ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)

映画、旅、その他について語らせていただきます。
タイトルの由来は、ライプツィヒが私の1番好きな街だからです。

今週末恒例の関西への桜の花見をしにいく

2024-03-28 00:00:00 | 旅(国内)

例年私は、関西方面に桜の花見に出かけます。コロナの関係で行かなかったこともありましたし(2020年)、行ったはいいがすでに完全に散っていた年(2018年)もあります。

大神神社で桜は見られなかったが、橿原市で宮崎市の観光親善大使の女性を見ることができた(前編)(4月15日更新)

以前は、4月の第1週の週末に行くことにしていまして、だいたいそれで関西の桜は間に合いましたが、やはり桜前線が早くなり、それでは桜の鑑賞が難しくなってきました。2018年は4月8日が日曜日で、その日は完全な葉桜でした。

この年は、4月1日の時点で都内の桜も散っているくらいの状態だったようですので、最悪そのころでないと関西の花見はできなかったのでしょうが、よって19年以降は、1週はやめて関西におもむくこととしました。ただ4月の年度当初あるいはその前というのは、私もいろいろ忙しいのでやはり有給休暇もとれません。というわけで週末での旅行というのは仕方ないし、曜日の配列は年によって違うし、もちろん桜の開花時期も年によって違います。このあたりは運に任せるしかない。

というわけで、今年は、京都とあと奈良のどこかで花見をしたいと思います。昨年は、宇治と祇園白川に行きましたが、今年は未定です。祇園白川は、半分散りかけていたので、また行ってみようかとも考えます。昨年の花見の記事は、下にリンクします。

関西の桜(2023年春)(2)

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弁護士会から業務停止の懲戒処分を受けた人物に情報番組のMCをさせていたとは、いったいどういう見識なのか

2024-03-27 00:00:00 | 社会時評

記事を。


ウェークアップ:4月に番組リニューアル 野村修也弁護士が3月30日でMC卒業 番組P「心から感謝」
2024年03月26日 17:31
MANTANWEB編集部
 
 土曜朝の報道番組「ウェークアップ」(読売テレビ・日本テレビ系、土曜午前8時)が4月からリニューアルすることになり、MCを務める弁護士で中央大学法科大学院教授の野村修也さんが、3月30日放送の番組で“卒業”することが発表された。

 「ウェークアップ」は1991年から全国ネットで放送している報道番組で、野村さんと中谷しのぶアナウンサー(読売テレビ)が2021年3月からMCを務めている。

 野村さんが最後の出演となる30日の放送では、特集コーナーで大阪・関西万博に関連する話題を取り上げる。

 番組プロデューサーは「実はダジャレ好きでお茶目な面もある野村さんですが、MCとして、専門の法律はもちろん、幅広い知識に裏打ちされた視点で、ニュースを伝え続けていただきました。そのために睡眠時間を削って準備されていることを私たちスタッフは知っています。真摯(しんし)にウェークアップに向き合ってくださった野村さんに心から感謝申し上げます。4月からのリニューアル内容については、今後の続報をお待ちください」とコメントした。

こんな話はいまさらのことですが、野村修也って、所属している弁護士会から、業務停止1か月の懲戒処分を受けた前歴があるんですがねえ。彼のWikipediaから一部引用いたします。注釈の番号は削除します。

2012年1月に橋下徹・大阪市長より大阪市特別顧問に任命され、市長・市職員・市会議員らから完全に特立した「第三者調査チーム」を率いて、市職員の政治活動や労働組合活動の調査を実施した。同年3月1日には「大阪市役所で発見された違法ないし不適正行為について(調査中間報告)」を公表し、4月2日には最終報告「大阪市政における違法行為等に関する調査報告」を公表し、大阪市役所の“職場環境の適正化”に向けた提言を行った。2月10日から2月16日にかけて、調査チームは、大阪市の全職員に対して、政治活動や労働組合活動についてのアンケートを実施した。大阪市の市労働組合連合会が大阪府労働委員会に対して救済を申し立てたことから、野村は2月17日に記者会見し、府労委の審査の推移を見守るとして、調査の凍結を発表した。府労委は2月22日、アンケート本文に回答しない者は処分の対象となると書かれてあることから、調査が続行されれば救済の基礎が失われる恐れがあるなどとして、調査の続行を差し控えるよう勧告した。野村は、同年4月6日、「違法とは思っていないが、職員への説明にはもう少し配慮すべきだった」として,公開の作業によりアンケートを未開封のままシュレッダーにかけるなどして廃棄した。大阪市特別顧問は同年4月9日に任期満了のため退任した。

この2012年の大阪市職員に対する政治活動や組合活動についての強制的なアンケートを実施したことに関し、延べ656人の弁護士が、第二東京弁護士会に『基本的人権を侵害し、弁護士の「品位を失うべき非行」にあたる』として野村の懲戒処分を請求した。第二東京弁護士会は審査の結果、2018年7月17日に野村に業務停止1か月の懲戒処分を下した。これに先立ち大阪高裁は、2015年12月16日付判決で、このアンケートはプライバシー権、政治活動の自由及び団結権を侵害する違法な内容のものであったとし(判決理由第3の5項末尾)、同人は法令に精通しなければならないことを職責とする弁護士であることを踏まえるとアンケートを作成しその実施に関与したことにつき過失があったと認定した上で(同7項(1))、同人は大阪市の公務員としてこれを行ったものであるとし、公務員個人は賠償責任を負わないとの国家賠償法の規定を適用して、市への損害賠償請求は認めたものの野村個人への損害賠償請求は棄却した(同項(2)(3))

弁護士が懲戒処分を受ける理由もいろいろでしょうが、


大阪市職員に対する政治活動や組合活動についての強制的なアンケートを実施したことに関し、延べ656人の弁護士が、第二東京弁護士会に『基本的人権を侵害し、弁護士の「品位を失うべき非行」にあたる』として野村の懲戒処分を請求した。第二東京弁護士会は審査の結果、2018年7月17日に野村に業務停止1か月の懲戒処分を下した。

なんてお話にもならない不始末でしょうに。あまりに非常識すぎて、正気の沙汰ではないのレベルじゃないですかね。実際、野村氏の懲戒処分を報じた当時の産経新聞は、こんなことまで書いています。


当初の記事で、アンケートが実施されたのは、「橋下徹市長(当時)の指示」としていましたが、事実関係が違いましたので、この部分を削除しました。

つまりこの記事を書いた記者や記事を校閲したデスクほかも、大要「(こんな非常識な)アンケートを実施したのは、橋下の指示があったからにちがいない」と思い込んでいたということです。つまりは、本来なら労働組合や大阪市職員に対してあまり好意的ではない産経新聞ですらそう考えたわけで、語るに落ちるとはこのことです(苦笑)。この件に関しては、私も記事を書いています。

なかなか興味深い記事だ

でですよ、当の「ウェークアップ」では、上の記事によれば、野村がMCになったのが2021年3月からであり、これ、ご当人が懲戒処分を受けたのが2018年だったということで「時効」「禊」ということなんですかね? そういうことなんでしょうが、弁護士なんていくらだっているし、野村程度にMCの能力のある人物なんて、ほかにもいくらだっていると思いますがね。しかも野村が不祥事を起こしたのは、大阪市にかかわることであり、そんなことをしでかした人物を、大阪市に本社がある読売テレビが起用しているなんて、いったいどんだけ懲りねえんだよと心底から呆れますね。しかもやらかしたのが、いわば行政と癒着した人権侵害ですからね。こういってはなんですが、いわば彼だけではできないことのわけであり、たとえば交通事犯や盗撮などのように個人で完結する犯罪よりもより悪質だといわれても仕方ないんじゃないんですかね。弁護士という職務にかかわった不祥事ですからね。

それでおそらくですが、読売テレビも、ご当人が何らかの性犯罪でとっつかまったらさすがにMCへの新規起用というのは見送るのでしょうから、読売テレビの見識としては、この懲戒処分というのはそんなに悪質なものではないという認識のようですね。それもどうかです。で、野村氏のWikipediaから、「出演番組」の「現在」というところを引用しますと、

とあります。ニッポン放送の御用達というのがいかにもかどうかはわかりませんが、読売テレビの使いっぷりもひどいですねえ。そんなに使い勝手がいいんですかね? いいんでしょうが、野村氏の業務停止の懲戒処分というのはきわめてよろしくないし、また野村氏も、自分の非行を恥じてテレビ出演をやめるような人物でもない(笑)。まったくもってどうしようもない光景です。

