どうも最近、オープンソースに対するユーザー企業のニーズは、かつてシステム・インテグレータが期待したものとは違う方向に向かいつつあるようだ。
オープンソースに関しては、1年以上前からLinuxといったOSレベルだけでなく、JBossやMySOLなどミドルウエア・レベルにも注目が集まってきた。こうしたオープンソースのミドルウエアを活用すれば、オラクルやBEA、IBMなどの高額な商用ミドルウエアを使わなくても、かなりミッションクリティカルな業務システムでも構築できる。Linuxのカーネル2.6の登場と相まって、基幹業務システムへのオープンソースの適用の対する期待は大きく膨らんだ。
特にこうしたオープンソースに強く、ユーザー企業とのプライム契約が結べるシステム・インテグレータの間では、1つのシナリオが期待を込めて語られていた。それは次のようなものだ。「オープンソースのミドルウエアを活用すれば、商用ミドルウエアを活用する場合に比べ、システム構成次第だが半分のコストで済むケースもある。これを製造業に例えれば、資材調達費の大幅削減に相当する。身を削らなくても、労働力のオフショアリングに求めなくても、ユーザーのコスト削減要求に十分に応え、かつ自らも利益を取れる」
もちろん、ユーザーがオープンソースのミドルウエアのサポートに不安を抱いているうちは、基幹系への適用などあり得ないので、システム・インテグレータがオープンソースのミドルウエアに対するサポート力を持つ必要がある。それさえできれば、ITデフレ下にあってもシステム・インテグレーションの利益率を維持、うまくいけばアップすることができる。多くのシステム・インテグレータはそうした期待をかけた。
だが現実は、システム・インテグレータの期待を裏切り、より厳しい方向に向かっているようだ。最近では、オープンソースのミドルウエアに対するユーザー企業の不安感は、以前に比べ薄らいでいる。それと共に、ユーザー企業の中には、こうしたオープンソースのミドルウエアの使用を前提に、システム・インテグレータに値引きを要求する動きも出始めたという。つまり、オープンソースの活用で浮いたコストはユーザー企業に還元せよ、という要求を出し始めたのだ。浮いたコストの一部を、システム・インテグレーション料金に上乗せするといったことは、システム・インテグレータの甘い願望に過ぎなくなりつつあるのだ。
これはちょうどオフショアリングでの事態に似ている。現状では、オフショアリングによりコストを削減しても、結局はその利益をユーザー企業に還元しなくてはならなくなっている。今やお堅い金融機関でも、オフショアリングを前提に料金引き下げを要求するご時世だからだ。オープンソースのミドルウエアでも、これと同様のことが始まろうとしているのだ。オープンソースのミドルウエア活用を積極的に推進していたシステム・インテグレータからは、「たとえ儲からなくても、ユーザーのニーズに対応しオープンソースのミドルウエア活用を進めなければ生きていけなくなる」といった、当初の期待とは全く異なる嘆きも聞こえてきている。
さて、ではオープンソースのミドルウエアは全く商売にならないかと言えば、決してそんなことはないだろう。こうしたソフトのサポートや、システム構築のノウハウの提供はビジネスになる。ちょうどe-Tetsuさんが報告されている
SourceLabsのようなビジネスモデルだ。あるいはLinuxにおけるレッドハットなどのモデルと言ってもよい。つまり、オープンソース化が進めば進むほど、ITインフラに関する知見が大きな付加価値を持つ。
システム・インテグレータが目指したオープンソースにおけるビジネスモデルは、業務ソフト開発が主で、オープンソフトのサポートなどを従とした。しかし、現実のビジネスの可能性は、どうやら逆だったようだ。オープン化の流れの中でシステム・インテグレータが生き残っていくためには、オープンソース、そして商用ミドルウエアなどを最適に組み合わせるITインフラのコンサル力・構築力・サポート力を高め、ここにビジネスの焦点を当てていく必要があるだろう。