老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

厄介な食べ物から子供達を守るのに必要な情報とその政策化のヒントになる世界動向

2024-04-18 13:20:20 | 社会問題
「厄介な食べ物から子供達を守るのに必要な情報とその政策化のヒントになる世界動向:過剰な糖質分を含む食べ物から子供達を守る施策をどう作っているかに焦点を当てる」

糖質の過剰摂取の問題が注目されている。今回はこの問題に焦点を当て、ことに子供達が糖質の過剰摂取の環境に置かれ、太りすぎや肥満に導かれやすい構造が世界に存在しており、この状況を放置していると糖尿病や心臓血管系疾患等の慢性疾患に苦しむ将来が彼らに待ち受けていることが大いに懸念される所である。

今回は、世界の特に子供達の糖質過剰摂取の状況を検分し、なぜ糖質の過剰摂取が問題なのか、そして世界がこの問題に対してどんな対応を試みているのか等、を紹介してみたい。

この課題を世界がどう見て、どう対応しているかを色々な角度から見ていくことが、企業主導でない「市民が主導する人々の考えに基づく持続可能な目標」SPOGs(市民の、特に子供の健康を守る)を提案する上で、参考になるだろうとの考えから取りまとめてみたい。

今回、SPOGsという用語を使っている。これはSustainable People-Oriented Goalsの略。
以前提案のSPGsとSOGsの二つを1つに纏めることが出来れば、望ましいのではとの考えから作りだした造語です。今後はこの言葉を「人々の思いに根ざした持続可能な目標」の意味合いから使っていきたいと思います。

今のSDGsは「企業の思いや願いに根ざした持続可能な(再)開発目標」と思います。
***

まず、事実の紹介から始める。
1. 世界の子供の肥満の実態と今後の予測
(1) WHO「肥満(Obesity)と太り過ぎ(Overweight)」2024年3月1日から引用
2022年の世界の思春期の子供らの肥満は、1990年と比較して4倍化している。
2022年の世界の5才以下の子供らのうち、太り過ぎのこどもは3700万人、5~19才では3.9億人以上が太り過ぎであり、その内で肥満者とされるこどもは1.6億人。

(2) アメリカの実態: Centers for Disease Control and Prevention(CDC)による「Childhood Obesity Facts」データ、最終更新日:2022年5月17日から引用
2017年から2020年の期間、2~19才の肥満者割合は19.7%(人数:1470万人)
内訳として:2~5才は12.7%、6~11才は20.7%、12~19才は22.2%
別の内訳として、スペイン系の子供は26.2%、非スペイン系黒人の子供は24.8%、非スペイン系白人の子供は16.6%、アジア系の子供は9.0%

(3) EUの実態:OECD/European Union(2020),“Overweight and obesity among children and adolescents”, in HEALTH AT A GLANCE:EUROPE2020から引用
2018年:太り過ぎ及び肥満の15才の子供の割合は、EU諸国平均で19%、2010年の16%と比べて上昇。 男女の内訳は、男子23%、女子15%。
EU域内の地域差は大きく、最少はオランダの12%、最大はマルタの36%と3倍の開きがある。
家庭の経済状況による太り過ぎの割合の格差の存在が認められており、恵まれない家庭の子供らの太り過ぎの割合は、恵まれている子供らに比べて50%大きいという。

(4) 日本の実態:最近の25年間の栄養調査(Obesity Research,2004)から引用
1976年から2000年の期間、6才~14才の男児29052人と女児27552人を対象として調査した結果、1976~1980年にかけて肥満男児割合が6.1%、肥満女児割合が7.1%だったのが、1996~2000年にかけては肥満男児が11.1%、肥満女児が10.2%へと、男女ともに肥満率が増大している。
地域による特性として、9~11才の男児女児共に小規模の都市に住む児童らが20年間の期間にわたり最も大きな肥満率の増大を示している。一方大都市の女児に関しては20年の期間の間に肥満率の増大は見られていないという。

2.糖質分の摂食状況
(2-1)アメリカの実態:Get the Facts: Added Sugars, Centers for Disease Control and Prevention(2~19才の砂糖摂取量の調査、2017から2018年)から引用。
一日の砂糖摂取量:男子は72g、女子は60g
内訳:
2才から5才児:黒人52g、白人48g、ヒスパニック44g
6才から11才:黒人76g、白人72g、ヒスパニック64g
12才から19才:黒人80g、白人80g、ヒスパニック60g
20才以上:男子76g、女子60g、黒人76g、白人68g、ヒスパニック64g

(2-2)日本の実態:農村の児童・生徒の嗜好飲料・冷菓からの砂糖摂取量(栄養学雑誌,1980年)から引用。
幼稚園児:男子33.6g、女子31.1g
小学校5・6年生:男子36.3g、女子33.5g
中学2年生:男子63.8g、女子47.3g
高校2年生:男子42.4g、女子32.4g

(2-3)日本の実態:日本人の澱粉と糖分の摂取状況調査 Nutrients2018,10月、1474ページより引用。
調査対象:18~35カ月の乳幼児368人、3~6才児376人、8才~14才の小中学生915人、20才~69才392人
結果:平均澱粉一日摂取量について
女性乳幼児の55.6gを最小として男性小中学生206gを最高とする範囲
年齢性別に関わらずに、50%以上の澱粉は米と穀類から取り入れている
平均砂糖一日摂取量について
乳幼児(女)の46.1gを最小として小中学生(男)68.7gを最高とする範囲

摂取糖質の形は、ショ糖が18.2~34g、グルコースが7.8g~13.1g、ラクトース(乳糖)が5.3g~13.1g、フラクトース(果糖)が7.6g~11.1g。

3.砂糖等の許容摂食量:(2015年3月WHO発表1日の砂糖摂取量の目安)から引用。
1日の総摂食エネルギー量の5%未満が目安。
例えば2000Calを1日に食べている人は、100Cal(砂糖25g)が上限目安。
小学生の場合は20g以内が目安。
海外では2歳児までは砂糖や還元糖の摂食は避けるべきとされている。

一方、The Institute of Medicineは、砂糖の適正摂取量に関して公表していない。

米国心臓学会(The American Heart Association)は女性には24g以下、男性には36g以下を推奨している。子供は12g以下を推奨している。

日本の厚生労働省:砂糖の1日摂取量目標を、成人男性8g、成人女性7g
2015年版基準の目安では、成人は10g、1~2才は5g、3~5才は7gとしている。

4.良く購入されている加工食品中の糖質分含有量の例
(4-1)アメリカ人は、砂糖等をどのような加工食品から摂取しているのか。
炭酸飲料/エネルギードリンク/スポーツ飲料から:42.2%
穀類ベースのデザート類から:11.9%
果物飲料類から: 8.5%
牛乳ベースのデザート類から: 5.5%
キャンディー類から: 5%
直ぐに簡単に食べられる穀物食品から: 2.9%

