水俣病の被害を訴える新潟市などの男女が、国と原因企業の昭和電工(現レゾナック・ホールディングス)に1人当たり880万円の損害賠償などを求めた新潟水俣病第5次訴訟の判決が4月18日 に新潟地裁であった。

新潟水俣病は、1965年5月に新潟県の阿賀野川流域で公式確認されたメチル水銀による中毒症 で、阿賀野川上流で操業していた旧昭和電工(現レゾナック・ホールディングス)鹿瀬工場の排水にメチル水銀が含まれ、汚染された川魚を食べた人が発症した。 熊本県の水俣病公式確認から9年後、1965年に公式確認され、行政の認定や水俣病被害者救済特別措置法などで救済された患者は計3696人(2024年3月末時点)に上る。

新潟県 新潟水俣病のあらまし


「ノーモア・ミナマタ」第2次訴訟と呼ばれる同種の訴訟は、新潟と大阪、熊本、東京の4地裁で起こされ、判決は3件目。昨年9月の大阪判決は原告128人全員を水俣病と認定したうえで国などに賠償を命じ、今年3月の熊本判決は請求を棄却した。

2023/9/28 大阪地裁、水俣病救済巡る訴訟で国側に賠償命じる 及び付記(熊本判決)

今回の訴訟は新潟県の住民らが2013年に集団提訴し、その後も原告が追加されていた。


原告149人のうち先行して審理を終えた50〜90代の原告47人について判決があり、

うち26人を水俣病と認め、1人当たり400万円、総額1億400万円を支払うよう昭電側に命じた。
19人については罹患している「高度の蓋然性があるとは認められない」とし、請求を棄却した。
国の責任は認めなかった。

問題点は下記の通り。

① 原告を水俣病と認めるかどうか。

原告側は、原告がメチル水銀に汚染された阿賀野川の魚を食べるなどして手足の感覚障害などを発症しており、長年診療に当たってきた民間医師が策定した「共通診断書」の所見に基づいて水俣病だと主張した。

判決では、共通診断書のみで罹患を判断するのは困難であり、主に公的検診の結果に依拠すべきだと指摘した。

水銀暴露から長期間が過ぎた後に発症する遅発性水俣病についても暴露後 6、7年以内に発症することがあり得るとした。

その上で、メチル水銀への暴露状況や症状などを個別に判断した。
公害健康被害補償法(公健法)上の患者認定を既に受けている2人を除く45人のうち26人を水俣病と認め、19人については罹患している「高度の蓋然性があるとは認められない」とし、請求を棄却した。

② 除斥期間

被告側は、20年の除斥期間が過ぎたと主張。

判決は除斥期間を経過していても原告が罹患を認識していなかったり、差別や偏見を懸念して請求をためらったりするケースもあったとし、除斥期間の適用は「著しく正義・公平の理念に反する」と断じた。

2023/9 大阪地裁判決

慢性水俣病の場合、損害の性質上、加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する。当該損害の全部または一部が発生した時が除斥期間の起算点となる。
医師らの検査で水俣病と確認できた時期が除斥期間のスタート地点。

2024年3月 熊本地裁判決

不法行為から20年で損害賠償請求権が失われる「除斥期間」を適用して退けた。

③ 国の責任

原告側は、熊本県で水俣病の発生源となったチッソ水俣工場と同様に水銀を使う全国6工場で国が実施した排水調査に着目。水銀が検出された1961年までに国は新潟水俣病の発生を予見でき、排水規制をしていれば発生や被害拡大を防げたと主張した。

国は「公式発見以前に発生を具体的に認識していなかった」と反論した。

判決は、被害発生・拡大を防げなかった国の責任があるとする原告側の主張は「具体的に認識・予見できたといえず、国家賠償法上の違法があるとはいえない」と退けた。

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新潟日報 [新潟水俣病・公害と裁判の歴史] 上

[新潟水俣病・公害と裁判の歴史] 下

経済産業省は4月19日、AIの開発に必要な計算資源の整備に向け、国内IT 5社に最大725億円を助成を行うと発表した。クラウド事業の基盤を持つさくらインターネット、GMOインターネットグループ、KDDIなどを支援する。

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社会のデジタル化の進展に伴い、クラウドサービスは、幅広い国民生活・産業活動の情報処理を担う機能として不可欠なものとなっている。

こうした中、基盤的なクラウドサービス(基盤クラウド)の国内市場においては、国内に事業基盤を有する事業者のシェアは約3割であり、海外から提供されるサービスへの依存が高まっている状況にある。

基盤クラウドは、情報処理の根幹を担うものであり、その開発体制を国内で確保できなければ、我が国が自律的に管理すべき重要情報を扱うシステムも含め、完全に他国に依存することになるおそれがある。

また、「クラウドプログラム」の中でも、生成AIは、従来のAIでは不可能だった、様々な創造的な作業を人間に代わって行える可能性があることから、産業活動・国民生活に大きなインパクトを与えると考えられており、そのサービス供給に制約が生じた場合には、我が国に甚大な影響が生じると考えられ、その計算資源を国内に確保することで、我が国における開発基盤の構築・サービス提供体制の強靱化を図ることが重要である。

こうした状況を踏まえ、経済安全保障推進法に基づき、「クラウドプログラム」を特定重要物資に指定し、その安定供給確保に向けて、特に生成AIについて幅広い開発者が利用できる計算資源の国内への整備に関する計画を認定し、国として支援することとした。

経済安全保障推進法(経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律)は2022年5月11日に成立した。

国際情勢の複雑化、社会経済構造の変化等に伴い、安全保障を確保するためには、経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為を未然に防止する重要性が増大していることに鑑み、安全保障の確保に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進するため、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する基本方針を策定するとともに、安全保障の確保に関する経済施策として、所要の制度を創設するもの。

