地球の裏からまじめな話~頑張れ日本

地球の裏から日本頑張れ!の応援BLOGです。
証券関係の話題について、証券マンとしての意見を述べていきます

G7

2008-10-11 08:24:30 | 初心者集まれ!株を始めてみる?
G7の共同声明が出たようである。
ブルーンバーグニュースによると、
「信用市場の凍結解消へ向け、必要な全ての措置を取る」
「金融機関に対して流動性への広範囲にわたるアクセス保証をする」

またNYSEとナスダックは再度空売り規制措置を検討しているようで、提案内容は、株式が20%を超える値下がりで引けた場合その後3日間に渡って空売りが規制される、と言うモノらしい。

結局NYは約1.5%の下落、ナスダックは若干のプラスで終わったようだから、まあ(私を含めて)一同とりあえずほっとしているのでは無いだろうか。
とは言っても1.5%の下落でホッとするって言う状況がそもそも??だけど。

いずれにせよ、G7によってどんな内容が出ようとも、もはや誰もその措置によってマーケットが再び元に戻るなんて楽観視している人は多分居なくて、とにかくこのFree Fallをまずは止める、と言うのが大先決である。このまま底抜け脱線ゲームのようになってしまうと本当に世界恐慌になってしまうと思う。
既に今日のマーケットでアメリカのBig3が危ない、って話がまことしやかに流れたし、要はこの大混乱がいよいよマニファクチャラーにまで及びつつあり、それは実体経済に本格的に暗い影を落とし始めている、と言うことを意味する訳で、そうなったらこれは株をやってるとかやってないなんて話じゃなくて、個々人の普段の生活にまで様々な影響が及ぶ、と言うことなのだ。

さて、このG7の声明であるが、ちょっと漠然としているので一体どの程度まで何が行われるのかが正直分からないので、中途半端なコメントは出来ないけれど、1番目はもうそれをやってもらわないととにかく底抜け、そして2番目の流動性へのアクセス保証、これは良いかなと思うけれど、では対象となる金融機関がどこまで入るのか、またそれはきっちり金融機関に取って安全な輸血になるのか、その辺がどの程度で足切りされちゃうのか良く分からないけど、現在の大命題である流動性の速やかな確保、と言う観点からは良さそうだ。
まあ詳細はこれから決まっていくのか既に決まっているのか情報不足ではあるけれど、仮に今後詰めて行くのであれば余り時間は無い。
ただこれらの声明だけでは株式の本格的反騰はまだ無理だろうと思う。ただ、とにかく止血、と言う点からは目先は止まる気がする。
しかしながら現在のマーケットは全く容赦が無い、出るもの全て撃たれる、片っ端から切り捨てられる、って感じだから、予断は許されないだろうが。

先日のエコノミスト氏がおっしゃっていたように(但しあの日水曜日に比べると今日金曜日は既に全く違うステージな感があるが)、とにかく効果的なのは、資本強制注入と流動性、と言うことであったので、その観点から行けばG7声明は妥当であろうか。(1番が資本注入の事をも謳っているとすれば)。

結局この現象は何だったんだろう、と考えると、やっぱりバブルの崩壊なんだよね。今日の何かの記事で要は今回は高度化複雑化した金融商品バブルが弾けた、と書いてたのがあったけど、まさにその通りなのだろう。さしずめ金融工学バブル、って事か。
実際金融業のサラリーってのは20年前くらいまでは平均+10%程度だったそうだが、現在はそれが+30%くらいになっているそうだ。(いくら同じ金融業と言えども我々普通のサラリーマンにはとても+30%なんて考えられないけど・・・)
サラリーにそれだけプレミアムが乗っかってるって事は、様々なリソースが金融業にくっ付いてきてた、って事で、それがバブルを知らない間に誘発して今回弾けた、って事だろう。
まあリーマンの会長の報酬なんて確かに尋常では無いわなぁ。5年で355億だか、って奴ね。
やはりそういう事例が世間を賑わすから余計資本の強制注入に対しては普通の暮らしをしている人にとっては、なんじゃそれ?と成るよね。
この「強制」ってのが味噌で、かつての日本でも同じことが90年代に行われている。これ最初は強制じゃ無かった。そうなると何処も手を挙げないんだよね、手を挙げる=うちは実は苦しい=株式の売りのターケットに成る=株価下がってますます苦しくなる、って構図で、これでは駄目だって事で全銀行に強烈に厳しい査定が行われて結局全行強制、となった。
今回は世界的だけれど、要は各国の主要金融機関には原則強制しないと日本と同じ轍を最初踏んでしまう懸念がある訳だ。ただそうなったらなったで、今度は各国の査定方法の違いだの何だのでもう一波乱くらいありそうだけど・・・ここが世界的レベルの難しさだろう。

現在日本は相対的に若干有利だと言われている。日本株もフリーフォール状態ではあるけれど、欧米に比べればまし、って事だ。ただここで政府がつまらないミスを犯すと必ず将来に禍根を残すと思う。
そんな中で麻生首相はとりあえずそれなりのリーダーシップを取っているように見えるのに対して、私は完全に民主党は駄目だと思った。
まあ政権奪取に今のタイミングを逃すまい、と言う気持ちは分かるけれど、全員がカラスの合唱のような「解散解散」、解散することが日本経済を救う、的な論調ははっきり言ってガッカリであるね。キレイごとを随分言っているようだけれど、財政的裏づけが碌に無いにも関わらずの無責任な物言いはどうか。
いくら相対的に有利な日本だからって、恐慌の一歩手前なんだから、その辺は国を代表する方々としてもっと「時間」と言う尺度に対しての真剣さを持ってもらいたいなぁ、と思う次第である。

本日2度目もまとまりが無くてすまん。


死ぬ瞬間

2008-10-11 03:15:36 | 初心者集まれ!株を始めてみる?
非常に物騒なタイトルで申し訳ないが、これはスイス人女性医師のキュブラー・ロスさんの有名な著作のタイトルである。
彼女は医者になってアメリカの大きな病院でホスピスの患者を受け持っているうちに、最期の迫った人間の感情の流れには4段階あることに気付いた。
「怒り」「抑鬱」「取引」「受容」である。
これを書いた本がこの「死ぬ瞬間」で、世界中のお医者さんで読んでいない人はほとんど居ない、と聞いたことがある。
ある日余命宣告されたとすると、まずその人は「怒る」。何故俺なんだ?ふざけんな!そして「抑鬱」期に入り、その後色々と心の中で取引を試みる。これをするから俺を助けてくれ、あるいは俺が死んでもあいつの事だけは神様頼む・・・
そして最後は「受容」、全ての現実を受け入れる。
先生は故に、受容段階にある人に対しては「頑張って生きて」みたいなことは一切言わず、静かにしたい事をさせてあげたり、って事をしていたそうだ。

