2024年04月01日
2024年03月に読んだ本
0301・宮地尚子 傷を愛せるか シーソーブックス 20240225
0301・宮藤官九郎 いだてん第二部 シナリオ 20240221発注0228受領中・宮藤官九郎 いだてん第二部 シナリオ 20240221発注0228受領
(0302・西川タイジ 珈琲短編（さんぽぶんこ）日本全国ZINEリトルプレス博覧会20240301
(0302・喫茶若草山(喫茶店がテーマのマッチ箱zine) 日本全国ZINEリトルプレス博覧会20240301
(0302・まばら本 1 日本全国ZINEリトルプレス博覧会20240301
(0302・くわっちーさびら(沖縄の食がテーマ) 日本全国ZINEリトルプレス博覧会20240301
(0302・ギャラリーフェイク38…ma
(0302・mayu すこしの焦燥感でときどきくるしい トオンカフェ20240302
(0303・スケラッコ ここは鴨川ゲーム製作所 2 …ma
(0303・ワカコ酒 22 …ma
0303・ユリイカ 2024年1月号 特集＊panpanya ―夢遊するマンガの10年― …ma
(0303・将棋の渡辺くん 7 …ma
(0303booklogなし・【再読】ヤマシタトモコ HER
0304・ヴィニシウス・ヂ・モライス オルフェウ・ダ・コンセイサォン 三幕のリオデジャネイロ悲劇 創造するラテンアメリカ 図書館20240301 …映画「黒いオルフェ」原案
(0306・細野不二彦 バブル・ザムライ1 Kindle
0307・藤原伊織 雪が降る 20240227 …お風呂用。「紅の樹」は「てのひらの闇」の原型
(0307・すなば マッチングシンドローム（さんぽぶんこ）日本全国ZINEリトルプレス博覧会20240305
(0307・すなば マッチングガール（さんぽぶんこ）日本全国ZINEリトルプレス博覧会20240305
(0307・まばら本 2 日本全国ZINEリトルプレス博覧会20240305
(0308・まばら本 3 日本全国ZINEリトルプレス博覧会20240305
0308・中国史史料研究会会報 2022年度 合訂号 中国史史料研究会会報合訂号 Kindle 20240301
(0308・長峰博之 17世紀末ヴォルガ・ウラル地方史料「ダフタリ・チンギズ・ナーマ」の4写本---ロンドン、パリ、ベルリン、エディンバラ---(日本中央アジア学会報 第19号(2023))
0309・三浦しをん しんがりで寝ています 20240309 文教堂大通
(0310・キノマドノマドvol.2 20240310 シーソーブックス
(0310・猫と紳士のティールーム 1-3 …ma
0311・【再読】藤原伊織 てのひらの闇 20240225 0310start
0312・植本一子 滝口悠生 さみしさについて シーソーブックス 20240225
0314・カフカ素描集 読書室ポワロ20240314
0314・森田たま 石狩乙女 読書室ポワロ …20240223初読 -p.40(2024.02.28)-160(3.6)
0314・木澤佐登志 闇の精神史 ハヤカワ新書 Kindle 20240214
0314・大河内さくら「札幌と私の生活史」at guara 2024.02.28初読 -p.110 -224(3.6)
0314・真崎 あなたのキャリアはどこから？私はクビから 20240314受領
(0315booklogなし・光文社古典新訳文庫目録
(0316・海が走るエンドロール6 …ma
(0316・へんなものみっけ10 …ma
(0316・七ツ屋志のぶの宝石匣21 …ma
(0316・バットゥータ先生のグルメアンナイト2 Kindle 20240316
(0317・【再読】関川夏央 谷口ジロー 坊ちゃんの時代 20240225 KindleUnlimited
0317・真崎＆ヨコ 人生こなれてきたけどままならぬ 20240314受領
(0317・美しいインクルージョンの鉱物図鑑
0317・開高健 珠玉 20240307 ビーバーズブックス(チカホ出店) …0311掌のなかの海,0316玩物喪志,0317一滴の光
0318・【再読】池澤夏樹 エルンスト・ハース きみが住む星 シャンティブックス20240309
0320・ピエール・バイヤール 読んでいない本について堂々と語る方法 (ちくま学芸文庫) Kindle 20240219
0320・【再読】村上春樹 一人称単数 文庫版 20240220
(0320・プリンタニア・ニッポン4 …ma
(0320・片岡義男 マーマレードの朝 シャンティブックス20240309
(0321・末沢寧史 本のヌード集 本のヌード展at三省堂書店札幌店 20240320
(0321・Grist vol.5 20240310 シーソーブックス
0322・【再読】燃え殻 ボクたちはみんな大人になれなかった …0331読書会課題図書
(0323・小原玲 アザラシの赤ちゃん KindleUnlimited
(0323・とっかりセンターアザラシ写真集 KindleUnlimited
(0323・西餅 日常の西餅 7 Kindle
(0324・西餅 高円寺純情貧乏 1 Kindle
0324・別冊音楽と人 櫻井敦司 20240316発注0320受領
0327・水口博也編 世界で一番美しいアシカ・アザラシ図鑑 図書館 20240327受領
(0327・Q.B.B. 古本屋台2 読書室ポワロ
0330・大江健三郎 僕が本当に若かった頃 シャンティブックス20240309 …0324宇宙大の「雨の木」
0331・水口 博也 世界アシカ・アザラシ観察記 動物写真家が追う鰭脚類の生態 東京大学出版会 図書館20240327受領
0331・【再読】燃え殻 ボクたちはみんな大人になれなかった …0331読書会後に
0301・宮藤官九郎 いだてん第二部 シナリオ 20240221発注0228受領中・宮藤官九郎 いだてん第二部 シナリオ 20240221発注0228受領
(0302・西川タイジ 珈琲短編（さんぽぶんこ）日本全国ZINEリトルプレス博覧会20240301
(0302・喫茶若草山(喫茶店がテーマのマッチ箱zine) 日本全国ZINEリトルプレス博覧会20240301
(0302・まばら本 1 日本全国ZINEリトルプレス博覧会20240301
(0302・くわっちーさびら(沖縄の食がテーマ) 日本全国ZINEリトルプレス博覧会20240301
(0302・ギャラリーフェイク38…ma
(0302・mayu すこしの焦燥感でときどきくるしい トオンカフェ20240302
(0303・スケラッコ ここは鴨川ゲーム製作所 2 …ma
(0303・ワカコ酒 22 …ma
0303・ユリイカ 2024年1月号 特集＊panpanya ―夢遊するマンガの10年― …ma
(0303・将棋の渡辺くん 7 …ma
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0304・ヴィニシウス・ヂ・モライス オルフェウ・ダ・コンセイサォン 三幕のリオデジャネイロ悲劇 創造するラテンアメリカ 図書館20240301 …映画「黒いオルフェ」原案
(0306・細野不二彦 バブル・ザムライ1 Kindle
0307・藤原伊織 雪が降る 20240227 …お風呂用。「紅の樹」は「てのひらの闇」の原型
(0307・すなば マッチングシンドローム（さんぽぶんこ）日本全国ZINEリトルプレス博覧会20240305
(0307・すなば マッチングガール（さんぽぶんこ）日本全国ZINEリトルプレス博覧会20240305
(0307・まばら本 2 日本全国ZINEリトルプレス博覧会20240305
(0308・まばら本 3 日本全国ZINEリトルプレス博覧会20240305
0308・中国史史料研究会会報 2022年度 合訂号 中国史史料研究会会報合訂号 Kindle 20240301
(0308・長峰博之 17世紀末ヴォルガ・ウラル地方史料「ダフタリ・チンギズ・ナーマ」の4写本---ロンドン、パリ、ベルリン、エディンバラ---(日本中央アジア学会報 第19号(2023))
0309・三浦しをん しんがりで寝ています 20240309 文教堂大通
(0310・キノマドノマドvol.2 20240310 シーソーブックス
(0310・猫と紳士のティールーム 1-3 …ma
0311・【再読】藤原伊織 てのひらの闇 20240225 0310start
0312・植本一子 滝口悠生 さみしさについて シーソーブックス 20240225
0314・カフカ素描集 読書室ポワロ20240314
0314・森田たま 石狩乙女 読書室ポワロ …20240223初読 -p.40(2024.02.28)-160(3.6)
0314・木澤佐登志 闇の精神史 ハヤカワ新書 Kindle 20240214
0314・大河内さくら「札幌と私の生活史」at guara 2024.02.28初読 -p.110 -224(3.6)
0314・真崎 あなたのキャリアはどこから？私はクビから 20240314受領
(0315booklogなし・光文社古典新訳文庫目録
(0316・海が走るエンドロール6 …ma
(0316・へんなものみっけ10 …ma
(0316・七ツ屋志のぶの宝石匣21 …ma
(0316・バットゥータ先生のグルメアンナイト2 Kindle 20240316
(0317・【再読】関川夏央 谷口ジロー 坊ちゃんの時代 20240225 KindleUnlimited
0317・真崎＆ヨコ 人生こなれてきたけどままならぬ 20240314受領
(0317・美しいインクルージョンの鉱物図鑑
0317・開高健 珠玉 20240307 ビーバーズブックス(チカホ出店) …0311掌のなかの海,0316玩物喪志,0317一滴の光
0318・【再読】池澤夏樹 エルンスト・ハース きみが住む星 シャンティブックス20240309
0320・ピエール・バイヤール 読んでいない本について堂々と語る方法 (ちくま学芸文庫) Kindle 20240219
0320・【再読】村上春樹 一人称単数 文庫版 20240220
(0320・プリンタニア・ニッポン4 …ma
(0320・片岡義男 マーマレードの朝 シャンティブックス20240309
(0321・末沢寧史 本のヌード集 本のヌード展at三省堂書店札幌店 20240320
(0321・Grist vol.5 20240310 シーソーブックス
0322・【再読】燃え殻 ボクたちはみんな大人になれなかった …0331読書会課題図書
(0323・小原玲 アザラシの赤ちゃん KindleUnlimited
(0323・とっかりセンターアザラシ写真集 KindleUnlimited
(0323・西餅 日常の西餅 7 Kindle
(0324・西餅 高円寺純情貧乏 1 Kindle
0324・別冊音楽と人 櫻井敦司 20240316発注0320受領
0327・水口博也編 世界で一番美しいアシカ・アザラシ図鑑 図書館 20240327受領
(0327・Q.B.B. 古本屋台2 読書室ポワロ
0330・大江健三郎 僕が本当に若かった頃 シャンティブックス20240309 …0324宇宙大の「雨の木」
0331・水口 博也 世界アシカ・アザラシ観察記 動物写真家が追う鰭脚類の生態 東京大学出版会 図書館20240327受領
0331・【再読】燃え殻 ボクたちはみんな大人になれなかった …0331読書会後に
 | 筑摩書房 発売日 : 2022-09-12 |
読書会で植本一子「愛は時間がかかる」を話題に出した時（トラウマ治療を受けたという一節があって）に、トラウマ治療をする側の本もあるよと教えてもらった一冊。ただ、ど正面からトラウマ治療をめぐるエッセイかと思いきや、トラウマが主要な研究テーマの著者が、旅先や日常、あるいは回想で語られる思いがメイン。アメリカにおけるベトナム戦争でのアメリカ兵の慰霊碑をめぐる、傷を認めてそれでも強くあれるのかという論考がずしりと重く。弱いままで強くあれるかという命題が全編を流れる通奏低音。◆「生きていてほしい」と家族に思われているからこそ、「死にたい」と心からいえる。「生きていてほしい」と心底思っているからこそ、「死にたい」と願うことの権力性を正面から指摘できる。p.35◆「他者を愛する」とは、自分とはちがう存在、自分には理解できないもの、自分では受け入れられないものをもっている存在を、まさに自分には理解できないし、受け入れられないからこそ、尊重するということである。p.39◆「トラウマ研究はいつから、戦っても傷つかない人間をふやすための学問になったのだろう」p.220◆といったあたりが心に残る。傷の記憶が抹消されていく流れに抵抗するという天童荒太「包帯クラブ」ちくまプリマー新書は手にとってみたくなった。
 | 文藝春秋 発売日 : 2019-12-18 |
第二部は、東京オリンピック招致に、日本水泳界の躍進のために奔走した田畑政治が主人公。せっかちで口が悪いが、直談判につぐ直談判でものごとを強引にでも進めていく暴走機関車。たしかに上下左右から好悪がわかれそうな人物像。だからこそ、招致にまでこぎつけられたのかもしれないが。ただ意外だったのが、これだけの人物が、1964年東京オリンピック時点では無職だったこと。そしてそこにいたる紆余曲折には、関東大震災、第一次世界大戦、日中戦争、第二次世界大戦がおおきな影をおとし、政治がスポーツにもちこまれたのは、1964年東京でも、インドネシアと北朝鮮がボイコットしたことからもあきらか。◆田畑 選手の気持ちの面倒みるのが監督であり我々でしょうよ。何してたの今まで。選手に全部背負わせるからプレッシャーに押し潰されて実力を発揮出来んのだよ、違う？p.35◆◆なに期待してんのオリンピックに。タダのお祭りですよ、走って泳いで騒いでおしまい。平和だよね。政治がどうの、国がどうの軍がどうの、違う違う、簡単に考えましょうよ。p.162◆
 | 小学館 発売日 : 2024-02-29 |
令和の世にギャラリーフェイクの新刊が読める幸せ。今回は、元検事でいまは悪徳弁護士の持ちつ持たれつラプソディ。ムンクカフェと予知夢的な絵を描いてしまう画家の苦悩と道行き。金融業で財を成し、老人ホームに入る女性のこれまでと息子との和解。妖怪マンガの巨匠と妖怪絵師をめぞすヤングケアラーな学生の交点、などなど。
 | 発売日 : |
#日本全国ZINEリトルプレス博覧会 で購入。奈良のマッチ箱ZINE。本当にマッチ箱の形してて、中をあけるとマッチ棒がずらりの写真のペーパーがおりたたまれててこんにちわ。それを開くと一枚物の喫茶店がテーマのzine。お客さんの次の注文がわかると豪語するマスターが店員に「盗み聞きやめたほうがいいですよ」と言われるマンガ…ほんと欄外にあるみたいにこのシリーズで単行本化してほしい。エッセイのほうは、こんな喫茶店があったら、という妄想と妄想のベースとなったバイトしてた新宿の喫茶店のお話。喫茶店の存在に救われる、という気持ちは自分にもあるものなのでとてもよくわかりました。新宿で老舗で200席もある大箱なんて、どこだろう？ちょっと気になりました。
| 発売日 : |
#日本全国ZINEリトルプレス博覧会 で購入。#トーキョーブンミャク さんでタイトルに「珈琲」とつくなんて、どちらも好きな身には見逃せず。アイスコーヒー、ホットコーヒー、缶コーヒーをモチーフに20ページほどの短編集。アイスとホットはどちらもモノローグ→急に入ってくるの構成で。さあ、アイスコーヒーだあ！のときに、氷がないのは確かにテンション落ちますよね…。そしてわたしがいちばん好きなのは缶コーヒー編の最後の一行。こんなこと言われたら…と。あとがき見るまで気づかなかった迂闊でしたが、読み終えるとzine「今夜」壱号、夜についてがとてもとても読み返したくなります。
| 発売日 : |
#日本全国ZINEリトルプレス博覧会 で購入。いろとりどりの沖縄の料理と風景がめじろおしで、思わず購入。ながめてるとだいぶ昔に沖縄行った時のこと思い出したりしたりして。共同売店の写真見ると、波照間島の共同売店で泡波のミニボトル買い込んだなあ、とか。台風の思い出とヒラヤーチー、久高島での不思議な体験のエッセイもよかったです。うちだけ電線が弱いだなんて、そ、そんなー…と思いつつ。巻末のスタッフ紹介にならって言うと、「好きな沖縄料理はナーベラーチャンプルーです」。あと、表紙と裏表紙のお兄さん、キリッとしてていいですね。
| 発売日 : |
#日本全国ZINEリトルプレス博覧会 で購入。ぱらりとながめて、いろんな人が寄稿してバラエティに富んでそうなのと、”毛の話”のエッセイが気になって購入。「私たちは体毛を気にかけているか否かを気にしてる」てあたりが特に気になり。猫やコケや友人の後ろ姿などをあつめた写真ページ「もふもふ」もお気に入りです。書体の自由研究、自分でレタリングしちゃうの気合いはいってるなあ、と思いながら引き込まれて読んじゃったり。ガチャコレ展の、ざ・役満マスコット第二局（イラストは九蓮宝燈かな）は欲しい！しか言葉がない。ツボ押しヨガにでてきた、猫のポーズ、ダウンドッグを見ると、クローゼットに放り込みっぱなしのヨガマットと「しばらくやってないなあ…」という慨嘆が呼び起こされ。と、こうして書き起こしてみると、読み手のいろいろな箇所が刺激されてるなあ、と感じた一冊。
mayuさんの個展「心鏡守護守」で購入。子供のころのとがったセンスのある友人との交友、閉鎖された王国だった中学の合唱部と、その後ながくつづいた、お気に入りにならなければいけないという呪いの話。そして、いつかの日記と夢日記。師匠が必要、褒められないと、崇拝しないと、という思い込みから離れて、人と人は対等、同時に全員を尊敬することができる、といった趣旨の一節がとくに心に残りました。
 | 青土社 発売日 : 2023-12-26 |
日常のはずが気がついたら奇想の世界に、あるいは気がついたらすでに奇想の世界に、といった感じのpanpanyaさんのマンガを、さまざまな切り口で論じたり、本人にインタビューしたり、往復書簡があったり、他の漫画家が寄稿したり、panpanyaさんにまつわる思い出が語られていたり。「蟹に誘われて」だけなぜ索引がついてる？という切り口の春日武彦さんのがいちばん読みたくて、おそらくは魚類図鑑と重ね合わせたのではないかという論を興味深く読んだ。あと、想像してた地誌が、実地やGoogleマップでパキパキと修正されていく感覚、あるいは実際のほうをなおしてしまうような、感覚の語りが興味深く。また、同人でしかできない手づくり感からそうはなれずに商業に入ってきた感を語ってる方も。
| 発売日 : |
札幌のギャラリー「ie_sapporo」が発行。シーソーブックスで購入。タイトルは、「家出」の意味を拡張して「iede」と捉えようと模索したとことから。小説、写真、イラスト、マンガ、人生相談と内容もバラエティに富み。ブルガリアヨーグルトに缶詰のフルーツぶちこんだみたいな何気ない写真がぐわっと飛び込んでくる。小説は、夜に個人レイブする美しい青年と、撮らせてほしい！というフリーカメラマンの友情物語。なぜ夜しか活動しないかはわけがあり…と。「別れたとき、悲しくないほうが悲しいだろ」「踊れ！」のセリフがいま読み返してみても、しみじみといいなあ、と。人生相談は、ここ何年かでオープンした店の方々に一問なげかけて答えてもらうもの。円錐書店さんの、PERFECT DAYS観ると、趣味と仕事の美しいバランスを見られる、という回答。シーソーブックス神さんに、人に頼ることができない、という質問をなげかける適材適所。談話室バテストさんの「愛はゆるし」というつきぬけ。blueのayaさんの「全てに好かれるって薄っぺらなイエスマンになることかな？」はパンチあるなあ。あとは、菊水の地下駐車場でバーやてるという「ハルヤ」（ウィスキーが何千本もあるのだとか）気になります。
 | 竹書房 発売日 : 2024-02-17 |
完結。放課後の課外活動みたく、ゲーム制作でゆるく繋がる大人たちの物語。ヨウの暴走しがちであわてがちなところを、認めて気にかけるまわりのやさしさ。どっぷり踏み込まないけど、気にかけ合いつつな関係性がいいなあ、と。ペンペンさんの一歩踏み出したところも良かったなあ。鬼のゲームも鍋奉行のゲームもやってみたくなる。
 | コアミックス 発売日 : 2024-02-20 |
トマトのキムチ、なすバター、イリカス、ひょうたん漬あたりが気になったかな。シュラスコの肉は食べ切れなさそうだけど、フェイジョアーダとかブラジル料理ついてくるなら魅惑的。なくなる店で名残を惜しむ回と、新人指導することになった後輩白石の回が良かった。
 | 講談社 発売日 : 2024-02-08 |
ぬいぐるみ愛にあふれるのは通常営業。藤井名人の壁は高いんだなあ、という感想。どう高いかを対戦者が語ってくれるのは貴重。作者の夏休み、ラオスの虫取り名人のもとへ、というのも読み応えありました。
 | 松籟社 発売日 : 2016-10-11 |
美しく苦く激しく残酷。お互いに燃え上がるように愛し合う、若く美しいオルフェウとユリディス。結婚直前に美しき婚約者ユリディスを、嫉妬した男に殺され、気が狂って彷徨するオルフェウ。彷徨に彷徨を続けたあげく、最後は以前振った女たちを邪険にして逆上され、滅多刺しにされて死ぬ…という救いのない物語。舞台では要所に美しき音楽が、優しく、激しく奏でられるのは感じられたが。翻案にしても切なく。またこれを原作にした映画「黒いオルフェ」の試写会で、作者のモライスが途中退席したというエピソードも気になる。アントニオ・カルロス・ジョビンと組んでボサノバ生みの親のひとりになったというエピソードも。
 | 小学館 発売日 : 2024-02-29 |
ときはバブル真っ只中、1985年東京。見た感じひょろっとした学生なのに、バイトで用心棒、思いのほか腕が立ち。警護で助けたお嬢様が同じ大学の学生と知り、いがみあいつつ、距離が縮まり、またパソコンに詳しい友人や、その先輩たちとのやりとりもあり。用心棒業でもライバルらしき男があらわれて、といったところまで。時代が時代なだけにオールドファッションに感じられるところもあるけど。これからおそらく亡父のことや、なぜその武術を身につけたのか、なにか大きな目的に、、、といったところが描かれるのかな。
| 発売日 : |
#日本全国ZINEリトルプレス博覧会 で購入。 #さんぽぶんこ シリーズ。主人公、卒なく要領よくこなしているようでいて、読んでてくるしいなあと思ってしまった。「気が休まらないのだ。マッチングアプリを使っている間、自分は常に審査されているし、自分もまた誰かを審査している」「恋愛とは答えのない問いであると同時に、式のない解でもある。結果はあるが、原因は常に不明である。」あたりが刺さってくる。あと本筋じゃないけど、新宿の大箱の喫茶店「珈琲西武」「らんぶる」あたりは行ってみたくなった。
| 発売日 : |
#日本全国ZINEリトルプレス博覧会 で購入。 #さんぽぶんこ シリーズ 。「マッチングシンドローム」の続編。これを読むと、女性の中には3500くらいのパラメータがあって、その細かい基準をクリアすると受け入れられるんだけど（それだけで絶望な確率だけど）、それで安心かというとそんなわけはなく、日々許す、許さないのフラグが変化していき、油断するとあっという間に放り出されるんだ、という絶望を感じてしまう。最後の一文が「マッチングシンドローム」につながっていたんだなあ、と思いつつ。
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-12-21 |
「テロリストのパラソル」の前日譚あり、「てのひらの闇」の原型ありの短編集。おおきく共通するのは、自分が守りたい大切な人、守り通したい秘密、思い出、思いのために、誇りをかけて戦う、立ち向かう物語なのかな、と。自分がもっと止めてたら…という過去と現在の思いの交錯。友を誇りに思う思い、その息子へ語りかけたい思い。となりあっただけの縁で、命をかけて救いに行く男。ゆがみに惹かれるこころ…などが描かれ、心に残る。
| 発売日 : |
#日本全国ZINEリトルプレス博覧会 で購入。◆今回の「けのはなし」の話は、創世記とギルガメッシュ叙事詩から。その頃からもう、人の毛に対する思いが読み取れるとは。みんなのデスクトップがみたい！はそれぞれ背景とアイコンの並べ方、混み具合に特徴が（ちなみにわたしは北海の魔獣あざらしさん47都道府県バージョンです）。乾燥機がこわれてゴワゴワなタオルが、過去のゴワゴワタオルの思い出を呼び起こし。
 | 志学社 発売日 : 2023-06-23 |
主に、亀田俊和さんの台湾通信と、赤坂恒明さんの内蒙古大学就職顛末記を目当てに購入。赤坂さんのモンゴル帝国史、日本史の論文で明らかにしたポイント、就職にあたっての連絡がなかなか来なくて、来たら来たで期限が間近、お願いしてたはずのことが実施されずみたいな苦労話や、亀田さんの、危険だからと自炊を禁止されてた学生、台湾のウィズコロナ政策、嘉農野球部、霧社事件、魏聖徳監督「海角七号」あたりの話題が気になり。あとは山田崇仁さんの老子の系譜の謎とありうべき解、戦国〜前漢期の研究の難しさと醍醐味など。
あらためて、写本研究って、あの手書きのアラビア文字を読むんでしょ？！気が遠くなりそう…。それを「同じことが書かれてる」「同じ人の手になるものだ」と把握するのすごくない？！という感想。写字生が自分の同時代史を書き足すってのも面白いし、そこから当時の歴史認識を汲み取れるというのもすごい。伝承が多く、史実の抽出は難しいけれど、そこに書かれてることから当時の歴史認識を知ることができる、というのは大昔に受けたイラン史の八尾志誠先生の集中講義で聞いた「言説」の話を思い出した。
| 発売日 : |
#日本全国ZINEリトルプレス博覧会 で購入。◆冒頭から「みょうがの押し寿司」が食べたくなり。◆毛は「わたし」と「もの」の境界線。毛の特徴、再生力。毛に情が湧くといったことといった「けのはなし」は今号も興味深く。◆ニャンは人語を解し、冗談を解さないからぜんぶ真に受ける、という一枚◆ソロバーベキューのたのしみ、などを楽しく読み◆独身女性、既婚女性にそれぞれ聞いた、結婚をめぐるアンケートの回答が、質量ともにたっぷりボリュームで読み応えありました。
 | 集英社 発売日 : 2024-03-05 |
EXILE一族に熱狂し、ぬいぐるみに熱烈な愛を向け、植物を育て、仕事の締切に七転八倒しつつ、家族や友人と時をともにする三浦しをんエッセイ。本人は十年一日のごとくと言ってるけど、どうしてどうしてネタの宝庫。友人たちと犬の散歩に行くだけでもおもしろエッセイになってしまうところがすごいなあ、と。導入部からして、平成最後のころにタクシー運転手と次の元号が「タピオカ」か「エグザイル」かで盛り上がるという抱腹絶倒もの。排便がうながされる友人の声、高級ホテルにマイワイングラス持ってあらわれた男性とその人の飲む銘柄をあてたワイン研究家、足のヒビより物欲な母、ピカチュウのモノローグ、繊細なネイルアートをほどこす袋開けは豪快なネイリスト、筆跡占いとは！？、ロマンあふれる深夜の洗車場など、おもしろポイントも盛りだくさん。一番好きなやりとりは、編集者さんとの以下のやりとり。◆ 「せめて、できたところまで原稿を見せてもらえませんか」「それは……、やめておいたほうがよかろう。いま原稿を見せたら貴君は、「え、まじでこれしかできてないの!?』とショックで心臓発作とか起こしちゃうかもしれない。 長く担当してくれている貴君を大切に思うがゆえに、小生は涙を呑んで原稿を見せないのだ。わかってくれ……！」「アホなこと言ってる暇があったら書ください（地の底から響く声）」p.188-9
文学フリマかネバマイで売ってたの見逃して、あとからこのzineの「恋する惑星」が刺さったみたいなこと呟いてる方をお見かけして、買い逃した〜〜と思っていた一冊にシーソーブックスで出くわし。速攻で買いですよね買い。確かに、映画に出てきたシーンと小道具に登場人物の心情を込めて、自由を愛する香港の人々の心情まで代弁する鮮やかさ。この映画好きで好きでたまらないけど、たしかにこんなふうには書けなかったなという思い。zineとしては、参加メンバーが一つずつ映画を紹介していく体で、「恋する惑星」「アメリ」以外は未見でした。「her」、アキ・カウリスマキ監督「希望のかなた」、「シェフ 三つ星フードトラック始めました」「パブリック 図書館の奇跡」あたりは観てみたくなりました。
 | コアミックス 発売日 : 2024-02-20 |
1-3巻読了。読書会でオススメされて、手に取った作品。紅茶大好きなイケボ、イケオジだけど人と目が合わせられない極度の人見知りの瀧さん、お店の看板猫のキームンくんが出迎えてくれる紅茶専門店。まるでヨーロッパに来たかのような豪華な内装に、本日の紅茶700円（紅茶二杯にデザート付き）でたっぷり楽しめて。紅茶に興味を持った人に質問されれば、瀧さん嬉しくなってとめどなく解説を始めるが、長くなりすぎるとキームンくんが飛びかかって止めてくれて。美味しく入れられた紅茶とデザートとのマリアージュが最高で、OLさんも主婦も老夫婦も女子高生もみんなこの店のファンになり。紅茶を飲んだ時、マリアージュした時の描写には読んでて紅茶欲がくすぐられ。「山田三姉妹」の会に出てきた2階の特別室、嗚呼行ってみたい！と思うと同時に、その昔麻生にあった麻布珈琲邸に似たような部屋があったなあと思い出しました（一度しか行けなかったけど）。そしてケーキ屋の佐藤さん、オッサンずラブかよ！というくらいの瀧さんとのベースにお互いへの敬意があるやりとりがとてもよかった。本日の紅茶700円でどうやって成り立ってるの？！という疑問には3巻最後の会計士さんとのやりとりでなんとなく解明され。その会計士さん用にデカフェの紅茶、淹れるところもまたいいですよね。
 | 文藝春秋 発売日 : 2002-11-08 |
極道の息子でいまは紆余曲折を経て飲料会社の広告部の課長堀江。ある日勤務先の会長に呼ばれて託されたのは、手持ちの映像を社のCMとして流したいという依頼。しかし堀江が考えられる限りの不備を指摘した後、あっさり引き下がり、その後会長は自死してしまう。会長の自殺の理由を求めて、奔走する堀江。いつものことながら彼の周りには部下の大原やバーのナミなど、若く美しく気が強く雄々しい、けれど堀江に魅了されてしまう女性たちがいて（「テロリストのパラソル」なら塔子）。極道のころに鍛えた剣道でヤクザたちものしてしまい、会社も辞めるつもりだから自分一身のことなんか知ったことじゃない、ある意味無敵。超能力まではいかないけど、無敵過ぎる主人公はいささかなあ、と思いつつも、次々と明るみにでてくる事実、疾走感、ストーリーにぐいぐいと読まされた一冊。作者は、義とか侠気とか誇りといったものを描きたかったのかな、と思った。主人公しかり石崎しかり柿島しかり坂崎しかり。
 | 筑摩書房 発売日 : 2024-02-13 |
写真家植本一子、小説家滝口悠生の往復書簡。「ひとりは、わるいものじゃないですね」、とそこだけ切り取るとよく聞く言葉でもあるけれど、植本さんの来し方をこの本でたどってきた上でこの言葉に出くわすと、深く深く頷いてしまう。「こころはひとりぼっち」の時も思ったけど、ひとりでかかえ込まずに、今、話を聞いてほしい！と思った時に、近所でもサークルでも話しを聞いてくれる人がいるの、植本さんの普段からの人間関係が良好なんだなあというのが感じ取れました。また滝口さんからもいつでも来てくれていいのだから、とかえしてくれて。最後のほうの、植本さんが同名の方に出会ったときに、おもわず自分にも言うような気持ちで「いちこがんばれ！」と叫んでしまい、言われた彼女もハッとして恥ずかしそうに「いちこがんばれ」と返してくれたシーンには何だか涙が出てきてしまいました。◆それは以前持っていた絶望的なさびしさからくるものではなく、一緒に過ごした時間が作った安心感のようなものを含んだ、希望のあるひとりです。p.69◆これまで周りの人、特に家族については散々書いてきたけれど、そこにある私からみた「本当」ってなんなのだろうp.150
 | 筑摩書房 発売日 : 2024-01-13 |
読書室ポワロで手にとった一冊。明治の世。家父長制強く、女学生には良妻賢母となるよう同調圧力がきついなか、文学に親しみ、自分の気持ちにまっすぐな悠紀子を主人公に、札幌、秋田を舞台に描かれる物語。理解のない周囲のなかで、教師の土屋だけは、お互いに信頼を寄せ合い、悠紀子の中に可能性を見出し、背中を押してくれていた。秋田の許嫁の生家に身を寄せても、許嫁の弟の方と本の話で、憎まれ口を叩き合いつつも率直な気持ちをぶつけあうことですっかり意気投合してしまい。それも周囲によって遠ざけられ。最後は、わたしはきっとずっと結婚せずひとり、と決意して北海道へ戻るところまでが描かれる。今から見れば、女性にとっては息苦しい時代に、何もかも思い通りになるわけではないけれど、それでも自分の気持ちに正直に、道を切り開こうとするところが印象に。◆自分は誰からも愛される草花にはなれない/むしろ皆から離れて山の頂に一本咲く桜の花のようになろう◆あなたはこの町で平凡にお嫁に行って、平凡に人妻として一生を終えるべきではない。かならずあの太陽のように日本の上にかがやくひとだ◆
 | みすず書房 発売日 : 2023-10-18 |
カフカが絵を描いていたんだ！という驚きで、読書室ポワロで手にとり。巻頭の素描集がカフカから友人ブロート、その秘書と遺族、イスラエルの博物館に渡る来歴と、素描集のみ読了。素描集はほんとうに描線がシンプルで、書簡や旅日記やスケッチの切れ端などに描かれたもので、個人的には本の表紙にも使われた人物像が印象に。また、ブロートのカフカ以上のよくぞここまでといった感じの収集欲には脱帽。その後の来歴も数奇。
| 発売日 : |
guaraで見かけて手に取り、岸政彦編「東京の生活史」を読んで、それの札幌版を作りたいと思った、というあとがきを見て、「東京の生活史」を熱狂して読んだ身としては、ぜひ読まねばと思った一冊。ただ、50冊しか作らず、ほぼ一般に流通していないようだったので、guaraに三週通って読了した。◆いちばん興味深かったのは、guara千葉さんのライフヒストリー。札幌の印刷会社からはじまり、大阪の焼き鳥屋、札幌戻って工事現場と点々として、23から車のディーラー7年間。そこから今の物件の前を通った時、スピリチュアルじゃないけどビビビッときて決めて、お金かきあつめて。お客を呼ぶのに、合コン一生懸命やって、てエピソードが強い。◆他の方のは、waya,雪結、E-Linkあたりのシェアハウスやオフィスが結節点なのかな、ってかたがたの話。稚内からでてきたサッカー少年が起業するまで、長野の村育ちからだんだんと人との距離がわかってきて、札幌でシェアハウスに、とか、動物園飼育員か学芸員か、といって札幌に乗り込み、第四希望の学科にすすんであーあと思ってたのに、そこにすすんだからこそwayaに出会えて、といった話、小樽商大で在学中にカレー屋起業した人のはなし。あと北極にいった女性の話はインパクトあったなあ。忍者になったという女性の話も。
新卒入社の会社を二ヶ月でクビ…後、転職、退職、無職、独立、移住…と---ここでめでたし、とは行かないのがわたしの場合、が繰り返されつつも---紆余曲折を経て、だんだんと真崎さんのやりたいこととやりたくないことの輪郭が明確になっていく様があざやか。最初に真崎さんの文章を読んだのは朝キャバ嬢のブログだったなあ、と思いつつ、それ以降の記事を追っていた身としては、こうしてまとまって読めるの感無量。さあタイへ、というところまでなので、その後のnoteのタイ留学日記以降も本にまとまると買っちゃうなあ、と思っているところ。◆フリーランスだろうが好きを仕事にしようが、不安と焦燥感をモチベーションに走り続ければ短時間で心が死ぬp.46◆私はちょっと稼いでお金に余裕ができるとすぐ安心して働かなくなってしまうp.65
 | 早川書房 発売日 : 2023-10-17 |
ロシア宇宙主義、アフロフューチャリズム、メタバースと100年前から現在の思想に光をあてて、今の世を再考するきっかけとなればということか。本筋ではないかもだけど、「猫シcorp」を知れたことは大きな収穫、アルバムを何回しもしてしまい、耳に馴染ませた。気になったトピックは◆土星出身と称するサン・ラー。ルーツを奪われたことからの、ルーツの創唱。◆幸福な監禁、幸福な搾取◆なんのために？広告収益のために。すべては莫大な富のために◆人間は身体を捨てた「非肉体的存在」として、言い換えればデジタルな魂として、不死の存在に生まれ変わる◆我々は不可能なことをする必要がある。真実（可能なこと）は死と等しい、しかし神話（不可能なこと）は永遠と等しい◆現実を不変と見なしてはいけない。永遠の真理などというものはどこにもない。あるのは実験（いろいろな試み）のみである◆ここで危機に晒されているのは、近代以来のリベラリズムにおける大原則である、対等な者同士の合意に基づく「契約」の概念◆といったあたり。「デザインされたギャンブル依存症」は読んでみたいと思った。
 | 秋田書店 発売日 : 2024-03-14 |
ダマスカスに戻らずにインド行きのはずが、ダマスカスに戻るルートも描くことにしたのは、それだけ人気がでたからなのだろうか、と期待しながらの導入部（個人的にはトンブクトゥ行くまでは連載つづいてほしい）。この巻は、盛り上がるリタの気持ちに、バットゥータ先生妻子持ち発覚で冷水を浴びせられ。けれど妻の養家で料理を習い、インド行きに備え。サバンナでは干しアンズといっしょにダチョウを食し舌鼓。登場の効果音がダチョーンなのはツボ。アラエティンの70人が洞窟に避難して、パン一個しかなくて全員がゆずりあって餓死…というエピソードをめぐる対話は興味深く。
 | 秋田書店 発売日 : 2024-03-14 |
PFFの結果を待つうみ子。結果を知るうみ子。そして海の結果を知るうみ子。創作したいという思いがかけがえのない自らの証になるという教授の式辞。海を撮った宮本監督の「映画は現実的」。そして海が舞台挨拶でうみ子を友人として紹介してくれたうれしさ。同級生と違って、残された時間が少ないという焦り。自分のほうが海をもっとうまく、実際に近い形で撮れるのではないかという自負と迷い。才能がどうとかではなく、違う視点を持った違う人間として海の姿を残したいという思い。
 | 講談社 発売日 : 2024-03-13 |
鷹の抱える秘密をついに皆と分かち合い。息子の嫁に呪いの指輪を贈ろうとする義母まで。娘が有名私立に通うママ友の、高額な付き合いへの懊悩としっかりすぎるくらいしっかりな娘。質屋大バーゲン祭の楽しさと、東西アキ対決などなど、この巻はシリアスよりコメディが全面に出て。
 | 小学館 発売日 : 2024-03-12 |
博物館が舞台の漫画。スズメバチ研究者が研究を志したきっかけと、小学生の興味をひいた蜂の巣駆除。ワニを描くことが好きな女性の、一度は諦めかけた夢と、再度向かうきっかけ。大切なレッサーパンダの遺体の預け先を探してた園長と、未来のために剥製を作り続ける学芸員。などなど。
 | 文藝春秋 発売日 : 1993-01-10 |
アクアマリン、ガーネット、ムーン・ストーン。時に人をなぐさめ、時に走馬灯のように記憶の奔流を呼び起こし、時に変容のひとときを垣間見せそうで垣間見せぬ。海で行方不明になった息子を探して船医になり世界をめぐった先生、あなたのような作家が持っていたほうがいいからと託してくれた中華料理店店主。そして大量に仕入れたからといって安価に売ってくれた鉱石店主。さまざまな物語を聴き、引き寄せて。◆道道無常道という言葉ね。これはもと老子の言葉ですよ。（略）この世に絶対不変の道、絶対不変の真理などというものはないのだ、というね。しかし、まあ、毎日、ささやかな別天地というものはある、と。だから天天小有天というわけです。p.52◆そして本筋でもなく、作者が使った意味とはきっとずれるけれども、「文献のための文献の、そのまた文献を読みあさり、そしてそういうことがやめられないのである。」(p.144)という一節が深く刺さる。
 | 双葉社 発売日 : 2017-02-09 |
何年ぶりかの再読。坊ちゃん、吾輩は猫であるなどの代表作がどのように構想されたか、その間の漱石の生活は、といったあたりが描かれている。めぐり合わせで、ラフカディオ・ハーンが追い出されたあとがまに座ることになった漱石。坊っちゃんの、お雇い外国人をやっつける箇所を語って聞かせた際に、ハーンの話を聞かされてとりさげるシーンが印象に。酒乱の気味があると描かれた漱石が、留置場で知り合った、森田、太田、荒畑、堀ら一同と会して語り合うシーンも。◆いってみりゃ小説なんざ思いきりのすこぶる悪い負け惜しみか頭の屁みたいなもんだよ（漱石）
ライター真崎さんと友人ヨコさんの大人の交換日記。仕事も含めたキャリアの話、めざしてた（めざしてる）目標の話、恋愛の話、焦燥感など---"「can&mustなタスクを日々こなすうち、wantがよく分からなくなる、もしくはwantはあるけどソコに辿り着けなくて焦燥感が芽生えている」というモヤモヤ"。さまざま語りあったあとの、"じゃあ私が本当に伝えたいことって何なのかというと、実はむっちゃんと同じ。「死なないでほしい」"にはかなりグッときてしまった。あと、「わかる！！！（128デシベル）」は積極的に使っていきたいと思いました。
 | エクスナレッジ 発売日 : 2022-10-03 |
美しい鉱物写真を眺めるたのしみ。光の当て方で虹色に光るものと、南国の海を思わせるようなエメラルドグリーンと白の境目のあたりが特に見てて目が喜びました。
 | 文化出版局 発売日 : 1992-10-01 |
仕事の都合で、世界のあちこちから恋人へ送られた短い手紙と美しい写真が交互に。朝焼けコレクターのはなしが印象に。世界各地の朝焼けを眺めて、日時と場所と観た印象を集めてた人が、ある時、アンデスのすさまじい朝焼けにやられて、コレクターをやめてしまった話。
 | 筑摩書房 発売日 : 2016-10-06 |
バーナード嬢曰く３巻、つながりで。◆タイトルに即してひと言でいえば、読んでいなくても、出版されてる本全体の中で、その書物がどの位置にあるかさえおさえておけば、読んでいなくてもその本のことを語ることはできる、極論、むしろ読まないほうがいいとさえ言える、と。◆もとはといえば、読んでいない本にコメントをもとめられるのは、大学教授、ライター、作家など教育や出版にかかわる人々が、読んでいない本についてコメントを求められた時に、というのが書いた動機みたいだけど、ふだん本に囲まれてない環境に身を起き、自ら機会を求めて、本を挟んで本についての雑談がしたいと思っている身には、きっと著者の動機にあてはまらない。◆ただ、本を読んだとはどういうことか、という問いかけは刺さってきた。最初のページから最後のページまで目を通したら、それは「読んだ」ことになるのか、それで本の中身がまるごと読んだ人のなかに残るのか？そんなことはないし、読んで忘れてしまうかもしれないし、読んだことの断片が、自分なりの理解で自分の中に残るだけであって、それは別の人が読んだものと一致することはない。ある本について「読んだ」者同士で話したとして、それはお互いの中にある、断片同士を照らし合わせてるに過ぎないのだ、と。◆だからといって、じゃあ、本など読んでも無駄、一切読まない、とはならないのだけど。なぜなら、本全体のなかでの位置を知るために読むのではなく、ただ、活字の海に目をひたしていたいから、読む愉しみにひたっていたいから。たとえ断片同士だとしても、自分が読んだ本について語り合いという思いが一方にはあるから。この本の中で、むしろ作家も作品すらも必要ない、最後は自分語りだ、という論がぶたれていても。◆誇りを持って、ただの一冊も本など読まぬ！と断言する司書のでてくるムージルの「特性のない男」は読んでみたく思った。
 | イースト・プレス 発売日 : 2024-03-19 |
プリンタニアのメンテナンスや調査、飼い主の定期検査、案内人の仕事など、和やかに日々は過ぎていき。すあま、そらまめのふわふわかわいい具合はこの巻でも健在で。プリンタニアに興味津々の少年は、最初はプリンタニアへの愛情を大声や唐突な接近でうまく表現できなかったけれど、徐々に徐々に距離をつめて、ついにはプリンタニア研究施設ではたらきたいと決意をかためるまでに。
 | KADOKAWA 発売日 : 1979-08-01 |
本の雑誌の目黒考二・北上次郎・藤代三郎 (別冊本の雑誌 21)で目黒氏が熱くおすすめしてたので気になって、表題作のみ読了。接待で銀座のクラブにやってきた若手サラリーマンが、銀座のホステスに声をかけられ、何度か運転手をつとめたところ距離が縮まり…と◆「ヒマなお嬢さんじゃないんだもの、コーヒーや紅茶なんか、おかしくって。飲むならお酒だわ」◆「甘い気持ちで惚れると、不幸になるわよ」◆なんていう女性のセリフに時代とはすっぱなところと潔さを感じ、「なぜ岩手県なの」「いろいろあるのよ」「聞かないことにしようか」「言わないことにしておきたい」なんてやりとりのリズムよさに心地よくなる一編。
 | 文藝春秋 発売日 : 2023-02-07 |
文庫化、文庫版入手を機に再読。なにかひやりとした悪意を感じさせる「クリーム」「一人称単数」。二度と会えなくなってしまった人との関係をつづる「石のまくら」「謝肉祭」。安定していると思っていた人がふと死んでしまい、不安定だと思ってた人がしたたかに生き延びていた「ウィズ・ザ・ビートルズ」。愛した人の名を観念的に奪ってしまう「品川猿の告白」。といったところか。◆も人は自分では気がづかないところで、他人の気持ちを踏みにじったり、プライドを傷つけたり、不快な思いをさせたりすることがある。（クリーム）◆僕は「読書家」と言えるほど系統的に緻密に本を読んできた人間ではないが、活字を読んでいないことにはうまく時間を過ごせない人間の一人だ。p.105（ウィズ・ザ・ビートルズ）◆たとえ愛は消えても、愛がかなわなくても、自分が誰かを愛した、誰かに恋したという記憶をそのまま抱き続けることはできます。p.218（品川猿の告白）◆芥川龍之介「歯車」から"飛行機"を激しく求めて読んだなあ、ということを思い起こした。
| 発売日 : |
本のヌード展 at 三省堂書店札幌店にて購入。マリークワントの本を紹介した方のキャプションからは、学生時代のにぎやかな嬌声が聞こえてくるかのよう。きのこ文学の本は、手に取ったことあるけど、見た目もファンキーかつ、フォントや紙質・紙色もめまぐるしく変わってすごく刺さった印象。明治の男子は…の山田寅次郎本は、装丁もだけど中身もいたく興味を惹かれ。矢萩多聞さんの中1で学校辞めて、日本と南インドを半年ずつ往復して、20代で本づくりに携わる…って経歴に興味。
| 発売日 : |
シーソーブックスにて購入。パラリとめくって、ビアフラ戦争について書いた一文があったのですごく気になり。ビアフラ戦争に基づいて芸名をつけた歌手の話から大国のエゴがいかに戦争を引き起こしたかの話へと広がっていき。他にも、入管法への、「政治的」であることを嘲笑するほうが現政権にYESと言ってる「政治的」なやつ、同性婚をのぞむ声、女性であるからと勝手にライス普通盛りを減らされたこと、パンクであること、2歳児にかけられた呪いを解く40代の自分、コロナ禍に死んだものをなかったことにはさせないという思いなど、闘え闘え闘え、という声が聞こえてくるかのような一冊だった。
 | 音楽と人 発売日 : 2023-12-28 |
BUCK-TICKボーカル櫻井敦司のデビュー6年目1993年から2023までのインタビューと、没後の関係者からの寄稿による一冊。巻頭のグラビアは見応えたっぷり。初期は、本人が、何歌っていいかわからなかったから、とりあえずラヴ・ソングでいいかみたいな姿勢だった。編集者からも、ペラペラ歌謡ポップ時代、髪の毛立てまくり歌謡曲紙一重時代は安っぽく捉えられてた、なんて本人に言ってた。そこから自己否定、死、絶望、退廃とその世界を深めていき、湾岸戦争、911、東日本大震災、ウクライナ戦争と社会の動きにも目を向け、痛みを感じて歌詞に込めていく境地までが語られ。聴きたくなった曲もてんこ盛り。そしてお茶目エピソードも満載。バンドメンバーともども飲み始めたらとまらない。巻き込まれた編集者が、櫻井邸で徹夜明けで風呂に入ってない(おそらく帰りたいの意味で)といったら、櫻井敦司本人がバスタブに湯をためて「お風呂湧きましたよ〜」「湯加減いかがですか〜」と後日、取材で会うたびに「お風呂、いつでも入りに来てください」と真顔で言われたてエピソード、沖縄料理屋にみんなつれていき、沖縄民謡が流れたらたちあがって、みんなに踊れ踊れーてはしゃいでカチャーシー踊りだしたエピソードが好きでした。寄稿・対談の中では、三浦しをん、MORRIE、山崎広子の各氏のものが印象に。坂本美雨がシンプルにキレイにしあげたBUCK-TICKトリビュートの曲、聴いてみたい。分厚く読み応えたっぷり大満足な一冊でした。
西餅の日常シリーズで、個人的に大好きなデッサンの先生が表紙だったので、もしかしてこれは全編デッサンの先生の話？！と期待したが、その点は肩透かしだった。いままでのじゃない難しい構図に挑戦！とけしかけておいて、ペン入れの時、誰だこんな難しい構図にしたの、描けるわけないだろと自分を恨むまでがセット、てあたりにいつもの先生節をかんじてよろこぶ。西餅さんの言い淀んだプライベートがダブルチーズバーガー2個一気喰いに、蝋梅の群生地で昆虫ばりに10分匂い嗅いでガンぎまりなのもいいなあ。あと、ワイルドナイツのラグビー代は美術館代と力説するところも。
 | 文藝春秋 発売日 : 2011-07-10 |
円山動物園のアザラシに魅了されたのがきっかけで手に取り。北極圏のタテゴトアザラシの赤ちゃんを撮り溜めたもの。どうやってこれほど間近で連続して撮れたのか、すごいなあと。母親の子育ては2週間、その後赤ちゃんは氷の上に残され、自力で泳ぎや餌取りを覚える。完全な独り立ちができるのには4週間、しかしすくなった流氷は2週間もたないのだとか…。2020年の流氷はボロボロで、この年はアザラシの赤ちゃんの75%が溺死という推測、過酷な環境と、愛らしい写真とのギャップ。
円山動物園のアザラシに魅了されたのがきっかけで手にとったもの、2冊目。紋別のアザラシに特化したとっかりセンターのアザラシたちの写真。表情がキュート、時にやらされ感のあるサンタ帽とかかぶったりしてるけれど。
 | 発売日 : |
「日常の西餅」シリーズがおかしかったのでこちらも読みたくなり。つてもあてもなく、ある劇団に入りたい一念で上京してきた主人公がたどり着いた激安風呂無しトイレ共同物件。窓から出入りする同人ゲーム作家、ボツを喰らいまくる漫画家の隣人たちに流されつつ、なじみつつ、貧乏ライフをすごす。激安カレールーをさらに分け合い、どんぐりや野草で歓迎パーティ、命の恩人を盾に奢ってもらったり、ビールを自作して大失敗したり。客がいると思うと落ち着けないからと、マスターがアバンギャルドなほどに植物を配置したお店、あったら行ってみたい。
 | 創元社 発売日 : 2021-10-21 |
円山動物園のアザラシに魅了されて手に取りました、第三弾。なので、アシカやオットセイにもふれられてたけど、アザラシのところを中心に。アザラシの子育て。ホッキョクグマによる捕食。体重2トンにもおよぶ雄が350kgの雌を囲う種類のアザラシは、新参の雄と激しく争ったり。北極や南極をはじめとした冷たい海にいるものだとばかり思っていたら、カリフォルニアで熱中症になるアザラシや、地中海やガラパゴス諸島に住むあざらしバイカル湖やカスピ海といった湖に住む種類など、あちこちにいるんだな、と。一時間ももぐっていられる種や、子へ授乳する二週間はそれに集中して、食事は取らず、蓄えた脂肪のみで生きて、その後、子を置いて海へ旅立つ母親。気候変動の波にもまれ、少なくなった海氷のせいで、より北へ向かわざるを得なかったり、天敵に捕食されやすくなったり。また湖に住む種は、化学物質がたまりやすいという地勢から、有毒物質をためこみやすくなって、健康被害が出ていたり、と。知りたかったことがさまざまに知れて、豊富な図版にも親しめた一冊でした。
 | 本の雑誌社 発売日 : 2024-02-22 |
あのおやっさんの古本屋台が帰ってきた！今回はコロナ禍も織り込んで、マスク生活やお酒販売NGの張り紙が描かれたり。けど、帽子に髭の紳士の、おやっさんへの愛情表現、見た目はチンピラなんだけど、風鈴や水耕栽培などセンスあるプレゼントを持ってくる男、大声出すなよ野中の一軒家じゃないんだから、をはじめとして客にビシッと厳しいこと言ったりするけど、次会えばまた変わらず迎え入れてくれて。時々きまぐれに出てくるつまみがあったり、映画ひまわりのテーマをバイオリンで弾いたり。客たちもマイペースでやってきて、白波を一杯飲んだり、古本を買ったり。ああ、ほんとこんな屋台あったらな。昔淡谷のり子がテレビで言ってた、あなた70歳になってごらんなさい、一時間なんて5秒よ、に実感が湧いた話と、最近装丁で買った本という話題を出してた客が佐久間文子「ツボちゃんの話」を推してたエピソードが印象に。
 | 東京大学出版会 発売日 : 2023-04-19 |
円山動物園のアザラシに魅了されて手に取りました、第四弾。アザラシの記述のみを追う。子供を産むときの行動。実際の子育て方法、期間。呼吸穴をどうあけて、どう利用しているか。結氷しないとワモンアザラシの繁殖ができなくなること。アゴヒゲアザラシの声の地域差。なわばりを守るための雄同士の戦い。水深600-800メートルの深海に頻繁に潜る、一度に100分もぐることもあるゾウアザラシ。海面からもちあげたペンギンの体を、首の動きによって激しく左右にふりまわして食べやすい大きさにしてから食べるヒョウアザラシ、などなど。知れば知るほど興味が深まる。
 | 講談社 発売日 : 1996-08-09 |
シャンティブックスにて、パラリとめくって、「雨の木を聴く女たち」の続編らしき一編が載ってる！と思い手にとった一冊。”宇宙大の「雨の木」”はあいもかわらぬペニー節健在。どう考えても、書かれなかったものを作品としたり、ノートに引用したことを作家的行為とするのは無理筋なのに、それを受けて最後に"まさに書き始められようとしながら、作者の不幸な死のために実現しなかった偉大な小説について、それが実現したかたちを想像しつつ主題と梗概とを話してもいいのではないか？"とまで書くのはあまりにお人好しすぎないか、と。ただ、新しい小説への始動を著者には感じさせたとのこと。ダンテ、ラウリーからの引用や、三島由紀夫とニューヨークで話したシーンも印象的。個人的には、最初の何篇かはちょっとあまりに観念的すぎてあまり入って来なかったのだけど、「治療塔」あたりからカチッとはまった感があり（意外ではないのかもしれないけど大江SFというのが新鮮で）、「マルゴ公妃のかくしつきスカート」「ベラックワの十年」「僕が本当に若かった頃」「茱萸の木の教え・序」あたりはがっちりと読めた。ベラックワの百合恵さん、茱萸の木のタカチャン、僕が…の繁少年は特に強い印象を得た。
 | 新潮社 発売日 : 2018-11-28 |
(2024/03/31)再読。いろんな人の読みにふれてからの再読で気になった断片を。「妹とふたりでクリスマス会するわ」と言ってたかおりに電話がつながらなかったのは別れの前兆のひとつだったのか。ゴールデン街で瞬間的にその場限りの友達、知り合いになり…といったまじわり。ナカマコーポレーションが3ヶ月後に摘発されたというのは、スーが消えた時期を知る鍵。関口の「望み通りのものじゃなくても、美味いって言えるのが大人ってやつよ」。かおり「キミは大丈夫だよ、おもしろいもん」。(2024/03/22)再読。何度目かわからないくらいの。「なぜ、かおりとスーは主人公のもとから去っていったのだろうか」と思ってたけど、すでに新しく好きな人ができてたから、まきこみたくなかったから、なのかな。けれど、なぜはっきりとさよならをつげてくれなかったのか、というところはわからず。主人公と大きく関わったのは、かおり、スー、七瀬、関口、みなこの作品の中で出会って、そして別れていってしまう。その時、その時の主人公の心をおおきく動かすように。今回はこの三箇所が気になった。◆美味しいもの、美しいもの、面白いものに出会った時、これを知ったら絶対喜ぶなという人が近くにいることを、ボクは幸せと呼びたいp.78◆ボクたちは似ていた。好きな人がいて、その好きな人の強さに惹かれ、自分の弱さに耐えられず少しズルくなっていた。p.114◆本当のさよならの時、人はさよならとは言わない。そんな時、ボクたちは太字で書き出すような名言も言わない。p.143◆（2022/02/14読了分）Netflix版視聴を機に再読。Netflix版はコロナウィルス蔓延した2020年、七瀬との再会、耐えきれずに婚約者が出ていった2015年、婚約者との関係がままならぬ2011年を足して、かつ、どんどんと時系列を遡っていき、最後に走馬灯のようにすべてがめぐる構成だった。今回は小沢健二「暗闇から手を伸ばせ」、犬は吠えるがキャラバンは進むが、ジャミロクワイが、小沢健二「ある光」が聴きたくなり、ゴールデン街で何人かと顔見知りになり余計な詮索はせず、今は繋がってない、瞬間的な知り合い、だからこそ身内にも話せない本音を話せたり、真剣な悩みを笑って冗談にできた、その瞬間距離が縮まり、またそれぞれの世界に戻っていった。"ボクたちは似ていた。好きな人がいて、その好きな人の強さに惹かれ、自分の弱さに耐えられず少しズルくなっていた。"。最後の「ありがとう、さようなら」のあたりが印象に。/（2018/12/11読了分）初回限定specialカバー、巻末マンガ、解説、あいみょんからのアンサーソングが追加ということで、つい買ってしまう。もちろん本編も、何度目かわからないくらいの再読。「美味しいもの、美しいもの、面白いものに出会った時、これを知ったら絶対喜ぶなという人が近くにいることを、ボクは幸せと呼びたい」「この瞬間の気持ちがずっと続けばいいのに。明日も、明後日も、何年先もずっと。それは夢だよと誰かに言われたとしても」。押井守監督、うる星やつら２ビューティフルドリーマー、見返したくなる。そして、間をおかず、cakes版も再読。この人のエピソードまるまる削除されてるとかこの人とこの人の話が関口さんに集約されてるとか、七瀬の来歴が少し変更になっていたりとか。かおりとスーとの出会いの時系列が変わっていたりとか。文庫版解説では、読めば改変の理由がわかるとあったが、綺麗にまとまった以外の点ではわからなかった。さすがに事務所をバットで壊しまくった後にバイトを置いて逃げて、そのバイトが障害を引きずったとか、同僚が取引先を鼻が折れるほど殴りつけたエピソードなんかは、何かまずかったんだろうな、ぐらいには思ったけれど。読み比べるとcakes版の方がまとまってない分、雑多な力のようなものを感じる。けど、両方とも好きです。
2024年03月04日
2024年02月に読んだ本
(0201・園中曜子 トルコ共和国におけるヴィジュアル公共圏の展開 –ゲズィ公園デモを中心に--- アジア・アフリカ地域研究/15 巻 (2015) 2 号 p. 167-207
(0202・ウィリアム・バロウズ 裸のランチ 図書館20240202受領 …序文のみ
(0203・もずく 毎日がんばってはたらく、えらい kindle 20240202
(0203・地主 スーパーの裏でヤニ吸うふたり 4…ma
(0203・バーナード嬢曰く。7 …ma
(0203・生きてるうちに推してくれ 4 …ma
(0204・レオナ・ロイヤル・ロード …ma
(0204・panpanya 蟹に誘われて …ma
0205・谷川嘉浩 スマホ時代の哲学 失われた孤独をめぐる冒険 Kindle 20240107 \886 16p
(0205・小沼理 みんなもっと日記を書いて売ったらいいのに シーソーブックス 20240204
0205・シェイクスピア 十二夜 光文社古典新訳文庫 KindleUnlimited
0206・嘉島唯さんに聞く「ウェブメディア」で文章を書くということKindle Unlimited
0207・大西康之 起業の天才江副浩正 KindleUnlimited
0207・【再読】中野美代子 砂漠に埋もれた文字—パスパ文字の話 ちくま学芸文庫 並樹書店 20230923
(0208・青にふれる 7 Kindle 20240208
(0209・夢の雫、黄金の鳥籠 19 Kindle 20240209
0209・他人が幸せに見えたら深夜の松屋で牛丼を食え Kindle 20240203
(0210・姉プチデジタル2024.1-2号 …セクシー田中さん最終話
(0210・坂口安吾 西荻随筆 Kindle 青空文庫
(0210・呪詛 vol.5 シーソーブックス 20240204
(0211・にとりささみ ホワイトタイガーとブラックタイガー Kindle 20240210
(0211・真船佳奈 子連れ海外旅行で帰国危機？！: タイ旅行レポート 真船佳奈まんがまとめ本 Kindle 20240210
(booklogなし0211・明和電機 製品カタログ 20240211
0212・くどうれいん 東直子 水歌通信 …ma
0214・山際素男訳 アンベードカルの生涯 集英社新書 KindleUnlimited
0214・土佐信道 修士論文「芸術における生物表現とシミュレーター 創造性についての考察」 20240211
0215・山際素男 破天 集英社新書 2023122x KindleUnlimited …第三章のみ読了。つきせぬ大菩提寺解放運動
0217・戌井昭人 壺の中にはなにもない 20240211 KindleUnlimited …agora読書会課題本
(0217・これ描いて死ね 5 …ma
(0218・森泉岳士 佐々々奈々の究明 (上)(下) …ma
0220・砺波護 馮道 中公文庫 図書館20240215受領
0220・【再読】村松恒平 達磨 20240214 20240211 KindleUnlimited
0221・【再読】渡辺淳一 阿寒に果つ …お風呂用
0222・宮藤官九郎 いだてん第一部 シナリオ 20240113発注0121受領0220読み始め…めっちゃくちゃ面白い！
0223・【再読】藤原伊織 テロリストのパラソル 20240211 KindleUnlimited
(0223・北北西に曇と往け 7 …ma
(0223・凪のお暇 11 …ma
0225・嘉島唯 つまらない夜に取り残されそうで Kindle 20240222
0225・歎異抄 光文社古典新訳文庫 KindleUnlimited 20240211
0225・後白河院選 川村湊訳 梁塵秘抄 光文社古典新訳文庫 KindleUnlimited 20240221
0226・zine「iede」ie_sapporo シーソーブックス 20240225
0226・藤原伊織 ダナエ 20240223 ブックオフ南二条
(0226・宮崎駿 風の谷のナウシカ 1−6 徳間書店 図書館20240226受領
(0227・宮崎駿 風の谷のナウシカ 7 徳間書店 図書館20240226受領
(0228・新井すみ子 好きな人が男じゃなかった2 Kindle 20240227
(0228・エルド吉永 龍子 1-2 読書室ポワロ
(0202・ウィリアム・バロウズ 裸のランチ 図書館20240202受領 …序文のみ
(0203・もずく 毎日がんばってはたらく、えらい kindle 20240202
(0203・地主 スーパーの裏でヤニ吸うふたり 4…ma
(0203・バーナード嬢曰く。7 …ma
(0203・生きてるうちに推してくれ 4 …ma
(0204・レオナ・ロイヤル・ロード …ma
(0204・panpanya 蟹に誘われて …ma
0205・谷川嘉浩 スマホ時代の哲学 失われた孤独をめぐる冒険 Kindle 20240107 \886 16p
(0205・小沼理 みんなもっと日記を書いて売ったらいいのに シーソーブックス 20240204
0205・シェイクスピア 十二夜 光文社古典新訳文庫 KindleUnlimited
0206・嘉島唯さんに聞く「ウェブメディア」で文章を書くということKindle Unlimited
0207・大西康之 起業の天才江副浩正 KindleUnlimited
0207・【再読】中野美代子 砂漠に埋もれた文字—パスパ文字の話 ちくま学芸文庫 並樹書店 20230923
(0208・青にふれる 7 Kindle 20240208
(0209・夢の雫、黄金の鳥籠 19 Kindle 20240209
0209・他人が幸せに見えたら深夜の松屋で牛丼を食え Kindle 20240203
(0210・姉プチデジタル2024.1-2号 …セクシー田中さん最終話
(0210・坂口安吾 西荻随筆 Kindle 青空文庫
(0210・呪詛 vol.5 シーソーブックス 20240204
(0211・にとりささみ ホワイトタイガーとブラックタイガー Kindle 20240210
(0211・真船佳奈 子連れ海外旅行で帰国危機？！: タイ旅行レポート 真船佳奈まんがまとめ本 Kindle 20240210
(booklogなし0211・明和電機 製品カタログ 20240211
0212・くどうれいん 東直子 水歌通信 …ma
0214・山際素男訳 アンベードカルの生涯 集英社新書 KindleUnlimited
0214・土佐信道 修士論文「芸術における生物表現とシミュレーター 創造性についての考察」 20240211
0215・山際素男 破天 集英社新書 2023122x KindleUnlimited …第三章のみ読了。つきせぬ大菩提寺解放運動
0217・戌井昭人 壺の中にはなにもない 20240211 KindleUnlimited …agora読書会課題本
(0217・これ描いて死ね 5 …ma
(0218・森泉岳士 佐々々奈々の究明 (上)(下) …ma
0220・砺波護 馮道 中公文庫 図書館20240215受領
0220・【再読】村松恒平 達磨 20240214 20240211 KindleUnlimited
0221・【再読】渡辺淳一 阿寒に果つ …お風呂用
0222・宮藤官九郎 いだてん第一部 シナリオ 20240113発注0121受領0220読み始め…めっちゃくちゃ面白い！
0223・【再読】藤原伊織 テロリストのパラソル 20240211 KindleUnlimited
(0223・北北西に曇と往け 7 …ma
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0225・嘉島唯 つまらない夜に取り残されそうで Kindle 20240222
0225・歎異抄 光文社古典新訳文庫 KindleUnlimited 20240211
0225・後白河院選 川村湊訳 梁塵秘抄 光文社古典新訳文庫 KindleUnlimited 20240221
0226・zine「iede」ie_sapporo シーソーブックス 20240225
0226・藤原伊織 ダナエ 20240223 ブックオフ南二条
(0226・宮崎駿 風の谷のナウシカ 1−6 徳間書店 図書館20240226受領
(0227・宮崎駿 風の谷のナウシカ 7 徳間書店 図書館20240226受領
(0228・新井すみ子 好きな人が男じゃなかった2 Kindle 20240227
(0228・エルド吉永 龍子 1-2 読書室ポワロ
デモの際に用いられるヴィジュアル・イメージの機能として、抗議者間の連帯感を強め、抗議者以外の人々にもその主張をわかりやすく伝える機能、マスメディアなどを通じて多くの人々の関心をひきつけ、通常の意思決定過程と異なる方法でその過程に侵入、時には停止させる機能をあげる。ここでの例としては赤いドレスの女、ペンギンなどがあげられる。日本で身近でいうと、原爆の日の式典でのダイ・インかな。オスマン帝国時代の兵舎風の建物を再建し、ショッピングモールを建てようとして公園の木を伐採することに抗議したゲズィ公園デモは、エルドアン政権の国民の多様性を尊重しないと捉えられた政策、イスラームの要素を強めた政策などさまざまな不満が爆発する契機となった。写真9ではゲズィ公園でもを象徴するヴィジュアル・イメージの数々に触れられる。その流れで、個人でも抗議を示すヴィジュアルとしての「止まる男」「7色の階段」が派生していく。ただヴィジュアル・イメージによる主張が平和的なものであっても、それらの情動喚起性から暴力的な衝突をまねく危険性もはらんでいることも述べられる。
 | 河出書房 発売日 : 2003-08-07 |
中島らも「今夜すべてのバーで」を読んで、W・バロウズ「剥離、ある病気に関する証言」が読みたくなり、それが「裸のランチ」の序文だと何かで読み手に取る。序文以外はイメージが錯綜といった感じで読めず。◆15年の麻薬中毒。「針は重要ではない。嗅ごうと吸おうと食べようと尻に突っ込もうと、結果は同じ。中毒だ。」という堂のいり方。”八時間爪先を見続けるだけ、視界は灰色のスクリーン” という身になってもやめられない。◆麻薬ピラミッドの恐ろしさ。（1）何一つ無料でくれてやってはいけない(2)必要以上のものを与えてはいけない(いつも買い手を飢えさせて、しかも待たせろ）(3)できることならすべて取り返せ◆「麻薬商人は、消費者に製品を売るのではない。製品に消費者を売りつけるのだ」◆アポモルヒネ治療というのは初めて聞く。モルヒネを塩酸で煮る治療とのこと。そんなに有効ならみんなやればいいのにと、非ジャンキーからは思えた画期的なもの。◆
 | KADOKAWA 発売日 : 2023-03-15 |
とにかく働きたい気がおきない。それでも毎日会社ではたらく。カメラロールにはタイマーを止めたスクショがずらりで、電車が会社に近づくとブルーで、働く気が一日起きなくておちこむことも。会社で理不尽なことがあったら家にかえってアイスボックスにコーラ入れてアーとする。かしわ天取った途端揚げたてのかしわ天が補充されたり、そのままあっためる冷凍チャーハンを開封しちゃったり、ランチの失敗は午後に響く。上司面談で、仕事のやる気が一応あるに◯つけてたら、充分にあるじゃないの？と問われてかえしは？在宅勤務時のWeb会議でカメラがオンかオフかでふりまわされたり。夜の九時に、ごめんもう帰りたいよね…で上司とふたりめそめそ。などなど。やる気でないことあるよね、理不尽なことあるよね、と思いつつ、キュートな絵柄でちょとファンキーだったり毒はいたりするところも好きです。
 | 小学館 発売日 : 2024-01-30 |
完結。アイドル業はエースのルリの脱退騒ぎ、除霊業はルリについた霊「先生」を除霊するために、ミサキと坊主とヒカルがあれこれ画策し、最後は…と。まさか、坊主らしく因縁生起を解き出すとは。儚く見える縁も次に繋がる、と。どうしたら推してもらえるかわかってたらアイドルこんなに苦労しないはミサキの血の叫び。先生の去っていくからと言って愛が終わったわけではないにはしんみり。
 | スクウェア・エニックス 発売日 : 2024-01-25 |
佐々木さんは相変わらず気づかなかったり、とはいえ田山さんのピンチに駆けつけたり。田山さんは田山さんで酔って真情をポロリと吐いたり、斜め上から気持ちを伝えていたりで、もどかしいふたりなのは変わらず。大五郎の飼い主登場は、佐々木さんには同志登場な感。大野さんの、人生やりたいことできた感への、「そんな人生舐めてる考え持っちゃったら自分に喝入れるためにパチンコ」回答もファンキーで好き。
 | 一迅社 発売日 : 2024-01-26 |
「本編が退屈すぎて本編内フィクションから戻りたい小説」への回答が、「小説じゃないけど人生だった」てかえしが効いてる。プロジェクト・ヘイル・メアリーは読みたくなってきた。町田、神林、遠藤、長谷川…日常的に本の話で盛り上がれるのうらやましい。「マーダー・ボット・ダイアリー」を例にとっての、すべての小説を他人の日記と思って読む、には立ち止まる。そして最後はみなの創作意欲が湧き上がって、その表し方も三者三様なところまで楽しめて。
 | KADOKAWA 発売日 : 2024-01-26 |
ゲームクリエーターになる夢をあきらめ、腐って、不登校で引きこもってゲームばかりしてたたいとのもとへ、突然異世界からやってきた王族のレオナが現れ。たいとにもう一度ゲームクリエーターになる夢を思い出させ、協力者を得るために後押しし、ブログラミングの得意な井内先輩、絵を描くことが大好きな田口さんが仲間になり、ゲームを作る夢を突き進むことに。どんどんそれぞれの個性が発揮されて目に見えてかたちになっていく過程がワクワクする。レオナのど正論でど正攻法の後押しもまぶしくて。最後のほうの、ではさらばじゃ、未来で会おう、のところでは泣きそうになった。◆何もしないうちから出来ない理由を探すものは、死ぬまで何者にも成れんぞ（レオナ）◆本気の苦しみを魂の燃料にして這いずってでも自分の道を探し続ける…それがロイヤルロードの進み方なんだ！！（たいと）
 | 白泉社 発売日 : 2014-04-25 |
逃げ出す蟹。切られるのいやだいやだと駄々こねる魚。エスカレーターの先から泣きながら降りてくる人々。パイナップルの秘密。商店街前駅に降りたったがための彷徨。大山椒魚をアマゾンにかえしにいった顛末。たくあんのプラモデル…実は…。闇鍋の反対語は明鍋？リーマン予想を八年がかりで解くイルカ。完璧な日曜日をすごすための各種工作。日常になさそうでなさそうな、ちょっとずらした世界に入り込む、奇想に満ちた物語。巻末の索引がまたツボ。動物黙らせ機…186,187,202て書かれても…。
 | ディスカヴァー・トゥエンティワン 発売日 : 2022-11-18 |
三宅香帆の”推しがたり”で、推しを語るにもモヤモヤを抱えておくのは大事、って文脈で紹介されてて気になり、手に取る。「ポイントは、自分がすぐに出せる判断や考えの中に「答え」や「解決」を見つけるのではなく、そうしそうになる自分を疑うことです」「謎や問いには、簡単に答えが与えられぬほうがよいのではないか。不明のまま抱いていた謎は、それを抱く人の体温によって成長、成熟し、更に豊かな謎へとそだっていくのでは」という主題の提示。しかし、その道はけわしい。「自分の頭で考えたこと」のみを重視することの危険性。そして「何かを学ぼうとする大半の人は、学んでいる内容を安易に「自分のわかる範囲」に落とし込もうとしてしまう」「想像力（使い方）を無視して、知識（情報）に接しているという躓き方」は身に覚えがありすぎて耳が痛くてちぎれそう。「私たちがするべきなのは、自分なりに理解することではなく、その人の概念やシステムを使えば、景色がどんな風に見えるのかを把握すること」というが難しい！難しいよ！つまり他の人の考え方をちゃんと勉強しよう、近道なんてないよ、と。そして考えを深めるために必要なもの、ちょっと気を抜けば、スマホをはじめあらゆる注意を分散させるものに囲まれたご時世に必要なものは「孤独」と「孤立」と。それは、今直ぐスマホを解約しろ！SNSのアカウントも全削除！という極端でできもしない提言とは一線を画し、「趣味」を持とうというもの、「何かを作る、何かを育てる」といった意味で。
| ディスカヴァー・トゥエンティワン 発売日 : 2022-11-18 |
三宅香帆の”推しがたり”で、推しを語るにもモヤモヤを抱えておくのは大事、って文脈で紹介されてて気になり、手に取る。「ポイントは、自分がすぐに出せる判断や考えの中に「答え」や「解決」を見つけるのではなく、そうしそうになる自分を疑うことです」「謎や問いには、簡単に答えが与えられぬほうがよいのではないか。不明のまま抱いていた謎は、それを抱く人の体温によって成長、成熟し、更に豊かな謎へとそだっていくのでは」という主題の提示。しかし、その道はけわしい。「自分の頭で考えたこと」のみを重視することの危険性。そして「何かを学ぼうとする大半の人は、学んでいる内容を安易に「自分のわかる範囲」に落とし込もうとしてしまう」「想像力（使い方）を無視して、知識（情報）に接しているという躓き方」は身に覚えがありすぎて耳が痛くてちぎれそう。「私たちがするべきなのは、自分なりに理解することではなく、その人の概念やシステムを使えば、景色がどんな風に見えるのかを把握すること」というが難しい！難しいよ！つまり他の人の考え方をちゃんと勉強しよう、近道なんてないよ、と。そして考えを深めるために必要なもの、ちょっと気を抜けば、スマホをはじめあらゆる注意を分散させるものに囲まれたご時世に必要なものは「孤独」と「孤立」と。それは、今直ぐスマホを解約しろ！SNSのアカウントも全削除！という極端でできもしない提言とは一線を画し、「趣味」を持とうというもの、「何かを作る、何かを育てる」といった意味で。
シーソーブックスでぱらりとめくって、即欲しくなってレジに持っていった一冊。タイトル通りの中身。「大きなものや中央集権的なものには、あまり期待できない。それに抗うのは、小さなものや独特なものたちだ。だからこそ、みんなもっと日記を書いて売ったらいいのに。」(p.62)という言葉に象徴されてるように。ただ、率直に書けばいいわけじゃない、非公開の日記にそそられるのはなぜか、どこまでコストをかけるのか、どう出版していくのかといったあたりは興味をひかれた。ただ、ちいさくやろうよというけど、商業の力はおおきいという感覚もあるんだなあというのも感じ取れて面白かった。対談パートでの、僕のマリさんの「「常識のない喫茶店」出した時、いろんな方面から"マジのやばいやつ"だと思われていて」にはくすりと笑ってしまい、「書きたい生活」までセットで読めばそんな風には思われないだろうにと思ったり、星野文月さんの「恋愛関係なしで、パートナーシップを築く実験」連載が読みたいと思ったり。
 | 光文社 発売日 : 2007-11-08 |
ロバート・ハリス「JJ 横浜ダイアリーズ」で効果的な舞台装置として出てきたので、どんなものかと手に取る。とりとめもなくドタバタなコメディで、領主と伯爵令嬢と男装の麗人が三角関係となり、麗人の双子の兄の登場で周囲の人々がふたりを取り違えてさらにドタバタして、最後はご都合主義きわまわれという形で三組のカップルが誕生、と。何を味わい汲み取ればよかったのか、という読後感。◆解題を読むと、タイトルの背景やそれがキリスト教的祝祭を意味し、それゆえのストーリー展開であること、結末もシェイクスピア喜劇の特徴でこの作品特有のものではないことがわかるが、素養無く読んでもそこまでは汲み取らないよね、と。◆でもJ J横浜ダイアリーズ読み返すと… J Jの抱くオルシーノの薄っぺらさへの憤り、 J J父の当時にしてはアヴァンギャルドな戯曲という見方もスッと入ってはくる。そしてこの小説に深く「十二夜」が食い込んでることも。J Jの祝祭の期間だったと思えばなおさら。
まさにWebメディアで書くライターの申し子！て感じの五年前のインタビューでした。ゴーストライターやりたい、GIF職人になる、エゴサで友達できた、あたりが印象に。cakes,noteに書かれてて、熱狂して読んでたエッセイ群が、当時働いてた社への、わたしこんなのも書けるんですぜアピールだったんだ、と知り。それがちゃんと次の仕事につながるのもすごい。近々出る単著も楽しみ。
 | 筑摩書房 発売日 : 1994-11-01 |
(2024/02/07読了分)何度目かの再読。最初はパスパ文字それ自体への興味。次に、フビライ期の宮廷で活躍したというネパールの王族（とされた）で技術者のアニゴに興味をひかれて再読。今回読み返して目にとまったのは、グユクの弟ゴダン王子がらい病にかかり「その原因は、兄グユクのもとに捕われているイスラム教の巫ファトマというペルシア女の呪術にあると信じ、その呪いを解くには、チベットでひろく信仰されているという仏教しかないと考えた。」(p.80-81)という一節。トマトスープ「天幕のジャードゥーガル」の構想の一端なんだろうなあ、と思いつつ。タタトゥンガによるチンギス・カンの印璽の重要性のレクチャーから始まった物語は、パスパ文字が作られ、元代に聖旨にきざまれたりしたあと、パスパ文字が故郷チベットにもどり、印章文字として活躍したところまで描かれる。フィンランド救国の英雄マンネルハイムの見つけた断片をめぐるストーリーは、小さな断片から大きな物語が飛び出してくるのを目の当たりにするようで読んでてワクワクがとまらなかった。作者が、中島敦の文字禍が好き！と熱弁するくだりでは、前回読んだ時それにあおられて「文字禍」も読んだなあと思い出す。(2022/06/07読了分)塙新書版を再読。それほど元朝の皇帝たちが漢文化に憧れたが、それほど漢人が枢要な位置を占めたか、漢人特に下級官吏のモンゴル文化への蔑視がパスパ文字の普及を妨げたか、論点はあれど、パスパやアニゴの来歴、パスパ文字の成立やその後の使われ方、遺されたパスパ文字の史料の紹介など幅広く知ることができた。蓮實重康論文は再度あたりたい。また半世紀後の研究の進展についても。
 | 東洋経済新報社 発売日 : 2021-01-29 |
リクルート事件までの江副浩正は、徒手空拳で、商品提供者と消費者を直接結びつけ、利権を破壊し、情報にこそ未来があると踏んで投資を続け、一部時代がついてこれないものもあったけど、これでもかと事業をあてていき、社内も若手だろうと女性だろうと実力があればどんどん登用していき、と。リクルート事件さえなければ、GoogleやAmazonよりも先んじていたかも、というif。リクルート事件にしても、未公開株が賄賂かという肝心なことをおきざりに、濡れてに泡はゆるせない！というメディアスクラム一色になった、という見方も紹介。ただ、法にさえ触れなければ何をしてもうけてもいいというやり方が、チャレンジャーだった時代には通用しても、自らがエスタブリッシュメントとなった身には許されなかったのでは、と。ただただ、今までになかった事業を立ち上げて突き進むパートは読んでいてわくわくしてしまった。それにしてもここ60年ぐらいで法制も含めて商環境ってガラッとかわってきたんだなということも実感できた。
完結。神田と瑠璃子の関係は、在学中は生徒と教師の関係を越えることなく抑制し。それでも両方と対話を重ねて両方ともの背中を押す白河先生がいいなあ、と。受験、卒業、7年後とめまぐるしく時計の針は進み。それでも思いは変わらず、ついに付き合うことに…というところまでが描かれ。それだけの時間をかけても、それだけの時間をかけたからこそ、の両方の思いを抱いた。
 | 鉄人社 発売日 : 2023-10-26 |
酒場でいい気持ちになって飲んでるおじさんたちに聞いた人生の真実。しょうもないのもあったけど、人生の一面をするどくえぐってくるのもちらほら。◆最近健康診断で、帰ろうとしたところを満面の笑みの保健師さんにとっつかまった身としては、「体が欲しているものを食べていいのは健康体のヤツだけ」は身につまされ過ぎました◆「「予定がわかれば連絡する」と言いよった女性とはもう会えへん」と「女性の気持ちは一瞬で変わる。しかも悪いほうへ」は実感◆「好きなことを仕事にするのではなく、仕事の中にひとつだけ楽しみを見出せばいい」「知識を身につけるのはしょうもないことで大げさに騒がないため」「人ってちょっとした趣味とか娯楽があれば、それなりに楽しく生きてける。」は救いの言葉よね。
 | 小学館 発売日 : 2024-02-08 |
ヒュッレムによるイブラヒムへの陰謀は悪辣さを増し。大宰相の外交文書を偽造、スルタンの命令書を握りつぶす…常人なら即死罪な所業も結果的にはスルタンに許され。最後はヒュッレムがイブラヒムを呼び出すところまで。なんだか読むの辛くなってきた。方向性としては澁澤幸子「寵妃ロクセラーヌ」と同じ方向に進んできたな…我が子可愛さに国を枉げる、それがどうした、と。
 | 小学館 発売日 : 2024-01-06 |
未完になってしまったセクシー田中さんの最終話が読みたくて。田中さんが三好さんとの関係を受け入れ、家まで遊びに行ったら、困窮した友人夫婦が泊まってたり、三好さん友人から、彼は底なしのお人好しで、て話を聞かされたり、最後はバーで愛子先生の教え子のダンサーにめっちゃ罵倒されるところまで。あぁ、このあとどんな続きを描くつもりだったんだろう、と。一番好きだったのは田中さん両親のエピソード。初デートで映画にいき、大嫌悪と大絶賛で大喧嘩になったのに、話してるうちに違いが楽しくなって朝まで話し込んで仲良くなった、という。作者の目指してた方向性の一端が垣間見えるようで。
| 発売日 : |
以前、文学フリマ札幌で「体毛文化研究会」というzineを出してたゆたか遊さんが寄稿、ということで購入。「無駄と呼ばれる毛（や脂肪）のある私の体、愛したい」という一文に深くうなずき。さまざまなものを無駄と思わせる広告や視線や風潮や同調圧力を思い起こしつつ。そして野原のイメージのイラストをあしらったレイアウトも素敵だなと思いました。他にも、乾杯の時の飲み物、「名前」、上野千鶴子・小倉千加子「ザ・フェミニズム」、逆セクハラという言葉への違和感、「「いただいた」自由じゃない、自在だけが欲しい」、「最近フェミニズムができていない(だから原稿なんて書けない)」という罪悪感問題、などなど読みどころたくさんでした。
 | 発売日 : 2012-09-13 |
安吾で西荻でタイトルに惹かれたけど、中身は安吾のニセモノがあちこちに登場！という導入。そのうちの一人が西荻でご活躍だったのか、西荻の店の女給一同から約束の日にいらっしゃいませんでしたね、至急お越しをと手紙をもらったことから、本人として乗り込む…のはいいけど、結局本人とは名乗らず（名乗れず）、坂口安吾も通ってたそうだけどどんな人だったの？と聞く顛末。なにこの諧謔と思いつつ読み終えた佳編。そのニセモノ、坂口安吾を名乗って西荻の刑事と握手したこともあるらしいから、どうせなら税務署長と握手して税金も安くしてくれててよかったのに、て末尾も効いてる。SNSの発達した昨今、そういうニセモノって跋扈しづらいと思うけど、一番最近だと（といってもだいぶ前だけど）、島谷ひとみが「亜麻色の髪の乙女」カバーして大ヒットした時に、その元歌を歌ったヴィレッジシンガーズのボーカルです、って称したニセモノがどこだかの地方のカラオケ大会で審査員におさまって…というニュースを見たことを思い出した。
 | KADOKAWA 発売日 : 2023-10-26 |
強くなりたい子虎のホワイトタイガーが、森にものすごく強いブラックタイガー(虎)を探しに行ったら、出会ったのはブラックタイガー(エビ)だった、という展開からしてもう大好きなんだけど、そのあと、仲良くなった二人が、何か楽しいことをしにいく/おいしいものを食べに行く→ブラックタイガーが天ぷらなどさまざまな料理になってしまう→救急車呼ぶ→うさぎ先生が「軽いやけどですね」で復活するループがシュールでおかしくて。もう、ブラックタイガーと温泉に来ました！のコマでは出オチが感が出すぎてて、オチを見る前に笑ってしまった。そして、うさぎ先生が患者をなおしたすぎて、自分の出番がなかったときの唇かんでるところも好き。
行きの飛行機でとなりあったタイ人女性がめっちゃいい人で、感想が「毎回となりになってほしい」にウケてしまった。コロナの制限も厳しいうちの入国はほんと大変そうでした。
 | 左右社 発売日 : 2023-12-06 |
短歌とエッセイのセットを交互に。くどうさんは、結婚前提で同棲してる彼のこと、昔好きだったハギノのことをつづり、東さんはいつとは知れず折々の思いをつづっているように見受けられた。「蝶の羽のように重なる桃の果肉するするくずすつめたいパスタ」（東直子）、「長葱とセロリはみ出すレジ袋のわたしのことを見て 撮って いま」「手に入れるのがこわいのに手に入らないのもいやで月がまぶしい」（くどうれいん）が目にとまった歌。◆出会った頃からお互いにうっとりすることをあまり求めていない。◆精神の死と体の死は同時とはかぎらない◆がエッセイの中から気になったところ。
 | 光文社 発売日 : 2005-02-20 |
白石あづさ「世界が驚くニッポンのお坊さん 佐々井秀嶺、インドに笑う」を読んだら、俄然読みたくなった一冊。インドで不可触民に生まれたアンベードカルが、苛烈としか言いようのない差別を受けながらも、学問をおさめ、最初は法学徒として、労働運動の旗手として、議員として、インド憲法の父として、一貫して不可触民の生活向上、不可触民性の廃止を願って活動し、最後はヒンズーカーストに見切りをつけて、仏教徒に改宗し、生を終えるまでが綴られる。意外だったのは、インド独立の父ガンジーのダークな面。不可触民への冷酷な態度。アンベードカルが鋭く批判するように、不可触民のために命をはったり、尽くしたり、制度をつくったりという態度を見せず、いままで不可触民を虐げてきたヒンズーの枠組みの中にとどめようとする姿勢、だのにインド憲法に不可触民制廃止の文言が入ったのはひとえにガンジーのおかげとする報道に、読み手としても悔しさを感じ。もちろん、アンベードカルとて超人、聖人ではないので、方向性がぶれているように見えたり、感情的になったり、人が離れていったりもあったけれども、その底流には一貫して不可触民をなんとかしたいという思いがあった、と。それにしても、カースト制度の理不尽さ。なぜに宗教が（慣習が？）身分をつくり、人を差別するのか、そのような宗教が何千年とつづいてきたという不可思議。以下、アンベードカルの言葉。◆人間は遅かれ早かれいつかは死ぬものです。自尊の理想を燃やし、人生を価値あるものとするため闘わねばならないのです。◆「ガンジージー、私には祖国がありません」◆宗教は人間のためにあるのであって、人間が宗教のためにあるのではないのだ。諸君を人間として認めず、飲水もあたえず、寺にも入れてくれない宗教は、宗教という名に値しない◆
明和電機ナンセンスマシーン展in札幌にて購入。社長の修士論文が読めるだなんて！◆（創造性の）問題を解決するには、人間がナンセンス＝マシンを作り上げることである。しかしそれは「人間が人間をつくる」ことであり、「矛盾のないもので矛盾をつくる」ことであり、「生物がなぜ誕生したかを理解すること」であり、「人間が創造主になる」ことである。それが可能家不可能かわからないが、人間が次に向かう目標であることには間違いはない。(p.67-68)あたりが肝なのかなあ、と思った。◆「情報をとり入れ、加工し、外に出す」という点で、芸術家の創造行為とコンピューターの処理過程のモデルは同じである。(p.10)からはじまる一連のモデル化もたいへんわかりやすく面白く読めた。◆制作のいきづまりから抜け出すきっかけが生物学。生物が多次元の存在でナンセンスで軽薄であるからこそ生き延びてきたことを実感した。そしてそれこそ創造性の本質であることを確信した、といったあたりも展示のキャプションにもあったし、実際そうなんだろうなと感じた。ナンセンスマシーン展でみた魚器たちに思いを馳せつつ、この論文で読んだことを重ね合わせていきたい。
 | 光文社 発売日 : 2008-10-20 |
白石あづさ「世界が驚くニッポンのお坊さん 佐々井秀嶺、インドに笑う」、D・キール「アンベードカルの生涯」と来て、この本にたどりつく。主に、第三章の大菩提寺返還運動のところを読んだ。つきせず、粘り強く続けられ、この本の中では決着のつかなかった運動。もともと仏教寺院だったものを、ヒンズー教からとりかえそうという運動。底に至るまでにデモから座り込み、断食に、演説、首相、州首相、大臣と乗り込んでいってかけあうが、いまだ返還ならず。ただ多くの仏教徒の支持が佐々井氏にあつまっているのはたしか。
 | NHK出版 発売日 : 2020-10-28 |
「繁太郎の良いところは、人の悪口を言わない、あくせくしたところがない、おおらかであるところ」とあるが、これはもう実家が太くてコネがあるから、おおらかで気遣いゼロで済んできた、本人がぼーっとしてても、親や祖父がなんとかしてくれるからおおらかでいられただけのことと思ってしまった。ただ、ダルヌル研究所に入ってからの営業っぷりは、「人は居場所のためならがんばれる」という感が強く。「祖父の壺なんて、そもそも不可解なんですよ。元をただせば、ただの土です。そこに祖父の手が加わったからといって、何百万円とかの値段がつくのがおかしいんです。壺なんて、ただの容れ物です。壺の中なんて空洞じゃないですか。その空洞部分にお金を払っているようなもんですよ」には笑ってしまった。ただ、最後に、自分でやってみることによって、その見方もかわっていくのだけれども。繁太郎とまわりのひととのやりとりは、落語的なおかしみも。
 | 小学館 発売日 : 2024-02-09 |
最強最高ステータス漫画に全振りの漫画家へびちか先生の登場、そして男前な森咲さんの加入、リレー漫画での熱い想い、手島先生の漫画家時代の回想と今回も盛りだくさん。漫画部の今年の目標は叶うのか？！といったとところまで。
 | 小学館 発売日 : 2024-01-30 |
上下巻読了。ミステリ作家の姉奈々、大学生の妹流々の二人家族。叔父の死によって、妹が叔父の住居を片付けに行ったところで、思い出して究明したくなってしまった8年前の叔母の失踪。記憶を掘り起こし、当時を知る人に話を聞いていくうちに、新たな事件が次々とおこり…と。最後はバトンタッチした姉による解決編。絶対に執筆中心の自分の生活ルールは変えず、人間関係もドライなうえにドライ。けど姉妹ともどもどういう人間でありたいかの芯はぶれてなくて、最後はお互いの考えていたことを理解し合い、なラストがよかった。人気が出たら続編もいけますよという含みも残しつつ。続編でるなら、読みたい！
 | ディスカヴァー・トゥエンティワン 発売日 : 2009-05-01 |
何処からとなく現れ、説法も経典編纂も断り、ただ洞窟に座り続ける。世話をしてくれる少年とのやりとりを除いては。そして何処となく去ろうとする時に、いまや青年となった少年と、ともに行こう、というだけのシンプルなストーリーなのだけど、だからこそ心の奥底にまで響く。初めて読んだ時は、嗚呼、嗚呼と声を抑えることが出来なかった。だのに、一度手放してしまい、再度買い直したのに今また部屋に見当たらず。KindleUnlimitedで読み返してしまった。いずれ買いなおさねば。
 | 中央公論新社 発売日 : 2003-10-01 |
五代の乱世に文官として評価され渡り歩き生き抜いてきた馮道の人生が、その時代背景とともに描かれる。“君に忠といわず国に忠といい、虚名に誤られることなく、何事にも現実を重視せよと主張した馮道”の方が、馮道を不忠の臣と非難する、名分に凝り固まった欧陽脩や司馬光らの宋代以降の文官たちより、今の世からするとずっと親しみが持てた。争わない性格とされるも、ここぞという時はビシッと諫言したり、遺命に背いてでも幼君を立てなかったり、現帝がいても趨勢を見て有力な皇族を勧進したりと現実主義者ぶりを発揮。ベースにあるのは”軍閥がのさばり歩くこの乱世においては、文官は大多数の人民のために自分のできる範囲のことで、精いっぱい努力するしかほかに道はない”という考え。とにもかくにも馮道の道筋がそのまま五代史にもなっていて、いままでより立体的に五代史をとらえられた。馮道がつくった二日酔いの薬爽団（ハッキリ）の製造法が「清異録」に紹介されてる、てエピソードがまた多才ぶりを示してて好き。
 | 中央公論新社 発売日 : 2015-04-23 |
著者をはじめとした5人の男と、純子の姉蘭子から見た「時任純子」。若くして美しいまま自死した彼女を、どの男も、自分が一番愛されていたと語る。全員の話を聞き終え/語り終え、純子は誰にも属さなかった…と結論づけたあとで、それでも誰かにお前は片思いだったのかと聞かれればきっと、純子は自分を一番愛してたと答えるだろうという締めくくりが何とも苦く。今読み返すと、できあがった純子像は、幼くて残虐で傲慢で自分の気持ち至上主義でそのためにはまるでゲームでもするようにいくらでも周囲を傷つけても顧みないといったもの。それを見抜ければ近づかないだろうけど、見抜けないからこそ…と。
 | 文藝春秋 発売日 : 2019-09-05 |
登場人物多すぎて、第一話、第二話あたりまでは巻頭の登場人物と行きつ戻りつで読んでたけど、それ以降は一気呵成。古今亭志ん生の1960年前後と若い頃が語り部となり、日本マラソン界の父金栗四三の生涯とかかわった人々を描く第一部。なぜ、NHK大河ドラマワースト視聴率なの？！脚本、こんなにおもしろいのに！、と。描かれるのは、日本が初めて選手を派遣したストックホルムオリンピックの前から、アントワープオリンピックのあたりまで。正直、実在の人物を織り込まれても、嘉納治五郎ぐらいしか知らなかったのに、こんなに魅力的な人物が目白押しだったとは。あまりに走ることしか眼中になくて、金栗さん、途中から宮崎駿「風立ちぬ」の堀越二郎に見えてきたけれど。スポーツなどという言葉が根付いていなかったころに、オリンピックを目指し、体育教育を整備し、女子体育に切り込んでいく様は痛快でした。第二部は、1960年代舞台に東京オリンピックを招致した人物に焦点があたるのだとか。
 | 秋田書店 発売日 : 2024-02-16 |
北海道での珍道中で繰り広げられる凪と蒲生の、元サヤにおさまりそうな、片方にはそんな気ないようなデッドヒートに、まーくんの、本人ぜんぜんわるくないのに、理不尽に標的にされてからの、サウナでのかたりまで。
 | 角川書店 発売日 : 2007-05-24 |
ひさびさに再読して、レイモンド・チャンドラーの「ロング・グッドバイ」を日本を舞台にやりたかったのかな、と思った。ハードボイルドの読み口、嫌いじゃない、むしろ好きだった。
 | KADOKAWA 発売日 : 2024-02-20 |
アイスランドで死んだ（ことになってる）弟の日本滞在時のことを、日本で聞き込み開始する兄の慧と親友の清。美しく親しく、次々となんでもしたくなってしまう周りの人々、触れられると「斬られる」と恐れるクラスメイト、弟の闇の面がだんだんと浮かび上がり、リリヤがアイスランドから「遠くで嫌な音がする」と感じたところまで。アイスランドの風物をなにげに取り上げてたところから、だんだんとサスペンスな展開へと傾いていき。
 | 光文社 発売日 : 2011-06-14 |
遊びをせんとや生まれけむ、の梁塵秘抄。一度読んでみたいと思っていた。川村湊氏が現代訳も現代訳、かなり現代向けにくだいて、しかもあとがきにあるように、大好きな女性演歌の風味もとりまぜて。おもしろい試みと思いながら読了。今様、当時の流行歌。ちょっと仏を「あなた」にして恋歌にしたてるのはピンとこなかったけれど。読経も富くじも独楽つかいも当時は芸能だったのは寡聞にして知らず。◆「仏も昔は人なりき」「万の仏に疎まれて 後生わが身をいかにせん」「あまりに興あらむとすることは、必ずあいなきものなり」◆作者と歌い手は別であり、歌い手のそれぞれで歌の意味が異なるということも示され。
 | 小学館クリエイティブ 発売日 : 2024-02-22 |
「匿名性をくれる街、東京」をcakesで見かけてからずっと気になって読んできた著者のデビュー作。20代でも30代でもない身にも刺さってくる物語。特に、女友達だと思ってたJに、あんたはあわよくばって思いがち、自分がない、からっぽ、なのに査定していると図星をさされまくって、口論になった男の話がいちばん印象に。
 | 光文社 発売日 : 2009-09-20 |
ナムアミダブツとだけとなえれば極楽往生できる、アミダさまがなんとかしてくれると信じさえすれば、というのは非常にシンプルな教え。自分でなんとかしようというのはどうもならん、どうせ迷うてばかりのわれらなのだから、他力本願、アミダさまの慈悲にすがるのが最上の道、と。ただ、アミダさま、そんなに力があるなら現世も救ってくれませんかね、と思うのが度し難き衆生たるわたしの感想。またあとがきの、弟子一人持たずな親鸞の衣鉢を継ぐと称す蓮如や大谷家がなぜ大教団に君臨するのか、という問いも興味深し。
10年ぶり以上の再読。1-7巻一気読み。映画と全然違う、ということは記憶していたがここまでだったとは。部分部分のシーンは映画に組み込まれていたけど、複雑な背景も登場人物もスッキリ刈り込んだものだったんだな、と。映画で有名な金色の野に降り立つシーンも2巻途中で、大団円とは程遠いものだった。まずもって、トルメキアと土鬼の２大帝国の戦争に、辺境の小勢力として風の谷があるという背景。戦況によってトルメキアにも土鬼にも加わることを余儀なくされ。ナウシカが平和を愛し、できる限り人の命が失われないように奔走し、森を愛し、生き物を愛するところは変わらないけど、その過程で綺麗事ではすまない現実をさまざまに見せつけられるのが漫画版。王蟲も巨神兵も腐海も物語の中でもっと大きな意味を持たされ。ペジテのアスベルが最後まで重要な役割を果たしたのも印象に。◆個にして全 全にして個 ある偉大な王蟲が教えてくれました。◆巨大な墓や下僕などなくとも私達は世界の美しさと残酷さを知ることができる 私達の神は一枚の葉や一匹の蟲にすら宿っているからだ◆生きねば
 | KADOKAWA 発売日 : 2023-04-24 |
藤原伊織生前最後に刊行された短編集。「テロリストのパラソル」に熱狂して、その後何冊も藤原作品を読んできた身には、ある時期から、ご都合主義な超能力で話を進めたりオチをつけたりすることに納得がいかず離れてしまった時期があるのですが、ひさびさにこの短編集で藤原作品に触れたら、戻ってきてた、あの頃に感。ハードボイルドな質感に。画家が、CMクリエイターが、カタギじゃない者が、やってきたこと、やろうとすることの手法は是非があるだろうが、過去に出会った大切な人、思い出のために、身体を張ってでも力になりたいというストーリーがつらねられているように思った。報酬を断る若きクリエーターのきっぱりとしたひとことが刺さるなあ。◆萩原朔太郎「乃木坂倶楽部」より”我れは何物をも喪失せず/また一切を失ひ尽せり”◆要するに、おれは鈍感にすぎたのだ。その鈍感さゆえの罰を受けている
 | リイド社 発売日 : 2023-09-14 |
1-2巻読了。スタートは黒海のほとりの小王国。ヤクザの娘龍子がクーデターの混乱から逃れ日本へ。母の因縁。父の因縁。王の忘れ形見。アフガンの少年との縁。アフガン派遣の元ソ連兵に、ソ連のバレエ団の元プリンシパル。青幇の娘。幾重にも絡みついた因縁が時に近づき絡み合い、時に心通わせ力を合わせ。そこに流れるのは「義」。国家間のうす汚ない裏切りもかいくぐっての見事な抵抗に息を飲む。一件落着と思いきや続編も準備中とのこと。こちらも楽しみ。
 | KADOKAWA 発売日 : 2024-02-27 |
Twitterで全部追ってたけどまとめて読むとまた格別。プライベートは男前、クラスでは陰キャな古賀さんと、プライベートの古賀さんにそれと知らず惚れ、クラスでは明るいギャルとして振る舞うあやが、オールディーズなロックを媒介に友情をはぐくむ物語。ふたりの距離は近づいたり離れたりためらったり踏み込んだり。修学旅行の夜に、友達の恋バナをやり過ごして二人でロックを聴きまくるシーンと、古賀さんがあやに自作の曲を聴かせるシーンが眩しいくらいに目に飛び込んでくる。
2024年02月01日
2024年01月に読んだ本
…4,5,6章はざっと
(0101・永田礼路 お前の寝言がわからない KindleUnlimited
(0101・真船佳奈 赤ちゃん生まれた Kindle
(0101・真船佳奈 愛が強すぎる妻と塩対応の夫 Kindle
(0102・真船佳奈 都内・保活ものがたり Kindle
0102・河一樂 五代十国人物鑑 (歴史) KindleUnlimited
(0103・会社員でぶどり9 ma
0103・速水螺旋人 いまさらですがソ連邦 KindleUnlimited …「ラウリ・クースクを探して」参考文献
(0103・日常の西餅 6 Kindle
0103・椎名誠 あやしい探検隊北へ (あやしい探検隊第2弾) KindleUnlimited
(0103・スーパーの裏でヤニ吸うふたり 1 KindleUnlimited
0103・ハーニオール 文明史としてのトルコ革命 図書館20231223受領 …ざっと。
(0103-04・推しの子 1-13 Kindle 20240103-04
0104・【再読】村上春樹訳 バビロンに帰る ザ・スコット・フィッツジェラルドブック2 … 「ジェリービーン」「カットグラスの鉢」「バビロンに帰る」「結婚パーティー」「新緑」
0105・はあちゅう 特別な人生を、私にだけ下さい。
0105・植本一子 こころはひとりぼっち シーソーブックス 20231231
0105・小泉悠 ロシア点描 KindleUnlimited
0106・ドフトエフスキー 賭博者 KindleUnlimited
(0106_booklogなし オールタイムベスト5 …青葉市子:アダンの風、寺尾紗穂:青い夜のさよなら
0107・木地雅映子 氷の海のガレオン/オルタ 図書館20240106受領…「氷の海のガレオン」のみ読了
0107・穂村弘 蛸足ノート …ma
0108・【再読】小笠原弘幸（編） トルコ共和国 国民の創生と変容 図書館20231223受領
0109・岸田奈美 もうあかんわ日記 20231223 ブックオフ南二条
0109・三宅香帆 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい！」しかでてこない 自分の言葉でつくるオタク文章術 Kindle20240101 (＝推しがたり)
0110・市川沙央 ハンチバック Kindle 20240107
0110・奈倉有里 ことばの白地図をあるく 図書館20240106受領
0110・雨宮まみ 40歳がくる！ 読書室ポワロ …1227に80％読了。0111に残り読了。
0111・【再読】目黒考二 酒と家庭は読書の敵だ KindleUnlimited …「活字浪漫」改題
0112・なnD 10 シーソーブックス 20240108
0112・Jam いつも心に猫ちゃんを Kindle Unlimited
(0112・大島弓子 ロストハウス Kindle 20240111
0113・【再読】古川日出男 アラビアの夜の種族 1 20240106 booklab
0114・【再読】古川日出男 アラビアの夜の種族 2 20240102
(0114・スーパーの裏でヤニ吸うふたり 2-3 …ma
(0114・プ〜ねこ 9 …ma
0115・【再読】古川日出男 アラビアの夜の種族 3 20240110受領
0116・なnD9 nerdbooks 20240108発注0114受領
(0116・今日もカレーですか？ 1 …SpicySpot
0117・原田マハ 生きるぼくら 20240110受領
0118・【再読】村上春樹訳 ザ・スコットフィッツジェラルドブック 中公文庫
0119・【再読】松村栄子 セラヴィ 図書館20240117受領
(0120・舞妓さんちのまかないさん 25 …ma
0121・詠坂雄二 5A73 20240102 …アメトーク読書芸人
(0121・トマトスープ ダンピアの美味しい冒険 6…ma
(0121・アレクサンドル V.パチカロフ 長峰博之(翻訳・注釈) 概説 ゾロタヤ・オルダの首都,旧サライと新サライの歴史(翻訳・注釈) 小山工業高等専門学校研究紀要第56号(2023)
(0122・深谷陽 スパイシー・カフェ・ガール 20240113発注0121受領
(0123・刷ったもんだ 11 kindle 20240123
0124・近藤大介 ふしぎな中国 Kindle20240102
(0124・牧野 智和 日常に侵入する自己啓発 生き方・手帳術・片づけ 勁草書房 図書館20240124受領…1,2,終章のみ
(0124・【再読】深谷陽 スパイス・ビーム Kindle
0124・プレヴェール詩集 岩波文庫 図書館20240122受領
0125・ルシア・ベルリン 掃除婦のための手引書 booklab 20240106
(0127・深谷陽 踊る島の昼と夜 KindleUnlimited
0127・間寧 エルドアンが変えたトルコ 長期政権の力学 図書館20240122受領
(0128・深谷陽 運び屋ケン(上)(下) KindleUnlimited
(0128・ニャリウッド！2 映画大好きアラン君 …ma
0129・【再読】中島らも 今夜すべてのバーで 20240102
0130・近藤大介 「北京女性」24人の肖像 KindleUnlimited
(0101・永田礼路 お前の寝言がわからない KindleUnlimited
(0101・真船佳奈 赤ちゃん生まれた Kindle
(0101・真船佳奈 愛が強すぎる妻と塩対応の夫 Kindle
(0102・真船佳奈 都内・保活ものがたり Kindle
0102・河一樂 五代十国人物鑑 (歴史) KindleUnlimited
(0103・会社員でぶどり9 ma
0103・速水螺旋人 いまさらですがソ連邦 KindleUnlimited …「ラウリ・クースクを探して」参考文献
(0103・日常の西餅 6 Kindle
0103・椎名誠 あやしい探検隊北へ (あやしい探検隊第2弾) KindleUnlimited
(0103・スーパーの裏でヤニ吸うふたり 1 KindleUnlimited
0103・ハーニオール 文明史としてのトルコ革命 図書館20231223受領 …ざっと。
(0103-04・推しの子 1-13 Kindle 20240103-04
0104・【再読】村上春樹訳 バビロンに帰る ザ・スコット・フィッツジェラルドブック2 … 「ジェリービーン」「カットグラスの鉢」「バビロンに帰る」「結婚パーティー」「新緑」
0105・はあちゅう 特別な人生を、私にだけ下さい。
0105・植本一子 こころはひとりぼっち シーソーブックス 20231231
0105・小泉悠 ロシア点描 KindleUnlimited
0106・ドフトエフスキー 賭博者 KindleUnlimited
(0106_booklogなし オールタイムベスト5 …青葉市子:アダンの風、寺尾紗穂:青い夜のさよなら
0107・木地雅映子 氷の海のガレオン/オルタ 図書館20240106受領…「氷の海のガレオン」のみ読了
0107・穂村弘 蛸足ノート …ma
0108・【再読】小笠原弘幸（編） トルコ共和国 国民の創生と変容 図書館20231223受領
0109・岸田奈美 もうあかんわ日記 20231223 ブックオフ南二条
0109・三宅香帆 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい！」しかでてこない 自分の言葉でつくるオタク文章術 Kindle20240101 (＝推しがたり)
0110・市川沙央 ハンチバック Kindle 20240107
0110・奈倉有里 ことばの白地図をあるく 図書館20240106受領
0110・雨宮まみ 40歳がくる！ 読書室ポワロ …1227に80％読了。0111に残り読了。
0111・【再読】目黒考二 酒と家庭は読書の敵だ KindleUnlimited …「活字浪漫」改題
0112・なnD 10 シーソーブックス 20240108
0112・Jam いつも心に猫ちゃんを Kindle Unlimited
(0112・大島弓子 ロストハウス Kindle 20240111
0113・【再読】古川日出男 アラビアの夜の種族 1 20240106 booklab
0114・【再読】古川日出男 アラビアの夜の種族 2 20240102
(0114・スーパーの裏でヤニ吸うふたり 2-3 …ma
(0114・プ〜ねこ 9 …ma
0115・【再読】古川日出男 アラビアの夜の種族 3 20240110受領
0116・なnD9 nerdbooks 20240108発注0114受領
(0116・今日もカレーですか？ 1 …SpicySpot
0117・原田マハ 生きるぼくら 20240110受領
0118・【再読】村上春樹訳 ザ・スコットフィッツジェラルドブック 中公文庫
0119・【再読】松村栄子 セラヴィ 図書館20240117受領
(0120・舞妓さんちのまかないさん 25 …ma
0121・詠坂雄二 5A73 20240102 …アメトーク読書芸人
(0121・トマトスープ ダンピアの美味しい冒険 6…ma
(0121・アレクサンドル V.パチカロフ 長峰博之(翻訳・注釈) 概説 ゾロタヤ・オルダの首都,旧サライと新サライの歴史(翻訳・注釈) 小山工業高等専門学校研究紀要第56号(2023)
(0122・深谷陽 スパイシー・カフェ・ガール 20240113発注0121受領
(0123・刷ったもんだ 11 kindle 20240123
0124・近藤大介 ふしぎな中国 Kindle20240102
(0124・牧野 智和 日常に侵入する自己啓発 生き方・手帳術・片づけ 勁草書房 図書館20240124受領…1,2,終章のみ
(0124・【再読】深谷陽 スパイス・ビーム Kindle
0124・プレヴェール詩集 岩波文庫 図書館20240122受領
0125・ルシア・ベルリン 掃除婦のための手引書 booklab 20240106
(0127・深谷陽 踊る島の昼と夜 KindleUnlimited
0127・間寧 エルドアンが変えたトルコ 長期政権の力学 図書館20240122受領
(0128・深谷陽 運び屋ケン(上)(下) KindleUnlimited
(0128・ニャリウッド！2 映画大好きアラン君 …ma
0129・【再読】中島らも 今夜すべてのバーで 20240102
0130・近藤大介 「北京女性」24人の肖像 KindleUnlimited
 | 青土社 発売日 : 2019-02-22 |
フィッツジェラルド「夜はやさし」を読んだ直後だったので、気になって手に取る。村上春樹「ノルウェイの森」への「夜はやさし」の影響を著者なりに読み解いたところがなかなかに興味深かった。「夜はやさし」のニコルを二人に分けて、心を病んだニコルが直子、健康な時のニコルが緑だったのではないか、と。◆時代に取り残されていくディック・ダイヴァーとワタナベ・トオルの置かれた状況は酷似している。純粋で傷つきやすいことがまるで罪悪であるかのように扱われる時代。その中で生き延びるとはどういうことなのか。(p.67)◆また、「ジャズ・エイジ」の頃のアメリカの繁栄とそれゆえの傍若無人、思い上がりが、現代にも連綿とつづいているのでは、という示唆も語られ。個人的には、「ディックはなぜこのように下降線をたどることになってしまったのだろうか。それは彼の視点が常に過去を向いていたからだ。」(p.92)の一節がささってきた。未来より過去を見がちと自戒しつ。
 | ナンバーナイン 発売日 : 2022-09-26 |
おさななじみの理系男子と文系女子が何十年ぶりに引っ越し先で再会、しかし入居予定のアパートが爆発して、代替のプランが激安ルームシェアで、一緒に暮らすことになり…と。理系文系のくくり方があまりにもステレオタイプで雑では…とは思いつつも、いきなり男女で暮らすことになり、相手によく思われたい空回りとかが描かれて。最後は…と。いじわるそうな人が実は一番親切だったというオチもあり。
妻の写真が全面にプリントされたトランクスプレゼントしたり、もらいもののお菓子一気食いしたあとに、だって「開封後はお早めにお召し上がり下さい」って書いてあったから仕方なかったんだ！！と叫んだり。夫に、夫とであえたことの感謝の言葉を伝えたら、反応が「ビフォーがほぼ野犬だと思った」（裸で服を着ない。肉しか食わない。片づけという概念がない。夜泣きする。）だったりとワイルド。夫さん…会ってみたすぎる、クールさと包容力。そして夫氏の「予知夢っていってもその時は「変な夢だな」位にしか思ってなくて、現実でそのシーンに出くわしてはじめて「デジャヴだ！」って気付くの。」は、自分も子供のころよく出くわしてて(オトナになってからはたまに)、同じ症例の人がこんなところに！！！の思いを新たに。また、コロナ禍での結婚式延期事情となんとかすべりこみの開催、豊富な準備期間などよかったこともありつつも、大変さがつたわってきた。
私の羊水テキーラ入ってたか？てぐらいの赤ん坊の顔の腫れからな、日毎に変わっていく顔、退院時でも母親の基盤ができてない、という不安。いつまでも赤ん坊のムービー見てられるあるあるから、寝かしつけのエクササイズで赤ん坊は寝るけど親はみなぎるアンビバレント、児童館のイベント情報たどりつくのハードル高いこと。などなど。
著者の住んでる区でそうだっただけで、違うケースも多々あるんだろうけど。「保育園落ちた日本死ね!!!」が2016年のことだったのに、それから5,6年経ってもあまり保活問題って改善されてないんだなあという印象。ま、どっか入れるでしょ、って楽観から、見学して見学して見学しまくって、どのような質問をすればよいか、何をポイントにしたらいいか、各自ロールプレイングしてみてね、という真っ当な話で。
五代十国南漢ファンとしては見逃せない一冊。ただ、唐末五代でマイナーな家臣含めて80％、十国は10％でほぼ君主というアンバランスな構成。史料の残存状況や国力とかもあるのだろうけど、もすこし十国の人物伝読みたかったなあ…。ちなみに南漢は君主のみ。最初はひとりひとり丁寧に読んでたけど、途中から唐末五代のマイナーな人は飛ばしてしまった…。けど類書がない点、人物像をおおづかみにできる点はよかった。馮道、一冊読んでみたくなった。
 | 三才ブックス 発売日 : 2018-10-04 |
宮内悠介「ラウリ・クースクを探して」の参考文献にあがってて手に取る。肋骨レコードやピオネールはこの辺から来たのかななどなど思いつつ読み進む。指導者像、共産党の仕組み、人々の暮らしなどが丁寧に語られ。上に政策あれば下に対策ありを地で行ってる感。◆本屋のショーウィンドウを頻繁にチェックして、誰の本がどの位置に置かれるかをチェックして失脚の前兆を予想。◆党員は戦争でも仕事でも人民の先頭に立つことを自他ともに自覚。◆すべての人民が平等なはずのソ連だが実際はかなりの厳格な階級社会という実像。◆食うや食わずの生活を共用しておいてソ連を好きになれというのも虫のいい話に聞こえるが、極限状態の人間のほうが洗脳しやすいのも確か。◆トム・クランシーの「レッド・オクトーバーを追え」で描かれる冷戦。◆現在のロシアでは、ソ連を超大国の地位に押し上げた功績が見直されてスターリン再評価が進められていること。◆大粛清の犠牲者は公式文書に記載されてるだけで70万人。◆ドイツに降伏した兵士の家族は裏切り者として逮捕、スターリンの息子は捕虜となっているがこの時スターリンは自分の妻を収容所送り◆フルシチョフの時代になり、政敵は解任され追放されるが、殺されはしなくなった◆ソ連の主要輸出品はあくまでも天然資源、コンピュータを輸出したところでわざわざ買うモノ好きは速水螺旋人さんくらいです、という共著者からのイジり◆西側に存在しない規格、単2乾電池を細長くしたような奇妙なタイプ。これがあれば我が家のソ連製ガイガーカウンターを動かせるのですが、という慨嘆に、螺旋人のこと言えないじゃないですか、という思い◆螺旋人さんがふだん愛用しているソ連製腕時計ラケータ◆といったあたりの論点、エピソードが目にとまりました。
 | スクウェア・エニックス 発売日 : 2022-08-25 |
なんか、喫煙コーナーで延々とどうでもいいことダベる感じの漫画かと思ってたけど、スーパーの若い子とおじさんが仲良くなる話だった。ダルいからみをしないところはいいけど、髪型変えただけでそんなに見分けつかなくなるものだろうか？？？他人ならともかく、推しを…と思いつつ。なんともいえない距離感がもどかしくもほほえましく。
デッサンの先生でてこなかったの残念。友達の飼い犬の名前が「ブリテリ」で、動物病院で名前呼ばれたときに、本当にブリッとして照りっとした犬がいるもんだから飼い主さんたちが一斉に笑いをこらえてて。クリスマス紳士の応用編のハロウィン紳士。シュトーレンの作り方の工程に寸胴いっぱいの溶かしバターに放り込まれるのを見て、解散したシュトーレン連合。銀行員が必要になって5個でてきたけど全部ちがった。あたりのエピソードがおかしくて好きでした。
 | KADOKAWA 発売日 : 2015-04-25 |
およそ40年前。30代後半の椎名さんと仲間たち。全方向にパワフルだなあ、という感想。ときに凶暴化し、ときにドキュメンタリーだと連呼し、ときに南の島に遠く思いを馳せ、スキューバで溺れかけ、船が欠航して欠航して3日も延泊を余儀なくされたり、台風の中必死でテントをおさえたり、ガソリン吹く仲間がいたり、焚き火を囲んでわっせわっせと踊り狂ったり。パラオの日本食堂をはじめとした日本ぶりはまだ残っているのだろうか。そして「日本読書公社」をよみかえしたくなった。
 | みすず書房 発売日 : 2020-03-04 |
長い間トルコでは、ケマルがあらゆる分野に通じ、すべてが独創で、全生涯を通じて秀でて先頭に立ち、と神格化されてきたが、最近の研究では、ケマルにあたえられたのは特異な機会--第一次世界大戦とオスマン帝国の弱体化---であり、その機会を十分に活かし切ることができた、またその時その時の状況で既存の思想や運動を組み合わせて活かし切ることができた「機会主義者」であった、というケマル像が出てきている、と。ただ、それはいささかもケマルの業績を過小評価するものではないとも。ケマリズムというものが融通無礙すぎて、さまざまな業界が自分たちを利するために、自分たちに都合の良いケマルの格言をつくりあげ、流布させてきたのも、ケマル像があまりにも巨大になってきた一因。こういった研究が進んできた背景は、世俗化をこころざしたケマルに対して、アンチ・ケマリストの公正発展党政権のもとでそれまでに経験したことがないほどの高い経済成長と急速な国土開発、国際政治で誰もが一目置く存在になったことが大きい。ケマリズムだけが、イスラムの排除だけが近代化への道ではないとトルコの人びとが実感したのである、と。ざっと読んだだけだけど、まとめるとそういうことなのかな。
 | 産業編集センター 発売日 : 2023-12-13 |
次巻完結予定と帯に。どう話を落とすのかなあ。そしてジャックさんが社長に就任！でぶどりさんも周りの鳥も、当たり前のように、働く上での固定観念や自分への言い訳を軽やかにときほぐしてくれるなあとこの巻からも感じた。
 | 幻冬舎 発売日 : 2022-02-10 |
だいぶ前に、裏アカめぐる小説書くために裏アカ作って、裏アカに取材、みたいの見かけたなあと思いながら手に取る。どう寂しさを埋め、承認欲求を満たすかをめぐる裕福な30代主婦、バリバリに稼ぐ40代OL、20代男子たち5人の連作短編集。◆身近な人に言えないことを裏アカで流していいねを得られた時の高揚感、人間の多面性を感じつつ誰かにとっての酷い男に救われることだってあるという感覚、自分のような男と簡単に寝て自尊心を低くしてる女の子を下に見つつ好物でそれで寂しさを埋めていることの手に負えなさあたりが印象に◆解説の冒頭にあげられていたパムクの文学講義、読んでみたくなる。小説芸術は人を裁くことではなく理解することで最大の成果をあげる、といった趣旨の。
 | 中央公論社 発売日 : 1996-04-01 |
「ある作家の夕刻」を読んで、キラキラしてたころのフィッツジェラルドを読みたくて再読。南部特有の思想と成り行きが描かれる恋模様、「ジェリービーン」。怨念のこもったカットグラスの鉢が引き起こした顛末。彼女が離れていったのは自分に金がないからだと思ってたのに、金を手に入れてなお彼女を手に入れられない男の物語、「結婚パーティ」。狂乱の酒浸り生活をあらためて、事業を立て直し、娘を引き取りに来た男が、あと少しのところで、その狂乱時代のしっぺがえしの形で横槍をくらい、その機会をふいにしてしまう、「バビロンに帰る」。あり得ないほどハンサムだけど、あり得ないほどの悪評を一ダース以上も背負った男に、一度は心惹かれた女性の幸福と失望、新緑。村上春樹のノートと宮脇俊文「ジャズ・エイジは終わらない」を読んだおかげで、よりよく読めた感。そう、キラキラしてただけではなく、苦みもたたえて。中でも、個人的には「バビロンに帰る」の宴のあと感、あと少しで手に入るはずだったものがすり抜けて行く感、悲しみと少しの希望が印象に。◆ディックという人間の弱さが、彼の愛する娘の幸福を脅かしていたのだ。でも彼は相手の男に対して心から同情した。人生に対する不適合性を、様々な品行に転換させる必要があったのだと理解さえした。（新緑）◆人生とは天気と同じだ。すべてを捨て鉢にさせてしまう熱気に耐えながら、疲弊した額に置かれる女の手のように柔らかく心地よい涼しさを待つのだ。それこそが南部の最大の英知である（ジェリービーン）
| 発売日 : |
こころはひとりぼっち、だけど、友人たちにめぐまれ労わられ救われ、と感じた。一読後。友人たちに囲まれていても孤独を感じたり、どうしても話が別れた彼に別れた彼に行きがちではあったとしても。娘からの「いや、いなくなってないから」て言葉に、著者と同様にハッとした。◆必要とされていてもされていなくても、自分の価値とはなんの関係もないはずなのに。◆私が本当に一人でも平気、となったときに初めて、また彼と向き合うことができるのかもしれないp.48◆あと、いかりんが「35歳からの反抗期入門」の碇雪恵さんだったとは。
 | 集英社 発売日 : 2023-11-17 |
長いことうすうす気になってた作品、紅白でYOASOBIの「アイドル」で紹介されてるのが最終的決め手で一気に13巻まで買って読んでしまう◆「推しの子」に込められたダブル・ミーニング。ファンにとっての「推し」の「子」だけかと思ったら、まさか物理的な意味も込められていたとは。◆最初の巻から、これからメインキャラになるんだろうなってキャラがバンバン死んでいってどうなるのかと思いきや、輪廻転生が誠になるとは◆美しく生まれついた兄妹が、芸能界に打って出て、妹は母の遺志をつぐようにまっすぐにアイドルの道へ。兄は自分が絶対に断罪しようと心に決めた人物を探し求めてそのために仕事を受けていって。そこで語られるアイドル、俳優、タレント、漫画家、脚本家、映画監督、芸能事務所、テレビ製作者などの境遇、ノウハウ、希望と絶望、本音、仕組みが語られているあたりが興味深く。◆個人的には、栄光と挫折を経験して、実力はあるのにまわりに合わせたり全体を調整するようになりつつ、求められれば自分を見て！と輝かせる演技もできる、口が悪いけど素直なところもある有馬かな推しです。◆以下備忘録。◆◆嘘はとびきりの愛なんだよ？◆コンテンツとファンは既に相互監視状態にある そして芸能は私達そのものがコンテンツ◆魅力的な素材が魅力的な嘘をつく事で 現実には存在しない様なカリスマを演出する◆
 | PHP研究所 発売日 : 2022-04-19 |
主に2010年前後のロシア滞在と2019年までのロシアとの往来で著者が見聞きした範囲でのロシア人の考え、文化、思想、嗜好などが豊富なエピソードとして語られ。それがひいては、ロシア人たちが選んだプーチンの思想、外交戦略を読み解く鍵となり、と。ロシア人はとにかく人を信用しない、一番ロシア人を信用しないが、一度「身内」と認識するか、保護しなければならない者、と認識するととことんまで親切。それはこちらもそうしなければならないという裏返しでもあり。「容易に統治できない我々意識」と「そうであるが故に強い指導者を戴かねばならない」という意識は表裏一体で、プーチン人気にもつながっているのでは、と。独自の核戦力を持って非同盟を貫ける「大国」だけがプーチン的世界観では本当の主権国家で、そこに入るのはアメリカ、ロシア、中国、インド。だからそこに入らない日本がいくら領土交渉などしても、最後はアメリカの言うこと聞かなきゃならないんでしょ？と思われてると。そんなプーチンは西側を中心としたポスト冷戦秩序を終わらせ、ロシアを含めた非西側諸国がより大きな発言権を持つ「ポスト・ポスト冷戦秩序」を作り出そうとしてるのでは。ウクライナ侵攻もその一環である、と。そのあたりの議論が個人的には大きな収穫。著者としては、プーチンはアイデンティティの持つ力を過小評価していて、そううまくはいかない、各国がロシアのいうことをなんでも聞くわけではないのでは、という見通し。◆椎名誠「ロシアにおけるニタリノフの便座について」、ニコライ・リリン「シベリアの掟」あたりは手に取りたくなった。
 | 光文社 発売日 : 2019-12-06 |
森巣博「越境者たち」、ロバート・ハリス「JJ 横浜ダイアリーズ」に取り上げられてて興味を持ち。なんとなく派手な賭博シーンがバンバンでてくるのかと思いきや最初の8章くらいはそんなことなくて、ずっと主人公のアレクセイに「なんなんだこいつ」と思い続け。みなに遺産をあてにされていた病床のおばあさんが、ぴんぴんした姿で遺産をあてにしていた面々の前に登場して大暴れ。ついでにルーレット場でも大暴れしてほぼ全財産をスリ散らかしたところで、話が大きく動き。熱に浮かされたようなルーレット賭博の一幕が描かれ。その後、恋い焦がれるポリーナを助けるために（当初の目的は）、アレクセイがルーレット勝負に挑んで、ジェットコースターのような波を描きながら日本円にして6000万円を稼ぎ出し。そこからポリーナに拒まれ、なぜかブランシュ夫人についてパリに行ってしまい、稼いだものをスリ散らかし、ギャンブル中毒になって、ついには投獄経験も味わいつつ、最後の友人アストリーとの対話。どうせいくら貸してもすぐに博打ですっちまうんだろうと見捨てられ、ポリーナに実はまだ愛されたと知り、それでも賭博を止められないアレクセイを描きつつfin。おばあさんとアレクセイがルーレットで荒れ狂ってるところの描写は最高だった。これを見て自分もその熱狂の渦に身を沈めたいか、敬して避けたいかは読み手次第。◆ジェントルマンシップにくらべて、お金なんて、ほとんど心を煩わせる価値のない低劣なものなのだから。◆わたしがはたいた金は自分の金で、あんたたちのじゃない！◆これからはもう、若い人たちの軽はずみを責めたりできないよ、それに、あの、あわれな将軍を責めることだって、いまのわたしには罪深くてできやしない◆友情の大部分は辱めをよりどころにしていますから。◆あなたは、賭けに勝つこと以外、どんな目的も放棄されたばかりか、ご自分の思い出まで放棄された◆
 | 中央公論新社 発売日 : 2023-11-20 |
読み終えて、穂村さん妻はエッセイのネタの宝庫だな、という思い。もちろん"育ってきた環境が違うから"お互いに考え方や感覚の違いがあるわけで、それをすくい取って面白くしてくれたのは穂村さんの筆なんだろうと思う。年下の男の子と付き合い始めたら、彼が話しててわからないところがあるからと死語辞典を買った話。歌人の集まりで海に行くたびに「海が似合わない」「水質調査に来た人みたい」と言われてしまうこと。ネパールにお詫びの手紙書いておいて、と無茶振りされた記憶。休んでも疲れが取れないのを、充電しても復活しないのはバッテリーがダメになってますね、と言われてぼくのバッテリーはどこに…と思った話、あたりが特におかしかったです。猫が好きで、大家さんに頼んでも飼えなくて、猫好きの友人宅に遊びに行ったり、猫づれで遊びに来てくれたりで、最後は、猫の「ひるね」がやってくるところまででぐるっと一周。
 | ジャイブ 発売日 : 2006-11-01 |
二階堂奥歯「八本脚の蝶」で見かけて読みたくなり。うちに図書室をつくるぐらい本好きな両親に育てられた小学生の杉子。あまりにもクラスメイトたちが子供に思えてなじめず、怒りを感じながら送る学校生活。けど、理解してくれる母も、音楽の先生もいて…と。大人になってから読むと、君のいうことはわかるし正しいよと思うけれども、同級生にいたら理解できたかどうはかなり自信がない。ああ、なんか、もっと若い頃に、せめて学生のころに読みたかったなという思い。◆俺は俺のおくさんにとっての旦那さんで、おまえらにとってのパパで、親父で、父さんな訳だ。俺はそれで生きているんだよ。◆「世界には」「あなたたちにはわからないことが、たくさんあるの。」「いいのよ、わかんなきゃ、そのほうがしあわせだわ。」「もう、かまわないでくれる？」
 | 九州大学出版会 発売日 : 2019-03-19 |
(2024/01/08読了分)小笠原弘幸「ケマル・アタテュルク」（中公新書）の参考文献にあげられていて手に取りたくなった一書。「アタテュルクが、その権威主義的体制のもと、オスマン帝国からの断絶を意図して精力的に取り組んだ「トルコ国民の創成」。であれば、その「創成」のプロセスを逆向きに解きほぐしてゆくことは、いまのトルコを理解するヒントになりえよう。これが、本書の問題意識の底流にある。」(p.9)という考えで編まれた論集。その論点も、文字改革、トルコ史テーゼ、国家的ページェント、トルコ共和国の領域に対する考え、「青きアナトリア主義」のような西洋文明の発祥をアナトリアと規定する考え、国民の世俗化から国家管理のもとの宗教教育へ、などなど多岐に渡る。なんとか近代的な国民へと生まれ変わらせようという国家の力の入った意識が感じられる。ただ、上からの改革は、国民に浸透しなかったものもあるし、浸透に時間がかかったものもあった。文字改革も、公務員ですら旧字を使い続けているという報告が1940年代にもあったり、民主党政権時代に破棄されそうな危機もあったが、1960年代には不可逆的なものとなった、と。トルコではアタテュルクその人への批判がタブーであったため、代わりにイノニュに批判が集中してきた（メティン・ヘペル）という論点も興味深く、そうであれば、神話的なアタテュルク像が改訂されれば、あらたなイノニュ像というのも必然的に浮かび上がってくるのでは、と。(2019/05/26読了分)教科書的には、独創的で力強く素晴らしい側面しか伝えられないケマル・アタテュルクに対して、1980年代以来の研究潮流である「権威主義的な政治体制・政治文化」への批判と「オスマン帝国からの政治的・社会的連続性」への着目という視点があること。多民族国家のオスマン帝国から、トルコ民族主義を重視したトルコ共和国への転換を急激に図るため、歴史、言語、音楽、など、実証よりも民族感情重視で、○○民族はトルコ民族だった、○○音楽はトルコの音楽が発祥だった、などの強引な結びつけが行われたこと。急激な文字改革も、すんなり受け入れられたわけではなく、アラビア文字を使い続ける人たちが、官僚の中にすらしぶとく残っていたことなどを知る。また、アタテュルクのアンカラでの儀式を追った一編、政府に抗議する手段としてのハンストを取り扱った一編、アナトリアの多様・多層の歴史をすべてトルコ共和国に帰そうと言う思想と、盗掘への対応をあつかった一編、などは興味深かった。トルコ軍が声望を落としたという、エルゲネコン事件、インターネット・メモ事件、バルヨズと言われる一連の政府転覆計画、および、ギュレン運動の現在の状況については、もっと知りたいと思った。通読して、多民族国家から、トルコ民族主義に転換し、国民を急速にまとめ上げていく、ということは大きな力が必要で、良い面もあったが、また歪みも出てくる、という側面が感じられた。
 | ライツ社 発売日 : 2021-05-31 |
実家の生活すべてをまわしてた母の入院。東京-神戸の激しい往復。タイムスリップする祖母。突然の祖父の死。手続き関係はままならぬことばかり。これでもかこれでもかと起こり続けるアクシデントを、意地でも笑える形にして送り届けるんだから！という意気込みが感じられ、その描き方がうますぎて、読んで笑わずにはいられない。入院したらふりかけマストなのは、味濃いおかず好きご飯星人にはありがたいご宣託。ぜんぜんフォローしてない神戸市北区disには思わず笑ってしまった(イオンモール神戸北 いつも3000万人くらいいる、というキャプションにも)。しゃぶ葉で、自分で生地を流し込んで焼くタイプのワッフルメーカーの前でかしこくジッと待っているヤンキーを眺めている岸田さんの図も、想像するだけでなごむ。◆心のなかにいつも、クールポコを住ませよう。たいていのことは「な〜に〜？やっちまったなあ！」で済む。やっちまえ。p.112◆毎日、小さく死んできた。でも、死のあとには生が始まる。命が永遠ではないのと同じで、もうあかん時間も永遠には続かない。p.316
 | ディスカヴァー・トゥエンティワン 発売日 : 2023-06-23 |
この本読んで一読「やばい！」と思った。それだけじゃ読んだ意味がないので、一番大きなポイント「好きの細分化」は取り入れるようになった。snsでちょっとつぶやく時も、美味しかった→どんな味だった？どこが好き？今までのと比べて？。考えさせられた→何を考えた？そのことにより自分にどんな変化や気づきが？。面白かった→どのへんが面白かった？今まで見たものと共通？まったく新しい？。などなど細分化するクセをつけるだけでも、自分の書くものが変わっていく感が味わえた。あとは、どこまで工夫する、推敲するかだよなあ、と思ったところまで。自分がよく使ってしまいがちな「自分クリシェ」にも思いを馳せつつ。◆推しを語る時いちばん大切なのは「自分だけの感情」◆人間はなにもかんがえずにいたら世の中に既にある「ありきたりな言葉」を使ってしまう生き物◆三浦しをん「好きになってしまいました。」の「コロナ禍でのコンサートの風景」が例題にあがってたのは、三浦しをんファンとしては、あの場面か！というのもコミでうれしかった。◆「他人の言葉と距離をとろう、自分の言葉をつくろう」、これをいいたくてこの本書いた、とのこと。
 | 大和書房 発売日 : 2023-12-02 |
まさか令和の世に雨宮まみの新刊が読めるだなんて。没後7年、web連載の原稿をまとめて、関係者の寄稿を募ったもの。◆トルコブルーのドレスで年下の女の子と夜の東京を走ってオールナイトの「シン・ゴジラ」観に行ったシーンと、飲んで飲んで大荒れしたい雨宮さんに、付き合いつつきちんと支えてる友人たちのシーンがあざやかに印象に残る。◆「不幸な頃のほうが面白かった」。それは、この世でいちばん下品な言葉だと思っている。その下品な言葉と戦って勝つために、生きたいと思うことさえある。（雨宮まみ）◆私は私のままでどんな40歳になれるのだろうか。という問いから始められ、今度こそ私が私のまま生き延びて…という血の出るような赤い文字で書かれた一節で終わりをつげる本。本当にその実感はあったのだろうに、何故…と◆寄稿からは、穂村弘さんが触れてた美しい２行「東京タワーのオレンジ色に私は祈る。／何を祈っているのかはわからない。」◆吉田豪さんの書いてた、身を削って書くことのしんどさ◆あたりが、特に印象に。
 | KADOKAWA 発売日 : 2015-03-25 |
「活字浪漫」からの文庫化改題。「酒と読書は家庭の敵だ」とあるが、本文に則せば、もっと敵なのは「睡魔と麻雀と競馬は読書の敵だ」になるかと思う。さすがにそれでは語呂が悪かったか。◆「本は読まなくても買わなくてもいい。見るのがいちばんである。」あるいは「もともと本などなくてもいいのだ。邪魔で憎々しい敵の存在が、おそらく読書をかけがえのない、愛しいものにしているのである！」なんて、本に対する愛憎半ばする思いに触れると本を読むことを愛する身としては深くうなずいてしまうのである。◆文芸時評で松村栄子「セラヴィ」を見かけ久々に読みたくなる。盛田隆二「サウダージ」も読んでみたくなる。
 | 文藝春秋 発売日 : 2023-06-22 |
紙の本へのこだわりが紙の本を読むだけで身体が潰れていくように感じる人への傲慢さだなんて、考えたこともなかった、考えが及ばなかった。そういった点では、新たな視点を教えてもらった感。健常者への毒を吐きつつ、淡々と生を/性をまっとうする様が印象に残る。捨ててしまいたくもあり、続けたくもあり、と。◆「本当の息苦しさも知らない癖に」◆蓮のまわりの泥みたいな、ぐちゃぐちゃでびちゃびちゃの糸を引く沼から生まれる言葉ども。だけど泥がなければ蓮は生きられない。
 | 白泉社 発売日 : 2001-06-01 |
「鬱の本」つながりで。表題作は、ルー大柴みたくいうと、ハウスをロストしたけど、ワールドをゲットしたということなのかな。子供の頃、隣家の新聞記者の忙しくていつも片付かない、けれど扉の開いた部屋であそぶことに心からのやすらぎを覚えていた主人公が、長じて、片付かない部屋でしかやすらげなくなってしまい、行方のわからなくなった彼を探すうちにホームレスになったと知り。「ああ彼はついに全世界を部屋にしてそしてそのドアを開け放ったのだ」と。他に、世界がもうすぐ終わると知らされた高校生グラフィティ、唐突な田舎暮らしを始めた夫婦の顛末、18歳にして急速に老人化していく女子高校生、文通相手が家出して転がり込んできてはじまるドタバタ、などなど。
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個人的に「なnD」6から継続的に買っている「なnD」。オーナーの神さんが載ってるからかシーソーブックスでばったり出くわし購入。神さんの、シーソーブックス＝「居場所としての本屋という感じが強いかなって思います」を読んで、ぶらりと訪れたり、本を買ったり、さまざまなイベントに足を運んだりして、知り合った人も何人もいて、人にもおすすめしたりしてる身には、深くうなずき。そして神さんのローカル・クラブカルチャー・ヒストリー、もし刊行されたらぜったい買って読みたい思い。◆他には、三品輝起さんの「さしたる目的もなく、精神の充足をもとめて街を歩きまわるひとはずいぶん減った気がする」という一節。宮田文久さんの「我々のように仕事して３０分とか１時間とか、ほぼ一期一会で話を聞き、帰る人間ってなんだ？」という思い。折田侑駿さんの「知り合いは増えるいっぽうだが、「友人」と呼べる存在とはどんどん疎遠になっていく。」あたりが気になったところ。◆酒井隆史「暴力の哲学」、ナンシー・フレイザー「資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのか」。二人称をつかった掌編小説集「palmstories あなた」浜田敬子「誰が本を生かすのか」てWeb連載。以前読んだ平出隆「葉書でドナルド・エヴァンスを」など読みたい本も目白押し。
 | 創元社 発売日 : 2023-06-14 |
「夕暮れに夜明けの歌を」がすごくよかったので、この本も。「異」文化ではなく、さまざまな文化を知ること。その中から語学を選んでみること。さらにさらに翻訳をしてみることまで、ゲームのクエスト仕立てで、コマンドが提示されつつ、みちびかれていく。「自」文化を囲う前提の「異」文化ではなくて、というところと、翻訳とは言語を移し替えるのではなく、読書体験を翻訳することだ！といったあたりが、特に印象に残りました。ドリトル先生が、Doctor Dolittle、ドゥーリトル、あまりなにもやってくれない先生、というのは知らなかったなあ
 | スクウェア・エニックス 発売日 : 2023-07-25 |
2-3巻読了。佐々木さんは相変わらず田山さんと山田さんの関係に気づかず。それでいて、最後は昔の上司に「大切な関係」と言えるぐらいには、対話を重ねてて。途中で既婚者なの？？疑惑からまわりの同僚にはとっくに気付かれてたシーン、店長がロマンスを摂取してツヤツヤしてるシーン、店長や佐々木の前日譚なども描かれててよかった。
 | 講談社 発売日 : 2023-12-21 |
猫みたいな母と犬みたいな父に育てられてる男の子の話がよかったかな。
 | 竹書房 発売日 : 2020-10-30 |
家のカレーしか食べたことのなかった主人公が、大学進学を機に東京へ。寮の同期や先輩に導かれるように東京カレー屋めぐり。神田の名店からCoCo壱の超絶パターン数の組み合わせまで。あるいは先輩の部屋の図書館並みのレトルトカレーからいただいたりと。登場人物が女子だけでイヤな人の出てこないゆるりとした雰囲気がいいなあ。
 | KADOKAWA 発売日 : 2006-07-22 |
1-3巻読了。おそらく20年以上ぶりの再読。現代のアラビアン・ナイトみたいな惹句にひかれて手にとったのだったか。18世紀末ナポレオン軍が迫るカイロ、迎え撃つマムルークのベイたち、そのうちの一家臣アイユーブが、迎撃のためという名目で読むものに破滅をもたらすという「厄災の書」を語り部ズームルッドから話を聞きつつつくりあげていくパート。語り部ズームルッドの語るストーリーのパートの2部構成が、交互に、時に作用しあいつつ進んでいく。語られるのは、親にかえりみられなかったり、親に捨てられたり、生まれ落ちた直後に親が死に、親の愛を知らぬ三人の男たちアーダム、ファラー、サフィヤーンの物語。サフィヤーンの物語あたりまでは奥行きも味わいも感じられたが、三者が出会って以降の魔術的修辞、魔術大戦的な記述は、正直、SF・ファンタジー苦手勢にはくるしく、3巻の前半は放りだしてしまおうかと思ったほど。しかし、終幕に向かっては畳み掛けるような大団円。ひとつ腑に落ちないのはあれだけの大掛かりな仕掛けをほどこしておいて「厄災の書」の使い方がそれだけなの？といったところ。語り語られ記し記され、それが連環していく様が描きたかったのかなとは思いつつ。◆人間には普遍的に「人間性」というものがあって、それを描写する…描写できると思って試みるのは、ただの錯誤であるかもしれないのだ。(��.p.13)◆罪悪感を無に等しいものとなすために、精神は暗黒に堕ちるのです。(��.p.106)◆それは魔術的な媒体であり、それは歴史に侵触される存在にあらず----いっそ歴史を侵蝕する。そのような存在が、歳月と無縁なのは当然ではないのか？(��.p.121)◆一冊の書物にとって、読者とはつねに唯一の人間を指すのです。(��.p.268)
| 発売日 : |
10号が出た時点で9号を入手してなくて、あわてて探した一冊。どこで見逃しちゃったんだろうなあ、と。この号で10号の粉川哲夫さんの話がなんのことかわかり、苅部太郎さんの作品もふれられていたりでいくつかの点がつながった。◆この号では、稀代のヴァガボンド、テンギョウ・クラさんの消息を知れたのが個人的に一番の収穫。西成でナミビアのバオバブに思いを馳せつつ、そこから出て今頃はマダガスカルに滞在しているのだろうか。また、柴原聡子さんの「彼らがその研ぎ澄まされた感性により、世の中の微細な変化に気づき、未来の像をいち早くキャッチすることだ。そして美しい形に昇華する。作品は長く残るから、まだ見ぬ人々へ届けることもできる。これほど合理的なメディアってあるだろうか。だからアートが好きなのだ。」という宣言が高らかに心に飛び込んできた。あとは、◆本の中にはあらゆる可能性がある。本によってあなたは自分の外に出て、自分を見失い、渇きで死に、かつ十全に生きる。本とはすべてだ。（アリ・スミス）◆グラフィティには保護すべきものと保護すべきでないもの、芸術的なものと非芸術的なものなどの区別自体が存在しない。保護された時点でグラフィティとしての「価値」は死んでしまうのだ（田中元樹）◆藤本和子「イリノイ遠景近景」あとがき…「イリノイ遠景近景」で伝えたかったのは、私が動きと時間とを住処にしているようす、人々との出会いを住処にしているようすでした◆といったあたりに心ひかれました。
 | 中央公論社 発売日 : 1991-04-01 |
ゼルダのヴァイタリティと悲しみ。最後のほうは、村上春樹「国境の南、太陽の西」で主人公が傷つけた最初の彼女の描写を思い出した。若くして両親にふりまわされ、ようやくその引力圏を抜け出したと思ったら、フィッツジェラルド再評価の波に翻弄されたフィッツジェラルド夫妻の一人娘スコッティのエピソードが哀しくせまってくる。傑作と言われるリッチボーイについては、今いちしっくりこなかった。当時の考え方なのかもしれないけれど。あまりにも自分のスタイルにこだわりすぎて、機会をのがしつづけているように思えて。そこから出られないのが哀しみなのかもしれないけれど。◆「冬の夢」にはフィッツジェラルドの小説を構成する主要なファクターが実に無駄のない素直なかたちで凝縮されている。甘く哀しく苦く、救いがない。p.101
 | 徳間書店 発売日 : 2015-09-04 |
「鬱の本」でとりあげていた人がいて気になり。くせのない成長譚に思えた。引きこもりの青年が、母の失踪をきっかけに、久しく会ってない父方の祖母を頼るが、祖母は認知症になっていて、そこには義理の孫が住み着いていた、という初期設定。そこからは、食堂の志乃さんをはじめとしたまわりのカッコいい大人たちの助けを借りつつ、祖母のやっていた自然農法の稲作にまで手をつけ、清掃の職業で認められ、田舎の人々に受け入れられ、祖母と向き合い、自然にふれて成長していく姿が描かれ。さまざまなしがらみで苦手になっていた梅干しを克服したシーンにはグッときました。◆やっぱり、お米は特別だね。生きてる証しっていうか。自然と、命と、自分たちと。みんな引っくるめて、生きるぼくら。そんな気分になるんだ。p.269◆ばあちゃんいわく、自然のまんま、そのまんま、がんばらなくても、みんな一緒に生きてるのよ。私たち、繋がり合って生きているのよ、と。p.273-4
 | 福武書店 発売日 : 1992-10-01 |
目黒考二「酒と家庭は読書の敵だ」で、単身者の孤独をたっぷりと描いていてよいと紹介されていたのを機に再読。会員制のバー「セラヴィ」に集う上流青年たちと帯にあるが、最初は主人公の卓也のひとりよがりでうわすべりなところに、なんなんだこいつ感をいだきつつ読んでいたが、彼が追っていた美里の「ひととは暮らせない」を彼なりにのみこんで、彼女に人生を賭けさせるのではなく、自分が人生を賭けてみようと、ゲイ雑誌にあった、夜の夫婦生活を省いた結婚相手募集に飛び込んで、募集主のみさとと出会ったあたりからは引き込まれて。ただ、最後は、飛び出そうとしていた枠にもどっておさまるような結末の付け方だったのかなあ、と。長年会っていなかった実母からの、十年、二十年でも待ってみたら？というアドバイスを、巣作りの季節ってありますから、と断ってまでも。◆そして結局のところ、一番紳士らしく見える者がすなわち一番の紳士だ。p.6◆銀のスプーンの苦さはくわえた者でなければわからない。p.10◆「ずいぶん本好きだったんですね、やっぱり（略）」「時間の無駄なだけだよ。読まずに済めばそれに越したことはない」p.154◆「人生なんて要するに詭弁だ、然り。人生とは何かなんて考えちゃ駄目だよ。これさ。ここにあるものが人生なんだ。」p.200
 | 小学館 発売日 : 2024-01-12 |
なんといっても今回のメインは、健太が自分の料理を他の人に食べてもらうところ。まずは気まずく別れた野球部の仲間に、次に親戚一同に、そして最後は大切に思うすみれとキヨに。読んでるこちらにも美味しさや嬉しさが伝わってくるかのような。
 | 光文社 発売日 : 2022-07-20 |
「アメトーーク！」の「本屋で読書芸人」で熱く紹介されてたのがきっかけで手に取る。遺体に、常用外の漢字、文字コードでいうと5A73の漢字をつけた自殺者たちが連続で見つかるところから始まる事件。捜査するのは、捜査能力は全く当てにされておらず、「実態が曖昧で犯罪性の立証が難しい案件、警察が扱うには観念的すぎる案件」担当、別室の山本と早川。この二人がまたとぼけてるというか、どこか浮世離れしてるというか。理屈こねるのが我々の仕事ですからーを地でいっていて、その道行きは興味を惹かれ。特に、大学で漢字を研究する根古谷との対話のあたりは。ただそれらも含めて、普段は、わからないことは知りたい、わからないことがわかることはいいことだと思う身には冷水を浴びせかけられるような読書体験。読後にまず思い出したのは、ギリシャ神話のミダス王かな。触るもの皆黄金に変えてしまうという。
考古学的にも貨幣学的にも、新サライ、旧サライがどこにあったのかというのは、定説がありつつも、それ以外の説も出され、一致を見せてはいない、とされる。その時期の遺跡がなかった、その時期に貨幣が発行されていなかった、というのが論拠になっている説は、発掘が進むと覆る可能性があって難しいと外野からは感じた（「ないこと」の証明は何にせよ悪魔の証明）。「サライの最盛期においても、ここはハンの定住地ではなかったことには注意する必要がある。ゾロタヤ・オルダの歴史がはじまって以来、サライ（交易と手工業の中心）とオルダOrda、すなわち君主の遊牧の本営は並行して存在していた。」(p.57)というのは、経済、工業、文化の中心と政治の中心が分離して、並存してたということなのだろう。今でいうとオーストラリア、ブラジル、南アフリカのような？また、ムスリムもキリスト教徒も居住していて（あるいは連れてこられて）生活を営んでいた、その一端がうかがえるところは興味深かった。
 | イースト・プレス 発売日 : 2024-01-18 |
ダンピアを船長に乗り出した海は、モンスーンに荒れ、もみくちゃにされ…そこで「誰からも見離された寄るべない自由、そこから踏み出せば、誰かから奪った自由。」と思い至り。仲間を病で失い、自分も半死半生の目にあいつつ、それでも知らない土地を知りたい、世界を見たい。囚われの王子ジェリオーを国に帰すと約束しながらも果たせず、突然のイギリス行き。彼をイギリスで売ってしまい、最後は天然痘で死亡。それでも、まだ知らない世界に旅立ちたい、というところで閉じられた物語。今の時代から当時のしたことを断罪することの是非もあるが、おそらく避けずにダンピアのしたことを描いたこと、番外編の、俺らが南海に来ることに正義なんてない、罪悪、というのが一つの答えか、と。
 | 宙出版 発売日 : 2005-05-14 |
勤め先が潰れて、調理師だがタイ料理は未経験の主人公。ぶらり入ったタイ料理屋はいかついけど繊細な料理出すマスター。キュートな韓国人ウェイトレス。ウェイトレスにデートを申し込まれたエピソードは作者の体験ベースのものだとか。キュンとくるし最終話にも絡んできて。その後は15ヶ国語操る強気なエリーがウェイトレス。アフガンから逃げ出した少女やロシアから来た女性をめぐるサスペンスなエピソード交えつつ、タイ料理のおいしさも描きつつな一冊。最後はえええっ？！て感じたけどまたどこかで会えるかななしめくくりで。いいわあ、こういうの、勢いがあって、なんだかタイ料理食べたくなって。
 | 講談社 発売日 : 2024-01-23 |
真白が3年帰省してないのを、黒瀬が背中を押して、帰って見ればキンキラキンのカレー屋開店。真白のやった仕事と判明。そして父の「もっと帰ってきてええんやで」料理がグッとくる。次巻はそれをみての、黒瀬が自分の家族と向き合う巻になる予告。他に、自分の都合ばかりで、制作に皺寄せする営業への反撃新橋さん、濃すぎる会社の人間関係から一歩引くオススメ新橋さん、競合他社との野球大会からの打ち上げで、打ち上げだけで交流できたんじゃね？とか、あるいは「接客業」からの印刷業界飛び込んだ、年上の新人とのやり取りが、教育に携わったことのある身なら染みること間違いなしだったなあ、と。◆「私たちの仕事は人を騙して売ることはしなくていい」「お客様のニーズを聞いてちゃんと納品すれば関係が続いていく仕事だ」（真白のインタビュー）◆知らないことを知るっていくつになっても快感なのよ/真白さんはこれからその機会がどんどん訪れる/それってちょっとうらやましいわ/だから楽しんで勉強しな◆橙野さんからの注意喚起マグカップ！◆
 | 勁草書房 発売日 : 2015-04-09 |
1,2,終章のみ読了。◆自己啓発書には個々人の状況、あり方を確認する応急処置的な機能をを持ち、（それは意味がない、ではなく、それも大事、と）。自己による自己の働きかけをそれ自体目的とし、追求に値するというメッセージを発信しつづける。自らがその影響をコントロールできるような解釈の枠組みで目の前の事象を解釈、それでもコントロール不能なものはノイズとして排除する---たとえば「社会」とか---傾向をうながす。また傾向として、「かなり多くの啓発書においては、仕事における習熟・卓越を目指す男性(性)、自分らしさを志向する女性（性）という前提が、驚くほど何も顧みられることなく自明のものとされている」(p.282)と◆一時期けっこう熱狂して自己啓発書読んでた時期もあったけど、どれも同じだな、結局自分に取り入れてないな、と思ってもう読んでいない。けどそれらを総体的に把握して分析するってのは面白そうと手に取った一冊。
 | 日本文芸社 発売日 : 2008-02-18 |
(2024/01/24読了分)前作の「スパイシーカフェガール」読んでから再読すると、やはり最後は爆発するのね、という感想。マスターの強面ぶりは健在、ウェイトレスは変わったけど強気だし強いしパワーに満ちてるのも変わらず。タイ料理店をめぐる人間模様をたっぷり楽しむ。(2021/05/18読了分)失業失恋のダブルパンチな主人公が、ふと入ったタイ料理屋のおいしさにやられ、レジの求人みて勢いで採用。いかついマスターとパワフル美女なウェイトレスのコンビのお店で、悪戦苦闘。料理のことは、経験はないけど、一度やってみせれば覚えられて、お客様にも通り一遍ではない愛情をそそぎ。お客さんがスパイスの効いた料理を食べたときの表情が好き。それだけでなんだか救われる気持ちに。マスターとウェイトレスの謎は謎のままどんどんイメージだけ膨らんでいったままあっけなく幕が閉じ。
 | 講談社 発売日 : 2022-10-20 |
一人っ子政策が孤独に慣れさせ、スマホの普及が孤独に耐性をつけ、社交嫌い、結婚恐怖族の増大といった流れ。変わる中国語といったエピソードで、簡体字打つのすらダルくてyydsみたいな英字でピンインをあらわして略語にしてるみたいなはなし。挨拶代わりの、もうごはん食べた？がもう書き写した？にとってかわられたこと。「火星法」と揶揄された法。自虐や皮肉も効いてるなあと思ったのが、「西朝鮮」「白衛兵」。かつては先進性を評価されてたのに、いまや「20世紀の景色」を観に日本に来る観光客。日本のタワマン文学みたいなベルサイユ文学があること。などなど。総じて、商機もチャンスもたくさん、テクノロジーも発達、けどビジネスや社交は生き馬の目を抜く、トップの意向次第であっという間の失墜も！…書かれてることがすべてではないだろうけど、もしこれが本当だったら生きづらい面は多そうだなと感じたり。著者の『「北京女性」24人の肖像』（メディアタブレット刊、２０１５年）も読んでみたくなりいまKindleで読み進めているところ。
 | 岩波書店 発売日 : 2017-08-19 |
永江朗「セゾン文化は何を夢見た」つながり。シャンソンの枯葉の歌詞、じっくり読んだのは初かも。でもくらしは恋人たちを裂く…は、「花束みたいな恋をした」を思い出した。他に、わたしはわたしよもともとこんなよ、夜のパリで三本のマッチを擦った、きみの乳房の先端はぼくのてのひらに新しい運命線をひいた、ロバと王様とわたしあしたはみんな死ぬ、のあたりが特によかった。
 | 講談社 発売日 : 2022-03-15 |
著者が自らの人生の各シーンを題材にとりつつも、物語として変容させてつづった短編集。個人的ベストは、祖母の友人のノロノロ運転の車に乗せてもらい、スピード出し過ぎの事故ったパトカーの横を通り抜けて、祖母の友人が「みずから立てりと思う者は倒れぬように心せよ」と聖書の一句を口ずさんだあとに祖母が横で「コリント！」と叫ぶシーン（エルパソの電気自動車）かな。まるであざやかな短編映画をみているかのような一編だった。また、よく登場するコインランドリーがらみの話も好き。「掃除婦のための手引き書」の、たとえば”奥様がくれるものは、何でももらってありがとうございますと言うこと。バスに置いてくるか、道端に捨てるかすればいい”みたいな手引から、「なあマギー・メイ、この世にずっと取っておけるものなんか一つもないんだぜ。ま、おれだけは別かもしれないけどな」という忠告まで。さまざまなバス路線にのって、さまざまな家に掃除にいき、家庭の内情にふれ、時にはばれないようにものをくすねてくるところまで描かれてる所が印象に。◆わたしは家が好きだ。家はいろいろなことを語りかけてくる。掃除婦の仕事が苦にならない理由のひとつもそれだ。本を読むのに似ているのだ◆死には癒やしの力がある。死は人に許すことを教え、独りぼっちで死ぬのはいやだと気づかせる（喪の仕事）
 | 作品社 発売日 : 2023-06-21 |
一党優位制を支えてきた、経済業績の後光効果(後光力)、社会保障による庇護(庇護力)、多数派支配を正当化する言説(言説力)の三本柱。エルドアンが長期政権を築いてきた基盤。しかし、それらの前提となるものが崩れ、統治力は弱まり。従来逆に思いがちだったので、独裁、強権統治が強まると、統治力が落ちるというのは卓見だったな、と。2016年のギュレン派のクーデター未遂、大づかみにしか知らないとまたエルドアンがギュレン派のせいにしてぐらいにしか思わなかったが、それ以前にどれだけ国の中枢に浸透し、どのようにクーデター未遂にまで至り、どのように展開し、失敗し、事後どうなったか、丹念に追っていてたいへん参考になった。直近の2023年総選挙はエルドアンが勝利したが、選挙前だけを見ても、発言や行動に衰えが見られ、今後の国家運営も多難、と。宗教的保守主義への傾倒、連立を組む小党の意向を過度に受け入れなど、政策的選択肢の幅がせまくなっている、失言や失態も増え、弁明に追われることも、と。野党６党連合も善戦はしたのだが、と。
 | KADOKAWA 発売日 : 2024-01-26 |
夢を持てないアラン君と夢を捨ててしまったコレットさんの再生を描く物語…というのが趣旨かもしれないけど、最後のミスティアさんの腹のすわった一撃が全部持っていった感。「お金を出してくれとお願いしに来たのではなくて、あなた方が恥をかかない様に私の映画にお金を出させてあげましょうってお話をするためなのよ」（ニッコリ）。強く美しくまぶしく。
 | マンガショップ 発売日 : |
女好きのヨリトモと働き者のニョマムがバリでひらく居酒屋カマクラ、そこを訪れる現地人や観光客のストーリー。呪いあり、予知夢あり、思念だけ残ってほかの人と交流したり、リゾートの恋あり、アクションあり、神秘あり。そういったものをくるんで人間くさい味付けで読ませてくれる物語。◆「見えないもの」がみえそうな「ありえないこと」が起きそうな◆思いだけ残って、本体は別のところにとか◆
 | マンガショップ 発売日 : |
舞台はバリにアフガン、タイ、カンボジア、ネパール。依頼主は美女。武器と麻薬以外はなんでも運ぶ。そう、これはクールで硬派な青年誌のシティーハンターなのだ、きっと。英語タイトルもKen the sweeperだし。世界を股にかけた冒険譚、読み応えありでした。ただ、ボスかつ最後の先輩の豹変ぶりはちょっと不可解だった。八つ当たりにもほどがある…と。最後は和解して…だけど。◆どこにだってあるんだ辛い事も嬉しい事もキレイな夕陽も/だけど自分に探す気がなきゃ目の前にあったって見つからない◆やっぱりビール飲むなら暑い国がいいよね◆
 | 講談社 発売日 : 1994-03-04 |
(2024/1/29読了分)「アマニタ・パンセリナ」を読んだことをきっかけに再読。◆アル中になるまでの顛末となってからの入院生活、そこで出会った人々、退院するまでが描かれていて。入るまでの堰を切ったかのような怒涛の転落、アルコールへの墜落。入ってから出会う患者たちや医者たちの強烈な癖モノぞろいなところ。そして、天童寺さやかの造形がいいなあ、と。主人公を心配するのを推し包んで強気で言うべきことをビシッといい、けど見捨てず、と。◆くだらない人間はくだらない同類を憎むものだ◆"私のことをわかってくれ"という権利など、この世の誰にもないのだ◆W・バロウズ「剥離、ある病気に関する証言」飯田隆昭訳 月刊imago 1990.07号はぜひとも手に取りたくなった。(2017/08/31読了分)主人公もクセがあるが、酒乱の主治医赤河と亡き親友大道寺不二雄、その妹のさやかの造形が強烈で印象に残る。紆余曲折を経たハッピーエンドといえばハッピーエンド。いつまで続くかわからないことを示唆しながらも。/「"みじめだから中毒になりました"というのを他人様に泣き言のように言ったって、それは通らない。それでは、みじめでなおかつ中毒にならない人に申し訳がたたない。”私のことをわかってくれ”という権利など、この世の誰にもないのだ」(p.124)/バロウズ「剥離、ある病気に関する証言」を読みたくなる。/「教養」とは学歴のことではなく、「一人で時間をつぶせる技術」のことでもある。(p.132)/フーゴー・バルも手にとってみたい/科学は気が長いんだよ/生きる意志を杖にして歩いていく人たちの流れの中にいて、そんな人たちのためだけに泣いたり笑ったりしたいの。(p.146)
 | 株式会社メディアタブレット 発売日 : 2015-02-05 |
「ふしぎな中国」を読んでたら同じ著者がこの本を紹介していたので興味が湧き。24人の人生に、中国が経てきた文化大革命、改革解放、天安門事件、社会主義市場経済、急速な経済発展、急速なテクノロジーの進化が刻み込まれてる。彫刻家、翻訳家、マンガ雑誌社社長、ワインバー経営、高級娼婦、ジャーナリスト、宝飾品販売、カリスマ美容師、スーパー家政婦、ピアニスト、ファッションデザイナー、スポーツ写真家などなど職業もさまざま。最初の向京氏はインタビューも挟むが、あとはインタビューをもとにしたライフヒストリーが語られる。好きになったもの、得意なこと、たまたま出会ったものを手にして、ジェットコースターのような転変を重ねながら成功していく様にひきこまれた。これだけの人生を目の当たりにさせてもらうことの稀有さ。天安門前後で、精神主義から物質主義になったという彫刻家。天安門事件からサンフランシスコに逃れて��小平研究に熱を上げた翻訳家…なぜ自分たちは��小平に負けたのか、��小平は中国をどう変えようとしているのか、と。ドラマティックだったのは、イスタンブールの銀行で一目惚れした青年と北京で暮らしだし、外資系ホテルでめきめきと仕事の腕をあげていった女性。日本のマンガ好きが高じて日本留学し、フランス人男性とつきあいワインにハマりマンガへの情熱がなくなり、北京で二人でワインバー開いて成功した女性かな。気になるのは彼女たちのその後。何人かは10年後のインターネットでは探せなくて。今どうなっているのかも知りたいと思った。
2024年01月08日
極私的2023年ふりかえり
年末年始にやろうと思いつつも、
なんとなく手がつかなかった個人的2023年ふりかえり。
仕事始め前にやってしまおうかと。
イベントふりかえりをメインに。
◆シークレット歌劇團0931を観に行った！
歌劇的なものは極力避けて来た人生でしたが、お友達のお誘いで、まずはラジオの公開録音。それが楽しかったので、ラジオを聞くようになり、12月末に公演「太陽がめいっぱい」を観劇。こちらも楽しかったです。
◆目の見えない白鳥さんとアートを観にいった！
川内有緒「目の見えない白鳥さんとアートを観にいく」を読んで感銘を受けてたら、その本で取り上げられていた全盲の美術鑑賞者白鳥健二さんが来札、いっしょにサッポロパラレルミュージアムの作品を鑑賞できる！と知り参加。本人からも直接お話を聞けて貴重な機会でした。
◆野崎卓也「わが庭園巡礼記」刊行イベント！
旅行zine、競馬zine、ジャーマン・ロックzineとさまざまなzineを出して来られた野崎さんが今度は庭園巡礼zineを刊行。シャンティブックス店主さんと対談ということで暑い夏の夜にかけつけ。その後、主催者参加者あわせて一緒に晩ごはんを食べに行き、大いに語り合うという大変贅沢な体験。みんなで大汗かきながら中華食べたのもいい思い出に。
◆サブスク元年
坂本龍一逝去をきっかけに、彼のアルバムをある程度は持っていたけど、より広い範囲で聴きたくて4月にAppleMusicに加入。今更ながら月1080円でこんなに聴けるの？とフルに聴きまくってます。また年末には、五胡十六国入門て本を買おうとした時に、KindleUnlimitedで読めます、と表示があって、これはもう入ってもよいのでは？と急に思い立ち加入。積読本が加速度的に増えてうれしい悲鳴です。
◆agora読書会
未読の読書会は毎月行ってたけど、課題本のある読書会にも行ってみたくてこちらに。まだ2回しか行ってないけど、自分とは違うさまざまな考え、読み方が聞けてたいへん楽しく。これは2024年も通いつづけたい。
◆恩師とばったり再会
11月に地下鉄乗ったら、向かいの席が15年ぶりの大学の恩師。たいへん懐かしく、思わずお声がけして、向うもおぼえててくださってて、ああ、お声がけしてよかったな案件でした。
◆ゆく店来る店
エスタ、pivot、北33条ゲオ・フレッシュネス・セカスト去り、moyuk、ココノススキノ、Bivi新さっぽろ来たる。それぞれ足を運んだなあ。
◆家の鍵落とす！
人生初、家の鍵を紛失して、大焦りに焦りました。ふだんの持ち歩きのオペレーションを大幅改善。いまの感じだとだいぶ失くす確率は減らせた感。ほんと、届けてくれた方と、探し回ってる時に届いてるはずと教えてくれた方の好意が身にしみました。
◆医療系イベントに参加
読書会「雨デモ晴レテモ」に参加している方のご縁で、医療系イベント（日本プライマリ・ケア連合学会 北海道ブロック支部のイベント）に参加。まったくの畑違いの身ながら、ふだん自分が知らなかった世界にふれることができてすごく貴重な経験でした。
◆コロナ罹患
2年連続2度めの罹患。ああ、5類に移行したからってまったく見逃してもらえるってものでもないよね、とあらためて実感させてもらいました。実感したくなかったけれど。それでも2度目は勝手もわかって、症状も1度目ほどではなかったけど、その後の感染対策をいま一度引き締める契機には。
2024年01月03日
2023年12月に読んだ本
(1202・panpanya 商店街のあゆみ
1202・後藤新平がわかる 図書館20231201受領
1203・本多孝好 Good old boys 20231118
(1205_booklogなし・ジョージ秋山 銭ゲバ kindle
1206・エトガル・ケレット あの素晴らしき七年 (新潮クレスト・ブックス) Kindle 20231126 …agora読書会 1月課題本
(1206_booklogなし・【再読】1年1組うちのクラスの女子がヤバい kindle
(1206_booklogなし・【再読】2年1組うちのクラスの女子がヤバい kindle・トーチweb …ひさびさに読み返したけど何度読んでもいいなあ。
(1206_booklogなし・高浜寛 京都に咲いた一輪のバラ トーチweb …三話まで。原作も読みたくなる！一茶の「世の中は地獄の上の花見かな」がしみる
(1206_booklogなし・【再読】シティーハンター 1 kindle
(1206_booklogなし・甘井最鹿 走り出す花びら feelweb
(1207_booklogなし・永見太郎 月とモノクローム トーチweb…終戦直後日本映画界の内情を。
(1207_booklogなし・坂口安紀 ベネズエラをめぐる大国の政策対応と思惑−米国・中国・ロシア ラテンアメリカ・レポート38 巻 (2021) 2 号…アメリカによる締め付け、巨額すぎる債権放棄できず長期で取り組む姿勢の中国、手を引く構えのロシア。
(1207_booklogなし・坂口安紀 底を打つベネズエラ経済―プラス成長とインフレ低下はなぜ達成されたか？ ラテンアメリカ・レポート39 巻 (2022) 2 号 …やむにやまれぬ経済のドル化で達成という皮肉
(1207_booklogなし・連ちゃんパパ 1 kindle
(1207_booklogなし・王欣太 達人伝 1-5 kindle
…荘子の孫荘丹が、故郷を救うため、9年で中国中の達人を集めようと奮闘
(1207_booklogなし・【再読】教えて！劉老師！ kindle
(1207_booklogなし・静かなるドン 1 ピッコマ
(1207_booklogなし・【再読】小池田マヤ 猫と女は呼んでも来ない kindle
1208・【再読】平野啓一郎 日蝕・一月物語 20231118
(1210・カルベハナコ コレクション zine シーソーブックス
1210・ビギナーズクラシックス中国の古典老子・荘子 角川ソフィア文庫…荘子のみ読了
1211・ミュリエル・バルベラ 京都に咲く一輪の薔薇 図書館20231210受領
(1211・鍋に弾丸を受けながら 4 kindle 20231211
1213・鬱の本 点滅社 20231210 シーソーブックス
1213・清水俊史 ブッダという男 ちくま新書 kindle 20231210
1213・【再開】八木谷涼子 知って役立つキリスト教大研究
1214・済東鉄腸 千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話 20231204発注1210受領
1216・北澤豊雄 混迷の国ベネズエラ潜入記 図書館20231214受領
1216・宮内悠介 黄色い夜 図書館20231216受領
(1216_booklogなし たーし どんけつ 1 ピッコマ …phaさんが鬱の本でおすすめ
1218・伊藤亜沙 目の見えない人は世界をどう見ているのか 光文社新書 kindle 20231213
(1219_booklogなし・【再読】広木忠雄 トドワラと太陽の大地 1996年 図書館20231219…2017年読了時と読後感変わらず。今ではもうほとんど朽ち果ててしまったと聞くトドワラ。
1220・今井宏平 トルコ100年の歴史を歩く: 首都アンカラでたどる近代国家への道 平凡社新書 図書館20231218受領
(1220・岩波講座世界歴史17 近代アジアの動態 19世紀(202x版) 図書館20231220受領…(1)秋葉淳:オスマン帝国の諸改革,(2)黒木英充:変容する「アラブ社会」,(3)阿部尚史:イランの一九世紀,の三篇のみ読了
1221・あかしゆか 海にもぐる 20231113発注1221受領
1222・宮内悠介 ラウリ・クースクを探して kindle 20231214 (1222昼読了1222夜再読)
(1223・夏森かぶと 本のある生活 シーソーブックス20231223
1223・フィッツジェラルド（村上春樹編訳） ある作家の夕刻 フィッツジェラルド後期作品集 図書館20231218受領
(1223・紛争でしたら八田まで14 kindle 20231223
(1223・永田礼路 ファントムペインファーマー kindle
1224・岡真理 ガザとはなにか kindle 20231224
(1224・後藤羽矢子 ハードモード離島青ヶ島行ってきた KindleUnlimited
1224・波間丿ヽ斉 「五胡十六国」入門 KindleUnlimited …この本きっかけでKindleUnlimited加入！
1225・【再読】二階堂奥歯 八本脚の蝶 河出文庫 20230929 …お風呂用
1225・イリナ・グリゴレ 優しい地獄 図書館20231220受領
(1226・元町夏央 14才の里山レシピ 東吉野でいただきます 1-2 KindleUnlimited
(1226・椎名誠 さらば国分寺書店のオババ KindleUnlimited …オババ関連箇所と巻末目黒椎名対談とあとがき
(1227・【再読】椎名誠 もだえ苦しむ活字中毒者の味噌蔵 KindleUnlimited …表題作のみ読了
(1227・マキヒロチ おひとりさまホテル 1 読書室ポワロ
(1228・和山やま ファミレス行こ！上 kindle 20231228
(1228_booklogなし・【再読】和山やま カラオケ行こ！ kindle 20231228
1229・内藤正典 トルコ 建国100年の自画像 岩波新書 図書館20231223受領
(1229・ハイスコアガールDASH 5
(1229・ポイズン通信DX3 シーソーブックス20231223
1230・永江朗 セゾン文化は何を夢見たか 図書館20231222受領 …アンビエント・ジャパンつながり
(1231・【再読】米原万里 嘘つきアーニャの真っ赤な真実 kindle 20231223 …「ラウリ・クースクを探して」読後に無性に読みたくなり
1202・後藤新平がわかる 図書館20231201受領
1203・本多孝好 Good old boys 20231118
(1205_booklogなし・ジョージ秋山 銭ゲバ kindle
1206・エトガル・ケレット あの素晴らしき七年 (新潮クレスト・ブックス) Kindle 20231126 …agora読書会 1月課題本
(1206_booklogなし・【再読】1年1組うちのクラスの女子がヤバい kindle
(1206_booklogなし・【再読】2年1組うちのクラスの女子がヤバい kindle・トーチweb …ひさびさに読み返したけど何度読んでもいいなあ。
(1206_booklogなし・高浜寛 京都に咲いた一輪のバラ トーチweb …三話まで。原作も読みたくなる！一茶の「世の中は地獄の上の花見かな」がしみる
(1206_booklogなし・【再読】シティーハンター 1 kindle
(1206_booklogなし・甘井最鹿 走り出す花びら feelweb
(1207_booklogなし・永見太郎 月とモノクローム トーチweb…終戦直後日本映画界の内情を。
(1207_booklogなし・坂口安紀 ベネズエラをめぐる大国の政策対応と思惑−米国・中国・ロシア ラテンアメリカ・レポート38 巻 (2021) 2 号…アメリカによる締め付け、巨額すぎる債権放棄できず長期で取り組む姿勢の中国、手を引く構えのロシア。
(1207_booklogなし・坂口安紀 底を打つベネズエラ経済―プラス成長とインフレ低下はなぜ達成されたか？ ラテンアメリカ・レポート39 巻 (2022) 2 号 …やむにやまれぬ経済のドル化で達成という皮肉
(1207_booklogなし・連ちゃんパパ 1 kindle
(1207_booklogなし・王欣太 達人伝 1-5 kindle
…荘子の孫荘丹が、故郷を救うため、9年で中国中の達人を集めようと奮闘
(1207_booklogなし・【再読】教えて！劉老師！ kindle
(1207_booklogなし・静かなるドン 1 ピッコマ
(1207_booklogなし・【再読】小池田マヤ 猫と女は呼んでも来ない kindle
1208・【再読】平野啓一郎 日蝕・一月物語 20231118
(1210・カルベハナコ コレクション zine シーソーブックス
1210・ビギナーズクラシックス中国の古典老子・荘子 角川ソフィア文庫…荘子のみ読了
1211・ミュリエル・バルベラ 京都に咲く一輪の薔薇 図書館20231210受領
(1211・鍋に弾丸を受けながら 4 kindle 20231211
1213・鬱の本 点滅社 20231210 シーソーブックス
1213・清水俊史 ブッダという男 ちくま新書 kindle 20231210
1213・【再開】八木谷涼子 知って役立つキリスト教大研究
1214・済東鉄腸 千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話 20231204発注1210受領
1216・北澤豊雄 混迷の国ベネズエラ潜入記 図書館20231214受領
1216・宮内悠介 黄色い夜 図書館20231216受領
(1216_booklogなし たーし どんけつ 1 ピッコマ …phaさんが鬱の本でおすすめ
1218・伊藤亜沙 目の見えない人は世界をどう見ているのか 光文社新書 kindle 20231213
(1219_booklogなし・【再読】広木忠雄 トドワラと太陽の大地 1996年 図書館20231219…2017年読了時と読後感変わらず。今ではもうほとんど朽ち果ててしまったと聞くトドワラ。
1220・今井宏平 トルコ100年の歴史を歩く: 首都アンカラでたどる近代国家への道 平凡社新書 図書館20231218受領
(1220・岩波講座世界歴史17 近代アジアの動態 19世紀(202x版) 図書館20231220受領…(1)秋葉淳:オスマン帝国の諸改革,(2)黒木英充:変容する「アラブ社会」,(3)阿部尚史:イランの一九世紀,の三篇のみ読了
1221・あかしゆか 海にもぐる 20231113発注1221受領
1222・宮内悠介 ラウリ・クースクを探して kindle 20231214 (1222昼読了1222夜再読)
(1223・夏森かぶと 本のある生活 シーソーブックス20231223
1223・フィッツジェラルド（村上春樹編訳） ある作家の夕刻 フィッツジェラルド後期作品集 図書館20231218受領
(1223・紛争でしたら八田まで14 kindle 20231223
(1223・永田礼路 ファントムペインファーマー kindle
1224・岡真理 ガザとはなにか kindle 20231224
(1224・後藤羽矢子 ハードモード離島青ヶ島行ってきた KindleUnlimited
1224・波間丿ヽ斉 「五胡十六国」入門 KindleUnlimited …この本きっかけでKindleUnlimited加入！
1225・【再読】二階堂奥歯 八本脚の蝶 河出文庫 20230929 …お風呂用
1225・イリナ・グリゴレ 優しい地獄 図書館20231220受領
(1226・元町夏央 14才の里山レシピ 東吉野でいただきます 1-2 KindleUnlimited
(1226・椎名誠 さらば国分寺書店のオババ KindleUnlimited …オババ関連箇所と巻末目黒椎名対談とあとがき
(1227・【再読】椎名誠 もだえ苦しむ活字中毒者の味噌蔵 KindleUnlimited …表題作のみ読了
(1227・マキヒロチ おひとりさまホテル 1 読書室ポワロ
(1228・和山やま ファミレス行こ！上 kindle 20231228
(1228_booklogなし・【再読】和山やま カラオケ行こ！ kindle 20231228
1229・内藤正典 トルコ 建国100年の自画像 岩波新書 図書館20231223受領
(1229・ハイスコアガールDASH 5
(1229・ポイズン通信DX3 シーソーブックス20231223
1230・永江朗 セゾン文化は何を夢見たか 図書館20231222受領 …アンビエント・ジャパンつながり
(1231・【再読】米原万里 嘘つきアーニャの真っ赤な真実 kindle 20231223 …「ラウリ・クースクを探して」読後に無性に読みたくなり
 | 毎日新聞出版 発売日 : 2023-08-21 |
栗原康「村に火をつけ、白痴になれ」で、大杉栄が、雑誌を発禁にされて頭にきて、当時の内務大臣だった後藤新平に、国が発禁にするからカネがないんだ、カネをくれといって、意気に感じてポンといまでいう100万円ぐらいくれたシーンが印象に残ってて、どんな人か気になり。戊辰戦争で賊軍の藩士の家族として、武士から平民になり困窮し、その中でも刻苦勉励、医学をおさめ、公衆衛生にも通じ、政策の企画立案も得意、留学も経て、台湾、満鉄総裁、東京市長を経て、関東大震災時の内務大臣、復興院総裁などを歴任。後半戦、壮大な構想を立てて、一旦は認められるのに、ひっくりかえされて予算削減、規模縮小されてるところが今となっては惜しい感。どんな生涯をたどったのか、概要をつかむにはよかった。
 | 集英社 発売日 : 2019-05-17 |
目黒考二追悼本で生前の目黒考二がすすめていたので手に取り。弱小な小学生サッカーチームの父親たちを中心に語られるストーリー。出身地も家庭状況も夫婦仲も職業もさまざまな父親。総じて、夫婦とは長く時間を過ごすことで言わなくても通じ合えるようになる、という命題がかんじられ。また、◆子の才能に嫉妬してつぶしてしまうことへのおそれ。◆また息子に決めさせて、息子に責任をとらせるのか◆ほしいものを与えるのではなく、必要なものを与えるのが親の仕事◆子育てに間違いも失敗もない◆子供の可能性を信じてやるのも親の仕事◆といった関係性も目につき。
 | 白泉社 発売日 : 2023-11-30 |
papanyaさんの奇想にはいつもおどろかされる。
家がスーパーロボットになって新聞の押し売りを撃退、翌月莫大な電気代請求。景品であたった土地にプラモデルの家建てる。実際には消えた区画の権利書を持つ依頼人からその区画を探すよう依頼。中央林間にまつわるエッセイ。うまく育てられればビルになるビルの芽。1番はやはり表題作の「商店街のあゆみ」。生き物のように伸び縮みし、やってきてまた去っていく商店街という斬新さに心惹かれた。
家がスーパーロボットになって新聞の押し売りを撃退、翌月莫大な電気代請求。景品であたった土地にプラモデルの家建てる。実際には消えた区画の権利書を持つ依頼人からその区画を探すよう依頼。中央林間にまつわるエッセイ。うまく育てられればビルになるビルの芽。1番はやはり表題作の「商店街のあゆみ」。生き物のように伸び縮みし、やってきてまた去っていく商店街という斬新さに心惹かれた。
 | 祥伝社 発売日 : 2023-11-20 |
前作も面白かったので、今作も心待ちに。ただ前作が全編漫画だったのに比べ、今回は文章多め。けど、カントクのその発想はなかったエピソードを楽しく読ませてもらいました。お互いのインタビューから、お互いに自分が支えてもらって、と思ってるのも伝わってきて。
 | 新潮社 発売日 : 2016-04-27 |
ホロコースト生き残りの父を持つイスラエル人作家による、ミサイルの飛来がもはや日常に組み込まれてる感のある日々。運賃をごねるタクシーに、いま戦場では同胞が…ということで納得させる言説が成り立つような。常時の徴兵制で国を守る環境の一方、我が子は戦争に行ってほしくないという作者の妻であり息子の母である女性の本音。ユダヤ教徒＝シオニスト＝イスラエル国家という等式は成り立たず、またユダヤ教徒内にも超正統派から一般的な教徒までグラデーションがあること。「コーヒー」を何語で言うかだけで緊張が走り一触即発になることを避けるため「エスプレッソ」とイタリア語で統一することで解決がはかられる環境。ホロコースト生き残りの父の、自分が何も失うものがないときに決断するのが一番いい、という性向。超正統派の男性と結婚した姉のことを「その時死んだ」と表現すること。おそらく日本の日常に生きていてはふれることのない考えだったり、環境だったり、性向だったりを、まずは知ることからしか始まらないのかと考えつつ読み進めていった。◆10月7日以降の事態について、どう考えているのか知りたくなって、「新潮」2024年1月号のケレットの文章を読んだが、一読の価値ありだった。◆ある読書会の2024年1月の課題図書に選ばれたので手に取った一冊。以下備忘録として。◆作家とは聖者でも義人でもなければ門に立つ預言者でもない。普通の人よりいくらか鋭い知覚を持ち、ぼくらの世界の思いもよらないような現実を普通の人よりちょっとだけ正確なことばを用いて描いてみせるだけで、ほかは普通の人と同じ、ありふれた罪人に過ぎないのだ。◆それでも国外では時としてイスラエルという国家を代表せざるを得ないし、それを避けようとはしない。ケレット自身の言葉によれば、「国内では裏切り者として、そして国外ではイスラエル人としてボイコットされ」てもだ。◆
 | 新潮社 発売日 : 2010-12-29 |
中世ヨーロッパの異端と錬金術（日蝕）、明治日本の詩人を引き寄せた美しい幻想(一月物語)。「日蝕」は芥川賞受賞以来の再読、「ある男」を読んだことがきっかけで。マルシリオ・フィチーノ「ヘルメス選集」をもとめる旅だったはずが、ある村へ立ち寄って、異端とされる錬金術者と知り合い、その思想に深く触れ、また両性具有者の火刑に立ち会ったことで、主人公の信仰、神への考えはおおきくゆさぶられて、と。肉体的な苦行が神の道へつづくという考え、あるいは説教者個人への人間的な敬愛による信仰への疑問にもふれられつつ。火刑によりこの世からまさに消えんとする際の美文の描写が愁眉か。（日蝕）◆「一月物語」読み終えてふと思った。主人公はいつから導かれていたのだろうか？すでに上野駅の時点で？吉野の山深くから彼を招くためにつかわされてきたのだろうか、あの女性は？と。「一体、夢と云い、現と云う。しかし、どちらも畢竟、同じ一つの幻のように感ぜられる。俺はあの夜、夢にではなく、現の世界で慥かに女の姿を見た。」p.310
 | 角川書店 発売日 : 2004-12-25 |
莊子の孫という莊丹を主人公とする王欣喜「達人伝」を読んで、莊子を読みたくなり、莊子の分のみ独力。9万里の高みを飛ぶ鵬、巧みな包丁さばき、胡蝶の夢、親切心で7つの穴を開けられて死んでしまう混沌などなど、有名なエピソードを簡潔に知ることができてよかった。何度か挫折してるけどいつかは原典も読破したい。
| 発売日 : |
不動産広告の間取りの切り貼りのみ。それぞれに対しては、一切、解説、感想なしなの潔すぎる！（巻末になぜこのzineを作ろうと思ったかは1ページかかれているけれども）。一時期、間取りの手帳remixを皮切りに、間取り本がちょっと流行ったことあったけど、やはりそれらとの違いは、潔さ。間取り広告だけみていろいろ想像してたのしむ。この広さ！といいつつ30平米なかったり、古民家飲食店にそのままつかえる物件、そして吹き抜けのある八角形の部屋、二階の離れまでの構造がわからず、と見ても見てもたのしい一冊でした。
 | KADOKAWA 発売日 : 2023-12-11 |
台湾のフルーツ王国っぷり。とくに釈迦頭の魅惑的な描かれかたといったら！そして、宗教ラーメンの話の強烈さ。「日本人が理解できる唯一の宗教がラーメン」というパワーワード。といったあたりが印象に残った巻。
 | 新潮社 発売日 : 2001-12-01 |
教派の違い、基礎的な疑問、典型的な教徒の生活、牧師やシスターへのインタビューなど盛りだくさんで興味関心を満たしてくれた。外から見たら同じキリスト教徒だとしても、内実はけっこう異なっていて。。カトリックとプロテスタントの結婚は異教同士と見做されてた時期があったとは。ローマ教皇の影響力って、当たり前だけどローマ・カトリック世界向けなのね、アメリカとかイギリスではそれほどなのかな、というのがすこし疑問。
 | 筑摩書房 発売日 : 2023-12-07 |
ブッダは、平和主義者とは言えないし、業と輪廻の存在も否定してないし、階級差別も否定しないし、男女平等も主張していない。初期仏典にあることをすべて信じてブッダは一切智者で超能力者とする「神話のブッダ」も、脱神話化をすすめすぎて、現代の像を反映してしまった「歴史のブッダ」も実像とかけはなれるだけ。ブッダは、2500年前のインド人であり、その背景と限界のなかで、当時としては革新的な思想を打ち出したのだ、という前提がいっそ清々しい。◆史料に知らず知らずのうちに、現代人の願いを読み込んでしまうというのは、この本でも取り上げられたイエス研究に限らず、研究対象との適切な距離感ということでは、歴史学全般にも言えることであるとあらためて思った。そして、「神話のブッダ」も一概に否定すべきではなく、アンベードカルによるインドでの仏教復興運動の原動力にもなった、という視点がたいへん興味深かった。あと、巻末の参考文献紹介は、門外漢へ簡易に先行研究をまとめてくれていて、ありがたく、中村元「ブッダ伝---生涯と思想」、吹田隆道「ブッダとは誰か」、佐々木閑 宮崎哲弥「ごまかさない仏教」、山際素男「不可触民と現代インド」あたりは手に取りたくなった。最期に。現代人の願いを読み込まずに、著者が示してくれた初期仏典における思想の革新性は、現代の我々にとってどういう意味を持ち、どう活かしていけばいいのだろう、あるいはそんなことは考えずにあるがまま受け止めていけばいいのか。
 | 早川書房 発売日 : 2022-11-02 |
高浜寛が途中までマンガ化してたのが気に入り、原作も手にとる。生前父と一度も会えず、怒りだけを抱えて40歳になったフランス人植物学者のローズ。亡夫の遺言を聞きに来日。亡夫の遺言で、ビジネスパートナーだった男性ポールの案内で何日も京都の寺をまわり、また亡夫の友人と会い、対話を重ねていくなかで、頑なだった心がほどけていき…と。その仕掛け自体はまだるっこしいと感じたところもあったけれど。一茶の句（世の中は地獄の上の花見かな）から、雪舟？の句（世の中は三日見ぬ間の桜）への変転はあざやか。また、頻繁に、問うても答えないシーンは、もう少し考えてみなさい、あるいは私から言うことはありませんという英仏式コミニュケーションなのだろうか。◆世界はその全貌をさらしているのに、人間の側からは、いつもその一部分しか見ることができない。絶望しているとき、人には何も見えなくなる。生きることのすべてがつらくなってしまうんです。p.90◆「最後には死ぬ、そうね。だからこそ、人生に即興演奏の自由を許さなければ」「そうじゃないと、地獄に行く前から地獄を生きることになる」（ベス）p.198-199
 | 左右社 発売日 : 2023-02-07 |
ひきこもりから、映画オタク、語学オタクが昂じて、Facebook、Twitterを駆使してルーマニア人の知り合いを作りまくり、交流しまくり、ついにはルーマニア語で小説家デビュー。みんな、どうしてその行動力、コミュ力が高校大学就職活動で活かされなかったのだろう！？と思ったのでは（私もですが）。まあ、それはきっと、タイミングとか技術の進歩とかいろいろあってなのかな。でも、これは！と見極めたらずんずんと突き進んでいく様は読んでて痛快でした。ルーマニア語小説家としてのこれからに期待。そして日本への逆輸入も。そして、ひさびさにE・M・シオラン、よみかえしたくなった。
 | 産業編集センター 発売日 : 2021-03-15 |
「ベネズエラ」で「潜入記」と聞いたところで食指がのびる。おそらく財政破綻国家、何百万%のインフレ、極端に悪化する治安、食料不足、医療崩壊、インフラ破壊等で何百万人も国外へ、という報道に接していたからか。作中にも同じようなことを行って著者をあおる日本人社長がいて苦笑してしまったが。そして著者が中南米を何度も何度も訪れて滞在する原動力のようなものはつかめなかったのだけれど、このベネズエラ行も難航難航また難航。頼りにしてた人から手のひらをかえされたり、なしのつぶてだったり、勇躍のりこんでみたら、話がちがったり、そもそも通っていなかったり。同行者は強盗にあうわ、自分もぼったくりや置き引きにあうわで散々な道中。けれど、ベネズエラという国、国民について見ると、地方や時代、富裕層/貧困層によって差異はあるのだろうけど、食べものはあるところにはあるし、最低賃金が月200円なのに、ディスコであそぶ若者たち、マッチングアプリにつどう恋愛をもとめる人々、月の最低賃金以上のランチを食べる人たちなどはいるところにはいて、みんながみんなそうじゃないにしても、人生楽しそうな人も多くて、と。中に入ってみなければわからないことはたくさんあるんだろうな、という実感。巻末三分の一は、メキシコを縦断する、移民をのせる「野獣列車」というものを追ったルポ。こちらも読み応えあり。危険な祖国を徒歩で抜け出してきた人たち。ギャングに誘われて断ったら見せしめに両手首切られるとか、受けても地獄断っても地獄の八方ふさがり。そして以前聞いた野獣列車と話が違っていたのは、あまりに列車がギャングに襲撃されるから、列車が速度を速めたのと、出発時刻を不規則にしたからだということが判明し、そのために移民にも徐々に敬遠されていった（列車から落ちて死傷することも増えた）ことも明かされ、と。◆「あんた、この国に住んでいないから分からないだろうけど、この国は、公的な連中ほど信用しないほうがいい」◆
 | 集英社 発売日 : 2023-11-17 |
おそらくエリトリアがモデルのE国のギャンブルタワーにのりこんでいく日本人ルイ。最上階までたどりつければ、その国の王の座を賭けて勝負ができるというその塔へのりこむ目的は？イタリア人のピアッザを相棒に、監視システムから心理戦から、頭から騙しにかかってくるものの裏をかいてのしあがっていくのか。重ねられるギャンブルや神や国に対するダイアローグも興味深く。雑誌初出時に読了も、単行本化を機に再読。それだけ心惹かれ、印象に残っていたから。そして個人的にエリトリアという国に興味があったから…独立の希望の星とたたえられた大統領が、いかに暗黒の秘密警察国家の元首へ変わってしまったのか…もちろん小説はモデルにしてるかだからそこを追っても仕方がないのだが。◆紛争のつづく国境地帯での、住民たちの意見はお決まりのものだ---もう、どっちの国だっていい。◆「なんのためにギャンブルをやるんだい」「そりゃ、神に近づくためだろうな」「それから神に負けるためだ」◆「ただ、自分の国が嫌いなやつは、結局、どこへ行ったって、何を見たって同じことさ。そういう連中は、自分の国が嫌いなつもりで、本当は世界全体が嫌いなのさ。だけれども、そうした内面の葛藤を認めきれないんだ」p.16（単行本版）
 | 点滅社 発売日 : 2023-12-05 |
「鬱の本」は84人の筆者が1000文字以内で、うつ病にかぎらず、ちょっとした憂鬱な気分などにからめて本が紹介されるエッセイ集。個人的には豪華執筆陣にも目をうばわれ（山崎ナオコーラ、大槻ケンヂ、pha、こだま、枡野浩一、瀧波ユカリ、頭木弘樹、東直子、島田潤一郎、pippo…）。二階堂奥歯「八本足の蝶」を再読している身には、菅原海春がそれを取り上げている章にはシンクロニシティを感じ。第二灯台守さんの「偶然でくわした小説の、一点に偶然惹かれて、立ち止まり、生かされた心があった。同じことがあなたに起こるかわからない。だから、誰も救うことはできない。」という一文に心ひかれ。エミール・シオランは極めて音楽的な文章を書く人だ、という高橋涼馬さんの言葉に、新井満「ヴェクサシオン」をきっかけに、「生誕と厄災」を手に取ったころを思い出す。無さんの「なにしろ、鬱の苦しさの少なくない部分、本を読めないということが占めていた」に、本を読まねば一日が明け暮れぬ身としては深くうなずき。小説のなかでしか心は自由に動かないけど、という思いはあります。でも、それでいいと思います。何回生まれ直しても同じ生き方を繰り返して、同じ小説を書くだろうと思います。それが自分というものだろうと思います。p.147（増田みず子）という言葉に、増田みず子さんの小説を手に取りたくなる。また、何冊も何冊も読みたい本が出てきてうれしい悲鳴でした。自分的には、鬱のときにおすすめしたいのは、最相葉月「なんといふ空」。どこから読んでも、読み通さなくても、開いたところを読むだけで、心がしんと落ち着くエッセイ集。
 | 平凡社 発売日 : 2023-09-19 |
トルコを語る、といえばイスタンブールに着目した本は数多あるが、この本はアンカラに着目してトルコを語るところが類書にない特徴。写真も図版も豊富。アンカラはよくも悪くも政治の都市。観光都市ではない分、イスタンブルよりも落ち着いた印象だとか。イスタンブールにあって、アンカラにないもの、まずは歴史、そして海。最後にボスポラス海峡からみた国際政治に触れざるを得なかったところに、アンカラ贔屓の（？）著者の悔しさが滲み出ていて、実際著者もそう語っていて、読んでて笑みが漏れてしまった。人を語るとなるとまずはケマル・アタテュルクが筆頭に。ただ、その最近はその功績を相対化する研究もあるとのこと。印象に残ったのはイスメトの扱い。この本でも大意、"トルコ共和国を象徴する政治家はケマルよりイスメトではと個人的に感じている。主要な政治家で約50年間、大統領、首相、野党党首としてトルコ政治で存在感を示し続けた点。第二次世界大戦での中立外交、そこから土壇場で勝ち馬に乗る外交。一党独裁体制から複数政党制へ。稀有なのは大統領退任後も共和人民党党首として政治の表舞台で活躍（共和人民党が人材不足といえばそれまでだが）。1960年の民政移管時には再度の首相も。"といったことが書かれていて。イスメトの単著で新書が出ないかしら、と思ってしまった。現職のエルドアン大統領についても、来歴からどのように国民に受け入れられているか、政策なども語られ、目についたのは、オスマン帝国の遺産を強調する政策からか、2010年代以降オスマン語を習う人が増えた、という記述。個人的に、学生時代にすこしかじったので、そういう趨勢なのか、という思い。一部、建物名や通り名や政党名など、固有名詞の羅列がつづく箇所は読みづらいと感じたところもあったが、アンカラから読み解く、という点はよかったなあ、という読後感。
 | 岩波書店 発売日 : 2022-07-28 |
(1)秋葉淳:オスマン帝国の諸改革,(2)黒木英充:変容する「アラブ社会」,(3)阿部尚史:イランの一九世紀,の三篇のみ読了◆(1)は、16世紀には中央集権的な体制を打ち立てたが、徐々に分権化していったものが、成否はともかく19世紀には中央集権的な、中間層を廃して臣民を直接細かく把握しようという志向が見てとれる。アーヤーンや地方官の私兵団から構成された軍隊から、徴兵に基づく統一的な常備軍へ、その維持と中央集権化のために、できるだけ中間勢力を排除して税源を中央の管理下へ。タンズィマート期のオスマン帝国はそのために法令、調査・登記、監視、評議会、視察、教育、定住という方法を重視。ハミト期が反動ではなく、多くの面でタンズィマートを継承したという理解が定着して久しい、とのことだが、具体例にあたってみたい。ある地域における特定の民族集団の人口が、その地域における権利主張の根拠とする考え方がひろまり、人口調査は政治的な重要性を帯びたことに着目。19世紀、オスマン帝国の領土は縮小したが、残された領域に対してオスマン帝国の国家権力は、かつてないほどに浸透した、と。「近代イスラームの教育社会史---オスマン帝国からの展望」(昭和堂)は手にとってみたい。◆(2)は、専制的なオスマン帝国統治のシリアから、最初は開明的なムハンマド・アリー期のエジプトへ、のちには世界中に移民し、ネットワークを築いたこと。宗派別縦割り制が今日までレバノンの政治体制を規定している宗派主義の起源となったこと---外国の介入により人々は宗派別人口のたかを意識し、ムスリムは非ムスリムの背後にヨーロッパ諸国の存在を意識することとなった。バグダード総督ミドハト・パシャが危機感を覚えて、従来明確に意識されてこなかったオスマン帝国の主権を主張するべく1871年に、内陸のワッハーブ派・サウード家に軍事行動を起こした。といった論点が気になった。◆(3)は、当時のイランには、欧州の覇権国家イギリス・ロシアの圧迫の中、かろうじて植民地化は免れたものの半従属的な立場に追いやられ、政府は近代化にも成功せず、専制的な政治体制を汲々と維持していたという負の印象がつきまとう。そうはいってもイランにとっての19世紀は、現在に直結する国家・社会・文化が形成された連続性から重要視される。地方に派遣された王子総督は、必ずしも中央政府と同心ではなく、一方ときに在地有力者を暗殺したり、強力な部族集団の内部抗争を扇動することで、最小限の武力で地域社会の秩序維持を実現していた（効率的な支配）。最後に、19世紀にアジアの独立国がみな「西欧を範とした」近代化改革を目指したとみなし、その到達度によって成功や失敗を評する見方は、近年再考を求められている、のだとか。イランでは、アゼルバイジャン州総督アッバース・ミールザーが近代化改革的な政策を次々と実行。特色としては、全国一致や、首都を中心としたのではなく、重要では有るがアゼルバイジャンという一州から開始されたこと。
 | 光文社 発売日 : 2015-04-16 |
川内有緒「目の見えない白鳥さんとアートを見にいく」を読んで、読みたく思っていた一冊。一口に、目の見えない、と言っても、生まれつき見えない/中途で見えなくなった、どれぐらい見えるか（まったく見えない？視野が狭い？色がわかりづらい？)、点字を読める/読めない、聴覚を手がかり？触覚を手がかり？他のものを手がかり？などさまざまな段階、グラデーションがあり、一般論には落とし込めないという前提は、川内さんの本を読んだときにも感じたこと。それを踏まえつつ、印象に残ったのは、目の見えない人の世界は、目の見える人の世界が欠けたものではなくて、まったく別個の世界ととらえた方がいいということ。欠けててかわいそう、ではなく、そっちの世界もいいだろうけど、こっちの世界もいいんだよ！というお互いの尊重が大事、と感じた。それは、運動で、介助で、美術鑑賞などさまざまなシーンで提示される。たとえば、大岡山を道の傾斜からお椀をふせた形の土地のてっぺんに駅があるとイメージしたり、「裏」「表」「外」「内」が等価で太陽の塔の模型をつくるときに模型の内部まで装飾することだったり、ガラス器だと思ってつかんでいたものが「それは陶器だよ」と言われた瞬間に陶器のイメージにすりかわることだったり、ブラインドサッカーのときのボールのイメージだったり、介助時に介助する側の体とされる側の体が接する部分で「コツ」や「気」のような言語未満のやりとりが交わされていることだったり。見えないからこその世界のつかみ方に非常に心惹かれた。◆最後は「本書の根底には、「情報」対「意味」という対比がずっと流れています。意味には、見えないことでおのずと生まれてくる意味と見えない人が意図的に作り出す意味があります。」という言葉に導かれて。
 | 朝日新聞出版 発売日 : 2023-08-21 |
これは何度も読みたい本を見つけたかも。初読、即最初から再読したぐらい魅力的な一冊だった。◆ソ連時代のエストニア生まれでパソコンでプログラミングを学びプログラマーを目指すも、ソ連崩壊の歴史に翻弄されたラウリ。彼を探すターンと交互に語られるが彼を探しているのは…！誰にも自分の人生を可哀想とは言わせない、というカーテャの言葉。アイデンティティは選択してつかみ取るもの、というのがこれほど伝わってくる時代というのもない。共産党員の息子とパルチザンの孫娘が食卓を囲むのはソビエトらしい、てシーンが印象に。そしてライライの「国と国民のデータさえあれば、いつでも、どこからでも国は再興できる。」という信念に裏打ちされた道行きと、結局はラウリを救った成り行きも。歴史に翻弄された、無名の、傍からは何も成し遂げてないように見える、けれどそこに確実にいて、生きているんだ！というのが伝わってくる歓び。「データは不死だ。 ならば、わたしはラウリのデータを書き残す。記憶素子と、水晶の箱庭に。あるいは、図書館という人文のデータ大使館に。青春の一片を、わたしの親友を、わたしはデータとして残すことを選ぶ。 ラウリ・クースクという一人の男の、その生きた軌跡を。」という最後のパートが深く深く響いてくる。
まさか除霊に幻肢痛を持ってくるとは。悪霊を大根に閉じ込めて除霊って絵面がもう抱腹。ただ助手で友人たる存在は実は…というのも描かれ。外道と言わば言え。八方まるくおさめる農家ストーリー。
 | 中央公論新社 発売日 : 2019-06-06 |
編訳者の言うごとく、後期には後期の味わいが、悲しみが、美しさがあるんだろうけど、それは「夜はやさし」につながっていったのだろうけど、ライトなフィッツジェラルド読者としては、やはりジャズエイジ時代の「氷の宮殿」とか読みかえしたくなった。フィッツジェラルドが落ち目と自覚する自分へ向けるまなざしのすさまじさ----あちこちに借金したあげく人類学者とともに北極探検に小説のネタを見出すフィネガンという登場人物。また芸能人たちの集まるセレブのパーティーで、本職の役者たちを前に小芝居を披露してどんずべりする作家。---など。書こうにも書けずにもがく作家像も描かれ。「フィッツジェラルド、警官を楽園のこちら側でノックアウト」なんて、皮肉な報じられ方だけど、まだニュースバリューがあった証拠とも読めて。◆というのは彼は若い時分から、人に何かを見せびらかしたいという弱点を抱えていたからだ。静かに耳を澄ませ、じっくり観察するかわりにp.193(ある作家の午後)◆私がつらいのは、どうやっても相手を助けられないのだということです。たまらなく切ないのです---何をしたところで無駄なのだと知ることはp.214(アルコールに溺れて)◆そして魂の漆黒の暗闇にあっては、来る日も来る日も時刻は常に午前三時なのだp.292(貼り合わせる)◆
| 発売日 : |
現役書店員さんによるzine第二弾。前作がよかったので期待して待っていた続刊。そしてまた本好きとしてはうなずきたいところ多数。休日には息をするように本屋に行く身としては、また本を買う時上から二冊目、なんなら語冊目ぐらいを取っちゃうこともある身としては。「身銭を切る」については、人それぞれさまざまな感覚があるのだなあ、と興味を惹かれた。個人的には、もう麻痺しちゃって、身銭切ってもやらないことはやらなくなってしまったなあ、と…。こういう道筋をたどって、こんなことを考えて書店員になって、書店員やりつつもこんなこと考えながら働いている、というのが伝わってきたのもよかったです。「ハンチバック」、カターエフ「ナイフ」、橋本一子「降伏の記録」、群ようこ「こんな感じで書いてます」あたりは手に取りたくなってきました。
 | 講談社 発売日 : 2023-12-21 |
バーニングマンとウクライナ危機が結びつくとは。バーニングマンについては、以前、東京で暮らす人々にインタビューした本で、バーニングマンのためにバイト生活してる人がいて興味が。最近は豪雨で会場が泥まみれになったニュースもあったな。もう一つのメインはサウジの女性解放と石油依存脱却。日本のアニメにぞっこんになったサウジ女性が、おばと八田との後押しで、自由を追い求めるストーリー。後味よく未来に期待が持てて。
 | 大和書房 発売日 : 2023-12-24 |
読後。踏みにじられても罰則もない国際法ってなんなんだろ。もちろん非難の根拠にはできるから、断然あったほうがいいのだけれど。なぜそれが守られないのだろう。◆数々の報じられてこなかったイスラエルからパレスチナへの攻撃を知れば、その結果、どのような封鎖を行ってきたかを知れば、「停戦」「休戦」の中身をどのようなものだったかを知れば、「どっちもどっち」「憎しみの連鎖」などとは到底言えなくなる、という思いを抱いた。◆また、当たり前といえば当たり前だけど、イスラエル国家の方針＝ユダヤ人の総意、とも言えないこともわかった。
| 発売日 : |
著者の学生時代、社会人時代、最初の結婚、離婚、その後の出会い、本屋開店、再婚、結婚生活までがやわらかく描かれ。印象に残ったのは適切な「距離感」。"人は多面的な生き物である。だからこそ、私がどの彼の一面を見るか、彼にどの私の一面を見せるかは、ちゃんと選んでいく必要があると思う。"(p.12)そして、"個人的で大切なことは、もっと、クローズドに、そういう時代が、きっとまたやってきている。"(p.64)という感覚。また、変化を恐れてちぢこまるのではなく、"これからの人生も、きっと予期せぬ変化に満ちているのだろう。人生は、うつくしくておもしろい。"(p.29)と思えるところ、いいなあと思った。
 | パヤパヤブックス 発売日 : |
おわってみれば日本一上陸困難な島にして脱出困難な島…の脱出困難ぶりに焦点があたった旅行記。ただ、地熱で食材をあっためる釜の体験と、島寿司はおいしそう、と思った。美容院が7/6-7/10とかタバコ屋が通うの17-18時とか、本当は必要ないけど村の子どもたちの教育用に信号が一基あるとか、島ならではの生活もうかがいしれる。
 | 発売日 : 2023-01-15 |
おおまかな流れが掴めて、簡易な評伝で人物像も知ることができて最高でした。強い女性が何人も正史に名を残しているのは乱世故か。カクヨムの慕容垂が主人公の小説きっかけで俄然気になった五胡十六国時代。西涼のあたりのごちゃごちゃ、冉閔の故殺令のむちゃくちゃさ、前秦のあまりの降伏者への寛容さ、鳩摩羅什の諦念、あらゆる紛争に巻き込まれざるを得ない地であえて独立を謳った仇池、謝安の博徒ぶり、あたりも気になりました。小前亮「王道の樹」「劉裕 豪剣の皇帝」、カクヨムの赫連勃勃が主人公の「雷の鞭」、ヒストリスト「五胡十六国時代勢力地図集」あたりはあたってみたいと思った。
 | 河出書房新社 発売日 : 2020-02-06 |
(2023/12/25読了分)再読。前は借りて読んだけど、手元に置いておきたくて河出文庫の紙版で購入。◆やはり後半部のキリキリとした、ヒリヒリとした、この世にはとどまりたくない思いが伝わってくるところ、迫ってきて読むの辛かった。仕事もあたたかい家族も恋人も理解者も文学もあって、それでもこの世に押し留められなかったのかと…◆生を呪うのは裏切られた者だけで、そして裏切られるのは信じていた者だけなのだ。生自体には根拠も目的もないということを自明のものとした上で（略）小さな（略）欲望に引っ張られて私は日々をすごしている。(p.96)◆楽園を抜け、約束の地を遥かに越えて、夢の世界よりもっと高く、深く。夢見ることと目醒めることが同じであるようなところまで。生きていられる間に少しでも遠くへ(p.390)◆まさか。「信じて」はいない。「信仰」ではなく「意志」。でもそれがどこへ向けられているか、私は知らない。(p.464)◆◆◆◆(2021/10/17読了分)穂村弘作品で何度かふれられていて気になったので。これから泳ぎにいきませんか、という本のタイトルにもなった発言は、夜十時の打ち合わせが終わったタイミングで、二階堂さんから穂村さんへ発された言葉。机の上に差し出された水着とともに。その後泳ぎにいったかどうかは語られてないのだが。膨大な読書量と思索、くりかえし語られる神への愛、耽美的な指向、フェミニズム思想、コスメへの愛、E.M.シオランさえ手ぬるいと感じさせる厭世思想、人生の時々を支えてくれる書物からの言葉。死の間際の死へ踏み出し踏みとどまり揺れている様は読んでるこちらまで苦しさに震えてきた。著者を導き照らしていた雪雪さんの文章を読みたくなった。巻末に著者と生前かかわった人たちからの文が寄せられているが、津原泰水のが一番痛切だった。/シモーヌ・ヴェイユ「重力と恩寵」を読もうか（自分がぐちゃぐちゃになるとこの本を読みたくなる）(57)/愛欲がらみの犯罪を立て続けに見せられると、恋愛という、一つ一つが特別で一回限りと思われるものが、実は誰にでもどこにでもいつでもあるごくごく陳腐なものだと思い知らされる。それでもいいのだ。(63)/わたしは生きていることに絶望などしない。なぜなら希望を持っていないから。それは生を悪いものとして低く評価しているということではなくて、評価をしていないということである。生を呪うのは裏切られた者だけで、そして裏切られるのは信じていた者だけなのだ。(96)/「もしもし、二階堂です。私あと五分で昼休みが終わるのですが、今神保町にいまして、古本の神様があと二軒廻ってから帰れといので休憩を三〇分いただきます。」(164)/私はしばしば罰せられ許されたいと思う。私は完璧ではなく、罰せられてしかるべき存在であるのにもかかわらず、愛されたいと願う。(197)/泣いているのは世界が美しいからです。世界が美しいのは、失われるからです。とても綺麗です。どうか、この一瞬にすべてが消えますように(340)/「そうよね。自分を自分で作れないで生きていて、どうするっていうのよね」(393)/165 あまりにも激しく祈る者は、自分に向けられた祈りには応えないもの。（雪雪「叙景集」『醒めてみれば空耳』）(427)/幸せになって。私をしあわせにしてくれたみたいに、哲、自分をしあわせにして。(525)/君は何度も僕を助けてくれたのに、僕は君を助けられなかった。無垢な魂の悲鳴に耳を傾けなかった。死ぬまで悔やむだろう。(津原泰水)(549)
 | 亜紀書房 発売日 : 2022-07-21 |
済東鉄腸さんの本で知り、手に取る。ルーマニアの方が日本語で書いたと。自然でいて味わい深い文章。青森の自然、ルーマニアの森、社会主義の悪と資本主義の悪…優しい地獄。チェルノブイリの子供。女であることの生きづらさ。映画への思いから、現在の研究のことなどがつづられていく。特に印象に残ったのは◆夫の服に着替えて雪かきを始める。こうしていつも彼の身体を借りる。男の服を着るのが好きな私。彼の魂を盗んでいる気分だ。p.168-169◆その時、友人は悟った。こんなに身近な人が死んでも何も変わらない。「私が死んでも何も変わらない」。死んでも何も変わらないのであれば、生きて世界を変えよう。p.219◆かな。
 | ぶんか社 発売日 : 2018-11-14 |
1-2巻読了。ルチャ・リブロの本を読んだ後に、「東吉野村が舞台の漫画がある！」と知り手に取った一冊。両親を亡くして一人暮らしの中学生海青子。その隣にあてもなく東京での仕事をやめて、祖父の暮らしていた家に来た祐。東吉野のおいしい食材と海青子の料理が祐を癒し、ゆっくりと次の道を見つけてゆく助けに。お互いを気遣い労わる心遣いがあたたかく。ただ2巻末にまたまだ続きますよ、と書かれてから三年経つのに続刊が出てないのは何かあったのかなあ。
 | クリーク・アンド・リバー社 発売日 : 2014-05-29 |
…オババ関連の箇所拾い読みと、巻末の対談を。オババ、高名な文学研究者だったとは。オババの高圧的な接客に憤慨しつつも、その背後にある本への慈しみに思いを馳せたり。オババと書いたことを本人に謝罪に行ってたとは知らなかった。◆そして巻末の対談。電子版あとがきがまた良い◆なぜ当時この本が爆発的に受け入れられたか全くわからないと目黒さん。今までも読み返してないけどこれからもきっと読み返さない、椎名誠自身にも手に負えないカイブツのような本という述懐も興味深く。スーパーエッセイが「超」じゃなくて、「スーパーマーケット」のほうだったとは。
 | 新潮社 発売日 : 2023-01-07 |
ホテル企画会社につとめる社員たちが、持ち回りで、自分へのご褒美に企みに満ちた素敵なホテルをめぐるストーリー。千葉にも佐原という小江戸があったんだ、とか、平日はホテルぐらし女子みたいな登場人物にモデルがいたんだ、とか、誰かを喜ばせるための空間でくつろぐ喜びが描かれていたり、そこに30歳を超えた社会人の抱く自由、実家の家族との関係性、パートナーとのすれ違いと和解などが織り込まれ、といったあたりがよかったなあ、と。
 | クリーク・アンド・リバー社 発売日 : 2014-06-05 |
表題作のみ再読。まずもってケンカで目黒考二が椎名誠を圧倒とかあり得ないと思いつつも、編集上で対立してケンカで目黒考二が椎名誠を圧倒、という設定。あまりに悔しくて、めずらしい明治のミニコミを見せるからと椎名誠がめぐろ・こおじを東京郊外の蔵におびき寄せて監禁。活字禁断症状に陥らせて…という話を読み返したくって。活字不足になりすぎて、ちぎったスーパーのチラシを蔵の窓から投げ込まれただけで狂喜乱舞するめぐろ・こおじ。可笑しみもありつつも、なんだか自分も同じ境遇に置かれたら同じ風になってしまうのではないか、と思うぐらいには活字中毒の自覚はあったりする。◆「流し読みするような人は人間的に何か欠陥があるんだと思う。普通の神経じゃそんなことできないでしょう」 と、めぐろ・こおじは言った◆
 | KADOKAWA 発売日 : 2023-12-28 |
「カラオケ行こ！」の続編と知り、手に取る。さとみくんのどこか人を突き放せないようでいて、自分の弱さも把握しつつ、狂児に反発しつつも、どこか親しみを感じていることが感じられるやりとりにしみじみいいなあ、と思いつつ。ヤクザの息子で家出してマンガ家になった男、お調子者でにくめない友達、バンドのボーカルやってるバイト先のい先輩など、個性豊かな登場人鬱たちからも目がはなせず。たこ焼きもぐもぐ学部のやりとりのくだりが特に好きでした。◆よし「カラオケ行こ！」も読み直そうと思ったら、借りて読んでたらしく手元になく、勢いでkindleで買って読み直して、そのあとまた「ファミレス行こ！」上巻読み直しちゃうくらい、面白くてツボでした。
 | 岩波書店 発売日 : 2023-08-18 |
トルコの立場に立った視点、トルコを内側から見たトルコ側の論理を知るという意味では、サブタイトルにある自画像を知るにはよい本と思えた。特に、与党議員に確認して、イスラム的な価値に従えば、民族問題など無意味という意見を引き出したり、2023年総選挙で野党6党の統一候補クルチダルオウルの演説が穏健なものから排外的なものへと変貌していく様、その際の選挙ポスターに触れられていた点など。エルドアンの成果は、それまでの政権や政党がなし得なかった、多くの貧困層がまともな暮らしをできるようにしたこと。ゲジェコンドゥ問題の解消や交通渋滞対策は大きな成果をあげ、エルドアン政権が20年存続した原動力となった、と。EUに対しては、トルコ国民はヨーロッパとのつながりを重視し、EUへの加盟を望んでいる、EUスタンダードの法改正もすすめてきた。それなのになぜ、という著者の思いが感じられる。「エルドアン政権は、イスラム主義の限界を知ることになった。強すぎるナショナリズムをイスラムのロジックで緩和し、民族間の融和を図るというイスラム主義の実験は20年間の政権下では成功しなかった。」(p.207)しかし無駄ではなかった、世俗主義やナショナリズムへの挑戦でトルコは新たな経験値を得たから、という論調。そういった意味では今後の展開についても明るいものがあるのでは、といったところか。
 | スクウェア・エニックス 発売日 : 2023-12-25 |
日高の、未練を断ち切るかのような恋敵の母との対峙-恋敵同志の付き合いを認めさせる-と、自分を振った男のスパルタ家庭教師。なぜ教師を目指したかの一端が明かされ。そして、回想から戻って、ゲーム部の設立を願う生徒と、ゲームを絶対悪とみなす校長の間に立ち日高先生の打つ次の手は！といったところまで。ずーっと力入って見てて、読んでる方もみなぎってきました。
 | 朝日新聞出版 発売日 : 2010-09-17 |
ele-king別冊アンビエント・ジャパンで参考文献にあげられていて気になり、手に取る。個人的には、2000年代に、リブロポートの本を読んだり、ナディッフに行ったりしたことはあったけれど、セゾン文化がピークの頃には残念ながらふれることができなかった。その自由で、何か最先端の文化が生み出されそうな空気というのは、今の時代から見ても憧れるものがある。ボードリヤールやフーコーやコジェーヴを語ることと、洋服や本やテーブルを売ることがつぎ目なしに連続していると信じられる空気。客と店員が作家や作品について話し込むことは珍しくなかったアール・ヴィヴァン。あのころの西武流通グループ全体に共有されていた「演劇的振る舞い」「演じる」という意識。そういったきらびやかな一面に反して、「この穀潰しが」といった視線…この国の人びとの、直接お金を生まないものに対する感情嫉妬と羨望と軽蔑と憎悪――とも通底しているのかもしれない(セゾングループの凋落後、堤清二に向けられた批判の根もそこにあると著者は考えている)、といった点もおさえられている。◆美術館は道楽でもなければ販促の道具でもなかった。もっと積極的に、百貨店のなかで現代美術を紹介することによって何かが生まれると信じていたのではないか。価値あるものを並べるのではなく、何が並べることによって新たな価値を生み出そうとした、と言い換えてもいい。「それが本業にも必ず反映されるはずだと思っていた（略）」(p.110)◆セゾン文化とは何だったのか。(略)壮大なる同床異夢、と言うことはできないか。 堤/辻井と彼のまわりに集まってきた、スタッフやクリエイター、芸術家、批評家、観衆、そして消費者、すべてが、 《セゾン文化》の名のもとで、少しずつ違った夢を見ていたのではないか(p.272-274)◆決して、何も残らない虚像ではなく、関わった多くの人にさまざまなものを残したし、文化的な貢献も少なからずあったんだよ、ということが語られているように思った。◆「武満徹をめぐる15の証言」2007小学館、獅子文六「箱根山」(…西武と東急の戦争を題材)、ジャック・プレヴェールあたりは手に取りたいと思った。そして堤清二/辻井喬という人にすごく興味がでてきた。
 | 角川学芸出版 発売日 : 2004-06-25 |
宮内悠介「ラウリ・クースクを探して」を読んだら、猛然と読み返したくなった一冊。10代前半、プラハのソビエト学校に通っていた米原さんが、40代になり、旧友３人を探し出し、会いに行くストーリー。誰よりも聞きかじりの性の知識が豊富で、女優になって片っ端からいい男と寝てやるんだから、と言ってたギリシア人のリッツァは、ドイツで医師になっていて、おおげさな革命的言辞が敬遠されてたけど誰よりも友達思いなアーニャは、イギリスで編集者をして、そしてクールで知的で葛飾北斎を崇拝していて「浮世絵マスターになる！」と言っていたヤスミンカは、内戦真っ只中のベオグラードでフリーの翻訳者となっていた。それぞれが、学校時代に祖国への愛憎半ばする思い、祖国間の関係が友人関係にも影響してくる理不尽さを味わい。30年以上経って明かされる「真実」は、オトナになってふりかえればさもありなん、と思える…ことばかりではないけれど。誰もが平等な社会をめざすべき社会主義の国で、あっけらかんと特権を享受し、当たり前のことと思ってる家族に、米原さんはつい詰問口調でせまってしまい、自分が同じ立場におかれたらはねのけられるだろうか、と自問し、しかし、アーニャとは最後までわかりあえず。個人的には、ヤスミンカの章が一番よみごたえがあった。米澤穂信「さよなら妖精」に影響されて、ユーゴ内戦の本を何冊も読んでいた時期があった身にはとくに。
2023年12月31日
2023年に読んだ本best10
順不同で、今年読んだものから10冊。
シリーズのものは一作として扱いました。
・「本の雑誌の目黒考二・北上次郎・藤代三郎」本の雑誌社
・平野啓一郎「ある男」文春文庫
・島田潤一郎「古くて新しい仕事」新潮社
・北海道放送報道部道警ヤジ排除問題取材班「ヤジと民主主義」 ころから
・吉村栄一「坂本龍一 音楽の歴史」小学館
・門井慶喜「おさがしの本は」光文社文庫
・山本弘「神は沈黙せず」(上)(下) 角川文庫
・高橋美野梨(編)「グリーンランド 人文社会科学から照らす極北の島」藤原書店
・芦原妃名子「セクシー田中さん」1-7 フラワーコミックスアルファ(小学館)
・宮内悠介「ラウリ・クースクを探して」朝日新聞出版
・「本の雑誌の目黒考二・北上次郎・藤代三郎」本の雑誌社
今年亡くなった目黒考二さん。平日は本を読み、仕事をし、休日は競馬場ですごし。本を読むために会社を辞めたりしていた目黒さんがたどりついたのは、書評雑誌会社の社長。社長業が忙しすぎて本がなかなか読めない時期もあったみたいだけど、結局は膨大な本を読み、それを仕事にし、と。本人の本への思い、目黒さんへの周囲の思いがつづられた一冊。読み終えて、「黒と誠」や目黒さん、椎名さんの本など大量に読み返しました。
・平野啓一郎「ある男」文春文庫
今年始めて参加したアゴラ読書会での課題本。読んで、自分なりに考えをまとめ、読書会に出て、そんな読み方もあるのか！と刺激を受け、再読し、映画版も観て、ひとりの人間の多面性ということに思いを馳せて、かなり深いところまで味わえた一冊。
・島田潤一郎「古くて新しい仕事」新潮社
一読、かなりガツンと食らって、あまりに衝撃がありすぎて、次の読書会「雨デモ晴レテモ」でその一節をわざわざ朗読したぐらい、印象に残った本。それはこんな一節でした。「最初にひとりひとりの生活があるのだ。最初にかけがえのない個人がいて、その人の家族がいて、友人がいる。彼らと話し、ともに出かけ、食事をする。彼らをどう思い、彼らのためになにをしようと思うか。そういうきわめて個人的なことが、文章となり、本となることで、永遠の命を持つ。ぼくがつくりたいのは、そういうものなのだった。/聞き取れないような小さな声。その人しか知りえない私的な事柄。小さな喜び。悲しみ。/それらを綴る文章もまた静かなものだろう。本の装丁もその内容にあわせて、落ち着いたものになるだろう。/その本は売り場では目立つことはないかもしれないが、そういう本を求めている人にはきっと届く。/ぼくは長く、そういうことを経験している。」(p.207)
・北海道放送報道部道警ヤジ排除問題取材班「ヤジと民主主義」 ころから
前から追っていた問題が本になり、映画になったのでどちらも手に取り、観に行き。黙っていれば、権力の有るもののいいようにされてしまう世の中で、声をあげることの大切さを痛感しつつ、あげられてない己をふりかえりつつ。関連書としては、この問題をとりあつかったzine「ポイズン通信DX」も。
・吉村栄一「坂本龍一 音楽の歴史」小学館
