ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

クレモナ

2015-07-26 | その他

元日以来の投稿になります。
生来のさぼり癖のためになかなか更新できずにおりましたが、いたって元気に過ごしています。

さて、タイトルに書いたクレモナといえば、言わずと知れた弦楽器の聖地。
アマティ、ガルネリ、ストラディバリ等、伝説の名工を輩出した町として有名です。
その偉大な聖地の名前を冠したスピーカーがあります。
イタリアのソナスファベール社製のものですが、私の愛用している機種は、その初期モデルになります。



これまで、ビクターのSX3に始まり、タンノイのアーデン、エジンバラ、そしてクォードの63PROという変遷をとげてきた我が家のスピーカー。
いずれのスピーカーも、それぞれ個性があり、素晴らしい音楽を奏でてくれました。
しかし、このクレモナとの出会いは特別。クレモナに出会ったのは2002年ですが、音に惚れて、フォルムに惚れて・・・。もう文字通りの一目惚れ。
クレモナは暖かい音色で艶やかに歌い、どんな時でも品位を失うことがありません。
クレモナが我が家に来てからというもの、私は一度も他のスピーカーのことを気にすることなく、ひたすら音楽を聴くことに集中できました。
しかし、東日本大震災では愛機クレモナもその衝撃で飛ばされ、側面にはその時の傷跡が今も生々しく残っています。ただ、奇跡的にスピーカーユニットは無事で、今も現役で頑張ってくれています。



ところで、クレモナの特徴のひとつは簾のようなフロントグリル。この簾が音色にも大きく寄与しているようですが、5~6年で簾のゴムが緩んでくるのです。今年になって結構緩みが目立ってきたので修理・調整に出していましたが、一昨日新品のようになって戻ってきました。
うん、やっぱりええ感じやなあ(笑)
早速、ヴェルディの弦楽四重奏を聴いてみます。
音の良さは勿論だけど、それ以上に音楽の素晴らしさを満喫させてくれる。
やっぱりこのスピーカー、最高!

コメント (4)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

謹賀新年 「主よ、人の望みの喜びよ」

2015-01-01 | CDの試聴記

新年おめでとうございます

これから1泊2日で、浜松の舘山寺温泉に行きます。
私たち夫婦と、親、子、孫等4世代が、一堂に会して新年を祝うという壮大な企画。
昨年義父の発案でやってみたところ、評判も上々。
というわけで、今年は第2回目として実施することになりました。
昨年と違うのは、新たに孫娘が誕生したことと、昨年来れなかった娘も今回参加してくれたこと。
とにかく、今年一年、皆が健康に過ごせたらと願っています。

新年、最初に聴いた音楽は、リパッティが弾くバッハの「主よ、人の望みの喜びよ」。
このあまりに有名なコラールを選んだのは、清々しさとともに内面から滲み出る喜びを感じたかったから。
そして、今日はどうしてもピアノで聴きたかった。
ケンプ盤と迷ったが、私にとって特別の1枚は、やはりリパッティ。
高貴という言葉が、リパッティほど相応しい音楽家はいない。
近づきがたいほどの凛とした佇まいでありながら、冷たさは皆無。
透明感と温かさを併せ持つ稀有のピアニストだった。
この曲も、冒頭は、静かに静かに奏でられる。そして、音楽の抑揚に合わせて次第に昂揚し、やがて力強く感動的なコラールを聴かせてくれるのだけど、この自然な表情が本当に素晴らしい。
思い返せば、このリパッティの演奏は、学生時代に輸入盤の廉価盤のレコードで、それこそ盤が擦り切れるくらい何百回となく聴いてきた。
リパッティにあやかってなんて、恐れ多くてとても言えないけれど、迷った時に心を清める道場として、今年もこの音楽・この演奏を大切にしていきたいと思う。

コメント (3)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2014年に聴いたコンサート&オペラ

2014-12-31 | コンサートの感想

今年も、残すところ6時間弱。
ブログの更新については、本当にサボりまくってしまった。大いに反省しています(汗)
せめて大晦日くらいは記事を書かなければと思い、備忘録の意味も兼ねて、今年(2014年)聴いたコンサートをまとめてアップすることにしました。
感想は、Twitterで呟いたものをベースに、思いつくまま簡単に書いています。
来年が、皆さまにとって素晴らしい年になりますように。

■ツィメルマン ピアノリサイタル 1/20 @サントリーホール
<曲目>ベートーヴェン:ピアノソナタ№30~№32
演奏会は、「アバドに捧げます」というツィメルマンの衝撃の言葉で始まった。
その時点で私はまだアバドが亡くなったことを知らなかった。
演奏は、ライブでないと絶対聴けない壮絶なベートーヴェンだった。とくに後半の32番はちょっと言葉が見つからないくらい感動的な演奏。魂を鷲掴みにされるとは、まさにこんな演奏だと思う。ライブのツィメルマンはいつも凄いけど、今夜は特別だった。第二楽章の長く切ないトリルを聴きながら、私は心の中で偉大なアバドを見送っていた。

■ナタリー・デッセイ ソプラノリサイタル 4/14 @サントリーホール
<演奏>デッセイ(S)、カサール(P)
<曲目>
・クララ・シューマン~ブラームス~デュパルク~R.シュトラウス
・フォーレ~ プーランク~ドビュッシー
至近距離で見るからかもしれないが、体調本当に悪そう。それだけに逆に鬼気迫るものがあった。ブラームスが秀逸。あれだけ劣悪なコンディションの中、よくぞ最後まで歌ってくれた。あなたは紛れもなく現代最高のディーヴァです。曲の合間で何度も咳込んでいる姿が痛々しかったが、あなたの歌はやはり説得力が違う。アンコールは3曲。
2列目センターで聴かせてもらったこの日のコンサート、絶対忘れない。

■BCJの「マタイ受難曲」 4/19 @さいたま芸術劇場
<演奏>鈴木雅明&バッハ・コレギウム・ジャパン
・エヴァンゲリスト(福音史家):ゲルト・テュルク(テノール)
・イエス:ペーター・コーイ(バス)
・ハンナ・モリソン、松井亜希(ソプラノ)
・クリント・ファン・デア・リンデ、青木洋也(アルト)
・櫻田 亮(テノール)、浦野智行(バス)
絶大な安心感とピュアな響きは、この日も健在。歌手もみんな素晴らしいが、中でもバスのコーイが抜群だった。これほど感動的なマタイを日本で聴けるなんて、本当に幸せだ。
BCJのピュアでしなやかな美質はそのままに、この日のマタイはさらに豊かな情感に溢れていた。しかも一音たりとも緩んだ音はない。BCJのマタイはCD・実演含め何度も聴かせてもらったが、今回が最高。

