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映画・演劇のレビュー

浮狼舎『狼は小鳥の夢を見る』

2024-03-27 12:04:00 | 演劇
ボロボロの身体に鞭を打ちながら怒濤の快進撃を続ける神原さんの新作。今年もこの作品を皮切りにしてこの先3本が待機している。彼女はコロナ禍でも例年の年4本ペースを保ってきた。体を休めている場合ではない。死ぬまで走り続ける覚悟である。 さて、今年最初のこの作品。相変わらずのまたまた過激な芝居だ。戦地で亡くなった男たちの無念が舞い戻り、暴れ回る。彼は大事な妹を国に残したまま戦場に赴き戦死した。彼ら(実は . . . 本文を読む
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本城雅人『時代』

2024-03-26 15:23:00 | その他
まさかこのタイミングでこの小説を読むことになったのは偶然でしかないけど、不思議なタイミングだ。WBCシーズン開幕の日、大谷が通訳の不祥事から大変な状況にある中、日本のプロ野球スター選手の離婚スキャンダルの記事から彼のチームが日本シリーズ敗退するというドラマから始まるこの小説を読み始めた。なんと500ページに及ぶ大作である。   スポーツ新聞社の記者から販売部に配属された男が主人公。彼 . . . 本文を読む
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『審判』

2024-03-26 07:12:00 | 映画
こんな映画が作られていたとは知らなかった。これは大阪では劇場公開されていないのではないか。上智大学の先生をしているというジョン・ウィリアムズという(まるで音楽家みたいな)人が脚本、監督した日本映画である。   2018年に封切られたらしい。原作は『変身』『城』の言わずもがなのフランツ・カフカの不条理小説。それを現代の東京を舞台にして作った自主映画だ。無名のメインキャストで綴る。安っぽ . . . 本文を読む
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『日の丸 寺山修司40年目の挑発』

2024-03-25 07:26:00 | 映画
呆れた。こんなもんを映画だと言って劇場で公開していたのか。昨年の公開時、少し気になっていた映画だ。TBSが制作したドキュメンタリー映画。若いディレクターが67年制作の寺山修司が企画構成したTVドキュメンタリーを再構成して今の視点を交え描く。   67年と22年をつなぎ、同じ質問を街頭で投げかける。寺山が手掛けた映像と重ねて描く。監督を手掛ける佐井大紀はあの頃と今が似ていると感じる。彼 . . . 本文を読む
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加納朋子『1(ONE)』

2024-03-24 08:32:00 | その他
久しぶりの加納朋子だ。しかも『ななつのこ』の姉妹編。だけど、これを単独作品として見て(読んで)構わない。続編ではなくちゃんと独立した作品になっている。3世代、3匹の犬と彼らを飼うある家族の歴史を背景にした大河ドラマである。ゼロと名付けられた小さな犬が、大事な女の子を守る話から始まり、その女の子やゼロが生まれる前から、今に至る家族と犬たちの物語が綴られていく。ゼロを守るのがもう今ではここにはいない( . . . 本文を読む
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『金の糸』

2024-03-24 06:50:00 | 映画
91歳、ジョージアの女性監督ラナ・ゴゴベリゼ。映画の主人公は監督自身(さらには彼女の両親だということを映画を見た後で資料から知る)を投影した79歳の女性作家エレネだ。映画は彼女が誕生日を迎えた日から始まる。だが、誰も今日が彼女の誕生日だということを忘れている。憶えていない。これはまず、そんな孤独な老人の話だ。今の時代なら、どこにでもいるような歳をとって体の自由が、無理が効かない老人。 同居してい . . . 本文を読む
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『金の国水の国』

2024-03-23 16:49:51 | 映画
これはまさかの傑作。先日見た『DUNE 砂の惑星 PART2』と並べると両者の差は歴然とする。あの映画はビジュアルは圧倒的に凄いけどお話の展開が下手すぎた。ぜひこの映画を見習って欲しい。『DUNE 砂の惑星』2部作に足りないものがここにはちゃんとある。シンプルなストーリーで本質を射抜く。政治的な問題を寓話の中に落とし込み、それを隣接する対照的な2国間の争いに集約し、さらにはわかりやすい王子と王女( . . . 本文を読む
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寺地はるな『やわらかい砂のうえ』

2024-03-23 01:59:00 | その他
2020年の7月刊行された作品の文庫化出版された新刊。解説が井上荒野。もしかしたら刊行時に読んでいたかもと思いつつも、まあいいかぁと読み始める。  このブログのバックナンバーを検索したけど、書いてなかった。今は読んだ本はほぼ全て書いているけど、5年前くらいまでは忙しくて、かなりの確率で書いてなかった。劇場で見た映画や演劇はほぼ全て書いていたけど、本やDVD(当時は配信はなかったからね) . . . 本文を読む
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編乃肌『真夜中のぐっすりカフェ 眠れぬ夜におやすみの一杯』

2024-03-22 12:59:00 | その他
まさかこのタイトルでこのサブタイトル付き。作者名も「これって何?」って感じ。カバーのイラストも可愛いし、メルヘン満載感いっぱいのマイナビ出版という知らなかった出版社から出ている文庫本。それをたまたま読むことにした。よくある『深夜食堂』っぽいタイプの小説だ。癒し系の軽い読み物。通勤電車用に読み始めた。予想通りほっこりする安眠ストーリーで、たまには息抜きにちょうどいい。というか、今は人生そのものが息抜 . . . 本文を読む
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『ビニールハウス』

2024-03-22 08:28:00 | 映画
監督は本作が長編監督デビューとなるイ・ソルヒ。主人公の女性が抱える現実を落ち着いた文体で淡々と見せる。そこには過剰な思い入れはない。説明も一切ないまま話は進む。彼女は訪問看護をしている。目の見えない老人とその妻で認知症の老婆の世話をする。彼らには息子がいるけど、老夫婦の面倒をみることはできない。彼女はたったひとりでビニールハウスに住んでいる。貧困な暮らしに甘んじるのは貧しいからだけではないみたいだ . . . 本文を読む
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第14回 ウイングカップ について

2024-03-22 07:06:00 | 演劇
最近近大によく芝居を見に行っている。ちょうどこのウイングカップ開催中に4本見た。ここで学生劇団(授業の発表会も含む)の公演を見るためだ。最初は知り合い(ウイングカップの審査を一緒にしている土橋さんや笠井さん)が指導している公演を見るために行ったんだけど、なかなか興味深い芝居が続くからついつい暇にあかせて他にも何本か見てしまった。若い演劇人が自分たちの力を試す。ウイングカップの劇団よりさらに若い人た . . . 本文を読む
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『沈黙の艦隊 シーズン1』 5話〜8話②

2024-03-22 02:16:00 | 映画
後半の4話を一気見した。核弾頭搭載の有無(話のフックにしてるけど)を曖昧にして、話を展開することには引っかかるが、そこは目をつぶって見ることにした。日米の対応を軸にする政治的側面を描いた部分も甘い。さらにはクライマックスの東京湾内での対戦をマスコミや一般人の対応がちゃんとは描かれてないのも気になる。だけど、3、4話の弛緩した展開から吹っ切れて、後半はなかなか見せてくれる。  日本政府と . . . 本文を読む
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『水平線』

2024-03-21 21:35:00 | 映画
ピエール瀧がスクリーンに戻ってきた。しかも久々の主演映画となる。監督は小林且弥。彼のデビュー作だ。あの傑作映画『凶悪』で出会ったふたりがコンビを組んで放つこの映画はピエール瀧でなくてはならない映画を目指したはずだ。だけど残念ながら、そうはならなかった。小林監督は敢えて抑揚のない抑えたタッチで2時間を綴る。だがそれはあまりに単調すぎて眠くなって困った。真面目で一生懸命作った映画だとは思う。だけど、ま . . . 本文を読む
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大崎百紀『いつかまた、ここで暮らせたら』

2024-03-21 15:11:00 | その他
これはホラーだ。読みながら震えた。泣きそうになった。いつか見たことを鮮明に思い出す。母の介護をしていた日々だ。ほんの数年前のことである。   今更後悔しても始まらないけど、もっといろんなことをしてあげたかったなんて、思えるのはあの先にあったはずの更なる試練を知らなかったからかもしれない。きれいごとじゃやっていけないことはわかっていたし、毎日が大変だった。気がつくと知らぬ間に心を病んで . . . 本文を読む
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『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』

2024-03-21 14:45:00 | 映画
若松プロダクションの黎明期を描いた『止められるか、俺たちを』の続編である。今回は映画作りの話ではなく、映画館を作る話。スケールは小さくなる。しかもこの映画の監督である井上淳一の自伝。名古屋のシネマスコーレが舞台となる。若松孝二は前作に引き続き井浦新が演じる。こんな地味でマニアックな題材で映画を作るなんて大胆。若松は名古屋に自分の映画館を作ることにした。自前の映画館を持つという画期的な映画監督となる . . . 本文を読む
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