さて、マーケットである・・・
何故こんな話を持ち出したかと言えば、少なくともマーケット関係者はみんなそろそろ「受容」期に入っている気がすごくするからなのだ。
実はこの4段階、私が人間観察をずっとしているうちに思ったんだけど、要はその人にショッキングな事態が起こるとほぼみんなこの4段階を経るのだね。
例えば解雇の場面。外人君たちがその憂き目に会うのを何度も見て来たけれど、一様にまずは「怒る」何故あいつじゃなくて俺が切られるんだ!ほんと顔を真っ赤にして怒る。そしてど~んと落ち込む(抑鬱)。そして色々取引を始める。この場合の取引は精神的なものではないけれど、弁護士を立てて戦う選択をする人、やら、今回の解雇が如何に酷いかを、新しい会社の面接で使う人、様々である。そしてそれら全てが終わって、上手く再就職出来た人・出来なかった人、裁判で勝ち負けが決まった人、要はこれはまあ当たり前だけれど全てを最後は受容する。

今のマーケットもまさにそんな感じで、各国政府が入り乱れての一種取引合戦、きっと間もなく受容期を迎えて、みんなが、それこそ世界中の人間が「これは何だったんだろう」って時期は必ず来る。

本来ならこのBLOGには例えば今日の我々のドキュメントチックな話やら、もっと生臭い話を書いたほうが受けが良いのだろうけれど、まずはどうしてもこれを書いておきたかった。
一昨日辺りから連日マスコミの方が電話をして状況を聞いて来るのだが(私個人的にはバンバンそういうのに出張って行きたいのだが(ミーハー)、色々事情もあるので公式取材は一切受けていない、受けられない)、自分が話しているその話に「キレ」みたいのを自分に全然感じないのだね。
さっきもさるTV局の方と電話で話していたんだけれど、要はもう私も分からないからキレが無いんだ、って事に気付いた。
過去の事例だの、チャートがどうの、ファンダメンタルがどうの、もう全て当てはまらないこのような状況、それも世界レベルで起きているこの未曾有の事態、説明が出来ないんだよね。
これを書いている間もブラックベリーをずっと見ているけれど、ダウもいよいよ8000ドルを割りそうだし、モルスタの株価も40%下落してる。

今日ブッシュ大統領のWHでの演説をライブで見ながら同時にマーケットの数字を追いかけていたけれど、全く反応しなかった、と言って良い。
NY開始後に、ライボーギャランティー、って話が出て、一瞬マーケットは戻ったけれど結局続かない。協調利下げが数時間の命だったことは前回書いたけれど、何をやっても止まらない。
さる外人が、いっそのことブッシュが「全部売れ」とでも会見で言ってくれたらマーケットは急反発したんじゃないの?なんてジョークとも取れないジョークを言ってたし。
ここまで来ると、もう簡単にはリスクマネーはマーケットに戻って来ないから、通常時の暴落直後の鋭角的な暴騰は考えにくい。数日はあるかも知れないけれど、本格的な戻りなんてのはしばらく全く期待出来ない。

現在の関心事は全てこの週末のG7。
G7で何が出るか、既にマーケットの答えは出ている気がする。つまり何が出てももうマーケットは反発する力とか気力が残っていないような・・・
イタリアの首相が、一旦世界中のマーケットをストップさせて・・って発言をして、マーケットでも今日一時噂になったけれど、それは結構関係者は本気で考えたと思う。ストップさせている間にまず溜まっている清算業務をきちんとやって再開するってのは、もはや非現実的な選択肢とは言えないかもしれない。

また後で書く。

どうすりゃ良いのか?

2008-10-09 06:02:36 | 初心者集まれ!株を始めてみる?
今日はさる著名なエコノミストの方のお話を聞けるチャンスがあったので、体調不良もあったが、証券マン人生でそう何度もお目にかかれることの無い状況なので会社に飛んで行った。

朝の段階では日経平均の大幅な下げにも関わらず、ヨーロッパはまあ「小安い」って言う展開で、日経平均の先物(シンガポール)も結構強そうな雰囲気だったので、ちょっと小康状態かな、と思っていたところへ飛び込んできたニュースが、

COORDINATED RATE CUTS
*BANK OF CANADA CUTS OVERNIGHT RATE TO 2.5% FROM 3%
*GLOBAL CENTRAL BANKS CUT BENCHMARK RATES BY HALF A POINT
*SWEDEN'S RIKSBANK LOWERS KEY RATE 0.50% POINTS TO 4.25%
*ECB LOWERS BENCHMARK INTEREST RATE TO 3.75%
*FED CUTS BENCHMARK RATE BY HALF-POINT TO 1.5%
*BANK OF ENGLAND CUTS BENCHMARK INTEREST RATE TO 4.5%
*ECB, BOE, BANK OF CANADA, SNB, RIKSBANK ALSO CUT RATES

要は世界各国の協調利下げのニュースであった。これによって特にFTは一時プラス圏に入ったし、超円高で推移していた円も一時売られた。
本来ならばこれでかなり安定するはずだった、とみんな思っただろうし、一番それを願ったのは各国中央銀行なり政府であったろう。
残念ながら日本はあと0.5%しか無いからこれには参加出来なかった。
日銀の白川総裁がやたらと協調はどうのこうの言っていたのもこれに参加出来ない事への布石だったのかな、と思ってしまったけど。

ところが問題はここからである。この辺が今の現状・現実を如実に物語っているが、結局ヨーロッパはその協調利下げの効果は数時間も持たずに下落に転じて、終わってみればまたもや5~6%の下げだったのだね。
つまり、協調利下げは実際行ってみて全く効果が無かったことが証明されてしまった。
しかしながらNYダウは実はさほど下げずに踏ん張っていて、先ほどまでプラス圏、現在は2%程度の下げで、欧州に比べると下げが浅い(これも終わってみないと何とも言えないが)。

まずここで我々がきちんと認識しなければならないのは、前回の記事で私が書いたように、やっぱりヨーロッパは一枚岩ではない、と言うことだ。
その事をマーケットは見抜いているがゆえに、この協調利下げによる欧州圏とアメリカの株価の下げの差が出ていると思う。