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和田春樹氏や山際永三監督らと比較すると、関川夏央の自分の言論に対する無責任さに心底からうんざりする

2024-03-26 00:00:00 | 北朝鮮・拉致問題

私はこのブログで、何回も関川夏央の北朝鮮についての言説を批判しています。何しろこの男は、かつて(1998年)

1:金正日はいつまでもつか

関川夏央:現状ではかわりが見つかるまでは、むしろもってほしい。

2:北朝鮮という国はいつまでもつか(引用者注:1998年時点)

関川夏央:韓国に、北朝鮮と中国に対するリアリズムが育つ日まで。あるいは中国に統一コリアと国境を接する準備が整うときまで。

3:戦争はおこるか、おこるとすれば、いつ、どんな形か

関川夏央:全面戦争でなければ1、2年以内に。あるいは金正日の精神・肉体が危機的となったとき。

とまで書いていたのだから、その言説がすっからかんに実情を外したのだから、言論人としては、自分の意見を撤回する必要があるでしょう。さらに彼は、こんなことまでほざいていました。

 近未来予測は、ある意味で通俗なやり口といわざるを得ない。それを承知で編集委員会があえてその手法を採用したのは、大多数が普通の人々であるだろう本書の読者の利便に供したいと発想したからだが、同時に、北のみにとどまらず、長くコリア全体を見つづけ学んできた民間研究者たちの見方を、ここで日本政府にも端的に示しておきたいという意図もひそんでいる。読者は、これら執筆者の北朝鮮の将来へのクールな展望とともに、日本外交への強い危惧の念をも感じとって驚かれることだろう。しかし、それこそが常識人の常識であると知っていただきたいのである。

私の書いたかつての文章を再掲すれば、

くりかえしますと、なにが

>>常識人の常識

だか。馬鹿にもほどがあるし、無様で無残にもほどがある、馬鹿も休み休み言え、デマデタラメもいいかげんにしろというレベルです。で、ご当人、現在では一切北朝鮮関係の発言なんかしていないみたいですからね(呆れ)。おそらく「おれはもう北朝鮮関係の発言はしていない。それでいいだろ!」「わかるだろ!」っていうことなんでしょうね。それにしたってここまでひどいデマとデタラメ間違い戯れ言をほざいたのだから、それは言論人としてもそれ相応の責任はあるでしょう。なぜ「自分のこの本での発言は妥当ではありませんでした。撤回します」くらいのことが書けないのか。彼にもその程度の責務はあるでしょう。でもご当人、無意味に自尊心や面子があるので、ぜったいそういうことはいえないのでしょうね。まさに関川にとって、北朝鮮言論にかかわったというのは「黒歴史」なのでしょう。あまりに愚劣すぎてお話にもなりません。

ということになるでしょう。世の中広いといっても、ここまで自信たっぷりに愚説・珍説をほざいて、それで完全に外したらトンズラこいているというのは、そうそうめったにない無様で無残な光景でしょう。そして私やほかの人間もしているであろう批判にも徹底的に黙りこくっているのだから、この男の無責任ぶり、デタラメぶりというのも、まあ最低だなと思いますね。無名の私の批判など彼の耳に入っていないとか、そういう問題でもないでしょう。私以外にも、この件で関川をろくでもない野郎だと考えている人間は、決して少なくないはず。上の引用でも書きましたように、なぜ自分の過去の言説の撤回ができないのか。

それでこれは確かだと思いますのであらためて指摘しますと、私が批判した関川の発言が収録されている

北朝鮮の延命戦争―金正日・出口なき逃亡路を読む 

という本は、日本における北朝鮮に対する見方について、一定の影響力があった本であると私は思っています。現在からすれば馬鹿にされる内容を多々ふくんでいる本ですが、かつてはそれなりの信ぴょう性や妥当性のある本だと認識されていたはず。ていうか、私もこの本を読んで、不審なところは多々ありましたが、しかし「え!? そうなの!?」と思った部分もそれなりにありましたので。

というわけでこの野郎の書いたことなんて、前にも書きましたように

「馬鹿も休み休み言え」「デマデタラメもいいかげんにしろ」「うそ八百ほざいてんじゃねえよ」「素人にフェイク吹き込むのもたいがいにしろ、嘘つきクズ野郎」

ということです。

さて明日(2024年3月27日)bogus-simotukareさんの記事で知ったのですが、次のような催しがあります。bogus-simotukareさんの記事より引用いたします。

今日の朝鮮・韓国ニュース(2023年3月25日分)(副題:和田春樹氏が日朝問題で集会を開催ほか)


日朝関係の膠着状態が続くなかで、昨年後半から日本政府岸田首相と北朝鮮当局者との間でメッセージの交換がなされ、今年2月15日、金与正労働党副部長の好意的な談話が発表されました。日朝交渉打開の第三のチャンスが到来したことに間違いありません。 
 この時にあたり日朝国交交渉三〇年検証会議では、検証作業の成果として『北朝鮮拉致問題の解決』(和田春樹編、岩波書店)を3月26日に刊行いたします。刊行にあわせて報告執筆者と寄稿者がそろって話をさせていただく会合を開きます。『拉致問題の膠着を破る鍵とは何か』を考え、解決のための緊急提言を行います。みなさまのご参加をお待ちしています


【日時】3月27日(水)15:30-17:30
【会場】衆議院第一議員会館1階・国際会議室(15時から会館入り口で入管カードを配布)
【挨拶】参議院拉致問題特別委員会委員長・松下新平
【報告】和田春樹、日本テレビ報道局「日テレNEWS」の統括デスク・福澤真由美、元「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」副代表・蓮池透、ジャーナリスト・有田芳生等
【発言】木宮正史・東京大学教授ほか

本来ならぜひ私も参加したいのですが、あいにく当日仕事があって行けません。が、ここはかなり興味深いものがあると思うので、ぜひ 会議後ネットで発言のまとめみたいなものを発表していただけると本当にうれしいですね。で、上の引用にもありますように、下の本が本日発売になるとのこと。

北朝鮮拉致問題の解決: 膠着を破る鍵とは何か

Amazonでは28日発売とありますが、岩波書店のサイトでは、26日の発売とあります。ともかく26日までには都内の大きな書店などには並んでいるのでしょう。この記事は3月25日に書いていますが、拙記事執筆段階では


未刊・予約受付中

とあります。岩波のサイトから本の内容を引用しますと、


はしがき

第Ⅰ部 検証 日朝国交交渉と拉致問題

 第1章 日朝国交交渉と拉致問題の経緯を振り返る
     日朝交渉三〇年検証会議 和田春樹
 第2章 拉致問題の真実とその解決の道
     日朝交渉三〇年検証会議 和田春樹

第Ⅱ部 二〇年を問い直す──外交、拉致被害者、家族

 第3章 交渉以外に問題解決の道はない
     田中 均 聞き手=福澤真由美
 第4章 拉致された人々を取材して──知られざるその肉声から見えるもの
     福澤真由美
 第5章 救う会と家族会の二〇年──「救出」から「北朝鮮打倒」への変質を問う
     蓮池 透
 第6章 拉致問題対策本部は二〇年何をやってきたのか
     有田芳生
 第7章 橫田家三代 女性たちの思い
     和田春樹

とあり、上のイベントの参加者には入っていませんが、インタビュー参加ということになりますが、田中均氏がご意見を書いているわけで、これは必読です。私もぜひ読ませていただくつもりです。

それにしてもこんな話は何回かいたかわかりませんが、田中氏のように本当に拉致問題解決のために動いてくれた方が国賊だなんだと罵倒されて外務省を追われて、安倍晋三のような口先だけの野郎に拉致被害者家族会は徹底的に依存しているのだから、どんだけ木が沈み石が浮くのか。お話にもなりません。

で、和田氏のこのような、北朝鮮問題や拉致問題への関与ぶりというのは本当に頭が下がりますね。和田氏も、2002年の際は一斉に厳しい批判をそこら中から受けて、これは人間だから当然ですが、さすがに北朝鮮問題とかかわり続けるのが嫌になった瞬間もないわけではないでしょうが、それでもそれから20年以上にわたって先頭に立って動きづづけておられるわけです。こんなすごい人もそうはいないのではないか。

