温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

西宮市 浜田温泉

2024年04月25日 | 兵庫県

(2023年2月訪問)
前々回記事から続く関西シリーズの続編になります。まずは阪神電車を乗り継いで久寿川駅で下車。


久寿川駅から徒歩6分程で、今回の目的地である「浜田温泉」に到着です。なお甲子園からも徒歩圏内にあるそうですので(甲子園駅から徒歩15分)、野球の観戦帰りに立ち寄るもの良いかもしれませんね。
こちらは下町風情漂う街並みに溶け込んでいる昭和35年開業の銭湯なのですが、施設名に「温泉」とあるように、2001年に温泉掘削に成功して温泉を提供するようになり、2004年に現在のスタイルへ改装して現在に至っています。上画像には写っていませんが、銭湯のシンボルである煙突には「天然温泉」の文字がしっかりと表記されています。


この温泉でマニア的に嬉しくなるのが、玄関の向かい設置された源泉が落ちるモニュメント。
地下900メートルの源泉から汲み上げたお湯をそのまま垂れ流しており、自由に触れることができます。実際にここでお湯を汲む人もいらっしゃいました。


下駄箱は昔ながらの木の松竹錠ですが、番台は現代風のカウンター式。湯銭を払って中へ入ると、脱衣室は至って普通の銭湯らしい佇まいです。

なお私の訪問時は浴場内が大混雑していたため、お風呂の写真はございません。文章のみでご説明して参ります。
内湯は限られた空間に洗い場や各種浴槽などいろんな設備を詰め込んでいる印象を受け、また混雑時に利用してしまったため、ちょっと窮屈な印象を受けました。記憶が曖昧で申し訳ないのですが、内湯にはたしか6~7か所の浴槽があり、うち1つは水風呂で4つは真湯となっており、残る2つが温泉浴槽です。男湯の場合は浴場に入って右前方に2人サイズの小さな浴槽が2つ背中合わせのような形で設置されており、純然たるかけ流し状態なのですが、何分にも小さな浴槽であるため常に客が入っており、しかも周囲には順番を待つお客さんもいるために、残念ながら私は入れませんでした。


(上画像は公式サイトより借用)
男湯の場合、サウナと水風呂の間を抜けた先に露天風呂が設けられています。露天といってもアパートと民家、そして塀に四方を囲まれた立地なので景色も何もありませんが、でも銭湯にもかかわらず露天風呂に入れることは嬉しいですよね。しかも源泉かけ流しの温泉なのですから、文句なんて言ってられません。むしろ有難く思わなきゃ。

内湯の温泉浴槽はいずれも小さなものでしたが、露天の温泉浴槽には6〜7人サイズの比較的大きな岩風呂と、その奥に2人サイズの岩風呂がありますので、こちらの施設で温泉に入りたいなら露天を利用した方が良いかと思います。手前側の大きな岩風呂には岩の上から滝のように温泉が落とされており、成分付着により岩が黒く染まっています。またこの他にもう一つ湯口があり、2方向からお湯を供給することで湯加減の均衡を図っているようです。
一方、奥の小さな岩風呂は底面から温泉が供給されていました。

内湯露天ともに、温泉が供給されている浴槽ではいずれも加温加水循環消毒ろ過無しという純然たるかけ流しの湯使いが実践されています。毎分600リットルという豊富な湧出量がそのような贅沢な湯使いを可能にさせているのでしょう。分析表によれば溶存物質1.060g/kgなので、辛うじて(ギリギリのラインで)ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉という泉質名を名乗れているのですが、とはいえそんな数値とは裏腹になかなかしっかりとした知覚的特徴を有しており、実際はもっと成分が濃いのではないかと分析結果を疑ってしまいたくなるほど。お湯の見た目は薄っすらジャスミン茶のような色を帯びた透明で、床タイルや岩などオーバーフローが流れる流路は赤黒く染まっています。お湯を口に含むと金気風味と薄い塩味、やや遅れてほろ苦味、そして有機肥料のような風味が感じられ、湯中ではしっかりとしたツルスベ浴感と泡付きが得られます。特に露天奥の小さな浴槽では源泉が底面投入されているためか、湯中で残存する気泡が多く、入浴するとたちまち全身が気泡で覆われます。

