つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

学園妖怪バスターズについて書いてみる

2008-05-29 20:03:46 | ゲームブック
さて、ふと思い立ったので、な971回目は――。

タイトル:学園妖怪バスターズ ~天魔が来た!~
著者:尾崎克之
出版社:双葉社 双葉文庫―冒険ゲームブックシリーズ(初版:'88)

であります。

唐突ですが――つい先日、ブログピープルに参加しました。
で、ついでに『ゲームブック』の話題を探したのですが……ない。(爆)
なので、作ってみました。

『ゲームブック』
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ゲームブックの記事を書いたら、トラックバックしてやって下さい。
もっとも、ディープなアドベンチャラーの方々は既にゲームブック専用のページを持ってらっしゃるようなので、わざわざトラバ入れる必要ないかも知れませんが……。

気を取り直して――今日紹介するのは、一部の方々から粗製濫造と揶揄される双葉文庫―冒険ゲームブックシリーズから、三作続いた人気シリーズの第一作『学園妖怪バスターズ ~天魔が来た!~』です。

ストーリーは、ひょんなことから地元・袖ヶ浦町に天魔を解き放ってしまった悪ガキトリオ(タダシ、ケン、鏡太郎)が、怪しすぎる男・アベノ骨董品店店主の協力を得て、天魔を再び封印するために街中を奔走するというもの。
タダシ達三人が三種の神器の化身だったり、敵の本拠地が彼らの通う袖ヶ浦小学校だったりと、設定はモロに御当地ロールプレイング。(笑)
さらに、敵天魔の中にケンと因縁があるキャラを入れるなどして、単調になりがちなストーリーにちょっとしたアクセントを加えていました。

アドベンチャー部分は、双方向移動可能な袖ヶ浦町を歩き回り、敵を倒して天魔の肝(お金のようなもの)を奪って装備を調え、街の人々から情報を集めてゴールに近付いていくという、これまたRPGを意識した作り。
特筆すべきは巻末に掲載されたマップで、他の双葉社の作品群に比べて異様なまでに広いです。
強敵が待ち受ける地点、重要アイテムを入手できる地点、一定の条件を満たさないと通行できない地点など、イベントポイントも多く、これだけでも作者がいかに凝り性かが解ります。

しかし、こんなのは序の口。

本作最大の特徴は、その戦闘システムにあります。
双葉文庫冒険ゲームブックというと、かの悪名高きバトルポイントシステムが真っ先に浮かんでくるのですが、幸いにして本書はそれを採用しておりません。
代わりに、戦闘開始時にフォーメーションを選び、所持アイテムと使用する魔法によって結果が変化する選択式戦闘システムを搭載しています――これが実に面白い。

登場する敵キャラは何と二十一種類!
主人公達のアイテム(三種の神器)は初期装備も含めて各人四~五種類存在し、所持する品によって戦闘結果が大きく変わってきます。
たとえアイテムが弱くても工夫次第で勝てたり、逆にどんな強い武器を装備していても選択を間違えるとあっさり負けてしまうなど、とにかく力が入っており、鬼のように遊び尽くしました。いや、本当に面白かった。

以下、戦闘絡みの話を中心に、主人公達についてちょっとだけ書いてみます。(各敵に関して細かく語り出すとキリがないので、そちらは割愛……)


◆多摩村タダシ
本作の主人公で玉の化身。これといった特徴がなく、ストーリー面での扱いも低い薄幸な少年。
専用アイテムのまがたまは四種類(石、水晶、ヒスイ、エメラルド)存在し、ランクが上の装備ほど使える術が多い。
『気デッポウの術』(水晶のまがたま以上のランクで使用可)は、破壊力こそ低いが、敵を怯ませる効果があるため中盤戦で大いに御世話になる。さすがに、終盤は殆ど無効化されてしまうが、ツマミギツネやヒノエドラといった大天魔に効く場合もあるので侮れない。
『ダキニテンの術』(エメラルドのまがたまのみで使用可)は、術力消費が激しいものの、効けばほぼ確実に敵を葬り去れる強力な破壊呪文。ただし、意外な敵が弾き返してきたりするので過信は禁物である。
残る二つの術は回復系だが、戦闘中しか使えないため有効利用は難しい。ただ、ケンの体力消費が激しいので、弱敵と出会った時はマメに使っておくのが吉。
なお、呪文を使う以外に、身を守るという選択肢もあるが、大抵死ぬので選ばないのが無難であろう。

