生活保護問題対策全国会議blog

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生活保護問題対策全国会議とは?

2050-01-01 00:00:00 | Weblog
「生活保護問題対策全国会議」は、すべての人の健康で文化的な生活を保障するため、貧困の実態を明らかにし、福祉事務所の窓口規制を始めとする生活保護制度の違法な運用を是正するとともに、生活保護費の削減を至上命題とした制度の改悪を許さず、生活保護法をはじめとする社会保障制度の整備・充実を図ることを目的として活動しています。


生活保護に関する相談窓口

2048-03-20 15:16:44 | Weblog
生活保護に関する相談窓口

院内集会:急増する稼働年齢層の生活保護受給にどう対処すべきか

2010-11-09 11:00:00 | 集会・シンポジウムのお知らせ
急増する稼働年齢層の生活保護受給にどう対処すべきか
~ 「有期保護」「医療費一部自己負担」で問題は解決するのか!? ~


 働きたくても仕事がない今日、都市部を中心に失業による稼働年齢層(16~65歳)の生活保護受給者が急増しています。そんな中、地方の財政負担解消を目的とし、10月20日、指定都市市長会が、国に対して、生活保護制度の抜本改正を求め、「有期保護」(働ける層に対しては3~5年で生活保護を打ち切る制度)と「医療費の一部自己負担」(現在無償の医療扶助の一部を窓口で本人に自己負担させる制度)の導入を提言しました。

 しかし、これが本当に実現すれば、期限を過ぎても職に就けなかった人をサポートする手だてがなくなり、いくつも病気や障がいを抱えている人は、必要な治療を抑制せざる得ない事態に陥ります。餓死者や自死者が続出し、憲法25条が保障する生存権を侵害する事態となることが必至です。むしろ、今求められているのは、まともに暮らせる雇用の確保、失業保険や「第2のセーフティネット」の拡充であり、生活保護費の全額国庫負担ではないでしょうか?

 この院内集会は、関係する当事者、支援者、研究者による「現場からの訴え」です。

 是非、多くの国会議員の皆さまにご参加いただきますよう、お願い致します。


 【日時】2010年11月9日(火)午前11時~12時30分

 【場所】衆議院第2議員会館 1階 多目的会議室

※ 10時45分から上記会館1階ロビーで通行証を配布します

 【発言予定者】(敬称略・順不同)

生活保護を利用している当事者の方々(シングルマザーの方、派遣切りにあった方、難病・高齢等で通院している方・・)

開会あいさつ          湯浅誠(反貧困ネットワーク)

指定都市市長会の提言の問題点  布川日佐史(静岡大学教授)

母子世帯の実情         赤石千依子(しんぐるまざあず・ふぉーらむ)

「基金訓練」の利用・運用の実態 河村直樹(全労働省労働組合)

●国保資格証明書問題に取り組んでいる方

「寄り添う支援」の必要性    奥森祥陽(生活保護ケースワーカー)

まとめのあいさつ        尾藤廣喜(弁護士)

 

【主催】生活保護問題対策全国会議

有期保護導入に反対する意見書

2010-10-20 19:00:00 | Weblog
2010年10月20日


生活保護の有期化は最後のセーフティネットの形骸化を招く暴論

~指定都市市長会・生活保護制度改革案についての意見書~



生活保護問題対策全国会議(代表幹事 尾藤廣喜)

全国生活保護裁判連絡会(代表委員 小川政亮ほか)

生活保護支援ネットワーク静岡(代表 布川日佐史)

近畿生活保護支援法律家ネットワーク(代表 竹下義樹・辰巳裕規)

生活保護支援九州ネットワーク(代表 永尾廣久・椛島敏雄)

         反貧困ネットワーク埼玉(代表 藤田孝典)

         特定非営利活動法人 ほっとポット(代表理事 藤田孝典)

社会保障解体に反対し公的保障を実現させる会(代表 手塚隆宏)

         二五の会(代表 岩崎淳子)

         ホームレス総合相談ネットワーク(代表 森川文人)

         ホームレス法的支援者交流会(代表 木原万樹子・後閑一博)

         特定非営利活動法人 神戸の冬を支える会(代表 森山一弘)

                               (以上、12団体)




第1 意見書の趣旨

1 生活保護制度の形骸化を招く市長会案の撤回を求める。

生活保護の有期化や医療扶助一部負担等を内容とする指定都市市長会の生活保護改革案は、やっと生活保護による救済が始まった失業者やワーキングプア層を生活保護から排除する危険な構想である。

生存権を保障した憲法25条に明確に違反し、生活保護制度という最後のセーフティネットを事実上崩壊させ、餓死者などを出しかねない重大な結果をもたらすものであり、断じて容認できない。市長会にはこの改革案の撤回を求める。



2 生活保護利用者の増加は雇用状況の悪化や、低額な年金など社会保障の不備が要因で

ある。貧困の拡大のもとで求められているのは、生活保護の有効活用である。

生活保護利用者の増加は、失業率の高止まり、非正規雇用の増大や社会保障制度の不備等を要因としており、生活保護制度に問題があることが原因なのではない。生活保護制度は増大するワーキングプア(働く貧困層)をはじめ、生活困窮者の救済には欠くことができない制度である。また日本の貧困率(標準的所得の半分以下の所得人口15.7%、6.4人に一人が貧困状態。2009年10月厚労省発表)や捕捉率(生活保護費未満の低所得者で、かつ貯金無しの世帯中、現に保護を利用している世帯は32%。2010年4月厚労省発表)から考えれば、もっとその役割を果たさなければならない。

現在求められているのは、労働者派遣法の抜本改正など企業に雇用責任を果たさせること、さらに、失業給付や年金の充実など社会保障の充実とあわせて、生活保護も最大限に有効活用することであって、その制限ではない。



3 財政負担増は国家責任により解決し、自立支援は期限を切らない支援計画によって行うべきである。

生活保護費の負担軽減の方策は、有期保護によって、生活保護から利用者を追い出すことに求めるのではなく、市長会も要望している通り、生活保護に至る前段階での第2のセーフティネットの充実等によるべきである。また、同会も要求しているように、もともと生活保護は国家責任の制度であること、またリーマンショック以降の雇用状況の悪化は国全体で起こっていることから、国が生活保護費の全額を負担することによって解決しなければならない。当会議の見解とも一致するこの方向での運動を、市民とともに強化することが重要である。

