ASAKA通信

ノンジャンル。2006年6月6日スタート。

「記憶」20240416

2024-04-16 | Weblog

 

 


 記憶の総体は生き物であって、
 絶えず個々の成分の比重を変えている。
 現在に生きることが過去の重みを変える。

        ──中井久夫『徴候・記憶・外傷』115

 

忘れたくなくても忘れることがある
忘れたくても忘れることができないことがある

内なる〝記憶係り〟のいとなみは意識の希望を斟酌しない

ある記憶の一角をきれいに消去できればどうなるのか
この仮構された空白の展開をたしかめるすべはない

記憶係りは絶えまなく経験を編集しつづけている
ときどき編みながら編み直すかのように
召喚を命じるように突然こみ上げることもある

一つだけ明らかなことがある

編集作業に直接手を入れて操作することはできない
ただ新しい経験のアイテムが書き加わえられるとき
記憶の全体は意味と配列をみずから変化させていく

 

 

 

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「生の意志、展開本質」20240415(20231017)

2024-04-15 | Weblog

 

 

「イヤな感じする」

存在がさらわれていく
浮き上がりもって行かれる

収束点へ向かうように
有無をいわせず引きずりこまれていく

求心性の獰猛なちからが支配している
身を委ねると終わってしまう

「ちがう」

この感覚がからだに走るとき
そうではないちからが点滅している

この感覚は見過ごされることがある
求心力が強く圧倒的であるほどかき消されていく
 
この圏域は一つの中心によって構成されている
絶対化した価値コードがそこに居座っている

これが世界、オマエの姿、この世の掟

新たな書き込みと展開を禁じ、すべてを吸い寄せ
有無を云わせず存在のかたちを教唆し確定していく

一つの中心に向かって収束させる獰猛な重力圏

圧倒的な重力の構成は善意でも悪意でもありうる
つまり、その本質は絶対化した価値において共通する

「ふざけるな」

この感覚が走るときはじめて、俺たちはみずからの展開本質
根源的な生の意志、この圏域の外へ向かう遠心性のちからに出会っている

 

 

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「真理と芸術」20240414

2024-04-14 | Weblog

 

 


 真理は醜い。私たちが芸術をもっているのは、
 私たちが真理で台なしにならないためである。
         
       ──ニーチェ『権力への意志』原佑訳

      *

最終解、究極解、理想解、絶対解、超越解
真理という名を冠された虚数項の群れ
ここから逆算されて記述される存在規定、世界記述

真理へまっすぐに向かう知のルート
その意味本質は以下のとおり──

「行き止まり」

真理と名付けられたガラスの天井
すなわち、思考の消失点としての真理

われわれは明らかにしておく必要がある
世界記述の〝真理=結審〟を手にしたい心の傾向について

あらゆる思考に先行するように立てられる記述命題群
知の頂きに立って、したり顔で真理を語ることの意味

すなわち、そこに隠されたほんとうの目的
あらゆる思考の制圧・支配・制御という動機について

けっして知の先行を許さないすぐれた芸術の体験
この全人的世界経験の原理が真理(知)の閉域性、抑圧性を教える

生の全域でありえないものが全域にわたるものとして真理を自称する
知におけるこの倒錯と暴力性をよく教える芸術という経験がある

それゆえ真理は芸術に照らして適切な場所を与えられなければならない
さらに同時に、真理を僭称する芸術は芸術の本質から脱落するともいえる

 

 

 

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「少年のコード」20240413

2024-04-13 | Weblog

 

 

秋、季節の匂いに鼻がクンクンする

山猿のように深い森をめぐり、野いちごを摘まむ
木に登り、アケビを喰らって種を吐き出す

河原に出て清流に向かって石を投げる
水面を切ってしぶきがはじける
光は乱反射して風景に飛び散り
翔け上がり、しばりはほどかれていく

青い輝きのなかで、空よ
なぜ白い雲を浮かべているんだ

はるか彼方、心は青空の奥の奥へ向かう

 

 

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「冤罪と正義の倫理」20240412

2024-04-12 | Weblog

 

 

 

知らないことを罪(恥)の意識で満たしてはならない
知らないことを希望のことばでコドモを迎える
少しだけ多く知をもったオトナの最低限の務めがある。

それがどんなに真摯な主張であっても道を誤ることがある
とりわけ知が倫理的要請や義務からはじまれば無知は〝冤罪〟に沈む

冤罪を負ったコドモは罪を軽くするために差別に走る
教室だけではない、社会(拡大教室)で頻発していることである

(歴史の惨劇の源に冤罪を晴らそうとする盲目的衝動がある)

はじめに絶対の理想、理念を立てた場所からはじめるとそうなる
この場所で真の意味での「多様性」が生き延びることはできない
理想、理念をともにする以外の人間は圏外に出るしかない

啓示宗教が説いた「原罪」に満ちた干からびた世界図式に似ている
(神-教会-司祭-信者-異端という絶対的な知の階梯)
世直しに走った正義の人、青年・賢治のあやうさもそこにあったのだと思う

ほんとうに問うべきは無知ではない
知を獲得したうえで知をどのように用いるのか
多くの罪を犯してきた「知」のあり方(用法)こそ問うべきだろう

 

 

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「Love」20240412

2024-04-12 | 参照

                                                              For All We Know (1990 Remix) (youtube.com)

 

When the satisfaction or the security of another person
becomes as significant to one as one's own satisfaction or security, 
then the state of love exists.

