石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(134)

2024-03-27 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第5章:二つのこよみ(西暦とヒジュラ暦)(20

 

134歴史に取り残されるパレスチナ問題(2/4)

 激動する世界及び中東の歴史の中でパレスチナ問題は次第に影が薄くなっていった。第二次大戦後久しく中東問題と言えばパレスチナ問題であったが、アラブの盟主エジプトが1979年にイスラエルと単独和平を結んだことで問題に対する関心が急速に薄れた。ヨーロッパ諸国はサダトとベギンにノーベル平和賞を与えることでこの問題が永久に解決されたかのごとき幻想をふりまいた。しかしこれでユダヤ人によるパレスチナの土地の占領という問題そのものが解決されたわけではなかった。

 

そもそもパレスチナの土地をユダヤ人に与えるというバルフォア宣言は、第一次大戦の勝利を金銭面で支援したユダヤ人に対する報酬であり、また歴史的なユダヤ人抑圧に対するヨーロッパ人の贖罪であった。と同時にバルフォア宣言はこれからもヨーロッパ白人社会を脅かしかねないユダヤ人を遠いパレスチナに厄介払いするというまさに一石三鳥の妙案だったのである。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

 

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石油と中東のニュース(3月26日)

2024-03-26 | 今日のニュース

(石油関連ニュース)

原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

・ガザ、ウクライナ暗雲で石油価格上昇。Brent $85.95, WTI $81.18

(中東関連ニュース)

・国連安保理、戦争開始後170日で漸くガザ停戦を決議。米は棄権

・国連事務総長、エジプト側ガザ国境で演説。救援物資待機車両7千台

・イスラエル、協議チーム派遣をキャンセル。米の安保理決議棄権に抗議

・イエメンフーシ派:中露船舶の紅海安全航行を保証

・フーシ派、中国タンカーミサイル攻撃:米CENTCOM発表

 

・エジプト:最高税制協議会を設立。官民専門家結集して政策立案

・サウジアラムコCEO:中国と二酸化炭素回収貯留技術協力を期待

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見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(133)

2024-03-25 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第5章:二つのこよみ(西暦とヒジュラ暦)(19

 

133歴史に取り残されるパレスチナ問題(1/4)

 ヒジュラ暦1400年(西暦1980年)前後から10年余りの間に中東イスラーム世界では大事件が続発した。主なものを列挙すれば、エジプト・イスラエル平和条約及びホメイニ師によるイラン革命(共に1979年)、イラン・イラク戦争の勃発と終結(1980年、1988年)、ソ連のアフガニスタン侵攻と撤退(1980年、1989年)等々である。

 

そして世界の歴史も20世紀の終焉を控えて激動した。1980年代に入りソビエト社会主義体制に綻びが目立ち始めた。それは資本主義国家と踵を接する地域で表面化した。1987年にベルリンの壁が崩壊、2年後の1990年に東西ドイツが統一したことでソビエト体制の終焉は誰の目にも明らかになった。こうして1991年、ソ連は崩壊した。ソ連はヨーロッパで資本主義に敗退し、シルクロードでイスラームのジハード(聖戦)に敗れた。1917年のロシア革命で誕生し、いずれ社会主義が世界を支配すると豪語したソビエト社会主義共和国は80年足らずで歴史の舞台から消え去り、米国を頂点とする資本主義が世界を席巻する。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

 

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石油と中東のニュース(3月23日)

2024-03-23 | 今日のニュース

(石油関連ニュース)

原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

・原油価格ほぼ変動ゼロ。Brent $85.76, WTI $81.08

(中東関連ニュース)

・国連安保理、米のガザ停戦提案に露、中国が拒否権発動

・米国務長官、エジプト大統領と会談。ガザ問題打開策を協議

・イスラエル首相、米国務長官と会談。米支援無くともハマス掃討継続

・Maersk商船、紅海回避、喜望峰経由航路を継続

・モスクワのコンサートホールで爆弾テロ、60名死亡。ISが犯行声明

・トルコとGCCがFTA交渉開始

・Fitch Ratings、カタールのソブリン格付けをAA-からAAに引き上げ

*「S&P 主要国ソブリン格付け(2024年1月)」参照。

・エジプト、ガソリン価格引き上げ

・サウジ:リヤドに世界初のドラゴンボールテーマパーク建設

 

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今週の各社プレスリリースから(3/17-3/23)

2024-03-23 | 今週のエネルギー関連新聞発表

3/18 TotalEnergies

United States: TotalEnergies acquires Talos Low Carbon Solutions, a pioneer in the growing American Carbon Storage industry

https://totalenergies.com/media/news/press-releases/united-states-totalenergies-acquires-talos-low-carbon-solutions-pioneer

