4~6月期のテレビドラマ、いわゆる春ドラマがその後も続々と始まっています。今週に続いて、恒例のテレビドラマ批評(勝手な感想)を書いていきたいと思います。今回はプライムタイムのドラマに加えて、深夜枠作品についても、いくつか書いていきます。
『アンチヒーロー』(TBS系、日曜21時)
伝統の日曜劇場枠は、現在の民放ドラマではもっとも視聴率もとれ、話題にもなる放送枠といえるでしょう。長谷川博己が、裁判に勝つためには手段を選ばない、一種の悪徳弁護士を演じます。深夜に放送される低予算でほのぼのした作りの作品も好きですが、これだけ力の入った作品を見せられれば、それはさすが、という他ありません。キャラが立つという言い方がありますが、これだけ徹底したアンチヒーロー像が描かれれば、そこにひきつけられるものがやはりあります。私って「頭のいい悪い人」が好きなんだなあ、と再認識しました。
余談ですが、主演の長谷川博己は中央大学文学部の卒業。インタビューで「僕が卒業した大学は法学部が有名な大学で…」って。「中央大学」ってはっきり実名で言ってくれよ!
『アンメット ある脳外科医の日記』(フジテレビ系、月曜22時)
交通事故で脳に障害を負い、翌日には前日の記憶がなくなってしまうようになった外科医・河内ミヤビ(杉咲花)が主人公。初回を見て、毎日ある訓練をしていけば、記憶がなくなっても技術は向上していく、といった部分が特に印象的でした。つまり、記憶がなくなっても毎日元に戻ってしまうのではなく、日々努力したことは確実にその人の中に残っていく、という初回のテーマは感動的でした。とはいえ、これは娯楽に重点を置くテレビドラマの世界では、とっつきやすいテーマとはいえません。いいことを語ってくれている作品ではありますが、多くの視聴者に受け入れてもらえるのかについては、やや心配になりました。
『9ボーダー』(TBS系、金曜22時)
39歳(木南晴夏)と29歳(川口春奈)と19歳(畑芽育)の3姉妹。「3姉妹がモヤり、焦りながら、自分の生きる道を模索 金曜日がハッピーになる ヒューマンラブストーリー!」だそうです。
過去に女性の生き方を模索した群像ドラマが多くありました。鎌田敏夫の『29歳のクリスマス』(1994)、岡田惠和の『彼女たちの時代』(1999)など、名作がたくさんありました。それぞれに時代をとらえているところが見事でした。昨年深夜枠で放送されていた『かしましめし』も思い出します。初回を見る限り「ハッピー」な感じはあまりしないのですが、ここから少しずつハッピーになれるよう模索していくところこそ、この作品の肝心なところなのかもしれません。
『お迎え渋谷くん』(フジテレビ系系、火曜23時)
彼氏いない歴の長い28歳の真面目な保育士(田辺桃子)と、恋愛経験のない24歳の若手イケメン俳優(京本大我)のうぶキュン物語。恋愛ドラマの歴史を考察してきた立場からいえば、「恋愛苦手な人たちの不器用な恋愛」というのは、現代のトレンドではあります。こんな若手イケメン俳優がいるはずないだろ!といったツッコミはさておき、その不器用さがほほえましく見られます。田辺桃子も京本大我もコメディが似合うとは思えませんが、いかにものコメディアン、コメディエンヌ俳優ではないことのギャップ感は、わるくないとも感じました。私はこの作品からは脱落しないで、最後まで見通せそうです。
『季節のない街』(テレビ東京系、金曜深夜)
以前と異なり、有料テレビで放送された作品が後から地上波で放送されるようになる、というパターンが出てきました。この作品もそうです。企画・監督・脚本は宮藤官九郎。そして、この作品に豪華キャストが結集しています。通常の深夜ドラマでは不可能な組み合わせでしょう。
山本周五郎の同名原作小説、黒澤明監督の映画『どですかでん』を引き継ぎながら、12年前の災害「ナニ」の後の仮設住宅の人びとという、独自の世界を描き上げています。「重い(重すぎる)内容をまるで軽い話のように描いていく」のが宮藤官九郎の真骨頂で、それは『あまちゃん』はじめどの作品においても変わりませんでした。この作品でも同様の要素はありますが、ときに(特に第2回は)あまりに重い内容も見られました。クドカンが自分の描き方を貫きつつも、通常の民放ドラマでは扱いにくい世界を、ここでは描こうとする熱意のようなものを感じました。
『約束 ~16年目の真実~』(日本テレビ系、木曜24時)
16年前に父親が連続殺人犯として逮捕された少女が、その後女性警察官(中村アン)になる、という設定。16年前の時間の舞台となった町にもどってきた女性警察官が、次第に過去の謎に向き合っていく…とう物語のようです。「予測不能×完全オリジナルの”心理サスペンス”」だそうです。笑わない中村アンはわりと好きなのですが、設定としてはかなりありがちな話です。しかも、主人公の叔父の岡部たかしがいかにも犯人っぽい。そう思わせておいて実は違う……、だと思いますが、もし本当に犯人だったら私怒りますよ!
『君が獣になる前に』(テレビ東京系、金曜深夜)
地下鉄サリン事件をこんなふうに扱うこと、血が流れたり飛び散ったりする映像が多いこと、私はいずれも生理的に受けつけません。ごめんなさい。脱落します。
※このブログはできるだけ週1回(なるべく日曜)の更新を心がけています。