◆鏡太郎
頭脳担当で鏡の化身。一人称は「僕」だが、語尾に「~ぜ」を多用するため、どこかアンバランスな印象を受ける。ちなみに次作ではキャラが完全に変更され、容姿端麗で礼儀正しい優等生と化す。
卓見力を消費して敵のランク(堕天魔~天魔主)、持っている肝の数、その他の特徴を分析するアナライザー。専用アイテムの鏡は五種類(銅、鉄、雲母、銀、ダイヤモンド)あり、ランクが上がるほど調べられる敵の種類が増える。ただし戦闘システムの性質上、彼を選んだ後は自動的にタダシに順番が回るため、術が効かない敵の場合は逃走するしか手がなくなるのが悩み所。(「なんてこった! これより強い鏡だけがこいつを倒せると出た!」の台詞は笑った)
他の二人に比べると役回りは地味だが、鏡でしか倒せない敵も存在するため放置すると地獄を見る。最低でも雲母とダイヤモンドの鏡は入手する必要があるだろう。
なお、唯一『逃げる』コマンドを使用出来るキャラであり、強敵と出会ったら迷わず彼を選んで逃走するのが本作のセオリー。

◆ケン
名前の通り剣の化身でパーティの主戦力。天魔を解き放つ札をはがしたり、女天魔ニャンニャコとの絡みがあったりと、ストーリー面でも優遇されている。
専用アイテムのつるぎは五種類(鉄、オオクニ、虎牙、ユニコーン、スサノオ)。1ランク違うだけで戦闘結果が大きく変わるので、手に入れた肝は優先的にこちらに回すべきだが、最初に買うのは『水晶のまがたま』をオススメする。これを買っておかないと、タダシが戦力として役に立たないからだ。
正面切って敵と戦うため体力消費が激しく、死ぬ回数も他の二人に比べて格段に多い。の割に、剣技などは習得しない上、専用コマンドもないため、目立ちはするものの使っていて面白みはなかったりするいかにもな古典RPG的戦士キャラである。


何となく、どんなゲームかイメージは掴んで頂けたでしょうか?
三人パーティと言うと、私は真っ先に『ドラクエII』が頭に浮かぶのですが、本作もそれぞれの個性を上手く引き出した良作だと思います。
RPG好きにはかなりのオススメ。運良く発見したら、ちょいと手に取ってみてやって下さい。

最後に一つ注意。このゲーム、バグがやたら多いので、プレイされる場合は下記のサイト――

MANATさんのページ『マナティの浜辺』

にある、バグ修正表を必ず参照して下さい。



――【つれづれナビ!】――
 ★ 『haioku』さんの記事にトラックバックさせて頂きました!

 ◆ 『つれづれ総合案内所』へ

続編……出ませんね

2007-03-16 23:04:48 | ゲームブック
さて、そう言えばこれも持ってたんだ、な第836回は、

タイトル:スーパー・ブラックオニキス
著者:鈴木直人
出版社:東京創元社 創元推理文庫(初版:S62)

であります。

初の国産RPG『ザ・ブラックオニキス』のゲームブックです。
著者は、『ドルアーガ三部作』で知られる鈴木直人
どこか寂しい雰囲気の漂う街・ウツロを基点に、四人の冒険者達が地下迷宮に挑みます。

主人公は、ギルガメス(笑)のような英雄になることを夢見る若者テンペスト。
彼がウツロの街に辿り着き、秘宝「ブラックオニキス」の噂を聞いたところから物語は始まります。
最初はテンペスト一人ですが、途中から気のいい盗賊バムブーラが加わり、以後、ゲームの進行と共に魔術師シモン、女戦士タラミスと、仲間が増えていくのは嬉しいところ。

システム面では、今回もドルアーガの塔と同じ双方向式ダンジョンを採用。
あちらが一巻二十階だったのに対し、こちらは全七層と少なめですが、その分――
1フロアが無茶苦茶広い
ので、さらにディープな冒険を楽しめます。
マップもきっちり書ける仕様になっており、病的迷宮愛好家(ラビリンス・マニア)にはたまらない作品と言えるでしょう。

お得意のギャグも健在。
緊張の合間に、「悪の十字架!(開くの十時か!)」なんてベタベタなネタをやってくれるのはさすがです。
街も迷宮も暗い雰囲気な上、絵がかなり濃いので、これがないとちょっとキツイという噂もあるけど。(苦笑)

