ユリノキまつり2017/5/21 にてツリーイング!

2017年04月26日 | 林冠の世界~木に登る~
森林公園くつきの森のシンボルツリー「ユリノキ」と
すこーしツリーイングして遊びましょう

●ユリノキまつり/2017年5月21日(日)10時~15時

10年ぶりに このユリノキに登ります
今回は、市内で高木剪定などをされている方が
枯れた枝を下ろす実演もされます。

彼は元々林業でスギなどの枝打ちをされていた時に
私の家の前で、ツリーイングをしてもらい、大変興味を持ってもらいました。
その後ツリーイングとは別のグループで、講習会を受け、
高木剪定のお仕事を始めておられます。

ユリノキ広場のメインツリーには、2本長い枯れ枝があります。
今回それを彼に切って下ろす実演をしてもらい、
その後、その隣で私がツリーイングを行います。

欧米で発達した高木管理を担う専門家をアーボリスト、
その技術のことをアーボリカルチャーと、言葉が作られています。
日本国内では、他に「特殊伐採」という言葉があって、
大きな木を倒さずに切ってしまう仕事が広まっていてます

またツリーイングは、その一部の技術を元に、
あくまでレクリエーションとして多くの人が高い木に登る遊びです。

同じように見えても、別の考え方からなっていて、
いずれも時間をかけて積み重ねられた専門的な技術です。

ユリノキの花咲く緑豊かな季節に
多くのお店や体験がユリノキ広場に並びます。
ぜひ森林公園くつきの森にお越し下さい。

キリタケ(シラウオタケ)見っけ。はじめての地衣類

2016年11月28日 | 自然と人のかけはし
高島の林床をてくてく歩いていたら、ふと目が留まりました。
朽木の上に白い毛がたくさん生えています。


よーく見てみると、うっすら緑色になっている朽木の表面から
白いキノコのようなものが生えています。


最近気になっている「地衣類」にこんなのがあったな、と帰って調べてみると

キリタケ(シラウオタケ)という地衣類のキノコ?のようです。

多くの地衣類は子嚢菌類というカビに多い菌類の仲間がベースになっていますが
キリタケは担子菌類というキノコを作る菌類に多い種類がベースになっています。

一本まっすぐなもの、2つ分かれたもの、たくさん分かれたもの。
ますます興味が湧きました。

参考:きのこじきさんのページ
よく通っていた芦生研究林にはお馴染みのようです。気づいたかどうかすら忘れてしまいました…。
シロソウメンタケは印象にあるのですが。

報告・くつきの森でセンペルセコイアに登る

2016年07月03日 | 林冠の世界~木に登る~
 センペルセコイアは、北米で100メートルを越える高さになる針葉樹です。樹皮がとても厚く、山火事にも耐えて生き残るそうです。森林公園くつきの森では、森林環境研究所の近くに数本あり、ユリノキやモミジバフウのように周りの木々から突き抜けて高く育っています。

 普段のツリーカフェで登らせて頂いているユリノキは、高さ17メートルまでロープで上がることが出来、高さは25メートルくらいだと思います。そこで周りを見ると、少し離れて同じくらいの高さに、三角形のセンペルセコイアがあります。何度も見ているうちに気になり、あそこに行ってみたい、と思いを募らせていました。

 ちょうど針葉樹に登るツリーイング技術の講習会があってスタッフをしてきたのですが、参加者の方々に練習の機会があれば、という思いもあり、よい機会なので【くつきの森でセンペルセコイアに登る】を企画しました。

 当日は出来るだけ木の上の時間と練習の機会を持ってもらいたく、前日にスローラインと下見を行いました。下の枝が非常に混み合っていて、何度か目標にスローパウチを投げるも手前に当たります。出来るだけ障害物の少ないルートを探して投げ、かかった枝からパウチを揺らしたりスローラインをつないだりして、荷重を分散させる支点になるようにスローラインを通します。手の届かない高いところでラインを操作する、これが頭と技をいろいろ使えて面白いところです。

 あとはロープを掛け、講習会でお伝えした通りのボトムアンカーをとってSRTクライミング。ボトムアンカーとは、かけたロープの一方の端を固定する支点で、木の根もとに帯紐を巻いて設置します。人に教えた後はスムーズに出来るような気がします。始めて登る木は特に慎重に、慎重に。木の様子、周りの様子に感覚を研ぎ澄ませて登っていきます。やはり樹皮がとても厚く、ふかふかしています。細い枯れ枝がいろいろな形で突き出していて、しばらく暗い環境です。両側は低めのモミの木で、その枯れ枝はずっと太く様々に折れています。