さてここで拉致問題とは直接関係ないのですが、国際放映のドラマやウルトラシリーズの演出でも知られる映画やテレビドラマの監督である山際永三氏について考えてみたいと思います。

以前私は、山際監督のトークショーに参加したことがあり、それを記事にしています。

ウルトラシリーズなどのテレビドラマの演出で有名な山際永三監督のトークショーに顔を出してきた(映画のフィルム発見の経緯、商業化の過程も興味深い)

で、その記事のコメントにbogus-simotukareさんからご指摘いただいたように、山際氏は、実は人権活動家としての側面もあったわけです。Wikipediaから該当部分を引用します(注釈の番号は削除します)。

オウム問題や拉致問題に関する社会評論を展開している。首都圏女性連続殺人事件狭山事件などの冤罪支援運動や死刑制度廃止運動、被逮捕者の人権擁護運動などでも知られる。オウムに関しては野崎研二弁護士にオウム弁護を持ちかけたのは自分で、横山昭二弁護士解任には役割を果たしてくれたと述べている

山際氏の共著署・編著書には、『報道被害 11人の告発』『「悪魔のお前たちに人権はない!」 学校に行けなかった「麻原彰晃の子」たち』があります。後者は、私も読んだことがあります。またbogus-simotukareさんがご紹介していただいた記事を引用させていただくと、


<その187> 帝銀事件70年=城島徹
2018/1/24 17:59(最終更新 1/25 02:34)

 戦後の混乱期に起きた「帝銀事件」で死刑判決を受け、無実を叫びながら獄中死した平沢貞通(さだみち)元死刑囚(1892~1987年)の獄中画を展示する「帝銀事件70周年 故平沢貞通画伯執念の獄中画展」が2月4日まで、下町情緒が残る東京都台東区谷中の「ギャラリー・てん」で開かれている。1月22日、二十数点の作品を並べた会場を訪ね、降りしきる雪に「雪冤(せつえん):無実の罪をすすぎ、潔白であることを明らかにすること」(広辞苑)という言葉が脳裏に浮かんだ。

 「獄中の平沢さんの心境が伝わってきますね」。そう言いながら作品を見つめていたのは、画展を企画した「帝銀事件再審をめざす会」代表で映画監督の山際永三さん(85)だ。

 鉄格子の内側に真っ赤な花が浮かぶ「獄窓の花」、鉄格子の下にしゃがむ我が身の姿を描いた「うずくまる貞通」、理不尽な思いが燃え上がるような「猫怒る」、娘への思慕と思われる「霞中娘」など、平沢元死刑囚が獄中で描いた作品ばかりが掲げられていた。

 1948年1月26日、東京都豊島区の帝国銀行椎名町支店で都職員を装った男に赤痢予防薬と偽った青酸化合物入りの液体を飲まされた行員ら12人が死亡し、現金や小切手が奪われた。この「帝銀事件」発生から半年余り後に逮捕されたのが、北海道・小樽出身で、日本画の巨匠・横山大観に師事したことのある画家、平沢元死刑囚だった。

 55年に死刑判決が確定した後も、冤罪だと訴え続け、支援者の協力で描いた獄中画は数千点にものぼったという。「この大量毒殺事件は毒物に知識が皆無の画家には起こせない」……。冤罪への強い疑いが指摘されるなか、87年に獄中で95歳の生涯を閉じたが、遺族が2015年11月、第20次再審請求を東京高裁に申し立てている。

 「映画に携わっていることから冤罪事件に関心が及び、特に帝銀事件は戦後冤罪の原点とも言うべきものとして70年代から支援活動に加わりました」「今年は事件発生から70年。平沢さんの出身地の北海道以外では確かにこの事件を知らない人が多くなったと思います。この獄中画を通して帝銀事件を知ってほしい」……。展示画を引き立てる照明を念入りにチェックしながら山際さんはそう語った。

 ギャラリーの外を見ると、4年ぶりに都心を襲った大雪で家屋や路面が真っ白に染まり始めていた。それは「雪冤」を願って絵筆を握り続けた平沢元死刑囚が降らせたようにも思えた。【城島徹】

というわけです。山際氏は、いわば正義感でこういった問題にかかわっているわけであり、かなりの経済的な負担や時間の負担もあるわけであり、こちらもほんと頭が下がりますね。他人がそうそう容易にまねができるものではないし、まねする必要もありませんが、ともかく本当に尊敬に値します。

で、こんな野郎言及する価値もありませんが、関川夏央の昨今の著作活動はどうか。詳細はWikipediaの著作でご確認いただくとして、つまりは文芸評論です。最近は、『人間晩年図巻』なるシリーズを岩波書店から出している。あれ、岩波って北朝鮮に対して好意的な出版社じゃなかったっけと思いますが、つまりは関川は、自分の過去は不問にしてもらいたいということなのでしょうね。関川にとって、過去の北朝鮮言説なんて完全な黒歴史、自分の過去から削除したいことなのでしょう。関川が文芸評論に逃げた背景には、たぶん朝日新聞社を不祥事(自衛隊員殺害事件の犯人と強度にかかわってしまった)で懲戒解雇になった川本三郎あたりをモデルにしてやっていこうと考えているのでしょうが、川本はそれでも『マイ・バック・ページ』を記して(1988年出版)彼なりに総括をしましたが、関川はねえ(苦笑)。当方関川の文芸評論に何の興味もないし、仮に彼の文芸評論がそれなりの価値があるからといってだからといって関川批判をやめる気もありませんが(そういえば、某大学教授の放言・暴言を批判したら、なんの関係もないその教授の研究実績をもってその大学教授をかばったどっかの馬鹿がいましたが(ご当人現在ネット界逃亡中にて、関係者の名前や関係HPなどの紹介は略)、関係ない話で他人を擁護してもしょうがないでしょう)、いずれにせよどんだけ自分の言説に無責任なんだということですね。要は、関川は、川本ほどではないですが、ほかで食っていけるくらいの才覚はあったから、関係ない方向へ逃げたが、そういった芸もない李英和関西大学教授(故人)などは、自分が運営していた人権団体が活動停止に追い込まれたり、死の直前に極右雑誌(WiLL)に寄稿するまでに落ちぶれたわけです。おまけにその死まで、ろくに報道されませんでした。高世仁などもご同様。あの男が会社をこかしてもいまだ拉致被害者家族会周囲に寄生しているのは、彼が自分でもほかの業界でやって行けるほどの才覚がないと自認しているからでしょう。上の本や集会には、高世とも強い関係にある有田芳生氏が参加するようですが、高世には、和田氏と関係するほどの覚悟はないでしょう。

李英和氏の死があまり報じられないことが、対北朝鮮や拉致問題への関心の実情ではないか

有田芳生氏の拉致問題についての本が発売され、その解説を高世仁が担当するとのこと

高世仁が主張するような人間はそうはいないし、いたらそれは多くの場合精神疾患や強度の発達障害などがある(高世も無責任なデタラメをほざく人間だ)

関川夏央が現段階SNSなりブログなりのネット言論をしているという情報を私は目にしていませんが、本を定期的に出版するくらいの立場ではあるわけで、だったら今からでも遅くないから、「私のかつての北朝鮮言説は妥当ではありませんでした。撤回します」とでも書いて、「ただし北朝鮮の体制への批判は今後も続けます」と書けばいいのです。あそこまで上から目線で、愚説・珍説・デマ・デタラメ・嘘八百をほざいたのだから、それくらいのことをする程度の責務はあるでしょう。でも彼は、そんなことをするくらいの責任感もないのでしょうね。どんだけデタラメな野郎なのかです。

なおこの記事のヒントを、前掲のbogus-simotukareさんの記事と拙記事へのコメントからいただきましたことを明記します。bogus-simotukareさんありがとうございます。

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安倍晋三が殺されなければ、はたして最高裁も地裁と高裁で統一協会が勝訴した事件の上告案件で弁論なんか開くかどうか

2024-03-25 00:00:00 | 社会時評

若干旧聞ですが、興味深い記事を。


旧統一教会に賠償求めた裁判 6月に最高裁弁論へ
2024年3月18日 21時49分 

旧統一教会から高額献金などの被害を受けたとして、長野県の元信者やその家族が教団らに賠償を求めている裁判で、最高裁判所は6月に弁論を開くことを決めました。教団の勧誘や献金をめぐる裁判が最高裁で審理されるのは初めてで、訴えを退けた1審と2審の判断が見直される可能性があります。

