Life in Oslo.

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フィッシング

2013年06月28日 | 生活
4月にオスロの隣町ホービク(Høvik)に引越してきました。オスロからバスで15分ほどの距離にあるこの小さな町は、緑と海に囲まれた高級住宅街(僕の安アパートを除く)です。オスロフィヨルドに沿ってヨットハーバーなどがあり、ときおり水上飛行機が飛んでいきます。


しかし、周囲には驚くほど何もありません。僕のアパートの隣にはガソリンスタンドとコンビニがあり、町の中ではかなり栄えている方です。



高緯度地域に特有の低い角度から差し込む太陽と澄んだ空気のせいでしょうか、雨上がりにはハッとするほど美しい虹が出ます。肉眼で虹が七色に見えたのは初めてです。

 あまりに周囲に何もないので、休日は自然を満喫する以外に選択の余地がありません。気が滅入りそうなので安い釣り竿セットを買ってみました。竿、リール、糸が全てセットでkr299。マクドナルドのハンバーガーセット3回分以下の値段です。


虫が大嫌いなのでルアー専門ですが、適当にやっても意外と釣れました。


これはseiというタラの一種(たぶん)で、日本語名はコダラ。


次は大西洋タラ。2リットルのペットボトルを超える大きさですが、これは小物。ノルウェーのタラはなんと2mにまで成長します。怖いので釣りたくありません。

そして本命、ノルウェーサバ。サバは6月から9月の海水温が上昇する頃がシーズンだそうです。暖かい日であれば割と簡単に釣れます。


ノルウェーサバは日本でも塩焼きや文化干しなどでお馴染みですが、ノルウェーではかなり強めに燻製(varmrøkt温燻製/kaldtrøkt冷燻製)にしたものが主流です。強烈な燻製香がサバ本来の味わいを台無しにしており、日本人としては「せっかく美味しいのにもったいない...」と残念に思われてなりません。手に入らないものは自分で作るしかないのですが、サバを一匹売りしている高級スーパーではkr130(約2200円)/kgほどです。サバの塩焼きに2000円以上も支払う気はしないので、もはや自分で釣るしかありません。捌き方や干し方などをその場で適当に調べ、一応それらしいことができるようになりました(便利な時代!)。鮮度低下を防ぐため、釣ったらすぐにエラやワタを取り除きます(下処理は本当に大切です。ノルウェー人は釣った魚を締めずに死ぬまで放置します。僕が釣ってその場で締めたタラと、ノルウェー人が釣って放置したタラを食べ比べましたが、味の差は明らかでした)

下処理をしても2リットルのペットボトルを上回る大きさ。激安釣り竿セットのおかげで、美味しいサバの塩焼きがタダで食べられるようになりました。

 釣った魚を捌くのにスウェーデンのMora社のアウトドアナイフも購入しました。スウェーデンやノルウェーはナイフの製造で有名です。特にスウェーデンはキルナで良質な鉄鉱石が手に入り、Sandvikのステンレス鋼12C27といったナイフに適した鋼を鋳造する技術をもつことから、Mora社など多くの老舗メーカーがあります。豊かな自然を楽しむ北欧ではナイフは日常道具として浸透しています。

 オスロフィヨルドでの釣りは、魚だけでなく美しい風景も味わうことができます。海岸沿いに整備された遊歩道は、午後10時頃になると北欧特有の美しい夕焼けに染まります。








日が沈むと、波の穏やかなオスロフィヨルドの水面に月明かりが伸び、ムンクが描く独特の月を実際に体験することができます。

 最後に、自然が豊かなHøvik周辺で珍しい光景を目撃しました。湾を泳いで横断する影を望遠撮影。



ノルウェーでは「シカ注意!」の道路標識をよく見かけますが、まさか船を操舵する時にもシカに注意しなければならないとは。

RUSSバス

2013年05月15日 | 生活
ノルウェーには、4月後半から5月17日までの期間、高校卒業を控えた生徒達が馬鹿騒ぎに興じる"RUSS"(ルス)というヘンテコな風習があります(去年一昨年の記事も参照)。このRUSS期間中、彼らはところ構わずべろんべろんになりながら乱痴気騒ぎを繰り広げます。しかし、重犯罪以外は何をやっても「まあ、RUSSだから仕方ないね」と大目にみられてしまいます(少なくとも詐欺と窃盗が大目に見られた例を知っていますし、そもそも公共の場での飲酒自体がノルウェーでは犯罪です)。
 RUSSの最大の特徴の一つが、RUSS BUSS(ルスバス)と呼ばれるバスです。仲良しグループで購入(!)したバスに、狂ったように音響機器を積み込んで、半径100m以内の物体がウーファーの振動でビリビリ震えるほどの爆音で各グループのオリジナルテーマソングや流行のクラブミュージックを流しながら、夜な夜な町を徘徊します。日本の過激政治団体の街宣車を10倍くらいうるさくしたようなものが多数、夕方から夜明けまで町を走り回っているイメージです。信じがたい迷惑行為ですが、ノルウェー人はやはり「RUSSだから仕方ないね」と諦めて文句も言いません。
 そのRUSSバスが、大学近くの公園の駐車場に大集結するという情報を入手し、友人達とさっそく行ってみました。普段は静かな湖畔の公園が、夜中1時を過ぎたあたりから爆音と光と歓声に包まれます。


ハリウッド号




サージェント・ペッパー号


ディズニーランド号

思い思いのペイントを施したバスから降りてきた高校生達は、互いのバスを自由に行き来して交流します。coolなバスほどステータスが高くモテます。僕なんかにはどれも甲乙つけがたいですが、RUSSの女の子達は「ディズニーランド号が最高にcool!!」と興奮気味に話していました。ここノルウェーでもディズニーランドは女子に人気です。夢と魔法の方向性がちょっと違いますが。











ディズニーランド号の内部の様子
真ん中の彼女が持つペットボトルには、なにやら夢と魔法が入っています。赤い粘性の液体は、およそ飲めるシロモノではありません。

 女の子からの人気はイマイチそうでしたが、サージェント・ペッパー号のチームリーダー君も自慢の車中を案内してくれました。









DJブースを中心に無数のビームが飛び交うサイバーな車内ですが、フラッシュ撮影すると途端に残念なチープさが浮き彫りになります。強烈にセンスのない椅子から、モテない臭がプンプン漂います。愛すべきバカ男子達。



チームリーダー君によると、このバスの制作費は、驚愕の120万ノルウェークローネ=2100万円(1 NOK = 17.5 JPY)。2100万円の産物として世界で最もクオリティの低いモノの1つでしょう。

 巨大なスピーカーとウーファー、無数のビーム、DJブース、スモーク発生装置など、自動車の中での使用が全く想定されていない機材を多数使うため、バスのバッテリー程度では話にならない量の電力が必要になります。そこで、バスの天井上や牽引する荷台に発電機を積んで、バスに電力を供給します。「雨の日はどうするのか」「万が一事故ったらどうなるのか」など心配の種は尽きませんが、RUSSだから仕方ないですね。