■ケフェレックの室内楽 5/3 inラ・フォル・ジュルネ
<演奏>ケフェレック、パスキエ 、東条慧、ドマルケット
<曲目>
・ハイドン:ピアノソナタ ホ短調 Hob.ⅩⅥ-34
・モーツァルト:ピアノ四重奏曲第2番 変ホ長調 K.493
聴き手を幸せにしてくれる演奏だった。冒頭のハイドンのホ短調のピアノソナタが、まず持って絶品。CDでも素晴らしかったが、生は一層ニュアンスに富んだ名演だった。あの魔法のようなタッチと色彩豊かな音色は今年も健在。

■コルポの「フォーレ:レクイエム」 5/3  inラ・フォル・ジュルネ
<演奏>
・ヴェルメイユ (ソプラノ)、エヨーズ (バリトン)、ジャンニーニ (オルガン)
・ローザンヌ声楽アンサンブル、シンフォニア・ヴァルソヴィア
ミシェル・コルボ (指揮)心から感動した。それにしても、フォーレの音楽ってなんて素晴らしいんだろう。そしてコルポのピュアで暖かい演奏が、フォーレの魅力を余すことなく伝えてくれる。
毎年当たり前のようにコルポの名演を聴かせてもらっているが、日本に住んでいる幸運に心から感謝。

■ケフェレック ピアノリサイタル 5/4 inラ・フォル・ジュルネ
<曲目>
・モーツァルト:ピアノソナタ第12番 ヘ長調 K.332
・ショパン:ノクターン 嬰ハ短調(遺作)
・ショパン:子守歌、幻想即興曲、舟歌
モーツァルトは12番のヘ長調ソナタ。昔アンヌさんがLFJでモーツァルトのソナタをまとめて聴かせてくれたが、その時の魅力的な演奏は今でも鮮明に覚えている。
今日のヘ長調ソナタもまさに絶品。流麗な中に陰影に富んだ表現はまさにアンヌさんの独壇場だった。ショパンもひたすら魅力的。

■小菅優 ピアノリサイタル 5/4  inラ・フォル・ジュルネ
<曲目>
・ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第19番、第20番、第21番「ワルトシュタイン」
凄いワルトシュタインを聴いてしまった。小菅さんのライブを聴くのは一年半ぶりだが、一回りも二回りも大きなピアニストになっていた。極めてスケールの大きなベートーヴェンだけど、デモーニッシュというのは当たらない。だって真摯な生気に満ち溢れていたのだから。

■ゲルネの「白鳥の歌」 5/15 @紀尾井ホール
<演奏>ゲルネ(Br)、アレクサンダー・シュマルツ(p)
ただただ感動。もうため息しか出ない。リートって、こんなに生々しく巨大なものだったのか。生ゲルネはウィーンフィルを本気にさせたマーラー以来だったが、当代随一のバリトンだと改めて実感。いただいた招待券も後方ながらS席だったし、幸運に感謝。
今夜ゲルネの白鳥の歌、プログラム通りDer Doppelgängerで終わらず、予定通り「鳩の使い」のアンコールで締めくくられて良かった。Der Doppelgängerが終曲だと、あまりの鬼気迫る歌唱に圧倒されて今夜は眠れなくなりそうだった‥

■ムーティの「シモン・ボッカネグラ」 5/27 @東京文化会館
<演奏>
・指 揮: リッカルド・ムーティ
・管弦楽: ローマ歌劇場管弦楽団、同合唱団
・演 出: エイドリアン・ノーブル
・シモン・ボッカネグラ: ジョルジョ・ペテアン(バリトン)
・マリア(アメーリア): エレオノーラ・ブラット(ソプラノ)
・ガブリエーレ: フランチェスコ・メーリ(テノール)
・フィエスコ: ドミトリー・ベロセルスキー(バス)
・パオロ: マルコ・カリア(バリトン)
第一幕まで聴き終った。やはりフリットリの穴は埋まらない。でも、でも、でも、素晴らしい。最高のシモンだ。マエストロのタクトが一閃すると、みるみる音楽に生気が宿る。ムーティの指揮ぶりを斜め後ろから見れる幸運に感謝。歌手では、フィエスコ役の存在感が群を抜いている。
素晴らしい音楽にして素晴らしい演奏だった。終演後の聴衆の笑顔が全てを物語っている。それにしても、今までムーティでハズレだったことは一度もない。特にオペラはコジ・フィガロ・シモンと圧倒的な名演ばかり。私にとってやはり最高のマエストロだ。

■ムーティの「ナブッコ」 5/30 @NHKホール
<演奏>
・指 揮: リッカルド・ムーティ
・管弦楽: ローマ歌劇場管弦楽団、同合唱団
・演 出: ジャン=ポール・スカルピッタ
・ナブッコ:ルカ・サルシ
・イズマエーレ:アントニオ・ポーリ
・ザッカーリア:ドミトリー・ベロセルスキー
・アビガイッレ:ラッファエッラ・アンジェレッティ
・フェネーナ:ソニア・ガナッシ
第一幕、相変わらず、聴き手をドキドキさせるムーティマジックは健在。セルジャンの降板は残念だけど、アンジェレッティも頑張っていた。
第二幕、ますます好調。ベロセルスキーの存在感が圧倒的だ。フィエスコもザッカーリアも凛とした中に力強さを持った名唱で魅了してくれる。それから弦が物凄く綺麗。驚いた。
第三幕以降も本当に素晴らしかった。タイトルロールのサルシも第一幕は今ひとつだったけど、途中から本領発揮。声の威力に頼らず、あれだけ情感豊かに歌われると、涙腺が緩むやないですか。それから何と言ってもあの合唱。オペラの中で聴くと感動の大きさが違います。
ナブッコの金色の翼、ムーティは一切ドライブをかけないで、民衆の中から自然に湧き出てくるような音楽として聴かせてくれた。
アンコールはなかったが、聴衆の心の中に深く刻まれたことだろう。
ムーティの手にかかると、スコアに書かれている全ての音符に命が与えられて、音符たちが生き生きと踊り出す。
どれほど感動的なイタリアオペラを体験した後でも、「素晴らしかった。でも指揮者がムーティだったらどうなっただろう」と私はいつも夢想していた。今回はその贅沢な夢から解放された。

