司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

昭和41年商法改正

2024-04-24 03:53:23 | 会社法(改正商法等)
商法改正の問題点(シンポジウム)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shiho1949/1964/26/1964_26_136/_pdf/-char/ja

「日本私法学会私法」昭和39年4月号に掲載された「商法改正の問題点(シンポジウム)」。昭和41年商法改正前夜の議論が紹介されている。大隅健一郎先生や鈴木竹雄先生が登場されており,興味深い。


 ちなみに,

「昭和41年改正の内容は,

・ 昭和25年改正で確立された株式の自由譲渡性の絶対的保障の原則を修正して定款による株式譲渡制限の制度を設けたこと
・ 記名株式の譲渡方法について株券の裏書または譲渡証書を添付して株券を交付する方法に代えて株券の交付のみで足りるとしたこと,それに伴い株券不所持制度を設けたこと,
・ 株主の請求による額面株式と無額面株式の相互転換の制度を設けたこと
・ 複数の議決権を有する株主についての議決権の不統一行使の制度を設けたこと
・ 第三者に新株引受権を与えて行う新株発行について一般に株主総会の特別決議が必要であった規定を特に有利な発行価額で発行する場合にのみ総会の特別決議が必要であるとしたこと
・ 株主の新株発行差止請求権の行使の機会を確保するため新株の発行に関して必要な事項の公示の規定を設けたこと
・ 新株引受権の譲渡を明文で認め譲渡方法を規定したこと
・ 株主名簿の閉鎖期間内でも転換社債の転換請求をすることができるようにしたこと

である」(後掲戸川)

cf.  戸川成弘「昭和41年商法改正(1)」(富山大学経済論集昭和42年2月号)
https://toyama.repo.nii.ac.jp/record/1762/files/42-2_01-07_Page339to366_Togawa.pdf
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商業・法人登記関係の主な通達等の英語併記バージョン

2024-04-24 03:21:10 | 会社法(改正商法等)
商業・法人登記関係の主な通達等
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00098.html

 主な通達等の「英語併記バージョン」が掲載されている。
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会社法第128条の存在意義

2024-04-23 09:57:24 | 会社法(改正商法等)
会社法
 (株券発行会社の株式の譲渡)
第128条 株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。ただし、自己株式の処分による株式の譲渡については、この限りでない。
2 株券の発行前にした譲渡は、株券発行会社に対し、その効力を生じない。


 そもそも,株券発行会社が例外的な存在となっている現在,会社法第128条は存在意義を有しないのではないだろうか。

 株券発行会社において,株式譲渡の譲受人は,株券を手中にしていれば,譲受人単独で譲渡承認請求をすることができ(会社法第137条第1項),また譲受人単独で株主名簿記載事項の書換えの請求をすることができます(第133条第1項)。しかし,譲渡人と共同で手続をするのであれば,いずれも株券の提示は要しない(第133条第2項,第137条第2項)。株券が現実に発行されていることの実益は,この単独請求の可否程度ではないかと。本来は,株主であることの証拠的機能を有したわけであるが,株券不発行会社においては,株主名簿記載事項証明書で代替されているわけであるし,株券に拘る意味もないかと。

 株券発行会社であっても,現実に株券を発行している株式会社は少ないという事情に鑑みれば,端的に株券の授受がなくても株式の譲渡は有効である,という取扱いにするのが合理的であるように思われるのだが。

 会社法第128条を前提にすると,現状追認として株券の授受がないケースを有効と取り扱おうとする場合に,「誰が利益を受けるか考慮せず,違法な行為を一律に有効と解するのはおかしい」(江頭憲治郎「株式会社法(第8版)」(有斐閣)234頁))という議論にならざるを得ないという問題もある。
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登記簿の附属書類閲覧のデジタル化

2024-04-23 09:15:30 | 不動産登記法その他
官報
https://kanpou.npb.go.jp/20240422/20240422g00100/20240422g001000003f.html

「不動産登記規則等の一部を改正する省令」(令和6年法務省令第32号)が,昨日(4月22日)公布された。

 登記簿の附属書類閲覧のデジタル化(登記簿の附属書類又は登記申請書等の閲覧について,現在は登記官の面前でのみ閲覧をすることができるとされているところ,ウェブ会議システムを利用した非対面での閲覧も可能とする。)等に関する改正である。