とまぁ、これだけなら他の作品と同じと言えば同じなのですが……。
自ら、飽きっぽい性格と言ってしまう作者だけあって、本作でも新しい試みがなされています。

それに当たるのが、四人パーティの管理システム。
主人公だけが戦い、他のメンバーは緊急時のアイテム扱いされるシステムや、主人公さえ生きていれば、仲間が何人死のうと関係ないシステムと違い、本作は全員に体力と戦力(魔術師のみ魔力)が存在し、四人中誰でも一人生き残れば迷宮から生還出来るというユニークなシステムを採用しています。
コンピュータ・ゲームでは常識なれど、ゲームブックという媒体でやるのはかなり難しいシステムですが、本作はこれを、『迷宮中で体力がなくなっても死なず、街へ戻る際に死亡チェックする』という方法でクリアしています。お見事。

ちょっとラスボスのキャラが薄かった気がするけど、それをさっ引いても充分に面白い傑作です。オススメ。
最後に、有名な話ですが本書は非常にバグが多いです。
運良く手に入れた場合、こちら→『鈴木直人伝説、内、SBO正誤表』を参照し、修正を行ってからプレイして下さい。

頭はぶつけません

2007-01-30 23:49:30 | ゲームブック
さて、記憶が間違ってなければいいけど、な第791回は、

タイトル:カイの冒険
著者:健部伸明
出版社:東京創元社 創元推理文庫(初版:H2)

であります。

ナムコの『カイの冒険』のゲームブック。
原作はパズルアクションですが、こちらはちょっと不思議な冒険もの。
悪魔ドルアーガからブルークリスタルロッドを奪還するため、イシターの巫女カイがドルアーガの塔に挑みます。

『ドルアーガ三部作』と同じ会社から出ていますが、作者も内容も全く別物です。
もっとも、だから面白くないなどと言うつもりは毛頭ありません。
むしろ雰囲気だけならこちらの方が好みかも知れない。

主人公カイと彼女の目的はゲームと同じなのですが、舞台となるドルアーガ塔の内部構造は原作と全く異なります。

つーか、そもそも塔の中じゃないし。(笑)

ドルアーガの魔力により塔内は一種の異空間と化しており、各階が独立した世界として存在しています。
その世界ごとに設定された条件をクリアしない限り、次の階に進むことはできません。
次々と登場する箱庭世界はバラエティに富んでおり、非常に不思議な旅を楽しめます。

しかし、これで素直に最上階まで行けたら面白くない。

カイは各階をクリアするごとに、女神イシターから授かった神具を一つずつ失っていきます。
全部で七つある神具すべてを失った時、たどり着いた場所は何と冥界。(!)
そこで彼女は、女神イシターの姉で冥界の女神でもあるエレシュキガルから衝撃の事実を知らされます……バビロニア神話の『イシュタルの冥界行』を再現したこの展開は非常に上手い。

女神の力を借りたカイは、天界を経由して再びドルアーガの塔に戻るという荒技を敢行するのですが――それ以降は本編で。
個人的には、神様ごっこができる天界第一層のエピソードが好きでした。
「どうですか、神になってみた気分は?」という、ナムタル霊の皮肉っぽい台詞が良いです。(笑)

『ドルアーガの塔』以前の話のため、カイが悪魔に破れるのは確定なのですが、ストーリー的にかなり上手く処理していました。
何より、彼女の旅が全くの無駄ではなかった、ということになっているのがいい。(原作ゲームでは単に石にされるだけだったしね……)
戦闘システムもかなり簡単なものを使用しており、ややこしいゲームは嫌いだという方でも楽しめます。

紛れもない怪作ですが、オススメです。
ただし、現在ではかな~り入手困難……らしいけど。

多かったなぁ、このシリーズ

2006-12-12 23:48:36 | ゲームブック
さて、風邪で死にそうな第742回は、

タイトル:ルパン三世/ダークシティの戦い
著者:飯野文彦
出版社:双葉社 ルパン三世ゲームブックシリーズ(初版:S60)

であります。

双葉社がこれでもかと出していた、ルパン三世ゲームブックの第二弾です。
ストーリーはマモー編の外伝となっており、クローン人間との戦いが描かれます。
実はこれ読んだ当初はマモー編視てなかったので、『ビッグM』って誰のことか解りませんでした。



死してなお、生き続けるドス黒い魂があった。
かつてルパン三世が遭遇した巨悪『ビッグM』。
その意思は、ゆっくりと、しかし確実に、暗い地下で復讐の時を待っていた。

ある日、ルパンのアジトに相棒達が血相を変えて飛び込んできた。
ルパンを執拗に追う銭形警部が、拳銃で撃たれて重傷を負ったのだ。
しかも、それをやったのはルパンなのだと言う。

過去の因縁にケリを付けるため、ルパン、次元、五右衛門の三人は敵地に乗り込む。
待ち受けるは、自分達と同じ顔を持つクローン人間達。
奴等の城は謎の地下帝国――ダークシティ!



