ピエロの綱渡り

お勧めできない綱渡り人生

パンテオン脇にて

2021-01-10 | よしなしごと -随想
時が経ちすぎて、何から書いたものかと思うが、とりたてて書くこともないのかもしれない。 一区切りついたときに書こうと思っていることはある。けれど、いつまでたっても区切りがつかない。 このままでも仕方ないので、メモとしてだけでも、端的に書いておく。もう、ちょうど四年前になる。 ---------------------------------------------------- 帰国の準備に . . . 本文を読む

馬に人参、おじさんにマカロン

2016-02-07 | よしなしごと -随想
 授業に行くとぐったり疲れてその後に支障が出るのは、体力の無い自分には常のことだが、今回は思った以上に疲労し、そうするとすぐ喉に来るので、油断すると風邪をひきそうである。  そんな体調ではあるし、そもそも優先すべきはいいかげん終わらせないといけない論文なので、コロック(討論会または学会)に行く気もあまり湧かなかったが、めったに足を踏み入れないパリ16区、何かなかったかと思いを巡らすと、マカロン . . . 本文を読む

野坂昭如を悼む

2015-12-10 | 文学
 先日の水木しげる氏に続いて、ついに野坂昭如氏までが。  自分の好きな最後の存命の作家だった。  破天荒なマルチタレントの草分けだが、小説家としては古典的教養に裏打ちされた伝統的なスタイル、それが読むほどに心地よく入り込める、独特の息の長いリズムに支えられていた。ときに才能の少なさを嘆きながら、これほど才能に溢れた人も珍しかったが、氏の多彩な能力はつまるところ氏の文才に集約される、典型的なことば . . . 本文を読む

自由の綱渡り

2015-01-17 | よしなしごと -随想
 帯状疱疹からは回復したが、慢性的に疲れていて、今は大きな口内炎に上唇の裏を支配され、左眼に痛みがあり、真っ赤に充血している。ノドは隙あらば痛くなる。鏡の、無精髭だらけの疲れた顔を見ると、まったく中年の行路病者の態で、自分で驚く。  始終、憂鬱なモノトーンで、我ながらよく酒に逃げないものと思うが、それも体の弱いせいで、多くを飲むことも毎日飲み続けることも、すぐ体を壊すためにできない。頑丈な体なら . . . 本文を読む

共和国の行進

2015-01-12 | よしなしごと -随想
   たぶん、ほぼ3年ぶりくらいで口にする納豆。「いちばん好きな食べ物は」と訊かれれば、躊躇なく「納豆」を挙げるくらい好物だが、どういうわけか、思ったほどの感動は無し。大豆が中国産のせいかもしれないが、ちゃんと納豆の味で、旨いと云えば旨い。腸チフス後、半年ぶりくらいでマニラで食べた納豆には、ほとんど涙がこぼれんほどだったのに。  そういえば、あれほど好きだったカレーは、今でも好きだし旨いと思うが、 . . . 本文を読む

削り節

2015-01-08 | よしなしごと -随想
 某新聞社の面接試験で「自分を長距離ランナー型と短距離ランナー型のどちらと思うか」という質問を受けたことがある。まったく愚問で、前者が求められているのは明らか、私も当然そう答えたわけだが、嘘っぱちである。瞬発力はそれなりにあるつもりでも、持久力はまったく無い、中学高校の頃、運動では長距離走がいちばん苦痛だった。  ところが社会生活で求められるのはほぼ長距離走者型のみ、短距離走者はスポーツ以外では歓 . . . 本文を読む

味と思考

2015-01-02 | 文学
 経済学者トマ・ピケティ氏がレジオン・ドヌール勲章を拒否したらしい。政治的な意味もあるだろうが、こういう骨格のある反骨心は、フランスのユマニスムの一つのよき伝統と思う。その頂点は、ノーベル賞を拒否したサルトルだろう(この一事だけでも、サルトルは尊敬に値すると思う)。  日本の場合、反骨心の多くは、若気の至りかひと時の直感で終わってしまう。それだけ集団や組織の力が強く、それに絡めとられずには生きて . . . 本文を読む

ダゲール通り

2015-01-01 | 文学
 パリ14区、ダゲール通りは学校の行き帰りに自転車で必ず通りかかるが、用事はないので、もう何年も入らない。  先日、学校でトイレに行きそびれたので、帰りに公衆便所に寄ろうとしたら、初めは数人待ちでパス、次のは故障中。その次がなかなか見つからなかったが、ようやくダゲール通りの脇にあり、一息。  せっかく自転車を降りたので、久しぶりにダゲール通りをのぞいてみようとぶらぶら歩いてみたが、店はいろい . . . 本文を読む

