∞再加入という選択肢が完全に無くなった以上は仕方ない、
と理解はしていても、
やはり故郷を去る倅を見送るほどに落胆し気持ちが遠のいたのは事実である。
だが今回ばかりは事情が違うぞ。
まつたけ座にアレが戻って来るといふ。
3度の夏と冬を過ごしたまつたけ座にアレが。
行かずにおられようか(反語)
主人公の織田作之助については予備知識ゼロだし『夫婦善哉』も読んだことない。
既に入っていたチームまつたけメンバーによれば大阪には「オダサク倶楽部」といふれっきとしたファン団体があって、早々に年配の御一行が来場されていたそうな。
そういうお客さんに評価してもらえる舞台になっていればよいのだけど。
期待と不安にまみれつつ
私も超久々にまつたけ座入口をくぐった。
◆
いつものように幕が開き、
ステージ中央に桜(お、NODA?)
の前に直立した棺(お、ジャニーズ?)
そして語り始めた文一浜中が完璧に つか。
愚息・内博貴の人外の美貌とアホさ加減は、ある限られた時期、松竹座において重大なオーディエンス体験をした人間には生涯忘れられないインパクトを残していよう。
今回の文一ビジュアルもそれに匹敵するほどヤバい。
10年前「葉っぱんつ」はいて「ブランブラン」だった子供が、自らの価値を「メタンハイドレート」と評するネタを許されるまでに成長(?)している。
いい具合に背も伸びた。ダンスの切れ味など今更言うに及ばずだ。
ぴがパティスリースウイーツ系なら文一は老舗羊羹系の美男子である。
今後各方面に相当の需要が生じると見た。
さて棺の中から颯爽と登場(※伝統芸)したマント姿の織田ピロキ之助が、この作品の主題歌を熱唱する。
♪デーカダンス デーカダンス
あゝ より美しく~
<Decadance>ちう単語からは
脊髄反射で小説JUNEみたいのしか思い浮かばん。
没落貴族チックな白人青年どうしがまぐわってるという昭和式BLエッセンス…
の
かけらもない仰々しく清らかな曲 by 岸田敏志(代表曲・きみの朝)
清らかでなおかつテイストは
♪なーんでか(フラメンコ~)
に酷似している。
うむ
冒頭から頭が大混乱だ。
しかも愚息が朗朗と歌い上げているとあっては。
※ところでミュージカル俳優としてのスキルは上がっているようで複雑
退廃
→耽美
→より美しく て三段活用できないこともないけどこれは苦しい。
EXTREME"Decadence Dance"を初めて聴いたときの違和感を宇宙規模で凌駕する。
物語を構成している、
a. 一枝との愛
b. 森本薫とのOne on One
c.「無頼派」三羽烏と志賀直哉との対立
は、それぞれ見応えある題材だったがどれも料理できていたとは言い難く、そこに止めを刺すのが
♪デーカダンス
の浮きっぷり。さながらライスカレーに乗った刺身である。
印象レベルで破綻しかねない内容が何とか形を保っていたのは、基本的にピロキそのものが浮いてる(爆)ことと、一枝(陽月華)、タツ姉さん(姿月あさと)という宝塚クォリティが肝心な場面をしっかり支えていたせいかと思う。
モチーフ自体は十分面白いものだったが、センセーショナルな主題歌以外にも
「そのくだり要るのか?」と素で問いたいスケート教練のシーン(笑) とか
お遊びにしても芝居として一寸キツいしずちゃん周辺 とか
もう少し何とかならんのかなあ、と漠然と残念な感想を持ちました。
◆
カーテンコール、
客席からのお手振りに答えてピロキちゃんもお手振り。
マントの下で。
てめえ、オバケちゃんかあああ!!!!
キィイイーーーーーーーッッッ!!!!
何年経っても愚息は愚息のままだからして
私はやはり長い旅の果てにいつかここへ戻り、皆と『旅人』を歌う日が来ることを祈る。