ネタからしてヤバイよね、この話。

当然と言えば当然なのですが、序盤でルパンは仲間とはぐれてしまいます。
後に待っているのは……偽物か本物か解らない奴等との騙し合い。
このため、作品の雰囲気はアニメで定着したアクションコメディ路線ではなく、SFホラーに近いものになっています。

ゲームとしては、行動力と攻撃力という二つの能力値だけを記録し、サイコロ判定なしで読み進めていくシンプルなもの。
このシリーズの特徴でもありますが、選択ミス=ほぼ即死という鬼仕様なので、最初の頃はルパンの死に様を堪能出来ると思います。
攻撃力はほとんど変化しないので、初期値より1多い11にしておけば安泰なのですが、行動力はとにかく変動が激しいので、常に10以上を維持するのが肝要です。(9だとかなりの高確率で死ねます)

あと、コピー人間がわんさか出てきますが、ルパンは大したことないのに次元と五右衛門はやたら強いです。
不二子のコピーも出てきます……ある意味最強な役所で。普通に行動していれば大丈夫だとは思いますが。
ちなみに、銭形のコピーは出てきません。(笑)

今読むとアラが目立つんだろうけど、昔は結構好きだった作品です。
血の泡を吹いて倒れるルパンに次元のコピーが、「グッバイ……ルパン三世」と言い放ったり、コピーと間違えて本物の五右衛門を撃ってしまったりと、子供向けゲームらしからぬシーンが多かったのが好きでした。(をい)

ドルアーガって暇神?

2006-12-04 23:44:36 | ゲームブック
さて、外伝って便利な言葉だと思う第734回は、

タイトル:ドルアーガの塔 外伝
著者:北殿光徳
出版社:勁文社 アドベンチャーヒーローブックス

であります。

ドルアーガの塔のゲームブック。
某パオト氏『ドルアーガ三部作』とは全く別の作品です。
特徴は、とにかくストーリーが無茶なこと。

ゲームブックが流行った時代は、同時にファミコン全盛時代でもありました。
テレビゲーム関連の書籍が溢れる中、ゲームブックもそれに便乗する形でゲームソフトを元にした作品を次々と出版します。
今で言うところのタイアップ企画ですが、当時はまだ情報が少なかったためか、多くの作品が、『元のゲームのコピー』ではなく『作者の趣味が詰まった謎の物体』になっていました。実は本作もその部類。(笑)

以下、本書と元のゲームの違いについて箇条書きにしてみます。


・主人公が違う――本書の主人公はギルではありません、彼の双子の弟・ノヴァです。もちろん、ナムコの『ドルアーガの塔』にそんな人物は出てきません。彼はギルとの関係を知らずに、ずっと王国の侍従長をやっていた、ということになっています。

・塔にけしかける奴が違う――原作ではアヌ神が鎧を授けてくれますが、こちらでは女神イシターになっています。ギルの弟うんぬんの話もこの時に明かされます。ちなみに、彼女は鎧と一緒に塔内の地図をくれるのですが、全く役に立ちません。(怒)

・目的地が全然違う――ノヴァが挑むのは『ドルアーガの塔』ではなく、『城塞戦車ドルアガノン(?)』です。六階建ての塔にキャタピラをくっつけた奇妙な兵器で、ドルアーガが王国内の不穏分子を一掃するために送り出した巨大戦車なんだとか……。本家より五十四階分低いですが、インパクトはこっちの方があるかも知れません。

・そもそも、目的自体が違う――イシターはノヴァの前に現れて、ドルアガノンの塔に『ドルアーガの塔の秘密』が隠されていることを告げ、それを調べて兄のギルに伝えるよう命じます。つまり、ノヴァに与えられた使命は調査であって、カイを救うことでも、ドルアーガを倒すことでも、ブルー・クリスタル・ロッドを取り戻すことでもありません。平たく言えば、兄のパシリです。


何と言うか……『ドルアーガの塔』に『マリブラザーズ』をくっつけ、ついでに『バトルシティー』も放り込んでみましたって感じの物凄い設定ですね。(賛辞)

それにしても、本作のイシターは怪しい。
いきなり現れて「お前はギルの双子の弟です~」、ギルと同じ鎧を与えて「お前も使命を果たしなさい~」、事が終わったら「次は別の塔です~」って……。
お前、別の奴にも全く同じこと言ってないか?