長野県に住み、裁判中に亡くなった元信者の女性は7年前、違法な勧誘で献金などをさせられたとして1億8000万円余りの賠償を求めて裁判を起こしました。

しかし1審の東京地方裁判所と2審の東京高等裁判所は、元信者が裁判を起こす2年前の86歳の時に「教団に賠償請求を行わない」などとする念書を書いていたことなどから、訴えを退けました。

原告側は不服として、請求のうち6500万円余りについて上告し「元信者は高齢で十分な判断能力がなく、念書の目的を理解していなかった。教団が賠償の義務を免れるために作成したもので、念書は無効だ」などと主張していました。

この裁判について最高裁判所第1小法廷の堺徹裁判長は18日、6月10日に弁論を開くことを決めました。

判決を変更するのに必要な弁論を開くことから、訴えを退けた判断が見直される可能性があります。

教団の勧誘や献金をめぐってはこれまで複数の元信者やその家族が裁判を起こしていましたが、最高裁で審理されるのは初めてです。

原告代理人「被害者の救済につながるような判断を期待」
この裁判で原告の代理人を務める「全国霊感商法対策弁護士連絡会」の木村壮弁護士は「教団に賠償を求めないなどとする念書があることで返金を諦めてしまう人が多くいる。最高裁判所には、被害者の救済につながるような判断を期待したい」と話していま

旧統一教会「詳細がわかり次第、適切に対応」
旧統一教会=世界平和統一家庭連合は「詳細がわかり次第、適切に対応して参ります」とコメントしています。

記事にもありますように、最高裁が弁論を開くということは、下級審の判断を見直すということになるかと思います。で、1審と2審の東京地裁と東京高裁は、統一協会勝訴の判決を出しています。地裁と高裁での判決が、最高裁で覆されるなどということは、そうそうあることではありません。だいたい日本の裁判所は、地裁<高裁<最高裁の順番で、行政とか自民党など強者におもねる判決を出します。地裁と高裁で統一協会勝訴の判決が出た裁判で、最高裁において、どこまでの勝訴ということになるのかはもちろん現段階言えませんが、ある程度原告側が有利になる判決が下される可能性が出てきたというのは、これまたずいぶん奇怪な話です。

つまりは、けっきょくこれ、私が前に記事にした

けっきょく誰かが(死因はともかく)死なないと事態は改善しないようだ(夏の甲子園もそうではないか)

のたぐいですよね。

上の記事で、私は次のように指摘しています。

統一協会に関しては、安倍晋三の暗殺がありました。あれがなくて、今日のような事態になったとは考えにくい。いや、安倍が殺されてですら、自民党ほかの中には統一協会をかばう態度がありましたが(こちらの拙記事に、その一例をご紹介しました)、さすがに日本憲政史上1番首相在任が長かった人物が殺されて、そのおおもとの原因に見て見ぬふりをするわけにはいかなかったということです。

上の記事を私が発表したのは、2023年11月26日です。この1か月半前の2023年10月13日、文科相が統一協会への解散命令を東京地裁に請求しています。で、このようなことが、今回の弁論を開く決定に関係しているのでしょうね。うんなもん、安倍晋三が殺されようがどうなろうが、この裁判に関していかなる関係もあるわけがないですが、でも安倍が殺されていなかったら、日本政府による裁判所への統一協会解散命令請求なんかされるわけもないし、最高裁も、たぶん弁論なんか開かないのでしょうね。こんなもんどこが三権分立じゃいです。今回の裁判の地裁と高裁の裁判官も、統一協会勝訴の判決を下したとき、良心がとがめなかったんですかね。たぶんとがめたでしょうね。最高裁が、いろいろな事情があるにしても原告側に有利な判決を下す準備をしているような裁判で、地裁や高裁の裁判官が、統一協会勝訴の判決を平然と下しているということもないでしょう。念書の存在などの形式的な判断に逃げて良心のとがめから目をそむけていたのでしょう。それもどうかです。この裁判官たちも、さすがに裁判官になった当初は、そういう判決を下す先輩裁判官たちを軽蔑していたでしょうにねえ。まるっきり若き日ののちの警察庁長官中村格みたいなものです。中村だって、さすがに警察庁の官僚になった当初は、のちの自分が、山口敬之伊藤詩織に対する性犯罪をした際、山口に対する逮捕状の執行を停止するなんていう不祥事をしでかすなんて、想像の埒外だったはず。

高校生、大学生、警察庁に入庁したばかりの中村格が現在の自分を見たら、ああいうクズにだけはなりたくないと思ったろう

上にも書いたように、こんなもんどこが三権分立なんですかね。つまりはいかに、地裁と高裁における統一協会勝訴の判決がろくでもない代物であったかということだし、統一協会の関係で恨みを買った安倍晋三が殺されるなどという想像を絶する不祥事が起きて、日本政府や自民党をふくめた統一協会を擁護してきた勢力が統一協会擁護を打ち切ってから最高裁は、統一協会により厳しい判断を下す準備をしているわけです。統一協会がしでかしてきたよろしくないことの数々なんて、そんなもの安倍晋三が殺されるとっくの前からの話です。裁判所はさすがに行政などや自民党の政治家などよりは、統一協会にそれ相応に厳しい態度を取り判決を下してきたかと思います。それでこのざまなのだからほんと日本というのもひどい国だと思います。お話にもなりません。

なお引用したNHKの記事では「旧統一教会」という表記ですが、拙記事では「統一協会」という表記にしますことをお断りします。

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ソウル紀行(2023年9月)(9)(Day2-5)

2024-03-24 00:00:00 | 旅(韓国)

順番が来ました。店に入ります。

斜め前の女性は、私の前に並んでいた女性です。

酒は、昼に飲み過ぎたので、コカ・コーラをいただきます。

ユッケビビンバです。

かき混ぜます。

レバ刺しとセンマイです。レバ刺しは、現在日本ではおおぴらには食べられないので、韓国ではぜひいただきたいものです。日本だって、勝手に食べればいいんだけどね。私は食べません。こわいから。

ユッケです。ほんとはこれに牛刺しをいただきたかったのですが、訪れた時点では、牛刺しには、値段の部分が封印されていました。

他にもいろいろな店がありますが、この店が圧倒的に込んでいました。他の店とそれくらい味に差があるかについては、断言できないので保留とさせていただきます。そもそも食べていないからわかるわけがない。

あまりソウルで公衆電話を見かけることもありませんが、使っている人を見たことはもっとありません。なお私は、かなり昔、1度韓国で公衆電話をかけたことがあります。

また地下鉄に乗ります。

こういう美女が乗っているので油断ができません。

東大門駅4号線に乗り換えます。

すらりとした女性です。

東大門歴史文化公園駅で下車します。ホテルに預けてある荷物の回収です。

水を仕入れました。

また4号線に乗ります。実はここで、いつも行く冷麺屋に行きソウルの食の締めとして、冷麺をいただく所存でしたが、食べ過ぎたと判断して本日はやめました。「平壌麺屋」です。食べログにリンクします。2022年大みそかには、年越しそばをいただきました。

3年ぶりの海外旅行(韓国 2022年12月~2023年1月)Day3-12(29)

韓国の人は、妊婦向けの席はわりとちゃんと空けるようにしています。

ソウル駅に到着します。いよいよ旅も終わりです。

いかにも韓国人らしいすらりとした脚のJK(?)です。

空港鉄道に乗ります。

各駅ですので、途中までは通勤電車の雰囲気です。

途中駅で乗り換えます。

黔岩駅です。ソウル方面からの電車は、ここで各駅停車は折り返すのが半数くらいです。

仁川国際空港に到着しました。これでこの旅行記を終えてもいいのですが、次回が最終回です。

(つづく)

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ソウル紀行(2023年9月)(8)(Day2-4)

2024-03-23 00:00:00 | 旅(韓国)

明洞駅でとりあえず下車します。

またまたザ・コーヒービーン & ティーリーフに行きます。メトロホテル近くにあった店舗は、まさに私にとってソウル憩いの場所でした。これは甘いものの摂取が過剰ですね。でもうまい。

ノマドワークなどに余念がない人たちも多数。

白人のなかなか美しい女性もいます。地元の人か旅行者かは不明。

店を出ます。韓国女性は、脚がきれいです。

いよいよ旅行もラストが近くになります。

ソウル駅(なおこの駅は、厳密には「ソウル駅」駅です。「ソウル駅」までが駅名です)で地下鉄を乗り換えます。

いかにも韓国女性らしい広告です。

日本ではあんまり見かけませんが、韓国ではプラカードを使うデモなど示威行動が盛んなんですかね?

