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ごろごろローリング

形式と美

2012-10-04 | まいにち

とにかく色色なものが入ってき過ぎる。混乱する…ただ混乱する。
わたしは影響されすぎる。たぶんわたしはプレーン過ぎるんだ。悪い意味で。

小麦粉みたいな従順さと怠惰さで―何て言ったらいいんだろう、とにかく私は影響されすぎる。そもそもあんまりにも多くが入ってきすぎる。際限がない。バランスが悪い。境界がない。わたしとすべての物ものの間に境界が存在しない…私はすべてを受け入れることができるし、同時にどこにも存在しない―つまりあらゆるものの存在ということだし、さらにその場合あらゆるものは。存在しない。

いっぺんに来る。
そして、もちろん間に合わず混乱する。世界に追い付けず、途方に暮れる間もなく世界は来つづける、私は分裂して、混乱する。あまりにも混乱しきってしまうために、わたしは静寂な混沌のなかに置かれる。
わたしは…わかってもらいたいわけじゃないのかもしれない。

この混乱がなければ良いのだろうかと考えたけれど、そうではないかもしれない。わからない。
ただこの分裂と混乱を知らずにいればわたしはまったく違う思考の体系を持っていただろうし、死を安寧とあがめてはいなかっただろうと思う。ただそれが良いことなのかどうかはわからない。
ぞっとする考えだ。
だったら私はいったい何を吸い込み、混乱に変え、そして吐き出し、おびえているんだろう。そしていったい何からなら救われることができるのだろう。不幸でもないのに?



だって、存在は常に美しすぎる。無価値であることは尊すぎる。
感じないほうが嘘だ。
そして感じることは、おそろしいことだ。おそろしすぎて、近づきたくなくなるくらいに。けれど入ってきてしまう。わたしは混乱する。泣いたり、吐いたりして、物事を感じる。そうするしかできない。

まだ世界に慣れていないんだと思う。
世界!膨大な!
立ち尽くすどころか何度も打ちのめされている。平伏している。
平伏しても平伏しても世界は新しくわたしを感じさせる。
それは、そうか、性行と似ている。とめどない快感と苦痛のあいだにはごくわずかな壁しかない、そこを行ったり来たりさせられる。自分の意思とは関係なく、行き来させられ、疲弊し、でもまた上り詰めることを望んでしまう。






24さいになりました

2012-03-16 | まいにち

24歳になって、ええと、17日、が経ちました
世界に参加しはじめてからは、ええと6年と5ヶ月目です(いまかぞえた)

わたしのなかに16歳と、7歳と、24歳と、42歳がいます。
女なら、だれだってそうであるようにね。

6年5ヶ月めの絶望は、24年と17日の絶望よりも深いと思うか?
わたしのは、深い。
それは新月の夜に、月光をさがす悲しみ。あるいは、
化粧を落としたピエロ。

いま、おもうことは、
あなたたちに会いたいということです。
そうです。あなたです。
他人事じゃないんだよ。

人生は、他人事じゃ、ないんだよ。

でもじゃあどうしてこんなに隔たっているのだろう?
いったい、いつからこんなにわたしはわたしと隔たってしまったのだろう?

「あいつ、頭、おかしいから。」
「ちがうよ、おかしいふり、してるんだよ。」
「それって、やっぱり、おかしいんじゃん。」
どっちも、同じだと思いました。
狂っているということは、順応しているということだし、逆も然り。
すべての意味は両極を孕んで存在する。ゆるぎない事実ばかりで埋め尽くされる世界は、なんどもかわる。世界は何度も変わる。
せかいはすぐに変わるよ。見せてあげるよ。見においでよ。いっしょにつくろう。

すべてを愛したいです。
なにひとつ愛せないです。愛されたいです。愛されたくないです。もうだれにも会いたくないです。いまおもうことは、あなたたちに、会いたいということです。

わたしは、これからもたくさん、許していけそうです。
森を持って。懐に、深い森を持って。だれにもみせずに、大きくして。
いつか、この世界がぼろぼろになってしまったら、
いれてあげるね。



none

2011-07-27 | まいにち

このまま朝も夜もなく愛し合って死なない?世界じゅうの時計の針を盗んでしまわない?ねえ大事な話をしているのにスープにラムを入れるのはやめてくれない?靴下が左右違うんじゃない?些細な問題にとらわれすぎなんじゃない?拘束具をはめた膣に魅力を感じない?残り少ない時間を嘆くのは違うんじゃない?この車はエンジン音が大きすぎるんじゃない?シーツを剥がす仕種に美しさを感じない?この部屋はもうかなり傾いているんじゃない?あなたはあたしを知らないのじゃない?