 不動産登記規則第202条第3項,商業登記規則第32条第2項が新設された。以下については,準則,通達等に規定が置かれるものと思われる。

・ 請求人は、窓口又は郵送で登記申請書等の閲覧請求を行う。
・ 登記官は、ウェブ会議により請求人と面談して請求人の本人確認を行い、本人確認ができた場合には、端末のカメラを用いてウェブ会議の画面上に登記申請書等を映出し、請求人に閲覧させる。
・ 請求人は閲覧に際して、登記官の指示の下、録画等を行うことができる。


 施行期日は,令和6年6月24日(一部を除く。)である。
 
cf. 不動産登記規則等の一部を改正する省令案に関する意見募集の結果について
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCM1040&id=300080308&Mode=1

【改正後】
不動産登記規則
 (閲覧の方法)
第202条 地図等又は登記簿の附属書類の閲覧は、登記官(その指定する職員を含む。第三項において同じ。)の面前でさせるものとする。
2 【略】
3 登記官は、法第百二十一条第三項又は第四項の規定による登記簿の附属書類の閲覧をさせる場合において、請求人から別段の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、第一項の規定にかかわらず、電子計算機を使用して登記官及び請求人が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話することができる方法によって閲覧をさせることができる。

商業登記規則
 (閲覧)
第32条 登記簿の附属書類の閲覧は、登記官(その指定する職員を含む。次項において同じ。)の面前でさせなければならない。
2 登記官は、申請人から別段の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、前項の規定にかかわらず、電子計算機を使用して登記官及び申請人が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話することができる方法によつて閲覧をさせることができる。
3 【略】
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京都市東山区が出生率で全国最低

2024-04-22 09:30:41 | 私の京都
京都新聞記事
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/1240358

「京都市中心部の4区が入り、特に0・76の東山区はワースト1位となった。この4区は過去調査でも下位の「常連」で、全国でも少子化の最前線を進む地域となっている。
 東山区以外の3区は、上京区が0・80で3位、下京区が0・82で4位、中京区が0・93で12位。」

「京都市人口戦略室の担当者は、この4区の出生率の低迷について「大学生ら単身世帯が多いことが影響しているかもしれないが、はっきりした要因は分からない」と説明。」(上掲記事)

 京都市内の不動産価格の高騰により,いわゆる子育て世帯の市外への流出過多となっていることは,公知の事実であり,「はっきりした要因はわからない」ということはなかろう。
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株券発行前にした株券発行会社の株式の譲渡の効力

2024-04-22 09:12:01 | 会社法(改正商法等)
最高裁令和6年4月19日第2小法廷判決
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=92912

【判示事項】
1 株券発行前にした株券発行会社の株式の譲渡は、譲渡当事者間においては、株券の交付がないことをもってその効力が否定されることはない
2 株券発行会社の株式の譲受人は、譲渡人の株券発行会社に対する株券発行請求権を代位行使することができる

「会社法128条1項は、株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じないと規定しているところ、株券の発行前にした譲渡について、仮に同項が適用され、株券の交付がないことをもって、株券発行会社に対する関係のみならず、譲渡当事者間でもその効力を生じないと解すると、同項とは別に株券発行会社に対する関係に限って同条2項の規定を設けた意味が失われることとなる。また、株券の発行前にした譲渡につき、上記原則を修正して譲渡当事者間での効力まで否定すべき合理的必要性があるということもできない。以上によれば、同条1項は、株券の発行後にした譲渡に適用される規定であると解するのが相当であるというべきである。」

「株券発行会社の株式の譲受人は、株券の発行前に株式を譲り受けたとしても、当該株式に係る株券の交付を受けない限り、株券発行会社に対して株主として権利を行使することができないから(会社法128条2項)、当該株式を譲り受けた目的を実現するため、譲渡人に対して当該株式に係る株券の交付を請求することができると解される。そうすると、株券発行会社の株式の譲受人は、譲渡人に対する株券交付請求権を保全する必要があるときは、民法423条1項本文(平成29年法律第44号による改正前のもの)により、譲渡人の株券発行会社に対する株券発行請求権を代位行使することができると解するのが相当である。」

「そして、株券発行会社の株式の譲受人は、譲渡人の株券発行会社に対する株券発行請求権を代位行使する場合、株券発行会社に対し、株券の交付を直接自己に対してすることを求めることができるというべきであり(大審院昭和9年(オ)第2498号同10年3月12日判決・民集14巻482頁、最高裁昭和28年(オ)第812号同29年9月24日第二小法廷判決・民集8巻9号1658頁参照)、株券発行会社が、これに応じて会社法216条所定の形式を具備した文書を直接譲受人に対して交付したときは、譲渡人に対して株券交付義務を履行したことになる。」

cf. 事案の概要
https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/2023/jiangaiyou_04_1266.pdf
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米国会社を他州に移転するには?

