──村澤真保呂・村澤和多里『中井久夫との対話』
中井の生命観を比喩的に述べるなら、
「さまざまなリズムをもつ旋律が絡みあいながら奏でる音楽」として示すことができる。
「人間の心身は、おそらくチャールズ河よりもさらに複雑であろう。
外からも内からもリズムや乱流が発生し合う」と述べている。
そして人間の場合「心理的リズムにこれ(生理的リズム)が加わり、
さらに社会的リズムが巨大な力を行使する」ために複雑さが加わるという。
船さえ沈めてしまような合成波……
発熱や体調の不良などは、システムの不調のサインであるとともに、
システムを制御する内的装置が正常に作動した証拠でもある。
「回復過程の中には加速できない過程、加速してはならない過程がある」
……そのような複合的なプロセスにおいては
「進行速度は、いちばん遅い素過程によって決まる」と考えてよい。
これを中井は「律速過程」という。