AKB48 チームBのファンより

鈴木紫帆里さんを中心にAKB48 チームB について語るサイトです。

カンテレ制作ドラマ『春になったら』の感想。悔いなく人生を終えるには。(ときめき研究家)

2024-03-27 19:50:53 | ときめき研究家
この春は観るべきドラマが多かったが、特に木梨憲武と奈緒主演の『春になったら』は身につまされた。
膵臓がんで余命3か月の宣告を受けた父(木梨)と、3か月後に結婚すると宣言した娘(奈緒)の3か月間を描いたハートフルなドラマ。派手な事件や驚きの展開などはないが、周囲の人達もいい人ばかりで見ていて気持ちいいドラマだった。
余命宣告を受けた父は「死ぬまでにやりたいことリスト」を作成し、その1つ1つを実現していく。そのやり方に共感した。私も、三連休などには「3日間にやることリスト」を作って過ごすことが常で、充実した時間を過ごすために合理的な方法だと思っている。逆に、何の予定も立てずにだらだらと過ごす休日も、それはそれでいいものだが、3日以上のまとまった休みだとそれではもったいない気がしてしまう。
ドラマの父は、余命宣告を受けて残された時間が可視化されたので、リストを作って少しでも充実して過ごそうとするのは当然の心理だろう。生きているうちにやりたいと思っていたことをやれずに死ぬのは心残りだ。突然死ではなく、予告された死だからそういうこともできる。自分の死までの時間を、ある程度自分で計画的に過ごすことができるのは不幸中の幸いだ。私でもそうすると思う。彼の最後の日までの過ごし方を、自分自身に重ねて、応援するような気持で観ていた。
一方で、娘は、リストが1つずつ消し込まれていくと、父の死が近づくようで悲しいというような話をしていた。その心理もわからないではないが、もしリストをすべて消し込んでしまえたら、また新たにやることを追加すればいいだけだ。

余命宣告こそ受けていないが、私も還暦を過ぎて、人生の残り時間を意識するようになってきた。同世代の知人や芸能人などの訃報を耳にすることも増えた。50歳くらいまでは「人生100年時代だからまだ半分」などとうそぶいていたが、さすがにもう気づかないふりはできなくなった。人生には限りがあるのだ。会社生活も一区切りを迎え、体調面でも小さな変調が続いた。そのうえ柏木由紀の卒業はAKB48鑑賞の節目となった。何事も永遠には続かない。私は残りの人生をどう生きるか、真剣に考えるようになった。
そんな中で、昔読んで良かった本をもう一度読み直すことを増やしている。もちろん新しい本も読むが、新旧の比率は半々くらいになっている。新しい本は、全く新しい発見や感動を味わえる場合もあるが、外れもありうる。いわばハイリスク・ハイリターン。再読のメリットは、昔読んで自分が良いと思ったのだから今回も楽しめる可能性が高いこと。加えて、昔とは違う発見や感動を味わえることも多いのだ。ローリスク・ミドルリターン、いやローリスク・ハイリターンと言っていいだろう。
本の再読と同様、音楽も昔の曲を聴く割合が増えてきた。AKBグループ、坂道グループの新曲もフォローしているが、カップリング曲までは手が回らなくなって来た。カップリング曲の中に、私の気に入る曲(例えば『Maxとき315号』や『君と僕と洗濯物』や『飛行機雲ができる理由』のような)がきっとあることは予想できるが、その確率が下がっている気がしてならないのだ。それよりは昔の楽曲、70年代や80年代のアイドル、それからAKBや坂道の昔の楽曲の中で好きだった曲を聴くほうが、高確率で感動できることに気づいてしまったのだ。限られた時間を充実して過ごすには、このような取捨選択も必要だ。
この感覚は受験勉強に似ている。まだ試験まで時間がある時は、新しい参考書や問題集を買って、どんどん知識を増やしていくことが有効だ。しかし、試験が迫ってくると、新しい参考書や問題集に手を出すより、既に持っている問題集をもう一度解いたり、間違った所だけ復習したりする方が効果的だ。遠い昔、受験生の頃の記憶を辿ればそうだったと思う。少なくとも私はそうだった。
別の例で、美味しいランチを求めて職場周辺の飲食店を開拓するとしよう。新しい店を開拓する日と、一度開拓して美味しかった店を再訪する日と、組み合わせながら今日はどこに行こうか決めるだろう。毎日新規開拓ばかりだと、外れの日もあるだろう。一方で同じ店ばかり高頻度で行けば飽きても来るだろう。どちらを重視するかはその人の性格や人生観によるだろうが、私はある程度のローテーションが確立したら新規開拓のペースは緩めて、好みの店を再訪する日を増やすのが好きだ。その方が、結果としてランチの満足度の総量が増えると思うのだ。ましてや、来月には転勤が決まったような場合は、誰もが新規開拓などせず過去に美味しかった店をなるべく訪れるはずだ。
受験や転勤と違って死期は明確ではない。もしかしたら私は100歳まで生きることになり、今から復習中心の生活にシフトするのは早すぎるのかもしれない。逆に、残された時間はあと数年しかない可能性もある。そういう不透明な中、新規開拓と復習のバランスを取りながら、「ときめき」の総量が最大になるように、私は生きていく。

辛気臭い話になってしまい申し訳ない。
ドラマの話に戻ると、元日向坂46の影山優佳が、奈緒の職場である助産院の同僚として出演していた。眼鏡をかけて髪を括っていたが、新人助産婦らしく初々しい演技だった。クイズが得意で、サッカーの造詣も深い。加えて演技もそつなくこなすとなれば、今後も多方面で活躍が期待できると思った。
奈緒の演技は言うまでもなく絶品。しっかり者で情に熱い、理想の娘を演じていた。一つ一つの表情が自然だけど、生き生きと感情を表現している。これまでの出演作でも上手いと感じていたが、今回の主演作で本領を充分に発揮していた。父娘2人きりの暮らしが長かった中で、素直で優しく真っすぐに育っていて、父との関係が良好だったのだろうといった背景まで、演技から滲み出ていた。「役になりきっていた」とはこういうことだと思った。
木梨憲武の演技は「わざとらしい」「コントみたい」といったネット評も目にしたが、日ごろからそういう話し方をする人はいるだろうと感じたし、違和感はなかった。早すぎる死という運命を受け入れ、周囲への感謝を忘れず、最後までポジティブに生きる姿は見習いたいと思った。
濱田岳、小林聡美、光石研、筒井真理子といったベテラン陣が脇を固め、素晴らしい作品に仕上がっていたと思う。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

柏木由紀卒業コンサートの余韻。(ときめき研究家)

2024-03-18 20:48:13 | ときめき研究家
土曜日にコンサートを観戦、日曜日に観戦記を書いてブログに掲載、月曜日は自作した柏木のベスト曲集を聴きながら通勤した。11曲中コンサートで歌われた曲は5曲、歌われなかった曲が6曲。どの曲も耳に染み入って来る。

『火山灰』は、コンサートではCDと声の出し方が違う印象だった。改めてCD音源を聴くと、滑らかで優しい歌声だ。それほど声を張っている感じはしない。エコーも程よく効いていて、日常の観賞用にはこの方が聴きやすい。

『シアターの女神』は改めて名曲だと思った。柏木がキャプテンになったチームB公演の表題曲で、歌いだしが柏木だ。最初の1フレーズから柏木色に染まっていく。劇場公演での柏木の華やかなパフォーマンスは「シアターの女神」を名乗るのにふさわしいものだった。この曲も『遠距離ポスター』と同じように、アイドルとファンの理想的な関係を描いている。

『やさしくありたい』は指原莉乃とのデュエット曲だが、コンサートでは歌われなかった。2人の声が似ていて穏やかな気持ちになれる失恋ソングで好きな曲だが、今回のコンサートにはそぐわなかっただろう。「AKB48の柏木由紀」の卒業コンサートだから、柏木だけにスポットが当たりすぎるソロ曲も『火山灰』とアンコール『最後の最後まで』の2曲だけ、デュエット曲も『てもでもの涙』1曲だけに留めたのだと思う。指原莉乃の出番は『Choose me』が最適で、効果的な演出だった。

『悲しい歌を聴きたくなった』も歌われなかった。もし歌われるとしたらデュエットの相方は渡辺麻友だったはずだが、彼女は現れなかった。渡辺麻友の近況や、現れなかった理由は知るすべもないし、一般人に対して勝手な憶測は控えたい。同時に柏木がそのことをどう受け止めているのか、残念なのか、理解しているのか、あるいは連絡さえ取れなかったのか、それも分からない。が、ファンの勝手な妄想として、盟友2人の気持ちは今も通じ合っていると信じてみるくらいは許されるだろう。