1号線に乗ります。なおご存じの方も多いかと思いますが、韓国の地下鉄は原則右側通行ですが、1号線は

乗り入れ先の韓国鉄道公社(KORAIL)に合わせ左側通行となっている。韓国の都市鉄道などでは他に、盆唐線がある。

というわけです。旅行に行かれる際は乞うご注意。

右側の女性(妊婦席に座っている人)の髪形は、韓国人の中高年女性によく見かけるものです。

鐘路5街駅 で下車します。漢字が、中国の略字であるのが時代ですね。

「ユッケ通り」にある著名な店で、ユッケをいただくのです。

通りに入ります。

列ができています。昔の韓国では、食堂の列はないとされましたが、昨今はそうでもありません。ただこの店の客は、外国人が多いのですが。

私の前に並んでいたのは、英語を話さない(たぶん東欧系)白人女性2人組でした。

店のなかです。

そろそろ私の順番です。

さあ何を食べるか、楽しみです。ただ遺憾ながら刺身は売っていないようですね。

(つづく)

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依存症というのは、まさに常識や愛情や情けなどでは克服できない

2024-03-22 00:00:00 | スポーツ

昨日報道されたこちらの件にはやはり驚かされますね。


ドジャース 大谷翔平の水原一平通訳を解雇 違法賭博に関与か
2024年3月21日 18時26分 

大リーグ、ドジャースは、大谷翔平選手の通訳を務める水原一平氏を解雇したことを明らかにしました。アメリカの複数のメディアは水原氏が違法賭博に関与したなどと報じていますが、球団は解雇の理由については明らかにせず、情報を収集しているとしたうえで、「現時点ではこれ以上のコメントはない」としています。

米メディアによると、水原氏は、20日夜の試合後にドジャースのチームメートに対して、みずからがギャンブル依存症であるとした上で「すべて自分のせいだ」などと説明したということです。記事では、ギャンブル依存症についてもお伝えします。

米複数メディア “水原氏が違法賭博に関与” と伝える
アメリカの複数のメディアは20日、大谷選手の代理人弁護士が水原氏が違法賭博に関与したと明らかにしたなどと伝え、このうちロサンゼルス・タイムズは、水原氏が連邦捜査の対象となっている違法な「ブックメーカー」と呼ばれる賭け屋で賭けるために、大谷選手の資金を「大規模に盗んだ」としています。

また、アメリカのスポーツ専門チャンネル、ESPNによりますと、大谷選手の口座からこのブックメーカーに対して450万ドル、日本円でおよそ6億8000万円が送金されていたということです。

これについて球団はNHKの取材に対して、「報道の内容は把握している」としたうえで、水原氏を解雇したことを明らかにしました。ただ、解雇の理由については明らかにせず、情報を収集しているとしたうえで、「現時点ではこれ以上のコメントはない」としています。

(中略)

水原氏「すべて自分のせい」 米メディア 
ESPNは水原氏がギャンブルで多額の借金を抱えていたとも伝えていて、取材に対して、水原氏本人が去年、借金の返済を大谷選手に依頼したと明かしたとしています。

その中で水原氏は「翔平はギャンブルに全く関与していなかったということを知ってほしい。このギャンブルが違法だとは知らなかった」などと話したということです。

また、20日夜の試合後には、水原氏がドジャースのチームメートに対して、みずからがギャンブル依存症であるとした上で「すべて自分のせいだ」などと説明したということです。

米スポーツ専門チャンネル 水原氏のインタビュー取材を詳報
水原氏が違法賭博に関わったとされる問題について、アメリカのスポーツ専門チャンネル、ESPNが水原氏へのインタビュー取材をもとに詳しく報じています。

取材のきっかけは、違法とされるブックメーカーに大谷選手の口座から複数の送金があることがわかったことだったということで、ESPNが今週に入り水原氏に取材した際には、「ギャンブルで多額の借金を抱え、その返済を大谷選手に依頼した」などと話しました。

借金は450万ドル、日本円で6億8000万円にのぼったとされ、借金が増えていったいきさつについては「勝ったことは一度もなく、沼にはまって借金がどんどん大きくなり、取り返すためにさらに賭けて負け続けた。もう二度とやらない」と明かしたといいます。

そして「当然、彼はよく思っていなかったが、二度とやらないように私を助けてくれると支払ってくれた。翔平は賭博には一切関与してないことをわかってほしいし、私もこの賭博が違法だとは知らなかった」と話し、当初は大谷選手に相談の上で借金の問題に対処したとしていました。

しかし、その翌日になって大谷選手の代理人事務所の広報担当者がESPNに対して水原氏の発言を撤回したということで、大谷選手の弁護士も「大谷選手が窃盗行為の被害者であるということが発覚した」というコメントを発表しています。

さらに、水原氏も取材に対して「大谷選手は自分のギャンブルや借金、その返済についてなにも知らない」と前日のインタビューの内容を否定し、「これはすべて私の責任で、受け止める準備はできている」と話したということです。

記事のこの後の部分をあとでまた引用いたしますことをお許しください。

件の人物である水原一平氏(一応まだ逮捕などはされていないので、敬称をつけておきます。大谷翔平については、いまさら敬称をつけることもないと思うので省略します)なる人物は、Wikipediaから引用すれば(注釈の番号は削除)、

2012年からは帰国して北海道日本ハムファイターズの球団通訳となり、ブランドン・レアードクリス・マーティンなど日本ハムに所属する外国人選手の通訳や生活のサポートを務めた。選手たちに「連絡があったらすぐ駆けつける」と約束し、選手の家族にまで配慮を行った

日本人選手からも好かれており、「一平ちゃん」との愛称で呼ばれた。また陽岱鋼(当時日本ハム所属)とは特に仲が良く、たびたびキャッチボール相手を頼まれた

マスメディアによる外国人選手たちへの取材に協力的で、記者たちから好評であった

大谷翔平の専属通訳として

2017年オフに日本ハム所属だった大谷翔平ロサンゼルス・エンゼルスへ移籍したことに伴い、大谷の専属通訳としてエンゼルスに所属。通訳以外にも運転手キャッチボールの相手など、公私にわたり大谷をサポートしている

とあるくらいで、単なる通訳というのではなくて、なかなかのやり手のようですね。当方のように特に大谷について報道に着目しているわけではない人間でも、水原氏のお名前はよく耳にしていてその存在はおなじみでした。おそらく相当いいギャラももらっていたろうし、彼自身現在の自分の立場に関しても、非常に満足度は高かったのではないかと思います。

が・・・ご当人ご自分で認めるようにギャンブル依存症だったようですね。NHKの記事の続きを。


ギャンブル依存症とは
ギャンブル依存症は、競馬や競輪、パチンコといったギャンブルをやめたくてもやめられない状態に陥り、本人や周りの人たちの生活に支障が生じる精神疾患の1つで、借金をする、仕事や学業を休む、睡眠や食事がおろそかになる、周囲との関係が悪くなるといった特徴があると厚生労働省は位置づけています。

国内でも社会全体で予防を図ることが重要だとして、政府も基本計画を策定して対策に乗り出しています。

それによりますと、依存が疑われる人は成人の2.2%と推計しているということです。

ギャンブルにのめり込むことで、本人や家族の日常生活や社会生活に支障を生じさせるだけでなく、多重債務や犯罪といった重大な社会問題を生じさせる場合があるとして対策が必要だとしています。

ギャンブル依存症は、早期の支援や適切な治療で回復が十分可能だとしていて、政府は、地方自治体や事業者などと連携して必要な取り組みを包括的に講じていくとしています。


専門家 ”社会的に成功した人でも依存症のリスク” 
ギャンブル依存症の患者の治療にあたっている大阪精神医療センターの入來晃久医師は、依存症の人に見られる特徴について「基本的には日常生活や人間関係、仕事などに支障が出ているにもかかわらずギャンブルを続けてしまうのが特徴で、人間関係や社会的な地位を失ってしまうことにもつながる。患者は真面目な性格で物事に一生懸命取り組み、能力も高い人が多い気がする。社会的に成功した人であっても本音が言えなかったり、ストレスをため込んでいたりする人はギャンブル依存症のリスクがある」と指摘しました。