(4-2)良く見かける食べ物や飲み物に含まれる砂糖・糖質分
コーラ:100ml当たり11.3g。コップ1杯は約200mlなので23g程になる。500mlボトルには56.5gが入っていることになる。
M社シェイク:バニラMサイズには糖質68.4g、Sサイズには41.2g
R社シェイク:バニラ(サイズはS相当か)には26.3g
あんぱん(80g):砂糖23.4g
レモン風味炭酸水(500ml):砂糖43.2g
大福(70g):砂糖10.8g
スポーツドリンク(500ml):砂糖32.4g
オレンジジュース(果汁50%、180ml):13g
つぶ入りオレンジ(250ml):32g
ショートケーキ:28.8g
シュークリーム:8.3g
コーヒーゼリー(100g):10.4g
コンビニ・プリンタルト類:糖質33.4gと食物繊維0.5g
コンビニ・プリンサンド類:糖質28.6gと食物繊維0.2g
果汁グミ:一粒に砂糖2gが一般的。子供の場合は2~3粒で目安に達する
チョコレート付きビスケットの一例:一箱50gに糖質31.3g、カロリー266Cal(植物
油脂やショートニングとして14.5gを含有)。糖質のCal/全Cal=47%
チョコレート:50g、砂糖28.3g、植物油脂16.6g、278Cal。糖質Cal/全Cal=40.7%
蒟蒻菓子:1袋(25gx12個入り)1個25gに糖質6.2g。1個で目安に達する
フルーツセラピーホワイトピーチ:1個150g、糖質(果糖ブドウ糖液糖と砂糖)26.6g、106Cal、糖質Cal/全Cal=100%

5. 加工食品製造時に砂糖が使用されるが、1980年代頃からコーンシロップを原料にした色々な甘味材が主として生化学的手法を用いて作られ、砂糖より安価であること及び食品のシェルフライフを伸ばすこと、そしてこれら甘味材を使用すると加工食品や加工飲料のフレーバー性やテクスチャー(のど越し等の食感)が向上すること等が評価されて、現在ではこれらの甘味材が多いに加工食品に使われている。これらの甘味材の種類には、以下のものが知られている。

ブドウ糖果糖液糖(果糖含有率が50%未満のもの)
果糖ブドウ糖液糖(果糖含有率が50%以上90%未満のもの)
高果糖液糖(果糖含有率が90%以上のもの)
砂糖混合異性化液糖(上記の液糖に10%以上の砂糖を加えたもの、例えばその
液糖がブドウ糖果糖液糖なら砂糖混合ブドウ糖果糖液糖となる)

2つ目の果糖ブドウ糖液糖と3つ目の高果糖液糖(High Fructose Corn Syrup:HFCS)は、「果糖(フラクトース)」が多く含まれ、砂糖より価格が安いこと、砂糖より20~50%甘みが強いこと、そして保湿性や吸湿性に優れていることから、焼き菓子に加えるとシットリさを高める働きがあることから寵用されている。その他の利用例ではジュースなどの清涼飲料水、スポーツドリンク、ドレッシング、焼き肉のたれなどの多くの食品に配合されている。

加工食品に使われる甘味料は砂糖だけではないということが、肥満と甘味料との関係や表示問題を考える際に砂糖だけを取り上げての議論では不充分になる、という点に留意する必要がある。

実際、HFCSは1967年に市場に導入された後、直ちに市場に受け入れられ、急速に拡大して、1980年の1人当たりの消費量は年間18.9ポンド(8560g、23.5g/日)になった。
甘味料市場におけるHFCSのシェアはカロリーベースで15%とされる(A Trend Projection of High Fructose Corn Syrup Substitution for Sugar, Amer. J. of Agricultural Economics,64,625-633、1982)。

2017年のHFCS生産量(830万トン)から計算するとアメリカ人のHFCS摂取量は69g/日に達している(High Fructose Corn Syrup Market Size, Trends and Forecast 2030Credence researchデータから引用)。

因みに、日本のHFCSの生産量は2021年に113.1万トンとなっており、国民一人当たりにすると、ほぼ1日25gになる勘定である。

日本を含めて世界は、甘味量の罠に嵌り込まされていると言える数字である。

6. 砂糖やHFCS等の糖分を過剰に摂取することによる弊害(The sweet danger of sugar 、Harvard Health Publishing 2022年1月6日より引用)

砂糖は炭水化物を含む通常の食べ物に自然に含まれているものであり、果物や野菜や穀類や乳製品等、普通見られるものである。これら食材中に含まれる砂糖は健康上問題になることはない。理由は、これらの食材は体内に取り入れられた後、「ゆっくりと」消化され、含まれている砂糖は細胞への安定したエネルギー源として働くからである。

一方、加工食品の日もちやフレーバー性や嗜好性を改善する目的で、加工時に外部から投入される過剰な砂糖や果糖その他は、吸収性の早さの問題とその糖分量の多さの2つの点で問題が発生するのである。

糖質分の吸収性の早さについては、次にデータが知られている。

お米等の穀物に含まれる澱粉は、体内で消化され吸収されるまでに3~4時間、砂糖や乳糖などの2糖類は10分~1時間、そして問題となる単糖であるグルコースや果糖(フラクトース)は数分で体内に吸収されてしまうのである(HFCSは、コーンシロップ中の澱粉を酵素分解や酵素的転換反応を用いて、人間では3~4時間を要するグルコースや果糖に変換する消化工程を、工場内で済ませてしまっていると言える)。

吸収の早さの問題も重なる形であるが、摂取糖分量の過剰さの問題として、次のことを知っておくことが大切である(Harvard Health Publishing,2021年7月1日、High-glycemic diets could lead to big health problemsから引用)。

我々が日々食べる食物に含まれる糖質分の健康に及ぼす問題を考える場合、一つの物差しとしてGI(glycemic index)値を知っておく必要がある。
先ほどの体内への吸収の早さのデータを使って、GI値を説明すると、体内で消化され吸収されまでに3~4時間が必要なお米等の穀物食品は「GI値が低い」食べ物であり、一方、数分で体内に吸収されてしまうグルコースや果糖(フラクトース)を多く添加した工業的に加工製造した食べ物や飲み物は「高いGI値」を持つものになる。

そして「高いGI値」の食べ物・飲み物を摂食すると、吸収性が早いことから血中の糖分レベルが急速に上昇することになり、膵臓からのインシュリン放出が促進されることとなる。そしてインシュリンの放出により、血中濃度は急速に低下することになる。

ここで2つの事柄が問題となって来るのである。一つはインシュリンの放出による血中濃度の急速低下により、欠乏感と渇望感が生じる可能性がある。これが、甘味食べ物と飲み物が持っている麻薬性・常習性とも言える性質であろう。
もう一つの問題は、この高GI値の食べ物と飲み物を頻繁に摂食して、上記のサイクルを頻繁に繰り返していくと、体重増加やインシュリン抵抗性や2型糖尿病に繋がっていく恐れがあること、そして心臓血管系の疾患リスクを高める可能性が高まるということである。

砂糖等の摂食と、それによる健康面の問題との間に因果関係・相関関係があると紹介する文献が多く発表されており、ここでの話の流れもそれらの文献を中心に紹介する形を取っているという点を指摘しておきたい。そして、研究者の中には、因果関係がある、と断定することは現時点ではできないとの立場の人々もいる、ということを紹介しておく。

とはいえ、砂糖やHFCSのような果糖が多く含まれている加工食品の使用実態や問題点をみていくと、「加工食品の全部」に懸念を持つのはやりすぎであろうが、特に一部の加工した食べ物や飲み物(超加工食品と呼ばれる範疇の加工食品群にかぶさる部分が大いにあると思われる)には、注意を向ける動きも必要なのではと考える。

かかる懸念をもっての世界における興味ある動きを以下に紹介していく。

7. 加工食品の包装前面(Front of Pack:「FoP」)に栄養成分を表示する世界の動向

食事と健康とを改善していくことを目指して、WHOは2004年にFoP栄養ラベル表示方式を提案し、パッケージ前面への表示を推奨する動きを始めている。

2つの目標を念頭に置いており、一つは消費者に対して健康的な食品の情報を提供すること、もう一つは食品工業界に対してより健康的な商品の開発を促すことであった。

その後、数多くの包装前面表示方式が、多くの国から提案され、どの方式が最も効果的なものであるか、をめぐって検討が続けられているのが現状と言える。

Food Quality and Preference誌(2023年3月、An 18-country analysis of the effectiveness of five front-of-pack nutrition labels,S.Pettigrew et al.)によると、
代表的な方式として5つがあるとしている(星の数表示方式・多面的な交通信号方式・栄養素スコア表示方式・推奨摂食表示方式・警告表示方式)。

