Let'us cling together

駆け出し経済学者のブログです
専門はネットワーク効果のある産業です

twitter導入

2010年05月04日 | Weblog
流行に疎いながらもtwitterを導入
活躍している人の情報発信力って凄いなぁと思う。
http://twitter.com/toshi_kuroda

「打倒Googleの秘策」の考察

2009年11月20日 | Weblog
/.の記事打倒Googleの秘策:「有力サイトにカネを払ってGoogleへの登録を削除してもらう」が興味を引いたので、ちょっとした考察を書き込んでおきました。
当該コメントへのリンク

この問題は、
1・多面的市場において、誰が誰にお金を支払うのか
2・排他的取引契約が可能か、それは社会的に好ましいのか
3・誰が誰と契約するのか
という3つの問題に分割することが出来ます。

1・2はコメントに記したとおり、理論研究、実証研究から一定の方向性を見いだせますが、3はどうでしょうね。
ネットワーキングの勉強はまだ始めたばかりなのですが、おそらく均衡は沢山あるので予測は困難、複数均衡におけるパレート劣位な均衡になりうる、位しかまだわかりません。

Webサイト開設

2009年04月24日 | Weblog
就職に伴い、正式なWebページを開設しました。
http://www.tku.ac.jp/~kuroda/index.html
公式ページには研究業績と講義資料を掲載予定です。

初年度は講義作りと研究に専念するつもりですが、研究や教育以外で世間に言いたいことが出てくればblogも更新するつもりです。

仙台観光

2008年06月12日 | Weblog
公益事業学会のついでに仙台に行ってきました。
発表は1日目の午前中。
学生なので朝早い時間なのは仕方ないと思うのですが、会場が仙台駅からバスで1時間以上かかる山奥にあるため、午前中のセッションに参加するには前日泊する必要があり、財布に優しくありません。(まだ科学研究費も使えないね。)
どうせならということで仙台観光をして来ました。

まずは観光バスで伊達政宗の眠る瑞鳳殿へ。


瑞鳳殿への道のりです。
荷物を持ったままで余裕だろうと思っていたのですが、ちょっと後悔。


正宗の眠る瑞鳳殿です。
第二次世界大戦の際に仙台空襲で焼け落ちてしまったそうで、これは再建をしたものだとか。(写ってる人はもちろん無関係です)


次に仙台城へ。
これは良い眺め!


仙台城跡地は現在神社になっているようで、お約束の絵馬チェック。


切実ですね・・・


へー


ほうほう


ちょw


自重しろよwwwwwwwww


まさかこんなカオス空間が待ちかまえているとは思いませんでした。
恐るべし、仙台城!

最後は名物のずんだ尽くしで一息です。


この後は、ホテルにチェックインをして、発表の最終チェック。
その後、鯨料理店で鯨尽くしを食べてきました。
赤身だけじゃなくて、内臓、舌、子宮、睾丸など、変わった部分も色々食べて、孤独なグルメちょっとした孤独なグルメです。
わずかな時間でしたが、非常に楽しい観光でした。
また学会があるときはもう少し長く観光したいですね。

Connect Mailを使ってみました

2008年05月21日 | 研究活動
予想通り(?)講義が終わってからすっかりとBlogの更新をしなかったのですが、
学会発表とかあれこれの準備が一段落したので一つ小ネタを。

総務省のモバイルビジネス活性化プランや戦略的競争評価「プラットフォーム機能が競争に及ぼす影響に関する分析」等でしばしば出てくる携帯電話プラットフォームのオープン化についての議論がなされています。
そんな中、かねてからドコモへの接続を要求し、総務大臣裁定によってサービスインした日本通信のConnect Mailが無料トライアルで利用できるようなので、試しに利用をしてみました。
Connect Mailは基本的には携帯電話端末からPC用のメールアドレスを利用可能にするサービスです。
http://www.connectmail.jp/

細かい仕様についてはわからないのですが、どうもこれはISPをドコモのiモードから日本通信に切り替えることでサービスを実現しているもののようで、端末の接続先設定をiモードから日本通信に切り替える必要があります。
日頃はあまり意識されないのですが、携帯電話はインターネット接続で言うISPにあたる部分を携帯電話事業者が提供しており、iモードやEZWebの公式メニューサイトもiモードなどのISPを経由してインターネットに接続し、各サービスプロバイダのサーバに接続することになっています。
ここのiモードを日本通信に置き換えることでPCのメールを利用可能にするのがConnect Mailなのですが、このサービスを利用することでいくつかの弊害が生じます。

ISPを日本通信にしていくつかの代表的サービスを利用してみたところ、
・mixiモバイル:iモードブラウザでmixiモバイルにログインしようとしたところ、ブラウザが携帯ブラウザと認識されず、PCサイトにリダイレクトされ、ログインすることができない(greeも同様)
・モバゲータウン:ISPがiモードでないせいか、パケット節約サービスなどを利用して利用することはできません、というページが表示される
・Yahooモバイル:携帯用ログインページが表示され、SIM情報を送信しますかのダイヤログまでは出てくるのですが、SIM情報を送信した後の処理がうまく行かないらしく、スクリプトが画面に表示されてログインできない。
・JIGブラウザ:JIGブラウザはiモード専用のIDなどを使用しているらしく(サポートデスク回答)、接続先を日本通信にしている状態では通信を行うことができない。
・ANAサイト:プロキシーエラーが出てログインできず
・clubDAM、プリインストールのFMラジオ番組情報取得アプリ、NAVITIME等のiアプリ:起動後ハングアップ、もしくは通信機能を利用できず
となり、利用できないサービスが非常に多く、頻繁に接続先を切り替える必要がありました。

