再び戻ってきた。
病室というのは、何故か治療する意欲を削ぐ気がする。
同じ景色。
同じ毎日。
刹那的に生きる意味のようなものを見失う。
戻ってきて、それはここでも同じ事に気づく。
同じ景色。
同じ毎日。
1人静かな部屋。
一年経って。
一年経って、それまでの幸福と時間を振り返る。
1人ではない部屋。
寝室では隣から聞こえる寝息。
呼吸の音を聴いて。
身体越しに心臓の鼓動が聞こえて。
体温を感じて。
寝顔を見て、安堵した気持ちで自身も再び眠りにつく。
確かに生きていた。
2人とも。
生きていたんだ。
あの瞬間。
温もりは突然消え失せ、鼓動が止まり、呼吸は聴こえなくなった。
生きていれば。
生きてさえいれば、また、と。
ただ待っていた。待っているはずだった。
ある時。
本当に2人は消えたのだと。
そう理解した。
唐突に。
一年は。
同じ日々の繰り返し。
身体の負担を感じながら、同じものを少量食べ、ただ眠る。
それでも。
あの優しい声と、愛しい姿を毎日思い出し。
毎日独り語りかけていた。
ただ、独り語りかけていた。
生きていれば。
生きてさえいれば、きっとまた。
そう願っていた。
記憶と暮らしている。
ただの記憶。君の記憶。君との記憶。
指輪が独り寂しそうに佇んでいる。
何故か戻ってこなかった片割れはどうしているだろう。
そう呟きながら、帰りを待っている。
記憶の中で。記憶の日々を。
きっとまた同じ。
同じ繰り返しの一日。
私はこのまま死んでゆくんだろうか。
果たして何の意味があるんだろう。
何のための時間だったのだろう。