■セガン&フィラデルフィア管弦楽団 with諏訪内晶子 6/2 @サントリーホール
<曲目>
・チャイコフスキー:ヴェイオリン協奏曲 ニ長調Op.35
・チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調Op.74「悲愴」
メリハリ感とエネルギーの迸りが強烈。しかし、この音楽は、ほんとにセガンが求めているものなのだろうか。デリカシー、ドライブ、ダイナミクス、それぞれの要素が、それぞれの器の中で表現されているように感じる。パーツパーツをとれば文句なしなのだけど。

■フリットリ ソプラノリサイタル 6/4 @東京オペラシティ
<演奏>フリットリ(S) ヴィティエッロ指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
<曲目>
・ドニゼッティ:ラ・ファヴォリータ序曲
・デュパルク:「旅へのいざない」「悲しき歌」
・ベルリオーズ歌曲集「夏の歌」より「ヴィラネル」「知られざる島」
・マスカーニ:カヴァレリア・ルスティカーナ間奏曲
・トスティ:アマランタの四つの歌
・モーツァルト:≪皇帝ティートの慈悲≫
「おおヴィッテリア、今こそ~今はもう美しい花のかすがいを」
・マスネ:タイスの瞑想曲
・マスネ:≪マノン≫より「さよなら、小さなテーブルよ」
・ヴェルディ:≪アイーダ≫より「勝ちて帰れ」
・プッチーニ:マノン・レスコー間奏曲
・プッチーニ:≪トスカ≫より「歌に生き、恋に生き」
(アンコール)
・チレア:≪アドリアーナ・ルクヴルール≫より
「哀れな花よ」、「私は創造の神の卑しい僕」
・マスカーニ:≪友人フリッツ≫より 「この僅かな花を」
最前列中央という、信じられない席で聴かせてもらった。
感想なんて言えないほど素晴らしい。全ての曲が超一流だった。
特に最後のトスティは感涙もの。間違いなく、いま世界一のプリマだと思う。
フリットリ終演。まだ夢の中にいるようだ。そして、夢なら覚めないでくれと祈りたくなるような素敵なコンサートだった。
シルキーなソットヴォーチェから、強靭なフォルテシモまで、聴き手を一瞬で虜にする歌唱は今夜も健在。そして優しさとユーモアも忘れない。やはりあなたは、最高のディーバです。
フリットリ様
こんなに素晴らしいあなただから思うのですが、マエストロ ムーティと組んだあなたのアメーリアが、何としても聴きたかった。
でも、後半の最後に聴かせてくれたトスカのアリアを聴きながら、トリノの来日公演の悔しさを思い出すとともに、今宵それが聴けた幸せを噛み締めている。

■ウィーンの音楽 8/22 in草津音楽祭
<演奏>
・ヒンク(Vn)、遠山 慶子(Pf)、オクセンホファー(Va)、ベッチャー(Vc)、シュトール(Cb)、山田 百子(Vn)、シュミードル(Cl)、岡崎 耕治(Fg)、木川博史(Hr)
<曲目>
・モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 変ロ長調 K.454
・モーツァルト:ピアノ・ソナタ ハ長調 K.545
・シューベルト:八重奏曲 ヘ長調 作品166 D.803
今年の夏も草津音楽祭に来た。いつもながらアルペンホルンも素晴らしい。
この日のプログラムは、モーツァルトとシューベルト。
事務局長の井阪さんのシューベルトに対する深い思い入れのお話を冒頭聴いて、私も改めてシューベルト愛に目覚めた(笑)
演奏も、偉大な作曲家に敬意を表しながら、名人たちがこれぞ室内楽というべき暖かな演奏を聴かせてくれた。しみじみ音楽っていいなぁと思う。

■小菅優 ピアノリサイタル 9/13 @さいたま芸術劇場
<曲目>
・J. S. バッハ:イタリア風のアリアと変奏 BWV 989
・ベートーヴェン:ソナタ第21番 ハ長調 作品53 「ワルトシュタイン」
・武満 徹:雨の樹 素描
・武満 徹:雨の樹 素描II -オリヴィエ・メシアンの追憶に-
・リスト:《巡礼の年 第3年》より 〈エステ荘の噴水〉
・リスト:バラード第2番 ロ短調
・ワーグナー(リスト編曲):イゾルデの愛の死
(アンコール)
・ショパン:24のプレリュード 作品28より
 第11番 ロ長調 、第15番 変ニ長調〈雨だれ〉
バッハ989の変奏曲、初めていい曲だと思った。小菅さん、静寂の表現が上手くなったなぁ。ワルトシュタインはLFJの時と、基本的なスタイルは変わらないが、今日の方が情念の迸りが強く感じられた。そして、この日の白眉は後半に置かれたリスト。
凄い表現力。やっぱり、この人は天才だ。

■ドゥダメル&ウィーンフィル 9/25 サントリーホール
世界一のオーケストラにして、我が最愛のオーケストラ。今日もその魅力を余すところなく披露してくれた。ドュダメルも凄い。単に早熟の音楽家じゃないのと少し偏見を持っていたが、どうしてどうして。この人、自然流の達人です。呼吸感も完璧!

■新国立劇場 「パルシファル」 10/8
<演奏>
・指 揮 飯守 泰次郎
・管弦楽 東京フィル
・合 唱 新国立劇場合唱団
・演 出 ハリー・クプファー
・アムフォルタス:エギルス・シリンス
・ティトゥレル:長谷川 顯
・グルネマンツ:ジョン・トムリンソン
・パルジファル:クリスティアン・フランツ
・クリングゾル:ロバート・ボーク
・クンドリー:エヴェリン・ヘルリツィウス
この感動をどう伝えたらいいのだろう。ライブ映像を含め、数多くの名演に触れてきたつもりだけど、初めて生で聴いた今日の公演は格別だ。とりわけトムリンソンの存在感は際立っていた。
それから、素晴らしい演出と舞台は、かくも作品の価値を高めるものなのか。