もしかして



きのう爪に十字を彫ったのはあなたじゃないの?音楽を飲みすぎると帰ってこられなくなるんじゃなかったの?帰ってこられなくってもかまわなかったんじゃないの?傷つくほうが悪いんじゃないの?誰かを傷つけることなんてほんとうにはできないんじゃないの?冷凍庫が開けっ放しじゃないの?ねえ靴下が左右違うんじゃない?大事な話をしているんじゃなかったの?

誰が先に死んだの?わたしが死ななければならないんじゃなかったの?どうして生きようとして生きなければならないの?血の味はそんなに不味いものなの?いつも頭が痛いのには理由があるの?答えのないものに問いかけてはいけないの?どこに行くの?時間なんて意味がないんじゃなかったの?わたしは私じゃなかったの?あなたは誰なの?そんなことが重要だったの?
ねえ意味はどこにあるの?必要なの?どうしてそんなにいろいろなことを我慢しているの?手に入れることがそんなに後ろめたいことなの?どうして嫌われてはいけないの?何におびえているの?どうしてわたしには理解できないの?どうして


19998-2

2011-04-06 | まいにち

 あまい日差しが部屋のなかにはいってくる。すこしとろっとしていて、すごく明るい。空気が春のそれだ。二度、深呼吸して耳のうしろと、うなじ、それから腰にごく少量の香水をすりこむ。直子にとって、それはサラリーマンが着るスーツのようなものだ。匂いを着る。ときどきは、二種類の香水をべつべつの場所にすりこむこともある。ごく控えめに、それでいて複雑に香るように。それがただしい使い方なのかはわからないが、直子はもう何年もそれを行っている。

 おもては、やはり晴れていた。桜が五分ほど咲いている。ゆうべ、惣一が言っていた。週末に花見をしようよ、と。直子はその言葉を思い出して、愛しいきもちを確認した。もちろん、惣一への。
 数年前に、男の子とふたりで花見をした。何年も連絡をとっていなかった同級生だ。はじめて彼から電話がきて、それでその通話をつなげたまま近所の公園で会い、ただ桜をみた。きょうの桜ほどにも咲きそろっていなくて、だからつまり、ほとんどが蕾のまださみしい桜並木だった。彼がどうして電話をかけてきたかはわからない。お互いが電話番号を交換したことさえも忘れていたほどだ。
 ともあれ、二人でぽつぽつと話をしながら公園をぐるり一周し、そのまま男の子の部屋へ行った。彼の実家の、部屋。一度、教本の手順に沿ったみたいなセックスをしたあと、男の子は眠ってしまった。窓を開けても、廊下に面した彼の部屋からは外は見ることができなかったが、空気は晴れた春のものだった。あかるく、水分を孕んで。わたしはそれを、ブラジャーだけをつけた格好で、たいして親しくもない男の子の部屋のなかで、一人で、座って、味わった。彼の部屋はいろいろなものがとても乱雑に配置されていて、灰皿のまわりだけが不思議に清潔だった。大きくて、深みのある、どっしりしたガラスの灰皿。無駄な装飾はなく、頑丈そうで、わたしはそれを好ましく思った。そこに適度に吸い殻が溜まっているのもまたよかった。
 あのとき、わたしにはセックスが必要だったのだと思う。ビスケットみたいに軽い、さくりとした、たんたんとしたセックスが。晴れた世界や、咲き始める桜や、すべてのものがあかるく照らされることや、たまたま仕事も予定もなかったあの日のすべてが、わたしにセックスを必要とさせた。そのときにはそれに気付かなかったけれど、あとから考えてみてもどうしてもそうなのだ。そうしてそれは転がりこんできた。しかるべき速度で、しかるべき場所に。物事はそうやって、大きな力に動かされている部分がある。そのときには気づかなくても、振り返ればそういう物事は結構たくさんあるものだ。
 男の子を起こすことなく、わたしは帰った。部屋を出るときに振り返ってみると、そこには散らかった若者らしい部屋と、その住人が半裸で寝ているだけだった。でもそれは不思議にあたたかい風景だった。すぐそこにあるのに、なぜか思い出を思い出しているような。
 帰りみち、気分は思っていたよりもずっとすがすがしかった。たばこを吸いながら歩いた。公園をひとりでもう一周して、缶のジュースを飲んだ。ベンチに座って。空はきちんと晴れていてあかるく、雲はどこにもみあたらなかったけれど、桜はやっぱり3分ほどしか咲いていなかった。