また、生活保護利用者の自立支援は、長期的な支援計画の下で、働く場を用意することも含め、資格等を獲得していくステップバイステップの取組が有効であることが明らかになっている。また、公的就労の充実がなければ、自立支援は有効に機能しない。

期限を切って利用者を追い詰めるのではなく、このような取組によってこそ、正規雇用など安定した就労に就くことができ保護からの安定的脱却が可能となる。



第2 指定都市市長会生活保護制度改革案の検討

1 改革案の概要

改革案のもとになった骨子案が大阪市のホームページに掲載されており、本意見書では、この骨子案を検討することにする。

骨子案は、(1)制度の抜本的改革、(2)生活保護の適正化、(3)生活保護費の全額国庫負担という3つの柱で構成されているが、本意見書では、(1)の抜本改革と、医療費の一部負担化について検討する。

「制度の抜本的改革」の内容は、基本的に2006年の全国知事会・市長会の「新たなセーフティネットの提案」をベースに、①ボーダーライン層への「雇用・労働施策」、②稼働可能層を対象にした「有期保護」と「集中的かつ強力な就労支援」、③高齢者層に対する「年金制度と整合する生活保護制度」という3つの柱で構成されている。「稼働可能層対策」の内容の中には、「就労へのインセンティブが働く制度設計」、「稼働年齢層で就労できない場合には、自立支援の一環として社会奉仕・貢献へ参加」などが列挙されているが、基本的には、期限を定めて就労を迫り、期限が来ても就労できない場合には、いったん保護を打ち切り、その上で、「自立支援の一環として」の社会奉仕・貢献を行うことを条件に保護の継続があり得るような運用が想定されている。


2 改革案の問題点

 骨子案は、生存権を具体化した生活保護法の変質をもたらすと言ってよい重大な問題を含む。明らかに憲法違反の提言である。


(1)改革案の基本認識  ~貧困の自己責任化、生活保護「問題」論

 骨子案の最大の問題点は、あたかも、集中した支援があれば、一定の期限内に、失業等による保護利用者は誰でも、就労により生活保護から脱却できるかのような前提に立っていることである。骨子案には、貧困は個人の責任であり、利用期間を切った「支援」によって、個人が頑張れば克服できるという考えが根底にあると思われる。

しかし、貧困の拡大が、失業や非正規労働の拡大という、個人に責任のない雇用の問題に大きな原因があることは明らかである。依然として、失業という蛇口は全開状態のままである。にもかかわらず社会保険などのセーフティネットや2009年から実施されている第2のセーフティネットも十分に機能していないから、最後のセーフティネットである生活保護利用者が増大しているのである(いわゆる「すべり台社会」)。生活保護制度に問題があるわけではない。反対に、派遣切りされた労働者や失業者は、生活保護によって辛うじて救済されているのが現実である。

現在必要なのは、派遣法等の改正により失業の「蛇口」を閉め、生活保護に至らない段階での第2のセーフティネットの充実を図り、生活困窮者を生活保護できちんと受け止め、さらには、公的就労の場を創出することも含めた自立支援策を強化することである。


(2)有期保護の問題点 

ア 憲法25条、生活保護法2条違反

基本的人権である生存権を予め期間制限することはできない。生活保護法2条の無差別
平等の原理は、困窮に至った原因を問わずに経済的な困窮状態に着目して保護が利用できることを保障している。経済的に困窮している市民に対して、「あなたは受給期間3年ないし5年が終了しているからもう保護は受けられない」とはいえないはずである。

イ 生活保護が有期化されれば、最後のセーフティネットがなくなる

雇用の崩壊が改善されない下で、生活保護が、最初で最後のセーフティネットとなって
いる。その生活保護が利用期間が過ぎたからもう使えないということになってしまっては、
後には救済できる制度は何もなく、生活困窮者はたちまち生存の危機に瀕することになる。


ウ 3年~5年で貧困から脱却できる実証的な根拠がない

骨子案は集中的な支援によって保護利用者は5年で自立せよという。しかし、これは現
実的には5年経過したら貧困のまま放り出されることを意味する。1996年からアメリカで実施されている5年有期保護であるTANF(貧困家庭一時扶助)の施行後、保護率は急激に減少したが、半分ほどの元受給者は貧困状態のまま放置されている。日本においても生活保護の就労支援を行なっても8割が保護から脱却できていない(2008年1月1日「読売新聞」)。
 アメリカのフードスタンプ(食料の現物給付)のような制度のない日本でこれを導入すれば、より悲惨な悲劇を招くことは明らかである。


エ 実効性のある自立支援とはまったく逆行

現下の雇用情勢の下では、適切なアセスメントを踏まえた、段階的、ステップバイステップ(一歩一歩)の視点による、しっかりしたキャリアアップの取組が不可欠である。北海道釧路市、京都府山城北福祉事務所など厚労省も推薦する先進的な取組みはそのことを示している。期間を切ればうまくいくものではなく、保護利用者を追い詰めるだけとなってしまう。


(3)医療扶助一部自己負担化の問題点

 骨子案では制度の詳細は不明であるが、もし、医療扶助の利用者一部負担化であるとすれば、最低生活を割り込む一部負担を生活保護制度に埋め込むことになり、これも憲法25条に明確に違反する。また、多大な受診抑制をもたらし、利用者の医療を受ける権利を正面から侵害することになる。

生活保護に至る原因の4割は病気である。また生活保護利用者の9割は何らかの治療を行っている。病気と貧困は現代でも密接な関係がある。生活保護利用者の病気の治療を保障し、健康を回復し、自立を進めるためには、医療へのスムーズなアクセスと治療の継続は不可欠である。このような権利を侵害する医療扶助一部負担化はけっして容認できない。

 この構想が、たとえ保護利用者が医療機関受診時にいったん一部負担し、後に福祉事務所から償還される制度を想定しているものであっても事態は変わらない。最低生活しか保障されていない利用者にとっては、後で戻ってくるとはいっても、受診時の一部負担があるために、受診から遠ざかることになってしまうのは明らかである。


以 上

三郷生活保護裁判をご支援ください!