具体的には、法制上の手当てが必要な喫緊の課題に対応するため、(1)重要物資の安定的な供給の確保、(2)基幹インフラ役務の安定的な提供の確保、(3)先端的な重要技術の開発支援、(4)特許出願の非公開に関する4つの制度を創設するもの。

2022年12月、特定重要物資として、抗菌性物質製剤、肥料、永久磁石、工作機械・産業用ロボット、航空機の部品、半導体、蓄電池、クラウドプログラム、天然ガス、重要鉱物及び船舶の部品の11物資を政令で指定した。また、2024年2月に新たに特定重要物資として先端電子部品(コンデンサー及びろ波器)を政令で指定し、既に指定されている重要鉱物の鉱種にウランを追加した。


経済産業省は2023年4月以降、5件を支援しており、今回の分を合わせ、合計10件となる。 (うち、さくらインターネットは3件)

さくらインターネットは2023年以降、NVIDIAなどから2000個の画像処理半導体(GPU)の調達を進めているが、今回、8000個を追加、2027年末までに合計1万個を購入する。

また、KDDIがAIスパコン事業に進出する。

詳細は下記の通り。No.6以降が今回のもの。

No. 設定日 事業者

助成額

供給確保計画 詳細
2023/4/1 東京大学 42億円 量子コンピューターを活用したクラウドサービスの提供 2021年7月、川崎市の研究開発拠点に米IBMの量子コンピューターを導入した。今回83億円をかけて、処理能力が5倍高い最先端品を導入する。創薬や新素材開発などに利用できるクラウドサービスとして、トヨタ自動車や東芝などの企業や学生が共同で利用する。
2 2023/6/16 さくらインターネット 68億円 AIに関わる計算資源としてのGPUクラウドサービスの提供 GPUクラウドサービスの提供に向けて、3年間で130億円規模の投資をし、「NVIDIA H100 Tensor コア GPU」を搭載した、合計2EFLOPSの大規模クラウドインフラを整備
3 2023/7/7 ソフトバンク 53億円 NVIDIA DGX SuperPOD™などを活用して高いデータ処理能力を有する計算環境を構築し、自社で取り組む生成AIの開発およびその他のAI関連事業に活用する他、生成AIを中心とした社外からのさまざまな利用ニーズに応えるため、大学や研究機関、企業などへ幅広く提供していく。この計算環境の構築に関わる設備投資額は約200億円を見込んでおり、そのうち53億円の助成を受ける。
4 2023/11/2 ゼウレカ(三井物産) 11億円 (創薬・ヘルスケア業界で最先端AIサービスを提供)
5 2024/2/20 さくらインターネット 6億円 計算資源の自動拡張/縮小制御技術、ソフトウェアによる共通化・効率化技術等の技術開発 「基盤クラウドプログラムの技術開発支援」の取組種類として、国内で重要情報を扱う事業者等が海外サービスに依存せずクラウドを安定的に利用できる状況を確保。対象となるIaaS型クラウドサービス「さくらのクラウド」の技術開発計画に係る人件費などについて助成を受ける。
6 2024/4/15 GMOインターネットグループ 19.3億円 AIに関わる計算資源としてのGPUクラウドサービスの提供 NVIDIA との協業を加速させ 100 億円規模の GPU サーバーを取得
7 2024/4/15 さくらインターネット 501.0億円 生成AI向けクラウドサービス「高火力」に最新の「NVIDIA HGX B200 システム」をはじめとするGPUが約10,000基が搭載され、合計約18.9EFLOPSの計算能力が整備される。
8 2024/4/19 RUTILEA &
AI福島
25.6億円 第一弾としてNVIDIA H100 GPUを搭載した第4世代DGXシステムである「NVIDIA DGX H100」をInfinibandを用いて複数ノード(最大8ノード)接続した『RUTILEA DGXクラウド(仮称)』サービスの展開を予定
9 2024/4/19 KDDI 102.4億円 生成AI開発のための大規模計算基盤の整備を開始。今後4年間で1,000億円規模の投資を行い、2024年中に本計算基盤の先行稼働開始を目指す。国内最高性能の大規模言語モデル(LLM)や領域特化型LLMの開発を加速する。
2023年11月から開始した「MUGENLABO 生成AI活用支援プログラム」をはじめとするスタートアップ支援プログラムを通じて、世界最高レベルのLLM開発にチャレンジする研究機関やスタートアップなどに対しても本計算基盤を提供。
10 2024/4/19 ハイレゾ&
ハイレゾ香川
77.0億円 香川県綾川町と高松市にある既存施設を利活用したGPUデータセンターを整備し、GPUSOROBANのサービス提供を2024年秋から開始。
業界最安値級のNVIDIA H100の先行予約を受け付け開始。

米下院は4月19日、ウクライナ支援追加予算案等の4法案の審議を進めるための議案を、賛成多数で可決した。20日に採決を行う。

共和党 民主党 合計 欠員
賛成 151 165 316  
反対 55 39 94  
棄権 12 9 21  
合計 218 213 431 4



米下院は4月20日土曜日、4つの緊急予算案の採決を行い、すべて可決した。法案は上院へ送られ、近く採決する予定。

1)ウクライナ支援(総額608.4億ドルで、うち融資が79.0億ドル)

約7割は米国国防総省に割り当てられ、232億ドルが米国の武器、在庫、施設の補充のため。

・ウクライナに提供された防衛装備品・防衛サービスの補充 232億ドル
・該当地域における 米軍事作戦を行うための費用  113億ドル
・防衛システム、防衛装備品、および防衛サービスの調達 138億ドル
・ウクライナに提供された援助および装備の監督と説明責任を継続するための2600万ドル。
・ウクライナへの経済援助 95億ドル うち融資が79.0億ドル
・パートナーや同盟国に公平な負担を求める

下院で多数派を占める野党・共和党のうち、支援に消極的な保守強硬派の議員を含むおよそ半数が反対したが、与党・民主党の議員のほとんどが賛成に回り、超党派での可決となった。

共和党 民主党 合計 欠員
賛成 101 210 311  
反対 112 0 112  
棄権 5 3 8  
合計 218 213 431 4


2)イスラエル支援(
263.8億ドル )

  • 防空システム「アイアンドーム」および 中・長距離迎撃ミサイル「デービッド・スリング」 40億ドル
  • アイアンビーム防衛システム 12億ドル
  • 対外軍事基金(Foreign Military Financing)を通じてイスラエルに資金提供 35億ドル
  • 砲弾・弾薬の生産・開発強化 10億ドル
  • イスラエルに提供された防衛装備品やサービス補充 44億ドル
  • 中東地域における米軍事作戦を行うための費用 24億ドル
  • 国外に保管されている米国の防衛装備品をイスラエル用に柔軟に提供できるようにする
  • 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金提供を禁止

米国内ではイスラエルのガザ地区への侵攻が「過剰だ」との世論が高まり、バイデン政権も避難民が集中する同地区南部ラファへの大規模侵攻には反対している。しかし、議会ではイスラエル支持が大勢を占めており、20日の予算案の採決も賛成366、反対58と大差がついた。

共和党 民主党 合計 欠員
賛成 193 173 366  
反対 21 37 58  
棄権 4 3 7  
合計 218 213 431 4


3) インド太平洋の安全保障を強化する法案(
81.2億ドル )

東アジア地域で強力な抑止力を確保するための予算
・米潜水艦の保守や維持を目的としたインフラ開発(ドライドッグ建設投資を含)33億ドル
・台湾およびインド太平洋地域の主要な同盟国と安全保障パートナーが中国の侵略に対抗するための対外軍事基金 20億ドル
・台湾および地域パートナーに提供された防衛装備品および防衛サービスの補充 19億ドル
・インド太平洋地域での米国軍強化 5億4200万ドル
・ 砲弾・弾薬の生産・開発強化  1.3億3300万ドル

共和党 民主党 合計 欠員
賛成 178 207 385  
反対 34 0 34  
棄権 6 6 12  
合計 218 213 431 4


4) 21st Century Peace through Strength Act

最後の段階で追加された。米国が問題とする諸問題への対策

 (ロシア中央銀行などの公的資産の活用)

  • ウクライナへの財政支援のため、凍結されたロシア中央銀行などの公的資産をウクライナに移転する権限を行政府に与える(REPO for Ukrainians Act)
    (3000億ドルのロシアの公的資産が凍結されているが、米国の管轄下にあるのは40~50億ドルしかない)

 (パレスチナ、シリア、イラン)

  • Hamas、 Palestinian Islamic Jihad、Al-Asqa Martyr's Brigade、the Lion's Denをはじめとしたパレスチナのテロリスト集団とその支援者に対する制裁を義務付ける
  • 戦争犯罪者であるバッシャール・アル=アサドを支持する不正取引関する個人への制裁
  • イラン産原油・石油製品の積み下ろしなど実施した港湾・製油所への制裁
  • ミサイルやドローンの製造に使用されるものを含め、イランへの米国原産品と技術の輸出または再輸出制限
  • 2023年10月に失効した国連の対イラン・ミサイル禁輸措置の対象となる活動に関与する者、イランのミサイルや無人機の供給、販売、譲渡、支援に関与する者に対し、制裁を義務付ける
  • 中国の金融機関がイラン産原油または石油製品の購入に関与しているかどうかを定期的に検査し、違反していたら制裁を発動するよう大統領に要請(IRAN-CHINA ENERGY SANCTIONS ACT OF 2023)
  • 行政府はイラン指導者の財政状況について議会に報告する。金融機関に対し、イラン指導者に関係する口座を閉鎖するよう求める

 (麻薬フェンタニル)

  • 国際的なフェンタニル密売を国家非常事態と宣言する。米財務省に対し、国際的なフェンタニル密売に関与する国際犯罪組織や麻薬カルテルの主要メンバーの金融資産を標的とし、制裁・阻止するよう指示する

 (TikTok)

  • ByteDanceに対しTikTokを売却するか、米国内での利用を禁止する法案
      
    2024/3/15 米下院、TikTok規制法案可決   165日以内に同アプリの米国事業売却 → 最大1年以内に売却
共和党 民主党 合計 欠員
賛成 186 174 360  
反対 25 33 58  
棄権 7 6 13  
合計 218 213 431 4

予算内訳は 別紙 及び https://ni225-topix.com/?p=10768





米共和党のジョンソン下院議長は4月15日、イスラエルとウクライナへの支援を今週、別個の法案として審議すると述べた。
上院は約2カ月前に両国への支援を一体化した法案を可決している。

ーーー

上院はこれまで与野党の対立で宙に浮いていたウクライナへの軍事支援の予算について、2月13日 に緊急の予算案を可決した。

緊急予算案は953.4億ドル(約14兆円)にのぼる。ウクライナやイスラエル支援に加え、インド太平洋地域向けの予算も計上した。

2月7日に否決された予算案から、トランプ前大統領の介入で政治問題になっている米国の国境不法移民対策の予算を除外し、ほぼ、前回と同じものである。

バイデン案 2/7 上院否決 2/13 上院可決
ウクライナ支援 614億ドル 601億ドル 600.6億ドル
米国国境不法移民対策  136億ドル 202億ドル

 除外

イスラエル支援 143億ドル 141億ドル 141億ドル
ガザ支援 92億ドル 100億ドル 91.5億ドル
インド-太平洋 74億ドル 48.3億ドル 48.3億ドル
紅海対策 24.4億ドル 24.4億ドル
その他 63億ドル 47.6億ドル
合計 1060億ドル 1180億ドル 953.4億ドル

2024/2/9 米連邦議会の混迷 

野党・共和党の ジョンソン下院議長は、国境の危機的な状況への対応を怠っているとして、この予算案に否定的な考えを示していた。

ジョンソン下院議長は共和党の超保守派議員から、移民政策で譲歩を引き出すことなしにウクライナ支援法案を可決させないよう圧力を受けている。超保守派議員が求めているのは亡命希望者全員を強制的にメキシコにとどまらせること、国境に壁を建設することなど、民主党にとっては受け入れがたい内容である。

なお、トランプ前大統領は2月10日、Social Media PlatformのTruth Socialで、米政府の対外国支援を返済義務が生じる融資又は紐付き融資に限定すべきだと表明した。反対してきた対ウクライナ追加支援の条件に浮上する可能性がある。

2024/2/15 米議会上院 ウクライナ支援の予算案可決  成立は不透明な状況

ーーー

ジョンソン下院議長は4月17日、イスラエル、インド太平洋地域、ウクライナの地域別に分割した三つの法案を20日に採決にかけると明らかにした。対外支援法案については米政府や外国から早期の採決を求める声が上がっていた一方で、一部の共和党員が強く反発していた。

下院歳出委員会は計950億ドル超の安全保障支援法案を公表した。ウクライナに608.4億ドル、イスラエルに263.8億ドル、インド太平洋に81.2億ドルを充てる。

ジョンソン議長は20日正午まで法案を精査し修正を提案する期間を設けると述べた。保守派の要求に応じ、国境警備に関する別の法案を公表する方針も示した。

2/13 上院可決 今回下院案
ウクライナ支援 600.6億ドル 608.4億ドル
(うち 融資) (79.0億ドル)
米国国境不法移民対策 

 除外

イスラエル支援 141億ドル 263.8億ドル
ガザ支援 91.5億ドル
インド-太平洋 48.3億ドル 81.2億ドル
紅海対策 24.4億ドル
その他 47.6億ドル
合計 953.4億ドル 953.4億ドル

詳細は別紙

トランプ前大統領の主張を踏まえ、ウクライナ支援法案にはこのうちの経済援助の79億ドルは2025年9月までの融資の形をとる。

政府は法案成立後60日以内にウクライナ政府と返済について合意する必要がある

なお、議会が認めれば、大統領は2024年11月15日以降にウクライナの債務の50%を、また2026年1月1日以降に残りすべてを、帳消しにできる。(バイデンが大統領選に勝てば、この規定でウクライナの債務を消せるが、トランプが勝てば、ウクライナ支援をローンにすることを主張しているため、これを求めないと思われる。)

下院指導部はその後、安全保障支援パッケージの一環として4番目の法案を提出した。上院案には盛り込まれていない凍結したロシア資産のウクライナへの移転やイスラム組織ハマスとイランに対する制裁が含まれた。

「TikTok」など中国の字節跳動(バイトダンス)傘下のアプリについて、米国内のアプリストアでの配信やホスティングサービスの利用を禁止する項目も入った。
バイトダンスやその他の「外国敵対勢力」の管理下にある企業との関係を断てば適用を免れる。

バイデン米大統領は17日、「イスラエルやウクライナ、パレスチナへの人道支援、インド太平洋の安全保障強化を提供する緊急予算案を強く支持する」と述べ、上下両院に早期可決を求めた。

共和党の保守強硬派は、ジョンソン議長がウクライナ支援と国境管理厳格化をセットにして民主党の譲歩を迫らなかったことに反発し、ジョンソン議長が法案を採決にかければ同氏の解任を求める構えを見せているが、下院民主党ではジョンソン下院議長の解任動議が提出されても同調せず、反対すべきだとの声が強まっている。


2023年10月に米下院共和党保守強硬派が、共和党のマッカーシー下院議長が政府機関閉鎖の回避に向けたつなぎ予算成立を図るため民主党の支持を得たことを問題視し、解任動議を提出したが、民主党議員全員がこれに賛成し、8人の共和党員の造反で、これが通ってしまった。共和党議員の大半の反対にもかかわらず民主党の望む法案を通してくれた議長を放り出すことになり、その後、混乱が続いた。

今回は予算案の成立を優先する。


付記 米下院は4月19日、ウクライナ支援追加予算案等の4法案の審議を進めるための議案を、賛成多数で可決した。20日に採決を行う。

共和党 民主党 合計 欠員
賛成 151 165 316  
反対 55 39 94  
棄権 12 9 21  
合計 218 213 431 4

4月18日の朝日新聞は、「宇宙から見える」砂漠に再エネ発電所 のタイトルで、インド西部グジャラート州の最西部にあるカッチ地方の砂漠で建設されているGujarat Hybrid Renewable Energy Park (Khavda Solar Park) の訪問記を掲載している。

用地面積はシンガポールの国土とほぼ同じ広さの約724平方キロメートルの人を寄せ付けない塩性湿地で、総事業費は22億6千万ドル(約3400億円) 、ディベロッパーはその巨大さをit will be visible from space と表現した。

インドの西北端で、パキスタンとの国境近くのKhavda村の近くにある。

官民計6社が設備を設置・運営し、計画段階の出力は計2770万キロワット。単純比較で大型火力発電所や原発約20基分に相当する。太陽光と風力発電に加え、蓄電設備も設ける。発電量が天候に左右される再エネの弱みを補い、24時間電気を供給できる計画である。

Sr.No Name of Park Developers Solar-Wind Hybrid capacity (MW) Allocated Land in (Ha.)
1 Gujarat Industrial Power Company Limited 2,375 4,750
2 Gujarat State Electricity Corporation Limited 3,325 6,650
3 National Thermal Power Corporation Limited 4,750 9,500
4 Adani Green Energy Limited 9,500 19,000
5 Sarjan Realities Limited 4,750 9,500
6 Solar Energy Corporation of India Limited

(only wind)  3,000

23,000
Total 27,700 MW 72,400 Ha

Developers は、2021/12/31から3年以内に能力の50%、5年以内に100%達成を義務付けられている。

ーーー

人口増加や経済発展によるエネルギー需要の急激な伸びが予測されるインドでは、効率的かつ環境に優しいエネルギーインフラの拡充が急務となっている。モディ首相は、2021年に開催されたCOP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)において、2070年までにネット・ゼロ・エミッションを達成する、具体的な目標年を発表、再生可能エネルギー発電容量を500GWまで増やし、2030年までにインドのエネルギー需要の50%を再生可能エネルギーで賄うことを宣言した。

国際エネルギー機関(IEA)によると、2022年時点でインドは再生可能エネルギー容量と風力発電容量で世界第4位、太陽光発電容量で第5位である。また、インドはCOP21での公約を9年近く前倒しで達成し、すでに発電能力の40%を非化石燃料で賄っており、インドのエネルギーミックスに占める太陽光と風力の割合は驚異的に伸びている。

インドの再生可能エネルギー発電容量は過去数年間で急速に増加しており、FY16~FY23(2023年2月まで)の年平均成長率は14%を超える。

その内訳は、太陽光と風力がほとんどを占めている状況。2019年時点では風力が主流だったが、現在は太陽光が53%を占め、次いで風力35%、両者を合わせ、88%に上る。


以上、infoBRIDGE 情報

経済産業省は2023年12月13日、国が指定した秋田・新潟・長崎の3海域で洋上風力発電を担う事業者の公募結果を発表した。

公募された海域は再エネ海域利用法で促進区域に指定しており、事業者は最大30年間占有できる。今回は2021年末の初回に続く第2弾となる。

公募結果は下記の通り。秋田県八峰町及び能代市沖については、最も評価の高かった事業者に再提出させ、第三者委員会における評価等を経て、2024年3月に選定結果を公表する。

第1ラウンド 2022/2/24 国の洋上風力発電公募入札の評価基準が問題に

第2ラウンド(中間)  2023/12/14 経産省、洋上風力発電を担う事業者の公募結果を発表


3月に
秋田県八峰町及び能代市沖について、下記の通り発表され、第2ラウンドのすべてが揃った。

事業者 発電設備 運転開始 供給価格
秋田県八峰町及び能代市沖 ジャパン・リニューアブル・エナジー(ENEOS)
イベルドローラ・リニューアブルズ・ジャパン、
東北電力 
37.5万kw(1.5万kW×25基、Vestas製) 2029年6月 @3
長崎県西海市江島沖 住友商事、東京電力リニューアブルパワー 42.0万kW (1.5万kW×28基、Vestas製) 2029年8月 @22.18
秋田県男鹿市、潟上市及び秋田市沖 JERA、電源開発、伊藤忠商事、東北電力 31.5万kW (1.5万kW×21基、Vestas製) 2028年6月 @3
新潟県村上市及び胎内市沖 三井物産、RWE Offshore Wind Japan 、
大阪瓦斯
68.4万kW (1.8万kW×38基、GE製) 2029年6月 @3


長崎県西海市江島沖は
着床式で、ジャケット式基礎のため、上限価格を29円/kWhに設定
他の3つはモノパイル式で、「ゼロプレミアム水準」を3円/kWhとし、3円以下の価格はすべて価格点を満点(120点)とした。


各計画の詳細は次の通り。

1) 秋田県八峰町及び能代市沖

「合同会社八峰能代沖洋上風力」は、ジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE)、イベルドローラ・リニューアブルズ・ジャパン(スペイン)、東北電力の3社で構成


2) 長崎県西海市江島沖

「みらいえのしまコンソーシアム」:住友商事、東京電力リニューアブルパワー

 

  

3) 秋田県男鹿市、潟上市及び秋田市沖

「男鹿・潟上・秋田Offshore Green Energyコンソーシアム」は、JERA、電源開発、伊藤忠商事、東北電力の4社で構成する。

4) 新潟県村上市、胎内市沖

「村上胎内洋上風力コンソーシアム」は、三井物産、RWE Offshore Wind Japan 村上胎内、大阪瓦斯の3社で構成する。


全体計画は下図のとおり。

2024年1月19日、洋上風力第3ラウンドの事業者公募が開始された。今回の対象区域は「青森県沖日本海(南側)」「山形県遊佐町沖」の2つで、公募の期間は2024年1月19日〜2024年7月19日。

    選定事業者 運転開始
促進地域 ①長崎県五島市沖 1.7万kw 戸田建設グループ
②秋田県能代市・三種町・男鹿市沖 47.88万kw 三菱商事連合
③秋田県由利本荘市沖 81.9万kw 三菱商事連合
④千葉県銚子市沖 39.06万kw 三菱商事連合
⑤秋田県八峰町・能代市沖 37.5万kw ジャパン・リニューアブル・エナジー(ENEOS グループ)
イベルドローラ・リニューアブルズ・ジャパン、
東北電力 
2029/6/30
有望な区域 ⑥長崎県西海市江島沖 42.0万kw 住友商事、東京電力リニューアブルパワー 2029/8/31
⑦青森県沖日本海(南側)

 第3ラウンド

⑧青森県沖日本海(北側)  
⑨秋田県男鹿市、潟上市及び秋田市沖 31.5万kw JERA、電源開発、伊藤忠商事、東北電力 2028/6/30
⑩山形県遊佐町沖

第3ラウンド

⑪新潟県村上市及び胎内市沖 68.4万kw 三井物産、RWE Offshore Wind Japan村上胎内、大阪瓦斯 2029/6/30
⑫千葉県いすみ市沖  

三菱商事は4月16日、Shell US Gas & Powerなどが米国ルイジアナ州で検討を進める大気中の CO2 を直接回収するプロジェクト(Pelican Gulf Coast Carbon Removal Project)への参画を決定したと発表した。

参画企業・団体は、シェル、ルイジアナ州立大学、ヒューストン大学と三菱商事で、ルイジアナ州立大学が主導する。最先端の直接空気回収(Direct Air Capture)技術を活用して大気中のCO2を回収し、ルイジアナ州を中心としたエリアに地下貯留することで炭素除去(Carbon Dioxide Removal)を行う。将来的にCO2換算年間約100万トンの炭素除去を目指す。

今後、大幅なコスト削減が見込まれる複数の有望なDirect Air Capture技術会社と共に技術実証を進め、Direct Air Capture技術の精査と設計作業を通じて当該技術の成熟度を高めつつ、Direct Air Capture技術会社への資金拠出を含めた商業化支援、エネルギー消費・用水・土地利用等におけるコスト削減機会の追求などを通じ、Direct Air Capture事業の早期商業化を目指す。

将来的には回収したCO2の一部をe-methane (非化石エネルギー源を原料として製造された合成メタン)やSustainaやSustainable Aviation Fuel(持続可能な航空燃料)などの三菱商事が取り組む合成燃料の原料として活用することや、直接空気回収事業の他地域での展開も視野に入れながら、カーボンニュートラル社会の実現に貢献するとしている。


米国エネルギー省は2023年8月に、本プロジェクトの第一段階を支援するために、490万ドルのプロジェクト助成金を授与した。

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直接空気回収(Direct Air Capture)技術には下記の4つの方法がある。(産業技術総合研究所)

DACの種類特徴主な材料
化学吸収法 空気を吸収液に通すことで、大気中のCO2を吸収・分離し、加熱によってCO2を回収する。 アルカリ水溶液
アミン
化学吸着法 空気を吸着材に通すことで、大気中のCO2を吸着・分離し、加熱・減圧・加湿操作によりCO2を回収する。 アルカリ金属塩
アミン担持多孔質材
金属有機構造体(MOF)
イオン交換樹脂
膜分離法 空気を分離膜に通すことで、大気中のCO2を分離・回収する。 高分子膜
イオン液体膜
深冷分離法 CO2の凝固点まで空気を冷却し、CO2をドライアイスにして分離する。


Harvard Medical School のMassachusetts General Hospital は3月21日、遺伝子操作を行ったブタの腎臓を脳死者でない患者に世界で初めて移植したと発表した。同病院では1954年に世界で初めて腎臓移植が行われている。

移植を受けたのは重い腎臓病を患っていた男性 Rick Slayman(62)で、手術は3月16日に行われ、4時間に及んだ。術後の経過は順調で、患者は手術から2週間あまりがたった4月3日に退院した。

手術を執刀したのはハーバード大学外科教授の河合達郎医師(67歳)で、2023年8月にMassachusetts General Hospital に新設された臨床移植免疫寛容センター(Legoretta Center for Clinical Transplant Tolerance)の初代所長に就任した。

移植寛容は、臓器移植と同時に骨髄或いは血液幹細胞を移植することにより長期間の免疫抑制剤を必要とせずに、患者の免疫系が新しい臓器を維持することを可能にする革新的な方法で、移植の成功を確保しながら、患者が薬物療法を減らす、又は中止することを可能にする。Legoretta夫妻の2500万ドルの寄付で、移植寛容における世界有数のセンターとなることを目的に設立された。

患者は11年間移植を待ち、2018年に腎臓の提供を受けた。しかし昨年から腎不全の兆候が現れ始め、透析を再開、「末期」との診断が下された。

医師らからブタの腎臓の移植について提案され、男性は「自分が助かるためだけでなく、移植を必要とする多くの人に希望を与えるものだと考えた」と決断に至った経緯を説明した。

河合医師によると(毎日新聞インタビュー)、今回の手術の前にサルで100例以上ブタの腎臓を移植したが、今回、移植直後の腎臓の様子がこれほど良かった例はなかったという。移植した腎臓に血液が流れ始めると 、きれいなピンク色になり、すぐに尿が出た。

人間の場合は腎臓の動脈が2本や3本、たまに4本あることもあるが、ブタはいつも1本で、その意味では実は人間のドナーよりも技術的には簡単だが、今回の患者は透析が難しいほどに血管の病変が進み、移植で使える動脈が限られるなどの難しさはあったという。

今回使用したブタは、米スタートアップの eGenesisが、拒絶反応が起こりにくくなるように遺伝子を改変したもの。ゲノム編集技術「CRISPR/Cas9」が2012に登場し、2015年に同社が創業した。

eGenesisは、ハーバード大学の遺伝学者 George Church と30歳のMs. Luhan Yang(Chief Scientific Officer )が2015年に共同設立した。

人間の病気や臓器の拒否反応の原因となり得る特定の遺伝子を不活性化することで、豚の臓器を人間に移植可能なものにすることを目指している。

この手術で使用されたドナー腎臓(EGEN-2784)は、同社の腎移植のリード候補であり、以下の3つのクラスの編集をした。

(1)ハイパーアキュート(超急性)拒絶に関与する糖鎖抗原の合成に関与する3つの遺伝子のノックアウト、
(2)拒絶を調節する経路の調節に関与する7つのヒトトランスジェンの挿入:炎症、先天性免疫、凝固、および補体、
(3)豚のゲノム内の内因性レトロウイルスの不活化。

遺伝子改変を行わない場合、豚の腎臓は人間の受容体によって直ちに拒絶される。eGenesisは、臓器の安全性と有効性を解決するために、これらのすべての編集を持つ臓器を開発している業界で唯一の企業。

河合医師は5年ほど前まで異種移植をあきらめかけていた。2000年代初め、異種移植後の急性の拒絶反応を抑えるため、Gal(ギャル)という抗原を生む遺伝子をノックアウト(欠失)させたブタが登場したが、その腎臓をサルに移植してもせいぜい100日くらいまでしか生きられず、その先の展望が見えなかった。

そこにクリスパーが登場、さらに多くの拒絶や感染を引き起こす可能性のあるブタの遺伝子を除去したり、特定のヒトの遺伝子を追加したりすることが簡単になった。

それからまた試してみようかという雰囲気になった。

eGenesisと共同研究を始めたのは2017年ごろで、新しいドナーのブタの作製が続けられ、河合医師らは週2~3例のペースでサルでの移植を続けた。免疫抑制法を工夫するなどしてついに術後2年以上生存させることに成功し、これならヒトでも可能かもしれないと思ったという。

過去にゲノム編集されたブタの心臓移植を2人の患者が受けている。
1人目は2022年1月、2人目は23年9月に手術を受けたが、いずれも2カ月足らずで死亡した。

Massachusetts General Hospital の医療チームは、さらに多くの患者でゲノム編集したブタの腎臓移植を実施すべく、正式な臨床試験を開始する予定だが、さしあたり、スレイマンの健康維持に主な焦点を置いている。

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明治大学発ベンチャーのポル・メド・テック社とeGenesis は、eGenesis が開発した遺伝子改変ブタを日本で再現生産することに成功した。3頭のブタが2024年2月11日に誕生し、今後前臨床研究のために日本国内の医療機関に供給される予定。

ポル・メド・テックは、明治大学バイオリソース研究国際インスティテュートにおける遺伝子改変ブタ作出技術の事業化を目的に2017年2月に設立された。

事業内容は、
 医療用ブタによる臓器移植・再生医療事業
 疾患モデルブタの製造販売事業
 技術サービス事業

2023年9月にポル・メド・テックはeGenesisから遺伝子改変ブタ細胞を輸入し、明治大学バイオリソース研究国際インスティテュートで開発された体細胞核移植技術を用いてクローン子豚を作製した。

実績を有する遺伝子改変ブタのクローン個体が日本で誕生したことにより、今後我が国での臨床応用実現に向けての取り組みが加速化されることが期待される。


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東京慈恵医科大や国立成育医療研究センターなどの研究チームが、重い腎臓病の胎児にブタの腎臓を一時的に移植する臨床研究を計画している。年内にも、国が認定する委員会への研究計画の申請を目指している。



腎臓に問題がある「ポッター症候群」の胎児に、受精後30日のブタ胎児から取り出した約2mmの腎臓を移植する。移植手術は出産予定日の約4週間前に行い、胎児の背中の皮下に特殊な注射針でブタの腎臓を注入する。

ポッター症候群は、生まれつき腎臓が正常に作られず、体内の水分や老廃物を十分に排出できない病気で、5000~1万人に1人の頻度で発症するとの報告もある。妊娠中に羊水の量が少なくなることで見つかり、肺などに障害が出る。生後、透析が受けられないと、間もなく死亡するケースが多い。

移植した腎臓は周囲の血管と自然に結合し、1日数十ml 程度の尿を作ることが期待できるという。出産後、赤ちゃんの背中にチューブを挿入し、たまった尿を排出する。

治療は、赤ちゃんが透析を安全に受けられるようになるまでの数週間、病気の腎臓の代役となる「橋渡し」との位置づけで、その後、ブタの腎臓は取り除くという。

チームの横尾隆・慈恵医大教授(腎臓高血圧内科)は「亡くなるのを見守るしかなかった赤ちゃんの命を救える可能性がある」と話す。

新タイプの肥満症治療薬の利用者が、米国を中心に世界で急増している。

先駆けとなったのが、デンマーク製薬大手Novo Nordisk Wegovy(ウゴービ )で、2021年に米国で承認された。もともと糖尿病(内臓脂肪の蓄積が主な原因)のために開発した薬(GLP-1受容体作動薬)を肥満症治療に応用したもので、食欲を抑制することでやせる効果があるとされる。日本では「セマグルチド(遺伝子組換え)」として2023年3月に承認された。

食事をとると小腸から分泌され、インスリンの分泌を促進する働きをもつホルモンをインクレチンといい、GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド )とGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)がある。
2型糖尿病に対する治療薬として注目されるのがGLP-1である。

GLP-1は、食事をとって血糖値が上がると、小腸にあるL細胞から分泌され、すい臓のβ 細胞表面にあるGLP-1の鍵穴 (受容体) にくっつき、β 細胞内からインスリンを分泌させる。GLP-1は、血糖値が高い場合にのみインスリンを分泌させる特徴がある。摂取した食物の胃からの排出を遅らせる作用や食欲を抑える作用などもある。

GIPも食欲を抑制するだけでなく、体内での糖分や脂肪の分解を改善する可能性がある。

Eli Lillyは昨年12月、同様の働きを持つ肥満症治療薬Zepboundを米市場に投入した。

Amgen や Pfizerなど多くのメーカーが開発を急ぐ。

CNBCによると、各社の開発状況は下記の通り。

製品名

メーカー

用法

米承認

Wegovy

Novo Nordisk

週1回の注射

2021 承認

GLP-1を活性化 

Zepbound

Eli Lilly

週1回の注射

2023 承認

GLP-1とGIPを活性化   

Saxenda

Novo Nordisk

週1回の注射

2020 承認

GLP-1を活性化

MariTide

Amgen

月1回の注射

Experimental

GLP-1を活性化し、GIPをブロック

Danuglipron

Pfizer

1日1回の錠剤

Experimental

GLP-1を活性化

VK2735

Viking Therapeutics

週1回の注射

Experimental

GLP-1とGIPを活性化

Pemvidutide

Altimmune

週1回の注射

Experimental

GLP-1を活性化

GSBR-1290

Structure Therapeutics

週1回の錠剤

Experimental

GLP-1を活性化

Survodutide

Zealand Pharma,
Boehringer Ingelheim

週1回の注射

Experimental

GLP-1とグルカゴンを活性化


Amgen のMariTide は、他の薬剤が週1回の注射が必要なのに対し、月1回の注射でよいことで注目されている。

Eli Lilly のZepbound はGLP-1とともにGIPを活性化する。GIPは食欲を抑制するだけでなく、体内での糖分や脂肪の分解を改善する可能性がある。

しかし、AmgenのMariTideはGIPをブロックする。同社では、これを遺伝学的研究に基づいているとしている。

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これとは別に、日本では2023年2月17日に大正製薬が、肥満の人向けの肥満症予防薬オルリスタットをOTC医薬品として厚生労働省より製造販売承認を取得した。欧米ではRocheがXenical、GraxoSmithKlineがAlliの商品名で販売している。

薬局・薬店で薬剤師から指導を受けて購入する「要指導医薬品」に指定されている。「腹部が太めな方の内臓脂肪および腹囲の減少(生活習慣改善の取り組みを行っている場合に限る)」の効能・効果をうたう。

カプセルタイプで1日3回、食事中もしくは食後に服用する。

オルリスタットには、脂質の吸収を抑える効果がある。通常、小腸では、リパーゼという脂肪分解酵素が脂質を分解して、脂質が吸収される。オルリスタットを服用すると、オルリスタットはリパーゼと結合し、リパーゼの働きが抑えられる。その結果、脂質は分解されず、そのまま便として排出され、肥満症を予防する。


神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科の田口 精一特命教授、高 相昊特命助教と産総研とカネカの共同研究グループは4月10日、"強靭性" と "生分解性" を両立する次世代型ポリ乳酸の開発に成功したと発表した。

   https://www.kobe-u.ac.jp/ja/news/article/20240402-65194/

石油系プラスチックは、衣類・食品容器・医療器材など、日常生活を豊かにしてくれる欠かせない材料だが、世界で年間4億トンも製造される巨大産業で、毎年約600万トンのプラスチックごみが海洋へ流出している。

気候変動対策としてのCO2削減、不適切な廃棄による海洋汚染問題が世界的な課題となる中で、これらの課題解決に応える"実用的な"生分解性プラスチック素材の開発が求められている。

ポリ乳酸は、木や草などの未利用な植物バイオマスを原料から作られるバイオプラスチックの代表格であり、石油由来の合成プラスチックの代替素材として注目されているが、ポリ乳酸には、"硬い・成型しづらい"という実用面の課題と、海水中では "難分解" という環境面での課題を抱えており、利用拡大の妨げとなっている。

今回開発に成功した次世代型ポリ乳酸は、使用時は"強靭" でありながら、使用後は、海水中でも速やかに "生分解" されるため、地球にやさしい実用的なバイオプラスチック製品の開発に繋げることが期待できる。

「次世代型ポリ乳酸に立脚した循環型プラスチック材料開発」 の全体像 は下図の通り。



神戸大学の研究グループでは、遺伝子組換え大腸菌により、乳酸(LA)と3-ヒドロキシブタン酸(HB)の共重合体(LAHB)の合成に世界で初めて成功した。

微生物によって生合成される天然ポリエステルの "3-ヒドロキシブタン酸" の基本骨格に、非天然の "乳酸"を組み込むことで実現した成果で、天然の生分解性を持つポリヒドロキシブタン酸実用物性を持つポリ乳酸の両方の長所を兼ね備えたハイブリッドな性質を示すため、まさに、次世代型のポリ乳酸と言える。

従来のアカデミック用途の "大腸菌" を用いたLAHB生産系では、「生産性が低い」ことが実用化に向けての大きなハードルとなっていた。

今回、生分解性プラスチック GreenPlanet TM の商用生産に成功しているカネカとの共同研究を行い、産業実績のある "水素細菌" に注目し、代謝経路の最適化を行う合成生物学的アプローチによって、LAHBの大量生産技術を世界で初めて確立した。

水素細菌から生産されるLAHBは、分子量100万を超える "超高分子量" で強靭なプラスチックであることが明らかになった。成型加工プロセスで要求される "強靭性" を発揮する実用的なプラスチック素材である点が、従来技術と大きく異なる。

今回得られたLAHBは、強靭な特性を持ちながら、海水中に含まれる微生物によって、常温でも速やかに生分解されることも明らかになった。

さらに産総研の共同研究において、LAHBをポリ乳酸に添加剤として少量加えることで、ポリ乳酸の伸びの大幅な改善と、ポリ乳酸の海水中での生分解が促進されることを見いだした。

すなわち、LAHBがポリ乳酸の "強靭性""生分解" の弱点を解消する "モディファイアー (改質剤)" として機能するという、これまでのポリ乳酸が分解されないという常識を覆す革新的な研究成果である。


今後の展開として、
様々な環境に応じて、生分解性を制御し、かつ、本来の性能や機能を発揮できるような自律的プラスチック材料あるいは、ポリ乳酸の改質剤としての展開を図る。
将来的には、バイオ・サーキュラーエコノミー社会への貢献が期待される。



この研究成果は、4月10日に、国際誌「ACS Sustainable Chemistry & Engineering」に掲載された。

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