過去記事を読み返して気づいたが、オープニングの生演奏+ソロ歌唱という趣向に加えて、アンコールの構成・選曲も渡辺麻友の卒業コンサートとほぼ同じだった。卒業ソングのソロ曲。「チームB集合」の号令で初期メンバーが登場。当時集合した9名のうち渡辺、多田を除く7名が今回も集合した。いつもの「冷静に、丁寧に・・・・」という円陣の後、伝説の名曲『初日』。その後現役メンバーも加わって『約束よ』。そして最後は『桜の花びらたち』を歌う。ここまでは全く一緒だ。これは敢えてそうしたのだと確信した。
柏木はそこにもう1曲『遠距離ポスター』を付け加えた。これは、卒業しても生涯アイドルでいたいという柏木の決意表明なのだと解釈した。そして「なかなか会えないけど誰よりそばにいる」という『遠距離ポスター』の歌詞は、柏木から渡辺への密かなメッセージなのかもしれないと夢想した。

ベスト曲集に『カラコンウインク』と『最後の最後まで』を追加して全13曲のセットリスト、これからも時々聴き続けたい。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3月16日柏木由紀卒業コンサートを観戦。(ときめき研究家)

2024-03-17 17:54:31 | ときめき研究家
柏木の卒業コンサートは必ず観戦しようと決めていた。チケット確保後、予習も怠らず、そしてついにその日が来た。

心配していた電子チケットは3日前に案内が来て、無事ダウンロードできた。入場時にスマホの画面を見せるので、電池がなくならないか、アプリが立ち上がるかにも気を遣ったが、紙のチケットをなくさないかという心配と同じことだろう。当日は電子チケットのトラブル対応窓口も設けられており、慣れればこの方が便利だと思った。何より運営側にとっては合理的なのだろうと感じた。これもDXか。

着席観覧席は3階だがステージ正面で前から2列目、非常に見やすい席だった。周囲の客層は老若男女とても幅広かった。若い女性2人連れ、若い女性単独、若い男女カップル、若い男性2人連れ、私と同じ中高年男性単独、そして中高年男性の2・3人連れがはやり目に付いた。それから外国語で会話しているグループも。
それぞれの人がそれぞれの思いを抱いて来場しているのだろう。それはどのコンサートでも同じことだが、柏木由紀の卒業コンサートという特別なコンサートだから来たという人も多いと思われ、客層の幅広さにも反映していたのだろう。私もその一人。「AKB48チームBのファンより」ライターの一人として、初代チームB最後のメンバーの卒業を見届けるという気持ちで臨んだ。

出身地鹿児島ロケでのインタビュー映像の後、劇場公演のOvertureに続いて開幕だ。

1.『火山灰』(柏木ソロ、フルコーラス)
舞台中央の扉が開いて、純白のドレスを身に纏った柏木が現れた。伴奏は電子ピアノと弦楽四重奏の生演奏。冒頭にアコースティックなサウンドでのソロ歌唱は渡辺麻友の卒業コンサートと同じだと気付いた。故郷への思いを歌った『火山灰』は、インタビュー映像からの流れもいい選曲だ。
CDで聴くと、しっとりとした柏木のベルベットボイスを堪能できる、私も好きな曲だが、この日の歌唱は少し味わいが違った。声を張るというか、少し上ずったような歌い方だ。卒業コンサートへの気負いからなのか、広い会場の音響のせいなのか、慣れない生演奏の伴奏の難しさゆえなのか分からないが、とにかくいつもの柏木らしい優しい歌声ではなかった。しかしそれもまたライブの醍醐味だ。

2.『ポニーテールとシュシュ』(全メンバー)
3.『言い訳Maybe』(全メンバー)
4.『大声ダイアモンド』(全メンバー)
AKB48メンバー全員が登場し、ヒットメドレーを1コーラス半でテンポよく続けて行く。メンバーは白い衣装でミニスカート。柏木もドレスの長いスカートを脱いでミニスカート姿になった。同じ白い衣装だが、衣装の生地が柏木のだけ光沢が強いように見える。それより何より柏木の履いているブーツがギラギラ輝いている。主役の柏木が見つけやすいようにという行き届いた演出だ。しかし常にセンターで踊っていて、背も一段高く、純白の大きなリボンを付けている柏木は、遠目でも目立っていた。踊りも大きく、衰えのようなものは全く見られなかった。

MCをはさんでユニット曲コーナーに入る。柏木の思い入れのある曲ばかりであろう。
5.『スカートひらり』
6.『涙の湘南』
7.『ジッパー』
8.『口移しのチョコレート』
9.『てもでもの涙』
『てもでもの涙』の相方は宮澤佐江だった。ちょっと期待していた佐伯美香ではなかった。宮澤は背が高く、歌声にも張りがあって、振り付けもきびきびしており、現役芸能人らしかった。柏木とよく合っていた。宮澤は2期生、柏木は3期生だが、もはやそんなことは些細なことなのだろう。初期AKB48を支えたメンバー達には、期やチームを超えた深い絆があるのだろうと想像した。
10.『思い出のほとんど』
イントロが流れ、卒業には欠かせない名曲だと分かり、この曲は誰と歌うのか注目した。舞台左側で歌い出したのは村山彩希。あれ?と思っていると、次のフレーズは舞台右側で向井地美音。そしてBメロ、舞台中央で柏木が歌い出す。そう、意表を突いた3人編成だったのだ。本来デュエット曲のこの曲をこの3人で歌ったのには、次のリーダーを委ねる村山、向井地へバトンを渡す意味合いなのだろう。あるいは、「思い出のほとんどは一緒に作ったね」という文字通りの意味かもしれない。考えてみれば、多くの初期メンバーが卒業してから、村山、向井地ら後輩メンバーと過ごした時間の方が長いのだ。
初期メンバーとか何期生だとかに拘りを感じるのは、私のようなファンだけで、柏木自身はもっとフラットな感覚なのかもしれない。だからこそ現役メンバーたちに慕われ、自身も「今のAKB48が一番好き」と公言し、それがすんなりと受け入れられるのだ。

11.『Teacher Teacher』
12.『ロマンス拳銃』
13.『呼び捨てファンタジー』
14.『イビサガール』
『イビサガール』では、NMB48兼任メンバーだった時の映像が画面に流れた。そう言えばそういう「大組閣」や「兼任」を連発して活性化させようとした時期もあった。『理不尽ボール』というようなマッチポンプ曲もあった。
15.『MAXとき315号』
『MAXとき315号』では、NGT48兼任メンバーだった時の映像が流れた。北原里英と2人でNGT48の立ち上げに相当努力したのだと思う。NGT48のグループ自体は、その後ドタバタで残念な状況になったが、シングル曲ではない初オリジナル曲であるこの曲はメンバー全員がキラキラ輝いていた。そして今回この曲がセレクトされたのは嬉しかった。

ここで、スクリーンでビデオメッセージが披露された。メッセージを寄せたのは、前田敦子、山本彩、北原里英、石川梨華の4人。山本と北原はそれぞれNMB48、NGT48兼任時の思い出を語っていて、直前のセットリストからの流れもよかった。モーニング娘。の石川梨華は、中学生の柏木が憧れていたアイドルということで、親交もあるらしい。このビデオメッセージが出た人は、出演はないのだろうなと余計な予測をしてしまった。

16.『If』(フレンチキス(柏木、倉持明日香、高城亜樹))
フレンチキスは約10年ぶりの再結成。当時の旅番組の思い出などのトークは穏やかな感じ。3人とも良い年齢を取ったのではないか。当時のグッズであるタオルを持参して来て掲げていたファンのおじさんがいて、3人ともそれを見つけて懐かしいとコメントしていた。トークの後、もう1曲披露した。
17.『カッコ悪いI LOVE YOU』(フレンチキス)

18.『RIVER』(高橋みなみ登場、柏木ら現役メンバー全員と一緒に)
冒頭の「AKB~」のコールで場内大興奮。高橋は往年と変わらず暑苦しい(褒めている)パフォーマンス。
19.『少女たちよ』(横山由依登場、柏木ら現役メンバー全員と一緒に)
横山のはんなりした雰囲気は今も変わらない。
20.『遠距離ポスター』(現役メンバー全員)
21.『Choose me』(峯岸みなみ・指原莉乃登場、柏木ら現役メンバー全員と一緒に)
『遠距離ポスター』から『Choose me』への流れには興奮した。この2曲は『桜の栞』のカップリング曲で、集英社の雑誌「ヤングジャンプ」「週刊プレーボーイ」とのタイアップで人気投票が行われた。『遠距離ポスター』のセンターは柏木だったから歌うのも当然だが、続いて『Choose me』とはサプライズ。『Choose me』のセンターは北原里英で、その曲に参加していた峯岸と指原が登場。そこで北原の代わりに柏木がセンターという趣向は、なかなか粋な演出だった。
柏木の衣装替えの間、高橋、横山、峯岸、指原によるこなれたMCをしみじみと味わった。峯岸の「坊主」が既に笑って話せる話題になっていることに時の流れを感じた。

