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2024年冬シーズン 新作映画レヴュー「哀れなるものたち」「みなに幸あれ」など

「哀れなるものたち」ヨルゴス・ランティモス 「ロブスター」で注目を浴び,「聖なる鹿殺し」ではタイトルの意味探しも含めて映画ファンを唸らせ,「女王陛下のお気に入り」で遂にオスカー(主演女優賞)を獲得するに至ったギリシャの鬼才ランティモスが,前作に続いてエマ・ストーンと組んだ新作は,映画ならではのスペクタクルを全編で展開した傑作だ。 作品の骨格は初期の「籠の中の乙女」に似ており,独自の手法によって「人 . . . 本文を読む
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映画「枯れ葉」:カラオケを作った国への愛を滲ませた見事な復帰作

功成り名遂げたヴェテランが第一線にカムバックするというニュースは,場合によっては「今更?」という受け止められ方をする危険性が多分にある。ポピュラーミュージック界にあっては,特にグループの再結成において「何をやろうというのか?」「お金の問題か?」というネガティヴな反応が生まれやすく,その危惧はたいてい当たる。あの偉大なスティーリー・ダンでさえ,再結成後のアルバムはグラミー賞に輝いたとは言え「ガウチョ . . . 本文を読む
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映画「PERFECT DAYS 」:繰り返される日常の隙間に生まれる至高の微笑み

主人公のトイレ清掃員の平山は,休憩時間中にフィルムカメラで木漏れ日を撮影しては現像に出すことを繰り返す。ファインダーを覗かずに撮った写真は,どんなものが映っているかは出来上がりを観るまで分からない。撮影し,フィルムを使い切ったら現像に出し,出来上がったプリントを家に持ち帰って確認する。気に入ったものは残し,そうでないものは破って捨てる。残した写真はアルバムに貼って整理するでもなく,無造作に缶箱に入 . . . 本文を読む
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映画「2023年の10本」:女性監督は10本中3本だが,秀作比率で男性を圧倒

アニメーション作品が年間を通じてシネコンのスクリーンを独占した一方で,グレタ・ガーウィクの「バービー」が圧倒的な高評価と裏腹に興行的には大苦戦をした2023年。同作とほぼ同時期にアメリカで旋風を巻き起こした「オッペンハイマー」が,日本では公開に至らないという事態を憂う中,とうとうケリー・ライカート作品がロードショー公開されることを寿いだ年末。鑑賞本数は減った割に,数え挙げると10本に絞る作業は困難 . . . 本文を読む
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映画「ファースト・カウ」:男二人と牛とドーナツで綴られる誰も知らない西部開拓史

画面をゆっくりと横切っていく馬車群を捉えた「ミークス・カットオフ」のショットを想起させる,川面を運搬船が滑るファーストカットから,もうライカートの術中にはまってしまう。 悠揚迫らぬペースでショットを積み重ね,人間が愚かな何事かを「しでかす」様を炙り出すライカート作品の魅力は,西部開拓においてこんなこともあったかもしれない出来事を描いた「ファースト・カウ」でも健在だ。 現代から始まるエピソードは,完 . . . 本文を読む
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映画「ナポレオン」:フランス人が英語を喋る,長大だが重厚とは言えない歴史絵巻

デビュー作の「デュエリスト/決闘者」でカンヌの新人監督賞を獲って映画の世界に躍り出たリドリー・スコットは,H.R.ギーガーの優れた造形デザインのサポートも得て,CMディレクターならではのアイデアとビジュアルセンスの合体という未踏のルートからSF映画の新たな頂きを征服してみせた「エイリアン」の若きクリエイター,というイメージが強かった。そのイメージは「ブレードランナー」によって更に強化されたものの, . . . 本文を読む
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映画「ドミノ」:血みどロドリゲスの華麗なる帰還

ケレン味たっぷりの派手な銃撃戦でハリウッドの扉をぶち抜いてきたロバート・ロドリゲスの新作「ドミノ」は,原題「HYPNOTIC」が示す通り,催眠術が物語を動かすエンジンとなって観客をドライブする優れたスリラーだ。一見チープに見えながらも遊び心に溢れた映像で数々のヒット作を生み出してきた俊英は,何度も急旋回をするようなストーリーテリングに軸足を移動させ,映像も洗練の度合いを深めつつも,初心を忘れること . . . 本文を読む
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映画「おーい!どんちゃん」:泣いて泣かれて,育て育てられてのかけがえのない3年間に拍手

現役の映画監督が選んだ作品を上映し,上映終了後に監督自身が作品を解説し,併せて自作や制作姿勢などについて語る札幌市芸術文化財団主催の企画「映画へと導く映画」シリーズの6回目のゲストは,「あのこは貴族」の岨手由貴子監督だった。彼女がアニエス・ヴァルダの「冬の旅」と共に選んだ「おーい!どんちゃん」の上映後は,同作の監督である沖田修一と出演した女優宮部純子がステージ挨拶をするという嬉しいサプライズもあり . . . 本文を読む
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映画「ロスト・キング 500年越しの運命」:孤独を軽やかに救いだす職人芸

世評の高かった「マイ・ビューティフル・ランドレット」が今ひとつピンとこなかったため,イギリスの新進気鋭の映画監督スティーヴン・フリアーズとの相性は良くないのかと思いながら期待しないで観た「プリック・アップ」の切れ味の鋭さは,今も鮮明に思い出せる。ゲイリー・オールドマンの出世作でもある同作が証明した,独善に落ちることなく心の闇を抉り出すフリアーズの手腕は,娯楽色を強めつつ実話を立体的に映画化する方向 . . . 本文を読む
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2023年夏シーズン新作映画レヴューNO.1:「君たちはどう生きるか」「CLOSEクロース」など

「世界が引き裂かれる時」マリナ・エル・ゴルバチ 「ドンバス」を観た時にも感じたが,2014年のマレーシア航空撃墜事件を背景に描かれた,ウクライナが置かれた過酷な状況について,何と無知だったことかと頭を殴られるような衝撃を受けた。 民族間の衝突が生む悲劇と,戦争という極限状況において人間が社会的な生き物としてクリアすべき最低条件を放棄してしまう姿を,しかしゴルバチ監督はカメラの「フレーム」という保冷 . . . 本文を読む
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2023年J1リーグ第22節 札幌VS.鹿島【0:3】

開始10秒足らず。札幌がボールに触れることが出来ないまま,先制点を奪われて試合は決した。札幌の守備網を面白いようにかいくぐって繋がったパスの仕上げを行った樋口が,今日の試合の主役だった。樋口は正確無比のキック精度で放ったCK2本も蹴っており,全得点に絡む1G2Aの活躍が見事だった一方で,札幌のパスワークの精度の低さをより鮮明に浮き彫りにしてしまった。 今日の鹿島のボール奪取のためにかけた圧力は凄 . . . 本文を読む
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映画「ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE」:トムが飛び出す先は,果たして何処なのか

予告編やTVスポットで何度も流されたトム・クルーズが断崖絶壁からバイクと共に空中に飛び出すシーンは,本編では長い助走からのジャンプがワンカットで捉えられており,文字通り命がけのアクションで観客を釘付けにする。何度か行われたリハーサルも含めて本人が演じたということだったが,大画面に映し出された身体を張った飛翔は,トム・クルーズがまるでその一部と化しているように見える映画という「見世物」に対する覚悟が . . . 本文を読む
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2023年J1リーグ第21節 札幌VS.新潟【0:1】

後半退場者を出して10名での闘いを強いられた新潟だったが,札幌に攻め込まれながらも常に余裕があったように見えたのは,守備陣に自信があったことに加えて,札幌の攻撃が単調かつ精度の低いものに終始していたことが大きかったはずだ。緊張感を保ち続けた新潟DFのライン・コントロールによってペナルティエリアに穴は見つけられず,やむを得ず試合終盤に空中戦に活路を見出すべく岡村を前線に残す作戦を採った札幌だったが, . . . 本文を読む
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2023年J1リーグ第20節 札幌VS.福岡【1:2】

札幌が先制して福岡が追い付く。札幌でのホーム戦と似た展開になりながら,今回は福岡の選手交替が功を奏し,交代選手が立て続けに得点して逆転される,という最悪の結果となった。試合展開に応じて臨機の対応が出来ないミシャの弱点が露呈し,福岡の雨は札幌サポーターにとって冷たい涙雨となってしまった。 先制点は中村のスピード溢れる左サイドの突破とスパチョークのポジション取りが完璧に符合した,見事なものだった。ス . . . 本文を読む
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TVドラマ「サンクチュアリ -聖域-」:極悪主人公版リアル「巨人の星」

20年くらい前,仕事でドイツに出張した時にホテルでテレビのザッピングをしていたら,いきなり「バカノサト」というアナウンサーの言葉と共に相撲取りの映像が映った。ドイツ人の発音で「バカノサト」と呼ばれた力士は,関脇に上がったばかりの「若の里」だった。まさかヨーロッパで,日本でもスポーツとしてはメジャーと言えるかどうか微妙な立ち位置と言わざるを得ない大相撲が,有線チャンネルとは言え,本場所の取組が延々と . . . 本文を読む
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