ゲームとしては、スタジオ・ハードの御家芸『バトルポイント』を使ったオーソドックスなものです。
迷路は引き返すことが出来ないタイプで、妙なところで道が合流したりすることも多いです。
ただ、それを逆手にとり、塔内を石の建物の中というより、一種の異次元空間として描写しているのはグッド。
ホラータッチの文章や原作ゲームに近い感じの絵も、独特の雰囲気を支えています。

怪作好きな方にオススメ。
本作の悪ノリは本編に留まらず、巻末付録にまで及んでいます。
これからの物語と題して、ドルアガノン後のノヴァの戦いが……つーか、ドルアガドンにドルナイトって何よ?



tawa_towerさんのブログ『雑居空間』に本書の冒険記が掲載されています。
非常に面白いので、興味がある方はリンク先へGO!

兎小屋ダンジョン

2006-11-20 19:31:45 | ゲームブック
さて、またもウィズネタな第720回は、

タイトル:ウィザードリィ ~魔術師ワードナの野望~
著者:塩田信之
出版社:双葉社 ファミコン冒険ゲームブック(初版:S63)

であります。

ファミコン版ウィザードリィIを元にしたゲームブックです。
魔術師ワードナから魔除けを取り戻すため、六人パーティを組んで地下迷宮に挑むというストーリーは原作と同じ。
最後にちょっとだけオリジナルな展開がありますが……それは読んだ方だけの秘密。(笑)
(ゲームブックって何よ? という方は第113回を御覧下さい)

本書の目玉は、ウィズの楽しみの一つであるキャラクターメイキングを再現していることでしょう。
さすがに原作ゲームほどの自由度はありませんが、メイキング部分を本編と分割し、一つのゲームとして成立させているあたり、作者の気合いが感じられます。
以下、登場キャラとそれぞれのメイキングについて、簡単に書いてみます。

・主人公(名前なし)……人間の戦士で、一応主役。性格は自由に選べる(善固定だったっけ……?)が、唯一ロードに転職できるキャラなので、善にしとかないと泣きを見る。こいつ一人が戦い、他の連中がフォロー入れるのが本書の戦闘の基本なので、常に最強状態を保つのが得策。プレイヤーキャラのためか、苦労するポジションの割には個性が薄い。

・グレン……ホビットの盗賊で、裏の主役(笑)。忍者に転職できるが、ベストエンドを迎える気がないならほとんど意味はない。最初に持つ武器で性能がちょっと上下するので注意。休息中、行軍中、罠外し中などなど、場所も状況も無視して軽いノリで喋りまくるため、六人中最も目立つ。

・ミルディ……人間の元気娘で、お色気担当。性格は善固定、職業は僧侶か戦士を選べるが、僧侶にするメリットは皆無である。非常に明るい性格で、グレンに次ぐお喋り屋。前衛に入っても重装備はしない、上級職にも転職しない、と妙なこだわりを持つが、実はパーティで一番まともな人物だったりする。

・アリサ……エルフの僧侶で、いかにもヒロインぽい黒髪の美少女。善悪の性格選択のみできる。もっとも、初登場時のイメージが引っ込み思案の見習い僧侶or物静かな邪教徒のどっちかになるだけで、以後はまったく反映されない。殆ど喋らないが、イラストのおかげで人気だけはあるかも。(爆)

・ルコック……身長2mを誇る、謎の長髪男。性格も種族も職業も自由に選べる。巨漢のホビット魔術師なんて凄いキャラを作るのも楽しいが、こいつが前衛にいないと序盤が厳しいので、ドワーフの戦士にしといて侍に転職するのがベスト。かなり強い上に、隠された過去まであり、実は真の主役という噂も。

・ベネディクト……ノームの魔術師で、実は重要な秘密を持つ老人。性格も悪固定で、メイキングは一切できない。喋らない、言うこと聞かない、呪文も殆ど唱えない、と数合わせ以下の存在だが、最後の最後で目立つ。