タコ日記その他

2014-06-07 | よしなしごと -随想
 訪仏した知人ご一行を5区の一つ星レストラン・イティネレール(itinéraire)にご案内。 ・旨かったもの: 前菜の手長エビ、野菜全般、デザートのサクランボ ・旨くなかったもの: メインのほろほろ鳥、牛ステーキ、サクランボ以外のデザート全般  鳥はパサパサで味が薄く、牛肉は有無を言わさずレアにされ、色は美しいが冷たく、旨味が無い。  デザートの「チョコレートのサラダ」は . . . 本文を読む

イカ日記

2013-05-20 | よしなしごと -随想
 市場の魚屋に悪くなさそうなコウイカがあり、見ているとイカのねっとりした舌触りが思い起こされ、食べたくなってきたので、1.3キロと大きいのがやや気になったが入手。イカなど捌くのは初めてで、いろいろ見ながらやったが、まず姿がヤリイカなどのように可憐ではなく、ふてぶてしい赤茶色の巨体と大きな目玉(写真ほど凶悪なツラ構えではなかったが)、あまり触りたくなるような外観ではない、おそるおそる持ってみると、ド . . . 本文を読む

夢の中で

2013-03-25 | よしなしごと -随想
 何かの誤解で大きな洞窟のような薄暗い場所に入れられ、囚人の扱いを受けている。洞窟の天井からは長いロープがぶらさがって、そこに囚人をくくりつけて振り子のように振り回される仕掛けがある。仕事をやらされるようなのだが、それが大鍋一杯に盛られた手首をグツグツ煮て、内容物をこそぎだしてキレイにするようなことらしい。そんなことをやらされてはたまらないから、「自分は罪を犯したような扱いを受けているが、無実であ . . . 本文を読む

バスの中で

2013-03-23 | よしなしごと -随想
1. ワイン市へ買い出しに行くバスの途中、"Victor Considerant"というバス停を通る。人の名前らしいが、「考える勝者」の意に思える。すべきこともせず、昼日中から酒を買いに行く自分などは、さしづめ「考えない敗者」だなと思う。 しかし、昔からの疑問だが勝者とか敗者とは何のことだろう。アメリカ人などはすぐ成功がどうとか云うようだが、かぶれた日本人がある人のことを「ルーザーだね」と云い出し . . . 本文を読む

愛しちゃったのよ

2013-02-20 | よしなしごと -随想
 愛する相手から愛されないのはつらい、なんてのは子供でも知っているし、かつて愛してくれた相手が今では愛してくれない喪失感や虚脱感も、もう少し成長したものなら大方知っている(知らない幸せ者もいるかもしれない)。つらいから片思いはしたくないのが人情で、報われぬ恋や騎士道の恋、草葉の陰から見守っておりますなどは、昔は賞賛されたかもしれないが、今ではストーカー呼ばわりされるのが落ちだろう。相思相愛の実感あ . . . 本文を読む

牡蠣大当たり

2013-02-04 | よしなしごと -随想
 日本から世話になった人が来て、牡蠣が食べたいというので、ブルターニュの養殖業者が産地直送の牡蠣を出す直営店へ行ってみた。なかなか旨く、ふだん口にしない珍味をたらふく堪能した。  二日めの午後までは元気だったが、夜になって何だかおかしくなりだし、明け方にひどく腹を下して、その後フラフラで寝込んだ。噂のノロウイルスに、定評どおりの牡蠣で当たり。  吐きそうで吐かず、熱が出そうで出ないので、ノロウイル . . . 本文を読む

温泉日記

2012-11-07 | よしなしごと -随想
ブダペストに寄った主目的は温泉に入ることで、いくつかある中で行ったのは、オスマントルコ時代の雰囲気を残すルダシュ温泉、中のひとつは日本の風呂ほどに熱い湯で、嬉しくなって出たり入ったりを繰り返し、すっかり体に沁みわたった。 温度の違う浴槽各種にサウナ、ミスト、マッサージに休憩室など。 曜日ごとに男女をわけており、この日は男のみ。 鍵付の個室で服を脱ぎ、入り口で渡された小さな前掛けをするのだが、後 . . . 本文を読む