今日そのエコノミストの方に質問した。
「極端に言えば、ほんと欧州は昨日までインフレインフレ、だから利下げなんて出来ない、の一点張りだったのに、何故本日協調利下げをしたのか?それはここもとの原油の下落等を鑑みて、インフレ警戒感が緩んだ証左になるのか?」
個人的に私はヨーロッパのインフレファイターぶりの徹底している事にある種感銘すら受けていたので、それがあっさりこうなるのか、と思ったのだよね。
エコノミストの方の答えも私の想像通りで、
「ヨーロッパのインフレに対する態度自体は余り変わっていない。しかしながらさすがにそうも言ってられなくなった、って所でしょうか」
ECBが世界的に最もインフレに関してはタカ派であるのは、前に書いた気がするけど労働者との緊張関係がどこの国よりも厳しいからだと言われている。世の中がどんなに不景気でも、インフレが起これば労働者側からの賃上げ圧力が高まり、そこで下手を打てば不況下のインフレ、つまりスタグフレーションの引き金を引いてしまう恐れがあるからだ。
そのインフレファイターであるECBが、直近の原油相場の下落を見て単に安心したから利下げをした、とはもちろん考えにくくて、やはり背に腹は変えられない、と言うのが本音だろう。
しかしながら当日の結果だけを見ればこれは残念ながら空振りに終わった。
もちろん徐々に金利系マーケット等ではこれが効いてくるのだろうが、少なくとも株式市場はそれに100%賛同しなかった。
その答えは上に書いたように、一枚岩じゃない、って事以外に私は今のところ的確な解を見付けられない。

欧州在住歴十ウン年の私が直感的に思うんだから多分当たらずとも遠からず、なはずだ。
考えてもみれば、例えば私がドイツ人だったら、イタリアの連中と一緒にして欲しくない、だって奴らは毎日昼間はシエスタ取って、何かあればケセラセラ、到底そんな連中とは合わないぜ。
反対に私がイタリア人だったら、あんなにしゃちほこばった、何でもかんでも四角四面なドイツ人なんかと一緒にして欲しくない、だって奴らには遊び心みたいなのもないし、何かあれば、我々はドイツ人、イッヒビンドイチェ!みたいなそんなつまんない奴らとは合わないぜ。
って事だ。

その実は一枚岩じゃない系の記事があったので参考までに引用しておく。

~~~以下記事引用Bloombergより~~
【記者:Simon Kennedy and John Fraher】
10月8日(ブルームバーグ):欧州連合(EU)の各国政府が深刻化する金融危機に対し、共通の対処策を打ち出すことができず、英国とスペインの両国は自国の金融システム保護に単独で動き出した。
 事情に詳しい関係者3人によると、英国のブラウン首相は、経営難の銀行への公的資金による資本注入を含む救済策を用意している。また、スペインは7日、最大500億ユーロ(約6兆8200億円)を投じて銀行の資産買い取りを進める計画を発表した。
 4日にはパリで欧州首脳会合、6日はルクセンブルクでユーロ圏財務相会合がそれぞれ開かれたが、金融危機に対処する共通の対策を打ち出すことはできず、英国とスペインの両国は単独で金融システム保護策に動いた。
 イタリアとフランスの両国は米国の金融安定化法に倣った救済基金の創設を提案したが、ドイツの反対で実現しなかった。また、欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁も法的な制約から介入する権限がなく、単独で金融安定化策を発動する国が今後、続出する可能性がある。
 ドイツ銀行のエコノミスト、マーク・ウォール氏は「市場はもっと各国共通の措置ないし米国並みの政策を望んでいただろうが、欧州には米国と同じような連邦制度は存在しない」と指摘する。27カ国から成るEUは共通の政策を打ち出すのに難航し、国境を越えて活動する巨大銀行が破たんしかかっているときに、共通対策を打ち出せないリスクが高まっている。
 また、欧州にはポールソン米財務長官やバーナンキ連邦準備制度理事会(FRB)議長のような中心人物がいない。トリシェECB総裁はそのような役割にふさわしい人物だろうが、米銀JPモルガン・チェースによる証券大手ベアー・スターンズの救済買収を後押ししたバーナンキFRB議長のように、金融機関を救済する権限がない。トリシェ総裁は7日、「われわれは銀行の経営問題に介入することができず、できることには限界がある」と述べた。
 メリルリンチ(ロンドン)の欧州担当チーフエコノミスト、クラウス・バーダー 氏は、ECBにも将来、複数の国にまたがる銀行の救済権限が付与される可能性があるとしているが、近いうちに実現する可能性は低い。各国協調による銀行救済策がないことで、既に低迷している欧州経済に一段と下押し圧力が掛かる恐れがある。

~~~以上引用終わり~~~

エコノミストの方もおっしゃっていたが、EUってのは通常の状態の時はそれなりにきちんとワークしていたけれど、いざ何か問題が浮上するとやはりこういう足並み問題が出ますよね、と。全く同感である。
もっと言えば、アイスランド問題ではご存知かも知れないけど、アイスランドの銀行に結構お金を預けていた英国人は多くて(金利が高かったので)、その銀行には英国人の口座数だけで30万口座くらいあるそうなのだが、そのWEBサイトがそのニュースでクラッシュしてWEB経由で一切預金を引き出せなくなったそうだ。ちなみにアイスランド人の預金は全額保護されるけど、英国人に関しては約1万6千ポンド(300万円程度)の保護しか受けられない模様で、英国政府はアイスランド政府を訴えることにしたらしい。
ちなみにロシアがアイスランドに融資するって話も非常に不思議だし。

一時が万事大混乱で、いくらサルコジだのメルケルだのブラウンだのが仲の良いところを見せても、結局は市場に見透かされているって訳だ。

今の状態はかつての日本の1993年~1997年に似ていると言う。
かつての住専、三洋証券破綻、長銀、日債銀の国有化・・・
リップルウッドが入ってきて、あの惨憺たる日本の状態にリスクマネーを果敢に投じ、彼らはそれで成功を収めた。
今現在、それと同じようなことが同じような順番で起こっているわけで、では日本がやって各国がまだやっていない事。
これはエコノミスト氏によれば、資本の強制注入だ。日本も紆余曲折して最後は金融機関は強制注入を受け入れた。
もっともその後それで景気が一時的に浮揚したので、そこを日銀が見誤り先手を打って金利を上げていったのが間違いだった、と氏は言っていたけれど、なるほどね。
残念ながら世界的レベルで果たして資本の強制注入があるだろうか。これは当然即効性があるので、最後の劇薬かも知れない。問題はいまだにそういう話題が出ると、「国民の税金でウォールストリートを助けるのか」の議論である。私もこの議論には実は多少賛同してしまうのだが、ただこれはウォールSTを助けるのではなくて、金融システムを守るのだ、と言うことである事をきちんと理解してもらう必要がある。
そうは言ってもなかなかねぇ。