■パッパーノ&ローマ聖チェチーリア管 withブルネロ 11/7 @サントリーホール
<曲目>
・ヴェルディ: 歌劇「ルイザ・ミラー」序曲
・ドヴォルザーク: チェロ協奏曲 ロ短調 op.104 (チェロ: マリオ・ブルネロ)
・ブラームス: 交響曲第2番 ニ長調 op.73
大好きなブルネロのコンチェルトを聴きたくてチケットを取ったのだけど、ルイザミラーからアンコールまで、これほどワクワクするような昂揚感と音楽を聴く喜びに浸れたコンサートは稀だ。
それは、やはりパッパーノの存在なしには語れないだろう。彼の音楽からは、一期一会の覚悟のようなものが伝わってくる。その覚悟が、聴衆に大きな感動を与えてくれた。そして、オケがパッパーノに対して全幅の信頼を寄せていることがビンビン伝わってくるのも嬉しい。たとえば、ブラームスの終楽章でパッパーノは要所要所で楔を打ち込む。この楔があることを知っているので、オケは思う存分歌いエネルギーを爆発させることができる。その結果として、あの昂揚感が生まれるのだ。
このオケは決して冷めた演奏をしない。温度は常にやや高めだ。その特質を土台に伸びやかに弦が歌い、木管はぽっと空間に漂う。そして力強くブラスは咆哮し、全体を見事な存在感でティンパニが引き締めていた。とりわけ、名ティンパニ奏者のカリーニの存在感が圧倒的だった。
パッパーノとオケの印象があまりに強烈すぎて、後回しになったが、ブルネロのチェロは、最高。現役のチェリストの中で、やはり私はブルネロが一番好きだ。

■ヤンソンス& バイエルン放送響 withツィメルマン 11/24 @サントリーホール
<曲目>
・ブラームス:ピアノ協奏曲第1番ニ短調 Op.15
・ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 Op.95 「新世界より」
前半のブラームスのピアノ協奏曲第一番では、実演のツィメルマンの凄さをまざまざと思い知らされた。ヤンソンスとツィメルマン、そしてバイエルン響が互いに強い絆で結ばれていて、大きな感動を与えてくれた。後半の新世界は、一転してスタイリッシュな快演。
硬派の演奏にもかかわらず、終始暖かさを感じさせてくれるのは、やはりヤンソンスの凄さか。

■小泉和宏&東京都交響楽団 ベートーヴェン「合唱」 12/26 @サントリーホール
<演奏>リー・シューイン、中島郁子、オリヴァー・クック、青山 貴、二期会合唱団
私にとって今年最後のコンサート。テンポは少し速めだけど、いい意味で、昔からよく知っているスタイルの第九だった。目を引く演出も、わざとらしい仕掛けもない。最近流行りの研究成果とかもない。でも、このどこかレトロな味がする第九、私は大いに気に入った。それにしても、この曲、やっぱり桁外れ。ベートーヴェンは凄い。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ドゥダメル&ウィーンフィル 来日公演(9/25) @サントリーホール

2014-09-29 | コンサートの感想

朝夕、めっきり涼しくなってきた。
そして、自宅近くでは、金木犀の香りも漂い始めた。
もう、秋の気配が感じられる。
そんな中、25日の木曜日に、ウィーンフィルの来日公演を聴かせてもらった。

ウィーンフィルは、世界中で私が最も敬愛するオーケストラ。
2005年10月にムーティが振る来日公演を初めて生で聴いてからというもの、私はすっかりウィーンフィルの虜になった。
もちろんLPやCDのディスクを通して、ウィーンフィルの素晴らしさは知っていた。いや知っていたつもりだった。
しかし、ウィーンフィルが奏でるモーツァルトのクラリネット協奏曲をサントリーホールで聴いたときの感動は、今も忘れることができない。
もちろんペーター・シュミードルのクラリネットも、ウィーンフィルの絶妙のアンサンブルも絶品だった。
しかし、第一楽章冒頭のトントントントンと淡々と伴奏を刻む弦楽器の音に、私は言葉では言えないくらいの衝撃を受けたのだ。
それは羽毛のように柔らかく、重さをまったく感じないサウンドでありながら、モーツァルトの音楽が必要とするリズムはものの見事に表現されていたから。
こんな音、こんな音楽は、いまだかつて聴いたことがなかった。

その時以来、ウィーンフィルは私の心の中で絶対的なアイドルになり、それ以降の来日公演は、かかさず聴いてきた。
しかし、今年の公演は、パソコンの不調という信じられないようなアクシデントがあって、チケットが取れなかった。
痛恨の極みではあったが、「今回は、さすがに縁がなかったと諦めよう。今まで幸運すぎたのだ。それにドゥダメルは若いし、また聴く機会はあるだろう」と強引に自分自身に言い聞かせていた。
そんな折、ずっと視聴しているクラシカジャパンの視聴者プレゼントでウィーンフィル来日公演の招待券のプレゼントがあることを知り、100%だめだろうと思いつつ申し込んだところ、何と奇跡的に当選した。
信じられないことが起こると、人間はよく頬っぺたをつねるというが、今回私は送られてきたチケットを見てもまだ信じられなくて、本当に頬っぺたをつねってみた。
そこで初めて本当に当選したことを実感。次の瞬間小躍りしたのは言うまでもない。こんなこともあるのですね。
クラシカさんには、心からお礼を申し上げます。



<日時>2014年9月25日(木) 19:00 開演
<会場>サントリーホール(大ホール)
<曲目>
■R.シュトラウス: 交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』 op.30
■シベリウス: 交響曲第2番 ニ長調 op.43
<演奏>
■指揮:グスターボ・ドゥダメル
■出演:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(アンコール)
■J.シュトラウス
・アンネン・ポルカ 
・ポルカ『雷鳴と稲妻』

前置きが長くなったが、そんな奇跡的な経緯で聴くことのできたコンサートだったので、私は特別の感慨を持ちながら、開演を待った。
やがて、会場の照明が暗くなりステージが明るくなる。
その後、いつもの光景であるが、コンマスのキュッヒルを先頭にメンバーがステージに登場してきた。
この日のもう一人のコンマスはシュトイデだ。またキュッヒルとともに今シーズン限りで退団するヴィオラの名手コルも、ヴィオラのサブの席に座る。
コンサートの前半は、「ツァラトストラはかく語りき」。
冒頭部分「日の出」はオーディオのデモンストレーションでもよく使われるが、当たり前のことだけど彼らの演奏に、こけおどし的な要素は微塵もない。
絹のような音色、そして豊かな拡がりを持ちながら少しも重さを感じさせないバス。
世界中でウィーンフィルだけが奏でることができるただ一つのサウンドは、この日も健在だった。
パレットの色はとんでもなく多いが、全てが有機的に結びついている。
よく言われることだが、全編まさに歌のないオペラを観ているかのようだった。
「日の出」の後、しばらくして登場する「信仰のテーマ」のなんと美しいことか。
こんなとろけるような表現ができるのは、ウィーンフィルだけだ。
第二部では、なぜか歌劇「サロメ」の中で、サロメがヨカナーンを呼び出すときのシーンが頭をよぎる。
リヒャルト・シュトラウスの爛熟した雰囲気を存分に表現しつくして、前半は終わった。
後半の、シベリウスは、さらに名演。
エネルギーの迸りも強烈で、このオーケストラが本気になったときの凄さをまざまざと感じさせてくれた。