その上で対策については「正直に話せる場所や人がいることが非常に大切だ。患者本人は恥ずかしいとか自己責任だとか思ってしまいがちで、自分で何とかしようと考えて治療や支援につながらないことが対策が難しい理由になっている。周りの人も正しい知識を持って偏見をなくすことが大切で、患者を責めたりすることがないようにしてほしい。同じ依存症の人が集まる自助グループに参加したりするのも有効だ」と話していました。

というわけです。世の中死刑になるような重罪をした人間のなかにも、明らかにギャンブル依存症だったと思われる人物がいます。名古屋女子大生誘拐殺人事件泰州くん誘拐殺人事件長崎・佐賀連続保険金殺人事件など。上の引用での入来氏のお話にもあるように、


人間関係や社会的な地位を失ってしまう

ということもあるわけです。ギャンブルではありませんが、何らかの性依存の一種であると思われるこちらの件についてはどうか。私が何度もご紹介しているケースです。


日本IBM元社長を盗撮容疑で書類送検へ 警視庁
2012年8月30日 13:03

日本IBMの大歳卓麻元社長(63)が女性のスカートの中を盗撮したとして、警視庁四谷署が事情聴取していたことが30日、同署への取材で分かった。同署は元社長を東京都迷惑防止条例違反(盗撮)容疑で書類送検する。

四谷署によると、元社長は22日午前8時ごろ、JR四ツ谷駅構内の上りエスカレーターで、女性のスカート内を携帯音楽プレーヤー「iPod」の動画撮影機能を使って盗撮した疑いが持たれている。元社長は事情聴取に対し「盗撮に興味があった」と話したという。

iPodには動画が残っていた。盗撮に気づいた通行人と元社長が口論になり、別の通行人が交番に届け出たという。

日本IBMなどによると、元社長は今月、同社最高顧問を辞任。三菱UFJフィナンシャル・グループと明治安田生命保険、カルビー、TOTO、花王の5社で社外取締役を務めていたが、30日までに辞任した。総務相の諮問機関、情報通信審議会の会長も辞めた。

日本IBMの元社長が、金や女に不自由するわけがない。が、それでもこういうことをしてしまうわけです。さてさて、金銭のスケールは違うとはいえ、読者の皆様は、次のような記事を読んでどうお考えになりますかね?


消防職員の任意団体の資金約1000万円を横領 小樽市の50代消防職員が警察に自首していたことわかる
2024年 3月19日 19:02 掲載

小樽市の消防職員が、消防職員の任意団体の活動資金を横領し、警察に自首をしていたことがわかりました。

小樽市消防本部は19日、50代の職員が自らが事務局長を務める任意団体「小樽市消防職員行政研究会」の活動資金およそ1000万円を横領し、今月8日に警察に自首したと公表し、謝罪しました。
小樽市消防本部によりますと、2021年9月時点でおよそ1100万円あった任意団体の預貯金が現時点ではほとんどなくなっていて、資金は事務局長の職員が管理していたとのことです。
警察は、金の使い道や動機などについて詳しく調べています。

いろんなご意見はあるかもですが、この人が会計を任された背景には、たぶん「不祥事は起こさないだろう」という仲間内の判断があったはず。さすがに過去に金銭不祥事を起こした人に、こんな役割は託されないでしょう。が、それでもこの人は、事情は不明ですが、よろしからぬ不祥事を起こしてしまったわけです。

彼(女)がどういう理由で横領をしたのかは現段階定かでありませんが、やはり何らかの形での依存症のようなものがあるのではないかと思います。ギャンブルか女(男)か、あるいは何らかの浪費癖か。そのあたりは今後報道されるかもですが、それ相応の社会常識があると思われていた人間が、ここまでしてしまったわけです。

それで、窃盗症と思われる人間の不祥事というのもひどいものです。元記事はすでに削除されているようですので、拙記事からの再引用で。

窃盗癖というものは、かくのごとく他人の期待や情けを裏切り、迷惑をかける(性犯罪、アルコール依存、ギャンブル依存その他もご同様)


2023.08.22 18:45
万引きで逮捕の小学校教頭「以前にも万引き」懲戒免職に 校長は市教委に報告せず 大阪・堺市

 書店で万引きをしたとして逮捕された堺市立小学校の教頭(43)が、「以前にも万引きをした」と話していることが分かりました。教頭は22日付で懲戒免職となりました。

 懲戒免職になったのは堺市立小学校の男性教頭で、7月28日、堺市南区の書店で参考書1冊を盗んだ疑いで現行犯逮捕されました。

 堺市によりますと、教育委員会の聞き取りに対し、教頭は7月中旬と今年4月にも書店や量販店で商品を万引きしたと話していたことがわかりました。

 一方、4月に教頭が万引きし、警察から事情聴取を受けた際、上司の校長が身元引受人になっていましたが、校長が教育委員会に報告していなかったこともわかりました。

 校長は「教頭が泣きながら『絶対にもう二度としません』と話したため、報告していなかった」と話しているということで、堺市は22日付で教頭を懲戒免職処分に、校長を戒告処分としました。

こんな話は紹介したらきりがないのでもうやめますが、ともかく依存症というのは水原氏だろうが、日本IBMの元社長だろうが、校長に情けをかけてもらった堺市の教頭だろうが、なっちゃったら容易には克服できないということです。ともかく「これはまずい」と思ったら、やばくなる前に医者や自助グループほかに行くに限ります。あなただけのためじゃないよ、周りの人間のためでもあるんだよです。これも何回も引用している依存症についての金言をまたご紹介してこの記事を終えます。

これはなかなかの金言だと思う(というわけで、読者の皆さまにもご紹介)

依存症の分野では、それまで常識と考えられていたことが、次々に覆される。以下はパラドックスの例だ。

・手を放せ

・重症者の方が回復する

・やめようとすることをやめろ

・自分の意志を使うな

・病気になったことは恵み

・無力を認める

・嫌いな人は自分の鏡

・希望をもつのはいい。だが、期待するな

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昔の特撮やドラマなどでよく使われていた横浜の洋館の跡地へ行ってみたい

2024-03-21 00:00:00 | 映画

ロケ地といってもいろいろありますが、昔のドラマでよく登場した横浜の洋館があります。たとえば下は、『江戸川乱歩の美女シリーズ』の栄えある第1作「氷柱の美女」より。放送は、1977年8月22日。

こちらの洋館です。

メカゴジラの逆襲』(1975年)では、平田昭彦藍とも子(クレジットで「新人」とあります)の演じた真船親子の住む屋敷です。公開は1975年3月15日です。

ほかにもたとえば『ウルトラマンレオ』(TBS)第17話で、ゲストの関根世津子の自宅(母役が、幾野道子)や、また同じく第45話でも使用されており(なお、この屋敷を警備する警官役として、鈴木正幸が出演しています。もちろん『桜中学シリーズ』より前の出演)、いろいろなドラマに登場している模様です。こういったロケ地に詳しい「ころころがたがた」さんというブログさんがあり、私もいろいろ勉強させていただいていたのですが、残念ながら削除されてしまっています。

なお上のドラマの17話は、1974年8月2日の放送であり、前掲の藍とも子が、主人公の勤務するスポーツクラブの練習生として出演していて、これが彼女の女優デビューであり、上の洋館を訪問するというシーンもありました。これも何かの縁かも。ノンクレジットでしたが、これは彼女のWikipediaにもあるように、レギュラー前提のテスト出演でした。もう1人若い女性が、彼女の相棒みたいな立場で出演していまして、彼女もノンクレジットですので詳細は不明ですが、あるいは、藍とも子と彼女のどちらかがレギュラー候補だった? そのあたりの真相はともかく、藍とも子は、26話からレギュラー(松木晴子隊員役)を勝ち取り、殉職という設定で降板する40話まで出演します。その出演中にオーディションで『メカゴジラの逆襲』のヒロイン役に抜てきされたわけです。また、第45話は75年2月14日の放送であり、おそらく『メカゴジラの逆襲』でのロケと前後しての撮影だったと考えられます。

どういう事情でこの時期、この洋館がやたらロケ地に使用されていたのかは当方情報を入手していませんが、その時のオーナーが撮影に協力的だったということなのでしょう。おそらく70年代の終わりから80年代初頭のいずれかの時期においてこの建物は取り壊しとなり、現在はマンションが建てられているとのこと。