利用可能だったサービスは、
・googleモバイル
・乗り換え案内
位でしょうか。

情報通信産業におけるアクセス事業者の垂直的な取引制限には、管路差別(サービスを提供する側がアクセスに対して行う差別)とコンテンツ差別(アクセスを提供する側がコンテンツに対して行う差別)の2種類があります。
情報通信産業には通信の秘密の条項があるためにコンテンツ差別はネットワークを害しない限り原則的に禁止されていますが、管路差別は禁じられていないためにこのような結果が生じたことと想定されます。
固定インターネットでは管路差別はあまり行われていないのですが、携帯では広範に行われているのは何故か、検討してみる価値がありそうです。

Connect Mail自体は良いサービスなのですが、これだけ頻繁に接続先を切り替えなければいけないことや、結局他アプリなどを利用するためにiモードを解約できない事を考えると、年額4,800円の追加支出を行おうと思う人は少なそうです。
端末にiアプリ起動時に利用するISPを自動で切り替えるような機能でもあればずいぶんと楽になるのでしょうが。
日本通信からのサービス事業者への働きかけに期待したいところです。

内外のコンテンツ産業

2008年01月29日 | 産業組織の経済分析
すでに1月も末ですが、ようやく本年初の更新となります。
講義は終了しましたが、研究の合間を縫って少しづつ更新してゆきたいと思います。
本年度もよろしくお願いします。

第十一回目の講義では、(株)情報通信総合研究所の志村様にご来場いただき、「内外のコンテンツ産業」と題して講演をしていただきました。
以下が講義の概要となります。

・コンテンツ産業のビジネスモデル
コンテンツからの収益を最大化するため、多様化するメディア(ウィンドウ)を取り込む
米国映画産業の場合、
1940-70年代:ハリウッド制作→劇場
1970年代:ハリウッド制作→劇場→フリーTV
1980年代以降:ハリウッド制作→劇場→ケーブル・衛星放送・DVD→フリーTV
市場規模としては、映画館収入を100とすると、ビデオが215、CATVが20、シンジケーションが100とされる
2000年代のインターネットメディアに対するウィンドウ戦略は技術革新の早さから流動的
WOWWOWとハリウッドの契約は「アウトプット・ディール」と呼ばれ、ヒット作品と無名作品のバンドルで販売、BSで劇場公開後1年後から1年間に12回放送できる権利として購入される。
米国のTV局がハリウッドスタジオに支払う制作雛年鑑5000億ドル言われている(2006年ではCBS11億ドル、ABC2億ドル、FOX12.2億ドル。)

・コンテンツを見る環境の変化
1・SlingMedia:ロケーションフリーTVのように自宅のコンテンツを遠隔地のPCで見ることができる
2・Jalipo:視聴者は各チャネルで放送される番組を番組単位、シーン単位で購入・視聴することが可能。編集はJalipoが行っていると言われる。
3・Babelgum:タッチパネルのようなUIによってコンテンツを視聴可能
4・Joost:P2Pによる配信、ツールによるチャット・双方向コミュニケーションに注力
これらのオンライン配信は画面が分割されている(注・日本のテレビ局は一つの画面に複数の情報源からの情報が表示されることを拒否する傾向があります。また、コピーワンスの議論の中で視聴者が番組を好きなように編集して保存する権利を認めず、放送されたそのままの形で保存・視聴すべきとのスタンスを示しているようです。)

・短尺と長尺
映像の利用がエンターテイメントのみならず、実用的なもの(How to、教育)にも拡大
NBCはネット向けのドラマ「quarterlife」(ネット配信された版は36話構成1話8分)を1時間番組に編成し治して2008年初頭にテレビで放送。これは脚本家組合ストの影響もある。
SonyピクチャーズはCracke(SonyがMy space内に設置した配信コーナー)でMinisode Networkが配信する短尺コンテンツを配信
短尺コンテンツをチャンスと捉えるクリエイターたちも多い(French Maid TV、Good Night Burbank、SIVOO、等)

・バーチャル・コミュニティの現状
Second Lifeのアクティブユーザ数は停滞(約1000万)、企業も撤退が相次ぐ
2Dグラフィックで作成されたシンプルな仮想世界であるHabbo Hotelはユーザ数を拡大中(現在8000万、収益は広告とアバター用の小物の販売)

・Nokia,Amazonのコンテンツ戦略
携帯電話端末シェア世界No.1(40%)のnokiaは垂直統合型のコンテンツ流通を戦略の中心に コンテンツ・サービスポータル「Ovi」(フィンランド語で「door」)ブランド
 「Nokia Music Store」:nokia製携帯・PCからアクセス可能な音楽配信サービス。2007年秋より欧州主要マーケットで開始。一曲あたり1ユーロ、アルバム10ユーロ
 「N-Gage」:nokia対応携帯端末から直接アクセス可能なダウンロードゲーム、購入料金は携帯電話料金とまとめて請求することが可能

