【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

定額減税(月次減税?)

2024-03-30 18:31:00 | 会計、税金、経営、その他の話題
大阪国税管内の各税務署が「給与等の源泉徴収事務に係る令和6年分所得税の定額減税のしかた」というパンフレットを源泉徴収義務者あてに送付しました。

「なにがいいたいんや!?」
「なにをやれちゅうねん!?」
「インボイスと電子取引だけでも大変やのに」

【結論】定額減税は年末調整でするに限ります!

国税庁のパンフレットなど読む必要はありません。定額減税は年末調整でしましょう!

社長ひとり、あるいは社長とその親族だけの会社はこの方法に限ります。社員がいる会社でも、社員の同意が得られるのであればこの方法によってください。国税庁のパンフレットで説明されているように年度途中の源泉徴収税額から減額するのは間違いのもとです。

★月次減税?????

このような言葉があろうことか国税庁のパンフレットで使われています。わが国の所得税は暦年単位で課税されますので月次(月単位)での減税などという概念はありません。せめて、「源泉徴収免除額」とか「源泉徴収税額表調整額」などの言葉を使うべきです。

実際、月次で減税されて年間(年末調整)では増税(還付ではなく追加徴収)されるケースもあります。年末までに「大昇給した」「冬の賞与が多い」「扶養親族数が減った」場合はそうなる可能性があります。

「月次減税」、国民を愚弄した言葉です。「訂正!」といいたいところですが、今年だけですのでもういいでしょう。

★住民税特別徴収の定額減税

住民税特別徴収の定額減税はスマートです。しかし、減税されたという実感はわきません。年間税額から定額減税額を差し引き、それを「7月以降」翌年5月までの「11か月間」にわたり分割して徴収します。例年は「6月以降」翌年5月までの「12か月間」ですので、今年は6月分が徴収不要です。しかし、誤って6月から徴収してしまうケースも続出することでしょう。

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今年の夏の賞与からは所得税が源泉徴収されない(手取りが増える)!

「昇給はある」「減税で手取りは増える」、なのでその分を消費に回す。この制度の効果はこれでしょう。

このところ日米とも株価が上昇していますが、減税が行われる6月以降も株価が堅調であることを祈るばかりです。マイナス金利の解除に反して円安が止まらない(輸入物価の上昇が止まらない)のも気掛かりです。

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税務署の受付印が廃止される

2024-03-30 18:30:00 | 会計、税金、経営、その他の話題
【国税庁サイト】「令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて

来年から税務署の受付印が廃止されます。電子申告(e-Tax)の普及に伴い税務署窓口での申告書の提出が減っていることから業務の見直しをするのです。長年、税務署に申告書を提出する際は「提出用」と同じ内容の「控用」を持参し、控用に税務署の受付印の押印を受けるのが慣習となっていました。

★受付印をもらい忘れた(控用を持参しなかった)

受付印は控用に押印されますので申告書を提出する際に控用の持参を忘れると押印を受けることができません。この受付印のもらい忘れが非常に多いのが実情です。

★受付印をもらえば「勝ち!」

税務署は申告書を受け付ける際、申告書や添付書類に一通り目を通してから受付印を押印します。しかし、これは基本的な事項(住所や氏名など)が記載されているか、申告書用紙や添付書類の漏れがないかを確認しているだけです。税額が正しいことを認めたのではありません。にもかかわらず、受付印をもらって鬼の首を取ったように喜んでいる人がいます。

★受付印がなければ申告書の控ではない(金融機関の対応)

申告書の控を金融機関に提出しなければならないことがあります。その際、金融機関は「税務署の受付印が押印された申告書の控」の提出を求めます。

「受付印の必要性」を初めて認識するのはこのときです。受付印がなければ融資などの手続が前に進みません(難航します)。受付印は税務署が申告書を受け取ったという記録に過ぎませんが、金融機関はこの受付印に異常なまでの信頼を寄せています。そんなことから、受付印を偽造する輩もいるほどです。また、提出用と異なる内容の控用(融資に有利な内容や数値にしている)を作成し、それに受付印の押印を受けようとするケースもあるようですが、当然その場でばれるので押印は受けられません。