2010-09-27 13:30:00 | 生活保護裁判
<転載大歓迎>

夫が白血病で緊急入院した後、
たびたび電気やガスを止められる厳しい生活をよぎなくされた
一家の女性を1年半に渡って追い返し続け、
弁護士が同行してようやく生活保護を開始するも、
すぐに市外への転居を強要し、
しかも転居先での保護申請を禁止するという
許しがたい違法行為を行った
埼玉県の三郷市に対する国家賠償訴訟が闘われています。

全国の市民が、福祉事務所の水際作戦の違法性を問う
三郷訴訟に注目し、正義に叶った判決を求めていることを、
裁判所に理解させたいと思っています。
署名は、10万筆を目標にしています。
よろしくお願いします。

署名用紙

また、運動を大きくしていくために、多くのみなさんに
三郷生活保護裁判を支援する会の会員になっていただければと思います。
支援する会は今はまだ必ずしも十分な財政基盤が確立されていないので、
経済的余裕のある方はカンパも積極的にお願いします。

支援する会入会申込書

■署名送付先
○埼玉県社会保障推進協議会
〒330-0064
埼玉県さいたま市浦和区岸町7-12-8 自治労連会館内

○三郷市社会保障推進協議会
〒341-0032
埼玉県三郷市谷中397 埼玉土建三郷支部気付

■カンパ振込先
中央労働金庫さいたま支店 普通6042887
「三郷市生活保護裁判を支援する会」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
三郷生活保護裁判へのご支援のお願い

三 郷 生 活 保 護 裁 判 弁 護 団

連絡先 浦和シティ法律事務所(中山)

TEL:048-839-7129 

1 貧しいながらも仲睦まじく暮らしていた4人家族の生活は、2004(平成16)年末、大黒柱のAさんが
白血病で倒れたことによって急変しました。緊急入院したAさんの介護のため毎日のように病院に通う中、Aさ
んの妻は、夫を失う恐怖と不安で精神を病み、精神科に通院するようになりました。一家の生活は、派遣労働者
である長男の両肩にのしかかりましたが、フルタイムで稼働しても約10万円という収入では、家族の生活を維
持していけるはずもなく、2005(平成17)年1月には、一家は家賃と入院費を払えなくなりました。

こうした中、妻は度々、三郷市役所の生活保護の窓口に足を運びましたが、その度に職員から「働きなさい」、
「自分でどうにかするしかない」「親族に助けてもらいなさい」等と言われ、生活保護の申請を拒否されました
。光熱費が払えず、電気、ガスを止められたことは数知れず、水道を止められたことも1度ならずありました。
次女は、給食費や集金を払えないことが恥ずかしく、登校拒否になりました。

2006(平成18)年6月、弁護士が同行してようやく一家の生活保護が開始されましたが、保護課はその直
後から、一家に市外への転出を強力に勧めるようになりました。そして、転出先が決まった8月末、「転居後は
保護を受けないように」と念押しした上で母子を保護の対象から外し、Aさんが一時的に退院した9月11日、
保護を全面的に廃止したのです。

2 妻が少なくとも6回は保護課窓口に行った事実は、提訴前の証拠保全手続きで獲得した一家の生活保護記録
にも明記されています。この面接記録票からは、Aさんの白血病罹患と長期入院の必要性、妻に稼働能力ないと
いった医師の診断等の事情を、三郷市が保護開始前から認識していたことが判明しています。

三郷市が生活保護の申請書を交付しなかったことや、強引な転居指導で一家を市外に追い出し、保護の対象外に
したことに合理的理由を見いだすことはできません。

3 Aさん夫婦は、2007年7月11日、三郷市を相手取り、受給できなかった16ヶ月 分の保護費相当額と慰謝
料の支払いを求め、さいたま地方裁判所に提訴しました。

  この裁判を通じ、Aさん夫婦が求めているのは、お金ではありません。自分たちが受けた、救いの見いだせ
ない絶望感と苦痛を他の人に味わせたくない、生活保護を担当する行政が本来の姿に立ち返り、苦しみの中にい
る市民の声に耳を傾け、救いの手をさしのべる暖かさを取り戻して欲しい、これがAさん達の願いです。

この思いは、私たち代理人弁護士にも共通です。この裁判が、憲法25条の保障する「健康で文化的な最低限度
の生活」に真に見合った生活保護行政を全ての自治体に実現させ、また国の定める生活保護の水準を抜本的に底
上げする契機になればと考えています。この目的を達成するべく、私たち弁護団員は、勝訴に向けて一丸となっ
て進んでいくことを決意しています。

そのためには皆さんのご協力が不可欠です。是非ともご支援下さるようお願い申し上げます。

 次回証人尋問  日時 2010年11月29日午後1時30分(1時10分より傍聴券配付予定)

             場所 さいたま地方裁判所 101号法廷

弁護士中山福二 弁護士吉広慶子 弁護士池本誠司 弁護士小山香 弁護士猪股正

弁護士小林哲彦 弁護士長田淳 弁護士松苗弘幸 弁護士久保田和志 弁護士平原興

弁護士川井理砂子 弁護士満尾直樹 弁護士川崎慎一 弁護士斉藤耕平

弁護士高松佳子 弁護士近藤宏一 弁護士土屋文博 弁護士森川清

弁護士佐々木新一 弁護士岡本卓大 弁護士渡邉恭子 弁護士林大悟 弁護士北川浩司

無料低額宿泊所等に関する議員立法案の根本的訂正を求める意見書

2010-08-03 14:00:00 | Weblog
2010(平成22)年8月3日

無料低額宿泊所等に関する議員立法案の根本的訂正を求める意見書
~これでは「規制法案」ではなく「温存育成法案」だ~

貧困問題と貧困ビジネスを考える民主党議員の会
会長 衆議院議員 中根 康浩 殿
厚生労働大臣 長妻 昭 殿

生活保護問題対策全国会議
代表幹事 弁護士 尾 藤 廣 喜
(連絡先)〒530-0047大阪市北区西天満3丁目14番16号
西天満パークビル3号館7階 あかり法律事務所
電話 06-6363-3310 FAX 06-6363-3320
事務局長 弁護士 小久保 哲 郎
                  NPO法人 神戸の冬を支える会
                   代  表     森 山 一 弘
                  