 ちなみに、どのバスも車内は鼓膜が破れそうな爆音ですので、車内にいるメンバーは常に耳栓をしています。もはや意味が分かりません。雇われたバスの運転手に至っては工事用のイアーマフ(ヘッドフォン型の遮音装置)をつけて運転しています。そんなバスが一般道や高速道路を走り回っているのは、冷静に考えると恐ろしいことです。もはや迷惑度を競っているとしか思えませんが、それを裏付けるように窓ガラスすらないバスもありました。

もしかするとウーファーの重低音の衝撃で割れたのかもしれません。だとすると、恐るべき兵器です。

 結局この日は10台ほどのRUSSバスが集結しましたが、多い時には60台も来るそうです。付近の住人に対するテロ攻撃とも言える数ですが、この駐車場に集まる理由の一つは"トイレタイム"です。バスから降りると、男女ともお構いなしに隠れもせず、そこらじゅうで用を足します。さすが男女平等の国ノルウェー。

バードウォッチング

2013年05月12日 | 生活
今年の春は例年よりも寒い日が続きます。先週からやっと暖かくなってはきたものの、未だにジャケットは欠かせません。日が射すと半袖やノースリーブの人も現れますが、残念ながら僕はそこまでノルウェーに適応できていません。先日、ノルウェー人の友人達に「平熱は35.5度だ」と言ったら、誰も信じませんでした。彼らの平熱は37度強だそうで、なるほど気温10度で半袖にもなれるというものです。僕が日本から持ってきた体温計は36.8度以上で「熱あるかも」マークが表示されますので、やはり日本人の平均体温はノルウェー人より低いのでしょうか。
 Høvikに引越してから、オスロ中心部に住んでいた時よりも更に自然が身近になりました。「自然以外のものが縁遠くなってしまった」と言うべきかもしれませんが、とにかく休日にすることといえば自然散策くらいなものです。バスで10分ほどの距離に、オスロ圏では有名なKolsåsという山があります。Kolsåsはロッククライミングスポットとして有名のようですが、周辺には散策路が整備されており、ジョギングやハイキングスポットとしても親しまれています。





シカやヘラジカもいるようですが、彼らは警戒心が強く、夜に行動することが多いので、通常の散策でお目にかかることは稀です(余談ですが先日、最寄りの地下鉄駅から歩いて帰宅中に子鹿と遭遇しました)。その代わりといっては何ですが、野鳥には事欠きません。

黒い小鳥


黄色い小鳥


青と黄色の小鳥


ヤマバト?


黒い小鳥2


白黒の小鳥

鳥類に関する知識が幼稚園児並なので、写真の説明は悲しいほど中身がありません。運が良ければキツツキや鷹なども観察できます。北海道で育った僕は、キツツキといえばアカゲラやクマゲラしか知りませんが、アカゲラとノルウェーのキツツキ(アオゲラ?)は木のつつき方が違うようです。アカゲラは"コンコンコンコン"と一定の強さを保ってつつきますが、ノルウェーのキツツキは最初の一突きが"カツン!"と強く、後は"ビヨヨヨヨ~ン"と震動の余韻が続きます。木に矢が突き刺さった時のような音です。一体どんなつつき方をしているのか非常に気になります。

 野鳥とは直接関係ありませんが、ノルウェー人の友人から教えてもらったノルウェーのロックバンド"bigbang"の代表曲が"Wild Bird"という曲でした(YouTube)。ノルウェーは小さな国で、英語の普及率が極めて高いこともあり、ポップミュージックのトップチャートは大半がアメリカやイギリスのアーティストで占められています。せっかくノルウェーにいるのだから"N-pop"を聴きたいものです。ちなみにノルウェーは何故かブラックメタルで有名です。豊かで穏やかな平和さの反動でしょうか。

 最後に、散策中に見つけた標識です。本こそ読んでいませんが、背負っている物といいチョンマゲといい、まさに二宮金次郎です。帰宅して写真をチェックするまで気がつきませんでしたが、股間にガムをお見舞いされていました。憐れ二宮さん...

引越

2013年04月12日 | 生活
最近の急激な円安は、日本の経済にとっては良いことなのでしょうが、日本円で給料を受け取る海外生活者にとっては大変な打撃です。円相場が20%下落すると、単純に給料が20%減ります。天然資源と関税の壁(ノルウェーはEU非加盟国)に守られたノルウェー経済は比較的堅調で、ただでさえ高い物価は順調に上昇しています。特に不動産は持続不可能と言われるほどの高騰ぶりで、中でも首都圏の単身者向け賃貸物件の家賃相場は、完全な貸し手市場を背景に年10%も上昇しています。一説によると、一人暮らしを始める大学生の親が限りある単身者向けアパートを確保しようと割増料金を提示するため、オークションの原理で家賃が高騰しているのだとか。2012年時点でオスロ市内のワンルーム(20-25平米、キッチン、トイレ、バスルーム付)の家賃相場は8000クローネ(14万円。1クローネ=17.5円)と言われており、僕のような外国人単身者には非常に厳しい環境です。
 というわけで、更なる円安の進行も考慮し、引越を決めました。今度の住まいはオスロ市に隣接するBærum市Høvikという、何とも発音しにくい町。"Æ"と"Ø"というノルウェー語特有の文字が2つも入っています。いわゆる郊外のベッドタウンで、ノルウェー人の友人達には「ずいぶん遠いところに引っ越したねぇ」と言われるものの、オスロ中心からバスで15分なので、日本人の感覚では十分に通勤圏内ですね。
 「全てはFinn.noで起きている」とさえ言われるFinnというサイト(Yahooのようなポータルサイト)で見つけた物件は、つぶれた有名チェーンホテルを安く買い取って単身者向けアパートに改築したもの。家賃、電気、暖房、上下水道、インターネット、ケーブルテレビなど全て込みで6500クローネという、ノルウェー人に心配されるほどの格安物件でした。ノルウェーの引越業者の粗雑なサービスに高額料金を支払うのも馬鹿らしいので、引越作業はイースター休暇中にレンタカーを借りて独力で行いました。
 家賃の安さに不安を抱きながら引っ越したものの、さすが元有名チェーンホテルだけあって部屋は十分に快適で、キッチンやクローゼットなどは以前のアパートよりも充実しており、防音性も問題なし。

住んで2週間が経過しますが、今のところ以前よりも快適に過ごせています。いわゆる掘り出しモノの物件でした。


そして何よりも、元ホテルだけあってバスタブがついている点が日本人としては大きなポイントです。

寒い冬が長く続く割にはノルウェーではバスタブが普及しておらず、友人には「バスタブなんてラグジュアリー!」と羨ましがられました。ただしこのお風呂、出てくるお湯が黄金色です。おそらく貯水槽か水道管が古いのでしょうが、黄金色のお湯はラグジュアリーの証と前向きに捉えることにします。入浴剤を入れる時は良く考えないと、予想もしなかった色に仕上がります(どうでも良いですが、これを"減法混色"といいます)

 オスロ中心からバスで15分とはいえ、さすがノルウェーの郊外だけあって周囲には何もなく、草木に囲まれたのどかな住宅地です。オスロではリスとモグラとハリネズミにしか遭遇しませんでしたが、このあたりは暖かくなれば様々な動物に会えそうです。また、Høvikは海水浴や釣り場として有名な海岸の町でもあります。近所に河口があり、4月半ばだというのに未だ凍ったままの川で白鳥たちが羽を休めていました。









羽を休める白鳥たちの中で、文字通り抜群にリラックスした奴がいました。

長い首を伸ばして優雅にたたずんでいましたが、しばらくすると...





