非国民通信

ノーモア・コイズミ

「理系」を巡って思ったこと

2024-04-14 23:38:35 | 社会

 近年、理工系の学部で「女子枠」を導入する大学が急増しているそうです。元より男女の偏りが顕著な学部であるだけに、それを是正しようとする意図自体は評価されるべきものでしょう。もっとも同じ理系科目が入試に用いられる医学部などは女性受験者の方が強い場面も見られるわけです。将来的な外科医志望者を確保すべく逆に女性の合格者を制限していたケースもまた近年で告発されており、それを鑑みるとどうなんだろうと感じるところもあります。

 一般には最も入試難度の高くなる医学部において、男性側に下駄を履かせてバランスを取ることすらあった実態を考慮すると、単純な学力面では女性の大学受験者を優遇する必要性はないと言って良いでしょう。医学部に進学しても特定の診療科に女性が偏在してしまう、学力は十二分なのに理工系を進学先に選ぶ女性は少ない、こうした「偏り」をどうにかしなければならないのは当然ですが、しかるに「女子枠」を設けるような現行の試みが上手くいっているかと言えば首を傾げないでもありません。

 医学部と歯学部は入学時点で明確に隔てられているのに、外科と精神科、泌尿器科と眼科が全て同じ学部というのも、考えてみると少々不思議な話です。「医学部」と「歯学部」の二つだけに分けるのではなく、「内科学科」「皮膚科学科」「放射線科学科」等に分かれていても良い、そこで外科学科が女性受験者に不人気ならば女子枠を設ける、逆に女性の応募が多数派になる学科には男性枠を設ける、それだったら釣り合いは取れそうな気がしないでもありません。ただ18歳の時点で細かく専門を決めさせることのデメリットもまた大きいでしょうか。でも歯医者になるコースだけは18歳の時点でガッツリ定まっていることを考慮すると、意外になんとかなる気もします。

 個人的に最悪だと思ったのは数年前の「リケジョ」ブームですね。これは完全に女性をおもちゃにしている、その旗頭として起用されたのが小保方晴子という作られたアイドルであり、輝かしいキャリアを歩んできた一方で研究内容は真っ当とは言いがたい代物であったことは象徴的です。これも背後には理系分野での女性の活躍を期待する意図から産まれたものではあったのでしょうけれど、中身のない偶像を(男性達が)作り上げたところで何の意味もありません。

https://www.titech.ac.jp/student-support/students/extracurricular/organizations

 ちなみにこちらは女子枠を大きく設けている東京工業大学の公式ページですが、曰く「文化系の大学とは異なり、本学は、実験・実習・演習など、とかく勉学に追われ~」だそうです。以前にも取り上げましたけれど、「理系」を自認する人々の中には「文系」を敵視する人が一定数います。まぁ文系学部と言いますと、低成長と格差拡大を理論的に支えてきた経済学や、アメリカ政府の広報官のような国際政治学もある、「英語で」授業をしていることを誇り語学留学の斡旋にばかり積極的な英会話学校もどきも増えているだけに、一定の批判はあってしかるべきでしょう。

 とはいえ文系学部でも英会話と英会話と語学留学など、とかく英語に追われて忙しい学校もありますし、理系学部でも暇を持て余しているところはいくらでもあります。そして学部を問わず経済的な問題で勉強「以外」に忙しい学生だっていくらでもいるわけです。東工大は難関大学として自らを誇るところはあるのかも知れませんが、他の何かを貶めないと自らを誇ることが出来ないとしたら、それは随分と残念な話、「お里が知れる」振る舞いであるとは言えます。

 東工大ではサークル活動のための時間として水曜日の午後があてられているとのこと、大学に入ってまで学校に時間割が決められているというのも私としてはちょっと嫌ですが、それ以上に「これと同じことを体育会系に言えるのか?」と思いました。「文系と違って自分たちは忙しいんだ」とマウントを取る姿は余所でも普通に見られますけれど、では「体育会系と違って~」と、反撃されそうな相手にも喧嘩を売ることが出来るのか、そこを私は問いたいです。

 加えてもう一つ、拘束時間の長さを誇るべきではない、とも思います。教授の実験に付き合わされ研究室に泊まり込む日々が続いたとして、では時間を費やせば成果が得られるかと言えば、それは全く別の話ですから。会社でも労働時間が長ければ評価されてしまう、仕事をした気分になってしまう傾向が見られますけれど、これこそまさに日本企業が抜け出せずにいる誤った考え方であるはずです。どれだけ時間を費やしたところで成果を生まなければ意味がない、意味があるのは拘束時間の長さではなく成果である、そこは意識されなければなりません。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