22.『ジワるDAYS』
23.『フライングゲット』
24.『君と虹と太陽と』
25.『10年桜』
26.『グリーンフラッシュ』(小嶋陽菜登場、柏木ら現役メンバー全員と一緒に)
ライブでめったに歌わないという『グリーンフラッシュ』で、ダブルセンターだった小嶋が登場。彼女もあまり印象が変わっていなかった。
27.『カラコンウインク』
本編最後は、卒業シングルにして、柏木の初単独センター曲。『Everyday、カチューシャ』に似ていることは過去記事に書いた通り。AKB48グループが昇り龍のように人気上昇していた時期の雰囲気を再現したような楽曲だ。柏木がまだ10代で、多くの先輩や同期と切磋琢磨していた時代だ。柏木は「今のAKB48が一番好き」と言うが、それはその時々の「現在」が常に一番輝いているということだろう。過去が現在と比べて輝いていなかったということではない。

たっぷり時間を空けたアンコールでは、まずスクリーンで柏木の17年間を振り返る映像が流れた。そして現れた柏木が長い挨拶をして、歌い始める。
28.『最後の最後まで』
『カラコンウインク』のカップリング曲であるこの曲を、私は敢えて「予習」せず、当日初めて聴くことにした。柏木ソロの卒業ソングということは分かっていて、秋元康がどんな歌詞を書いて、柏木がどのように歌うのか、卒業コンサートのその場で真剣に聞き届けようと考えたのだ。
曲調はいかにも卒業ソングらしいバラード、そして歌詞は柏木のための渾身の当て書きと言えるものだった。久しぶりに本気を出したのかもしれない。「最後の最後までここにいた」「そのわけをわかってくれるでしょう」「なんの後悔もない」「人には言えない失敗もした」そのような歌詞は、柏木の心情をほぼ正確に推し量り、定着させたものだと思う。その証拠に柏木も途中何度か声を詰まらせて歌えない場面もあった。卒業ソングとして最高の出来ではなかろうか。

卒業ソングを歌い終え、一転して柏木が叫ぶ。「チームB集合!」。
29.『初日』(初代チームBメンバー8人)
集合した初代チームBメンバーは、柏木のほか、片山陽加、平嶋夏海、仲川遥香、仲谷明香、田名部生来、菊地あやか、そしてキャプテン浦野一美だ。
私は、今日このシーンを見に来たと言っても過言ではない。しかし、そこに多田愛佳と渡辺麻友の姿はなかった。多田の近況は分からないが、渡辺は芸能界を離れてから一切動静が伝わらないことから強い意志を感じる。だから今日の不参加も薄々予感はしていた。それぞれの決断、それぞれの人生を尊重したい。
駆け付けた7人も、それぞれの人生を精一杯生きているはずだ。それこそ「今の自分が一番好き」であってほしい。それでもほんのひととき、懐かしいメンバーと再会し、一緒に歌い踊ることに喜びを感じてくれているのだと思えば、観ている私も嬉しくなる。

30.『約束よ』(初代チームBメンバーと現役メンバー全員一緒に)
31.『桜の花びらたち』(高橋、指原ら出演した卒業生全員も加わり、現役メンバー全員一緒に)
『桜の花びらたち』は、世代を超えて受け継がれていくグループの文化、精神とも言える名曲だ。最後まで懐かしい曲でまとめたセットリストだった。最近の楽曲はほとんどなかった。それは、久しぶりにAKB48のコンサートに来たという私のようなファンも多いことへの配慮だろう。
そして、予想と少し違ったのは、柏木のソロ曲が冒頭の『火山灰』の1曲だけだったことだ。『シュートケーキ』や『夜風の仕業』くらいは歌うと思っていた。しかし、これは柏木由紀の卒業コンサートではあるが、同時にAKB48のコンサートなのだ。だから柏木の卒業と関係なくAKB48のコンサートに来たという現役のファンにも目配りしたのだと思う。何より、最後の最後までAKB48の一員であることに喜びを見出している柏木らしい考えだと思う。

32.『遠距離ポスター』(現役メンバー全員)
卒業生は退出し、現役AKB48メンバーだけのアンコールの最後の最後に、本編でも1回歌っているこの曲を選んだこともサプライズだった。考えてみれば、この曲は「アイドルとファンの理想的な関係」を描いている。その間には明確な一線があって、あくまで「プラトニック」、それでもお互いに勇気づけられる関係だ。原点に返って、AKB48もこんな存在であり続けてほしい、そんな柏木の願いを感じたような気がした。

歌い終えた後、ファンにたっぷり時間を取って手を振り、その後メンバー1人1人から花一輪を受け取り、扉の向こうに消えた。
3時間ちょうど。時間を感じさせない中身の濃いコンサートだったと思う。
「最後の初期メンバーの卒業で1つの時代が終わる」とか「初代チームBの最後を見届ける」とか不純な思いを抱いて参加した私は反省した。それは私自身の勝手な思い入れであって、柏木はもっと自由だった。一言で言えば「普通の卒業コンサート」だった。思いのこもった、丁寧に創られた、素晴らしい卒業コンサートだった。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

AKB48『カラコンウインク』を聴く。初めて聴いたのに懐かしい。(ときめき研究家)

2024-03-10 15:42:05 | ときめき研究家
卒業する柏木由紀が単独センターを務めるシングル曲。
先入観全く無しで聴いたが、一聴してとても「懐かしい」印象を受けた。これは敢えてそういう狙いで創られているのだろう。
イントロが籠ったようなノスタルジックなサウンドのオーケストラで、『Everydayカチューシャ』のイントロを連想する。さらに歌い出しの「素足では まだ早い」は、『Everydayカチューシャ』の「太陽が 昨日より」とメロディーがとてもよく似ている。

歌詞の全体の内容も似ている。片思いの相手と海に行って今日こそ告白したいという内容で、AKB48がブレイクした当時の世界観そのものだ。『ポニーテールとシュシュ』『Everydayカチューシャ』『ギンガムチェック』と続くAKB48の黄金パターンだ。その黄金時代からずっとグループを支え続けた柏木由紀のラストシングルにふさわしいと思う。

相違点もある。『Everydayカチューシャ』は男子目線の歌詞だったが、『カラコンウインク』は女子目線だ。『Everydayカチューシャ』は2人きりで海に来ている(または来ていると妄想している)が、『カラコンウインク』はクラスメイト数人で来ている点も異なる。クラスメイト数人で来ているのは『#好きなんだ』と同じ設定だ。それから季節も『Everydayカチューシャ』は初夏だが、『カラコンウインク』はまだ早春である。卒業後の最後の春休みにクラスメイト数人で来ているというシチュエーションには、柏木の卒業ソングという意味合いも込められているのだろう。そして最大の違いは、『Everydayカチューシャ』の彼は結局告白できずじまいだが、『カラコンウインク』の彼女は、ウインクで気持ちを伝えようとしている点だ。口で言えずに別の手段で伝えるというのは『心のプラカード』にも通じる内容だ。

ところで、彼女は本当にカラコンを付けているのだろうか? 勇気を出して気持ちを伝えるために「ヘーゼル系」のカラコンを付けて出かけてきたのだというのが普通の解釈だと思う。しかし一方、他のクラスメイトもいる中で、意中の彼だけがカラコンに気付くという訳ではないだろう。「特別な眼差し」「好きになったら瞳の色も変わる」という表現が気になる。他のクラスメイトを見る目と彼を見る目は全然違う、彼を見る目だけ「熱視線」になるということ、まるでカラコンを付けているように。つまりカラコンは比喩だという解釈だ。
どちらの解釈も成り立つし、聴き手が決めればいいことだろう。現代の中高生が気軽なファッションとしてカラコンをするのかどうか分からないが、私の若いころは極めて特殊なファッションだった。沢田研二が、あれは何の曲だったか(『OH!ギャル』だったか?)の演出で、水色や赤のカラコンをしていたことが強烈な印象に残っているくらいだから、一般人が日常で付けるものではなかった。だから私は比喩説に傾いている。

「ウインク」もまたAKBグループで何度か歌われたモチーフだ。
『へたっぴウインク』は渡り廊下走り隊のシングル曲。ウインクが下手なまゆゆのPVが興味深い。
『ウインクは3回』は『鈴懸なんちゃら』のカップリング曲でHKT48の元気な歌唱が楽しい。
『カフカとでんでんむChu』は横断ユニット「でんでんむChu」のシュールな楽曲だが「ウインクしてるでんでんむChu」という歌詞があり、ウインクはアイドルの象徴的な行為と位置付けられている。
AKBグループ以外のアイドルでは、やっぱり松田聖子『天使のウインク』が頭に浮かぶ。そしてグループ名のWinkも。『淋しい熱帯魚』『愛が止まらない』など、80年代終盤にヒット曲を連発した。

ところで『カラコンウインク』の話に戻るが、柏木はソロパートも多く、慣れ親しんだ世界観の歌を、堂々と楽しそうに歌っているように思われる。アイドル人生悔いなし、という感じか?
激しいリズム、複雑なダンス、思わせぶりな歌詞、大人っぽい衣装やメイクといった「今ふう」なアイドルが日韓問わず多い現況だ。多分そういうのが今は売れているのだろう。AKB48もそのような挑戦も試みていて、それも必要なこととは思うが、『カラコンウインク』のような原点回帰、王道パターンという路線も、自分たちが一番輝く持ち味として大切にしてほしいと改めて思った。

