バナナ・ヒロシの「はーい！バナナです」

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浮き世に根ざしている以上に、生に根ざしているものがある。芸術はその端的な一例だけれど、おしなべて浮き世（社会）のフレームでしか考えられなくなる方々もいる。例えば、音楽というものに逐一「その意味は？」と問いながら聴く人はまずいない。生に根ざしたものに、そのような問いは不可能だから。

それでも「歌はどうだ？ 歌詞にはちゃんと意味があるじゃないか」と言うかもしれない。それは神話的思考を論理的思考でわかろうとするような誤謬に似ている。論理的言語と詩的言語との違いについて考えたことがないわけである。歌（うた）は詩（うた）であり、詩は歌である。だから詩には呼吸が伴う。

でも以前、或る若手詩人に「あなたの選ぶ言葉はとても美しいのだけれど、読んでいると息が止まってしまう。詩における呼吸についてどうお考えか？」と訊いてみたところ、そっぽを向かれてしまったことがある。

2024年3月2日　中島智のTwitterより


でも以前、或る若手詩人に「あなたの選ぶ言葉はとても美しいのだけれど、読んでいると息が止まってしまう。詩における呼吸についてどうお考えか？」と訊いてみたところ、そっぽを向かれてしまったことがある。

2024年3月3日　中島智のTwitterより


かつてはただ互いに吐きだしているだけの若者の会話や、問わず語りしてくる老人の語りがまるで意味不だったのだけど、伝えるために語ることも理解するために聴くことも不全なのである。語るために語り、聴くために聴くことだけが、語りとして、傾聴として、完全なのである。

まるで猫がペットフードを一瞥して床を掻くような、溜め息のような、あくびのような言葉。SNSに繁茂するコトノハ。言外の言葉。もしも言葉がなにかを伝えるための、コミュニケーションのためのツールにすぎなかったら、ヒトの世界はどんなにちっぽけだっただろう。

2024年3月4日　中島智のTwitterより


人々を殺傷できる兵器を輸出すれば、その兵器で子どもたちも殺されるかもしれません。それで儲けたお金で、いったい何をしたいのでしょうか。

2024年3月27日　想田和弘のTwitterより


俺が高校生の頃にもすでに「会社に従順で秩序を乱さないけど、イノベーションを起こせる個性がある人材が欲しい」なんてことが言われていて、すでに一世代以上経過しているが、文科省レベルで全く進歩なしということか。

2024年3月27日　林譲治のTwitterより


明日岸田総理の記者会見。なんと、未だにコロナ感染対策の理由で人数制限。本当です。

2024年3月27日　西村カリンのTwitterより


そもそも論で、授業と冠婚葬祭は列挙して同列に扱うものではない。授業は日常だけど、冠婚葬祭は非日常の典型。そして体調のためなら今時冠婚葬祭だって水筒の水くらい飲む。いちいち断らない。最後に、授業中に水を飲むのがなぜマナー違反なのか根拠がない。

2024年3月28日　渡辺輝人のTwitterより


「若いころは莫迦だった／わかってなかった」と進歩主義的に知的ステージを語る方々がいる一方で、芸術関係者たちは「あのころの絵はもう描けない／そのときの完成形」といった並列的もしくは螺旋運動的な認識を述べるむきがある。このリニアと螺旋は、知性観だけでなく自己 ≒ 世界観の違いでもある。

積分的・累積型の学習ステージ観、すなわち一つの方程式やシステム構造にモノゴトを適合させながら敷衍応用していく知性観が成り立つのは、その型をもって優秀さを評価してきた教育システムへの自己適合化でもある。一方、その平均線に適合しない定常偏差とか外れ値のふるまいをみる微分的知性もある。

刹那的に明滅しているもの、そのふるまいが示す外システムからの干渉や複合、未知の外因との相互作用などを微分的認知でみていく知的タイプは、典型的に芸術的思考にみられるものである。しかし積分的知性観にとって、それは知性ではなく「曖昧な感性」とみなされやすい。だが芸術では「知性」である。

2024年3月30日　中島智のTwitterより

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歴史修正主義者って、平気で「強制なんてなかった」と「脱走したなら撲殺されて当然」を同時に主張するんですよ。

2024年3月23日　能川元一のTwitterより


アインシュタインが知識人ほど暗示にかかりやすく極端な行動に走りやすい、みたいなことを書いていて、その理由を文字を通じて現実を把握するからだとしている。確かにテキストというのは極端な解釈をされやすく、声の方が複雑さが伝わる。深刻な問題の相談は、メールより電話の方がいい理由はこれだな

2024年3月23日　東畑開人のTwitterより


「バナナはおやつに入りますか」のネタがわれわれに与えてくれる教訓は「何事もグレーゾーンを狙うなら黙ってやれ。確認されたらＮＯと言うしかなくなる」という大人の世界の不文律。

2024年3月23日　炒飯さんのTwitterより


【メディアの皆さん】
水原一平さんのギャンブル依存症問題に対して、無関係な街の人の「裏切られた」「ショック」といった声を拾ったり、家族の元に押しかけたり、今さら恩師の元を訪ね「残念です」と言わせる。
こういう人格否定はいらないです。
依存症という精神疾患の人を傷つけ回復を阻害します

素人の皆さんも、マスコミに乗せられて、マスコミの思い通りのコメントを出すのはやめましょう。

2024年3月23日　田中紀子のTwitterより


ドストエフスキーとの出会いをめぐって椎名麟三が、こんなことを書いている。「たとえ人生に解決がなくても、助けてくれえ！と叫ぶことはできるということを教えてくれたのであった」。この叫びは人には届かないかもしれない。しかし、けっして聞き逃さない者を二人は信じようとしている。

2024年3月25日　若松英輔のTwitterより


なぜ言葉を大切に扱うべきかといえば、言葉は現実をつくる力があるから／という肝要なことを国語の授業において学ぶ機会がないことを考えると、国語というより言葉の授業が必要だと感じる。ちなみに国語の授業ではなぜ「国」語なのかということすら教わらない。

2024年3月26日　鳥羽和久のTwitterより


「優雅な生活とは、大きく言って休息を楽しくする術をいう」

バルザックの名言。休息を取ることそのものが既に難しいが、楽しい休息となると圧倒的難行になる。楽しくすると疲れるし、つまらないと休んだ気がしない。この矛盾を超えて、楽しいのに休めているのが「優雅」。つまり、静かな愛のことだな

2024年3月26日　東畑開人のTwitterより


僕は何でも尽力しちゃうのでよく笑われた。でも、年を取ったらマジメを笑われることがなくなったな〜と思っていたのですが、それはマジメを笑う人たちから離れるようにして来た結果だったようです。