 今日はどことなくあの日に似ている。不思議に心穏やかだったあの日。あれから随分時間が経ったような気がする。だっていまわたしには惣一がいるのだ。
 スニーカーをばしばし進めながら直子は考えている。
 惣一と花見をするのははじめてだ。惣一と、はじめてのものごとをするのはものすごくどきどきする。他の人とならしたことがあることでも、ばかみたいに初心に戻って、どうしたらいいのかわからない。花見も、きっとそうなるだろう。そしてそれは直子にとって、とても大事な時間のひとつになるだろう。


20000

2011-03-27 | まいにち


 いつのまに物事がここまで来たのか、直子にはわからない。ぜんぜんわからない。
 食卓テーブルのうえには、三斤分つながった、大きな食パンが置いてある。ずっしりとして、レーズンが入っていて、皮がぶあつい食パン。とおくのほうでサイレンが聞こえる。床はしんとつめたく、直子の裸足はたちまち冷える。
 静かな部屋のなかで、ただぼうっと考えていた。
(そもそものはじめから惣一は特別だった。)
 特別な理由はない。意味もない。だからこそ惣一は特別だった。最初っから。あの、「もしもし」。
 パンは惣一が買ってきた。おくりものだ。学校からかえってくる途中においしいパン屋があるんだ、とはもうずっと前に聞いた。でもほんとうにそこでパンを買ってきたことは今まで一度もなかった。
 惣一に、きのう頬を張られたのだ。暴力というほどでもない、叱るような、たしなめるような。切れたり腫れたりはいっさいしなかった。その惣一は、いまは部屋で静かに寝ている。寝息まで規則正しいあたたかさを持っている惣一。

「我慢できねえ」
 惣一はそう言った。
「なんで他の奴とも寝るんだよ」
 直子は絶句した。まず何から説明すればよいか、見当もつかなかった。
 それで、
「ちがうよ」
 と、必死で言った。
 何がどう違うのか、直子は説明したかった。自分でも理解できるように、じっくりと。時間をかけて。きちんとした言葉で、なにがどう違うのかを、話したかったのだ。でもそんなことは惣一にもわかっていた。
「気持ち悪いよ」
 二人とも似たような心地悪さを感じていた。もっと、きちんと、時間をかけて、言葉をつくして、自分の気持ちを言いあうべきだったのだ。たぶん。それができれば。でもそれが二人にはできなかった。できる気なんてぜんぜんしなかった。お互いがそういう気持ちであることを知りながら、言葉をなくして立っていた。
 あのときの、行き場のない空気。
 あのとき、惣一に責められれば良かった。罵倒されれば。あるいは懇願とか、泣くとか?何でもよかった。
 いちばんかなしい、ありうるなかで一番ただしくないやりかたで行き場をなくしてしまったような、そんな心持ちがした。
「よく考えて」
 しばらく無言が行き交ったあと、惣一はそう言って部屋を出て行った。
 あの空白。

 なにをどう考えたって仕方がなかった。
 直子にとっては惣一が誰よりも何よりも大切なのだ。
 直子はどうしたって惣一を失えないだろう。
 でも、惣一が直子をどういう風に思っているかとそれとは全然別の問題でもあるのだ。
 たとえば惣一が直子と別れると言えば、直子はそれを呑むしかないだろう。それだけのことをしているのだ。惣一がそれを知っているか知っていないかは別として。直子に決定権はない。それは知っていた。
 でもそれでもどうしたって直子は惣一を失うってことにはならない。惣一が直子のことをどうおもっていようと、隣にいようといまいと、愛があろうとなかろうと、惣一が惣一であればそれが直子の一番大切な惣一なのだ。