 当会は,弁護士,司法書士を中心に,研究者,生活保護ケースワーカー,生活保護利用当事者など約300人で構成する民間団体です。当会は,すべての人の健康で文化的な生活を保障するため,貧困の実態を明らかにし,生活保護制度の違法な運用を是正するとともに,生活保護費の削減を至上命題とした制度の改悪を許さず,生活保護法をはじめとする社会保障制度の整備・充実を図ることを目的として活動しています。

 近時,悪質な無料低額宿泊所運営事業者等が,いわゆる「貧困ビジネス」として社会問題となっており,貴殿らにおかれても,「被保護者等住居・生活サービス提供事業の業務の適正化等に関する法律案」(以下,「本法案」といいます。)を国会に上程すべく準備中であるとお聞きしております。
 しかし,本法案の内容を拝見すると,問題のある業者に対する規制を強化する内容となっておらず,問題事象が改善されないばかりでなく,むしろ,問題業者を温存し育成する結果となるおそれが極めて強いものと言わざるをえません。そこで,私たちは,法案の内容を抜本的に改めることを求めて本意見書を提出するものです。
 
第1 問題の所在
 無料低額宿泊所等の事業者が「貧困ビジネス」として問題視される根拠は,
① 居住環境が劣悪であること(6畳を間仕切りした3畳間等)
② 食費やサービス料など様々な名目をつけて保護費の大半を徴収され最低生活以下の生活を強いられること
③ 「一時的宿泊場所」という名目なのに入所期間が長期化していること
④ こうした処遇が事実上強制され当事者に離脱の自由が保障されていないこと(金銭管理,当事者の窮状・無知に付け込んだ不十分な説明等)
などにあると言われている。

 こうした「貧困ビジネス」がはびこる背景には,ホームレス状態にある人々に対しては,生活保護法30条1項によって原則とされている居宅保護(アパートにおける生活保護)の実施が極めて消極的で,便利な引受先として,こうした業者を「活用」している都市部の福祉事務所の姿勢がある。その結果として,本来,定住の場が見つかるまでの一時的な宿泊場所であり,「無料又は低額」で宿泊できるはずの「無料低額宿泊所」等が,「長期的な居住の場」となり,しかも,無料でも低額でもなく高額の利用料を搾取されるという病理現象が生み出されているのである。
 こうした病理現象を根絶するためには,「貧困ビジネス」の問題点である上記①ないし④のうち,せめて数点でも強い規制をかけることが不可欠である。しかし,本法案の条文を個別に検討すると,上記①ないし④のいずれも規制しないという内容になっており,こうした問題点は何ら改善されることなく,むしろ温存・強化されるおそれが極めて強いものであるから,根本的に訂正される必要がある。
 以下,本法案の問題点を順に述べる。

第2 現行社会福祉法上の規制を緩和
 本法案は,「被保護者等住居・生活サービス事業」(二人以上の被保護者等に対し,宿泊所等を利用させることにより住居を提供するとともに,有償で生活サービス(衣類,食材等の日常の生活必需品の供与,入浴,食事,金銭の管理その他生活に関するサービス)を提供する事業など)を行う者に対して届出義務を課し(6条),都道府県知事による業務改善命令(18条)や,被保護者等の処遇につき不当な行為をしたときなどの事業停止命令(19条)などの権限を定めている。
 しかし,上記の「住居・生活サービス事業」には,一般に無料低額宿泊所と呼ばれている入所施設形態の事業も含まれているところ,こうした事業は,第1種社会福祉事業について定めた現行社会福祉法2条2項1号の「生計困難者を無料又は低額な料金で入所させて生活の扶助を行うことを目的とする施設を経営する事業」に該当する(詳細は,日本弁護士連合会の2010年6月18日付意見書を参照)。そして,自治体と社会福祉法人以外の者が第1種社会福祉事業を経営する場合には,都道府県知事(政令市の場合は市長)の許可を受けなければならず(同法62条2項),無許可営業に対してはただちに罰則の適用がある(同法131条)。
 とすると,上記の本法案の内容は,本来刑事罰の対象となる無許可営業を原則として適法とし,現行社会福祉法上の規制権限を不当に緩和するものと言わざるを得ない。

第3 居住環境の劣悪性
本法案8条1項は,「業務の運営について必要な基準」を厚生労働省令で定めなければならないとし,同条2項は,「宿泊所等の構造及び設備並びに管理に関する事項」,「事業者の経営内容に関する情報の公開に関する事項」などを列記している。ここで,どのような基準が採用されるかが,極めて重要であるが,法案ではその方向性は何ら示されていない。
この点,平成22年6月11日に厚生労働省保護課長名で発出された「平成22年度セーフティネット対策等事業費補助金「居宅生活移行支援事業」の採択方針について」では,「構造設備の状況」として,「居室面積3.3㎡以上(開口部以外が硬質の壁で区切られている等プライバシーに配慮された個室に限る)」,「自立支援のためのプログラムが実施できる相談室の確保(食堂など,代用できる設備がある場合でも可)」とされている。すでに,こうした基準を満たす事業者に対する助成事業の募集が開始されていることからすれば,上記厚生労働省令で定められる基準が,それよりも厳しくなるとは考えられない。
しかし,上記助成事業で採用された基準は,平成15年7月31日付の厚生労働省社会・援護局長通知で示された基準を踏襲しているものであり,何ら従来の条件を厳しくするものではない。こうした基準が法律上の根拠をもって固定化され,さらにこの基準を満たしさえすれば補助金まで受けられることとなれば,問題のある業者が温存・育成されることになり,全く本末転倒である。
仮に,ごく短期間の通過施設ではなく,半恒久的な居住場所として位置づけるのであれば(後に述べるとおり,本法案は,そう位置づけている),他法との整合性の観点からすると,厚生労働省令が定める基準は,住生活基本法に基づく住生活基本計画で定められた最低居住面積水準(単身者で25㎡)と整合性のあるものでなければならないし,補助金の対象となる基準は,同計画で定められた誘導居住面積水準(都市部の単身者で40㎡)であるべきである。ちなみに,高齢者に関する「軽費老人ホーム」の一人あたり面積が21.6㎡であり,「特別養護老人ホーム」のそれが10.65㎡であるのと比しても,「3.3㎡」という基準は余りにも劣悪である。