目次

2024-04-14 00:00:00 | 目次


なんだかもう、このカテゴリ分けが全く無意味になりつつあります……

社会       最終更新  2024/ 4/14

雇用・経済    最終更新  2024/ 4/ 7

政治・国際    最終更新  2024/ 3/31

文芸欄      最終更新  2024/ 2/23

編集雑記・小ネタ 最終更新  2024/ 4/11

 

Rebellion (rebellion0000) は Twitter(現X) を利用しています

 

↑暇ならクリックしてやってください


 このサイトはリンクフリーです。 

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アメリカのために戦う部隊なのに

2024-04-11 22:19:07 | 編集雑記・小ネタ

陸上自衛隊の第32普通科連隊、公式Xで「大東亜戦争」と表現(朝日新聞)

 陸上自衛隊大宮駐屯地(さいたま市)の第32普通科連隊が、X(旧ツイッター)で同隊の活動を紹介する際に、「大東亜戦争」という言葉を使って投稿していた。政府は太平洋戦争を指す言葉として、この呼称を公式文書では用いていない。同隊は7日、取材に公式アカウントであることを認めた上で、「本日はコメントすることができない」とした。

 同隊は5日、硫黄島(東京都)で日米合同で開催された戦没者の追悼式に参加したことをXの公式アカウントで紹介。「大東亜戦争最大の激戦地硫黄島」「祖国のために尊い命を捧げた日米双方の英霊のご冥福をお祈りします」などと投稿した。

 日本は1940年、欧米からアジアを解放し「大東亜共栄圏の確立を図る」との外交方針を掲げ、41年12月の開戦直後に「大東亜戦争」と呼ぶことを閣議決定した。戦後、占領軍の命令で「大東亜戦争」の呼称は禁止された。

 

 大日本帝国の精神の引き継ぐ自衛隊としては至って自然な感覚だったのだと思われますが、公式Xで「大東亜戦争」と表記したことが一部で物議を醸しているようです。冥福を祈る対象は「日米双方の英霊」とのことで、ここに(日本以外の)アジア人が入らないあたりに自衛隊側の真意が窺えるところでしょうか。実態を伴わなかったことを別にすれば「欧米からアジアを解放」という大東亜共栄圏の大義名分自体は悪くないものと思います。しかるに現代において日本が仮想的と見なしているのはアジアの国々であって、いわば「アジアからアジアを開放」して「アメリカの覇権を確立する」ことが外交方針となっているわけです。この点では戦前から明確に意識が違うところ、それが良いものかどうかは別ですが……

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

何が給料を引き上げるのか

2024-04-07 23:09:30 | 雇用・経済

 さて連合などの発表によれば「定期昇給を含む」賃上げ率は5%を上回るところが多い、中小企業でも4%台後半が平均なのだそうです。私の勤務先も定期昇給を含めた賃上げ率は結構な高い数値となっていますが──残念ながら誰もが定期的に昇給するわけではなく、昇進するのは一部の人に限られる、微々たるベアの上昇で我慢せざるを得ない人もまた多いのではないでしょうか。私も成果手当に関しては決して悪くない評価をもらっていますけれど、入社当時と大差ない給料のまま働き続けています。

 ここで私は思ったのですが、御用組合の連合傘下にある企業と、戦う組合が多数派を形成している企業、そして組合のない企業と、それぞれ賃上げ率に目立った差はあるのでしょうか? 大企業と中小企業という会社規模に分けて賃上げ率は発表されていますけれど、組合の方向性の違いや有無による分類があるのなら、それは興味深いところです。

 時には組合の要求に対する満額回答どころか、組合要求を上回る賃上げ率を発表する企業もあります。あるいは組合が会社のイエスマンで、微々たる賃上げでも「苦渋の決断」であっさり受け入れてしまうケースもあります。一般には組合がなければ会社への要求を通しにくいとされるものですが、しかし組合のない企業の賃金水準が組合のある企業に比べて大きく劣るかと言えば、同程度の事業規模であれば顕著な差はありません。賃上げと組合の因果関係はどこまで実存するのか、そこも気になります。

 かつてヘンリー・フォードは低コストな自動車生産で市場を席巻しましたが、それは日本企業が得意とする人件費削減によるものではなく、むしろ大幅な賃上げを行っていたわけです。フォードは賃上げだけではなく1926年には早くも週40時間労働を取り入れるなど労働時間の削減においても時代の先端を歩んでいたと伝えられます。しかしフォードは一貫して労働組合の結成には否定的で、フォード社における組合の完全な結成は社長の代替わりを待つしかありませんでした。

 組合潰しのためには暴力の行使すら厭わなかったヘンリー・フォードが、従業員に対しては同業他社を大きく上回る賃上げを提示してきたことは、賃上げのメカニズムを考える上で興味深い例と言えます。組合側は当然のこととして賃上げを自らの成果と誇るところですけれど、しかし組合がなければ賃金が上がらないかと言えばそうでもありません。労働者の代表として組合の存在意義がなくなることは考えにくい一方で、本当に組合が役目を果たせているのかは問われるべきものがあるでしょう。

