伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

愛され続ける会社から学ぶ応援ブランディング

2024-05-04 07:17:54 | 実用書・ビジネス書
 中小企業や小規模な会社が応援されるブランドを作るための考え方、手法を説明した本。
 著者はブランドづくりの第1歩は、外部には見せない経営戦略としてのミッション(使命:なぜそのビジネスをしているのか)、ビジョン(目標:ミッション実現のために何を目指すのか)、バリュー(価値観:どのようにすればミッションの実現やビジョンに到達するのか)の決定だとしています。そして第2段階では環境や自社の強み・弱み、競合、ターゲットとすべき顧客層などを分析した上でで、顧客からの期待と自社ができることと自社がやりたいことを明確にし、お客さまに約束すること(ブランド・プロミス)を決定し、その上でマーケティング戦略、顧客との接点の設定などを考えていくとされています。
 企業向けの戦略を個人自営業者が応用するのは難しいですが、私の場合、それを考えると、
ミッション:庶民/弱者が正当な権利を実現し紛争を満足に解決すること
ビジョン:自分が対応可能な範囲で庶民/弱者の事件を安定して受任する態勢
バリュー:誠実な仕事とフェアな訴訟対応
ブランド・プロミス:庶民の側で仕事をする(弱い者いじめの事件は受任しない、原則として企業の事業のための事件は受任しない)
といったところでしょうか。
サイトで「私のセールスポイント(伊東を選ぶ5つのメリット)」を公開しています (^^;)


渡部直樹 同文舘出版 2024年2月22日発行
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画材で印象を変える キャラクターイラストの描き方

2024-05-03 21:04:14 | 趣味の本・暇つぶし本
 2つの画材の組み合わせ6種(水彩色鉛筆・水性マーカー、アルコールマーカー・色鉛筆、ボールペン・万年筆インク、鉛筆・不透明水彩、透明水彩・筆ペン、アクリルガッシュ・パステル)を用いた美少女イラストの作例6つの作成(主として着色)過程を詳細に解説し、画材の特性等について論じた本。
 それぞれのパーツごとに効果を与える技法を解説してくれているのですが、かなり手先が器用で丁寧な仕事ができ、工程の順序をきちんと計画する能力とアイディア・センスがないとマネできないなぁということを実感します。単純にプロの仕事に感心する本で、これを読んだから自分も描いてみようとは思えない本だと思います。
 画材の説明で、水彩系のプロの解説でふつうに出てくるマスキング液の話がまったく出てこないのでハイライト(一番明るいところ:たいていの水彩画の技法解説ではマスキング液を塗ってその上から別の色を塗り、乾いたあとに剥がすことで白のまま残すように書かれています)どうするのかと思っていたら、別の色を塗った上に白絵の具を載せるって。プロの技法はやはり一様ではないのだと再認識しました。


古島紺 グラフィック社 2024年3月25日発行
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アメリカから見た3・11 日米両政府中枢の証言から

2024-05-02 23:30:00 | ノンフィクション
 福島原発事故直後の数日間の日本政府の内情と混乱、アメリカ政府の対応と困惑ぶりを事故後12年を経てNHK記者である著者が関係者にインタビューした本。
 アメリカから見たというタイトルながら、アメリカ側の見方等の話は3割くらいで、日本の官邸でのやりとりが中心のおおかたこれまでに聞いたことが再確認されている本という印象を持ちました。
 事故後12年を経てこそようやく明らかにできる真実、なんてことならいいのですが、むしろ12年経ってもなお現在の政権や当時の政権関係者の立場を気遣い忖度した発言に終始するのだなと感じました。
 私には、アメリカ政府の方よりも、3月15日未明に撤退を口にしていた東電に菅首相らが乗り込んで撤退はあり得ないと演説した後、小部屋で菅首相が東電の勝俣副社長に改めて「絶対に撤退はない。何が何でもやってくれ」と言ったところ、勝俣副社長は「はい。子会社にやらせます」と答えたと同行していた寺田首相補佐官が証言した(140~141ページ)というのが興味深く思えました。


増田剛 論創社 2024年2月20日発行
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魅せる!ふるさと納税 返礼品でPRせよ