この書を半分まで読んだところで、坂本龍一の訃報に接し、その後、残り半分を読んだ一冊。この本が入口となって、その後、新刊既刊あわせて、(1)坂本龍一 後藤繁雄 skmt、(2)坂本龍一（編） 非戦、(3)坂本龍一 音楽は自由にする 新潮文庫、(4)坂本龍一 龍一語彙 二〇一一年-二〇一七年-(5)Music Magazine 2023年6月号 特集・追悼坂本龍一(6)坂本龍一 ぼくはあと何回、満月を見るだろう、(7)SWITCH Vol.41 No.7 特集 坂本龍一 Ars longa, vita brevis. 芸術は長く、人生は短し(8)坂本龍一 Seldom‐illegal 時には、違法、(9)坂本龍一 福岡伸一 音楽と生命、(10)坂本龍一 坂本図書、(11)ユリイカ2023年12月臨時増刊号 総特集＝坂本龍一 1952-2023 と読み進み、Apple Musicのサブスクに入って、坂本龍一を聴きまくる入口になった本。
・門井慶喜「おさがしの本は」光文社文庫
図書館を舞台にした謎解きにいどむ司書、と聞いただけで手に取らずにはいられなかった。今年の収穫は門井慶喜を知ったこと。図書館、文書館、古書店が舞台の小説、美術探偵シリーズなど、魅惑的なラインナップ。この本があまりによかったので「小説あります」「天才たちの値段(美術探偵・神永美有1) 」「天才までの距離(美術探偵・神永美有2)」「注文の多い美術館(美術探偵・神永美有3) 」「パラドックス実践 雄弁学園の教師たち」「この世にひとつの本」「定価のない本」と読み進んじゃいました。
・山本弘「神は沈黙せず」(上)(下) 角川文庫
もし、この世界が、はるか天空の果てにいる超越者があやつる実験場みたいなところだったら。「フェッセンデンの宇宙」に想を得て、壮大なスケールで組み立てられるSF。発想がぶっとびすぎて、鼻面ひきずりまわされて、のめりこんだ上下巻。
・高橋美野梨(編)「グリーンランド 人文社会科学から照らす極北の島」藤原書店
以前からのグリーンランド好きにはたまらない一冊。各方面から多面的に分析されたグリーンランド像を手に取ることができてしびれました。
・芦原妃名子「セクシー田中さん」1-7 フラワーコミックスアルファ(小学館)
1巻が出たのはだいぶ前だけど、今年は最新刊が出ては全巻読み返し、ドラマ化されては全巻読み返し、具合が悪くなれば布団の中で全巻読み直し（寝ろよ…という話もありますが）、と何度となく読み返したシリーズ。田中さんの生きる姿勢で、朱里が、笙野がいい方向に変わっていって、それでいて田中さんを支えて、という善き相互関係がまたよくて。
・宮内悠介「ラウリ・クースクを探して」朝日新聞出版
ソ連時代のエストニア生まれでプログラマーをめざしていたラウリが、ソビエト崩壊、エストニア独立という歴史の渦に巻き込まれて、翻弄されて、一度は目指した道をあきらめるが、元の道に引き戻してくれた人、年を経て彼を探してくれた人がいて、そこで語られたことは…と。初読、即再読したぐらい魅力にあふれた一冊でした。
シリーズのものは一作として扱いました。
・「本の雑誌の目黒考二・北上次郎・藤代三郎」本の雑誌社
・平野啓一郎「ある男」文春文庫
・島田潤一郎「古くて新しい仕事」新潮社
・北海道放送報道部道警ヤジ排除問題取材班「ヤジと民主主義」 ころから
・吉村栄一「坂本龍一 音楽の歴史」小学館
・門井慶喜「おさがしの本は」光文社文庫
・山本弘「神は沈黙せず」(上)(下) 角川文庫
・高橋美野梨(編)「グリーンランド 人文社会科学から照らす極北の島」藤原書店
・芦原妃名子「セクシー田中さん」1-7 フラワーコミックスアルファ(小学館)
・宮内悠介「ラウリ・クースクを探して」朝日新聞出版
・「本の雑誌の目黒考二・北上次郎・藤代三郎」本の雑誌社
今年亡くなった目黒考二さん。平日は本を読み、仕事をし、休日は競馬場ですごし。本を読むために会社を辞めたりしていた目黒さんがたどりついたのは、書評雑誌会社の社長。社長業が忙しすぎて本がなかなか読めない時期もあったみたいだけど、結局は膨大な本を読み、それを仕事にし、と。本人の本への思い、目黒さんへの周囲の思いがつづられた一冊。読み終えて、「黒と誠」や目黒さん、椎名さんの本など大量に読み返しました。
・平野啓一郎「ある男」文春文庫
今年始めて参加したアゴラ読書会での課題本。読んで、自分なりに考えをまとめ、読書会に出て、そんな読み方もあるのか！と刺激を受け、再読し、映画版も観て、ひとりの人間の多面性ということに思いを馳せて、かなり深いところまで味わえた一冊。
・島田潤一郎「古くて新しい仕事」新潮社
一読、かなりガツンと食らって、あまりに衝撃がありすぎて、次の読書会「雨デモ晴レテモ」でその一節をわざわざ朗読したぐらい、印象に残った本。それはこんな一節でした。「最初にひとりひとりの生活があるのだ。最初にかけがえのない個人がいて、その人の家族がいて、友人がいる。彼らと話し、ともに出かけ、食事をする。彼らをどう思い、彼らのためになにをしようと思うか。そういうきわめて個人的なことが、文章となり、本となることで、永遠の命を持つ。ぼくがつくりたいのは、そういうものなのだった。/聞き取れないような小さな声。その人しか知りえない私的な事柄。小さな喜び。悲しみ。/それらを綴る文章もまた静かなものだろう。本の装丁もその内容にあわせて、落ち着いたものになるだろう。/その本は売り場では目立つことはないかもしれないが、そういう本を求めている人にはきっと届く。/ぼくは長く、そういうことを経験している。」(p.207)
・北海道放送報道部道警ヤジ排除問題取材班「ヤジと民主主義」 ころから
前から追っていた問題が本になり、映画になったのでどちらも手に取り、観に行き。黙っていれば、権力の有るもののいいようにされてしまう世の中で、声をあげることの大切さを痛感しつつ、あげられてない己をふりかえりつつ。関連書としては、この問題をとりあつかったzine「ポイズン通信DX」も。
・吉村栄一「坂本龍一 音楽の歴史」小学館
この書を半分まで読んだところで、坂本龍一の訃報に接し、その後、残り半分を読んだ一冊。この本が入口となって、その後、新刊既刊あわせて、(1)坂本龍一 後藤繁雄 skmt、(2)坂本龍一（編） 非戦、(3)坂本龍一 音楽は自由にする 新潮文庫、(4)坂本龍一 龍一語彙 二〇一一年-二〇一七年-(5)Music Magazine 2023年6月号 特集・追悼坂本龍一(6)坂本龍一 ぼくはあと何回、満月を見るだろう、(7)SWITCH Vol.41 No.7 特集 坂本龍一 Ars longa, vita brevis. 芸術は長く、人生は短し(8)坂本龍一 Seldom‐illegal 時には、違法、(9)坂本龍一 福岡伸一 音楽と生命、(10)坂本龍一 坂本図書、(11)ユリイカ2023年12月臨時増刊号 総特集＝坂本龍一 1952-2023 と読み進み、Apple Musicのサブスクに入って、坂本龍一を聴きまくる入口になった本。
・門井慶喜「おさがしの本は」光文社文庫
図書館を舞台にした謎解きにいどむ司書、と聞いただけで手に取らずにはいられなかった。今年の収穫は門井慶喜を知ったこと。図書館、文書館、古書店が舞台の小説、美術探偵シリーズなど、魅惑的なラインナップ。この本があまりによかったので「小説あります」「天才たちの値段(美術探偵・神永美有1) 」「天才までの距離(美術探偵・神永美有2)」「注文の多い美術館(美術探偵・神永美有3) 」「パラドックス実践 雄弁学園の教師たち」「この世にひとつの本」「定価のない本」と読み進んじゃいました。
・山本弘「神は沈黙せず」(上)(下) 角川文庫
もし、この世界が、はるか天空の果てにいる超越者があやつる実験場みたいなところだったら。「フェッセンデンの宇宙」に想を得て、壮大なスケールで組み立てられるSF。発想がぶっとびすぎて、鼻面ひきずりまわされて、のめりこんだ上下巻。
・高橋美野梨(編)「グリーンランド 人文社会科学から照らす極北の島」藤原書店
以前からのグリーンランド好きにはたまらない一冊。各方面から多面的に分析されたグリーンランド像を手に取ることができてしびれました。
・芦原妃名子「セクシー田中さん」1-7 フラワーコミックスアルファ(小学館)
1巻が出たのはだいぶ前だけど、今年は最新刊が出ては全巻読み返し、ドラマ化されては全巻読み返し、具合が悪くなれば布団の中で全巻読み直し（寝ろよ…という話もありますが）、と何度となく読み返したシリーズ。田中さんの生きる姿勢で、朱里が、笙野がいい方向に変わっていって、それでいて田中さんを支えて、という善き相互関係がまたよくて。
・宮内悠介「ラウリ・クースクを探して」朝日新聞出版
ソ連時代のエストニア生まれでプログラマーをめざしていたラウリが、ソビエト崩壊、エストニア独立という歴史の渦に巻き込まれて、翻弄されて、一度は目指した道をあきらめるが、元の道に引き戻してくれた人、年を経て彼を探してくれた人がいて、そこで語られたことは…と。初読、即再読したぐらい魅力にあふれた一冊でした。
 | 本の雑誌社 発売日 : 2023-09-24 |
帯の「本だけ読んで暮らしたい」をブレずに地で行った人生だったんだなあというのが読後感。もちろん自分も創業メンバーとなった本の雑誌社立ち上げからしばらくは本を読む時間も大幅に削られたと思われるけど、それでも。本を読むこと、ギャンブル、書評仕事、これらで人生の大部分が占められ。多くの人の亡くなったことを惜しむコメントを見ても、（人の話を聞かない、遊びに悪い感情を持ち込むなといいつつ自分でできてない、などありつつも）愛されてたんだなということが伝わってきて。あと、ベストテンはお遊びよね、本人もルールぶれぶれと言ってるくらいだし、概ね、賞で評価されない、まだ陽の当たってない作家のよい作品をできるだけプッシュしたいという傾向はあれど。亡くなったあとの目黒さんの蔵書を片付けに言ったメンバーの悲喜こもごも。目黒さんの一日書店員体験記。椎名誠のカツ丼12個！の衝撃。「私の書斎はもっぱら駅のベンチだ」。どこに旅行、だれとつきあい、ふられたとかまで克明に記された巻末の年譜。あたりが印象に。あと読みたくなった本が目白押しでうれしい悲鳴。◆本を読むという行為を、能動的なもの、世界を変えうる行為だとしたのは佐々木中だったp.45(鏡明)◆目黒の書評の中で何が好きかって問われたら、躊躇なく「感情の法則」と答えるp.67 (菊池仁)
 | 文藝春秋 発売日 : 2021-09-01 |
三年九ヶ月暮らした夫が死んでわかったことは、彼の過去も名前もみな他人のものだったということ。では、夫とは誰だったのだろう？◆その謎を追っていく弁護士と、彼から話を聞いたのが作者だった、という設定で◆語られるうちに浮かび上がってくるのは「愛にとって過去とは何だろうか」「愛にとって過去は必要なのだろうか」「本物の愛とは」という問い。そして、「自分が違う人の人生を生きていたら」「途中から誰かが自分の人生をひきついだら、もっとうまく生きてくれたんじゃないか」という思い。◆すべては、「一緒に過ごした三年九ヶ月の間に、初めて幸福を知ったのだと思います。彼はその間、本当に幸せだったでしょう。短い時間でしたが、それが、彼の人生のすべてだったと思います。(p.366)という言葉に収斂されていくのだろうか。◆本物の愛、本物の幸福、本物の理解…たとえそれをつきつめなくたっても、そこには確かに幸せな時間が、幸せな記憶があった、それを持つことができる、ということなのかと自問しつつ。そして冒頭とラスト近くをつなぎあわせると、城戸は今は孤独の淵に沈んでいるのだろうか。以下備忘録として。◆◆「アイデンティティを一つの何かに括りつけられて、そこを他人に握り締められるってのは、堪らないですよp.154◆◆先生は、在日っぽくない在日ですね。でも、それはつまり、在日っぽいってことなんですよ。私みたいな詐欺師と一緒で。p.169…小見浦◆◆人はなるほど、「おもいで」によって自分自身となる。ならば、他人の「おもいで」を所有しさえすれば、他人となることができるのではあるまいか。p.200◆◆誰も、他人の本当の過去など、知ることは出来ないはずだった。(略)本心などというものは、わかると考える方が思い上がっているのだろうか。p.294◆◆僕たちは誰かを好きになる時、その人の何を愛しているんですかね？…出会ってからの現在の相手に好感を抱いて、そのあと、過去まで含めてその人を愛するようになる。p.314
 | 新潮社 発売日 : 2019-11-27 |
ひとり出版社夏葉社をたちあげた島田潤一郎さんのエッセイ。同じ著者の「あしたから出版社」「本屋さんしか行きたいとこがなかった」を読んできたので、内容重なるところもあったけど、より仕事論、読書論、出版論といった観点で、静かだけれど熱い思いが語られている、と感じた。大資本のサービスは、いろいろなものを安価に、容易に入手できるようになり、すぐに手元に届くようになったが、その代わり仕事の選択肢が減ったという観点。数値化されず、SNSで拡散されず、多くの人に共有されない思い出の大切さ。「一回読んだだけではわからないけれど、ずっと心に残る本。友人に話したくなるけど、上手く伝えられなくて、「とにかく読んでみてよ」としかいえない本。ぼくの孤独な時代を支えてくれた大切な本。ぼくが死んだあとも残る、物としての本。」(p.64)を作りたいという思い。むかしの作家の作品に込められた滋味。「本を読むということは、現実逃避ではなく、身の回りのことを改めて考えるということだ。」（p.112)。といったあたりに特に惹きつけられた。そして、個人的にはこの本の肝ともいえる207頁の次の一節は、何度も何度も読み返してかみしめて、自分のなかに深く浸透していくのを感じた。ほとんど泣きそうになってしまった。嗚呼、本当にこの本を読んで良かったと思えた。◆最初にひとりひとりの生活があるのだ。最初にかけがえのない個人がいて、その人の家族がいて、友人がいる。彼らと話し、ともに出かけ、食事をする。彼らをどう思い、彼らのためになにをしようと思うか。そういうきわめて個人的なことが、文章となり、本となることで、永遠の命を持つ。ぼくがつくりたいのは、そういうものなのだった。/聞き取れないような小さな声。その人しか知りえない私的な事柄。小さな喜び。悲しみ。/それらを綴る文章もまた静かなものだろう。本の装丁もその内容にあわせて、落ち着いたものになるだろう。/その本は売り場では目立つことはないかもしれないが、そういう本を求めている人にはきっと届く。/ぼくは長く、そういうことを経験している。(p.207)
 | ころから 発売日 : 2022-11-07 |
(2023/07/26読了分)映画「ヤジと民主主義」を観たのを機に再読。警察の中に治安維持のためなら多少の違法行為は許されるという風潮。警察は間違ってました、ごめんなさいというしかないのに、決して非を認めず謝罪しない、だから引き伸ばす、世の中が忘れるのを待つ。誰かの権利が奪われることに無関心な社会は、権力の暴走を許すことにつながるのでは。動画という強力な証拠がポイント。組織犯罪多岐作の法律化は警察の権限強化でもあった。法的な根拠がないまま監視やプライバシー侵害につながるものが広がる。といったあたりが今回読んで目にとまった。高裁判決はだいぶ後退したいけれども、行く末を注視したい。原田宏二「警察捜査の正体」（講談社現代新書）を手に取りたくなった。「ジャーナリズムとは報じられたくないことを報じることだ。それ以外のものは広報に過ぎない」（ジョージ・オーウェル）(2023/03/11読了分)事件の経過はそれなりに追ってきたつもりだった。ヤジポイの会のzineも読んだりして。判決は原告のほぼ全面勝訴。ただ、街宣車のほうに向かっていった行為は静止されても仕方ないとされた、など判決の詳細を読めたのは収穫。これだけ動画という動かぬ証拠を出されながら、上告した警察には疑問。また裁判の過程でも、動画を示されても覚えてない、動画に残されてないことをあった、言われていたなど強弁してきてて非常に腹立たしい。大杉さん、桃井さんの声をあげた勇気には感服。同じことが自分にできたかと思うとむずかしい。元警察官の「元々警察っていう組織の中に治安維持のためであれば、多少のやりすぎとか、違法なことをしても許されるんじゃないのという風潮があるんですよ 」(p.195)「警察が既成事実を積み重ねているうちに、国民の権利がわからないところで危険にさらされている部分があるんだよっていうことを皆さんわかってないんじゃないでしょうかね。(p.201)というコメントには背筋が寒くなる。「権力者にとっては抗議の声は不都合なものというか、やっぱり怖いものなのだと改めて思った。（略）声を上げる権利を守るというのが、人が尊厳を持って生きるうえで大切だと思った(p.167)、あるいはいちばん最後の「 勇気を出して声を上げることの大切さを改めて私は教えられた。（略）今日もどこかで誰かが、声を上げている。民主主義とは、このような声によって、ようやくもちこたえられている。」という言葉をかみしめつつ。デモとかヤジとかじゃ何も変わらないと思っていた過去の自分の認識を恥ずかしく思いつつ。
 | 小学館 発売日 : 2023-02-21 |
生まれてから2022年までの生涯を。時々、年表をバラして書いているような読み味のところもあったけれど、知りたかったこと多数で、読んでよかった一冊。中学校の吹奏楽部でチューバ吹いてたというのはチューバ吹きとしては見逃せず。世の多くの人は14-18歳までの時期に触れた音楽に終生影響を受けるという説。武満徹批判ビラ配り事件。間章、阿部薫との交流。YMOとして売れる→自身のイメージも消費される恐怖、反YMO的な違和感。1996年、薬害エイズ訴訟支援→政治的発言開始。本人的には極上のポップミュージック、しかし売上や反響が思ったほどでなく、自分がポピュラーやる意味って、と思ったこと。雑誌「エロコト」「ラブコト」の刊行。macのプラグインで変わった音出すのは若い人たちにまかせて、自分はピアノという古くからの楽器でこんな音が出せる！といいたい。自作曲の、オケやピアノトリオでの再解釈による新たな発見。武満徹が生きてたら聞いて欲しかった曲は
「Walker」、自然音と楽音が50:50で使われている。2021年の記述が3頁しかないのが、コロナ禍のインパクトを伝える。自伝「音楽は自由にする」の続編の「新潮」の連載にもあたってみたい。
「Walker」、自然音と楽音が50:50で使われている。2021年の記述が3頁しかないのが、コロナ禍のインパクトを伝える。自伝「音楽は自由にする」の続編の「新潮」の連載にもあたってみたい。
 | 光文社 発売日 : 2011-11-10 |
目黒考二「息子たちよ」で図書館が舞台の連作ミステリがあると知り手に取る。しかも主人公は図書館のレファレンス担当！個人的には俄然興味が増す。短大生の国文学のレポート、赤富士の写真が表紙の児童書探しと来て、図書館を潰そうと赴任してきた図書館長が赴任してきて出してくる難題、死の直前の老夫が返却しておいてほしいと頼んだ本と来て、最後は図書館の存続を賭けた戦い…と。本にまつわる話がこれでもかと出てきて、探してる本はこれだ！となった後のどんでんがえし、ヒールと思えた館長が実は大の本好きで、主人公と志は違えど、本について、仕事について語り合う丁々発止なところなど読みどころたくさんで楽しく読めた。◆本は酒と同じだ。ほどほどにしないと身体をむしばむ(p.194)◆レファレンス・カウンターは調査を助ける存在です。調査そのものは相談者自身がしなければならない。それと同様、書物というのは、ただ人間を助けるだけの存在なのです。最終的な問題の解決はあくまで人間自身がおこなわなければならない。p.323◆
 | KADOKAWA 発売日 : 2006-11-23 |
上下巻、読了。神は実在するのか、実在するとして神の意図とは。われわれは単なるシミュレーションではないのか。おおがかりな仕掛けで壮大な思想を語る。神に対しての仮説にはおおいにうなづく。ヨブ記の解釈のあたりは個人的には出色。世界は分けてもわからない（福岡伸一）を地でいくようなさまざまな事象の統合ぶりには唸る。腕のあるSF作家の面目躍如か。ちょくちょく目の辺りにするのは、信じていたことが嘘だと暴かれても、それがどうしたの？と真実に目を背け、自分の信じたいことだけを真実人たちの姿。「神の教えと人間としてのモラルが食い違ったら、人間としてのモラルを優先すべきよ。もし神が「殺せ」と命じたら、逆らうべきなのよ。そうでしょ？だったら最初から神の教えなんか必要ない。「人間として正しく生きよう」と言えばいいだけのことじゃない？」(下巻p.358)
 | 藤原書店 発売日 : 2023-08-29 |
個人的な昔からのグリーンランドへの憧れだけで手に取った本。「本書は、西から東へ移動したエスキモーと、東から西へと新たな地平を求めたノース人／デンマーク＝ノルウェー同君連合出身者との<合流>の輪郭を、通時的且つ分野横断的に跡付けることを目指して編まれたものである。」(p.362)とあるが、合流があった、という認識すらなかったので収穫。その一環として、近代-未開の構図から近代化の度合いを評定していく思考態度を退け、文化相対主義的に先住民の世界観を尊重することをも超え、先住民の立場から、彼らの世界観を自己呈示するプロジェクトも示された。それは、なかなかに慎重にして精緻な道を耐えずたどろうとする試みと思えた。興味深かったのは、グリーンランドにおける儀礼が、他の植民地支配と比較して穏健な面があり、またグリーンランドの人々の中で、集団で争い合うこともなかったことから、逆に守り抜こうという機運が起こらず、喪失していったのでは、という論点。また、デンマーク、フェロー諸島、グリーンランドの三者の関係を軸に、お互いにどう影響し、自治を獲得し、どのような関係性を結んできたか語った章も興味深く。幸村誠「ヴィンランド・サガ」をずっと読んでる身には、史料上のトルフィンの話にふれられたのも良かった。
 | 小学館 発売日 : 2023-10-10 |
大きく関係性の動いた巻。笙野が、朱里が、自分がいい方向に変われたのは田中さんのおかげだ、と自覚しつつ、それぞれのパートナーへぐっと一歩ふみだしたのと同時に、田中さんも、ただの憧れだからと封をしていた自分の気持ちにすこし正直に、と。何もかもおちゃらけてごまかしてそうに見えた三好さんのバックグラウンドも語られ。そしてドラマ化のはなし、作者のスタンス、マンガとの距離感が記されていて、ドラマ見るのも楽しみに。◆「どん底まで落ちて立ち直ったり開き直ったり強くなったり弱くなったりしながらまた誰かを好きになる」（朱里）◆そして朱里の「田中さんが誰を選んでも誰を選ばなくても」から始まる一文は涙なしには読めなかった。
| 朝日新聞出版 発売日 : 2023-08-21 |
これは何度も読みたい本を見つけたかも。初読、即最初から再読したぐらい魅力的な一冊だった。◆ソ連時代のエストニア生まれでパソコンでプログラミングを学びプログラマーを目指すも、ソ連崩壊の歴史に翻弄されたラウリ。彼を探すターンと交互に語られるが彼を探しているのは…！誰にも自分の人生を可哀想とは言わせない、というカーテャの言葉。アイデンティティは選択してつかみ取るもの、というのがこれほど伝わってくる時代というのもない。共産党員の息子とパルチザンの孫娘が食卓を囲むのはソビエトらしい、てシーンが印象に。そしてライライの「国と国民のデータさえあれば、いつでも、どこからでも国は再興できる。」という信念に裏打ちされた道行きと、結局はラウリを救った成り行きも。歴史に翻弄された、無名の、傍からは何も成し遂げてないように見える、けれどそこに確実にいて、生きているんだ！というのが伝わってくる歓び。「データは不死だ。 ならば、わたしはラウリのデータを書き残す。記憶素子と、水晶の箱庭に。あるいは、図書館という人文のデータ大使館に。青春の一片を、わたしの親友を、わたしはデータとして残すことを選ぶ。 ラウリ・クースクという一人の男の、その生きた軌跡を。」という最後のパートが深く深く響いてくる。
2023年12月03日
2023年11月に読んだ本
1101・【再読】平野啓一郎 ある男
1102・別冊ele-king アンビエントジャパン 20231028
(1103・坪内祐三、広瀬洋一(音羽館)、三浦しをん、目黒考二 高原書店について語ろう！ 「古本の雑誌」所収 図書館20301102受領
1104・馳星周 雪月夜 双葉文庫 図書館20231030受領
1104・角田光代 今日もごちそうさまでした 20231012 …「ハラヘリ読書」つながり
(1104・世界の露店 北十二条書店 20231104
1104・千葉雅也 アメリカ紀行 20231014
(1104・合田一道 定山坊の夢の里 定山渓温泉開湯百五十周年記念 定山渓連合町内会 図書館20301102受領
(1104・ぶらんとマガジン社／編 定山渓 定山渓温泉開湯150周年記念誌 定山渓観光協会 図書館20301102受領 …ざっと
(1105・池澤夏樹個人編集 日本文学全集07 枕草子 方丈記 徒然草 (酒井順子、高橋源一郎、内田樹訳)図書館200231026受領 1029方丈記、1105枕草子（ざっと）読了
1105・山本直輝 スーフィズムとは何か イスラーム神秘主義の修行道 (集英社新書) kindle 20231021
(1105・きのう何食べた？(特装版小冊子付き) 22
1105・くどうれいん 桃を煮るひと
(1105・末森晴賀「17世紀末〜18世紀初頭におけるオスマン朝の「海賊」対策−対ヴェネツィア関係の中で」『日本中東学会年報』38（1）、2022年
1106・坂木司 アンと幸福
1107・サマセット・モーム マウントドレイゴ卿/パーティのあとに 光文社古典新訳文庫 20231102受領 1106読み始め
(1107・角田光代 降り積もる光の粒 図書館20231107受領 …マリ紀行(アフリカ 声なきメッセージ)のみ読了
1108・栗原康 村に火をつけ白痴になれ 岩波現代文庫 …agora課題図書 20231104
(1108・みっけ 知りたいこと図鑑 読書室ポワロ
(1108・週末北欧部chika 北欧こじらせ日記 フィンランド一年生編 kindle
(1109・黒と誠 3 kindle 20231109
(1109・応天の門 18 kindle 20231109
(1109・よしながふみ 環と周 kindle 20231109
1110・中島らも 頭の中がカユいんだ K文庫 20231028 1109読始め 1-3まで読了 4は割愛
1111・永井宏 夏みかんの午後 シーソーブックス 20231103
(1111・衿沢世衣子 光の箱 3
(1112・新田章 あそびあい コミックDAYS
1112・booklogなし【再読】氷室冴子 海がきこえる …1111読始め
1113・booklogなし【再読】氷室冴子 海がきこえるII アイがあるから …1112読始め
1113・【再読】スコット・フィッツジェラルド 夜はやさし 上 角川文庫 …1111読始め
(1115・booklogなし・私市正年 イスラム聖者講談社現代新書 図書館 …ざっと 聖者伝的なのを期待してたが、ちょっと期待と違った。詳細なプロフィールは2名のみ。
(1115・【再読】近藤勝也 氷室冴子 僕が好きな人へ 海がきこえるより 図書館
(1115・kotoba 2021 Summer Issue No.44 特集 ビートルズ 読書室ポワロ
1115・【再読】スコット・フィッツジェラルド 夜はやさし 下 角川文庫
(1115・ヴラド・ドラクラ 7 kindle 20231115
(1116・天上恋歌 8 kindle 20231116
1116・遠藤雅司（音食紀行） 食卓の世界史 ちくまプリマー新書 20231111
(1118・山田胡瓜 AIの遺伝子 Blue Age 7
(1118・真造圭吾短編集 台風のあと ゆとりや 20231118
(1119・七つ屋志のぶの宝石匣20
1119・ユリイカ2023年12月臨時増刊号 総特集＝坂本龍一 1952-2023 kindle20231101
1119・【再読】中野美代子 ザナドゥーへの道
1120・売野雅勇 砂の果実 河出文庫 20231117
(1120・ファリード・ゥッディーン・ムハンマド・アッタール イスラーム神秘主義聖者列伝 国書刊行会 図書館20231118受領
1122・郡司ペギオ幸夫 やってくる シリーズケアをひらく 医学書院 図書館20231120受領
(1122・唯野未歩子 17歳 （「JOY！」講談社、所収）図書館20231122受領
(1123・アサギユメ アタマの中のアレを食べたい 6
1123・平野啓一郎 あなたが、いなかった、あなた 図書館20231122受領
1125・ほしおさなえ 紙屋ふじさき記念館 あたらしい場所 20231124
1125・小笠原弘幸 ケマル・アタテュルク 中公新書 Kindle 20231118
(1126・日常の西餅 1-5 kindle …残酷なこともはっきりいうデッサンの先生好き
(1126・渋谷直角、甲斐みのり 僕のフランス、私の千里 zine 古本トロニカ 20231125
1128・唐澤俊一 古本雑学マニア雑学ノート ゆとりや 20231118
(1129・片岡義男 珈琲が呼ぶ 読書室ポワロ …一杯百円の珈琲、スザンヌ・ヴェガ「トムズダイナー」、5時間で40杯珈琲飲んだ歌、三島由紀夫
(1129・Marie=Madeleine no.4 古本トロニカ 20231125
1129・谷川渥編 三島由紀夫の美学講座 ちくま文庫 20231121
1130・【再読】大江健三郎 「雨の木」を聴く女たち Kindle 20231118
1130・平野啓一郎 高瀬川 20231118
1102・別冊ele-king アンビエントジャパン 20231028
(1103・坪内祐三、広瀬洋一(音羽館)、三浦しをん、目黒考二 高原書店について語ろう！ 「古本の雑誌」所収 図書館20301102受領
1104・馳星周 雪月夜 双葉文庫 図書館20231030受領
1104・角田光代 今日もごちそうさまでした 20231012 …「ハラヘリ読書」つながり
(1104・世界の露店 北十二条書店 20231104
1104・千葉雅也 アメリカ紀行 20231014
(1104・合田一道 定山坊の夢の里 定山渓温泉開湯百五十周年記念 定山渓連合町内会 図書館20301102受領
(1104・ぶらんとマガジン社／編 定山渓 定山渓温泉開湯150周年記念誌 定山渓観光協会 図書館20301102受領 …ざっと
(1105・池澤夏樹個人編集 日本文学全集07 枕草子 方丈記 徒然草 (酒井順子、高橋源一郎、内田樹訳)図書館200231026受領 1029方丈記、1105枕草子（ざっと）読了
1105・山本直輝 スーフィズムとは何か イスラーム神秘主義の修行道 (集英社新書) kindle 20231021
(1105・きのう何食べた？(特装版小冊子付き) 22
1105・くどうれいん 桃を煮るひと
(1105・末森晴賀「17世紀末〜18世紀初頭におけるオスマン朝の「海賊」対策−対ヴェネツィア関係の中で」『日本中東学会年報』38（1）、2022年
1106・坂木司 アンと幸福
1107・サマセット・モーム マウントドレイゴ卿/パーティのあとに 光文社古典新訳文庫 20231102受領 1106読み始め
(1107・角田光代 降り積もる光の粒 図書館20231107受領 …マリ紀行(アフリカ 声なきメッセージ)のみ読了
1108・栗原康 村に火をつけ白痴になれ 岩波現代文庫 …agora課題図書 20231104
(1108・みっけ 知りたいこと図鑑 読書室ポワロ
(1108・週末北欧部chika 北欧こじらせ日記 フィンランド一年生編 kindle
(1109・黒と誠 3 kindle 20231109
(1109・応天の門 18 kindle 20231109
(1109・よしながふみ 環と周 kindle 20231109
1110・中島らも 頭の中がカユいんだ K文庫 20231028 1109読始め 1-3まで読了 4は割愛
1111・永井宏 夏みかんの午後 シーソーブックス 20231103
(1111・衿沢世衣子 光の箱 3
(1112・新田章 あそびあい コミックDAYS
1112・booklogなし【再読】氷室冴子 海がきこえる …1111読始め
1113・booklogなし【再読】氷室冴子 海がきこえるII アイがあるから …1112読始め
1113・【再読】スコット・フィッツジェラルド 夜はやさし 上 角川文庫 …1111読始め
(1115・booklogなし・私市正年 イスラム聖者講談社現代新書 図書館 …ざっと 聖者伝的なのを期待してたが、ちょっと期待と違った。詳細なプロフィールは2名のみ。
(1115・【再読】近藤勝也 氷室冴子 僕が好きな人へ 海がきこえるより 図書館
(1115・kotoba 2021 Summer Issue No.44 特集 ビートルズ 読書室ポワロ
1115・【再読】スコット・フィッツジェラルド 夜はやさし 下 角川文庫
(1115・ヴラド・ドラクラ 7 kindle 20231115
(1116・天上恋歌 8 kindle 20231116
1116・遠藤雅司（音食紀行） 食卓の世界史 ちくまプリマー新書 20231111
(1118・山田胡瓜 AIの遺伝子 Blue Age 7
(1118・真造圭吾短編集 台風のあと ゆとりや 20231118
(1119・七つ屋志のぶの宝石匣20
1119・ユリイカ2023年12月臨時増刊号 総特集＝坂本龍一 1952-2023 kindle20231101
1119・【再読】中野美代子 ザナドゥーへの道
1120・売野雅勇 砂の果実 河出文庫 20231117
(1120・ファリード・ゥッディーン・ムハンマド・アッタール イスラーム神秘主義聖者列伝 国書刊行会 図書館20231118受領
1122・郡司ペギオ幸夫 やってくる シリーズケアをひらく 医学書院 図書館20231120受領
(1122・唯野未歩子 17歳 （「JOY！」講談社、所収）図書館20231122受領
(1123・アサギユメ アタマの中のアレを食べたい 6
1123・平野啓一郎 あなたが、いなかった、あなた 図書館20231122受領
1125・ほしおさなえ 紙屋ふじさき記念館 あたらしい場所 20231124
1125・小笠原弘幸 ケマル・アタテュルク 中公新書 Kindle 20231118
(1126・日常の西餅 1-5 kindle …残酷なこともはっきりいうデッサンの先生好き
(1126・渋谷直角、甲斐みのり 僕のフランス、私の千里 zine 古本トロニカ 20231125
1128・唐澤俊一 古本雑学マニア雑学ノート ゆとりや 20231118
(1129・片岡義男 珈琲が呼ぶ 読書室ポワロ …一杯百円の珈琲、スザンヌ・ヴェガ「トムズダイナー」、5時間で40杯珈琲飲んだ歌、三島由紀夫
(1129・Marie=Madeleine no.4 古本トロニカ 20231125
1129・谷川渥編 三島由紀夫の美学講座 ちくま文庫 20231121
1130・【再読】大江健三郎 「雨の木」を聴く女たち Kindle 20231118
1130・平野啓一郎 高瀬川 20231118
 | Pヴァイン 発売日 : 2023-10-20 |
坂本龍一がfeaturingされてるので買ってしまう（本人は「アンビエント・ミュージックは作ったことがない」と言っていたそうですが）。アンビエント・ジャパンと銘打ってるので、ジャパンでのアンビエントミュージックと思うのだが、アンビエントの定義は曖昧模糊ではばひろく、また意味も使われ方も移り変わってきているようで。ブライアン・イーノによれば「アンビエント・ミュージックは、主に特定の時間や状況にむけて作られた、さまざまな雰囲気に適した音楽であり、静けさや考えるための余白を残すもの」とのこと。さまざまなDiscが紹介されていて、片っ端からApple Musicで聞いている。個人的には細野作品はあまり肌にあわず、長屋和哉作品が肌にあった。ディスクガイドとして秀逸。他の作品ももっともっと聴き込んでいきたい。またAmbient Music フェス「Off-tone」気になる。また、アール・ヴィヴァンについても語られてる永江朗「セゾン文化は何を夢みた」朝日新聞出版も読んでみたい。
 | 本の雑誌社 発売日 : 2012-10-24 |
坪内祐三、広瀬洋一(音羽館)、三浦しをん、目黒考二「高原書店について語ろう！」のみ読了。「ブックオフから考える」の参考文献にあがってて、無性に読みたくなる。高原書店の名物創業者が亡くなった直後の追悼座談会。雑本でもなんでも買い取り、本に上下はない、と徳島の倉庫にどしどし送る。ブックオフより前に、古本は半額という値付けは画期的だった。最後の方は、古本屋らしく値付けするようになったな、とのこと。四階建ての予備校のあとに移転した際のたいへんさは三浦さんが語る。階段しかないのに、多くの本を運び上げた苦労。そしてブックオフができた際の打撃。などなど。
 | 双葉社 発売日 : 2003-05-01 |
何も情報をいれずとも、読む前から結末はわかっていた気がする。そこに向かって愛憎を抱えながら焦燥し、暴走し、収斂するさまを毎回見ていたいのかもしれない。そのバリエーションを楽しむだけ。舞台は厳寒の根室。2億の金をめぐって、腐れ縁の昔の悪ガキたちが、ヤクザが、政治家が、ロシア人が、新聞記者が、お互いをまったく信頼せず、利用して、出し抜こうとデッドヒート。相変わらず誰もが悪人で、感情移入だなんてものを拒み、思想も理想も綺麗事もなくみなカネめがけて突き進む狂想曲でした。故郷に逃げ戻りロシア人相手のしがない電気屋のおやじで終わるはずだった幸司の「おまえらみんな呪われろ」、誰も信じず、誰をもバカにし、誰もかれも呪う闇の深さ。北上次郎の書評に導かれて手に取った一冊。
| 発売日 : |
定山坊が定山渓にたどり着き、温泉地としての整備に奔走し、亡くなるまでが簡潔にまとめられてる。のちに美泉定山に改名するとあるが、改名したところは、その契機は描かれず。どうやって石川正蔵と知り合って、なぜお金を貸してくれたのかもわからず。と、わからないところもあったけれど、人の身体を癒やしたい、温泉地を整備したいという熱い思いはつたわってきた。
先にダイジェスト版を読んでたので、ざっと。合田一道氏の定山坊の解説は、「定山坊の夢の里」よりわかりやすかった。道職員相当の湯守を辞して、美泉定山と名乗り始め、「美泉」は出身地の「備前」にかけていたのではないか、と。そして最後は行方不明と言われ続けていたのに、没後百年で、小樽の寺に埋葬されていたとわかり、末裔とも連絡が取れて、法要が行われたこと、定山渓と定山の出身地の岡山とで交流がつづいていることなどを知る。あと、昔の定山渓は混浴だったのね、と。写真も残されていて、あたりまえだけど、それが普通といった風情が残されていた。
 | 新潮社 発売日 : 2014-07-28 |
早田ナノ「ハラヘリ読書」つながり。30歳を機に、好き嫌いがほとんどなくなったという「食革命」のところを読みたくって。松茸の項に顕著だけど、とにかく繰り返す、場数を踏む、何度も食べてるうちに食べれるようになる、なんなら好きになる、美味しく感じられてしまう過程には、ただただ脱帽。どの口で、あとがきでわたしは食いしん坊ではないなんて言えてしまうのか、と言いたいくらい、こちらにまで食べるのが好きだ！というのが伝わってくるエッセイ集でした。「しらたきについて、何か考えたことがありますか？」というのが一番好きな書き出し。悶絶するほどおいしいという「里芋の唐揚げ」は食べてみたい。
 | 文藝春秋 発売日 : 2022-05-10 |
気になってた著者なので、手にとってぱらりとめくったら、その時読んでた「新しい文章力の教室」の唐木元さんが出てきたので、シンクロニシティと思い、買ってしまう。内容は、四ヶ月にわたる著者のアメリカ滞在記。二度目のアメリカ滞在。どんなカルチャーショックを受けたか。日米の文化の差異。2017年当時のアメリカの政治経済文化状況などの断片が感じ取れる。そのなかで著者の現在の研究での興味関心の一端もしめされる。◆「関係することが不要だと言いたいのではない。我々はもちろん関係するし、関係が必要なのだけれども、互いに立ち入らない部分もある、つまり、部分的に無関係もあるということが、互いの差異を尊重することに必要だという考えなんです」p.103◆あと文章を書くときの書き出し方、まとめ方あたりは参考に。
 | パイインターナショナル 発売日 : 2016-01-16 |
売り物のメロンにねそべるアフガニスタン。ガラクタの山にしか見えない中央アフリカのスペアパーツ屋。かろうじてケースには入ってるが直射日光バンバンあびてる薬のバラ売り屋。身体にぶらさげるだけぶらさげた家電売り。身長の3倍以上つみあげてる綿菓子屋。上空からみていろとりどりのマーケットの景色などなど。何売りか、どこの国かの簡単なキャプション以外は写真をもって語らせる感。外から見ると、これで商売になるのかなあと思いつつも、たくましい生命力のようなものも感じる。
 | 河出書房新社 発売日 : 2016-11-22 |
(2023/11/05読了分)どうにも清少納言さんとは気が合わないというか、肌あいが違うというか。辛辣な視点は印象に残るのだが。美しいものを愛でる視線は好きなのだが。どうにも、「清少納言を求めて、フィンランドから京都へ」のミア・カンキマキさんほどはのめり込めなかった。鴨長明さんとは意気投合できそうで、高橋源一郎のポップな新訳も肌に合った（高橋源一郎訳は再読）。◆遠くて近いもの。極楽。船での道中。男女の仲。p.210◆音楽は夜。人の顔が見えない頃に。p.238◆だが、何も変わらなかった。時がたつと、人びとは、自分がしゃべっていたことをすっかり忘れてしまったのだp.345◆（解説より）心の中の葛藤や矛盾は「発心集」に生々しく語られている◆(2017/03/11読了分)高橋源一郎訳「方丈記」のみ読了。ホテル、フロントとか当時はない語彙や、京都の通りの名前、天皇の名前などなどの固有名詞はカタカナで通すとか、それも含めてくだけた文体でポップだなあ、と思いつつ、著者の伝えたかったことの本質を現代人にもわかりやすくするよう努めた点は伝わってきた。原語で挫折、角川ソフィア文庫の解説つき現代語訳で読んだ身には新鮮だった。
 | ミシマ社 発売日 : 2023-06-14 |
食べることを愛する著者と、それにまつわる人間関係がやわらかくつづられていて、読んでてあたたかな気持ちに◆ヒロイン気質だからひとりでごはんが食べれないんだと納得して、そんなわたしをご飯にさそってくれるあなたはヒーローと締めくくってたり。食事をだれかとおいしさをぶつけあう行為ととらえていることとか。夏はじれったければじれったいほどいいという感慨とか。同居人ミドリさんの何も知らない人のふりしようかなあ、からの抱腹絶倒のやりとりとか。元の勤務先の社長の、ダメだ、お前は生活に集中しろ、お前の創作は生活と共にあるはずだ。桃を煮てると、母からは、恋ですねと言われ、同居人ミドリさんにも「桃を煮てますなあ」と声をかけられ。といったあたりが好き。一番は、腹八分目がわからないという著者に、ミドリさんが、そこ！そこがいま八分目、と教えてくれたのに、そうかこれがそうか、と言いながら、冷蔵庫からナタデココゼリーだしたところが最高におかしかった。
 | 集英社 発売日 : 2023-08-17 |
神の見える域の人の心には形があり、その形に合わせるために修行するという考え方は面白かった。ただ、どうやってその修行方法が編み出されたかは気になった。まさかその境地に至った人が、何を何万回唱えなさいとか言ったのだろうか？？なぜその修業をしたら神と通じ合える領域に達せられるとわかったのか。誰が決めたのか。神や神と通じ合えるものの心の形はこれだ、というのがどのようにして指ししめされたのか。師が一方的に弟子に教えるのではなく、共に歩み学ぶところ、形から入るところ、念仏を唱えれば救われる、悪人正機など日本人とスーフィー、親和性が高いのでは、というのは興味深い指摘だった。
17世紀末までは、オスマン朝が中心の「海賊」取締りというアフドナーメの前提は順守され、「海賊」案件は、ヴェネツィア側からオスマン朝へ報告、オスマン朝が処分を下す流れ。オスマン朝が「海賊」を処罰し、ヴェネツィア陣捕虜は解放されるという原則も概ね実戦された。ただし、捕虜解放や略奪品返還の命令がほとんどで、「海賊」自体への処罰はまれ。ただし、アフドナーメ参照には、カルロヴィッツ条約後のオスマン-ヴェネツィア関係の変化の影響。18世紀以降、法解釈ではヨーロッパ的秩序のあり方を取り入れはじめた、と。力関係でまさってる間は、外野からみると、不平等というか、ヴェネツィア側の自衛行為では？と思われることも、オスマン側からすると許されざる行為とみなされていて、地方官に訴えても無視されることもあったが、カルロヴィッツ後はいろいろ変わってきたんだろうなあ、と想定。
 | 講談社 発売日 : 2023-10-23 |
この巻は、ジルベールと小日向さんの結婚式。シロさんのスピーチが感動的。ケンジも泣き出すノロケand公開プロポーズ的な内容で。また他の話ではChat-GPT から霊媒師による呪いまで出てきて、ハイテクからローテクの振り幅すごいなという思いに。小冊子は、西島さんが同年代の史郎と同じ経験をちょっと前にして共感…どの辺に共感したのか知りたかった。そしてよしながさんへの慶應の法学部出たのは、シロさんの職業が弁護士なのにつながりが？て質問も良かった。小日向さん役山本耕ニのコメントのいっちゃってるぶりも好き。
 | 光文社 発売日 : 2023-10-25 |
アンと幸福、というかアンと成長というか。自分から興味を持ってしらべて、時には大学の講座まで通って、自ら考えて、日々の仕事で抱いた謎に自分なりの答えを見出していき、言いづらいこともきちんといい、自分がどうしたいかちゃんと立花にもつたえられて。新店長の赴任、アンの正社員登用、椿(元)店長との和歌山出張とイベントめじろおし。そんななか、週末を使って部下を集めてお茶会ひらいちゃう部長の話から、部下と上司、年上と年下、男性と女性と、断ってもいいからねといいつつ断りづらい状況を無邪気につくりだしてることをあぶりだしたり、俳句結社に入った大学生の若者ふたりのいだいた疑問を一緒に考えたり（「和風の文化っていうか、古っぽい文化って、呪文を知る者だけに開かれる扉があるんですよ。俺たち、そういう「お約束」にワクワクしちゃって」）。さあ、肚は決まった、あとは旅立つだけ、という余韻もありつつ、残るものとしてはいままでの場をしっかり支えなければいけなく、でも十分に力を蓄えてきててまぶしいくらい。次巻ではアンにその力を存分にふるってほしいなあ、と思いつつ本を置く。
 | 光文社 発売日 : 2011-04-12 |
有能だが高慢な外交官の、取り憑かれたかのような連夜の悪夢がもたらしたものは。常識的な婦人と地味で鈍重な婦人といった対比が最後には、自分のいいたいことやりたいことをいって魅惑するものと常識にとらわれてくすんだ様子へといれかわったり。すべてうちあけてくれなければ困るという親族一同の強要が、聞かなければよかったへと墜落していくさま。謹厳で傲慢な宣教師が、悔い改めさせると意気込んだその先には。頑迷な判事と地味な近隣の夫妻という関係が、最後には。そして有能なメイドと自らを常識人と信じる紳士の関係性の変化と表面的には凪いだ波のようなメイドの本心は。登場人物たちは、目まぐるしく印象を変え。一面的なものから多面的に。すべてを語らず、謎を残したまま、あるいは読み手にゆだねて、と。個人的には古典から文学的滋味をちゅうちゅうしたいという思いと、あまりに時代背景が違いすぎると普遍にたどりつきがたい思いとがあいなかばして。◆「そうねえ、真実を前にしても気づかないからかしら」p.55◆「イングランドの何がわかろう、イングランドしか知らぬ者に、だよ」p.103◆罪の意識を吹き込むのがもっとも苦労した点でしょうかp.192◆人生というのは面白い。最高しか受けつけないと言えば、その最高が転がり込む。p.256
 | 文藝春秋 発売日 : 2017-05-10 |
角田光代「今日はごちそうさまでした」で、マリに行ったことがある、という一文を読んで、探してたどり着いた本。なので、「アフリカ 声なきメッセージ」の章のみ読了。女性器切除廃絶運動の活動する人々についてまわったマリ紀行。頑なに、文化だから廃止する意志はないという村。最近やめた村。だいぶ前からやめた村。対比すると廃止した村の方が子供たちが明るくいきいきしていて、個々の女性たちも意見を言ったりと活発に見えた、と。マリのひとびとの独特の時間感覚も垣間見えた。すごく昔は「500年前」。ちょっと前は、何年かわからないが、ちょっと前。そういった時間感覚は口承文芸が多く残っていることも関係するのだろうか。廃絶運動も、大上段からふりかざしても、聞き入れてもらえず、すこしずつ訪問し、すこしずつ廃絶運動以外のことで関係性をきづいていき、それでようやく話題に出せるかどうかという地道なものである、と。◆「どことも似ていないところ」と答えた。マリは強力にマリだった。あのカオスも、断崖絶壁も、遠い惑星のような岩場も、たなびく生活の糧も、あまりにも私の見知ったものとは異なる生活と光景があった。p.247
 | 世界文化社 発売日 : 2023-11-08 |
Chikaさん、波乱万丈すぎる！北欧好きが極まりすぎて、移住したくなり、けれど仕事が…と調べてみたら、寿司職人なら引く手あまたらしい！そこから会社員しながら寿司学校に3年間通い、ヘルシンキのレストランに就職決定！移住決定！そこまでは読んでたんだけど、まさか1年で職場が倒産してしまうなんて…。「まいにちヘルシンキ」でも「世界ともだち部」でも「マイフィンランドルーティン ヘルシンキ編」でも、他の連載でも一切語られてこなかったから、表紙見た時は、まさか…何かの比喩？と思ったのだけど。一年間のレストランでの日々は、忙しくも、寿司シェフとして尊重され、自分のちからが足りない！と思っても、まわりが気遣ってくれたり、サポートしてくれたり、フィンランド人なりの労働観、仕事は人生の一部、自分の時間がないのはありえない、自分の本当にやりたいことをやる、というのに影響されて、失業後なやみになやんで、狭き門、外国人だが起業家ビザを申請して、通るところまで。この先のフィンランド生活どうなっていくのか、きっと次巻で見せてくれるはず。
 | KADOKAWA 発売日 : 2023-08-28 |
読書室ポワロにて。夕焼けの名前、月の名前、戦国時代の元号、数の単位、文豪の代表作、世界三大○○、国名の略称、世界の国旗などなど、さまざまなちょっと知りたいを、ときにキュートに、ときにクールに、デザインされたビジュアルでたのしめる一冊。ぱらぱらと好きなところをめくって飽きるまで眺めていたい感。これはこの本のせいじゃないんだけど、国名の略称、スイスもスウェーデンも「瑞」で、瑞国と出てきたらどっちと判断すればいいのだろう…と要らぬ心配をしてしまった。
 | 岩波書店 発売日 : 2020-01-18 |
栗原康さんの著作は何冊か手にとってたけど、今度の読書会の課題図書に選ばれたのを機に読了。◆野枝はすごい、すさまじい、生命力、活力、首をかっきられる覚悟で、エネルギーのかたまりで、やりたいことをやりたいようにつきすすんでいく。また、大杉栄との相乗効果も。うらやましい、ただ、うらやましい。こうまでつきすすめるのが。ただ、なれるのか。今の世でこうなれるのか。国家信じるにたらずは、100年経っても変わらない。むしろ、直接的に牙を向いてるように見えないだけ、質がわるくなってるかもしれない。理屈では言いまかせるかもしれない。ただ、生命力では、行動力では、輝きではかなわない。これ読んで、ああ、なんと自らの奴隷根性にまみれていることよ、という嘆き。ああ、もう、ああ。「急転直下、自分で自分の心がわからぬ！」と突っ伏した大杉栄のように。また、並の評伝とちがって、栗原さんのいいぞ、もっとやれ、といった感じの合いの手がまたいいリズムになって。あとがきで、3年ぶりの彼女ができた、とか、恋して恋して恋だ、というよろこびが、野枝の伝記を書く上でももりこまれ。文庫版あとがきで近況もお聞かせいただきたかったなあ、と思ったり。◆◆◆何やったって何とかなるさ、と好き勝手やるには、相互扶助が必要、しかし今の世のほうがうすれている感◆他人にほめられることなんてどうでもいい。なにものにもしばられずに、ただ自分のことだけに執着をあつめておけばいいのである。他人の迷惑かえりみず。やりたいことしかやりたくない。それができなければ、即トンズラだ。夜逃げの哲学。p.58◆貞操は、男が女を家の中に囲っておきたい男たちの願望をかなえるためにつくれらた不自然な道徳p.80より◆私はあらゆる人間社会の人為的な差別が撤廃され、人間のもつあらゆる奴隷根性が根こそぎにされなければならないという理想をもっています。p.156◆野枝がいいたかったのは、端的にこういうことなのだとおもう。わがまま、友情、夢、おカネ。結婚なんてクソくらえ、腐った過程に火をつけろ。ああ、セックスがしたい、人間をやめたい、ミシンになりたい、友だちがほしい。泣いて笑ってケンカして。ひとつになっても、ひとつになれないよ。p.171
 | 新潮社 発売日 : 2023-11-09 |
藤原の政争にまきこまれてしまった伴中庸。唐風の宴につられて業平についてきてしまったばかりに、居合わせてはいけない場にいあわせてしまった道真。すべてをなかったかのように宴を解散させる命を受けたが、さてよい思案は浮かぶのか、といったところまで。まいどまいどあてにされてしまい、あるいは間が悪くて、といったところか。そこで見せられる鮮やかな手さばきが読みどころなのだけれど。
完結巻。本の雑誌も事務所を借りて、事務員木原さん（のちの群ようこ）も入り、配本部隊もでき、本の雑誌社として株式会社化、目黒考二も専任に、椎名誠は会社をやめ売れっ子作家の道へとどんどんと話は躍進していき。最後近く、元助っ人学生同士の結婚式で、思わず目黒考二が涙を流したところが一番のシーンかな。また漫画化されてよかったなあと思ったのは、目黒考二がチンチロリンにハマりすぎて、ガスの火をサイコロと見間違えてつかもうとしたシーン、そしてダイナマイト窪木・吉田コンビが可視化されて力強いシーンが見られたことかな。作中の参考文献何冊かあたってみたくなってきた。
 | 集英社 発売日 : 2008-01-18 |
「アマニタ・パンセリナ」読んだら俄然読みたくなった一冊。会社員しつつ酒と薬にのまれてた日々をつづったとあったので。けど、どこまでが現実で幻想なのか境目が…といった気に。広告、コピーライター、ネクタイ、思想と宗教にラリってることへの悪態。ファンの女の子と一夜をすごしたあとの喫茶店で最低といわれる顛末（宝くじでもあたったら電話して、ギャンブルはきらいなにゃ、ひとつぐらいいいところあるのね人間って、のやりとり）。何も連絡せずに３日家をあけたら配偶者から会社にかしこまった手紙がきたり。山に行ってくれ、そこでワシを…とむちゃくちゃなことをたのんでくる上司。高級時計屋でカラ注文したり。バースのマスクをかぶってはちゃめちゃしたあとに、そのマスクを人に渡したりと。なかなかに狂躁的でひきずりまわされた感。
 | 信陽堂 発売日 : 2023-10-02 |
東京の喧騒をすてて海辺の葉山にやってきた32歳フードスタイリストのエリの、しずかな生活の描写に最初はぜんぜんノレなかったのだけど。いままでの仕事へのやる気が減衰していって、どうしたものかと思ってた中に、自分のやりたい方向性がみつかって、個展ひらいて、店をひらこうと決めて、どんどんまわりのひとも参加してくれて、という熱量がバーっとあがったところは、いいなあと思いながら読み進められた。「自分だけでなくみんなが何かのきっかけのようなものを気持ちの奥で求めているような気がした」(p.89)また、あとがきのあと。最終頁の「本とは/人のいとなみからあふれた何ごとかを/はこぶための器」がじんわりとくる。
 | 小学館 発売日 : 2023-11-09 |
生と死のはざまにあるコンビニ。闇の勢力が強まったり、現世との通信が開通したり、さらわれた仲間を助けるために魔と対決したり、店員による防衛体制を進言したりとめまぐるしい巻。タヒニのデータを見た店長がそこに弟を見出すがどう出るか！？といったところまで。
 | 講談社 発売日 : 2013-11-22 |
1-3巻読了。アメトーークのラブコメ漫画芸人であつくプレゼンされてて興味を持ち。誰ともつきあわない小谷と小谷を好きになってしまった山下の関係。小谷の親友の横井がいいなあ。あと山下の男子校に通う友人の宮田も。「お前の正しさに価値なんてねーよ(略)自分の気持ちがどこ向いてんのかとことん考えて行動し続けるしかねんだよ そんで----その出た結果だけに価値があんだよ！」なんてなかなか高校生いえないよ。「あたしも山下もまだまだ育つよ まだまだ…変わるよ」ということばが、変わってきたふたりとこれからのふたりを象徴しているようで。
 | 徳間書店 発売日 : |
(2023/11/15読了分)豊富なイラストと「海がきこえる」本文からの抜粋は、最近再読した身には楽しめた。巻末のレターはちょっと期待外れだったかなあ。ベタな期待かもだけど。松野と松野のいとことの川釣りの思い出にことよせて、里伽子に、君にもこんな思い出あったか聞いてみたいという拓こらの変化球なラブレター。もっと番外編的なエピソードだったらなというないものねだり。(2019/09/08読了分)スピンオフとか読めるかと思いきや、イラストメイン、時に、本編からの抜粋の文章が添えられ。末尾に、短い、拓から里伽子への手紙が添えられていて、それも、里伽子は登場せず、親友の松野とその大学生のいとこと川でキャンプして楽しかった時の思い出を語っているというもの。
 | KADOKAWA 発売日 : 2023-11-15 |
幽閉されつづけるヴラド。協力者を通じてモルダヴィアのシュテファンにアドバイスを送り。シュテファンによる侵攻してきたハンガリー軍の撃退は、当時の国際政治に一石を。業を煮やしたハンガリー王はヴラドを牢から出して顧問的な位置へ。さてヴラドは復位までたどりつけるか、というところまで。小国中国の思惑が交錯し、だましだまされの駆け引きがからみあい、一敗地にまみれたかと思いきや、それを糧に成長したりとひとすじなわではいかず。
 | 角川書店 発売日 : |
上下巻読了。舞台は20世紀初頭。将来を嘱望された有能な精神科医ディック・ダイヴァーは、精神を病んだ美貌の富豪令嬢ニコルと結婚し、パーティーや社交に満ちたある面狂躁的ではなやかな生活を送る。ディックに恋する若き新進女優ローズメリー、そのときどきで彼らの生活に出入りする紳士淑女と、「自分にはなんの役にもたたない人間に対しても交渉をもち好意を示し続けずにはいられない」と描かれるディックとの関係。多くの人を魅了し、惹きつけてきたディックだったが、ニコルとの関係、病状の一進一退、「あなたはあたしたちが買ったものよ、いずれはあなたもおわかりになるでしょうがね。独立してるようなふりをつづけるのばかばかしいわ」という義姉からのプレッシャー、たちどまって「人間の身だしなみのABCを金持ちに教えて、九年間も棒にふってしまった」と独語する空しさ。夫婦関係の冷却から、過度の飲酒、旅先の警察との大乱闘、気がつけば、輝きを失い、抜け殻となり、かつて惹きつけられてきた人もつぎつぎと離れていき、ニコルさえ失って、やがて消息すら…と。一度も輝いたことのなかった者とはちがい、一度でも輝いていた者が見るも無惨に輝きを失い、それを受け入れられない時の悲哀が痛切。ただ、ディックがまったくの公明正大、清廉潔白だなんていうつもりはないけれど、それにしも、ディックならずとも「そりゃないよ」といいたくなる成行き。「あたしはディックを愛していたし、これからもけっして彼を忘れてしまうことはないわ」というニコルのつぶやきが救いといえば救いなのか。
 | 集英社 発売日 : 2021-06-05 |
僕にとってのビートルズ的なのはとばして。ホワイトアルバムの詳細な解説は読み応え。ビートルズ映画、特にハードデイズナイトとゲットバックについてのも。ゲットバック絶対見なきゃ感がわきあがる。あと、2062年のビートルズみたいなアート企画も興味深い。溝を全部磨いたレコード、200台以上のオーディオで同時に200曲以上のビートルズの曲を同時演奏とかとか。ピーター・バラカンのビートルズデビュー時を生きた人によるイギリスや音楽界の空気感も。
 | 秋田書店 発売日 : 2023-11-16 |
何ら戦果をあげられなかった童貫の厚顔な要求。苦渋の金側。アイラの躍動。仲間のためなら一命もなげうとうとする凛之のすがすがしさ。皇太子の登場。名のみの婚約とお互いに思っていたはずなのに、距離がちぢまる康王とアイラ。そしてアクダの死まで。どこまで描くのだろうか、やはり北宋の滅亡まで描かれるのだろうか。
 | 筑摩書房 発売日 : 2023-11-09 |
その昔、著者主催の歴メシイベントで、実際の歴史を題材にとった料理をふるまってもらったことのある身としては、見逃せない一冊でした。◆東西の文化がまじわったところで、あらたな文化が生まれ、あらたな料理、食文化が形成されるのに興味がある、と。それはアレクサンドロスの大遠征であったり、アジアとヨーロッパにまたがったオスマン帝国の統治であり、コロンブスが新大陸にもたらし、新大陸から持ち帰ったものだったりする、と。その時代に象徴的な人物をとりあげ、食べていたと思われる料理を史料から特定し紹介という趣向は興味深く、面白かった。古代ローマでは、飲料水の質を確保するために、ワインビネガーで割って飲んでいた。チンギス・カンが食べていたのは予想通り羊肉料理で胸熱。フリードリヒ二世の沸騰させたスパークリングワインをコーヒーに注ぎ入れ、コショウとマスタードを加えたレシピは、著者が試した上で、賛辞を送れないとのこと◆イェラシモスはオスマン宮廷料理の特徴に、「肉を蜜と炒める」、「肉をぶどうやプラムの果汁で煮る」、「りんごにひき肉を詰める」、「果物を野菜のように火を通す」、「できあがった肉料理にバラ水をかける」などを挙げていますp.163
 | 秋田書店 発売日 : 2023-11-08 |
人間関係をAIに頼り切りな人がAIに頼らなかったケース。廃村の伝統の祭りをロボットに再現させて継承する取り組み。拡張現実で複数の生を生きさせる取り組みへの「怖さ」と、けれども「悪い」と判断することへの慎重な保留など、近未来にありそうで、そのとき問題になりそうなトピックを考えさせられる。巻末のアーティストとの対談で、自分のファンたちが全員米津玄師の曲を聴いた後に一斉にSKI-HIを聴いたらAIが誤解して米津玄師さんのあとは必ずオレの曲を流さなきゃいけない仕様になるんじゃないかとは思ったことはありますね…は、なかなかおもしろいなあ、とおもった。
 | 小学館 発売日 : 2012-07-30 |
「ひらやすみ」の著者の作品だ！と思い手に取る。ビールが主食の怪獣とか、立てこもり犯と人質が最後は仲よく鍋つついてたり、急にやってきた美少女にいためつけられつづける男の話とか、宇宙人が兄役を演じてたり、理不尽な女の子の願望を叶えて叶えて最後は…とか、スワンボートで外洋に出ようとしている男との物語などなど。なかなかに奇想天外、ぶっとんでておもしろかった。特に「ビール獣」「FELLOWSHIP」が好き。
 | 講談社 発売日 : 2023-11-13 |
顕定側からも、鷹臣側からも、北上家離散事件の謎の解明は少しずつ進み。フランス人シェフが真珠探しと絡めて自分の来し方行く末に納得を見出したエピソード、顕定の調べれば調べるほど自分には何もないわけじゃないと教えられる、てモノローグがよかったなあ。水軍の末裔がサーフショップのくだりも。
 | 青土社 発売日 : 2023-11-01 |
坂本龍一と関係した人々のインタビュー、寄稿。時代も青年期、大学時代、YMO以前、YMO時代、ソロ時代から没後まで。テーマも、音楽はもちろん、美術、映画、社会運動、庭園、哲学とさまざまに語られ。印象に残ったのは、◆茶の湯にもなぞらえ。非即興的であると同時に即興的な状態。「枠」の設定が、即興的要素を「自由」へと導いていて◆共演者との「競争」ではなく「共創」◆完全に純粋な音楽や中立的な音楽など存在しない、というリテラシーはもっておくべきだ。生きている人間の表現は何かしら政治性を帯びるし、ましてメディアに乗ればその作用はさらに強まる。(坂本龍一)◆ぼくは音楽からあらゆる刻みを取り払いたいと思ってるのね(坂本龍一)◆「音楽のほうが坂本龍一に寄る」（狭間美帆）◆ピアノとの関係を深めていった晩年の坂本にとって、演奏は<自己>をよく知りうる相手との対話であり、演奏する身体を生きることでありのままの自分として生の時間を更新することだったのだろう（小沼純一）◆たとえどんなに弱い立場になったとしても、皆であげ続けなければならない、無かったことにされてしまう前に(坂本龍一)◆坂本龍一の教育実習◆映像でもいいから「LIFE」のインスタレーション版は見てみたい思い。あと「TIME」も。◆映画戦メリをワンシーンワンシーン音楽とあわせて論じた論考も◆◆◆読みたくなった本や記事、多数。◆瑕疵としては、巻頭の、週刊文春かよ！と言いたくなるような大貫妙子への下世話なアプローチだけはいただけないなと思った。
 | 河出書房新社 発売日 : 2023-07-06 |
最初は、余談とダジャレ満載でだるいと思ってたけど、少女Aを経て、チェッカーズ、矢沢永吉、坂本龍一、中谷美紀の話まで来ると、だんだんと話の密度があがってきたと感じた。さまざまなミュージシャンたちとの交遊、華やかな世界を垣間見る思い。並み居る大ヒット曲をおしのけて、著者自らが代表作と考えているのが、坂本龍一作品への作詞であると述べているあとがきにしんみりしてしまった。◆「真の芸術家は、その作品の中にいて、雄弁なのだと思います」(塚田マネージャー)(p.256)◆僕が自分の代表作と思う作品は、「美貌の青空」はじめ、坂本さん作曲の中谷美紀さんの一連の作品だ。それを書かせてくれたのは、音楽の中に潜んでいる坂本龍一という芸術家だ(p.257)◆読み終えてひとつ思ったこと。ここには書かれてないけど、著者の作詞で大ヒット出したり、すごく意気投合したアーティストがいたのに、なぜその後は別の作詞家になったりするのかな。そして、しばらく時を置いてまた依頼がきたりして。著者に限らず、みなそういうものなのかな。
 | 国書刊行会 発売日 : 1998-06-01 |
アッタール自序、ハサン・バスリー、ラービア・アダヴィーアまで読了。あまりに依って立つところが違いすぎるように感じて、ことばが入ってこなかった。
 | 青土社 発売日 : 2009-04-01 |
再読◆「眠る石」の姉妹編とのこと。各章、だれか一人物に事寄せて語られる歴史絵巻。◆プレスター・ジョンの章はプレスター・ジョンに擬せられた耶律大石が主人公。ブハラをとどめおき、みずからはテント村たるグスオルドに陣す。セルジュクのサンジャルを打ち破り、サンジャルと妃をとらえ、解放するが、のちに妃はみずから耶律大石のオルドに飛び込んでくる、と。◆ミカエル・ボイムの事績は寡聞にして知らずであった…明朝の亡命政府にて、キリスト教に改宗した皇族に請われ、ローマ教皇に援軍の派遣を依頼しにいったポーランド人司教がいたとは。ローマ滞在時はキルヒャーとの交遊も描かれ。その結末は苦く、教皇には面会さえ許されず、帰途は海賊に襲われたり、キリスト教徒入港禁止の憂き目にあい、何年もかかってようやくベトナムまでたどり着くが、すでに亡命政府は滅亡した報を聞く…と。◆景教徒アロペンと仏教徒玄奘の一瞬の交錯、ほんの一瞬だけ見かけた相手とみつめあい、みとめあい、触れ合わず、みつめあうしかない…それこそ他者というものの存在。◆ピエール・ロティの兄ギュスターヴ・ヴィオーはダンピア「最新世界周航記」でコンドル島をほめたたえられたものとして知るが、実際には瘴癘の地で自らも病にたおれる。◆トマス・アロームはアームチェアに身を沈めたまま、参考資料を渉猟しただけで、シナを隈なく旅して精緻にスケッチしたような画集を出し、飛ぶように売れ、自らも、おれはすごい旅をしてきたもんだ、と思い始め◆石工のジューリオは、その人生で、13世紀にイタリアからブハラまでまたにかけて移動し、石工としての腕を活かし、と。◆耶律楚材「西遊録」、李志常「長春真人西遊記」、小説「西遊記」と、まぎらわしいタイトルの、しかしまるきり性格の異なる三種の書物が、久しく私にまつわりついていたのであるが、本書においてパラリと振りはずしたような気がする。(p.232-233)にハッとさせられる。
 | 講談社 発売日 : 2008-04-22 |
ドラマ版「きのう何食べた？」のスーパーのレジ役の唯野美歩子さんが作家でもあると教えてもらい手に取った一冊。唯野美歩子「17歳」のみ読了。17歳の子が、18年ぶり凱旋ライブするバンドのボーカルを、実の父かも？と思いかけつけるが、そこに至るまでの母との関係、今の彼との関係が語られ、描かれる。高校生カップルが、遠い昔のバブル時代のマニア、という設定がおもしろく。バブルん。
 | 医学書院 発売日 : 2020-08-03 |
問いかける、ずれた答えがくる、それにつっこみが入り、その空隙に外からなにかがやってくる。ムールラーや友だちと勘違いしてた話は、オレの話かこれは！というくらい寄り添って読んでたのだが、デジャブあたりから道が別れて、共感できなくなり、しかし、外部を全部排除した人工知能より、つねに外部を受け入れるようひらいた天然知能、という議論にはスッとはいっていけた。なぜ外部からくるの？というのがちょっと腹におちてない部分。また「こわい」より「わからない」が多かった。デジャブにピークがあるというのは初耳だった、20歳ぐらいまでがデジャブを体験するピークというデータがある、と。個人的には今までのデジャブって、この体験は初めてではなく以前夢で見た気がする、だったので、著者の説明とちょっとずれてるかなあ、じゃあ自分のはいったいなんだろうという自問。◆生ハムとメロンの間の違和感は、両者の間にギャップをもたらし、このギャップをなんとかしようと、想定もしていなかった外部を呼び寄せる必要がある。外部とは、生ハムとメロンを認識し、感じることで動員される脳の活動領域以外のすべてです。そうしてやってきた外部こそ、「生ハムメロン」のリアリティをもたらすのです。p.77◆世界にあるものを知覚するとは、「あるものではない可能性に開かれながらあるものと判別する」ことです。p.255
 | 秋田書店 発売日 : 2023-11-20 |
この巻で食べられるのは、シュールストレミング、わらすぼ、タイノエ、馬のち◎こ…。シュールストレミングは、傷んだ魚で腐った水のにおいだが、日常的に（自分の家の）ペンギンの食べ残しでこのにおいと接していて抵抗がなかった、って、あまりにニッチすぎて大抵の人にはあてはまらなそう。けど、匂いも味もふまえて上で一度は挑戦したい感。サメの心臓、食べてみたい！鯛の舌に寄生する寄生虫タイノエのえげつなさ…鯛の舌にとりついて壊死させておいて舌の位置をタイノエが占拠。寄生された魚は貧血・栄養障害…。けど味は抜群なのだとか。馬のち◎こが食べられるの見て、旦那さんのほうが、自分のがヒュッとなる感覚、わかるような気がする。味はコンビーフだそうです。
 | 新潮社 発売日 : 2007-01-30 |
「フェカンにて」を読みたくて。平野啓一郎「私とは何か――「個人」から「分人」へ (講談社現代新書)」の何箇所かでとりあげられていたのに触れて。著者をモデルにした小説家の主人公の、パリからフェカンへの旅路と思索。作中で、「フェカンにて」という青年が旅をし、最後にフェカンで投身自殺をするという小説を構想している、というメタな構造。それを描きつつ、親族たちとの関係や自分の体験をそこにこめていく様が語られ。◆冒頭の小説は、加齢や疲労で人から砂がこぼれおちていく世界。「高瀬川」の冒頭の、人が突然風船のようにはじけて消える世界と呼応しているのかな。「鏡」は1行だけの小説。「一枚上手」は、妻に唐突に3日間お互いの携帯を交換しようと提案された男の焦燥。「義足」はシエラレオネで戦闘で足と腕を失った男の物語。粗末な義足を手に入れたのに、その最後は…と。「慈善」は、妻用や娘用にさまざまに買ってやりたいのに原資が足りない男性と、妻の外貨預金での利益に、人の不幸で儲けたと激高してしまう場面、その反論からは多かれ少なかれみな…という考えが透けてみえ。ちょっと他の実験的な小説は手が出ず。
 | 中央公論新社 発売日 : 2023-10-23 |
トルコ共和国建国は本文350頁中260頁から。思ったより、オスマン帝国時代に筆がさかれていたなあ、といった感。後世の後知恵からすると、ケマルだけがすぐれていて、ケマルが勝ち抜いて、ケマルが強大な力で統治したのは必然、と見えることも、国民闘争における他のメンバーや他の運動の果たした役割も大きく、一歩間違えば、立憲君主制が続いてたり、ケマル以外のものが建国時に先頭に立っていた可能性も感じられ、また、トルコ共和国の統治者としても、強大な権限を持っていたとはいえない面もあり、むしろ現在のエルドアン大統領の権限のほうが強大な面もある、と。その功績の語られ方も、神格化に近いところから、史料にもとづいて冷静に、時には批判的にみる研究もあるとのこと。その点では、ハリデ・エディブとかキャーズム・カラベキルの回顧録とか邦訳されないかな、と思ってしまった。◆アタテュルクは、機会主義者---原理原則よりも、そのときの状況に応じてもっとも適切な行動をとる---でもあった。p.331◆彼は、みずからの理想とするところにしたがって、トルコにさまざまな遺産を伝えた。それは民族主義と世俗主義であり、民主主義であり、そして権威主義であった。これらは、混じり合いながら、トルコの政治文化をかたちづくったのである。p.334◆
 | KADOKAWA 発売日 : 2023-11-24 |
シリーズ七冊目にして完結巻。物語の途中からコロナ禍の現実がなだれこんできて、世は自粛自粛、記念館の閉館セレモニーも中止になってしまい。そこからの新記念館の候補地探し、開館準備室の立ち上げ、意欲的で有能な同僚たちとの出会い、薫子さんのアドバイスにも力を得て、和紙の良さをつたえるために奔走する百花。最後は、無事、新記念館がオープンするところまでが描かれて、大団円。これからもっと、という思いを胸に抱いて。和紙への思い、ものづくりへの思い、素直に好きなことをつきつめて、好きなことでつながる世界-それでいて無理に恋愛方向にもっていこうとしない-が描かれたやさしい世界にひたることができた。
1-5巻読了。漫画家西餅さんの、え？そんなとこ引いちゃう？という出来事から、着眼点がおもしろすぎて笑いがとまらないエピソードまで。残酷なこともはっきりと言うデッサンの先生シリーズが一番好き。完璧な紳士の話、けっこう好きだけどなあ。あと、中年女性と海シリーズも。三者三様の完全防備っぷりがツボに。救命胴衣でぷかぷか浮くの、たのしそう。
甲斐さんは、大江千里アルバムベスト、大江千里トピックス、大江千里ファンの編集者と対談、とオーソドックス（反抗期まっただなかで父とまったく口をきかなかったのに、大江千里の歌詞を媒介に気持ちが通じて反抗期が終わるエピソード、よかったなあ）。渋谷さんのほうは、本当にフランス好き？10年フランス行ってないから好きなフランスの曲、10年前でとまってる、フランスでジャケットにめっちゃ美しい人写ってて買ったけど、日本で見たらそうでもない…とか。極めつけは、文章記載の7コマ中4コマ使って五島勉「ノストラダムスの大予言」の話。嘘とでっちあげで、日本中に1999年地球滅亡を信じさせたんだから、下手な文章本よりブックオフで「ノストラダムスの大予言」買うべきにはちょっとなるほどと。フランスではノストラダムス、予言どうこうはなく、ルネサンス期の詩人として研究されているのだとか（ちょっと耳寄り情報）。
 | 幻冬舎 発売日 : 2000-08-01 |
まだネット古書店が全盛じゃないころの、情報も足で拾ってがメインの話などたっぷり聴けて新鮮でした（古書即売会でのドタバタ劇なども）。札幌に古書店がまだ今よりたくさんあったころの話も聞けて。古書店の店頭にでっかい模造紙があって、そこに書き込むことで情報交換してたとか、不便だけどまた良さも濃さもあって、といった感。◆そんなにたくさん本を買っていつ読むのだとよく聞かれるが愚問、切手収集マニアにそんなに切手を買っていつ手紙を出すのだと訊くようなものではないか、には思わず笑ってしまった。「そうかなあ」と「そうだ！そうだ！」相半ばする気持ちで。◆本というものは、決して人生の指針になったり、教養を深めたり、人格を研磨したりするためにあるのではない。本は楽しむためにあるのである。p.222◆古いものに目の色を変えて集め回るというのは、これは病気ですよ。病気になったら、高いと思っても、おクスリを飲まなくては仕方ないでしょうあ。古本屋は病院、古本はおクスリと思って、私は集めているんですよp.282◆あと、行きつけの古本屋に「結婚するんですが」と報告に行ったら、第一声が「エッ、それで、本はこれからも買うんでしょうか」だったエピソードには笑ってしまった。
古本トロニカでパラリとめくってビビッと来てひっつかんできたzine。ベトナムコーヒーから、コーヒー豆の話から、カフェの話を経てパーティーへ！◆メイド・イン・ベトナムのコンデンスミルクって、もれなくココナッツミルクが入ってるって知ってた？…知らなかった！ちょっと探してひとさじなめてみたい。そしてふだんコーヒーなんか飲まない！けどベトナム買い付け時だけはゲストハウスでたっぷりベトナムコーヒー飲む方の、「少し氷のとけたグラスに移し変えてガシャガシャと混ぜてごくごく。疲れた体にしつこい甘さがたまりません。」のくだりがたまりません。最後は、「乾いたら潤す。疲れてても飛び出す。おしゃれし…。夜はこれから。」からはじまるパーティーの夜。心得から、当時のパーティーの模様から、DJおねがいね！ってかんじで、こんな曲かけてフロアはこうなってみたいなところまで、読んでてたのしく。
 | 光文社 発売日 : 2018-01-17 |
一杯百円のコーヒーと何も考えずに千円以上取る珈琲の対比。彼を待ち続けて朝まで5時間40杯も珈琲を飲んでしまった女性の歌。スザンヌ・ヴェガ「トムズダイナー」の歌詞ににまつわる一編。著者が三島由紀夫のコメント取りしてた頃の話（自ら受話器を取って、明晰すぎるくらいに明晰すぎる理路整然としたコメントくれたことと、のちに三島邸の写真を見て、この部屋で電話をとってくれたのか、と感慨にふけるはなし）あたりをぱらりとひろい読み。
 | 筑摩書房 発売日 : 2000-01-06 |
すべてを読み解くことはできないが、断片的に惹きつけられる節はいくつかあり。◆三島が生前、自分自身の「美学」のために、「まとまった評論の体裁に編むつもり」と書いていたが実現しなかったとのこと。編者は、この書をその「まとまった評論」の代替物になったのでは、とあとがきでのべている。最近、編者が「三島由紀夫 薔薇のバロキズム」という美学から読み解く三島由紀夫評論を出したので、この本はその大きなベースになったに違いないと推測。以下、備忘録。◆美は死の中でしか息づきえない。p.19◆生活よりも高次なものとして考えられた文学のみが、生活の真の意味を明らかにしてくれるのだp.45◆芸道とは何か？それは「死」を以てはじめてなしうることを、生きながら成就する道である、といえようp.196◆しかし死は模倣ではない。一人一人が一人一人の死を死んだのである。p.48
 | 講談社 発売日 : 2006-10-14 |
「高瀬川」は、作家と編集者がお互いにいい印象を抱き、身体の関係を持ち、翌朝別れるまでが心理的、肉体的に微に入り細に入り描写される一編。細かいひだまで見通せて。けど会社の昼休みに読む物ではなかったなあ。ペットボトルにショーツとトランクスをねじこんで。「氷塊」は上下二段に別れ、見知らぬ女性に亡き実母の面影を追う少年と、よく見かける少年を不倫相手の息子と思い込む女性とのストーリーが並行して進められ、時に交わり、最後は…と。人が弾けて消える設定の「清水」、断片的なテキストを追わせる趣向の「追憶」は個人的には買わない。◆彼の中では、大人はまだ誤らない存在であり、誤らないからこそ大人であった。p.202◆それほど大きな喜びを与えてくれていたとは思えないその関係が、失われると考えた途端に、何か掛け替えのないもののように思われてくることの皮肉を、女はつくづく感じた。p.227
 | 新潮社 発売日 : 1986-02-27 |
再読。◆最初は武満徹「雨の樹」を聴いたからか、大江健三郎作品を読んでから「雨の樹」を聴いたのかはもう覚えてないが、周期的に聴きかつ読む作品。◆よくよく、言いがかりつけられたり、陥れられたり、よくわからない独りよがりの理屈を浴びせられ続ける主人公だなと（トリックスターとしての、高安カッチャンとその妻ペネロペ、メキシコシティーの同僚の元妻と代理人…）。雨の木は何らかの形の救いを象徴するものなのだろう、と。底に流れる、自己を犠牲にしてでも何者かを救うイメージとまじわるかのように。◆ハワイで行われた国際的な作家たちのレセプション会場が精神科患者たちにのっとられてた話。大学時代の旧友とのハワイでの再会、悪がらみされ、娼婦を買えと強要され、最後は密輸の片棒をかつがされる話。メキシコシティーで同僚の元妻から、あなたが来たから夫はわたしのところに戻ってこなかったと理不尽に責められる話。反核運動の運動家にまねかれたはずが待ちぼうけをくらい、それとは別に第二話の旧友の元妻がハワイで助けてくれたり、カッチャンの息子への影響を語ったりする話。最後は、よく通うスイミングクラブでの、蠱惑的なOLと自分の身体をいじめぬく青年と作家である主人公の対話と、ねじれていく関係性、悲惨な事件の話。◆◆そして結局僕が、暗闇のなかから姿を現わすそれを見ることのなかった、頭のいい「雨の木」の方角から、およそ悲痛の情念に躰がうちがわから裂けるような、大きい叫びとしての女性の泣き声を、二度、三度聞いたのである。◆自分はあなたのいう decency を守ろうとして、苛酷な訓練をつづけたが、それをつうじて次の犯罪へいたるより他の、なにもかもを削ぎおとしてしまったのだ、肉体からも、精神からも、と玉利君の眼は訴えているようでもあったのだが。
2023年11月26日
(ネタバレあり)北野武監督「首」（感想）
(ネタバレありなので下のほうからはじまります)
勝手に期待しすぎて、
勝手にないものねだりをしてしまった。
勝手に、これは戦国時代版「アウトレイジ」にちがいない、と思ってしまったので、
勝手に、「アウトレイジ」と比べてしまった。
全編にひりひりするような緊張感が漂っていて、
凄みのある悪意を見せつけられて、といったことを期待して。
今、思うと、見る態度としてもったいなかったなあ、と。
悪意の描き方が雑でうすっぺらく感じたというか、
本音の、オレのために死んでくれが口をついてしまったり、
まるで準備していたみたいですね、と見透かされたり。
いままでの多くの映画、ドラマで扱われてきた英雄的な戦国大名といったって、
実際はこんなものだったんだぞ、という北野武のアンチテーゼなのかな、と思った。
細かいところでは。
首というタイトルで、実際に何人もの首が飛ばされていくのと、
最後の、秀吉の「首なんかどうだっていい」があざやかな対比。
西島秀俊。
同じ時期にやっているドラマ版「きのう何食べた？」との、
男同士の愛情のやり取りの違いに思いを馳せたり。
信長が、
まんじゅうをさきっぽにつけた刀を荒木村重の口の中でこねくりまわしたシーン、
「アウトレイジ」で対立するヤクザが歯医者の治療中にのりこんで口の中血だらけにしたシーン思い出し、何かこだわりがあるのか、と思ったり。
自分の影武者が殺されても、淡々とかわりの影武者を要求する家康のクールさ。
おれは百姓だぞ！（武士のやり方なんか知ったことか！）という秀吉の叫びは、
おれはお笑い芸人だぞ！映画のお作法なんか知ったことか！というたけしの叫び…
というのは、うがった見方すぎですかね。
勝手に期待しすぎて、
勝手にないものねだりをしてしまった。
勝手に、これは戦国時代版「アウトレイジ」にちがいない、と思ってしまったので、
勝手に、「アウトレイジ」と比べてしまった。
全編にひりひりするような緊張感が漂っていて、
凄みのある悪意を見せつけられて、といったことを期待して。
今、思うと、見る態度としてもったいなかったなあ、と。
悪意の描き方が雑でうすっぺらく感じたというか、
本音の、オレのために死んでくれが口をついてしまったり、
まるで準備していたみたいですね、と見透かされたり。
いままでの多くの映画、ドラマで扱われてきた英雄的な戦国大名といったって、
実際はこんなものだったんだぞ、という北野武のアンチテーゼなのかな、と思った。
細かいところでは。
首というタイトルで、実際に何人もの首が飛ばされていくのと、
最後の、秀吉の「首なんかどうだっていい」があざやかな対比。
西島秀俊。
同じ時期にやっているドラマ版「きのう何食べた？」との、
男同士の愛情のやり取りの違いに思いを馳せたり。
信長が、
まんじゅうをさきっぽにつけた刀を荒木村重の口の中でこねくりまわしたシーン、
「アウトレイジ」で対立するヤクザが歯医者の治療中にのりこんで口の中血だらけにしたシーン思い出し、何かこだわりがあるのか、と思ったり。
自分の影武者が殺されても、淡々とかわりの影武者を要求する家康のクールさ。
おれは百姓だぞ！（武士のやり方なんか知ったことか！）という秀吉の叫びは、
おれはお笑い芸人だぞ！映画のお作法なんか知ったことか！というたけしの叫び…
というのは、うがった見方すぎですかね。
2023年11月02日
2023年10月に読んだ本
1001・山崎ナオコーラ 論理と感性は相反しない 20230918発注0925受領
(1001・くさか里樹 レオの柩 1-3 kindle
(1001・渋谷直角 世界の夜はぼくのもの シーソーブックス 古本フリマ (1987野澤書店) 20230917
1003・法月綸太郎の新冒険 古本浪漫堂 20230917
1004・アンソロジー カレーライス!! PARCO出版 読書室ポワロ …2/3〜3/4ぐらい読了
1004・ポール・ボウルズ(越川芳明訳) 遠い木霊 ポール・ボウルズ作品集II 図書館…遠い木霊、教学師、稲妻に導かれて、モフタールと死の夢、のみ読了
1005・機動戦士ガンダム�� 古本浪漫堂 20230917
1007・嵯峨景子 氷室冴子とその時代増補版 図書館20231004受領 1,6(なぎさボーイシリーズ),7(エッセイと一般小説),8(「海がきこえる」),10章のみ読了。
(1007・であいもん16
(1007・BROWN BOOK ブラウンブック vol.10 ブラウンブックスカフェ
(1007・スガラムルディ SAPPORO CULT CLASSICS 4 …Never mind the books 2023
(1007・さとう田ゆうこ(編) たまたま …Never mind the books 2023
(1007・野澤頃 オバケちゃんとウサギちゃん 8 ぽやん舎 …Never mind the books 2023
(1007・Tamari Masakazu Music of the middle east …Never mind the books 2023
(1007・ブラウンブック Brown Book vol.10 ブラウンブックスカフェ
1008・ポール・ボウルズ（四方田犬彦訳）優雅な獲物 図書館 …遠い挿話、優雅な獲物、ハイエナ、庭、過ぎ去ったもの まだここにあるもの、読了。
(1008・くるみみどり 読書後文4 …Never mind the books 2023
(1008・おふたろう 短歌集I …Never mind the books 2023
(1008・野白風 白箱 …Never mind the books 2023
(1008・野白風 黄金の庭 …Never mind the books 2023
1008・唐木元 新しい文章力の教室 図書館
(booklogなし1009・【再読】豊田徹也 アンダーカレント
1009・下嶋哲朗 海原の里人たち 八重山諸島聞き書き記 K文庫 20230915
(1009・ミシェル・フーコー わたしは花火師です シーソーブックス 古本フリマ (1987野澤書店) 20230917 …「わたしは花火師です」のみ読了
(1009・日本ご当地パン大全 (タツミムック) 喫茶ペエジ
1009・ボムアラム 夢を描く女性たち イラスト偉人伝 タバブックス booklab 20231009
1011・miyono とある暮らし はむはむ堂(喫茶こん) 20231001 -210p1001,-240p1003,-285p1005,-335p1009,-445p1010,-514p1011
1011・坂本龍一 坂本図書 20231007
1011・頭木弘樹（編） 絶望名人カフカの人生論 読書室ポワロ
(1011・Jazz It Up! マンガまるごとジャズ100年史 読書室ポワロ
(1012・松本ひで吉 いきものがたり1 kindle 20231011
1012・松田道弘 ベストゲーム・カタログ 古本浪漫堂 20230917
(1013・セクシー田中さん 7 kindle
(1015・本多俊和「資料と通信 研究者訪問（２）スチュアート ヘンリ（本多俊和） 放送大学客員教授 ――「ひと」と「もの」との出会いを追いかけて」文化人類学(81-3)_522-529 (https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcanth/81/3/81_522/_pdf/-char/ja)
1015・高橋美野梨(編) グリーンランド 人文社会科学から照らす極北の島 図書館20231013受領 …第8章以外読了
1015・【再読】岸上伸啓 〜極北の風景〜 グリーンランド写眞帳 - ヌーク篇 - …高橋美野梨編「グリーンランド」つながり
(1015・かしましめし 6
1015・ANOANO 20230921発注0927受領 …SONOSONOつながり
(1016・黒と誠 1-2 kindle
1019・本の雑誌の目黒考二・北上次郎・藤代三郎 20231015 シーソーブックス
1019・ロバート・ハリス JJ横浜ダイアリーズ kindle 20230930 (20231016 5→80%)
(1021・おいおいピータン！！5
1021・ミア・カンキマキ 清少納言を求めて、フィンランドから京都へ 図書館20231018受領
(1021・エドモンド・ハミルトン フェッセンデンの宇宙 河出文庫…フェッセンデンの宇宙、フェッセンデンの宇宙(1950年版)のみ読了
1022・平野啓一郎 ある男 文春文庫 …agora読書会用 20231021
1024・【再開】開高健 地球はグラスのふちを回る …10年越しに読了
1025・原田ひ香 喫茶おじさん 読書室ポワロ
1025・松田道弘 おもしろゲーム実戦本 講談社文庫 図書館20231018受領
1026・サマセット・モーム アシェンデン 北天堂書店 20231009 …1024読み始め
1027・谷頭和希 ブックオフから考える 図書館200231026受領
1028・甲斐みのり 愛しの純喫茶 読書室ポワロ
1028・空間が美しい札幌のカフェ 読書室ポワロ
1028・さのかずや 田舎の未来 タバブックス シーソーブックス 20231009
(1028・桐谷さん、ちょっそれ食うんすか!?16
(1028・[定山渓温泉開湯150周年記念誌 定山渓 ]ダイジェスト版 K文庫 20231028
(1028・世界史地図 山川出版社 昭和40年発行 K文庫 20231028
(1030・馬場多聞 宮廷食材・ネットワーク・王権: イエメン・ラスール朝と13世紀の世界図書館20231030受領 …ざっと拾い読み
(1001・くさか里樹 レオの柩 1-3 kindle
(1001・渋谷直角 世界の夜はぼくのもの シーソーブックス 古本フリマ (1987野澤書店) 20230917
1003・法月綸太郎の新冒険 古本浪漫堂 20230917
1004・アンソロジー カレーライス!! PARCO出版 読書室ポワロ …2/3〜3/4ぐらい読了
1004・ポール・ボウルズ(越川芳明訳) 遠い木霊 ポール・ボウルズ作品集II 図書館…遠い木霊、教学師、稲妻に導かれて、モフタールと死の夢、のみ読了
1005・機動戦士ガンダム�� 古本浪漫堂 20230917
1007・嵯峨景子 氷室冴子とその時代増補版 図書館20231004受領 1,6(なぎさボーイシリーズ),7(エッセイと一般小説),8(「海がきこえる」),10章のみ読了。
(1007・であいもん16
(1007・BROWN BOOK ブラウンブック vol.10 ブラウンブックスカフェ
(1007・スガラムルディ SAPPORO CULT CLASSICS 4 …Never mind the books 2023
(1007・さとう田ゆうこ(編) たまたま …Never mind the books 2023
(1007・野澤頃 オバケちゃんとウサギちゃん 8 ぽやん舎 …Never mind the books 2023
(1007・Tamari Masakazu Music of the middle east …Never mind the books 2023
(1007・ブラウンブック Brown Book vol.10 ブラウンブックスカフェ
1008・ポール・ボウルズ（四方田犬彦訳）優雅な獲物 図書館 …遠い挿話、優雅な獲物、ハイエナ、庭、過ぎ去ったもの まだここにあるもの、読了。
(1008・くるみみどり 読書後文4 …Never mind the books 2023
(1008・おふたろう 短歌集I …Never mind the books 2023
(1008・野白風 白箱 …Never mind the books 2023
(1008・野白風 黄金の庭 …Never mind the books 2023
1008・唐木元 新しい文章力の教室 図書館
(booklogなし1009・【再読】豊田徹也 アンダーカレント
1009・下嶋哲朗 海原の里人たち 八重山諸島聞き書き記 K文庫 20230915
(1009・ミシェル・フーコー わたしは花火師です シーソーブックス 古本フリマ (1987野澤書店) 20230917 …「わたしは花火師です」のみ読了
(1009・日本ご当地パン大全 (タツミムック) 喫茶ペエジ
1009・ボムアラム 夢を描く女性たち イラスト偉人伝 タバブックス booklab 20231009
1011・miyono とある暮らし はむはむ堂(喫茶こん) 20231001 -210p1001,-240p1003,-285p1005,-335p1009,-445p1010,-514p1011
1011・坂本龍一 坂本図書 20231007
1011・頭木弘樹（編） 絶望名人カフカの人生論 読書室ポワロ
(1011・Jazz It Up! マンガまるごとジャズ100年史 読書室ポワロ
(1012・松本ひで吉 いきものがたり1 kindle 20231011
1012・松田道弘 ベストゲーム・カタログ 古本浪漫堂 20230917
(1013・セクシー田中さん 7 kindle
(1015・本多俊和「資料と通信 研究者訪問（２）スチュアート ヘンリ（本多俊和） 放送大学客員教授 ――「ひと」と「もの」との出会いを追いかけて」文化人類学(81-3)_522-529 (https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcanth/81/3/81_522/_pdf/-char/ja)
1015・高橋美野梨(編) グリーンランド 人文社会科学から照らす極北の島 図書館20231013受領 …第8章以外読了
1015・【再読】岸上伸啓 〜極北の風景〜 グリーンランド写眞帳 - ヌーク篇 - …高橋美野梨編「グリーンランド」つながり
(1015・かしましめし 6
1015・ANOANO 20230921発注0927受領 …SONOSONOつながり
(1016・黒と誠 1-2 kindle
1019・本の雑誌の目黒考二・北上次郎・藤代三郎 20231015 シーソーブックス
1019・ロバート・ハリス JJ横浜ダイアリーズ kindle 20230930 (20231016 5→80%)
(1021・おいおいピータン！！5
1021・ミア・カンキマキ 清少納言を求めて、フィンランドから京都へ 図書館20231018受領
(1021・エドモンド・ハミルトン フェッセンデンの宇宙 河出文庫…フェッセンデンの宇宙、フェッセンデンの宇宙(1950年版)のみ読了
1022・平野啓一郎 ある男 文春文庫 …agora読書会用 20231021
1024・【再開】開高健 地球はグラスのふちを回る …10年越しに読了
1025・原田ひ香 喫茶おじさん 読書室ポワロ
1025・松田道弘 おもしろゲーム実戦本 講談社文庫 図書館20231018受領
1026・サマセット・モーム アシェンデン 北天堂書店 20231009 …1024読み始め
1027・谷頭和希 ブックオフから考える 図書館200231026受領
1028・甲斐みのり 愛しの純喫茶 読書室ポワロ
1028・空間が美しい札幌のカフェ 読書室ポワロ
1028・さのかずや 田舎の未来 タバブックス シーソーブックス 20231009
(1028・桐谷さん、ちょっそれ食うんすか!?16
(1028・[定山渓温泉開湯150周年記念誌 定山渓 ]ダイジェスト版 K文庫 20231028
(1028・世界史地図 山川出版社 昭和40年発行 K文庫 20231028
(1030・馬場多聞 宮廷食材・ネットワーク・王権: イエメン・ラスール朝と13世紀の世界図書館20231030受領 …ざっと拾い読み
 | 扶桑社 発売日 : 2021-09-29 |
90年代東京のカルチャーと、かっこよくなりたい、モテたい、好きなものをきわめたい若者たちを描いた作品。正直当時の東京にいたわけでないので、その空気感は遠くからかんじ、流行もおくれて入ってきてたんだなあと思いつつ、自分なりに90年代の流行の受容を思い起こすよすがになったり。i-D JAPANに「なんだよこの雑誌！？こんなこと知りたい人いんの！？」ていった主人公のひとことが、カルチャー全般に言えるとは思うけど、だからこそ知りたい、という思いも一方ではあり。フランス映画、ブックオフ、モスのフリーペーパー「モスモス」、渋谷系、ハッピーマニア、テクノ、フィッシュマンズ、Jリーグ、小室ファミリー、ミスチル、ビョーク、岡崎京子…今もあるもの、勢いのあるもの、そうではないものを眺めつつ。
 | 朝日新聞出版 発売日 : 2020-06-10 |
1−3巻読了。ロバート・ハリス「地図のない国から」読んだらバックギャモンの小説読みたくなるも見つけられず、マンガが見つかった。勝ち上がるのは、定石把握と勝率計算が最低限必要。そこから差をつけるのは場数とセンスなのかなあ。レオの人の愛を知らず信用しないゆえの攻撃的なところが時に苛立たせられるけど、それを速水とゴリが溶かし、まっすぐに勢いを得て、世界へ、と。これから…というところでたたまれたストーリーは打ち切りなのかな◆君が勝負をあきらめて投げ出さないかぎり/バックギャモンは君を見捨てない/常に君と共にある◆バックギャモンだけは/自分で運をコントロールしてるって実感できるんだ！◆サイコロの出目はどんな人にも平等/誰にだってチャンスがあるって事
 | 講談社 発売日 : 2002-07-16 |
図書館探偵ものがふたたび読めるか、と期待して手に取るが、図書館が主題のものはなく、何かの事件の際に、図書館の貸出情報を開示するか否か、という論点が何度か登場するだけで、図書館探偵ものへの期待、という点では肩透かし。ただ、探偵法月綸太郎の腕の冴えは健在だし、司書穂波さんも登場するし、法月綸太郎のミステリは最低だ、という自虐がところどころ織り込まれるけれど、ミステリ読みじゃない身としては、二転三転させていくところは唸らされました。◆申し訳ありません。利用者のプライバシーに関する事実の商会は、理由の如何にかかわらず、応じることはできません。「図書館の自由に関する宣言」と「図書館員の倫理綱領」でそのように定められていますp.348
 | パルコ 発売日 : 2013-02-28 |
ライスカレーとカレーライスの違いはみなさんこだわりあるようで、俺は/私はこう思う！といろいろな説がでてきて「諸説あります」な気持ちに。そして、思い出が語られる昭和のカレーのアバンギャルド。カツオ出し？うどん粉？うどんの出し？サッカリン？片栗粉でとろみ？…なかなかに興味はある。それがすごくまずい！と思い出すのと、そこはかとない懐かしさをこめる人がいて。こうなると、バーモントカレーなどのカレールーの普及は、家庭のカレーの味をよくするのに大分貢献したんだなあと。あと、あつあつカレーをつめたいご飯に、冷えたカレーを熱いカレーに、またまた少し冷めたのを少し冷めた飯にかけたのも、など熱さのこだわりも。せっかちな関西人にぴったり！と東海林さだおの大阪「自由軒」の名物カレー、すでまぜカレー（すでにごはんとカレーがまぜてあるカレー）、いいですねえ。大真面目にレトルトカレー食べ比べ比較表をつける吉本隆明と、お気に入りで行きつけのインドカレー屋の店主が二度までも交通事故死し、三度目はなんとか火事はだしたものの店主は生き延びて店をつづけてくれたよしもとばなな親子の対比が印象に。「食べものなんてそんなにうまいものである必要はない」て山口瞳のつぶやきもいまとなっては一考の余地あり。
 | 白水社 発売日 : |
遠い木霊、教学師、稲妻に導かれて、モフタールと死の夢、のみ読了。ロバート・ハリス「地図のない国から」を読んだら読みたくなり。簡潔で切れ味のいい作品を、と。簡潔は味わえたけど、切れ味はあまりわからなかった。唐突感。遠い木霊のアイリーンが母の友人にふるった暴力は、自分から母を奪ったという憤懣の矛先だったのか。モフタールが死の夢にとらわれて、実際に夢のとおりだ！といいつつ肉屋を手にかけたのを、群衆は無罪、警察は断罪というギャップ。教学師の、弟は教学師に従っただけといいつつ、解放された兄にどうしても恐れをぬぐえず…。稲妻に導かれての身勝手な動機と支配欲に駆られた一幕…など。「人生を何だと思っているの。あなたのために用意された終わりのないパーティじゃないのよ」(プルー)「遠い木霊」より
 | 朝日ソノラマ 発売日 : 1981-03-01 |
ＴＶ版とは違うとどこかで聞いた気もするが、まさかアムロが？と愕然としてしまう。スペースオペラは書かれた時代を背負う。まさか宇宙にまで飛び出た人類が仲人を気にするとは、とか。台詞回しや考え方、男が女がとか、40年前な古さを感じるところはあるけれど、それでもTV版とはまた違った味わい。ニュータイプとて恋のひとつもする普通の人間てスラッガーのつぶやき。シャアが部下を信じすぎた故の悲劇。レビルの、これは厳命だ、生き延びろ、という訓戒の皮肉。そして、戦後のカイテンシデンの、シャアの演説への違和感が目に止まった
 | 河出書房新社 発売日 : 2023-06-24 |
おもに「海がきこえる」について知りたくて。1,6(なぎさボーイシリーズ),7(エッセイと一般小説),8(「海がきこえる」),10章のみ読了。「海がきこえる」は、プロトタイプとなる小説、そこでの試みが後の氷室作品に与えた影響。「海がきこえる」が取り上げられた書籍、媒体。「海がきこえる」が登場する他の作者の作品など知りたいことが十全にのべられ。「海がきこえる」単行本化でばっさり削られたというアニメージュ連載分の19-23話は読んでみたい。そして氷室冴子の晩年のことを知れたのは大きい。読者や時代の変化にあわせて作品をアップデートしていったこと。長い休筆期、新たな連載をこれからというところでの病状悪化。没後のファンによる継承活動などを。元担当の「作家が亡くなって、新しい作品が出なくなれば、やっぱり自然と忘れられていくんですね。けど、作品さえあれば新しい読者と編集者にまた発見される」という趣旨の言葉が響く。
ぽやんコミックス待望の新刊。こののんびりゆったりとした空気感が好き。夜のお花見のほっこりした空気が好き。本屋さんできそうなくらい本があっても本が売れないのに共感(個人的には、買う量>>>>売る量でどんどん増えてく…)。壁の穴をかくしたカレンダーをめくって、王様の耳はロバの耳ごっこするのに笑い。炭酸コーヒーのこの夏一番のヒット具合にははげしくうなずきつつも、その後の、瞬間最大風速な去り際を思い出して切なくなったり。喜怒哀楽の「怒」意外の感情を刺激されつつ読み終えました。
もう発想からしてぶっとんでいて発売前から興味しかなかった。サブタイトルの「たまたま苗字に「田」がつく人たちのオススメ本と解決したいこと」とあるように、たまたま苗字に「田」がつく人たちにオススメ本と解決したいことをインタビューして編集したもの。年齢層も小学生からおそらく中年な方々まで幅広く。インタビュー本の好きなところは、自分とは違う考えを持っている人のお話を間近で聞けたような気持ちになること。もちろん会ってお聞きできればベストなのだけど、そこは機会(縁)と時間とによるし。円錐書店さんの「言葉の信用性」をめぐる話には深くうなずき。オススメ本に、以前借りて読んで、人にもおすすめして、最近自分でも買った二階堂奥歯「八本脚の蝶」と、個人的に熱狂して買い揃えて続きを待ちわびてる「紙屋ふじさき記念館」シリーズが入ってて、おおおと思いました。下北沢fictionessはもうないのか…という思いをあらたにしたり、そこで話されたという「トルストイとドストエフスキーが文学の最高峰に一番近づいた人ではないか」という話に、過去に読みはしたけどほぼ自分の中に残ってない「カラマーゾフの兄弟」再読への思いが頭をもたげたり。
| 発売日 : |
言葉で描く絵画、というのに心惹かれて。「それを取り返しのつかない白だと思うか、白鯨の断片ととらえるか。好きなほうを選ぶことができる。」という一節に凝縮されてる。オノ・ヨーコ「グレープフルーツ」を思い出す。言葉によるパフォーマンス。
| 発売日 : |
自らだけのための場所に導かれ、そこで自分を天使ととらえた少年と出会う主人公。押し付けではなく共に感じること。喜ばせたい、という気持ちで通じ合うこと。庭の情景を思い浮かべながら、読み進めていった。ミルクパズルはわからなくて調べちゃいました。そして「記憶の宮殿」についても深掘りしたいなと思った。そして自らの宮殿に降りていく。
ブラウンブックスカフェの周年の記念誌。お店のブログから厳選した、店主星川さんと元店員体阿弥さんのエッセイ。キン・シオタニ「コーヒーと旅」（マドレーヌブックス）の旅が主軸の一編（カランコロンの旅）が個人的ベストでした。起きぬけにいきたくなるお店、いいなあ、と。
 | KADOKAWA 発売日 : 2023-10-04 |
和が、しっかりとしてきたと年配の職人さんにも思われ、和菓子と日本酒のマリアージュメニューをバーに提案したり。和の東京時代を語りつつ酔い潰れた佳代子を介抱したりと。
今回もアグレッシブさは健在。わざわざ宗教の勧誘してくると噂のラーメン屋に飛び込んで、わざわざ勧誘されて缶ビールを隠し持ち教団施設に潜入してお話聞いてかえってくるとか。人類は科学的に創造された！というチラシにみちびかれてイベントに参加して記念撮影してかえってくるとか。けどやはり最大の目玉は、おふたろうさんが売場で言ってた「ついに解決したんですよ！！！」の怪文書貼り主究明&訪問でしょう。よくわかりましたね、は読者であるわれわれの言葉でもあるが、訪問時のお話、出くわした悪夢についてはvol.5でも読めるのでしょうか。まだまだ引っ張るこのzine、そして引っ張られたいわたし。
シャンティブックス店主溜さんによる中東音楽ディスクガイド。買う時に、付属のCDは、発売日の午前に思い立ってmixしてつけてくれたのだとか。すごい！個人的には、Baba Zula(卒業後に飲みに行った指導教官(オスマン帝国史)に「ちょくくんこれ好きそうだから」とプレゼントしてもらったアルバム)、Omar Suleyman(サラーム海上さんに感化されてiTunesで購入)は愛聴してた、かつ、Gaye su Akyol、Sabreenあたりは別の曲を持ってたりするけど、あとはまったくのお初。よくこれだけの地域、時代から幅広く掘ってきたなあ、と。いま付属のspotifyのplaylist聞きながら書いているけど、5時間近くあってなかなか聴ききれない。けど、ひととおり耳を通したい。そしてひっかかったものがあれば、自分で深掘っていきたい。思い返してみると、自分の中東音楽歴は、イスタンブールの音楽家たちにインタビュー・演奏してもらった映画「クロッシング・ザ・ブリッジ」、二条市場にあったときのシーシャ屋さんArguilaCafe、サラーム海上さんの中東音楽講座がらみ、そして23歳で行ったトルコ旅行時に買い集めたものがベースになってるなあ、と再認識。
| 発売日 : |
ぱらりとながめて、お、短歌以外も載ってる、というのと、あの怪文書ハンター的「サッポロカルトクラシックス」を書いた人はどんな歌を詠むのかな、という興味と半々で購入。短歌は「夜間専用押しボタンを朝、気まぐれに押すような人だったし」「放尿、いわば逃避行、精神の拡張、This is 短歌」「頭の悪すぎる歌詞はすぐに出てくるからきっとこれが本性」あたりが気になりました。「ほっぺになにいれてるの？」「太陽だ」はランボーへのオマージュなんだろうなあとふんだ。ただ、もう少し全般的に定型に押し込めたほうが読みやすいなあ。清竜人「FEMALE」、川上未映子・穂村弘「たましいのふたりごと」あたりは手にとってみたくなりました。著者の一月をまとめたページもよかったです。ゆうちょ銀行のせいで青森旅行キャンセルだなんて…。
| 発売日 : |
今回も、きっと取り上げられた本、読みたくなっちゃうなあ…と思いつつ、やはりそのとおりに。増田セバスチャンのエピソード強すぎる（飴屋法水と看護師立ち会いの下、お互いの腕にチューブを繋いで、増田さんの血液を飴屋さんに注入しながらトークショーって！）。バッハのコーヒー・カンタータは高校生の頃に買ったCDに入ってて、めっちゃコーヒーコーヒー言うてる、と思った記憶が。MOGUMOGU食べあるきくま、札幌編もあるのよさげだなあと思いました（個人的には、同じナガノ作「くまのむちゃうま日記」は何度も読み返して偏愛してる一冊）。そして、コメダのブックカバー！本当にソファと溶け込んでますね。
 | 新潮社 発売日 : |
ロバート・ハリス「地図のない国から」に導かれて。遠い挿話、優雅な獲物、ハイエナ、庭、過ぎ去ったもの まだここにあるもの、読了。「地図のない国から」で取り上げられてたのは「遠い挿話」だった。モロッコで言語学の教授が攫われ、舌を切られ、砂漠を運ばれ、見せ物にされ、突然意識が覚醒して砂漠の彼方へ駆け出していく。「優雅な獲物」は、モロッコに住む少年が隊商の途中で同行者に裏切られ男性器を根本から切られ、気道を傷つけるところまで首を切られ絶命、その後少年の部族のものに知られ、砂漠に首から下を埋められ放置されるまで。乾いた、凄惨な描写とストーリー。文学の滋味をちゅうちゅう吸いたいという気持ちがあるのだけど、これはなかなかに冷たく手ごわい。
 | インプレス 発売日 : 2015-08-07 |
会社で役職者が若手にすすめてるのを目の当たりにして、便乗して手にとってみる。身につければナタリー的な文章になる、というのは感じた。それがビジネス的にもいいのでは、と。いきなり書き始めるな、テーマを立てて、要素、順番、軽重の順に組み立てよう、というのは確かに。日本語の閉じ開きのスタンダードは年々、開き方面にシフトしてきているというのは、そうなのか！、"語句に「こと」をつけて名詞化"の功罪、"感想文やレビューのような文章は、客観的事実より前面に主観的意見を配置し、それを事実で補強していくような順番が望ましい"、あたりは参考に。仕事で、自分が書いたものじゃないけど、他の方の資料を確認する機会があったんだけど、するすると学んだことが活かせて、これはいい、となってます。
島津氏からの圧迫があったにせよ琉球王府の八重山への苛政。機械的な人頭税のために、田を耕すために船でときには20キロ先まで通う。村の通りからこちらの区画は全員他の島へ移住など。また太平洋戦争後の農業のつらさ。復帰後に二束三文で土地を取り上げられたり、減反調整にあってせっかくの田畑が荒廃していく挿話。反面、アメリカが道をつくってくれた、マラリアを撲滅してくれたという声も。対立は、琉球王府、日本政府、アメリカ軍政治対民衆だけではなく、島どうしのものも。また著者が一年の滞在で見た離島における離島ならではの論理。ある面受け入れてくれても、最終ラインはよそものと思われてしまうところなど。不思議に思うのは、これほどの結束力をもつ村落が、なぜ無人島になってしまうまでバラバラに解体されてしまったのか、という視点。月刊誌、週刊誌を石垣市で買うと、本の定価より二十円高くとられる。これも運賃分とか。定価のほかに別料金をとるような地域はほかにもあるのだろうか、という疑問。百姓の歌や踊りは、百姓が歌い踊って、はじめてその味が出るのではないかと思う、なのに農業の担い手はどんどん減って、形だけ残っても…というなげき。などなど、当時の八重山の知らなかった一面を垣間見せてもらう。
 | 辰巳出版 発売日 : 2022-06-02 |
おもに北海道のものをながめてたのしむ。ビタミンカステーラ、チョコブリッコ（高校の購買で何十個買ったことか）、羊羹ツイスト、金時豆パン（全国区だと思ってた）、どんぐりのちくわパン（言わずとしれた。大好き）、みそぱん（もそもそは意図的だったのか）、ラブラブサンド（ランチパックの亜流だとおもってた）あたり。一時期イオンにあってアホほど食べてたスペースアポロは広島産だったのか。富山の昆布パンは非常に興味をそそられる。大阪のスイカパンは見た目もスイカで、スイカピューレで味付け。富山のヒスイパンはみためも翡翠。などなど。
 | タバブックス 発売日 : 2020-05-30 |
半分はさまざまなイラストレーターによるポートレート、半分は女性の偉人の事績が語られる。なぜ教科書の偉人は男性ばっかり？という疑問を出発点に。ナイチンゲール、物品の補給に問題が生じたらハンマーを持ってきて錠を破壊したから「ハンマーを持った女」と呼ばれた、「白衣の天使」というイメージに反して。ヘレン・ケラーが障害者として成長をとげた話は知られるが、生涯をささげたことは社会運動だった（女性参政権、障害者のための制度、盲人事業協会の募金活動、反戦平和運動、労働運動、先住民権利保護など）。有色人種用の席にすわってたのに、そこを白人用の席に変えられた時、席をゆずらなかったことで逮捕されたローザ・パークス「私が立つ理由はないようですが」…黒人たちのボイコット運動につながる。博士号も、「院士」称号も、海外留学経験もなく、発見が40年も評価されなかったトユウユウは最終的に抗マラリア薬開発によりノーベル賞受賞。田中美津の「便所からの解放」というビラ。「フェミニストとは男性や女性で「今日もジェンダーに関する問題は存在し、それを直さなければならない。もっと努力するべきだ」と言う人のことである」（チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ）。「私たちが呼ぶのは、加害者ではなく犠牲者たちの名前なのだ」（ジャシンダ・アーダーン）。またこれまでふれたことのなかった韓国の女性映画監督、弁護士、作家、医師、教育者、独立運動家にもふれられることができたのがよかった。
 | 筑摩書房 発売日 : 2008-09-10 |
「わたしは花火師です」のみ読了。フーコーが「わたしは花火師」ってどういうこと？という興味一本で手にとる。歴史家とも哲学者とも呼ばれたくない。わたしは花火師、占領と戦争と破壊に役立つもの。花火師は地質学者にして実験家。つまり、問題提起職人てことなのかなあ。どのような土地、世論、時代背景で効果的に問題提起できるか、というのを「花火師」と称したのかな、という感想。きれぎれに書くこと、書き物であることが自覚されない書き物、熱に浮かされたカオスのように書くことを望んでいるのだとか。また、書くという営みが、本に仕えることが必要だとも。◆異常者だということは、病人だということだ。ほかの人とは違っていること、正常ではないこと、病人であること、この三つのカテゴリーはきわめて異質なものでありながら、どれも同じように扱われていたのです。p.12◆
 | バリューブックス・パブリッシング 発売日 : 2023-09-27 |
【坂本龍一が語る、本を介した36人の人物録】。時間、ジョン・ケージ、相互扶助、分節しないものの見方といったあたりの話題が個人的には響いた。◆時間は記憶、時間は一瞬の夢、世界の実像とは、一直線の時間軸でつながっていない世界、むしろ夢に近い。◆しかし、ケージが一生こだわったのは時間を組織化することだった。「4分33秒」は充満する音を、時間を区切って提出する、作曲家の仕事である。この沈黙の音楽は、しかしこの世に沈黙はないという気づきによって生まれたのが面白い。p.132...ケージの「作曲家の告白」をこんな風に切り取れるなんて◆デルス・ウザーラが何度かでてきたり、ウスビ・サコとの対話でもふれられたけど、ひとりじめしようとする資本主義と、シェアしようとしていく社会との対比。相互扶助。◆分節しないモノの見方では、自分と対象との区別もない。主客もない。それは無心とも、無私といってもいい。言葉的な、分節的な思考を破壊すること、実はこれは禅の修行の大事な過程であるp.66◆また、ビルの最上階、屋根に大きな穴、トイレはむきだしなナム・ジュン・パイクのアトリエに遊びに行き、天井の穴から降り注ぐ雪をを眺めながらお酒を飲み語り合ったシーンがあざやかに印象に残る。
 | 飛鳥新社 発売日 : 2011-10-22 |
倒れたままでいたい願望、集中力もなく、体も心も弱く、けど弱さを誇るところもあり？！よくこんな暗い内容の手紙を婚約者に送ったなあ、と。親友ブロートとの関係も興味深い。まるで正反対の二人。原稿は焼いてくれ、というのに出版したことには賛否両論あるみたい。一番ささったのは、読むことについてかな。本など読まなくたって幸福になれる。必要な本とは、このうえない不幸、愛する人の死、すべての人から引き離されて森へ追放されること、自殺のようにぼくらに作用する本。ぼくらのうちの氷結した海を砕く斧でなければ、といった趣旨の。それと対比されるのが「真実」だというのがなんとも。◆避けようとして後ずさりする、しかめっ面に、それでも照りつける光。それが真実だ。ほかにはない。（カフカ）◆カフカ（頭木弘樹編訳・評論）「「逮捕＋終り」ー「訴訟」より」も読んでみたくなる。
| 発売日 : |
福井の10-80代の人々にひたすらインタビューした本。福井が好きか、どんなところが好きか、どんな時怒るか、怒ることについてどう思うか、人生のターニングポイントは、将来（世の中が、福井が、自分が）どうなって欲しいかといった問いを投げかけ。当たり前だけど考えは皆さまざま。若者が行けるところがどんどん減ってく、老人向けばかりで若者向けの政策がないと嘆く人あれば、老人が安心して暮らせるのを見せなきゃ若者も安心できない、行けるところがなければ自分で作ればいいという人まで。置かれた場所、年齢、経験などにより、見方、感じ方は千差万別、そのグラデーションが見て取れる。怒りについては総じて若い層は感じても出さない、歳を経るにつれ、出す人が多いと感じた。福井に対しても愛憎。人がいいという人がいれば、人がいやという人も。自然はいいという人、それ以外何もないという人、のんびりしてるから退屈まで。怒りは、コントロールできるならいいけど、そうじゃなければ人にぶつけるべきではない、という考えがまっとうで目にとまる。あと、インタビュー対象によって馬があうあわないなのか、濃淡あり、1ページ半の人から20ページ近い人までさまざま。◆なかったことになる関係もあるp.366◆人助けっていいことやん。それは知ってる。募金っていいことやん。それは知ってる。でも知ってるっていうのと、やってるっていうのは別やん。俺はできてないんやp.402◆みんなにダサいと言われてもその服を着るみたいな。もっとそういう人がいっぱいいるといいのになと思いますp.38◆怒ることって、結局自己満足なんですよ。（略）自分の意見を無理やり押しつけてるんですよp.56◆
 | 講談社 発売日 : 2008-08-29 |
ビル・エヴァンス、スタン・ゲッツ、マイルス、ジョビン、ジョアン・ジルベルトあたりをさらりと。立ち位置とか時代背景とか名作誕生のきっかけとかがわかりやすく。
 | 講談社 発売日 : 2023-09-22 |
著者のあふれるほどの動物愛。調べに調べて動物たちのかわったところを伝えてくれる。カモノハシ、ブラックライトあてたら光る、身体から乳がにじみでる、爪には猛毒、電気を察知するくちばし、卵を産む…。なまこ…危機にあうと尻から内蔵ぶちまけ、どろどろに溶ける、けど3ヶ月あれば元どおり。ナマケモノは満腹なのに餓死することも、死因の50％は排便時におそわれて。サソリの肛門はしっぽにあり、しっぽを切り離すと排便できなくて死んでしまう…。鯨は耳がちいさすぎて、耳くそは生涯たまりつづける。コアラの食費年間2000万超、食べるユーカリの品種にもこだわり。先日ココナツの殻を小脇に抱え颯爽と海底を歩くタコの姿が撮影され…殻をポータブルなシェルターに活用。好奇心旺盛なタコにしばらく手をつながれ、お散歩につきあわされたダイバー。キリンの子は、出産直後に2m落下。ハイエナの出産は、初産ママの10匹に1匹は死亡、胎児の60％が窒息死の命がけ。進化のバグ。キツツキやジャコウウシは最近の研究では脳に損傷をおってる。みたいなエピソードめじろおしで、これがキュートなイラストで語られるところにもだえます。
同じ著者の、「おもしろゲーム実戦本」を昔持っていたのに手放してしまったのが頭にあり、古本屋でこちらをみかけてノスタルジーで手にとってしまう。「ゲームというのは、ふしぎな戦いの世界です。そこで各プレーヤーは、自分の自由意志で建設と破壊を同時進行させながら果てしのない戦いを繰り返すという、パラドキシカルな宇宙をつくりあげていきます。」(p.3-4)という冒頭近くの魅惑的な文言から、各種のゲームの簡易な紹介がくりひろげられる。簡略化されたアメリカ産の紙マージャン「ミン」。モノポリのハウスルール「過激モノポリ」。有名なポーカー・ジョーク、ロラパローザ・ハンド。三国志演義（エポック社）、戦国大名（エポック社）(p.163)はどんなゲームだったんだろう。チェスのナイトの動きでしかつなぐことができない「ツイクスト」。あたりが気になったゲーム、エピソード。◆バックギャモンは1960年代にアメリカで爆発的なブームをひきおこしましたが、今はかなり下火のようなです(p.201)とあるが、なぜその年代にブームになったのか、そしてなぜ90年代には下火になっていったのか、どこかにそれにふれた文章はあるのだろうか。◆泡坂妻夫「トリック交響曲」文春文庫、A・アルヴァレス「ザ・ギャンブラー」新潮社あたりは手にとりたくなる。
| 小学館 発売日 : 2023-10-10 |
大きく関係性の動いた巻。笙野が、朱里が、自分がいい方向に変われたのは田中さんのおかげだ、と自覚しつつ、それぞれのパートナーへぐっと一歩ふみだしたのと同時に、田中さんも、ただの憧れだからと封をしていた自分の気持ちにすこし正直に、と。何もかもおちゃらけてごまかしてそうに見えた三好さんのバックグラウンドも語られ。そしてドラマ化のはなし、作者のスタンス、マンガとの距離感が記されていて、ドラマ見るのも楽しみに。◆「どん底まで落ちて立ち直ったり開き直ったり強くなったり弱くなったりしながらまた誰かを好きになる」（朱里）◆そして朱里の「田中さんが誰を選んでも誰を選ばなくても」から始まる一文は涙なしには読めなかった。
 | 風土デザイン研究所 発売日 : 2014-09-10 |
(2023/10/15読了分)高橋美野梨編「グリーンランド」つながりで再読。なぜアイスランドに面した西部ではなく東部から入植が始まったのか疑問だったが、「北から海氷や浮氷がほぼ一年中沿岸に流れ込むので、夏季でさえアイスランドから直接の航行は困難であった」(p.21)という記述にふれ納得。総人口56000人のうち専従のハンター・漁師は2500人ぐらいしかいない、グリーンランドをもはや狩猟民社会とは言えないのでは、という指摘も。グリーンランドの産業化をはかるための集住政策が、イヌイットの反発を呼び、のちの自治政府樹立の要因のひとつに。グリーンランド大学には35人の教職員、約150名の学生とこじんまり。日本とのつながりでいえば、寿司のエンガワにはグリーンランド産オヒョウのヒレの部分が使われていることが多い。といったあたりが印象に(2020/11/02読了分)グリーンランドの主に首都ヌークを中心とした写真集。手つかずの大自然、というイメージをいだきがちだが、2万人都市のヌークはしっかりと近代都市で。グリーンランドの成り立ち、歴史、自然から、都市生活、教育、文化まで幅広く語られる。オールモノクロなのは若干物足りないが、値段見合いで致し方ないところか。温暖化ひとつとっても、北部では狩猟や漁業に悪影響、南部では地下資源開発の可能性がひらける、とその影響はさまざまな。早くからヨーロッパ文化に接していた西部にくらべ、東部は19世紀まで独自文化が色濃く残っていた、など、ひとくちにグリーンランドといってもさまざまな側面。
| 藤原書店 発売日 : 2023-08-29 |
個人的な昔からのグリーンランドへの憧れだけで手に取った本。「本書は、西から東へ移動したエスキモーと、東から西へと新たな地平を求めたノース人／デンマーク＝ノルウェー同君連合出身者との<合流>の輪郭を、通時的且つ分野横断的に跡付けることを目指して編まれたものである。」(p.362)とあるが、合流があった、という認識すらなかったので収穫。その一環として、近代-未開の構図から近代化の度合いを評定していく思考態度を退け、文化相対主義的に先住民の世界観を尊重することをも超え、先住民の立場から、彼らの世界観を自己呈示するプロジェクトも示された。それは、なかなかに慎重にして精緻な道を耐えずたどろうとする試みと思えた。興味深かったのは、グリーンランドにおける儀礼が、他の植民地支配と比較して穏健な面があり、またグリーンランドの人々の中で、集団で争い合うこともなかったことから、逆に守り抜こうという機運が起こらず、喪失していったのでは、という論点。また、デンマーク、フェロー諸島、グリーンランドの三者の関係を軸に、お互いにどう影響し、自治を獲得し、どのような関係性を結んできたか語った章も興味深く。幸村誠「ヴィンランド・サガ」をずっと読んでる身には、史料上のトルフィンの話にふれられたのも良かった。
タモリ他「SONOSONO」が、この本に刺激されて作られたと書かれてて手に取る。40年前の女子のおしゃべり。いまも変わらないところと変わったところとあるんだろうか。
高橋美野梨(編)「グリーンランド」（藤原書店）を読んで、著者紹介だけじゃ来歴が全然わからないなと思って手に取った一編。あちこち里子に出されたという青年期までと、北極の研究者になるまでの紆余曲折が語られていて、知りたいことを知ることができた。インタビュアーは元教え子。そういえばちいさなスノーモービルで雪山に突っ込んで川に落ちた大学院生がいまして…先生、その節は…みたいなくだりがお約束みたいで可笑しかった。
 | 祥伝社 発売日 : 2023-10-06 |
なんでもホットサンドにしちゃうのをはじめ、夏野菜をあらんかぎりの工夫で食べたり、食べるを楽しもう！誰かとわかちあおうというのがあふれでていて読んでてお腹空いてくる。「そのしんどさはただしい」「相手に納得してもらうためにあるんだなカテゴリーって」「自分一人のために何かをし続けるには人生はながすぎる」あたりのことばにうなずきつつ。最後は、嵐の予感、トミオの姉の来訪、といったあたりでしめくくられ。
最近出た「本の雑誌の目黒考二・北上次郎・藤代三郎」を読んでたら俄然読みたくなり1−2巻買って読んでしまった。活字でしか読んでこなかったストーリーがマンガになり、より熱がつたわってきて。目黒考二が本を読むために会社をやめ、本の話を書いた手書き誌をくばり、それを面白がった椎名誠と「本の雑誌」をつくり、苦労して店に置いてもらい、編集路線でバチバチに対立するところまでが描かれる。よく椎名誠が目黒考二のことを見てたんだなあという描かれ方。パワーと情熱にみちあふれてて、読んでてわくわくしてくる。◆オレにとっちや雑誌が仕事で本は「趣味」だけど 目黒にとっちゃ本は「生き方」なんだな（椎名誠）◆今に残る本の雑誌社の社是「無理をしない」「頭を下げない」「威張らない」の誕生の瞬間など。
| 本の雑誌社 発売日 : 2023-09-24 |
帯の「本だけ読んで暮らしたい」をブレずに地で行った人生だったんだなあというのが読後感。もちろん自分も創業メンバーとなった本の雑誌社立ち上げからしばらくは本を読む時間も大幅に削られたと思われるけど、それでも。本を読むこと、ギャンブル、書評仕事、これらで人生の大部分が占められ。多くの人の亡くなったことを惜しむコメントを見ても、（人の話を聞かない、遊びに悪い感情を持ち込むなといいつつ自分でできてない、などありつつも）愛されてたんだなということが伝わってきて。あと、ベストテンはお遊びよね、本人もルールぶれぶれと言ってるくらいだし、概ね、賞で評価されない、まだ陽の当たってない作家のよい作品をできるだけプッシュしたいという傾向はあれど。亡くなったあとの目黒さんの蔵書を片付けに言ったメンバーの悲喜こもごも。目黒さんの一日書店員体験記。椎名誠のカツ丼12個！の衝撃。「私の書斎はもっぱら駅のベンチだ」。どこに旅行、だれとつきあい、ふられたとかまで克明に記された巻末の年譜。あたりが印象に。あと読みたくなった本が目白押しでうれしい悲鳴。◆本を読むという行為を、能動的なもの、世界を変えうる行為だとしたのは佐々木中だったp.45(鏡明)◆目黒の書評の中で何が好きかって問われたら、躊躇なく「感情の法則」と答えるp.67 (菊池仁)
 | 草思社 発売日 : 2021-07-30 |
会社を一年休んで、国から手当、各機関から助成をもらい、日本語はできないが、英訳の枕草子を抱えて、フィンランドから京都へGO。心のなかで、セイ、あなたはどう思う？わたしはこう思う、とダイアローグを重ね、見たものを枕草子にならってリストマニア的にリストアップし、京都の風物を愛で、そこで出会った人々とまじわり、心の道行を思うままに記していく一冊。最後のほうで、「枕草子」のフィンランド語訳をしているミーカに、蔵書から資料を全部貸せたのに、わざわざ京都やロンドンへ行くこともなかったのに、と言われ、だからこそ最後の最後まで連絡を取りたくなかった、自分で地道になしとげたかったこと、用意された本の山をヘルシンキでただ読んでいるだけだったら、どんな長期休暇冒険になっていただろう？と語り、それを裏付けるように、滞在の最後は、清少納言にならって「十二単衣を纏ってみること」（衣装だけで18キロもあり、さらに床まで届く黒髪のかつらも！）。おそらく、文献を渉猟した研究者とは異なる視点で語られているんだと思う。読み終えて、自分でももっともっと枕草子について知りたいと思った。個人的には、この本で語られているような、源氏物語と枕草子の研究の蓄積に圧倒的な差があるとはいままで意識したことがなかった。早速、札幌のジュンク堂の古典文学の棚を見に行ったら、そのことを目の当たりにでき実感もできた。英語圏での枕草子受容は、おもにアーサー・ウェイリー訳で始まったが、それは原文の4分の3を省略したものだった---最も「枕草子」の"原文"というのも原本が残ってない以上、難しい問題のようだが。また、「セイ、春画と呼ばれる日本の官能的な木版画と、その他の東洋の愛のハンドブックのことが英語でpillow booksと呼ばれていることがわかった。」(p.421)とあるように、英語で枕草子の研究を調べる際の苦労も語られている。枕草子はpillow booksでよかったのだろうか？！。あとは、外国人にとって、せめて英語の解説やテキストを、という提言も。また、外国人のつどう宿でみな夢中になっていたのは桜の花見。やはり大きなインパクトがあるのだろうか。◆日本で学んだいちばん大事なことは、散った花は散っていない花と同じくらい美しくて意味があることだp.456◆反骨的な人生を謳歌した一休の言葉を思う。「なぜすべてはこんなにも美しいのか、この嘘の夢も、この狂気も、なぜ？」p.456
 | 河出書房新社 発売日 : 2012-09-05 |
フェッセンデンの宇宙、フェッセンデンの宇宙（1950年版）のみ読了。山本弘「神は沈黙せず」で大々的に取り上げられていて気になり、松田道弘「ベストゲーム・カタログ」でも見かけたのでこれはもう読むしかない！となり。自分の実験室に極小宇宙を作り上げたフェッセンデンとその目撃者となったブラッドリー。その極小宇宙に恣意的にさまざまな化学変化を起こして過程を楽しむフェッセンデン。見てるうちにだんだんと感情移入していくブラッドリー。結末はそうなるだろうなというところにおちつき、しかし、自らが住むこの宇宙、地球もそうなのではないか、という疑問でしめられる。1950年版の改版された方は、初版のものよりフェッセンデンのブラッドリーをハナから小馬鹿にしたところが改められてると感じた。これを、神はいるのか？世にあまた起こる超常現象の原因は…といった疑問にまで持ち込んだ山本弘の技量には改めて感服。◆無粋だが疑問に思った点は二つ。(1)疑似宇宙装置は何ものにも囲われていなかったようだが、それでいて部屋の中で無重力と重力ありの状態をわけておけるものなのだろうか？(2)特に触れられていなかったが疑似宇宙装置の（無重力状態を発生させる）動力源は何だったんだろう？もし電気だったとしたら、停電したらどうなっていたのだろう？
 | 講談社 発売日 : 2023-10-13 |
大森さん妻の髪が触覚並みにはねてるのをみて、ゆっくり休め、仕事を抱えすぎるなというサインと見て、語りかける大森さん。嫌いなしいたけをベランダから下の階に落としてた男の子が、中学生になってタバコを、高校生になって彼女を…と成長見守る下の階のお姉さんとの話。そして、義母に「できすぎてない？！」と言われる婿さんが、小さい頃から遠い街の美容室に通ってたことが今の自分を作ってると回想する話。あたりが好きでした。
| 文藝春秋 発売日 : 2021-09-01 |
三年九ヶ月暮らした夫が死んでわかったことは、彼の過去も名前もみな他人のものだったということ。では、夫とは誰だったのだろう？◆その謎を追っていく弁護士と、彼から話を聞いたのが作者だった、という設定で◆語られるうちに浮かび上がってくるのは「愛にとって過去とは何だろうか」「愛にとって過去は必要なのだろうか」「本物の愛とは」という問い。そして、「自分が違う人の人生を生きていたら」「途中から誰かが自分の人生をひきついだら、もっとうまく生きてくれたんじゃないか」という思い。◆すべては、「一緒に過ごした三年九ヶ月の間に、初めて幸福を知ったのだと思います。彼はその間、本当に幸せだったでしょう。短い時間でしたが、それが、彼の人生のすべてだったと思います。(p.366)という言葉に収斂されていくのだろうか。◆本物の愛、本物の幸福、本物の理解…たとえそれをつきつめなくたっても、そこには確かに幸せな時間が、幸せな記憶があった、それを持つことができる、ということなのかと自問しつつ。そして冒頭とラスト近くをつなぎあわせると、城戸は今は孤独の淵に沈んでいるのだろうか。以下備忘録として。◆◆「アイデンティティを一つの何かに括りつけられて、そこを他人に握り締められるってのは、堪らないですよp.154◆◆先生は、在日っぽくない在日ですね。でも、それはつまり、在日っぽいってことなんですよ。私みたいな詐欺師と一緒で。p.169…小見浦◆◆人はなるほど、「おもいで」によって自分自身となる。ならば、他人の「おもいで」を所有しさえすれば、他人となることができるのではあるまいか。p.200◆◆誰も、他人の本当の過去など、知ることは出来ないはずだった。(略)本心などというものは、わかると考える方が思い上がっているのだろうか。p.294◆◆僕たちは誰かを好きになる時、その人の何を愛しているんですかね？…出会ってからの現在の相手に好感を抱いて、そのあと、過去まで含めてその人を愛するようになる。p.314
 | 講談社 発売日 : 2018-09-20 |
1960年代横浜を舞台に、日本に帰化したアメリカ人の父と日本人の母を持つJJ高原の高校時代を描いた青春小説。自伝的要素も入っているのかな。理解しきれないと敬遠し、自分から距離を置きがちな父。聡明でJJに理解のある負けん気の強い双子の妹。初めての経験をさせてくれた年上のお手伝いさん。JJを深く魅了しかきみだした年上の恋人。JJに好意を寄せてくれる友だちの元カノで学校一の美女。気のいい、タフな、頼りになる、男前な友人たち。対立する不良の先輩。と、素敵な道具立てと設定、キャラたちにかこまれ、ぶつかり、悩み、行動し、成長していくJJ、といったところ。恋して、喧嘩して、遊んで、悩んで、旅の人生に憧れて、嗚呼、青春ここにあり感。父の友人で、JJが英語を教えて、かわりに世界の各所に滞在した際の話をきかせてくれるカブさんがいい味だしてるなあ、と思った。女ともだちと言い合ったあとに、バーカ、バーカって言い合うシーンの親しさが好き。◆「終わったあと、この前みたいに冷たくならないって約束して欲しいんだ」p.66 ◆「カッコとか体裁とかそういうことをJJは気にしすぎなんだよ」p.157◆耐えるのではなくて、その悲しみを受け入れるの（略）悲しさも感じてあげないといけないのp.362◆ドストエフスキー「賭博者」、シェイクスピア「十二夜」、サマセット・モーム「剃刀の刃」は手にとってみたくなった。
 | 新潮社 発売日 : 1981-11-27 |
10年越しに読了。なぜか中途でやめて放り出してたエッセイ。10年ぶりに詠むの再開。酒からはじまり魚へと、世界をまたにかけてかたり、その国の風土や人も語るといった体で。舞台はだいたい50年ぐらい前で。エスカルゴ食べて、「バターとニンニクとパセリのみじん切りの香りが腸をねじる」(p.41)なんて表現したり、ヴェルレーヌの詩を一節口ずさめば、共産圏の同行者に「頽廃だ」と吐き捨てられたり、開高健と大江健三郎が吐き出したほど不味いと思ったブランデーを、最高級品です！と野間宏に持っていったら、だまってのんで「もう一杯おくれ」と言われたシーンとかは印象に。あとは◆「戦い合う当事者は、人間的にはなれない。真に人間的なのは、第三者の傍観者である」(ゲーテ)p.234◆旅でも同じだ、というのが私の考えだな。何でも記憶にとどめようと気ばって見て歩くと、物ごとの表面ばかり見ることになる。本質が見抜けなくなる（略）自然体に構えて、それ触覚にひびいてきたもの、耳と目と頭に残ったもの、それがきみにっとての物ごとの本質だということになるp.234-235◆「漂えど、沈まず」（略）男の本質、旅の本質は、まさにこれなのだp.240◆といったあたりが良かったかな。
 | 小学館 発売日 : 2023-10-12 |
趣味＝純喫茶めぐり、主人公＝おじさんて、まんま自分のことかと思いきや、一流大企業を早期退職して、喫茶店ひらくも半年で潰して、退職金半分溶かして、無職で、妻には出ていかれて、けどのんきに趣味と思いきわめて純喫茶めぐりしてて。甘い！のんき！いい気！と思いきや、前の妻、今の妻、実の娘、喫茶店時代のバイト大学生、同期で出世頭だった友人、喫茶教室の20歳下の同級生にまで、本当に何もわかってないんだなあ、と言われてしまう始末。何かイヤなことがあっても、喫茶でいやされたりしてたけど、立て続けに持ち上がる家庭のこと、仕事のこと、いままでの人生の振り返りを経て、たどり着いた境地は…と。わかってないと言われても、どこか憎めてなくて、愛されていて、まわりも縁を切らない、そこはある意味人徳なんだろうなあと。削ぎ落として削ぎ落としていった先には、本当に自分のやりたかったことが残ったのは救いか。大半の純喫茶は店名も出てこないけど、東京に住んでて喫茶好きな人ならわかったりするんだろうなあ、てところがちょっとうらやましい。ああ、わかるわかる、てとこと、身につまされすぎて読んでるこっちがつらくなってくるところと目白押しで。読んでよかったなあと思えた一冊。
 | 講談社 発売日 : |
中学生のころに買って、もう十分読んだと手放したのに、時を経てまた読みたくなった一冊。読みたく…というよりも、図入りで実戦、やろうと思えばやれるゲームの数々。いくつかやったなあ、と思い起こしながら。今読むと、アグレッション（陣とりゲーム）、ミル（世界最古の三目並べ）、へびとはしご（というタイトルのシンプルなすごろく）、あたりが気になった。ニムというマッチ棒を交互に取っていき、最後の一本をつかまされたほうが敗け、というゲームがアラン・レネ監督の「去年マリエンバード」でで効果的に使われていた…とあったが、見たのにおぼえていない始末。もう一度見たくなってきた。そして、本編と関係ないけど、巻末の最新刊案内に、堀ひろ子「サハラとわたしとオートバイ」てのがあり、女ふたりサハラ砂漠縦断、て魅惑的な紹介。こちらも気になる。
 | 岩波書店 発売日 : 2008-10-16 |
サマセット・モーム自身の第一次世界大戦時の諜報員経験をベースに書かれたスパイ小説。スパイ小説、スパイ映画というと派手なアクション、派手なドンパチといったイメージを抱いていたが、その先入観に照らし合わせると地味。けどこっちのほうが実情なんだろうなあ、と思いつつ。作家としての言語運用能力やら好奇心やらが買われてスカウトされ。最初はぜんぜん任務果たせてないのでは？これ、と思いつつ。どんな風にしたら相手と仲よくなれて、情報がとれて、腹のさぐりあいして、何を言うべきで何を言うべきでないか、つねに頭を高速回転しながら、カードを切っていき、と。長じて、地道な積み重ねが効いて任務を果たせたり、はからずも駒として動かされて結果的に任務を果たしたり。そして地味な報告文章を暗号化して送付する…と。毛無しメキシコ人とハーバート卿の饒舌でいて引き込まれる語りときたら、もう、めっちゃ引きこまれました。今までモーム作品は「月と六ペンス」「昔も今も」しか読んだことなかったけど、あと何作か読んでみたくなった。とりあえずは、「マウントドレイゴ卿」の入った短編集かな。◆「もっとも、自分が本当にしたいことをして、結果は後からついてくるに任せるという生き方も、賢くないとは言えないような気がしますがね。」p.331◆「もののわかった人間なら誰でも、虚栄心は、人の魂を苦しめる諸々の感情の中で一番破壊力が強く、一番普遍的で、最も根絶しがたいものであることを知っているはずです」p.350
 | 青弓社 発売日 : 2023-06-02 |
ブックオフの特徴を「なんとなく性」に求め、それをキーワードにブックオフを読み解き、現代社会の中にブックオフを位置づけていく試み。「なんとなく性」は、「なんとなく」=「目的がないこと、はっきりとした理由がない」ということ、ブックオフの棚には「明確な目的」があるわけではなく、「なんとなくそこに存在している商品」が多くあることから出てきたことば。「なんとなく性」に関わる重要なシステムが、ブックオフの本の買い取り基準。古本の価格は「見た目のきれいさ」と「本の新しさ」というわかりやすい基準だけで決まる、と。その「なんとなく性」が、ブックオフで遊ぶことを可能として、「レコメンドされない空間」「何を買うべき！読むべき！いいという圧がない心地よい空間」となり、「アルゴリズムの外側に出会うことが創作の源泉になる」こともある。「全く異なるジャンルや、ときに異なる種類の商品がひしめき、さまざまなものが出会い、集まる場所」「そこに集った人々は、そこからいままでそれぞれが出会うことを予期していなかったさまざまな作品や物に出会う場所」であるがゆえに。そこから最後には「ただなんとくな「ある」とか「いる」ことが結果として多様性につながっていくような空間、それこそが「なんとなくの公共性」を持つブックオフの空間なのではないでしょうか。そこで求められているのは、ただ、さまざまな本があるだけ、そのシンプルな要素です」(p.223)と論じられる。話は大きくなるが、そこに至るまでの遊び心に満ちた道のりが楽しく。三宅香帆さんやphaさんのインタビューは示唆に富み、また、まだ全部読んでなかった特設サイト「ブックオフをたちよみ」をぜんぶ読みたくなりました。ブックオフで遊んだり、ブックオフを題材に作品を作られている方の紹介もたのしく。三千円ブックオフって試みで、他の人が2時間も3時間も悩んで無理やりトータル3000円にあわせてきたのに、創始者の♨（温泉マーク）さんが「三千円ぴったりって合わせられないですよ。無理無理、そんなの。」って言っちゃってるのがおかしくて笑ってしまった。
移住者対談での、定山渓を鳥の眼で見ると命の源、という一言にはハッとさせられる。 豊平峡温泉の開業が1992年というのは意外と新しい気がした。他に、合田一道の定山ノンフィクションや、女子大生が発案したという町中の足湯・手湯、温泉まんじゅう三種の違いなどが気になりました。
古本屋の100円コーナー眺めてたら、これ自体がもう史料でしょ！という古さの地図帳を発見。現代の世界地図が、ソビエト連邦、ユーゴスラビア、東西ドイツ、南北ベトナムをはじめとして、60年前の世界はこうなっていたのか…という感慨。そして今となっては研究がすすんで違う地図になるだろうと思われるところも興味深く。そして前の持ち主の方の勉強のあとと思われる書き込みもいい味だしてました。
 | オレンジページ 発売日 : 2023-10-16 |
主に東日本の純喫茶をめぐったもの。上野、喫茶王城のなつめミルク、私の原点で語られる植草甚一、新潟、香里鐘の、人口クラゲのオブジェとヨーグルトドリンク「チャールストン」（ヨーグルトドリンクにブルーハワイシロップ、フルーツ、手作りラスク）、あたりに心惹かれました。学生時代からの京都への憧れとそれを体現したような「田園」でのバイトの話とかも。
 | マイナビ出版 発売日 : 2020-03-19 |
三分の一ぐらいはいったことあったけれど、行ってないところも、しばらくら行けてないところも、行きたいところが目白押し。昔ながらの建物をリノベーションしたところで雰囲気良さそなところに特に惹かれる。
 | 双葉社 発売日 : 2023-10-26 |
この巻は、ジャンボうさぎ、エイヒレ、ホンオフェ…口の中で強烈なアンモニア臭って！。らくだのこぶ…例えるならおいしいローソクって！。桐谷さん父の！。蚕の繭刺身…そのままではぐにゃぐにゃして無味。毒キノコホイル焼き、毒キノコ炊き込みご飯…シャグマアミガサタケの毒抜きの手間のかかることといったら！。雑食同好会の発足、ジャンボタニシ…と。個人的にはホンオフェに激しく心惹かれました。
 | タバブックス 発売日 : 2019-04-25 |
きっかけは、教育実習中に、実家の父が職を失った、田舎で働くには、といった趣旨のツイートで。そこからさまざまな指摘を受けつつ、本人も考え、若い移住者が多い隠岐の自治体を見に行ったり、故郷の遠軽が世界の中心のようなステッカーをつくって配ったり、地域の人の声を集めたWebサイトを立ち上げたり、田舎×音楽のイベント「ENGARU」を立ち上げて認知度を高めようとしたりと多くの試みがなされ。田舎に住む人への厳しい視線もありつつ、儲からず、盛り上がらず、それでも田舎で生きていくことへの模索が描かれている。一方で「お金が欲しいというより、同じ労力でよりインパクトのあることをやろうと思うと、自然と中国でやるということになってしまう」（山下智博）という言葉もあり、どうしてそこでなければいけないのか、というのはきっと、内からも外からも問われ続けてゆくのだとは思いつつも。とりあげられてたYoutube、Webサイト、修士論文、あたってみたいと思った。
 | 九州大学出版会 発売日 : 2017-03-25 |
イエメン・アイユーブ朝から洗練された統治機構を受け継ぎ、リストアップされてる豊富な食材を産し、オスマン帝国のメフメト三世がわざわざ書写させた料理書が著され、バラ水が到達してたのに宮廷料理書には一切記述がないのは13世紀ラスール宮廷の嗜好に関係するのかも、といったあたりが気になりました。
2023年10月07日
2023年09月に読んだ本(タイトルのみ)
(0901・いしいひさいち ROCA kindle 20230831
(0901・ひらやすみ 6 kindle 20230901
(0902・キングダム 67 pudding maruyama
(0902・キングダム 68 pudding maruyama
0902・法月綸太郎 法月綸太郎の冒険 20230829
0903・坂木司 アンと愛情 20230903レンタル
0903・【再読】ロバート・ハリス アフォリズム 20230813Amazon発注0817受領
(0904・いしいひさいち 花の雨が降る ROCAエピソード集 kindle 20230904
(0904・鳥辺茜 アイスランド旅行超入門 booth pdf 20230904
0904・【再読】ロバート・ハリス アウトサイダーの幸福論
0905・森茉莉 貧乏サヴァラン 図書館20230901受領…宮田ナノ「ハラヘリ読書」つながり
0907・【再読】中野美代子 カニバリズム論 …「法月綸太郎の冒険」つながり
0907・宗田理 ぼくらの七日間戦争 角川文庫 読書室ポワロ
(0908・洋介犬 反逆コメンテーターエンドウさん2 kindle 20230907
0903,0909・中沢新一「解題 南方マンダラ」(南方熊楠コレクション 第1巻 南方マンダラ 河出文庫 所収 図書館20230903受領) …坂口恭平「自分の薬をつくる」つながり
0909・【再読】中野美代子 三蔵法師 20230422 …20230907読み始め
(0909・ミステリと言う勿れ13
(0909・夏目友人帳30
(0909・佐野量子写真集 渚のモデラート アツベツ古書の街 20230909
0910・カフカ 夢・アフォリズム・詩 平凡社ライブラリー 図書館20230903受領 …坂口恭平「自分の薬をつくる」つながり
0910・三島由紀夫レター教室 20230903…宮田ナノ「ハラヘリ読書」つながり
(0910・ワカコ酒21
(0910・喰う寝るふたり住むふたり 続 5
0910・マルクス・アウレーリウス・アントニヌス(神谷恵美子訳・兼利琢也補訂)「自省録」岩波文庫 2007年改版 Kindle 20230303 …(0910:第9章以降読了・第1,2章再読)
0911・森巣博 越境者たち 上 図書館20230909受領
0912・森巣博 越境者たち 下 図書館20230909受領
0912・白石あづさ 世界が驚くニッポンのお坊さん 佐々井秀嶺、インドに笑う (文春e-book) kindle 20230831
0913・氷室冴子 新版いっぱしの女 ブックハウスQ 20230909
0914・高橋源一郎 これはアレだ な 図書館20230911受領
0914・中野美代子 北方論 図書館20230911受領
(0914・トマトスープ 天幕のジャードゥガル 3 kindle 20230914
(0914・亀 バットゥータ先生のグルメアンナイト1 kindle 20230914
(0915・松本あやか きみとたべると、 ブックハウスQ 20230909
0915・ブコウスキー 郵便局 光文社古典新訳文庫 図書館20230909受領…ロバート・ハリス「アフォリズム」つながり
0915・アフリカ諸地域 ~20世紀 (岩波講座 世界歴史 18巻) 図書館 …(1)坂井信三:トランスサハラ交易と西アフリカ諸国家(2)苅谷康太:アラビア語史料から見るアフリカ のみ
0915・村西とおる 人生、死んでしまいたいときには下を見ろ、俺がいる。――村西とおる魂の言葉 (祥伝社新書) アツベツ古書の街 20230909
(0916・えすとえむ うどんの女 2
(0916・これ描いて死ね 4
(0916・舞妓さんちのまかないさん 24
(0916・水凪トリ しあわせは食べて寝て待て 4
0916・太平洋海域世界 ~20世紀 (岩波講座 世界歴史 第19巻) 図書館
(0917・彷書月刊1990年6月号 特集=饅頭本・売られなかった本 アツベツ古書の街 20230909
(0917・諫早庸一 ハンの巡行― ジョチ・ウルスにおける〈移動〉のポリティクス ― 「スラブ研究」70(2023) pdf
(0918・伊藤理佐 あたって砕けろ！！ 漫画林 20230915
(0918・くるみみどり 智美と蘭 シーソーブックス 古本フリマ (シャンティブックス) 20230917
(0918・野澤尚也 光景 2 シーソーブックス 古本フリマ (1987野澤書店) 20230917
(0918・えすとえむ いいね！光源氏くん1-5
0919・氷室冴子 冴子の東京物語 ブックハウスQ 20230909
(0920・ほしよりこ 山とそば シーソーブックス 古本フリマ (シャンティブックス) 20230917
0920・日本の庭園 角川写真文庫 シーソーブックス 古本フリマ (シャンティブックス) 20230917
0921・馳星周 古惑仔 アツベツ古書の街 20230909
0921・タモリ 赤塚不二夫 滝大作 高平哲郎 ソノソノ (大和文庫) ブックハウスQ 20230909
(0922・週末北欧部Chika マイフィンランドルーティン100 ヘルシンキ暮らし編 kindle
0923・上野千鶴子 鈴木涼美「往復書簡 限界から始める」図書館20230919受領
(0923・燃え殻原作 雨夜幽歩 すべて忘れてしまうから kindle20230923
(0923・モブ子の恋17
0924・【再読】燃え殻 すべて忘れてしまうから …漫画版すべて忘れてしまうからを読んだので
(0924・貼りまわれ！こいぬ4
0925・【再読】宇月原晴明 安徳天皇漂海記 ブックハウスQ 20230909
0928・ロバート・ハリス 人生の100のリスト シーソーブックス 古本フリマ（Freedombooks）20230917
0929・佐藤猛,佐々木千佳,羽田朝子,長谷川章(編) 行き交い、集う人々 感染症×文系力 秋田魁新報社 20230924
0929・【再読】ロバート・ハリス 地図のない国から
0930・【再読】北川悦吏子 素顔のままで 20230923
0930・坂本龍一 福岡伸一 音楽と生命 図書館20230929受領
0930・叶恭子 蜜の味 20230924発注0930受領
(0901・ひらやすみ 6 kindle 20230901
(0902・キングダム 67 pudding maruyama
(0902・キングダム 68 pudding maruyama
0902・法月綸太郎 法月綸太郎の冒険 20230829
0903・坂木司 アンと愛情 20230903レンタル
0903・【再読】ロバート・ハリス アフォリズム 20230813Amazon発注0817受領
(0904・いしいひさいち 花の雨が降る ROCAエピソード集 kindle 20230904
(0904・鳥辺茜 アイスランド旅行超入門 booth pdf 20230904
0904・【再読】ロバート・ハリス アウトサイダーの幸福論
0905・森茉莉 貧乏サヴァラン 図書館20230901受領…宮田ナノ「ハラヘリ読書」つながり
0907・【再読】中野美代子 カニバリズム論 …「法月綸太郎の冒険」つながり
0907・宗田理 ぼくらの七日間戦争 角川文庫 読書室ポワロ
(0908・洋介犬 反逆コメンテーターエンドウさん2 kindle 20230907
0903,0909・中沢新一「解題 南方マンダラ」(南方熊楠コレクション 第1巻 南方マンダラ 河出文庫 所収 図書館20230903受領) …坂口恭平「自分の薬をつくる」つながり
0909・【再読】中野美代子 三蔵法師 20230422 …20230907読み始め
(0909・ミステリと言う勿れ13
(0909・夏目友人帳30
(0909・佐野量子写真集 渚のモデラート アツベツ古書の街 20230909
0910・カフカ 夢・アフォリズム・詩 平凡社ライブラリー 図書館20230903受領 …坂口恭平「自分の薬をつくる」つながり
0910・三島由紀夫レター教室 20230903…宮田ナノ「ハラヘリ読書」つながり
(0910・ワカコ酒21
(0910・喰う寝るふたり住むふたり 続 5
0910・マルクス・アウレーリウス・アントニヌス(神谷恵美子訳・兼利琢也補訂)「自省録」岩波文庫 2007年改版 Kindle 20230303 …(0910:第9章以降読了・第1,2章再読)
0911・森巣博 越境者たち 上 図書館20230909受領
0912・森巣博 越境者たち 下 図書館20230909受領
0912・白石あづさ 世界が驚くニッポンのお坊さん 佐々井秀嶺、インドに笑う (文春e-book) kindle 20230831
0913・氷室冴子 新版いっぱしの女 ブックハウスQ 20230909
0914・高橋源一郎 これはアレだ な 図書館20230911受領
0914・中野美代子 北方論 図書館20230911受領
(0914・トマトスープ 天幕のジャードゥガル 3 kindle 20230914
(0914・亀 バットゥータ先生のグルメアンナイト1 kindle 20230914
(0915・松本あやか きみとたべると、 ブックハウスQ 20230909
0915・ブコウスキー 郵便局 光文社古典新訳文庫 図書館20230909受領…ロバート・ハリス「アフォリズム」つながり
0915・アフリカ諸地域 ~20世紀 (岩波講座 世界歴史 18巻) 図書館 …(1)坂井信三:トランスサハラ交易と西アフリカ諸国家(2)苅谷康太:アラビア語史料から見るアフリカ のみ
0915・村西とおる 人生、死んでしまいたいときには下を見ろ、俺がいる。――村西とおる魂の言葉 (祥伝社新書) アツベツ古書の街 20230909
(0916・えすとえむ うどんの女 2
(0916・これ描いて死ね 4
(0916・舞妓さんちのまかないさん 24
(0916・水凪トリ しあわせは食べて寝て待て 4
0916・太平洋海域世界 ~20世紀 (岩波講座 世界歴史 第19巻) 図書館
(0917・彷書月刊1990年6月号 特集=饅頭本・売られなかった本 アツベツ古書の街 20230909
(0917・諫早庸一 ハンの巡行― ジョチ・ウルスにおける〈移動〉のポリティクス ― 「スラブ研究」70(2023) pdf
(0918・伊藤理佐 あたって砕けろ！！ 漫画林 20230915
(0918・くるみみどり 智美と蘭 シーソーブックス 古本フリマ (シャンティブックス) 20230917
(0918・野澤尚也 光景 2 シーソーブックス 古本フリマ (1987野澤書店) 20230917
(0918・えすとえむ いいね！光源氏くん1-5
0919・氷室冴子 冴子の東京物語 ブックハウスQ 20230909
(0920・ほしよりこ 山とそば シーソーブックス 古本フリマ (シャンティブックス) 20230917
0920・日本の庭園 角川写真文庫 シーソーブックス 古本フリマ (シャンティブックス) 20230917
0921・馳星周 古惑仔 アツベツ古書の街 20230909
0921・タモリ 赤塚不二夫 滝大作 高平哲郎 ソノソノ (大和文庫) ブックハウスQ 20230909
(0922・週末北欧部Chika マイフィンランドルーティン100 ヘルシンキ暮らし編 kindle
0923・上野千鶴子 鈴木涼美「往復書簡 限界から始める」図書館20230919受領
(0923・燃え殻原作 雨夜幽歩 すべて忘れてしまうから kindle20230923
(0923・モブ子の恋17
0924・【再読】燃え殻 すべて忘れてしまうから …漫画版すべて忘れてしまうからを読んだので
(0924・貼りまわれ！こいぬ4
0925・【再読】宇月原晴明 安徳天皇漂海記 ブックハウスQ 20230909
0928・ロバート・ハリス 人生の100のリスト シーソーブックス 古本フリマ（Freedombooks）20230917
0929・佐藤猛,佐々木千佳,羽田朝子,長谷川章(編) 行き交い、集う人々 感染症×文系力 秋田魁新報社 20230924
0929・【再読】ロバート・ハリス 地図のない国から
0930・【再読】北川悦吏子 素顔のままで 20230923
0930・坂本龍一 福岡伸一 音楽と生命 図書館20230929受領
0930・叶恭子 蜜の味 20230924発注0930受領
2023年09月に読んだ本
その昔O Pastor(海と旋律)を車のCMで見かけて気になり、ヴィム・ヴェンダース監督の「リスボン物語」でMadredeusにハマった身としては、ファドが好きでストリートライブから評価されてデビューした女子高生、という設定は読まずにいられない思い。しかも四コママンガ（いしいひさいちらしいギャグもいれつつ）。著者自身が、都合の良い話ですがと断ってるけど、ファドを好きな様、それを愛されていく様は読んでてグッとくる。一番は、学生時代からずっと身近にいて力になってくれてた友人がその生業ゆえに最後は…てところがなんとも苦くて。プレイリスト片手に、出てきた曲を聴くのも楽しみ。
 | 小学館 発売日 : 2023-08-30 |
ヒロ兄の過労で入院からの退院、やりたいことが見つかって、それは一生懸命ゾンビ映画を撮ることで。なつみちゃんのマンガは大スランプから、抜け出すための糸口がかすかに見えたかというところまで。ヒロ兄の「全部に意味がなきゃ、ダメなの？」と、なつみちゃんが「ムダだと思ってることにこそ、意味があるんじゃないかと」と思い当たったところにこの巻の言いたいことがすべて凝縮されてるんじゃないかと個人的には思った。
 | 講談社 発売日 : 1995-11-07 |
門井慶喜「おさがしの本は」つながり。法月綸太郎の冒険で図書館シリーズ四編が読めると書いてあったので。ただ、その他の三編も楽しめた◆図書館シリーズは、図書館探偵法月綸太郎が、図書館司書穂波をパートナーに、あるいは翻弄されつつ、図書館を舞台にした事件を解決。最初のページだけ切り取られた本の数々。夫の遺言に反して蔵書寄贈を拒む妻。日に何冊も借りてそれをすべて次の日に返しにくる女性の謎。土曜日ごとに書店に現れて50円玉20枚を千円に両替してくれと頼む男。それぞれに機知がはりめぐらされ、本、書店、図書館などが話題にされていて、本好きにはたまらない。法月綸太郎と穂波の関係は、法月綸太郎は穂波に気があって、それを知られていて、穂波は知りつつ翻弄する関係。法月綸太郎の「これが村上春樹の小説なら、出会った最初の晩にはこの娘をものにしているはずなんだが、と」には思わず吹き出してしまった。本の読めない人生など…とp.401で館長が独白するセリフは、活字中毒な身にはしみてくる言葉ではあった。◆それ以外の、死刑囚を執行直前に殺す動機、なぜ祖母は毒殺されたのか、なぜ彼は彼女を殺したあとに死体を食べたのか、という三編もミステリらしき手さばきで読ませてくれた。引用された中野美代子「カニバリズム論」を再読したくなった。
| 講談社 発売日 : 1995-11-07 |
門井慶喜「おさがしの本は」つながり。法月綸太郎の冒険で図書館シリーズ四編が読めると書いてあったので。ただ、その他の三編も楽しめた◆図書館シリーズは、図書館探偵法月綸太郎が、図書館司書穂波をパートナーに、あるいは翻弄されつつ、図書館を舞台にした事件を解決。最初のページだけ切り取られた本の数々。夫の遺言に反して蔵書寄贈を拒む妻。日に何冊も借りてそれをすべて次の日に返しにくる女性の謎。土曜日ごとに書店に現れて50円玉20枚を千円に両替してくれと頼む男。それぞれに機知がはりめぐらされ、本、書店、図書館などが話題にされていて、本好きにはたまらない。法月綸太郎と穂波の関係は、法月綸太郎は穂波に気があって、それを知られていて、穂波は知りつつ翻弄する関係。法月綸太郎の「これが村上春樹の小説なら、出会った最初の晩にはこの娘をものにしているはずなんだが、と」には思わず吹き出してしまった。本の読めない人生など…とp.401で館長が独白するセリフは、活字中毒な身にはしみてくる言葉ではあった。◆それ以外の、死刑囚を執行直前に殺す動機、なぜ祖母は毒殺されたのか、なぜ彼は彼女を殺したあとに死体を食べたのか、という三編もミステリらしき手さばきで読ませてくれた。引用された中野美代子「カニバリズム論」を再読したくなった。
 | 集英社 発売日 : 2023-01-19 |
恒騎の奇策な十字陣と李牧ら趙軍包囲の突破。宜安の攻城と、砂鬼一家の誕生の秘密、一家にいたころの恒騎の話までが語られ。恒騎が抱えた怒りが、中間層に向けた怒りだったとは…
 | 集英社 発売日 : 2023-04-18 |
なんだか以前に読んだキングダムの評で、戦略の失敗を戦術で、個のがんばりでなんとかしようとする、というのがあったが、まさに地で行ってるなと思う展開。恒騎の逆襲。肥下の城を救いにきた李牧を待ち伏せて包囲したがその決着は！というところまで。恒騎側も、李牧側も、しまった、ヤラれたという瞬間はあるが、それを極限まで追い込まれて化物じみた力を発揮せざるを得ない個たる部下たちがなんとかしようとしている戦場。それには李牧、恒騎、それぞれへの内実はどうあれ信仰にも近いカリスマあってこそなのだろうけど。
 | サンクチュアリ出版 発売日 : 2010-12-08 |
何年ぶりかの再読。◆永遠に生きるかのように夢を見、今日かぎりの命と思って生きよう。（ジェームス・ディーン）◆愛が全てだよね。でもチョコレートがたまにあっても悪くないよね。（チャールズ・シュルツ）の2つは前に読んだ時も引用したので、個人的によっぽど気にいったんだと思う。今回、他に目についたのは、以下の６つかな。◆スポーツと人生の原点は負けることである。負けるということを、理解することだ(リン・デイヴィース)p.27◆我々は美を発見するためだけに生きている。他のことは全て待ち時間のようなものだ（カリール・ジブラーン）p.29◆死なんてただの外角低めの速球さ（オーガスト・ウィルソン）◆つまらないことをカッコ良くやる----それこそアートだぜ（チャールズ・ブコウスキー）◆頭を垂れないで、顔を高く上げて。世界をまっすぐ見つめるのよ。(ヘレン・ケラー)◆あなたの同意なしに誰もあなたに劣等感を抱かせることは出来ないのよ。（エレノア・ルーズベルト）◆ブコウスキー「郵便局」、フィッツジェラルド「夜はやさし」、モーム「アシェンデン」、ニーチェのアフォリズム集「人間的、あまりにも人間的」、カリール・ジブラーンあたりは読んでみたいなと思った。
 | 光文社 発売日 : 2023-08-09 |
アンちゃんのほんとうに和菓子が好きで、由来や背景、物語、エピソード含めて丁寧に説明してくれて、買いたくなっちゃうなあ。相変わらず。そして食べるのも好きで、美味しそうに食べる様はこちらにも食べたい気持ちが伝わってきて。今回は、椿店長の新たな展開、乙女立花のアンちゃんへの気持ちがヒートアップ。しかし、アンちゃんには気づかせない、友だちだと思おうという展開にしたようで。強みが強みであるのはその場所に左右されるというのはなるほどなあ、和菓子の接客だけじゃないよなあと思いつつ。◆私たちもね、和菓子屋さんと同じように物語を売ってるのよp.169◆甘くたって、いいじゃないp.236◆弱い人の強さと、強い人の弱さp.237
 | 集英社 発売日 : 2015-02-17 |
(2023/09/04読了分)心をオープンにして、運を天に任せて伸び伸びと人生を謳歌せよ。自分ばかりみるな、自分とは人との関係性のなかにある。そして組織を離れれば、同じ一対一の人間だ。といったところか。とくに、p.99あたりの、オープンな心とは…から始まる数節にはグッときました。同じ著者の「アフォリズム」を読んだあとだと、共通するアフォリズムが出てきたりして何だかニヤリとしてしまう。そのなかでも◆スタイルとは、街を追い出されようとしていながら、あたかもパレードを引率しているかのように見せることである。ウィリアム・バティ（医師）◆自由と、本と、花と、そして月があったら、幸せになれない人間なんているだろうか？オスカー・ワイルド（小説家）◆あたりがカッコいいなあ、と。◆p.108の、ドイツの劇作家プレヒトの「快感」というタイトルの詩--自分が快感に思うものをひたすら並べてる--を読んで、自分だったら何を並べるだろうか、と思いを馳せる。そう、一番は、お気に入りの読書向きのカフェで本を読むことだろうか。(2016/03/02読了分)読みおえて、少し肩の力が抜ける本、楽になって、リラックスできたような。自分の中を爽やかな風が通り抜けていく。それだけでもめっけもの。以下備忘録的に。/ポーカーとバックギャモンでメシを食っている時、一晩でギャンブルのための軍資金全てと三ヶ月分の家賃を持って行かれたことがある。一晩寝ては起きをくりかえし、翌朝シャワーを浴び、涙を洗い流し、夜には新鮮な気持ちで勝負にでかけた。/（今は会わなくなった友がいても）あの時はあの時だ。彼らと過ごした素晴らしい瞬間は永遠に素晴らしい瞬間としてぼくの心の中に刻まれている。でも、今のぼくは違う瞬間の連続の中で生きている。/プレヒトの「快感」という詩。それを真似て書かれた著者の「快感」/「お前はいつもニコニコしてなにも考えなくて良い気なもんだ。もっと真剣に自分を見つめたらどうだ」「ぼくは今、この時、この瞬間を楽しんでいるんだ。今はキミとこうして屋台で食事をするひとときを楽しんでいた。キミはそんな瞬間を見事にぶち壊してくれた。さも分かったような口を利かないでくれ」/ぼくはヒトを社会的地位や役職や経歴や学歴などではなく、良いやつか嫌な奴か、信用できる奴か出来ない奴か、頼りになるかならないかといった、根本的な見地から人を判断、認識することを覚えた。/映画「イージーライダー」とケルアック「ダルマ行者たち」が放浪の旅のきっかけ/人間、オープンでいるかぎり、傷つくときは傷つくし、胸が痛いときは痛い。生きるということは、喜びを感じるのと同じように、痛みを感じることも条件なのだ。/魅力的なアフォリズムもひかれている。出典がわかるともっとうれしいのだけれど。/自由と、本と、花と、そして月があったら、幸せになれない人間なんているだろうか。（オスカー・ワイルド）/真実の最大の敵は、権威に対する思慮のない敬意である（アインシュタイン）/空を舞う星を生むためには、魂にカオスがなければならない（ニーチェ）/降参するな、希望を捨てるな、自分を売るな（クリストファー・リーヴ）
| 発売日 : |
今回はマンガでなくマジの旅行入門。アイスランドに船で行くルートとか難易度高そうだけど旅情をそそる。デンマークの空港から待ってる間の1時間でスウェーデン往復できるなんて。あとは、レンタカー旅のおすすめ。レイキャビク以外を回るなら断然車がいいと。地図に、ガス欠すると詰む、と何度も出てくるのは推して知るべし。旅情、かきたてられます。
いしいひさいちROCAのサイドストーリー集。ROCAと時期が重なるものがほとんどで、最後に後日談的な1話が。それも苦い味の。未練があった、また描きたくなったと著者は書くが、こちらももっと読みたかったのでありがたく。
 | 筑摩書房 発売日 : 1998-01-01 |
読書室ポワロで読んだ、宮田ナノ「ハラヘリ読書」つながり。著者がしびれたという森茉莉のエレガントさの一端にふれてみたくて。ルウム・クウラア、エヴァ・ミルクにグラニュウ糖、クレエム・ドゥ・カカオ、フルウツ・ポンチ、シュウクリイムなどのクラシックな表記はたしかにちょっと心惹かれた。もっともそういう表面的なところではなく、著者いわく「私は貧乏でもブリア・サヴァランであるし、精神は貴族なのである。」「贅沢というのは高価なものを持っていることではなくて、贅沢な精神を持っていることである」という心意気が真骨頂なのだろうけど。あと、息子のジャックとの関係というか距離感が絶妙で読んでて心地よい。特にp.132あたりの。鴎外が、杏子を煮て、砂糖のかかったのをご飯の上にかけてたべるエピソードも、まねしてみたく。
| 筑摩書房 発売日 : 1998-01-01 |
読書室ポワロで読んだ、宮田ナノ「ハラヘリ読書」つながり。著者がしびれたという森茉莉のエレガントさの一端にふれてみたくて。ルウム・クウラア、エヴァ・ミルクにグラニュウ糖、クレエム・ドゥ・カカオ、フルウツ・ポンチ、シュウクリイムなどのクラシックな表記はたしかにちょっと心惹かれた。もっともそういう表面的なところではなく、著者いわく「私は貧乏でもブリア・サヴァランであるし、精神は貴族なのである。」「贅沢というのは高価なものを持っていることではなくて、贅沢な精神を持っていることである」という心意気が真骨頂なのだろうけど。あと、息子のジャックとの関係というか距離感が絶妙で読んでて心地よい。特にp.132あたりの。鴎外が、杏子を煮て、砂糖のかかったのをご飯の上にかけてたべるエピソードも、まねしてみたく。
 | 福武書店 発売日 : |
(2023/09/07読了分)法月綸太郎「カニバリズム小論」で引用されていたのを目の当たりにして再読。p.75の一節は、彼我を別物として、悪を悪として安易に断罪して思考停止するはたやすいが危険、というように受け取った。これはまた現代にも活きる思想と受け止めた。◆私は、民衆の「性善説」を嘲弄はしない。しかし、「性善説」の神話を民衆に押しつける「良識」の「屎リアリズム」は嫌悪する。絶対的な「性善説」はありえず、また、絶対的な「性悪説」もありえない。すなわち、われわれのすべては彼らと同じであり、それゆえに、われわれは、いつでも悪や愚行を犯す蓋然性を具えている。p.71◆スウィフト「奴婢訓」岩波文庫、開高健「最後の晩餐」、塚本邦雄「檻」あたりは読んでみたく思った。(2017/04/23読了分)何年ぶりかの再読。言いたいのは、カッコ付きの「良識」。自分たちが良識だと信じて止まない、良識ぶった良識なんかくそくらえ、という叫びではないのか、と思った。カニバリズムを題材として掲げつつも。過去のカニバリズムが起きた事件を取り上げ、その経過を描き、生き残ったものがどう遇され、裁かれ、あるいは受け入れられたのか、もし日本で同じことが起こったら、どう受け入れられるか、自分が同じ状況に置かれたらどうするか、ということも含めて。清代に書かれた「鏡花縁」は手に取ってみたく思った。また、副題に、一つの三島由紀夫論のために、と付けながら、一語も三島由紀夫に触れなかった「王国維とその死について」はやられた感があったが、国家への対し方に通ずるものがあったのでは、と解題に触れられ「社会上の習慣は許多の善人を殺し、文学上の習慣は許多の天才を殺す」(王国維)
 | KADOKAWA/角川書店 発売日 : 2014-06-20 |
読書室ポワロで。TM NETWORKの歌は知ってるし、映画の断片もCMで観た気はするけど、原作って読んだことないなと思い手に取り。舞台は約40年前。ある日あるクラスの中学生男子全員が倒産した会社の社屋に立てこもり解放区を名乗り、大人たちと対峙するワクワクするような活劇。体面ばかりだったり、自分たちは不真面目でも子供にだけは真面目を強制したり、小悪党すぎる小悪党だったりの教師や親や町の大人たちに目にもの見せてくれようと。今の目からみると、隙だらけな計画や対応だったりするけれど、「子どもだって、おとなだって、わるいことはわるい。そうじゃねえのか？」「どうして、子どもだけマジにしてなきゃいけねえんだ？理由を言ってみろよ、理由を」というセリフに象徴される思いを抱いた子供たちはなかなかにてごわく。そしてこの時代はまだ、全共闘世代、戦争に行ったことのある大人たちが、まだまだ現役世代としてリアルな手ざわりで描かれる時代だったんだなあ、というのも感じました。
 | KADOKAWA 発売日 : 2023-08-21 |
育児でラクをするのはどうかと…に、「社会は我慢大会などではない」、被害者にも非があるのでは？…には、「こんな凶悪な人間がいる現実に耐えられないから「おあいこだった」と思うことで安心しようとしている、そんな臆病に被害者と世間を巻き込まないでいただきたい」、の叫びには深くうなづく。切れ味は1巻の前半がピークであとはひねりのない正論が増えてきたなあと思ってたけど、ところどころ健在だなあ、と個人的には。
 | 白泉社 発売日 : 2023-09-05 |
今回の夏目は…紅子さん邸に招かれ、紅子さんの祖父とあやかしの思いを代弁してみたり、そこでもらった招待状で、旧家のオークションに参加してみたり、と。まさかの田沼まで登場、ニャンコ先生と別行動で気になる人物を追う夏目がみたものは…といったところまで。「見たいと思って見えたものなど所詮はただの幻なのだ」てニャンコ先生の言葉が響く。
 | 河出書房新社 発売日 : 1991-06-04 |
坂口恭平「自分の薬をつくる」つながりで。中沢新一の解題がめちゃ面白いとのことで手に取る。解題だけ読了。一度では頭に入ってこず。二度目に手書きメモで自分なりにぐりぐり図など描きつつ読みすすめてようやくこういうことなのかなと自分なりの理解を。「東洋のエピステーメーの全体構造の中からも、西欧にはなばなしい「現代」として実現されているものとは異質な、それよりもはるかに深遠な世界観を土台にした、新しい未来を生み出すことができるのではないだろうか」という思想をベースに構築された南方マンダラ。純粋に「心」だけ、純粋に「物」だけ、というのは存在しない。「心」と「物」が交わるところに「事」が生まれる。そして「事」が「心」と「物」にフィードバック。「心」「物」を統べて認識、記述、予言する「理」があり、また「大日如来」からの「力」で「心」「物」が生成され、「心」と「物」のむすびがほどかれると「事」のあとに「名」が残り、それにイメージが付与されると「印」になる、と。それらの運動が不断におこり、世界に底はなく、部分を見ても理解できず、全体で見なければならない、とついていくのがやっとで、それを自分の中でどう消化して、どう世界を見るかにつなげていくかはこれからだなあ。
 | ノーブランド品 発売日 : |
イベント「アツベツ古書の街」で見かけて懐かしくて買ってしまった。その昔、佐野量子のラジオ番組を聴いてて、その流れでCD「まさか」を買って愛聴し（その頃CD発売で、ラジオでよくかけてたので）ていた佐野量子。80年代ぽい雰囲気の写真集でした。
 | 中央公論新社 発売日 : |
著者の一連の西遊記研究を何冊か読んだあとに、史実の三蔵法師をどう描くのか興味を持ち手に取る。どういうルートで隋唐の地を移動し、そこからインドまでどういうルートを通り、その際はどんな格好で、どんなやりとりがあり、どんな言語を使ったのか、どんな王たちと交流し、経典を経て、どう受け入れられたか、それらの国々での仏教の興隆具合はどうだったのか、丹念にたどられるだけでなく、後世の資料、人々によって三蔵法師がどう語られ、どのようなイメージが付与されたかまでが語られる一冊。◆この本のおかげで、一時期、「サマルカンドの金の桃」にどハマリしたことを思いだす。◆玄奘の成長。最初は、求法僧として。必要に駆られて探検家として。そして群雄割拠のインドで、仏教もさほど興隆してない中で、多くの経典を持ち帰るために、外交家として、交渉人として腕をあげていく。それは帰国後に、 皇帝太宗の依頼を断りながら自分の願いはかなえさせる（訳経のための組織づくりと運営）という手腕にもあらわれた、と。◆太宗にとって仏典の翻訳などどうでもよかった。道先仏後の考えがあったため。ただ玄奘の機嫌をそこねずに彼の西突厥に対する知識を活かしたかったから要求をのんだのだ、と。◆著者の、史料に書かれてることが本当かどうかはどうでもよろしい、 そう記録された、ということが大事という思想、大昔にならった言説研究を思い起こす◆「玄奘は「唐三蔵」として再生したときに、かれ自身も、またかれの同時代人も、思いもよらなかったような長い強靭な生命力を得たのである。」p.261◆中野美代子 中国ペガソス列伝 中公文庫 -英雄たちの面構えp.31◆中野美代子 ひょうたん漫遊録 p.40あたり手に取りたくなる。◆
 | 筑摩書房 発売日 : 1991-12-04 |
宮田ナノ「ハラヘリ読書」つながりで。といっても、引用されてたのはごく一部で。これが「金閣寺」や「豊穣の海」を書いたミシマなのか、というくらい、全編通俗of通俗。20代と40代の男女5人の愛憎欲望うずまく手紙のやりとりだけで構成された一編。「世の中の人間は、みんな自分勝手の目的へ向かって邁進しており、他人に関心を持つのはよほど例外的だ、とわかったときに、はじめてあなたの書く手紙にはいきいきとした力がそなわり、人の心をゆるぶる手紙が書けるようになるのです。」(p.221)が一番ささってきたところかな。群ようこが解説で引いていた、心して毎日暗唱したいと書いていた２フレーズも。
 | 小学館 発売日 : 2023-09-08 |
緊迫の富山編完結。解いた！と思った先に誘導があり、また地道な暗躍があり…と。ライカさんへお土産渡すとこと学食でレンくんに再会したシーンがホッとする。
 | 平凡社 発売日 : 1996-06-12 |
坂口恭平「自分の薬をつくる」つながりで。アフォリズムのところからいくつか拾い読み。「この場所に、わたしはまだ一度も来たことがない----呼吸が変だ。太陽よりもまぶしく、その隣に星が輝いている。」p.155の浮遊感というか、ぶっとんだかんじとか、「悪に対して分割払いはきかないのだが、人はしょっちゅうそれを試みている。」p.164のユーモラスさ、「絶望しないこと、またお前が絶望しないことにも絶望しないこと」p.270の重さあたりが気になった。p.199の「お前が家を出て行く必要はない」ではじまる、じっとしてるだけで、最後は、世界がかまってほしそうにうっとりと身をくねらせるあたりのが出色かなあ。
 | 岩波書店 発売日 : 2007-02-16 |
いつか読み切りたいと思い、何度も挫折したあと、この度は、Kindleに入れて、思いついた時に読めれば、と半年がかりで読了。全編貫かれてるのは、公益のために生きよ、正しく生きよ、感情や肉欲に流されるな、という思想か。また、---自然によることには悪いことはひとつもない。あるがままを受け止めよ。すべての存在は絶え間なく流れる河のようなもの。ささいなことにとらわれるな。多くのことは大目にみよ、寛大であれ。今日が最後の日と思って行動せよ。--と。なかなかに禁欲的、そうありたいと願ったのか、自らがそうなので人にもそうあれと説いたのか。そうせよ、そうすべきに、どうすればそうできるかもセットであればよかったのに、と思ったりするけれど、それは各人が己を磨いてね、ということなのかな。
 | コアミックス 発売日 : 2023-08-19 |
深夜食堂コラボ、なかなか良かったあ。もし本当にあればワカコさん、通ってそうな気がしました。
 | コアミックス 発売日 : 2023-08-19 |
完結。夫婦二人、それぞれの視点で交互に語られるストーリー、リツコヘの長野の彫金作家からのスカウトからどどどどどどと事態は動き出し、ついに長野へ。お互い、少しはしゃいじゃう→冷静に冷や水浴びせてみる→地に足をつけて考え直すのプロセスを踏んでるところがいいなあ、と。最後はまさかの車目線での語り。ドナドナみたく連れられつつ二人の幸せを願うところにちょっとうるっと来てしまった。
 | 集英社 発売日 : 2005-03-17 |
6年ぶり再読。上下巻読了。いま読み返しても、ここで書かれる反「民族」論、反「日本人論」、賭博論は色褪せないと感じた。オーストラリアを舞台にヴェトナム移民マイキーとニュージーランド移民ウルフの物語を軸に。それだけに、その後の「越境者的ニッポン」（講談社現代新書,2009年）で見せた知的怠惰--言いがかりみたいなそうに決まってるという思いこみに、そうに違いないを重ねていく--にはどうしてしまったのだろう、という思いを抱いてしばらく離れてしまっていた。結末は苦い。一個の確固たる男が、誰に言われようと自分の意志で賭博し、打たれ、堕ちていくのを、たとえ誰がなんと言おうとも止めることはできない、それをわかっている、わかっていたはずなのに、傍で見てれば明白なのに、当人になると止められない。まるで、負けて罰されるために賭け続けるかのように。それはまた人生のアナロジーなのかもしれない、ある意味では。◆人間の「差異」などというものは、じつは「想像」上のみに存在する 上巻p.79◆少数者が住みづらい社会とは、また多数者にとっても住みづらい社会である 上巻p.80◆マイキー、死ぬなよ。何が起こっても、死んじゃ、駄目だぞ。生きてさえいれば、なんとかなるんだ。きっと。必ず。絶対に。 下巻p.227◆多くの場合、博奕では、敵が勝利したのではない。自分が負けただけなのだから。 下巻p.265◆博奕では、本来の動機も目的もすっかり忘れ去り、ただ闘っているという現実のみが最重要な課題となってしまう瞬間が、必ずあるものなのだ。 下巻p.208
 | 文藝春秋 発売日 : 2019-06-20 |
シャンティブックス店主さんに教えてもらった、インドの仏教界のトップは日本人、仏教徒がインドですごい勢いで増えている、という話を聞いて、それが佐々井秀嶺という人物だと調べて、彼について書かれた本で一番新しいものを、と手にした一冊。◆著者への態度は威張ってて気まぐれで最初はとっつきにくいなあ、と思ったのだけど、彼の波乱万丈の人生をたどってタイからインドへ渡ったあたりからは目が離せなくなり、死の直前までの断食で一気に名がひろがり、貧しい民衆のためにと常に活動し、特にヒンドゥー教のカースト制度に苦しめられている不可触民から支持を受けて、仏教徒の数を増やしていく様、他の宗教の者や、政治家、あるいは仏教徒内部からも命を狙われつづけるが、それでも困った人がいれば助けにいき、表舞台に立つことも厭わない決意には目を見張るものが。その中で、ガンジーは不可触民にはまったく嫌われている、というのを読み、なぜかと思ったら、ガンジーは外国の支配には立ち向かったが、カースト制度は残そうとしたからだ、と。なるほど…。そして彼と対立したアンベードカルという不可触民出身の宗教者がインドの仏教復興の中興の祖であること。彼の死後、しばらく経ったあとに、インド仏教界の長に佐々井秀嶺氏が抜擢されたことなどを知った。◆「人生の良いこと、悪いこと、あるがままを受け入れて生きていく。煩悩を消すのではなく受け入れて生きていく。俺はその文を読んで雷に打たれた。そして山の上で叫んだ。この求道者、シッダールタは俺そのものだー！ インドに来てよかった!! とな」(ヘルマン・ヘッセ「シッダールタ」を読んで)◆"最大の理由は、龍樹から与えられた使命だからだ。人は誰にでも使命がある。"◆「歎異抄」とヘルマン・ヘッセ「シッダールタ」は読んでみたくなった。
 | 筑摩書房 発売日 : 2021-07-12 |
氷室冴子作品では「海がきこえる」、何度読み返したかわからない。テレビで「氷室冴子をリレーする」を観て、エッセイをいくつか読んでみたくなり。このエッセイは1992年ごろのもの。◆かつては思いをともにしたはずの女ともだちたちとの、考えのすれちがい、著者を決めつけてくることの違和感、もっとばかばかしくもくだらない、お互いの話をしたいのに、会社や子供や夫の話ばかり聞かされること。あるいは、女は結婚して一人前という強固な信念を持った母とのわかりあえなさ。今となってはひどいセクハラと断定される類の言葉を、無邪気に、悪意なく放ってくる男たち。そういった中、国文学の教授が講義でもらした「どうして女性は簡単に”わかる”という言葉を使うんだろう。（略）少なくとも、自分はほんとうに、”わかっている”のかと自問する姿勢がなければ」(p.50)という言葉へ思いを馳せたところと、あたかもクリスマス一点主義かのようなカップルたちを見て、「クリスマス以外のありふれた日の、たくさんの幸福な夜と昼の記憶がなければ」(p.155)自分には足りないと述懐するところ。そして学生時代の、「忘れものがなくなったら、世界がよくなるのかなあ。ラブアンドピース」(p.163)てセリフに、なんだかほんとに氷室冴子の世界、という思いをあらたに。
 | 毎日新聞出版 発売日 : 2022-02-28 |
日々の起こったことに対して、これはアレだな、っていう話かなと思ったら、どちらかというとある本について、過去のあの本では？みたいなのが大半。ただ、「Youは何しに日本へ」は現代の鑑真だった！には思わず吹き出してしまったが膝を打った。日本の冒険家のツートップ、「辺境メシ」の高野秀行みたく、出先で変なもの食うか、「人情ヨーロッパ」のたかのてるこみたく、旅先でありえないほど純粋に恋に落ちるか、そのどちらかしか「旅」の未来はないのだろうという指摘にもうなずきつつ。もうねえ、読みたくなった本が目白押しで困ってしまった。えすとえむ「いいね！光源氏くん」、山田太一「岸辺のアルバム」(持ち家が最後の砦だったのにそれすら洪水でながされ)、頭木弘樹「食べることと出すこと」(潰瘍性大腸炎闘病記 絶食の果てのヨーグルトは口の中で味覚が爆発)、瀬戸内寂聴「いのち」(大庭みな子の秘密とは)、有吉佐和子「非色」(ニューヨークに渡った戦争花嫁が何を感じどう行動したか。何重もの差別の中)、上田としこ「フイチンさん」(長谷川町子に並ぶ女性漫画家。村上もとかもマンガに)、藤原理加「八重山おばぁのぬちぐすい」文響社(おばぁにレシピ聞きつつ、往時の話とか聴く)、上野千鶴子 鈴木涼美「往復書簡限界から始める」(この組み合わせだけで読んでみたくなる)
中野美代子「カニバリズム論」を読んだら、俄然この本も手に取りたくなり。個人的な愁眉は、北方論とオーストラリア紀行かな。あと、著者が13年住んだという野幌の、それも「森林公園」に整備される前の美しい野幌原始林が、著者の心に大きく根を下ろし、思想にも影響を与えているのでは、と感じた。あとがきで、若気の至り、北海道への愛ゆえこそですと断っているが、本文中では、「オーロラタウン」「ポールタウン」という命名に憤り、「北方領土」という言葉のあいまいさに噛みつき、「北海道百年記念塔」と称する見苦しい塔が立ちと毒づきと威勢がいい。手つかずの自然を愛するゆえ、というところも多々あり。世界の中の北海道、日本の中の北海道の立位置を模索し、北海道芸術とは、と問い。中国人は北方に砂漠を見たからこそ、「北方」概念を絶対化して南方に発展し、ヨーロッパ人は南方に砂漠を見たからこそ「南国」概念を絶対化して北方に発展したと喝破。オーストラリアでの擬似的イギリスの散見に、北海道の開拓を終え、札幌を中心として東京化してきた過程と似たものをみる、と。饒舌な上に饒舌すぎる熱帯雨林の生命力に比して、”オホーツク氷原の白一色の世界。 生命はすべて否定され、それでも敢えて存在しようとすれば、無機物のかげに精妙にかくれている。おそらくそれは、生命の存在形態の洗練とも言うべきではなかろうか。”という北方の、針葉樹林の整然さに北方論の胚胎を感じた一節が特に印象に残った。
 | 秋田書店 発売日 : 2023-09-14 |
ダマスクスの奴隷市場で、歯が丈夫だから！という理由で奴隷のリタを旅のお供として買った「三大陸周遊記」のイブン・バットゥータ。メッカ、インド、その先までをめざし。各地で食べるご当地スイーツや料理がすごく美味しそう。旅の道連れも多士済々。オスマン朝のアラーエッディンといえば、二代目オルハンと後継者争いをした人かなあ、と。◆「交流とは世界を整える運動だ」（イブン・バットゥータ）、「「弱い人間には何をしてもいい」と言われて「そうですね」と言えるなら学者やってないです」（イブン・バットゥータ）
 | 秋田書店 発売日 : 2023-09-14 |
「知」を武器に、帝国への怒りを共有し、帝国を傾けることに情熱を注ぐファーティマことシタラ。情勢は激動。金への遠征、オゴテイの発病、身代わりかのようなトルイの死、トルイ家とオゴテイ家のアンバランスを正そうとする動き。金国を倒した先のことまで、世界を見通しているオゴテイと第一皇妃ボラクチン。本心を隠して、ボラクチンがほしい言葉を与えて「知」でつながろうとするファーティマ、と。錬金術の書が登場。その内容も気になる。
 | 岩波書店 発売日 : 2022-11-01 |
トンブクトゥへの個人的な関心から、(1)坂井信三:トランスサハラ交易と西アフリカ諸国家(2)苅谷康太:アラビア語史料から見るアフリカ のみ読了。◆(1)坂井信三:トランスサハラ交易と西アフリカ諸国家：マリの中央権力はそれほど強力ではなかったのでは、「マリ帝国」という呼称は再検討を要するのでは。サアド朝君主はシャリーフであることを理由に西アフリカのムスリム勢力に臣従を要求していたこと。イスラームを標榜するソンガイの王の統治下でトンブクトゥの学者たちは自信を深め、「ビラード・アッ・スーダーン」はすでにイスラーム圏の一部であるという認識を持つようになる。16世紀トンブクトゥ知識人による、アラブの著述家達の認識の塗り替え、一様に未開で野蛮とされた「ビラード・アッ・スーダーン」にもイスラーム圏/非イスラーム圏という分節が生まれた、といったあたりが目を引いた。◆アラビア語史料から見るアフリカ：イクリーム＝二つの緯線に挟まれた、赤道と平行に広がる帯状の空間。外部史料→同一のイクリームの人々は同じ外的性質、内的性質を持つと決めつけ アフリカの気候条件は劣った人間生み出す 「科学的」に劣ったアフリカ人像の形成の一端を担っていた。ソコト・カリフ国を建てたウスマーンが、ハウサ諸国のムスリムを称する支配層を打倒するために用いたのは、北アフリカの先達の言葉に盲従したのではなく、ハウサランドの時代的地域的文脈に落とし込むことで自らのジハードの正当化図る。といったあたりが目を引いた。またトンブクトゥの学者が記したさまざまな史料が紹介されているのも貴重。
 | 光文社 発売日 : 2022-12-13 |
ロバート・ハリス「アフォリズム」つながりで。巻末のブコウスキーのインタビューからの引用。「この社会じゃ、選択の権利なんてほとんどない。八時間労働をするか、飢えて死ぬかだ。みんな社会にそんなふうに拘束されて、恐怖にかられて生きてる」(p.301)。ブコウスキーは50近くで文壇デビューして抜け出したが、そうでない者は…と。ただ、単調な労働と言いつつ、ブコウスキーの勤務態度も生活態度もなかなかにハチャメチャ、腹に据えかねることがあれば反抗も辞さない心意気。なかなかにここまで思い極めて勤めらんない。そこはうらやましく。◆おれはそんなケチな盗みなんてやる気はなかった。全世界が手に入れられないなら、何もなくていいp.93◆まったく、やつらは人間を生きさせちゃくれないんだ。いつも働かせようとするｐ.141
 | 祥伝社 発売日 : 2020-02-29 |
「全裸監督」を本で読み、Netflixで観たのでこの本も手にとってみる。なかなか、「金50億円でも命があるんだからラッキー」の境地にはたどつけなさそう。きっと思い描いてることのスケールは天地ほどのひらきがあるんだろうけど、「遠回りしてはじめて、本なら2行で書いてあるような真実が、沁みる。そういうもんなんです」は腹に落ちる。「人生はお互いさま、水に流してこそ生きていけるんだ。」「人生は、喜ばせごっこなんです。」は、その言葉の背後にどれだけのことがあったかと思うと…。
 | ぶんか社 発売日 : 2018-12-14 |
「札幌乙女ごはん。」で知った松本あやかさん、こういうのも描いてたとは！今回は、各話オムニバスで、北海道名物というよりはザンギとかジンギスカンとかアスパラとか海鮮丼とかもっと普段よりに近いご飯で、けどそれがきっかけで関係が和んだり、なぜここにいるのかという自問が氷解したり。コワモテの彼がトースト食べようとするのみんながワクワクしながら見つめて、うまっ、のひとことに、でしょでしょでしょでしょーってとこがほんわかして好き。そして、各話オムニバスなのに3回登場、愛想なくてみんなに怖がられるけど仕事できる先輩に、ご飯作らせてください！とアプローチしつづける新人飯尾くんの気持ちはつたわるのか？！
 | 秋田書店 発売日 : 2023-09-14 |
同僚の唐さんから移住の話を聞いて、身体にあった土地で体調を整える選択肢に輝きを。その選択は…しかしそういう可能性も取り得る人生でありたかったという言葉にグッときました。そして、唐さんがyoutubeで見かけて、あこがれ、車で四時間の街まで会いに行ったミュージシャンの合田さん。「音楽と生活に境目なく 普通に生きて時々燃える…みたいな」て言葉が響いて。「温泉 心地良いからって長く浸かってると 湯あたりするから気をつけてな」は、もちろん温泉だけではなく、今の環境が居心地良くても、てことを含意してるんだろうなあと思いつつ。
 | 岩波書店 発売日 : 2023-05-30 |
オーストラリア、ハワイ、ニュージーランド、フィジー、パプア・ニューギニア、日本の南洋群島統治、小笠原諸島の項のみ読了。◆オーストラリアに送られた流刑囚の犯罪歴の四割が初犯の窃盗犯と知り、量刑の重さに驚く。流刑囚は一般市民の補助移民に置き換えられていくが、クィーンズランド植民地補助移民リストを始め、移民制限法成立時の連邦会議議事録、第一次世界大戦従軍兵士記録、あるいは20世紀の移民の厖大な記録など、デジタル化された史料が豊富なのが目を引く。◆ハワイ史ではそれまで等閑視されていたハワイ語の史料がようやく21世紀に入り日の目を見て、外からではなく、ハワイ人から見た歴史が書かれ始めているとか。カメハメハはハワイで知られてなかった銃や大砲を積極的に導入し、ライバルを倒しハワイ諸島で覇権を握った、と。ハワイの歴史が従来、欧米から押し寄せる波にのまれ、弱体化、衰退、ハワイの人々は無力で受け身の被害者と描き、ハワイの植民地化に正当性、必然性を与えてきたが、ハワイ語の史料を駆使した研究がそれをゆさぶる。ハワイ王国崩壊は、スティーブンズ大使の越権行為のみならず、アメリカ政府全体の責任と指摘するハワイの人々の声、ハワイが州になることは、アメリカに組み込まれ、ハワイ王国の回復が遠のくという反対の声、など。またマウナ・ケアへの望遠鏡施設建設への反対運動も、科学対伝統、科学者対先住民という二項対立ではなく、TMTやハワイ州政府の「科学」「真実」が極めて「非科学的」であることをハワイアンの視点から暴く研究も。◆ニュージーランドでは、一見、イギリスがマオリの権利、資源を尊重するワイタンギ条約が締結されたが、実質的にほとんど機能しなかった。1975年のワイタンギ条約法以降、状況はすこしずつ改善◆パプア・ニューギニアでは、それまでの女性も経済や儀礼を担い、社会生活を支える主体だったところに植民地主義的権力が、公的領域は男性、私的領域は女性という配置を行い、社会に緊張と葛藤をもたらした。そこから女性の政治参加がどう進展していくかを描く◆フィジーの歴史、というとき、このフィジーが人（先住民）を指すのか、場所(国)を指すのか区別する必要。両者の歴史には重なり合いとずれ。独立後は安定した統治をみせていたが、軍のクーデターで不安定化。現在は各人種の既得権益をそれぞれ削る形で統合をはかるが、2022年選挙の結果どうなるかは未知数。植民地時代オセアニアの「カーゴカルト」という民衆暴動が各地で起こるが、フィジーのアポロシのヴィディ・カンバニ（フィジーの会社）運動もその一端。◆日本の南洋群島統治では公式には「福祉及発達」をこころがけたとされるが、一方「一等国民：内地人、二等国民：沖縄人/朝鮮人、三等国民：島民」という暗黙の序列が存在したとのことで実態としてはうたがわしく感じた。◆小笠原諸島は、19世紀初頭まで定住社会がなく、新たな移住者がしたがくべき伝統的秩序が存在せず、どの国の主権下にも組み込まれていなかった、一種の「アジール」であった、もちろんそれは階級秩序、ジェンダー支配、収奪関係がなかったことを意味しなかったが。日本の幕府は、19世紀半ばに、領有権主張目的で、かつて幕府自身が否定した小笠原貞頼発見伝説や「小笠原」「父島」「母島」という名称をあえて持ち出した。そのために派遣された官吏団のなかには通訳としてジョン万次郎が参加していた、と。
 | 小学館 発売日 : 2023-09-12 |
ロボ太とポコ太と出会った時の話から、一気にコミティア参加の話へ。前乗りして神保町を堪能して、コミティアで自分の新刊を売り切った後の持ち込み。辛辣な指摘も取り込んで最持込み…と。好きなことを描けるならプロでもプロじゃなくてもどっちも、という言葉がまぶしくて。
 | 祥伝社 発売日 : 2023-09-08 |
一巻からの間が空き過ぎて（出たのは12年前、私が読んだのは10年前）ほぼ忘却の彼方だったけど、新キャラのヅカさんとジョージが魅力的すぎる。そして、過去も含めての五角関係、絡み合う糸がさらにほぐれたり離れたり。木野くんの、この人も基本田中先生方面の人なのでは、には吹き出してしまった。そして、なぜ「ヅカさん」なのかはこれ以降明かされるのかな。
 | 小学館 発売日 : 2023-09-12 |
屋形「市」を支える”おかあさん”と百子さんの過去編も大団円。100年後も踊りを続ける覚悟の百子に、伴走できる子を育てたいという思いから、芸妓を辞め”おかあさん”になり屋形を継いだという思いが長い時をかけて、ようやく伝わった一幕。
饅頭本とは何ぞや？という興味で手に取る。ただ、この特集はそんなこと知ってるもんという層向けのようでその説明はなく。他で調べると、葬式饅頭がわりに配られる個人の遺稿や追悼文集のことを言うんだそうで。◆出久根達郎の「おかしな話だが追悼集の価値というのは、追悼される人の業績ではないのだ。故人の交友なのである」に漂う古本屋のリアル。資料的価値としては…と。また昭和11年私家版の早稲田大学生の遺稿集を目録掲載、大学教授に売れるが、その直後著者のいとこが「40年探してた…」と連絡。事情を聞き、思案し、大学教授に譲ってもらうくだり。こちらもまた古本屋のリアルか。◆連載の「古本屋の個人史」は、ちょうど戦後すぐのことで、門井慶喜「定価のない本」の世界を思い出した。買い出しした本をリヤカーで引いてたらパンクして、自転車で1.5時間のところを5倍も時間かかって深夜に帰宅、といったあたりに苦労がしのばれる。◆TOWNの項で、1988年には、古書現世が支店を開設、というあたりに、おそらく現店主のお父さんの代かと思うけど、そういうこともあったんだ、と。そして札幌在住の方の、札幌は目録で本を買うには不利、届いて即電話したのに売り切れましたは数しれず…。◆33年前の雑誌。巻頭エッセイの中島らもの肩書がまだ「コピーライター」で隔世の感。
従来説では、ジョチ・ウルス君主の〈移動〉については、その移動圏がヴォルガ下流域に固定されていた。そうではないのではないか。東西移動もあったのではないか、と当論文は主張。「ジョチ・ウルス君主の北カフカースへの東西移動はおそらくは一過性のものではなく――ヴォルガ下流域の南北移動に並行しながらも――トクタの代に始まり、その後継者たちであるウズ・ベク、ジャーニー・ベク（治世 1342 〜 57 年）といった後代の君主たちによって実践されていたものであった。」と。それらの主張が、最新の研究成果も盛り込みつつ丁寧に論証されていく。個人的には、ここでいう<移動>は、「遊牧」と「政治的巡行」に分けられ、「遊牧」は季節のリズムに沿って明確な暦を有するが、「政治的巡行」はそうではなく、政治状況が要請すれば、冬の最中にでも移動すると理解。「移動」に関しては、すくなくとも、初期の君主については、南北移動で固定的。後代のトクタ〜ジャーニー・ベク期は、固定的な移動圏(南北移動)＋恒常的な移動圏(東西移動)と言えるのでは、と捉えた。ジョチ・ウルス君主の〈移動〉については、ということでいうと、時期によって違う、政治的要請に左右された、ということか。
| 発売日 : |
仲のいい中学生智美と蘭。ふたりに起こる不思議なできごと。ある日気になった蟻についていくと…と。ホラーと言うか民話的というか。本筋ではないかもしれないけれど、智美はトラウマ抱えずに生きられたのかな、その後、というのが気になるところ。
| 発売日 : |
1987野澤書店にて。今回は場所と時刻を刻印された千歳、札幌とその近郊の自然の風景と街並と。個人的には夜空に凶々しい満月がくっきり浮かぶ写真がひときわ印象に。パッと見とタイトル見て印象が変わったのは「捕魚車」。樹木の表面かと思いきや、魚がこれでもかというくらい密集している図とは。けど、それがわかったあとでも、見るたびに両者のあいだをいったり来たりしてます。◆ポストカード式になったことで、読み手が順番入れ替えてみる楽しみができた。今まては綴じられていたので、読み手が好きな順で読むことができるとはいえ、その並び順には何がししか作者の意図があったのと思われ。ただ、今回、カードをパッキングした順がそうだったならごめんなさいです。ひとまず自然と街並みに分けてみました。2：1ぐらいの割合でしょうか。いろいろ眺めたり入れ替えてるうちに、しばらくは「補魚車」を一番上において眺めることにしました。
 | イースト・プレス 発売日 : 1995-11-04 |
文芸の伊藤理佐特集で見かけて、長いこと探してたもの。表題作はほんのちょっと。著者22歳くらいのもの。大半はコンサートレポートと芸能レポート（いろんな番組やドラマの本番やリハを見学）。口調はなかなかに辛辣なのもあり、いまなら載らないだろうなあてものも。30年前の流行や世相がよくわかって楽しいところはあった。◆「チータ」のブンブンビート阿波踊り、チカブーン、聴いてみたい。吉本興業新人オーディションの審査員控え室な豪華な佃煮巻感！ヒデキはきっちりアンコールにYMCAとギャランドゥーやってくれたにサービス精神を見たり、伊豆の別荘のジャグジーは星型ってうわさにほんとかよと思ったり。コンドマニアでお店、調べたらまだあってびっくり。
 | 祥伝社 発売日 : 2016-09-08 |
1-5巻読了。高橋源一郎「これはアレだな」つながり。現代日本のOLな部屋にタイムスリップしてきた光源氏。よく考えたら実在しない人物だからタイムスリップではないけど。それがあれよあれよとスマホを持ち、SNSをやり、和歌でオフ会とかなじむのが早すぎる。ライバルの頭中将までタイムスリップしてきて、ホストクラブで働き始めるは。本人たちもまわりも順応早すぎて、何かあるごとに和歌詠みすぎて。テンポよくおかしみもてんこ盛りで、かなり楽しかった。
 | 新潮社 発売日 : 2014-07-28 |
上高地、宮島、阿蘇と2011年の旅行記。松本城近くの古書の無人販売のお店、風情がありそうだなあ。かと思いきや、次の日行ったらあいてて、高価な山の写真集半額にしてもらっちゃったエピソードなど。岩国の白へびとたわむれるの図。宮島の判じ絵の看板にかんじるおかしさと親しみやすさ。鹿児島〜熊本あたりののんびりとしつつ、親切なひとがからんできてくれたり楽しげのんびりな感。だいたいが多人数で無理せずけれど行きたい、みたいところはしっかりまわって、他愛無い話でもりあがり、おすすめしあったりで、こういう旅行いいなあ、とふんわり思いました。
 | 角川書店 発売日 : |
野崎卓也「わが庭園巡礼記」に影響されて、シーソーブックスの古本フリマ、シャンティブックスさんのブースで購入。京都の庭園がメイン。1956年発行とあり、活字のズレ具合なんかもまた味が。すべてモノクロ写真。まずはキャプション抜きで写真だけで堪能。竜安寺あたりの幾何学的な庭に心惹かれ。それからキャプションを。ただ短いキャプションの緊張感、軽快、観念的、リズミカル…という述語がわからんというか素直にうなずけぬというか…読む側の素養が問われるなあ、と思った。庭園初心者にはもう少し噛み砕いてほしい思い。
 | ダイワアート 発売日 : |
若き日のタモリの写真の表紙（おそらく30代半ば前後）にひかれて買ってしまう。おじさんたちのおじさんたちによるおじさんたちのためのキャッキャウフフ。今から見ると勝手だなあああと思えることを、そんなこと百も承知でわかってくれよと言われてる感。4人で対談の時に、随所に「（小声で）バカ」とか「（小声で）うそつけ！」とかつっこんでるところとか、赤塚不二夫とタモリのいがみあってるようで、実は仲がいいことを思わせる関係性とかが面白く読めた。p.92のラブホテル割引券、バス回数券、ストロー、アロンアルファにただよう物悲しさ。「最初からあの娘は先生なんか眼中にないですよ」「（涙声で下唇をかみ）うるファイ！」のやりとりが好き。
 | KADOKAWA 発売日 : 2009-07-25 |
短編が6編。ひとことで言うと、みんな救いがない。何もかもうまくいかず鬱屈してイタチ撃って…、自分の死神ぶりに耐えきれずこめかみに拳銃あてて…、対立する組にかこまれ首を切られ…、目と腎臓を売るために連行され…といった具合に。「ああ、淑絹。おまえに新宿を見せてやりたい。まるでダイアモンドを埋め込んだような街なんだ」という願いからの転落。暗澹とした読後感。あとがきは懇切丁寧な馳星周読書案内。根室が舞台の「雪月花」、そして今度こそのエルロイ「ホワイト・ジャズ」が読みたくなる。
 | ワニブックス 発売日 : 2023-09-21 |
前作が旅人の視点からだとしたら、今作は住んでいる人の視点で。好きな人が愛してやまないものを語る姿が大好きだ、のイラストがキュート。手がパタパタしてるところが。毎日かかさずはちみつカシューナッツ。ヴァイキングレストランでがっつりヴァイキング感のあるお肉メニュー、テーブルにはヴァイキングのぼうし。迫力満点のカラクッコ…ライ麦パンの中に豚バラ肉と小魚を詰めてじっくりやきあげた。ことあるごとにチョコレートのボックス食い。音楽博物館でソロカラオケ、しかもVRゴーグルつけるタイプ。などなど、気になるところが目白押し。そして、誰もいないという"空間の余白" 何もしないという"時間の余白"を楽しんだり、お気に入りの水辺に持参のイスを置いて、どこでも自分の好きな場所にしてしまえたり、のんびりとヘルシンキ周辺の島でピクニックしたり。のんびり、ゆったり、自分の好きを楽しんでるのがつたわってきてよき。
 | 講談社 発売日 : 2023-09-22 |
燃え殻さんのエッセイがこんな風にマンガになるとは！と。エッセイ読んだのはだいぶ前だけど、エピソードが強烈すぎたり、しんと心の深いところに残ってたりして、次々と思い出されてきて。絵面でこそその強烈さが伝わる事も。過酷なADたちが、「ひとり2段ずつ使っていい事になってるんですよ 」と非常階段を一段を物置、一段を寝床として使っている様はマンガの方が強く。またボソボソとつぶやくような一言も響いてくる。◆わかってほしくて、おそらくすがる先を探して。◆居場所があると思った ここではない場所に◆「死にたい」を「タヒチに行きたい」にしてみてはいかがでしょうか◆
 | コアミックス 発売日 : 2023-09-20 |
 | 幻冬舎 発売日 : 2021-07-07 |
高橋源一郎「これはアレだな」、zine「おてあげ 本のまわりの困りごと」vol.1でとりあげられていたので。上野千鶴子と鈴木涼美の手加減なしの問いと鋭い指摘と言葉の応酬。なぜそんな風に考えてこれたのですか、私が通ってきた道はこういう道でだからこう考えた、という応答が語られ。自分が言われたわけでもないのに、「マスメディア、とりわけ男メディアの需要に応えて役割演技をパフォーマンスすることで日銭をかせぐより、ほんとうに自分のやりたいことをおやりなさい。(略)人生のなかで大切なことに優先順位をつけて、それをまちがえないようになさいな。」と上野から鈴木へ語りかけるところは、泣きそうになってしまった。また、弱さの拒絶が、被害者であることを嫌うことが、強い側、加害者に有利に働く側面、だからこそ、弱さを、被害者であることを恐れないことが有効なシーンもあるというのにはうなずき。そして「「男なんて」「女なんて」というのは、「人間なんて」と言うのと同じくらい冒涜的だからです。人間は卑劣で狡猾でもありますが、高邁で崇高でもありえます。」(p.260)とありつつも、「男なんて」と指弾される範疇には頭があがらないこと多々。
 | 扶桑社 発売日 : 2020-07-24 |
漫画版読んだの機に再読。エピソード自体は思てたけど、漫画では細かい設定を変えたり追加したり省略してたんだなとわかり、それぞれの味わいがまた増した。◆日々のほとんどは、本当はグラデーションの中にある気がする。世界平和を考えながら性欲にかられたり、金持ちになりたいと思いながら、好きなことを追い求めて世界一周に出たいと夢見たり、そんな両方を夢想しながら中目黒で満員電車を待っていたりする。p.27-28◆これは絶望でもあり希望でもあるのだけど、この世界は誰が抜けても大丈夫だ。だから潰れるまで個人が我慢する必要なんてない。p.62◆「ボクたちは必ず死ぬ。誰も何も持たずにこの世界からオサラバするのだ」p.63◆物事は全部繋がってると思う。だから簡単にさ、わかるって言う奴はダメだと思うんだp.88
 | 秋田書店 発売日 : 2023-09-14 |
 | 中央公論新社 発売日 : 2010-02-06 |
前半は源実朝、後半はマルコ・ポーロ、クビライ、南宋最後の皇帝を主要登場人物とし、全編を通じて、前半は語り手にして実朝の従者、後半は隠者となる人物、そして前半は父、後半は子と二代に渡り狂言回しをつとめる妖術師天竺丸。世捨て人は仮の姿で、法力を持つ諜者の役割が「方丈記」の鴨長明に帰され。そして彼らすべてをつらぬいてタイトルともなっている琥珀に閉じ込められてひたすら海を漂う安徳天皇。彼らの運命を大きく動かし、最後は、蜜の雨降る絢爛なシーンへと誘う、一大伝奇スペクタクル。歴史の書かれざる部分を奇想で埋めて魅惑する試みだった。個人的には、隠者然としてイメージの鴨長明が強かですごみを帯びていたのが興味深く。引き上げられた南宋最後の皇帝の遺体、その手のひらの中にマルコが最後に渡した硝子の小鳥を見つけたシーンは涙が出そうに。また、かつての帝を琥珀の玉に封じ込めて生かしめ、また海に投じるだけで大艦隊をも覆滅させる珠をつくるなど、黄金の国ジパングの技術力の高さを語ったりも。
 | 講談社 発売日 : 2008-05-20 |
自分が定住型で、ずっと組織の中でやってきたからか、真逆のタイプの思いつくまま旅のまま、基本一匹狼でやってきた著者の作品に心惹かれる。自伝的エッセイは何冊か読んでるので、元ネタは一緒なんだけど、これは世界放浪の旅の途中、カルカッタ(当時)で思い立って書き上げた人生でやりたいこと100のリスト(を失くしたので本を各時点で記憶から復元)をベースに、そのうちどんなことを達成して、どんなことを達成できなかったか語られたもの。イルカたちに混じってボディーサーフィンの高揚。ヌードモデルやったときにやってしまったことの羞恥。ドラッグ決めたヒッピーでいっぱいの映画館で「2001年宇宙の旅」を観て、お目当ての宇宙船が木星に突入するトリッピーなシーンの歓喜の渦。振り返れば楽しげな刑期3日の刑務所ライフでのバックギャモン教師ぶり。といったあたりが印象に。「人生楽しんだ者勝ち」「夢を思い描き、それを心の中で追い求める……。これこそぼくにとって、人生を楽しむ最高にして最良のゲームとなっているように思えるのだ。」を地でいくような。読んでてワクワクしてこちらまで楽しくなってしまうような一冊でした。◆新・人生の100のリストの「54天使と出会う」「55悪魔と出会う」とは比喩的なものなのか、それともそのものなのか。56大学でアウトロー文学の講義をする、は受けてみたいなあ。そして長編小説は書かれるのだろうか。新旧どちらのリストにも入ってる、トゥンブクトゥの寂れたバーで酔っ払うは昨今のマリ情勢からは厳しそうだけれど、憧れる。泥でできたモスクのある待ちトゥンブクトゥへの憧憬。
 | 秋田魁新報社 発売日 : 2023-07-20 |
「感染症」「旅と移動」「集う人々」の三章からなり、秋田大学の先生たちが連載していた、地域も時代も幅広く取った作品が語られ。スタンスは、現代で問題になったものでも、過去にそれを考えるきっかけになるような出来事があったんだ、ということだろうか。もちろん、それがそのまま現代にあてはまるわけではないけれど、われわれは何もかもわけがわからず放り出されているわけでもないんだとは思える。個人的には日本史、東洋史の範疇はなんとなくなじみがあるのだけれど、西洋史の中世から近現代あたりが題材にとられていたところは知らないことばかりで、興味深く読めた。16世紀ベネチアのペスト対策先進国ぶりとそれでも防げなかったこと。ブリューソフの短編「南十字星共和国」1905年…南極点に首都をもつ最先端の未来国家のはなし。警備の厳重なシナゴーグと、ますます進む人の移動、多様化の基盤のもろさ。ジャンヌ・ダルクが各時代の転換点で人々にかつがれてることとそのかつがれ方が時代を映すこと。古代ギリシアの預言を例に、人間の知は有限で未来を正確に知ることができない以上、その不安を埋めて何かを決断するためには、未来を大胆に約束するものが必要だったこと。などなど◆種痘を擁する天然痘対策において重要なのは、もはや個々の人間の生死でも、その細やかなケアでもなく、感染率、重症率、死亡率などの統計的に把握される数値であり、それらを許容可能な範囲内に「調整」することである(p.48)といったあたりに、現代の感染症の対応政策と通ずるものを感じたり。◆首席医務官リアム・ドナルドソン「人間は過ちをおかすものだが、それを隠すのは許されざることであり、ましてやそこから学ばないのは弁明の余地がない」(p.160)
 | 幻冬舎 発売日 : |
個人的「ロバート・ハリス」リバイバルが来ていて再読。バリでの出会い、ベルリンでのドラッグ、宗教的カリスマに会いに行く旅、サハラのスークの隠者、関係を持った後に旧友夫婦の娘とわかった話、バックギャモンの夜などなど。エッセイと地続きのような、何ものにもとらわれない旅、また旅のものがたりを楽しめた。「何かを得た者より、得られなかった者にやってくる反動のほうが強いからかな」p.94(静かな海)がわかるようでわからない、気になるけどのみくだせないフレーズ。「そう、自分だけが例外なんだと思わないことです。あなたの闇にも、いつかは光が当たり、美しい野の花が咲くようになります」p.158(クリシュナの光)に何がしかの救いを感じ。◆「言っておくけど、何もないぜ、その先には。君はどこへ行っても、君の過去を引き摺っていくだろうし、君という意識も、欲望も、捨てることはできない。我々はさなぎじゃないんだ。いくら場所を変え、物語を変えても、本質を変えることはできない」p.228
 | 幻冬舎 発売日 : |
斎藤美奈子「趣味は読書」に、"叶恭子「蜜の味」は本にしておくのはもったいない、五幕もののオペラに"とあったのに興味をひかれて手に取る。この頃は美香さんじゃない妹の話も随所に出てきたり、美香さんの話は、異母兄弟として名乗りを受けた、とさらっと書くだけだったんだ、と。巻末に、事実に基づいたノンフィクションだが、フィクションにしたところもある、とあって、なんだか信じるか信じないかはあなた次第みたいな気持ちに。半生記ということで、裕福だが複雑な過程で育ち（遠足の目的地にリンカーン・コンチネンタルで横付けして三段お重のお弁当！）、高校生の時は会うたびに一千万くれる彼氏とつきあい、それを元手に年商十億の会社を経営し、政界のフィクサーの仲介で（さらにその仲介に不動産王D.T.て…あの人しか思い浮かばん）、資産800億のアメリカ屈指の石油王の夫人候補に指名され、結局は断念、最後はいいよってきた資産家が他殺されたことで容疑者となり、疑いが晴れたところまで。まさに波乱万丈。帯には努力すれば手に入るサクセスストーリーとあったが、どの方向に努力すればこうなるのか途方に暮れる。ただ、自分以外の人に対して何かを期待せず、自分をとことん楽しむ「自分フェチ」の自覚があり、何ものにもしばられず生きていきたい、というのは伝わってきた。
 | KADOKAWA 発売日 : 1995-09-22 |
旧に読みかえしたくなって、再読。ドラマはリアルタイムでは観てなかったのだけど、ノベライズだけで読んでた作品。もちろん頭の中では安田成美と中森明菜を思い浮かべながら。女性の友情物語であり、ダンスなり脚本かなり絵描きなり、それぞれの夢を追い求める若者たちの物語であり、五人の恋模様の話でもあり、と。カンナの不器用でまっすぐでいつも裏目に出てしまうところが、もうもどかしくてみてられなくて愛しくなってしまう。そして最初は決められたレールに乗ること、家族や周囲の期待にこたえることが中心だった優美子の、カンナに触発されて、言いたいことをいいやりたいことをやるように成長していく話でもあり。一度ケンカ別れしたのに、絵本のラストが優美子からカンナへの、きっとまた会える、という願いのようなラブレターのようなものだったところがよかったなあ。◆優美子はきっと、本当にいい友だちを持ったんじゃないかと思った。過去を偽らないで、自分を飾らないで、素顔のままで付き合える友だちだ…。(p212 優美子の父)◆「私、カンナを失いたくなかった…。あなたが好きだから」p.214(優美子)
 | 集英社 発売日 : 2023-03-24 |
ロゴス(＝論理)とピュシス(＝本来の自然)の対比。再現性と一回性の話。ロゴスは世界を分けるがロゴスではない世界を知ったことにはならない。分けることでこぼれ落ちてしまう膨大なものがある。だからピュシスの中に入って理解しなければならない、ということか。中沢新一の話と通ずるところがあるなあ、と思いつつ読み終えた。西洋と東洋の謂いでもあるのか、と思った。◆福岡 生命は増大し続けるエントロピーを絶えず系外に捨て続けることで、不安定ながら、見かけ上、ある一定の期間、崩壊しそうになるたびに秩序を作り直しています。p.129◆坂本 死ぬことによって生きる、ではないですけれども、生きるために先回りして壊すというエネルギーの流れは、まるで何かの武道の理論のようですね。p.136◆
2023年09月03日
2023年08月に読んだ本
0802・吉川永青 乱世を看取った男 山名豊国 図書館20230731受領
0802・堀江貴文のchatGPT大全 kindle 20230801
0802・中村 拓志 恋する建築 図書館20230726受領
0803・Jam 多分そいつ今ごろパフェとか食べてるよ 20230724
0803・燃え殻 ブルーハワイ 20230803
(0805・生きてるうちに推してくれ 3
(0805・地図にない場所4
0805・ユリイカ 2023年1月号 特集 コペルニクス 図書館20230805受領
0805-0806・【再読】魚豊 チ。地球の運動について 1-8 kindle
0807・野村進 コリアン世界の旅 講談社文庫 20230723
(0809・重版出来！20 kindle
0809・福岡伸一 世界は分けてもわからない 講談社現代新書 20230723
0811・今村翔吾 塞王の楯 20230729
(0811・昭和天皇物語 12 kindle
0812・門井慶喜 定価のない本 20230729
0812・鈴木輝一郎 家康の選択 小牧・長久手 図書館20230812受領
0813・氷室冴子 冴子の母娘草 20230811
0813・澤田直 フェルナンド・ペソア伝 異名者たちの迷路 20230805
0813・小林登志子 古代メソポタミア全史 中公新書 図書館20230812受領
0813・飯吉光夫 パウル・ツェラン 円錐書店 20230428 …ざっと
(0813・(zine)夏森かぶと 本のある日常 シーソーブックス 20230813
(0814・永田雄三 トルコの歴史(上)(下) 刀水書房 図書館20230814…ざっと
(0814・ウィンストン・ブラック 中世ヨーロッパ 図書館20230814 …ざっと
0814・金七紀男 図説ポルトガルの歴史 図書館20230814
0815・宇月原晴明 信長あるいは戴冠せるアンドロギュヌス 20230812
(0815・違国日記11
0815・岩波講座世界歴史10 モンゴル帝国と海域世界 11-13世紀 図書館20230814
0816・澤田直編訳 ペソア詩集 図書館20230814
(0816・中塚武 書評一 樹木年輪古気候学の現状と課題 バレリー・トロエ 年輪で読む世界史 史苑82-2
(0816・宇野伸浩 書評二 モンゴル帝国初期の気候変動---白石典之「モンゴル帝国の誕生」史苑82-2
0817・山崎ナオコーラ ニセ姉妹 20230805
0817・本の雑誌編集部(編) 本屋、ひらく 図書館20230817受領
0818・落合信彦 狼たちへの伝言 20230811
(0819・海が走るエンドロール5
(0819・夜白風 mayu 亡霊についての解釈とエッセイ 2023 ギャラリー犬養 20230819
(0819・ヤシロカゼ ヤシロカゼ作品集 霞の帳 ギャラリー犬養 20230819
(0819・川尻こだま 第12集: 引越し先で閃光玉喰らった話 他 川尻こだまのただれた生活 kindle
0819・山本文緒 なぎさ 20230811
0823・山本弘 神は沈黙せず（上）20230812
(0823・刷ったもんだ10 kindle 20230823
0823・ユリイカ 2023年7月号(通巻806号) 特集:奇書の世界 図書館20230820受領
0824・山本弘 神は沈黙せず（下）20230812
(0825・宮田ナノ ハラヘリ読書 読書室ポワロ
0825・砂原浩太朗 高瀬庄左衛門御留書 20230819
0826・桜木紫乃 ラブレス 20230811
(0826・野崎卓也 わが庭園巡礼記 シャンティブックス 20230824
0826・岩波講座世界歴史13 西アジア・南アジアの帝国16-18世紀 図書館20230826
(0827・片喰と黄金10
(0827・ひらばのひと4
0827・渡辺和博 たらこ筋肉 シャンティブックス 20230824
(0828・関根正雄 ヨブ記 岩波クラシックス 図書館…解説のみ
0828・角田直美, 麻井玖美 インド紀行 保育社 1980年 シャンティブックス 20230824
(0829・3月のライオン17 kindle
0829・阿佐ヶ谷姉妹 阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし 幻冬舎文庫 20230828
0829・桜木紫乃 妄想radio 図書館20230829受領
(0830・アンリ・カルティエ＝ブレッソン ポートレイト 内なる静寂: アンリ・カルティエ=ブレッソン写真集 読書室ポワロ
0830・坂口恭平 自分の薬を作る 図書館20230829受領
(0830・booklogなし スラムダンク31 読書室ポワロ …映画「THE FIRST SLUMDUNK」二度目を観たのを契機に
0831・中島らも アマニタ・パンセリナ シャンティブックス 20230824
0802・堀江貴文のchatGPT大全 kindle 20230801
0802・中村 拓志 恋する建築 図書館20230726受領
0803・Jam 多分そいつ今ごろパフェとか食べてるよ 20230724
0803・燃え殻 ブルーハワイ 20230803
(0805・生きてるうちに推してくれ 3
(0805・地図にない場所4
0805・ユリイカ 2023年1月号 特集 コペルニクス 図書館20230805受領
0805-0806・【再読】魚豊 チ。地球の運動について 1-8 kindle
0807・野村進 コリアン世界の旅 講談社文庫 20230723
(0809・重版出来！20 kindle
0809・福岡伸一 世界は分けてもわからない 講談社現代新書 20230723
0811・今村翔吾 塞王の楯 20230729
(0811・昭和天皇物語 12 kindle
0812・門井慶喜 定価のない本 20230729
0812・鈴木輝一郎 家康の選択 小牧・長久手 図書館20230812受領
0813・氷室冴子 冴子の母娘草 20230811
0813・澤田直 フェルナンド・ペソア伝 異名者たちの迷路 20230805
0813・小林登志子 古代メソポタミア全史 中公新書 図書館20230812受領
0813・飯吉光夫 パウル・ツェラン 円錐書店 20230428 …ざっと
(0813・(zine)夏森かぶと 本のある日常 シーソーブックス 20230813