この辺はまたきちんと整理して書く。
とりあえず今日はここまで。

今こそハゲタカの襲来に備えるべし

2008-10-07 04:04:14 | 初心者集まれ!株を始めてみる?
何度かここに書いた。「これで終わりではない」って。
今日のマーケットを朝から見ていると本当に背筋が凍る。ヨーロッパは朝の段階から4-5%下げ、NYが始まった途端それは加速し、結局軒並み7~8%下落して終わった。NYも現在7%弱の下げ、NASDAQも8%近い下落となっている。
さらに日経平均の先物はあっさり10000万円を割り、円ドルは一時100円台、ロシアは16%下げ、ブラジルも15%下げて何度かサーキットブレイク。
実は数日前、私のフィールドであったユーロCBの値段をチェックしてそれに関する記事を書こうと思っていたのだが、今日気配値を見たらもうその気がなくなってしまった・・・

それでもロンドン時間朝の段階では、もし日本株を売りたいってお客さんから来たら、それは決めてあげられないだろうけれど、買いたいが来たらどうしようか、って議論があった。まあこういう相場だからいつ何時要人の発言が飛び出してマーケットも反転するかも知れない、って意見もあって、とりあえず両方向とも様子見、にしていたけれど、今ここまで下落してしまうとさすがに明日の東京及びアジアでの市場は半ば見えている感じだ。

今現在のこの相場が、私が何度か書いたように今後の実体経済の悪化を織り込みに行っているとすれば、そろそろ終わりが近いかも知れないし、実際そういう意見がちらほらマーケットでは出て来ている。
しかしながらここまで下がってくると、世界中での一般の企業活動に及ぼす影響ってのはいよいよ無視できなくなって来るので、ある意味ネガティブスパイラルに陥っているとも言える。
アメリカの先週の雇用統計の数字等や、既に起こっている日本企業の倒産等が現在の姿を物語っている。

さて、ここから本題である。
仮にこのままNYが引けて、ヨーロッパに比べると幾分下げ幅も小さい状況であったとするならば、やはり焦点はアメリカからヨーロッパへ移ってきている、と見る事も可能だろう。
先週さるテレビ局の方と話していて、ヨーロッパに関して聞かれたのだけれど、私の見解は「ヨーロッパは一枚岩ではない」って事だ。
週末にEUの4カ国が集まって色々協議をしていて、さらにその宣伝効果を狙ってか否か、イタリアの首相が、この時期の日本の首相の交代に対して批判めいた事を言ったとか。
ヨーロッパ在住が長い私に言わせれば、何をかいわんや、であるけど。

やはりいくらEUとは言っても、各国のお国の事情は様々で、それらで精一杯なのに他のEU諸国の事まで・・・ってのが私は本音だと思う。何となくそれらの矛先を日本だの選挙中のアメリカだのに向けさせたい意図が透けて見える気がする。
つまりヨーロッパがいくら我々は協調して断固云々かんぬんと宣伝してもやはり一枚岩でないことをマーケットは見抜いているとも言えるだろうか。

さらに気になるのが、まああの時は非常事態で仕方が無かったように見えるけれど、野村なりMUFGなりの買収劇である。
曲がりなりにもアメリカを代表する(してた)金融機関のリーマンなりモルスタの買収やら出資やらに米政府が噛んでいない訳が無いと思う。ここで何となく現象だけを見ていると、おおようやく日本の金融機関も傷が浅いって事も手伝って、いいタイミングでいい買い物をしたよなぁ、って思ってしまう。
けれど本当にそれに安穏としていて良いのだろうか。

かつてのライブドア事件の時、私は散々このBLOGにて、リーマンはハゲタカでも何でもない、と書いた。当時の報道やらマスコミやらの論調を思い出して頂きたいが、リーマンと言うハゲタカがどうのこうの、ってのがすごく多かった。
私はあの手のMSCB等をずっと見て来ていたから、リーマンがやった事は全く持って間違いではなかったし、それを捉えてスケープゴートにしよう、って言う独特の風潮に物凄く嫌な感じを持ったのだが。
まあそれらの先陣を切っていた方々は、リーマン破綻に対して、因果応報だ、それ見ろ、みたいに思っているかもしれないが、そういう方々にこそ現状を理解し再び先陣を切って頂きたい。
それは、本物のハゲタカは国家だ、って事だ。

アメリカがリーマンやらMSを日本にとりあえず渡した訳を考えると、もしかしたら余りにも穿った見方かもしれないけれど、それらを通じて日本の資金を引き出そう、と言う意図があるんじゃないの、って事だ。
一見日本は良い買い物をしたように見えるかも知れないけれど、実はそこから、唯一何となく大きな被害が無さそうな日本から着実に何かを引き出していくその第一歩、みたいに見えるのだよね。
EUの軽い日本叩きだって、さらに穿った見方をすれば、日本はまだ安全で良いね、って事を周知徹底しているような匂いすらする。むしろここで日本が出すものを出さないと世界恐慌が本当になるよ、って言う、いざとなったらそういうことに掛けてはわが国の遥か上を行くヨーロッパの狡猾さが怖い。(この辺も私自身の日常でヨーロッパ在住中に何度もそれなりの目に遭っているから良く分かる)

世界がこうなって来ると間違いなく保護主義的な様相を強めてくる。その際に我が日本政府はきちんとした対応をしないとずっとアッシー君やらミツグ君になってしまうことを覚悟しないといけない。
若干暴論に聞こえるかも知れないけれど、どうもそういう布石が着々と各国から出て来ている気がしてならない。
本当のハゲタカの姿を我々はきちんと見極めて、行き当たりばったりな対応やら、将来に禍根を残すような対応だけはして欲しくない、と取り急ぎ思っている。

催促相場

2008-09-30 04:47:07 | 初心者集まれ!株を始めてみる?
相変わらずマーケットの激震は続いている。
今日もさるTV局から取材の依頼があったのだが、諸般の事情にお断り申し上げた(内心ちょと残念)。ただ電話でのやり取りはさせてもらって、普通の人にも何が起こっているのか、と言う事は説明出来たように思う。

思えば、
フォルティス → ベネルクス3国
ワコビア → シティー
B&B → 国有化、サンタンデール
ワシントンMU → JPモルガン
リーマン → 野村
モルスタ → MUFG
メリル → BOA
AIG → 国
みたいに、ざっと見渡しただけでも相当な合従連合が起こっている。それも世界のトッププレイヤー達が勢ぞろいしたオールスターみたいな感じだ。

インベストメントバンキングビジネスモデルの崩壊、に関してはこの間述べた。
ではこれは具体的にどういうことか?
一言で言えば、金融会社が主体となってリスクを取るビジネスが崩壊した、って事だ。
榊原氏流に言えば、商業銀行は「牧歌的」、つまり商業銀行、コマーシャルバンキングビジネスの基本はお客さんから預金を集めて、融資する、つまりまずは顧客ありき、のビジネスだ。このごく一般的なモデルには自己が自ら主体となって(プリンシパル)リスクを取る必要は基本的には無い。もちろん融資先の破綻、はあるけれど。