さて、この日タクトを振ったのは、ベネズエラの俊英グスターボ・ドュダメル。
正直に告白すると、「ドゥダメルか。確かに大変な才能だと思うけど、単に才気煥発というか早熟の天才じゃないの」とある種の偏見を持っていた。
しかし、この日の音楽を聴いて、まったくの誤りであることに気づかされる。

まず第一に、彼はまさしく自然流の達人だった。
よく聴くと、「あっ、やってるな」と思う箇所も散見される。しかし、その表現は説得力があり違和感は皆無。大きな流れの中で、極めて自然に表現されていた。

それから二つ目の特徴は、見事としか言いようのない呼吸感の素晴らしさ。
私は、ライブで演奏を聴くときに、できるだけ演奏家と呼吸を合わせて音楽を楽しみたいと思うタイプ。
オケの楽器は何一つ演奏できない私であるが、この日のドゥダメルの指揮であれば、楽器の一つを手に取って気持ちよく演奏に参加できそうな気がした(実際に、そんなことができる筈もありません。でもそんな錯覚を覚えるほど、自然な呼吸感だったということです。)

三つ目の特徴は、全体の見通しが極めて明確であること。
たとえば、シベリウスの第一楽章。聴き手をフィンランドの大地へ誘うような魅力的な描写をしながら、そこにはすでに終楽章のイメージが感じられる。
個々のフレーズはこれしかないという見事な表現を行いながら、決して全体を見失うことはない。

そして、何よりも、音楽に生気を与えることができることが、彼の最高の特徴だろう。
私がムーティを敬愛する理由は、まさにそれだ。
今回私が感じたドゥダメルの美質が最も顕著に表れるのは、ひょっとするとオペラかもしれない。
昨年のスカラ座の公演は聴きそびれたが、次回来日するときは是非とも聴いてみたい。

まだまだ、ドゥダメルは若い。
だから、今回あえてマエストロという言葉は使わない。
しかし、近い将来、彼は必ずや音楽界を席巻することだろう。
また、聴く楽しみが増えた。

コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小菅優ピアノ・リサイタル (9/13) @さいたま芸術劇場

2014-09-15 | コンサートの感想

一昨日から昨日にかけて、息子夫婦が孫娘を連れて遊びに来てくれた。
孫娘は、3月30日生まれだから、今月末でちょうど半年になる。
生まれたときは、まさに春の嵐が吹き荒れていた。初めて孫娘を見たときは、小さくて痛々しくて、これで本当に大きくなるのだろうかと、随分心配した。でも、彼女は両親の愛情を一杯もらって、すくすく成長してくれた。今や、家族中の太陽のような存在だ。この子の笑顔を見れるなら、どんなことがあっても我慢できると思う。
こんなことを言うと、やっぱり爺バカかなぁ(笑)。

さて、一昨日は、孫娘が来る前に、地元さいたま市で小菅優さんのコンサートを聴いた。
小菅さんのピアノを聴くのは、5月のラ・フォル・ジュルネ以来。
あの時聴いたベートーヴェンは素晴らしかった。今回もプログラムに入っているワルトシュタインをメインに据えたプロで、非常にスケールの大きな音楽を聴かせてくれたが、一方、規模の小さいソナタでは微妙なニュアンスに富んだ表現で魅了してくれた。
この日は、小菅さんが「どの曲も今私が一番弾きたい曲です」というプログラム。期待して、開演を待った。

冒頭のバッハは、テルデックのバッハ全集で聴いたときはほとんど印象に残らなかったが、小菅さんの手にかかるとなかなか聴かせどころも多く、いい作品だと思った。この曲は、チェンバロよりもピアノの方が合うかも。
前半のメインはワルトシュタイン。5月に聴いたときよりも、さらに情念の迸りをより強く感じた。ただ第2楽章から第3楽章へ移る時の神秘的な雰囲気をもう少し感じさせてくれたら、個人的には最高だったかもしれない。

後半は、武満徹の「雨の樹素描」から始まった。
この曲は、初めて聴いたときから大好きな曲。大江健三郎の短編「頭のいい雨の木」からヒントを得たと言われるが、所謂ゲンダイ音楽とは一線を画するとても美しい音楽だ。小菅さんは、椅子に座った後、なかなか弾きださない。その「無」の時間というか空間が、すでにこの音楽を立派に表現している。続く10年後に書かれた「素描Ⅱ」ともども、きわめて美しい表現だった。
この日の白眉は、続くリストの2作品。最初の「エステ荘の噴水」は、武満さんの作品と「水」つながりなのだろうか。弱音の美しさも抜群で見事な演奏。
そして、さらによかったのは、バラード第2番。凄みのある低音、中世の寺院の鐘を思わせる響き、強烈なパッションとそれと交錯するかのように現れる夢見るような美しい歌。この難曲を小菅さんは余すところなく魅力的に描いて見せた。いやはや凄い表現力だ。
それに比べると、最後の「イゾルデの愛の死」は大変な力演だったが、あのイゾルデが舞台で歌うアリアとははっきり言って別物。ただ、最後の音が消えて10秒、いや20秒以上だっただろうか、あの沈黙の時間を共有できた素晴らしい聴衆には、大きなブラーヴォ。
ベルリン国立歌劇場の来日公演で、ワルトラウト・マイヤーの神々しいまでの名唱を心無い拍手でぶち壊わしにされた経験があるだけに、この日さいたま芸術劇場に来られた聴衆の集中力には感謝してもしきれない。

小菅さんのピアノを初めて聴いたのは、もう10年以上前になるだろうか。
確か読響とのベートーヴェンのコンチェルトだった。
その時に感じた「このピアニストは、絶対大物になる」という予感は、年を重ねるごとに確信に変わるつつある。
毎年、小菅さんのピアノを聴くことは、私にとって大きな楽しみのひとつだ。
終演後、サイン会で小菅さんに感謝の言葉をかけたかったけど、この日ばかりは孫娘の魅力に負けてしまい断念。
次回も、楽しみにしています。 