 生きた枝が出てきて、よいしょよいしょと枝をかわしながら登っていきます。枝を握るとじわっとへこんで柔らかく、緑の葉っぱもさらさらと柔らかです。枝は水平より僅かに下がって横に伸びています。ロープを掛けるときは気をつけなければいけません。適度に太さがあり、丈夫そうに感じますが、ところどころに枯れ枝があります。まっすぐ伸びている枝もあれば、途中で折れて急に伸びる向きが変わっていたり、他の枝と絡んだりしている枝もあります。

 いよいよロープがかかっている支点、トップアンカーに着きました。枝は健康か、しっかり幹についているか、ロープの位置は適切かなどと、慎重にチェックします。下から見上げているだけでは分からないことが多いのです。珍しく下から見ていたより安心感があります。ロープを少し持ち上げてみると、枝が少し凹んでいます。本当に柔らかい樹皮です。どれくらいで回復するのでしょう。

 ここで高さ約10メートルです。さらに上に登るために、短いロープで体を確保し、交互に架け替えて登っていきます。枝の間をくぐり抜けて慎重に、そしてロープのルートを意識しながら適切な支点となる枝を探していきます。徐々に視界が開けてきて、明るくなってきます。隣のモミの木は先端が近づいてきました。生き生きとした枝がたっぷり日差しを受けています。

 7メートルほど登って、隣のモミの木の頂上と同じ高さのところに新しいトップアンカーを決めました。スローラインにパウチをつけて下に下ろしていきます。出来るだけボトムアンカーや登るルートに枝などが干渉しないようにルートを微調整します。

 遠くを見ると、これまで登っていたユリノキが見えます。そして隣にある針葉樹のコウヨウザンや、ひときわ高いモミジバフウが見えます。今登っているセコイアも含めて、これらの木々は、この地に植えられてから40年程度しか経っていません。自分より少々年上な生きものたちが、なんと巨大になっていることか、そしてまだまだ成長初期に過ぎず、これからますます大きくなって、たくさんの生きものたちを育んでいくことに思いを馳せて、木を下りました。

 いよいよ企画当日。はるばる兵庫県から、先月のT-2講習会と、3ヶ月前のT-1講習会の参加者がお越しになりました。お一人は早速SRTの器具も購入されて、初使用です!用具をお貸しして、基本を復習しつつ、昨日かけたスローラインでSRTのセッティングを行いました。ロープを上げたり、ボトムアンカー用のミュールノットをお互いに見て作ったり。時間を十分とってセッティングを行います。

 T-1講習会のみの受講者が登れるように、私がDRTシステムのトップアンカーを設置しに上がります。昨日はDRT用の13mmロープで登りましたが、今はSRT兼用の11mmハイブリットロープを使います。器具の通りが良くてスムーズにアセンダーが動きます。色も黄緑でいい感じです。昨日よりだいぶ高いのですが、ガチャガチャあっという間にトップアンカーまで登ってしまいました。

 その下にDRT用のアンカーを設置してスローラインを下ろし、声をかけながら協力してロープに架け替えてます。樹下ではDRTシステムを組んで登り始め、同時に私は別の短いロープをかけて、それに移ります。4月以来のツリーイングとなる参加者は、楽しい、楽しいと笑顔で登ってきました。さすがに体力は使うので途中で休み休み、枝が出てくるところまで来ると、こうやって座ると落ち着くよー、と実演します。登ったことがないツリーカフェのお客様と違って、自分でシステムを操作して下がることが出来るので、好きな場所を自分で探して休めました。

 そして空いているSRT兼用ロープも使って、もう一人上がってきました。隣のモミの木を見ながら、これも登れる?と興味を示しながら少しずつ。もう一つかけた短いロープに移ってもらってから、一度私は下に下りました。

 参加者お二人は、持って上がったお弁当でお昼ご飯。前の講習会でも樹上でお昼を食べた強者です!私は地上で食後のコーヒーの用意をしてから登ります。高島市内で焙煎された新鮮な豆を挽いて淹れ、ポットに入れて樹上へ運びました。木の上のランチとコーヒーで長時間過ごせば、違った感覚になれると思っています。

 双眼鏡をお渡ししたら、「すごく見える!見ているところはどこだ?」と驚きながら、見えている木の実は何だろうと話したり、普段よく登るユリノキにかけていたスローラインを紹介したりしました。森の一点に留まりながら、さらに森を広く深く楽しめるツールだと思います。

 20mのメジャーの先にスローパウチをつけて、下ろして高さを測ると、3名でご飯を食べた腰の高さで17m。ロープ自体は20m以上の高さになっていました。木の先端は25mくらいでしょうか。これからまだまだ伸びるでしょう。

 アメリカで木登りに取り憑かれた人たちを描いた「世界一高い木」(リチャード・プレストン著 渡会圭子 訳 http://ec.nikkeibp.co.jp/item/books/P83630.html )という本があります。高さ世界一の木を探したり、木の上の豊かな生態系に魅了されたりした人たちが出会い、縁を深めていく物語です。そして、そこに登場するセンペルセコイアに名前がつけられて、木々の巨大さ、豊かさ、生きてきた時間の長さを様々に描かれています。私は以前この本を読んで、この木はどんな木なのだろうと心に残っていました。くつきの森のセコイアはまだ40年余りしか伸びていない若い木ですが、ふかふかの樹皮や柔らかな針葉、爽やかな香りなど、海の向こうのセコイアの森に思いを馳せることが出来ました。

 参加者お二人に感想を伺うと、木がとてもよかった・木の上で昼食とコーヒーブレイク!・ロケーションが良かった・少人数でじっくり技術を確認出来た等が好評でした。道案内など課題もありましたが事前の情報提供を十分行えば解決出来ることでした。今後は確実に行います。
 くつきの森には他にも様々な種類の木があります。同じ木に何度も登ると新たな発見もあります。ぜひ一緒に木の上で過ごしましょう。

【引用・本の紹介】誰でもできる ロビイング入門 社会を変える技術

2016年04月14日 | 本の紹介
誰でもできる ロビイング入門 社会を変える技術/明智カイト/光文社新書791

まだ途中までしか読んでいないのですが、忘れないうちに引用しておきたく。

> 以下引用

でも、ひとたび何か不具合が起こったとき、自分たちが今住んでいる社会がいかに完全なものでないかということを痛いほど思い知る。(中略)日本は様々な課題を抱えている。そうした課題を解決し、日本そのものがよりよい社会になるだけでなく、他の国の手本となっていくためには、政府や行政といった形のない何かに依存しきり、自分に不都合なことが起こったときだけ顔の見えない誰かを批判する、そんな意識を変えていくことが必要だ。

> 以上引用: 2章 病児保育問題、待機児童問題のためのロビイング・駒崎弘樹

ツリーカフェをはじめたのは、木登りを広めたり自然の中にいたかったりするためではない。

「声なき声を届ける」

子どもの頃から鳥を通じて様々な地域と環境を見ていて、
生きものたちが、声を出すことなく、いなくなってしまうことを実感して、
無数の生きものたちに私達が支えられているということを
人間社会に伝えなくては、ということが 心の底に横たわっているからだと思います。

(つづく)

ツリーイングにとって良い木

2016年03月25日 | 林冠の世界~木に登る~
ツリーイングにとって良い木の条件とは、例えて言えば、あなたにとって良い結婚相手の条件と似ています。

いろいろと理想の条件や大事な条件はあるかと思いますが、実際の人間というのは条件通りにはいきません。複雑で混じりあっていて同じものは一つとしてなく、時間と共に移り変わっていきます。出会える相手にも限りがあります。樹木も同じ生き物、そしてツリーイングする人間も一人ひとり条件が異なります。その相性が合う木と人の組み合わせが、ツリーイングにとって良い木となると思います。

そういったことを頭に入れた上で、いろいろな条件を見ていきましょう。

ツリーイングの特徴は、枝分かれしている部分にロープをかけて、ぶら下がって登ることで、同じ木に同時に何人も一緒に登れたり、地面近くに枝がなくても登れたり、高くても危険が少ないことです。それを生かす木の形は、太い枝が大きく横に張り出し、その途中で何箇所も枝分かれしている形です。平らな土地の真ん中に孤立して大きくなったクスノキやトチノキ、エノキ等がこのような樹形になります。身近なドングリの木で多いコナラも、適度に斜め上に広がり、途中の枝分かれも多くて良い樹形になります。逆に真っ直ぐ垂直な幹から、枝分かれしない細めの枝しか伸びない、スギやポプラのような樹形だと、基本のツリーイング法では登れなかったり、登れても人数が限られたりします。

大切な人間の命を預ける木ですから、枯れていたり腐っていたり病気で弱っていたりする木は危険です。葉や枝のつき具合、枯れ枝の割合、幹に変わったところはないか、地面が踏み固められたり土を被せられたりして根が傷んでいないか、日光を十分受けているかなどを確認します。自然に育った木は必ずそれまでの生涯に何らかのダメージを受けています。たくさんの木を見て、傷んだところや元気なところを見る目を養いましょう。

ツリーイングの危険で最も注意しないといけないのは、落下物による事故です。高いところにあるものは大きなエネルギーを持ちます。「枯れ枝や、かかり枝」に一番の注意を払いましょう。技術があれば地上から取り除いたり、ルートを選んで立ち入り禁止エリアを設定したりすることで危険を避けることもが出来ます。ちなみに実際にツリーイングしている時も物を落とさないよう細心の注意を払い、落下防止策をとりましょう。

また木はたくさんの生物の棲み家でもあります。人が近づいても迷惑でなく楽しい植物や動物もいますが、スズメバチや毒のあるツタウルシ、登ると攻撃されることもある鳥の巣などがないか、十分に探して下さい。樹液が出ているところは虫が集まっていることがあります。幹の後ろにいるかもしれません。木を見る時は必ず木の周りを一周して見るようにして下さい。

木の近くに電線があったり、屋根の上に枝が張り出していたり、木の下に歩道があったりするような危険もチェックします。ツリーイング中は少なくとも木が枝を広げている下から人の立ち入りを制限する必要があります。照明器具や道標など壊してはいけないものはありませんか。水際や斜面の上など、歩き回っている時に危険なところはありませんか。ツリーイングしている人と共に周りの安全にも責任を持って下さい。

ツリーイングは、継続的なお付き合いです。一回きりということは余りありません。その土地の管理者と交渉したり、枯れ枝や「かかり枝」を下ろしたり、登った後に健康状態を確認したりと、何年にも渡って付き合いを続けることが多いです。それが出来る条件を満たす必要があります。あなたにとって継続的にアクセスしやすいか、困った時に助けてくれる仲間がいるか、トイレが近いか、車はどこまで入れるかなどです。誰かが使わせてくれる木の場合は、その人や施設などに十分に敬意を払いましょう。

ツリーイングは身近な大自然にアクセスできる素晴らしい遊びです。たくさんの木を改めて見直して、人間の生き方と、時間も大きさも感じ方も全く異なる生き物の魅力を、多くの方が再発見出来ればと願っております。

カワウとのつきあい方~アメリカ・ヨーロッパの取り組みから考えるウの管理~

2015年08月02日 | 自然と人のかけはし
それぞれ多くの葛藤を抱えながら対応されている研究者が
直接語る言葉を聞くと、それぞれ愛おしい対象が関わる軋轢に心を痛め、
なんとかしようともがいている感情が伝わってきました。

///概略(記憶違いの言葉が混じるはずです。ご了承下さい)///

カワウとのつきあい方~アメリカ・ヨーロッパの取り組みから考えるウの管理~
2015/7/25@滋賀県立琵琶湖博物館

> 亀田佳代子(琵琶湖博物館)
> 日本におけるカワウ保護管理の現状と課題
カワウは、日本に暮らす他のウと違って、内陸の川や湖でも餌を取り、また樹上にも巣を作ることが特徴です。1960~70年台に大きく減少し、日本全体で3000羽以下コロニー5箇所までになりました。80年台から増えて分布も広がり、それに伴ってアユなど内水面漁業への食害や営巣地での森林景観悪化が問題となりました。90年台から様々な対策が取られるようになり、現在は2013年に環境省が策定した「特定鳥獣保護管理計画作成のためのガイドライン及び保護管理の手引き」がよりどころになっています。

> Linda R. Wires (アメリカ合衆国魚類野生生物局)
> アメリカ中央部のミミヒメウ管理の歴史的変遷と課題
ミミヒメウは、目の後ろに、上に立った飾り羽がある北米のウです。この鳥にちなんだ地名がつけられるほど目立って多い鳥でした。1970年代までに非常に少なくなり保護の対象でしたが、90年代に劇的に増えて分布も広がりました。人による魚類の乱獲や外来魚侵入、放流やナマズの大規模な養殖などで生態系が変わったこと等が原因と考えられます。それに対して水産資源への影響が懸念されて1998年と2003年に連邦規則が制定され、致死的な管理が行われ50万羽以上駆除されました。
管理の意思決定には科学的な証拠が必要とされておらず、社会的な価値観や憶測、信じこみが一番の動機になっていて、ウがスケープゴートにされています。人の心から発生した「被害」であるため、解決のためには社会学者と倫理問題の研究者が入ることが必要です。寛容さを増加させる方法の一つとして、「たくさんのウがいる壮観な景観を売り物にする」例が紹介されました。

> 坪井潤一(水産総合研究センター)
> 日本の内水面漁業における被害と対策
最も管理が進んだ山梨県の例です。カワウが問題になるのは、1kg3,600円もする放流アユが、直後にカワウに一網打尽にされてしまうからです。しかも放流時期がカワウの子育ての時期と重なるため、大きな投資である放流事業が、「子育て中のカワウに餌をやって増やしているだけ」に感じられるからです。そこで「毎月20日はカワウの日」、漁業者自身が日の出30分前から2時間カワウを数えて、どこにどれだけいるのか情報を共有しました。また駆除個体のお腹を調べてアユの割合がどれくらいか調べてカワウが食べたアユの金額を推定し、2012年の6.5%を放流個体の5%程度に維持するという目標を設定しました。春にアユの放流場所で集中的に追い払いを行い、また新規コロニーを除去するなど被害が少なくなるような場所にカワウの群れを管理する、という対策を行っています。

> Daniel D. Roby (オレゴン州立大学)
> アメリカ西部のミミヒメウ管理の最前線
北米西部のミミヒメウについては、管理が最近始まったところです。コロンビア川の河口にあるイーストサンド島は、安全で近くに魚が豊富なため、1989年には90つがい程だったのが2003年には1万3千つがいにまで急増しました。より北部のコロニーでは減少しています。サーモンはアメリカ人にとってQOLの象徴で、また絶滅危惧区保護法掲載のサケ科の稚魚の捕食圧を下げるためという理由で、政府機関がコロニーの1万1千羽をハンティングにより4年で駆除する計画を立てています。これは北米西部のミミヒメウの15%を駆除することになります。致死的でない代替法が実践されていて、コロニーの一部をフェンスで仕切り、繁殖できる場所を限定して追い払いをしたり、人口巣台やデコイなどで特定の場所に誘引したりしています。在来種でもコロニー性魚食性鳥類が被害の原因としてレッテル貼りされてしまっています。

> 山本麻希(長岡技術科学大学)
> 地域と広域 カワウ個体群管理の考え方
ここにいる多くの方が関わられた「特定鳥獣保護管理計画作成のためのガイドライン及び保護管理の手引き」についてエッセンスを解説されました。(トークが面白くてメモ出来なかった)
管理計画を立てる際には、「鵜的フェーズ」と名付けられた、各段階のどこにいるかをまず把握し、その後、段階を追って対策を進めることが大切。各自が勝手に追い払うと、分布が広がったり知らないところで被害が出て手に負えなくなります。1羽も殺さないとか絶滅させるとかではなく、「ほどほどにいることを目指す」。データを地図化してワールドカフェにより関係者の合意形成を行います。将来的にどこを残すかなどを共有します。

> David N. Carss (英国生態学水文学研究センター)
> ヨーロッパのカワウ管理システムと体制
カワウはEUでも法律で保護されていますが、各国や各国内でも解釈が異なります。INTERCAFE Projectなどで学際的なネットワークで解決を図っています。欧州議会前で1万人の漁師デモの写真を紹介されました。ヨーロッパでは内陸と大西洋岸に暮らす2亜種がいて、問題になっているのは内陸性の亜種です。広く移動する冬に軋轢が起きています。1月中旬の土曜日にヨーロッパ全体で3千人以上の調査員が参加して一斉カウントをして、2003年で675,835羽と集計されました。カワウについては、魚を減らすという学術的根拠はなく、カワウと魚に関する人間の社会文化的意義を理解する試みが必要です。大西洋岸では、カワウの食文化があります。またグリーンランドではフェザーで中間着を作っています。
カワウと人との問題ではなく、人と人との社会的問題であると思う。

コメントの中で印象的だったのは…

> 須藤明子
滋賀でのシャープシューティングで個体数を減らせたのは重要な一例。
ツールは持っている。自身を持って落ち着いて対応する。

(説明)滋賀での有害駆除について、過去は一般の狩猟者が散弾銃でカワウを撃っていたが、2009年から須藤氏ら専門家がエアライフルを使い高度な大量捕獲を行って、顕著にカワウを減らすことに成功した。

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募集ページ
http://www.bird-research.jp/1_katsudo/kawau/sympo.html

「トチノキをめぐる社会生態誌―滋賀県高島市朽木を事例に」を聴いて

2015年07月18日 | 自然と人のかけはし
朽木のトチノキについてお話を聴いてきました。
完結なレポートが研究会のウェブサイトにあるので
そちらをお読み頂くのが適切です。

民族自然誌研究会レポート
http://www.showado-kyoto.jp/news/n3583.html

こうやってまとめたらいいのかと感心しつつ、
印象に残った言葉なども記したメモを
ごく参考までに残しておきます。
-----
「トチノキをめぐる社会生態誌―滋賀県高島市朽木を事例に」
2015年7月18日民族自然誌研究会

> 手代木功基(総合地球環境学研究所)
> 「滋賀県朽木地域におけるトチノキ巨木林の立地環境」

1.自然環境
小径木は谷沿いに一様にある
巨木は上流に密集してある…最上流部のなだらかな斜面
->(詳しくは)谷頭凹地と上部谷壁斜面と下部谷壁斜面の間の緩急線付近

←トチは水分と土壌の肥沃な谷底が好適だが、土石流など撹乱が多いため
撹乱が少なく谷底に根を伸ばせる最上流部の斜面に巨木が残る

2.人為的環境
「朽木の杣」古代から木材生産地
鎌倉から明治、朽木氏による安定した統治
ホトラ(肥料用のコナラの枝)や薪炭林・入会と木地生産
戦後はパルプ用材・スギ植林
集落から歩いていける場所
明治以降個人単位に山割りが行われ、利用の仕方が個人単位になった
単木での「トチ買い」も行われてきた
「トチ植えるバカ、トチ伐らんバカ」
…炭用材やスギに良くない
ただし、全体的にはトチの生育を維持する方向に
・奥山ではなく利用されてきた山林に残る。選択的に残された。
・トチ以外の利用(伐採)により生育促進された。

> 八塚春名(日本大学)
> 「トチ餅づくりを支える超地域的なトチノミ利用ネットワークの形成」

山村の衰退→商品化・特産品化
-朽木では鯖寿司と共にトチ餅
…実は流通させても都市では食べられない(アク抜き処理が出来ない)

「ふるまいもち」がずっと行われてきた
昔は女性が連れ立って採集に。
(1986年以降商品化)
雲洞谷(35世帯4つの小字2012年)

アク抜きの手法・灰あわせに2種類。
・煮灰(ニバイ)実を湯につけてから灰あわせ。効率的。現在はこちらで。
・かけ灰(カケバイ)湯を実に何度かかけてから灰あわせ。崩れにくく減りが少ない

1986年栃餅保存会が補助金を受けて施設と機械を購入
1987年くつき新本陣1988年朝市開始。トチ餅販売。
◎朽木居住者も、もっぱら買う。お彼岸のお供えに。

栃の実の売買
朽木「シカがみんな食ってしまう」
福井・滋賀・岐阜などから。行商の方が持ってこられる。
山村から山村に流通する。新しい資源利用の形。地域を越えたネットワーク

飯田義彦氏の代理で藤岡悠一郎
「生きたトチノキを活かす地域づくり活動の展開過程」

滋賀県・「巨木と水源の郷をまもる会」による保全の経緯紹介
2008~2009年 トチ伐採情報。観察会スタート。幹周り7.2mはなんとか残る
32本が契約済。解約解除通知したが裁判に。
2011年滋賀県が保全協力金。49本に対して

「会」秋のトチノキ祭と3月の発表会
下流の針江と協働して苗木づくり
綾部市古屋・長浜市小原地区との交流

トチノキ:供給サービスから文化的サービスへ、比重転換
課題:外部者の割合が大きく地元の成熟がしない・アク抜きなど文化の継承


> コメンテーター(長野・秋山郷の事例紹介)
> 井上卓哉(富士市立博物館)

トチモチ以外に、こざわし、
・トチアンボ(おやきのような、アワ・ヒエの粉を混ぜて、中に包んだもち)
木鉢(こね鉢):生活道具+商品として。江戸時代から。生産が今も。

○1711年文書:割板・・曲物を作って越後へ売っている
…この時点では針葉樹が豊富で、それを利用した商品を売っていた
○「秋山記行(1828)鈴木牧之」
粉のまま食べる。灰あわせしない
地名聞き取りで、「~の栃林」多い
山開きの日がある。家から3名だけ取りに行ける
30年位前に村から離れたところの共有林の栃を伐採して家具屋に売った

「里へ出して交易のものを問ふに:粟・稗・荏(えごま)・木鉢・木鋤(こすき・雪かきスコップ)・樫、檜、松の盤・桂板・サワラ、白木の折敷、秋には干茸・しな縄(シナノキの皮で編んだ縄)…」

1825年秋山記行の頃
「100年前(1700年頃)サワラ、ヒメコマツ、ゴヨウマツで曲物を作ってきた。
 くれ(板)をたくさん。
 あんなにたくさんあったのに、人の欲とはすごいもので、なくなってしまった。
 今はブナ、ナラ、ヤナギ、トチ、雑木ばかりになって困った」

現在の木鉢制作の材料は…秋田から丸太を/国有林伐採・単木払い下げ(終了)/集落近くのトチを

残っている木鉢の製作年と大きさ
…嫁入り道具など、製作年が分かることが多い
直径はあまり変わらないが、高さが大きくなってきた。
→かつて馬の背中に載せた(低い方がたくさん重ねて積める)
 縁が高い方が、そば打ち用に良い(近年)

> 総合討論
雲洞谷トチ餅づくり「仕事を辞めてまですることではない」「リタイアした人が継いでいければ」
綾部市古屋>外部ボランティアの会「古屋でがんばろう会」9月400名で栃の実拾い
 ネットを張って獣害防止。ないところはみんなシカに。1000町歩みんな村の山、だから残ったのかな。
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民族自然誌研究会は先輩に連れられて初期の数回参加しました。
ありがとうございます。

「トチノキをめぐる社会生態誌―滋賀県高島市朽木を事例に」を聴いて

2015年07月18日 | 自然と人のかけはし
朽木のトチノキについてお話を聴いてきました。
完結なレポートが研究会のウェブサイトにあるので
そちらをお読み頂くのが適切です。

民族自然誌研究会レポート
http://www.showado-kyoto.jp/news/n3583.html

こうやってまとめたらいいのかと感心しつつ、
印象に残った言葉なども記したメモを
ごく参考までに残しておきます。
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「トチノキをめぐる社会生態誌―滋賀県高島市朽木を事例に」
2015年7月18日民族自然誌研究会

> 手代木功基(総合地球環境学研究所)
> 「滋賀県朽木地域におけるトチノキ巨木林の立地環境」

1.自然環境
小径木は谷沿いに一様にある
巨木は上流に密集してある…最上流部のなだらかな斜面
->(詳しくは)谷頭凹地と上部谷壁斜面と下部谷壁斜面の間の緩急線付近

←トチは水分と土壌の肥沃な谷底が好適だが、土石流など撹乱が多いため
撹乱が少なく谷底に根を伸ばせる最上流部の斜面に巨木が残る

2.人為的環境
「朽木の杣」古代から木材生産地
鎌倉から明治、朽木氏による安定した統治
ホトラ(肥料用のコナラの枝)や薪炭林・入会と木地生産
戦後はパルプ用材・スギ植林
集落から歩いていける場所
明治以降個人単位に山割りが行われ、利用の仕方が個人単位になった
単木での「トチ買い」も行われてきた
「トチ植えるバカ、トチ伐らんバカ」
…炭用材やスギに良くない
ただし、全体的にはトチの生育を維持する方向に
・奥山ではなく利用されてきた山林に残る。選択的に残された。
・トチ以外の利用(伐採)により生育促進された。

> 八塚春名(日本大学)
> 「トチ餅づくりを支える超地域的なトチノミ利用ネットワークの形成」

山村の衰退→商品化・特産品化
-朽木では鯖寿司と共にトチ餅
…実は流通させても都市では食べられない(アク抜き処理が出来ない)

「ふるまいもち」がずっと行われてきた
昔は女性が連れ立って採集に。
(1986年以降商品化)
雲洞谷(35世帯4つの小字2012年)

アク抜きの手法・灰あわせに2種類。
・煮灰(ニバイ)実を湯につけてから灰あわせ。効率的。現在はこちらで。
・かけ灰(カケバイ)湯を実に何度かかけてから灰あわせ。崩れにくく減りが少ない

1986年栃餅保存会が補助金を受けて施設と機械を購入
1987年くつき新本陣1988年朝市開始。トチ餅販売。
◎朽木居住者も、もっぱら買う。お彼岸のお供えに。

栃の実の売買
朽木「シカがみんな食ってしまう」
福井・滋賀・岐阜などから。行商の方が持ってこられる。
山村から山村に流通する。新しい資源利用の形。地域を越えたネットワーク

飯田義彦氏の代理で藤岡悠一郎
「生きたトチノキを活かす地域づくり活動の展開過程」

滋賀県・「巨木と水源の郷をまもる会」による保全の経緯紹介
2008~2009年 トチ伐採情報。観察会スタート。幹周り7.2mはなんとか残る
32本が契約済。解約解除通知したが裁判に。
2011年滋賀県が保全協力金。49本に対して

「会」秋のトチノキ祭と3月の発表会
下流の針江と協働して苗木づくり
綾部市古屋・長浜市小原地区との交流

トチノキ:供給サービスから文化的サービスへ、比重転換
課題:外部者の割合が大きく地元の成熟がしない・アク抜きなど文化の継承


> コメンテーター(長野・秋山郷の事例紹介)
> 井上卓哉(富士市立博物館)

トチモチ以外に、こざわし、
・トチアンボ(おやきのような、アワ・ヒエの粉を混ぜて、中に包んだもち)
木鉢(こね鉢):生活道具+商品として。江戸時代から。生産が今も。

○1711年文書:割板・・曲物を作って越後へ売っている
…この時点では針葉樹が豊富で、それを利用した商品を売っていた
○「秋山記行(1828)鈴木牧之」
粉のまま食べる。灰あわせしない
地名聞き取りで、「~の栃林」多い
山開きの日がある。家から3名だけ取りに行ける
30年位前に村から離れたところの共有林の栃を伐採して家具屋に売った

「里へ出して交易のものを問ふに:粟・稗・荏(えごま)・木鉢・木鋤(こすき・雪かきスコップ)・樫、檜、松の盤・桂板・サワラ、白木の折敷、秋には干茸・しな縄(シナノキの皮で編んだ縄)…」

1825年秋山記行の頃
「100年前(1700年頃)サワラ、ヒメコマツ、ゴヨウマツで曲物を作ってきた。
 くれ(板)をたくさん。
 あんなにたくさんあったのに、人の欲とはすごいもので、なくなってしまった。
 今はブナ、ナラ、ヤナギ、トチ、雑木ばかりになって困った」

現在の木鉢制作の材料は…秋田から丸太を/国有林伐採・単木払い下げ(終了)/集落近くのトチを

残っている木鉢の製作年と大きさ
…嫁入り道具など、製作年が分かることが多い
直径はあまり変わらないが、高さが大きくなってきた。
→かつて馬の背中に載せた(低い方がたくさん重ねて積める)
 縁が高い方が、そば打ち用に良い(近年)

> 総合討論
雲洞谷トチ餅づくり「仕事を辞めてまですることではない」「リタイアした人が継いでいければ」
綾部市古屋>外部ボランティアの会「古屋でがんばろう会」9月400名で栃の実拾い
 ネットを張って獣害防止。ないところはみんなシカに。1000町歩みんな村の山、だから残ったのかな。
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民族自然誌研究会は先輩に連れられて初期の数回参加しました。
ありがとうございます。

中公新書2305「生物多様性 / 「私」から考える進化・遺伝・生態系 /本川達雄 著

2015年05月25日 | 本の紹介
高島のいいところを どうやったら説明出来るのかな
などと考えていたところで
図書館の新刊コーナーで見かけて 手に取りました

「歌う生物学者」を自称されてる方が 歌をたった2曲に留めて
その分 長い生物学と科学の歴史を 丁寧に詰め込んで
なんともまじめに 分かるように書いてあります。
学生時代の復習をした気分になりました。
生物と付き合い続けたものの 独特の「生きもの感」が 楽しいです

それで本題、
生物多様性の高い高島の価値とはなんだ、
と説明せよと言われると、やはり

「いいところを 好きじゃない人に説明するのはものすごく難しい」
というものでした。

現代の価値観の中に生きる人間には
生きものと多様性の価値は、見事に納得いかないものか、ということを
深く掘り下げてあって面白いのですが、

抽象的なことを理解しようとする時には、
経験に裏打ちされた言葉がないと理解し難いだろうなと感じました。

サンゴ礁の海の豊穣さは、その場での体験がないと
身に沁みない、いや、沁みにくいだろうなと。

自然から離れた、厳しい環境で生きる方々に説明するには、
相手の環境を十分に理解しないと 伝わらないだろうなと思いました。

ひとつ、キーワード

環境を受け入れ、自分のものとすること
それが 生きものの大きなチカラ。

カラスがひとり

2015年05月16日 | わくわく!
田んぼの真ん中に カラスがいる

田植えの終わった田んぼの真ん中に
てくてく ひとり カラスがいる

下をじいっと見ながら 歩いている
霧雨の降る 灰色の空を映した田んぼに

なにをしているの
どうしてひとりなの

集中している
広い 田んぼの真ん中に