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受付印の押印を廃止したからといって税務署の業務が大幅に省力化されるとも思われませんが押印廃止は時代の流れなので当然のことなのでしょう。

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2割特例(ありがたい救済制度)

2024-02-17 12:31:00 | 消費税
2割特例、昨年インボイス登録をして消費税の課税事業者になり、今年初めて消費税の申告をする個人事業者のほとんどがこれで申告することになるでしょう。2割特例が税務署に納付する消費税が一番少なくて済むからです。

◆原則課税との違い

事業者は商品の販売やサービスの提供に際して消費税を受け取ります。一方、仕入や諸経費の支払いに際しては消費税を支払います。そして、この受け取った消費税から支払った消費税を差し引いて税務署に納めなければなりません。この消費税の仕組みどおりに申告をする方式を原則課税といいます。

2割特例は受け取った消費税の2割を税務署に納税すればよいという申告方式です。2割特例においては支払った消費税がどれだけであるかは問題としません。2割特例は、消費税の仕組みを一切考慮しない極めて政策的な申告方式です。

◆簡易課税との違い(2割特例は簡易課税の変形?)

簡易課税とは、支払った消費税の計算(仕入税額控除)を受け取った消費税に対して「みなし仕入率」を乗じることによって行うという方法です。みなし仕入率は、卸売業は90%、小売業は80%、製造業は70%といったように業種ごとに法律で定められています。

なお、簡易課税が認められるのは、基準期間(2年前)における課税売上高が5000万円以下の事業者です。また、簡易課税で申告するには申告に先立って所定の届けをしておく必要があります。

2割特例は簡易課税の変形であると考えることができます。受け取った消費税の8割を支払った消費税として差し引くと考えるのです。しかし、簡易課税のみなし仕入率には一定の合理性がありますが、2割特例の2割には全く合理性がありません。

◆2割特例は基準期間の課税売上高が1000万円以下であれば認められる

2割特例は基準期間における課税売上高が1000万円以下の事業者にのみ認められます。いわゆる免税事業者がインボイス制度導入に際して適格請求書発行事業者になった場合の特例だということです。(インボイス制度導入後、基準期間における課税売上高が1000万円以下になった適格請求書発行事業者についても認められます。)

◆2割特例は申告時に選択可能

2割特例は簡易課税のように申告に先立っての届けは不要です。2割特例が原則課税よりも、簡易課税(届けはしていなかった)よりも有利という場合にはありがたいものです。

◆2割特例は期間限定の特例

令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する年度(個人事業者であれば令和5・6・7・8年)において認められる期間限定の特例(救済制度)です。

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2割特例で申告するには下記の要領で申告書を作成して提出しなければなりません。

★申告書第1表
「税額控除に係る経過措置の適用(2割特例)44」を丸で囲む必要があります。

★付表6
これを記載して提出しなければなりません。

2割特例で申告する場合は売上のみの集計しておけば申告書を作成することができます。なお、昨年インボイスの登録をして消費税の課税事業者となった場合、令和5年の消費税の申告において対象となる売上はインボイス制度が導入される10月1日以降の売上です。

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初めての消費税申告(所得税との違い)

2024-02-17 12:30:00 | 消費税
昨年インボイスの登録をして消費税の課税事業者となった個人事業者が、初めて消費税の確定申告をする時期になりました。はたして申告できるのでしょうか。

◆所得税と消費税はまったく違う税金(申告書も納付書も別)

事業所得者に課税される所得税は、収入(売上)から必要経費を差し引いた事業所得が基準となります。一方、消費税の課税事業者が税務署に納める消費税は、事業者が商品販売やサービス提供に際して受け取った消費税から仕入や諸経費に関して支払った消費税を差し引いた額です。

このように所得税と消費税はまったく違う税金です。ですから、申告書の作成と提出、そして納税も別々に行います。

◆自主申告であることは所得税同様

消費税の納税義務がある事業者は自ら申告と納税をしなければなりません。「税務署からの連絡がなかった」「連絡に気がつかなかった」が通用しないのは所得税同様です。

◆消費税の申告も暦年単位で行う

所得税も消費税も税額の計算を暦年単位で行い申告と納税をします。所得税の申告期限は申告対象年度の翌年3月15日、消費税は3月31日です。納税もこの期限までにしなければなりません(ただし、いわゆる振替納税の場合は4月下旬に預金口座から引き落とされます)。