これで3月16日の卒業コンサートの予習も終えた。
しかし電子チケットの発行がまだできない。電子チケットは数日前になるのが普通と聞いてはいるが、不安で仕方がない。紙のチケットは良かった。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

櫻坂46『承認欲求』を聴く。(ときめき研究家)

2024-03-06 20:01:23 | ときめき研究家
実は昨年に発売されていた『承認欲求』。この曲も櫻坂46らしい曲だ。

チャカポコチャカポコというファンキーな鐘を鳴らすイントロ、思い切り加工した歌声で始まる歌唱、とてもシュールな楽曲だ。全体としては、激しいリズムとダンスのための曲調。『何歳の頃に戻りたいのか?』と全く違う楽曲なのに、どこか似たような印象を受けてしまう。

歌詞の内容は案外分かりやすい。
SNSやらユーチューブやらで発信し、フォローしてほしい、いいねを付けてほしい、何ならアンチや炎上でも構わない、そんな承認欲求にまみれた人々の異様さを歌っている。確かに、誰でもいつでもどこからでも、どんな内容だって発信できる時代だ。誰もが発信することに精一杯で、人の発信を気に留めている余裕などありはしない。聖徳太子でもない限り、全部を聞いてはいられない。そんな需要と供給がアンバランスな情報社会の不毛と困惑を描いていると言えよう。

そもそもいつの時代でも、誰でも、多かれ少なかれ承認欲求は持っているだろう。それは決して悪いことでも恥ずかしいことでもない。ただ現代は、SNSへの既読やコメントなどで即時に鮮明にその欲求が満たされるから、いっそうその欲求がエスカレートして行くのだろう。
しかし、そのことを櫻坂46が歌うということに倒錯した構図が見える。AKB48のかなり初期からだが、各メンバーが積極的にSNSを発信することが奨励された。ファンをモバイル会員だとかにして収益を上げる手法でもあり、メンバーにとっても自分をPRしファンを獲得する必須のツールとなっていた。おそらく坂道グループでも、ツールは変われども方針は同様だろう。彼女たちは自らの承認欲求を増大させ、その欲求に忠実に、日々発信に励んでいるはずだ。それなのに、それを第三者的に醒めた視点で批判的に歌わせることは矛盾しているし、過酷とも言える。

ただ救いもある。歌詞をよく聞くと「数だけ増えればいいわけではない」「承認されたら即友達って変だよね」「私はちゃんとあなたのことを見ているよ」といったメッセージが含まれている。肥大した承認欲求に振り回されず、真に認めてもらいたい人に認められたらいいねというのが込められた救いなのだろう。

かく言う私にももちろん承認欲求はある。ブログ記事など書いているのがその証拠だ。実際、記事を載せた後はアクセス数が気になるし、コメントが入ったりすると正直嬉しい。
でも、アクセス数やコメントのために書いているかと言えばそうではない。私が記事を書くのは、自分が書きたいから、自分の感じたこと考えたことを文章に残したいから、というのが第一義だ。だから自分の過去記事は折に触れ読み返している。そして当時の思いや考えが蘇るのが何より楽しい時間だ。ブログの最大の愛読者は私自身だと思う。
それではなぜ公開するのかと言えば、もしかしたら私の拙い文章でも読んでくれる人がいるかもしれない、もっと欲張るなら「共感」してくれる人がいるかもしれない、という思いもあるからだ。その欲は「承認」欲とは少し違うような気もする。私自身を「承認」してほしいのではなく、私の感性や考えを「理解」「共感」してほしいのだ。

『承認欲求』の歌詞を書いた秋元康も、きっと承認欲求は誰よりも強いはずだが、今さら彼の存在自体を承認してほしと思ってはいないだろう。やはり歌詞の中身を理解、共感してほしいと思って書いているはずだ。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

櫻坂46『何歳の頃に戻りたいのか?』を聴く。(ときめき研究家)

2024-03-03 13:04:42 | ときめき研究家
櫻坂46の新曲が出たので聴こうと思ったら、実はその前に『承認欲求』というシングルも出ていたようだ。私が迂闊なだけなのだが、結構短いサイクルでシングルが出ていることにグループの勢いを感じる。順番は逆転するが、最新シングルの方から感想を記す。

櫻坂46『何歳の頃に戻りたいのか?』
何歳の頃に戻りたいのか? いつが一番輝いていたか? そんな後ろ向きにならず、未来を見据えて生きていこう、そんな啓発ソングだ。櫻坂46らしい楽曲と言える。『Start over!』とも共通するようなテーマだ。
櫻坂46のメンバーや若いリスナーは、過去など振り返らず、今が一番輝いていると思いながら生きていてほしい。でも還暦を過ぎた私にとっては、少し考えさせられる歌詞だ。
人生には限りがあり、いつか必ず終わりはやってくる。その直前まで「今が一番」と思い続けて生きられれば、それはそれで素晴らしく幸福な人生だが、そうではない人も多いだろう。体力や健康、感受性などが少しずつ失われて行き、それでも無理して「人生最高」を追求し続けるのはしんどいことかもしれない。人生のいろんな場面を振り返って、改めて味わい直すこと、人生を反芻することは、それはそれでとても有意義なことだと、今の私は考えるようになった。
例えば、ここ数年、昔に読んで良かった本を再読している。当時気に入った本だから当然今回もおおむね気に入るのだが、ストーリーを忘れていたり、当時は気づかなかったことを発見したりするので、単に懐かしいだけでなく、新たな創造的な読書になるものだ。昔の音楽もそうだ。70年代、80年代のアイドルを久しぶりに聴くと、新鮮な感動を味わえたりもする。更に言えば、15、6年前のAKB48初期の楽曲ですら、既にそういう対象になっている。
もちろん新しい本も読むし、新しい音楽も聴く。でもそれだけでは、人生で味わえる感動の総量を最大にすることはできないと思う。新しいものの開拓と過去に好きだったものの反芻、それをどう配分すれば感動の総量が最大になるのか、それを模索している最中だ。多分、もっと年齢が進めば、その配分は過去に重きを置くようになるのだろう。
作詞家の意図とは全くかけ離れているだろうが、この曲を聴いてそんなことを考えた。

とは言え、楽曲の主役は腹に響くようなサウンドと激しいダンスなのだろう。
テレビで一度パフォーマンスを観たが、とても難しそうな統率の取れたダンスだった。韓国のグループの影響もあってか、日本のグループも似たようなパフォーマンスが増えているように思われる。
AKB48初期の牧歌的な「振り」が懐かしい(その頃に戻りたいという訳ではないが)。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

バカリズム脚本ドラマ『ブラッシュアップライフ』を観る。ネタバレあり。(ときめき研究家)

2024-01-28 18:39:07 | ときめき研究家
2023年度に放送されて高評価だったドラマ『ブラッシュアップライフ』。当時なぜか見逃してしまったが、年末に一挙放送があったので録画して観た。最初は週に1話ずつじっくり観ようと思ったが、途中から止まらず後半は一気見になった。評判通り、素晴らしい作品だった。一挙再放送があって良かった。これを見逃していたら人生の損失だった。ブログ読者には今更だろうが、感想を記しておきたい。

まず、計算され尽くした脚本が素晴らしい。
主人公の安藤サクラは、人生を何度もやり直して、ブラッシュアップして行く。選ぶ職業は、市役所職員、薬剤師、テレビ局員、研究医、パイロットと毎回違うのだが、それぞれの仕事が丁寧に描かれていてリアルだ。「お仕事ドラマ」を5本書くくらいの労力をかけているのではないか。そして5つの職業の全てに意味がある。随所に数多くの伏線が忍ばされていて、クライマックスに向けてストーリーが収斂し、急加速していく。その「カタルシス」は圧倒的だ。

バカリズムの過去作品『素敵な選TAXY』(竹野内豊主演)も過去に遡ってやり直すというストーリーで、エンタメ性が高く、非常に面白い作品だった。設定に類似点がある『ブラッシュアップライフ』は、前作を更に「ブラッシュアップ」した作品と言えるのではないか。
というのは、エンタメ性が高い一方で、メッセージ性も高い作品になっていると思うのだ。しかも、一面的な押し付けがましいメッセージではなく、観る人によって様々なメッセージを受け取ることができる作品だと思う。
前半は、人生を微修正しながらやり直す主人公の試行錯誤を楽しみながら、自分だったらどうやり直したいかあれこれ考えた。しかし話が進むにつれて、人生は一度きり、やり直しができないからこそ味わい深いのだと感じるようになった。
また同時に、大きな目標を達成するための人生と、友人との何気ない日常を楽しむ人生、両方の人生観があると思うが、どちらも尊いのだというメッセージも受け取った。
それから、人生は「徳を積む」ことが重要ということ。ただ、何が「徳」なのかは非常に難しい。結局、他人のために自分ができることは労を惜しまず実行すること、なのだろう。そこに遠慮や躊躇は不要で、できるのに実行しなかった後悔だけはしないようにしたい。主人公はそのような行動原理で動いていた。
そんなことをあれこれ考えさせられ、後半の回では何回か泣かされた。

