MOT日記

知識資本主義の流れを医療界へ。
医療界の産業革命を目指します。

異業種の研究会

2008年06月10日 | Weblog
先日、とある研究会に参加して、
いつもの臨床の現場から離れて、近未来の技術に触れてきました。
最先端の知識と発表に触れながら、何気なく考え事をしていました。



すると。
頭の中でいろいろなアイデアが繋がりました。
久しぶりの感覚です。雲を掴みながら粘土をこねるような。



帰宅後、すぐに電子図書館で、自分のアイデアの新規性を調べました。
「チャンレンジしてみるか・・」



自分でどこまで権利を保ちながら、産業化するか。
自身のバランス感覚を信じて、
周囲のアドバイスにも耳を傾けて、
企業との交渉に臨みます。


いい製品を作りたい、という想いが共通するパートナーと一緒に仕事ができれば最高ですね。


異業種の研究会に出席すると、脳内のシナプスが繋がります。

数学の力

2008年04月10日 | Weblog
ある医療機器の検査結果を見ていて。
株価の変動のようだね、という会話になりました。
株価の予測には数学的知識が必要です。


私の同級生には数学者がいます。
数学の力を借りれば、この検査結果を定量化できるのではないか。。


そんな考えから数学者の友人と打ち合わせをしてみました。
私は医学的見地から。彼は数学的見地から。
折れ線グラフの検査結果をにらめっこ。



「こんなんどう?」


彼が提示した方程式は単純で、かつ美しく、魅力的でした。


医者が100人集まって100年議論してもこの数式にはたどり着けません。
身震いを感じました。


数学は偉大です。




医師にできる社会貢献

2007年01月21日 | Weblog
医師にできる社会貢献


医師は医業を行うことで社会貢献をしています。
私は今までの活動を通じて、医師が診療行為以外で社会貢献できる方法に気づきました。二つ紹介します。


ひとつ。
医療受益者に対する、保健情報の啓蒙活動は重要です。
マスメディアが飛びつくのは先端医療、最新の手術法が中心です。
ですが反対に、もっと知って欲しい一般的な知識も数多くあります。
健康セミナー、各種メディア、手段は様々ですが、
保健に関する教育活動は非常に重要です。

<医師法第1条>
医師は、医療および保健指導を掌ることによって
公衆衛生の向上および増進に寄与し、
もって国民の健康な生活を確保するものとする。

つまり。医師は医師法で
「医療」以外に「保健指導」をしなさい。
と規定されています。
「病気を治しなさい」ではなく「健康な生活を確保しなさい」と
明記されています。

臨床医は医師法の精神を意外と知らずに仕事をしています。


ふたつ。
医療機器の開発にかかわることも重要です。
現場の医師の知識・知恵は、時折イノベーションを産み出します。
メーカーの開発部と共同で知恵を凝縮すれば、
さらに高性能で、低侵襲な医療機器を作り出せる可能性があります。
所属を超えて、クリエイティブな医師がWeb上で繋がれば・・
産業的価値の高い、医療水準の向上に寄与する
素晴らしい活動が可能です。


普段の臨床活動からさほど飛び出ない範囲の活動で可能です。
医師が社会貢献できる領域はまだあるようです。


国際出願

2006年04月20日 | Weblog
私の大学でのもう一つの研究テーマが網膜へのドラッグデリバリーシステムの開発です。

新しいコンセプトで素材ができたので、去年の夏に大学から特許出願しました。
この度、その案件を国際出願(すごくお金がかかります)する事になりました。大学には全ての特許案件に対応する予算が無いため、JSTの支援審査に合格した案件のみ、国際出願する事になっています。つまり、JSTの審査に合格すれば国からの支援(税金)で国際出願が可能です。事業化されれば国に返金する仕組みです。


先月末、無事に審査に合格しました。

TLO団体、大学の知的財産部門の担当者と今後の戦略を話し合います。折角の機会ですから、大きく育てたいです。

公開特許公報

2005年12月02日 | Weblog
私が手続きを依頼してます特許事務所から公開特許公報掲載のお知らせが届きました。
特許出願というのは、出願から18ヶ月以上経てば、審査の如何に関わらず電子図書館で公開されます。
ですから、特許庁の電子図書館のページで「武蔵国弘」あるいは「眼内観察用内視鏡」のキーワードで検索すれば今回の出願案件がヒットします。

