ロンドン投資銀行日記

金融街シティでの仕事、ロンドンの生活、日々の雑感など

アイデンティティ

2004-07-27 07:38:56 | Weblog
海外にいると自分のアイデンティティについていつも考えさせられる。自分とは何者かということであるが、これは日本にいる時には考える必要の無いことである。そもそもほぼ全ての日本人が祖先を数百年さかのぼっても100%純血日本人で、日本語が第一言語で、宗教的にもほぼ同じで、かつ文化的にも統一的な日本では、アイデンティティという言葉すら存在してこなかった。

一方、移民の国アメリカなどに行くとアイデンティティを常に模索している人々で溢れている。先祖は誰かという問いに対して、ヨーロッパ人としか答えられない人や、そもそも三代前の先祖がどこで何をしていたのか全くわからない人などが多くいる。移民の一世・二世はアメリカに溶け込もうと必死である。あれほどことあるごとに国旗を掲揚し、国家を歌う国も珍しいぐらいだが、出身・ルーツ・文化・宗教・言語がばらばらな人々の集まる国であるからこそ、そうして頻繁に国として一体感を皆で感じないと国としてのまとまりを得るのが難しいのかなとも思う。

ヨーロッパではそれぞれの国家・国民としてある程度確立されたものが今日では存在するので、アメリカほど激しくはないが、それでも異なる文化に触れる機会が日本よりは圧倒的に多い。またアメリカに移り住む多くの人々がそのままアメリカに一生住もうと思って移り住むのに比べ、ヨーロッパではいつでも好きなときに母国に戻れるという気軽さも手伝って、アメリカほどアイデンティティに悩む人々は少ないが、それでもヨーロッパ人のハーフやクオーターといった人々ももちろん多いし、異なる国の人々と生活・仕事する機会が多いのは同じである。

自分のアイデンティティが常に変化し続け、常に自分の価値観や基盤となる信念が変化するというのは、周りにいる人々も画一的な日本にいると感じないが、海外に来ると多かれ少なかれ誰もが感じることだと思う。少しづつ典型的な日本人としての自分が違う価値観に触れる機会が出てきて、いやがおうにも考えざるを得なくなる。

以前1年半ほど昼夜を共にして一緒に働いていたアメリカ人が帰国する直前に「日本は今や僕のアイデンティティの一部になったよ。今後、日本の話が出たり、日本のことについて見聞きする機会がある度に、日本は僕が住んだことのある国でYasutoや他の日本の友達のことをその度に思い出すことになると思う」と言っていたことを思い出す。僕にとっても、以前住んだアメリカに加え、ロンドンも今後おそらく同じように自分のアイデンティティの一部となって行くんだろうなと思う。

金融街シティの仕事

2004-07-18 14:27:34 | Weblog
ロンドンの金融街シティは、ロンドンの中心からやや東にあります。ウォール街と違って高層ビルが立ち並ぶという感じではなく、やや低めだけど斬新なデザインのビルが立ち並んでいるのが特徴的。日系企業の駐在員ではなく外資金融のロンドンオフィスで働くと、まさに外資の本拠地で働いているという雰囲気満点です。

今のロンドンでのオフィスは一フロア100人ぐらいいる中に日本人は私一人。ロンドンオフィスに5000人以上社員がいるところ、日本人は全部でも5・6人。周りのチームメンバーの国籍は、ドイツ、フランス、スウェーデン、スペイン、デンマーク、オーストラリア、南アフリカ、ギリシャなどなど。英語のネイティブは少なく、イギリス人はシティの中でもおそらく3割ぐらいで、残りの大半は大陸ヨーロッパ人。英語だけでなくフランス語、ドイツ語など各国言語がオフィスで飛び交っているのがウォール街以上に非常に国際的な感じを醸し出しています。

若きインベストメントバンカー(投資銀行家)としてこの業界に入ってくる新入社員の質にも目を見張るものがあります。イギリスからは主にオックスフォード、ケンブリッジ、LSE、インペリアルカレッジから数人づつ、その他は欧州各国のトップスクールからほんと一人二人づつといった採用をします。23歳でオックスブリッジで博士号を取得していたり、会計士・弁護士から第二新卒として入ってきたりなどなど。日本ではまだまだ知られていない職業ですが、イギリスでの現代版階級社会の中で上層に位置する憧れのインベストメントバンカーにならんとする学生は後を絶ちません。

買収ファンドによるLBO、米欧をまたぐ大型クロスボーダー案件、イスラエル企業のロンドン上場、クエート政府保有の欧州企業買収、東欧の国営企業の民営化、中国企業による買収案件。ほんの一例ですが、今のロンドンでの仕事です。M&Aの活発さ、活動のグローバルさ、市場の洗練度合いは日本と大きく違います。インベストメントバンカーの数、関連する弁護士・会計士の数も日本とは比べ物にならない。うちの会社のロンドンオフィスの投資銀行本部だけでインベストメントバンカーはおそらく400~500人。これは日本の主要な外資証券の投資銀行部のインベストメントバンカーを全部足したぐらいに匹敵します。うちのロンドンオフィスでは、欧州に加え、主要金融マーケットの無いいわゆるRoW(Rest of the World)地域も担当しており、ロシア、中東、アフリカ、インド、アジアなどの案件にも関わるため非常にグローバルな投資銀行業務が経験できます。

この業界に足を踏み入れたときから憧れた金融の本場での仕事。日本人として、あるいは日本語の価値は実質ゼロの中、どこまでできるかのチャレンジですが、おそらくこれ以上ないほど仕事を満喫しています。やっている仕事は同じなので日本人としてバリューは無くとも、自分にバリューは無いわけではないので。久しぶりに新鮮な気分でアドレナリンがビシバシ出る中全力投球しています。

ブロードバンド

2004-07-17 13:19:33 | Weblog
みなさん元気にやってますか~!

何人からかホームページで定期的にロンドン報告をしてほしいとのリクエストがあったのですが、ようやくブロードバンドが家で使えるようになりましたので、気まぐれベースで時間があるときに雑感を書いておこうと思います。

それにしてもイギリスのブロードバンド事情は最悪です。早くて1-2M。しかも高い。