そして、演者が全員素晴らしい。
安藤サクラの親しい友人役に、木南晴夏、夏帆、水川あさみを、妹役に志田未来を配していて、実に芸達者ぞろいだ。他の同級生としては、染谷将太、黒木華、市川由衣など。同世代のオールスターキャストというべきその中に、元AKB48の野呂佳代も堂々と名を連ね、自然な演技で貢献していて嬉しかった。
その他にも、臼田あさ美、江口のりこ、松坂桃李、浅野忠信、野間口徹、鈴木浩介、神保悟志、三浦透子など、驚くほど豪華なキャストである。
役の大小にかかわらず、どの演者も実に自然に演じていて、荒唐無稽な設定のドラマなのに、そんなことは忘れて物語に没入できる。想像だが、どの演者もこの作品に関われて嬉しかったのではないか。

最後に、ディテールが素晴らしい。
ドラマの感動を下支えしているのは、ディテールの緻密さだ。毎回展開される主人公たちの会話が、どうでもいいような些細な会話なのだが、非常にリアルに感じる。友人が泊まりに来た時に、3人で床に雑魚寝するか1人はベッドで寝るかとか、買って来たお菓子をいつ披露するのかとか、些細などうでもいいことを、気を遣いながらも真剣に言い合っている。それがまた楽しいのだと伝えているのだろう。
女子小学生のシール交換の駆け引きとか、放課後のドラマクラブとかのディテールも丁寧に描かれている。それが本当に女子小学生のリアルなのかどうか私には分からないが、非常にリアルに見える。バカリズムがどうしてそんなにリアルに描けるのか、不思議でならない。もしかしたら彼の前世は女子小学生、中学生、OLだったのかもしれない。
また、毎回のエンディングには当時のヒット曲が効果的に使われている。それ以外にも、当時のヒット曲が惜しげもなく続々登場する。たまごっち、セーラームーン、ポケベル、エンジェルブルーなどの流行りモノも。私は主人公たちと同世代ではなく父親世代なのだが、毎回懐かしさを感じた。
人生2周目はできないが、ドラマは何回でも鑑賞できる。2回目は結末こそ分かってはいるが、ディテールをより深く味わうことができるし、新たな発見もあるだろう。それもまたバカリズムの狙い通りではないか。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2023年紅白歌合戦の感想。(ときめき研究家)

2024-01-05 21:50:57 | ときめき研究家
昨年の大晦日も紅白歌合戦を観た。視聴率は過去最低だったそうだが、それでも30%前後の家庭がリアルタイムで観ている。我が家も含め、習慣化しているということで、年末には欠かせない存在だ。

乃木坂46は、久しぶりにその年のヒット曲から『おひとりさま天国』を歌唱した。多様な生き方を肯定する内容で、番組のテーマに沿っていたのも理由ではないか。可愛らしい曲調で、なかなか辛辣な歌詞なのは乃木坂らしい。
櫻坂46『Start over!』は激しいダンスとハードな曲調で、グループの特徴がよく出ていたと思う。私の家族からはなぜグループ名を変えたのか、変えたのになぜ似たような曲を歌っているのかいう質問を受け、上手く説明できなかった。グループ名を変えたのは圧倒的なセンター平手友梨奈が抜けたから、でも連続性も大事にして曲調は踏襲している、という答えで多分当たっているのだろう。個人的には違った曲調の『桜月』の方を歌ってほしかった。

AKBグループから今年も出場なしは寂しかった。旧ジャニーズ事務所不出場も、紅組には関係なかった。
唯一、グループ卒業生からは宮脇咲良がLE SSERAFIMの一員として出場していた。HKT48在籍中からIZ*ONEの活動に参加し、その後現在のLE SSERAFIMとして引き続き韓国で活躍中。私の好みではないが、その活躍ぶりは認めざるを得ない。かつて指原莉乃が注目、激推しした目は確かだったということだろう。

今回の特徴として、上記3グループを含み、日韓、男女、多くのアイドルグループが出場し、各々のパフォーマンスを見せた。ときめき研究家としてはお恥ずかしい限りだが、初見のグループが多く、楽曲も私には難解なものが多かった。それだけ多様化している中、本家AKB48の再出場はなかなか難しいだろうと予想される。それでも良い楽曲を定期的に出し続けていれば、いつかまたスポットライトが当たる日も来るかもしれない。当面は20周年の2025年はチャンスだろう。出場できれば、卒業生の力も借りて盛り上げを見せてほしい。

そんな中、番組のラスト近く、YOASOBIの『アイドル』は見どころがあった。そもそも昨年の最大のヒット曲で、テレビ初歌唱として注目されていた。アイドルの虚実を歌い、曲調が自在に変化する難解な楽曲だが、一切乱れのない完璧な歌唱だったと思う。そのバックで、番組に出演していたアイドルグループが入れ代わり立ち代わり総出演でダンスを披露したのは壮観だった。その最後に登場したのがanoちゃんと橋本環奈。まさに「アイドル」というテーマで一期一会、一夜限りの、刹那で豪華なステージが展開されたのだった。紛れもなく番組のクライマックスだったと思う。
そして興味深いのは、アイドルなのかアイドルではないのか判断に迷う「新しい学校のリーダー」とPerfumeは登場しなかった。これは彼女たちの自己認識が非アイドルだからだろう。また、乃木坂卒業生として初めてソロ歌手として出場し2曲も歌った生田絵梨花も、この曲には参加しなかった。彼女もまた非アイドル認識なのだろう。その判断も興味深かった。

アイドル以外では、演歌歌手の扱いのぞんざいさには同情させられた。
三山ひろし歌唱時の「けん玉ギネスに挑戦」は、もはや恒例行事になっていて、誰も歌など聴いていない。芸能人水泳大会の競技中に流れる新人歌手のワイプ映像のような扱いだ。しかも今年はいったん成功とアナウンスしながら、後になって失敗と訂正される不手際。失敗した人の心中を察するといたたまれなくなる。これは次回リベンジの流れなのか? 三山ひろし出場確定で、本人は案外喜んでいるのだろうか。
水森かおりの歌唱時には「ドミノ倒し」の新趣向が導入され、これも恒例になりそうな予感がした。これもまた、ドミノの成否にばかり注目し、誰も歌を聴いていない。司会の有吉弘行が「誰も歌を聴いてなくて申し訳ない」とフォローする始末。ただ、けん玉と違って、ドミノの絵柄が楽曲「日向岬」のイメージだったので、歌を引き立てる演出の範疇にギリギリ留まっていたという見方もできる。
そのほかに、天童よしみと山内惠介は、それぞれ大阪と浅草からの中継で、お笑い芸人とのカラミの演出。これもまた、ただでさえ屋外で寒い上に、歌に集中できなさそうで気の毒だった。寒い中、裸になる芸人も気の毒だが・・・。

同じ中継でも、自分のコンサート会場からの中継になるアーティスト系は恵まれている。今回だとさだまさしがそうだった。福山雅治もトリでない年は決まって中継だ。自分の番に歌うだけでいいので、拘束時間も短いし、応援などの演出にも付き合う必要がない。何より自分のファンのためのコンサートを優先できる。
本来なら、様々なデメリットがあっても生放送のNHKホールに来られる歌手を選抜すべきだと思うが、そうも言っていられないのだろう。

そのほかに印象に残ったのは、伊藤蘭だ。もちろん年齢相応ではあったが、昔と同じ振り付きでキャンディーズナンバー3曲を披露してくれたのは嬉しかった。また「スーさん、ミキさんにも感謝」というひとことにもグツと来た。応援に駆り出されていたオールドファンの盛り上がりぶりにも胸が熱くなった。
薬師丸ひろ子『セーラー服と機関銃』の美しい歌声が今回も健在だったのも嬉しかった。
一方、浜辺美波の歌唱には別の意味で耳を奪われた。ディズニーメドレーの冒頭、橋本環奈とのデュエットで『いつか王子様が』を歌ったが、あの曲は彼女たちには難しすぎた。一応元アイドルグループの橋本環奈がフォロー役だったと思うが、彼女の歌唱も相当頼りなく、1曲の間非常に不安定なパフォーマンスに終始した。久々に見る「下手の醸し出す良さ」であり、浅田美代子、大場久美子、川田あつ子、中野理恵、守谷香らの殿堂アイドルを彷彿とさせた。そこまで狙って選曲したのだとすれば、制作者のグッドジョブだと思う。


2015年紅白歌合戦の感想 
2016年紅白歌合戦の感想 
2017年紅白歌合戦の感想 
2018年紅白歌合戦の感想 
2019年紅白歌合戦の感想 
2020年紅白歌合戦の感想 
2021年紅白歌合戦の感想 
2022年紅白歌合戦の感想 
コメント (1)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2023年ベスト8を選定。(ときめき研究家)

2023-12-31 15:07:48 | ときめき研究家
大晦日なので、恒例どおり2023年のAKBグループ、坂道グループの楽曲からが選曲してプレイリストを作成する。シングル曲はだいたい配信で購入しているのだが、あまり聴き込めずにブログ記事が書けなかった曲もあった。ましてやカップリング曲にまではなかなか手が回らず、今年は10曲に満たないベスト8となった。
音楽を聴く時間はあまり変わっていないが、昔の曲を聴くことが増えた。1カ月森高千里ばかり聴いていた時期もあった。自分の気持ちに正直に、その時時に聴きたい曲を聴くスタンスで、続けていきたい。

『桜月』(櫻坂46)。この曲が今年のベストワン。緊張感の中に華やかさもあり、櫻坂46というグループ名での代表曲になったと思う。

『おひとりさま天国』(乃木坂46)。

『渚サイコー!』(NMB48)。

『アイドルなんかじゃなかったら』(AKB48)。

『あのさ、いや別に』(NGT48)。

『Start over!』(櫻坂46)。

『パクチーピーマングリーンピース』(日向坂46)。

『Monopoly』(乃木坂46)。


2022年のベスト10はこちら
2021年のベスト12はこちら
2020年のベスト5はこちら
2019年のベスト10はこちら
2018年のベスト10はこちら
2017年のベスト12はこちら
2016年のベスト12はこちら
2015年のベスト12はこちら
2014年のベスト12はこちら
2013年のベスト12はこちら
2012年のベスト10はこちら
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

柏木由紀が卒業発表。「チームBのファンより」はどうなる?(ときめき研究家)

2023-12-13 22:00:09 | ときめき研究家
少し古い話になるが、10月20日に柏木由紀がAKB48からの卒業を発表した。2024年3月に卒業コンサートを行うとのことだ。
このブログのタイトルは「チームBのファンより」。初期チームBの魅力について語るべく、2008年6月に開設された。ブログ管理人氏をはじめ、複数のライターが思い思いに記事を掲載していた。私ときめき研究家は少し遅れて同年8月から参加したが、気が付けば今日まで800以上の記事を掲載している。
そしてついに、初期チームBのメンバーだった最後の一人、柏木が卒業を迎えるのだ。
柏木は40歳になっても卒業せずに生涯アイドルを貫くのだと、根拠なく信じていたので、意外だった。しかし、柏木本人がその時だと感じたのなら、きっといいタイミングなのだろう。

柏木の最大の魅力は、個性的な歌唱だと思う。グループの一員として、ソロ歌手として、ユニット「フレンチキス」として、魅力的なベルベットボイスを聴かせて続けて来た。声だけで判別できる歌唱力豊かな歴代メンバーと言えば、柏木、渡辺麻友、山本彩だと私は考えている。柏木がソロコンサートを何回も開催できているのは、所属事務所も彼女の歌手としての力をプッシュしているからだろう。渡辺麻友ファンとしては羨ましかった。
彼女の歌唱を振り返るため、手持ちの音源からプレイリストを作成し、通勤時に聴いている。

柏木由紀ベスト
1.『夜風の仕業』(チームB『シアターの女神』公演ユニット曲(ソロ))
2.『よわむしけむし』(アルバム『ここがロドスだ、ここで跳べ』収録曲(ソロ)) 過去記事
3.『口移しのチョコレート』(チームB『アイドルの夜明け』公演ユニット曲)
4.『シアターの女神』(チームB『シアターの女神』公演全体曲)
5.『てもでもの涙』(チームB『パジャマドライブ』公演ユニット曲) 記事多数 数多のバージョン
6.『悲しい歌を聴きたくなった』(『シュートサイン』カップリング曲(渡辺麻友とのデュエット)) 過去記事
7.『やさしくありたい』(アルバム『0と1の間』収録曲(指原莉乃とのデュエット)) 過去記事
8.『遠距離ポスター』(『桜の栞』カップリング曲) 過去記事
9.『思い出せない花』(フレンチキスシングル曲) 過去記事
10.『ショートケーキ』(シングル曲) 過去記事
11.『火山灰』(フレンチキス『ロマンス・プライバシー』カップリング曲(ソロ))

どの曲でも、柏木の声だとすぐわかる安定した発声、歌唱だ。ユニット曲や全体曲でも、柏木のソロパートが始まると曲の色合いが柏木色に染まると言うか、曲の世界観を支配してしまうのだ。

ちなみに、恋愛関係のスキャンダル報道も何回かあり、それをスルーし続けたことへの批判もあったようだが、その点について私はあまり興味がなかった。指原莉乃のように転籍にもならず、峯岸みなみのように坊主にもならず、淡々と主力メンバーとして在籍し続けた。それは時代の違いであり「清純フィロソフィー」後の自己責任原則が適用されたものだろう。離れたファンもいただろうが、気にせず推し続けたファンもいたから在籍し続けられたということだ。

柏木の卒業コンサートのチケットは確保した。アイドルのコンサートとしては、指原莉乃の卒業コンサートを2019年4月に横浜スタジアムで観て以来、実に5年ぶりとなる。私は元々「現場派」ではないが、それにしてもそんなに現場から離れていたのかと改めて実感した。
最後までアイドルとして振舞い続けた柏木のパフォーマンスをしっかり目に焼き付けたい。
コンサートで楽しみなのは、初期チームBのメンバーが参集することだ。芸能人を続けている指原莉乃、平嶋夏海らはもちろん、ジャカルタで活躍中の仲川遥香も駆けつけるだろう。最近結婚報道があった多田愛佳、出産報道があった浦野一美も来てくれるだろう(初期チームBのことを当時はそう呼んでいなかったが、キャプテン名を付ける後の慣例に従えば「浦野チームB」と呼べる)。更に、佐伯美香との『てもでもの涙』デュエットは再現されるだろうか?(そもそも当ブログ管理人氏は佐伯ファンだった)

そして芸能活動を引退した渡辺麻友はどうだろうか? 引退の決意は固く、一切動静も伝わらないことから、今回も出てこない可能性もある。それはそれで彼女の選択なので尊重する。一方で、「まゆゆきりん」と呼ばれた盟友の卒業だから、今回だけ特別で一般人としてファンの前に姿を現す可能性もなくはないだろう。歌わなくてもいい、一目だけでも元気な姿を見たいと私は願っている。

そしてこのブログだが、初期チームBが消滅しても、ブログ更新は続けたい。少なくとも私は、私が書きたいことがある限り書き続ける。書きたいこととは、AKBグループや坂道グループの新曲についてだったり、昔の曲についてだったり、その他のアイドルについてだったり、ドラマや映画の感想だったり、限定はしていない。初期チームBの思い出を書くこともあるだろう。
記事の掲載数はこのところ減少傾向だが、書きたいことがないのに無理して書くことはしていない。月に1本か2本でも、書きたいことがあれば続けて行きたい。当面1001本までは目標としたい。だから、今後も時々はのぞいてみてほしいです。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

乃木坂46『Monopoly』を聴く。(ときめき研究家)

2023-12-05 22:19:58 | ときめき研究家
乃木坂46の新曲は、いっぷう変わった楽曲だ。
「やさー、しさをー、あいー、だとー」と、2拍目にアクセントを置いた歌詞の載せ方が個性的だ。ぎっこんばったんしながらメロディーが進んでいくような印象。ノリは確実に悪いが、慣れると耳に残ってしまう癖になる曲調だ。
歌詞の内容は、よくある勘違い片思いモノ。誰にも優しい彼女の態度を勘違いして、のぼせ上っているうぶな少年の思いを歌っている。自分だけで独占したいと歌っているが、それは叶わぬことだ。
もう1つ特徴的なのは、遠くに旅立つ彼女の乗る列車を自転車で追いかけているシーンだ。列車で旅立つ彼女は『好きといえば良かった』『Doubt!』『大人列車』と共通。それを無謀にも自転車で追いかけるのは『平行線』と同じだ。AKBグループや坂道グループでお馴染みの状況を2つ組み合わせた楽曲と言える。

最後に出てくる「そのハートを独占したいんだ」という歌詞が、タイトルを回収する重要なフレーズだが、そこはちょっと残念だ。「独占したいんだ」が「独占たいんだ」に聞こえる。音符の数が足りないので強引に「した」を1音に乗せているが、よく注意して耳を澄ませていないと「し」は聞こえない。こういう所が気になってしまうのは私の悪い癖だ(悪い癖といいながら実は悪いと思っていないのは、刑事コロンボや杉下右京と同じ)。