<日時>2014年9月13日(土) 15:00開演
<会場>彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール
<演奏>小菅 優
<曲目>
・J. S. バッハ:イタリア風のアリアと変奏 BWV 989
・ベートーヴェン:ソナタ第21番 ハ長調 作品53 「ワルトシュタイン」
・武満 徹:雨の樹 素描
・武満 徹:雨の樹 素描II -オリヴィエ・メシアンの追憶に-
・リスト:《巡礼の年 第3年》より 〈エステ荘の噴水〉
・リスト:バラード第2番 ロ短調
・ワーグナー(リスト編曲):イゾルデの愛の死

(アンコール)
・ショパン:24のプレリュード 作品28より
 第11番 ロ長調 、第15番 変ニ長調〈雨だれ〉

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ビゼー:ピアノ作品集 by 金田仁美

2014-06-22 | CDの試聴記

久しぶりの投稿になります。
ブラウザを IEからクロームに変えたこともあり、なかなかパソコンが思うように動いてくれない(汗)

6月は、週に1回のペースで計4回講演があり、それも毎回異なるテーマだったので、準備が大変だった。
でも試練の4番勝負も、あと1回を残すのみ。
気を抜かないで頑張ろう。

先週残念だったのは、やはりワールドカップ。
一人少ないギリシャに勝てなかった原因については、専門家を含め語りつくされているので、多くを言うつもりはない。
ただ、最終戦に向けては、ゴールが見えたらひたすら貪欲にシュートを狙ってほしい。
「そこに山があるから登る」というシンプルな考えでいいじゃないか。
それと、4年かけて築き上げたスタイルは変えないでほしい。
自分たちのこのスタイルで負けたら仕方がない、というくらいハードな練習をしてきたはず。
混沌とした状況で頼りになるのは、やはり「型」だと思う。
今日一日休養に当てて、充電したこともいいだろう。
泣いても笑ってもGL最後の試合。後悔しないように頑張ってください。

ブラジルも日本も、今の季節は湿度が高い。
このじめじめした気候が得意な人はあまりいないと思うが、私も大の苦手。
得体のしれない息苦しさのせいで、それが体調にも影響してくるのだ。
そんな中、不愉快なじめじめ感を、暫し忘れさせてくれるような爽やかな音楽を聴いた。
ビゼーのピアノ作品集。

ビゼーといえば、何と言ってもカルメン。
あとは、「アルルの女」や「美しきパースの娘」といった劇音楽をオーケストラ用にアレンジした組曲。
そして、私の大のお気に入りである交響曲。それと声楽の好きな人には、「真珠採りのタンゴ」のオリジナルであるオペラも含まれるだろうか・・・。
でも、よく聴かれるのは、だいたいこのくらいまでだろう。
ピアノ曲は、私自身あまり聴いたことがない。
今回、金田(かなた)さんのアルバムを聴きながら、昔、グールドの演奏でビゼーの変奏曲を聴いたことを、ようやく思い出した。
まことにお恥ずかしい次第だ。


金田さんの弾くビゼーは、アレンジ物もピアノのオリジナル作品も、いずれも 実に爽やかな音楽だった。
ビゼーは、リストが認めるほどのピアノの名手だったらしい。
カルメン組曲のピアノ版と聞いて、私は管弦楽作品に負けじと華麗で派手な方向の音楽かと勝手に想像していたが、さすがにピアノの名手だけあって誠に理に叶ったアレンジだ。
音の数が少ないことを逆手にとって、見事な音楽に仕上げている。
金田さんの演奏も、力まず真摯に向かい合っていて実に気持ちのいい演奏。
私がとくに気に入ったのは、冒頭の夜想曲ニ長調。30歳の時の作品だそうで、揺れ動く心理状態を瑞々しく歌い上げていて、思わず引き込まれる。
それと、あまりに有名な「アルルの女」第2組曲のメヌエットも秀逸。
このメヌエットは「アルルの女」に含まれる音楽ではなく、「美しきパースの娘」の楽曲というのはよく知られているが、ピアノで弾かれたこのメヌエットのピュアな美しさは、何物にも代えがたい。

また、このアルバムには1曲だけ異質な音楽が含まれている。
演奏会用半音階的変奏曲だ。
この曲を初めて聞いたのは、先述のグールドのアルバムだが、そのとき「これが本当にビゼーの音楽か?」という強い思いにかられたことを覚えている。
グールドの演奏では、半音階でゆっくり上昇するバスに導かれて、驚くほどの緊張感を内包しながら音楽がさまざまな変化を見せていた。
だからこそ、途中で長調に転じた箇所が、砂漠のオアシスの畔に咲く花一輪という風情で、実に印象的だった。
金田さんの演奏は、さすがにグールドほどの緊張感と奈落の底に突き落とされるような切迫感はない。
その代り、よりひたむきで真っ直ぐな印象を与えてくれる。そして、息苦しくないだけ、私はいっそう音楽そのものの魅力を味わうことができた。
中間部のオアシスの美しさも特筆ものだ。
この変奏曲が、やはりアルバムのメインだった。
単に爽やかさだけではない素晴らしい感動を与えてもらったことに感謝です。 


ビゼー:ピアノ作品集
<曲目>
1. 夜想曲ニ長調
2. 『カルメン』組曲
3. 海洋画
4. 演奏会用半音階的変奏曲
5. 3つの音楽的素描
6. 『アルルの女』第1組曲(ビゼー編曲)
7. 『アルルの女』第2組曲

<演奏>   金田 仁美(ピアノ)
<録音>   2014年4月24日
<録音場所>大阪・吹田 メイシアター 中ホール

 

コメント (3)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

バッハ カンタータ第1番 「輝く暁の明星のいと美わしきかな」

2014-01-01 | CDの試聴記
新年おめでとうございます。
本当に穏やかな元日の朝を迎えることができました。
今年一年、こんな日が続いてくれるように心から願っています。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

昨年は、娘の結婚という大きなイベントがあり、今年は息子夫婦に子供が産まれる予定だ。
本業の年金の仕事は、昨年かつてないほどの大きな波にさらされたが、激変のときこそ真価を発揮しなければいけない。
誠実に、そして全力で取り組んでいきたいと思う。

今年最初に選んだ音楽は、バッハのカンタータ第1番。
このカンタータは、いつ聴いても、晴れやかな気持ちにしてくれる。
とくに第3曲が素敵。
オーボエ・ダ・カッチャをともなったソプラノの何とも魅力的だ。
このリヒター盤では、私の敬愛するマティスが歌っている。
いつもながらチャーミングの一言。
この演奏にあやかって、素晴らしい一年になりますように。