よって跡地に行ってみてもあまり面白くないのかもですが、さまざまなドラマのロケ地となった場所を追体験するということも悪くないので、機会を見つけて行ってみます。なお、『赤い迷路』『赤い絆』『ウルトラマンレオ』などのロケ地となった世田谷の橋や狛江の河原の訪問記がありますので、よろしければお読みになってください。またこれもよろしければ、映画『ブラック・レイン』のロケ地も撮影していますので、こちらもどうぞ。

「赤いシリーズ」「ウルトラシリーズ」のロケ地の現在(いま)(成城・祖師谷編)(追記あり)(写真の追加あり)

「ウルトラシリーズ」のロケ地の現在(いま)(五本松編)

『ブラック・レイン』のロケ地の現在(いま)(追記・訂正あり)

『ブラック・レイン』のロケ地の現在(いま)(大阪府庁、京橋・あべの筋再撮影編)

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ソウル紀行(2023年9月)(7)(Day2-3)

2024-03-20 00:00:00 | 旅(韓国)

カロスキルを歩きます。

月曜ということもあるのでしょうが、あまり人通りは多くありません。

女の子たちがいたので写真を撮ろうかと思いましたが、撮り損ねました。日本ではともかく、海外では私も無茶をします。

曇りですが、紫外線は意外と強いので、日傘は有力な手段です。

以前は、カロスキルで空いている店舗なんかなかったんですけどねえ。明洞でも、以前と比べると空き店舗が目立っています。

カロスキルも全盛期は過ぎたのかもしれませんね。2013年ごろとは比較の対象にもなりません。

ソウル・咸平紀行(2013年7月)(5)

そういうわけで、あまり充実したとはいえない時間を過ごしてここを去ります。

地下鉄に乗ります。

次の目的地は・・・。

(つづく)

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翻訳のヴァージョンを比較してみる(老人と海)

2024-03-19 00:00:00 | 書評ほか書籍関係

今回ご紹介する翻訳は、何種類もあります。この小説はすでに版権が切れているので、翻訳は誰でも出版できます。いちばん有名な翻訳が、福田恆存の翻訳でしょう。改訳されているので、今回ご紹介するのは、新潮文庫の1979年以降の翻訳です。これが福田訳の最終ヴァージョンでしょうが、詳細は未確認です。福田死後の96年に発売された85刷より。80年に49刷で改版されているとのことなので、たぶんこの翻訳が最終ヴァージョンになった? 下の表紙は、2003年発売のもので、96年のものは、ヘミングウェイの肖像が表紙です。

老人と海 (新潮文庫) 

 

老人と海 (光文社古典新訳文庫)

訳者の小川高義氏は、現在東京工業大学名誉教授です。2014年の訳。

老人と海

高見浩訳。新潮文庫のポスト福田訳です。2020年の発表です。

新訳 老人と海

訳者ほ東京女子大学名誉教授の今村楯夫氏です。日本ヘミングウェイ協会の顧問とのこと。2022年発売。

挿し絵入り版 老人と海

訳者である島村法夫氏は、中央大学名誉教授であり、日本ヘミングウェイ協会の元会長とのこと。2023年発売。

なお引用する翻訳については、段落は、一段スペースを空け、冒頭の一字下げは、省略します。

では、まずは原文を。冒頭から。出典は、こちら

He was an old man who fished alone in a skiff in the Gulf Stream and he had gone eighty-four days now without taking a fish. In the first forty days a boy had been with him. But after forty days without a fish the boy's parents had told him that the old man was now definitely and finally salao, which is the worst form of unlucky, and the boy had gone at their orders in another boat which caught three good fish the first week. It made the boy sad to see the old man come in each day with his skiff empty and he always went down to help him carry either the coiled lines or the gaff and harpoon and the sail that was furled around the mast. The sail was patched with flour sacks and, furled, it looked like the flag of permanent defeat.

福田訳(漢字の振り仮名は省略)

かれは年をとっていた。メキシコ湾流に小舟を浮べ、ひとりで魚をとって日をおくっていたが一匹も釣れない日が八十四日もつづいた。しかし一匹も釣れない日が四十日もつづくと、少年の両親は、もう老人がすっかりサラオになってしまったのだといった。サラオとはスペイン語で最悪の事態を意味することばだ。少年は両親のいいつけにしたがい、べつの舟に乗りこんで漁に出かけ、最初の一週間で、みごとな魚を三匹も釣りあげた。老人が来る日も来る日も空の小舟で帰ってくるのを見るのが、少年にはなによりも辛かった。かれはいつも老人を迎えにいき、巻綱や魚鉤や銛を、それからマストに巻きつけた帆などをしまいこむ手つだいをしてやった。帆はあちこちに粉袋の継ぎが当ててあったが、それをマストにぐるぐる巻きにした格好は、永遠の敗北を象徴する旗印としか見えなかった。(p.5)

小川訳(漢字の振り仮名は省略)

老人は一人で小舟に乗ってメキシコ湾流へ漁に出る。このところ八十四日間、一匹も釣れていなかった。四十日までは同行する少年がいた。だが四十日かかって一匹も釣れないとは徹底して運に見放されている、サラオだ、と少年の両親は言った。スペイン語で「不運の極み」ということだ。少年は親の言いつけで別の船に乗り、その船は一週間でなかなかの大物を三匹釣った。あいかわらず空荷の小舟で帰ってくる老人を見るのは少年にはつらいことだ。いつも浜へ迎えに出て、巻いたロープなり、鉤うや銛なり、運び出すのを手伝った。帆もたたんで持ち帰る。小麦粉の袋で継ぎを当てた帆をマストに巻くと、連戦連敗の旗印にしか見えなかった。(p.7)

高見訳(漢字の振り仮名は省略)

漁師は老いていた。一人で小舟を操って、メキシコ湾流で漁をしていたが、すでに、八十四日間、一匹もとれない日がつづいていた。最初の四十日は一人の少年がついていたのだが、一匹もとれない日が四十日もつづくと、あのじいさん、もうどうしようもないサラオだな、と少年の両親は言った。サラオとはスペイン語で”不運のどん底”を意味する。少年は両親の言いつけで別の舟に移り、その舟は最初の一週間で上物を三匹釣り上げた。老人のほうはその後も毎日空っぽの舟でもどってくる。それを見ると少年は悲しくて、いつも浜に降りていっては、老人が巻き綱や手鉤や銛などを運び上げるのを手伝った。帆を巻きつけたマストも運んだ。帆には小麦粉の袋で継ぎがあてられていて、マストに巻きつけられた姿は際限もない敗北の旗といった風情だった。

今村訳(漢字の振り仮名は省略。原語の注記は、()にいれる)

老人がひとり、小舟に乗ってメキシコ湾で漁をしていた。一匹も釣れない日が八四日も続いていた。初めの四〇日は若者が一緒だったが、浜に降りて行っては、と、若者の親はあのじいさんはサラオになってしまったのだと言った。サラオとはスペイン語で、最悪の事態という意味だ。親に言われて別の舟に移り、最初の週にみごとな魚を三匹も釣り上げた。しかし、老人が空っぽの舟で帰ってくる姿を目にするのは若者にとっては何よりも辛かった。いつも浜に迎えに行き、巻いた釣り網と魚鉤(ギャフ)と銛、帆が巻きつけられたマストを持った。帆はあちこちに小麦粉の袋で継ぎが当てられ、それがマストにぐるぐる巻きにされている格好はまさに永遠の敗北を示す旗のようであった。(p.5)

島村訳(注釈の番号、漢字の振り仮名は省略)

彼は年老いていて、ひとり小舟に乗り、メキシコ湾流で漁をしていた。これまで八十四日間も一匹も釣れていないでいた。最初の四十日は、少年が一緒だった。だが一匹も釣れない日が四十日も続くと、彼の両親は、爺さんはとうとうとんでもないサラオになってしまったんだと少年に言って聞かせた。サラオとは、スペイン語で最悪の不運な状況を表す言葉だ。少年は、両親の言いつけで別の舟に乗って、最初の週で、立派な魚を三匹も仕留めた。来る日も来る日も、老人が空の小舟で港にも戻ってくるのを見ると、悲しかった。少年はいつも浜辺に行って、ぐるぐる巻きにした釣網とか鉤竿や銛、それと帆をぐるぐる巻いたマストを運ぶのを手伝った。帆には、小麦粉を入れる布製の大袋で作った継ぎが、あちこちに当ててあった。それがマストに巻きついていると、永遠の敗北を暗示する旗のようであった。(p.10)