 

3/18 Chevron

chevron and JX sign MOU for collaboration on development of CCS value chain

https://www.chevron.com/newsroom/2024/q1/chevron-and-jx-sign-mou-for-collaboration-on-development-of-ccs-value-chain

 

3/19 JX石油開発

CCS バリューチェーン構築に向けた Chevron との共同検討の開始について

https://www.nex.jx-group.co.jp/newsrelease/upload_files/20240319JP.pdf

 

3/19 出光興産

富士石油株式会社(証券コード:5017)株式の買集め行為に該当する 株式取得についてのお知らせ

https://ssl4.eir-parts.net/doc/5019/tdnet/2411599/00.pdf

 

3/19 出光興産

商船三井・出光興産・HIF が、CO2 の海上輸送を含む合成燃料(e-fuel)/合成メタノール(e-methanol)のサプライチェーン共同開発に関する MOU を締結

https://ssl4.eir-parts.net/doc/5019/tdnet/2411360/00.pdf

 

3/19 OPEC

The Seventh High-Level Meeting of the OPEC-China Energy Dialogue takes place in Vienna

https://www.opec.org/opec_web/en/press_room/7312.htm

 

3/21 ENEOSホールディングス

組織の改正について

https://www.hd.eneos.co.jp/newsrelease/upload_pdf/20240321_01_01_2008355.pdf

 

3/22 経済産業省

海洋エネルギー・鉱物資源開発計画を改定しました

https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240322001/20240322001.html

 

3/22 ENEOS

日韓でのバイオ燃料および原料に関する協業について

https://www.eneos.co.jp/newsrelease/upload_pdf/20240322_01_01_2008355.pdf

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ホームページ「マイ・ライブラリー」のご案内

2024-03-22 | その他

 これまでにブログおよび各種の雑誌への寄稿等に発表したレポート、エッセイ等を「マイ・ライブラリー(論稿集)」としてまとめました。 日々のニュースをモニタリングしているブログ「石油と中東」及び荒葉一也編集ブログ「OCIN Initiative」及び「Middle East Informant」とあわせてお読みください。

おすすめのコーナー:

・(New)世界ランクシリーズ4 人間開発指数(2023-24年版)

・(New)五大国際石油企業2023年1-12月業績比較

・(New)世界ランクシリーズ6 腐敗認識指数(2023年版)

・(New)IMF世界経済見通し(2024年1月版)

・(New)戦後ガザはどうなるのか?当事者たちの本音と本性

・(New)世界主要国のソブリン格付け(2024年1月現在)

・世界ランクシリーズ10 報道の自由度

・世界タンクシリーズ1 人口・出生率・平均寿命

・アラブ世界の大企業500社番付

・アイアンドーム防空システムの裏をかくハマス

グローバルサウスに傾斜するMENA諸国(MENAの多国間関係)

・EI世界エネルギー統計2023年版

・世界ランクシリーズ8 世界平和指数(2023年版)

世界ランクシリーズ5 男女格差指数(2023年版)

・(再録)サウジアラビア・サウド家

・エッセイ「挽歌・アラビア石油(私の追想録)」

 

 

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見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(132)

2024-03-22 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第5章:二つのこよみ(西暦とヒジュラ暦)(18

 

132うっぷん晴らしとしっぺ返しの悲劇(4/4)

 しかしフセインの野望も、そしてパレスチナ人たちの期待も所詮は邯鄲(かんたん)の夢であった。半年後にクウェイトは解放された(湾岸戦争)。イラクは撤退の置き土産に油田地帯に火を放った。クウェイトの砂漠に真っ赤な炎が立ち昇りあたりには原油の黒い飛沫が飛び散った。クウェイトの上空は黒煙に包まれ、昼なお薄暗い日々が続いたのであった。

 

ジャービル首長などサバーハ家王族は亡命先のサウジアラビアから舞い戻り、クウェイトは落ち着きを取り戻した。彼らは解放に力を貸してくれた米国をはじめとする多国籍軍の派遣国に深く感謝した。そのために新聞の全面広告も出た。そこにはパキスタン、スーダンなど多国籍軍に参加した国の名はあったが、軍隊を派遣できずその代わりに1兆円という巨額の支援金を拠出しただけの日本の名は無かった。

 