バッハ カンタータ第1番 「輝く暁の明星のいと美わしきかな」
<演奏>
■ソプラノ:エディット・マティス
■テノール:エルンスト・ヘフリガー
■バス:ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ
■カール・リヒター指揮
■ミュンヘン・バッハ管弦楽団
■ミュンヘン・バッハ合唱団
コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

バッハ:カンタータ 第140番 「目覚めよと、われらに呼ばわる物見らの声」

2013-11-04 | CDの試聴記
一昨日は、娘の結婚式だった。
親バカと言われようと何と言われようと、私にとってはかけがえのない最愛の娘。
そんな娘が素敵な青年と出会い、この日嫁いでいった。
父親として一抹の寂しさを感じながらも、これほど嬉しいことはない。
結婚式に来てくださった方々からの祝福に最高の笑顔で応えていた新郎新婦を見て、「この二人なら、きっと幸せになってくれる」と一安心。
そして結婚式の最後の挨拶で、新郎が「必ず幸せにします」と力強く宣言してくれたことが、私には何よりも嬉しかった。
この日の感動を大切にして、いつまでもお幸せにね。

今、聴いているのは、バッハの140番のカンタータ。
カール・リヒターの名盤だ。
何度聴いても心洗われる名演奏だと思う。
実はこのリヒターの演奏は、私たちの結婚式(もう30年以上前の話ですが・・・)のときにもメインで使った思い出の音楽だ。
娘とバージンロードを歩きながら、このカンタータの第1曲がずっと私の中で流れていた。
「おめでとう。幸せになるんだよ」と心の中で娘に語りかけながら・・・。

また、新郎新婦は、私たち両親に、手作りのワイングラスを贈ってくれた。
イニシャル入りのお洒落なグラスで、とても素敵。
まさに、グラツィオーソ。
せっかくプレゼントしてもらったのだから、昨日早速使わせてもらった。
シャンパンにしようかと迷ったが、華やかな雰囲気もほしかったので、イタリアの微発泡赤ワインであるランブルスコにした。
美味しい!
ワインもさることながら、このグラスの存在がものを言ってる。
心のこもった贈り物、本当にありがとう。
ずっと大切に使わせてもらいます。


バッハ作曲 カンタータ第140番『目覚めよと、われらに呼ばわる物見らの声』
■指揮:カール・リヒター
■ミュンヘン・バッハ管弦楽団、合唱団
■ソプラノ: エディット・マティス
■テノール: ペーター・シュライアー
■バリトン: ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ
コメント (8)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ジョン・ウィリアムス ラストコンサート (10/28) @白寿ホール

2013-11-01 | コンサートの感想
23日のトリフォニーホールに続いて、28日にも白寿ホールで2回目のコンサートを聴くことができた。

<日時>2013年10月28日(月)
<会場>白寿ホール
<曲目>
■バッハ:リュート組曲 第4番 ホ長調 BWV1006a
■フレデリック・ハンド:祈り
■グレイム・ケーン:ア・クローズド・ワールド
■スティーブン・ゴス:マリルボーン・エレジー
■ジョン・ウィリアムス:マリンケ・ギターズ
■アルベニス:アストゥリアス
■タルレガ:アルハンブラ宮殿の思い出
■ジョン・ウィリアムス:
 ・ステッピング・ストーンズ 第1番
 ・オッド・ナンバーズ
 ・フロム・ア・バード第3番
 ・ハロー・フランシス
■マイヤーズ:カヴァティーナ
■バリオス:ワルツ 第3番
■フィゲレード:ロス・カウハリートス
■カリージョ:星の涙
■カノニコ:エル・トトュモ
(アンコール)
■バリオス:フリア・フロリダ

この白寿ホールのコンサートは、二つの意味でメモリアルな演奏会だった。
まず一つ目は、今年いっぱいで演奏活動を引退するジョン・ウィリアムスの日本における最後のコンサートであったこと。
二つ目は、白寿ホールという音響の素晴らしい小ホールで開催されたこともあり、PA装置を使用せずに、生音でジョンの美しい音色を味わえたこと。

チケット料金は上記の背景もあり通常のコンサートより割高ではあったが、ジョンの最後のコンサートを前から2列目のセンターで、しかもPAなしで聴けたことは、もう神様からの贈り物としかいいようがない。
あまりに期待しすぎると、往々にして勝手に作り上げたイメージ(偶像)と現実とのギャップに失望することもあるものだが、この日限って、そのような話は全くの杞憂だった。

ツアーの疲れもあっただろうし、この日の体調は決して万全の状態ではなかったはずだ。現に曲の合間に何度か咳き込む場面もあった。また連日のサイン会で右手を酷使した影響も、少なからずあったと思う。
そのせいかどうか分からないが、とくに前半、ミスタッチや思いがけない音の外し方をした場面も散見された。
しかし、ジョン・ウィリアムスは、やはり神様だ。
ジョンが表現したいと考えていることは、たとえミスタッチがあったとしても、何の障壁もなく私たちの心にダイレクトに飛び込んできた。
器楽の奏者は、70歳を超えると「枯れた味」なんて言い回しをされることもあるが、ジョンには全く当たらない。
高貴な佇まいを崩さずに生命力と躍動感に満ち溢れた演奏スタイルは、若い頃の天才ジョン・ウィリアムスと何ひとつ変わっていなかった。

今回、至近距離で聴かせてもらって強く感じたのは、左手と右手のモーションが際立って小さいこと。
ギターで最も難しいはずのポジションの跳躍においても、絶対にバタバタしない。
また右手のタッチは強いが、絶対に荒っぽくならない。透徹した豊かな音色はイメージ通りであったが、近くで聴くとやや硬めだった。
でも、これが音を減衰させずにホールに響かせるコンサートギタリストの刻印なんだと思う。
そして、彼のサウンドの最大の秘密は右手の親指にあった。
低音は言うに及ばず、高音(1弦や2弦)でもジョンは親指を多用していたが、その音の美しさ、表現力の凄さは、ちょっと類をみない。
それらの圧倒的な技術が高次元で融合し、見事に音楽に奉仕していた。