Amazonは電子ブックリーダ「Kindle」を販売
 「Kindle Store」経由でオンライン書籍の購入が可能、書籍のベストセラーは新作9.99ドル、旧作は1.99ドル、雑誌は1.25~2.49ドル/月
 携帯電話の3Gネットワークを利用して端末へ直接ダウンロード
 データ通信料はAmazonが支払うため、利用者はデータ通信料を支払う必要がない

・メディアの対応
NBCはコンテンツのオープン化戦略を推進
 「NBC Direct」にて広告モデルの無料ダウンロードサービス(放送後1週間まで視聴可能、所有、レンタル、サブスクリプションなども検討)
 「視聴者は、自分の好みの番組を、いつ、どこで、どのように楽しむのかをコントロールしたいと考えいている」(Vivi Zigler, NBC Digital Entertainment社エグゼクティブ・バイス・プレジデントの発言)

CBSは放送局を売却、SNSを買収し、メディアポートフォリオの再構築を実施
 音楽SNSのLast・FM、動画ブログニュースwallSTRiPを買収、ウィジェット作成ツールを持つclearspringに出資、その他フラッシュツール会社やWebチャットツール会社などと提携、テレビ局・ラジオ局を売却
 "Respect fot the audience"をカギに、番組表のスペースを削り、コミュニティ機能を充実、ブログ/SNSへの書き込みをサポートする機能も実装
 「誰もわざわざCBSのサイトまでこない」と認識し、外部への流通を指向

News社:
 グローバル市場で利用できるコンテンツの獲得:金融情報、サッカープレミアムリーグ等大衆スポーツコンテンツを獲得
 視聴者コミュニティ・オンラインプロモーション:MySpace買収、Photobucket、Flektor買収、英国番組をMSN Media Centerで放送
 ウィンドウ戦略の見直し:」DirecTVを売却、FOX Business Network設立、人気のあるエンタメ365サイトを買収、NBCUと共同配信サイト"Hulu"を開始

志村氏の所感1:番組の視聴/流通形態の多様化が進んでいる。放送局から視聴者へと番組の視聴携帯の主導権が移りつつある。
志村氏の所感2:映画コンテンツのビジネスモデルの行方。大勢にリーチした上での広告による無料提供と、限られた視聴者への有料での提供、2つのモデル間で試行錯誤を繰り返す放送局

・音楽業界のイノベーション
英国音楽バンドRadioheadは新曲のダウンロード料金を「リスナー次第」に。アナログ版月のボックスセットをレコードレーベルのサポート無しでPR。
プリンスは新曲を新聞「The Mail」のおまけに無料添付
米国の大物バンドNine Inch Nails, Maddonaも同様にレコード会社を通じない流通を指向
音楽配信ビジネスではiTunesの一人勝ち、DRMフリーの楽曲配信、新規参入が拡大
 コンテンツ産業の中抜き論:デジタルコンテンツの流通が、既存バリューチェーンの変化をもたらす。レコード会社の衰退、アップルなどの新規参入企業が流通を担う。
 プラットフォームビジネス:デジタルコンテンツのプラットフォームビジネスは、ある程度のフリーさが必要。オンラインプラットフォームの成長が見込まれ、NGN上に必要なコンテンツとなる。
 コンテンツ権利保護の意識変化:コンテンツホルダー側は、楽曲をプロモーション目的に利用。本来のコア・コンピタンスを再定義。ライブ活動を収益源に。

・ローカル広告を狙うネット企業
検索ワードが細分化、優秀な広告配信サーバを獲得するために、MSN,Yahoo,Googleはネット広告代理店を買収。
ネット広告はマスビジネスからロングテールへ向かっている。地方新聞の広告を担うBelo、ラジオチェーンCLEARCHANNEL、125チャネルの広告枠を持つECHOSTA等へと広告枠が拡大。

・クチコミと広告の境界線
オンラインユーザへの接触メディアとしてSNSが重要視されている
SNSコミュニケーションをビジネス化する手法として、「クチコミ」と「広告」の境界が曖昧に
Facebook Ads
 Social Ads:友人関係にバイラルに入り込む広告配信システム。Facebook内でブランドや製品についての行動が共有される
 Facebook Pages:ブランドがプロファイリング・ページを作成
 Insights:広告主が、提供した広告の得の閲覧状況などを確認できる
「広告」と「友人間のお奨め」の間の境界が曖昧になる、プライバシーなどの問題がある
SelfServe by MySpace:オンライン広告を利用したことのない中小企業をクライアント都市、カスタマイズ広告を配信可能な広告作成ツールを提供、ターゲットとしたいユーザの関心事項、地理情報、年齢、性別などを設定できる

・米国映像・音楽ビジネスの新たな潮流
オンライン文化の浸透: 誰もがコンテンツを制作、音楽をCDで買ったことがない世代が誕生、検索・オンデマンド文化に慣れ親しむ
視聴者動向の変化:「タイム」と「プレース」のシフト。ビデオ視聴による視聴率の低下、モバイル・ロケーションフリーなどデバイスの進化
課金プラットフォームの成立:iTunes, Google Ad Sence, Amazonなどロングテールコンテンツの収益モデルが成立
これらの潮流から新たなるコンテンツビジネスの可能性が生まれているが、対立関係も出てきている
ハリウッド既存勢力 vs 新興コンテンツ流通
 プロモーションとして配信資料(CBS)、将来のウィンドウとして育成(BNC)、デバイスベンチャー企業の買収(EchoStarのSlingBox買収)
 ハリウッド以外のコンテンツ・ウィンドウが成立するか?

レコード会社 vs アーティスト
 楽曲を無料で配布(Prince、Radio Head)、レコード会社との契約を打ち切り、自主流通に踏み切る有名アーティストたち(Madonna)

2007年10月から、アメリカの4台ネットワークテレビ局の積極的な映像配信ビジネスへの参加が目立つ
オンライン映像配信ベンチャーはクリエイターの発掘、育成など自主コンテンツ制作へ関与する動き

・英国コンテンツ流通の現状
有料放送市場の成長・広告放送市場の停滞
制作プロダクションの収入の87%がテレビ局の制作費。海外・二次流通市場は市場全体の20%に留まる。

・日本のコンテンツ流通の現状
有料コンテンツの市場規模は小さい
 BSデジタル・ケーブル普及率は約2000万世帯に対し、有料コンテンツメディアの加入者数は200-400万世帯で推移
 放送キー局が2兆円市場に対し、映画史上は2000億円市場と10分の1

次世代有料コンテンツ流通モデル、IPTVの戦略委オプションは1)アグリゲータ、2)コンテンツ制作もするコングロマリット
 メディアの優劣は、普及率の高さで決まる。ブロードバンド普及が進む中では、BS、ケーブルテレビインフラよりも有利
 放送キー局の番組制作費は年間1,000億円、WOWOWの番組購入費は年間250億円、avexは3年間でコンテンツ投資80億円
制作能力のあるキー局、放送権購入のWOWOW双方とも、番組費用は売り上げのほぼ40%

以上が講義概要となります。
こうして米国のコンテンツ産業の取り組みを見てみると、日本の放送局のインターネットへの対応の遅さが目立ちます。
米国では放送局はすでに「視聴者はわざわざ自社サイトを見に来ない」「視聴者は、自分の好みの番組を、いつ、どこで、どのように楽しむのかをコントロールしたいと考えいている」などという認識が広まりつつあるのに対し、未だに日本の放送局は「放送はリアルタイムで見るもの」「視聴者に番組を見せる権利は与えているが、それを編集する権利は与えていない」「我々の放送とWebの情報が同一の画面に表示されるのは問題外」等という認識を変えていないように見えます。
こうしたインターネット利用への遅れは、米国市場ではすでにCATVが広く普及しているために、伝送路を保有していることが競争力の源泉となっていないことに対して、日本の放送局の競争力の源泉が主として希少な伝送路を保有しているからにあるのだと思われます。
NTTの光ファイバや放送局はドメスティックな競争力にしかなり得ないインフラの部分の競争力に強く依存しており、国際的な展開をする際に必要となるコンテンツ制作能力、編集能力等による競争力を高めてゆかなければ、海外へのコンテンツ発信能力は高まることはないでしょう。つい先日、総務省が放送局の下請けいじめについての実態調査に乗り出すことが公表されました。通信サービスの規制に関しては支配的事業者であるNTTグループに対して非常に厳しい対応を取ってきた総務省ですが、放送局に対しても毅然とした対応を取ることができるでしょうか。

20世紀は良くも悪くも映像の世紀であり、映像コンテンツがコンテンツ産業の中心であり、政治力とも密接なつながりを持っていました。しかし、かつてコンテンツの流通経路が口伝から書籍、放送へと変化してきた流れを鑑みるに、おそらく21世紀の中心となるコンテンツは、映像をただ時間に沿って変化させるだけの形態ではなく、よりソフトウェア的なものになって行くような気がします。おそらく、映像はコンテンツを構成する一要素でしか無くなり、その他のソフトウェアと組み合わせて価値を生む様になってくるのではないでしょうか。(私はテレビも映画も殆ど見ないのですが、ゲームはやるのでそう思っているだけかもしれませんが)

最近話題の映像技術に、「拡張現実実感技術」と呼ばれるものがあります。
具体的にどのようなものについてかは、こちらのブログと、引用されているYouTubeの動画を見るとよくわかります。(gooブログってYouTubeの動画埋め込めないんですね・・・)


この技術のエンターテインメントとしての応用方法としては、現在幾つかの実証実験にて、観光地に設置されたRFIDを端末が検知して、その場の歴史や解説の動画を再生するような実験が行われていますが、こうした拡張現実技術と組み合わせることで非常に効果的な演出を行うことができるのではないでしょうか。かつてのその地の姿をオーバラップし、現在までの変遷を見せる、かつてそこで暮らしていた人の生活を3Dオブジェクトを埋め込むなどが考えられます。他にもスポーツを競技場で観戦する際に視界にテロップを重ねる、選手についての情報検索結果を表示するなど様々な利用が可能でしょう。自動車の各種情報表示とフロントガラスの融合も行われるでしょう。
また、拡張現実技術は、既存の映像メディアよりも強烈な政治的なインパクトを持つかもしれません。好き好んでみる人がどの程度いるかはわかりませんが、原爆ドームが破壊される様やその周辺の様子をこの技術を使って再現する事で、キノコ雲の映像や被災地の様子の映像よりも強い政治的なインパクトを与えることができるでしょう。アメリカなら911の貿易センタービルの再現映像等を作成するでしょう。未だ実現していない技術とはいえ、10年もすれば専用デバイスで、20年もすればメガネなどのウェアラブルコンピュータで利用が可能になります。せっかく情報通信法を作るのであれば、こうした真のイノベーションを妨げないような制度設計であってほしいものです。

2.5GHz比較審査評4:総評

2007年12月27日 | 情報通信政策関連
2.5GHzの周波数割り当ての審査結果に関しての総評を述べたい。

今回の比較審査は移動体通信の周波数割り当てについて割当数を申請事業者数が超えるという初めての自体であり、総務省の比較審査能力と、比較審査方式の妥当性が試される結果となった。私は政府の審査によって資源配分が行われるシステムが資源配分の効率性を達成するためには非常に難しい制度設計が必要であり、適切なメカニズムの模索を継続し続けるべきであると考えている。代替案は必ずしもオークション方式だけではなく、比較審査の中に市場メカニズムによる配分の効率性を組み込むのも一つの手であろう。今回の審査にあたって経済原理の活用は特に明示されていなかったが、以前の「電波有効利用政策研究会」の議論からみて、人口カバー率、エリア展開が経済原理として用いられている項目のようである。その肝心の人口カバー率が誤った基準によって評価されており、また技術方式間の違いを正しく評価していないように思われるのは残念である。

市場原理の異なる利用方法として、例えば投資資金は全て金融市場からの調達で行うことを義務づければ、効率的な事業者に資金が集まり、オークションと同様の効率性を発揮することができるのではないだろうか。オークション理論や制度設計についてはいまだ不勉強であるが、今後の研究課題の一つとして含めておこうと考えている。

また、今回の比較審査では免許を割り当てられた際の事業者行動は他の事業者の行動に依存しないだろうという仮定の下に事業計画の評価が行われていたが、移動体通信のように少数者による寡占市場では周波数を割り当てられた事業者の最適戦略はもう一方の事業者が何処であるかに依存するはずである。事業者の事業計画、保有資源等から4つの事業者から2つの事業者を選ぶ8通りの組み合わせそれぞれの経済状態の評価を実施し、その結果の是非から割り当て事業者を選定する方法も比較審査のありかたとして考慮すべきではないか。評価すべき状態が8通りであればそのような比較審査のありかたも可能であっただろう。8通りを評価せずとも、WiMAX2社と次世代PHSとWiMAXの2方式の場合の最適戦略はかなり違ってくるのではないだろうか。

今回の割り当ては結果としてKDDI、ウィルコムと既存のモバイルサービスの基盤を持ち、そこそこMVNOもやるがどちらかと言えば垂直統合を嗜好する事業者への割り当てとなった。次世代PHSとWiMAXには端末の互換性がないために、2社WiMAXの場合に比べて垂直統合型事業のメリットが大きくなるはずである。おそらく2.5GHzBWAが新たなMVNOの参入を呼ぶ事にはならないだろう。

ともあれ、審査は終わったので、あとは事業者が無事に資金を調達して良いサービスを提供し、高速無線通信技術の普及に成功してくれる事を期待したい。特に次世代PHSという技術を立ち上げればならないウィルコムの挑戦は非常に困難なものになるだろうが、無事にサービスを提供して、周波数の再割り当てなど起こらないよう、圧倒的高評価を与えた総務官僚のメンツをつぶさないよう、比較審査方式の妥当性が疑われないよう頑張って貰いたい。

来年行われるであろう固定系地域バンドの周波数割り当てでは約1,700の市区町村毎の周波数割り当てとなる。地域バンドの用途は地域ごとの個別事情を踏まえて評価をするとされており、地域の地方公共団体の意見を参考に本庁のスタッフが審査することになると思われるが、多大なる人的リソースを要することになるだろう。今回の周波数割り当てでは2免許への4事業者の申請を評価するのに4月かけているが、同等の時間をかけて審査するためには免許数の比率でおよそ3,400ヶ月、約300年もの年月を要する。賢明なる審査能力を持ったスタッフを100倍に増員したとしても3ヶ月かかる事になるが、はたしてどのようにして審査を行うのだろうか。実際には殆どの地域で免許申請が行われないのではないかとの見込んでいるようだが、そのような結果になった場合、一部地域の一部事業者、利用者のために多くの地域で周波数を死蔵させる政策が果たして肯定されるのだろうか。地域バンドの動向についても注視してゆく必要があるだろう。

2.5GHz比較審査評3:事業者の申請の判定

2007年12月26日 | 情報通信政策関連
2.5GHzの周波数割り当ての審査結果に関して、実施された事業者の申請の判定についてのレビューを行う。

それぞれの項目について各社の申請の概要評価結果を比較して、総務省の評価基準についての検討を行いたい。
移行の記述はこれら資料と合わせて読まれることを前提として記載する。

1-1に関しては、各社の申請の概要における2012年の特定基地局の設置数、人口カバー率は共にKDDI>ウィルコム>オープンワイヤレス>アッカとなっているため、おそらくこれを評価したものであると考えられる。
項目設定の所でも述べたが、同一の技術であれば基地局数の大小が実質人口カバー率の大小を表すだろうが、次世代PHSとWiMAXのように異なる技術を比較する際に基地局数は評価基準として不適である。また、市区町村の役所で利用可能であれば当該地域の人口が利用可能と見なす判定基準も適切ではない。実質的に利用できるエリア、人口で評価すれば、KDDI>オープンワイヤレス>ウィルコム≒アッカと見なすべきだったのではないだろうか。

1-2についての評価はKDDI>ウィルコム>オープンワイヤレス=アッカとなっており、概要のうち基地局の配置と設置場所の確保、基地局設備の調達、基地局設置の稼働の確保について評価したものであろう。まず、オープンワイヤレスとアッカが同等であると判断された件についてであるが、基地局配置についてアッカは「出資者の通信事業者の基地局を停波後に活用」「8,700の候補を選定」としている。他方、オープンワイヤレスは出資者の「関連会社などの携帯電話基地局15,000の候補場所を保有」としている。オープンワイヤレスの方が候補地を倍程度保有しているのに対してアッカはあくまでも候補であるため、この部分ではアッカとオープンワイヤレスが同等とは言えない。その分の差をアッカのいう出資者の停波後の基地局が埋めているようだ。ここで言われている停波後の基地局とはおそらくドコモのPHS基地局だと思われるが、ドコモのPHS基地局の数は数万と多くあるだろうが、町中で見かける電柱に設置されたPHS基地局をWiMAX基地局に置き換えるのは困難である事を勘案すると、手持ちの情報からこの判断が妥当性であるかをの判別をするのは困難である。むしろこの情報はドコモのPHS基地局を置き換えは携帯電話の基地局を設置できるスペース7000個を共用するのと同程度の評価をされた、と解釈するのが妥当であろう。
加えて、A評価を受けたKDDIは基地局数6000個のセル設計を実施済み、既存基地局の設置箇所を活用としている。既存基地局設置箇所についてはオープンワイヤレスの方が数が多く、主として800MHzを利用しているKDDIよりも2GHzの基地局を数多く持つオープンワイヤレスの方が既存設置箇所の転用によるネットワーク構築はし易いであろうため、数で数えればKDDIが特に優れているとは言えない。おそらく、セル設計が実施済みであることが高く評価されたのだろう。
残るウィルコムは技術方式が異なるが、2012年までに転用できる既存PHS基地局が11,400あるとしている。ドコモのPHS基地局置き換えが7000個の携帯電話基地局の転用と同等であると考えた場合、基地局数・転用可能な基地局スペースの割合が15,000の携帯電話基地局を転用するオープンワイヤレスよりも勝っているためには、ドコモに対して基地局数と転用可能比率で2倍の差をつける事ができたと言うことであろう。また、基地局の数はオープンワイヤレスに劣り、一つの基地局でカバーできる範囲も狭いだろうが、その差を覆すほどに自律分散であるからセル設計が不要としているところも高く評価された模様である。
調達についてはWiMAXを採用する3社で条件が異なるとは考えにくく、次世代PHSのみ差がつく可能性がある。既に世界で多くのベンダが基地局を製造、販売しているWiMAXの方がマイナーな規格である次世代PHSよりも調達では楽であると思われるが、セル設計の難易度を覆すほどの差とは見なされなかったようである。逆に言えばそれほどに基地局のセル設計は困難であると言うことであろう。
稼働の確保については全事業者が外部からの調達になり、どの陣営も出資者に工事委託実績の多い事業者を含んでいるため、差はつかなかったと思われる。

1-3については中継網の確保、ネットワーク構築・運用の技術的ノウハウ、人員、運用体制を評価したものだろう。ウィルコム以外は関連会社がIP化したバックボーンをかなり保有していると思われるため同等であるが、ウィルコムがこの点で同等と評価可能なのかについてはいささか疑問である。多くの既存の基地局とコアネットワークを接続する回線にメタルのISDN回線が使われている事、他社と同等のブロードバンド用の大容量のバックボーンが構築済みであるとも思えない事から、おそらくここの部分でウィルコムは今後かなりの投資を行わなければいけない筈である。しかし、評価において有意な差を与えるほどの差では言うことだろうか。

1-4は財務基盤となっており、ウィルコムがA、KDDIがB+、アッカ、オープンワイヤレスがBとなっている。ここでは概要に記載された設備投資額と資金調達、事業の収益性について評価をしたものと思われる。ところで、ウィルコムは設備投資額が最も低く、原則的に金融市場を利用せずに現行サービスからの収入で投資を行い、他社より1年早く単年度黒字化を行うと述べている。1-1のエリアの部分でも予測された事であるが、WiMAXを利用する他社に比べウィルコムは小規模なインフラによる事業を計画している模様である。しかし、2004年、2005年、2006年と当期純利益で見れば3期連続の赤字、経常利益でも2期連続の赤字となっている。また過去3年の設備投資額は135億、264億、312億となっており、今後5年間で毎年平均200億、営業収益の1割にもなる設備投資をキャッシュフローから積み増すのはかなり難しいだろう。これらの情報からウィルコムにA判定をつけるには相当な金融市場の機能不全を前提とする必要がある。おそらく、これは公表された事実とは異なる情報によって評価された結果だろう。以前からウィルコムはIPOを計画中であると報道されており、公表されていない場にてIPOの計画、もしくは他の事業者への事業売却について説明を行い、確実な資金調達が可能であると評価されたのだろう。IPOであればわざわざそれを隠す必要も無いため、おそらくどこか特定の企業への売却予定があると思われる。
また、KDDIがオープンワイヤレスやアッカよりも優れていると評価されたのは低廉な小型基地局の共同開発のために設備投資額が抑えられている所だと言われている。しかし、以前の講義でWiMAXフォーラムはパテントが一部事業者に偏ら無いこと、低いパテントフィーであること等が説明されており、KDDIが他事業者に比べて特に安価な基地局を調達可能であるとはいささか考えにくい。むしろ差はコアネットワーク側、フルIP化されたウルトラ3Gネットワークによって生じているのだろうと推測される。

1-5、1-6はこれまでの経済的な項目とは異なり、社会的な項目となっている。どの事業者も通信事業者としての実績を持っているため、横並びとなったようだ。これまでの実績を鑑みれば、災害時対応はKDDIにB+をつける事も可能だったのではないか。また、1-6が横並びなのはソフトバンクを嫌う人にとっては不服かもしれないが、妥当な判断と言えよう。

2-1~3は技術に関する項目である。2-1、2-2の電波干渉対策等は異なる技術間の比較をするのであれば差が出る事もあるかもしれないだろうが、これまで「2.5GHzギガヘルツ帯を使用する広帯域移動無線アクセスシステムの技術的条件」などで十分に検討されている部分なので、事業者間で差が出る事はおそらく無く、横並びで妥当であろう。

2-3は周波数利用効率の高さについての技術開発、導入計画を評価するものとなっており、セグメンテーションを用いるとしたオープンワイヤレスとアッカが同等のB、自律分散、マイクロセルを採用するウィルコム、FFRを実用化済みのKDDIがAとなっている。WiMAXを採用する事業者は皆ベンダから機器を購入することになるため、FFRはKDDIだけが利用可能なものではない。しかし、自前の研究開発能力、以前から30MHzの割り当てを前提として事業計画を練っていたこと等が評価されたようである。私は技術者ではないのでFFRと自律分散+マイクロセルが同等の評価であることが妥当であるかどうかは判別ができないが、自律分散+マイクロセルをより高く評価する声が目立つように思われる。今後の実際のサービスが出てからの検証に期待したい。

3-1はMVNOの推進に関する評価である。小売りを行わないオープンワイヤレスがA評価、MVNO実績の多いウィルコムがB+評価、KDDIとアッカがB評価となっている。オープンワイヤレスは小売りを行わないという部分が目立ち、ウィルコムは過去の実績が大きいのでKDDI、アッカよりも高い評価なのは理解できるが、小売りを行わないことがウィルコムとオープンワイヤレスで1ランクの差をつけるほどに高く評価されたのは意外である。KDDIの言うように、新しいマーケットの立ち上げには垂直統合型のビジネスモデルであることの恩恵があり、事業形態を特定の形に限定せずに市場の動向や範囲の経済性を見ながら事業形態を選択してゆく事ができる方が望ましいように思える。

最後の3-2は電気通信事業の健全な発達と円滑な運営への寄与となっており、概要にはサービス料金、加入者数予測、端末、他の事業者との提携、事業形態、標準化活動などが記載されている。ここの評価はアッカがA、KDDIがB+、オープンワイヤレスがB、ウィルコムがB-となっている。個別項目を見ると料金はおおむね横並び、加入者数はウィルコムがやや低めの240万、オープンワイヤレス、アッカが300万、KDDIが500万となっている。端末はWiMAX間では差が出ず、次世代PHSが低め評価になるだろう。
しかし、なぜアッカがここでAを取るのか。MVNOでは点がつかなかったにも関わらず、BWA2.0(笑)が評価されたのだろうか。0点とか-1点を避けて顔を立てるためにAにしたのであれば比較審査にそんな気遣いは不要である。ウィルコムB-、オープンワイヤレスB、KDDIB+、アッカBが妥当な評価だろう。

2.5GHz比較審査評2:スコアリング方法について

2007年12月26日 | 情報通信政策関連
2.5GHzの周波数割り当ての審査結果に関して、実施されたスコアリングについてのレビューを行う。

今回のスコアリングは4つの事業者からの申請を11の項目についてA~Eまでの5段階の相対評価を行ったとされている。しかし、相対評価であるにも関わらず評価項目毎に平均評価が等しくなるような評価方法をしていないため、各項目間のスコアを等しいウエイトで加算した結果場合に項目毎の重要度の違いがある事になる。

2社2項目の評価を行う場合の数値例を用いて説明すれば、
企業1 項目a: A、項目b: D
企業2 項目a: C、項目b: C
この場合、総務省の例示している数値でスコアリングを行えば、
企業1 項目a: 2、項目b:-1
企業2 項目a: 0、項目b: 0
となり、企業1の合計スコアは1、企業2の合計スコアは0となり企業1に免許が割り当てられることになる。

他方、各項目における勝敗を変えずに項目aの平均スコアを下げ、項目bの平均スコアを上げた場合、
企業1 項目a: C、項目b: C
企業2 項目a: D、項目b: A
この場合、総務省の例示している数値でスコアリングを行えば、
企業1 項目a: 0、項目b: 0
企業2 項目a:-1、項目b: 2
となり、企業1の合計スコアは-1、企業2の合計スコアは1となり企業2に免許が割り当てられることになる。
従って、実質的に項目間のウエイトが置かれた判定となっていると言えよう。

さらに言えば、項目間の平均スコアを等しく設定しても差の付け方次第でスコアは逆転する。この手のスコアリングに論理的に望ましい方法を導き出すのは難しいはずなので、結果から読み取れる事について解釈を行う事とする。

総務省の公表している数値例を用いて算出した各項目の平均獲得スコアは、各項目間の重要度の大小を表していると考えることができる。

各項目の平均スコアは、
1-1:3.5、1-2:3.75、1-3:3、1-4:3.75、1-5:3、1-6:3、2-1:3、2-2:3、2-3:4、3-1:3.75、3-2:3.5となっている。
従って、2.5GHzの比較審査においては、
平均点4
「2-3:小セル化及び空間多重技術の導入による収容効率の向上に資する技術その他の電波の能率的な利用を確保するためのより優れた技術の開発及び導入をする計画を有していること」
が最も重要な要素として評価され、次いで
平均点3.75
「1-2:開設計画に従って円滑に特定基地局を整備するための能力がより充実していること」
「1-4:特定基地局の運用による電気通信事業を確実に開始し、かつ、継続的に運営するために必要な財務的基礎がより充実していること」
「3-1:本開設指針に基づく開設計画の認定を受けていない電気通信事業者による無線設備の利用を促進するためのより具体的な計画を有していること」
次いで平均点3.5
「1-1:より広範な地域においてより早期に電気通信役務を提供するための特定基地局を配置する計画を有していること」
「3-2:1のほか、特定基地局を開設して電気通信事業を行うことが、電気通信事業の健全な発達と円滑な運営により寄与すること。」
が重要視された事になる。

今回の比較審査にあたって重要項目とそれ以外の項目が事前に明かされることはなかったが、周波数利用効率、MVNO促進、財務基盤の安定性、広いカバーエリア等事前に重要視されるのではないかと見なされていた項目のウエイトが高くなっているため、概ね妥当なウエイト付けであったと言えるのではないか。
ところで、仮にMVNOの推進よりも周波数利用効率が優先されると事前に公表されていたのであれば、事業者はWiMAX以外の技術方式を選定する、そうした能力に優れたベンダとの交渉を優先する、当該技術への投資を行う、等の対応が可能であったはずである。今回選定されたKDDIとウィルコムは最重要とみなせる2-3にてどちらもA評価を受けているが、KDDIとウィルコムがこうした項目で優れていたからこの項目を重視したのではないかとの疑惑を持たれないために、今後は重要視される項目とそのウエイトを事前に明らかにしておくべきであろう。
また、今回の重要度についてはおそらく今回の比較審査のみのウエイトであり、周波数割り当て毎に異なるウエイト付けが行われることになると思われる。このとき、比較審査の回を重ねる毎に前回のウエイトと今回のウエイト付け方が異なることの説明が求められるだろうから、周波数の利用目的と審査ウエイトの間の対応を明示してゆくことが必要だろう。おそらく今回の割り当てでも電波監理審議会の場で十分な説明がなされたであろうから、議事要旨が公開されてから改めて検討する事としたい。

2.5GHz比較審査評1:評価項目の選定について

2007年12月26日 | 情報通信政策関連
本年の情報通信政策で最も注目をあつめたであろう2.5GHzの周波数割り当ての審査結果が発表されたので、レビューを行う。
今回の比較審査では、
1・評価項目の選定
2・評価のウエイト付け
3・事業者の申請の判定
について改善すべき点があると考える。
まず、評価項目の選定についての問題点を述べたい。

以前比較審査方式を維持すべきか、オークションを導入すべきかという議論が行われた際に、以下のような形で経済原理を導入する「修正比較審査方式」を採用することとされた。その議論については「電波有効利用政策研究会」にて検討されており、最終報告書のp30にて市場原理活用型比較審査について紹介されている。
そこでは、人口カバー率(設備投資額)を評価項目として評価する事で、市場原理を活用することができると述べられている。

今回の周波数割り当てにおいては周波数割り当て申請の際にエリア展開について満たすべき一定の基準が設定された他、評価項目1-1に人口カバー率の展開の計画について評価を行っている他、それに関連して1-2にて基地局整備能力,1-3にて電気通信設備の設置・運用能力の評価が行われている。この三つの項目が経済原理の活用となっているわけであるが、何故エリア展開について評価をこの3つの項目に分けたのだろうか。
より多くの場所でサービスが利用であるか否かを評価するのであれば、どれだけの場所に基地局を置くことができるか、基地局がどの程度の範囲のエリアをカバーできるか、を問う必要があるが、今回の審査要件では基地局がカバーできる範囲については一切の評価が行われていない。他方、2-3では小セル化の周波数利用効率のみを評価し、小セルであることによるカバーエリアの少なさを欠点としていない。ネットワーク構築において同一のセル構築方式を採用する事業者同士を比較する審査であればこのような比較方法でも良かっただろうが、今回はマクロセル型のWiMAXとマイクロセル型の次世代PHSというセル構築方式が全く異なる事業者を比較している。現行サービスにWillcomは16万もの基地局を要するが、ドコモのW-CDMAは約1/3の基地局でサービスを提供できている。WiMAXはマクロセル方式であり、周波数帯から考えればW-CDMAよりはカバーエリアが狭くなると想定されるが、PHSよりは遙かに少ない数の基地局で同等のエリアにサービスを提供することができるだろう。
従って、今回の比較審査の審査項目では実際の人口カバー率を正しく評価することができていない。今後も同様の審査方式を継続するのであれば、収益にかかわらず小規模基地局を市町村の役場近辺に一つづつ設置して名目上の人口カバー率を向上させるという事業者行動を促すおそれがあり、経済的インセンティブの付け方として誤った審査方式である。特に市町村合併によって単一市町村が広域化したことにより、この歪みは大きい。人口カバー率の定義を早急に見直す必要があるだろう。

長くなるのでウエイト付け・判定については別エントリーとする。