ちなみに、各キャラクターのグラフィックに興味がある方は、こちらのサイト→『駄人間生誕』を御覧下さい。

ゲームノベルの項にて、本作の紹介をされています。
今回の記事を書くにあたって、かなり参考にさせて頂きました。厚く御礼申し上げます。

話を戻して……誰だ、殆ど固定じゃんとか言ってるのは?
いや、限られたパラグラフの中でかなり頑張ってた方なのですよ、これでも!
ちゃんと六人全員にキャラクターシートが用意されており、HP、装備、ACなどを別々に記録するという、妙にTRPGチックな作りをしてたのも好みでした。
(私がD&Dやってたのも大きいかも知れませんが)

とまぁ、キャラクター作りに関してはかなり満足のいく本作なのですが……本編は、サボってるというか、手抜いてるというか、ちょっと痛い仕事してます。
何と言っても、ダンジョンが狭い。

冒険を開始すると、三方向に道が分岐します。
この内一つはレベル1で行くと死ねるので、残るは二つ。
片方は実質一部屋で終わり、もう片方は数部屋で手詰まりとなります。

この兎小屋を何度も行き来してまずはレベル上げしようね、ってことか作者っ!

やりましたけどね、レベル上げ。(爆)
中盤以降も、とても迷宮と呼べるような広いマップは出てきません。
最終ステージに至っては迷路自体が存在せず、サイコロの出目によって登場する敵が変わるという鬼な仕様で……これはひょっとして苦行か? 苦行なのかっ?

にも関わらず、カバーがボロボロになるまで遊んでしまった人間がここにいますが。(爆)

いや……ゲームブックは懐の寒いガチンチョには素晴らしい玩具だったのですよ、マヂで。

ゲーム性にこだわらず、飽くまでウィザードリィ物語の一つを楽しみたい方にオススメします。
当然ながら絶版で、AMAZONでも結構な値段が付いてたりしますが、気合いで探して下さい。

魔界大作戦

2006-02-27 23:52:54 | ゲームブック
さて、結局450回記念はやらなかったなと思う第454回は、

タイトル:魔界の滅亡
著者:鈴木直人
文庫名:創元推理文庫

であります。

ゲームブック『ドルアーガの塔』の最終巻。
四十一階から六十階までの冒険を描きます。
一巻についてはこちら、二巻についてはこちらを参照。

二人の友と別れ、再び孤独な旅を続ける勇者ギルガメス。
強敵ゴルルグを倒した喜びもつかの間、さらに塔の上部を目指す彼の顔に疲れはない。
ようやく、旅の終着地が見えてきたのだ……ブルークリスタルロッド、カイ、そして倒すべき悪魔ドルアーガのいる場所が。

というわけでドルアーガ三部作の最終巻です。
741分岐、500ページ強を誇る、堂々たる完結編。
500分岐、300ページちょっとの第一巻と比べると、その分厚さに圧倒されます。

前巻あとがきでも触れていたように、今回ギルを待ち受けるのは上下左右くまなく行き来できる立体迷路。
すべてのフロアを歩き回らない限り、ドルアーガの待つ五十九階に辿り着くことはできません……しかも全部のフロアのマップが書ける。(笑)

各階は謎解きのオンパレード。
算数の問題が出たり、『倉庫番』ごっこをやったり、暗号解読を頼まれたり、とパズルマニアにはたまりません。
全部解く必要はありませんが、解けないとかなり辛いことに……幸い、時間制限はないのでじっくり考えましょう。

ただ、謎解き要素が濃くなった分、道中のドラマは薄くなっています。
前作のような、サブキャラとの掛け合いで進む大冒険を期待すると肩すかしを食らうので注意。
ラスト近くはかなり盛り上がりますが……パズルも迷路も退屈、という方はそこに行くまでが結構辛いかも。

ちなみに、スポット的なイベントは過去最多。
登場キャラがとにかく多く、顔ぶれも多彩。(もちろん、例の二人も出ます)
前巻、前々巻で得たアイテムが使えたり、思い出したように懐かしい敵が出たり、原作ゲームにあったシーンが再現されていたりと、遊び心満載です。

エンディングにも少し触れておきましょう。
本作のエンディングは二種類用意されていますが、正統(?)ではないアナザーエンディングの『七一八』が実に美しい。
当のギルやカイにとってみれば『七四一』の方が幸せなんだろうけど……実際プレイされた方、どちらがお好みですか?