阪神間にはアワアワが多い重曹泉の温泉が点在しており、拙ブログでもこれまでいくつも具体例をご紹介してまいりましたが、この「浜田温泉」もその典型例と言えましょう。私個人としてはアワアワの重曹泉が大好きなので、こちらの温泉は非常に気に入りました。次回は空いている時間を狙って再訪してみたいと思います。


ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物温泉 43.5℃ pH7.4 600L/min(動力揚湯) 溶存物質1.060g/kg 成分総計1.073g/kg
Na+:257mg(88.90mval%),
Cl-:107mg(23.62mval%), HCO3-:577mg(74.02mval%),
H2SiO3:70.7mg, CO2:13.0mg,
(2011年2月4日)

兵庫県西宮市甲子園浜田町1-27
0798-26-7088
ホームページ

15:00~24:00 毎週水曜定休
490円
ドライヤー20円有料。

私の好み:★★+0.5

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春日温泉 旅舎十二館

2024年04月17日 | 長野県

(2023年5月訪問)
2023年5月下旬に私のパートナーの親戚が集う機会があり、その親類の地元である信州佐久へ出かけた日のこと。親類の多くは佐久地方にある春日温泉「旅舎十二館」で一晩泊ったのですが、翌日に仕事があった私は東京へ戻る必要がありました。でもせっかくだからひとっ風呂浴びて帰りたいと思い、佐久を出る前に「旅舎十二館」でお風呂へ入り、ついでにお宿のお食事もいただいてから東京へ戻ることにしました。
八ヶ岳連峰の北麓に位置する春日温泉の中心部から更に狭い山道を上がった先にあるこちらのお宿。駐車場から玄関へ向かう途中のアプローチには、藤棚で藤が見事に花を咲かせており、強い芳香を放っていました。


さてお邪魔しましょう。


お食事までまだ時間があるとのこと。そこで、さっそくお風呂へ入ることに。
お風呂は玄関の奥へ伸びる狭い通路の先です。


明るく天井が高いお風呂。なお内湯のみで露天風呂はありませんが、山裾の緩やかな傾斜地に建てられているため、大きな窓からの見晴らしがよく、内湯とは思えないほど開放的な雰囲気で湯浴みできます。


洗い場には計5つの混合水栓が設置されています。この洗い場の水栓から出てくるお湯がマニア的には注目なのですが、その理由については後ほど。


浴槽はひとつのみで、その容量は5~6人サイズでしょうか。2面の窓下に据え付けられており、湯浴みしながら窓外の景色を眺められます。源泉温度が25℃であるため温泉は加温した上で湯船へ注がれていますが、ややぬるめの長湯仕様に設定されているため、時間を忘れてじっくりと浸かっていられます。


お湯は無色透明無味無臭で一見すると何の変哲もないのですが、湯船に浸かると誰しもがビックリすること間違いなし。いわゆる美人湯と称されるような温泉をはるかに凌駕するほどの強いツルツル感を有しているのです。まるでローションに浸かっているのではないかと勘違いしてしまうほどのツルツル感で、ヌルヌルという語句を用いて表現しても差し支えないほどです。分析表によればpHが9.6とかなりアルカリ性に傾いている上、炭酸イオンが29.3mgも含まれていますので、こうした影響によるものと思われます。

春日温泉は以前拙ブログで紹介した「国民宿舎もちづき荘」の飲泉できるお湯もツルツル感が素晴らしいのですが、こちらのお湯は飲泉こそできないものの浴感が極上。おそらく同じ源泉かと思われるのですが、湯使いの違いによるものなのでしょうか。
長湯仕様の湯加減と相まって、時間を忘れていつまでも浸かっていたくなるほどの極上湯でした。


なお湯使いについては館内に表示があり、それによれば25℃の源泉を一旦温め、浴槽用とシャワー用をセパレート。シャワー用は当然ながら使いきりで循環しませんが、浴槽用はかけ流しを併用しながら、循環装置を使ってろ過消毒を行っているそうです。とはいえ循環していることなど気にならないほど気持ち良いお湯でした。


上述にて「洗い場の水栓から出てくるお湯がマニア的には注目」と書きましたが、一部を循環させている浴槽用のお湯とは異なり、シャワーから出てくるお湯は加温された源泉100%ですから、完全かけ流し状態のお湯に触れたければシャワーのお湯を浴びれば良いのです。私もこのシャワーのお湯で驚異的なヌルヌル感を存分に堪能させていただきました。

お風呂から上がったところでお食事をいただきました。多くの親類が同席していたため画像は撮っていませんが、こちらのお宿は鯉料理が絶品。佐久と言えば鯉料理ですよね。正直なところ私は鯉があまり得意ではないのですが、「旅舎十二館」でいただいた鯉は、これまでの鯉料理に対する概念が覆りました。鯉ってこんなに美味いのか!
予め席には鯉の洗いが用意されており、まずこれが美味しい。その後、鯉のうま煮(鯉こくより色が淡い)も出されましたが、これもまた美味。気づけば鯉料理をペロっと平らげていました。

お湯佳し料理佳し。実に素晴らしいお宿です。この時は残念ながら宿泊できませんでしたが、次回は是非とも宿泊してゆっくり過ごしてみたいものです。


アルカリ性単純温泉 25.0℃ pH9.6 113L/min(掘削自噴) 溶存物質0.1681g/kg 成分総計0.1681g/kg
Na+:28.3mg(94.17mval%),
OH-:0.7mg, CO3--:29.3mg(74.19mval%),
H2SiO3:93.1mg,
(平成27年9月18日)
加水無し
加温あり(源泉温度が低いため)
循環ろ過消毒あり(かけ流しと併用)

長野県佐久市春日2253-343
0267-52-2019
ホームページ

日帰り入浴の可不可については直接施設へお問い合わせください

私の好み:★★★
コメント (2)
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堺市 トキワ温泉 2023年6月頃閉業

2024年04月12日 | 京都府・大阪府・滋賀県
(2023年2月訪問)
前回記事に続いて閉業してしまった温泉施設の記事となってしまい申し訳ございません。

前回記事の「弥生の里温泉」は訪問前から閉業することはわかっていましたが、今回ご紹介する堺市の銭湯「トキワ温泉」はこの度ブログで記事にするまで閉業の事実を知らず、記事を書くにあたって事実関係を確認すべくネットを調べたら2023年6月下旬に閉業していたことを知ってビックリした次第です。近年は温泉施設が相次いで閉鎖していますので、行きたい温泉があれば「また今度でいいや」ではなく、可及的速やかに訪問日程を立てるべきでしょう。後悔先に立たず。この言葉ほど温泉巡りにピッタリな教訓はありません。


さて、2023年2月に堺市を訪問した私は、阪堺電車に乗って神明町電停で下車。
電停から数ブロック歩いてゆくと・・・


目的地である「トキワ温泉」に到着です。この時は銭湯のオープン時間(13時)に合わせて訪ねたのですが、まだシャッターが閉まっており、玄関の前ではたくさんの爺さん婆さんが列を作って開店を待っていました。


やがて上半身裸のおじさんがせわしない感じで現れてシャッターを開けてくれました。開店準備に時間がかかっていたのでしょう。施設の方々が日々汗を流して準備してくださることで我々は気持ち良いお風呂に入れるわけですから、そのご苦労には心から感謝しなければなりません。


入浴券は下足場に設置された券売機で購入します。面白いのが、普通の入浴料490円のほか、黙浴450円という料金設定があること。コロナ禍の時期に導入されたものと思われますが、40円余計に払えば喋っても良いということなのか、あるいは細かな金銭感覚を持つ関西の方は40円を惜しんでみんな黙浴しようとするのか、いずれにしても面白い試みですね。私は根っからの関東人ですが、ついつい40円の安さにつられて黙浴の入浴料を購入しちゃいました。