拙訳

メキシコ湾で1人で漁をしていた年老いた男は、この84日間1匹の魚も釣れていなかった。最初の40日は少年がついていた。しかし40日にもなって1匹も釣れないとなると、少年の両親は、じいさんは今となっては完全についに「サラオ」-スペイン語で最悪の不運な状況という意味だーになったのだ、と少年にいった。少年は親に言われて舟を降ろされて、別の舟に乗りこんだ。その舟は、最初の1週間で3匹のりっぱな魚を釣り上げた。毎日老人が空っぽの舟で帰還するのを見るのは、少年にとっては気が滅入るものだった。少年は老人を毎度迎えにいき、巻綱やうおかぎ、マストに巻きつけられた帆の運び出しを手伝った。帆には小麦粉の袋で継ぎが当てられていて、それはあたかも永遠の敗北であるかのようだった。

各氏の訳を比較すると、ほんと全然違うなということに驚きます。で、こういうの読んでいると、ほんと「翻訳って、訳者による原典の解釈だなあ」と痛感させられます。そんなことは初めから知っていますが、やはりそれを再確認します。

では、ラストを。

That afternoon there was a party of tourists at the Terrace and looking down in the water among the empty beer cans and dead barracudas a woman saw a great long white spine with a huge tail at the end that lifted and swung with the tide while the east wind blew a heavy steady sea outside the entrance to the harbour.

"What's that?" she asked a waiter and pointed to the long backbone of the great fish that was now just garbage waiting to go out with the tide.

"Tiburon," the waiter said, "Eshark." He was meaning to explain what had happened.

"I didn't know sharks had such handsome, beautifully formed tails."

"I didn't either," her male companion said.

Up the road, in his shack, the old man was sleeping again. He was still sleeping on his face and the boy was sitting by him watching him. The old man was dreaming about the lions.

福田訳(漢字の振り仮名は省略。引用文中青字は原文傍点)

昼すぎ、一暖の旅行者がテラス軒に立ち寄った。すると、ビールの空罐や死んだ魣の散らばっている水面を見おろしていたひとりの女が、そこに大きな尻尾をつけた巨大な白い背骨がゆらゆら揺れているの見つけた。港のそとでは、重い海の上を、風が東から強く吹いていたのだ。

「あれ、なんでしょう?」女はかたわらの給仕にたずねながら、大魚の長い背骨を指さした。その骨はいまや潮とともに港のそとへ吐き出されるのを待っている屑としか見えなかった。

「ティプロン」給仕はそういって、今度は訛のある英語でいいなおした。「さめが・・・」かれは一所懸命顛末を説明しようとする。

「あら、鮫って、あんな見事な、形のいい尻尾を持っているとは思わなかった」

「うん、そうだね」連れの男がいった。

道のむこうの小屋では、老人がふたたび眠りに落ちていた。依然として俯伏せのままだ。少年がかたわらに坐って、その寝姿をじっと見まもっている。老人はライオンの夢を見ていた。(p.116)

小川訳

午後になって、〈テラス〉の店がツアーの客で立て込んだ。ここから見る海に、ビールの空き缶や死んだカマスが浮いている。ある女の客が、大きな尻尾のついた長大な白い背骨も浮いていることに目を留めた。東の風が港の外海にずっしりした波をうねらせ、その余波で背骨がゆらりゆらりと揺れている。

「何なの、あれ」女はウェーターに言って、もはやゴミとして潮の流れに運ばれようとしている大魚の背骨を指さした。

「ティプロン」とウェーターは言った。「さめ」と英語で言いなおしたのは、骨になった事情を伝えようとしたのだった。

「知らなかったわ。鮫の尻尾だって。あんなに立派な、いい形だったのね」

「そうだな」連れの男も言った。

この道を行った先の小屋では、まだ老人が眠っていた。うつ伏せになったきりで少年が付き添って坐っている。老人はライオンの夢を見ていた。(p.128)

 

高見訳(漢字の振り仮名は省略)

その日の午後、観光客の一団が〈テラス〉でくつろいで、海を見下ろしていた。するとビールの空き缶やカマスの死体が浮くなかに、大きな尻尾のついた白くて長い巨大な背骨が浮き沈みしているのに、一人の女性が目を留めた。湾口の外では東の風がどっしりとした海を波立てており、つられて白い背骨も揺れていたのだ。

「あれはなあに?」女は給仕に訊いて、いまは潮に流されるのを待つ屑と化した、大魚の長い背骨を指さした。

「ティプロン」と給仕は答えた。「いえ、サメが」と英語で言い直したのは、何があったのか、説明するつもりだったのだ。

「知らなかったわ、サメがあんなに立派な美しい尻尾があったなんて」

「おれもだよ」つれの男が言った。

道の先の小屋では、老人がまた眠り込んでいた。うつ伏せになったままの老人を、少年がそばにすわって見守っていた。老人はライオンの夢を見ていた。(p.134~135)

今村訳

昼すぎ、テラス亭には旅行者の一団が集まり、海を見下ろしていた。そこからは海に一匹の魚が大きな尻尾をつけたまま、巨大で長い白い背骨を見せ、ビールの空き缶や死んだカマスとともに浮いているのが見えた。潮にゆらゆらと流されているところだった。東風に吹かれ、魚が港の入り江から外海にゆっくりと出ている様子が見えた。

「あれは何?」と女はウェイターに尋ねる。指さした先には偉大なる魚が、まさに海の藻屑となって潮に流され、入り江から出て行くところだった。

「ティプロンが・・・・・・」とスペイン語で言いかけ、「鮫が・・・・・・」と英語で言い換えた。ウェイターは何が起きたのか説明しようとしたのだ。

「鮫があんな素敵な美しい尻尾をしているなんて知らなかったわ」

「私も知らなかったな」連れの男が言った。

道を上ったところの小屋の中で老人はふたたびうつ伏せのまま眠っていた。その傍らに若者は腰をおろし、老人を見ていた。老人はライオンの夢を見ていた。(p,120~121)

島村訳(注釈の番号は省略)

その日の午後、テラス食堂に旅行者の一団がやってきた。一人の女性が空のビール缶や死んだバラクーダが浮かんでいる海面を見下ろしていて、最後尾に巨大な尻尾がついた、とてつもなく長い真っ白な脊柱に気づいた。それが、外海で東風が絶え間なく大きなうねりを立てている間、潮流のまにまにゆらゆら揺れ動いていた。

「あれなあに」と彼女は給仕に尋ね、潮流に乗って外海に出ていくのを待つ他ない生ごみにすぎない巨大な魚の長い背骨を指さした。

「ティブロンが」給仕が言った。「鮫が」彼は何が起こったか説明するつもりだった。

「知らなかったわ。鮫があんなに素敵な、きれいな形をした尻尾をしているなんて」

「ぼくもだ」連れの男が言った。

道路をずっと行ったところの小屋では、老人がもう一度深い眠りに落ちていた。相変わらずうつぶせになったままだ。少年がそばに腰を下ろして、見守っていた。老人はライオンの夢を見ていた。(p.146~147)

拙訳

その昼、「テラス」に旅行者の団体が来て、海を見おろしていた。ビールの空き缶やカマスの死体が浮かぶ海面に、団体の中の女性が、大きなしっぽのあるとても長く白い背骨を見つけた。湾の外では、東からの風が重い海を吹きさらし、それで背骨は揺れていた。

「あれはなに?」彼女は、もはや港の外に押し出されようとしているゴミでしかない、大きく長い背骨を指さしてたずねた。

「テイブロンが」とウェイターは、スペイン語で言って、英語で言い直した。「鮫が」。事態を説明しようとした。

「鮫って、あんなすてきできれいな形のしっぽをしているなんて知らなかった」

「そうだね」と連れの男性も言った。

道をいったところの掘っ建て小屋では、老人はまだ寝ていた。うつ伏せになったままで、少年は座って老人を見続けていた。老人は、ライオンの夢を見ていた。

これも訳者でぜんぜん雰囲気がちがいますね。英語から日本語にすると、スペイン語から英語の言い直しもあるので、やはりやや文章がくどくなるところがあり、それは仕方ないところもあります。

次回はフランス語の翻訳に挑戦したいと思います。それではまた。

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