へやわくろぺでぃあ

へやわけのレビュー(というかうだうだ書き)を中心に。まずは「へやわけマン」から。

マン[20] このお行儀の悪さは真似できるようでなかなかできない。

2006年10月12日 00時07分52秒 | へやわけレビュー
とんでもなく大胆不敵な問題。対称部屋割りでそこそこ美しい見た目だけれど、だからといって「見た目のために解き味を犠牲にした問題」なんてありきたりの評価はとてもじゃないが下せない。解き味を犠牲とかもうそんな半端レベルじゃない。「見た目のために仕方なく妥協した」とはとても思えない。どう見ても狙ってハチャメチャやってる。

普通,2×8の部屋があるからといってそこにどんと「8」を入れない。しかも腹の手筋すら使わずにさらっと起爆させたりしない。他の解き筋を入れる余地があるところに0in2×3を入れない。しかも2か所も入れない。何もかもがアウトローだ。それでいながら「6」のところの寸断の解き筋や最後の黒マスの決まり方のような渋い演出まである。ニクイ。

…あ,しつこいようですけど,このブログには基本的に賛辞しか書いていません。つまり上記はすべてホメコトバです。誤解なきよう。nyanbazは悪ノリも大好きです。

マン[19] 多段切り替えの妙味が凝縮された問題

2006年10月11日 01時07分39秒 | へやわけレビュー
フットワークが軽い問題。ぱたぱたぱたと黒マスの方向転換が連発していく様子が楽しい。分断禁の使い方もダイナミックで解いていてわくわくしてくる。左上のスタートが砲台で、右下のラストが砲台になっているところも劇的。

10×10という小さな空間の中にこれだけ多くの方向転換機を埋め込んだところを賞賛したい。3in2×3の方向転換が3か所あり,しかもサザンクロスまで使っていて,これらだけで100マス中の27マスを消費している。隣接禁や分断禁で決まる周辺のマスを加えると全体の3分の1を越えてしまう勢いだ。それでいてこの問題には大味なところを感じさせるところがほとんどない。寧ろ緻密性すら感じる。無駄がない。

マン[18] 世界の合い言葉は2

2006年10月05日 01時21分28秒 | へやわけレビュー
2in1×3の飛び石を何度も使っている問題。左下の3連禁を挟んでの3連鎖などはややお約束気味ながらやっぱりキモチいい。上から1,2行目の分断禁から再び飛び石に着地させる発想も楽しい。また,全体的に3連禁の使いどころがうまくてメリハリが付いているように感じる。

「1」が1つだけあるものの,実質的には2シバリの盤面と言ってしまって良い。数字シバリの問題は単調な展開に陥ってしまいやすいのだけれど,それにさえ気をつけてることができれば,逆に「同じ数字なのに全く違った使われ方をする」バラエティに富んだ問題ができやすい。この問題がまさに典型。どの「2」もそれぞれ個性的に働いていて,目が離せない。アツイ。

マン[17] 「マン」で最も美しい問題だと思います,見た目が。

2006年10月04日 01時13分51秒 | へやわけレビュー
とにかくシンプルな部屋割り。そして無理がなさ過ぎる。実質2×3の部屋だけで問題を創っているようなものなのにこの無理のなさは何なんだ!と叫んでしまいたい。ここで美しい盤面とは何かを語りたいと思ったけれどあいにくそちら方面のセンスが全くないので割愛するとして,とにかくnyanbaz的には最高に美しい見た目だと思った。区切り線がごちゃごちゃしてないのがいいのかな,と考えたけど,2×2を5×5に並べた盤面は個人的にはそんなに美しく感じないんだよなあ。

あとは,2×3の腹の解き筋が効果的に使われているところに注目したい。この解き筋は非常に汎用性が高い反面使いどころが非常に難しい。何しろ,nin2×nがあれば即適用できてしまう解き筋なんだけれど,実際に解くために必要になる機会はそれほど多くないので解くときに放置してしまいがちになる。スリリンの端の13のように,安易に使うことが憚られてしまう気にさえなる。この問題は,部屋の数が少ない分,1つ1つの部屋の存在意義が大きい。そのため(だと解釈しているのだけれど違うかもしれない),前述したような後ろめたさを微塵も感じることなく必然として腹の白を使ってしまえる。晴れ晴れとした気持ちになれる。

マン[16] 温故而知新 可以為師牟 的良問

2006年10月02日 23時03分59秒 | へやわけレビュー
いかにも単純仮定を使ってくださいと言わんばかりに冊字配置を鏤めた,挑戦的なまでにアルカイックな雰囲気漂う問題。点対称な部屋割りがまた古めかしさを倍増させている。のだけれども,実際に単純仮定を使う場所は2か所ほどで,全体的にテンポ良く解き進められる。単純仮定の登場シーンも単調な展開にそろそろ飽きてくるかなーという終盤でのピンポイント・リリーフで,実はナニゲにポップな問題だったりする。温故知新という言葉の似合う問題。

単純仮定という解き筋は,「単純仮定といえばペンパ本『へやわけ1』,『へやわけ1』といえば単純仮定」と言ってしまっていいほど,同書で枯れ尽きるまで使い込まれてしまった。ために,現在では「陳腐なもの」という印象だけが先走っている。けれども,仕掛けが小さくまとまっているためにどんな局面でも無理なく組み込みやすいという利点を活かし,この問題のようにアクセントが欲しい場面でさりげなく見せるような使い方をすれば,まだまだ輝かせることはできるはずだ。