第4 保護費の大半を徴収される問題点について
 本法案では,事業者に対して,「事業者が提供する住居及び生活サービスの内容並びにそれぞれの対価の額に関する事項」の都道府県知事等に対する届出義務を課し(6条1項5号),同事項を記載した書面の利用者への交付義務を課しているが(10条3号),その対価額の上限等については何ら定めていない。
 これでは,対価額を定めて届出し,対価額を記載した書面を利用者へ交付しさえすればよいこととなり,むしろ,保護費の大半の徴収を法的に容認したかのごとき結果となってしまう。
 「社会福祉法の解説」(社会福祉法令研究会,70頁)によれば,同法2条にいう無料低額宿泊所の「低額」とは,「社会通念上必要とされる経費以下の額で,かつ,実際に支出された経費以下ということになるであろう。」と解説されている。したがって,対価の上限としては,「実費」が最高限度とされるべきである。

第5 入所期間が長期化する問題点について
 本法案4条2項は,地方公共団体が,「宿泊所等の利用が不当に長期にわたることのないよう,当該被保護者等の転居の支援等自立の支援に努めるものとする」と規定している。
 問題の第1は,「不当に長期」の基準が何ら示されていない点である。無料低額宿泊所が,居宅保護なり施設保護が決定されるまでの経過的な居所として存在意義があるというのであれば,生活保護法24条3項が定める14日間(特別な理由がある場合に30日間)といった入所期間に関する基準を設定すべきである。
 問題の第2は,「支援に努めるものとする」として,地方公共団体が不明確な努力義務しか負わされていない点である。「・・・支援に努めなければならない」と,地方公共団体に対して明確な義務を課さなければ意味がない。

第6 当事者に離脱の自由がない問題点について
1 利用者による解約の自由を却って制限し,長期間の契約を前提としている
本法案12条は,「被保護者等は少なくとも1月前に予告すれば当該被保護者等住居・生活サービス提供契約を解除することができる旨を(契約に)定めなければならない」と規定する。
しかし,これでは,利用者が契約から離脱したいと考えて解除の意思表示をしても,それから1か月間は同じ場所で生活をしなければならないことになる。悪質業者のもとで今後1か月間居住を続けなければならないことを覚悟のうえで,解除の意思表示を行うことなど事実上不可能である。
本来,不当なサービス提供契約は,公序良俗違反等によって無効であり,利用者は即時解約できるものと解すべきであるのに,本法案は,かえって離脱の道を閉ざしており,本末転倒である。利用者側からの解約は即時可能であることを明記すべきである。
また,同条は,事業者側からの解約についても,「少なくとも6月前に予告しなければならない」と定めていて,6月以上の長期契約を当然の前提としていて,大いに問題がある。

2 金銭管理を幅広く容認している
本法案13条(金銭等の管理の制限)は,事業者が,金銭管理業務担当者の氏名等を提出してあらかじめ都道府県知事の承認を受けることにより,当該事業利用者の保護費及び保護費が振り込まれる預貯金口座の通帳・カード等を管理することを認めている。
金銭管理については,本来,当事者の個別同意が必要であり,金銭管理を行う必要性の有無も個別の当事者の状況によって当然異なる。にもかかわらず,法案は,事前の包括的な承認を得た事業者が,その独断で利用者の金銭管理を行うことにお墨付きを与える内容となっており,極めて問題である。

3 苦情処理体制構築の責任を不明確にしている
本法案4条3項は,「地方公共団体は,・・・(利用者の)苦情を適切かつ迅速に処理し,被保護者等からの相談に適切に応じるために必要な体制を整備するよう努め・・るものとする」と規定している。
ここでも地方公共団体の責務があいまいにされている点が問題である。「整備しなければならない」と,地方公共団体の義務を明記すべきである。
また,無料低額宿泊所等の事業は,本来,社会福祉法上の位置づけがあり,同法による規制に服しているものである(詳細は,日本弁護士連合会の前期意見書を参照)。現行社会福祉法85条1項は,既に,「運営適正化委員会は,福祉サービスに関する苦情について解決の申出があったときは,その相談に応じ,申出人に必要な助言をし,当該苦情にかかる事情を調査するものとする」と規定し,同条2項は,「運営適正化委員会は,前項の申出人及び当該申出人に対し福祉サービスを提供した者の同意を得て,苦情の解決のあっせんを行うことができる」と規定している。
新規立法を行うのであれば,現行法による苦情解決システムをより強化する方向で行われるべきである。たとえば,「苦情解決のあっせん」について,サービス提供者側の同意を不要とし,同委員会のあっせん案について,業者や福祉事務所を含む関係機関の尊重義務を規定することなど,現行社会福祉法における運営適正化委員会の権限や機能を強化する方向での改正が検討されるべきである。

以 上

TBSテレビ番組の放送内容に関する質問状

2010-06-18 10:00:00 | Weblog
平成22年6月15日
〒107-8006 東京都港区赤坂5丁目3番6号
株式会社TBSテレビ 御中
〒160-0021 東京都新宿区歌舞伎町1丁目4−1
新宿区福祉事務所 御中
ホームレス総合相談ネットワーク
代表 弁護士森川文人
                    生活保護問題対策全国会議
                       代表幹事 弁護士尾藤廣喜
                    ホームレス法的支援者交流会
                       代表 司法書士後閑一博
【連絡担当】
〒101-0041東京都千代田区神田須田町1丁目4番地8
芙蓉神田須田町ビル8階 お茶の水合同法律事務所
弁護士 渡邉恭子 
電話 03-5298-2601

TBSテレビ番組の放送内容に関する質問状

ホームレス総合相談ネットワーク(以下、「当ネットワーク」と言います。)は、主に東京都内において、ホームレス状態にある方々への法的支援を行っている団体、生活保護問題対策全国会議は、生活保護の運用と制度の充実と改善を求めて活動している団体、ホームレス法的支援者交流会は、ホームレス状態にある方への支援にあたる法律家及び支援者が法的な観点からの支援について情報交換と交流を行う団体です。
この度、TBSテレビ(以下、「貴局」と言います。)の制作著作に係る、平成22年3月29日23時59分放映の番組「ニッポン国民の皆さん 田村淳でございます」(以下、「本番組」といいます。)を視聴したところ、ホームレス状態にある方々の生活保護申請に関して、視聴者の誤解を招き、偏見を助長する内容が含まれており、看過し難い問題点があったことから、以下の通り要望致します。
なお、ご多忙中に御手数をおかけして恐縮ですが、回答は、本書面到達後2週間以内に書面でいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

第1 放送内容の概要と質問及び要望事項
1 放送内容の概要
本番組においては、政治家を目指す田村淳氏が社会問題にアプローチするという設定で、田村氏とジャーナリストの鳥越氏が、ホームレス問題に対する行政の対応を調査すべく新宿区福祉事務所唐沢邦子職員にインタビューを行う場面があります。
その中で、唐沢職員は、
① ホームレスの人が生活保護費を「だまして」「持ち逃げ」する問題があり、「持ち逃げ」した人を罰する法律がないことを制度上の問題として指摘し
② 「持ち逃げ」したホームレスでも、再度、生活保護申請できることを問題視し
③ ホームレスの生活保護申請を支援している弁護士、司法書士らが「何度でもいいじゃないか」と「怒鳴り込んでくる」ことがけっこうある
という趣旨の発言をし、田村氏、鳥越氏もそれに同調する形で番組がまとめられています。
 2 質問及び要望事項
 (1) 上記①ないし③の事実があったとされる時期や件数の詳細と、いかなる調査と根拠に基づき、上記の事実認定をされたのかをご回答ください。
  特に、「だまして」「持ち逃げ」をしたとされる「ホームレス」の人や、「怒鳴り込んできた」という弁護士の言い分をどのようにして調査確認したのかを明らかにしてください。仮に、こうした調査確認をしていないとすれば、批判・非難の対象とされる相手方の言い分を確認しないまま、なぜ上記のように断定的に発言し、報道することができたのかについて明らかにしてください。
(2) 仮に十分な根拠や調査確認を行うことなく上記の発言、報道に至ったというのであれば、TBSテレビは、訂正放送を行うとともに、TBSテレビ及び新宿区福祉事務所は、今後同様の過ちを犯すことのないよう再発防止策を策定し公表してください。

第2 放送内容の問題点
 1 ホームレスの人が生活保護費を「だまして」「持ち逃げ」するという発言・報道の問題点
    唐沢職員は、ホームレスの人達が、生活保護費を持ち逃げすることがあることを当然の前提とし、「持ち逃げ」とはいかなる行為を指すのか、「持ち逃げ」するホームレスの人達がどの程度の割合でいるのかなど、具体的な数値、根拠を示すことなく発言しています。
    唐沢職員は、「まあそんな頻繁ではありませんけれども。」と言っておきながら、「でも、けっこうあることなんですね。」などと言っており、結局のところ、何らの根拠に基づかない自己の主観的印象を述べているにすぎず、行政の責任ある立場の職員の発言としては軽率であるといわざるを得ません。
  2 再度申請することを問題視する発言・報道の問題点
    本放送では、「持ち逃げ」したホームレスが何度でも生活保護申請をすることを問題視しています。
しかし、生活保護は、「日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活の困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする」(生活保護法1条)ものです。
また、生活保護は、すべての国民が「無差別平等に」受けることができるとされており(無差別平等原理、同2条)、過去にいかなる事情があったとしても生活に困窮しているのであれば、何度でも、保障されなければならないのです。
    このことは、憲法上の要請であり、憲法を尊重し擁護する義務を負っている行政の立場にある者の発言として許されないものです。
  3 ホームレスを支援する弁護士、司法書士をクレーマー視する発言の問題点
    唐沢職員は、ホームレスの生活保護申請支援をしている弁護士、司法書士らが「何度でもいいじゃないか」と「怒鳴り込んでくる」などと発言し、あたかも、弁護士、司法書士らが理不尽なクレーマー的存在であるかのように発言しています。しかし、こうした発言が、いかなる具体的事実をいかなる根拠と調査確認に基づいてなされたかという点が極めてあいまいである点は、1で述べたのと同様です。
    そもそも、弁護士、司法書士は、法律専門家としての職責に則って、生活保護行政が法律を遵守した形で実施されるように生活保護申請に同行するなどの支援をしているのであって、法律に反した主張などをしているわけではありません。少なくとも当ネットワークに所属している法律家、支援者らは「怒鳴り込んでくる」と評価されるような言動は一切行っていません。
    住居がなく路上生活を余儀なくされ、毎日の食事にも満足にありつくことができない「ホームレス」は、究極の貧困状態として憲法25条で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」以下の生活をしていることは明らかです。
    したがって、生活保護法上、ホームレス状態にある人々に対して生活保護制度を適用して、アパート等での生活を保障することは当然のことです。
    しかし、現実には、「住所がないからだめ」「まだ若いからだめ」「病気でないからだめ」「施設に入らなければ保護は受けられない」などといった違法な理由により、福祉事務所の窓口で追い返される「ホームレス」の人が後を絶ちません。当ネットワークでは、毎日のように、生活保護を受けることができず困窮した「ホームレス」から相談を受け対応しているところです。
    このような「ホームレス」の置かれた現状をふまえれば、ホームレスと生活保護についてテレビ番組で取り上げるのであれば、むしろ、生活保護を利用する資格があるのに福祉事務所の違法な対応により利用できないホームレスの存在こそが報道されるべきであると考えます。
    生活保護法に則った保護の実施を求めて、福祉事務所の窓口で交渉をする弁護士、司法書士、支援者らのことを一方的に「怒鳴り込んでくる」クレーマーのように扱う唐沢職員の発言には悪意すら感じ、ホームレスの法的支援に携わる者としては誠に心外です。

第3 行政機関・報道機関としての姿勢の問題点
 1 行政機関としての新宿区福祉事務所の問題点
 厚生労働省が定めている生活保護の実施要領の冒頭には、「生活保護実施の態度」として、「被保護者の立場を理解し、そのよき相談相手となるようにつとめること」、「被保護者の個々についてその性格や環境を把握理解し、それに応じた積極的な援助をたゆまず行うようつとめること」、「実態を把握し、事実に基づいて必要な保護を行うこと」、「被保護者の協力を得られるように常に配意すること」といった、保護の実施機関(職員)としての基本的心構えが記されています。福祉事務所のケースワーカーは、さまざまな困難を抱えている生活困窮者に寄り添い、その信頼を得て、細やかな支援を行うことが求められているのです。
しかし、先に述べたとおり、本放送での唐沢職員は、本来支援の対象であるはずのホームレスの人について、生活保護費をだまして持ち逃げするなどと敵視し、批判する発言を、何らの根拠や資料に基づかず、あくまで主観的印象として行っています。こうした発言は、視聴者に対して、ホームレスは生活保護制度を悪用しているという誤解や偏見を強く印象づけるものであり、生存権保障の担い手となるべき福祉事務所の職員が、公の電波において、堂々とこのような発言をすることの責任は重大です。
2 報道機関としてのTBSテレビの問題点
   日本民間放送連盟の「放送倫理基本綱領」は、「報道は、事実を客観的かつ正確、公平に伝え、真実に迫るために最善の努力を傾けなければならない」と規定しています。また、同連盟の「報道指針」は、「報道姿勢」として、「誠実で公正な報道活動こそが、市民の知る権利に答える道である。われわれは取材、報道における正確さ、公正さを追求する」、「未確認の情報は未確認であることを明示する」、「公平な報道は、報道活動に従事する放送人が常に公平を意識し、努力することによってしか達成できない。取材、報道対象の選択から伝え方まで、できるだけ多様な意見を考慮し、多角的な報道を心掛ける」と規定し、「報道表現」として、「報道における表現は、節度と品位をもって行われなければならない。過度の演出、センセーショナリズムは、報道活動の公正さに疑念を抱かせ、市民の信頼を失う」と規定しています。
   しかしながら、本放送の内容からすると、ホームレスの人や弁護士、司法書士に悪感情を抱いているとうかがわれる唐沢職員の一方的な批判的発言を特段の根拠や資料も示さずに垂れ流し、批判の対象となっているホームレスの人や弁護士、司法書士に対する取材が行われた形跡はうかがわれません。
   しかも、本放送では、唐沢職員の発言に合わせて、「(保護費の持ち逃げを)何度やってもいいじゃないかと弁護士が怒鳴り込んでくることも」、「(持ち逃げした人が)2度と来ちゃったりするんです」、「(裏切った人は2度と支援をしないように)有権者の声 国会議員になって法改正を!」という文字テロップを画面に表示し、唐沢職員の発言に対して、ことさらに肩入れして強調する演出が行われています。
このように、本放送は、公共の電波で唐沢職員の一方的な発言をそのまま放送することにより、あたかもそれが事実であるかのような印象を視聴者に与えたものであり、放送倫理上大きな問題があると言わざるを得ません。

第4 まとめ
   この国では、ホームレス状態にあるということは、身分証明の手段を奪われ、選挙権や就労の機会を奪われ、一人前の市民であるとはみなされず、差別と偏見の下社会生活から排除されてきました。
今般の番組企画における、従来見過ごされてきたホームレス問題を政治につなげようとする視点や、実際に現場を見るという構成そのものについては、私たちも異存はなく、大いに評価したいと考えます。
それだけに、ホームレス状態にある人に対する偏見を助長する内容には、敏感であっていただきたいと切に願います。
双方当事者に取材にあたることは、報道の基本です。とりわけ、社会的強者と弱者が当事者である場合には、強者の論理が一方的にまかり通ることにならないよう、配慮を求めるものです。
また、ホームレス状態にある者に対する援助を第一線で行う福祉事務所にあっては、ホームレス問題の特殊性をよく理解され、生活保護法及び各関連法規の趣旨にもとることのないよう対応を強く求めるものです。

以上

生活保護申請マニュアル2010年度版を発行しました

2010-06-05 00:00:00 | Weblog
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1 実施要領、別冊問答集の改訂(自動車保有、扶養義務、過払い金の扱い等)、
2 最低生活基準の改訂(母子加算復活、子ども手当等)
3 路上からの保護についての運用改善
4 無料低額宿泊所に関するQ&Aの新設
5 通院移送費の運用改善(2010年4月から制限通知撤廃)
6 第2のセーフティネットと生活保護について(制度の比較、得失表)
7 仮の義務付け、執行停止、証拠保全(ケース記録全面開示)等、最新の判例

編著:生活保護問題対策全国会議 発行:全国クレジット・サラ金問題対策協議会
発行日:2010年6月5日 概要:B5版・CD付き 価格:1冊1,500円(価格据置き!)

執筆者(アイウエオ順)
大口耕吉郎(全大阪生活と健康を守る会連合会)
木谷公士郎(カトリック社会活動神戸センター)
木原万樹子(大阪弁護士会)
小久保哲郎(大阪弁護士会)
徳武聡子(大阪司法書士会)
舟木  浩(京都弁護士会)
森川  清(東京弁護士会)
吉田雄大(京都弁護士会)

監修
村田悠輔(東京自治問題研究所研究員)
吉永  純(花園大学社会福祉学部教授)

問い合わせ:
司法書士徳武聡子(電話072-970-2232)
お申込は072-970-2233 へFAXを。

他にも、生活保護問題対策全国会議では、
「市民の力で貧困を絶つ!」
「アメリカ福祉改革の悲劇に学べ」
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を、発刊しております。
こちらもよろしければ、お求め下さい。

ご注文はチラシをご利用下さい。

目次
はじめに

第1章 申請
Q1 多重債務問題と生活保護
Q2 生活保護とは
Q3 どこに行けばよいか(福祉事務所、ケースワーカーの役割)
Q4 福祉事務所と接するときの心構え
Q5 保護「申請」の有効性
Q6 本人申請の際の助言内容
Q7 申請代理・同行援助
Q8 同席・代理申請を拒否されたら
Q9 申請に同行する意義
Q10 相談の際の聴取事項
Q11 法律相談と法律扶助
Q12 保護申請・審査請求援助と法律扶助
Q13 生活保護に関する文献

第2章 保護を拒否された場合の対処法
Q14 稼動能力と生活保護
Q15 借金と生活保護
Q16 生活保護利用者の債務整理法方
Q17 年金担保融資利用者と生活保護
Q18 自動車の所有・借用
Q19 持ち家の取り扱い
Q20 リバースモーゲージ(不動産担保型生活資金)
Q21 住宅ローンがある場合の取り扱い
Q22 現金、預貯金の取り扱い
Q23 生命保険等の取り扱い
Q24 学資保険の取り扱い
Q25 親兄弟や配偶者等がいる場合
Q26 高額家賃の場合の取り扱い
Q27 世帯認定
Q28 母子生活支援施設
Q29 ホームレスと生活保護
Q30 野宿生活者に対する敷金支給・居宅保護
Q31 無料低額宿泊所等からの転居
Q32 DVの場合
Q33 外国人と生活保護
Q34 新しいセーフティネットと生活保護

第3章 調査・決定
Q35 申請時に必要な書類
Q36 決定までの期間
Q37 保護が決まるまでの生活資金
Q38 決定金額チェックの必要性

第4章 保護開始後廃止まで
Q39 保護費の種類
Q40 通院交通費
Q41 転居と生活保護
Q42 働いた分だけ保護費は差し引かれるか(基礎控除)
Q43 収入認定しないものの取り扱い
Q44 年金の遡及支給と法63条返還
Q45 過払金と生活保護
Q46 交通事故の賠償金と法63条返還
Q47 離婚に伴う慰謝料の取り扱い

第5章 廃止
Q48 保護廃止が許される場合
Q49 終了指導と保護廃止
Q50 辞退届
Q51 退院即保護廃止

第6章 争訟
Q52 生活保護に関する決定に対する不服申立:審査請求・訴訟
Q53 当面の生活の確保(再申請・執行停止・仮の義務付け)
Q54 ケース記録の情報開示

コラム
橋の下からの脱却
ワーキングプアと生活保護
「おにぎり食べたい」「法はかざりか」

書式・資料集

生活保護を3年で打ち切りって、ホンマでっか?~私たちが求める生活保護改革案~

2010-04-13 18:30:00 | Weblog
(転載大歓迎)

4月13日に大阪で、生活保護の有期限化に反対し、
どのような改革案が求められるかを考える集会を開催します。

200人の会場を、熱気で一杯にしたいと考えています。
是非ともご参加お願いします!

チラシ

**************************************************
 生活保護を3年で打ち切りって、ホンマでっか?
   ~私たちが求める生活保護改革案~ 
**************************************************

 生活保護「急増」を受け、大阪市が、働ける人には生活保護を3年から5年で
打ち切る制度の導入を検討していると報道されています。
しかし、目下の雇用情勢と手薄な就労支援制度の中で、生活保護を期限付きに
すれば、路上生活者、餓死者、自殺者の続出が必至です。一方、雇用状況が改善し
手厚い就労支援制度ができれば多くの人が仕事に就くでしょうから、保護を期限付き
にする必要などありません。

 大阪の保護受給率は現在5.1%。
 確かに日本の中では高いけど、ドイツの8.8%に比べたらまだまだ。
 感情的に受給者を「悪者」に仕立て上げても何も生まれません。
究極の不安定雇用、日雇労働者の街「釜ケ崎」を抱える大阪の姿は、
不安定雇用が蔓延しつつある日本の明日を映し出しています。
ここで、私たちが冷静に建設的な選択ができるかどうかは、日本の未来を左右します。

-そもそも、働きたいのに仕事がないのがおかしいんと違うの?

-失業保険が手薄過ぎるのがおかしいんと違うの?

-手厚い再就職支援がなけりゃ、低学歴・無資格・無技能の人の転職は難しいでしょ?

「有期保護」なんて言う前に、保護費の全額国庫負担、
第二のセーフティネットの拡充の実現のために、一緒に頑張りましょうよ、平松さん。

 集会では、さまざまな立場の人たちが、保護が期限付きになったらどうなるか、
本当に求められる改革案は何かを語ります。ぜひ多数ご参加ください。

------------------------------
日時 4月13日(火)18時30分~

場所 エルおおさか5階南ホール    

プログラム
 基調報告・吉永純氏(花園大学教授)
 *日本の生活保護補足率・受給率は
 *有期保護提言の沿革
 *アメリカ福祉改革(有期保護の導入)の結末
 *求められる社会保障の充実

有期保護になったら? どんな改革案を望む?
~当事者・支援者・現場からの提言
 【発言者】
  中野冬美氏(しんぐるまざあず・ふぉーらむ・関西)
  母子家庭の当事者
  谷口伊佐美氏(前大阪市生活保護査察指導員)
  山野みどり氏(保健師・精神保健福祉士)
  訓練・生活支援給付の利用者
 生田武志氏(野宿者ネットワーク) 他
           
資料代 
  弁護士・司法書士1,000円
 一般500円
  ※生活保護利用者の方は、資料代はいただきません。

* 託児ルームを用意しています *

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【開催団体】
生活保護問題対策全国会議、近畿生活保護支援法律家ネットワーク、
野宿者ネットワーク、しんぐるまざあず・ふぉーらむ・関西、
全大阪生活と健康を守る会連合会、生活保護切り下げ反対実行委員会、
全国クレジット・サラ金問題対策協議会、生活保護裁判連絡会、
非正規労働者の権利実現全国会議、大阪クレジット・サラ金被害者の会
   
【問い合わせ先】
〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16 西天満パークビル3号館7階
         あかり法律事務所  弁護士 小久保哲郎 (TEL 06(6363)3310)

なお、有期保護の問題については

生活保護問題対策全国会議『アメリカ福祉改革の悲劇に学べ!
~えっ!?日本でも生活保護が5年で打ち切りに?~』
(全国クレジット・サラ金問題対策協議会 2009年)


を是非ご覧下さい。