白鳥も大変ですね。ここまでだらけた姿勢を取ると、かえって疲れそうですが。


そして、群れから離れた若いつがいでしょうか。

犬神家遊びに夢中の夫を、半ば呆れ顔の妻が見守っています。僕が夢中で写真を撮っている時の妻を思い起こさせる1枚です。

オーロラ in アビスコ、キルナ、ナルヴィク(画質向上版)

2013年02月26日 | 観光スポット
先日、オーロラを見にノルウェー北部とスウェーデン北部に行ってきました。目的地は「北欧屈指の晴天率」らしいスウェーデンのアビスコ。日テレ系列の「世界!弾丸トラベラー」という番組で菅野美穂さんがオーロラを見に訪れるなど、日本でも知名度が上がっているようです。アビスコは、全長70km、面積330平方kmを誇る巨大なトーネ湖畔にある国立自然公園を中心とした地域で、夏はハイキング、冬はオーロラ観測に最適な地としてヨーロッパでは人気があります。周囲をフィヨルドで囲まれた巨大なトーネ湖上空にオーロラが輝く様子は、まさに息を呑む絶景でしょう。アビスコにはオーロラ観測用の国営山小屋"オーロラスカイステーション"(菅野美穂さんがオーロラを見たのも、この山小屋)があります。公式webサイトには日本語もあり、上空の様子を5分おきに撮影する"ライブカメラ"でオーロラの映像も楽しめます。
 そのアビスコに向かう手段としては、スウェーデンの首都ストックホルムから電車で向かうか、飛行機でキルナまで行って電車に乗り換えるのが一般的なようです。しかし、ストックホルム発の電車は時間がかかり、キルナ発着の飛行機と電車の接続も悪いなど、交通の便が良いとは言えません。オーロラに出会える確率を最大限に高めるにはレンタカーによるフットワークが不可欠であることから、キルナでレンタカーを借りるのもお勧めですが、レンタカーを借りるならノルウェーのナルヴィクも穴場です。ハシュタ/ナルヴィク(Harstad/Narvik)空港(別名:エヴェネス(Evenes)空港)とオスロ空港間は、スカンジナビア航空やノルウェージャン・エアシャトル(格安航空)の便が豊富にある上に、風光明媚なフィヨルドを堪能しながらアビスコまで1時間半で行くことができます(キルナ~アビスコ間も1時間半程度)。レンタカーで国境を越えるといっても粗末な小屋を通り過ぎるだけですし、道路状況はノルウェー側の方が運転しやすいため、アビスコに向かうならノルウェールートもお勧めです。

 そんなわけで、世界一美しいとも言われるロフォーテン諸島の根本に位置し、フィヨルドの真っ直中にあるハシュタ/ナルヴィク空港に向かいます。飛行機は剣山のようなフィヨルドの合間を縫うように飛んでいきます。

ハシュタ/ナルヴィク空港には、北欧の田舎町にしては珍しく日本製のATハイブリッド車が常備してあります。物価が高く給油施設も乏しい北極圏の山奥では、燃費と車の信頼性は非常に重要です。
 ハシュタやナルヴィクでも、もちろんオーロラを見ることができます。アビスコの天気がイマイチの時もハシュタやナルヴィクは晴れていることがありますので、そういう意味でもノルウェールートがお勧めです。今回はアビスコに向かう途中の山道(ノルウェー側)で早くもオーロラに遭遇。










(PENTAX k-30 with SAMYANG 14mm F2.8: ISO500/15-20sec./F2.8)
風力発電用の巨大風車(赤く光っている建造物)と月とオーロラは、なかなか珍しい組み合わせです。

 今回の宿泊地は、スウェーデン国境を1kmほど越えたRiksgränsenという地区にあるアパートメント。ホテルというよりはスキー場の麓にある民宿といった施設で、自炊道具が揃った小綺麗な客室と日曜も開いているスーパー、アットホームな雰囲気にレストランまで併設という、予想以上に良い施設でした。そしてスーパーには何とインスタントラーメン「出前一丁・カレー味」まで置いてありました。「雪山といえばラーメンかカレー!」というウィンタースポーツの定番が、こんなところにまで浸透していました。

 このRiksgränsenはアビスコまで20km、車で15分の距離にありますが、実はアビスコに勝るとも劣らない晴天率を誇ります。実際、今回の旅行期間中はアビスコは一度も晴れず、オーロラ観測はRiksgränsenがメインでした。ホテルからアビスコ側に車で数分行くと、大きめのパーキングエリアがあります。湖に面して北側に視界が開けており、オーロラ観測には打って付けです。以下のオーロラは全てこの場所から観測したものです。その美しさは筆舌に尽くしがたく、実際に見ていただくのが一番です。

















(PENTAX k-30 with SAMYANG 14mm F2.8: ISO500-800/15-30sec./F2.8)

周囲に人工光源がなく空気が澄んでいるためか、トロムソで見たオーロラよりも発色が良く鮮やかでした。そして息を呑むほど星が綺麗で、オーロラ越しに満天の星空が透けて見えます。曇天でもキャンセルの利かないアビスコのオーロラスカイステーションに賭けるお金があれば、レンタカーを借りて臨機応変にオーロラを追った方が遙かに効率的で安上がりだと、個人的には思います。

 そして最後に、トーネ湖の南端(キルナ側)で連続撮影したオーロラを動画(YouTube)にしました。実際のオーロラは比較にならないほど滑らかでダイナミックですが、何となく雰囲気は掴んでいただけると思います。
(PENTAX k-30 with SAMYANG 14mm F2.8: ISO1000/5sec./F2.8/50-70frames with 3sec. interval)


<オーロラ観測のメモ>
ここからはオーロラ観測に役立ちそうな情報をご紹介します。今回の旅の最低気温は-28度でしたが、このような極寒環境では予想もしなかった事態が発生します。これからオーロラを見に行く方のご参考になれば幸いです。それ以外の方には面白くも何ともありませんので、ご了承下さい。