私としては、もちろん今回のアイデアが特許性ありと認可され、ライセンシングを希望する企業が現れ、商品化してくれるとうれしいのですが、現実はそんな簡単ではありません。地道な知財営業、学会発表を繰り返して初めて具現化します。大企業ならチームとしてその流れを生み出すことができますが、一個人では大変です。しかも我々医師は、医業が本業なものですから、なおさら大変です。

大学として所有する特許ならば、様々な支援スキームがあります。それを利用する事を出願当時の私は「良し」としなかったので、この特許出願は個人所有です。そんなに無理してアホやなあ、というのが率直な今の気持ちです。

ただ、自分で明細書を書く、という貴重な経験をする事ができました。
経験は財産です。一生モノです。

このアイデアのコンセプトを書き込んでおきます。電子図書館でごらんになった時の参考にしてください。

1:眼科用の内視鏡は全て軟性鏡。硬生鏡にした方が圧倒的に画質は良くなるがサイズの問題がある、
2:サイズの問題は主にレンズ径ではなく、レンズの背後に配列されるCCDとアンプにある。
3:レンズ→CCD→アダプターへ至る構造を工夫すればサイズの問題は解決できる。
4:光軸を2本にする事で双眼視を可能にし、眼前にディスプレーさせれば立体視も可能。
5:硝子体内だけでなく、小切開により網膜下へのアプローチも可能。


電子図書館って便利ですが、そこで埋もれてしまう知財は多いのでしょう。
早速、おたくの知財を雑誌に掲載して広告宣伝してあげますよ。という掲載依頼が来ました。


知財営業をするゆとりも無く、しばらくは市場の動向を見守って類似品をチェックします。


医者の頭の中にはいろんなアイデアが埋もれてると思います。それをくみ上げれば医療界の発展、医療の質の底上げにつながると思うのです。

医療界のMOTは私のライフワークですね。

プロパテントかアンチパテントか

2005年11月19日 | Weblog
久しぶりの更新です。

世間ではプロパテントの風潮。自分の権利を守れ、守れの大合唱。
企業の、開発へのモチベーションを保護するのは良くわかります。

この風潮、いずれアンチパテントに傾く事はないだろうか。と考えてみました。

医療に関する特許制度の整備が、実業界からの要請を受けて進んでいますが、現場の医師が意見を言う機会は皆無です。医師会の一部の先生方は頑張っておられますが。どうも温度差を感じます。私は大学院生ですから、最新の情報が入りやすい環境だとは思いますが、日々の診療の忙しさのためか、特許制度の改革のことが話題にのぼる事はありません。


開業医の先生方が、新技術・新制度に反対する気持ちは分かります。私の観点は少し違うようですが、プロパテントに一石投じておられます。

現在の私の意見をここに留めておきます。何年後かに振り返ってみたいです。

『ライフサイエンスに関するノウハウは共有すべき。特別に新規性のあるノウハウは著作物、DVD、ソフトウェアの著作権として保護すべし。』

手術方法を盗んだ、と医者が医者を訴えるようなアメリカは寂しい国です。(実話)



レントゲン写真は誰のもの

2005年10月29日 | Weblog
昨日、医学領域の知的財産を専門にされている教授にお会いしたので、普段の疑問点を聞いてみました。


レントゲン写真の版権は誰のものなのか?
患者さん?病院?主治医?