マン[15] くるっと回せば世界も回る

2006年09月28日 23時54分29秒 | へやわけレビュー
天地開闢や砲台といった定番もの,壁から1つ離して寝かせた3in1×5といったお約束もの,左下エリアのような個性的なものと,入り口のバリエーションが多くて序盤から楽しませてくれる問題。左下エリアの0in1×1を1マス離して並べ,即座に小分断禁〜3連禁に繋げてしまうあからさま具合は鮮やか。へやわけのルールが一通り盛り込まれている。

けれども,この問題の神髄は中盤から終盤にかけてに炸裂する「残り物の方向転換機」×2だろう。特に,中央右の3in2×4が生み出す方向転換機と,そこに至るまでの過程が楽しい。右下の入り口から,3連禁,分断禁,3連禁と流れるように繋がって,方向転換。小気味よさ,ダイナミックさ,知的さ,どれをとっても超一流の展開。余波で2×4の1を決めてしまうのも心憎い演出。適度な興奮が心地よい。

マン[14] 真一文字の四文字が快感をもたらす

2006年09月28日 00時46分14秒 | へやわけレビュー
上から5列目に廊下が入り盤面が上下2つのエリアに分けられている印象を受ける。この廊下が,見た目だけでなく展開や解き味にも強い影響を与えているのが面白い。展開という観点から見ると,廊下より下のエリアは残り物の解き筋を組み込んでの玄人好みのする流れ。廊下より上はひたすら分断禁に徹したストイックな流れ。廊下を境に見事に分かれている。

でもそれだけなら,廊下はただ境界を表すだけの標識でしかない。この問題の面白さは,5列目の廊下それ自身がダイナミックな解き筋を形成していることだ。廊下に沿って黒マスがジグザグながら両端から一直線に走り,真ん中辺りで分断禁として弾けている。横一文字の分断禁というのは,ありそうであまりないパターンだ。分断禁を見せようと思って問題を創る場合,思わず欲を出して横方向だけでなく縦方向にも黒マスを伸ばしてしまい,袈裟懸けや山型の分断禁にしてしまうことが多いからだ。長い黒マスの繋がりだけが「ダイナミック」というわけではない,ということを教えてくれる大切な問題,といってしまおう。

マン[13] Let's enjoy 対称形の呪縛 ?!

2006年09月27日 00時50分40秒 | へやわけレビュー
部屋割りにこだわった問題。点対称だけでなく,すべての部屋が2×2以上という縛りも付いていて,すっきり美しい。それでいて,(面積が大きい部屋が多いためにややホワイトニングに頼りがちになってはいるものの,)全体的な解き味という意味では全く無理を感じさせない。まあ,最近はへやわけの創り手レベルがどんどん上がっているので,「ただ綺麗なだけ」な問題が掲載されることは少ないのだけれど。

創る側の立場で考えると,「部屋割りを先に決める」という創り方は必ずしもマイナスではない。破綻する可能性が常にあるので,最後まで気を抜かずにじっくり決めていく,ということが自然にできる。部屋割りから来る制約の中で,自分の思い通りの黒マス運びができたり,この問題の2in2×4のようなクレバーな解き筋を組み込むことができたりしたときの胸の高鳴りは,難しいパズルを解いているときのそれと似ている。問題をただ創っていくだけで,パズルを創る上で絶対に忘れてはならない「気付いたときの感動」が,次々に湧き上がってくる。「解くように創る」ことが苦もなくできる。

マン[12] 発掘された砲台が新たな世界の到来を告げる

2006年09月26日 01時06分16秒 | へやわけレビュー
この本で初めて難易度が1段階上がった問題。解き筋そのものに難しいものはないのだけれど,「残り物の議論」が何度も使われているところがやや高等と評価されてこの難易度になったのだと思う。まあ妥当だろう。

残り物の議論を楽しめる問題だけど,特に右下の3in2×5で砲台を創って下端の5in2×8へ繋げるところが秀逸。ここまでの問題で砲台を使っていないのは10番と11番のみ。つまり1〜9番のすべての問題で使われているくらい砲台はポピュラーな解き筋だと言って良い。けれどもこの砲台,盤面の角でしか使えないという致命的な弱点がある。角にさえ注意を払っていれば誰でも気付けてしまう非常に易しい解き筋だ。入り口以外で使うためには残り物に潜ませるしかない。部屋を上方から削って残り物の砲台を発射,そのまま左方向に解き筋を逃がす。とても合理的で教科書的な使い方だ。

マン[11] 筋を違えるのも悪くない

2006年09月24日 23時18分26秒 | へやわけレビュー
分断禁を前面に押し出した問題。中でも下端から中央に拡がる大ループ禁が圧巻。部屋割りが点対称でしかもそこそこ美しいのだけれど,その束縛を感じさせないところも素晴らしい。

分断禁の魅力そのものについてはここでは措いておいて,今回は左上エリアに注目してみたい。「大ループ禁の白マスから3連禁で押し出された黒マス」から始まって,それまでとは筋違いの分断禁に繋げている。「筋違い」というのは,盤面を市松模様に塗り分けたときの違う色になる関係,というくらいの意味。おらけさんもインタビューで言っているけれど,へやわけで筋違いを操るのは難しい。それまでの一旦流れが止まってしまうし,同じ筋で繋げていくよりも白マスが「無駄に」増えてしまうしで,あまりいいことがない。けれど,「目先を変える」というメリットは,ときに上記のデメリットを払拭するほどの効果をもたらす。大ループ禁と同じ筋で左上エリアへ黒マスを繋げてしまう一貫性も悪くはないと思うのだけれど,敢えて違う筋を利用して小世界を形成してしまう貪欲性の方がnyanbazは好きだ。