一巻、二巻と続けて読んできた方にはかなりオススメ。
ただ……これ単独だとさすがに辛いかなと思います、前を読んでいないと出てくるキャラやアイテムがピンとこないと思うので。

ドルアーガ包囲網

2006-02-20 23:55:27 | ゲームブック
さて、450回記念はやるべなのか? と思う第447回は、

タイトル:魔宮の勇者たち
著者:鈴木直人
文庫名:創元推理文庫

であります。

ゲームブック『ドルアーガの塔』の第二巻。
二十一階から四十階までの冒険を描きます。
一巻についてはこちらを参照。

最上階目指して、ドルアーガの塔の中を旅する勇者ギルガメス。
彼は二十一階の市場で、旅に役立つ品を探していた。
上の階に潜む強力な魔物に対抗するには、現在の装備では心許なかったのだ。

来るべきドルアーガとの決戦に備えて、ギルは情報も集めていた。
その過程で彼は、強力な協力者を得ることに成功する。
だが、順調に進み続ける勇者の前にドルアーガの腹心ゴルルグが立ち塞がる!

というわけでドルアーガ三部作の第二巻です。
元のゲームだとたった一人で戦い続けるギルですが、本作では旅の友を得ます。
盗賊王タウルス、魔術師メスロン、この二人が非常にいい。

タウルスは盗賊王と名乗るだけあって、典型的なトリックスターです。
話術、詐術はお手の物、鍵も開ければ罠を仕掛けたりもする。
かなりのビッグマウスなので、一見ただの山師に思えますが、口に見合うだけの実力を持った頼れる人物です。

で、へヴィメタル魔法使いのメスロン。(そーゆー格好をしてるのです)
一流の魔術師にして、これまで間接的にギルを助けてくれていた協力者。
まだ青年なので精神的に不安定なところはあるものの、強力な魔術と豊富な知識はギルの及ぶところではありません。

冒険の舞台もちょっと変化しています。
前巻は塔を上へ上へと進んでいく、一方通行の面クリア式ゲームでしたが、本巻は二十一階の町を拠点として、塔を上下に行き来できるシステムを採用。
つまり、上の階でお金を稼いで、下の階で買い物をするという、普通のRPGゲームに近い遊び方ができるのです。

また、迷路ばかりでは退屈……と考えたのか、いったん塔の外に出て旅をするイベントがあったり、強制的に移動するだけの階があったり、地図が公開されている階があったり、相変わらず豊富なアイディアでマンネリを防いでいるのはお見事。

ちなみに、内容を濃くしたためか、ギャグが減ってます。
魔法封じの呪文が『断公九封呪魔』(麻雀解る人なら笑えます)だったりしますが、前巻よりさらにシリアスになり、ホラー色も濃くなっています。

一巻から続けて読む方が面白いけど、これ一冊でも充分楽しめます、オススメ。
どうしても見つからない、という場合は……復刊を待って下さい。

ギルガメスの伝説

2006-02-15 18:25:43 | ゲームブック
さて、これも紹介してなかったなと思う第442回は、

タイトル:悪魔に魅せられし者
著者:鈴木直人
文庫名:創元推理文庫

であります。

伝説のカルトゲーム『ドルアーガの塔』のゲームブック。
三部作の第一巻で、一階から二十階までの冒険を描きます。
微妙に設定が変わってたりしますが、気にする程ではありません。

苦難の末、英雄ギルガメスは悪名高きドルアーガの塔に辿り着いた。
王国に愛と平和をもたらしていたブルークリスタルロッド。
悪魔ドルアーガは、この塔のどこかにそれを隠している。

長旅の唯一の友であった愛馬と別れ、黄金の甲冑を身に纏う。
塔内は魔物のひしめく迷宮、生きて帰れる保証はない。
求めるは神々の至宝ブルークリスタルロッド、そして、捕らわれた恋人――カイ。

以前紹介した『パンタクル』もそうでしたが、素晴らしい完成度を誇るゲームブックです。
8×8ブロックのフロアをほぼ自由に動き回れるシステムを採用し、元になったゲームの核である『迷路』を無理なく再現しています。
さすがにセレクトボタン一回押しや、呪文を三回受ける等の宝探しシステムはありませんが、たまに隠しアイテムも出てきます。(例えば七階の……以下略)

特徴としては、原作にはない作者独自の演出が非常に多いこと。
塔の中に闘技場や牢獄や食堂があったり、魔法を知らない筈の主人公が呪文を使えたり、ドルアーガが下の階層に出てきたり……これが本当に面白い。
今のゲームでは当たり前になっているマルチエンディングも採用されており、ついつい二度三度と遊んでしまいます。