8. 「交通信号式」要注意成分を表示する世界の動向(Traffic Light Labelling: A Guide for Food Businesses、Ashbury 2024,Jan.24から引用)。

英国では多くの食品事業者が、消費者の購入の利便性向上の目的から製品包装材の前面に栄養情報を色分けして、表示する方法を採用している。英国では信号ラベルと呼ばれており、世界中で採用されている食べ物や飲み物の包装の前面ラベル表示法(Front of Pack, 「FoP」)の一つである。

信号ラベルは、購入食品に含まれる主要な栄養素情報が一目で理解できるという利点がある。しかしながら、すべての食品企業と飲料企業が、かかる有用な情報を、何時の段階に、そしてどのように表示するか、を正確には理解していない状況にあるとしている。

(8-1)信号機(TL)ラベルとは?
包装済み食品や飲料製品の前面に、信号ラベルが使用され、栄養情報の迅速かつ明確な表示に役だつ。消費者は購入製品の購入時に必要な情報をそれから得ることが出来る。各栄養素(脂肪・飽和脂肪・糖分・塩分)は推奨される一日摂取量に基づいて、赤・オレンジ・緑で評価され、表示される。
赤はその栄養素が多く含まれており、食べ過ぎに注意が必要だと明示している。
オレンジはその栄養素が適度に含まれており、好む時に適量の摂食は問題ないことを意味する。
緑はその栄養素の量は少なく、日々定常的に摂食することが可能である。

(8-2)摂食量の目安
信号ラベルには成人の1日推奨摂取量に対するその栄養素が含まれている量の割合が%で表示されている。このラベル数値を参考にして、そして摂食する別の食品の栄養素を勘案して健康な食生活が送れるよう各自が考えることが求められる。

(8-3)FoP信号ラベルの表示義務はあるか?
表示義務はない。英国で販売される商品への信号ラベルシステムは自主的な制度であり、表示に義務はない。しかし、大半の小売店と食品企業が情報の利用を許諾している(opted in)。許諾を選択している企業は、カロリー・脂肪・飽和脂肪酸・糖分・塩分の量についての情報の提供に同意していることを意味する。

英国のスーパーの棚の商品の約2/3にFoPラベルが表示されている。これらの表示は保健省のガイドラインに従う必要がある。

FoP信号システムは任意だが、ほとんどの包装済み食品では、包装の裏面に重要な栄養情報の表示が義務付けられている。

9. 学校から要注意加工食品を追放するという動きがある(Advocates hope Rio’s ban on ultra-processed foods in schools triggers wave、NCD Alliance 2023, August 11から引用)。

2023年6月にリオデジャネイロ市で、公立と私立の学校内での超加工食品の販売を禁ずるという法案が可決されている。1月のニテロイ市に続く2番目の法案可決だという。校内での販売を禁じる対象としては、クッキーやキャンディーやソフトドリンクなどの砂糖等や脂質を多量に含んでいる食べ物・飲み物という。

2016年に超加工食品の栄養成分を包装前面に表示することを始めているチリの動向(Advocates hope Rio’s ban on ultra- processed foods in schools triggers wave、NCD Alliance 2023, August 11から引用)から見ると、適切な前面表示を行えば、施行2年後に高含量糖分を含む食べ物の販売は26.7%の減少が、高食塩商品は36.7%の減少が、高脂質商品は23.8%の減少が起こっているという。

学校から健康に良くない食べ物・飲み物等を追放することや、購入加工食品に適切な表示をしていくことを検討し推進していくことで、少なくとも幼児・児童・思春期の若者らや保護者らがこの問題に対して、適切な判断をする材料や判断する機会が得られ、結果的に彼らの健康を守っていく社会作りが醸成される方向性が見えてくるのではと思う。

但し世界に巨大食品・飲料メーカーが存在しているのも事実で、食品・飲料メーカートップ10社が世界で販売されている食品売上げの80%をコントロールしており、そして彼らが稼ぎ出す総利益は毎年1000億米ドルを上回っており、その利益の3/4が超加工食品からのものだという事実があることも侮れないものであろう。

最後に「肥満に打ち勝つ力と智恵は、若者たちが与えてくれる」との情報を紹介して、締めくくりとしたい(Giving young people the power to beat obesity、 Horizon The EU Research & Innovation Magazine、2022,2月14日By J.Smithの情報を引用)。

若者たちの健康改善を目指す政策設定や決定を行う時点で、若者たちの発言機会はほとんどない。しかし、政策の立案と決定権を持つ人々に何を、如何に変えていくことが望ましいかを伝えることが出来るのは、若者たち以上に適格な存在はないのである。

若者たちに権限を与えて政策を描き、若者たちが変化の主体になっていくことになれば、どんなことが起こるであろうか?
10代の若者たちの太りすぎの問題を解決したいのならば、先ず始めに行うことは若者たちの声を聞くことが解決に向けて新しい政策を立案する上で必要なことだと、研究者らが作る国際的組織が指摘している。

太り過ぎの原因と解決方法についての若者たちの意見は非常に重要なものであるが、現実には政策決定権者や研究者らに見過ごされている、と著名な研究者であるKnut-Inge Kleppさんは語っている。 Kleppさんは、青年期の諸課題を研究することで、若者たちの肥満問題の世代間ギャップを埋めることを目指している研究団体(CO-CREATE)の主要研究者である。

「政策を執行し、確実な効果を生んで行くには、政策設計段階に若者たちが参画することが決定的に重要なことである」とKleppさんは指摘する。「若者たちは、政策による介入がどのように効果があるのか、如何に適切なものであるかを、理解している人々だ」。

この考えを基にして、欧州の5カ国で16-18才の若者の参加のもとで「思春期の太りすぎ削減課題」を解決していくことを目指すCO-CREATEプロジェクトが立ち上げられた。
その結果、専門家らや大人たちでは想像出来なかった政策的アイディアが、多数若者たちから展開されることになったのである。以下に例を挙げると、

授業時間外での学校の体育施設の利用・ジャンクフードの広告制限を提案しているノルウェーの若者がいる。 そしてノルウェーの若者たちは健康に良い食べ物が、販売されている数多くのジャンクフードに比べて割高だ、という点を指摘している。
即ち、健康に良くない食べ物の広告を制限し、健康的な食べ物の競争性を高めれば、若者たちの食に対する行動を変えていくことが出来るだろう、とノルウェーの若者たちは発言している。

オランダのアムステルダムとアルメレの若者たちは、学校での調理教育実習の活動や学校食堂に、学生ら自身が工夫したメニューで作った温かで健康に良い美味しい食事を提供するシステムを持ち込むことを提案している。
オランダの若者たちはまた、消費者への意識付けならびに生産者に対しては砂糖の添加量を下げるインセンティブになると期待できる、砂糖税(1g当たりに課税する)の導入を提案している。彼らはまた、健康に良い食べ物や飲み物の価格を引き下げる行動や、スーパー等における健康に良い食べ物や飲み物の販売場所を消費者に判りやすい場所に移すことを提案している。