内部は典型的な昭和の銭湯といった佇まいで、下足箱は木板の松竹錠で施錠する昔ながらのスタイル。男女別の入口を過ぎてすぐのところに番台があったり、脱衣所のロッカーも松竹錠だったり、牛乳が飲めたり・・・まさに昭和の銭湯そのものです。なおドライヤーは無料で使えたのですが、脱衣室内に設置されているサウナは別料金とのこと。

(浴室内は混雑していたため画像はございません。文章のみでご説明致します)
浴室内もこれまた昭和の銭湯さながら。入ってすぐ目の前にはかけ湯があり、男女両浴室を仕切る塀に沿って洗い場が設けられ、宝式水栓(いわゆる押しバネ式水栓)と壁直付けシャワーが8セット並んでいます。また右手前に水風呂が、右奥にはジェットバスがそれぞれ配置されています。
男湯の場合は中央から右隅にかけての位置に主浴槽となるL字形の浴槽が上下二段に分かれて据えられており、湯口から直接注がれる上段の浴槽は熱く、その下流にあたる下段は適温となっていました。そして湯口は温泉成分の付着によるためか焦げ茶色に染まっていました。

浴槽のお湯は無色透明で、湯口の熱いお湯を手に汲んでみますと、ほんのりとした金気の味と香り、そして有機肥料のような風味が感じられました。マニアの方しかわからない表現になってしまいますが、青森県の津軽平野や三八上北地方に多く見られる温泉に近い風味と言ったら良いのかもしれません。上段の浴槽に入ると全身に気泡が付着するほか、上下段ともに湯中ではサラサラスベスベの軽やかな浴感があり、熱いながらの粗熱の抜けは良いため、湯上がりには意外にも全身がスッキリとした爽快感に包まれました。

なおネット上ではこちらのお湯についてイオウ臭がするとの記載が散見されたのですが、私はまったく感じられませんでした。花粉症で嗅覚が鈍っていたのが原因かしら。分析表を見ても硫黄らしさはほとんどないので、その硫黄臭がどこから来ているのか、残念ながら私にはよくわかりませんでした。


館内には「当浴場のお湯は全て温泉です」と掲示されており、浴槽の身ならずシャワーも源泉使用なんだとか。また「溢れたお湯の再利用などは一切ございません」と書かれているように、各浴槽とも完全かけ流しでしっかりオーバーフローしており、湯使いの素晴らしさにも感心しました。市街地にもかかわらず44℃の温泉が毎分575Lも汲み上げられるのですから、加温加水循環消毒が無い状態で掛け流せる贅沢な湯使いが可能なんですね。素晴らしい!

このようにお湯が大変良いためか、訪問時は昼にもかかわらず洗い場が埋まるほど混雑しており、地元ご老人の憩いの場となっているようでした。私も再訪してこのお湯の良さを再度堪能したいと思っていたのですが、まさかその数か月後に閉業してしまうとは想像だにしませんでした。憩いの場を失ってしまった地元ご老人も相当悲しんでいらっしゃることでしょう。お湯を汲み上げるポンプの故障が原因とのこと。その修理もしくは交換には多大な費用を要するため、閉業をご決断なさったものと思われます。残念ですが仕方ありません。


単純温泉 44.5℃ pH7.61 575L/min(動力揚湯) 溶存物質609mg/kg 成分総計609mg/kg
Na+:160mg(91.15mval%),
Cl-:160.0mg(55.40mval%), HCO3-:220mg(44.26mval%),
H2SiO3:54.2mg,
(令和2年4月27日)

大阪府堺市堺区神明町西3-1-29

2023年6月か7月頃に閉業してしまいました

私の好み:★★+0.5
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弥生の里温泉 2023年2月閉館

2024年04月08日 | 京都府・大阪府・滋賀県
(2023年2月訪問)
いつも1年以上前の訪問記を記事にしている情報鮮度感ゼロな拙ブログですが、今回はそれどころか既に閉館してしまった施設を取り上げます。入れない温泉を紹介することになり申し訳ございません。過去帳入りした温泉のアーカイブとしてご覧下さいますと幸いです。

今回取り上げる「弥生の里温泉」は大阪南部の和泉市にあり、阪和線信太山駅から徒歩1~2分という便利な立地で営業していたのですが、残念ながら私が訪ねた2023年2月の末に閉館してしまいました。


上述のように、電車でアクセスするならば阪和線を利用するのが最も便利なのですが、生来のへそ曲がりである私は敢えて阪和線に乗らず、南海高野線から分岐する泉北高速鉄道に乗車し、終点の和泉中央駅で下車して、和泉市のコミュニティーバスに乗り換え、「信太山駅前」バス停で下車しました。バス停からもすぐに着けます。


こちらが施設敷地の入口。右側がこれから利用する温浴施設の建物(2023年2月末閉館)で、左手が別棟の宿泊棟なのですが、宿泊棟旨もその後閉業してしまったようです。


なかなか大きな建物ですね。壁面には2020年9月19日に営業再開する旨が大きく掲示されていますが、それから約2年半で閉じてしまうことになるとは。コロナ禍の影響でしょうか。残念です。


玄関前には源泉の足湯と、源泉のお湯汲み場が設けられていました。お湯に触れる部分が思いっきり赤茶色に変色しており、それだけでもお湯の濃さが窺い知れます。お湯汲み場のお湯を手に汲んで口に含んでみますと、はっきりとした塩味とともに金気味や炭酸味、そして土気味が感じられました。色も味も相当濃い温泉のようです。


こちらはポンプですね。おそらく源泉を汲み上げる設備かと思われます。


さて入館しましょう。


玄関を入ったところには、閉館のお知らせが掲出されていました。


吹抜けになっているエントランスホールに受付があり、ここで入湯料を支払うとロッカーキーが手渡されるので、それを手にしてエレベーターで浴場がある3階へ。


奥へ細長い構造をした更衣室を抜けて浴場へ。
内湯にはいろいろな浴槽があり、窓側には温泉の浴槽が並んでいました。奥の方には約2.5m四方の浴槽が2つ(奥がぬるめでその手前がやや熱め)、手前側には桧か何かの木材で作られた5〜6人サイズの浴槽があり、いずれも自家源泉の温泉なのですが、加水ろ過循環しているため、浴槽のお湯はわずかに黄色く底に若干の沈殿が見られる程度で、またほんのりとした薄塩味が感じられるばかりで、玄関の足湯やお湯汲み場から得られたような源泉の特徴は大幅に消えていました。なお浴場内の洗い場は半分ほど使えない状態でした。閉館を目前に控えていたため、修理を断念していたのでしょう。


一方、露天ゾーンには岩風呂と2つの壺湯があり、いずれも源泉掛け流し(加温循環併用)とのこと。たしかに岩風呂はかけ流しと循環を併用しているような感じでしたが、(あくまで私の体感ですが)2つのつぼ湯は循環のない加温掛け流しだったのではないかと思われます。


さすがに循環していない源泉のお湯を注ぎこんでいるだけあって、浴槽では源泉の特徴が良く表れていました。湯船のお湯は黄土色に濁り、湯中では赤茶の浮遊物が目立っています。湯口のお湯からは明瞭な塩味や金気、弱い炭酸味、土気味が感じられ、浴槽まわりには塩化土類泉的な析出がこびりつき、成分付着により赤茶色に染まっています。湯船に浸かるとキシキシと引っかかりつつ皮膚の皴へ入り込んでいくようなしっとりとした浴感が得られ、特につぼ湯はぬるめの湯加減であるため長湯するとお湯の良さを存分に実感でき、最高に気持良い湯あみを楽しむことができました。海辺やグリーンタフの温泉にありがちな火照りやすいパワフルな温泉です。


ナトリウム-塩化物温泉 38.5℃ pH7.0 湧出量記載なし(動力揚湯) 溶存物質2836.7mg/kg 成分総計2888.4mg/kg
Na+:709.7mg(68.27mval%), Mg++:57.0mg, Ca++:170.9mg(18.86mval%),
Cl-:1271.4mg(81.65mval%), Br-:1.2mg, HCO3-:486.4mg(18.15mval%),
H2SiO2:67.2mg, HBO2:30.4mg, CO2:51.7mg,
(2009年3月18日)
加水無し
加温あり
露天風呂はろ過無しの放流式だが循環加温装置使用。
内湯の温泉浴槽は循環ろ過装置使用
塩素系消毒剤使用(条例の基準を満たすため)

大阪府和泉市池上町1-696-1

2023年2月末に閉館しました

私の好み:★★+0.5
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ホテル阪神大阪 客室の天然温泉

2024年03月29日 | 京都府・大阪府・滋賀県
(2023年2月訪問)

まだまだ冷たい冬の北風がスギ花粉を伴って街を吹き抜け、私の鼻をムズムズさせることで、いよいよ春が近づいてきたことを感じさせた2023年2月の某日、大阪の福島駅前に屹立する「ホテル阪神大阪」で一晩を過ごしました。このホテルは「全客室のバスルームで自家源泉の温泉に入れるホテル」として温泉ファンには夙に有名ですから、いまさら拙ブログで取り上げることも無いような気がしますが、関西方面の記事がまだまだ弱いので、少しでも嵩増しを図るべく、その際の記録を今回記事に致します。お付き合いください。


当たり前ですが、まずはフロントでチェックイン。
アメニティ類はフロント前に用意されていますので、各自で必要なものを必要な分だけ手に取ってから客室へ向かうことになります。


こちらが私の泊まった客室。
独りで泊まるには十分な広さがあり、綺麗で且つ設備も整っていますので、とても快適に過ごせました。


時系列は前後しますが、上画像は客室からの眺望です。今回の客室は南に面していたため、「ほたるまち」など堂島川沿いに林立するビル群を一望できました。夜景も綺麗でしたよ。


さて、こちらが客室のバスルーム。
一見すると何の変哲もないごく普通のユニットバスなのですが・・・


バスタブの上に、普通のホテルでは見かけないコックと案内表示が取り付けられていますね。説明は不要かと思いますが、このコックは、ユニットバスのシャワーやカランから出るお湯を、一般的な水道の沸かし湯もしくは自家源泉の温泉に切り替えるものです。コックにぶら下げられているものは・・・


温泉の成分分析表ですね。やっぱり分析表が無いと本物の温泉っぽくないですよね。
これによれば、源泉名は「徳次郎の湯」で、泉質は単純温泉とのこと。各イオンの細かな数値もちゃんと表示されています。


それでは、コックを「温泉給湯」へ回して、バスタブに温泉を溜めましょう。
分析表に記載された源泉の湧出温度は34.4℃ですが、ホテルのような設備ではレジオネラ属菌の発生抑制などを目的として50~60℃近くまで加温しており、こちらのホテルも同様ですから、そのまま浴槽にお湯を張ったところですぐには入浴できません。かといって、水で薄めてしまうのはもったいない。熱いお湯のままバスタブに溜め、そのままお湯が適温まで冷めるのをひたすら待ちましょう。なおお湯が熱いので時間をかけて冷ました方が良いことは、フロントでもチェックインの際に教えて下さいます。


湯船にお湯が溜まり、丁度良い湯加減まで落ち着いたので、いざ入浴です。
お湯は麦茶を薄めたような色をしており、透明度は比較的高く、お湯からは僅かながらモール泉を思わせる香りが漂ってきます。お湯を口に含んでミスと薄くほろ苦さを感じ、同時に金気のような味覚も得られるのですが、金気に関しては源泉由来なのか設備由来(配管などの影響)なのかよくわかりません。なお分析表によれば総硫黄が1.8mgも含まれており、その数値の通りならばハッキリとした硫黄感が得られても不思議ではないのですが、カランから出てくるお湯に硫黄感を感じることはできませんでした。熱々に加温された上に給湯系統内でグルグル回っているため、その過程で硫黄感がすっかり抜けてしまうのでしょう。

この「徳次郎の湯」はこのホテルの自家源泉。地下から汲み上げて貯湯槽にストックし、熱々に加温した状態で給湯系統内を循環させていますが、客室のコックを開けて以降のお湯は使い捨てとなるため、実質的にかけ流しの湯使いです。

コックにぶら下がっている分析表によれば泉質は単純泉であり、溶存物質の量も484mg/kg程度なので、比較的成分が薄めの温泉と言えそうですが、その中でも炭酸水素ナトリウムが主成分となっており、また多くの河川が集まる大阪湾岸の河口域でもあるため、阪神間に多く見られるモール泉的な重曹泉に近い特徴を有しているものと思われます。とはいえ、いわゆるモール泉らしい芳醇な香りがはっきり感じられるわけでも、ツルスベの滑らかな浴感が強いわけでもなく、どの知覚的特徴も控えめであるため、温泉としての有難みを感じない人にとっては、ただの濁ったお湯に過ぎないかもしれません。一方で、私のような温泉ファンにとって、大阪のど真ん中で誰にも邪魔されずにかけ流しの温泉に入れるのはこの上なく幸せな環境です。私は1泊の中で、夜2回、朝1回、計3回お湯を張り替えながら、徳次郎の湯を存分に堪能させていただきました。


なおホテルの7階には「阪神サウナ」があり、宿泊客は別料金ながら割安の800円で利用できます。しかも手ぶらで大丈夫。フロントでロッカーキーを渡されますので、それを手にしてロッカールームに向かうと、ロッカー内には館内着と大小タオルが用意されているわけです。
内部はとても綺麗ですが、都市部のど真ん中ゆえかさほど広くはありません。サウナは1室のみで、お風呂も5〜6人サイズの主浴槽、ジャグジー、思いっきり塀で囲われた3人サイズの露天風呂、そして水風呂という構成です。洗い場のシャワーも9箇所ほどだったかと思います。主浴槽には客室と同じく「徳次郎の湯」が張られているのですが、こちらは加温加水循環ろ過消毒という湯使いであるため、客室のお風呂で得られた源泉の面影はほとんどありません。温泉目当てではなく、駅前の好立地でゆったりと寛げるサウナ兼お風呂という観点で利用なさると宜しいかと思います。この施設については公式サイトにて画像など詳しく紹介されていますので、そちらをご覧ください。


「阪神サウナ」内には「徳次郎の湯」という源泉名の由来について説明するプレートが掲示されていました。曰く、この地にはかつて徳次郎という者がおり、菅原道真公が大宰府に流される途中でこの地に立ち寄った際、徳次郎に厚くもてなされたため、そのお礼に菅原道真がこの地を「福島」と名付けたんだとか。その徳次郎とそのおもてなしの心にあやかって「徳次郎の湯」と名付けたそうです。ホテルに相応しいネーミングですね。


温泉とは関係ありませんが、こちらはホテルの朝食。洋定食と和定食から選択するスタイルだったので、私は洋食をチョイス。とても美味しく、ペロッと平らげちゃいました。温泉も良いですが朝食もおすすめです。


徳次郎の湯
単純温泉 34.4℃ pH表記無し 溶存物質484mg/kg 成分総計489mg/kg
Na+:105.4mg(91.77mval%),
HCO3-:305.1mg(95.84mval%), HS-:1.6mg,
H2SiO3:56.8mg, H2S:0.2mg,
(2019年4月17日)

大阪府大阪市福島区福島5-6-16
06-6344-1661
ホームページ

私の好み:★★+0.5

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