ゲームブックの醍醐味である、秘密情報、嘘情報も満載。
北の扉は開けてはいけない、こう行けば迷路は突破できる、宝箱は罠だ、この中に嘘つきがいる等々、あの手この手でプレイヤーを惑わします。
誰を信じるかはプレイヤー次第、上手くいったら情報提供者に感謝の祈りを捧げ、騙されたら作者を呪って下さい。(笑)

以下、やった人だけ解るネタ。

・経験値は30でカンストだと思っているのは私だけでしょうか? 毎巻30稼ぐと、能力値的に最終巻のドルアーガと釣り合いが取れるのです。つか、そう考えないとホワイトナイト稼ぎでゲームバランスがボロボロに……。

・十二階の謎を覚えておいででしょうか? 私の場合、一階へZAPされる道と、正しい通路は見つけ出せたのですが、十三階への道がどうしても解りませんでした。気付いたのは三巻全部クリアして、もう一度やり始めてから……悔しい。

ゲームブック好きなら即買いです。
絶版本だけど、気合いと根性で探し出しましょう。

鬼界が、悲鳴~をあげてるぜ

2005-07-11 18:47:41 | ゲームブック
さて、ちょっと懐かしくなった第223回は、

タイトル:パンタクル
著者:鈴木直人
文庫名:創元推理文庫

であります。

私の中で最高のゲームブック。
ゲームブックって何よ? という方は第113回を御覧下さい。
鈴木直人氏と言えばドルアーガ三部作なんだろうけど、私はこっちの方が好み。

森の国シャンバラーは死に瀕していた。
天変地異が大河の流れを変え、巨大な亀裂が国を孤立化させたのだ。
人々は亀裂の向こうにできた谷を『鬼哭谷』と呼び、恐れた。

死の床にあって、国王セフィロトは三人の息子に言った。
すべての元凶は鬼哭谷にある、如意宝珠を探しだし亀裂に投げ込め、と。
三男ビナーは軍勢を率いて鬼哭谷へと向かい、消息を断った……。

四男ケセドは鬼哭谷へと馬を走らせていた。
長男のケテルには新王としての勤めがある。
父と兄の仇を討てるのは自分しかいないのだ。

道中出会った医師ミンダルカムイと共に、ケセドは亀裂にたどり着く。
ケセドを気づかって医師が先に吊り橋を渡るが、それは唐突に崩れ落ちた。
きっと助けに行くと確約し、ケセドは馬に乗って立ち去る。

ミンダルカムイは医師の装束を解き、皮鎧を身にまとった。
左手には魔道士の証である万能章(パンタクル)が輝いている。
ミンダルカムイ――追放された筈の次男メスロンは、祖国を蝕む鬼どもを滅ぼすべく鬼哭谷へと乗り込んでいった……。

魔道士メスロンとなって鬼哭谷を巡るファンタジーRPGです。
敵は八部衆から荒御霊まで、仏教世界の有名人達がゴロゴロ。
迷路好きには物足りないかも知れないけど、マッピングはちゃんとできます。

とにかく魔法のシステムがよいのです。
十五種類もの魔法をありとあらゆる場所で使用できる。
知ってる魔法のうち、これとこれだけ使える、というシステムならいくらでもあるが、どれを使ってもいいというシステムはこの本が初めてだったと思う。

魔法の選択もいいですね。
『火界』、『土呑護(どどんご)』といった攻撃魔法から、『幻水金』のような幻術破りの魔法までバラエティに富んでいます。
こんな魔法、使い道があるんかいな? という変なものや、本当に全く使い道がないというか使うと不幸になれるものもあります。

特筆すべきはそのネーミング。
防具破壊の魔法が魔防道風、パワーアップして魔防那須……。
小さくなる魔法が『ほっけ縮劣拳』……って×斗×拳かい!
ゲーム性とシリアス度をアップしたため、ドルアーガほどギャグ要素がありませんが、こういう遊びを見ると楽しくなります。

あ、忘れるとこだった、主人公のメスロン。
ドルアーガのゲームブック二作目で登場したヘビメタ魔道士です(笑)。
東洋魔術は勉強中と言ってたけど、さすがは当代随一の使い手、本作ではこれでもかというぐらい漢字表記の魔法を連発してくれます。

現在、復刻版が出てます。(上記リンクを参照)
ゲームブックファンなら絶対のオススメ、結構手強い。
あ、もちろんドルアーガ三部作も……こちらは本当に絶版だけど。