ポーランドとポルトガルの若者たちは、同様にスーパーの課題を取り上げて、健康に良い食べ物をもっと目立たせることを狙った活動の必要性を指摘している。
ポーランドの若者たちは、健康に良くない食べ物が販売店において過剰な仕方で数多く陳列されており、それが購入時の選択に影響している点を懸念している。またポルトガルの若者たちは、それら健康に良くない食べ物が入り口付近やレジ近くに配列されているという問題点を指摘している。

英国の若者たちは、健康的な食生活習慣の支援の為にソーシャルメディアの利用を提案している。 現在、若者たちはソーシャルメディア上で、ジャンクフードの市場戦略の攻撃に曝されている状況と言える。このジャンクフードの攻撃から子供達を守るには、学校レベルだけでなく、地域レベルでも国レベルでも健康的な食べ物の情報が入手できるソーシャルメディアのアカウントの作成が求められると指摘している。

***
SPOGs(市民の、特に子供の健康を守る)のテーマとして、例えば交通信号表示システム運動やパッケージ前面への表示義務運動を組み合わせた最適な表示方式を検討して、表示を義務化する運動やTVその他の媒体を利用して高含量のHFCS等糖質分を含む商品(一個や一本で30~40gの糖質分を食べてしまうことになるようなもの)を広告宣伝する業者に対して課税することや販売店内の商品陳列様式の規制を設けるとか、色々と考えられることは多いのではと思っております。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan
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『水原元通訳 出頭・拘束・保釈…』から見た「米国流司法取引」対「日本の人質司法」

2024-04-17 09:57:37 | 民主主義・人権
『水原元通訳 “大谷選手に謝罪したい”と声明 出頭し拘束・保釈』。その辺り、TV・展開から、「米国流司法取引」対「日本の人質司法」を考えてみた。

勿論、人質司法を口にする以上、これに好感は持っていない。日本の刑事司法、捜査は、戦前とそう変わっていないのではないか。

例えば、権利保釈「(必要的保釈-刑訴法89条)」の規定はあるが、実効性が奪われている。逮捕の後は、無造作に、23日間の勾留~起訴まで<拉致・監禁が続く>ことになっている。しかも、捜査・尋問に弁護士の立会いは認めない。弁護士との接見交通も制限する。被疑者の権利、防御はあまりに不十分…人質司法と言われる所以。

さて、日々伝えられる、日本で大人気の大谷翔平氏と彼の元通訳、水原一平氏の銀行詐欺の疑い!?事件で、米国流の逮捕・司法取引など、間接的だが、目の当たりにすることが出来た。いづれも、初めてのことだった。どうしても、日本人は、日本での逮捕・捜査の通例を背景に理解しようとしてしまうが、それは誤解!邪魔になるばかり…。

只、被疑者、犯罪(被疑事実)の追及は共通するものの、人権尊重、人権規定との距離感、どちらを優先するかなどなど、斟酌する中で、相当大差の捜査があるのかと。 唯、日本の人質司法のような極端なものは、類を見ないのかと。

日本の最高法規、日本国憲法に帰るべきではないかと思う。人権制限・侵害を当然視する、戦前からの伝統ではなく。

〔基本的人権の由来特質〕
第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
 
アメリカの司法取引採用について、「犯罪も多いので、効率の点から採用されている」と、番組で紹介があった。しかし、それだけではなかろう。決して冤罪を生まない、市民社会の常識、できる限り、人権を尊重すると言う選択が。

ウーン、してみると、人質司法を敢行する日本は、捜査、警察関係は、無闇と加重に人材が溢れているのかも、と思った次第。

自民党には、相性として民主的、現代国家とは似ても似つかず、警察国家がさも似たり。人権尊重のオーソリティ、人権委員会もない。予定も!?

<ご参考に>
水原元通訳 “大谷選手に謝罪したい”と声明 出頭し拘束・保釈 2024年4月13日 11時34分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240413/k10014420791000.html
そのとき 大谷翔平は… 水原元通訳 破綻への時系列を振り返る 2024年4月12日 19時07分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240412/k10014420381000.html

刑事訴訟の流れ - MtBook US リーガルサービス
https://mtbook.com/service/criminal-lawsuit/
『刑事裁判において、通常法廷内で最初に行われる手続きは罪状認否です。被告が書面による罪状を受領し、弁護士による代理が認められ、訴えられている罪状に対して応答すると、裁判の日程が計画され、保釈が審理されます。』 ...

ドイツ法曹学会所属の専門家に聞く海外の司法 ※刑事訴訟法198条
https://keiji-pro.com/magazine/169/

「護憲+コラム」より
蔵龍隠士
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「オッペンハイマー」原爆を開発した科学者

2024-04-09 20:58:16 | 戦争・平和
オッペンハイマーは、原子物理学者で「原爆の父」ということは、皆様ご存じでしょう。
映画「オッペンハイマー」は、彼の生涯を描いています。
https://www.oppenheimermovie.jp/

大学や研究所では素粒子論に打ち込み、超新星の爆発後のブラックホール理論を予想していました。しかし、ロスアラモス所長に任命され、原爆開発のマンハッタン計画の責任者となってしまいます。戦時下でさえなければ、研究者としての一生だったでしょう。

私たちは原爆が広島と長崎で多くの人々を殺し、放射能被害に苦しむ人のこともすでに知っています。オレンジ色のボタンを押す恐怖、突然の無音、そして爆発の映像は息を呑みます。

オッペンハイマーは「原爆は終戦のために必要だった」との考えは揺るがなかったようです。しかし、テラーの水爆開発には反対します。水爆は世界を破壊する、ソ連との止めどない軍事競争の過程で、もし水爆が使われたら…と考えたのかもしれません。

原爆の開発者として、オッペンハイマーが人々の称賛と喝采を受ける場面は、やはり米国では「戦争を終わらせた」勇者であり、原爆雲の下の悲惨な人々への想像は及ばないのだなと感じさせます。その意味で、まさに加害者側の原爆開発物語ですが、一見の価値はあるでしょう。俳優陣も豪華です。

原作は「American Prometheus: The Triumph and Tragedy of J. Robert Oppenheimer」。火を人間に与えてゼウスの罰を受けるプロメテウスに、原子爆弾を作ったオッペンハイマーをなぞらえています。

「護憲+BBS」「明日へのビタミン!ちょっといい映画・本・音楽・美術」より
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いつの間にやら、空母が2隻。(-_-;)ゞ

2024-04-09 20:49:21 | 安全・外交
故・安倍晋三が”積極的平和主義”なる陳腐な造語を喧伝し、国会で122回ウソをつき、軽々しい閣議決定で方向を決めた日本の安保政策。

① 空母は保有しません→前後分割甲板のヘリ空母を建造。
② 空母ではなく「ヘリ搭載護衛艦です」
甲板が前後分割だから航空機は離発艦できません
→艦首~艦尾まで通った甲板の大型ヘリ空母を建造。

同時に、航空自衛隊が垂直離着陸できる戦闘機F-35を導入。
また、垂直離着陸できるが安全性・安定性に欠陥のあるv-22オスプレイも導入。
V-22オスプレイを購入したのは日本だけ。それも今年、米国で生産打ち切りになるというのに整備増強して、空母に載せようという魂胆。
それらをヘリ空母に搭載するのでは?と突っ込まれた政府は、

③ 航空機は艦内に格納できません→大型エレベーターを装備。
④ 航空機が離発艦できる強度はありません→耐熱耐荷重のある飛行甲板に改修。
⑤ 米軍空母からF-35とV-22を呼び寄せて、離着艦テスト。

ついに、日本は戦艦大和に匹敵する大きさの空母を2隻保有しました。
「空母ではなく、大型護衛艦です。災害時には輸送艦になります」と国民に説明していた言葉は、どこへ消えたのですか?