(0814・永田雄三 トルコの歴史(上)(下) 刀水書房 図書館20230814…ざっと
(0814・ウィンストン・ブラック 中世ヨーロッパ 図書館20230814 …ざっと
0814・金七紀男 図説ポルトガルの歴史 図書館20230814
0815・宇月原晴明 信長あるいは戴冠せるアンドロギュヌス 20230812
(0815・違国日記11
0815・岩波講座世界歴史10 モンゴル帝国と海域世界 11-13世紀 図書館20230814
0816・澤田直編訳 ペソア詩集 図書館20230814
(0816・中塚武 書評一 樹木年輪古気候学の現状と課題 バレリー・トロエ 年輪で読む世界史 史苑82-2
(0816・宇野伸浩 書評二 モンゴル帝国初期の気候変動---白石典之「モンゴル帝国の誕生」史苑82-2
0817・山崎ナオコーラ ニセ姉妹 20230805
0817・本の雑誌編集部(編) 本屋、ひらく 図書館20230817受領
0818・落合信彦 狼たちへの伝言 20230811
(0819・海が走るエンドロール5
(0819・夜白風 mayu 亡霊についての解釈とエッセイ 2023 ギャラリー犬養 20230819
(0819・ヤシロカゼ ヤシロカゼ作品集 霞の帳 ギャラリー犬養 20230819
(0819・川尻こだま 第12集: 引越し先で閃光玉喰らった話 他 川尻こだまのただれた生活 kindle
0819・山本文緒 なぎさ 20230811
0823・山本弘 神は沈黙せず（上）20230812
(0823・刷ったもんだ10 kindle 20230823
0823・ユリイカ 2023年7月号(通巻806号) 特集:奇書の世界 図書館20230820受領
0824・山本弘 神は沈黙せず（下）20230812
(0825・宮田ナノ ハラヘリ読書 読書室ポワロ
0825・砂原浩太朗 高瀬庄左衛門御留書 20230819
0826・桜木紫乃 ラブレス 20230811
(0826・野崎卓也 わが庭園巡礼記 シャンティブックス 20230824
0826・岩波講座世界歴史13 西アジア・南アジアの帝国16-18世紀 図書館20230826
(0827・片喰と黄金10
(0827・ひらばのひと4
0827・渡辺和博 たらこ筋肉 シャンティブックス 20230824
(0828・関根正雄 ヨブ記 岩波クラシックス 図書館…解説のみ
0828・角田直美, 麻井玖美 インド紀行 保育社 1980年 シャンティブックス 20230824
(0829・3月のライオン17 kindle
0829・阿佐ヶ谷姉妹 阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし 幻冬舎文庫 20230828
0829・桜木紫乃 妄想radio 図書館20230829受領
(0830・アンリ・カルティエ＝ブレッソン ポートレイト 内なる静寂: アンリ・カルティエ=ブレッソン写真集 読書室ポワロ
0830・坂口恭平 自分の薬を作る 図書館20230829受領
(0830・booklogなし スラムダンク31 読書室ポワロ …映画「THE FIRST SLUMDUNK」二度目を観たのを契機に
0831・中島らも アマニタ・パンセリナ シャンティブックス 20230824
 | 幻冬舎 発売日 : 2023-08-01 |
著者のコラムが1/3から半分ぐらい。あとは各界の方々に、あなたにとってchatGPTとは？と問いかけ、回答を得て、各人にとっての使い方を開陳してもらうかたち。特典でついてくるプロンプトをゴリゴリと使ってみて、オープンチャットでのやりとりを参照しつつかなあ、といったところ。プログラミングやる際の環境設定。ある分野の論文を網羅的に集めてきて要点を整理させ、気になったのだけ深掘り。生成AIへのコマンド生成。固有名詞について聞いてもダメだけど、 それよりも哲学的な話とか答えが決まっていない話のほうが使いでがありそう、といったあたりが参考になるなあ、と。
 | アスキー 発売日 : 2007-12-03 |
読書会で教えてもらった手に取った一冊。「人に「好きだ」と言ってもらえるほど親しい関係になれる建物を、僕は「恋する建築」と呼ぼうと思った。」「恋愛は、ふとした触れ合いからスタートする。建築と人との恋も、接触する機会がなければ始まらないだろう。だから僕は人と建築の触れ合うチャンスをデザインすることが、恋の第一歩だと思う。」と語る建築家の「恋する建築」のケーススタディ。常識的な間取りや建材にとらわれず、依頼された場をつくるにはどういうものがいいのか、ゼロベースで考えて、ないものは自分で作る、あるいはプロに依頼していくオーダーメイド。狭小住宅なのに外壁が外側にふくらんでいて、そこに住む少女がそのくぼみの魅力を発見していくことを期待したり、絵と2人きりで見つめ合って過ごせるような、小さな部屋をたくさん用意することにしたり、浴室の"天井、壁、床に設けられた無数の窓は、まるでパールのように輝く"といった仕掛けをしたり、コンクリートの素材のうち、砂利をガラスカレットに変えて、表面を洗い出したり。ワクワクするような建築にふれられて。
 | 角川春樹事務所 発売日 : 2023-07-14 |
戦国時代。家名だけは高いが内実は衰退に衰退を重ね、自家の家臣団すら満足に束ねられない山名豊国。本家の名を残そうと奮闘、織田に毛利にと何度も裏切りを重ね、家臣の垣屋豊続の神輿になろうと思い極めるも、最後は因幡衆をまとめられず、籠城してた鳥取城から織田家の武将だった秀吉へ単身降伏。所領を失い、本家を失い、栄達、出世の虚しさを悟るが、栄達・出世しか目にない秀吉に仕えなければならない苦衷。家康の知遇を得てからは、理解者を得た思い。家光の世まで長生きして、最後は己の生に誇りを持って生涯を終えるまで。かずかずの物語で暗愚、卑怯と描かれる主人公を、心意気は高く、単騎の武勇ならあり、人の気持ちを推しはかれるが、その上でどうするかの方策が甘い、けど家臣の垣屋豊続に鍛えられ、乱世を生き延びることはできた男として描く。戦国を看取った、というよりは、流れに任せて、とみえたけど。家康の眼差しが「山名禅高は確かに粗忽者だが、人生の岐路において一度も道を過たなかった。百分の一殿くらいの値打ちは十分にあるぞ」と語ったように見えたシーンが白眉かな、と。あと垣屋豊続の人物像に興味が出てきた。
 | サンクチュアリ出版 発売日 : 2018-07-07 |
いやな出来事やいやな人のことが頭をしめて離れない、そんな時に、忘れちゃいなよ、頭の中から消しちゃいなよ、と簡単にいってもできるわけがなく---泣いてる人に泣くなよといっても意味がないみたく---けど、そんな時、こう考えたらいいんじゃない？という示唆をくれる一冊。「多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ」と考えてみる。「嫌なやつのことが頭から離れないって一緒の家に住んでいるようなものだよ」「家の中のいらないものを置いてる場所にも、家賃は発生してるよ。ゴミに家賃払うの？」とかね。相手のためでなく、誰のためでなく、自分のために、相手をゆるす、と著者は語るけど、最終的にはその境地までいきつければね。
 | 新潮社 発売日 : 2023-08-02 |
燃え殻さん、偉い人にむやみに深夜に呼び出されがち。いろんな女性との思い出作りがち。けど、どちらも愛されてるなあ、と。人と比べるのではなくて、過去の自分のと比べてみては、という回答や、おいおいと泣く場所さえあれば、人はどーにか朝を迎えられる気がする、人生には気持ちよく希望を語る瞬間があっていい、といったあたりに優しさを感じ。「ヘイ！ ヘイ！ ヘイ！ ヘイ！ 平安京」には読んでて吹き出してしまった。
 | 青土社 発売日 : 2022-12-27 |
魚豊「チ。---地球の運動について---」を読んだのを契機に、手に取る。著者の「マンガ、あるいは物語を作るうえで大切にしているのは閉じることなんです」「開かれたらみんな入ってきて結局分断され、陰謀論が起こる」というのに、なるほど、そういう考え方もあるのか、と。「絶対に信じられるものとしての神が崩壊した後の基盤になりうるものは何かということも、「チ。」を描くにあたってはテーマとして入れたいと思っていた」(魚豊)◆巻頭の「チ。」の作者の対談の他に、コペルニクスは何を転回したのか、天文学がイスラム、ヨーロッパと伝播していく過程、占星術、ファクトとフィクション、「チ。」を様々な角度から読み解いた論考など、多岐に渡るテーマに触れられている。中世観が「暗黒の中世」どまりだった身には蒙を啓かれる思いの箇所、特にウィンストン・ブラック「中世ヨーロッパ ファクトとフィクション」など手に取ってみたく思った。高橋憲一「コペルニクス(よみがえる天才5)」(ちくまプリマー新書2020)も。また、中西恭子氏の歴史創作に対する論考も読み応えがあった。その末尾から。「歴史そのまま、ではないところに歴史創作の妙味があり、大胆で巧みな虚構を通して、同時代の書き手と読者の欲望を歴史上の人物を通して映し出し、虚実の指標を見いだしてさらなる思索へ招くことがある。そのような作品に心をひらく楽しみを、歴史家も思想史家もいまこそ省みるときかもしれない。」
 | 小学館 発売日 : 2023-07-28 |
まさかのお坊さんに、本来の後継のいとこ登場で、おはらいコンビ解散の危機？！からの、なんだったの展開。愛別離苦を解いて去る一幕も。いとこの、優しくするのはコントロールしたい時、の呪言にもふれつつ。ミサキのアイドル業は、いてくれるだけでうれしい存在への方向転換から、各メンバーのそれぞれの悩みがあらわになり…と。現状を是として、必死で元に戻そうとするけど、沈まないだけの船でいいの？それではどこの陸地にもたどり着けない…独白にシンとなりつつ。
 | 小学館 発売日 : 2023-07-28 |
イズコの正体を知ってしまいつつも、知らぬ体で琥珀とイズコ探しをしてしまうことに罪悪感を感じるユート。青石やすずとの関係に想いを巡らしつつも、当たり前のように琥珀の隣にいたり、気持ちを推し測ったり、年末年始を過ごしたり。変わりそうで変わらない関係性を穏やかに眺めているような、少しずつあゆみよりはあるような感覚を味わいつつ。次巻、完結とのこと、どう転がるのかなあ。
 | 小学館 発売日 : 2020-12-11 |
ユリイカのコペルニクス特集の読了を契機に1−8巻通して再読。最新刊が出るごとに切れ切れで読んでたのでは見えてこなかったことが味わえた感。構成は1巻、4巻、2.5巻、0.5巻といったところか。新章ごとに時間が飛び、主人公も変わっていく。ノヴァクとヨレンタは章をまたいで登場するが。P国、C教が、ポーランドとキリスト教に変わる断面、異端思想と弾圧という構造が、実は…といったところなど、いろいろ読めてなかったなあ、と。「暗黒の中世」観にひたっているようで、見事にひっくりかえすところなど。ほんとウィンストン・ブラック「中世ヨーロッパ ファクトとフィクション」は読まなきゃだわ。ドゥラカの叔父の、知性についての講釈。ヨレンタの人の生まれる意味の語りかけ。シュミットの、出版活動を信念を固定化し、思想を可視化し、瞬間を永遠に移すものと捉えているところ。ラファウの「知が人や社会の役に立たなければいけないなんて発想はクソだ」あたりが今回読んで特に印象にのこったところ。
 | 講談社 発売日 : 2009-05-15 |
斎藤美奈子「読者は踊る」で見かけて手に取り。芸能界、焼肉、パチンコ、サッカー、などなど、普段あまり意識しないで目にしているけど、在日韓国・朝鮮人、帰化者たちが深くかかわっている様を、そこで普通に暮らす人々が、何を考えどう生きてきたかを教えてくれる。日本統治下の差別、韓国人同士での差別、日本人でも韓国・朝鮮人でもないと向けられる在日への視線。在日であると日本人に告げた時の反応への失望。職業差別。地域差別。◆「金日成にはもっと早く死んでほしかったけれど、北朝鮮がどんなにひどい国かなんていうことを、日本人からは絶対に言われたくない」（マルセ太郎）◆尹「（朝鮮学校の男子生徒にとって）日本の人と触れ合う機会は喧嘩とサッカーしかない。どちらもその場限り。僕は日本にいるんだから、日本の人との付き合いをおそろかにしたら、自分の存在価値がないと思っていたんですよ◆朝鮮学校の出身者は往々にして、韓国・朝鮮系であることを隠して生きている人たちを憐れんだり見下したりしがちだが、尹は名もなき普通の人々と手を携えて生きる方向を模索。◆といったあたりが印象に。
 | 講談社 発売日 : 2009-07-17 |
タイトルに沿って、順を追って考察が繰り広げられるというよりは、いくつかのケースを紹介していって、タイトルの結論にもっていこうという趣き。細胞の活動、実はふたつにわけられていたヴィットーレ・カルパッチョの絵画、視線とは何か、マップヘイターとマップラバーの行動原理。境界を両サイドから写した写真家渡辺剛の写真集。そして12章中半分近い5章を割いた、癌細胞の解明でノーベル賞に近づいたと思ったラッカーとマーク・スペクターの栄光と挫折。◆全体は部分の総和以上の何ものかである。◆世界は分けないことにはわからない。しかし分けてもわほんとうにわかったことにはならない◆世界に部分はない。◆本当の意味の因果関係もない。◆「治すすべのない病」が絵画の話から"神の手"を使ってしまった研究者までつながるところがまた興味深かった。
 | 小学館 発売日 : 2023-08-09 |
これまでの成長とこれからの展開を期待させつつの大団円。黒沢の「殴る価値なんかない」、三倉山先生の「幸せになったら他人のために描くんです」という言葉に押されるように、堂々と貫禄を身につけた中田伯が、これまでなら考えられないサイン会をひらき、そしてアユとも思いを伝え合い…と。そう、この巻はほかにもいくつもの思いを伝え合うシーンの垣間見える巻。そして世界で読んでもらえるようになった、と喜ぶ黒沢へ、ディスクレシア（識字障害）の子からの私のような人にも対応してほしいという願い、対応。そして国籍不明のギリシャ文字を操る作家からの作品に「情熱で作られたものに国境はないから」と五百旗頭。といったところが印象に。
 | 集英社 発売日 : 2021-10-26 |
戦国の世に名を知られた城の石垣作りの職人集団穴太衆。その中の飛騨屋の跡取り匡介を軸に描かれるストーリー。誰にも破れない石垣を造れれば、戦はなくなるのではないか、という思いを抱いて。そして対抗するは鉄砲製造集団国友衆の跡取り彦九郎。こちらは、あっという間に大量に殺せる兵器があれば、あるいはどんな庶民でも武装して対抗できれば、戦がなくなるのではないかと夢想。何やら現代の核抑止やアメリカの銃規制反対派のような考えにも思えるが。ともに目指すゴールは同じはずなのに、正反対のルートをたどろうとする二人。その二人が正面からぶつかりあう決戦は関ケ原の前哨戦ともいえる大津城の戦い。こもるは「蛍大名」と世に軽侮される京極高次。しかし、その内実は、自分も家族も家臣も領民たちも、誰一人死なせたくないという思いから発していて、戦国の世からすると軟弱と思われ勝ちだが、それを知りつつ、凡将とも愚将とも呼ばば呼べ、それで一人でも多くの命が助かるならとその一点で肚をくくっている、穏和で抜けていて頼りなくて、けれどもそんな殿様をなんとかしなければと周囲から支えられ愛される、魅力的な君主として描かれている。職人二人のぶつかりあいとそこに流れる原理、愚将と誹られても誰の命も失いたくない君主像といったあたりがこの小説を魅力的にしているところかな、と感じた。
 | 小学館 発売日 : 2023-03-30 |
二二六事件の勃発と、天皇による断固たる討伐、そして後継内閣の誕生まで。だんだんと軍部の統制が効かなくなる様が描かれ。
 | 毎日新聞出版 発売日 : 2023-06-05 |
家康が主人公なんだけど、それとあわせて大々的にとりあげられているのは、敵対した秀吉ではなく織田信雄。家康を、家臣団に支えられ専制権力はなく、民衆の人気も少なく、見た目は見栄えがせず、財務能力がなく、交渉もそこそこ、政事もそこそこ、合戦での武名はあるが、文にはくらく、地味であまりぱっとしない、けれど生き残ることにだけは抜群の才を見せた武将として描く一方、織田信雄を、名門の血をひいて、見た目は秀麗、文化にも通じ、秀吉に匹敵するぐらいの政事と交渉の名手、極力戦わず、闘って負けても負けても生き残り続ける、"ある意味「名将」"として描いている。ただ、実際に上司や同僚にいたら、あまりに自分勝手すぎてぶん殴りたくなるだろうな、というのは作中の家康ならずとも。ただ、織田信雄の研究とかほそぼそ追ってる身にはそういう視点もあるのかと面白かった。あと、軍師役としての阿茶局が効いているなあと思った。◆史実に材をとったフィクション、歴史小説で、読みやすさ面白さ優先、演出も加えてる、といっそすがすがしいあとがき。そのベースが俗説も多く、最新の研究による更新を経てないように見えるところもあったけど、きっと著者にとっては些事だろう。◆「どんな死地に遭遇しようが、どんなことをしても生き残る。わしの才は、それしかない。それだけしかない」p.93◆「このいくさ、勝っても勝っても、終わらないのではないか」(織田信雄)p.222◆「いくさで勝って、敗けを受け入れるのは、大変だぞ」(織田信雄)p.227◆
 | 中央公論新社 発売日 : 2020-10-20 |
高野秀行「イラク水滸伝」の参考文献。シュメルの文化を残すイラクの湿地帯アフワールが舞台だったので。目には目をとはちがって、「シュメル社会ではちがう法原理つまり「やられても、やりかえさない」考え方があったことが「ウルナンム法典からわかる」(p.67)んだそうな。また「「武力で拡大した広大な版図は有能な王ならば運営可能だが、凡庸な王には治められない。絶頂期の後に急速に衰退していく例は、この後のメソポタミアの歴史で繰り返される」(p.62)とありほんとに何度も繰り返されるんだけど、それを防ぐ方策は取られなかったんだなあと思ったり。他に、ハンムラビ王も宗主として仰いでいたシャムシですアダド王の隆盛。人口調査ができたことは、支配が安定していたという説明、など。しかし、登場王朝、人物多数で、頭に入りづらいこと甚だしかった。
 | 東京創元社 発売日 : 2022-10-19 |
第二次世界大戦直後。東京。一人の古書店主が倒れてきた多くの本によって圧死。事故か？殺人か？事後処理と調査に同業者の古典籍を専門に扱う古書店主が立ち上がったところから始まる物語。戦前から戦後すぐまでの古書業界の仕組み、状況などが描かれ、興味深かった。古本好きとしてはたまらなかった。そこからの展開は二転三転。最後はまさか日本の歴史を守る、日本の文化財を守るという大きな話にまで転がっていくとは思わなかった。そのやり方はまさに古書店主らしいやり方なのだけれども、それは読んでのお楽しみ。太宰治がちょい役だけど顔を出していてちょっとニヤリとした。巻末の対談で、作者が、本が倒れてきて圧死だなんて「普通の読書さんからしたら、小説家だからってそんなことを好き勝手に想像で書いて…と思うかもしれないけれど、我々からすると非常にリアリティのある死に方です」(p.364)と書いてたけど激しく同感。2018年の北海道胆振東部地震の時は寝床のすぐ横の本棚2本を必死でおさえつつ本を浴び、もう2本の本棚は抑えきれず、部屋が本で埋め尽くされて身にも他人事ではなかった。
 | 集英社 発売日 : 2023-08-04 |
おそらく日本での本格的な評伝は初なのでは。フェルナンド・ペソアの誕生から死までが語られる。もちろん詩人本人は（というか異名者カエイロが）「わたしが死んでから 伝記を書くひとがいても/これほど簡単なことはない/ふたつの日付があるだけ生まれた日と死んだ日/ふたつに挟まれた日々や出来事はすべてわたしのものだ」とは書いてはいるのだけれども。ペソアの「異名者」＝平野啓一郎の「分人」に通ずる、という見方にはなるほど、と。Twitterの別アカに例えている人もいたなあ。「不安の書」などを読んでいると、ペソアはリスボン帰還以来、商業翻訳で日々の糧を得ているが、それ以外はひきこもりで友人も恋人もほぼなく、ただただ夢想し、詩作を続けていたようなイメージを持ってしまいがちだが、どうしてどうして。二度の出版社起業と挫折。友人たちとの交友。婚約までいった女性との手紙ややりとり（異名者カンポスが、ふたりの関係を邪魔した。オフェリアに、カンポスがペソア批判でいっぱいの手紙を書いた…って異名者もペソアじゃないの？と普通なら考えてしまうが）。新聞への積極的な政治発言。雑誌の創刊。そしてコカ・コーラのためのコピーライティングまで（これはなぜか当局に目をつけられて以降50年間ポルトガルにコカ・コーラが入ってこないい事態に）。ときに神経を病んで停滞する時期もあったけれども、なかなかに活発で活動的な一面もあわせもっていたんだなあ、というのがわかっておもしろかった。◆絶筆は、鉛筆書きの英文I know not what tomorrow will bring.(明日が私に何をもたらすかは知らない)。生前、詩集を一冊刊行しただけだった詩人は、現在、こんなにも世界に名が広がり、極東の島国で日本語の評伝が出版されるだなんて、きっと思っていなかっただろうなと思いつつ。◆ウジェーヌ・グリーン監督「いかにしてフェルンド・ペソーアはポルトガルを救ったか 2018年 27分◆ペソアを響かせてるという、ファドが基調のアレシャンドラ「テラス・ド・リスコ」あたりは観たり聞いたりしたい。
 | 集英社 発売日 : 2022-05-20 |
当時３０代の売れっ子小説家が、「結婚して子供産むことがすべて、独身女性の仕事なんか一文の価値もない」と考えてて、ことあるごとに結婚の話題を出してくる母親とことごとにバトル。にしても、本人に相談なく、テレビの人生相談に娘の結婚を相談し、あまつさえ本名まで出してしまったのは、読んでる身にも絶句。作者も絶縁状を出すほど怒り心頭だったが。両親の生い立ちや関係性や時代背景にまで思いをいたして、一方的に突き放せないところに、またモヤモヤした感を抱いてしまう。山あり谷ありだけど母娘関係は続いていく…といった感のむすび。
書店員夏森かぶと( @kbt0401 )さんのzine。シーソーブックスで見かけて、タイトルだけでビビッと来て、何ページかめくって「これは絶対おもしろい！」と思ってレジへ持っていきました。そして予感は裏切られませんでした。以下（）は個人の雑感。新刊書店での値段は出会い料。積読は、自分の家に自分だけの図書館を作ること。読まなきゃいけない、なんて思いは読書にとって毒。読みたくなった時ふとみたらある、というのが理想。二次会にほろ酔いで本屋（シーソーブックスのビアガなら、飲みながら本をながめられます）。本を読むのはめんどうくさい、めんどうくさいからこそ読む。どうしようもなくなった時にこそ本を読む（最相葉月の「なんといふ空」には何度助けられたことか）。本が好きだと町との関わり方が違ってくる（西荻窪に何度も通い、旅をするたびに旅先で本屋に入ってしまいます）。などなど、本好きにとっては共感にあふれすぎてたのしい一冊でした。続刊希望です。
 | 小沢書店 発売日 : |
主に「ツェラン素描」「誰でもないものの薔薇」の章を目当てに、ほかのところはざっと目を通すかんじで。神なき身に目についたのはやはり、ツェランの神を信じることと、それならばなぜ、神がいるのならなぜあの戦争が起きて、あの大虐殺が起きたのかという問いかけ。◆「「誰でもないものの薔薇」の詩集の題名の取られた詩篇「頌歌」は、不在の神にむかって歌いあげられていく祈りであり呪いであるだろう。」(p.15)◆（「頌歌」の）「最後までつづく薔薇への呼びかけは鎮魂とも諦念ともならない救われようのない、救われようのなかった叫び声だ。」(p.119)◆そこだけが論点ではないのかもしれないけれど、強く印象付けられた。
 | 河出書房新社 発売日 : 2011-05-18 |
フェルナンド・ペソア伝に触発されて手に取り。ローマ時代から現代までのポルトガルの歴史を概説。国家予算の大半を傾けてモロッコで大敗したり、スペインに併合されたり、ブラジルに遷都したり、首相が暗殺されたり、なかなかに波瀾万丈。ペソアの再評価についても触れられていた。一種の救世主願望たるセバスティニアズモについてもコラムあり。
 | 刀水書房 発売日 : 2023-03-31 |
本書の狙い→トルコ系諸王朝の遊牧国家的性格を論じ、移住した先々の諸地域との間の「異文化」接触の諸相を明らかに、とのこと。上下巻のうち興味のあるトピックを拾い読み。ルーム・セルジュク朝。イルハン国のオスマン帝国への影響。ティムール帝国との文化交流、特にアリー・クシュチ。バヤズィト2世とその時代。現金ワクフ容認というエビュスウードの柔軟な法解釈に反対したビルギヴィー。カドゥザーデ派。パトロナの反乱一七三〇年（ミュニル・アクテペ）。ミドハト憲法、など。註をみると、日本の研究、文献が幅広く網羅されていることがわかる。陳舜臣「イスタンブール」での、トプカプ宮殿をみて、遊牧民のテントを思い出した、という感慨まで引かれてるとは。末尾の、オスマン研究に入るきっかけとなった話は、たしかに人に恵まれ、引き寄せ、という側面もあったのだなあ、と。
 | 平凡社 発売日 : 2021-04-23 |
中世ヨーロッパについてのフィクションなどによって流布する俗説を斬る、といった感。ユリイカのコペルニクス特集、「チ。—-地球の運動について—-」特集の参考文献に挙げられていて。構成は、どう信じられているか、その説はどのように成立したか、実際はどうだったか。3章ほと拾い読み。中世の人も地球は丸いとは思っていた、地球が太陽の周りを回ると思ってないだけで。魔女狩りは中世にはなかった、それは近世のこと。中世の教会は科学を抑圧しなかった、むしろ神の摂理に近づくために科学研究に協力してた、と。
 | 祥伝社 発売日 : 2023-08-08 |
完結。元カレ・元カノなのに、フラットに友達に戻って、会食などしながら付き合ってた時の違和感など話しあえる槙生、笠町コンビの関係性をうらやましく思う導入部から、槙生の生命保険加入をめぐる感情のすれちがい、そして、なぜ愛してるのひとことが言えない、に、そんなひとことではぜんぜん足りないとかえすシーンが一番好きでした。最後は、この穏やかな距離感を持った関係性がつづいていくことが示唆されつつ。
 | 新潮社 発売日 : |
何年ぶりかの再読。呪術・オカルトから読み直す信長を中心とした戦国史。遠くローマ皇帝ヘリオガバルスとの接続。信長が両性具有だったという見立て。1930年代のアントナン・アルトーと信長に仕えた僧の子孫總見寺龍彦との信長とヘリオガバルスをめぐるダイアローグと戦国時代が交互に語られる。信長とヘリオガバルスのつながりは、時に論理飛躍、時に状況証拠に依存、オカルティックだけれども、妖しい魅力があることは否めない。ただ、細かいところでいうと、長篠の戦いの時の柵の構造だけはどうにも頭の中で像を結ばなかった…遠くから見たら第一陣しか見えないのに、それをやぶると第二陣、第三陣があり、それが山の斜面を登るような構造とあるが、斜面を登るようなら遠くからもわかるのではないだろうか、それともその先の斜面を覆い隠すほど第一陣が高くつらねられていた？…と。また、信長のライバルたちは、次々と信長に仕える僧堯照の妖術で命を奪われていくという設定。信長と光秀は不老不死なのかというぐらい年を取らず、周囲もそれを不思議に思う設定。宣教師に「黙示録」の内容を聞いて比叡山を焼き討ちにした。そういった数々の設定の妙をたのしむのもまた一興。そしてもう一つのアントナン・アルトー「ヘリオガバルスあるいは戴冠せるアナーキスト」成立史にもなっているという仕掛け。◆ヘリオガバルス: あるいは戴冠せるアナーキスト (河出文庫)、藤巻一保「第六天魔王信長」（学研M文庫）、定方晟「須弥山と極楽」（講談社現代新書）あたりは読んでみたいと思った。◆新潮文庫版読了。
 | 岩波書店 発売日 : 2023-05-01 |
巻頭の宇野伸浩「初期グローバル化としてのモンゴル帝国の成立・展開」が個人的には特に教えられること多く。チンギス・カンがケレイト王国の宮廷に出入りしていたころにすでにムスリムの臣下を得て、イスラーム教の文化や文物を知った可能性があること。1206年に成立したモンゴル帝国は、ケレイト王国を土台として成立した可能性が強いこと。チンギス・カンの建国に始まったモンゴル帝国は、13世紀後半に四つの国家に分裂したとされるが、ただし、大元ウルスのカアンが帝国のリーダーとしての権威を維持していたこと。モンゴルの抗争にカラ・キタイ国が介入し、金朝に対してモンゴル諸部族を敵対させようとした証拠はないこと。モンゴル帝国が多民族、多宗教の国家として成立した要因を解明するために、モンゴル帝国のプロトタイプをカラ・キタイ国に求められないこと、など。その他、松田論文での帝国の中央区分のこと。個人的に追っているアニゴについて中村論文で追えたこと。川口論文で、名実ともにチャガタイ・ウルスからティムール朝へと変わったのは、ハンを置かなくなったティムール晩年以降のことと考えるべきであること、など。参考文献にもさまざまあたってみたい。
 | 思潮社 発売日 : |
澤田直「フェルナンド・ペソア伝」読了を機に手に取る。主にオクタビオ・パスのペソアロンが読みたかったのだけど、--------ペソアの世界は此岸でもなく彼岸でもない。非在という言葉で彼を定義できるのではないか。仮りに不在によってある流動的な状態を、現前が姿を隠して非在が何か—現存するものがもはやそこになく恐らく、存在するであろうと思われるものが僅かに顔を覗かせる瞬間—-を予告する状態を考えるとしての話だがp.132（オクタビオ・パス）--------それに引きずられるように、タブッキのペソア論にも手をのばし、--------カエイロの作品はペソアの行った唯一の肯定であると。カエイロは太陽であり、彼のまわりをレイスとカンポスとペソア自身が回っている。彼ら全員のなかに、否定と非現実のかけらがある。レイスは形式を、カンポスは感覚を、ペソアは象徴を信じている。カエイロは何も信じない。存在しているのだ」。（タブッキ）p.138--------そこから、ペソアと異名者たちの詩へと手をのばしていった。個人的に、詩歌が身体に入ってこなくなってしまった身には、ヴェンダース監督「リスボン物語」でのファーストインパクトからの余韻でペソアを追い続けているのだけど。おそらく異名者たちとペソアの詩を読み分けることができるかといえば、できないだろうと思う。だが、二度ほどながめた中で、特にカエイロの詩には心惹かれるものがあった。◆森羅万象の唯一の隠された意味は/いかなる隠れた意味もないということ◆わたしが死んでから 伝記を書くひとがいても/これほど簡単なことはない/ふたつの日付があるだけ生まれた日と死んだ日/ふたつに挟まれた日々や出来事はすべてわたしのものだ◆しかし世界について考えはしない/考えることは理解しないことだから....../世界は考えられるようにはできていない
植生がまばらなところでないと成り立たない。日本のような密生しているところでは難しい。弱点は「気候変動自体に伴って年輪データと気候の定量的関係性が生物学的に変化する」可能性。寒冷地での樹木の成長因子が、気温から、温暖化によって降水量になったりした場合。
「チンギス・カン勃興期の1200年前後に冷涼期を確認できる」という説は、もとの論文にあたると成立しないのでは、という指摘。
 | 本の雑誌社 発売日 : 2023-05-25 |
aruをひらいたあかしゆかさん目当てで手に取る。開店までの道のりと二拠点生活しながらの運営について。選ばれた一冊が僕のマリ「常識のない喫茶店」なのもなんだかうれしくなってくる。全体を見渡すと、書店員・編集者・出版社など出版関係の経験者の割合の方が多いのかな。中には全くの未経験から、という方もいらっしゃったけど。各々の抱える、出版・書店に関する問題意識にも触れることができて。新刊書店は再版制ゆえ薄利なのは明白。それをどう粗利の高い業態と組み合わせたり、仕入れを工夫したりということになりがちだが、肚をすえて新刊だけを扱い、おかしいのは薄利で成り立たない仕組みだと指摘する方も。また、それぞれの店主があげてくれた一冊も興味深く。辻山良雄「本屋、はじめました」、虫明亜呂無「女の足指と電話機」、「読んでいない本について堂々と語る方法」、内沼晋太郎「これからの本屋読本」あたりは手にとってみたい。◆私にとって読書とは「反抗」だ。本を読み、ふさわしい言葉を得ることで世間一般の共通理解や現実の人間関係と一定の距離を取ることができ、それらから離れた場所に自らを立たせることができる。世界を識ることで既存の自分から脱皮することができる。p.241-242(BOOKSライデン)◆ショウペンハウエルの「他人の頭で考える読書」は、読み手は自身の頭の中で答えをだすべき、ということを言いたかったのでは（冒険研究所書店）というのはなるほど、と。
 | 中央公論新社 発売日 : 2022-01-20 |
自分の建てた家で、血のつながった姉妹と暮らすシングルマザーの正子。「世間」の物差しでしか人を見ず、そこからはずれた存在は「かわいそう」と見下す姉衿子。自分は社会のルールを守って生きているんだから、守らず生きている人は攻撃してルールを守らせるのが当然という妹あぐり。彼女らと暮らし、対話を重ねていく中で、自分の考えとは相容れない思いがつのり、血の繋がってる姉妹に出て行ってもらい、血の繋がっていないけど気の合う友人の百夜とあぐりと一緒に住み、「姉妹になろう！」と、そしてなってしまうストーリー。途中、ストーリーというよりも思考実験につきあっているような気になるところもあったけれど、視点は興味深かかった。同じことを男がしてもそうは言われないのでは。道徳的に生きたい人は、自分がそう生きればいい（人に押し付けるのは違う）。自分の意志で結婚や離婚ができるんだから、家族だって選べてもいい。血が繋がっているからといって好意のやりとりを強制されると感じなくてもいい。お金のやりとりをするときにリラックスできる関係になりたい、と。◆偽物の姉妹で、喫茶店を開くんです。血の繋がりも戸籍も気にしないで、姉妹として社会に関わっていこう、っていうインスタレーションなんですよp.248
 | 小学館 発売日 : 1993-11-01 |
「哀しみの貴公子」さんがおすすめしてたのに興味を惹かれ。今となっては、大昔、アサヒスーパードライのCMに出てたなあてのと、落合陽一氏の父なんだなというイメージしかなかったが。なかなかにマッチョ。男性誌に連載だからか、おれはスゲぇ、オイルマネーで億かせいだ、ケンカもつよかった、女にも次から次へとモテたという語りからの今の日本は、日本人は…という語り。なかなかに破天荒。30年以上前の本だけど。国際情勢に浪花節-センチメンタルは通用しない。悪い意味での平等社会。あたりは今もそうかな、と。◆負けたけどよくやったな、なんて日本人だけのメンタリティ。◆不安だから寂しいからとそこから逃げるな。寂しさも悲しさも人生の重要なスパイス◆世間などというものは、困ったときに助けてくれるわけでもなく、悲しいときに泣いてくれるわけでもない。そんなものにふりまわされるな。◆人生というのはギャンブル。世界はでっかいカジノ。金はチップにすぎない。それを少しぐらい貯め込んでも意味がない。チップは回すものだ◆ゴッド・イズ・ラブ。すなわち神は愛です。
え？銀杏15個食べたらだめなの？一抹の不安が八抹の不安に…そしてまたまた登場の新キャラ一抹の不安の不穏さ。電球がパーンとなって閃光弾はわたしも食らったことあるなあ…。
 | KADOKAWA/角川書店 発売日 : 2016-06-18 |
専業主婦の冬乃。その夫の職場の後輩川崎。二人の視点で進んでいく物語は、自分になんか何もできないという思いを抱いたふたりが、仕事や周囲の人間関係を経て、自信を取り戻していく物語。そして、血がつながっているからといって家族が助けてくれるわけではない、むしろ憎しみ合ったり、傷つけたり、血がつながっていない他人が助けてくれた、血がつながってなくても家族以上になれる、という物語なのかな、と思った。個人的に、最近読んだ山崎ナオコーラ「ニセ姉妹」に影響されてるのかもしれないけれど。一直線ではなく、紆余曲折を経ての物語。◆「いいな」と「いい気なもんだ」で揺れ動く気持ち◆菫と一緒にカフェをやることに決めてから、私の中で明らかに何かが動き始めていた。凪いでいた海にさざ波がたち、やがて大きなうねりになる予感がしていた。p.127◆自己評価が低すぎるのって、高すぎるのと同じくらい鼻もちならないのかもって最近気が付いたんです(冬乃)p.329
ヤシロカゼ mayu 二人展「亡霊」を観にギャラリー犬養へ。作者二人による亡霊についての解釈とエッセイ。それがなんだかわからなくても何かを好きと思う子供心を取り戻すには絵がおすすめというヤシロさん。絵は自分の感情をとどめておくためで、そこに他人は介在しない、けれどなぜみてもらいたいかはわからないとmayuさん。
抽象画家夜白風さんの作品集。昨年の春、創世スクエアで、「白い花」て絵とその絵を小さなカードにしたものが売られていて、なんとはなしに心惹かれてカードのほうを買って、いまも会社の机にかざっています。今回の二人展では、個人的に「青雲の霧氷」がいちばん響いてきました。なぜかはわからないけど、心惹かれるので繰り返しながめてしまう。言葉にならないものが絵で表現されて、それを言葉にならずに受け止めている。
 | 秋田書店 発売日 : 2023-08-16 |
撮影中に倒れたうみ子。PFFへのエントリー。海を主人公にした映画を先に撮られた悔しさ。PFF受賞作を観に海と金沢へ。そして海を主人公に撮りたいと告げるところまで。
 | 講談社 発売日 : 2023-08-23 |
取引先に頼まれたコスプレしての売り子。黒瀬の誕生日を祝う真白の心遣い。真白兄の職場見学。よく人を見て炎上を阻止した呉須のファインプレー。などなど、この巻も読み応えあり。ハイチーズのかわりに、社畜か！みたいなひとことを連呼する真白と黒瀬のシーンには笑ってしまった。
 | 青土社 発売日 : 2023-06-28 |
さまざまな視点から奇書を取扱った特集。各種コンクリートの打撃音だけを集めてページ毎に再生できる本とか、みてみたかったなあ。「書物の再魔術化はいかに可能か」なんてテーマがでてくる鼎談とか。「奇書を解説する動画」を運営する三崎律日による『亞書』の出版意図の解説（のちに国会図書館は出版社に返金を求めたようだけど）。ろうそくの科学のファラデーが実は好奇心あふれる製本職人だった。などなど。ギレルモ・デル・トロ創作ノート驚異の部屋」DU BOOKS 2014、春日武彦「私家版精神医学事典」河出書房、「超人 高山宏のつくりかた」、鳥井真平「論文海賊版サイト、日本の違法ダウンロード720万件 5年で5倍超」毎日新聞 2023.6.6、六角弘「怪文書」光文社 2001年あたりは手に取りたくなった。◆あと、「政治的に相容れなかったフアン・ドミンゴ・ペロンの四六年の大統領就任からほどなくして、公営市場の家畜検査員へと事実上の格下げを被りみずから職を辞すまでの九年間、彼はそのミゲル・カネ図書館に路面電車で通勤しながら、「伝奇集」1944や「アレフ」1949、「続審問」1952に収められることになる文章を書いた。」(p.292)あたりから、手持ちのボルヘスを再読したくなった。
 | KADOKAWA 発売日 : 2006-11-23 |
上下巻、読了。神は実在するのか、実在するとして神の意図とは。われわれは単なるシミュレーションではないのか。おおがかりな仕掛けで壮大な思想を語る。神に対しての仮説にはおおいにうなづく。ヨブ記の解釈のあたりは個人的には出色。世界は分けてもわからない（福岡伸一）を地でいくようなさまざまな事象の統合ぶりには唸る。腕のあるSF作家の面目躍如か。ちょくちょく目の辺りにするのは、信じていたことが嘘だと暴かれても、それがどうしたの？と真実に目を背け、自分の信じたいことだけを真実人たちの姿。「神の教えと人間としてのモラルが食い違ったら、人間としてのモラルを優先すべきよ。もし神が「殺せ」と命じたら、逆らうべきなのよ。そうでしょ？だったら最初から神の教えなんか必要ない。「人間として正しく生きよう」と言えばいいだけのことじゃない？」(下巻p.358)
 | KADOKAWA 発売日 : 2022-08-25 |
文豪や現代作家たちの食にまつわるエッセイをやわらかな絵で紹介。森茉莉の「シュウクリイム」に感化されて「ドリンクバァ」と表記してみてエレガントさを味わい。森茉莉がその後没落しちゃったというのは初めて知った。ずっとエレガントに暮らしていたのかと。一度「贅沢貧乏」に挫折した身としては、「貧乏サヴァラン」あたりから再挑戦してみたい。他に、「三島由紀夫レター教室」、三島由紀夫「女神」も手に取りたく。角田光代が「今日もごちそうさまでした」で見せた、嫌いな食べ物の克服っぷりも気になる。内田百�里呂海箸△襪瓦箸肪�者に影響を与えている模様。
 | 講談社 発売日 : 2023-06-15 |
最近時代小説も歴史小説も、史実とフィクションの割合が違うだけで同じ方向のものかと思い始め。また時代物を手に取る中高年男性の気持ちってこんな感じなのかな、と慮りながら読み進め。妻に先立たれ、息子も亡くし、息子の嫁からの思いに気付きつつも、日々の事件に処し、五十近くの小禄の役人としての日々をすごす庄左衛門の日々。「ちがう生き方があったなどというのは錯覚で、今いるおのれだけがまことなのだろう」(p.201) 「人などと申すは、しょせん生きているだけで誰かのさまたげとなるもの」 「されど、ときには助けとなることもできましょう…均して平らなら、それで上等」(p.288)といったあたりが共感を呼ぶのかなあ、と。また志穂の父から庄左衛門への「半分おしつけさせていただこうと参上した次第」といったあたりの機微が味わい深いなと思いつつ。
 | 新潮社 発売日 : 2013-11-28 |
姉百合江とその姪小夜子の目から語られる三世代の物語。ある程度のところから諦念で流されて生きていくことに性ががあった姉百合江と、どんな時も力強く我を通さねば気が済まない妹の里実。彼女らのしたたかでたくましく、業の深い、けど土壇場では自分の気持ちに正直な生き様。それを取り巻くどうしようもない環境と、つかの間の幸せと、あまりにもあまりにもクズな身の処し方な人々の群像と、その中でも手を差し伸べてくれた幾ばくかの人と。中でも高城の造形の救われなさと云ったら…。それら全てを含めての圧巻な物語。すべてが繋がっていき。◆いつかまた関係が修復できるという無意識な甘えに支えられ、姉妹はいつまでも姉妹だったp.61◆妹の言う通りだったかもしれない。不幸も幸福も長くは続かない。p.313◆告白って、ただの確認作業だと思うわけ。本人が気づいてるかどうかはわからないけど、自分が許されてるかどうか確かめたいんじゃないかな。p.374
 | 岩波書店 発売日 : 2023-01-27 |
個人的な興味関心からすると、オスマン帝国の系譜意識の話、自らの王朝をどこにつなげてどういった層にアピールしたかったのか、というのを知ることができたのが収穫。◆林論文での、「オスマン王家が明確に辿れる出自をもたないことは現代の目からは明らかだが、創造された系譜の上では、権威あるトルコ系オグズ族の血統が主張された」「トルコ部族系の血筋や神権的な聖性、あるいは「戦うスルタン」の主張は後景に退き、イスラム的なカリフの主張が前面に」「オスマン帝国の一七世紀を「立憲主義」とする主張もある」という視点は興味深く。また、あまり意識してなかったが、国力の一端を示すと思われる人口について「16世紀後半ムガル帝国はデカン征服以前で1億-1.45億人、オスマン帝国は2200万人、サファヴィー帝国は1000万人程度と見積もられている」というのは、もしオスマン帝国とムガル帝国が正面からぶつかりあったらもしかして…と思いを馳せてしまった。上野論文は、イスラム優位のもとでのある程度の自由を享受していたイメージのオスマン帝国治下のキリスト教徒が、自分たちもシャリーア法廷を利用することで、教会法では得られない権利を行使するケースがあったことを示してくれた。近藤論文は、多民族多宗教の帝国的側面をもつサファヴィー朝が、シーア派帝国として常に臣民をシーア派化することに力を注ぐという帝国としては特異な志向をもっていたことを示し。小笠原論文では、「１５世紀以降のオスマン王家の年代記では、オスマン王家はオグズ族のカユ氏族に属するという説が主張された。（略）支配の正統性アピール（略）１６世紀諸頭には定着」(エサウ説の放棄、ヤペテ説採用から「オスマン王家は系譜操作によって、オグズの王たる地位を獲得することに成功したが、王権を神与のものとすることには失敗したのである」「公正な統治を実現するならば、カリフはクライシュ族出身でなくとも構わない、オスマン帝国君主はカリフたりうる存在であるという主張が１６世紀中葉に出現」といった視点が興味深かった。ただ主張は主張としてそれはどこまであまねく受け入れられたのだろうか、という思いも抱いた。
| 発売日 : |
シャンティブックスでzine「わが庭園巡礼記」刊行記念トークイベントがあったので参加し、その場でzineも購入。野崎さんといえば「野崎が行く！」シリーズの旅行記もののイメージだったけど、その後、競馬、ジャーマン・ロックときて、今度は庭園巡礼記！内容は、冒頭にごあいさつのようなヒントのような一文があるほかはすべてモノクロの庭園写真。どこのともキャプションもなく。著者いわく、さまざまなことを感じた風景を共有したい、それについて途中まで書いたけど、解釈はひとそれぞれと掲載はしなかったとのこと。けれど、会場に建築と庭園に造形深い方がいて、ぜひ次はそれを読みたいですと熱く語っていて、もしかして続編には？と。庭園に行くとさまざまな情報を受け取ってしまい忙しいとのこと。一例としては、この別れ道は人生の別れ道を暗示しているのだろうか…など。見立ての一種だろうか。こちらの灯籠はやさしいかんじ、こちらの灯籠は厳しいかんじ、というのも。これは見た際の感覚か。それでいくと個人的には、湖面に写った硬質なビルが、さざなみでゆらめいている対照がぐっときました。あとは、夜の枯れ草が、打ち上げ花火のように見える一枚、間隔をもって立ち並ぶ立木が格子のように風景をさえぎってまるで閉じ込められてる場所から外を眺めてるような一枚が印象に残りました。さあ、あとは「札幌 庭園」で検索して自分でものりだしてみよう！と思ってます。
 | KADOKAWA 発売日 : |
タイトルの珍妙さに、思わずなんだこれはと手にとってしまった一冊。ストリートの描写--レコード屋でバイトしてたら、ホルストの「惑星」をかけてくれ、と頼み、ふところから指揮棒を出してアルバム一枚分指揮してから、ありがとう、と言って去るお客の話が好き---から、アラーキーをはじめとしたアート界隈のひとびとの訪問記---インテリアが中国風になっていてチャーシューメンみたい、ってどんなかんじかな---あと、三島剛さんの家にいくとメニューが出てくる（ビール、コーラ、お茶など）ってなかなかないなあ、と。そしていまとなってはおみかけしないオールドファッションなエロマンガ、エロルポルタージュも。ノーバン喫茶、のぞき劇場、などなど。
 | 講談社 発売日 : 2023-08-18 |
完結。どちらかというとあだち充「タッチ」式というか。そこにたどりついて、あとは後日談というか。アメリアの前進する意志がここまで導いたのだなあと。ゴールドラッシュ、49ersについては、もう少し調べたい思い。
 | 講談社 発売日 : 2023-08-23 |
妨害してくる落語の前座、講談ききにきてくれた女子高生が、席亭の孫と知るが、そのことで彼女が講談をきくのを反対されたり。姉弟子の夫と食事を共にしたり。間に合わなかったと落ち込むより、間に合ったものを大事にしな、ということばにグッと。
| 保育社 発売日 : |
シャンティブックスでの野崎卓也さんのzine刊行記念トークイベントで紹介されてたので、イベント直後に思わず買ってしまった一冊。50年前のインド。インドのそこにあるたたずまい。強烈な存在感。◆牛糞で装飾された壁、それを燃料とし。1950年以来憲法はカーストを否定するが、ひとびとのちょっとした仕草でそれがまだ廃れてないことを知り。死は生の出発点だからと、あるがままに死を受け入れている様を目の当たりにし。ラジャラニ寺には、大リンガ(男根)とヨーニ(女陰)があり、信仰され。カーリー像が異彩を放つ。◆1971年国勢調査では宗教人口はヒンドゥー82.7% イスラム11.2% ...仏教0.7%なのだとか。今は仏教、どれぐらいの割合なのだろうか。◆スリランカで余生を送るには。八万ドル（二千万円）を預金すれば、外国人でも住む所、食べること一切死ぬまで面倒を見るという制度がある…とあったが、さすがにもう今はないのだろうか。
 | 幻冬舎 発売日 : 2020-02-06 |
山��ナオコーラ「ニセ姉妹」つながりで。作中人物のセリフにも出てきて、巻末で作者とも対談してたので気になって、このエッセイを。阿佐ヶ谷の六畳一間で暮らす二人の悲喜交々。このエッセイが言いたくても言えない時の救い主になってたのかしら？！というくらい赤裸々に共に暮らす相手への想いや不満が綴られ。それがあまり嫌な感じじゃなくて。二人の書いた恋愛小説も不思議な味わいがあって好きでした。そして最後はまさかの、隣の部屋が空くミラクルで、お隣さん同士になるとは！あと阿佐ヶ谷、人情に熱いなあ。餃子の差し入れが美味しすぎて、手料理振る舞うロケなのに、美味しすぎる！と差し入ればかり食べられたり、夜にランニングしてたらTwitterに「阿佐ヶ谷姉妹がウォーキングしてた」とかかれたり、巻き尺で寸法測ってたらエアコンの電源の差し込み口に巻き尺が接触し、ちょっと感電しかけたり、時折みほさんのお姫様気質が出ると「だってみほさまですから」とお互い納得したり。読み終えてほっこり。
 | 北海道新聞社 発売日 : 2023-04-08 |
著者2冊目のエッセイ。最初は各所に書いたエッセイ、次が著者がママ、美人でお客がそれ目当てで来るくらい歌の上手いチーママとのダイアローグという体の「妄想radio」。巻末には歴代担当によるなんの忖度もない座談会と盛りだくさん。印象に残ったのは、「悲しみよりも観察を優先」「53歳でサックス始め」（自分明るくてあなたの書くの暗くてわからないという人へ）「いいですいいですイーデス・ハンソン」という。「共感は遅発性の感情」「マイベストは(カルーセル麻紀がモデルの)緋の河」といったあたり。姑さんの聴かせてくれた、とにかく相手によくしなさい、そしたら相手が頭をさげてくる、に見る業。
 | 白泉社 発売日 : 2023-08-29 |
二階堂視点からの零との対戦、島田開視点からの零との対戦前の独白を、あかりの商売っぷりがやわらかくはさみこんでいるかのような構成。二階堂と零の対局は「心友」って書いた扉がひらいてしまったかのようなふたりのいちゃいちゃぶりをもたらし。島田は島田で、なぜ自分の地位をおびやかすような若者たちの面倒を見てるのだろうと自問自答し、人間離れした強さをみせてきた零が人間になったように感じて、なら倒せるかと独白する黒さも見せて、と。巻末に「3月のライオンもいよいよ本当のラストスパートです」とあったので物語もあと二、三冊なのかな。
 | 岩波書店 発売日 : |
山本弘「神は沈黙せず」に影響されて手に取り、解説だけ読む。ヨブ記のテキストも錯綜し諸説あり、読みの幅も解釈の幅もひろいようだ。著者のオーソドックスな立場にたてば、「ヨブ記の主題は義人の苦難という問題」「ヨブの苦闘はルターの場合と同じく怒りの神の奥に恵みの神を発見することにあった」「神の故に神を信ずるのでなければ本当には神を信ずることにはならないのであり、そのために苦難が神から与えられるのであり」ということになるようで。信仰ならぬ身にはやはり受け入れがたい結論と思わざるを得ない。
 | 岩波書店 発売日 : 2006-10-05 |
読書室ポワロでふと見かけて。ポートレイト集。老境で撮られるか壮年期に撮られるか若き日に撮られるかで、だいぶ印象が違うだろうなあとは思いつつ。意外や聞かん気の強そうなトルーマン・カポーティ。しっとりした美しさのマリリン・モンローあたりが印象に。あとは、メシアンやオネゲルやストラヴィンスキーら、作曲家たちの肖像がみられて個人的にはよかった。
 | 晶文社 発売日 : 2020-07-14 |
坂口さんが病院をひらいて、そこに患者として来場者に演じてもらうワークショップという体で。◆自分の薬をつくる＝自分の日課をつくる、ということ。それには、「何かをつくる」こと。なんでもいいから、インプットをして、アウトプットしてみる。それは思いつきのままでいい。誰に見せてもいいし見せなくてもいいし、完成しなくてもいい。「自分に深刻になるな、作品に真剣になれ」（ホックニー）。企画書を書くのもいい。妄想でも良い。もちろん実現しなくてもいい。そうすれば、日々の悩みに囚われてとどまることなく、落ち込むことなく、だめなのは自分ではなく作品だ、とどーんとかまえていれば、と。声になっていないものを声にするのだ。やりたくないことはやらなくていいのだ。そんなふうにとらえました。何だか肩の荷がおりるというか、気が楽になりますよね。これはいい、と思い、自分でも読むの途中で止めて、オスマン帝国のスルタンを主人公に小説を書き出してみました。もちろん勢いだけで始めたのですぐに挫折。けれど、このメソッドはいい。明日もまた挑戦しようと思えて。◆南方熊楠コレクションのうちの一冊「南方マンダラ」の、中沢新一が書いた「解題 南方マンダラ」が無茶面白い、というのと、カフカの日記はいいぞ、とのことなので、この二冊は手にとってみたいと思いました。
 | 集英社 発売日 : 1999-03-19 |
UNTAPPED HOSTELのスタッフが選書していたのをseesaw booksで見かけたので気になっていた一冊。タイトルの「アマニタ・パンセリナ」は「テングタケ」の学名で毒キノコとのこと。睡眠薬、シャブ、アヘン、サボテン、咳止めシロップ、ハシシュ、大麻、ガマガエルなどなど、さまざまな薬物にまつわる話、ラリった話、それを使った人の話が集められたもの。こういうの読む自分って、自分では使ってみる心意気もないのに、その世界は垣間見てみたいといった意図で読んでてなんだかなとは思うけど、それでも気になるものは気になってしまい。麻薬とは「自失」、ラリっているということは、たぶん大脳新皮質のもたらす雑多な情報をとりのぞいて、獣の状態になること、といったあたりに目が吸い寄せられ。因縁にからめとられ、少しずつ姿かたちを変えながら、我々は時間の河を渡っていくのだ。死に向かってではない。生に向かってだ。(p.96)といった一節に心奪われたりする。サボテンやガマガエルとの顛末にややほっこりしたり、居候をたくさんかかえこんで明日はどっちだみたいな暮らしを送ってときの話とかがバキバキにキマってるなあと思ったり。薬やってぶっとんでやらかしたエピソードの数々に魅入られたり。「人がラリっている報告書を、なんのためにああいった美装本で出す必要があるのか。ワラ半紙でよろしいワラ半紙で」という罵倒に思わず笑ってしまったり。◆著者のほかの本も手に取りたいと思った→(1)「頭の中がカユいんだ」徳間文庫p.40(2)「なにわのアホぢから」講談社文庫p.92...桂べかことの対談所収(3)「今夜、そのすべてのバーで」…睡眠薬とアルコールで二ヶ月入院の事情◆
2023年08月03日
2023年07月に読んだ本
(0701・柴裕之 織田信雄・信孝 —権力継承をめぐる相剋のもとでの「きょうだい関係」— 『日本歴史』2023年1月号
0701・松下憲一 中華を生んだ遊牧民 講談社選書メチエ 図書館20230629受領
0701・詠坂 雄二 遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか? 光文社文庫 図書館20230629受領
0704・【再読】辺見庸 もの食う人びと 20230611
0705・笙野頼子三冠小説集 シャンティブックス20230629…「タイムスリップ・コンビナート」のみ読了
0705・今日は死ぬにはもってこいの日 図書館20230703受領
0705・岡倉天心 茶の本 青空文庫 20230504DL …若松英輔「悲しみの秘儀」、門井慶喜 神永美有シリーズ つながり
(0706・川尻こだまのただれた生活11 「未来の作画の話」他 kindle
0706・【再読】ロバート・ハリス エグザイルス・ギャング kindle
(0707・ヤマザキマリ とりみき プリニウス 12 kindle
0707・又吉直樹 東京百景 20230627
0708・磯部涼(編) 踊ってはいけない国、日本 シャンティブックス 20230507
0708・薩川昭夫 庵野秀明 シナリオ ラブ＆ポップ 20230625
(0708・鳥辺茜 北に恋する一週間Vol.1 第一話 北へ行く理由？ メロンブックス 20230708
(0708・麻生みこと 下足痕踏んじゃいました3
(0708・恩田陸原作 皇なつき漫画 蜜蜂と遠雷2
(0709・肋骨凹介 宙に参る 1-3
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(0709・佐藤優子 「読む」と「書く」 ライターのわたしがかたわらに置く11冊 文学フリマ札幌 20230709
(0709・竹部礼子 片づけエール 文学フリマ札幌 20230709
(0709・カフェバグダッド/比呂啓/じょいっこ Baklava Banzai deluxe 文学フリマ札幌 20230709
(0709・北18条文学 ケツ出し珈琲 文学フリマ札幌 20230709
(0709・ぽやん舎 ひみつ絵日記3 文学フリマ札幌 20230709
(0709・ぽやん舎 明日もすべてがありますように 文学フリマ札幌 20230709
(0709・トーチ社 三十路ン 文学フリマ札幌 20230709
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0710・バービー 本音の置き場所 図書館20230710受領
(0711・ラーメン大好き小泉さん11 kindle
0712・高森純一郎 沈黙の農夫 文学フリマ札幌 20230709
(0712・佐藤二葉 アンナ・コムネナ4 kindle 20230712
0713・やまてつ 本は読み方が9割 kindle 20230712…insta「you_hey_heeey」参照
(0713・【再読】ヤマザキマリ とりみき プリニウス 1-12 0712:1-3,0713:4-12
0714・香港ポップ・スター 20230714
(0715・木村清孝 華厳経入門 角川ソフィア文庫 図書館20230710受領…主に”第一章「華厳経」と現代”のみ。あとはざっと。
0715・植本一子 個人的な三月 -コロナジャーナル- 円錐書店 20230623
0715・山本幸久 展覧会いまだ準備中 中公文庫 20230708…4年目美術館学芸員主人公の長編（目黒考二「息子たちよ」）
0716・門井慶喜 パラドックス実践 雄弁学園の教師たち 20230701
0717・別冊ele-king 坂本龍一追悼号 日本のサカモト 20230715
(0717・あかねさす柘榴の都 3
(0717・本田 病める惑星より愛をこめて 3
(0717・二ノ宮知子 七ツ屋志のぶの宝石匣 19
(0717・近藤聡乃 ニューヨークで考え中 4
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(0717・カフェバグダッド アンソロジーvol.2 文学フリマ札幌
(0717・ビールの放課後 創刊号+有明号 「ペア」を超えろ！ビールと料理を合わせる基礎理論 文学フリマ札幌
(0717・菅野彰佐々木禎子尼野ゆたか金丸マキ藤沢チヒロ いざ、昼酒 文学フリマ札幌
(0717・比呂啓（著）しょうこ（絵） この広い世界を知るための10皿（中東編） 文学フリマ札幌
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0719・アントニオ猪木 闘魂レシピ 図書館20230719受領
0719・小飼弾 本を遊ぶ 働くほど負ける時代の読書術 (朝日文庫) 20230625
0720・どうして書くの?―穂村弘対談集 20230618借り
0721・門井慶喜 この世にひとつの本 20230712Amazon発注0719受領
(0721・紛争でしたら八田まで13
0722・アントニオ猪木 猪木詩集「馬鹿になれ」2000年 図書館
0722・彼岸の図書館 ぼくたちの「移住」のかたち 図書館20230719受領
0722・金井真紀 日本に住んでる世界の人びと 図書情報館
(0722・木村ゆり Saudade 図書情報館
0723・藤代三郎 戒厳令下のチンチロリン 情報センター出版局 シャンティブックス 20230722
0723・筒井康隆 ビアンカ・オーバースタディ 図書館20230723受領
0723・最相葉月 辛口サイショーの人生案内 シーソーブックス20230723
(0723・月刊まちの日々38 シーソーブックス20230723
0724・おてあげ 第一号 シーソーブックス 20230723
0726・高橋源一郎 文学がこんなにわかっていいのかしら シャンティブックス 20230629
0726・【再読】ヤジと民主主義 図書館20230723受領
0726・鷹野律子 メトロリスボン 図書館20230726受領
(0726・This is tababooks 2013-2023 シーソーブックス
0727・金井真紀(文と絵) 聞き書き世界のサッカー民 スタジアムに転がる愛と差別と移民のはなし 図書館20230726受領
0728・【再読】サンキュータツオ ヘンな論文
(0729・タスクオーナ（米澤穂信原作） 氷菓 15
0730・【再読】氷室冴子 多恵子ガール kindle
(0730・へんなものみっけ9
0730・高野秀行 イラク水滸伝 20230729
(booklogなし 0731・【再読】氷室冴子 北里マドンナ kindle
(0730・ヒロ・ヒライ 蒸留術とイスラム錬金術 kindle
(0730・ヒロ・ヒライ、中西悠綺 魔術的マトリクスの誘惑: イスラムとヨーロッパの神秘主義とオカルト諸学 kindle
0701・松下憲一 中華を生んだ遊牧民 講談社選書メチエ 図書館20230629受領
0701・詠坂 雄二 遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか? 光文社文庫 図書館20230629受領
0704・【再読】辺見庸 もの食う人びと 20230611
0705・笙野頼子三冠小説集 シャンティブックス20230629…「タイムスリップ・コンビナート」のみ読了
0705・今日は死ぬにはもってこいの日 図書館20230703受領
0705・岡倉天心 茶の本 青空文庫 20230504DL …若松英輔「悲しみの秘儀」、門井慶喜 神永美有シリーズ つながり
(0706・川尻こだまのただれた生活11 「未来の作画の話」他 kindle
0706・【再読】ロバート・ハリス エグザイルス・ギャング kindle
(0707・ヤマザキマリ とりみき プリニウス 12 kindle
0707・又吉直樹 東京百景 20230627
0708・磯部涼(編) 踊ってはいけない国、日本 シャンティブックス 20230507
0708・薩川昭夫 庵野秀明 シナリオ ラブ＆ポップ 20230625
(0708・鳥辺茜 北に恋する一週間Vol.1 第一話 北へ行く理由？ メロンブックス 20230708
(0708・麻生みこと 下足痕踏んじゃいました3
(0708・恩田陸原作 皇なつき漫画 蜜蜂と遠雷2
(0709・肋骨凹介 宙に参る 1-3
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(0709・佐藤優子 「読む」と「書く」 ライターのわたしがかたわらに置く11冊 文学フリマ札幌 20230709
(0709・竹部礼子 片づけエール 文学フリマ札幌 20230709
(0709・カフェバグダッド/比呂啓/じょいっこ Baklava Banzai deluxe 文学フリマ札幌 20230709
(0709・北18条文学 ケツ出し珈琲 文学フリマ札幌 20230709
(0709・ぽやん舎 ひみつ絵日記3 文学フリマ札幌 20230709
(0709・ぽやん舎 明日もすべてがありますように 文学フリマ札幌 20230709
(0709・トーチ社 三十路ン 文学フリマ札幌 20230709
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0710・バービー 本音の置き場所 図書館20230710受領
(0711・ラーメン大好き小泉さん11 kindle
0712・高森純一郎 沈黙の農夫 文学フリマ札幌 20230709
(0712・佐藤二葉 アンナ・コムネナ4 kindle 20230712
0713・やまてつ 本は読み方が9割 kindle 20230712…insta「you_hey_heeey」参照
(0713・【再読】ヤマザキマリ とりみき プリニウス 1-12 0712:1-3,0713:4-12
0714・香港ポップ・スター 20230714
(0715・木村清孝 華厳経入門 角川ソフィア文庫 図書館20230710受領…主に”第一章「華厳経」と現代”のみ。あとはざっと。
0715・植本一子 個人的な三月 -コロナジャーナル- 円錐書店 20230623
0715・山本幸久 展覧会いまだ準備中 中公文庫 20230708…4年目美術館学芸員主人公の長編（目黒考二「息子たちよ」）
0716・門井慶喜 パラドックス実践 雄弁学園の教師たち 20230701
0717・別冊ele-king 坂本龍一追悼号 日本のサカモト 20230715
(0717・あかねさす柘榴の都 3
(0717・本田 病める惑星より愛をこめて 3
(0717・二ノ宮知子 七ツ屋志のぶの宝石匣 19
(0717・近藤聡乃 ニューヨークで考え中 4
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(0717・カフェバグダッド アンソロジーvol.2 文学フリマ札幌
(0717・ビールの放課後 創刊号+有明号 「ペア」を超えろ！ビールと料理を合わせる基礎理論 文学フリマ札幌
(0717・菅野彰佐々木禎子尼野ゆたか金丸マキ藤沢チヒロ いざ、昼酒 文学フリマ札幌
(0717・比呂啓（著）しょうこ（絵） この広い世界を知るための10皿（中東編） 文学フリマ札幌
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0719・アントニオ猪木 闘魂レシピ 図書館20230719受領
0719・小飼弾 本を遊ぶ 働くほど負ける時代の読書術 (朝日文庫) 20230625
0720・どうして書くの?―穂村弘対談集 20230618借り
0721・門井慶喜 この世にひとつの本 20230712Amazon発注0719受領
(0721・紛争でしたら八田まで13
0722・アントニオ猪木 猪木詩集「馬鹿になれ」2000年 図書館
0722・彼岸の図書館 ぼくたちの「移住」のかたち 図書館20230719受領
0722・金井真紀 日本に住んでる世界の人びと 図書情報館
(0722・木村ゆり Saudade 図書情報館
0723・藤代三郎 戒厳令下のチンチロリン 情報センター出版局 シャンティブックス 20230722
0723・筒井康隆 ビアンカ・オーバースタディ 図書館20230723受領
0723・最相葉月 辛口サイショーの人生案内 シーソーブックス20230723
(0723・月刊まちの日々38 シーソーブックス20230723
0724・おてあげ 第一号 シーソーブックス 20230723
0726・高橋源一郎 文学がこんなにわかっていいのかしら シャンティブックス 20230629
0726・【再読】ヤジと民主主義 図書館20230723受領
0726・鷹野律子 メトロリスボン 図書館20230726受領
(0726・This is tababooks 2013-2023 シーソーブックス
0727・金井真紀(文と絵) 聞き書き世界のサッカー民 スタジアムに転がる愛と差別と移民のはなし 図書館20230726受領
0728・【再読】サンキュータツオ ヘンな論文
(0729・タスクオーナ（米澤穂信原作） 氷菓 15
0730・【再読】氷室冴子 多恵子ガール kindle
(0730・へんなものみっけ9
0730・高野秀行 イラク水滸伝 20230729
(booklogなし 0731・【再読】氷室冴子 北里マドンナ kindle
(0730・ヒロ・ヒライ 蒸留術とイスラム錬金術 kindle
(0730・ヒロ・ヒライ、中西悠綺 魔術的マトリクスの誘惑: イスラムとヨーロッパの神秘主義とオカルト諸学 kindle
 | 講談社 発売日 : 2023-05-15 |
拓跋鮮卑、北魏、洛陽…と聴くと、現代日本とは遠くかけはなれてると思ってしまいがちだけど、日本にも受け継がれてる制度や都城があって、つながりを感じさせ。遊牧集団と民族の違い。部族解散とは何だったのか。国史事件とは。中国文化への傾倒が語られるが実態は。大代大魏の国号はどう使い分けられたか。皇帝としての顔だけではおさめきれず、部族長、遊牧民リーダー、現世にあらわれた仏、道教の神としての側面もあわせもったこと。今の中国文化とされるものに遊牧民の文化が流れ込んで融合したこと、などなど、教わること多く。◆特に興味深かったのは、墓群で埋葬されてる遺体の頭の方向やいっしょに埋葬された動物の像から、どんな文化集団が葬られていたのかわかるのでは、というところ。◆ちょっとくだけたところでは、ラノベ仕立てで「転生したら洛陽だった件」で一節書いてたり（めっちゃ「洛陽伽藍記」読みたくなる！）、賄賂もらいまくりのクサレ鎮都大将とか、ラオウのイメージはふさわしくなかったか、「我が生涯に一片の悔いなし」と言ったか、みたいな北斗の拳ネタ。遺跡に実際に立ち、高歓に思いを馳せたところ、などが気になったところ。
 | 光文社 発売日 : 2014-02-13 |
きっかけはアメトークの本屋で読書芸人。そこで紹介されてたのは詠坂雄二「5A73」だったんだけど、まずは手近に借りてこれるものから試してみるかとこの本を。普段ミステリ読みでない身には、ずっと翻弄され惹きつけられ、読み終えた後も最後の署名と年表見比べて、え？いつの間に？と思ったり。特徴のない書店員と思われてた男が80人以上殺した殺人犯とわかり、そのうちの２つの殺人に焦点を当て、彼の考えや行動、周囲の人を追っていく構成。無関心で厭世的なようでいて、時に本質をついてくるような佐藤誠の言葉に惹かれるところもあり。ねじれにねじれて最後は…といったストーリー運びにもしびれ、もう何冊か読みたくなってきた。というか、書かないところが美学なんだろうけど、佐藤誠関連でもう二冊くらい書けそうな余韻が残されてる。
清洲会議で争われたのは、信長後継ではなく、三法師を後継に据えた上での「名代」を信雄にするか信孝にするかだった、というのは微妙な違いのようでだいぶ違う。その二人のどちらがなっても対立して家中混乱すると見込まれ、羽柴柴田惟住池田の宿老の合議制と決まった。それが敗れて、信雄信孝兄弟をそれぞれ「名代」にかついだ宿老たちが衝突し、信雄と信雄をかついだ秀吉が残った、と。信雄のその後に関しては柴裕之「織田信雄の改易と出家」 (『日本歴史』 八五九、二〇一九年)が詳しそう。もし、兄弟仲が悪くなければ、という仮定に意味はないが思いが至ってしまう。
 | 角川書店 発売日 : 1997-06-20 |
何年ぶりかの再読。きっかけは斎藤美奈子「趣味は読書」か「読者は踊る」。ただ、そこでとりあげられてたみたく、本当に危ないことはしない、プロの危機察知能力で避けている、とまでは思わなかった。本文には出てこなかったがあとがきで、アフリカ編をコーディネート、同行したのが、一志治夫「前へ、前へ―あるテレビジャーナリスト32歳の死」でとりあげられてた沼沢均氏だったことは、あとがきにたどり着くまで失念していた。ときどき問題意識が空回りしてるな、と思うところはあったけれど、バングラデッシュ、ベトナム、ソマリア、ウガンダ、旧ユーゴ、チェルノブイリ、韓国…さまざまな国をめぐり、ダッカの残飯、ドイツの囚人食、チェルノブイリの放射能汚染食品、ソマリアPKO各国軍部隊の携帯食、インジェラ、エイズの村のマトケ…などなどが著者の舌と胃袋を打つところを垣間見、考えさせられるテーマが目白押しだった。
 | めるくまーる 発売日 : 1995-09-01 |
坂本龍一「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」で、アメリカ・インディアンの哲学をまとめたものと紹介されていて手に取る。表題にもなってる、「今日は死ぬのにもってこいの日だ/生きているものすべてが、わたしと呼吸を合わせている。」(p.39)からはじまる一節にはやはりグッとくる。他にも「わたしは醜いものを眺めながら、そこに美しいものを見る」「「不信の時」というものがある。「沈黙を守るべき時間」というものがあるのだ」「たぶん、君自身になるってことは/泣き叫ぶ嵐の中に、君独りいるってことだ、/そのとき君が求めるすべては/人の焚き火に手をかざすことだけ。(p.57)」「ここでの人生があまりにつらくなったとき/鷲となって天空を飛翔して/いかに地球がちっぽけかを/上から見ることができるからだ(p.79)」あたりがよかった。(ここまで2023/07/05読了分)◆(2010/03/13読了分)老年とは、雨が降らなくても 緑の丘がいかに豊かに見えたかを憶えていること／それ以外の何ものでもないのだと。藤原智美『検索バカ』でこの本が紹介されていて興味を持ち手に取る。
 | 発売日 : 2012-09-27 |
若松英輔「悲しみの秘儀」、門井慶喜 神永美有シリーズで取り上げられていて、手に取る。◆茶室の調子を破る一点の色もなく、物のリズムをそこなうそよとの音もなく、調和を乱す一指の動きもなく、四囲の統一を破る一言も発せず、すべての行動を単純に自然に行なう――こういうのがすなわち茶の湯の目的であった。◆ 真の美はただ「不完全」を心の中に完成する人によってのみ見いだされる。◆ われわれは心の安定を保とうとしてはよろめき、水平線上に浮かぶ雲にことごとく暴風雨の前兆を見る。しかしながら、永遠に向かって押し寄せる波濤のうねりの中に、喜びと美しさが存している。◆といったあたりが印象に。
 | 河出書房新社 発売日 : 2010-08-03 |
「タイムスリップ・コンビナート」のみ読了。夢うつつが、とりとめないを通って、過去の回想を引き出して、取り留めなく終わる感。謎の電話とマグロとの思い出に導かれ。海芝浦と沖縄会館が強い印象を起こすけれど。
 | 東京書籍 発売日 : 1998-09-24 |
再読。すがすがしいまでの放浪者っぷり、自由人っぷり、モテっぷり、ギャンブラーぶり。やりたいことだけを志して楽しんで生きる様を語ってくれて。ただ、自分が感じたみじめな思いも、みっともないところも、迷いや逡巡や後悔も性癖もさらけだしてくれてるから、それほど嫌味になることもなく。アヌスに鞭でエクスタシー感じたエピソードが強烈だったなあ。彼のもとにつどう友人や恋人たち、家族も含めて強烈な個性が勢ぞろい。◆「人生とはX、つまりわからないところで始まり、わからないところで終わる。その中でどれだけ暴れ回るか、それが勝負なんだ」（ブランドン・キャバラリ）◆僕はすべてものに意味などなくていいと思っている。たまに見つかるからいいのだ。◆
おせち、なにかとギュッとしがち。百均で良さげ！と思ったら500円とかあるある！鼻詰まりを脇圧迫で解消、ほんとかな？てあたりが気になり。たぶん思いつき新キャラの生実感ピエロ、起床報告太郎には笑ってしまった。あと、一部だけカラーなのなんでだろ。
 | 新潮社 発売日 : 2023-07-07 |
ついに完結。プリニウスの最期に作者間でそんなバトルがあったとは。違いが面白い。既存キャラ勢揃いだったけど、忘れてるキャラとかもいたので、読み直したい。◆「我々人間は地球によって生かされているに過ぎない」「だが…私はそんな人間に生まれてきて楽しかったぞ...」◆(追記)ヤマザキマリ とりみき「プリニウス」1-12巻を再読(2023/07/13)。やはり細かい所、登場人物の来歴とか忘れてることも多かったので12巻の味わいがグッと増しました。エウクレスが若き日の恋を叶えていたこととか、彼らの子（ある方のご落胤？）と小プリニウスが仲よくなっていたり。◆エウレクスがどこで拾われ、恋に迷い、水道技師ミラベラとどこで知り合い、フェリクスが付き従い、セネカやヴェスパシアヌスと交わったかよくわかる。珍奇なもの含めた万物への関心も。◆ポンペイの地震。ポッパエアの暗躍。ブッルスの死オクタヴィアの死。漂流船との遭遇。孤児の仲間入り。アフリカへの旅。…通して読むと12巻の味わいがグッと増した！！
 | 河出書房新社 発売日 : 2012-08-25 |
法律へのアプローチもいろいろ。「ドアだけ閉めときゃばれないさ」という面従腹背から、その法律こそが憲法違反です！とぶったぎるという手段まで。「それでいけるんなら行ってもいい（略）「闘争の手段をえり好みしてはいけない」。無論、可能な限り暴力は除外して。」(p.127)という言葉にグッとくる。また、「自分ではない他者は潰されていい」と言ってその先のことを想像しなければ、、自分も潰されていい、の道を舗装しているのと同じということに目を向けるべき、と。
アイスランド好き、きたとりっぷ好きとしては見逃せない一品！今回は、前哨戦。アイスランドはヨーロッパの左上。北海道とほぼ同じ面積、旭川と周囲の街あわせたのと同じ人口。なんでしょっちゅう北海道にかえる？もっと北に行けば理由がはっきりする？調べてみると、宿が少ない、やること多い！航空券は取った！てとこまで。つづきがたのしみ。
 | 一般書籍 発売日 : 2023-06-29 |
コンクールは一次予選から二次予選まで。各コンテスタントの関係性が語られ、演奏が描かれ。読んでみて思ったのは、絵で語る演奏のすごさの描写。音楽の素養のない身には、言葉で文学的、哲学的、美学的な描写をされてすごいんだと納得するより術はないのだけど、ちょっともとかしく。それはこの作品に限ったことではないけれど。この巻では、「過去の神童」扱いされてた栄伝が、他のコンテスタントの音楽をすくすく吸収して、自分の音楽にしていく過程に注目。
 | 白泉社 発売日 : 2023-07-05 |
財閥オーナーの孫を追う工藤・宙コンビ。ようやく捕まえたあとの政治的なやりとりと、あらわれた凄腕の先輩との関係性に着目。物語をドライブしていきそうな。
 | KADOKAWA 発売日 : 2020-04-10 |
これでもかとこれでもかと自意識が自意識を通って自意識をこじらせて疾走続ける感。だけど巻末のピースがほとんど登場しないことの説明と、相方綾部へのちょっとやそっとでは揺るがなそうな肚のすわった思いには感銘。◆全百景のなかでは、「二十七 高円寺の風景」が一番好き。◆あと「七十六 池尻大橋の小さな部屋」の最後の、水やでと言ってコーラを渡して、それをのんだ彼女がのどを両手でかきむしり、二人で笑い続けたシーンがとてもやさしくて。
 | 幻冬舎 発売日 : |
庵野秀明をとりあげた評論を読んで（宇野常寛だったかな？）観たくなり、けど、その前に、村上龍の原作を読んで、その後にシナリオを読んで、と遠回りを続けている。25年前の渋谷は本当に同じ日本だったのだろうか、いまの日本と地続きの、といった感。◆世の中のものは、必ず終わっていく。人の気持ちも終わっていく◆でも私は、消えてしまうもの、うつろいゆくものの、今、をつなぎとめておきたいと思う◆
#文学フリマで買った本 バクラバ好きには見逃せない一冊！バクラバ起源論争、都内でバクラバ食べれる店、お国によるバクラバの違いなど興味深いトピック目白押し。トルコのは、シロップ漬けが多めなのが特徴で他国のより格段に甘いらしい。けど個人的には、ファーストインプレッションがトルコのこめかみが痛くなるほどの甘いバクラバだったので、これ読んで、次に取り寄せる時もトルコのもの取り寄せたい、という思いを強くしました。トレンドとしては、いま、冷やしバクラバというムーブがあるのだとか。あとアイス乗せて食べたりとかさまざまなバリエーションが紹介されてて興味をそそられる。銀座に出店したバクラバ専門店ナーディル・ギュルのオーナーへのインタビューも興味深い話してんこ盛り。桜バクラバとか日本向けにいろいろアレンジもやってみたい。バクラバの起源も研究してて来年に本も出されるとか（読みたい！けどトルコ語Onlyかな？）。料理長みたいな方が、まず逆さにして半分噛んで味わってみてての、やってみたくなった。（わたくし、その昔、何度か新宿にあったトルコ食材屋さんでバクラバ買ったり取り寄せたりしたことあり。調べたら、Interfoodてお店でもうないみたいで、バクラバは、ユルドゥズ・パレスて箱に書いてました)。
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#文学フリマで買った本 30歳になったのを機に、20代てどうだった？30代どうしたい？というのを、庭師、医師、写真家、映像作家、アニメ制作、サウンドクリエイター、海事会社、コンサルなど様々な職業やバックグラウンドを持つ方たちが語った一冊。自分が30になった時、何してたろ？何考えてたろ？というのに思いを馳せた一冊でした。家業をついでUターンしてまだまだ経験が足りない、医師として最期を迎える患者と寄り添うには、生き急いでるとよく言われ起業して稼いで、それをゆるめて札幌に移住して…て方の話が特に印象に。
#文学フリマで買った本 おわりにかえてで書かれる「よく読むものがよく書く」を地でいくように、読むこと、書くことに資する本が紹介された一冊。本の内容を紹介し、どこが響いたか教えてくれつつ、著者の過去の経験も垣間見せてくれて。個人的には、「辛口サイショーの人生案内」、読んでみたくなりました。「ヨーロッパ退屈日記」「世界はフムフムで満ちている」は既読だったので、着目したところの違いを楽しんだり。あと秘密のビンに入ってた、他社への怒りは…で始まる言葉はぶっささってきました。◆あと、craft zineだからオーダーメイドがきいたんでしょうか。縦に、ななめに、さまざまに文が自由にレイアウトされていて楽しかったです。特に「森」が水色の文字になってて、そのまわりに木木木木木…てむらがってるとことか。そして、水の入ったコップに浮かぶ数字…フォントなの？イラストじゃないの？？じゃあもしかして本文全部この文字にできたりするの？？？そんなことできるなら読んでみたい！！！！と想像が広がったりしました。
| 発売日 : |
#文学フリマで買った本 片づけエール。片づけられない勢にとっては、なんて魅惑的なタイトル！そしてライター佐藤優子さんが、この本読んで、今が一番片付いている！というのをお見かけして、購入。もうね、わらすが（藁にもすがるる思い）。きっと全部をキチキチにやろうとしても力尽きるだろうから、なかでも"「せっかく」はやめる"、"「好き」の変化を受け入れる"を、まずやってみようかと思ったのでした。
| 発売日 : |
#文学フリマで買った本 今回は、ブッダのように弟子たちに囲まれて死をむかえんとする今野、戦時中に南洋でイカダに乗せられ太平洋の真ん中ででくわす今野と小西、そしてくすぶり続ける今野の三本立て。今野のいつもの傍若無人、パワフルぶりは健在。そして、師事しているようで貪欲に今野をエンタメとして消費しようとする弟子たちの熱量、狂気とそのとばっちりをくらった小西。くすぶる今野が「死のうと思う」に、それがいい、と即答で同意してしまう小西。今際の際も肉チャーを食べる今野。といったあたりが強烈な印象を残しました。
#文学フリマで買った本 なぜ、何の根拠もなく、明日もすべてあると思ってしまうのか。そうじゃないと、不安で不安でいてもたってもいられなくなるからかなあ。ぎゅっと目をつぶって、自分の部屋のドアをあければ、誰かが出迎えてくれる幻を見て、街に出れば誰もわかってくれないとはかなむけど、最後は、明日もすべてがありますようにと祈ることができて、と。
| 発売日 : |
#文学フリマで買った本 ひっこしたのである、の一連のイラストが好き。ものをすてるのもせいとんするのも大嫌いなウサギちゃんに同感です。あと、2023年をふりかえろう、も好きでした。あのちいさいスペースでもシャンティブックスさんだとうかがいしれて。
 | リイド社 発売日 : 2020-02-27 |
1-3巻まで読了。夫の遺骨を届けに地球までの宇宙旅行にでたソラと息子の宙二郎。専業主婦として描かれてると思いきや、元は高度な宇宙船技術者で、ありえない呪文としか言えない発声で、宇宙船のシステムをハッキングできたりして、それを追う組織があったりして…と。旅路で出会う旧友や人々とのやりとりも個性的で楽しく。
 | 講談社 発売日 : 2020-11-06 |
なぜか思い立って手に取ってしまった、バービーの本。栗山の町おこししてる記事見てから気になってて。わりとトップスピードで本音を語ってるなあという読後感。厳しくも的を得つつ、自分が言ったことがあとからブーメランでかえってきたことも隠さずつづられていて。「たくさんの多面を持つことは、色々な人の考えに寄り添えること、さまざまな角度の視点を持つこと」「人としての自分の身体をありのままに愛す」「地方を変えるにはお金の前に「信用」がないと交渉のテーブルにもつけない」てあたりが印象に。
| 発売日 : |
#文学フリマで買った本 スリランカに生まれ育ち、外交官となり、シンガポールに留学し、ネパールに赴任し、スリランカに戻り、地に足のついた開発を志す外交官が何を考え、何を志してきたかだなんて、自分には考えもつかないことだった。だからこそ、その設定とそこから導き出される問題意識に引き寄せられる。◆主人公の原点は、幼い頃の遠足で訪れたキャンディの茶畑。茶こそスリランカの誇る産品と教師が誇るのに、そこで働く女性たちは見た目も貧しく、貧困からくる視野の狭さから無関心で、自分たちには目もくれない。赴任先のネパールでも同じようなシーンに立ち会うことに…それが本書のタイトルにもなっている。◆はっきりと分担されている富裕層と貧困層。仏教を信じるシンハラ人国家と教育されるが、ヒンドゥー教を信じるタミル人との内戦を抱え。港湾開発などの大規模な開発を高利の借款で実施したことの歪み。豊かなシンガポールとの対比。内戦と開発という同様の課題を抱えたネパールとの共通点と相違。スリランカ外交官とネパール官僚の静かな、しかし言外の丁々発止。読みどころは多々あれど、最後の、小さいけど農民のためになるような地に足のついた開発に希望が託されるところに一筋の光を感じた。◆また、外に発信されるその国の姿は、その国が発信したいと思う姿、だからこそ実際にその国を歩いてみることが大事。その国ではポピュラーだけど外に見えてこない、大切にされてるものが見えてくるかもしれないのだから。といったあたりが印象に。個人的に、20年以上前に、街路図だけを頼りに、トルコのイスタンブルやエディルネの観光地ではない街路を歩き回った日々のことをかすかに思い出した。
 | 竹書房 発売日 : 2023-07-11 |
今回は夏休みの自由研究がラーメンの味変！千葉のいきづらい場所三大ラーメン！仙台の自宅改装系ラーメンの圧倒的自宅感！最上の居心地1！そして長崎ちゃんぽんめぐり！大阪ワンダーランド!(ソフトクリームのつっこまれた辛味噌ラーメン！茶碗蒸しラーメン！出汁の氷を削り入れて、仕上げに焼きおにぎりつっこんで冷や汁風ラーメン！) 魅惑的なラーメンの数々に、食べてみたいの思いをおさえきれない。◆存在しない家族との思い出を夢想してしまいました…のセリフは、「存在しない家族」なのか、「家族との思い出」が存在しないのか。つい思いを馳せてしまった。◆高校生なのに、思い立ったら、平日でも長崎に飛んでしまう行動力と経済力。やはり謎すぎる。
 | 星海社 発売日 : 2023-07-12 |
アンナの場を読んでの古典の朗唱、言葉を武器に人の心を揺さぶる術を目の当たりにしたブリュエンニオスは、彼女を慕う者と同時に、彼女を憎む者も多く生み出すことを危惧する。そして弟ヨハネスへハンガリーから妻ピロシュカ=エイレーネーが。ヨハネスもアンナも好きすぎて！というキャラに。そして子をみごもり身動きがとれないアンナは、女子教育の仕事をソフィアに託し、ソフィアは人を説得することにやりがいを見出していくのであった、と。1000年以上昔の制限された範囲だけれども、その中で女性ができることを最大限やりきろうというアンナに目が奪われてしまう。
 | 発売日 : 2023-02-25 |
一つの本から1から３個吸収できればよしとする。潔い。ついついよくばって、付箋立てまくって、抜書きして、ブクログに感想書いて、感想書く時間が億劫になってきて、という身にはとても刺さる。人に話す機会のある本は話すようにしてるけど。「読書の全技術」は読んでみたい。あと著者が読書にハマるきっかけとなった「イチロー思考」も。そしてなんとこの本、電子書籍なのを活かしてこの後も進化するとのこと。そこも楽しみ。
 | シネマハウス 発売日 : 1997-02-01 |
1994年に1ヶ月上海、北京にいたことがあり、その時にアジアンポップスにはまってしまい、帰国後に「アジアNビート」でさらにはまってしまい。1997年発行のこの本を見つけてなつかしくて買ってしまった。フェイ・ウォンの中で激推しされてる一曲、張学友「一千個傷心的理由」、張国栄「無心睡眠」、蘇慧倫「Lemon Tree」あたりを追加で聞きたくなりました。金城武の解説も詳細でありがたく。カレン・モクも注目。ウォン・カーウァイが監督したワールドのCMのフィルムもあるとのことでチェックしてみたい。
 | 中央公論新社 発売日 : 2015-12-19 |
大学では応援団員、現在学芸員として4年目の主人公が、東京郊外の架空の中規模美術館で、素人館長、個性的過ぎる先輩学芸員3名、ボクシングをやる運送会社の女性、応援団の先輩などに囲まれ、日々雑務をこなしつつ、頼まれごとの地元作家の羊を描いた作品が大きな位置を締めていき…と。目黒考二「息子たちよ」で紹介されていて、猛然と読みたくなった一冊。好きなことを仕事にしたが、その先好きなことを出来ていない思い。好きなことを仕事にできなかったものの思い。好きなことを仕事にして、そのことに没頭すると寝食も忘れてしまう人の存在。生きている実感をしっかり味わえているかの自問。右往左往しつつ振り回されつつも、これをやりたい！という展示をようやく見つけて、そこへ向かう道筋が見えたところまで。美術館が舞台というのに心惹かれた。ちょっとキャラがマンガチックな人がちらほらというのが気になったところもあったけれど、おおむね楽しく読めた。◆「自分がいいと思ったものを世に知らしめるのが、きみの役目ではないのかね」p.86◆「ものの価値はひとそれぞれが判断するわけで、わかるわからないっていうもんじゃないと思います」p.200
 | KADOKAWA/角川学芸出版 発売日 : 2015-01-24 |
新井満の小説が好きで、そこから森敦の小説に導かれ、二人の対談で森敦作品の世界のベースのひとつに「華厳経」があると知り手にとってみたくなり。しかし、入門でも壮大な宗教的歌劇とも紹介される本編のほうは歯ごたえがありすぎ、主に第一章"「華厳経」と現代"のみ読んであとはざっと。１「存在するものは、すべて心の表れである」、２「小が大であり、一つがすべてである」、3「初めが終わりである」という特徴的な考えだけおさえて。
主に2020年3月の日記。コロナ禍が本格化する兆しを見せ始めた頃の。仕事に、プライベートに、政府や自治体の不十分なコロナ対策にふりまわされ怒り困惑する様が率直に描かれ、家族や多くの時間を過ごすパートナーとの関係性にも影を落としていく。コロナに対する考え方の相違が大きな関係性の破綻へと向かったケースも散見したが、著者は、その覚悟で相手にぶつけて、それを相手が受け止めてくれて、踏みとどまった感。「家族最後の日」を読んだときも、ここまで正直に自分の思いを書いてしまって、周りの人との関係性は…と思ったけど、そのことについても巻末につづられている。◆「文化が真っ先に削られるって、地獄に向かっているのと同じだ。」(p.13)「ミツは…生まれてきただけで、お父さんとお母さんを救ったんじゃない？」(p.53)…11歳の娘さん大人すぎる！◆#近年稀に見るクソバカ内閣 という一文から始めるzine展やりたい、は実現したのだろうか。もしそうなら見てみたかったなあ。
 | 講談社 発売日 : 2013-01-16 |
雄弁術に力を入れてる、初等部から大学までそろえた雄弁学園。高等部に赴任してきた能勢は、初日から3人の生徒に3つの証明を求められ…というところから始まる、教師たちの悪戦苦闘が語られる連作短編集。プラトン「饗宴」岩波文庫360円で卒論50枚をでっちあげあとは麻雀にあけくれてた能勢が、学生時代の専攻はプラトン！ということで白羽の矢を立てられ、内実を言い出せず…というコミカルさ。しかし、どの教師たちも、火事場のクソ力というか、追い詰められて頭を高速回転させると一筋の答えが導き出される…その道筋は時に唐突に思えるケースもあった。ただ、雄弁術をどの科目よりも重視する学園という舞台設定は面白く、対話の醍醐味と危うさの両面を感じさせてくれるものだった。◆「謎というのは、解いた解かないの話にとどまるかぎり、永遠になぞなぞに過ぎぬであろう」p.304◆「実務の基本である」「目的から逆算して編み出した手段は、ただ編み出した手段よりも遥かに正答に近い」p.136
 | Pヴァイン 発売日 : 2023-07-13 |
デヴィッド・シルヴィアン、アルヴァ・ノト、クリスチャン・フェネス、テイラー・デュプリー、そして小山田圭吾。坂本龍一没後の共作者たちのロング・インタビューをたっぷりと読めたのが何よりもの収穫。そして巻末のディスコグラフィーが客観よりではなく思う存分に主観が込められたもので読み応えがあった。既発表曲を違った角度から紹介してくれてたり、知らなかった情報が得られて、またまた聴き返したい曲が増えてしまった。◆人類最大の過ちは国を作り出したことだと思うp.176◆音楽というのは平和な時じゃないと鳴らないんだ、音楽を鳴らすためには平和にしないとダメなんだp.65◆憎まれてまで、何でこんなことをしているのか気恥ずかしくて言いたくないけど、愛ですよ、愛。日本や、日本人への愛がなくなったら、ぼくなんかがこんなことわざわざ発言する必要はない。p.78(坂本龍一)◆最初に混乱を覚え、何かを理解しにくいと思ったら、それこそが最も重要なアートであるp.121(緊那羅デジラ)
| 発売日 : |
#文学フリマで買った本 をお借りして読みました。5つのシチュエーションで描かれる、女性1人の昼酒。モラハラ彼氏への訣別と仕切り直しの居酒屋昼酒。訪問介護の夜勤からのまわらない寿司屋での昼酒。失恋からの松屋で牛飯とビールからの公園でイケメンに介抱され。両親の次々の介護とそれを終えた後のワイン一杯十円の昼酒。セコマのシャンパンからのそれを持ち出しての公園でのアウトドア昼酒。失意からの復活を期したり、自分へのご褒美だったり。美味しいものを食べ、酔うことの歓び。
#文学フリマで買った本 をお借りして読みました。抹茶羊羹と箕面ビールw-ipaの組み合わせに心惹かれる。四者四様のビールとの出会いが語られているところもよき。ヒューガルデンホワイトがビール沼のターニングポイントなの、個人的にはわかる気がする。
#文学フリマで買った本 をお借りして読みました。カフェバグダットのブースで取扱ってたもの。ホムスもバクラヴァもバリエーションがあるなあ、それをまた東京と近郊で食べられるのうらやましいなあと思いつつながめてました。羊の臓物やら頭の肉を煮込んだクルド料理パチャ！ものすごく心惹かれる。またカルデア人、カルデア料理というのも初めて聞きました。
#文学フリマで買った本 をお借りして読みました。冒頭のサウジシャンパンに激しく心惹かれ。アップルジュースを炭酸で割って果物をたっぷり浮かべたもの。敬虔なムスリムのためのノンアルコール飲料。またサウジを初めとした中東各地でひろくノンアルコールビールが売られているというのは寡聞にして知らず。十条のクルド料理屋メソポタミアにはかけつけたくなりました（ドルマ！ブルグル！ジャジュク！）。
 | KADOKAWA 発売日 : 2023-07-14 |
その時の自分が決めたことだから、選択に後悔はしない、ナツの意外なタフさ。日本とグラナダ、両方を眺めてみて、その上で今自分がどこにいたいかを決め。みなの集まるバルのような居場所を作りたいと、まずはバルで働き出し…といったところでfin。どこにでもいけるから、どこにいくかは自分次第なのだと。あと、アルハンブラ物語の塔に閉じ込められた三人の王女の話、教訓がクヨクヨしないこととは。
 | 講談社 発売日 : 2023-07-13 |
橘次男の登場に、無防備な資産家夫人、バズル国での暗躍、顕定から乃和への大事な話に、それを話してくれないことを寂しく思うしのぶ。そして、楽器専門の質屋をやりくりする友人のドタバタもあり、な巻。
 | 亜紀書房 発売日 : 2023-07-07 |
仮住まいからの帰還、そして二匹の猫をお迎えしたこと。コロナ禍の盛り上がりと落ち着き、人々の反応もニューヨークと日本じゃ異なっていて。同じところに戻り、同じ時を、と思っても、人も場所も気持ちも変わってしまったりしていて、それでも日々過ごしていくのだ、ということを読んでて感じたりしました。
 | 秋田書店 発売日 : 2023-07-13 |
対立するふたつの芸能集団の息子たちデュコクとキキウの友情。まるでロミオとジュリエットのような。彼らを迫害する独裁者。彼らをともに併呑しようと目論むカジムと信者たち。共に逃げようとしたデュコクとキキウはひとりは悲命に倒れ、ひとりは芸能集団を滅し去る慟哭の雄叫びをあげ…という神話が語られる一幕。そう、ガイドが語った神話として。
 | 飛鳥新社 発売日 : |
zine「LEMON RICE」の料理する男子の紹介する料理本コーナーで見かけて気になり。おにぎりはその人の心を身体にいれるとか料理と精神みたいな話もインパクトあったけど、くわえて、貧しかった子供時代、ブラジル時代、なかなか肉も食べれなかったプロレスラー修行時代の話など、初めて聞く話が多く、印象に。また糖尿病との対峙も独特。インシュリンを打たず、激しい運動で回復。あるいはモンゴルで脂の浮いた羊の水煮でもてなされた時に、糖尿病で高カロリーなものを食べることにためらいを覚えたが、もてなしてくれる心に答えるためにだまって全部たいらげた話なども。
 | 朝日新聞出版 発売日 : 2018-04-06 |
最近更新されてないけど、その昔、読書blog「404 not found」はかなり熱狂して読んでいた記憶が。そんな弾さんが出してた読書本、見逃してたので手に取る。もっとも本人が言うごとく、すべて鵜呑みにするのではなく、批判的に読んで、取り入れたいところは取り入れて、と。◆本は空想のお供としては役に立つ、それ以上の実利を求めるのは、本に対してむしろ失礼◆昔好きだった本を読み返すのは、自分の変化を読む、自分を読むということ◆読んでばかりだと考えるほうにエネルギーが割けません◆あたりが印象に残る。◆山本弘の大作「神は沈黙せず」角川文庫、筒井康隆の書いたラノベ「ビアンカ・オーバースタディ」角川文庫あたりは手にとってみたくなる。余力があれば、数学系の大著にも手をだしてみたい。
 | 東京創元社 発売日 : 2015-12-12 |
印刷会社が舞台で、タイトルが「この世にひとつの本」と来たら、本好きとしては手に取らずにはいられないところ。ワンマンで傲慢な創業社長と頼りないと思われてる三男の二代目。史上最速の窓際族と呼ばれる東大卒の斜視編纂室員。社長の秘書にして愛人。社長が肝いりで支援している書道家。書道家の世話をする主婦。主要な人物はこれぐらいなのだけれど、話が進むにつれ、どんどん探偵役の三男への周囲の目がかわっていき、最後は…というところと、なるほど、そういわけで「この世にひとつの本」なのだ、という仕掛けが印刷、出版などの知識をかたむけつつ縦横に語られていて面白かった。時計の素材については、早い段階から、おそらくあれだろうな、という目星は読んでてついたのだけれど。活版への見方が変わるところもよかったなあ、と。この世にひとつの本になりたくないか、の問いに、複製可能な刊本でいい、いやむしろ組織の力でおおきくものごとを動かすには刊本であるほうがいいのだ、という対話も。◆書という芸術（略）いっぽうに字の意味があり、もういっぽうに読者の理解があるとしたら、そのあいだに進んで割りこみ、字そのものの姿かたちの鑑賞を激しく主張するのが書なんだからp.158◆芸術家を援助するというのは、要するに面目をつぶされるために金を出すということだ。恥がこわくてパトロンができるかp.237◆滅びるものこそ美しいなんて、素人の甘ったれた思いこみにすぎんp.284◆
 | 大和書房 発売日 : 2022-11-19 |
モルディブの無人島が余ってるから刑務所の島、ゴミ収集の島、その他さまざまな専用の島、という使い方。アイスランドは人口少ないから職業掛け持ちの人が多いという視点。さべつをやめてぷるこぎを食べよう、の横断幕への笑みと涙。AI語学教材を販売するアイスランド人の「文化を理解するためには、言語を学ぶ必要がある。だからこれは世界平和に貢献する事業だと思っています」という言葉。内モンゴル自治区出身女性の宝石商からケーキ屋さんまでの波乱万丈。東ティモール出身レオさんの「過ぎたことは過ぎたこと。振り返るな」。といったあたりがとくに印象に◆語られた、ミャンマー国軍、コンゴ民主共和国の警察の仕打ちには言葉もでなかった。◆個人的には、メキシコ出身の長谷川ニナさんの「異文化には、まじめに接しなければいけない」「異国趣味は植民地主義の裏返し。異文化をおもちゃにして弄んではいけない」は重く響いた。
 | 幻冬舎 発売日 : 2019-08-01 |
サウダージというからには、ポルトガル、ブラジルといったポルトガル語圏だけかと思いきや、モロッコからブルガリア、アルバニアなど東欧からトルコ、スリランカまで幅広く。
 | 角川書店 発売日 : 2000-10-04 |
アントニオ猪木「闘魂レシピ」つながりで。有名な「迷わず行けよ/行けばわかるさ」って猪木オリジナルだと思ってたら一休禅師が出典と記されており。しかし、さらに調べると清沢哲夫氏の本が出典なのかな。冒頭の、とことん馬鹿になってとことん恥をかいて裸になれば、本当の自分が見えてくるといったあたりのインパクト。自然に「元気ですかーっ！」と語りかけるも、自然は何もいわず、ほほえみかえしてくれたくだり。ソマリアで次々と飢えて死ぬ人が運ばれていくのを目の当たりにして地球にバカヤローと叫ぶところ。東スポの人を食ったところが好き。最後が「冷蔵庫の納豆たべちゃってごめんね」でしめられる詩のキュートさが好きでした。
 | 講談社 発売日 : 2023-07-21 |
台湾編の完結（支配者がさまざまに変わって来た中での外省人、本省人、それぞれの苦悩）。南アの白人と黒人の貧富の格差、対立、白人内でもイギリス系とオランダ系の格差、そしてゲーム大会へのスポンサード、情報の共有などが取り上げられ。最後は、バーニングマン！その昔読んだ「トーキョー・リアルライフ」という東京に暮らす若者にインタビューして月の出費とか明らかにしてくれた本があって、その中の一人が必ず毎年バーニングマンに行くっていうのを見て知ったなあ、というのを思い出した。日本語でバーニングマンをテーマにした本とか出てこないかなあ。
 | 夕書房 発売日 : 2019-10-03 |
帯の「「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」という「実験」のはじまりとこれから、という言葉に惹かれて。人文系私設図書館というワードも気になるし、名前がメキシコのプロレスというあたりもインパクトあり。ただ、もっ図書館の運営の話を期待していたのだけど、それよりも著者の都市より地方、経済成長より共生、公共とは、学ぶとは、どう生きるかという話が前面に出てきていた。それはそれで興味深かったけど。奈良県東吉野村で、自宅を開放して運営しているルチャ・リブロでやりたいのは、図書館・寺子屋・研究所の機能で、図書館で思考し、寺子屋で実践し、研究所でさらに専門的に研究したい、という方向性とのこと。発行しているzineや書籍にもあたってみたい、関西にいくことがあったら足をのばしてみたい、という思いに。
 | ミシマ社 発売日 : 2015-12-08 |
文学フリマで買ったzine、佐藤優子「「読む」と「書く」」で紹介されてて、俄然読みたくなった一冊。身近ではかえって相談しづらいことも、公開されるけど匿名ということでかえって相談しやすいこともある、と。"辛口"とあるけれども、往々にして全う、時に相談者の相談内容を整理していみるとあまりに甘えてたり、あまりに自分だけ高いところに置いてたりすると、ビシーッということはあれども。そんなサイショーさんの回答。個人的には、「あなたは恋に落ちたのです。罪悪感に苛まれればよいのです。弁解無用です」「さて、あなたは何をお望みですか。心のあり方というなら、心の中は自由ですとしかいいようがありません」「前を向くとは自分の人生を生きることです」「あなたには絶望が足りません」あたりが印象に残りました。もう相談者自身が回答を出している「相手は変わらないだろうから自分を変えようという、あなたの心の持ち方に感服しました。人生案内など必要ない。」といったあたりも。ノンフィクション「絶対音感」でデビューされてから、もう何冊も最相葉月作品を読んできたけれど（「なんといふ空」は辛い時にはげまされる宝物のような一冊）、取材を重ねる中で、様々な声を聞き、対話してきたことで、こういった回答が導き出されたのかなあ、と思いを馳せつつ。
「北書店の本棚」を買って読んだ身には、その発行を記念したフリーペーパーが出てたと知れば読まずにはいられない。記憶の本棚で、まだ見ぬ、そしてこれからも見ることのない記憶のなかの本屋の話を垣間見。TSUTAYAがすべての本屋をなぎたおしていったあとにTSUTAYAも滅びてしまった町の索莫。あと、南陀楼綾繁さんの塚田旅館の話、よかったなあ。
 | 星海社 発売日 : 2012-08-17 |
小飼弾「本を遊ぶ」で筒井康隆が書いたラノベがある！というのを知り手にとってみた次第。ラノベ読みではないので、ラノベのお作法もわからず、ラノベかメタラノベかという比較もできないのだけれど、ハチャメチャなのはわかった。高校一の美少女にして生物部でウニの生殖の研究をしていたビアンカが、人で研究できないかと思いつき…。途中からパラサイト・イブもかくやといった感のバイオSFか？はたまた未来人は出てくるわ、わりとみんな驚かないわ、ビアンカぜんぜんぶれないわで。最後は続編を予感させるけどそれは余人にまかせたい、と。やぶれかぶれさを楽しんだといったところ。
 | 角川書店 発売日 : |
50年前の日本が舞台だけど隔世の感！あるいは異国の話？と思ってしまった。なにしろ会社に仕事じゃなくてギャンブルしにきてるみたいなエピソードのオンパレード。おそくきて中抜けして早上がり、ギャンブルで徹夜徹夜は当たり前、そしてすきあらば集ってギャンブル旅にでかける。競馬に麻雀にチンチロリン。すさまじいギャンブル欲と熱量となにがしかの愛嬌を感じた。「競馬は馬券を適中させなくても面白いギャンブル」「自分がサイコロを振るのは一瞬でも、念力の闘いのほうは休む暇がないのである。」といったあたりに藤代さん（目黒さん）の楽しみ方の一端が垣間見える。角川文庫版ではなく、情報センター出版局版で読了。肩書が、リリカル・ライター藤代三郎となってるところもまた味わい深い。
| 発売日 : |
「本のまわりの困りごと」てサブタイトル。困ってる人文編集者の会（こまへん）発行。というのを観て、面白そう！と思いそのままレジへ。著者様対応マニュアル、仕入れ担当の大変さ、Webのブックサイトも淘汰の時代をむかえて大変、クラブ弾圧反対の社会運動の思い出など、興味深く拝読。◆また、2022年読んでよかった本対談は、次から次へと興味津々なものが出てきて困りました…読んでるほうの困りごとも増えたパターン(笑)。滝口悠生「水平線」、鈴木涼美 上野千鶴子「往復書簡 限界から始まる」「「イタコ」の誕生」、山口智子「LISTEN.」。三省堂の大塚さんの朝日出版社のウェブ連載「何を読んでも何かを思い出す」。「本は人生のおやつです！！」という名前の書店。あたりが気になる。◆こまへん日記は、子育てしながらの編集稼業のたいへんさがつたわってきました。そして、最近読んだサンキュータツオ「ヘンな論文」角川文庫読みおえたら、謝辞に発行人のひとり角川の麻田さんの名前をおみかけして勝手にシンクロニシティをかんじてました。
| ころから 発売日 : 2022-11-07 |
(2023/07/26読了分)映画「ヤジと民主主義」を観たのを機に再読。警察の中に治安維持のためなら多少の違法行為は許されるという風潮。警察は間違ってました、ごめんなさいというしかないのに、決して非を認めず謝罪しない、だから引き伸ばす、世の中が忘れるのを待つ。誰かの権利が奪われることに無関心な社会は、権力の暴走を許すことにつながるのでは。動画という強力な証拠がポイント。組織犯罪多岐作の法律化は警察の権限強化でもあった。法的な根拠がないまま監視やプライバシー侵害につながるものが広がる。といったあたりが今回読んで目にとまった。高裁判決はだいぶ後退したいけれども、行く末を注視したい。原田宏二「警察捜査の正体」（講談社現代新書）を手に取りたくなった。「ジャーナリズムとは報じられたくないことを報じることだ。それ以外のものは広報に過ぎない」（ジョージ・オーウェル）(2023/03/11読了分)事件の経過はそれなりに追ってきたつもりだった。ヤジポイの会のzineも読んだりして。判決は原告のほぼ全面勝訴。ただ、街宣車のほうに向かっていった行為は静止されても仕方ないとされた、など判決の詳細を読めたのは収穫。これだけ動画という動かぬ証拠を出されながら、上告した警察には疑問。また裁判の過程でも、動画を示されても覚えてない、動画に残されてないことをあった、言われていたなど強弁してきてて非常に腹立たしい。大杉さん、桃井さんの声をあげた勇気には感服。同じことが自分にできたかと思うとむずかしい。元警察官の「元々警察っていう組織の中に治安維持のためであれば、多少のやりすぎとか、違法なことをしても許されるんじゃないのという風潮があるんですよ 」(p.195)「警察が既成事実を積み重ねているうちに、国民の権利がわからないところで危険にさらされている部分があるんだよっていうことを皆さんわかってないんじゃないでしょうかね。(p.201)というコメントには背筋が寒くなる。「権力者にとっては抗議の声は不都合なものというか、やっぱり怖いものなのだと改めて思った。（略）声を上げる権利を守るというのが、人が尊厳を持って生きるうえで大切だと思った(p.167)、あるいはいちばん最後の「 勇気を出して声を上げることの大切さを改めて私は教えられた。（略）今日もどこかで誰かが、声を上げている。民主主義とは、このような声によって、ようやくもちこたえられている。」という言葉をかみしめつつ。デモとかヤジとかじゃ何も変わらないと思っていた過去の自分の認識を恥ずかしく思いつつ。
 | 大福書林 発売日 : 2021-03-14 |
半分はリスボンの地下鉄のタイトルや装飾を、半分はリスボンやその他のポルトガルの町のタイルを。もう見てるだけで楽しくてうっとりするような、本当に各駅まわってみたくなるような一冊。アンゴラのルアンダ出身のグラシンダ・カンデイアスがアラビア文字、ファドと闘牛のモチーフで描いたMartim Moniz駅の内装、シンプルな幾何学文様、ハッとさせられる鮮やかさのタイルで多くの駅をかざるマリア・ケイル作品がとても印象にのこった。
栗原康さんが飲んでた時に、書いてた本のことで、右翼が襲撃に来ちゃいますかね、とtababooksの宮原さんに言ったら、そんなやつはこうだ、とカラのワインボトルをぶんぶんふりまわしてたてエピソードが好きです。手に取りたくなった一冊は小川たまか「「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を」。また自分を投影させたと語る「フェアな関係」を書いた枡兼綾さんが感想読んで、そうか...傲慢で苛烈で友達になれないか…とへこむシーンが印象に。
 | 福武書店 発売日 : |
尾辻克彦のそんな同じことばかりつづけていて、面白いのか、という問いかけ。詩の同人誌「ト、ヲ」の限定読者という試み。ひとりひとり手書きの読者名が書かれた一冊一冊の同人誌。推理の結果予想を出すのではなく、自分の好みの結果を出すために、必要なデータを探してくるって太い野郎だ、と書かれる井崎脩五郎。そしてドラクエ�靴飽貍呂鬚気い燭箸海蹇△覆�なか読み応えあった。「我々に必要なのは「善意」にみちた「物語」ではなく、底が抜け、その抜けた底から冷たい風が吹き上がる「ゲーム」そのものなのだ」
 | カンゼン 発売日 : 2022-11-14 |
現地で、あるいはコロナ禍のせいでオンラインで、サッカーを応援する人々にインタビューした作品。サッカー応援を切り口に見た世界とは。◆スポーツするのに制限、スポーツ観戦も制限、デモすれば最悪殺されるイランの女性抑圧。メキシコ、ファレスで七発の銃弾撃ち込まれ右目を失明したた男性のそれでも命があるから。スウェーデン8部から1部までかけあがったクルドのクラブチーム。息子たちがスタジアムへ行くときは私も覚悟してるというフィレンツェのマンマ。わざと車椅子が人目につくように大変な思いをして公共機関でスタジアムへ向かう鹿島サポーター。ほとんどのチームが呪術師を雇ってるという南アのクラブチーム。親友が5人いて5人ともコリンチャンスファンという敵対するチームのファン。◆生きる糧、だなんて一言で言うのもはばかられるくらい、時に命懸け、時に人生を大きく左右するケースも見受けられ。そこでは、抑圧、差別、治安の悪さ、それでもたくましく、したたかに生きる人たちの姿があった、ということをうかがい知ることができた。
 | KADOKAWA 発売日 : 2023-07-25 |
ひさびさの氷菓、新作。最初の２話は、状況を見通し、逡巡を見抜き、その上でやるべきこと、道筋を示して行動の指針を出した先輩が眩しくて。最後の１話は、奉太郎の山月記の感想文が興味深く
 | 集英社 発売日 : 1985-01-10 |
(2023/07/30読了分)「氷室冴子をリレーする」を観て、読み返したくなり再読。中学生、高校生という地平から遠く離れたところからながめると、子供子供しているというか、でもその純情でまっすぐで、そう好きとなるとまっすぐに、嫉妬するときもまっすぐに、最終的にはどちらの気持ちとも向き合って、といったところが青春というかなんというか、という読後感。しょっちゅう平手打ちしたり、涙にほだされてキスしてしまったり。続きの北里マドンナも読み返したくなった。(2019/09/21読了分)シリーズ前作「なぎさボーイ」のストーリーを多恵子視点で、なぎさボーイよりもっと先まで描く。こちらの多恵子は、なぎさボーイでのしっかりぶりとは違い、どこまでも思い悩み、揺れ動き、けれど、最後は決然と思いを伝える一幕。
 | 文藝春秋 発売日 : 2023-07-26 |
イラクのアフワールと呼ばれる湿地帯に興味を持ち、イラク方言のアラビア語をならって、現地へGO！ってあいかわらずの好奇心と行動力だなあ、という導入部。ただただ現地のことを知りたい、だったものが、行くうちに、舟大工に舟をつくってもらおう！その舟で湿地帯を舟旅しよう！とか、まぼろしのアザールという布のでどころを探り出そう！というものとなっていき。しかし、一筋縄ではいかないのがイラクの人。バグダードではホスピタリティあふれるもてなしを受けるが、裏返すとそれは自分がホスト、相手はもてなされる、という関係性じゃないとダメな人が多いことを示し。アフワールに入っては、最初は警戒され、のちに、お金で人を雇うことはできない、友達ベースで頼んであとで謝礼や経費を払うという形でしか動いてもらえないなどなど、さまざまな文化の違いにふれ。文化の違いと言えば、マンダ教徒やアフワールの人々がつたえる文化や産品、慣習などに、遠く数千年前のシュメール文化の痕跡が見られるのでは！とせまっているところなどグイグイ読まされました。関連して、小林登志子「古代メソポタミア全史」中公新書（2020年）は絶対読んでみたいと思いました。湿地帯の人々は今も昔も統一より分散を求め、現在の秩序を壊す方向にいつも傾こうとしているp.219◆マアダンの人たちは文明/国家を「他人事」として見ている。彼らはもっと独立性が高い。p.269
トマトスープさんゲスト回の【公開講座】天幕のジャードゥガル観て、興味を持ち。スーフィズム＝神秘主義と思ってたので、スーフィズムには神秘主義だけに還元できない側面がある、というのが新鮮。秘教か顕教かという区分けも違い、秘教からはじまり、後代にはイスラムの正統信仰に入ってくる-12世紀初頭まで活躍したガザーリーが正統信仰に取り入れるのに大きな役割-と。また、アンダルスの魔術的マトリクスが源泉となって、占星術や魔術といったオカルト諸学の影響がイスラム圏へ、と。
 | 発売日 : 2014-04-25 |
トマトスープさんゲスト回の【公開講座】天幕のジャードゥガル観て、興味を持ち。◆薔薇水の製造は8世紀終わりから9世紀初頭に成立。シラス近隣が有名な生産地で、イベリア半島から中国まで供給された◆イスラム錬金術は、ふたつの傾向。卑金属から貴金属を作り出そうとした冶金術的方向性、不老不死のエリクシルの探求という医学・薬学的な方向性。これらは密接に関係、蒸留技術はそれを同時にささえる大事なテクニック。◆
 | 小学館 発売日 : 2023-07-12 |
博物館が舞台のマンガ。「科学と詩」、レプリカ職人、隕石と小学生と地球防衛、きよす先生がきよすそんに戻るとき、そして「クジラの鼻水プロジェクト」。ブローやブルックアップなど、クジラの行動にどんな意味があるかとか考えたことなかったなあ。
2023年07月03日
2023年06月に読んだ本
0601・三浦しをん 墨のゆらめき 20230531
0601・斎藤美奈子 趣味は読書 図書館20230529受領
0601・Music Magazine 2023年6月号 特集・追悼坂本龍一 20230527 …特集は0528読了
(0603・須賀敦子 トリエステの坂道 図書館20230529受領
0603・大山顕 ジャンクション トロニカ 20230603
(0603・MARINA ART BOOK vol.2 20230603
(0604・北大エスペラント研究会 Rondo Nordo 1-2
(0604・わたせせいぞう チョーク色のピープル 20230603
0604・目黒考二 活字三昧 北十二条書店 20230531
(0604・ふることふひと 6
0605・目黒考二 活字学級 北十二条書店 20230531
0606・僕のマリ いかれた慕情 20230605
0607・門井慶喜 おさがしの本は 20230529
0608・新井満 新井満と語る 風のごとく自然体で 新風舎文庫 20230603
0609・【再開】森治 人と思想 ツェラーン
0610・西川美和 永い言い訳 20230529
(0610・太宰治 佐渡 青空文庫
(0611・AIの遺伝子 Blue Age 6
(0611・ブランチライン 5
0611・斎藤美奈子 読者は踊る 図書館20230607受領
0613・朝井リョウ スター 20230603
0613・松浦弥太郎 くちぶえサンドイッチ 北大エスペラント研究会 20230603
(0614・私たちが恋する理由 4 読書室ポワロ
(0614・ミステリマガジン 2023年07月号 読書室ポワロ …追悼北上次郎、アガサ・クリスティ幻の戯曲「見知らぬ私」本邦初訳
0615・門井慶喜 小説あります(「おさがしの本は」姉妹編) 20230611
0615・佐久間裕美子 ヒップな生活革命 円錐書店 20230527
0615・新井満と語る 威厳を持った老後と哀れな老後と 新風舎文庫 図書館20230612受領
(0616・夢の雫、黄金の鳥籠18 kindle
0617・門井慶喜 天才たちの値段(美術探偵・神永美有1) 20230613
(0618・青にふれる 6 Kindle
0619・【再読】カズオ・イシグロ わたしを離さないで
0620・門井慶喜 天才までの距離(美術探偵・神永美有2) 20230611
(0621・【再読】ぽやん舎 おはなばたけ
0622・坂本龍一 ぼくはあと何回、満月を見るだろう kindle 20230621
0622・SWITCH Vol.41 No.7 特集 坂本龍一 Ars longa, vita brevis. 芸術は長く、人生は短し 20230621
(0623・後ハッピーマニア4 Kindle
0624・門井慶喜 注文の多い美術館(美術探偵・神永美有3) 20230611
0625・zine「LEMON RICE」円錐書店 20230623
0625・深町秋生 ファズイーター 図書館20230625受領
0625・椎名誠 目黒考二 沢野ひとし 木村晋介 発作的座談会2 20230513
0626・山際淳司 ニューヨークは笑わない 20230611
0627・坂本龍一 Seldom‐illegal 時には、違法 図書館20230626受領
0628・オスカー・ワイルド 理想の夫 20230617
0628・カラサキ・アユミ 古本乙女の日々是口実 シーソーブックス 20230625
0629・碇雪恵 つぶやかなかったことばかり シーソーブックス 20230625
0630・中田薫(編) 廃墟マニアックス！ 廃界本 20230624
0630・原田ひ香 図書館のお夜食 読書室ポワロ
(0630・久住昌之原作 ナカタニD.作画 百合子のひとりめし
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0601・斎藤美奈子 趣味は読書 図書館20230529受領
0601・Music Magazine 2023年6月号 特集・追悼坂本龍一 20230527 …特集は0528読了
(0603・須賀敦子 トリエステの坂道 図書館20230529受領
0603・大山顕 ジャンクション トロニカ 20230603
(0603・MARINA ART BOOK vol.2 20230603
(0604・北大エスペラント研究会 Rondo Nordo 1-2
(0604・わたせせいぞう チョーク色のピープル 20230603
0604・目黒考二 活字三昧 北十二条書店 20230531
(0604・ふることふひと 6
0605・目黒考二 活字学級 北十二条書店 20230531
0606・僕のマリ いかれた慕情 20230605
0607・門井慶喜 おさがしの本は 20230529
0608・新井満 新井満と語る 風のごとく自然体で 新風舎文庫 20230603
0609・【再開】森治 人と思想 ツェラーン
0610・西川美和 永い言い訳 20230529
(0610・太宰治 佐渡 青空文庫
(0611・AIの遺伝子 Blue Age 6
(0611・ブランチライン 5
0611・斎藤美奈子 読者は踊る 図書館20230607受領
0613・朝井リョウ スター 20230603
0613・松浦弥太郎 くちぶえサンドイッチ 北大エスペラント研究会 20230603
(0614・私たちが恋する理由 4 読書室ポワロ
(0614・ミステリマガジン 2023年07月号 読書室ポワロ …追悼北上次郎、アガサ・クリスティ幻の戯曲「見知らぬ私」本邦初訳
0615・門井慶喜 小説あります(「おさがしの本は」姉妹編) 20230611
0615・佐久間裕美子 ヒップな生活革命 円錐書店 20230527
0615・新井満と語る 威厳を持った老後と哀れな老後と 新風舎文庫 図書館20230612受領
(0616・夢の雫、黄金の鳥籠18 kindle
0617・門井慶喜 天才たちの値段(美術探偵・神永美有1) 20230613
(0618・青にふれる 6 Kindle
0619・【再読】カズオ・イシグロ わたしを離さないで
0620・門井慶喜 天才までの距離(美術探偵・神永美有2) 20230611
(0621・【再読】ぽやん舎 おはなばたけ
0622・坂本龍一 ぼくはあと何回、満月を見るだろう kindle 20230621
0622・SWITCH Vol.41 No.7 特集 坂本龍一 Ars longa, vita brevis. 芸術は長く、人生は短し 20230621
(0623・後ハッピーマニア4 Kindle
0624・門井慶喜 注文の多い美術館(美術探偵・神永美有3) 20230611
0625・zine「LEMON RICE」円錐書店 20230623
0625・深町秋生 ファズイーター 図書館20230625受領
0625・椎名誠 目黒考二 沢野ひとし 木村晋介 発作的座談会2 20230513
0626・山際淳司 ニューヨークは笑わない 20230611
0627・坂本龍一 Seldom‐illegal 時には、違法 図書館20230626受領
0628・オスカー・ワイルド 理想の夫 20230617
0628・カラサキ・アユミ 古本乙女の日々是口実 シーソーブックス 20230625
0629・碇雪恵 つぶやかなかったことばかり シーソーブックス 20230625
0630・中田薫(編) 廃墟マニアックス！ 廃界本 20230624
0630・原田ひ香 図書館のお夜食 読書室ポワロ
(0630・久住昌之原作 ナカタニD.作画 百合子のひとりめし
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 | ミュージック・マガジン 発売日 : 2023-05-19 |
大友良英、後藤正文、高橋健太郎のインタビューを読んで感じたのは、彼らが坂本龍一を、目線のフラットな人、視線のフラットな人、と捉えていること。「世界の坂本」と偉ぶったりせずに、どんな人の言葉にも耳を傾け、対等な会話を望み、芸術音楽より歌謡曲が下みたいなランク付けなどせずに音楽全般をフラットな目でみて、そして一市民として社会運動に加わって社会をよくしていこうという姿勢、といったところかな。TEI TOWAとの対話で、”俺は何やったらいいかわんないんだよ"って坂本龍一が言ったシーンがなんだか哀切。小山田圭吾、大友良英の即興演奏の素材にした坂本龍一の音源が最後のものらしいが、聴いてみたかった。特集以外のジャズ・ミュージシャンになって十年の大江千里や、世界中のディスクガイドから聴きたい曲をピックアップしたりも楽しめた。
 | 新潮社 発売日 : 2023-05-31 |
実直なホテルマン続と奔放な書道家遠田。ホテルの業務の一環として、続が遠田に筆耕を依頼したことから二人の付き合いは始まり。人との距離感を踏みぬいて人の話を聴かず、それでいてなにかしら人を惹きつけずにはいられない遠田。その強引さに最初は腰が引け気味だった続だったが、いつしか足繁く遠田のもとに通い。しかし突然の絶縁宣言。その理由を手繰り寄せようとした時、遠田が語った己の過去とは…と。筆耕から発展して代筆屋シリーズ物として続けていくのかと思いきやのこの展開。そして大人な上にも大人な小学生遥人くんの存在が光るなあ。過去作からすると、まほろ駅前のシリーズかなとちょっと思った、続が実直な多田で、遠田が奔放な行天みたいな。まったく何から何まで一致するわけじゃないけど、雰囲気がね。書の奥深さと漢詩の滋味にもふれられてよかった。「気になるなら、会いにいけばいい。勝手に下ろされたシャッターなど、ぶち破ればよかったのだ。」と今まで実直一本だった続がはじめてそれを突き抜けるかのようなシーンが愁眉。個人的には。「働いて食ってクソして寝て、あっというまにお別れのときが来る。それでも俺たちは、その日が来るまで忘れたふりをして、賭けて笑って悔しがって、せいぜい楽しく生きるのだ」(p.76)
 | 筑摩書房 発売日 : 2007-04-01 |
読みたくなったのは、永田希「再読だけが創造的な読書術である」つながりだったかな。半分くらい読了。「倚りかからず」は老人応援歌、「朗読者」は自分はいつも安全圏にいてつべこべ施策してるだけ、叶恭子「蜜の味」は本にしておくのはもったいない、五幕もののオペラに、「プラトニック・セックス」をはじめ「文学」はもう赤裸々な告白系のタレント本にしかないんじゃないか、といったあたりが印象に。そして自分が「読書依存症」なことを再認識。「この一族は年中本に関するゴタクばっかりこねている。 書評や書籍広告にもよく目を通し、読んだ本についてあれやこれやと論評し、頼まれもしないのに、ネットで読書日記を公開したりする。目的がなくても書店があると入ってしまい、買う気がなかった本まで買ってしまう。 「本の置き場所がない」は彼らの最大の悩みだが、きっぱり売り払う勇気もない。(p.21)嗚呼、まさに…
エスペラント語話者の間で、専用サイトで都合がつけばお互いに宿泊できたりするネットワークがある、というのが一番興味深く。もちろんその家族はエスペラント語を解さないケースもあるが、知らない土地で、知ってる言語で会話することでグッと縮まる距離。英語のケースとはまた違うんだろうなとの思い。オランダ語の方言とかの話も。言語学やってる学生にはたまらないだろうなあ。あとは、エスペラント語サークルのあまり束縛しないゆるくて自由な仕組みと、それゆえに会員を定着させることの難しさ、学習の喜びと大変さが語られていて面白かった。
 | メディアファクトリー 発売日 : 2007-12-12 |
ジャンクション、高速道路と高速道路が交わるところ、原則。ジャンクション写真集、魅入られて静かに興奮してくる。スタートは、高速道路の構造各所の名前の解説、ジャンクションの形式の分類でやや堅苦しく始まるが、メインの各ジャンクションの写真が始まるともうもうただただ圧倒される。圧倒的に夜景のほうが映える。個人的ベストは阿波座JCT、次は大黒JCT。複層のデッキが重なり合う様は見飽きないフォルムで圧巻でした。
真吏奈さんの作品を初めて見たのは、札幌パルコでのie_sapporo企画の全館使った展覧会で。今回The JOHNSON STOREで個展を開くと知り、そこで最近の作品の図録を購入。若い女性たちの眼力と天国の色彩といいたくなるような色とりどりな画面が特徴。個人的には、大画面に女性の脳内から色とりどりのmindが溢れ出るかのような一作が特に強い印象を受けました。
 | 新潮社 発売日 : 1998-08-28 |
「ブラウンブック」に書かれてた 体阿弥さんのエッセイに触発されて、「トリエステの坂道」「ふるえる手」のみ読了。ナタリア・ギンズブルクとの交流が描かれた「ふるえる手」でのコーヒーの扱われ方を味わい深く差し出してくれていて。「鍋つかみのかわりにした黒いセーターの袖のなかで、老いた彼女の手はどうしようもなくふるえていて、こぼれたコーヒーが、敷き皿にゆっくりとあふれていった。」(p.225) ウィーンとフィレンツェの文化が合流し、せめぎあうトリエステに生き、自らの書店に「ふたつの世界」とつけたサバと、中世のまがりくねった道も、現代の直線の道もどちらも人間には必要だし両方を求めている、と喝破した作者は通ずるものがあったんだなあ、と思いつつ。
チョーク色ときくと、肌色のことを思い出してしまう。無前提で、前者は白、後者はベージュを想定しているんじゃないかと。まあ本編にはそんなこと関係なく。チョーク（白亜）のと説明も入っているのだけれど。別れた家族、別れた恋人たち、別れた瞬間、あるいは後から思い返して、また始まりそうだったり、苦い思いを抱いていたり、と。最初の話の父、母子から去ったのも勝手なら、なぜ自分勝手な息子はひとりでいいという思い出、いまの相手の思いを封殺してるのほんと自分勝手という思いに…。まあでもなぜか定期的に手に取りたくなってしまう、わたせせいぞう作品。かっこつけてるてなあと思いつつ、それをたまに垣間見たいと思いもあるのだろう、自分のなかに。
 | マッグガーデン 発売日 : 2023-05-15 |
まさに打ち切り、といった唐突な完結。額田王これからキーになっていきそう。蘇我唱子も。武内宿禰の系譜もみつけ、史（不比等）も氏の長者に、その地位を返せと大見得を切り、そして国史編纂にも大きな動きが、とすべてがこれからのところで終了。やはりテーマが地味すぎたのだろうか。不比等が権力を握り、壮年となってからの血湧き肉躍る政争を描いた馳星周とはまた違ったたたずまいで好きだったのだが。
 | 角川書店 発売日 : |
本の雑誌目黒考二追悼号にふれて再読。全編通してそのうち書きたい小説の構想、そのうち出したい雑誌の構想、読書計画の変更をしている時の楽しそうな様といったら。のっけから、社員旅行北京行きの飛行機で9人中8人がかばんから取り出したのがケラーマン「サイレント・パートナー」…他の人の読む速度が気になって集中できず、からはじまる読めないぐだぐだがおかしくておかしくて。また、時代小説でオススメされた島田一男「魔道九妖星」がどうしても読みたくて、足で探して探して探してようやく見つけたら、これは「xxxxx」を改題したものである、とあり、なんとそれは私の書棚にあるものだった…という悲しみ…はげしくうなずく、あるよねそういうこと。民間でなんの支援もなくシベリアを横断した玉井喜作の数奇な人生や、椎名誠・沢野ひとし・木村晋作のあいだがもめるのは、彼らのあいだに私有の概念が薄いからでは、という考察なども興味深く。◆「読書が面白いのは、同じ本が隣の人におそらくは違うことを囁いていることだろう。私に聞こえてくる囁き声は私だけのものだ。だから本が特別のなにかなのである。」(p.263)
 | 角川書店 発売日 : 1997-08-01 |
本の雑誌目黒考二追悼特集号を読んで読みたくなり再読。本の紹介を、著者の家族や独身時代の思い、人生観、恋愛観、ギャンブル観などの私情ではさんで届けられるエッセイ。「結ばれるべくして結ばれた関係など、私はまったく興味を覚えないのである」「非日常的なものへの過度なのめり込みは、安逸なる現在を結果的には破壊する」、週に一度の帰宅日に帰宅せずに競馬にでかけたと聞いた息子が「嘘ーっ！」と叫んだのに対して「息子よ、嘘ではないのだ。私はそういう父親なのである」、「ギャンブルの目的は、実は金ではない。（略）むしろ金を捨てるという感覚がいいのだ。傷つくのがいいのである。」といった著者の考えが垣間見えるところがいい。すごくいい。
 | 百万年書房 発売日 : 2023-05-29 |
「常識のない喫茶店」「書きたい生活」の僕のマリさんの最新作は、私家版出した「いかれた慕情」の出版社からの出し直しと思いきや、26編中、4編が私家版から、1編が雑誌にのったもので、あとの19編は書き下ろし！なんて大盤振舞い！結婚して以降の日々のこともたっぷり読めてうれしい。ネットで知り合ってめちゃくちゃ仲良くなったリノちゃん。本を出したと知って自分のこと以上に涙をながしてよろこんでくれたなほみさん。生きづらくて「生きられない」と涙する日もあったけれど、友人にめぐまれた面もあって。また、サイゼリヤで落としても割れないのが自慢のプラスチック製グラスで、ワインをちびちび飲むのとか、”重たい単行本を何冊か持ち歩く癖があり、それをいつも人に少し笑われる。でも、続きが気になる本を放置するなんてできない。”とか”他人からすれば意味のないことが、わたしにとって一番大切でした”とか、激しくうなずきたくなってしまう瞬間もあり。結婚生活の話で一番好きだったのは、「豚ロースを冷蔵庫のいちばん上の段に隠して寝た」のフレーズでした。
| 光文社 発売日 : 2011-11-10 |
目黒考二「息子たちよ」で図書館が舞台の連作ミステリがあると知り手に取る。しかも主人公は図書館のレファレンス担当！個人的には俄然興味が増す。短大生の国文学のレポート、赤富士の写真が表紙の児童書探しと来て、図書館を潰そうと赴任してきた図書館長が赴任してきて出してくる難題、死の直前の老夫が返却しておいてほしいと頼んだ本と来て、最後は図書館の存続を賭けた戦い…と。本にまつわる話がこれでもかと出てきて、探してる本はこれだ！となった後のどんでんがえし、ヒールと思えた館長が実は大の本好きで、主人公と志は違えど、本について、仕事について語り合う丁々発止なところなど読みどころたくさんで楽しく読めた。◆本は酒と同じだ。ほどほどにしないと身体をむしばむ(p.194)◆レファレンス・カウンターは調査を助ける存在です。調査そのものは相談者自身がしなければならない。それと同様、書物というのは、ただ人間を助けるだけの存在なのです。最終的な問題の解決はあくまで人間自身がおこなわなければならない。p.323◆
 | 新風舎 発売日 : 2004-09-06 |
森敦との対談での華厳経的なものの見方。勅使河原宏との茶室談義、生花談義、空間の切り取り方。井伏鱒二との「黒い雨」の”用水溝を泳ぐ鰻の子の行列のほうに視線がいってる”独特さ。淀川長治とは、「あなたあの映画見ましたか？わたしはあれが好きで」合戦。日野啓三との、大病からの生還者としての対談。最後は新井満と90歳を超えても現役の助産婦の実母との対談。どういった経緯で助産婦になって、病院につとめて、どういった思いで、とあったりが掘り起こされ。◆日野 僕が恐怖をもって考えたのは、まともに見えている東京の夜景も、実は基本的にゴーストではないか、ということだった。p.201-202◆日野 ただ日頃から自分の意識の深層をひっかき回して、目をあけて夢を見るような仕事をしているから、意識の表層と深層の膜が大体は薄いからp.203◆新井 懐かしいと思うのは、風であった時代の記憶をふっと彷彿とさせるからなんじゃないですかp.223◆
 | 清水書院 発売日 : 2016-09-01 |
評伝部分は充実。ツェランの生まれた街の成り立ちからそこでのユダヤ人の地位、文化的状況から説きおこし、それがツェランに与えた影響に始まり、青年時代、収容所時代、戦後からその死まで簡潔に知ることができた。詩論の部分は、ドイツ語にも詩にもうとい身には難解だった。詩集「誰でもないものの薔薇」、特に「頌歌」の解釈が気になってただけの身には。かろうじて、自分の内面を掘って掘って掘った先に、否定の、否定の、否定の言葉を連ねてそこを突き抜けた先に何かをつかもうと/つかんだものを提示してくれたのかな、と思った。◆想起としての詩が得られるためには体験が砕かれ、搾られることが前提となることが明らかになった。知覚や思考がまず忘却の夜の中に沈まなければならないのである。そしてそれは言語の解体を経験するということである。p.104◆ツェラーンの詩は語りかける相手をあらかじめ持たない。そしてその無所有を究極まで深化させることにより、かえって無の対話者を可能性として出現させるのである。即ち時は無の人 (niemand) と対話し、「握手」することになる。p.171
 | 発売日 : 2012-09-27 |
佐渡が思ってたのより大きすぎる、北海道とそんなに違わないのではという感慨。好きでもない料理屋に入って食べたくもない料理と藝妓をあげて宿に帰り、死ぬほど淋しい所の酷烈な孤独感のためにここにやってきたと実感。金山は見れず、みやげものをたんと買い込み、「私は、とうとう佐渡を見てしまったのだ」という思いを抱くまでの小旅行記。
 | 文藝春秋 発売日 : 2016-08-04 |
幸夫ほどの文才も高名も色男ぶりも何一つもちあわせていないのに、幸夫の言い訳が全部そのまま自分に刺さってきて刺さってきて刺さってきて苦しいくらいだった。幸夫/津村啓、妻、編集者で愛人、妻の友人の夫、その息子、さまざまな視点で語られる幸夫/津村啓像。不意の事故で妻/母を失ってしまった2つの家族が交錯し、まっすぐに過去の妻を愛おしむ男と、冷めきった関係の妻に去られた男の困惑と悔恨と言い訳とが描かれて。◆あの語り手が明示される時以外の、章のあたまにおかれた文様のようなサインのような架空の外国語の文字のようなもやもやとしたあれはいったいなんなんだろう。登場人物たちの心象風景だったのかな。◆ぼくらはね、そんなに自分の思う通りには世界を動かせないよ。だからもう自分を責めなくていい。だけど、自分を大事に思ってくれる人を、簡単に手放しちゃいけない。みくびったり、おとしめたりしちゃいけない。そうしないと、ぼくみたいになる。ぼくみたいに、愛していいひとが、誰も居ない人生になる。簡単に、離れるわけないと思ってても、離れる時は、一瞬だ。そうでしょう？p.312◆
 | 文藝春秋 発売日 : 2001-12-07 |
斎藤美奈子「趣味は読書。」で、自分は「読書依存症」だなあと思い、そういう方は「読者は踊る」をどうぞとオススメされていて、それにのってみて、巻頭の診断で10個あてはまって、重度の踊っている読者と診断されてから読み始め。「タレント本＝私小説」化傾向から、芥川賞選考委員は会社の人事部、歴史教科書の会、「左翼」の正攻法ばかりで技巧さがないこと、全学連と暴走族の共通性、などなど多岐な話題で俎上の本をバッタバッタと切っていく。なるほど、そういう読み方もあったのか、と。でもあとがきの「本文を読んでもらえばわかることだが、私はごくごく一般的な、そんじょそこらの読者である」はちょっと…かも。そんな鋭く切り込める読者はそんじょそこらにはいないから、この本が成り立ってるのでは、と。◆中谷彰宏「人は誰でも作家になれる」、辺見庸「もの食う人びと」、田川建三「書物としての新約聖書」、嶋津与志「沖縄戦を考える」、野村進「コリアン世界の旅」あたりは読んでみたくなった。
 | 秋田書店 発売日 : 2023-06-08 |
電脳の安楽死、AIが無理やり人の仕事を作り出してる世界線、ロボットの子供の養育、電脳ドラッグによる意識の変性などなど、近未来的なさまざまなテーマを描き出す連作短編。何も規制を加えなければ、金持ちが牛耳る一握りのAIの一人勝ちになるから、AIの使用にさまざまな制限を設ける、という設定が面白かった。
 | 祥伝社 発売日 : 2023-06-08 |
失恋して全然回復できない友人への岳の、死んだと思ってみたら？の波紋。山田の、八条寺家へのサプライズ初訪問。どちらもゆるやかに友情や家族や家族以上の親しさを感じさせてくれて。
 | 朝日新聞出版 発売日 : 2023-03-07 |
大学時代に制作した映画がちょっとした賞をとった尚吾と絋。尚吾は、高品質なものを高価格でしかしあまり広く世に知らせられなくなっている映画業界へ。絋は、低品質で安価でも広く世に出せるYouTubeの世界へ。お互い自分の業界特有の問題点にぶち当たり、悪戦苦闘しつつ、その果てに久々に邂逅し、大学時代の後輩泉はいいとこどりの第三の道を提示するが…と。中身だ！質の高いものだ！細部に神は宿るのだ！という立場と、無料だ！拡散だ！速さだ！という立場のせめぎあい、そしてそれを単純にいいとこどりしようとしてもうまくいかず、三者三様。映画なんて、映像なんて、娯楽なんだ、不要不急なんだだなんて切り捨てられず。「仕事とか娯楽とか家族とか、そういう何もかもって、結局は人間が生きていくことの付加価値っていうか…人間が”ただ生きているだけ”の状態になっちゃうことから目を逸らさせてくれるものなのかもって」(p.364) いつしか道の別れてしまった二人の道が、もしかしたらまた交わるのではないかという微かな期待をいだかせながら閉じられる物語。しかし、現実は…と。「誰かにとっての質と価値は、もう、その人以外には判断できないんだよ。それがどれだけ、自分にとって認められないものだとしても。」(p.371)という言葉が重くのしかかってくる。◆◆◆「でも、今、消費者が対価として払っているのって多分、お金じゃなくて時間ですよ」p.112「なんか、本気の一作にちゃんと向き合うのって疲れません？暇潰しくらいの感覚で二十四時間過ごしちゃいたいっていうか」p.113◆ないものをあるように見せる人たちを見送った先に待つ、あるものがないようにされてしまう場所。p.137◆世の中にあるものって結局、文脈とか関係性、もっと言うと歴史とか背景とか、そういうものから完全に脱することってできない気がするp.229◆待つ。ただそれだけのことが、俺たちは、どんどん下手になっているp.299◆でも、質や価値を測る物差しなんて、一番変わりやすいp.301◆
 | 集英社 発売日 : 2008-04-18 |
ふわふわとした青年時代の日々、サンフランシスコで過ごした日々、本屋を開いてからのフリーペーパーの再録などが収められ。著者の書く、未だ見ぬサンフランシスコは行ってみたくさせられるが、30年以上たってだいぶかわったのだろうか。◆その喫茶店の女の子はまるでシンディ・シャーマンのように毎日違った格好をしているのです。◆箱いっぱいのジャムとパンをもたせてくれた古書店◆なんでもかんでもかりかりにして売ってるおじさん。たとえばスイカの皮。ガハハハと笑いながら◆ポストカードサイズの赤いアクリルにくりぬかれたハートが並んでいて、いろんなサイズのハートをきれいに書くための定規◆ブックマンという職業「大切な一冊はみんな誰かの家の本棚にあるよ。もう一度読みたくなったら遊びにいけばいいさ」(p.140)◆といった断片にふれるうちに。あと、「ブロォォォオオオディガンを探しに」という表記は真剣なのか笑いをとりにきてるのかちょっとわからず。◆最後の方の、「ぼくはニトントラックに古本を積んで東京や大阪や名古屋に移動しながら本を売り歩く商売をしています。（略） 食べていけるか、食べていけないのか。その判断だけで人生の選択が動くことをぼくは理解できません。これぞと思ったら、どんなことをしてでも、これで食べていくんだという決心でしかないのです。そう思えば、いわずと努力もするし、気持ちも入るし、必死になって、なまけることなんかもできないはずです。」p.290という言葉は印象に。自分も含め、ついみんな聞きがちですよね、思いがちですよね、食べていけるんですか？ピシッと背筋の伸びる思い。
 | 早川書房 発売日 : 2023-05-25 |
北上次郎追悼、という表紙の文字に惹かれて、ふらふらと読書室ポワロへ。追悼コラムをいくつか読む。自分にとっては自己中おじさん、だから本人も認めてたけど友人は少なかった、だけど人をけなすときは「あいつ、友達すくないんじゃないか」と言ってた、というエピソード。締切を必ず守る、遊びの時間にはぜったい遅刻しない。ゲラの段階で書評でよく書けなそうな本は依頼を断る、だから書評の質については断然信頼を置かれていた。そして、人の書評にも鋭い目を向け、忙しくて流して書いてしまったなとか、鋭く切り込めなかったな、と本人が思ってたら、北上次郎から、この間のあれ、なんだ？あんなの書きやがって、と見抜かれてすぐ説教された話などなど、さまざまなエピソードにふれられ。個人的に大好きな「未必のマクベス」の再録、嬉しかったなあ。そして、アガサ・クリスティーの本邦初訳の戯曲。一気に読んでしまった。7年越しの婚約者との結婚を破棄して、今朝あったばかりの男と結婚して郊外に移住した若い女性が、夫の正体を段々と知り…といったサスペンス仕立て。もとになったという短編も読んでみたい気に。
 | 祥伝社 発売日 : 2023-06-08 |
キーケースを贈られて、振るとなにか音がして、あけたら合鍵が入ってるとかニクい演出。あるいは、都心で思わずの雪かき後の「終わったらとんかつ許されると思わない？」「思います！ビールも！」の息ぴったりさ加減。元気に生きて！働いて！納税して！とそれ以上を求められたあとでのクーっとなってるところなど、今回も目をひかれました。
 | 朝日出版社 発売日 : 2014-07-11 |
リーマンショックを契機に、大量生産大量消費からインディペンデントなものの作り手があらわれ、少量だけど良いものを尊ぶ気風が生まれ、それは食、農業、出版の各分野で見られるようになった。オバマ政権末期のアメリカ。トランプ政権、バイデン政権となってその気風かどうなったのかは気になる。◆「食べ物が安かったら、誰かがどこかで損をしているということなんです」p.83◆
 | 光文社 発売日 : 2014-02-13 |
「おさがしの本は」姉妹編、3年後のN市が舞台と知れば、おおいに「おさがしの本は」を楽しんだ身には見逃せず。もちろん和久井さんも再登場。後日譚もちょこっと楽しめる。今度は商社の御曹司の地位を投げ打って文学館の嘱託職員になった主人公が、文学館存続のために奔走。キーは、敬愛する作家が残した、ありえないはずの「本人のサイン入り遺稿集」、そして、「人はなぜ小説を読むのか」という問い。◆物語のキーとなる本と哲学問答。「おさがしの本は」に比べてもどかしいところもあったけれど、本好きな身には十分に楽しませてもらった。紆余曲折を経て、導き出された、人はなぜ小説を読むのかの答えに深くうなずきながら。◆「ぶんがくかんって、どんなところ？」「小説の博物館さ」p.37◆「無駄なものは、無駄じゃない」p.361◆
 | 新風舎 発売日 : 2004-10-05 |
新井満の「まり子さんの仕事って、福祉というよりは芸術作品なんですよ。」とという言葉に、宮城まり子が、「はーい！マーンちゃん、それいってほしかった。」とかえしてたのが耳に残る。新井満にとって19で一度死にかけたことは小説にもエッセイにも対談にも何度も記さねばならないくらい深く人生に食い込んだ出来事だったんだな、の思い。他に、国境のない医師団に参加した医師の、むなしくなる時は、人道援助が道具でしかないと認識させられる時、構造的な権力の側は、人命に無関心、そのかくれみのにうまく使われているというか、という趣旨の言葉。細川護熙の項で出てきた「対月忘西」という言葉。浄土を望む、仏道を修める気持ちも、あまり美しい月に向かっていると、つい忘れてしまう、という意だとか。
 | 小学館 発売日 : 2023-06-09 |
母后の死、スレイマンとイブラヒムが遠征中のヒュッレムの策謀。イブラヒムの書簡を握りつぶし、いずれも偽書で、ムスタファのみを知事としてイスタンブルから出すことに、そしてイブラヒムがペルシア王にある書簡を送っていたとに。スレイマンに露見すればただではすまないことを、ギリギリの綱渡りで。スレイマンは、イブラヒムがかたくなにムスタファ推しなのを訝しみはじめ。そして…と。段々とクライマックスに向かってる感。史実からすると、イブラヒム失脚は間近、そのあとは駆け足で語られるのかな。
 | 文藝春秋 発売日 : 2010-02-10 |
新作を目にすると舌が甘さを、贋作を目にすると舌が苦さを感じる美術探偵・神永美有。彼が持ち込まれた難題をバッサバッサと解決という設定かと思いきや大学の美術講師・佐々木が相棒的な役割にして語り手。直感の神永、理論の佐々木というタッグで、ボッティチェリ、フェルメール、涅槃図、ガラス工芸、モラエスの古地図などをお題に、持ち込まれた難題に取り組んで解決していく連作短編集。奇抜を芸術と履き違えた自負と傲慢と猪突の申し子、佐々木の教え子のイヴォンヌがまたいい味を出す狂言回し的な役割で。◆「ギャラリーフェイク」が好きな身としては、美術品にまつわる連作ミステリなんて読まずにいられようか。その期待を十二分に満たしてくれた。贋作は苦く、真作は甘く感じるという舌、という仕掛けも面白く。美術探偵と美術講師というホームズとワトソンばりの相補う関係、また絶妙な距離感もよくって。◆人間の審美眼なんか、もともと誰とも共有し得ないものなんだ。p.39◆根源的な疑問なんてのは最も厳格な哲人か、ただの甘ったれのどっちかが持ち出すものだ。その中間に位置するすべての良識ある大人はな、それを無視するところからしか仕事をはじめられないんだよp.40◆天才はたしかに存在する。それに対して凡人がとるべき態度は一つしかない。心ゆくまで嘆賞することだ。p.60◆
背中をおされて、母の望む方向とはちがう、自分の行きたい進路をつげることができ。青山ともすこしずつ距離がちぢまり、すこしずつでも思いがつたわっていき、と。
 | 早川書房 発売日 : 2008-08-25 |
ぽやん舎koroさんのつぶやききっかけで再読。前に読んだ時は、すべてを知らされずに、段階的に知らされるのを自分ごとのように読んだけど、今回は高度に発達した文明が生み出した存在にやどる魂、たとえばAIとかに、といった観点で読んでしまった。キャシー、ルース、トミー、中心となる三人の心の揺れ動きが緊張感を持って微細に描かれていて、時に息苦しく、時によろこびにあふれ、時にこれ以上ないぐらいに通じ合って。読了後に、前は、ぽやん舎「おはなばたけ」を思い出し、今回は山田胡瓜「AIの遺伝子」シリーズを思い出したかな。もし次読むことがあれば、その時はどう読み、何を思い出すのだろうか。そしてまた、ぽやん舎「おはなばたけ」も読み返して、そこにある不穏さ、結果はうすうすわかっているのに、そうせざるを得ない思いを噛み締めました。◆「そこにこの少女がいた。目を固く閉じて、胸に古い世界をしっかり抱きかかえている。心の中で消えつつある世界だとわかっているのに、それを抱き締めて、離さないで、離さないでと懇願している。」(p.415-416)「ヘールシャムもそこに運んでいきましょう。ヘールシャムはわたしの頭の中に安全にとどまり、誰にも奪われることはありません」(p.438)(2023/06/19読了分ここまで)(2015/02/19読了分ここから)3年半ごしに読了。今となっては、なぜ200ページで挫折してしまったのかと疑問。Facebookの茂木健一郎さんの書評を見て食指が動いて再度挑戦。介護人、提供、ヘールシャム。それがどういった意味を持つのか、なんのためにそこに集められ、厳しい規則のなか教育を受け、仲間たちとすごし、どのような思いをいだいたのか。すこしずつつまびらかになっていく。閉鎖空間独特の息苦しさと引き換えの親密さ。微細な表情ひとつ見逃さずに思いを分かち合う関係。なぜ、どうしての部分は読み進めるうちにだんだんと像を結んでいき、その過程が心地よくて、ページを繰る手がはずむ。将来の夢を語り合う生徒たちに、言わずにはいられなかったルーシー先生、その先が決まっていることを受け止めて進むことこそ大事と思う考えと、その先が決まっていることを今知っても自暴自棄になるだけだから、それまでは「教わっているようで、教わっていない」状態に置いておきいずれ明らかにする方がよいとする考え。その先、いずれ、を別のものに敷衍すれば、きっと、他人事じゃなく思える。そう考えた。そして、キャシーが12年の介護人生活を終えるということは、やはり…と考えずにはいられない。
 | 文藝春秋 発売日 : 2012-08-03 |
美術探偵・神永美有シリーズ第二弾。第二弾は、相棒の美術講師佐々木が、東京から京都へ渡り、別の大学で准教授になるところから始まり。佐々木から神永への思いが、友情から依存になることを恐れて、これぞ遠距離恋愛ならぬ遠距離敬愛とほどよい距離感に一安心してた平穏を、かき乱しにくるのはやはり今や元教え子となったイヴォンヌ。今回のお題はボッティチェリ、岩波文庫の表紙、岡倉天心、柱時計、牧谿に端を発した日中どちらかに肩入れしたひとびとの調停。最終話、教え子に恋してしまった佐々木の、悪徳画商もかくやといわんばかりの仲介ぶり、奮闘ぶり、次々とあかされていくパッと見価値がないかに見える絵画に秘められたストーリーに興味がいや増しました。
 | 新潮社 発売日 : 2023-06-21 |
パートナーにしてマネージャーの空里香さんの背中の推しっぷりというかお尻叩きっぷりがすごいなあという第一印象。信頼と理解があるからそこまで言えるんだろうなあ、と。"「いま世界中で、あのイニャリトゥ監督から直に音楽を頼まれるミュージシャンが何人いると思う？ガンが再発して死んでもいいからやりなさい」" "ぼくが反原発運動を活発にしていた時期、「ひょっとして日本政府に目を付けられて、刺客を送られるんじゃないか」という話になった。それに対してパートナーは、「あなたが暗殺されたら、世論が反原発にグッと傾くから、それはそれでいいんじゃないの？」" ちょっとテイストは違うけど、村上春樹夫人陽子さんのエッセイを読んだときの村上夫婦の関係をちょっと思い出してしまった。◆パワーワードは、「ぼくは40歳を過ぎる頃までは健康のことなんて一切考えず、野獣のような生活をしてきました。」かな。いったいどんな生活を送ったらそういうくくりができるのかなあ、と。その後の病を得て、死に向きあった言葉の数々は深くしみわたってきた。タイトルにもなった、「シェルタリング・スカイ」でボウルズが言ったセリフに導かれるように。またさまざまに行ってきた社会的活動の詳細、それに向かう考えや覚悟も読めたのも。音楽に対する考えでは、下記が印象に。"身体が自由にならなくても、音楽を作ったり聴いたりしているときだけは、痛みも不愉快な思いも忘れていられる。「Music sets me free」なのだと、しみじみ感じます。" "「自然には敵わない」という前提を認めつつ、そこに二つ三つ、自分の音を足して楽しむ権利はあるんじゃないかと。もともとぼんやり持っていた考えの方へ、震災をきっかけに、より傾いていったと言えるかもしれません。"
 | スイッチ・パブリッシング 発売日 : 2023-06-20 |
A・カルロス・ジョビンの言葉で始まり、3.11後の社会活動でしめくくられる、坂本龍一特集。Switchでの過去の掲載分からの再録。音楽、美術、映画、環境の４章からなるけれど、美術が２ページなのはちょっと淋しかった。若き坂本龍一のジョン・ケージ、ナム・ジュン・パイクとの写真はグッときたけど。また細野晴臣、高橋幸宏が坂本龍一を語るページも愛があふれていてよかったなあ、細野高橋組でまたバンドはじめたら、遠くから坂本龍一が入れてほしそうにこっちを見てる、みたいな比喩とか、韓国行ってかえってきて韓国のタクシーが面白かったんだよ！とか言ってすぐ京城音楽Seoul Musicつくった話とか。あとは、環境の章でたっぷりと坂本龍一の社会運動を詳細に知ることができたのは収穫。坂本龍一が10人のピアニストを語る相手があの華恵さんとは！いつの間にか芸大でて三十代になっていたとは。
 | 文藝春秋 発売日 : 2017-08-04 |
美術探偵・神永美有シリーズ第三弾！今回のお題は、榎本武揚由来の刀、支倉常長由来のタペストリー、ペリー由来のSLの模型、金印ならぬ銀印出土などなど。ちょっとドタバタ度が増したかな、と思いつつもやはり今作も美術ミステリ好きには十二分に楽しめました。最終章は、神永美有二十歳が自分の舌の能力に目覚める前日譚。さすがに、当時の佐々木先生がピッピースタイルで自らをフランソワと称し金目になりそうな美術品探しに飛んで回ってたのは後付け感ありだけど（神永が高野にイヴォンヌと名付けた元ネタなんだろうけど）、神永の舌が目覚めたストーリーはなるほどなあ、と。◆美術、おもしろいぞ。僕は、生まれてはじめてそう思いました。p.353◆この世の中には、作り話にしかできないことがたしかにあるのだp.303-304…このへん「小説あります」との呼応を感じる◆イヴォンヌ、ほんと酷いよ。すべてが丸く収まったかのようなときに、不必要に、佐々木先生の恋心を琴乃にバラすなんて。まあ…気づいてなかったというのは方便かもしれないけど。◆神永、理学部生物学科の学生だったとはちょっと意外の感。
 | 祥伝社 発売日 : 2023-06-23 |
「ハッピーマニア」で恋愛中毒だったシゲタが、年を経て、恋愛が絡むと途端に感じてしまうだるさ、恋愛中心で回ってる人にふりまわされる迷惑、それでも恋愛対象から完全除外されると感じる悔しさを描きたかったのかなあ、と。
 | 幻冬舎 発売日 : 2022-03-24 |
八神瑛子シリーズ第5弾。警察もヤクザもそれ以外も主要登場人物全員たたけばホコリのでてこない人物などおらず。第3弾までは、夫の死の真実を暴くために、非合法な手段も辞さないという名分があったけど、それ以降は、巨悪を叩くため、とつきすすんでいくが。この巻は、前巻で最後の老侠客のたたずまいだった男が狂い、死に花を咲かせようとするのに周囲が巻き込まれ…という見たて。稼業に疲れ果てた末端の荒廃や、真面目過ぎるばかりに割を食うものが描かれたり、あるいは警官側の一度刃物や銃で襲われた者のその後の辛さが描かれたり。タフな八神にも、もし自分の娘が生きていたら、もし夫の死がきちんと捜査されていれば、自分も捜査のために手段を選ばない警官ではなくもっと違った人生があったのではないか、という思いが、たびたび挿入され。印象に残ったのは、署長との「手強くなった。とっとと出世して、上野から出ていくべきね」「褒め言葉と受け取っておく」というやり取りと「どいつもこいつも、妙に恰好つけやがって。 最後まで外道でいりゃいいものを、つまらねえ意地だの美学だので人生を棒に振りやがる。」という厄介者扱いされ続けた老ヤクザの啖呵。
| 発売日 : |
円錐書店で、「レモンライス」というタイトルと表紙のたたずまいだけで手に取り、食べ物の思い出のエッセイということだけ確かめてレジへ。その昔、大阪にあった夏爐（かろ）というカフェ、そこで出されていたレモンライス、このふたつの思い出を中心に語られるエッセイ。あわせて、木村緑さんの世界、料理をする男子10人のオススメ料理本も。マスターが夏爐開店前にあちこちの喫茶店でコーヒーのみあるいて、これだ！て店でどこのコーヒー豆使ってるか聞いたけど教えてくれなくて、店の前でずっと張り込んで、仕入れの車が来たらあとをつけて突き止めたエピソード。レモンライスはしいたけの戻し汁が大きなアクセント。古今若衆というお客さんがいろいろ書いていくノート。お店がなくなったあとも惜しむ人が多くて、大阪市立大学の学食にレシピがひきつがれたこと、など。みなカフェですごした日々、バイトした日々のことなどなつかしく語られ。◆ノースカロライナのビーチでたべた、ハム、マヨネーズ、薄くスライスしたりんごのシンプルなサンドウィッチ。情景がうかぶような◆食べちゃダメだと言われると、食べたくなるもの「悪魔のピクニック」、おむすびを食うことは握ってくれた人の愛情を心身にとりいれること、アントニオ猪木「闘魂レシピ」飛鳥新社、ライバルの切り札は「関西国際空港弁当」！ゆでたまご「グルマンくん」あたりは手にとってみたくなった。◆
 | 角川書店 発売日 : |
4人の徹頭徹尾、くだらないからスタートしてくだらないを経てくだらないで終わる座談に、ときに引き付けをおこしそうになりながら笑いころげてしまった一冊。沢野「ねえ、どうして十進法ってあるの？」木村「指が十本あるからじゃないか。」とか、椎名「お前の家のビデオは単純なやつだろ。おれんちのはすごいんだから。ダイヤルが二百個付いている」とか、もらった時計をいろいろいじってたら急にいろんなものが動き出して、ワーッって急いで机の中にいれた、とか、目黒「どうして不景気になるのかってこと」椎名「簡単に答えろよ」木村「みんなが無駄遣いをしないからだな」椎名「お前、おれたちをバカにしてないか？」のやりとりとか、椎名「お前、川端康成で勝ったからって、向田邦子まで出してくるなよな、とか、沢野「クーラーは夫婦の愛を壊しちゃったりするな」木村「お前んとこ、クーラーにやられたの？」に注25 コメント不能、とかもうおかしくておかしくて。随所にツッコミを入れまくっている注釈もコミで楽しめました。
 | 角川書店 発売日 : |
(2023/06/26読了分)スポーツノンフィクションだけかと思いきや、こんな洒脱なエッセイも書いていたとは。タイトルは東京かニューヨークかどちらに住むか迷う夫婦が地震にでくわし、「でも、ニューヨークは笑わないわ」とそれが決めてでニューヨークに決めたエピソードから。野田知佑からカヌーの手ほどきをうけた腕で、ニューヨークのイーストリバーにカヌーを浮かべたり。第一線の日本のプロ野球選手をメジャーに送る構想を語ったり、ドナルド・トランプがまだ新進気鋭の不動産業者だったり、東京には永久歯がないと頻繁に建て変わる町並みをなげいたり。人づきあいには距離感覚が必要、心のなかで感じている親しみと、それをおもてに出すこととはおのずと別もの、と感じていたり。なかでも目に止まったエピソードはふたつ。◆「開けることばかり考えているやつは、まあ、この道じゃ半人前だね。同じ腕と、それに頭を使って、キチッと閉めるシステムを作るやつが一人前だ」p.89◆使わなくなったカード式のキイは赤茶けた更地の上にさしてきた。何のことか、誰にもわからないだろう。p.91◆「ある朝、気がついたらあいつジュディーのウォーターベッドの水がすっかり抜けていた。フロアは水びたしだった。そして、ジュディーはいなかった」p.100(2014/02/26読了分)スポーツノンフィクション…だけではなく、エッセイ風のものもあり。青山通りで追い越していった車のカーステレオから流れる音楽に思いを馳せたり。ニューヨークにながれる川をボートでわたり、どこへいく？ととわれれば、from NY to NYとこたえる、大笑いで Welcome to NY!とかえしてくれる、そんなシーンが好き。バブルのころの様々なモノを買いあさる日本人に、アメリカ人のコメンテーターが、「かつて、ドルがとても強かったころのアメリカ人の姿を思い出しますね」という皮肉。プロの鍵師の「開けることを考えてばかりいるやつは、まあ、この道じゃ半人前だね。同じ腕と、それに頭を使って、キチッと閉めるシステムを作るやつが一人前だ」と語る語り口。監督を解任されたばかりの王貞治から、インタビューで、解説者や評論家について「どうしてもおれがやらなきゃならない商売じゃなさそうだからね。男として、おれじゃなきゃといわれるような商売をしたいじゃない、どうせやるなら」と語られたり。マイク・タイソンのインタビューととるために、暑いブルックリンをかけずりまわり、鳩の話しで少しは反応をだせたけど、結局はあまりインタビューとならなかった件。ヘルナンデス戦で目の当たりにしたフォアマン。「フォアマンがのっそりと近づき、ぼこっという音を立てて右のフックを打った。叱りつけているようなパンチだった。虚勢を張って格好つけてどうするんだ、ボーイ、生きるってのはそんな簡単なことじゃないんだ、わかってるのか。そういうパンチである。」(p.191)/いつもせわしなく旅しているような、私小説というより私ノンフィクションといような、不思議なあじわい。
 | 角川書店 発売日 : |
月刊カドカワ1988年10月号-1989年9月号の連載がベース。ライトな感じの語りおろしを文字起こししたものなのか。日本がバブルを謳歌して、まだそれかはじけるなんて多くの人が思っていなかったころ。だからエンパイアステートビルだって早く買っちゃえなんて話もでてきて。タイトルは、当時のアメリカの教習所のテキストに、飲んで乗るのはダメだが、もし飲んじゃって乗る場合、ビール大瓶一本、飲んで1時間以内ならSeldom illegal と書いてあったのからとったのだとか。マネージャーAkiさんがなくなって、喪失感と自分で交渉からマネジメントからやらなければならず大変な様。学生運動を共にして、エリートコースから地元の国会議員になるべく帰郷した友の地元で、名を売る助けをしたり。その当時から、自分はできることが多い、やりたいからやるよりもできるからやる、という思いを抱え、それをやりたいことにフォーカスしていきたいと語り。YMOのレコーディングを、村上春樹と村上龍が同じ部屋で二人で小説書いてるようなもの 、と例え、もう耐えられない、と語り。◆経済というのはやっぱり文化を一回殺すんですね。で、また、その余りをいただいてもう一回建設していくわけですp.182◆最後のページを見てハッとしたのは、コーディネイト 空里香 kab.inc 、とクレジットがあったこと。この頃にはもう関わりがあったんだなあと。
 | KADOKAWA 発売日 : 2022-01-21 |
夫を理想化し愛する妻。清廉潔白、新進気鋭の政治家の夫。しかし、過去の不正を知る女が証拠となる手紙を手に現れ、家庭生活も政治家生命もひっかきまわそうとするが…。夫の親友が相談にも乗り、解決にも手を貸し。硬い考えにこりかたまった妻も一連のできごとと説諭を経て、結婚生活第二幕へ、といった戯曲。19世紀末のイギリスでは、常識は男だけが持つもの、男は欠点も含めて女を愛するが、女はまったく欠点のない男としか愛せない、女は男をゆるすべきもので罰するものではない、というのは当時の一般的な通念だったのでしょうか、あるいはワイルドの希望だったのかしらと思いつつ。◆チェヴリー夫人 女の一生で本当の悲劇っていえば、たった一つしかないわ。それは、過去のことをいつも愛人のように思ってなつかしがり、未来のことはいつも夫のように思ってあきらめていることよ。p.156◆ゴーリング卿 人間は男も女も、お互いにそのような犠牲を受けるように創られているものではありません。それを受けるほどの価値は人間にはないのです。p.200
 | 皓星社 発売日 : 2018-04-20 |
古本に興味ない友人と歩いてる時に古本屋を見つけてしまい入った時のジレンマ。古本好きのディズニーランド、岡山の万歩書店。積ん読タワードミノ倒し地獄。古本屋でワクワクする本見つけてうちに連れて帰って、本棚に見つけた同じ本。あたりは、同じ古本好きとしてはげしく同意。ただ自分より著者のほうが古本に対してかなり気合はいってるなあ、と感じた。◆車で見知らぬ土地を走行中に「ブッコフ！！止めてっ車停めておくれーっ」「絶対ヤダ」加速する相方…をはじめとした、是が非でも古本！の著者と、ライトな本好きだけど古本屋はそれほど、な相方さんとの駆け引き、攻防、心の見抜かれっぷりは、ほのぼのしてしまう。◆関西の古本市での、値段のスリットがない本もって「おいくらですか？」て聞いたら15000円で、そんくらいしますよね、でも暑い中来てくれたし5000円で！まだ高いかな。いえ、あの買います。もう500円おまけしたげたら。ほんなら4500円ねー、のやりとり。ほんと好き。◆家にあんだけまあ腐る程に本があるんにぁーだ買うんかねっ、と妻に怒鳴られた旦那さん…のみならず会場全員の漁書する指先がピタッと止まった◆あと5分ていってもう15分たってるわよー、とつれられていく旦那さん◆通勤経路で当時下車していた環状線鶴橋駅のブックオフは、店内入口にJR自動改札機がある！◆昼休みに往復30分(徒歩＋電車)かけて古本屋まわり◆古書即売会に出店したときに、自分の出した本を買ってくれるのを目の当たりにし、語り合いたい、共感しあいたい気持ちをぐっとこらえるシーン。◆"エロ本を棚買いした女"と古書会館で話題に◆といったあたりも印象に。
 | 大洋図書 発売日 : 2023-04-28 |
きっかけはInstagramで流れてきた川北すピ子さんの投稿。こんな本に書きました！てので手に取り。気になった写真は、旧ユーゴのアール・デコ様式のケレンフェルド発電所。ジョージアに残る温泉施設の廃墟。気になった記事は、川北さん以外では…閉店したラブホテルから開店ベッドを自宅に移設した那部亜弓さん。消えゆく商店街を撮りつづける武部将治さん。廃エロ本小屋のことを書いたよごれんさん。廃医院や素封家の家の廃墟を撮りつづけた道民の人さん。廃便所ハンター雪村柚鈴さん。あたりが気になりました。眺めてるだけでもたのしめる。
シーソーブックスでタイトル見て、中をちらっと見て、撃ち抜かれてレジへ。まず、ツイッターでつぶやかなかったことをあげ、つぶやかなかった理由をさらっと書き、その後長文で解説していくといったもの。いや、もう、ここまで書いちゃうなら一周回ってつぶやいちゃったほうが、と思いつつ、それを紙に残すという所がまたなんとも個人的にツボで。◆こうやってある程度文字数を割いて書いてみてわかるのは、ツイートしようとしていた短文の背景には、140文字には決して収まりきれないさまざまな思いや考えがあるということです。(p.3)◆つぶやかなかった理由の一つは、好きな作品について書くと、作者本人の目に触れてしまう恐怖に敏感なこと。◆あと、ぐぐっときたのは、"むしろすべてのことにはファスナーがあるのでは、と。” ”裏切られたというけれど、その人が裏切ったというわけではなく、その人の見えなかった部分が見えただけ”◆「バランス釜厭わない奴大体友だち。」だそうなので、友だちなれるかも。だいぶ前に東京で一年半住んでたのは都営新宿線西大島駅徒歩2分2K78000円バランス釜の部屋だったから。
 | ポプラ社 発売日 : 2023-06-21 |
16時から24時まで開く私設の「夜の図書館」が舞台。そこは、亡くなった作家の蔵書だけを譲り受けて所蔵。貸出なし。入場一回千円、月間パスポート一万円、年間パスポート五万円。そこで働く人々は元の職場は図書館、書店、古書店、警察官、喫茶店と様々で。そしてまかないには昔の作家にちなんだ美味しい料理が食べられる。しかも古いけど家賃のいらない寮までついて。そこで働く人々、利用者たちの繰り広げる出来事、ちょっとした謎が描かれる一冊。いやもうほんとにそのこんなところあったら働きたい！本好きにとっては桃源郷の最上級みたいな環境。もちろんそこは一筋縄ではいかず、働く人々もなにかしら秘密をかかえ、利用者も蔵書の依頼者も一癖も二癖もある、作家、作家の元愛人、作家の遺族…さまざまで。基本的には風通しよく裏表なく労わりあいながら働きつつも、どうしても図書館の成り立ちや仕組みに興味をひかれてしまう。それは後の方で語られるのではあるけれど。個人的には元古本屋の彼の語りが印象に。そしてほぼ料理をしない身にも、森茉莉の焼きオイルサーディン缶醤油がけぶっかけご飯しあげにねぎ、みたいな料理はググッと作ってみたい気に。
 | 復刊ドットコム 発売日 : 2014-10-22 |
原作久住昌之でこのタイトルと来たら、女性版孤独のグルメ？！と思いきやちょっとテイストが違った。離婚して姓が象（すがた）に戻った30歳の主人公百合子、日本全国の象（ぞう）を撮りまくるぞ！と心に決めて、その道中でひとりメシ、とい寸法。立ちはだかるのは自意識。場違いなのでは、ジロジロみられる…けど、大阪でのどて焼き、どこの部位だ？といぶかりつつのダチョウの串焼き、ギョウジャニンニクに「とんこつ」、カレーうどん、タイ料理、中華街、牛丼屋とチャレンジしていき。モノローグが多くなることもなく、時に戸惑いつつも新たなひとり飯の喜びを得るの、割と好きだったんだけど、打ち切り作だったとは。人気なかった原因思い当たらず…掲載誌の読者との相性？
2023年06月12日
2023年05月に読んだ本
0501・若松英輔 悲しみの秘義 シーソーブックス 20230423
0501・坂本龍一 音楽は自由にする 新潮文庫 20230427
(0501・石川雅之 もやしもん 1-160話 コミックDays
(0503・ニューズウィーク日本版 4/18号特集：追悼・坂本龍一
0504・中沢新一 今日のミトロジー 図書館20230429受領
(0505・末森晴賀 17世紀オスマン朝―ヴェネツィア間の海上秩序―「海賊」をめぐるアフドナーメ・勅書の分析から― 歴史学研究 1032 2023年2月
(0505・澤井一彰 スレイマン１世治世末期のイスタンブルにおける居酒屋と酒の流通に対する規制の実態 歴史学研究 1033 2023年3月
0507・逢坂冬馬 同志少女よ、敵を撃て ブックオフ中の島 20230504
0507・向井透史 早稲田古本劇場 図書館 20230504受領
0507・芥川也寸志 音楽を愛する人へ ちくま文庫 beaversbooks 20230503
(0507・三倉康博 オスマン帝国事情報告としての『トルコへの旅』(「イスパニカ」2011 年 2011 巻 55 号)
0509・椎名誠 本の雑誌血風録 ブックオフ琴似 20230504
(0510・長峰博之 サライはどこに？—―ジョチ・ウルスの「首都」サライをめぐる近年の研究動向によせて―― 西南アジア研究 95(2022年12月)
0511・今村夏子 とんこつQ＆A 20230506
0511・椎名誠 新宿熱風どかどか団 ブックオフ琴似 20230504
0513・桂米朝 落語と私 ブックオフ南郷 20230504
(0513・大石トロンボ 新古書店ファイター 20230513
0513・生野幸吉 闇の子午線 パウル・ツェラン 円錐書店 20230428
0514・本の雑誌 2023年5月号 特集:さらば友よ！目黒考二・北上次郎・藤代三郎追悼号 20230513
(0514・BrownBook ブラウンブック 第6号 ブラウンブックスカフェ 20230513
0514・群ようこ 別人群ようこのできるまで 20230513
(0515・BrownBook ブラウンブック 第9号 ブラウンブックスカフェ 20230513
0515・MUSIC MAGAZINE増刊 坂本龍一 本当に聴きたい音を求めて 20230508
0516・内澤旬子 ストーカーとの七〇〇日戦争 20230513
0516・山之口洋 暴走ボーソー大学 ブックオフ中の島 20230504
0517・中江有里 わたしたちの秘密 ブックオフ中の島 20230504
0518・愛海夏子(編著) 貴族の世界:シークレット歌劇団0931 図書情報館
0518・坂本龍一 龍一語彙 二〇一一年-二〇一七年- 図書館20230517受領
0518・目黒考二 息子たちよ 図書館20230518受領
0520・植本一子 家族最後の日 ブックオフ南郷 20230504
(0520・澤井一彰 トルコ共和国総理府オスマン文書館における「枢機勅令簿 Muhimme Defteri」の記述内容についての諸問題(「オリエント」2006 年 49 巻 1 号) 0520・小川哲 君のクイズ 20230520
(0520・舞妓さんちのまかないさん23
0521・オオヤミノル 喫茶店のディスクール カルメル堂
0522・佐々木紳訳 ミドハト・パシャ自伝 近代オスマン帝国改革実録 図書館20230521受領
0523・永田希 再読だけが創造的な読書術である Kindle 20230430
0524・芥川也寸志 私の音楽談義 ちくま文庫 beaversbooks 20230503
0524・トーチライト シーソーブックス 20230521
(0527・モブ子の恋16
(0527・きのう何食べた？21
0527・金原ひとみ アンソーシャル ディスタンス 20230525
(0528・税金で買った本 1
0529・珈琲相場師 ブラウンブックスカフェ 20230513
0529・西川美和 映画にまつわるxについて 円錐書店 20230527
0529・ミャンマーの民主化を求めて シーソーブックス 20230521
0531・上原善広 日本の路地を歩く ブックマルシェ 20230515
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0501・坂本龍一 音楽は自由にする 新潮文庫 20230427
(0501・石川雅之 もやしもん 1-160話 コミックDays
(0503・ニューズウィーク日本版 4/18号特集：追悼・坂本龍一
0504・中沢新一 今日のミトロジー 図書館20230429受領
(0505・末森晴賀 17世紀オスマン朝―ヴェネツィア間の海上秩序―「海賊」をめぐるアフドナーメ・勅書の分析から― 歴史学研究 1032 2023年2月
(0505・澤井一彰 スレイマン１世治世末期のイスタンブルにおける居酒屋と酒の流通に対する規制の実態 歴史学研究 1033 2023年3月
0507・逢坂冬馬 同志少女よ、敵を撃て ブックオフ中の島 20230504
0507・向井透史 早稲田古本劇場 図書館 20230504受領
0507・芥川也寸志 音楽を愛する人へ ちくま文庫 beaversbooks 20230503
(0507・三倉康博 オスマン帝国事情報告としての『トルコへの旅』(「イスパニカ」2011 年 2011 巻 55 号)
0509・椎名誠 本の雑誌血風録 ブックオフ琴似 20230504
(0510・長峰博之 サライはどこに？—―ジョチ・ウルスの「首都」サライをめぐる近年の研究動向によせて―― 西南アジア研究 95(2022年12月)
0511・今村夏子 とんこつQ＆A 20230506
0511・椎名誠 新宿熱風どかどか団 ブックオフ琴似 20230504
0513・桂米朝 落語と私 ブックオフ南郷 20230504
(0513・大石トロンボ 新古書店ファイター 20230513
0513・生野幸吉 闇の子午線 パウル・ツェラン 円錐書店 20230428
0514・本の雑誌 2023年5月号 特集:さらば友よ！目黒考二・北上次郎・藤代三郎追悼号 20230513
(0514・BrownBook ブラウンブック 第6号 ブラウンブックスカフェ 20230513
0514・群ようこ 別人群ようこのできるまで 20230513
(0515・BrownBook ブラウンブック 第9号 ブラウンブックスカフェ 20230513
0515・MUSIC MAGAZINE増刊 坂本龍一 本当に聴きたい音を求めて 20230508
0516・内澤旬子 ストーカーとの七〇〇日戦争 20230513
0516・山之口洋 暴走ボーソー大学 ブックオフ中の島 20230504
0517・中江有里 わたしたちの秘密 ブックオフ中の島 20230504
0518・愛海夏子(編著) 貴族の世界:シークレット歌劇団0931 図書情報館
0518・坂本龍一 龍一語彙 二〇一一年-二〇一七年- 図書館20230517受領
0518・目黒考二 息子たちよ 図書館20230518受領
0520・植本一子 家族最後の日 ブックオフ南郷 20230504
(0520・澤井一彰 トルコ共和国総理府オスマン文書館における「枢機勅令簿 Muhimme Defteri」の記述内容についての諸問題(「オリエント」2006 年 49 巻 1 号) 0520・小川哲 君のクイズ 20230520
(0520・舞妓さんちのまかないさん23
0521・オオヤミノル 喫茶店のディスクール カルメル堂
0522・佐々木紳訳 ミドハト・パシャ自伝 近代オスマン帝国改革実録 図書館20230521受領
0523・永田希 再読だけが創造的な読書術である Kindle 20230430
0524・芥川也寸志 私の音楽談義 ちくま文庫 beaversbooks 20230503
0524・トーチライト シーソーブックス 20230521
(0527・モブ子の恋16
(0527・きのう何食べた？21
0527・金原ひとみ アンソーシャル ディスタンス 20230525
(0528・税金で買った本 1
0529・珈琲相場師 ブラウンブックスカフェ 20230513
0529・西川美和 映画にまつわるxについて 円錐書店 20230527
0529・ミャンマーの民主化を求めて シーソーブックス 20230521
0531・上原善広 日本の路地を歩く ブックマルシェ 20230515
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 | 文藝春秋 発売日 : 2019-12-05 |
タイトルに即して言えば、「同じ悲しみなど存在しない。そういうところに立ってみなければ、悲しみの実相にはふれ得まい。同じものがないから二つの悲しみは響き合い、共振するのではないか。」(p.16)という一節が肝なのかな、と思った。それが「悲しみの花はけっして枯れない。それを潤すのは私たちの心を流れる涙だからだ。生きるとは、自らの心のなかに一輪の悲しみの花を育てることなのかもしれない。」(p.176)という言葉に敷衍され。著者がどのような悲しみを負っていたかは、p.186で語られ。◆そして悲しみにとどまらず、読むことと悲しみの共通性、読むことの能動性、作品は読まれることで全貌があきらかになる、といったことが語られ。◆「引用は、人生の裏打ちがあるとき、高貴なる沈黙の創造になる。そこに刻まれた言葉は、人がこの世に残し得る、もっとも美しいものにすらなり得る。」(p.216)といった一節にグッと来る。
 | 講談社 発売日 : 2005-05-23 |
菌の見える沢木が某農大で菌や発酵を研究する樹研究室に入るところから始まる物語。細部の説明は端折りつつまとめて読むとなかなかに面白かった。毎日がお祭りよね。終わらない学園祭的な。そして舞台も沖縄に、フランスに、アメリカにと勢いで大きくかわり。通奏低音には日本酒づくりがあり、と。最後、沢木が菌を見るだけでなくて操れるようにまでなったところ、菌から樹教授への呼びかけ、といったところがグッとくる。しかし農大…独自ルールがてんこもりでそこが面白く謎深くまた馴染めぬ人にはキツそうだなあと思った。コミックDaysで全話読了。
 | 新潮社 発売日 : 2023-04-19 |
先に吉村栄一「坂本龍一 音楽の歴史」も読んでたけど、本人が語ったものと、本人が語ったものも素材の一つとして他の素材と突き合わせて編まれたものとでは自ずから読んでいる感触も違って感じられた。表現とは。高橋悠治の演奏会でいわゆる現代音楽に出会った10歳。学生運動にハマった高校時代、あっさり転向して芸大に入り、しかし授業にはあまり出ず。三善晃の謦咳に接し。最初はビラ撒いて批判してた武満徹と、のちには小津映画の音楽について意見が一致して盛り上がり。週6日の徹夜も平気で、坂本があまりに活動的で、これでは身が持たないから、毒を盛ろうかと思ったこともある」と事務所の人に聞いた話。YMOのデビューで公的な存在として抑圧を受け、反YMO的な姿勢をとったりと複雑な思いを抱えていたこと。そして、この本が出る頃には「ぼく自身、今後CDを売って音楽家として食べていくということはできないでしょう。常にヒットチャートの上位にいるようなアーティストでないと、コストが回収できない。もう無理だなあ、と感じる毎日です。」(p.303)とも語っていて、率直、と感じた。
 | 株式会社CCCメディアハウス 発売日 : 2023-04-11 |
Special report 追悼・坂本龍一をお目当てに。「 4人目のYMO」こと松武秀樹、大江千里との交流、Minamataの監督のインタビューあたりが印象に。特に大江千里の語りは、音源を聴いてもらったこと、聴かせてもらったこと、ボルボの助手席にのせてもらってのシティドライブ、コインパーキングでや和食屋での邂逅、LINEの交換を坂本龍一の息子が手伝ってくれたこと、LINEで音楽の話がとまらなくなって3時間話したことなどなど、生き生きと伝わってきてよかった。以下備忘録。◆「だんだん響き重視」「建築的に音を重ねていって何かを作る、ということにはあまり興味がなくなってきたかな」◆自分の昔の曲を以前よりゆっくりと弾く理由「音符を減らし、（次の音符までの）空間を増やしたい。空間は、無音ではない。空間には音が響いている。その響きを私は楽しみたい」◆「千のナイフ」の録音、どの曲も全体像はなかなか言葉で説明されず、メロディー抜きのコードの進行や構成の説明だけがある状態。（略）音符に書けないサウンドエフェクトのような音については言葉と絵での説明があった。◆
 | 講談社 発売日 : 2023-01-13 |
「週刊現代」連載。時事ネタや現代の映画、音楽、テクノロジー、スポーツなど、さまざまな事象の背後に神話的構造、東洋思想、仏教思想を見出すというしつらえ。◆個人的に一番ヒットしたのは、「井之頭五郎とデカルトは似ている」から始まる「「孤独のグルメ」の食べる瞑想」。五郎が食を得る過程、シーンを「食べる瞑想」と描写し、それがデカルトとの比較、ユダヤ教の瞑想家カバリストから最後はイグナチオ・ロヨラにならった食べることによる「霊操」まで持ち出されて語られるスケールの大きさ。ミクロの一点にこれでもかと大きな話を持ち込む、面目躍如な一篇。読み終え、思わず、本棚から「孤独のグルメ」ひっぱりだしてきて再読しちゃいました。◆もう一つ興味深かったのは、いわゆる「四大文明」が興る頃から、人間の耳は聞こえづらくなってきた。「それまで人類の耳は、心の内面に語りかけてくる、繊細微妙な「声」を聞き取ることができた。この声は、意識の外から語りかけてきて、人生の重大事についての決定を人におこなわせる。」(p.58) 個人の意識なんてものよりも巨大な情報体（クラウド）から送られてくる情報に耳を傾けてれば、人生大きく踏み外すことはなかった、と。このへん記録があるとのことだが、どういう記録だったのか、可能ならあたってみたく思った。◆「ミトロジーの思考が、人間の知性の働きを、掛け算型の「レンマ」と足し算型の「ロゴス」とに分離して考えてきたからである。掛け算型のレンマ知性では、あらゆるものごとはたがいに「作用」しあい、相互につながりあっていて、そのつながあいは宇宙全体に及ぶ。ところが足し算型のロゴス的知性では、世界はブロックを積み重ねるようにして、論理的に構築されていく。」(p.112)
「海賊」をめぐるアフドナーメ・勅書の分析によって、
17世紀オスマン朝―ヴェネツィア間の海上秩序を、その前段となる16世紀の状況から説き起こしつつ論じたもの。バヤズィト2世時代は、海賊の取締主体は曖昧か双務的だったが、スレイマン1世時代はオスマン帝国が取締主体となったように、その時々の国際情勢やオスマン帝国の勢威が関係をオスマン-ヴェネツィア関係を規定。海賊とマグリブ私掠船の違いは、私掠船=アフドナーメで安全保障与えてない国や地域の船舶を略奪、とあるので、海賊はアフドナーメで安全保障を与えていようがいまいが略奪するということなのだろう。しかし、読んでて思ったのは、アフドナーメを与えられていたヴェネチアの船を略奪したら、それはもう私掠船しゃなく海賊では？という思い。17世紀前半のヴローラ事件を例にとっても、「私掠船」に襲われて、報復攻撃で自力救済したことをスルタンに激怒されたヴェネチア。じゃあ、どうすればよかったの？本来アフドナーメを与えたスルタンが、ヴェネツィアを守るか、守りきれなかったら補償するのが筋ではないの？と思ってしまった。そこらへんの「私掠船」の曖昧さが事件をきっかけに勅書で明確化されたのが17世紀のオスマン-ヴェネツィア関係なのかな。
17世紀オスマン朝―ヴェネツィア間の海上秩序を、その前段となる16世紀の状況から説き起こしつつ論じたもの。バヤズィト2世時代は、海賊の取締主体は曖昧か双務的だったが、スレイマン1世時代はオスマン帝国が取締主体となったように、その時々の国際情勢やオスマン帝国の勢威が関係をオスマン-ヴェネツィア関係を規定。海賊とマグリブ私掠船の違いは、私掠船=アフドナーメで安全保障与えてない国や地域の船舶を略奪、とあるので、海賊はアフドナーメで安全保障を与えていようがいまいが略奪するということなのだろう。しかし、読んでて思ったのは、アフドナーメを与えられていたヴェネチアの船を略奪したら、それはもう私掠船しゃなく海賊では？という思い。17世紀前半のヴローラ事件を例にとっても、「私掠船」に襲われて、報復攻撃で自力救済したことをスルタンに激怒されたヴェネチア。じゃあ、どうすればよかったの？本来アフドナーメを与えたスルタンが、ヴェネツィアを守るか、守りきれなかったら補償するのが筋ではないの？と思ってしまった。そこらへんの「私掠船」の曖昧さが事件をきっかけに勅書で明確化されたのが17世紀のオスマン-ヴェネツィア関係なのかな。
そもそも飲酒を禁じてたのはムスリムに対してで、非ムスリムには本来禁じておらず、居酒屋等が秩序を乱すとされて規制された時も、非ムスリムには酒類が充分行き渡るよう配慮されてた、と。「「イスラーム国家」たるオスマン朝において酒は存在すらしなかった, あるいは酒類の生産や消費はイスラーム的価値観によって常に厳しく禁じられていたとするような誤った理解は, 史料的根拠をもたない主張として退けられることになろう」「帝国全土のあらゆる人々に対して, 一切の酒類にかかわる生産, 流通および消費を禁じたという意味での「禁酒令」は、16世紀後半においては見られなかった」「16世紀後半におけるスレイマン1世の「禁酒令」が,その実態としては一時的な, そしておそらくは酒類の流通上の規制や制限に過ぎなかったという事実を確認することを試みた」といったあたりが肝かな、と。
 | 本の雑誌社 発売日 : 2022-08-26 |
「北書店の本棚」での北書店主の佐藤さん、向井透史さん、南陀楼綾繁さんの鼎談読んだらこの本を読まずにいられない。本当に、向井さんの近所の郵便局は事件が絶えない。それ以上に古書現世のお客さんも通りかかる人もクセの強い人が多い。「すみません、オナラしていいですか」、大声で商品の本を音読する人、働きたくないから古本屋になりたいと相談にくる学生、偽のサイン本を買わせようとする人、ダウジングの針金もって入ってくる人などなど。そしてあとがきにもあるように、お金の悩みと店が暇の話は手を変え品を変えよくでてきて、それを面白がっちゃいけないのかもしれないけど、面白く読ませてしまうところがまた芸だなあと。ただ、面白エピソード、哀愁エピソードの合間にハッとするような一節も。◆そのような選択肢のなかでどのように自分の店の形を作っていけるか。古本屋というのは表面的には小売業だが、実は流通業でもあるのだ。店というのはいろいろな形で本を動かす拠点なのだ。p.92 ◆美しいものに感情が動かされるというのはもちろん悪いことではない。でも、美しさとか優しさとかに飲み込まれる瞬間が怖い。日常の無駄に、視点を合わせていたい。p.317◆大変な状況のなかにも、これだけたくさん「本」を求める人がいる。なんとなく変わらない日常を生きがちな自分たちにとって、嬉しい光景が夕方まで続く。p.38◆「善き書店員」は読んでみたくなった。◆古書現世ブログの「Shinjuku Night」シリーズは大好きで読んでたので、その背景の一端も知れてよかった。◆
作者問題は脇において、作者のオスマン帝国滞在経験有無は、当時は重視されておらず、他の文献と同様に先行史料も用いたオスマン帝国事情報告となっている。当時公刊されていればオスマン帝国事情報告として受容された確率が高い、と。
 | 筑摩書房 発売日 : 1990-08-01 |
今となってはオールドファッションなところも散見されるけど、入門編としてはいいかなあ、と。◆「ウイリアム・テル序曲」と「ダフニスとクロエ」をやるとオーケストラになにかよからぬことがおこるというジンクス？レスピーギの妻の、作曲家の妻としては満点のサポート。スーザフォン、戦時中は吹口に耳を押し付けると遠くの爆音まで聞ける、簡便な聴音機としても使わていたこと。ストラヴィンスキー「春の祭典」の初演が賛否激しくうずまくスキャンダルだったことにからめて、作曲家が初演に立ち会ったのを著者が直接見た、バーンスタイン指揮、ヴァレーズ「沙漠」。それが巻末ちかくの「作品は作っている段階ではどうにでもなるものですが、ひとたび完成しておのれの手を離れたが最後、ヤツは作ってやった主人にはむかってくる。これでどうしていい気分になれるでしょうか。」(p.211)という慨嘆につながる流れ、といったあたりが印象に◆エル・サロン・メヒコ。フランクの弦楽四重奏曲。シャブリエ「スペイン」。ジョリヴェ、メシアンにも影響をあたえたラヴェル「マダガスカル島民の歌」、スカルラッティ「猫のフーガ」あたりは聴いてみたくなった。
サライは一つか二つか、どこにあったか、どう移転したかについては、(1)「旧説」バトゥによって旧サライ（サライ・バトゥ）が、ベルケによって新サライ（サライ・ベルケ）が建設（orベルケが建設、ウズベクのときに移転）(2)「定説」サライ・バトゥとサライ・ベルケ／バラカはともに旧サライ（セリトレンノエ）で、新サライ（ツァリョフ）への移転はウズベク治世末期かその死の直後 (3)「新説」�．汽薀い楼譴弔妊札螢肇譽鵐離┛篝廖�ツァリョフ遺跡はギュリスタン。(4)「新説」�▲汽薀い脇鵑帖ゝ譽汽薀ぁ淵�ラスヌイ・ヤル遺跡などが候補）と新サライ（セリトレンノエ遺跡）があり、この論文では、文献史料からサライはふたつ、ウズベク治世の1330年代かそれ以前と推定、しかし位置については特定が難しい、とされる。新説からの「新視点」としては、移転の要因がカスピ海の水位上昇に求められたこと、ギュリスタンの興隆にペストの影響が関連づけられたことがあげられる。また、真の「首都」は季節移動するハンの天幕としても、首都としてのサライの役割として、文化・宗教・経済的な中心の役割が考えられ、また君主の墓地としての可能性も示唆される、と。◆自分の知っていた論点はこの論文における「旧説」にとどまっていたので、四半世紀もすると研究も進むものだなあというのをあらためて実感。位置の特定については、あらたな考古資料の発掘等があれば進展するのだろうか。何をもって首都で、何をもって移転でそれはいつと言えるか、というのは、各王朝で論点もさまざまあがると思われ、自分もオスマン帝国については少し考えてみたこともあり。それを思い出しつつ、比較しつつ読むのもまた楽しかった。
 | 講談社 発売日 : 2022-07-21 |
アメトーークの「本屋で読書芸人」に感化されて手にとり。接客が大苦手な中華料理屋のバイトが、文を読むなら言えると、「いらっしゃいませ」から始まり詳細なマニュアルを作り、それが小説に、という話だったが、読んでみるともちろんマニュアルだけで小説にはなってなかった。けれど、店員としてはぽんこつな主人公をあたたかく受け入れてくれるバイト先の父子、自分が少しできるようになると、最初の頃の自分を忘れて、新しいバイトが接客できないことにいらだってしまうこと。でも、新たなマニュアル作りが新たな関係を産み、父子と主人公と新しいバイトの関係性も変わっていき…と最後は気持ちがあたためられた心地の表題作。あとの三編は、自分たちのしてしまったことを嘘つきと言われる同級生のせいにしてしまったことで、外に出られなくなった姉、気がつくと空気のように存在が忘れられてしまったと感じた弟。自分の利己的な動機で起こしたことを保身のために認められず、二度とも夫に後始末してもらい、結局は被害者のせいということにおさまってしまった妻。あの人にお金を課してはダメと忠告されてたのに、気がつくと懐に入られ、けどお金もせびられず、ご飯などつくってくれて仲良くなり、この人はそんな人じゃないと思った矢先に一万円貸して次の日に消えられるお話、とひんやりとするお話三編で気持ちを冷やされる。
 | 新潮社 発売日 : 2005-10-28 |
前作、本の雑誌血風録と少し被っているけど、椎名誠が会社をやめて、作家としてどんどん活躍していって、本の雑誌社が正式に株式会社になって、といった時期のことが描かれている。それにしても、椎名の遅筆にいらついた星山編集長がケンカでタイホされて、あわてて書きはじめたり、あるいはサイン会やった同じ書店で一週間後に取りたい本の前に陣取った男をなぐりつけたり、なかなかに荒っぽいご時世だったんだなあ、と（今ならアウトだよなあ、と思いつつ）。前に読んだ時も一番印象に残ってるのは、「もだえ苦しむ活字中毒者の味噌蔵」のイラストを沢野ひとしがぜんぜん書かずに逃げ回って、滞在先の長崎から小包がとどいて、ようやく描いたかとみんなが安堵したら、中からカステラと、ごめんねてイラストが一枚出てきて目黒考二が「ばかやろう！こんなカステラ捨てちまえ！」と怒ったシーン。結局、発売は10ヶ月遅れた…と。あと群ようこの仕事が、総務庶務経理営業編集配宣伝広報担当かつ椎名誠への原稿依頼の窓口ってすさまじいなあ、と。そして、初サイン会への助っ人学生のサクラを頼んだ椎名誠への、目黒考二のただしくもクールな対応と、けど心配で見に行ってしまうあたりがほっこりしました。最後の方は、目黒社長が「会社を経営する、ということは無知でいてはいけない、ということでもあるんだ。非常に怒りつつ、そういうことがわかったよ」(p.328)と語った、本の雑誌社あわや倒産の一幕も垣間見えたり。
 | 創元社 発売日 : 2013-11-13 |
読書室ポワロにあったアンドレ・ケルテス「読む時間」。以前手放しちゃってたのでなつかしく、眺めました、本読む人々の写真集。パリから昔の東京から、いくつかの都市とさまざまな人々。ゴミの中でむさぼるように、ひなたでくつろぎながら、静かに椅子に座って、などなど。最近は会社の休み時間がはかどります、個人的には。
 | 皓星社 発売日 : 2023-05-09 |
すべての新古書店好きに捧ぐ…無限の資金と無限の部屋の広さと無限の本を読む時間があれば、こんなことに悩まなくても済むのにと思いつつ、そんなことは望むべくもないので、新古書店をぐるぐるめぐったり、新古書店でさまざまに思いあぐねてしまう。うんうん、わかるよ真吾、といいつつ、最後までページをめくってしまった。父の蔵書を勝手に母に新古書店に売り払われていまはカリスマセドラーな少女、バーコードリーダー片手に悪魔のような速さでせどりをする男、彼女に金持ちぶってふるまい、新古書店好きだと告白できない男などなどサブキャラもクセが強くて印象に。島田潤一郎さんの真吾は新古書店に来るひとりひとりそのもの、という趣旨のあとがきに深くうなずき。新古書店いかない人にはなにがなんやらかもしれないけれど。
 | 文藝春秋 発売日 : 1986-03-08 |
子供向けの落語入門をちょっとアレンジしたもの、というだけあって、懇切丁寧わかりやすい。講釈師はあくまで講釈師として話の登場人物を語るが、落語家は、登場人物になりきって語る。サゲは一種のぶちこわし作業、さまざまのテクニックを使って本当らしくしゃべり、最後に「これは嘘です、おどけばなし」とひっくりかえすのが落語。前後のことを考えて高座をつとめる人が減った、自分だけ受ければそれでいいやという、余裕のない人がふえた。日本の速記術は、明治に落語の速記本が大売れしたことから普及が加速した。といったあたりが印象に。「落語は現世肯定の芸であります。大きなことは望まない。泣いたり笑ったりしながら、一日一日が無事にすぎて、なんとか子や孫が育って自分はとりよりになって、やがて死ぬんだ---それでいい---というような芸です。」(p.215)◆ラジオや動画だとどうしてもこぼれおちてしまうものがあるんだなあ、というのも感じた。
 | 早川書房 発売日 : 2021-11-17 |
時は1940年前後。ドイツに侵略されたロシアで、母を殺され、家を焼かれ、村を滅ぼされた少女セラフィマ。赤軍に助けられ、狙撃兵の道を進むことに。最初は、ドイツ兵を殺し、母を撃った狙撃兵を殺し、自らと母の亡骸を侮辱したイリーナを殺すためであったが…。読み終えて。正義も悪も、正常も異常も、敵も味方もわからなくなってくる。だからといって何でもありでいいわけではない。その中でもセラフィムは己の中に軸を持った、「女性を守るために戦うこと」。高らかに口に出した人がどうしたか、黙って背中を見せてた人が何をしたか。戦後に何をすべきか、どう生きるべきか、という視点も提示され大事なこととして扱われた。戦下にも戦後にも、人は生き、生活はあるのだから。という思い。◆楽しむな、とイリーナは言った。自分は人殺しを楽しんでいた。p.266◆自分たちは神ではない。では神は何をしているのか。神がいるというのなら、彼は安寧の世界から地上に地獄を造り、その様子を俯瞰しているというのか。p.293-294◆「私からアドバイスがあるとすれば、二つのものだ。誰か愛する人でも見つけろ。それか趣味を持て。生きがいだ。私としては、それを勧める」p.363-364 (リュドミラ・パブリチェンコ)◆セラフィマが戦争から学び取ったことは（略）命の意味だった。失った命は元に戻ることはなく、代わりになる命もまた存在しない。p.477
 | 新潮社 発売日 : 2002-01-30 |
お硬い流通業業界誌の編集長だった椎名誠が、目黒考二と本の話でもりあがり、目黒考二が手作りの書評個人誌を出してさらにもりあがり、それを雑誌にしてしまおうとつっぱしり、ついに沢野ひとしや木村晋作も巻き込んで本の雑誌社をつくり、その一方業界誌の方もさまざまに企画を立て、東奔西走しあぶらがのっていて、しかしいよいよその両輪が苦しくなり、会社やめるか…となるところまでが怒涛の勢いで、時代も文体も話題もはげしくあっちこっちに行きながらつづられる。とにかく猛烈な熱量、パワーを感じて引き込まれる。一度本を出して踏み出すと、世間に見出され、全方位的にお声がかかり興味関心が爆発的に広がっていく様が。ラジオ出演にインタビュー、プロレスから旅からもうもうもう、と。◆目黒さん初めて本を読んだのが中学三年の春休み前というのは意外だった。その後、大学入学後から本本本本の生活で、有名なシーン、椎名誠の会社を、本が読めないので辞める、というシーンもちゃんと出てきて。また本の雑誌が有料の出版広告をことわるくだりをはじめとしてそのクールさが際立っていて。また、木原ひろみ、のちの群ようこをめぐる話も興味深かった。自分の会社の志望者の落選者の履歴書からひろいあげて連絡し、その話がおもしろくてみんなから好かれ、しかし狭い事務所でのあれこれに怒りがおさまらなかったり。◆藤代三郎「戒厳令下のチンチロリン」、別人群ようこの できるまで、安部公房「榎本武揚」、井上靖「四角な船」は手に取りたくなったなあ。
 | 岩波書店 発売日 : 1990-12-19 |
パウル・ツェランを知ったきっかけは、大学生のときに、香山リカのエッセイで、讃歌と非在の者のばらの一部がとりあげられていたのを見かけたこと。学生時代に挑戦してみたが、詩も詩論も歯が立たず手放した一冊。今回、円錐書店で見かけたのを機に書い直してみたけれど、やはり自分には難解。著者自身が、「もともと翻訳されたテクストに即して詩を解釈することは不可能だ。」(p.78)と語る以上のむずかしさを感じる。それでも讃歌と非在の者のばらの周囲をぐるぐるし、ホロコースト、ユダヤ人であること、神への信仰、涙、石、黒いミルクなど、モチーフや頻出するテーマを切れ切れに追い求めることをのみ行い、わからないなりに、心にとまった詩をいくつか抜き出した読書だった。特に「プラハにて」「フーエディブルー」が印象に。◆祈れ、主よ／わたしたちに向かって祈れ、／わたしたちは近くにいる。p.62「テネブレ」◆沈黙、炭と化した／双手のなかで、金のように／煮られた。p.121「ヒューミッシュ」◆決してない。世界を下降しつつ。ぼくは歌わなかった。ひらかれて／きみはよこたわっていた、ぼくの／航行するたましいの前に。p.136◆何らかの進歩・開花への期待とは逆に、むしろ地軸回転が止まらぬかぎり、時間停止、時間消失がないかぎり、「いつ」という花は開いてしまう、という恐れである。p.146◆大気の／なかから眼の／鋏で／切りとれ／祈りの手を。おまえの口づけで／その手の指を切りつめよ」p.283（光の強迫3・7）
 | 本の雑誌社 発売日 : 2023-04-13 |
目黒考二・北上次郎・藤代三郎追悼号。いちばん目黒考二さんらしいと思ったのは、「「新宿鮫」だけは著者よりも俺のほうがわかっているという。だって大沢さんに向かって「新宿鮫」はそういうシリーズじゃないんですよ」ってこんこんと説教していました」てエピソード。いちばんぐっと来たのは、群ようこと、目黒考二がつけたペンネーム「群ようこ」を、でもいい名前だよね、と笑いあったところ。笹塚日記でサザンテラスのクリスピー・クリーム・ドーナツに行列してたのは、同じところに並んだことのある身としては共感しかなく。10月までカレー二回おかわりするぐらい元気だったのに、、11月はさすがに食欲減ってた、という証言もあり、急転直下の今年１月の訃報だったんだなあ、と。◆ひさびさに書評コーナーも読み、◆深刻な米国のオピオイド危機…「DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機（ベス・メイシー、神保哲生訳、光文社未来ライブラリー）詩赤く◆ケン・グリシャム「リプレイ」新潮文庫〜藤岡みなみ推薦◆渥美清「お遍路が一列に行く虹の中」、太宰治「追憶のぜひもなきわれ春の鳥」（村上護「きょうの一句」新潮文庫）あたりは手に取りたくなった。
 | 文藝春秋 発売日 : 1988-12-10 |
本の雑誌血風録と本の雑誌目黒考二追悼号を読んだら読みたくなった一冊。就活にあたってはのほほんとしてたけど、いざ広告代理店に入ってから本の雑誌社に至るまでの三社はまさにドタバタ、ブラック勤務、パワハラ、セクハラ。やりがいのあることもあったにしても。そんな中目に飛び込んできたのが本の雑誌。面白く読みふけり、椎名誠が編集長をつとめる雑誌の会社の求人に応募したところから話しは転がり…と。以降は椎名誠、目黒考二とのやりとりを中心に追っていき。目黒考二とは、お互いに、冷たい目で見られてたという記憶。目黒さんも笑うんだ、という感慨。最後はペンネームの名付け親になってもらい、実務をほぼ一人で回す立場から、作家として巣立っていくまでのストーリー。別の視点からの「本の雑誌風雲録」「本の雑誌血風録」。
体阿弥さんの須賀敦子「トリエステの坂道」にまつわる3ページが個人的ベスト。心にしみわたった。絶対自分でも読もうと思う。父とコーヒーとの関係、石が呼んでいるネックレス、留学先で出会った親友キムとの邂逅と再会の話もよかった。
 | ミュージック・マガジン 発売日 : 2023-04-28 |
1978年から2022年のものまではばひろく、この雑誌に語ったこと、他のミュージシャンにインタビューしたこと、作品紹介などが収められた一冊。坂本龍一最後の音源（20230316）をかけながら即興演奏を繰り広げた大友良英と小山田圭吾という一節を見て、熱烈にそこに立ち会いたかったという思い。さまざまな作品を作編曲プロデュースしてるのを知り、その一部なりともふれてみたい思いに（坂本美雨「aquascape」、飯島真理「ロゼ」、「海や山の神様たち」、大貫妙子「UTAU」、そしてインスタレーションLife -fluid, invisible,inaudible... 、YearBook2005-2014）。作品紹介も秀逸で、特に「音楽図鑑」の曲を微に入り細に入り解説されてるところは、そこまで細かく聞けてなかったので、首っ引きで聞き返した曲もいくつか。
インスタントコーヒー飲むなんてかわいそう、とつづってた伊丹十三が、実は自分も飲んでたという茶目っ気。開店し、コーヒーの臭いが染み付くまで半年かかったというブラウンブックス南3条屋根裏店。「飯尾和樹のずん喫茶」を是非みてみたくなるような心温まる紹介。悪口しか言わないよ、という樹木希林に、向田邦子の話を聞きにいった太田光…悪口と言いながら絶賛しているように聞こえた、と。産業革命のころのイングランド、アイルランドにあった「ノッカー・アップ」という頼まれて、朝、人々を起こしにいく仕事、初めて知った。辞めるというスタッフに、「うちの店のメインの商品ってわかりますか？それは愛なんです」という星川さん。といったあたりが心に残りました。
 | 徳間書店 発売日 : 2014-08-01 |
舞台は千葉の山の中の、自他ともに認める底辺大学。そこを舞台に、唐突に学期途中で閉校させようとする理事長、そうはさせじと立ち向かうお気楽サークルの面々と顧問の非常勤講師、といったしつらえのドタバタコメディ。お気楽サークルのメンバーは、やさしい会長、女社長的女子、鉄道女子、ゴスロリ、ホスト、パルクール好き、12年生と多士済々。そのやりとり、鬱屈、歓び、秘密、連帯感がジェットコースターのような事態に一喜一憂しつつ、最後はそれぞれの道をみつけて…と。コミカルで楽しかったけど、ちょっと会長が弱いなあと思いつつ。
 | 中央公論新社 発売日 : 2022-07-21 |
わたしの秘密からわたしたちの秘密へ。「走れメロス」へのオマージュも織り込みつつ。入れ替わりものやファンタジー要素は、個人的にはちょっと苦手とする要素だったけれど、生きる気力をなくしかけていた玉青が、偶然運び込まれた病院で出会った、いるはずのなかった姉妹。入れ替わることによって、お互いの見方も、世界観も影響を受けて、親、恋人、同僚、子供との関係もすこしずつ変わっていき…と。きっかけもパターンもわからず、気がつくと入れ替わり、思念があふれてまざりあいそうになる不思議。繊細で謎めいた物語だった。
 | 北海道新聞社 発売日 : 2022-11-10 |
平民の作文以外はほとんど読了。北の大地にこんな魅惑的な歌劇団があったとは。何だか圧倒的に楽しんでる、楽しそうだなというのは伝わってきました。オススメされて手にとった一冊。王道のふたりはそれはもう凛々しいんだろうけど、個人的にはあいざわさんが気になりました。受け答えや考え方、チャック全開事件や沖縄移住のため出れませんのはずが、翌年は出演してたり、色々謎ったり興味津々。オススメしてくれたから断片的に伝わってきてたものが点と点だったのがつながった感。ドゥワイエ。タオルヌンチャク。ガストドンキーペレサーレ。架空の年越しそば。ハダカで持たされる手土産 「あのう…ぼくの名前…とおるじゃなくて、たかしなんです」（あいざわさんメインのお祝いなのに…）。「信号が黄色になったら走らない。軟骨をすり減らさない。それでもしもバスに乗り遅れたら、帰る！」あたりが特に印象に。まだ平民になる決心はついてないけれど。
 | KADOKAWA 発売日 : 2017-11-04 |
2011年から17年の様々な媒体に発表された発言を36のテーマに分類したもの。よくこれだけ集めてきたなあ、と。ドイツの哲学者、テオドール・アドルノはアウシュビッツ虐殺の後、詩を書くことは野蛮であると言った。こう言い換えたい。フクシマの後に声を発しないことは野蛮である。(p.349)を地で行くように、フクシマ前もフクシマ後も社会的な発言を続けていた坂本龍一。イロコイの人たちの言い伝えで、大事なことを決める時は7世代先のことまで考えて決めるという有名なものがあります。(p.96)が根底にあるかのように、環境問題、国際政治、さまざまに発言しているのを知ることができず。それだけでゃなく、記憶と想像力、演奏も創造、「家具の音楽」やアンビエント・ミュージックも人の意識を規定すること、シェールガス採掘と地震、国会や政府が民意を反映しないことなど、さまざまな論点。ほっこりしたところでは、一緒にこれ以上ないぐらい美味しい鮨を食べにいった坂本美雨が、「の夜のライヴでこんなにおいしい鮨を食べたと、ネタをひとつひとつ挙げて感動を綴る10分にも及ぶ大作の「鮨の歌」を即興的に歌ったほど(p.300)」という一節。その歌聴いてみたかった。
 | 早川書房 発売日 : 2020-01-09 |
20年間、基本会社に泊まり込みと週末の競馬で、家に帰るのは日曜日の夕方から月曜日の朝までの実質5時間のお父さん。正月夏休みGWだけは長く休めるけれども。酒と家族は読書の敵、なんて本も出されてるイメージからすると、意識としては、意外とまともなお父さんぶりだなあ、という感想。もちろん子育ての実際からすると妻にかなりの比重がかかっていたのだろうけど。そしてお父さんとしてもそれなりに慕われているのでは、という感触。ちいさいころはぶつかるようにして出迎えてきてくれた兄弟が今では、思い。うちも商売をしていればよかったんだ。そう思った途端、家族がばらばらになるのは当然だと言っていたくせに、実は淋しかったことに気づく。そうか、オレは淋しかったのか。(p.158)と感じたり。◆自分の気にいった服を捜すのもいいけれど、いま着ている服を好きになること、そして自由に着こなすことも大切なのではないか、父はそう考えているのである。p.175◆だから息子よ、一生の友でなくてもいいのだ。そのときの友も、いまの友も、すごく大切なのである。私たちは一人で生きていけるほど強くはない。いま目の前にいる友に出会えたことは、ひとつの奇跡なのである。p.223◆といった思いも抱いていたり。次男の就職内定祝いに食事会で、「あとはすぐに会社をやめないことだな」と言った私に、「お父さんはそんなこと言う資格ないよね」と長男が言った。(p.174)のシーンにはくすりと。大学出た数年間で７，８社を勤めたりやめたりしたことを家族は覚えてて本人だけ忘れてたのだとか（そのうちの何回かは「本が読めないので辞めます」）。また本の雑誌の目黒考二追悼号に長男、次男が寄せた文を読み返したくなった。
 | 太田出版 発売日 : 2017-02-01 |
「あんだけいなくなっても平気だって言ってたのに、いざ本当にいなくなると思ったら、自分の自由って石田さんありきのものなんだってことがよくわかった」（略）「身をもって教えてくれてるじゃん」(p.183)。家族や友人、知人、周りの人への悪感情も包み隠さず綴られている。そのストレートさには脱帽と言うかなぜそこまでさらけだせるんだろう、と思ったり。石田さんの存在の上に成り立つ自由という自己規定。石田さんも植本さんも、石田さんのガンさえ、よし！これで何か書くぞ！という燃料にできる、いや燃料にしてしまわずにはいられない業の深さ。むずかしい事態がもちあがるごとに、逆にテンションがあがってしまうこともある植本さん。でも、ダメージを受けたことも、少し距離を置きたいと思ったことも書かれ、交互に、と。「無理はしない、絶対、も決めない」(p.241)
 | 小学館 発売日 : 2023-05-12 |
今回は過去編。すみれやキヨの「おかあさん」にあたるあずさの、入門時の話。てきぱき、ハキハキときてるあずさに比べてマイペース一本やりの同期の夕子。しかし正反対故かウマが合う二人は姉妹のように仲良くなり、と言ったところまで。
御前会議、勅令の定義には着目。枢機勅令簿にさまざまな文書があることを示唆。ただ実見できないのでどれがどれかを見極めるのは限界あり。
 | 朝日新聞出版 発売日 : 2022-10-07 |
アメトーーク「本屋で読書芸人」で、クイズ大会の決勝、最終問題で一言も問題が読まれる前に解答が出て優勝するシーンから始まる、とプレゼンされ、いたく気になって手に取る。その謎を敗れた対戦者が解こうと奮闘するのと、決勝戦の回想、彼のクイズ遍歴が交互に語られながら進むストーリー。一見、解明不能な謎に論理的に迫っていく手腕が読み応えあり。そこからのひねった展開も含めて。クイズ巧者たちの暗黙の了解やテクニックが一般聴取からすると、「高度に発達した科学技術は魔法と区別がつかない」（アーサー・C・クラーク）と見えること。クイズを解く時の瞬時の思考が、ボールを蹴るまでの秒単位で長口舌をふるう「キャプテン翼」を思い出させた。人生は大半が答えのないクイズ、一部の答えがあるものがクイズとして競技される。クイズに人生を肯定される。正解の「ピンポン」という音は、解答者だけでなく、出題者も肯定する音。といったあたりの視点が面白かった。
 | 文藝春秋 発売日 : 2022-03-08 |
ストーカー事件による不利益は、いちじるしく公平を欠くと思えるほどに、被害者側にのみ重くのしかかる。住居移転を余儀なくされ、仕事にも支障を来たし、軽々にいえないことにより今までの友人関係や地域とのつながりに日々が入り、警察や裁判所関係にとられる膨大な時間と手間、それに比して加害者の刑期、金銭的補償、精神的賠償、いずれの面でもまったくもって不十分というのがこれでもかこれでもかと描かれる。そして恐怖というものが人の判断をいかに曇らせるかということが如実にわかる。これを、本来なら思い出したくないだろう被害者の立場から、相手が誰かを特定できないようにしたとしつつも、詳細に、克明に記してくれたということには頭がさがる思い。被害者が事件後も安心して暮らせるようにという観点からの、加害者を罰するだけではなく治療も受けさせるべきという提言も。◆被害者になってしまったのだ、自分は。何もかも奪われてひっそりと暮らす、被害者に、気がついたらなろうとしている。…冗談じゃない。奪われて、たまるか！(p.77)◆そしてなぜ被害者側にこんなに屈辱的な思いを強いられ、隠れるように怯えて生きなければならないのか。被害者は隠れるのがあたりまえと世間は思っているようにすら感じられます。(p.308)◆「絶対安全」は、もう私の人生にはないのだから。(p.392)
 | 誠光社 発売日 : 2023-02-05 |
カルメル新聞第17号で、カルメル堂店主さんがオススメしていて気になり。◆店は喫茶店という看板をかかげている時点で、客はそこに客として珈琲飲みにきている時点で、そこには何らかの契約が発生してる。店は珈琲の味や雰囲気を適正な価格で提供し、客を縛ったりせず、美味しくない珈琲に物語をのっけることで権威化したりしない、そうあるべきなんじゃないの、というのが通奏低音。そこから喫茶の話にとどまらず、消費すること、資本主義社会、商売のあり方というところまで踏み込んで論じられるエッセイ。"客が企業の仕事を手伝わされている。 "、それをまた疑問もなく受け入れている客がいる、という視点は大事だなあと思った。知らず識らずのうちに受け入れてることに鋭く切り込んでくるものがあると思った。◆「「まだ没頭すべき仕事に出会っていないから」 真剣に取り組まなくていいんじゃなくて、目の前にあるすべての仕事は損得を超えて没頭すべきことだって決まってるんだよ。」(p,14) 「消費をさせられるために余暇を与えられた、と言い換えてもおかしくない。 余暇のために時間を賃金に換えることが仕事になるのであれば、あらゆる職業は虚業に近づいていくし、労働自体の価値が薄まり、労働が寸劇化していく。」(p.17) 「金なんて人生を左右するようなシステムではないのに、人間の関わりにおいて勝手にそういう風習が生まれてきただけで、人生が金で潰れるなんて、そんなのヤクザの仕事かヒステリーでしかないよ。」(p.38)
 | 東京大学出版会 発売日 : 2023-02-02 |
自伝だからか弁明の書だからかミドハトは終始清廉、制作の実現の意を尽くし、それをくじこうとする敵どもは失敗しまた恥いって暗殺や誹謗を止めるといった基本線。もっとも中央政界での立ち居振る舞いはそうはいかなかったことが感じられた。あとがきにあるように、政敵たちのミドハト評価やミドハトが書かなかった点も重要、と（ズィヤーやナームク・ケマルは制憲の同志だったにもかかわらず一言もふれられず。自身が適用され追放されることになった、憲法第113条の挿入をめぐっておこなわれたとされる、アブデュルハミト２世とのかけひきについても）。ただ、大宰相としての力量が足りなかったと評価するものには、在任期間3ヶ月ほどが2回でそれを問うのはいささか酷ではという言葉を返したい。トゥナ州、バグダード州の知事としては、内政に辣腕をふるい、大きな仕事を残したのでは、という印象。謎だったのは、政敵マフムト・ネディム・パシャはなぜロシア大使イグナチェフのいうこと全面的受け入れ？スルタンの言うことならともかく、なんの利益があって？賄賂でももらっていたのだろうか。
 | 筑摩書房 発売日 : 2023-03-20 |
前著「積読こそが完全な読書術である」が個人的にはヒットしたので、姉妹編ともいえるこちらも手に取った。なぜこの本をよむ？なぜ生きるのか？これを読みたいのはなぜか？という問いに繋がっていく様は壮大。再読で自分を組み換え、自分が組み変わるというのはなるほど、と。「強さ＝激しさ」から離れて、対象に向き合うフラットな「思考」、という視点は興味深く。◆「自分は何を大事にしているのか、それを大事にしたい自分は何なのか、こういった問いをおろそかにしたまま強い刺激だけを追い求めていけば、行き着く先はバーンアウト」◆「以前に読んだときの体験と、再読の際の体験とのあいだにある「開き」や「溝」。それを認識することが再読であり、この「開き」や「溝」を認識することが読書の本質にかかわる」◆「 まことに奇妙なことだが、ひとは書物を読むことはできない、ただ再読することができるだけだ。良き読者、一流の読者、積極的で創造的な読者は再読者なのである。」(ナボコフ)◆斎藤美奈子「趣味は読書」、元ファッションモデルの社会学者アシュリー・ミアーズ「VIP」みすず書房あたりは手に取りたくなった。
 | 筑摩書房 発売日 : 1991-04-01 |
音楽談義、リズム談義、旋律談義、ハアモニィ談義、形式談義、楽器談義…といった章立てで語られる。芸術における異種交配は、そう手軽にゆくものではない、音楽はまず時間の芸術で、リズムは時間に秩序を与えるから何よりも優先、などの考え。◆別宮貞雄「音楽はその本質において歌と踊りから離れられぬものだ。十二音音楽から電子音楽に至る現代音楽の一つの系列は、この本質にそむくものだ」p.140◆ハチャトゥリアン「まず、旋律、なによりも旋律」「旋律は音楽の魂である。しかも旋律は、民族性をもっともよく表現する」p.77◆あたりが印象に。エピソードとしては、吹雪の中の陸軍軍楽隊としての行進、ある作曲家の自分の作品とはアカのようなもの、創っているときはともにすごしているのに、ひとたび身体から離れてしまえば…あたりがおもしろかった。最もグロテスクな打楽器---ラマ教のダコルという振太鼓の共鳴胴は、一対の未婚の男女の頭蓋骨でつくられます…には、そんなものがあるのか、と。
個人的に注目してた会社の、さのさんの仕事ということで待ちに待ってシーソーブックスで購入。以前、文学フリマで出してたトークセッションのzineがとてもよかったので。しかし、会社はもうじき閉業ということで続きが見られないのは残念。個人的にはやはり、UNTAPPED HOSTELの神さんの来歴が詳しく語られていて興味を惹かれた。ストリートで遊んできて見てきたことから身につけた知恵や空気感の話。UNTAPPED HOSTELの別館に設立された印刷所「STUDIO3」のことなど。これはまだシーソーブックスができる前の話。もうひとつ個人的に注目なのは、一時期足繁くクラブに通ってたみとしては、zine「クラブと生活」のお二人へのインタビュー。DJや運営の視点ではなく、客の視点から語るクラブ、というのが斬新で。もちろん、言葉とクラブは相性が悪いのかも、という思いは抱きつつも、それでも、と。ただそこには、始める楽しさと続ける難しさ、巻き込む難しさというのもあったみたいで。また、「だからひとつの生き方として、違和感を手放さないでいること、言葉をあきらめないでいる姿勢を伝えていきたいですね」（タバブックス宮川さん）という言葉も力強く。編集後記の「きっといつか時代のスクリーンショットとして、その次代の空気に新鮮に触れるものとして、こうした物質的なアーカイブは機能するのだろうと思う。」に深くうなづきながらページを閉じた。
 | 新潮社 発売日 : 2021-05-26 |
「無人島のふたり」でガン闘病中の山本文緒が、「金原ひとみさんの「アンソーシャルディスタンス」、死ぬことを忘れるほど面白い」と書いてて、手に取ってみたけど、なるほど、これを面白いというのは「恋愛中毒」を書いた山本文緒だなあと思った。アルコール中毒、プチ整形地獄、位置情報アプリと自分たちの性行為を録画した動画と激辛料理、不倫、コロナ禍による生きるよすがにしていたライブの中止…己を依って立たせるために、様々なものに依存しつつ、ひりつくほどの焦燥感に駆られ、狂っていき、それでも止まらない、止められない様、あるいはふと我にかえる様が描かれる作品集。◆本当の理由は「なんか」だ。「なんか好きじゃない」の「なんか」が重大な理由だ。人は「なんか」好きになるし、「なんか」好きじゃなくなるし、「なんか」セックスしなくなる生き物なのだ。確固とした意志、信念、理想がありそれに則って生きている人間が果たしてどれくらいいるだろう。(p.117)◆人間とは海に浮かぶ藻屑のようなもので、雨風や水中生物によって動いたり絡まったり離れたりする、不確実な生き物でしかない。(p.118)
 | コアミックス 発売日 : 2023-05-19 |
電話越しに聞いた涙。遠距離の二人はお互いの中間地点の福山で会うことにし、負の感情も吐き出して聞くことで、またお互いの気持ちを再認識し…と。
 | 講談社 発売日 : 2023-05-23 |
シロさんの５０代実感話、ケンジの実家のお正月に初おじゃま、そして、小日向さんとの結婚式準備でケンカしてシロさんのところに転がり込んできたジルベールの話など。シロさんは意図せずにプロポーズ的なことばと行動を投げかけて、ケンジが受け止めきれない一幕も。
 | 講談社 発売日 : 2021-12-20 |