それに対するインベストメントバンクのモデルってのは、元々は自らの資金力を背景にとにかく儲かるものには基本自己のリスクで向かって行った訳で、それらが複雑に張り巡らされ、どこかがこけると連鎖的にみなこけた、となる。
どこかかの記事に出ていたけれど、例えばCDSなんてのは良い例かも知れない。
Credit Default Swapの略で、要は相手の倒産リスクを回避するためのヘッジ手段として元々は開発された。
単純にリスクヘッジのために使われていたCDSであるが、これはちょっと前までは実はその会社が倒産するかも知れない、なんて事を念頭に取引されていた訳ではない(はずだ)。
それが何時の間にやらCDS=倒産リスク指数、みたいに成り代わってしまい、完全にこの指数が株価とは別に一人歩きを始めてしまった。
CDSのスプレッド拡大→この会社やばいかも→株を売る→株がこんなに安くなった→CDSは余計スプレッド拡大→・・・・・

巷では(特にレベルの余り高いとは言えないマスコミでは)、株式市場が次の獲物を探して暴れまくっているような書かれ方をしているけれど、私は相場が「催促」している、と言う言い方を使いたい。
これだけ合従連合がなされて、でもあなたの所は本当に大丈夫なの?と。
一連の大嵐で各国金融当局、特に英米は、金融機関の株式の空売り規制に動いた。私の本来の持論は、株式市場は自由であるべきだと思っているので、余りこの規制には組しないけれど、つまり空売りは簡単に出来ない、ましてやリーマン等の影響でヘッジファンド自体もかなり窮屈になっているはずで、それにも関わらずこれだけ特定の株式が狙い打ちされているのは、これは意図的に大きく歪められたモノでは無いような気がするのだ。

直近の合従を見れば分かるように、救い手は必ず大銀行になってる。そして救われる方は、インベストメントバンクであり、不動産系金融機関である。(ワコビアは商業銀行だけど)
つまりこの一連の動きとは一言で言えば、商業銀行業務を核とした大銀行がバックに付いてない限り、下手な金融機関は目先生き残れませんよ、と言う事だ。
ライボーレート(Libor)が一気に3倍に跳ね上がってもじたばたせずにきちんと資金繰りが出来ないと、今後簡単に自己が主体となってリスクを取っていくビジネスは出来ません、と言うことだろう。

催促相場とはすなわち、あなたの会社のバックにきちんとした銀行が居ますか?と言うことを問いかけ、もしそれが無いのであれば、どこかきちんとした後ろ盾を見付けて下さい、さもないと知りませんよ、と言うことで、私は相場がそう言っている様に聞こえる。(まあ裏返せば生贄探し、とも言えるけれど)

そして良く聞かれるのが、「このような相場はまだ続きますか?」と言う質問である。
私はまだ続く気がする。この一連の催促が終わるまでは相場は一喜一憂の展開になるだろうし、そしてここからが問題で何度も書いているけれど、実体経済への影響はそれから、になる。
○○がXXに買われて従業員も全部引き継ぐ、とは言ってもそれは恐らく「当初は引き継ぐ」って話で、それ以降は徐々に人数が減っていくだろう事は簡単に想像できる。
全てが収まる所に収まっても、昨日まで買う方も買われる方も同じような商売をしてた訳で、そこに1+1=2、の算式が成り立つとは思わない方が良いでしょう。
各国政府も相当疲弊しているはずだし、ここからの動きにはある意味今まで以上に神経を尖らせる必要があると思う。
日本政府のお気楽論に流されてしまってはいけない。

一見マーケットは落ち着いているが・・・

2008-09-23 03:52:37 | 初心者集まれ!株を始めてみる?
もう日替わりで世の中が目まぐるしく動いている感じで、私ごときでも付いていくのがやっと、ってな感じである。
マーケットは落ち着きを取り戻し、先週末は乱痴気騒ぎの相場を演じたかと思えば、今日のアメリカ・ヨーロッパはまた不安感に覆われている、そんな感じだ。

今日のビッグニュースは何たってMUFGのモルスタへの出資及び野村がリーマンの結構な部分を買うことに決めた、これだろうね。
リーマンに関しては遅かれ早かれどこかが触手を伸ばすだろう事は誰もが予想していたはずだけど、まさかモルスタにMUFGが名乗りを上げるとはねぇ・・・

拙BLOGにて19日に書いた記事で、コマーシャルバンクの巻き返し及びインベストメントバンクのビジネスモデルの崩壊に関して語ったけれど、その同日に以下のようなニュースが流れて、やっぱどう考えてもそうだよね、と思った。
例のMr.Yenのコメントである。

~~~以下記事引用~~9月19日(ブルームバーグ)ニュースより

榊原氏は、昨夏以降の金融危機で「投資銀行のビジネスモデルが崩壊してしまった」と分析。米証券2位のモルガン・スタンレーは「あと1週間くらいの間に」単独での生き残りを断念する公算が大きく、最大手のゴールドマンも「中期的には、どうなるか分からない」と述べ、「インベストメントバンクは消えていく運命にある」との見解を示した。

預金を集めて貸し出しを行う商業銀行が中心となる「牧歌的な金融システムに、だんだん戻ってきている」と指摘。この歴史的な「パラダイムシフト」を踏まえ、次期米大統領が就任する「来年以降、金融当局の政策や規制の形であるレギュレーション体系を変える」動きが起こると予想した。

~~~以上引用終わり~~~

いや、誤解を招くといけないので言っておくが、私は天下の榊原氏が拙BLOGを読んでるなんて自惚れはこれっぽちも無い(笑)。
実戦を知っている極めて発言力のある方だって、私のようなシガナイ証券マンだって、ちょっと考えれば分かることなのだね。

その榊原氏のもう一つの予言である「モルスタは一週間以内に」ってのもピタリと当たったね。
結構モルスタ東京の中枢に居る私の後輩と先週電話で喋っていたのだが、彼曰く、
「小鬼さん、うちは手元流動性から何から他社とは簡単に比べて欲しくないくらい厚いんですよ~」と言っていた。これは事実だと思うし、でもマーケットはやはりそうは受け止めてくれなかった訳だ。

今、「ああひとまず安心」だと思っている政府関係者の方とかが居るとすればそれは大きな間違いだと思う。確かに現象面だけ見れば、アメリカ政府の大量資金供給があって、メリルはBOAの傘下に、AIGは政府の庇護の下に、そしてモルスタはこれでしばらくいざって時の資金等で問題視されることはなくなるだろうし、割と全てが丸く収まった感はある。
しかし何度も言うように実体経済への影響はこれからである。
MUFGや野村の腹は分からないけれど、恐らく目先の大量解雇のようなことはしないだろう、でもその後は分からない。メリルだってAIGだってこれから本格的なリストラが始まるはずだ。当然買った側の負担はそれなりに大きい訳だから、それなりに業績に影響を与えるだろうし、世界中の銀行、コマーシャルバンクはこれらの動きをつぶさに目の当たりに見ている訳だから、当然貸し出し等は今後絞られこそすれ楽になっていくはずが無い。

日本の証券大手をもう一度考えてみると、前にも書いたけれど唯一野村と大和がきっちりしたコマーシャルバンクの後ろ盾が無い。
日興はシティーが、三菱UFJ証券はMUFGが、みずほ証券にはみずほFGがそれぞれ付いている。
MUFGのモルスタへの出資は現在の証券子会社で足りないところを徹底的に補完させる腹があるのだろうし、親会社の銀行としては資金のリスクに気をつけていればあとは証券同士で上手くやれ、みたいな感じなのかな、と思うし、これは極めて正しい戦略だと思う。
みずほはそういう意味では一歩出遅れている感はあるが、それでも銀行がバックについている限り新光との国内のある意味小さな問題はとっととクリアーして先に進みたいだろう。
そして繰り返しになるけれど、野村はこれで特にアジア、ヨーロッパ(リーマンのヨーロッパオペレーションの買収は現段階ではまだ推測記事に過ぎないけど、話はあるのだろうね)戦略は大きく前進する。ただこれといった銀行の後ろ盾が無いから、その部分は今後の動きが非常に興味深い。
そして大和はさらに一歩出遅れてしまった気がする。SMFGとの緩やかな提携はあるけれど、これを一歩進めて、そして何処へ触手を伸ばすのか、これも興味深い。

この間書いたプライムブローカレージ業務、これは野村も大和も何度もやろうとしていたけれどモノになっていないはずだ。結局日本の証券会社が海外でイマイチだったのもこの部分の巧拙が非常に大きい。
これも前に書いた記憶があるけれど、例えば貸し株の世界なんてののピラミッド構造ってのはそう簡単にひっくり返せない。アメリカのトッププレイヤー達を傘下に収めこの部分にての躍進を計ったら、日本勢はかなり今後大きな影響を持つことになると思う。
しかしながらそれらが本当に効いてくるのは恐らく何年も先のことだと思うし、そうなるまでの実体経済は、これからその苦しみを経験することになると思う。
ボンドやコモディティーの世界も含めてこれだけでかい事故と言うか歴史的な出来事に直面してまだまだ日が浅い訳である。
楽観はまだまだ禁物であろうと、本当に実感する。




これからの金融界

2008-09-19 07:42:36 | 初心者集まれ!株を始めてみる?
いやはや今日アクセス数を見てビックらこいてしまった。この数字はかつてのライブドアで一生懸命書いていた以来である。みなさんほんとそれに対してまだまだあけっぴろげに書けなくてすまん。
まあ現場の空気とか、今私なりに考えていることなんかを少しでもお伝えできればと思って今日も眠いけど書いてみます。

既に書いたように、リーマンの破綻って言うものの直接的な影響はプロの世界の範疇にて収まるけれど、間接的な影響は必ず国民のみなさんにまで及ぶと思う。
ある意味今日くらいになるとさすがに我々もちょっとした事で大騒ぎするようなことも減ってきて、極めて粛々と黙々と散らばった小石をせっせと集めて庭をキレイにしている、そんな感じだ。

私の目の前でも昨日書いたような決済絡みの問題、これ以上の影響を食い止めるための自衛策みたいなものの策定など、やらねばならないことはあるけれど、結局オフィスで気付いてみるとマーケットをひたすら追いかけている自分に気付く。
ヨーロッパ株式市場はもとより、定期的に入ってくるCDSの気配やら、ライボーの数字、日本の騰落レシオやらVIX(恐怖指数)やら、もちろん為替、シカゴの日経平均先物、AIGやGS・MSのプリマーケットやら、金、オイル、バルチック指数・・・
そんな中でもちろん最も気になるのがNYダウな訳だけど、ダウも相変わらずのフリーフォール、スペースマウンテン状態。200ドル上がってからマイナス20ドルになって気付いてみると400ドル上がって・・・
結局色々な数字を見つつも要はな~んも出来ないのだ。
唯一出来そうなことは、刻々と変わる数字を見ながら、刻々と流れてくるニュースを見ながら、少なくともこれからの世界を自分なりに読み解くくらいだ。
それをここに書いておこうと思うけれど、みなさんあくまでもシガナイ証券マンの勝手なシナリオだから、その辺は割り引いて下さい。

あたかもマーケットは次なる獲物を求めて喰らい付こうとしている、みたいな解釈でそのターゲットがGSでありMSでありUBSである、みたいな報道が目立つ。
海外に居る証券マンとして考えるのは、リーマンもしかり、GSもMSもしかり、つまり米系証券会社の強みって何だったんだろうって事である。
私はみなさんには余りなじみがないかもしれないけれど、彼らが擁するPB部門ってのが、実は無視できないって思ってる。
スイスが長かった私がPBって聞くと、ついPrivate Bankingとか思っちゃうのだけど、この場合は違って、Prime Brokerageの意味である。
要は顧客の決済絡みを丸抱えしちゃう部門なのだね。
彼らの大手顧客は近来ではやはりヘッジファンドな訳で、ヘッジファンドは株の世界に限っていれば借株をしたりショートしたりを毎日毎日やっている。株を借りて売ればそのお金が入って来るから入ってきたお金でまた株を買う、そういう株の貸し借りやら受け渡し、それに伴うお金の出入りやらそれに伴う金利等の受け払いから全てやってあげますよ、ってのがこのPB部門だ。
さらに米系の強みは圧倒的な巨大投資家にも食い込んでいるから、特にGSなんかは例えば日本株で調達できない株はほとんど無い、とまで言われてる。
リーマンも当然このPB部門はつい先週までは相当金額を毎日動かしていたと思われ、それが止まっちゃったんだからその相手方に与える影響の大きさってのは何となく想像出来ると思う。
日系の証券会社も随分このPBビジネスに食い込もうとして頑張ったりしているけれど、米系のシステムなり調達力なりには相当劣っていたのが現状だ。と言うよりほとんど諦めて居たと言っても良い。

もちろんPBをやるからにはその相手となるヘッジファンドやらその他のお客さんに対する審査は相当厳格なはずであるが、ここへ来てのクレジットクラッシュは、証券会社から見ると相手の信用力に不安を抱く結果と成っていて、また同時に顧客の側から見てもリーマンがああなっちゃったら、じゃあ家が任せてるあそこは大丈夫かよ、って事になる。
このPB、要は私が昨日ここに書いて騒いでる決済に大きく絡んでくる所だから、これはお互いの会社の根幹を揺るがす部門なのである。
いくら優秀なFMが居たって、ここが崩壊してしまってはそのFMの活躍の場がなくなってしまう。

つまりここにもインベストメントバンクの限界があると思ってる。
地道にやってきた商業銀行系がここへ来て物凄くどっしり見えるのは、いざって言う時の資金調達力に大きな差があるからだろう。
残念ながらコマーシャルバンク系は証券会社をコントロール出来るけれど、インベストメントバンク系には限界があるのだ。
リーマン破綻の日に何かの記事で読んだけれど、証券会社あるいはインベストメントバンクが単独で生き残るビジネスモデルは恐らく同時に破綻したと見るのが正しい気がする。
天下のMSがどこかの銀行と合併交渉をし、GSもそうなるかも知れない。
でもドイチェとかバークレーズ、シティーなんてのはそういう話にはならない。
UBSはターゲットに成り掛けているように見えるけれど、私はスイス政府がUBSをどうにかするとはどうしても思えない。UBSも世界中で派手にやってるけれど要は正しいコマーシャルバンクの側面をきちんと持ってる。CSも余り話題に上らないのは同じような理由だろう。

翻ってわが国。
証券3番手の日興はシティーのバックがある。かつての新日本だ勧角だってのは今やみずほで、三菱UFJ証券だって色々な証券会社が合併して出来てる。
国内専業は別として、業界1,2位はどうか。ゆるい提携はそれぞれ銀行とはやってるけれど、まだまだ彼ら自身が優位性を保とうとしてがゆえの産物、みたいになってる。
これらが飛んじゃうってのは私も今は考えられないけれど、近い将来にどちらも商業銀行系とがっちり手を組まざるを得なくなるのでは無いか、って思う。

今日色々な数字を見ながらそんなことを結構じっくり考えてしまった。
そんな暇が実はあるんだ、ってのは無しね。

現場の混乱

2008-09-18 07:17:38 | 初心者集まれ!株を始めてみる?
今日もこの拙BLOGにたくさんアクセスを頂いているみたいでありがとうございます。
今日はちょっと酔っ払っているのではあるので取りとめが無いかも知れないが。

コメントでさるBLOGをご紹介下さったので、今日は読んでみたけれど(物凄く有名なので私も存在を知ってましたが)BONDの方も混乱も常軌を逸しているね・・・
そうなんである、今目先で一番混乱しているのが、リーマン絡みの決済の部分である。
株の売買をしたらその4日後に決済、つまり買ったらお金を払って株券を受け取り、売ったら株券を渡してお金をもらう、がある。
リーマン破綻と同時に日本の金融庁はリーマン東京に対して業務停止命令を出し、26日までのすべての業務に対して停止を命じた。
決済の世界ではこれがボディーブローのように影響を広げている・・・

リーマンは家から買ったのにお金を払ってくれないし株券を受け取ってくれない。
リーマンは家に売ったのにお金を受け取ってくれないし株券を渡してくれない。
もちろんこれはリーマン東京のせいでは無い訳だけれど、こういった大きなプレーヤー間での取引ってのはある意味チェーンになっていて、リーマン売りメリル買い、メリルはモルスタから買っててでもモルスタは野村から買ってて・・
みたいな事が往々にして起こる(まあこれは極端な例だけど)。
そうなるとリーマンの決済のスタックってのはそのチェーンの末端まで影響を及ぼすわけだ。
つまり株券の流れのみならずマネーの流れをも完全にスタックさせる。
さらにリーマンはいわゆるプライムブローカレージって業務をやっていたので(詳細は後日)、この部分の業務停止ってのはほぼ全ての金融商品の決済をスタックさせる。

私がここや拙日記にて、直接的な影響、すなわち日本の何たら銀行がリーマンのサムライ債を10億買ってました、なんてのは実は氷山の一角で、本当に怖いのは間接的な影響だ、って言っている原点はここにある。
今まで当たり前のように流れていた川が、ある日突然せき止められちゃったようなもので、そうなると川上では川が氾濫し、川下では必要な水が全然流れてこない、って事になる。
これらの影響を碌に計りもせず、我が優秀な日本政府は、蜂に刺されただのなんだの言っているし、BOJも余り危機感の無い『日本経済は停滞』なんてコメントをこのタイミングでしゃあしゃあと流しているのを見るに付け、私は我が祖国ながら日本が本当の意味で一流になれない原因を見た気がするのだよ。

AIGに関しての米政府のやり方には賛否両論があるけれど、私は正しいと思う。
プロの世界でのトッププレイヤーだったリーマンの破綻でこれほどの影響が出ていて、これに加えて一般国民に広く深く浸透しちゃってるAIGが飛んじゃったらその影響は、正直私には想像も付かない。日本政府もこのアメリカの決定に関してはそれなりに噛んでいると思うけれど、もうちょっと危機感を持って対処してもらわないとなぁ、と思う。
もちろん一般の方々へ不安を抱かせないような言動なり施策は非常に大切であるのは重々承知している。
しかしながら長年のクソつまらない茶番の政治の世界の駆け引きを見飽きてる我々に本当に必要なのは目先の安心を誘うような甘言ではなくて、我々一人一人がきちんと現実を見つめて今後冷静な対処法を構築出来るような絶対的な事実だと思うのだけれど・・・

リーマンBROS

2008-09-17 06:48:01 | 初心者集まれ!株を始めてみる?
本当はまだ余り詳細は書けないのであるが、恐らくこの話題を求めて何人かの方々がこの放置プレイ状態の場所までいらしてくれていると思うので、書ける範囲でアップしておこうと思う。
雑感は拙日記の方に書いているが、時系列に私の思っていたことを書いておこう。

先週末の段階で、週末に何らかの結末が出ることは明らかであった。
私を含め世界の大多数は、米政府が何らかの形でリーマンを救済して全てが落ち着くだろう、と言うものだった。
そして15日、日本・中国・HKなどが休場の日に我々の予想が如何に甘かったかを思い知らされる結末と成った訳だ。
私も実は某テレビ局から取材の要請を受けたのだが、残念ながら日本が休日と言うことで私の言ったことがそのまま会社の代弁となり、ひいてはそれによって無用なトリガーを引く可能性を排除できないほど我々現場も混乱していたためお断りした。

15日はとにかく情報収集に終始したわけだが、我々がさらに予期していなかったメリルのBOAによる買収、そしてAIGの危機も同時に伝えられ、正直月曜日は何をしていたのか今となってはきっちり思い出せないほどみんなテンパッてた。

そして日本が開いた今日16日。当然アジア株式市場は予想通りの展開で、まあそこまでは昨日の段階で誰もが予想出来た。
問題はここからである。
日本が開いたと同時に実務面での障害が出て来た。今日はこのソートアウトに終始したのは言うまでも無く、同時に欧米の市場を終始見ていたので、今日も結局終わってみれば何をしたのか具体的に余り思い出せない(汗)。
アメリカ市場のあの乱高下は本当に飛行機が乱気流に突っ込んで激しく上下動するかの如くであった。
あんなに一日でのボラタイルな市場は久し振りだったのではないか。

