Umpiring is not built in a day. ~審判技術は一日にしてならず~

               【アメリカ・マイナーリーグ審判員のDaily blog】

ご報告

2014-05-01 | 日記
更新が滞ってしまい、申し訳ありません。

突然ではございますが、私一木正興は、マイナーリーグ審判員を退職致しましたことをお知らせ致します。
ご報告が遅くなってしまい、大変申し訳ありません。

Release(戦力外通告)されたわけでもなければ、Fire(解雇)されたわけでもありません。あくまで一身上の都合による退職です。
僕も30歳になり、守るべき人も出来ました。オフシーズンに受けた試験に合格し、新たな道が出来たことで今回の決断に至った次第です。

今から4年程前にプロとしての採用が決まった際、ある審判の大先輩から『今のうちから終わりを考えておけよ!いつか終わりは必ず来るんだから。』と言われました。普通に考えれば、これから夢と希望を抱いてプロの世界に飛び込んで行こうという者に対しての言葉ではないようにも思えます・・・が、自分はこの言葉が非常に心に響いたのです。
それ以来、僕は常に終わりを意識してきました。決して後ろ向きな考え方ではなく、前向き思考としてです。
同じ【辞める】にしても様々で、ボロボロまでやって解雇される人もいれば、入ってすぐに自ら去る人もいます。怪我や病気で辞めざるをえなくなるケースだってあります。
どれが正解かはわかりませんが、少なくとも僕にとっては後に続く日本人が出て来てくれた今が一番の引き際だと思えたのです。

今シーズンは開幕前に昇格が決まり、西海岸ということで色々な方に試合を見に来ていただくチャンスがあったかもしれません。
サンフランシスコ・ジャイアンツ主催の【Japanese Heritage Night】という試合のマイナーリーグ版で審判を務めることも決まっていました。

全く悔いがないと言ったら嘘になるでしょう。今はまだ実感がありませんが、これから時間が経つにつれて後悔の念は大きくなっていくかもしれません。でも、それで良いと思っています。少なくとも、後悔しているうちは審判が好きでいられるからです。
僕は審判が大好きです。飽きっぽい僕がこれ程までに情熱を注いだモノは未だかつてありません。そして、その情熱は今でも衰えていません。

採用通知をもらってからの4年間は、本当に夢の中にいるようでした。そのような期間を過ごすことが出来ただけでも、僕は幸せ者だと思います。

以前、Northwest league時代のパートナーだったLewisのお父さんに、こんなことを言われました。
『マサ、後に続く者への道を作ってやるのは先に入ったお前の役目なんだよ』
その言葉を聞いたその日から、何とかその役目を果たしたいと常に考えていました。
そして今シーズン、新たな若者がマイナーリーグの扉を叩きます。
決して僕が道を作ったわけではありませんが、道端の草刈りくらいは出来たかなと思っています。

これまで応援して下さった皆様、毎日のようにブログをチェックして下さっていた方々には感謝の気持ちでいっぱいです。決して長い期間ではなかったかもしれませんが、皆様のおかげで続けてくることが出来ました。

そして、最愛の妻に一番の感謝を贈りたいと思います。これまでに僕は一生分のワガママを聞いてもらいました。これからは、僕が彼女のワガママを聞いてあげる番です。

今後このブログを更新することがあるかどうかわかりませんが、当分はこのまま閲覧出来るようにしておこうと思います。今後マイナーリーグを目指す若い審判達の道しるべ・・・とはいかないかもしれませんが、何かの役には立つかもしれませんので。

改めまして、これまで応援して下さった皆様、本当にありがとうございました!

一木 正興

同期の桜

2014-03-31 | 日記
NPBの開幕から遅れること数日、ついにメジャーリーグも本格的なOpening Day(開幕)を迎えました。
その開幕戦で、一人のマイナーリーグ審判員がメジャーリーグデビューを飾りました。

彼の名前はPat Hoberg、僕の審判学校時代の同期です!
彼とは2009年の審判学校の同期で、2度目の挑戦となった2010年は僕のインストラクターでした。
学生時代に4年間日本語の授業を選択していたため、他のアメリカ人と比べて日本の文化にも精通しています。

2009年にマイナーリーグ審判員としてのキャリアをスタートさせて以来、わずか5年でメジャーリーグデビューまで漕ぎ着いたのはかなり早い方だと言って良いでしょう。
インスタント・リプレーの範囲拡大に伴う新規採用に加え、特に今年はメジャーリーグ審判員(フルタイム)のDL入りが多く、若手のCall Up(バケーション・アンパイア)にはチャンスが多く回ってきているそうです。

今後も彼の活躍に期待してあげてください。


新ルール【7.13】 Part2

2014-03-29 | 日記
前回の記事の続きです。

今回のルール改正では原則として本塁での接触が禁止となりましたが、全ての接触が禁止されたわけではありません。いくつか例外があります。


1つ目は捕手(もしくは本塁を守る他の野手)がボールを持ち、本塁への走路(ホームプレート)を完全に塞いでいる場合。走者はこれまで同様に体当たりすることが認められています。
この場合はオブストラクションもインターフェアも適用されません。仮に捕手がボールを持たず、本塁への走路(ホームプレート)を完全に塞いでいたと審判員が判定すればオブストラクションを適用します。

2つ目は本塁への送球がそれ、捕手がその送球を捕球するために走路上を走っていた走者と接触した場合
走者が走路を外れて走っていたわけではなく、捕手が走路上に出てきてしまったために接触が起こってしまった場合は、捕手がボールを確補していたか否かを問わず、これまで同様接触が認められます。

日本のアマチュアでは内規で本塁上での接触が禁止されているかと思いますので今回の規則改正はそこまで難しくないかもしれませんが、NPBをはじめとするプロ野球では今後の規則適用が変わっていくことでしょう。

新ルール【7.13】

2014-03-23 | 日記
更新が滞ってしまい、申し訳ありません。その間も絶えず閲覧くださった方々、本当にありがとうございます。
お詫びとお礼の意味も込めて、今年(2014年)のアメリカにおける規則改正のひとつをご紹介いたします。
今年は9項目の規則改正がありました。中でも一番大きな改正といえるのが、【7.13】という新しい規則が追加された点です。

実はまだ今年のOfficial Baseball Rulesが手元に届いていないのですが、本文はこのようになっています。

・・・とその前に、これから掲載するルールはあくまで今年のアメリカにおける規則改正であること、及びその日本語訳はすべて僕個人が訳したものであることをご了承ください。ですので来年の公認野球規則に掲載されることを保障するものではありませんし、必ずしも正しい日本語訳でない可能性もございます。
また、もし他所に転載を希望される場合は一度コメント欄等よりご連絡いただければ幸いです。(文章はコピー&ペースト出来ないよう、JPEG形式にしてあります)






ところどころおかしな日本語訳になっていたら申し訳ありません。

この文章を読む限り、日本のアマチュア内規に近い解釈となっているように受け取れるかもしれませんが、実はこの新ルールの運用は既に変更になっています。

その話はまた次回・・・

Challenge system、初のOverturned call.

2014-03-13 | 日記
アリゾナ・フロリダ両州で開催中のスプリング・トレーニング(オープン戦)に導入されているチャレンジシステム(インスタント・リプレー)において、ついに判定が覆るプレーが起こりました。

【映像を見る】

この映像を見る限りでは、2塁手はボールをしっかり掴んでいるようにも見えますし、逆にしっかり掴んでいないようにも見えます(どちらかと言えば後者)。一番最初に映像を見た時はBobbled the ballかと思いましたが、繰り返し見れば見るほど際どく見えてくるのが不思議なところです。このようなプレーはアウト・セーフどちらの判定を下しても間違いなく抗議を受けます。

これまでに21回のチャレンジがあり、20回は審判員が下した元の判定がそのまま採用されています。
その数が多いか少ないかは別として・・・このシステムで僕が個人的に納得いかないのが、ベンチ外の各球団のビデオコーディネーターがダグアウト内の監督と連絡を取り、チャレンジするか否かを決定することが認められているという点です。ビデオコーディネーターは間違いなくリプレー映像を確認してから監督とコンタクトを取るので、ようは【後出しジャンケン】をしているようなものにしか見えません。

もちろん、我々審判員の仕事は正しい判定を下すことです。
今はまだスプリング・トレーニング中なので選手や監督もそこまで気にしていないかもしれませんが、リプレー映像を確認することで試合の流れは少なからず変わってしまうでしょう。