途中から連載を読んだマンガなので出だしが知りたくて。一巻はほぼ石平くん早瀬丸さん白井さんの3人でストーリーが展開。図書館における弁償、レファレンス、電源使用の話などをテーマに。一冊の本の取り扱われ方から借りた人の人生まで妄想しちゃうところ楽しいなあ、と。子供の頃は本が好きだったのにだんだんと知りたい気持ちからも離れて、ヤンチャな少年になった石平くんが、大昔に借りた本の弁償からまた本を読むこと、わからないことを調べることに興味を持ち出したところに、昔の悪友に声をかけられ、というところまで。
 | 早川書房 発売日 : 2004-06-24 |
17世紀オランダはアムステルダムが舞台、ポルトガル系ユダヤ人ミゲルが主人公、その仕事は相場師。一度は砂糖相場で失敗して破滅の憂き目を見るが、今度扱う商品はコーヒー。彼に協力を申し出るもの、邪魔するもの、ぎりぎりの綱渡りをつづけながら、市場の独占を目論見、立案し、金策し、調達し、交渉し、機知をもってかけずりまわる。当時のアムステルダムの暮らしを彷彿とさせ、また歴史や商慣習や宗教といった側面も垣間見え。今じゃご法度の風説の流布や価格操作も当時は商習慣だった、と。それと名前は出てこないけど、コピ・ルアクまで出てくるとは。終章近くの、ミゲルとハナのダイアローグはよかったなあ、よかった、わたしが求めるのは少しだけです。結末は、苦さが残る、コーヒーだけに？本当なら手をたづさえてお互いを祝福したはずの相手を、ある者は破滅させ、ある者は完膚なきまでにやっつけ、ある者は大怪我をさせ片目を失わせ…。ミゲルに恩があるといいつつのこの仕打かよアルフェロンダ、という悪辣さにはいやな苦味を感じ。一筋縄でいかないのがこの世界だとしても。
 | 寿郎社 発売日 : 2023-03-31 |
ミャンマーにカレーを作りに、が異色。ミャンマーのカレーはアヒージョに近いらしい。ルーをごはんにかけて食べるという習慣もないらしい。それで最初はせっかく作ったカレーでも残されて、みたいな一文をみかけて手に取った。そして料理にはめっぽう油を使うとのこと。もちろんタイトルにあるように本線はミャンマーの民主化を求める人の活動。個人的には、北海道の在日ミャンマー人の活動を知ることができたのがよかった。国軍は、今回のクーデターに限らず、以前から少数民族には同じようなことをしてたこと。とにかく国軍に金が渡るようなことはしないでほしいという声。現地の弾圧の状況などが詳細に語られ。まずは知ること、募金すること、誰かに語ることの他になにができるだろうと感じつつ。暴力的に奪われた平和を平和的に取り戻すことは難しいのです。戦って取り戻すしかありません。(pp.66-67)という言葉が重く響く。
 | 実業之日本社 発売日 : 2020-08-05 |
とにかく映画「ゆれる」のプロダクションノートが読みたくて。個人的にもう何回見たことか、な映画だったので、クランクインまでの苦闘、キャストのこと、撮影のこと、読むことができて収穫だった。◆生きることだけが、大事である、ということ。たったこれだけのことが、わかっていない。(坂口安吾「不良少年とキリスト」)p.242◆（是枝監督は）「「描く」ということは、観ることも、撮ることも、書くことも、その中には必ず暴力性を含み、そして僕たち描き手は自分の目的の為にしばしばその凶暴性を野放しにしてしまうのだと言った。」p.211◆映画は言葉を尽くした散文よりも、行間から様々に想像を巡らす詩や俳句に似ていると、私は思う。p.49
 | 文藝春秋 発売日 : 2012-06-08 |
日本の路地を歩く、といえば、全国の大きな道路からちょっと入った路地を散策して…みたいなのを想像して手に取れば、中上健次が「路地」と書いた被差別部落の話だった。自身も「路地」の出身の著者が、全国の「路地」を、傷口に塩をなすりつけてまわるような旅なんかしなければいいのに、と自問しながらそれでも訪ねて歩き話を聴かねばいられなかった記録。差別はあるといえばある、ないといえばないようなもの、各人の心の中に巣食う、差別なんてないという同じ口で、あのへんは怖い、通りたくない、なんだかきみがわるい、という人もいて。積極的に部落をうたっていきたい人と、ほっといてほしい、寝た子を起こさないでほしいという考えの対立。といったあたりが印象に。以前、立花隆のノンフィクションで見た猿回しの村崎太郎の路地とのつながりや、吉田松陰と獄中で親しくなった久子の被差別部落のものとのつながりのエピソードも印象に。あと、「被差別の食卓」新潮新書、太宰治「佐渡」を読んでみたくなる。
2023年04月30日
2023年04月に読んだ本
(0401・ハイスコアガールdush 4
(0401・生きてるうちに推してくれ 2
0402・峠恵子 冒険歌手 珍・世界最悪の旅 山と溪谷社 図書館 20230325受領
0402・清水ミチコ 三人寄れば無礼講 図書館 2023027受領
0402・カベルナリア吉田 絶海の孤島 図書館 2023027受領
(0402・加藤茶・綾菜の夫婦日記『加トちゃんといっしょ』 20230401
(0402・三島芳治 衒学始終相談 1
0403・頭木弘樹 絶望読書 河出文庫 20230401
0403・ ヨシダナギ ヨシダナギの拾われる力 20230401
0405・【再読】本屋図鑑 夏葉社
0405・【再読】鷺沢萠 ありがとう（「ナグネ・旅の途中―場所とモノと人のエッセイ集」改題） 角川文庫
0405・【再読】鷺沢萠 かわいい子には旅をさせるな 角川文庫
0406・【再読】鷺沢萠 ウェルカム・ホーム！ 角川文庫
0406・ナンシー・リカ・シフ 世にも奇妙な職業案内 図書館 20230405受領 (from三浦しをん)
0407・植島啓司 恋愛のディスクール20230401Amazon発注 0406受領
0407・吉村栄一「坂本龍一 音楽の歴史」読書室ポワロ 20230324 1-6章,0407 7-11章読了
0408・宇田智子 三年九か月三日 那覇市第一牧志公設市場を待ちながら 市場の古本屋ウララ 20230405受領
(0408・スリランカでカフェはじめました kindle 20230408
0408・人間最後の言葉 図書館20230407受領
0408・【再読】金井真紀 世界はフムフムで満ちている
0409・絶望図書館 ちくま文庫 20230405受領
(0409・桜玉吉 日々我人間1 -2
(0409・ボオドレエル（富永太郎訳）Any where out of the world 青空文庫
0409・【再読】吉本ばなな キッチン …「キッチン」「満月 - キッチン2」のみ
0410booklogなし・【再読】村上春樹 国境の南、太陽の西 …ざっと
0411・池澤夏樹 星に降る雪 図書館20230409受領
0412・【再読】鷺沢萠 君はこの国を好きか
(0412・オルタナ旧市街 14
0413・サンキュータツオ もっとヘンな論文 20230408
(0415・三浦しをん 夢の旅路（「Seven Stories」所収）
(0415・会社員でぶどり8 …新入社員の活きのよさ。出向ラプソディ。
(0415・ダンピアのおいしい冒険5
0416・坂本龍一 後藤繁雄 skmt 図書館20230412受領
0416・吉田隼人 死にたいのに死ねないので本を読む: 絶望するあなたのための読書案内 図書館 20230405受領
(0416・とよ田みのる これ描いて死ね1-3
(0416・坂本龍一（編） 非戦 図書館20230415受領 …ざっと
0416・長峰博之 ジョチ・ウルス後裔政権史料は何を参照し、ジョチ・ウルス再編をいかに認識したのか？(野田仁 (編) 近代中央ユーラシアにおける歴史叙述と過去の参照 所収)
0417・碧野圭 書店ガール 20230413
0418・【再読】村上春樹 世界の終わりとハードボイルドワンダーランド 上
0420・【再読】村上春樹 世界の終わりとハードボイルドワンダーランド 下
0420・山本文緒 残されたつぶやき 20230415
0421・天野純希 有楽斎の戦 20230415
(0421・刷ったもんだ 9 20230421 Kindle
(0422・波よ聞いてくれ10 20230421 Kindle(0422・新井すみこ 気になってる人が男じゃなかった 1 20230422
(0423・ひとりで死にたい 6
0423・村上春樹 街とその不確かな壁 20230422
0424・山崎ナオコーラ 鞠子はすてきな役立たず 20230413
0424・椎名誠 アイスランド 20230413
0426・よしもとばなな サウスポイント 20230414
0426・香山リカ テクノスタルジア 図書館20230415受領
(0427・竹内絢香 ロンドン日記 3 Kindle 20230425
0427・天野純希 雑賀のいくさ姫 20230415
(0428・映画「Wakka」パンフレット 20230427 …48pに寄稿多数の豪華パンフレット
・0428芸術新潮 2023年5月号 追悼 総力特集 坂本龍一 20230427
(0429 zine 0番地. Wood Link
(0429 asirietok 1-3. Wood Link
(0429・高橋由佳里 新・トルコで私も考えた 2023 巣立ち編 20230429
0430・北書店の本棚 シーソーブックス 20230423
(0430・であいもん 15
(0430・ちょっ、桐谷さんそれ食うんすか？！15
(0401・生きてるうちに推してくれ 2
0402・峠恵子 冒険歌手 珍・世界最悪の旅 山と溪谷社 図書館 20230325受領
0402・清水ミチコ 三人寄れば無礼講 図書館 2023027受領
0402・カベルナリア吉田 絶海の孤島 図書館 2023027受領
(0402・加藤茶・綾菜の夫婦日記『加トちゃんといっしょ』 20230401
(0402・三島芳治 衒学始終相談 1
0403・頭木弘樹 絶望読書 河出文庫 20230401
0403・ ヨシダナギ ヨシダナギの拾われる力 20230401
0405・【再読】本屋図鑑 夏葉社
0405・【再読】鷺沢萠 ありがとう（「ナグネ・旅の途中―場所とモノと人のエッセイ集」改題） 角川文庫
0405・【再読】鷺沢萠 かわいい子には旅をさせるな 角川文庫
0406・【再読】鷺沢萠 ウェルカム・ホーム！ 角川文庫
0406・ナンシー・リカ・シフ 世にも奇妙な職業案内 図書館 20230405受領 (from三浦しをん)
0407・植島啓司 恋愛のディスクール20230401Amazon発注 0406受領
0407・吉村栄一「坂本龍一 音楽の歴史」読書室ポワロ 20230324 1-6章,0407 7-11章読了
0408・宇田智子 三年九か月三日 那覇市第一牧志公設市場を待ちながら 市場の古本屋ウララ 20230405受領
(0408・スリランカでカフェはじめました kindle 20230408
0408・人間最後の言葉 図書館20230407受領
0408・【再読】金井真紀 世界はフムフムで満ちている
0409・絶望図書館 ちくま文庫 20230405受領
(0409・桜玉吉 日々我人間1 -2
(0409・ボオドレエル（富永太郎訳）Any where out of the world 青空文庫
0409・【再読】吉本ばなな キッチン …「キッチン」「満月 - キッチン2」のみ
0410booklogなし・【再読】村上春樹 国境の南、太陽の西 …ざっと
0411・池澤夏樹 星に降る雪 図書館20230409受領
0412・【再読】鷺沢萠 君はこの国を好きか
(0412・オルタナ旧市街 14
0413・サンキュータツオ もっとヘンな論文 20230408
(0415・三浦しをん 夢の旅路（「Seven Stories」所収）
(0415・会社員でぶどり8 …新入社員の活きのよさ。出向ラプソディ。
(0415・ダンピアのおいしい冒険5
0416・坂本龍一 後藤繁雄 skmt 図書館20230412受領
0416・吉田隼人 死にたいのに死ねないので本を読む: 絶望するあなたのための読書案内 図書館 20230405受領
(0416・とよ田みのる これ描いて死ね1-3
(0416・坂本龍一（編） 非戦 図書館20230415受領 …ざっと
0416・長峰博之 ジョチ・ウルス後裔政権史料は何を参照し、ジョチ・ウルス再編をいかに認識したのか？(野田仁 (編) 近代中央ユーラシアにおける歴史叙述と過去の参照 所収)
0417・碧野圭 書店ガール 20230413
0418・【再読】村上春樹 世界の終わりとハードボイルドワンダーランド 上
0420・【再読】村上春樹 世界の終わりとハードボイルドワンダーランド 下
0420・山本文緒 残されたつぶやき 20230415
0421・天野純希 有楽斎の戦 20230415
(0421・刷ったもんだ 9 20230421 Kindle
(0422・波よ聞いてくれ10 20230421 Kindle(0422・新井すみこ 気になってる人が男じゃなかった 1 20230422
(0423・ひとりで死にたい 6
0423・村上春樹 街とその不確かな壁 20230422
0424・山崎ナオコーラ 鞠子はすてきな役立たず 20230413
0424・椎名誠 アイスランド 20230413
0426・よしもとばなな サウスポイント 20230414
0426・香山リカ テクノスタルジア 図書館20230415受領
(0427・竹内絢香 ロンドン日記 3 Kindle 20230425
0427・天野純希 雑賀のいくさ姫 20230415
(0428・映画「Wakka」パンフレット 20230427 …48pに寄稿多数の豪華パンフレット
・0428芸術新潮 2023年5月号 追悼 総力特集 坂本龍一 20230427
(0429 zine 0番地. Wood Link
(0429 asirietok 1-3. Wood Link
(0429・高橋由佳里 新・トルコで私も考えた 2023 巣立ち編 20230429
0430・北書店の本棚 シーソーブックス 20230423
(0430・であいもん 15
(0430・ちょっ、桐谷さんそれ食うんすか？！15
 | スクウェア・エニックス 発売日 : 2023-03-25 |
急に過去編。大学合格発表を控える矢口に、ゲーセンの筐体を提供する日高。夢の国にミッキーに会いに、に浮かれて出てきたら神保町のゲーセン「ミッキー」だった時の腹立たしさ。そして晶の思い人を確かめにアメリカきらやってきた晶母に何故か火力全開でつっかかっていく日高…という展開。未来編より描ききれてない過去編の方が個人的には興味。
 | 小学館 発売日 : 2023-03-30 |
スナックに行きたかった客、商店街でライブがしたかったミュージシャン、売れないホストについてた客などなど今回も、個性豊かな霊たちを祓う依頼を受けて…と。そして、ミサキも自分の属するグループの方向性など考え始め…と。相変わらずお坊さん容赦ないなあと思いつつついつい引き込まれてしまう。
 | イカロス出版 発売日 : 2015-12-19 |
三浦しをん「好きになってしまいました」つながり。最初は、青ヶ島、トカラ列島と南北大東島、小笠原あたりが読みたかっただけなのに、結局全部読んでしまう。仕事で旅に、って傍からはうらやましく思えるけど、理不尽に拒絶されたり、怒られたり、八つ当たりされたり、もめごとにまきこまれたり、からまれたり、それでも「孤島」ゆえに逃げ場がなかったり、といった側面もあり、いいとこばかりでもないなあ、と。もちろん、あたたかい島民にもてなされ、親切にされ、おいしいものたべて、美しい景色を見てというシーンもあったけれど。◆酒田市の沖、能登半島の沖、四国と九州のあいだなど、自分の知らない友人島はいくつもあるのだな、と改めて認識。◆そして住む側の切実さ。「年をとったらこの島に住むのは難しい。ここで病気になったら死んでしまう」「いつまでこの島で暮らせるのかなあ」。◆臥蛇島の帰島のイベントに立ち会えたのは貴重。◆ママディ・ケイタ来島をきっかけにジャンベ・スクールができた硫黄島◆絶海の孤島故に学費に下宿代、医療費が高額となりのしかかってくるため、ダブルワーク、トリプルワークせざるを得ず、那覇見たく昼間からぶらぶらしてパチンコするやつなんかここに住めない、そんな事も知らずになにが県内所得ナンバーワンだ、という南大東島の人の憤り◆といったあたりが印象に残る。
 | 中央公論新社 発売日 : 2019-10-16 |
YOUが「お葬式に来てくださいねっ」と言ってるのに清水ミチコが「ちょっとその日は…」とかえしてるのとか、大竹しのぶが、私と結婚してる時はさんまさんもちょっとつまんなかったし、野田秀樹さんも書くものイマイチになっちゃってとサラリとすごいこと言ってたり、森山良子が娘婿の相方のやはぎと小木談義してると思ったら、最後の方で森山直太朗・光浦靖子対談でも小木の話しでてきたりで傍若無人に見えて愛されキャラなのうらやましいなと思ったり。あと結婚生活30年の清水ミチコの夫婦関係に対する考え、関係性、ことばが含蓄に富んでいるなあと。
 | 山と渓谷社 発売日 : 2015-09-18 |
角幡唯介の著書に何度か出てきたり、島田潤一郎「本屋さんしか行きたいところがなかった」に出てきたりで手に取った一冊。◆あまりにアナログな船での日本-ニューギニア往復。めざす未踏の山には結局のぼれず、代替の山の一部未踏部分をのぼり。幻の犬やら日本兵遺骨探しなど迷走。現地民にはたかられ、盗まれ、騙され、裏切られ。ありえないほどアナログな船で日本とニューギニアを往復。帰国後も隊長と生活するなど行動が謎。なぜ峠さんがその後の資金も出さねばならないのかわからず。次にであった小笠原出身ロタ島の男性にも最終的には親族一同にたかられ家財一切を失うというひどい目にあい。波乱万丈。その時はくるしかったけど、それを今は笑い飛ばしてるようなところが魅力か。高野秀行解説、角幡唯介対談も面白かった。佐藤駿「越境フットボーラー」 も読んでみたくなる。
 | 白泉社 発売日 : 2023-03-31 |
何を研究してるか誰も知らないが莫大な予算を得て日々研究を進める先生。そこへ助手として入り込み、いつか先生に取って代わろうとする生徒。勝手に生徒を実験台にする先生。先生を追う謎の人物。人の心の復興をめざす、として様々な聞いたこともない学祭的な研究が繰り広げられ、否応なく生徒も巻き込まれ、ついには率先して…と。想像の大学。悪魔的研究。奇想に心惹かれる。
 | CCCメディアハウス 発売日 : 2018-03-15 |
最初はおそらく、少数民族の写真を撮りに行き、自分も彼らと同じように脱いで同じような格好をして溶け込む、という記事を見たんだと思う。そのあと、写真展に足を運んで感銘を受け。本も買い。しばらくしてから「クレイジージャーニー」に出てることを知った、ヨシダナギさん。この本はそんなヨシダさんにビジネス書を書いてくれという由来から生まれたんだとか。自分はできることが少ない、自分が苦手なことははっきりとわかっている、だから極力苦手なことはやらない、素直に助けてと誰かを頼る、できることだけのばす、見え張ってでも弱みをみせずにのばしていく。愛想良くかつ自分ができることやりたいことはさりげに伝えておく。そうして拾われていまがある、といったテイストでした。なるほど、こういう思考で行動してきたんだ、ハチャメチャなようでいて一本筋は通ってるなあと思いつつ読み終えました。
 | 双葉社 発売日 : 2022-03-30 |
本の宣伝も兼ねてだろうけど、ふたりのエピソードを特集した番組かなにか見て、興味を持ち。ウソを書かれてのバッシングは本当にいたましい…けど、どちらが本当だったかは、すぐに別れる、揚げ物ばかり食べさせて殺す気か、などと言ってた人たちと、10年以上夫婦を続けてる側と比べれば一目瞭然だなあ、と。いつでもビシッと決める、いろいろなところに几帳面なで、365日芸能人でいることに疑いをいだいたことなく、今回の結婚後初めてコンビニや回転寿司、牛丼屋にはじめて入った時に狂喜し、かと思えば「人のことを悪くいう行為は上を向いてツバを吐いているのと一緒」という考えの持ち主、加トちゃん。そして時に支え、時に家族としていうべきはビシッといい、ケンカし、仲直りしの作者。
 | 河出書房新社 発売日 : 2018-11-03 |
絶望してからでは遅い。絶望してる時に本など手に取りたくない。しかし、絶望し続けてる時に手に取ると救われる本（あるいは映画でも落語でもテレビドラマでも）がある。そして絶望から回復しようとする時にまた効くものがある。すぐに立ち直ろうとしても、あとから癒やされなかった悲しみが追いかけてくるだけ。その時に備えて、といったところだろうか。「マイナスのことが起きるといち早く忘れようとか、乗り越えようとか、思い過ぎている気がする。暗部と向き合うこともなく、適当に自分を偽って生きてしまう」(山田太一)。◆太宰治「待つ」。「絶望名人カフカの人生論」。ドストエフスキー（中山省三郎訳）「カラマーゾフの兄弟」青空文庫。「桂米朝 上方落語大全集」。映画「ばしゃ馬さんとビックマウス」。カーソン・マッカラーズ「心は孤独な狩人」。ブッツァーティ「七階」（「神を見た犬」所収）あたりは手に取りたいなと思った。
 | 角川グループパブリッシング 発売日 : 2008-04-25 |
10年ぶりぐらいの再読。旅にまつわるエッセイが主。残飯で育てる豚の内臓を傷つけないためにつくられたでんぷんでつくられた楊枝。ロストバゲージされてシカゴの空港で「おかしいですねえ、これはおかしいですねえ」とつぶやく一幕。「おねーちゃんのいる飲み屋」で働いてた際の従業員教育がのちに活きたなあという話し。といったあたりが印象に。解説の方が「待っていてくれる人」の「クツは船に乗って」の話しの方だと知りちょっとニヤリとする。御朱印船の時代よりもベトナムに靴が届くのが遅いとはどういうことだという旦那様のお怒りの話しね。
 | 夏葉社 発売日 : 2013-07-01 |
(2023/4/5読了分)再読。島田潤一郎さんの夏葉社の本を何冊か読んだのを契機に。一見普通の駅前書店だが一歩中に入ると「ちくま学芸文庫全店フェア」や「平凡社品切れ本フェア」など意外なものが待ってるサンブックス浜田山。手描きPOP一枚で「白い犬とワルツを」を大ヒットさせたことでも知られるブックス昭和堂。喫茶店がルーツというブックスルーエ。中上健次に「荒尾成文堂があったから作家になれた」と言わしめた荒尾成文堂。震災直後に、雑誌のバックナンバーをできるだけ長く置いて、しょっちゅう来れない避難所の人が買いたい時に買えるようにしてるおおうち書店。トルコ文学棚もある蔦屋書店熊本三年坂。中公文庫の「世界史」がこの書店での売行きを契機に全国的ヒットになった早稲田大学生活協同組合ブックセンター。利尻島の本屋さん本庫屋書店。子供の性格や好みなどをヒアリングし、その情報をもとに毎月絵本を届けるサービスもする木城えほんの郷森のほんやさん。といったあたりが今回は気になりました。ちょっと調べたら最北端と最南端の書店はまだ元気に営業してました。その昔、最南端の石垣島のモールにはいってる山田書店で「八重山の台湾人」て本買ったのを懐かしく思い出す。◆「ヒタメン 三島由紀夫が女に遭う時」、碧野圭「書店ガール」読みたくなった。◆自分の生活から遠い場所に、いい本屋さんがあるというのは、本当にうれしいことである。いい本屋さんがあるということは、つまり、その店のまわりに、本を愛する人が、たくさん暮らしているということでもある。p.172（根木青紅堂書店）(2013/7/28読了分)海外文学棚の個性、病院売店で料理本がたくさん売れるのはなぜ？、民家もないすすきの原に立つ本屋さんとは。最南端と最北端の書店は、など、目にとまる。書店好き心、本好き心、旅心をそそられる。
 | ブルースインターアクションズ 発売日 : 2004-05-22 |
三浦しをん「好きになってしまいました」つながりで。個人的に気になった職業は以下の職業。◆ドッグ・スニッファー（犬嗅ぎ人）…犬の匂いを嗅いで体調や病気などを判定。◆高級サパークラブの男子トイレサービス係の女性。◆ソルフェージスト（譜面起こし）…整備した譜面はどうなるのだろう？資料に？売りに出されるの？けど何の曲かはっきりしない曲の譜面起こしだから権利的に無理か。◆バービー・ドレス・デザイナー。◆ディーナー（死体洗い）：都市伝説かと思ってたけど本当にあるんだ。◆ホットドッガー：1000人以上の大学生から選ばれた12人が、ホットドッグ型の来るまでアメリカ中を旅する。すごくたのしそう！。◆犬の糞掃除：依頼人の犬の散歩に一緒についていくのか、あるいは、依頼人の犬の散歩が終わったあとにまとめて？◆と、見開き左ページで簡単な職業の説明、右ページで職業についてる人の写真なので、謎が謎を呼ぶようなところもあり、興味が尽きない。
 | 新潮社 発売日 : 2006-08-29 |
再読。血の繋がってる家族だけが家族じゃないというメッセージを強く受ける二編。「渡辺毅のウェルカム・ホーム」仕事も家も妻も愛人もすべて一度になくした渡辺毅が、家はあるが妻をなくして小さな子を抱えた親友と同居するが、その子がうちには二人のパパがいて…という作文を書いてるのを見てしまい。オトコの沽券にふりまわされ、自分の怒りがくだらない男の沽券から来ていることを悟り、最後にはふっきれて。「不安なわけよ、お前以外の人間にノリを預けんのは」にはグッと来た。オトコとかオンナとかもう関係ない、誰もフツーじゃないし、誰もフツーじゃないんだから、逆にみんながフツーなんだよ、ってあたりが肝だなあ、と思いつつ。「児島律子のウェルカム・ホーム」はもう何度も読んで筋も話の展開も台詞もだいたい頭に入っていて、それでも何度も読めてしまう、惹きつけられてしまう魅力。今回はやはり、「もういいんだよ。よく帰ったね。お帰りなさい。」のところがよかった。
 | ベネッセコーポレーション 発売日 : |
大学教授パスカルのもとに転がり込んできたのは、親友レイコの娘みなみ。みなみの母でパスカルの親友のレイコが何者かに殺されて、家に火をつけられたため。ふたりの命を狙う正体不明の手がせまり、ふたりはそのまま逃避行を強いられることに。彼らに救いの手を差し伸べようとする者にも魔の手はせまり…。しかし、追うものがなんだったのか、レイコは誰に殺されたのか、すべてパスカルの無意識から出てきた執着だったのか、あの地下室の神父は、記憶と現実と幻想が入り混じり最後は…と。香山リカの解説ではすべては片付かないようにも思ったが、しかし、一番近いところなのだろうか。サスペンス仕立てのところは面白く読めたが。◆ともかく自分にとっては、本を読んでいるのがもっとも救われる時間だった。(p.18)◆どうしてそんな単純な事実を見逃していたんだろう。殺されたのはぼくだったのだ！p.106◆RB あなたは欲望のありかを教えようとしたら、当の欲望をほんの少し禁じてやればよいp.138◆RB 恋するわたしは狂っている。そう言えるわたしは狂っていない。p.143◆頭の中でいろいろと考えてきたことが、一瞬のうちになにかに結実するといった偶然がなければ、おそらくいかなる愛情も成就することはないだろうp.152◆どこからか「信じたまえ、信じたまえ、永遠に不滅の愛を信じて生きよ」と声が響きわたっていたp.169◆
| 小学館 発売日 : 2023-02-21 |
生まれてから2022年までの生涯を。時々、年表をバラして書いているような読み味のところもあったけれど、知りたかったこと多数で、読んでよかった一冊。中学校の吹奏楽部でチューバ吹いてたというのはチューバ吹きとしては見逃せず。世の多くの人は14-18歳までの時期に触れた音楽に終生影響を受けるという説。武満徹批判ビラ配り事件。間章、阿部薫との交流。YMOとして売れる→自身のイメージも消費される恐怖、反YMO的な違和感。1996年、薬害エイズ訴訟支援→政治的発言開始。本人的には極上のポップミュージック、しかし売上や反響が思ったほどでなく、自分がポピュラーやる意味って、と思ったこと。雑誌「エロコト」「ラブコト」の刊行。macのプラグインで変わった音出すのは若い人たちにまかせて、自分はピアノという古くからの楽器でこんな音が出せる！といいたい。自作曲の、オケやピアノトリオでの再解釈による新たな発見。武満徹が生きてたら聞いて欲しかった曲は
「Walker」、自然音と楽音が50:50で使われている。2021年の記述が3頁しかないのが、コロナ禍のインパクトを伝える。自伝「音楽は自由にする」の続編の「新潮」の連載にもあたってみたい。
「Walker」、自然音と楽音が50:50で使われている。2021年の記述が3頁しかないのが、コロナ禍のインパクトを伝える。自伝「音楽は自由にする」の続編の「新潮」の連載にもあたってみたい。
 | 皓星社 発売日 : 2015-04-30 |
(2023/04/08読了分)再読。再読。今回目にとまったのは。◆こつこつとお金をためて年に一度上京しこの薄暗い部屋で師に縛ってもらうことで残り三六四日のつらさを乗り越えている人もいる（緊縛師）◆舐められたあと、どうすっか。それが腕の見せどころ。（工事現場監督）◆「何万もの言葉を拾い集めて気づいたのは、まちがっている言葉なんてないということです」「どの言葉も望まれて生まれてきた。だから言葉を差別してはいけないんです」（国語辞書編纂者）◆「演奏技術ではもう津軽の人に負けないです。でも音と音のあいだの空白の表現が下手で津軽の人間じゃないことがバレちゃう」（津軽三味線奏者）◆「どういうとき平常心が失われるのか」結果ふたつの条件が重なったときだということがわかった�〕澆�出てしまう場面��不安がある場面（ボウリング選手）◆こつこつと年に一度…というのは何かしら自分で自分を救うためのことを人は持っているよね、そうせざるを得ない一面があるよねと思い、工事現場監督の話には激しくうなずき、国語辞書編纂者の言葉への深い思いにうたれ、津軽三味線奏者の空白でバレるの、著者も書いてたけど本当になんて世界だ。犬はフェイントに引っかからない。てイラストが壮絶にキュートでした。◆この本を書こうと思うきっかけになったというスタッズ・ターケル「仕事！」(1983年刊)も手を出したいと思ったが、ハードカバーで700頁超かあ…。(2016/03/21読了分)音羽館で見かけて。各界の達人にインタビューしたもの。相手の名前は明かされないので、わからない人は本当にわからないけれど、その言葉には重みがある。「スポーツをやってていいのは、二度死ねること」と青年は言った。 競技人生が終わる時が一度目の死。そのあと始まる二度目の人生は「一度死を経験した者として生きられると思う」(オリンピック選手)/「仲間は大事だ。それもほんと。でも。大人になったら、抜け駆けしてもいいんだよナ」(お笑い芸人)/「歌人の条件はまず、ナルシストであること。そうして同時に、嘆き人であること。その両方がないと歌は詠めない。ほら、晶子なんかもそうでしょう」(歌人)/子供のころ架空の天気予想図を書いていた気象予報士。架空の映画館の看守をしていたディレクター。架空の時刻表をつくっていた乗り物雑誌記者。/「調子がいいときのあなただったら、こうするでしょうね」(キャディー)/「私の仕事はものの延命措置です。ゴミになるか商品になるかギリギリの中古品を拾ってきて、誰かに売る。買ってもらえれば、とりあえず延命できる....。」(古書店主)/「決めてることはいっこだけ。それっぽいことをしないってことです」(出版社の社長)/「顔を見たら、有罪か無罪かわかるようになっちゃいましてね」(法廷画家)/「そういえば...むかし見た映画に...こういうシーンがあったなぁ…」ってひとりごとをいうの。「あ、それ使えるかも」と乗ってくる(漫画雑誌の編集者)/「字ぃ書くとき、十を目指しちゃだめ。九で寸止めすんの。粋になりすぎると、野暮になんだよ」(寄席文字書家)
 | 角川書店 発売日 : 2005-08-25 |
(2023/04/08読了分)再読。今回ぐっと来たのは、この2つのフレーズ。◆やはり世の中には「正しいこと」などなく、あるとしたらそれは「やりたいこと」なのではないか。そう思った。(p.79)◆「あきらめるな」は他人に向かって言うことばではない。自分に向かって、黙ったまま言うことばだ。(p.106)◆「ほんとうの夏」「バイバイ」は読み返したくなった。山川方夫「愛のごとく」はこのエッセイ集の影響で読んだ記憶。「最初の秋」も読みたくなる。酒井順子との「負け犬の遠吠え」をめぐる対話もとてもおもしろかった。(2017/06/05読了分)何年ぶり何度目かの再読。このエッセイ読んで、「バイバイ」、「ほんとうの夏」も読み返したくなった。世の中には正しいことなんかなく、やりたいことしかないのでは、というフレーズ。一緒に住んでた人に、あんたは私の好きな花すら知らない、と罵った1年後の誕生日に届いたトルコキキョウの花束に頽れたシーン、が印象に残る。比嘉光龍（バイロン）の歌を聞いてみたい。対談での酒井順子さんの、いつもニコニコしていて、どうせ俺なんか、と言わない人ならいい、という基準。ネットをつないでくれた彼女は、のちの、サギサワ@オフィスめめのわたべさんだろうか、と思いをめぐらしたり。
 | 筑摩書房 発売日 : 1993-01-01 |
春日 武彦, 穂村 弘, ニコ・ニコルソン「ネコは言っている、ここで死ぬ定めではないと」、穂村弘「彗星交叉点」つながりで。全部ではなく、なじみのある人物のと、600の最後の言葉だけ。信仰なき身には、キリスト教出現以降の古代中世の、神のもとへ、神に感謝、神よなぜ、のオンパレードには少々食傷してしまった。セプティミウス・セウェルス「働こう！」「だが、重要な物事などひとつもないのだ」という最後の言葉は、マルクス＝アウレリウスの「冥想録」（「自省録」のことか）のすべてを要約している、という一文。◆オスカー・ワイルド「幸福なんてものじゃあない！なんと言ったって幸福なんてものじゃなあい！快楽なんだ！いつも最も悲劇的であろうとしなければ…」(p.107)◆◆背教者ユリアヌス「自然は余に貸し与えたものを余に求めたので、余は悦んでそれを返す…人間の霊魂は肉体の絆から解放されたとき、はじめて幸福になると哲学は余に教えてくれた」(p.373)◆来てくれた神父の歌声が調子っぱずれだとうそぶいた作曲家ラモー◆ドゥニ・ディドロ「哲学への第一歩、それは無信仰だ」(p.368)◆アルフレッド・ル・ポワトヴァン「窓を閉めてくれ、外は美しすぎる」（p.401）◆死の間際ですらあと5年、10年あれば、真に偉大な画家になれたのにと嘆く葛飾北斎◆といったあたりが個人的には印象に。
市場の建替えの決定。市場に面した場所で古本屋をひらく著者にとっての影響は甚大。そんな日々がつづられた一冊。しかし、それはただ待っていて、時間が立てばもとに戻るというものではなかった。コロナ禍の影響。仮設市場に移るタイミングで商売をやめてしまう人。仮設市場から新市場へ移るタイミングでやめてしまう人。水上店舗側でも店をやめてしまう人。アーケード内からなくなってしまう銀行と郵便局。アーケードがなくなったことで風雨の影響をもろに受けてしまう苦しさ。それでも商売人の矜持としぶとさをみせてくれる会長や副会長。最後の方まで読んできて、この二つの文にうたれました。場に対する深い宇田さんの愛が感じられて。◆つくるには莫大なお金と手間がかかるけれど、一度つくってしまえば、店主やお客さんも安心して過ごせる。それがアーケードだ。アーケードは愛。(p.93)◆そうか、店を閉めた人にもまた会えるのかもしれない。私が店を開けてさえいれば。(p.105)
 | ぶんか社 発売日 : 2023-03-10 |
スリランカの観光地でゲストハウスを始めた著者が、自分がまともなコーヒー飲みたい！と思ったのを発端にカフェ経営に乗りだし。しかし物件探しも店員探しも珈琲探しも何もかも難航。出てくるエピソードは、スリランカ人の気質、国民性に起因する大変さ。大変なのはすごくわかったけど、なぜ著者がスリランカにかかわり続けるのかわからなかった。人に魅力を感じてるわけでもなく…
 | 筑摩書房 発売日 : 2017-11-09 |
頭木弘樹「絶望読書」つながりで。◆「絶望的な物語」でもなく「絶望から立ち直る物語」でもなく、「絶望の期間をいかにすごすのか」の物語をあつめた、とのこと。◆忽ち「なごやかになれる」人々がなんだか怖いのである(山田太一「車中のバナナ」)◆息子を誘拐されて殺された母の、神への失望、落胆、反感、自分が犯人を許してないのに、なぜに先に神が彼を許すのかという嘆き、憤り、そして救いのない最後（李清俊「虫の話」）◆異星人とまったく話が通じない、行動が理解できない（筒井康隆「最悪の接触」）◆壺の中の魔神を助けたのに殺されかけた男の知恵ばたらきとここで語られなかった物語への興味（千夜一夜物語「漁師と魔神との物語」）◆離れているのに理不尽な束縛が効いてほろびゆく家族（川端康成「心中」）◆わが家に帰ってきたはずなのに、どんどん確信がもてなくなっていく（フランツ・カフカ「ぼくは帰ってきた」）◆通信教育、大学、幼稚園とブラックジャックの横以外の依って立つところを求めて奔走するも果たせないピノコ。（手塚治虫「ハッスルピノコ」）
 | 発売日 : 2013-10-22 |
吉田隼人 死にたいのに死ねないので本を読む: 絶望するあなたのための読書案内、で引用されてるのを見かけて。わずか4頁。光と鉱物てできた都市リスボンという一節の魅惑的なことといったら。そして最後の「どこでもいいわ！この世の外なら」でキュッと引き締まる思いに。
 | 角川書店 発売日 : 1998-06-23 |
福武文庫版を。言わずと知れた不朽の名作。「キッチン」「満月 - キッチン2」のみ再読。みかげが、田辺が、えりこさんが。何を言ってどういう話しかもだいたい頭にのこってるのに、よみかえすたびに、また、清流の水を飲んだように味わいが深まり。「でも人はみんな、自分の気持ちの面倒は自分でみて生きているものです。」「世界は別にわたしのためにあるわけじゃない。」「私は知る。楽しかった時間の輝く結晶が、記憶の底の深い眠りから突然覚めて、今、私たちを押した。」今回目にとまったところ。
 | 文藝春秋 発売日 : 2016-11-28 |
1-2巻読了。漫画喫茶沈没編と伊豆暮らし編。漫画喫茶の生態悲喜交々。なぜに家でなく、とは思いつつ。伊豆編はムカデとの戦い。あとクルマ運転アクシデント編。ムカデ対策で和室にテント張って暮らすにはわらってしまった。
 | 新潮社 発売日 : |
(2023/04/12読了分)再読。前回同様鷺沢萠「ありがとう」を再読したことをきっかけに。◆在日韓国人三世の俊之が、通名と本名とのあいだで揺れ、両方とも名乗るいとこ、本名でとおすおさななじみとの対話を重ね、いまつきあっている彼女に、車の事故処理でつれなくしてしまったあとに、逡巡の果てに、もう一度電話するところまで。そこで話されることはおそらくきっと…。（ほんとうの夏）在日韓国人三世の雅美が、それまで知ろうとしてこなかった韓国のことを、アメリカ留学で出会った韓国生まれ韓国育ちのジニーをきっかけに激しく知りたくなり、韓国へ留学。そこで味わったのは愛憎半ばする思い。ハングルに感電し、激しく惹きつけられ、同じだけ「裏切りあい」とも思える失望を味わい。それでも「あんた、この国を好きやった？」という鐘煕への回答は、きっと愛にあふれたものになるだろうことを予感させつつ、締めくくられる物語。ほんまのことを、知りたいやん。..歴史学を専攻した理由を問うた雅美への鐘煕のこたえにはグッと来た。(君はこの国を好きか)(2017/06/05読了分)ほんとうの夏、 のみ、何年かぶりの再読。同じ著者のエッセイ「ありがとう」で触れられてるのを見て。普段は通名で暮らす在日韓国人の男の子が、付き合ってる子に自分の国籍を知られないように、交通事故の現場から怒鳴って追い払ったシーンを軸に…隠してたわけじゃない、気がついたらそうなってたのに、今さら…という気持ちをすくい上げたかったのかもしれないけど、幼馴染の、それは隠したかったってことでしょ、という言葉に素直になり、自分から連絡をとることに、と。初出から20年経ったけど、状況は変わったのだろうか、と思いを巡らす。
 | KADOKAWA 発売日 : 2013-02-23 |
同じ時に遭難して亡くなった男の親友と恋人による、星に近い天文台でのダイアローグ、「星に降る雪」。日本から来た男が聖母の涙を見て足をくじいた修道院は、何十年も前にふらりとやってきた謎の男により修復されたものだった、「修道院」。「星に降る雪」は、「スティルライフ」彷彿とさせるチェレンコフ光、「一瞬のチェレンコフ光を目が捕らえるところを想像する」◆「地上の日々には意味がない。それはただ正しい方法で旅立つための準備の時間で、だから人はただ待つしかない」p.54◆「修道院」は、ふらりとやってきて修道院を修復した男の、赦しを求めるための自分なりのミサ、濃密な人生と放擲、自分の罪悪感との対話、積み上げてきたものの瓦解。彼にあこがれて、助けになりたいと思っていたのに、ついには心を開かせられなかった宿屋の娘。◆主は全能の力を持っておられる。それなのになぜこの世に罪というものがあるのか？p.214◆地獄は人の中にある。つまり主の中にある。p.215◆「そうだよ。あんたは聖母から遣わされたのさ。憐れなミノスのために、憐れなアダとミルトスのために、おミサを挙げなさいとわたしに伝えるためにね」p.220
| 発売日 : |
にゃあと鳴く犬。一面スクリーンになるマンションの向かいで青空映画祭。中華スープのいいにおい漂う地下鉄。日常の中にさりげなくなさそでありそな風景を差し込むスプリングフィクション。そして、喫茶店でモーニングを食べるだけの何気ないシーンを切り取った一篇が心地よかった。席を立って振り返ったときに、差し掛かる光の描写とかも。
 | KADOKAWA 発売日 : 2017-05-29 |
こんな面白い研究があるんだ！という紹介とともに、著者の研究、研究者に向けるあたたかい視線がいいなと思える一冊。途中までは研究者を志していた身としては、楽しく読めて、激しくうなずき、笑い、深く納得し、といった一冊でした。◆プロ野球選手と結婚するための方法論を策定することを目的...その球団の選手がよく来る水商売のお店のホステスとして潜入する、というのがもっとも打率のいいコース？。◆竹取物語の翁は話を盛る人だ、読み込んだ結果42歳だったのでは…「この論文を読み終えたとき、最高に気持ちよく好奇心を刺激されて、とても晴れやかな気持ちでこう叫びたくなる。「だからなんだよ」と。これが古典研究の最高の醍醐味だ。役に立つとか立たないとか、そういう基準で生きている自分があさましく思えてくる。現在の常識などではかってはいけない。(p.73) ◆マンガ1015タイトル（10421冊）を7人で手分けして読んで、鍼灸について言及のあった箇所を抽出・分類・分析した研究。◆漱石が松山に赴任するルートを確定させた、生粋の船オタク研究者、客船史研究者の緻密さと行動力...「自分の関わっているジャンルが世間に誤解されて伝わるということはよくあるが、それ「自分の責任」と思うのが専門家の意識なのだ。」(p.242)。◆1997年から開始した卒業論文の調査をきっかけとして常滑競艇場と関わり、今日もフィールドワーク、ついには競艇場でバイトはじめちゃった研究者…「 競艇場には着飾らず気負わずに、日常の延長線上のなかで足をのばせるという場所の「気安さ」があるということ。」(p.133）を詳細に描いてくれる。◆走れメロスを読み込んで、メロスの速度を大胆に算出して、歩いてたんじゃないかとする中学生◆しかし、やむにやまれずしてしまう「苦しみ」を表現する手段として「研究」があるのかもしれない。最高に贅沢な自己満足、エンタメ化された修行。これこそが「ヘンな論文」ではなくてなんであろう。(p.158)
 | 産業編集センター 発売日 : 2023-04-13 |
おおきく言うと、活きのいい新入社員がやってきたぞ編と、でぶどりひよコンビ見込まれて出向編か。一番おかしかったのはコミュニケーション能力おばけのピノとの「ぼくの手にかかればお互いの脳を交換するレベルのコミュニケーションを取らせることが可能」「なんかこわいでもすごい」てやりとり。どんなレベルだ…。そして出向先での、進捗報告に1時間、表計算ソフト使わず人力、それで残業…無駄が多い、という職場によっては笑えなそうな一幕。ダチョウ用に運転席だけ頭ひとつ分だけ飛び出た車。いがみあいからの、腹割って話そう、貯金どれだけあるの？、暗証番号教えるから残高照会していいぞ、のいきなり腹割すぎ展開などがおかしくて好きでした。
 | イースト・プレス 発売日 : 2023-04-12 |
ポルトガル人のエラスモの加入、マニラ・ガレオンの財宝探しを目論むも果たせず、フィリピン近海から南方の未知の大陸へ。そこからインドへ向かう道中で下船するダンピア。ティートには、英国に戻れると期待されてか、密かに手記を託され。そこから皆の協力を得つつ、頼りないながらもアチェを目指す、新米のキャプテンダンピア。その先にはモンスーンが、というところまで。
ジョチ・ウルス後裔政権が、政権下で編まれる史料にどの説話を取り入れ、どの系譜を強調し称揚するかで、自分の政権をどの系統につらなるものか主張しようとしていたかが明らかに、という側面は興味深かったです。◆ただたいへんな研究をやられてるなあ、という思いました。さまざまな可能性がありすぎて、史料編纂の過程って最終的に特定できるのだろうか？という素朴な思い。◆四ウルス叙述法は遠く日本の（一時期の）世界史教科書にも受け継がれた面もある？（オゴタイ・ハン国、チャガタイ・ハン国、イル＝ハン国、元と書かれた教科書でした、私の時代は。四ウルス叙述法とは完全には重なりあわないかもだけど）◆またこの史料はこの史料を参照してます！というのは史料自体でうたってるものなのでしょうか？あるいは断片をつきあわせて後代に解明したものなのだろうか？（後者だったら絶望的に大変そう）。◆クリミア・ハン国が他のジョチ・ウルス後裔政権とすこし毛色が違うのはさもありなんの思い。オスマン帝国好きとしては、あいまを見て、参考文献の川口琢司：１８世紀クリミアのオスマン語史書「諸情報の要諦」における歴史叙述（森本一夫編「ペルシア語が結んだ世界」）にも手を出してみようかなと思いました。
 | 文藝春秋 発売日 : 2023-04-05 |
三浦しをん「夢の旅路」のみ読了。60年来の友人、篤子と志麻の「ななつ星」での旅の一幕、お互いの来し方行末を振り返りながらの。数少ない喫煙仲間の鶴巻さんが指摘しなかったように、篤子と志麻の関係が名づけ得ないものであること、その尊さが描きたかったことなのかなと思いつつ。
 | 草思社 発売日 : 2021-11-04 |
佐々木ののかさんが読んでるのをお見かけして。◆歌人にしてフランス文学研究者である著者のなかなかに鬱屈してペシミスティックなライフヒストリーに重ね合わされた読書遍歴。◆ボオドレエル「パリの憂愁」、「雨月物語」、「思想のドラマトゥルギー」、田中小実昌の一連の哲学小説、三島由紀夫「岬にての物語」あたりは手に取ってみたいと思った。◆いま現実で起こっているカタストロフィに対して何の役にも立たず、恐らくは文章を読むうえでもさほど重要でないようなたった一つのフランス語の単語。にもかかわらずその一語に遭遇したとき、自分は利害も不安もすべて忘れて、ほとんど無意識のうちに寝床を這い出してまで辞書を引いてしまうような人間であるということを、このとき心の底から思い知らされた。(p.153)には個人的に共感。もう研究生活も送ってないのに、社会人になってから体調崩してたのに、ただ知りたい欲だけで大学の図書館に駆け込んであてもなく歴史学の論文コピーしてたことのある身には特に。
 | リトルモア 発売日 : |
1996-1999年当時の坂本龍一の考えの断片。最初に170問問いかけ、最後に別CD-ROMのものを再掲した1000問の回答。◆人類はもう滅亡するという厭世観。21世紀は20世紀のツケを払う世紀に。生きる目的はない、生きる信条はない。"自分の時間"ってどういうのかわからない。「美しいものはどこか郷愁的である」。武装とは「防衛」。「ars longa, vita brevis 芸は長く、いのちはみじかい」◆ビートたけしと坂本龍一、お互いに映画と音楽でやりたいと思ってたのに、どうして実現しなかったんだろう。◆音楽で気をひこうと思ってつくった曲はいいとして、女装して出会ったできごと、恋愛沙汰の一例などは、よく書いたなあと思ってしまった。◆彼が当時読んだ本、聴いた音楽、自薦したものを追体験することのよろこび。◆
 | 幻冬舎 発売日 : 2001-12-20 |
この本は、911テロに対して、根拠なくアフガンに報復戦争を仕掛けるのは反対、ということから始まったのだと思う。「本当の勇気とは報復しないことではないか」、アメリカのこれまで他国にしてきたことが返ってきた、といった言葉はおそらくブッシュ（息子）にも多くのアメリカ人にも届かなかったな、と今は知っているけど、当時にあって声をあげたということに着目。しかし、この頃は、20年後にロシアがウクライナに侵攻するだなんて思いもよらなかった。攻め込まれたウクライナにしてみれば、本当の勇気とは…という言葉はきっとまったく耳に入らないだろう、と。◆非戦闘員の大量虐殺を生んだゲルニカ爆撃(1937年)に対し、アメリカ大統領ルーズヴェルトは「非戦闘員の殺傷が不正であること」を再確認する書簡を発表したそうだが、その頃にはまだ「非戦闘員の大量虐殺」を許せないという共通認識があったんだな、と思った。◆断じて音楽は人を「癒す」ためだけにあるなどと思わない。同時に、傷ついた者を前にして、音楽は何もできないのかという疑問がぼくを苦しめる。p.21（坂本龍一）◆「人を殺すな」「生き物を自分の利益のために殺すな」「子供たちの生きる権利を奪うな」という思いだけは共有しているものと信じますp.401（坂本龍一）
 | 小学館 発売日 : 2022-05-12 |
1-3巻読了。熱い熱い漫研漫画だった。伊豆大島の漫画好きの女子高生が、友達の後押しを得て、漫研作り、同志を募り、顧問をお願いし、それがまた憧れの作家だという仕掛けあり、ライバルとなる同人作家が出てきたり、顧問の先生のマンガ家時代の過去話も熱いマグマで一巻に1話ずつ出てきたり。◆「同情は制作の敵と考えます」「想いのこもらないメソッドに心を動かされるのが癪」◆そして先生も生徒も少しずつ成長していくのもいいなあと。
 | PHP研究所 発売日 : 2012-03-29 |
理子が店長になるまでは、これでもかと典型的で通俗的な「オンナの戦い」、女の敵は女といわんばかりのバトルがくりひろげれて、読むの放り出そうかと思ったけど、店長就任後一転、理子と亜紀が協力して奮闘する姿は読み応えがあった。書店の置かれた状況、書店員の毎日の仕事、そして取材、企画、イベントなども。POPの功罪、書店員のコメントが客に信用されて売り上げに繋がる構造が出版社や作家の利益になるが…という指摘、「たった一冊の小説が、自分の心を強くした。」という読むことの歓びなど。限られた期間に売上を大幅にのばせば閉店をのがれる、という目標のもと、理子と亜紀は協力し、案をだしあい、時にいたわりあうまでになったが…と。結末は苦さとひとすじの希望と。
 | 新潮社 発売日 : 2010-04-08 |
1988年文庫版で。15年以上ぶりの再読。新刊「街とその不確かな壁」をより楽しむために事前に読んでおきたくって。正直、おかしなふたり組に部屋中破壊されるところとか、ラストシーンとか、博士の美しくふとった娘とのやりとりとかは覚えていたけれど、図書館の女性が重要なパートを占めるという点はすっぽり記憶から抜け落ちていた。一時期は、「世界の終わり」のパートがだるくて「ハードボイルド・ワンダーランド」のパートばかり読み返してたこともあったけど、今読むと静謐で不穏で「世界の終わり」のパートも好きだ、という感触。両方の対象具合や、何かの象徴、暗喩であるとかは掘れば多くのことがわかるのかもだけれど、そこまでは読み解けず。これが「街とその不確かな壁」を読む糧になるかどうかはわからないけれど、最近作には感じられない物語の吸引力を強く感じたことは確か。老科学者の被験者にとっては迷惑極まりない科学的好奇心のために、勝手に脳に細工を施され、そのために理不尽に現世の生活を奪われる、…たしかに自分の身に起きたら怒り狂ってしまいそう。◆「誰の戦争かなんて問題じゃないし、誰の金かも問題じゃない。戦争とはそういうものだ。まああきらめることだな」上巻p.262◆「この世界では誰もひとりぼっちになることなんてできない。みんなどこかで少しずつつながってるんだ。」上巻p.329◆僕は世の中に存在する数多くのものを嫌い、そちらの方でも僕を嫌っているみたいだけど、中には気に入っているものもあるし、気に入っているものはとても気に入っているんです 下巻p.108◆これは死ではないのです。永遠の生です。そしてそこであんたはあんた自身になれるのだ。 下巻p.134◆いいかい、弱い不完全な立場からものを見るんだ。獣や影や森の人々の立場からね 下巻p.223◆私は死ぬまでずっとあなたのことを覚えているから。私の心の中からあなたは失われないのよ。そのことだけは忘れないでね 下巻p.338
 | 講談社 発売日 : 2017-08-23 |
本能寺の変、関ケ原の戦い、大坂の陣を舞台に、有楽斎と島井宗室、有楽斎と小早川秀秋、有楽斎と松平忠直を対比させた短編集。信長の弟なれど武名はゼロ、文化を愛し武を憎むが、部名無きゆえに蔑まれ、一念発起して関ケ原で武名を求めるも世評は変わらず。”いずれ大坂の城は焼け落ちる。江戸城とて、いつか誰かに攻め落とされるかもしれない。だが、私の茶の湯と茶室は世に残り続ける。それこそが、私を嗤い続けた者たちへの、最高の復讐ではないか。”(p.140)と思い極めたところが有楽斎の真骨頂か。武ばかり尊ばれた世には埋もれても、現代人の心性から見ると、自分が大事、保身したい、武に屈せず、文を守りたいというところは親しみやすいのではと思った。「茶の湯は、政の道具などではない。先人たちが血の滲む思いで美を追求し、名物を作り上げ、様式を整えてきた、長い長い歴史の積み重ねなのだ。」(p.65)という島井宗室。朝鮮の役で戦にめざめ、関が原も最後の最後までどちらにつくか決めず、どのタイミングが一番効果を与えられ、歴史に残る大戦の勝敗を決するかだけを測っていたという秀秋像。大阪の陣にあって祖父家康への怒りにふるえ、最後の最後まで徳川と豊臣を天秤にかけていた忠直像も魅力的だった。
 | 講談社 発売日 : 2023-04-21 |
持ち上がった黒瀬のお見合いは、先方もノリノリで潰したい案件で一件落着。その間、旧友灰原とコミケにでかけた真白は黒瀬とばったり。ふたりの距離は自然なものに、その後、一歩縮まり…と牛歩のごとくだけど着実に。虹原印刷は、若手だけの企画で地域を盛り上げる案件が持ち上がり、と。恋路も仕事も着実に、な巻。
 | KADOKAWA 発売日 : 2023-04-19 |
Twitterでお見かけしてから、毎週日曜日の更新を楽しみにしてたマンガがついに一冊に！買わないでいられようか。メロンブックス版特典小冊子は後日、別に受け取りとなったがそちらも楽しみ（受け取ったら更新するかも）。百歩譲って、学校のスカートとバイト先のボーイッシュな格好で見抜けなかったとしても、学校とバイト先で声を使い分けてない限り、気が付かないかな？というのは無粋な指摘と重々承知。その上で、バイト先のみつきをかっこいいお兄さんだと思って恋してしまったアヤ。それを知りつつ、好きな音楽でつながれるのがうれしくて、アヤの気持ちを引き寄せるようなことを言ってしまったみつき。そこからのどうやって打ち明けよう、どうやって距離をつめよう、どうやって打ち解けようという紆余曲折、ふたりの距離感が尊くて、見ててやきもきして、またそれがよくって、という一冊。続きも気になる。
 | 講談社 発売日 : 2023-04-21 |
南波探索からはじまり、ミナレがミイラ取りになって南波と同じ雪穴に落っこちてしまうまで。茅代との迷コンビでのクマとの対峙、クマのモノローグのあたりがピークおかしかった。あと茅代の秒数まで指定しての仮眠も。相変わらずのミナレの啖呵のキレ具合と暴走機関車ぶりはこの巻も健在。
 | 新潮社 発売日 : 2023-04-13 |
村上春樹の6年ぶりの長編。「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を再読してからのぞんだ。1980年代の「街とその不確かな壁」に決着をつけるべくして書いた「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」。しかし違う決着のつけ方もあったのでは、という思いを抱きつづけて40年越し書きなおしたのが今作とのこと。ただ一読者視点で言わせてもらうと、第一部で言えば、本体が影に告げる一言は全くもって説得力を持たなかった。「世界の終わり…」で語られた壁に囲まれた世界への哀惜、図書館の女の子と心が通じ合ったかのような描写が乏しく、なぜその一言に至ったのか、というのが消化不良の上にも消化不良だった。半年寝かせてから第二部、第三部と続けてくれて本当によかったなあ、と。おそらく現実世界の現代日本の福島の小さな町と思われるシーンと、主人公とその16歳の時の恋人が詳細につくりあげた壁に囲まれた町のシーンが交互に描かれ。壁に囲まれた街では、どちらが本体でどちらが影か、最初はわかっていたはずなのに、いつしかねじれ、混沌とし。そこは、心から願えば叶う世界。誰かが受け止めてくれると、強く信じることで救われる世界。思いが繋がれる世界—図書館を司る役割を受け継ぎ、夢読みの役割を引き渡す。もとは自分だったが、別れてしまった存在とひとつになり「本当の自分」になる姿が描かれる。◆象徴的な上に象徴的で、比喩的で、抽象的で、けれども著者が抱え続けてきたテーマなんだよなあ、というのは感じ取れた。◆ガルシア＝マルケス「コレラの時代の愛」をひいてきたのは、傍から見ればマジック・リアリズムでも、本人にとってはそう見えていた、リアリズムだったのではないか、というのをこの作品にもあてはめるためだったのかな、と。◆口癖が、もちろん、そうかもしれない、なのは、「世界の終わり…」の、わからない、そうかもしれない、に比べれば肯定的。◆孤独が好きな人なんていない、誰だって何かをもとめている」は、「ノルウェイの森」の、無理に友だちを作って失望したくない、に比べれば成長したということなのだろうか。◆読み終えて、何がしか深いところから帰ってきたかのように、しばらく活字を読みたくなくなった。強い吸引力で物語世界に引き摺り込まれ、語りを聞かせ、受け渡そうという力を感じた。
 | 小学館 発売日 : 2021-11-05 |
◆個人的にアイスランド好きなので、手に取らずにはいられず。その昔、アイスランドが舞台というだけで永瀬正敏主演「コールドフィーバー」て映画を見に行ったことあり。◆ここは幸福な国、みんないいひと、日本と違って「危険なところでも自己管理、自己抑制」、風景がきれい、という思い込みを再確認しただけだった？！この旅は。◆案内人のアリニは、日本で築地市場で働いてて、日本人女性と結婚してアイスランドにもどって今は「回転寿司屋」さん、流行っていて出前サービスもするとのこと。それに対して「おいホントかよ」、トロブリアント諸島の首長の「わし札幌ラーメン好きやねん」に匹敵するほどの文化人類学的衝撃であった、というリアクションが好きだった。◆発酵した鮫のブロック肉「ハウカトル」はぜひとも食べてみたい◆「ぼくは眠れない」（新潮新書）を出しておきながら行きの飛行機はぐっすり、と書いてたこの本は読んでみたくなる。◆御年七十歳時点での遠くアイスランド旅。そのパワーには脱帽。
 | 河出書房新社 発売日 : 2021-08-06 |
働かざるもの食うべからず、ではない、というとこか一言でいうと。「そもそもは世の中には働きたくても働けない人もいる。」「主婦は素晴らしいよ。地球のこれまでの歴史は、主婦が家を整えてきた歴史なんだ。」「世間にある「働いていない人を責める雰囲気』が嫌だな」「とにかく、『働いている人だけが、えらい』っていう空気が漂っている。」という鞠子の言葉が響いてくる。そしてそんな鞠子の言葉、行動にふれて、父から強く「働かざる者食うべからず」を刷り込まれてきた小太郎が、だんだんと変わっていき「そうだよ。働かない人も社会に必要だ。働かない時間も人間に必要だ、と考えを改めたんだよ」(p.232)という境地にいたるまでが軽やかに描かれている。そううまくいくかよ、と言いたい人もいるかもだけど、違った視点でとらえてみたら、という示唆をくれたことが重要で。
 | 青土社 発売日 : 1996-11-01 |
パウル・ツェランの詩にはじめてふれたのも、ニューアカの文章にふれてみたいと思ったのも、香山リカのエッセイ（「リカちゃんコンプレックス」）がきっかけだった。その点はこの本にも色濃く残り。ツェランの評伝や詩論、詩集が読みたくなってきた。通奏低音としてながれるのは、「近未来イメージ」に感じるなつかしさ、「未だ来ぬもの」に対し何かノスタルジィに似た感情をふと抱いてしまうこと。未来の裏に、ユートピアの陰に、「死」が潜んでいること。◆坂本龍一の95年のインターネット・ライブ、美貌の青空を聴いた時の強い印象が語られているのは、坂本龍一の追悼の出版物や映像にいくつも触れているなかで、個人的にシンクロニシティをかんじた。「私たちは、何かを見た。そして失敗した。そう思い続けて生きていく人こそがそれなのだ、と。」(p.229)
60年代英国文化が好きすぎてのロンドン長期滞在。Mods Culture好きのあつまるフェアに乗り込んでの、好きなもので通じ合う同志のキラキラがまぶしかった。あとMary Quant、気になる。マブの友達との3泊5日はTwitterでだと読めるのかしら？？著者のロンドン欲が満たされると思いきや、ロンドン住みたい欲が爆発にはさもありなん。次はロンドン定住日記期待してもいいのだろうか。
 | 中央公論新社 発売日 : 2011-04-23 |
管啓次郎「本とは読めないものだから心配するな」つながりで。運命的な恋人同士ならパッとわかる、偶然出会う。あまりに近しい人を亡くして、亡くした人になりかわろうとする。というのは、「キッチン」と「ムーンライトシャドウ」の頃から変わらない、ずっと大事にされてることなんだなあ、というのをまず感じた。子供のとき、お互い強く好き同士だったのにいつか離れてしまったふたり。大人になって、ふと耳にしたハワイアンソングの歌詞が、わたしが夜逃げする時に送った手紙そのものだったことから...という物語。なぜそんなことしなければいけなかったんだろう？という再会から、ハワイのあたたかく甘い空気のなかで、わだかまりも時間もこえて、出会い直すような物語。◆世界は恋愛だけでできてやしないんだ、そんなに雑なものではないんだ、もっときめ細かな夢のようなもので、ひとつの糸は必ず布全体につながっているんだp.52◆眼の前にいるこの人は幸彦さんの薄い影。そして私は昔の私の幽霊。ここには生きて躍動しているものはなにもない、そういう印象がある。p.140◆「ここにいると、足りないものはないから、失うものもなにもないんだよ。。命以外には。」p.147
 | 講談社 発売日 : 2022-01-14 |
「人の弱みにつけ込んで戦の矢面に立たそうとするような連中のために、うちの郎党に命懸けさせるわけにはいかんのや」(鶴) 「なににも縛られることなく、思うままに生きろ。だがこれだけは忘れるな。お前は俺の娘で、お前の帰る港は雑賀だ」(鈴木孫一) 設定が破天荒かつスケール大きいなあ。雑賀孫一の娘鶴が実は倭寇の大立者林鳳の娘で西洋船に乗り込んで貿易へ。そこへ立ちはだかるのは海軍大将で島津義久の妹の巴。倭寇の九州来寇を防ぐため、連合軍に加われと。島津義弘、島津家久小早川隆景らも勢揃い。南海大合戦…と。はちゃめちゃないくさ姫が戦国時代の海外を股にかけて貿易に、という筋だてかと思いきや、島津の姫が出てきてからは、時に脇にまわるような成行きで、最後にこれからは海外へ、商いへと方向は示されたものの、その先をこそ読みたかったという思いも。サムライになりたくてスペイン、フィリピン、日本とめざしたが海賊にとらわれ、いくさ姫にすくわれたジョアンの存在も効いている。
 | 新潮社 発売日 : 2023-04-25 |
追悼 総力特集 坂本龍一に惹かれて購入。「12」をキーワードに、12の聴く、読む、見る、坂本龍一への手紙で構成された特集を見てみたくて。リ・ウファンて歴史的存在だと思ってたので、生きて坂本龍一との交流を垣間見れたのは貴重。また2017年の札幌国際芸術祭にハマりまくっていた身としては、モエレ沼公園で坂本龍一、大友良英並んでのアイスクリーム食べてるショットとかは貴重でした。聴く、読むはいくつも自分で触れられてて、レビューは再確認の意味合いが強かったけど、「見る」のほうは実際に現地に足を運ばないと触れられないものだったので、たとえそれが写真だとしても、一端を垣間見れてすごくよかった、という思い。著書もアルバムもこれから出る予定を簡潔に知れたのもありがたし。
シアターキノで映画「Wakka」を観終えた余韻も冷めやらぬまま帰ろうと思った足を止めて、やはり買おう！と踵をかえして吸引された一冊。パッとひらいたら「空海とレヴィ＝ストロース」なんてタイトルが目にとびこんできて、やはり買ってよかったな、との思い。セリフもストーリーもない映画だったから、著者たちのひとつひとつの読み解きが、映画鑑賞後に余韻にひたる道標となり、個人的には収穫。水や水滴に人類の旅の記憶の凝縮を見て、そこから流れ出すのはわたしたちの物語であると見立てたり、「野生の思考」が、「具体の思考」の衰えた現代社会のあり方が描かれたと見立てたり、水道管を文名のメタファーと見立てたり。監督が思い描いたのは「映像と音だけで表現する映画」「暗喩や寓意が避けられ、セリフですべてを説明する「わかりやすい」映画への反発。<誤読する自由>の大事さ。たくさん読み込んで自分の解釈を豊かにしていく一助として。
 | 集英社クリエイティブ 発売日 : 2023-04-25 |
トルコでわたしも考えたも30周年、作者も６●歳になったとのことで、そう考えると最初に手にとった時の自分も…と思いを馳せてしまう一冊。夫もトルコへ、息子は働きだして一人暮らしへと巣立っていき、急にサークル活動や副業を…と思うが一周回ってマンガ描くのが一番自分に向いててお金になると気付いて連載再開というオチ。トルコの老人の頑丈さとサークル活動の本気さにはおそれをなし、と。巻末近くの親族たちのトルコ不動産事情は興味深く。他に気になったところ4点。◆トルコの爆弾級スイーツ「カザンディビKazandibi」（大鍋の底）、ミルクプディングの表面のカラメルがこんがり焦げたもの…と思いきや中に鶏の胸肉を細く裂いたものが入ってる…とのこと。著者はひとくちでザセツしてましたが、個人的にはすごく食べてみたい！◆海の見える不思議なお店でコーヒーとタロット占いの思い出。◆老後に読もうと溜め込んでいた本が、老眼で字が小さすぎて読めない！宝物が宝物でなくなった瞬間…には本を積みがちな身には身にしみる。◆オスマン帝国の宮廷料理「カヴン・ドルマス（メロンのドルマ）」（16世紀）…メロンをくり抜いて羊（牛）肉・米・ナッツ・ハーブを炒めて詰めてオーブンで焼いたものに果物のコンポート添え。なにそれ豪華に美味しそう、食べてみたい。◆
一般社団法人知床しゃり発行。写真展を見に行ったWood Linkで配布してたフリーペーパー。斜里で働くひとたちのインタビュー集。農業、農協、高校教師、ガソリンスタンドスタッフ、漁師へのインタビュー、発行元のスタッフの移住の経緯や現在の仕事が垣間見れる。特に印象に残ったのは、女性漁師ならではのたいへんさとよろこび、流氷の下をダイビングする人の語る幽玄的な美しさと流氷減少の実感。
苗穂の築９５年の古民家をリノベしたアトリエにつどう作家たちの誌上展覧会。写真展「堆積する時間、その手触り」の会場で売っていたもの。紙で作ったベンツにベンツのエンブレムだけつけた作品で、価値とは？と問う作品が、大真面目とユーモアがあわさって好き。あと文字を印刷した模造紙とくしゃくしゃの模造紙をあわせた作品が心にひっかかる。
１２年を駆け抜けた新潟の北書店（医学町店舗）の軌跡。いまは坪数を減らして別の場所でリオープンしてるとの由。新潟は一度足を運んだことあるだけで、北書店も行ったことはないけれども、気になった一冊。年表と写真でつづる１２年間、クロージングイベントレポート、店主のエッセイ、南陀楼綾繁、向井透史との鼎談、坪内祐三の妻佐久間文子との対談もおさめられ。イベント豊富なお店だったんだなあ、と。本屋業への見方、新潟のタレントやアイドルとのつながり、一箱古本市、古本業界が景気良かったときの話、ブックオフの功罪（若い人の目を古本屋全般へ行くきっかけにと向けた）、坪内祐三の「記憶を作る」話、などなど興味深いテーマいろいろ。向井透史「早稲田古本劇場」は手に取りたくなった。
 | KADOKAWA 発売日 : 2023-05-02 |
和がオトコマエに思えるシーンの多い巻だったなあ。
 | 双葉社 発売日 : 2023-04-27 |
小笠原諸島満喫ウミガメフルコースとスコットランド料理ハギスには激しく心惹かれる。アイリッシュパブはよく聞くけど、スコティッシュパブも日本にあるのか、あればワンチャン食べれるのかなあ。コピ・ルアクは知ってたけど（映画「かもめ食堂」で知った）、タヌキ、ハナグマ、象の糞から取り出した珈琲豆で作ったコーヒーもあるとは初耳でした。しかし、糞コーヒーゼリーはネーミングわざとでしょ…
2023年04月05日
2023年03月に読んだ本
0301・南川高志 マルクス・アウレリウス『自省録』のローマ帝国 岩波新書 図書館 20230227受領
0302・斎藤環 オープン・ダイアローグとはなにか 図書館 20230226受領 …第一部のみ。第二部の論文は割愛。なかなかに歯応え。
0302・クイックジャパン vol.74 (2007) 特集＝Perfume 20230225 まんだらけ
0303・佐藤友則 島田潤一郎 本屋で待つ 20230223 シーソーブックス
0303・こぽこぽ珈琲 河出文庫 20230219
0303・島田潤一郎 古くて新しい仕事 読書室ポワロ
0303・森敦 月山 ・鳥海山 図書館 20230227受領 …「月山」のみ読了
(0304・ギャラリーフェイク37
0304・塩野七生 ローマ人の物語(文庫版)35 最後の努力(上) 20230228
0304・開高健 歩く影たち 図書館 20230226受領…「岸辺の祭り」「貝塚を作る」以外読了
0304・【再読】鷺沢萠 サギサワ@オフィスめめ 角川文庫
(0305・横浜駅SF 1-2
(0305・川尻こだま 真四角異世界暮らし kindle
(0305・ニャリウッド！1
0306・【再読】天野純希 南海の翼 長宗我部元親正伝
(0306・札幌軟石物語 喫茶こん
(0306・こうせきやまのいし 喫茶こん
0307・ヘミングウェイ 移動祝祭日 20230228
(0308・ハイパーハードボイルドグルメリポート新視覚版1 kindle
0308・澁澤龍彦 城 夢想と現実のモニュメント 河出文庫 20230225 まんだらけ
0309・【再読】南川高志 新・ローマ帝国衰亡史 岩波新書
(0309・灰原薬 応天の門 17 kindle
0310・鈴木光太郎 オオカミ少女はいなかった スキャンダラスな心理学 図書館 20230308受領
0310・アガサ・クリスティ 清水俊二訳 そして誰もいなくなった クリスティ文庫<80> 読書室ポワロ
0311・ヤジと民主主義 図書館 20230308受領
(0311・鍋に弾丸を受けながら 3 kindle 20230310
(0311・幸せカナコの殺し屋生活7
0312・庄野潤三 愛撫・静物 庄野潤三初期作品集 20230308受領 …「愛撫」「静物」のみ読了
0312・秦建日子 ザーッと降って、からっと晴れて 20230311 …ニューカレドニア！
0313・アントニオ・タブッキ レクイエム 図書館 20230308受領 …福間恵子つながり
0314・上原隆 胸の中にて鳴る音あり 20230311
0315・開高健 食卓は笑う. 20230311
0315・新井満 森敦-月に還った人 図書館 20230313受領
0315・【再読】鷺沢萠 サギサワ@オフィスめめ 建国編 でんでん虫国創立！角川文庫
(0316・天上恋歌 7 kindle
0316・ジル・ラプージュ 赤道地帯 図書館 20230308受領
(booklogなし0316・【再読】鷺沢萠 祈れ最後まで サギサワ麻雀 …ざっと
0317・【再読】鷺沢萠 酒とサイコロの日々 図書館 20230315受領
(booklogなし0318・世界人権宣言 国際連合広報センター …映画「丘の上の本屋さん」つながり
0319・スティーブン・ウィット 誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち 図書館 20230313受領
0319・【再読】サン=テグジュペリ(池澤夏樹訳)星の王子様 …映画「丘の上の本屋さん」つながり
0320・山舩晃太郎 沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う 20230318受領
0321・新井満 カメラマンと犬 図書館 20230319受領
(booklogなし0321・スラムダンク25-31
0323・上原隆 ひそかに胸にやどる悔いあり 20230321
(0323・紛争でしたら八田まで12 kindle
0324・【再読】鷺沢萠 待っていてくれる人(「この惑星(ほし)のうえを歩こう」改題) 角川文庫
0325・新井満(文)・ラウル・デュフィ(絵) 朝のパンセ 図書館 2023025受領
0326・【再読】宇月原晴明 黎明に叛くもの 20230316
(0326・片喰と黄金9
0326・穂村弘 彗星交叉点
0326・森敦 月山・鳥海山 図書館 20230318受領 …「月山」のみ0319再読 他は0325-26初読
0326・【再読】新井満 海辺の生活 図書館 20230319受領
0327・【再読】鷺沢萠 サギサワ@オフィスめめ 方言バトル編 ウチにいないぞ、俺! 角川文庫
(0329・週末北欧部Chika 世界ともだち部1 kindle 20230328
0329・森敦 意味の変容 図書館 20230318受領
0329・世界カフェ紀行 中公文庫 20230324
(0330・真造圭伍 ひらやすみ5
0330・【再読】鷺沢萠 愛してる
(0330・みずしな孝之 ジョシュー・オーウェンの取材ノート
0330・中村倫也 THE やんごとなき雑談 20230329
0302・斎藤環 オープン・ダイアローグとはなにか 図書館 20230226受領 …第一部のみ。第二部の論文は割愛。なかなかに歯応え。
0302・クイックジャパン vol.74 (2007) 特集＝Perfume 20230225 まんだらけ
0303・佐藤友則 島田潤一郎 本屋で待つ 20230223 シーソーブックス
0303・こぽこぽ珈琲 河出文庫 20230219
0303・島田潤一郎 古くて新しい仕事 読書室ポワロ
0303・森敦 月山 ・鳥海山 図書館 20230227受領 …「月山」のみ読了
(0304・ギャラリーフェイク37
0304・塩野七生 ローマ人の物語(文庫版)35 最後の努力(上) 20230228
0304・開高健 歩く影たち 図書館 20230226受領…「岸辺の祭り」「貝塚を作る」以外読了
0304・【再読】鷺沢萠 サギサワ@オフィスめめ 角川文庫
(0305・横浜駅SF 1-2
(0305・川尻こだま 真四角異世界暮らし kindle
(0305・ニャリウッド！1
0306・【再読】天野純希 南海の翼 長宗我部元親正伝
(0306・札幌軟石物語 喫茶こん
(0306・こうせきやまのいし 喫茶こん
0307・ヘミングウェイ 移動祝祭日 20230228
(0308・ハイパーハードボイルドグルメリポート新視覚版1 kindle
0308・澁澤龍彦 城 夢想と現実のモニュメント 河出文庫 20230225 まんだらけ
0309・【再読】南川高志 新・ローマ帝国衰亡史 岩波新書
(0309・灰原薬 応天の門 17 kindle
0310・鈴木光太郎 オオカミ少女はいなかった スキャンダラスな心理学 図書館 20230308受領
0310・アガサ・クリスティ 清水俊二訳 そして誰もいなくなった クリスティ文庫<80> 読書室ポワロ
0311・ヤジと民主主義 図書館 20230308受領
(0311・鍋に弾丸を受けながら 3 kindle 20230310
(0311・幸せカナコの殺し屋生活7
0312・庄野潤三 愛撫・静物 庄野潤三初期作品集 20230308受領 …「愛撫」「静物」のみ読了
0312・秦建日子 ザーッと降って、からっと晴れて 20230311 …ニューカレドニア！
0313・アントニオ・タブッキ レクイエム 図書館 20230308受領 …福間恵子つながり
0314・上原隆 胸の中にて鳴る音あり 20230311
0315・開高健 食卓は笑う. 20230311
0315・新井満 森敦-月に還った人 図書館 20230313受領
0315・【再読】鷺沢萠 サギサワ@オフィスめめ 建国編 でんでん虫国創立！角川文庫
(0316・天上恋歌 7 kindle
0316・ジル・ラプージュ 赤道地帯 図書館 20230308受領
(booklogなし0316・【再読】鷺沢萠 祈れ最後まで サギサワ麻雀 …ざっと
0317・【再読】鷺沢萠 酒とサイコロの日々 図書館 20230315受領
(booklogなし0318・世界人権宣言 国際連合広報センター …映画「丘の上の本屋さん」つながり
0319・スティーブン・ウィット 誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち 図書館 20230313受領
0319・【再読】サン=テグジュペリ(池澤夏樹訳)星の王子様 …映画「丘の上の本屋さん」つながり
0320・山舩晃太郎 沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う 20230318受領
0321・新井満 カメラマンと犬 図書館 20230319受領
(booklogなし0321・スラムダンク25-31
0323・上原隆 ひそかに胸にやどる悔いあり 20230321
(0323・紛争でしたら八田まで12 kindle
0324・【再読】鷺沢萠 待っていてくれる人(「この惑星(ほし)のうえを歩こう」改題) 角川文庫
0325・新井満(文)・ラウル・デュフィ(絵) 朝のパンセ 図書館 2023025受領
0326・【再読】宇月原晴明 黎明に叛くもの 20230316
(0326・片喰と黄金9
0326・穂村弘 彗星交叉点
0326・森敦 月山・鳥海山 図書館 20230318受領 …「月山」のみ0319再読 他は0325-26初読
0326・【再読】新井満 海辺の生活 図書館 20230319受領
0327・【再読】鷺沢萠 サギサワ@オフィスめめ 方言バトル編 ウチにいないぞ、俺! 角川文庫
(0329・週末北欧部Chika 世界ともだち部1 kindle 20230328
0329・森敦 意味の変容 図書館 20230318受領
0329・世界カフェ紀行 中公文庫 20230324
(0330・真造圭伍 ひらやすみ5
0330・【再読】鷺沢萠 愛してる
(0330・みずしな孝之 ジョシュー・オーウェンの取材ノート
0330・中村倫也 THE やんごとなき雑談 20230329
 | 岩波書店 発売日 : 2022-12-22 |
何度も読もうとしては挫折の「自省録」。それを切り崩す一助になるかもと思い、手に取る。哲学ではなく歴史からマルクス・アウレリウスと「自省録」に切り込む一冊。五賢帝の掉尾をかざる、哲学者による「哲人政治」と評されることもあるが、実際のマルクス・アウレリウスの時代は、戦争と疫病に見舞われた時代で、平和で豊かな時代であったとは一概には言えず、その統治も、本人に哲学の素養はあったとしても、哲学を反映した政治とはとうてい言えず、養父アントニヌス・ピウスの遺風をまもって統治にあたり、「今を大事に」生きてきたひとりの皇帝の姿が浮かび上がる、と。◆マルクスは、帝国住民の安寧のために働こうと努力した。しかし、その治世において、彼は疫病大流行、戦争、反乱に遭遇し、危機的状況の中でただ懸命に皇帝の職務に励むことでしかできなかった。哲学の理念や政体の理想を目指してではなく、先帝アントニヌスの範に従って懸命に働くこと、それが彼の生き方であったといってよいのではないか。 (p.184)◆神谷恵美子訳「自省録」は持っていたが、挫折中。南川氏の著作で神谷恵美子訳の兼利琢也補訂版が岩波文庫から出ていることを知り、Kindle版を購入した。これから読むのが楽しみ。
 | 医学書院 発売日 : 2015-06-22 |
◆第一部のみ。第二部の論文は割愛。なかなかに歯応え。◆いまよく言ってる読書会を主催の方が、この読者会、オープン・ダイアローグと通ずる、といった趣旨のことをおっしゃっていて気になり。◆内容は、統合失調症患者に、オープン・ダイアローグを用いれば薬物治療が必要なくなる、というフィンランドの研究成果の紹介、その理論的根拠、実践方法というもの。◆精神医学的なもの普段読みつけてない身にはなかなかの歯応え。患者家族も含めなかなかのコミットが求められるなあという感想。まずは聞く、発言の内容を否定したり決めつけたりしない。無理に結論を出そうとしない。それぞれの異なった理解を、うまくつなぎ合わせ、共有する。といったあたりは通ずるものがあるかなあ、と。
 | 太田出版 発売日 : 2007-10-12 |
ポリリズムを出した頃のPerfumeが特集で、懐かしくて買ってしまう。「ストリートライブがネットの告知だけで四〇〇人集客！！」にかしゆかが冷静に「絶対嘘ですね、あれ。スタッフさんが話を大きめにしてたんですよ。」とかえしてたり。のっちが、高速でバスドラムがガンガン鳴っているような、狂ったっていうか、その上で歌いたいと言ってたり。中田ヤスタカとのからみでは、(1)「ジューシーフレグランス」て曲、中田さんがちょっと間違えてデータを消しちゃって発表できなくなった。あとで「もう一回やりたいです」って言ったら、「もう昔の曲だから嫌だ」って。（2）こないだ「Perfumeの曲、どんな曲があったか覚えてますかって、聞いたんです。そしたら「お、覚えてるよ…チョコレイト・ディスコ」とか「エレクトロ…ワールドだっけ？」とか言って、てあたりが好きです。Perfumeを中学生の頃からずっと見てて成長した部分はと問われ、中田ヤスタカ「私服がおしゃれになったことかな（笑）」、いやそれだけかーい、と。中田「デモ作ってオケ録って最後に歌入れ、というスタンダードな形では絶対に出来ない。歌詞とメロディが出来ていればすぐに録って歌入れをして、あとは締め切りが来るまで、僕が一人で好きなように料理する感じ。それをやらせてもらえなければ、プロデュースできない」てのは今も一貫してるのかなあ、と。◆Perfumeだけさらりと読むつもりが、銀杏BOYZ、近田春夫、襟沢世衣子、北沢夏音、上原ひろみ、ピエール瀧、板尾創路、松本亀吉、映画本CD紹介などなど他にも読みたいとこ多数だった。のちに「ルポ川崎」書いた磯部涼が銀杏の密着取材してたとは。
 | 河出書房新社 発売日 : 2022-11-05 |
さまざまな作家のコーヒーにまつわるエッセイを集めたもの。戦前、戦中、戦後でその楽しみ方、受容のされ方、流通のひろがりが異なるのが垣間見えるのもまた楽しかった。福引であたったコーヒーメーカーにエスプレッソ用に挽かれた豆を入れて…「コーヒー革命！今まで飲んでいたのは何だったのだろう」と開眼した湊かなえ。「ウィーン風」をウィンナーと勘違いし、ウィンナーを「ウィーン風」と勘違いした星野博美（ウィンナーコーヒーはタコさんウィンナーがコーヒーのまわりに…）。ふるーくなったコーヒーを無理やり淹れたあとに「コーヒーは、やっぱり新鮮に限る」と阿川佐和子。その蓄積が小説へのきっかけを生み出す、小さな非日常への移行や浮揚の体験をコーヒーにみいだす片岡義男。コーヒーの効果は官能を鋭敏にし洞察と認識を透明にする点でいくらか哲学に似ていると寺田寅彦。シナリオ稼業に入るきっかけとなった喫茶店で覚えてるのは、プラスチックのカップで飲んだ薄いコーヒーの味くらいという向田邦子。コーヒーのいろいろな淹れ方を楽しんでるからと「ちがいがわかる男」のCMを断っちゃった團伊玖磨（あとでお金が必要担った時に、あの時受けていればとちらちら思ったりもしたが）。クローブを入れて煮出したコーヒーに、コーヒーとは別物と思ったがアラブらしく素敵だったと畑正憲。「珈琲のある風景」て本を出したら、ちっともコーヒー通ではないと自認するのに、コーヒー通と思われてこまった森本哲郎。といったあたりが印象に。井上ひさしの喫茶店学は、名前のとおり、コーヒーというよりは喫茶店に焦点があたるのだけど、常連客・固定客と宣伝でパッと押し寄せる一見客という観点でみると今の喫茶店、カフェの在り方にも通ずるものがあるなあ、と読みました。
| 新潮社 発売日 : 2019-11-27 |
ひとり出版社夏葉社をたちあげた島田潤一郎さんのエッセイ。同じ著者の「あしたから出版社」「本屋さんしか行きたいとこがなかった」を読んできたので、内容重なるところもあったけど、より仕事論、読書論、出版論といった観点で、静かだけれど熱い思いが語られている、と感じた。大資本のサービスは、いろいろなものを安価に、容易に入手できるようになり、すぐに手元に届くようになったが、その代わり仕事の選択肢が減ったという観点。数値化されず、SNSで拡散されず、多くの人に共有されない思い出の大切さ。「一回読んだだけではわからないけれど、ずっと心に残る本。友人に話したくなるけど、上手く伝えられなくて、「とにかく読んでみてよ」としかいえない本。ぼくの孤独な時代を支えてくれた大切な本。ぼくが死んだあとも残る、物としての本。」(p.64)を作りたいという思い。むかしの作家の作品に込められた滋味。「本を読むということは、現実逃避ではなく、身の回りのことを改めて考えるということだ。」（p.112)。といったあたりに特に惹きつけられた。そして、個人的にはこの本の肝ともいえる207頁の次の一節は、何度も何度も読み返してかみしめて、自分のなかに深く浸透していくのを感じた。ほとんど泣きそうになってしまった。嗚呼、本当にこの本を読んで良かったと思えた。◆最初にひとりひとりの生活があるのだ。最初にかけがえのない個人がいて、その人の家族がいて、友人がいる。彼らと話し、ともに出かけ、食事をする。彼らをどう思い、彼らのためになにをしようと思うか。そういうきわめて個人的なことが、文章となり、本となることで、永遠の命を持つ。ぼくがつくりたいのは、そういうものなのだった。/聞き取れないような小さな声。その人しか知りえない私的な事柄。小さな喜び。悲しみ。/それらを綴る文章もまた静かなものだろう。本の装丁もその内容にあわせて、落ち着いたものになるだろう。/その本は売り場では目立つことはないかもしれないが、そういう本を求めている人にはきっと届く。/ぼくは長く、そういうことを経験している。(p.207)
 | 夏葉社 発売日 : 2022-12-25 |
高校大学とパチンコ屋に入り浸って缶コーヒーすすってた著者が、実家の本屋の支店の店長になって、そこから町の人の信頼を徐々に得て行って、本屋なのに、化粧品販売、エステ、美容室開設、年賀状受付、最後にはパン屋オープン、コインランドリー開設と複合化をすすめ。本屋の複合化のトレンドより前に。しかし、それは流行にのってというよりは、本より利益率の低い商品は見当たらない！という現状認識のもと、お店をどうやれば生き残らせるか模索した果てのことだった。しかし、信頼の得方がハンパじゃない。ウィー東城店で学校に行かなくなった子の面倒を見てくれるらしい、年賀状の宛名を書いてほしい、プリンターが壊れたんだけどどうしたらいい。それを本屋のしごとじゃないから、とバッサリ斬るのではなく、話をきき、どうしたらいいか一緒に解決しようとする姿勢。そして人の育て方。最初は全員に自分のように仕事をしてほしいと思ってうまくいかなかったけれど、不登校だった子に働いてもらう中で、働く人にあったやり方が徐々にわかってきて、最後の方ではもうまかせられるから、と次代の店長誕生。これからは彼らの時代、彼らの物語がつむがれていくことを予感させつつしめくくられる。地方の本屋のありかた、ということにとどまらない、さまざまな視点、刺激をくれた一冊でした。読み終えて表紙を改めて眺めると、扱う業務を広げてきた軌跡がわかって感慨深い。基本的にはウィー東城店の佐藤友則さんの語りが9割、そこに夏葉社の島田潤一郎が物語としてふくらませた1割で成り立っている本なのだとか。どうふくらませたんだろう、というのは興味のあるところ。
 | 新潮社 発売日 : |
人の生は歩く影にすぎぬ（シェークスピア「マクベス」）。ふと、手にした「パニック・裸の王様」 (新潮文庫)の表紙裏に「玉、砕ける」「怪物と爪楊枝」の朗読版の宣伝があって、こんな短編集があったのか！と知り、手に取る。舞台はほぼベトナム、「戦場の博物誌」にイスラエルとビアフラが出てくる。玉、砕けるの玉は垢を固めた玉で、帰路の飛行機のなかであっという間にくだけた。「怪物と爪楊枝」は絶大な権限を持つ秘密警察のトップたるバウ将軍をバーで見かけたこと、その後の噂を聞いたこと、入院中の病室に呼ばれ、貴重な情報をやるからかわりに、日本から爪楊枝製造機のカタログを送ってくれ、という依頼（軍人としてはもう活動できない怪我を負い、第二の人生のために）…という一篇。本編もそうだが、「私は高いストゥールに腰をおろし、カウンターに肘をおいてペルノーをすすっていた。茴香の冷たくて甘い匂いが唇を濡らし、酒精のあたたかい霧がじわじわと体内にひろがりつつあった。」という何気ない一節に、その場の空気感を感じる。「墜落したエア・ヴェトナムのスチュアデスの一人が蝶々になってサイゴンの家へ戻ってきたという話なんです。今日の第一面のヘッド・ラインは拳骨ぐらいもある字で、スチュアデス、蝶々となるというんですからね」(p.155)（飽満の種子）というエピソードは、人々が何を信じたがるか、何を報道するのか、という今にも通ずる問題を垣間見せる。いつもその場にたって地べたによこたわって呻吟する人を、助けもせず、祈りもせず、ただ手をぶらさげたままでまじまじと上から見おろしているだけの姿勢。そして大後方の空調のきいたホテルの部屋でうつろで激しい文章を書くだけのこと、それでいくらかの稿料をポケットにすることに、そこはかとなく、いいようのないコンプレックスを感じている。やましさを感じる。(p.286)（戦場の博物誌）という一節の苦さも。「いやや、いややといいながらウットリしびれてるやないか。また私に嘘ついて火星へいくつもりとちゃうか。火星の話はもうせえへんという約束や。守ってもらいたいナ」(p.75)（フロリダに帰る）に、黙ってベトナムへ行かれた主人公の妻の気持ちがせまってくる。
 | 新潮社 発売日 : 2009-08-28 |
一冊まるごとディオクレティアヌス。ディオクレティアヌスといえば四頭政。ただディオクレティアヌスには帝国を分割する気はなかった。四頭政は、蛮族からの帝国の防衛が最大の目的で、軍事は四人で分担、しかし統治に必要な政策はディオクレティアヌス一人が決めていた。防衛の面では大成功、しかし、皇宮が4つとなったことで、軍隊は倍増、官僚機構は肥大化、それを支えるために大増税が行われた。皇帝は、市民たちの第一人者から絶対君主へ、皇帝と臣下たちの間の距離は大きく広げられた。また本国と属州の区別も撤廃された。中央集権的な、きめこまかな統治、きめこまかな町税のため。極度のインフレが起こり、価格統制勅令、悪貨を良貨とすべく貨幣改鋳が行われたが、インフレの鎮静化には失敗。徴税徴兵のため、職業選択の自由、居住地を変える自由は禁じられた。帝国に暮らす民は、蛮族からの略奪には守られたが、重税に苦しみ、大変窮屈な政策を押しつけられ、生きづらかったのでは、と。ディオクレティアヌスの在位最末期には、キリスト教徒迫害ととられる勅令が出されたが、殉教者はごく少数だった。古代のキリスト教会が持つ柔軟性には著者は何度も感心、三世紀後半のキリスト教徒弾圧の当時から、棄教者の復帰をゆるすのに必要な手順がマニュアル化されていたのだ、と。最後は、最高権力者としては空前絶後、生前にさっと退位して隠棲したところまで描かれる。政治史的にはおおむねそうだったのだろうと思われる。政策面はもう少し類書をあたりたい。
 | 小学館 発売日 : 2023-02-28 |
バブル華やかなりし頃に、東京のウォーターフロントにギャラリーフェイクをかまえた藤田が、見た目も変わらず令和の世に。コロナ禍のリモート、アートレンタル、ウーバーイーツ的配達員、オンラインゲーム、暗号資産詐欺、ロシアのウクライナ侵攻が作中に取り入れられ。藤田もサラも三田村館長も知念も、そのままの存在で時代だけが過ぎ行き、永遠の〇〇歳、という設定でどうやらいくようだ。この巻の藤田は、現代アートが一握りのアカデミズムに牛耳られる様を厳しく批判し、オンラインギャラリーやアート投資に、アカデミズムの破壊、アートの民主化の可能性を見出し。元シェフ、現ウーバーイーツ的配達員の男が、妻子に会いにいけない理由を、見栄、虚栄心、自己愛と切って捨て。窃盗団の転売に手を貸すと思いきや、逮捕に手を貸し。茶道界の新風となりそうな女性の利休論に感銘を受ける。なかば藤田を脅しながら保税倉庫に同行してきた三田村館長が、神業的にイコンを修復していく藤田の横で、「表面の顔をめくるとその下に別の顔が現れる」イコンに藤田を重ね合わせ、その善も悪も飲み込んだ、深く広い学識と、高い技術と多層的な人物像に惹かれていた時代を思い起こすシーンが印象に。
 | 角川書店 発売日 : |
ひさびさに本棚から引っ張り出し。鷺沢さん、わたべさん、藤原伊織さんの丁々発止のやりとりが抱腹絶倒。そして23年前のインターネット文化が垣間見えてなつかしい。キリ番を踏んだ、踏めなかったで大盛りあがり。ISDNは出始めで、ヒモ（LANケーブル）を忘れた、電源ケーブルを忘れた、いまとなってはあぶなっかしく思える、人のパソコンで更新した、などなど。あとがきのいおりん「心中ひそかに、彼女たちをガツガツシスターズと呼んでいる。おかげでどこかへ消えた飲食代は、この解説文の原稿料などをはるかにうわまわるはずだ。真っ赤っ赤の大赤字、大損害である」とはいいつつもそこはかとなくうれしさを隠せないと思ってしまうのは読者の期待か。
 | KADOKAWA 発売日 : 2017-08-10 |
1-2巻読了。本州の99%が横浜駅に覆われた世界。自己増殖し続ける横浜駅。Suikaをインストールしたものしか基本存在させず、エキナカのルールを破ったものは外の世界に強制排除する機構。それと対抗するのがJR北日本とJR九州、と。よくこんな設定思いつくなあ…面白い！
なんでだろう、やったことないゲームなのに、川尻さんが描くと面白く読めてしまうのは。
 | KADOKAWA 発売日 : 2023-02-27 |
ニャリウッドカメラマンのマズルカが、ある日街で見かけたストリートミュージシャンのビビに何かきらめきを感じ、ビビを主人公に映画を撮ることを決意。シナリオ書くのに悪戦苦闘しつつも…と。夢をめざすこと、夢を笑うこと、本当の自由などなどクリエーターを目指す人にはきっと刺さる言葉が満載。
 | 集英社 発売日 : 2013-11-20 |
(2023/03/06読了分)ミネルヴァ書房の「長宗我部元親・盛親」、「黒南風のうた 蜷川道標と長宗我部元親」、「戦国武将列伝 10 四国編」を読んだのを気に再読。大坂冬の陣を前に、長宗我部盛親が久武親直から長宗我部元親の治世を語り聞く、という構成。民を豊かにするため、国を平和にするために、土佐統一、四国統一を目指してやぶれ、いつしか覇道に堕ちて心が壊れていった長宗我部元親、その闇の仕事を一手に引き受けた久武親直（表の能吏にして裏の忍びの頭目）という設定。実弟島弥九郎は阿波の海部氏に討たれたのではなく、元親に命じられた久武親直が討った。本能寺の変の前に光秀に謀反をうながした。本能寺の変は光秀と秀吉の出来レースだったが光秀は秀吉に裏切られた。戸次川の戦いは秀吉の命令で長宗我部元親・信親親子と十河存保を殺すための戦いだった、現に逃げた仙石秀久はのちに許されている。久武親信が、私が死んだ後も親直を重く用いるなと言ったのは、国のためにならぬという意味ではなく、親直を慮ってのこと。といったところが作者なりの解釈なり特色だったのかな、と。元親から信長へは、いずれ盟約など簡単にやぶると覚めた見方。十河存保から元親へは、どう考えても勝てぬ戦に敢然と挑むと聞き、見事な決断と感じ。蜷川道標は法制定にあたる官吏といった描かれ方。我が子親和の最後の叫び「最早誰も父上のことなど尊敬しておりません」。豊臣徳川の手切れを心待ちにし、その乱に乗じてふたたび四国を統一しようと考え果たせなかった元親。盛親の「父は、夢に近づけば近づくほどに絶望を深めていった」という述懐が苦い。(2014/01/01読了分)戦国時代、四国統一を目前に、秀吉の軍門にくだり、期待していた優秀な長男信親を戸次川の戦いで失い、壊れてしまった長宗我部元親の物語。どう描いても、スッキリと一筋縄ではいかない。毒殺、暗殺、謀略を張り巡らし、またそれらの汚れ仕事を久武親直に采配させ、四国では領土を拡大していくも、結局は、中央の軍にはかなわず、理不尽な九州への出陣で、自分が捨て駒にされていることを知り、息子を奪われ、息子の血を残すことのみ考えて家中を乱し、関ヶ原前に乱を予感し、ひとたび事が起こった場合の構想を楽しみに練っていたところで病に倒れた、と描かれる。己の才を恃むも、どうあがいても一番にはなれない、自負と苦み。
| 発売日 : |
旅に出たくなった石がごろごろと転がり、道を越え、川をわたり、札幌の街中をころがり、それに従い、別れた石はとどまって、車を止めたりテーブルになったり。石はどんどんまるく小さくなっていき…と。正直、車運転してて前からでかい石が転がってきたらビビるとは思うがそれはそれとして。むくりと「ここではないどこかに行きたい」、それが転がっての旅、というところはいいなあと。さりげなく石の役割をちりばめつつ。
| 発売日 : |
四万年前の噴火、火砕流が冷えてかたまり軟石に。北海道開拓の始まりで断熱材がない時に、建材として軟石が重宝されたこと。石山から馬鉄で運ばれ、その名残が石山通。昭和の中頃には安価になったコンクリートに押され。いまも常盤で切り出してるんだというのは知らなかったなあ。一棟まるまるではなくても、部分的に内装外装に使うという用途もあるんだな、と。2015年まで札幌軟石発見隊みたいなイベントあったのか。参加してみたかった。
 | 新潮社 発売日 : 2009-02-01 |
「現代音楽史」（中公新書）より。ヘミングウェイ「移動祝祭日」20年代パリでのフィッツジェラルド、エズラ・バウンド、ガートルード・スタインらとの交流◆そしてまた、三浦しをん「好きになってしまいました」にも導かれ。◆有名な「もし幸運にも、若者の頃、パリで暮らすことができたなら、その後の人生をどこですごそうとも、パリはついてくる。パリは移動祝祭日だからだ」は冒頭のエピグラフ。読む前は、セレブリティたちと入れかわり立ちかわり毎日パーティみたいなのを想像してたけど案に相違し。まだ文名高からず、どうにか作品をものにしてやろうとやっきになる姿勢が垣間見え。そして実際の懐具合はともかく、解説によるとあえての貧しい暮らしをこころがけていたとか。エズラ・パウンド、ガートルード・スタイン、ジェイムス・ジョイスなど濃淡はありつつ作家たちと交友し。そして個人的にはスコット・フィッツジェラルドに３章あてられているのがよかった。手放しの称賛ではなく、苦い思いも多々いただいていたけど、それでも「グレート・ギャッツビー」を読んだ時の文才のきらめきは、それらがどうでもよくなるほど輝いていたのだ、と。フィッツジェラルドとヘミングウェイが、幌のないオープンカーでリヨンからパリへのドライブ旅行のシーンが、ユーモラスかつ味わい深く。◆解説に、ヘミングウェイ死後の出版でメアリー夫人が編纂し、そのために削られた草稿もあるようで、必ずしも十全にすみずみまでヘミングウェイの意がいきわたってるとは言えない点も留意が必要か。
 | 秋田書店 発売日 : 2023-03-08 |
テレビ本編、書籍と見てきているので、3度目の味わい。けれどやはり飽きさせない。この巻はリベリア編のみ。テレビ、書籍では味わえなかった、旅立ち前や、内心の吐露、現地の人を真似て手で食べようとして、手をのどにいれてオエっとなったシーンなど、漫画ならではのシーンも味わえて、原作者のロングインタビューも読めて最高でした。
 | 河出書房新社 発売日 : 2001-10-01 |
澁澤龍彦「オブジェを求めて」の巻末に広告がのってて、気になり。最近この手のきっかけが多い。ユリイカの空中庭園特集の広告からisの失われた書物特集、開高健「パニック・裸の王様」の表紙裏から「歩く影たち」など。◆わりとざっくりと、澁澤龍彦が城をめぐりあるいたり、書物のなかから思い起こしたりしつつ、大好きな信長を語ったり、サド侯爵を語ったり、といった体裁の一冊。安土城をみた帰りに、あやしげなバーに入ったら、おそろしく太った女の子三人に鴨だとばかりに囲まれて、注文もしないおつまみやらサラダやらが並んで、これから茶漬けを食べにいかない？と誘われ、ほうほうの体で逃げ出してきて、「そうだよなあ。やっぱり廃墟の方がいいよ。幻の城がいちばんだよ。」と著者がつぶやくシーンはユーモラスこの上ない。◆「おそらく城とは、何よりもまず、専制君主の夢想のための場所なのだ。しかし、この場合、専制君主は必ずしも現実の専制君主である必要はあるまい、というのが私の意見である。」(p.84)著者もその掉尾につらなる、と。巻末の龍子夫人のエッセイも味わい深く。それまで出不精で旅にでたがらなかった著者が42歳で一念発起、夫人とヨーロッパ旅行へ、三島由紀夫らがお見送りに、その年の冬に三島は割腹自殺をとげ、あれは別れを告げにきていたのだと思ったり、方向音痴、時間音痴、お金音痴で、ホテルのなかで迷ったり、その国の紙幣を節目しても、こっちのお札のほうがきれいだねえ、なんて言ってて、ひとり旅はとても無理だったろう、と。
 | 岩波書店 発売日 : 2013-05-22 |
(2023/3/9読了分)「ディオクレティアヌスと四帝統治」（文庫クセジュ）、塩野七生「ローマ人の物語 35 最後の努力（上）」、南川高志「マルクス・アウレリウス 『自省録』のローマ帝国」と読みすすめてきて、この本を再読したくなり◆皇帝政府が帝国支配のパートナー、支配の共犯としていた各地の有力者たちが、それぞれの場で住民たちを支配しており、かつ彼ら有力者が帝国への帰属意識、「ローマ人」としての自己認識を持ってローマ風の生活様式を取り入れることに意義を見出している間は、帝国ローマは世界を統合する力を持ち得た (p.42)が肝かな、と。ローマ人たることが魅力的なうちは求心力を持ち、4世紀も後半になってローマ人ならざる人々にとってローマ帝国の魅力がなくなったので---治安維持力の低下、衣食住の面での失望、排外思想の興隆---、反乱され、侵入され、蹂躙された、と。◆ただ、その度合いは帝国の東半と西半では異なり、東半が皇帝権力が新しい貴族層を把握し官僚や宦官を用いた強力な統治体制ができていったのに対して、皇帝権力が在地の有力者を充分に把握できずにいた帝国西半では、秩序を維持するために新しい兵士と新しい軍指導者に頼る傾向が強まっていた。それは西半の急速な瓦解を招き、東半はビザンツ帝国として生き延びていく要因でもあった、と。(2013/6/13読了分)ローマ帝国とは、帝国を構成する人が、われわれはローマ人である、というアイデンティティをもって存在していた。それが無くなった時に、衰亡し、崩壊した、と。蛮族というのも後世の考え方で、そのようなまとまりがあったわけではなく、もっとゆるやかな集団が場当たり的に活動していた。ローマの境界も、防壁や国境のまわりに、ゆるやかなゾーンがあり、グラデーションを描くがごとく、ひろがっていたこと。また、ローマ帝国のすみずみにまで、ローマの文明をありがたがっているわけではなかったこと、が描かれる。個人的には、ユリアヌス帝の治世が、アンミアヌスの史書で描かれるよりも、よりコンスタンティウス2世の施政に沿って行われていたことを知ることができた。
 | 新潮社 発売日 : 2023-03-09 |
道真が業平の部下たちに女難をめぐる相談を持ちかけられる、伴中庸が太皇太后に見込まれる、藤原高子入内をめぐる一悶着の巻、と言ったところか。太皇太后を、藤原を煮詰めたような女と評したシーン、すごい表現だなあ、と。道真は、ああ面倒と思いつつつい面倒事を解決してしまい、さらに頼られるの図。どこまでも続きそうで、青年壮年老年まで描かれるのだろうか、とも思い。
 | 筑摩書房 発売日 : 2015-05-08 |
三浦しをん「好きになってしまいました」で取り上げられていて気になった一冊。オオカミに育てられた双子の少女がいた、サブリミナル広告でポップコーンの売上激増、虹を3色と認識している民族がいる、人語を解する猿や馬がいる、双子は離れて育てられても同じ性格や嗜好を持つ、などなど、広く知られている心理学的エピソードが実は…というのを懇切丁寧に解いてくれる。◆ブラインドテストは必須なのに、それすら守られない実験も多く、根拠あいまいなままの説がセンセーショナルに取り上げられ、広まってしまうケースも。◆科学の世界では発見が公に認められるためにはほかの研究者による確認作業が必須(p.108)というのがこの本を通しての基本姿勢だが、「ピダハン」はブラジル政府の許可がおりず、ピダハンの著者も他の専門家もその後の現地調査の確認ができず、神話になってしまうのでは、という状態なのだとか。割と感銘受けた本なのでちょっと意外。◆論理的にものを考える（略）原典にあたること。噂に頼らぬこと。疑うこと。そうすれば、心理学のなかの似非科学の部分ははるかに少なくできるに違いない。(p.295)という最後近くの言葉はたしかにそう、けれど難しく、自分もいまだに根拠が薄弱なのに信じていることってあるんだろうなあ、と思いつつ。◆それにしてもデータを捏造したり、いじってしまったりする人、あとをたたないけれど、やはり功名心が勝ってしまって、バレないバレないと思ってしまうものなのだろうか。
 | 早川書房 発売日 : 2010-11-10 |
読書室ポワロで読み始めて、頁をめくる手が止まらず、閉店間際まで席を立てなかった一冊。超有名作品で、10人が孤島に集められ、ひとり、またひとり殺されていくというのは知っていたけれど。誰が犯人かわからぬまま、残されたものは疑心暗鬼にかられ、「彼らを結びつけているものは自己防衛の本能だけだった。そして、五人とも、人間ではなくなっていた。動物にかえってしまったのだった。」(p.259)。最後に明かされる犯人と動機。正義感というよりは一種の狂気、言いがかりともいえそうな、しかし関わったものの心には深く淀んでとどまったものを、もう一度かきまわそうという所業と執念。なるほど、法には反していなかった、しかし…と思うか、法には反していなかった…だからよいとするのかのせめぎあい。
 | KADOKAWA 発売日 : 2023-03-10 |
今回も危険なところほど飯がうまいを信条につきすすみ。interlude 的なまずかったもの集、面白かった。ホットドッグに油たっぷりのフライドポテトかけたの、ハイカロリー極まり魅力的。最後の方の、まだデビューする前の時期の、俺はファミレスでサンドイッチ食べながら、コーヒー飲むのが好きな男なんだという自己認識がポツンと身に染みる。ボブさんとの出会い、嗚呼ほんとに初期の善きインターネットだなあという思いでしみじみ。
| ころから 発売日 : 2022-11-07 |
事件の経過はそれなりに追ってきたつもりだった。ヤジポイの会のzineも読んだりして。判決は原告のほぼ全面勝訴。ただ、街宣車のほうに向かっていった行為は静止されても仕方ないとされた、など判決の詳細を読めたのは収穫。これだけ動画という動かぬ証拠を出されながら、上告した警察には疑問。また裁判の過程でも、動画を示されても覚えてない、動画に残されてないことをあった、言われていたなど強弁してきてて非常に腹立たしい。大杉さん、桃井さんの声をあげた勇気には感服。同じことが自分にできたかと思うとむずかしい。元警察官の「元々警察っていう組織の中に治安維持のためであれば、多少のやりすぎとか、違法なことをしても許されるんじゃないのという風潮があるんですよ 」(p.195)「警察が既成事実を積み重ねているうちに、国民の権利がわからないところで危険にさらされている部分があるんだよっていうことを皆さんわかってないんじゃないでしょうかね。(p.201)というコメントには背筋が寒くなる。「権力者にとっては抗議の声は不都合なものというか、やっぱり怖いものなのだと改めて思った。（略）声を上げる権利を守るというのが、人が尊厳を持って生きるうえで大切だと思った(p.167)、あるいはいちばん最後の「 勇気を出して声を上げることの大切さを改めて私は教えられた。（略）今日もどこかで誰かが、声を上げている。民主主義とは、このような声によって、ようやくもちこたえられている。」という言葉をかみしめつつ。デモとかヤジとかじゃ何も変わらないと思っていた過去の自分の認識を恥ずかしく思いつつ。
 | 星海社 発売日 : 2023-03-08 |
アドとの命の狙いあい、幸せすぎてのスランプからの、キヨミを救うための仕事復帰、しかしそれは7に疑念を抱かせることになった…というところまで。ユイの加入でパワーアップした職場だがカナコの明日はどっちに？！
 | 講談社 発売日 : 2007-07-11 |
島田潤一郎「古くて新しい仕事」を読んだら、なにか庄野潤三を一冊読んでみたくなり。短編集の中から、結婚生活も人生も光り輝く素晴らしい世界では決してないと思い始めてきた妻が語る「愛撫」。妻を亡くした夫が子供たちと何気ない日常に自分の父や妻の思い出にかられながら対話を重ねていく「静物」。このふたつだけ読了。何気なく見える会話の積み重ねの先にぼんやりと見えるものを味わい。
 | 河出書房新社 発売日 : 2017-06-06 |
すべての道はニューカレドニアに通ず。「ニューカレドニア」をキーワードに、駆け出しの主婦シナリオライターが、さえないサラリーマン中年が、かつて司法試験をめざした銀行のOLが、堂々と二股かけてくる彼を持ちつつ失踪した父をさがしに出る娘、シナリオの発注者などなど、時間も場所もバラバラな人々がかすかにすれ違い、つながりを持ちつつ、最後は…と。お話が良くできてるなあ、と堪能しました。◆日々のことだ。減らしたくない、失いたくないといくら思い努力をしても、夜が来て、次の朝が来ると、掌の中のものは、確実に少しずつ減っている(p.63)◆「バカ。人生は短いんだ。ずるずるしてる暇なんか無いんだ」(p.168)◆人生は、間違えられるからこそ、素晴らしい(p.181)◆しかし、「今まで、自分を曲げずに生きてきて良かった」はパワーワードだなあ。もし目の前に差し出されたら、自分の来し方行く末ふりかえっちゃうよ。
 | 白水社 発売日 : 1999-07-10 |
福間恵子「ポルトガル、西の果てまで」を読んだら、無性に読みたくなった一冊。あるひどく暑い夏のリスボンでの一日、現実と夢うつつを行き来しつつ、さまざまな人に--時に死者とも--会ったのちに、夜半に--明確には記されないものの--フェルナンド・ペソアと食事を共にするまでが描かれる一篇。
ふらふらとさまよい、思い出の場所を探し、シャツを買い、着替え、娼館で仮眠し、占いを受け、墓参し、語り合う。イザベルと出会う直前まで描かれて、何を語ったか全く描かれなかったのはなぜなのだろう。タデウシュとの会話で何を話したいか語ってしまったからだろうか。◆わたしの感情は、真の虚構を通してしか湧き上がらない性質のものなんだ。わたしに言わせれば、きみの考える誠実さなど、形を変えた貧困だよ。究極の真実とは虚構にほかならない。(ペソア。p.163)◆魂には、どんな薬もいかさまだよ、タデウシュが言った。(p.56)◆優しさって、知らないひとにしてあげられる、最高の贈り物だよね。(p.77)◆
ふらふらとさまよい、思い出の場所を探し、シャツを買い、着替え、娼館で仮眠し、占いを受け、墓参し、語り合う。イザベルと出会う直前まで描かれて、何を語ったか全く描かれなかったのはなぜなのだろう。タデウシュとの会話で何を話したいか語ってしまったからだろうか。◆わたしの感情は、真の虚構を通してしか湧き上がらない性質のものなんだ。わたしに言わせれば、きみの考える誠実さなど、形を変えた貧困だよ。究極の真実とは虚構にほかならない。(ペソア。p.163)◆魂には、どんな薬もいかさまだよ、タデウシュが言った。(p.56)◆優しさって、知らないひとにしてあげられる、最高の贈り物だよね。(p.77)◆
 | 文藝春秋 発売日 : 2011-01-07 |
漫画家柏木ハルコ、政治家武村正義から無名の人々まで。人生のある一瞬を切り取ったコラム・ノンフィクション。必ずしもオチがあるわけでもない、救いがあるわけでもない、教訓があるわけでもない、それでもつづいていく、これぞ人生、といった感。力を入れたいけどリポビタンDを半分だけ飲んで、一本まるまるだと私には強すぎるんです、という女性。性別も越えて最高のパートナーと出会えたふたり。ひとりの男性だけしか知らない結婚生活で、私は考えてもしょうがないことは考えないようにしたの、と語る妻。三カ月の間に父親が躁うつ病で入院、母親がガン、妻と別居した元キックボクサー。裸になれば誰にでも魅力はあるんですよ、という見合いをセッティングする会社の代表。◆辺見じゅん「収容所から来た遺書」から導き出した教訓「どんな困難なときでも自分を楽しませる術をもつこと」◆ただ、これを書かなければ自分が自分でなくなるというような気持ちで書いていた。それは才能があるなしに関係なく、自分を支えるためにだけする表現行為なのだ。(p.177)
 | 新潮社 発売日 : |
45分くらいでさらりと読めた。人種、国民性、身体的特徴の揶揄など今となっては笑えないものも多いが、ミュートつけたトランペットで下痢とオナラの音を模して吹いた「聖者の行進」てエピソード、ワニをとりに行く時は「共産党小史」を持っていけ、ってのがおかしかった。◆ギネスブックによると、史上最も短い戦争は、イギリスとザンジバルの1896年のもので、イギリスの38分間の砲撃で決着。その後に、第四次中東戦争のことが語られ、ナセルがロシアの軍事顧問団を雇ったのが敗因、すべて北方の寒冷地仕様で装備・戦術が組まれ、それゆえに大敗、「大丈夫だよ、耐えて耐えて冬がくれば勝利に持ち込める」と常夏のエジプトでロシア人軍事顧問が言った、というオチまでついたのが印象に。
何年かぶりの再読。盗聴に気づいて電話にやるならやるぞ！と挑発したら本当に翌日家の前に街宣車が来た話し。がんばったことのご褒美は本来なにもない、自分は頑張ったという満足感だけ、という言葉が印象に。ウリでんでん虫国の創立、そういう国家を相対化する視点、興味深く。韓流ブームも、K-POPブームも、反韓反日の対立なども目の当たりにせず亡くなられた鷺沢さん。生きてたらなんていったかなあ、と。
 | 秋田書店 発売日 : 2023-03-16 |
金の王族たちが狩猟に夢中になるあいだに、小さな子を川から救った康王が株をあげ。そこへ遼に対して、宋の敗退の報。金の救援により逆転、しかし何もしなかったのに燕京だけは持って行こうとする宋。さてどうする、といったところまで。宋金関係はカタストロフまであと一歩。しかし遼の最後の君主、宋の重臣たち、いずれもみごとなまでに民を顧みず国を顧みず無能、という描かれ方だなあ。
 | 文藝春秋 発売日 : 1992-05-01 |
再読。著者が、CMディレクターとして対談型のCMへ出演依頼したのがきっかけで、森敦と知り合い、何度か語り合ううちに意気投合し、たわむれで森敦「月山」の冒頭に曲をつけて歌ったら、森敦がそれをいたく気に入り、録音したものを会う人会う人に聞かせて、ついにはレコードデビュー。後年、著者が環境ビデオのロケでタヒチに行った際にみつけてしまった美しい海の底にバドワイザーの缶を見つけてしまったことから、小説の処女作ができ、書くごとに森敦にほめられ、ついには芥川賞を取ってしまい、と。まことに数奇な出会いで数奇な運命。また、ふたりのやりとりがいい。すごくいい。森敦のことはこの本を最初に読んだときまで知らなかったけれど、昭和9年22歳で、横光利一の推挽で処女作「酩酊船」を連載、同年冬には、太宰治、檀一雄、中原中也らと同人誌「青い花」を創刊って生ける文学史みたいな人やねえ。その後放浪と勤労をかさね、40年ぶりの作品で芥川賞を取った、と。構造を意識した作家森敦。ジャンルをひらく者でなければ文学をやる意味はない、とも。「月山」はレコードにもなればバレエや日舞にもなり絵画や演劇にもなり、やがて映画にもなる、その端緒を著者がひらいたらしい、と。個人的には、初読時につかみきれなかった「月山」を再読したくなった。
「ひとつの旅は、空間・時間・社会階層のそれぞれのひろがりに、同時に書きこまれているのだ」（レヴィ＝ストロース）。訳者である管啓次郎の著書「コロンブスの犬」「斜線の旅」を読むと無性にジル・ラプージュ「赤道地帯」を読みたくなる。観念的なブラジル紀行と紹介されたこの本を。強く印象に残ったのは「狂気の愛」の章、傍から見ると片方が片方を奪い尽くしたように思えた一組のカップルと激しく憎み合い一組の夫婦。◆ふたりはやさしさのうちに、公開も虚栄心もなく、同時に敗者であり勝利者であるものとして、別れた。(p.82)◆ふたりの愛は、憎悪を容れるためにはあまりにも美しすぎたのだ。(p.94)。◆そして、呆然とした人間しか、心を明かさないと称されるノルデスチ。時間がつまってしまうことを好まず、未来たる予定も極力空白にしておこうとするサン・ルイスの住民。外から見ればブラジルというひとかたまりに思えるかもしれないが、個性豊かにその土地その土地の文化、思想、志向、特色などを語ってくれる。◆時のすぎゆくままの移ろいに身をまかせる以外の仕事は、何もない。(ノルデスチ p.178)
 | 新潮社 発売日 : |
(2023/3/17読了分)酒とサイコロ…に限らず麻雀、競輪などなど博打博打博打の日々。大半はもうこれでもか！これでもか！とばかりに博打に負け続けてお金を失い呆然としてるところが描かれ。小さな頃から麻雀牌は触ってたけど、どうしてここまで狂ったように博打するようになったかは本人にもわからない、気づいたらなってたそうな。救いは、最後のほうで、あまりにもチョンボのしすぎで慣れてしまい、気の触れたようなレートの麻雀で、ぼそっとつぶやいた、ああ流れて助かった、いまわたしノーテンでリーチしてたんですよね、に卓を囲んでた百戦錬磨の雀士たちが、ものすごいものを見る顔で「ふんとに？」、イノセントに「ふんとにふんとに」と返したら、心理的揺さぶりをかけるつもりはなかったのに、そのあとツイてツイてつきまくった話があったくらいか。しかし、いかに高レート麻雀とはいえ、断ればいいじゃん、と思ってしまうのは、外野にいるもんの見方なんだろうなあ。(2011/06/25読了分)再読。お酒での失敗エピソードが、ユーモラスに語られる章と、負けても負けてもやめられない、麻雀をはじめとしたギャンブル戦記がつづられる一冊。泥酔して、気がついたら暗くて狭いところに閉じ込められた！と110番して、パニックになりながら説明してたら、実は、自分のマンションのエレベーターのなかだった、、、てエピソードが一番好きです。
 | Audible Studios/早川書房 発売日 : 2019-04-19 |
島田潤一郎「本屋さんしか行きたいところがなかった」を読んで無性に読みたくなった一冊。◆MP3を開発した音響データ圧縮技術者。工場労働者にして「海賊」。大手音楽産業会社の経営者。三者を軸に繰り広げられるノンフィクション。本線は、音楽の違法アップロードの技術的、思想的側面、その対応。◆最初の三章は登場人物たちの来歴に当てられてちょっととっつきにくかったけど、そこを越せばあとは一気呵成。音楽業界の経営者が何をもとにどの方向へとすすんでいったか、技術者たちが精魂込めてようやく市場がとれたと思ったらまっさきに評価した者は「海賊」だったという皮肉、なにげない「ちょっとだけいいものがほしい」「もう少しお金がほしい」という動機がスタートだったのに、最後は目的が手段にすりかわって「違法アップロード中毒」になってしまった「海賊」たち。持ち出す手段や捜査の手の迫り方などなかなかにスリリングだった。最終的には作り手に何も還元されなければ、誰も音楽を作らなく／作れなくなってしまう。しかし、音楽にお金を払うという考えがない層も生まれてしまい。その妥協点がストリーミング文化だけれど、作り手への還元率はCD時代に遠く及ばず、というのが現状。そこに至るまでの紆余曲折を知るにはもってこいの一冊でした。◆リスナーは音質を気にしないし、完璧な音にいつまでも固執し続けること自体、音楽業界が消費者を理解していない証拠だった(p.123)◆ProToolがあればスタジオはいらないし、mp3エンコーダがあればCD工場はいらず、トレントトラッカーがあれば流通網はいらない。業界全体がラップトップ1台に収まったのだ(p.295)◆グローバーは音楽業界のがんで、アンダーグラウンドの英雄で、シーンの王様だった。史上最高の音楽泥棒だった(p.325)◆
 | 新潮社 発売日 : 2021-07-15 |
きっかけは、著者をテレビの「クレイジージャーニー」で見かけたこと。(1)トレジャーハンター：「ギャラリーフェイク」の影響で、トレジャーハンターというとわりとヒロイックなイメージを持っていたんだけど、水中考古学者からすると敵も敵。貴重な遺跡を換金目当てに破壊して止まない人々なんだとか。本の中では、最近は悪名が響き渡ったので、水中考古学者に偽装する者もいるのだとか。(2)フォトグラメトリ：精密に撮影したものをデータ処理して3Dモデルを作成する最新技術。テレビではミリ単位の精密さで発掘に役立てられる様が描かれていたが、実態は過酷。「水中作業が一度始まったら、私は足を全力で動かして前進しつつ、神経を指に集中して半押しを続けたシャッターボタンを押すことを繰り返す。その間、オーバーラッピングを確保するための撮影頻度と、自分の位置に気を遣い、頻繁にキョロキョロ周囲を確認しながら基本的には全力で泳いでいる。」(p.128)。なかなかに地味でたいへんな作業の積み重ねに、専門的な知識による処理が必要と思い知らされる。(3)水中考古学を志すきっかけとその過程：野球少年だった著者が大学で挫折して、ロバート・F・バージェス「海底の1万2000年---水中考古学物語」、井上たかひこ「水中考古学への招待 海底からのメッセージ」(1998年、成山堂書店)にみちびかれて水中考古学を志し、英語力ゼロから留学、博士号取得にいたるまでの過程も手に汗にぎる。英語もそれなりにできるようになったと思ったころに初めて受けた大学院の授業75分がひとことも分からなかった時の絶望。でもそこからの巻き返しもすごかった。◆オスマン帝国好きとしては、1583年、ベネチアへ、ハレムが焼失したので、5000枚のガラスを修復のために使いたい、とオスマン帝国ムラト3世より注文、といったエピソードが目に止まった。
 | 集英社 発売日 : 2005-08-26 |
映画「丘の上の本屋さん」を観て、再読したくなり。自分の星で、バラの花と仲違いして、旅に出た王子。いくつもの星をまわったあと、地球にたどりつき。◆今回は「あなたのやってることは役に立ってる？役に立ってない？」という人物判断、「自分は重要人物だ！」と言う人物への反感、自分の疑問が晴れるまで人にはしつこく質問し続けるのに、自分は聞かれたことに答えない自分勝手さが気になったかなあ。答えたくても顔が赤くなれば語ってるのと同じ、なシーンはありつつも。◆それでも、ぼくにはあの人だけが滑稽でないみたいに思える。たぶんそれはあの人だけが自分以外のものの世話をしているからだp.74-75◆「肝心なことは目では見えない」「きみがバラのために費やした時間の分だけ、バラはきみにとって大事なんだ」p.104◆「家でも、星でも、沙漠でも、きれいに見えるのは何かを隠しているからなんだ！」p.111-112◆「習慣って何？」「それは、ある1日を他の日々と区別し、ある時間を他の時間と区別する」p.100◆様々なことがこんなことのメタファーなのかなと思い巡らせながら読むひとときでした。
 | 集英社 発売日 : 2002-05-02 |
「傷のある部屋」の続編的な。主人公のカメラマン柊、友人の写真家岡崎はひきつがれ。そして生活をともにする雄弁すぎるぐらいに雄弁な犬のハナコ。おそらくサントリーの社長がモデルと思われる人物との邂逅と写真家として立つターニングポイントになったできごと。前の番号の持ち主あての激しく責め立てるような電話、病身の妻と子供たちを捨てて出ていった男をなじる電話に次第に…。アマゾンのど真ん中に立てられたオペラハウスとそこでみたウアクチといういきものとの夢幻の世界。5000枚以上の写真のなかから、ミールが落下した瞬間をとらえたフィルムを選んだ過程。そして離婚した妻が育てる息子が永遠の別れを告げにきた瞬間が語られる連作短編集。厭世的で退廃的なものに心惹かれるのは前作から引き継がれており、ときに美を見抜く力にすぐれた瞬間があることも。マリー・ローランサンの「鎮静剤」や新井満が自由訳した「千の風になって」が引用されていてニヤリとしたところも。またミールが落下するシーンがおさめられたフィルムの発掘のくだりは、もしかしてデビュー作の「サンセットビーチホテル」とつながるはなしか？！と個人的に一瞬色めき立ったが、あちらは隕石、こちららは宇宙ステーションで別の話だった。ウアクチとのやりとり、ホフマン夫妻のおどろくべきエピソード、わたしたちのなかの「わたなべさん」的なもの、といったエピソードは特に印象にのこった。◆「出てこなければいけない理由があるから、出てくるんだよ。たぶんその夢には、君にとってそれくらい重要な情報が隠されているんだろう」p.231◆人間がつくったものとは、人間が見ようとした"夢"のようなものだったかもしれない。それは、人間の勝手な都合でこの世に無理矢理産み落とされたにもかかわらず、再び人間の勝手な都合で情け容赦もなく、捨てられて置きざりにされたのだったp.138
 | 双葉社 発売日 : 2023-02-15 |
目が見えなくなった女性。中学から60年間新聞配達アルバイトしてる男性。自分が看板を支える棒と同じに無価値と感じるサンドイッチマン。妻が既婚者の子を妊娠し、一度は自分の子として育てると決めたのに、妻の気持ちが離れていって、自分の気持ちもみじめなままの男性。見ず知らずだった男性を三年半居候させてる元教師。元妻の連れ子を一人で育て、「オレの親はあんただから」と言われうれしくて言葉の出ない男性。ドラマティックだったり、地味だったり、傍からは気持ちが推し量れなかったり、必ずしもオチがあるわけでも救いがあるわけでもない、けれど人生の一シーンでのその時の思いを垣間見せてくれるコラムノンフィクションでした。◆「彼と彼女と私」は村上春樹が昔経営していた「ピーターキャット」の斜め向かいでお店をやってた方。当時のことをさまざま語ってくれていて貴重。「ミタちゃん、六年かかって大学卒業したなんて、なんかお笑いだよね」(p.170)と言われたのが印象にのこってるとか。◆遺族の思いを受けて、2010年に、国会で時効を廃止する法案が成立したというのは不勉強にして知らずでした。
 | 講談社 発売日 : 2023-03-23 |
犯罪への加担が疑われるスイスのホテル調査編、意外な黒幕とその結末。ただ宣言したから永世中立でいられたわけではない、攻めてくるものあらばただでは置かない施策があったからというのが浮き彫りに。そしてユリのルームメイトアレックスの故郷台湾編。日本統治、中華民国統治、戒厳令下、民主制時代を生き抜いた祖父のバックグラウンドと、四つのバックグラウンドを持つ民族の交錯する陰影。パイナップルを麹でつけた料理気になる。
 | 角川書店 発売日 : |
鷺沢さんの最後に文庫で出たエッセイ。「この惑星(ほし)のうえを歩こう」の改題、文庫化。「Office meimei」三部作を読み返しているのを機に、思い立って再読。オフィスめめにも登場のわたべさんに、韓国でPCの電源ケーブルを忘れてえらい怒られた話しなど出てくるとにやりとしてしまう。お互いの確認不足で超絶不機嫌に取引先のところに向かっているところに、過剰なまでのレディーファーストを示されて、ここは日本だしそこまでしなくても、という趣旨のことを言ってほほえみあったら、解けた不機嫌。 急に御朱印船の話を持ち出した友人、ベトナム出張中の旦那さんに頼まれた靴を送ってなくて、「ワタシのクツ、なぜ400年前より届くの遅い！？」と怒られた話し。10人乗り飛行機のパイロットと空港ついてからのバスの運転手がおなじで「飛ばせてよし、走らせてよし、ですねえ！」「コッチ（バスの運転）のほうが本業なわけさー」といった話し。アヤシイ英語に寛容な英国、蔑視される米国を対比しつつ「アメリカが未だ克服できずにいるのが「言語の「壁」なのではないか」(p.124)といったところが今回は目にとまった。旅先で受けた訃報に「時差や日付変更線なんて、関係ない。もう間に合わない。間に合いなどしない。おそらくは一生、もう間に合いなどしない。おそらくは一生、もう間に合いなどしない。そう思った。」(p.96)というシーンのやりきれなさ。
 | TBSブリタニカ 発売日 : 1993-01-22 |
パリに夢を追い求めてイギリスからやってきたジョアンナを主人公とした小説と新井満の愛するデュフィの絵画のぜいたくなコラボレーション。何者でもないままパリにやってきて、看護師の職をみつけ、同僚のイザベルと親しくなり、旅先でであったミシェルに心惹かれ、自らを導くような老ピアニストアレフとの出会いがあり、やがて打ち込みたいことがみつかり、次の地へ飛び立つ、と。さらば私の青春、と。何になりたいのかもわからず、ただ日をすごしているようで対話を重ね、出会いに導かれ、アレフのふとした一言から転がりだす運命、認められ、わきあがるやりたいことを抑えきれずに。あいまあいまに大判の本で眺められるデュフィの絵をたのしみながら。個人的には、オレンジと黄色と黄緑にいろどられた「ドビュッシー頌」がデュフィの絵の中では一番印象に。◆「私が存在する間、死は存在しない。死が存在する時、もはや私は存在しない」「つまり我々人間は、死ぬために生まれてきたんだよ」「さよう。理屈に合わぬ話だろう？だからこれを、不条理という。そうして不条理を乗り越える唯一の方法は、死ぬまで生きる。死にものぐるいで生き抜く、これ以外には、ない」（アレフ）◆「幸福って何だと思う？いつの日か自分自身を発見するってことさ。自分に成るってことさ…」◆
 | 文藝春秋 発売日 : 2017-07-06 |
(2023/03/26読了分)初読ではつかみきれなかったけど、新井満「森敦--月に還った人」を読み、映画「丘の上の本屋さん」を読んだ後に再読したことで、目が文にべたっと張り付くようになって、すみずみまで味わうことができた。祈祷簿として使われてた和紙で蚊帳をつくり、隙間風入る寺の二階ですこしは快適にすごせたこと。椀のなかのカメムシに見る生命の儚さと力強さ。親切に声をかけてくれた女への微かな想いとどこへもつながらなかった想い。やっこや薬売りの来訪と、行き倒れがミイラにされた話し。最初は敵視されたけどおそらく密造酒があばかれるのではという危惧があったこと。それらを経て、最後は迎えに来た友人とともにどことなく旅立つまでを味わい（「月山」）。併録の「天沼」は、月山の時間軸のある一点をとって、じさまと山に登ったときのダイアローグ。◆死とは死によってすべてから去るものであるとすれば、すべてから去られるときも死であるといってよいに違いないp.82◆ひとというものは、なんでもそうしたものをつくり上げて、憎むなり疎むなりしねば収まらねえもんでのp.109◆なにもかも去ってしまった！p.116（以上「月山」）◆やがては春になるというそのことによって、美しい大きな約束のあることを信ぜよという天上の声のようにも思えるのです。p.174（以上「天沼」）◆3編から8編目までの短編が「鳥海山」。鳥海山まわりの集落でのできごとが描かれるが、最後の一篇だけ、鳥海山から遠く離れたダムの現場だったのはなぜかなあ、と思いつつ。◆なぜなら、わたしたちもこうして生きていると思っているが、どうしてそれを知ることができるのか。それを知るには死によるほかないのだが、生きているかぎり死を知ることはできないのだ。p.216（「初真桑」）◆ひょっとすると、すぐ枝をのばし、葉をつけ、花を咲かせるそのために、むしろ折ってもらいたいとすら言われたかての木ではないだろうか。もしそうなら、糧（かて）にもならぬにかての花と笑われていたが、すべての木も草も枯れ果てたとき、人が最後の糧にした花の木だったのではないだろうか。p.305(「かての花」)◆(2023/03/03読了分)「月山」のみ読了。新井満つながり（文学的な師弟関係）、関口良雄「昔日の客」つながり（森敦が登場）、三浦しをん「好きになってしまいました」つながり（「月山」が登場）。 で、手に取る◆庄内平野、月山。その集落の破れ寺に無為徒食する主人公。そこに住むじさまや集落の人々とのやりとり、集落の習俗、風景、心象が描かれ。ちょっと最初は方言に目がおよぎ、なかなかにとっつきづらく。◆ひとりの女が安心しきったかのように、男の住む二階で寝ていたシーンとその後のやりとり。「寺のじさまはだれに聞かされたかミイラを信じてい、いわば祈りとして来たおのれの信ずることを、とてもわたしが信じるはずはないと思っていたのです。」(p.121)といった一節が印象に。
 | 筑摩書房 発売日 : 2023-03-03 |
偶然性による結果的ポエム。おもにネットや街でひろった声を題材につづられたエッセイ。連載が2011年から2016年で今年出版だからずいぶん寝かせておいたんだなあ、と思いつつ。前にも話したことを話しすぎて、「もう話したよ」フラグ壊れてる、には同感しかない。ぜったい自分も思われていそうで…。◆寒い日にカフェであたたかい飲み物飲んでたら、ふらりと入ってきた女性が第一声「しかし、ビール」（居合わせたかった！）◆お蕎麦屋さんで。お相撲さん並みの巨漢のお客さん入ってきて「せいろ一枚、せいろ一枚、大至急」「急いでね！俺、今、向かいの店に並んでるから」（落語かよ！）◆穂村弘さんが、「種村さん」に間違われて、Amazonでも「た行の作者」に分類されていたこと。◆奥さんに「沖縄で、僕どうだった？」と聞いたら「昼寝してた。夕日がきれいだよって云っても、ぜんぜん起きなかったけど、ゲジゲジの上にゲジゲジが乗ってるよって云ったら、起きてきた。眼鏡して見てた」と返ってきて、まさに自分と思ったシーン◆このあたりがおもしろくて印象に残りました。◆あと、「人間最後の言葉」（ちくま文庫）読みたくなった
 | 中央公論新社 発売日 : |
松永久秀と斎藤道三はともに、遠く中東の地からニザール派の教えを汲む波山（ハサン）の法を伝えられた美童だった、という設定。そこから戦国の世の裏にはたいてい久秀が噛んでいたという見立てをこれでもかと盛り込んだ伝奇もの。悪名もここまで極めればいっそすがすがしく。著者も確信犯とことわっているとおり、最新の研究が別の方向性を示していても、物語として面白いほうを取った、と。その割り切りと豪華絢爛な絵巻のようなストーリーに少し長いかと思いつつも魅了される。李賀の詩や閑吟集もちりばめられつつ。おのれが日輪になり輝こうと志し、やがて星にすぎぬと自覚する苦さ、そして日輪たる信長がのぼっていくのをただ眺めるにとどまらず、腹をさぐりあい、出し抜きあい、理解し合い、最後はたもとをわかち、しかし意識的にか無意識的にか光秀に託し、と。個人的には、最後の濃姫と光秀の対面は、三島由紀夫「豊穣の海」のラストを思い起こさせた。◆金輪際人を思いやるつもりもない俺には、敵しかおらぬ。おらぬから、かえって迷うこともない。兄者のごとく人によかれと八方に思いをかけるなら、いつかは味方にこそ、恨まれることになる(久秀 p.239)◆久秀は初めて、おのれの一人のみを頼みに何事も片づけてきた自身の半生を悔やんだ(p.246)◆「不可思議を見せたばかりでは、人は驚くだけよ。欲を見せねば、安心すまい」(久秀 p.407)◆老獪さとはつまり、弱さのことである。弱ければこそ、人は紆余も曲折もするのだ(p.615)
 | 講談社 発売日 : 2023-03-20 |
ワワタシとの衝突。コナーとの合流。強盗してきた三兄弟を返り討ちにして加入させ。アメリアがリーダーぶりを発揮する。アメリカに元から住むものと開拓者たち、イギリスとアイルランドの衝突の根深さは随所に垣間見えて。◆憎悪と憤激に身を委ねるには「正しい」生き方が染みつき過ぎてしまった◆ないかもしれない最善を一緒に探してゆきましょう◆そして、次巻でフィナーレ？！どうやって終わらせるの？目的地まですら結構あるのに。あだち充「タッチ」方式しか思い浮かばない。やったー！目的地だあ…で、何年後とかで大農場、大富豪、大家族、豊かな生活、幸せな老後みたいな写真が何枚か出てきてfinみたいな。
十年以上ぶりの再読。最初は方言編、そして日本各地、世界各地をとびまわる日々。他のエッセイでもとりあげられたエピソードが出てくるとにやりとしてしまう。粟国島、本当によかったんだろうなあ、というのがつたわってくる。そしてすきあらば麻雀の日々でもあり。
 | 中央公論新社 発売日 : 2023-02-21 |
面白くて、味わい深くてな一冊でした。けど、ぜいたくを言えば、いつ書かれたものなのかクレジットいれて欲しかった。今も味わえるのか、在りし日のことなのか知りたくて。◆許しがたいトマトと、耐え難い塩辛さのベーコンがでてきたロンドンの思い出せないカフェ（野田秀樹）。北欧の街角でカフェに入りたくなたら珈琲でも紅茶でもビールでものめるkomditoriへ（三木宮彦）。夕方買い物帰りの主婦がペルノなどをひっかけていくパリのカフェ（辻邦生）。エメラルド色の絹のスーツに、完璧な脚を腿の真ん中まであらわにし、かかとがきんきんに高いパンプスをはいた黒人の美女が登場したウィーンのカフェ（佐藤亜紀）。空気までエメラルドグリーンに感じられる旅情豊か色彩豊かな一篇は、秋山祐徳太子「エメラルド横丁のお茶」。アンカラの研究所の昼休み、イスラーム風のバックギャモンたるタウラに我を忘れてチャイハネで夕刻まですごしたことがある山内昌之。中沢新一の「ジョドプールのマカニア・ラッシー」は、クリームが濃すぎてスプーンが立つところまではわかったが最後まで正体はあかされず、すごく気になる。堀内勝のコーヒー豆の本体の外皮のみを煮出し、生姜を加えた黄色のコーヒー、イエメンコーヒーも気になりすぎる。「エジプトの夕暮れは官能的だ。白昼の強烈な光が失せると、ナイル河をわたる風がまるで微かな紫色の香料を運ぶように、小さな路地が薄紫に染まる」と描く蜷川幸雄。フランス領ギアナのジャングルの入り口の町の小さなパリ風のカフェで、鹿の目にみつめられた西江雅之。三鷹の「第九」という音楽喫茶で一枚三十円のトーストを三人で分け合ってショスタコヴィッチとかプロコフィエフとか聞いてた赤瀬川原平。京都の喫茶店にはひとが孤独になれる場所という側面があったと鷲田清一。甘味喫茶で、つぶあんのクリームあんみつを、ゆっくりと、しかしアイスクリームが融けぬだけの速度をキープし、アイスとあんのバランスを考えつつ、かつ最後にかんてんばかり残ってしまわぬよう配慮しながら食べる柴田元幸。といったあたりが好きでした。
 | 筑摩書房 発売日 : 1991-03-01 |
きっかけは木皿泉のエッセイで取り上げられていたのをだいぶ前にみかけて。そして森敦「月山」を楽しく読めたのでこのタイミングならいけるかと思ったけれど、自分には難解すぎてぜんぜん読み砕けなかった。「内部といい、外部というも、無限に孕まれるか、無限を孕むかの違いにすぎない。」(p.26)「いかに精妙な音色をもってする吹奏も、ただ群集にむなしい問いを問うにすぎないことに絶望したのである。」(p.108)
 | 講談社 発売日 : 2023-03-23 |
たいていのことは1年後にはどうでもよくなる、Take it easy.、兄になってくれたハリネズミさん。旅そのものはシェアするけど旅先での行動は同じじゃなくていい、もぐらさん。人生の何％かは、これから先もお互いの一緒に歩む分だと思ってるとキツネさん。お互いのオススメを詰め込んだBOXを定期的に交換することでより友情をつづきやすくしてくれたウニさん。チカさんの思いつきを強固にあとおししてくれて、ともにナウルにまできてしまったヤンバルクイナさん。売上欲しさに誰でも迎えてたあらお店は絶対に続かないわよというバイト先のカフェのオーナー。人生は一回きりだけど、考え方はさまざま、チカさんの国籍も考え方もさまざまな友人たちから受けたいい影響を垣間見させてくれてこちらまでほこほこした気持ちになってくる一冊。
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-03-18 |
水卜アナとのかけあいから、当意即妙才気煥発抱腹絶倒なエッセイ期待したけど期待しすぎたかも。ただ、このエッセイから徐々に文章力とかコメント返し力とか身についたのかも、と推定しつつ。書かれたのは2018−2020年だし。「チャーハン事変」はおかしかった。トークが苦手だからと、鍛えるために、トークショー開いてエッセイ時点でもう6回って、すごい行動力だなあと思った。あと、自意識ってめんどくさいですよねという共感。五十路を迎える先輩の誕生日をともに三年間祝い続けた尾上寛之のプレゼントが2年前海外もののプロテイン、去年は赤いバンダナ、そして今年はちっちゃいジオラマの「踏切」と「駐輪場B」、て破壊力が印象に。「でも本をただぜばみんな、ただ生まれてきただけのはずだ。使命も意味もなく。でも意味のない人生は寂しいから、なんとか理由を探そうともがく。その時間が「生きる」ということなのかもしれない。」(p.183)
 | 小学館 発売日 : 2023-03-30 |
仕事に煮詰まりせっぱつまりテンパってるヒデキ。あかりんの、今描いてる絵に苦戦してたけど、みんなとあったらやっぱり楽しくて来てよかったというストレートな吐露から、恋路がうまくいき。そんなあかりんに「ズッ友だよ」と請け合うなっちゃん。昔ふたりで映画をとってたときみたいに、釣り堀でずぶぬれになってはしゃぎあうヒデキとヒロ。ヒデキはなにかがふっきれたようで…。そして無理に無理をかさねて倒れてしまったヒロ兄…といったところまで。本当にやりたいことができたらうちなんか辞めていいんだからな、てやさしさがグッとくる。
 | 文藝春秋 発売日 : 1991-03-01 |
「苺」「ヴェクサシオン」の"雨宮三郎"が少し違った世界線を背負って「海辺の生活」の"桜木三郎"になった感。生い立ちやエピソード、考え方、職業などは重なり合わせつつ。三郎が妻と二人の子供と家庭をきずいた世界線。それにしても、実際の出来事の折り込み具合は私小説、同じことば、同じ考えは手を変え品を変えこの作品にも見られ、そして引用のパッチワーク。個人的には好きです。◆ルナアルの言葉によれば、幸福とは幸福を捜すことであるという。p.108◆「神は直線を描かない」p.111◆「すべてのことがらは疑わしいのであるから、一切の判断を中止すべきなのである。エポケー」p.147◆人間とは、わざわざ死ぬためにこの世に生まれてきた存在である……。p.261
ほのぼのストーリーに群馬の特産とか企業とかカフェとかこれでもかと盛り込んであって楽しかったです。ていねいに取材したのが感じられて。オーウェンさんの小説読んでみたくなる。これから公開のサブストーリーも楽しみです。あと、しばらくたってから、ジョシュー・オーウェン＝上州応援からとったのかなあ、と気がついた。
 | 角川書店 発売日 : |
再読。「わたし」の目から見た、ナイトクラブ「ファッサード」につどう若者たちの群像劇。前に読んだときも飛び込んできた言葉が今回も飛び込んできた。"思ったり感じたりした者の勝ちだ。だから、「忘れられなかった」者の勝ちだ。"(p.94) 友情というには少し踏み込んで深く、愛情と言うにはまだ確固としてなく。けれど、いや、だからこそ、「ねえ、知っている人がいるって、なんかいいよね。」(p.136)と言ったときのジュニアの何言ってんだよっていいつつも親しげな反応、"わたしはなぜだか嬉しくなって、ハンニバルの腕を後ろから掴んだ。---愛してる？ わたしは言った。なんだよ、それ。ハンニバルは吹き出しながら振り向いて、もう一度笑った。"(p.219-220)といった関係性が強く胸にせまってくる。
2023年03月05日
2023年02月に読んだ本
0202・塩田武士 歪んだ波紋 20230102
0202・小玉武 評伝 開高健 -生きた、書いた、ぶつかった! (ちくま文庫) 20230102
0203・松本隆さんに喫茶店で聞いてみた 夏葉社 図書館 20230202受領
0204・山本文緒 自転しながら公転する 20230102
0205・ディオクレティアヌスと四帝統治 文庫クセジュ 20230108発注0118受領
(0205・zine 東海林広太 青い光 ie_sapporo 20230205
0207・中沢新一 知天使（ケルビム）のぶどう酒 20230104発注0111受領
0209・秦建日子 アンフェアな国 刑事雪平夏見 20230128
0210・早稲田大学坪内博士記念演劇博物館（監修）村上春樹映画の旅 読書室ポワロ
0210・山本文緒 無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記 読書室ポワロ
(0210・ファミレス最期の戦い 20230210 シーソーブックス
(0210・屋良朝哉 いつでもまっすぐ歩けない 点滅社 20230210 シーソーブックス
0210・【再開】中沢新一 虹の理論
0211・山本文緒 伊藤理佐 ひとり上手な結婚 図書館 20230208受領
(0211・ヤマシタトモコ 違国日記 10
(0211・高円寺円盤発 三ツ沢通信 リス年春号 20230115 フリーマーケットatトオンカフェ
(0211・世田谷十八番 vol.1〜5
(0211平井上総 久武親信・親直（戦国武将列伝10 四国編、所収）
(0211・小林美香 脱毛広告観察――脱毛・美容広告から読み解くジェンダー、人種、身体規範（「現代思想2021年11月号 特集＝ルッキズムを考える」青土社、所収）
0212・山本文緒 パイナップルの彼方 図書館 20230208受領
0212・山本文緒 ブルー、もしくはブルー 図書館 20230208受領
(0212・海野つなみ Travel Journal
(0212・丹羽庭 トクサツガガガ14-16
0213・伊丹十三 ヨーロッパ退屈日記 20230115 フリーマーケットatトオンカフェ
0214・岩村暢子 家族の勝手でしょ!: 写真274枚で見る食卓の喜劇 (新潮文庫) 20230104発注0111受領
0215・【再読】澁澤龍彦 唐草物語 20230124
0216・【再読】梨木香歩 村田エフェンディ滞土録
(0216・トマトスープ 天幕のジャードゥーガル2 kindle 20230216
0216・トゥルスン・ベグ メフメト2世征服記 図書館 20230208受領
(0216・ふしぎの国のバード10 kindle
(0216・booklogなし 【再読】中野美代子 契丹伝奇集 …「敦煌」のみ :井上靖「敦煌」とはまた違った、欧米の探検家二人に焦点をあてた乾いたストーリーだった。
(0217・芦原妃名子 セクシー田中さん 6 kindle 20230217
0217・【再読】梨木香歩 春になったら苺を摘みに 20230124 …渡りの足跡読了きっかけ
0218・三浦しをん 好きになってしまいました 20230218
(0218・たらちねジョン 海が走るエンドロール 4
(0219・地下街への招待 B2 アダノンキ 20230218
(0219・ふることふひと 5
(0219・トクサツガガガ 17-20
0219・磯田道史 日本史を暴く from 実家 20230215
(0219・中島敦 悟浄難異 青空文庫
(0219・booklogなし【再読】セクシー田中さん3-6 kindle
0222・開高健 パニック・裸の王様 20230206
(0223・booklogなし【再読】セクシー田中さん1-2 kindle
(0223・竹内絢香 ロンドン日記 1 kindle
0223・【再開】二村ヒトシ すべてはモテるためである
0223・シーラッハ 珈琲と煙草 読書室ポワロ
0223・高原英理 詩歌探偵フラヌール 図書館 20230220受領
(0223・ワカコ酒 20
(0223・喰う寝るふたり住むふたり続 4
(0223・芦原妃名子傑作選1 記憶 kindle 20230223
(0224・竹内絢香 ロンドン日記 2 kindle
0224・福間恵子 ポルトガル、西の果てまで 共和国 20220131発注0204受領
0225・カツセマサヒコ 明け方の若者たち 20230217
0225・We Act! #2 アダノンキ 20230218
0225・僕のマリ 書きたい生活 20230225 ジュンク堂
(0226・はるな檸檬 ZUCCAxZUCA 8 20230225 まんだらけ
(0226・二ノ宮知子 七ツ屋志のぶの宝石匣 18
(0226・毛塚了一郎 音盤紀行 1
(0226・衿沢世衣子 シンプルノットローファー kindle 20230226
0226・有島武郎 生まれいづる悩み 青空文庫
(0228・booklogなし【再読】衿沢世衣子 シンプルノットローファー kindle 20230226
0202・小玉武 評伝 開高健 -生きた、書いた、ぶつかった! (ちくま文庫) 20230102
0203・松本隆さんに喫茶店で聞いてみた 夏葉社 図書館 20230202受領
0204・山本文緒 自転しながら公転する 20230102
0205・ディオクレティアヌスと四帝統治 文庫クセジュ 20230108発注0118受領
(0205・zine 東海林広太 青い光 ie_sapporo 20230205
0207・中沢新一 知天使（ケルビム）のぶどう酒 20230104発注0111受領
0209・秦建日子 アンフェアな国 刑事雪平夏見 20230128
0210・早稲田大学坪内博士記念演劇博物館（監修）村上春樹映画の旅 読書室ポワロ
0210・山本文緒 無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記 読書室ポワロ
(0210・ファミレス最期の戦い 20230210 シーソーブックス
(0210・屋良朝哉 いつでもまっすぐ歩けない 点滅社 20230210 シーソーブックス
0210・【再開】中沢新一 虹の理論
0211・山本文緒 伊藤理佐 ひとり上手な結婚 図書館 20230208受領
(0211・ヤマシタトモコ 違国日記 10
(0211・高円寺円盤発 三ツ沢通信 リス年春号 20230115 フリーマーケットatトオンカフェ
(0211・世田谷十八番 vol.1〜5
(0211平井上総 久武親信・親直（戦国武将列伝10 四国編、所収）
(0211・小林美香 脱毛広告観察――脱毛・美容広告から読み解くジェンダー、人種、身体規範（「現代思想2021年11月号 特集＝ルッキズムを考える」青土社、所収）
0212・山本文緒 パイナップルの彼方 図書館 20230208受領
0212・山本文緒 ブルー、もしくはブルー 図書館 20230208受領
(0212・海野つなみ Travel Journal
(0212・丹羽庭 トクサツガガガ14-16
0213・伊丹十三 ヨーロッパ退屈日記 20230115 フリーマーケットatトオンカフェ
0214・岩村暢子 家族の勝手でしょ!: 写真274枚で見る食卓の喜劇 (新潮文庫) 20230104発注0111受領
0215・【再読】澁澤龍彦 唐草物語 20230124
0216・【再読】梨木香歩 村田エフェンディ滞土録
(0216・トマトスープ 天幕のジャードゥーガル2 kindle 20230216
0216・トゥルスン・ベグ メフメト2世征服記 図書館 20230208受領
(0216・ふしぎの国のバード10 kindle
(0216・booklogなし 【再読】中野美代子 契丹伝奇集 …「敦煌」のみ :井上靖「敦煌」とはまた違った、欧米の探検家二人に焦点をあてた乾いたストーリーだった。
(0217・芦原妃名子 セクシー田中さん 6 kindle 20230217
0217・【再読】梨木香歩 春になったら苺を摘みに 20230124 …渡りの足跡読了きっかけ
0218・三浦しをん 好きになってしまいました 20230218
(0218・たらちねジョン 海が走るエンドロール 4
(0219・地下街への招待 B2 アダノンキ 20230218
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(0219・トクサツガガガ 17-20
0219・磯田道史 日本史を暴く from 実家 20230215
(0219・中島敦 悟浄難異 青空文庫
(0219・booklogなし【再読】セクシー田中さん3-6 kindle
0222・開高健 パニック・裸の王様 20230206
(0223・booklogなし【再読】セクシー田中さん1-2 kindle
(0223・竹内絢香 ロンドン日記 1 kindle
0223・【再開】二村ヒトシ すべてはモテるためである
0223・シーラッハ 珈琲と煙草 読書室ポワロ
0223・高原英理 詩歌探偵フラヌール 図書館 20230220受領
(0223・ワカコ酒 20
(0223・喰う寝るふたり住むふたり続 4
(0223・芦原妃名子傑作選1 記憶 kindle 20230223
(0224・竹内絢香 ロンドン日記 2 kindle
0224・福間恵子 ポルトガル、西の果てまで 共和国 20220131発注0204受領
0225・カツセマサヒコ 明け方の若者たち 20230217
0225・We Act! #2 アダノンキ 20230218
0225・僕のマリ 書きたい生活 20230225 ジュンク堂
(0226・はるな檸檬 ZUCCAxZUCA 8 20230225 まんだらけ
(0226・二ノ宮知子 七ツ屋志のぶの宝石匣 18
(0226・毛塚了一郎 音盤紀行 1
(0226・衿沢世衣子 シンプルノットローファー kindle 20230226
0226・有島武郎 生まれいづる悩み 青空文庫
(0228・booklogなし【再読】衿沢世衣子 シンプルノットローファー kindle 20230226
 | 講談社 発売日 : 2021-11-16 |
事実とは何か、報道することの功罪、誤報の及ぼす影響、面白ければ嘘を流してもいいという確信犯、既存メディアを貶めてやろうと虎視眈々と狙う者、斜陽とプレッシャーに押しつぶされながらそれでも真実を報道しようとする者たちのせめぎあい。舞台はテレビ局、地方紙（新聞）、全国紙（新聞）、独立Webメディア、週刊誌、そして謎の集団。◆虚報が人の人生を狂わせたり、回復できないほど人を傷つける可能性。にもかかわらず、プレッシャーに負けて安易な捏造に手を出してしまう者。それを他人事とせず、どこにでもその罠は口をあけていて…。「しかし、いくら取材を重ねて社会問題を提起しても、PVでは不倫に勝てない」という忸怩たる思い。「自由と無料をベースにした難敵を相手にしているという自覚がないのだ」という批判的視点。「所得の分配が歪に過ぎて、資本主義そのものへの疑問がどうしても拭えない」という思い。最後の、結局は現場を踏まないと、という追い詰められてからの行動が印象に。
 | 筑摩書房 発売日 : 2020-10-10 |
学生時代、開高健にあこがれ、ひいては同じ会社に入り同僚となり身近で接し、開高健没後は、夫人と開高健関連イベントのために奔走した著者による評伝。節目となる作品、「パニック」「裸の王様」「日本三文オペラ」「ベトナム戦記」「輝ける闇」「夏の闇」「オーパ」などを軸に語られていく。個人的にはポツポツと開高健作品を読んできたが、こうして時系列に並べられその変遷を語られると、自分の読んだものはこういう位置づけにあったのかというのが見渡せてありがたい。◆”「内面に寄り添わない作品を書く」と宣言し、「パニック」や「日本三文オペラ」を独自の遠近法で書く” ”わずか三カ月ほどのベトナム戦争従軍記者としての体験が、その後の作家活動を大きく左右” ”自分から遠ざかりたい遠心力だけをたよりにして、それによりかかって作品を書いていた” ”ノンフィクションの名手でもあったが、まず何より、”痩せた事実”より”華麗な嘘”を書く立場をとる小説家であった。そして、開高の立場は事実に寄りそって書く小説家でもあった” ”「到着」と「出発」という枠がはっきり見えている”といった作家の特質に切り込んだところが特に印象に残る。◆開高夫人の描き方は、開高健の芥川賞受賞後はあまり書かれず、時にその見方は厳しく、といった印象。◆北ベトナム人民軍兵士として従軍したベトナム人小説家バオ・ニンがベトナム戦争を描いた小説「戦争の悲しみ」は読んでみたくなった。◆そして「パニック」「裸の王様」「日本三文オペラ」「珠玉」あたりは手に取り、「夏の闇」「輝ける闇」あたりは再読したくなる。
 | 夏葉社 発売日 : 2021-07-16 |
夏葉社島田潤一郎さんの「あしたか出版社」読んで、もう何冊か夏葉社の本を読みたくなって。松本隆といえば自分にとっては小説「微熱少年」。本当に気負わず肩の力を抜いてさらりと語ってくれる感があってあっという間に読めてしまった。「でも、もう演奏しちゃうと、記号になっちゃってるから、意味なんか飛んじゃって、まぁおもしろいんだよね。」(p.24) 僕の世代が見てて嘆くのは、「なんで怒らないんだろう」っていうこと。（p.50） 僕のいちばんのおすすめは、孤独に慣れること。（略）意外とひとりでなんでもできるんだよ。(p.51)あたりの言葉がパッと入ってきました。
 | 小学館 発売日 : 2014-09-25 |
同じ著者の「セクシー田中さん」を最近1-6巻まで再読したんだけど、最後のページに必ずこの作品の宣伝がのってて、まんまとやられてしまった。最初と最後の話は好き。恋に恋する中学生ものはちょっとキツかった（主に読み手の年齢の問題）。"あたし達はそれぞれがずるくて卑怯で優しくて幼かった"(蝶々雲)
 | 白水社 発売日 : 2010-07-15 |
ディオクレティアヌスは即位時、おそらく主権を分割する意図は持っていなかったが、戦争と諸改革の問題山積を前に、即位1年後にもう一人の正帝を即位させる。その共同統治の8年後、それぞれに副帝をつけることにした。ディオクレティアヌス-ガリエヌス、マクシミアヌス-コンスタンティウス・クロルス（コンスタンティヌス大帝の父）という組み合わせ。その実態は本書のタイトルにあるとおり、「四帝統治」ではあるが「四分統治」ではなかった。ディオクレティアヌスが長として、優位に立って、統治を行っていたから。軍事面では、西方ではダキアとデクマテス地区を除いて帝政前期の国境を取り戻した。東方では、ペルシアに勝利してローマ支配を拡大した。税制も四世紀を通じて使われつづける制度を残し、きめ細かな統治のために属州の数を大幅に増やした。碑文が語る機動軍の一兵士の行動は東西南北縦横なものだった（機動軍のメンバーで下士官となった兵士アウレリウス・ガイウスは、ドナウ戦線でサルマティア人と四度、ライン戦線でゲルマン人と二度、北アフリカでマウリ人と、メソポタミアでペルシア人と、そしてエジプトでも戦ったというp.111）。そして305年、ディオクレティアヌスの治世20年での自発的な退位。同僚のマクシミアヌスも退位させ。しかし、四帝統治はディオクレティアヌスでなければつかいこなせないものだった。310年には一時、七人の正帝が立つという混乱。ガレリウスの目を見張るばかりの政治的センスのなさ（なぜ2人の副帝をさしおいて自分の友人をいきなり正帝に抜擢）。「四帝統治はおそらく個々人の公正さと義務感に過剰な信頼をよせたものだったから、その創設者の隠退を乗り越えることはできなかった。」(p.147)と。簡にして要を得た概説だった。
| 発売日 : |
サッポロパラレルミュージアムとNever mind the booksのコラボ企画のie_sapporoブースで。パラリとめくっただけで、青、青、青の画面。朝まだ青い空気の中の花、テールランプが龍のように尾をひく夕暮れ、青い空気に青いペディキュア、ネコ、クルマ…さまざまな青を感じさせてくれる写真に魅了されて買っちゃいました。
 | 新潮社 発売日 : 2022-10-28 |
東京での仕事、暮らしをやめて地元の茨城にかえって、父とともに、更年期障害で不調の母の世話をしつつ、地元のアウトレットモールのアパレル店につとめる都が主人公。タイトルに心ひかれ。それは主人公の恋人の「そうか、自転しながら公転してるんだな」てセリフからとられていて。そこには「おれたちはすごいスピードで回りながらどっか宇宙の果てに向かってるんだよ」(p.103)、"地球はただ太陽のまわりを円を描いて回っているのではなくて、スパイラル状に宇宙を駆け抜けていて、一瞬たりとも同じ軌道には戻れないのだと。"(p.339)といった意味が込められていて。仕事にも、恋人との関係にも、両親との関係にも、友人関係にも、少しずつの満足と少しずつの「これじゃない感」をかかえつつ日々をすごし、時に自分の打算的な考えが嫌になり、時に周囲の仕打ちに耐えかねて爆発しそうになったり、時に相談した友人から厳しい指摘を受けて、傍目にはふらふらと、ゆれ動く様が描かれ、それでも、状況も関係性も変化していき、と。なんか、これ、服を本に置き換えたらまんま自分のことではと勝手にあてはめて刺さりまくる箇所があったり、空気が悪くなるからと愛想笑いですませたりしないで、厳しい意見をきちんとぶつけてくれる友人の存在がうらやましかったり、ふと回転しながら宇宙の果てに向かっていくイメージにめまいを感じたり。もがいてころがりまわって、時に流れに身をまかせて、決断するべきは決断して、思いをぶつけて、受け止めて、生きていかねばならないのだよ、という気に。◆「何かに拘れば拘るほど、人は心が狭くなっていく。幸せに拘れば拘るほど、人は寛容さを失くしていく。」(p.436)◆自分の人生なのに誰かが何とかしてくれると思っている。私なんか誰の役にも立っていない。ただ消費して、無節操に物を溜め込んでは、愚かに捨てる(p.384) ◆「運命はないってことは正解はないってことじゃない。正解はないってことは間違いもない、つまり失敗もない」(p.317)◆「別に幸せになろうとしなくていいのよ。幸せにならなきゃって思い詰めると、ちょっとの不幸が許せなくなる。少しくらい不幸でいい。思い通りにはならないものよ」(p.653)
 | 河出書房新社 発売日 : |
全体的に。1990年前後からすると、モダンだけじゃ、ソリッドだけじゃたち行かない、これからはアンフォルマルにも目を向けないと！というのが有効だったんだろうなあ。アンフォルマル重視の例としての宗教の復権、神話、無意識、ドリーム・タイム、メカスの映画、マリックなのかな。今じゃそのモダン自体きれいに砕け散って跡形もなくなって荒れ地になって。そんなかでもドリーム・タイムには個人的に魅力を感じる。ドリーム・タイムについてちょっとくわしく読みたかった身には大変ありがたく。過去現在未来が同時にあるような不思議な場所での/からの神話的思考。またソレルスのウェーベルンの交響曲聞いて涙するのは確かに凡百の身には理解し難い。「隣地的集中度の、驚くほどの高さ」。あれから何度か集中して聞き返してみたけど。
 | 河出書房新社 発売日 : 2017-10-17 |
「アンフェアな国」というから雪平が国家権力と戦って…みたいなのかと思ったらそういうのではなかった。安藤くん最後によく言った、ただ回答はオープンエンド、読者に委ねられ。もう8年続編出てないけどもし出るとしたらその時は…と。個人的にはハッピーエンドと捉えた。無邪気で無自覚な男が巻き起こした見えない部分での両国の緊張、それは一見無関係な人たちを巻き込んで、と。雪平が白迫に切った啖呵の痛快さも…あんたのやったのはただの派閥ゲーム、すくなくとも玖島は街の治安を守ったよ。ただ思う、半沢直樹や雪平夏見に喝采を送るのは普段自分が言えないようなことを我が身も顧みずに言うことの痛快さを感じているだけでは、とも。
 | 新潮社 発売日 : |
中学生の頃から何度も挑戦して跳ね返されてきた「虹の理論」の章約50p、読めた！「知天使のぶどう酒」読んだおかげか。折りに触れこの本のどこか部分部分は読めたのだけれど、通読は初めて。◆大地の強度、大地の音楽、自然の持つ豊穣と破壊の両面を持つパラドックスがアボリジニの虹の蛇の神話とインドネシアのガネーシャから語られ◆ルチアーノ・ベリオのシンフォニアの歌詞にこめられた神話の意図◆記憶想起の訓練、光のヨーガ、チベット密教の修行の魅惑的な描写。◆中世日本の虹が出れば市を立てねばという考え方。僧侶たる作庭家たちの、「大地の風景のなかから天使が立ち上がる」奇跡的な瞬間をかいまみせる庭づくり。◆「二十世紀音楽の起源の場所には、毒物と性の誘惑者と愛の夜と死と病気が、おおきな渦を巻いているのだ。そしてその渦のなかからは、あざやかな虹がたちのぼっている。」p.63◆ソリッドなものをつきやぶる、運動と生命力に満ちたもの、虹をキーワードに語られる神話、庭、音楽、密教、市、呪術の魅惑。
 | フィルムアート社 発売日 : 2022-10-12 |
同名の展示の図録がベース。村上春樹本人のエッセイがすこしと、村上作品（小説、エッセイ、翻訳）に映画が言及される箇所をピックアップし、その映画の解説や時代背景が語られ、後半には映画と村上春樹に関する論説、インタビューが掲載されている。二週間ほどで書いた卒業論文「アメリカ映画における「旅」の思想」、読んでみたいけど難しんだろうなあ。当時の指導教授の印南高一先生に褒められて「君はゆくゆくはものを書く道に進むといい」とアドバイスされたそうな。シナリオ作家を志していたけど、いま考えると無理だった、自分は基本的に共同作業というものに向いていないから、という述懐。お金がないころに演劇博物館でシナリオを読みまくって、自分の頭の中で上映して楽しんでたから、いまでもそれが映画館で実際に観たのか、自分の頭の中で上映したものなのかわからないものもある。ただそれが小説家となってから活きているところもある。といったエピソードは興味深く。映画化に際しても、最近のものは安心してみてられる、どんどん筋も変えてくれて、どんどんセリフも変えてくれてるから、別物のように楽しめるから、といった趣旨のことが語られていて。巻末の論説でも、原作への「忠実性」より「想像性」が大事、と指摘している方がいたなあ、と。あとフィッツジェラルドの未完の遺作「最後の大君」の翻訳出てたんだ、これは読んでおきたい。
 | 新潮社 発売日 : 2022-10-19 |
著者がガンで余命宣告されてからの最期の半年間の日々。諧謔と戸惑いが入り混じった「うまく死ねますように。」「そんなことを急に言われても、というのが正直な気持ち（余命宣告を受けて）」「私、うまく死ねそうです。」「しかし、泣きながらも「120日後に死ぬフミオ」って本を出したらパクリとか言われるかなとも考えた」「変とはまさにこのこと。奥歯をガチガチ鳴らしながら、エヴァンゲリオンのフォントで「容態急変！」「救急搬送！」と私の頭の中を文字が横切っていくのを見ていた。」といった言葉を目の当たりに。申し訳ないけどエヴァのくだりは吹き出してしまった。それはそれとして「もうすぐ死ぬとわかっていても、読みかけの本の続きが気になって読んだ」「金原ひとみさんの「アンソーシャルディスタンス」、死ぬことを忘れるほど面白い」なんて勧め方をされたら是が非でも読んでみたくなる。「未来はなくとも本も漫画も面白い。とても不思議だ。」(p.66)は普段阿呆みたく活字を追いたくて仕方ない身には、深くうなずくところ、おそらく同じ立場に置かれても同じこと思うだろうなあ、と。「人間同士の関係は男女だけでも、女同士だけでも男同士だけでもない。恋愛だけじゃないし、親友だけでもない。ただずっと離れずに自転公転をゆるーくゆるーく繰り返すことができるのが豊かなことかもしれないと、私はふんわり幸福に思っていた。」(p.167)という境地に至れたのがうらやましく。
シーソーブックスのtwitterでオススメされてて気になり。店頭で濃い目のナポリタンのイラストが気になり、ポストカードなのかと一瞬思い手にとって見ると短い文章が載ってて、一読面白そうで購入。店員さんからも、作者さんはオクトパスボーイとして活動、変わってて面白くてそんな作者の魅力込みで楽しんでくださいとのこと。もんのすごいパワーで持っていかれました。ファミレスを戦場の最前線に見立てたお遊び（本人たちはいたって真剣？）ととらえました。ファミレスの呼び出しボタンが核ボタンとしておされるまでの一気呵成、怒涛のモノローグをたのしみつつ、圧倒されました。
サブタイトルは「大学中退無職のど素人が出版社を立ち上げてからの半年間考えていたこと」。シーソーブックスの棚オーナーコーナーで配布しして気になり手に取る◆映画「1917」を観て、どうして本が出したいのか？という問いへ「人間を信じたいから」という答えを出した所がグッと来ました。あと、尾崎一雄の「人間信頼」というエッセイのいう「大きな意味で、人生や人間を佳しと思わせるような（建設的な）小説」をほしい、それに加えて「人生や人間を最悪だと思わせるような（非建設的な）小説も欲しい」それが点滅社のやりたいこと、というところに惹きつけられた。
 | 戎光祥出版 発売日 : 2022-12-23 |
久武親直・親信の章のみ読了。久武親信擁護の文章みたいになってしまったけどと最後の方に書かれてたけど、最新の研究にあたりつつ、久武親直が独裁的な権力を持ち、元親・盛親に讒言した佞臣で、跡目争いや当主の親族の誅殺の主因で、長宗我部家改易の張本人というイメージをひとつひとつ丁寧にひきはがしていく。権力は留守居の時に権限を与えられるものの合議制の一員、讒言や誅殺は良質な史料に見えず確定できず、改易は親直のしたことというよりは、浦戸一揆が主因、と。親信が戦死した岡本の戦いも、天正七年説から天正九年説が出されてて、まだまだいろいろ研究の余地があるのだなあ、と。そのうち全編あたってみたい。
 | 祥伝社 発売日 : 2023-02-08 |
田汲朝、高2から高3にかけての惑いの日々。まわりの子たちがどんどん決めて先にすすんでいくように思えるのに、自分だけ何がしたいかわからない、何になりたいかわからない、わたしにはなんにもない、という思いから泥沼のように抜け出せず、自分でもうっとうしいと思いつつ、級友に先生に槙生に問いかけ問いかけ問いかけつづけ、揺れ動く日々。亡き母の日記に説教臭さを感じ、また槙生やカンちゃんから夢はないけどリアルな言葉や全肯定の言葉をもらい、それを受け止めたり受け止めきれなかったり。◆「大丈夫じゃないまま生きていくからいい」◆今がいちばんだ一生忘れないと思ったこともどんどん忘れてしまうよ（槙生）◆失われると知っていても愛したり死ぬとわかっていても生きるようなこと（槙生）◆そうゆうの全部なくてもなんもなくなんてないだろ（カンちゃん）
| 発売日 : |
トオンカフェのフリマで入手。福袋のようなバラエティ、そしてカオスなパワーを感じました。トオンカフェのフリマで入手。福袋のようなバラエティ、そしてカオスなパワーを感じました。◆今日の三ツ沢通信：◆四度の飯と本が好き_パロディ:ユリシーズてオデュッセイアのパロディなの？◆四度の飯と本が好き_鳥:中沢新一鳥の仏教とりあげられててよかった。◆円盤:100ポータブルキーボードで同じ和音を出し、100ポータブルレコードで100枚の波音のレコードを再生したもの、気になる◆枕元レコード 栗鼠春 フェルナンド・テルのバンドネオン聞いてみたい。あとよく自主盤とか集めてるなあ、と。アイドルのデビュー盤がジャケット違いで何種類も放送局から放出されたの、よっぽどしつこくプッシュされたのかなて推測も。◆台湾料理ごとうのレシピ：怪味ソース、怪しいではなく複雑な味のこととか、レシピなかなかに素材多し。◆サイケデリック劇場：無名の写真家によるヌード写真収集。目のつけどころ！そして永遠の宿題がふたつ◆「円盤営業中！」：過剰なウィスパーボイス黒岩あすかさん気になる。あとシタールをフィーチャーしたのが何枚か。ライブ場所の供給過多など
こんにゃく作り、自転車店、食堂と弁当、青果店、革職人。世田谷で商いを営む人たちの来し方行末をインタビュー。些細なことでもいいのでそこでの十八番を聴く、と。個人的にこういう市井の人のインタビュー大好きで、サッポロパラレルミュージアムのイベントの一環で配布してて飛び付いちゃいました。食堂の店名が「さらぼん」でサラ・ヴォーンと皿とお盆をかけてる、公務員から飲食に飛び込んで、てストーリーが個人的には一番印象に。
 | 青土社 発売日 : 2021-10-28 |
小林美香「脱毛広告観察――脱毛・美容広告から読み解くジェンダー、人種、身体」のみ読了。最近の脱毛広告、ヘアケア広告、男性化粧品広告をとりあげて、一見既存の見方を打ち破るようなテイストをまとっていても、仔細にながめれば、従来のルッキズムの枠組みの中で、許容範囲を増やしているだけ、枠組み自体は維持されている、といった点を解き明かしてくれる。電車広告、インターネットの動画広告、スマホゲームの広告などで日々大量にこういった情報にさらされてる身には腑に落ちる論考でした。
 | 講談社 発売日 : 2010-08-20 |
結婚恋愛夫婦関係に関する相談がベースなんだけど、ふたりの回答がずれるときが面白い。それぞれの個性が出て。お互いのパートでお互いにさぐりを入れたり呼びかけたりするところも。また、ふたりの関係がさぐりさぐりから徐々に近づいていって意気投合する距離感も好きでした。伊藤理佐パートの漫画に出てくる山本文緒は、伊藤理佐の中の山本文緒像なのか、山本文緒の発言・態度が織り込まれてるのかはちょっと気になった（どちらでもいいといえばいい）。「夫婦の生活というのもは、膨大な数のでこぼこをこつこつと減らしていく作業なのかもしれません。」(p.7)「いい思い出っていうのは、生きていくのにわりと必要なものだなあと当たり前なことに気づきました。」(p.80)(山本文緒)あたりはなるほどなあ、と。けらえいこの「二人がお互いに相談し合う会があったじゃないですか。あのときにりさっちがハチのコとりを勧めていたのは、実は真実を突いていたんだじゃないかと」にも。
 | 講談社 発売日 : 2021-09-13 |
山本文緒「無人島のふたり」で、これを小説でできたらな、ととりあげられてたのを読んで手に取る。編集者と書店員の女性二人を主人公に、ハワイ、ニュージーランド、ホテルラウンジ、おうちで海外旅行気分、ハードすぎる英仏旅行がつづられる連作短編旅マンガ。個人的にはトルコのお菓子kazangibiというのは初めて知った。ハワイの帰還間近、ちょっとバスが遅れてぽっかりあいた30分に、寝転んで何もしない時間、ぜいたくなかんじでよかったなあ。英仏旅行は詰め込み具合と予定の狂い具合がキリキリとしててちょっとつらい感。
 | 小学館サービス 発売日 : 2018-09-28 |
ダミアンとの仲直り大作戦。高代さんに、元のままに振る舞うのがいいのでは、と言ったのが「元からとはどこから？」という哲学的な問題に還元され。2月の連休に、仲村さんが、いよいよ大阪の実家に帰省し母と再対決を決意、それにみんなで小旅行をくっつけようと吉田さん、高代さん。寝てないので逆に元気でアホの小学生な吉田さん。名古屋でミヤビさんと合流して、名古屋、大阪と観光、食べ物、撮影、ビーボーイズのライブ、獣将王最終回鑑賞会と旅行を満喫したあと、仲村さんはひとり、母とこれから再対面、といったところまで。
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-05-21 |
「自転しながら公転する」の解説にひかれて◆ドッペルゲンガー、もうひとりの自分。優しくて裕福だが自分に関心のない夫との結婚生活に飽き、不倫相手にも飽きた蒼子。旅先のアクシデントで立ち寄った博多で、自分と同じ名前、背格好、見た目のもうひとりの自分が、過去にふったはずの恋人と結婚しているのを目の当たりにする。やがて、ふたりは入れ替わることを考え…と。◆もうひとつのあったかもしれない自分の人生を、もうひとりの自分が生きていたら、という設定。そしてドッペルゲンガーの方はある条件のもとでは他人から認識されなくなってしまう、という設定◆自分が優位に立っていると疑いもせず、ドッペルゲンガー扱いされる側の気持ちも考えず、嘘をつき、わがままに、冷酷にふるまってしまい◆「愛されてたのに愛し返さなかったのよ、私達」という叫びがせまってくる◆◆自分にとってはそれはどこの地点だろう。もしもうひとりの自分が別の人生をおくっていたとして入れ替わりたいだろうか。自分をかえりみればきっとまた同じ道をたどりそう、だからどの地点に戻ってもという思い。
 | KADOKAWA 発売日 : 2022-01-21 |
父のコネで信用金庫につとめる深文。家族とも友人とも同僚とも恋人とも波風立てずにやっていきたいのに、そうはいかず。職場の先輩サユリさん。職場の後輩日比野。今ならセクハラで一発アウトのスケベな上司岡崎。仕事からも恋からもいつも逃げ出してばかりの友人月子。理想の結婚出産をしたはずの友人なつ美。いつもマイペースでこちらが言うことをきかねばならぬ気のする姉。おだやかな恋人の天堂。誰かをうらやみつつ、敬しつつ遠ざけつつ、言いたいことを飲み込んだり、恋人の気持ちがわからなくなったり、一方的な悪意をぶつけられたり、色恋沙汰にまきこまれたり、あらぬ罪をきせられそうになったり。最後は連れ出されるように逃げ出すけれども、友人とプールで語り、恋人とは喧嘩しつつもつながりつづけそうなエンディング。ぐるぐるとまわっているようで、最後は自分の向かいたい方向がわかってくるような。時代だなあと思ったのは、連絡手段が公衆電話、家電、そしてみんなフランクに会社に私用電話かけてくるところ。携帯電話普及前はそれが普通だったのかなあ、と。◆逃げたい私と、逃げない私が、一枚の壁を両方からぐいぐいと押してくるようだったp.187◆恐いものがない人間は強い。欲望のままに動いて、後先考えずに嘘をつくことができる。相手を傷つけたのではないか、自分が嫌われたのではないかと思い悩むこともない。p.218◆「そうやって、いつも人を馬鹿にしているから、皆に嫌われるのよ」(日比野から深文)p.247◆
 | 新潮社 発売日 : 2010-02-19 |
デジカメは使用禁止、レンズ付きフィルムで撮影、未現像で提出を条件。1960年以降生まれ、首都圏に在住する子供を持つ夫婦を対象。主婦は専業主婦、有職主婦をわけず。2003年から2008年までのデータ。120家族を調査。見知らぬお宅の普段着の食卓が豊富な写真でぎっしりと興味深く垣間見れる一冊◆印象的だったのは、子供の好き嫌いに対して今の親はとても「寛容」、2000年代初頭までは「食事は楽しく、嫌がるものは押し付けたくない」だったのが、今回の調査では「私のストレスになるから、そういうことはしたくない」。「だが、自主性や意思を尊重されて「リクエスト」を出す子供たちに、食生活の自己管理能力があるとは、とても思えない」(p.222)。また主婦が疲れるからを理由にさまざまなことを放棄、夫もそれに寛容、という例示がいくつも。主婦の声に絞って取り上げただけ、批判する気は毛頭ない、というが、取り上げ方や寸評がすでに批判になっているようには見受けられた。◆自分の家庭は、出されたものは食べるのが当たり前、箸の持ち方も正しく持てるまで泣こうがわめこうが席を立つことを許されず、好き嫌いがあろうが、栄養があるから身体にいいんだから食べなさい、といった感じだったので隔世の感。最も時代だけじゃなく家庭でもさまざまだろうし、母数の少なさもあるからケーススタディーとしてとらえるべき面もあるか。さて令和の世はどうなっているんでしょうか、と思いつつ。
 | 河出書房新社 発売日 : 1996-02-01 |
一読、風雅な寓話だなあ、という読後感。そこに諧謔やエロスや残忍さが含まれていたとしても。自分になつく少女を餓死させてしまったウッチェロ（鳥）と呼ばれた画家（鳥と少女）。清衡の生まれ変わりと称するドライバーに案内された平泉（平泉異聞）。ティムールとハーフィズ、ティムールとイブン・ハルドゥーンのひりひりするような対面（盤上遊戯）。セレウコス朝のアンティオコス一世に命じられて、その妃と神殿建設のために三年の旅を命じられた美男の建築家が自分の命を守るために切り落としたものとは（閹人あるいは無実のあかし）。避雷針の押し売りを、雷に打たれて死ぬために売ってくれてといって困らせた話（避雷針屋）。花山院が頭痛するたびに召された安倍晴明が、院の前世、前前世、前前前世の無念を読み解いてその骸骨を丁重に葬ると頭痛が止む話（三つの髑髏）。紀長谷雄が鬼との賭けに勝ってもらいうけた女性といざ、という時に水となり弾けた話（女体消滅）。火山の噴火に好奇心の赴くまま意気揚々と向かっていくプリニウス（火山に死す）。などなど。
 | 角川書店 発売日 : 2007-05-25 |
大学時代の友人から急にこの本読んで感銘受けた旨のFacebookのメッセージが来たのをきっかけに、何回目かの再読。戦雲急を告げる感の1892年のイスタンブルにイギリス人、トルコ人、ドイツ人、ギリシア人、日本人が集う宿を舞台に繰り広げられるストーリー。それぞれの国情、文化を背負いつつ、それをぶつけあうのではなく、ゆずれないところを抱えつつも、理解できず許せないと感じたとしても、受け入れるという関係性。今回読んで、特によかったのは、前回とも重なるけど以下の2箇所かな。(1)---こんな事は何でもないことだ。「私は人間だ。およそ人間に関わることで、私に無縁なことは一つもない」（p.83) ディミトリスが、会ったこともない、村田の日本人の知人木下が寝込んでいるというのを聴き、醤油をわけてもらってきて、村田から猛然と感謝された際の一言。どうしたらこうまで深い愛を抱けるのだろうか、と。出典はテレンティウスという古代羅馬の劇作家の作品に出てくる言葉なのだとか。さらにしらべると、岡道男訳（世界文学全集2）講談社、1978 で読めるみたい。「自虐者」という作品 (2)そういう世界、知らなくもないけど。あまりに幼稚だわ。分かるとこだけきちんとお片付けしましょう、あとの厖大な闇はないことにしましょう、という、そういうことよ p.182 ... シモーヌから木下への辛辣なことば。西洋の合理主義と東洋の思想、一神教と多神教、進歩と停滞、さまざまな対立項を提示しつつ、一方が必ずしも優れているわけではない、自分だけの正義を相手にぶつけても理解しあえない、たとえ無知蒙昧に見えても彼らには彼らの内在的な論理がある、といったこの小説のそこに流れているものを象徴するようなシーンと感じた。
 | 新潮社 発売日 : 2005-03-02 |
読んだのは1976年文春文庫版。伊丹十三、といえば自分にとっては「マルサの女」を始めとした大ヒット作品の映画監督なんだけど、往時は欧州を股にかけた映画スターだった由、その一端が垣間見える。洋行の珍しき時代に欧風生活を、在りし日の英国紳士を、”「ムード」と週刊誌と香水入りおしぼりの国、日本”と対比したり、何が粋なのか啖呵を切ったり、""でも、自分の嫌いなものをあれこれ考えるのはとても愉しいことです。美的感覚とは嫌悪の集積である、と誰かがいったっけ(p.144)"。ヘタにやると皮肉や自慢が過ぎてイヤミになりそうなところを、ここまでつきつめるとかえってカラリとするというか、なんというか。◆「あなたの耳にですね、バナナが詰まってますよ！」「何ですか？なんとおっしゃました？」からの一連のくだりは、ライター佐藤優子さんのブログ「耳にバナナが」の元にもなっててニヤリとしてしまいました。
 | 秋田書店 発売日 : 2023-02-16 |
チンギス・カンの死、オゴタイ・カアンの即位。ソルコクタニから密命を得たシタラ、しかしその意図とは別のところへ流れ着くことに。オゴタイ妃ドレゲネ。モンゴルに暮らしつつ、時にモンゴルを許しそうになりつつも、モンゴルを強く憎む二人が出会い、嵐を起こそうとする！と言ったところまで。オゴタイ側のボラクチン妃、モゲ妃は同じ兆候を感じ取りモンゴルが分裂しないように目論むが、と。オゴタイの、戦争しか考えてない一族家臣の前に、都を作ろうと思う、そこに世界中の富が集まるようにする、と言ったの最高にクール、と思ったけど案の定トゥルイ以外には通じず。
 | KADOKAWA 発売日 : 2023-02-15 |
バードと伊藤の元雇い主マリーズとの対峙。初回は決裂。二度目は条件交渉を経て、伊藤の意思を確認した上で、一カ月伊藤をレンタル契約にこぎつけ。アイヌ文化の中心地へといざ。バード側から見れば敵として立ちはだかるような描写のマリーズだが、この巻で一端が語られた彼の生涯も気になってきた。
 | 新潮社 発売日 : 2006-02-28 |
梨木香歩「渡りの足跡」を読んで、戦時中アメリカの強制収容所に入れられてた男性の話が出てきて、最初の出会いはこの本につづられていると知り、再度手に取る。語るに悲惨な体験、記録にすら残してもらえず、ある日着の身着のままでつれてこられ、財産も奪われ、”だってドイツ人もイタリア人もそんな目にはあっていないわけですよ”。抵抗し、虐待され、アメリカ市民権を放棄して戦時中の日本へ、しかしそこでも…と。そしてもうひとつ大きなながれは、ウェスト夫人（きっとどこかで誰かが書いてそうだけど、「村田エフェンディ滞土録」のディクスン夫人の造形に多大な影響を与えているんだろうなと思いつつ）とのやりとり。「女は自分の信じるものは他人にとってもそうなるはず、と独り合点するところはなく、また人の信じるところについては、それを尊重する、という美徳があった」(p.100)。そしてそれは「理解はできないが受け容れる。ということを、観念上だけのものにしない、ということ(p.230)、価値観や倫理観が違う人間同士の間でどこまで共感が育ち得るか、という課題(p.127)につながっていくんだなあ、と。
 | 小学館 発売日 : 2023-02-09 |
田中さんも朱里も笙野も、自分を縛る思い込みからだんだん解き放たれてすてきになっていくなあという思い。笙野-田中さんデートからの泥酔帰宅、靭帯損傷、お見舞いからの笙野母とのエンカウンター。田中さんと笙野母は意気投合するが、別の人とのお見合い話もあり、母の病気きっかけで笙野は断れず、といったところまで。朱里が田中さんのためにはじめた女の人のためのメイク研究のくだりと、田中さんが、行きたかった場所に来られた 午後に食べたケーキがおいしかった 初めての国の初めての文化に触れた 好きな色のスカーフを見つけた 一つ一つは些細でもたくさん集めれば生きる理由になるよ、って語るくだりがグッときました。
 | 法政大学出版局 発売日 : 2022-06-27 |
美文調で歴史的事実の内容は少ないか。割礼式典のあたりは特にそう感じた。研究編にあるような語り方を楽しむものなのか。（メフメト2世の大宰相）マフムート・パシャ大大大活躍なのは著者トゥルスン・ベグが仕えた人だからか。何かメフメト2世、バヤズィト2世の華々しき戦勝は語られるが、敗戦が見当たらなかったのは気のせいか（美文に目が滑り読み逃した？）。メフメト2世とて常勝将軍ではなかったはずだが（例えばヴラド3世、例えばスカンデル・ベグ）。バヤズィト2世の活躍が描かれ、好意的に感じるのは、マフムート・パシャ処刑後、どういう経緯かジェムの財務長官になり、バヤズィトとジェムの継承戦争で敗れて捕虜になったあと、許され、厚遇されたことも一因か。ざっと読んでみて、ハリール・イナルジク教授が「よく日本語に訳そうなどと考えたね。トゥルスンは厄介すぎて、自分は現代トルコ語にすら訳そうとは思わない」(p.418)と言ったのもさもありなん、と。個人的には、特に、コンスタンティノープル陥落、ヴラド三世との戦い、トレビゾンド帝国征服、ウズン・ハサンとの戦い、バヤズィト2世のスルタン位即位のあたりは興味深く読んだ。
 | 大和書房 発売日 : 2023-02-18 |
2012年から2022年に、雑誌・新聞に単発・連載で書かれたエッセイ。掲載誌の希望で真面目より、はっちゃけ寄りに書き分けるのがプロといいつつ、真面目寄りでお願いされた原稿もいま読み返すとはっちゃけ寄り…って冒頭からもうおもしろい。化粧品会社の会報誌で真面目に美について考えようと思うもなぜか虫の話ばかり…ってもう1ページ目からお腹がよじれそうです。
個人的には、もっともっとEXILE一族についての熱い思いを読みたかったのですが、はかない願いのようです。なぜなら、はまっている期間は「言語野が破壊されているから」（しをんさん談）。それでも「シャレオツな巨大送風機に乗るきらめく集団。タオルでふぐふぐ口をふさぐ女の子。SFっぽいんだかアナログなんだかよくわからない。(p.34)とコロナ禍でのコンサートの一幕も垣間見れたり。一番好きな章は、「希望の塔-なぜ、ひとは積ん読をするのか？」からの一連のくだり。もうタイトルだけで百回ぐらいうなずく。そしてどうやってベッドの上に崩れずに本がつめるのか。「積み上がる本は希望なのだとも言える。「明日も生きて、これらの本の中から一冊読みたいな」とか、「知らなかったことをまだまだ知りたいな」とか、自分自身や未来への希望の象徴なのだ」(p.151)という一節にも激しくうなずくが、冒頭からここにいたるまでのしをんさんの部屋はまさにサバイバル。しかし、気がつくと部屋のあちこちに本の山ができる身には共感しかなかった。「もしもなにか（だれか）を好きになったら、ひるんだり恥ずかしがったりせず、「好きだ」と感じている自分の気持ちを直視すればいいのだと思う。」(p.197)からのくだりがこの本のタイトルにつながり、何かを好きになることの尊さと留意点とがこめられた素晴らしい一節だったなあ、と。◆ブックガイドとしても秀逸。カベルナリア吉田「絶海の孤島」 、鈴木光太郎「オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険」ちくま文庫、ナンシー・リカ・シフ「世にも奇妙な職業案内」、森敦「月山」はぜひとも読みたくなりました。
個人的には、もっともっとEXILE一族についての熱い思いを読みたかったのですが、はかない願いのようです。なぜなら、はまっている期間は「言語野が破壊されているから」（しをんさん談）。それでも「シャレオツな巨大送風機に乗るきらめく集団。タオルでふぐふぐ口をふさぐ女の子。SFっぽいんだかアナログなんだかよくわからない。(p.34)とコロナ禍でのコンサートの一幕も垣間見れたり。一番好きな章は、「希望の塔-なぜ、ひとは積ん読をするのか？」からの一連のくだり。もうタイトルだけで百回ぐらいうなずく。そしてどうやってベッドの上に崩れずに本がつめるのか。「積み上がる本は希望なのだとも言える。「明日も生きて、これらの本の中から一冊読みたいな」とか、「知らなかったことをまだまだ知りたいな」とか、自分自身や未来への希望の象徴なのだ」(p.151)という一節にも激しくうなずくが、冒頭からここにいたるまでのしをんさんの部屋はまさにサバイバル。しかし、気がつくと部屋のあちこちに本の山ができる身には共感しかなかった。「もしもなにか（だれか）を好きになったら、ひるんだり恥ずかしがったりせず、「好きだ」と感じている自分の気持ちを直視すればいいのだと思う。」(p.197)からのくだりがこの本のタイトルにつながり、何かを好きになることの尊さと留意点とがこめられた素晴らしい一節だったなあ、と。◆ブックガイドとしても秀逸。カベルナリア吉田「絶海の孤島」 、鈴木光太郎「オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険」ちくま文庫、ナンシー・リカ・シフ「世にも奇妙な職業案内」、森敦「月山」はぜひとも読みたくなりました。
 | 秋田書店 発売日 : 2023-02-16 |
映画祭出品作へ向け各々制作を進める海とうみこ。うみこのさりげないアドバイスに、監督向きのポテンシャルを感じる海。そして実家の親との対峙に、つい衝動的に海の最寄り駅までついていってしまううみこ。映画で語り映画で繋がる関係。そしてその映画祭を、観に行った会場で…というところまで。映画が自分の中にある乾ききってない感情をさらす行為だとしたら、自分の感情をもう一人の自分が俯瞰して語る所業だとしたら、これほどの愛はない、という感に打たれる。
| 発売日 : |
アダノンキのTwitterでお見かけした気になる一冊。北海道のが7つも紹介されてると知り矢も盾もたまらず購入。地下街への招待、というから「地下街」のことを紹介かと思いきや、比重としては「地下街への招待」＝エントランスの魅力が語られている。地下街の入り口の吸引力、どれだけ入りたくさせるかの工夫。また、見る人が見ればぜんぜん見えてくる景色も違うんだなあ、ということを痛感させられる。入り口の看板のたたずまい、フォント、照明の魅力、タイルの模様、床のしつらえなどなど。おそらく自分がまのあたりにしてもさらりと流してしまいそうなところに着目して魅力的に語ってくれるの、学芸員さんに案内してもらう美術館のごとし。もちろん入り口だけにとどまらず、中の店に入って、往時の話をインタビューしたり、それもまた興味深い。たいていの地下街が1950-1970年代に竣工で、老朽化はあらがえぬ波。残る店は残ってくれているが、そうではない地下街もこの本の中には残っているの、行ったこともないのに感無量に。札幌からは緑苑ビル、昭和ビル、すすきのゼロ番地、北専佐野ビルあたりが個人的に見覚えあり、馴染みありのところで、見つけてうれしくなり。今日から街歩きするごとに、あ、ここにも地下飲食街！とか発見、再認識したりして、歩くのが楽しくなりそうな一冊でした。
 | 青空文庫 発売日 : 1999-02-09 |
中野美代子西遊記ものに導かれ。沙悟浄の目からみた孫悟空、三蔵法師、猪八戒。悟空の力の強さ、己の命を顧みない所、三蔵法師の弱さとそれでも孫悟空、猪八戒、沙悟浄をひきつけてやまない魅力、猪八戒の世の楽しみを楽しみつくそうとする姿勢に感嘆。悟空と三蔵法師の共通点を、生き方において所与を必然、必然を完全と考えていること。その必然を自由と見做していること、と気がつく。三蔵法師はいつも永遠を見ている、数々の善きものの上に絶えずじっと憐れみの眼差しをそそいでいる、と考えた。
 | 小学館サービス 発売日 : 2019-09-30 |
17-20巻での仲村さんの大きな宿題は、「母との関係改善」「ダミアンとの仲直り」。母との関係は、もう親子としてはダメだ、特撮が一年ごとに関係をクラスチェンジするように、私と友達になるというのはどうでしょう？という提案。すべてをゆるせなくったって友達にはなれるのではないか、という。最初はギクシャクしつつも、少しずつお互いの痛みを理解しつつ、歩み寄れたのでは、というところまで。人間関係に特撮からの考察が効く、と。そしてダミアンとの関係。吉田さん、北代さん、みやびさん、任侠さん、窪田さん、タツさん、「大きなお友達」の協力も得て、獣将王のショーに参加。ダミアンも友達ふたりと来てくれるものの、最初は「もういい」モード。まわりからのあの手この手の働きかけで、頑なな心にひびを入れることができて…という過程がもう見ててグッときました。ていねいに、各キャラクターのその後がつづられているところも吉でした。大団円。◆自分が苦しいことは、弱い人を見捨てていい理由にも、人を苦しめていい理由にもしてはいけないと、ずっと思い続けてきた。◆私もいつか、もっと輝いて見えるものに出会って、さよならが辛いとさえ気づかずに、去るのだろうか◆なんにもしないやつがバカにするな 戦ってる人のこと◆
 | 中央公論新社 発売日 : 2022-11-21 |
初出は新聞連載で、日本史の多岐にわたるトピックスがとりあげられていて、初学者にも専門外の方にも、どっかこっか興味を惹いて、もっと知りたくなるようなフックがたくさん仕掛けられているように思えた。それにしても、新聞を読む速度でくずし字を読めるというのはすごいなあ、と（もしかして現代史以外の日本史研究者はみんな？）。個人的に興味を持った箇所は、(1)松永久秀大悪人説は、実像はともかく、流布の原因は、久秀が強引な集金の産物で奈良のお寺や金持ちに深く恨まれていたこと、そのお寺は記録が得意で世評や歴史観への影響力が大きいことに依っていたのでは (2)イエズス会の布教戦略としての日本人への宇宙論の提供 (3)忍者心得の史料で失敗想定が多いのは、それだけ失敗する忍者がいた証拠 (4)岡山藩やその分家の、脱藩しても追手をかけないゆるさ (5)明治政府の感染症関連布達が明治人に「空気感染」、「病原」が衣服や物品に付着して感染拡大、という知識が定着、といったあたりが興味深かった。磯田道史「感染症の日本史」にも手をのばしたいと思った。ただ、一部、かなり後世の史料を用いて、うのみするわけにはいかないがといいつつ論旨の展開に使っているのは、どうかなと思う箇所もあった。
 | マッグガーデン 発売日 : 2023-02-15 |
着々と古事記の編纂はすすみ、しかし欠史となっている点の扱いになやみ。物部氏がいまの王朝より前から存在した王家であるとする歴史を。大王には復命時に、歴史を捻じ曲げようとすることこそ祟りを呼ぶとして、日本書紀の方に入れるよう提言。史は史で、阿礼の姿をしてるときに史を呪い殺そうとする蘇我の姫君とのひりひりするような出会いあり、一族の長大嶋との、お互い嫌い合っていると知った上での駆け引きがあり、と。最後は大嶋が額田王に面会を求めるところまで。古事記の内容噛み砕いてくれるのありがたいが、なかなかに読むのに骨が折れる。
 | イースト・プレス 発売日 : 2012-12-02 |
一度挫折してたんだけど、燃え殻さんとの共著がきっかけで読むのを再開。◆なんのためにモテたいか、どういうふうにモテたいか、自分が好きで苦も無く続けられることは何か、どんな相手が好きなのか、などなど、まずは徹底した自己分析から入る。そのあとの具体的な練習方法は、女の子のいる店で練習、次はSNSのオフ会で練習…と。面白い構成だなあ、と。解説で、「だって、この本読んでも、「モテる」ようになったりしないもん」とあるのはご愛嬌。突き詰めていくと、どう生きたいかの問題にいきつくような、哲学的な。認めて欲しい、、受け入れて欲しい。だったら、自分を守ろうとするな、そうすればその先に…と。
 | 河出書房新社 発売日 : 2022-12-10 |
メリとジュンのふたりが、詩歌をもとめて、アパートに、レストランに、古本屋にとさまざまな場所をフラヌール=遊歩者となってめぐる、その過程でとりあげられる萩原朔太郎、大手拓次、小林秀雄訳のランボー、都倉俊一訳エミリ・ディキンスン、閑吟集、堀口大學訳のシュペルヴィエル、最果タヒ、左川ちかの詩歌をたのしむといった趣向。個人的には、正直フラヌールの部分はあまり目に飛び込んで来ず、詩歌のいいなあと思うところを味わっただけなので、作者の意図の半分も受け取れてないようには思う。p.203あたりの「デンマークの森」を書いた「村谷夏樹」は村上春樹をもじって、バックグラウンドをだいぶ変えたのかなあ、と思いつつ。
 | 東京創元社 発売日 : 2023-02-13 |
読書室ポワロのSNSでお見かけして気になった一冊。自伝、小説、エッセイ、引用、観察記録からなる断章。唐突な死が語られ、いつかみな死ぬと語られ、生きる義務などないと書かれ、生きる義務はあると語られる。「他の誰がするんですか？」というユダヤ人差別のために孤軍奮闘する女性弁護牛の決然たる回答に背筋がのびる。「私たちの人生は一瞬の間でしかない。わずかな歳月で私たちの命は尽きる。私たちには限りがあり、はかなく、傷つきやすい。人生をすべて理解できると思うときがあっても、それはできない相談なのだ」(p.71)
Twitterで発表されたもののまとめ。ちょこちょこ読んでたのでまとまって読めるのうれしい。ロンドン家探しはマジでたいへんそう。けど、著者のシェアハウス生活はたのしそう。イタリア米をレンジで炊いたり、外食についてくるこれでもかのポテト、超クールにキックスクーターで通勤するお兄さん、シェアメイトたちとの気軽な交流、しとしと雨だと本当にだれも傘をささない（どしゃぶりだとさすがさす（著者調べ））、コミコンでのアニメ好きたちとの交流などなど、ロンドンが好きすぎて思い切っての半年滞在の好きがあふれていて読んでてたのしくなってくる。
 | コアミックス 発売日 : 2023-02-20 |
あげだし白玉、チョコレートの天ぷら、ふだんならデザートなのをお酒のつまみにしたのが気になる。ヒロキ氏ひさびさ登場の気が、LINEの会話だけだけど。
 | コアミックス 発売日 : 2023-02-20 |
映画の見方、二人の違い、といった話題から、長野-東京往復で、夫はDIY心に火がついて長野でリノベしたい古民家を見つけてしまった、妻は心惹かれた彫金作家の教室を見つけ、心を掴まれてしまった。次巻完結、ふたりの出した答えは？？と気になるところ。
 | 共和国 発売日 : 2021-09-30 |
アソーレス諸島の紀行文が読めるとは！圧倒的にタブッキの「レクイエム」読みたくなる！カビデーラ（鶏の肉・内臓・血も入れて煮込み、米を加えたリゾット風の料理）たべてみたい！◆旅の終わりは、次の旅のはじまりである。さらに旅に出る必要がある。どんなときでも（ジョゼ・サラマーゴ/福間恵子訳）
2巻で気になったエピソード→ロンドンいつも夏でも25度ぐらいのところ40度な熱暑ラプソディ。一部地下鉄はエアコン無しで蒸し風呂とかいろいろ大変そうだったけど、申し訳ないが机が西向きだから仕事してたらまじサンシャイン竹内にはふきだしてしまった。あとKATSU CURRYが昨夏イギリスで流行してたとは！ルウは肉なし、カツカレーといいつつ、イカフライ、ソーセージ、豆腐カツ、野菜コロッケ等選べるとか、米かチップス（ポテト）が選べるとか、その違いにも興味津々。少ない残業や長期休暇は、不自由を許容することと表裏一体と感じた…に触れて、なるほど、だからこそ一朝一夕では難しそうと思ってしまう。
 | 柏書房 発売日 : 2023-02-28 |
「常識のない喫茶店」の正統な続編にして完結編、なんて書かれたら、「常識のない喫茶店」大好き勢としては見逃すわけにはいられなかった。前半は、「常識のない喫茶店」を出版してからその喫茶店を辞めるまでの日々。後半は辞めてからパートナーと新しい生活を始めた日々のこと。パートナー…「常識のない喫茶店」では語られてなかった気が。ネット専業古本屋をいとなむ青年。一緒に暮らすまではパートナーの部屋は古本、古本、古本で足の踏み場もなかったそうで、「一度、大きめな地震があったときに「部屋がこんなになっちゃった」と彼が写真を送ってきたが、特に変化がわからなかった。サイゼリヤの間違い探しみたいだった。」というのが好きな一節です。しーちゃんとのやりとり、辞めるまでの日々も、辞めてからのときどき顔を出した時、しーちゃんとしーちゃんのパートナーと三人で飲んだ時の空気感、みんな好き。そして送別会に17人ぐらい集まった、愛されてる感。◆また、いつでもフルコミット、前向きな姿勢が求められる働き方への疑念、断っても大丈夫とさとって、自分を守り労りながら日々を過ごしたり働いたりしていこうという考え方、「だから、知ってほしいし、知りたいと思う。自分だけが苦しいとも思わないし、人の苦しさなんて感嘆に測れない」から始まる書くことへの思いに深くうなずく。◆ブックガイド的受容として、木村紅美「あなたに安全な人」、植本一子「ある日突然、目が覚めて」、牟田都子「文にあたる」あたりは読んでみたくなる。◆完全に忘れることはできなかったけれど、日常のしんどさを遠ざけてくれたのはやっぱり本だった(p.57)◆次はどんなことを書いてくれるのだろう、その先もたのしみに。
 | 幻冬舎 発売日 : 2021-11-17 |
自分だけはまわりと違うという思いと、やはり凡百のひとりだったという思いのせめぎあいな僕が「勝ち組飲み会」で一目惚れした彼女と付き合うが…大事すぎる情報開示するの遅すぎないですか？後付けですか？という思い。そんな留保付きで楽しんでるようにはみえなかったのだが前半。あと過去の思い出を感傷たっぷりに引きずるのは燃え殻さんの恋愛ものを思い出しました、好きです。明け方の若者たち、って若者だから明け方まで遊べるよねという話がと思いきや、何者かになりたくてもがいてもがいた僕と、同期の尚人のふたりの道行きがすこし明るんで見えるからなのと、両方の意味かなと思った。もがいてもがいてのところ、激しく共感してしまった。もうだいぶ年代はズレた身だけどそれでも。◆大切な人は、いつも突然いなくなる。でも実は「突然」でもなんでもなくて、きっと行動や表情には見えない心の機微が積み重なって、「突然」のように見えているだけなんだ。それに気付けなかった僕にこそ、問題があった。(p.204)
| 発売日 : |
佐久間さんを知ったのはシーソーブックスがきっかけ。ただ、著書を読んだこともなく、社会運動にも参加しないですごしてきた身には、距離を感じてしまい、けれどそれでいいのだろうか、まずは知るところから始めようと手に取った一冊。Sakumag Collectiveに集うさまざまなバックグラウンドを持つ方たちによるAct。◆何もしていなくても、自分だけは自分のことを尊重してあげたいと思うようになった。（略）無理して何かになろうとしなくても、私は私ってだけで最高なんだ (p.31)◆無限の経済成長の裏側で、見えない誰かにしわ寄せを押しつけていいのか。 p.47◆素朴に日々を暮らす人たちを踏みつけにするような判断には「おかしい」と言っていい。政治は他でもない、私たちのものなのだから p.53◆「"私なんて"は絶対にない。あなたの場所からしか見えないものがある」 p.73◆あたりの言葉が響いてきた。そして。まずはSakumagニュースレターをとるところからはじめてみようかな。
 | 太田出版 発売日 : 2009-05-20 |
昔のPerfumeがポリリズム出した頃のクイック・ジャパン読んでたら、衿沢世衣子「天心モナカ」第9話てのが載ってて、調べたら、その連載をまとめたものが改名されて、この本になったと知り、購入。女子高生のよしなしごとをつづった群像もの。のちの「1年1組うちのクラスの女子がヤバい」から、男子高校生と無用力（超能力だけれどだいたいは無用な能力）の設定を引いたら、「シンプルノットローファー」になるなあと思った。いわば原形。食費を削ってでも映画がみたくて、カリグラフィーが上手な子。電気工作全般が得意で、電気工事屋の助っ人までつとめる子。歌手をめざす子。茶道にこだわる子。写真で日々を残したい子。ブログの更新にハマってる子。さまざまな個性がからみあい、気持ちをぶつけあったりして過ぎゆく日々。巻末の生徒一覧と本編行ったり来たりしながら読むとより味わいまします。
 | 講談社 発売日 : 2014-06-23 |
台湾公演編がよかったなあ。日本からもヅカオタが大挙おしかけ、普段の公演でも会うともだちと普通にすれちがって「日比谷か！」てコマも。ああ日本帰りたくない、と思ってたのに、日本での次の公演のことを思いだしてツヤツヤしながら「帰ろう！」というコマ好きです。◆ヅカオタにとって宝塚以外の舞台は「外部の舞台」。宝塚の舞台は身内感覚でなんとなく当事者感覚で観劇してるから、外部の舞台はゆったりと観客に徹することができるのだとか。すごい世界観だなあ、と。◆ゆきちゃんはほんとに壱城さんを中心に物事を考えているんだねー、というパートナーのひとこと、COMMENTARYの「いよいよだな」：ヅカオタが症状を悪化させるたびに家族や友人にかけられる言葉。わりと頻繁に言われる。…がツボでした。
 | 新潮社 発売日 : 1960-06-28 |
小玉武「評伝開高健」（ちくま文庫）読了を機に手に取り。【パニック】ネズミが発端のパンデミックの兆しに、先駆者として気づいて対策を低減するも、無責任に楽観な上層部に無視され、いざパンデミックになると対策に辣腕をふるわれ、そして上層部に政治的な生贄にされた主人公。最後のひとことが効いてくる…「やっぱり人間の群れにもどるよりしかたないじゃないか」。そして50年以上たっても、パンデミックの当初は無責任に楽観的だった令和の日本の政治家に思いを馳せる。【巨人と玩具】キャラメルが全国的に売れなくなって、そのトップ3社が広告戦争をくりひろげる狂想曲…「子供の夢のために大人は眠れなくなったのだ」。そのうちの一社の広告部員、広告課長と抜擢されたモデル、当初の力関係がガラリとかわり、最後には…と。【裸の王様】画塾を営む主人公に友人からまわされてきたのは、表情・意欲がとぼしく殻にとじこもり決して人を書こうとしない絵具会社社長の御曹司の太郎。注意深く観察し、対応していくうちにだんだんと生気をとりもどしていく太郎。絵を媒介とした情操教育のひとつの成功例として。太郎ののびのびとした絵を、社長主催の展覧会にだまって持ち込んで種明かしをした時の凡百の評論家たちの鼻をあかせた痛快さ。【流亡記】中国は春秋戦国時代から始皇帝の秦帝国の時期のある都市、最初は次々とやってくる将軍たちに蹂躙され、秦の統一がなり束の間の穏やかさを過ごしたかと思いきや突如始まる長城や宮殿建設のための徴発・苛斂誅求。もう誰も逃れられない、誰を上に戴いてももはや始皇帝的な支配から逃れることはできないという諦念が哀しく。
 | 発売日 : 2012-09-27 |
木田金次郎をモデルにした人物木本と作者の対話、といった予備知識で手にとる。最初に絵を持ち込まれて評価し、しかし木本は故郷岩内にかえり漁師として十年過ごし、その後また作者に絵と手紙を送ってきた。その時の手紙から作者が木本の厳しい生活を想像し、「君よ春が来るのだ。冬の後には春が来るのだ。君の上にも確かに、正しく、力強く、永久の春がほほえめよかし…僕はただそう心から祈る」と励ますかのような一文で締めくくられる。描かれる木本の生活は厳しく…「人間というものは、生きるためには、いやでも死のそば近くまで行かなければならないのだ」。しかし、自然を目の前にして、筆をとり絵を描く瞬間は何者にも替え難く。これからも絵筆を取り続けることを感じさせつつ。
 | 講談社 発売日 : 2023-02-13 |
この巻は、園山刑事が顕定の父が見山にまで辿りついてたこと、しかしその後のなり行きを黙秘してたこと。顕定の倉田屋出てく宣言から元に戻るまで。といったところ。
 | KADOKAWA 発売日 : 2022-05-20 |
祖父の残したレコードに込められた思い。禁制のスタッグスのレコードを探し求める少女。そのスタッグスが滞在先のフィリピンでギター勝負を挑まれ。船に放送機材を積んで公式以外の音楽をかける海賊ラジオ。田舎町のダイナーを守るかのようにやってきたアンドロイド（ちょっと芦奈野ひとし「ヨコハマ買い出し紀行」思い出した）。レコードを、音楽をめぐる連作短編集。タワレコで見かけたのを機に読んでみたくなり。味わい深くてこれはいい！とおもえた一冊。
2023年02月03日
2023年01月に読んだ本
0101・國分功一郎 暇と退屈の倫理学 新潮文庫 20221129
0103・恩田陸 夜のピクニック 20221202
0103・ユリイカ 特集:空中庭園 20221208着
0104・青木康征 コロンブス 中公新書 図書館 20221228受領
0105・岩波講座世界歴史(第三版)07 東アジアの展開 図書館 20230105受領
(1)舩田善之 キタイ・タングト・ジュルチェン・モンゴル―覇権の遷移とその構造
(2)山崎覚士 「五代十国」という時代
(3)渡辺健哉 元の大都―元朝の中国統治
(4)舩田善之 パスパ文字とその史資料
0105・阿川佐和子 檀ふみ ああいえばこう食う 20221229
0107・澁澤龍彦 オブジェをもとめて シャンティブックス 20221210
0107・岩波講座世界歴史(第三版)09ヨーロッパと西アジアの変容 図書館20230107受領
(1)黒田祐我 レコンキスタの実像
(2)佐々木博光 中世のユダヤ人
(3)小澤実 異文化の交差点としての北欧(一部)
(4)五十嵐大介 西アジアの軍人奴隷政権
(5)巻頭の「展望」(一部)
0108・三浦伸昭 黒南風のうた 蜷川道す標と長宗我部元親 kindle 20230103
0108・角幡唯介 探検家とペネロペちゃん 幻冬舎文庫 20230103
0109・ミシェル・ルケーヌ コロンブス 聖者か、破壊者か 「知の再発見」双書21 図書館 20230108受領
0109・ヘルマン・ヘッセ デミアン シャンティブックス 20221210
0110・高野 麻衣 F ショパンとリスト (集英社文庫) 20230102
0111・【再読】島田潤一郎 本屋さんしか行きたいところがなかった 岬書店
0112・たかのてるこ ジプシーにようこそ! 旅バカOL、会社卒業を決めた旅 (幻冬舎文庫) 20230102
0113・【再読】三浦しをん極め道 20230104発注0111受領
0114・中野美代子 西遊記XYZ 講談社選書メチエ 図書館 20230111受領
(0114・舞子さんちのまかないさん 22
(0114・田村由美 ミステリと言う勿れ 12
(0114・丹羽庭 生きてるうちに推してくれ 1
0114・管啓次郎 斜線の旅 …フィジーの夕方、ヌクアロファのみ20221115読了 図書館 20230107受領
0115・おばけ3号 話し上手さんが考えていること kindle 20230103
(0115・丹羽庭 トクサツガガガ 1-4
(0115・松本ひで吉 なんもなかった その1 kindle 20230115
0116・梨木香歩 渡りの足跡 20230102
0117・季刊Panoramic Mag. is vol.71 特集・失われた書物 ポーラ文化研究所(1996-03-10) 20230108発注0112着
0118・垣根涼介 光秀の定理 20230102
(0118・佐藤二葉 アンナ・コムネナ3 kindle 20230118
0119・【再読】澁澤幸子 イスタンブール時はゆるやかに 20230102
0119・秦建日子 愛娘にさよならを---刑事 雪平夏見(河出文庫) 20230102
(0120・【再読】星里もちる りびんぐゲーム1-10 20230113発注0118受領
0121・トルストイ イワン・イリイチの死／クロイツェル・ソナタ 図書館 20230118受領 …クロイツェル・ソナタのみ読了
(0121・アサギユメ アタマの中のアレを食べたい 5
(0122・丹羽庭 トクサツガガガ 5-8
(0122・ナガノ ねこくま、めしくま booklab 20230122
0122・塩谷舞 ここじゃない世界に行きたかった 20230102
(0123・オルタナ旧市街 往還 シーソーブックス 20230122
0125・【再読】中野美代子 敦煌ものがたり 中公文庫 20230103
0125・たかのてるこ キューバでアミーゴ 20230104発注0111受領
0126・こだま ずっとおしまいの地 20230102
0126・梨木香歩 f植物園の巣穴 20230102
(0126・閑吟集 図書館 …一部（一期は夢よ、前後）のみ
(0126・ネルヴァル ネルヴァル全集3 東方の幻 図書館20230126受領 …コンスタンティノープル部分のみ(p.376-434,p.532-546) …「イスタンブール、時はゆるやかに」つながり
(0128・モブ子の恋15
0128・【再読】管啓次郎 本は読めないものだから心配するな (ちくま文庫) 20230102
(0128・松本ひで吉 何もなかった2 kindle
(0129 丹羽庭 トクサツガガガ 9-13
0129・季刊黒猫 2022夏 20230115 フリーマーケットatトオンカフェ …0128半分熟読！0129もう半分熟読
0130・アガサ・クリスティ オリエント急行の殺人 20230103
(0130・鳥辺茜 Kitatrip 09
0103・恩田陸 夜のピクニック 20221202
0103・ユリイカ 特集:空中庭園 20221208着
0104・青木康征 コロンブス 中公新書 図書館 20221228受領
0105・岩波講座世界歴史(第三版)07 東アジアの展開 図書館 20230105受領
(1)舩田善之 キタイ・タングト・ジュルチェン・モンゴル―覇権の遷移とその構造
(2)山崎覚士 「五代十国」という時代
(3)渡辺健哉 元の大都―元朝の中国統治
(4)舩田善之 パスパ文字とその史資料
0105・阿川佐和子 檀ふみ ああいえばこう食う 20221229
0107・澁澤龍彦 オブジェをもとめて シャンティブックス 20221210
0107・岩波講座世界歴史(第三版)09ヨーロッパと西アジアの変容 図書館20230107受領
(1)黒田祐我 レコンキスタの実像
(2)佐々木博光 中世のユダヤ人
(3)小澤実 異文化の交差点としての北欧(一部)
(4)五十嵐大介 西アジアの軍人奴隷政権
(5)巻頭の「展望」(一部)
0108・三浦伸昭 黒南風のうた 蜷川道す標と長宗我部元親 kindle 20230103
0108・角幡唯介 探検家とペネロペちゃん 幻冬舎文庫 20230103
0109・ミシェル・ルケーヌ コロンブス 聖者か、破壊者か 「知の再発見」双書21 図書館 20230108受領
0109・ヘルマン・ヘッセ デミアン シャンティブックス 20221210
0110・高野 麻衣 F ショパンとリスト (集英社文庫) 20230102
0111・【再読】島田潤一郎 本屋さんしか行きたいところがなかった 岬書店
0112・たかのてるこ ジプシーにようこそ! 旅バカOL、会社卒業を決めた旅 (幻冬舎文庫) 20230102
0113・【再読】三浦しをん極め道 20230104発注0111受領
0114・中野美代子 西遊記XYZ 講談社選書メチエ 図書館 20230111受領
(0114・舞子さんちのまかないさん 22
(0114・田村由美 ミステリと言う勿れ 12
(0114・丹羽庭 生きてるうちに推してくれ 1
0114・管啓次郎 斜線の旅 …フィジーの夕方、ヌクアロファのみ20221115読了 図書館 20230107受領
0115・おばけ3号 話し上手さんが考えていること kindle 20230103
(0115・丹羽庭 トクサツガガガ 1-4
(0115・松本ひで吉 なんもなかった その1 kindle 20230115
0116・梨木香歩 渡りの足跡 20230102
0117・季刊Panoramic Mag. is vol.71 特集・失われた書物 ポーラ文化研究所(1996-03-10) 20230108発注0112着
0118・垣根涼介 光秀の定理 20230102
(0118・佐藤二葉 アンナ・コムネナ3 kindle 20230118
0119・【再読】澁澤幸子 イスタンブール時はゆるやかに 20230102
0119・秦建日子 愛娘にさよならを---刑事 雪平夏見(河出文庫) 20230102
(0120・【再読】星里もちる りびんぐゲーム1-10 20230113発注0118受領
0121・トルストイ イワン・イリイチの死／クロイツェル・ソナタ 図書館 20230118受領 …クロイツェル・ソナタのみ読了
(0121・アサギユメ アタマの中のアレを食べたい 5
(0122・丹羽庭 トクサツガガガ 5-8
(0122・ナガノ ねこくま、めしくま booklab 20230122
0122・塩谷舞 ここじゃない世界に行きたかった 20230102
(0123・オルタナ旧市街 往還 シーソーブックス 20230122
0125・【再読】中野美代子 敦煌ものがたり 中公文庫 20230103
0125・たかのてるこ キューバでアミーゴ 20230104発注0111受領
0126・こだま ずっとおしまいの地 20230102
0126・梨木香歩 f植物園の巣穴 20230102
(0126・閑吟集 図書館 …一部（一期は夢よ、前後）のみ
(0126・ネルヴァル ネルヴァル全集3 東方の幻 図書館20230126受領 …コンスタンティノープル部分のみ(p.376-434,p.532-546) …「イスタンブール、時はゆるやかに」つながり
(0128・モブ子の恋15
0128・【再読】管啓次郎 本は読めないものだから心配するな (ちくま文庫) 20230102
(0128・松本ひで吉 何もなかった2 kindle
(0129 丹羽庭 トクサツガガガ 9-13
0129・季刊黒猫 2022夏 20230115 フリーマーケットatトオンカフェ …0128半分熟読！0129もう半分熟読
0130・アガサ・クリスティ オリエント急行の殺人 20230103
(0130・鳥辺茜 Kitatrip 09
 | 新潮社 発売日 : 2021-12-23 |
あかしゆかさんのnoteきっかけで手に取る。◆読み終えて、自分なりに平たくまとめると、善く生きよ、人生を楽しめ、より善く楽しむために学べ、美術なり映画なり文学なり美食なり気晴らしをより深く楽しむためには深く学ばねばならないのだから、パンのみならずバラも求めよ、といったところか。自分に置き換えてみれば、今の最大の気晴らしは読書とカフェと古本屋めぐりかな。定住革命（日本でいえば縄文）、産業革命から現在に至るまで、暇と退屈がどのように発生し、それにどう対処してきたか丁寧に語り起こしてくれる。その中でも、ダニの例から説き起こされる「環世界Umwelt」という概念。人間にとっては一八分の一秒が感覚の限界である。ということはつまり一八分の一秒という瞬間、「最小の時間の器」、それが連なって人間にとっての時間が出できている(p.308)といったあたりの論点は特に興味深かった。参考文献からは、当時の生活を読者にうまく思い描いてもらうために著者の著者が創作した物語が挿入されてる岡村道雄「日本の歴史01 縄文の生活誌」（講談社学術文庫）2008年は手にとってみたく思った。◆人間と退屈のつきあいは人間の生活様式に関係しているのである。(p.163)◆世界には思考を強いる物や出来事があふれている。楽しむことを学び、思考の強制を体験することで、人はそれを受け取ることができるようになる。<人間であること>を楽しむことで、<動物になること>を待ち構えることができるようになる。(p.409)◆
 | 新潮社 発売日 : 2006-09-07 |
主に、高校3年生の西脇融と甲田貴子の視点で交互に語られる物語。舞台は高校最後の80kmを夜通し歩き続けるイベント歩行祭。2人は初めて同じクラスになったが、融の貴子に向ける視線は厳しく冷たく、貴子はそれを仕方なく思いつつも内心は複雑。二人の関係は徐々に明かされていき…と。二人に相通ずる事情から、それをお互いの親友（忍と美和子）にも打ち明けられず、隠し通してきたが、彼らを見守る級友たちがまた大人でやさしくて彼らに注ぐ愛情があたたかくて。語られなくても、表情や視線、普段のふるまいでわかってしまうもの、理解したいとおもうもの。自分が高校生のとき、そこまで友人のことを見て、慮れていただろうかと思うと全く心もとない。ただ自分が子供で自分にいっぱいいっぱいで気付けなかっただけで、大人な同級生、先輩、後輩はいたんだろうな、と今振り返れば思えるけれども。どうしても「歩く」イベントだと最後は「語る」ことしかやることがなくなる。真っ直ぐに、変化球に、手を変え品を変え、さまざまに語り合うことで変化していく関係、そして誰と語りたいか、どうやって語りかけようかという試み。その穏やかさに波紋を投げかけるジョーカー二人、高見と野球帽の少年は印象に残った。◆みんな、ギラギラしてるからね。僕たちは、内心びくびくしながらもギラギラしてる。これから世界のものを手に入れなきゃいけない一方で、自分の持ってるものを取られたくない。だから、怯えつつも獰猛になってる。p.266◆みんながそれぞれの苦い思いを抱えている。憧れなのか、恋なのか、自尊心なのかと何度も自問自答を繰り返し、それすらも匂わせずに去っていく。p.365
 | 中央公論社 発売日 : |
コロンブスの第一回航海からその死までが描かれ、最後に、第一回航海以前のコロンブスについて語られる。◆コロンブスの事業家、企業家としての側面に光をあて、航海者としての側面はすこしだけ、英雄か大悪人かという判断については全く触れられず。◆船乗りとしての航海技術は一流、壮大な「インディアス事業」を企画し売り込めた起業家としての腕も超一流。しかし、経営者、統治者としては自己の利益にこだわりすぎるあまり、部下や仲間たちにわけ与えること少なすぎ、そのために反乱や悪評をまねき、事業の成功に暗い影をおとしたことがわかった。◆また、なぜ？どうやって？「インディアス事業」を思いついたかは、史料が少なく確定しがたいが、少なくともトスカネリからもらった書簡、という従来最有力視されていたものは否定され、コロンブスより先にインディアスに到達していたという航海士の死の間際に聴いたことが発端という「無名の航海士の新大陸発見説」というのもあるそうだが、客観的事実とするには、残念ながら決定打がない、状況証拠のみとのこと。このへん30年以上経って、研究はすすんだのだろうか。◆王室から援助を引き出しつつも、自分の利益に対しては強気一点張りで協約を結び、最後まで妥協しない、しかし、王室側もだんだんとコロンブスが邪魔になってきて、その政治的綱引きは読む側にもスリリングにつたわってきた。コロンブスを含め、航海者たちの先住民族たちへの理不尽な仕打ちに対しては淡々と記すだけで、価値判断は行なわれていないが。
 | 集英社 発売日 : 2001-06-25 |
(2023.01.05,読了分) 関川夏央「中年シングル生活」で話芸を絶賛してたので手に取り。今となってはちょっと話柄が古いかなと思うところもあるけど、気の置けない女性同士のポンポーンとしたラリーのやり取りはたしかに面白く。寝かしてくれ、の阿川父。阿川の啓蒙活動が行き届きすぎて、下剤のことまで書いちゃう檀ふみ。バカ犬を買った、という阿川父から檀ふみへの伝言。マナー講師兼任でついてきてくれという叔父の欧州旅行で、それ以上言うと屁こきまくってやる！のくだりあたりが面白かった。チェーホフとゴーリキーの往復書簡なんかすごく面白い、と巻末対談の五木寛之。これも面白そう。(2010.12.01読了分)本当に仲がいいんだろうな、と思わせる、丁々発止のやり取りが見ててすがすがしくなってくる往復エッセイ。掛け合いの相方って、なかなか手近に見つからないものだけど。愛だけじゃなく、毒だけじゃなく。
 | 岩波書店 発売日 : 2022-04-30 |
◆(1)山崎覚士 「五代十国」という時代：宋初で「五代」の規定は見られた、「十国」が規定されるのは100年後の欧陽脩の時代。華北王朝の皇帝から見て、皇帝を称さず国主を称する場合、その国の存在は認められた(呉、南漢など基本敵対しつつも国主と称する限り関係は保てた)。特に呉越国王は特別待遇、最上位の位階「真王」、諸国に対する領導、征伐が求められた。五代に天下はなかったように思われることもあるが、当時の天下は万国型天下秩序、「中国」＋諸国という秩序でなりたっていた。「五代は、伝統的天下秩序が維持されつつ、天下外で新たな国家構造を模索する国家・国家秩序が芽生える時期でもあった」(p.198)◆(2)渡辺健哉 元の大都―元朝の中国統治：北京地区が、江南まで領有した形として初めてチャイナプロパーの国都となるのが元の大都。大都は、金・南宋の継承者であることを具現化する空間。前代からの書籍、絵画、礼楽器などを集積、保管。ただ皇帝は常に大都に起居せず、また1357年の紅巾軍の軍隊の展開に際し、元朝政府中枢が大都の放棄に躊躇しなかった→伝統的中華世界の要素とは異なる点。モンゴルは長期にわたる分裂を解消。モンゴルの影響、中華の伝統がどう受け継がれたか、二つの都城の季節移動や科挙の復活、中断、再開などはその良い例に。元の大都＝北京は連続面、断絶を考える格好の舞台。◆(3)舩田善之 キタイ・タングト・ジュルチェン・モンゴル―覇権の遷移とその構造：・各帝国の興亡を気候変動に帰す説、人為的な環境改変（人口移動、都市建設、農地開発）に帰す説がある。・唐とモンゴル帝国との狭間の時代における国際関係を形作ったのはいわゆる「多国体制」、それは王朝間で締結された盟約によって支えられたため「盟約の時代」と呼ばれる。・物資と財貨が南から北へ、という経済構造、農牧接壌地帯に展開する軍事力が北と南を牽制する政治構造は変わることはなかった。・遊牧の必要を超えた長距離かつ広範囲にわたる移動は王族や将軍、その軍団への権威の誇示を目的としていた。◆(4)舩田善之 パスパ文字とその史資料：紹介されてた「古代文字資料館」の充実ぶりが印象に。◆以下の参考文献は手にとってみたいと思った。◆(1)http://kodaimoji.her.jp …吉池孝一「日本のパスパ文字資料目録稿」(2)古松崇志 脩端「辯遼宋金正統」をめぐって - 元代における『遼史』『金史』『宋史』三史編纂の過程 (3)遠藤 総史 未完の「統一」王朝 : 宋朝による天下理念の再構築とその「周辺」( 独自の論理で別の天下秩序構築試みる) 「史学雑誌」126 (6) (4)妹尾達彦東 アジアの複都制(5)舩田善之モンゴル帝国の定住民地域に対する拡大と統治：転機とその背景, 史学研究, 300巻, pp. 1-29
 | 岩波書店 発売日 : 2022-09-01 |
◆(1)黒田祐我 レコンキスタの実像：イスラム勢力の領域を征服したキリスト教勢力が、モスクを教会に転用したか、壊して教会を建て直したかで読み解くレコンキスタ時の両者の関係。イスラムの「寛容」もキリスト教徒の「不寛容」（イスラムの様式の建築の残存状況参照）も従来像からは修正が必要。キリスト教/イスラム教、寛容/不寛容、同化/排除という二項対立を前提にすると歴史の実態見誤る。「暴力と共生、排除と包囲の両面をつねに持ち合わせていたのが、これまで単純に「レコンキスタ」と総称されてきた中世イベリア半島の征服・入植活動の真の実態」p.196◆(2)佐々木博光 中世のユダヤ人：13世紀に緊張高まり、14c末から16c初頭にかけ神聖ローマ帝国諸都市の多くがユダヤ人追放…共生の終焉。その中で反ユダヤ的な説教とユダヤ人への反感を煽る受難劇の果たした役割に注目。◆(3)小澤実 異文化の交差点としての北欧：・「ヴィンランド・サガ」によるヴァイキングのアメリカ渡航は長年疑問視されてきたが、考古学、自然科学の進展で、カナダのニューファンドランド島のランス・オ・メドウズで発見されたヴァイキングの入植遺跡が、1021年に遡ることがわかっている(p.174)。グリーンランド、985年入植、15c放棄。猛禽、シロクマ、セイウチ（の牙-象牙の代用として）が経済リソースとして提供された。王への献上品として。という2つのエピソードが目にとまる。◆(4)五十嵐大介 西アジアの軍人奴隷政権：マムルーク朝は、従来一代貴族性と擬似家族関係を基調とするイスラーム的軍人奴隷制度の特徴が最も国家と政治の諸分野に浸透した王朝とみなされてきた。しかし！(1)カラーウーン家の王朝的支配は100年以上(2)血縁・姻戚関係も併存、時に補完・補強しあう。またマムルーク朝支配を、支配層の民族（トルコ、チェルケス）、支配する家の推移（サーリフ家、カラーウーン家、バルクーク家、カーイトバーイ家）、実力主義か世襲制か（「トルコの法」時代…君主を殺害した人物が君主の座を得る 1250-1310,カラーウーン世襲王朝の時代1310-82,王朝主義と実力主義の時代の混合期1382-1412,「ムルク・アキーム」時代1412-1517…有力マムルークが血縁によらず実力でスルターン位につくのが不文律として確立）で見方が変わってくる、と。◆巻頭の展望からは、「アクコユンルのウズン・ハサンの法が、オスマン朝、サファヴィー朝に受け継がれた」「オスマン朝のみが勝ち残ったことに関しては、「結局のところ（ビザンツ帝国に一番近かった）地政学的状況が決めたという説明しか見当たらない」というエメジェンの結論を、現時点では受け入れざるを得ない(p.74)」という2点が目に止まった。
 | 河出書房新社 発売日 : 2000-09-04 |
箴言集か名文集のようなものかと思って手に取ったら、澁澤龍彦がオブジェに着目して編んだアンソロジーだった。◆藤原節信と能因法師が出会って、片方は鉋屑の一片、もう片方は乾燥した蛙をお互いにみせあって、感じ入って、またそれを懐にしまって別れた、というシーンが個人的にはベスト。（「鉋屑と蛙」）。◆オブジェとしての少女、はオスカー・ワイルド「仮面の真理」に書かれたもので、「インテンションズ」という評論集におさめられてるものらしく、全編読んでみたい。ディドロ「不思議な宝石」からは男女の体温を計って結婚すべきかどうか判断をくだすシーン。これも全編読みたい。◆奇妙な多面体、はヴァレリー「未完の物語」より。あらゆるものに道はあるのだと説く莊子。光厳院が、ともしびは我にむかないし、我もともしびにむかないと歌う一首。マルセル・シュオップの「架空の伝記」。ドイツの君主たちが花々に囲まれて庭園の洞窟の入り口にエオリアン・ハープを置くといったシーンには、どんな妙なる調べがと思いを馳せたくなり。ルーセル「アフリカの印象」に出てくる、刑罰のための避雷針直結のベッドに逍遥として横たわる女性。ボードレール「玩具のいのち」で示される破壊神としての子供。といったあたりが印象に。
 | 白泉社 発売日 : 2023-01-04 |
名取の年下のいとこを名乗る妖、往年の大女優がひさびさに開いたサロンに巻き込まれて参加することになった夏目たち、レイコのかわりに妖たちの「包み比べ」に参加することになった夏目の3本だて。田沼が寺の子としての冷静な観点を見せたり、夏目がレイコに変装して妖の願いを叶えてやろうとして、ノリノリで犬の会大活躍などいろいろ見どころ。
 | 幻冬舎 発売日 : 2019-10-24 |
前半読み終えて、「子供ができておれの人生激変」「俺の娘は純粋に客観的かつ公平的基準からみて超絶かわいい」（最後のほうで8割冗談とはいうものの…）の2行にまとめられると思った。その後、父からみた娘への思い、娘との関係性、娘の自我の成長、親の愛とはいったい？などが語られ。世の子育てエッセイと違う特色といえば、探検家ってもっと豪快で無頼だよね、という他者からのイメージへの対応、逆におれは探検家だからそんな市民的感覚なことは、というこだわりの熔解、といったあたりだろうか。個人的には、正月に読んだばかりの國分功一郎「暇と退屈の倫理学」で出てきたユクスキュルの「環世界」の概念とマダニの話にここでもでくわしたので、勝手にシンクロニシティかんじてます。娘かわいさに、グリーンランドの僻遠の地でスカイプやりすぎて、22万の請求が来たエピソードが好きです。同じくグリーンランドから電話した時、ユウスケがサラリーマンになるって選択肢もあるかな、と奥さんが言って、ピーンチとなったシーンも印象に。
 | 青土社 294ページ 発売日 : 1996-04-01 |
お目当てだった、建造物としての空中庭園はわずか、文学上の空中庭園／架空庭園にも手を伸ばし、それでもネタが足りず、庭／園にまで範囲を広げた感。◆「空中庭園のためのスケッチ、若干」の、"空中庭園という言葉そのものがコンフリクトな（矛盾撞着的な、違和相剋的な）言葉であり概念" 「空中-垂直、上昇・下降」「庭園-水平、平行移動」といった対比に興味をひかれ。◆澁澤龍彦「バビロンの架空園」の、1899年の発掘で架空園の実在も証明され、今は廃墟となった架空園の位置、減築プラン、大きさも確認された、といったあたりが、最近の山田重郎《世界史リブレット人》 003.ネブカドネザル2世 山川出版社 とは一致しなくて、はて、どちらが、という心持ちに。ただ、澁澤氏はネブカドネザル二世建造説が強いが、セミラミス建造派も、、、と言っているので気にはしないかもだけど。ただ、それでも空中庭園に興味をもつきっかけになったこの一編のエッセイは色あせない◆原研二「陰鬱なサルタンの庭園」では、サロモン・ド・コーの架-空テラス庭園というのが軽くとりあげられ、詳細は「グロテスクの歴史」を参照とのこと。こちらも興味深い。"「文字のハーレム」（ベンヤミン）、それは例えば「空懸かる庭園」という詩の中でシュテファン・ゲオルゲが遊び耽ったオリエンタリズムのパスティーシュ（文言のなぞり）である"(p.174)という一節の魅惑。◆岡部慎一郎「爆発を続ける庭園-シェーンベルクのゲオルゲ歌曲集<空中庭園の書>」や、小沼純一 「「音楽の庭」へ」では、シェーンベルクの「架空庭園の書」にはじまり、武満徹「鳥は星型の庭に降りる」までさまざまな「庭／園」を題材にした音楽が語られる。◆変わり種で面白かったのは、許光俊「庭園料理ア・ラ・シュヴァル--ピエール・ガニェールのムニュ・ド・ジェオグラフィ」。郵便配達夫シュヴァルの理想宮とアヴァンギャルドなフレンチをだす料理人ガニェールのレストランを一日ではしごした個人的体験から、両者を対比させるエッセイ。奇抜な料理、空間、こだわりと理想宮の対比という意外性が個人的におもしろかった。
 | 三浦伸昭 発売日 : 2014-01-26 |
蜷川道標という人物を主軸に据えた所が面白かった。「いろはの会」という当時の文化人が日本文化を守ろうとしたサークルに属しつつ、足利幕府の吏僚から客分として長宗我部元親の連歌の師匠となって土佐に移り、文化顧問、教育顧問のような立場から、法律の制定など内政にも力をふるい、外交使節としても活躍、浦戸一揆の鎮圧にも一役買い、長宗我部盛親が大阪入城する際の仕掛けも生前に施していた、という大車輪の活躍を見せた、というストーリー。長宗我部元親は、外交や調略に強く、領民を愛し愛され、文化政策に理解を示しつつも、国を治めるためなら酷薄な仕打ちも辞さない君主として描かれていた。最後は、夢を持ち続けさせる長宗我部家と、民は愚昧なままにし、無能な官僚だけで国が回る仕組みを、という徳川家康の考えの対立、といった形が描かれる。久武親直は、長宗我部家や当主には忠実で善意の人だが、正論を杓子定規に振り回しすぎたばかりに、家の方向を誤らせた人として描かれていた。
 | 創元社 発売日 : 1992-10-20 |
青木康征「コロンブス」（中公新書）を読んで、もう一冊概説を読んでみたくなり。とにかく図版が豊富。コロンブスの25歳まではやはり諸説あり謎に包まれてる印象。◆カトリック両王がコロンブスの計画を否決したのを、熱弁をふるって翻意させたのはサンタンヘルだが、なぜかディエゴ・デ・デサのおかげで計画が受け入れられたとコロンブスが書き残してるのは謎。◆ラス・カサスが、「提督は、まるでポケットに鍵を持っていたかのように、自分のインディアス発見を革新していた」というあたりは共通。◆コロンブスは大汗宛のカトリック両王の親書を携えていたのに船には安物が満載…コロンブスの目的は伝説上の島々だけで、その他のことは支援者を釣る餌だったとしばしば言われる…とあるが、各種の権益へのこだわりからするとそれはどうだろうか。◆航海を禁じられた1501年、「予言の書」編集という一見奇異に思える活動に1年間を費やした、というのは興味深い(p.119-120あたり)。◆末尾は、超人でも聖者でもなく一個の冒険者だった、その偉大さのためにあくどさが帳消しにならないまでも、と。
 | 新潮社 発売日 : 1951-12-04 |
ヘッセと言えば、「ノルウェイの森」の影響で大昔に「車輪の下」読んで以来。デミアンは、主人公のシンクレールに大きな影響を与えた友人。裕福な環境に育ったデミアンは、不良な友人に気に入られたようと自分がついた嘘が原因で以降脅迫されるようになり…そこで救いの光となったのがデミアン。けれど、その後まっすぐと二人が友人になって友情物語を育むといった直線的な話ではなく、明暗二つの道を行きつ戻りつしつつ、シンクレールが一方的に恋慕するベアトリーチェ、シンクレールを崇拝する後輩、哲学的に語り合えるオルガン奏者、そして人生の折々に邂逅するデミアン、大きな愛で包み込んでくれるエヴァ夫人との対話の中から、自らの魂のありよう、真の人生とは、どこへ向かうのか、といったことをもがきつつ、つかんでいく物語。最初は、カインとアベルの物語の見方を変えてみることだったのが、段々と明暗、善悪の境目、価値観がゆさぶられ。自我の確立と世界との接続のせめぎあい。自らの魂が欲するところを知り、知るべきことはきっと経験するのだと思い極める。ただ、嗚呼、ピストーリウスの弱点は己の弱点でもある、という思いを拭い去れず。また、それでよしとする己もいる、といった読後感。
 | 集英社 発売日 : 2022-06-17 |
太陽と月だったなあ。ギラギラとまっすぐに自信満々に照りつけてくるリスト。どこか翳を宿しつつも光輝くショパンといったところか。この作品の中では。ショパンとリスト、どちらも聴いたことはあったが、直接の交流があったとは知らなかった。もちろんだいぶ脚色されてるだろうけど。ちょうどクラシック音楽が王侯貴族のものから市民のものへ、何人もの音楽家が入れ替わり立ち替わりのコンサートから、ひとりの音楽家が演奏するリサイタルへという過渡期。音楽のことだけで生きられたらいい、自分たちの音楽は世界を変えられると意気込むが、なかなか思うままにいかぬ二人。リストがふみこんでいき、ためらいながらもそれを受け止めるショパン。音楽のことで意気投合し語り合うふたりのシーンは読んでてぐっときました。ふたりがぶつかる原因となった、ショパンが抱えていた秘密は、昔から語られている俗説なのか、まったくの脚色なのかはわからないけれども。読み終えて、無性に二人の音楽が、特にピアノ曲が聴きたくなる一冊でした。◆作中出てきたZalというポーランド語。悲しみ、が近いのかもしれませんが、それだけじゃない、悔恨や、憎しみや、懐かしさ---いろいろな感情が混ざった、ポーランドだけの言葉です、とあったけど、ポルトガル語のサウダージとも通ずるのだろうか。◆「仕事は仕事。弾薬は心に秘めて、病者を装え」
同じ著者の「あしたから出版社」を読んだのを機に再読。◆なぜだろう。前回読んだ時はタイトルのもとになったと思われる箇所を読み逃していた。本屋さんのある場所がぼくにとって町の中心でありゴール、いい本屋さんがある町がいい町、いい本屋ない町はパッとしない町、本屋さんがない町はぼくが行かない町。「本屋さんしか行きたいとこがない」というのはつまりそういうことだ」といった趣旨のことを。今回はパッと目に飛び込んできた。◆個人の感じたことを大切に。本の声は小さい、で？なにがいいたいの？という姿勢では一冊の本から何も学べない。ぼくの好きな本は、おしなべてこういうことを言う。人間は誤る。気をつけろ。過信をするな。といったあたりが今回は印象に。そして刷り部数100部、原価10000円の自費本を出した話も。◆「日本のZINEについて知ってることすべて」（誠文堂新光社）、峠恵子「冒険歌手」あたりは手に取りたくなった。前回も気になった「誰が音楽をタダにした？」はなおさら。そして、島田潤一郎「古くて新しい仕事」も。
 | 幻冬舎 発売日 : 2013-07-05 |
映画で観たジプシーに惹かれ、ルーマニアに勇躍のりこんだたかのさんだが、さすがのたかのさんも言葉が通じないからか、初手からぼったくられる、くすねられる、たかられる、襲いかかられると散々な出だし。けれど、リバーナの家での滞在とカティのとこでのホームステイはほんとにgoodな体験だったように見えた。オープンに迎え入れてくれて、自己肯定感が高くて、ときにこってりした好意や要求を押し通すところに辟易することはあっても、底抜けに明るく、自分たちのやり方をとおす、”ジプシーはいつだって「今、このとき」がすべてなのだ。”といったジプシーたちが好きになり、愛着をもっていく過程が描かれる。それは彼女の深いところに根をおろし、結局は会社を辞め、旅人一本で行きていく後押しをすることでもあった、と。
 | 光文社 発売日 : 2007-06-01 |
ひさびさの再読。まさかタイトルが、JRのY線でよく話しかけられたりお見かけしたりするその筋の人たちから来てたとは…オタクの道を極めたから極め道とか勝手に思ってました。どこで記憶がすりかわったのか。大学卒業の前後で、就職が決まらなくてバイト生活で、漫画読んでお酒飲んでと自堕落だけど楽しげな生活をハイテンションで怒涛の筆致で語るエッセイ。最初の本を出したとき、もし万が一K談社から原稿依頼が来たら？と聞かれ、そんなビッグになるわけもないけど、もし来たら断る、とあり、今となってはまさかまさかの直木賞とって数々の映画化作品をかかえ気がつけば直木賞選考委員にまでなってるのに、調べてみたら現在K談社からは小説、エッセイの単行本は出してないとお見受けされる（調べのがしてたら教えてほしい）。これは依頼がなかったのか断ったのか？！◆日が昇り始めた宝塚劇場に到着、ひさびさに二ノ宮知子「平成よっぱらい研究所」読みました、それぞれがリットル単位でビールを飲むなんて牛か私たちは、授業中大学の友人Y君に「ねえ胸毛ある」？と聞いたらガバッとシャツをめくって見せてくれたけど毛なかった、てあたりのエピソードが好きでした。◆最初の本が出た時のおばさんの歩く広告塔ぶりも必見です！（本をみせながら銀ブラ、本をみせながら地下鉄の最後尾から最前列まで闊歩）◆清水玲子「22XX」「MAGIC」ともに白泉社、藤田貴美「SHIMAVARA」は読んでみたくなりました。
 | インスクリプト 発売日 : 2009-12-01 |
いったいこれまでこの作者は、どの順番でどれだけのところに住んだんだろう。アメリカ本土、ハワイ、ブラジル、ニュージーランドまではわかったけれど。フィジー、トンガ、青森、武漢、アメリカなどが舞台の紀行。観念的な旅しかできず、観光的なものは見逃してるところもあるかもしれないが、と語るが、そこに住み、あるいは何日か滞在し、都市にふれ、人にふれていくことでわきあがる思索を追っていくような旅。タイトルは、ガンジーを念頭に、インドで生まれ、イギリスに留学し、インドで高給の弁護士だったのに、それをなげうって南アフリカの砂糖労働者救済のために南東に、世界地図でいうと斜線を描いて移動したことから取られている。(そんな風にかけ離れた土地が誰かの生涯において突然に、長い斜線を引くようにして結びつけられることには、どこか人を魅了するものがある。(p.14))◆トンガで印象深いもの「お墓」「よろず屋」「野良豚」「みんなの体格のよさ」「町中のタパを打つ音」（洗濯のため）「オムライス」といったあたり、「青森ノート」の移動と光の加減が特に個人的には印象に。◆また、”「美術ってて何か役に立つんですかあ」と何の屈託もなく口走る学生たち”に何度でも言う言葉(p.202-203のあたり)、"現代日本には、誰もが誰を相手にしても対等の立場で話をしていいしたとえ未知の相手であってすら必ず言葉を交わすべきだという原則が、完全に欠落している。"というp.132の前後あたり、"一貫性が一日のうちですらたやすくとぎれ、すべてが並列される。価値の位階が崩れ、自分自身が何か索引のようなものになってしまう。"ではじまる p.260-261のあたりが特にぐっときました。◆リー・フリードランダーの砂漠写真、ウーヴェ・オマー「トランジット-1424日世界一周」も観てみたい思いに。
 | 講談社 発売日 : 2009-12-11 |
「孫悟空の誕生」「西遊記の秘密」「孫悟空はサルかな？」と読んできた身には重複が多いなあという感じ。ただ、「西遊記」全巻の訳業を終えて、また見方が変わってきたという趣旨の一文を読んだのでそれに触れてみたくて手に取る。ざっくりいうと、1.「西遊記」の作者は呉承恩にあらず、匿名の複数名の道士たち、あるいは煉丹術師たちの頭脳集団 2.「西遊記」の冗長な詩詞は音通字（同音異義字）に読み替えると隠された意図が明らかに 3.「西遊記」の冗長な詩詞は「西遊記」が百科全書をめざしたもの といったところか。ただ、読み替えに関しては、面白いけれど論証はできないよなあ、とは思った。ものすごい数の解釈の幅がありそうで。◆明刊本における「受難詩」を検証、このモチーフがほかのエピソードに巧みに「もぐりこみ」、多彩な「入れ子」を形成、、これまた「西遊記」という建築的な世界をデザインするうえでの、あの「シンメトリーの原理」に匹敵する戦略(p.219より)といった論点も興味深し。◆仏教的世界観を解体し、それを解体したとわからないようにしたのは誰か？道士たちないしは煉丹術師たちによる匿名の頭脳集団と仮定し、明刊本「西遊記」を最終的に集大成するにあたっての「組み立て工事」の作業手順を、仮説的に再構成(p.54より）したのが「西遊記--トリックワールド探訪」(岩波新書) �� 組み立て工事 のようなので読んでみたい◆列挙、日本ふうにいえば「ものづくし」についての分析→ジャクリーヌ・ピジョー「物尽し—日本的レトリックの伝統」も手に取りたい。
 | 小学館 発売日 : 2023-01-12 |
視えてるけれど何もできない地下アイドルと、視えないけれど祓うことはできるらしい坊主がタッグを組んで！という珍道中。イヤイヤながらも祓い屋業をやる中で、アイドルとして大切なことを少しずつ学んでいくのが吉というか。お坊さんの方は清々しいまでの資本主義。口がうまくて顧客対応がなめらかなのが救い。そして祓う方法は「霊の話しをよく聞き、言い分をできるだけかなえる」というオーソドックス、面白い。
 | 小学館 発売日 : 2023-01-10 |
ながいながい事件かもしれないお話の一端。風呂光刑事の祖母が、教え子が死んで事故と片付けられたが殺されたと思う、という電話から幕が開け。舞台は富山。否応なしに巻き込まれる、巻き込まれ続ける整。情報収集から祖父に進学を反対されている孫娘の援護射撃まで。何かを察したのか途中で整を解放する風呂光。偶然が続いたような出会いが、なにやら意味ありげに思えてきて、といったところまで。
 | 小学館 発売日 : 2023-01-12 |
百花もキヨも健太も思いは抱えつつ淡々と日々を。青森の祖母から唐揚げのコツを習ったり、百子姉さんの気迫の踊りに「残されたもんには責任があります。残されたものはすごないといけない」と言う言葉を投げかけたり、修学旅行生が自分の店をわざわざ目指してきてくれたことに感じた意気など。めがねさん姉さんの失敗のデパートが後輩を守るための盾になっていたり、市を去っていく娘の物語、去られる側の物語。次巻は、市のお母さんと百子の昔の物語が語られる予告。
 | KADOKAWA 発売日 : 2020-12-10 |
ふんわりした契約書を交わすとうちにやってきてくれるおばけ。今回のクライアントは、仕事も恋も上手くいかないと考えてる20代OLと、30代の専業主婦。おばけとの軽口や、いろんな人と会って言葉を交わすストーリー仕立てで、箇条書きにされてもきっとすんなりとは入ってこないであろう、会話のコツ、考え方のコツをやわらかく教えてくれる。◆相手と会話の「軸」や「単位」を合わせること◆相手の言った「本人を飾る言葉」より「相手の求める情報」や「相手が過ごす言語圏」を頼りにすること◆言葉の毒は解毒されるまで、本人の行動を制限するし、思考も邪魔する→自分なりの解毒の儀式を◆生半可なアドバイスは凶器にもなる、まずは信頼関係が必要◆といったあたりはしみました。
なんもなかった…というが子豚カフェで子豚にぜんぜんなつかれなかったエピソード、笑ってしまった。そんなにエサやった時だけ群がられ、それ以外は全員他の客のとこにいっちゃうとは。あとは、一カ月ぶりの実家で甘えてくる犬ばかりなでててたら、猫が渾身の「ニャーーー！！！」で俺もかまえ、を要求してきたり、旦那さんが爬虫類大苦手だったのに、留守番中トカゲの餌やり頼んでかえってきたら、めっちゃ仲良くなってたエピソードとか好きでした。
 | 小学館 発売日 : 2014-11-28 |
1-4巻読了。会社では特撮オタクであることをひた隠しに隠しているため、時に挙動不審、時につきあいのものすごくあ悪い人と思われてしまう20代OL仲村さん。そんな彼女の言えないがゆえのトホホ話から、列車で同じになった女性が、まさかの好きな特撮番組のキャラをつけてるのを観て声をかけ、オタ友達ができて…そこから特撮オタク、アニメオタク、アイドルオタクの仲間の輪がひろがっていき、4巻最後は大団円のカラオケ大会。この先も気になります。仲村さんがつい見てみぬふりしてしまいそうになったり、ずるいことしてしまいそうになった時に、心の中の特撮ヒーローが語りかけてきて、ついつい清く正しく強い行動をとってしまうのもご愛嬌。
 | 新潮社 発売日 : 2013-02-28 |
気合いの入ったバードウォッチャーとしてのエッセイ。「渡りは、一つ一つの個性が目の前に広がる景色と関わりながら自分の進路を切り拓いていく、旅の物語の集合体である。」(p.45) 渡り鳥の足跡や姿、鳴き声、生態などにふれ、その厳しい行動原理を目の当たりにし。また鳥の行動がおかしくなっていること、気象や大気や水の変化を通じて世界がつながっていること、また人の渡り＝移民としての第二次大戦下アメリカの日系人の思い、などが語られ。普段あまり自然にふれない身にもハッとさせられるような視点をくれた。ウラジオストクの森を博物館員と通訳と分け入っていった時のエピソードがユーモラスでよかった。◆「生物は帰りたい場所へ渡る。自分に適した場所。自分を迎えてくれる場所。自分が根を下ろせるかもしれない場所。本来自分が属しているはずの場所。還っていける場所。たとえそこが、今生では行ったはずのない場所であっても。」(p.222)
 | ポーラ文化研究所 72ページ 発売日 : 1996-03-10 |
「アーサー王の死」の写本発見の話、エキサイティングだったなあ。R .M.ウィルソン「中世イングランドの失われた文学」(改訂版1970)、高宮利行「西洋書物学事始め」青土社 1993あたり手にとりたくなった。武田雅哉の「中国書籍のための保管ロッカーとしての日本」という視点もおもしろかった。管啓次郎の巻頭のデラウェア・インディアンの絵文字の話も。また、スタニスワフ・レムが、もう文学でやることがなくなったからと、企みに満ちた「架空の本の序文」「架空の本の書評」を出したことも。若島正の導きにしたがって、ボルヘス「アレフ」も読みたくなる。
 | KADOKAWA 発売日 : 2016-12-22 |
タイトルは「光秀の定理」だが、僧「愚息」と武芸者「新九郎」の目から見た光秀、という色彩のストーリー。「定理」も愚息の定理と言った方がより正確か。愚息が仏典から学んだと称する確率論で必ず最後は勝つ博打を打つ。その定理やいかに？新九郎が、光秀が、光秀の妻が、そして信長が挑む。それは、戦にも民の統治にも応用の効く定理だった、と。そしてまさか最後は安達充「タッチ」方式だったとは。時を経て光秀のことを語り合う愚息と新九郎。何が黒幕説だふざけるな！やつは意志なき操り人形ではない、一個の信念を持った武人だ、唯一の権力者が全てを支配する息苦しい世の中にしないため、この国に住む多くの人たちのために立ち上がったのだ、という感慨を二人はいだき、と。愚息も新九郎も架空の人物だろうけど、釈尊以外は敬わぬ、という無頼の思想、原始仏典の思想、そして確率論を取り入れたこと、他の歴史小説と異なる魅力になっている。◆物事の理は、自分で汗をかき、必死に実感として分からぬ限り、人様から聞いても何も役にたたん。p.164（愚息）◆人とは所詮、自分の得手とすることを通じてしか、賢くなれぬ。また、慶びもない（新九郎）p.178◆「十兵衛、おのれもこの時代に生きる武人なら、その次代の必然を倫理で測っては判断を誤る、と言っておる」p.217(愚息 )◆「人に限らず、万物が無常であるという儚さ、翻って過ぎてしまえば、人の苦悩も一つに過ぎぬという頓悟、さらに言えば、それらの意味での宇宙との一体感…つまりそれが解脱、涅槃の境地ということでござりましょうな」p.365 (愚息)◆あと「閑吟集」を読みたくなった。
 | 星海社 発売日 : 2023-01-18 |
ヨハネスの初陣、アンナ悔しくて変装しこっそり従軍 まさかヨハネスの代わりに矢を受けるとは そしてまさかのシティハンターみたいな助かり方 懐妊、サレルノの女医との出会い、出産と盛りだくさんな3巻。置かれたところで咲きなさい、よりも、得意なことを伸ばすべきのアンナ。我こそは皇帝に相応しいという自負と共に、広く女性のため、国民のための政策をあたためている、という描き方が良き。
 | 河出書房新社 発売日 : 2013-02-05 |
雪平夏見シリーズ第四弾。元夫を亡くし娘と引き離され、刑事から監査室へと異動に。しかし、彼女が一瞬すれちがった男が…。そこから連続殺人事件に。刑事ではなくなった雪平が敢然と捜査に乗り出し…被害者たちのつながりが段々と浮かび上がり。娘のために立ってくれた弁護士の叱咤。犯人を間近に捉えた時の一瞬の逡巡、構えたまま撃てなかった男たちの忸怩、そして娘のもとへと急いだ雪平は関係を取り戻せたのか。
 | 新潮社 発売日 : |
再読。1981、1982、1986、1992年の旅の様子を。さらさらと読めて。最初の訪土で仲良くなったアルパッサンと、トルコ語と日本語を教えあうことにしたり。トルコ人のこぼれんばかりのホスピタリティにふれて、泊めてもらったりごちそうになったり。お誘いには、勘を働かせてか、わたしいきたい、と、やめとくわ、をその都度選択し、けど過度に警戒的にもならず、遺跡や町並みをながめ、トルコの人々と仲良くなり、と。30〜40年ぐらい前の、トルコ。今はだいぶ変わってしまったのだろうか。ネルヴァルの東方紀行、手にとってみたくなった。
再読。何年ぶりかの。連載時、毎週楽しみにしてたなあと。今となっては極端なキャラの極端な行動が目立つけど。ストーリーも突飛で。けど、面白くて好きだったんだよなあ。これが30年前なんだなあというのも感じつつ。ナミフクD Mサービスが立ち退く最後の夜、みんなで会社に泊まったシーンがあたたかくてせつなくてよかった。不破くんいい加減だけどやさしくてよく女の人に好かれてこだわり強くて、いずみちゃんまっすぐで思い込み激しくて時に暴走しちゃうけど、センパイひとすじで。
 | 光文社 発売日 : 2006-10-12 |
(2023/01/21読了分「クロイツェル・ソナタ」)奈倉有里『夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く』に影響されて、クロイツェル・ソナタ読みたい！と思い手に取った一冊。◆電車に乗り合わせた男女が、愛について議論を交わしているところに割り込んできたポズヌィシェフ。一人の男が、電車で、ポズヌィシェフがいかに堕落し放蕩した果てに結婚し妻を殺してしまったか語るのを聴く体で進んでいく小説。当時の道徳観からしても過激だったらしく、一度はロシア国内での出版を禁じられたのこと。19世紀末から見てもそうだったのか、と。ただポズヌィシェフが滔々と語る独特の男女観、結婚観にはときに油断してるとひきずられそうになってこまった。(2019/02/03読了分)バーナード嬢曰く３、スゴ本ブログ、三宅香帆cakes連載と揃い踏みだったので、手に取った一冊。イワン・イリイチの死、のみ読了。/そつなく人生のレールを歩み、高い収入を得て、結婚生活も最初は楽しかったが、行き詰れば、仕事に逃げ込み、たまのホイスト(ブリッジの一種)が楽しみ、社会的地位もそこそこ名声を得られるところまで登り詰めたところで、病気、衰え、死の恐怖。俺の人生はこれでよかったんだろうか？人生誤ったのでは？と言う問いに煩悶し、悶えながら死んでいく、という一幕。高度成長期のサラリーマンみたいな心性て、19世紀ロシアにもあったんだな、と。そして人生がまさに終わりを迎えようとする時の自問は、自分だったらどうだろうという問いを突きつけられた思い。イワンの最期は希望だったのか、まやかしだったのか。
 | 秋田書店 発売日 : 2023-01-20 |
イモムシが杏仁豆腐味、コピ・ルアクを自作（ジャコウネコを2種飼ってる）、土料理フルコース、名古屋といえば喫茶マウンテン、サボテンは先端より根本がおいしい！と今回も盛りだくさんの内容。喫茶マウンテン、愛・地球博で名古屋にいったときに一回行ったっきりで大変堪能したのですが、まだお元気にやっておられるようでよかった。コピ・ルアクを自作デキる家なんてそうそうないですよね、と思った（すごいよ！）。
 | 文藝春秋 発売日 : 2021-02-25 |
異国の地で今までの武器が一つも使えない中、最後に頼りになったのは美意識。エシカル、エコも大事だけどそれを言えるのは恵まれた立場であることもまた忘れずに。「あぁ、本音をインターネットにちゃんと置いておいて、本当に良かった！」という叫び。「最初から頭に情報を与えてしまうと、なにを見ても「情報との答え合わせ」になってしまって」。「努力が実を結ぶのは自分の実力」という考えそのものが、自分がマジョリティ側だからこその特権でもあったのだ。」といったあたりが印象に残る。「ヒルビリー・エレジー」や「13th---憲法修正第13条」、國本怜さんの音楽にもふれてみたいと思った。末尾近くの一文が凛としていて。「世界のどこに行ったって、自分のために用意された理想郷は存在しない。だったら自分でやるしかない。内側の声に、そして地域の声に耳を傾け、自らの手で小さな理想郷をこしらえていく。」(p.266)
 | KADOKAWA 発売日 : 2018-03-24 |
くまのむちゃうま日記大好き勢としては見逃せなかった。ただ、猫:食べる:くらしが2:1:1ぐらいだったのでもすこし「食べる」多かったらなあと。辛子明太子、ビール、すごくしょっぱい鮭をお湯かけたご飯に乗せてなどなど、美味しそうなの伝わってきました。「くらし」には「買ったほうが早インパラ」も登場。この時からいたんだなあと。
 | 小学館 発売日 : 2015-12-28 |
5-8巻読了。板チョコにチョコをかけてどうする。二条城の大広間（約40畳）くらいの広さがあれば。オタクはシームレスに購入に移行する。あたりがツボ。実写とショーの差異をどうとらえどう思い入れるか。みんなで撮影のために海に出かけて、トラブルも楽しんじゃう、社会人になったって時間作ろうぜというエール、あたりのエピソードが印象に。
| 発売日 : |
シーソーブックスのzineのコーナーで、遠目に見てもギラギラとした装丁が目を惹き、トーキョーブンミャクのzineでの文章が好きで、単著の「一般」も購入済のオルタナ旧市街さんだったので、ノータイムでレジに持っていきました。「都市、記憶、いつかどこかで見た光」という冒頭。吉祥寺、水戸、小岩、巣鴨、東京…といった章立て。"街を勝手に定義付けて、あそこはこう、ここはこうと一定の性格を与えすぎるのはよくない"とか、
”よい具合に放っておいてもらえるような喫茶店をいくつか知っておくことは、地震に備えて家具を固定しておくとか食糧を買いためておくこととかと、同じくらい大切な心積もり”といったフレーズに心惹かれ。そしてロイホではホットファッジサンデーですよね！という共感。一時期、弱ってたときには、ホットファッジサンデーを注入して自分に喝を入れてた身には特に。
”よい具合に放っておいてもらえるような喫茶店をいくつか知っておくことは、地震に備えて家具を固定しておくとか食糧を買いためておくこととかと、同じくらい大切な心積もり”といったフレーズに心惹かれ。そしてロイホではホットファッジサンデーですよね！という共感。一時期、弱ってたときには、ホットファッジサンデーを注入して自分に喝を入れてた身には特に。
 | 幻冬舎 発売日 : 2010-07-01 |
ブエナビスタソシアルクラブにやられて勇躍キューバにのりこんだたかのさん。自転車タクシーのアレクシスと、画家ミルトンや女優ミネルバらのアーティスト集団との交流が主に描かれる。アレクシスはディープなキューバを次々と垣間見せてくれるけど、悪気なくタカってくる。最初は憤ってたけど、徐々にあきらめ、そして最後の夜に大奮発してくれてお見送りにもきてくれて、彼に友情を感じてたゆえの切なさと気づき。ミルトンやミネルバたちとはお金の面ではフラットなつきあい。今をたのしく、集うことでお互いインスピレーションが湧き、たあいないおしゃべりから、芸術の話まで幅広く語り合えて、ビニャーレスまで小旅行して無計画と思いきや現地であれよあれよといろいろ調達しちゃうたくましさも。本当に楽しそう、名残惜しそうというのが伝わってきた。興味深かったのは「サンテリア」。もとはナイジェリアのヨルバ族の信じていた神々がルーツで、アフリカの神々の信仰を禁止されていた人々が、カトリックの聖人をアフリカの神々に見立てて祈った、これがカトリックとアフリカの神々のミックス「サンテリア」の始まり、とのこと。実際の儀式なども描かれているが、なかなかに呪術的といいますか。社会主義を標榜しつつ、資本主義国の観光客の落とす金が最大の外貨獲得源、国民の生活はまずしく制約されている、という矛盾にもふれるが、20年以上たった今はどうなっているのだろうか。
 | 太田出版 発売日 : 2020-09-04 |
こだまさんはデビュー作が衝撃作すぎたけど、こちらは三作目。いまだ本人いわく「おしまいの地」にいる作者から語られる過去のこと、今の夫婦親族関係。苦しかったこともやらかしちゃったことも読める形で差し出してくれる語り口が好きだなあ、と思いました。たとえば、夫婦で老舗旅館の宿泊楽しみにしてたのに、こだまさんが予約を間違えてて、その近くのビジネスホテルみたいな宿に泊まることになり、ここを楽しんで失敗をなかったことにしようみたいな手には乗らないから、という夫を横目に、ゴールデンカムイ全冊貸出、ファミコン貸出など次々と楽しみを見つけ、最後は結局夫婦2人で楽しんじゃったエピソードとか。◆「義弟M、妹の伴侶にして私の大学の同期」というパワーワード。ほぼすべての友人・会社関係の社交を断って家へ帰宅、家事・子育てを率先というパパに。自分が紹介したとはいえ、実家帰ると大学の同期がいるってなかなかのインパクト。また”ありったけの「栄光」を詰めて会いに来た両親、過去の傷が癒えない夫、身内に黙って本を出している私。全員まともではない。”(p.40)のあとすこし打ち解けたエピソードも好き◆他に、自宅サウナに固執した父、私の骨はまだ行方不明、ただ好きと思い合う関係だけじゃ駄目だったんですか、メルヘンさんに送ってしまった44万円、ネット大喜利という救い、といったエピソードが印象に残りました。
 | 朝日新聞出版 発売日 : 2012-06-07 |
植物園の園丁が主人公。ちょっと過去と現在の入り混じった奇想の箇所は個人的にあまりなじめなかった。人が犬になったりめんどりになったりかえるになったり。夢と現とのまじりあい、記憶も変容していき、と。戻ってきてからの変容した主人公と妻の紆余曲折を経たあとのあかるさが救い。
 | 中央公論社 発売日 : |
再読。スタイン、ペリオによる中央アジア探検と、敦煌の経典の持ち去り。漢代に軍事拠点としての敦煌の役割が定まり。唐の頃は河西回廊と中国本土を結ぶ位置にあり、その後は仏教信仰の厚い帰義軍節度使の治める所となり、西夏が侵攻してきて、ちょうど井上靖「敦煌」の舞台で、モンゴル、明、清と国際交易都市から辺境都市へと落ち着いていく様が語られる。帰義軍節度使時代、面白そうでもう少し調べてみたい気も。「蔵経堂出土の敦煌文書のなかに西夏文字資料が一点も含まれていない」(p.231)というのは諸独自見逃してたなあ。◆5世紀はじめから11世紀はじめまでの600年間にわたる写本が一斉に3万巻以上すがたをあらわした、というのはすごいインパクトだったんだろう。◆チベット支配時代はともに僧侶であった二人のうち、一人は僧官の頂点、一人は落魄して死をまつばかり、後者から前者への手紙、あるいは長安に売られてきたが親兄弟や夫からも冷たく遇されている女性の手紙など当時の生活をうかがわせるものは興味深かった。
 | 岩波書店 発売日 : 1989-10-16 |
垣根涼介「光秀の定理」つながり。54「何せうぞ くすんで 一期は夢よ ただ狂へ」が作中出てきて、それが「閑吟集」より引かれたものと知り。閑吟集自体は恋愛の歌が大半のようだが、一期は夢よ…前後の何首かは無常観をただよわせていてよかった。◆50「何ともやなう 何ともなやなう うき世は風波の一葉よ」◆53「夢幻や 南無三宝」◆54「くすむ人は見られぬ 夢の夢の夢の世を うつつ顔して」
 | 筑摩書房 発売日 : 1998-07-01 |
ネルヴァル全集3 東方の幻より、コンスタンティノープル部分のみ(p.376-434,p.532-546)読了。澁澤幸子「イスタンブール、時はゆるやかに」で引用されていたので、もっと読みたくなり。◆華麗と悲惨、涙と喜びが共存し、どこよりも専制的でどこよりも自由◆べデステンの絢爛さ◆広場の一方を埋める、代書人、細密画家の店、本屋◆魚の形をしているせいで船足の早い船…どんな形だろう◆スルタンの権力は立憲君主国の君主より限られている、という説明。スルタンのいるハレムにいるカディーム（カドゥンか？）は33人、そのうち寵姫と目されるのは3人だけ、のこりはオダールク＝小間使いだ、と。…アブドゥルアズィズ帝のころはそうだったのだろうか◆貸本クラブ、というものが当時のイスタンブルにあったなんて◆シャンゼリゼの歌声喫茶みたいなものだ、と形容されるおしゃれなカフェ◆フランス大使が後宮を訪問したときの雑な扱い。◆バターと砂糖をたっぷりつかったバクラヴァスという一種のガレット◆スルタンの夏の宮殿では、貸してもらったバブーシュに履き替えねばならなかった◆デルヴィーシュの自由気ままな行動の大本は、すべてを捨てる人間はすべてをもらうことができるという考え方にある◆といったあたりが気になったところ。
何もなかった、っていうけど、犬さん亡くなってるじゃないですか…。年取って身体がきかなくなっても立ち上がろうとしたり、ジャンプして失敗しても明るかったりの犬さん。そしてとかげさんの動じなさ、好き。そんなとかげさんも脱皮に失敗して片目があかなくなったとき、とかげさんのためだから、痛くしないからと語りかけるとじたばたをやめ、身体をふんばり、そしてなぜか口はあけて、目から皮をとられるシーン、キュート。ネコもハラハラと見守り。
 | コアミックス 発売日 : 2023-01-20 |
同期の幼馴染のカフェ店長がぐいぐいと来るけど、きっぱり入江くん以外は考えられない！と信子さん。同期と店長と三人で出かけた話をデートでしたのがきっかけでギクシャクしてしまい。けど、店長からのはげましもあって、もやもやのままにしたくないと自分から会いに行くことに。彼女の周りは終わってしまった遠距離恋愛や伝えられない片思いに囲まれて…と。主人公二人とも真面目でまっすぐだなあ、相手を思いやる気持ちと自分の湧き上がった気持ちはどう整合性をとろうね、と。
 | 小学館 発売日 : 2017-01-30 |
9-13巻読了。役者アイドルの引退問題。海外日本の製作費大きいから？問題。 20-30年役者や制作の人は待てる？食べれる？。「作ったモノから人の内面決めるなんて下品な話だよ」。駄作品上映お泊まり会in吉田家開催！！ネタバレ戦国時代。吉田さん彼氏登場。感想オバケの誕生。鍋パーティーin仲村さん家。 仲村さん母の来訪と決裂。ダミアンと気まずくなり挽回なるか。といったところ。特撮オタの悩みにドルオタの闇をぶっこんでくるところ好き、仲村さんの悩みを時に辛辣に、時に丁寧に例をあげて諭す北代さんのターンが。
| 発売日 : |
トオンカフェのフリまで入手◆楽器セッティングシート（バンド名「チェッカーズ48」でsax40のchorus8って！）から、東京の喫茶店の思い出マッチをすってろうそくに火をつけると店員が注文とりに来るお店！（六本木「貴奈」）、短い紙幅で2022年夏のミャンマー情勢を伝えてくれる「村上巨樹のミャンマー音楽探訪録」、プラスチック・ビニール使わないのではなく、使い回すのがエコではのメッセージつきのアルフレッドハウゼ楽団「奥様お手をどうぞ」 の中古レコード、レコード大賞受賞前後でジャケットの変わったレコードの紹介「レコジャケの矜持」、なにげない生活がうかがいしれる佐渡市南部の山間にある集落羽茂大崎にあるドーナツ屋の店頭から見た日記(100人ほどの集落に本屋と古本屋あるのすごい)、絵や写真に思いをこめられない、文書にはこめられるという「404 not found vol.8 」、エイドリアン・トミネの「長距離漫画家の孤独」のことを語る福田教雄「スウィート・ドリームスのヒビ」 、大谷由美子「TM Song Book」、超越瞑想のこと、ビートルズが兄弟子とは！、リンゴのオクトパスガーデンの歌詞に超越瞑想を見る、と(確かにタコさんの庭ってなんだ？と子供心に思った覚え)、台所88ヶ所漫遊 5月号第56番 黒松 西澤さま宅で「新・平家物語、長い時間かけて諸行無常描く」。といったあたりが印象に。カオスでごった煮だけど、そこが面白かった。
 | 筑摩書房 発売日 : 2021-09-13 |
タイトルに惹かれてそれがどこに書いてあるか、どうしてそう言えるのかを知りたいだけなら、14ページまで読めばいいと思った。--それにとどまらず、本について、教養について、読書論について、空間について、翻訳について、芸術について、縦横に語られている。ただの音の連続がどうしてメロディーに聴こえたりするんだろう、というのと同じく、ただの文字のつらなりから著者はどうして土や水や光や風を感じるのだろうか、というところに思いを馳せる。---◆「読書とは、一種の時間の循環装置だともいえるだろう。それは過去のために現在を投資し、未来へと関係づけるための行為だ」p.8◆「本に「冊」という単位はない。あらゆる本はあらゆる本へと、あらゆるページはあらゆるページへと、瞬時のうちに連結されてはまた離れることをくりかえしている。」p.13◆「読むことと書くことと生きることはひとつ。それが読書の実用論だ。そしていつか満月の夜、不眠と焦燥に苦しむきみが本を読めないこと読んでも何も残らないことを嘆くはめになったら、このことばを思いだしてくれ。本は読めないものだから心配するな」p.14（ここまでタイトルに直接かかわると思った部分）-◆空間とは、ひとりの人間という観測者の位置をもちこんで考えるならけっして「一瞬」には存在しえないもの、それはすでに時空の連続体なのだp.40◆光にさらされる眼球が、網膜がざわめく文字を研磨剤のように使って、ぼくらの心を削る。p.45-46◆「教養」とは、そのときその場にないものをどれだけゆたかに呼び覚ますことができるか、人が見落としがちな隠された連関をどれだけ細心に見抜くことができるかにかかっている。p.107◆あらゆる芸術作品は、映画であれ、本であれ、絵画であれ、音楽であれ、人を別の時間の中に招き入れ、その人のふだんの生活を中断させ、宙吊りにし、忘却させることに、根本的な秘密がある。その上で、作品を通じて時間の別のステージが垣間見えたとき、われわれはそれを希望として感知する。 p.175◆作者の意図とはまったく無関係に、そこに投げ出された文章そのものが、読まれたがっている。解釈してよ、といっている。翻訳してください、と頼んでいる。 p.263◆以下読みたくなった本・映画◆ジル・ラブージュ「赤道地帯」1979 "はらりと開いたページを拾い読みするだけで、ブラジルの光が目の前にひろがる気になる" p.228◆畠山直哉 Slow Glass p.44◆多和田葉子「文字移植」p.89◆港千尋の新作写真集「文字の母たち」p.145◆モブツ・セセ・セコ物語 p.149◆「ギターを抱いた渡り鳥」 p.159◆フリオ・コルタサルの短編集「愛しのグレンダ」所収の「グラフィティ」 p.176◆よしもとばなな サウスポイント 2008 p.205◆映画「シティ・オブ・ゴッド」が描き出すファベーラ p.221
 | 早川書房 発売日 : 2011-04-05 |
読書室ポワロ好きとしては、一度は読んでおかねばと思ったポワロもの。そして手に取ったのはタイトルだけはだいぶ前から知っていた超超超有名な「オリエント急行の殺人」。勝手に勘違いしてたのですが、スタート地点ロンドンで、ゴールがイスタンブールで、その間に殺人事件が起こるのかと思いきや、ポワロのスタート地点はなんとシリア。そこからイスタンブールに向かい、そこでオリエント急行に乗る、と。事実説明編、乗客証言編、ポワロ考察編の三章だてなんだけど、事件の詳細は書いたらあれなので、よくまあそんな細かいところまで見てるな、そこまで証言の気になるところを深彫できる、証言同志、証言と物証の差異を見抜けるな、というのと、クールなようでいてほろりと人情家の一面も感じさせてくれて。結末と犯人はまさかね…と。
冬の宗谷で雪道克服！……生存バイアス、てタイトルだけでもう心惹かれる。札幌から深夜バスで稚内。そこから稚内〜浜頓別〜中頓別〜音威子府〜幌延〜豊富温泉〜稚内、と。猛烈な眠気におそわれたり、スリップしたり、ドカ雪に見舞われたり、道路外につっこんだ車見かけたりと波乱万丈。そして、行ったこともないのにおひさしぶりです！という気になってしまう豊富温泉。バターたっぷりのアヒージョと石油の浮かぶ温泉は、以前見たときからくっきりと印象に残ってたので。3キロにわたって風力発電の風車がならぶ光景も圧巻だろうなあ、と。そして今回はYouTubeとも連動。ドライブルートが動画としてあがってるんだけどこれがまた秀逸。右上に道路名、左上に住所で、下段に時々橋とか建物とかの説明が入るんだけど、こんな小ネタどこからひろってきたんだろうというのが目白押しで見てて楽しかったです。
2023年01月02日
2022年12月に読んだ本
1203・森本哲郎(編) 新撰世界の七不思議 らくだや 20221119
(1204・石川啄木 札幌 青空文庫
(1204・野口雨情 札幌時代の石川啄木 青空文庫
(1204・へんなものみっけ！7-8
1204・伴田良輔 独身者の科学 らくだや 20221119
1204・ラブホテルの文化誌 本戒 dual_books 20221115
1205・【再読】金城一紀 対話篇 らくだや 20221126
1206・【再読】瀬川深 チューバはうたう-mit tuba- らくだや 20221126
1207・キンマサタカ(編) 痛風の朝 本の雑誌社 図書情報館
(1208・和山やま 女の園の星3 kindle 20221208
1208・山口文憲(編) 香港読本 らくだや 20221126
1208・ヘンリー・スコット・ホランド さよならのあとで 夏葉社 図書館
(1208・鳥辺茜 KITATRIP 08 (野付半島・知床半島) メロンブックス取寄 20221208
1208・寺山修司 悲しき口笛 本戒 dual_books 20221115
1210・燃え殻 二村ヒトシ 深夜、生命線をそっと足す 20221210
(1210・野澤尚也 何度でも出合える 2022.10 Remind シャンティブックス 20221210
1211・樺山紘一 ルネサンス 講談社学術文庫 らくだや 20221112
1211・ミスドスーパーラブ 発行:トーキョーブンミャク
(1211・香原さんのふぇちノート1 kindle
(1212・重版出来 19 kindle
1212・下村湖人 論語物語 講談社学術文庫 らくだや 20221112
1212・早瀬耕 十二月の辞書 20221210
1212・長島有里枝 背中の記憶 らくだや 20221126
1216・ブレイディみかこ ヨーロッパ・コーリング・リターンズ 社会政治時評クロニクル2014-2021 岩波現代文庫 20221203
1217・【再読】小川洋子 やさしい訴え カルメル堂→図書館
(1217・ma2 私たちが恋をする理由 3 読書室ポワロ
1217・関口良雄 昔日の客 図書館 20221217受領
(1218・麻生みこと アレンとドラン 7
(1218・麻生みこと 下足痕踏んじゃいました 2
(1218・プリンタニア・ニッポン 3
(1218・AIの遺伝子 Blue Age 5
(1218・山尾結月 星を縫って (有島青少年文芸賞 取り消し)
1219・【再読】金城一紀 映画篇 20221209
1219・ポッケ 肉と葡萄酒号 スタジオプリケ(シーソーブックス)
1220・碇雪恵 35歳からの反抗期 トーチブックス(シーソーブックス)
1221・中野美代子 孫悟空の誕生 福武文庫 シャンティブックス 20221210
1222・たかのてるこ ガンジス川でバタフライ シャンティブックス 20221210
1223・尾崎一雄(編) 関口良雄さんを憶う 夏葉社 図書館
(1223・刷ったもんだ 8 kindle
1224・安村直己 コルテスとピサロ 遍歴と定住のはざまで生きた征服者 世界史リブレット人
1225・奈倉有里 夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く kindle
1225・上林暁 星を撒いた街 上林暁傑作小説集 夏葉社 図書館…「星を撒いた街」「青春自画像」「病める魂」「晩春日記」「花の精」を読了
1225・武井彩佳 歴史修正主義 ヒトラー賛美、ホロコースト否定論から法規制まで 中公新書 図書館
(1225・うかうか それいけ犬HK
(1225・森泉岳士 フロイトの燃える少年の夢
1225・中野美代子 西遊記の秘密 福武文庫 らくだや 20221112
1225・岩波講座世界歴史(1999年) 12 遭遇と発見 図書館…(1)染田秀藤「二つのインカ帝国像」(2)大黒俊二「「東方見聞録」とその読者たち」のみ読了
(1226・亀 歴史系倉庫 世界史の問題児(クズ)たち Kindle
1229・岩波講座世界歴史(2022年) 08 西アジアとヨーロッパの形成 図書館 …亀谷学、三佐川亮弘、佐藤健太郎、高野太輔各氏の論文読了
1229・【再読】宇月原晴明 天王船 中公文庫
1230・平井上総 長宗我部元親・盛親 ミネルヴァ書房 図書館 20221228受領
1230・【再読】加藤幸子 苺畑よ永遠に 図書館 20221228受領
(1230・市川春子 三枝先生 kindle
1230・中野美代子 孫悟空はサルかな？ 図書館20221224受領
(1204・石川啄木 札幌 青空文庫
(1204・野口雨情 札幌時代の石川啄木 青空文庫
(1204・へんなものみっけ！7-8
1204・伴田良輔 独身者の科学 らくだや 20221119
1204・ラブホテルの文化誌 本戒 dual_books 20221115
1205・【再読】金城一紀 対話篇 らくだや 20221126
1206・【再読】瀬川深 チューバはうたう-mit tuba- らくだや 20221126
1207・キンマサタカ(編) 痛風の朝 本の雑誌社 図書情報館
(1208・和山やま 女の園の星3 kindle 20221208
1208・山口文憲(編) 香港読本 らくだや 20221126
1208・ヘンリー・スコット・ホランド さよならのあとで 夏葉社 図書館
(1208・鳥辺茜 KITATRIP 08 (野付半島・知床半島) メロンブックス取寄 20221208
1208・寺山修司 悲しき口笛 本戒 dual_books 20221115
1210・燃え殻 二村ヒトシ 深夜、生命線をそっと足す 20221210
(1210・野澤尚也 何度でも出合える 2022.10 Remind シャンティブックス 20221210
1211・樺山紘一 ルネサンス 講談社学術文庫 らくだや 20221112
1211・ミスドスーパーラブ 発行:トーキョーブンミャク
(1211・香原さんのふぇちノート1 kindle
(1212・重版出来 19 kindle
1212・下村湖人 論語物語 講談社学術文庫 らくだや 20221112
1212・早瀬耕 十二月の辞書 20221210
1212・長島有里枝 背中の記憶 らくだや 20221126
1216・ブレイディみかこ ヨーロッパ・コーリング・リターンズ 社会政治時評クロニクル2014-2021 岩波現代文庫 20221203
1217・【再読】小川洋子 やさしい訴え カルメル堂→図書館
(1217・ma2 私たちが恋をする理由 3 読書室ポワロ
1217・関口良雄 昔日の客 図書館 20221217受領
(1218・麻生みこと アレンとドラン 7
(1218・麻生みこと 下足痕踏んじゃいました 2
(1218・プリンタニア・ニッポン 3
(1218・AIの遺伝子 Blue Age 5
(1218・山尾結月 星を縫って (有島青少年文芸賞 取り消し)
1219・【再読】金城一紀 映画篇 20221209
1219・ポッケ 肉と葡萄酒号 スタジオプリケ(シーソーブックス)
1220・碇雪恵 35歳からの反抗期 トーチブックス(シーソーブックス)
1221・中野美代子 孫悟空の誕生 福武文庫 シャンティブックス 20221210
1222・たかのてるこ ガンジス川でバタフライ シャンティブックス 20221210
1223・尾崎一雄(編) 関口良雄さんを憶う 夏葉社 図書館
(1223・刷ったもんだ 8 kindle
1224・安村直己 コルテスとピサロ 遍歴と定住のはざまで生きた征服者 世界史リブレット人
1225・奈倉有里 夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く kindle
1225・上林暁 星を撒いた街 上林暁傑作小説集 夏葉社 図書館…「星を撒いた街」「青春自画像」「病める魂」「晩春日記」「花の精」を読了
1225・武井彩佳 歴史修正主義 ヒトラー賛美、ホロコースト否定論から法規制まで 中公新書 図書館
(1225・うかうか それいけ犬HK
(1225・森泉岳士 フロイトの燃える少年の夢
1225・中野美代子 西遊記の秘密 福武文庫 らくだや 20221112
1225・岩波講座世界歴史(1999年) 12 遭遇と発見 図書館…(1)染田秀藤「二つのインカ帝国像」(2)大黒俊二「「東方見聞録」とその読者たち」のみ読了
(1226・亀 歴史系倉庫 世界史の問題児(クズ)たち Kindle
1229・岩波講座世界歴史(2022年) 08 西アジアとヨーロッパの形成 図書館 …亀谷学、三佐川亮弘、佐藤健太郎、高野太輔各氏の論文読了
1229・【再読】宇月原晴明 天王船 中公文庫
1230・平井上総 長宗我部元親・盛親 ミネルヴァ書房 図書館 20221228受領
1230・【再読】加藤幸子 苺畑よ永遠に 図書館 20221228受領
(1230・市川春子 三枝先生 kindle
1230・中野美代子 孫悟空はサルかな？ 図書館20221224受領
 | 新潮社 発売日 : |
イスタンブールから船にのって主に黒海沿いにトルコ北東部をめぐる旅。ナターシャ（娼婦）たちへの厳しい視線、ふにゃふにゃした貧乏旅行の大学生やカップルに態度的にも知的にも飽き足らない様子なども騙られるが、概ねトルコ人に対しては親切親切親切を重ねて受けてる感。カメラと財布を泥棒にとられたりしたけど、警察とカフェ店員のおかげで、二時間でつかまり、ものもかえってきたり。また、プロフィールに生年を記してないのに、解説の牟田口義郎氏の話からわかってしまう一幕も。イランを出て、トルコではたらき、ノルウェイ国籍が取れたのでノルウェイにもうすぐ立つ青年との出会い。「そうだよ、旅は辛抱(ペイシヤンス)だ」と言った旅行者との出会い。なども印象に残る。
はじめにの「世界がどうあるか、が不思議なのではない。世界がある、ということが不思議なのだ」（ヴィトゲンシュタイン）という言葉にみちびかれるように。世界の七不思議、今となっては古びて見えるので、新しく著者が20個選びました！という章。鼎談でそれぞれ世界の不思議な場所、建築などをあげていき、最後に各人が七不思議ずつあげる章。最後に、さまざまな人が、私の不思議No.1を寄稿、スケールの大小はあれど（群ようこの見えないバス停は、電柱に白ペンキだけ塗ったバス停、バス停だってわかるか！という世界の不思議と言うより小話レベルに思えたが）。◆20撰のなかからは、泥のモスクが夕陽に染まった（マリ ジェンネ）、切り立った絶壁の上に築かれた天国に一番近い修道院（ギリシア テッサリア平原）、夏にはすっかり溶けてしまう極彩色のバター人形（中国 西寧）が強く印象に残る。イースター島ではその昔、首長選出の儀式に島の西側の断崖オロンゴから海に飛び込んで海鳥の卵を手にした男が一年間島の長になったとか。モアイよりも目もくらむ断崖から身をおどらせられるのか、そのマケ・マケのほうが不思議、と著者。◆鼎談では、はじめてのアメリカの町サン・アントニオでいきなり路線バスにのって町を把握。北朝鮮-韓国のDMZにあったという、警察もいない、泥棒もいない、税金もないという100-200人くらいの村。日本人は諸行無常の世界観で行きているから、永遠になにかが残っているのは逆にショック、というミイラへの視線。選ばれて5-6歳から12-13歳くらいまでカトマンズの宮殿で暮らす生き女神。ピラミッドにしてもストーン・ヘンジにしてもみな天文に関係、古代人はいつも天をみあげていたが、天を失ってから人間は壮大でなくなった、という視点。石を積んだだけのグレート・ジンバブエが崩れない不思議、また宋代の陶器が出土したり、海のシルクロードの一端だった。日野啓三がカッパドキアを舞台に書いたという小説。満州やオスロで脳みそが凍って、その度に暖をとった話。などが印象に残る。◆寄稿からは、ウルムチでの金環蝕を、戦時中に重慶の拘置所で死刑囚としてともに閉じ込められていた旧友と、40年後に一緒にながめられる不思議。アマゾンのゴールドラッシュを目の当たりにして、1％の権利を買って翌年5000万円ころがりこんでくるはず皮算用のところ、あれから三年、朗報は来ない、というエピソード。在りし日の九龍城塞で、得意顔で友人たちを案内できることになった著者のよろこび。といったあたりが好きなスケール感でした。
 | 現代書館 発売日 : |
困った客事件簿、業界の名士にインタビュー、茶屋からラブホテルへの発展、ラブホテル建設への住民の反対運動、ラブホテルに置かれたノートやらくがき、等、まとまりなく総花的な感触。ネタにつまったのか、2、3章ラブホテルに関係ないやん、みたいなところあり、若干看板に偽りあり。わたしなりのエロティシズム試論を開陳したく…って最初から書いてほしかったなあ、と。らくがきの話あたりは、本村凌二「ポンペイ・グラフィティ」思い出した、2000年昔も現代日本も人間、一面そんなにかわらぬと思わせてくれた一冊。参考文献としてあげられてたロバート・ライズナー「落書きの世界」時事通信社はおもしろそう。◆パピルスに残っている化粧品のコピー「この化粧品を使えば、どんな老人でも若くなる。百万回も実証ずみ」p.107◆長時間入浴の記録といえば、1715年、ルイ15世の宮殿を訪れたペルシャの使節、マホメット・リザ・ベイで、あまりの居心地の良さに六時間も浴槽につかっていたp.139◆あたりは興味をひかれた。
 | 河出書房新社 発売日 : 1988-04-01 |
おおまかにいえば、セクソロジーの本なんだと思うんだけど、終始、大真面目な顔で冗談を言われ続けたような読後感。よく、巻頭とか賞のあたまに、古今の書物とかから引用されてるけど、「オー！ヨーコ！」(ジョン・レノン)てなんだよ！と思わず吹き出してしまった。金子光晴「人非人伝」は読んでみたく思う。
 | 発売日 : 2012-09-13 |
札幌アートウォークつながり 札幌の様子は冒頭ごく僅か、あとは下宿での様子とあらたな新聞社の就職口の話だった。
 | 小学館 発売日 : 2022-11-10 |
7-8巻読了。コウモリ研究者の「未知なるものは人類を発展させる原動力だ。◆この２巻は、コウモリ、蝶の道、自切する昆虫、ムー大陸、北極と南極を往復するキョクアジサシ。海岸に流れ着いた陶器から水中考古学の話へ、科学と詩をつなぐ絵本、サンゴノフトヒモと水族館-博物館勝負の引継ぎ、オオセグロカモメとヘラクレイトスの「パンタ・レイ」（万物は流転する）。漁師と哲学、余命僅かな漁師と旧友とのやりとりがよかった。◆コウモリ研究者の「だからこそ分からないことや不思議なことをむやみに切り捨ててはダメだ！！」にグッとくる。
 | 発売日 : 2012-10-03 |
札幌の新聞社に入ったらいきなり訪ねてきて勝手に野口のタバコ吸って、職を紹介してくれと依頼してきた啄木。老母や妻子を抱えて借家に移る際に手伝いにいった野口。その2回の遭遇シーンが描かれる。ただ石川啄木「札幌」とガラリと描かれるシーンも登場人物がちがってて、啄木のほうはフィクションなのかなあと不思議な気持ちに。
 | KADOKAWA 発売日 : 2020-08-25 |
何年ぶりかの再読。(1)がんで死ぬ前に殺したいやつがいる。たまたま依頼した同級生は実は殺し屋だった。(2)周囲から死神と呼ばれるくらい親しくなった人、両親、親戚、最愛の恋人をさまざまな形で失った同級生、より親しくなった主人公は…(3)人権派弁護士の、東京から鹿児島までのドライブの運転手募集に応募した主人公。という3本立て。基本、主人公と対話相手のふたりで進められるものがたりだから対話篇なのか。「映画編」も読み返したくなる。3編はすこしずつつながっている。僕はハードボイル小説の/ミステリ小説の愛読者だからこういう展開にはなれているんだ。一話目で殺意を抱かれている教授は、三話目の回想にでてくる谷村なのか。などなど◆◆だって、すべてを失ってまでイエスを言うわけにはいかないだろう？p.66◆「やっぱり、好きな人のそばで過ごしたかった。好きな人に看取られながら、死にたかった」p.94◆「スードラがスードラでなくなる方法がある」「インドから出て行くか、インド自体を変えちまうんだ」p.141◆現実が自分の理想にそぐわなくなったので、すべてを放り出してしまった。p.211
 | 小学館 発売日 : 2016-09-06 |
何年ぶりかの再読。元・吹奏楽部のチューバ吹きとしては、太宰治賞受賞時に見逃せず買ってむさぼり読んで、モデルとなったバンドのひとつファンファーレ・チョカーリアのCDとか買ったな、という思い出。インディペンデントのチューバ吹きの製薬会社OLの女性がクラリネット、ヴァイオリン、ドラムで多彩な音楽をくりひろげる楽団に飛び入る表題作。南洋を放浪する男がどんな音楽も貪欲にこなすバンドに離島のレストランで出会う話。ひとりでプラネタリウムを作った男の上映会をめぐる群像劇。の三部立て。◆趣味とひとことで片付けられがちな志向への、偏執的なまでのこだわり、他人によせといわれてスイッチを切ったようにやめられるようなものじゃないという憤りにいたく共感した覚え。「私の肺は空気を満たし、私の内腔はまっすぐにチューバへと連なって天へと向いたベルまで一本の管となり、大気は音に変わって世界へと放たれるのだ。」(p.107)というラストの覚悟の決まり方に、きっと誘われていたヨーロッパを楽器をかなでつつまわる旅に出たんだろうな、という想像をしつつ。音の渦に身を委ね、溶け、酔う様はいたく共感。また、作中の「火の中の火」を実際につくったというシカラムータもチェックしてみたい。◆「私たちが同じところに立って同じ星を見ている、それは宇宙の長い長い歴史から見れば、奇跡的な偶然なのです」(p.190)
 | 本の雑誌社 発売日 : 2021-08-27 |
痛風というと当人はすごく痛いのに、なぜかまわりからは同情されない、心配されないというギャップ。時に、贅沢病でしょ？なんて揶揄されたり。けれど、このアンソロジーを読むと、大酒飲みで運動嫌いで酒のツマミ大好きな人から、ビールだって飲まないしそんなに悪いもの食べてないのになんで俺がって方まで、20代の若さで発症の方から、50代の方まで千差万別。◆さすがに、痛風になってよかったは真正面から受け止められないけれど、痛風前、痛風後で見える景色が変わるというのはなんとなくわかるような。痛風になってもまだ食べたいものというのがクリアになったというのは、うらやましいような痛ましいような。◆痛風キャリアのそれを笑い飛ばそうというセンスには脱帽。プロの「ツーファー」（痛風持ち）、痛風になりそうな食べ物は「ツーフード」、それらを食べると痛風の頭文字を取って「Tポイント」がたまるとか吹き出してしまった。ちなみに邦楽奏者田中さんの人生でベスト3Tポイントがたまったのは「谷中で食べたTポイントキングの鮟鱇鍋」「カニと白子鍋の波状攻撃が続いた北陸の冬」「フォアグラを1日3回食べたブダペスト滞在」だそうです。◆身近なところでは、12月初旬のシーソーブックスのトークイベント。柳下恭平さんが外は氷点下の札幌に、短パン裸足サンダルでいらっしゃってて、そんなに暑がりなんだろうか、と思ったのですが、この本を読んで、発作が出ると痛くて長ズボン履けない！靴下や靴も履けない！とあったので、もしかして発作が出つつも司会してくれてたんだろうか、そう思うとありがたさがいや増すいや増すという思いに。推測ですが。◆あと、気になったのは、痛風のドイツ人はいない？てのと、シン・ウルトラマンの樋口監督が尿酸値14なのに発症してなくて、そんな人は超レアらしく、病院でぜひぜひ新薬を試させてもらいたいと数週間投薬したら尿酸値14.8->4に激減、薬を開発した先生はアメリカ留学が決まった、というエピソード。なにそれ、その薬めっちゃ欲しい気持ちに◆かくいう私も、何年か前に、左足親指の付け根が痛くて痛くて、もしやこれは？と総合病院に駆け込み「先生、ぼく、痛風でしょうか？」と聞いたら先生に「こんなの全然痛風じゃないよ、アハハハハハ」と笑い飛ばされた経験がある身、かつ、健康診断で尿酸値over7.0を叩き出したことのある身には他人事ではなく、Tポイントの蓄積には敏感でありたいと思いをあらたにしました。
 | 角川春樹事務所 発売日 : |
寺山修司の絶筆。映子「同じ夢を見れないなんて変なことね」寺山「それは、目をあいたときにいつも同じ夢を見ているからだよ」のやりとりが最高に好き。◆母と最後に食べた回想のうどん。いろいろな弁解はすべて「私を捨てるための方便」に聞こえ◆ねずみの心はねずみいろ／かなしいかなしいねずみいろ、という歌に心情を託す22歳の寺山◆あたりが印象に。かの有名な「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし見捨つるほどの祖国はありや」がイカサマポーカーの相方と横浜の海を見に行った際の情景に引かれ◆ネルソン・オルグレン「人生は、なぜ、ときどき深夜営業の映画館ががら空きになっているような感じがするのだろうか。誰も坐っていない客席に向って、いたんだフィルムが映されているような感じがする」(p.200)
 | 祥伝社 発売日 : 2022-12-08 |
待ちに待ってた3巻。今回も面白かった！ただ、1,2巻に比べてちょっとパワー落ちたかな？と思ったのは期待しすぎたからかな？風邪ひいた星先生に奥さんが本格的インドカレー（ナン付）を作りおいていったくだりは爆笑しました。あと、ひんやりしたのは、子供のころ、姉の彼氏がやってきて、姉が不在だったので動物園つれてってもらってたのしくて家まで送り届けてくれて、夜、姉にそのこと伝えたら「私彼氏いないよ」と言われた話。三者面談も、ゴキブリを誰も除去できない掃除時間も、鳥井さんが星先生が心配で鶴を折ろうとして次々と異形のものを生みだしたり、SNSでつながった好きなアイドルのファンの子と、初めて合ってごはんたべるために、会食恐怖症を克服する手伝いしたりと、そこで繰り広げられる会話がまたなんともいえず味があって。巻末の、星先生の赴任日のはなし、小学校の先生だったんだあ、とか、小林先生の一挙手一投足に「仲良くなれそう」とモノローグがついててまたほっこり。
 | 夏葉社 発売日 : 2012-01-27 |
島田潤一郎「あしたから出版社」つながりで。島田さんが出版社をやろうと思ったきっかけの本。いとこの死を悲しむ叔父叔母にすこしでも元気をだしてもらおうと。42行の短い詩が余白たっぷりに記され、シンプルな線画が添えられた一冊◆私はただ／となりの部屋にそっと移っただけ。◆私の名前が／少しの暗いかげもなく／話されますように。◆が特に心にのこる箇所だった。
| 発売日 : |
ロシア留学を目前にウクライナ侵攻がはじまりロシア留学がフイになってしまった女子大生が、道東沿岸から対岸をのぞみつつ、再び気軽に交流出来る日を待つといったストーリーのマンガと、著者自身による、東京から、普通の土日をつかって野付半島、知床半島をめぐる旅行記。ペーパードライバー返上を目的にといいつつ、しっっっかり、読む側に野付と知床の魅力をつたえてくれる。ロードムービー的に。夕陽にしずむナラワラ、トドワラ、翌朝のクルマでいけるだけいった先端の様子などは、野付半島好きにはたまらなかった。
 | 福武書店 発売日 : |
沢木耕太郎「深夜特急」の香港のあたり、藤原新也の若くして死んだ女性の葬儀と同船した一編、梶山季之の露悪的な買春一幕、平岡正明の日本映画と香港映画の登場人物比較論などなど。山口文憲が滞在した70年代香港は、まだ日中戦争の記憶を中国以上になまなましくたくわえた人々がいた時代。アグネス・チャンの「難民ですね。気もちとしては。だから、この土地は自分のものというよりも、一時的な足場って感じじゃないでしょうか。」といったあたりが印象に。香港返還まであと10年を切った時期に出版されたアンソロジー。
 | マガジンハウス 発売日 : 2022-12-08 |
燃え殻さんが二村ヒトシさんと配信したラジオ番組の抜粋、加筆集成版。いつもの燃え殻さんの空気感がかもしだされていて、燃え殻ファンとしては嬉しい限り。20年仕事でつきあいのあったクライアントがガンで亡くなった際のやりとりと、その後彼がいきたかった鳥取の温泉にいった話が、すっきりきれいな話で落ちそうになり、落ちなかった話のくだりが一番好きでした。人生そんなになんでもかんでもきれいにオチがついてすっきりなんかしないんだよ、と。あと、二村さんの「俺は死んじゃった人が、ついさっき俺に向けてたかもしれない好意とか憎しみとかってどこに行ったんだろうあん、みたいなこと考えるんですよ。」(p.45)とか、理詰めの向こう側にある、ゴロッとした何かに触りたい(p.29)といったあたり。◆ふたりで何回使ったんだっていうティーバッグでうすーい紅茶を飲みながら、MTVを観てました。アリアナ・グランデとかp.186◆燃え殻 ちゃんと大人にならないで、長い長い思春期をやっとあきらめると、急に老いるっていうやつでしょ。子供から直接、老人になる。p.178◆二村 SNSの中でしか日本人を知らないと「一部の人間が民度が低い」って上から目線の話で終わっちゃうけど、「愛しのアイリーン」とか観ちゃうとさ…（略）あれ、みんな俺たち自身でしょpp.201-202◆のあたりも印象に残った。映画「初恋」（三池監督）、映画「愛しのアイリーン」、映画「そこのみにて光輝く」はすごく観たくなってきた。
「何度でも出合える」の判型を変えて、言葉を足したバージョン。写真との関係はあるようなとないようなのあわい。添えられた言葉と照らしあわせて、そのあわいを楽しむように観てみた。「午睡を装って」が、雪のふりしたうさぎが午睡してるのか、うさぎの午睡のふりした雪なのか、ちょっとわからなくなった。
| 発売日 : |
ドーナツ自体への愛。青春の、恋の、仕事で辛かった時に救われた時の、家族との、ドーナツにまつわる思い出。ドーナツ目線からのエッセイも。そこにさしはさまれるドーナツ短歌。ミスドのドーナツの写真。ミスドの各ドーナツ（汁そばも入ってるけど）を各章のタイトルに冠しつつ、エッセイやストーリーがつむがれる一冊。◆ほんっっっっと食欲そそられて、読み終わる前にミスドに駆け込んでオールドファッションハニーを食べちゃいました。◆読書会で選んだ一冊だったけど、その場でもそれぞれの方のドーナツの思い出、ドーナツ語りが引き出されて楽しいひとときでした。◆一時期、飲んだ後のしめに「しめのドーナツ」（主にオールドファッションハニー）を食べてた身としては見逃せない一冊でした。◆先輩と残業とエンゼルクリーム、ハニーディップばかりたべるおじいさんの一瞬の宗旨替え、片思いの美しい男の食べるポン・デ・ストロベリー、小さな男の子が「かみさまののみもの」と言ってやさしさを見せてくれたホットチョコレートあたりのエピソードが印象に。◆巻末の、わがまま言わせてもらえば夏はアイスコーヒーもおかわり自由にしてほしい、には激しく同感です。ドーナツの冷凍保存はやってみようかどうしようか（毎日食べれるのうれしいようなヤバいような）。
 | 竹書房 発売日 : 2022-11-16 |
スゴ本ブログで見かけて、たしかににおいを感じたときの表現は独特でおもしろかったけど、あとは読んでていたたまれなくなってしまった。
 | 小学館 発売日 : 2022-11-18 |
読みはじめてすぐに既視感。それを抱いたまま読み終え、最終ページに、S-Fマガジンに以前掲載の「十二月の辞書」が原案とあり、納得。村上春樹の「蛍」と「ノルウェイの森」の関係のように、短編を題材に長編でよりくわしく書かれた一作。「グリフォンズ・ガーデン」「プラネタリウムの外側」をつなぐミッシング・リンクがより鮮やかに浮かび上がる。やたらと南雲の悪態的な言い出したいけどいえないカッコ書きのモノローグが多いのと、佐伯の不安定で無礼と親しみとそっけなさとわがままをはげしく行き来する様、そんなふたりの関係性の振幅に興味をひかれた。短編のときにも思ったけど、頭のなかの画像をこんな面倒な方法で辞書にこめられるなんて、いったいどんな精緻な計算能力と美的感覚なのだろうかということに思いを馳せた。影響されて、ウィトゲンシュタイン「反哲学的断章」を手に取りたくなった。◆◆藤野には、頼んでもいないことを「してあげる」癖がある。p.19◆「南雲君、いま、ディシジョンツリーを全部計算しなかったでしょ」p.31◆三人とも自分の名前で仕事をしている。必要経費とMan×Monthでしか測れない作業の報酬に、自分の署名を入れることで付加価値を上乗せしている。p.65◆「秘密っていのうは、秘密が存在することを漏らした時点で、その半分は明かされたようなものなんだよ」p.238◆南雲は、ユーミンを聴きながら、神様の隠した定理を見つけることや、神様と同じものを作ろうとする行為の愚かしさに対して、ため息をついた。p.267◆君のお父さんは光を閉じ込める箱を作っていたんだ。p.304◆
 | 小学館 発売日 : 2022-12-12 |
ピーヴのアニメ化、中田伯の母への手切れ金、アユを守ろうとする黒沢の決意、最後は、世界七ヵ国語同時配信の試み、と。どんどんとスケールが大きくなっていき。そして次回はいよいよ最終巻とのこと。どんなエンディングが。
 | 講談社 発売日 : 1981-04-08 |
いつかは読み通したいと思って何度か挫折している孔子「論語」。その全部ではないが、思うままに引用し組み合わせて物語として語ってくれるのが下村湖人「論語物語」。すこしまとまったストーリーとして読ませてくれることで、全体像を把握しやすく、場面設定をふまえて、出てくる人の感情も読み取りやすい。どんなシーンで、どんな思いで発せられた言葉なのだろうということがわかって。◆永遠は現在の一瞬にある。刻下に道に生きる心こそ、生死を乗りこえて永遠に生きる心なのだ。p.40◆先生は、ただ老者と、朋友と、年少者とのことだけを考えていられる。それらを基準にして、自分を規制していこうとされるのが先生の道だ。p.48◆学びつつ考え、考えつつ学ぶ、これが学問の要諦だp.91◆悪の根元はなんといっても自分を愛し過ぎることにあるp.124◆未だ生を知らず、いずくんぞ死を知らんとp.240◆君子の理想は、用いられればその位置において堂々と道を行い、用いられなければ、退いて静かにひとり道を楽しむ、というところになくてはならい。p.259◆といったあたりが印象に。
 | 講談社 発売日 : 2015-07-15 |
少女時代の著者から見た祖母、母ら家族の話、親戚の話、友人の話がつづられた一冊。大人になってからふと入ったワイエスの画集から母や祖母の背中が思い出され、紡がれていく回想。甘え方がわからず
本当の気持ちと正反対の態度しか出せない叔父のマーニー、それでも見離せない著者。赤ん坊時代の息子が、なにかにつけおっぱいを慕い、「初めて娑婆でさまざまな衝撃を経験している子供にとっては、辛さを持ち帰った自分を受け止めてくれる存在であり、ホッとひと息つける存在であり、頑張ってこいよとまた送り出してくれる存在のようだ」(p.134)。そして、いつも遊んでた友だちとの引っ越しにやる別離。「子どもにとっては距離が友人関係のすべてを左右するほど重要だった」(p.159)あたりが印象に。
本当の気持ちと正反対の態度しか出せない叔父のマーニー、それでも見離せない著者。赤ん坊時代の息子が、なにかにつけおっぱいを慕い、「初めて娑婆でさまざまな衝撃を経験している子供にとっては、辛さを持ち帰った自分を受け止めてくれる存在であり、ホッとひと息つける存在であり、頑張ってこいよとまた送り出してくれる存在のようだ」(p.134)。そして、いつも遊んでた友だちとの引っ越しにやる別離。「子どもにとっては距離が友人関係のすべてを左右するほど重要だった」(p.159)あたりが印象に。
 | 講談社 発売日 : 1993-07-05 |
今更ながら、西洋史の大家による「ルネサンス」概説。前半は理解しやすくよみやすく、なんでかと巻末みたら「NHK市民大学」のテキストだったとのこと。どおりで。その分後半の各論部分にはやや歯ごたえを感じてしまった。30年前から、いわゆる「ルネサンス」への疑問はかかげられてたんだな、と。いわく、中世に人間と文化が暗黒に沈んでいた、という見方への批判。ルネサンスが近代世界観の創造を達成したというのは早計ではという疑問。「再生」というが同一物の復活ではないのでは、という視点など。ルネサンスとは、暗黒からの離脱と、光明への跳躍。「古代の再生・復活」とは、ルネサンス人が古代人になることではなく、じつは端的に「古代の発見」。「死の勝利」とか「死の舞踏」とかよばれる画像が多くつくられたこと。善と悪、美と醜、それに全知と虚無がわかちがたく同居。15世紀ルネサンス人は、新プラトン主義を鍵として、「ヘルメス文書」を理解し、実際上の知識・技術である占星術・錬金術を学びとったこと。など、その特徴を論じるさまざまなトピック、論点は興味深く。最後は、「大航海の成功は、ついにはルネサンスを暗殺することになろう。宗教改革の嵐は、直接ルネサンスをたおしはしなかったが、しかしやがてローマ法王庁は、ルネサンス人の楽天的な世俗精神をうとましくおもいはじめ、カトリック改革という引きしめ策を講ずる」(p.291)と。
 | 岩波書店 発売日 : 2021-11-16 |
ひとことで言うと「緊縮財政は不正義だ」と。子供、女性、老人、貧困層、労働者にかける予算が真っ先に削られ、彼らを苦しめ、弱らせると。新自由主義もグローバリズムも同様、くたばれ、と。日本では簡単に、それ自己責任でしょ、みたいな言葉で片付けられそうな事象の背景を見つめ、構造的な不公正、不平等を見抜き、提示してくれる。日本の政治もたいがいだと思うが、だからといって隣の芝生が青いとは限らない、という思いをイギリスの政治にも感じた。ただ、統治される方もただやられっぱなしなだけではない。◆「移民に八つ当たりして右翼正統にのぼせてる暇があったら、現実に自分を苦しめている相手と現実的に戦って自分で現状を変えろ」という地べたの女たちの現実主義は、社会の右傾化にたいするカウンター的現象でもある。p.60◆また、戦後すぐにはすぐれた政策であったNHS（イギリスの国民保健サービス）にまつわるこの言葉には胸があつくなった。◆NHS設立の理念にもなった元炭鉱労働者の保険大臣アナイリン・ベヴァンの言葉「病気とは、人々が金銭を払ってする道楽ではないし、罰金を払わねばならぬ犯罪でもない。それは共同体がコストを分担すべき災難である」p.77◆ポルトガルは、「ドイツとEUが提唱する緊縮をしなくとも経済は好転し借金も返せる」ことを体現する存在になっているのだ。(p.247)と語られたポルトガルの現状はどうなっているのかも、気になるところ。
 | 文藝春秋 発売日 : 2004-10-08 |
(2022/12/17読了分)5年ぶりの再読。カルメル堂のカウンターに座ったら目の前にあって、その場で思わず60ページほど読み進んでしまったので、勢いがついて。筋書きもだいたい覚えていたのだけれど、また違った気もちで読めて。今回目に止まったのは以下の2節。◆どんなささいなものにも、その存在を支える絶対的な形があります。p.170◆「いや違う。僕達の方が君を求めたんだ」「何のために？」「人を求めるのに、理由はないよ」p.257(2017/12/17読了分)三宅香帆 京大院生が選んだ「人生を狂わす」名著５０|眠れない夜には小川洋子。静かな大人の恋愛小説を読みたい人へ https://cakes.mu/posts/17914 に触発されて、再読。/夫の生活から逃げるように別荘にやってきた瑠里子が出会ったのはチェンバロ製作者の新田と弟子入りしている薫。彼らと親しくしていくうちにどうしようもなく新田に惹かれ、自分に振り向かせ、自分だけのものにしようともがくけど、結局は、チェンバロでつながった二人のつながりには割り込めないと思い知らされ。けれどカリグラフィーの専門家である瑠里子が見出した、自分でもチェンバロに少しでも形を残せる答えは…と。きっともう二度と会うことはなくても、微かなつながりが残せた、そのことの余韻を残しつつ。/でも、どんな重大な出来事でも、紙に書くと一行か二行で終わっちゃうんですよ。「目が見えなくなった」とか、「無一文になった」とか(略)世の中何でも、大げさに考えすぎない方がいいなあ、って(瑠里子)/私たちいつも、空気の震えに耳を済ましているでしょ？チェンバロの弦が響く音に。すると相手の心の震えまでが、一緒に伝わってくるんです(薫)/人を求めるのに、理由はないよ(新田)/そして、もちろん、読み終わった後は、出てきたチェンバロの曲をいくつかダウンロードして浸りたい気持ちに。
 | 夏葉社 発売日 : |
島田潤一郎「あしたらか出版社」を読んで手に取りたくなった一冊。作家の家にぶらりとたずねることができたり、直接電話できたり、道端でバッタリと頼み事できたり、おおらかな時代だったんだなあ、と思った。古書店に出入りする客たちと店主とのやりとり、文豪たちとの交流も一筋縄でいかなく、けれど、「本が好き」でつながってる心地よさを感じさせてくれ。特にタイトルにもなった、野呂邦暢との交流がなんともいえず、距離がありつつも、読んでて心があたたまってくる、味わいのある一編でした。「昔日の客より感謝をもって」(野呂邦暢)でしめくくられる。◆正宗白鳥「だれのものでも、金を出して読むということはその人にそれだけの価値を認めているんですからね...」p.19◆上林暁の本への署名 「本を愛する人に悪人はいない」p.43◆大体、私小説というのは人生の喜怒哀楽を味わって、その上で身につまされて読む作品が多いものだ。p.139◆
 | 祥伝社 発売日 : 2022-10-07 |
小津さんカッコいい！オトコマエ！そして大島さんもちゃんと受け止めきった！どのカップルも、行き違いはありつつも、あきらめなかったり、きちんと向き合って話し合い、解決して、関係を深めていくのが素敵と思った3巻でした。
| 発売日 : |
親から、一度は受賞になったのに、「本賞の趣旨になじまない内容」という不可解な理由で取り消されたと聞き、読んでみる。列車事故を起こして死んだ運転手の妻の視点で進む物語。周囲からのバッシング、事故原因が会社の体制にあるとわかってからの周囲の手のひら返し、虚しい心を抱えてた時に見た、事故直前の列車に乗れるという誘い…。重い題材を扱いながら、見事に読ませてくれた一編。道新に問い合わせても、上記の理由以外は頑として明かさなかったそうだが、なぜ選考過程でOKとしたものをNGにしたのか。どこかしらからクレームが入ったのか。理不尽な横槍があったのか。謎のまま。
 | 講談社 発売日 : 2022-12-13 |
リンダさんのやりたいこと、付き合いたい人がよりクリアになり、抱えられるだけ抱えて突っ走る。エドガーさんにも理解されて、エドガーさんを理解して-心の無いモンスターが自分にだけ懐く快感て-大団円。いままでの麻生みこと作品ならエドガーさんとうまくいかなくて、タイラー先生といい感じだけどはっきりとは付き合ってない、みたいなエンドかと思いきや、の。いきなりこの巻から出てきたエドガーさん友人の新山さん。いいひと極まりなさすぎるし、やりとり面白いし、どうやってエドガーさんと友達になれたのか気になりすぎました。
 | 白泉社 発売日 : 2022-12-05 |
夫の失踪を最初から事件性があると決めつけて捜索依頼してきた妻。警察には隠してることがあって…。そして、宙の交番時代に助けた子から連絡があり、調査するも、こちらも非協力的で最後は逃げられ…。被害者が非協力的だと警察の調査も捗らないという典型だが、そこをどう捌くかも問われ、と。
 | イースト・プレス 発売日 : 2022-12-14 |
普段の形と違って、なりたい形に変わってしまったりどことも知れぬ場所にまぎれこんで戻って来れなくなったり。プリンタニア界にも大変なことが発生。すあまもそらまめも、調査に駆り出されたり、注射を打たれたりいそがしく。しかし、さわりたいようなもちもちした雰囲気はのこってて、キュートで目が離せない。
 | 秋田書店 発売日 : 2022-12-08 |
シッターロボによる育児、AIのアドバイス通りに生きる男性、振り分けられるスコアの真理を見つけようとする女性、自らの“死”をAIの決断に任せ終末を過ごす老人（裏表紙より）。須藤の、AIのいう間違いであったとしても選びたい、自分の人生を愛したいという言葉が印象に残る。すべてをAIに委ねたら何が残るのか、そこで生きる意味とは、自らの個性とは、それを愛せるか、楽しめるかというのが問題になってくるのかなあ、と。AIの遺伝子シリーズがなぜ何度も衣替えしてきたのか、巻末2ページにかかれてて、なるほどと思った。
毎年楽しみにしているポッケ。今回は、肉と葡萄酒号。鮨と地酒号のときはたまらずに金寿司にかけこんだが、今回はジンギスカンかなあ。肉の山本、気になりすぎる。鳥辺茜さんの、ジン、ジン、ジンギスカ〜ンの歌と、ジンジンジンギスカンジンジンジンギスカンの歌がぐるぐるまわるという話にうなずき、川村マユ見さんの、そらちワイナリーロードのドライブ後、子供が寝静まって夫婦でワインとハムをたしなんでいたら、娘が起きてきて…あああああ、のひとこまに涙。藤沢チヒロさんの、純子さんが親友へ捧げきった恋心と、その弟との交流のひとときを描いた一編が印象にのこり。秋永真琴さんのおいしいよふかしの読後感がよすぎて、姉妹編「よいこのよふかし」も読んでみたくなり。
 | KADOKAWA 発売日 : 2020-09-24 |
さまざまな映画がキーとなる短編集。姉妹編の「対話篇」のエピソードもちらほらありつつ、「ローマの休日」の上映会もちらほらと織り込まれつつ、最後の一編は、孫たちがおばあちゃんのために映画上映会を開こうという一編で大団円。ベタだけど、「ローマの休日」がすごく観たくなった。その時は、上映会でパンフがわりに配られた設定の岡くんの文章が巻末にのってるので、それを読みつつみたいなあ、と。結局はみんな映画に救われた、みたいな均一でベタな話ではなく、そこへたどりつくまでの過程はさまざまで。自分が小説家になるきっかけをくれた級友を救いにいくことだったり、薬害事件の隠蔽のために自殺した残された妻を勇気づけるためのものだったり。日常から抜け出すための誘いをかけてくれた級友が最初に話しかけてきたきっかけだったり。何日か経って読み返してもどの話も、話の筋も登場人物もどこに熱くなったかもよみがえってくるような短編集だった。どこかヒリヒリとシリアスなところが続いたところを、最終話の、ふにゃふにゃしてて考えてるところ全部顔にでて犬みたいにかわいいとかいわれる、プロデューサーの名のもとに面倒な企画交渉ぜんぶまかされちゃう愛嬌たっぷりの大学生の、恋と映画上映への奔走にはふんわりとくるまれてしまう。「才能っていうのは力のことだよ。でもって、力を持ってる人間は、それをひけらかすために使うか、誰かを救うために使うか、自分で選択できるんだ。」(p.73)
| 発売日 : |
自由、自由、自由とはなんぞや、人との関係、距離感とは、という問いを投げかけてくれてたところに個人的にはしびれた。「花束みたいな恋をした」は映画ではなくノベライズでしか読んでないけど、三章にわたって語られた著者の映画版への思いには深くうなずき。映画もマンガも演劇も、社会から押し寄せる常識や世間体から自分の心を守る防波堤だと思っていたい。(p.88)。矢面に立つ人を勝手に理想化する危うさ。行動として他人の目に映る、「性格」と呼ばれるものはその人の人生のただの点でしかない。どんなものであれ値段を決める権利は作り手側にあり、文句を言う人はあなたの客ではない。といったあたりは印象に。「かけがえのない、大したことのない私」というのは田中美津さんの著書のタイトルだそうだけど、グッと胸にかかえておきたい言葉。
 | 福武書店 発売日 : |
荒唐無稽な小説と思われる「西遊記」に何らかの構造を見出したいという欲望が思う存分に展開された一冊。西遊記未読の身にも楽しめる。それまで面々と受け継がれてきた民話のどれかひとつを源流と決めつけるのではなく、西遊記のモチーフを「女を拐うサル」「あばれて鎖で岩に閉じ込められるサル」「求法のサル」「インドのラーマーヤナ伝説」(p.224)の４つにわけ、それぞれがどのように受け継がれてきたか、主に宋代にそれぞれが混合し、影響を与え合い、元明期に今のかたちになっていったかが解き明かされるスリリングな一冊。「宋人にとっては、唐はあらゆる意味においても権威であったとおぼしいが、なればこそ権威の象徴であった文化を洗練させることができた一方で、民衆のレベルにおいては、ワイワイガヤガヤと、あらゆる権威を揶揄して、勝手気ままにさまざまな伝承をくっつけたりデッチあげたりすることもできたのである。」(p.235) その中にラーマーヤナからの影響まで語られるとは。ただ、歴史学と違って難しいなあと思ったのは、源流をたどる作業、この話とこの話似てるから源流！と言っても、そう言えるかもしれないし、そうではないかもしれない、としか言えないのではとも思ってしまう。影響を受けたのか、自家発生的なものなのか、似てるだけでは判断がつかなく。まあ、それを言うのは野暮というほどの面白さにあふれていた。澁澤龍彦「マンドラコラについて」、中島敦「悟浄難異」は読んでみたく思った。また、"いつの日か編む予定の「西遊記虚実地名辞典」"は編まれるのだろうか。もし出るなら手に取りたい。
 | 幻冬舎 発売日 : 2002-03-01 |
北海道書店ナビのシャンティブックスさんのインタビューきっかけで手に取り◆全編インドの話かと思いきや、3分の1は、旅に出るまでの紆余曲折と、はじめての海外一人旅香港-シンガポール-マレーシア編だった。ただ全然不満はない。海外へのあこがれはありつつも、なかなかなかなか踏み出せなかった反動か、一度出てしまえばフルスロットル。言葉はできなくても明るく突っ込んでいき、いつの間にか仲良くなり、出会いにも恵まれ、ふと親切にしてくれた家族に招かれておじゃましたり、と。パワフルで読んでて元気になる。大人も子供も必死に色水をなげある年一度のお祭りホーリーにまきこまれたり。ごく普通の家庭のやさしいお母さんが、不可触民には鬼の形相で接してて、自分の無力さを感じるシーン。タイトルにもなってるガンジス川でバタフライしたバナラシのあたりが特によかったなあ、と。◆「この国は、いいところも悪いところも全部ひっくるめて、あまりにも魅力的すぎたのだ。人びとの生がむき出しで、色彩のコントラストが強烈で、太陽や空や皮がデカくて、自分がまるで自然の一部にでもなったように感じられた。私はインドに身を置いているだけで、「自分が今、生きている」ということをリアルに実感することができたのだ」p.300◆「インド人が魅力的に見えるのはさ、みんな今日を生きてるからなんだよね。（略）大事なのはいつも”今”なんだって（略）未来のための今を生きるんじゃなくて、今日を毎日、楽しむことなんだって」(p.314)◆ダライ・ラマのと、モロッコのは読んだことあるので、それ以外の著者の旅行記も読みたくなってきた。
 | 夏葉社 発売日 : 2011-02-19 |
関口良雄「昔日の客」を読んだら読みたくなり。野呂邦暢さんから見た「昔日の客」。尾崎一雄好きがきっかけで初対面で意気投合して、それからは山王書房に行くたびに朝から晩まで滞在するほどだった百合子さん。寝込んでからの上林暁さんをしばしば見舞っていた関口さん、通夜に妹に行ってもらったら、思った以上に遠路だったと告げられ、そんな道程をしばしば来てくれてたのかと思いを馳せた一節。といったあたりが印象に。宇野千代邸で興が乗って腰が痛くなるまでミニの女物のワンピースで踊り狂う関口さん、見たかったなあ。
 | 講談社 発売日 : 2022-12-22 |
印刷競技をここまで熱く面白く読みごたえたっぷりに書いてくれるとは！平常心大事よね。セルフコンダクトの話も面白かった。セルフトークいいかも。
 | 山川出版社 発売日 : 2016-12-02 |
コルテスとピサロを、レコンキスタで新たな国土を望めなくなったイダルゴ（下級貴族）とくくるのは粗雑。コルテスは裕福な生まれ、生家の後押し、法学士としての知識、識字能力、雄弁、外交術を駆使して、アステカ征服に向かうが、対して寡黙なピサロ、貧しい出で識字能力もなく、慎重、時に優柔不断。先住民間でも対立があり、アステカもインカ(インカの支配層の分裂、神官層と軍人層の分裂、インカによる征服の記憶)もそこにつけこまれた。またスペイン人の征服者間でもときに利害の不一致で対立が生じたが、それを潜り抜けてきたコルテスとピサロ。◆コルテスは高い統治者資質を示すも、逆にそのためにスペイン本国から統治権を持たせるべきではないと危惧され、遍歴を余儀なくされ、商業貿易、のちには知識人との交友に注力。ピサロは、定住し統治者を目指すも資質を欠き最後は対立勢力による暗殺。身内を大事にしたところは共通点。後世まで末裔は残る。コルテス、ピサロの行動も、征服から植民地統治への転換期特有の流動性のなかで語られ得る、と。インカの敗北も単純な技術差ではない。お互いの内部の論理がからまりあい、どちらに転ぶかわからない局面もありつつも、従来の常識や既得権益にとらわれた判断ミスの連鎖で破れた、と。
 | イースト・プレス 発売日 : 2021-10-07 |
ロシア語に、ひいてはロシア文学の魅力にのめりこみ、ペテルブルク、最終的にはモスクワへ留学し、授業、図書館と勉学にのめり込んでいく著者。どこに惹かれ、なにに興味を持ったかていねいに綴られていて、こんなにも知る歓び、考える歓びを垣間見せてくれて、学問することの時に恍惚となるような瞬間に立ち会わせてもらった感。教師や友人にもめぐまれ、同室のマーシャ、批評理論のアントーノフ先生にはその関係性の深さをあらわすように特に多くのページが割かれている。アントーノフ先生没後十年にして著者のもとに届いた手紙で解き明かされた謎とはなんだったのか、そこはこの本で秘するが花とされている。そして「クロイツェル・ソナタ」が読みたくなった。以下抜粋◆そして言葉が心を超えないことを証明してしまうような瞬間が人生のどこかにあるからこそ、人はどうしてその瞬間が生まれたのかを少しでも伝えるために、長い長い叙述を、本を、作りだしてきたのだ。◆そうしてようやく、先生に出会ってからの「学び」がそれまでとどう違い、自分の身になにが起きたのかを知った。それは私にとって、少しずつ生まれ変わることだった。新しいことを知るたびに、それは単なる知識ではなく、細胞がひとつひとつ新しくなるような喜びだった。◆
 | 夏葉社 発売日 : 2011-07-04 |
 | 中央公論新社 発売日 : 2021-10-18 |
著者が西洋史専門ゆえに、メインはヨーロッパの話題、特にホロコースト否定論の話題が大半を占める。歴史修正主義は、ある種の情熱に支えられていて、何ら証明を行わないし、実証的に論破しても受け入れない、ただただ根拠もなく繰り返し疑問を呈するだけで、人々が確固として存在していると思っていた事象に揺らぎをもたらそうとする。そのコストは、繰り返し述べるだけなので低いにも関わらず、それを実証的にひっくりかえそうとすると、膨大な手間と時間と資金ががかかるというコストの高さ、非対称性。分が悪いな、と思ってしまう。◆「歴史家は現在手にしている証拠から、おのれの訓練と経験により、かなり可能性の高い推論を立てることができる。歴史はおそらくこうであったと推論する十分な根拠があるのだ。」「歴史学では、特定の事柄の証拠となる文書が存在しないことは、出来事の背景に意図や計画が存在しなかったことを意味しない。（略）歴史とは一点ではなく、全体であるからだ」という点は、専門家がやった場合と歴史修正主義者がやった場合で一般大衆に区別がつきづらいように思った。◆ただ、アカデミアが黙殺するだけでは、歴史修正主義者の論が広まることはあれ、静まることはないということもまた確か。◆最後のほうの、歴史問題の司法によるガバナンスには、 政治・司法・歴史のあいだのバランスがきわめて重要、均衡を保つために表現の自由が保障されていること、そして民主主義が機能していること、という趣旨のことが述べられるが、たとえば隣国がそれにあてはまらない場合はお手上げにも思える。◆ただただ、歴史を、あるいは目の前の事象を自分の都合の良いようにイメージ操作したいだけの言葉の言い換えや、あからさまな相手側への責任転嫁には、いまなお続くウクライナへ攻め込む指導者の像と重なるところが多々あった。
 | ベネッセコーポレーション 発売日 : |
言い換えや韜晦に満ちた錬丹術的読み解きと、すさまじい「九」へのこだわりを感じさせる数秘術のところが面白かった。「「西遊記」とは、かくして、孫悟空をめぐる物語の成立にまつわる長い歴史のほかに、その物語の解釈の歴史をもないまぜにした世界なのであり、そこにこそ、いまもって解けぬタオ的な隠秘学のおもしろさがひそんでいる。」(p.166)とあるので、著者のこの本をも含む一連の西遊記関連の著書も、西遊記の一部？では、といったらすこし視点をずらしすぎかな。◆男の「不瀉還精」こそが長生に不可欠、としたあとに、注で、「不瀉還精」では子供ができないので、ふつうは「還精補脳」といい、年齢に応じた性交回数などを決める、ニーダム参照とあったくだりはニヤリとしてしまった。◆孫悟空と龍と馬の関係について論じたという「孫悟空との対話」（NHK人間大学テクスト）も手にとってみたくなった。
 | イースト・プレス 発売日 : 2022-12-17 |
もうタイトルだけでおかしくてお腹いたくなる笑ってしまった。NHKの番組名や登場人物、言葉のはしばしに「犬」をまぜこんでくる漫画。犬HK俳ぬ、ダーウィヌがきた！、ピタゴラスイッヌ、など。力技なとこも随所に感じつつ、基本笑ってしまう。特に、犬う院さんとワン野監督の造形が秀逸すぎてツボでした。犬がチョコレートを飲めるようにする話は普通に引き込まれてしまった。
 | 河出書房新社 発売日 : 2022-10-22 |
フロイト、E・ブロンテ、ヘッセ、ウルフ、ドフトエスキーの作品に題材を取り、その中で夢について書かれた箇所を漫画化。燃え上がる少年のイメージは鮮烈。「クヌルプ」のさまよう魂の描き方が心に残る。
 | PHP研究所 発売日 : 2016-09-20 |
アケメネス朝ペルシア、ヘンリー8世、ニュートン、西太后、カトリック両王などが登場。予言が怖くて子供を家臣に殺させようとするとか今の価値観としてはどうかと思うけど、アケメネス朝でもこれは…と思われたから記録に残ったのだろうか。ヘンリー8世は娘たちにツッコミをいれられまくるという体裁で、うちの母をよくも！と最初から最後までどつかれてるのは理由からしてむべなるかな。カスティーリャ、アラゴンの統一、レコンキスタ、口癖が「インド！」のコロンブスなど、15世紀後半から16世紀初頭のスペインはわかりやすくまとまっていたと思う。あとニュートン、意外とやりたい放題。
 | 岩波書店 発売日 : 2022-06-30 |
(1)亀谷学「初期イスラーム時代の史料論と西アジア社会」は、初期イスラーム共同体の歴史についての豊富な史料が、ほとんど採用する楽観派から、ほとんど信用ならないとする懐疑派までがいて、その中間のものがどの時代のどの史料を信じるかは研究者間で一致を見るのは稀な状況を活写。ムスリム史料を一端脇に置き、非ムスリム史料や碑文、貨幣、パピルス文書などにあたることも重要。カリフの称号とその性質に関わる問題に新たな展望が開けたケースも。ただお互いに否定しあうものではなく、相互に参照すべき、と。(2)三佐川亮弘「ヨーロッパにおける帝国概念と民族意識-中世ドイツ人のアイデンティティ問題」は、以前読んだ石井宏「反音楽史」があまりに自明なものと描いてきた17・18世紀「ドイツ人」「イタリア人」に引っかかりをおぼえて、手に取った一編。史料上、「ドイツ人」「ドイツ」という民族的、地理的名称が初めて自称として使用されたのは1000年ごろ、「ドイツ王国・国王」は1070年代以降。オットー一世から三世(921-1002年)の集中的なイタリア政策が「ドイツ人」という超民族的、近代ネーションに先行する「原基的ネーション」形成の起爆剤に。それに対応したイタリア側諸民族も「ローマ人のローマ帝国」ではなく「ドイツ人のローマ帝国」という政治的現実に直面する中で「イタリア人」としての共通の民族感情を育み出した。「ローマ帝国」を志向する皇帝権、それを「ドイツ王国」に限定しようとする「教皇権」。両者の狭間で揺れ動く「ドイツ人」の複雑に捻れたアイデンティティ。「宗教」「政治」の領域でそれはまた幾重にも引き裂かれていく。残されたほとんと唯一の絆は共通の「言語」によって結ばれた「民族」なるフィクションであった、ということのよう。それが新たな段階を迎えるのは19世紀だった、と。(3)佐藤健太郎「アンダルスの形成」で興味深かったのは、イベリア半島の在来社会がすべて断絶したわけではない、「アンダルス」がイベリア半島のすべてを覆っていたわけではない、同じイベリア半島内に異なる特徴持った社会が隣接して形成されたことが西アジアや北アフリカのイスラーム社会と比べ異色、といったところ。(4)高野太輔「初期イスラーム時代のカリフをめぐる女性たち」は、なぜイスラーム世界に女性カリフはいなかったのか？（スルタンはいたのに）、ウマイヤ朝アッバース朝のカリフには母系の血筋で即位した者が一人もいなかったのか？といった疑問から、当時のアラブ社会の慣習、考え方が語られる。当時のアラビア半島、個人と個人の社会的距離をはかる基準は第一に父系の血縁であったこと。ただ、カリフの母の出自はウマイヤ朝末期に大きく変化（アラブの名族から奴隷出身者へと）。彼らの社会の常識、つまり異民族の母から生まれたものは社会的地位が低いという考えの消失がうかがえる、と。
 | 中央公論新社 発売日 : |
童子時代の斎藤道三と松永久秀、津島天王祭りの織田信長、金と銀の独鈷が舞う中秀吉の天下にかけることにした小早川隆景。ハサンと東方見聞録、マルコ・ポーロがクビライの天幕でみた、金と没薬と乳香の奔流。鮮烈な色のイメージに彩られた歴史奇譚。
 | ミネルヴァ書房 発売日 : 2016-08-10 |
天野純希「南海の翼」読んで、強烈なヒール役として描かれていた久武親直をいつか調べたいと思っていてようやく果たした。当初は兄とともに土佐の高岡郡一条家配下の国人の支配に携わり、その後伊予の軍代として配置、中富川の戦い参戦、秀吉に降伏後は、三家老として元親・盛親不在の留守居に他の家老と協調しての文書発行（独裁的権力ではなく）など内政面で活躍、そして大坂の陣には参戦しなかったが盛親のために、石谷家縁戚の蜷川道標に盛親のとりなしを依頼。親実、親和殺害のために讒言繰り返し、耄碌した元親が受け入れたとする軍記物に対しては、吉良、津野ともに大身で遠心的な勢力だったため、君主権強化のための強硬策だったのでは、といったところか。◆長宗我部家全体の動向としては、a.1580年頃、伊予で織田信長派同士で戦ってしまったので、阿波では織田派同士でたたかうことを避けた。信長が一方的に同盟を切ってきたのではという疑念。b.四国攻めに対して、恭順の姿勢を示しつつ、渡海してきた織田勢の退路を断って撃破するプランもたてていたのではという見方。c.1584年に毛利家との同盟を切り、その後も伊予の領有を狙い続けたことが、外交決着をできなくし、敗北をもたらしたという視点。d.井伊直政が、関ヶ原後の盛親への堪忍分支給への障害として懸念していたのは浦戸一揆のみであり、津野親忠の話題は一切出てこない、江戸時代の因果応報的なストーリーはなりたたない、と。といったあたりが目にとまった。
 | 新潮社 発売日 : |
北大が舞台と知り手にとってから何度読んだかな。ひさびさの再読。結局異国にわたったKのもとへいかない理由は、抽象的すぎてわからない。最初は山に、次に苺畑に、自分の新生をかけて果たせなかった佐智。同じく演劇の脚本に、演劇論執筆に賭けていた都筑が新生を果たせなかったのに呼応するように。佐智に反して、Kの物語になるよりは現実のKに飛び込む方がよっぽど、と思うのは読み手のあさはかさか。◆つまり自然が創造したものを、人間は模倣するってこと。p.223◆北国に来て四年目の苺畑で、佐智は自分のために物語を書いたのだ。名前もわからない誰かさんのために、石を積んだわけではなかったのだ。p.265◆
 | 講談社 発売日 : 2022-10-21 |
みんなに愛されてる保健室の先生三枝先生。けど寂しいのは卒業するとみな彼女を忘れて誰も尋ねてこないこと。そんななか六年、保健委員をつとめていつも近くにいてくれた生徒が卒業することになり。◆「自由でからっぼ 変幻自在 軽くて丈夫 悪くないでしょ？」「健康で正直で強くて現実的」◆最後の会食での冗談めかした告白が、パッとその場の空気を和ませる技だけ持つもう一つの告白に。長く近くで見てもそれはどこまで行ってもその人の中の像。けどたとえ少し美化されていてもそれを伝えてくれるのは嬉しいこと。初めての、ふたたび訪れてくれる卒業生になることを予感させてくれつつ閉じられる物語。
 | 日本文芸社 発売日 : |
同じ著者の「孫悟空の誕生」「西遊記の秘密」に続けて手に取る。ただ、あちこちに書いたものをまとめたとのことで、この本の中の文章同士でも、他の著書と比べても、重複が多く感じられた。巻頭、50頁ほど使って豊富に図版があるのはよかった。何箇所からも参照するため、この形式になったと思われ。メインはタイトルにもあり、あとがきにもあるとおり、「孫悟空はサルかな？」。"孫悟空はみかけ上は疑いもなくサルではありますが、虎であり、龍であり、石であり、金属でもあります、雷神でもあります。「孫悟空はサルかな？」(p.133-134より)というところに凝縮されている。どうしてそうなのかは、ざっとのべられている。他に、漢の武帝の妖怪の取り扱いから、強大な国家権力とは、たかが妖怪ごときにも漏れなく及び、民衆の想像力も国家権力の支配と監視からのかれられないといったところ。「辯機がわざわざ「山海経」の足らざるところを補うものと、「大唐西域記」を規定したことは、この正確無比な地誌の根源に、荒唐無稽な小説「西遊記」の世界を導き出す壮大な力がひそんでいることになりはしないであろうか。それは、すなわち、著しく性格を異にするこの双方の書物が、それぞれに一種の宇宙論（コスモロジー）を持っていることなのである」(p.221)といったところが目にとまる。意外なところでは、なぜオスマン帝国のスレイマン大帝の夫人ロクセラーナ（ヒュッレム）の肖像画があるのかと思ったら、ビュスベクあたりから彼女の容貌が詳しく伝わっており、19世紀に金糸猴の標本をもらったある学者がその標本の思い切り天井を向いた鼻の頭に驚き、ロクセラーナを思い出した、というエピソードであまりいい話ではないな、と感じた。
2022年12月31日
2022年に読んだ本best10
順不同で10冊。
・川内有緒 目の見えない白鳥さんとアートを見に行く
・岸政彦（編） 東京の生活史
・週末北欧部Chika 北欧こじらせ日記
・鈴木忠平 嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか (文春e-book)Kindle
・馳星周 比（なら）ぶ者なき
・高森純一郎 辺境の民 文学フリマ札幌
・ナガノ くまのむちゃうま日記 1 kindle
・本のエンドロール
・高崎彰 アカハチ
・源河亨「美味しい」とは何か 食からひもとく美学入門 中公新書
・川内有緒 目の見えない白鳥さんとアートを見に行く
これは立て続けに二度読みました。目が見えないのにどうやってアートを？という疑問から、見えない人の世界はどうなってるのか、アートを見るとは？などなど、普段自分が見ている世界と違った視点をくれて、かつ白鳥さんがチャーミングで。theater for ALLで映画も観ちゃうぐらいのハマりぶりでした。
・岸政彦（編） 東京の生活史
前の職場の餞別でいただいた図書カードでまっさきに買った本。圧巻の1000頁超。100人分の人生がどどっと流れ込んでくるようでものすごい読み応え。自分が語るとしたらどう語るだろうかと思いを馳せつつ。
・週末北欧部Chika 北欧こじらせ日記
北欧が好きすぎて好きすぎて、会社員しつつ寿司職人修行して、フィンランドで寿司職人として就職！Chikaさんの著書はこれ以外も全部買い、コミックDAYSの連載もおっかけてます。本人もだけどまわりの人もキャラがたってて、すごくいいんです。
・鈴木忠平 嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか (文春e-book)Kindle
ホリエモンメルマガの編集者S氏があまりの文章のうまさに嫉妬する、と書いていて手に取りましたが、中日ファンでも落合ファンでもないのにぐいぐいと引き込まれ、平日なのに深夜まで読んでしまった。指揮官の孤独と栄光。
・馳星周 比（なら）ぶ者なき
藤原不比等が主人公。圧巻の政治劇。続編「四神の旗」や、研究者の書いた概説書などもあさりまくり、奈良時代初期にハマるきっかけになった一冊。
・高森純一郎 辺境の民 文学フリマ札幌
毎年の楽しみ、高森さんの作品。今回の舞台はウイグル。一方的な抑圧が、というイメージがあるが、実際はどう生き、どう考え、選択肢の自由さがときにどういう作用をおよぼすかということへ考えが至る。だからといって全部決められたいわけでもない。そのグラデーションのどこに自分を置くのか。
・ナガノ くまのむちゃうま日記 1 kindle
買って半年たつのに、いまだに折にふれてKindleひらいて何ページか読んでしまう。最初はつくろうとしてたのに、買ったほうが早インパラに影響されて、買ってばかりになっちゃったくま。けど、おいしそうたのしそうなのでぜんぜん問題なく、何度もながめたい。
・安藤祐介 本のエンドロール
出版営業最前線！最初は理想ばかり語ってぜんぜん行動がおいついてない主人公が、だんだんと理想へと仕事を近づけていっていて、それをめぐる作家、編集、印刷工場、書店などなど本をめぐる人々とのやりとりがグッときました。これも平日朝方まで読みふけってしまった本。
・高崎彰 アカハチ
史料の少ないオヤケ・アカハチ。波照間島にいったときから気になってた英雄だけれど、まさかアカハチ研究で一冊にまとまるとは！もうそれだけで買い！でした。
・源河亨「美味しい」とは何か 食からひもとく美学入門 中公新書
情報におどらされない、五感だけであじわう、真のおいしいなんてあるのか？という問い、われわれは結局情報を食べているのだ、という思い。題材が興味深すぎて、論証はときに理屈っぽくもかんじたけど、面白かった。参考文献も手に取り、彦摩呂の「海の宝石箱やあ」を題材に一章書いた本とかとも出会えておもしろかった。
・川内有緒 目の見えない白鳥さんとアートを見に行く
・岸政彦（編） 東京の生活史
・週末北欧部Chika 北欧こじらせ日記
・鈴木忠平 嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか (文春e-book)Kindle
・馳星周 比（なら）ぶ者なき
・高森純一郎 辺境の民 文学フリマ札幌
・ナガノ くまのむちゃうま日記 1 kindle
・本のエンドロール
・高崎彰 アカハチ
・源河亨「美味しい」とは何か 食からひもとく美学入門 中公新書
・川内有緒 目の見えない白鳥さんとアートを見に行く
これは立て続けに二度読みました。目が見えないのにどうやってアートを？という疑問から、見えない人の世界はどうなってるのか、アートを見るとは？などなど、普段自分が見ている世界と違った視点をくれて、かつ白鳥さんがチャーミングで。theater for ALLで映画も観ちゃうぐらいのハマりぶりでした。
・岸政彦（編） 東京の生活史
前の職場の餞別でいただいた図書カードでまっさきに買った本。圧巻の1000頁超。100人分の人生がどどっと流れ込んでくるようでものすごい読み応え。自分が語るとしたらどう語るだろうかと思いを馳せつつ。
・週末北欧部Chika 北欧こじらせ日記
北欧が好きすぎて好きすぎて、会社員しつつ寿司職人修行して、フィンランドで寿司職人として就職！Chikaさんの著書はこれ以外も全部買い、コミックDAYSの連載もおっかけてます。本人もだけどまわりの人もキャラがたってて、すごくいいんです。
・鈴木忠平 嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか (文春e-book)Kindle
ホリエモンメルマガの編集者S氏があまりの文章のうまさに嫉妬する、と書いていて手に取りましたが、中日ファンでも落合ファンでもないのにぐいぐいと引き込まれ、平日なのに深夜まで読んでしまった。指揮官の孤独と栄光。
・馳星周 比（なら）ぶ者なき
藤原不比等が主人公。圧巻の政治劇。続編「四神の旗」や、研究者の書いた概説書などもあさりまくり、奈良時代初期にハマるきっかけになった一冊。
・高森純一郎 辺境の民 文学フリマ札幌
毎年の楽しみ、高森さんの作品。今回の舞台はウイグル。一方的な抑圧が、というイメージがあるが、実際はどう生き、どう考え、選択肢の自由さがときにどういう作用をおよぼすかということへ考えが至る。だからといって全部決められたいわけでもない。そのグラデーションのどこに自分を置くのか。
・ナガノ くまのむちゃうま日記 1 kindle
買って半年たつのに、いまだに折にふれてKindleひらいて何ページか読んでしまう。最初はつくろうとしてたのに、買ったほうが早インパラに影響されて、買ってばかりになっちゃったくま。けど、おいしそうたのしそうなのでぜんぜん問題なく、何度もながめたい。
・安藤祐介 本のエンドロール
出版営業最前線！最初は理想ばかり語ってぜんぜん行動がおいついてない主人公が、だんだんと理想へと仕事を近づけていっていて、それをめぐる作家、編集、印刷工場、書店などなど本をめぐる人々とのやりとりがグッときました。これも平日朝方まで読みふけってしまった本。
・高崎彰 アカハチ
史料の少ないオヤケ・アカハチ。波照間島にいったときから気になってた英雄だけれど、まさかアカハチ研究で一冊にまとまるとは！もうそれだけで買い！でした。
・源河亨「美味しい」とは何か 食からひもとく美学入門 中公新書
情報におどらされない、五感だけであじわう、真のおいしいなんてあるのか？という問い、われわれは結局情報を食べているのだ、という思い。題材が興味深すぎて、論証はときに理屈っぽくもかんじたけど、面白かった。参考文献も手に取り、彦摩呂の「海の宝石箱やあ」を題材に一章書いた本とかとも出会えておもしろかった。
 | 集英社インターナショナル 発売日 : 2021-09-03 |
(2022.10.10読了分)再読。前回読んだ時に感銘を受けたところに加え、◆ものを見ることの曖昧さ。過去の記憶は常に塗り替えられ、常に新鮮な状態の「過去の記憶」、"ひとは「時」というものに抗うことはできないけれど「時」を宝物にすることはできるから"(p.328)。みんなと見ることでひとりで見るのでは気付けなかった核心にせまれることもあること。◆なぜひとは不思議に思うのか、その不思議さ自体がわからない、それが彼の美術鑑賞の源流、つまり「はじまりのはじまり」なのかもしれないp.310◆わたしたちは、白鳥さんの見えない目を通じて、普段は見えないもの、一瞬で消えゆくものを多く発見した。流れ続ける時間、揺らぎ続ける記憶、死の瞬間、差別や優生思想、歴史から消された声、仏像のまなざし、忘却する夢p.312◆といったあたりが今回の再読では目にとまった。青山拓央「心にとって時間とは何か」講談社現代新書、川内有緒「空をゆく巨人」は読んでみたくなった。(2022.06.23読了分)図書館のアート特集コーナーに置かれていて手に取る。タイトルからして、おもしろそうだなあ、と。まずは、目が見えないのにどうやってアートを見るんだろう、という疑問から。最初は、一緒に美術館に行き、一緒に行ったひとが見たままの感想や、どんな作品か説明し、それを聴くことで鑑賞しているんだと思ってた。それにより「見えている人」もいつもより白鳥さんに伝えようと深くじっくり見るようになった。新たな発見もあった。お互いにいいことではないか。といった地平から。いろいろなアートに、いろいろな人とおもむき、対話を重ね、白鳥さんの映画を撮ることになり。白鳥さんは言葉や会話から多くの情報を受け取っていると思い込んでいたが、それは一部で、会っているときの、空気とか雰囲気とか、どっち向いて話してるのかとか、声の大きさとか距離とか。そういったものも大事にしていたとわかり。最後は「この世界で笑いたいんですよ。」「絵を見る活動は、ただそこにいるひとたちといたいだけ」言葉に深くうなずく境地へ。アートに救われる、アートに触れてこんな風に世界を見ていいんだ、という感覚は、札幌国際芸術祭2017のいくつもの展示に深くハマったことがある身としてはよくわかるし、現代アートに惹かれるのはこういうところなんだなあと再認識。以下備忘録。◆よくわからないものに惹かれる いやたぶんわからないの向こう側に惹かれている(川内有緒)◆その人がそのひとのままで作品を見たり、作ったりすることが尊いとおもうんだ(マイティ)◆盲人というだけで、他の感覚が鋭いと思われても…鋭い/鋭くない、才能ある/なしは見える人と一緒◆あなたはこの世界をどう見ていますか (作品からの問いかけ)◆しかし、正しい知識がなくとも作品について自由に語る資格はあるのです、というのがマイティの「鑑賞道」である◆ 「めくるめく現代アート」読んだあとなので、特にマリーナ・アブラモヴィッチの章は興味深く読んだ。もっと作品や著書、講演映像などにも触れたいと思った。◆
 | 筑摩書房 発売日 : 2021-09-21 |
※No.は便宜的にこちらでふりました。◆東京の縮図ではない、とあったけど、「東京にいる人、いた人、いたことのある人の話」(No.148)というテーマでつのったうちの150人の語り、人生。月並みだけど一読、嗚呼、人生って不公平。一族が築いた資産でガツガツ働かなくて生きていける人から、両親がいなくて養護施設に入れられて里親が引き取ってくれたと思ったら補助金で贅沢する目的で教育費生活費をほぼ渡さず抑圧してこきつかわれるだけみたいな人まで振れ幅大きく。これで全部「自己責任」とか「置かれた場所で咲きなさい」とか言われたら暴れたくなるわな。その環境を逍遥と受け入れる人から未だに納得いかなくて憤懣やるかたない人までさまざま。様々さを様々なまま、ただ読み、知り、受け入れ、といった読書体験でした。部分的に150人分の人生を追体験。読みやすさは千差万別だけど、おそらく編者の方針でだいぶ原型が残されてるのかと。ただ、ずっと「あははは（笑）」が連発されてる人の話は、内容に比して受け入れられ方で損してるなあと思った。◆一番理路整然とすっと入ってきたのは、話すプロだからなのか僧侶(No.30)。インプットがすべて法話というアウトプットに活かされ、固定的な自己なんてないみたいな東洋哲学の面白さを語り、生き方がそのまま教えに直結するシンプルさと怖さ（何かやらかすとお釈迦様の評価も下がっちゃう）、檀家制度が細る中でどう足場を固めていくか、みたいな話がおもしろく。◆一番ぶっとんでいたのは、No.112の、ADHDで苦しかったけど覚せい剤のおかげで生き延びられた、妻は抗うつ剤もい効かずに鬱で苦しんでいたが危険ドラッグのおかげで生き延びられた、という夫婦の話。いい薬効だけで悪い症状でてないんだ？それ話して大丈夫？今はどうなの？もっとヤバい話があるけどここでは語られてないってどういうこと？といくつもの疑問符重ねながら怒涛の語りに圧倒された他に以下の方、エピソードが印象に。◆◆◆◆◆ゴージャス松野のドキュメンタリーを撮った映像作家(No.10)◆芸大で声楽専攻を専攻し、BIGO LIVEて配信アプリなど駆使し、生計につなげていく話(No.28) ◆日本では中国人といわれ、アメリカでは中国人じゃない日本人だろといわれ、寄る辺なさを痛感した美術家のチョーヒカルさん(No.35)◆川崎市内のその街は庶民的、必要なもの全部ある、手ごろで便利なかんじを「その「ほろーん」っていう感じが好きだったんですよね」(No.39)と語った人。◆耳の聴こえない方の語る、"聞こえない人たちの世界って、その国々の小さくて密なコミュニティがある" "アメリカ手話やフランス手話など国によってもちがう" "「怒ることは大事だけど、怒ることは新しい分断を生むこともあるから、美しくないときもあるよ」ってことを教えてくれたシチリア島の人"(No.45)◆ジャズミュージシャンで、ドラムの先生が、「わかったんだったらいいよ。くだらないことをやってみて、くだらないってわかったらそれでいいんだ」と言ったというエピソード。(No.58)◆元八百屋でいまはビッグイシューを売る人(No.70)◆脳梗塞でマヒが残った人の話(No.73)◆インドネシア出身で、敬虔じゃないムスリムだけど、トンカツを食べた際に雷おちてこないかとそっと天をうかがった話(No,77)◆占領下沖縄に暮らした人が感じた、沖縄人は食べるのに事欠いても、アメリカ人は食べ物を捨ててた、金網のなかだけ豊かなのが見て取れて違和感を感じた、という語り(No.86)◆主婦から区議になった人の「政治家の仕事は区民の代表として政策を決めることだと思ってたんですけど、そうではなくて、行政が決めたことを正当化するための調整をしなきゃいけない。これではまるで行政の代理人じゃないかと感じました」(No.88)◆フランスだけど、グアドループ出身。クレオール文化で育ち、フランスで教育受け、フランス語で話し、カスレ食べたことないけど、ブフ・ブルニギョンがなにかも知ってる。日本人がいわゆるフランス的体験を求めて近寄ってきても、その人たちが想像するフランスを私は与えられないと語る、安積遊歩さんのカイロ会議のスピーチに感銘を受けて研究テーマを決めた車椅子に乗るイヴァンカ・ギヨームさん。(No.90)彼女の研究にとても興味がわく◆お客さんに探りを入れながら、お客さんと一緒にカクテルをつくっていくかんじ(No.96)◆気志團のフェスなどをてがけた人(No.106)◆社会学科の卒論、登川って炭鉱は、坑夫たちが「友子」（ともこ）というヨーロッパでいうギルドみたいな、技術伝承機能、共済機能、親分子分ていう人間関係の機能ももっている、て話。「一番思い出したくないことを人間は忘却って形で忘れる」(No.113)◆愛人宅に押しかけ、帰宅する夫を出迎えたら、ぎゃっといって裸足で逃げ出すから、旦那の背中に靴を投げて「靴ぐらい履けっ」て。そういうドラマ？がありました、という出版社勤務の編集者。(No.120)◆「土地や人種に根付いたものがある人が自分の国を悪者として見るのは、もう不可能に近いんじゃない？」「アメリカは隣りの人は取り締まらない。ガバメントにさえ引っかからなければ大丈夫。」「日本の場合、法律を守るより、文化と今までやってきたことを守るっていうほうが強いのかもしれない。」と語るフォトグラファー(No.108)◆活版印刷の文選工の話。貴重な、本当に貴重な(No.124)◆ほぼ一〇年、医学部浪人した医学生(No.134)◆伊豆七島出身者の、「島に住んでると、誰のせいにもできないことってたくさんあって。天候であったり、飛行機が欠航して上京できない、予定が予定通りいかないとか、台風で家が壊れちゃったりとか。（略）運命を受け入れましょうっていう、という語り(No.143)◆残留孤児向けの介護をはじめた方(No.145)◆アイヌ民族として。「なんで国立民族博物館で、アイヌのこと紹介しなきゃいけないんですか。消えそうだからですよね。なぜ消えそうになるのかを、伝えなきゃいけないですよね。」(No.150)
 | 世界文化社 発売日 : 2022-02-18 |
最近個人的に大好きでハマってる週末北欧部chikaさん。北欧好きがこうじて、フィンランドに寿司職人として移住！なぜ？どうして？どうやって？という紆余曲折な経緯は、この本を読むことで知ることができました。好きなだけで終わらせずに、少しでも近づこうと、北欧にかかわれるだけを軸に就職活動、その後、会社も変わるが、ブログやったり北欧雑貨バイヤーやったり、北欧イベントやったり、チャットで北欧好きの日本人や、フィンランド人の友人が増えていき、行き来するうちに憧れがつのり、そうだ！移住しちゃえばいいんだ、何して働こう？ん？寿司職人だとすごくたくさんオファーがある、よし、寿司職人になろう！そのために寿司の専門学校へ！という行動力、フットワークがすごいなあ、と。◆そしてフィンランド愛を語る段。駅の地下街の奥のうすぐらいけどお気に入りのカフェ。カラオケもクラブもどっちも苦行なのにどっちも行き、カラオケはオンステージ！な一幕。好きなフィンランド音楽(Scandinavian Music Group- Valmis,Suvi Terasniska-Sina olet kaunis)なども取り上げられ。昔カーディガンズとかリサ・エクダールにハマった身にはしたしみやすく◆飲食店を知りたいと始めたカフェのバイトでオーナーの言ってた「お客様のためにお客様を選ぶ、選ぶ強さを持たないとお店は続かない」が心にしみる。◆北欧ピクニックで仲良くなった仲間との北欧オンライン飲み、テーマは北欧と俳句の回はどんな話がくりひろげられたんだろう◆
 | 文藝春秋 発売日 : 2021-09-24 |
ホリエモンメルマガで編集Sさんが、その文章力に嫉妬するという趣旨のことを書いてて、落合ファンでも、中日ファンでも、ましてや野球好きでもないのに手に取った一冊。◆情より理、感情より技術。情報は極力統制し、決断の理由も容易には明かさない。勝つことがファンサービスとそれ以外のことは切り捨てていき。最初は恐れ、距離を置いていた選手たちも、落合監督の言うこと、やることで結果が出るとわかれば納得し、それが8年間ですべてAクラス、1度の日本一、4度のリーグ優勝という成績に。本人、および、高額契約だが活躍できなかった投手、コーチ、守備の名手、打撃の才を秘めた者、サイドスローのセットアッパーに活路を見出したもの、東大卒の切れ者の球団職員、スカウトなどなどへのインタビューを重ねた上で語られる落合監督像。そしてこれは、最初は末席につらなる伝書鳩と自嘲していた著者が、一級の記者へと成長していく物語でもあった。契約書こそがすべて。野球選手は個人事業主、自分のためにプレイしろ、稼ごうと思え、それが結果につながればそれでいい。ヘッドスライディングはするな、選手生命を失いかねない。その禁じていたヘッドスライディングを、自分で考え決断してここぞという場面で荒木が繰り出して、勝利をもぎとったシーンは号泣せずにいられなかった。最後は、理由にもならぬ理由で（ただ嫌いだからとしか思えないような態度で）球団幹部から契約を打ち切られ、そこから逆転優勝、日本一まであと1点のところまで迫るという、生半な小説よりも劇的な展開。しかし、今も、落合監督の考えを理屈では正しいと思っても、まるで自分がバカにされているように感じ、排斥しようという空気は、各所に蔓延している、と感じた。落合監督が著者に最後に贈った言葉がずしりと重く。
 | 中央公論新社 発売日 : 2020-03-19 |
場面は、主人公の藤原不比等が、自らも信頼を受け、玉座にと思い極めていた草壁皇子の死に立ち会うところからはじまる。持統天皇、文武天皇、元明天皇、元正天皇と、時に協力しあい、信頼を受け、政治に腕をふるい、かけひきをし、皇族や並み居る臣下たちを説得し味方につけ、あるいは蹴散らして、権力を振るう。底には、「父上は満ち足りていたであろう。吾は餓えているのだ」「この国の根幹を変えようとしているとは露ほども悟られてはならぬ。天皇の力を奪おうとしていると見抜かれてはならぬ。未来永劫に続く力を求めていると知られてはならぬ」という思いを抱きつつ。古からのしきたりをねじ曲げ、天皇を神にまつりあげ、本来なら資格のない者を皇位に就けようとする、と謗られても堪えず。政とは、なにかを手に入れるためになにかを差し出す、を地でいき、ひとつひとつ積み重ねていき。最後は、長屋王のなかに、若き日の自らとおなじ野心を感じながらも、死につく、と。「古事記」も天皇を頂点とした国家のありようもみな、藤原不比等が自らの力をふるい、藤原家を未来永劫繁栄させるためにこしらえたもの、という見方から描かれた歴史絵巻。そこまでするのか、そこまで先回りして読み切るのか、といった思いを目の当たりにする圧巻。高島正人「藤原不比等」（吉川弘文館）とあわせて読むと、また味わいが増します。
| 発売日 : |
ホノルル-成田間の飛行機内で、中国系アメリカ人の人権弁護士に、ウイグル族の青年がその半生を語るかたちの小説。独裁政治と行っても、全面的で一方的な統治が繰り広げられてるわけではない。統治層が決めた方針があって、それに従ったほうが生活上「得」をするよう巧妙に誘導され、できるかぎり政治運動や宗教には興味を持たないようにされる。ガス抜き程度のものは保証されるが。公の場での振る舞いや発言は、言いたいこと/やりたいこと、ではなく、言うべきこと/やるべきことを行うよう暗にもとめられ、それをはずれると大きな不利益をこうむる。そんな中で学業優秀なトルファン近郊の村の青年が、メッカ巡礼、大学進学、旅行会社への就職を経る中で抱いてきた思い、多数派民族から少数派民族に向ける、言葉のはしばしにあらわれる優越感や理解が行き届いていない感。自らの仕事は、自らの愛する伝統文化を見世物にすることに加担しているのでは、といった呵責。信仰心と普段の生活の板挟み。「自分で選択する」それらがあわさって、最後は、すこしでも自分と家族が、ある程度リベラルである程度強権的でありつつムスリムらしく生きられる新天地をめざした、といったところだろうか。”決して差別や弾圧を受けた訳ではないし、アメリカに幻想を抱いていた訳でもない。ただ、少数派として国内にいる限り、自分に付きまとう性質やラベルが重すぎた...」(p.121)” "この国には言論の自由がある。しかしそうであるが故に、何が最適な解釈なのかは、自分で決めなければならない。"(p.133) ”アメリカで暮らしていた時に、自由や民主主義の恩恵に与っていると実感する場面は、なかった訳ではありません。でも、少なくとも私と夫にとっては、そのコストが大きく感じられ続けました。”(p.144)
 | 講談社 発売日 : 2022-06-22 |
急に読みたい気持ちが止まらなくなり、思い立って買ってしまった。twitterではちらほら見かけてたんだけど。大好きな「買ったほうが早インパラ」たくさん見れてうれしい。最初はつくろうつくろうとしてたくまさんだけど、だんだん早インパラに感化されたのか、コンビニで買ってきたりするようになり。影響されて、限定のコーヒーゼリー、探しに行ったなあ…見つけられなかったけど。くまがほんとうにおいしそうに食べる絵をみてるといとおしくなってくる。
 | 講談社 発売日 : 2021-04-15 |
本好きにはぜひ読んでみてほしい、作家が本を書き上げてから、どうやって本が造られて店に並べられるかまでがこれでもかと描かれる。印刷会社を舞台にしたマンガ「刷ったもんだ」の活字版！と個人的には思った（あちらは企画デザイン課、こちらは営業課だけれど）。ただ、開発・制作側の会社員生活を送ってきた身には、最初は主人公にものすっっごく腹が立つ。印刷会社はメーカーだ、とか高い理想をぶちあげるが、やってることは、編集や作家の言う"急なスケジュール変更、短納期、度重なる仕様変更、もともと無茶な要求、採算のあわない案件"をすべて「はいはい」と丸飲みして、現場に丸投げして現場に負担させるだけ。本当こういう営業前の会社にもいたわ！と怒りで血管がぶちぎれそうに。ただ、章を追うごとに、何度も何度も胃の痛くなるような場面に遭遇しつつも、着実に成長していき、最後はかかげた理想は変わらないのに、仕事ぶりは成熟し、周囲の理解も得て、なんなら追いつきたい、追い越したいと思っていた先輩とすら、お互いに影響を与え合うようになっていて、胸があつくなる大団円。周囲の目も、最初は、クソみたいな仕事ぶりのくせに理想だけ高くかかげやがって、だったのが、最後には、せっかく仕事するんだから理想ぐらい高くかかげなきゃ、って感じに。営業だけでなく、工場での生産、生産管理、DTP、経営層から取引先の編集、書店、装丁作家、そしてラスボスともいえる作家まで、さまざまな視点、立場が語られてものがたりをより重層的にしている。最後に、この本に関わった方々の、本当の本のエンドロールがかかげられてるのもグッと来ます。
 | ハガツサブックス 発売日 : 2020-12-23 |
50年ぶりの八重山旅行、50年前の卒論、最近のオヤケ・アカハチをめぐる研究・実践の動向と、15年前に波照間へひとり旅したことのある身には興味深い題材が目白押し。50年ぶりの八重山旅行はおおむね穏やかなものだったが、泥にはまった船を腰まで泥につかって推したり、「オッホッホー」という仮面のトリックスターがお金をばらまく祭事といったあたりに興味を惹かれた。卒論「オヤケ赤鉢の乱の研究」は、オヤケ赤鉢の乱そのものだけではなく、むしろそれは一部で、もっと広く、乱前後の沖縄社会を文献資料、考古資料を使って、当時の生活、社会を明らかとし、封建支配に抵抗した郷土の英雄ではなく、15世紀先島社会を原始社会から古代社会へと移行する過程ととらえ、その中でいくつも起こった、広域を支配しようと試みる族長的支配者の一つであったことを明らかにする、といったものであった、と。それを受けて最近の研究・動向で、これまで明らかになってなかった発掘成果や、さまざまな研究が紹介され、大変参考になった。オヤケ・アカハチが尚王朝の末裔であることを詳細に論じた研究書まであるという驚き、韓国の英雄ホン・ギルドンがアカハチになったという説なども。
 | 中央公論新社 発売日 : 2022-08-22 |
タイトルからして心惹かれて衝動買い。「五感すべてを使わなければ普段私たちが感じる味にならない」「舌のどこに位置する味蕾も五つの基本味のすべてを感じられる」「区別できる種類の多様さをみるなら、味の大部分を決定しているのは嗅覚だとも言える」「形だけでなく色も味に影響。色はにおいも変化させる。色による味の変化はそのまま味の変化ということに」「舌ないし味覚のみで感じられ、かつ、他から影響を受けない「純粋な味」などありそうにない。多感覚知覚は私たちの知覚システムが自動的に行っているものであり、それぞれの感覚が得た情報は私たちの意志とは独立に勝手に統合されてしまう。」「「無垢な眼」や「無垢な舌」など存在しない」「「何がおいしいのか」という問いに対して文化を超えた唯一の答えがないとしても、それぞれの文化のなかでは答えはあるのだ」といったトピックや論点にワクワクしながら読み終えた。料理は芸術である、という論を論証する歳の手際などは理屈っぽいなと思いつつも惚れ惚れするものでした。◆さっそく影響されて、外食した際の料理をより五感を使って味わうようになりました。あと、われわれは情報を食べている、というのはある意味正しいんだな、と。◆参考文献のうち以下の三冊にはあたってみたい。(1)佐々木健一「タイトルの魔力」中公新書 2001年 (2)瀬戸賢一＆味ことば研究ラボラトリー「おいしい味の表現術」インターナショナル新書 2022年 (3)久野愛「視覚化する味覚---食を彩る資本主義」岩波新書 2021年
2022年12月03日
2022年11月に読んだ本
1101・安部龍太郎 十三の海鳴り蝦夷太平記 図書館 20221031受領
1103・ヨゼフ・コジェンスキー（鈴木文彦訳） ジャポンスコ ボヘミア人旅行家が見た1893年の日本 らくだや 20221022
1103・【再読】星野博美 戸越銀座でつかまえて らくだや 20221022
(1103・七海雅人 御家人の動向と北条氏勢力の展開(七海雅人(編) 鎌倉幕府と東北（シリーズ東北の中世史)所収) …安藤氏の乱関連のみ読了
1105・【再開】ジョン・ケージ著作選 ちくま学芸文庫 …小鳥たちのためにで割愛された、ダニエル・シャルルとの33のやりとりあり！
1105・尾崎世界観 祐介・字慰 20221105
(1105・つばらつばらにもの想ふ …喫茶つばらつばらの10周年記念誌
(1106・てげ通信 第15号 シーソーブックス
(1106・D1 torch シーソーブックス …対談企画第一弾。
(1106・きのう何食べた？20
(1106・スケラッコ ここは鴨川ゲーム製作所1
(1106・水凪トリ しあわせは食べて寝て待て1-3
1106・北の内海世界 図書館20221106受領
1106・北の環日本世界 図書館20221106受領
1107・【再読】垣根涼介 君たちに明日はない(君たちに明日はないシリーズ1)
1110・【再読】垣根涼介 借金取りの王子 (君たちに明日はないシリーズ2)
1112・【再読】垣根涼介 張り込み姫(君たちに明日はないシリーズ3)
1112・北海道新聞社(編) 七光星に輝きを 図書館 20221111受領
1113・【再読】垣根涼介 永遠のディーバ(君たちに明日はないシリーズ4)
(1113・灰原薬 応天の門16 kindle
1114・豆塚エリ しにたい気持ちが消えるまで シーソーブックス 20221112
(1115・ヴラド・ドラクラ6 kindle
1116・伊藤亜紗 手の倫理 講談社選書メチエ kindle 20221114
1117・東直己 さらば愛しき男と女たち 20221105
1119・【再読】管啓次郎 コロンブスの犬
(1119・北北西に曇と往け6
1119・ほしおさなえ 紙屋ふじさき記念館6 結のアルバム 20221118
1119・高桜方子 ココの詩 図書館 20221117受領 …はるな檸檬「れもん読むもん！」つながり
1120・山口椿 中国残酷女列伝 らくだや 20221112
1120・くどうれいん 虎のたましい人魚の涙
1120・甦れ！探偵物語 トロニカ 20220918
1120・山賀博之 大野木寛 オネアミスの翼 王立宇宙軍 小学館文庫
1121・坂木司(編) 和菓子のアンソロジー
(1122・紛争でしたら八田まで 11 kindle 20221122
1122・関川夏央 豪雨の前兆 20221105
1123・エロスin music 本戒 dual_books 20221115
1123・紺野文訳 モンタギュー夫人書簡集
(booklogなし 1124・【再読】紺野文 モンターグ夫人が見た18世紀のオスマン帝国社会 女性の暮らしを中心に
1126・【再読】垣根涼介 迷子の王様(君たちに明日はないシリーズ5) らくだや 20221022
1126・平田オリザ 道路劇場、バヌアツへ行く 本戒 dual_books 20221115
1126・庄司浅水 世界の七不思議 らくだや 20221119
(1127・イチケイのカラス1-4 コミックDays・kindle
1127・森本哲郎(編) オリエントの幻 らくだや 20221112
1127・札幌アートウォーク 北の出版社わけあり販売会 20221107 アートと札幌。本郷新、イサム・ノグチ、国松明日香、…石山緑地
(1127・早良朋 へんなものみっけ！1-6
1127・金森誠也 甦るアトランティス らくだや 20221126
(1128・中谷宇吉郎 北海道開発に消えた八百億円 青空文庫
1129・島田潤一郎 あしたから出版社 20221118
1103・ヨゼフ・コジェンスキー（鈴木文彦訳） ジャポンスコ ボヘミア人旅行家が見た1893年の日本 らくだや 20221022
1103・【再読】星野博美 戸越銀座でつかまえて らくだや 20221022
(1103・七海雅人 御家人の動向と北条氏勢力の展開(七海雅人(編) 鎌倉幕府と東北（シリーズ東北の中世史)所収) …安藤氏の乱関連のみ読了
1105・【再開】ジョン・ケージ著作選 ちくま学芸文庫 …小鳥たちのためにで割愛された、ダニエル・シャルルとの33のやりとりあり！
1105・尾崎世界観 祐介・字慰 20221105
(1105・つばらつばらにもの想ふ …喫茶つばらつばらの10周年記念誌
(1106・てげ通信 第15号 シーソーブックス
(1106・D1 torch シーソーブックス …対談企画第一弾。
(1106・きのう何食べた？20
(1106・スケラッコ ここは鴨川ゲーム製作所1
(1106・水凪トリ しあわせは食べて寝て待て1-3
1106・北の内海世界 図書館20221106受領
1106・北の環日本世界 図書館20221106受領
1107・【再読】垣根涼介 君たちに明日はない(君たちに明日はないシリーズ1)
1110・【再読】垣根涼介 借金取りの王子 (君たちに明日はないシリーズ2)
1112・【再読】垣根涼介 張り込み姫(君たちに明日はないシリーズ3)
1112・北海道新聞社(編) 七光星に輝きを 図書館 20221111受領
1113・【再読】垣根涼介 永遠のディーバ(君たちに明日はないシリーズ4)
(1113・灰原薬 応天の門16 kindle
1114・豆塚エリ しにたい気持ちが消えるまで シーソーブックス 20221112
(1115・ヴラド・ドラクラ6 kindle
1116・伊藤亜紗 手の倫理 講談社選書メチエ kindle 20221114
1117・東直己 さらば愛しき男と女たち 20221105
1119・【再読】管啓次郎 コロンブスの犬
(1119・北北西に曇と往け6
1119・ほしおさなえ 紙屋ふじさき記念館6 結のアルバム 20221118
1119・高桜方子 ココの詩 図書館 20221117受領 …はるな檸檬「れもん読むもん！」つながり
1120・山口椿 中国残酷女列伝 らくだや 20221112
1120・くどうれいん 虎のたましい人魚の涙
1120・甦れ！探偵物語 トロニカ 20220918
1120・山賀博之 大野木寛 オネアミスの翼 王立宇宙軍 小学館文庫
1121・坂木司(編) 和菓子のアンソロジー
(1122・紛争でしたら八田まで 11 kindle 20221122
1122・関川夏央 豪雨の前兆 20221105
1123・エロスin music 本戒 dual_books 20221115
1123・紺野文訳 モンタギュー夫人書簡集
(booklogなし 1124・【再読】紺野文 モンターグ夫人が見た18世紀のオスマン帝国社会 女性の暮らしを中心に
1126・【再読】垣根涼介 迷子の王様(君たちに明日はないシリーズ5) らくだや 20221022
1126・平田オリザ 道路劇場、バヌアツへ行く 本戒 dual_books 20221115
1126・庄司浅水 世界の七不思議 らくだや 20221119
(1127・イチケイのカラス1-4 コミックDays・kindle
1127・森本哲郎(編) オリエントの幻 らくだや 20221112
1127・札幌アートウォーク 北の出版社わけあり販売会 20221107 アートと札幌。本郷新、イサム・ノグチ、国松明日香、…石山緑地
(1127・早良朋 へんなものみっけ！1-6
1127・金森誠也 甦るアトランティス らくだや 20221126
(1128・中谷宇吉郎 北海道開発に消えた八百億円 青空文庫
1129・島田潤一郎 あしたから出版社 20221118
 | 集英社 発売日 : 2019-10-25 |
鎌倉時代末期、津軽にいる蝦夷管領安藤季長の三男新九郎季兼が主人公。危機と嘘を察知すると鼻がツンとする主人公、尋常じゃない男性器に、念波でテレパシー通話にと伝奇的要素がふんだんに盛り込まれ。けどスケールは大きい。刀鍛冶の出自にヒッタイトまで引っ張り出してくるとは。津軽からみた蝦夷地、鎌倉、若狭、京都、樺太、朝鮮まで縦横に語られ魅力的。父の野望に翻弄されつつ、都人の身勝手さにふりまわされつつも、船乗りとしての、商人としての誇りをいだいて、和平をもとめ、民のくらしを守ろうとし、アイヌの人々tも友好を結ぼうと奮闘する。◆鎌倉時代の後期になると、各地の村々では自ら検断をおこなうようになっていたが、この風習は渡党アイヌにも伝わっていたのだったp.130◆「わしが帝の命に従うことにしたのは、季久が得宗家と組んで蝦夷管領の職を当家から奪い取ろうとしたからじゃ」p.176◆なぜ安藤一門で殺し合わなければならないのか。なぜ津軽を二つに割った戦をしようとするのか。なぜ朝廷と幕府は争わなければならないのか。はたして今上の志とやらは正しいのかp.236◆鎌倉時代末期の津軽と蝦夷というなかなかお見かけしない舞台だったので、さらに興味が湧き、参考文献のうち、津軽安藤氏と北方世界、北の環日本海世界、はてに取りたい。◆
 | 吉川弘文館 発売日 : 2015-09-15 |
七海雅人 御家人の動向と北条氏勢力の展開より、安藤氏の乱関係のみ読了。安藤季久が蝦夷の反乱の鎮定の活躍を評価され、蝦夷管領に任じられ。それに不服の前蝦夷管領安藤季長が反乱し、大きな広がりとなったが、工藤祐経が派遣され一旦は和睦。季長も鎌倉へ連行。しかし、残党の安藤季兼らが反乱し、宇都宮、小山も派遣され鎮圧。といった基本線はかわらず。
 | 朝日新聞出版 発売日 : 2017-01-06 |
何年かぶりの再読。「一人暮らしに敗北して実家に戻った。それを認められるようになったのは、最近のことだ。」それで筆が進んで一書にまとめあげられたとのこと。一人暮らし末期に、姉に指摘されるまで空き巣に入られたと思わず、天の仕業だとおもってたあたり、だいぶやばかった、という自己認識も綴られ。ただ、20年ぶりに舞い戻った地元にもすぐには馴染めず。距離感を測りながら、香港での経験なども活かしながら。そして都会に住みつつ、気持ちは田舎者のマインドのご近所さんの手強さ、したたかさも描かれていて。「戸越銀座は甘くない。私たちはあなたがたを叩きつぶすのを、手ぐすね引いて待っているのだ」(p.267)といった一面も。あとは、「旅とはなんだろう。一言で言えば、片っ端から出会い、片っ端から別れることp.72、といったあとの、旅慣れすぎて心の切り替えに慣れすぎだと感じたあとに、「いまの私には、臆病だった自分のほうが、生き物として信用できるような気がするのだ」(p.75)と語ってたところにグッときました。
横浜、東京から京都、長崎まで、1893年の日本をぐるりと旅行したボヘミア人の旅行記。植物や生物に興味を示し、東洋の文物の方がいいとする東洋趣味も見せつつ、よく食べ、よく見て、時には一般の日本人の家庭にお邪魔して。畳がないと過ごせない日本人とか、乳製品を食べない日本人とか、天然痘の予防接種しない日本人とかは隔世の感。また、日本の港に定住したドイツ人は、日本人のあまりの礼儀正しさとていねいさに対する軽蔑の気持ちをかくさない、という所感も。日本人の信仰心の現世利益てきなところを語るところはたしかに、と。芝居や茶屋通いに熱心な若者たちは、今も変わらぬか。日本の現代劇の創立者が二人の女性であるという事実 、というが誰と誰のことなのだろうか。大津事件で、のちのニコライ2世を襲った人物は聞いたことあったが、一命を救った二人と彼らのその後については知らなかった。などなど、興味深い日本人観、当時の日本社会などを知ることができてよかった。
 | 文藝春秋 発売日 : 2019-05-09 |
クリープハイプの存在を知ったのは、前職の後輩が10年前ぐらいに、イベントでDJしてたときにかけてた「オレンジ」を聴いて、好きになって買った覚えが。それからは他の曲も聴いたりはしてなかったけど、先日、喫茶つばらつばらで何気なく手にしたフリーペーパー「灯台にて」で尾崎世界観「祐介」が熱く語られていたので、居ても立っても居られず、買いに走りました。村上龍「限りなく透明に近いブルー」の生臭い血の味を思い出すとのことでしたが、個人的には、西村賢太「苦役列車」をマイルドにした感じと受け取った。絶えまなく描かれる周囲の人への怒り、嫌悪、悪意。主人公の彼らへの視線が伝わったかのように、バンドメンバーも何もいわずある日ライブに来ず、離れていき。細い線をたどってステージにあがったソロライブでも得るものはなく、ファンの子には「ある程度音楽でやってから、小説でも書けばいいじゃない。どこかの編集者にそそのかれて勘違いして、好きなだけ比喩を使って、小説でも書けばいいのよ」と言われ。ある意味窮地を救ってくれた小学生の「僕達、間違ってませんよね」が響く。
| 発売日 : |
雰囲気が大好きで何度も行ったことあったけど、最近は人気すぎて、何度か満席でふられていたお店。ただ11月5日はたまたまのタイミングでするりと入れて。その時のカウンターで目にしたお店の10周年記念誌。これは買わざるを得ないでしょう、と手に取り。5周年でも記念誌出してたそうだけど（見逃してた…慚愧）、そのときは、2店舗目を出すなんて、スタッフを5人も雇うなんて、想像もしていなかったそう。けど、老舗喫茶のマスターが辞めることを知り、いてもたってもいられずに2店舗目、スタッフ募集と突き進み、声をかけた方が目をきらきらさせてjoinしてくる様も描かれ。すぐにコロナ禍となり近隣の心無い声を浴びせられながらも、くじけず、開いててくれてよかったという声にはげまされるように営業し今に至る、と。呼称が、オーナーや店長じゃなくて、ママやチーママなんだ、というのが面白いなあと思ったり、お店事件簿がちょっとおもしろかったり…私ならむしろすすんで、冷やし中華アイスコーヒーがけ食べてみたかった！窓いっぱいにはられたお面の真相は？とかいろいろ気になるポイントあり。ぼかしてあるけどたぶん創世スクエア？のあの店、つばらつばらだったという世界線もあったんだ、と知り（個人的にはそっちのほうがよかったなあ）。あと、トイレに通じる細い通路にいつもかかげられてる黒板の言葉が何パターンも掲載されてて。わたしが行った日のは「一歩前に踏み出す」。なんだか背中をそっと押された気に。スタッフの方々の紹介、スタッフの方々の「喫茶店とわたし」「つばらつばらと私」がテーマのコラムもよかった。
 | 筑摩書房 発売日 : 2009-05-11 |
13年越しの通読。◆いくつもの文章が収められているが体裁はまちまち。文がクレッシェンドしてデクレッシェンドするくらいはまだご愛嬌で、文中の任意の文字だけふと文字になったり、インタビューなのに問いと回答がどう対応してるかわからなかったり、上下左右さまざまな方向に分の塊が散乱していたり、英訳すればおそらく縦読み出来るように凝らされた文意だったり。そういったところも含めてジョン・ケージらしいなと思わせてくれるようなレイアウト、編集。◆「4分33秒」の或る"演奏"のとき、茸を見ることで第1楽章を見送り、第2楽章は、指揮台にしていた岩から10フィート以内のところまで飛び上がってきた雄鹿と牝鹿の音で始まった◆可能性の全領域が粗く分割され、これらの分割されたものの内で実際の音響が数字に従って指示されるが、選ぶのは演奏者或いはテープの編集者に委ねられることもあろう。この最後の場合、作曲家は誰か他人が写真をとることができるようにする、写真機製造者に似ている。p.63◆文脈もあったのかもしれないけれど、すごく根源的な問いだなあと思ったのは、この二つ。◆作曲して欲しいといわれなくなったらどうされますか ケージ=おそらく私たちは、私の沈黙の作品に立ち戻らなければならないでしょう。p.122◆それでは、敢えて音楽を書かれるのはなぜですか ケージ=答えは簡単です。師であるシェーンベルクに対して、一生を音楽に捧げると約束したからです。p.122◆ケージらしいつぶやきと思ったのは◆バスを待っているときも われわれはコンサート会場にいるのだ 突然われわれは舗道に立ちながら芸術作品を求める p.180◆かなあ。年表でおかしかったというか、なぜここにと思ったのは◆1958 イタリアのクイズ番組「ここでやめる？それとも倍に？」でキノコについて回答・優勝◆
 | 山川出版社 発売日 : 2002-06-01 |
安部龍太郎「十三の海鳴り」の参考文献にあげられていて手に取る。目に止まったのは以下の箇所。◆この事件の解釈ポイントは、私は、安藤氏が鎌倉幕府の滅亡と運命をともにしなかったことにあると想うんですねp.21 ...北条氏との関係がなくなっても、それによって存立の基盤を全部失ってしまうような存在ではなかったということです（村井章介「中世国家の境界-外浜・津軽を中心に」）◆鎌倉時代末期1320−22年の蝦夷蜂起。直接の相手は、蝦夷管領（「蝦夷管領」は後世の呼び名で、本来の名はおそらく「蝦夷沙汰代官」）として現地支配の人にあった安藤氏（略）事件の拡大は、1322年、津軽安藤氏（下国家）の惣領の地位と蝦夷沙汰代官職をめぐり惣領季長と季久が対立。ともに鎌倉に訴えたが内管領長崎高資が両方から賄賂をとり裁定をくだせず、その間に両勢力が蝦夷を味方につけて合戦、戦争は拡大。1325年に業を煮やした北条高時が代官職を季久に変更。季長は一族や蝦夷となおも抵抗。1326年工藤祐貞を派遣し季長を捕縛。しかし季長の郎従季兼を首領になお抵抗。宇都宮・小田をさらに派遣。1328年季長派と宇都宮・小田が和談。pp.187-189より要約（斉藤利男「安藤氏の乱と西浜折曽関・外浜内末部の城郭遺跡」）◆
 | 山川出版社 発売日 : 1999-07-01 |
安部龍太郎「十三の海鳴り」の参考文献に関連して手に取る。以下の論点が目に止まった◆所領の分布形態からも、安藤氏の活動範囲が十三湊・秋田の日本海側のラインに限られないことは明白。◆室町初期の1432年、南部氏との合戦にやぶれ、安藤氏は夷ヶ島へ没落。◆1456年安東太師季の再渡海からの一連の出来事で「パックス南部」「南部の平和」は瞬時に崩壊の憂き目◆「夷族襲来」の守りとして三守護職設置という史料は信頼がおける（糠部・閉伊・夷ヶ島の海民集団と諸大名）◆「新羅之記録」再検討により、コシャマインの戦い以降道南の100年にわたる争いが、アイヌ民族と館主の争いではなく、津軽下北における安東氏と南部氏の争いの延長にあって、安東氏の弱体化にともなう館主間の勢力争い、蠣崎氏による館主の統一過程であり、アイヌ民族は倭人との交易活動に依存を深めていたため、この争いに巻き込まれざるを得なかったこと、また、アイヌ民族はこの時期館主と対等の交易に関する協定を結ぶことができるだけの勢力を持っていた（北海道の戦国時代と中世アイヌ民族の社会と文化）◆骨鬼は元朝の後退による間隙を埋める形でサハリンに定住と考えられる。元民交代期のアムール川下流域での諸集団の動きの活性化とリンクして。◆サハリンが本格的にアイヌの居住地となるのは14世紀半ば以降◆イオマンテというアイヌ文化の中心といわれてきた儀礼の成立は近世初期、地域によってもばらつき◆幕藩制国家成立で、和人とアイヌとの間の「倭寇的状況」は収束。しかし、北の「倭寇的状況」は収束せず、サハリン・沿海州との接触・交流はその後も継続。近世アイヌ文化のなかのいくつかの要素は、北の「倭寇的状況」の変貌がうみだしたものであったかも（北の「倭寇的状況」とその拡大）
 | 秋田書店 発売日 : 2022-10-14 |
1-3巻読了。膠原病でフルタイムで働けなくなって、週四勤務。住まいも団地に引っ越してきて。そこの住人の鈴さんと、一緒に住む司と薬膳が縁で仲良くなり。人と比べて気持ちがいじけることもあるけど、だんだんとゆっくりとできる範囲で回復していき、と。ゆっくりおだやかに。◆「ネガティブ・ケイパビリティ」とか「失敗が許される世の中じゃないとやっていけませーん」て考え方にうなずいたり。
| 発売日 : |
対談シリーズ第一弾。対談相手はフリーランスwebマーケティング／web制作の城後健人さん。ウェブのなかで何が起こっているのか、それをどうとらえているのか、という一端を指し示してくれていて。ウェブに残るのが嫌な若者たち、という減少に、さの「えっ、価値観変わるのが大人じゃんそんなん」と考えたり。◆メインカルチャーもサブカルチャーも、なくなってて「みんな違ってみんないい」状態であったり◆内輪を見せつけないようにしている人たちの内輪がどうやって広がってるのか、全然謎だよね◆インターネットソーシャルに全く出てこない、野良のマジ強い人って世の中にめちゃめちゃいるな、と思っていて◆といったあたりが気になりました。あと、さのかずきニュースレター、とってみたいなと思った。
| 発売日 : |
ライタータカハシさんによる、ボーイッシュだった若い頃にであったいくつかのエピソード。二次会できれいなパブのお姉さんに裏口から逃された話。そしてインタビューは、札幌のセレクト書店L・HのMさんて、その後に、ラボラトリーハコの…て記事があって、隠す意味があるのかと（笑）。ただ、奇妙な前兆がいくつかあったあとの、友人の車での助手席から気がつくと病院、脳に損傷、九死に一生の話は重く。友人がどうなったか最後まで語られなかったことも気になる。そして採用されれればラボラトリーハコさんにテーマを決めて3冊選書してもらえるコーナーがあるとは。
 | 講談社 発売日 : 2022-10-21 |
この巻は、小日向ジルベール結婚式ラプソディ、ケンジの「シロさん」呼びの謎、修先生民事弁護もやってくれることに、ジルベール、実家のように筧家にご飯食べにくる、などなど。筧父の、「先に不義理をしたのは私達なんだ 自分達が楽になるために相手を呼び出して許しを乞おうなんて身勝手な事はするもんじゃない」に理性を感じる。
 | 竹書房 発売日 : 2022-10-17 |
ある日、老人ホームに入る祖母の家にかわりに住むことになったヨウ。ひらめきで、ゲーム作って一発当てようと。妻とうまく行ってないスーパーいい人の従兄弟キク。キクの妻の友人で女性の生きづらい社会に憤るカナデ。カナデの友人で、同性パートナーと暮らす大学教員ホウライ。四人が集まって、ゆるーくゲームの完成目指しつつ、お互いのライフステージの悩みを共有しつつ、お互いの得意不得意を重ね合わせつつなストーリー。いい！おだやかなだけじゃなくて言うところちゃんと言い。もう一つの居場所を作り上げているところが。
 | 新潮社 発売日 : 2007-10-01 |
(2022/11/07再読分)再読。12年ぶりの。以前読んだ時はもっと真介の仕事を、そうはいっても社会に必要な仕事だ、卑下することはない、と思ってたように思うが、今回読むと、やはり人に嫌われる辛い仕事という面にも目が向いた。中には殴りかかってくる顧客もいて、それに対して「でも、あんな最低の野郎にも家族はいるし、たぶん最低でも人生はある。そういうことです」 (p.100)とぐっとこらえられた真介、大人だなあ、と。この先も長い付き合いになる陽子との出会いも描かれ。「この女はおよそ達観ということを知らない。しかしそこがいい。」(p.151) また、会社なんて合議制による朝令暮改、てところは前回読んだときも気になってたみたいで自分に対してちょっとおかしかった。 (2010/09/19読了分)リストラ宣告人の真介が主人公。会社都合で、辞めさせられる、それを告げるもの、告げられるもの、その時に浮かび上がる、仕事とは、生きるとは、という問いへの各々の対応は、読んでて身につまされることこの上ないのだけど、それをただ苦いだけに終わらせず、読ませてくれるところが腕の見せ所。この著者の、アクション満載のハードボイルド小説しか読んだことなかったので、正直、そうきたか、うまいなあ、読ませるなあ、と思ってしまった。◆「会社などは所詮そんなものだ。有象無象が寄り集まった上層部によるあいまいな合議制による朝令暮改。誰も責任を取らない。その無責任さに振り回される社員など、憐れな将棋の駒にしか過ぎない。」◆「リストラ最有力候補になる社員にかぎって、仕事と作業の区分けが明確に出来ていない。」◆「女こそ度胸だ。その瞬間、彼女たちは光り輝く。」◆「たとえ自分のようなへなちょこ野郎でも、男が男を抱き起こすなど、下衆のやることだ。そういうものだ。」◆「自身の存在と自意識との間にある距離が、ちゃんと取れている。安易に自分をかわいそうがらない。その距離感がおかしみを生む。」◆「でもね、今の会社でも見かけるけど、そういう人たちって、どこか投げやりになっているところがある。自分のことを妙に儚んだりしている。わたし、そんな生き方ってやっぱりどうかなって思うの。自分を大事に思えない人が、自分の目に見えている周囲の世界を大切にするとは思えないしね」◆「つまるところ、イメージングなのだ。相手の立場になって付き合えるかどうか。そうすれば自然と涙は出る。飯だって奢る。その共感性の高さがつながりを密にする。相手を、信用させる。」
 | 新潮社 発売日 : 2009-11-01 |
(2022/11/10読了分)再読。前回読んだ時に引用したところは今回も眼にとまった。◆さらに今回目にとまったのは「だって、会社を辞めたからって、別に死ぬわけじゃありませんから」p.184◆「本当に満足のいく人生かどうかは、結局のところ本人じゃないと分からない。たぶん他人が見た状況じゃない」p.341◆「彼女と一緒にいると、世界が明るい」p.352の三つかな。最期のセリフにはなかなか深い相手への愛情を感じた。(2010/09/19読了分)君たちに明日はない、シリーズ第二弾。今回は、デパートの外商部のトップセールとして走り続けてきた女性、地方のホテルの従業員の女性、女性が苦手でわざと出世コースをはずれる覚悟で異動を願い出た男性、真介の彼女、陽子との仕事を通じたかかわり、そして表題作の「借金取りの王子」。頼りなかった王子が、信頼した上司のために自らを鍛え上げ、迎えに行き、一度は拒絶され、そして生きててよかったと二度だけ思った、その二回共に加えてくれた瞬間、親の前で説得したシーンには、ぐっときた。◆「出来る人間ほど、会社を自ら辞めていく。そして出来ない人間ほど、組織にしがみ付こうとする。なんでだろう？」「そういう人って、会社を辞めても結局はなんとか生きていくもの。それが、自分で分かっているもの」「たぶん、もう一つは、仕事の出来る人って、自分の将来に対しては基本的に楽観的な人が多いからじゃないかな。『お気楽』という意味じゃなくてね。じゃないと、長期的な努力なんて虚しくてやってられないじゃない」
 | 新潮社 発売日 : 2012-03-28 |
(2022/11/12読了分)10年ぶりの再読。今回のクライアントは、旅行会社のマイペース社員。こだわりの強い自動車整備士。文芸志望だった週刊誌記者。など。今回は◆日頃から落とし穴を意識し、いろんな生き方を模索する姿勢を自然と身につけていれば、自分が今まで思ってもみなかった生き方など、やがて幾通りも見つかるものだ。p.132◆「たぶん、後悔のない人生なんて…からのp.370の一節◆（人から教わっても見聞きしても、結局、一番大事なことは、時間をかけて自分で感じ、発見するしかない）（それでもその時点での仕事の意味は、その時点の自分にとっっては真実でしょう。たとえ一時的なものでもね）p.377◆の3箇所が特に目に飛び込んできた。「たぶん、後悔のない人生なんて…」は前回も目にとまったので、よっぽど響いたのだろうと思う、個人的に。そう、この小説も含めて、人の意見を聞いたり読んだりできるけど、結局は自分がどう感じたか、その決定も一時的なものかもしれないけど、その都度懸命に判断し、それを抱えてすすんでいくしかないんだな、と。そう思わせてくれた4つのケーススタディ。(2012/04/07読了分)「ひとつには、単なる手段を、目的と勘違いしないことです」「たとえば、百件の飛び込み営業が目的ではなくて、その先にある受注が目的だということです。さらには受注したあとの売り上げではなく、目的は収益だということです。勘違いしやすいことですけど」p.105/一見、健気な弱者の意見にも聞こえる。しかし、（何でもいいから〜）などという人間に、果たして雇い主は、責任のある、そして能力の要求される仕事をやらせたがるだろうか？飢えに苦しむ第三世界の話ではない。この日本での話だ。答えは「ノー」だ。p.263/「『愛』だけでは、生きられない」「オトコっ、って言うより、男の子」p.284/「こうしなくてはならない、こうあらねばならない……そういった”べき”論は、実は、法律に触れない以上は仕事に限らず、この世には存在しない−−自分です。突き詰めれば、自分がどう感じているかが、すべてなんです」p.368/「日常に連なった事実の中にある、真実。たぶんそれは、石ころのようにさりげなく道端に転がっている。だから気づかない。人から教わっても見聞きしても、結局、一番大事なことは、時間をかけて自分で感じ、発見するしかない。負の側面でも、正の側面でも、そうです。」p.368-9/「たぶん、後悔のない人生なんて、ありません。でも、その時々の信念や気持ちを信じて行動していけば、後悔はあっても、それでも後を振り返ったとき、納得は出来る。……私は、そう思っています。」p.370
 | 北海道新聞社 発売日 : 2022-05-21 |
Web版の北海道新聞の連載時に気になってて、わざわざ会員登録してまで読み漁っていた連載記事「札幌集中のリアル」が読みたくて手に取る。◆おおまかにまとめると、少子高齢化で、北海道は、地方から札幌へ人口の流出がとまらない。札幌はそういった人口をある程度ダムとして堰き止める機能を持ちつつ、その機能も低下してきている。同時に、若者たちを東京に送り出すポンプの役割も果たしている。◆「行政が同水準のサービスをこの先維持し続けるのは限界。住民合意を得ながら、除排雪の優先度を明確にする必要がある。」「ついで利用」しやすい都市の方が住みやすい。住民がぎゅっとまとまって済む政策は必要。」といった専門家の意見。◆サービス付き高齢者住宅(サ高住)の札幌一極集中、一方1戸もない地域は120市町村。もみじ台は高齢者が高齢者を支えて何とか成り立っている」。山の手の一軒家の除雪が、高齢になり大変になり、平地の駅近のマンションに越してくる富裕層「山下り」。といった事例。◆"南富良野町 14年度、過疎4地区の除雪を地域住民に委託し「共助と公助を組み合わせた事例」" "07年に政令市となった浜松市は23年にも、七つある区を大幅に減らす。” "愛知県新城市の穂積市長、人口増を目指さない" といったさまざまな取組み◆利尻町で漁業を営む方「周りの住民も気軽に飛行機を使っている。札幌は隣町みたいなもんだ」という感覚◆といったあたりが気になったところ。◆地方交付税がある限り、自治体はなくならないと道や自治体の幹部から何度も聞いたが、逆では？国の財政が傾くなか、交付税がいつまでも割り当てられる保証もない。国の政策に振り回される前に、タブーなく様々な施策を打っていくべきでは、という提案には、なるほど、と◆そこに住む人の感情を一旦なかったこととして、国全体のレベルでみれば、大半の地方は捨てて、住民には極力集住してもらい、限られた予算を、集中的に透過してインフラを整備するのが理想なのだろう。ただいくつものうまくいかなかった事例からも推し量れる通り、いままで通りここに住みたい、という気持ちの人を強制的にどかすことはできない。それをいかにうまく誘導できるか、という制度設計、あるいは住み続けるなら住み続けるで行政的な負担を減らせる工夫、というのが、さらにさらに求められている、と。
 | 新潮社 発売日 : 2014-09-27 |
文庫版で8年ぶりに再読。概ね単行本版の感想 https://booklog.jp/edit/1/4104750042 とは変わらず。ただシリーズ5作中、文庫化にあたりタイトルを変えたのはこの4作目だけ。確かに内容の深さから言えば、こちらの話の方が推しも推し、という感はあり。「過去を追うな。未来を願うな。過去はすでに捨てられた。未来はまだやって来ない。ただ今日なすべきことを熱心になせ。誰か明日の死のあることを知らん。」(p.347 釈迦「中部経典」）はグッとくる。そしてこの巻を貫くフレーズでもある。
 | 新潮社 発売日 : 2022-11-09 |
義を見てせざるわ、といわんばかりの、廃太子の願いを叶えるための危険な行動。鬼に襲われたという高子の侍女の頼みに応じた、素行の悪い御曹司をこらしめ。藤原良経の雨の日の戯れの下問には及第点を得て。かと思えば、なくなった門人が誰なのか調査、推測し、のこされたものが納得する形をつけたり、と。◆しなくてはいけない気がしたので自分の「理」に従っただけ◆より強い力で脅すだけなら同じ穴の狢ではないか。これが人の役に立ったのか。なんだこれが私がしたかったことか？という自問も。
 | KADOKAWA 発売日 : 2022-11-15 |
ヴラドの意識が戻らぬ中での高官たちの裏切り、首都の陥落。そこから覚醒したヴラドたちのハンガリーへの逃亡。その道中、裏切り者からヴラドを庇って命を失った妃。弟ラドゥ公の戴冠、そして当初は支援を約束したハンガリー王の裏切りによる幽閉と事態は坂を転げ落ちるように。◆メフメト2世のような天才的なひらめきも、ヴラドのような常識にとらわれない発想のどちらもないが、だからこそラドゥは、人の心の弱みをつき、人の心を支配しようとする、といった趣旨の一文が目にとまる。そして、いくら公として専制を敷こうとしても結局は貴族たちが己の保身と利益を保ちに走ることをとめられず、公の権力の儚さをかんじてしまう。
 | 講談社 発売日 : 2020-10-09 |
まずもって「さわる」と「ふれる」、普段あまり違いを意識していなかったな、と思った。読んですぐ、なぜかふとんのなかでお腹がいたくなり、ゆっくりとその患部に手を置いてみると、じんわりとそこからあたたかくなり、痛みが癒えていく感覚があり、なるほど、これがふれるだなあ、と実感したり。◆国語の教科書でも取り上げられていたと聞いた「共鳴」の話。目の見えない人と見える人が、ロープ一本を介して伴走するだけなのに、そこから気分、緊張してるかリラックスしてるか、何を考えているかが相互にわかってしまう瞬間、ケースが語られていて。ちょっと自分あんまり鋭いほうじゃないから、ロープ一本でそこまで伝わってきたりするんだろうか、と不思議な気持ち半分と、ごくごく親しい人とこの話を伝えた上で、ロープ一本を介して目をつぶって走ったら、どんな気持ちがするだろうかという気持ち半分を感じました。◆「ふれる」と「さわる」の関係。「ふれる」が相互的であるのに対し、「さわる」は一方的。「ふれる」は人間的なかかわり、「さわる」は物的なかかわり。ただ、それだけではなく、ある点をこえれば「ふれる」と「さわる」は入れ子構造のような関係をなしている、と。◆「倫理」について。"「すべきことができる」なら道徳でよい。それでは解決できないとき、逡巡しながら、人は自分なりの最善の行為を選ぼうとする。倫理が問題になるのはこの迷いにおいて。" "倫理的な営みとは、具体的な状況と普遍的な価値のあいだを往復すること、そうすることで異なるさまざまな立場をつなげていくこと。" "倫理には、道徳とは違って、いつでもどこでも通用する「一般」はありません。この意味で、倫理は常に生成的です。"という3つの文を読んで、俄然、倫理学にも興味が湧いてきました。ちょっとベクトル違うかもだけど、國分 功一郎「暇と退屈の倫理学」を読んでみたくなった。◆「安心と信頼」。安心とは、「相手のせいで自分がひどい目にあう」可能性を意識しないこと、信頼は「相手のせいで自分がひどい目にあう」可能性を自覚したうえでひどい目にあわない方に賭ける、ということ◆同じ著者の「目の見えない人は世界をどう見ているのか」も読んでみたくなった。◆ただ、ないものねだりをすると、なぜ西洋哲学だけなのだろう。インド哲学や中国哲学、イスラーム哲学、仏教や日本の哲学ではどのようにこのテーマが語られるのだろうか、ということもちらりと思った。
 | 光文社 発売日 : |
2冊のエッセイからの再編集本、読んだことあるよなあ、きっと、と思いつつ、結局最後まで読んでしまう。軽妙な上に軽妙。お風呂でゆったりと読むのにちょうどいい読み口のエッセイでした。くら寿司が新しくできたときに、くら寿司、くら寿司、ととなえながら飛び込んだ回転寿司屋でひと皿目を食べ終えて、はっ、はっ、はま寿司！て音が聞こえてきて、「ここ。はま寿司じゃん！」と驚いた経験がある身としては、一番印象に残っているのは、うなぎ食べた過ぎて、うなぎ、うなぎ…とと念じつつ、うなぎ屋だ！と飛び込んだ店に、うなぎはありません、うどんしかありません、と言われ、のぼりの字を空目してしてしまったが、あとの祭り、しかもそのうどんがすごくまずかった、けど俺が悪いんだ、としょげてるおじさんの話、ベストでした。他に、ベロンベロンに酔ったイトーさんに、わたしが昔つきあってた女性の店です、とつれてってもらえばいきなりバケツで水をかけられ、塩をバサッと投げつけられて追い出されたり。終電後の長蛇のタクシー待ちの列で、次は前田方面！とか相乗りをしきってくれてる気のいい人が、自分の父親だと気付いたエピソード。酔って乗り過ごしてばかりの人が、今度こそは、と決意したのにウトウトしてしまい、ハッと気付いて降りたら苗穂だった（札幌から北広島へ帰ろうとしてたのに…）、終電だった、あれはくやしかったという話。といったあたりが印象に。男としてビシッと一本筋を通したい、というのはハードボイルド小説書きに通ずるものがあるのかな。
 | 河出書房新社 発売日 : 2011-10-05 |
(2022/11/19読了分)再読。詩情豊かにブラジルの風を感じさせてくれる滞在期。引用される書物からの一節も魅惑的で。旅すること、そこで何かを感じること、旅行者である限り、コロンブスとの連続性を生きていることを逃れられないこと、読むこと、それを背負うこと、ブラジルに仮託して様々な思いをめぐらす。コロンブスやマゼラン、ヴァスコダガマなどの簡易な伝記や事績にふれたものを手にしたくなった。◆旅に出るのは、たしかに有益だ、旅は想像力を働かせる。これ以外のものはすべて失望と疲労をあたえるだけだ。ぼくの旅は完全に想像のものだ。それが強みだp.17 セリーヌ「夜の果ての旅」◆「つまりそれは、ぼくは自分自身であることに安住できないということだ。私とは一個の牢獄だ。みんながそうであるように、ぼくもまた他人でありえないこと、偶然にこの自分という存在に住みついていることに、うんざりさせられている」p.18 ラプージュ「赤道地帯」本とともに旅することも、本を捨てて旅をすることも、たいしたちがいはなく、ぼくらは透明な図書館を背負いながら歩みつづけるしかないだろうという気が、ぼくにはする。p.57◆夏の道は終わった あの暗い岩と黒苺の間を ただひとり歩くことも終わった（西脇順三郎「失われた時」）p.139◆貿易風が体の中を吹きぬけ、きみはもう光と風の透明な容器でしかなくなってしまう。p.203◆リシュボア、ぼくの観念の練習室p.209◆(2017/12/05読了分)詩情豊かな、行ったことのない30年前のブラジルに行った気にさせてくれるエッセイ、紀行、雑感。読んでるだけで異世界に連れていってくれるような感覚を味わえる。/以下備忘録的に。死刑のない国で、被害者の中には一部の警官に秘密で仕返しを依頼する、「必殺隊」の登場、刑務所内の犯人をどこかへ連れ出し私刑する(p.98より)/星の名を通貨の名として採用した国なんて、ふたつはない。クルゼイロ。ブラジルでは一杯のカフェは、二百五十の南十字星によって買われる。(p.101より)/あらゆる現代の旅行者は、コロンブスとの連続性を生きている。(略)彼はやってきた、見た、新大陸を。黄金の土地を。空白の可能性を。/ブラジルでは、心が南極むきに冷え切ったやつだと思われたくなければ、最低でもこれぐらいのことはいわなくてはならない。p.150/ポルトガルはブラジルの零落した父親だ。小心で、若い頃の勇壮さをすっかり忘却したこの小男は、ブラジルに少なくともことばと料理を教えた。p.155/英語をほんとうにものにしようと思うなら、アメリカの小学校、中学校の教科書はひととおり読まなければいけないね。特に社会科、理科。つまりね、平均的なアメリカ人なら誰でも知っているような知識と、それに使われる単語があるわけでしょう。そうしたものはいちどはおさえておかなくちゃ。p.178/コルテスの通訳ドニャ・マリーナ、マリナリ・テネパル、メキシコのマリンチェの物語/貿易風が体の中を吹き抜け、きみはもう光と風の透明な容器でしかなくなってしまう。p.184より
 | KADOKAWA 発売日 : 2022-11-22 |
コロナにより記念館閉店イベントがすべて中止になる失意から、コロナ禍の日々。百花の就職活動、和紙への思い、卒論、そして記念館再建へと走り出した藤崎さん、と。◆藤崎産業の就職試験に悪戦苦闘する百花へ、館長が希少な手漉き和紙見本帳を貸し出すことで、最終試験での迷いが晴れ、「和紙のうつくしさを広めるために生きていきたい」と真摯に和紙への思いを語り内定を得られた百花。◆「人はなるようにしかならないし、できることしかできない。そんな気がするんだよね。みんな、自分にできることをするしかないんだと思う。こうしなくちゃいけない、とか、こっちの方が優れてる、とかじゃなくて」（p.176 百花）◆まっすぐな気持ちをあたたかい理解が包んですこしでもよい世界に、と感じられる物語。次巻は新記念館を舞台に、社会人になった百花の活躍が見られるのだろうか。それがたのしみ。
 | リブリオ出版 発売日 : |
はるな檸檬「れもん、読むもん！」つながりで。すさまじかった。人形からねずみくらいの女の子となって何も知らぬまま、自由な外の世界に出て、ネズミのヤスに恋して舟にのせられるも、知らぬ間に借金のかたに猫のボスに売られ。召使いとしてのんきに暮らしつつ、ヤスのむかえを信じつつ、いつのまにか真面目なネズミモロに協力して、猫のボスの名画窃盗を暴くことに。絶対そうなるとわかりつつ、ヤスの縄をほどいてあげるシーンなど、苦しくなってくる。そして決戦の場から、ファンタジーな展開をたどって、何もかも吹き飛ばしてしまうような結末へ。苦い、本当に児童文学なのだろうという舌の上に残る苦さ。はるなさんのマンガでの解説が、ものすごい説得力とともにせまってきた。
 | KADOKAWA 発売日 : 2022-11-18 |
警察と称する男たちに連れ去られ、行方不明になった弟が、不可解な形で見つかり、魂が抜けたようになった慧。そんな慧を日本での住処に連れ立ったジャック。日本の土や風にアイスランドとの違いを感じつつ、茶を立てたり、バイクの女性と出会ったりで、ゆっくりとだけど回復していく慧。
前半は映画のハイライト。セリフを活字化してくれたとこ、ありがたし。後半は、決定校前のシナリオ。こういう展開も考えられてたのか、と。マナが映画と名前も役割も全然違って、前に前に出てきてリイクニの代弁者になってるとこが一番の違いかな。
 | 三栄書房 発売日 : 2022-09-16 |
自己啓発本のように筋道立てて、こうすればしにたい気持ちが消えます、みたいなことが書いてあるわけではない。「結局、簡単に楽になる方法はない」(p.13) 飛び降り自殺をはかるまでの過程は、読んでるこちらがつらくなってくるぐらい、つらさがつたわってくる。そこから生き延びて、首から下が麻痺した状態で、リハビリをつづける様子も読んでて苦しかった。リハビリ自体の辛さ、周囲の無理解も。そこから、理解してくれる人、違った視点で見てくれる人にも出会い、◆私は私だ。誰にも支配されたくない。誰の指図も受けない。自分の思う正しさのみに従う。それを挫かれるくらいなら死んだほうがマシなのだ。p.117◆障害は、私のことは私が決めていいのだと、誰からも求められなくても生きていていい。無価値のままで、生きることに意味なんてなくていいと教えてくれた。p.290◆という境地にいるというところまで語ってくれる。著者サインの、ばちばちに生きてこーね、が響く
 | ベストセラーズ 発売日 : |
なかなかに、なかなかに通俗読み物だった。モンゴルの女将軍イミルとは誰のことなのだろう。五石散飲みすぎて命を縮めたと描かれた何晏、も少し調べたい。宦官と宮女の夫婦はお互いに食むと書いて「対食」というとは。西太后の遺言が、夫人に政治を任せず、宦官の専横を許すな、なのだとしたら、ものすごい皮肉だけど、自分の人生を全否定してでも言い残したのは最後の明晰だったのかな。
 | 講談社 発売日 : 2022-09-22 |
虎のたましいとも書く琥珀のイヤリングをさっそうと身につけるシーン、とても仲のよいすいちゃんとご飯食べたり温泉入ったり、の章が好きでした。◆語ることができなかった傷は、時折、語ることができなかったという理由で痛み出すことがあるだろうから(p.92)でも恋じゃないといかんのかね(p.129)◆祝福の速度を上げろ。日々を祝福するためにわたしは働いている。(p.171)のあたりが心に残る。
 | 日本テレビ 発売日 : |
各話のダイジェスト、グラビア、キャストやスタッフのインタビュー。繊細、作品トータルへの熱い思い、優しさ、思いが溢れ過ぎてケンカやスタッフに手をあげたりもあったり。ハードなアクションやバチバチのハードボイルドではなくユーモアを込めた路線でやりたかったことなどが語られてました。
 | 文藝春秋 発売日 : |
ブエノスアイレスの旅の記憶、そこで案内してもらった人が夫妻で日本へ来た時の案内が一番印象に（関川エッセイは女々しいという感想のようだったが）。また文豪たちの暮らしの一端がわかるエッセイも。豆腐の値段からにじみでる光景など。◆漱石の入院。毎日刺身が出る。腹の上に乗せた一丁一銭八厘のこんにゃくを千切って食べては看護婦に意地汚いと怒られ。胃潰瘍の療法として熱した板こんにゃくを腹にのせて焼く、というのがあったとか。(p.76より)というあたりには時代を感じる。一時期、独歩と花袋が、飽きずに375g一丁一銭五厘豆腐ばかりたべてた、とかね。また、「経験を食べる」という一節が頭にのこる。最近読んだ「おいしい味の表現術」の「情報を食べる」に通ずるものがあるな、と。
 | 講談社 発売日 : 2022-11-22 |
メインはコロンビア編。麻薬と暴力から対話と教育へ。コロンビアのさまざまな料理、フルーツにも心惹かれる。巻末には、著者の受賞作、事務バイトしつつライフル射撃にハマる女子を描く好編。◆アグアルディエンテ、アニスの香りが特徴的なサトウキビ焼酎、気になる。僕の心は誘拐された、という言葉に思いをのせたヴィト。文学の生産と消費が恵まれた環境に育った作家や読者間だけの限られた教養になってしまう…マンガを読み上げれば寄ってくる人々が「百年の孤独」を読むと散ってしまう様に。
三枝成章から武満徹まで担ぎ出してくるとは。寺山修司x小泉文夫対談はエロスを盛り上げるのではなくむしろ鎮静する音楽が語られたりもする。身代わりとしての歌手という存在。対して直接参加、たとえばケチャ、民族音楽、民俗芸能のなかでのエロス的なエネルギーというのも、そういう媒介を廃して直接的に自分たちが当事者になろうという欲求から出てきたものじゃないかという気もする、と(p.6より)。<ヘアー>というミュージカルのエピソードも印象に。五味康祐氏がドビュッシーの<雲>を聴きながら射精し、非常にストイックな文章を書くことについてどう思うかと問われた(p.28)というのはエロスin musicど真ん中な一節だが本当なのかなあ。◆チベットのスピトク寺院では、岩を砕いて作る色砂を用いて砂マンダラが作成される。（略）まわりの僧が楽器を奏で声明をとなえながら砂を置く。色の違う砂と砂との境界は、楽器が振動させる空気のバイブレーションによって混ざりあい、無限に複雑な色彩を描き出していく(p.66)◆ヨーロッパの音楽の歴史は、人間がより自由に感情を表現する能力を獲得していった歴史と言える。レコードのおかげで我々はその過程を容易に理解できるようになったp.194◆現代人の耳には、ジョン・ダウランドの音楽はどうにも憂鬱で物悲しいばかりのものが多い。しかし当時の人々にとっては、ちょうどジャズのルーツであるブルースのように、おそらくメランコリックな感情を深くたっぶり味わわせる音楽だったのだろう。p.194◆シェーンベルクは袋小路に入ってしまったことに気づくと、十二音技法で新規まき直しをはかり、この技法が音楽に革命をもたらすと信じた。しかし十二音技法で書かれた音楽は一曲として、コンサートのレパートリーに定着しなかった。p.204◆といったところも印象に残る。タイトルからすると直接的に、こんな音楽はエロいみたいな通俗的な見方で、クラシック、ジャズ、民族音楽、ポップスなどから引用していくのかと思っていたが、もっと幅広く、抽象的かつ多岐に渡る視点で語られていて、それはそれで面白かったな、と。
紺野文「モンターグ夫人が見た 18 世紀のオスマン帝国社会」があまりに面白くて、添付資料のトルコ書簡集にも手を出す。ロンドン、ウィーン、アドリアノープル、コンスタンティノープルとまわり、別ルートから帰還。当時の手紙の届くスパンや届き方、やりとりの内容など興味深く。ただ、ずいぶんアドリアノープル発1717.4.1の手紙だけ多いな、と思った（9通）。なぜなのか。その日にだけまとめて書いたのか、書き溜めたのを出す時に同じ日にしたのか、その理由は。◆出色はやはり乗馬服を来てアドリアノープルのハマムに乗り込んだところだろうか。ロンドンのコーヒーハウスの女版だ、との感慨。またオスマン帝国の過酷な統治の一端も気になる…20台の馬車を提供して、死んだり怪我した馬さえいたのに、1銭もお金が支払われず追い払われる馬車の持ち主、家主が死んだら家はすべて大宰相のものになるという法律。ウィーンの、男性崇拝者を持つ夫人、2人の夫を持たねばならぬという習慣、夏でも冬でもアイスクリームがふるまわれるということ。同じ1人の人間がギリシャ人の反逆精神、イタリア人の内気、スペイン人の高慢、フランス人のおしゃべりという気質を持ち、イギリス人のように時に深く考え込むということはありません(p.96)という言葉にあらわれるメアリーのお国柄観。ローマ・カトリックに親近感がもてないのは出家した女性の悲惨な境遇のため。といったあたりが興味深かった。もちろん書簡の記述はメアリの目からみた個人の視線である、という前提はあるけれども。
 | 光文社 発売日 : 2014-06-12 |
坂木司が声をかけて編まれた和菓子がテーマのアンソロジー。坂木司の和菓子のアンスピンオフはのちに、続編に収められた記憶（読んだ記憶ありなので）。北村薫のは、落語家と女子大生シリーズを彷彿とさせる、俳句がキーとなる一編。卒業後一度も連絡してかなかったけど、こちらを親友だと思ってた友からの、会社の新人に和菓子を贈って問いかけしたら和菓子で返された、の話も心温まり。主人公の妻のあたたかな視線と鋭い考察。学生時代の友達づきあいを懐かしく思い起こしたり。ちょっと近未来の日本で、週に一度、旅で見たものを和菓子を作りあい見せ合いつつ旅する話も風変わりだけどよかった。他に、警官と定期的に送られてくるフルーツ大福に込められたストーリー。ファズのメディナでであった松露。雪深き里で、その昔思い合いながら別れてしまった2人の再会を後押しするカフェの店主。ひきこもりと精神科医と元アイドルがともに和菓子をつくったりするお話。などなど。深い思いが込められたり、考えを伝え合ったり、人との関係をつないだり、人と人との心を和解させたり、そういった役割を和菓子に託す読み心地の良い短編集でした。
 | 新潮社 発売日 : 2016-10-28 |
文庫版で8年ぶりの再読。感想はおおむね単行本版のとき https://booklog.jp/edit/1/4104750050 と変わらず。ただ、すっかり忘れてたけど、最終章で、「借金取りの王子」の2人の後日談が、「永遠のディーバ」のプロデューサーの後日談が読めたのはすごくうれしかった。そしてそれが真介の人生の選択肢にも大きく影響を与えていることも。◆「食うためだけに仕事をする人間は、いつの時代だって結局その仕事からは、永久に報われることはない」p.139、は重く響いてくる。◆本好きの書店員が語る、読書するよろこびが伝わってくるp.213のあたりもまぶしかった◆
 | 晩聲社 発売日 : |
事前にAmazonレビューでバヌアツ紀行部分少なくてがっかり、とあるのは把握してたが、それでもいいや、少しでもバヌアツのこと読めれば、と手にする。最初は、道路劇場what？と思いきや津軽弁一人芝居と前衛舞踏の2人ユニット。ご飯と宿だけ用意してくれれば青森県内どこへでも！投げ銭歓迎。小学生男子のこの踊りにどんな意味があるんだーという叫びは秀逸。結果的に、道路劇場の存在自体が特異で魅力的で、さらにバヌアツのことも読めるという二重にハッピーな読書体験だった◆フランスとイギリスに統治されてたニューヘブリデスが今のバヌアツ。泊まったホテルでは正統なフランス料理が出てきてフランス仕込かパンがおいしい。アルカロイド系の麻酔物質を含むカバという飲み物が強烈。一行の口に料理があわなかった時のことを考えてずっとインスタントラーメンの袋をもちあるいててくれた同行のバヌアツ人。バヌアツ人のスピーチが必ず長くなるのは、誰かに何かをもらったりお世話になったりしたら、必ずスピーチの中に折り込むから。と、まだ見ぬバヌアツのことに触れられて善き。30年前の話だから今はどうなっているのだろうか。日本側では、道路劇場のメンバーが、バヌアツ行きのための訓練として、一週間の断食、デパート前の舞踏、田んぼの畦での舞踏、プロムナードでの舞踏を実施し…数週間後この訓練はバヌアツでは役に立たない気がしてきた、といった一節。著者の妻は丸の内OLで「夫が大統領から招待を受けたが外国ではそういう時は夫人同伴が常識なので自分も行かなくてはならないという」すごい方便で二週間の有給をもぎとったがそれで有給使い果たして出発日も出社。ていうエピソードがすきでした。
 | 社会思想社 発売日 : |
世界の七不思議、というから七つだけかと思いきや、29話。ビザンチウムのフィロの選んだ7つ、選者不明の第二の七不思議7つ、コットレルの選んだ7つに、著者が独自に選んだ現代の新七不思議ともいうべき8つ（八不思議？）がおさめられてる。わりとこれといった基準はなく、選んだ人の当時の世界観、文化観、技術レベルなどで決まったのかなあ、と。個人的にむかしから興味があったのはバビロンの空中庭園。その章が読めただけでもひろいものか、35ページあたり。陶器でできてたという南京の陶塔は、よくそんな巨大な陶器ができたなあという驚き。ツタンカーメンの呪いは、関係者にひろくあまねく死をもたらしたが、なぜもっとも張本人的な立ち位置のカーターだけは天寿をまっとうできたのだろうか、そっちのほうが気になる。イースター島のロンゴロンゴはいまでも未解読のままなのだろうか。といったあたりが、気になった論点。
 | 講談社 発売日 : 2018-08-23 |
1-4巻読了。考え方の堅い裁判官坂間。曲者ぞろいの同僚、上司に翻弄されつつも、裁判への、それに関わる人々への向き合い方が徐々にかわっていく様が、さまざまな事件とともに描かれる。裁判の流れやポイントなどもわかって興味深かった。刑事弁護の報われなさから刑事弁護の弁護士から弁護士任官で裁判官になった同僚入間。定年間近まで平の裁判官として残り続け、２審でくつがえされない無罪判決を多数だしてきた上司。一筋縄でいかないようでいて、裁判の基本はしっかりとおさえつつ、そのなかでいかに被告人の人生を善きものにできるかということを盛り込む姿勢に、こんな裁判官がいたら、の思いを禁じ得ない。
酔狂に、そういえばアトランティスって何を根拠にあるって言われてるのかなと思い手に取る。基本、プラトンの著作一本なんだなあ、と。アトランティスがあった、と直接述べてる史料は。そしてあんなに哲学者がみんな尊敬する大哲学者プラトンが嘘を書くはずがない、って言ってて、いやそこ史料批判するのが学者の仕事では、と思いつつ。次に、アトランティスがどんな文明か述べるのに、エドガー・ケイシーのリーディングが出てきて、うーん、という感じ。その後は、状況証拠はくりだしてくるけど、アトランティスが実在する前提で、アトランティスが実在したことを示すとはとても思えないものが連なっていたなあ、と。ふむ。
 | 小学館 発売日 : 2021-04-12 |
博物館に出向してきた事務職員薄井くん。存在がうすくて周囲に忘れらがちで、自分でも事務の仕事はバリバリとこなせるけど、語れるほど好きなことがなくて落ち込みつつ、好きのかたまりみたいなへんな研究者たちに囲まれて日々をすごすうちに目が開かれ。コノハズクの救護。くじらの骨を砂浜から発掘。恐竜博士との邂逅。事務員として南極へ行きたいという夢。たくさんの「いたんだ」を残す、という仕事。金勘定ばかり厳しいようで自分の大好きな博物館を残したくて奮闘する事務局長。にせもののミイラが語る、the others、変わったものがむすぶ関係性。幻のオオカミ探しにでかけた小学生。古代メソポタミアから発掘されたスターゲイザー。などなど、興味深いトピック、ストーリーが目白押しでした。6巻は、薄井くんが任せられた企画展の幕があがって、といったところ。3年期限の1年半まですぎたけど、もう1年半はどう描かれるのか？南極へ向かうのか。
 | 発売日 : 2017-09-28 |
雪の結晶の人のイメージしかなかったので、「札幌アートウォーク」で知った、こういう論考も書いていたとは知らなかった。目標（人口増と食糧増産）が無謀だったとしても、800億円（現在の価値にしたらいくら？）投じて何ら効果がなかった（人口増は目標の160分の1、食糧に至っては減産）1952-1956年度の北海道開発の第一次計画、なのに第二次計画も進められてて誰も責任取ってない、と。農業本位から工業本位への切り替え、テネシー州の開発の成功を例に取り、活かす提言。開発庁長官が東京に住んでるようじゃ、という苦言も。◆70年経っても政治が低調なのは相変わらずだなあという思いも。
 | 北海道新聞社 発売日 : 2010-01-01 |
アートと札幌、本郷新、イサム・ノグチ、国松明日香、さまざまなアーティスト、石山緑地、モエレ沼などのランドマークに心惹かれて手に取る。モエレ山が最も端正に見えるのはふとみ銘泉4階の露天風呂という私見。モエレ沼を観光資源にしようと有志が立ち上げたが11年の短命に終わった観光会社「札幌モエレ沼観光」。「190万市民のおよそ８パーセントが１年間で入れ替わっている。このまちでは、誕生から今日まで、営みの多くがトランジット状態にあるのだ。」(p.57)。牧場生活を夢見たが都市青年には過酷すぎて一月持たずに月寒から東京へ舞い戻った高村光太郎。札幌のあとの冬季五輪開催地だったデンバーは恵庭岳滑降コースの自然破壊を見て、市民が猛反発して開催を返上。といった興味を引くエピソードの数々。◆石狩川・豊平川水系と呼応しながら園内を満たす清潔な緊張感は、水のまち札幌の汀がつくる美しい詩学だ。(p.29)といった美しいモエレ沼公園讃歌。◆すぐれたアートによって、人は、日常の意識や想像力を超えて何ごとかに目覚めていける。いつもとちがう視点から世界を見渡したり、自分の心や身体を、それまでとは異なる感覚から意識するようになる。(p.97) 美術は単になにかの手段や道具ではありません。地域社会や経済の仕組みの中で機能するというよりも、そうしたものの根底にあって、水や空気と同じように、人が生きていくことをいちばん底から支えたり、刺激を与えるものだと思っています(p.101 國松明日香)といった芸術論…あたりが心に残る。◆木田金次郎とのやりとりがベースになった有島武郎「生まれ出づる悩み」、わずか２週間ほどの札幌ぐらしを啄木はのちに「札幌」という小説で回想、中谷宇吉郎「北海道開発に消えた８００億」といったあたりは手に取りたくなった。◆ただ一人のリゾート客を泊めることもなく空襲で焼け落ちた石狩海浜ホテル。あるいは、漁を守るために鉄道を受け入れなかった（といわれる）石狩がそのため小樽と札幌のあいだでしだいに存在感を薄め、やがては皮肉なことに豊漁にも見放されてしまうことになる、港が近代文明とつながることはなかった、といった光景に哀切を感じる。
アッシリア、ヒッタイト、エジプト。普段あまり馴染みのないメソポタミア文明揺籃の地を対談とビジュアルでたどる入門書。親しみやすかった。最新の概説にもふれてみたい。アッシリアは庶民の生活までわかるが、ヒッタイトは公文書しか残っておらず、その運用や庶民生活は謎とのこと。エジプトはどういうカウントで二十いくつも王朝があることになってるのだろう。多神教世界に一神教の太陽神信仰を打ち立てようとしたイクナートンはやはり強く印象に残る。他に、シュメールの書記養成塾の生徒の日記が、人類最初の贈賄と収賄が描かれてるのでは、と思ったり。アッシリアの残酷さは宣伝が行き届いてるが見せしめの意味合いもかなりあった、という一節にモンゴル帝国史を語る杉山正明氏の筆致を思い出したり。メソポタミアの人たちは、死後の世界というものに対して非常に悲観的で、アッカドのサルゴン大王やバビロンのハンムラピ大王でも墓がないということを知ったり。あるピラミッドがつくられると、それはもうまもなく盗掘された、というのがどうも事実のようですね(p.143)ということだったり。ヒッタイトの法律は体刑が賠償に代わる。眼には目をのバビロンより、いくらか進歩し温和に(p.239より)。旧約聖書を「神の意思に反して、自然の状態から離反するようなことは許せないということで一貫」(p.92)と語っていたり。
 | 筑摩書房 発売日 : 2022-06-13 |
ミシマ社の「計画と無計画のあいだ」を読んでまた別の出版社本に手を出したくなり。こちらはひとり出版社「夏葉社」のおはなし。出版社を始めた動機からして明確で（いとこの死に直面して、息子を亡くした叔父叔母を元気づける本を作りたい）、一冊一冊思いのこもった本を出し続けてきたんだな、というのがわかる本。就活の特技欄に、「失われた時を求めて」読破しました、と書いてあったら、採用かどうかはともかくどんな人か一度は面接して話聞いてみたいと思うのに！というのは本好きの贔屓目だろうか。ただミシマ社の時も思ったけど、ある種の無鉄砲さは通ずるものが。まず借金して事務所構えたけど、最初の本ができないと翌年の春には倒産しちゃうぞ、とか、あるいは編集経験なく手探りで始めてたりとか。ある種の思い切りというのは何かを始める時には必要なのか。他に、地方の書店の苦境や、文学にはなんでもあると思い惹かれていく様、復刊をとおして、新刊で本を買えるようにすることが、作家の命にあらたな息を吹き込むことなのだと知ったことなどが書かれていて印象深い。昭和五四年の文庫フェアが、そのままきれいに残っている書店とか…。
2022年10月31日
2022年10月に読んだ本
(1001・ひらばの人 3
(1001・panpanya 模型の町
(1001・週末北欧部chika かもめニッキ 20221001
1001・徳谷柿次郎 おまえの俺をおしえてくれ シーソーブックス 20220925
(1002・ジンボー・キンジ 短編小説が好きな奴は吹奏楽コンクール課題曲を聴こう！追補版 文学フリマ札幌
(1002・体毛文化研究会 vol.1 脱毛の今昔 文学フリマ札幌
(1002・並木陽 ルネサンス漫画備忘録-15・16世紀のイタリアを中心に- 文学フリマ札幌
(1002・北18条文学 誰も知らない異常者たち 文学フリマ札幌
(1002・各駅停車 できることなら、各駅停車で Vol.01 文学フリマ札幌
1004・宮城修 ドキュメント<アメリカ世>の沖縄 岩波新書 図書館 20220930受領
(1004・D2 トーチ書店 文学フリマ札幌 20221002
1005・【再読】ウォン・カーウァイ原案 百瀬しのぶノベライズ 花様年華 図書館
1008・高森純一郎 辺境の民 文学フリマ札幌 20221002
1009・【再読】楠見朋彦 マルコ・ポーロと私 amazon 20220926受領
★1009・mayu 野白風 白夜 …野白さんのうかつに触ると切られそうなひんやりとした悪意
(1009・伊藤理佐 あさって朝子さん kindle 20221009
1010・【再読】川内有緒 目の見えない白鳥さんとアートを見に行く 図書館 20221003受領
1012・諸井誠 これがクラシックだ！ チカホ 20221005
1012・白須英子 イスラーム世界の女性たち 文春新書 チカホ 20221005
1013・深町秋生 インジョーカー 幻冬舎文庫 20221002
1014・【再読】ジョン・ケージ 小鳥たちのために 1987野澤書店(ワンデイブックス 千歳) 20220903 …序0925 一二章1009 三四五六章1010 七八九十章1014
(1015・天上恋歌 6 kindle
1015・町田康 ギケイキ チカホ 20221005 ファッションに着目した義経記
1016・【再読】並木陽 斜陽の国のルスダン
(1016・舞子さんちのまかないさん21
1016・羽山信樹 滅びの将 図書館 20221016受領
(1017・【再読】はるな檸檬 れもんよむもん！
1017・諸井誠 音楽の見える時 諸井誠音楽論集 図書館 20221017受領…モーツァルトのみ読了。あとはざっと。
1019・角田光代 対岸の彼女 図書館 20221016受領
(1019・キングダム64-66
1019・諸井誠 現代音楽は怖くない マーラーからメシアンまで 図書館 20221017受領
1022・町田康 ギケイキ2 20221018
(1022・ブランクスペース 20221022 kindle
(1022・チェッカーズ写真集 集英社文庫(1985年) らくだや 20221022
(1022・片喰と黄金8
1022・青山拓央 心にとって時間とはなにか 講談社現代新書 図書館 20221016受領
1023 Neve mind the books pppppppppppppppppppppp
1.ぽやん舎 Happy songs
2.ぽやん舎 ひみつ絵日記2
3.スガラムルディ Sapporo Cult Classics 3
4.くるみみどり 読書後文 3
5.六畳書房 本はこわくない
6.ここは札幌アンダーグラウンド
7.mayu 白夜
8.やまだなおと 宇宙 日本 ブックオフ
ppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppp
(1023・芥川龍之介 杜子春 青空文庫
(1023・ナガノ くまのむちゃうま日記 1 kindle
(booklogなし 1023・【再読】浅田彰 ヘルメスの音楽 …ジョン・ケージ、ブーレーズのみ
1024・石井宏 反音楽史 20221015
1024・【再読】高野秀行 清水克行 辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦
(1024・川尻こだまのただれた生活 第十集 kindle
1027・店にレトロの風情あり ゆとりや シーソーブックス 20221023
1028・三島邦弘 計画と無計画のあいだ ゆとりや シーソーブックス 20221023
★1029・江國香織 号泣する準備はできていた 図書館 20221023受領
(1029・桐谷さんちょっそれ食うんすか？！14
1029・おいしい味の表現術 図書館 20221024受領
(1029・能條純一 昭和天皇物語 11 kindle
(1001・panpanya 模型の町
(1001・週末北欧部chika かもめニッキ 20221001
1001・徳谷柿次郎 おまえの俺をおしえてくれ シーソーブックス 20220925
(1002・ジンボー・キンジ 短編小説が好きな奴は吹奏楽コンクール課題曲を聴こう！追補版 文学フリマ札幌
(1002・体毛文化研究会 vol.1 脱毛の今昔 文学フリマ札幌
(1002・並木陽 ルネサンス漫画備忘録-15・16世紀のイタリアを中心に- 文学フリマ札幌
(1002・北18条文学 誰も知らない異常者たち 文学フリマ札幌
(1002・各駅停車 できることなら、各駅停車で Vol.01 文学フリマ札幌
1004・宮城修 ドキュメント<アメリカ世>の沖縄 岩波新書 図書館 20220930受領
(1004・D2 トーチ書店 文学フリマ札幌 20221002
1005・【再読】ウォン・カーウァイ原案 百瀬しのぶノベライズ 花様年華 図書館
1008・高森純一郎 辺境の民 文学フリマ札幌 20221002
1009・【再読】楠見朋彦 マルコ・ポーロと私 amazon 20220926受領
★1009・mayu 野白風 白夜 …野白さんのうかつに触ると切られそうなひんやりとした悪意
(1009・伊藤理佐 あさって朝子さん kindle 20221009
1010・【再読】川内有緒 目の見えない白鳥さんとアートを見に行く 図書館 20221003受領
1012・諸井誠 これがクラシックだ！ チカホ 20221005
1012・白須英子 イスラーム世界の女性たち 文春新書 チカホ 20221005
1013・深町秋生 インジョーカー 幻冬舎文庫 20221002
1014・【再読】ジョン・ケージ 小鳥たちのために 1987野澤書店(ワンデイブックス 千歳) 20220903 …序0925 一二章1009 三四五六章1010 七八九十章1014
(1015・天上恋歌 6 kindle
1015・町田康 ギケイキ チカホ 20221005 ファッションに着目した義経記
1016・【再読】並木陽 斜陽の国のルスダン
(1016・舞子さんちのまかないさん21
1016・羽山信樹 滅びの将 図書館 20221016受領
(1017・【再読】はるな檸檬 れもんよむもん！
1017・諸井誠 音楽の見える時 諸井誠音楽論集 図書館 20221017受領…モーツァルトのみ読了。あとはざっと。
1019・角田光代 対岸の彼女 図書館 20221016受領
(1019・キングダム64-66
1019・諸井誠 現代音楽は怖くない マーラーからメシアンまで 図書館 20221017受領
1022・町田康 ギケイキ2 20221018
(1022・ブランクスペース 20221022 kindle
(1022・チェッカーズ写真集 集英社文庫(1985年) らくだや 20221022
(1022・片喰と黄金8
1022・青山拓央 心にとって時間とはなにか 講談社現代新書 図書館 20221016受領
1023 Neve mind the books pppppppppppppppppppppp
1.ぽやん舎 Happy songs
2.ぽやん舎 ひみつ絵日記2
3.スガラムルディ Sapporo Cult Classics 3
4.くるみみどり 読書後文 3
5.六畳書房 本はこわくない
6.ここは札幌アンダーグラウンド
7.mayu 白夜
8.やまだなおと 宇宙 日本 ブックオフ
ppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppp
(1023・芥川龍之介 杜子春 青空文庫
(1023・ナガノ くまのむちゃうま日記 1 kindle
(booklogなし 1023・【再読】浅田彰 ヘルメスの音楽 …ジョン・ケージ、ブーレーズのみ
1024・石井宏 反音楽史 20221015
1024・【再読】高野秀行 清水克行 辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦
(1024・川尻こだまのただれた生活 第十集 kindle
1027・店にレトロの風情あり ゆとりや シーソーブックス 20221023
1028・三島邦弘 計画と無計画のあいだ ゆとりや シーソーブックス 20221023
★1029・江國香織 号泣する準備はできていた 図書館 20221023受領
(1029・桐谷さんちょっそれ食うんすか？！14
1029・おいしい味の表現術 図書館 20221024受領
(1029・能條純一 昭和天皇物語 11 kindle
 | 講談社 発売日 : 2022-09-30 |
北欧好きが高じて、会社員しつつ、寿司修行して、寿司職人としてフィンランドで就職！という夢をかなえたchikaさん。そんなchikaさんの寿司修行時代をメインに書かれた日記。家族や友人とのほっこりとしたやりとりに癒やされる。寿司学校でできたともだちとのお気に入りのものを5000円以内で買い込んでお互いにおすそわけしあう会。近くのマンションの友達と、急遽中華に、学校で作った寿司を届けたり、第二の実家ともいうべきご近所居酒屋に飲みに行ったり。映画のエキストラでとなりあっただけなのに、そこから11年つきあいのつづいてる友達。あまりの美味しさに家族内で大盛りあがりしてその後家族で工場見学にまで行った幻のキムチ工場（しかもフィンランド渡航前日）。他に、波照間島でワーケーションや、北欧好きのメンバー11人が集まって、カルサリェンニットウというフィンランドの下着一枚でダラダラ飲む習慣をやってみようという会とか楽しげなエピソードが目白押し。もちろん寿司修行もコツコツと続けて、言葉はきびしくてもあたたかく支えて、教えてくれる店の人々の後押しもあって、無事就職も決まったのでした、と。
 | 講談社 発売日 : 2022-09-22 |
学校寄席で講談に興味を持った女子高生初音。泉太郎に口止め料でパフェをおごらせつつも、だらだらと講談の話を聞くのを楽しみにしてたのに、すげなくされて、寄せまで押しかけ、徐々に講談に興味を持ち、講談教室に通うまでに。若者の新規加入welcomeな空気はありつつも、本人はいたってサバサバな。ひるがえって姉弟子の泉花は売れっ子落語家万喜助の会に出演を誘われ、最初はひるみつつも、どんどんと実力をあげていき、会心の一席に。それを見て泉太郎も火がついて、前座の会に。初音から厳しい指摘はあったものの、充実感はいなめなく。最後は初音が、「泉太郎の憧れる席亭の女将」の孫と示唆されるところで物語は締めくくられ。そして。音羽亭に火をつけたのはお席亭という噂の真意は…と。講談の演目「小猿七之助」。一人船頭一人芸者。読んでみたいな、と思った。だれ場を聞かせるのが講談師の腕の見せ所てのが印象に。
 | 白泉社 発売日 : 2022-09-30 |
いつも不可思議な世界を描いてくれるpanpanyaさん。今回は、ここはどこでしょうの旅のシリーズがおもしろかった。どこだかわからないところに降り立って、ここがどこだか自分たちで発見する、と。他には、ルールのギリギリをついてじっくりと登校を楽しむ級友との邂逅。ブロック塀の歴史。ベットから出ない条件で停電の街を探検する少年。の話あたりが好きでした。
◆おまえの俺をおしえてくれは、土門蘭さんを聞き手にした、出版カウンセリングradioというタイトルのインタビューパート、次に柿次郎さんの文章のターン、と交互にすすめられていく。柿治郎さんがどういう幼年、少年、青年時代を送ってきたのか、圧倒的な「ない」という感覚を養いながら、好きな本や日本語ラップにのめりこんでいき、新聞配達と松屋で生活費を稼ぎながら「いつかは音楽ライター」を夢見。上京、挫折、上京、自分を理解し、拾ってくれた大人たちとの出会い、がむしゃらに仕事して、吸収して、ジモコロというWebメディアの編集長となり、日本全国の地方をかけまわり、長野に移住し、Huuuuという会社を立ち上げ、地域に根ざした商店やコワーキングスペースを立ち上げ、と。最初は同じエピソードがインタビューでも文章でも出てくるなあ、と思ったけど、それが意外なグルーブ感を生み出すというか。とにかく「ない」時期の柿次郎さんの鬱屈、怒りがびんびんと伝わってきて。そして一転、ノオト、バーグハンバーグバーグ、独立と駆け抜けていく時は怒涛のように。「徳のセンタリング」と「売れすぎない美徳」という考えは興味深く（もっとも、売れさせる人だけが売れすぎないことを語れるんだろうけど）。ただ、都市にしがみついてる身には、長野以降の柿次郎さんの言をそのまま腹落ちできないところもあると感じた。それは全国をめぐって強烈な個性にふれてきた方とそうでない身の落差なんだろうなあ、とうらやましく思う。ただ、"自分が納得できるプロセスをやりきることに意味があるのだ、と。仕事って、全部そういうことじゃない？(p.39)" "「お前が信じる、お前を信じろ」" （アニメ「天元突破グレンラガン」の名台詞）あたりは響いてきた。「座右の銘：俺もやるからおまえもやれ」と言われてしまいそうだけど。◆表紙は、猿蟹合戦モチーフかと思いきや、"あるときはゴリラの経営者として背中を見せる。あるときはハチの編集者として全国に花粉を届ける。あるときはカニの表現者として想定を裏切った姿で横歩きする。これらはぜんぶつながっている。"(p.295)という一節がもとになっているのかなと思った。◆柿次郎という名乗りは、"なんかそのオモコロのコミュニティのなかで「柿次郎って名前にしたらおもろいやん」って言われて。なんか半分イジリで、半分救いだった気がするんですけど。"(p.128-9)から来ているみたいで。気がつけば徳谷さんを形成する重要なアイデンティティになっていて。「お前のおれをおしえてくれ」は、おれ＝柿次郎さん、お前＝周りの人、最後のほうに徳次郎さんについて寄稿している人を指すのかと思っていたけど、おれ＝洋平さん（本名）、お前＝柿次郎さんという自分同士での対話も含まれているんだな、と読み終えて思った。◆(買った経緯)シーソーブックスの"未読の読書会"「雨デモ晴レテモ」きっかけで購入。参加者がシーソーブックス店内でピンと来た本を選んでそれぞれ持ち寄り、わいわい話すという。そこで自分が選んだのがこの本。タイトルの圧が凄くて手に取り、ぱらりとめくると、出版カウンセリングradioて章タイトルに心ひかれたり、入った会社でやることなくて社長の机拭いたとか、面白そうで、他の方が「表紙は猿カニ合戦？」とか「柿次郎さんてどんな人なんだろ？」とか投げかけてくれて、奥付見たら、2022年9月16日(40歳) 初版、と書いてあってどういうことだろ？と思い、ますます読みたい気がupして、購入までこぎつけました。
ルネサンス漫画をまとめて紹介してくれていてうれしい。少女漫画方面が手薄な身には特に。◆川原泉「バビロンまでは何マイル？」、日之下あかめ「エーゲ海を渡る花たち」は読んだことあり。並木さんが、1550年代に描かれてない防波堤が、1560年代に作られたものと知り、日之下さんの考証の正確さに驚いたエピソードには、こちらも驚き。「フローラと白い結婚」の原作で緻密な考証重ねた人だからこその気づきか。◆惣領冬実「チェーザレ」は並木さんの熱い紹介を読んで挑戦したくなった。◆佐久間智代「もう、天使には会えない」（「憎みこそすれ、嫌いになれない」）はオスマン帝国のジェムが登場。◆原作・藤本ひとみ「逆光のメディチ」は原作の方読みたくなり。◆森川久美「花の都に捧げる」は宿敵たるロレンツォ・デ・メディチとサヴォナローラが実はひかれあっていたという奇想天外。◆真冬麻里「鉄槌とピエタ」は少年ミケランジェロと大天使ガブリエルの話、アフタヌーンに2019-20連載とあるけど見逃してたな…。◆樋口雅一「マンガメディチ家物語」講談社＋α文化はメディチ家にとってよくまとまってそな予感。
今回も奇想天外。たっぷり楽しませてもらいました。◆同窓会での出会いに敗れ、結婚相談所詐欺にあい、ラーメン大将で勝手に学ラー大盛り頼まれた上に、隣席の男がオナラに火をつけて店が爆発、と災難に災難の上塗りなとっつぁん坊や。◆大将で肉チャー食べてたはずが、いきなり「ここはあの世とこの世の通り道」「北大正門から出れば元の世界に帰れる」といわれる世界線。◆最後は北大合格をめざすもままならない今野の青春譚。◆”人生のさまざまな局面で色々な決断してきた人間の顔と、ずっと家にいてテレビ観ていた人間の顔は違う”は、テレビのところを別のものにいれかえると身につまされる。「あ、わざわざ戻ってきたのに悪いけど、午後8時になったら店は閉まるからね」には、ひどい！と同時にわらってしまった。「SNSに肉チャーの画像をアップするとセンシティブ画像として認識される」は真に受けていいのかしばし悩みました。が、自分であげるほどの男気はなく。
吹奏楽部出身者には見逃せない！吹奏楽コンクール課題曲解説な一冊。ところどころにろくな旋律を与えられない低音楽器の悲哀が語られてるので著者は低音楽器奏者だったのだろうか。元チューバ奏者としては共感しかなく。課題曲の歴史やエピソードも興味津々。委嘱作で作曲者がやりたい放題日本の旋律詰め込んだ「カント」はなんと演奏する団体が一団体もなかった、とか。「パルスモーション」のミニマル音楽的なテイスト。 「潮煙」のマーチとはおもえない渋さ（個人的にも大好きです）。「風の黙示録」が作曲者のフィリピン戦での経験が反映されていたとか。初期には、軍隊ラッパ部門のための課題曲があったとか、舞台演奏部門と交信演奏部門に分かれてたりとか。櫛田 胅之扶の、曲の雰囲気をぶちこわさない範囲で、各自自由にパート譜をわって（意訳）みたいな指示もすごいな、と。兼田敏と保科洋が生前にお互いに鎮魂曲を送り合ってて、兼田敏「嗚呼！」、保科洋「Lamentation to.…」がそうなんだとか。で、兼田敏の葬儀は保科洋がとりしきったんだとか、なにその熱い男の友情。
脱毛に対する見方、考え方の変遷、あるいは、例えば「介護脱毛」みたいな言葉ができたからそこに市場ができる、みたいな話が語られる。脱毛を強制されるような風潮への批判的な動き。女性ラッパーによる「エビバディBO」て曲やネット上のコンプレックスを助長する広告の差し止めを求める動きなど。
現役北大生による、作品評論集、とのことで本、映画がとりあげられています。あと行きつけのお店も。エンデ「モモ」、三秋縋「三日間の幸福」、恩田陸「夜のピクニック」はこれを読んで手に取りたいなと思った。岡本太郎「自分の中に毒を持て」はピンとこないところがあったんだけど再読してみようかな、と。「ニューシネマパラダイス」は一時期はまって何度もみたことを思い出しました。あと、北大正門近くのちゃんぽん屋さん「野々」気になります。濃厚ちゃんぽん野菜増し950円食べたいなあ。
 | 岩波書店 発売日 : 2022-03-22 |
伊藤潤「琉球警察」きっかけで手に取り。あらためて、こうして米軍統治下の1945-1972年の沖縄の歴史をふりかえり、まとめてもらうと、いかに米軍基地に対する沖縄の人々の怒りが、深いところに根ざしているかがわかるように思った。戦時中からの沖縄を切り捨てるような目線。軍事最優先で沖縄の土地を横暴に収容していき。「民主主義のショーケース」などと謳っていたのに、反対する意見や運動には、瀬長亀次郎への対応も一例だが、とても民主主義的とはいえない高圧的な態度、政策でのぞみ。米兵が市民の安全や生命を失わせるような事件があっても、無罪や軽微な罪で済まされ。日本の1%以下の広さの沖縄県に、70％以上の米軍基地がある、沖縄の犠牲の上に、日本の繁栄がある、という思いは、日米の政策がかわらない限り、いくら時が経っても薄れていかないように思った。日本返還時にも"日本復帰前に日米合意に基づき国政参加が実現したが、返還協定の審議という重大局面で、沖縄代表と住民の声は無視された。"(p.232)といった状況であったことも描かれ。"ドル・ショックは日米経済の谷間にあるこの小さな島の経済を直撃して、末端の県民生活まで打撃を与えた。県民は戦後のイバラの道につづく経済的イバラの道を歩まされたのである"(p.211)といったことについては今回初めて知った。まずは知ることから。
| 発売日 : |
オースティン出身、いまは札幌で働く、若きミュージシャンをりきくんに、さのかずやさん（トーチ書店）が札幌の音楽シーンなどなどをインタビューする一冊。◆2011〜2015年ぐらいはDaishi Danceのトラックにめっちゃはまってクラブが好きになり、よくPrecious Hall、Riviera、キングムー、a-lifeとか行ってた身には興味津々な一冊でした。◆「札幌はすごいDJ始めやすい街。練習会とか勉強会とか、機材開放日とかやってるハコもけっこうある。」とか「北海学園大学にclub-DTMという音楽制作サークルがあり、札幌のクラブ界隈に一定の才能の供給がなされている」とか"デカ音部屋：2021年に札幌で始まった、DJ機材や音響機材などを異様に兼ね備えた貸しスタジオ。2022年6月に諸般の事情で終了"、とか◆「北海学園大学のサークルの2人が立ち上げた「Veronica」てイベント」いったあたりは、そんなのあったんだ！とかそれ行ってみたい…とかシーンの中にいないとわからないなあとか。◆住宅街もそんなに中心部から遠くない、て文脈で"麻生ってすすきのから徒歩圏内じゃないですか。極論、頑張れば（笑）(p.26)"には、わ、わかいっていいなあ、と。◆”PROVO 札幌で20年ほど営業しているクラブ。割とアクの強い人たちがすすきのの少し外側でやっており、関わりがなければ入っていきにくい（個人の意見です）”(p.40)て注釈には、りきくんのパートでも2箇所くらい語られてたけど、20代とかからすると、PROVO、Precious Hallはやや敷居が高く感じるのかなあ、と。◆一番グッと来たのは"りき 結局DJってブースとフロアの対話なんで、どんなにうまく繋ぎができたとしても、なんかフロアの人とDJがコミュニケーションできてなかったら、自宅で練習してるのと何も変わらなくて (p.39)"てところでした。
 | 扶桑社 発売日 : 2001-03-01 |
(2022/10/05読了時)二度見て、二度読んで、ようやく「あれはそうだったのか」と思うレベル。ノベライズでかなり行間を埋めてくれたけど、本来は映画のシーンのみでそこまで語っていたということなのか、読み取れなかった。抑制的といえばあまりに抑制的な二人だったから、ミスター・チャウとミセス・チャン。お互いに、相手に自分をどうにかしてほしい、あるいは気持ちを伝える自信がない、というのがあまりに強くって。ただ、今回も映画見て、ノベライズ読む順番だったけど、かなり味わいは増したなあ、と。映画では語られなかった、ミセス・チェンからの手紙の中身、最後のアンコール・ワットのシーンで穴に込めた秘密の中身はノベライズでは語られている。また、最後の最後にチャウがシンガポールに誘った時、チャンは答えようと駆けつけたが遅すぎた、その1年後、チャウをシンガポールまで追っていったけど電話を無言で切った理由についても。そしてチャウが仕事場がわりに借りたホテルのルームナンバーが「2046」だったのを映画ではしっかり見届けた。(2020/06/14読了時)映画を観て、どうしても読み解けない部分があって、手にしたのだけれど、香港-シンガポール間に1年の間があったことは完全に見落としていた。なぜにか、1年後にミセス・チャンが追っていったけど、電話でミスター・チャウの声を聞いた途端に、男と恋に落ちても苦しいだけとさまざまな思いが渦巻いて…無言で切ってしまった、と。そこまでは映画から読み取れなかった。映画の行間をよく埋めてくれたノベライズ。両方あってより深く楽しめるように思った。
| 発売日 : |