Under no other circumstances is a state of love present, 
regardless of the popular usage of the term.

                    ──Harry Stack Sullivan

 

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「セッション」 20240411 

2024-04-11 | Weblog

 

 

奏でられることと聴かれること
ふたつがひとつであるかぎり
歌は詠まれ、新たな情と響きが生まれ続ける

聴くこと奏でることのたしかさが途絶え
ふたつのこととしてほどかれるとき
ひとつの世界が閉じられていく

 

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「転位する波形」20240410 20230307

2024-04-10 | Weblog

 

 

2番目のシグナルは教唆を憎んだ

伝統のプログラムに騎乗して
世界は壮大な運動会に沸き立っていた

はたして一人が考えるのか
一人を放棄したみんなが考えるのか

マイムマイムの高揚とスペクタクルは
日常をくまなく覆っていた

謹厳な威光に染まった拡大教室
教唆するニンゲンたちのことばの群れ

善意悪意問わず見おろす視線がからみつく
からんで身動きがとれなくなる

すべてはプログラムされた内側の出来事でしかない

ゲームから離脱しよう
からだは受け容れることを拒否した

愛されることが苦しさに転移する
どうしたらいいのかわからない

それでいい、そのままに
それを望んだのだからそうしている

抵抗は無意識深く潜行して
どこかわからない陣地へ向かった

 

 

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「She said」 20240409

2024-04-09 | Weblog

 

 

マジメな向上心をうたがうわけじゃないよ
おとといおいでなんていわないわ
冷笑を浴びせて楽しむなんてシケた趣味はないの

ただね、余計なお世話ってわかってるけどさ
そこんところは完全に修正したほうがいいな
放置したままじゃよろしくないよ、おバカさん

知的、そんなことばに舞い上がる田吾作くん
知的に上昇したつもりになったらおしまいだよ
薄っぺらとか濃厚とか、たわ言はやめなさい

ほんとうにモノを考えるって比較級じゃないよ
どんだけ周りがおバカさんだらけでも加点はないよ
学校のペーパーテストじゃないんだからね
努力賞も、敢闘賞も、殊勲賞も、一等賞もありません

「真理は醜い」(ニーチェ)ってどんな意味かわかる?
心にたぎる血を抜き取るもの、それが真理(行き止まり)、
ほんとはさ、真理も一つの通過点でしかない広大な展開域があるわけ

できることは一つだけ

一番もビリも、知者も愚者も、あれもこれも、すべて混ぜ合わる
光も影も、毒も薬も、正義も悪も、真も偽も、なんでもかんでも
魔女がするように丸ごと投げ入れた煮込み鍋を用意する

つまり世界鍋を用意して、そこに思考を投げ込んでグツグツ煮詰めていく
一切のこだわりを捨てて何一つ材料の取りこぼしのないようにね
だれかがあつらえたのではない自前の鍋だよ

それでどうするのかって?

目的はシンプルなことだよ、生を励ます美(エロス)を抽出すること
わけがわからなくても一度試してみて!ウインクを贈ります

 

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「理想理念、倫理、心情論理」 20230314

2024-04-08 | 参照

 

 

 


──竹田青嗣「批評のテーブルと事そのもの」 
  (2011年日本文学協会シンポジウム)


自分の「理想理念」について、絶対的な全知のないことを自覚し、
独断的な態度をとらず、「ほんとう」を求めることを承認しあうテーブルの上で、
自分の理念の普遍性を互いに検証しあおうとする態度と努力。
それがヘーゲルの「良心」の概念です。

カントの「道徳」は、近代的な善にとってきわめて重要な一歩だったが、
それが「良心」にまで進むことができなければ、
理想理念の深刻な対立という問題を決して克服できない。
これがヘーゲルのカント批判です。

        *

ポストモダン思想は、マルクス主義に代わる本質的な
批判思想のオルタナティヴとしての役割を果たすべく自分を展開させました。
しかしそれは価値相対主義という自己の論理的限界を超えることができず、
何らかの概念を「超越項」としておき、それを「義の要求」として立てる
「倫理的ポストモダン思想」となってしまった。

先にも触れましたが、それを象徴するのが
「了解不可能な他者」「無償の贈与」といったキーワードです。
この理念はいまやエマニュエル・レヴィナスの思想に大きく依拠しています。

レヴィナスの「他者の形而上学」というキーワードは、
貧しきもの、弱きもの、抑圧されたものに対する、
理由なき倫理的態度の要請、ということを意味します。
そしてそのことと、現にある社会への異和と否定という
ポストモダン的な理念とが結びついています。

社会思想が、「現実の矛盾を克服するための条件」を確定しようとする道につかず、
無償の倫理的要請へゆきつくのは、社会思想としての敗北なのです。

この倫理的要請の訴えは、どれほど思想的に抽象化され粉飾されていても、
本質的には「隣人を愛せよ」という命法を人間の内面へ呼びかける、
宗教的な倫理要請の復活にすぎないことは明らかだからです。

 

 

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「展開の地平」20240407(20240117)

2024-04-07 | Weblog

                    Halley Came to Jackson - Mary Chapin Carpenter cover (youtube.com)

 


 最初におさえておくべきことは、
 いわゆる〝外界〟におけるいかなる物体も出来事も差異も、
 それらに応じて変化するだけの柔軟性をそなえた
 ネットワークの中に取り込まれさえすれば、
 情報の源(ソース)になりうる、ということだ。

    ──G・ベイトソン『精神と自然』(佐藤良明2022年訳)

               *

倫理、義務、指令のコマンドがアクセスできない領域がある

命令や当為があらかじめ指定するルートには限界がある
指定ルートを先行的に強行すれば見失われていく

生命は本質的に指図されることを望まない

どんなに美しい理想、理念、ロマンであっても
どんなに親しい存在の指令であってもそれは変わらない

生命は外から訪れる制御のちからには断固抵抗し、歯むかう
おのれの納得を経由しない強制力にはけっして承認を与えない

「われ欲す」

この根源的な作動に敬意が示されるときはじめて
生命はみずからに備わる柔軟性の行使へ向かい
外部の声を新たな変化の糧として利用しはじめる

敬意を示し合って生きる

この相互性において開かれる展開の地平があって
この地平を共にする存在を俺たちは〝友〟と呼びあっている

 

 

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「ことば」20240406

2024-04-06 | Weblog

                                                                    Nitta Masahiro - Tsugaru Jongara-Bushi (youtube.com)

 

情動がしたためることばは文字にはできない
シニフィアンとシニフィエの連結は解体している

そうであればどんなによかったことか
そうでなければどんなによかったことか

ひとつのことをふたつのこととして語ることはできない

ことばができることが一つだけある
かたちとして明示することで情動を呼び覚まし
そんなことではない、それとはまったくちがう
そうではありえないことを示して教えてくれる

 

 

 

 

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「サロン嫌悪@箱崎三丁目福山荘」20240406

2024-04-06 | Weblog

 

 

サロン嫌悪にはたしかな理由があった

居心地のよさに溺れることの居心地の悪さ
そんなうごめきがはっきりと告げていた

仲間のスケール、境界線確定、閉域性
疑われざる資格審査、否定項の共有

自覚成分が圧倒的に抜けたサロン文法
動かない善と悪、美と醜のライン設定
それって差別のプロトタイプだぜ

この直観だけは疑わなかった

もちろんおのれの正当性の根拠、アリバイには使えない
貧乏くさいことを云って終わりではない
それじゃあトンマの上塗り、同類になってしまう

だからなんなんだ?
そう。それが引き受けるべき問いの一つになった

 

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「連結装置」20240405(20240316)

2024-04-05 | Weblog

 

 

「つばさを生やしてみる?」
「はい」

      * 

「第四次延長」(宮沢賢治)の位相において時空の関所は破られ
銀河群の全域、全時間、全方位を連結する窓が開かれる

 暗きより暗き道にぞ入りぬべき はるかに照らせ山の端の月
                  (和泉式部『拾遺』)

平安朝、跡かたなく砕け散って消えた千年はるかかなた
一人のおんなの歌が山の端の月のように「いまここ」を照らす

 めぐり逢ひて見しやそれとも分かぬ間に 雲隠れにし夜半の月影 
                                  (紫式部(『新古今集』)

出会いの時、別れの時、すべての時に糸を通すように
連結の翼は通時的にも共時的にも自在に翔けてゆく

 ふるさとは語ることなし (坂口安吾)

外にさがしても何もない
吹きさらしの風だけがある

連結の翼は第四次延長に開かれた窓から羽ばたき
あの歌、この歌、すべての歌を結んだ先に、未生の歌を紡ぎ出す

 

 

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「セッションへの誘い」20240405

2024-04-05 | Weblog

                                                                                    Miles Davis - Burn (youtube.com)

 

人格、思想は問わない
アイデアを出し合うんだ

マイルス・デイビスはそう云った

真理に呪われるまえに
真理が台無しにするまえに

正義が道を塞ぐまえに
正義が占拠するまえに

さあ、はじめようか

 

 

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