株式市場に限らず、債券は高騰、為替は円高、原油は大幅下落、CDSは急激に上昇、とどこをとっても実は落ち着いた市場なんて無くて、NYはプラスで終わりそうな気配であるけれども世界はさほど単純ではないと思っている。

まずはここから波及してくる間接的な影響に我々は注視する必要がある。
直接的な影響は今日大体出尽くした。邦銀勢もリーマンのサムライ債に対する投資額等をこぞって公表していたし、昨日のリーマンのチャプター11ファイル自体が出回っていたので、我々は昨日の段階で邦銀勢の融資額等も大体そこから分かっていたし。
問題は間接的影響である。これは単純に計れない。さらに今回の件が近い将来の実体経済に与える影響だ。これは色々な形で出て来ることが考えられ、我々は前もって対処できることはしておくに越したことは無い。
一人一人が現段階では事実をしっかり把握し、余計な分かったような口を聞いているコメンテーターみたいのに惑わされないことがまずは何より重要だと思う。

取り急ぎ。

初心者集まれ~外資規制論議?何を今さら・・・その2

2008-02-14 07:20:46 | 初心者集まれ!株を始めてみる?
今の政府は本当に言ってることとやってることがチグハグ過ぎる。
正直言ってこの記事を読んだら、呆れるのを通り越してもう無力感で一杯になってしまった。。
まずは記事の引用から。

~~~以下日経新聞の記事から引用~~~

英投資ファンドのザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)がJパワー(電源開発)株の買い増しを求めている問題で、経済産業省は当初、今月13日までとしていた審査期間を最長で5月中旬まで延ばすことを決めた。株式の購入目的などについてより詳しい説明を求め、TCIによる株買い増しが日本の安全保障を脅かすかどうかを検討する。
 Jパワーは国内の電力需要の1割弱を供給する電力卸の最大手。経産省は「外資系ファンドの影響力が過度に強まれば、不当な電力料金引き上げや外国企業への株式譲渡などにつながりかねない」などと懸念。TCIがJパワーの発電や送電事業などにどのようにかかわるつもりかをより詳しく審査することにした。
 TCIは1月にJパワーへの持ち株比率を現在の9.9%から20%へ高めたいと届け出た。外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づき、外資が電力会社株を10%以上保有するには国への事前届け出が必要。経産省による審査期間は申請から原則30日だが、4カ月まで延長できる。
 TCIは配当増などを経営陣に積極的に提案する「モノ言う株主」として知られる。昨年も非常勤の社外取締役受け入れや役員賞与の支給凍結などを提案したが、Jパワーは「現時点で経営体制を見直す必要はない」として拒否した。

~~~以上引用終わり~~~

前回の私の記事では例の空港会社規制のことを書いた。
ダボス会議で首相がせっかく外からの投資を促進する、っておっしゃったのに空港会社に外資規制を掛けるのはどうなの云々かんぬん、と政府内で意見が分かれてるって奴ね。
私の結論は、外資からの投資に関してそんな程度のことに問題を矮小化しないで欲しい、って事だったけれど、いざ目の前に海外から投資をしたい、って要望がぶら下がっているのにこの有様である。

TCIと言えば少なくとも英国では知らない金融関係者は居ないってほどの一流投資会社である。彼らの投資に対する要求は極めて高く、どこの証券会社も間違いなく一目置いている先だ。
日本の今の論調を見る限り、きっとここから3ヶ月の間に渡って、あーだこーだ外資だハゲタカが来た安全保障に関わる会社に対して何でだやっぱりまずいからこの話は丁重にお断りしよう、マスコミやら知ったかぶりのエセ論者が偉そうにそう言った議論を展開するだろう事は目に見えている。

買ってもらったら良い、20%まで買ってもらって色々な要求をしてもらえば良い。
政府は空港会社、それも出来てみてしばらく経たないと果たして外人が本当に買いたいかどうかも分からない会社に対してあーだこーだ言う前に、まずはここでやってみてもらえば良いのだ。
相手の言うことがごもっともであれば、それに沿って会社が変われば良い。
この会社に関してはNTT法だの電波法だので網を掛けてなかったんでしょ?
英国のファンド、しかもThe Children’s Investmentだよ、一体どうやったら彼らが日本の安全保障を脅かそうって言うのだろう。
その程度で脅かされるような安全保障だったら、一体何のために我々の血税をどっさりアメリカに払ってんのさ?そんでもって沖縄であんな悲惨な事件が起こって、「遺憾の意を表明」ばっかりで一体日本政府は本当にどうしちゃったの?

経産省では例の事務次官の「お馬鹿」発言があって、いくら彼らが真剣に考えようともう足元が完全に見えてると思うんですが。

ここで前にも書いたけれど知り合いのエコノミスト、あの「行政KY不況」を提唱している人だけど、彼が同じメールでこう言ってる。
「株価反転のきっかけは、①企業が目を覚ますイベントが起こること ②政府が性根を入れ替えて税制改革を中心とした抜本的な構造改革を断行すること。
第一に中国の企業が日本を代表する企業を買収してしまうこと。中国のモロコシと麦の蒸留酒メーカーはキリンの時価総額の1.85倍、家電量販店でもヤマダ電機の時価総額の1.31倍の会社が中国に現れてきています。・・・」
要はそれくらいドラスティックなことが起こらないとこの国は目を覚まさないよね、と言うことだ。
今回はこれは中国の企業ではないけれど、ましてや恐らく買収の意図があるとは思えないけれど、こういう時にその国が如何に肝が据わっているかがアリアリと分かってしまうと思うんだよね。

これから役人さんたちがマスコミの力を借りながら密室で3ヶ月間あーだこーだやるよりも、「20%まで大いに買ってくれ、それがわが国の首相の投資に対するスタンスでもある。遠慮は要らない、その代わりその会社が強くなったらその株を再び日本へ売ってくれ、その時は我々は大いにプレミアムを付けて買い戻してやるよ。途中でクソくだらない行動に出たらその時はあんたのファンドがぶっつぶれるくらいの外交問題にしてやるから、君達も覚悟して買ってくれ」くらいの事を言ったらどうよ?
外資導入を促進したいのは結構、でも何も卑屈になる必要は無いし、もっと堂々と世界と対峙したらいい。心配のある業種にはきちんとした網を掛けておけばいい。
やることをきちんとやって、言う事をきちんと言う、それが出来れば何も首相がスイスのダボスくんだりの田舎まで行ってうわべを喋ってくるよりよっぽど効果があるよ、これは私の海外駐在17年の経験から断言できる。