ホノルル-成田間の飛行機内で、中国系アメリカ人の人権弁護士に、ウイグル族の青年がその半生を語るかたちの小説。独裁政治と行っても、全面的で一方的な統治が繰り広げられてるわけではない。統治層が決めた方針があって、それに従ったほうが生活上「得」をするよう巧妙に誘導され、できるかぎり政治運動や宗教には興味を持たないようにされる。ガス抜き程度のものは保証されるが。公の場での振る舞いや発言は、言いたいこと/やりたいこと、ではなく、言うべきこと/やるべきことを行うよう暗にもとめられ、それをはずれると大きな不利益をこうむる。そんな中で学業優秀なトルファン近郊の村の青年が、メッカ巡礼、大学進学、旅行会社への就職を経る中で抱いてきた思い、多数派民族から少数派民族に向ける、言葉のはしばしにあらわれる優越感や理解が行き届いていない感。自らの仕事は、自らの愛する伝統文化を見世物にすることに加担しているのでは、といった呵責。信仰心と普段の生活の板挟み。「自分で選択する」それらがあわさって、最後は、すこしでも自分と家族が、ある程度リベラルである程度強権的でありつつムスリムらしく生きられる新天地をめざした、といったところだろうか。”決して差別や弾圧を受けた訳ではないし、アメリカに幻想を抱いていた訳でもない。ただ、少数派として国内にいる限り、自分に付きまとう性質やラベルが重すぎた...」(p.121)” "この国には言論の自由がある。しかしそうであるが故に、何が最適な解釈なのかは、自分で決めなければならない。"(p.133) ”アメリカで暮らしていた時に、自由や民主主義の恩恵に与っていると実感する場面は、なかった訳ではありません。でも、少なくとも私と夫にとっては、そのコストが大きく感じられ続けました。”(p.144)
 | マガジンハウス 発売日 : 2013-07-25 |
30代OLあさって朝子さん、いつも明るく、ちょっとしたことで一喜一憂、おっちょこちょいで思ったことが顔と口に出がちで、すべったりやりすぎたりしても上司も同僚もあたたかく見守ってくれて、といったかんじで。残業のときって変な話で盛り上がるよね、のシリーズが好きでした。それを毎回うっかり耳にしてしまう警備員山岡さんも。取引先として、おい！ピータンの大森さんがちょっと登場してるシーンはうれしかった。
 | 集英社 発売日 : 2000-07-26 |
10年以上ぶりの再読。マルコ・ポーロがその旅の話を語って聞かせ、ルスティケロが記述したとされる「世界の記述」。そのテクストの成り立ちについての仮説がくりひろげられる物語。◆「マルコは見事に語り、騙る。(p.44)「マルコが言う、私が書く。マルコが言う、私が言う。私が言う？」(p.49)「私はマルコの語る地名を、どのように筆記するのであろうか。(略)それぞれの原語表記をもって。いいや、不可能であろう」(p.102)「世界の外と内が、マルコの話のなかで、私の地図の上で、われわれの本の中で、ひとつになる。マルコの頭の中で、次いで私の頭のなかで、ひとつに融合する。（略）マルココスモス」(p.114)「マルコの話のなかには、自分で見聞したものに加え、父や叔父から聞いた話も相当混じっているのであろう。（略）誰彼に聞いた、俗謡や昔話の類が」(p.119)◆マルコが語り、ルスティケロが記したという。しかし、マルコとは何者か？どのように旅したのか？旅しなかったのか？どこまでが実体験でどこまでが伝聞なのか？ルスティケロとは何者か？何語で語られ何語で記されたのか？写本の原本はどこに？◆「「世界の記述」が、世界を巻き込んで、どんどん発展しているのだ」(p.149)◆原本などもはやないのでは。書写されていく過程でどんどん内容が付け加えられていき、マルコやルスティケロすら、原作者「たち」の一人なのでは、と。◆後日譚めいて、ルスティケロがマルコとと分かれてから27年五に、マルコの娘と称する女性がやってきて形見を置いていくシーンが描かれる。◆「私が語ったマルコ・ポーロとは、何者であったのか。或いは、ひょっとすると私が、<私>だけが、マルコ・ポーロであるのか。」(p.156)◆めくるめく語りの、騙りの渦にまきこまれて、いささか興奮しながらテキスト成立の瞬間に立ち会えたかのような錯覚を、喜びを感じられる物語だった。◆あとがきに、そのプロフィールが、マルコに酷似してやしないか？もしや、マルコのプロフィールの原型？と語られるネパールの芸術家アルニコは、中野美代子「砂漠に埋もれた文字-パスパ文字のはなし」で見かけて以来気になりつづけている人物。「マルコ・ポーロと私」出版以後20年近く経つが、当時よりは邦語文献もちらほらと出てきているように思う。
| 発売日 : |
ギャラリー犬養でのmayu、野白風二人展「白夜」の会場で売られていたzine。お二方の語る、お二方にとっての白夜とは…がここに。mayuさんの朝早い時間のあわくうすく水色かかった空気を感じさせる世界観と、野白さんのいたずらっ子のような茶目っ気にくるんだ、うかつにさわると切られそうなひんやりとした悪意の対比。
 | 集英社インターナショナル 発売日 : 2021-09-03 |
(2022.10.10読了分)再読。前回読んだ時に感銘を受けたところに加え、◆ものを見ることの曖昧さ。過去の記憶は常に塗り替えられ、常に新鮮な状態の「過去の記憶」、"ひとは「時」というものに抗うことはできないけれど「時」を宝物にすることはできるから"(p.328)。みんなと見ることでひとりで見るのでは気付けなかった核心にせまれることもあること。◆なぜひとは不思議に思うのか、その不思議さ自体がわからない、それが彼の美術鑑賞の源流、つまり「はじまりのはじまり」なのかもしれないp.310◆わたしたちは、白鳥さんの見えない目を通じて、普段は見えないもの、一瞬で消えゆくものを多く発見した。流れ続ける時間、揺らぎ続ける記憶、死の瞬間、差別や優生思想、歴史から消された声、仏像のまなざし、忘却する夢p.312◆といったあたりが今回の再読では目にとまった。青山拓央「心にとって時間とは何か」講談社現代新書、川内有緒「空をゆく巨人」は読んでみたくなった。(2022.06.23読了分)図書館のアート特集コーナーに置かれていて手に取る。タイトルからして、おもしろそうだなあ、と。まずは、目が見えないのにどうやってアートを見るんだろう、という疑問から。最初は、一緒に美術館に行き、一緒に行ったひとが見たままの感想や、どんな作品か説明し、それを聴くことで鑑賞しているんだと思ってた。それにより「見えている人」もいつもより白鳥さんに伝えようと深くじっくり見るようになった。新たな発見もあった。お互いにいいことではないか。といった地平から。いろいろなアートに、いろいろな人とおもむき、対話を重ね、白鳥さんの映画を撮ることになり。白鳥さんは言葉や会話から多くの情報を受け取っていると思い込んでいたが、それは一部で、会っているときの、空気とか雰囲気とか、どっち向いて話してるのかとか、声の大きさとか距離とか。そういったものも大事にしていたとわかり。最後は「この世界で笑いたいんですよ。」「絵を見る活動は、ただそこにいるひとたちといたいだけ」言葉に深くうなずく境地へ。アートに救われる、アートに触れてこんな風に世界を見ていいんだ、という感覚は、札幌国際芸術祭2017のいくつもの展示に深くハマったことがある身としてはよくわかるし、現代アートに惹かれるのはこういうところなんだなあと再認識。以下備忘録。◆よくわからないものに惹かれる いやたぶんわからないの向こう側に惹かれている(川内有緒)◆その人がそのひとのままで作品を見たり、作ったりすることが尊いとおもうんだ(マイティ)◆盲人というだけで、他の感覚が鋭いと思われても…鋭い/鋭くない、才能ある/なしは見える人と一緒◆あなたはこの世界をどう見ていますか (作品からの問いかけ)◆しかし、正しい知識がなくとも作品について自由に語る資格はあるのです、というのがマイティの「鑑賞道」である◆ 「めくるめく現代アート」読んだあとなので、特にマリーナ・アブラモヴィッチの章は興味深く読んだ。もっと作品や著書、講演映像などにも触れたいと思った。◆
 | 文藝春秋 発売日 : 2003-09-20 |
二十年ぶりに再読。思った以上に通俗的読み物だった。参考文献のタージ・アッサルタネ「ペルシア王宮物語 ハレムに育った王女」（東洋文庫）、ケニーゼ・ムラト「皇女セルマの遺言」（清流出版）、Jean SassonのDaughters of Arabiaあたりは気になるところ。シーア派のムトアについては、この本が出たあとに、青柳かほる「一時婚（ムトア）に関するシーア派とスンナ派の論争」という論文が出ていて、論点がよくまとまっていた。チャドルの下に何を着ていてもわからない女性、貧富の差も美醜も隠すのに都合良い、逆にそれぞれ違う身なりをしている男性の方が女性から観察されているようだ、という論点および、以下のフレーズは印象に。◆ヴェールは上からの強制であれば圧政のシンボルになるが、自発的な着用であれば、時の権力者の行動に疑義をさしはさみ、必要ならば権力者に反旗を翻すときの鎧にもなるわけだ。p.131◆「宗教というのは、自分の帰属を示す一種の身分証明のようなものですが、正真正銘のムスリムを自称することは、理不尽なことは認めないということです」（ケニーゼ・ムラト）(p.177)
 | 音楽之友社 発売日 : 1998-12-10 |
ほぼ半世紀前のクラシック入門書。著者の諸井誠はマコトニオ・モンロイの筆名も持つ作曲家。「ぼくのB・B・B」「ロベルトの日曜日」は面白く読んだ。表紙の「音楽史のスーパースターだって、女、金、憂世の悩みは尽きない。赤裸なエピソードを読み進むうち、キミはクラシックの虜になる」とあるとおり、通俗的と言うか週刊誌的というか。「楽聖悪妻物語」のいちじるしく女性側に公平を欠いた書き方や、ウの目タカの目コラムの下世話さはいまとなっては目につくが、エピソード、エピソードを楽しむ心持ちで。ミサをあげられない赤毛の司祭ヴィヴァルディを協奏曲の祖父と。モーツァルトのスカトロ趣味満載の手紙の一節。プッチーニがシェーンベルク支持者になり、遠くまで急進的な「ピエロ・リュネール」を聴きにいったこと。訪米の折、ラヴェルがワイシャツ50着、パジャマ20着を携行。アメリカでのストラヴィンスキー、若き音楽家ロバート・クラフトの影響で十二音音楽に関心をもち「七重奏曲」「アゴン」を作曲。といったあたりのエピソードをたのしみ。著者自身の「現代音楽はわかりにくい」という印象が「わかりにくいものは現代音楽だ」という概念にすり代わってきているわけだ。いや、参った、参った…」(p.201)といった感慨にも触れつつ。
 | 幻冬舎 発売日 : 2020-08-06 |
亡夫の死の真相を暴き、名誉を回復した八神だが、そのために警察内には逆恨みするもの多数。八神自身も、警察内部にも外部にもネットワークを広げ、強引な捜査を続ける。盟友の中国人女性からも、時に連携した、心が通じ合ったヤクザ甲斐からも「刑事から足を洗ったら」と言われるが、踏み切れない八神。そんななかでの甲斐を狙った事件。中国人マフィアにやとわれた、あとがない出所直後の元ヤクザ、ベトナム人、ネパール人のトリオが暗躍する。八神の右腕の井沢の苦悩。清廉な警察官の父を持ち、父と真逆の道を走ってきたキリスト須藤。一見謎にみえる冨永課長の行動。そして「極道とつるんでも、流されないあんたが好きだった……。悪党を叩き続けろ」という甲斐の言葉が印象に。最後は苦い後味をのこして。
 | 河出書房新社 発売日 : 2018-06-06 |
魂だけでも現代に蘇ったかのような義経を語り手として、物語の説明に、現代の地名、文化をふんだんに盛り込んで、ストーリー中の自分を含めた者たちの運命も知りつつ語られる新感覚の義経記。ファッションやメイクに着目したところは斬新かな。三分の二は義経のターン。三分の一は弁慶のターン。鞍馬山での修行で常人の域を遥かに超えて早く動ける「早業」を身につけ、「六韜」を読み込むことで空中浮揚などの術を身につけたという、伝奇的な設定。この巻は、挙兵した頼朝に合流しようと奥州から馬を駆けさせるシーンでしめくくられる。破天荒で生命力みなぎる義経像が魅力的。「人間が合理的に行動するのは小説やドラマのなかに限られる。」(p.153)てのが効いてるなあ。
 | 密林社 発売日 : 2016-05-02 |
(2022/10/16読了分)ルーム・セルジューク朝の王族の1人、ルスダンの王配ディミトリが主人公となる演目が宝塚で演じられるのを機に、ディミトリ目線で再読。ひとじちとしてグルジア王国に遣わされ、美しき王女ルスダンに、幼馴染として共に育ちながら、立場上かなわぬ思いを寄せていたが、モンゴルの襲来、義兄ギオルギ王の死により、思わず為政者の夫となり「王配」に。しかし他国出身ゆえ、一切の権力を与えられず、ホラズムの侵攻に敗色濃厚なグルジアを救うために、父の伝で密かにホラズムと交渉すると、裏切られたと感じたルスダンが不倫に、そして、ディミトリは幽閉され。その後ホラズムのジェラールッディン王に仕えたデイミトリは、周囲がグルジアの復讐に燃える者、と見てくることを逆手に取り、裏切り者として誅されることを覚悟の上で、ルスダンのトビリシ奪回の手助けをし、殺される…と。最後の、魂だけでも、トビリシのルスダンの元へ帰って来たシーンは涙なしには読めず。◆こうなっては、キリスト教の神だろうとイスラムの神だろうと、自分を天国に受け入れてはくれないだろう。もう二度と、神に祈る資格さえ無いような気がした。(ディミトリ p.109)◆ホラズムの使者として、ルスダンのもとへ来たディミトリ◆わたくしは、貴方が的だろうと味方だろうとどうだっていいのよ！（略）貴方がこの地上のどこかで生きていてくれさえすればいいの！（ルスダン p.125)◆「グルジアとホラズムに二重の裏切りを働いた貴公のことを、後の世の人間は悪く言うだろう。だが、貴公があくまでグルジアの王配として生きたこと、このジャラルッディーンが見届けた」p.132◆あとがきに出てくるT.Soupさんは、最初に読んだ時は気づかなかったけど、いまや「ダンビアのおいしい冒険」「天幕のジャードカール」を送り出してくれてるトマトスープさんだと気づく。(2016/07/25読了分)舞台は13世紀ジョージア。おそらく史書からすると絶世の美女だったが、戦は負け続き、家臣もまとめきれず、夫には裏切られ、都も追われ…と散々な評価しかくだされなかったルスダンに、兄の意志を受け継ぎ、国を守ろうと、夫と力を合わせるも、モンゴルやホラズムの残党の前に、及ばずながら散っていった悲劇のストーリーを紡ぎあげ、魅力ある読み物に仕立てられているのには感嘆。祖母のタマラ女王にも興味がひかれた。
 | 小学館 発売日 : 2022-10-12 |
すみれ、キヨ、健太、3人の思いあう思いはゆるやかに。他の店の舞妓2人が臨時でご飯食べにくる回、彼我の違いを感じるところが面白く。百花のあねさんの夏合宿は、百花じゃなくすみれの積み重ねが百花になる、すみれを大事にせなあかん、てのをやんわり伝えてくれるためのもので。
 | 新人物往来社 発売日 : |
米澤穂信「黒牢城」を読んだのをきっかけで、別の人の描いた荒木村重も読みたくて手に取る。他に、別所長治、松永久秀、吉川経家、清水宗治と、信長に敗れた男たちを描いた連作。軍記物に依ったいささかオールドファッションな感もありつつ。◆荒木村重に関しては、一番信頼を置いていた家老の荒木久左衛門が、半分はお家の存続のため、半分は自らの息子や係累の生命を助けるため、織田と密かに通じ、交渉したが、その思いは裏切られ、村重が毛利に単身助けをもとめに城外に出ると阻まれ、その間に本城は落とされ、主たるわしには死の安息は許されぬと降伏も拒否し、卑怯者という汚名だけを着せられた…という悲喜劇。籠城が長引くにつれ、味方同士で猜疑の目を向け合い。村重にとついできた本願寺の坊官下妻頼廉の娘だしは「この世はけがれている仮の宿。西方浄土こそ永遠の安寧」と達観し。織田からも酷使され、すがった毛利にも捨て石にされたか、という絶望。猜疑に埋もれる中でも信頼に信頼を重ねたはずの五人から内通者が出た悲痛。最後は、己の叫びの偽りが民にも見抜かれていた、だから籠城も破れたという苦い思いの吐露。汚名は着せられ、家臣の大半、家族の大半を殺されひとり生き延びた村重。その最期を、裏切った久左衛門が看取るというめぐりあわせ。◆別所長治。いくさに敗けても実は勝つ。武威を示したということか。われらの上には血筋の高きものを置くがふさわしい。それをふみにじったことは別所の、そしてその民への侮蔑だった、と。武士をあなどるとどういうことになるか信長に知らしめたかった。そのために多くの生命を必要としてしまった。（反面）神仏を足蹴にし、すべてを破壊してやまぬあの男の苛烈さが怖かった◆松永久秀。「ものは美しい。人はみにくい。物の美しさだけは、信じることができる。」「やつは地蔵がただの石くれで、仏像が木端や銅にすぎんことを知っておる」信長への共感と同時にそこまで己が達せないゆえの憎しみ。◆
 | 秋田書店 発売日 : 2022-10-14 |
金の都に見舞いに訪れた康王。婚約者と思うは宋ばかりで金側からすれば、替わりの宋皇女の輿入れに返事せぬ宋は保留中という認識。そこは康王が機転を効かせるが…その後は（自称）婚約者の力量を試す大狩猟大会。また彼我の文化の差は、康王をして初めて見る金の都は「ただの村では？！」という感想を抱かしめ。皇帝が村人の家でご飯に招かれる様に驚き。いつもは意地悪な康王が、白凛之を助けるために、「この中で金の言葉ができる人ー！？」のシーンはこの巻で出色。そんななり行きで金の都に思わず随行することになった白凛之だが、自分の中のアイラへの気持ちがだんだん抑えきれなくなるのを自覚しつつ、アイラに面と向かうと抑制してしまう。そして最後は、宋と金の関係が悪化する大きな一因が描かれて閉じられる。
 | 新潮社 発売日 : 2018-07-28 |
(2022/10/17読了分)3年ぶり再読。お貸ししてかえってきたのを機に。◆結婚する娘のために泣く泣く蔵書を捨てて部屋を片付けてくれた父。まさか娘の夫になる男性が輪をかけて本を積み上げる部屋に住んでいようとは。旦那に近藤麻理恵「人生がときめく魔法の片付け」渡したら「全部にときめくときはどうしたらいいの」と泣かれた、とあって「旦那さん！」と激しく同意しながら握手したい気持ちに。…大半は捨てられtたそうですが。◆今回こそ、高楼方子「ココの詩」はぜったい手に取ろうと決意。以下の◆読めば無条件に楽しい気持ちになれる本 最期に心に残るのはいつもそういう本たちでした。p.109◆あたしはねあの頃読まずには生きていられなかったp.126◆この世は生きるに値するp.127◆といったあたりはグッときました。(2019/08/31読了分)ダルちゃんの作者による、読書遍歴エッセイ漫画。気になったもの、寝転がって読める、ブックホルダー\23,940。高楼方子「ココの詩」、吉本ばなな「ハチ公の最後の恋人」、山田詠美「風葬の教室」「蝶々の纏足」「放課後の音符」。親しくなった友人宅で読みふけった小説だったり、本がきっかけで今でも続く友情をつちかった友人のエピソード、気に入った本に出会った時の感情が鮮やかに描かれていて、良い読後感。
 | 音楽之友社 発売日 : |
モーツァルトのみ読了。あとはざっとながめる程度で。◆モツが…と語る歯医者、「モーツァルトは悲しみの音楽…」てな事を書いて一財産作った文芸評論家などなど、モーツァルトについての断定的印象、感想を聞くと「聞いたふうなことをいうな！」と言いたくなること◆グレン・グールド 「モーツァルトの初期の作品に本当に好きな物たくさん」。モーツァルトは（初期に比べると）「凡庸」になった作曲家。ブレンデルと正反対の意見◆ピアノ協奏曲No.26 戴冠式ニ長調…ゴマスリ音楽？満面に笑み浮かべて迎え入れるような。一度聞いたら忘れられない魅力的な旋律とか。聞いてみたい。◆
 | 文藝春秋 発売日 : 2007-10-10 |
(2022/10/19読了)11年ぶりの再読。「直木賞受賞エッセイ集成」を読んでひさびさに読み返したく。だいたいの話の流れも、主人公二人、専業主婦の小夜子と、ちいさな会社の社長の葵。現在の小夜子と、葵の少女時代が交互に語られ、やがて交わり、むすびあっていく物語。小夜子の、ぜんぶかかえこまなくていい、相手に求めてもいい、一歩踏み出していい、という変化が読んでてグっと来た。そして刀付き矢折れといったていで一人会社にもどった葵のところに飛び込んでいくところが一番好きだったかも。◆葵ももうひとりの女の子も、こわかったのだ。同じものを観ていたはずの相手が、違う場所にいると知ることが。p.313 (2011/05/09読了)知らないの？フランク･シナトラの名言だよ。顧客の心をとらえる方法はひとつしかない。それは誠実かつ謙虚な姿勢で顧客に訴えかけること。(p.150)なぜ私たちは年齢を重ねるのか。生活に逃げこんでドアを閉めるためじゃない、また出会うためだ。出会うことを選ぶためだ。選んだ場所に自分の足で歩いていくためだ。(p.321)
 | 講談社 発売日 : |
パラパラと拾い読み。ラベルへのジャズの影響、左手のためのピアノ協奏曲やヴァイオリン・ソナタの第2楽章あたり聴きたくなる。貧困喧騒野卑麻薬人種差別セックス暴力などなど貧民街に巣くうあらゆる要素が純愛と交錯してドラマを形成しているこの黒人街オペラとして絶賛しているガーシュウィンの「ポーギーとベス」も。バーバー「第二交響曲」より「ナイト・フライト」も。p.320からのウェーベルンの作品分類は圧巻。◆無調は表現主義と深い関わりをもって生まれた語法だが、調性の支えを失った音楽が、これに代わる支えを詩に求めたとは考えられないだろうかp.330
 | 集英社 発売日 : 2022-02-18 |
恒騎「底なんてないんだよ痛みに」。趙総大将を撃破。虐殺された雷土を見ての、捕虜十万人虐殺。怒りの嬴政出馬。今この世で一番人を殺してんのはお前だぞ秦王よ。恒騎と嬴政の対決、恒騎に理があったように思った。そして李牧の復活まで。
 | 集英社 発売日 : 2022-06-17 |
邯鄲の目前に突如現れた長城。趙北部へ向かう秦軍。迎え撃つ李牧。宜安の手前までやすやすとやって来た秦軍…というところまで。
 | 集英社 発売日 : 2022-09-16 |
趙31万、秦14万の激突。伏せられていた趙兵の包囲に絶体絶命。いつもの戦略の失敗を頑張りでひっくり返す飛信隊と楽華隊、辛くも包囲を抜け。李牧に「正攻法のやり方を知らぬ」と決めつけられた恒騎は、見たこともない十字の陣形を、というところまで。
 | 青土社 発売日 : |
大学の時に芸術学の授業で「4分33秒」をテーマにレポートを書いた際に買って、手放してしまったけど、千歳のワンデイブックスで「1987野澤書店」で見かけて、何十年かぶりに読みたくなり再購入。◆"私が本当に音楽をつくり始めたのは、つまり<真剣に>作曲を始めたという意味ですが、それは騒音に注目するためでした。なぜなら騒音は権力から、つまり和声や対位法の法則を免れていたからです。"（p.243）ケージのある一時点、このインタビューが行われた1970〜1971年時点での考えであると留保を置きつつも、全編をとおして底流に流れているのは、騒音も沈黙も、あらゆる音を音楽だと、聞かれるべき資格のある音だと、耳を開いて受け入れようと考えるように、またあらゆる統治を、押し付けを拒むような、ありのままの音が尊いように、ありのままの存在の人も尊い、ということかな、と思った。ケージがそう言ってるように感じた。そこから、あの「4分33秒」みたいな作品が生まれて来たんだな、と。もちろん、それだけではくくれないさまざまな作品が生み出されているのだけれども、それもまた融通無碍なのか。意外というか贅沢というか、それ聞いてみたかったな、と思ったのは、ケージが生活が苦しい時代の"家を一軒一軒まわり、二ドル半で私の講演十回分の前売券を売りました"(p.51)てエピソード。また、作中、好きだった言葉をいくつか引用。◆ものは消えていく、去っていく。確かにそうです。しかしすべてが去っていく瞬間にもすべてがそこに在ると言うこともまたできるんです。p.22◆偶然のおかげで、私達は存在と不在を同時に考えざるをえなくなるわけですね（ダニエル・シャルル）p.79◆私達が本当になにものも所有しなくなったとき、そこに詩があるんです。p.106◆
 | 河出書房新社 発売日 : 2021-08-06 |
義経が、頼朝と対面したと思ったら、その後の平家討伐は1ページですませて、あっという間に頼朝との関係悪化期が描かれる。刺客の正尊を撃退した後は、落ち目感はなかった！ぜんぜん落ち目感はなかった！と何度も強調しつつの都落ち。最後は静と別れるまでが語られる。◆印象に残ったのは、起請文の効力。それが実際に効いたという世界観。義経が自分の書いた起請文が根も葉もあることだと証明するために、こういった行動をしたのだ、という風に描かれており。◆全4巻の計画らしいが、この続きは未だ書かれていないようで。けど、このあとって滅亡までまっしぐらというか書いてても読んでてもつらそうで、どうもりあげるのかなあ、と一抹の不安。◆"つくづく思う。人間は首尾一貫しようとして滅ぶ、と。人間は根底に於いて首尾一貫しないものだ。人の心は瞬間的に変わるし、瞬間的に明滅している。"(p.388)
40年前のチェッカーズ写真集。まだツンツンの髪でチェックの衣装を来ていたころの。みんな若いというか稚さも遺して。履歴書形式の紹介や一問一答などを読むと特に感じられ。ファンに一言で、「自宅探しやめてほしい」は切実だなと思いつつ。好きなもの、影響を受けたものコーナーでの、キング・カーティス、60s代表するソウルテナーサックス、映画「コンプリート・ビートルズ」はあたってみたいなあと思った。
 | ヒーローズ 発売日 : 2022-09-29 |
凶暴化する空白の犬。スイを守ろうとする空白のテツヤ。空白な存在がより集まって、世界を守ろうとし、それは果たされ。主人公二人の世界は、以前と何も変わらないように見えて、けれど確実にのこされたものはあり、と感じられる結末でした。
 | 講談社 発売日 : 2022-10-20 |
コナーのインディアンの少年との出会い。その集落で暮らすうちに徐々に受け入れられていき。しかし、コナーが攫われたと勘違いしたアメリア一行の登場で事態は一触即発に。拭おうとも拭えぬ、開拓者とインディアンとの根深い対立が顕になった瞬間。
 | 講談社 発売日 : 2022-06-22 |
急に読みたい気持ちが止まらなくなり、思い立って買ってしまった。twitterではちらほら見かけてたんだけど。大好きな「買ったほうが早インパラ」たくさん見れてうれしい。最初はつくろうつくろうとしてたくまさんだけど、だんだん早インパラに感化されたのか、コンビニで買ってきたりするようになり。影響されて、限定のコーヒーゼリー、探しに行ったなあ…見つけられなかったけど。くまがほんとうにおいしそうに食べる絵をみてるといとおしくなってくる。
 | 発売日 : 2012-09-13 |
先日行った読書会で、芥川隆之介愛を熱く語ってくれる方がいて、感化されて、いくつかあげていたうちの一品、杜子春を手に取る。◆二度落魄して一文無しになり、二度仙人に大金持ちにしてもらい、三度目はもう大金持ちにしてくれなくていいから、仙人に弟子入させてくれと願った杜子春。絶対口をきくなと言われたがそこに連れてこられたのは…と。◆何ページか読んで、じんわりと味わい、またつづきに取り掛かる、あるいは朗読で耳から聞く、といったゆったりした愉しみ方を聞いたあとだと、そこまでは真似できなかったけど、ついいつもたくさん読みたいと思ってしまう身にはうらやましく思い、味わいつつ読みすすみました。
 | 集英社インターナショナル 発売日 : 2018-04-05 |
(2022/10/24読了分)ギケイキ、ピダハン、イブン・バットゥータ「大旅行記」、「日本語スタンダードの歴史」、世界史のなかの戦国日本、の分だけ再読。「日本語スタンダードの歴史」からの、伊達政宗がそれまでの書状でひらがなに三濁点を打ってたのを、朝鮮に攻め込むにあたって名護屋に他大名と一同に集められて以降、二濁点にあらためた、というのが文化の均質化という視点で語られてて興味をひかれた。また、2017年公開の「関ケ原」て映画では、登場人物がみな早口すぎて聞き取りにくく、とくに島津家は気をぬくと何をいってるかわからなくなるほど、てことで観てみたいと思った。この本を読んでから、この本のおかげで読みたい！と思ってたのを忘れ、ギケイキを読み、2巻の高野秀行さんの解説読んで、あ！この本のおかげだったんだ、と思い出す一幕もあった。ピダハンについても半分そうだった（もう半分は吉野朔実さん）。今回は、村井章介「世界史のなかの戦国日本」再読したくなりました。(2018/04/11読了分)前作、「世界の辺境とハードボイルド室町時代」が面白かったので、同じコンビだし手に取る。「ゾミア」から浮かび上がる、「強大な権力の支配から逃れるために、あえて「窓口」をつくらない、というのは支配される側の一種の知恵ですね。」「結局、文明とは誰のものなのか」「むしろ文明でメリットを得てきたのは国家の側だったんだっていうことを学びました」という視点。イブン・バットゥータの「大旅行記」で最高のキャラと紹介されるのが暴虐と慈愛の君主、インドのムハンマド=ビン=トゥグルク。/町田康「ギケイキ」で描かれる中世への鋭い視点には二人とも賞賛。「「ギケイキ」の中で義経は、兄の頼朝について「あの人の場合は、意識的に田舎者になった節がある」という言い方をしてるでしょ。これ、鋭くないですか。/頼朝はあえて関東の田舎者になったからこそ、田舎者の世界でトップを張れた。/「列島創世記」。縄文時代はゴテゴテに凝った土器をつくっていたのに、時代が進んで弥生時代になると、土器がシンプルになっていく/道具は必ずしも実用性からデザイン性へという変化をたどるわけではない/というのを読んで、個人的に、最近読んだ八重山の社会と文化で、考古学の発掘成果から土器->無土器->土器と言う時代変遷が紹介されてたおり通ずるものがあるのだろうか/「日本語スタンダードの歴史」：「現代日本語の源流についても、約五百年前、すなわち応仁の乱以降の一五・一六世紀の日本語を眺めれば足りる」/室町期には、流通が発達して、都にいろいろなものが集まってくる、と同時に、都の知識や教養が地方に拡散していった結果、人々が都を目指すようになったって言ってたじゃないですか。/政宗もローカルルールにのっとって文書を書いていたんですが、朝鮮出兵のときに、九州の名護屋城にいろいろな大名たちと一緒に集結させられて共同生活を営むようになると、文書から三濁点が消えて点が二つになるんです。/様々な興味深い視点が提示されていて飽きさせない魅力。もう、「普遍」というものを根底から覆す「ピダハン」はもっとも強烈な印象で手に取ってみたく思った。/あとは、清水和裕「初期イスラーム時代の奴隷女性と境域の拡大」「歴史学研究」950 2016/10月号 ー原則イスラーム教徒を奴隷にすることはない、細川重男「頼朝の武士団 将軍・御家人たちと本拠地・鎌倉」洋泉社新書y - 吾妻鏡を元に頼朝周辺の御家人の生態を描いた。彼らの会話がチンピラ言葉で訳される。あたりにもあたってみたい。
カラスにかにパンを持っていかれ、子供時代に一缶分の味付け海苔を一気に食べて黒くしたり、作業の段取りで「闘気を練る！」とマンガ読んだりyoutubeみたりいろいろやるけど、作業にとりかからないうちに闘気がしぼみ、また闘気を練らねば…と無限ループ、といったあたりが好きでした。
 | 新潮社 発売日 : 2010-09-29 |
◆まずは評価する点◆クラシック音楽を、作曲家と作品中心主義にしたのは間違いだった。演奏家、聴衆とのあいだに優劣をつけるべきではなかった。だから廃れていくのだ、と。十二音音楽はいいが、誰がその楽理のすばらしさを聞き分けられるというのか。逆行音形？十二音音楽？そんなものを耳で聞き分けられるのは、全人類のひとにぎりもひとにぎりにすぎない。だから大多数の聴衆からそっぽを向かれ衰退していくのだ、という論点。18世紀のヨーロッパの音楽の中心が、ドイツ音楽史のいうドイツにはなく、イタリアにあったこと。ドイツ音楽史のいう交響曲や器楽曲ではなく、声楽が、特にイタリア・オペラが中心だったこと。交響曲や器楽曲が、イタリア・オペラという梯子を登って高みに到達したのに、到達した途端に口をぬぐってそんな梯子などなかったことにした、という論点。そのあたりは斬新だった。当否を判断するほどの知識は有していないのだけど。◆次に批判する点◆まず大前提として18世紀ドイツ人、18世紀イタリア人って何？現在のドイツ、イタリアの領域にいた人がお互いを「ドイツ人」「イタリア人」と呼び、認識していたの？18世紀のプロイセン王が、ドイツ人の歌など馬のイナナキだと言った時の「ドイツ人」とは誰のことを指していたのか？神聖ローマ帝国（現在のドイツとは必ずしも一致しない）？ 18世紀ヴェネツィア人は18世紀ナポリ人を同国人だと思っていたのか？18世紀ベルリン人は18世紀ハンブルグ人を？それは地理としてのドイツを、地理としてのイタリアを指すのか？もしかして、作者は、今で言うドイツ、イタリアが諸都市、諸国家に別れていたことを知らなかったのか？いや、文中では別れていると知っているようだ。では、上記の疑問にはどう答えてくれるのか？最後まで読んでも答えはなかった。ドイツ人がクラシック音楽史をねじまげたというが、彼が指すのはシューマン、ベッカー、アインシュタインのほぼ3名。この3人が西洋にあまねくひろがる、ひいては、日本、韓国、中国にまで影響を及ぼした、ドイツ音楽中心のクラシック音楽史を広めたのだろうか。ただ、それを置いておいても、耳をかたむけるべきところはあった。
 | 講談社 発売日 : 2019-12-11 |
川内有緒「目の見えない白鳥さんとアートを見に行く」つながり。白鳥さんが、「自分の記憶だと思っているものは、常に新鮮な状態の「過去の記憶」じゃない？」(p.325)と語っていることを理解できるかなと思って手に取ったが、そこまでにはいたらなかった。自分にとって、「心にとって時間とはなにか」というのが噛み砕けなくて消化不良気味だったから。リベットによる実験の結果が、人間の自由意志などない、という意味合いで広がっていることへの異議。手を動かそうと意識する前に、すでに脳の腕を動かそうとするための部位から信号が発されている、というが、「私がもし被験者であったなら、手を動かそうという意志をいつもったのか、正直なところわからないだろう。」(p.57)と。”手を動かそうと意識した”ということを客観的に証明できるのか、と。ただ、それは、この実験に限らず、「科学ではその分野ごとに、「健全な不確実性」と呼べるものがあり、研究成果はつねにそれとともに提出され、そして受容される。不確実性があることは研究の穴ではなく、むしろ、不確実性が健全な範囲に収まっていることが、その研究成果に「客観性」を与える。」(p.61)とし、客観的な研究成果とされるものを100％真実とみなすことも、100％真実でないからと拒絶することも間違ってる、とする。この考え方は至極まっとうに思え、腑に落ちた。◆千野帽子「人はなぜ物語を求めるのか」ちくまプリマー新書、池谷裕二「単純な脳、複雑な「私」」講談社ブルーバックスは手に取りたいと思った。
 | 北海道新聞社 発売日 : 2010-10-01 |
シーソーブックスの未読の読書会「雨デモ晴レテモ」のときに、棚オーナーゆとりやさんの棚から持ってきた一冊。2010年刊。今はなき、麻生珈琲邸がばっちりのっていたので思わず購入。他にも、cafeシエスタ、蔵乃珈琲、cafe Blancなど個人的に行ったことあるけど今はない店がちらほらと、そして今の店の前の前の場所にあるbrown books cafeもみられて。円山茶寮、インソムニア、有島武郎旧邸はいったことあり。インソムニアとか桑園のあたり、元北大教授邸がいい状態で残されてレトロなカフェに転用されているものがいくつもあるんだとか。軟石づくりの建物も多くて魅入られます。
 | 河出書房新社 発売日 : 2014-08-06 |
出版社勤めに息がつまって、思い立って旅へ、そして思い立って出版社設立。最初はひとりだから自宅でやればいい？いや、「カオス的空間こそ、出版社の「原風景」。「ごちゃごちゃ」から、真に「面白い」本も生まれるというものだ。」と自由が丘にオフィスをかまえ。オフィスを借りて、本を一冊だしたら、会社のお金がほぼなくなっちゃった！よし、ここはお金はないけど人を雇おう。人を何人か雇って、これ以上雇ったら会社が傾くから雇わない！と宣言した数日後に意気投合した青年を採用、「来年出る本が売れたらなんとかなるよ」、そして本当に「謎の会社、世界を変える。：エニグモの挑戦」が売れてなんとかなった。ハタから見たら、常識外、無計画、ぶっとんでる、と思われそうなことも、著者の、良い本を作ってあまねく人々に届けるという原点回帰、自分の感覚を大事にする、100年後にミシマ社があるためにはどうするか？という発想でつらぬかれている。社員たちからも「感覚」を引き出すようにうながし、いくつもの企画が立ち上がり、実行されていく。大変そうだけど、非常に楽しげ、読んでて元気になってくる本。最後まで読んで、「「計画と無計画のあいだ」を揺れ動いているとき、人は初めて自由を感じうる。そして揺れ動く二つの間隔が広ければ広いほど、自由度は高い。(p.255)という言葉が、すっと腹に落ちてくる。◆中沢新一「愛と経済のロゴス」、トランスビュー社の取り組み…長岡義幸「出版をめぐる冒険」アーク出版は手に取りたいと思った。
 | 新潮社 発売日 : 2006-06-28 |
「直木賞受賞エッセイ集成」読んだらよみたくなった一冊。◆短編集ゆえ中身は色とりどり。表題作より強いインパクトがあったのは、「そこなう」。15年経てようやく恋人が妻と別れたのに、「他に男がいた」と告げた時の男の寂しさ、そしてさらに「俺にも妻の他に女がいた」と言われた時に「ひどい」「こわい」と言った主人公。 ”なにかが決定的にそこなわれてしまったのはその瞬間だった。”◆「あなたのことがわからないわ」「なぜすべてわかろうとする？」（「前進、もしくは前進のように思われるもの」）◆「私たち一度は愛しあったのに、不思議ねぇ。もう全然なんにも感じない」「ねえ、どう思う？そのこと」（「溝」）◆といった二人の関係性が問われるセリフが目にとまる。
 | 集英社インターナショナル 発売日 : 2022-02-07 |
源河亨「「美味しい」とは何か」（中公新書）がおもしろくって、その参考文献にあげられてたので興味をもってたぐってみた。十人の著者が、コク・キレ・のどごし、「生」（生）、味の「宝石箱」、「うまい、おいしい」、マンガな味、カレー、ラーメン、お菓子といったジャンルや味の表現をキーに解析を試みる。目次見ただけでもワクワクしてくる感。まっさきに飛びついたのは、”味の「宝石箱」のヒミツ”。彦摩呂の「海の宝石箱や〜」だけで一節まるまる分析にあてられるとは！宝石という言葉の豊かなバックグランド、ネットワークがイメージを喚起したが、宝石だけじゃだめだった、宝石「箱」としたことで、「宝石がひとつではなく、いくつもが箱の中で輝いている。ひと粒でもすばらしい宝石が、目の前にいくつもあるという幸せ」(p.106)が感じられて、インパクトが増し、あとあとまで残るヒットした表現になったのだ、と。他にも、「「コク・キレ・のどごし」のコクとは、油脂成分が主体で甘味と熟成味に支えられた口中で立体化して、濃さを増しそのまま長くとどまる経時変化である。キレとは一言でいえば、味がすっとなくなる変化。感じている味がさっと消えるか、酸味（や塩味）あるいは（適度な）香辛料の刺激がほかの味のなかを一瞬でかけぬける。これがキレの正体だ。のどごしは、軽快にのどを通りすぎる滑らかな心地よさ」(pp67-68)と描いてみたり、マンガのセリフの分析で、男の「うまい」、女の「おいしい」が、くだけてない場合は男性も「おいしい」系の表現を、「うまい」も男性専用とはいいがたくなっていく、といった傾向が読み取れておもしろかったり。マンガも小説もエッセイも宣伝のキャチコピーも縦横に引用して比較して分析する様は鮮やかで目を奪われた。そういった解析を別にしても、味を表現する千変万化を目にあてるだけでも十分に楽しめる一冊でした。
 | 小学館 発売日 : 2022-10-28 |
永田鉄山軍務局長暗殺から、二・二六事件勃発まで。皇道派の青年将校たちの暴発を押さえきれず、ついに。君側の奸を除く、われこそが正義という思想がいかに独善的だったか。後の世からは見えてくるが。
 | 双葉社 発売日 : 2022-10-27 |
この巻からは、鹿と猪の内臓煮とクジラの口づけ丼（歯茎とのどちんこ）が気になる、食べたい、といったかんじでした。それにしても桐谷さんどんどん魔物化していってるような気がします。毛豆腐、さらに発酵させた腐乳も食べてみたい。
2022年10月01日
2022年09月に読んだ本
0901・瀬尾まいこ おしまいのデート 20220814
(0901・mayu {RAKUEN}≒ROOM 20220830 紙のしわざ at 大丸藤井セントラル
0902・日垣隆 松代大本営の真実 20220811
(0903・旅に取り憑かれたイギリス人 …第10章 「マホメットの楽園」を旅して—メアリ・モンタギュとトルコの女性たち、のみ読了。 20220903
(0903・であいもん14 20220903
(0903・野澤尚也 光景1(千歳市真町、桜木、末広) 1987野澤書店(ワンデイブックス 千歳) 20220903
0904・夢枕獏 シナン 上巻 中公文庫 20210612
0904・夢枕獏 シナン 下巻 中公文庫 20220817
0905・河畑悠 重慶大厦百景 20220821シャンティブックス
(0905・北海道大学博物館（編）わがまちの文化遺産石山軟石 2011.3 図書館
0908・浪川健治 アイヌ民族の軌跡(日本史リブレット) 山川出版社 20220811
0909・王力雄 セレモニー 図書館 20220907受領
(0909・北海道裏観光ガイド B-SIDE Hokkaido alternative vol.1 …何か(ワンデイブックス 千歳) 20220903
0910・中沢新一 ピンボールのシャングリラ（「月刊 小説王」2-9）古書店小次郎(ワンデイブックス 千歳) 20220903
0911・粉川哲夫 遊歩都市―もうひとつのオーストラリア 1983年 20220821 シャンティブックス
0911・高野秀行 語学の天才まで１億光年 20220910
(0911・北海道裏観光ガイド A-SIDE Hokkaido underground vol.1 …何か(ワンデイブックス 千歳) 20220903
(0911・北海道裏観光ガイド C-SIDE Hokkaido Rediscovery vol.1 …何か(ワンデイブックス 千歳) 20220903
(0912 booklog なし・柴門ふみ 東京ラブストーリー 文庫版1-3,After25years
0913・上橋菜穂子 隣のアボリジニ ちくま文庫 20220827
0914・原田ひ香 三人屋 チカホ 20220822
0915・安藤 祐介 本のエンドロール シーソーブックス 20220903
0917・【再読】上田岳弘 ニムロッド 講談社文庫 20220827
(0917・おいおいピータン 4
(0917・谷川史子 おひとり様物語10
(0918・念仏機 光と音の専門店ハオハオハオ PARCO CULTURE SUPERMARKET 20220918
(0918・気になるベトナムの宗教 光と音の専門店ハオハオハオ PARCO CULTURE SUPERMARKET 20220918
0918・荒木スミシ ダンス・ダンス・ダンスRMX 図書館 20220917受領
0919・源河亨「美味しい」とは何か 食からひもとく美学入門 中公新書 20220903
(0919・川尻こだまのただれた生活 9 エナドリ詐欺の話 kindle
(0919・安藤ゆき 地図にない場所3
(0919・大衆酒場ワカオ ワカコ酒別店7
(0919・ワカコ酒 19
(0919・であいもん 公式コミックアンソロジー〜縁〜
(0919・booklogなし 【再読】本田 病める惑星より愛を込めて1
(0919・本田 病める惑星より愛を込めて2
(0919・福浪優子 あかねさす柘榴の都1-2
0919・庄野雄治 誰もいない場所を探している 1987野澤書店(ワンデイブックス 千歳) 20220903
0919・原田ひ香 サンドの女 三人屋 20220917
0921・ウォン・カーウァイ原案、百瀬しのぶノベライズ「2046」 図書館 20220921受領
0923・伊藤潤 琉球警察 図書館 20220921受領
(0923・モブ子の恋14
0923・エビ型宇宙人がコーヒーを飲んだ日
0923・色川武大 うらおもて人生録 チカホ 20220822
0924・清水亮 プログラミングバカ一代 ゆとりや(シーソーブックス) 20220917
(0924・林家瑜 スケッチで巡るカフェの旅 SAPPORO シーソーブックス 20220923
(0924・さつき zine「コーヒーのある暮らし」 シーソーブックス 20220923
(0924・モス田モス蔵 ESCAPE ZINE 交信 PARCO CULTURE SUPERMARKET 20220918
0924・n次創作観光 …何か(ワンデイブックス 千歳) 20220903
booklogなし0924・【再読】高野秀行 世界のシワに夢を見ろ …語学の天才まで一億光年、を機に再読
(0925・小西明日香 春の呪い 全２巻
0925・ほしおさなえ ヘビイチゴ・サナトリウム 図書館 20220926受領
0928・はやせこう 庶務省総務局KISS室 政策白書 (ハヤカワ文庫JA) 20220924
0930・青に、ふれる。 5 kindle
0930・ひらやすみ 4 kindle
(0901・mayu {RAKUEN}≒ROOM 20220830 紙のしわざ at 大丸藤井セントラル
0902・日垣隆 松代大本営の真実 20220811
(0903・旅に取り憑かれたイギリス人 …第10章 「マホメットの楽園」を旅して—メアリ・モンタギュとトルコの女性たち、のみ読了。 20220903
(0903・であいもん14 20220903
(0903・野澤尚也 光景1(千歳市真町、桜木、末広) 1987野澤書店(ワンデイブックス 千歳) 20220903
0904・夢枕獏 シナン 上巻 中公文庫 20210612
0904・夢枕獏 シナン 下巻 中公文庫 20220817
0905・河畑悠 重慶大厦百景 20220821シャンティブックス
(0905・北海道大学博物館（編）わがまちの文化遺産石山軟石 2011.3 図書館
0908・浪川健治 アイヌ民族の軌跡(日本史リブレット) 山川出版社 20220811
0909・王力雄 セレモニー 図書館 20220907受領
(0909・北海道裏観光ガイド B-SIDE Hokkaido alternative vol.1 …何か(ワンデイブックス 千歳) 20220903
0910・中沢新一 ピンボールのシャングリラ（「月刊 小説王」2-9）古書店小次郎(ワンデイブックス 千歳) 20220903
0911・粉川哲夫 遊歩都市―もうひとつのオーストラリア 1983年 20220821 シャンティブックス
0911・高野秀行 語学の天才まで１億光年 20220910
(0911・北海道裏観光ガイド A-SIDE Hokkaido underground vol.1 …何か(ワンデイブックス 千歳) 20220903
(0911・北海道裏観光ガイド C-SIDE Hokkaido Rediscovery vol.1 …何か(ワンデイブックス 千歳) 20220903
(0912 booklog なし・柴門ふみ 東京ラブストーリー 文庫版1-3,After25years
0913・上橋菜穂子 隣のアボリジニ ちくま文庫 20220827
0914・原田ひ香 三人屋 チカホ 20220822
0915・安藤 祐介 本のエンドロール シーソーブックス 20220903
0917・【再読】上田岳弘 ニムロッド 講談社文庫 20220827
(0917・おいおいピータン 4
(0917・谷川史子 おひとり様物語10
(0918・念仏機 光と音の専門店ハオハオハオ PARCO CULTURE SUPERMARKET 20220918
(0918・気になるベトナムの宗教 光と音の専門店ハオハオハオ PARCO CULTURE SUPERMARKET 20220918
0918・荒木スミシ ダンス・ダンス・ダンスRMX 図書館 20220917受領
0919・源河亨「美味しい」とは何か 食からひもとく美学入門 中公新書 20220903
(0919・川尻こだまのただれた生活 9 エナドリ詐欺の話 kindle
(0919・安藤ゆき 地図にない場所3
(0919・大衆酒場ワカオ ワカコ酒別店7
(0919・ワカコ酒 19
(0919・であいもん 公式コミックアンソロジー〜縁〜
(0919・booklogなし 【再読】本田 病める惑星より愛を込めて1
(0919・本田 病める惑星より愛を込めて2
(0919・福浪優子 あかねさす柘榴の都1-2
0919・庄野雄治 誰もいない場所を探している 1987野澤書店(ワンデイブックス 千歳) 20220903
0919・原田ひ香 サンドの女 三人屋 20220917
0921・ウォン・カーウァイ原案、百瀬しのぶノベライズ「2046」 図書館 20220921受領
0923・伊藤潤 琉球警察 図書館 20220921受領
(0923・モブ子の恋14
0923・エビ型宇宙人がコーヒーを飲んだ日
0923・色川武大 うらおもて人生録 チカホ 20220822
0924・清水亮 プログラミングバカ一代 ゆとりや(シーソーブックス) 20220917
(0924・林家瑜 スケッチで巡るカフェの旅 SAPPORO シーソーブックス 20220923
(0924・さつき zine「コーヒーのある暮らし」 シーソーブックス 20220923
(0924・モス田モス蔵 ESCAPE ZINE 交信 PARCO CULTURE SUPERMARKET 20220918
0924・n次創作観光 …何か(ワンデイブックス 千歳) 20220903
booklogなし0924・【再読】高野秀行 世界のシワに夢を見ろ …語学の天才まで一億光年、を機に再読
(0925・小西明日香 春の呪い 全２巻
0925・ほしおさなえ ヘビイチゴ・サナトリウム 図書館 20220926受領
0928・はやせこう 庶務省総務局KISS室 政策白書 (ハヤカワ文庫JA) 20220924
0930・青に、ふれる。 5 kindle
0930・ひらやすみ 4 kindle
紙のしわざ at 大丸藤井セントラルで購入。ふだんイラストなどで接していた世界観が、CGにすることでくっきりと浮かび上がってくる感があってすごくよかった。
 | 集英社 発売日 : 2014-05-20 |
甘酸っぱい普通の男女のデートを期待した身には肩透かし。両親の離婚で離れて暮らす祖父と孫娘。元不良と恩師のお爺さん。男子高校生同士。公園で犬を飼うバツイチOLさんと大学生。最後は、保育士と園児と園児の親をめぐるストーリー。どれも最後はやわらかくあたたかい気持ちに。最初の話の祖父の「だけど、ごまかせる程度のことだったらいいじゃないか。たいして問題はないってこと」にグッとくる。
 | 講談社 発売日 : 1994-07-18 |
まずもって松代大本営に馴染みがなく、定説も、さまざまな謎も押さえてなかったので、それを知ることから始まり。友人の遺志を継ぐ形で始められた調査。聞き取りから、一次資料の発掘まで広く手掛けて、考察し、たどり着いた境地とは。◆ゼネコン各社の建造への参画。ポツダム宣言受諾決定の直前まで、軍、宮中、政府、日本放送協会が、松代移転を現実の俎上にのせていたこと。松代大本営計画は、陸軍の独走というより特定の皇国思想でつながる人脈が立案、政府各省の官吏が計画をになった。そのルーツからして朝鮮人労働者の酷使と無縁ではないこと。松代大本営にかかわった政府諸機関の役割をあきらかにし、すべての受け皿は長野県であったこと。日本放送協会と無線部隊の動きを追い、情報局こそが松代大本営移転の最終局面で重要な役割をになっていた、と。◆調べれば調べるほど松代周辺で本土決戦を行おうとしていた形跡は、絶無であると了解される。完全敗北や無条件降伏とは異なる「終戦」をより有利に、最悪の場合にも国体だけは護持するために、いくつかの選択肢のうち、きわめて可能性の高いものとして、松代大本営はあったのだ。p.106-7◆日本放送協会は、8月10日からポツダム宣言受諾放送を流す。ワシントンでも傍受され、大統領にも届いている。世界各地では、日本国民が真相を知らされないうちに早くも戦勝の歓声があがっていた。p.203-4より◆
サブタイトルとして、千歳の地名が３つ銘打たれた、草木、森、川、花といった自然の光景が大半を占める写真集。水面でさざめく光、暗い森にところどころ射す光の色合い、空の色が映った川に心惹かれました。一番気になったのは、13ページ目の緑の葉の合間合間に白い花。それだけ見てても鮮やかで目を奪われるのだけれど、ページの角度を変えながら室内の光に照らしていくと、多孔質な紙の特性で、電灯の光の粒々と花がシンクロする瞬間があって魅入られました（勝手な楽しみ方ですが）。サブタイトルの地名も、普段千歳に住まぬ身には、末広？駅のすぐ北側でまちライブラリーもあるところ…こんな自然に触れられる場所あるんだ、とか、真町、ファーストぽやんのときイロイロリビングでおすすめされて歩いていった千歳神社のあるところ、たしかに豊かな森があったなあとか、桜木はちょっと見当がつかないなあ、などと思いを馳せました。
 | KADOKAWA 発売日 : 2022-09-02 |
代を継ぐ若者たちの苦悩と、それにそっと助言するかたちの和。美弦の思いのかなったはずの和との誕生日会食にかえって距離を感じてしまう一幕。和のふるまいは鈍感からかあえてのものなのか。そして最後は和が祖父の思いを継いだ和菓子「和稜」を作りあげるまでの一幕。
 | ミネルヴァ書房 発売日 : 2016-09-02 |
第10章 「マホメットの楽園」を旅して—メアリ・モンタギュとトルコの女性たち、のみ読了。種痘をイギリスに導入したのは大きな功績。他の男性作家と違い、女性として実際に後宮に入り、実際に見たことを記録できたことが強み。イスラム圏とキリスト教圏の女性の社会的地位の差異の考察。実際の倫理観に差異はないものの、常にベールをかぶることで、イスラム圏の方がはるかに容易に逢引を楽しめる。ただ刺殺され裸で路上に捨てられた事件で、誰も彼女の身元を特定できない、というケースもあった。また、モンタギューは見るものとしてだけでなく、見られるものとなったエピソードも。女性たちが裸で入浴するハレムに、乗馬服で乗り込み、執拗に裸になるように促され、コルセットを見せたところ、彼女らはモンタギューの夫がそれをつけさせ彼女を裸にならないようにしてると想像し納得したのだ、と。東京外大の卒論で書簡集を和訳したものがあるので全文読んでみたい気持ちに。
 | 中央公論新社 発売日 : 2007-11-01 |
 | 中央公論新社 発売日 : 2007-11-01 |
文庫を入手したのを機に、上下巻再読。神にどのような名前がついていようとも神は神、俺がどんな名前で呼ばれようとも俺であるように。建築は人が神に出会うための依代。ただしそこに人が過剰であってはいけない、神よ私はこんなにも祈っています、こんなにも神を敬慕していますという声が満ちていてはかえって神の姿を見逃す。知れば知るほど完璧な建築だということがわかってくるアヤ・ソフィア。それを超えるジャーミーを作れと命じられ。それには王による後押しのある莫大な予算、神の姿を見るための数学、そして建築家が必要、と。大きさはかなわないがアヤ・ソフィアよりすぐれたスレイマニエ・ジャーミイをなんとかスレイマン大帝存命中につくりあげるが、アヤ・ソフィアより大きなジャーミーは、スレイマンの息子セリム2世時代の、セリミエ・ジャーミーまで持ち越される。それでも作り上げてしまうところがシナンのすごいところ。生前にはかなわぬと悟った時の老いた帝王の眼から流れたひと筋の涙は印象に。最後は旧知の女性と再会し語り合うところでしめくくられる物語。◆「どのようなジャーミーをお建てになりたいと考えていらっしゃるの？」「人が神に出会える場所を」(下巻p.368-369）◆「仕事をしなさい」「それ以外に答えを得る方法はないよ。人に問わずに、仕事に問うことだ。自分の手に問うことだ。仕事をしなさい」(下巻p.32 ミケランジェロ)
 | 彩図社 発売日 : 2020-09-29 |
映画「恋する惑星」（原題：重慶森林）を観たあとに読むと味わいもまたひとしお。映画のシーンを思い起こすように、撮られた写真を食い入るように見入った。何人もの「オーナー」がそれぞれの物件を所有することで成り立っていること。オーナーたちの集まりで管理事務所ができたこと。時代も変わり、商売のやり方も変わり、商売はだんだんと難しくなっていると語る合鍵店経営者。「どうやって絵を仕入れているかは秘密だよ！」という絵画販売業者。などなどそこで商売をする人、訪れた人々にもインタビューしていてなかなかに興味深かった。
| 発売日 : |
ぱらりと読める薄い冊子。市内の軟石づくりの建物が図版で豊富に紹介されている。伏古にあったいまはやってないカフェ・シエスタなども載ってて、行ったことのある身には懐かしく。もうなくなってしまった石の蔵ぎゃらりぃなども。またまだ軟石を切り出してる山がひとつだけあること、石山緑地が開放されたのが平成に入ってからだったり、知ることができました。
 | 山川出版社 発売日 : 2004-09-01 |
アイヌ文化の勃興、和人との邂逅、対峙、乱をおこしてはだまし討ちで平定され、文化的に抑圧され、経済的に搾取されといった面を語りつつ、ただ一方的にやられるだけの非抑圧者ではない、したたかな、交渉する、自分稼などで意に従わなかったりする、躍動するアイヌ像を打ち出したところが印象に深くのこった。あと、サハリンと元明時代の中国とのかかわりのあたりはわりと中村和之さんの研究が参照されてるなあ、と。「政治や経済面における抑圧は、精神まで踏み込んでの文化否定にはいたらなかったのである。それほどまでにアイヌの人びとの生きた歴史には民族文化に対する強い帰属性が刻み込まれていたのだともいえよう。」(p.93)◆以下備忘録◆アイヌ集団が欲する非自給品の北方との交易が不安定だったため、本州との安定的な取引に依存せざるを得ない面◆津軽アイヌの活発な商業活動。漁業による蝦夷地とのかかわり、木材の福井や山形への移出◆商場知行制、寛文期の東北の不作つづきによる米の高騰から、暴力をともなってアイヌに無理な交換比率を押し付けることに◆18世紀のロシアの進出、北からの略奪者の出現は、クナシリ、エトロフの首長層の松前への接近をもたらす◆クナシリ、メナシの乱のアイヌたちにとって、蜂起は、アイヌ社会の慣習における制裁権の行使にすぎなかった◆1793年ラクスマン来光時は、ツキノエはロシアとの内通を疑われその風聞は関東にまで達した◆
旭川銀座商店街の銀座デパートの「間弁証法」というカオス＆カルトな小部屋。地上九階建てのムロランコア、商業テナントはすべて撤退して荒廃するが住居フロアは人が住み続ける光景。出版当時は、かつてキングムーだった建物…その後同じくクラブとして復活するとはこの時予想できず、それもまたワンダー。利用客に野菜を配っていたというホテル農協。もっともっと詳しく知りたい津別のシゲチャンランド。興味深すぎる物件が目白押しでした。
 | KADOKAWA 発売日 : |
月刊小説王二〜九（1983年-1984年）より、中沢新一「ピンボールのシャングリラ」のみ読了◆ワンデイブックスという千歳市のブックフェアで見つけた、角川書店「月刊小説王」の束。なにげなくめくったら、中沢新一「ピンボールのシャングリラ」連載とあり。「タントラを体得した気鋭の文化人類学者が放つ現代の「神曲」！！」はさすがに言い過ぎかと思ったが、なかなかにわくわくさせてくれる連載だった…未完だけれど。マカオのカジノで出会ったエリとネパールで再会した主人公のぼく。空飛ぶ卒塔婆を見に行ったり、寺院の地下通路を探しにでかけ大ケガして寝込んだり、エリがしばらくでかけてかえってこず、かわりにガールフレンドが来たり、カトマンズの街を歩いたり、と。最後は、これからシャングリラに向かうのか、その前段階なのか、というところで（つづく）となっているが続きは書かれていない様子。40年近く放置されているからもう書かれないのかなあ、と。「天使的交換」（初出「海」。現在は「雪片曲線論」所収）が姉妹編とし知り、本棚からひっぱりだしてきて、これがそうだったのか、と今更ながらにつながりを知る。以下備忘録。漢数字は、月刊小説王の巻号◆でも、ピンボールはそうはいかねえ。このマシンはもっと周到な悪意でつくられてる。人間の自由意志が介入できるのは、玉が奈落の底へ落っこちる寸前のきわどい刹那しかないからね。(p.246 二)◆「そう？よくわからないわ。すごく冷たいのと熱いのは似てるもの」(p.264 三 エリのガールフレンド)◆「んなこと言ったら、この世にはほんとのこたなにひとつねえってことになるじゃんか」（エリ p.259 四）◆病気にかかってくる椎のは、その病気を追い出してやろうとあがくからだよ。（略）病気と慣れあって生きてくことだって人間はできるんだぜ(pp.241-2 七)◆生き物をほんとうに癒す力を持つことができるのは、おそろしい毒だけです。その毒の力が強ければ強いほど、薬としての効きめも強くなるんです。(pp.243 七 ソナム)◆
 | 藤原書店 発売日 : 2019-04-26 |
ハイパー監視社会中国という舞台設定で描かれた”政治ファンタジー小説”。網の目のように監視網が張り巡らせた社会の緊張と脆弱さ。己の欲望、野心、保身といったものがもつれにもつれて有り得べからざる事態を引き起こし、本来頂点に立つことなど想定されない人物が頂点に立とうとし、暗躍が繰り広げられ。その過程で多くのものが死んでいき、最後も救いなく感じ。靴に埋め込まれたナノ素材から位置情報をつかめる「靴のインターネット」、照射されたものは自分でも制御できない強烈な性欲が湧き上がるという「ドリーム・ジェネレーター」、暗殺にも使える超小型ドローン「電子蜂」、神経遮断薬、監視カメラ、ビッグデータ、グリッドシステム、（テクノロジーとは趣が違うけど）人間をごみのように粉砕して跡形もなくする部屋。道具立てはテクノロジーの亢進とディストピア社会を映し出すのにふさわしく。また、独裁国家での統治の手法と、政治的闘争の描写についても読み応え。◆警察と監獄に頼った統治は、コストがかかりすぎるのだp.77◆一国を治めるにおいては、具体的な個々人の無実かそうでないかなどは思慮の外である。重要なのは、規模を確保することだ。そうすれば統治に必要な効果を得ることができる。p.1239◆「失策を犯した者は、その首を斬り落とす」p.129◆彼が造ったソフトは、彼らを蟻扱いして人間として見ていないp.148◆国家と社会の安全のためには、区々たる個人の死などは大局を維持するためには必要な犠牲に過ぎませんp.175(劉剛)◆
メルボルン、シドニー、アデレードと80年代オーストラリアを描いた作品。都市文化という視点から。都市から郊外へ、カウンター・カルチャーの台頭。さまざまな価値観が解体されてきている都市と、伝統的文化が息づいている郊外。前者には失われた日々を描いたもの、後者には自分たちのことを描いたものとして受け止められて大人した映画「渚のレッスン」。”案内書や旅行記には、オーストラリアの最もポピュラーな食べものがピッツァであり、最もポピュラーな飲みものがカプチーノであることなどということはどこにも描かれていなかった。”(p.49)というぼやき。バンク文化の勃興。シドニーにおけるカウンター・カルチャー革命のすぐれた現場記録、フランク・モアハウス「酒と怒りの日々」（1980年）といったトピックが目にとまる。内輪の屈折（ブルース）、といったあたりはもうすこし掘り下げたいかな。
 | 集英社インターナショナル 発売日 : 2022-09-05 |
語学を切り口にした高野さんの半生記。大学生から、アヘン王国に潜入するあたりまでの。だいたいの作品を読んでいる身には、だいたいはどこかで読んだ話だなあ、と思ったりもするのですが、そのことはこの本の魅力を一切減じない。この話は詳しくはこの本で、としょっちゅう出てくるので、私は読み返したくなるし、初めて高野作品を手にとった読者には、よい高野秀行入門になるのではないかと。言語学習、言語感、言語を使ったコミュニケーションなど言語を切り口に編み直されているからこそと思える。たとえカタコトでも、コミニュケーションには必ず相手がいて、たいていはコミニュケーションを成立させるためにこちらを助けてくれる。言語には「うまく話せる人の方が優位に立てる」という理不尽な法則、「言語内序列」がある。現地語をしゃべることで、現地人とより親しくなれるが、待遇も現地人並みになってしまうという弊害も。"日本人は言語を「内か外か」で見るが、<コンゴ>の人は(そして多くのアフリカ人は）言語を、"階層"として見ているのだ。(p.79)"、「何を話すか」というのも「言語のノリ」に含まれる、 "主に顔見知りで構成される前近代的な色合いの濃い社会では、定形の挨拶語や儀礼語は不要(p.310)"。などの興味深い考察や見方。”目的達成の手段や現地の人と仲良くなるためのツールとして必要なときだけでなく、無力感に苛まれたり、精神的に落ち込んだりすると、反射的に言語学習を始めてしまうようになる。学ぶ意味があるのかとか話せるようになるのかなんてことも度外視して、それにすがってしまうのである。”(p.103)、あるいは目的を達成してしまうと急速に学習意欲がしぼんでいってしまう、といった高野さん独特の（と思える）性分。言語には「情報を伝えるための言語」と「親しくなるための言語」の二つがあると。そして最後のほうの「ITでまかなえるのはもっぱら「情報を伝えるための言語」なのである。いっぽう「親しくなるための言語」はそもそも情報伝達には必要のないものなのだ。」(p.323)、「どの言語でも原理的に言い表せないことがらはない。どの言語も似たような性質を共有している。そしてどの言語も美しい。だから私は、つくづく思うのである。「人間はみな同じなんだな」と。人間は平等であるべきだとか、人権の観点から言うのではない。語学を通してみると、そういう結論しか得られないのである。」(p.329)という言葉に深く納得する。波瀾万丈、迷走や空回りたっぷり、あふれんばかりの情熱と焦燥とゆううつにかられえてのたうちまわっていることの繰り返しだけれど、それをこれだけワクワクして読ませてくれるのは本当に高野作品だな、と。
王子特殊紙江別工場のフォルムと色彩の絶妙さ。幌内炭鉱の項で紹介されていた「2010炭鉄港」（空知の石炭が鉄道で運ばれ鉄の港町室蘭へ）。新千歳から南は苫小牧に向かう「キラキラ海岸」。苫小牧のローカルアイドルのデビューシングル曲のタイトルにもなったのだとか。といったあたりが印象に残った物件。巻末の愛知の地域誌を作った方との対談も読み応えあり。気に入った物件のセレクトが個人的にかぶってたり、hokkaido ALTERNATIVEに登場する二人が誰なのか謎がとけたり。
休坂の「黒魔術」という名のカレー店。北の京芦別のキッチュな豪華絢爛さがそそられる。今はなきOYOYO、くすみ書房の地下にあったソクラテスのカフェ、移転する前のアダノンキがみられたのも収穫。
 | 筑摩書房 発売日 : 2010-09-08 |
白人が入植してきて、実際には250以上（方言差を含めると600以上）もの全く通じない言葉を話す集団に分かれていた原住民を「アボリジニ」とひとくくりにし、土地を騙し取り、酷使し、虐殺していったこと。その後も政策的に伝統文化を、生業を破壊していった結果が、"狭い家に大勢ごろ寝、朝からビール、町でなにするでもなくすわり、失業手当が出た夜は決まって喧嘩騒ぎ、車を盗んでぶっこわし、国民の血税で保護されてるくせに、過去の歴史に文句を言い続ける人々"と多くの白人が密かに、あるいは堂々と著者に語った「隣のアボリジニ」。ただ、そういう視点からだけでは見えないことも多々あって。それは伝統文化を守って暮らしている人たちから、町にでてきて溶け込んで伝統文化を失い、キリスト教徒として生きている人までさまざまで。伝統文化も、一律に尊重されるべきではなく、呪術的な面などは忘れてしまったほうがいいという人も。ある所では隔離され、ある所では混ざり合っていた、アボリジニと白人の不思議な関係も見られて。類型化しまとめるのではなく、さまざまなケースを経た人々の語りに耳を傾けて、描かれる「隣のアボリジニ」。◆私はね、みんな、自分が信じるものを信じればいいと思っているよ。ね、他の人たちの文化が間違っているなんて思う必要はないんじゃないかね？p.67(ローズマリおばさん)◆「アボリジニの世間」自体が、均質ではない。とても「白人的」な部分ととても「アボリジニ的」な部分を含みこんでしまっているため、どちらを向いてもどこかからの目が気になる(pp.218-9要約)
 | 実業之日本社 発売日 : 2018-02-06 |
朝はモーニング喫茶、昼はうどん屋、夜はスナックと三姉妹が三交代で営業するお店。そうなるに至った理由は…。そして多種多様な性別年齢職業の人たちの思いをよくもここまで書き分け書き上げられるなあと舌を巻く思い。そしてセルフイメージとまわりからつきつけられるイメージのギャップに驚く登場人物の肩に手をおいて、「あるある」と一緒にうなずきたい思い。◆なあ、男と女の愛情ってそういうものじゃないかね。その人の喜ぶところを見たいって、それだけのp.76（三觜）◆いい人、いい人。まひるにとっては、いい人がすることはすべていいことだもんなp.96（勉）◆「なにを正当化したいの？」「甘えないで。自分の人生は自分で決めて。あたのしのせいにしないで」p.171(夜月)
| 講談社 発売日 : 2021-04-15 |
本好きにはぜひ読んでみてほしい、作家が本を書き上げてから、どうやって本が造られて店に並べられるかまでがこれでもかと描かれる。印刷会社を舞台にしたマンガ「刷ったもんだ」の活字版！と個人的には思った（あちらは企画デザイン課、こちらは営業課だけれど）。ただ、開発・制作側の会社員生活を送ってきた身には、最初は主人公にものすっっごく腹が立つ。印刷会社はメーカーだ、とか高い理想をぶちあげるが、やってることは、編集や作家の言う"急なスケジュール変更、短納期、度重なる仕様変更、もともと無茶な要求、採算のあわない案件"をすべて「はいはい」と丸飲みして、現場に丸投げして現場に負担させるだけ。本当こういう営業前の会社にもいたわ！と怒りで血管がぶちぎれそうに。ただ、章を追うごとに、何度も何度も胃の痛くなるような場面に遭遇しつつも、着実に成長していき、最後はかかげた理想は変わらないのに、仕事ぶりは成熟し、周囲の理解も得て、なんなら追いつきたい、追い越したいと思っていた先輩とすら、お互いに影響を与え合うようになっていて、胸があつくなる大団円。周囲の目も、最初は、クソみたいな仕事ぶりのくせに理想だけ高くかかげやがって、だったのが、最後には、せっかく仕事するんだから理想ぐらい高くかかげなきゃ、って感じに。営業だけでなく、工場での生産、生産管理、DTP、経営層から取引先の編集、書店、装丁作家、そしてラスボスともいえる作家まで、さまざまな視点、立場が語られてものがたりをより重層的にしている。最後に、この本に関わった方々の、本当の本のエンドロールがかかげられてるのもグッと来ます。
 | 講談社 発売日 : 2021-02-16 |
ビットコインとバベルの塔と駄目な飛行機コレクション、のお話。そして主人公の名前は中本哲史(ナカモトサトシ)。もちろんあのビットコインを始めた方にあわせてと思うけど。それだけで興味惹かれちゃうな。小説とビットコインの相似性。最初は駄目な飛行機コレクションを、次に小説を書いておくってくるニムロッド。かつての結婚生活のために時々不安定になる恋人。スクリーン越しにだけど主人公とニムロッドと恋人が一同に会するシーンが一番好きだった。それはなにかの終わりの始まりだったのかもしれないけれど。東方洋上に去ったふたりがどうしているのか思いを馳せながら。これまでの小説で語られてきた、そしてこのあとの「キュー」にも流れている、人間が高みをめざして建てた塔と、人が個体であることをやめ、総合体として存在する世界観はこの作品でも受け継がれている。きっとこの先もそうなのだろう。この世界が作者にどう見えて、そこにどんな意味を見出して、どうすごしていくのか、これ以降の作品でも注視していきたいなと思った。◆そうじゃなくて、そういうよくわかんない事してくる人でもちゃんと生きていけるんだって、安心するのかも。優しい世界。p.72◆年を取るのも悪くないとか言いながら、自然に朽ちていく。そんな、今の現実のありようを事後肯定するものばかりがあふれててp.76◆取引履歴を記載し続けて、価値があるって言い続けるなんて、ずいぶん紳士的だと思わないか？ドルは紙切れとコイン、それから武器でできている。仮想通貨はソースコードと哲学でできているpp.79-80◆僕が言葉を紡いでいくことで、人々の精神に何かを書き込む、遺伝子に誰かが書いたコードみたいに、ビットコインのソースコードみたいに、僕が誰かの心に文字を通じて何かを記載することで、それが世界を支える力になる。pp.149◆
 | 講談社 発売日 : 2022-09-13 |
「マー君はわたしにとってオシャレなラップホルダーやねん さいならっ」と元カノに言われてふられたのが10年以上も気になって、今度結婚する今カノによみといてもらうお話が一番好きでした。罪状を申し渡す、ってコマからの、これでもこれでもか、という。ラップホルダーって必要？それがおしゃれ？いらないにいらないの上塗りなんだよ！って。◆あと大森さんが疲れ切った渡辺さんに、「しばらくごはんつくります。」「言っとくけど…太るぞ？」「キャー」てやりとりもすごく好き。◆しょっちゅうお腹をこわしてトイレにいく男子と、ものすごい頻尿の女子が電車の駅のベンチで運命の出会い、って話も好きでした（ふたりともよく途中下車して駅のトイレにかけこむゆえに）。
 | 講談社 発売日 : 2022-09-13 |
完結巻。元カレと出会って、その時のつらいことを思い返して今カレとの結婚に踏み込む話。多分けっこうトータルでかなりしあわせと母に言い切る娘。「ひとりでも楽しい、独りを愛している」「でも誰かに手を伸ばしたいと思う」両方素敵、両方できるんじゃ、と思う女性。…の話がよかった。
| 発売日 : |
めくるめくブッダマシーンの世界。中国ではポピュラーなのか、日常にお経ソング流すのが。そしてものすごい数の商品ラインナップ数。300曲入りとか気になるけどまずはまったり6曲入りとかかなあ。巻末には、突撃で実際に中国のブッダマシーンを作っているメーカーに訪問し、熱烈歓迎を受け、製造工程を見せてもらったりしてるところも掲載。ブッダマシーン愛があふれてるのを垣間見れます。
| 発売日 : |
30年も続かなかったみたいだけど、ココナッツしか食べないというココナッツ教のことが読めただけでも元が取れた感。カオダイ教もそうだけど、いろんな信仰のいいとこ取りしようという感じがすごくて、日本人に合いそうな気も。また、ベトナムのヤギの焼肉チェーンが気になりすぎました。
11年後の「ダンス・ダンス・ダンス」。25歳になったユキと13歳のときのユキと荒木スミシと羊男の「ダンス・ダンス・ダンス」。「ダンス・ダンス・ダンス」の主人公の”僕”はユキのセリフとして一箇所出てくるだけで、ユミヨシさんに至っては影も形もない。あの嫌らしい刑事はでてきたけど。そういったRMX。ユキとスミシと羊男の「ダンス・ダンス・ダンス」。ユキは”僕”に電話をかけたのに、つながったのはスミシだった、というところから始まる物語。ステップを踏み続けるかわりに、静けさを集める物語。まさかユキが働いてるところなんて、たしかに想像つかなかった。間違った電話から、引き出しでつながり、石でふさがれ、静けさを集め、現実にもどっていく。◆でもいつか私達は現実に帰っていく。何かを手に入れていつか現実に帰っていく。暗闇は暗闇。光は光。影は影。雨は雨。涙は涙。そうよね？(p.205)
 | mille books 発売日 : 2015-10-27 |
イベント「ワンデイブックス」（千歳）の1987野澤商店で購入◆珈琲店を始めるまでは波乱万丈。納得しないながらも就いてた旅行会社の営業の仕事をやめて、妻子あり30過ぎで未経験の飲食業界に飛び込み、起業。開店前にえいやと高級車が買えそうな値段の焙煎機を購入。店のオープン前せまる中、試飲してもらった師匠と頼んだ方に「オープン日延ばしたら？」といわれるほど完成してなかった珈琲。なんとか開店四日前に完成にこぎつけ。けれど、焙煎、喫茶、珈琲豆販売の店をオープンしてからはオーソドックス。過度な宣伝などせずひたすらお客様を待つ。ポツポツと来るお客さんにはその時点で最高の豆、珈琲を出し。ちょっとずつ客がつき。決めた営業時間は全う、臨時休業などは極力せずに。お店の名前「アアルト・コーヒー」はフィンランドの建築家アアルトから、その椅子が好きだったので。そのおかげで、北欧好きな方や建築好きな方がふらりと訪れたりする縁もあったり、アアではじまるから、電話帳では必ず先頭になったり、と名前も大事。縁があってラジオでとりあげられたりして、全国から豆の注文が入るようになったり、もう一店舗、みなが集まれるような店をつくったり、アアルト・コーヒーを喫茶をやめて焙煎に絞ったりと、試行錯誤しつつ柔軟に。真っ当にコツコツと営為していく姿が描かれている。徳島という地方都市のメリットとデメリット、人が集まるのか、という懸念をよそに、競合がすくないことを活かし、当時周囲がやってなかった、店内で絵や写真などの個展をひらいてみたり、チャレンジしやすい環境でもあったり、家賃がやすかったりと。環境面のメリット、デメリットを把握した上で、いろいろやってみればいいんだ、と。◆最初の数年は同じことをやり続けた。むやみに品ぞろえを変えない。イベントはしない。週に一度は休む。その代わり臨時休業はしない。営業時間は何があっても守り、どれだけ暇で辛くともそこにいる。そういう当たり前の積み重ねが信用になる。p.58◆店は当たり前のことを、毎日同じ気持ちでできるかどうかがすべてだ。決めた時間はずっと開けて、いいものを提供し続けること。p.59
| 中央公論新社 発売日 : 2022-08-22 |
タイトルからして心惹かれて衝動買い。「五感すべてを使わなければ普段私たちが感じる味にならない」「舌のどこに位置する味蕾も五つの基本味のすべてを感じられる」「区別できる種類の多様さをみるなら、味の大部分を決定しているのは嗅覚だとも言える」「形だけでなく色も味に影響。色はにおいも変化させる。色による味の変化はそのまま味の変化ということに」「舌ないし味覚のみで感じられ、かつ、他から影響を受けない「純粋な味」などありそうにない。多感覚知覚は私たちの知覚システムが自動的に行っているものであり、それぞれの感覚が得た情報は私たちの意志とは独立に勝手に統合されてしまう。」「「無垢な眼」や「無垢な舌」など存在しない」「「何がおいしいのか」という問いに対して文化を超えた唯一の答えがないとしても、それぞれの文化のなかでは答えはあるのだ」といったトピックや論点にワクワクしながら読み終えた。料理は芸術である、という論を論証する歳の手際などは理屈っぽいなと思いつつも惚れ惚れするものでした。◆さっそく影響されて、外食した際の料理をより五感を使って味わうようになりました。あと、われわれは情報を食べている、というのはある意味正しいんだな、と。◆参考文献のうち以下の三冊にはあたってみたい。(1)佐々木健一「タイトルの魔力」中公新書 2001年 (2)瀬戸賢一＆味ことば研究ラボラトリー「おいしい味の表現術」インターナショナル新書 2022年 (3)久野愛「視覚化する味覚---食を彩る資本主義」岩波新書 2021年
 | KADOKAWA 発売日 : 2022-06-10 |
ピリ辛磯部もち。けどだからこそこの店をしっかり守ってかんと…私が。そこは一緒に守らせてくれんかなあー…のボケとツッコミ。千弦と佳乃子のバチバチ×2、異世界転生もの×2など。
やわらかい物はたいがい丸飲み、むしパンは実質飲み物！！に、天啓猫さんが「んなわけないだろ」といったあとに、変なしゃっくりが止まらんまでのやりとり。YOUTUBEで好きな動画、歯石除去動画に、もはや工事、ミケランジェロかよ、ってつっこみ。同僚に緑茶を注ぎ、エナドリの缶をあけたのを持ちながら、緑茶わたして、緑茶かい！とおどろかせたところ。カレールウ買いに行って、忘れて、うまそうなスイーツ買ってきて食べて「我は鳥---自由の象徴---」とうそぶいてるコマ。そしてタイトルにもなってる、エナドリをストローでのんで、脳に直接効いたのはいいが寝れなくなっちゃったところあたりがおかしくて好きでした。
 | 実業之日本社 発売日 : 2021-02-05 |
めちゃくちゃなのに皆に気にかけられ探される長女の夜月。当たり前だけど姉に屈折した思いを抱く次女まひる。知らずに資産家の孫に好かれてまず商店街をあとにする三女の朝日。「三人屋」世界のひとときの隆盛とあっけない崩壊。夜月の彼氏の書かない小説家中里一也、朝日の彼氏の不動産業資産家一族の透、の二人を大きなきっかけに。そしてこのシリーズのはじめと終わりの語りての森野。そして、全編を通して三姉妹にそれぞれ愛情を注ぎ、ひと時愛され、頼りにされ、けれど誰とも結ばれず、それでも愛情を注ぎ男気を見せる飯島大輔には登場人物のなかで一番グッと来ました。◆商店街って店をやっている人だけでできているわけではないのよ。来てくれる人、すべてでできているの。森野さんもその一員p.301（まひる）
 | 小学館 発売日 : 2022-08-30 |
急に話が進んだ感。イズコのこと。琥珀のことを好きな税理士さんの登場。すずのユートへの気持ち。
 | コアミックス 発売日 : 2022-08-20 |
ワカコ酒スピンオフ最終巻。煎り酒、初めて知りました。菜の花おひたし、タラの芽天ぷらは、春の風物詩！そして100話目、最後のお客さんはワカコさんが来てfin. スペシャルで10年後のワカオさんと八ちゃんまで出てきて大団円。あったかもしれない…となってるけど、まだお店があって、八ちゃんが少しずつ味を継いで言ってる、大将が顔に出したことはぜんぶ八ちゃんが読み取ってくれてる、そんな世界。
 | コアミックス 発売日 : 2022-08-20 |
まるごとブロッコリーのオリーブオイルがけ、キンカンの醤油漬けがこの巻で食べてみたいおつまみワンツー。室蘭焼き鳥まで登場して室蘭焼き鳥好きとしてはうれしい。カラシ…つい、つけすぎちゃいますよね。お酒をいっしょに楽しめる同僚お二人からの誘いもあったりなこの巻。そういえば、ワカコさんガラケー だなあと思ったら、作者がこの夏スマホデビューなのだとか。ガラケー＋タブレットだったのだとか。
 | 秋田書店 発売日 : 2022-09-14 |
ホテルで働くミサさんは、過労でモフモフを抱くことに。一家心中の生き残りのエーヴェちゃんは、幼年期を捧げた敬愛、思慕していた男性がモフモフを使う人を襲ってるときき、ガイドの仕事中に涙が止まらなくなり、ガイドを雇ったトリくんに話を聞いてもらう、と。トリくんがニ…としながら、創作をあたかも真実のように残すの俺は好きですね…てシーンがすき。
 | KADOKAWA 発売日 : 2022-09-15 |
1-2巻読了。14歳で母を亡くした夏樹は、アンダルシアに住む叔母アルバのもとへ引き取られることに。アンダルシアの人々に徐々に慣れ、自分の意見も言うようになり、友達もできて、街に溶け込んで、アルハンブラや現地の教会、アラブ人街なども眺めたり。アンダルシア、グラナダが舞台と聞いただけで読みたくなった。現地の風物が織り込まれてるところもグラナダ好きにはたまらない。
 | 角川春樹事務所 発売日 : 2021-07-15 |
徳之島出身の東が、食い詰めて琉球警察に採用され、その後公安所属となり、己の職務と沖縄の政治運動の狭間に立ち、占領下沖縄を駆け抜けていく一編。奄美大島出身者ということで差別を受けながらも、沖縄に地歩を築こうとし、人民党内に情報源を確保しようとしつつ悩み、また瀬長亀治郎の人物に傾倒していく。瀬長亀次郎の描き方は魅力的。またあわせて岩波新書の「ドキュメント<アメリカ世>の沖縄」も読みたくなる。米軍占領下沖縄を舞台に、奄美出身者を主人公に据え、米軍-日本-沖縄-奄美の関係性を浮き彫りにし、そこから這い上がろうとする者たちが描かれている。◆何が正しくてなにが間違っているかなんて、誰にも分からないんだ。誰にも分からない未来に向かって、みんな必死に選択をしているp.138 ◆戦争はあらゆるものを引き裂いていった。それでも本土の連中は復興を成し遂げる、人並みの暮らしをしている。沖縄だけを置き去りにしてp.320 ◆「瀬長さん、沖縄が返還されたら、まず何をしますか」「もしも私が生きているうちに返還されたら、国政に参画したい。沖縄の窮状を日本国民に伝えたいからだ」p.410◆米軍の沖縄経済への浸透が深まるに従い、瀬長さんの人気は陰りを見せはじめているからだp.414
 | かりん舎 発売日 : 2022-03-02 |
シーソーブックスの書店店主トークセッションでアダノンキさんが手にしていたのを見て釘付けに。タイトルからしてもう魅惑的で。最後つかまって、高級料理店にエビがつれてかれるのをみて、まわりの人たちの目とゴクリとならしたのどがわすれられない。
 | マガジンハウス 発売日 : |
映画を観てから未整理のところを整理したいなとノベライズを手に取り。ルル、バオ・リン、ジンウェン、スー・リーチェンの四章で整理され、劇中小説もすっきりと刈り込まれて読みやすく。ジンウェンの妹が再登場なのはノベライズのみか。「ブエノスアイレスで好演してた張震はノベライズ読んでも登場シーンが思い浮かばず。天人五衰-天の神であっても、問題を抱えるときがある-が出てきた時は三島由紀夫「豊饒の海」を思い出した。以下備忘録。
◆多くのことは無意識のうちに起こるものです◆恋愛にはタイミングが重要なのだ。出会いが早すぎても遅すぎてもうまくいかない◆いつか君が過去から解放されたら、俺を訪ねてくれ◆愛に代替品など存在しない◆それで今やっとわかったよ。人は時間の貸し借りなんて、決してできないんだ◆
◆多くのことは無意識のうちに起こるものです◆恋愛にはタイミングが重要なのだ。出会いが早すぎても遅すぎてもうまくいかない◆いつか君が過去から解放されたら、俺を訪ねてくれ◆愛に代替品など存在しない◆それで今やっとわかったよ。人は時間の貸し借りなんて、決してできないんだ◆
 | コアミックス 発売日 : 2022-09-20 |
まさかまさかの社会人編、遠距離恋愛編。最初は付き合い出したら終わりかなあ、次は就職したら終わりかなあと思ったら、続いてくれて。広島と愛媛、市役所と大学と場所は離れたけどまだお互いへの思いは続いて。けど、少し齟齬を見せそうな予感。同期の幼馴染、喫茶店の店長が波乱の種になりそうな予感を残しつつ次巻へ。
 | 新潮社 発売日 : 1987-11-30 |
一言でまとめると、博打も人生も九勝六敗を目指しなさい、と。何もかもうまくいくということはない。負ける時はわるびれずに甘んじて受けて、次に切り返せ。生地がずるいのは器が小さい、要領よくなんてのは捨てて、まずは誠実に向き合うこと。人を好きになっておいてよかった、ということがすべてのベース。人を愛することが出来ないと、ちゃんとたたかうこともできない。…といったところか。◆＜プロは、一生を通じてその仕事でメシが食えなくちゃならない＞＜だから、プロの基本的フォームは持続が軸であるべきだ＞＜しかし、なにもかもうまくいくということはありえない＞p.118
カルメル堂、Fabulous、石田珈琲店、POP/IN、時計のない喫茶店、plantation、MINGUS Coffee、あめつち by 35stock、35stock、poool、morihico stay & coffee、アトリエ・モリヒコ、BROWN BOOKS CAFE、喫茶つばらつばら…半分以上は行ったことのあるお店だった。中には大好きで何度も通っているお店も。スケッチする人はカウンターの素材とかそういうところにも目がいくんだ、というのも面白かった。行ったことあるカフェのスケッチで行ったときのことを思い出したり、まだ未踏のお店へ行ってみたい欲をかきたてられたりと、素敵な一冊でした。
| 発売日 : |
札幌出身の大学三年生がはじめて作ったZINEなのだとか。あなたにとってのコーヒー＆somethingは？など四つの問いを友人たちに投げかけてその回答がさまざまで面白く。また韓国のカフェ事情も垣間見れて吉。コーヒー休学とか興味深いトピックも。インタビューで2度出てきたace coffee roasterは心惹かれた。あと春楡珈琲、neld coffee clubも。いろいろな人のカフェとの距離感、カフェへの思いとか読めてよかったなあと。◆札幌珈琲館、創業40周年の2022年を機に本社を江別に移転、というのは知らなかった。◆ 韓国事情を聞いてたyutoさんの、話変わってfintechはカスという話の続きも読んでみたい気持ちに。◆自分でもやってみた。Q.あなたにとってのコーヒー＆somethingってなに？ A.本。読書のお供にはコーヒー。Q.忘れられない一杯はある？ A.苦ければ苦いほどいい、みたいなアイスコーヒー派だったけど、初めてスペシャルティコーヒーのアイスコーヒー飲んだ時に、なんだこれは？！と衝撃を受け、それからは浅煎りのフルーティなアイスコーヒー好きに。 Q.コーヒーをたのしむベストな瞬間は？ A.夢心地のようなお一人様カフェで本読みながら飲むコーヒー。 Q.コーヒーにはまったきっかけは覚えてる？ A.喫茶店好きな人と付き合いはじめたことかな。すぐに自分の方が深みにはまってカフェ巡りが好きに。◆
| 発売日 : |
PARCO CULTURE SUPERMARKET No.2(札幌パルコ)に出店してた交信さんにて購入。円山の交信で買うの迷ってたzineに再会できたので◆ほぼ2020年仙台の日々を綴ったzine。モス田さんはパンクな会社員なのかな◆アベノマスクや、ラジオから流れてきたドルチェ＆ガッパーナがとうしたとかいう歌、逃げ恥再放送に、むずキュン？見てらんねえやイライラして、嫉妬？いやいやいや、とかそのあたりの空気感思い出したり。◆野中モモの「zine」小さなわたしのメディアを作る、は読みたくなる。またネットプリントのzineの情報なんてなかなかつかめないので、名古屋発坂口さんの「しげき的な日々」、図書館司書青野さんの「Blooming Blue」とか気になります。◆児童館で男の子いないとなーと言ってくる館長に、「悪気のなさと意識の低さは通底している」と感じたことなども◆「僕ら」の「女の子写真」からわたしたちのガーリーフォトへ、読んでみたい。瀬戸内寂聴「諧調は偽りなり」「美は乱調なり」「余白の美」あわせて必読。栗原康「村に火をつけ白痴になれ」「はたらかないで、たらふく食べたい」あたりはやはりアナーキストをひきつけるのかなあ。「町中華で飲ろうぜ」は映画なのかな、と思いきやBS-TBSの番組らしい。気になる。
 | 晶文社 発売日 : 2015-07-25 |
面白かった！ある一面の日本のIT発展史を垣間見せてくれるような。いまはなくなってしまったブログ「shi3zの長文日記」ファンだった身にはたまらない一冊でした。学校では理解者を得られず、塾の先生に「これから先の人生はあなたは自分自身のためではなく、あなた以外の大勢の人を幸せにして、みんなの未来をつくるのよ」と言葉をかけてもらい、コンピューターにのめりこみ、3Dプログラミングを極め、パソコン雑誌に連載を持ち、マイクロソフトに入り、森栄樹という最大の理解者を得て、デザイナーとエンジニアとリーダーをかけあわせたアーキテクトとなり、"ゲームを遊ぶ人々は、決してOSを触っているのではない。ゲームソフトを触っているのだ。ということは、人間の真理があるのは、むしろOSではなく、ゲームを通じて動かされる人間の心の方なのだ"とゲームに大きな関心を寄せ、”ゲームはなぜ、ひとの心を掴むことが出来るのか。それを僕は、携帯電話でゲームを作って確かめてみたいんです”とのめりこんでいく。そこから会社をつくり、enchantMOON、enchantJS、moonblockと立て続けに発表したあたりは目の当たりにし、ついにはあのアラン・ケイにも会いにいき、と。"同じ道を往く者に対してできるのは愛情を向け、励ますことだけなのだ。実際にその道を歩くのは、自分自身でなくてはいけない。それが未踏領域、本当の意味のフロンティアである。"◆血沸き肉踊る半生記。実話をもとにしたフィクションと思ってくれればとのことだったけど。
 | NPO法人北海道冒険芸術出版 発売日 : 2013-02-15 |
アニメ聖地巡礼を中心にすえて、観光社会学、コンテンツツーリズムを解き明かしてくれる一冊。すごく気になったトピックは、アニメ「あの夏で待ってる」にでてきたという”見た目はカルボナーラだが冷やし中華の味がするパスタ”。何それすごく食べてみたい！見た目真っ青だけど、たべるとすごくおいしいチキンカレーなオホーツクカレーをうわまわるインパクトと推測。最後は、末尾近くの以下の二文に深くうなずきつつ本を置く。「コンテンツをめぐって人々が観光し、遊び、想像する。その総体がコンテンツツーリズムである。」「人は自分の興味に従って行動し、居場所を見つけ、他者性を持った他者と遊び、交流できる。そして、自分が認められる場所を中心にして、社会に対し希望を持って生きはじめることができる。これが観光の可能性である。」
 | 一迅社 発売日 : 2016-04-25 |
1-2巻読了。19で癌で死んだ妹。残されたのは死んだ妹の恋人と姉。罪悪感と背徳感を抱きながらも付き合いはじめた二人。条件は、妹の行ったところを一緒に巡ること。お互いに義務感と罪悪感だけかと思っていたのにどうしようもなく惹かれてしまい、最後は…と。死んだ人がどう思ってたか、たとえ呪いだったとしてもそれは解けることはない。残されたものはただ生きていくしかない。
 | 東京創元社 発売日 : |
私立の中高一貫の女子中学校・女子高校を舞台に起こる連続自殺。それは自殺だったのか？原因はなんだったのか？よそで起こった自殺とつながりはあるのだろうか。自殺した生徒の後輩たちが、噂された教師が、その教師とかつて仲の良かった教師が、司書教諭が、それぞれ舞台をまわす。ただ、どの登場人物もしょっちゅう、「思いつき」（わたしはこう思う！けど○○について説明できる？それはわからないけど…）、「思い込み」（○○先輩はそんな事する人じゃない！）、「理解の強要」（まずは私の気持ちをわかってほしい）そして噂好き、根拠がうすかろうがなんだろうがぱっと広まっていく噂。それらが高速で順繰りでてきて、ややげんなりしてしまった。それが舞台となる場所の特質なのだとしたらそうなのかもしれないけれど。事件か？自殺か？誰が犯人なのか？原因は？二転三転する見込みに、だんだんと真実があきらかになっていき…と。◆「わたしは正しかったんだ、って」「なにが？」「わかりません」「わかるって言ったじゃないか」「わかったことをすべて言葉にできるわけじゃないでしょう？」(p.192)…このやりとりが一番ひんやりとした。◆活版印刷三日月堂シリーズ、紙屋ふじさきシリーズ、金継ぎの家とほしおさなえ作品を読んできたので、デビュー作も、と思ったけど、風合いがだいぶちがった。
 | 早川書房 発売日 : 2021-02-17 |
読書アプリの新刊通知に「早瀬耕」で登録してたのに、一年近くも見逃してしまっていたのは、きっと、今回の作者名が「はやせこう」だったから。そして著者紹介も「1967年グリフォンズ・ガーデン生まれ」。最初見かけた時は、同名異人？と疑ったが、他の作品の紹介に「未必のマクベス」「グリフォンズ・ガーデン」があったので安心してレジへ持っていきました。ただ、「未必のマクベス」「グリフォンズ・ガーデン」らの重厚にして緻密な世界観から一転、架空の省庁で働く官僚二人の奇想天外な政策提言を、固有名はあきらかにしないが、折々の各国の元首や社会現象、日本の国民性を皮肉りながらも軽やかにくりだされていくショートショート。働きたくなさすぎて仕方ない東大卒のお嬢様島崎室長と、実家から一生働かないで暮らせるだけのマンション収入を与えられているがそのことを隠して働く中村くんの迷コンビが主人公。◆温暖化対策の潜水型流氷カニ運搬計画、残業の名称を変えるだけで残業を減らそうという残業パラダイムシフト、太陽帆を打ち上げて国際原子時をひそかにのばそうという政策、閣僚・議員の心拍数連動型アラームで失言・暴言の防止、胡蝶蘭のリサイクルなどなど…科学的知識を敷衍して大風呂敷を広げたものから、言葉遊びをひねったものから、リサイクルまでさまざまに、クスリとたのしませてくれる。貴国の元首の発言は記者に出す紅茶のフレーバーからある程度予測できるのでは？にMI5が、いやいやフレーバーではなく、砂糖の量だ！と得意げにうっかり漏らすやりとりが個人的にはツボでした。
傷つける相手からは逃げていい。嫌な考えはストップと自分で声かけて止められる。母には四者面談で初めて打ち明けた進路。積み重なった違和感を、先生たちの後押しを請けてきちんと伝えられたことが尊い。
 | 小学館 発売日 : 2022-09-30 |
よもぎと小説家の邂逅、小説家宅での本の話。クリスマスパーティーで漫画友達ができそうななつみ。いいやつでもないけど、それほど悪いやつでもない、と。給湯器故障でバイトを増やすひろ兄。それぞれがゆっくりと変わりだす予感。
2022年09月01日
2022年08月に読んだ本 その2
0816・須賀しのぶ 革命前夜 20220813
0816・原田ひ香 ランチ酒 読書室ポワロ
(0816・トマトスープ 天幕のジャードカール 1 kindle 20220816
0816・【再読】森絵都 風に舞い上がるビニールシート …「直木賞受賞エッセイ集成」つながり 20220811
0817・Hans Werner Holzwarth:Koons 図書情報館
(0817・【再読】高浜寛(デュラス原作) 愛人（ラマン）紙版 Amazon 20220817
0818・ほしおさなえ 紙屋ふじさき記念館1 麻の葉のカード 20220811
(0819・夢の雫、黄金の鳥籠17 kindle
0819・原田ひ香 ランチ酒 おかわり日和 読書室ポワロ
0820・イム・キョンソン 村上春樹のせいで 20220817
0820・ほしおさなえ 紙屋ふじさき記念館2 物語ペーパー 20220811
0821・ほしおさなえ 紙屋ふじさき記念館3 カラーインクと万年筆 20220102
(0821・コナリミサト 凪のお暇10
(0821・七つ屋志のぶの宝石匣17
0821・柿本拓哉 ハロー！グッバイ！ 20220821 シャンティブックス
0823・村上 陽子／写真・文 風のなりゆき a‐tempo 6 リブロポート …図書館
0822・「あのひと」+ユビキタ・スタジオ あのひとと語った素敵な日本語 覆面雑談 ユビキタ・スタジオ …図書館
0822・吉村昭 赤い人 …「本のフルコース」つながり 20220811
(0823・もりっつ 南大東島に閉じ込められた！ 20220823
(0823・刷ったもんだ7 20220823
0824・ほしおさなえ 紙屋ふじさき記念館4 故郷の色 海の色 20220811
(0824・紛争でしたら八田まで10 20220823
(booklog なし0825・【再読】シマシマ1-2 kindle
0825・中江有里 残り物には、過去がある 20220811
0826・原田ひ香 ランチ酒 今日もまんぷく 読書室ポワロ
0827・週末北欧部Chika 北欧こじらせ日記 移住決定編 20220827
0827・ほしおさなえ 紙屋ふじさき記念館5 春霞の小箱 20220827
(0828・高浜寛 扇島歳時記4
(0828・喰う寝るふたり住むふたり続 3
0828・デュラス 北の愛人 図書館 20220821受領 …高浜寛の漫画版「愛人」つながり
0829・ほしおさなえ 金継ぎの家 20220817
0831・高杢禎彦 チェッカーズ 20220831受領
0816・原田ひ香 ランチ酒 読書室ポワロ
(0816・トマトスープ 天幕のジャードカール 1 kindle 20220816
0816・【再読】森絵都 風に舞い上がるビニールシート …「直木賞受賞エッセイ集成」つながり 20220811
0817・Hans Werner Holzwarth:Koons 図書情報館
(0817・【再読】高浜寛(デュラス原作) 愛人（ラマン）紙版 Amazon 20220817
0818・ほしおさなえ 紙屋ふじさき記念館1 麻の葉のカード 20220811
(0819・夢の雫、黄金の鳥籠17 kindle
0819・原田ひ香 ランチ酒 おかわり日和 読書室ポワロ
0820・イム・キョンソン 村上春樹のせいで 20220817
0820・ほしおさなえ 紙屋ふじさき記念館2 物語ペーパー 20220811
0821・ほしおさなえ 紙屋ふじさき記念館3 カラーインクと万年筆 20220102
(0821・コナリミサト 凪のお暇10
(0821・七つ屋志のぶの宝石匣17
0821・柿本拓哉 ハロー！グッバイ！ 20220821 シャンティブックス
0823・村上 陽子／写真・文 風のなりゆき a‐tempo 6 リブロポート …図書館
0822・「あのひと」+ユビキタ・スタジオ あのひとと語った素敵な日本語 覆面雑談 ユビキタ・スタジオ …図書館
0822・吉村昭 赤い人 …「本のフルコース」つながり 20220811
(0823・もりっつ 南大東島に閉じ込められた！ 20220823
(0823・刷ったもんだ7 20220823
0824・ほしおさなえ 紙屋ふじさき記念館4 故郷の色 海の色 20220811
(0824・紛争でしたら八田まで10 20220823
(booklog なし0825・【再読】シマシマ1-2 kindle
0825・中江有里 残り物には、過去がある 20220811
0826・原田ひ香 ランチ酒 今日もまんぷく 読書室ポワロ
0827・週末北欧部Chika 北欧こじらせ日記 移住決定編 20220827
0827・ほしおさなえ 紙屋ふじさき記念館5 春霞の小箱 20220827
(0828・高浜寛 扇島歳時記4
(0828・喰う寝るふたり住むふたり続 3
0828・デュラス 北の愛人 図書館 20220821受領 …高浜寛の漫画版「愛人」つながり
0829・ほしおさなえ 金継ぎの家 20220817
0831・高杢禎彦 チェッカーズ 20220831受領
 | 秋田書店 発売日 : 2022-08-16 |
13世紀ペルシア。モンゴル帝国軍に攻め落とされたトゥースで捕らえられた少女シタラは、ファーティマと名を変え、チンギス・カンの子トルイの妃ソルコクタニにつかえることに。仕えていた家で、世の中の動きを知り、それがどうなっていくか知るために、学問を身につけておくべきという言葉を胸に。「知識」を武器にモンゴル帝国に切り込んでいこうという決意を胸に。1巻は、チンギス・カンが死んだことが示されたところまで。
 | 文藝春秋 発売日 : 2009-04-10 |
「直木賞受賞エッセイ集成」つながりで手に取る。表題作、（亡き元夫が命を賭けて守ったアフガンの少女ソワイラ）「ソワイラは、国際機関で働くのが将来の夢だと僕に打ちあけてくれました」と記者が伝えてくれたシーンは涙なしには読めなかった。他に、仏像修復に異様なまで深くこだわりを見せる修復師、ケーキ屋オーナーの専属秘書として振り回されながら、プロポーズしてきた彼の自分より仕事を優先する不満をいなしつつ、手のひらの上で転がそうと決意する女性。謝罪に向かう車中での助手席の男の会話から、身も知らぬ男たちの10年ぶりの草野球に参加するまでの顛末、大学で聞いたレポートを代筆してくれる守護神の噂、病弱な犬の専用職缶詰のため夜のバイトにでる女性などなど、バラエティ豊富な短編集。◆「食」とは人類に最も手近な、そして平等な満足と幸福をもたらす賜りものであると信じている。(「器を探して」)◆「人それぞれ、なにをあてにして生きるかは好きに決めればええんとちゃうか」（「鐘の音」）◆「僕はいろんな国の難民キャンプで、ビニールシートみたいに軽々と吹きとばされていくものたちを見たんだ。人の命も、尊厳も、ささやかな幸福も、ビニールシートみたいに簡単に舞いあがり、もみくしゃになって飛ばされていくところを、さ」（「風に舞い上がるビニールシート」）
 | 祥伝社 発売日 : 2017-11-14 |
タイトルから勝手にのんきなOL、あちこちランチも巡りながらお酒も飲んじゃう！みたいなのを想像してたけど、全然違った。どんな仕事なのかも、どうしてランチが一日最後の食事なのかも、どうしてランチの時に飲みたくなるのかも全部。よくこういう設定思いつくなあ…というお仕事は、深夜から早朝にかけての見守り屋。いろいろな家に呼ばれて、さまざまな年齢性別職業の人と出会い、話を聞き、その家のある街でランチしてかえる、と。そして、主人公祥子も、見守るばかりではなく、実は見守られていたんだよ、と。もちろんBig brother is wathing you.的な意味合いではなくね。それが何だか善き。◆丸の内の回転寿司屋は、根室花まるだろうか。北海道民としては気になるところ。また、十条の肉骨茶（バクテー）専門店、もしあるなら、訪れてみたい。◆「誰かが歩けば、道の小さな石ころが動く。空気も揺れる。どんなことでも、何も変わらないってことはないのよ」（元子） 私は食べて、飲んで、生きていく。そして、生きていれば何かが変わり、それはどこかであの子につながる。それでいい（祥子）
 | 文藝春秋 発売日 : 2018-03-09 |
1989年、日本から東ドイツへピアノ留学した主人公の眞山柊史。東ドイツ、ハンガリー、北朝鮮、ベトナムとさまざまな出自の留学生や同級生たちとぶつかり、時に受け入れられつつ、また父の旧友一家と交流を持ちつつ、秘密警察（シュタージ）が跋扈する東ドイツ社会にて、時に翻弄され、時に熱い心でぶつかっていき...と。ただ、完全に食べ合わせならぬ読み合わせの問題なのだけど、1945年ベルリンを舞台にした、深緑野分「ベルリンは晴れているか」を読んだ後だと、23歳の柊史が幼く見えてしかたなかった。ベースにある思想は「罪には罰を」。それぞれの登場人物が抱える過去に犯してしまったことが、苛烈に彼らを縛り、追い詰めていく。秘密警察による恐怖政治というものが、いかに人の心を腐らせていくかが悲しいまでに描かれていく。敵か味方か、友かそれ以外か、信じていた者に裏切られ、きつくあたってきていた者が一筋の真実をいだき、お互いに堅い信念がぶつかりあい、それぞれの運命を受け止め。そしてもう一つは「クラシック音楽」の存在感。特に、ラインヴェルガーのオルガンソナタ第11番第2楽章は聴き込みたく思うところ。主人公がピアノ留学にきたこともあるが、ピアノ、ヴァイオリン、オルガンの演奏描写には強く心惹かれるものがあった。◆「価値観なんて、たった一日で簡単に反転する」（ヴェンツェル）p.121◆音楽は彼に復讐した。罪には罰を。それが彼が自分に科した罰なのだろう。(p.455)
 | TASCHEN 発売日 : 2015-12-08 |
椹木野衣「シミュレーショニズム」読んだらジェフ・クーンズの図版をもっとながめたくなり。ステンレスで磨き上げたシリーズと、連作「made in heaven」を見ることができたのは収穫。ただ、もっと図版豊富なものがみたかった。
 | KADOKAWA 発売日 : 2020-02-21 |
和紙を始めとした紙の知識は深く広いが無愛想でそれを広める気持ちの乏しい藤崎と、引っ込み思案だけど紙小物が大好きでそれらを企画広報する才のある女子大生百花。当人たちは気乗りしないまま周りの後押しで、紙の記念館の館長とバイトという関係になった二人。最初はギクシャクしてたものの、新たな紙小物製品や館内の展示の仕方、SNSでの宣伝などを通して、藤崎の百花に対する評価も変わり…と。専門家側からと素人側からのアプローチがいい具合にうまく合わさって、善き方向に展開しそうな予感。それにしても和紙の世界は奥が深い！◆「あんまり紙をおもちゃにしたくないんだよね。紙はね、もっと…」「記録のための紙、なにかを包んで守る紙、家具としての紙。紙はむかしから強い力を宿すものだった。できれば敬意を持って扱いたいんですよ」（藤崎さん p.266）◆やっぱり紙っていいなあ。小さくても、持っているとしあわせになる。これであの人に手紙を書こう、とか、あの本にはさもう、とか、「これから」を考えるのが楽しい。実際に使っても、使わなくても。小さな可能性、小さな未来を手に入れたみたいに。p.108-109◆
 | 祥伝社 発売日 : 2019-07-11 |
「見守り屋」祥子のシリーズ第二弾。この巻のベースには、夫に引き取られた娘となかなか会えない気持ちがあり。力になりたいと思う人、力になってくれる人との出会い、また会いたいと思う人、また会いたいと思ってくれる人との出会いがあり。迷ったっていい、ふらふらしたっていい、気持ちのままに進んでいけばいい感を抱く。この巻のランチ、秋葉原のとろとろ卵の角煮カツ丼！静岡のは、あの「さわやか」かな？どっちも特に美味しそうで読んでて食欲が刺激される。そしてビール！ビールが飲みたくなること請け合いです。出てきた人の中では、SNSでの誹謗中傷に苦しむ実咲、おだやかで一緒にいて心おちつく出版社編集長小山内、明るく快活でいて危ないことから守ってくれた代議士秘書の角谷とのやりとりがよかった。角谷さんどうなっちゃうの？とハラハラしつつ最後のページに一筋の希望が託された思い。◆つまりは言いたいことをはっきり言えず、なんとなく飲み込んでしまったり、相手の気持ちを勝手に慮って身をひいてしまう。そして、気がつくと大切なものは皆、なくなってしまうのだ。（p.15）◆おいしいものを一緒に食べて、同じことに笑ったら、もうそれは恋なのだと、大阪を舞台に小説を書き続けていた女性作家が言っていたことを思い出す。（p.110）◆どれだけ、彼女はここにいたかっただろう（p.148）◆ある種のものは、ある日あっという間になくなる（p.295）◆
 | 小学館 発売日 : 2022-08-10 |
◆冒頭、タイトルにもなった黄金の鳥籠、夢の雫を詠み込んだ独白が流れ。幼き時の夢とはなんだったか◆ハンガリーの代理大使たるグリッティは、ヒュッレムの画策も間に合わず、捕らえられ車裂きの刑に。強く強く「もし皇后であったならば」との念を。◆東方遠征に向かった大宰相イブラヒムからは、ヒュッレムの息子への暗殺指令がくだるが、シャフィークの機転で防がれ。次巻、ヒュッレムとイブラヒムの全面的な対立に発展する予感を秘めつつ、閉じられた物語。
 | 季節社 発売日 : 2020-10-22 |
タイトルから、韓国の作家が、村上春樹のせいで人生の針路がこんなにも大きく変わって、みたいな自分語りが読めるのかと思いきや、著者自身のことはほんのすこしで、大半は、著者の目からみた村上春樹のライフストーリー、村上春樹の思想、そして架空インタビューで占められていた。今となっては希少な雑誌からの引用とかは、読めてうれしかった。「ジャズ喫茶のマスターになるための18のQ＆A」『JAZZ LAND』1975.8.1号とかね。◆村上春樹と村上龍の対比、村上春樹の妻陽子さんのキャラクターなども垣間見られて。◆昭島で「村上春樹資料館」を運営する渡辺商店のオーナー渡辺シンジさん、の紹介も。もう少し、しらべてみたい。◆あのひと＋ユビキタススタジオ「あのひとと語った素敵な日本語」ユビキタススタジオは取り寄せて読んでみたい気に。◆僕は結末についてはあらゆる可能性を残しておきたいんです。僕の読書なら、その「開放性」を理解してくれると思います。それが読者に与えられる「親切さ」ではないかと思っています。（架空インタビューより）◆彼にとっての「男の子らしさ」とは、困難に直面しても、ぐっとこらえて乗り越えていくことだ。普段は少し抜けているところがあっても、壁にぶつかったときには一人でもひるまず打ち勝つことを理想的な男の子らしだと思っている。つまらない言い訳をしたり、図々しく人を利用したり、人の悪口ばかり言うようであれば、それは「男の子」ではないという。P.200
 | KADOKAWA 発売日 : 2020-09-24 |
最初は和紙のことなんかぜんぜんわからなかったのに、自分からぐいぐいとつかみに行き、名古屋で紙こもの市があれば、帰りに岐阜によって紙漉きの体験をしてきたり。「わたしが望んでいるのは、和紙をいまの世の中にふさわしい形で生かすこと。そのために若い百花さんにしかできないことがある」(p.44)と期待をかけられ、終章では、作家だった亡き父の作品を引用した蝋引きの美しい物語ペーパーを企画し、受け入れられ、館長の藤崎さんに「大丈夫だよ。うちの商品のことは吉野さんがいちばんわかってるだろう？開発者なんだから」（p.241)と声をかけられるまでに。"人はみんなひとりなんだ。だから生きているあいだは、まわりにいる人といっしょに過ごそう。"耳の奥に父の声が響く(p.286)というフレーズが流れる中閉じられる物語。悩みのタネといえば、館長の藤崎氏に激しい対抗心を燃やす次期社長候補のいとこ浩介が、記念館の仕事を本社に移管しよう移管しようとすることか、と。
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-02-25 |
この巻のメインテーマ、1つ目は「水引」。帰省で祖母に教わった水引の結び方。それが、水引クリエーターのワークショップに、祖母を読んで参加者に結び方を教えてもらうことにつながり。◆だれかが生み出して、それをだれかが引き継いできてくれたからいまがある。それを引き継ぐのはたいへんなことだけど、自分のためにがんばるんじゃない、と思ったらなんだか力が湧いてきたんです。これまで水引に携わってきた人たちがみんな自分のうしろについてきてくれている気がして。(p.197)◆そして2つ目は、タイトルにもなっている「カラーインクと万年筆」。個人的には、正直、何百種類ものカラーインクが市場に出回って受けいれられてるとは寡聞にして知らずでした。また、書き味の説明を読んでいるだけでもガラスペンへの興味がいやましに増してくる。百花たちも、見に行った文具やで、カラーインク、ガラスペン、万年筆に心ひかれていくのを読みながら。そして取引先のインクメーカーには新発売のインクのネーミングまで依頼されることに。次期社長候補の横槍にもめげず、取引先の協力もあって、百花の奮闘もあり、記念館
の案が採用されるところまで。すっかり欠かせない記念館の戦力になりつつある主人公百花、という図に。
の案が採用されるところまで。すっかり欠かせない記念館の戦力になりつつある主人公百花、という図に。
| 発売日 : |
著者の知り合いも、知り合いじゃない人も含めて、左頁にハロー（出会い）、右頁にグッバイ（別れ）の写真をつづった一冊。わかりやすく、ハロー、グッバイなものもあれば、そうでもないものもあり。また、関係性の濃淡が写真にあらわれてるのかどうかも想像したり。自分だったら、どんな風に出迎えて、送り出すだろうか、どんなポーズを取るだろうかと考えてみたり。まずページをひらいたときの、シーソーブックス店主の写真でインパクトを受け、何頁かめくったあとのシャンティブックスとシャンティブックス店主の写真に馴染み深いものを感じ。
 | 秋田書店 発売日 : 2022-08-16 |
我聞の負のスパイラルどこまでも回るところに、凪の地元での心楽しい日々。入れ替わりに東京に出てきた凪の母夕が己の欲望リスト一つづつクリアしても満たされないのは、自分が母に抑圧されたことをまんま母の権利として凪にしてしまっていること、と隣家に指摘され。我聞は北へ、凪のところへ逃げ、夕は心の決着をつけるために…といったところまで
 | 講談社 発売日 : 2022-08-12 |
顕定が子供の頃に、捜査に来たことのある刑事を見かけるが、話に乗って来ず、娘の結婚式すら出ようとせず、ひたすら世間から忘れられようとしてる。彼の元相棒も不慮の事故で命を落としており…。鷹と虎徹は彼に迫れるのか！といったとこまで。志のぶが買い取ったガラクタ揃いの品々がおかしくて笑ってしまった巻。
 | 講談社 発売日 : 1984-03-08 |
「本のフルコース」つながり。もうすぐなくなってしまう弘栄堂パセオ西店で印象的なポップがあって、多くの部数が売れたのだとか。◆樺戸集治監（現在の月形刑務所の前身）が主人公の物語。厳寒の中、足袋も手袋も支給されずに屋外作業に駆り出される囚人たち。凍傷から病気、死亡者の異様な増加。それを懲戒の為と意に解さぬ政府。極限まで憎み合う看守と囚人。隙あらば脱獄しようとし、皇族の消息に恩赦への微な望みをかける囚人たち。のちには、道路工事、炭坑へも駆り出され、囚人たちも命の危機が増し、素行も精神も荒れていく…。国の政策も二転三転し、労働による懲戒から技術を教え込むことによる教化へと転じ。最後は安価な払い下げを期待した地元からの廃止運動でなくなるまでが描かれる。北海道の初期のインフラ整備に大いに功績があったことは確かだが、囚人たちの扱いがあまりにも過酷で声を失う。
 | リブロポート 発売日 : |
イム・キョンソン「村上春樹のせいで」つながりで手に取る。村上春樹の妻陽子さんの写真集。春樹の「ハ」の字も出てこず、夫の仕事の関係で、何年か、イタリア、ギリシャに住んだことが記されるのみ。いっそ潔いくらいに。イタリア、ギリシャにイギリスを加えて、そこに生きる動物たちや人々を写した写真集。我が物顔でどこだろうと自分の居場所にしてしまうような猫たちに、愛おしさ。大好きなイタリア車を東京でみかけて、窮屈そう、イタリアに帰してあげたい、なんて独白も。
 | ユビキタスタジオ 発売日 : 2006-01-15 |
イム・キョンソン「村上春樹のせいで」で、この本のYさんが、村上春樹の妻陽子さんだと知り、読んでみたくなり。ご本人と、作家である夫のこと、その関係が垣間見えるかな、と。◆選択肢があるのが好き、選択肢がないのはたまらない。曲げてはいけないことに関しては曲げない。例えば結婚するときに、「愛さえあればいい」と思ったら、する。誰がなんと言おうと、する。夜には興味ない、夜遊びしたいと思ったことがない。誰かを好きになったら離婚よ。といった考え方。◆夫にどうしてそんなに小説にセックスを出すのかと訊いた時の答えは「わかんない」「考えたこともないんだよ。とにかく出てくるんだ」。「どうしてだと思う？どうしてこういうことが起きるの？」って聞いても、「考えてもしょうがないじゃない」と。あの人は、そこにある、それを、ある意味で受け入れる、と。◆といったあたりが目にとまったところ。最後のほうの「なぜ何かしないのか、とよくいわれるけれど、自分の人生を全うする以上の自己表現はない。」(p.252)はシンプルにかっこいいなと思った。
 | 講談社 発売日 : 2022-08-23 |
この巻は、桃の印刷大会への奮闘ぶりと、急遽の誕生日ケーキから海まで朝になるまで歩き続けて、最後は捻挫して、黒瀬が真白をおぶって家まで送って、二人の距離が縮まった、けど黒瀬に政略結婚の話が…ところが本線かなあ、と。気になる、気になりすぎる。縁の下の力持ち、生産管理課を描いた回もグッときたけど。◆活字組版時代は活版室の階下に印刷室があることが多かったから、「版」を「下ろす」（下版）ていうのは初めて知った。◆力持ちすぎて重機扱いされる橙野さん。他人に全く期待していないから、どんな無理難題にもおだやかでいられる東雲。紺堂「慣れりゃどんな原稿でも全部金に見えてくるから」。真白が誕生日と知り、黒瀬が急いでコンビニケーキを買ってきてぶっといろうそくを6本刺して蠟だらけになった顛末。「小ロット印刷ならおまかせ」から名刺を出すのが社風な会社。などなど。
twitterでリアルタイムで閉じ込められたのを拝見してたので、同人誌が出ると聞き思わず購入。この日も、この日も…と飛行機に乗れないことがわかり疲弊していくのと並行して、旅人たちのすごい旅話や心遣いにもふれられて、と。最後、tweetをみた那覇空港の空港食堂の方が一食おごってくれたり。南大東島の歴史や見どころにもふれられてすごくよかった。会社支配の島で会社発行の紙幣が発行されて島で流通、しかし外の世界では使えない…というのが、カイジのペリカの発想のもとになっていたとは。
 | 講談社 発売日 : 2022-08-23 |
主に、経済制裁に苦しむ中、事業拡大へともがく商社と現地のひとびとを描くイラン編。多様な人種が集う学校の中で自由を求める人と秩序を求める人が鋭く対立する中丸く治める策は？といったカナダ編。フライドポテトにチーズと肉汁を使ったグレイビーソースをかけたカナダの定番料理「プティーン」が気になりすぎる！そして、イラン編の八田さんのプレゼンが、物語では描かれなかったが実ったのかどうかも気になるところ。次巻、コロンビア編も気になるところ。
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-08-24 |
自分より年下だが高校生時代から活版印刷三日月堂で働く天野楓の存在に刺激を受け、また先輩たちの就職活動を垣間見て、”和紙にこだわるなら、藤崎以外で和紙関係の仕事を探すべきなんだろうか。”と思い悩む百花。"自分に与えられたことだけしていれば生きていけるなんて場所は、もうどこにもないと思うんです。" "ひとりではなにもできないから、信じられる人といっしょに働きたい"(p.102)という楓の言葉も響き。藤崎の華やかな両親の登場と対話から、藤崎の持つトラウマ、人付き合いの苦手さの理由を知ることができ。人気アプリの編集部からのインタビューで、迫りくる記念館閉館までになにをすべきかが、明確になり。定期的なワークショップ開催、Webサイト作成、Web通販、クラウドファンディングと立て続けに企画していき、最後は、"まだ口に出すことはできない。でもわたしも…。この道を行きたい。心の深いところでそう思っていた。"(p.298)という境地にいたった百花。次巻どうなっていくのかいよいよ気になります。◆相手のことを思って紙を折る時間、そういうものを捨ててしまったら、心もどんどん目減りしていく気がします(p.240)◆単なる懐古主義に陥らず、現代にどうやって古いものを活かしていけるか、そういった模索が読んでていいなあ、という思い。
 | 新潮社 発売日 : 2022-01-28 |
美女と野獣、玉の輿、格差婚などと社内で言われていた50近い社長と20代契約社員の女性の結婚式。参列した、友人代表スピーチまでつとめる「レンタルお友達」、新郎の同級生、新婦の一歳違いのいとこ、新郎、新婦、そして参列していない新郎が「過去にこっぴどくふられた」とトラウマになった新郎の元恋人と語り手をくるくると入れ替えて語られる人間模様。思い込み、見た目からは計り知れない彼らの事情、新郎の出生の秘密、そこで受け入れられるために身につけてしまった自分を押し殺してしまう性格、新婦に突然突きつけられた不幸、それにまつわり、叔父叔母いとことのあいだにつくりあげてしまった壁、孤独、ままならぬ仕事、プライベート、それをすくいあげてくれた新郎…と。◆世の中のすべての人に見限って貰いたい、こんな自分を。その一方で、誰にも捨てられたくない、と怯えている自分がいた。(p.182)◆「あの人とこれから友だちになれば？おれのときと同じく」(p.267)◆そう、本当にそうなれればいいなと思わせてくれるスピーチだった、もしそうなれれば、最初の章で語られてたことが栄子、新郎、新婦で語られたりするのだろうかと夢想したり。そして新婦も、新郎も、世間的には公言していない、ふたりだけが納得しているふたりの結婚のかたちは別として、今後、お互いのなかに良さを見つけ、認め合い、"信頼と愛情を深め、穏やかに慈しみあって"いくのではないかと予感しながら、本を置いた。
 | 祥伝社 発売日 : 2021-06-10 |
この巻のメインは、祥子と角谷の再会から付き合うことになり、感情を大きく起伏させながらも関係が深まり、一歩も二歩も踏み出したところ。祥子と元夫と娘の明里の関係性の変化、より溜め込まずに思ったことが言える関係性と、娘の成長、母の気持ちが伝わってることの実感、かなあ。一読者としては、見守り屋じゃなくなったらランチ酒はやめちゃうのかな？てことにあったり。今回のお客さまで気になったのは、深夜の仏壇屋、有力政治家たちのフィクサーだった死期迫る占い師、そして最後まで公明正大な編集長小山内氏かな。◆それでも、祥子はずっとこうして話していたい、と思った。ずっとずっと、角谷に見守られながら、話し続けたいと子供のように願った。p.116◆あの子を一時も不安にしたくない。この家に自分の場所がないと思った時に、別に居場所があるということを伝えたいし、それをあなたにも認めてほしい。それだけなの。p.215◆自分はいつも一人で楽しみ、悩み、食べていたつもりだったけれど、ずっといろんな人に見守られていたのかもしれない。p.314
 | 世界文化社 発売日 : 2022-08-25 |
個人的には、twitterで見かけてから好きすぎて、本はぜんぶ買う勢いの週末北欧部chikaさん最新作。ついに、寿司職人としてフィンランドへ転職！なこの巻。前半は、なかなかフィンランドへ旅立てない日々での、ペンパルたちとの心温まるやりとり。フィンランドと日本のお菓子のおくりあいっことかほほえましくて。ねり梅は、日本のサルミアッキなのか！？とか。"弱さはみせてもいい、この距離感だから話せることがある"にしんみりきたり。そして会社員やりつつの寿司修行の日々。"完璧を目指して時間を使うよりも行っちゃった方が早い！"というアドバイスを得ての求人応募、オンライン面接にこぎつけてからの採用！編集者さんの「流れ星を見てすぐに願いを言えるのは、願う準備ができている人だけです！」という言葉にグッと来る。フィンランドいったらいったで、寿司担当のヘッドがまだ未採用だったり、寿司担当の同僚があっという間にやめたりで、孤軍奮闘だったけれど、それをわかって支えてくれ、評価してくれる同僚たち。ほんとにフィンランドに来てよかった、という心情に、ほんとうにそうですよね、とあたたかく語りかけたくなるようなそんな一冊でした。2022年秋、ドラマ化決定とのこと。こちらも楽しみ。chikaさん、ドラマよりドラマな人生だから。
 | KADOKAWA 発売日 : 2022-03-23 |
サークルをあげての紙漉き体験。「なにもしなければ、失うものはない。でも、あたらしく得るものはない。まわり道でも、失敗しても、やってみることに意味がある」(p.96-97)という思いもあらたに。墨流しの技法への興味、父がむかしの紙作りやその周辺を扱った小説を描きたいと考えてたことを知り、またそれに関連して民藝の運動にも興味がでてきて。江戸時代の紙問屋との戦い、軍事利用。きれいなだけじゃない、紙の歴史のなまなましい側面も。すべては、記念館の閉館へ向けての、ワークショップの充実、Webサイト運営、閉館イベント、閉館後の本社での活動へと向けられていくかと思われた矢先の終章。裏表紙に書かれた"予想外"の事態がまさかこんな形とは。今までそんなことは露ほども示唆されていなかったのに。実在の時系列とは独立して進んでいたかのような物語世界で、急に記念館の閉館が実際のあの年月に重ね合わされるだなんて。そこから引き起こされるカタストロフに、落差に目眩のする思い。続編描かれるのだろうか。
 | 河出書房新社 発売日 : |
「愛人」よりも登場人物たちの内面が、行動の理由がていねいに描かれていて、わかりやすく、個人的にはどちらか選べといわれれば「北の愛人」の方を選ぶかな、という感想。「愛人」との大きな差異は、少女の愛が、中国の男だけでなく、下の兄ポーロ、母が引き取った孤児で家宰のタンにも大きく向けられていること。「愛人」ではある意味誇り高く、中国の男を無視して無きものと扱っていた上の兄が、「北の愛人」ではまっこうから直接抗議され怯え、またアヘンやお金を渡される存在だったこと。「愛人」ではフランスへ向かう船の中で、もしかしたら私はあの男を愛していたのかも知れないと激しくこみあげてくる少女、「北の愛人」では最後のほうだけれど、◆---ぼくの一生で、ぼくが愛したということになるのは、きみだけだ。(p.258)◆--そして、あたしの愛したひとも、あなただけ、ということになる。--そう。たったひとりだけ。きみの人生で。(p.260)◆とお互いにまっすぐ気持ちを伝え合うところ。心にとまったのは、次の二節。◆男は言う、たとえそうだとしても、いまの自分にはどうでもいいことだ。何もかも追い越されてしまうものなんだ---と。(p.158)◆おわかりにならなければ、あなた、たとえ犬っころに対する愛でも、侵すべからざるものなのですのよ。それにまた、権利があるのです、---生きるための権利と同じように、侵すべからざる権利、---その愛については、だれにでも知らせる必要はないという権利が。p.195(少女の母親)◆
 | リイド社 発売日 : 2022-08-26 |
◆結核にかかりハルトマンさんへの想いに苦しむりきや。◆切支丹として島流しにあう友との最後の語らい、その後自首しようとしてお嬢に引き戻される岩次。ハート模様の浴衣に布団うなぎで誘惑される一幕も。◆佐幕の軍に加わった虎四郎は、人斬りに酔い畜生道に落ちるが父の命をはった願いに引き戻され。◆ヴィクトールに助けを求めたい心で涙することもあったたま。父から金を借りてたまを妻としフランスへ連れ帰ろうとして果たせなかったヴィクトール。それでも何か話そうとするヴィクトールへ、「こんな縁も唐にもあろか花咲く里の春ならば雨も薫りて名や立たん」（由縁の月)と三味線の音に乗せて想いを伝えようとするたま。夕闇に再度たまが由縁の月をつまびきつつ閉じられる物語。◆ 冥加金の次は鑑札料。上が新しくなっても弱いものから取るのは同じ、と遊郭への目線も厳しくなり、やめて畑でも耕しましょかとかたる主人たち。時代の移りゆく変わり目に、人々が何を思い、どう行動したかを垣間見た思い。
 | コアミックス 発売日 : 2022-08-20 |
推しをめぐる狂想曲。お互いがお互いのことを、頼もしく思ってる、お互い苦手なことを補っている関係。赤ちゃんの生まれた親友のうちに遊びに行っての一幕。最後、車のディーラーの営業マンで1話書くとは。高い買い物に納得してもらったうえでできるだけ楽しい空気を作る仕事、深い。
 | 幻冬舎 発売日 : 2019-10-09 |
ホテル勤務の母結子、むかしから金継ぎを続けてきた祖母千絵、進路に迷いつつ祖母に金継ぎをならい手伝うことでおぼろげながら進みたい方向が見えてきた孫真緒。。4話構成、前半は金継ぎが祖母の生きる糧になり、そのきっかけは友人の君枝だったこと、おそらく先を見通して金継ぎをすすめてくれたのだと思いあたり。また、金継ぎすることにより、器がうまれかわり、依頼してきた人の人生まであたたかく変えてしまうようなストーリー。色々な器が持ち込まれて、金継ぎすることで人生を変えていく、みたいな展開かと思いきや、後半は、祖母千絵の70年前の思い人を探し、訪ね歩くストーリー。はしばしに、金継ぎやその材料となる漆の来歴や使われ方、栽培方法などが縦横に語られ心惹かれた。70年のときを超えて、気持ちは通じ合っていたことがわかった瞬間にはホロリとなってしまった。活版印刷、和紙ときて、金継ぎへ。次はどんな伝統文化をよみがえらせて語ってくれるのだろうか。◆「だから面白い。繕うことで景色が変わって、別の器に生まれ変わる。」(p.48)◆そのときふと、君枝さんが最初に繕いを頼んできたのは、こうなるとわかっていたからかもしれない、と思った。繕いがわたしの心の助けになるとどこかで予感していたのかもしれない(p.142)◆だからだったのかもしれないね、あのころ金継ぎに夢中になったのは。取り憑かれたように器を継いで、割れてしまったものをなんとかつなぎ合わせて、そうやってなにかをつなぎとめようとしてたのかもしれない(p.303)◆
 | 新潮社 発売日 : 2003-06-01 |
良くも悪くも、タカモクから見たチェッカーズ像、タカモクから見たフミヤ像。チェッカーズ話を期待した身には、前半のタカモクのガン闘病話は読み飛ばし。幼少期はヤンチャなガキ大将、ケンカケンカで警察の世話になり。フミヤは親友、要領よく立ち回り、女の子にはモテモテで気がついたらアマチュアバンドのボーカルはって大人気。なんとか2度のオーディションを経て、チェッカーズのデビューにもぐりこみ。そこからは短い下積みと急激なブレイク。師匠とも言えるソングライターにめぐまれ。そこから、自分たちのオリジナルでもっとお金が欲しいと、師匠に断りなく独立。金のためなら恩を裏切るバンドだった、自分も含めて、と。そこから一度はチェッカーズ辞めようと悩んだ時も、フミヤにblue rainはタカモクが活躍できるからと引き止められ。よしおれは一生チェッカーズだと思っていたら、フミヤから「解散したい」。大暴れに暴れ、ブチ切れて、なぜお前が決める、と。けど世間的にはフミヤ＝チェッカーズ、メンバーにもそう思うものもいて、チェッカーズ続けたい派と真っ二つ。そこから解散までは、フミヤはだらしない、フミヤは筋が通らない、フミヤは汚いと非難のオンパレード。俺がリーダーだったら解散なんかさせなかったのに（読む側からしたら現実的とは思えなかったが）と。ただ、著者の視点からのみなので、フミヤは、他のメンバーはどんな考えだったのか見えず。なぜ考え方が違っていってしまったのか、仲が悪くなったのか、チェッカーズをどうしていこうとしてたのか。解散に向けた、実際の出来事はどうだったのか。そのへんは知ることができなかった思い。今聞き返すとチェッカーズのヒットナンバーって、サックスの曲かよ！と思うぐらいサックス目立ってるのに、それを吹くナオユキが、いざバンド始動の時に担当楽器にあぶれて、じゃあおまえサックスな、となってから猛練習した、というエピソードは印象に。もしそうならすごい成長曲線だなあと。フミヤが原点というキャロルのカバーアルバム聞いてみたい。
2022年08月に読んだ本 その1
0801・川尻こだま 第八集: 「ルッコラ育てた話」他 川尻こだまのただれた生活 kindle
0801・【再開】澁澤龍彦 ヨーロッパの乳房
0803・産経新聞社 新聞記者司馬遼太郎 from実家
(0803・化物語1-3 kindle
0804・鈴木董 食はイスタンブルにあり君府名物考 講談社学術文庫版 20220710
0804・国文学 村上春樹特集 平成10年 20220723 古書浪漫堂
(0804・逢坂冬馬x奈倉有里対談 戦争文学で反戦を伝えるには（「図書」2022.6 岩波書店所収）from 実家
0805・養老孟司 <自分>を知りたい君たちへ from 実家
(0806・ITOKO NAKAHARA Back in Sapporo〜ただいま札幌〜 シーソーブックス 20220806
(0806・itk 車でアメリカ横断失敗編. シーソーブックス 20220806
(0806・週末北欧部Chika 北欧こじらせ日記 20220806
(0807 もぐこん 推しの肌が荒れた kindle 20220807
0807・宮田珠己 のぞく図鑑穴 20220806
0807・珈琲店タレーランの事件簿8 20220806
0807・オルタナ旧市街「一般」 シーソーブックス 20220806
(0808・川本 智史 船が買いたい! : 前近代イスタンブルと海上交通 (小特集 海峡と都市) 都市史研究 6:2019 p.74-93 国会図書館遠隔複写
(0809・高浜寛 デュラス原作 愛人（ラマン） トーチweb
0809・黒田祐我 レコンキスタの実像 : 中世後期カスティーリャ・グラナダ間における戦争と平和 刀水書房, 2016.2 P52-88,185-205 国会図書館遠隔複写
0809・瀬尾まいこ そしてバトンは渡された 20220806
(0810・朝倉 慶景 長宗我部政権下の奏者久武内蔵助親直について 土佐史談 (276):2021.3 p.50-56 国会図書館遠隔複写
(0810・鍋に弾丸を受けながら2 kindle 20220810
(0810・伊藤 宏明 南漢政権の性格--地域公権力と私権化 名古屋大学東洋史研究報告(通号 14) 1989.12 p.p51〜73 国会図書館遠隔複写
0811・中島らも 愛をひっかけるための釘 図書館
(0811・伊藤理佐 やっちまったよ一戸建て1-2 20220811
0811・【再開】澁澤龍彦 私のプリニウス
(0812・【再読】平井上総 関ヶ原合戦と土佐長宗我部氏の改易掲載誌 日本歴史 / 日本歴史学会 編 (718) 2008.3 p.37〜53
0812・空飛ぶ冷やし中華 図書館
0812・国井桂 ツユクサ 20220811
0813・【再読】マルグリット・デュラス 愛人 …高浜寛の漫画版「愛人」つながり 20220811
0813・椹木野衣 シミュレーショニズム ちくま学芸文庫 図書館
(0814・ベストエッセイ2022 …三浦しをん分のみ読了
0814・深野緑分 ベルリンは晴れているか 20220811
(0815・新谷英治「スルターン・ジェム」のオスマン朝とヨーロッパ(「西南アジア研究」24,1985)
0815・桜木紫乃 緋の河 …「おばんでございます」つながり。カルーセル麻紀がモデル。 20220811
0801・【再開】澁澤龍彦 ヨーロッパの乳房
0803・産経新聞社 新聞記者司馬遼太郎 from実家
(0803・化物語1-3 kindle
0804・鈴木董 食はイスタンブルにあり君府名物考 講談社学術文庫版 20220710
0804・国文学 村上春樹特集 平成10年 20220723 古書浪漫堂
(0804・逢坂冬馬x奈倉有里対談 戦争文学で反戦を伝えるには（「図書」2022.6 岩波書店所収）from 実家
0805・養老孟司 <自分>を知りたい君たちへ from 実家
(0806・ITOKO NAKAHARA Back in Sapporo〜ただいま札幌〜 シーソーブックス 20220806
(0806・itk 車でアメリカ横断失敗編. シーソーブックス 20220806
(0806・週末北欧部Chika 北欧こじらせ日記 20220806
(0807 もぐこん 推しの肌が荒れた kindle 20220807
0807・宮田珠己 のぞく図鑑穴 20220806
0807・珈琲店タレーランの事件簿8 20220806
0807・オルタナ旧市街「一般」 シーソーブックス 20220806
(0808・川本 智史 船が買いたい! : 前近代イスタンブルと海上交通 (小特集 海峡と都市) 都市史研究 6:2019 p.74-93 国会図書館遠隔複写
(0809・高浜寛 デュラス原作 愛人（ラマン） トーチweb
0809・黒田祐我 レコンキスタの実像 : 中世後期カスティーリャ・グラナダ間における戦争と平和 刀水書房, 2016.2 P52-88,185-205 国会図書館遠隔複写
0809・瀬尾まいこ そしてバトンは渡された 20220806
(0810・朝倉 慶景 長宗我部政権下の奏者久武内蔵助親直について 土佐史談 (276):2021.3 p.50-56 国会図書館遠隔複写
(0810・鍋に弾丸を受けながら2 kindle 20220810
(0810・伊藤 宏明 南漢政権の性格--地域公権力と私権化 名古屋大学東洋史研究報告(通号 14) 1989.12 p.p51〜73 国会図書館遠隔複写
0811・中島らも 愛をひっかけるための釘 図書館
(0811・伊藤理佐 やっちまったよ一戸建て1-2 20220811
0811・【再開】澁澤龍彦 私のプリニウス
(0812・【再読】平井上総 関ヶ原合戦と土佐長宗我部氏の改易掲載誌 日本歴史 / 日本歴史学会 編 (718) 2008.3 p.37〜53
0812・空飛ぶ冷やし中華 図書館
0812・国井桂 ツユクサ 20220811
0813・【再読】マルグリット・デュラス 愛人 …高浜寛の漫画版「愛人」つながり 20220811
0813・椹木野衣 シミュレーショニズム ちくま学芸文庫 図書館
(0814・ベストエッセイ2022 …三浦しをん分のみ読了
0814・深野緑分 ベルリンは晴れているか 20220811
(0815・新谷英治「スルターン・ジェム」のオスマン朝とヨーロッパ(「西南アジア研究」24,1985)
0815・桜木紫乃 緋の河 …「おばんでございます」つながり。カルーセル麻紀がモデル。 20220811
バターがかろうじてパンの形をしているだけの食べもの◆羽二重餅にあんこはさんで食べたら、天啓猫が「それは大福では…？」◆2年前からのんでるもの 冷凍タピオカに、天啓猫が「描くのが2年遅いぞ…」◆アイスミルクティー、なぜまぜない？◆あたりが、個人的この巻のハイライト
 | 河出書房新社 発売日 : |
バビロンの架空庭園好きとしては、”イゾラ・ベッラという島全体がバロック庭園になっていて、あたかも「バビロンの架空庭園」のように、怪奇で幻想的であることを知り”、あるいは、"バビロンの架空庭園には、ありとあらゆる種類の珍奇な植物があつめられ、時をわかず、エキゾティックな美しい花々が咲きみだれていたと語り伝えられています（フローラ幻想）”といった一節に心惹かれる。◆また、アストロラーブ好きとしては、加藤郁乎「天文や大食の天の鷹を馴らし」という一句から、店のあるじとのアストロラーブ購入交渉まで含めて「イスパハンの昼と夜 アストロラーブについて」は一章まるごとお気に入り。◆19cフランスの東洋学者エルヴェ・ド・サン・ドニ侯爵 自分の好きな女の絵を描きながら、イリス根という芳香性物質を口にふくんで、女のイメージと匂いとを結びつける練習をくりかえし、ある夜、眠っているときに、クッチにイリス根を入れてもらったら、夢の中で好きな女に会うことができた（匂いのアラベスク）というエピソードにも、そんなことが！という驚き◆安楽死保険会社のセールスマンとのやりとりの一章は、伝奇的と思いつつも、ふと考えさせられる死生観。服装、食事をはじめとして質素な生活を送り、宮殿からほとんど外へでないまま全カトリック世界に号令していたというフェリペ二世、異端としりぞけられて解散させられたテンプル騎士団については、もう少し知りたいと思った。
 | 文藝春秋 発売日 : 2013-06-07 |
司馬遼太郎出身の新聞社編ということである程度予想はしていたけど、「新聞記者はいい仕事だ」というのがベースに流れてて、マイナスなことはひとつもなく、インタビュー記事に、勝手に加筆してインタビュー対象を怒らせたことすら、おちゃめでいきすぎた、みたいなとりあげられかたしていた（新聞小説で一回分落ちそうになったときに、だいたいこうだろう、と勝手に代筆してそのままのせちゃった、なんてのも）。時代が時代だったのか。新聞記者時代の司馬遼太郎の実像を、という点では興味深く。宗教・大学担当から文化部記者へ。宗教・大学担当時代は、京都で寺などまわり、本願寺の書庫で史料をよみふけったりしたことが、のちの小説に生きたのだろう、と。記事は自らの目と足でかせげといわんばかりに、宗教・大学担当の時の京都大学の引き継ぎが、正門前に案内して、「これが京都大学だ」のひとことだったというのもご愛嬌か。晩年、台湾問題では、李登輝と対談して、台湾も、内蒙古も、チベットも、俺のものだなんて考え方は通用しない、とぶちあげて、当時の中国の「偉い人」を怒らせたなんてエピソードは知らなかった。みどり夫人への市電を待っている時へのプロポーズのシーンは、その反応もふくめて、初々しく。「新聞記者は行儀よくあるべきだ」というのも前後を切り取られると賛否両論よびそう。
 | 講談社 発売日 : 2018-06-15 |
1-3巻のみ読了。怪異に取り憑かれ、不老不死となったり、体の重さを奪われたり。そこからどう抜け出て、どう生きていくか。まだ物語は始まったばかりで。助けるのではなく、倒すのではなく、自分で助かるんだよ、と。大ゴマ３つ使っての「I」「Love」「You」からの「蕩け」までの流れが好き。
 | 講談社 発売日 : 2020-09-11 |
小笠原弘幸「オスマン帝国」再読を機に、こちらも再読。副題の君府名物考とあるように、公定価格表や旅行記や料理書をひもといて、これでもかの食材、料理づくし。エヴリヤ・チェレビーが大げさにかきたてるヨーグルト作りたち。安価なごちそう羊の肝（カラ・ジエル）。羊の胃袋のスープ、イシュケンべ・チョルバスゥ。生食でもジャムでも乾無花果でも食べられた無花果。今は見られないらしい、メロンの種を抜いて、炒めたご飯や挽き肉などなどをつめこんで蒸したというメロンのドルマ。貽貝のドルマ（ミディエ・ドルマスゥ）。バクラヴァ、針金カダイフ、レヴァーになど、甘い焼き菓子の数々。酸味料として使われた、レモン汁、未熟な酸っぱいぶどうの汁、ざくろ汁。レシピだけでのみたくて仕方ない気にさせられる薔薇水、スルタン風蜂蜜水。といったあたりが特に心惹かれた食材、料理。また、エピソードとしては、かつて大膳所のコックでもあった国政を立て直した偉大な大宰相キョプリュリュ・メフメット・パシャ、料理人としての腕については、何も伝えられていない…という一節からドラマが書けそうなと思ったり。宝石にも等しい高価な青磁も染付を、日常の食器、容器として何げなく用いられていた、特に昔オスマン帝国展見た際の、わざわざ使い勝手の良いように金属の蓋をとりつけた壺などが思い起こされ、といったところか。
デジタルな作家としての村上春樹、および、1973年のピンボール、ノルウェイの森、ダンス・ダンス・ダンス、国境の南 太陽の西、レーダーホーゼンあたりの評論、エッセイを読んだ。ピンボールは、遠さの言説から読み解く。皮膚を突き抜けるほどの寂しさ、などのレトリックから。チーズケーキみたいな貧乏の話からノルウェイの森における”わがまま”に話を繋げ、ケーキを買って来させて気まぐれに捨ててまた買いに行かせるような緑の欲望は、物語では逆に「僕」に振り回されて何度も走り回らされその度許す構造になっている指摘にはなるほどなあと。ダンス・ダンス・ダンスの、僕の分身の遍在とユキ、ユミヨシさん、アメ、キキ、メイらの他の物語との関連についても興味深く。
 | 岩波書店 発売日 : 2022-05-27 |
逢坂冬馬x奈倉有里対談 戦争文学で反戦を伝えるには、のみ読了。戦争を描きつつ、戦争に魅入らせない、悲惨さは伝えたい、というところのさじ加減の難しさ。
 | 毎日新聞出版（インプレス） 発売日 : 2022-02-19 |
養老孟司の書評集。一番読みたく思ったのは、◆H・クリングバーグ・ジュニア「人生があなたを待っている」１・２かな。「夜の霧」のフランクルの伝記。伝記だけ読むとひょっとして軽い人と思うかも知れないが、そういう面もあったこともたしか。フランクルは「他人が人生の意義を見出すことの手伝いをする」ことを天職として生きた人。彼は憎悪を抱かないという自分の決意を堅く守り、まさにそのために多くの人々に憎まれた…なんて紹介を読むとますます。他に3冊ほど気になる本が。◆フレッド・ピアス「水の未来 世界の川が干上がる時」…たとえば小麦が栽培できるようになったが、そのために水が塩化し、結局は100万単位の人がヒ素入りの井戸を使わねばならぬ事態に…など。◆ニコラス・G・カー「ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること」…「われわれは道具を作る。そしてそののち、道具がわれわれを作る」◆岩村暢子「家族の勝手でしょ！写真274枚で見る食卓の喜劇」新潮文庫…ごく普通の家庭の食卓の写真集◆印象に残ったフレーズは、"「本当の自分」など、わかりはしない。それを昔から希望と呼んだのである。希望は自分のなかにある。外の世界に転がっているものではない。”(p.156)かな◆
 | 世界文化社 発売日 : 2022-02-18 |
最近個人的に大好きでハマってる週末北欧部chikaさん。北欧好きがこうじて、フィンランドに寿司職人として移住！なぜ？どうして？どうやって？という紆余曲折な経緯は、この本を読むことで知ることができました。好きなだけで終わらせずに、少しでも近づこうと、北欧にかかわれるだけを軸に就職活動、その後、会社も変わるが、ブログやったり北欧雑貨バイヤーやったり、北欧イベントやったり、チャットで北欧好きの日本人や、フィンランド人の友人が増えていき、行き来するうちに憧れがつのり、そうだ！移住しちゃえばいいんだ、何して働こう？ん？寿司職人だとすごくたくさんオファーがある、よし、寿司職人になろう！そのために寿司の専門学校へ！という行動力、フットワークがすごいなあ、と。◆そしてフィンランド愛を語る段。駅の地下街の奥のうすぐらいけどお気に入りのカフェ。カラオケもクラブもどっちも苦行なのにどっちも行き、カラオケはオンステージ！な一幕。好きなフィンランド音楽(Scandinavian Music Group- Valmis,Suvi Terasniska-Sina olet kaunis)なども取り上げられ。昔カーディガンズとかリサ・エクダールにハマった身にはしたしみやすく◆飲食店を知りたいと始めたカフェのバイトでオーナーの言ってた「お客様のためにお客様を選ぶ、選ぶ強さを持たないとお店は続かない」が心にしみる。◆北欧ピクニックで仲良くなった仲間との北欧オンライン飲み、テーマは北欧と俳句の回はどんな話がくりひろげられたんだろう◆
札幌の中心部、北大周辺、円山、南区をとりあげ。ピリカラーメン、時計のない喫茶店、六花亭の休憩所、あたりが琴線にふれる。サッポロピリカコタンはぜひいってみたくなる。
日本で一ヶ月後に働くことになったので、ニューヨークからサンフランシスコまで車で横断してから帰ろう！というITKさんと旦那さんのコンビ。大学街でのんびりしたり、バーベキュープレートやテクスメクスのレストランのごはんがハイカロリーでそそられたり。ダラスのGUNS！GUTS！GLORY！という看板にひええとなったり。気のいいアメリカ人に助けられたり。最後の最後は大ハプニングだったけど（自分の車が街乗り用かどうかなんてわかる術があるんだろうか…）、修理工場の人と車買ってくれることになった友人のあたたかさに助けられ。旦那さんの、起こったことはしかたがない、あとのことは楽しもう、必要なことはテキパキこなす切り替えがすがすがしく。
| 発売日 : |
シーソーブックスで、黒とゴールドの装丁、どちらが作者でどちらがタイトルなのかわからないとこが気になり、ぱらりとめくって心惹かれて、衝動的にレジまで持って行き◆個人的には「早安台北」「Retrospective」「真夏の残像」にグッときた。「早安台北」での見知らぬ街に2週間滞在するワクワク。23の夏の2週間イスタンブールに滞在した身にはしっくりとくる感覚。「Retrospective」の、わたしたちは瑣末なことを日々忘れて暮らしている（略）わたしとあなたの断片をみっともなく増やしていこう。何度でも覚え直せばいいし、何度でも忘れていい、という一節。宮古島が舞台の「真夏の残像」での、島時間と渡口の浜を教えてくれた老夫婦、飲む極上ライス「ミキ」、沖縄版チキンラーメン「オキコラーメン」、「生と死のあかるい境目に立っているような気分になった、しかるべき手続きで、生と死は連続している。誰にも不当に脅かされてはいけない」と一節が、心に留まる。
 | 新潮社 発売日 : 2022-06-09 |
Twitterでみかけて全編読んでみたくなり。「裸のマオ」は、母親の愛情にめぐまれないマオが、担任の先生に銭湯で声をかけられてモデルをすることになるが、それが段々エスカレートし…。何もわかってないまま、友達が「わたしが救った」と内心思う形で閉じられるけど、それでなにか別の愛情がふりそそいでくるわけでもなく、なんともやりきれない思い。「推しの肌が荒れた」は、アイドルのファンゆえに、写実的なイラストをネットにあげつづけ、それはいつしか、推しの肌が荒れてもそれをそのまま描いてアップするようになり、それが賛否両論を巻き起こし、そのタイミングで推しが引退し…と。主人公がそれと知られず、推しととなりあった際に、あの絵師のことは大嫌いだけど、わたしのことをすごく好きでいてくれたことはわかった、という言葉をかけられたのがすごく大きな光に。
 | 小学館 発売日 : 2022-06-15 |
自然にできた穴から都市の中の穴、食べ物や道具など身の回りの穴まで。以下、気になったトピック◆ジョージアのクルベラ洞窟最深部約2196m、2012年調査でロープで降下するのに27日かかった…には「途中ロープの上で寝泊まりしたの？！」と思った。◆トルコのカッパドキア。36の地下都市、最深部は地下85m＝デリンクユという地下都市。カイマクルという地下都市は地下8階まであったと…その深さと広大さにあらためて興味湧く◆徳島県の慈眼寺の境内には2枚の石板が立ち、その間を通れないと修行に参加できない…のだとか。著者近影にも使われてるのでよっぽど気に入ったのかなあ。そして自分は修行できる気がしない（悲）。◆キツツキはすごい速さでくちばしを打ちつけて木に穴を掘る、その時脳震盪にならないように、脳みそに自分の舌をまきつけて守る…のだとか。一体どういう仕組みなのか皆目見当つかず、脳も外気にさらされてる？◆生物学者本川達雄「生きものは円筒形」…読んでみたい◆北極圏コラ半島、かつてのソ連が地球内部を調べるために深さ12000mをボーリング掘削、いまは使われず。…何か使い道はないのか、そしてその奥底はどんな状態なのか。
 | 宝島社 発売日 : 2022-08-04 |
今回は美星さんとアオヤマさんが、因縁の相手に推薦されて、コーヒーフェスに参加し、そこで妨害事件が置き、容疑者が二転三転して、最後に美星さんがキリリと推理を披露して事件を解決、という流れ。最後に…以降はだいたいどの巻でも。事件の進展につれて二人の関係も二転三転。事件も関係もベースに流れているのは、人を許す心と嫉妬。◆◆「心のバランスを崩してよろめき、越えてはいけない一線を越えてしまうこともある。もちろん、それに対して相応の罰は受けるべきだ。そのために、法律やルールはあるんだ。やり直す道を閉ざせば反省する意味も無くなってしまうし、僕はそういう世の中を是としたくない。」というアオヤマの言葉に、自分だったらそこまでできるだろうかと省みつつ、うなずく。◆ それでも僕らは顔を上げ、歩み続けるしかないのだ。世の中は、いつだって不公平で不条理なものだから。わかっていても人は、願わずにいられない生き物なのだから。(p.307)◆後味は苦いものだけど（珈琲だけに？）ただ苦いだけじゃなく、たった一つのことで全てを無かったことにはできない、それでも許したい、許してほしい、やり直したいという思いが垣間見えてすこし救われる。
「鹿島茂によれば十九世紀パリでダンディーとなるには「馬車」を手に入れて乗り回すことが不可欠だったが、イスタンブルの海峡貴紳たちにとってのそれは、ピヤーデであったのだろう。」という一節が、タイトルの「船が買いたい！」のもとになってるのだろう（ピヤーデは小舟のこと）。気になったトピックは、◆海上輸送の主たる対象は穀物◆船上とその先にある島は、飲酒、売春、乱暴狼藉の半ば無法地帯◆アジア側沿岸部のある程度裕福な住人が所有していたカユクは、投資用ではなく私用の舟で、市内交通の足としてヨーロッパ側に渡っていてと推測（さしづめ自家用車といったところか）◆といったところか。随所に、「海峡性」というキーワードがちりばめられていたのが印象に。
 | 刀水書房 発売日 : 2016-03-15 |
P52-88,185-205のみ読了（第四章 対グラナダ戦争の特質◆第五章 王国間休戦協定◆第六章 王国間休戦協定の締結状況と時代的変遷◆第十二章 和戦を個別に担う「境域」の各地域―十五世紀後半を中心とする西方部域―、および◆第十三章 和戦を個別に担う「境域」の各地域―十五世紀後半を中心とする中央部域― …第一節 ナスル朝宮廷と直接交渉する都市―アルカラ・ラ・レアル―）。主に、グラナダ王国とからみそうなところをピックアップして。◆境域をまたいだムスリムとキリスト教徒の利害の一致と一体感。境域の勢力同士で独自に結ばれる休戦条約。オスマン朝初期にも同様の光景が見られたのだろうか、と思いを馳せた。気になったトピックは、◆中世では、小規模な略奪遠征からなる消耗戦を繰り返し、適領域を疲弊させることに戦争の主眼。敵が疲弊しきったところで、相対的に重要な拠点を獲得するため、守備側と降伏協定を結ぶのが常道。◆当時の為政者の対グラナダ戦争は、会戦、拠点奪取戦ではなく、略奪を繰り返し、相手の経済状況を悪化させ、闘争心を弱めることを意図◆1330年、グラナダ王国軍を統率していたのはマリーン朝の将軍ウスマーン◆1340年のマリーン朝・グラナダ王国連合軍とのサラード会戦におけるカスティーリャの勝利◆戦争と平和の連続性。中世置いては、いかなる政治権力も戦争を長期にわたって継続する人的・財政的な基盤を保持していなかった◆限定された人員と未熟な防衛網で行使されるのが、「境域」の戦争◆王国単位では、グラナダ側の軍事的に劣勢だったが、「境域」における小競り合いでは、グラナダ拠点民の方が熟達していた、と近年の研究者は意見が一致◆「外交」に伴う難題を解決した上で取り結ばれた関係。休戦が優勢を占め、静態的にみえる両王国の関係は、常に水面下で緊張に満ちたものだった◆貢納金の供出は、ムスリム君主側の政治的意図にかかわらず、長期的にアンダルス経済を徐々に侵食。財源確保に、イスラーム法に規定のない非合法な税を課し、法学者や民衆の不満をまねく◆カスティーリャ王、グラナダ王というトップレベルで恣意的に決定される動乱にまきこまれることをおそれて、独自の「外交」をくりひろげる境域勢力◆といったところ。
 | リイド社 発売日 : 2020-02-04 |
最初から他の女にするように私を扱ってという諦め。この人は絶対父に反抗してまであたしを連れ出さないという諦め。けど、インドシナを経つ船の中で、はげしく、私は彼を愛してなかったの？という疑問。愛していたように見えましたよ、あなたのやり方で、必死でおさえつけないとあふれてしまいそうなぐらい、という思い。原作読んだときよりもスッとはいってきて、また原作も読み返したくなる。◆原作読了後にまた再読。紙版で購入しなおして。やはり、あとがきがよかったなあ。ベトナムでの取材で作品を眺め直す高浜さん。デュラスとショロンの実家が意外と目と鼻の先にあることから、船で初めて見染めたのではなく、お互い若い頃から知っていたのではないかという推測。またデュラスがフランス帰国後も三年は誰とも付き合わずにショロンの男が来ることを待っていたこと、などが語られ。web版→原作→紙版、と読み進めることで、また味わいも一層深くなった。「北の愛人」も読んでみたくなる。
 | 文藝春秋 発売日 : 2020-09-02 |
"私には父親が三人、母親が二人いる。家族の形態は、十七年間で七回も変わった。" 血が繋がってても繋がってなくても、どの親も、自分なりの形で優子に愛情を注いでいたのが感じとれて。すくすくというよりは、大人びて、なかなかに動じない少女に育っていきつつ、やりたいことは定まり、好きな人もできて…と。親たちの中でもやはり、派手で元気いっぱいに自分も楽しんでる感の梨花さんとどこかずれているようでいて父親でいてくれようとする森宮さんが強く印象に。そして、いつだって太陽みたいに明るくて楽天的な早瀬くん、"いつだって変更はきくんだし。俺たちは大人なんだから、自分たちで楽しいと思えるように進めばいいだろう"(p.338)と。最後にバージンロードを歩く父役に任命されたのは…読み終えて本当に温かい気持ちになる一冊だった。◆「梨花が言ってた。優子ちゃんの母親になってから明日が二つになったって」「明日が二つ？」「そう。自分の明日と、自分よりたくさんの可能性と未来を含んだ明日が、やってくるんだって。親になるって、未来が二倍以上になることだよって。(p.315 森宮さん)◆◆だけど、森宮さんはちっとも平気なんじゃなかったのかもしれない。思い切った行動をする早瀬君を認められないくらいに。七年経っても誰も好きになれないくらいに。きっと、私の気持ちを乱さないように平然を装っていただけだ。(p.378)◆これからは、愛情を注いでもらうばかりではいられない。誰かの子どもとしてではなく、早瀬君と二人で家族を築いていかなくてはいけないのだから。(p.391-2)◆
 | KADOKAWA 発売日 : 2022-08-10 |
今回は、北九州、ドバイ、アメリカに、ブラジルふたたび。ドバイの謎のはちみつ、気になりすぎる！何入ってんのかわかんないけどスプーン1さじで、ガーッと身体があたたまって、汗かいて一晩寝たら回復するっていう。何が入ってのかわかんないってのがね…。ドバイも心惹かれるなあ。夜釣りもできるのんびりさ。そしてふわりととろけるパレスチナ産のハルヴァ。米原万里さんのエッセイでも出てきた一品。日本でハルヴァは食べたことあるけど、おそらく職人がつくったのじゃなくて、既製品だったんだろうな、ちょいとねばって歯にくっつく、粘り強い系キャラメル的なものだった。アメリカのグリルドトーストの、ちょっと治安の悪そうなところでふらりとシャグっと食べるのがイキなスタンス。そしてブラジル編、ほんとうに最高のもてなし、最高の友人たち。塩ふって野外で焼いただけのステーキが人生最高という一幕。それなりに手間はかかってるけれど。
天野 純希「南海の翼 長宗我部元親正伝」を読んで以来、あえて嫌われ役、悪役を買って出て、家中を切り回していこうとする久武内蔵助親直像に心ひかれていて、そのために手に取った一編。それほど史料が多くないのか、推測が目につく。史料にはじめて現れるのは、1585年の金子備前守宛起請文。おそらくは1586年の戸次川合戦で、長宗我部氏の親族や有力家臣が多く戦死したため、残ったもののうち識見をそなえたものとして抜擢された、「奏者」として、長宗我部氏への取次的存在、多くの重臣より特別の地位が与えられていた、と。全体で何町あったかわからないので、なんともいえないが、家中で90町、娘の持分が50町で、家臣の中でも知行が突出していたようだ。さらに元親、盛親とも常に意思疎通ができていた。これらから、久武親直は独裁者になっていたのでは、という見立て。そのような地位にあったのだから、関ヶ原敗戦後の、津野親忠殺害、「籠城と謝罪」というまずすぎる事後策の責任は逃れ得ないだろう、と。簡潔にして要を得た一編だった。
◆五代十国のうち今の広州近辺を統治した南漢◆劉隠から皇帝として即位した高祖の中期までは、中央から難を避けてきた士人層を積極的に採用。南海貿易にて財を築き、周囲に領土を広げる。一転、周囲の国と通婚し和平につとめる。高祖末期から士人層排除、厳と恩寵関係が強い宦官層に政治の実権が集まり「私権化」。皇帝権の「家産」的体質、士人層の「保身主義」が対立し、その間隙をぬって宦官層・女官層が台頭。その後の殤帝、中宗、後主といった皇帝も、奢侈、それを賄うための重税、それを抑え込むための皮剥ぎ、鼻削ぎなどの酷刑による恐怖政治と、そこで暮らすには苛酷であったことを感じさせる統治。中宗は、自らを擁立した重臣や、諸王たる弟たちを次々と誅殺。権力を支える官僚層であるはずの諸弟・功臣を失う。商人の船を襲い金品略奪、海賊行為を行い。ただ楚、南唐の混乱につけ込んで攻め込み領土は拡大、最大版図に。後主の頃は宦官は20000人にまでふくれあがった。北宋により攻められ滅亡。◆国としては、本来、地域公権力としての要件を備えた国家を目指した点が本質。その後、皇帝権の「家産」的体質、士人層の「保身主義」が対立し、その間隙をぬって宦官・女官層が台頭したことにより、国としての統治が変質してしまった、と論じる。◆しかし、どの権力も、多かれ少なかれ「家産」的体質をもっているのではないか。それがなぜ南漢だけが、極端な君主の奢侈、苛斂誅求、宦官が治める恐怖政治の国となったのだろうか。まさか貴族は「保身主義」じゃないから、などとは言い出さないでほしい。他の国と比べてどうだったのか、他の国ではどのようにして皇帝権の「家産」的体質を克服したのか、あるいは克服し得ずともなにか方策があったのか、そのへんのことを知りたいと思った。
 | 河出書房新社 発売日 : 2014-04-08 |
ヤマザキマリ・とりみき「プリニウス」を読んだ時から、プリニウス「博物誌」を手に取りたいと思ったが、なかなかに大冊でとっつきづらく、プリニウスについてのエッセイたるこちらを手に。学問や研究のために威儀を正して読むというよりは、あんなに嘘八百やでたらめを描き並べて世道人心を迷わせてきた男にふさわしい付き合い方をしてやらねば、とは澁澤龍彦のプリニウスに対する弁。気になったエピソードは◆横隔膜に傷を受けた人が笑いながら死んでいく◆ブレミエス族には頭がなくて、彼らの口や目は胸についているということだ。◆ヒマントポデス族は革紐の足をした種族で、歩けないから這ってすすむ。◆日本のトキに近い水鳥イビスが長いくちばしを肛門にさしこんで、みずから浣腸する◆僭主ポリュクラテスはおのれがあまりに幸運に恵まれすぎていると思ったので、その幸運をつぐなうために、大事にしちる宝石一個をわざと捨てて、運命の女神の気まぐれとの帳尻を合わせようとした◆皇帝の放蕩仲間であったオトが足の裏に香料を塗ることをネロに教えたとある◆といったところか。
 | 集英社 発売日 : 1995-07-20 |
◆タイトルは、フランスかイギリスだかの格言からとった。「女にとって男とは…」という比喩だったと思う、とのこと。恋におち愛し合うことを美しくうたいあげたかと思いきや、女房が質に入るなら絶対「流れる」まで近づかない（編集部へのお願い。この本は事務所あてにお願いします。自宅へは決して送らないでください）…なんで書いちゃうのは時代だなあ、と思ったり。筒井康隆の缶詰時のエピソードにくすりと笑ったり、顔に入れ墨する青年のその何ものをも寄せ付けない孤立に思いを馳せ、全曲が「眠りの予告編」的な静けさに満ちているゴンチチに魅入られ、心に重くのしかかるものがあるときは心の中で「てけてんてんてんてん」と6回唱えると心が軽くなると語る。◆西洋哲学は「フレット」のついた思考（略）しかし考えてみればこれは異常なことなのであって、世界は混沌であり、混沌は混沌のままに受け取られるべきなのだ。それは不安だし勇気のいる作業ではあるけれども。(p.144)には深くうなずく。◆あとがきで、茶道の本「なごみ」から連載依頼されたことを語り、"「作法を存じませんので」と一言。ぐいと茶を飲む。これなら僕にもできる。「作法を存じませんので」と絶叫しながら、いつもの場外乱闘を繰り返すのだ"といった心がまえで連載してたとのこと。その絶叫しているところの絵面を想像してしまって思わず笑ってしまった。
何年ぶりかの再読。文藝別冊総特集伊藤理佐を読んだのを機に。やっぱ勢いがあって好きだなあ、このマンガ。いまはもう売って、家族もできてだけど。小さく悩んで大きく決断。不動産屋さんも設計士さんも建築士さんもいい人との出会いに恵まれて（不動産屋さんのうちに初めて行って意気投合して12時間飲みとか）。紆余曲折いろいろありつつ、建ててしまったら、もう一回建てたい！というのは予言的だったなあと。あとがきの、これを読んで同じメンバーで建てたい！と言って本当に建てちゃった人、これを読んで逆にミサワで建てた人、それぞれいて、これ前回読んだ時も印象に残ったなあと。
津野親忠殺害は改易の理由たりえない。1600年10月までは徹底抗戦方針だったが、11月におそらく盛親が井伊直政から、降伏→堪忍料受領という確約で上阪したのでは。しかし一度抗戦で集められた者たちを国元の留守居で抑えきれず浦戸一揆勃発、城受け取りの際に激しく抵抗。このために、堪忍料受領も流れて改易に至った、と。他の外様の西国大名が降伏してない中、降伏後に抗戦したものを許すわけにはいかないという政治的理由から、と。
冬に冷やし中華が食べれないとはなにごとだあああ、という憤りから発してできた全日本冷やし中華愛好会。冷やし中華への愛が昂じるあまり、お互いのこだわりで派閥までできて、冷やし中華思想が滾々と論じられ。冷やし中華好きとして手に取ったが、さらりと流し読み。
 | 朝日新聞出版 発売日 : 2022-03-18 |
映画はほぼ芙美目線で語られてたのが、ノベライズは航平目線、篠田目線も入ってて、よりお互いの心情に踏み込んで描かれててよかった。また、ノベライズにだけあるエピソードとして(1)芙美が初対面の航平に亡き息子を重ね合わせてしまって、気を取り直して、航平に、友達になって、と言ったこと。(2)妙子の復縁のために、純一郎に誤解を解きにいったこと。が、追加されてて、グッときました。◆パンフレットとかには書いてあったのかもだけど…ツユクサの花言葉は「ひとときの幸せ」。まさに自分と篠田の関係そのものか、という独白が映画タイトルをよく表し。しかしそれをひとときにとどまらせないために二人は動き、と。◆これもパンフレットに書いてあったのかもだけど、太田浜、東京から二時間、て記述から、舞台は静岡県牧之原市ではないかと推測したり◆” —痛みだけとってください。痛みが取れたら、またがんばれるので。”あれは歯の痛みのことだけを言っているのではないのではないか。…篠田の独白も印象に◆主題歌は中山千夏「あなたの心に」知りたい」◆
 | 河出書房新社 発売日 : 1992-02-05 |
この本を原作にした高浜寛の漫画版「愛人」を読んだのを機に再読。漫画版はすっきりと整理され、エッセンスを提示してくれていたんだな、と思った。小説版は、最初からデュラスの家族のことや当時のインドシナのことが思いつくままにあちこちに語られ、ショロンの男が登場するのはようやく文庫版でも50ページにもなってから。「いろんな女たちを相手にやってるようにしてほしい。」「わたしは年老いた。突然、それを知る」「父親に反抗してわたしを愛し、わたしをつかまえ、わたしを連れだすだけの力はこのひとにはない」「わたしもお父様と同じ考えよ。あなたといつまでも一緒にいるのはお断り。その理由は言わなかった」「そして彼女は突然、自分があの男を愛していなかったということに確信をもてなくなった」といった印象的なシーンを原作のなかに見出して再度味わい。◆永遠不滅がおのれを生きているかぎり、生は不死であり、その一方で生は不死であり、その一方で永遠不滅は生のなかにある。(p.168)
 | 筑摩書房 発売日 : 2001-05-01 |
恐れることはない。とにかく「盗め」。世界はそれを手当り次第にサンプリングし、ずたずたにカットアップし、飽くことなくリミックスするために転がっている素材のようなものだ。(p.116)。サンプリング、リミックス、アンビエント。どのように登場し、使われ、影響を与えてきたかが語られていて興味が尽きなかった。特に、マイク・ビドロ、ジェフ・クーンズ、シンディ・シャーマンあたりを語るところ。ブライアン・イーノと「アンビエント」、ハウスミュージックを語るあたりが心惹かれた。それにしても、展覧会で、ピカソの精密な模写を並べて「これはピカソではない」という人を喰ったタイトルにして、それが否が大きめの賛否両論を呼び、けど作品は売れたっていうのが1980年代。デュシャンが、便器にサインして、それがただの物体か芸術品か、"両者を隔てるのは、「芸術」として認められているか否かという「信用」以外にはありません。つまり、煎じ詰めれば「芸術」とは信用の問題なのです”と喝破したところから、芸術家たちは迷走を強いられたのではないか。その行き着いた先が、サンプリング、リミックス、アンビエントなのでは、と。印象的な展示は、"出品作家に精液の提供を求め、液体窒素で凍結し、作品としてギャラリー展示。中原昌也、大友良英、飴屋法水らが参加。"といったもの。その後体外受精に活用され得ることも織り込み済みだったとは。ジョン・オズワルド「プランダーフォニックス」（音響略奪）..."著作権によって法的に権利を守られた音源をあえて使いつつ、同時に情報の出所を不明にするために0コンマ数秒単位でサンプリングし、たがいにまったく等価の、前後関係や価値関係のないものとして羅列して、一定の時間を物理音響的に専有"...とあるが、youtubeなどで聞いてみると、ビートルズのレボリューションNo.9に近い響きと感じられた。アシッド・ハウス、ディープ・ハウス／ガラージュ・サウンドあたりも聞いてみたいと思った。◆ケージが沈黙を重視したのに対して、イーノはいわば「不完全な沈黙」を重視し、この不安定性、無名性こそがその周囲の環境へと注意を喚起させるのだとしているからだ。(p.274)◆
 | 光村図書出版 発売日 : 2022-08-05 |
三浦しをん分のみ読了。友人と泊まった老舗温泉旅館の話をぜんっぜん聞かないご主人のエピソードがユーモラスにつづられ。
 | 筑摩書房 発売日 : 2022-03-14 |
時は1945年ベルリン。大戦を生き延びた17歳のドイツ人の少女アウグステは、ある時、恩人の死を知らされ、ソ連軍によって恩人の甥エーリヒに訃報を伝える旅へと駆り立てられる。元俳優で泥棒のカフカとともに。道中を下級軍曹ベスパールイにたびたび助けられ、浮浪児の盗賊集団のヴァルターとハンスに助けられながら。なぜ恩師は殺されたのか、なぜそれほどまでに訃報を伝えねばならないのか。二転三転の道中を経て、自分に関わる人々の正体が少しずつ語られ、それは幕間での少女時代から、1945年につながるアウグステの前歴からも明らかになっていく。第三帝国ドイツの暮らしの重苦しさ、戦後の苦しみを濃厚に描きつつ語られる結末は…と。とても苦く感じたのは、「人ひとりに会う、それだけでこんなに難しいのは、党があった頃から変わらない。終戦前、反ナチだった人は、連合国が来たら自分たちを解放して自由にしてくれるだろう、と信じていた。でも違った。待っていたのは、正義の使者なんかではなく、ドイツ人は全員が総統の信仰者で、全員が同じ思想を持っていると思い込んだ、普通の軍隊だった。」(p.264)といった箇所。ウクライナに攻め込んだ国の国民に同じことを思ってしまわないだろうか、ということ。ユダヤ人を、障害者を、ジプシーを、差別して亡き者にしようとした大きな権力。それに積極的に加担する者、苦い思いをいだきつつ何もできなかった者、命の危険とひきかえに果敢に抵抗した者。その中で、ドイツ人なのに、ユダヤ人と見紛う風貌に生まれたばかりに、最初は蔑まれ、次にユダヤ人を笑いものにするモノマネで人々に受け入れられ、ついにはプロパガンダ映画のユダヤ人役俳優にまでなったカフカの、一時の栄光とその後の長い苦悩。アウグステが出会った、多くの抵抗する人、差別にあらがう人、そのために命を落とした人、それを顧みずに手をさしのべようとした人の描写が強く迫ってくる。自分だったらどうしただろうか、どうできただろうか、と。
 | 新潮社 発売日 : 2022-03-28 |
桜木紫乃「おばんでございます」つながり。このエッセイを読んだら矢も盾もたまらず「緋の河」が読みたくなってしまい。◆カルーセル麻紀の前半生をモデルに描かれたフィクション。昭和20年代の釧路で、男に生まれたけれど、きれいなものが好き、自分がきれいになりたい、女言葉のほうがラクなヒデ坊。笑われてもいじめられても、自分の道を貫き通そうとする自意識の強さ。釧路から札幌へ、そして東京、大阪へ。ゲイバー以外のステージに立ち、認められ、テレビに出る道が開けたところまでが描かれる。読み終えて、続編「孤蝶の城」があることを知り、こちらも読んでみたい。◆「ヒデ坊、女になんぞなるもんじゃないよ（略）どうせなるのなら、この世にないものにおなりよ」p.72(華代)…この世にないものになる、という考えが長くヒデ坊の心を照らし、あたため、進む道標となった。◆「あたしはあたしってこと。こうやって生まれついたんだもの、あたしくらいあたしを認めてあげたっていいじゃない」p.159（ヒデ坊）◆「言いたいやつには言わしておくの。嫉みなんて、こっちが持たなきゃただの追い風よ」p.170（ヒデ坊）…小気味良い啖呵はすがすがしくも、自分を鼓舞するためのものでもあり、というのが見てとれる。◆「かたちの違う者同士が、どうやったらそれぞれの角を折り曲げながらうまく付き合っていけるか--そんなお話です」p.328…高校時代の演劇部の脚本は、ヒデ坊の来し方行く末をあらわしているかのような一編。◆「ゲイボーイは、歌も歌える踊りも踊る。踊りねだりたかりで暮らすのが信条なの。本気を出したときは、あんたたちの財布が信じられないほど軽くなるのよ」p.417…誇り高さがせまってくる。◆だから言ったじゃないの--- ひとの言いなりになっていると、いつか自分をすり減らしちゃうんだから--- p.536…姉章子へのつぶやき。すり減らしてしまった姉を暖かく迎え入れるヒデ坊。◆誰かを傷つけてるわけじゃあない。お前の痛みが、いつか誰かの役に立つときが来るんだろう。わたしはそんな気がする p.622…この母のマツの言葉にはグッとくる。どれだけの葛藤と逡巡を経てこの境地にたどりついたんだろうかと思いつつ。
◆"1482-1495年、オスマン朝のスルターン位請求者ジェムは、修道会、ローマ教皇、フランス王の許で勾留されていた。そしてこの時期オスマン朝は西方への軍事行動を成約されていたように思われる。"という問題設定。◆ジェム監視のために、オスマン朝→修道会へ莫大な金額が払われていた。◆修道会側は、ヨーロッパの諸君主を糾合して、オスマン朝に反撃するチャンスととらえるが、君主たちは結局は動かず（ハンガリーにおいては動きが見られたが侵攻にまでは結実せず、またマムルーク朝は対オスマンでヨーロッパと連合する動きも見せたが）好機を活かせず。結局は、ヨーロッパ諸勢力には、この時代、オスマン朝に抗する実力がないことを露呈した、と。
2022年08月01日
2022年07月に読んだ本
0702・坂口安吾 戦争と一人の女 青空文庫
0702・若き日の映画本 シアターキノ
0704・いま知りたい、私たちの「現代アート」 高松市美術館コレクション選集 青幻舎 図書情報館
0704・【再読】小笠原弘幸 オスマン帝国 中公新書
0705・伊藤潤 山河果てるとも 図書館
0706・本多孝好 真夜中の5分前side-a 図書館
0707・本多孝好 真夜中の5分前side-b 図書館
0709・和田裕弘 天正伊賀の乱 図書館
(0709・ぽやん舎 girl on the road ブックネットワン野幌 20220709
(0709・アケミックス 無職日記 ブックネットワン野幌 20220709
0709・吉田紀子 涙そうそう ブックネットワン野幌 20220709
(0710・山田胡瓜 AIの遺伝子 blue age 4
(0710・【再読】小林ダイ Hungary is flatter than pancake
0710・バーチャル美少女ねむ 仮想美少女シンギュラリティ kindle 20220708
0711・バーチャル美少女ねむ メタバース進化論 図書情報館
0711・瀬尾まいこ 強運の持ち主 20220705
0713・加藤陽子 それでも日本人は戦争を選んだ 新潮文庫 図書館
0715・中沢新一 幸福の無数の断片
(0716・舞妓さんちのまかないさん20
0716・菊池寛 出世 青空文庫
0716・原田ひ香 まずはこれを食べて 読書室ポワロ
(0717・シマシンヤ Gutsy Gritty Girl 20220712 kindle
0717・直木賞受賞エッセイ集成 図書館
(0717・逃げ上手の若君1-2 kindle
0718・中島京子 夢見る帝国図書館 ブックネットワン野幌. 20220709
0718・山本佳奈子 個人メディアを十年やってわかったことわからなかったこと 交信 20220716
0718・小野寺伝助 クソみたいな世界を生き抜くためのパンク的読書 交信 20220716
(0718・池辺葵 ブランチライン 4
0718・松井玲奈 カモフラージュ 20220710
(0718・ぬこー様ちゃん絵日記集6：富士ヒルシルバーを目指した結果: 富士ヒル編 Kindle
(0718・ぬこー様ちゃん絵日記集7：１００日後にオフパコされる話: パコおじ編 Kindle
0719・瀬尾まいこ 幸福な食卓 20220710
0720・本屋の仕事 シャンティブックス 20220709
0721・文藝別冊 総特集伊藤理佐
0721・桜木紫乃 おばんでございます 図書館 20220721貸出
(0723・ゴールデンカムイ 31
(0723・海が走るエンドロール3
0724・澁澤龍彦 女のエピソード 大和文庫 20220723 古書浪漫堂
0725・【再開】中沢新一 ゲーテの耳
0725・【再読】村上龍 ニューヨークシティマラソン 20220723 古書浪漫堂
(0725・アンサングヒーロー4 kindle
(0726・洋介犬 コメンテーターエンドーさんインディーズ版kindle
0727・米澤穂信 黒牢城 20220726
(0727・洋介犬 反逆コメンテーターエンドーさん kindle
0727・江國香織 泳ぐのに、安全でも適切でもありません 20220719
(0729・衿沢世衣子 2年1組うちのクラスの女子がヤバい1 kindle
(0729・衿沢世衣子 1年1組うちのクラスの女子がヤバい 新装版 kindle
0729・ずるずるラーメン
(0730・高野雀 しょうもないのうりょく3
0730・澁澤龍彦 マルジナリア 20220723
(0731・軍鶏1-3 kindle
(0731・男子高校生を養いたいお姉さんの話 1 kindle
(booklogなし0731・【再読】掟上今日子の備忘録 1 kindle
0702・若き日の映画本 シアターキノ
0704・いま知りたい、私たちの「現代アート」 高松市美術館コレクション選集 青幻舎 図書情報館
0704・【再読】小笠原弘幸 オスマン帝国 中公新書
0705・伊藤潤 山河果てるとも 図書館
0706・本多孝好 真夜中の5分前side-a 図書館
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0709・和田裕弘 天正伊賀の乱 図書館
(0709・ぽやん舎 girl on the road ブックネットワン野幌 20220709
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(0723・ゴールデンカムイ 31
(0723・海が走るエンドロール3
0724・澁澤龍彦 女のエピソード 大和文庫 20220723 古書浪漫堂
0725・【再開】中沢新一 ゲーテの耳
0725・【再読】村上龍 ニューヨークシティマラソン 20220723 古書浪漫堂
(0725・アンサングヒーロー4 kindle
(0726・洋介犬 コメンテーターエンドーさんインディーズ版kindle
0727・米澤穂信 黒牢城 20220726
(0727・洋介犬 反逆コメンテーターエンドーさん kindle
0727・江國香織 泳ぐのに、安全でも適切でもありません 20220719
(0729・衿沢世衣子 2年1組うちのクラスの女子がヤバい1 kindle
(0729・衿沢世衣子 1年1組うちのクラスの女子がヤバい 新装版 kindle
0729・ずるずるラーメン
(0730・高野雀 しょうもないのうりょく3
0730・澁澤龍彦 マルジナリア 20220723
(0731・軍鶏1-3 kindle
(0731・男子高校生を養いたいお姉さんの話 1 kindle
(booklogなし0731・【再読】掟上今日子の備忘録 1 kindle
 | シアターキノ 発売日 : 2022-07-01 |
斎藤次郎さんがかかげた（自分の中の）「もうひとつの国」づくり(中島洋)をするのに映画を観よう。それは生きていく上での力になるから。特に若い人たちにおススメしたい映画を、と41人の方にシアターキノから執筆を依頼した本。一人ひとつずつ（中には二つの方もいらっしゃったけど）、おススメする映画をあげつつ、その映画と自分のかかわり、人生の印象的なワンシーンや転機、時代背景などが語られる。そうはいっても、冒頭は、バーンと、「好きを否定したり強要する権利は誰にもない」(文月悠光。「害虫」を推薦。)と若い人からの言葉がかかげられるけど、そこは「大事なのは大人のおせっかい」というくすみ書房の楠見さんの言葉を置いて。印象的だったのは、◆人間は考えることで強くなる(松井久子。「ハンナ・アーレント」を推薦。)◆暗闇にいる時間が長ければ長いほど、外に出た時、さっきまで歩いていた道が全然違って見えるというオマケ体験もある(三宅唱)◆あたりかな。エピソードとしては”アメリ一作で一年間の4分の1の収入たたき出す”というのがすごい人気だったんだなあ、と。わたしも見に行きました。◆「害虫」「戦争ともう一人の女」「ハンナ・アーレント」観たくなる。「チャップリンの独裁者」（二人の方がおススメしてた！）、「ダーティハリー」「灰とダイヤモンド」「いちご白書」「ゴッドファーザー」あたりも観てみたくなった（なんとなくメジャータイトル大目になってしまった）。◆個人的にはおススメできるほどたくさん見てるわけじゃないけど、ど直球の成長物語「オネアミスの翼」とか、肩に力入ってばかりじゃなくていいよと「かもめ食堂」とかおススメかなあ、と思ったり。
 | 発売日 : 2012-09-13 |
「若き日の映画本」で田中綾さんが取り上げていたのに触発されて。青空文庫版は、底本からするとGHQによる削除を受け入れたもののよう。今度は削除されてない版も読んでみたい。やけっぱちに、どうせ戦争のあいだだけのあいだがらだと思っている男と、奔放に見えて、そうさせたのはわたしを汚い商売にかかわっていたからとことさらに言いたがる男のせいであって、わたしはそうではない。ただ、戦争というごちゃごちゃした中での関係にはこころひかれる、といったところか。◆なぜなら、戦争により全てが破壊されるといふハッキリした限界があるので、愛着にもその限定が内々働き、そして落ち付いてゐられるのではないか◆僕は可愛がつたことなぞないよ。いわば、ただ、色餓鬼だね。ただあさましい姿だよ。君を侮辱し、むさぼっただけじゃないか。君にそれが分からぬ筈はないぢやないか」「でも、人間は、それだけのものよ。それだけで、いいのよ」◆
 | 中央公論新社 発売日 : 2018-12-19 |
（2022/7/4読了分）今回の再読では、オスマン的イスラムが一番印象に。イスラムとしては辺境の地にあり、当初は習合的なイスラムだったが、のちにスンナ派正統によっていき、しかしいくつもの制度ー兄弟殺し、デヴシルメー、現金ワクフ、ムスリムと非ムスリムの平等などーは厳密にイスラムにもとづけば認められないはずのものだが、現実のほうに寄せて認めていくという柔軟な姿勢。他に、評判のいちじるしく悪いセリム2世も、ソコルル・メフメト・パシャに対して独自性を発揮し、主導権をとろうとした面もあったこと、軍事も政治もスレイマン大帝最末期の栄光をひきずりつつ展開されていたことを指摘。イブラヒムも狂人とされるが、宸筆とされるものも筆跡にみだれなく、奇行とされる数々のことも、説明はつけられる、後世のあとづけで狂人とされたのでは、と。p.24の各侯国の説明。皇子時代に農地や鉱山の経営に成功した手腕がスルタン就任時にもいかされたアブデュル・ハミド2世、そしてトルコ共和国初期にもその人員や政策が引き継がれた面があったことも示唆される。◆オスマン集団とは、習合主義かつ融通無碍な包括力を持つ神秘主義的イスラムが触媒となり、聖戦の大義名分のもと、ムスリム・トルコ系戦士集団とキリスト教戦士集団が、オスマンというカリスマ性のある個人のもとに結び付いた人々であった(p.32-33)（2018/12/24読了分）17世紀オスマン帝国を、スルタンの廃立が繰り返される混乱期から、一つのところに権力が集まりそうになると、イェニチェリ、ウラマー、都市民などさまざまなファクターが均衡を求めて蜂起し、それがスルタンの廃立、大宰相の罷免、政策の変更につながると言った、柔軟で「民主的な」分権的な時代と描いたところが一番印象に残る。また、デヴシルメ、兄弟殺しなど、本来のイスラムでは脱法行為とされることも、柔軟に統治に取り込んでいるところも特徴と再認識。支配を支える層も、トルコ名家層からカプクルへ、分権から集権、また分権へと、またティマール制度から徴税請負制、ティマール騎士からイェニチェリ、そして新兵へと。時代に応じ、状況に応じ制度、支配層が変容していく様を横軸に、各スルタンについて語られることを縦軸に語られている点、読みやすかった。
 | 青幻舎 発売日 : 2016-04-01 |
「めくるめく現代アート」つながりで。主に、日本の20世紀の現代アートを、時期ごとに分けて、見開き2ページのイラストで簡潔に紹介してから、各人1作品ずつ紹介。あいまにエッセイをはさみ、といった構成。中ザワヒデキさんの「もの派」は当時は揶揄語だった、「もの派」とされた人が誰も自称しなかったことからも明らか、のちに海外で評価され、それにともない国内での意味合いも肯定的なものに、といったエッセイは興味深く。瀧口修造の焦げた円。もの派の作品の数々。鮮烈なレインボーの靉嘔の作品。千円札を成功に拡大コピーして逮捕された裁判中に、ゼロ円札をつくってくばる赤瀬川原平の心意気。河原温の日付の刻印。ピンクとホワイトで構成された西山美なコ。風刺の効いた会田誠。言わずとしれた奈良美智、村上隆まで。誰のかメモしわすれたけど、瀧口修造と近い年代で、一見モンドリアン風で、球体の運動の奇跡を記録したかのような作品もわすれがたい。
 | 角川グループパブリッシング 発売日 : 2008-06-28 |
左衛門は主戦派→宣教師→世界へ。小源太は血脈と祖先からの地を守るため不戦恭順→姉妹や食糧を収奪される→反乱。忠兵衛は不戦恭順→信長軍派遣→覇道→暗殺。勘六は、主戦派の後方舞台→信長暗殺の試み→土地に根差した地侍へ。と、伊賀の豊かな山河で共に親しんだ者たちの道もそれぞれ。◆織田中将信雄のプライドだけ高く、やることなすこと軽薄で肝がすわらず、主玄こと滝川雄利の生き残るためなら不義も責任転嫁も辞さず、時に主君信雄を脅しつけてでもいうことを聞かせ。◆下山甲斐は、伊賀、織田両陣営の板挟みにあうが最後は伊賀のためであることを皆に知らしめ。◆北畠具親は、自らが貴種ゆえ、北畠再興のためなら伊賀の土豪がどうなろうと知ったことかの身勝手さ。◆それぞれの信ずるところに依って、突き進み、考えを変え、絡まり合う様が熱量持って描かれ。◆和田裕弘「天正伊賀の乱」（中公新書）読みたくなる。
 | 新潮社 発売日 : 2007-06-28 |
 | 新潮社 発売日 : 2007-06-28 |
何年かぶりの再読。side-A,Bとおして。◆嗜好も考えも行動も好みも一緒の見分けのつかない一卵性双生児がいて、そのどちらかを好きになった場合、彼女のどこが好きなのか、なにを愛してるのか、なぜもうひとりの方ではないのか。究極の設定で、誰かを愛するとはどういうことかと、鋭く問いかけてくる一編。◆本人はいたってクール、死んだ恋人の影をひきずり、わけもなく次々と美女に好かれ、つきあうと人としてのずれを感じられる、といった一時期の村上春樹しぐさなスタイルが垣間見えるところはちょっとな、と思いつつ、ぐいぐい読めてしまった。◆結末はまさかの…。自己同一性、その人をその人たらしめている部分がまざってしまい、自分でもわからなくなってしまったら、という形に。それでも愛せるだろうか、そもそもそれは本当なのだろうか、多大な混乱に押し流されそうになりながら。以下備忘録◆◆狂ってるのよ。あなたの部屋にある目覚まし時計と同じ。ほんの五分くらいだけだけどね。ちょっとだけ、でもきっちりと狂ってる。◆結局のところ、僕にとってあの会社はもう過ぎてしまった地点だし、彼らにとっての僕もすでに過ぎてしまった人間だった◆「好きな自分になってみようという気は？そういうことに時間を費やすことが、正しい人生の過ごし方だと思うんだけどね」◆「俺はこの世界が嫌いだけど、俺はこの世界でしか生きていけない」「そこのところだけは誤魔化したくないんだよ」（野毛）
ガールとともに四季をめぐる一冊。写真のなかに写り込んだかのように描かれるガール。ふと描かれた街角にふらりとガールがいそうな気になってしまいそう。秋のガールが一番好きです。表紙の光をつかもうとしてるガールも。ひざの上に猫をのせたおだやかさも。
| 発売日 : |
10年ぶりに無職となったのを契機に、旅行に映画に。ノサップ岬のふるえるほどの寒さ。めざした春国岱に入れずまわりをぐるぐる。学生時代に聞いてずっとあたためてたチヨマトー神社と創業から継ぎ足すぬるくて酸っぱいらーめんの訪問（ラーメンは代替わりしてた）。ありとあらゆる動物を排泄させる謎のアケミックスパワー。パワフルで楽しめました。それでも仕事したい欲の湧いてこない、強烈な仕事したくないパワーを感じて。
 | 中央公論新社 発売日 : 2021-05-19 |
伊東潤「山河果てるとも」つながり。良質な史料からは、第一次、第二次天正伊賀の乱での伊賀衆の行動の詳細はなかなかに追えず、といったところか。百年後に書かれた戦国小説ともいえる「伊乱記」などに則らねば。足利義昭の貴種ゆえのわがままな行動を列挙し、朝倉義景たたずは、義景の優柔不断より義昭の人物が信用ならぬ面があったからでは、と。「山河果てるとも」では、悪辣に謀略をふるい、信雄を落としつけてでもいうことを聞かせていた滝川雄利は135-136頁に詳しく取り上げられ、立ち回りのうまさと有用さが語られる。第一次伊賀討伐は、丸山城攻防戦の敗北に対する復讐ではなく、北畠具教の息のかかった伊賀衆を織田軍が征服するというのが真意。家康の神君伊賀越えは、同行した家臣が当時の武功を誇っておらず、ルートも検討の余地、そもそも周辺の地侍にある程度の規模の家康一行を襲えたはずなし、盛られた話では、と。
(2022/7/10読了分)再読。そうだ！自転車旅に切り替えれば安く上がるし！という思いつきとワクワク感から、難路にやられてあっという間にへこみ、そこからの浮き沈み。おれはこんなところでなにを、と思うときも、現地の人と飲んでさわいで楽しんだりと。タイトルにもなってるハンガリーはわりとさらりと終わってたなと思いつつ。(2019/7/18読了分)ブルガリアのソフィアから、オランダのアムステルダムをめざす自転車旅行記。中国から陸路でヨーロッパまでやってきたが、思い立って、ソフィアから自転車旅行に切り替える。けど、終わり方も唐突、ドイツで自転車を盗まれて終わるなんてね。一人貧乏旅行者の悲哀も感じさせつつ。目をあわせてもらえなかったり、話しかけてもらえなかったり。かと思えば、現地の人のあたたかさにふれたり。言葉も通じないのに、とめてくれて、身振り手ぶりで通じ合ったり。ルーマニアの労働者たちと酒をくみかわしたり。さらりとよめて、わくわくが伝わってくる。
 | 幻冬舎 発売日 : 2006-09-01 |
◆一度読んでみたかったお話。ド直球王道ストレートなお話だった。◆父親は失踪、母親は病死で幼くして親戚に引き取られた血のつながらない兄と妹。母の、妹を守るんだよ、に忠実に、ガムシャラに働く兄。明るく美しく成長する妹。お互いの気持ちに気づいてしまい、離れて暮らすが、妹のピンチに兄が駆けつけた時はすでに死病の身で若くして帰らぬ人に…と。◆那覇と波照間を舞台に。
 | 秋田書店 発売日 : 2022-07-07 |
今回のテーマは、人の気持ちを変えてしまうAI。ヒューマノイドからヒトへの臓器移植。犯罪者の更生のためのAI 。「みんな同じ目をしてたんです。加害者もその家族も」というひっかかりはあれども。最終話は次の巻へもつながる、全てをAIが監視し、AIに身を委ねる形で暮らす人々の「新世界」。メリット、デメリット、さまざまに浮き彫りにしながら。
 | 文藝春秋 発売日 : 2009-05-08 |
何年かぶりの再読。元営業職だったけど、人と働くのがいやになって一人でできる占い師になったルイーズ吉田。父と母とどっちがいいか占ってほしいという男の子。彼の気をひきたいんだけどどうしたらいいかと何度もやってくる女子高生。いろんなことの終わりが見えるがどう使ったらいいか知るために無給アシスタントにしてくれと押しかけてくる大学生。なかなかなれてくれない本格的にやとったアシスタントの竹子さん。ぼーっとしてるけれど、ぜったい手放したくない強運の持ち主の彼氏の通彦とのなにげないやりとりや日々の生活。真面目に占うよりもどちらかといえば直感と話術でなんとかしちゃってるルイーズ。占いが完全な恋愛相談や進路相談になっちゃったり、自分の言ったことが自分にかえってきたり、占い師なのにときには直感のほうが大事、あるいは自分より大切な人の意思を尊重したり、占いを9割以上答えが出てる人の背中をそっと押すものと割り切っているようでいて、それだけではないものとして扱い、読み終えてあたたかい気持ちになれる一編。
 | 技術評論社 発売日 : 2022-03-19 |
メタバースってなんなの？ヘッドセットかぶってゲームするのがメインでしょ？という思い込みに、きちんと肉付けされた説明を与えてくれた一書。VRChatをはじめとした四大ソーシャルVRアプリで交流が行われていたり、その中で人々がどのように楽しみ、どんな技術に支えられ、どんなことが営まれているのかが語られていてすごく面白かった。なりたい自分になれる権利、みたいな考え方も新鮮で。心のコスプレ、コミニュケーションのコスプレ、そして近い未来に大事になりそうな職業まで。触発されて、著者が、メタバースのなかで協力者をつのってできた曲と360度カメラ仕様のPVに圧倒され、小説も書いてると知り、購入してしまいました。読むだけでもワクワクの止まらなかった一冊。◆ メタバースにおけるアイデンティティは、名前、アバター、声。
 | 新潮社 発売日 : 2016-06-26 |
佐藤優子「本のフルコース」で取り上げられていて、手に取った一冊。日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、満州事変から日中戦争、太平洋戦争を順番にとりあげて、日本人の考え方、政治、国力、軍事、経済などがどのように変わっていったか、それをとりまく世界の情勢はどうだったのか、どのような外交が繰り広げられ、あらたな文書や研究からどんなことがわかるのか、といったことを、進学校の私立高校の歴史研究部のメンバーに、東大教授が５日間にわたって講義する、という形で語られる一書。高校生も著者の問いをがっぷり受けてたち、ときには著者の想定を上回る回答をみちびきだし。教科書で通り一遍の通説的な理解しかしていなかった身に、こういう状況、こういう史料からこんな見方もできるんだよ、と視界を広げてくれる。圧巻は最終章の、日本はなぜ国力が劣勢ななか太平洋戦争を開戦したのか、そしてどうやって戦争を終わらせるつもりだったのか、という問い。後者は、初戦に大勝して、それが助けとなりドイツが勝ち進んで、さっと有利な講和をむすぶという楽観に楽観を重ねた無責任なもの。前者は、耐えに耐えてジリ貧になるより、少しでも勝ち目がありそうな賭けにのってしまった、といったところか。そこに至るまでの日清戦争からの積み重ね、紆余曲折を経て。パリ講和会議での顧維鈞、胡適「日本切腹、中国解釈論」あたりはもう少し調べてみたい。またパリ講和会議についてももう一冊ぐらい読みたい。以下備忘録。◆「国民の正統な要求を実現しうるシステムが機能不全に陥ると、国民に、本来見てはならない夢を擬似的に見せることで国民の支持を獲得しようとする政治勢力が現れないとも限らないとの危惧であり教訓」(p.7)は、戦前の陸軍に対して述べられた箇所だけれど、今の日本の政治状況にも通じそう。◆「日中戦争期の日本が、これは戦争ではないとして、戦いの相手を認めない感覚を持っていたこと」(p.27)は、今のロシアのウクライナに対する姿勢にも通じそう。◆（リンカーンのゲティスバーグでの演説と同じで）巨大な数の人が死んだ後には、国家には新たな社会契約、すなわち広い意味での憲法が必要になるという真理(p.43)◆E.H.カー「敵国であるドイツが悪いのではなく、そもそも国際連盟がまちがっていたのだ、と。敗戦国ドイツに対する連盟の処し方がまちがっていたのだ」(p.65)…日本でよく読まれる理由はこういったところに◆（日本は）第一次世界大戦の始まりから（連合国同士なのに）イギリス、アメリカへの反感が芽生えていた。(p.263)◆パリ講和会議での、自分はがんばってプロパガンダしたが、他の人だって強盗をしているから自分が咎められる筋合いはないという弁明は、人を納得させることはできない、と真摯に悩むこの時点での松岡洋右の姿が。のちには連盟脱退演説、三国同盟と極端な外交をするイメージはあるが◆天皇を含めて当時の内閣や軍の指導者の責任を問いたいと思う姿勢と、自分が当時生きていたとしたら、助成金欲しさに分村移民を送りだそうと動くような県の役人、あるいは村長、あるいは村人の側にまわっていたのではないかと想像してみる姿勢、この二つの姿勢をともに持ち続けること、これがいちばん大切なことだと思います。(p.474)◆NHK取材班編「理念なき外交「パリ講和会議」」角川文庫、1995年
同じ著者の「メタバース進化論」にとりあげられていて、思わず手に取る。「メタバース進化論」の3年前だけど、"なりたい自分になる"見た目のコスプレや経済のコスプレ、デジタルツインあたりはすでに萌芽が。BMI(Brain Machine Interface)の研究者たる主人公が、研究が煮詰まって研究室のマシンの中で寝てしまい、気がついたら無意識にVTuberデビューしていて大人気に。普段の自分とのギャップに戸惑いつつ、母との思い出の噴火で今は入れない離島が、デジタルツインとして復興されていたり、バーチャルの世界でさまざまに交流したりする様が描かれている。フィクション、とされているけど、VTuberデビューの初回放送は、著者のデビュー時のものと重ね合わされているように思った。まだVRの世界では、ヘッドセット、あるいは、全身に何らかの機器をつけてのトラッキングまでで、脳波は微弱すぎて何かをコントロールするには不足なようだが、仮にそれがかなえられた世界。そして、すべてをxxxxにすると結ばれたそこには、何があてはまるのか。以下備忘録。◆魂のありかは本当に脳なのだろうか？◆顔も声も変換すると、自分の魂が自分の肉体から抜けて、ディスプレイに映るアニメの美少女に入ったような感覚に◆さよなら醜い肉体よ。今までありがとう。私は、ついに肉体の軛から解き放たれ、デジタル空間に足を踏み入れたのだ。
 | 河出書房新社 発売日 : |
映画、アート、書物をめぐる各所に書かれたエッセイの集成。何頁かだけながめて十年単位で寝かせてたものを通読。◆タイトルにもなってる「幸福の無数の断片」、ジョナス・メカスとの対話、メカスの語る幸せ、瞬間瞬間にしか存在しないものへの慈しみ、愛しさ。（メカスが映画で描く幸福の感情は、いつも断片とか破片とかがキラキラと飛び散っている。瞬間にしか興味を抱かない。魂の出会いが起こる、きわめて緊張度の高い瞬間こそ真に意味のある人生の重要な時間。幸せは、持続されたものとしては実現されなかったが、そうもありえたという理想的な人生の状態が、かいまみえる瞬間）◆「読みうること、それを越えて」、エリック・フェンビー「私の知っているディリアス」を原作とした、ケン・ラッセル監督「ソング・オブ・サマー」で描かれる、イギリスの作曲家ディーリアス、「ツァラトゥストラ」を一日わずか数行だけ、じっくりと時間をかけて読み、瞑想し…作曲家の身体を通過したニーチェのことばが、こんどは音楽となって流れでる…。影響されてニーチェ（佐々木中訳）「ツァラトゥストラ」（河出文庫）を買ってしまう。◆この二篇が読み終えて特に印象に残った。◆以下備忘録◆およそ彼の愛したものすべてのこめかみを、思想の銃弾で撃ち抜くようなやりかたでしか、それを愛することができなかったバローズ。◆カソリック、この世界をこんなに美しくつくりあげている神様の「栄光」は、人の五感に語りかけてくる、だから人間はそのゴージャスな感覚の儀式をとおして、その「栄光」をたたえなければならない。プロテスタントにとって大事なのは聖書にかかれた言葉だけ。◆19c末、ヨーロッパの近代に神は死んでしまっていた、神のかわりに芸術家たちは、個人として、「無」のなかから、言葉や色彩や形態の力をもって、さまざまな世界を創造しようとした◆双子座的読書、書かれてるものを読みそれに触発され、次の書へ、また触発されて次へ、行きつ戻りつしつつ、池になげいれた石が波紋をひろげるように。つまり乱読？ "「読みうるもの」のむこうに燃えあがっているものを知ること。ただ、そのことのためにだけ、彼は本を読む"◆田中純のアビ・ヴァールブルクのエッセイも読みたい◆梅原猛「真実は事実のなかにいるときには、窮屈そうにしているが、詩のなかにいるときはくつろいでいる」
 | 発売日 : 2012-09-27 |
「夢見る帝国図書館」つながりで。若い菊池寛から見て、汚い履物の自分を蔑んだ男、またいつまでも機械的に下足をあずかることへの憐憫を感じていた図書館の下足番の男が、菊池寛が盛名を得た後再訪すると、出世していたことを描く。そういう存在でも出世できる世であったことを喜ぶ気持ちが描かれ。
 | 小学館 発売日 : 2022-07-12 |
理子のスランプから、デビュー、家族が来ての晴れ姿に、家族への手紙であかされる百花やつる駒さん姉さんへの思い。健太の風邪から、百花の心配、キヨの見舞いから、言い出せなかった感謝まで。募る百花の思いと一見無表情なキヨの対比が。
 | 双葉社 発売日 : 2019-12-18 |
学生時代の仲間5人で起こしたベンチャー企業に、福利厚生で家政婦さん入れよう！とういうのは別の漫画や小説で見たことある気もするが、一人一人の悩みを家政婦さんの料理が解決！とまで行かなくてもそっと背中を押すハートウォーミングストーリー…みたいのを想像してたら、失踪した創業メンバー、家政婦さんのライフヒストリーが語られ、あれよあれよと絡み合い、意外な方向に話は転がり。みんなあいつが好き、酷いことされても結局は許しちゃう愛されキャラかと思いきや、全員を見下し操り支配下におきたかったサイコパスとか、おいおい、と。あと家政婦さんのキャラは好きなんだけど、ゴミ箱あさるのがキーなのはやめてちょうだいと思いつつ。話さないと抱えてしまう、話してみると肩の荷も降りる面は確かに。田中の買う家にみんなは集まるのだろうか、そうであってほしいと思いつつ本を置く。
 | 文藝春秋 発売日 : 2014-04-10 |
オススメを受けて手にとった一冊。真っ先に読んだのは、ずっと個人的にファンでサイン会やトークイベントにも行ったことのある三浦しをん。◆一番笑ったのは、桜庭一樹。高校時代の女子更衣室で、クラスメイトが、先日秘宝館で買っちゃったけど家に置いとくのこわくてもってきちゃった、というのがリアルすぎるくらいにリアルな男性器型の薄荷味の飴で大騒ぎ、やっちまえーの掛け声とともに、みんなでハンマーで打ちこわし粉々にし、その破片をみんなでがりがり食べて、薄荷の味がするよ！とげらげら笑いあったというシーンに。◆いやいや、そっちのほうが読みたいよ、と思ったのは奥田英朗。あるシリーズの登場人物伊良部と作者が、一緒に精神科に診療を受けに行くという架空対談を、再録したくないからと別のエッセイに差し替え。差し替えられたほうも十分おもしろかったけど。わたしの小説のセオリーは「裁かない」「テーマを持たせない」「説明しない」「自分で酔わない」なんだとか◆ぶっとんでるなと思ったのは、山本文緒。自伝的エッセイのはずが、直木賞候補になった日の買い物日記になり。◆読み返したくなったのは、江國香織。「号泣する準備はできていた」「泳ぐのに安全でも適切でもありません」はまた手に取りたい。「絶対はない。でも、主観的には絶対というものは確かにあるし、永遠も確かにあります。永遠の恋も、主観的にはあると思う（略）だから私は「個人的な絶対」が好きだし、主観的な登場人物が好きですね。」◆そして、森絵都の"自らの信念や価値観を守って黙々と生きている人々を描く"「風に舞いあがるビニールシート」も読み返したく◆
 | 集英社 発売日 : 2021-08-04 |
1-2巻まで読了。主人公北条時行は、栄華の極みから一月足らずで滅亡させられた北条家の御曹司。取り柄は人智を越えた逃げ足。足利高氏、諏訪頼重、小笠原貞宗と、彼に味方するも者も敵対するものも、なんらかの魔に魅入られるか、神としての御業を持つか、常人を超えた生き物としてデフォルメして描かれ。続きは気が向いたら手にとろうかな。
 | KADOKAWA 発売日 : 2022-07-12 |
Lost Lad Londonの作者による短編集。Lost…に出てきたユキの前日譚が読めて善き
 | 文藝春秋 発売日 : 2022-05-10 |
上野の子ども図書館に仕事で来たフリーライターの主人公が、図書館をでたベンチでで図書館を愛する自由な女性、喜和子さんと出会ったことから始まるストーリー。帝国図書館を主人公に据えた物語と交互に語られる。最後は、あ、世界の終わりとハードボイルドワンダーランドみたい、とちょっと思った。こちらの世界とあちらの世界がつながった、それもすごく良いかたちで、と。◆図書館の歴史は金欠の歴史。永井荷風の父を始めとした図書館長や職員たちの悪戦苦闘。◆樋口一葉、幸田露伴、淡島寒月などなど名だたる文豪たちが本を読みに通う図書館◆菊池寛「出世」でも描かれた下足番。◆日本国憲法の草案作成にも大いに資するところのあった国会図書館◆図書館を巡る人々、帝国図書館の小説を書いてくれという願い。本人は語らなかったが、だんだんと明かされていく喜和子さんの前半生。そして、残された謎を解いていくと…といったところがスリリングで、おもしろくて、けれど切なくて、と。◆率直で自分勝手だけどどこか憎めない古尾谷先生や、男前のホームレス彼氏の造形なんかも好きでした。
「オルタナティブについてわかったこと――形骸化するオルタナティブと、仕事化されないオルタナティブ」「ウェブやＳＮＳについてわかったこと――エコーチェンバーのネットにちょうど良いサイズの社会を求めて」「日本の音楽シーンについて、わからなかったこと――興行ビザ／ツアー収支とギャラ定額制／対バン文化」の三編からなるエッセイ。札幌・円山の小さな紙もの屋さんで見つけて手に取り。”エコーチェンバーのネットにちょうど良いサイズの社会を求めて”という2編目のサブタイトルが気になり。"「ウェブサイトがなければオフィシャルじゃない」感が、noteの流行、twitterのツリー投稿機能の定着で、日本でもだんだんとSNSがウェブがわりになりはじめたのかなとも感じる。" "私たちは、情報をSNSからたくさん取得しているように見せかけて、実は、その情報の洪水は、ほんの一筋の支流の氾濫でしかない" ”ネットとSNSに功績があるとすれば、メインストリームという存在をつぶし、嗜好やカテゴリーを民主的に細分化し、並列化し、適度なサイズのコミュニティ空間を多数生み出したことかもしれない。”といったあたりが印象に。「オルタナティブについてわかったこと」は、自分にまつわるお金と責任から逃げ続けて、デイジョブに時間をさいて、オフショアを生業にまで育ててこなかったことを自覚し、腹を据え、ウェブ版「OffShore」を停止し、紙版でやっていくぞ、という決意までが描かれ。最終ページの「それでも個人メディア、続けます」という広告が雄弁なto be continuedになってる。3編目の音楽シーンの話は、1編目を読んでても感じたけど、自分は客観的、自分は正しい、けどうまくいかない、協力者もあらわれない、誰か自分の理想を実現してくれ、というテイストで息苦しかった。頑固で完璧主義で人のアドバイスも自分の理想に合わなければ、一切耳を貸さない…では、苦しい、ただ正直につづられているな、とは思った。
ある集団のことを一般化し、全体化することはひとつの暴力だ（岸政彦「断片的なものの社会学」）◆イスラエルでの日常を気負わずにユーモラスに描く、エトガル・ケレット「あの素晴らしき七年」◆ユニティを大事にしすぎて寿命をちぢめたのでは、けどそれもまた幸せだったのでは、といった感の「阿佐田哲也の怪しい交遊録」◆誰をも排除しない音楽本来の楽しさをおしえてくれる、大友良英「学校で教えてくれない音楽」◆「平凡な時間の連続のなかに、キラッと光るような瞬間がある。こいつを大事にしなければならない、澁澤龍彦「快楽主義の哲学」◆「私にとって、資本主義社会に心を奪われない様にするための武器は、何十年も前の本を読んで感動したり、誰が読むとも知れぬ文章を書いたり、パンクを演奏してボロボロになったり、友と酒を呑んでゲロを吐いたりすることだ」（限られた時間の中で 借り物の時間の中で -ミヒャエル・エンデ「モモ」）といったあたりが手にとってみたくなった。
絵日記集はこんなにもおもしろいのになぜこんなにも打ち切りになるんだろうという不思議。
 | 集英社 発売日 : 2021-05-20 |
1話目は彼女持ちの男とつきあう女性の話でまあまあ、2話目はホラーチックで心が拒否して、以降どうしよ、と思ったが3話目「いとうちゃん」がよかった！（憧れのメイドになれたけど、ストレスで食べて太ってしまい、客や店長や同僚たちからの言葉や視線にどうしようと悩み、唯一の理解者の料理人とは心が通じ合い、あらたな自分を活かせる地へ飛び立ち、と）ので、通読できた。桃を食べる女フェチの男、本音ダシ鍋食べて生配信でぶちまけ合うYouTuber 3人組の転落と這い上がり（最後の、実は…のつづきも気になる）。潔癖症な元カレの影響を職場の後輩のお陰で克服できそうなOL。などなど。◆「僕がいとうちゃんを肯定してあげることは簡単だけど、結局は自分が肯定してあげないとなんにも変わらないと思うよ」（「いとうちゃん」）◆「太ったねって言われたり、痩せたいと思っているのに痩せられない時って、実はその自分に満足してる時なんじゃないかな」（「いとうちゃん」）◆「好きだった時間が長い分、その人が自分の体に染み付くんですよ。好きなもの、苦手なものもそうだけど。その積み重ねで俺たちは生きているんだと思うんですよね」（「拭っても、拭っても」）
 | 祥伝社 発売日 : 2022-07-08 |
優しすぎるから、幸せになってほしい。山田について家族に聞かれた仁衣のことば。仁衣が仕事ぶりをいつも見ていて、誠実に自分の言葉で話そうとする山田に信頼を寄せて、時に天才！とほめたり。その仕事ぶりはondes にも通じて…と。
 | 産業編集センター 発売日 : 2022-07-13 |
(1)ジャックさん、「後輩との関わりにおける課題とソリューション」のスライドが56枚で、「キャロルがかわいい件」のスライドが1350枚なの吹いた！ひよでなくても逃げ出す。(2)新キャラのカッパが好きすぎる！大将が出してくれた賄いにも、スパイスの挽き方が粗く、肉が硬くて50点と言っちゃうけど、陸にあがって自分の道を突き進む。(3)でぶどりのトサカを取ると労働意欲にあふれる設定、おかしかった。(4)ページ左上、右上の書き下ろしマーク、パラパラ漫画かとおもって、パラパラしちゃった。
 | 講談社 発売日 : 2007-06-15 |
父さんを辞めると宣言する父、なにごとにも真剣にならない兄、行き来はあるけれど家族と離れて暮らす母、真っ直ぐな好意を向けてくる同級生の大浦くん。派手でがさつな兄の恋人の小川ヨシコ。家族がばらばらになったのは以前父が起こしたできごとがきっかけになっていて…と。中学生の佐和子の目から語られる彼らとの日々。最後がこんな結末だったとは。◆「気づかないところで中原っていろいろ守られてるってこと」◆他人じゃないと救えないものが直ちゃんにはある。きっと、同じように私にも◆
ぬこー様ちゃん、途中からわかってたよね？自分が女だと勘違いされてるって…。と思いつつも、ぱこおじいい人すぐる。同人知識のいろはをAtoZまで教えてくれて、いまにつながってるって。そして14年後に明かされる謎。大きかったからとかそういうオチ？とおもいつつ。最後のキラリと光るコマも意味深すぎて。
 | 平凡社 発売日 : 2005-11-01 |
パラリとめくって、タコシェの中の方がインタビューされていたので即買い。ガロのアンテナショップから始まり、ガロと青林堂書店のものしかおいてなくて、一日売上2000円の時とかあって、これはやばい！と試行錯誤していくうちに、今のかたちになった…と。「犯罪・拷問」「ドラッグ&コンピュータ」「風俗・サブカル系」「左右の思想となぜかエロ」「ちょっと社会派」「クィーア」といった棚の分類に独自のテイスト…って、独自すぎる！いまもそうなのかな…。「本の内容は、本屋が書き換えられない。すでに完成された商品だから、それをどういうふうに並べるかっていうのが、本屋の仕事だと思う」（タコシェ中山さん）◆永江さん書店員時代に先輩から「回転率は最高だけど品揃えは最悪のキオスクという書店が一方にあって、回転率は最低だけど品揃えは最高の国立国会図書館がもう一方にあって、その両極のどこに自分の立ち位置を見つけるかが書店員の仕事だよ」と。◆TSUTAYA TOKYO ROPPONGIは、店内で珈琲を飲めるようにして、たいていはなんともないけど、一度、お客さんが平積みの雑誌の上にこぼして40冊全部濡れたことがある、とか。それはお店とお客さんのどちらの負担になったんだろう…◆ある調査によると、本の購入の7割は、店頭での衝動買い。だから衝動買いしたくなる本をどう並べるか（ブックファースト）◆洋書はかなり半径が違うので、デザインをかんがえながら陳列（ハックネット）◆本を売って稼ぐのは非効率。本をベースにしつつ、マーケットを拡大して、広い分野にアプローチする必要（ハックネット）◆（所管）とりあげられている本屋に共通してるのは、その本独自の個性を出していかねば埋没してしまう、という思いと、本だけ売っててもなりたたない、さまざまな分野とアプローチして裾野をひろげていかないとたち行かない、という問題意識か。2005年の本だけど、いまはどうなっているのか、今にも通ずる問題意識と思いつつ。
 | 河出書房新社 発売日 : 2022-06-14 |
安野モヨコx伊藤理佐x二ノ宮知子鼎談は、豪華なメンバーでかつ話も面白すぎるぐらい面白く。村田順子先生のアシスタントしてた伊藤理佐が、先生と二人、あたらしく来るはずの二ノ宮知子を待っていたら…待てど暮らせど来ず、携帯もないころだから事故にでもあったのかと思ったら、パチンコ打ってて遅刻…「でちゃったんだよねー」のシーンが一番笑いました。あと、他の方々がシリアスにかっこよく書かれた「おい！ピータン」の大森さんがツボ。歴代担当からもれなくあがる声は「し、しめきりを、しめきりをまもってください…」。この本読んで読みたくなったのが「チューネン娘」「あさって朝子さん」。あと山本文緒と共著の「ひとり上手な結婚」。読みたくなったけどAmazonですごい値がついてたのが、体当たりルポものの「あたって砕けろ」。鼎談で、朝日新聞に交代で連載してる益田ミリに嫉妬と伊藤理佐が書けば、益田ミリが寄稿で、編集者が「うちにもイトウリサみたいなドル箱がほしい」と言ってたのを耳にしたときの気持ちを書いていて、みごとなキャッチボールと思ったり。
 | 北海道新聞社 発売日 : 2020-11-07 |
著者初のエッセイ集。「ホテルローヤル」「ターミナル」「裸の華」を読んだ身にはすっと入ってきやすかった。一読、わりと自らを落として笑いのたねにするんだなあ、と。わざわざ亀甲縛りをならって、自分で縛りながら一曲歌う芸を家族の前で練習しようとしたら無視されたエピソードとかおもわず笑ってしまった。いいなあ、と思ったのは、40代ではまった金爆のライブに寄せて、”好きに理由はないの。嫌いにワケなどないように。今よ、今なのよ、今このときが楽しいの”と言ってるとこ。読みたくなったのは、カルーセル麻紀モデルのフィクション「緋の河」かな◆昨年直木賞の候補になった時に思わず発した言葉「誰が応募してくれたんですか」◆物語はいつも、ほのかな光を欲している◆下積み時代に送っても送ってもボツになった小説、段ボール箱にサクラギと書いて出版社に眠るというのは都市伝説なのか否か…。
 | 集英社 発売日 : 2022-07-19 |
地獄行きの列車での死闘もついに決着。生き残ったのは…。◆アシリパは俺に光を与えて俺は殺される（尾形）◆私は杉本佐一と一緒に地獄へ落ちる覚悟だ（アシリパ）◆ひとりでは行かせるかよ、相棒だろ（杉元）◆故郷へ帰ろう、アシリパさん、と杉元が言った時の杉元とアシリパさん、いい笑顔してたなあ。◆そして、連載時も思ったけど、やはり単行本でも白石やりやがったな！という感想。単行本では、第二次世界大戦直後のエピソードも追加され。
 | 秋田書店 発売日 : 2022-07-14 |
泥啜っても血反吐吐いても映画監督になりたいんだろ、Soraの言葉が、海とうみ子に静かに火をつけたかのように、お互いにフィルムフェスに出展することを知り、お互いにお互いを撮る映画を撮りたいと肚はきまって…と。
 | ダイワアート 発売日 : |
資生堂「花椿」に連載していた、歴史上の女性の通俗的なエピソードを紹介しつつ、若い女性の生きる指針の参考になれば、と書かれたものとか。ただ、なかなかに強烈な人物が目白押しで真正面から真に受けると人生なかなか大変そう。自分の快楽のために親族を毒殺していき、最後はばれて、裁判の過程でもふてぶてしい態度をくずさなかったド・ブランヴィリエ侯爵夫人。父に純潔を奪われ復讐に父を殺し処刑されたペアトリーチェ・チェンチ。フランス革命の大立物マラーを暗殺し裁判中に自らの肖像画を描かせたシャルロット・コルデー。マリー・アントワネットが拘束され、ギロチンにかけられるまでのあいだに気高い貴婦人へと変貌したというエピソードあたりが印象に。なによりこの本を手に取った動機は美しい本文レイアウト。右上隅、左上隅に花が咲くように置かれ、それをとりかこむやわらかな曲線がありつつ、おおむね直線でかこわれた見て楽しいデザインで、それだけでも買った甲斐あり。
 | 河出書房新社 発売日 : |
広大な地下水道をたたえたイスタンブールで微細な揺れを感じ続け。デリーでは、死刑囚の刑執行間近に牢屋越しに皇帝から与えられる慈悲、牢屋の鉄格子越しのはだけた女性…カリタス・インディア（インド的御慈悲）という言葉を知り。◆中国の南部にトンパ文化を学びにいった際は、◆邪馬台国そのものには、中国の国家みたいな中心もなく、実態すらなく、境界領域にあらわれた鋭い観念のエッジみたいなものをさして、それをただ国家と呼んでいただけなのではなかったか◆うちつづく勝利にいきおいづいたジェロニモが、部族連合を統一した「国家」のリーダーとして、白人に最後のたたかいをいどもうと呼びかけたのにたいして、部族たちは連合を解いてそれに抵抗した。連合はするが、そのなかから統合がつくりだされるのを拒否する人々の、非国家性の伝統だ。p.49-50◆という2つのエピソードが関連して語られ。◆魅惑的に語られる「打つ音」◇「パーカスすること、なにかを打つことは、世界から精霊を解き放とうとする行為だ」（アメリカのパーカッショニスト、デヴィッド・ヴァン・ティーゲムのヴィデオを見たときの映画作家オスカー・フォン・フィッシンガー）◇打つ音は、音楽行為のもっとも奥深いインフラ・ストラクチュア（下部構造）だ。◇パーカスすること、打つことは、人間の実存のもっとも深い地層につながっている。そのために、あらゆる単独者たちは、つねに「打つこと」を愛してきた。◆壮大な発想とかんじたのは、◇東洋の文明のなかには、ひょっとしたら、技術がその「本性にしたがった」発達をおこなうことが、人間にとってなにか正しいものではない、と考えるような叡知が存在して、そのためにそこでは技術のオートノマス（自律的）な発達をはばむ力が働きつづけていたのではないか。◇技術に対しての、エコソフィア（地球惑星的な叡知、と言ったほどの意味だ）が必要だ◇といったところ。また、ラマ僧たちとの夜遊びエピソードの描写が面白かった。夜中に笛ふきながら、墓場にたどりつき、なにか歌いつつ、チャクラをひらいたしてあそぶ、ってどんな光景だったんだろう。
 | 集英社 発売日 : 1989-09-20 |
(2022/07/25読了分)再読。今回は◆そして一年に一時間だけ輝ける時間の中に身を置く、観衆の中を手を振り微笑みながら通り過ぎる（リオ・デ・ジャネイロ・ゲシュタルト・バイブレイション）◆「ユキちゃん、俺のこと、好きなんだろ？」「よう、わからんとよ」（ハカタ・ムーン・ドッグ・ナイト）◆「責任」という言葉は、「支払能力」という言葉から派生したものだということで感心していたのでジョンストンに対して強い態度に出られなかったのだった（パリのアメリカ人）◆の三か所が印象に残り。そしてやはり、今回も、ジョンストンが自殺を思いとどまった画家ニコラ・デ・スタエルNicolas de Staelのほとんど無彩色だけの抽象画を見たいと思った。(2018/01/23読了分)cafe オリーブと鳩で手に取った、稲越功一「Paris 1989」つながり。そこに、この本所収の「パリのアメリカ人」の一部が使われていて。「俺には力がないって、この、いい感じの瞬間を持続させる力が俺にはないってね、足りないんだよ、足りないし、勇気もないんだ」(ハカタ・ムーン・ドッグ・ナイト)、「成功というものに縁がなく年をとった者に取って、進歩とか変化は明らかに敵なのだろう」(メルボルンの北京ダック)、「この絵のどこに自殺を止める力があるのかわからなかったが、ヘレナは分厚いスタエルの画集を買った」(パリのアメリカ人)。スタエル＝ニコラ・デ・スタエル、亡命ロシア人の抽象画家とあるが、見てみたい。Nicolas de Stael/NY。娼婦と男娼のカップル、ある勝負がきっかけでニューヨークシティマラソンに出ようと特訓を始める娼婦。二人の関係性も微妙に変化していき..。リオ。大事故を起こして療養中のF1ドライバーと娼婦の物語。考えるって何よ、YESなのNOなの？てスタンス。最後の最後に出した答えは...と。ローマ。寸借詐欺師のはずが情にほだされ話を聞いているうちに...。コートダジュール。何不自由ない生活を送ってたはずなのにコンコルドのコックピットから見た地球に宗教的なものを感じ仕事が手につかなく。最後は、直接地球をの声を聞いたかのように。フロリダ。急に妻に去られた男が、別荘のプールに泳ぎに来たメキシコ人に料理を振舞い奇妙な交流がお互いの人生を少しずつ良い方向に動かし…。香港。不思議な生物、産卵体の液を脳に注入することで一気にダンスの名手になりスター街道をのし上がり、男のもとを去っていったマーム。結末は物悲しく。/リアリスティックなものから、ファンタジーなものまで。
 | 講談社 発売日 : 2022-07-20 |
わかってた、成功するのはわかってた、真っ直ぐ見えた、そこまでの道。といった感想。音楽マンガは聴こえないからどうしても目ですごい曲なんだ、と思いこむしかない。売り出す方の苦労、その時どんな指標を用いて、どんな施策を打つか？というのは興味深く。
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-06-02 |
信長のもとでめきめきと頭角をあらわし摂津一円の領主となった荒木村重。信長に突然叛旗を翻し、説得に訪れた黒田官兵衛を監禁し、抗戦するもかなわず、妻や家臣を捨てて一人だけ城を抜け出し、生き延び、悪名を残した史実は知っていたが、そこをどうやってミステリとして描くのか？というのは気になっていたところ。◆人質殺害、手柄不明、茶器紛失、使節殺害、叛臣殺害。それぞれ、荒木村重がすべて家臣たちに調査させ、聞き取り、検断するが解けず、囚われの身の黒田官兵衛に諮問し、解決の糸口をもらう…という図◆荒木村重、黒田官兵衛はじめ、親衛集団、家老、在地の武士、僧侶、傭兵集団、キリシタン、女房衆、それぞれが自らの思惑をかかえ、信じ、依ってたつところに沿い、行動していったその先には…と。◆刻一刻と変わりゆく、城内城外の情勢。村重が戦国の常法に反してまでもこだわり、主張したかったこととは？黒田官兵衛の極悪な環境下で冴え渡る智謀とそれを披露する動機とは？それが明かされた時には…と。史実ゆえ結末を知る身にも、十分楽しませてくれるミステリだった、よくここまでのことを織り込めたな、と。やはり伊勢長島での一向一揆降伏後の、和約に反した信長の攻撃、そこからの死兵となっての反撃のシーンが、色濃く、物語のベースに流れてるのをかんじる。大きな自負と野心を抱え、我こそがと大きなものに手をかけようと足掻いた男の、苦い読後感。◆されど戦に勝たねば、いんへるのでもぱらいそでもござらぬではないか。鉄砲の玉が我が身を逸れるよう祈るのが武士というもの 高山大慮◆儂は将じゃ。雷が来ねばよいと願うだけでは足りぬ 村重◆「わたくしどもはただ、死をもってすら、この苦しみが終わらぬことを恐れたのでございます」
 | 集英社 発売日 : 2005-02-18 |
「直木賞受賞エッセイ集成」を読んで再読したくなった一冊。アメコミみたくかっこよくグラサンシャンパンで祖母の見舞いな母娘。健康にたべまくる二人。物思いにふけりつつの仕事帰りの朝の公園に鮮烈に響いたトランペットの「りんご追分」。"私自身について言えば、私はこの人たちといると、物事がどうでもよくなるところが気に入っているいる"という同級生4人での集まり。"でも、人は誰だってどういうふうにしかやっていかなくてはならないのではないか"、と夫と離れて暮らす母娘。"私の好きな男が妻と別れないのは、そこに帰るのが彼の習慣だからだろう。" "人にはみんな習慣があるんだ"。と、人生の一瞬の輝きを、苦しみを、物思いを切り取ってすくって差し出してくれる。「瞬間の集積が時間であり、時間の集積が人生であるならば、私はやっぱり瞬間を信じたい」というあとがきにうなずきつつ。
 | 河出書房新社 発売日 : 2014-06-19 |
ラーメンにまつわる新旧取り揃えた作家のエッセイ。まずかった！やられた！から、子供の時の思い出から、いま（作者的に）ハマってる一品までさまざま。一番食べてみたいのは馳星周のトルコ風ラーメン。一番ガッカリが伝わってきたのが椎名誠。店に入るのが「挿入」とかこれがアラーキー節か！と思ったのがアラーキー。小津監督を畏怖しつついけすかないとこも描かれた短編映画のような池辺良。学者エッセイ風に寄せてきたのかな、千葉雅也。ラーメン女子増加へ布教を怠らない島本理生。ラーメン大好き小池さんに奥さんいたんだ！と思った藤子不二雄。あたりが、印象に
 | リイド社 発売日 : 2022-07-29 |
個人的に、大好きで、借りて全部読んだのにkindleでぜんぶ揃え直して、また何度も読んだシリーズの続編とあらば買わないわけがない。今回は新クラスメイトも何人か登場。座席表と無用力リストもついて。なんだかんだいってみんなフランクだし、ちゃんと主張するし、助け合うし、わりとお互いを見てるよね、と理想のクラス像。勘違いで一年近く悩んでたりするのは、ちょっと大変と思ったりもするけど。3年1組シリーズまで繋がってほしい。そのときは、無用力がなくなる時、みたいなエピソードも描かれるのだろうか。
 | リイド社 発売日 : 2022-07-29 |
個人的に、大好きで、借りて全部読んだのにkindleでぜんぶ揃え直して、また何度も読んだシリーズの新装版！全部持ってるしなあ…と思ったけど、各章末に無用力リスト＋座席表＋若干改稿とあり購入。リストと座席表は再読にあたり、これはいいなあというものだった。途中まで自分で無用力リスト作ってた身としてはなおさら。改稿部分は一読解らずだったので今度見比べよう。
マスコミや政治家に関わらず、本当にそう！と思ったことをズバッと言ってくれるエンドーさん。しびれるわー、と思いつつ書籍化を寿ぐ。
 | KADOKAWA 発売日 : 2022-04-22 |
インディーズ版に比べて若干改稿、大幅増補されてる。その分ちょっと中だるみに感じるところもあったけど、熱い心意気はそのまま。前漢の袁盎という人物がエンドーさんのモデルとは意外だった。
 | 福武書店 発売日 : |
短い断章で次から次へと話題をつなげていく感のある「マルジナリア」の章は、なかなかにテンポよく、縦横無尽に考察をくりひろげてくれて、目をよろこばせてくれた感。それもふくめ、以下のトピックス、エピソードが印象に。「いたるところに中心がある」（ニーチェ「ツァラトゥストラ」）という考え方こそ、私にとっていちばん好ましい考え方◆フランスででたギヨン、ボエニック「自殺、その実行法」。完全自殺マニュアルより、20年近く前に同種のものが出版されていたとは◆対数渦巻を発見したベルヌーイが、これを「驚異の渦巻（スピラ・ミラピリス）」と呼び、自分の墓碑にもその形を彫り刻ませたのは、大先輩アルキメデスの真似をしたのでは？◆19c中葉のパリでなぜ邪視がインテリたちのあいだで取り沙汰されていたのか。作曲家オッフェンバックは邪視の持ち主と噂され、ゴーティエらがおそれていた◆性差をできるだけ少なくするのが今日の若者文化のようであるが、石川淳はあくまで陽根主義者として当代に屹立している◆
 | 竹書房 発売日 : 2022-07-27 |
人々が、ちょっとした異能をもつ世界のお話…で、最後に、異能ないかも？とアメリカで発表、というのをぶち込んできて、それでも日々はつづくといった終わり方で。星野さん、藤原さんコンビ、微笑ましくて好きでした。
 | 講談社 発売日 : 2018-08-17 |
男子高校生を残して借金を抱えた両親が蒸発、さらわれて内臓を売られそうになっていたところ、隣の部屋のお姉さんがサクッと借金を払ってくれ、今後も養ってくれることになり…という展開。おねえさんは、前から男子高校生の存在に癒やされており、なんでもする、いつまでもいていいとい言ってくれるが、彼を神聖化すること甚だしく、普通にしようとする彼とのギャップがギャグに…と。そんだけしてくれるのに、なぜか頑なに本名は教えてくれないおねえさん。その謎は一巻では明かされず。
 | 講談社 発売日 : 2011-06-23 |
両親殺しとして報道され、外の世界に居場所なく、少年院に送られたのちも、執拗ないじめ、性的虐待がつづき、ここにも居場所がないかと絶望しかけるリョウ。唯一ののぞみは、空手。無期囚の師範の教えを素直に吸収し、やがて拳ひとつで院内でのしあがり、外に出ても狂犬のように拳をふるっていくなか、空手の達人の試合をテレビでみかけ…といったところまで。なかなかな暴力シーンは目を多いたくなるところもあり。主人公の渇きはつたわってきたが。
2022年07月04日
2022年06月に読んだ本
(0601・ぬこー様ちゃん絵日記2 kindle 20220530
(0601・ぬこー様ちゃん絵日記5 kindle 20220601
(0601・昭和天皇物語10 kindle 20220601
0601・小林紀晴 写真はわからない kindle 20220524
(0601・ぬこー様ちゃん絵日記4 kindle 20220530
0602・【再挑戦】中沢新一 イコノソフィア …ドリームタイム、マンダラだけのつもりが通読。ドリームタイムは三読。マンダラ、来迎図は二読
(0602・ぬこー様ちゃん絵日記3 kindle 20220530
0603・村上龍 超電導ナイトクラブ 図書館
0604・【再読】群ようこ かもめ食堂 図書館
0604・開高健 開高健の本棚 読書室ポワロ
0604・【再読】上原隆 雨の日と月曜日は 20220521
(0605・小犬のこいぬ3
0605・【再読】よしながふみ あの人とここだけのおしゃべり 20220603 …三浦しをん、羽海野チカ、堺雅人のみ
(0605・トマトスープ ダンピアのおいしい冒険4
(0605・えすとえむ 王様の耳1
0606・北中正和 ビートルズ kindle 20220601
(0606 久保田和男 書評「山崎覚士著「中国五代国家論」」「法制史研究」2012 年 61 巻 p. 269-274
0607・【再読】中野美代子 パスパ文字のはなし 図書館
(0608・アンナ・コムネナ2 kindle 20220608
0608・矢澤豆太郎 Home.++ Booth 20220605
0609・C#の絵本 20220606 4‐6章のみ読んだ
0611・【再読】ヨッピー 明日クビになっても大丈夫 kindle
(0611・ミステリと言う勿れ11
(0611・かしましめし5
0612・佐藤聰明 耳を啓く 図書館
(0612・石塚真一 東京チェックイン 石塚真一短編集 20220611 漫画林
0612・小泉悠 現代ロシアの軍事戦略 20220529
0612・藪本晶子 絶滅危惧動作図鑑 ラボラトリーハコ 20220611
0613・村上龍 坂本龍一 友よ、また逢おう 20220529
0614・『FMステーション』とエアチェックの80年代 僕らの音楽青春記 らくだや 20220612
0615・筧菜奈子 めくるめく現代アート 図書情報館
0615・村上龍 昭和歌謡全集 20220603
0615・作家と珈琲 カルメル堂
0615・関川夏央 中年シングル生活 図書館
0616・【再読】本多孝好 dele kindle
0618・西村まさゆき 押す図鑑ボタン 20220618
(0618・アタマの中のアレを食べたい4
0618・高山宏 中沢新一 インヴェンション 20220606
0619・おれは一万石19 尚武の志 らくだや 20220612
0619・gray あざらしさん画集2022
(0619・はしゃ・ちろ 眠くなる前に話したいことがあと３つあって
0619・関川夏央 森に降る雨 図書館
0619・村上龍 長崎オランダ村 らくだや 20220612
0619・新井満 自由訳千の風になって らくだや 20220612
(0620・吉田秋生 河よりも長くゆるやかに 20220611 ありさん文庫
0622・ポール・ニザン アデン・アラビア 池澤夏樹世界文学全集 図書館
0622・関川夏央 水の中の八月 20220614
(0623・泰三子 ハコヅメ21
0623・【再読】中ザワヒデキ 近代美術館史テキスト
0623・川内有緒 目の見えない白鳥さんとアートを見に行く 図書情報館
0624・叶 美香 おっぱいにつまっているもの 気くばり目くばり思いやり 20220622
(0624・鴨長明（漫画：信吉）漫画方丈記 日本最古の災害文学 読書室ポワロ
0625・村上龍 音楽の海岸 らくだや 20220612
0625・中沢新一 三万年の死の教え―チベット『死者の書』の世界 角川ソフィア文庫 20220612
0626・【再読】関川夏央 水のように笑う 図書館
(0626・おやすみカラスまた来てね。7
(0626・ゴールデンカムイ 30
(0626・ハイスコアガールダッシュ3
0626・【再読】瀬尾まいこ 図書館の神様 20220614
0627・【再読】佐々木ののか 愛と家族をさがして kindle
0628・中上健次 村上龍 ジャズと爆弾 20220612
0628・ブレイディみかこ ワイルドサイドをほっつき歩け 20220617
(0629・pdf)矢島洋一「ハヤーティー史」におけるジュナイド
0630・【再読】村上龍 ポップアートのある部屋
(0630・魚豊 チ。地球の運動について8 kindle
(0601・ぬこー様ちゃん絵日記5 kindle 20220601
(0601・昭和天皇物語10 kindle 20220601
0601・小林紀晴 写真はわからない kindle 20220524
(0601・ぬこー様ちゃん絵日記4 kindle 20220530
0602・【再挑戦】中沢新一 イコノソフィア …ドリームタイム、マンダラだけのつもりが通読。ドリームタイムは三読。マンダラ、来迎図は二読
(0602・ぬこー様ちゃん絵日記3 kindle 20220530
0603・村上龍 超電導ナイトクラブ 図書館
0604・【再読】群ようこ かもめ食堂 図書館
0604・開高健 開高健の本棚 読書室ポワロ
0604・【再読】上原隆 雨の日と月曜日は 20220521
(0605・小犬のこいぬ3
0605・【再読】よしながふみ あの人とここだけのおしゃべり 20220603 …三浦しをん、羽海野チカ、堺雅人のみ
(0605・トマトスープ ダンピアのおいしい冒険4
(0605・えすとえむ 王様の耳1
0606・北中正和 ビートルズ kindle 20220601
(0606 久保田和男 書評「山崎覚士著「中国五代国家論」」「法制史研究」2012 年 61 巻 p. 269-274
0607・【再読】中野美代子 パスパ文字のはなし 図書館
(0608・アンナ・コムネナ2 kindle 20220608
0608・矢澤豆太郎 Home.++ Booth 20220605
0609・C#の絵本 20220606 4‐6章のみ読んだ
0611・【再読】ヨッピー 明日クビになっても大丈夫 kindle
(0611・ミステリと言う勿れ11
(0611・かしましめし5
0612・佐藤聰明 耳を啓く 図書館
(0612・石塚真一 東京チェックイン 石塚真一短編集 20220611 漫画林
0612・小泉悠 現代ロシアの軍事戦略 20220529
0612・藪本晶子 絶滅危惧動作図鑑 ラボラトリーハコ 20220611
0613・村上龍 坂本龍一 友よ、また逢おう 20220529
0614・『FMステーション』とエアチェックの80年代 僕らの音楽青春記 らくだや 20220612
0615・筧菜奈子 めくるめく現代アート 図書情報館
0615・村上龍 昭和歌謡全集 20220603
0615・作家と珈琲 カルメル堂
0615・関川夏央 中年シングル生活 図書館
0616・【再読】本多孝好 dele kindle
0618・西村まさゆき 押す図鑑ボタン 20220618
(0618・アタマの中のアレを食べたい4
0618・高山宏 中沢新一 インヴェンション 20220606
0619・おれは一万石19 尚武の志 らくだや 20220612
0619・gray あざらしさん画集2022
(0619・はしゃ・ちろ 眠くなる前に話したいことがあと３つあって
0619・関川夏央 森に降る雨 図書館
0619・村上龍 長崎オランダ村 らくだや 20220612
0619・新井満 自由訳千の風になって らくだや 20220612
(0620・吉田秋生 河よりも長くゆるやかに 20220611 ありさん文庫
0622・ポール・ニザン アデン・アラビア 池澤夏樹世界文学全集 図書館
0622・関川夏央 水の中の八月 20220614
(0623・泰三子 ハコヅメ21
0623・【再読】中ザワヒデキ 近代美術館史テキスト
0623・川内有緒 目の見えない白鳥さんとアートを見に行く 図書情報館
0624・叶 美香 おっぱいにつまっているもの 気くばり目くばり思いやり 20220622
(0624・鴨長明（漫画：信吉）漫画方丈記 日本最古の災害文学 読書室ポワロ
0625・村上龍 音楽の海岸 らくだや 20220612
0625・中沢新一 三万年の死の教え―チベット『死者の書』の世界 角川ソフィア文庫 20220612
0626・【再読】関川夏央 水のように笑う 図書館
(0626・おやすみカラスまた来てね。7
(0626・ゴールデンカムイ 30
(0626・ハイスコアガールダッシュ3
0626・【再読】瀬尾まいこ 図書館の神様 20220614
0627・【再読】佐々木ののか 愛と家族をさがして kindle
0628・中上健次 村上龍 ジャズと爆弾 20220612
0628・ブレイディみかこ ワイルドサイドをほっつき歩け 20220617
(0629・pdf)矢島洋一「ハヤーティー史」におけるジュナイド
0630・【再読】村上龍 ポップアートのある部屋
(0630・魚豊 チ。地球の運動について8 kindle
 | 光文社 発売日 : 2022-04-12 |
最初の方で、素人の写真集の読み手の、どう読んでいいかわからない、ではなく、「わかってきたからこそわからないこと増える」という意味での”写真はわからない”だと知り、本を置こうかとも思ったが、それでもやはり話を聞いてみたい心地になり。◆「作品を発表するとは私は世界をこう観ています。私にはこんなふうに観えています。あるいはこう観たいです。こう観えませんか？ と宣言し、問うことである」 つまり新たな価値観の提示、といったところが、この本の肝で、個人的に一番響いたところだった。自分で撮るわけではない身にも。◆世界はすべて撮りつくされているという言葉への疑義。”撮る側の考え方、感じ方、経験、年齢といった要素で世界の見え方は違ってくる”、”何より時間軸が加わることで、世界は常に更新しているともいえる”と。何を撮るかも大事だが、何を撮らないかも大事。といったあたりの話も響いた。◆フォトグラファーになるために必要な条件と聞かれたら、私は迷わず「写真より興味があるものを持っている者」と答えることにしている、にはなるほどなあ、と。◆村上龍「切り取られた一瞬」と題されたエッセイ。 「昔、カメラマンのことをうらやましいと思っていた時期があった」という文章から始まる…これは全文読んでみたく思った。どの本に載ってるのかな◆
Zwift という自転車ゲームへのハマり具合が凄かった。ハマるには、どうすればやり続けられるかではなく、やめられなくすること。そのためには一緒にやる仲間、と
超こってりラーメンから、見た目卵型キュートできっついお酒、焼き肉きんぐ、置き配をすぐ察知できるセンサー、遠隔でコーヒーいれてくれるガジェット、訪問販売員との対決などなど。
的確な調査能力と対面での詰問で、若いクリエイターをやりがい搾取しようとする輩を追い払い。末期的な嘘の人脈自慢と盛りすぎな経歴を吹きまくるのを、暴き…と。潰しても仕方ない、懲りずにまた湧き出てくるからてとこに闇を感じる。
 | 小学館 発売日 : 2022-05-30 |
五一五事件、度重なる首相暗殺に、転向していく政治家たち。軍に、国民の声に阿らないと命はないと。そして国際連盟脱退。熱河作戦の裁可とりけしを願う斉藤首相の、恐慌下の日本が経済制裁を受ければ日本国民は飢えますと聞いた時の呆然とした顔が忘れられない。
 | 河出書房新社 発売日 : 1989-10-01 |
マンダラ、ドリームタイム、山岳密教、マジック…さまざまなキーワードをかかげつつも、意識の深淵へ降り立っていくために、あるいは高みへとのぼっていくために用いられ、それらは静的なものではなく、魅惑的なめくるめく運動をはらみ、二元論のきっぱりとした境界はとり払われ、溶け合い、一元論的に収斂していく、といったことが語られているのかなと思った。「雪片曲線論」と底流を通ずるかのように。
子どものころのトラウマと克服、父母の話から、漫画家になるまでの話を途中まで。
 | 新潮社 発売日 : |
十年以上ぶりの再読。これでもかというくらい自分のかっこわるいところまでさらけだして描いたいくつものエッセイ。自分オタクと自他ともに揶揄したりされたりしても。”自分を赤裸々に表現したいという欲求”、”他人を取材しても、そのひとのもっとも個人的なつらい部分にふれたいという思い”を抱えて。そこが、取材して書いた「私ノンフィクション」とは一味違って。そこが再読したくなった理由のひとつ目。◆もうひとつは関川夏央の「私コラム」にふれたところ。(関川夏央最大の魅力は「私コラム」)「水のように笑う」（新潮文庫）「森に降る雨」（文春文庫）「家はあれども帰るを得ず」（文春文庫）「中年シングル生活」（講談社文庫）あたりは、前に読んだ時にも惹かれて、何冊か手に取った。また読みたくなった。以下目にとまったところ。◆「かけがえのない私」の欲望を根の根のところまで探るならば、それは、他人とつながりたい、そのために私を捨てたいということになるのだ。「かけがえのない私」を大切にすることは、「私がなんぼのもんじゃい」につながる◆「あなた、こんなことしてるときが一番楽しそうね」という母のひとことが人生をずっと支えていて。ものづくりに夢中になって我を忘れているときのことを「黄金の時」と名づけ。
 | 河出書房新社 発売日 : 2021-09-17 |
ざっとだけ。サルトルの「嘔吐」が無人島に一冊持っていくなら、にセレクトするくらいベストだとか、フランス文学によく親しんでいたこと。篠沢秀夫のフランス文学講義がおもしろいこと、など。
 | 幻冬舎 発売日 : 2008-08-04 |
映画「かもめ食堂」再視聴を機に再読。サチエがフィンランドに来るまでの来歴が語られ。あとは細かな異同ありつつも、だいぶ映画と原作は近いテイスト。映画のほうがすこしマジカルに描かれてるかな。
 | 講談社 発売日 : 1994-04-07 |
坂東齢人（馳星周）「バンドーに訊け」で、村上龍「超電導ナイトクラブ」はハイテク用語ＳＭ文学思想嘘ごった煮にして中身はない、けど面白いといった趣旨の紹介を見かけて手に取る。3分の1ぐらいまでは面白く読んだが、カルロスが純愛プロジェクトにのめりこむあたりから、文章が疾走し、コビトのノノヤマが登場したあたりからは、完全に暴走して、読み込まずに流すかんじに。◆ハイテク技術者がつどう銀座のバーで、さまざまな変わった来客をある時は迎え入れ、ある時は追い返し。深刻な告白をさせて、その内容に興味を持ち解決を助けられるとわかれば、法を犯してでものりこんでいく、そもそもモラルなんか薬にもしたくない面々ではあるのだが。その繰り返しならこじんまりとまとまったかもだけど、話が地球規模にまでひろがると与太の与太性がより強調されてしまって、にぎったハンドルをはなしたくなうような心持ちに。以下備忘録。◆文学というのは落差がものすごい大きい断崖を行ったりきたりして刻印されたサムシングによって書かれるものなのです◆道徳と常識と教育は人類が生んだ三悪ですとニーチェが言ったようにそれは嘘なんです。◆まるでマラルメのソネットのように完璧な一日でした◆「超電導ナイトクラブ」では常連の仲間入りをするにあたって新しい客はどういうわけか必ず深刻な告白をするのだ。◆「二十一世紀へ向けてすべての哲学・宗教が純愛へ向けて収斂していくのは間違いありません」◆ミシマでも花道でも一流のスシ屋でも共通していることは、内に厳しく、外に甘いということなんだ
 | 白泉社 発売日 : 2013-04-26 |
文庫版は読んでなかったな、と手に取り（堺雅人との対談が追加されてた）。三浦しをん、羽海野チカ、堺雅人分のみ読了。三浦しをんの「啓蒙！」、堺雅人の妻菅野美穂の「植物！」、羽海野チカと初対面で16時間ぶっつづけトークの相思相愛っぷりが特に印象に。気になったトピックは◆吉野朔美作品の永遠の少女性。◆「恋愛に限らず、一瞬非常に幸せなことがあって、それ以外には何もないんですよ」（三浦）◆「読者を教育しなければないけないんですよ（略）読者が自分で自分の好きなジャンルの幅を狭めるような読み方しかできなくなったら、そのジャンルは終わっちゃいますからね」（三浦）◆性欲は食欲におきかえるとわかる（よしなが） マンガ欲におきかえるとわかる（三浦）◆いちばん好きな人間関係は、テーマは「孤独と連帯」（三浦）◆ハチクロは、登場人物みんな恋愛に関しては中学生並みだけど、仕事になるとみんないい作品をつくってくる。だからこそ、ラストはあれしかなかった…と◆「幸せって思う瞬間を繋いでいきしていくしかないんだよ」ていうのを、「西洋骨董洋菓子店」は本当に真っ向から描いてくれたの（羽海野）◆裁判っていうのは、人間が、落とし所を見つけるための作業なのであって、真実は、本当の所、誰にもわからない（よしなが）◆数あるマンガの中から別の畑のクリエーターの人が、自分の作品を選んでくれたという事の、この嬉しさ（略）多分誰一人として「もっと宣伝になるから」とく理由じゃないのよ（よしなが）
 | イースト・プレス 発売日 : 2022-05-19 |
冒頭の、そこまでやってもおさまらないぼーっとさがいいなと思ったり。謎の青い生物との共同生活から、手に汗握るサスペンス…最後のコマはその生物が記憶を食べて…てことなのかな。あと、フリマで花瓶を買う話が好き。
 | イースト・プレス 発売日 : 2022-05-12 |
リングローズの死。メキシコ、ミンダナオ、船員の反乱、カンボジアへと航路を取り。未知の南方大陸へ航路を取るのはいつになるやら。
 | 小学館 発売日 : 2022-05-30 |
来店して特定のカクテルを頼めば奥の部屋へ通され、秘密を買い取ってくれるバー「王様の耳」。買取額は内容次第。単発でストーリーが進んでる時も面白かったけど、虚言癖の女性アナウンサーの連作になってからぐっと引き込まれ。彼女の本当の秘密はなんなのか、と。
 | 新潮社 発売日 : 2021-09-17 |
メンバーの誰がどうして、何して、何を言って、この曲がどんな風にできて、バンドとしてどうなって、というのをもう少し読みたかったが、それは参考文献に挙げられていたハンター・デイヴィスの本や「ビートルズ アンソロジー」にあたってください、ということなのだろう。この本は、ビートルズのメンバーは生まれも育ちもリヴァプールだが祖先・音楽にアイルランドのルーツを持つことなどをはじめとした、メンバーが影響を受けた音楽--スキッフル音楽、黒人音楽、ラテン音楽など--や、ヒットした時代の状況といった主に背景の部分に多くのページが割かれ。トゥモローネバーノウズの詞にチベット死者の書、シタールなどワールドミュージック取り入れの先駆け、ジョージ・マーティンがいたからこそ、メンバーは遊び心や実験を極められた、コンサートやめたことによる音楽の可能性の開花、といった部分には興味を惹かれた。後半は、アップルとスティーヴ・ジョブズのアップルの係争なども語られ。彼らはお互いに属してる、というジョージの妻パティの言葉。レットイットビーの未編集フィルムなど再編集したGet Backは観てみたく思った。
荊南が列国の一つに数えられてるのは、宋王朝の正統性を示し十という整数にするための北宋仁宗朝の史観によるもので国としての実態はなかった、「五代十国」史観の相対化を提言。五代中原国家は、敵対する南唐をのぞく南方諸国に冊封を行い「天下秩序構造」を保っていた＝五代には五代なりの天下国家観。南漢、呉越、閔など南方の国々の商業的隆盛が、逆に列国の存在意義を無くさせた-商業的には、統一政権のほうが都合良いから。といった視点が興味深く。
塙新書版を再読。それほど元朝の皇帝たちが漢文化に憧れたが、それほど漢人が枢要な位置を占めたか、漢人特に下級官吏のモンゴル文化への蔑視がパスパ文字の普及を妨げたか、論点はあれど、パスパやアニゴの来歴、パスパ文字の成立やその後の使われ方、遺されたパスパ文字の史料の紹介など幅広く知ることができた。蓮實重康論文は再度あたりたい。また半世紀後の研究の進展についても。
前作「Home.」読んだ勢としては、個人的な大ヒットは「星の灯台」。「天使の約束」の千春とてんしのその後が読めるとは！！…と思っていいのだろうか、二人の得意だったゲームも音ゲーからシューティングに変わってて、離れた町でそれぞれの仕事についてたはずの二人が…もしかしてアナザーワールドの話？とも思ったりしたけど、続編、ととらえることにした。ゲーム好きなのはふたりの娘にも受け継がれ、千春の弟がちいさな町の灯台守のようにゲームのできるカフェを守り、みなが集まれるようにする様が好もしく描かれててよかった。架空のゲームに、ダウンロードできる楽曲もついてくるという試みもすごく良く。その昔、音ゲーやってた勢としては、そうそうこういう曲かかって、むずかしくて苦労した！という思いが呼び起され、みょん吉くんが最後に苦戦したのはこの辺だろうか？と思いながら聞くのもまた楽しく。ゲスト市村圭氏の「木いちごの心臓」も、法律改正で異邦の日本へやってきた少女ミヤコと家政婦アリカの物語。eスポーツがひとすじの光となって少女の生活に彩りと楽しみを与え、それが異邦で生きるための希望になるまでが描かれた壮大な一編でした。
 | 星海社 発売日 : 2022-06-08 |
帝位継承者として一歩ふみだした弟のヨハネス。弟以外の兄弟には深い慈しみを示しつつ、弟には消えて欲しいと思い、それが伝わってしまっているアンナ。そんな姉弟に仲良くなってほしいと素直でまっすぐな気持ちをぶつけるアクスーク。妻アンナへの愛しさがますます増していってるブリュエンニオス。アンナは、ときに父の政策へ思いを馳せ、ときにブリュエンニオスの愛情と才能の深さにあらためて感じ入り、無意識にギーに知らない扉を開かせ、学識ある宦官に手をさしのべようとして裏切られ。皇帝には私こそふさわしいという誇りを胸に、父や夫へはまっすぐな愛情を向け、学問にはげみ、公式の場で存在を示そうとし、認められればうれしく…と。最後は、今後ヨハネスを遠征に随行させ、その補佐にブリュエンニオスが任命されるところまで。
 | 翔泳社 発売日 : 2008-02-04 |
考え方だけわかればいいやと第一版を手に取り、第4章 クラス、第5章 クラスの継承、第6章 クラスの応用、のみ読了。イラストでわかりやすいところもあれば（理解がすすみました）、そこをイラストにされても…というところも。そういう仕組みなのはわかったが、じゃあ使いどころは？これとこれがあるけど、使い分けしないといけない理由は？という点も。翔泳社で正誤表がでてるそうなのでそれもあとであたろう。
 | 幻冬舎 発売日 : 2017-09-20 |
(2022/06/11読了分)4年ぶりの再読。自分の好きなことを生産的なこと（消費して終わりじゃなくアウトプットしろ）につなげて何かやれ、というメッセージを相変わらず自分は果たせてないなと思いつつ。◆与えられた仕事のクオリティをあげるのも大事（戦術）だけど、そもそもどの仕事をするのが自分にとっていいのか（戦略）も大事。読者の奴隷なので読者を裏切ることは絶対できない。リスクとって行動しろ、へのリスクとらなくても行動できる。問題にブチあたれ！に問題から逃げた先にも道はあるぞ。あたりは印象に。◆「WEBだと永続的に自分が書いたコンテンツがWEB上に残る」は4年たつと「エンガジェット日本版」「TechCrunch Japan」「cakes」「slow news」などの例から必ずしもそうではないことが明らかになり、プーチンと（武道で）戦う、という目標は現況では果たせそうになく。文中に「オレイズム」まだ見れます、とあったけど、見に行ったら見れなくなってた（跡地はあったけど）(2018/04/07読了分)ネットでよく見かけるライターさんの、軽快なタッチで描かれてるけど、そっと背中を押してくれるような一冊。水風呂はいるのはいいなあ、とちょっと思った。めちゃくちゃやっているようでいて、ちゃんと道筋はついているんだなあ、と。以下備忘録として。/少しのふざけも許されない会社に呆れ、どんどん浮いていった会社員時代。組織が優れていれば優れているほど、個人のやりがいは搾取される仕組み。反面、インターネットの世界ではオモコロでお下劣記事を連発。お金にはならず、むしろ減る一方だったけど、やりたいことをやりたいようにやれていた、と。で、結局のところいいたいのは「あなたも本業以外に何かやれ」と。とにかく自分がやってみたいことを１００個ぐらい書き出してみて。消費する趣味を生産する趣味にする方法を考えよう、と。まだまだ儲かるイスなんて探せばガラガラに空いてるんだからと。/生きる上で大事にしていることは、会いたい人に会う、行きたいところにいく、やりたいことをやる/何かしようと思って行動して何かができた時は自分の事を少し好きになれるはずで、結局のところ「幸せの近道」なのでは、と。
 | 小学館 発売日 : 2022-06-10 |
あやしいバイトに誘われてみればタイムカプセルの埋められた場所探し。「け」と書かれた景品の玉の謎。ガロとライカの邂逅からガロとカウンセラーとの丁々発止！！の三本立て。レンくんとのからみでのコミュ強とはこういう人…という思い。期せずしてなぞ解きに巻き込まれる性、求められなくても自分で首をつっこんでいく性。ライカさんとのデートと言える道行きと、友達といってもいいのではないか認定、そしてチョコをもらったことでの静かな浮かれぶり。カウンセラーの自信たっぷりで、なのに最後の一歩まで追いつめて来ない不気味なたたずまい。あたりが印象に。「不意に思いだすようになったんなら もう心の中にピンで留まってる」
 | 祥伝社 発売日 : 2022-06-08 |
デザインの賞を取ったあとの、前職のパワハラ上司からの連絡に動揺しつつも、反対されつつも会ってしまう千春。そして克服などできてないことを自覚して、激しく動揺が増し先生に助けをもとめ、ふところに飛び込み。それを知り、二人がうまくいったら私たちはここにいていいのかしら、もしそうなら幸せを願うべきなのに、と英治にもらしてしまうナカムラ。栄太郎、先生まであわせて６人で、ほくほくほくとしながらご飯をほおばる幸せなシーン（帯にもあったけど、ここがこの巻で一番好き！）。そして動揺も混乱もすべてのみこみ、糾弾も告発もしないけれど、わたしは忘れない、と宣言し、すべて仕事に注ぎ込み、あらたな賞を勝ち取る、弱弱しく見えてたくましい一面をもつ千春の姿が描かれ。「ただ食べてただけだけど」（ナカムラ、英治）「ただ居てくれるだけってすごくありがたいんだよ」（千春）のやりとりが、冒頭のナカムラへの答えにもなっていて。
 | 小学館 発売日 : 2009-02-27 |
詐欺師的な占い師の話。世界一周してきたワタルが、実家の東京の安宿に行き交う旅行者たちを紹介し、日本に帰ったあとも、日本を愛して訪れてくれた旅行者たちに、なにくれとなく目をくばり。孤独を感じていたイギリス人をお好み焼き屋へつれだして、わけへだてない応対に心あたたまったり。行方不明の孫を心配する祖父へ「泣くのは素晴らしいよ、いつでも」と肯定してくれる宿の客。最後のthis first stepは事実上のデビュー策。一度だけのつもりでデートに応じた冴えない男と思ってたら、最後にかっこよくジャズピアノをひきこなし、見直した女性の視線。演奏するときの目線、熱量がのちのBLUE GIANTにつながったのかな、と思いつつ。
 | 筑摩書房 発売日 : 2021-05-08 |
西側からは受け入れ難いが、"それが一種の被害妄想であるとしても、主観的にはロシアは西側の「非線形戦争」に晒されているのである"。つまり、ロシアの他国への侵略はすべて西側が仕掛けてきた非定型な戦争への反撃であり自衛だ、という考えを持っている、と。◆ハイブリッド戦争とはいっても、非線形的な攻撃は補助的なもので、従来の軍事力が大きな割合を占める。◆ロシア軍が、軍事目的の破壊という目的が優先されれば周囲に民間人がいるかどうかは顧慮せず、また人々の生活インフラを意図的に攻撃しているとみられ、それはシリアへの軍事介入時にも顕著--これは今回のウクライナ戦争でも看取できる。◆物理空間からサイバー空間に至るまで、核兵器からレーザー兵器にいたるまであらゆる手段を用いて敗北を回避しながら戦う、これが「弱い」ロシアが2020年代初頭までにたどり着いた大規模戦争戦略であると言えよう…という見立てに沿えば、今回のウクライナ戦争でも、まだまだこれらの手段の登場余地はあるということか◆おわりに、では日本がとるべき対ロ政策についても見通しがのべられ、今般のウクライナ戦争によってこれに沿った政策をとらねばならなくなったように見受けられる。
 | 春秋社 発売日 : 2006-11-01 |
西洋音楽と邦楽の対比。あるものとあるものをはっきりと分ち、綿密に音を組み上げ伽藍を打ち立てる西洋音楽。耳を啓くためだけに改良され、演奏機能を退嬰させ、最も深いところで音楽を拒否している邦楽器で奏でられる邦楽。”純粋に音を聴き、一心只菅に音に徹し、無意識の領域に直入する霊威のある一つの音を得るためにのみ創られている” しかし、西洋音楽に慣らされてしまった耳で組み上げる邦楽の曲は、邦楽しか耳にしてこなかった作曲家がつくるものとはおのずと異なるだろう、という指摘。佐藤聰明の手にかかると、邦楽がどこか呪術的な、ただそれだけでゆらめきながら立ちのぼり、対立してると思えた事物の境界がいりまじり溶け合うようなものと感じられ。◆また武満徹への畏敬、愛惜、タクシーの中で呟かれた「僕は違います」という呟きをめぐる思い、映画「ベン・ハー」の曲を描いたミクロス・ローザへの称賛なども印象に。◆以下備忘録。◆私達に感動が齎されるのは、宇宙の相ともいうべき、純粋な時が、一瞬、光輝くのを聴くからである。その時、刹那は遍く一切に通じ、無始無終の開闢へと私達を旅立たせる(p.52)◆日常という混沌不定の世界に目眩まされて、魂の奥底に冥く鎮まる湖沼のありかを見ようとせず、その静謐な水面に己を映すという孤独を厭う。しかし音楽はそこから仄かなる闇につつまれて生まれてくる。それをひきだすものは情念といっていい。(p.72)◆「宇宙の意思、あるいは気ともいうべき流れが、自分という特異点を通過するとき、その影が痕跡として残る。それを人間の生命的時間のスケールで翻訳されたものが、音楽として表現されるのではないか」（西村朗）p.86◆歌は魂の深い陰影をかもして言葉を天に向かって解き放つ。歌の原義は「訴う」であるといわれる。歌は天と地を、此岸と彼岸を結ぶ呪力であった。p.100◆「いま鈴を打ちましたが、もはや音は消え去り聴こえません。残るのはなんの音もない沈黙だけです。しかしそれは耳に聴こえないだけであって、鈴の音はこの部屋を満たし、家に充ち、やがて世界に鳴り、ついには宇宙に鳴り響くものと私は信じています。沈黙をそのようにイメージしてほしいのです」(p.127「シュメール」のリハにあたっての佐藤聰明)◆読後すぐに、いくつもの曲を聴きたくなりヘッドホンを手に取った。◆武満徹 地平線のドーリア、テクスチャアズ、カトレーン。諸井誠の雅楽。ドビュッシー：牧神の午後への前奏曲、「夜想曲」より「雲」。黛敏郎「涅槃交響曲」最終章、併録の声明。佐藤聰明「夕暮れの香を聴く」「仄かなる闇」。クルアーンの朗誦。
 | 祥伝社 発売日 : 2021-10-13 |
危惧してるわけじゃないけれど、20代の著者が映画やマンガなどなどで見たのも含めて集めたさまざまな動作。テレビのチャンネルはまわしてた、電話のダイヤルもまわしてた、番号でカラオケの予約したことある…から、ギョウチュウ検査って2015年で終わってたの？ 水銀体温計って販売中止になってるの？ロケット鉛筆、なつかしい！使ってた、という思いまで。また動作のイラストがちょっと素朴でクスリとしてしまい。なんか100年後に、史料としてつかえるんじゃないだろうかと密かに思ってしまった。
 | 角川書店 発売日 : |
冒頭から坂本龍一「BEAUTY」の話をたくさんきけるとは。ただ総じて二人とも気取ってるなあ、気負ってるなあ。通勤にぱらりと読むのにはgoodだった。◆村上龍は映画「トパーズ」から次回作にかけて、坂本龍一は「BEAUTY」「HEARTBEAT」、映画「シェルタリングスカイ」のサントラの時代◆村上龍のキューバ音楽への激烈なのめりこみようと他の音楽への罵倒、自らの撮る映画の切り取る東京とSMと主演女優の存在感はつたわってきた。坂本龍一がこのころから環境問題に深い関心を寄せていたことも。◆意識の中では国籍を離脱し、龍、小説を書けよ。映画は恐ろしいよ、と結び。ケージの1970年の対談をすすめ、「アメリカは自由の国」というナイーブな幻想をいだいていては現実的な集団に勝てないと語り。(坂本) 僕がベートーヴェンから自由になってるかって？まさか！ベートーヴェンが不自由だとしたら、同じくらいポップスやケージも不自由なんだ（坂本）ハウス・ミュージックをやってる若い黒人たちがみんなすごく優しくて、ひたすら気持ちの良いグルーブだけを求めて何時間もヘッドフォーンをしてるのをみると、これは胎内回帰だと思う（坂本）僕が一番嫌いなのは、「日本文化」なんてのが、どこかに独自に存在してるっていう確信のもとに何でもやっちゃう人（略）そんなものないんだ、と気がつくことがすごく気持ちがいいのに（坂本）コッポラから聞いたという「今の映画は中世の教会建築みたいなものだ。そこからタブローが生まれたように、いずれ映画も完全な個人作業となる時代が来るだろう」（村上）は今となっては完全に実現可能に。◆「シェルタリング・スカイ」の砂漠、トゥアレグのキャラバンを優しく包んでいた音楽、きいてみたくなる。
 | 河出書房新社 発売日 : 2021-09-04 |
FM誌が4誌も生存できてた幸せな時代、80年代。そのうちのひとつ「FMステーション」が売れない頃に投入され、売れた頃には編集部員に総スカンを食らい（一体何をやれば？どんだけ増長すれば？）、その後も出たり入ったり、他の雑誌編集部から見ていた元編集長が語る、FM放送局の設立・発展・乱立、それに追随するFM誌の特色・遍歴・盛衰、音楽の聴かれ方の歴史（レコード→FMのエアチェック→CDレンタル）、ポップス音楽の流行、それらの一端を垣間見せてくれる一冊。中学高校くらいは、お金がないからFMの番組表とにらめっこしてエアチェック、限りあるカセットテープに録音していったのは今となって懐かしい思い出。これのおかげで、イージーリスニング、現代音楽、民族音楽あたりは、いまでも折に触れ聞き返したくなるものとなった（個人的には）。番組表、番組でかける曲を1か月前、おそくとも2週間前には確保しておきたい雑誌側と、直前まで、できればリアルタイムで決めておかず、その場の天気や時事にあわせて放送したいFM放送局の対立は、いずれ発生するものだったろうな、と。また、音楽業界と共存共栄のつもりが、ある時、お前らはうちら（音楽事務所）の言う通りの記事を書いておけばいいんだよ！と怒鳴られ、一気に熱が冷める様なども。アナログ・レコード針の会社が、CDの登場に、起死回生とばかりに、自動スシ握り機開発して記者発表までするところ、好き。こういう会社が生き残るんだよなあ、と。広告が入りすぎて、ページ増、月刊が月2回だなんて、今では考えられない景気のいい話だけど、広告モデルは広告モデルで、たとえばVHSとベータの戦いのときに、いろんな情報からもうVHSに軍配があがっていると思ってるのに、広告の関係上断言できず、読む人が読めばわかるようにしかかけなかった、なんて逸話も（それにしたって今見たら攻めてると思えるけど）。
 | フィルムアート社 発売日 : 2016-02-18 |
見開き２ページで、前半はアーティストと作品を、後半は現代アートのキーワードを、特徴をよくとらえたイラストと簡易な解説で紹介。入門にはもってこいの一冊でした。◆マリーナ・アブラモヴィッチが一番印象に。「死ぬ覚悟はできてる」と、自分を傷つけても作品へ。自らの腹にカミソリで赤い星を描いて横たわる、パートナーに矢を射掛ける手前で静止してもらう、裸で美術館の入り口に立ち観客が接触しなければ入れなくする、観客の精神が変容してきてマリーナに暴力をふるってしまう作品、など。◆他に、岡本太郎作品が広まったことにおける岡本敏子の功績、イヴ・クライン青の神秘、草間弥生のとどまらぬ制作意欲、島をつつむなど大規模作品を手掛けるクロード夫妻、「一番大変なのは許可を得るという仕事」。オノヨーコのリンゴ、カットピース、war is over if you want itといったコンセプチュアルアート。荒川修作の養老天命反転地。デミアン・ハーストのバンドデビュー、レストラン経営と手広い活躍。◆アイ・ウェイウェイの二千年以上前の壺を割り、そこから立ち上がるものを感じてほしいパフォーマンス◆ティノ・セーガルの作品記録を一切残さないという厳しい姿勢◆もの派：素材をほぼそのまま未加工で提示◆インスタレーション：空間全体を作品化◆写真によって写実表現が重視されなくなり、20c前半に抽象表現が開拓される◆手持ちの、中ザワヒデキ「美術史」も再読したくなりました。
 | 平凡社 発売日 : 2022-01-21 |
茨木のり子、有吉玉青、原田宗典、中村好文、片岡義男、長田弘、水木しげる、渡辺貞夫、吉井勇、永田耕衣、植草甚一、赤川次郎、沼田元気、小田島雄志、曽我部恵一、萩原朔太郎、池波正太郎、石井好子、村田紗耶香、吉田戦車、十文字美信、林芙美子、片山廣子、高山なおみ、石川直樹分を読了。着物にコートに下駄でパリでじろじろ見られた林芙美子。コーヒーセレモニーに感嘆する石川直樹。旅先でネスカフェにふれる高山なおみ。コーヒー五千円というタイトルに心ひかれた片山廣子。ハイカラな祖父にあずけられた池波正太郎の思い出。下戸ゆえに登場人物みなカフェでコーヒーに舌鼓な赤川次郎。顔見知りだからとコーヒー代を無心された小田島雄志。タヒチでのインスタントコーヒーが印象深いと片岡義男。映画をみて欲しくなったら、友人が簡単な設計図だけでカフェオレボウルをつくってくれた中村好文。コーヒーを飲みつつ、のんびりながめるのにもってこいの一冊でした。
 | 幻冬舎 発売日 : 2001-06-01 |
おたく6人と、ミドリ会というおばさん6人の集まりの、復讐の応酬、殺し合いが描かれ、最後は調布の街ぜんぶを…というお話。細部の饒舌がキモなんだろうなと思いつつ、繰り返しに思えて、後半は読み飛ばしてしまった。テニスボーイの憂鬱も、走れ！タカハシも、ポップアートのある部屋も、超電導ナイトクラブもそうだけど、鬱屈しててその反動で狂躁的で饒舌な登場人物の群像が一時期の村上龍作品のテイストなんだけど、ハマれば読めるけど、飽いてくると疲れてくる。ゲバラもマリゲーラも言ってた、大切なことは何十回も繰り返しても無駄にはならない、って。
 | 講談社 発売日 : |
上原隆「雨の日と月曜日は」つながり。関川夏央に一章を割いて、その私コラムのよさをつたえてくれたので。「中年シングル生活」中の「家事は感染する」に登場する、最近文書も書くベテランの教育関係映像監督がおそらく上原隆なのだろうけど、実際の人数も会話も変更されて脚色されてるとのことなので、巻末の阿川佐和子との丁々発止のいきおいある対談でも述べられてるように、すべて本当のノンフィクションでもなければ、まったくのフィクションでもない、"物語のない小説"、虚実のあわいに浮かぶかがやきと暮色を描きたかったんだろうと思った◆ひとりものは、針を棒のように、またはその逆のようにいいたて、一点の弱みを見せつつ、ひとをうらやましがらせることが巧みだ。実はそれは、長くつづけたたったひとりのサーカスの暮らしのうちにおのずと磨かれてしまった技術、または詐術なのである。(p.45) ◆二十歳で美しくなく、三十歳で強くなく、四十歳で金持でなく、五十歳で賢明でない人間は、一生美しくも強くも金持にも賢明にもなり得ない（夏目房之介が関川夏央の耳元にささやいたイギリスのことわざ） ◆本を読むには感情がいる。しかし本を片付けたいなら、愛情も未練も禁物だ。とりわけ非情の心を他にもとめがたいシングルに必要なのは、見切りとあきらめである。(p.135) ◆斎藤緑雨、樋口一葉、石川啄木、あたりの日記、読みたくなる◆「あのね、荒野を無理矢理にでもたのしげに歩くのが中年シングルのつとめであるわけよ。こう見えても心の中を風が吹いて、胸の振子はゆらゆら揺れるんだぜ」 ◆阿川 大人とは何ですか。 関川 人生が有限であると知ること。おカネを貯めても無駄だと思い知ること。p.284◆
 | KADOKAWA 発売日 : 2018-05-25 |
(2022/06/16読了分)謝罪が自己満足でもいいのでは？生き残るものはこれからも生きていかなければいけないのだから◆死に行く人も未来を見ている◆ 「人間扱いしてくれるっていうのはさ、自分の今を自分の未来のために使えって言ってもらうことだって、そいつは言ってた。自分の未来のために、自分の今を大事にしようって思えることだって」◆自分ならきっと逆の商売を始めた。依頼人から生前預かったものを全力で残す、守り通す◆ 「お前が死んでも、俺はお前を覚えている。お前と今日、こんな風に話したことも、覚えておく。お前の妹の話もな」(2018/08/04読了分)ふとつけていたテレビでやってた「dele」に釘付けになり、原作を探し購入。山田孝之と菅田将暉のコンビのクールと軽さの対比をイメージしつつ、読み進め。依頼人から、死後、契約で定めた一定の時間、パソコンやスマホが操作されなかったら、遠隔で、削除してほしいデータを削除するサービスを展開する「dele.LIFE」。依頼者の背景が語られつつ、進むストーリー。どんなデータを、なぜ削除したかったのか、と。資産家の死後迫る女の影。要領が悪く生き方も下手くそな男がなぜ殺されなければならなかったのか。よろけて車にはねられた男はストーカーだったのか正義の騎士だったのか。死に行く妻が削除を依頼したデータを知りたがった会社社長の結末は。死んだ塾経営者が残した秘密は。/「データが何だったかはわからない。けれど、自分の死後、このデータは削除される。そう信じていたからこそ、依頼人は最期までデータを残していられた。俺は依頼人のその信頼に応えなきゃならない」/一時期、出る作品ごとに買っていた時期もあった本多孝好作品。ある時期から、ご都合主義に嫌気がさして離れていたけど、この作品はなかなか読ませてくれた。
 | 明治大学出版会 発売日 : 2014-03-01 |
読書は快楽！には激しく同意。高山宏に話をふられてだけど、中沢新一の中野美代子観が聞けたのは収穫。「定信お見通し」などのタイモン・スクリーチの仕事も目をとおしてみたい。定信は緊縮財政だなんて言ってるけどとんでもねえ、コレクション気質で自分の楽しみには惜しげもなく散財、関所に使われてる木材コレクターなんてマニアックなところ攻めてる、と。あと山口昌男はなぜふたりが疎遠になるような魔法をかけたのか？その魔法はなんだったのか？
 | 小学館 発売日 : 2022-06-15 |
雑作家Junya @Junya_to_you さんの「押してもいいですよ」展に大興奮した身としては見逃せなかった一冊「押す図鑑ボタン」。ボタンはなぜ押したくなるのでしょうか、の導入からやられる。バスのボタンは13pほどですが、変遷、作り方、収集家まで出てきて充実！その他にも気になるボタン目白押し。ボタンから派生して、自販機や券売機、消火設備、エレベーターのしくみなんかも解説されてて。うどんやトーストなど簡易調理器みたいな自販機集めたお店、壮観だろうなあ、行ってみたい。ジュンク堂の児童書コーナーにあったけど、大人でも、いや、大人こそ楽しめる一冊。紙とKindleで迷ってる人には紙版をオススメ。カバーのボタンの写真にひと工夫凝らされてるので！
 | 秋田書店 発売日 : 2022-06-20 |
この巻は、ホビロン（バロット）、納豆、ドリアン、ヘビ鍋、うじ虫、ウミガメというラインナップ。いつもいつも虫とか爬虫類とかもうイヤだー、とキレた旦那さんに、アサギさんが、食の感受性が低いのでは？と言ったら、納豆で反撃された話し好き。虫も爬虫類もオールOKでも納豆はダメなんだあ、てのと、それでも手作り納豆にして衝撃を和らげてくれるやさしさが。ホビロンは一度試してみたいんだけど…一部ものすごく苦いのか。うじ虫で発酵させるチーズ…は聞いたことあったけど、プチっと行くのかあああ。ドリアンは飴をもらったことあるけど、それほどショックはなく、やはり実物一択かなあ。
 | 文藝春秋 発売日 : |
上原隆の「雨の日と月曜日は」つながりで。関川夏央の「私コラム」のうちの一編。同じ連載の前半をまとめたのが「水のように笑う」とのことで、こちらも手に取りたい。印象に残ったのは以下の箇所。◆スリランカの山の中での奇縁。◆昔ながらの真面目に働くことが報われない社会はろくでもないという思い。◆わけなどあるものか、と思った。ひとはこんなふうにときどきひと知れず泣く、奇妙なカタルシスを感じてじきに忘れるp45-46 （昔の思い人との何度かの逢瀬の後に）◆われわれはついきのうからきた、そしてわずかにあしたまでしか行かないのだ◆「おれがおれであるために」「ここよりほかの場所へ脱出する」日活アクション1957-71の本質的テーマ◆「鉄火場で感傷なんて百円にもならないわよ」「そういうやつは絶対早死にするんだわ」◆「人生に脈絡なんて必要ないのよ。大切なのは決断だけよ。ねっ」◆あなたちゃんとしなきゃ駄目なんだから。少なくとも相手が結婚したからようやく口説くなんてコソクなやり口はほんとに駄目なんだから。
 | 双葉社 発売日 : 2021-12-16 |
人足寄場と長谷川平蔵、その子息辰蔵。おそらく別シリーズの主題にもなってるんだろうな（あと、山本周五郎「さぶ」でも扱われてる）と思いつつ読み進め。台風災害で人足寄場再建にあと百両必要→定信は取りやめさせる心算→なんとか百両拵えて定信をギャフンと→白羽の矢を立てられた正紀→直参旗本剣術大会開いて寄進を募ることに→滝川の後押しで将軍の耳にも届き反対勢力を抑え→妨害を跳ね除けて開催→辰蔵は優勝できなかったが寄場再建は成り、と。勧善懲悪、非常にわかりやすく、すらっと読めて。幕府首脳の命令はするが手は貸さない。体面、威光は大事。実情など知ったことでなく、命ずれば下々はそれに服するはずという政権運営への疑問。初めは無理難題を押し付けられたと感じたが、滝川は押し付けて終わりにしなかった、という正紀へ向けた信頼が深まったのが救いと言えば救いか。
 | 朝日新聞出版 発売日 : 2009-09-04 |
風が吹きわたったかのような読後感。作者不明の詩にどうやって出会って、どんなバージョンがあって、どのバージョンを取り、メロディをつけたかが淡々と記され。新井満の小説は好きでコツコツ読んでたけど、自由訳とか出し始めた頃にはすっかり離れてしまい、亡くなった後におそらく一番人口に膾炙してる作品に触れるとは。けど、シンプルによかった。
 | 講談社 発売日 : |
作家ケンと後輩ナカムラの対話のみで成り立つ一編。テーマは、長崎オランダ村で40日間行われた、世界中からパフォーマーを集めてひらかれた「ワールドフェスティバル」とそこに集うパフォーマーたちのこと。 〇〇人だからこうだ、みたいな議論は今となってはナイーブにすぎると感じたが、以下、良い悪いはともかく目にとまったところを。◆どんな表現でも運動でも行為でも共同体でも、個人がそれに依存した瞬間、ある円環が閉じられ、堕落と退行が始まる。◆生まの人間は恐いくせにレコードとか文章になってるとむさぼるように受け入れる◆悩みというのはそいつのイメージと、現実とのギャップだ、そんなものが美しいわけがない◆オレ達は、自分と向き合わないように、いろんなものと関係を持つわけやろ？◆自分と向き合って小説を書く奴はクズだ、自分と何か、世界とかね、他社とかね、女とかね、自分と何かとの関係に向き合って、そのことを書いていくんだ
 | crim 発売日 : 2022-05-10 |
最後の、「ちっちゃい電気は消さないでね」「ハイハイ」のこざとおいちゃんのやりとりの後、おっきい電気にたくさんのキラキラと一緒に入ってるおいちゃんのイラスト、泣きそうになる。◆北海牛乳の「大胆かつ繊細な美味しさ」には吹いた 笑◆公式LINEに話しかけるとおいちゃんがかえしてくれるの、いまでもたまに救われます。◆スタンプの、Twitterの、カレンダーの、イラストの、いろいろなおいちゃんとこざを見られて大満足でした。
 | イースト・プレス 発売日 : 2022-06-17 |
 | 小学館 発売日 : 1994-11-17 |
よしながふみ「あのひととここだけのおしゃべり」で、三浦しをんさんが推してたので。バナナフィッシュより前の吉田秋生作品も！と。ちょっとおバカで勢い任せだけど男前で家庭環境に影があって、けど深雪はじめ気のいい友人に囲まれて、みどりというかわいいくて直球の彼女がいて、という学園生活。友人のポパイが能代に、おれはお前の姉と…と宣言するシーンが印象に。
 | 講談社 発売日 : |
日本名・本名問題、「祖国」への帰還運動が垣間見え、在日の女とつきあったという箔をつけたいだけでしょと旅先で鋭く指摘されたフリーライター、在日日本人の妻に見捨てられて、仕事で訪れた韓国から妻へラブレターを送る元夫、などが登場し。関川さんはほんと気が強くて生意気な女の人にどうしょうもなく惹かれるんだなあ、と再認識。
 | 河出書房新社 発売日 : 2008-11-11 |
有名な「僕は二十歳だった。それが人生でもっとも美しいときだなんて誰にも言わせない」という書き出しは知っているが、そういえば全編は読んだことないなと手に取り（「アデン・アラビア」のみ読了）。多くはヨーロッパ批判、文明批判で、旅先の描写はわずか、決意をもって帰還し、「僕は敵たちの中で生きるつもりだ」と覚悟を決め、と。以下備忘録◆ここがアデンだ。着いた。得意がるほどのことはない。◆本当の無のなかでは、どんな儀式にも口実などないからだ◆（狂気は）死者のために生者が負けてやるチェスの試合だ◆詩と女は通りすぎていく。でも革命が過ぎ去ったことは一度もない。◆以下は、澤田直の解説より◆「泣かないでくれ。僕はいま、二十歳で死ぬために、ありったけの勇気を奮い起さなければならないのだから」（ガロワ）
(2022/06/23読了分)「めくるめく現代アート」読んで再読したくなり。◆シアワセが、おめでたいというかお花畑な意味合いで使われてるなあと。シアワセな作品とか。あとフデアトね。匿名性から、その人の作品と明白にわかるような痕跡が求められるようになった流れがあったと。その後日本イラスト史に入るところが面白いところ。スージィ甘金は少し追ってみたいな。あと気になった論点は以下◆私は、美術の制度とは未視感の視覚表現を追求するためのものだったと考えますp38◆芸術に関して言えば前に前に進んだ先にあったのは「芸術をやめること」だった◆ジャスパー・ジョーンズ「星条旗」が切り拓いた、ポップアート、ミニマルアート、コンセプチュアリズム。(2018/09/x読了時) 見る、魅る！現代アートを鑑賞しよう!(at白石区民センター 2018.9.3)に触発されて。というか魅力的に講義で紹介されていたので。42ページと薄い小冊子に、全て手書き。文字のみならず、紹介する絵画も全て手描きと云う贅沢なつくり。キャンバス全体を金色に塗った絵を紹介する白黒の絵で、カラーでお見せできないのが残念です、なんてご愛嬌も。また、キャンパスを切りさく作品(フォンタナ「空間概念」)の紹介で、実際にページに切れ目が入ってて、これは...本当の手作り...と思ったのもつかの間、3、４ページ先まで切れ目が入ってて、そこはきっちり１枚だけにしようよ！とおかしみを感じたり。◆内容は、印象派から始まり、アメリカの現代アートの発展と袋小路を描き、一転、1980年代の日本のイラスト事情が語られ、幕が閉じる。薄いから一読すぐ理解、かと思いきや、なかなか言ってることは凝縮されてて、二、三度読まないと理解できないかもしれない。ただ、読み返したいと思わせる一冊ではある。◆マティスの安易ですべってる側面に感じるポップさ、馬鹿でかいキャンパスに茫洋とした色彩を残すマーク・ロスコの魅力、反芸術を突き詰めすぎて芸術をやめ晩年はチェスに興じていたというデュシャン、吉澤美香「三脚」の魅力、もの派の衝撃、制度のあるところに反体制は現れるが、その繰り返しがすぎると袋小路に、そして体制なきところには反体制も生まれず。蓄積なきところに独自の文化が花開いた、特に日本のイラスト界に。と言ったトピックスに興味。なんだか、アフリカでは固定電話の普及の前に一気に携帯電話が広がった話と通ずるものを感じた。
 | 集英社インターナショナル 発売日 : 2021-09-03 |
図書館のアート特集コーナーに置かれていて手に取る。タイトルからして、おもしろそうだなあ、と。まずは、目が見えないのにどうやってアートを見るんだろう、という疑問から。最初は、一緒に美術館に行き、一緒に行ったひとが見たままの感想や、どんな作品か説明し、それを聴くことで鑑賞しているんだと思ってた。それにより「見えている人」もいつもより白鳥さんに伝えようと深くじっくり見るようになった。新たな発見もあった。お互いにいいことではないか。といった地平から。いろいろなアートに、いろいろな人とおもむき、対話を重ね、白鳥さんの映画を撮ることになり。白鳥さんは言葉や会話から多くの情報を受け取っていると思い込んでいたが、それは一部で、会っているときの、空気とか雰囲気とか、どっち向いて話してるのかとか、声の大きさとか距離とか。そういったものも大事にしていたとわかり。最後は「この世界で笑いたいんですよ。」「絵を見る活動は、ただそこにいるひとたちといたいだけ」言葉に深くうなずく境地へ。アートに救われる、アートに触れてこんな風に世界を見ていいんだ、という感覚は、札幌国際芸術祭2017のいくつもの展示に深くハマったことがある身としてはよくわかるし、現代アートに惹かれるのはこういうところなんだなあと再認識。以下備忘録。◆よくわからないものに惹かれる いやたぶんわからないの向こう側に惹かれている(川内有緒)◆その人がそのひとのままで作品を見たり、作ったりすることが尊いとおもうんだ(マイティ)◆盲人というだけで、他の感覚が鋭いと思われても…鋭い/鋭くない、才能ある/なしは見える人と一緒◆あなたはこの世界をどう見ていますか (作品からの問いかけ)◆しかし、正しい知識がなくとも作品について自由に語る資格はあるのです、というのがマイティの「鑑賞道」である◆ 「めくるめく現代アート」読んだあとなので、特にマリーナ・アブラモヴィッチの章は興味深く読んだ。もっと作品や著書、講演映像などにも触れたいと思った。◆
 | 講談社 発売日 : 2022-06-22 |
初見のみやげもののにいちゃんに「なんて伸びやかな自尊心だ！どう育てればこんな自己肯定のバケモノが育つんだ!?」「バケモノのブリーダーこいつだな」と思われる藤部長・川合コンビ、最高すぎる。あと、取り調べ得意な人って生き辛そうっすよね、と言われる中富課長も。この巻は大きな事件と大きな事件の幕間的なかんじだけれども、藤・川合、源・山田ペアや、如月・川合カップルの関係がそれぞれふかまった感もあり。
 | 文響社 発売日 : 2021-09-10 |
５つの災害に遭った男みたいな切り取り方面白いなと思ったのと、マンガ版だとたしかにスッと入って来やすいというのはあるな、と。特に、方丈の庵のイラスト図解みたいのは理解を助けるな、と。
 | 講談社 発売日 : 2008-09-23 |
姉恭子さんの奔放な本を読んで、ラジオを聴き、妹美香さんの常識的な対応に触れ、著者も読んでみたくなり。最初は、フォーマルさがぬけない感じで肩が凝る気持ちだったけど、テレビ６台同時に見てる、あたりから面白くなってきて。いつもお姉さんのお世話大変ですねと言われるが、本人的には息を吸うようにお世話したいだけで、とのこと。だだ、百問百答からはたいへんに思っていることも垣間見え。また端々にDHCへの言及があるのもさすがというか。朝寝て昼起きるスケジュール、傍目には大変そうだしお肌に良くないのでは、と思ったりするけどたぶん余計なお世話。姉恭子さんが服やコスメや本や靴を、ここからここまでみたく棚買いした時も、あとでそっと選んで戻しに行く、なんてエピソードもあり。サルサ！アマイエクスタシー、ブルブルンのキュッのボン！（すごい曲名）も聞いてみたくなる。
 | 角川書店 発売日 : 1996-06-01 |
修行してなくても、死体に、あるいは火葬後の霊魂に、僧侶が正しき教えを語りかけてくれれば、その教えに従い原初の光と合一できれば、ワンチャン、輪廻転生の輪から離れて解脱できるかも、て面白い考えだなあと。その教えが「バルド・トドゥル」つまり「死者の書」である、と。◆p.37の大日如来の図像、印象に残る。◆「生命のからだから離れた死者の意識は、自分自身の中から出現してくる、さまざまな光を見るのです。生きているときよりもかえって研ぎ澄まされている死者の感覚は、ラマの教えの記憶をとりもどしなさい、という先生の声をはっきりと理解できるのです◆「生と死のむこうにある、心の本質を知ることができたら、その生には意味があったということになるし、それができなければ、無意味なことを積み重ねたことにすぎないだろう」◆（オーストラリア原住民）テレパシーの能力に富み、宇宙を巨大な目に見えない力（強度）の流れとしてとらえ、宇宙に遍満するその力の流れのことを「ドリームタイム（夢の時間）」と呼んで、その「ドリームタイム」の力の流れに触れながら、彼らは充実した精神生活を送ろうとしてきたのです。(p.103)◆思想史に対して「三万年」という時間のゲージを採用してみることの大事さ
 | 講談社 発売日 : 1997-04-14 |
自分に惚れてる女たちを依頼があれば派遣しあがりを分け合う女衒のような暮らしをしてたケンジ。ある時から音楽一切を受け付けなくなってしまっていたが、ニースからモナコの海岸にあるという、何の情報も知識もコードも必要とせずに聴けるという音楽には憧れがあり。そんな中ある男から受けた、自分の女をおかしくした映画監督を社会的に抹殺し破滅させてほしい、という依頼。ケンジは女たちから情報を集め、映画監督や秘書に近づき、ある変態の医者をターゲットとして巻き込んで、そのプロジェクトにのめり込んでいくが…と。緊張感のあるダイアローグ。演技と策略と自らの中の欲望の正視、侮蔑と共感、憧憬。ないまぜになった饒舌。ターゲットを壊すことは、タフであることを自負していた自分が壊れることにもつながっていた。SM論と音楽論をほうりこんでまぜあわせて繰り広げられる物語。そして希望だけがない国というコンセプトがすでにこの時語られていて、のちの「希望の国のエクソダス」につながっていたんだな、とわかった。◆本当に死ぬ人は、例えその時、誰かに止められたとしても、いつか一人になった時に死ぬもんです。それに、人間が発狂したら、もうその人は別人になったと思わなければいけない。別人なわけだから、最初からやり直さなくてはいけないんです。◆あんたは喜んで犬のマネをしている自分が本当の自分なんだってことに気付いたんだよ。◆みんなが仲良くしなければいけないという教えが、あらゆる関係性の上に（略）のしかかっているので、それに耐えられなくなった連中が、できるだけ弱い部分を狙っていじめる。◆人類はどうして、こんなにきれいなメロディを必要したか（略）基本的に敗北者だからだろうと、思ったんです(p.255)◆生きる希望、生きていく希望は妄想以外にあり得ず、それにノーマルな形を与えたものが音楽。
 | 双葉社 発売日 : |
上原隆「雨の日と月曜日は」つながり。「美しかるべき五月」「九月になっても」が読みたくって。苦い感傷を。◆恋が終わって、わたしは実のところほっとした。慣れない経験に精神がどうにかなりそうだったのだ（美しかるべき五月）◆わたしたちはなにかを選びとりながら前に進むのではない。そんなことは怖くてとてもできやしない。ひとつひとついじくりまわしては壊し、選択肢を踏みつぶして進路をせばめながら、最後に残ったものにすがりついて生きてきた。無意識のうちに退路を絶ってきた。とてもやるせないが、臆病だからそんなふうにしかできなかった。（美しかるべき五月）◆
 | 筑摩書房 発売日 : 2009-07-08 |
清く正しくがモットーでひたすらバレーボールに打ち込んでた清（きよ）。しかし高校で大きな挫折を味わい、バレーボールを離れ、ただ流されるように、大学は文学部、国語の講師として海辺の小さな町へ。そこでバレー部顧問を希望するも果たせず、部員一人の文芸部顧問に。物静かでクールに見えて、毎日文学するのはエキサイティングといいはなつ垣内くん。よく訪れるひとなつこくてマイペースで優しい弟。不倫相手のケーキづくりの先生、彼らと交わるうちに清は段々と自分を取り戻していき…と。朝練だ！と意気込んで図書の整理したシーン、好きでした。◆「文学を通せば、何年も前に生きてた人と同じものを見れるんだ。見ず知らずの女の人に恋することだってできる。自分の中のものを切り出してくることだってできる。とにかくそこにいながらにして、たいていのことができてしまう」（垣内くん）◆「文学なんてみんなが好き勝手にやればいい、だけどすごく面白いんだ」（垣内くん）
 | 小学館 発売日 : 2022-06-23 |
まさかそうくるとは。いや、そうなってみればしっくりといった感か。汐さんのアドバイスをど直球で受け止めた善十のひと言が、二人の関係性をガラリと変えて。変わらないためには変わり続かなければ、お店も人もと思いつつのフィナーレ。
 | 集英社 発売日 : 2022-06-17 |
前巻から佳境の五稜郭攻防戦。次巻いよいよ。
 | スクウェア・エニックス 発売日 : 2022-06-23 |
3on3の対決へ、小春先生の筐体を買ってまでの格ゲー指導は続き、そして。次巻は、過去の話が語られるのか。
 | 亜紀書房 発売日 : 2020-06-25 |
(2022/06/27読了分)再読。今回は、付き合うでも結婚するでもない「あの人の子どもが産みたい」。気持ちの変化や取り決め通りに動かない感情を、話しあい、決め事をアップデートして四年以上も一緒に暮らす関係。「選択的夫婦別姓」を例に、どうして人が選ぶものを尊重できないんだろう。「子どももいないのに子育ての相談に乗るなんて」等の経験主義的な批判は、当事者以外から言葉を奪う。「ポリファミリー」という関係。模様替えするように変化していく関係。「結婚マジック」というワード。といったあたりが印象に。「結局、彼と千佳さんは「一緒になる」ことはなかったけれど、そこには確かに何かがあった。あえて言うならそれは「愛」だと思う」が一番深く響いた。(2020/06/29読了分)lineグループに集う友人たちとの共同の子育て。事実婚で年更新制で性的に独占し合わないカップル。精子バンクを利用して子供を産んだ女性。18歳まで児童福祉施設で育った女性。恋愛関係にない女性同士のルームシェアで同性パートナーシップ制度を使って「家族」になることを模索。心から愛した男性は植物と猫しか愛せない人だった。などなど、さまざまなケースのインタビューと、それを終えるごとに著者が自分なりにとらえ返し、自分のケースを語っていく作品。普通って…家族って…いろいろな形があっていい、そもそも誰が普通と決め、誰に許可を取らなければいけないのか、自分の人生なのに。そういった違和感を大事にし、自分なりに抱えて、突き詰めていった先にできたさまざまな形。フィクションだと、三浦しをん作品がさまざまな家族の形を提示してくれて興味深いがそれとはまた違った読後感。/以下目に留まったところ/「血縁でも戸籍でもつながっていないけれど、家族。じゃあ家族って何だろう？」/性的拘束はしないと決めていても抱いてしまう嫉妬のような感情に、人間の不思議さと尊さを想った。/ワカヌさんの話した「家族は彫刻のようにコツコツとつくっていくもの」という表現が全身に染み渡った。/そもそも、子育てが向いているかいないかなんて子どもを持ってみて初めてわかることだ。いざ育ててみて向いていないと知ることだってあるだろう。/もちろん、誰にも心を許せなかった彼が、千佳さんにだけ伝えたという「I love you」を想像しただけで、大げさではなく、身体が地割れするような感動が走る。
 | KADOKAWA 発売日 : |
50年前の対談は言いたいやりたい放題。薬で捕まった話や言いっぱなしの放言、愛人やガールフレンドの数をバラし合い、あの映画見た？この本読んだ？から、バケツ一杯プリンプリンプリンとつくって食べなかったとか、ああいうやつはダメだ！という指弾まで。勢い感じた。倫理で言えば爆弾で巻き添えにするなんて許せないよ、ところがその倫理なんてぶっ飛ばそう、無責任でいいんだよ、責任とれるはずないじゃないか、とか。後期的エッセイの、群像新人賞パーティで朝まで飲み明かして、村上龍がひとりぽつんと歩いて帰ってると、「こらー、村上！」と中上健次が声かけてしばらく二人で歩いたシーンが印象に。以下備忘録◆ウイスキーにシュガーまぜて血管に打つとよくゴミが入って高熱がでるんだとか◆究極のマゾヒズムは自分が家具になること。◆ポール・ニザンの小説だったかな。男を変え得るものは三つかしかない。革命、麻薬、女。◆大江健三郎「われらの時代」読みたくなった◆映画「タクシードライバー」観たくなった◆
新出史料により、サファヴィー朝の始祖シャー・イスマーイールの祖父、シェイフ・ジュナイドに焦点をあてる。サファヴィー教団が軍事力を手に入れた時期だが、実像が不明だったとのこと。◆ウズン・ハサンとデスピナの娘マルタと、ジュナイドの息子ハイダルとの間に生まれたのがシャー・イスマーイール。サファヴィー朝の史料がジュナイドのトレビゾント侵入に言及が少ないのは、王朝始祖の父方の祖父が、母方の祖母の郷里を攻めたことによるのかもしれない◆ジュナイドは教団内でおじジャアファルと対立し、最後まで主導権にぎれず。ただ息子のハイダルとは和解。ジャアファルの後ろ盾のカラコユンルのジャハーンシャーの死と、カラコユンルの没落が背景にあったのだろう、と。ジュナイドの死後、その集団を継承したハイダルが、ジャアファルと和解したことで、サファヴィー教団は、ジュナイドらによって培われた軍事力を取り込むことになった。◆ジュナイドは後ろ盾であったウズン・ハサンの力を大いに利用したが、一方ウズン・ハサンにとっても、直接的には軍事行動の兵力として、間接的には外交交渉を有利に運ぶ圧力として格好の手ごま。政治的変動期にあった15世紀なかばの北西イラン・アナトリア・コーカサスに出没したジュナイドの行動は、政治や外交に直接影響を与えていた、と。◆それはオスマン朝側の史料にも記されているように、オスマン朝へも類をおよぼすものだったのかな◆
 | 講談社 発売日 : 1989-03-10 |
(2022/06/30読了分)「めくるめく現代アート」読んだ後で水をゴクゴク飲むように再読。ポップアートにまつわる12の小説。おもに、急に小説が売れて戸惑う小説家がであうちょっと不思議な話。小説家がであうちょっと不思議な話でも龍的ワールドとハルキ的ワールドじゃずいぶん趣き違うなあと。アメリカはつよくなきゃ？あるいは、二度と戻ってこない甘い日々。取り返す気もないけど、取り返せない悔恨。(2014/07/27読了分)若い頃に十回ぐらい読んで、もういいかなとだいぶ前に手放したのに、ひさびさに読みたくなって手に取る。この本でポップアートが大好きになったことを思い出しつつ。攻撃的な浪費をする男、いまは画廊を経営していて、昔、金目当てに婚約したと思われ、ひどい目にあわされた男、突拍子もない映画の企画を思いつく男。信念を持って東洋人の女ばかりのカタログを見せて紹介しようとする男（西洋の女は、タバコとオレンジとくちびると乳首だけだ、とある絵を指して語る男）。奇妙な花嫁像だけ残して妻に去られた男が、その像の前では落ち着くシーンが心に残る。
 | 小学館 発売日 : 2022-06-30 |
完結。異端とされた集団の最後の大博打、異端糾弾の先頭に立つ教会に飛び込み、将来の利益を餌に説得を試み。それがうまくいったかに思えた時に飛び込んできた異端審問官-これまでの生涯を覆されるような変節を見せつけられて、彼がとった行動は…。◆「迷いの中に倫理はある」「神はなくなっても人から魂はなくならない」「知が人や社会の役に立たなければいけないなんて発想はクソだ」◆それぞれの信じた道に準じた先にあったものは…か細くもそれが受け継がれ、やがて真理になったことが簡潔に伝えられたフィナーレだった。
2022年06月01日
2022年05月に読んだ本
0501・軍艦島は生きている!―「廃墟」が語る人々の喜怒哀楽 (長崎游学マップ 4) 長崎文献社 20220429
0503・榎本泰子 敦煌と日本人 20220412
0503・【再読】鈴木董 オスマン帝国 講談社現代新書 らくだや 20220409
(0504・はるな檸檬 zucca x zuca 1-4 20220504
(0504・天上恋歌 5 kindle
(0505・ひらやすみ 3 kindle
(0505・週末北欧部Chika マイフィンランドルーティン100 20220504
(0505・デジタル原始人川原泉
(0505・ゴールデンカムイ 29
(0505・片喰と黄金7
(0505・違国日記9
(0505・夏目友人帳28
0506・佐藤航陽 世界2.0 kindle 20220427
(0506・ウクライナ ―国民形成なき国民国家 伊東孝之 20140609発表
[https://src-h.slav.hokudai.ac.jp/center/essay/20140609-j.html#_ednref7](https://src-h.slav.hokudai.ac.jp/center/essay/20140609-j.html#_ednref7)
0507・ヤマザキマリ ムスコ物語 20220502
0507・堀江貴文 これからを稼ごう 20220402
0508・ブレイディみかこ ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー2 20220502
0508・最果タヒ 好きの因数分解 20220504
0509・坂元裕二原作 花束みたいな恋をした 20220504
0510・【再読】目黒考二 本の雑誌風雲録 20220504
0510・望月昭秀 縄文人に相談だ 20220504
0511・【再読】借金玉 発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術
(0511・清水玲子 秘密 1 20220504
0512・坪和寛久 今日 ヤバイ屋台に 行ってきた インドでメシ食って人生大逆転した男の物語 図書館
0513・原田ひ香 古本食堂 読書室ポワロ
0514・馳星周 バンドーに訊け 図書館
0514・野沢尚也 何度でも出合える ぽやん舎
(0514・田中康夫 葉山海岸通り …葉山海岸通り、羽田空港、のみ
0514・【再読】井上靖 楼蘭 図書館 …楼蘭、洪水、宦者中行説、補陀落渡海記、のみ
(0514・カルベハナコ 蟹缶タンバリン シーソーブックス 20220514
0515・鈴木忠平 嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか (文春e-book)Kindle 20220514
0515・【再読】宮下遼 多様性の都市イスタンブル
(0516・鳥辺茜 kitatrip07
0518・【再読】井上靖 敦煌 図書館
0518・pdf)周霞 井上靖「敦煌」と藤枝晃「沙州帰義軍節度使始末」 : 「節度使」の描写をめぐって 岡山大学大学院文化科学研究科紀要 47巻 2019-03-22
0518・佐々木ののか 自分を愛するということ(あるいは幸福について) 20220514
(0519・田中整治 楚と南漢の関係(田村博士頌寿東洋史論叢 1968年所収) 国立国会図書館デジタルコレクション
0519・シリコンバレー式最強の育て方 kindle 20220509
(0519・アンサングヒーロー3
0520・井上靖 平山郁夫 アレキサンダーの道
0521・【再読】野島伸司 世紀末の詩 20220511
0522・村上龍 「私は甘えているんでしょうか？」（27歳・OL） 20220522
0522・村上龍 希望の国のエクソダス 図書館
booklogなし0524【再読】うちのクラスの女子がヤバい1-3
0522・佐藤航陽 お金2.0 20220509
0525・村上龍 気ままにいい夜―Ryu’s Bar 図書館
0525・札幌芸術の森美術館(編) 本郷新展 生誕100年 図書館
0526・本郷新 彫刻の美 図書館 …ざっと
(0526・清水玲子 秘密 2 20220521
0527・村上龍 夢見るころを過ぎれば 村上龍vs女子高生51人 図書館
0527・村上龍 存在の耐え難きサルサ 村上龍対談集 図書館
0528・【再読】村上龍 走れタカハシ！ 20220522
0529・村上龍 空港にて 20220528
(0529・蔵西 ペルシャの幻術師2
(0529・モブ子の恋13
(0529・桐谷さん、ちょっそれ食うんすか？！13
0530・写真集 CRP TOKYO VOL.6 代官山 中目黒界隈 31March 2018 20190330
(0530・ぬこー様ちゃん ぬこー様ちゃんとウコンの部屋 ぬこー様ちゃん絵日記集 kindle
0531・さかなクンの一魚一会 図書館
0531・今村夏子 ピクニック（「こちらあみ子」所収） 喫茶カルメル堂
0503・榎本泰子 敦煌と日本人 20220412
0503・【再読】鈴木董 オスマン帝国 講談社現代新書 らくだや 20220409
(0504・はるな檸檬 zucca x zuca 1-4 20220504
(0504・天上恋歌 5 kindle
(0505・ひらやすみ 3 kindle
(0505・週末北欧部Chika マイフィンランドルーティン100 20220504
(0505・デジタル原始人川原泉
(0505・ゴールデンカムイ 29
(0505・片喰と黄金7
(0505・違国日記9
(0505・夏目友人帳28
0506・佐藤航陽 世界2.0 kindle 20220427
(0506・ウクライナ ―国民形成なき国民国家 伊東孝之 20140609発表
[https://src-h.slav.hokudai.ac.jp/center/essay/20140609-j.html#_ednref7](https://src-h.slav.hokudai.ac.jp/center/essay/20140609-j.html#_ednref7)
0507・ヤマザキマリ ムスコ物語 20220502
0507・堀江貴文 これからを稼ごう 20220402
0508・ブレイディみかこ ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー2 20220502
0508・最果タヒ 好きの因数分解 20220504
0509・坂元裕二原作 花束みたいな恋をした 20220504
0510・【再読】目黒考二 本の雑誌風雲録 20220504
0510・望月昭秀 縄文人に相談だ 20220504
0511・【再読】借金玉 発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術
(0511・清水玲子 秘密 1 20220504
0512・坪和寛久 今日 ヤバイ屋台に 行ってきた インドでメシ食って人生大逆転した男の物語 図書館
0513・原田ひ香 古本食堂 読書室ポワロ
0514・馳星周 バンドーに訊け 図書館
0514・野沢尚也 何度でも出合える ぽやん舎
(0514・田中康夫 葉山海岸通り …葉山海岸通り、羽田空港、のみ
0514・【再読】井上靖 楼蘭 図書館 …楼蘭、洪水、宦者中行説、補陀落渡海記、のみ
(0514・カルベハナコ 蟹缶タンバリン シーソーブックス 20220514
0515・鈴木忠平 嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか (文春e-book)Kindle 20220514
0515・【再読】宮下遼 多様性の都市イスタンブル
(0516・鳥辺茜 kitatrip07
0518・【再読】井上靖 敦煌 図書館
0518・pdf)周霞 井上靖「敦煌」と藤枝晃「沙州帰義軍節度使始末」 : 「節度使」の描写をめぐって 岡山大学大学院文化科学研究科紀要 47巻 2019-03-22
0518・佐々木ののか 自分を愛するということ(あるいは幸福について) 20220514
(0519・田中整治 楚と南漢の関係(田村博士頌寿東洋史論叢 1968年所収) 国立国会図書館デジタルコレクション
0519・シリコンバレー式最強の育て方 kindle 20220509
(0519・アンサングヒーロー3
0520・井上靖 平山郁夫 アレキサンダーの道
0521・【再読】野島伸司 世紀末の詩 20220511
0522・村上龍 「私は甘えているんでしょうか？」（27歳・OL） 20220522
0522・村上龍 希望の国のエクソダス 図書館
booklogなし0524【再読】うちのクラスの女子がヤバい1-3
0522・佐藤航陽 お金2.0 20220509
0525・村上龍 気ままにいい夜―Ryu’s Bar 図書館
0525・札幌芸術の森美術館(編) 本郷新展 生誕100年 図書館
0526・本郷新 彫刻の美 図書館 …ざっと
(0526・清水玲子 秘密 2 20220521
0527・村上龍 夢見るころを過ぎれば 村上龍vs女子高生51人 図書館
0527・村上龍 存在の耐え難きサルサ 村上龍対談集 図書館
0528・【再読】村上龍 走れタカハシ！ 20220522
0529・村上龍 空港にて 20220528
(0529・蔵西 ペルシャの幻術師2
(0529・モブ子の恋13
(0529・桐谷さん、ちょっそれ食うんすか？！13
0530・写真集 CRP TOKYO VOL.6 代官山 中目黒界隈 31March 2018 20190330
(0530・ぬこー様ちゃん ぬこー様ちゃんとウコンの部屋 ぬこー様ちゃん絵日記集 kindle
0531・さかなクンの一魚一会 図書館
0531・今村夏子 ピクニック（「こちらあみ子」所収） 喫茶カルメル堂
ブックレットサイズで読みやすく、当時の写真、暮らしていた人のコメント、日本のコンクリート建築としての先進性、島内の娯楽、買い物など日々の生活、子供たちの活動などを知ることができてよかった。狭小な土地で人口密度が高いことには思いが至っていたが、外海にある孤島のため、台風の影響が甚大というのまでは思いがいたらず。吹き抜けに雨風が入ってくるのは辛そう。またトイレのたいへんさの証言、船の式典に参加してそのまま島外に出奔などのリアルな証言なども。
 | 中央公論新社 発売日 : 2021-03-06 |
敦煌ブーム、シルクロードブームともいえる1980年代の熱狂。改革開放から天安門事件までのほぼ10年間、中国へ向けた憧憬を含んだ思いをベースとした幸福な日中関係。井上靖、平山郁夫、映画「敦煌」と徳間康快、NHK特集『シルクロード −絲綢之路−』といった立役者たちのことが詳細に語られ。それらは突如咲いた徒花ではなく、戦前の大谷光瑞に端を発し、さまざまな歴史学者たちの分厚い研究をベースとしたものだった。自分を顧みれば、マンガ版中国の歴史を買い与えられ、項羽と劉邦、三国志、モンゴル帝国などに親しみを覚え、大学は東洋史学を選び、第二外国語に中国語をとり、そのクラスのメンバーと一ヶ月語学留学に行ったり…おおいに影響を受けていたんだな、とあらためて思う。敦煌ブーム、シルクロードブームはどこからきて、どこへ行ったのか。なぜあの時代の日本で起こったのか、ということから解き明かされる日本人の一側面。「20世紀初頭以来、日本人がシルクロードを通して世界の主要な文化に自らを接続させようとしたのは、日本文化の優秀さを裏付けるものが欲しかったからであろう」(p.294)。以下備忘録。◆1930年代当時の西域ブームが日本軍の大陸進出と連動し、敵地研究の意味合いを持っていたこと◆小説「敦煌」をめぐる小説家井上靖、研究者藤枝晃のやりとり 「やりましたな」「いけませんか」「いいですよ、小説家だから」◆「中国敦煌芸術展」が日本におよぼした影響◆福田豊四郎「日本古美術のほとんどの様式が敦煌芸術の中に含まれている」◆日中両国の文化交流の成果が、1960年代以降の広義のシルクロードブームにつながり、敦煌は中国の奥深くにありながら日本人の格別な関心を集め、歴史のロマンを体現する場所として燦然と輝くようになった◆戦後、シルクロードの概念が一般市民の間に広まったのは1964年東京オリンピックがきっかけ。◆「敦煌」の原作小説は、古代を舞台にしているため、歴史認識問題などの政治的懸案に触れることがない◆天安門事件の衝撃◆あい支えあう、敦煌学の学問的発展と日本人の貢献、大衆の敦煌・シルクロードへの興味関心。一般社会における風俗現象にみえて、20世紀日本の歴史学・考古学・美術史学などの発展に支えられた底の厚いもの◆
 | 講談社 発売日 : 1992-04-16 |
いつ以来の再読だろう。小笠原弘幸「ハレム」を読んだ後に、一番基礎となる概説書を読みたくなり。◆これ読んで、スルタン＝カリフ制度はセリム1世にはじまる、宗教ごとに統治するためのミッレト制などは、成り立たないって学んだんだよなあ、となつかしく思い。「イスラムの寛容」も、「柔らかい専制」も手放しで称賛できるものではなく、時代や条件付きで、そういう側面もあったと言える、という段階のもの。けど、これその後一時期一人歩きしちゃった感もあったなあ、と。「イスラムの寛容」については、当時アラビア語を教えてくれていた先生が「あんな、為にするための言説」と吐き捨てるように言ってたのが印象に残る。xxページの地図のチュニジアとエジプトの属領はどこを指すのか気になった。これを読んで、ジェラーリー反乱、ネヴシェヒルリ・イブラヒム・パシャ、チューリップ時代、パトロナ・ハリルの乱、エディルネ事件についてもっと知りたくなった。以下備忘録◆宰相制度の導入。当初は政治面だけが、のちには軍事面の権能も。カプクル制度。常備軍の整備。ワクフとその収益を生む営利施設。バヤズィット２世末期のシャー・クルの反乱。セリム１世のシーア派弾圧-空前絶後の宗教弾圧-それだけサファヴィー朝の宣伝工作が脅威。スレイマン１世は、軍事も内政も、組織の統合のシンボルとして立ち会うかたちに。イスラム理念にもとづくスルタンとしての顔。1654年、最初に大宰相に官邸が与えられる（デルヴィッシュ・メフメト・パシャ）。理論上、スルタンが一律に一円的に課税しうる権利を持つ。アスケリ、レアヤーという法的身分を基軸に、宗教・民族・職能の要素が加わり、オスマン社会は多くのあい異なる社会層からなる。
 | 幻冬舎コミックス 発売日 : 2019-09-27 |
まずはコンテスタントの紹介から。5人のうち、サラリーマンをやりつつ、コンクールに臨む、音楽に全てを捧げたものにだけ価値があるのかと問いかけたい明石。亡き名ピアニストが劇薬として送り出した教え子風間塵。二人の対比が気になり。そしてコンクールはこれから。
 | 秋田書店 発売日 : 2022-04-14 |
皇太子を陥れようとする皇子の追求を交わし、アイラからの思わぬ形での原料供給を受けて、閲兵式で新兵器の効果を皇帝に認めさせた、皇太子と凛之をはじめとした工匠の者たち。一方アイラは、父たる金の皇帝が倒れたとの知らせで急遽帰国。帰国時には回復した父に温かく迎えられひさびさの一族揃い踏みの時間を過ごすが父阿骨打が本調子じゃないのは見てとれ。そしていよいよ金宋同盟軍と遼の間で戦端が開かれそうと言ったところまで。
 | 講談社 発売日 : 2012-10-23 |
1-4巻まで読了。宝塚にハマることの喜びと（圧倒的な生きる糧）と大変さ（お金と時間の蕩尽）が余すところなく描かれ。何かをこんなにも激しく好きになることが生きるよすがになることを、垣間見られて。自分の芸名を考えたり、舞台に出たらどうする、相手役は、と考えることは尽きず。傍目には、こんなに頻繁にご贔屓退団の報に接しては日常に手が回らないのではと心配に…。一巻後書きの、東村アキコ先生のこのマンガへの貢献っぷり。そして、ソーラーパワーをか・ん・じ・て！のパワーワードぶりと言ったら。
 | 小学館 発売日 : 2022-04-28 |
◆応募したマンガが評価され、次は読み切りのネームを、と言われたがなかなか通らないなつみ。なつみの躍進、同級生の子育てをみて、なにか思うところありげなヒロト。不動産屋のよもぎさんは、客で来た作家の石川さんが気になり、石川さんはよもぎさんのことがもっと気になり、本を貸し、エッセイで返してほしいと書いたのもすごいなあと思いつつ、このあとこの本のこと話しませんかというアプローチ。どうなるどうなる？と。◆アプローチの是非はともかく、本好きとしては自分が読んで気に入った本のこと、誰かと分かち合いたいというのは常に心のどこかを占めており…と。◆なつみが、同級生の山田を「恋」という意味で好きでないのはヒロトと似すぎてるからと気づき、だからこそ、友達のあかりの山田への恋心を応援できて、横で見てて眩しく感じられ。
 | ワニブックス 発売日 : 2021-09-24 |
◆フィンランドが好きすぎて何度も通う著者が教えてくれる、フィンランド愛あふれるルーティンの数々。◆サウナでソーセージ焼いてサウナストーンにビールかけてビールロウリュ、「パンの香りがする」、月明かりの中湖で泳ぐ、濡れた髪のままサウナ焼きソーセージとビール。◆真冬のサウナで凍った湖に飛び込む◆あのサルミアッキを溶かしたウォッカ。オンステージなカラオケ。地元の人しか行かない地下道の最果ての薄暗いカフェ。マリメッコのお皿でだしてくれる日本人からすると個性的な、フィンランド人に愛されるお寿司屋さん。フィンランド料理の全てが詰まったレストラン（トナカイ食べたい！）◆フィンランドに行くと必ず買う黄色い缶のえんどう豆スープ◆かもめ食堂がかもめ食堂に！ロケ地のカフェが閉店した後に日本人オーナーが買取り、そな名も「かもめ食堂」、日本食も出すお店に…とは！
 | 白泉社 発売日 : 2022-05-02 |
手首の負傷をきっかけにデジタル化移行を決意した川原泉さん。けどその道はイバラの道で、同業の福田素子さんが手を差し伸べるがまったく一筋縄ではいかず…。作画ツール「クリスタ」が取り上げられてるけど、これパソコン、スマホの初歩の初歩から、あるいはあらゆるソフトの使い方教える時に通ずるものがあるなあ、と。わからないことがわからないレベルの人を教える時、そして激しい劣等感に苛まれてるときに、どうしたらいいのだろう…と。最後は、クリスタの使い方マスターして連載再開、というのを観たかったなあ。そして、クリスタ開発会社訪問も、ツッコミ待ちにすべてマジレスして、しかもそれをかなえちゃおうとするクリスタ社の生真面目さにキュンとした。
 | 集英社 発売日 : 2022-04-19 |
第七師団も、杉元アシリパ土方たちもみな暗号を解き函館へ。本格的な攻防はこれから、と。
 | 講談社 発売日 : 2022-04-20 |
ラルフのコレラ、イザヤの希死念慮もひとまずは解決をみて一行はさらに西へ。そこでインディアン討伐に出てる少佐ら軍人の一行と出会し。口は悪いが、家族、民衆、国のことを思う熱い人だということがわかり…と。どこに視点を置くかで評価は変わるだろうけど。マニフェスト・ディステニーという当時のスローガンも取り上げられ。幌馬車が馬が引くとは限らず、長距離なら牛の方が多かったこと、極論猫がひいても幌馬車というのは知らなかったなあ。
 | 祥伝社 発売日 : 2022-04-25 |
一番印象に残ったのは「なんかさあたしたち仲良くなったよね」「夏休みどこにも行かない程度にね」と率直に言い合える朝と槙生の距離感。◆「誰のために何をしたって人の心も行動も決して動かせるものでないと思っておくといい ほとんどの行動は実を結ばない まして感謝も見返りもない そうわかってなおすることがと想いんだと思うよ」槙生の苛烈さ。◆朝の、なんで小説書いてるの？という問いへの、槙生含めて作家三人の鼎談。あたりがよかったなあ。
 | 白泉社 発売日 : 2022-05-02 |
名取の取り逃がした妖が名取に見せた幻影と、それを払うために夏目が手を貸そうとする話がメイン。
 | 幻冬舎 発売日 : 2022-03-31 |
これからの世界の技術革新、投資の向かう先は、宇宙空間、仮想空間。宇宙空間は、膨大な投資が必要ですでに周回遅れの日本は厳しい。豊富なコンテンツとそれを支える人材育成を持つ日本は、メタバース＝仮想空間ならまだチャンスあり。インターネット、スマホの勃興時に、その可能性を見抜けず、気づいたら何周も遅れてた轍を踏まぬためにも。AI、3DCGを始めるためのハードルはより安価に、お手軽になってきている。これからは生態系を作ることで道が開ける。勝負できないと思うグラウンドでも別の生態系を作りそこで君臨すれば。世界対世界ではなく、多くの世界が並行するのが普通の時代が来る、と。AIが生態系を生成する世界ではそれを支えるエンジニア、プログラマーも不要となる可能性も。◆メタバースとは「インターネット上に作られた３Dの仮想空間」。ざっくりいえば「相互交流できる3次元バーチャル空間」◆テクノロジーの本質的な特徴�／祐屬魍板イ垢襪發里任△襪海硲欧い困貎祐屬魘軌蕕兄呂瓩襪海鉢�手のひらから始まり、宇宙へと広がっていくこと◆村上龍「希望の国のエクソダス」、細田守監督「竜とそばかすの姫」は手に取ってみたく思った。
ロシアのクリミア侵攻直後（2014年）に書かれたもの。ウクライナは寄せ集め国家だ、というのはこのころからのプーチンの持論。ウクライナ人自身がウクライナのために戦ってない、というNYタイムズのライター。たまたま独立時にそこに居住していたというだけで市民となった人々は、どのような理由に基づいて国家と自己同一視できるか、という問題提起。多くの軍人も、独立後20年たった現在も、ウクライナを別個の主権国家とは見ていない。クリミアがあっけなく陥落した背景には、兵役希望者が任地を選択できたことにもある。自らを国家と自己同一視できないものが、その地元を任地に選択した時、外敵の侵攻に抗しえなかった、と。国民形成へ寄与するようなメジャーに放映されるドラマもなかった（ただ、これはのちに、ゼレンスキー大統領が主演した、自らが大統領となるドラマが放映され、その人気からゼレンスキー大統領が誕生することとなる）。これらを指摘したうえで、著者は、プーチンやメトロックのように、ウクライナはもともと別々の国なのだから、一つの国になれないと示唆したいわけではない。むしろ逆に、どのような過去を背負っていても努力次第で、制度の作り方次第で、一つの国民となることができると考えている。独立後二十数年でかなりの成果をあげている。それは随所にみられる、とのべている。これが書かれた直後から、今回（2022年）のロシア侵攻のあいだに、国民形成が進んできたからこそ、おおかたの予想をくつがえして、長期の抗戦がつづいているのだろう、と。
 | 徳間書店 発売日 : 2018-06-30 |
仮想通貨を支える理論と仕組み。それにまつわる代表的な事件。根底にながれる、国なんてものは案外信用ならないという思い。マウントゴックスとコインチェックの事件は、仮想通貨の動きが現実社会の通貨の流れと似通ってきたことを示し。◆いままでの事業で、株式100分割をしたのも、根底ではつながっていて、株を通貨のようなものに、日本国家という概念の相対化を考えてた。選択できることが重要。もっとカジュアルにどんな人でも自分が住む世界を自分で選択できるように、と。◆Code Is Law（プログラムコードこそ法律）という考えがイーサリアムの分裂を産んだこと◆「社会にとって役に立たないこと」をどんどんやったらいい。社会にとって役立つことは、機会に置き換えられるから◆といったあたりが興味を引いた。◆トークンエコノミーについては、佐藤航陽「お金2.0」にあたってみたく思った◆
 | 幻冬舎 発売日 : 2021-08-04 |
「幼い時から世界を転々とし、全く予定調和というものを許されずにきたデルスの諦念の力は一筋縄ではいかない」という母の前書きに比して、あとがきで、息子からすると、冷静に、諦めてたようにみえても、日本からシリアに行くときは内心動揺し、泣きたくもなり、けれど言ったところでどうなるものでもない、という葛藤を経てものであることが明らかにされる。ババはババ、母は母、ムスコはムスコ、と干渉せず尊重するところは尊重するけど、時にババから母、母からムスコへは、抗いがたい嵐のような大きな影響を与えてしまうこともある。それでいて断絶するのではなく、嵐の中、吹き飛ばされそうになりながらも大木にしがみつくようについていき。やがて、あれは自分の人生にとってよかったことだと思い返せる、けれどもいつもべったりではなく、適度な距離があったほうがいい、といった家族の物語、とみた。◆「ねえ、ママ、ベッピーノも若いんだから、ちょっとくらいムカついても大目に見てあげなよ。勉強はお金にならないけど、ああ見えて頑張ってるんだから。ね？」と。あるいは、ババの見舞いに行ったんだって？という母に「ママも行ってきなさいよ。ババは頑固だからああ見えて実は寂しがり屋だし、ママにも会いたがってるんだから」と家族のことをよく見ていて、大人なデルスの言葉のひとつひとつ。◆ポルトガルでの新参者への洗礼に、新たに父になったベッピーノの「少し辛抱して、別のことを考えたりしながら、自分が関心の対象にならなくなるのを待つ以外にないよ」というアドバイス。◆沖縄の水族館に12年ぶりにおとずれてまわしたガチャガチャには、人工のおびれをつけたイルカとデルスをモチーフにしたフィギュアが入ってたシーン。◆「生き方のスタイルや思想など、様々なことが自分とは重ならなくても、同じユーモアで笑えるかどうか。映画でも文学でも、同じ感動や嗜好をひとつでも分かちあえるかどうか。結局のところ、私にとって家族というもののありがたみは、それに尽きるのかもしれない」◆「他社という鏡に自分を投影することで自らの存在の確認などしなくても、地球に受け入れられているという自覚だけ持って堂々と生きて欲しかったし、私の息子である以前に、この惑星の生き物として生まれてきたことを感じてほしかったから」デルスと名付けた、という思い。◆といったあたりが特に印象に残った。◆サカナくんの自伝は読んでみたく思った。
 | 祥伝社 発売日 : 2022-05-07 |
高橋の独立、社運をかけたプレゼンから遁走の詩織との関係再構築。シゲタのフクちゃんへの相談から探偵事務所での粘りがちもぐりこみと、捜査の過程でふりかえらざるを得ない己の年齢。そして…なんだかカオスになってきたな、という思い。
 | リトル・モア 発売日 : 2020-01-31 |
高速で耳元で詩的/私的な語りを聞かせてくれているような読み心地、と感じたエッセイ「きみの言い訳は最高の芸術」に個人的に通ずると思った疾走感で語られる最果タヒの好きなもの。吉増剛造の「燃える」を読んでみんな戸惑えばええねんと叫び。宇多田ヒカル「In My Room」の歌詞に七重の意味を読み取り。2017年に一度書けなくなってから町田康対談を経て書けるようになった2019年以降の小説は、まだ単行本化されてないのかなと思ったり。他人にバカにされないようにしたいと願うことこそが、自分をバカにした行為だとつぶやき（「Sacai」）。あなたにくだらん部分が一ミリでもあるなら、買い物にだってそれが現れるのは必然だろう。（「買い物」） 「誰も譲れないし、売れそうにない、どうしようもない買い物」こそ、私は好きなのです（「買い物」）と宣言し。音で自分の成分が震えると感じたKEN ISHII「EXTRA」（「KEN ISHII」）。日常が日常として気楽なものであるのは、結局、命に鈍感になっているからかもしれないと。（「プール」）といったあたりが印象に。
 | 新潮社 発売日 : 2021-09-16 |
「僕の身に起きることは毎日変わるし、僕の気持ちも毎日変わる」「でも、ライフってそんなものでしょ。後悔する日もあったり、後悔しない日もあったり、その繰り返しが続いていくことなんじゃないの？」という終章の息子の言葉が響いてくる。そして語られる、数々の、きっぱりと白か黒かでは分けられない問題。異教徒がヒジャブをかぶること。俺のようになるなという労働者階級の父親たちの説教の時の決まり文句とそれをきく子供たちの気持ち。英国の自営業者増は、不本意で不安定な働き方を強いられてるケースも多い事。グラフィティ格差を見出し、EU離脱の分析に都市と田舎の落書きの研究も必要ではという提言。社会を信じる、社会を信頼することができていれば、発生しないはずの多くの問題。など。
 | リトル・モア 発売日 : 2021-01-04 |
好きなものがピッタリで（本棚見て「まんまうちの本棚じゃん」のシーン好き）一気に意気投合した二人。一緒に暮らし始めるが幸せな時間は長くは…。好きなものを好きで居続ける彼女と、二人で暮らすためにやりたくもない仕事で稼がなきゃと仕事にばかり時間と関心を注ぎ込む彼の間に距離が広がり。けど最初のシーンはふたたび？あるいはもう帰ることのない過去が渦巻いてるだけ？ ”花はいつか枯れる。だけど枯れてしまっても、そこに美しい花が咲いていたことは忘れない。◆穂村弘、長嶋有、今村夏子、小川洋子、円城塔、滝口悠生「茄子の輝き」、AwesomeCityClub「Lesson」、「その人は今村夏子さんの「ピクニック」読んでも何も感じない人だよ」
 | KADOKAWA 発売日 : 2020-06-12 |
タイトルから想像したほど縄文味があったわけではなかったが、これは期待しすぎたからか。随所に土偶や土器の写真がキュートなキャプションとともに掲載されていたのは吉。特に加曾利E式文様セーターとか欲しい。また相談者も多彩で、3回登場の飲みすぎジョニ子さんから、ブルーライトを恐れる（貴重な縄文好きタレント）藤岡みなみさん、食事に行っても帰るタイミングのわからない（「大家さんと僕」の）矢部太郎さん、ユッキーナに憧れるしまおまほさん、将来が不安なラーメンズ片桐さんといったタレント陣まで。もう15年もダイエットしてるという相談に、冬眠しろとか。土偶の脇があまい（風通しがよさそう）なのはなぜなんでしょうね。貝塚は単なるゴミ捨て場ではなく、送りの場でもあった、したあとのブログは貝塚だ！という指摘とか。
 | KADOKAWA 発売日 : 2018-05-25 |
(2022/05/11読了分)4年ぶりの再読。今回目に留まったのは「自分はそう簡単には変えられない。だから自分以外のものを変えるのです」、ACE GENE(エースジーン)EVL-2.5て鞄、人間は「欲しい」という感情より「取り返したい」という感情のほうが何十倍も強い、”褒めるで大事なのはレトリックでなくタイミング、むしろ音ゲー"、雑談は中身がなくていい、といったあたりかな。部族の掟に従え、茶番だと冷笑するのをやめよ、とかも。(2018/07/07読了分)ライフハックとは「目を良くしようと努力せず、すぐメガネをつかえ」ということである https://blog.tinect.jp/?p=52175 という記事に触発されて購入。一番印象に残り、抱腹絶倒だったのは、「よくやっている机の上を5秒で片付ける儀式。１ まず机の上に腕を置きます。２ 次に、その腕を右もしくは左に大きくスライドさせます。3 大量に物が落下しますが、作業スペースだけは確保できるはずです。後から拾えばいいんです。」と。象を冷蔵庫に入れるには？冷蔵庫を開ける、象を入れる、冷蔵庫をしめる、に通ずるユーモアを感じた。確かに、クリーンなデスク、クリーンなPCのデスクトップが頭の混乱を消してくれるのは納得。他にも、カバンぶっ込みが最強、ひらくPCバッグがおすすめ。大きな白紙こそ思考を広げるのに最適。まず中心に「打開」という概念を据え、そこから思考を広げていく。完璧な休息の必要性。人間は他者に与えたものに対して対価が支払われなかった時、大変強い怒りを覚える、お金に限らず。茶番センサーを解除するために茶番を必死にやるしかない。上記アイマスクとヘッドフォンして毛布にくるまって２０分ほどで精神をクリアに。自己肯定に根拠はいらない、などなど。発達障害から来る生きづらさのエピソードはそうではない身には壮絶に思えたが、こうすれば乗り切れるというのを編み出して、なんとかやっていけてるところがいいなあ、と。解説の芥川龍之介が「最も賢い処世術は、社会的因襲を軽蔑しながら、社会的因襲と矛盾せぬ生活をすることである」と書いていた、という一節も目に止まる。
 | 白泉社 発売日 : 2001-12-01 |
佐藤優子「本のフルコース」つながりで。損傷のない死後の脳をスキャンすれば、その人が見ていたものがわかる、犯罪捜査に利用できる、という設定。人の脳にこそ鬼が住む、という慨嘆。100%クリーンと言われた大統領が見ていたものはなんだったのか？そしてアメリカ大統領の娘に接近していたテロ組織のリーダーと風貌がそっくりな薪警視正のつながりは？28人殺人犯の脳の映像を見て唯一生き残った男薪警視正。死後、自分の脳が捜査のために衆人の目に晒されるとしたら…脳を撃つしか、自分だったら撃てるか？という問いに駆られた。
 | KADOKAWA 発売日 : 2020-12-17 |
頭が痛くなるほど甘いチョコレートアイスラーメン、めっちゃ食べてみたい。乳ビームメロンシェイク見てみたい。壺焼きラーメンははちゃめちゃ。1�團汽鵐鼻⊃澗，泙爾竿咫▲筌�一匹ビリヤニ、ピザパスタパスタサンドも食べてみたい。屋台のカーンさんとは通ううちに気づけば大親友に。小さいお姉さんには、著者のみならずまわりの屋台おやじたちも手を差し伸べずに居られないあたたかさ。問題が起きた時に創意工夫でなんとかしてしまうジュガードとか、本当に親しい関係なら「ありがとう」は言わない、など生きやすい考え方にはなるほど、と。
 | 角川春樹事務所 発売日 : 2022-03-15 |
古本食堂！というから、古本のある食堂か、古本屋でご飯も食べれるお店かと思いながら手にとったけど、どちらも違って。けど、ラスト近くのまわりにおいしいお店がたくさんあって、街自体が食堂みたい、というのと、テイクアウトでお客さんと店の人で食べて語らうひと時が貴重で、タイトルに納得。話は、東京のど真ん中に、自社ビルの古書店を遺してなくなった滋郎の妹珊瑚と、生前何度か滋郎に会っていた滋郎の兄の孫美希喜が、店主とバイトとして残された古書店を運営しつつ、悩んだ末にたどりついた客に、ずばっと本をお勧めして悩みの解決を手助けしたり、歴史深いお寿司やカレーパンやボンディのカレーなどをおすすめして共に語ったりといった連作。滋郎がどんな人で何を考え、どんな思いを遺していったかも徐々に明らかにされ。最初はＦＩＲＥにしか興味がなく、日々を楽しまずに貯金だけためこんでいた出版社社員建文くんの変貌っぷりが好ましくすがすがしくて。後藤田先生が美希喜を説得するシーンの、平安時代の記録は大半が残ってない、だからここに残っているものは末永く残さねば、私たち研究者はその長い長い鎖をつなぐ、小さな輪の一つでいい、古本屋さんもそうではないですか、といった趣旨の言葉が胸に残る。個人的に大好きな、本が、古本屋が、人と人とを繋いでいくストーリーでした。◆本多勝一「極限の民族」、鹿島茂「馬車が買いたい！」、谷崎潤一郎「三人法師」は手に取ってみたくなる。ビブリオ古書堂でも出てきた小山清「落穂拾い」は再読したい。◆「そんな風に好意や愛や恋というものをそのまま、自分の気持ちのまま出せるのは人生のほんのわずかな時間なのだ、ということをこの二人は知らない」（珊瑚)◆「人をそこまで馬鹿にしたあと、教えろとか図々しくないですか」（美希喜）◆「自分の職業を誰かに継いで欲しいというのは、ちょっとした軽口でも、口にするのは勇気のいることですよ。エゴになってしまわないか、相手を縛ってしまわないか」（後藤田先生）◆
 | 角川書店 発売日 : |
「羽田空港」「葉山海岸通り」のみ。おそらく80年代後半の若者たちを活写してるんだろうな、と思いつつ。インクエンツィとかイタリアの外車にのってユーミンのコンサートに行ったシーンとかなんとも。
 | 文藝春秋 発売日 : |
まんま、「ゴールデン街コーリング」の続編がここにあった！という気持ち。書評なのに長いのが特徴の前振りにこめられた失恋、ギャンブル、パソコン通信顛末、犬を飼う事、飲んだり飲まなかったりの生活がつめこまれ。「ゴールデン街コーリング」の北上次郎解説で「バンドーに訊け」を読めば、作家・馳星周ができるまでを追うことができる、と手に取った一冊。花村萬月、梁石日、藤沢周あたりの激賞には「不夜城」に通ずる線があったのかな、とは思った。傍観者のハードボイルドが読めなくなった。くだらない男のくだらない感傷なんか、スタイルだけの小説なんか、という姿勢。青春小説への強いこだわり。冒険小説は受難の時代、未知のフロンティアなんかほぼ無い時代にみな過去を舞台に設定する、という指摘。伝奇小説は好きだけど歴史小説はきらい、など、好き嫌いの評価も多く、本人も言いがかりだけど…と前置きしての指摘もちらほらだけど、勢いはあるし、ある程度説得力もあるのよね、と。そして、30年近く前の作家たちのうち、生き残ってる人のなんと少ないことよ、という思いも。そしてブックガイドとしても秀逸。下記はよみたくなった◆乗越たかお「アポクリファ」パソコン通信のチャット小説◆村上龍「超電導ナイトクラブ」ハイテク用語ＳＭ文学思想嘘ごった煮◆「青春デンデケデケデケ」はすばらしかったが◆藤川佳介「紅のサザンクロス」オーストラリア開拓初期、アボリジニの権利を守るため反政府運動に立ち上がった8人の男◆高橋和島「朱帆」台湾奪取前までの鄭成功
| 発売日 : |
「リュックというものを背負ったことがないの」がよかったので、二作目も。おそらく表題にもなってる「カニ缶」、路上に住んでいる人に時々缶コーヒーやカイロ差し入れてたら、ある時高そうなカニ缶をくれて、おれ缶切り持ってないから、て。それをおいしく食べた、ってだけなんだけど、すごく短いのにすごく印象に残る一編でした。「すすきのイートイン」で、となりあった人と頭のなかで会話しちゃうのすごくわかる。「あなたには好きな場所がありますか」でライブハウスを頼りに引っ越したエピソードは、自分が過去に、古本屋の向かいで内見一発目で気にいって引っ越しを決めた部屋、引っ越してきた次の日に「長らくご愛顧いただきましたが…」て張り紙がしてあって愕然としたエピソードを思い出した。
 | 新潮社 発売日 : 1968-01-29 |
楼蘭、洪水、宦者中行説、補陀落渡海記、のみ読了。榎本泰子「敦煌と日本人」に導かれるように。中学生から大学生ぐらいの時に何度か読んだ記憶。「楼蘭」は漢と匈奴の境界に位置し、どちらかに属せばどちらかに攻められることを繰り返したあげく、漢の指令で250マイル南に移住することに。なのに、のちになってそれを知らぬと言わぬばかりに、援助してこなくなった漢への楼蘭の人々の怒りといったら。小国ゆえに翻弄され、砂の中にあとかたもなく消えていったひとびと。「宦者中行説」は匈奴に降嫁される公主について派遣された宦官がいつの間にか匈奴の単于に心酔し、漢を打倒し匈奴を強くするための献策をしていく一編。「補陀落渡海」は、紀州の寺の僧侶が、いく人も補陀落を目指して片道切符の航海に出る話。人々もそれをありがたがり、繰り返されてきたが、その覚悟が定まらないまま渡航を迎えた僧の苦悩とのその顛末。助けてくれ、という声を聞こえなかったかのように周囲の人が再渡海をすすめていくシーンの切なさとむごたらしさと。
| 発売日 : |
◆蛇腹状になった製本で1枚もの、2枚ものの写真があわせて収められ、縦横の視点の変化も楽しめ、おそらくこだわられた紙も昼の光のなかで傾けたりして角度を変えると、黒に顕著だけれど、ざらりとした模様が出てきて面白いなと思いました。どうやって製本しているのかな？と裏返してみるとセロテープで張り合わせてあり、これはたくさん作るのはたいへんそうだな…と思いました。(のちにお聞きしたところ、セロテープより耐久性のある「超透明テープ」とのこと)◆車のバックミラー、コンクリートにあたる日差し、雪原、家庭料理など、前作までのモチーフも健在。個人的に一番好きなのは、一番最後の雪解けで黒ずんだ雪捨て場なのか路肩なのか。空の青さとの対比が特によくって。ファーストぽやんの時の、モノクロのゴミ捨て場の写真のことをすこし思いだしました。喫茶こんのこんごはんの写真は、食べたときのことを思い出して、ほっとやさしい気持ちに。これは何だろう？と思ったのは、年輪のような天気図のようなゆがんだ同心円のような水面の写真。そしてカーテンにアンテナの組み合わせかな？と思った写真、横にしてみると朝焼けの空のような何ともいえない色合いで。◆タイトルの「何度でも出合える」にこめられたのは、ここに写されたものは、季節がめぐれば、日々を過ごしていれば、何度でも見ることができる、何度でも見たいと思っていることを示しているのだろうか。
 | 大阪大学出版会 発売日 : 2018-02-28 |
(2022/05/15読了時)鈴木董「オスマン帝国」再読を機に、再読したくなり。著者が知り、手に入れ読みといた書物をベースにしたのみで、すべてが網羅されているとはとてもいえないとあとがきでいいつつも、これだけ豊穣な近世イスタンブルの人々の生活や思考が浮かび上がってくるとは、という驚き。オスマン帝国好きにはたっぷり楽しめる一冊。◆第一章はオスマン人たちの心性、いだいたイメージを扱うことを宣し、◆第二章は街案内。◆第三章は詩人たち。アヤソフィアを軽視し国産モスクを称揚する。イスタンブルを天の園に比するほどの誉と美を持つ唯一無二の存在と認識。◆第四章は、称揚と対照的な「当世批判」。詩人としては庶民を都市を彩ると称揚し、雅人としては都市の悪徳の根源とこきおろす。酒場や珈琲店、さまざまな職業の描写。◆第五章は、エレミヤ・チェレビー、エヴリヤ・チェレビーの二人の記録した俗信の数々。でか鼻メフメトチェレビーら狂人の話が秀逸。ただ1440年没のシルトベルガーがベヤズィト2世の黒海沿岸の都市包囲を記せる訳はないので正しくはベヤズィト1世か？◆第六章は、さまざまな学識を持つもので構成されたダラモン大使一行による紀行から。イスタンブルの中に古代のキリスト教文化を見出しがち。以下備忘録。◆フリーリp275-279に詳しいというエヴリヤ・チェレビーの夢の話。◆ 1520-30年にブルサ6300戸エディルネ4000戸。◆エルドアン大統領肝入りの巨大モスク・チャムルジャ・モスク◆パムク「白い城」に登場するメフメト4世。終盤に主人公にヨーロッパの様子をたずねに来る好々爺はエヴリヤ・チェレビー◆18世紀イスタンブル市内の不埒物を地域ごとに羅列した「珍事考」◆近世の帝都では「奇跡の原因は神以外にはないという神学的認識は、とくに民衆レベルでは、奇跡に対する切望そのものによって常に脅かされて」いたわけである。(p.280)◆イフサン・オクタイ・アナル（宮下遼訳）「霧の大陸の世界地図（抄訳）」中東現代文学研究会(編)「中東現代文学選 2012」所収,2013,73-91pは読みたい◆第三章注30の三種の「エディルネ都市頌歌」（メスィーヒー、ザーティー、ネシャーティー）◆(2018/03/29読了時)贅沢で豊穣な時間旅行を味わう。読んでる間は、16,17世紀のイスタンブルに迷い込みたゆたうような感覚、読み終わり深い余韻が残る。建築物や街並み、宮廷が描かれ、高官、詩人、庶民、外国人の目から見たイスタンブルが描かれる一冊。
 | 本の雑誌社 発売日 : 2008-10-23 |
馳星周「ゴールデン街コーリング」を読むと絶対読みたくなる一冊。主に、首都圏で本の雑誌を直販するための配本部隊の話に焦点をあて。本を読む時間がなくなるから何社も辞めたという有名なエピソードを含め、自分にはやってみないとわからないという軽率なところがあり、と回想し。編集方針でぶつかって孤立した時は、専任でやってる自分に比べてお前らはなんだという思いがあったが、彼らだって仕事を持ちながら時間をあけてやってくれてたのにそこが見えてなかったと回顧したり。目黒父の、ボーナスが一回になったと嘘をついて一回分のボーナスを全部本につぎこんだエピソードには血のながれをかんじ。沢野ひとしが旅先から遅れに遅れた原稿を送ってきたのかと思いや中身がカステラだったときの目黒さんの「捨ててしまえ！」という叫びにはクスリと。無給でお願いしてたので、居つく人は居つく、居なくなる人は居なくなるにまかせていたが、だんだん自覚をもって仕切ってくれる助っ人もでてきて、時には、目黒さんにかわって鬼軍曹役をやってくれる人も。彼らは社員じゃないから、よし経営者になろうとは思わなかった、教師になろうと思った、と。時間の許す限り話を聴き、まかせてダメなら次はたのまない、から、助っ人の進言でやり方をかえていったり、こなくなった彼、彼女はどうしてるだろうと思いを馳せたり。もちろん納品、代金回収などのハード面もあり。最後は、助っ人同士の結婚式で気が付くと視界が涙でくもり、「ぼくにとって「本の雑誌」とは、彼らだったのである」というエンディングにグッときてしまう。
| 文藝春秋 発売日 : 2021-09-24 |
ホリエモンメルマガで編集Sさんが、その文章力に嫉妬するという趣旨のことを書いてて、落合ファンでも、中日ファンでも、ましてや野球好きでもないのに手に取った一冊。◆情より理、感情より技術。情報は極力統制し、決断の理由も容易には明かさない。勝つことがファンサービスとそれ以外のことは切り捨てていき。最初は恐れ、距離を置いていた選手たちも、落合監督の言うこと、やることで結果が出るとわかれば納得し、それが8年間ですべてAクラス、1度の日本一、4度のリーグ優勝という成績に。本人、および、高額契約だが活躍できなかった投手、コーチ、守備の名手、打撃の才を秘めた者、サイドスローのセットアッパーに活路を見出したもの、東大卒の切れ者の球団職員、スカウトなどなどへのインタビューを重ねた上で語られる落合監督像。そしてこれは、最初は末席につらなる伝書鳩と自嘲していた著者が、一級の記者へと成長していく物語でもあった。契約書こそがすべて。野球選手は個人事業主、自分のためにプレイしろ、稼ごうと思え、それが結果につながればそれでいい。ヘッドスライディングはするな、選手生命を失いかねない。その禁じていたヘッドスライディングを、自分で考え決断してここぞという場面で荒木が繰り出して、勝利をもぎとったシーンは号泣せずにいられなかった。最後は、理由にもならぬ理由で（ただ嫌いだからとしか思えないような態度で）球団幹部から契約を打ち切られ、そこから逆転優勝、日本一まであと1点のところまで迫るという、生半な小説よりも劇的な展開。しかし、今も、落合監督の考えを理屈では正しいと思っても、まるで自分がバカにされているように感じ、排斥しようという空気は、各所に蔓延している、と感じた。落合監督が著者に最後に贈った言葉がずしりと重く。
| 発売日 : |
今回は判型が少し大きくなって、日めくりのように縦にめくる仕様に。青森・北海道旅行、札幌日帰り旅行、福岡日帰り旅行、関門・別府旅行と、日本を北から東までずずずいっと。青森・北海道の際の深夜バス2連続は、「水曜どうでしょう」かよ！とおもいながらそのキツさに思いをはせる。100％バターのアヒージョ、気になります。きっと美味しいんだろうなあとカロリーすごいんだろうなあ、のトレードオフ。日帰り旅の軽装備っぷりと言ったら！いっそすがすがしい。（しかし、自分の弾き比べてみると、紙の本持ち歩きたくて、普段でも鳥辺さんのこの時の旅をはるかにこえる重装備だなあ…と思ってしまった） 若戸大橋や小倉駅のモノレールのイラスト、巨大建造物や乗り物が好きなんだなあとあらためて伝わり。別府温泉の宣伝を私財でやってた油屋熊八さんははじめて知りました。と、もりだくさん楽しめました。
 | 亜紀書房 発売日 : 2022-03-25 |
唐突に誰かとぶつかりたくなる夜、比喩ではなく正真正銘の相撲を申し込む、"相撲とは、社会から逃避行した先の無法地帯で、決死で束の間の駆け落ちなのだ"という文の鮮やかさ。「他人に好かれたいってことで悩んでるのって、そういう自分が好きになれないからなんだよ。自分が好きになれないから、それを他人に代行させようっていうズルが”恋愛”なんだよ」（橋本治「恋愛論 完全版」（文庫ぎんが堂））という指摘。書き込みや付箋、シミ、ヤケ、角落ちなど、本を読んだあとに残される手垢を評価して販売する「余白書店」という興味深い試み。◆リスクが100パーセントあると科学的に証明されたとしても、一体どうして、この手で触れたこともないものを信じることができようか。これは信仰の問題である。p.065/インターネットの川に文を流す時とき、私は狼煙を上げるような気持ちになる。この世界に点在する、まだ見ぬ同志たちに届けと祈りながら。p.106/良い写真には、節目をつくる力がある。p.122、といったあたりが強く印象に。◆吉田隼人「死にたいのに死ねないので本を読む 絶望するあなたのための読書案内」はひりひりしそうなタイトル、手にとってみたい。
 | 新潮社 発売日 : 1965-06-30 |
何回目かの再読。今回は、榎本泰子「敦煌と日本人」読了を機に。いくら解説で本当の主人公は敦煌の都市そのものと言われてもやはり、元科挙受験生・趙行徳、西夏軍の漢人部隊長・朱王礼、ホータンの元王族を名乗る儲けるために手段をえらばぬ交易商・尉遅光の三人から目がはなせない。おまえとおれは死に場所は同じだ、二人が二人だけになるような合戦に勝ち、お前は碑を建てろという朱王礼。甘州でかくまったウイグルの王女をともに愛した趙行徳と朱王礼。科挙の挫折、西夏への憧憬、漢人部隊での生活、西夏文字を学ぶための派遣、仏教への関心のたかまり、仏典の西夏役への意欲、朱王礼の李元昊への復仇への加担、西夏軍の侵攻から仏典を守る役割。最後は、ホータンを拠点とする商人となり尉遅光や、帰義軍の曹延明の願いをかなえるために寄進するところまで、往時の日本人を魅了した西域のロマンをあますところなく感じられ。「自分たちの読んだ経巻の数は知れたものだ。読まないものがいっぱいある。まだ開けてさえ見ない経巻は無数にある。---俺たちは読みたいのだ」という若い僧の言葉にハッとする。「行徳はこの夜のために、あるいは自分は長く漠地を流歴していたのではなかったかと思った」(p.214-5)
井上靖「敦煌」と藤枝晃「沙州帰義軍節度使始末」を"節度使"描写に絞って比較して、「沙州に関する概説」、「「漢人コロニー」という特徴」、さらには瓜州王が自ら西夏に降参したこと、及び沙州帰義軍節度使と瓜州の
太守が兄弟であることなど、歴史背景のような大きな枠組みに関しては、井上靖は忠実に考証に基づいていると考えられる。一方、瓜州が降参した年代、「延恵」という人物に関する描写など、物語の進展や人物の造型に関しては、井上靖は史実を踏まえつつも、登場人物の行
動や性格を最優先にするところもあったことがうかがえよう。…といった内容。井上靖「敦煌」を読んだ直後だと、するっと腹におちてくる内容。帰義軍節度使のことも知りたかったのでまさにストライクな論文でした。
太守が兄弟であることなど、歴史背景のような大きな枠組みに関しては、井上靖は忠実に考証に基づいていると考えられる。一方、瓜州が降参した年代、「延恵」という人物に関する描写など、物語の進展や人物の造型に関しては、井上靖は史実を踏まえつつも、登場人物の行
動や性格を最優先にするところもあったことがうかがえよう。…といった内容。井上靖「敦煌」を読んだ直後だと、するっと腹におちてくる内容。帰義軍節度使のことも知りたかったのでまさにストライクな論文でした。
| 田村博士退官記念事業会 発売日 : |
田中整治「楚と南漢の関係」のみ読了。五代十国の楚と南漢の関係を主に楚の視点からつづる、とのことでしたが、南漢好きとしては見逃せない一編。劉隠の強勢、清海節度使となり、南海交易のさかんな広州に拠ったため。楚の馬殷は、茶、絹、木綿、食料の増産につとめ、開平二年(908年)南漢の劉隠をやぶり六州を奪うことにつながる。911年劉隠→劉龑 同年。劉龑、楚から二州を奪還。912年、後梁の仲介で楚（内治に力をそそぐため）と南漢（このころ交州を平定していた）の講和。915年、南漢の劉龑と楚の馬殷の娘の婚姻。917年劉龑が皇帝即位。国号は当初「大越」、翌年に「漢」。両国の和平は12年つづき。928年、楚の水軍の侵攻でやぶれる。その後、攻防はありつつも、両国の和平で交易の振興をはかりたい後晋のすすめでまた939年両国和解。だが長くは続かず。その後、楚が後継者争いで乱れた隙に南漢の劉晟が楚に侵攻、領土を奪う、と。南漢は当初32州、劉晟の代に47州となったことから、楚の滅亡でおおいに領土を増やした、と。
 | かんき出版 発売日 : 2017-09-13 |
職場での1on1施策向けに読む。何をすれば良いのか具体例があってよい。ここにうたわれる効果を出せるかは運用者次第だけれど。都度ここに立ち返りつつ、ひとつひとつやっていく。
 | 講談社 発売日 : 2022-05-19 |
作詞作曲も佳境。売れ筋の曲を書く子の歌入れから急に帰ったり、レコーディングから突如消えたり、紆余曲折を経つつ曲は完成。MV制作、ジャケット、宣伝と裏方の仕事は目白押し。曲以外は全て任せた、と任せられたゴメンの奔走。ミュージシャン側に焦点当たることが多いなか、制作側にライトが当たるのはなかなかないのでは。答えのない中、何度もやり直しくらい、その中でもベストを出してくるプロ根性に感嘆しました。いよいよジャムのメジャーデビューというところでハプニング感じさせるシーンでこの巻はしめくくられ。
 | 文藝春秋 発売日 : |
榎本泰子「敦煌と日本人」つながり。約半世紀前。アレクサンダーの西から東への東征路を、東から西へたどるように、アフガニスタン、イラン、トルコの旅。大半は乾いた大地に車を走らせ、点在する遺跡群に足を運び思いを馳せる。ヒッタイトやバクトリアの遺跡、バーミヤンの巨大石窟、カッパドキアなどなど。ソ連侵攻前のアフガニスタン、イスラム革命前のイラン、経済発展やエルドアン登場前のトルコ。今とはだいぶ違うのだろうな、と思いつつ。アフガニスタンは、「死にたければクンドゥズへ行け」といわれるほど過酷なクンドゥズ。その中でもスピンザ・クラブのまわりだけクンドゥズの町のもっている雰囲気とまるで違う、青年たちがフットボール、一室では女子学生たちが親権な顔でゴーゴーの稽古。といったところが印象に。トルコ編では平山郁夫が以前4ヶ月滞在していたイヒララ村での村人たちとの交歓に心あたたまり。女性の服装が、西に向かうに連れ、すべて布で覆い目だけだす→布で覆うが顔は出す→布で覆わないと変遷していく様も描かれ。
 | 幻冬舎 発売日 : 2017-11-30 |
理念は素晴らしく響くのに、近い将来に、働かずに暮らせる社会がくる未来を思い描けず。古い時代のしがらみに囚われてるからか。◆条件付きだけれど、価値主義には、資本主義に風穴を開ける可能性を感じた。経済も政治も宗教も、価値主義からすると同じもの、というのは面白いなあと。"世の中の悲劇や不幸の多くは、悪人によって起こされるよりも、誤った仕組みが大規模に社会に適用されることによって起きることが多い"といったあたり、わりと、「世界2.0」と通ずるところあり。◆クラウドソーシング、人工知能、ブロックチェーンをうまく組み合わせて自律分散の仕組みを実現したNumeraiという無人ヘッジファンドの話題など大変興味深く。◆以下備忘録。◆価値という漠然としたものをやりとりするため生まれたお金◆現実は「お金」「感情」「テクノロジー」の3つのベクトルが併存し相互に影響を及ぼし、それらが未来の方向性も決めている◆世界を変える＝前時代の共同幻想を壊して、新しい共同幻想で上書きすること◆発展する経済システム＝報酬、変動、不確実性、階層序列、交流＋寿命による移動先、共同幻想◆「自然が経済に似ている」ではなく、「経済が自然に似ていたからこそ、資本主義がここまで普及した」◆「自然の構造に近いルールほど社会に普及しやすく、かけ離れた仕組みほど悲劇を生みやすい」◆トークンエコノミー：国庫がやってきた通貨発行権の縮小版を、トークンを用いて企業や個人が手軽にできるしくみ◆1割ほどの消費経済の上に、9割の資産経済が乗っかって、全体の経済が成り立つ◆価値＝１：有用性としての価値 ２：内面的な価値 ３：社会的な価値 ◆評価経済、信用経済に対する違和感＝今話題になっている大半の仕組みが「評価」「信用」ではなく、「注目」「関心」に過ぎないから◆複数の経済圏が併存＝既存のストリームの経済から外れてしまった人に対しても膨大な選択肢を与えられる、そのことで多くの人がリスクをとって積極的に活動可能に◆といったあたりが印象に。
 | 幻冬舎 発売日 : 2009-04-01 |
タイトル見て、何だろうこの本？と手にとり。村上龍の人生相談。ただ、タイトルの「私は甘えているんでしょうか？」（27歳・OL）て相談はみあたらなかったあ。◆放っておけばいい。気にしなければいい。相手をバカだと思ってればいい。と、正論なんだけどけっこう突き放した回答多い印象。もっとも、放っておけない、気になるから相談してきてるともいえるんだけど。◆生活に潤い、人生に彩り、文化とはそのためにあるのです。好きになってからと言われても、人間は好きになれないんです。あたりは、たしかにね、と。◆若い人が無理してジョルジョ・アルマーニ買うことないですよね、に同意したジョルジョ・アルマーニが、あ、でも、エンポリオアルマーニ買えばいいんだ、安いから、てくだりは完全に漫才だった。
 | 文藝春秋 発売日 : 2002-05-10 |
佐藤航陽「世界2.0」つながり◆パキスタンの北西辺境州に現れた中学生、それに刺激を受けた中学生たち。「この国には、何でもあるけど、希望だけがない。」 中学生の大量不登校に端を発し、中心をもたずネットワークで広がりを見せる中学生たちの組織が力を持ち、はっきりとは書かれないけど、おそらく日本が破産間近になるほどの通貨危機を仕掛け、そこからの救出も演出する。そして最後は、北海道の広大な土地に移住し、そこの政治をにぎって、独自の地域通貨=電子マネーをおこし、国の補助を一切受けず、独自の政策をかかげて市を運営していく、といった長編。独自通貨、電子マネーと信用創造あたりの話は、先見の明があったんだなあ、という感慨。風力発電の風切り音にメロディーをつけるために作曲家の坂本龍一に相談というあたりはご愛嬌か。以下備忘録。◆市場というのは、欲望をコミュニケートする場所で、まるで空気みたいに、あるいはウイルスみたいに、どこにでも入り込んできて、それまでそこにあった共同体を壊してしまうんです。共同体が持っていたモラルや規範を無意味なものにしてしまうんです◆「何かをお願いしてもダメなんだ。（略）奪うんだ。戦って、奪わなきゃいけない。◆力関係が圧倒的に弱く正義がこちらにある場合に暴力は認められる（チェ・ゲバラ「ゲリラ教程」）◆そっちのほうが使い勝手がいいと、ひょっとして世界中が判断したら、信用を新しく創造できるわけでしょ？◆中学生だけではなく、他人のことはわからない。もちろん自分のことさえわからないし、未来のこともわからない
 | 講談社 発売日 : |
安倍譲二、井上陽水、江夏豊、三枝成章、坂本龍一、西田敏行、林真理子＋秋元康、山下久美子＋原田知世、やまもと寛斎、横山やすし、和田アキ子のみ読了。◆パーサー4年やってたころは夢だったんだろうか。単行本のない小説家は名刺のないサラリーマンみたいなもん。◆井上陽水と飲みに行ってカラオケで陽水の歌うたってたら、陽水も歌いだして、そしたら、おまえ（村上龍）、やめろ！歌うな！とやじられたとか◆坂本龍一に、おまえ文学をバカにしてるだろう！からはじまる、仲がいいゆえに、今読むと隙だらけな対談◆おそらく映画「敦煌」ロケの時のことを話していて、個人的にはすごくすっと入ってきた西田敏行◆年賀状が電報でくるエピソード（寛斎）◆飛行機の訓練で、民家の上飛ぶな、コンビナートの上飛ぶな、大きな船の上とぶな、どことべっていうねん（横山やすし）◆初対面で、村上龍のデビュー作を、３０分以上もぜんぜんわからないと話つづけた和田アキ子◆別れた男の人には変わりはいないけど、仕事とか別のことでまぎれる。結婚だって何回もすればいい、愛がなくなればまた別れて、といったかんじで（原田知世）◆といったあたりが、印象に。自分で、人に興味がないし、内気でなかなか本音がでてこない、という人をホストに、けどその割には盛り上がっているようにみえて不思議な一冊。
| 発売日 : |
「はじめてのほんごうしん」（本郷新記念札幌彫刻美術館）に触発されて。展覧会をふりかえるには最適な図録だった。みかえして、特に「哭」が自分の心に強くとどまったんだな、とあらためて認識した。「飛び降りる女」の躍動感も。７年後輩の佐藤忠良へのインタビューで、本郷新がアドバイスしてくれてなおしてくれるのはいいけど、気が付くと、自分の作品が本郷新作みたいになっちゃって…みたいな話が印象に。最晩年に構想だけのこされた「石狩」、観てみたかったな。
 | 白泉社 発売日 : 2003-05-29 |
佐藤優子「本のフルコース」つながりで。「第９」に配属された新人女性が無断欠勤したと思ったらある日彼女の脳だけが「私の身体を探して」という紙片とともに送り付けられ…。一家惨殺で死刑執行された男の脳をスキャンしてみると…。という2編。脳をスキャンすることで加害者と被害者しか知りえない情報が得られる斬新さと、被害者が意識を失っていれば得られる情報が限定されるという限界、多くの人から自分の脳を死後にスキャンされることの可能性に対して嫌悪感・反感を持たれている現状。裁かれることなく逃げおおせた殺人者の放つ、人の秘密をのぞきみるゲス野郎という悪罵。上に制作あれば下に対策ありで、脳をスキャンされないように頭をつぶすような犯罪、頭を撃ち抜く自殺が増えるんだろうな、という予感も含め。自分がこの世界に置かれたらどうするか、と思いを馳せてしまう。
 | 中央公論美術出版 発売日 : 2005-05-01 |
「はじめてのほんごうしん」（本郷新記念札幌彫刻美術館）に触発されて、ざっと目を通す。主に、彫刻の社会、彫刻の技術、彫刻の要素、彫刻の歴史から成る。/「雨や風をしのぐ洞窟を住居としたことが、人類の物の方面での生活のはじまりであるとすれば、美しいことのために石を積んだのは、心の方面での生活のはじまりである」(p.14)/ロダンの「ダンスのムーヴマント」の躍動感/ある形が最初にあって、それを彫っていく石彫や木彫のことを彫刻といい、心棒をつくり、それに粘土をつけていってつくるものは彫塑といわれる。それで、この二つをいっしょにした彫刻という便利な言葉ができているが(p.74)/ギリシアだから…南国だから…みたいな類型化は今となっては、と思うけど。
 | リクルートダヴィンチ編集部 発売日 : |
3組6人分とあとがきのみ読了。3組分読んだだけで、これは残り全部読んでも同じだなと思い。著者のインタビュー終えた感想は、対談集「存在の耐え難きサルサ」で語られていて、何をしたいとかもなく、何に興味を持つでもなく、何が楽しくて生きてるのか？「彼女らは死人だ」ってのがなんとも。インタビューする側の価値観にあてはめようとして、あてはまらなくて、理解しあえないだけで、それはそれで彼女たちのリアルなんだろうとは思う。理解者ぶるのでもなく、批判者に堕すのでもなく、対話がかみあって、また別の世界観があるというのが見えるようなものを読みたかった、というのはないものねだりか。
 | 文藝春秋 発売日 : 1999-06-01 |
中上健次、浅田彰、蓮實重彦、坂本龍一、柄谷行人、庵野秀明のみ読了◆ジャズもロックも、いうならアフリカの音楽が西欧とぶつかり。島の中でジャマイカとぶつかった音楽がレゲエで、プエルトリコとぶつかったのがサルサ（中上健次）◆神秘主義も結局ケミカルな問題にすぎない（略）修行といったって、脳内物質を変えるということしかない（柄谷行人）◆（免疫は）無意味論であるべきなんだよ（略）無意味な分子のメカニズムが、なぜか知らないけれども、内と外のバウンダリーをつくり出して、高度な有機体をつくり出して、云々というところが面白いわけでしょう（浅田彰）◆システムから外れて情念のカオスみたいなところへ自滅的にのめり込んでいくのが本物だという間違った思い込みがあって、実際にそれでやっちゃうミュージシャンもいるわけじゃない？それは全然違うと思う（阿部薫やカート・コバーンも間違った、と浅田彰）◆一人の女の子がこういうことを言っていた。親は簡単に離婚してしまうし、友達はすぐさよならで、残るものが何もない。しかし、入れ墨だけは残るからやるんだと言うんですよ。（柄谷行人）◆表現したいというのは、すごくくだらない動機かあ出て、俺はここにいるぞとか、俺はこの色が好きだとか、俺はこの女が好きだとか、そういうものじゃない（略）ものすごく自意識過剰な行為（坂本龍一）◆映画も基本的に妥協の産物ですよ。特に監督は、いちばんこだわっているように見えて、実はいちばん妥協していると思います（庵野秀明）◆直観は、ひらめきなんかではなく、それまでに厳密に考え抜いたことから発生するんですよ（村上龍）◆といったあたりが印象に。庵野監督、シンエヴァンゲリオンの密着番組では全然妥協してなかったように思うけど、年月が経ったからだろうか。◆お互い褒め、仲間褒めから、あいつはダメだ、あの作品はダメだ、あいつはバカだ、みたいなのが始まったり、ワキの甘い、詰めの甘い放言がでてくると、ああ対談集というフォーマットゆえか、と思う個所もあったが。そういった厳密じゃないところがまた対談の魅力という人もいるのかもだけど◆
 | ワニブックス 発売日 : |
◆僕は思う。愛とは、本当に相手を愛するならば生きることなんだ。生きて生きて、愛する人を看取り、一人残される悲しみを受けることなんだ（亘）◆人間の愛はしょせん自己愛に根ざしているのかもしれない！僕も結局は自分が一番カワイイのかもしれない！だけど、僕が好きなのは、あなたを好きな自分なんだ！（亘）◆愛とは恋のように思い出にもできず、失えば誰かを好きになる回路すら奪われるものであり、瞬間にして永遠で、疑わず、あきらめず、そして喜び、怒り、哀しみ、楽しみ、救われるものだと。恋する人と出会い、長い時間をかけて魂が寄り添うことなんだ。それが愛なんだ（亘）◆愛とはとどまること（夏夫）◆唯一の真実の愛とは、互いの愛を確かめ合うための…冒険だから（亘）
 | 講談社 発売日 : 1989-05-08 |
何年ぶりかの再読。何か困りごとがあって、それを解決するために、広島のプロ野球選手高橋慶彦の盗塁が、ホームランが、あるいは彼に頼み事したり、話してもらったりすることで、いい方向にも悪い方向にも転がっていき。たとえ悪い方向でも、人生そういうものといさぎよく受け入れたり。自分のみっともなさ、なさけなさをかかえて、せいいっぱい走り回ってる人たちが、それでも一瞬、天から細い糸を垂らしてくれる存在、それがタカハシ、といった設えが多かったように思った。◆幸福は必ず秘密と嘘に支えられているものなのだ◆「タツヤは、他人に不幸の可能性があるのが我慢できないんだろ？それ、悪い癖だぞ、人は自ら不幸へ向かって旅立つこともあるんだ」◆「プライドは感情じゃないよ、おまえ小説家のくせに、だめだなあ、プライドってさ、自分をよく知ってて、だめなことはだめってはっきりさせることだろう？自分のスタイルを通すことだぜ、違うかな」
 | 文藝春秋 発売日 : 2005-05-10 |
他人と共有できない個別の希望を描いた、とあったが。表題作に「空港にて」は、ずっとひんやりとした空気から最後にすこしあたたかく。なぜ遅れたのか理由はあかされずだけど。ほかに、駅前にて、クリスマス、披露宴会場にて、あたりはかすかにたぐりよせられた希望があったかな◆誰かに話すと決意が薄まるというのは正しいと思った（クリスマス）◆最初懐かしくて、しかし、ずっと見てたら、どういうわけか気分が沈んできたんだ（駅前にて）◆どこにも出かけようとしない人間が嫌いなだけだ（駅前にて）
 | 文藝春秋 発売日 : 2022-05-20 |
囚われの姫ナン、幻術師アッサム、血塗られたモンゴルの征服者ボルトル。アッサムの館で宝石をつかってナンにかけられた幻術はナンを虜にし。術でボルトルに遅れをとるはずのなかったアッサムは、ナンを高所に逃したのちに、ボルトルに差し貫かれ…最後は洪水で何もかも滅びというのは、ある時代の西域をあつかう小説のお約束だったのか。井上靖や中野美代子の短編にも見られ。幻想にあそぶ描写は絢爛で、お高そうだけど参考文献の桝屋友子「イスラームの写本絵画」をめくってみたい想いに。
 | コアミックス 発売日 : 2022-05-20 |
卒業旅行のつづきから、勘違いからのはずみでプロポーズ、意を決してのとなりのふとんからの…と二人が意識してだけど言い出せなかったことをクリアし、いよいよ信子の卒業、引っ越し、バイト最後の日。お見送りでも入江くんとお互いの気持ちを確かめ合って。そして社会人編のスタートは不穏な予告。どうなることか。ここまではいまでは珍しく感じるくらいのまっすぐで純粋で見てて歯痒くなるくらいのスピードで、けど相手を思いやる二人を見てきたのでなおさら。
 | 双葉社 発売日 : 2022-05-26 |
あめふらしで出汁を取って紫色のスープ。カエルの産道スイーツ「雪蛤」。塩味かんじられるラクダミルク。芋煮会にキツネ鍋、タヌキ鍋。と、今回も興味ひかれまくりのラインナップ。雪蛤とか中国食材ショップみたいなとこで手に入るかなあ。
 | PHOTO CAMP 発売日 : 2018-05-15 |
15人の写真家の合作。桜の写真は圧巻。特に花びら舞う水面や、川面をはさむ両サイドの桜並木など。花見ににぎわう人々。スマホで写真を撮る人を写した写真。ストロングゼロの空き缶。他方で写される界隈の人々のふつうの暮らし。ウォーホルのモンローが印刷されたマネキン。なにげない建物や植物の写真。街の風景と人々の営みがかさねあわされて。
久々に会った親友がすすめてきたのは「20万円のウコンを買えば不労所得」。友人をネットワークビジネスから救い出そうとアジトに乗り込み完膚なきまでにボスを論破したのに、友人は「話聞いてもっとウコンがんばろうと思った」と目が覚めずというオチ。代表、いくら儲かってるんですか？からはじまって、具体的な数字が出てこないことを次々と引き出し、最後はつかれちゃったな…という代表に「へえ？ウコン飲んでるのに？」と容赦ない様は痛快でしたが。
 | 講談社 発売日 : 2016-07-21 |
好きを貫きつづけたさかなクンもすごいけど、それを支えたまわりの大人たちもすごい。特におかあさん。さかなクンの好きをひとつも否定せずに、褒めて、自分も一緒にたのしみ、好きを摘もうとする大人たちから、うちの子はこれでいいんですと防波堤になり、と。妖怪、はたらくくるま、タコ、ウマヅラハギと移り行き、そこから魚全般へと興味がひろがり。はじめての釣りは捕ったタコをこうしないとうまくならないとたたきつける友人の祖父に大ショックを受け、その後は、ようやくつかまえたタコを飼おうとして炎天下に置いて死なせてしまったり、和食屋で惚れ込んだウマヅラハギを飼おうと思って勇気をだしてください！と言ったらおつくりになってでてきたり。最初は、命をいただく意味、生き物としての生死すら審らかではなかったさかなクンがそれも含めての愛着を魚全般にいだいて行き。学校の先生、水族館、魚屋、すし屋とかれら親子の熱意を見て手をさしのべてくれる人もいて。学校で許可されて公開した、さかなのすきなところ全開なイラストつき壁新聞がのちの職業につながってたり、学校でカブトガニの人工ふ化に成功して新聞にのったり、テレビチャンピオンの全国魚通選手権に高校生のときに出て優勝したり。勉強は全ツッパで、好きをつらぬいてきたので、あこがれの東京水産大学には入れなかったけど、水族館や寿司屋やペットショップなど、魚にかかわれると思ってついた仕事も、逆に魚に思い入れがありすぎてそれいがいのことがうまくいかずつづかず。たどりついたのは、建物のかべに魚を描くしごと。最初は寿司屋の大将の好意からじょじょに口コミが広がり。おさかな専門イラストレーターとして活躍し、テレビにもでるようになり、研究施設に出入りするうちにみこまれて、東京海洋大学（あこがれの東京水産大学の合併後の大学）から客員准教授への就任を打診され。好きをつらぬいたさかなクンがどんなにさかなが好きか、それがどういう紆余曲折をたどって花開いて今にいたったかがよくわかっていい一冊だった。
 | 筑摩書房 発売日 : 2014-06-04 |
(2022/5/31読了分)「ピクニック」のみ読了。「花束みたいな恋をした」ノベライズ版で主人公の男の子が「きっとあの人たちは今村夏子さんの「ピクニック」読んでも何も感じない人なんだ、というセリフを言ってて興味を惹かれる。◆舞台は、ビキニでローラースケート履いた女の子たちが接客するお店。ルミたちと七瀬さんと新人がメインで。ルミたちの「芸人と付き合ってるという七瀬さん」への全力応援が心からの善意か、最初からの悪意だったのか、途中で変質したものなのか、一部ずつの融合なのかわからず。結果的には七瀬さんを追い詰めてしまい。ジョーカーかと思ってた新人の「だって先輩たちも笑ってるじゃないですか」しかしルミたちはひとりも笑ってなどいなかった、てあたりが内面を見抜いたものなのかな、キーなのかなと思いつつ。(2021/8/21読了分)穂村弘の書評集でタイトルをみかけて頭の片隅にあったところ、カフェですわった席の前にあったので手に取り、表題作のみぱらりと読了。あみ子の純粋無垢、まっすぐさは、ときに眩しく、ときに周りの者にとってはいたたまれず、刃を向けられたような思い、そのために疎まれ、嫌われることも多々あり。けれど、あみ子にはこたえず、変わらず自分のペースで、自分の思いを口にしていく…と。
2022年05月04日
2022年04月に読んだ本
0401・【再読】オスカー・ワイルド ウィンダミア卿の扇
0401・八切止夫 ずっこけ武勇伝南十字星 山田長政 図書館
(0402・であいもん 13
(0402・【再読】ワケありな国境 図書館
(0403・青池保子 アルカサル2 秋田文庫 20220402
(0403・紺野文「モンターグ夫人が見た18世紀のオスマン帝国社会 女性の暮らしを中心に」東京外国語大学トルコ語専攻卒業論文 2002年 pdf
(0403・アルカサル 3 秋田文庫 20220307
0404・泰三子 ハコヅメ仕事論
(0404・アルカサル 4 秋田文庫 20220307
(0404・アルカサル 5 秋田文庫 20220307
(0405・アルカサル 6 秋田文庫 202201xx
(0405・アルカサル 7 秋田文庫 20220321
0406・【再読】藤田千恵子 愛は下剋上 図書館
0406・佐藤優子 本のフルコース
0408・山本兼一 ジパング島発見記 ブックハウスQ 20220326
0408・清水章子 イスタンブールの「カフヴェ」を考察する 作家サイト・ファーイクの視点から―」 東京外国語大学トルコ語専攻卒業論文
(0409・恋と国会1 0409 ブックネットワン野幌
(0409・川尻こだまのただれた生活7 kindle
(book log なし0409・【再読】イスタンブルの喫茶文化 …執筆当時は路地に椅子出してお茶するストリートスタイルが流行。特に女性に。
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(0409twのみ・雑サーニャ19 えべつ同人マーケット
(0409twのみ・雑サーニャ20 えべつ同人マーケット
(0409twのみ・鳥辺茜 足跡 えべつ同人マーケット
(0409twのみ・断筆 第一話・第二話 えべつ同人マーケット
(0409twなし・断筆 第三話 えべつ同人マーケット
(0409twのみ・眠兎・アケミックス バルと梅割り えべつ同人マーケット
(0409twのみ・ぽやん舎 おばけちゃんとウサギちゃん えべつ同人マーケット
(0410twのみ・THE ゲーム雑記帳 2 えべつ同人マーケット
(0410twのみ・アケミックス Apple viper えべつ同人マーケット
(0410twのみ・根本誠 日記漫画 四畳半の 2017 えべつ同人マーケット
(0410twのみ・ヤマダ代務 トゼンソウ 1-2 えべつ同人マーケット
(0410twのみ・スガラムルディ えべつ同人マーケット
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(0410twのみ・野田サトル ゴールデンカムイ 281話-311話 ヤンジャンアプリ
0410・【再読】中里恒子 時雨の記 図書館
0411・堀江貴文 糖尿病が怖いので、最新情報を取材してみた 20220402
(0412・重版出来 18 kindle
0412・【再読】上原隆 喜びは悲しみのあとに ブックハウスQ 20220326
0412・松田青子 女が死ぬ 中公文庫 kindle 20220321
(0413・町田粥 吉祥寺少年歌劇 kindle
(0415・セクシー田中さん5 kindle
(0416・沖縄のオキテ もいわ太陽食堂
0417・岸政彦（編） 東京の生活史 20220310 150人中19人(20220321) -38人（20220402)-50人(20220403)-65人(20220408)-73人(20220410)-84人(20220411)-93人(20220413)-105人(20220414)-123人(20220415)-139人(20220416)-150人(20220417)
0419・宮崎正弘 AI監視国家・中国の恐怖 図書館 …ざっと。
0420・中上健次 枯木灘 20180407 らくだや
0421・有田芳生 私の家は山の向こう テレサ・テン十年目の真実 図書館
0422・つかこうへい 蒲田行進曲 20220409 ブックネットワン野幌
0422・多和田葉子 献灯使 20220417 …「本のフルコース」つながり
(0422・紛争でしたら八田まで9 kindle
0423・馳星周 ゴールデン街コーリング 20220409 ブックネットワン野幌
0423・木皿泉 すいか1 20220404 まんだらけ
0424・木皿泉 すいか2 20220404 まんだらけ
0424・荻上直子 川っぺりムコリッタ 20220418
(0424・藤巻晋也 赤髭ハイレッディンの生涯 東京外国語大学トルコ語専攻卒業論文
(0424・佐藤将人 １８世紀オスマン帝国における近代化 アフメト・レスミーをてがかりに 東京外国語大学トルコ語専攻卒業論文
0427・永井路子 炎環 図書館
0427・燃え殻 それでも日々はつづくから 20220427
0428・梶谷 懐 高口康史 幸福な監視国家・中国 NHK出版新書 595 図書館
(0428・三澤志乃富「オスマン朝宮廷における小姓たちの生活 Ali Ufki Beyの手記を中心に」東京外国語大学トルコ語専攻卒業論文 2008年
0430・デコート豊崎アリサ トゥアレグ 20220417
0430・すなば さよならシティーボーイ 20220416 シーソーブックス
(0430・藤原辰志 パンデミックが歴史学の 課題であるとはどういうことか 「学術の動向」2021年26巻12号
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(0403・紺野文「モンターグ夫人が見た18世紀のオスマン帝国社会 女性の暮らしを中心に」東京外国語大学トルコ語専攻卒業論文 2002年 pdf
(0403・アルカサル 3 秋田文庫 20220307
0404・泰三子 ハコヅメ仕事論
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(0410twのみ・野田サトル ゴールデンカムイ 281話-311話 ヤンジャンアプリ
0410・【再読】中里恒子 時雨の記 図書館
0411・堀江貴文 糖尿病が怖いので、最新情報を取材してみた 20220402
(0412・重版出来 18 kindle
0412・【再読】上原隆 喜びは悲しみのあとに ブックハウスQ 20220326
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0417・岸政彦（編） 東京の生活史 20220310 150人中19人(20220321) -38人（20220402)-50人(20220403)-65人(20220408)-73人(20220410)-84人(20220411)-93人(20220413)-105人(20220414)-123人(20220415)-139人(20220416)-150人(20220417)
0419・宮崎正弘 AI監視国家・中国の恐怖 図書館 …ざっと。
0420・中上健次 枯木灘 20180407 らくだや
0421・有田芳生 私の家は山の向こう テレサ・テン十年目の真実 図書館
0422・つかこうへい 蒲田行進曲 20220409 ブックネットワン野幌
0422・多和田葉子 献灯使 20220417 …「本のフルコース」つながり
(0422・紛争でしたら八田まで9 kindle
0423・馳星周 ゴールデン街コーリング 20220409 ブックネットワン野幌
0423・木皿泉 すいか1 20220404 まんだらけ
0424・木皿泉 すいか2 20220404 まんだらけ
0424・荻上直子 川っぺりムコリッタ 20220418
(0424・藤巻晋也 赤髭ハイレッディンの生涯 東京外国語大学トルコ語専攻卒業論文
(0424・佐藤将人 １８世紀オスマン帝国における近代化 アフメト・レスミーをてがかりに 東京外国語大学トルコ語専攻卒業論文
0427・永井路子 炎環 図書館
0427・燃え殻 それでも日々はつづくから 20220427
0428・梶谷 懐 高口康史 幸福な監視国家・中国 NHK出版新書 595 図書館
(0428・三澤志乃富「オスマン朝宮廷における小姓たちの生活 Ali Ufki Beyの手記を中心に」東京外国語大学トルコ語専攻卒業論文 2008年
0430・デコート豊崎アリサ トゥアレグ 20220417
0430・すなば さよならシティーボーイ 20220416 シーソーブックス
(0430・藤原辰志 パンデミックが歴史学の 課題であるとはどういうことか 「学術の動向」2021年26巻12号
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 | 新潮社 発売日 : 1953-04-10 |
(2022/04/01読了分)8年ぶりの再読（ウィンダミア卿夫人の扇のみ）。オスカー・ワイルドの描く19世紀末ヴィクトリア朝貴族社会絵巻。この頃の貴族の気質、考え方、規範などを知っていればもっと楽しめたのかもと思いつつ。ウィンダミア卿夫人は、ある日お節介な公爵夫人に、あなたの夫、半年前からアーリン夫人という女に入れ上げて、頻繁に会ってお金を渡しロンドン中のうわさになってると告げ口され。しかも拒否したにもかかわらず、主催のパーティーに、アーリン夫人をウィンダミア卿によって招待され、一度は告白を断ったダーリントン卿のもとへ奔るウィンダミア卿夫人。それを察知して自分の評判が地に落ちることもかえりみず、ウィンダミア卿夫人を連れ戻しにいくアーリン夫人。なぜなら彼女はウィンダミア卿夫人の…と。なぜ最初から話さなかったのか、ゆすりと思われても仕方ない行為、それを甘んじて受け入れた行為を、何もなかった、説明はしない、おれを（わたしを）信じて欲しいと言われても。そして、聡明なら結果は分かりそうなものなのに、パーティーに乗り込んできたアーリン夫人。不可解なのはウィンダミア卿とアーリン夫人、との思い。ただ、最後は、ウィンダミア卿夫人もアーリン夫人の一種英雄的な行動に心服し、一度は捨てたはずの幸せもオーガスタス卿をうまく言いくるめて手にしてしまうしたたかさに脱帽。散りばめられたきらびやかな警句にも引き寄せられる一編。以下備忘録/人間はね、魅力があるか退屈か、のどちらかです。（ダーリントン卿）/男って、年をとるばかりで、ちっともよくなりはしない（ベリック公爵夫人）/あなたから与えられた接吻はみんな、思い出のなかで汚されるのです（ウィンダミア卿夫人）/悪い男というのは、なんと弱いのでしょう！（ウィンダミア卿夫人）/ところがぼくの経験によるとだ、人間はだんだんものがわかってくる年配になると、もうなんにもわからなくなっちまうんだな（セシル・グレアム）/男と女のあいだには友情というものはありえません。情熱とか、敵意とか、崇拝とか、恋愛なら、ある（ダーリントン卿）/一瞬、わたしたちの命は会い--わたしたちの魂は触れました。もう二度とふたたび会ったり触れたりすることはけっしてありません。（ダーリントン卿）/歴史とは噂にすぎない。ところがだ、悪口なるものは、お説教のために退屈なものとなった噂なのだ。（セシル・グレアム）/女ってやつはね、われわれをなんとも救うべからざる悪人として発見し、そして、なんとも魅力のない善人として捨てさるのがお好きなのさ。（セシル・グレアム）/そして感傷家ってのはだね、ダーリントン君よ、あらゆるものにとてつもない価値を認めるが、たったひとつのものの市価さえ知らぬ人間のことさ。（セシル・グレアム）/人生は恐ろしい。人生がわたしたちを支配するのであって、わたしたちが人生を支配するのではない（ウィンダミア卿夫人）/わたしくたちすべてにとって同じ世界があり、善と悪が、罪と無垢が、手に手をとって、その世界を歩みぬけるのですわ。安穏に暮らそうとして、人生の半分に目を閉じるのは、落とし穴や崖のある土地を、もっと安全に歩こうとして目隠しをするようなものですわ。（ウィンダミア卿夫人）◆(2014/03/09読了分)ウィンダミア卿夫人の扇、まじめが肝心、のみ読了。まじめが肝心は、俗っぽい喜劇。友人同士で、危篤の友人や放蕩者の弟をでっちあげて、何かを断る口実にしているふたり。親戚や娘のつきあっている相手にずけずけと資産を聞いてその多寡によってころりと態度を変える夫人。その口実にするりともぐりこむようにして、郊外にあらわれ、二対二のさやあて、鞄に入れられて預けられた出生の秘密がときあかされ、最後は，まじめが肝心だなんて、どの口が言ったのかといったかんじのひとことで締めくくられる「まじめが肝心」。「ウィンダミア卿夫人の扇」は、恋し恋される男女が、機微に富んだセリフを繰り広げる群像劇。
「撃たれても」「紺屋大将」のみ。撃たれてもは、マカオでひと暴れした有馬晴信家中とその後始末に人肌脱いだ有馬晴信の話。ひそかに殺されたのは、実は信長殺しの家康が秘密が漏れるのを恐れて殺したのだという建てつけで。火薬を手に入れるための冒険譚と、ポルトガルを相手に大立ち回りの一幕。紺屋大将は山田長政物語。一旗あげようと本多家中を出奔し、ベトナム、シャムへ。虎退治で一躍名をあげついにはシャム四分の一の領主へと。ちょっとした時代活劇。紺屋というのは当時そんなに差別されてたのか、寡聞にして知らずでした。何気に手にとったが、今度はもしあるなら山田長政研究のようなものを読みたく思った。
 | 筑摩書房 発売日 : 2011-08-09 |
(2022/4/02読了分)ナミビア、アフガニスタンの回廊がふと気になり再読。ナミビアのほうは、ドイツが植民地にしていた時代に、東アフリカとのアクセスのため、どうしても大河に隣接させたかったため。アフガニスタンは、イギリスが、自国のインド領とロシア領を直接隣接させたくないために緩衝地帯を設けたかったため、と。他に、マレーシアのマレー半島領土とボルネオ島領土の行き来はパスポートが必要で、それはボルネオ側の州に高度な自治を認めているためであることなど。(2012/2/27読了分)興味深かったのは、メキシコ政府作成の安全な不法入国のためのマニュアル、なぜブラジルを任された翌年にポルトガル皇太子ドン・ペドロが本国からの独立をはかったのか、チリの領土拡張がアンデス山脈に規定されていたこと、バチカン市国の主産業は出版（聖書関係）・モザイク製作（教会関係）で、観光収入と世界中の信者からの寄付が財政を支えていること、シーランド公国のこと（どこの国も認めておらず、国民４人なのに、クーデター起きたり、鎮圧されたり、亡命政府できたり、火事で半焼したり、ベイツ公は国外に住んでて難を逃れた、、、て、住んでないのかい！とか、一度売りに出されたけど価格の折り合いがつかなかったことなど）、南アフリカに囲まれたレソトとスワジランドのことなど。
 | KADOKAWA 発売日 : 2022-04-04 |
この巻のおしながきは、冷やしみたらし、ひさご、餡入りわらび餅、氷あずき、炎天雪花。和と佳代子が祭りをそぞろ歩きまた食べたいと願う冷やしみたらし。幼少期の記憶に残ってないけど、ずっと大事にしてたお守りをくれた人に、父に代わってひょうたん型の和菓子をお中元届けに行く話。二代にわたる縁が込められた和菓子炎天雪花。暑い暑いいうお客さんたちに、発泡スチロールの雪を降らせて涼んでもらおうという幼児の試みから転がったはなしは…と。
 | 秋田書店 発売日 : 2008-10-10 |
勝手に王妃の一族を逮捕させた愛妾アルドンサを捨て、政治に口出しをさせぬ決意を示し、反乱の芽を摘むため、庶弟ファドリケ、いとこホアンを殺し、ポルトガル王子と自身の娘を婚約させ、アラゴンへの侵攻へ向けて軍備を練る、といった巻。だんだんとドン・ペドロに統治者としての自覚と冷厳さがそなわりつつ、と。
小笠原弘幸「ハレム」（新潮選書）の参考文献にあがっていたので手に取り。/1716年、オスマン-ヴェネツィア休戦協定のため、夫エドワード・ウォートレー・モンターグがオスマン帝国大使に任命。しかしオスマン帝国に有利な条件を本国に申し送ったために1年後に解任される。メアリーはそれに同行した、と。ムスタファ2世の未亡人、ハフサ夫人を訪れた際に、豪華な衣装と宝飾品におどろき。トルコの女性たちが私たち以上に自由であると称賛し--それは「外に出られない」「ヴェールをつける」などの制限された中で最大限自由をたのしむといった類のものであったとしても。また、1717年当時大宰相だったハリット・パシャ夫人、スルタン侍従長夫人のファトマ、前スルタン・ムスタファ2世妃ハフサ夫人のハレムを訪問。奴隷を扱う時のトルコ人が”人道的”であると称賛し。この世の創造物はすべて神が人間のためにお造りになったものなのですから、ぶどう酒を飲むことが罪ならば、神はぶどう酒をお造りにならなかったでしょう？とぶどう酒をのむアフメッド・ベイ。女性たちの社交場としての公衆浴場ですごした際のエピソード。また、儀式が執り行われるような非日常・祝祭的な意味合いから、息子の嫁探しをするような側面もあった。といったあたりが印象に残り。
 | 日経BP 発売日 : 2022-03-17 |
先月ほぼ全話ハコヅメ読んだ身にはなんてタイムリーな一冊。◆外から見ると上意下達一辺倒の組織と思いきや、組織として人を育てる仕組み、意識が整ってるんだな、と。部下が上司を守る、の一例で泰さんが描いたマンガのオチがわからないからボツという署長に、上司の係長が乗り込んでいって直談判でこれはこうこうこういうオチなのでと説明してボツを撤回させたエピソードが好き。マンガづくり面でも、泰さんが、自分でも病気と思うくらい思考を止められない方で（警察時代に身体を極限まで使うとそこまで思考に余力がなくなり精神が安定したとのこと）、最近家の近所で迷うようになった、頭のなかの岡島県と現実の境目が曖昧になりすぎて、人間関係も登場人物なのかリアルな家族友人知人なのか、一呼吸おいて判断しないといけないレベルに、というところがすごいなあ、と。◆本来、今の時制から４，５年先の話を書くつもりだったこと。作者のシリアス路線と編集者のギャグ路線のせめぎあいがあったこと。職場でのアドバイスは自分の現在の位置情報とおもえ。周囲の期待をすべて具現化しようとした鬼瓦ではなく、地味に目立たなくともコツコツと仕事をかさねていく横井が活躍する姿を描きたかったこと。幹部の半分がせめて女性だったら、女性の視点をもっととりいれらられるのに、市民の半分は女性なのに、という思い。性犯罪捜査の矢面に立たされた女性警察官たちの苦悩。実は山田が思い入れの深いキャラでほぼ山田な元上司がいたこと。などが印象に。
| 発売日 : |
選者にワンテーマで5冊のおすすめ本を紹介してもらう選書企画、北海道書店ナビの「本のフルコース 」(http://www.core-nt.co.jp/syoten_nav/archives/category/full-course)が、リトルプレスとして、あらたに取材した札幌弘栄堂書店パセオ西店の石川幸店長と、人形作家・高山美香さんのフルコース、著者の選んだバックナンバーがおさめられた一冊◆まずは「未来に絶望しないための「ディストピア本」フルコース（石川さん）。多和田葉子「献灯使」、清水玲子「秘密」、藤子・F・不二雄「定年退食」あたりは読んでみたくなりました。そして箸休めででてきた札幌弘栄堂書店竹野内美紀さんのQRコードで飛んだ先の紹介で見て吉村昭「赤い人」も激しく気になり。石川さんの「本を読むことが外界とつながる大事な手立て」という言葉には深くうなずき。次の「偉人人形を作るためのフルコース」（高山さん）。ひとつの偉人人形作るのに30冊は読み込むという熱量にあてられ。宮沢賢治のニックネームがカピバラだったのはなぜ？というのが語られてる本を見つけたシーンが印象に。そして「世界人物逸話大事典」（角川書店）は紹介を見て、ぜひとも挑戦してみたい気持ちに。1100頁以上あるようなので、まずは図書館でめくってみるのが現実的か。バックナンバーからは、加藤陽子「それでも日本人は戦争を選んだ」が気になりました。日々、読みたい本が消化しきれないなか、また読みたい本が積み上がってうれしい悲鳴。自分の選択眼だけでは手に取らなかったかもしれない本に目が向くよろこびと。
 | 秋田書店 発売日 : 2010-01-08 |
3−7巻読了。ナスル朝好きとしては、ムハンマド5世、アブー・サイードあたりの内紛が、カスティーリャ、アラゴンのそれぞれと手を結ぶことで、カスティーリャとアラゴンの戦いの中で重要なファクターとなっていた点、楽しく読んだ。また、佐藤賢一「双頭の鷲」、佐藤猛「百年戦争」を読んだ身には、フランス王シャルル五世やシャルル・デュ・ゲクランの登場もうれしかった。カスティーリャとアラゴン、またドン・ペドロとエンリケの争いは、イベリア半島内だけでおさまってるあいだは一進一退、決め手を欠き。ただ、セビリアのアルカサルが完成したあたりは、ドン・ペドロの絶頂期といえ、連載は一旦そこで中断。再開はその数年後からで、ドン・ペドロの運命は急速に暗転していき、紙幅をだいぶ残したままエンリケに殺されてしまう。その後の長い歳月、ドン・ペドロの孫とエンリケの孫同士が婚姻関係を結ぶことでドン・ペドロの血脈がカスティーリャ王として戻ってくるまでを描いている。ドン・ペドロは、王としては果断、勇猛、威厳に満ち冷徹で国民の支持を得ていたが、貴族層には厳しくあたり、裏切り者には容赦せず。逆にエンリケは貴族層を優遇し、国の柱としようとしたが、どちらも一長一短、国内の統制には悩みつづけることになった、と。戦争や外交のやり方も、騎士道精神や誇り・名誉・形式といったことが部分的に重んじられたり軽視されたりしていて、そのやりとりや適用の仕方なども興味深かった。
 | 筑摩書房 発売日 : |
協力：藤田千恵子とクレジットされている「みのり伝説」全9巻を再読直後の身には、このエピソードもあのエピソードもいくつもいくつもとりいれられ、マンガ内でアレンジされたんだな、ということがわかりまた味わいが深まる。自転車でのりつけた月島にある西仲商店街の描写がああ、いいなあとゆったりした気持ちに。ノミで冷凍庫の霜取りしてたら冷蔵庫本体にぶっさしてしまいおしゃかにしてしまったこと。常時四冊そろえてるという中里恒子「時雨の記」についての、これでもかと読んでみたくさせる紹介。いつもいいたいこと我慢してると、奥歯噛み締めすぎてへの字口に、嘘ばっかりいってると口がゆがむ、思い悩んでばかりいると眉間にしわがよる「顔の話」。結局相談事とはわたしの場合、自分の言ってほしいことを言ってくれそうな人にすりよっていってしまうという姑息なことになってしまう。といったあたりが印象に。あとがきに記載のあった「思想の科学」に連載していたという「パッパラ湯」は単行本化されてないのだろうか。されてたら読みたい。
 | 集英社 発売日 : 2012-07-20 |
ザビエル、フロイスといった教科書級の有名人から、フランシスコ・ゼイモト、メンデス・ピント、アルメイダ、ヴァリニャーノ、カブラルといった人々まで。戦国時代日本にやってきた宣教師たちから見た当時の日本と日本人。自分たちとは異なる文化に興奮し敬愛し深い理解と愛情を見せるフロイスから、野蛮な国と人々と見下げ果て何事もヨーロッパのやり方が一番とごり押しするカブラルまで、日本と日本人に対するあり方はさまざま。海の向こうにはなにか自分の期待を満たしてくれるのではないかという思いを抱いていたという点では同じだったはずなのに。ただ遠く離れた未知の世界へと旅立つ様には脱帽と羨望を抱く。フロンティアなるものがほとんど見当たらなくなった世にあっては。/「探さないものは、見つからない」「ウソは本当の話にまぜなければ誰も信用してくれない」「海の向こうには絶対に幸せが待っている」（メンデス・ピント） 「神の前では不可能も可能になる」「（日本と日本人たちのことを）書かずに死んでたまるか」（フロイス） 個人的好き嫌いは抜きにしてまずは彼らの美意識を受け入れねば、彼らもキリスト教を受け入れてくれない（ヴァリニャーノ）/メンデス・ピントの著作と解説にあった山本兼一「銀の島」は読んでみたく思った。
サイト・ファーイクの短編7編から、20世紀初頭イスタンブルのカフェの機能、描かれ方を考察。◆現代トルコ人はカフヴェ文化を、怠けるように溜まる場として「トルコの恥ずべき部分」と語る向きが多いとのことだけど、女性専用のものなど独自色を出すものもあるとか。◆サイト・ファーイク作品の特徴は、作家自身と作品の相互関連性。また「なに起こらない」と評されることも。イスタンブルのどちらかといえば下層の人々の暮らしをながめるまなざし◆作品中に登場する「終夜カフェ」という形態が興味深かった。家もなく、簡易宿泊所もとりあげられた労働者たちの寄る辺として。また時に孤児を一時避難させたり。近所の人たちの集まるハブ、社交場としての役割など。◆宍戸克実「イスタンブルの喫茶文化」、小山皓一郎編訳「イスタンブール短編集」を再読したくなる。
 | 小学館サービス 発売日 : 2019-11-29 |
代々議員を輩出した家計に生まれ、総理だった父の地盤を継いで当選した福太郎。元地下アイドルでぽっと当選した一斗。どちらも政権与党の一回生議員となり。そつなく政治家の流儀を通す福太郎に、一歩一歩立ち止まって、おかしいことはおかしいと正論で切り込みつづけていく一途。前代未聞の国会ラブコメ！？と裏表紙にあったけど、それよりも常務委員会とか、国会議員の活動、慣習、付随する憲法などなど、そういったところをまるっと教えてくれるところがいいなあと思った。ふたりのケミストリーが国会にどんな渦を巻き起こすのかたのしみ。
なんかイタリアーノっぽい料理「トマトとベーコンのキザン・デ・マゼターノ」のおいしそうさ具合といったら！そして蚊取り線香をキャンプファイアー積みして火災報知器なりだして、私と蚊、死ぬのはどっちかのdead or alive感。
 | 文藝春秋 発売日 : 1998-07-10 |
藤田千恵子「愛は下克上」つながりで。ただ、自分にはあわなかった。壬生のまっすぐな（にみえる）思いに対し、多江は高潔だ。それをことさら際立たせるために、壬生の妻をことさら悪妻に造形してやしないか。「気に入らないおくさん、何故貰ったの、お皿一枚だって、あれだけ吟味なさるのに」という多江の問いに、なんでもよかったが、聡明な母とうまくやってもらうのにすこし頭の悪い女のほうがいいと思った、という壬生に、なんともいえない違和感。時雨のように、壬生がさっと通りすぎていってしまっても、多江の肩に、濡れた露がしっとりと残っていることは、疑いようもないことでした、という感慨はわかるのだけれども。
 | 祥伝社 発売日 : 2021-05-01 |
糖尿病についての最新の研究と予防法。見ると、生活習慣は予備軍としていくつもひっかかりそうで。こんなことからはじめてみては？というのがいくつも紹介されてるけど、すでにくじけてるところが我ながら…と思いつつ。甘いものと運動不足からかな、まずは。腸と腎臓は「貪欲な臓器」。一生懸命、糖と塩分を摂取しようとする、それをゆるやかにしようという研究も。また、デジタル薬ともいうべき、患者の投薬や健康習慣をサポートするものもでてきてること。糖尿病がさまざまな臓器の代謝に「悪さ」をする病気なのではと考えられるようになってること。日本人はインスリンを作る力が弱いため、食後血糖値が上昇しやすいこと。などが知見として得られた。
 | 中央公論新社 発売日 : 2021-05-21 |
物語で都合よくふるまう「少年」の特権性を撃ち。物語の都合で殺されたり、さまざまなマイナスな役割を女性が負わされることをあばき。あなたの好きな少女が嫌い、と類型的な女性の好みを列挙し（これはふくらませて別の小説になったのだとか）。また、日本のナショナルアンセム（すごい婉曲表現）が主人公の短編が２つ。垂直な権力構造のなかで、面白くない話に無理に話をあわせられない！と叫び。グロテスクなミソジニーの解体をショーにし。男流作家と男性ライターが”男性ならではの感性”ばかりもてはやされてうんざりする様を描き。著者ひとこと解説で連発される、そういうことじゃないんだよ、という叫びが随所に感じられる、言わずに飲み込んでる人が多いことを白日のもとにさらす、企みに満ちた短編集。水蒸気をたたえてるからまっしろ、とか、会社のロビーにけっこう大きな穴が開いていてうっかり落ちた人が時々死ぬ、とかの発想が飛んでて好きでした。
 | 幻冬舎 発売日 : 2004-03-01 |
何年振りかの再読。/著者が、話を聴かせてくれる人を訪ねてエッセイにまとめるシリーズ。/「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」「東京の生活史」と比べると、基本、一人語り形式にすっきりと刈り込まれて、適切に質問もさしはさまれている感。生の素材をどこまで広げて収集するか、どこまで刈り込むかというのには幅広いグラデーションがあるのを感じつつ。/障害を持つ子を育てた作家の、将来のことを考えていては今日は生きられない、ということば。大人になってもロボット玩具を手放せず、それは父が自分に買ってくれた時代のことを忘れないためであるこお、そして自分が子供を持ったらぜったい一人にしないと決めている男性。新聞記事でトレードを知らされ、自分を出したチームから何とか勝利をもぎ取りたいプロ野球の投手、最後の注釈がまたドラマで。実演販売を生業にする男性の、川の流れのなかに立っている一本の孤独な杭のようなたたずまい。人はなぜ自分の子供を殺すのか、というテーマをかかえ、子殺しの裁判の傍聴をつづける女性。倒産した新聞社の、組合闘争の先頭に立った人が、就職が決まらず、本音を言えば一般組合員が一番得したという思いはぬぐいきれないという苦い吐露。その組合員の一人は、たかが私企業のはずがなぜにこんなにも愛着が、という思いを。といったあたりが印象に。
 | 小学館 発売日 : 2022-04-12 |
マンガ家の執筆風景配信、アシスタントなしでも漫画家が執筆をこなせるアプリとネット社会の光景も描かれ。ついてた先生が週刊連載の過酷さにつぶれたのを見てた元アシスタント、現アプリ開発会社社員が、アプリのおかげで先生が復活したニュースを見た感慨には思わずもらい泣き。黒沢の、なぜ男性なのにこんなに女子の気持ちをわかるんでしょう！というのを聞いてる時の中田画伯の顔！そして、その画伯に、子供の頃からろくに愛情は与えず、援助だけは求め伯の誕生日など忘れてる実母と誕生祝いのメッセージをくれたアユの対比が印象に。また、黒沢の休日合コン編、相手方男子たちへの鋭くも容赦ない分析と、それが店員の女性にまで向けられ、本人はというとおいしいものを食べることにしか興味がないという番外編的な一編もたのしく。
 | 祥伝社 発売日 : 2021-10-08 |
「雑サーニャ」20号でとりあげられていたのを見て手に取り。宝塚の男性版が、もし吉祥寺にあったら、という設定。もちろん男役、女役の両方があり、厳しい倍率をくぐりぬけた者たちが、吉祥寺音楽学校に入り、ゆくゆくは吉祥寺少年歌劇へ、と。歌舞伎の家からある条件付きで音楽学校へ入ることを認められたもの。踊りはぜんぜんダメだけど歌の実力一本で合格したもの。自らの才能に自負があったのに、天才たちに囲まれてくじけ、不貞腐れてたところから復活したもの。吉祥寺少年歌劇が好きすぎて好きすぎて入ってきたもの。それぞれの希望、野望、屈託、憧憬をかかえつつ、時にぶつかりあい、手をさしのべ、磨きあい、と。「ここでライトの光を受けて生きていきたいと思うなら 自分の素質にある-今はまだ歪なものを美しく磨いていくしかないんだよ」という先生の一言と、立ち直ったカジの「食らいついてやるしかないんじゃない できるかできないかなんて考えてもしょうがないよ」て言葉が印象に。最初は歌以外に自信がなかった主人公が、遠い先にいたと思える同輩を追い、磨きあい、手をさしのべ、スターの道へ、しかしその寿命は短く…また今の世相も織り込んで、寂しい引退模様となったが、普段着も普段着で、かすかな鈴の音を鳴らしつつ、雑踏へとまぎれていく姿に、どんな第二の人生を切り開いていくのだろう、と思いつつ。なんだか、この先道行く男の人からかすかに鈴の音が聞こえてきたら、一瞬、もしかして？と思ってしまいそうです。
 | 小学館 発売日 : 2022-04-08 |
会社での身バレで引きこもりそうになった田中さんに、本当に田中さん会社で浮いてます？もしそうなら田中さんのプレゼン不足。中身はこんなにステキなのに、と手を差し伸べたのは無神経なハズの笙野。元気の出る映画を貸してくれたり、ダルブッカの修行始めたり。一方小西も朱里を的確に観察して言葉を重ね、心を開き、朱里の元カレとサシで飲みに行ってそのあと、朱里と和解したり。田中、朱里、小西、笙野がそれぞれ心を開き関係性が深まった回！でした。
 | KADOKAWA/中経出版 発売日 : 2014-12-13 |
沖縄料理屋のカウンターで手に取り。沖縄が好きすぎて移住したライターさんと宮古出身のフリー書家さんが結婚。雨でも傘はささない、台風でも外に確かめに出ずにはいられない、台風だと明日は休みだとdvdにボーリングに飲み会に。泳げない人も多く、泳いでも服を着て。ビーチパーティーという名の浜辺でのバーベキューが大好き。墓の前のひろびろスペースは墓前での宴会のため。めーごーさーは、ゲンコツだ、の意味。きいやま商店の名がちらっと出てきてハンバーガーポーイズファンにはうれしい。そして、個人情報ダダ漏れと思いつつ同窓会のお知らせの横断幕。そして、沖縄向けのみのポンカレーなどのソウルフード紹介ページ。などが気になりました。
 | 筑摩書房 発売日 : 2021-09-21 |
※No.は便宜的にこちらでふりました。◆東京の縮図ではない、とあったけど、「東京にいる人、いた人、いたことのある人の話」(No.148)というテーマでつのったうちの150人の語り、人生。月並みだけど一読、嗚呼、人生って不公平。一族が築いた資産でガツガツ働かなくて生きていける人から、両親がいなくて養護施設に入れられて里親が引き取ってくれたと思ったら補助金で贅沢する目的で教育費生活費をほぼ渡さず抑圧してこきつかわれるだけみたいな人まで振れ幅大きく。これで全部「自己責任」とか「置かれた場所で咲きなさい」とか言われたら暴れたくなるわな。その環境を逍遥と受け入れる人から未だに納得いかなくて憤懣やるかたない人までさまざま。様々さを様々なまま、ただ読み、知り、受け入れ、といった読書体験でした。部分的に150人分の人生を追体験。読みやすさは千差万別だけど、おそらく編者の方針でだいぶ原型が残されてるのかと。ただ、ずっと「あははは（笑）」が連発されてる人の話は、内容に比して受け入れられ方で損してるなあと思った。◆一番理路整然とすっと入ってきたのは、話すプロだからなのか僧侶(No.30)。インプットがすべて法話というアウトプットに活かされ、固定的な自己なんてないみたいな東洋哲学の面白さを語り、生き方がそのまま教えに直結するシンプルさと怖さ（何かやらかすとお釈迦様の評価も下がっちゃう）、檀家制度が細る中でどう足場を固めていくか、みたいな話がおもしろく。◆一番ぶっとんでいたのは、No.112の、ADHDで苦しかったけど覚せい剤のおかげで生き延びられた、妻は抗うつ剤もい効かずに鬱で苦しんでいたが危険ドラッグのおかげで生き延びられた、という夫婦の話。いい薬効だけで悪い症状でてないんだ？それ話して大丈夫？今はどうなの？もっとヤバい話があるけどここでは語られてないってどういうこと？といくつもの疑問符重ねながら怒涛の語りに圧倒された他に以下の方、エピソードが印象に。◆◆◆◆◆ゴージャス松野のドキュメンタリーを撮った映像作家(No.10)◆芸大で声楽専攻を専攻し、BIGO LIVEて配信アプリなど駆使し、生計につなげていく話(No.28) ◆日本では中国人といわれ、アメリカでは中国人じゃない日本人だろといわれ、寄る辺なさを痛感した美術家のチョーヒカルさん(No.35)◆川崎市内のその街は庶民的、必要なもの全部ある、手ごろで便利なかんじを「その「ほろーん」っていう感じが好きだったんですよね」(No.39)と語った人。◆耳の聴こえない方の語る、"聞こえない人たちの世界って、その国々の小さくて密なコミュニティがある" "アメリカ手話やフランス手話など国によってもちがう" "「怒ることは大事だけど、怒ることは新しい分断を生むこともあるから、美しくないときもあるよ」ってことを教えてくれたシチリア島の人"(No.45)◆ジャズミュージシャンで、ドラムの先生が、「わかったんだったらいいよ。くだらないことをやってみて、くだらないってわかったらそれでいいんだ」と言ったというエピソード。(No.58)◆元八百屋でいまはビッグイシューを売る人(No.70)◆脳梗塞でマヒが残った人の話(No.73)◆インドネシア出身で、敬虔じゃないムスリムだけど、トンカツを食べた際に雷おちてこないかとそっと天をうかがった話(No,77)◆占領下沖縄に暮らした人が感じた、沖縄人は食べるのに事欠いても、アメリカ人は食べ物を捨ててた、金網のなかだけ豊かなのが見て取れて違和感を感じた、という語り(No.86)◆主婦から区議になった人の「政治家の仕事は区民の代表として政策を決めることだと思ってたんですけど、そうではなくて、行政が決めたことを正当化するための調整をしなきゃいけない。これではまるで行政の代理人じゃないかと感じました」(No.88)◆フランスだけど、グアドループ出身。クレオール文化で育ち、フランスで教育受け、フランス語で話し、カスレ食べたことないけど、ブフ・ブルニギョンがなにかも知ってる。日本人がいわゆるフランス的体験を求めて近寄ってきても、その人たちが想像するフランスを私は与えられないと語る、安積遊歩さんのカイロ会議のスピーチに感銘を受けて研究テーマを決めた車椅子に乗るイヴァンカ・ギヨームさん。(No.90)彼女の研究にとても興味がわく◆お客さんに探りを入れながら、お客さんと一緒にカクテルをつくっていくかんじ(No.96)◆気志團のフェスなどをてがけた人(No.106)◆社会学科の卒論、登川って炭鉱は、坑夫たちが「友子」（ともこ）というヨーロッパでいうギルドみたいな、技術伝承機能、共済機能、親分子分ていう人間関係の機能ももっている、て話。「一番思い出したくないことを人間は忘却って形で忘れる」(No.113)◆愛人宅に押しかけ、帰宅する夫を出迎えたら、ぎゃっといって裸足で逃げ出すから、旦那の背中に靴を投げて「靴ぐらい履けっ」て。そういうドラマ？がありました、という出版社勤務の編集者。(No.120)◆「土地や人種に根付いたものがある人が自分の国を悪者として見るのは、もう不可能に近いんじゃない？」「アメリカは隣りの人は取り締まらない。ガバメントにさえ引っかからなければ大丈夫。」「日本の場合、法律を守るより、文化と今までやってきたことを守るっていうほうが強いのかもしれない。」と語るフォトグラファー(No.108)◆活版印刷の文選工の話。貴重な、本当に貴重な(No.124)◆ほぼ一〇年、医学部浪人した医学生(No.134)◆伊豆七島出身者の、「島に住んでると、誰のせいにもできないことってたくさんあって。天候であったり、飛行機が欠航して上京できない、予定が予定通りいかないとか、台風で家が壊れちゃったりとか。（略）運命を受け入れましょうっていう、という語り(No.143)◆残留孤児向けの介護をはじめた方(No.145)◆アイヌ民族として。「なんで国立民族博物館で、アイヌのこと紹介しなきゃいけないんですか。消えそうだからですよね。なぜ消えそうになるのかを、伝えなきゃいけないですよね。」(No.150)
 | PHP研究所 発売日 : 2018-11-15 |
個人的には「AI監視社会」の部分を知りたかったが、「中国の恐怖」ばかりだった。パンダハガーは、パンダと抱き合う人転じて…という意
 | 文藝春秋 発売日 : 2005-03-01 |
歌にめざめ、歌に生き、台湾、香港で人気が出て、確固たる地位を得たあとに、日本へ進出。新人として扱われ最初は芽が出ないが、「つぐない」「愛人」「時の流れに身をまかせ」とヒット曲にもめぐまれ、紅白にも。その後、"パスポート事件"でアメリカに渡るが、台湾側も折れて不問とされ。そこにはつい最近まで戒厳令を出していた台湾、国の出入りが煩雑だったことへの対処という側面もあり。また中国も激動の時を経て、改革開放へと向かう。退廃音楽と非難されても、庶民の口にテレサ・テンの歌がのぼるのは止められず。ついには中国当局から天安門広場での大コンサートを打診され、テレサも乗り気になっていたが、天安門事件はそんな彼女の気持ちをくじいた。失意の彼女はパリへ向かい。そして最後の恋人と出会い、パリ、日本、香港、台湾と渡り歩き、タイで喘息の悪化、おそらくはのちに過剰投与が問題視された薬の影響もあり、死去…と。死後おもに日本で大々的にスパイ説、謀殺説、エイズ説などが報道されたがすべて根拠薄弱なデマばかりであったことが描かれる。日本の大多数の人は、ヒット曲を何曲か残した演歌歌手のイメージを持つかもしれないが、台湾、香港、中国とアジア各国で幅広く支持を受け、時に民主化に立ち上がる学生たちを大いに応援し、天安門事件後も一時は民主化を支援する姿勢を見せるなど活発に政治的意見を表明してきたが、その後は、こんな時に歌うことが何か悪いような気持ちにとらわれて、政治的な意見表明から身を引いてしまう…と。「パスポート事件」にみられるように台湾が国際社会の中で孤立していく過程とつい最近まで戒厳令が敷かれていた政治体制だったこと。中国の政治体制の変遷により、時に名指しで非難され、時にそれが緩められ、また当局からコンサートの開催計画が具体的にすすめられたり、天安門事件後は一切接触が絶たれたりと、ふりまわされてきた面など、国際政治の流れと無縁な存在ではいられなかったことなども知ることができた。
 | 講談社 発売日 : 2022-04-21 |
マリで英雄たることを期待されるフランスで活躍した元サッカー選手パカリ。それを歓迎したい穏健派と敵視する過激派。自らの息子の安全を第一として、積極的に政治的意見を表明しないことにしていたが、穏健派トゥアレグのバンドとの交流、息子の誘拐事件、八田とのやりとりを経て、覚悟を決め、リバースイノベーションに期待を馳せ。最西部にかたよった位置の首都バマコではなく、マリの中心部に位置するモプティを中心に北部と南部のパイプ役になろうとするところまでが、マリのこれまでと現在の状況を活写しつつ語られ。その後はパカリの元妻と交渉するためにフランスに飛び、移民たちの現状と鬱屈、そこへ向けられる冷たい視線と対照的な元妻の公平な視線と行動が対比され。マリ、フランス事情の一端を知ることができた。ジャンジャンブルジュース、ベネといったマリ料理。ジャンボン・ブール、トリップ・ア・ラ・モード・ド・カンというフランスの料理、パスティスという最初はアブサンの代替品として生まれたリキュールなど、今回も興味を惹かれる料理が目白押しでした。
 | 発売日 : 1981-11-30 |
滝口悠生「高架線」に出てきたので、名前は知ってるけど、いままで敬して遠ざけてた一冊を手に取ってみる。階段落ち、てのが有名なのだけは知っていたけど。スター気取りだけどスターになりきれてない銀ちゃん。大部屋俳優のヤス。銀ちゃんの子供ができて、ヤスに押し付けられた小夏を軸に進んでいく話。もう銀ちゃんがこれでもかというくらい自分勝手で嫌な男で、とにかく自分は愛されて当たり前、好き勝手やって当たり前、気前よく見せたいけど金には汚い、細かいことまでネチネチあげつらって因縁つけて、そんな銀ちゃんをかえって信用できる、わかってあげらるのは自分だけとヤスはついていくけど、小夏と所帯をもつと結局銀ちゃんみたいに小夏にふるまい、銀ちゃんにはいままでどおりの銀ちゃんでヤスにふるまってほしくて。結局は、三角の三辺がとぎれなく囲まれてる三角関係。それはわかったが、そこまで自分に自信がなくて、ひどい言動ひどい行動を重ねてそれでも自分についてきてほしいという片方にだけ都合のよい甘えた関係ってあるのか？と最後まで憤りながら読み終え。どこが受けいられて流行ったのか理解にくるしむ。
 | 講談社 発売日 : 2017-08-09 |
佐藤優子「本のフルコース」でとりあげられていた一冊。若いころは、テクノロジーとは、文明とは、一直線に、右肩上がりに進歩していくものだと思っていた。21世紀の今、テクノロジーはともかく、文明という点では…コロナ禍の対応、20世紀の遺物のような戦争を目の当たりにして。「献灯使」の世界は、近未来なのか、インターネットや電話をはじめとしたさまざまなテクノロジーが失われ、老人たちは死ねずに丈夫で社会のインフラを支える存在に、生まれてくる子供たちは老人たちからするとひ弱で一人では生きていけないような存在として描かれる。各国は、それぞれの問題を世界に広げないようにと鎖国し、政府も民営化され…と。東日本大震災を経て、今の日本の状況を織り込んで、想像の力でさらに推し進めたケースとして。現世と一続きの世界だとして、自分がここに出てくる老人のようになるとしたら、耐えられるだろうか、それでも希望を見いだせるだろうかという思いを馳せつつ。◆「無名は自分を可哀想だと思う気持ちを知らない」（義郎）◆「僕と曾おじいちゃんとは動物図鑑の同じページに載せてもらえないかもしれない」（無名）◆「迷惑は死語だ。よく覚えておいてほしい。昔、文明が充分に発達していなかった時代には、役にたつ人間と役にたたない人間という区別があった。君たちはそういう考え方を引き継いではいけないよ」（義郎）◆また、併録の「彼岸」の、現状を抉るような"脳味噌から脳味噌に目に見えない信号が飛び、それが無意識のうちに特定の人々によって同意され、同意した者の口座には自動的に儲けが振り込まれるという新しい世界経済の仕組みがとっくに成立している"という一節が刺さる。
 | 河出書房新社 発売日 : 2013-08-06 |
1-2巻読了。再読。十年以上前にDVDも借りて全話見たけど、今回もやはり好きなシナリオだなと思った。主人子基子。信用金庫につとめる、きっと十年先も同じ日常をすごしてそうで、決まったレールにのり、世間のしがらみにがんじがらめになってると思っていて。そこへふってわいた同僚にして唯一の友人の馬場ちゃんの三億円横領と失踪。そして母から独立して、シェアハウス「ハピネス三茶」に入居することに。そこは大学教授夏子、エロ漫画家絆、スリランカにふらっと行った父に管理を押し付けられたゆかが暮らし、夏子の教え子の編集者間々田や間々田の娘の元カレが出入りする、のんびりとしつつ居心地のよい場所だった。彼らとの対話やちょっとした出来事、日々を経るうちに、自分をしばっていたものをすこしずつ破って、気づき、相手を認め、自分も認めることができるようになり…と。◆最近手に取った木皿泉「すいか」も荻上直子「川っぺりムコリッタ」も、血の繋がりのない住人達がそれぞれ集まり、気づけば家族よりも家族らしく交流し、ここに居ていいのか？と問う主人公に、いてよしと背中押す話で、自分の好きな小説だった。何だろ、自分はシェアハウスにでも入ればよかったのかな、という雑感をいだいたのだけど。◆◆夏子「泣くことを許さないわけじゃないんです。考える事をやめて適当にごまかす事が許せないんです。◆夏子。「色々、居ていいんです」◆絆「私らは、偉いよ。自分が、最低だって知ってるもん。これって、目茶苦茶ラッキーだよ」◆生沢「仕事なんてさ、内容より、場って言うの？ 人間関係が大きいんじゃないですかね」◆生沢「人に嫌われてもいいんです。矛盾してる自分を、許してあげなきゃダメです」◆基子「お金出せば、それですむとか、時間もったいないから次に行こうとか、体裁のいい事だけ言っておこうとか」◆夏子「どんなに自分の中が荒れ狂っても、元の自分がやってくる。それ信じて、じっと我慢するしかないの」◆絆「誰かを言い訳にして、誰かに乗っかって生きるっていうのは、あんましかっこいいことではないでしょう」◆夏子「自分で責任を取るような生き方しないと、納得のいく人生なんて送れないのよ」◆生沢「私が覚えているかぎり、あんたは世の中とつながってるんだからね」
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-12-21 |
馳星周若き日の半自伝的小説。実在の登場人物（船戸与一、北上次郎、立川談志）も実在の人物をモデルにした人物も出てくるけど、もちろん小説だからストーリーは脚色されていて、それは作中にも出てきて解説も書いてる北上次郎の言葉からもあきらか。ただどこが事実で…とかつついてまわるのはおそらく野暮。そうあってほしい、そうしたほうが面白いなどの著者の語りと受け止めればいいのでは、と。主人公坂本は、北海道の片田舎でハードボイルド小説を読み漁り、憧れをつのらせ、そのために東京へ行きたい、そのために大学へ進学し、日本冒険小説協会を立ち上げ、小説好きの集まるバーを経営する顕のもとで働くことに。しかし素面では博識、気前よく、面倒見のいい兄貴分の顕は、泥酔すると粘着質で攻撃的な酒乱となり、店員や客を困らせるのであった…と。時に小説好きでキャバクラで働く友香に恋し破れ、面倒なばかりの酔客のなかで唯一温厚でまともなナベさんは命を落とし、ツケでのませてくれたびたび話をきいてくれ励ましてくれるリリー、息子よ！とかわいがってくれる佳子姫、顕に対峙する同志ともいうべき同僚の田丸らと行き交い、顕もかかわる同人雑誌に書いた原稿が北上次郎の目にとまり「本の雑誌」に原稿を書くことが決まり天にのぼるほど喜び、坂本にまっすぐに好意を向けてくれる香に最初はすげなくし、のちには最初に原稿を読んでもらいたい存在になり、と。二十年後に功なり名を成したあとに、自分のつとめた店を再訪したら、席があるのにしかめっつらで追い返され、これこそゴールデン街、と別の店に飲みにいくのもまたハードボイルド、といったフィナーレで。どうしようもない大人に落胆させられながら、同時にちゃんと自分というものをもった大人たちに、若者よ、息子よ、弟よととにかくかわいがられる面も持つ坂本。作中語られる志水辰夫の小説のように。"弱く、自分勝手で、けれど、どうしても譲れない線があって、その線を守るために命を賭ける。その心は常に揺れ動いているんだけど、その心の揺れがぼくにはとてつもなくリアルに感じられるのだ"。そしてやりたいこと、やりたかったことが輪郭をはっきりさせ、それをつかみ取るところまでが語られる。個人的には佳子姫に諭されるところと、最後のほうでリリーが坂本のことを香に託するp.423-424は何度読んでも泣けてきてしかたなかった。最後の北上次郎の解説を読むと「バンドーに訊け！」が読みたくてしかたかなくなる。以下備忘録的に。/ゴールデン街は嫌いだが、ゴールデン街がなくなることには耐えられない。//飲みに行くのは酒が好きで、酔っ払うことが好きで、酒場の雰囲気が好きだからだ。でも、裏返せば、ひとりで夜を過ごすことを恐れていると言えるのかもしれない。「病気じゃない人は、ちゃんと終電で家に帰るのよ」(佳子姫 p.387)/「ゆるしてあげなさい。息子もいつかだれかにゆるしてもらうときがくるんだから」「そう。人はゆるし、ゆるされて生きていくのよ」(佳子姫 p.387)/だが、今のぼくには顕さんの言葉が胸にすとんと落ちて来ない。男の友情、誇り、ロマン---どれもこれも薄っぺらな言葉に感じてしまう。顕さん、あなたの生きている世界はもっとドロドロじゃないですか。酒に酔えば理性を失い、友情もかなぐり捨てて、肥大したエゴに埋もれ、欲望の虜になるじゃないですか。それが人間でしょう？p.176
 | 河出書房新社 発売日 : 2013-08-06 |
 | 河出書房新社 発売日 : 2015-01-07 |
通勤の行き帰りに、仕事の合間の昼休みに、何ページかずつ読むと、未だ見ぬ緑深き紀州の狭隘な地へとすっと心を持っていかれる。日に灼かれ、緑になじむ秋幸の力強さ。自分を産ませた実父、最初に籍に入れられた実母の先夫、ともに暮らし籍にも入れてくれた義父と三人の父をもち、父違い、母違いの兄弟は多数。海と山と川に挟まれた狭隘な地に、多くの親族とからまりあいながら暮らす日々。悪い噂の絶えない、実父への反発。妾腹の妹への複雑な思い。結婚を約束した娘への時に暴力的な思い。そして最後は遠き祖から、父の血を受けた身体がもうひとりの父の血を受けた身体へと爆発し…。狭隘な土地に煮込まれ、からみあった血族たち、己が住む土地への深い愛着と断ち切れない憎悪に翻弄された秋幸の行動はついには…と。秋幸の去った後の文昭のはりきりようと、あれほど親しかった徹の手のひらを返したようなたたずまいがまた悲しみを誘い。/それは秋幸の骨の太い体の中に流れる一つの血ともう一つの血の衝突だった(p.)/光が撥ねていた。日の光が現場の木の梢、草の葉、土に当っていた。何もかも輪郭がはっきりしていた。曖昧なものは一切なかった。いま、秋幸は空に高くのび梢を繁らせた一本の木だった。(p.80)/秋幸は川原に立ち、男を見ながら、その路地に対する愛しさが胸いっぱいに広がるのを知った。長い事、その気持ちに気づかなかった。(p.256)
| 発売日 : |
兄弟は最初スルタン・セリムの兄コルクットの庇護下に入り支援を受け。15世紀末-16世紀にかけての北アフリカはレコンキスタでスペインを追われたムスリムであふれていた。ハイレッディン兄弟は1504年以降北アフリカで活動。安定した足場をもとめチュニスの王家と接触。戦利品の1/5を収める条件でハルクル・バードに定住。1513年ジジェッリ征服、オルッチが太守に推される。1515年、セリムの庇護下に入るために使者。1518年、オルッチ戦死でハイレッディンが後継に。ハイレッディンは1533年スレイマンを訪問。1534年、アルジェベイレルベイおよび海軍提督に任命。もっとも派手な功績は1538年プレヴェザの海戦での勝利。1543年、ニースへの遠征が最後の大遠征。といった経歴。「バルバロス・ハイレッディン」遠征記は前半ではオルッチ、後半ではハイレッディンが幾多の戦闘で力を増大、商人、海賊、オスマン朝海軍提督へと駆け上がっていく。意外なのは17回の戦闘場面のうち13回が陸での戦闘を描いてること。海軍提督の戦記なのに。ハイレッディンの艦隊の豊富な物資、人員、人員の質（海の知識があるものを選抜）、一律化された戦力（中央集権的）といった記述から、敵に対し優位にたっていた、と。簡易に経歴がわかり、戦記の内容、特徴を知ることができた。あとは、あとがきにあるように、本人の叙述が元になってるので、敵対勢力から見てどうだったのか、オスマン政府側からみてどうだったのか、同時代の他の史料では、といったところに興味が。
アフメット・レスミー。スルタンの命令で派遣されベルリン長期滞在。第一全権大使としてキュチュク・カイナルジャ条約調印。40年間、官僚、鋭い批評家としてオスマン政府に仕え。徒弟から高官へ。イェニチェリの無秩序化、ティマール制の問題、軍隊の統制・兵站・兵法の問題で、西洋と軍事的な差がついた、西洋にみならうところありと。各種提言は、セリム三世、マフムト二世の改革の内容の基盤になったのでは、と。また、当時としては異色な、これ以上領土拡大せず、現状に満足し平和を求めよ、という提言も。
 | 講談社 発売日 : 2019-06-27 |
◆刑務所から出てきて、川べりのアパートに住み、塩辛工場で働く日々の主人公。ずうずうしくあがりこんで風呂と飯をねだる隣人に最初は大いに違和感を感じたが、少しずつ他の住人ともふれあい、自分を捨てた父の死とも対峙し、ゆっくりとここにいていいんだという思いが、と。◆最近手に取った木皿泉「すいか」も荻上直子「川っぺりムコリッタ」も、血の繋がりのない住人達がそれぞれ集まり、気づけば家族よりも家族らしく交流し、ここに居ていいのか？と問う主人公に、いてよしと背中押す話で、自分の好きな小説だった。何だろ、自分はシェアハウスにでも入ればよかったのかな、という雑感をいだいたのだけど。◆「かもめ食堂」「めがね」「バーバー吉野」「トイレット」「レンタネコ」「彼女が本気で編む理由」と観続けてきた監督の作品。今回は帯を見て見逃したかと思っていたが、コロナ禍による影響で上映延期だそうな◆死にそうなときは、死にそうですって大声で言わなくっちゃ。本当に死んじゃうよ（島田）p.44◆ご飯ってね、ひとりで食べるより誰かと食べたほうが美味しいのよ（島田）p.70◆期待してたり、気にしてたりってのが、もう愛だよね（南）p.126◆自分が死んだとき、寂しいって思ってくれる人がひとりいたら、それでいいと思ってるんだよね（島田）p.160◆気が付くと島田の言葉ばかり拾っていた。
 | 文藝春秋 発売日 : 2012-06-08 |
高野秀行さんがtwitterでよく調べてある、面白いとオススメしてたので。頼朝の異母弟阿野全成、北条保子夫婦それぞれを主人公に。また、梶原景時、北条義時を主人公に鎌倉幕府成立前後から初期までが描かれた連作短編。頼朝に感銘を受け失望し、その後は己のみ栄達にあずかれぬ鬱屈をひた隠し、存在感を消して側近として仕えつづけた全成。秘めに秘めてあと一歩で実朝の育て親として全権をふるえるところまできて（作中書かれなかったけどおそらく義時の示唆で）首をはねられ。誰にでも笑顔で屈託なくおしゃべり好きとだけ思われた保子が、実は全成が生き残り、権力をつかむための種を蒔いていたとしたら？ そして、武家の世を作るためと、頼朝の優柔不断で決断できず汚名を着たくない心を見抜いて、汚名はすべて自分が背負う、と心に決め、悪評も受け流してきたが、頼家に理解されず必要とされなかったことから、最後は自らが目指してきた信念を自ら打ち壊そうとして果たせず、な景時。頼朝存命中はほぼ功績なく存在感なく、父時政の言うなりにみえて、その後父時政の意を先回りして、結果を事後承諾させるようなキレを見せ、ついには父を引退に追い込み。肝心な時に居場所がわからぬよう姿をくらませ、何十手先も見据えて手を打ち、その意図に周囲が気づいた時にはすべてが手遅れといった義時。大地震干ばつ霖雨、半月つづいた彗星がふりそそぐなか死をむかえたシーンは映画にしたいほど劇的。◆「血のつながりとは、所詮、そのくらいのものなのだ」（全成）◆「四郎という人は…目の色を変えて探しても、その場にいたためしはないんだ」◆頼家が修善寺で死んだときに黒い噂がたったが、それよりも一年前に公式に死んでいたことのほうに着目すべき◆「院宣などというものは、勝ったものにはいくらでも下されるものじゃ」（大江広元）◆「謀反ではないぞ、太郎。上皇こそ御謀反遊ばされたのだ」（北条義時）
 | 新潮社 発売日 : 2022-04-27 |
まーまーな味のちゃんぽんやがつぶれたことを機に、まーまー好きだった彼女のことを思い出し。タイミング悪すぎて、クレーマーと間違えられて店長にキレられ。一方通行の偉そうなコミュニケーションをとる人を、バーニラバニラの宣伝カーと一緒だと喝破。「世の中にこれしかない！なんてことはないから。そもそも答えなんてないから。あっち行ったりこっち行ったりしてる間におしまいになるだけだから。好きにやれよ」という金魚屋の主人のことば。結婚報告してきた元カノに言えなかった「ドキドキしない日常を一緒に過ごしていけることを、人は愛しあってるってい言うんだよ」。一泊3000円のビジネスホテルやコーヒー200円のチェーン店などなどへ、求めすぎる客に、求めすぎなんですよ、という思い。といったあたりが印象に。思い立って失踪して石垣島のスナックのママのところで一週間みたいなエピソードが以前あったような気がするけど、今回はバーでとなりあった女性と勢いのまま、連絡先も知らぬまま、熱海の温泉に乗り込み。そのあとどうなったんですかああ！と問いたい。あと、最初のほうのいくつかは、他の本に同じネタがあったような。そういうのも含めてあたたかい目で見てね、ということでよろしいでしょうか、と思ったり。
 | NHK出版 発売日 : 2019-08-10 |
◆テクノロジーによる監視体制がどのようなものか、豊富な実例とともに語られ、それを中国人はどう考えているのか、それらの体制が中国固有で自分たちと無関係と断ずるのは短絡的で、監視体制を成り立たせるにいたった思想背景は、日本や欧米諸国でも見いだされるものである、と。◆テクノロジーによる監視の仕組み。特に、SNSの投稿やメッセージアプリのメッセージを削除するのではなく、閲覧できなくしたり、届かなくすることで、削除されたと投稿者にさとられることなく、反応がなかったのかなといった方向に持っていかせる、というのは巧みであるとともにうすら寒い思い。信用スコアの運用の事例、民間ではともかく、行政ではごく一部の都市でゴリゴリに運用されてるほかは中身をともなってないこと、スコアの上下が一般ユーザーには不可解な点、またフリーランスの人にはスコアのみを見てくれてありがたい、という面も語られ。中国人ユーザーがみなプライバシーを喜んで提供してるのではなく、「中国の消費者はプライバシーが保護されるという前提において、企業に個人データの利用を許し、それと引き換えに便利なサービスを得ることに積極的だ」という語り。また、中国での監視体制の運用が、中国固有の事情に根差した、自分たちの世界とはまったく異質なものだ、という理解はあやまりで、監視が先鋭化し、人々が受け入れていく背景には、安全と自由のトレードオフで安全側に傾いていく人々の傾向があり、それはどの社会でも起こりうること、と思想的背景まで掘り下げて語られ。最終章は新疆での先鋭化した監視体制が、監視が究極的にいきついたケースとして語られる。
小笠原弘幸「ハレム」（新潮選書）の参考文献にあげられていたので。英独仏羅希ポーランドと各国語に通じ、トルコに初めて楽譜をつたえ、音楽家であると同時に、言語学者、翻訳家、詩人、歴史家、ミニアチュール画家であった。その手記の語るところでは、ときには肉がいきわたらずスープでおなかをいっぱいに。トルコ人はあまり風呂にはいらぬヨーロッパ人に比べ痛風や胆石にかかるものがすくない。結核、慢性的に体に水がたまる、慢性的便秘などが小姓たちのかかりやすい病気。小姓たち同志、女官同志の恋愛は厳しく禁止。スルタンムラト4世は小姓と恋愛。などといったエピソードがひかれ。当時の暮らしや思想を知るうえで参考に。ただ、手記直接ではなく、ヨーロッパ人の書簡に引かれたことから、彼の意見も入っているのでは、と。ユダヤ人は卑怯で臆病、金貸ししかできぬと軽蔑、などというのはそういった例のひとつか、と思いつつ。
 | イースト・プレス 発売日 : 2022-03-17 |
TRANSIT(トランジット)44号 砂漠の惑星を旅しよう で、著者がサハラの塩キャラバンの映画を撮ったという記事を見てから興味を持っていたのだが、この度本を出すとのことで購入。フランス人、日本人の両親を持ち、フランス、日本、どちらにも寄る辺なさを感じ、息苦しさ、問題意識を抱えていたところに、砂漠への憧憬がつのり、数々の困難をくぐりぬけ、ついに塩キャラバンへ帯同。そして彼らを撮影するドキュメンタリー映画も撮影。現地でラクダに乗って過酷な砂漠旅を味わうツアーを企画し、客たちを迎え入れたが、サハラ砂漠の干ばつとテロで中断を余儀なくされ。その後は、東日本大震災で現地をリポートしたのを皮切りに、砂漠のウラン鉱の真実に迫り、と。なかなか外からはうかがい知れない遊牧民と砂漠の暮らしの一端を知ることができ、彼らの考え、慣習などを知れてよかった。そして著者の行動力と人を巻き込む力には頭が下がる思い。過酷な砂漠の旅の紀行はともに旅しているかのようにヒリヒリと厳しさが真に迫り追体験させくれた。◆「塩キャラバンは、もっとも優れた知恵に基づき、環境に優しい、自給自足体制を保つ最高に未来派のエコロジーな交易」（ゲルト‣スピトラー）◆「塩キャラバンは前進しながら買ったり売ったりする循環の交易なんですね？」（バルダラン）「そうだ。キャラバンは輪である。今の旅は翌年の旅の準備でもある」（アダム長老）◆（ラクダの不調で積み荷を手放し）「ラクダのほうが大事だ。それをわからない男はラクダも荷物も失うだけだ」（リーサ）◆「砂漠の無限に私を埋めよ。底知れぬ愛に死ぬ者には、底知れぬ忘却を」（フーコー神父の残した、ㇺサとダシンの詩集）◆
歴史学者としては、過去の感染症の例を出してくるにとどまらず、新型コロナウィルスの死者に比して、なぜ自殺者数や交通事故死者数は語られないのか、過去の「スペイン風邪」時には現行ほど当時の人が深刻さを感じてなかったのはなぜか、むしろ感染症より戦争と休戦が主な関心事だった、そして現在エッセンシャルワーカーとされる人には光があたらず、いまもその状況が続いているのはなぜか、という点にも目を向けるべきという提言。
| 発売日 : |
◆トーキョーブンミャクの雑誌「今夜」第一号に心惹かれて、その中の著者のひとりということで購入。◆熱く語るシティボーイな前書きのあとのひとつめのエピソード、バスのなかで噴出をとどめられなかった話…のインパクトが強すぎて、そのあと二つめ、三つめが頭にはいってこなかったりしたけど、気をとりなおし。◆BUMP OF CHICKENの歌に青春の日々をほろ苦く思いだし、ちょっと油断するとぜんぜん大切じゃないものに大量の時間を投入しがちになることを思い、「人は生きている限り精神的貴族でなくてはいけない」と日常の渦に飲み込まれがちな時に楔を打ち込み、迫りくる死の恐怖を家族や周囲には毛ほども見せず逍遥と死についたように見えた編集者が遺した短歌にこめられた苛烈な遍歴の思い。詩作を一部の人以外にも、とすそ野を広げるような対話が描かれるジム・ジャームッシュ監督の「パターソン」。読みたくなった、潮見惣右介「さよならBUMP OF CHICKEN」。◆そして「書く」ということに意識的である姿勢。「普段は何食わぬ顔でツイートしている生活や風物やカレーのことについて、そのことよりももっと大事な言及すべきことがあるような気がしてならなかった。誰から求められているわけでもないけど、その何かを知らんふりしてツイートボタンを押すのは不誠実な気がした。」「生活は「権力」によって守られるべきものだ。同時に、「権力」から守らなければいけないものでもある」という言葉が刺さってくる。◆「泣いていい生きてもいいと知ったとき初めてオムライスを残した」「知らない海辺にいて好きだったものを数える」という短歌と自由律俳句がなぜか染み入り。
2022年04月18日
#えべつ同人マーケット tweetまとめ ※一部後日譚あり
宵さんから教えてもらって、足を運んだ、 #えべつ同人マーケット 。お目当てだったぽやん舎さん、鳥辺茜さんはじめ、大収穫でした。 pic.twitter.com/Uyo2YpnA3c
— ちょく (@choku70) April 9, 2022
#えべつ同人マーケット 収穫その2と会場の様子。読むの楽しみです。 pic.twitter.com/4h9EF9dlFq
— ちょく (@choku70) April 9, 2022
#えべつ同人マーケット キッチンカーも充実してました！たっちゃんのケバブ（エスニック、ターキッシュ）、えべたこのネギ塩ベーコン焼き、しるしるのくるみ入りスープと３種制覇。美味しくてお腹いっぱいで大満足でした。 pic.twitter.com/gKIUCJDJoW
— ちょく (@choku70) April 9, 2022
#えべつ同人マーケット で買った #ぽやん舎 さん新刊の、おばけちゃんとうさぎちゃん。あのオバうさシリーズとは別とのこと。学校に行かないうさぎちゃんの自尊心を損ねずに気にかけるおばけちゃんのおだやかな優しさが染み入ります。自家製ねるねるねるねるねはパワーワード^^ pic.twitter.com/S9ITeKgWXq
— ちょく (@choku70) April 9, 2022
#えべつ同人マーケット で配布されてた、雑サーニャ19号。探偵ナイトスクープの「元カレのお母さんの料理をもう一度食べたい」はたしかに観たくなるテーマ。吸引力高めのワードだなあと。Stray Kids「ソリクン」のPVはほんと中毒性あります。 pic.twitter.com/OFrlZEoejy
— ちょく (@choku70) April 9, 2022
#えべつ同人マーケット で配布の、雑サーニャ20号（19号と表裏一体） 宇野さんのポーズはあの赤塚不二夫先生の有名な…と思ってしまい。また「吉祥寺少年歌劇」の紹介には強く心惹かれました。佐藤浩市は子供の頃連れられて観た映画「敦煌」の精悍なイメージがいまたに強くあります。 pic.twitter.com/sFbMqEAjDL
— ちょく (@choku70) April 9, 2022
※このあと、町田粥「吉祥寺少年歌劇」はKindleで買いました。めっちゃよかったです。
#えべつ同人マーケット で買った鳥辺茜さんの「足跡」。バスさえ廃止になった地を冬に歩く一編。見開きに広がる雪原の絵に心がしんとなり、「ええ、何もなかったわ でも行けてよかった」というセリフがまさに万感、といったかんじで心に残りました。 pic.twitter.com/Q364H96YRR
— ちょく (@choku70) April 9, 2022
#えべつ同人マーケット で購入、眠都さん、アケミックスさんの「バルと梅割り」。四文屋とスペインバルMapacheが取り上げられ。キンミヤ梅割りは一杯でノックアウトされる身になっちゃったのよね。けど味変レシピには興味大。バレンシアパエリアはカタツムリ入りの本場レシピの食べたくなりました。 pic.twitter.com/MmKLxKp2it
— ちょく (@choku70) April 9, 2022
※眠都さんのペンネームのもとになったマンガ、探し中です。
#えべつ同人マーケット で買った、SF007 @SF0O7 さんの「THE ゲーム雑記帳2」。個人的には、地図とお店の解説付きゲームセンターの思い出がすごく刺さりました。ほんと札幌のゲーセンて今よりもっとたくさんありましたよね。あと下段の細かい解説をちまちま読んでくのが楽しかったです。 pic.twitter.com/NrJd1dEwFg
— ちょく (@choku70) April 10, 2022
※このあとコメントで、スマホゲームでも「シティコネクション」できます、と教えていただきダウンロードしてきました。操作感ちがってムズイけど、なつかしくあそびました！
#えべつ同人マーケット で買った、アケミックスさんのアップルバイバー。二作品入ってるけど個人的にはどちらもなかなかに強烈でした。レストランいしかわの欠番になってるメニューを頼むとでてくるのは…。そして人生イージーモードのイケメン男子高校生が知り合った3人の先輩は…、と。 pic.twitter.com/1ChEJNdABI
— ちょく (@choku70) April 10, 2022
※ちょっと、途中、夢かうつつかわからなくなるところもあったけど、ほんと怖かったです、レストランいしかわ。あと、先輩たちのキャラが強烈すぎた。
#えべつ同人マーケット で買った、根本誠 日記漫画 札幌の六畳一間2017。地下鉄とかによくあった浮き島トイレのことはよく覚えてます。あと自転車のサドル盗られて40分立ち漕ぎして帰ったこともあったなあ。 pic.twitter.com/v9bHpXGANZ
— ちょく (@choku70) April 10, 2022
#えべつ同人マーケット でもらった、スガラムルディ。手書きの映画語りからほとばしる熱を感じました。札幌映画館案内はしばらく足を運んでないうちに料金やら割引やら色々変わってたんだなあと感慨。とてもよくまとまっててありがたし。 pic.twitter.com/k0D8FV2Ni1
— ちょく (@choku70) April 10, 2022
#えべつ同人マーケット で購入した、ヤマダ代務さんの、トゼンソウ1-2。1の最後の、いにしえのメッセージアプリでイスラエルの子と英語でやりとりしてたことがその後の人生に影響与えた話が好きでした。あと思い出話に共感するところがいくつも。あとがきの炙りや浸しは試そうか迷うところ。 pic.twitter.com/2UZgrpWsqL
— ちょく (@choku70) April 10, 2022
#えべつ同人マーケット で買ったもの、もらったもの、ようやくひと通り読み終えました。内容もバラエティに富んでて、笑ったり、なごんだり、ハラハラしたり、それは知らなかった！と思ったりさまざまで、大満足でした。
— ちょく (@choku70) April 10, 2022
2022年04月05日
2022年03月に読んだ本
0301【再読】新井満 サンセット・ビーチ・ホテル
0301【再読】村上龍坂本龍一 EV Cafe …浅田彰、柄谷行人のみ
0302 モダン古書案内 マーブルトロン 2002年 図書館
0302・岩波文庫編集部（編） 世界名言集 2002年 読書室ポワロ
0302・佐藤泰志作品集 図書館…小説（大きなハードルと小さなハードル、納屋のように広い心、虹、移動動物園、鬼ガ島）及び、エッセイ、詩、を読了
0303・ポイズン通信DX2 シーソーブックス 20220225
0303・【再読】上原隆 にじんだ星をかぞえて
0303・滝口悠生 薄荷（kaze no tanbun 夕暮れの草の冠 所収 読書室ポワロ ****）
(booklogなし0303・【再読】木村紺 神戸在住 8-10
0303・【再読】新井満 尋ね人の時間
(booklogなし0303・【再読】ボルヘス 伝奇集 …「トレーン、ウクバール…」のみ読了 …「偏愛蔵書室」つながり
0305・芝健介 ヒトラー 岩波新書 図書館
0306・安井かずみ 加藤和彦 ワーキング・カップル事情
(0306・佐久間薫 カバーいらないですよね
(0306・ギャラリーフェイク36
(0306・ひとりでしにたい4
0306・夢眠ねむ 本の本 夢眠書店、はじめます20220302
0308・新井満 そこはかとなく 図書館
0309・新井満 髭とパラソル 図書館
0309・ダニエル・L・エヴェレット「ピダハン 「言語本能」を超える世界と文化観」図書館 …吉野朔実、阿久津隆つながり
(0309・谷崎万華鏡 谷崎潤一郎漫画アンソロジー 読書室ポワロ
(0310・booklogなし【再読】村上春樹訳 Cover's Dozen（「大聖堂」のみ読了…やはり自分にとってはいちばん最後の一言が、解釈に幅がありすぎて、謎）
(0310・キングダム 63 キャロル
(0308-0310・鬼滅の刃 9-23
0311・鬼滅の刃 鬼殺隊見聞録 弐
(0311・アルカサル1 秋田文庫 20210307
(0312・衿沢世衣子 光の箱2
(0312・永田礼路 螺旋じかけの海4
0312・アルフィアン・サアット マレー素描集 図書館
(0313・ハコヅメ 別章 アンボックス kindle 20220313
(0314・ハコヅメ 4-20に相当する話数 コミックDaysで単話買い
0316・珈琲店タレーラン7
0316・磯部涼 ルポ川崎 図書館
0317・夢眠ねむ まろやかな狂気 夢眠ねむ作品集 20220302
0319・仁藤敦史 藤原仲麻呂 古代王権を動かした異能の政治家 中公新書 図書館
0320・菅野芳秀 七転八倒百姓記 20220312
(0321・石塚真一 Blue Giant Explorer 3-5 Hatocoffee
(0321・鍋に弾丸を受けながら 1
(0321・七つ屋志のぶの宝石匣(16)
0322・望月衣塑子 新聞記者 20220321
(0322・ヒヅメ 一級建築士になりたい 20220321 kindle
(0323・刷ったもんだ6 kindle
0324・梨木香歩 雪と珊瑚と 20220307
(0324・燃え殻xおかざき真里 あなたに聴かせたい歌があるんだ 20220324 kindle
0326・滝口悠生 茄子の輝き 図書館
(0326・タスクオーナ （米澤穂信原作）氷菓 14
0327・三上延 ビブリア古書堂の事件手帖III ~扉子と虚ろな夢~ (メディアワークス文庫) 20220326
(0327・戦国コミケ 1-5
(booklogなし)0328【再読】フィッツジェラルド マイ・ロスト・シティーより、マイ・ロスト・シティー …映像の世紀カラー版、アメリカ1920年代編に引用されてたのに触発されて。端的に描かれた繁栄と喪失。
0330・小笠原弘幸 ハレム 新潮選書 20220326
(0330・【再読】みのり伝説 1-9 20220330 0331・魚豊 チ。地球の運動について7 kindle
0331・滝口悠生 死んでいない者 図書館
0331・ポール・オースター(編) ナショナル・ストーリー・プロジェクト1. 20220308
0301【再読】村上龍坂本龍一 EV Cafe …浅田彰、柄谷行人のみ
0302 モダン古書案内 マーブルトロン 2002年 図書館
0302・岩波文庫編集部（編） 世界名言集 2002年 読書室ポワロ
0302・佐藤泰志作品集 図書館…小説（大きなハードルと小さなハードル、納屋のように広い心、虹、移動動物園、鬼ガ島）及び、エッセイ、詩、を読了
0303・ポイズン通信DX2 シーソーブックス 20220225
0303・【再読】上原隆 にじんだ星をかぞえて
0303・滝口悠生 薄荷（kaze no tanbun 夕暮れの草の冠 所収 読書室ポワロ ****）
(booklogなし0303・【再読】木村紺 神戸在住 8-10
0303・【再読】新井満 尋ね人の時間
(booklogなし0303・【再読】ボルヘス 伝奇集 …「トレーン、ウクバール…」のみ読了 …「偏愛蔵書室」つながり
0305・芝健介 ヒトラー 岩波新書 図書館
0306・安井かずみ 加藤和彦 ワーキング・カップル事情
(0306・佐久間薫 カバーいらないですよね
(0306・ギャラリーフェイク36
(0306・ひとりでしにたい4
0306・夢眠ねむ 本の本 夢眠書店、はじめます20220302
0308・新井満 そこはかとなく 図書館
0309・新井満 髭とパラソル 図書館
0309・ダニエル・L・エヴェレット「ピダハン 「言語本能」を超える世界と文化観」図書館 …吉野朔実、阿久津隆つながり
(0309・谷崎万華鏡 谷崎潤一郎漫画アンソロジー 読書室ポワロ
(0310・booklogなし【再読】村上春樹訳 Cover's Dozen（「大聖堂」のみ読了…やはり自分にとってはいちばん最後の一言が、解釈に幅がありすぎて、謎）
(0310・キングダム 63 キャロル
(0308-0310・鬼滅の刃 9-23
0311・鬼滅の刃 鬼殺隊見聞録 弐
(0311・アルカサル1 秋田文庫 20210307
(0312・衿沢世衣子 光の箱2
(0312・永田礼路 螺旋じかけの海4
0312・アルフィアン・サアット マレー素描集 図書館
(0313・ハコヅメ 別章 アンボックス kindle 20220313
(0314・ハコヅメ 4-20に相当する話数 コミックDaysで単話買い
0316・珈琲店タレーラン7
0316・磯部涼 ルポ川崎 図書館
0317・夢眠ねむ まろやかな狂気 夢眠ねむ作品集 20220302
0319・仁藤敦史 藤原仲麻呂 古代王権を動かした異能の政治家 中公新書 図書館
0320・菅野芳秀 七転八倒百姓記 20220312
(0321・石塚真一 Blue Giant Explorer 3-5 Hatocoffee
(0321・鍋に弾丸を受けながら 1
(0321・七つ屋志のぶの宝石匣(16)
0322・望月衣塑子 新聞記者 20220321
(0322・ヒヅメ 一級建築士になりたい 20220321 kindle
(0323・刷ったもんだ6 kindle
0324・梨木香歩 雪と珊瑚と 20220307
(0324・燃え殻xおかざき真里 あなたに聴かせたい歌があるんだ 20220324 kindle
0326・滝口悠生 茄子の輝き 図書館
(0326・タスクオーナ （米澤穂信原作）氷菓 14
0327・三上延 ビブリア古書堂の事件手帖III ~扉子と虚ろな夢~ (メディアワークス文庫) 20220326
(0327・戦国コミケ 1-5
(booklogなし)0328【再読】フィッツジェラルド マイ・ロスト・シティーより、マイ・ロスト・シティー …映像の世紀カラー版、アメリカ1920年代編に引用されてたのに触発されて。端的に描かれた繁栄と喪失。
0330・小笠原弘幸 ハレム 新潮選書 20220326
(0330・【再読】みのり伝説 1-9 20220330 0331・魚豊 チ。地球の運動について7 kindle
0331・滝口悠生 死んでいない者 図書館
0331・ポール・オースター(編) ナショナル・ストーリー・プロジェクト1. 20220308
 | 講談社 発売日 : 1989-01-06 |
浅田彰、柄谷行人の部分のみ、何年ぶりかの再読。/根拠や一貫性をとことん追求する。絶対的に突き詰めていくっていうことが、極限において、根拠だの一貫性だのがもはやなりたたないような底抜けの状況につながらざるを得ないというパラドックスを問題にしているわけで、それ以前のところでフワフワしてもらったんじゃ話にならない（浅田）//メタリックな金属音みたいなものに対する興味（略）それが入ってくると共同体と自然の間にざっくりと傷口があいちゃうし、また武器であり貨幣である（浅田）といったあたりが興味深く。柄谷対談は、神秘主義の取り扱われ方が、今とは若干違って思われ。また、基地のある都市産まれ・育ちで過剰にアメリカにやられてる田舎者と感じてた村上龍が、それは村上龍個人の個性に帰せられるのではと指摘されたり、何度も坂本龍一をきみは都会人だからとあたってみたり。村上龍が気に入らない褒められ方した時に村上春樹に相談してたり、坂本龍一の「コマーシャリズムをからませる村上春樹 神秘主義をよけて通ってね」という見方などが目にとまり。