この日のプログラムは、前半のメインにリュート組曲第4番を据えたAプロ。
初期のLPで聴かせてくれた瑞々しさはさすがに薄れていたが、その代わり舞曲の性格はより鮮明になり、遊び心に満ちた佳演だった。
後半は、すみだトリフォニーホールで聴いたBプロと全く同じ。
前回よりもさらに闊達な演奏だった。
とくにジョン・ウィリアムス自作の作品が、とても魅力的。
ハロー・フランシスやオッド・ナンバーズあたりは、今後ギタリストの好個のレパートリーとなることだろう。
そして、アンコールは、この日もフリア・フロリダ。
ひたすら美しい音楽、そして美しい演奏だった。

この美しいバルカローレで、ジョン・ウィリアムスは日本のファンに別れを告げた。
私は聴きながら涙が滲んできて、とても恥ずかしい思いをしたが、涙を流しながらも心の中は不思議に爽やかだった。
ジョン・ウィリアムス様、本当にありがとう。
あなたの聴かせてくれた音楽は、ずっといつまでも私の心の中で生き続けます。

右の画像は、プレミアム席の特典でいただいた、生写真とジョン直筆のサイン。
また家宝がひとつ増えました。
コメント (4)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ジョン・ウィリアムス ギター・コンサート (10/23) @すみだトリフォニーホール

2013-10-27 | コンサートの感想
4年ぶりに、ジョン・ウィリアムスが来日した。
そして、「これぞギターで表現しうる最高の芸術」といいたくなるような素晴らしい名演奏を聴かせてくれた。
しかし、今回の日本公演は特別の意味を持ったツアーだ。
なぜなら、今年いっぱいでジョン・ウィリアムスが引退を表明しており、今回が文字通りのサヨナラ公演だったから。
すみだトリフォニーホールを埋めた聴衆も、きっと万感の思いでジョンの奏でる演奏を聴かれたことだろう。

<日時>2013年10月23日(水)
<会場>すみだトリフォニーホール
<曲目>
■ヴィラ=ロボス:5つの前奏曲
■ソル:モーツァルト「魔笛」の主題による変奏曲
■バッハ:シャコンヌ(無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第2番より)
■アルベニス:アストゥリアス
■タルレガ:アルハンブラ宮殿の思い出
■ジョン・ウィリアムス:
 ・ステッピング・ストーンズ 第1番
 ・オッド・ナンバーズ
 ・フロム・ア・バード第3番
 ・ハロー・フランシス
■マイヤーズ:カヴァティーナ
■バリオス:ワルツ 第3番
■フィゲレード:ロス・カウハリートス
■カリージョ:星の涙
■カノニコ:エル・トトュモ
(アンコール)
■バリオス:フリア・フロリダ

軽やかにステージに登場したジョンは、とても70歳代とは思えないほど若々しかった。
最初のプログラムは、ヴィラ=ロボスのプレリュード全曲。
第1番は、チェロを思わせる低音の表現力が凄い。
第3番は、思いがけない箇所でミスがあって少し危なかった。しかし、リピートした後、最高音からカンパネラをともなって神秘的に下降するフレーズは鳥肌がたつほど美しかった。
続く第4番は名演。ただ最後の第5番はいささか雑な演奏で、正直いただけなかった。度忘れか即興か分からないが、中間部以降の配列も原曲とは異なる。
次のソルは原曲通り序奏付の演奏。
テーマは、後半の1フレーズがジョン・ウィリアムス流。
バリエーションでは、第4変奏が弾けるようなリズム感で見事だった。

そして、前半のメインは、バッハの聖典シャコンヌ。
この深遠で高貴なシャコンヌを聴けただけでも、この日は十分に値打ちがあった。
「ギターでバッハを、それもシャコンヌをなぜ演奏するのか」という問いに対する最高の答えがそこにあった。
旋律を美しく奏でられて、しかも和声を十分に表現できる。そして、分散和音等においては、他の楽器の追従を許さない見事な表現が可能なのだ。しかし、それはあくまでも可能性であって、今宵のジョンのように演奏することは極めて難しい。
やはり、ジョンはギターの神様だと思い知らされた。
少し技術的なことを備忘的に書いておく。
とにかく左指も右指も本当に動きが小さい。本物の技術とはこういうことなのだ。
前半の連続するスケールの難所を合理的な運指で楽々と弾き切った後、続く長大なアルペッジョを圧倒的な昂揚感で表現してみせた。
アルペッジョの後半では左指が悲鳴を上げる音の跳躍が出てくるが、ジョンは無理な運指を避けてハイポジションだけで弾いていた。(極めて自然な運指に見えたが、これもジョン様マジックかも・・・)
また、再びニ短調に戻った後、録音よりもさらに早い時点から高いAのカンパネラを使っていたのが印象に残った。

後半は、さらに素晴らしい。
ジョン・ウィリアムスの芸術の深さ・広さを満喫させてもらった。
アストゥリアスの最初のEの音が鳴った瞬間、「あっ、これこれ!」という魅惑の世界に引き込まれる。
そして最後の和音は、なんとタンボーラだ! しかし、この余韻の深さを聴かされてしまうと、奇策ではなく真実の発見だと感じてしまう。
その後の「アルハンブラ宮殿の思い出」以降も、「どの曲が」とか「どんな風に」といったコメント無用の名演ぞろい。
ジョンの名人芸に酔いしれているうちに、気が付くと盛大な拍手に応えてアンコールが始まるところだった。
アンコールは、バリオスの「フリア・フロリダ」。
「バリオスの・・・」ではなく、「アグスティン・バリオス・マンゴレの・・・」とフルネームで作曲家を紹介したジョンの謙虚さ・誠実さにも心打たれた。
それにしても、あの「フリア・フロリダ」の美しさは何と形容すれば良いのだろう。
聴きながら、私はずっと幸福感に浸っていた。

前回2009年の来日公演の折、私はこんな風にブログに書いた
「ジョン・ウィリアムス様
来年いや再来年でもいいから、日本で元気な姿をステージで見せてください。
そして、最高のギターを聴かせてほしい。
できることなら、そのときはバッハも聴かせてほしい。
今から楽しみにしています。」

この願い事は、今回すべて叶えられた。
しかも、その時もう一つの夢をブログに書いていたが、それも明日白寿ホールで叶えられようとしている。
「たとえ5割増しの料金であっても中規模のホール~たとえば紀尾井ホールとかカザルスホール・・・~で、一度ジョンの演奏を聴いてみたいと思ったのは、私だけだろうか・・・」

本当に神様に感謝しなければ・・・
右の画像は、終演後に、ニューアルバム「Stepping Stones」に書いてもらったジョン自筆のサインです。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする