ばりばりの御主人様_跡地

もう御主人様はいません。

ブログ引っ越しました

2009-05-28 10:56:04 | 日記
このブログに投稿した記事を新しいところへ移し終わりました。

gooブログには記事を『草稿』として投稿することができ、記事を非公開のまま保存する機能があるのですが、その草稿記事の中に気になる文章を見つけました。



date:2008 9/4

title:これから記憶を消してきます。


 うちの大学で非公開に行われている『高次頭脳情報処理研究』を行っている研究室があることを偶然知った。そこで記憶を消すことが出来るらしい。

 僕は彼女に振られてからのこの半年間、何度も自殺を考えた。このまま生きていくのは辛い。僕はそう簡単に新しい生きる意味を考えることはできなかった。

 死にたいと思っているなら死ねばいい。しかし、人間は、少なくとも僕にはそういう解決を簡単に実行することができなかった。

 結局僕は半年間、死にたいと思いながら生きてきた。僕の頭から希死観念が憑りついて離れることは一時も無かった。朝起きてから夜眠るまで。いや、自殺する夢を何度も見た。

 そんな時、記憶を消すことができるという可能性を知ったのだ。

 彼女のことさえ忘れれば、僕は彼女と出会う前に戻れるかもしれない。

 彼女のことさえ忘れれば、希死願望は消え去れるかもしれない。

 彼女のことさえ忘れれば・・・

   ・・・僕は生きる希望を新たに見つけられるかもしれない!!



 僕は高次頭脳情報処理研究室とやらを尋ねた。丁度記憶に関する実験を行う被験者を募集していたそうで、僕はそこに一ヶ月ほど通うことになった。

 一ヶ月間、僕の消してほしい記憶だけを消すために彼女に関する記憶を洗いざらい研究所の担当の教授に話した。頭に装置を取り付け彼女のことをひたすら思い浮かべる、と言うこともした。辛かった。彼女のことを思い出すことが。早く忘れたい。記憶から消したい。そのために僕はこの1ヶ月間彼女のことを思い出し続けた。

 そしてついに、今日、これから記憶を消してもらう。『彼女に関する記憶』 と『記憶を消すことに関する記憶』 を。つまり、記憶を消してもらったこと自体も忘れてしまうのだ。僕は今日から新しく生まれ変わるようなもの。不安も勿論あるが、希望の方が圧倒的に勝っている。だって僕はずっと絶望の中にいたのだから。







 なんだこれ? 本当にこの文章は僕が書いたのか?

 だいたい、『彼女』って誰だよ。僕は今まで誰とも付き合ったことなんてない。告白したことだって無い。だから勿論振られたことだなんて無い。

 僕は自分の過去の手帳を読んでみた。2008年度の手帳はいつの間にか紛失していたので、2007年度の手帳をめくってみた。

 本当…なの……?

 手帳には2月分までしか書かれていない。でもそれまでは僕には彼女がいたようだ。しかもその相手は同じバイトで同じ年で同じ大学の友人だった。

 今の僕は彼女のことは女友達だと思っている。かつて付き合っていたのなら記憶を無くしてるとはいえまた改めて好きになっても良さそうなものだが、そんな感情が沸いたことは一度もない。

 僕は『高次頭脳情報処理研究』の噂を知っていた。でもうちの大学に纏わる都市伝説的なものだと思って全然信じてもいなかった。でも、大学院の友人に聞いてみたら本当にあるとのことだった。脳の情報をデータ化することを研究しているらしい。ただ、記憶を消せるという話は知らないとのことだった。

 僕はその研究室に行ってみて、教授に恐る恐る聞いてみた。

 記憶を消すことができるのは本当か? 僕は本当に記憶を消してもらったのか?

 僕は笑われるかと思っていた。しかし、教授の反応はその真逆だった。

 『明日また来てください。記憶の再構築を行いますから。あれだけ記録を消してほしいと言ったのに…。それから、あなたの記憶を私たちが操作したという記録は全て消してください。今日のことも絶対どこかに記録したりしないように。その手帳も処分してください。絶対に明日来てください。』

 僕は気味が悪くなった。これが、本当のことだったなんて。

 僕はどうしても気になっていたことがあった。教えてくれないかもしれないけど、聞いてみた。

 「あの、もしかして彼女もここを利用したのでしょうか。」

 だって彼女も僕と普通に今まで接していたのだ。友達として。僕の記憶がなくなっているだけで、ああも普通に接することができるのだろうか。

 「気になるのも無理は無い。だけど教えられないんだ。どうしてもって言うなら明日、記憶を消す直前に教えてあげます。」

 「分かりました。明日絶対伺います。」


 手帳はもう捨てた。いくら僕の字と言えども他人の手帳のようにしか感じられなかったし抵抗は全く無かった。
 彼女に電話して聞いてみようかと思ったけど、やっぱりやめた。彼女は頭がいい。きっと『なにそれ? 妄想の話?』と言うに違いない。そう言われたところで僕にはそれが嘘かどうかなんて区別付かないだろう。

 それに僕自身、これが妄想か何かだと疑っている部分がある。もしかしたら妄想かもしれない。もしかしたら本当かもしれない。

 だけど、これがもし本当だとしたら、僕はまた何かの拍子に記憶を消したことを思い出すかもしれない。そうなったらまた僕は記憶を消すだろう。繰り返す。僕はまた嫌なことがあったら、記憶を消して逃げてしまう。

 それって自殺と変わらないんじゃないか。

 僕はその逃げ道をなくすために、記録が残っていないか色々チェックした。このブログに記憶を消すことについて書かれていないか。縦読みで変なメッセージが無いか。僕は記録を消すことに専念した。

 だけど、こうも思うのだ。今の僕の記憶は勿論僕のもので、それは未来の僕のもの。だから記憶が無くなってしまうなら何か記録で残したいという願望もあった。

 だからこの文章をブログに投稿することにした。

 でも、これから記憶を再構築された僕がすぐに読んでしまっては意味が無い。

 だから僕はブログを引っ越すことにした。ブックマークも新しいブログに変更して、今までの投稿記事も全部新しいブログに移動させた。

 そうすればこの文章を明日以降の自分が読むことは無い。そしていつか見るかもしれないと言う希望が残る。

 凄く中途半端な決意かもしれないけれど、これが僕の決断だった。


 そういうわけで、ブログ引っ越しました。

 ばりばりの御主人様