ところで乃木坂46は、年末のNHK紅白歌合戦でこの歌を歌うのだろうか。乃木坂46でもシングルは1年に2曲しか出さなくなって、その年のヒット曲にこだわらず、歌いたい曲を歌うような風潮になっている。だから、『Monopoly』を歌う可能性は低いのではないか。私は聴いてみたいし、生歌で「独占したいんだ」と聞き取れるかトライしてみたいものだ。
今年もAKBグループは不出場。坂道グループから2組が出場だが、2組目は昨年の日向坂46から櫻坂46に変わった。これはNHKの意思というより坂道側の意向で、交替で出ようということなのだろう。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

作詞家三浦徳子を偲んで。初期松田聖子の作品を回想。(ときめき研究家)

2023-11-23 17:32:06 | ときめき研究家
ミュージシャンや音楽関係者の訃報が相次いだ。自分との年齢も近く、自分が好きで聴いてきた音楽の作り手たちの逝去は、他人事とは思えない。
三浦徳子の最大の業績と言えば、やはり松田聖子を世に出したことだろう。
デビュー曲の『裸足の季節』から『青い珊瑚礁』『風は秋色』『チェリーブラッサム』『夏の扉』までのシングルと、アルバム『SQUALL』『North Wind』の全曲と『シルエット』のほとんどの楽曲を作詞した。トップアイドルとしての地位を獲得するまでを支えたと言える。
6枚目のシングル『白いパラソル』以降は、松本隆にバトンタッチされた。その後の多彩な楽曲により、松田聖子は既存アイドルの枠を超えた存在になった。なので松田聖子といえば松本隆という印象が強いが、デビュー後約1年半の三浦徳子による基礎があってこその、松本隆の応用・発展だったと考えている。強引に例えるなら、三浦徳子作品で160キロのストレートを投げられるようになり、その後松本隆作品で七色の変化球を身に付けた、そんな感じだ。

三浦徳子の歌詞は、しかし王道アイドルの正統的な歌詞かと言えば、そうでもない。どこか引っ掛かりのある、おかしなところもある歌詞なのだ。
『裸足の季節』では、出だしの「白いヨットの影」の「ヨット」が早口で妙に耳に残る。サビは「えくぼの秘密あげたいわ」という伸びやかな歌唱が印象的だが、「えくぼの秘密」とは何か? 洗顔フォームの商品名を強引に歌い込んでいるのは分かるが、謎めいた歌詞だ。
『青い珊瑚礁』では、冒頭サビ部分「あー私の恋は」が強烈に印象的だが、直後に「南の風に乗って走るわ」「青い風切って走れ」と、「恋」を擬人化し、かつ「風に乗れ」「風を切れ」と2つの違う命令をしていて混乱する。語感はとても良いし、意味よりもメロディーに合っていることを優先した歌詞なのだ。
アルバム『SQUALL』収録の『9月の夕暮れ』には、「銀杏並木 鮮やかな色」という歌詞があるが、銀杏の葉が色づくのは通常11月だから不正確だ。これもイメージ重視の歌詞と言える。
もう1つ。アルバム『North Wind』収録の『North Wind』には、そっけない彼の態度に「そうよそんなところも好きになった原因だから」という歌詞があり、「原因」という言葉に違和感があった。普通なら「理由」だろうが、メロディーには「原因」の方が合っている。
そういう小さな引っ掛かりはありながらも、歌いやすく、聴きやすい、メロディーに良く合った歌詞ばかりだったと思う。

松田聖子の初期楽曲の中で私が一番好きなのは、『チェリーブラッサム』のB面曲『少しずつ春』だ。もちろん作詞は三浦徳子だ。
過去記事でも書いたことがあるが、私が大学生だったころ、FM東京の番組『松田聖子のひとつぶの青春』の「聖子と電話でデート」というコーナーに出演し、3分ほど「デート(お話)」をした後、リクエストした曲だ。松本隆の手がまだ入っていない、基礎ポテンシャルが高いまま、がむしゃらに歌っている感じが素晴らしい。また、「月日はいたずらな子供みたいに冷やかし半分見ている」とか「木立が緑の会話をしはじめる」とか、三浦徳子お得意の擬人化もある。まだ2月なのに「緑の会話」というのも早すぎて、三浦徳子らしい。
ちなみに、3分間の「デート」の中で、カラオケではどんな歌を歌うのかと聖子に尋ねられ、1フレーズ歌わされたのが『君に薔薇薔薇・・・という感じ』だった。その曲も奇しくも三浦徳子作詞だった。

ネットで見つけた「オリコンニュース」の記事から、三浦徳子作詞曲の売り上げトップ15を引用する。ミリオンこそないが、間違いなく80年代を代表するヒットメーカーの一人だった。
1位…杏里「キャッツ・アイ」(1983年8月5日発売) オリコン週間シングルランキング最高1位、累積売上82.0万枚
2位…松田聖子「風は秋色/Eighteen」(1980年10月1日発売) 最高1位、累積売上79.7万枚
3位…松田聖子「チェリーブラッサム」(1981年1月21日発売) 最高1位、累積売上67.5万枚
4位…松田聖子「青い珊瑚礁」(1980年7月1日発売) 最高2位、累積売上60.3万枚
5位…八神純子「みずいろの雨」(1978年9月5日発売) 最高2位、累積売上58.8万枚
6位…松田聖子「夏の扉」(1981年4月21日発売) 最高1位、累積売上56.9万枚
7位…八神純子「パープルタウン」(1980年7月21日発売) 最高2位、累積売上56.4万枚
8位…工藤静香「嵐の素顔」(1989年5月3日発売) 最高1位、累積売上52.4万枚
9位…田原俊彦「君に薔薇薔薇…という感じ」(1982年1月27日発売) 最高3位、累積売上36.5万枚
10位…沢田研二「ス・ト・リ・ッ・パ・ー」(1981/9/21発売) 最高6位、累積売上36.4万枚
11位…吉川晃司「モニカ」(1984年2月1日発売) 最高4位、累積売上33.9万枚
12位…シブがき隊「ZIGZAGセブンティーン/Gジャンブルース」(1982年10月28日発売) 最高5位、累積売上33.5万枚
13位…松田聖子「裸足の季節」(1980年4月1日発売) 最高12位、累積売上28.3万枚
14位…岩崎宏美「万華鏡」(1979年9月15日発売) 最高10位、累積売上27.8万枚
15位…郷ひろみ「お嫁サンバ」(1981年5月1日発売) 最高6位、累積売上27.3万枚
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

NMB48『渚サイコー!』とカップリング曲を聴く。「てんとうむChu!」の思い出も。(ときめき研究家)

2023-11-04 13:16:06 | ときめき研究家
渋谷凪咲がNMB48を卒業するとのこと。この曲は卒業ソングのようだ。
彼女は、2013年に48グループの期待の新人で結成された横断ユニット「てんとうむChu!」のメンバーだった。その7名のメンバーの中で最後までグループに残ったことになる。
小嶋真子、西野美姫、岡田奈々、北川綾巴、田島芽瑠、朝長美桜はすでに卒業している。私の個人的な印象では、個性的なメンバー揃いの中で、渋谷は一番目立っていなかった。あまり自己主張をせずいつもニコニコしている印象だった。そんな彼女が最後までグループに在籍するとは不思議なものだ。

「てんとうむChu!」に関する過去記事は以下。
『君だけにChu!Chu!Chu!』
『選んでレインボー』
『スマイル神隠し』
『初恋のおしべ』
『ダンシは研究対象』
『清純タイアド』

『渚サイコー!』。
タイトルに個人名を堂々と盛り込んでいて、そんな曲は『上からマリコ』以来ではないか。一応海の「渚」と名前の「凪咲」を掛けてはいるが、歌詞の内容は卒業する彼女を絶賛する内容で、彼女がファンやメンバーに愛されていたことがうかがえる。
海で出会った彼女のルックスだけでなく独特のセンスに惹かれ、夢中になったが、別れは突然やって来る。切ないけれど君との思い出は宝物。「渚バイバイ」と笑って見送る。そんな歌詞と、王道のアイドルポップっぽい楽曲。サイコーの卒業ソングだ。

『ジンクスとゲンカツギ』。
ジンクスとは「2年目のジンクス」というように、悪いことが起きる時に使う言葉だ。良いことが起きる「ゲン担ぎ」と混同して使われているが、良いことには使わないのが正しい。そういう事実を教えてくれる歌だ。私も誤解していた。勉強になる。でも、たったそれだけのアイデアで1曲作ってしまう秋元康の力業には、いつもながら恐れ入る。
曲調はサスペンスっぽく、歌詞の内容とのアンバランスさが面白い。

『恋のヘタレ』。
強気の彼女に翻弄される「ヘタレ」男子の歌だ。そして大阪弁で歌われている。
男女の関係性はまちまちだが、この歌のように女性の方が主導権を持ち、男性の方が振り回されるパターンは案外安定しているものだ。それはそれで、その状況を楽しんでいたりもする。この曲もそのパターンで、とても幸福そうだ。そういう世界観に大阪弁はぴったりで、調和している。『恋の意気地なし』だとちょっとニュアンスが違う。過去の大阪弁歌詞の楽曲としては『ホンマにサンキュー』とテイストが似ている。