◆海自の護衛艦「かが」大規模改修で飛行甲板が長方形に…事実上の空母化で「F35B」発着艦に
https://www.msn.com/ja-jp/news/national/%E6%B5%B7%E8%87%AA%E3%81%AE%E8%AD%B7%E8%A1%9B%E8%89%A6-%E3%81%8B%E3%81%8C-%E5%A4%A7%E8%A6%8F%E6%A8%A1%E6%94%B9%E4%BF%AE%E3%81%A7%E9%A3%9B%E8%A1%8C%E7%94%B2%E6%9D%BF%E3%81%8C%E9%95%B7%E6%96%B9%E5%BD%A2%E3%81%AB-%E4%BA%8B%E5%AE%9F%E4%B8%8A%E3%81%AE%E7%A9%BA%E6%AF%8D%E5%8C%96%E3%81%A7-%EF%BD%86%EF%BC%93%EF%BC%95%EF%BD%82-%E7%99%BA%E7%9D%80%E8%89%A6%E3%81%AB/ar-BB1lgDSN?ocid=msedgntp&pc=U531&cvid=07968ca78fa44e82898a331351d16b89&ei=7

事実上の空母化・・・って、書いちゃうんですね?読売新聞さん。記事には、
「政府は2018年に定めた中期防衛力整備計画で、警戒監視や有事の際の防空態勢を強化するため、いずも型の2隻について、事実上の空母とすることを明記した。」
とも。さすが、ネトウヨみたいなweb版を運用するマスメディア。全国紙が、すでに空母化を容認している。権力への批判がない御用新聞、まるだし!

今後、空母2隻で済むわけがない。空母を守るミサイル護衛艦、露払いのイージス艦、隠れたところに潜水艦・・・アメリカ海軍の空母打撃群を見ればわかるでしょうに。おカネなんか、いくらあっても足りるワケがない。だから、防衛予算だけ複数年で確保する。

こうやってズルズルと、「専守防衛」という線引きを「先制攻撃」の方へズラしていくんです。「空母じゃない」と強弁していた国会議員は辞職せよ!

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
猫家五六助
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原子力発電は地球環境にやさしいのか

2024-04-07 20:05:48 | 原発
原発が相次いで作られた時代に盛んに繰り返された、「原子力発電はクリーンな発電方法である」という主旨の言説がここにきて蘇っているようだ。SDGsの7番目の目標に掲げられた「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」を意識し、原子力こそがカーボンニュートラルで持続可能な発電方法であるとして、日本政府が進めようとしている原発回帰の根拠ともなっている。

原発回帰を進めようとする人、あるいは否定しない人たちは、一見すると中立で多角的な情報源をもとに、原子力発電こそが現状では最も安定した電力供給ができ、かつ環境への負荷が少ないと訴えているようだが、実際には原子力発電に有利な情報を選んでいて、必然的にバイアスがかかった内容に見える。

NHK高校講座で開講されている理科科目のひとつである「科学と人間生活」では、生活に必要な電力をいかにして発電しているのかを説明している。原子力発電のデメリットや福島第一原発事故だけでなく東海村臨界事故にも言及し、万が一事故が起きた時に甚大な被害が出るというリスクについても説明している。しかし、あくまでも発電方法やメリット・デメリットを知るにとどまっている印象を受けたのも事実だ。

たしかに、現在の技術では再生可能エネルギーでは電力供給が不安定かもしれない。しかし、それらを克服するためにどのような研究開発が行われているのかなどを紹介してもいいのではないか。

水力発電は気候変動の影響を受けやすく、干ばつが原因で発電できなくなってしまうのであれば、まずは省エネと再エネで気候変動問題に対処することが先だろう。

さらには、原発もまた気候変動というよりも端的に温暖化の影響を受けやすいようだ。気温上昇に伴い、冷却水として用いる湖沼、河川、海水の水温も上昇し、冷却水として使用できない事例もすでに発生している。大半の原発を海岸に設置している日本でも冷却水として使えなくなる可能性がある。

また、気温の上昇による海面上昇問題も、原発に大きな影響を与えることは想像に難くない。浸水の危険性があり、高潮と暴風雨が重なった場合には水没する可能性もあるだろう。

冷却に使用された後は海水温よりも7℃近く高くなって海に戻されるのであれば、海水を冷却に使用すること自体が海水温の上昇につながり、SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」に反することになってしまう。

SDGsの目標16には「平和と公正をすべての人へ」とあるが、原発では労働者の被ばくが前提とされていて、事故が起きた場合には環境だけでなく人間にも甚大な被害をもたらし、10年以上経っても収束できないのが現実だ。すべての人が平和に暮らせる手段ではないことは明らかである。

自分たちがやりたいことに対しては多少のリスクもデメリットも厭わないのに、消極的な事柄についてはリスクとベネフィットを対照することもなく、デメリットを克服しようとも試みない。公平な観点から原子力発電こそがもっともクリーンエネルギーだという考えを今一度見直していただきたい。

「護憲+コラム」より
見習い期間
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裏金&脱税する政治家!好き勝手に日本の国益を決めるな!

2024-04-03 21:03:28 | 自民党政治
平和国家の礎が揺らぐ――これは東京新聞3月28日付の社説タイトルである。
◆<社説>安保法施行8年 平和国家の礎が揺らぐ
https://www.tokyo-np.co.jp/article/317816?rct=editorial

平和国家・日本の立ち位置は“積極的平和主義”と妄言を吐いた安倍晋三が2015年9月に安保法成立を強行したことで「国民の合意」とはかけ離れたところで好戦的な方向へシフトしてしまった。そして専守防衛の縛りをいとも簡単にほどき、「輸送艦です」とゴマかしていた戦艦大和に匹敵する大型艦船を堂々と「空母」に改装した。

さらに、岸田政権はロシアのウクライナ侵攻やイスラエルのパレスチナ殲滅という国際紛争に乗じ、「少子化対策だけでなく防衛力の抜本的強化もわが国の喫緊の課題だ」と強弁し、支持率が低迷しているにも関わらず安倍政権の悪癖「閣議決定」を使って国会で議論せずに他国との戦闘機共同開発+第三国への輸出へ舵を切った。

さらに、さらに、岸田政権は軍備増強のために1兆円単位の「クレジットカード」を持つことを決めた。
◆「兵器ローン地獄」が来るかも…「例外」だった高額武器の分割払いを「当たり前」にできる法案が衆院を通過
https://www.tokyo-np.co.jp/article/316122

こんな危ない爆買いカードを簡単に作れる・使える仕組みを“支持率の低い”一政権が決めるなど、デタラメにもほどがある。なぜ、これほどのデタラメが政治の中枢・国会で起きてしまうのか。容認されるのか。

これは「日本がイチバン」「日本は一国でも負けない」「言葉よりも武力」という確信犯的な自民党タカ派やスポンサー勢力だけの問題ではない。“戦争の怖さ、愚かさ”を知らない、裏金稼ぎや脱税に精を出す不勉強なバカ政治家が「そーだ、そーだ!」と同調しているからだろう。

そう考えると気が滅入ってしまうが、東京新聞3月23日付コラム「ぎろんの森」の政権・政治家批判を読み、少しだけ救われる気になった。
◆「憲法9条を声を出して読む」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/316816?rct=discussion

国歌斉唱・国旗掲揚にこだわるならば、「憲法9条の朗読」を月1回、国会の始業時に行うこと。これを閣議決定しなさい、岸田文雄!

「護憲+コラム」より
猫家五六助
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「在日特権」について考える

2024-03-25 20:38:23 | 政治
日本に「在日特権」はあるのでしょうか。

ネットなどでは声高に叫ぶ人達がいます。
一方「そんなものはある筈がない。一部の者達が煽っているだけだ」という人達もいます。

どちらが本当なのでしょうか。

実は2024年の現在、日本に「在日特権」はあるのです。最強にして最大の「在日特権」を有する組織があるのです。

それは、『米軍基地』。

沖縄では昔、日本人が米軍のトラックに轢かれても、日米地位協定が有り、米軍が調査した後でないと沖縄の警察は手を出す事も出来なかったのです。

最近も、東京の西部地区では、米軍基地から垂れ流された疑いのある物質により地下水が汚染され、発がん物質が見つかりました。

それだけではなく、米軍のオスプレイは2023年屋久島沖で墜落事故を起こし、その原因解明も詳細にされる事なく、日本の上空を飛び回ろうとしています。

これを「在日特権」と呼ばず何と呼ぶのでしょうか。

「米軍基地は日本を守ってくれているから仕方が無い」という人がいますが、本当にそうでしょうか。 
米軍が守っているのはアメリカの利益であって、日本の民の命ではないのです。

曾てアメリカ政府は日本を共産主義の防波堤にしようとしました。
今、アメリカ政府は戦争が始まる時に日本を防波堤にしょうとするかも知れません。

そのためには邪魔な「日本国憲法」を変えよと迫って来るでしょう。

今沖縄で起きている事は、日本の何処で起きても不思議ではありません。

ネトウヨの皆さん、もう一度「在日特権」について考えてみませんか。

「護憲+コラム」より
パンドラ
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「日本国憲法」のミステリーを追いかけて(ある著書に出会う)

2024-03-23 09:40:10 | 憲法
1.はじめに

最近、憲法の本を書き出しており、なぜ締め切りのあるコラムなのか、コラム投稿の任が少し負担になっている。
それはともかく、表題が上記のようなタイトルになった。
日本国憲法のミステリーは学生時代から不可思議なものだった。連合軍の占領下で成立した憲法である。学者は間違いを糾すこともないまま、アメリカの占領と発言している。(最近の岩波新書でも、そうなのである。)

確かに、GHQの最高司令官は米軍のトップ、マッカーサー元帥であり、憲法の起草も元帥の名前で呼ばれている。だが、憲法の最大の謎は、制定時はともかく、日本の為政者はGHQの批判を受けて占領軍の草案を少し訂正して、国会の審議を経て、現在の憲法典となっている。

だが、50年代に朝鮮戦争が勃発すると、占領軍はアメリカ主導で日本の再軍備を決行した。そして、あろうことか、戦時中の東条内閣の閣僚であった岸信介を首相に就けて、第二次安保条約を締結したのである。

この急転直下の「憲法」の事実上の「改正」は謎と言わなくして、なんと呼べばよいのか。

2.そういう憲法制定後の世界情勢の激震を受けての、アメリカ主導による、憲法9条の事実上の改正である「自衛隊法の制定」があった。そして、今回の重要な争点となる、米軍の日本在留である「米軍基地の創設」があった。

これが「謎」ではないという憲法学者の日本アカデミーであるが、彼らの憲法テキストには「米軍基地」のきの字もない。(これはジョークだと思うが。)

そうこうして私が悪戦苦闘しているときに、1冊の本が飛び込んできた。矢部宏治(以下矢部氏と言う)著『日本はなぜ、「戦争が出来る国」になったのか』(集英社インターナショナル)という著書である。

3.この矢部氏の本で、私の前述したミステリー;「謎」(疑問)は一気に氷塊した。
矢部氏の言わんとする要点は次のことである。(以下この本の見出しと著者の執筆動機と主張を、冒頭だけ引用します。まだ読み始めたばかりで、コラム投稿には間に合いませんでした。)

『「日本の超エリートも知らない「日米密約」の謎』
「たしかに日米間の軍事上の取り決めには、オモテに出ない闇の部分もあるのだろう、でも、外務省など国家の中枢にはそういう問題も全部わかっている本当のエリートたちがいて、国家の方針を間違わないようアメリカとギリギリの交渉をしてくれているのだろうと。
ところが、全くそうではなかったのです。
現在の日本のエスタブリッシュメントたちは、戦後アメリカとの間に結んできた様々な軍事上の密約を、歴史的に正しく検証することが全くできなくなっている。というのも、過去半世紀にわたって外務省は、そうした密約に関しては体系的に保管・分析・継承することもせず、特定のポストにいるごく少数の人間の個人的なチェックに、その対応を任せてきてしまったからです。
そのため、特に2001年以降の外務省は、「日米密約」というこの国家的な大問題について、ただ資料を破棄して、隠蔽するしかないという、まさに末期的な症状になっているのです。」

(次の見出しがこの本の真髄の、)
『「戦争になったら、日本軍は米軍の指揮下に入る」という密約がある』
「この「日米密約」の世界に一歩でも足を踏み入れてしまうと、世の中の出来事を見る目が、すっかり変わってしまうことになるのです。
例えば、2015年に大きな社会問題となった、安保関連法についてです。(投稿者注記;中略 あの安倍政権で「閣議決定」された集団的自衛権の行使容認問題の案件です。)
けれども、すでにアメリカの公文書で確認されている一つの密約の存在を知れば、あの時起きていた出来事の本質は、あっけないほど簡単に理解できるのです。
その密約は、簡単に言うと、「戦争になったら日本軍は米軍の指揮下に入る」という密約のことです。
1952年7月と、1954年2月に当時の吉田首相が口頭で結んだこの密約が、その後の自衛隊の創設から今回の安保関連法の成立にまでつながる日米の軍事的一体化の法的根拠となっているのです。
けれども、これまでそれは、あくまで日本とその周辺だけの話だった。
ところが、今後はそこから地理的なしばりを外して、戦争が必要と米軍司令官が判断したら自衛隊は世界中どこでも米軍の指揮下に入って戦えるようにする。
そのために必要な「国内法の整備」が、昨年;1916年:ついに行われて」しまった。それがあの安保関連法の本質だったということです。

『日本の戦後史に隠された「最後の秘密」とは?』
「私は今回、この戦争になったら、自衛隊は米軍の指揮下に入る」という密約の行方を追いかけるうちに、これが日本戦後史の「最後の秘密」だろうと思われる、軍事面での「大きな構造」にたどり着くことができました。」
「なぜならそこでは日本の現状が「占領体制の継続」ではなく、それよりもさらに悪いものだということが公文書によって完全に明らかに証明されてしまうからです。」

引用を終わります。

矢部氏は上記の結論を冒頭で述べています。確かに、「本文」を読めば、安保条約が、日米政府のトップではなく、日米合同委員会という、いわば、日本の官僚と在留している米軍のトップ同士の「取り決め」で決定されている素気ないものにすぎません。しかし、これが「日米密約」として、日本の法令と政府も拘束する法制度になっているのです。

次回も、矢部氏の超撃の著書を、ポイントを絞り解読していきます。矢部氏は、真相を知って、悲観的にならないように読者に訴えています。米軍とアメリカ政府の言いなりになっている自民党政権というマスコミ論調ですが、そうではないと矢部氏は主張しています。米軍の日本再占領を強く働き掛けてきたのは政府であると。

トランプ政権時にトランプさんは、米軍基地はそれほど要らないだろうと発言していたこともありました。状況は変わるのだと矢部氏は力説しています。

(次回も続きから、次回は占領下の真実に迫ります。)

「護憲+コラム」より
名無しの探偵
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東日本大震災から13年、自衛隊の果たす役割は?

2024-03-11 11:59:36 | 災害
今日は3月11日。2011年の東日本大震災発生から13年が経ちました。

地震、津波、火災等により2万人を超える死者、行方不明者を出し、原発事故を引き起こした未曾有の大規模災害に、当時私たちは衝撃を受け、被災地はどうしたら立ち直れるのか、自分に何かできることはあるのか、政治は被災者救済と被災地復興に迅速適切に動けるのかと、息をこらしながら見つめる日々が続きました。

そんな当時の状況で、今も強く印象に残っていることのひとつが、自衛隊による献身的な救助活動でした。

震災発生後ほどなくして現地に入った自衛隊は、福島第一原発周辺のがれきの撤去やインフラ整備、被災者への食糧支援や風呂の提供、更には泥にまみれたアルバムの回収や、床の拭き掃除、仏壇の整備等々、被災者の心に寄り添う多岐に亘る支援を行い、その利他的献身と、訓練・組織力に裏打ちされた救援能力に、私たちは強い信頼と共感を抱くようになりました。

こうした国民の間に広がった自衛隊に対する信頼、肯定的評価は、3.11東日本大震災の貴重なプラスの置き土産だったと、今でも思います。

しかし、その一方で、震災後の政治の動きを見ると、野田民主党政権、それに続く安倍自民党政権、共に、安全保障政策の強化に傾斜。「積極的平和主義」と称して、自衛隊の海外派遣を断行するに至りました。

そんな状況下の2016年1月に、「自衛隊は戦場に行くの?」という毎日新聞社主催のシンポジウムがあり、そのシンポジウムのレジュメに、(見習い期間さんのコラム「積極的平和の意味するもの」とも通じる)瀧野隆浩さん(現毎日新聞編集委員)の以下のような印象深い言葉がありました。

「自衛隊には①いわゆる「普通の軍隊」になろうとする新しい流れと②60年かけて培ってきた「軍隊らしくない」「利他性組織」としての本流』がある。『相反する二つの流れをよく理解し、なんとか生かしていけば、安倍首相がいうのとは別の「積極的平和主義」の道が築いていける。』
https://blog.goo.ne.jp/rojinto_goken/e/0971579a34329e2702d43bbb99375ceb

現在の岸田政権は、安倍政権の路線を踏襲し、「厳しい安全保障環境」を強調し、「防衛能力」「反撃能力」の強化を全面に打ち出しています。

その一方で、今年1月に起きた能登半島地震に際しては、(3月4日の参議院予算委員会で山本太郎氏が指摘したように、)災害救助に自衛隊を投入することには極端に消極的な姿勢を示しています。

岸田政権の対応から、政府は東日本大震災時に示された自衛隊の「国民の命を救う」能力を活用するのではなく、「敵を殺す軍隊」の強化を重視していく方針だとしか思えません。

ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルによるガザ攻撃、喧伝される中国や北朝鮮の脅威、等々、世界中に戦争の火種が存在し緊張が高まる中、「平和的生存権」を掲げる「日本国憲法」を持つ私たちは、自衛隊の「災害救助隊」としての機能を強化し、「国際災害救助隊」として世界に貢献することこそが、「真の平和構築」に繋がることを、今一度思い起こす必要があるのではないでしょうか。

「護憲+コラム」より
笹井明子
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(目にとまった記事の紹介)そしてその情報をもとに「人々」の立場から試みにSPGsの具体的目標を考えてみる

2024-03-06 12:55:09 | 社会問題
(目にとまった記事の紹介)そしてその情報をもとに「人々」の立場から試みにSPGs(Sustainable People Goals)の具体的目標を考えてみる。

「人々」の発想から浮かぶSPG(農耕)、SPG(食べ物と栄養)、SPG(暮らしと生計)にまつわる目標を「目にとまった記事の情報」をもとに考えてみたい。SOGsも提案していますが、両方を表記すると煩雑になるので、SPGsを代表して今回は使用しております。

今回のニュース記事は、The Lancetに発表された「世界の肥満と低栄養」に関する研究を紹介しているDeutsche Welleの記事です。

『世界的な栄養失調の様相:8人に1人が肥満』(Deutsche Welle,2024年3月1日 Tapatrisha Dasさん記す)
***
医学雑誌ランセットの最近の報告によると、栄養失調が原因となる飢餓人口は世界的には減少しているが、しかし栄養失調の別の形態である肥満は爆発的に拡大している、と指摘されている。

世界の肥満率の実態をみると、1990年以降子供の肥満率は4倍化、成人のそれは2倍化している、との研究結果が3月1日の医学雑誌The Lancetに発表されている。

世界の10億人(8人に1人)が、BMI(Body Mass Index)が30以上の肥満状態にある。
BMIとは個々人の体重と身長の数値をもとに計算できる簡便な過体重や肥満状態がわかる数値であり、kgで表した体重を、メートルで表した身長の二乗で割って得られる数値。

WHOの栄養と食品安全局代表のFrancesco Brancaさんは、肥満率30以上の人が世界で10億人を越えるのは、以前は2030年と予測していた、と語る。しかし、この予測が8年も早い2022年に到達し、破られてしまったことになる。

Lancetの報文の共著者であり、インペリアルカレッジロンドン教授のMajid Ezzatiさんは、肥満率の上昇のスピードがこの様に早いことに「驚いている」と語っている。

そして、この急速な上昇が、世界が想像する地域即ち富裕諸国で起こっているのではない。

今回の新たなデータによると、多くの富裕諸国では肥満率が頭打ちになり始めている状況が一般化してきているのに対して、エジプトやイラク、リビアや南ア、チリのような低所得国から中所得国では、成人と共に子供達の間で肥満が急速に進行していることが認められている。そしてシリアやトルコやメキシコ等の国もそれに遅れることなく追随しているとされている。

「米国を除くと、全ての伝統的な先進国は、肥満率の点では世界のトップグループに入っている国はなく、低所得から中所得の国々がトップグループをほぼ独占している状況だ。」とEzzatiさんは指摘している。

今回のデータは、飢餓に苦しむ人々の数の低減化が世界規模である程度進んでいることも示している。
過去30年間で、痩せすぎの成人の人数は世界規模で半減している。18才以下で見ると、痩せすぎの女性は5分の1に、男性は3分に1に低下している。

しかし、状況が改善されていない、いくつかの国の存在も浮かび上がっている。
例えば、エチオピアやウガンダの様な国々では、痩せすぎの成人の割合はほとんど変わっていない。

インドやバングラデシュやパキスタンの様な他の国々では、痩せすぎの成人の割合は急速に低下している。

しかし、パキスタンでは、一つの栄養失調の形態が、別の栄養失調の形態に置き換わっているように見える状況があるという。即ち、痩せすぎの成人の割合が1990年以降に27%から7%へ低下した一方で、肥満の成人の割合が3%から24%へと同時期に上昇している。パキスタンにおける肥満率の上昇スピードは、欧州諸国の大半の国より大きいのである。
そして、サハラ砂漠以南のアフリカの国々にも同様な痩せすぎが減少する一方で肥満の人が増大するという交差性が、殊に女性の中に見られているという。

低所得から中所得国の国々で肥満率が急増している理由は何なのであろうか?
富裕諸国に比べて低所得から中所得諸国の間で急増しているのには、いくつかの理由があるとBrancaさんは指摘し、次のような理由を挙げている。

