百合と向日葵の花束を

アニメやゲームの感想ブログです。

GODZILLA 決戦機動増殖都市

 前作のラストで謎の生物に救われたハルオ。彼らは「フツア」というこの地球に最適化された人類のような存在だった。フツアが使っていた武器からビルサルドたちはメカゴジラに使われていたナノメタルの存在を知り、その源であるメカゴジラの建造場所へとたどり着く。2万年を経てゴジラが巨大化したように、メカゴジラの残骸もまたナノメタルを使ってゴジラと戦うための巨大な都市を建造していた。その都市を拠点にゴジラとの戦いを再開するハルオたち。だが、ビルサルドはその都市との融合を是とし、最終的にゴジラに勝つためにはと人類すらもナノメタルと融合していく。ハルオはそれを認められず、都市化したメカゴジラのコントロール部分を破壊するが、時既に遅くハルオの後輩はナノメタルに侵食され、命を落とす。作戦は失敗し、ゴジラはメカゴジラの拠点を焦土と化す

 良い部分も悪い部分もある映画でした。
☆良い部分 
・櫻井はマジ櫻井。今回エクシフを滅ぼしたゴジラ的存在、おそらく彼らが破壊の王と呼ぶ存在の名前を明かしてくれるのだが、それが最後の最後に公表される。「ギドラ」という名前でハイハイって感じではあるが、次回作「星を喰う者」のバックに現れた三匹の絡み合う金色の龍にどんなデザインを出してくれるのか期待したい。でも今回公表されたメカゴジラのデザインといい、ゴジラといいあまり期待できないかな……。
・メカゴジラシティとして全く別の活躍をするメカゴジラ。兵站の問題を色々な意味で解決する荒業としては大変良いと思う。「メカゴジラシティ」という単語が別の意味でバズってる気はするが。なぜメカゴジラのデザインを起こした。 
・メカゴジラ最高! になってたビルサルドたちが最終的にナノメタルと一体化して行くというのは「プロジェクトメカゴジラ」で示唆されていた「あいつらこの星をナノメタルで覆っちゃう気だったんじゃないか」という話を読んでいるとなお楽しいと思う。 
・「ゴジラを倒すにはゴジラレベルの存在にならないとダメ」というビルサルドたちの思考回路というか「ナノメタルとメカゴジラ」を信じるその姿勢。それはある意味エクシフよりも強い信仰心ではないか、という事を考えさせられる。科学バンザイって一歩間違えると信仰みたいに見えるよな、という。逆にエクシフの信仰はゲマトリア演算というシステムから生まれているわけで。
・対象的に一貫してフツアたちはナノメタルを毒だとずっと言ってるし、フツアの鱗粉(モスラの従属種族みたいなものです双子の姉妹もいるのでお察しください)で治療してもらった人たちはメカゴジラシティで体調悪くするし、最終的にハルオがナノメタルに侵食されなかったのも鱗粉のおかげというのも感慨深い。地球はあのナノメタルを否定するのかな、的な。
・ナノメタルに侵食されたヒロインの死の描写が「目から涙のように流れ落ちるナノメタル」 タイトルロゴが流れ出る液体なのを含めて大変趣味がよく「虚淵ぃィィィ!」ってなった。 
・モスラの歌が流れなかった。よく我慢したなスタッフ。

★悪い部分 
・基本的に話の流れが前作と同じ。
・戦い方も「ゴジラを小型機動兵器で牽制しつつ罠に引き込んで倒すぞ!→失敗」で同じ。失敗の仕方が違うのはいいんだけど、せっかくカッコイイ新型パワードスーツを作っても「もう一回旋回して攻撃だ!」バリバリバリってやってること前のエアバイクと同じじゃんよという。 
・せっかくフツアがハルオたちを「渡り烏」っていってるんだからあの兵器は「レイヴン」とかでよかったのではなかろうかと思ったり。 
・ハルオが櫻井に頼りっぱなし過ぎませんか? まあこれは前からか。