一方、クウェイトはフセインを支持した者を許さなかった。政府はパレスチナ人とヨルダン人全員を国外追放処分にした。国境の南にあった日本人が操業する石油基地もクウェイトが50%を握っていたためその対象となった。パレスチナ人たちのうっぷん晴らしに対するクウェイト側のしっぺ返しである。しかしクウェイトの行政と経済を下支えしていた彼らを追放すればどうなるかは日の目を見るより明らかだった。クウェイトの受けた傷は深く、それは今も癒えていない。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

 

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石油と中東のニュース(3月21日)

2024-03-21 | 今日のニュース

(石油関連ニュース)

原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

・原油価格一服。Brent $87.22、WTI $83.16

・イラン、アザデガン油田他5か所の開発で過去最大130億ドルの契約締結

(中東関連ニュース)

・米国務長官、ガザ問題で再度中東歴訪。まずサウジ皇太子と会談

・イスラエル、ハマスのガザ停戦提案拒否

・イスラエル軍、ガザAl Shifa病院でハマス戦闘員90名殺害

 

・IAEA事務局長、シリア訪問。アサド大統領と核平和利用協議

・トルコとイラク、クルドPKK対策で共同作戦本部設置に合意

・IMF、中東事務所をリヤドに開設

 

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伸張著しいUAEと中国-世界と中東主要国の「人間開発指数」(下)

2024-03-21 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0599WorldRank4.pdf

 

(世界ランクシリーズ その4 2023-24年版)

 

(改善著しい中国とUAE!)

2.1990~2022年のHDI指数の推移(図http://rank.maeda1.jp/4-G01.pdf )

 世界トップのスイスと日本、中国及びUAE、サウジアラビア、イランの中東3カ国に全世界平均、アラブ諸国平均それぞれの開発指数について1990年から2022年までの推移を追ってみる。

 

 スイスのHDI(人間開発指数)は1990年ですでに高々度開発国(VHHD)であり、2000年代前半にHDIが0.900を超え、2022年のHDIは0.967に達している。日本の1990年の指数は 0.846で、2010年に0.900を超え、2022年は0.920となっている。

 

 UAEとサウジアラビアを比べると、1990年のHDIはそれぞれ0.717及び0.699であり、UAEはすでに高度人間開発(HHD)段階に達していた。サウジアラビアは中位度開発(MHD)に留まっていたが、1990年代にHHDに仲間入りし、2010年には両国ともVHHDグループになっている。両国は2010年まではほぼ平行線をたどって向上してきたが、2010年以降、UAEのHDIは急速に改善し、2020年にはついに日本を上回った。これに対してサウジラビアは改善の足取りが鈍り、2022年のIndexは0.875にとどまり、UAE(同0.937)との格差が拡大している。

 

 イランと中国の1990年のHDIはそれぞれ0.613及び0.482であり、イランは中緯度開発国(MHD)であったのに対し中国は低度人間開発(LHD)にとどまっていた。しかし両国のHDIはその後大幅に改善されている。特に中国のHDIは0.586(2000年)→0.698(2010年)→0.781(2020年)と、20年間でLHD(低度開発)からHHD(高度開発)に伸長、全世界平均を上回り、イランを凌ぐまでに改善されている。

 

以上

 

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

 

                   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(131)

2024-03-20 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第5章:二つのこよみ(西暦とヒジュラ暦)(17

 

131うっぷん晴らしとしっぺ返しの悲劇(3/4)

 イスラエルに対するイラクのミサイル攻撃を大歓迎したのはイスラエル占領地のパレスチナ人であり或いはヨルダンに住むパレスチナ難民たちであった。アラブ各国の首脳は口を開けば「イスラエルを地中海に追い落とせ」と威勢の良いことを言うが、実際に行動に踏み切った為政者はイラクのフセインただ一人だった。フセインなら本当に自分たちの夢を実現してくれるかもしれないという幻想にパレスチナ人たちが取りつかれたのも無理のないことだった。彼らはフセイン支持を声高に叫び日頃のうっ憤を晴らしたのであった。

 

 声に出さないまでも心の中で快哉を叫んだパレスチナ人もいた。クウェイトに出稼ぎに来ていた者たちである。まともに仕事もできずただ傲慢なだけのクウェイト人に奴隷のようにこき使われていた出稼ぎの彼らは、イラク軍に攻め込まれ、慌てふためいて隣国サウジアラビアに逃げ込んだクウェイト人たちを見て留飲を下げた。そして次にイスラエルがミサイル攻撃を受けたとき、米国に押しとどめられてイスラエルが反撃できないことを知り、ひょっとすればフセインが自分たちの祖国を取り戻してくれるのではないかという期待に胸を膨らませたのであった。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

 

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