2017年05月14日

戦傷病者後払となる往復乗車券

平成29年4月にJR東海の管内で発売された、戦傷病者後払となる往復乗車券の往片(三河安城→長崎)です。前回、前々回の記事で紹介した特急券に付随する乗車券です。

三河安城→長崎の往復乗車券(ゆき、戦傷病者後払)

片道の営業キロが600キロを超える区間で、往復割引が適用されています。割引後の全額が後払で、旅客から運賃を収受しないため、原券C制のゴム印は押されておらず、出札担当者の意図を感じる秀逸な一枚です。右下の割引印章は[戦後復]となります。

戦傷病者は身体障害者割引の対象者であることも多く、戦傷病者乗車券類引換証の身体障害者旅客運賃割引欄に該当する戦傷病者については割引が適用されます。この場合、戦傷病者単独の場合は[戦後身]、介護者を同行できる甲種戦傷病者(戦傷病者乗車券引換規則第2条第2項第1号)で、本人の場合は[戦後障]、介護者の場合は[戦後介]となります。

往復割引の割引率は1割、身体障害者割引は5割ですから、身体障害者旅客運賃割引欄に該当する戦傷病者本人について[戦後復]の乗車券が引き換えられることはありません。

以上トピック的になりましたが、最近の実例を交えて戦傷病者後払の取扱いについて、3回に分けて少し触れてみました。

平成23年版と平成28年版の厚生労働白書によると、戦傷病者乗車券類引換証の交付を受けた戦傷病者はそれぞれ14,874名、4,465名で最近5年間で約1/3に激減しています。そのため駅での取扱件数も近年は減って、馴染みが薄い制度になっていることは間違いないでしょう。

コレクション的な観点から見ると、戦傷病者後払に関係するマルス券の割引印章は、これまで3回の記事で触れなかったものでは、他に普通急行列車に関係する[戦後急][戦後急障][戦後急介][戦後急乗継] の4種類あり、あわせて合計12種類!も存在しましたが、一度も実券で見たことがない券があります。

定期の普通急行列車は平成28年3月のダイヤ改正で廃止になった「はまなす号」が最後になってしまいましたが、普通急行列車でしか出なかった、これら4種類の割引印章はひとまずお蔵入りになったことになります。

参考
マルス券のページ - マルス券の割引印章(5)
http://mars.saloon.jp/discount05.shtml

平成23年版 厚生労働白書 資料編 p.215
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/11-2/kousei-data/pdfNFindex.html
平成28年版 厚生労働白書 資料編 p.212
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/16-2/
  

2017年05月09日

戦傷病者後払となる指定席特急券(2)

平成29年4月にJR東海の管内で発売された、戦傷病者後払となる新幹線特急券(三河安城→博多)です。のぞみ号を名古屋→博多で利用しています。

新幹線特急券(戦傷病者後払)

戦傷病者後払によって指定席特急券を引き換える場合、自由席特急料金相当額との差額を収受することを前回の記事で紹介しましたが、自由席特急料金との差額にはならない例があります。のぞみ号、みずほ号、はやぶさ号、こまち号を利用する場合、また特定特急料金が適用される場合です。

長い条文ですが、戦傷病者乗車券引換規則から第5条を一部引用します。
(戦傷病者に対して引換えをする乗車券類)
第5条 戦傷病者が戦傷病者乗車券類引換証によって、旅客運賃又は急行料金を無料の取扱いで引き換えることのできる乗車券類は、次の各号に定めるとおりとする。
 (引用注:中略)
2 戦傷病者が戦傷病者急行券引換証(甲種)及び戦傷病者急行券引換証(乙種)によって、指定席特急券、急行・指定特別車両券(A)、急行・寝台券及び急行・座席指定券を購入する場合は、次の各号に定めるところにより当該乗車券類と引き換えることができる。

(1) 特別急行列車の特別車両以外の座席指定車に乗車する場合(第2号及び第3号に掲げる場合を除く。)は、自由席特急料金又は特定特急料金との差額を支払う。

(2) 特定特急料金が適用される区間を東京・博多間を運転する新幹線の特別急行列車のぞみ号又は新大阪・鹿児島中央間を運転する新幹線の特別急行列車みずほ号(以下これらを「のぞみ号等」という。)の指定席に乗車する場合(のぞみ号等とのぞみ号等以外の新幹線の特別急行列車とを乗り継ぐ場合を含む。)は、当該特定特急料金と、当該区間に対するのぞみ号等の通常期の指定席特急料金からのぞみ号等以外の新幹線の特別急行列車の通常期の指定席特急料金を差し引いた額とを合計した額と指定席特急料金との差額を支払う。

(3) 東京・新青森間を運転する新幹線の特別急行列車はやぶさ号又は東京・盛岡間を運転する特別急行列車こまち号(以下これらを「はやぶさ号等」という。)の指定席に乗車する場合(はやぶさ号等とはやぶさ号等以外の新幹線の特別急行列車とを乗り継ぐ場合を含む。)は、通常期の指定席特急料金から520円を低減した額(特定特急料金が適用される区間をはやぶさ号等に乗車する場合は、当該特定特急料金と、当該区間に対するはやぶさ号等の通常期の指定席特急料金からはやぶさ号等以外の新幹線の特別急行列車の通常期の指定席特急料金を差し引いた額とを合計した額。)と指定席特急料金との差額を支払う。
 (引用注:後略)
特定特急料金の適用区間が東海道筋と東北筋では異なることもあって複雑ですが、簡単に説明すると、特定特急料金の適用区間では、指定席特急料金と特定特急料金との差額を収受し、かつ、のぞみ号等、はやぶさ号等の加算料金は旅客からは収受しないとする内容です。

そのため、掲載したマルス券の例では、所定の指定席特急料金7,420円から特定特急料金6,380円を差し引いた1,040円を収受するのではなく、特定特急料金6,380円と、所定の指定席特急料金(通常期)7,420円から、のぞみ号等以外の指定席特急料金(通常期)6,900円を差し引いた額(7,420-6,900=520円、のぞみ加算額)とを合計した額(6,380+520円)を、所定の指定席特急料金7,420円から差し引いた、7,420-(6,380+520)=520円を収受します。

すなわち、のぞみ号等以外の指定席特急料金から特定特急料金を差し引いた額と等しくなり、4月21日(金)は通常期ですから、のぞみ加算を含まない指定席と自由席の差額520円を収受します。

また、小倉→博多で新幹線の指定席特急券を引き換える場合(通常期)は、のぞみ号等、のぞみ号等以外にかかわらず、のぞみ号等以外の指定席特急料金2,250円から特定特急料金970円を差し引いた1,280円を収受します。

余談ですが、特定特急料金が適用される区間で指定席特急券を戦傷病者後払で引き換える際に旅客から収受する金額については、「国鉄旅客制度のQ&A306」(佐々木健著、中央書院発行)から「JR旅客営業制度のQ&A」(小布施由武著、自由国民社発行)まで継続して設問が掲載されてきました。

平成27年3月に発行された「JR旅客営業制度のQ&A」(小布施由武著、自由国民社発行)からQ344を引用します。

JR旅客営業制度のQ&AのQ366(戦傷病者後払)

2行目「…すなわち『指定席−特定』です。」までの部分は佐々木氏が著者だった頃の回答で、これ以降を小布施氏が2回の改訂でのぞみ号、はやぶさ号と漸次対応させて書き足した部分なのですが、「…すなわち、通常期520円…を収受します。」と言い切っているのは残念です。この設問が意図するのは、特定特急料金が適用される区間では「指定席−特定」なのですから、先に例示した小倉→博多のように、必ずしも「通常期520円」ではないことのはずなのですが…。

また、平成27年3月にはやぶさ号に対応した版以降では「はやぶさ差額」を説明した括弧書きについて括弧の位置が誤っています。

JR旅客営業制度のQ&A(第2版)

この記事を書いている最中、第2版が出版されたことを知り、早速取り寄せたのですが、変わっていませんでした。北海道新幹線の新青森〜新函館北斗間開業に伴う制度改正に対応しているそうです。表紙をH5系が飾っています。

参考
東海旅客鉄道株式会社 戦傷病者乗車券引換規則(平成26年4月1日現在)
http://railway.jr-central.co.jp/ticket-rule/carriage/_pdf/06.pdf

国鉄旅客制度のQ&A306 (佐々木健著、中央書院発行) 昭和59年1月
JR旅客制度のQ&A311 (佐々木健著、中央書院発行) 平成2年3月
JR旅客制度のQ&A336 (佐々木健著、中央書院発行) 平成9年12月
Q&A JR旅客営業制度[第3版] (佐々木健著、中央書院発行) 平成15年6月
JR旅客営業制度のQ&A (小布施由武著、中央書院発行) 平成19年12月
JR旅客営業制度のQ&A (小布施由武著、自由国民社発行) 平成27年3月
JR旅客営業制度のQ&A (小布施由武著、自由国民社発行) 平成29年5月(第2版)  
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2017年05月06日

戦傷病者後払となる指定席特急券(1)

平成29年4月にJR東海の管内で発売された、戦傷病者後払となる「かもめ27号」特急券です。

かもめ27号特急券(戦傷病者後払)

軍人軍属等であった者に対して、国家補償の精神に基づいて戦傷病者特別援護法が戦後定められ、戦傷病者として戦傷病者手帳を交付し、療養給付等の各種援助が行われてきました。この援助の一環として、旅客鉄道会社線への乗車についての無賃取扱いがあり、その運賃・料金については国による後払とされ、この取扱いを戦傷病者後払(せんしょうびょうしゃごばらい)と呼びます。

対象者には毎年各都道府県から障害の程度に応じて、戦傷病者乗車券類引換証(戦傷病者乗車券引換証、戦傷病者急行券引換証)が交付されます。運賃は戦傷病者乗車券引換証により無料、特急料金は戦傷病者急行券引換証により自由席に相当する設備は無料、指定席に相当する設備は自由席特急料金相当額との差額を収受します。

掲載したマルス券は、戦傷病者急行券引換証により指定席特急券を引き換えた例となり、博多〜長崎のB自由席特急料金1,380円との差額520円を旅客から収受しています。

傷病者払で由席特急料金相当額が後払となるため、券面右下の割引印章は[戦後自急]となります。

自由席利用であれば、無料で引き換えができ全額が後払となるため[戦後]、自由席利用で乗継割引が適用となる場合は[戦後乗継]、指定席利用で乗継割引が適用となる場合は[戦後自急乗継]と割引印章が変化します。特急券に関連する表示だけでも、これだけの種類があり、コレクション的にも興味深い対象と言えます。

掲載したマルス券で特筆すべき点は、クレジットカードで支払いを行ったと思われ、原券C制のゴム印と520円の記入があることでしょう。このゴム印は、本来クレジットカードで購入した乗車券類に対して乗車券類変更を行った際に、原取扱日と原券領収額を転記するためのものですが、戦傷病者後払によって券面の領収額と実際に旅客から収受する金額が異なるという稀な取扱いのため、決済した金額を記入できるゴム印を使用したものと思われます。

これにより、旅客から自由席特急料金との差額520円を収受した事実が明確にされており、戦傷病者後払の制度を語るのに、たいへん興味深い1枚となりました。(続く)

参考
マルス券のページ - マルス券の割引印章(5)
http://mars.saloon.jp/discount05.shtml  
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2016年08月05日

上本町で折り返しとなる定期乗車券

平成7年9月に発売された、河内小阪〜畝傍御陵前の通学定期乗車券です。近鉄奈良線と近鉄大阪線の接続駅は布施ですが、上本町(現在の大阪上本町)で折り返しとなる経由になっています。

河内小阪〜畝傍御陵前の通学定期乗車券

これは、JRの旅客営業取扱基準規程に相当する、近鉄の旅客営業細則第41条を根拠に発売されています。条文を引用します。
(2区間以上の区間に対する定期乗車券の発売方)
第41条 次の各号の1に該当する場合は、当該各号に掲げる区間に対して、1枚の通勤定期乗車券又1枚の通学定期乗車券を発売することができる。
(1) 2以上の指定学校に通う旅客の場合で、乗車区間の全区間が旅客運賃計算上1区間となるときは、その全区間
(2) 前号の場合で、環状線を1周乗車する旅客のときは、その環状線の全区間
(3) 列車の運行形態の都合等の事由で指定学校に通う経路の一部が折返しとなる場合は、折返し駅までの区間
(4) 列車の運行形態の都合等の事由で、事業所又は指定学校に通う経路の一部上本町又は鶴橋を折返し駅として分岐乗車となる場合は、折返して分岐線乗車となる区間を通じた全区間
この第4号が根拠となり、大阪線の始発駅である上本町で着席したり、布施を通過する優等列車に乗車する利便を図って、上本町又は鶴橋を折り返し駅として奈良線と大阪線を分岐乗車する形態に対して、1枚の定期乗車券を発売していました。

第1号から第3号までの規定は、JRでも同様な規定(旅客営業取扱基準規程第55条第2項)がありますが、近鉄で見られる第4号の規定は、通勤定期券でも認めています。

また、この運賃計算方も興味深く、結論から先に述べると、河内小阪・上本町間のキロ程(5.7km)に上本町・畝傍御陵前のキロ程(37.1km)を合算したキロ程(42.8km)に対して定期旅客運賃を収受します。根拠は旅客営業細則第71条(例4.)となり、条文を引用します。
(2区間以上の区間に対する定期旅客運賃の計算方)
第71条 第41条の規定により2区間以上の区間に対する定期乗車券を発売する場合の定期旅客運賃は、キロ程を打ち切らないで全キロ程を通算して計算する。

(例1. 第41条第1号の例) 居住地最寄駅が桑名、指定学校最寄駅が近鉄名古屋及び近鉄四日市の旅客が上記区間を通学する場合の運賃計算区間は、近鉄名古屋・近鉄四日市間とする。
(例2. 第41条第2号の例) 居住地最寄駅が弥刀、指定学校最寄駅が学園前及び大和八木の旅客が弥刀から布施経由学園前・大和西大寺経由大和八木・弥刀の区間を通学する場合の運賃計算区間は、弥刀・布施経由・大和西大寺経由・大和八木経由弥刀とする。
(例3. 第41条第3号の例) 藤井寺・北田辺間の通学旅客に対して、藤井寺・大阪阿倍野橋間の通学定期乗車券を発売する場合の運賃計算区間は、藤井寺・大阪阿部野橋間とする。
(例4. 第41条第4号の例) 居住地最寄駅が近鉄奈良、事業所最寄駅が長瀬の旅客が近鉄奈良・鶴橋経由長瀬間を通勤する場合は、近鉄奈良・鶴橋間のキロ程に鶴橋・長瀬間のキロ程を合算したキロ程に対する通勤定期旅客運賃を収受する。

2 乗車区間が第41条第4号によらない分岐乗車となるため2枚の定期乗車券を発売する場合は、旅客運賃の計算区間が最も低廉となるものによる。

(例) 居住地最寄駅が津新町、指定学校最寄駅が鈴鹿市及び近鉄四日市の旅客が上記区間を通学する場合の通学定期旅客運賃計算区間は、次のいずれかによる。
 (1)津新町・近鉄四日市間及び伊勢若松・鈴鹿市間
 (2)津新町・鈴鹿市間及び伊勢若松・近鉄四日市間
 (3)津新町・伊勢若松間及び近鉄四日市・鈴鹿市間
JTBの運賃表・第15号に収録されている、近鉄の定期旅客運賃欄(平成7年9月1日改定)によると、43kmに対する通学定期旅客運賃(1ヶ月)は5,080円と掲載されており、裏付けが取れました。

なお、JRの旅客制度による考え方では、旅客営業取扱基準規程第119条の規定に基づいて、上に引用した旅客営業細則第71条第2項に定められる計算方をとり、

 (1)上本町・河内小阪間(5.7km、3,400円)+布施・畝傍御陵前間(33.0km、4,900円)
 (2)上本町・畝傍御陵前間(37.1km、4,990円)+布施・河内小阪間(1.6km、2,000円)
 (3)上本町・布施間(4.1km、3,100円)+河内小阪・畝傍御陵前間(布施経由34.6km、4,900円)

これら(1)〜(3)のうち、低廉となる(2)の6,990円で、いわゆる二区間定期券を発売することになり、近鉄の計算方はJRより旅客に有利となっています。

しかしながら、近鉄の計算方においては、折り返し区間となる上本町・布施間を重複して合算する規定で、二重取りになっています。これは私見ですが、第41条第3号のように通学定期券に限らず、通勤定期券にも広く適用されることを鑑み、ある程度のバランスを取っているように思います。

参考
旅客営業規則及び同細則 近畿日本鉄道 平成13年2月1日
(加除式。平成14年12月1日の制度改正分まで加除追録されたもの。引用は原文ママ)

JTBの運賃表 第15号 1996年版 日本交通公社出版事業局

旅客関係規定集(規則)(JR東日本編・平成23年6月10日版・第17号) 日本鉄道図書  
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2015年03月15日

トワイライトエクスプレスの思い出(2)

前回に引き続き、今回もトワイライトエクスプレスの廃止を偲んで、寝台券を紹介しながら個人的な思い出を綴ってみたいと思います。

平成25年3月 大阪⇒札幌 シングルツイン

2503下りシンツイ_トワイライトエクスプレス

前年暮れからの2連続ウヤ(運休)の反動で、往路はB個室シングルツイン、復路はA個室ロイヤルの布陣で臨みました。

ハンバーグステーキ
ダイナープレヤデスにて。料理が冷めないように皿も温めてある

食堂車「ダイナープレヤデス」のランチメニューである「ハンバーグステーキ」です。ハンバーグのメニューは北斗星の食堂車「グランシャリオ」でもパブタイムに設定があって、東西で異なる味わいが楽しめますが、個人的には「ダイナープレヤデス」に断然軍配が上がります。

グランシャリオのハンバーグ
グランシャリオで供される煮込みハンバーグセット

北斗星の「グランシャリオ」が列車内供食を体験できる設備であれば、「ダイナープレヤデス」はレストランと胸を張って言えるほど、お食事がおいしいのです。この食堂車の差が関東在住の私を北斗星派からトワイライト派に傾倒させた大きな要因になりました。

平成25年3月 札幌⇒京都 ロイヤル

2503上りロイヤル_トワイライトエクスプレス

生涯初めてのA寝台に足を踏み入れました。A個室ロイヤルの良さは多くが語られていると思いますので何も触れませんが、私もご多分に漏れずロイヤルの虜になって、キャンセル待ちもロイヤル一本釣りのスタイルになりました。

運転は順調だったものの、朝の富山で常願寺川の風速規制に引っかかったのを皮切りに北陸本線内でずるずると増延。芦原温泉でサンダーバードへの振替が発表されるも、トワイライト自体は運転打ち切りではないことが判明。A個室の乗客を中心にトワイライトに残り、今庄では普通列車にも抜かれ回送状態になって、3時間遅れで京都に到着しました。

2510上りステーキピラフ

「ビーフピラフ」からリニューアルして登場した、パブタイムの「ステーキピラフ」です。上に載る肉がステーキになって更に贅沢な味になりました。

平成25年9月 大阪⇒札幌 ロイヤル  ウヤ 

2509下りロイヤル_トワイライトエクスプレス

キャンセル分を拾って乗車するスタイルをできるだけ貫いてきましたが、10時打ちで取れた唯一の寝台券です。JR西日本の電話予約サービス(5489)では発売開始2〜3分前に運良くオペレータに繋がると、10時打ちをしてもらえることがあります。それでもロイヤルは激戦で取れないことが多かったです。

ところが、前日通過した台風による不通区間が解消せずにウヤとなって涙を呑みました。前日最終の新幹線で大阪入りしたので発券は当日の朝でしたが、早朝の時点で運休が示唆されたため、朝一の新今宮駅で寝台券を受け取りました。すでに心の中では無賃送還で東京に戻ることを視野に入れて、原券を入手しておきたかったという気持ちがありました。

下りロイヤルはこの時が最初で最後の乗車機会だったため、乗車は叶いませんでした。

平成25年10月 札幌⇒大阪 ロイヤル

2510上りロイヤル_トワイライトエクスプレス

平日のパブタイムには私のような1人乗車の男性がいて話をすると、毎月のようにA個室に乗って往復している熱烈な常連客をトワイライトは抱えていることを知りました。「ロイヤル友の会」といったところでしょうか。

私も最後3回の乗車は全てロイヤルで、「ロイヤル友の会」の末席を汚させていただき、毎月キャンセルを拾っては乗車していました。

2510上りパスタ
平成25年10月 - キノコのパスタ

パブタイムのパスタは定期的にメニューが入れ替えられて、乗る度に「ダイナープレヤデス」へ足を運ぶ楽しみがありました。

2511上りパスタ
平成25年11月 - 蟹のパスタ

上りのパブタイムも、青森駅での運転停車を見届けて発車してからゆっくり向かうのが定番でした。食堂車の営業終了は青森秋田県境の矢立峠付近で、碇ヶ関駅の提灯を眺めてから席を立ち、帰りに氷(100円)を購入して自室に戻り、夜景をじっくり堪能するのが常道でした。

平成25年11月 札幌⇒大阪 ロイヤル

2511上りロイヤル_トワイライトエクスプレス

JR北海道の電話予約センターでもトワイライトの寝台券が予約できたため、上り列車で重宝したことがあります。最近までJR北海道のMV端末は熱転写のMV30型端末で、5489では個室寝台券をみどりの券売機(MV端末)で受け取ることができなかったため興味深い例にもなっています。

2511上りスペアリブ

私がパブタイムで好きだった一品料理は「スペアリブ」でした。「ステーキピラフ」やパスタは小皿で提供されていましたが、「スペアリブ」は大皿料理で非日常感を演出していました。

平成25年12月 札幌⇒大阪 ロイヤル

2512上りロイヤル_トワイライトエクスプレス

この時がトワイライトへ最後の乗車機会となり、11枚寝台券を取って3回が運休となり8回乗車(シングルツインとロイヤルを4乗車ずつ)することができました。以降、廃止発表が出てからは一切キャンセルを拾うことはできませんでした。

ツアーの団体客が入らなければ平常時は空気を運んでいたBコンパートも、廃止発表が出ると最後はプラチナチケットになってしまい満席が続きました。

ツアーの団体客を良く思わない人もいるかもしれませんが、トワイライトの運行を日頃から支えていたのはツアーの団体客だったように思えます。食堂車の片側にあるA個室(スイート、ロイヤル)は、廃止発表以前から常に満席が続いていましたが定員も少なく、採算性はツアー客が満席にしてくれるBコンパートが一番良かったのは間違いありません。

また、A個室の寝台券がオークションで再販されていた理由の一つとして、料金設定に疑問があるように思います。ロイヤルの寝台料金は3万円以上でも売れたのではないでしょうか。個室単位での発売なのに1名乗車より2名乗車したほうが高くなる料金設定などは、定員に満たない人数の場合に貸切料金を収受するフェリーの上級船室に比べて不思議でした。

プレヤデスサラダ
プレヤデスサラダ

ともあれ、多くの人に愛されたトワイライトエクスプレスは運行を終了してしまいました。殊に単身者にとって、A個室ロイヤルは最後の楽園になっている感じすらあります。とても寂しいですが、青函トンネル世代として、北斗星とトワイライトエクスプレスが消えると、一つの時代が終わってしまうような感覚もあります。

最後の1年間に集中して乗車した恰好になりましたが、私らしい取り組みだったと思います。そんな取り組みを振り返ることで、私なりのトワイライトエクスプレスへの送辞とさせていただきます。

※文章中の写真は時系列を混在して掲載しています。
  
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2015年03月13日

トワイライトエクスプレスの思い出(1)

始発駅3月12日発をもって、トワイライトエクスプレスの運転が終わってしまいました。近鉄の補充券に関する記事の連載中ですが、今回は同列車の廃止を偲んで、寝台券を紹介しながら個人的な思い出を綴ってみたいと思います。

平成12年3月 札幌⇒京都 シングルツイン

1203上りシンツイ_トワイライトエクスプレス

初めてのトワイライト乗車は、上りシングルツインB個室でした。はまなす+白鳥に乗る予定で指定券を確保していたのですが、トワイライトの個室に空席が残っていて乗変してしまいました。今から考えると、この時は白鳥に乗っておくべきでした。白鳥を全区間(青森〜大阪)乗り通す機会は、この先巡ってきませんでした。

平成24年10月 大阪⇒札幌 シングルツイン

2410下りシンツイ_トワイライトエクスプレス

平成12年に初乗車した後、トワイライトに乗車する機会は、大阪在住時代も縁がなく12年間もブランクが開いていました。その間、私の寝台熱?北海道熱?は北海道フリーきっぷで道内夜行の開放B寝台に乗車したり、ぐるり北海道フリーきっぷを利用して北斗星のB寝台1人用個室ソロで往復することに注がれていました。

トワイライト下りの発車風景

あるとき思いついて、JR西日本の電話予約サービス(5489)で問い合わせてみると、シングルツインの空席が見つかって衝動的に購入したのがトワイライトとの再会でした。廃止発表の以前からA個室はプラチナチケットでしたが、シングルツインは平日を中心に比較的取りやすい状況にありました。

パブタイムのビーフピラフ

食堂車「ダイナープレヤデス」のパブタイムで戴ける「ビーフピラフ」です。末期は「ステーキピラフ」と名前を変えてリニューアルしましたが、「ビーフピラフ」の時代は上に載っている肉が小間切れでした。パブタイムの食事では定番の人気メニューだったと思います。

平成24年12月 大阪⇒札幌 シングルツイン

2412下りシンツイ_トワイライトエクスプレス

個室寝台では乗車前に食べ物を買い歩くのも大きな楽しみです。大阪では阪神百貨店の地下、札幌では大丸や東急の地下、エスタ大食品街が定番になっており、普段より少し良いものを選んでしまいます。お酒は飲まないのですが、車内でコップがあると便利なので、カップ入り氷も必ず購入しています。大阪では桜橋口ラッチ内のハートイン、札幌では西改札側北口のサンクスでいつも入手しています。

私は熱転写券に絶対的な拘りは持っておらず、まだまだ関東では縁が薄かったMR52型端末の太くて濃い印字が新鮮でした。

トワイライトエクスプレスのミックスフライ

下り列車でしか味わえないランチ営業を楽しむのも醍醐味でした。その中でも、宮脇俊三氏の「時刻表昭和史」で戦時中の急行1列車稚内桟橋ゆきに乗った氏が鮭フライ定食を食べたエピソードを読んでから、食堂車で供される揚げ物に関心があった私にとって、「ミックスフライ」は一度食してみたいと思っていたメニューでした。

「ミックスフライ」は公式サイトでランチが「肩肘張らない昔ながらの手作りの洋食」と紹介されるに相応しいメニューでしたが、末期ではメニューから消えています。

2503下りディナー準備
ランチ営業の終了時刻が近くなるとディナーの準備が始まる

下りのランチ営業は、北陸トンネルを抜けてからゆっくり訪問しても空席が目立っていました。最後は私だけになって、食堂車クルーがディナーの準備をしている姿を見ることができました。

平成24年12月 札幌⇒大阪 ロイヤル  ウヤ 

2412上りロイヤル_トワイライトエクスプレス

雪害が予想された運転日のA個室ロイヤルにキャンセルが出て発作的に購入するも、天候が回復する願いが敵わず結局ウヤ(運休)になってしまった残念な寝台券です。これまでA寝台への乗車経験がない私が初めて手にしたロイヤルに乗車できなかったことが、翌年になってロイヤル乗車に執念を燃やす火種となったように思います。

平成25年1月 大阪⇒札幌 シングルツイン  ウヤ 

2501下りシンツイ_トワイライトエクスプレス

顛末は以前の記事で少し書きましたが、翌年のトワイライト一発目もウヤで始まって、2回連続で乗車できない残念な結果となりました。

ラストラン直前も3月9日と10日の2日連続して暴風雪で運転できず、冬季の厳しい現実が突きつけられましたが、運休にならずに催行するかという点が、トワイライトへ乗車する旅客への最後の試練でありながら、最大の山場となっていました。近年はLCCの欠航・遅延リスクなどを話題にしたこともありましたが、最も催行率が低かったのはダントツでトワイライトだったわけです。(続く)

※文章中の写真は時系列を混在して掲載しています。  
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