◆今回の申告対象は令和5年10月1日以降の売上(昨年インボイスの登録をして消費税の課税事業者となった場合)

昨年インボイスの登録をして消費税の課税事業者となった個人事業者の場合、令和5年の消費税の申告において対象となる売上はインボイス制度が導入される10月1日以降の売上です。受け取った消費税は10月以降の売上合計に基づいて計算し、支払った消費税も10月以降の仕入や諸経費に基づいて計算します。

◆原則課税と簡易課税?

このどちらを選択するかが消費税の難しいこところです。どちらにするかによって有利不利があります。税務署に納付する消費税が異なってくるのです。また、簡易課税を選択するには事前の届けが必要で、届けがない場合は原則課税になります。

◆2割特例?

原則課税と簡易課税だけでもややこしいのに「2割特例」とうい申告方式があります。受け取った消費税の2割を税務署に納付すればよいという特例です。2割特例は申告時に選択可能ですので、原則課税あるいは簡易課税よりも有利であれば選択できるという点においては融通が利きます。

◆消費税に関する専門用語の難解さ

所得税の確定申告を税理士には依頼せず自身で行っている個人事業者は多いです。そのような個人事業者は、申告書の用紙を見て「これならばなんとか自分で書けそうだから」と感じたからです。

しかし、消費税はそうはいきません。消費税の申告書は「一般常識」「勘と経験」「ひらめき」では理解できない専門用語ばかりです。おそらく、申告書を見ただけでは手も足も出ないと思います。

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★税務署が混乱すること必至!?

消費税の申告書は大変「とっつきにくい」ことから、これからの確定申告の時期、税務署は消費税の申告書の書き方をたずねに来た個人事業者で混乱することが予想されます。また、申告書が書けず放置したままの事業者、申告が必要なことに気がつかなかった事業者が現れることも予想されるので、税務署はその対応にも追われることでしょう。

インボイス制度が軌道に乗るまで、行政上の負担(コスト)も相当なものになります。当然、それを負担するのは国民です。

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インボイス制度は大成功(漁夫の利を得た政府)?

2024-01-27 16:31:00 | 消費税
インボイス制度導入から早や4か月、世間は「きりきり舞い」「七転八倒」です。

「インボイスを発行しなければならない」
「インボイスを発行してくれ!」
「これはインボイスではない(訂正に追加発行)!」
「登録番号がないので消費税は支払わない!」

インボイス制度導入以降、事業者間の「いざこざ」が絶えません。しかし、世間の混乱をよそに税収は確実に増えていると思います。

◆インボイスの登録をしなければならない

多くの事業者がインボイス制度開始前の令和5年9月30日までにインボイスの登録を済ませましたが、中には制度開始以降に慌てて登録する事業者も相当数います。

「やはり噂は本当だったのか」

制度開始前はインボイスの登録などしなくても大丈夫と高を括っていたけれども、制度開始後、「本当に消費税の請求ができなくなって」ようやくインボイスの登録をする事業者がいます。

◆インボイスの登録をしていない支払先に関する経理処理

インボイスの登録をしていない支払先の経理処理を杓子定規にしている事業者は多いです。

「登録番号の記載がない請求書は仕入税額控除8割」

機械的にこのような処理をしている事業者がいます。「塵も積もれば山となる」で、次回の申告の際に消費税の納税額の増加に愕然とすることでしょう。

◆漁夫の利を得た政府?

インボイス制度導入により消費税の課税事業者は増えます。従来からの課税事業者の納税額は増えます。政府は何もしなくても民間に委ねておけば勝手に税収は増えます。

しかし、間もなくインボイス登録をした個人事業者が消費税の申告をする時期になります。

できるでしょうかね?
消費税の申告をしたのはいいけれども、その納税はできるでしょうか?

税務署は「消費税を申告すべき事業者が漏れなく申告しているか」「その申告額は正しいか」「そして納税しているか」を確認しなければなりません、大変な作業です。

インボイス制度の成果が問われるのはこれからです。具体的な運用方法の確立、制度の修正、課題は山積みです。

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