 また新卒社員の初任給に関しては、5%どころではない大幅な賃上げが発表されるケースが相次いでいます。既存の社員は1万円の賃上げでも大幅アップなのに、新卒初任給は3万アップ、5万アップ、なかには8万アップなどという企業も出ているわけです。こうした企業の中には一定の勤続年数を重ねた社員よりも初任給の方が上回る事態も発生しているようで、確かに勤続10年の私の給料よりも高い給与で新卒を募っている会社が今となっては珍しくない、何だかなぁと思います。

 新卒社員の初任給の引き上げもまた、組合の要求によって実現されたものではないはずです。組合が会社と微々たる賃上げを巡ってプロレスを続けているのを尻目に、若い社員を確保したい会社は初任給ばかりを大きく引き上げているわけで、ここでもやはり組合の有無なんかよりも会社側のニーズや市場原理の方が人件費を動かすのだなと意識させられます。雇用側からすれば何も知らない新卒の若者の方が勤続20年の氷河期中年よりも価値がある、そう思ったら組合の要求などなくとも賃金は(一方だけが)上がる、そういうものなのでしょう。

 採用抑制が絶対の正義だった時代に入社した人々は20万程度の横並び初任給から昇給とも無縁で働き続けてきた一方で、企業が若い子の確保を競う時代に入社した人々は最初から25万、30万と景気の良い給料を提示されています。もっとも世界に目を向ければ10万円以下の月給で働く人もいる、パートタイムの外国人労働者でも日本円で50万円以上の月給を得られる国もあるわけです。高い給料を得るために必要なのは組合の交渉でも本人の努力でもない、時と場合の巡り合わせが最も大切なのだと断言する他ありません。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

本当に孤立しようとしているのは

2024-03-31 22:15:30 | 雇用・経済

林官房長官がロシアを非難 国連北朝鮮パネル延長めぐる拒否権行使(朝日新聞)

 林芳正官房長官は29日の記者会見で、国連安全保障理事会で北朝鮮に対する経済制裁の履行状況を監視する「専門家パネル」の任期延長が否決されたことについて、「遺憾だ」と語った。拒否権を行使したロシアを「理事国の重責に反する」と非難した。

 パネルの任期は4月30日までで、延長には決議の採択の必要があった。常任理事国で北朝鮮との関係を深めるロシアが28日の安保理会合で拒否権を行使し、パネルの活動停止が決まった。

 林氏は専門家パネルについて、「関連安保理決議の実効性を向上させるための重要な役割を果たしてきた」と評価。ロシアの対応を「国連および多国間主義の軽視であり、グローバルな核不拡散体制を維持するという安保理理事国としての重責に反する行為で残念だ」と強く非難した。制裁の完全履行に向けて、「米国、韓国をはじめとする同志国とこれまで以上に緊密に連携しながら、更なる対応を検討していく」と語った。

 

 イスラエルを巡ってはアメリカも国連で拒否権を行使したばかりですが、それを日本政府が非難したという話は聞きません。林官房長官曰く「理事国の重責」とやらが存在するらしいですけれど、これは果たして全ての理事国に等しく課されるものなのでしょうか。ある国が拒否権を行使したときは沈黙を守り、別の国が拒否権を行使したときは政府の代表が公然と相手国を非難する、両者の違いをまずは説明する必要があるように思います。

 アメリカによる拒否権の行使については黙認する一方で、アメリカの傘下にない国による拒否権の行使を認めないのであれば、それこそ国連の存在意義を否定するものです。異なる立場の国々が話し合うからこそ国際的な枠組みには意味があるのであって、アメリカという特定の国の見解だけを優先するのであれば、わざわざ国の代表が集う必要などありません。アメリカの意向に付き従うだけならば、国連ではなくワシントンから指令を受け取れば済む話でしょう。

 ともあれ結果として日本は「米国、韓国をはじめとする同志国とこれまで以上に緊密に連携」と、今まで以上に身内での排他的な結束を高めていく方針を表明しています。日本からすればアメリカとその衛星国こそが「国際社会」であって、「同志国」の間で連携できてさえいれば国際協調ということになるのかも知れません。しかし現実には日本の思い描く「国際社会」は少数派に過ぎず、とりわけアジア地域においては顕著である、かつての経済や軍事面での先進的地位も失われつつある中、本物の国際社会から日米欧が孤立していると言った方が現実に近いところすらあるはずです。