2024-05-01 22:17:08 | 実用書・ビジネス書
 自社の商品をふるさと納税の返礼品に登録することで商品の認知度を労せずに高め利益を上げようと勧める経営者向けのビジネス書。
 著者自身が鉄筋コンクリート製の防災シェルターを開発したが高額商品であり認知度も低くまったく売れなかったが、自治体職員からふるさと納税の返礼品にしてみたらどうかを声をかけられて1億円の納税の返礼品として登録したら、マスコミが飛びついて話題にし、実際に成約したという成功体験を基にした本です。要は、商品を売りたい/PRしたい事業者と、税金を集める材料探しに苦心する自治体、世間の目を引く話題に飢えているマスコミの利害が一致して、売れなかった商品が売れた、これをビジネスにしない手はないというものです。
 何ごとも初期には他人が思いつかないところで成功することがあっても、競合がいない一人勝ちのブルーオーシャンは長く続かず、すぐに激しい競争が行われるレッドオーシャンになってしまうものですから、この本を読んで思い立った経営者がうまく行くかは、お手並み拝見というところでしょうけれども。


川口篤史 みらいパブリッシング 2024年2月27日発行
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交換ウソ日記3 ふたりのノート

2024-04-30 22:26:34 | 小説
 実は一人でいるのが好きだが断るのが面倒なので誘いを断らない高校2年生理系コースの有埜景が、図書館の窓際に置かれていたノートに自分を名指しできらいだと書かれているのに匿名で返事をしたことから、幼なじみの文系コース2年瀬戸山美久と交換日記をすることになり…という展開の青春恋愛小説。
 2巻が1巻の主人公黒田の親友松本を主人公にしたので、次はもう一人の親友優子かと思いきや、1巻の主役男子瀬戸山の7歳下の妹に振ってきました。やっぱり続けるというのはなかなか難しいのでしょうねぇ。3巻続けて、偶然から相手に正体を知らせないままに交換日記を始めるという困難な設定(まぁそうしないとこのシリーズタイトルが維持できないから仕方ないですが)、お約束のようになった多数人の前での告白のクライマックスを書き切っただけでも賞賛ものですね。
 設定は近鉄奈良線沿線の高校なのですが、関西弁がほとんど出ません。関西人!と思わせるのは実に2巻で二ノ宮が着ているものを(ワイシャツではなく)「カッターシャツ」と書いている(29ページ)ところくらいです。読者層を拡げるのに標準語で会話させるのなら、設定を関西にしなくてもいいように思えますが。


櫻いいよ スターツ出版文庫 2021年10月28日発行
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交換ウソ日記2 Erino’s Note

2024-04-30 19:27:00 | 小説
 「交換ウソ日記」(1巻)で脇役だった生徒会副会長の松本江里乃が、早朝の昇降口で拾ったノートに書かれていたポエムに誤字と言葉の用法の誤りを指摘する付箋をつけ、使用されていない靴箱に返したことから、人騒がせな行動で目に付く3年生二ノ宮静と匿名で交換日記をすることになり…という展開の青春恋愛小説。
 1巻で自分の主張を堂々と言えると黒田にうらやましがらせていた松本に、劣等感や嫉妬、自己卑下を繰り返し語らせているのは、誰にも悩みはあるとか、他人のことはよく見えるものということを言いたいのだと思いますが、作者が自立した強い女性を賞賛することを好んでいないのかなぁという気もします。
 二ノ宮が友人から「ボーリング」に誘われています(324ページ)。娯楽の方は「ボウリング」で、「ボーリング」は地盤調査のための掘削。間違えやすいところです。3巻では「ボウリング」になっていて(23ページ等)気がついたんじゃないかと思うのですが、3巻が出た後の刷り(2023年6月6日発行の13刷)でも2巻の方は直されてません。


櫻いいよ スターツ出版文庫 2020年12月28日発行
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交換ウソ日記

2024-04-29 23:29:54 | 小説
 文系コース2年の黒田希美が水曜4限の数学Bの授業のときだけ座る席に入っていた、その机の主2年E組理系コースの人気者男子瀬戸山潤からの宛先のないラブレターに、黒田が匿名で返事を書いたことから交換日記が始まったものの、黒田がわたしの名前、知ってる?と聞くと、瀬戸山は黒田の親友松本江里乃の名を挙げ…という展開の恋愛小説。
 インパクトのある書き出しから最終盤(ラスト直前)の瀬戸山の叫びまで巧みに引き込んでくれます。裏表紙の紹介で「予想外の結末は圧巻!」と書いていますが、私には、ふつうこの展開は予測するでしょ、むしろ予測できる展開をきちんと書き切れる、予想していても/予想しているからこそ共感/感動できると思える作品でした。
 自分の主張を堂々と伝える(と黒田に評価されている)生徒会副会長の松本と何か聞かれると自分の意見を言わずどっちでもいいが口癖で周りの空気を読む「頭ポンポン」にときめく黒田を対比しながら、松本に卑下させ、黒田をメインに据える点、読者層としては黒田に自己投影する者が多数派なのだろうけど、それでいいのかと思いました。私は松本の方に好感しますので。


櫻いいよ スターツ出版文庫 2017年8月28日発行
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恋愛中毒

2024-04-28 23:02:09 | 小説
 小さな編集プロダクションの事務職員の中年女性水無月が、うまく別れ損ねた女から執念深く追われている新人編集者に、問わず語りに過去の話をするという体で、有名作家の愛人として過ごしつつ離婚した夫への執着を断ち切れない日々を語る小説。
 裏表紙の紹介で「恋愛小説の最高傑作」と書かれているのですが、恋愛小説というイメージよりも嫉妬、執着心を描く、ノワールというのかほの暗い心情に満ちた作品で、最初は「恋愛中毒」というタイトルに馴染めなかったのが終盤でそこはあぁなるほどと思います。
 初めての男として見離せない(284ページ)という荻原の付き合いのよさというか、義理堅さ、責任感に淡い感動を覚えました。


山本文緒 角川文庫 2002年6月25日発行(単行本は1998年11月)
吉川英治文学新人賞受賞作
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函館グルメ開発課の草壁君 お弁当は鮭のおにぎらず

2024-04-27 22:55:45 | 小説
 新卒早々に一人暮らしをすることになった山谷水産開発課に配属された下戸の新入社員草壁佑樹が、2年先輩の優しい笑い上戸の中濱直に勧められて料理SNSアカウント「イチイさんのお弁当箱」を見ながら毎日自炊してお弁当を作るようになり…という青春お仕事お料理恋愛小説。
 終始幸福感に満ちた職場と私生活の描写が続き、基本的に穏やかで暖かい、あるいは羨ましい心情と、少しのうるうる感・胸キュン感を持ちます。
 裏表紙の紹介でも「草壁は“ある疑問”を抱き…」とされているように、イチイさんの正体をめぐりミステリーっぽい扱いがされていますが、そこはちょっとどうかなと思いました。


森崎緩 宝島社文庫 2023年7月20日発行
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生命はゲルでできている

2024-04-26 20:34:33 | 自然科学・工学系
 生物の体が細胞から細胞外マトリックス、血管、腱、靱帯、軟骨、筋肉、皮膚など様々な階層でゲル状の組織でできていること、その性質、利点などを説明した本。
 ゲル(ドイツ語読み:英語読みではジェル)の例にゼリーやこんにゃくの他に豆腐やゆで卵、炊いたご飯やゆでた麺などが挙げられ(2ページ)驚きます。物理では、物質の3態として気体、液体、固体の分類がなされ、物質はその3つに分けられると思っていましたが、考えてみると生物の世界ではそう分類できないものが大半だと気づきます。通常は柔らかい流動性のあるものでも変形し流動する間もないほどのごく短時間にことが起こると硬いもののように振る舞う(外力を跳ね返す)、極めて速く足を動かせば水上を駆け抜けることもできるもので、時間スケールの取り方で固体のような性質も液体のような性質も持ちうるという説明があり(11~14ページ)、ちょっと目からウロコの気分がしました。そういう原理で水上を走るトカゲが表紙に採用されています。
 さまざまな生物組織やそれを構成する化学物質、構造の説明は、かみ砕いてなされているようで、でもわかったようなわからないような感じのところが多くありました。ゲルについての研究はまだ日が浅く、わかっていないことがとても多いというのですが。
 いろいろと視野を広げてくれる刺激に満ちた本でした。


長田義仁 岩波科学ライブラリー 2024年3月14日発行

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