2024-04-20 11:31:58 | 会社法(改正商法等)
MARK RESEARCH
https://www.markresearch.com/how-to-transfer-corp-forn-another-state/

 上掲記事によると,州法にもよるが,単純に本店移転登記はできないことが多いらしい。

 方法として,

(1)B州に新しい法人を同名で登記,B州にA州法人との合併登記を申請し,A州法人を閉鎖する。
(2)B州に新しい法人を設立した後にA州の法人を閉鎖する。
(3)B州にA州法人の州外法人(支店)を登記する。A州法人はそのまま残す。

の3つの方法があるのだとか。

 とすると,日本における不動産登記においては,

(1)の場合,合併による所有権の移転の登記
(2)の場合,事業譲渡による所有権の移転の登記

を経ることになる。(3)の場合は,変更なしである。

 そして,所有権の移転の登記の際に,所有者の「法人識別事項」として「設立準拠法国 アメリカ合衆国B州」の登記をすることになる。

cf. 令和6年4月18日付け「テスラ,会社本店を登記上も移転へ」

 ん~,一筋縄では行かないお話。
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財務省,新たなマネー・ローンダリング(資金洗浄)対策に取り組む方針を表明

2024-04-18 20:29:44 | 会社法(改正商法等)
日経記事
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA182ZR0Y4A410C2000000/

「財務省は18日、新たなマネーロンダリング(資金洗浄)対策に取り組む方針を表明した。金融庁や警察庁、法務省などが連携して、金融機関などが保有する企業の実質的支配者の情報に、捜査当局がアクセスできるシステムの構築を検討する。」

 ふむふむ。

「資金洗浄対策を強化するため、財務省は株式会社に自社の株主となる実質的支配者の情報を法務局へ提出するよう求める仕組みを構築する案を説明した。」
「資金洗浄対策を審査する国際組織の金融活動作業部会(FATF)は勧告で各国に、法人の実質的支配者の最新情報を公的機関が保有するよう求めている。」

 本来,こうあるべき。

「起業時に公証人が、定款について創業者の意思を面会して確かめる手続きで、法務省は動画やシステム上で会社設立の意思を確認できれば、オンラインを含めた面会による確認を省略できるよう見直すと明らかにした。」

 ええっ。動画やシステム上での確認とは??
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テスラ,会社本店を登記上も移転へ

2024-04-18 14:56:09 | 会社法(改正商法等)
日経記事(有料会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN016G80R00C24A2000000/

 米国のテスラが,会社登記上も,デラウェア州からテキサス州に移転するらしい。

 このようなケースで,不動産登記においては,「本店移転」による変更の登記の申請のみならず,「法人識別事項」の変更の登記の申請もする必要がある。各々付記登記がされることになる。

 各別に申請すべきものと考えられる。

登記の目的  所有権登記名義人住所変更
登記原因   年月日本店移転
変更後の事項 本店
       アメリカ合衆国テキサス州(以下略)

登記の目的  所有権変更
登記原因   年月日設立準拠法国変更
変更後の事項 法人識別事項  設立準拠法国 アメリカ合衆国テキサス州

 登録免許税は,2倍かかることになるが,致し方なしか。

【追記】
 という単純な話ではないようだ。

cf. 令和6年4月20日付け「米国会社を他州に移転するには?」
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司法書士及び司法書士法人の業務のマネー・ローンダリング及びテロ資金供与に関するガイドラインについて

2024-04-18 12:46:25 | 司法書士(改正不動産登記法等)
司法書士及び司法書士法人の業務のマネー・ローンダリング及びテロ資金供与に関するガイドラインについて
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00607.html

「本ガイドラインは、司法 書士を対象とする「リスクベース・アプローチ」の枠組みを示し、これを遵守させることを目的とするものである。リスクベース・アプローチは、自らの業務について直面しているマネロン・テロ資金供与のリスクを適時かつ適切に特定及び評価し、リスクに見合ったリスク低減措置(資産及び収入の状況の確認を含む。)を講 ず ることをいい、司法書士が業務を行う上での姿勢を示すものである。
 また、司法書士の業務におけるマネロン・テロ資金供与への対策を実効的なものとするために、法務省、日司連等が行うべき取組みや司法書士に対するモニタリ ングのあり方について明らかにする必要がある。法務省、日司連等が本ガイドラインを踏まえたマネロン・テロ資金供与対策への対応状況等についてモニタリングを行い、適切な是正措置を行うことで司法書士が果たすべき執務の一層の適正化を図るものである。」
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