夜明けの曳航

銀行総合職一期生、外交官配偶者等を経て大学の法学教員(ニューヨーク州弁護士でもある)に。古都の暮らしをエンジョイ中。

サッチャー元首相亡くなる(後輩として)

2013年04月09日 | Weblog

サッチャー元首相が亡くなりました。
実は、Oxfordでは、彼女と同じSomerville College(学生は学部を問わずどこかのCollegeに必ず属す)にいました。

ノーベル化学賞受賞者ドロシー・ホジキンが彼女のチューター(同大学では毎週一回教員=tutorが個人指導をし、tutorialと呼ぶ。私も現在民法の授業で取り入れている)だった。ホジキン以外もインディラ・ガンジーもこのカレッジにいた。

私が在学していたとき(1992ー1993年)は、「女性初の首相を出したことに誇りをもっているでしょう?」とnaiveにも、当時住んでいた院生寮公共スペースで友達(何人かとは今でも誕生カードとかやりとりしいる)にきくと、みな困ったような顔をして、「大学の予算を大幅に減らしたし、保守的で女性が困るようなことをした。きっと大金持ちと結婚したので高額でシッターを雇えるから働く女の大変さもわからないのよ。だから、歴代首相の中で唯一名誉博士号をもらっていない卒業生なのよ。」と評判は悪かった。

Margaret Thatcher Conference Centreを作るときも、名前を入れるのに反対した人がたくさんいた。(確か、はじめはDorothy Hodgkin & Margaret Thatcher Conference Centreとするという案だったのでは?でも結局彼女一人の名を冠することになった)

でも、カレッジでは半旗にして追悼の意を表している。カレッジからきたレターの一部を以下に。(カレッジが保守化したのでなく偉大な卒業生への礼節なのだと思いたい)

また、彼女のカレッジへの直筆レター
http://www.some.ox.ac.uk/CMS/files/Thatcher%20Letter%20open%2019790001.pdf


Baroness Thatcher (Chemistry, 1943) has died today, aged 87

08 Apr 2013

It is with great sorrow that we have learned of the death of Margaret Thatcher, Baroness Thatcher of Kesteven, this morning at the age of 87.

Baroness Thatcher, then Margaret Hilda Roberts, arrived at Somerville College in 1943 to study Chemistry. Raised in modest circumstances above her father's shop in Grantham, the young Margaret impressed her teachers with her passion for scholarship. Her tutor at Somerville was Dorothy Hodgkin, to date the only British woman to have won a Nobel Prize for science (in her case, Chemistry). Margaret's academic work was strong, and College records show that she was recommended for several grants and prizes, and an Exhibition. She also became President of the Oxford University Conservative Organisation.

Since her graduation in 1947, Somerville continued to enjoy a warm relationship with Baroness Thatcher; she was elected to an Honorary Fellowship of the College in 1970. She maintained a particularly close friendship with our former Principal Daphne Park. It is largely thanks to the visionary fundraising activities of Baroness Park that the College was able to build its Margaret Thatcher Conference Centre, which was officially opened by her in 1991. Further successful fundraising campaigns led us to establish The Margaret Thatcher Fund, which now incorporates several exciting initiatives.

Somerville College sets students from all backgrounds on paths to future success. We are immensely proud to have educated Britain's first - and so far only - female Prime Minister and one of the most internationally significant statespeople of the twentieth century. On this sad day, we pay tribute to the truly pioneering spirit that propelled her to the pinnacle of British political, and public, life.

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奥田英朗『噂の女』

2013年03月04日 | 読書
ハズレがないと全部読んでいる作家の一人。

一人の悪女の生き様を周囲の人間の目を通して描く10個の章からなる小説。
主人公の21歳から27歳までが描かれる。

ヒロインの内面がけして描かれないところ、章と章の間で何が起こったか読者の想像に任せるところは東野圭吾『白夜行』にも通じる。

作品の完成度はさすがだが、作者が『最悪』『無理』などでも描いてきた地方都市(奥田の出身地でもある岐阜が舞台)の閉塞感やしがらみにしばられた不正や狎れ合いが罷り通る現実への痛切な告発が一貫している。

(私の学部は地域の政策などを研究しているので、私は地方都市の問題を抉ったものとして学生に『無理』を読むことを勧めている)

また、ジェンダーの視点からも秀逸である。

ヒロインの短大の同級生のセリフ
「平凡な結婚をして、子供を二人産んで、小さな建売住宅を買って、家事と育児とローンに追われて、田舎の女はそういう人生の船にしか乗れんやん。でも糸井さんは、女の細腕で自分の船を漕ぎ出し、大海原を航行しとるんやもん。金持ちの愛人を一人殺すぐらい、女には正当防衛やと思う」

「世界中どの国でも、女に殺される男の数より、男に殺される女の数の方がはるかに多いやん。やったら方りうもバランスを取るべきやと思う。女が男の百倍殺されとるなら、女が男を殺しても、罪の重さは百分の一やて。」


確かに、地方都市ってこんなに腐っているのかと驚かされる。

①警察は幹部が異動する度に餞別と称して大金を地域から徴集(そのかわりに駐車違反のお目こぼし等がある)
←これは横山秀夫の『64』にも出てきた。

②市営住宅の半分は市役所職員等のコネで決まる。職員の口利き料は10万円。

③公共事業の受注の談合は当たり前

④カルチャースクール・料理教室の講師は親戚の教育委員のコネでしかも親族のスーパーの売れ残りの悪くなった食材を使う。

等々。
これらを登場人物は全員「田舎で生きるということはこういうことだ」と諦めている。
私にはとてもできない。

ヒロインの美幸は、④については直談判して講師を代えさせたり、知り合いの女性を食い逃げした男にヤクザの弟を使ってヤキを入れたり、何より男を食物にする生き方自体が、こうした男中心の腐敗に大きくnoを突きつけているようにも見える。

それが、ほかの悪女ものと一線を画す痛快さになっている。

ただ、短大時代に大きく変貌した彼女だが、そのきっかけに一体何があったのか、出てくると思ったらこなかったのでそこは残念。




ちなみに全部読んでいる(読む方針の)作家は下記

三島由紀夫
笙野頼子
桐野夏生(グロテスク最高)
奥田英朗
角田光代(八日目の蝉最高)
貫井徳郎(乱反射最高)
津村記久子(女性会社員小説の白眉)
群ようこ(無印シリーズ最高)
平安寿子
林真理子(白蓮れんれんを読んでから)
湊かなえ


全部ではないが大体読んでいる
芥川
夏目
川端
鴎外
太宰治

横溝正史(金田一モノと由利モノは全部)
姫野カオルコ(エッセイは全部)
酒井順子
西村賢太(なぜかクセになる)
諏訪哲史(アサッテの人は三島と似た世界観、実際ファンだそうだ)
東野圭吾(玉石混交)
中村うさぎ
岸本葉子(教養の見田ゼミの先輩)
有川浩
伊坂幸太郎
ナンシー関


これから全部読もうかと思っている
中島京子(FUTONがすばらしかった)
奥泉光(桑潟ものは抱腹絶倒、笑いすぎて電車で読めない。シューマンの指はなぜこのミスの一位でなかったか不思議)
横山秀夫(受賞作より、64、震度ゼロがすごい)







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あなたは荒ぶる神だ、そうに違いない。

2013年02月17日 | 読書
ほぼ1年ぶりの更新である。閲覧してくださる人が毎日いるというのがありがたくまた申し訳ない。

吉田敦彦の『日本神話の深層心理』を読んでまた関連妄想してしまったことがあるので書いておく。

大国主神が一緒に国づくりをしていたスクナヒコナ(先日鳴り物入りでスタートして視聴率で大コケしたドラマ『Going My Home』に出てくる妖精クーナはこの神様らしい。是枝監督の『歩いても歩いても』はものすごく良かったのだが。出来の良い長男が命懸けで助けた海で溺れていた少年[これがまた医師だった息子とは比ぶべくもないだめっぽさで救われない]を罰のように毎年命日に来させる母親のやるせなさ、嫁姑のチクチクした喧嘩とか、愚痴とか、ちゃっかりしたきょうだいへの思いとか、けして綺麗事でない人間や家族の営みがリアリティをもって描かれていて最高だった)に去られた後、出雲の国で大物主に出会い、

「あなたはいったい誰なのですか?」と問うと、

「私はあなたの幸魂(さちみたま)・奇魂(くしみたま)だ」と答えた。
国づくりは大物主が助けていたというのである。
(日本書紀)

また、古事記によると、大物主は、大国主神に自分を御諸山に祭れといい、それが現在の三輪山、大神神社である。


これは三島の『豊饒の海』に影響を与えていないだろうか?

三島自身が解説しているように、第一巻『春の雪』は和魂、第二巻『奔馬』は荒魂を描いたものだという。

また、『春の雪』で主人公松枝清顕は、滝で親友本多繁邦から「あなたは荒ぶる神だ、そうに違いない」といわれる不思議な夢を見る。

夢日記に書かれたそれらの夢はすべて実現するが、実際に第二巻『奔馬』で、清顕の生まれ変わりである飯沼勲が大神神社で行われた剣道の御前試合のあと、奥の院に行く途中の滝で水浴びしているところに、大阪控訴院判事の本多が院長の代理で臨席したあと行き合う、というかたちで再現されたのである。


私はこのエピソードが大好きで、2008年、夫と大神神社の奥の院に登り、途中その滝も見た。思ったより小さな滝で、ここで本当に大勢の剣道部員が禊をしたのかと疑うほどだった。結構ハードな登山になったが、三島も登ったと思うと感無量だった。

写真は一切撮ってはいけない(この前後に世界ふしぎ発見でもやったがやはり映像はだめだった)ので、入口の写真をお見せします。

第二巻『奔馬』では、同じ機会に本多は奈良の率川神社の百合祭りにも出て「こんな美しい祭りを見たことはない」という。これも調べて見に行った(会員になると中で見せてくれるので会費を払って会員になった)。

本多は奈良ホテルに泊まったという件があるので、奈良ホテルに行って「三島が泊まったそうですが」と聞いたら、支配人が「こちらは不勉強ですみません。せめてものお詫びに皇族の泊まる特別室をお見せします」といって案内してくれた。


京都、奈良などの名所はほとんど行っているのに、こうやって解説をちゃんと書こうと思うとつい億劫でそのままになってしまうが、少しずつ紹介していきたいと思いますのでよろしくお願いします。


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2012年 演劇等

2012年12月24日 | 演劇

1月17日
寿歌 堤真一 新国立

2月4日
下谷万年町物語 唐十郎 藤原竜也 シアターコクーン

14日 うるう KKP 天王洲銀河劇場

3月3日
峠 モダンスイマーズ シアタートラム
 
7日 サド侯爵夫人 世田谷パブリックシアター

10日 雪やこんこん こまつ座 紀伊国屋サザンシアター

鈴本演芸場 一之輔真打

20日 幻蝶 古沢良太 内野聖陽 シアタークリエ

21日 Welcome 日本 大人計画 本多劇場

25日 Under the World 燐光群 笹塚ファクトリー

4月9日 戯曲を書く(前川知大、蓬莱竜太、倉持裕の対談。新国立で)
14日
陽だまりの樹 上川隆也

21日 闇に咲く花 こまつ座 サザンシアター

28日 文楽 国立文楽劇場 

ハイタウン ヨーロッパ企画 立誠小学校跡

5月12日 ミッション イキウメ シアタートラム

16日 ポツネン 小林賢太郎 神奈川芸術劇場

25日 永野宗典不条理劇場 立誠小学校跡

26日 シダの群れ 岩松了 堤真一シアターコクーン

 27日 天使猫 
   月に   おふぃす300 座 高円寺

30日 宮沢賢治の世界 堤真一・鈴木京香・風間杜夫による朗読 世田谷パブリックシアター

6月8日
ロミオとジュリエット 佐藤健 シアターブラバ

9日 
南部高速道路 長塚圭史演出 真木よう子 シアタートラム

12日 シレンとラギ 新感線 藤原竜也 青山劇場

20日 斎藤工 握手会 サンシャインシティ

23日 桜の園 三谷幸喜 パルコ劇場

25日 天日坊 宮藤官九郎 シアターコクーン

26日 猿之助襲名披露 新橋演舞場

7月10日 宇宙みそ汁 燐光群 梅ヶ丘

13日 高き彼のもの マキノノゾミ 京都文化芸術会館

14日 山下智久 握手会 三宮

21日 しみじみ乃木大将 こまつ座 紀伊國屋ホール

25日 muro式 永野宗典 スズナリ

8月3日 山下智久コンサート 代々木体育館

4日 暗いところからやってくる イキウメ 横浜KAAT劇場

11日 ふくすけ 松尾スズキ作 シアターコクーン

其成礼心中 三谷文楽 パルコ劇場

18日 芭蕉夜船 こまつ座 紀伊國屋ホール

9月1日 Avenue Q Broadway

2日 ヤンキース試合 ヤンキースタジアム
シカゴ Broadway

3日 Evita  Broadway

7日 a half century boy  久ヶ沢徹50歳記念 小林賢太郎等作 本多劇場
すうねるところ 木皿泉 シアタートラム 

8日 本谷有希子・西村賢太トークショー シアターウェスト

9日 坂上忍

19日 ボクたちの四谷怪談 橋本治作 シアターコクーン

10月 6日 遭難 劇団本谷有希子 シアターウェスト

8日 リチャード三世 新国立
鵜山仁 小田嶋 岡本健一によるアフタートークショー

13日 エッグ NODA MAP 東京芸術劇場

16日 笑う巨塔 東京セレソンデラックス解散公演 斎藤工 サンシャイン劇場

29日 こんばんは父さん 永井愛 シアターウェスト



11月5日 春の雪 宝塚 日本青年会館

10日 楽園 モダンスイマーズ 

11日 松坂桃李トークショー お茶の水女子大学

17日 日の浦姫 井上ひさし 藤原竜也 シアターコクーン

18日 図書館的人生(上) イキウメ

20日 星の息子 燐光群

23日 ロールシャッハ KKP

12月 8日 月とスイートスポット ヨーロッパ企画

9日 シンデレラからサド侯爵夫人へ 吉祥寺シアター

12日 桑田佳祐コンサート 大阪城ホール

15日 いきちゃってどうするんだ 松尾スズキ作・演出・主演 スズナリ
トロイアの女たち 白石加代子 シアターウェスト

16日 topdog underdog 堤真一・千葉哲也 シアタートラム






棟方志功展

ボストン美術館展

正倉院

平櫛田中

ベルリン展


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海外渡航先

2012年05月03日 | profession

アメリカ

メキシコ

カナダ

ブラジル チリ アルゼンチン パラグアイ

イギリス

ベルギー オランダ 10 リヒテンシュタイン スイス オーストリア ドイツ フランス モナコ公国 イタリア バチカン ギリシャ スペイン 20 ポルトガル スウェーデン デンマーク フィンランド

ルクセンブルグ

エジプト ケニア モロッコ

ブルガリア ルーマニア 30 チェコ ハンガリー

ノルウェー アイルランド

イスラエル

ロシア ベラルーシ ポーランド 

タイ シンガポール 40

中国

ペルー

トルコ

香港 マカオ

カンボジア マルタ

インド

韓国

オーストラリア 50 ニュージーランド

インドネシア

シリア ヨルダン レバノン

エクアドル

南アフリカ

ベトナム ミャンマー モルジブ 60

フィリピン  

マレーシア

モンゴル

台湾

ニューカレドニア

モーリシャス

セーシェル

フィジー

イラン

アラブ首長国連邦 70

ボスニア・ヘルツェゴビナ モンテネグロ クロアチア スロベニア

チュニジア 

グアテマラ ホンジュラス

ラトビア エストニア リトアニア 80

アゼルバイジャン グルジア アルメニア


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2冊目の単著を出しました

2012年03月05日 | profession
ここのところ、演劇とかテレビドラマの話ばかりだったので、仕事もしているということもアピール、ということで、2010年3月に一冊目の法学研究書『中国民商法の比較法的考察』を出してから2年ぶりに、二冊目の単著を出しました。



『民法改正とアメリカ契約法』という研究書です。

アメリカ契約法の解説をしながら、民法改正の各論点について、検討委員会試案、加藤委員会試案や法制審議会での議論状況を紹介し、アメリカ法やCISG等の影響をどのように受けているかについて考察したものです。

何より、現在民法改正の議論がどのようになっているかを各案に配慮し、中国法まで視野に入れてきちんとまとめ比較法的に見た類書はないのではないかと思います。


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岡田惠和を『おひさま』で見損ない、『最後から二番目の恋』でまた見直す

2012年02月17日 | 演劇
いやー、岡田惠和への私の評価はこの1年で急降下したが最近またうなぎ登り。ジェットコースターみたい。


そもそも、好きな脚本家である岡田の作品であること、住んだことのある場所の隣町が舞台であることなどから見始めた『おひさま』、意地で最後まで見たが、苦痛以外の何物でもなかった。

何よりも、戦中の雰囲気が全く出ていない、登場人物が全員21世紀を生きている人にしか見えない、井上真央が花団と同じ演技で空回りというのがだめだめ。

「女だから○○というのだけは我慢できない」といい、母親からの教えもそうなのに、母の死後彼女が一人で家事をし、父や兄二人が全く手伝いもしないのは矛盾だ。
主人公が松本のそば屋に嫁ぎ、出産後も安曇野の小学校で教員を続けるために、赤ん坊を安曇野の実家に預けず(父と兄だがほとんど外で働いてはいない)、他人の飴屋夫婦に預けるのも、「男に育児は無理」というジェンダー・バイアス。

炊飯器もガスコンロも冷蔵庫もスーパーもないその頃(戦前)のしかもど田舎の家で4人家族の家事を担っていて、毎日女学校の帰りに飴屋でだべる時間があるのもリアリティに欠けすぎる。全体に生活の厳しさがまるで伝わってこないのもだめ。

樋口可南子が娘を亡くして悲しいときにたまたま見かけた女の子に後日お見合いを持ってくるのも変だし、主人公が酔って人事不省になって見合い相手に告白して結婚に至るのもご都合主義すぎ。

渡辺美佐子(松本の老舗の菓子屋開運堂の娘らしい)や串田和美が出てるのは松本出身だからでしょうね。

1923年生まれの主人公やその10歳は上であろう恩師の伊藤歩も含めて殆どの関係者が2011年に存命という徹底したハッピーエンドもええ加減にしろといいたい。最後の方は意味もなく「うふふふふ」と笑う井上の声を聞くと虫唾が走るようになった。

こんなドラマが人気というのだから最近の視聴者はだめなんだ。



すっかり、「見損なったぞ、岡田惠和」と見捨てようとしたところに、1月から始まった『最後から二番目の恋』。16年前同じ岡田で『巡り逢えたら』の翻案『まだ恋は始まらない』と同じ中井・小泉なので見ることにした。しかし、嬉しい驚きがあり、これは、岡田の最高傑作『ランデブー』(1998年)に次ぐ名作だ。

『ランデブー』は、前にこのブログにも書いたが、岡田自身も、自己ベスト2に選んでいたように、私も大変な傑作と思う。私は岡田という脚本家をこれで初めて見出した。

ストーリーは、主婦・朝子(田中美佐子)が、夫(吹越満)の怪獣オタクぶりに愛想を尽かして家出し、リバーサイドタウンという不思議な町にたどり着く。そこにあるホテル「マリア」に滞在し、そこに住む真由美と不思議な友情で結ばれる。また、幼い兄弟のためにつぶれかかった屋形船を切り盛りする美青年(柏原崇)と、余命いくばくもないと知り家族にわからないようにどこか遠くで死のうとする風来坊のようなその兄(高橋克典)とも交流ができる。
真由美は、先に賞をとってしまったために、同じく作家を目指していた恋人に自殺された過去を持ち、ために人生を斜めから見ており、純文学の才能があるのにポルノのみを書いて流行作家になっているが、兄(高橋)はその恋人にそっくりだった。
私はこのドラマの高橋があまりにかっこよかったので、ついファンクラブにまで入ってしまい、コンサートにも行ってしまった(「サラリーマン金太郎」で熱が冷めた)。

最終回で、クールな真由美が、朝子との友情を大事に思っていることを、かちかち山とか、姥捨て山とか引き合いに出しながら訥々と語るシーンが絶品。
そして、30年あっていない恋人との恋に終止符を打つためだけにホテルを経営していた主人・岸田今日子(最終回では、恋人のジョージ・チャキリスが本当に別れを告げに来た。それで、マリアという名はウエストサイド物語から来ているのだとわかった)や、真由美の担当編集者・田口浩正や、吹越満ら脇役の怪演も良かったし、近年にない、出色のドラマだったと思う。
ちなみに、主題歌は、多分これが最後の小室プロデュースだったであろう華原朋美の"Here We are"で、アンニュイ感を醸し出していた。


なぜ、『ランデブー』の話を長々としたかというと、『最後から二番目の恋』もこれに似ていると気づいたからだ。

主人公の小泉今日子は45歳のTVドラマのプロデューサー、仕事や私生活の閉塞感から鎌倉の古民家に引っ越してきて隣家の中井貴一一家と知り合う。中井は妻を事故でなくし、思春期の娘と、早くに両親をなくしたため親代わりになってきた30代の双子の弟妹(坂口憲二と内田有紀)と同居する鎌倉市役所の職員。そこに、高校の担任教師と大恋愛して結婚したはずなのに夫からも息子からも必要とされなくなったと不満を募らせる妹飯島直子が家出してきて居座る。

とにかく、科白がリアリティがあるのに小粋でウイットに富んでいる。とくに小泉と同じような独身キャリアウーマンの親友二人(森口博子と渡辺真起子)とのあけすけな会話は、「ここまでいっちゃっていいの?!」というくらい。そして、私も40代女性なので、いちいちうなずけることばかり。

内田有紀の変人ぶりもすごいが、坂口憲二は難病を抱え、いつ死ぬか判らないために特定の恋人を作らず、「世界中の女性を幸せにすることが目標」と称して、長い関係を結べないことを納得づくで、夫から捨てられたとか、町で恋人にすっぽかされたとか、かわいそうなたくさんの女性に一夜限りの夢を与える「天使」業を、自宅でカフェを営む傍ら営んでいる。

坂口がなぜそんな生き方をするのか、はじめはわからないのだが、4回目くらいで病気が原因と明かされ、そこで私は、「そうか、わかったぞ、これは『ランデブー』の高橋克典の演じたキャラなんだ!」と金田一耕助シリーズの加藤武のように手を打った。

こうしてみると、内田の演じる変人キャラは『ちゅらさん』の菅野美穂なんだーとか、いろいろ思い当たったりする。


なぜ、『おひさま』はくそつまらなく、『最後から』はこの上なく面白いのか、それは、岡田が「大人のファンタジー」を描くのがうまいからだからなんだ。

天使みたいな夭折予定のイケメンが10歳以上年上のキャリアウーマンの恋人になろうとする、しがない中年の課長が娘くらいの年齢の可愛い部下(佐津川愛美、彼女の舞台はいいね)とその母親(美保純)の両方から惚れられるとか、どう考えてもファンタジーなのだが、科白回しのリアリティとこじゃれたとことが救っている(中井が「お連れしようとしていたレストランに図らずも他の人(小泉)と先に行ってしまったので両方に申し訳なく別の店にした」と正直に言うと、美保が「誠実なんですね。でも結婚相手にはそれを求めても,デイトの相手だとそういう誠実さは却下です」とか、なかなか思いつかない科白だと感心する)

まあ、最終的にはラブコメの王道をいき、口げんかばかりしている中井と小泉はくっつくんだろうなと予想はつくんだが、それはそれで過程を楽しませてもらおうじゃないの、と思える。

また、岡田は、自らはっきり認めているように、「めぞん一刻」や「タッチ」といった漫画に影響を受けている。
まず、大勢の他人が同じ建物に住んで交流する、というパターンが多い。
「ランデブー」もそうだし、「ちゅらんさん」の一風館、そして、「ぼくだけのマドンナ」もそうだった。
「ちゅらさん」の、ヒロインの夫は文也、死んだその兄は和也、というのは「タッチ」へのオマージュだ。
今回の中井の一家も、その隣人の小泉も、何か合宿っぽいノリで、やはりこの路線をいっているといえるだろう。


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2011年 演劇Best5

2012年01月08日 | 演劇

えんぶに投稿するために選んだ。

舞台Best 5

1位 イキウメ 太陽
2位 イキウメ 散歩する侵略者
3位 虚構の劇団 アンダーザロウズ
4位 燐光群 たったひとりの戦争
5位 渡辺えり ゲゲゲのげ


演者 Best 5
1位 木場勝巳 ミシマダブル キネマの天地 
ジャニーズが三島の難しい芝居をやりきれたのも脇を彼が固めていたから。とくに、10回近く見てきた『サド侯爵夫人』のシミアーヌ夫人役は彼が今までで最高と断言できる。たぶん三島がこの作品で最も愛した登場人物で最悪の悪徳が最高の聖性につながるというベナレス的な価値転換や自分自身も投影しているから。やはり三島自身が投影されている『黒蜥蜴』も男優が演じる方がしっくり来るのと同じなんだろう。これから、シミアーヌ夫人役は男がやるべきだとさえ思った。

2位 大竹しのぶ ピアフ
説明不要でしょう。

3位 小林賢太郎 劇作解体新書 ポツネン The Spot

4位 藤原竜也 ろくでなし啄木

5位 中川晃教 ゲゲゲのげ


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2011演劇総括その2

2012年01月08日 | 演劇

以下はネタバレの可能性があります。
7月~12月は34件。

ちなみに、私が芝居のチケットをとる条件は大体以下の通り。

1.好きな役者が出演する。

第一グループ(絶対外したくない) 堤真一 真田広之 内野聖陽 上川隆也 (4人ともTVで好きになったのだが、偶然、舞台出身か舞台にかなり力を入れている人ばかりだった)藤原竜也 斎藤工
第二グループ(できれば行きたい) 佐藤健 古山憲太郎 山崎雄介 
第三グループ (とくに好きというのではないが演技がうまいと思うので舞台の演技を見たい役者)
大竹しのぶ 白石加代子


2.好きな作家の脚本

第一グループ(絶対外したくない) 三島由紀夫 三谷幸喜 野田秀樹 宮藤官九郎 本谷有希子 松尾スズキ 小林賢太郎
第二グループ(できれば行きたい) 坂手洋二 永井愛 井上ひさし 渡辺えり 前川知宏 上田誠 福田雄一

3.好きな劇団・プロジェクト
イキウメ 大人計画 ウーマンリブ 燐光群 虚構の劇団 ヨーロッパ企画 劇団鹿殺し 平田敦子・福田転球の二人芝居

7月
 ベッジ・パードン 三谷幸喜 @世田谷パブリックシアター
ロンドン留学時代の夏目漱石(野村萬斎)の話だが、同宿人(大泉洋)が嫌がらせした動機が「ユーモアのセンス」というのがあまりにもリアリティも説得力もない。また、浅野和之の一人11役は面白いことは面白いがそれで演劇自体の面白さを上げようとするのは邪道。深津絵里の繊細な演技が救いだった。

3日 おどくみ @新国立
庶民にとって天皇は何かを描いたさりげない社会派作品だがあまり感心しなかった。

23日 文楽 心中宵庚申 @国立文楽劇場

30日 荒野に立つ 阿佐ヶ谷スパイダーズ @座 高円寺 
とくに感心しない。

31日 岸家の夏 劇団鹿殺し @青山円形劇場
千葉雅子、峯村リエが楽しんでいる感じが良かった。


8月
6日 ゲゲゲのげ 渡辺えり @座 高円寺
前々から見たかった渡辺えりの傑作。ゲゲゲの鬼太郎をモチーフに現在と過去、いじめの問題と罪悪感などが複雑に交錯する作品。舞台を狭しと駆け回り踊り歌う中川晃教の演技がすごい。馬淵恵里可も舞台女優としてすっかり安定した。燐光群の『現代能楽集』や内野聖陽主演の『イリアス』などの演技も光っていた。
『白線流し』に出た女優4人のうち、ダントツで人気だった酒井美紀が精彩を欠き、脇だった馬淵が舞台女優として活躍、京野ことみ(渡鬼で馬淵と同居する役だったのには驚いた)、遊井亮子は脇役専門ながらドラマの仕事が途切れないのと比べて皮肉だなと感じる。

夫は2011年に見た中でこれが一番といっている。

奥様お尻をどうぞ ケラリーノ・サンドロヴィッチ @本多劇場
ものすごく笑えるがそれだけ。

7日 クレイジーハニー 本谷有希子 @パルコ劇場
予定より遅れに遅れた本谷の新作。今まで『幸せ最高ありがとうマジで』『来来来』がすごく良かったので期待大。
いつもドMの痛い主人公が出てくるが、今回は若い美人の物書きで本谷本人とかぶりすぎてちょっと正視できなかった。
初舞台にしては長澤まさみはそつなくこなしているが、演技よりあまりにも白くて長いきれいな足に同性ながら釘付けになってしまった。

天使は瞳を閉じて 虚構の劇団 @グリーンシアター
旧作らしいが、冒頭に原発事故後の処理人員の話が出てきて、ドームの中に町を作り、外界の致死量の放射能から免れている町を舞台にしたタイムリーな作品になっている。
第三舞台と同じ役をやった大高洋夫(私は三谷脚本の深夜ドラマ『子ども、ほしいね』の印象が強いんだが)がファンには嬉しいんだろう。

 奇っ怪 @世田谷パブリックシアター
イキウメの前川知宏のホンなのでいった。大災害による死者への鎮魂をモチーフにしていてタイムリーだが、イキウメほどの評価はできない。

斎藤工 握手会 @池袋サンシャイン
メジャーデビューCD『燦々』発売記念握手会
『ゲゲゲの女房』につげ義春がモデルのアシスタント・小峰役で出てきたとき、その涼しい目元に思わず吸い寄せられた。
週刊誌で工の母親千枝子さんがオススメの本を紹介している中につげの『貧困旅行記』があった偶然には驚いたが、読んでみたらとても面白かった。つげが葛飾区出身と知って嬉しかった。

とにかく、話が面白い。教え子にもいるけど、シュタイナー教育を受けた人はどこか違う。
司会者とのトークの掛け合いも絶妙。「行きつけのラーメン屋ではさらに気に入りの職人を指名してその人が作ったラーメンしか食べない」とか。『ハガネの女』で共演した子どもたちも来ていた。
何人もの人との握手は疲れるだろうに、ベビーカーの中の赤ちゃんにまで腰をかがめて手を触れてあげて優しいなと感動。
私が「京都から来ました」といったら「本当ですか?ありがとうございます」といってくれた。
肝心の歌だが、声があれほどいいのに、いまいちだった。残念。

それから、ネットで検索すると、その名もずばり『Boys Love』など、やおい系の映画等のマーケットで活躍していた人だと最近知った。『テニスの王子様』に出ていた忍成修吾、加藤和樹などは大体そうらしい。だからどうということはないのだけど。


9月
3日 ニューチャーリー @北沢劇場
福田転球と平田敦子の二人芝居を大阪のIndependent Theatre(2008年4月から約二年間住んだ東日本橋の家のすぐそば。学部長に教えてもらった)で2回見てすごく面白かった(そのうちの一つが土田英生脚本だったので2010年に『初恋』を見たがそれほど面白くなかった)ので、今年二人芝居の代わりにやった(開演前にロビーでタバコ吸ってた平田さんに「二人芝居やらないんですか?」と聞いたらそういっていた)これを見たかった。虚構の劇団で一番イケメンの山崎雄介くん(学部長の息子さんではない)が出ている事もある(写真参照)。彼は大河『龍馬伝』の初回から武市半平太の従兄弟役ででていた。

10日 キネマの天地 井上ひさし @サザンシアター
映画とストーリーが全然違うので驚いた。

11日 ロベルトの操縦 ヨーロッパ企画 @本多劇場
オチがどうも切れが悪い。

24日 どん底スナイパー @スタジオコモネ
モダンスイマーズのお気に入り、古山憲太郎作・演出なので。初めてとは思えない出来だったと思う。
同時上映『デンキ島・松田リカ編』はいまいちだった。


10月
 朱雀家の滅亡 三島由紀夫 @新国立
数年前池袋のアウルスポットこけら落としでやった(初演で息子役をやった中山仁が主人公を演じるのが胆だったが、佐久間良子が科白を噛みすぎ)のと同じ宮田慶子演出。しかし、鳥居を舞台の中心奥に据えるなど演出が異なる。
終演後のシアタートークで國村隼演じる主人公の有名な最後の科白「どうして私が滅びることができよう。もうとうに滅んでいる私が」は、今までの演出(私は1990年の杉浦直樹のも見ている)では独白っぽいのに、今回は、ぱっとヒロインを振り返っていう珍しい演出でしたがその理由は」ときいたが、別に意識していないようで少しがっかり。

16日 ピアフ @シアタークリエ
大竹しのぶの歌唱力を補ってあまりある演技力に圧倒された。

21日 劇作解体新書 小林賢太郎
ここから5回にわたって作者が作品を語るイベントに参加。
このブログで既に解説。

22日 隠蔽捜査 隠蔽捜査2 @シアター1010
上川隆也と板尾創路(うちの学科主任に顔もしゃべり方もそっくり。ところで山本文緒『恋愛中毒』の創路は関係あるのか?)が出ているので見に行ったが、2011年どころか、ここ数年で最低の舞台だった。
大体、どちらも登場人物の一人がナレーターになって、いちいち直前の場面の解説をするのが信じられない。客を馬鹿にしているのか?この後見たイキウメ『太陽』と同じ「演劇」と呼ぶのもおかしいと思うほど腹が立って仕方がなかった。

上川隆也は結婚して、また、事務所をかわってから仕事を選ばなくなった。いい役者なんだからもっと自分を大事にしてほしい。

某日 普天間 青年座 坂手洋二 3部作 正面から沖縄基地問題を扱った問題作。


11月
5日 サンパウロ市民 平田オリザ @吉祥寺シアター
ソウル市民シリーズ第5作

19日 たったひとりの戦争 燐光群 @座 高円寺
まず観客は原発建設予定地の見学コースに参加する設定で係員の誘導に従って施設に入り、説明を受ける。つまり、観客も登場人物になっているという斬新な設定。原発反対運動で地下に潜る闘士、それを助ける女性という設定は前述の『帰還』ともかぶるが、円城寺あや(帰還を見に行ったとき会場で会った)演じる作家の描く地球侵略SFも隠喩として絶妙に交錯、今年の坂手洋二三部作のどの作品よりも完成度が高かった。

20日 イキウメ 太陽 
流行する死病に罹患する者としない者に分断された日本列島という特異な設定が圧倒的な緊張感をもって観客に迫る。差別する側とされる側、正常と異常の二元論の相対化、人間に潜む醜い自己中心性、大震災で生起した様々な問題を形而上学的に訴えかける、2011年最高の最高傑作。主演俳優の逮捕という悲劇を乗り越えたのも見事。

23日 ソウル市民 第1部~第4部
疲れた。


12月
3日 おやすみかあさん @あうるすぽっと
白石加代子と中嶋朋子の二人芝居が面白くないはずがない。
しかし内容はのっけから衝撃的すぎる。最後に救いがあるかもしれないと思ったが、なかった。

20日 90ミニッツ 三谷幸喜 @パルコ劇場
設定は面白い。しかし、どうしても近藤の自分本位に西村が犠牲になったようにしか見えず、どうにもこうにも後味が悪い。
やっぱりこの頃、三谷にはかつての輝きはない。
息をのんだ『マトリョーシカ』や『オケピ』のような作品を数年に一度でもいいから書いてほしいと切望する。

某日 アイドル かくのごとし
クドカンが出るので見に行った。岩松了のこういう科白や間の取り方が好きな人は大好きなんだろうが私はそれほどでもない。
夏川結衣は好きな女優で、その初舞台というのも楽しみだったが、やはりそつなくこなしていた。







 



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2011年演劇総括その1

2012年01月08日 | 演劇

えんぶの投票をしようと思い、ここで昨年見た演劇を総括することにした。

3月までは、大阪の劇場で見ることが多かったが、4月に夫が霞ヶ関の本省に転勤になり、谷中のマンションを借りてからは、ほぼ毎週末東京に来ているので、東京で夫と週末に見に行くことが多くなった。

むろん、京都の大学に移るまでは専ら東京で観劇していたのだが。

比較すると、同じ演目を東京と大阪の両方でやっているなら、大阪で見る方が条件がいい。
まず、①値段が少し大阪の方が安いことがある、②会場が狭いことが多いので、より舞台に近い席が取りやすい、③そもそも、チケットが東京よりずっと取りやすい。おそらく観劇人口と公演回数×座席数の比率が大阪の方が有利なんだろう。東京でも大阪でもない人がわざわざ見に来るとしても、東京公演の方がずっと多いので都合が付けやすいといこともある。

ただ、東京でしかやらない公演というのも依然多いという致命的なデメリットもあるが。

また、つくづく思うのは、なぜ、京都に、東京のシアターコクーンや大阪のシアタードラマシティに匹敵するようなちょうどいい劇場が皆無なのかということ。東京なんか葛飾足立も含めて23区全部にその規模の劇場があるぞ。文化都市を標榜しているのにあまりにもお粗末。


1月から6月までは30回。

1月
15日 文楽 恒例の正月演目 姫捨松 傾城恋飛脚 国立文楽劇場にて

16日 Newspaper @ブリーゼホール
絶対DVDにできない皇室ネタをやってくれるのが楽しみ。しかし、今回は、直前に内閣改造があっていろいろ仕込みが間に合わなかったようで気の毒。

30日 ろくでなし啄木 三谷幸喜生誕50周年祭 の第一弾 藤原竜也が石川啄木役

既にこのブログに詳細な感想を書いている。
http://blog.goo.ne.jp/otowa1962/e/c183eced2b11dcdc38cab870b800550c


2月
11日
流れ姉妹たつことかつこ @森ノ宮ピロティホール
古田新太とか千葉雅子とか、小劇団出身系の役者が仲間内で楽しんでやっている感じ。

同日
大人はかく戦えり @シアタードラマシティ
子ども同士の喧嘩をめぐって二組の夫婦が話し合いをする一場の芝居。
慇懃無礼な態度だった四人がだんだん本音を明らかにしてくる過程が絶妙、とくに秋山奈津子の嘔吐シーンが圧巻。

南へ NODA MAP @東京芸術劇場 久々の野田秀樹
火山観測所への天皇行幸を中心に日本にとって天皇とは何かを働きかける。
しかし、野田らしい言葉遊びも真のテーマへのひねりも他の野田作品に比べて今ひとつ。

シングルマザー 永井愛 二兎社 @東京芸術劇場
沢口靖子主演、シングルマザー支援のNPOが舞台。
日本のシングルマザー支援のお粗末さと母子家庭の悲惨な状況はよくわかるが、政治的メッセージ性が強すぎ、それがまだ演劇作品として十分昇華しきっていないような気がした。

永井愛は『ら抜きの殺意』を読んで敬服し、2010年も竹下景子主演『かたりの椅子』で市民社会の権力の隠然とした恐ろしさの絶妙に描いた作品に感動したところだったのでちょっとがっかりした。ご本人とは少し話した。


3月
サド侯爵夫人(ミシマダブル) @シアターブラバ 生田斗真主演

金閣寺 @梅田芸術劇場 森田剛主演

既にこのブログに感想を投稿

http://blog.goo.ne.jp/otowa1962/e/08b1d3efa16418ba8012fd8349e2cfd9

13日
我が友ヒトラー(ミシマダブル)@シアターブラバ

既にこのブログに感想を投稿

http://blog.goo.ne.jp/otowa1962/e/08b1d3efa16418ba8012fd8349e2cfd9

4月2日
山下智久 ソロコンサート @大阪城ホール

既にこのブログに感想を投稿

http://blog.goo.ne.jp/otowa1962/e/dabea8d5e6a7906084d15372060deed6

この直後、急にブログのアクセス件数が増えたと思ったら、ジャニーズ関係の2ちゃんねるで紹介されたらしい。
また、台湾人のブログで私のこの記事が紹介され、中国語に翻訳されているのを見て驚いた。

http://i.mtime.com/qyaii/

某日 文楽公演 @国立文楽劇場

16日 
国民の映画 三谷幸喜 @森ノ宮ピロティホール
ヒムラーが庭の花につく害虫を「なるべく殺さずに花を守る方法があるしその方が望ましい」と繰り返しいいながら、ユダヤ人を虐殺することには何ら躊躇がない皮肉を描いているのはいいが、それがしつこくて鼻につく。こういうアイロニーはさらっとやらないとね。最近の三谷作品はどうも今ひとつだ。
拾いものと思ったのが、平岳大の大きな身体を大げさに動かす道化ぶり。喜劇の才能もあると見た。
何年か前紀伊國屋サザンシアターで平幹二朗・佐久間良子と親子共演で『鹿鳴館』でデビューしたときより格段の成長ぶり。

日本人のへそ 井上ひさし
どこまでが劇中劇なのか、何回も実は、といれかわるメタファーの入れ子構造。それ以外は別にとるところなし。

22日
Top girls
古今東西の歴史に名を残す女性たちのディナーの席から一転して、英国のある姉妹・母子の確執。
女性の生きづらさを演劇的に見事に昇華したフェミニスト必見の舞台

劇団鹿殺し ジャージ公演
汗組『愛卍情』
@阿佐ヶ谷ひつじ座
つかこうへいへのオマージュ作品

23日 アンダーザロウズ 虚構の劇団 @座高円寺
学部長の息子さんが出演する舞台。前作『エゴ・サーチ』も見に行って良かったので今度は夫と。チケットは学部長に頼んだ。
「学部長も来てたりして」と開演前に夫に話してたら、夫が「そういえばさっきロビーで落ち武者ヘアの人を見たような…(本人がプロフィールに落ち武者と書いているからいいと思うが)」というので会場を見渡したら前の方の席にいたので挨拶。

前作よりずっと良かった。旧作なのに、風評被害の怖さなど、大震災のことを上手に取り入れており、また、いじめられていた側が平然と多数を恃んでいじめる方にさっさと転換する恐ろしさも十二分に描けていて感心した。

それにしても、学部長は何回目からしく、オチが始まる前から笑いはじめ、他の客が笑い終わってもいつまでも笑い続けてその特徴ある笑い声が劇場中に響いているのは、後で話した息子さん本人も「困りますよね」といっていた。
学部長は新入生合宿のプロフィールも大半が息子・娘自慢。専門にしているベーシックインカムの一般人向け講演でも「十分儲からなくても芸術の道に生きるという私の子どもたちのような生き方も可能になる」と何度も子どもたちに言及していた(結局自分が仕送りいている分を政府に出してもらうということか?)。
親に虐待されて育った私から見ると、こんなにも親に手放しで臆面もなく愛され,自慢にされている息子さんたちは本当に羨ましい。

高円寺の改札で文学部のやはり演劇マニアのS先生とばったり。

29日
オペラ座の怪人 劇団四季 @京都劇場
夫といくはずが、現在は本省で室長を務めるので大震災関連法案のために国会が開かれているため(注:国会議員は週末や休みは地元で広くいえば次回選挙のための活動をするのが普通なので、例年はゴールデンウイークは国会はやらない。国会やっているときは、いつ議員から大臣に質問が来るか判らないので官僚は出勤しなければならない。大臣の答弁は官僚が作成するという悪習は、あれだけ官僚批判をする民主党政権になったらなくなると思っていたのに全然違った。本当に腹が立つ)、京都に来られなくなり、仕方なく、親しい演劇好きの学生につきあってもらった。

浅利慶太はどうかしていると思ったのが、訳詞のセンスだ。
このブログでも書いたことがあるが、http://blog.goo.ne.jp/otowa1962/e/14d2ffd1f2ba13dbd06d8dc6b07d83f5

ガストン・ルルーの原作を下敷きに、普遍的なテーマを斬新なスタイルで描いていることにあると思う。優しく、必ず幸せにしてくれるであろう男性と、危険で一緒にいても不幸になりそうな男性(このことは、私の一番好きなナンバーAll I Ask of You において、それぞれの男性がChristineに歌いかける科白が、 Raoulのそれが “Let me lead you from your solitude” であるのに対して、Phantom のは、“Lead me, save me from my solitude”であることに象徴されている)との間で揺れる女性というのは、源氏物語の浮舟と匂宮・薫大将の三角関係にも遡れる普遍的なテーマである。(そういえば、劇中最も美しいシーンであるPhantomがchristineを船に乗せ、地下水路をこぎ行くシーンは、匂宮が浮舟を舟に乗せて連れ出すシーンと似ている)

この劇の最も重要な部分は、同じメロディで二人の男性が歌う歌詞の対照なのに、その部分が日本語ヴァージョンでは省略されているのだ。浅利慶太は三島とも親交があり、『鹿鳴館』を思い入れをもって四季で上演してくれているが、どうもわかっていないのではないかとかなりがっかりした。

5月
7日 小林賢太郎 ポツネン the spot @京都文化会館
演劇好きの学生に勧められたのと、最近好きになった斎藤工が「移動中ラーメンズとか聞いている」と話していたので。
上品なユーモアに感心。「男子自由型」なんかの表現は永遠の少年性をアピールして母性本能をくすぐるなと思った。
影絵を作るのは、後で見ても舞台に何も印がなくて、その神業に驚愕。

後に『新日本語学校』のCDを入手し移動中に聞きまくり、人前でも吹き出してしまうのに困った。
その学生さんにDVDを借りてかなり見て感心。

14日 たいこどんどん 井上ひさし @
どうも冗長。科白に出てくる東北各地の地名に胸が痛む。
古田新太が科白をかみまくり。もっと長い科白を完璧にこなしてた『表裏源内蛙合戦』の上川隆也の偉さを再認識。

 イキウメ 『散歩する侵略者』@シアタートラム
直前の記事に書いた通り、身体が震えるほどの感動。出会いに感謝。

 芝浦ブラウザ ヨーロッパ企画 @新グローブ座
いつもの近未来SFっぽさは減じているが、不動産屋で建物の中まで詳細に見られるという設定は新鮮。
登場人物の名前もはっきりしないゆるーい会話は相変わらず心地いい。
井ノ原快彦が出たせいか観劇マナーに問題ある客がいた(つまり普段芝居に来ない人ということ)。

 アヴァンセプロデュース『或る、致し方ない罪に対する やるせない復讐のはじまり』坂上忍作演出
『つくしだれの子』とかドラマで子役として活躍していた坂上忍がいつのまにかこんなことをやっていたのか。
見に行ったきっかけは、学部長にいいと勧められたモダンスイマーズの芝居『真夏の迷光とサイコ』(YOU主演)でファンになった古山憲太郎が出ていたから。(写真参照)終演後、なんと、彼が役作りのためにびっしり書いたノートをくれた!
自殺志願者が一同に集められるという演劇的設定が生きていた。

21日 鳥瞰図 @新国立
別にわざわざいかなくても良かった。

鎌塚氏放り投げる @本多劇場
執事と女中頭のラブコメ。口述する『演劇解体新書』で作者が語ったところによると、カズオ・イシグロの『日の名残』に触発されたとか。また、盆使いの特異さが特徴。しかし面白くなかった。


22日
唐十郎 ひやりん児 @鬼子母神
一度唐十郎の出演舞台を間近で見たかった。年なのに水槽に入ってずぶ濡れになったりの熱演。


6月
12日 燐光群 推進派奄美の基地誘致に関する芝居。
後で触れる『帰還』『普天間』と並ぶ坂手洋二三部作。

25日 ウーマンリブ Sad SOng for Ugly Daughter
宮崎あおいの初舞台。最終戦争の起こった未来から来た荒川良々がはまり役。
宮崎の役はやはりクドカン作品の『泣くもんか』のヒロイン像とかぶる。

26日  井上ひさし @新国立劇場
亀次郎はもう老練の域と言えるだろう。しかし、いくら演技がうまくてもその性的魅力で主人公の生き方を変えさせるヒロインとしては永作博美はミスキャスト。それにはじめから仕組んだにしては、彼女と番頭の最初のやりとりが矛盾。

 民藝 『帰還』坂手洋二 三部作
大滝秀治の舞台を初めて見る。












 



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小林賢太郎 劇作解体新書

2011年12月31日 | 演劇

8ヶ月ぶりの更新です。

4月に夫が東京の本省に転勤になり、ほぼ毎週末東京都行き来する生活になり、いきおい、京都にいるときはほとんど大学にいて仕事仕事、起きている時間帯に2時間以上続けて自宅にいる日がないほどなので、宅配便の再配達の指定もできない日々で、それどころではなかった。

昨年出版した中国法の研究書に続けて、来年3月に出版予定の『民法改正とアメリカ契約法』の執筆、大学から研究助成を受けての社会福祉協議会による高齢者の財産管理サービスの調査でも忙しく過ごした。

今年はだから旅行もあまり行けなかったが、夏休みに行ったコーカサス三国(アゼルバイジャン、グルジア、アルメニア)はすごく良かった。80カ国事情旅行に行き、たいていのことでは旅情も感じなくなっていたのに、日本とあまりに違う政治情勢や宗教のあり方に文字通りのカルチャー・ショックを受けた。

また、夫が香港の領事になって赴任していたときにパーティーで何度か着て以来、10年以上機会がなかった和服を着ようと、(せっかく京都に住んでいるのやし)着付け教室に通い始めたのも今年。しかし、着物は金がかかる。小金のある(実はあるわけではないのだが)キャリアウーマンがよく陥る落とし穴に自分もはまりそうだ。林真理子や群ようこのエッセイを読んで、自分だけは絶対着物に手を出さないと誓っていたのに、去年、奄美大島に旅行に行って本場の大島紬を買ってしまったことがきっかけになった。

演劇は60回くらい行ったが、なんといっても、イキウメという劇団に出会えたのが収穫だった。「散歩する侵略者」は内容はもちろん、シンプルな舞台装置の使い方の妙にもうならされたし、「太陽」の原発事故も想起させる差別の問題、異なる種類の人間が共存できるかという小野不由美の『屍鬼』とも通底するテーマ、その緊張感漂う演劇的空間の創出に圧倒された。
しかし、主演俳優の窪田道聡の偽装結婚による入管法違反・逮捕には、「こんなすごい芝居で主演する役者でも小劇団は食えない」という現実を思い知らされた。

また、演劇好きでよく情報交換する学生さんから勧められた小林賢太郎のポツネンを見に行って、その上品なユーモアのセンスにはまった。最近好きになって、夏に握手会にも行ってしまった斎藤工が移動中にラーメンズを聞いていると話しているのを聞いたのも関係あり。

秋には、彼も講師を務めた「劇作解体新書」を渋谷のゲキシネに見に行った。

○企画趣旨(cubit clubのHPより)
「劇作家本人が、自身の戯曲を徹底的に語り尽くす!
最前線クリエイターの劇作のヒミツに迫る公開講座です。

「あの劇作家のこの戯曲は、どんな経緯を経て書かれたのだろう」
「このセリフはどうやって編み出されたのだろう」
「なぜこの場面の次はあの場面なのだろう」
「あの脇役はどんな背景を背負っているのだろう」

お芝居を見ていてそんな興味が湧き上がったことはありませんか?また劇作を試みたことのある方なら、他の劇作家がどんな方法で書いているのか知りたくなることはありませんか?
この講座では人気劇作家の戯曲を毎回1本取り上げ、土田英生をナビゲーターに、ゲスト本人に徹底的に解説していただきます。1本の戯曲の生まれる過程を通し、その劇作術を解剖していきます。


ゲスト
10月17日(月)土田英生「なるべく派手な服を着る」(ナビゲーター:横山拓也)
10月21日(金)小林賢太郎「TEXT」
10月23日(日)倉持裕「鎌塚氏、放り投げる」
11月7日(月)長塚圭史「ラストショウ」
11月8日(火)ケラリーノ・サンドロヴィッチ「すべての犬は天国へ行く」
※本講座は上記各戯曲について作家自身が解説していくものです。
 事前にお読みになってご参加下さいますようお願い申し上げます。 」

通し券でないとチケットが買えなかったので、全部見に行ったが、小林さんと他の人では全然違うという感じがした。(小林さんのときは満席だったが他は空席が目立った)

その学生さんからのリクエストもあり、小林さんの回で取ったメモを以下に記す。
冒頭のような事情で、今日になってしまった。

今年の正月休みは、結婚して殆ど初めて、どこにも旅行に行かず、東京の家でゆっくりする。夫が4月には麹町・六番町に買ったマンションに引っ越すこともあり、和服を着て地元谷中を散策するつもり。

はじめに、TEXTのDVDのうち、対象になった『不透明な会話』(配布されているのもこの部分のみ)を上映。

司会(土田英生、以下、T):なぜこの作品を選んだか?

小林賢太郎(以下、K):劇作に興味ある人のための企画と聞いたので、シンプルで説明しやすく、基本的なスキルが入っているので有用。

T:ノープランで書き出すのか、緻密に計画を立てるのか?
(土田氏は今回全員にこの質問をして、小林以外はみんなノープランと聞いて自分と同じと安心していた。「小林賢太郎は完璧なプランを作るらしいですが」とその度にいって「そんなことできるわけない」とゲストと共感していた。)

K:設計図を作る。構造を頁で割る。
たとえば、このテキストだが、信号機のコントで途中で主客逆転するが、これは本当にやりたい透明人間の前振り。
理不尽な理論で説得される、というルールを先にしらせておく。なくてもいいが、脚本は説得できなければならない。

A 信号機 B透明人間

AとBの部分は、切って貼って並べると、きれいに対応するようになっている。

客にどのくらい思い出させるか、忘れさせるか(ある程度は忘れてくれないと困る)
転ドン、思い出させるというスキル。
かぶせ、角度替えでできているのがこの本

T:計算して作る?

K:自分の勘が信用できない。ボケ、かぶせ、角度がえの黄金比率がある。
実際に稽古して初めてわかることもある。台本は設計図、稽古は建築、本番はそこに住むこと。住んで初めて不具合に気づくことも。初日に気づいたことは翌日に直す。ポツネン・スポットは98公演やって98回目で初めて気づいたこともあった。完成するということはない。

T:設計図が周到すぎるのでは?

K:自分の作品は芸術作品でなく商品。金をとれるもの。①機能、②デザイン(センス)のうち、①をまず完成させる必要がある。だから、はじめは最低限のものを作る。機能美の塊。でもそれだけだと息がつまるので、前後に影響ない部分でアドリブで遊ぶ。
ノリで書くとか、何かが降りてくるとかはない。

T:降りてくるはずがない。はじめのとっかかりはどうやって考えるのか?

K:まず方向性は決める。本件は、「コントのふりした座っている漫才」というコンセプトから始めた。コントのスキルとして漫才は基本が全部詰まっていてrespectしているジャンル(次のライブは語感がテーマだった)。コントでありながら漫才の作りは今後もやりたい。発信と受信、AA'BB'表の図できる。アトリエに貼っておく。他のコントとかぶらぬようにする。

T:他のコントとの絡み方がすごい。セット無し二人だとどうしても似て見えるのに、ただの伏線ではない。納得させる力がすごい。条例のつながり方がにくい。後でつながってくるのに作家がついつい筆が滑ったように見える。

K:そう見せている。小笑いにして思い出してもらうようにする。

T:常盤=ジョバンニ、金村=カンパネルラで『銀河鉄道の夜』を下敷きにしているんですよね。同じ効果音でseparateし、透明人間と見えない金村がつながっている。

K:一人芝居が二人芝居に、二人芝居が一人芝居に、A面B面の関係、ガシャンガシャンという列車の連結音で分けている。
あえて、たとえば「今度は二人でやろうか」といった科白をあえて使わないのは、客を信頼しているから。その方が芸術性があがるという、本番直前に思いついたアイディア。

T:条例、言語禁止条例までやりきったのにパトカーの音であれ?と思うと強盗だった,どうやってそんなアイディアを?

K:そこから考えましたから。客の心の中で完成される情報を大切に。「2」といわず、「1+1」といって客の心の中に「2」を思い浮かばせる。科白はヒントに過ぎないから。

T:はじめからそうだったのか?

K:はじめの頃は、いいすぎていた。万能でありたいと思っていた。説明過多のものもやった。その中で自分に向いているのが今のやり方。

T:ペットボトルとかは、いらない脱線?

K:そうですね。起承転結の転みたいな?稽古場から発想して変えることもある。

T:どれくらいかわる?

K:台本は読み物として面白いところまでは作っている。それを大の大人が口に出せばおもしろさは上乗せされているはず。締切は守る。

T:書けない夢とか見ない?間に合わない夢。

K:見ません。(きっぱり!)夢は見るものじゃなくて叶えるものだからね。
(ここで客大いに沸く)
でも不安はありますよ。

T:自覚的なところは?

K:自分が何になりたいかはっきりさせること。二種類のTシャツや靴を並べてどちらが好きか、自分で理由を言語化する、この訓練が大事。迷ったときにパッと選べる。「何が嫌いか」と突き詰めるのは危険。大学で専攻した美術でも選択の連続だった。色の選択に理由はない。しかし、自分は突き詰めたかった。受けない理由をほじくり出す。自分の「何となく」は信用できない。

T:自分は1行目から行き当たりばったりだけど。

K:芸術家ですか?

T:全く計算無しの小林賢太郎が見てみたい!

K:面白くないぞー。

T:実生活との関連は?

K:全て作品に投影している。でも、一度納得できなかった生活上の実体験を作品に投影したら失敗した。

T:「色すらいらない」という科白は見事に透明人間に話題転換している。

K:のりしろ。不自然でなく話題転換。

T:「スーパージョッキー」も片桐君の存在必要ないよね。

K:僕の休憩時間です。

○会場からの質問コーナー(開演前に客が書いて出したものから土田氏が選択)
Q:あてがきするか?
A:する。役者の癖に合わせる。科白の音域、間、呼吸がより生きる科白回しにする。

Q:『銀河鉄道…』は最初に作ったか?
A:最後。しかし、タイトルははじめから頭にあった。『銀河鉄道の夜』を小林賢太郎がコントにしたらどうなるか、がテーマ。宮沢賢治もテキストにして、かつ、このコントがコントの手本になれという意味で、全体のタイトルTEXTを決めた。

Q:落ちを考える段階は?
A:仕組→オチ→中身

Q:スランプに陥ったことは?
A:(きっぱり)ないです。

Q:この企画になぜ参加したか?
(学生さんによると、めったに露出しないらしい)
A:土田さんですから。長いつきあいですから(私は片桐が土田の『初恋』(見に行ったけどあまり面白くなかった。平田敦子と福田転球の恵美須町のIndependent Theatreの二人芝居のホンが面白かったから見に行ったんだけど)に出たりしてるからだと思うが)

Q:その地方に合わせて考える?
A:いいえ。

Q:しゃべりすぎに気をつけているか?
A:一文字でも省けるよう努力する。

Q:これだけは譲れない創作上の条件
A:人を傷つけていないか?(でも、外国人差別ネタではNHKに苦情が殺到したのでは?)

Q:作者と演者の切り替えは?
A:30回以上やっていると舞台上にいても「明日こうしよう」と考えてしまう。

Q:短編中編長編の書き分けは?
A:してない。長編は教習所気分。

Q:今後の予定は?
A:KKPで初めて一人芝居。ラーメンズの台本を全部伏線と宛て書き先除して作り出す。


○最後の挨拶
僕はこうやるというだけの話です。ただの触媒の一つですから、皆さんは自分が一番いいと思う方法で作品を作ってください。



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裁判所見学

2011年04月13日 | profession

担保物権法の授業の一環として、毎年京都地方裁判所を見学している。

昨年度は2月に実施した。授業期間中は、他の授業を休ませるわけにも行かず、結局この時期になってしまった。

主たる目的は、三点セット、つまり、裁判所が、競売の入札希望者のために用意した物件明細書、現況調査報告書、評価書の三点を、閲覧室で見てもらうことである。最近は、ネットでも見られるようになっているが、やはり現物のファイルを見てもらうのがいいと思っている。

一昨年度の感想文では、「夜逃げした後の散らかった部屋の写真とかがリアルだった」「下宿の側のマンションが競売の対象になっているとわかり、競売を身近に感じた」という声があった。


10時前に集合し、まず、裁判員裁判の開かれる大きな法廷で、裁判員制度についての説明と、裁判官席に実際に座らせてもらって、法服などを着させてもらった。20歳にして法服があまりにも似合う子もいた。



裁判長の席の下に赤いブザーがあって、非常時に押すことなども教えてもらった。


その次の民事裁判の傍聴は思いがけず非常に面白かった。

刑事裁判と違って、民事裁判は、書類のやりとりが中心なので、傍聴してもよくわからないことが多い。

前任校のあるソモラ市の裁判所に法科大学院生と行ったときは、ちょうど授業で取り上げたばかりの過払い金返還訴訟だったり、知り合いの弁護士が代理人だったので解説してもらったりした。

一昨年度は少し複雑な案件だったが、知り合いでもないのに代理人弁護士が少し別室で説明してくれた。

しかし、今回は、説明がなくても証人の社長の尋問だけでよくわかる案件だった。

京都市内の従業員一桁の小さな会社のトラブルで、入ったばかりの新入社員が3ヶ月で辞めてしまい、会社が、5月に実施したグアムの社員旅行の費用の返還と彼女が壊したプリンターの修繕費の支払いを求めた訴訟だった。

会社側にも被告側にも弁護士がつき、とくに被告側はベテランそうな弁護士が二人ついていて、訴訟物はせいぜい10万円程度、弁護士費用を考えればペイしないが、双方とも意地を張り合っているような感じがよくわかった。

争点になるのは、2月に改訂した就業規則「入社後1年以内に辞めた場合は旅行費用を返還する」という条項の有効性だ。

もっと驚いたのは、裁判終了後(結審は次回ということになったが)、大島裁判長が、事件の解説をしてくれたことだ。
私が、「海外留学の費用の返還義務については判例があって、金銭消費貸借という構成であれば、返還義務があるということだったと思いますが、こうしたケースは判例があるのですか?」と聞いたら「ないようですね」ということ、同席していた神戸大学法科大学院出身の司法修習生の女性も答えてくれた。
「こういうケースは和解になることが多いと思うのですが」
「当事者がどうしても判決がほしいというものですから」

裁判長が傍聴人にわざわざ説明してくれるというのは本当に異例だ。
ソモラ市の裁判長は、民事裁判の訴訟指揮で言葉の解説を入れてくれたりしたが、それでもかなり親切な方だった。
後で、大島裁判長が神戸大ローで教えていらして教科書も書いていることがわかったが、やはり、京都という土地は本当に学生を大切にしてくれる土地柄なのだとよくわかる。

物権法の授業で毎年見学に伺う京都地方法務局も、ものすごく周到に準備して(記念写真まで撮ってくれて)それはすばらしい見学会をやってくださるからだ。その上、3回生のインターンシップでもどこよりもたくさんの学生を受け入れてくださっている。
ソモラの法務局は、たまたまOBがいる間だけ協力してくれ、彼の転勤後は断られたからだ。尤も、法科大学院生がかなり失礼な態度だったということもあるが。(こんな所にくる暇があったら受験勉強したいのに、来てやってるんだよ、というそのままの発言を、登記官の前で、40代後半の社会人経験ある学生が叫んだのである)

ラウンドテーブル法廷というのを初めて見たのも新鮮だった(事案によっては、当事者と裁判官が円卓を囲む方式が望ましい、ということでもうけられている)。

私の授業は毎回小テストがある上に、個人指導と判例のまとめの発表まである。単位をもらうためのコストパフォーマンスがあまりよくないが、それでも最後までついてきてくれる学生はまじめで優秀な子が多く、教え甲斐がある。授業中私語や携帯が鳴ることは一切ない。素直だし、思いもしない発想を教えられることもある。

別の授業だが、一度だけ休んだ学生が「その回の授業を僕のためにもう一度やってもらえないでしょうか」とメールしてきたのにも、そのまじめさに感動した。私がここで教えた中で最も優秀でいつも小テストで期待以上の答案を書いてくれる学生だが。

ジェンダーの授業で「友達に同性愛者だと打ち明けられたらどうしますか」というアンケートに、「異性愛は、生殖など利害計算がつきまとう。同性愛者は損得抜きで純粋に人を愛せるから羨ましいと思う」というすごいコメントを書いた子には、「負うた子に教えられ」という気持ちになったものだ。

教師が学生に癒されるという職場環境は本当に恵まれているとつくづく思う。他にいやなことがあっても、文句をいったらきっと罰が当たるといつも思っている。


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地震後の東京

2011年04月13日 | Weblog
いわきで大きな余震があったので、いわきの恩師に久しぶりに電話したら、「昨日、5月号の原稿を書いていたら地震が起きて、1時間ほど停電しました。送っていただいたろうそくが役に立ちました。ありがとうございます。」といわれた。「危ないからお願いだから東京のご自宅に避難してください」と懇願しても、地震ごときでじたばたすること自体、抵抗がおありになるようだ。謹慎中の歌舞伎俳優は妊娠中の妻と福岡に避難し、ミネラルウォーターを買い占めては東京の自宅に送っているというのに。

話が夫の根津の新しく借りたマンションの話に及ぶと、「何階ですか?」「1階です」「エレベータのことが問題なくていいですね」「先生のお宅は12階ですけれどエレベーターが止まったりするんですよね」「止まるけどすぐ修理してくれるので助かっています」
もう何もいえない。


4月2日、コンサートで元気をもらってから、帰宅し、夫と高速バスで東京へ。引越の手伝いのため。

3日に着いて、多慶屋で買い物していたら、二人の携帯が突然防犯ブザーのようなすごい音を立て、見たら、「茨城で地震発生」という非常連絡だった。そういう設定をした覚えはないが、ドコモのサービスでやっているらしい。そのとき東京は揺れてはいなかったが。

意外な影響が、自転車が品薄で買えなかったこと。工場が東北に多いせいらしい。

スーパーで牛乳やヨーグルトがなく、逆に冷凍食品が半額になっていた(計画停電の可能性があるため買い控えているらしい)。

駅ではエスカレーターがほとんどすべて停止、銀座駅も終電後と見まがうばかりに暗い。

根津は、大学への通学で使っていた駅で、研究会や調べ物でよく母校の東大に行くので頼んで近くのマンションを選んでもらったのだった。

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カミングアウトします。

2011年04月13日 | Weblog

阪急梅田駅で宝塚宙組が募金活動をしていた。

この1年くらい、初めて若いアイドルのファンになり、初めての経験に自分でも戸惑っている。

今まで若い異性の芸能人を好きになったことがなかったからだ。

十代の頃は、私より7歳年上の新御三家、西城秀樹、郷ひろみらの全盛時代だったが、全く興味を持てなかった。
自分より20も年上の北大路欣也とか、近藤正臣とか、田村亮(芸人でなく田村さん兄弟の末っ子の方。二谷友里恵(私より2歳下。トライの現社長なので父親をCMに起用していると思われる)も十代のとき彼のファンだったと知ってちょっと驚いたが)とかが好きで、彼らの出るドラマを一生懸命見ていたのだった。とにかくおじさん好きだった。

唯一、『岸辺のアルバム』を見ていいと思った国広富之も、高校時代、彼に惹かれて『噂の刑事トミーとマツ』を見るうちに、係長役の林隆三(やはり私より19歳年長)の方がずっと好きになってしまった。(そういえば、このドラマの婦警役で人気の出た石井めぐみを久しぶりにTVで見た、と思ったら、椿鬼奴という女芸人だった。本当にそっくりだと思いません?年齢だいぶ違うけど。)

後は自分も20代後半、30代になってから、年齢の近い真田広之、堤真一、上川隆也、内野聖陽を好きになり、舞台や映画、ドラマは欠かさず見ているが、これは若いアイドルとはいえないだろう。藤原竜也を好きになったのも、『身毒丸』の舞台を見てその演技力に感心したからだった。

ところが、ここ1年くらい、あるアイドルにはまってしまった。
はじめは、出身地が近いとか、母子家庭で苦労した生い立ちとか、アイドルやりながらそこそこいい大学を卒業して偉いとかそういう感想しかなかったのが、いつの間にか、はまっていたのである。

夫には「目指せ、マルグリット・デュラス(それほど年齢差ないし才能も金もないけど)!」とかいって呆れられている。

彼の母親より自分の方が年上と知ってなおショックであり、また、学生に知られたらみっともないと思い(とくに男子学生が引くのではないか、研究室にポスター貼ったりしたらセクハラにならないか、とか)、はっきりいわなかったが、先日、同じ学部の女性教職員とちょっとしたパーティーをしたとき、「いいじゃないですか、別に」といわれ(とくに韓流にはまっている先生に)、ブログに書くことにした。

以下は、ファンにしかわからないしょーもないコメントなので、興味のない人はパスしてください。


彼のコンサートに、昨年の1月に続き、4月2日に行ってきた。ファンクラブに入っている学生がチケットを取ってくれたのだった。

大阪城ホールの周辺は独特の盛り上がりで、そういえば、数年前、後楽園の歩道橋の上で、やはりジャニーズの彼の属すグループのコンサートの直前でうちわをもってすずなりになっている若い女の子たちを見て、「よくやるわね」と思っていたのに、まさか自分がその集団の一部になるとは夢にも思わなかった。

やっぱり、人間は、年相応の時に年相応の経験をしておかないと、後で怖いとつくづく思う。

席は、楕円形の長い方の端、メインステージのちょうど真向かいの2階席の5列目だったが、そのためにサブステージがすぐ側にあり、そこに何回もきて歌ってくれたので、3メートル以内くらいで間近に見られて大興奮だった。間近で見ると、不規則な生活だろうに肌がきれいなのに驚き、そしてそう思う自分のおばさんさ加減に自分でちょっと引く。

私の席は通路の脇だったので、通路に出て思いっきり手を振ったら、目があった(ような気がした)。
中央の舞台もメインステージも肉眼でもかなりよく見えて、やっぱり大阪城ホールはすごくお得だと思った。
今までサザンやユーミンのコンサートに行った東京ドームや代々木体育館、横浜アリーナ等は、ものすごく広く、S席でアリーナでも後ろだと豆粒くらいにしか見えないからだ。

去年とは比べものにならないくらい、力が入っていた。
アンコールも「特別サービスですよ」といって2回もやってくれた。

以下、覚えている限りのことを書いてみる。

1.コンサートのセットやグッズのデザインは、ドラゴンを中心として赤と青で渋く統一、香港ぽいイメージで、このアジアツアーが1月29日に香港でスタートしたという特徴が際立っていた。

2.スタートは、中央ステージでスッポンから登場、いきなり「抱いてセニョリータ」、続いて「青春アミーゴ」と、大ヒット曲を前座のように先に持ってくることに、このコンサートにかける意気込みが感じられた。

3.去年よりはるかにたくさん観客の側に行き、手を出した観客のほとんどと握手してくれた。

4.「今日は、幅広い方にきていただいて、ちびっ子から (ここでしばらく言葉を選んでいたのか沈黙)熟女のお姉さんまで」というのがおかしかった。私と目があった(ような気がする)のは関係ないと思うけど。そう思ったおばさんは会場にたくさんいるのでは。

5.MCも面白かった。しゃべりは苦手らしく、「つたないMCの時間です。今日は質問を何でもうけることにします」かなり率直に答えていた。

Q「Super Good とSuper Bad、どちらが好きですか?」(40代くらいの人を選んでマイクを向けてあげていた)
A「Super Badですね。Super Goodは社長が選曲したので、少し古いですね。ずっと、『You、これやっちゃいなよ』といわれたことをいろいろやってきましたから、いいんですけどね。」

ちなみに私もSuper Badの方が好きだ。ユーロビート調の曲が楽曲としてできがいいと思う。
スローなバラードは彼の歌唱力と声量では少し無理がある。ただし、声量がない分、歌声が話す声に近いので、ファンにはたまらない、ともいえる。

Q「今回のアルバムの中で一番好きな曲は?」
A「そうですね、Party don't stopがノリがよくて好きですね」

Q「夕べ何をしてましたか?」
A「ミュージックステーションを見てました」(しかし、その番組は19時から生放送だから生では見られないはず。わざわざ録画していたのかな?ちなみに、この回は「元気が出る曲ベスト200」がテーマ。「青春アミーゴ」が69位あたりに入っていたと思う。それに、よく見ると、キンキやJ Friendsのバックでジュニア時代に踊っているのを発見)

「みなさん、ほかの歌手のパフォーマンスを見ているゲストの様子を画面の隅で丸の中で写すじゃないですか?僕、昨日それを見てたら、淳之介はノリノリでで頭を振りながら一緒に歌ってました。今度あいつが出たら注目してみてください」

Q「誰と仲がいいですか?」
A「そうですね。昨日亮ちゃんと飯食いましたね」

Q「もうすぐ結婚するんですけど、どんな結婚式がしたいですか?」
A「結婚のことはまだ考えられないですね。」わざわざカメラ目線で力強く「結婚はまだまだですからね」と念を押した。

Q「関西弁で好き、っていってください」
A「(大声で)めっちゃすきやねん!」(かなり目立つ赤いリボンとコスチュームの二人の女の子。「Love you 10 years」というカードをみて)「長い間ファンでいてくれてありがとう」(本人たち、感極まって泣き出す。すごく若い時代のうちわをとりあげて)「わー古いですね、このうちわ、完全に目が死んでますね」

Q(欠食児童とは正反対の体型の小学生の男の子)「どうしたらジャニーズに入れますか?」(会場、大爆笑、仕込んだんじゃないかと思うくらいはまった質問だった。)
A「そうですね、踊って踊って、踊り続ければなれますよ」

6.バックで踊っていたFIVE一人一人に質問。「趣味は何ですか?」釣りという子に、「シゲも最近釣りにはまってて、あいつ、暇だから釣りばっかり行ってるみたいなんですよ。今度テレ東でレギュラー始まるらしいのでみんな見てくださいね」(ちょっと残酷かなと思ったけど)

7.「昨日名古屋で始まって」というコメントにはちょっとブーイング(前の日から大阪でスタートしたから)

8.「後半で、80年代歌謡曲みたいな『罪と罰』という曲で、皆さんにグーパーしてもらいます。みんな、ここには僕と皆さんしかいないんだから恥ずかしがらないで」

9.外国でのツアーで日本らしさを出すために、後半のはじめは、鬼の面を被って登場して剣舞。

10。歌はともかく、踊りはやっぱりすごい。激しく踊りながらでも歌うときに息が切れないのも訓練の賜と思った。

11。通常のアンコールの後、「本日の公演はこれですべて終了しました」アナウンスが流れ、前日の代々木体育館での募金活動のビデオが流れた(朝イチで代々木に行ってから大阪に来て夜のコンサートをやった模様)が、あまりにも長く続く「山P」コールに答え、Tシャツ姿で登場、「本当に特別ですよ」といいながら、「ゴメンネジュリエット」を歌ってくれた。

12 去年は、ほとんど曲を知らなかったが、今回はアルバムを買って、移動中(電車の中は除く)ひたすら聴いて予習していたので、マイクを会場に向けられたとき、他の客と一緒に「最後のラブソング」を合唱できた。こういう一体感はすごいと思った。


彼は情熱大陸に出演したとき、「僕は男だからずっと仕事をしていきたい、小さい頃、お母さんが働いていて本当にかわいそうだった。女の人にそんな思いをさせたくない」といっていた。母親を助けるために自ら希望して小学校5年生で事務所に入り、今までひたすら努力してやってきたわけである。


「こんな時期だからこそ、今日は一日楽しく過ごしてください。皆さんあっての僕です」
ファンに触られまくってちょっと苦笑もしていて、「仕事と割り切ってアイドルしてるんだろうな。ホントは彼女以外には触れられたくないし、もっと遊びたいんだろうなあ。健気だなあ。いじらしいなあ」と思った。彼にとっては、有名になるとか、ちやほやされることは二の次で、とにかく11歳の時からアイドルは母親を助けるためにお金を稼ぐ手段、勤労青年なのである。
そして、どんなに明るくふるまっていても、そのたたずまいに哀しみや影がつきまとうのはなぜなのだろう。

手抜きのないパフォーマンスとサービス精神、プロ根性がすごいなと思った。

それに引き替え、私は、分野は180度違うけれど、彼ほどプロフェッショナルな仕事をしているだろうか、と考えさせられた。
私もいろいろ辛いことがあっても、もっと仕事を頑張らなければならないな、とものすごく勇気づけられた。

アイドルとは、元気づけ、鼓舞してくれる存在、それでいいのではないだろうか。

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天地明察 小さいおうち

2011年04月06日 | 読書
134回直木賞候補作および受賞作

天地明察 

天地明察
冲方 丁
角川書店(角川グループパブリッシング)


江戸時代に様々な苦労を経て大和暦を大成し、太陰暦から太陽暦への転換という大事業を成し遂げた渋川春海の生涯を,彼を取り巻く人々とともに描いた作品。

この作品を貫くのは、「知」や「真理」への純粋な探求心と憧憬である。

渋川春海という名前自体、本名である安井算哲という名が、元々代々江戸城で御前碁を打つ家に育ち、優秀な碁打ちでありながら、定石をはみ出すことのできない職務につくものであり、その非創造性に「飽いて」「自分だけの春の海辺がほしい」ということから名乗ったものである。

その「自分だけの春の海辺」を必死で捜し、渋谷の金王神社にある算術の設問と解答を記したたくさんの絵馬を見に行き、その絵馬が風でふれあう、「からん、ころん」という音が、彼の生涯の様々な重大場面で繰り返し出てくる。その音こそが、「知」への憧憬の象徴だからだ。

その絵馬から、和算の大家となる関孝和と出会い、算術の才能から酒井雅楽頭(ちなみに本木雅弘は彼から長男を「雅楽=うた」と名付けた。ちなみに長女は伽羅)とに抜擢され、22歳で北極星観測隊に参加してから、改暦事業に携わるようになり、3度の挫折を経て、ついに、45歳の時、改暦の大事を達成する。

主人公はもちろん、関孝和への出題が誤問と知ってその場で切腹しようとするなど、純粋でまっすぐな性格だが、他の登場人物も、権力にも利害にも関心がなく、学問への純粋な関心だけに突き動かされている愛すべき人たち、とくに、北極星観測隊の隊長建部と伊藤の、儒教社会にもかかわらず、孫のような年齢の春海の計算の正確さを子どものように喜ぶ、純粋さ、その稚気に、思わず本を閉じて落涙した。「学問は長く、人生は短い」という真実に改めて思い至り、それにひきかえ、一応学問を仕事とする自分のいいかげんさが恥ずかしくなった。

学問や真理、知という絶対的なものに仕える同志愛で結ばれている者同士という関係は、授時暦の誤りを検証する自分の研究を無償で提供する(しかも自分の貢献は隠そうとする)関孝和や、碁のライバル本因坊道策、会津藩士安藤との関係にも表れ、現実の世界で利害計算が第一になっている人間関係にまみれた者から見ると、そのすがすがしさはまぶしいくらいだ。

しかし、改暦は学問の純粋さとは対極をなすと思われる政治とはもちろん無縁ではなく、春海自身も、改暦事業に関わる中で、暦を相対化するということが、権威そのものを相対化する危険をはらむものだと看破する。「権威の所在-つまり人々は、徳川幕府というものを絶対的なものとして崇めているわけではないのではないか。帝のおわす京、神々の坐す神宮、仏を尊崇する寺院、五畿七道に配置された藩体制。人々が自由に権威を選ぶ余地はいたるところに残されており、しかもそうした余地は、決して誰にも埋めることのできないものなのではないだろうか。」
暦を幕府の力で正確なものに変えることは、幕府の権威を絶対的なものとするためにも必要だったのだ。

しかし、そうした政治的な思惑ですら、作者の手にかかると、やはり公平無私な企みになる。民の安寧のために武断政治から文治政治への転換が絶対必要、改暦はその第一歩と考える家光の異母弟保科正之の徹底した名君ぶり、数々の善政も、自分の手柄とあっては徳川宗家の恥と自分が関わった書類を焼き捨てる忠義と無私(その徳川家への忠誠という家訓のために、幕末会津藩は朝敵とされ白虎隊などの大きな悲劇に見舞われる)にも泣かされる。水戸光国も大きな役割を果たす。それがきれい事になっていない筆力がすばらしい。

元々暦が自然の脅威をコントロールするためのものだということを想起すると、現在の日本政治家にはぜひ見習ってほしいものだ。

全て、歴史の転換点にあって、個人の利益でなく、自らの果たすべき役割だけに集中しようとする人々の姿が、読者に清冽な印象を与えるのだ。

また、主人公のえんとの関係も、甘いばかりの恋愛でなく、えんの自律した女性ぶりも共感できる。

久しぶりに読書の楽しさをどっぷりと堪能させてくれた作品。

『小さいおうち』も悪くはなかったが、なぜ少なくともこの作品が直木賞を同時受賞しなかったのかが不思議でならない。

受賞作 小さいおうち

小さいおうち
中島 京子
文藝春秋


これは純愛の物語である。

ただし、それを板倉にとって生涯を捧げる純愛たらしめたのは、彼の悲惨な戦争体験である。
それが饒舌に語られることがないだけに、タキの描く「小さいおうち」でののどかな暮らしとの対比でいっそう戦争の恐ろしさが読者の心に迫る。

巧みな構成、筆力の秀作である。

表紙の装画はネタバレになっています。読後じっくり見るとわかりますよ。この装画も作品の重要な一部なので、文庫版になっても使ってほしいですね。

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