実際の服装
上半身:長袖シャツ+長袖ニット+インナー用ダウン+スキーウェア+貼るカイロ
下半身:ヒートテックももひき+綿の七分丈パンツ+スウェット+スキーウェア+貼るカイロ
頭部:総フェイクファーの耳付き帽子+フェイスマスク
→フェイクファーは凍結してカメラのファインダーに付着してしまったのでお勧めしません。また、フェイスマスクが薄手だと吐息でカメラのファインダーやモニタが結露・凍結します。
手:スマートフォン対応の薄い手袋+スキー用レザーミトン
→後述の通りスマートフォンで天気予報やオーロラ情報を確認するため、タッチパネル操作が可能な手袋をインナーとして着用。スマートフォンを使用しない場合でも、カメラや三脚を素手で触ると凍結して離せなくなる可能性があるので、指先を動かしやすいインナー手袋は必須です。
足:普通の靴下+ウールの靴下+貼るカイロ
靴:外側ラバー加工、内側総起毛のスノーブーツ
→防水加工と起毛は必須。起毛していないレザー素材等だと、足から出る水蒸気が靴内で結露し、靴内部が凍結して凍傷になります。

カメラ
カメラ本体:僕のPENTAX k-30、同行者のPENTAX k-rともに、マイナス28度でも問題なく稼働しました。ただし、-10度まで動作が保証されているk-30の方が稼働時間が長かった気がします。また室内撤収時には、シリカゲルを入れた真空機能付きジップロックに入れて密封した上で、マフラーなどにくるんで徐々に室温に馴染ませました。
稼働時間:撮影状況にもよりますが、k-30だと付属のバッテリーで稼働時間30分ほど、リチウム電池だと45分程度でした。動画用のインターバル撮影ではリチウム電池で150コマ程度でした。
レンズ:F値2.8以下、焦点距離がAPS-Cサイズで18mm以下のものがあると良いと思います。ピントは無限遠にし、実際にピントが合っているかどうかを事前に確認(ファインダーが凍結して確認できない場合があるため)して、マスキングテープ等で固定することをお勧めします。レンズによっては無限遠に設定してもピントが合っていない場合があります。実際、ピント確認せずに急遽使用した予備レンズは、無限遠でもピントが合っておらず、撮影した写真は全てピンボケでした。
三脚:しっかりしたもので、できれば自由雲台のものをお勧めします。僕は持ち運びやすい低価格の軽量三脚を持って行きましたが、低温のため金属の柔軟性が低下して脚が1本折れ、プラスチックの留め具も割れました。破損してしまっては全く意味を成しませんので、堅牢なものを強くお勧めします。また軽量の三脚は風で画像/映像がブレます。動画を見れば実際にブレているのがお分かりいただけると思います。さらに、起伏に富む雪面で撮影ポイントを変えながら撮るので、あらゆる角度の調節が簡単にできる自由雲台があると便利です。
その他:ブロアーとブラシがあると便利です。レンズに付着した雪や埃を手袋着用の手ではらったり、息で吹き飛ばそうとすると、微量の水蒸気がレンズに付着して瞬時に凍結します。一度凍結してしまうと、再び撮影可能になるまでに相当の時間がかかります。レンズに付着したゴミ等はブロアーとブラシで取ることを強くお勧めします。

その他の装備
懐中電灯:人工光源が全くないので懐中電灯は必須です。金属製の筐体を介して電気を流すタイプの懐中電灯は、低温により伝導効率が悪くなるためか、全く使い物になりませんでした。プラスチック製のものや低温環境でも使用可能なアウトドア用のものをお勧めします。
方位磁針:オーロラは北の空に出現し、次第に空一面と広がっていくことが多いです。オスロで買ったオモチャのような方位磁針("city use only"と標記された簡易方位磁針)でも凍らず機能しました。
液体類:飲み水はもちろん、コンタクト用の目薬なども凍るので注意が必要です。


情報
良く当たる各地域の時間帯別天気予報(僕は"Weather+"と"AccuWeather"を併用)、オーロラ予報(アラスカ大学版ノルウェーのテレビ局版)、オーロラ関係のTwitter情報("太陽活動速報"、""宇宙天気ニュース"、"Aurora_Alerts")、iPhone用オーロラ情報アプリ(Aurora Forecast)を使用。山岳部でも3G回線が使用でき、2Gを含めると圏外の地域はほとんどありませんでした。


(2013年5月29日:画像を圧縮jpgではなくpngで圧縮し直して画質を向上させました)

ノルウェーのクリスマス料理

2013年02月10日 | 生活
今年の冬は雪は少ないものの、路面が凍結しており、坂が多いオスロは非常に危険です。札幌育ちで路面凍結には強いと自負していましたが、何度か派手にひっくり返ったので、簡易スパイクを購入してしまいました。ちょっと敗北感。

右端の黒いゴムベルトを靴にはめます。かっこわるいですが、背に腹は代えられません。ノルウェーではこのてのスパイクがたくさん売られており、中には"ランニング用"まであります。「-15度+つるつる坂道でランニングなんて、もはや体に良くないじゃないか!」とも思いますが、本当にノルウェー人はランニングが好きです。ランニング用スパイクとヘッドライトを装着して真夜中にジョギングする人も見かけます。酔狂としか言いようがありません。また、冬期の日照時間が少なく街の灯も少ないノルウェーでは、多くの人が反射材(life saver)を身につけています。腕やカバンに巻き付けるタイプとキーホルダータイプがあり、最近ではノルウェーっぽい柄のものも売られているのでお土産にも良いと思います。

 さて、ノルウェーにはいくつか伝統的なクリスマス料理があります。ノルウェーは今でこそオイルマネーにより世界有数の富裕国ですが、1900年代後半(割と最近!)にオイルが発見される前はヨーロッパ最貧国とまで言われるほど貧しい国でした。ノルウェーのクリスマス料理は「厳しい冬に備えて備蓄した貴重な動物性タンパク質を、年に一度のご馳走として振る舞う」というコンセプトを体現したものであり、基本的に高カロリー・高塩分・高脂質で驚くほど体に悪いものばかりです。
 クリスマス料理の代表格としてはルーテフィスク(Lutefisk)という魚料理が挙げられます。ルーテフィスクはタラを水酸化ナトリウム(!)に漬け込み、ぷるぷるのゼリー状にした謎の食べ物です。一説によると誤ってタラを水酸化ナトリウムの中に落としてしまったのが起源だとか。真偽のほどは分かりませんが、何ともノルウェーらしくて良い話です。この謎の食べ物はノルウェー人でも好みがはっきりと別れ、面妖な食感と異様な匂いにより否定派も多数います。普段は"100%ビーフ"を売り文句にしているハンバーガーチェーンがクリスマスシーズンに掲示した広告にも、そのことが見て取れます。


 ルーテフィスクは敷居が高すぎるので、今回はもう一つの代表的なクリスマス料理であるピンネショット(Pinnekjøtt)を作ってみました(余談ですが、ノルウェー語では一定の条件で"k"が"s"に近い発音になります。例えば中国=Kinaは"シナ"と発音します)。ピンネショットの起源はノルウェー西部の保存食で、塩漬けにした羊肉を白樺の木を使って蒸し焼きにしたものです。クリスマスシーズンになるとスーパーには様々なメーカーの肉が並びます。塩漬けにした後に燻製したもの(røkt)と、燻製せずにただ干したもの(urøkt)があります。1kgで200クローナから400クローナほど(2013年2月現在、約3500円から7000円程度)とピンキリですが、安い物は可食部が少なかったり色が悪かったりします。今回は、いつも買うラム肉のブランドが出している300クローナ/kgほどの物(燻製していないurøkt)を買いました。

ピンネショットは、時間こそかかるものの、調理方法はいたって簡単です。

<ピンネショットの作り方>
(1)水でうるかす(←北海道弁のようです。標準語では「水に漬ける」?)

塩漬けされた肉は物凄くしょっぱいので、水でうるかして相当量の塩分を抜かないと食べられません。ノルウェーでは半日程度が一般的なようですが、24時間以上、できれば30時間ほど塩抜きしないと日本人には厳しい塩分です。数時間すると何とも言えないケモノ臭(犬小屋臭)が漂ってきますので、適宜水を換えます。普通は1度換えれば良いそうですが、僕は3回換えました。

(2)蒸す準備
最低24時間以上塩抜きすると、棍棒のように硬かった肉も、さすがにふやけて軟らかくなります。

塩抜きが終わったら大きな鍋を用意し、ピンネショット用の白樺スティック(スーパーで必ず売られています)を"井"の字型に組みます。蒸し焼きにする際に肉が水に浸かるのを防ぐことに加え、白樺の香りで肉の臭みを消す効果もあるそうです(本当に効果があるのかは分かりません)。ピンネショット用の肉は細長いので、隙間から肉が落ちないように工夫して組みあげます。


(3)蒸す

鍋の中に白樺スティックを組みあげたら、あとは水をはって蒸すだけです。肉から鈍い黄色がかった油が滴り落ち、部屋中に蒸しケモノ臭(犬サウナ臭)が充満します。軽く蓋をして蒸すと日本人好みのふっくら軟らかな仕上がりになります。

(4)出来上がり
2時間ほど蒸せば出来上がりです。個人的な感覚としては、肉が収縮して骨が出てくればOKだと思います。写真の皿の中央左側の肉から白い骨がニョキッと顔を出しています。こういう状態になれば食べ頃だと思います。


ピンネショットは、ノルウェーのクリスマス料理の中では日本人の口にも合い、調理方法も単純ですので、お勧めです。しっかりと塩抜きし、蒸して油を落としてもなお、食後にずっしりとした存在感を感じます。このずっしり感を解消するため、食後にはアクアヴィット(ハーブを加えた蒸留酒)が欠かせません。前回の記事でもご紹介した通り、アクアヴィットは消化を助ける(と、少なくともノルウェー人は信じています)ので、高カロリー・高塩分・高脂質のクリスマス料理には必須です。


 ピンネショットの作り方を教えてくれた友人が、彼のアパートの大家さん主催のクリスマスパーティに招待してくれたのですが、その時に食べたチョコレートケーキがとても美味しかったので、そのレシピも教わりました。このチョコレートケーキもクリスマスによく作られるそうです。これまでに食べたことがないほど濃厚で滑らかな舌触りにすっかり虜になってしまいましたが、とても美味しいのに何故かたくさんは食べられない不思議なケーキでした。

レシピを聞くと、たくさん食べられないのも頷けました。実際に作って妻に食べてもらったのですが、先に材料や製法を言ってしまったのでフォークの進みが遅く、リアクションはイマイチでした。このケーキを作る時は、原材料や作り方を食べる前に絶対に教えないことが重要です。そしてこのケーキ、なんとオーブンで焼く必要がありません。信じられないほどいとも簡単に作れます。ただし、その簡単さの秘訣こそが、食べる前に最も教えてはいけないポイントなのですが。

<ノルウェー風チョコレートケーキの作り方>
(0)材料
ケーキ本体用
・板チョコレート:3枚(ビター1枚、ミルク2枚にすると丁度良い甘さ)
・ココナッツオイル(固形。"Delfia"という商品が有名で、このケーキが"Delfiaケーキ"と呼ばれるほど):375g(Delfiaだと1.5パック)
・卵:4個
・砂糖:小さじ4杯
・インスタントコーヒー:小さじ3杯(入れるとビターな仕上がりになるので、好みで調整。)
ココナッツオイルは必ず固形のもの、つまり常温で固体であるものを使用してください。ここが最大のポイントです。


ケーキの具(?)用。必須ではないので、お好みで。
・マリービスケット:0.5パック(適量)
・カラフルなグミ:適量(入れると相当くどくなるので、あまりお勧めしません)
・マジパン:適量(入れると劇的にくどくなるので、お勧めしません)

(1)具を作る
粉々に粉砕したマリービスケットとバターを絡めて板状にし、冷蔵庫で固める。マジパンも入れたい場合は、同じく板状にしておく。どちらもケーキの中に入れるので、使用する型に合わせて成形する。

(2)チョコレート全量を、湯煎で溶かす。インスタントコーヒーも溶かす。

(3)卵を泡立て器で混ぜ、砂糖を溶かす。

(4)ココナッツオイル全量を小鍋に投入し、弱火で溶かす。

(5)溶かしたチョコレート、混ぜた卵、溶かしたココナッツオイルを全て混ぜて型に流し込む。板状に成形したビスケットやマジパンを入れる場合には、流し込む途中で適宜配置してレイヤー(層構造)を作る。カラフルなグミも適当に配置する(google画像検索などで"delfiakake"で検索すると、ケーキの写真がたくさん出てきます)

(6)冷蔵庫にいれて固まるまで冷やしたら、出来上がり。

ケーキ本体の調理は10分程度で済んでしまいます。何故こんなに簡単かというと、レシピからお分かりの通り、溶かしたチョコレートを油で固めるだけだからです。チョコレートを油で固める...ざっと計算しただけで、通常のケーキ1切れサイズで1500kcal以上ありました。これを食べる前に聞かされてしまうと、一気に食べる気が失せます。マジパンなども入れると一人前2000kcal超えも夢ではありません。ただ、ケーキ自体は本当に美味しいです。ココナッツオイルも油の中では健康的な部類だそうです。そうは言っても所詮は油ですし、文字通り脂質の塊です。ピンネショットやハム、豚のリブのグリルなど、高カロリー料理を一通り食べた後に、7種類のクリスマスクッキーやビスケットケーキ(ラードで揚げる)、そしてシメに油で固めたチョコレートケーキ。ノルウェーのクリスマス、恐るべし。

クリスマス

2012年12月13日 | 生活
12月も半ばとなり、ノルウェーはJule(ユール。ノルウェー語で"クリスマス"の意)で浮かれています。ノルウェーは一応キリスト教国(プロテスタント・ルーテル派)ですが、信仰が厚いわけではなく、個人的には日本に近い印象を持っています。クリスマスの商業色が強い点も日本と似ていますが、クリスマス・イブ&クリスマスは日本でいう大晦日&元旦のような位置づけで、一年で最も大切なイベントの1つです。クリスマス・イブの16時以降はスーパーやコンビニを含むほぼ全ての商業施設が閉まり、市内全域の全ての公共交通機関がストップします。ほぼ全ての人が家族や恋人と過ごすので、単身者は為す術がなく、同僚曰く「ホームレス向けの炊き出しに参加する」くらいしかないようです。単身者への厳しさは日本の比ではありません。
 僕の職場も例外なく浮かれており、11月最後の金曜は「クリスマス・ワークショップ」と称して、大学院生も教授もみんなでクリスマスツリーの飾りを作ります。

廊下の電球を色紙で覆い、勝手にイルミネーションをつけます。電球を紙で覆うと危ないのでは?と心配したものの、「火事になるかもね~」と笑って済まされました。絶対に真似しないでください。

そして、イルミネーションにオーナメントをくっつけます。地引き網に引っかかったゴミのようですが、半分くらいは僕が折り紙で作ったものです。余談ですが、折り紙ができると外国生活で重宝します。「きちんと角を合わせてピシッと折る」というのは、少なくとも多くのノルウェー人には非常に難しいようです。

 さて、ノルウェーのクリスマスにはいくつか欠かせないものがあります。まずはpepperkakeとgløgg。pepperkakeは薄焼きのジンジャークッキーで、日本人の口にも合います。ノルウェーではクリスマスにpepperkakeを含めた7種類のクッキーを焼くそうですが、このジンジャークッキーが最もポピュラーで、どこのスーパーでも売っています。

一方、gløggはホットワインの一種で、ドイツのグリューワインなどと同じものだと思います。スパイスを煮詰めたgløggの素(赤)を、温めた赤ワインで割ります。gløggの素(赤)はウガイ薬のような臭いがしますが、ワインで割って飲むと甘くて意外に美味しいです。ミックスナッツやレーズンを入れて飲むのが一般的です。また、最近はgløgg(白)も登場し、シナモンスティックなどを入れて飲むようです。

同じくjulebrus(ユール・ブルス。ノルウェー語で"クリスマス・ソーダ"の意)も、子ども達には欠かせません。julebrusは日本のシャンメリーのようなもので、後述のクリスマス・ビールが飲めない子ども達のために各ビールメーカーが作っているソーダ飲料です。バニラ味やベリー味など色々な味や色があります。もちろんノンアルコールです。

ちなみに各ボトルに描かれているサンタクロース風の顔が濃い奴は、julenisse(ユール・ニッセ)と呼ばれる妖精です。意外かもしれませんが、北欧のクリスマスのシンボルはサンタクロースではなく、このユールニッセです。

 ジンジャークッキーやクリスマスソーダといった子ども向けのものだけでなく、もちろん大人向けのものもあります。その代表がjuleøl(ユーレ・ウル。ノルウェー語で"クリスマス・ビール"の意)です。ノルウェーに限らずヨーロッパでは"クリスマス・ビール"と称して、スパイスを加えた期間限定のダークビールを醸造します。毎年、各メーカーが競って新しいクリスマス・ビールを世に送り出すのですが、ノルウェーでは方向性がおかしなものが多々あります。web上にクリスマス・ビールの品評サイトがいくつも立ち上げられ、各ビールの色や香り、味の説明や人気ランキングを見ることができます。以下の「」内の説明は品評サイトからの抜粋です。おかしな記述は誤訳ではありません。

まずはビンの4本を右端から順にご紹介します。


・Munkholm (ムンクホルム)
ノルウェーで最も有名なノンアルコールビール"Munkholm"のクリスマス・ビール味。通常バージョンは美味しく、安いのでお勧め。クリスマスバージョンは「金色に似た茶色で、甘いモルトと軽い金属臭。角のとれた甘みと控えめな苦みが特徴」。個人的には少し甘すぎましたが、悪くはないです。

・Santa Clausthaler
ノンアルコール。「淡い金色のような茶色で、泡は少ない。豊かな麦芽の中、ほのかな灰皿の香り。モルトとホップの軽い味わいに、何かしらの金属の味がするが、見事に調和している」。個人的にはMunkholmの方がお勧め。

・Aass Juleøl(オオス)
オスロ近郊のAassのクリスマス・ビール。「透き通った赤銅色。泡は少ない。ホップ、カラメル、レーズン、コカインのフルーティな香り。ほのかなコーヒー味と塩味」

・Ringnes Juleøl(リングネス)
オスロを代表するRingnesのクリスマス・ビール。Ringnesはオスロでは最もポピュラーで、さっぱりとして飲みやすい。日本でいうとアサヒ。クリスマス・ビールは「赤銅色で、軽くて甘い味わい。レーズンとカラメルシロップの香り。水っぽい」


次に、缶の5本を左端から順にご紹介します。


・Frydenlund Juleøl(フリーデンルンド)
同じくオスロを代表する"Frydenlund"のクリスマス・ビール。FrydenlundはオスロではRingnesに次いでポピュラーで、Ringnesよりややしっかりした香り。日本でいうとキリン。クリスマス・ビールは「透き通った赤銅色。焦げたシロップとコーヒーの中に、ほのかにホップが香る。ややアンバランス」。残念ながら、品評サイトでは低評価。

・Hansa Juleøl(ハンザ)
ノルウェー西部の都市・ベルゲンを代表する"Hansa"のクリスマス・ビール。Hansaの高級ライン"Hansa Premium"は、スーパーで買えるビール(アルコール5%未満)の中では最も評価の高いビールの1つ。クリスマス・ビールは「赤っぽい茶色で、ホップ、そしてわずかに土の香り。とても甘く、ほのかなカルダモン味の後にわずかな苦み。とにかく甘い」

・Hansa Julebrygg(ハンザ)
"Hansa"のもう1つのクリスマス・ビール。「透明な赤銅色で、バターボールとハチミツ、フルーツアイスの香り。カラメルとブロス(肉や野菜のスープ)を連想させる味。少し苦いが、やたら甘い」

・Borg Juleøl(ボルグ)
味はそこそこなのに何故か他のビールよりも少し安いBorgのクリスマス・ビール。「カラメル、イチジク、缶詰コーンとバターの香り。ラクリス(甘草)と砂糖、ラズベリードロップの味が短時間続き、後味にほのかな苦みとアニスの香り」。品評サイトではすこぶる不評。

・Dahls Julebrygg(ダルス)
ノルウェー第三の都市・トロンハイムの醸造所"Dahls"のクリスマス・ビール。「甘くフルーティな中に、ほのかなペンキの香り。甘いカラメルとレモンピールの味に、ほのかな苦みが短く続く」


いかがでしょうか。美味しそうなクリスマス・ビールはありましたか?ありませんね。以上のビールは全て、スーパーで買えるアルコール分5%未満のものです。上位クラスとして、国営酒屋Vinmonopoletでしか買えないアルコール分5%以上のクリスマス・ビールもたくさんあり、より独特の香りや味が楽しめます。僕が参加した品評会では「チョコレート、コーヒー、石けんと古い灰皿の混合物の味」「ポークハムとチョコレートとメロンの香りが調和」など、非常に個性的なものがたくさんありました。しかし「これは美味しい!」と思えるビールには未だ出会えていません。


 さて、クリスマス・ビールと共に欠かせないアルコールがaquavit(アクアビット)。「命の水」を意味するこの蒸留酒は、ハーブを加えたジンを樽で熟成させたものです。

一見するとただの熟成されたジンですが、最も有名なアクアビット"LINIE"の熟成方法を知れば、どこがノルウェーらしいのか分かります。19世紀初め、ノルウェーからジンを積んだ船がインドネシアに向かいましたが、ジンは売れず、仕方なくノルウェーに持ち帰りました。ノルウェーに戻った彼らが売れ残ったジンを飲んだところ、驚くほど美味しくなっていることに気づき、たどった航路(波の具合や赤道を二回横切ったことなど)がジンの熟成に最適だったと結論づけました。以来、彼らはジンを積んでノルウェー→アメリカ→オーストラリア→日本→アメリカ→ノルウェーという途方もない船旅を、ただジンを熟成させるためだけに続けています。このストーリーを日本人に話す度に「そんなバカな」と笑われますが、公式webサイトできちんと解説されています。アルコールにかける酔狂なほどの情熱は、いかにもノルウェー人らしいエピソードです。また、このアクアビットはハーブをふんだんに使っているため、消化を助ける働きがあるそうです。ノルウェーではクリスマスにラムやポークなどの肉類を食べるので、クリスマスのディナーにはアクアビットが欠かせないようです。この"LINIE"はミニボトルがあり、オスロ空港の免税店で手に入ります(国営酒屋Vinmonopoletでも買えますが、価格は免税店の倍以上します)。日持ちのする手頃な名産品が少ないノルウェーにおいては貴重な土産物です。

オーロラ in トロムソ

2012年10月18日 | 観光スポット
先日、ノルウェー北部にある町・トロムソに行ってきました。トロムソはオスロから飛行機で2時間弱の距離にある北極圏有数の町で、夏は白夜、冬はオーロラ観測が体験できる町として有名です。町並みはこぢんまりとしつつも北欧の港町らしいですが、ガイドブック等で言われる「北欧のパリ」は、いくら何でも言い過ぎです。




海を隔てて見えるのは、冬とオーロラをイメージしたデザインで有名な北極教会です。白いレイヤー構造は、確かにオーロラのようでもあります。



"北極圏有数の規模"と言っても、人口7万人ほどの小さな町ですが、トロムソ大学やEUのオーロラ観測所などがある学術都市でもあり、町には北欧らしいオシャレ図書館があります。


また、トロムソはトロムス島という小さな島にあるのですが、この島はトンネルや地下が異様に発達しています。市街から島の反対側にある空港までの道のりの大半は岩肌むき出しのトンネルで、トンネル内部はロータリー式交差点がいくつもあり、アリの巣のような複雑な構造をしています。また、市街には巨大な地下駐車場があり、トンネルとも直結しています。

これほど暗く岩肌むき出しの巨大な空間が町の下に張り巡らされている例は、今まで見たことがありません。一説によると、冷戦時代に旧ソ連の核攻撃に耐えうる核シェルターを兼ねて建造されたとか。駐車場内の各ブロックの仕切りに厚さ20cmほどの鋼鉄の扉が設置されていたりと、核シェルター説もあながち嘘ではないかもしれません。

さらに、トロムソには世界最北のビール醸造所があります。この醸造所で作られるマック(Mack)ビールは市内の至る所で飲めますが、やはり醸造所直営のパブがお勧めです。


ピルスナーはまろやかな酸味があり、やや個性的な味です。いくつかの定番ビールに加え、季節によって変わるビールも楽しめます。


フードメニューは少ないですが、ラムシチュー(ラムで作った肉ジャガのようなもの)とバカラオ(ノルウェー産タラのトマト煮)がお勧めです。ノルウェー名物の極薄の変なパンも付いてきます。


敷地内のショップではマックビール各種や世界最北ジョッキ(珍しい上にノルウェーにしては安い)などのお土産が買えますが、何故か全然関係ないイギリスのビールなども売っています。



 さて、そんなトロムソですが、最大の名物はやはりオーロラです。トロムソはオーロラが見られるオーロラベルト直下にあり、他のオーロラ観測地に比べて温暖で、交通の便が良いというメリットがあります。しかし、他のオーロラ観測地(特にアラスカ)に比べて天候が不安定で、市街地の灯りが近く、オーロラ観測以外のアクティビティに乏しいというデメリットもあるようです。とはいえ、オーロラが見られるかどうかは、結局は運次第としか言いようがないと思います。
 今回は週末を利用した短期旅行だったので、滞在は一夜のみ。行動範囲と時間の自由が利かないバスツアーなどは利用せず、レンタカーを借りて、天気予報(iPhoneやAndroid向けのノルウェー天気予報アプリ"yr.no"がお勧めです)オーロラ予報、周囲の雲と風の強さを常にチェックしながら、Google mapで観測に最適そうな場所を探します。この日は珍しく晴れた上に、前日に突発的な太陽風が発生し、月齢もほぼ新月という好条件が重なった日でした。オーロラが十分に強い場合はトロムソ上空にも出現しますが、弱い場合は北の空に出現する確率が高いので、なるべく北の方角の視界が開けた場所が適しています。我々が観測地としたのは、トロムソから北へ車で1時間ほどの、名も知らぬ浜辺でした(Google mapで緯度と経度"69.798997,19.545959"を入力すると位置情報が表示されます)


 夕焼けを眺めつつ、スーパーで買い込んだ食料とノンアルコールビールを片手に待つこと小一時間。上空に突如として謎の白い筋が出現しました。

(肉眼で見た色とほぼ同じ色に修正)
雲にしてはあまりに直線的で、飛行機の航跡にしてはあまりに長く太い筋が空を横切ります。同行した友人と騒いでいるうちに、その筋がにわかに広がり、白くカーテン状に拡散しました。

上空に筋が出現してからカーテン状に拡散するまで、わずか数分でした。日没直後で完全には暗くなっていないにも関わらず、白いカーテン状のものは明らかに発光しながら揺らめいています。突然の出来事に驚くやら感動するやら、年甲斐もなくぴょんぴょん跳びはねながら大はしゃぎです。夢中でシャッターを切るうちに周囲も暗くなり、いよいよオーロラが本格的に動き出します。オーロラに加えて人工衛星や流れ星も肉眼ではっきりと見え、写真にも光の軌跡として映っています。











活発なオーロラは驚くほど速く、空の端から端までを数秒で渡ることもありました。速すぎるオーロラはシャッタースピードを20秒以上にするとレイヤー構造がつぶれてしまいます。一方、遅く弱いオーロラは、ISO 1000程度でシャッタースピードを十分に遅くして撮影した方がきれいに映ります。難しいところです。



そして、オーロラ活動がいよいよ強まると、空一面が曇ったようになります。しかし、雲のような大きな塊が一瞬で出現しては消えるので、明らかに雲ではないことが分かります。

(肉眼で見た色とほぼ同じ色に修正)
空一面に分布した雲のようなオーロラの塊が一瞬のうちに集まり、凝集したオーロラが解き放たれるかのように渦を巻きながら拡散することもあります。上空で緑色がかった眩い巨大な塊が渦を巻く様子は、もはや畏怖の念すら覚えます。世界の終末や神の怒りのようなものを感じさせる不吉ささえ感じました。


 結局この日は飽きるまでオーロラが出続けていました。この日のオーロラ予報は"Active"から"High+"程度だったと思います(観測した場所は電波状態が悪く、オーロラ予報をリアルタイムで見られませんでした)。肉眼で見たオーロラは、写真に映ったほどは緑色ではありませんでしたが、それでも緑色がかっていることがはっきりと分かる白色でした。そして、写真では伝わらない、怖いほどのダイナミックな動きこそ、オーロラを生で見る醍醐味でしょう。巨大な発光体が空の端から端まで数秒で広がる様子は、一生に一度は見る価値があります。
 今回は非常に好条件が重なったので、このクラスのオーロラがトロムソで必ず見られるわけではありません。しかし、運が良ければ、もっと鮮やかなオーロラを見ることもできるはずです。そして、オーロラ観測には「徹底した防寒」「カメラの予備バッテリー」「レンタカー」「IT」が何より重要です。僕は真冬用アウター、ヒートテックももひき、ウィンドプルーフジーンズ、手袋、ネックウォーマー、耳当て付き帽子という装備でしたが、気温0度という"穏やか"な寒さにも関わらず、連続観測時間は15分が限界でした。また、寒い上に長時間露出を多用するため、カメラのバッテリーが驚異的に消耗します。僕はPENTAX K-rで150枚ほど撮影しましたが、フル充電バッテリーに加え、予備のアルカリ単三電池アダプタを3度交換しました。レンタカーも重要です。オーロラはいつ、どこに出現するか分からないので、いつでも自由に移動できることが重要です。車があれば観測の合間に暖を取ることもできますし、その気になれば仮眠もできます。スーパーに買い出しに行き、食料などを携行することもできます。そして最後にITです。天気予報やオーロラ予報など最新の情報を常にチェックし、GPSと地図で現在地と周辺地形を把握できれば、オーロラを見られる確率は格段に高まります。他の地域ではどうか分かりませんが、少なくともトロムソやアイスランドでオーロラを観測する場合には上記の4点が決定的に重要かと思います。

秋の気配

2012年08月25日 | 生活
オスロでは最低気温が一桁台を記録し始め、日に日に秋を感じられるようになってきました。晴れた日中は20度を超えることもありますが、陽が落ちると長袖は必須です。
 さて、北欧の秋といえば、何と言ってもベリー摘みです。ここオスロの郊外でも数々のベリーが自生しています。オスロ市民の憩いの地、ソンスヴァン湖では、散策路に沿ってベリーが実をつけ始めました。






ベリーについては詳しくないのですが、ラズベリーでしょうか。たぶん食べられそうです。


これは何だか分かりません。食べられそうにも見えますが、謎です。その辺に生えているものを摘んで食べてみるというのは、病院のシステムも良く分からない国で一人暮らしをする者にはリスクの高い行為です。ノルウェー人は摘んだ野生のベリーをランチとして持参したり、ジャムを作ったりしていますので、そのうち挑戦してみます。


 また、散策路から一歩踏み込んで森に入ると、今度はいろいろなキノコが生えています。キノコ狩りも北欧の秋の風物詩です。


松の根に生えていた、松茸や本シメジに似ていなくもない、美味しそうにも見えるキノコ。


同じく松の根に生えていた、これぞキノコ!という風貌の正統派キノコ。美味しそうではありません。


メレンゲのようでもありますが、やはり美味しそうではありません。


妙に大きい、ゾウガメのようなキノコ。食べたくありません。


そして、スーパーマリオキノコ。オスロ在住の友人に「マリオキノコだけは食べるな」と言われましたが、全く食欲はそそられません。ちなみに恐らくこれが、かの有名な毒キノコ「ベニテングタケ」です。

 キノコ狩りはベリー摘み以上にリスキーですが、友人曰く「オレンジ色のキノコは安全」らしいので、見つけたら味噌汁にでもしてみます。


 森にはキノコの他に、野生動物の痕跡も見られます。これはシカの足跡でしょうか。

本格的に冬が来る前に、野生動物にも逢ってみたいものです。

憲法記念日とRUSSバス

2012年07月12日 | 生活
更新がすっかり滞ってしまいましたが、去る5月17日、ノルウェーでは憲法記念日が盛大に祝われました。昨年の記事でもご紹介した通り憲法記念日(National Day)はノルウェー最大のイベントで、無数のノルウェー国旗と素朴ながら美しい伝統衣装ブーナッドが街を埋め尽くします。









世代、性別、人種を越えて平和の国ノルウェーを愛し、喜びを分かち合う様子は感動的です。今年は僕もノルウェー国旗を持って憲法記念日を祝いました。ノルウェーに移住して1年半が経ち、「ちょっとマヌケだけど素朴で平和なこの国が、ずっとこのまま続くと良いな」と心から思っています。


 さて、5月17日は憲法記念日の他にも大きなイベントがあります。それは前回記事でもご紹介したRUSSです。卒業を控えた高校生達が一ヶ月ほど度を超えたバカ騒ぎを繰り広げるノルウェー独自の風習です。中でも僕が一番興味をそそられるのは、バカ騒ぎの真骨頂・RUSSバスです。彼らはこの一世一代の悪ふざけに、日本円にして400万円もの大金をつぎ込みます過去記事も参照。特に外装のペインティングは重要で、最もcoolなRUSSバスを決めるコンテストの行方を大きく左右します。下の写真は、今年のRUSS公式サイトで取り上げられていたcoolなRUSSバスです。パラマウント映画風のペイントは、他のRUSSバスとは一線を画す精巧さです。かっこいいかどうかは別ですが。



そして、個人的に今年最大の悪ふざけ賞を贈りたいのが下のRUSSバス。見覚えのある親子三代の下に、ノルウェー語で"happy☆days"と書かれています。




 さて、これらのRUSSバスを遠巻きに眺めていると、「一体全体、中はどうなっているんだろう?」という疑問が湧いてきますね。ベロンベロンに酔っ払った高校生たちに「中に入っていい?」と尋ねると、さも自慢げに案内してくれました。しかし、意気揚々と潜入したにも関わらず、一歩足を踏み入れただけですぐに心が折れました。



まず入り口で圧倒的な悪臭に襲われます。車内にはビールをぶちまけて一週間ほど放置したような独特の湿気と臭いが充満し、歩く度に床が粘着きます。

吐き気を催す悪臭に耐えきれず、入り口で写真を数枚撮っただけで、あえなく退却。他にも数台のRUSSバスが停まっていましたが、恐ろしくて中には入れず、望遠で入り口付近を撮影するのが精一杯でした。





僕は未だかつて、これほど汚い乗り物を見たことがありません。いや、これほど大きなゴミ箱を見たことがありません。