一点目は、エジプトやメキシコの様な国で急速な工業国化が最近の30年程で起こったこと。それにより、それらの国では特に都市部に置いて食ベ物のシステムが変化しており、「加工食品と加工飲料の売り上げやスーパーマーケットの数やアウトレット販売店の数が大きく拡大した」とBrancaさんは指摘する。「それらの変化は非常に早く、そしてその向かう先が良い方向ではないのである」と付け加えている。

二点目は、2倍化する負担の生物学(the biology of the double burden)の存在であると、Brancaさんは指摘する。2倍化する負担の生物学とは、低体重で生まれた子供や、あるいは子供のころに充分に食べ物を摂取できなかった子供らは、往々にして過体重な成人や肥満成人になりやすい、ということを指す。サハラ砂漠以南の国々で見られる状況も、この考え方で説明できるとされる。

そして三つ目として、これらの背景に政府の無策が存在している、と指摘している。その結果市民に対して健康に良い食べ物を提供するという活動が欠如する状況が生まれる。
そして、富裕諸国とは異なり、低所得から中所得諸国の多くは、脂肪分が多い・砂糖が多い、そして塩分が多い加工食品を過剰に供給するマーケットの巨大な圧力から市民を守るために必要な、政府当局の政策がほぼ無いか、あるいは全く無いとBrancaさんは語る。

「重要なことは、従来は、肥満が富裕諸国の中の問題と思われていたのが、今や肥満が世界全体の課題となって来た、ということだ」とBrancaさんは指摘している。
***
【2倍化する負担の生物学(the biology of the double burden)との言葉は判りにくい。補足的に説明する文献が同じくBrancaさんの2019年ランセット誌にあり、内容を紹介すると、「栄養失調の2重の負担(ここでは生物学という言葉でなく栄養失調を使っている)は、国・都市・地域・世帯・個人などあらゆるレベルでの栄養過多(過体重と肥満)と栄誉不足(発育阻害と消耗)という2つの栄養失調の共存状態を指す。従来は様々な形態の栄養失調を個別の問題として理解し、対応を考えてきていた。ここに新たに出現した栄養失調の2重の負担という現実は栄養不足と栄養過剰とが相互に関連し共存しており、従って複数の側面に同時に対処する2重の責務を負った行動と政策を実施する必要があることになる。」と説明している。】

以上のランセットのニュース記事を参考にして、日本社会では、ややもすると脇に置かれて視界から消され勝ちな状況ではあるが、「人々」の立場に立てば見えてくる具体的な「市民の目標案」を、試みにいくつか提案してみたい。

今回はSPG(農耕)やSPG(食べ物と栄養)やSPG(暮らしと生計)を取り上げてみたい。ここでは全てを網羅して厳密に議論することはせずに、容易に思い浮かぶ項目のみを挙げるに留めます。

ランセットの研究結果のポイントの一つは、飢餓や低体重の問題は世界的に改善されてきている、一方でBMI30以上の肥満者は急増しており、その急増している地域が先進富裕国ではなく、低所得から中所得国の国々で起こっていることの問題を指摘している。即ち、所得の格差が肥満を助長している、という関係性がハッキリと示されたと言え、換言すれば、人々の健康状態が、所得の格差により左右されている、というのである。

まず、大前提として、わが国でも「所得の格差」と「人々の肥満や健康状態」との間に相関性があるかどうか、を確認することが必要である。 興味あるデータが、大和総研の行った調査(「人々の所得や雇用から見る健康格差」2023年4月27日)にあり、紹介すると、

年収200万円未満世帯の肥満率:男性38%、女性26%
年収600万円以上世帯の肥満率:男性25%、女性22-23%
(いずれも2014年厚労省発表の国民健康・栄養調査結果の概要を基にしている)

即ち日本でも、世帯年収が低いと肥満度が高くなる傾向がある、と確認できる。

また大和総研の資料によると、食材ごとの摂食量にも違いがあるとしており、即ち、年収200万未満の男性は600万円以上の男性に比べてコストが安く、カロリーの取れる穀類(米や小麦等)を9%程度多く摂食しており、反対に肉類は20%近く少なく、野菜類は30%程少なく摂食しているという。世帯年収が低いと健康に良い食生活を送りにくい状況が見て取れるのである。

こうした実態を見ると、所得格差の問題を解決する策を「人々」の立場から打ち立てる必要があると思う。SPG(暮らしと生計)の具体的な目標案を提示したいと思う理由です。

そしてもう一つの視点は、日本でも戦後の復興と成長を期待して工業偏重の急拡大が起こり、その潮流にはじき飛ばされるように農業は衰退していき、結果として農業従事者数の激減とともに自給率の悲惨な低下がもたらされ、その状況が今も継続しているのは言うまでもなく、戦後の農業人口の推移に明らかに現れています。

即ち、農業従事者は1960年ごろ850万人だったのが、2015年に187万人へ、そして現在は130万人にも満たない。日本の人口約1.2億人とすると率にして約1.1%であり、その間の人口推移を加味すると農業人口の割合は日本では10分の1に低下してしまっている。

食糧自給率の状況は、農水省発表の2022年度のデータによると、カロリーベースで前年と同じ38%で依然として低い水準で推移している。因みに1965年ごろは70%を越している。

妥当な農業従事者数がどの位が良いかの判断としては、世界の農業従事者数と世界人口との関係が使えるのでは、との考えから調べると、現在約9億人が農業に従事しているという。世界人口は80億人であるので、率にすると約11%。これは1960年当時の日本の状況ともかぶる数字で、目標の目安としては妥当ではないかと思う。

そして現在の日本の状況は、世界の10分の1である。

「人々」の立場から浮かび上がるSPG(農耕)の目標として、日本の農業従事者を2050年までに倍増する(130万人から260万人へ)というのはどうであろうか。2050年の人口予測が9500万人とされており、これを使うと3%弱への農業従事者の拡大を目指すことになる。

この方向の目標を採用すれば、130万人の職が新たに農村地域で生まれること、食料自給率が改善されること、そして農村地域の生活水準の向上という暮らし向きの改善が期待される。農村地域の過疎化の解消の方向そして農村地域の人の増大による自然環境へ人の手がより多く入ることになり、里山の回復も期待できるのではないか、と思う。

◎SPG(農耕)の目標:日本の農業従事者を2050年までに倍増する(130万人から260万人へ)

この目標はSPG(暮らしと生計)の目標とも言えるものである。

SPG(食べ物と栄養)については、ランセットで触れられている「脂肪分過多・砂糖過多、そして塩分過多の加工食品、殊に超加工食品の過剰圧力から市民を守るのに必要な政策の弱さ、政府の怠慢を論じている部分に対して、我々「人々」の立ち場からどういう目標を考えるか、が一つのポイントと思います。

加工食品、ことに超加工食品は、それらに依存する状況が生まれるような嗜好性の高い食べ物である点が一つの困った特徴である。従ってそれらの健康への悪い影響と共に、その中毒性とも言える特徴から、成人だけでなく、殊に児童らに対する健康上のリスクの配慮が極めて高く為される必要があるものだと言える。

現在、かかる観点での啓蒙活動は、ほとんど我々の視界には入って来ていない状況と考える。

◎「人々」の発想から浮かぶSPG(食べ物と栄養)の目標:児童らに対する加工食品、ことに超加工食品が持つ健康上のリスクを判り易く児童に伝える啓蒙活動、即ち「健康上のリスクを訴える漫画」の作成を早急に行う

このような、「人々」の発想から浮かぶSPGを今後も提示していければと思っています。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan
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