イランの報復攻撃(日本時間14日午前)を境に、イスラエルを見る世界の目が一変しました。加害者を批判する目から、被害者に同情する目へ。
それを演出したのはイスラエル自身とアメリカをはじめとするG7諸国であり、加担したのが西側メディアです。
G7 はまるで待ち構えていたように、14日早々にオンライン会議を開催。「イスラエルとその国民に対する全面的な連帯と支援を表明し、イスラエルの安全保障に対する我々の関与を再確認する」という声明を発表しました(15日付朝日新聞デジタル、写真中)。
それを受けて16日、朝日新聞は「イランの攻撃 報復の連鎖 総力で断て」、毎日新聞は「イランの大規模攻撃 報復の連鎖断ち切る時だ」と題する社説を掲載しました。共同通信は「イスラエルがイランに反撃するかどうかが焦点」とする解説を配信しました(16日付京都新聞)。
上川陽子外相は16日、イラン外相に電話で「強く非難する」とし「自制を強く求め」ました(17日付共同)。
そもそも今回のイランのイスラエル攻撃の発端は、イスラエルによる在シリアのイラン大使館空爆(1日)という暴挙です。大使館を空爆されれば報復は必至です。イスラエルのイラン大使館攻撃はそれを見越した(それを誘発する)明白な挑発行為です。
ところがこのイスラエルのイラン大使館空爆について上川外相は、「イスラエルは関与を認めておらず、事実関係を十分に把握することが困難で、確定的な評価は差し控えたい」(17日付朝日新聞デジタル)と述べイスラエルを擁護しました。二重基準(ダブルスタンダード)も甚だしいと言わねばなりません。
中東調査会の高岡豊・協力研究員(中東地域研究)もこう指摘します。
「在外公館の安全は外交関係の基本なのに問題が軽んじられている。イランがイスラエル領を攻撃するのが悪いのなら、イスラエルがやってきたことはどう評価するのかという問いに答えなくてはならない」「問題化した起点が恣意的だ。日本を含むG7 諸国の対応は他国から二重基準とみられかねない」(17日付朝日新聞デジタル)
イスラエルとアメリカはじめG7 各国の狙いは明白です。世界の目をガザから逸らせ、イスラエルによるガザ攻撃(ジェノサイド)への批判をかわすことです。
慶応大大学院の田中浩一郎教授(西アジア地域研究)は、「イスラエルが在シリアのイラン大使館領事部という「飛び地」を攻撃し挑発したことで、イランが直接手を下すしか選択肢がない状況になっていた」とし、「報復の連鎖が起これば、パレスチナ自治区ガザでの戦闘から「国対国」の次元の違う戦争に発展する恐れがある」(16日付京都新聞=共同)とその狙いを指摘します。
さらに田中氏はこう予測します。
「イスラエルが反撃しない可能性は低いが、米国からの圧力で自制に応じた場合には「対イランで妥協した」引き換えとしてガザの戦闘を激化させかねない」(同)
それはまさに悪魔のシナリオと言わねばなりません。世界の目がイランに向けられている間にもイスラエルはガザを攻撃し続けており、犠牲者が続出しています(写真右)。
「焦点」は「イスラエルがイランに反撃するかどうか」などではありません。イスラエルのガザ、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区に対す攻撃・ジェノサイドを直ちにやめさせることです。それ以外に焦点はありません。