 フィンランドとスウェーデンが正式にNATO入りし、これをロシアの戦略が裏目に出た結果だと囃し立てる論者は少なくありません。しかし元からアメリカの衛星国に過ぎなかった国が中立の建前を捨てただけとも言えますし、逆に非NATO諸国の関係はどうなったかも考えてみる必要があるように思います。今回の引用に現れているようなロシアと北朝鮮の関係強化などを見るに、むしろ非NATO諸国の連携が強まっている、日米欧の一層の地盤沈下を招いているところはないでしょうか。

 アメリカを再び偉大な国とすべく、バイデン政権は自国に従属しない国々との対決姿勢を強めてきました。結果として日米欧の排他的結束は大いに強まりましたけれど、それ以上にアメリカに傘下に入らない国々の関係を深める結果を招いているとも考えられます。元来ロシアからすればNATO諸国もビジネスパートナーであり、その意向には気を遣わねばならないものでした。しかし日米欧からの一方的な非難を前に「吹っ切れた」ところがあるわけで、これまでアメリカとその衛星国との関係に配慮して控えてきた国々──イランや北朝鮮など──との協力関係を深めているのが現状です。

 中国からしても、ロシアとは互いに牽制し合う相手であって、必ずしも友好的な関係ばかりではありませんでした。むしろ空母の調達などソ連時代の兵器技術の入手ルートであるウクライナの方が関係性は深かったとすら言えます。しかし同様にアメリカからの一方的な非難や不当な制裁を科され続ける中で、生存戦略としてロシアとある程度までは協力せざるを得ないところまで中国が追い詰められているのが実態ではないでしょうか。

 つまり世界をアメリカの敵と味方へ明確に線引きしてきたバイデン外交が、アメリカに従わない国々の結束を深める結果を招いている、実態として非ドルでの決済も急速に広まりつつあり、「アメリカ(及び衛星国)なしの」独立した国々の連合が浮かび上がりつつあるわけです。そして現在のところ日本の外交はバイデン政権へ全面的に乗っかっている状況ですが、支離滅裂なトランプが大統領の座を取り戻せば、恐らく日本は「はしごを外される」結果になることでしょう。そうなったときアメリカの尖兵として振る舞ってきた日本は周辺のアジア諸国とどう向き合うのか、必然的に問われることになります。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

定期昇給とはなんぞや

2024-03-24 22:20:20 | 雇用・経済

春闘の賃上げ率、2回目集計も5・25%と高水準…中小は4・50%(読売新聞)

 連合が22日発表した2024年春闘の第2回集計結果(21日午後5時時点)によると、平均賃上げ率は前年同期比1・49ポイント増の5・25%だった。15日に公表した初回集計の5・28%とほぼ同じで高い水準を維持している。

 賃上げ率は、基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせた額で集計した。回答数は1446組合で、初回から倍増した。ベア分は3・64%となる。賃上げ額は4825円増の1万6379円で、ベアは4668円増の1万1262円だった。

 大手に続き、中小企業の交渉が始まっている。組合員数300人未満の企業の賃上げ率は1・11ポイント増の4・50%だった。初回集計の4・42%よりもわずかに上昇している。

 

 さて春闘も結果が揃いつつありますが、これまでに比べれば随分と良い数値が並んでいるようです。大企業であればベースアップと定期昇給を合わせて平均5.25%、中小企業でも4.5%とのことですので、このペースが続けば多少は希望も見えてくるでしょうか。私の勤務先の親会社グループも今年は業界平均を上回る賃上げを行ったらしく、その企業名が紙面を賑わせたりもしていました。しかるに組合から渡された資料に記載の賃上げ額とメディア報道で伝えられている賃上げ率がどう一致しているのか、今ひとつ私には分からなかったりします。

 私の勤務する企業グループの場合、純粋にベアと呼べる基本給部分については数百円程度の増に止まり、比率としては「ほぼ0」でした。一方で評価に応じて支払われる成果給については8000円超のアップだそうで、これをベースアップに含めて良いのかどうか疑問に思うところですが、平均的な評価であれば恩恵にあずかれるとは言えます。これに家族構成に応じた扶養手当の増額を含めると総額で1万円に到達する計算になり、大幅な賃上げを勝ち取ったと、組合はそう誇っているところです。

 単身者も今は珍しくないだけに、扶養手当を満額で計算して成果をアピールする組合の姿勢には疑問を感じないでもありません。でもパワハラ上等で接待漬けの古い体質が抜けない御用組合からすれば、結婚して世帯を持ち家族を養う、それが「普通」なのでしょう。ともあれ組合の公表するモデルケースでは1万円の賃上げ、一応は私が入社して以来の最大幅ではあります。しかしメディアの報道によると、勤務先グループの賃上げ率は組合の誇るよりもずっと大きいらしいのです。

 冒頭の引用のように、賃上げ率はベアと定期昇給の合算で発表されるのが通例です。私の勤め先の場合も、組合の発表額に「定期昇給」を追加すれば新聞やテレビで報じられているような賃上げ率に合致するものと推測されます。ただ定期昇給の「定期」とは、「誰でも定期的に」という意味ではありません。社員としての等級が一つ上がった場合の昇給分と組合のアピールする賃上げ分を合算すれば、だいたいメディアで伝えられている賃上げ率に近い計算結果が得られます。しかし昇進しなければ「定期昇給」分などないわけで、この場合はどういう計算になるのでしょうか?

 近年、初任給ばかりを大きく引き上げようとする会社も見られるようになりましたが、それまでも初任給は横ばいが基本で少なくとも下がっては来ませんでした。ただ初任給が維持されてきたにも拘わらず、日本で働く人は30年前よりも貧しくなってしまったわけです。それは結局のところ入社した後の賃上げがなかったからで、昔は入社10年もすれば給料は倍になった、一方で氷河期の採用ともなれば入社10年でも新人時代と大差ない給与のまま据え置かれているケースが珍しくありません。定期昇給が重なっていれば親世代と同じ程度の賃金を得られたはずの人が、定期昇給とは無縁で入社当時と変わらない賃金で働き続けている、日本が貧しくなった原因はそこにあるように思います。

参考、年功序列でないことだけは確かだ

 もちろん私の勤務先でも昇進を重ねる人はいます。そういう「定期昇給」を重ねる人であれば、報道にあるような大幅な賃上げと矛盾しないのでしょう。しかし、長く働いていても昇給の機会から遠ざけられている人もまた少なくありません。その場合はメディア上で流布される華々しい賃上げ率とは大きくかけ離れた給与しか得られないわけです。長く真面目に働いていれば定期的に昇給する、そんな仕組みがあれば社員も希望がもてる、仕事へのモチベーションも上がるのでしょうけれど、現実は真逆です。人件費を減らして内部留保を積み上げる上では効果的であったのかも知れませんが、その結果として日本社会はどうなったのか、日本の経済的地位はどうなったのか、顧みられるべきものは少なくないと言えます。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トランプよ、これがアメリカ第一主義だ

2024-03-24 21:29:24 | 編集雑記・小ネタ

岸田首相「日本がアメリカをサポートする時代に入った」 4月訪米を前に意気込み示す(FNNプライムオンライン)

岸田首相は22日夜、東京都内で行った会食で、4月に控えた訪米について、「今までの日米関係は、いろいろ助けられていたが、日本がアメリカをサポートしていく時代に入ったことを考えたい」と意気込みを強調した。

同席した日枝久フジサンケイグループ代表が明かした。

2人の会食は、東京・港区のホテル内の日本料理店で約2時間行われた。

日枝氏によると、岸田首相は、自民党が派閥の政治資金問題で収支報告書に不記載のある議員の処分を検討していることについて、「党に任せてある」と述べた。

また、4月は、訪米のほかに、衆院の補欠選挙などもあり、「大変だ」との認識を示した。

そして、「やはり一つ一つを丁寧にやっていかないと仕方がない」と述べたという。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

これを機に悪法を撤廃してはどうか

2024-03-17 21:59:41 | 雇用・経済

アマゾン、ふるさと納税に来春にも参入へ 仲介競争さらなる過熱か(朝日新聞)

 ネット通販大手のアマゾンが来年春にも、ふるさと納税の仲介事業へ参入することを調整していることがわかった。仲介市場は現在、楽天など国内4社がほぼ占めており、自治体向けに設定する手数料も高止まりしている。外資系の巨大プラットフォームが参入すれば、競争環境に変化が起きそうだ。

 今年に入りアマゾンから提案を受けたという複数自治体の関係者によると、同社は「アマゾンふるさと」というサービス名で専用ページをサイト内に開設すると説明しているという。2025年3月にサイトをオープンする予定とし、「早割プラン」など他社よりも低い手数料や独自の配送サービスをアピールしている。

 

 これまでふるさと納税の仲介市場は楽天など国内4社がほぼ占めていたそうですが、アマゾンが参入予定とのことで局所的に話題になっています。早くもアマゾンには勝ち目がないとみられているのか競合する国内の仲介事業者の株価が軒並み下がっているとも言われるところ、高止まりしていた仲介手数料が引き下げられることに繋がれば自治体の支出は減るでしょうか。国民の納税額は変わらないのに仲介手数料と返礼品の費用の分だけ自治体の税収を減らすのがふるさと納税の仕組みでしたけれど、これを機に見直しが図られれば、少しは世の中がマトモになるのかも知れません。

 アマゾンが儲かっても日本社会が豊かになるかと言えば微妙ではあります。ただ、筆頭に挙げられている楽天など国内の仲介事業者が儲かれば(アマゾンの場合とは違って)国民の生活が楽になるかと言えば、決してそんなことはなかったわけです。どうしても外資であるとそれだけで反感や警戒感も生まれますけれど、国内企業であっても中抜きビジネスにはもう少し厳しい目が向けられても良いのではないでしょうかね。