『職員室に行くべきか』。
授業中の教師の発言に納得できずに、質問をしようとしたらチャイムが鳴って時間切れ。それでもモヤモヤして、職員室に行って話をするべきかと自問し、実際に行くまでの心情を歌っている。珍しい状況を歌っていてユニークな歌詞だ。教師の発言など聴き流したり、納得できなくてもわざわざ対話しようとしない醒めた若者が多数だと思うが、彼は食い下がろうとしている。その姿勢は好ましい。
1つだけ残念なのは、その教師の発言とはどんな内容だったのか一切歌われていないことだ。それによって生徒である「僕」に共感できるかどうかが違ってくる。生徒を差別したり人格を否定するような発言か、それとも大人の価値観を押し付けるような発言か? でもそこはあえて具体的な歌詞にせず、聴き手の想像に任せているのかもしれない。自分が言われて嫌だったことを思い出してほしいという意図か? でも時間が経ち過ぎていて、私は思い出せない。
シリアスな内容とはうらはらな、穏やかなメロディーが心地よい。

『人生は長いんだ』。
フォーク調のしみじみした歌だ。渋谷凪咲のソロバージョンと、お笑い芸人たち(ダイアン、かまいたち、見取り図)と一緒に歌っているバージョンがある。番組での共演者なのだろうか。
この曲も渋谷凪咲の卒業ソングなのだろう。いや、彼女への応援ソングという方が適切か。人生の次のステージに歩き出す彼女に、「人生は長い」から着実に歩いていけばいいと励ましている。人生が長いか短いかは主観的なものだから何とも言えないが、まだ20台の彼女と60過ぎた私では受け止め方が違う。「人生は長い」と悠長なことは言っていられない私は、この曲を聴いて焦りを感じてしまった。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

谷村新司を偲んで。(ときめき研究家)

2023-10-20 21:15:09 | ときめき研究家
谷村新司が亡くなった。このブログでは、彼がアイドルに提供した作品について語りたい。
とは言っても、彼のアイドルへの提供曲はごく僅かで、私が思い浮かべることができたのは以下の3曲だ。

山口百恵『いい日旅立ち』(1978年)。
言わずと知れた大ヒット曲。今回の報道時にも、谷村新司の代表曲として挙げられていたし、山口百恵にとっても代表曲の1つと言える。長く歌い継がれている国民的ヒット曲だろう。
当時の山口百恵は、さだまさし提供の『秋桜』では結婚前日の母親への感謝を、『いい日旅立ち』では人生の旅立ちの決意を、いわば日本的な湿度の高い感傷を歌い上げていた時期だ。阿木燿子・宇崎竜童コンビの『プレイバックPART2』『絶体絶命』のような、ハードボイルドな世界とは全く異なる歌だった。どんな歌でも主人公になりきって歌える、アイドルという枠を超えたカリスマ、国民歌手というべき存在になっていた。
『いい日旅立ち』は国鉄のPRソングで、旅情を感じさせるが、歌詞の中で列車や鉄道とは一切歌っていない。むしろ人生の旅立ちといった風情が強い。曲調は暗く、声域も低く、一歩間違えば陰鬱としたメロディーとも言える。よくこの曲を山口百恵サイドがOKしたものだ。そういう意味で『昴』とも近しい印象の歌だ。しかしそれこそが谷村新司の真骨頂なのだろう。

柏原芳恵『花梨』(1982年)。
1980年デビューの柏原芳恵(デビュー時は、よし恵)は、同期の松田聖子、河合奈保子と人気を分け合ったアイドルだった。当時、現天皇がファンだったことでも知られる。
中島みゆき提供の卒業ソング『春なのに』が有名だが、この『花梨』も一種の卒業ソングと思われる。卒業して上京した幼なじみを思い続ける少女の歌だ。いつしか彼からの手紙が途絶えるが、彼の負担にならないよう「私もボーイフレンドができた」と嘘をつく心情がいじらしくも少し怖い。「カリン カリン」と弾むようなメロディーは可愛らしくはあるが、やはり物悲しく響く。

松浦亜弥『風信子(ヒアシンス)』(2004年)。
最後のソロアイドル松浦亜弥に、どういう経緯で谷村新司が曲を提供することになったのかは分からないが、奇跡的な出会いが名曲を生んだ。
この曲も卒業ソングである。しかし学生時代を懐かしむより、未来を展望する色合いが強い。「いつも65点の私は何色だろう?」「私はいつか私らしい風になる」というフレーズが印象的。岐路に立つ自分を客観的に見つめ、前を向いて歩きだす姿勢が凛々しい。谷村新司的な翳りのあるメロディーが、松浦亜弥のドライな歌声で中和されて心地よく響く。

改めて振り返れば、3曲とも別れや旅立ちを歌った曲だ。3曲の主人公は3人とも一人きり、孤独だ。それは谷村新司の世界観を反映しているのだろう。そして、一聴するだけでわかる、独特の谷村新司ぶしというか、翳りのあるメロディーラインが埋め込まれている。職業作曲家ではないシンガーソングライターは、他人への提供曲であっても独自の色が出ている方が望ましい。依頼する側もそれを求めているのだから。

最後に、谷村新司に『風信子』のサビの歌詞を贈りたい。「ありがとう あなたがくれた全てにありがとう」。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

NGT48『あのさ、いや別に・・・』を聴く。同意なきキスは許されるか?(ときめき研究家)

2023-10-01 17:11:11 | ときめき研究家
NGT48『あのさ、いや別に・・・』
中井りかの卒業シングルのようだ。そういうことに関係なく、純粋に楽曲として鑑賞する。

歌詞の内容は定番の「幼なじみとの別れ」だ。AKBグループでは、もう何度も歌われてきたテーマだ。『Doubt!』『好きと言えばよかった』『大人列車』『鈴懸なんちゃら』『思い出は遠いほど』などなど。幼なじみが卒業や引っ越しで遠くに行ってしまうことが判明し、急に焦って気持ちを伝えたくなったり、それでも素直になれず素っ気なくしたり、引っ越して行った先に訪ねて行ったり、秋元康が得意とするパターンの一つだ。

『あのさ、いや別に・・・』の男の子は、引っ越して行く女の子に対して、最後に何とか気持ちを伝えようとしている。勇気を振り絞って「あのさ」と言い出したものの、後が続かず「いや別に」と言いよどんでしまう。その場面はありありと浮かぶし、狙いはよいと思うが、セリフで「あのさ、いや別に・・・」と一続きで言わせているのは残念だ。「いや別に」の前に、もう一呼吸ほしかったと思う。
その後、女の子の方も気持ちを伝えたくて「いつか会いに来て」と水を向けている。それなのに「それってどういう意味?」と自問する男の子はもどかしい。彼女も好きって意味だよ。本当にもどかしいけれど、それがこの手の歌の神髄なのだ。

そういうもどかしさを延々と経たうえで、彼はついに思い切った行動に出る。「言葉にはできないI love you だからいきなりキスしちゃいました」。しかしこの行為、今日的には非常識な行為かもしれない。
口で好きだと言えないくせに、行動でキスができるというのはどういうことだろう。例えとして適切かどうかわからないが、ツーアウト満塁で迎えた強打者に対して警戒してボールが先行し、3ボール0ストライクでど真ん中に投げてしまうピッチャーのような状態になってしまうのだろう。
しかし彼女の気持ちに確信が持てないから告白できないはずなのに、いきなりキスするのはリスクが高すぎる。口で告白して拒絶されたら、恥ずかしくはあるがそれだけだ。いきなり同意も得ずにキスして拒絶されたら、犯罪になりかねない。

もちろんこれは歌詞の中の出来事で、実際にそういう行動を取る男の子は滅多にいないだろう。
また、「いきなりのキス」は歌の中ではよくある出来事で、それが全て問題だとポリコレ的に批判するのが本意ではない。逆に、「真面目にキスしていいのなんてムードを知らない人」と松田聖子が『秘密の花園』で歌ったように、一々言わなくていいこともあるのだ。歌の中では、お互いにテレパシーが使えて、言葉に出さなくても相手の気持ちが分かるという前提があるのだ。
ただ歌と現実は違う。NGT48の歌を聴いた男の子が、好きならばいきなりキスしてもいいのだと勘違いして、現実世界で実行に移すようなことが起きてほしくない。時々そういう勘違いをする人はいる。現実社会では、ムードはなくていいので、相手の真意を確かめてから行動に移す方が無難なのだと心得ておきたい。

書き忘れていたが、曲調は素晴らしい。大らかなメロディー、管楽器を駆使した賑やかなアレンジともNGT48らしい楽曲だ。
歌い出しのソロは中井りかと思われるが、可愛いだけでない意思の強さのようなものを感じる。サビ部分の伸びやかなメロディーは皆気持ちよく歌えているようだ。大サビに当たる部分はラップで、アクセントになっている。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする