繊細な感情の機微がきらきら光るSF短編。
全編を通して人が人を想うことへの前向きな感情があって素敵なんだけど、何と言っても表題作が一番好き。
歴史に取り残されてしまったアンナが抱え続ける自問自答が。
決して解消されることのない別離と孤独を抱えてしまったアンナが向かう先の描き方が。
「わたしたちが光の速さで進めないなら」は問いかける。
物質的豊かさを追い求め、経済的な観点で文明が進んでいってしまったら、それは
「わたしたちは宇宙に存在する孤独の総量をどんどん増やしていくだけなんじゃないか」と。
空間的な深い深い断絶。
歴史は繰り返さないけど、韻を踏むとは誰の言葉だったか。
要因がさ、人間が勝手に下した判断だからこその割り切れなさが感じられてやるせない。
ずっと待つという展開で内田百里「柳撿挍の小閑」をなんとなく思い出した。
うつつにその人がいるとしても、その人の顔も姿も声も見る事は出来ないのであるから、いない人を見るつもりになっても同じ事ではないか。
でもそうはならない。
かつて愛した人たちは本当に永遠に離れていってしまったのか、彼らが去って100年以上が過ぎたのだとしたら、どうしてわたしはいまだに凍結と覚醒をくり返すことができるのか、どうして毎回死なずに目覚めるのか。どれほどの時間が流れ、世の中はどれほど変わっているのか。だとしたら、わたしが彼らに再会することだって可能なんじゃないか。
わたしたちは何処に行くのか、先の未来に何かあるのか、別れ来た人たちとは本当にもう会えないのかしまい込んだものは未だそこにあるのか。
この日々は何のために、何のために生きているのか、本を読むことが僕にとって何なのか。
SFで、化学もずっと進歩していて、先の未来でなんだけど、分かち合えなさ、自分のことを理解してもらえない孤独が、全編を通して根底にある感じ。
「スペクトラム」のヒジンは未知との邂逅を疑われて口をつぐみ、「共生仮説」のリュドミラは『わたしを置いていかないで』と懇願し、「感情の物性」でボヒョンはユウウツ体を収集する彼女に当惑し、「館内紛失」でジミンの母は生前から社会と分断され、「わたしのスペースヒーローについて」でヒーローは失踪していると。
だけど、それらは決して悲しむべきことだけではなく、そうした他者の存在こそが巡礼者たちが帰らない理由そのものであると。
だから読後感が明るい。
でもオンボロでちっぽけな宇宙船に乗って、止まって見えるかのようなスピードで虚空を進んでいく170歳のおばあちゃんて、その情景を想像するとユーモラスでもあるよね。
全編を通して人が人を想うことへの前向きな感情があって素敵なんだけど、何と言っても表題作が一番好き。
歴史に取り残されてしまったアンナが抱え続ける自問自答が。
決して解消されることのない別離と孤独を抱えてしまったアンナが向かう先の描き方が。
「わたしたちが光の速さで進めないなら」は問いかける。
物質的豊かさを追い求め、経済的な観点で文明が進んでいってしまったら、それは
「わたしたちは宇宙に存在する孤独の総量をどんどん増やしていくだけなんじゃないか」と。
空間的な深い深い断絶。
歴史は繰り返さないけど、韻を踏むとは誰の言葉だったか。
要因がさ、人間が勝手に下した判断だからこその割り切れなさが感じられてやるせない。
ずっと待つという展開で内田百里「柳撿挍の小閑」をなんとなく思い出した。
うつつにその人がいるとしても、その人の顔も姿も声も見る事は出来ないのであるから、いない人を見るつもりになっても同じ事ではないか。
でもそうはならない。
かつて愛した人たちは本当に永遠に離れていってしまったのか、彼らが去って100年以上が過ぎたのだとしたら、どうしてわたしはいまだに凍結と覚醒をくり返すことができるのか、どうして毎回死なずに目覚めるのか。どれほどの時間が流れ、世の中はどれほど変わっているのか。だとしたら、わたしが彼らに再会することだって可能なんじゃないか。
わたしたちは何処に行くのか、先の未来に何かあるのか、別れ来た人たちとは本当にもう会えないのかしまい込んだものは未だそこにあるのか。
この日々は何のために、何のために生きているのか、本を読むことが僕にとって何なのか。
SFで、化学もずっと進歩していて、先の未来でなんだけど、分かち合えなさ、自分のことを理解してもらえない孤独が、全編を通して根底にある感じ。
「スペクトラム」のヒジンは未知との邂逅を疑われて口をつぐみ、「共生仮説」のリュドミラは『わたしを置いていかないで』と懇願し、「感情の物性」でボヒョンはユウウツ体を収集する彼女に当惑し、「館内紛失」でジミンの母は生前から社会と分断され、「わたしのスペースヒーローについて」でヒーローは失踪していると。
だけど、それらは決して悲しむべきことだけではなく、そうした他者の存在こそが巡礼者たちが帰らない理由そのものであると。
だから読後感が明るい。
でもオンボロでちっぽけな宇宙船に乗って、止まって見えるかのようなスピードで虚空を進んでいく170歳のおばあちゃんて、その情景を想像するとユーモラスでもあるよね。