 

ふるさと納税厳格化のその後 仲介サイトはノーダメージ、憤る自治体(朝日新聞)

 ふるさと納税の経費ルールが昨年10月に厳格化され、自治体が返礼品や人件費の費用削減に追われている。手数料の引き下げを仲介サイトに働きかける動きもあるが十分に進んでいない。仲介サイト事業者の間では、返礼品を提供する企業からも手数料をとる「二重取り」の仕組みが新たに広がるなど、規制側とはいたちごっこの状態だ。

 「仲介サイトへお金が流出する割合が増えただけ。『サイト栄えて地域滅びる』だ」

 

 こちらはアマゾン参入が話題になる1ヶ月ほど前の記事ですが、仲介者が「日本の会社」であっても問題は大きいことが伝えられています。根本的には、ふるさと納税という制度に救済の余地がない、ふるさと納税という悪法を続けている限り歪みは大きくなるだけで、そこに外資の参入を阻んだところで救いはありません。まぁアマゾンという外資への反感が導火線になって制度そのものに疑問が持たれるようになることが、最も世の中を好転させるルートになるような気がします。

 地方の財源をどうにかしたいのであれば、地方交付税を拡充すれば済む話です。しかし自己責任を奉じる我が国は、ふるさと納税という制度を作り、各自治体の自己責任で税金の獲得競争を行わせています。そんな税金の奪い合いの勝者にばかり光が当てられている現状ですけれど、ふるさと納税を集めるためのコストは決して小さいものではない、積極財政派の自分から見てもムダ以外の何物でもない支出が増えていると言わざるを得ません。

 そしてふるさと納税で「選ばれなかった」自治体の税収は当然ながら減ってしまうわけです。これに限らず市場競争における敗者の存在を無視しがちな我が国ですけれど、いくら無視したところでその存在が消え去ることはありません。日本社会全体の底上げを図るためには自己責任と自由競争ではなく、対象を選別しない分配こそが必要であって、それはふるさと納税とは対極に位置するものです。もちろん対象を選別しない分配ならば事務的なコストも安く済む、仲介事業者を介在させる必要もない、何もかもがメリットと言えます。

 しかるに国民に歓迎されるのは自己責任と自由競争による格差であり、敗者を救済「しない」ことの方でした。ならば楽天その他の仲介事業者がアマゾンとの競争に敗れて衰退していくとしても、それは自業自得として受け入れるのが筋なのだと言えます。結果としてアマゾンが市場を独占し、その後に仲介手数料が大きく引き上げられる可能性もあるわけですが、そうなったときには改めてふるさと納税の全廃を議論したら良いのではないでしょうか。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

それから

2024-03-10 21:58:37 | 社会

店に「大量のナメクジ」SNSで虚偽投稿した罪、飲食店元従業員起訴(朝日新聞)

 仙台市太白区の飲食店について虚偽の内容をSNSに投稿し、業務を妨害したとして、仙台地検は5日、住居不定の無職円谷晴臣容疑者(25)を偽計業務妨害の罪で起訴した。地検は認否を明らかにしていない。

 起訴状などによると、円谷容疑者は2022年7月24日、「大阪王将仙台中田店」(仙台市太白区、閉店)にナメクジが大量に発生したなどと、虚偽の内容をツイッター(現X)に投稿。店を一時休業に陥らせて、運営会社(若林区)の業務を妨害したとされる。

 円谷容疑者は店の元従業員で、「ナメクジ大量にいる」などと投稿していた。地検はナメクジが大量に発生したり、料理に混入したりした事実はなかったと認定。動機は店の待遇への不満で、休業による財産的損害が生じているなど悪質だと判断した。

 

 先月取り上げた報道の続編となりますが、どうなのでしょうか。とうとう問題の告発が「虚偽」と認定されているわけです。以前の報道よりも逮捕から起訴に至る理由が多少は伝えられているものの、まだまだ納得がいかないところはあります。元従業員による告発があった当初は保健所も衛生面での問題を認定した他、フランチャイザーである大阪王将も当該店舗の運営会社との契約を解除しました。第三者が告発の内容を概ね認めた結果であったはずですが……

 その他にも当該店舗と運営会社では「猫を飼っていた(衛生検査時には隠していた)」「食品衛生管理者の変更届を出していなかった」「雇用調整助成金を不正に受給していた」ことを伝えられています。告発の核心であるナメクジの数とは別の問題かも知れませんけれど、これまでの報道が事実ならば社会的な信頼を損ねるだけの行為を同社は繰り返していた、決して潔白な店舗ではなかったというのが客観的な評価になりそうです。

 もちろん店舗側の言い分も考慮されるべき、運営会社が告発者を訴える権利はあるでしょう。その先は司法の判断となるところですが、今回は仙台地検が告発を虚偽と認定していることが伝えられています。繰り返しになりますが告発当時、保健所と大阪王将は衛生面で問題があることまでは認めているわけです。しかるに地検は「ナメクジが大量に発生したり、料理に混入したりした事実はなかったと認定」したとのこと、では保健所とフランチャイザーの調査結果は何だったのか、という疑問がないでもありません。

 痴漢「していない」ことを証明することが困難であるように、「ない」ものを証明するハードルは高いです。地検がどのようにして告発されたような状況が「なかった」と断定したのか、そこは疑問に思うところでしょうか。あれこれと追及されている国会議員などを見ていると不正の一つや二つでは逮捕・起訴には至らないかに見える我が国ですけれど、今回の告発者に関しては随分とスムーズに起訴まで進んでいる印象を受けます。疑わしきは罰せず、本当に告発が虚偽と立証されているかは問われるべきでしょう。

 たしかにナメクジが「大量に」発生した云々は、話を盛っていたのかも知れません。そして最終的に告発場所がSNSとなっていたのも問題視はされるかも知れません。ただ告発当初は、まず店長に相談していたとも伝えられています。告発者が店長に送信したというSNSの画像も出回っていたものですが、そのあたりは考慮されているのでしょうか。しかるべき手続きを踏んでも無視された結果としてSNSで告発した、それを不適切と認定されて有罪となるのであれば、事態はこの一件だけでは済まないように思います。

 例えば、芸能界の大御所が長らく性加害を続けていたとしましょう。被害者が事務所に相談したけれど、何ら事態の改善が見られなかったとします。思いあまった被害者が次は週刊誌に何もかも暴露、その結果として大物芸能人が活動休止を余儀なくされたとしたらどうでしょうか? 週刊誌に訴えた被害内容は、少しばかり大げさに語られていたかも知れません。今回のナメクジ事件の結果に準えるなら、地検が「言われているほど頻繁な性加害の事実はなかったと認定」し、告発者を起訴することだってあり得るわけです。

 日本では、定められた要件を満たせば社員を解雇することが出来ます。そして日本では、定められた要件を満たす内部告発者を保護する法律があります。今回の告発者は公益通報者保護法の対象には該当しないのだと、したり顔で解説してくれる人もいるのですが、どうしたものでしょうか。要件を満たさぬ解雇は横行していますが、それで事業者側が逮捕・起訴されたケースは皆無であるはずです。しかし公益通報者保護法の要件を満たさない内部告発の結果が逮捕・起訴であるとしたらどうなのでしょう?

 日本が大いに肩入れしている「同志国」のウクライナでは、体制に批判的な政治家やジャーナリストが拘束され、捕虜交換の弾にされたり獄中死したりしています。ロシアにおける獄中死は体制による殺害として非難される一方、ウクライナの獄中死は黙殺される、そして日本国内の獄中や入管での死亡は自業自得のごとく扱われてきました。我々の社会は、他国を居丈高に断罪できるほどに公正なのでしょうか。今回のナメクジ云々を巡る逮捕と起訴については、本当にそれだけの「悪」であることが立証されているのか、問われるべきものであるように思います。

 また今回の一件で店舗側の信頼が損なわれたのは、単にSNSでの拡散によるものだけではないはずです。大手新聞社も概ね告発側の訴えに沿って報道してきた、保健所もフランチャイザーも告発の内容を否定するような発表は行いませんでした。SNSで騒いでいるだけならば「嘘かも」という疑いを持つ人はいることでしょう。しかし大手メディアも保健所も否定していないのであれば、その告発は概ね正しいものとして受け入れる人が多いように思います。

 もちろんロシアや中国など、「アメリカの敵」が絡むと戦時報道のごとくになりがち、大手メディアも大学教員も一方の体制に寄り添った偏向を見せることは多いです。社会的な権威が、国民を欺くことは珍しくありません。しかし今回の飲食店とナメクジの話に政治的な要因はない、ならばマスコミ報道も大筋では正しいだろうと、私は受け止めてきました。それを地検が容易く覆してきたのが今回の一件ですけれど、では告発者だけではなくメディアの責任は問われるのでしょうか。この問題、どうも一人の被疑者の運命だけで済む話ではないように思われます。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ロシアとNATOがウクライナで争い、クルド人が負けた

2024-03-03 22:12:05 | 政治・国際

 さてウクライナを舞台に膠着が続いていた代理戦争ですが、先般はアブデーフカが解放され少しずつ事態が動き出しています。アメリカでは次期大統領にトランプが再選される可能性が高く、NATO陣営では今のうちに事態を不可逆的にエスカレートさせる試みが幾つか見られるところです。その一つはフランスによるNATOからの派兵発言ですが、これはブラフであってあくまでウクライナ人を傭兵として使い潰す方針には変わりないと思われます。

 この代理戦争の最大の敗者は「ウクライナ人」であると私は当初より述べてきました。ウクライナ政府の長がNATOの後ろ盾で権力を維持し「勝者」になったとしてもウクライナ人の犠牲は変わらない、それは早期停戦以外では決して回避することの出来ないものだった言えます。日本のメディアではなんとかの一つ覚えのようにウクライナ人に「勝利、勝利、勝利」と連呼させてきたわけですが、政府の圧力やメディアによる選別を除いたウクライナ人の本心はどうなのでしょうね。

 そして先般はフィンランドに続いてスウェーデンのNATO加盟が決まりました。日本のメディアは挙って「ロシアは侵攻が裏目に出て自らの首を絞めることになった!」みたいに報じているところですが、実際のところはどうなのでしょうか。フィンランドやスウェーデンが本当に中立であったのならロシアにとってはマイナスになるのかも知れません。しかし中道を自称する人々が大半は極右であるように、中立を自称する国も実際はアメリカの衛星国に過ぎなかったりするわけです。スウェーデンもフィンランドも中立の装いを捨てただけで実際にやることは何も変わらないのでは、という疑問がないでもありません。

 そもそも、ロシアが何もしなかったからこそNATOは東方に拡大を続けてきたという現実があります。東欧各国に止まらずウクライナまでをNATOに取り込もうとした、そのロシアとしても妥協できないレッドラインにNATOが踏み込んできたことが今回の戦争の原因の一つであるわけです。もしロシアが何もしなかったならば、いずれスウェーデンやフィンランドはウクライナと足並みを揃えてNATO入りを果たしていた可能性もあります。ウクライナ方面だけはなんとか死守しようとしたロシアの行動は結局のところ不可避だったのではないでしょうか。

 このスウェーデンとフィンランドのNATO加盟を巡っては、トルコとハンガリーが難色を示していたと伝えられています。ハンガリーは加盟への同意と平行してスウェーデンからグリペン戦闘機の購入を契約したとのことで、かつては権威主義的な指導者として欧米諸国から非難を受けることも多かったハンガリーのオルバン首相ですが、今後は「国際社会」が公認する自由と民主主義の同志として、表だった批判を受けることはなくなることが予測されます。

 

サッカーのエジル選手、独代表を引退表明 トルコ大統領との写真めぐり(BBC NEWS)

サッカーのドイツ代表チームのメンバー、メスト・エジル選手(29)が22日、代表引退を表明した。トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領と一緒に撮影された写真をめぐり、議論が沸き起こっていた。

(中略)

6月24日のトルコ大統領選前に、エルドアン大統領と両選手との写真がトルコの与党・公正発展党(AKP)によって公表されると、ドイツの政治家の多くが、両選手のドイツの民主主義に対する忠誠心を疑う発言をした。

 

 そしてトルコのエルドアン首相もまた一時期は欧米からの批判が絶えなかったわけです。トルコ系移民でドイツ代表のサッカー選手がエルドアンとの写真撮影に応じたことで囂々たる非難を浴び、20代で代表引退を決断するなんてこともありました。かつてはプーチン大統領ではなくエルドアンが民主主義の敵として扱われていた、そんな時代もあったのです。ところがウクライナを舞台に代理戦争が始まり、トルコが海峡封鎖で重要な役割を果たすようになるとエルドアンへの批判は次第に減っていきました。

 トルコではクルド人の処遇を巡って弾圧やテロが続いており、これもまた欧米からのエルドアン政権批判の理由の一つでした。政権と対立するクルド人勢力は特にスウェーデンの庇護下で活動するものも多く、トルコと他のNATO諸国の間には溝があったと言えます。しかるにスウェーデンのNATO加盟を巡ってトルコの同意が必要となるや、クルド人の処遇についてはエルドアン側の言い分が全面的に受け入れられる結果となりました。この取引の結果としてトルコはスウェーデンのNATO加盟に同意することとなったのですが、ではクルド人はどうなるのでしょうか?

 ウクライナ人が第一の敗者なら、第二の敗者はクルド人なのかな、と思います。ほんの数年前までクルド人は欧米諸国が悪玉視する権威主義的な独裁者から迫害される民族として扱われ、ウイグル人あたりと似たようなカテゴリーに含まれていたわけです。しかるにNATOとトルコの取引の結果としてNATOはクルド人を切り捨てた、エルドアン側の言い分が欧米諸国の公認となってしまいました。結果として日本国内の排外主義者が嬉々としてクルド人をターゲットにするようになったり等々、NATOとロシアの対立に何ら関与していないクルド人が被害を被っている、なんとも罪深い話です。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする