竹取翁と万葉集のお勉強

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後撰和歌集 巻16 歌番号1170から1174まで

2024年04月23日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻16
歌番号一一七〇
原文 満可利加与比个留於无奈乃己々呂止計寸乃美三衣者部利个礼八
止之川幾毛部奴留遠以万左部加々留己止々以比川可者
之多利个礼八
読下 まかり通ひける女の心解けずのみ見え侍りければ、
年月も経ぬるを、今さへかかること、と言ひつかは
したりければ

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 奈尓者可多美幾者乃安之乃於以可与尓宇良三天曽布留飛止乃己々呂遠
和歌 なにはかた みきはのあしの おいかよに うらみてそふる ひとのこころを
読下 難波潟汀の葦の老ひが世に恨みてぞ経る人の心を
解釈 難波の潟の渚に生える葦が時とともに枯れ逝くことを残念に思うように、互いに年を取るほどの長い関係なのに、どうして、貴方は嫌味の気持ちを手紙に見せるのですか。
注意 三句目の「於以可与尓(おいかよに)」を「おひかせに」と改訂するのが標準で、「追い風に葉の裏を見せる」と解釈します。

歌番号一一七一
原文 於无奈乃毛止与利宇良三遠己世天者部利个留可部之己止尓
読下 女の許より恨みおこせて侍りける返事に

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 和寸留止八宇良三左良奈无者之多可乃止可部留也末乃之為八毛三知寸
和歌 わするとは うらみさらなむ はしたかの とかへるやまの しひはもみちす
読下 忘るとは恨みざらなんはし鷹のとかへる山の椎はもみぢず
解釈 私が貴女を忘れたと恨まないでください、はし鷹が住処へ帰る、その山の椎の葉は紅葉することは無いのですから、(私が心変わりすることはありません。)
注意 四句目「止可部留也末乃(とかへるやまの)」の「とかへる」の言葉には「巣に戻る」と「羽の色が変わる」との二つの説があります。

歌番号一一七二
原文 武可之於奈之止呂尓美也徒可部之者部利个留於无奈乃於止己尓
徒幾天飛止乃久尓々於知為多利遣留遠幾々川个天
己々呂安利个留飛止奈礼者以比川可八之个留
読下 昔同じ所に宮仕へし侍りける女の、男に
つきて人の国に落ちゐたりけるを聞きつけて
心ありける人なれば、言ひつかはしける

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 遠知己知乃飛止女万礼奈留也末左止尓以部為世无止八於毛比幾也幾美
和歌 をちこちの ひとめまれなる やまさとに いへゐせむとは おもひきやきみ
読下 遠近の人目まれなる山里に家ゐせんとは思ひきや君
解釈 あちこちの人が男が女の許へと通うことを眺め気にすることも稀な山里に家を構えて、そこに恋人を住まわせることを思いましたが、貴女はそのような私の想いに気が付きましたか、思いも寄りませんよね。

歌番号一一七三
原文 加部之
読下 返し

原文 与美飛止之良寸 
読下 詠み人知らす

原文 三遠宇之止飛止之礼奴与遠多川祢己之久毛乃也部堂川也末尓也八安良奴
和歌 みをうしと ひとしれぬよを たつねこし くものやへたつ やまにやはあらぬ
読下 身を憂しと人知れぬ世を尋ね来し雲の八重立つ山にやはあらぬ
解釈 私は棄てられたものと思い、我が身は辛いと思っていて、今は貴方が知らないこの国にやって来ましたが、その貴方から昔の私と貴方との関係への思いを尋ねて手紙がやって来たことは、幾重にも雲が隔てる山がありますが、それがないような嬉しい思いです。

歌番号一一七四
原文 於止己奈止者部良寸之天止之己呂也末左止尓己毛利
者部利个留於无奈遠武可之安比之利天者部利个留飛止
美知満可利个留徒以天尓飛佐之宇幾己衣佐利川留遠
己々尓奈利个利止以比以礼天者部利个礼者
読下 男など侍らずして年ごろ山里に籠もり
侍りける女を、昔あひ知りて侍りける人、
道まかりけるついでに、久しう聞こえざりつるを、
ここになりけり、と言ひ入れて侍りけれは

原文 土左
読下 土左

原文 安佐奈个尓与乃宇幾己止遠志乃比川々奈可女世之万尓止之者部尓个利
和歌 あさなけに よのうきことを しのひつつ なかめせしまに としはへにけり
読下 朝なけに世の憂きことをしのびつつながめせしまに年は経にけり
解釈 朝や昼間に、この世に生きる辛さを思い出し、あの歌ではありませんが、長雨を眺めている内に時間が経ってしまいました。
注意 古今和歌集「花の色はうつりにけりないたづらに我が身世にふるながめし間に」と「朝なけに見べき君としたのまねば思ひたちぬる草枕なり」を引用する。

コメント
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