「イヤな人からは離れる」と決めるのは、いつからでも遅くはない。そして、ゆるゆると実行していく。

2024年3月29日　安田登のTwitterより
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タイムラインに「自分に自信を持つ」という言葉が散見される。私の経験をちょびっと。
自分に自信を持つのはとても難しいことで、いくら頭と言葉で「自信を持て」とか「ついに私は自信を持った」と言い聞かせても、すぐに元に戻ってしまう。自信→自信のなさ→自信→
というこれも無限ループに陥る。

これは構造的なもので、なるべくしてなっているのではないか。なぜってそれは自己が自己であるというとトートロジーと同じ構造で、自信て持とうとして持てるようなものではない気がしてます。現代人が自分に自信がないのは、個として依って立つ根拠のなさに由来しているので、時代の鏡みたいなもので。

私もこれで苦しみ続け、どうしたかというと頭で考える無限ループをやめようと。そのためにはどうしたらいいかと、これは本能的に身体に向かいました。果実の芯のようなものを身体の中に育てる以外にないと。これは理屈抜きにどうしようもなく「ある」状態になることです。

それは「自信を持とう」という発想から生まれるものではなく、気がついた時にはすでにあるような、絶対的なものだと思います。身体の内側には「絶対」「無限」という領域があるということ。そのために七転八倒し、今もしています。自信を持つということにハウツーのようなものはないと思います。

結果わたしは原初への終わることのない旅をすることになりました。まさかこんなことになるとは。死ぬまで続くでしょう。稽古はそのためにあるとも言えます。気高く、恐ろしいまでに輝く、絶対的な生に向かっている目算です。だははは


2024年3月23日　最上和子のTwitterより
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若松英輔　身体が健康にならなくとも、生き方そのものが変わってゆくということもありますよね。身体そのものには変え得ない限界もあるわけですから。

悪とはどういう形をしているのか、すこし角度を変えて考えてみたいのです。石牟礼道子さんの『苦海浄土』をめぐって一人芝居をやられていた、砂田明さんという方の言葉を見てみたいと思うのです。

・・・

「水俣病は、もっとも美しい土地を侵したもっともむごい病でした。そのむごさは、まず力弱きもの−−魚や貝や鳥や猫の上にあらわれ、次いで人の胎児たちや、稚な児、老人達におよび、ついに青年壮年をも倒し、数知れぬ生命を奪い去りました。生きて病みつづけるものには、骨身をけずる差別がおそいかかりました。そして、大自然が水俣病をとおして人類全体に投げかけた警告は無視され、死者も病者もうち捨てられ、明麓の水俣は、ふかいふかい淵となりました・・・」（志村ふくみ『ちよう、はたり』）

・・・

工場排水に含まれる有機水銀という猛毒。1959年熊本大学の医学部がそれが水俣病の原因だとつきとめていながら1968年までの9年間も海に垂れ流し続けた。病気の発見から数えたら12年の歳月が流れています。これはもう、考えられない悪です。ナチスドイツがやったことに等しいジェノサイドです。

今の日本では、水俣病は、公害であって、大量虐殺だとはされていない。しかし、現実は違います。なぜ有機水銀を流し続けたかといえば、経済的利潤のためにです。ある工業製品を作るために有機水銀が必要だった。しかし、一見これは悪という顔をしていない。だから、恐ろしいのです。

山本　「悪は善の欠如である」ということを別の文脈で言いなおすとすれば、罪とは考慮すべきことを考慮せずに行為するということです。ここでいえば、弱い人々の命という当然考慮すべきものを考慮せずに利潤、あるいは自分たちから見た善を追求しようとすること。積極的に悪いことをしようとするわけではない、自分たちにとっての善を実現するために当然考慮すべきことを考慮せずに目をふさいでしまうということ。神学的に言えば、それが罪なのだという言い方になりますね。

若松　繰り返しますが、水俣病の原因がわかってから9年間ものあるいは、有機水銀を垂れ流し続けたのです。ここには罪というよりも悪的なものを感じます。私たちが生きる現代という時代を包む大きな闇です。

山本　気づかないのではなくて意図的にということですよね。気づいているにもかかわらず、考慮すべきことをあえて考慮しないということがある。

若松　そうなんです。学者たちはおそらく−−これは生命科学者の中村桂子さんからうかがった仮説ですが−−水を流せば濃度は薄まるだろうと考えた。しかし、薄まらなかった。海には生き物がいたからです。水俣の不知火海は湾になっている。本当にいい漁場です。それゆえに悲惨な出来事が起きた。

そこまでならばまだ、これほど大きな過ちにならずに済んだかもしれない。しかし、原因がわかってからもなお9年間も流し続けた。また、地方自治体も漁場を禁止しなかった。ここには小さな罪を積み重ねていったというよりも、いのちをめぐる決定的な過ちがある。


若松英輔・山本芳久「キリスト教講義」p241
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こだわりの強い人は好きだけど、よく頑迷さなどと誤解されている。こだわりと頑迷さはまったく逆で、こだわりは常人が踏みこまない段階にまで嵌み出そうとしている。頑迷さのほうはたんに保身的なだけである。こだわりを持つ人を発見し、助力できるのは同類の「浮いた人」だけなので、運に左右される。

「浮いた人」っていうのは、親戚が集まると一人はいる「なにやってるかわからない叔父・叔母」とか、学校のなかで人付き合いが苦手な「へんな先生」とか、まあどこにでもいるのだけれど、気にしないと「ただの不器用な人」と思われているような方々のことである。しかし彼らはしばしば発見者になる。

2023円8月31日　中島智のTwitterより


「人類にとってアートとはいったい何なのか？」といった問いは言語的問いである。それは前（非）言語的なアートには届かない。「アートによって人類はいったい何をしてきたのか？」と問うには、意味 means 思考ではなく像 visions 思考、置換操作ではなく変換作用に〈戻ら〉なくてはならない。

前（非）言語的思考に「〈戻ら〉なくてはならない」というのは、例えば「生きている」理由や「生きてはいけない」理由がないにもかかわらず、理由をもとめてしまう意味強迫なるものを患った意味思考では、像思考が去勢されてしまい、それ以前に生きられている欲動にふれることが適わないからである。

2023円8月30日　中島智のTwitterより



日本の生活保護制度の欠陥はいくつもあります。なかでも決定的なものは、申請時の預貯金の保有が事実上ほぼ認められていないことなんです。
保護受給後の預貯金の保有は一定額まで認めているし、自宅、自動車の保有も限定で認めているのだから、数十万円、百数十万円くらいの預貯金の保有も認めるべきだと思います。国会議員の皆さん、早く法改正してください。

2024年3月21日　藤田孝典のTwitterより


へーと思ったら２万人いる非正規労働者に対して、正規の増員は１１１名だそうで。職安の職員が不安定雇用って、本当に何の冗談だよと思うけど、日本の政治の問題点を凝縮しているようにも思う。

2024年3月21日　渡辺輝人のTwitterより


ベトナムでは、1年あまりで2人の国家主席が汚職問題で辞任。汚職が起きている状況は悪いが、それでも汚職スキャンダルが発覚したら辞任という部分は健全だと思う。

今の日本政治にはそれが無くなったし、メディアも「汚職」という言葉を使わなくなった。「政治と金」って何？


2024年3月21日　山崎雅弘のTwitterより


だいたい今度の車いす問題にせよ、何で日本人がこう酷薄かといえば、かつて学校で教師に食らったことを他人に向けてるだけなのでは。努力しても「これぐらい皆やってる」、事故で遅刻したら「５分早く家を出ればよかったんだ」、辛さを訴えても「お前一人にみんなを合わせられない」。覚えあるでしょ？

障害者の外出行動で必ず言われる「あらかじめ連絡をしておけばよかった。それを怠った方が悪い」、まるっきり同じことを黒人伝統の髪型をして卒業式に出ようとして拒まれたアフリカ系生徒にも言っていたのを思い出した。「言ってくれれば許可したのに」って、いや、そんなつもりなかったでしょセンセ？


2024年3月22日　芦辺拓のTwitterより
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いつも言ってるが「無駄なことは勉強したくない」「役に立つ知識だけ欲しい」「効率的に学びたい」という学生は常に伸び悩む。役に立つか立たないかより「面白いかどうか」で学ぶ学生は最初は鈍くてもある時期からぐいんと伸びていく。「役に立つこと」だけを大学で教えてたらこの国はアホになるよ

昨日書いたこの発言が１万くらいリツイートされている。すると普段私が何言ってるか知らない沢山の人から膨大なコメントがつくのだが、見てわかるように「似た持論を演説する」「半可通でケチつける」「自分の自慢をする」といった反応がほとんどである。私が読んで資するところはあまりない

しかし個々の発言が役に立たなくても、それがマスになって押し寄せてくるとよくわかることがあって、「大衆の反応」とはそういった「相手への無理解と無遠慮」そのものであるという実感である

私などせいぜいこういう機会にかすかに感じる程度にすぎないが、マスコミに登場するような有名人は濃密な「こういう感じ」に毎日晒されているのだろう。そりゃ頭もおかしくなる（笑）。事件などで突然スポットライトがあたった一般人が動転してしまうのも無理もない

そう考えると政治家というのはこういった「大衆の反応」を汲み取り、一つ一つ誠実に（理念としては、だが）対応するのが仕事であって、ほんまちゃんとやるならば大変な仕事なのだろうと思う

ドブ板選挙とかやる人は、わけのわからん「持論」「ケチ」「自慢」をぶつけてくる選挙民に対して「くだらん」と無視するわけにはいかない。彼ら彼女らに「自分の意見がちゃんと聞き入れられた」という思い込みを与えてあげなければならないわけよな。やーオレには無理やね、とほんま思う

こう書いたのをたぶん読まないままコメントはどんどん増えていく。注目が集まる場所で便乗して演説したいその俗な欲望のことを「大衆」とオレたちは呼んでいる。大衆って形式であって個々人の集合じゃないんだよね。他人を顧慮しないまま自分を表し注目を浴びたい（叶えられない）欲望のことです

大衆文化論とはそういう欲望の形式を分析する作業であって、自身の大衆的な欲望を振り回して「これが好き。なぜかというとね」と他人に聞かせてまわることではありません、と土曜日の模擬授業で高校生に諭しておきたい

2018年7月31日　増田聡のTwitterより
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若松英輔　自分なりに悪を定義しようとすると、悪とは罪を重ねていくことではなく、聖なるものを破壊しようとする営みではないかと考えています。遠藤周作が、フランスの作家ジョルジュ・ベルナノスの言葉にふれながら書いていたように、この世に悪というものなどないと思わせるように企んでいるものこそが、究極的な悪なのではないでしょうか。

歴史を振りかえれば、ファシズムを経験し、スターリニズムの時代も経てきた。その日々には悪と呼ぶほかない、いのちの軽視があった。しかし私たちは、その問題にきちんと向き合わず、それら悪をもたらしたものは思想の違いにすぎない、という結論に落ち着けてしまってきていたように思うのです。

悪とは人間のなかに内在する、聖なるものを破壊しようとする衝動であって、それは罪とは根本的に異なるもの、つまり本来求めなければならないものを求め損なっている、というよりも、本来求めなければならないものを破壊しようとする衝動を伴ったものが悪なのではないか、人は、神なるものの力を借りねばならない。けれども、神とは異なる力を借りて、人間と神とのつながりを分断しようとするもののように感じられます。

聖書の中にも、悪魔および悪霊というものは確かに出てきます。でも、現代のキリスト教はどちらかというと神とは何かを語ってはきたけれども、悪についてはあまり語ってこなかった。悪は、けっして縁遠いものではなくて、常に萌芽として身近なところにあって、意識にのぼらせなくては、知らないうちに大きく育ってしまうものなのかもしれない。でも語られることがないままでは、内省することも、悪に考えを及ぼすこともできなくなってしまう。

山本　神があるのになぜ悪があるのか、という問いも大事です。でもアウグスティヌスもそうであったように、むしろ悪の問題について本当に深く考えた人で『キリスト教の精髄』を善と悪の話から始まり、善と悪という概念を認めると、自ずと善悪の究極的な基準としての「神」の問題について考えなければならなくなるという展開をしていきます。トマスの有名な言葉にも「もし悪が存在するのであれば、神は存在する」、というものがあります。もし神が存在しなければ、つまり善悪の絶対的な基準のようなものを認めなければ、悪というものも存在しえない。逆に悪というものを認めるのであれば、それは善悪の究極的な基準としての「神」の存在を認めることにもなるというわけです。これは、一見詭弁のように聞こえるかもしれませんが、無神論者の代表者であるニーチェにおいても、形を変えてまた出てきます。

ニーチェの著作に『善悪の彼岸』というものがありますが、ニーチェの無神論は、善悪の向こう側とするものです。伝統的に道徳で言われてきた「善悪」は、弱い人間が強い人間のことを「お前たちは悪だ」と言うことによって自分たちを守ろうとする、弱者の奴隷道徳２過ぎないのだ、と言うのですね。

つまりニーチェは、悪があるのであれば神なんか存在しないと言うのではなく、この世にはむしろ善も悪もないのだ、力が強いか弱いかの区別しかないのた、という方向に行く。それがニーチェの「無神論」というものです。逆に言えば、ニーチェもまた、道徳的な悪を道徳的な悪と認めることが神の存在を認めることにつながってしまう、ということを認めているとも捉えうるでしょう。

若松　なるほど。ただ山本さんに反対するわけではないですが、神を聖なるものに置き換えて考えてみると、どうでしょうか。悪に直面することは聖なることに直面するかといえば、悪を封印していくと、逆に聖なるものを見失うのではないかと思うのです。昨今の日本に漂う空気はまさに、そういった危機を感じさせる。人間の手がふれ得ないもの、全身全霊で畏怖の念をもって接しなければならないようなものが、陳腐なものに成り下がってしまっている状況・・・それこそが悪の原種のように思われるのです。

悪というものは、角を生やして、私は悪魔です、と分かりやすい形でやってくるのではなく、むしろ、自らを救世主であると称して現れることもある。この世界を破壊する、という恐怖に満ちたメッセージを伴って現れるとは限らず、むしろ、より良い世の中を作ろうという明るい絶望とともに出てくる。

例えば、強い人間、弱い人間といった優位をつけることもその過程ではないでしょうか。ナチスドイツがやったのは、まさにそういうことです。民族的にユダヤ人が劣っている、ハンディキャップを持った人には生存価値はないと言い、人に優劣をつけて、徹底的に質的存在であるいのちを量的に換算していく。

人間に内在する聖なるものは、本来、量的に換算されることを拒むはずです。数値によって測られたり、多寡を比べられるようなものでなく、絶対固有性を保持しているはたらきこそが、聖性でしょう。でもそういった固有の価値を相対化してしまうもの、人間の命を数値で測るような衝動こそが悪なのではないでしょうか。原子爆弾の投下などは悪以外の何ものでもない。アメリカは戦争を終結させるために原子爆弾を投下するより仕方なかったと言うけれども、そもそもそうした一瞬の殺戮という選択肢が出てくることに、人間の内在する悪の表出というものを見る思いがします。戦争で人が殺しあうことをはるかに越えた、瞬殺して戦争を終結させることが良いことなのだという価値観こそが恐ろしいと思うし、現代の悪というのはそのように、ある価値体系においては、良いことと判断されるものでもある。


若松英輔・山本芳久「キリスト教講義」
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教育、医療など様々なサービスを無償化すると、また国から税金を掠めとられる、と思う人がいます。
実は税金以上に企業で働いている人は会社、株主からすでにたくさん「剰余価値」を掠めとられ、貧困、生活苦にされています。
税金が上がっても「再分配」が増えれば、生活は楽になります。

20243月18日　藤田孝典のTwitterより


自分は人間の揺らぎやぶれを擁護する立場なので、「こういう人間はこういうふうに判断するんです」といった他者についての断定の暴力性には、一番抵抗を覚える。

20243月18日　高村峰生のTwitterより


人は語り得ないおもいが胸にあるから書くのである。語り得ないおもいこそが、それまで手に握っていたものを手放させ、ペンを持たせるのである。書くとは、言葉のちからを借りながら文字の奥に眠る意味を目覚めさせることである。容易には言葉たり得ない意味を生きている己れの生を証しすることである。

20243月18日　若松英輔のTwitterより


「私が調査しているエチオピアの農村部でもそうですが、一見、仲が悪く見えるんです。行くたびに兄弟ゲンカやご近所トラブルを目にします。しかし、揉め事だらけに見えるのは、それぞれの問題をちゃんと吐き出して表沙汰にしている証拠でもあります。」松村圭一郎

西アフリカでも大喧嘩だった。けれど、たちまち笑い合っている。引き摺らない。引き摺って恨む文化のベースには構築・貯蓄のイデーがある。すなわち保守がベースになっている。保守の心性には、それを喪う怖れがあり、攻めにたいする脅威が増し、反撃も過剰になる。この怖れが傷となって引き摺られる。

20243月19日　中島智のTwitterより


いま考えてみると「安倍首相が権威主義や偏狭なナショナリズムを広めた」というより「安倍首相の周りに群れていた政治家から文化人に至るまでの取り巻き論者たちが権威主義や偏狭なナショナリズムを広めた」と言う方が正しいように思えてきた
安倍首相本人は実はさほど深く立入ってなかったような気も

20243月19日　ShinHoriのTwitterより

今は「ホームレスを寝させないため仕方ない」とか言ってる人がいるが、いずれ発想が逆転して「ホームレスのせいで俺たちまで使いにくい椅子になった」という逆恨みの主張に変わると予想（排除アートのベンチについて)

20243月20日　ShinHoriのTwitterより


「体調管理」という言葉を若い頃は何の気なしに使っていたけれど、身体は自分の意思で「管理」できるものかとあらためて聞かれたら、今の私はうなずきがたい思いがする。

20243月19日　牟田都子のTwitterより

生活のいろんなことを記録しましょうとデバイスの機能が豊富になる。それは管理の楽しさという新たなサービス的価値。

20243月19日　千葉雅也のTwitterより
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「学問は役に立たなくていい」と言い切って満足している学者等は少なくないが、�　嵒�要性からの距離」に価値を置くことはブルデューが指摘する特定の階層や文化資本に無自覚なふるまいであり、�◆嵬鬚卜�つ」ということの意味を矮小化しており、�８�的資源投入を削減する口実を与える点で自損的である。

2024年3月1日　本田由紀のTwitterより


「普通」「標準」「人並み」という言葉はどれも排除性を持っている。「当たり前」「世間」「一人前」という言葉も、とりわけ「正義」という言葉も排除性と、基準に収まらないものを排除し、除去しようという暴力性を有している。「普通でいいじゃん」と考えないで済ませてしまうところに怖さがある。

2024年2月25日　山内志朗のTwitterより

「日本社会がどういうものかが、発達障害を通して見えてくるんです。つまり、ある社会の期待があるから、それにうまく適応できないことが目立つという側面があるのです。」照山絢子
「その人」にとって「障害」となる環境、慣習、制度として、社会を捉えていく人類学的視点。

「そんなこと言っても現実は …」と、ローカルな社会を「絶対化・物象化」してしまう発想こそが、障害となる環境なのである。

2024年2月26日　中島智のTwitterより


表現において「コレがある」「アレもある」と顕示されたものしか見えなくなると、たやすく「知識がある」「経験がある」などといった顕示にちょろまかされてしまうのかもしれない。「ある」ことによって喪われるものについての感受性さえあれば、「ある」ことがもつ偏向性そのものを祝ぐこともできる。

2024年2月29日　中島智のTwitterより


創作が好きで芸術系大学まで進んだ学生とか、あるいは研究が好きで専門学科に進んだ学生でもそうだろうが、彼らの「好き」を奪って、潰すことは簡単である。ひたすら「それをやる理由は？ 意味は？ 意図は？」と問い詰めていくだけでよい。これから進学される学生さんたちは、この罠にだけ留意ほしい。

2024年3月1日　中島智のTwitterより


意味とか価値がないとやれない、という脆弱さに気づかないと、意味があることや価値があることを正しさの根拠にすり替えてしまう。こうなってしまうと「意味を求められて潰れるようなヤワには才能がない」とか「続けたもん勝ち」といった、結果論の淘汰説へのすり替えまでまことしやかになされていく。

（美大で学生に部外者向けの意味（方便）を考えてやることがあるけれど、昨今では学内教員向けの方便まで求められらようになっている現状がある。）

2024年3月1日　中島智のTwitterより
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共産主義が設計主義であるゆえに「悪」が政府の強権に集約されて現れるのにたいして、複雑でアドホックなシステムのツギハギである資本主義では、「敵」の姿がはっきり見えない。だからいつでも「悪者」探しが行われ、煽動と炎上が常態になる。

2024年3月10日　倉数茂のTwitterより


「降りてから言え」という輩は「降りてから言うなよ」と難癖する。ただ難癖したいだけだからである。

2024年3月12日　中島智のTwitterより


批判には愛があるが、嫌悪感にはない。なにかに嫌な感じがしたなら、それは自身のなかに個人的な傷のようなものが疼いているわけだから、批判の装いを施すよりも省察したほうがポジティブである。このとき、嫌な感じがした対象は、自身を生き直すための指標となる。理屈が立つ人たちはここが不得手。

2024年3月13日　中島智のTwitterより


学生、若者、女性、非正規労働者…。
構造や制度が始めから困窮するように備え付けられているので、変えられない、と諦めずに仲間と連帯して着実に取り組んでいきましょう。
生活困窮しているのではなく、生活困窮させられている、という感覚が大事。

2024年3月14日　藤田孝典のTwitterより


働けば豊かになれる、と信じて労働者は資本、企業の言いなりになって人生を捧げます。
しかし、住宅も教育も何もかも商品にされ、必要なもの全てを資本が独占している社会です。
だから、金、金、金、と生涯奪われ、気付いたら搾り尽くされて、ボロボロの身体しか老後に残らないです。

2024年3月15日　藤田孝典のTwitterより


あえてですが、資本主義に「逃げ場」はないのです。搾取ー被搾取の階級社会ですからね。
階級に自覚的にならないと「逃げ場」「理想郷」「ユートピア」があると思わされ、また資本に搾取されますよ。幻想、マヌーサを解く時代です。がんばりましょう。

2024年3月15日　藤田孝典のTwitterより


ビル・ゲイツとか、イーロン・マスクとか、勝ち組資本家というのはそういうヤツです。
日本の資本家など全て負け組もよいところだし、いまさら参入して勝てる産業はありません。
日本の金持ち、小金持ちは勝ち組資本家ではなく、負け組、搾取される側です。

2024年3月15日　藤田孝典のTwitterより


たぶんどうでもいいことではないんだけど、一見職業差別を防ぐフリして「セクシー」の意味をすり替えて、実際には性産業の消費者男性を守る新たな婉曲表現が作られつつあるのが気になる。セクシー女優とかセクシーダンサーとか、セクシーの範疇に止まってなくね？セクシュアルな行為も含まれてるなら。

2024年3月13日　中野晃一のTwitterより


「血縁」「国籍」「人種」といった要素にもとづく排外主義というのは結局、
「能力と無関係な既得権」を既成事実化したい欲求の表れという面が小さくない気がする。

ナチスなんかもそうですけど、成長や向上の数倍も「正当化」のために努力する、その知的な本末転倒感がなかなか凄い。

2024年3月14日　マライ・メントラインのTwitterより
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共産主義(社会主義)の体制で一部の者が豊かになって多くの者が貧しくなった場合、その体制は"失敗"と見做されるが、資本主義体制で同じことが起こると、逆に"成功"として扱われます

2024年3月10日　ShinHoriのTwitterより


「政治家に文句を言うなら、お前が政治家になれ」

とある人に言われたのですが、それを言う時点で民主主義的には失格です。
政治家にならないと文句が言えないなら、政治家ではない国民の殆どが政治に文句を言えないことになります。
民主主義とは政治家を無責任に虐げる力を国民が持つ思想です。

2024年2月18日　織原然ののTwitterより



私は日本の全大学、全学部に好意的だし、リスペクトしている。
時代の変化を読めずに苦労している大学も多数あるが、その時々の知識人が必要だと思って開学したり、学部創設、学生募集に尽力してきた経緯は尊いもの。
それは偏差値などで到底計れるものではない価値あること。

2024年3月10日　藤田孝典のTwitterより


Fラン大学=「不必要な大学」と雑にまとめすぎ。
偏差値教育に染まり、目が曇った指標しか持てない人間には「Fラン」は不要だと映るかもしれない。
経済、経営、社会、介護、福祉、保育、芸術、美術、文化、工芸、宗教など色々な学術分野が「Fラン」として現れる。
それら超価値あるものを「Fラン」にしているのは私たちかもしれないよ。

2024年3月10日　藤田孝典のTwitterより


真面目に研究している学者の待遇は年々悪化しているのに、大昔に筒井康隆が「テレビ芸者」と呼んだタイプの「社会学者」や「国際政治学者」や「経済学者」などは大手広告代理店とつるんで高収入を得る。それ自体が若者へのメッセージとなっている。体制に逆らわず寄り添えば良い待遇を得られるぞ、と。

「テレビ芸者学者」も「幇間芸人」も、一見すると中立っぽく振る舞います。あからさまに権力（自民党や大阪維新）の味方をしない。

代わりに彼らは「権力や体制を批判する人間」を逆張りで叩いたり、揶揄冷笑する。つまり「権力の敵を叩く」ことで「権力に奉仕」しています。

2024年3月11日　山崎雅弘のTwitterより


学生時代によく野外コンサートなどから漏れてくる音楽を聴きにでかけた。それは紙芝居屋がきてアイスキャンデーを買えなくても遠巻きに紙芝居を鑑賞できた立ち位置にも似ていた。こういうかたちでも文化継承はなされる。しかし、これを文化継承と捉えられない鑑賞論者らは、帰れ帰れと蹴散らしにきた。

実際、誰がどのようなかたちで文化継承を行い、その後ステージに立ったり我が子のために創作したりするかは未知数なのである。そのために博物館法では基本的に展示物を無料鑑賞できるよう推奨している。わざわざ教育しなくても受けとってしまう方々はしかと受けとる。それを選り分けることはできない。


2024年2月25日　中島智のTwitterより


大っ嫌いな人生訓なようなことを言うとすれば、「ナニ者かになりたい」と望むなら、迂闊さと浅薄さとが不可欠になる。逆に、「ナニ者でもなく軽快でいたい」と望むなら、慎重さとか思慮深さとかが不可欠になってくる。これがわかれば、これらを選ぶことができる。選んでいる方々のこともわかってくる。

「あなたのアイデンティティは？」「わたしのアイデンティティは◯◯です」といった会話がなされる時、そこでなされているのは「あなたの承認欲求とは？」「わたしの承認欲求とは◯◯です」という情報交換なのである。ここに決定的なディレンマがある。その「◯◯」は、社会的コスプレでしかないから。

2024年3月2日　中島智のTwitterより


教養の用途についての話題が廻ってくる。教養を集合知とか公知とみなすと集団にとっての用途を考えがちだけど、実際のところ教養は匿名ではない。いわば教養が教養たりうるのは教養が固有名詞になることで、これに個人として「あの人ならどうする？／どう考える？」と同盟関係をもつことなのである。

「あの人ならどう考える？」といった（仮想の）同盟が築けなければ、不安なときにただ怯え、悲しいときにただ泣いているだけになってしまう。なんでもない日の穏やかな慶びもただなんでもないものになってしまう。物事にただ骨髄反射するだけになる。生の、そのこと自体のめんこさがわからなくなる．

2024年3月1日　中島智のTwitterより
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ある集団を画一化する方法は簡単だ。結果主義を植えつければよい。成果を出さない奴は恥ずかしいと考えさせればよい。その成果とは本人にとってのそれではなく、望ましいと見做された一つの結果である。翻って、個別化をもとめるならプロセス重視がよい。プロセス重視では、本人にとっての成果になる。

結果主義ではできるかできないかしか選択肢がないけれど、プロセス重視では幸せかどうかという個別判断、多様な評価軸に委ねられることになる。できるかできないかはモノ・ストーリーだが、幸せかどうかはマルチ・ストーリーなのである。いうまでもなく教育はマルチ・ストーリーを実現するためにある。

2023年8月28日　中島智のTwitterより


たまに研究者でさえ、よく「あの街では同時期にたくさんの著名学者／芸術家を輩出した」とか「そのクラスタには錚々たる面々がいた」などと言うので呆れる。これが地政学的非対称性の問題で、いわば東京にキー局が集中し、じゅん散歩的に紹介するので、全国で渋谷や田園調布が知られているようなもの。

地政学的非対称性は、情報の流れを一方向的にしてしまう。この非対称性に気づかないと、ある地域がとりわけ優秀な人材、錚々たる面々を輩出しているかのように錯覚してしまう。しかしそんなことは決してあり得ない。そのあり得ないことを錯覚させるのが地政学的問題なのである。

2024年2月18日 中島智のTwitterより



宗教の基礎が、信者的な解釈ではなく、行者的な自己変容にあるように、哲学の基礎もまた知恵への愛好ではなく、内省的批判プロセスにある。ものごとの基礎は、それを消費する立場からではなく、それに衝き動かされる方々の実践、欲動から捉えていかないと、少なからず倒錯的になる。

2024年2月20日 中島智のTwitterより


プライドというのは相対評価ではなくて絶対評価なので、芸術系の、とくに実技系の方々なら自然に身につく自尊心である。プライドがないと相対評価しかできなくなる。なめられたと感じてしまうのは、相手がなめているかどうか以前に、そう解釈した側が「上下関係」に囚われているケースがままある。

2024年2月23日 中島智のTwitterより


自らの生を考えるにも、誰かの生を想うにも、二通りの眼差しがある。一つはカンブリア紀からの悠久の時をもつ生、もう一つが生命史上はじめて生まれた変異体、個体としての生。いずれも尊い生である。でもこれらの尊厳は、社会的ニンゲンとしての意味とか価値とかに惑わされた眼差しには見えなくなる。

残念ながら、生の、生による、生のための自己言及としてのアート、などと語っても、社会的去勢を被った方々にはふわふわした話題にしか見えない。ふわふわしているのはむしろ去勢観念のほうで、例えば狩猟民からヴィーガンまで、食とは生が、他の生を、死骸を賜わることなのだが、食品にしか見えない。

カンブリア紀から五億年以上ものルーツをもち、眼の前でめんこく鼓動している誰かに、俺のほうが上だとか、優れているとか、持っているとか、見た目がましだとか、賢いだのと、時代の価値なんかで比較したり、批評したりするのは、一つのふわふわした遊び game、ふわふわした物語 fiction にすぎない。

2024年2月23日 中島智のTwitterより


映画「ジョーカー」をみた。映像も演出もいい。けれどジョーカーがジョーカーになっていく理由に合理性がありすぎて軽薄になっている。ひとが或る人格になる理由とは、当人にすら自覚できない無数の出来事と、認知バイアスとの絡み合いで、出来事のほうに決定的理由などない。

たとえば誰かと唯一無二の世界を制作していく「愛」を知らず、誰かに与えたぶん与えてもらうとか自ら変わっていくのではなく現実を変えてほしいとか願う「依存」というバイアスがあれば、思うように与えてもらえない相手や変わらない現実に幻滅し、他責的に憎むようになる。そんなバイアスの積み重ね。

2024年2月23日 中島智のTwitterより
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論理で伝えるような言語的思考と、イメージ同士が対話していく視覚的思考との最大の違いといえば、言語的思考では「肯定」が否定によって成立していること。一方、視覚的思考では「肯定」が新たな「肯定」を生んでいく。美術などを学ぶさいは、この言語的思考の「否定による肯定」からのシフトが必要

慣習的に用いられている言語的思考からのシフトができないでいると、先達が「その先／その向こうがあるよ」と新たな肯定へと誘っても、これを「今此処が否定されている」と勘違いしてしまうことになる。

2024年2月18日 中島智のTwitterより


おもちゃ遊びの深化プロセスはちょうど作品鑑賞とも相同的である。

第１階梯：玩具がもつ物語 rule や、それに喚起された物語で遊ぶ
第２階梯：玩具がもつ構造を探って、その構造を転用しながら遊ぶ
第３階梯：玩具を作ったひとの欲動や善意、物質的出自に遡行していく

以降、玩具を制作しはじめる。

玩具遊びの第２階梯では、玩具はことごとく解体される。この段階への移行を「モノを大切にしなさい」などと叱責して止めてしまうと、大人になっても「ルールは守ろうよ」的な思考停止をする、与えられた物語 rule のなかでしか思考できない人間になってしまうかもしれない。

2024年2月18日 中島智のTwitterより


「石工が苦心するのは、石をみわけることで、長い間つき合っていると、石は必ず物をいう。自分で考えるというより、石の言葉を聞きわけることが大切で、間違って下手に積むと、石があばれる。石に従うことがわしらのつとめなんですよ。」粟田万喜三

華道家は花に「どうなりたいの？」と聞く。石工も石に聞く。これは物づくりの基本だけれど、人づくりでも自分育てでも同然である。人ならば無意識に聞く。そういう作法が身についていない人が先生になると、素人の物づくりのように自分のイメージを素材、相手に押しつけてしまう。

2024年2月19日 中島智のTwitterより


山田太一編『生きるかなしみ』1995：山田太一「断念するということ」；いま多くの日本人が何より目を向けるべきは人間の「生きるかなしみ」であると思っている。人間のはかなさ、無力を知ることだという気がしている。……大切なのは可能性に次々と挑戦することではなく、心の持ちようなのではあるまいか？　可能性があってもあるところで断念して心の平安を手にすることなのではないだろうか？　人間の出来ることなどたかが知れているのであり、衆知を集めてもたいしたことはなく、ましてや一個人の出来ることなど、なにほどのことがあるだろう。
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世の中には人の目には見えない所で、記録に残らない形で、人生を深めている人が沢山いる。その深まりようはしばしば、本人すら気が付かないほどだ。五感に訴えるものはすべて、この世に置いていかねばならない。しかし真の意味で、認識したものは違うのではないか。愛、自己、意味、超越者もまた。

2023年8月27日　若松英輔のTwitterより

セヌフォ族の人々はとても聡明だった。その精神のありようは「風が吹いている」としか言いようがない。簾でしか仕切られていない涼やかな部屋のように。風が、精神なのだ。ところが風で吹き溜まった葉塵、水が淀んでうまれた澱物のほうを「私」とか「精神」と呼んでしまう倒錯はしばしばみられる。

2023年8月27日　中島智のTwitterより
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あとね、洗練されていない、と批評されることがあるんですが、わたしは、小説でも演劇でも、洗練や成熟や円熟や熟練を目指したことはありません。
それは、作品にとって停滞だと思います。
はっきり言うと、死です。
いかに、洗練に背を向け、洗練から遠ざかるかに賭けています、わたしは。

2023年8月27日　柳美里のTwitterより
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学生と話していて思うのは、革命は悪いこと、デモも悪いこと、批判も悪いことと思っている人がかなりいて、常に正義は双方にあるのだと思いたいという願望の強さ。ここにつけ込まれているのではないか、と思う。あと反共思想を内面化した人も多く、人権は胡散臭く競争は不可欠という感覚。

そして新自由主義、優生思想、ヘイトと一体化した排外的ナショナリズム、自己責任論を浴びながら生きてきたことをひしひしと感じる。同時に生きづらさ、現代社会は何かおかしいという感覚や正義感もある。世界で何が起こっているか、世界情勢と抵抗の世界史を学ぶ場を増やすことが急務ではないか。

思った以上に反応があったので補足。もちろん学生さんは私達の頃よりも色んな意味で真面目できちんと考えようとしている人や社会的な運動にアクセスしている人もそれなりにいます(それも私達の世代より増えている印象)。ただ興味を持ったときの入り口がYouTubeだったりするのと修正主義に巻き込まれる

そして、こうした状況を作り、強化しているのが、働いている壮年以降の世代だと思います。なので、大学卒業した後だからこそ見えてくる矛盾や生きづらさを問いなおすための学びの場が必要で、そのためにも過労低賃金の状況で学べる形をどう模索するかが急務だと思っています。

2024年2月5日 水口良樹のTwitterより
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若松英輔　そうすると、アウグスティヌスの考え方によれば、悪の行いは神には届かないということでしょうか。つまり、悪が人間世界を破壊する、あるいは人間的な秩序を破壊することはありえても、悪が神の国の秩序を破壊することはありえないということでしょうか。

山本芳久　どうでしょうか。もう少し言葉を足すと、キリスト教には「悪は善の欠如だ」というアウグスティヌスに由来し、トマスなども受け継ぐ基本的な悪の定義があります。『自由意志論』も徐々にそうした話題に移っていくのですが、人間の罪や悪い好意は、じつは「悪を選ぶ」という選択によるものではない、というのがアウグスティヌスの考えのポイントの一つです。むしろ、人間の選択というものは常に善と善の間の選択でしかありえない。行為をするとき、我々は常に何らかの「善」を目指していると考えるのです。

一般的に、人生の様々な場面における選択とは、倫理的に生きることを選ぶのか、あるいは金や快楽におぼれて生きるのか、といったわかりやすい道徳的基準に基づいた二分法でしょう。でもアウグスティヌスによれば、人助けのような倫理的な行いは、もちろんのこと、お金や快楽の追求といったものも、すべて「価値があるもの」であるという広い意味において「善」なのです。サービスのよいレストランも、書き心地よいボールペンも人間の選択の対象となるのはすべて善なので、悪い行為は悪を選ぶことではなく、常に善を選ぶことに由来することになる。となると、悪とは何なのか。

そこでアウグスティヌスは、より高次の善を犠牲にすることによって、より低い善を実現しようとすることが悪しき行為の本質なのだと考えるのです。

人間の欲求は善なるもの、価値あるものにしか向かいえないものだというだけではなく、そもそも、神の創造したものはすべて善だとキリスト教では考える。その意味において、実際には善しか選べないわけだけれども、よりよい善に目を閉じてしまった場合に、そこに悪い行為が生まれてくるのだ、と考えるのですね。つまり、悪い行為というものはあっても、それ自体として悪いものなどそもそもありえないのだ、というのがアウグスティヌス以来、キリスト教において悪を考えるときの大前提なのです。

若松　しかし、「悪は善の欠如である」という悪の定義と、私たちが直面する悪というのは感覚的にずいぶん異なるものではないですか。

山本　確かにそれはそうなのです。「善の欠如」はラテン語でプリバチオ・ボニといいます。ボニは、「善」を意味するボヌムというラテン語の名刺の属格で、「善の」という意味で、プリバチオが「欠如」ですね。トマスは区別しているのですが、ほかに「善の欠如」に類似する概念に「善の不在」というものがあります。ラテン語ではアブセンティア・ボニですが、「不在」とは単に何もないという意味であるのに対し、プリバチオ、「欠如」とは、あるはずのものがないという意味です。当然あるべきはずの倫理的な考慮を欠落させて、快楽や利益という意味での「善」をひたすら選んでしまう。それは、恐るべき空白というか空虚というか、そういうものだと思います。「悪は善の欠如である」とは悪なんて存在しないと言っているのではなく、「悪は一種の空虚として存在する」という意味だと解釈したほうがいいと思います。そこには、人間存在の抱える恐るべき虚無性が表現されているのだと思います。

若松　罪と悪というのもずいぶん違いますでしょう。

山本　そう、罪というものはもちろん実在します。罪とは、つまりより高次の善を犠牲にする仕方でより低次の善を選んでしまうという在り方のことですね。究極的に言えば、神という最高善や、神によって創られた秩序を蔑ろにして行為するのが「罪」というものだと思います。

若松　日本人にかぎらないと思うのですけれども、キリスト教が抱えている大きな問題として、罪と悪との関係をあまり明らかにしていないことがあるように感じられます。罪を重ねていくと悪があるという考え方なのか、それとも、悪と罪というのは似て非なるものであって、二つの間には容易には越えられない大きな壁があるのかどうか。罪と悪には連続性があるのかないのか。この関係性を神学的にどう考えるのでしょう。

山本　我々が現実に感じとる悪の大きさと、悪の定義である「善の欠如」という悪の定義は必ずしも単に楽観的なものの見方を表現しているのではない、という事実に着目することです。人間は多くの場合、「善の欠如」的なことを選んでしまう、しかしそれ自体が結構恐いことですよね。人間存在がどうしても抱え込んでしまう恐るべき虚無性の表現として、「善の欠如」という悪の定義を理解しなおすことが、この定義を有意義な仕方で生かしなおすための鍵になると思います。

若松　それはそうですね。人間は罪を犯しがちです。でもそれでも、罪を犯すことと悪との間には大きな溝があるように思えてならない。人は呼吸をするがごとく罪を犯すという存在であったとしても、本当の意味での悪とはそういうものではないだろうと思うのです。日々生きてあるなかで何千という罪を犯す。しかし、足し算で罪が重なってその数が三千になったら悪に転ずるのかといえば、そんなことはけっしてない。悪の門をくぐるときには、何かもっと、とても大きなものを超えていくのではないか、と思うのです。

山本　おそらく日本語で罪という言葉に、どうもおどろおどろしいイメージが付きまとうのでしょう。罪という言葉は、罪を犯すとか、罪を背負って生まれてくるといったように、どこかとても暗いイメージを与えるところがある。一方、ギリシア語で罪はハマルティアというのですが、これは元々は「的外れ」という意味なのです。そんなところを目指しても人間としては満たされませんよ、というようなニュアンスなのです。その流れで考えれば、「人間は罪を背負って生まれてくる」といういわゆる「原罪」の教義も、人間には、自分を本当に満足させるところがある、といった気味で解釈できるはずです。

アウグスティヌスの『告白』に描かれている話で言えば、出世とか異性との関係とか、そういったたぐいのものです。最終的に自分を満たしてくれるものと思いこんでしまったけれど、そうではなかった。より大きな善へと心が開かれていなかった――それが罪ですね。出世とか魅力的な他者との関係とか、それはそれ自体としては善いものです。むしろ、善いもの、魅力的なものであるからこそ、それ以上に善い物があるということを覆い隠してしまうことがある。そこに問題がある。だから罪とは、積極的に悪を為すということでは必ずしもないのです。

若松英輔・山本芳久「キリスト教講義」
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生まれたばかりの
おまえら
カニのこどもたち

一体
人間がこわいなどと
誰に教わったか

ひとまたぎの流れを
如何にもカニらしくしねいる足で
ピラピラと
泳いで渡る術を知っているなんて

二十匹が
二十匹とも

這い上がった岩の上に
けろりと
苔なんぞをむしっているくせに


石牟礼道子「生命」
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ところで、現代の科学でも、

「人間はたったひとつの受精卵から始まる。人間はどの一つの細胞をとっても、からだ全体作り出すことのできる遺伝子を持っている。つまり一つ一つの細胞には潜在的にからだのすべてがある」

というような考え方がありますが、私はこの考えは「部分は全体を写す」という世界観のかなり安直な焼き直しと感じるのです。というか、細胞の話を「部分は全体を写す」というふうに解釈してしまったら、それはチェーホフ以前の世界観にしかならないと思うのです。科学者自身、細胞の話をするときについつい「部分は全体を写す」式のことを言っていますが、科学者が科学の現状を一般向けにわかりやすくアレンジしてしゃべるのきにはすでにアテにならない、と私は思っています。科学者自身の持っているボキャブラリーが案外19世紀的なことが多いからです。細胞にとっては、どれもみな同じ遺伝子を持っていることより、一度「手」なら「手」になったものは二度と「足」にも「心臓」にもならないことの方がずっと重要なはずです。

いまの科学は脳や遺伝子や宇宙について、いろいろなことを発見していますが、大事なことは、それらの発見が、概念として文学で使うことができないということだと思うのです。使うとしたら、科学の現場で使われている科学としての正しい意味を離れて比喩的にしかならないのですが、比喩的思考の乱用を避けるようになったのがチェーホフ以降の文学で、これもまた広い意味での科学的思考の成果です。

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少し話が飛躍するように感じられるかもしれませんが、歴史と真に対峙しようとするとき、ひとりであるということがとても重要なのではないかと考えているのです。ここで対置される態度があるとすれば、それは集団的に理解される歴史観というものです。しかし、キリスト教における生きる歴史というものに向き合うためには、こういう誰かに定められた歴史観をもって生きるのではなく、ひとり、歴史と向き合ってみなければならない。「歴史」を経験することと、ある「歴史観」で時代を眺めることは違います。キリスト教の歴史は正統と異端の相克です。新しい時代を作ってきた者たちは一度ならず異端視された。古くはパウロ、トマス、アッシジのフランチェスコもある人々から見れば異端者です。もちろん、ルターやカルヴァンにも同質のことがいえます。

若松英輔・山本芳久「キリスト教講義」p187
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