映画の試写会に行ってきた
私は人生でいちども試写会というものに行ったことがないし、行きたいと思ったことがない
実家が映画の映写事業などもやっていて、叔父が映写技師だったので、
子供のころから見たい映画は叔父を訪ね、ニューシネマパラダイスさながら映写室の小さな窓から観ていたのだ
いつでもただで見れるので、映画への執着がなかった
よって、試写会なるものに応募しようなど、つゆほども思ったことはなかった
今回、出版社経由でマスコミ向け試写会の招待状が私宛に届いた
担当編集者のマルコさんから「こんなのきましたけど、行かれます?」と参加の可否を尋ねてきたのだ
『それは行かないな。。。』と頭のなかでつぶやきつつ、念のため「何の映画ですか」と尋ねてみた
と。。。
ジブリの新作という
『はい、いきますよ!』
『それ、かならずやいきますよ!』
ジブリ映画は例外だ
死ぬ前に見たい映画トップスリーにはトトロが入る
仕事と重なっていなければいいなぁ。。。祈る気持ちで転送されてきた招待状を開ける
と、東京にいる平日の21:30~だった。。。
セーフ!!
それにしても、マスコミの人々が忙しいのは重々承知だが、平日の夜21:30からのご招待ってどうよ。。。
それでも当日の日比谷スカラ座は関係者で長蛇の列だった
今回上映されたのは「コクリコ坂から」という作品
コクリコか。。。
与謝野晶子の ~ 嗚呼皐月 仏蘭西の野は火の色す 君もコクリコ 我もコクリコ ~ の詩がよぎる
居眠り優等生だった学生時代は、なるほどぉ、フランスの長閑な野原で、あなたもわたしもコックリコと うたたねかぁ。。。オツだねぇ。。。なんて本気で解釈していたのだ
コクリコ=ヒナゲシ は私の好きな花だ
10歳の時、人生初めての入院。。。
頭が割れるほど痛く、ベッドの上で2週間寝たきりとなった
そんな時に、友人の母親が「10本で100円だったから」と見舞いにくれた花がヒナゲシだった
が。。。ぜ~んぶ 見事なつぼみだった
ひょろひょろ~っと葉も無い質素な長~い茎に、とってつけたようにまんまる坊主の蕾がのっかっている。。。
そこまではよいとして。。。
その全身をグロテスクなまでに真っ黒のヒゲが覆っているではないか。。。
『うげげ。。。チューリップやスイートピーがあっただろうに。。。』
ありがとうの笑顔とうらはらに心の中で嘆いた
痛みと戦うこと以外、することがないので、しかたなく毎日そのグロテスクな植物に目をやった
と、ある朝、春のあたたかな陽に照らされて、そのグロテスクなヒゲもじゃ頭が真っ二つにパカッと割れた
すると、中から眩しいまでに鮮明な橙色が現れた
自然ってすごい。。。
無条件降伏。。。
一本の花を数時間眺め続けたのは後にも先のもこのときだけだ
やがて分裂したヒゲもじゃの殻はサイドテーブルの上にコロンと落ち
透きとおるような可憐で大きな花弁が、深呼吸するように開き始めた
まるで、さなぎから蝶が孵るようだ。。。
自然に対して畏敬の念を覚える記念すべき出来事となった
それは、痛みを忘れる瞬間でもあった
以来、ヒナゲシは私のお気に入りの花となる
そんな思い入れのあるヒナゲシが随所に散りばめられる作品、「コクリコ坂」は、複雑な成育歴をもつ主人公・海と俊のほんわか青春ラブストーリー
学生紛争や戦争など、時代の波に翻弄される主人公や親たちとの関係が、昭和のレトロ感あふれる横濱を舞台に展開する
詳細は公式サイトに譲るとして。。。
う~ん、親のジェネレーションはいいとして、現代の日本人に響くのかなぁ。。。と少々心配。。。
が、そこはさすがジブリ、普遍的なものがばっちり盛り込まれている
とくに今この時期だからか。。。奇しくも震災前にはとっくに決定していたサブタイトル
「上を向いて歩こう」 は身に沁みて
久々に泣けた。。。
裏プロットとなっている、伝統的建造物・文化部男子オタクの魔窟~通称「カルチェラタン」の解体・建替え騒動(学生紛争の火種)は、主人公 海の
「掃除したら女子も来やすいよ?」
のひょんな一言から思わぬ展開に
男子生徒は毎日のように喧々諤々の討論を交わし、熱く信念をぶつけ合うも、政治的な圧力によって望む結果には一向に繋がらない
そこで、ただ「気持ちいいから」とか、「カッコいい男子に会いにいきたいから」という、伝統やら文化やらの高尚な信念はそっちのけの、きわめて通俗的&ナチュラルな動機で動き出す、女子掃除部隊。。。
その断捨離快進撃さながらの大胆な掃除っぷりが、図らずも生徒たちの心を一気にひとつにまとめ、紛争のブレークスルーを生み出すからオモロイ!
観る者を実に清々しい気持ちにさせてくれるのだ
なぁ~るほどねー。。。これかぁ~。。。断捨離伝道師が招待されたのは!。。。なぁんてね
俊の 「捨てるか取っておくか、迷ったら。。。」
「燃やせ!!!」
には膝を叩きたい思いだった
いびつで人を寄せつけないカルチェラタンが、人を魅了して止まない透明で清々しい空間に生まれ変わる。。。
それはまるで蕾のひなげしが陽を浴びて花開くようだ。。。
複雑な議論よりも、単純な行動が大きな結果を生むことって多々あるね
「コクリコ坂から」
断捨離的にも、か~なりオススメ映画です。。。
患者さんが描いてくれたヒナゲシの花。。。
(( Non's断捨離ストーリーはこちら ))