 次回作への引きは前回より遥かに良い。前の「デカイゴジラが出てきて負けて終わりかよ!」に比べるといいんだけど、後はもうギドラが来るかモスラが出てくるかみたいなところではある。怪獣大決戦を描かないのか描けないのか、なスタッフに見えてそこはとても心配。
 前作の不満だった「ゴジラを踏み台にして一回ひねったものを見せてくれていない」という点においては満足させてくれたと思っている。生態系の頂点を取り戻すのに、一度越えられた人間じゃ無理だろ? じゃあなっちゃえばいいんだよゴジラに! というビルサルドの思想、ここが今回のキモとして真面目でありつつ「ゴジラに勝てるのはゴジラだけ」という理屈で最初のメカゴジラが生まれたというパロディ的な構造になっているところ、ここが実に虚淵の得意な二次創作テイストで個人的にはお気に入りで満足。前作を通底していた汚いビジュアルに比べるとヒロインのひどい死に様も含めて。まあ本物のヒロインはマイナとミアナですよ、って感じはするけど。後はホントギドラとモスラを上手いこと描いてね、としか言えない。
 後前作も含めてだけど、前作のゴジラを倒したら本命のデカイのがでてきたという流れに『神の獣』って漫画を思い出したんだけど、今回のゴジラの「前と同じ作戦を取ったら今度は体質を変化させて攻撃方法を変えてきた」というのも『神の獣』に出てきたネタだったなあと思いだした。
 小説と比してという点では「プロジェクト・メカゴジラってプロジェクトX的なネーミングじゃないか」という負け戦だった小説に対して「形を似せてゴジラに勝てる怪獣を作ろうとしたのが間違いだった」とばかりに生き残っていたメカゴジラの頭脳部が本体は捨てて「対ゴジラ決戦都市を作った」と考えるとなかなか興味深い。当時のビルサルドはやっぱり何も考えてなかったんじゃねえかな感はすごいけど、結局地面にナノメタル流してメカゴジラが勝ったら全部と一体化するつもりだったんだろうか。そう考えるとビルサルドの母星もそんなんだったのかなーとか妄想が広がる。

GODZILLA プロジェクト・メカゴジラ

 前作に続いて今回も映画の前に発売された小説。
 今回はオペレーション・エターナルライト後、なぜ地球脱出をすることになったのかの後半部分。オペレーション・エターナルライトの終了後、密やかに発見されていた小惑星・ゴラス。この名前だけで笑えるところがあるのだが(章タイトルが『妖星』である)、ゴジラの活動が活性化した理由が小惑星の招来、そしてそれに活性化されたバトラの目覚め、バトラを倒してその力を手に入れ、その威力を持ってゴラスを撃破したゴジラという冒頭の短編は、それだけで「わかりましたお腹いっぱいです」となる。ここで前作の「月とかに行けばいいんじゃねえの」という話は割と無意味だったことがわかる。あっちをテラフォーミングして住んでもゴジラに狙われたらおしまいだ。
 そしてそのゴラスから逃れるための船の計画が、ゴジラのための地球脱出戦という計画と、プロジェクト・メカゴジラというゴジラ打倒策へと移行するのだが、そこからがどんどん人類が狂ってくるし、どんどんゴジラに対する負け戦と消耗戦を展開するようになっていく。前作の核ミサイルでゴジラを殺そうなんて話は序の口だった。エクシフとビルサルドは自らの母船を犠牲にしてゴジラ殲滅を図るも失敗。
 次に展開されるのは「メカゴジラを作るまでひたすらゴジラに攻撃して足止めをする」だけのオペレーション・ロングマーチ。劇場版の死ぬだけみたいな兵器、エアバイクもここで登場する。そして絶望的な戦闘の中人類は怪獣をコントロールして味方につける策を展開するのだが、その中でビルサルドのナノメタルを利用して作られたガイガンが大活躍するのがキモ。「ガイガンはゴジラを倒しましたか……?」って聞きながら息絶える少年兵とかとんでもないものが見られるぞ。
 次は「メカゴジラを作るまで、ヒマラヤ山脈をぶっ飛ばしてデカイ壁を作ってゴジラを足止めする」というオペレーショングレートウォール。ここで「地球にナノメタルを流し込もう」という作戦が展開されるが結局失敗に終わる。
 最終的に富士の裾野で作られていたメカゴジラはゴジラの襲撃を前に起動せず、ゴジラの攻撃で消滅してしまう。人類は結果的に外宇宙に逃げ出すこととなった、ということで映画1作目の冒頭に繋がることになったのだが、そこで死んだと思われていたハルオの両親が実は行きており、南米に存在しているモスラの卵を護り、それを密かに日本へ運ぶというオペレーション・クレイドルという最終作戦が発動されるところで物語は終わる。
 こちらも「映画にしたいけどできないシーン」山盛りの作品。前作と違って撤退戦と言うか「人類がゴジラに勝てないと悟って逃げ出すまで」の話なので鬱々としているが、それはそれで面白い。再生し続けるガイガンが最終的にミサイルマイト(流星人間ゾーンの武器)まで装備させられるような濃いネタがあったりと、そのへんも相変わらずだった。後はこのモスラがいつでてくるかみたいな話になるので、その辺は映画の三作目に期待かな。

GODZILLA 怪獣惑星

 とまあ、上記の小説を読んだ上で映画に臨んだ&三部作ということを理解していたので「なんじゃそりゃあ」みたいな不満点はまったくなかった。何より櫻井演じるメトフィエスが公開前「コイツ絶対ゴジラを神として崇めるろくでもない存在に違いない」と思っていたら全くその通りのキャラクターとして出てきて爆笑したため、そこで満足してしまったというのがデカイ。
 ただ、突っ込みどころというかうーんと思ったところはいくつかあって、ハルオの立案した作戦が、移民船の残存人員と残存兵力だけで十分実行できる作戦なのかとか、そのレベルの作戦なら何故移民する前に実行できなかったのかとか、割と話のコアになる辺りが引っかかるのが残念。戦闘がケレン味に欠けるのはまあ第一弾ということで良しとしましょう、という感じ。
 エクシフとビルサルドという2大宇宙人がなんでゴジラが倒せなかった時点で「こらあかんわ」と逃げ出さずに人類についてきたのか、ということについては今後語られるのではないかなと好意的に解釈してみる。エクシフは「破壊の王」たる存在に一線を越えた存在が滅ぼされる姿を看取るのが本命なのかもしれないが、ビルサルドはどうなんだろう……。あの人達「レアメタルを集めてくれたらメカゴジラとか諸々作って助けてやる」というところがゴジラには勝てなかったよ……で一緒に逃げてるとなると相当間抜けな気がするんだが。
 で、この作品に虚淵らしさはあるのかと言われると今のところこれまた微妙ではある。虚淵の作品は基本的に二次創作というかパロディめいたものであるところに面白さがあると俺は思っている。Fate/Stay Nightの前史であるFate/Zero、魔法少女モノのお約束を逆手に取ったまどか☆マギカ、SF刑事物とでも言うべきPSYCHO-PASS。元々エロゲでもオリジナリティのあるものというよりは何かを踏み台にして面白いものを作ってくれる。そんな人だと思っていた。
 ただ、今回の怪獣惑星はまだ「ゴジラを踏み台にして一回ひねったもの」を見せてくれているようには思えない。何故か一人の兄ちゃんが「こうすればゴジラは倒せる!」やってみた→実際に倒せた はちょっと物語としての説得力に欠けると思うのだ。だからといって「兄ちゃんが倒せたゴジラは小物で本命のクソでっかいのがいました」というのもなあ、と。
 この辺細々と文句をつけたところは今後の展開フォローしてくれると信じたいので、次を楽しみにしたい。

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