みなさんはどう思いますか?肖像権と同じように考えれは患者さんのものですよね。と、すると医学雑誌の病理標本についているコメントは、『○○先生のご好意による提供』ではなく、『○山×子の承諾による』『△△病院出典』にすべきだ、という論調になります。
○山×子の承諾、と述べた瞬間に個人名が特定されるのですが。。


現在の流れは『レントゲン写真は誰のものでも無い』が正解のようです。個人が特定できない状況では、創造性が全く無いので権利となりえない、という法的根拠です。(異論はあるでしょうが)


しかし、画像や病理標本写真に一文でもコメントを付けるとガラリと変わります。つまり論文やポスターになった瞬間、創造性を伴うと判断され著者に著作権が生じます。


今日の結論。
オンライン上で症例検討会を行うには、
1:個人が特定できないプレゼン方法
2:関係医師のみがアクセスする環境
3:作者が著作権を当該サイトに承継する(あるいは共有する)

場合、可能になるでしょう。
そんな日は近いと考えてます。

グラスピアスの安全性

2005年10月16日 | Weblog
販売する立場からすると、『安全性』という基準は開発者の認識よりもはるかに厳しいようです。

以前の日記にもその点を触れた事があります。

さて、眼鏡のレンズ部分にピアスを付けた『グラスピアス』でも同じような言葉をメーカーサイドから聞きました。
眼鏡は一応は『医療補助器具』として医者の処方が必要なんですね。眼鏡メーカーとしては、医療器具でもある眼鏡の強度が弱くなる(かもしれない)加工は受け入れにくい、というコメントでした。
なるほど。一理あります。『しかし。。』、新進気鋭の眼鏡専門店の店長である彼は続けました。

その言葉は私を勇気づけ、今後の方針を確信しました。

まだ言えませんがそのうちに。
頑張りますよ。

MOTとは地道などぶ板営業なんですね。医療の現場にいて、医業をしていると営業努力をどうも軽く見がちです。
そこに気づけば医療のMOTも前進するかも、と考えてます。


知的財産検定

2005年09月25日 | Weblog
知的財産検定の申し込みをしました。

まだまだ一般的には認知度の低い検定だと思います。前回が記念すべき第1回。急用で受験できませんでしたが、某企業の知財部の友人から資料をもらって準備はしていました。

私が受験するのは2級です。実際に出願の流れを何度か経験しているので、さほど抵抗なく勉強できました。

日経BP社発行の『MOTを極める』には実際の試験問題が数問載っていました。受験者の正答率はだいたい80%のようです。その中で正答率が50%の問題が1問だけあり、解いてみると、私も不正解。

解説を見てびっくり。問題文がおかしいのですね。理解しにくい。

受験テクを身につけないといかんのかしら、と悲しくなりました。


まあ気楽に受けて来ますよ。

MOT概論6(事業性評価)

2005年09月07日 | Weblog
ゼミの班長に選ばれ発表する事になりました。

テーマは『ヒト羊膜コラーゲンシートを用いた角膜上皮細胞シート移植』の事業性評価です。聴講生の中で私の専門が眼科だから私が選ばれたのか、眼科医の私がいるからこのテーマになったのか、どちらかは分かりません。


簡単にまとめますと。
市場性:海外では角膜は供給過多。患者数は安定的に存在するが、致死的な疾患ではない。角膜片を単価50万円としても国内の市場規模は多く見積もって年間30億円。これに対し、心臓ペースメーカ-473億円(国内2002)。人工関節678億円(国内2002)。
技術優位性:従来の治療法で治せない疾患が治療可能、よって技術優位性は高い。
競合性:他社の角膜上皮細胞シート状移植に対抗できるか不明。従来の角膜移植も安定した成績を残している。


従来の角膜移植術にとって代わるものではない。事業化はしにくいが、大学の専門性を高める治療法でしょう。という結論を出しました。(実際には事業化されています)

早稲田大学のMOT講座の助教授が来られていました。医療のMOTは独特だね、とのコメント。(その一言のみ!)
有益な新しい治療法をどうやって普及させるのか。。企業は慈善事業でもないし。。うーむ。。バイオベンチャーは大変です。今回のゼミの発表をする事で納得しました。数字(市場規模)は正直です。

いい治療法がどうやって普及していくのか、その技術の評価、事業性の評価。それを踏まえた普及策。

医療界は法律の規制が多いので、解決すべき点が多く時間もかかります。普及には地道な学会活動が一番近道なのかもしれません。そう感じました。

どうでしょう?