 | 文藝春秋 発売日 : |
(2022/03/01読了分)新井満の訃報に接して、何冊か読み返したくなり。夫たる映像作家はミクロネシアの楽園で、バドワイザーの空き缶、放射能を含んだ風、マナーの悪い焚き火、スペースデブリに、この世界は長くないのでは、と危惧しつつ最後は隕石に撃ち抜かれ。妻たる書道家はニューヨークでキモノで動の書パフォーマンスが喝采を受け。一方、奇妙な車椅子の老人に導かれ、幻のコレクションを有すると称する美術館に案内され、パフォーマンスを請われるがそこは…と。「自分に出来る限り正直になろうとした時、人は少しずつ外れて行くのかもしれない」。そして、夫と再度向き合おうと思ったときにはすでに…と。(2016/12/11読了分)夫と妻、南の島と寒冷なNY、自然が好きと人が好き、撮影する者と自ら描く者、さまざまな対比がなされる二編が収められる。こんにちは、さようなら、ありがとうを意味するマーシャル後、ヤボイ！。絶海の楽園かと思われた地で見かけた後始末の悪い焚き火のあとに、地球は長くないのでは、と思いを馳せる夫。サムルノリの音楽に身体震わされる妻。「夫婦とは何だろう、と碧は思う。二人で生きるということか。ならば、なぜ二人なのか。一人で生きられないからか。だが、一人を生きられない者に、二人を生きる資格はない。そう思ったからこそ、申し出た別居である。」(p.180)という独白。<毎日、どうしていますか><私？私はね、毎朝、生まれるの><ほう><そして、毎晩、死ぬの><あいかわらずだなァ>(p.180-181)という対話が心に残る。
 | 岩波書店 発売日 : 2002-05-20 |
「ベーコン随想集」、サマセット・モーム「月と六ペンス」あたりがいくつも心に響いたので、手に取ってみたい。以下備忘録。/ひとを罰しようという衝動の強い人間たちには、なべて信頼を置くな！（ニーチェ「ツァラトゥストラはこう言った」）/自分を憐れむという贅沢がなければ、人生なんていうものは堪えられない場合がかなりあると私は思う（ギッシング「ヘンリ・ライクロフトの私記」）/「シーザーを理解するためには、シーザーである必要はない」。そうでなければ、あらゆる歴史記述は無意味であろう。（ウェーバー「理解社会学のカテゴリー」）/真実でさえ、時と方法を選ばずにもちいられてよいということはない（モンテーニュ「エセー」）/苦労はたいてい、人間をけちに意地悪くするものなのだ。（モーム「月と六ペンス」）/恋愛はただ性欲の詩的表現を受けたものである。少なくとも詩的表現を受けない性欲は恋愛と呼ぶに値しない（芥川龍之介「侏儒の言葉」）/愛は嵐を見つめながら、揺るぎもせず、いつまでも、しっかと立ち続ける灯台なのだ（シェイクスピア「ソネット」）/共通の過去を持ち、何でも話し合い、何でもすることができて、しかも、いつでも他人でいられる男と女って、まれにしかあるものでない。（伊藤整「変容」）
ユリイカ1987.4 特集「喫茶店」、デュジャルダン「もう森へなんか行かない」、安井かずみのエッセイ、吉田豪が紹介する男気あふれるタレント本、岡崎武志の西荻古書散策あたりが興味をひいた。
 | クレイン 発売日 : 2007-10-10 |
小説（大きなハードルと小さなハードル、納屋のように広い心、虹、移動動物園、鬼ガ島）及び、エッセイ、詩、を読了。/「移動動物園」の役に立たなくなった動物を殺すシーンの生々しさと凶暴さと、園長とはなれられない道子への主人公の思い。「鬼が島」の、主人公の父の「どこにでも行け、ゴミみたいなことをいっぱい知って、ゴミみたいな男になれ」という怒声、文子の少女期の経験からどの男の子供も堕す、養護学校の職を選ぶ、誰にも文句など言わせないという力強さ。「大きなハードルと小さなハードル」「納屋のように広い心」でのアルコールにおぼれる秀雄のどうしようもなさと差し伸べられた手を素直にとれない意固地さと、後悔しているかという問いへの、妻の「誰にいっているの。馬鹿にしないでほいしわ」という毅然さ。遺作となった「虹」が、父母も職場の資料館も村も顧みず、田舎の村を捨てる決意を固めた主人公が、友人を追いかけて都会からきた女性と対話を重ねるうちに、決心を改め、急いで出ていくことはないと残ることに決めたところに感じた救い。
 | 朝日新聞出版 発売日 : 2009-06-05 |
(2022/03/03読了分) 再読。「その人のことを思い出してる時の方が、会ってた時より好きだなって思うんです。これって不幸ですよね」というもりさんの述懐。「あいつさえいなければ、今ごろ、心弾ませて仕事したのに」という言葉の袋小路とやりきれなさ。十万くらい貸すけどそれでそのあとどうするの、正直に言ったほうがいい、それでどうなろうといいじゃない、刑務所もそんな悪くない、と諭してくれた友人。「ひょっとしたら、私が亡くなればこの宇宙全体も無くなるのでは」という天文学者の遺書の一節。自分が感動したとことをすぐにでも伝えたくて文章を書いている、それを見抜いて、高校の頃からぜんぜんかわらないなと評してくれた友人。そして、二人でいる時に相手を楽しませられない、自分の興味を優先したり、一人になりたくなってしまうという自分語りのコラム。といったあたりが印象に。(2012/09/17読了分)59歳のベテランマンガ家の「カッコ悪いけど」「ジタバタしたことじゃないかな。この歳でもジタバタじていいんだね」ということば。画家・石井一夫が、一日の最後に落語のテープをききながら眠るシーン。突然死んでしまった長女を、父母妹三人とも他の家族にきづかって、ひとりの時にしか涙をながさなかったこと。ひょうにあたって傷物になってしまったりんごを「的中りんご」として売り出して成功した農家の話し。横領を隠してごまかしてとうとうバレて社長に告げた時の、「もうこれで?をつかなくていいんだと思うと正直ホッとしました」という独白。ビッグイシューさえ、左手にかかげられれば、金がなくなってもこわくない、というホームレスのことば。そして、天文学者磯辺氏の言葉をひいた一節。”「天文学が人類に与えた最大の貢献は」と磯辺は書いている。「人類の存在が有限であることを知らせたことである」では、人類が滅びるとわかっていて、生きることにどんな意味があるのだろう。「人類は何故生きるのかという問に対して答えを求める努力が必要であり、そのためにも生き続けなければならない」生きる意味を知るために生きる、これが結論だ。”p.195 地べたを這うようによりあつめた市井のことば、悲喜こもごもな情景から、宇宙にまでひろがった大きな話しまで。
 | 文藝春秋 発売日 : 1991-08-10 |
(2022/03/03読了分)新井満の訃報に接して、再読。カフカの外套、黒い傷のある部屋、ヴェクサシオン、サンセット・ビーチ・ホテルと読み返したあとに。何年かごとにまとめて読み返す作家だなあ、と。厭世的で世の中斜めに見て、あまりに健全で体育会的なものを忌避する姿勢は、バブル真っ盛りで物質では充分に満たされてるけど、でも…という世界ではアンチテーゼとして効いたのかな、という思い。その背景がなくなるとただの絶望に堕してしまう危惧。ただこういう主人公嫌いじゃないのよね。(2016/12/21読了分)何年かぶりの再読。ヴェクサシオン、サンセット・ビーチ・ホテル、尋ね人の時間、と読み進めてくると、サンセット・ビーチ・ホテルの併録作をのぞいて、骨の髄まで厭世的な男が主人公なんだな、というのが改めて感じられる。この作品も、不能者の増加は人口爆発を抑える地球の意志、フランスの田舎にある二歩進んで三歩下がるリゴドン・ダンス、スクランブル交差点が苦手…。生きることに積極的でないと責められても、それが自分と、むしろ、地球はこの先長くないのでは、という確信を深めていく。発表から30年経ったけど、残念ながら、まだ地球はありますよ、あなたが見たかった地球ではないかも知れませんけど、と語りかけたい心地に。
 | 柏書房 発売日 : 2021-06-30 |
(2022/03/03読了分)滝口悠生「高架線」がよかったので、こちらの「薄荷」も読みたくなり。祖母の家の後始末をするために故郷に訪れた主人公の、家族をめぐるひとり語りや、自らの遠い記憶の経験しなおしが描かれ。/"死んでいるからといって生きている者の話し相手になれないわけじゃない"/祖父、祖母、光ちゃんのエピソード。恋人のお腹の中のこれから生まれてくる子供へ語りかけ。/祖母の住んでた家を訪ねようと歩き始めて迷い/まさか光ちゃんが娘とは…/"自分の記憶には自分の知らない間違いがきっともっとたくさんあるのだ、そう思うと私はなぜか救われた気持ちになって"/(2022/01/21読了分)短文アンソロジー。夫がランダムに名付けたという娘の名前たうぽ、人にいぶかしがられるたびに、ニュージーランドに同名の湖が、と言い訳するたびに愛着が湧いてきて、娘はすくすくと育ちやがて本当にニュージーランドに留学し就職も決めて同性のパートナーと子供ももうけ、とかろやかに怒涛の展開をみせてくれた、松永美穂「たうぽ」が個人的ベスト。他に、なかなかハワイにたどりつけない、青木淳悟「旅行（以前）記」。先に気づいてすばやく耳にささやくことでお互いが死に向かって逃れようもなく絡み合ってしまう、早助よう子「誤解の祝祭」（栗原康作品に出てきて一度読んでみたかった作家さん）。人みな口から出るゼリー状の繭につつまれる世界、岸本佐知子「メロンパン」。学校のトイレに霊が見えるという同級生をぼこぼこにしてしまい、その後和解らしきものがおとずれる、柿村将彦「�發覆鵑箸�君」。も、よかった。/飛浩隆「緋愁」。道路管理の公務員が主人公で、ガードレールに布をぐるぐる巻きにする教団の語る、「いずれ個人が携帯電話でつく嘘とテレビの嘘が混じり合うようになる。そうしたらあっという間だ。ひとの数だけある主観世界が漏れて現実をじっとりと溶かす。」て一節が印象に。
| 発売日 : |
ソーシャルワーカーが支援してる人たち「自己責任論を振りかざしたり、家族の支え合いなどを強調してごまかしたところで、決して解決が見込めないもの、そういうものへの対処も含めて、安倍政権を支持しない人間がここにいる、という事実を、身を持って示さなければ、今の政治に反対する声は、存在しないことにされてしまうという思いがベースにあった街頭演説へのヤジ。（声をあげる人への）「行為が迷惑」ではなく「存在が迷惑」という圧力/おせっかい的なものが滅んだ社会と「迷惑」「マナー」概念が氾濫する社会はつながっている、という指摘。/「公共の空間をオキュパイして姿を見せること、あるいはそこが自分たちの場なんだと示すことが運動なんじゃないか」/街宣車の上にいる彼の意見の重さと、地面から発するわたしの意見の重さは同じです/
/「ひとりひとりが考え続けなければいけない」「私たちにとって決して他人事ではない」などの記述→日本では「自分が政治的決断、行動しなくてもなんとかなる」という考えが一般的だからでは（※）/といったあたりが気になったところ。（※）ののところは、まずは知ることが大事、といいつつその先に進めていない、これを書いている自分のことを指してるようでもあり。
/「ひとりひとりが考え続けなければいけない」「私たちにとって決して他人事ではない」などの記述→日本では「自分が政治的決断、行動しなくてもなんとかなる」という考えが一般的だからでは（※）/といったあたりが気になったところ。（※）ののところは、まずは知ることが大事、といいつつその先に進めていない、これを書いている自分のことを指してるようでもあり。
 | 新潮社 発売日 : |
山崎まどか「ブック・イン・ピンク―おしゃれ古本ガイド」つながり。(2013.12.18) で買ったのを10年近く寝かせたあと、「モダン古書案内」でまた見かけて通読。ワーキング・カップルていまは言わないですよね。30年近く前は珍しかった共働きもいまは普通。そして二人とも売れっ子作詞家、ミュージシャンのスーパーカップル。リフレッシュには年に数回の海外旅行、とかぜんっぜん参考にならないたころから、家に帰ってとりあえずテレビつけるなんて怠惰、うちはサティかマーラーの五番…みたいのから、夫婦間はなんでも話し合うべき、夫婦はお互いを諦めてはならない、夫婦間では異性の友人関係はオープンに、という真っ当なことまでグラデーション。時代の先端をいってるという自負を感じたかど、それでも男だから、女だからこうすべき、みたいのはやはり色濃くあったんだなあと。好きなエピソードはふたつ。メキシコに行った時二人ともマヤ文明にはまり、テラスでお互いお気に入りの論文読んで夜は喧々囂々議論を戦わせ、1週間たっぷり遺跡を堪能…味わい深かったろうなあと。あと、加賀まりことの最初の出会い。軽井沢で当時珍しい黄色のオープンカー走らせてたら向こうから馬に乗った加賀まりこが来て、何この女みたいな目で見られたのが最初…てドラマのワンシーンみたいな。
 | 双葉社 発売日 : 2021-03-17 |
ちょっとやる気と知識が足りなくておっちょこちょいだけど、めげず折れず、まわりに怒られたり、かばわれたり、カバーされたり、ちょっとずつ仕事を覚えていき。包装、話好きすぎるお客さん、返品する本の梱包、常連さん対応などなど書店員ならではのことも描かれて。
 | 講談社 発売日 : 2022-02-22 |
人として生き、人として死にたい、尊厳を持って、と。父のあやうい投資話を止め、社内であらぬ噂を立てられ距離をおき、自分の保険を見直すために元カレに連絡と言うところまで。
 | 双葉社 発売日 : 2021-03-17 |
ちょっとやる気と知識が足りなくておっちょこちょいだけど、めげず折れず、まわりに怒られたり、かばわれたり、カバーされたり、ちょっとずつ仕事を覚えていき。包装、話好きすぎるお客さん、返品する本の梱包、店内でのメモ・撮影への注意、常連さん対応などなど書店員ならではのことも描かれて。
 | 小学館 発売日 : 2022-02-28 |
コロナ禍のフジタ、マスク姿のフジタ、ワクチンの副反応に苦しむフジタ…一巻から読んでた身としては時を超えてるなあ、と。/ヴァロットンは不思議な画家、初めは版画家として売れ 白黒のみの斬新な構図で市民の風俗をシャープに切り取る/長年贋作を量産して美術館に寄贈し続けた男マーク•ランディス、ドキュメンタリー映画あり。観てみたいなあ。/クーデターで大混乱のミャンマーへ/少年時代の藤田の話もあり。陶芸家の祖父、日本画家の父、贋作に翻弄された一族、藤田もまた。
 | 新潮社 発売日 : 2017-11-30 |
夢眠書店開店に向け、書店員、編集者、ブックコーディネーター、独立系書店主、営業、宣伝、取次、校閲、装丁とさまざまな本作りに携わる方にインタビュー。すすめられないと本を手に取らない方、本を手に取るタイミングが減っている方が多い、そういう方にも届けたい！と書店、出版社立ち上げまで視野に入れて、アドバイスを受けつつ、と。さまざまな工程、立場にある人との対話から柔軟にヒントを得ている様がいいなあと。最終章では、装丁の方と、実際にこの本の装丁やフォントが決まっていく課程が語られ、本を見ながらだと興味も実感も倍増して面白かった。あと印象に残ったのは、史料の引用だけじゃなく、史料の解釈までチェックする新潮社校閲部の力強さと、まず見本から本を作っちゃうクラフト・エヴィング商會の本作り、発送の方法、「物語の扉を作ること」という意識かな。
 | 岩波書店 発売日 : 2021-09-21 |
権力掌握までの過程は、民主主義にのっとってドイツ国民に選ばれたなどとはとても言えないものだった、という所感。「わが闘争」には、ヒトラーによるごまかし、意図的な省略、捏造のうち、まだ信じられてるものがあること。ヒトラーが、政治的重要案件には基本思想、設定目標確認にとどめ、個々の具体的事案は各大臣の処理に委ね、多くの事案の決定権が所轄官庁に移転され、1934年には省庁命令の法律が全体の88%→権力諸集団の競合・対立が、（わけても対ユダヤ人）政策のラディカル化・過激化をもたらした、アウシュビッツへ一直線ではなく、紆余曲折をへて絶滅政策に至ったこと。内科医モレルが、最後の六ヶ月間、誰に干渉されることもなく、ヒトラーの身体を完全に支配した（トレヴァー＝ローパー「ヒトラー最期の日」）という視点。モレルの薬調合の不適切さに加え、パーキンソン病の進行が、徐々にヒトラーの衰弱に拍車をかけたこと。ヒトラーの独裁を支えたのは、ナチ党メンバー、官僚、軍人、サブリーダーたちによるヒトラーの意思の忖度。無数の犠牲をだしたのはヒトラーの一党独裁と戦争、破壊への意志だったが、それを支えた重大要因は、指導者原理にがんじがらめとなり、自らのあらゆる責任を放擲した軍やドイツ国民の盲従、たたきこまれた服従心と根深い道徳的崩壊、という指摘。最終章のヒトラー像の変遷、といったあたりが興味深かった。
 | 新潟日報事業社 発売日 : 2011-04-01 |
カラフルな挿し絵とごくごく読めるエッセイ。めぐり合わせの妙というか、後から振り返ると点がみなつながるというか。オンフルール、新潟、サティ、安吾、新井満というつながりで個展が決まったり。
お蔵入りになった「組曲・鳥海山」が遊佐町のイメージソングとして20年ごしに陽の目をみたり。「苺」で描かれた激しい腹痛は、1964年の新潟地震のptsdが一年後十二指腸潰瘍になったことをモチーフにしたんだな、とか。子供たちが一年越しでお小遣い貯めて、土壇場で方針転換して一年間売れ残った犬を買ってきたら、いつのまにかDJ犬として著者と共演するようになったり。作詞作曲歌手脚本家テレビ番組プロデューサー小説家写真家、それでも足りずに画家になりたい、という意欲。出版まで40年かかった「北越雪譜」の経緯と素晴らしさなど、興味深く。
お蔵入りになった「組曲・鳥海山」が遊佐町のイメージソングとして20年ごしに陽の目をみたり。「苺」で描かれた激しい腹痛は、1964年の新潟地震のptsdが一年後十二指腸潰瘍になったことをモチーフにしたんだな、とか。子供たちが一年越しでお小遣い貯めて、土壇場で方針転換して一年間売れ残った犬を買ってきたら、いつのまにかDJ犬として著者と共演するようになったり。作詞作曲歌手脚本家テレビ番組プロデューサー小説家写真家、それでも足りずに画家になりたい、という意欲。出版まで40年かかった「北越雪譜」の経緯と素晴らしさなど、興味深く。
 | 河出書房新社 発売日 : |
新井満の訃報に接して、何年ぶりかの再読。かずかずの作者が体験したことが小説に塗り込められてることがわかり、けど私小説ではないとはこれいかに、との思い。冒頭は、芥川賞受賞の時に、ぐるぐるまわる山手線の車内にいて連絡がとれなかった話から。ビョーキとか欠陥をもった登場人物を書くのがお好きですね、という問いかけには、現代に生きる人間のコミュニケーションの難しさの象徴なのだとかえし。足し算の本能は人類という種の保存に必要不可欠なメカニズム、引き算の思想は…人類を滅ぼすため？。電話カバーを贈られて困惑する吉行淳之介には、作者なりの解釈を示して「しかし君は変なことを考える人だなあ」という言葉を引き出し。ヴェクサシオンになぞらえて、裏切ったヴァラドンのほっぺたを840回ぶんなぐってやりたいというのが、サティの正直な気持ちだったのでは、と説き。ブラジルで出会った1000個のブラジャーの展示。村上春樹の文学を、小説の大半を引き算の方法論で書いている（何か起こりそうで何も起こらず、次々死んでいく登場人物、しかしそのあとに残された空洞性こそがリアリティをもって読者を包み、妙に懐かしい気分にさせる）とし。といったあたりが興味をひかれた。
 | みすず書房 発売日 : 2012-03-23 |
数がない、「右と左」の概念も、色もない、神もいない、という帯文。/吉野朔実の「本の雑誌」での読書エッセイで取り上げられていてそのうち読みたいと思いつつ幾星霜、阿久津隆「読書の日記 本づくり スープとパン 重力の虹」で取り上げられていたのを見て、これはダメ押しだ、手に取らねばと思い。/キリスト教伝道のため、ブラジルはアマゾン、ピダハンのもとへ向かったダニエルは、彼らの言語、文化を知るうちに、あまりにも自らがベースとしてきた文化と違うことに驚き、親しみ、尊敬の念を抱き、やがて自らの信仰を捨て去ることになったのだった（"わたしが大切にしてきた教義も信仰も、彼らの文化の文脈では的外れでたんなる迷信" "自分でも日増しに迷信に思えてきた"）。またそれは家族の崩壊も意味した…と。その後の話ももう少し読んでみたかった。またいまのピダハンについても知りたくなった。受け入れられるまでの最初の方は波瀾万丈。小さな子供三人と妻をかかえ、そのうち2人がマラリアにかかった際はマラリアとはわからずに、飛行機も電話もない中自力で搬送するためにアクション映画のように悪戦苦闘。伝道は正しい、しかし家族の助けは自分にとって必要、とここまで巻き込むエゴには目を見張らされた。紹介されるピダハンの文化は確かに現代の自分が見聞きする文化とは大きくかけ離れ。ピダハンの表現は質問、宣言、命令のどれかで「ありがとう」や「ごめんなさい」に相当する言葉もない。どんな役に立つ知識であっても外の世界の知識や習慣をやすやすとは取り入れない。価値、情報を実際に経験した人物、あるいは実際に経験した人物から直接聞いた人物が、行動や言葉を通して生の形で伝えようとするので、口承伝承、儀式の入る余地はない（あるいはキリスト教やイスラム教などの聖典も）、などなど。ブラジル人はどんな難局でもあるがまま受け入れ、たったひとりで立ち向かう、というスタイル、最後ちかくの「畏れ、気をもみながら宇宙を見上げ、自分たちは宇宙のすべてを理解できると信じることと、人生をあるがままに楽しみ、神や真実を探究する虚しさを理解していることと、どちらが理知をきわめているかを」という言葉に深く打たれながら本を閉じ。
 | 中央公論新社 発売日 : 2016-11-08 |
久世番子「谷崎ガールズ」 今日マチ子「痴人の愛」 高野文子「陰翳礼讃」のみ読了。谷崎ガールスは、何作品かの谷崎の登場人物の女性を、谷崎好みにサービスするのも大変なんだから、とくくり、痴人の愛は現代のアイドルとファンに翻案、陰翳礼讃は、絵巻のような感触。
 | 集英社 発売日 : 2020-12-04 |
9-23巻読了。思いを繋いで繋いで、自分が果たせなくても、それをまた別の人に繋いで、ひとりでは太刀打ちできないものにも、繋いで、多くの人の力を少しずつでも集めれば、太刀打ちできることもある。だから、希望を捨てないで、自暴自棄にならないで、あきらめないで、生まれてきただけで尊いのだから、というのがベースにあるんだなあ、と思った。
 | 集英社 発売日 : 2021-02-04 |
全巻のあらすじ、キャラごとの設定、登場シーンまとめ、単行本未収録マンガがついてて、全巻読んだあとに楽しめた。いや、でもこれ、読んでる最中に、ときどき、この人誰だっけ？どこで出てきたっけ？と思うことあったから、参照しつつ読めばよかったなあという思いも。それだけよくできてる。
 | 集英社 発売日 : 2021-11-19 |
紀元前234武城・平陽攻略戦。恒騎軍の劣勢、雷土が捕らえられ。飛信隊は前進、影丘を攻略し。それに対する趙の将の対応が取られるが、そこが恒騎の狙い目だったことが示唆されるところまで。
 | 小学館 発売日 : 2022-03-10 |
生と死の狭間にあるコンビニ。研究室の研究者、つい自分の命も顧みず人助けしてしまう土木作業員、失恋の痛手を闇猫を救うことで癒した青年の話の後に、店長がどのようにして店長になったかの経緯が語られ、コンビニ店員たちがどのように現世と狭間を行き来してるかの仕組みが語られ、何者かがそれを破ろうとしてることが語られ。次巻からはそれらの勢力への対抗が語られるのだろうか。生から死へ一直線ではなく、こんなふうにワンクッションあったらな、というのは心休まるファンタジー。
 | 書肆侃侃房 発売日 : 2021-09-30 |
48の短編て綴られる、シンガポールのマレー人。マレーシアからの分離独立、2001-2002年、シンガポール国内でテロを計画したとして、イスラム主義組織の約三十人が拘束された事件、1999-2011年のあいだ少数派のタミル人であるナザン大統領が大統領を務めたことなどが折り込まれつつ。急速に英語がもてはやされる中でアイデンティティを失いかけたマレー語話者。中国人労働者の急速な増加に、経済的に圧迫されてると感じるマレー人。アジア人、マレー人、ムスリム、シンガポール人。この四つの分類を提示する組み合わせは十六通りある。そのうちのどれを使えば、ニューヨークではわかってもらえるのだろうという悩み。ムスリムとしての誇りと日々の生活への浸透と、異教徒との共存と。サローマの曲、クロンチョン・シンガプーラ、夜のシンガポール（シンガプーラ・ワットゥ・マラム）が流れる中での恋物語と哀しい結末と。離婚して週一しか娘に会えない男のもの思いなど。さまざまな側面から描かれ、それぞれの世代、性別、職業の人々が抱く思いに触れられ。
| 発売日 : |
異種への変異を服の上から見抜いて密告して小銭を稼ぐ盲目の同性愛の占い師。自らが陸で迫害されたことを深く恨み、世界に復讐する権利があると頑なに思い決めた心をオトの説得と代替案が溶かし。また裏メニューを持つ薬局を営む女性には陰に日向に援助し、彼女に恩を感じる者たちが最大のピンチに駆けつけて、と。薬は使う者次第で毒にも薬にもなる、という言葉にうなずきつつ。
 | 講談社 発売日 : 2021-06-23 |
本編の主要人物のひとり黒田カナを主人公に。体格も体力も頭脳もおよばないという自覚がありつつ、要領だけで警察学校時代を乗り切ってきたと感じるカナが、自分ならではの強みを活かして乗り越えてきたが、自分が担当していた女性が、彼氏にDVを受けた末に殺された事件を契機に、怒涛のような外野からの批判、自分の対応への後悔、歯噛みしそうな焦燥と、それでも前へともがく中で陥ってしまった黒い沼。同期の山田の機転でなんとかふみとどまったものの…最後は…と。ラスト近くの、横井教官の、"「誰にも知られずに職場を去りたい」そうだね 何甘えたこと言ってるの 引き留める手を全て振りほどいて出ていきなさい”以降は涙なしには読めなかった。
 | 講談社 発売日 : 2022-02-22 |
ハコヅメ 4-20巻に相当する話数を、コミックDaysで単話買い。藤、源、山田、川合、如月、桃木、黒田、副署長などなど、個性豊かすぎる面々が、基本的には1話読み切りのコメディ。時に、シリアスな長編（奥岡島事件の恩賞、伊ケ崎交番署長の過去編など）を挟みつつ。本部長から源、如月らが表彰受ける際のぐっだぐだぶりの回(その143 雲上人の啓示)が一番おかしかった。
 | サイゾー 発売日 : 2017-12-15 |
阿久津隆さんの本つながりで。同じ国に住んでるのかな、というくらい見える風景が違っていて。育った土地も環境も違って。小中学生ギャングがくわえタバコに酒飲んで肩で風切って盗みやケンカにあけくれるような世界観。地元を愛し、川崎駅までが地元感、地元では名が通っても一歩外に出ると名も通らない、うっとおしいほどのしがらみとトレードオフの厚すぎるほどの情の濃さ。かと思えば、ヒップホップで身を立てるもの、ダンスで世界に名を馳せるもの、スケートボード文化を根付かせたい、かつ、川崎のキャッチャー・イン・ザ・ライのような存在。ヘイトスピーチに身体を張って立ち向かうもの。工場屋上でのフェスを運営するもの。それぞれのライフヒストリーに触れつつ、紆余曲折の末に今を語る姿に感銘受けつつ。付き合ってた男が覚醒剤で逮捕されて、うちにもガサが来そうだったから、あわてて横浜の闇医者に行って、血を全部交換してもらった、てエピソードには、どういうこと？と思ってしまった。Bad hopのLife styleて曲、映画スカーフェイス、カリートの道あたりは触れてみたく思った。
 | 宝島社 発売日 : 2022-03-04 |
静かな店内で否応なく聞こえてしまう客たちの会話だけから、客たちが抱える謎を鮮やかに解き明かしてしまう美星。青山くんらしき人は、最後の話にしか出てこないが、美星ひとりでも、毎回キリリとした推理と気づかいを見せてくれて目が離せなかった。新婚旅行に向かうタクシーで事故に遭い、夫を失った女性が、意識を取り戻した後に、わたしたちハワイで楽しい新婚旅行を送ったあとの帰り道だった、という宣言と物証と。あまりの悲劇とその家族の思いに、言葉を失った。以下備忘録//本を読むというのは、自分以外のたくさんの人生や、考え方や感情や価値観に触れて、自分の人生だけを生きていては知りえないことを知る営みだと思うの。それはきっと、人との違いや多様性を受け入れ、広い心を持つことにつながっていく。であれば読書の大会のスタッフを務めたわたしが、その手本を示すことには意義があるんじゃないかな//結婚していれば幸せで離婚したら不幸せ、というのはただの幻想です。自分以外の誰かが現在、幸せではないと決めつけ、あまつさえ昔と変わらないなんて思い込むのは、その方の人生を軽んじることであるように、私には思えます/
 | マーキーインコーポレイティド 発売日 : 2016-11-01 |
対談では、おかずがあると白米食べれちゃってふりかけいらないんだけど、けけどおいしいふりかけでご飯食べたい時もある。彼女がいてもアイドルを好きになるのはふりかけみたいなもの、という「ふりかけ」と、ＳＮＳで偽夢眠ねむアカウント作られて、それにファンがついて、やめてもらいたいと思ってたが、偽の偽まででてきて…というカオスな顛末が語られた「偽物」がよかったです。ファインアートをやる理由、あるいは、クリームソーダが世界で一番好きな飲み物だった、曖昧な混乱が大好き、怯えることなく不平等に、アイドルというもの自体がオンタイムの巫女、というワードも拾いつつ。夢眠ねむ、という概念を継いでほしい、というのは興味深く。オンタイムでは全然まにあわなかったけど、コズミックメロンソーダマジックラブ展、みてみたかったなあ、という思い。
 | 中央公論新社 発売日 : 2021-06-21 |
気になった論点。(1)駅鈴と内印が、天皇の命令施行に必要な権威の象徴だったとは。源平の合戦、南北朝時代は、三種の神器だったように思うのだが。いつ入れ替わったのだろうか。(2)鎌足、不比等の事績とされていることは、仲麻呂が祖先の顕彰を目的として作成した史料に基づくものも多く、そのままは受け取れない（不比等の佩刀と天皇の関係、など）。(3)(1)によれば、権威の正統性は淳仁天皇-仲麻呂ラインにあったので、仲麻呂の乱ではなく、孝謙上皇のクーデターというのが正しい、と。/権力闘争はエグいの一言。叔母である光明皇后の権威をバックに、反対者は殺すか左遷、自らと一族、協力者はどんどん昇進させ。ただ、闇雲に権力のための権力を目指しただけではなく、主な政策は儒教による政治（安民策、負担軽減などの仁政）、唐風化政策、学問重視、藤原恵美家の皇親化、東北や新羅への対外積極策で、後年にも受け継がれたものも多く、と。/奈良時代を白村江の戦い663年、壬申の乱672年の影響下における「戦後史」と位置付けることで、仲麻呂政権に別の見方→壬申年功臣の処遇変更と対新羅戦争の準備という点で、内乱と対外戦争という課題に真正面から対処しようとした重要な時期、という視点を提示 /藤原仲麻呂が人生の節目で疫病の流行とどのような向き合うかということがたびたび試されている。為政者が疫病の流行という国家危機をどのように乗り越えるのかという現代にも通じる課題、という視点も。 /あと、武智麻呂、豊成が凡庸の一言で切って捨てられてるが… 疑問。/またこれだけ準備してても、孝謙上皇の反撃を防ぎきれなかったんたな、という思い。
 | 現代書館 発売日 : 2021-10-13 |
グローバリゼーションこそ正義と思っていた時期もあり。この書が、決定的にくだいてくれた。蒙を啓かれた思い。農家から逃げ出したいと、東京の大学へ、学生運動から、三里塚闘争で逮捕され、沖縄で組合専従として働き、生まれた土地を離れたくない、かえって来たいと思うようにしたいという沖縄の人たちに触れ、故郷に農民として戻る決意。減反拒否は挫折するも、運動には「理」だけではなく「利」も重要、グレーゾーンも重要と思い直し、減農薬運動を地道に広げ、東南アジアの農民たちとも連帯する活動をすすめ、ゴミの分別・減量から堆肥生成までのサイクルをまわすレインボープラン、置賜自給圏をつくろうという試みまでが描かれる。レインボープランも、現状や先の見通しが決してバラ色だけではないことも公平に語りつつ。地域社会からボトムアップで自給圏がいくつもできていけば、それが地方の、ひいては日本全体の衰退を押しとどめることになるのでは、という壮大な構想にうなづきつつ。熱い思いと行動力に圧倒され、あおられた。/フィリピンの庶民たちの食卓に上がるはずの魚を日本がごっそりとって畑の堆肥にしていたという時期。アメリカの百姓は日本の市場開放など望んでない、一部の巨大なアグリビジネスの主たちがそれをのぞむだけで、という声。といったあたりは初めて知ったこと。また、村社会を変えるにはまず女性が生きやすくなる社会を、運動の重要な部分で女性たちに協力をもとめ、その声を取り入れていく姿も。
 | KADOKAWA 発売日 : 2022-01-08 |
紹介文見て、大好きな「ハイパーハードボイルドグルメリポート」のマンガ版みたいなのがある！と思い手に取る。冒頭の、マフィアの拷問焼きからすでにがっちりハートつかまれたけど、やはりエルビスの寿命を縮めたという、フルでつくると一食17000kcalというエルビスサンドにやられる。これは…食べてみたい、と。日本にいればどんなものも70-90%のおいしさのものが食べられるが、治安の悪いところで食べるものは20%か50000％のどちらかだ、という信念で世界の危険地帯に突入し。二次元の摂取しすぎで感覚がマヒして、自分も含めてみんなアニメの美少女に見える、という設定になれるまではちょっとかかったけど。世界各地に友人知人がいるのは、大大大好きな「釣り」を媒介にして、ひとり熱い友人ができると、そこから芋づる式に…というのもみんなクセ強でおもしろかった。
 | 小学館 発売日 : 2021-06-30 |
アメリカ三つ目の街はサンフランシスコ。ヒッチハイクで拾ったジェイソンがマネージメントを買ってでてくれて。 /ケンキョの前に自分をハッキリとアピールしろよ（ジェイソン） /この国で成功するのは難しいと思う（アレックス・リュウ） /周りのせいにしてる場合か？！手を動かせよ、ヘタクソが！！オレた達にはそれができる幸せがあるだろ！？（ダイ） /誰が演ってもジャズはジャズだ（ダイ） /いくらジャズをがんばっても…というリュウにぶつけたダイの言葉と与えたチャンス、発奮してそれにこたえたリュウ。そして、地元紙の記者のインタビューは、まだ答えのない問いをダイに投げかけ、これ以上一人でまわっても意味がないのでは？ベストのメンバーを集めて続けては、という問いに。
 | 小学館 発売日 : 2021-10-29 |
アメリカ編、次の街はサンノゼへ寄り道した後、ロスアンゼルスへ。そして国境越えてメキシコはティファナ。 /オレジェイソンみたいに自由でいる勇気はないから、何かを積み上げていたいんだ（ゲーリット） /ロスでは人の情けの冷たい風にあてられ、スムーズでイージーな音楽が好まれる中で、ダイの力強い音がうとまれるなか、なんとか三晩のライブに漕ぎ着け全力でソロを吹き通し。2時間かけて歩いて観にきたコロンビア人ダンサーの男性の、絶対に大丈夫だ、という言葉に感極まり。 /ティファナでは、ダイのことを知ってるがオレの方が上と話しかけてきたアントニオのプレイを見て、ジェイソンは彼を口説き落とせないかと考え…というところまで。
 | 小学館 発売日 : 2022-02-28 |
別れ際にスケートボードのビッグトリックに挑む姿を見せてくれたジェイソン。「失敗してもいいんだぞ、ダイ。笑いさえすれば、何度だってチャレンジできるんだ」 /そして、一路東海岸へ向けて。しかし旅費がなくなり、アルバカーキで皿洗いとサックスのレッスンの仕事につくことに。追いついてきたアントニオに、世界一を目指すやつが皿洗いしてるよ、ダイのシリアスさは欠点だよ、と思われながらも、旅費をため。最後は生徒たちの発表会をバイト先で開こう、というところまで。生徒たちの反応が四者四様でおもしろく、またダイの糧になるところもあり、と。チャーリー・パーカー好きの生徒とパーカーの曲をいいあうシーンにほっこり。
 | 講談社 発売日 : 2022-03-11 |
鷹臣は菖蒲の秘書に仕掛け、志のぶは宝石工房や信長の質店で鑑定能力を見せつけてしまう。彼らの軽々しさに危惧を抱きながらも目が離せない顕。そして、顕の記憶に残る円形脱毛の男の影がちらつき、しょーちんと接触するところを見てしまうところまで。
 | 発売日 : |
一級建築士試験に合格するまでの道のりを挫折も紆余曲折も含めて描いた一編。働きながらの勉強、大変そうで、やはり独学オンリーではのりきれず、学校へ。そこでの切磋琢磨や成長の過程など。試験合格翌週から一年のアメリカ出張ってすごいオチ。
 | KADOKAWA 発売日 : 2017-10-12 |
Netflix版ドラマ「新聞記者」つながりで。過去の失敗や未熟さも隠すことなく、報道を受け取る側からしたら正直重要度の低いことに血道をあげていたこと（スクープ主義や他の新聞社との抜いた抜かれたの争いや、取材源に、こんなに必死に通ってるのになぜ（大事なネタを）私に言わなかったとくってかかるところなど）も正直に書きつつ、やはり、政権が隠そうとしたこと、認めてこなかったことを、質問に対して回答をはぐらかしたり、的外れなことを言ったり、質問自体を制限しようとしたことに、くいさがり、調べ、質問を重ね、せまっていく姿勢はまっとうだな、と思った。一時期のバッシングはなんだったのか、安倍政権、菅政権が終わってみれば、どちらが正しかったのか、どちらがあるべき本来の姿だったのかは一目瞭然、という思い。「私は特別なことはしていない。権力者が隠したいと思うことを明るみに出す。そのために、情熱をもって取材相手にあたる。」これからもおかしいと思ったことは問いただし続けるという姿勢とともにしめくくられる。
 | 講談社 発売日 : 2022-03-23 |
新人3人のそれぞれとそれに対応する2年目真白たち。桃もこじらせながらも、のどかの間接的な後押しもあり最後は大会へとやる気を出し。オーソドックスな新人ラプソディ、先輩ラプソディだけど、5巻まで読んできた身には真白たちの成長にグッとくるものがある。真白の「印刷はチーム戦」という言葉に新人がハッとし、あってるかどうかわからないけど、これからもやっていきたい思いを胸に。そして真白の「黒瀬さんとだから楽しい、それは変わらない」が黒瀬の心を動かしたのか否かは次の巻で。
 | 扶桑社 発売日 : 2022-03-24 |
キリンジの曲「エイリアンズ」にのせて。中学生の時、教室で悪童たちが立場の弱い産休の代理の27歳の英語教師にしたひどい仕打ち。原作者をモデルとした登場人物は傍観者でいることしかできなかった。ラスト近くの「私 謝るって大嫌い 謝っても人生は続くのよ あなたは幸せなんですね？ そんなもの誰にもわからないわ これからよ」というダイアローグが心に残る。謝る？誰のために？相手のために？自分がすっきりしたいだけでは？という問いが頭にうずまき。あと、カウンターで苦悩する作家にかけたママの「あんたすごいじゃない。挑戦したじゃない 自分を信じて挑戦したんでしょ？ すごいよあんた 世の中には挑戦できない人がごまんといるんだよ 自分の可能性を信じない人がごまんといるんだよ」て言葉が印象に。
 | 新潮社 発売日 : 2017-06-30 |
空気や気分をふくんだ記憶への愛おしさ、が語られていて、そのたゆたうような雰囲気をながめて楽しむような連作短編でした。/20代後半から30代前半にかけて、主人公が、会社でのあれこれ（お茶くみ当番のローテーションで喧々諤々！）から、離婚して去っていた妻伊知子への思い、会社に入ってきたかわいい子千絵ちゃんを（どうこうしたいとかいう思い抜きに）めでることではずむ思い、バーで知り合い終電を逃して泊っていった女性オノへの思いが、寄せては返すように語られ、それが彼女らと会った場所、行った場所の記憶と重ね合わされ、ああでもない、こうでもないとゆらめき。/個人的には、似た感覚としては、前の前の会社を辞めて東京を去ったあと、次の会社の出張で空いた時間に、ながく時間は経っていたけど、以前に住んでいた西大島の街並みを、住んでいた時に何を感じ何があったかに重ねながら散策した時の感覚を思い出した。/「未来の自分は変わりようがないけれど、過去の自分の思い出され方は決定的に変わる。それは今に続くものではなく、今と切断された過去になる」(p.178)という一文がかみ砕けず。
 | KADOKAWA 発売日 : 2022-03-25 |
折木の部屋に集まった友人たちに、あることをなんとか悟られないようにという折木の苦心。折木らしい「走れメロス」の感想文。からの、伊原の所属する漫研の、読むだけ派-描きたい派の対立に心ならずも巻き込まれることになり…と。過ぎてみればコップの中の嵐でも渦中ではそうも思えず。
 | KADOKAWA 発売日 : 2022-03-25 |
今回の章タイトルは、ゴジラ映画のパンフ、樋口一葉「通俗書簡文」、夢野久作「ドグラ・マグラ」。他に山田風太郎「人間臨終図鑑 1-3」、樋口、夢野の他作品もとりあげられ。一読後何冊かとりあげられた本を読みたくなるのはいつものこと。/今回は特に正臣が好きだと漏らした樋口一葉「十三夜」かな。栞子の母、扉子の祖母たる智恵子がまた何かを企んでいることは語られるが作中では突き止めきれず、片鱗を見せるだけ。元夫の蔵書を守ってほしいという女性からの依頼が発端となるが、元夫の父、その書店員、女性と元夫のあいだの息子を巻き込んでの絵巻に、ビブリア古書堂の面々がどこまでせまれたのか。そして智恵子がはたから見ると膨大の手間と幾重にも張り巡らした策でからめとろうとする、血眼になってでも後継者を探してつがせたいこととは何かは次巻以降で語られるのか。栞子の何があっても誰も見放さない、それは智恵子も、という堅い決意表明がどう展開していくのか気になる。/蔵書が人をつくる、とあったけど、それは万人に可能だろうか、との思い。電子書籍も、読んで手放した本も、借りて読んだ本もある中で、言えるとしたら、いまこの瞬間に、紙の本として持っておきたいと思えた本のみが本棚に収められていて、その前提でそれらを他の人が読んで、自分という人を理解できるのだろうか、という思い。
 | KADOKAWA 発売日 : 2022-03-26 |
1-5巻読了。戦国時代にタイムスリップしたクラシックスタイルのオタクが、コミケで鍛えたスキル（整列、ヲタ芸、混雑回避、目標ロックオンなどなど）、装備（抱き枕、同人誌、スケブ、レッドブルなど）を駆使して大活躍。木下藤吉郎のかけがえのない右腕になり、信長にも気に入られる、というストーリー。日本史に一切興味ない、てとこが意外だったし、一コマめからなんかムカつくと思わせといて、だんだんと今野が愛おしくなって、カッコよく見えてくるワナにはまり。どんな時でもオタク文化や同人誌、自分への愛を語るブレなさ。噛み合わなくても伝わる気持ち。といったあたりがおかしくて最高でした。
 | KADOKAWA/角川書店 発売日 : 2015-06-20 |
生まれたばかりの雪をかかえ、二十歳でシングルマザーになってしまった珊瑚。子供をあずけて働かねばと切羽詰まったときに目に留まった「子供預かります」。あずかってくれたくららは、その後料理を教えてくれたりさまざま力になってくれて。雪をとりあげてくれた産婆の那美。バイト先のパン屋で意気投合した由岐。こだわり野菜をつくるくららの甥の貴行とその友人時生。珊瑚の行ったことをまわりがひろげて背中を押してくれて、力になってくれて、決意して開いた森の中のカフェ。最初から順風満帆とはいかなかったが、徐々に支持されて。元夫の父母もそっと力になってくれようとして、と。そんななか喉にささった魚の骨のような印象なのが、不真面目にやってきたその結果なのに、子を産んで一人で育てるのがそんなにえらいのか、ちょっとまじめにがんばったからってまわりがちやほやするのが許せない、中身なんかないくせに、とまっすぐに悪意を向けてくる元同僚。もらう方、あげる方の関係と、あげる方の生活のための仕事の一部にするのが長続きの秘訣という智恵。娘の珊瑚を捨てて好きにやってきたように見える母親を、潔い人とかばう昔の友人。そして自分のプライドをどこに置くかと葛藤する珊瑚の姿。といったあたりが心に留まる。すべてにきれいに解決をつけるのではなく、抱えながら、それでも日々はつづいていく、という形で。
 | 新潮社 発売日 : 2022-03-24 |
ムラト三世時代に、前代の3倍に増築されたハレム。スルタンごとに、どこがどう増築されたのか、そういう図版かCGはないのかな、と激しく希求 酒池肉林のめくるめく世界、みたいなイメージを、後継者育成のための官僚組織のように転じる効果はあったかと。それは「ハレムで立ち働く女官と宦官たちは、ピラミッド状に構成された職階に属し、職階に応じた任務と俸給が割り当てられた。妻妾たちは原則的に入れ替わりのない、安定した序列のもとに置かれた。母后はスルタンに代わるハレムの統率者として働き、王女は女婿を通じてスルタンの権力維持に寄与した。さらに、ハレムでの生活は静謐が尊ばれ、そのため唖者に範を得た手話も導入された。ハレムの歴史が教えるのは、ハレムは徹頭徹尾、王位継承者を確保するという目的に最適化された組織だった、ということである。いわば、ハレムは官僚組織であり、ハレムに住まう人々は官僚だったのだ」（p.274）という一節に集約されている。/他に、母后や妻妾のエピソード。ムラト三世、メフメト三世の宮廷で力をもった白人宦官長ガザンフェル・アア。白人宦官、黒人宦官の盛衰に、帝国の内外の情勢が密接にかかわっていたこと。芸術の才覚のあるものを見出すため奴隷商人長補佐を努めていた宮廷楽師。トゥルハンが建てさせたダーダネルス海峡を守らせるための軍事施設は、軍事施設建設に王族女性がかかわった稀有な例。19世紀には各スルタンが次々と宮殿を建てていくが、落日の帝国のどこにそんな余力があったのだろう。19世紀には王子たちもある程度自由を認められ給金も与えら、多くは放蕩したが、王子時代のアブデュルハミト2世だけは農園経営に手腕を発揮し、そのあがりを投資してさらに資産を膨らませ、即位時の下賜金の原資としたというエピソード。オスマン王家のハレムにおいては、イスラム法の厳格な適用よりも、徹底的な現実主義が重視されていたこと。などが、印象に残る。昔読んだペンザー「トプカプ宮殿の光と影」あたりは再度手に取りたくなった。【他に触れてみたい参考文献】◆鈴木董「食はイスタンブルにあり」講談社学術文庫/◆Haki Tezcan「The Second Ottoman Empire」Cambridge 2010 /◆紺野文「モンターグ夫人が見た18世紀のオスマン帝国社会 女性の暮らしを中心に」東京外国語大学トルコ語専攻卒業論文 2002年◆三澤志乃富「オスマン朝宮廷における小姓たちの生活 Ali Ufki Beyの手記を中心に」東京外国語大学トルコ語専攻卒業論文 2008年◆清水和裕「イスラーム史のなかの奴隷」
何年ぶりかの買い戻しての再読。特にツテもあてもなくむこうみずにフリーライターとして独立したみのり。取材を重ね文章を発表していくうちに、少しずつ手をさしのべてくれる出版社、取材先、同業のライターたちがあらわれ。取材で生き返ったお店も力をおとした店もあり。敬愛する出版社社長への思いがいつしか…そしてそれは相手にも響いて、けれども…。浮き沈みはあり、先輩女性ライターの凋落をみたかと思いきや、今度はみのり自身がスランプに陥ったり。仕事に苦しめられ、人に傷つけられても、仕事が助け、人が助けてくれて。”自分がなんぼのもんかなにをやりたいのか見極めなくていいのか それで五十すぎまで働く自信が生まれるのか？ 道は自分で決めるんだ フリーライターはよ”（元木）フリーライターに限らずかもだけど。最後はそれぞれの道を。同業のみきはかじりついてでも書きたいものを見つけ。大きく仕事面で支えてくれた編集者二人は結婚し。公私共に力になってくれたお店のママは店を締め。みのり自身は仕事に、そして「せめてひとつだけ つらいことはすべてわたしがうけとめたい」という相手の言葉を抱いて、日々をすすんでいくことが示唆されて閉じられるものがたり。/紙の雑誌が今よりうんと読まれていて、ライターという職業がうんと希少だった時代のお話。20代も後半になった女性には容赦なく行き遅れのレッテルを貼り、両親親戚結婚した友人から結婚はまだか子どもはまだかとせっつかれ、言われたほうも自虐的な気分になる。30年前てそんな感じだったかな、というのが詰め込まれている側面もあったけれど。藤田千恵子「愛は下克上」、中里恒子「時雨の記」読み返したくなる/その正直さで書けばええ ウソついてムリにほめることない(田代納豆)/おれとやつを天秤にかけろ おれは勝つ（望月）
 | 文藝春秋 発売日 : 2019-03-08 |
高架線、茄子の輝き、と続いて3冊目の滝口悠生。ある老人の葬儀のためにあつまった一族、総勢約30人。その子、その孫、ひ孫から、友人まで。その一日かそこらのことを、語り手をくるくると変え、積み重ねられていく、とりとめもない思いと会話。私たちが出会った奇跡は確率では計れないというダニエル夫婦。十歳年上のひきこもってる兄と月一くらいで長電話してとりとめなく話す、兄のすること考えていることはなんでも知っていたように思う知花。"たしかにあったどうでもいいことは、この世界にどのように残りうるのか" ある一族を舞台に、それを残すとしたら、といった試みでもある、と思った。併録された「夜曲」は謎めいたスナックのママから見た常連たちの会話と声に出さぬ独語、いっときかすった隠しておきたい過去のことなど。"同じようでいて同じ会話は二度とない” ”見つめていればそのうち何でも愛おしくなるものだが、それを続けるのは楽なことではない。"
 | 小学館 発売日 : 2022-03-30 |
異端活動組織の長となったヨレンタと、彼女が求めていた書をすべて記憶した上で焼き捨てたドゥラカ。C教が覆う世界に印刷した地動説の書をひろめることに命をかけるヨレンタと、金儲けこそ至上と思い極めるドゥラカの対話が白眉。権威の中で生じる思考停止は宗教だけではなく学問の中でも起こるのでは、という問い。「自由の定義は？」「そう問えること」。そしてドゥラカの「人の作る模倣が時として「自然が成し遂げないことを成し遂げる」こともあるという信念。時代を越えて多くの人の手を介して伝えられてきた地動説の書は…次の最終巻でどうなるかが描かれるのか。
 | 新潮社 発売日 : 2008-12-20 |
「私は完璧であったことはありませんが、私は現実なのです」という言葉に導かれるように。KKKの先頭に立つ人物が誰か暴いてしまった犬。屋根裏で見つかったO・ヘンリーの未発見の草稿。高級車に乗って送り迎えされていたのをいつも見るだけで手出ししてこなかった悪ガキ、家業が傾き徒歩通学になり彼らの仲間になれると思った途端に、ボコボコにされた男の子。沖縄人に盗まれたと思って万年筆を差し出させたが、のちに自分の部屋から見つかったと回顧する米軍人。賢者の贈り物を地でいくような、結婚指輪を売って娘にねだられた服を買った母。母が亡くなって一家で避難してきた海辺。理屈もなにもない母の強烈なひとこと、「お金のために食べられたんだから、ただでも食べられるでしょ」。裁判で親権を取り戻そうとあらんかぎりの誹謗をつくす弁護士の夫に打ち勝った、幸せそのものの写真。祖母の葬儀のために、特別に外出を許可され、おじに、「お前はばあちゃんのすべてだった、お前を誰よりも愛していた」と告げられた男。マンハッタンに引っ越してきて三日目のうだるような夏の日の夕方に、祝祭のように近所の人が集まったひとこま。グレイハウンドバスでとなりあって意気投合して、60年間、手紙のやりとりがたえず、60年ぶりに再会し、まる二日間それまでの人生や昔話をかたりあった二人。といったあたりが印象に残った。これがアメリカの語りなのか！と。今、それに引っ張られてか、これが東京の語りなのか！と思いながら「東京の生活史」を読んでます。
2022年03月04日
2022年02月に読んだ本
0201・【再読】村上春樹 雑文集
0202・杉田俊介「マジョリティ男性にとってまっとうさとは何か ＃Metooに加われない男たち 」(集英社新書) kindle 20220124
0202・エドガー・アラン・ポー タマレーン 図書館
(0203・鬼滅の刃 7-8 ラーメン大将
0203・【再読】山崎ナオコーラ 人のセックスを笑うな
0203・石川直樹 極北へ 20220126
0204・【再読】永井荷風 濹東綺譚 青空文庫
0205・前田弘毅 アッバース一世 世界史リブレット人 20220129
0205・吉田戦車 伝染るんです 文庫版 4 20220205
0206・雑誌あおにさい 第一号 あおにさいBooks seesawbooks
0206・三宅香帆 それを読むたび思い出す 20220205
(0206・ふることふひと 2-4 kindle
(0206・池辺葵 ブランチライン 1-3
(0206・伝染るんです 5 文庫版 20220205
0207・西村賢太 苦役列車 20220205
0207・平野啓一郎 私とは何か――「個人」から「分人」へ (講談社現代新書) kindle 20220124
(0209・彬聖子 こいのうた 20220205
0209・永田希 書物と貨幣の五千年史 (集英社新書) kindle 20220124
(0209・後藤裕加子 サファヴィー朝宮廷の女性たち ─近世イスラーム王朝女性史研究の展望─ 御茶ノ水史学 62(2019)
0210・南波一海 ヒロインたちのうた あおにさいブックス＝seesawbooks 20220129
0210・藤原不比等 人物叢書 吉川弘文館 図書館
(0211・麻生みこと 下足痕ふんじゃいました1
0211・中谷剛 ホロコーストを次世代に伝える―アウシュヴィッツ・ミュージアムのガイドとして (岩波ブックレット) 図書館 …荻上チキ、ヨシタケシンスケ「みらいめがね」つながりで。
0212・池澤夏樹訳 古事記 図書館
(0212・ジンギスカンのジンくん2
0213・馳星周 比（なら）ぶ者なき 図書館…藤原不比等が主人公
(0213・【再読】藤原不比等 人物叢書 吉川弘文館 図書館
0214・【再読】燃え殻 ボクたちはみんな大人になれなかった 新潮文庫
0215・【再読】燃え殻 ボクたちはみんな大人になれなかった cakes連載版
0215・阿久津隆 読書の日記 本づくり スープとパン 重力の虹 ...201710-20180509 読書室ポワロ
(0215・ふしぎの国のバード9
0215・志水辰夫 尋ねて雪か 20220126
(0216・末澤寧史、小林豊 海峡のまちのハリル 図書館
0216・諏訪哲史 偏愛蔵書室 読書室ポワロ
0216・室橋裕和 ルポ新大久保 kindle 20220203
0217・木本好信 藤原四子 国家を鎮安す ミネルヴァ評伝選 図書館 …馳星周「比ぶ者なき」つながり
0217・【再読】大崎善生 タペストリーホワイト 20220216
0218・馳星周 四神の旗 図書館
(0219・アンサングヒーロー2
(0219・海が走るエンドロール2
(0219・舞妓さんちのまかないさん19
(0219・矢澤豆太郎（Summer Rabbit）結局わたしには音ゲーしかないワケで 特集 ポップン
0219・中上健次 岬 図書館（表題作「岬」のみ読了）
0220・加藤久典 インドネシア ちくま新書 図書館
0221・フラナリー・オコナー全短編(上)(ちくま文庫) （善人はなかなかいない、含む）20220210amazon,0215arrival
0222・佐藤泰志 きみの鳥はうたえる ビーバーズブックス 20220217
0223・フランシス・ベーコン ベーコン随想集 岩波文庫 図書館 …世界名言集つながり
(0223・ワカコ酒18
(0223・大衆酒場ワカオ ワカコ酒別店6
(0223・新人出版社の履歴書フェア
0225・本橋信宏 全裸監督 20200223
0226・高崎彰 アカハチ 三省堂書店 20220223
(0227・ハコヅメ 1-3. kindle
0227・滝口悠生 高架線 図書館 …阿久津隆「読書の日記 本づくり スープとパン 重力の虹」つながり
(0227•カルベハナコ リュックというものを背負ったことがないの シーソーブックス 20220225
(0227・濱田実里 北の浮島、彩初める 淡濱社 三省堂書店 20220225
(0227・寝そべり主義者宣言 シーソーブックス 20220225
0228・【再読】新井満 ヴェクサシオン
(booklogなし0228•【再読】のだめカンタービレ 1-3 kindle
(booklogなし0228•【再読】木村紺 神戸在住 1-2 kindle
0202・杉田俊介「マジョリティ男性にとってまっとうさとは何か ＃Metooに加われない男たち 」(集英社新書) kindle 20220124
0202・エドガー・アラン・ポー タマレーン 図書館
(0203・鬼滅の刃 7-8 ラーメン大将
0203・【再読】山崎ナオコーラ 人のセックスを笑うな
0203・石川直樹 極北へ 20220126
0204・【再読】永井荷風 濹東綺譚 青空文庫
0205・前田弘毅 アッバース一世 世界史リブレット人 20220129
0205・吉田戦車 伝染るんです 文庫版 4 20220205
0206・雑誌あおにさい 第一号 あおにさいBooks seesawbooks
0206・三宅香帆 それを読むたび思い出す 20220205
(0206・ふることふひと 2-4 kindle
(0206・池辺葵 ブランチライン 1-3
(0206・伝染るんです 5 文庫版 20220205
0207・西村賢太 苦役列車 20220205
0207・平野啓一郎 私とは何か――「個人」から「分人」へ (講談社現代新書) kindle 20220124
(0209・彬聖子 こいのうた 20220205
0209・永田希 書物と貨幣の五千年史 (集英社新書) kindle 20220124
(0209・後藤裕加子 サファヴィー朝宮廷の女性たち ─近世イスラーム王朝女性史研究の展望─ 御茶ノ水史学 62(2019)
0210・南波一海 ヒロインたちのうた あおにさいブックス＝seesawbooks 20220129
0210・藤原不比等 人物叢書 吉川弘文館 図書館
(0211・麻生みこと 下足痕ふんじゃいました1
0211・中谷剛 ホロコーストを次世代に伝える―アウシュヴィッツ・ミュージアムのガイドとして (岩波ブックレット) 図書館 …荻上チキ、ヨシタケシンスケ「みらいめがね」つながりで。
0212・池澤夏樹訳 古事記 図書館
(0212・ジンギスカンのジンくん2
0213・馳星周 比（なら）ぶ者なき 図書館…藤原不比等が主人公
(0213・【再読】藤原不比等 人物叢書 吉川弘文館 図書館
0214・【再読】燃え殻 ボクたちはみんな大人になれなかった 新潮文庫
0215・【再読】燃え殻 ボクたちはみんな大人になれなかった cakes連載版
0215・阿久津隆 読書の日記 本づくり スープとパン 重力の虹 ...201710-20180509 読書室ポワロ
(0215・ふしぎの国のバード9
0215・志水辰夫 尋ねて雪か 20220126
(0216・末澤寧史、小林豊 海峡のまちのハリル 図書館
0216・諏訪哲史 偏愛蔵書室 読書室ポワロ
0216・室橋裕和 ルポ新大久保 kindle 20220203
0217・木本好信 藤原四子 国家を鎮安す ミネルヴァ評伝選 図書館 …馳星周「比ぶ者なき」つながり
0217・【再読】大崎善生 タペストリーホワイト 20220216
0218・馳星周 四神の旗 図書館
(0219・アンサングヒーロー2
(0219・海が走るエンドロール2
(0219・舞妓さんちのまかないさん19
(0219・矢澤豆太郎（Summer Rabbit）結局わたしには音ゲーしかないワケで 特集 ポップン
0219・中上健次 岬 図書館（表題作「岬」のみ読了）
0220・加藤久典 インドネシア ちくま新書 図書館
0221・フラナリー・オコナー全短編(上)(ちくま文庫) （善人はなかなかいない、含む）20220210amazon,0215arrival
0222・佐藤泰志 きみの鳥はうたえる ビーバーズブックス 20220217
0223・フランシス・ベーコン ベーコン随想集 岩波文庫 図書館 …世界名言集つながり
(0223・ワカコ酒18
(0223・大衆酒場ワカオ ワカコ酒別店6
(0223・新人出版社の履歴書フェア
0225・本橋信宏 全裸監督 20200223
0226・高崎彰 アカハチ 三省堂書店 20220223
(0227・ハコヅメ 1-3. kindle
0227・滝口悠生 高架線 図書館 …阿久津隆「読書の日記 本づくり スープとパン 重力の虹」つながり
(0227•カルベハナコ リュックというものを背負ったことがないの シーソーブックス 20220225
(0227・濱田実里 北の浮島、彩初める 淡濱社 三省堂書店 20220225
(0227・寝そべり主義者宣言 シーソーブックス 20220225
0228・【再読】新井満 ヴェクサシオン
(booklogなし0228•【再読】のだめカンタービレ 1-3 kindle
(booklogなし0228•【再読】木村紺 神戸在住 1-2 kindle
 | 新潮社 発売日 : 2011-01-31 |
(2022/2/5読了分)何年かぶりの再読。なかなか眠れぬ夜に、早く目覚めてしまった朝に、ごくごく飲める水のような一冊だった。個人的には。染みわたる感というか。内容は、あいさつから序文、後書き、人物談、音楽エッセイ、スピンオフの小品などなどとタイトルどおりまさに雑多小説家とは何か？「多くを観察し、わずかしか判断を下さないことを生業とする人間です」/良き物語を作るために小説家がなすべきことは、ごく簡単に言ってしまえば、結論を用意することではなく、仮説をただ丹念に積み重ねていくことだ。/自分自身は独自でかけがえのない人だと思っていても、他人から見れば「普通の人」/自分の作品の翻訳に求めるのは偏見に満ちた愛/小説家は「かたちにならないもの」を物語というかたちに置き換えて、人々に提示していくことを仕事にしている/「思うのだが、僕らを噛んだり刺したりする本だけを、僕らは読むべきなんだ。本というのは僕らの凍った海に対する斧でなくてはならない」（カフカ）/著者の小説が語ろうとしていること「あらゆる人間はこの生涯において何かひとつ、大事なものを探し求めているが、それを見付けることのできる人は多くない。そしてもし運良くそれが見つかったとしても、実際に見つけることのできる人は多くない。そしてもし運良くそれが見つかったとしても、実際に見つけられたものは、多くの場合致命的に損なわれてしまっている。にもかかわらず、我々はそれを探し求め続けなくてはならない。そうしなければ生きている意味そのものがなくなってしまうから。」(p.388)/といったあたりが印象に。/デイヴ・ブルーベックの「タイム・アウト」は手に取ってみたいと思った/(2016/1/31読了分)村上さんのところ、を読んだことをきっかけに、挫折してたのを、五年越しに読了。各所でのあいさつ、音楽、文学、質問への回答、翻訳、人物などなど雑多な内容だけど、まとめて読むとどっしり読み応え。物語というものへの深い信頼感が感じられる文章を多々読むことができる。また、和田さんと水丸さんの解説対談よむと、ほんとに親しいんだろうなという空気感が伝わってくる。/安西水丸「平成版 普通の人」よんでみたい。/私が小説を書く理由は、煎じ詰めればただひとつです。個人の魂の尊厳を浮かび上がらせ、そこに光を当てるためです。我々の魂がシステムに絡め取られ、貶められることのないように、常にそこに光を当て、警鐘を鳴らす、それこそが物語の役目です。p.79/僕はA面とB面をひっくり返せるCDを昔から提唱しているんですけど、誰も取り合ってくれない（笑）/CDのライナーノーツに、「ここの町の「タンジェリン」というレストランの名物（ということになっている）のビーフ・ウェリントンの肉はちょっと堅すぎるのではないか」て、お茶目すぎる…。/飛行機に乗ると「言い出しかねて」(I Can't Get Started)を反射的に思い出す。/いくつもの異なった物語を通過してきた人間には、フィクションと実際の現実とのあいだに引かれている一線を、自然に見つけだすことができる。その上で、「これは良い物語だ」「これはあまり良くない物語だ」と判断することができる。pp.204-5/(キャッチャー・イン・ザ・ライを読み返して) 世間とうまく折り合いをつけることができず、かといって自己評価の軸を自分の中に打ち立てることもかなわず、あっちに揺れ、こっちに揺れしながら、うつうつとしている一人の少年の姿-それは多かれ少なかれ僕ら自身の姿でもあるのだけれど-が、僕らの前に浮かび上がってくる。p.235/文章による救済の可能性を信じることができず、最後には自らの命を絶つことになったかつての僚友、アーネスト・ヘミングウェイの運命とはあくまで対照的だった。フィッツジェラルドは死の間際まで、しがみつくように小説を書き続けていた。「この小説が完成すれば…」と自らに言い聞かせていた、「すべては回復される」。p.274/僕が書く小説は、ありがたいことに、そのような最終的な明白な結論を必要としていません。必要がないものを無理に書く必要はない、ということです。僕は明白な結末というのが好きではないのです。日常生活のほとんどの局面において、そんなものは存在しないわけですから。 pp.369-70/「思うのだが、僕らを噛んだり刺したりする本だけを、僕らは読むべきなんだ。本というのは、僕らの内なる凍った海に対する斧でなくてはならない」（カフカ）/作家が物語を創り出し、その物語がフィードバックして、作家により深いコミットメントを要求する。そのようなプロセスを経過することによって作家は成長し、固有の物語をより深め、発展させていく可能性を手にする。p.409
 | 集英社 発売日 : 2021-09-17 |
フェミニズム小説や研究、エッセイを読んだときに感じるいたたまれなさは何だろう、それをどうしたらよいだろうと思い手に取ったが、その面からは消化不良。あたりまえだけど、スパッとこうしたらいいなんて伝家の宝刀は無く。ただ著者の書き方は誠実なんだとは思う。性急な断定やカテゴライズを避けて、複雑なことを複雑なまま、現状を詳細に記述したあと、被害者の声を乗っ取ることなく、差別を相対化することなく、他の男性にマウントするようにフェミニズムを振り回すことなく、粘り強く、傷つくことを恐れずに考え続けていかなければならない、と。
「書店主フィクリーの物語」つながりで、エドガー・アラン・ポー「タマレーン」のみ読了。トルコの征服者が主人公ということでオスマン帝国のスルタンのことかと思って手に取ってみたが、ティムールのことだった。ティムールレング（片足の不自由なティムール）、タメルラン、タマレーンと転訛したものと思われる。一介の牧民から身を起こした人物という設定で、権力を握る前、愛した女がいて王妃にも、と考えていたのに…どうしたかは読み取れず。いまそばにいないことは確か。権力の栄華を誇りつつ、そこにはいま、といった感か。
 | 河出書房新社 発売日 : 2006-10-05 |
(2022/2/3読了分)表題作のみ再読。DVD再視聴を機に。興がのってDVD→小説→サントラと一周してしまう。「私、君のこと好きなんだよ、知ってた？」、「昨日のことは嘘じゃないと言ってくれているようで」、"たいしたテクニックもない俺を知られちゃったのに、妙に自信があってずっと好かれていくんだろなって思っていた"、"すべて自分の都合なのだ、そのことに本人が気づいていない、自分は優しいと思っている"、「あのさ、私、べつにキスがなくてもね、磯貝くんのこと好きになってた」、猪熊さんのすべてを知った上での笑顔、「急に「楽しかったなあ」ってことが、頭の中をグルグルし始めたの」、電話なんて温度だ。といったあたりを抜き出して、映画と重ね合わせたり、重なりあわなかったり。小説の女性は二人とも自分からみるめに好意をはっきりと伝えていて、みるめはやや受け身。そして、ずっとうまくいくと思っていた気持ちも、何か決定的なことがなかったとしても、時を経て変化して、冷めていくことも改めて感じさせてくれて。(2010/12/7読了分)再読。もう何度読みかえしたかわからない。誰かが、また読み返した、というのを見かけて、また読みたくなる。今のところ何度読んでも色あせない。／「女の子は信じない」「女の子は人を支えたりなんかしない。気持ちがすぐ変わる。思ってないことを言う。そのくせ「察して」って言うのだ。／後の作品でも頻出する、テレビのラテ欄を作る仕事をする人、が第一作からすでに出て来てるのを発見。作者にとって、よっぽど作品のどこかにもぐりこませたいモチーフなのだろうか。
 | 毎日新聞出版 発売日 : 2021-07-30 |
グリーンランドが出てくる本にはどうしよもなく惹かれてしまい手に取り。冒険家を志すきっかけからその道を進みだす過程が描かれ。デナリへの最初の登頂、グリーンランド、スヴァールバル諸島、北極圏への冒険から、デナリ登頂ふたたびまで。グリーンランドといえど、もちろん中心都市ヌークは普通の都市のようなたたずまいで意外の感にうたれ。もちろんいつまでも自然のままでいてほしいだなんて、旅行者の傲慢だということはわかった上で。フェアバンクスでみたオーロラ。シトカのインディアンの語り部が来日した時に籠った小樽のフゴッペ洞窟。気候変動でなくなりつつあるシシュマレフの村。星野道夫が送った一通の手紙でアラスカと結ばれた縁。スノーモービルを使わないのかと問われた犬ぞりのマッシャーの「機械は壊れたら終わりだよ」という回答。みなが知らないことを伝えようとしたら、まとまらない雑談のようになるのはあたりまえではないか、という解説のフレーズ。といったあたりが印象に。
 | 発売日 : 2012-09-14 |
(2022/2/4読了分)再読。ひょんなことで傘に入れた芸者の置屋になじみ、お互い情が湧き、しかしこのままでは…と離れようと思ったタイミングで置屋がいづらくなり、いつしか会わなくなり、風のうわさで彼女が病んだ、と知り。文人であり、自ら精神的な廃人と斜にかまえつつ、文壇での外聞は気になり、また”真白だと称する壁の上に汚い種々な汚点を見出すよりも、投捨てられた襤褸の片にも美しい縫取りの残りを発見して喜ぶのだ」といった側面も持ち、と。(2013/3/31読了分)昭和初期の、東京の下町、特に墨田区あたりの情景をありありと目の前にみせてくれるような一品。老境にさしかかった作家と、ふと傘にいれたことから縁ができた芸伎とのやりとりや気持ちの行き来が描かれる。
 | 集英社 発売日 : 2017-08-04 |
無限列車編。炭治郎たちと煉獄さんの乗り込んだ列車。列車と一体化して乗客を人質にとった鬼との対峙。その後の上弦の鬼との決戦。まさかここで煉獄さんが、煉獄さんが…と。俺は君の妹を信じる、胸をはって生きろ、心を燃やせ歯をくいしばって前を向け、蹲っても時間は止まらず、ともに悲しんではくれない、俺がここで死ぬのは気にするな、後輩の盾になるのは当然だ、若い芽はつませない、君たちが鬼殺隊を支える柱となるのだ、俺は信じる、君たちを信じる。炭治郎たちに託した言葉の潔さとまっすぐさと慈愛に撃たれる。
 | 小学館 発売日 : 1999-05-15 |
何年振りかの再読。しいたけさんの屈折ぶりから目が離せない。「このひだひだに肉をつめてくれ」「そんなものないよ」「じゃあコンクリでもつめてくれ」でおでんの屋台につれてかれて「ヤケになるなよ」となぐさめられたり。
 | 山川出版社 発売日 : 2022-01-22 |
治績としては、サファヴィー朝を、遊牧政権、宗教国家から、シャーとその宮廷を中心とする集権的な体制に。ペルシア湾につながる南北の交通路を整備。南方の海域とその向こうの世界に着目。オスマン帝国と戦い連戦連勝、領土をひろげた。/中背の優男 偏見迷信おそれず 好奇心に満ち 自由を愛し 美しい建物と庭園を手ずからつくりあげた 一方政治的には保守的、細心、慎重 伝統、規律を重んじ、自らの意のままにならぬものは破壊しつくす 先頭に立ってレジャーにもいそしむが、マメでいそがしい 部下にもそれをつねにもとめてただろう 「気に入られれば出世も莫大な富も思いのまま。しかし、それも命を預けてのことであったのは往時の倣い」/一読の感想は、すごい人なんだろうけどなんぼなんでも人殺しすぎ。よく人がついてきたな、と。即位をめざしても即位後も、晩年も。辺境の有力者を殺して、けど、保守的だからその配下は残して息子に継がせた、って。それ絶対息子も恨みに思うし、そもそも殺す必要無くなかった？と。他にも次から次へと有力者、寵臣、官僚、皇族問わず、邪魔になれば殺すという点では一貫。/それが専制君主の倣いだとしても。それぞれテーマソング持つコーヒーハウスの美少年軍団、世界広場を年に数日女性だけの巨大なディスコにした、といったあたりは文化史的に、興味深いトピック。
 | 青土社 発売日 : 2022-02-04 |
cakesの連載でお見かけしてから気になっていた著者の自伝的エッセイと聞いて買わずにはいられず。地元、京都、読書の3部構成。まずイオンとブックオフがでてきてやや意外の感。ローカル特有のものを押し出すことへの疑問。チェーン店でつくられる豊かな文化もある、と。「やっぱり私は、その土地特有のもの--ローカルとされるものが、どこにでもあるグローバルなものよりも豊かであるなんて、絶対思わない」/スピッツをめぐる著者と友人とのやりとり。「スーベニア」「ハヤブサ」「三日月ロック」のイラストでスピッツ聴きたくなりTSUTAYAへ走った。でも自分が個人的に一番聴いてた時期のスピッツはちょうどかぶらず「空の飛び方」「ハチミツ」「インディゴ地平線」「フェイクファー」の頃だったと思い返した。/大学院の先生方の、まずは10キロ走ろう、ではなく、1000キロを走ってあたりまえという指導が可能性をのばしてくれた、というのが印象に。/山本直樹「レッド」の感想、穂村弘の「終バスにふたりは眠る…」の捉え方の違いなどは興味深かった。この歌にからめて紹介された、穂村弘の短歌をベースにしたという彬聖子「こいのうた」は買っちゃいました。届くの楽しみ。/と、著者のいまに至るまでの思いにふれられ、著者自身が自らのこれまでのことを思い出すのを目の当たりにし、読む側も、自分の聴いてた音楽、読んだ本が思い出される善きエッセイでした。おかげさまで、穂村弘の短歌三首を題材にした彬聖子「こいのうた」も買いました。
 | マッグガーデン 発売日 : 2022-01-15 |
2-4巻読了。藤原跡取りとして権力を握ることを目指すのではなく、史書編纂者として生きようと心に決め。安麻呂との古事記編纂作業は、欠史の組み込みの問題から最終的には、古事記、日本書紀合わせてひとつの史書となる構想に。編纂時の安麻呂の神々への、ロクでもない男、兄は悪くないのでは、いくら神でもやっていいことと悪いことがというツッコミに激しく同意。その過程で明らかになった史の兄の死の真相、記憶を消すことは兄を二度殺すことになるからと抱えて生きることを選び。最後は一族の長たる大嶋に、欠史を握る稗田阿礼を奪われ、一度は藤原の名を恐れた己の無力の為だと悔やむところまで。池澤夏樹訳古事記と吉川弘文館人物叢書の藤原不比等を激しく読みたくなる。
 | 祥伝社 発売日 : 2022-01-08 |
山の上に実家のある四姉妹、その母と長女の息子岳、四女の職場の同僚山田が織りなすストーリー。四女仁衣と同僚の山田の信頼をベースにした静かなダイアローグが好きです。「一度愛したら死ぬまでだ」（仁衣）。「聞き流すことや忘れることも思いやりだって知ったんだ」（仁衣）。「人はえらんでつきあうもんじゃないもんね」（山田）。「思いどおりにならないことを受け入れていくのが生きていくってことじゃないんですかね」（山田）。「だが私の世界ではより多くを許し受け入れた者が多くを得るということわりがある」(占い師ヨナちゃん)。「全部ノイズですね ノイズに揺れちゃだめですよ いつも自分の本音探さなきゃ オリジナルに生きるのが一番楽しい」（岳）。「そもそもあなた何からも影響を受けずに生きるなんてできますか」（ondes藤崎）。
 | 小学館 発売日 : 1999-07-16 |
通販で買った手袋兼靴下、カンタンプチピアノ…だまされたとうなだれるけど、どこに騙される要素があったのか小一時間問い詰めたい。他に、後部座席で紐をひいてブレーキをかける車（ぜったい二人以上じゃないと運転できない）。好き勝手酔っ払ってはきそうになるしいたけのお父さんの原木。「ほとぼり」が冷めないように温め続けられてる部屋（ほとぼりがキュートすぎる！）あたりのシーンが好きでした。
| 発売日 : |
シーソーブックスの棚オーナー「あおにさいBOOKS」のコーナーで見かけて気になり、手にとってぱらりとめくってなんだか気になりレジへ。ビールを飲む人々のスナップのこちらまで見てて幸せになっちゃう感。ビール工場体験のわくわく感。そして、巻末エッセイ。友達からのLINEで、実家が燃えたと妹がinstagram のストーリーにあげてたのを知ったとか、焼け跡の実家でビール飲むスナップとかいろいろぶっとんでていいなあ、と。買ってよかったな一冊でした。
 | 新潮社 発売日 : 2012-04-19 |
作者の訃報に接し、芥川賞受賞作を。中卒で日雇い人足というセルフイメージ。この後味の悪さ、ひねくれにひねくれて、自らを唾棄しつつ、それでも孤独には耐えられず、関係をもとめ、いっときは続いても、思い通りにいかないと相手を罵倒し嗤い、---またその嗤い方も下卑に下卑を重ね---関係をぶちこわす繰り返し。父の前歴が暗く大きな翳をさしているとしても。もちろんそんな感想は思う壺で、そういうお前はそんな大したものかいと返す刀で切られそうな、ひやりとした読後感。表題作じゃない方で語られる堀木克三、藤澤清造の造形は興味深かった。藤澤清造のほうは手にとってみたく思った。
 | 講談社 発売日 : 2012-08-13 |
個人(individual)とは、対人関係ごとにいくつかの分人(dividual)によって構成される。学校で、職場で、恋人の前で、親の前で、友人Aの前で、それぞれの分人が対応するが、どれも「本当の自分」。あらゆる人格を最後に統一しているのが、たった一つしかない顔。分人とは、他人との関係性で規定される、半分は他人のおかげで、他人のせいなもの。だから人を殺すというのはその人だけでなく、その人の分人、その人と対する分人をも失ってしまうわけだから大きな破壊。揶揄されることの多い自分探しも、分人という視点からすると、より刺激を受けたすてきな分人の誕生に貢献するかもしれない、と。分人という視点を持つと、過度に卑屈になったり、傲慢になったりせずに、自己分析ができる。どの分人を大事にするかは、どの人といるのが一番自分にとって心地よく、楽しく、大事なものかを帰順にすればよい。分人という視点をいれるだけで、人間関係というものをまた違った形でとらえられて、善き論考でした。同じ著者の「顔のない裸体たち」「葬送」（ショパン、ドラクロワが主人公）、「フェカンにて」「ドーン」あたりは手に取ってみたく思った。
アッバース一世までは、シャーの母、姉妹、娘、叔母などが政治顧問的役割を務めるが、その死後、ハレムに追いやられ、王朝末期にはハレムが肥大化、と
 | 小学館 発売日 : 2004-05-26 |
穂村弘の歌三首から繰り広げられる物語。甘い、少女マンガのように、と思いつつも、その歌をこう料理したかという楽しみを味わえました。好きな子に声かけるために短歌の本買って、バレて嫌われたら、バスを走って追いかけて両手のひらに「すー「き」とか、ベタだけどキュンキュンしますね。先生と女子高生の、キャプションだけ書かれた後日談も叶うなら読んでみたく思った。
 | 音楽出版社 発売日 : 2016-05-31 |
一番驚いたのは、自分が学生時代に吹奏楽部だった時に、超カッコいい「吹奏楽のための斜影の遺跡」て課題曲書いてた河出智希さんが、今はBOUNCEBACKてユニット組んで、アイドルに曲を提供してるってとこ。すごい転身。デビュー作がBOA「Amazing KIs ｓ」とは。彼をはじめ何人か、現代音楽が好きで、好きな時期があってと、語ってる作家がいたのが印象的。以下は、気になったフレーズや聴きたくなった曲をクリップ。/（星部ショウ）こぶしファクトリー『ラーメン大好き小泉さんの唄』/（ツキダタダシ）ももクロ「オレンジノート」/（ツキダタダシ）ももクロ「ピンキーとジョーンズ」（世界をめぐって日本の恋人に会いに行くってもの作ろうとしたら宇宙にいっちゃった。曲が進むにつれ鳴ってる楽器がどんどん変わる）/（NARASAKI）東京女子流はいいと思いますね。俺、トラックしか聴かないんで、基本的に。/(玉井健二)トマパイは極力少人数で、お腹いっぱいご飯食べたあとに寄る、いい感じのカフェみたいにしようと(玉井さんのインタビュー読みながら「PS4U」聴くとほんと新たな発見や意図が感じられて善き)/(NOBE)結局は自分たちの人生なんですけど、そんなことばっか考えてましたね。この人たちに嫌われたくないとか、そんなのばっかり頭のなかにあったかもしれないです。/(NOBE)Bouno「初恋サイダー」/(サクライケンタ)現代音楽が好きなのもあって、それをポップ・ソングにしたら面白いんじゃないかっていのうはあります。/（児玉雨子）「スタートリボン」「ファーストシークレット」/(佐々木喫茶)アルバム「MP3の断末魔」。Aira Mitsuki「tell me」、Saoriiii「3cmディスタンス」、KOTO半年連続リリース/（石田彰）最終的にはAKBをやりたいと思ったんですよ。秋元さんの弟子になれないかなと思ったこともあって/（里咲リサx灘藍）「カタルカストロ」みたいなずっとウィスパーみたいな曲を/(小出裕介)塾の先生となら禁断の恋にならないかと思って「Partition Love」
 | 吉川弘文館 発売日 : 1997-06-01 |
風越洞x壱村仁「ふることふひと」という青年期の藤原不比等を描いたマンガを読み、興味を惹かれ手に取った一冊。ただ「日本書紀」をはじめとした史書に初めて不比等が登場するのが、持統天皇3年（689年）2月、判事への任命、当年32歳の時。天武期における不比等の成長や活動については全く知りえない。とくに青年時代の消息は不明、とのこと。ただし、草壁皇子の佩刀を得ていたことから、天武期、草壁皇子の信任を得ていたことは確実、と。/「ふることふひと」は、史実から見ると空白ともいえる青年期の藤原不比等を、史上の人物も交えながら想像で埋めていく試みなのだなあ、と改めて認識。稗田阿礼＝女装した藤原不比等で、太安万侶は二人が同一人物だと気づかない、という設定もなかなかにマンガ的で興味をそそられるものもあり。/史上の藤原不比等はその後、持統天皇期に、急速な昇進、下級官吏50人の賜与、文武天皇夫人のひとりに不比等の娘が選出。おそらく持統天皇による政策面の諮問へも適切に答え、抜群の信頼を得ていたのでは、と。40歳にして文武天皇即位（697年）により天皇の外舅となる。律令の制定、銭貨の鋳造、造京、各種の民生策をうちおえて、国史・地誌などの編纂にあゆみをすすめる。晩年は息子たちを高位にとりたて、のちの藤原氏支配の基盤を確実にする、といったところか。
 | 岩波書店 発売日 : 2007-10-05 |
荻上チキ、ヨシタケシンスケ「みらいめがね」を読んで絶対手に取りたくなった一冊。アウシュビッツの生き残りの方の、ドイツ人の若き来場者への「君たちに戦争責任はない、ただ二度と繰り返さないために何ができるか」という言葉、 沖縄へ、ダルフールへ、想像力を向けるべき、という著者の言葉の重さ。自由民主主義社会、歴史の相互認識、差別と偏見の三点を重視して案内しているという著者の姿勢。ドイツのみならず協力国のとった迫害行為についても研究が進み明らかになっている現状。強制収容所の残忍性のみならずそれを可能にしたシステムにも注目すべき。ナチスの政策が個性を消すものなら、我々はそれを尊重せねば。といった提言が、心に留まる。
 | 白泉社 発売日 : 2022-02-04 |
麻生みこと作品、弁護士のシリーズの次は、警察もの。地域の巡査から刑事へと引っ張られた宙と、地元を遠く離れて神奈川の警察に務める教育係の花。蓋を開ければいじめの被害者の復讐だったり、社長の趣味の発露だったりで、報告書の書きにくい事件を、法の範囲内で、被害者にとっては助かる形で丸く収めたり、連続事務所あらしを、元OA機器メーカー社員の刑事が現場写真から突き止めたり、と。女性警察官ならではの、受けてきた思いを、今の時代にアップデートされたところ、されてないところを織り交ぜながら語られる連作もの。
 | 集英社 発売日 : 2021-09-17 |
「新しい技術によって古いブラックボックスが不可視化され、入れ子構造が複雑化していく過程は、ブラックボックスが原初の姿から複雑化によって肥大化していく、その歴史だった」。"ブラックボックス化"をキーワードに、書物と貨幣、それを産み出した背景を余すところ無く語る一冊。/「文字をもたない語り部たちが口承した物語、トークン、現存する人類最古の「書物」である帳簿、硬貨の誕生、神話や歴史など語り部たちの言葉をまとめた書物、書物を対象にした哲学、手写本、印刷術と紙や筆やペンなど書字媒体の発展、紙幣や各種手形（証券）の登場、活版印刷術の改良と機械化による大量生産、電信による情報伝達の加速、金融の電子化、コンピューターとインターネット革命、モバイル革命と、ブラックボjックスは進化してきました。これらをリバースエンジニアリングしていった果てに、記号とその指示対象の多様さや時間が、情報技術のなかに不可視化されていることをあきらかにしました。」「本章で議論したいのは、これらの諸段階においてブラックボックスのなかに畳み込まれて不可視化されてきた記号と、その指示対象および時間が、クロソウスキーのいう「ファンタスム」（動物としての本能は生殖行為に「子供をつくる」という生産的な役割を与えていますが、人間はそのような生産性から外れる志向をもっている）を生み出すということ」といったあたりがこの書の肝かな、と。/ボルヘスは『伝奇集』再読、ブラッド・ストーン、井口耕二訳『ジェフ・ベゾス 果てなき野望――アマゾンを創った無敵の奇才経営者』購入か借り出しあたりはしてみたいと思った。
 | 河出書房新社 発売日 : 2014-11-14 |
池澤夏樹、池澤春菜「ぜんぶ本の話」、藤原不比等と古事記を扱ったマンガ風越洞、壱村仁「ふることふひと」を読んで、俄然読みたくなってしまった池澤夏樹訳「古事記」。古事記は年代記ではない、古事記は論理だけではない、と注釈で繰り返される通り。また、煩瑣で冗長な系譜の部分は読もうとしても目が拒否してしまい。「ふることふひと」でも指摘されていたけど、神々のろくでもなさと、一定の決まりごと、様式をかんじつつ。読了。天皇が、みなみなの家に伝わる帝紀と旧辞は今では事実と乖離し嘘がまじっているのでそれを正すようにとのこと、という太安万侶の序から始まり。現代の目からみると、なぜそのような行動を、とか、考え方を、という部分は当時の人にはなじみのあるものだったのだろう、と思いを馳せ。三浦佑之の解題の、神話は古代の人びとにとって、哲学であり、教訓であり、歴史であり、科学であり、規範であり、そして何よりたのしい文学であった、という言葉にうなずきつつ。三浦佑之「口語訳古事記 神代篇・人代篇」（文春文庫）も手に取ってみたくおもった。
| 工房アルティスタ 発売日 : 2022-01-02 |
ジンギスカンのジンくん、社運をかけたグッズ販売のために、人気アップ大作戦、とジンくんが好きすぎて道東からやってきたピンクの鹿もみじちゃんと仲良くなれるかな編でお送りする第二巻
| 中央公論新社 発売日 : 2020-03-19 |
場面は、主人公の藤原不比等が、自らも信頼を受け、玉座にと思い極めていた草壁皇子の死に立ち会うところからはじまる。持統天皇、文武天皇、元明天皇、元正天皇と、時に協力しあい、信頼を受け、政治に腕をふるい、かけひきをし、皇族や並み居る臣下たちを説得し味方につけ、あるいは蹴散らして、権力を振るう。底には、「父上は満ち足りていたであろう。吾は餓えているのだ」「この国の根幹を変えようとしているとは露ほども悟られてはならぬ。天皇の力を奪おうとしていると見抜かれてはならぬ。未来永劫に続く力を求めていると知られてはならぬ」という思いを抱きつつ。古からのしきたりをねじ曲げ、天皇を神にまつりあげ、本来なら資格のない者を皇位に就けようとする、と謗られても堪えず。政とは、なにかを手に入れるためになにかを差し出す、を地でいき、ひとつひとつ積み重ねていき。最後は、長屋王のなかに、若き日の自らとおなじ野心を感じながらも、死につく、と。「古事記」も天皇を頂点とした国家のありようもみな、藤原不比等が自らの力をふるい、藤原家を未来永劫繁栄させるためにこしらえたもの、という見方から描かれた歴史絵巻。そこまでするのか、そこまで先回りして読み切るのか、といった思いを目の当たりにする圧巻。高島正人「藤原不比等」（吉川弘文館）とあわせて読むと、また味わいが増します。
| 新潮社 発売日 : 2018-11-28 |
（2022/02/14読了分）Netflix版視聴を機に再読。Netflix版はコロナウィルス蔓延した2020年、七瀬との再会、耐えきれずに婚約者が出ていった2015年、婚約者との関係がままならぬ2011年を足して、かつ、どんどんと時系列を遡っていき、最後に走馬灯のようにすべてがめぐる構成だった。今回は小沢健二「暗闇から手を伸ばせ」、犬は吠えるがキャラバンは進むが、ジャミロクワイが、小沢健二「ある光」が聴きたくなり、ゴールデン街で何人かと顔見知りになり余計な詮索はせず、今は繋がってない、瞬間的な知り合い、だからこそ身内にも話せない本音を話せたり、真剣な悩みを笑って冗談にできた、その瞬間距離が縮まり、またそれぞれの世界に戻っていった。"ボクたちは煮ていた。好きな人がいて、その好きな人の強さに惹かれ、自分の弱さに耐えられず少しズルくなっていた。"。最後の「ありがとう、さようなら」のあたりが印象に。/（2018/12/11読了分）初回限定specialカバー、巻末マンガ、解説、あいみょんからのアンサーソングが追加ということで、つい買ってしまう。もちろん本編も、何度目かわからないくらいの再読。「美味しいもの、美しいもの、面白いものに出会った時、これを知ったら絶対喜ぶなという人が近くにいることを、ボクは幸せと呼びたい」「この瞬間の気持ちがずっと続けばいいのに。明日も、明後日も、何年先もずっと。それは夢だよと誰かに言われたとしても」。押井守監督、うる星やつら２ビューティフルドリーマー、見返したくなる。そして、間をおかず、cakes版も再読。この人のエピソードまるまる削除されてるとかこの人とこの人の話が関口さんに集約されてるとか、七瀬の来歴が少し変更になっていたりとか。かおりとスーとの出会いの時系列が変わっていたりとか。文庫版解説では、読めば改変の理由がわかるとあったが、綺麗にまとまった以外の点ではわからなかった。さすがに事務所をバットで壊しまくった後にバイトを置いて逃げて、そのバイトが障害を引きずったとか、同僚が取引先を鼻が折れるほど殴りつけたエピソードなんかは、何かまずかったんだろうな、ぐらいには思ったけれど。読み比べるとcakes版の方がまとまってない分、雑多な力のようなものを感じる。けど、両方とも好きです。
 | 徳間書店 発売日 : 2007-10-15 |
馳星周「長恨歌」のあとがきで、書くのに影響を受けた一冊とあって手に取る。ヤクザものが、カタギの依頼者に出し抜かれ、そのせいで痛めつけられ、依頼を追ううちに、気になった別件に首をつっこんだら、捨てたはずの自らの過去と無理やり対峙させられた、といったところか。冬の札幌が舞台。狸小路や北24条の描き方はひどく斜にかまえられ（狸小路はスピーカーのわめきたてる大音声から逃れられない絶望的な街だった/たしかに落ちた。東京あたりの人間が、ここに案内されて来たら軽い自己嫌悪に陥るかもしれない。何でもあって、街は明るく、軽くて安直で安っぽかった。）。ハードボイルド小説なんだけど、どこか家族の情にひかれ、見捨てられず、名乗らず手を差し伸べようとして。最後にホテルマンのせいで素性がバレてしまい全力で逃げるけど、もうバレてるんだから逃げたってしかたくないかと思いつつ。奔走、苦悩、絶望にすこしの救い。/「金で過去から逃げられるもんか」/雪しか見えなかった。雪しかなかった。雪の声しか聞いたことがなかった/「いつだってそうなんだ。何かが起こったときはたいてい遅すぎる。しかし間に合うときは、いつだって誰も助けてやりはしない」/周章狼狽の時機は過ぎている。あとは決断と方法しかなかった/「だめだった。救ってやれなかったんだ。おれの手の間から、砂みたいにこぼれ落ちてしまった！」
 | NUMABOOKS 発売日 : 2020-03-11 |
本屋で本を選ぶ時、店で本を開く時、寝る前に読む時、今日の気分でこれを読めるかな、今はあちらよりこちらを読む気分だな、と試行錯誤するの至福だな、と思った。/滝口悠生「高架線」、植本一子「降伏の記憶」、"私たちのすることはすべて適切であり、言うことすべてに意味があり、見るものすべてが忘れがたい"（ホッファー「波止場日記」）、ピダハン、セルヒオ・ラミレス「ただ影だけ」、ナボコフ「ディフェンス」、植本一子「かなわない」、「Lovely Man」がはいってるPUNPEEのアルバム、ほんとうに美しいジム・オルーク「みずのないうみ」、磯部涼「ルポ川崎」、"人は、見たものを、覚えていることができる。忘れることができる（飴屋法水）、"課業と化してしまった読書は、その本に対して一種の蔑視を生み出す（保坂和志「小説の自由」）。PUNPEE「夢のつづき」、フラナリー・オコナー全短編集、G・ガルシア・マルケス「百年の孤独」といったあたりは手にとってみたいなと思った。/個人的に、大好きな「なnD6」が出てきたところ、うれしかった。校正のやりとりのなかで発せされた「ぼくはファクトみたいなことに興味がない。グーグルの口コミへの応答とその後の顛末。大谷翔平のさわやかな立ち居振る舞いの数々。などが目にとまった。/"なにか、感動した。この本を読むんだと思ってこの方は来てくださり、そして読み始めた。なにか素晴らしい瞬間を目撃した感があった。感動した。(p.639)は特によかったなと思った。
何回目かの再読。今回目にとまったのは以下のところ。/よくあのころ、こうしたらよかった何とか言うけど、それはないんや。自分の生きてきた来し方って必然の集積なんだ。（中島らも）/そしていつか全部思い出になるんだから（祖母）/自分たちがすみかにしている場所以外に、別の顔をして別の自分を演じられる場所を持つことは人生においてかなり大事なことのように感じていた。/七瀬はそのどの人種に対しても同じ態度で接した。基本的には勝手にしやがれだった。/人生の本当に大切な選択のとき、俺たちに自由はないんだ。七瀬の言葉だよ。つまりは、勝手にしやがれってさ/関口は厨房の真田に向かって深々と礼をした。
 | 辰巳出版 発売日 : 2020-09-11 |
高野秀行さんのツイートで面白い、と言うのを見かけて購入。著者が新大久保に興味を持って引っ越してくるところこら始まるノンフィクション。アオザイバーをガールズバーにしたいと目論みつつ、フェスがあればタピオカを仕入れ、次はバインミーと精力的なベトナム人トゥイさん。「日本でベトナム人向けのフリーペーパーを発行している韓国人？」と何もかも興味を惹かれる発行人。牧師カフェ、東京媽祖廟、ヒンドゥー寺院などみなで集うことのできるコミュニティ。送金会社ユニマニー、外国人対応できる家賃保証会社GTNなど、充実していくインフラ。「この街にいるだけで、世界旅行ができるよね」と笑うおばちゃん。もちろん多文化共生のいいところばかりではなく、それについて行けず、あるいは諦めて、この地を離れてしまう元からの住人についても描かれ。また読み進むにつれて、コロナ禍で阻まれそうな意欲的な試みがいくつも出てきて、どうなってしまったのかと思っていたら、終章で、負けずに海外に飛び出した人、いまは活動中止してるけどいずれは、と準備している人、大変だけどしたたかに、とさまざま。レストランなどでさまざまな国の人に話される、新大久保語ともいうべき、混成語的な日本語についても興味を惹かれた。
 | 三輪舎 発売日 : 2021-12-21 |
イスタンブルが舞台。オスマン帝国末期が舞台。なかむら商店。エブル。ハリルの祖父からエブルをならうたつきとハリル。イスタンブル探検。かわりに折り鶴を教え。おそらくエルトゥールル号に載ってたハリルの父の帰還。といったところが、描かれる。詩情溢れる絵が、舞台のイスタンブルと相俟って、伝統芸能に惹かれていく少年たちの友情物語をより味わい深いものとしてくれる。
 | KADOKAWA 発売日 : 2022-02-14 |
バードの蝦夷ヶ島でアイヌと会いたい動機は、進化論のダーウィンがきっかけだったこと。弘前英学校の生徒との対話で宣教の思いを新たにし。山の恵みで生きてるのに山の怒りを嘆くなんて、と暮らす山の民たちとの出会い。ヘボン先生との邂逅。英国領事の奔走による物資面での大きなアシスト。などが語られ。まちで見かけた伊藤に呼びかけるも無視されたところまで語られる。次巻は、いよいよ、伊藤の元雇い主マリーズ氏との対決、アイヌとの邂逅が描かれるのだろうか。
 | 国書刊行会 発売日 : 2014-10-27 |
パラパラめくっていたら、中上健次「岬」が読みたくなってきました。あと、ボウルズ、ナボコフ、草枕、カーヴァー、檸檬、あたりも。さすがに諏訪さんが偏愛する、プルースト「失われた時を求めて」を2種類の翻訳で、はハードル高すぎるなあと思いつつ。以下備忘録/カーンと冴え渡った檸檬。感覚以上に、漱石・志賀の精読により生み出された文体の強度/著者の妻が丸善の書店員でいまだに年に何個かは置いてある檸檬を拾うのだとか/カーヴァー「愛について我らが語るとき…」の短編「風呂」の凝縮された世界/ボールズ「優雅な獲物」の言葉を奪われた言語学者。/カーヴァーは生涯、短編と詩しか書かなかった。そのかわり駄作がない。/生野幸吉 闇の子午線 パウル・ツェラン/すべて小説とは、作中と作外、作品と作者との、非人情（メタフィクション）による決闘なのだ。その超越論的な小説観そのものを小説にしたのが「草枕」。/サルトル「嘔吐」 人の生には本当は意味も目的もない。何かのためにも誰かのためにも生きていない。「ただ在る」だけだ。/なべて人の愛は「偏愛」である。
 | 文藝春秋 発売日 : 2009-10-09 |
再読。学生運動の残滓が断末魔をあげていた1970年代後半。姉と恋人を、内ゲバの果ての誤爆で、頭蓋骨をくだかれ殺されてしまった主人公陽子。高校でも大学でも、前の世代が、自由、解放、革命をうたって暴れまわったあとの、荒廃した光景、息苦しさを感じ。姉の事件の痕跡を求め、もがき、同志を得て、失い、そこから立ち上がり、回復し、仕事を持ち、家庭を持ち、ある時知らされた姉が愛した人のその後と、その死と。全編をつらぬくキャロル・キングの唄には魅了され、アルバム「Tapestry」聴き込んだ遠い記憶。タペストリー、つづれ織り、誰かの人生の縦糸と誰かの人生の横糸が絡み合い。姉のしてきたことも言葉も考えも、薄れていくにしろ、自分に、娘に、どこかに、痕跡を残しているのであり、決して無駄ではなく、ひとつひとつ積み重なっていき、というのを描きたかったのかな、と思った。
 | ミネルヴァ書房 発売日 : 2013-05-08 |
基本線は、従来の、藤原不比等の四子武智麻呂・房前・宇合・麻呂は、不比等死後、房前を後継者として一致結束し政権運営に当たったという説に対し、後継者は武智麻呂で、武智麻呂と房前は路線を異にし、長屋王の変ではそれがピークに達し、以降、武智麻呂・宇合・麻呂は協力して政権運営にあたるが、房前はその死に至るまで不遇のままだった、といったところか。特に、長屋王の変時に誰がどのような行動をとったか、その後の政権掌握、誰の官位があがったかといったところに着目した立論は説得力があった。武智麻呂による光明子立后は、皇子の誕生がなくとも、政治を優位に展開できるようにとの意図で、藤原四子後の政治展開にも大きく影響。阿倍内親王＝孝兼ね天皇即位、藤原南家の仲麻呂政権現出へ、と。聖武天皇が、四子のうち、武智麻呂にだけ不比等と同様の大赦をもって平復を願っているのは、武智麻呂が不比等の実質的な後継者として認識されていたことを明確に。また、聖武天皇が武智麻呂の死後三日間廃朝していることも、房前との相違。
 | 中央公論新社 発売日 : 2020-04-18 |
藤原不比等の息子たち、藤原四子が主人公。参考文献にもあげられてる、木本好信「藤原四子 国家を鎮安す」(ミネルヴァ評伝選)が色濃くベースになっていると感じた。すなわち、藤原四子は一致結束して政権運営にあたったのではなく、いち早く参議となった房前は不比等の後継者ではなく、長兄武智麻呂が後継者、房前とは最終的に対立し、宇合、麻呂は武智麻呂に協力した、という視点。/武智麻呂：藤原家を繁栄させる 房前：自分は藤原の一門である前に天皇の臣下。ただ天皇でも間違えば臣下として諫言する。 宇合：この国を唐と並ぶ強国にする 長屋王：政を皇親の手に取り戻す 聖武天皇：朕の意のままに政を行う 安宿媛：首様を支える/それぞれの思いが交錯し、ぶつかり合い、強引ともいえる決着の付け方、そして祟りとも云われる終わり方に、史実を知る身であっても、割り切れぬ、重いものを飲み込んだような心持ちに。また、特徴としては、史実はもとにしているけれど、何年にこれがあった、という記載がほぼないので、時間の長さがあいまいにされ、例えば、長屋王の変直後に、武智麻呂らが罹患したようにも読める、そのあたりは意図したものなのかな、と思った。まだそこまではっきりとは形になっていないけれど、突き詰めれば、支配者の独裁か、有力者の合議制か、という対立軸になり、そこに皇位継承に関するそれまでのしきたりと天皇自身の我が子、我が孫に継がせたいというプライベートな思いがぶつかりあい、そこに自らのお家を繁栄させたい各家の思いがからまりあい、と。/しきたりは、いずれ新たなしきたりに取って代わられる（不比等）/天皇といえども、すべてが思いのままになるわけではない----長屋王は朝堂でそう言い放った。やり方さえ考えれば、天皇はすべてを思いのままに動かせる----武智麻呂は天皇にそう教えている//「兄上にとっては正しいと思われることでも、わたしにとっては間違いとしか思えぬこともあるのです。どうしてそれがわからないのですか。自分が絶対に正しいからですか。兄上は絶対に間違いを犯さないのですか」（麻呂）/「あなたは自分でも気づかぬうちに驕っていたのです。左道も呪いもどうでもいい。このような事態に陥ったのは、あなた自身が招いたことです」「人は感情に左右される生き物です。あなたは原則を盾に、その感情を無視した」（武智麻呂から長屋王へ）/「わたしなど、滅相もありません」 驕ってはならん。長屋王の死はわたし自身への戒めだ（武智麻呂）/「権力に正しいも悪いもない。権力はただ権力だ。」「話をしたことはない。だが、普段のあいつの様子を見ていれば察しはつく。おまえはなにを見ていたのだ。ただ、自分が正しくある、それだけを考えていたのだろう」（武智麻呂から房前へ）/個人的には一番宇合に惹かれていたようだ。気がついたら、宇合の言葉、思いに一番多く付箋を立てていたから。
 | 文藝春秋 発売日 : |
読書室ポワロで、諏訪 哲史『偏愛蔵書室』をパラパラめくっていたら手に取りたくなった一冊。地縁、血縁がぐつぐつに煮込まれて煮詰まった一画の人間関係と鬱屈。いい顔してナンパして、外に連れ出すと殴りつけていうことをきかせる、のちに古市を刺殺してしまう安雄、つねに酔って姪に酒をたかりにくる弦叔父が強い印象。男前で、すずしい顔してるようにときに思われる秋幸も、息のつまる思いを抱え。「彼の体の中にも、女と見れば、子持ちの後家であろうが、女郎であろうが、娘であろうが手を出す、好色の、淫乱の血が流れている。人を足蹴にする。友人を裏切る。人の弱みを突いて、乗じる」
「10にまつわるいろいろ展」（アートスペース201）で購入。以前、文学フリマ札幌で、ゲームセンターを舞台にした、短編小説とマンガを収録した「Home」がすごくよかったので、もう一冊なにか読みたいと思ってたところにドンピシャでした。魅力的なポップンの曲紹介に心惹かれ、一読、popnのサントラとか出てたら欲しい！と思ったのですが、調べてみるとたくさんあるようで。ただ、いくつかyoutubeで聞いてみて、新谷さなえさん、Sanaさんの曲はいいなあと思いました（しかしこれもあとから調べてみると新谷さなえさん＝sanaさん？）。出始めの頃に、beananiやDDRはかじったことあるのですが、これからはポップンの曲も少しずつ聞こうかなあと思いました。まずは、新谷さなえさんからだ！
 | 講談社 発売日 : 2022-02-18 |
A &Rとして、ジャムを売り出すため、デビューさせるに契約、制作でやることは山盛りで上手くできず、部長や先輩にぶち当たって教えを乞い、ジャムの顔色を伺ってばかりで言いたいこと言えよと指摘され開いたドア、ジャムとアレンジャーの会話につくづくアーティスト側ではないと思い知らされ、それでも奔走して欲しいドラムの音を探し出して、やればできんじゃん、と褒められた後免。1+1を2以上にするために周りに協力を求め、うねりを大きくしていくんだよなあ、と思いつつ。最後は、原石と売れる方向に特化したライバルとの対決か、といったところまで。
 | 秋田書店 発売日 : 2022-02-16 |
自分が理解できないもの否定するのって逃げだと思うんです。恐怖からの防衛本能かもしれないですけど。（海）/課題での海子の監督作品への講評と経験不足の積み方。山口の海への思い、玉砕、うみ子のフォロー。海の、映画の現場への修行とエキストラデビュー。海を見込んだインフルエンサーの学園への登場で波乱の予感、まで。海の、さりげないうみ子へのきづかいが印象に。自分の映画、どんなふうに上映/公開したい、は各人の抱く思いのバロメーター。
 | 小学館 発売日 : 2022-02-10 |
春のをどり一色で、いつもは集う舞妓さんたちはバラバラに過ごし。千秋楽までのハードな道のりをそれぞれの舞妓さんに合わせた好物できっちりと支えるキヨさん。すみれは、足の怪我をおして舞台に立とうとするも、お前は将来の街の宝なのだから止められ。それをキヨと健太の励ましで乗り越えられ。きっかけを作った百子ねえさんの、あの子には100%の味方が二人もいてはるんやなあ、というつぶやきがしみじみと。
 | 筑摩書房 発売日 : 2009-03-10 |
書店主フィクリーのものがたり、阿久津隆「読書の日記 本づくり スープとパン 重力の虹」つながり (1)善人はなかなかいない：クルマで旅行中の一家が祖母の粗忽な思いつきに起因する事故にあい逃亡犯に一人一人射殺される(2)生きのこるために：片腕が半分しかない男が強欲そうな老婆の信用を得て耳の聞こえない娘と車で新婚旅行に出て、その先で娘を置き去りにする(3)田舎の善人：田舎町で義足で博士号まで取った娘が田舎の善良な青年とみた聖書売りを誘惑しようとするも、義足を持ち去られ(4)強制追放者：農園を切り盛りする女主人が、ユダヤ人迫害から逃れてきた家族を受け入れたが、いままでの白人男性、黒人男性の密かな反感を得て、事故に見せかけて家族の長が轢き殺され。あたりが印象に残った作品。後味の悪さ、むき出しのものも、密かに抱かれて爆発するように現れる悪意も、読み終えると重いしこりが残る感。著者の意図としては成功なんだろうと思いつつのモヤモヤ感。/「善人はなかなかいないもんだ。なにもかも悪くなる一方ですね。昔は網戸に錠をかけずに出かけたもんだが。もうそんなことはできっこないさね」/「死人をよみがえらせたのはイエス・キリストだけだよな。そんなことはしないほうがよかった。イエスはあらゆるものの釣り合いを取っぱらったんだ」/「人生には、ほんとの楽しみなんかあるものか。」（「善人はなかなかいない」）/「奥さん、人間は二つのものでできている。肉体と精神だ」（「生きのこるために」）/「なんだって完全なものなどありません。」「田舎の善人は地の塩です！それに、人間のやりかたは人それぞれなのよ。いろんな人がいて、それで世の中が動いてゆくんです、それが人生というものなのよ！」/「あんた、あんまり利口じゃないな。おれなんぞ、生まれて以来、なんにも信じたことはないよ。」（「田舎の善人」）/
 | 河出書房新社 発売日 : 2011-05-07 |
友人の静雄と暮す書店で働く僕。書店の同僚の佐知子といい雰囲気になり付き合うようになるが、静雄を含めた三人の関係が深まりやがて…と。インターネットもスマホもケータイもない時代の青春グラフィティ。ものごとの突き詰め方、手ばなし方、あきらめ方が今と違ってて心地よく感じ。彼女の心が友人の方にも軸足を置いていくのをただ水のように眺めていたり。（「きみの鳥はうたえる」） 印刷会社で心を病み、医者にランニングを勧められ、走ってる時に暴走族と知り合い、そのすべてを暖かく見守る友人がいて、といった一編。（「草の響き」）/地獄におちた奴にチャンスなんかいらない、僕ならほしくないね（静雄）/五日間で、僕は佐知子を失うような気がした/「でも、聞いて。あたしたち、一緒に暮すことにしたの」/「そうね。あんたに悪いわ」「悪いって顔をしてないぜ」「だから悪いのよ」「それが僕にはよかったんだ」/「そのうち僕は佐知子を通して新しく静雄を感じるだろう、と思ったことは本当だった（略）今度は僕は、あいつをとおしてもっと新しく佐知子を感じることができるかもしれない」/
#新人出版社の履歴書フェア at三省堂書店札幌店にて、店頭で配布されてた各出版社の履歴書。内容充実してました（しすぎてて、ちょっと店頭で全部読む気になれず家に帰ってから通読しました）。一読して。個人的には、rn pressさんの、編集者時代、喫茶店で大友克洋をナンパして図録を担当と出版社の渡りっぷり、アジュマブックスの筆者名見て、あ、昔「LOVE PIECE CLUB」のWebコラムで読んでた北原みのりさんだ！と思ったり、刺激を受けた本で、ひとり出版社ものが結構共通していたり、淡濱社さんが利尻礼文ひとり旅がきっかけで移住・起業されていたり、オスマン帝国・トルコ好きとしては見逃せない、最近読んだ「海峡のまちのハリル」を作った方が入ってたり、ぜんぜん出版と関係ない道を辿ってきた方が一念発起して出版社おこしていたり、灯光舎さんがロゴを作ってもらった空中線書局さん、白地に活版印刷の白字の詩が刻された手製本買ったことある！などなど、響いたところ多数でした。読み終えて、もう一度、店頭にフェアを見に行こうと思いました。/この日は高崎彰「アカハチ」を購入。十年以上前に波照間島に渡ったことのある身としては興味津々、郷土の英雄だけど研究そんなにないしな…と思ってた所にメガヒットで即お買上げ。/その後、再訪。ああ、これが履歴書で語られてたあの本！と思いながら観られて、一度目より大変味わい深かったです。今回は、淡濱社さんの「北の浮島、彩染める」を買いました。
 | 筑摩書房 発売日 : 2021-08-10 |
すべての存在を差別なく受け入れ、少数派を保護するという理念を持つジャワ文明などに端を発し、イスラームと融合した、インドネシアならではの独特の寛容性。「イスラーム社会」と「ムスリム社会」の差異と特質。原理的な教義と信者の行為の乖離…どの宗教どの社会でも共通…宗教は時空を超えて変化を遂げるのであって、その意味で宗教は有機体…といった考えをキーとしたインドネシア社会の理解。民主化と信教の自由、他者への寛容性を大きく育てたグス・ドゥル（第四代大統領）の、インドネシアにはインドネシアのイスラームがあるべきだ、という考え方。華僑文化解放、政治犯釈放、個人の思想や自由の尊重、宮殿内モスクの一般解放、市民対話といったさまざまな施策、および政治家としての基本姿勢-権力ある者に屈しないこと、イスラームを個人の良心の問題として扱うこと、新しいイスラームのあり方を模索すること。といったあたりが印象に残る。
 | コアミックス 発売日 : 2022-02-19 |
なれずし、プーティン…フライドポテトのチーズとグレイビーソースがけ、塩オイルパルメザンのマッシュルームサラダが気になり。母を連れてのいつもの酒場編、同僚がチェーン店で一人飲み編とその直後のワカコさん一人飲み編などもよかった。
 | コアミックス 発売日 : 2022-02-19 |
酒盗づくりの手間ヒマに思いを馳せ。近所のスナックのママの佇まいと飲みっぷりのギャップ、看板娘へのスカウトをやんわり断り。焼肉サラダの回ではワカコ酒のワカコさんとコラボ。大将の親父さんの話と串にささった卵焼きの思い出にほっこり。総じて作り手の思いがおだやかに伝わってきて読んでて心地良し。次巻がラストなのはさびしい。
 | 新潮社 発売日 : 2021-04-26 |
前科7犯、借金50億、懲役370年。波乱万丈、ジェットコースターのように栄華、失墜、復活をくり返し。バー店員、百科事典セールス、英会話学校経営、ビニ本販売、AV監督、AV会社経営、そば屋、タオル屋…おそらくこの事業なら、というこだわりよりは儲かりそうという嗅覚。セールスで身につけた応酬話法でなんだって売れる、誰だって口説けるという自信。走り続けなければ死んでしまうような餓えと、生命力、活力はどこから来てどこへ向かうのか、といった思いで読んだ一代記。村西とおるの身近にいた著者も、なあなあではなく、時に村西が不愉快になるような質問も-たとえば卑弥呼の3000万円を最初から返すつもりなく事業費にまわすつもりだったのでは、とか-臆せずビシビシと切り込んでいる。語られるバブル前後の怒涛の光景。また、ふんだんに盛り込まれた本人の語りや女優や会社関係者などのインタビュー、エピソードも盛り込まれての文庫版約850ページの厚み。最後のほうの関係者インタビューでの、本当はこうすればよかったんだよ、というのは後出しにも聞こえたが、偽りのない本音にも思えた。もっともそうできなかったところが、村西の村西たるゆえんだったのかもしれないが。黒木香の当意即妙の切り返しや発言、発想、対談などのシーンを読んで、今更ながらこの人の書いたものを読んでみたい、という思いを強くした。露悪的にも思えるふるまいの数々と、子どもの教育のことでインタビューや執筆依頼が殺到しても「子どものことで飯が食えるか」と一切断る姿、密着映像を撮る監督の前で、「困窮した村西とおるは高槻彰から金を借り、それまで耐えてきた緊張の糸がぷつんと切れたのか号泣するのだ。精魂尽きたかのような、尾の長い悲痛な泣き声だ。」（p.795）となったシーンのギャップが眼にやきつく。/「おれのしたことって絶対悪じゃないからね。おれがやった刑法百七十五条違反っていうのは、先進八ヶ国においてはどこでも許されてるわけだからね。窃盗や殺人とはまったく違うわけよ。罪の意識を持てないところに苦しみがある。」/「おれに比べたら逆境と言えないような、つま先転びした程度の男が、すぐ死にたい、もうダメだと、女房の前で泣き叫ぶんですよ。聞けばたいしたことじゃないんだよ」/
シーソーブックスでぱらりと手にとり欲しくなり。シーモンキーを育てるのは大人でも難しく、祖母は重大な秘密めかして、リュックというものを背負ったことがないと明かしてくれた。見返すかもと大事にとっておいたアルバム類は見返さなくて捨てた。 ヌルマヨ「笑っていいとも」聴きながら出産したかったけど、痛すぎてそれどころでなく、MDプレーヤーを床に叩きつけた。といったエピソードが味わい深く、印象に。
 | 岩波書店 発売日 : 1983-04-16 |
読書室ポワロで手に取った、岩波文庫編集部(編)「世界名言集」を見てたら、いくつもベーコンの言葉が目についたので、手に取り。//人間の心は大きなことに立ちどまっているより、むしろ小さなことに進歩することによって励まされ元気づけられる（帝国について）/最上の忠告者は死者である（忠告について）…つまり書物に親しむのはよいことだ、と/比類なく自分を愛する人々は、しばしば不幸である（わが身のための知恵について）/熟考し熟慮するために読むがよい。ある書物はちょっと味わってみるべきであり、他の書物は呑み込むべきであり、少しばかりの書物がよく噛んで消化すべきものである（学問について）/高くつく支持者は好かれるはずがない。（略）私は財布の重荷になる者ばかりでなく、うんざりするほどしつこく嘆願する者も、高くつくと見なす（支持者と友人について）
| ハガツサブックス 発売日 : 2020-12-23 |
50年ぶりの八重山旅行、50年前の卒論、最近のオヤケ・アカハチをめぐる研究・実践の動向と、15年前に波照間へひとり旅したことのある身には興味深い題材が目白押し。50年ぶりの八重山旅行はおおむね穏やかなものだったが、泥にはまった船を腰まで泥につかって推したり、「オッホッホー」という仮面のトリックスターがお金をばらまく祭事といったあたりに興味を惹かれた。卒論「オヤケ赤鉢の乱の研究」は、オヤケ赤鉢の乱そのものだけではなく、むしろそれは一部で、もっと広く、乱前後の沖縄社会を文献資料、考古資料を使って、当時の生活、社会を明らかとし、封建支配に抵抗した郷土の英雄ではなく、15世紀先島社会を原始社会から古代社会へと移行する過程ととらえ、その中でいくつも起こった、広域を支配しようと試みる族長的支配者の一つであったことを明らかにする、といったものであった、と。それを受けて最近の研究・動向で、これまで明らかになってなかった発掘成果や、さまざまな研究が紹介され、大変参考になった。オヤケ・アカハチが尚王朝の末裔であることを詳細に論じた研究書まであるという驚き、韓国の英雄ホン・ギルドンがアカハチになったという説なども。
 | 講談社 発売日 : 2017-09-28 |
阿久津隆「読書の日記 本づくり スープとパン 重力の虹」つながり。語りに魅了される。練馬区の片隅の、住人が退去する時に次の条件を見つけてくることを条件に、ボロ家だけど風呂トイレ付き23区内で3万円という破格の家賃のかたばみ荘。そこの住人、その次の住人の親友、その彼女（のちの妻）、その次の住人、その行きつけの喫茶店の女性店長、そこに居合わせた作家と名乗る人物、と次々とリレー形式で語り手が変わっていき。彼らの学生時代、社会人時代、かたばみ荘での生活が語られつつ、失踪事件、令和の時代に昭和を地で行く逃走劇、穏やかな人生送ってそうな管理人さんの生き別れの子どもが、取り壊しが…といった事件も織り込まれ。けど、要約できない、まとめられない、語り尽くせぬ思いが、あたたかく、おだやかで、やわらかな関係性を形作っていて、読んでて滋味が深く。そして、これを好きな人は保坂和志も好きだろうなあという近似性も感じ。
| 発売日 : |
礼文、利尻の青の美しさが印象的な、レンタサイクル、レンタカーでぐるりとまわった一人旅の紀行。日本最初のネイティブ英語教師ともいわれる、ラナルド・マクドナルド氏。小さい頃「おはなし歴史風土記 北海道編」て本で読んだ覚えがあり、ここで出会えるとは、という思い。帰りの飛行機内で、人生の転機となるような思いにとらえられたんだなあ、と思いました。
ニュースなどで触れたことのある「寝そべり主義」がどんなものか知りたくて。わりと個人主義的な思想かと思いきや、内実は、広く連帯を求める思想だった。/「寝そべることこそが立ち上がることであり、立つことは這いつくばるということである」/「既存の秩序に対する大いなる拒絶を実現するには、個人主義ではない繋がりが肝心なのだ」/
 | コアミックス 発売日 : 2022-02-19 |
タバコ、ダイエット、親戚の子の悩み、仕事で中抜きされた怒り。ふたりのそれぞれの視点で、同じ出来事が語られる醍醐味。最後はリツコを飛ばして部長に直談判した後輩の視点も付け加えられ。ストレート一本じゃ勝負できない、それぞれの思惑も野心も気遣いもあり、信頼がベースにあってそれがうまくハマるさまは読んでていいなあと。
 | 文藝春秋 発売日 : |
(2022/02/28読了分)新井満の訃報に接して、何冊か読み返したくなり。今読み返すと、オールドファッションなところが見受けられたり、気取ってるなあ、と思うところもあるけれども、総じてこの世界観、ここに流れる空気に惹かれてまた何度も読むのだろうと思う。「音楽と絵画と文学の三人が、仲よく談笑しながらお茶を飲んでいる、そんな本ができたら…と夢のようなことを考えている」というあとがきに煽られたように、無性にサティが聴きたくなり、「ジムノペディ」「グノシェンヌ」「ジュ・トゥ・ヴ」「官僚的なソナチネ」「干からびた胎児」「スポーツと気晴らし」とつづけざまに聴いてしまった。/「あらゆる思想は、損なわれた感情から生まれる」（E.M.シオラン）/死のうと生きようと、大した違いはないのではないか/<彼らは皆、どこへ行ってしまったのか？><ここではない、どこか遠くへ>そしてこの場所には二度と戻って来ないだろう。(「苺」より)/人間も一生涯かけて大小様々な零を描き、最後にふっと消えてしまう(「ヴェクサシオン」より)///(2011/7/18読了分)何度読み返したかわからない。その昔、手に取ったきっかけは、サティの、840回も延々と同じフレーズを繰り返す曲のタイトルが冠されていたからだったことは覚えている。それから、同じ作者の作品を追って行ってた時期もあったけど、同じ道具立て、小道具が何度も使われていたり、登場人物の職業が、おそらく作者のこれまでの職業経験の範囲からのみ選ばれているんだろうな、主人公のタイプも似たかんじ、というのがほの見えて、広がりが無く感じられて、離れた時期もあり。独断と偏見だけど、大崎善生、山崎ナオコーラにもその傾向があるように思う。もっとも、その後、まったく毛色の違うほうへ、描かれる世界もひろがって、ということもないわけではないけれど。CFプランナーの三郎と、CF絵コンテイラストレーターの遥子。彼女が弾いたジムノペディをきっかけに、サティにのめりこんでいく三郎。フリーとしての一作目がこけたものの、遥子にコンテを頼んだ次回作はあたり、それ以降は忙しい日々を送り、ふたりのあいだに子どももでき…。「広」告から「狭」告へ、大衆の喪失と、価値基準の多様化、といったことは、この小説が描かれたころから語られていたんだな、ということ。太古から延々受けつがれてきた生命と、ヴェクサシオンの延々とつづくリフレインとを重ね合わせて、不思議さをかんじる三郎の素朴さに目がとまったり。
 | 講談社 発売日 : 2018-04-23 |
1-3巻読了。パワハラで刑事課から交番へ転属となった女性巡査部長を軸に、刑事などからめて描かれる警察模様。勤務内容とか考えたりすることは取材にもとづいてリアルなのだろうか、と思いつつ、興味深く読み。
2022年02月03日
2022年01月に読んだ本
0101・台北プライベートアイ kindle 20211212
0102・中崎タツヤ もたない男 シャンティブックス 20211231
0103・遠藤周作 砂の城 （中江有里「沙羅と万葉」関連）図書館
0103・呪詛 vol.3 seesawbooks 20211225
0103・新井満 カフカの外套 図書館
0103・あさぶ商店街創立３０周年記念誌 図書館
0105・加納朋子 カーテンコール 20220102
(0107・ぽやん通信 1
0107・木下聡「斎藤氏四代」ミネルヴァ書房 （2020） 図書館
(0108・キタノステラ5 kindle
0108・森沢明夫 大事なことほど小声でささやく 20220102
0108・川尻こだまのただれた生活 6 kindle
(0109・ラトビア MAGNETIC LATVIA seesawbooks
0109・中西嘉宏 ロヒンギャ危機(中公新書) 図書館
(0111・鬼滅の刃1-2 ラーメン大将…
0111・荻上チキ ヨシタケシンスケ みらいめがね 20220109 seesawbooks
(0111・PRESSSHIBA 2021 ...salonタレ目で 20220109
(0113・鬼滅の刃3-4 ラーメン大将...次々出てくる強敵
0113・【再読】朝倉かすみ 田村はまだか 20220102
(0114・ma2 私たちが恋する理由 1-2 読書室ポワロ
0114・綾野剛 牙を抜かれた男達が化粧をする時代 20220109
0115・佐々木チワワ ぴえんの病 SNS時代の消費と承認 kindle 20220109
(0116・AIの遺電子 Blue Age 3 (3) (少年チャンピオン・コミックス)
(0116・まるもの 6 seesawbooks 20220116
(0116・キョートット通信 vol.1 seesawbooks 20220116
0116・会田大輔 南北朝時代 中公新書 図書館
(0117・アンサングヒーロー 1
0118・【再読】村上春樹 意味がなければスイングはない (文春文庫) 20220102 ...ビーチ・ボーイズ（サンフラワー、サーフズアップ、ペットサウンズ）、プーランク、スタン・ゲッツ、シューベルト、スガシカオ、ゼルキン＋ルービンシュタイン、W・マルサリスのみ読了
0118・中江有里 結婚写真 20220102
0119・スマホ脳(新潮新書) 20220102
(0119・PERFECT SPICE 2・3・4、LOVE SPICE 10・12 、FINE SPICE 2 村上カレー店プルプル
0120・佐藤泰志 そこのみにて光輝く 20220102
0120・庄野雄治編 コーヒーと小説 読書室ポワロ
0121・村上春樹 古くて素敵なクラシック・レコードたち 読書室ポワロ
(0121・波よ聞いてくれ 9 kindle 20220121
(0121・紛争でしたら八田まで 8 kindle 20220121
0121・書店主フィクリーのものがたり シャンティブックス 20211231
0121・西崎憲（編） 夕暮れの草の冠 読書室ポワロ
0122・花田菜々子 シングルファーザーの年下彼氏の子供2人と格闘しまくって考えた「家族とは何なのか」問題のこと 20220102
(0122・モブ子の恋12
0123・嶽本野ばら ロリヰタ。 20220102
0123・阿部拓児 アケメネス朝ペルシア（中公新書） 図書館
(0123・川尻こだま ツイッタでマンガ描いてたらアニメになった話 kindle
(0124・渡辺ペコ 1122 1-2 kindle
(0124・鬼滅の刃 5-6 ラーメン大将
0125・佐藤泰志 黄金の服 20220121
0125・【再読】藤原新也 メメント・モリ
0126・シノドス新書 荻上チキ対談集１ kindle 20220112
0126・池澤夏樹 池澤春菜 ぜんぶ本の話 kindle 20220123
(0127・益田ミリ スナックキズツキ 20220126
0127・中谷美紀 オーストリア滞在記 20220102
0128・【再読】イスタンブールを愛した人々 中公新書 20220102
（0128・林邦夫 グラナーダ王国の征服 降伏文書の検討から(pdf) 鹿児島大学教育学部研究紀要. 人文・社会科学編 35
（0128・鈴木董 後期オスマン帝国における没落観と改革論(pdf)
（0129・末森晴賀 18世紀前半のエーゲ地方における勃興期の「アーヤーン」―「匪賊」サルベイオウル・ムスタファの事例から― 東洋学報,100(1),01-026 (2018-06)(pdf)
0129・札幌の喫茶店 ぴあMOOK 20220129 seesawbooks
0129・燃え殻 断片的回顧録 20220129
0130・誰も書かなかった平成史の謎 20220126
(0130・たらちねジョン 海が走るエンドロール1
0130・佐藤泰志 海炭市叙景 20220120
0102・中崎タツヤ もたない男 シャンティブックス 20211231
0103・遠藤周作 砂の城 （中江有里「沙羅と万葉」関連）図書館
0103・呪詛 vol.3 seesawbooks 20211225
0103・新井満 カフカの外套 図書館
0103・あさぶ商店街創立３０周年記念誌 図書館
0105・加納朋子 カーテンコール 20220102
(0107・ぽやん通信 1
0107・木下聡「斎藤氏四代」ミネルヴァ書房 （2020） 図書館
(0108・キタノステラ5 kindle
0108・森沢明夫 大事なことほど小声でささやく 20220102
0108・川尻こだまのただれた生活 6 kindle
(0109・ラトビア MAGNETIC LATVIA seesawbooks
0109・中西嘉宏 ロヒンギャ危機(中公新書) 図書館
(0111・鬼滅の刃1-2 ラーメン大将…
0111・荻上チキ ヨシタケシンスケ みらいめがね 20220109 seesawbooks
(0111・PRESSSHIBA 2021 ...salonタレ目で 20220109
(0113・鬼滅の刃3-4 ラーメン大将...次々出てくる強敵
0113・【再読】朝倉かすみ 田村はまだか 20220102
(0114・ma2 私たちが恋する理由 1-2 読書室ポワロ
0114・綾野剛 牙を抜かれた男達が化粧をする時代 20220109
0115・佐々木チワワ ぴえんの病 SNS時代の消費と承認 kindle 20220109
(0116・AIの遺電子 Blue Age 3 (3) (少年チャンピオン・コミックス)
(0116・まるもの 6 seesawbooks 20220116
(0116・キョートット通信 vol.1 seesawbooks 20220116
0116・会田大輔 南北朝時代 中公新書 図書館
(0117・アンサングヒーロー 1
0118・【再読】村上春樹 意味がなければスイングはない (文春文庫) 20220102 ...ビーチ・ボーイズ（サンフラワー、サーフズアップ、ペットサウンズ）、プーランク、スタン・ゲッツ、シューベルト、スガシカオ、ゼルキン＋ルービンシュタイン、W・マルサリスのみ読了
0118・中江有里 結婚写真 20220102
0119・スマホ脳(新潮新書) 20220102
(0119・PERFECT SPICE 2・3・4、LOVE SPICE 10・12 、FINE SPICE 2 村上カレー店プルプル
0120・佐藤泰志 そこのみにて光輝く 20220102
0120・庄野雄治編 コーヒーと小説 読書室ポワロ
0121・村上春樹 古くて素敵なクラシック・レコードたち 読書室ポワロ
(0121・波よ聞いてくれ 9 kindle 20220121
(0121・紛争でしたら八田まで 8 kindle 20220121
0121・書店主フィクリーのものがたり シャンティブックス 20211231
0121・西崎憲（編） 夕暮れの草の冠 読書室ポワロ
0122・花田菜々子 シングルファーザーの年下彼氏の子供2人と格闘しまくって考えた「家族とは何なのか」問題のこと 20220102
(0122・モブ子の恋12
0123・嶽本野ばら ロリヰタ。 20220102
0123・阿部拓児 アケメネス朝ペルシア（中公新書） 図書館
(0123・川尻こだま ツイッタでマンガ描いてたらアニメになった話 kindle
(0124・渡辺ペコ 1122 1-2 kindle
(0124・鬼滅の刃 5-6 ラーメン大将
0125・佐藤泰志 黄金の服 20220121
0125・【再読】藤原新也 メメント・モリ
0126・シノドス新書 荻上チキ対談集１ kindle 20220112
0126・池澤夏樹 池澤春菜 ぜんぶ本の話 kindle 20220123
(0127・益田ミリ スナックキズツキ 20220126
0127・中谷美紀 オーストリア滞在記 20220102
0128・【再読】イスタンブールを愛した人々 中公新書 20220102
（0128・林邦夫 グラナーダ王国の征服 降伏文書の検討から(pdf) 鹿児島大学教育学部研究紀要. 人文・社会科学編 35
（0128・鈴木董 後期オスマン帝国における没落観と改革論(pdf)
（0129・末森晴賀 18世紀前半のエーゲ地方における勃興期の「アーヤーン」―「匪賊」サルベイオウル・ムスタファの事例から― 東洋学報,100(1),01-026 (2018-06)(pdf)
0129・札幌の喫茶店 ぴあMOOK 20220129 seesawbooks
0129・燃え殻 断片的回顧録 20220129
0130・誰も書かなかった平成史の謎 20220126
(0130・たらちねジョン 海が走るエンドロール1
0130・佐藤泰志 海炭市叙景 20220120
 | 文藝春秋 発売日 : 2021-05-13 |
台北を舞台にした私立探偵もの、というだけで手に取ってしまう。主人公は、元大学教授、元劇団座付きの脚本家。自意識をこじらせまくってるけど、夫と娘がギクシャクしている原因を調査してほしい、という依頼を解決したあと、自分が殺人事件の容疑者にされ、無実を証明するために奔走する。彼なりのこだわりが描かれ、また仏教思想が重要なキーポイントとなり。まだ見たことない台北の風景、風俗がいきいきと描かれ、台湾人気質、台湾文化がふんだんに語られるところが魅力的だった。/あなたは人類を憎んでいるくせに、それでも人といっしょにいることが必要な、そういう哀れな人種なのよ/心に住あらばすなわち、住に非ずとなせばなり。
 | 新潮社 発売日 : 2015-05-28 |
どんどんどんどん捨てまくるお話だとは思ってたけど、「少しくらい不便になっても、少しでも無駄を省く方向、ものを捨ててしまいたいという気持ちが強くなる」てところは相容れないところ。それを捨てると不便になるなら、無駄ではないのでは、と思ってしまう。ただ、だからといって何も買わない方向に行くわけではなく、普通の人が「物欲」「所有欲」をあわせもつところ、著者は「物欲」「捨て欲」が共存しているとのこと。なるほど、そういう理屈で買って、捨てて、買い直してるんだというのはわかったけど、あまり参考にならず。
 | 新潮社 発売日 : 1979-12-27 |
中江有里「沙羅と万葉」に出てきたので読みたくなり。作中に出てきた「負けちゃ駄目だよ。うつくしいものは必ず消えないんだから」は、主人公の母親が１７の時思いを寄せていた勝之にかけられた言葉。物語は、長崎の大村からスチュワーデスになった泰子、同級生で悪い男につかまり最後は信用金庫で横領しつかまったトシ、英語劇が縁でしたしくなった健康的な青年だったが、のちにハイジャック犯として機上で泰子と再開する西、母と結ばれずのちにインドのデリーで救らい院で働いていて泰子と偶然あった勝之。彼らをめぐって、何が善きもので、何が美しいものか、常に問いかけ、問いかけられるように物語はめぐり。「夢みたものは ひとつの幸福 ねがったものは ひとつの愛」ではじまる立原道造の歌がくりかえされ、印象的。
商店街といっても、最初は何店かしか店がなく、舗装も十分じゃなく、バイクで納品に来る業者には納品をいやがられたとか。ちょっと雨がふったら、命がけの配達になるから、と。ダイエー麻生店（現：イオン麻生店）が出来る前の土地は牧場で、置きたら家の前に牛がいた話とか。ダイエー出店の際は、商店街が反対運動の先頭に経ったが、止められないとわかると条件闘争に移り、調印に来た当時の中内会長に、敵ながらあっぱれと言わせたエピソードなど。誌面にのってる参加店舗もだいぶなくなった店舗もあるけど、往時は、五叉路付近を歩行者天国にして大盆踊り大会したときの写真などは非常な賑わいで。内部でどうしていく、という対談では、盛り上げようと真面目にやったらバカを見た、インターロッキングとか融雪溝とか、みんなに役に立つのに金を払わない奴がいる、みたいな赤裸々な話も。
 | 文藝春秋 発売日 : 1991-12-01 |
新井満の訃報に接して、再読。革命まっさかりのハンガリーはプラハへ取材でのりこむこととなり、カフカの外套を買わないかというパンク・ロッカーと出会ったり、親切にしてくれた通訳の青年に上等な外套を贈ることにしたり、といったストーリー「カフカの外套」。(カフカの「変身」にたいして)「追いつめられるとさ、人間はよく虫になる。おれたちもまあ、虫けらのようなもんだろう…。多分、あんたも……。」/「世の中には、つかまってみたい鳥籠というのも、あるものなんですよ」（マルチン）「これはもう、返して下さるには及びません」（カフカが何かを受け取ってもらうための口癖）(カフカの外套)/「ホテル・アルカディア」はあなたのそばのあれがホテル・アルカディア、それもホテル・アルカディア、と言ってるうちに自分が主となり次なる旅人を待ち受けることになる幻想的な習作か。「約束」は、「ヴェクサシオン」所収の「苺」と同じエピソードを別の料理の仕方で。/「石棺」は入り組んだ幻想が、現実世界の自分を殺しにくる。/「千眼病-エイズよりもっと恐いアイズの伝説」は、風邪のような症状から体中に千個の眼ができる病気を扱った奇想。これも習作感。/「斜塔の荷風」は、フリーのCFディレクターの主人公に、会社員時にすごく世話になった、かつて才能溢れていたのに、突然の激しい飲酒癖で身を持ち崩した先輩からの、最後に一花の依頼をめぐり、先輩の過去をたどり、夫妻のあいだにあった悲しいすれ違いを知ることとなり。荷風の死生観と、余生、夫婦のあり方、それでも生きていくということを描き、語りかけてくれる一編。/「あなたと二人っきりですごしてみたいの。今日一日でいいから。」/長いあいだ家内をたった一人置き去りにしていて家内の異常に全然気が付きもしなかった/「私の立場からすると、そういうのを余分な生って呼ぶんです」「ごく簡単なことよ。一つの誕生は、生物学的に言うと、一つの結果なのよね…。」/(荷風に)「長らへてわれもこの世を冬の蠅、という句がありましてね」/たとえ飛び降りてあの世へ行ったとしても、あの世で夫人が待っていてくれて、喜んで迎えてくれるわけではないということに思い至った/
| 発売日 : |
本当に呪詛。高校生男子、大学生男子の心無い言動、行動については若い頃に思いあたることがないでもなく、本当にごめんなさいの気持ちに。
 | 新潮社 発売日 : 2020-08-28 |
岩田徹「一万円選書」(ポプラ新書)にて、選書で一番選んだものと知り手にとる。閉校の決まった女子大でさまざまな事情で卒業できなかった10人の生徒を、半年の合宿寮生活補講で特別に卒業させようと計画した理事長。LGBTQ＋、摂食障害、ナルコプレシー、オタク活動、医師への恋、度重なる自殺未遂、エナジードリンク中毒、フィーダー、などなど事情はさまざま。そこに、父とともに女子大の創立に奮闘した理事長の、亡姉への思いが織り交ぜられ。読後、物語というのは単体では読み逃してしまうかもしれない言葉を、身体に深くしみこませてくれるものだなあという思いを強く強くいだいた。/心が揺れるって、ブランコみたいに楽しいし、気持ちいいし、嬉しいね。だってそれって、生きてるってことじゃない？（夕美）/私が、私を、許す…（朝子）/能力が足りないというのなら、これから学び、身につければいいのです（理事長）/これから先、何か困難に出会ったとき、自己嫌悪に陥ったとき、そっとつぶやいてみて下さい。「私は素晴らしい」と。そしてどうかひまわりのように、常に明るい方、暖かい方を目指して進んで下さい。そうすればそんなに大きく間違えたりしませんから。」（理事長）
 | ミネルヴァ書房 発売日 : 2020-02-10 |
天野忠幸「三好一族」（中公新書）の参考文献にあげられていたことから手に取り。国盗り物語のまむしの道三のイメージから離れて、史料を仔細にながめると、最後の戦い以外はほとんど勝ってきた戦上手、統治機構は未整備、嫡子義龍への評価を見誤り、その弟たちを偏愛するが、最後の戦いで見せた義龍の隙のない采配ぶりを素直に称賛するなど、人間くさい面も見られ、下克上といっても父と二代にわたるもので、策謀渦巻く野心家というよりは、有力家臣が転がり込んできた好機にそって主君を追い出しただけ、とも言えるのではと。義龍については、周辺諸大名や幕府、朝廷に働きかける外交手腕、六人の重臣に合議で運営させる統治機構の精緻さ、信長の侵攻に対し、逆に調略、謀略でかなりの度合いのダメージを与えたことなど、かなり有能な面がうかがえる。ただ最晩年の宗教政策の失敗と、下克上上等の当時でも父子相克で父を討ったという例はめずらしく（追放・隠居へ追い込む等はあっても）、かなりのマイナスイメージを負ったことは足かせになったのでは。龍興に関しても、若年なのに、父と重臣2人を失った直後でも信長の侵攻をふせぎ、その後6-7年美濃の国主の座をまもったのは評価に値するのでは。政務を放棄し、遊蕩にふけったというが、政務は義龍の遺産で重臣たちが運営したとも言えるし、連年の信長の侵攻によるなか遊蕩する余裕などあったのか、と。ただ、後年、8か月にわたり竹中半兵衛、その義父稲葉一鉄に本城稲葉山を占領されたことは、美濃国内に「頼りない国主」像を広め、のちに次々と離反される要因になったのでは、と。「斎藤義龍」「斎藤龍興」はいなかった、という論点も興味深く。本人が家格の上昇をめざして、幕府公認で改姓したり、何らかの思いをこめて改名ても、敵対する信長側の史書や書状では、蔑視してみとめず、変わらず「斎藤」と呼び続けたことで、後年「斎藤義龍」「斎藤龍興」という呼び名が残ったと。四代について、新たに得た知見やイメージの更新があり非常に興味深いといった思いを抱く。
| 発売日 : |
ぽやん舎野澤尚也さんによる、野澤頃さんインタビュー。オバウサ制作秘話、中２病シール、ガールシリーズに込められた思いから、今後やりたいことの構想まで縦横に語られ。「オバウサ」はよいマンネリ、には、最近読んだ志村けん「変なおじさん【完全版】」の、お客さんが期待している笑いも必要、マンネリになるまでやり続けられることはすごいこと、マンネリはひとつの宝だ、を思い出し、まんがや「ガールズオンザロード」では、いずれも違う人格を持つ個人として描いています、てところに、自分の中に別人格の多くの異名者を産み出してそれぞれが作品を残したポルトガルの詩人フェルナンド・ペソアを思い出しました。短歌も、オールカラー画集もカラーイラストもコラボ作品も、新作が出たら追っていきたいなと思いました。ぽやん舎通信＃２にも期待です。
 | 発売日 : |
北海道を舞台にしたマンガと小説。/閻魔大王に、次に生まれ変わる国、生まれ変わるものルーレットをまわされ戦々恐々とする話。どんな悪事をはたらいたら来世は北極でずんだもちに生まれ変わるのか…。/苗穂駅前温泉蔵の湯の洞窟風露天風呂、東区こうしんの湯のシュワシュワ炭酸泉は興味津々。/難読地名同人ボードゲームは悶絶しそう。初無敵、をなんて読むかだなんて。発足、はわかったけど。/北海道土産と魅力がぎゅぎゅっと詰まったうん仔さんのマンガ/支笏湖をおよげるという認識が端からなかったので認識の変わった小説/スパゲッティにレトルトカレーをかけたもの、4プラでアクセサリーや服を買ってたおもいで、釧路のみどころ、などなど。/最後は、食いしん坊がこうじて、札幌に移住したフリーライター大泉さんによる、ザンギ、サンドイッチ、うに、夜パフェなどなどてんこもり、目白押しな「北海道で知った味」紹介。これは食べたくなること請け合い。/な、なかなかに北の魅力をぎっしりと楽しめる一冊でした。
子ども時代の話はなかなかにワイルド。太さのバラバラなそばはきっと自分も躊躇なく一緒にゆでそう。おシャンピーな朝食のおシャンピー、ひさびさにみた。納期間近の夜中に「2時間おきてられそう！」なのになぜ試しに横になってみた。ステーキ焼いてて肉汁あふれてきたら米を投入せよ。コメダ珈琲で計算ずくでエビカツパンとビーフシチュー頼んだのに…。ピザーラに注文してピザハットにかけこむ。などなど、今回もはげしくうなずいたり、つっこんだり、わらったりの一冊でした。
| 発売日 : |
大使館で配布してる小冊子。夏至、冬至、春分、秋分を祝う祭りがあり、祭りの時には、国民に広く愛されている合唱の歌声がひびきわたり、歴史ある町並みと自然に触れられ。ラトビア料理で気になったのは、ビーツの冷製スープ。ピンク色の見た目がなんとも興味をそそられました。
 | 中央公論新社 発売日 : 2021-01-18 |
多民族国家ミャンマーで、仏教徒ビルマ人による「民族・言語・仏教」を守れという声の高まり。その「民族・言語・仏教」にはインドからの移民、なかでもムスリムは決して含まれなかった。仏教徒ビルマ人の不満は、ムスリムが富と女を独占しているという不満が発端だった。長い軍事政権で、ロヒンギャへの、国家による排除と管理の強化がすすむ。民政移管後も、仏教徒とムスリムの紛争が広範囲になった原因…1）民主化が進んで集団での運動や動員が可能に。2）新旧メディアの影響による反イスラーム感情の拡散。3）治安維持に必要な政府の中立性が担保されていない。ムスリムはミャンマーの民族と仏教を危機に陥れる脅威であり、彼らは金を背景に、仏教徒女性を娶ることで、子供を増やして人口を増大させ、ミャンマーをムスリムの国にする計画があるので、それをなんとしてでも防がなければならない、という考え方を抱いて広く支持される運動、団体、指導者も。衝突の発端には、頻繁にデマが作用している。国軍によるロヒンギャの虐殺について、事実調査が極めてすすんでおらず、わからないことも多い状況だが、筆者の断片をつなぎあわせた推察が語られる。外国人の安全保障コンサルタントの筆者への警告には、無力感も感じるが、それを乗り越えてなお、というところが求められていると感じた。
 | 暮しの手帖社 発売日 : 2019-05-21 |
多様性へ目を向けるとはどういうことか、というのを、著者のライフヒストリーから語りおこし、ヨシタケシンスケさんがユーモラスなイラストでそれはこういうことだろうか、というのを重ねていくかたち。読んでいくうちに、自分のかけているめがね＝ものの見方に、いくつもの方向からやわらかく示唆をくれるような本でした。著者が母に、出版された本を渡し、その中の「ガラスの天井」について深く感銘を受け、親子で語り合い、距離がぐっと縮まった挿話が印象に残る。中谷剛「ホロコーストを次世代に伝える」はぜったい手に取りたいと思った。/僕が「死にたい」という言葉を吐く時、厳密には「死」そのものを望んでいるわけではない。今の状況からとにかく逃げ出したい(p.36)/「何かを褒めるために、何かを嫌いにならなくていい」「<自分が嫌いなものを好きな人>を嫌いにならなくていい」//"ヘイトスピーチが街角であるとすれば、我々は現在、ホロコーストとの間のどのあたりに経っているのか。それを知るものさしが必要です。それが歴史を知ることです。" /"君たちに戦争責任はない。でもそれを繰り返さない責任はある"（カジミエシュ・スモレン
salonタレ目で配布していたフリーペーパー。冒頭の「今年落ちた沼-工藤静香」にやられて、工藤静香ベストの音源ひっぱりだしてきて聴きまくってしまいました。他に、「東京の生活史」の感想をお見かけして、ますます読みたい気がましてきて、岡崎市の喫茶「丘」の手作りステッカーを黙々とつくりつづける佇まいにシビれ、マイジュークボックス（手動）を手に入れたエッセイにうらやましい愛着を感じたりしました。
 | 光文社 発売日 : 2010-11-11 |
(2022/1/13)岩田徹「一万円選書」（ポプラ新書）で取り上げられていて手に取る。小学校の同窓会。二次会、スナック「チャオ」につどった五人は、あとから遅れてやってくる田村久志のことを待っている。「田村はまだか」。待つ５人とマスターのそれまでの来し方行く末が語られつつ、それぞれの田村とのかかわりが語られるなかで、小学校時代の、それ以降の田村の像が徐々に浮かび上がってくる。マスターならずとも、早く田村に会いたくなってくる。しかし、それは…と。大人となり、それぞれの、離婚、仕事での鬱屈、不倫と別れ、ほのかな想いなどが通り過ぎていき、やがて、今の田村につながっていく。母子家庭から、親族に引き取られ、豆腐屋を継ぎ、一家の大黒柱となり、ようやくの休暇で同窓会にかけつけたのに。しかし、おそらくはその懐の深さで、不注意で己を不具とした若者が見舞いに来たときにすら、世間話で心を開かせてしまうだろうと思わせる田村。最後はそれぞれのその後が語られる大団円。5人のうちの池上の上司、二瓶正克の飄々とした佇まいも印象に残る。/「ばりばりばりと紙を破くように破ったら、あたしたちの見ているもの全部、きっと失くなってしまうのに」（中村理香）/「いつか、絶対、みんな、死ぬんだ」（中村理香）「だから、生きてるんじゃないか」「どうせ死ぬから、今、生きてるんじゃないか」（田村久志）/全速力で走れよ、きみ(二瓶正克)/つまらない人は、退屈な人生を送ったほうがいいのよ p.287////(2011/4/11読了時)舞台は札幌のスナック。五人の小学校の同級生が、もう一人の同級生田村を待つ一夜。そこに、五人それぞれの回想と、マスターの回想が差し挟まれ。苦く、鈍い光を帯びて、それでも愛おしい回想。スピンオフの「お前、井上鏡子だろう」も併録。「つまらないひとは、退屈な人生を送ったほうがいいのよ。そのほうが安全なのよ」/「待つ者は、きっと待たれる者である」（『お前、井上鏡子だろう』）
 | 集英社 発売日 : 2016-06-03 |
家族が鬼に食われ生き残った妹禰豆子も鬼に。炭治郎は鬼殺隊に入るため鱗滝さんに鍛えられ、錆兎、真菰のサポートもあり、ついに最終選抜も生き残り。禰豆子を鬼から人へ戻す方法を探すため。鬼殺隊として鬼を討伐していく。そして黒幕たる無惨とのすれ違い...といったところが2巻まで。3-4巻を読んだ限りでは、このあと、強敵が次から次へと出てきて、心強かったり、どこへ行くのかな暴走機関車だったり、弱気一辺倒だったり、禰豆子を人に戻す方法を一緒に考えてくれたり、さまざまな仲間と出逢って、炭治郎も成長していき、という展開なのかな、と思いつつ。
 | ワニブックス 発売日 : 2021-08-30 |
ドラマ「MIU404」、映画「影裏」で綾野剛に魅了されて、手に取った一冊。あざやかな写真に刻まれた切りつけてくるような言葉。連載時を振り返ってその作品に込められた思い、当時の状況などが語られるパート。巻末の抽象よりな絵画作品。と盛りだくさん。役を演じるということに真摯に向き合い、試行錯誤し、時に錯乱しそうになり、少しずつ違った何かになろうとするところを垣間見せられた思い。以下備忘録/笑うための納得はいらない 泣いて生まれてきたのだから/生きるという暴力/狂い舞い咲け 粛として 修羅の如く/激しく咲くために 美しく散れ/歓声と罵声 全ては産声から始まった そのことを決して忘れてはいけない/我々はいつだって「今」何ができるかを表現するための号砲になれるのだ/蜷川幸雄没後、遺族に渡された綾野くんへという封筒に、新作舞台台本、映画「アリラン」DVD、藤原新也「メメント・モリ」。死者から、死を想えというタイトルの本を託されるという体験
 | 祥伝社 発売日 : 2021-04-08 |
オフィスを舞台に、クールで怖そうだけどきちんと仕事ぶりを見てくれ、人として尊重してくれる先輩に恋したOL。いつも明るくおおきくて身体を鍛えるのとスイーツが好きな先輩に恋したOL。その思いは相手にも届き…。そして、合間に初々しい大正時代の夫婦の話が語られ、と。/まわりの目のせいで好きなものをがまんするのはバカバカしい。/ 私たちが恋する理由勇気を出した人から世界は変わっていくんじゃないかな。/どう考えても好きなんだ/といったあたり、いいシーンだなあ、と思いました。あと、作中、ぜんぜん札幌感がなかったのですが、次の駅はサッポロ、サッポロ…で札幌が舞台なんだと知り。
 | 扶桑社 発売日 : 2021-12-22 |
ぴえん、というと泣き顔、泣きたい気持ちをあらわす流行語、くらいにしかとらえていなかったけど、ある範囲の若者たちのなかで、もっと多様な意味で使われている文化があったのか、という驚き。そして、歌舞伎町にいる量産型女子を「ぴえん系女子」と定義した上で、彼女らの考え方、行動様式などが語られている。ファッションとしてカジュアルに血や死を消費していくぴえん系の社会観。行き場所のない中で仲間がみつかり救いとなったトー横。自撮り界隈。ルッキズム。犯罪者でもイケメンなら崇拝されてしまう現象。「推し」活動。個人の身体に加えて個人の言動すらも資本主義の消費対象になっていること。他者からのまなざしにさらされる、まなざしの地獄。といったあたりのトピックは興味深かった。ただ、ホストの生態、ホスト業界の仕組み、運営などが多大な熱量を持って描かれていた部分は、おそらく行くことのない身としては興味が持てなかった。
 | 幻冬舎 発売日 : 2015-08-05 |
岩田徹「一万円選書」（ポプラ新書）で取り上げられていて、気になった一冊。ジムのフリースペースに集まる個性的な面々、歯科医、美人漫画家、イケメン高校生、70間近の広告会社社長、自他ともに冴えないと思っていたサラリーマン。そして2m近い長身スキンヘッドのゲイのゴンママ。ゴンママのひとことに救われたり、背中を押されたり、気づきを得たりの面々だけど、最後に、ゴンママが悩み、憔悴したときに、ゴンママの言葉に救われたまわりの人達が、ゴンママの救いになるところがすごくよかった。以下備忘録。/人生に大切なのはね、自分に何が起こったかじゃなくて、起こったことに対して自分が何をするか、なのよ。起こったことなんて、そのまま受け入れればいいの。どうせ過去は変えようがないんだから/誰かと分かち合った喜びは大きくて長持ちもするけれど、ひとりぼっちで味わう喜びは、小さくてすぐに消えてしまうのである。/誰かを愛して誰かを失った人は、何も失っていない人よりも美しい（イルマーレ）/人間は悲しいときは泣けばいいって。不安なときは無理にしゃべらないで、そのまま不安がればいいんだって/巨大なオカマと美少女バーテンダーが人生を教えてくれる店だ/阿吽はこの世のすべてを表す禅の言葉なんだって。転じて、この世のすべては、阿と吽のあいだの一瞬のいまにしか存在しなくて、あなたが生きられるのも、いまこの瞬間だけなのよって/
 | 秋田書店 発売日 : 2022-01-07 |
AIがすべてをやってくれるなら、人間はその時何を感じ、どう行動するのか、というテーマがベースにあり。3巻は、トリアージ、引きこもり支援、婚活サービス、マシンボディ、テレイグジスタンスを使ったキャバクラが題材としてあげられ。生活全般を心身共にサポートしてくれるAIのサービスが、引きこもりしている男性ではなく、その母親を支援することで支援者、被支援者の関係を深め、構築していくエピソードが特によかった。
 | 中央公論新社 発売日 : 2021-10-18 |
(1)北魏前期の「子貴母死」制度、北周の宣帝が創始した天元皇帝、侯景の称した宇宙大将軍のように、一時的に実施されたにすぎない制度も数多く存在。後世に与えた影響が少ないと等閑視されがちだが、遊牧民と漢人の衝突・融合のなかで生じた試行錯誤の表れとして評価することができよう…遊牧民と漢人の衝突・融合のなかで意外な化学反応。それまで遊牧世界にも中国にも存在していなかった制度。彼らの模索と苦闘のあと。時代のダイナミズムを感じさせる。(2)南北朝時代独自の制度、北周・北斉・南朝の制度・文化を受け継いで成立した隋唐、といったあたりの論点が特に興味深く感じた。各国の興亡はめまぐるしく追うのが大変だったが。
毎日あほうだんす 横浜寿町の日雇い哲学者 西川紀光の世界。かめろん通信。「孤独や不安も含みこんで、そこから世界を感じてみよう。つながってみよう」という一文。沖縄戦のこと。ツバル語会話入門、など、気になるトピックや本がめじろおし。
| 発売日 : |
もふもふ新聞、いい！わたあめ、かびたレモン、タオルをもふもふにする方法、もふもふさんの悩み相談など。他に、羊のいる風景。きのこや植物の見分け方。サフランウォーター。ピンクに白水玉の背景にぎっちりつまったねこやうまや女の子のイラスト。鉄板をたたいてつくるグリルプレートのかっこよさ。心惹かれる骨董の写真などなど
 | 文藝春秋 発売日 : 2008-12-04 |
ビーチ・ボーイズ（サンフラワー、サーフズアップ、ペットサウンズ）、プーランク、スタン・ゲッツ、シューベルト、スガシカオ、ゼルキン＋ルービンシュタイン、W・マルサリスのみ読了。「サーフィンUSA」に「僕がずっと聴きたいと思っていたけれど、それがどんなかたちをしたものなのか、どんな感触を持ったものなのか、具体的に思い描くことができなかったとくべつなサウンドを、その曲はこともなげにそこに出現させていた」と語る著者。シューベルトは好きなことを好きなようにやって、あれも書かなきゃこれも書かなきゃとしてるうちに、短い生涯を閉じた、ある意味幸せだったと語られ。「スイングがなければ意味はない」で、ガレスピーが猛然と挑みかかり、ゲッツが受けて立つシーン。ゼルキンの「この作品は簡単であるには、あまりにも素晴らしすぎる」という言葉。プーランクは朝にしか作曲の作業をしなかった、一貫して朝の光の中でしか音楽を作らなかった、というエピソード。といったあたりが印象に残り。それほど音楽的素養もない身にはこれだけ音楽からふんだんに滋養を受け、縦横に語れるというのは楽しいだろうなあ、とうらやましく思う。
 | 小学館 発売日 : 2010-11-05 |
中江有里「万葉と沙羅」がいたくよかったので、他の本もと思い手にとる/母一人娘一人の家庭、母には十歳以上若い恋人がいて、わたしは学校では居場所がなく。ある日、母は、結婚写真を撮ろうと、自分の分と娘の分と。メイクアップしてウェディングドレスを着た母と娘それぞれの写真を。それが結婚への憧れとなり、背中を押し…という展開かと思いきや、それはたまたま見てしまった若い恋人の中へ鉛のように沈んでいき、成長した娘の「ママには悪いけど、あの写真がわたしの最初で最後の結婚写真だと思っておいて」という決意につながっていった、と。思春期の少女の、傷つきやすく不安定で居所ない思い、感情があふれだすと泣きながら走って逃げてしまうところ、淡い思いを抱いていた年上の幼馴染、決定的な場面を何度も救ってくれた母の恋人、自分の思いにはどストレートな母と時にぶつかり、時にやさしく見守られながら、主人公は成長していく様が描かれ。もちろん一本道をすくすくとというわけにはいかないけれど。/「好きにしていいよ…私はミツを信用するから」（リュウ）。美しくしっかりものの親友リュウの存在。木村紺「神戸在住」の主人公の友人愛ちゃんを思い出しました。
村上カレー店プルプルに置かれていたフリーペーパー、6冊。 …土の専門家の話。DJxAIのあくなき平均値をもとめるところと、お前、わかってるな、と思う瞬間、あくまで人が主体でそこにスパイスをさしこんでくれるような扱いにするといいのでは、という話。それと並行したカレーxAIの可能性について。酸化を軸に、酸化させない日本、どんどん酸化させていくインド、といった対比で語られる発酵の魅力。スパイスと感染予防と漢方、人間100万年の進化をウイルスは1年で果たす話。インドカレーは油にスパイスの香を閉じ込める料理だ、というフレーズが引かれて、油を軸にカレー論がかわされ。と多彩なスパイスをめぐる話題をたのしめた。
 | 新潮社 発売日 : 2020-11-18 |
人間の脳は原始的な狩猟時代に生き残るために特化された機能を、多く残したまま。溜め込めるだけ栄養をためこんだり。闘争か逃走か、という局面に立たされるとそれ以外を放擲してしまうこと。昨日など関係なく、現在と未来どうするかだけに注力すること。現代の、命の危険も少なく、食料にあふれ、インターネットが、SNSが発達した世界にはミスマッチなことも多々あり。それが心身の不調につながっている、という論調。脳の報酬系を過度に刺激することで、スマホやSNSは人間に害を与えている可能性。というのがベースの論調。もっとも、さまざまな調査結果を示しつつも、もしかしたら社会の急激な変化が原因で、スマホやSNSのせいではないのかもしれないと留保をつけるところは良心的か。ただ、それを経てなお、スマホもSNSも手放せそうにない己を顧み。
 | 河出書房新社 発売日 : 2011-04-05 |
もっと若い時に同じ著者の「海炭市叙景」を読んだ時に、なんて暗くてちっぽけで読んでてつかれてくるんだろうと思って敬遠していたのだけど、年を経て、この本を手にとってみたら、バチーンと波長があった感。それがいいことなのか悪いことなのかわからないけれど。達夫の何か諦観がベースにあるような佇まい。そこに無鉄砲なようでいて繊細なものを秘めた拓児という刺激があり、その姉千夏の佇まいがあり。うすぐらく退廃的なようでいて、微かな光も指すような、けれどすべてが解消されなにもかもうまくいくような救いもなく。飄々としてるようで信頼できるものを抱えているような松本の存在感に心ひかれる。/「確かに今の仕事に満足しているわけではないが、鉱山へ行きたいと思うほど不満でもないよ」「満足とか不満足とか、そんな話でもないだろう」(p.160)//「男は馬鹿ね。こんなふうに殴りあって、勝ったとか負けたとか騒いでみたり、くだらない夢にとりつかれたり」（p.177）
 | ミルブックス 発売日 : 2016-10-01 |
コーヒーがらみの小説のアンソロジーかと思い手に取るが、その期待は肩透かし。けど、コーヒーとともに楽しめる古い小説を選びましたとのことで読み進め。好きなものは咒うか殺すか争うかしなければならないのよ、という激しさにおののく「夜長姫と耳男」坂口安吾が個人的ベストかな。他にも、なぜ寿司がそれほど好きでもないけど寿司をたべると慰みになるのか老紳士が語ってくれた「鮨」岡本かの子。理想の女性像を具現化しようと富豪の建てさせた百貨店をめぐるなかなか未来的でぶっとんだ感じの「七階の運動」横光利一。かなり皮肉な視線で切り取られた「桃太郎」芥川龍之介。クズな男のどうしようもなさとそれでも愛されちゃうんだろうなという思いをいだいた「グッド・バイ」太宰治。二十歳前に料亭を継ぎ女手一つで切り盛りしていた女性が二度と日本へ帰らぬひとり息子にパリにやって来た「野萩」久生十蘭。姪の眼からみたひとり息子の来し方行く末、風来坊ぶりから、今生の別れの告げ方のあざやかさまで。など。
 | 講談社 発売日 : 2022-01-21 |
より深くミナレをラジオ沼に引き込もうとする試みから、みずほが拉致されるところまで。一番の見ものは、ラジオブースで芽代とミナレが酒を飲みつつ、勝負に負けたほうが延々とネガティブなことを吐露し合うシーン。この二人のダイアローグ、個人的に好きです。真っ向からいがみあってるようで、お互いのことを見ていないわけではなく、攻撃しあっているようで、認める部分は認めているよなところが。
 | 講談社 発売日 : 2022-01-21 |
八田の妹、その友人を巻き込んだヤンキーたちの抗争を、ウクライナ編で登場したアルセンらの興行をめぐって起きた盗難事件を、南北朝鮮の歴史をからめつつ格差とそこから這い上がろうとする家族、国際経済の波のなかで奮闘する中小企業の生き残り策を。八田さんがチセイで解決策を提案する巻。決められたルールを破らない範囲でゆさぶりをかけてくる攻撃を完全に防ぐすべはないが、ソフトパワーで対峙していくところ。理不尽な階級制度のもとに生れた選手が、宿の主人の努力すればなんでもできるに、いたく反感をいだいてしまったシーン。男達の拳の殴り合いを放置してたけど、凶器が出た途端ふたりともまとめてプロレス技で刈るところ。などが、印象に。巻末には、地政学関連の本のおすすめも併録。
 | 文藝春秋 発売日 : 2021-06-24 |
ラベル弦楽四重奏曲、 グローフェのカラフルな曲たち、若き小澤征爾、いつのまにかレコードが集まってしまったシェロモ、チャンドラー作品でマーロウが「緩んだファンベルト」と評したハチャトゥリアンのヴァイオリンコンチェルト、タリスの主題による幻想曲、シェへラザード、幽かになっていく儚い終わり方の四つの最後の歌、音楽の捧げ物の楽譜のあいまいさに指揮者の。富豪の息子で裕福なビーチャムが自前でオーケストラ（ロイヤルフィル）をそろえ、聴衆や批評家の評価など気にせず心ゆくまでディーリアス作品を演奏したこと、奏者としても作曲家としても印象に残るクライスラー曲集、などなど。ちょっとずつ読んでたのしめました。
| 柏書房 発売日 : 2021-06-30 |
短文アンソロジー。夫がランダムに名付けたという娘の名前たうぽ、人にいぶかしがられるたびに、ニュージーランドに同名の湖が、と言い訳するたびに愛着が湧いてきて、娘はすくすくと育ちやがて本当にニュージーランドに留学し就職も決めて同性のパートナーと子供ももうけ、とかろやかに怒涛の展開をみせてくれた、松永美穂「たうぽ」が個人的ベスト。他に、なかなかハワイにたどりつけない、青木淳悟「旅行（以前）記」。先に気づいてすばやく耳にささやくことでお互いが死に向かって逃れようもなく絡み合ってしまう、早助よう子「誤解の祝祭」（栗原康作品に出てきて一度読んでみたかった作家さん）。人みな口から出るゼリー状の繭につつまれる世界、岸本佐知子「メロンパン」。学校のトイレに霊が見えるという同級生をぼこぼこにしてしまい、その後和解らしきものがおとずれる、柿村将彦「�發覆鵑箸�君」。も、よかった。/飛浩隆「緋愁」。道路管理の公務員が主人公で、ガードレールに布をぐるぐる巻きにする教団の語る、「いずれ個人が携帯電話でつく嘘とテレビの嘘が混じり合うようになる。そうしたらあっという間だ。ひとの数だけある主観世界が漏れて現実をじっとりと溶かす。」て一節が印象に。
 | 早川書房 発売日 : 2015-10-22 |
岩田徹「一万円選書」（ポプラ新書）で取り上げられていたので手に取り。妻を亡くしたばかりの偏屈な島で唯一の書店の店主フィクリー。そこへやってきた出版社営業のアメリア。最初の出会いは最悪だったけど、フィクリーが本屋に捨てられて赤ん坊を育て始めた頃から変わっていき、アメリアとも本を媒介にいつしか距離は縮まり。娘マヤに対してフィクリーが自分の文学観を、特に短編小説の素晴らしさを説くところがよかった。また脇の人物としては最初はぜんぜん読書好きではなかった警察署長ランビアーズがどんどん読書好きになり、ついには…という展開が印象に。/ぼくたちはひとりぼっちではないことを知るために読むんだ。ぼくたちはひとりぼっちだから読むんだ。ぼくたちは読む。そしてぼくたちはひとりぼっちではない。ぼくたちはひとりぼっちではないんだよ。(p.327)/楽天家のアメリアは、感性や関心を共有できない人間といっしょにいるより、独りでいるほうがましだと信じている/あなたとお話してて、思い出したんですよ、ひとと感性を共有することが、情熱を共有することが、どれほど大切かということを。/なぜある本がほかの本とちがうのか？なぜならみんなちがうからだ。われわれは多くの本の中身を見なければならない。われわれは信じなければならない。ときには失望することも受け入れなければならない。われわれは信じなければならない。ときには失望することも受けれなければならない。だからこそ、ときたま精神の高揚を得られるのだ(p.314)
 | 河出書房新社 発売日 : 2020-03-18 |
前作がよかったので、今作も手にとり。タイトルから、「家族とは何なのか」問題だけかと思いきや、書店員として働く楽しさ・苦しさ・葛藤・新たなことへのチャレンジも描かれていて読み応えがあった。また「家族とは何なのか」問題のパートも、シングルファーザーの家庭は大変だから、みたいなマイナスに思うところがない、あるいはつとめてみせない父子たちの関係がいいな、と思った
あと、描かれている著者と書店員Ｎさんの絶妙な距離感も。以下備忘録。/ここは居心地がいい。でもまだ私は自分の人生の終着点をここに決められない。どんどんどこかに行きたいという気持ちも湧いている/「女性差別とは何か」「私たちは不当に何かを押し付けられているのではないか」という問題を考えたいときに、役に立つ本が揃っている本屋でありたい/「そうです。これが僕たち3人の生活でーす」/でも正しく巻き込み合って迷惑をかけ合いまくるのが恋人とか家族なのかもしれない。/「「変じゃない。そういう人いっぱいいる」って言われて、めちゃ元気出ました」「よかったです。好き勝手に生きてやりましょう」
あと、描かれている著者と書店員Ｎさんの絶妙な距離感も。以下備忘録。/ここは居心地がいい。でもまだ私は自分の人生の終着点をここに決められない。どんどんどこかに行きたいという気持ちも湧いている/「女性差別とは何か」「私たちは不当に何かを押し付けられているのではないか」という問題を考えたいときに、役に立つ本が揃っている本屋でありたい/「そうです。これが僕たち3人の生活でーす」/でも正しく巻き込み合って迷惑をかけ合いまくるのが恋人とか家族なのかもしれない。/「「変じゃない。そういう人いっぱいいる」って言われて、めちゃ元気出ました」「よかったです。好き勝手に生きてやりましょう」
 | コアミックス 発売日 : 2022-01-20 |
クリスマスから卒業旅行まで。卒業して遠距離になることを不安に思いつつ、少しずつ少しずつ、側でみてるとじれったくなるくらいに、それでも気持ちを伝えあい、距離がちぢまり。金沢の和菓子作り体験で、彼氏が仕事の電話ばかりの向かいのカップルに、さりげなくフォローしたシーンの柔らかさが印象に。
 | 中央公論新社 発売日 : 2021-09-17 |
青木健「ペルシア帝国」(講談社現代新書)と対比したくて。読み比べてみると、同じ史料状況でも、どこを取るか、どう解釈するかで違いがあるものだなあ、と。/ある事件がその後の時代でどのように語り直されているかに注目する「受容史」研究がとりあげられているところが興味深し。その一環として藤子・F・不二雄の「カンビュセスの籤」もとりあげられている。/ダレイオス一世、ダレイオス三世の即位のあたりはやはり、後代から見ると相当にあやしいというか、正統性を欠くものだったように思われる。/一般的に、ペルシア王は宗教的に寛容だったとする見方には、ペルシア王はときとして支配地域のローカルな宗教的伝統を保存し、ときとして自身の帰属するペルシアのそれを押しつけた、と語られ。/企業家グループ、ムラシュ家の文書が700点ほど残り、当時の経済活動が詳細にわかるというのも興味深い。また、ダレイオス二世の即位に資金面でおおきく貢献したと推測されることも。/ペロポネソス戦争の勝者は、ペルシアの支援したスパルタ。この勝利が真に意味するのは、ギリシア諸都市間争いにおけるパトロンとしてのペルシア大王の誕生/「飼い葉桶の刑」を、スキャンダラスな1エピソードとしてではなく、アルタクセルクセスが不浄で「偽」なるものを桶に閉じ込め、清浄で「真」なる地上世界の秩序を回復させた、というラディカルな読み直しも。深読みし過ぎという批判もあるようだが。/アレクサンドロスのベルセポリス焼き討ち。ペルシア戦争の報復、というレトリック。ペルシア戦争が一世紀半のあいだに神話化され、現実から離れたところで訴求力を持ったことを示す、と。
われは鳥 われは自由 しがらみなんかはいやと一度はアニメ化ことわったり、からの急転直下の早急なアニメ化。この機を逃せば先方の機がかわるかも、担当者も異動になるかも、と。アフレコに立ち会って、古汚いを「こぎたない」「ふるぎたない」のどっちですか？と問われ渾身の「わかりません」を返すシーンが好き（ふるぎたないにしました）。
 | 新潮社 発売日 : 2007-03-01 |
同じ著者の「落花生」を読んだら、この本も読みたくなり。表題作も、「ハネ」も、この世界での生き辛さ、自らの特異さを背負いつつ。ロリータファッション好きが講じて、大人のような少女を知らずに愛してしまいスキャンダルになったり、自分に生きる意味をくれた存在を目の前で失いその遺志を継ぐように露店で「天使の羽」を売り続けたり。いまとなってはなガラケーの画面でのメールのやりとりが懐かしくてよかった。/「言葉なんて、思ったことの全部が、伝わらなくて当然なんだよ」/何を伝えるかが問題ではなかったのです。伝える内容よりも、伝えようとすることが重要なのです/一体、何を知っていれば、憶えていれば、良識ある人間だと思って貰えるのですか/永遠はね、ある。でも見付けられない人もいる。見付けても、それは放っておくと、失くなってしまうものなんだよ。時間の中で流されていくものなんだよ。だから永遠を手に入れたいならば、それを見失わないように、それを色褪せさせない為に、必死に戦わなければならないんだよ。/
 | 集英社 発売日 : 2017-03-03 |
鬼滅の刃 5-6読了。蜘蛛家族との死闘を制す。柱たちの登場。お館さまによる、炭治郎が鬼（ねずこ）を同伴することへの許可。24時間全集中の呼吸をするための訓練。
 | 講談社 発売日 : 2017-05-23 |
1-2巻読了。レスな夫婦が、恋愛とセックスは外で、というルールですごしていくが、夫は外に好きな人ができて泊まったりしているが、ルールはルールとして感情もあるわけで。レスにあるきっかけも、夫婦で異なった記憶としてインプットされてて。傍で見れば譲れそうなことも、当人たちにとっては譲れないラインだったりするわけで、と思いつつ2巻まで読み。
 | 小学館 発売日 : 2011-05-10 |
オーバーフェンス、撃つ夏、黄金の服。ともに、少し前の時代のものと感じるけど、若さゆえか、流されているようで、それぞれ己にこだわりを持って生きてる様がいいなあ、と感じる青春小説。/育児ノイローゼになった妻に離婚をつきつけられ、郷里に戻り職業訓練校に通う白岩。「どこにでもいるぞ、ああいう人は」「僕はまだふらふら東京の尻尾をぶらさげています」/ただ、むきになって戦おうとする場所や人間から逃げ出したいだけなのだ/自分には考える時間も、考えない時間も同量に必要だ/僕はもうこの町を離れることはないだろう。/どうもこうもあるものか、ここまできて/さとしとこの地で暮らし、親ともきっちり向き合い、すこしずつ前に進もうということが、バットを振りぬいた先にあることを感じさせつつ( 「オーバーフェンス」)/腎臓の病気で入院している淳一。まわりの患者たちとの好むと好まざるにかかわらない交流。/岡本さん、他人ばっかりあてにしているんだから、仕方ないよね。愛し方がわからないんだから。/夜中中うめき声をあげていたがついに亡くなった隣室の老婆、いつもすこやかに見舞いに来てくれる友人の英夫。次々と退院していく同室者たち。気晴らしに窓から鳩を撃つ夏(「撃つ夏」)/読みかけのミステリとプールでの水泳と酔ってさわぐ日々の僕/夏の午後が好きだったし愉しみたかった。/泳いで、酔っぱらって、泳いで、酔っぱらって/アキは今日も無駄に身体を洗うだろう/「僕らは共に黄金の服を着た」/「いちいち傷つく必要なんかないわ」/「なぜ僕に黙っていた」「笑わせないで」「あんたっていつもそうなのね」最後のほうの僕とアキのダイアローグがひりひりとして心に留まる。道雄のすがすがしく凛としたたたずまいがまぶしい。(「黄金の服」) 巻末の久世朋子さんの私小説めいた解説もよかった。大江健三郎「洪水はわが魂におよび」が読みたくなる。
 | 三五館 発売日 : 2008-11-28 |
綾野剛：牙を抜かれた男たちが化粧をする時代、つながり。綾野剛が、蜷川幸雄の遺族から手渡されたものの中にあった、と。死者から死を想えという本を託されるとは、と。何年振りかの再読。今回は「眠りは成仏のための、日々の練磨のようなもの」という一節が印象に。
 | 株式会社シノドス 発売日 : 2013-04-04 |
荻上チキ、ヨシタケシンスケ「みらいめがね」がよかったので、何かもう一冊と思い手に取る。/「削り合い競争」が続く状況では「批判」「抵抗」だけでは改善されない部分が出てくる/社会設計の話をするときは「心でっかち」な議論は無効であることが多い/万人に寛容な社会は自分のためにもなる/国民としての一票より、党員になる、というメソッド/ニーズを表明するためにたくさんの前提条件が必要 一度も保障されたことのないニーズはなかなか言語化できない/福祉や支援は同情や共感とは別のところで行われるべき/人が教育を受け、健康状況が良く命の値段が高くなれば惨劇が防げるのでは/道徳をインストールすれば物事が一発解決するという考え方への疑義。複数の要因にひとつずつ手当していくことが世界平和、不幸が減る社会の近道/といった指摘や論点が気になりました。
 | マガジンハウス 発売日 : 2021-01-28 |
帯にあるように、誰かに傷つけられもやもやしたものを抱えた人たちが、路地裏にあるアルコールを出さないスナックにふらりと迷い込み、元マンガ家のママとお、語るともなしに語っているうちに、あるいは一緒にタップを踊ったり、弾き語りにあわせたりしているうちに、心にたまったものを吐き出せて、少し身体が軽くなって帰っていくようなそんなお店。そして知らずに誰かを傷つけた人もまた誰かに傷つけられてこの店に来て…とぐるぐると円環を成すような物語。こんなスナックあったら行ってみたいという思いをおさえきれない。
 | 幻冬舎 発売日 : 2021-02-04 |
1年の半分をドイツ人の夫とオーストリアで過ごすライフスタイル。2021年のひと夏の日記。自然に囲まれ、人生は短いんだからと好きなことをたのしみ尽くす夫と継娘の成長を見守りつつ、ドイツやオーストリアの文化、法律、人生観を垣間見せてくれる善き滞在記でした。あと、女優だからなのか、食べ物やボディメンテナンスについては共感するしないを問わずかなりのこだわりを感じました。以下備忘録/ウィーンで行列のできる日本風居酒屋「Mochi」/相手がＤｕでの会話を望んでいるのいＳｉｅでの会話を一方的に続けるのあ失礼にあたるらしく/コロナ失業中に人々の考えることのなんと単純なこと。彼の周囲では皆一様に自ら庭を掘り起こしているのだった。/「ミキ、女優なんかやめて料理のシェフになったらいいのに」/不快な痛みを感じてもなお楽しくてやめられないのが庭仕事で、夫が腕や手先の不調を感じながらもブルドーザーのごときスピードで石ころだらけの斜面を耕していた気持ちがよく理解できる/人間の尊厳は不可侵である」/8歳の娘が、お答えできかねます、チューッス！て言うところ、語尾が印象に/お昼は熟した桃の冷製スープ。豆乳と桃と羊のフレッシュチーズにひとつまみのお塩と一片の氷を加えてミキサーにかけるだけ/必要書類を全部そろえても滞在許可証がでるとは限らない/人間ひとりが生活するだけで、環境への負荷は計り知れない/自由裸体主義。サウナは男女混浴で全裸をいとわない/どのように自然と共存していくのかは、永遠の命題/お砂糖依存への警告。お砂糖断ちの苦しさと一か月後の変化/オーストリアの「顔を覆ってはならぬ」という法律があるにもかかわらずコロナ禍ではマスク着用義務/ドイツ及びオーストリアでは閉店法で原則日祝の小売店の営業が禁じられている。そのため肉や卵が売っている自販機は重宝/炭火が発がん性リスクを伴うと発表/結婚のメリットとリスクを天秤にかけた結婚観。夫婦別姓をつらぬくが、コロナ禍では正式な婚姻関係が吉とでたケースがままあった/イスラエルでは他人が自分のことをどう思うかなんて誰も気にしない、という友人。男女関係なくある兵役の前と後は遊んで遊んで遊びまくる。/完璧な妻、母、祖母であろうとする義母の気持ちもわからなくはないけれど、時代はすでに変わりつつあり、少しくらい手抜きしてくれたほうが、私たちも気が楽なのだった/「男なんてそんなもんよ」「はじめは進めって言うくせに、次はもう止まれってコロコロ変わるものなのよ」（ガブリエラ）/痛みのない身体のみあれば、それだけで十分に幸せであるということ/Life is too short not to enjoy」/かけがえのない人生を存分に満喫することを自らに許すことができるように/ 「遺体との対面は必要ない」というドイツ人の夫の価値観/
 | 毎日新聞出版 発売日 : 2020-06-27 |
池澤夏樹、池澤春菜「ぜんぶ本の話」がよかった。親子が本をめぐって語る語る語るといった感。こんなに本のことで親子で盛り上がれるのうらやましい。いずれも親が作家という側面、池澤夏樹の父福永武彦への想いなどなど読みどころたっぷりでした。/以下備忘録/とりあえず読めるものからどんどん読んでいくのが大事/本には読むべきタイミングがある/読書の根本は娯楽/本の中に逃げ込める。かけがえのない時間/フランス人て基本農夫、サンテグジュペリ自身も農夫的。それを念頭に置くと星の王子様がすっとわかった/SF。わたしたちが知っている世界や物事にifをひとつ入れてみる/円城塔のSFは高級な冗談なんだけど高級すぎてわからない人多そう/トマス・ピンチョン「V」のテーマはテセウスの船/等身大の恋愛物語だと「無理無理」「その話聞きたくない」/業界を越えて届くような光なんてありませんから/「いずれぼくは春菜の父として知られるようになる」/「きみが住む星」「星に降る雪 修道院」池澤夏樹訳「古事記」、スー・バーク「セミオーシス」、ディック「高い城の男」てにとりたい/
 | 中央公論社 発売日 : 1998-03-01 |
何年ぶりかの再読。ナイチンゲール、シュリーマン、ピエール・ロティ、ブルーノ・タウト、アガサ・クリスティー、トロツキーといった錚々たる面々。日本人では山田寅次郎、大谷光瑞、芦田均など。ナイチンゲールのクリミア戦争における活動拠点はクリミアではなくイスタンブールの野戦病院だったこと。イギリスにとってはインドへの通路にあたり、ロシアの南下政策の防壁としてのみオスマン帝国の存在意義を認めていたこと。トロイの財宝はトルコ、ロシア、ドイツがそれぞれ領有権を主張していること。シュリーマンが出土品の半分をトルコに引き渡す契約を破ってトルコ政府に起こされた訴訟は、一万フランの賠償という判決ですまされたこと。ピエール・ロティがアジヤデのモデルと再会を期して10年ぶりに渡土した際の旅行記が「近東のまぼろし」であること。1896年のオスマン銀行占拠事件に端を発するアルメニア人虐殺事件。1914年まで一時帰国をはさんで通算20年、イスタンブールに滞在した山田寅次郎。ケマル・パシャに「私を覚えていますか。あなたに日本語を教わった士官です」と話しかけられた山田寅次郎。トルコ人の時間の観念の欠如を、まるで大阪人みたいだと書き残した乃木希典。大谷光瑞がブルサに最初の日土合弁事業を立ち上げたが、その繊維工場は四年で倒産したこと。サカリア河の戦いで大谷光瑞がトルコ側に武器供与をしたという説があること。自ら治外法権に苦しめられた過去があるにもかかわらず、日本がオスマン帝国に治外法権を認めさせようとして、外交関係樹立が難航したこと。1930年イズミールで起きた「メネメン事件」（ナクシュバンディー教団の長の政権批判演説をとがめた将校で教職につく青年を群衆がリンチして殺し、都市暴動となった事件）。オリエント急行殺人事件がよみたくなる。アガサ・クリスティー11日間の失踪の謎を解く鍵がペラ・パレス・ホテルにあるとされるが、真相は今も闇。ブルーノ・タウトが最晩年の二年間、アタトゥルクの信任を受けて、建築家として腕をふるいにふるったこと。亡命者たちに寛容なトルコだったが、第二次大戦中の富裕税は、ユダヤ人、アルメニア人、ギリシャ人などを狙い撃ちにし、滞納者約4000人を強制労働所へ送ったこと。第二次世界大戦再末期のトルコの日本大使館の殺伐さを描いた小林高四郎「イスタンブールの夜」。といったあたりが印象に。
ボアブディルのカトリック両王の支援を受けた即位。父、叔父との三つ巴の戦い。ボアブディルのカスティーリャへの亡命。叔父の即位。フェルナンドによるボアブディルのグラナダ帰還。叔父がグラナダ王国西部、甥が東部をおさめる情勢。紆余曲折を経て両者ともカトリック両王に臣従。ボアブディルの降伏協定は、財産の保全や海外移住の容認など、協定文書自体はすこぶる穏便で融和的なものとみえる。諸都市の降伏協定も、総じて、旧来のモーロ人の制度、文化をそのまま存続させながら、モーロ人支配者層を媒介としてその支配を貫徹していく、という点が特徴、と。間接支配で寛大なもの、という結論。もちろんこれは降伏協定から導きだされたもので、これ以降永続的に寛大であったわけではないことは知られるところ。
荒井悠太「或る中世写本の旅路――イブン・ハルドゥーン『イバルの書』の伝播」(ブックレット《アジアを学ぼう》 別巻23) (ブックレット《アジアを学ぼう》別巻)つながりで。/イブン・ハルドゥーンに代表される歴史学的政治論は、しばし国家の興亡とその原因について論じ、組織論とより密接な関連を有していた。◆スレイマン大帝期：千年後もオスマン朝が続くという楽観。支配組織の欠陥は運用上の問題のみ、という見方。◆ムラト３世以降：高官たちの腐敗、堕落。軍政、税制の混乱。◆17世紀初頭。アフメト1世期の小康。ハプスブルクとの和訳、ジュラーリー反乱の鎮圧。支配組織中枢の秩序回復維持に向けあるべき組織の提示をめざす著作の登場◆没落観に裏打ちされた改革論。ムラト三世時代の、地位にふさわしからぬ高官の頻出、ティマールやイェニチェリの質の低下が没落の原因とする者も。スルタン親政が解決策とするものも。強力な改革者登場の熱望。旧来の組織モデルの枠内にとどまるキョプリュリュ改革のスタート。チューリップ時代における西洋へのまなざし。キリスト教徒ハンガリー人という帝国におけるマージナル・マンたるイブラヒム・ミュテフェリカの、近代西欧の新しい組織モデルを比較対象としてとりあげ、オスマン帝国の伝統的支配組織が技術的優位を失ったことを示す書の登場でしめくくられる論。
 | ぴあ 発売日 : 2022-01-24 |
よく行く大好きなお店から、行きたくなったお店まで目白押し。「珈琲と衛星」の”衛星”は、誰かにとって”もう一つの居場所”になってほしい、との思いから。喫茶こん、の”こん”はきつねと関係ない、と書かれてるけど、実は関係なくなくない、だったり。クラシックな喫茶店は、喫煙可のところが多いので、自分も含めて吸わない方は要注意かも。
末森晴賀：ムスリム捕虜の語る近世の地中海、つながりで。「匪賊」サルベイオウル・ムスタファの活動から、「アーヤーン」勃興期の18世紀前半における地方の動きを明らかに。18世紀オスマン朝、反抗的な人物は取り込み手なずけた。それができなければ「匪賊」として討伐。政府に協力しつつ勝ち残った者が、政府から官職も得てアーヤーンに。サルベイオウル：保護と同時に貢納徴収を通じて、地域住民や交易に影響力。政府から見れば「人々の財産を不当に奪う」存在。オスマン政府がオーストリアとの戦争に注力し、討伐に手が回らないため、従軍を条件に取り込みを図り、一旦はサルベイオウルも同意するが、翻意。イズミルを襲撃した際に、外国人の財産も侵害し、交易も阻害したことから国際問題となり、政府も討伐せざるを得なくなり。ついには討伐され、約7年の反乱に終止符。彼を討伐した勢力の中に、アーヤーンが加わっていた、と。「オスマン朝において地方支配の実権が在地の実力者の手に移って いった18世紀という時代，サルベイオウルはその初期に現れた「アー ヤーン」の一つの形である。彼のように強大で地域に影響を及ぼし ながら政府に反抗的な者は排除され，政府と結び付きつつ勝ち残っ た者が18世紀後半にアーヤーンとして割拠していくのである。」
 | アタシ社 発売日 : 2022-01-25 |
呟きでも日記でも物語でもない一年間、という帯。読み終えて、呟きのような日記のような物語のような一年間、という思い。小説もエッセイも全部買ってる燃え殻さんの新刊情報をなぜかhontoアプリに教えてもらい、購入。何事も最初からピッタリ来ることなんかまずない、「微調整で乗り切るしかない」は掛け軸にして床の間に飾っておきたい（床の間ないけど）。"スーパーマーケットの前のガードレールに繋がれていた柴犬に二度見された。エサっぽかっただろうか。"、p.60のリャンピン、四萬、点棒が路上にころがる写真、"机に花瓶が置かれていたことがある。僕はなんか得した気分になって、少し花瓶を右にずらし、受付嬢気分で授業を受けた。"、"遠距離恋愛をしている友人が「距離を置きたい」と言われたという話に癒された。"、「わからない」と認め合ってから、人と人は始めるべきだ。"あたりに、可笑しみから、まさかそんなを通って、深いうなずきまで。一番の何言ってんだ大賞は、"え、男ならニューアルバムを引っ下げて「カウントダウンＴＶをご覧の皆様、こんばんは」とやるのが夢で、女なら自分の写真集を出版して「スペイン語で愛情という意味です」とか言いたいんじゃないの？(p.70)"。爆笑してしまいました。
 | 宝島社 発売日 : 2019-01-10 |
平成史ものは何冊か読んできたけど、これは週刊誌がよく取り上げたものがメインの事件史もの。皇太子「お妃騒動、山一証券廃業、オウム死刑囚死刑執行、SMAPの脱退メンバー、神戸連続児童殺傷事件の犯人の手記出版、海部総理誕生から加藤の乱まで。権力闘争に敗れた貴乃花。ノーパンしゃぶしゃぶ。プロ将棋棋士のソフト不正疑惑、などなど。時代に「置き去り」を食らう「平成」13の未解決事件簿は、いまも未解決のままだろうか、ラインナップを見ると、自分が生きてた時代のことを思い出す。当時皇太子だった今上天皇の、記者会見での宮内庁への苦言ととれる言葉。2014年に旧山一證券の社員らによって山一證券の商標が復活し事業がスタートしたこと。有力支援者がいる、再審請求や獄中訴訟をくりかえす者、共犯者が逃亡している者は死刑執行が回避される傾向にあり、そういう「対策」をしてない死刑囚から死刑執行される実状を打破するのがオウムの死刑囚たちの執行だった、と。遺族に無断で匿名で手記を出版できると考えていた著者と、そこをあいまいにしていた編集者。総理になるため３桁億円の金を使って総理を1年7か月やった、海部は投下資本ゼロで2年4か月だ、という元首相の語り。自民党が苦しかったときにだけ外に出ていい恰好をした奴を総理大臣にするわけにはいかない、という権力闘争という名のむきだしの感情論。結局冤罪だった騎士がタイトル挑戦権と勝っていれば4000万円以上の賞金をふいにし（何らかの補償はされたとはいえ）、告発したほうもスランプに陥り、あとから全体を眺めてみると、不幸な方向にいく流れだったとしかおもえない、という経緯。などが、印象に
 | 小学館 発売日 : 2010-10-06 |
15年ぶりぐらいの再読。前に読んだときは、暗くてちっぽけでしみったれててと感じて、ぜんぜんピンと来なかったけど、時を経て、「そこのみにて光り輝く」「黄金の服」を読んでから手に取るとまた違った味わいで、じわじわと来ました。/覆面パトカーに嵌められて罰金とられた飲酒運転＆スピード違反の中年男性が、盗んだ酒じゃねえ、俺が自分の金で買った酒飲んで運転して何が悪い、と倒産で職業訓練校で息子みたいな年齢の若者たちに交じる鬱屈を、やけっぱちやぶれかぶれ、間違った場所間違った方向にぶつけて結局捕まるワンシーンがあざやかに残る。/多くは貧しく、小市民的で何らかの鬱屈を抱え、それを時に息を吸って飲み込んで、時に一触即発で、時にやぶれてもれ出て、と。片道切符で雪山のロープウェーになり、下山で遭難し、死体は崖から海へ落とされた青年。両親の反対を押し切って若者には未来がない故郷へ帰ってきて、来ない引っ越しコンテナを待つ青年。プロパンボンベで足をつぶし、義理の息子を虐待する妻に憤る男、不倫した親友の子を育てるためだけに娶られたと鬱屈する妻。授業をさぼって切手コレクションと映画のために街に出た中学生の心に走る虹。小砂丘の地区に住む人々への偏見と差別。変貌する産業道路の周辺。プラネタリウムの仕事に誇りを持つが、妻には軽んじられ、浮気を疑い、それを息子からやめさせるよう遠回しに言わせようとして憐れまれる男。同僚たちを本を読まない、美術品も身にいかないと見下すところのあるうだつのあがらない男。などなど。
 | 秋田書店 発売日 : 2021-08-16 |
65歳で夫を亡くし、ひさびさに足を運んだ映画館で、映像専攻の学生海と知り合ったうみ子。映画を撮る側ではないかと背中を押され、大学に入り直し、映画を撮る決意を抱く。海と対話するうちに、老後の趣味だから、とごまかしてきた思いに真正面から向き合おう、と。個人的には、それが、映像じゃなくてもいい、学び直したい気持ちに。
 | 講談社 発売日 : 2021-11-18 |
オーディションで突出した歌の才能の持ち主にうちのめされ、制作側にまわろうと決めた青年。空回りする日常の中、自分をうちのめした女性シンガーと再会し、売り出させてほしいと頼み込み。好きなこと、信じたことしかやりたくない歌手と、なんとかして売り出したい制作側がせめぎあいつつ、どう化学反応をおこしていくのか。
2022年01月09日
2021年12月に読んだ本 つづき
 | 岩崎書店 発売日 : 2021-08-25 |
ある女の子が、自分の死のことを考えてつくった、わたしはしなないおんなんのこ、という歌が、ネズミが、ネコが、のみが、うなぎが聞いていてそれをひろめてくれて、時が経ち、遠い場所でまた別の女の子に届いて歌われる、というお話。誰かが声をあげれば、誰かが世界にひろげてくれて、また別の誰かに届く物語。
 | 集英社 発売日 : 2021-12-17 |
アシリパ救出。撃たれた有古。夢現で語られる杉元と菊田の過去、解かれる暗号…鶴見とアシリパによって相前後して。中央への反旗を決意して菊田を撃った鶴見。そして金塊のありかは、見間違えようもない特徴を持つあの場所に… いよいよ次巻かその次あたりで、と思わせるクライマックス感！
 | KADOKAWA 発売日 : 2020-09-12 |
近藤ようこ版全4巻読んだあとに、澁澤龍彦原作読み返して、また近藤ようこ版1−3を読み返す。相乗効果でどんどん味わいが深まっていく感。このターンは「自分の一生はどうやらこのなにかを求めて足をうごかしていることの連続のような気分もしないでもない」「どこまで行ったら終わるのか」「なにを見つけたら最後の満足をうるのか」といった独白が印象に残る。
 | ポプラ社 発売日 : 2021-12-08 |
一万円選書で有名な砂川の「いわた書店」岩田さんが、生い立ち、本屋を継ぐまで、継いでからの長く苦しい期間、「一万円選書」の発端、最初は鳴かず飛ばずだったが、七年後に深夜番組とSNSでバッと拡散してブレイク、それからは選書で売上が立つようになったことが語られ、どんなアンケートをもとに選書を実施するのか、実際に1ケースをとりあげてこんなやりとりを行うことを示し、最後はこのメソッドは開放してるので、やりたい人は広めてほしい、というスタイルでしめくくられ。この選書のためのアンケート、依頼する人にとって、選書の依頼であるとともに、自分の人生への振り返りであり、一種の信仰告白であり、これを託され、応え続ける岩田さんへの信頼と力量は並々ならぬものを感じた。誰でもこのメソッドを使ってほしい、というが誰にでもできるだろうか、いややれるところからやっていけばいいのでは、の、せめぎあい。少なくとも、まずは自分が自分のために、時間をかけて選書アンケートを書き上げてみたい！という思いがかけめぐった。また、「一万円選書」長いこと耳にしてたので、最初っから大ヒットのどメジャー企画だと思ってたら、つい最近ブレイクしたものだったとは寡聞にして知らず。しかもそのブレイク時の岩田さんが63歳って、よくぞここまで続けてくださった、耐え忍んでくださったという思い。/よく選書される本を何冊か読んで、逆に岩田さんはこういう本が好きなんだ、というのをさぐっていきたい思いも/
 | マガジンハウス 発売日 : 2018-03-16 |
「東京トイボックス」が大好きな身としては、cakesのニブンノイクジの連載を楽しく読んでたのですが、なにせ途中からだったので、147話まで読めると知り購入。出産も保育園入園も情報戦と交渉力。小沢さんの細かさ、こだわり、粘りがいいほうにでて、保育園に入園のくだりは手に汗にぎり。4時間煮込んだ料理がだめになったときの夫婦のいさかいに、2歳時がさっと乗り出し、はげしく落ち込む父をよしよしとなぐさめ、おさけのみな！びーる！とビシッといったシーンが一番印象に。かわいいもたいへんも、どうやってのりきったか、話し合ったり、ログをとったり、お互いの得意をわけあったり。怒りをぶちまければ楽になるけどあとのことを考えぐっとこらえて、代替案だして状況をすこしずつかえていくのほんとすごい。
| 発売日 : |
そびえ立つカラーン・ミナレット。罪人や旅人をあそこから落としたんだよな、ウズベクの高い建物わりと権力者が人を落とすのに使われている。てところ。カラフルに変化するモスクをながめながら、実写アラジンのサントラを聞いて「エモ」ってなってるところが印象に。トルコのバクラヴァをさらに改良したパフラヴァにも興味ひかれる。
火療、遊郭建築、横浜でベトナムエッグコーヒー、東京ジャーミィとハラルフードマーケット、東京タワーと台湾祭など魅力的なラインナップ。漢方オイルぬって、身体にかけた布に火をつけて消す、お灸みたいな効果な火療は受けてみたくおもった。遊郭だった建物でお茶できるのも善き。東京ジャーミィーは再訪したくなった。バクラヴァとか売ってるかな。
 | 一迅社 発売日 : 2021-12-20 |
善き、が詰まっていると語られるレイモンド・カーヴァー「大聖堂」読んでみたくなる。また、南條範夫「戦国残酷物語」も気になる。本について語り、意見をぶつけあって、関係を築いていくのいいなあ、といつもながらに思う。「フランケンシュタイン」の怪物に名前があったほうがいい、いや、名前がないことが不完全な存在という側面を明らかにしている、あるいは「山月記」は虎になったことを悪としてしか捉えておらず、そのもととなった心理状態といえどそこまで拘泥すべきか、みたいな読みもあったり、また、遠藤くんと神林さんですこし背伸びしてうわすべりしたフィクション論をたたかわせてみたり。といったあたりが、印象に。
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コミックスの余白を埋める、幕間の試みなのだろうか。BL要素含みつつ。
コミックスの幕間の話から、後日譚まで、BL要素強めで。神田くんがフランス語教師のコンスタンスとつきあいはじめ、小野さんは、千影とつきあいはじめ、けど橘への気持ちにあらためてきづき、それを千影にきづかれつつも許され、橘は一般女性とのゴールインを目指すもはたせず、でこはアンティークで働きだしてケーキ屋をめざす、と。まだまだ連載が続いてたらこうだったのかなという未来を垣間見せてくれた感。
| 発売日 : |
質実剛健、文弱なんぞより尚武な気風のスパルタ。ふだん栄養あるもマズイ豚の血と臓物のスープを食べ、戦争時はおいしいものを食べることで、戦に向かわせる心持ちを鍛え。後世になって、50万、100万、520万とその規模がどんどん誇張して描かれるペルシャ軍を相手に、レオニダス1世が300の親衛兵だけで立ち向かったテルモピュライの戦い。その後の王妃ゴルゴーのことは不詳としつつ、一節にはその息子が王位についたとか。藤村シシンさんのアレスをオチにした4コマ漫画。キュノスーラさんの、馬車競争で馬車のオーナーとなって優勝者に名を刻もうとする王女の狂想曲あたりもたのしかったです。
 | Distributed Art Pub Inc 発売日 : 1995-10-01 |
キスする人々を写した写真集。恋人たち、親子、友人、夫婦と関係性はさまざま、電車からとびおりて、アクロバティックなポーズで、並んで寄り添って、とさまざまなシチュエーションで。その中にならべると、ジョン・レノンは、オノ・ヨーコに深く惹かれていたのだろうか、という思いに。
 | 講談社 発売日 : 2021-10-13 |
内野さんが圧力釜の良さをこれでもかと語る対談がよかった。ドラマ、映画を楽しんだ身には、こういった思いで製作されたのか、というのがよくわかって良い本でした。シロさんの成長物語、という側面には確かにそう。
 | 新潮社 発売日 : 1956-03-13 |
中江有里「沙羅と万葉」にでてきたので手に取り。舞台は、語り手である詩人が、太平洋戦争後のサナトリウムで、汐見と知り合うことで始まり。そこから、汐見が太平洋戦争前後に愛した兄妹、藤木忍、藤木千枝子のことが手記の形で語られ。忍は思いを受け入れず、千枝子も一度は受け入れてくれたが結局は離れていき、忍も千枝子も俺を愛してくれなかった、俺は孤独だ、と応召し、戦場に向かう汐見。ただ、今の時代から、傍観者として見ると、汐見の愛は、そんな愛し方では受け入れられないよ、独りよがりだよ、と思えた。理知的で純粋と自らが信じ抜く理想を築き上げ、そこに相手をあてはめるような愛し方、かつ、同時に自らの孤独なる魂も大事にしたい、その熱量の高さは確かに目を見はるばかりだが、それを向けられた身としては、と。もちろん、いくつかの行き違いはあって、それがうまくかけあわされていれば、もしかしたら、と思わなくもないけど、さてどうであったろう。以下備忘録/本当の友情というものは、相手の魂が深い谷底の泉のように、その人間の内部で眠っている、その泉を見つけ出してやることだ、それを汲み取ることだ/愛することによってのみ、僕たちは地上の孤独からイデアの世界に飛翔することが出来るんだ。その中でこそ真に生きられるんだ。/このわたくしとして、この生きた、血と肉のあるわたくしとして、愛されたいと思いました。/藤木、君は僕を愛してはくれなかった。そして君の妹は、僕を愛してはくれなかった。僕は一人きりで死ぬだろう……。
 | 文藝春秋 発売日 : 2018-07-20 |
実際にあった東大のサークルを舞台にした事件をモデルにした小説。地方-東京、進学校-普通の高校、女子校-男子校-共学、東大-東大以外の大学、かわいい子-それ以外の子、裕福な家-裕福じゃない家、幸福な家庭-乾いた家庭、さまざまな軸が幾重にもかさなりあって、そのいずれかの場に立つ登場人物たちの内面、語り、夢、野望、素直さ、残酷さ、見下しが描かれ。何度も繰り返し記されるのは、挫折を知らない、要領よく受験を勝ち上がってきた、傷つくことを知らない、つるつるした彼らはといったような、事件を起こした側の行動、言動への記述。それらは起訴されたあとの、なぜ自分が？という態度へもつながり。被害者の学校の教授が、加害者家族からしつこく被害者への面会を要求され放ったひとことが、行われたことが、どんなにか被害者の魂を殺すことで、家族を含めた加害者がまったく思い至ってなかったことを痛烈にいいあらわしていた。こんなことで宇宙に飛び出そうなほど高いプライド持って、それで人を見下せるなんておめでたいとバッサリ切り捨てられるのか、自分がこんなことでと思うことに、何か別のものをあてはめれば、一歩間違えば彼らのようにならなかったと言い切れるだろうか、と肩をつかんでゆさぶられたような。
| 発売日 : |
seesawbooksでふと手に取ったフリーペーパー。口にしにくいことも、関係を深めるために語り合うことも必要。語り合うための試み。以下、気になった言葉や、論点など。/詩やフィクションという”現実から一種隔離された”場所だからこそ書けることがあります（文月悠光）/詩は「答え」を示すものではなく、読み手に「問いかける」もの（文月悠光）/「当事者になってみないとわからない」と言ってしまうと全てが分断されてしまう（橋加奈子）/「子どもを産まない」という想いを社会が選択肢の一つとして認めないことで、「子どもを産みたい」という気持ちも、「普通」とされている流れを後押しする選択になってしまうことが嫌だなと思います。(和田彩花)/相談する相手には気をつけていて、ジャッジしてこない人や、僕の悩みを矮小化せずに深掘りしてくれる人を選んでいます(kan)/me and youは個人と個人の対話を出発点に、遠くの誰かにまで想像や語りを広げていくための活動を行うための拠点/
 | 新潮社 発売日 : 2002-09-30 |
志村けんとドリフの大爆笑物語、を見たら読みたくなり手にとる。特に、全員集合のあたりを。志村けんに語ってもらってそれを再構成した感じの本。英語もスペイン語もできない荒井注、志村けん、二人でブラジル旅行、の章は出色の可笑しさだった。以下目に止まったところ。///マンネリをバカにしちゃいけない。マンネリになるまで続けられるのは実はすごいことだ。/ずっと好きなコントをやっていきたい。死ぬまで「あいつはバカでどうしようもない」って、言われ続けたい。/全員集合のコントはチームワークのコント。仲が良くないとできない。/全員集合おわる時、その先のことはメンバー誰とも話した覚えがない。/終わる時はこんなもんかよ、と思った。全員集合もカトちゃんケンちゃんもだいじょうぶだあも/屁の音はリアルじゃなきゃいけない、って屁の音ばかり収録されたレコード、を探し出してきてそれを使った、と。それを作った教授が生徒たちに繊維質のものを食べさせて屁を出せとせまって録ったものなのだとか（今なら問題になりそう）。
いまとなっては2代前の総理の話になってしまったが、それでもこういうことがあったということを記しておくことは大事、と思う。政権にあるものが演説し、賛同者たちは何をしても排除されないのに、ヤジっただけで、法的根拠なく警察官たちが押し寄せ、「お願い」といいつつ、身体を拘束し、ヤジやデモをさえぎり、やめたあともつきまとう。他の独裁国家を民主的でないなどと責められるだろうか、と。/「権力者による大きな不法行為・不正義には目をつむりながら、細かいルールを持ち出して、一般庶民の行動をどんどん規制する」/また、不当な排除に抗議するためのデモを申請する際も、法的根拠のない、いやがらせのようなお願いが連ねられ、一部はのみつつ大半は無視しても、デモはできて、あれはなんだったんだ、という話から、別途、個人で道警に情報開示請求した方のお話なども。
 | 集英社 発売日 : 2000-10-05 |
新井満の訃報に接して再読。初読時は、曜子の年齢に近く、主人公の柊を、ベタで安っぽい感傷！妻がありつつモデルの若い女に手を出す身勝手な不倫！と散々な評価だったが、柊の年齢を越してみると、甘い顔一辺倒ではなく、自分のすべてをさらけだすつもりでヌード写真撮影をせがんだ曜子に、きみはちっとも裸になんかなってない、と職業人としての誇りを垣間見せたところもあり。また、いっしょにあそんでいた幼い弟が池で溺れ死ぬのを助けられなかったこと、高校時代の信頼していた親友が裏で曜子があたかも援助交際しているかのような噂を広めたことといったトラウマを打ち明けるまでに信頼を得ていたことは印象に。ただ今よみかえしてみると、随所に古めかしさを感じることも確か。オークションにつれてって曜子に絵画をプレゼントすることで彼女を見極めようとしたり（ポンと３０万の絵を買ってあげる）、一日ラマダンにつきあってもらったあとにフレンチを食べにいったり、ベトナムの青年が無慈悲に殺される映像を一緒にみたあと、彼女の絶頂の顔にその青年を重ねたり、チェルノブイリで誰もいないのに鐘だけがなり、地球の滅びへの挽歌に感じたことを、その直後に思い出したり、主題となったビュフェの絵画が曜子の心象に深く寄り添っていたり、なぜかSTQとぼかされたキューブリック監督「アイズ・ワイド・シャット」をめぐるやりとり、ブランクーシの「空間の鳥」にこめられた思いなど、たてつけは興味深いところもあったのですが。/「お昇りなされ、あるいは下りなされ、おなじことじゃよ」ゲーテ「ファウスト」/ちるさくら、のこるさくらも、ちるさくら 良寛
 | 小学館 発売日 : 2021-12-28 |
時は流れて。C教正統派に反抗し、教会に疑義を呈し、襲撃をかける集団が描かれ。また移動民族の女子が、オグジーたちが命がけで残した地動説の書を偶然みつけ。それをおいかける集団と行動をともにすることに。そして、ここに…というところにヨレンタさん登場、というところまで。信仰ならぬ身としては、作中の正統派に反対する論のほうにどちらかといえば惹かれるのですが。
 | 講談社 発売日 : 2015-08-06 |
1-2巻読了。大昔にアニメで見たことはあったが、マンガを読んだことがない気がして手に取り。愛子の愛犬パピーが、バイト中の池上にはねられたところから物語は始まり。そのかわりのようにおしかけてきたスパンク。自分たちの前から姿を消した父。ヨットが縁で、父の行方の鍵になるかもと期待される池上。心配し力になってくれるクラスメイト。愛子のために、あるいは自分のために、人語を解するかのようにさまざまにおせっかいをやくスパンク。父との再会。父母のフランスへの旅立ち。海辺の町で代理の父のもとでくらしはじめ。といったところまで。スパンク…憎めなくて愛らしい。
なかなか目的地につかない春の散歩にほっこりし、"今日のすまし汁おいしい”には味噌がなくても出汁がよく出ててかえってすごいのでは感、蓄光石がはやってることを知り、黒猫クロエちゃんが親切でやさしくてうさぎちゃんをあたたかく見守ってくれていていいなあと思いました。大型ごみ持ち帰りたくてうずうずには、その昔、飲み会の帰りに捨てられてたソファーをかかえてタクシーで帰ろうとして止められたことのある身には共感しかなく。
 | 中央公論新社 発売日 : 2021-10-18 |
勝ち残り、御用歴史家ともいえる人々が書き残したので、織田信長、羽柴秀吉のみが先見の明を持ち、先進的、革新的だと思われがちだが、史料を丹念にながめていくと、三好長慶が畿内に打ち立てた「三好政権」とも言える存在が、足利将軍無しでの支配体制という選択肢、可能性を示したことに先進性が認められる。信長といえど、途中まで足利義昭にこだわりつづけ、当初は三好義継らと形式上は同格で義昭を支えていたにすぎない。松永久秀の傀儡で無能とされる義継も、甘い予測であったが誰もが常識に囚われ成し得なかった将軍殺害という方法で取って代わろうとし、久秀と三好長逸が当主を支える体制に回帰し、二人を従え、大和、山城、各半国程度を勢力圏とするまでになったことは評価すべき。ただ、長慶時代にも見られたが、一族、家臣団の不和が足を引っぱり続けた、と。松永久秀にしても、義昭や信長から離反したのは、忠誠心のかけらもない性格や野心のためと評価されてきたが、久秀からするとそもそも信長に臣従してないし、継続して三好氏の被官であり、三好氏の被官としては至極当然の行動してきただけ、という見方もできる、と。三好政権の「先進性」を知ることができ、信長の「革新性」を相対化する視点を得られたこと、貴重。
 | リイド社 発売日 : 2021-12-27 |
ハルトマン邸をでて遊郭に出ることになったたまを、たまをに気持ちを告げ引き取ろうとするも果たせず無力感を噛み締めるヴィクトル、政府軍に組み込まれ奥羽での戦いに志願する虎四郎、火事を機に母である慶と岩次で暮らそうと持ちかけ遠回しに拒絶され商売に会計に身を入れる百年、キリシタンで仲間たちを案じ信徒だと明かせなかったことを悩み続ける岩次。次巻、クライマックスへ。
 | 双葉社 発売日 : 2021-08-05 |
世子と先代共闘再び。面が割れたら藩消滅？！て帯が物語るとおり。先代正森、対外的には高岡にいなきゃいけないとこを、江戸と銚子に現地妻おいて、商人顔負けで手広く商売にかかわりと心の赴くままに。ただ、今回は自分が原因で藩に迷惑がかかりそうということで世子正紀らの助力を受け入れ、逆恨みする代官、商人らの陰謀をかわし返り討ちすることができ。最後の、此度は助かったと率直に礼を言うのと、そなたらの顔は見たくもない、という相反する本音を晒したところまで清々しく。
 | 双葉社 発売日 : 2021-07-15 |
またまた出府で物入りになり金策にかけまわる正紀。今度の題材は鰯の加工品。不漁の噂を聞きつけ、銚子に人を派遣してまで、相場を張って儲けを出そうと試み。その過程で関わることになったのが、三十年前に藩政を離れた先代藩主正森。藩とはいっさいかかわらぬつもりの正森にとって、正紀らが噛んでくるのは迷惑千万な話だが、冷徹で利に聡いだけのようでいて、ベースには領民への思いが感じられるのであった…と。今回も悪徳代官と悪徳商人の無法に、正義の高岡藩世子が立ち向かうという構図は変わらず。安心の様式美。
2021年12月に読んだ本
1202・池波正太郎 真田太平記 12
1202・僕のマリ まばゆい 20211122発注_20211128着
1203・坂元裕二 往復書簡 初恋と不倫 読書室ポワロ
1203・吉田篤弘 月とコーヒー （甘くないケーキ、カマンザの朝食、世界の果てのコインランドリー のみ読了） 読書室ポワロ
1204・末森晴賀 ムスリム捕虜の語る近世の地中海 マルタの「海賊」とオスマン朝のはざまで 20211127
1205・梨木香歩 風と双眼鏡、膝掛け毛布 図書館 …興味のある地名分のみ拾い読み
1206・【再読】丸島和洋 真田信繁の書状を読む
1207・荒井悠太 或る中世写本の旅路 イブン・ハルドゥーン『イバルの書』の伝播 20211127
1207・【再読】池波正太郎 槍の大蔵 真田武士小説集 図書館 …武士の紋章（滝川三九郎）、槍の大蔵（雨宮大蔵）、闇の中の声（西尾仁左衛門）、運の矢（天野源助）のみ読了
1209・【再読】池波正太郎 碁盤の首 真田武士小説集 図書館 …錯乱(堀平五郎)、碁盤の首(小川治郎右衛門)、この父その子（真田信安）、角兵衛狂乱図（樋口角兵衛）、信濃大名記（真田信之）のみ読了
(1209・応天の門 15 kindle
(1210・真造圭吾 ひらやすみ 2 kindle
(1210・佐藤二葉 アンナ・コムネナ 1 kindle
1210・朝井リョウ 正欲 読書室ポワロ …三宅香帆さん、あかしゆかさんおススメ
1211・【再読】丸島和洋 真田四代と信繁 図書館 …信繁、信幸、および昌幸（天正壬午の乱、第一次上田征伐）のみ
1211・【再読】池波正太郎ほか 真田太平記読本
(1212・小学館版学習まんが世界の歴史別巻3 オスマン帝国1: (学習まんが 小学館版)
1212・澁澤龍彦 高丘親王航海記 20211106
(1212・桐谷さんちょっそれ食うんすか！？12
1213・imaginary 創刊号
1213・佐伯綾那 アンナ・コムネナの描く「ポルフュロゲネトス」(博士論文)(pdf)
1214・久保明教 日常の時代に生きる記号を喰う 食マンガ批評試論 1 https://bodyartslabo.com/report/akinori-kubo.html
1217・中江有里 沙羅と万葉 読書室ポワロ
(1218・夢の雫、黄金の鳥籠（１６） (フラワーコミックスα)
1218・札幌地下街十年誌 図書館
(1218・司馬遼太郎原作、蔵西漫画 ペルシャの幻術師 1
(1218・凪のお暇 9
1218・さっぽろ地下街20年誌 図書館
1218・さっぽろ地下街40年誌 図書館
1219・中川裕監修 アイヌ文化の大研究 図書館
(1219・特集ポールタウン・オーロラタウン"半世紀秘話" - 財界さっぽろ2021年5月号
(1219・トルコにおける都市研究と労働社会史研究(pdf)
(1219・knowsノース vol.3 Seesawbooks
1219・【買直し】丸島和洋 真田一族と家臣団のすべて (新人物文庫) kindle 20211213
1219・福永武彦 廃市(日本文学全集 17 池澤夏樹個人編集 所収)(中江有里「沙羅と万葉」関連）図書館
(1219・ミステリと言うなかれ １０
1220・向田和子編 向田邦子ベストエッセイ ちくま文庫
1220・#しかたなくない seesawbooks
(1222・川尻こだまのただれた生活 5 kindle
1222・中国史史料研究会会報 2020年度 合訂号 Kindle 20211220
1222・チョ・ナムジュ 82年生まれキム・ジヨン 20211205
(1223・アレンとドラン 6
1224・xd magazine issue vol.1 私たちは今、 どんな価値を選びたいか? seesawbooks
(1225・【再読】近藤ようこ 高丘親王航海記 1-3 kindle
(1225・kissing らくだや 20211211
(1225・小林エリカ わたしはしなないおんなのこ
(1225・ゴールデンカムイ 28
1225・岩田徹 一万円選書 ポプラ新書
(1226・うめ イクメンとよばないで ニブンノイクジ 20211225
1226・劇場版きのう何食べた オフィシャルブック
(1226・booklogなし 近藤ようこ 高丘親王航海記 4
(1226・akanatu 旅まんが異文化散歩 関東・関西
(1226・akanatu ウズベキスタン旅まんが
(1226・バーナード嬢曰く。6
(1226・ケンジとシロさん 5
(1226・それからのアンティーク1-3
(1226・音食紀行 スパルタ
1227・福永武彦 草の花 新潮文庫 （中江有里「沙羅と万葉」関連）図書館
1227・おれは一万石17 金の鰯 らくだや 20211211
1228・姫野カオルコ 彼女は頭が悪いから 読書室ポワロ、kindle
(1229・魚豊 チ。地球の運動について 6 kindle
(1229・たかなししずえ おはようスパンク 1-2 kindle
1228・ポイズン通信DX 増補改訂版 -アベをやじったらポリスが来た！＠札幌- seesawbooks 20211225
1228・新井満 黒い傷のある部屋 図書館
1228・志村けん 変なおじさん完全版 20211228
(1231・オバケちゃんとウサギちゃん 7 シャンティブックス
1231・おれは一万石18 大殿の顔 らくだや 20211211
1231・天野忠幸 三好一族 中公新書 図書館
(1231・扇島歳時記3
1202・僕のマリ まばゆい 20211122発注_20211128着
1203・坂元裕二 往復書簡 初恋と不倫 読書室ポワロ
1203・吉田篤弘 月とコーヒー （甘くないケーキ、カマンザの朝食、世界の果てのコインランドリー のみ読了） 読書室ポワロ
1204・末森晴賀 ムスリム捕虜の語る近世の地中海 マルタの「海賊」とオスマン朝のはざまで 20211127
1205・梨木香歩 風と双眼鏡、膝掛け毛布 図書館 …興味のある地名分のみ拾い読み
1206・【再読】丸島和洋 真田信繁の書状を読む
1207・荒井悠太 或る中世写本の旅路 イブン・ハルドゥーン『イバルの書』の伝播 20211127
1207・【再読】池波正太郎 槍の大蔵 真田武士小説集 図書館 …武士の紋章（滝川三九郎）、槍の大蔵（雨宮大蔵）、闇の中の声（西尾仁左衛門）、運の矢（天野源助）のみ読了
1209・【再読】池波正太郎 碁盤の首 真田武士小説集 図書館 …錯乱(堀平五郎)、碁盤の首(小川治郎右衛門)、この父その子（真田信安）、角兵衛狂乱図（樋口角兵衛）、信濃大名記（真田信之）のみ読了
(1209・応天の門 15 kindle
(1210・真造圭吾 ひらやすみ 2 kindle
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1210・朝井リョウ 正欲 読書室ポワロ …三宅香帆さん、あかしゆかさんおススメ
1211・【再読】丸島和洋 真田四代と信繁 図書館 …信繁、信幸、および昌幸（天正壬午の乱、第一次上田征伐）のみ
1211・【再読】池波正太郎ほか 真田太平記読本
(1212・小学館版学習まんが世界の歴史別巻3 オスマン帝国1: (学習まんが 小学館版)
1212・澁澤龍彦 高丘親王航海記 20211106
(1212・桐谷さんちょっそれ食うんすか！？12
1213・imaginary 創刊号
1213・佐伯綾那 アンナ・コムネナの描く「ポルフュロゲネトス」(博士論文)(pdf)
1214・久保明教 日常の時代に生きる記号を喰う 食マンガ批評試論 1 https://bodyartslabo.com/report/akinori-kubo.html
1217・中江有里 沙羅と万葉 読書室ポワロ
(1218・夢の雫、黄金の鳥籠（１６） (フラワーコミックスα)
1218・札幌地下街十年誌 図書館
(1218・司馬遼太郎原作、蔵西漫画 ペルシャの幻術師 1
(1218・凪のお暇 9
1218・さっぽろ地下街20年誌 図書館
1218・さっぽろ地下街40年誌 図書館
1219・中川裕監修 アイヌ文化の大研究 図書館
(1219・特集ポールタウン・オーロラタウン"半世紀秘話" - 財界さっぽろ2021年5月号
(1219・トルコにおける都市研究と労働社会史研究(pdf)
(1219・knowsノース vol.3 Seesawbooks
1219・【買直し】丸島和洋 真田一族と家臣団のすべて (新人物文庫) kindle 20211213
1219・福永武彦 廃市(日本文学全集 17 池澤夏樹個人編集 所収)(中江有里「沙羅と万葉」関連）図書館
(1219・ミステリと言うなかれ １０
1220・向田和子編 向田邦子ベストエッセイ ちくま文庫
1220・#しかたなくない seesawbooks
(1222・川尻こだまのただれた生活 5 kindle
1222・中国史史料研究会会報 2020年度 合訂号 Kindle 20211220
1222・チョ・ナムジュ 82年生まれキム・ジヨン 20211205
(1223・アレンとドラン 6
1224・xd magazine issue vol.1 私たちは今、 どんな価値を選びたいか? seesawbooks
(1225・【再読】近藤ようこ 高丘親王航海記 1-3 kindle
(1225・kissing らくだや 20211211
(1225・小林エリカ わたしはしなないおんなのこ
(1225・ゴールデンカムイ 28
1225・岩田徹 一万円選書 ポプラ新書
(1226・うめ イクメンとよばないで ニブンノイクジ 20211225
1226・劇場版きのう何食べた オフィシャルブック
(1226・booklogなし 近藤ようこ 高丘親王航海記 4
(1226・akanatu 旅まんが異文化散歩 関東・関西
(1226・akanatu ウズベキスタン旅まんが
(1226・バーナード嬢曰く。6
(1226・ケンジとシロさん 5
(1226・それからのアンティーク1-3
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1227・福永武彦 草の花 新潮文庫 （中江有里「沙羅と万葉」関連）図書館
1227・おれは一万石17 金の鰯 らくだや 20211211
1228・姫野カオルコ 彼女は頭が悪いから 読書室ポワロ、kindle
(1229・魚豊 チ。地球の運動について 6 kindle
(1229・たかなししずえ おはようスパンク 1-2 kindle
1228・ポイズン通信DX 増補改訂版 -アベをやじったらポリスが来た！＠札幌- seesawbooks 20211225
1228・新井満 黒い傷のある部屋 図書館
1228・志村けん 変なおじさん完全版 20211228
(1231・オバケちゃんとウサギちゃん 7 シャンティブックス
1231・おれは一万石18 大殿の顔 らくだや 20211211
1231・天野忠幸 三好一族 中公新書 図書館
(1231・扇島歳時記3
 | 新潮社 発売日 : 1988-03-01 |
小野お通の格別の配慮で信之に届けられた幸村の遺髪。/長年、信之を庇護してくれた大御所家康の死。/樋口角兵衛の尾張家出仕と喧嘩の末の逐電、上田に突如あらわれ、意外やその後おだやかな余生をおくったこと/幕府からの真田家取潰しの陰謀を、お江からの通報により察知し、「わしの不明であった」とお江に率直に詫つつ（お江も信之への認識を改めつつ）、いち早く大御所からの書状という伝家の宝刀を準備し、完膚なきまでに叩き潰し、禍根となる馬場彦四郎を碁狂いの性質を利用しておびき出して誘殺。松代転封については、ありがたきしあわせ、光栄なことと即答し、先祖伝来守り抜いてきた土地、父や祖父への思い、怒りをぐっとこらえて。最後は、転封を惜しむ領民に見送られ、またその中にいたお江と住吉慶春見にも身送られつつ、出発する信之（完）といったところ。「悪しきことは、なかなかに、かたちとなってあらわれぬ。これが困りものじゃ」と信之が鈴木右近へつくづくと漏らした言葉が、後半部のベースとなっていることを感じつつ。
| 発売日 : |
「常識のない喫茶店」の時代に至るまでのことがたくさん書かれている。結婚する男友達が、ウェディングブーケと引き換えるためにくれたトランプの入った封筒の裏に、ローダンセの押し花---花言葉は、終わりのない友情---が貼られていたのを見つけたシーンが一番心に残った。実家で飼っていた犬コタに向けた「わたしが飼っていたのは、ただならぬ愛の塊だった」という言葉。そして、「日々思ったことを自分の言葉で紡ぎたい」「静かに続く激情に翻弄されたい」といった日々から生まれる言葉を、また読みたい思い。
 | 徳間書店 発売日 : 2019-02-26 |
「甘くないケーキ」、「カマンザの朝食」、「世界の果てのコインランドリー」の三編のみ読了。心ならずも継いだ喫茶で、試作なのでといえば気になるあのお客さんに、気を使わせずにケーキを提供できるのでは、という思い。貨物列車しか停まらない駅近くにあるという世界一おいしい朝食を出す店を探す旅に出たカマンザ。ひとりのトカゲ男以外誰も住む人のいなくなった街にあるコインランドリーと、彼を気遣いつつ見守っているコインランドリー管理会社の社員。どれも、これから物語が展開しそう、というところですっと幕をひかれる。あとは読み手に委ねられて、と。「ひとつだけ、わかっていることがありました。自分で答えられない問いがあるということが、カマンザを前へ進ませる唯一の力なのです」（カマンザの朝食）
 | リトル・モア 発売日 : 2017-06-26 |
あかしゆかさんが感想を書いてたのに惹かれて手に取る。クラスで空気のように扱われてる男子に恋して、彼を救い出そうと奮闘する女子。時は経ちおとなになり、こんどは彼が彼女を救おうとするが…と。そして、地雷除去のために海外に旅立ち行方不明になった妻を待つ夫と、あなたの妻はわたしの夫と一緒に海外のとあるところにいますと告げてきた主婦。二人の関係はやがて、彼女のプロデュースで平和に命をかけた妻の手記の出版でときの人となるが…と。誰かの問題は、その人だけの問題ではない、必ず自分にもふりかかってくる、世界はつながっている。そして、”大切な人がいて、その人を助けようと思う時、その人の手を引けば済むことではない。その人の取り巻くすべてを変えなければいけない”が底流にあり、そこに魅入られ引き込まれるようにして、行動していく主人公たち。どちらの話にも友人として出てくるトリックスター豆生田氏がきっちりとしたアクセントになっていて善き。「その人の前を通り過ぎるという暴力」というフレーズが心に残る。
 | 風響社 発売日 : 2021-11-15 |
読み終えて気になったのは、なぜマルタ私掠船は身代金目当ての捕虜を一年半や七年も抑留したのか。目当てがお金なら、さっさと身代金決めて、さっさと解放、一方金にならぬ捕虜はさっさと解放した方が管理費もかからないのでは。それとも捕虜を牢獄に入れ最低限の食事を与えるくらい、身代金に較べればごくごく軽微なものだったのだろうか。最後の方の注でさらりと、マルタて捕虜になるよりオスマン朝で捕虜になる方が、ガレー船の漕ぎ手にされたり土木作業に駆り出されたりと大変だったことに触れられている。著者はスルタンや母后に直訴できただけマシだったのかもしれない。ただ、その中で、宗教建築なんかに寄進するより、われらを解放するほうがよっぽど神もよろこぶ、みたいな筆致もあり、言われたほうは特に不快に思わなかったのかなと要らぬ心配も（結果から逆算すると問題なかったのか）。解放で筆が置かれるがその後、本来の任地のカーディになれたのか、はたまたアルジェの知事の師となったのか知りたいところ。以下備忘録/私掠船に持ち物すべてと衣服も剥ぎ取られ裸で泣きわめいたマジュンジザーデ/運命をともにする捕虜たちのあいだでも仲間割れは避けられず/捕虜たちが外の情報を得る手段：新たにマルタに連れてこられた捕虜たちから。捕虜が開放されるための協力を母国の人間に要請する場合/マルタに連行されて約１年３ヶ月でようやくマジュンジザーデの身代金額決定/帰国できる捕虜仲間にマジュンジザーデは、スルタンや母后に上奏する詩を託す/スルタンはマルタの捕虜の解放と交換にマジュンジザーデを救うことに/捕虜による「冒険譚」、捕虜個人の非日常的な体験談を前提。同時に詩をふんだんに用いて出来事や書き手個人の心情を描写しているところに特徴/「冒険譚」はマジュンジザーデが無事解放されるため、あるいは解放後のオスマン官人としてのキャリアを円滑にすすめるための一種の「キャンペーン」として書かれたものであったかもしれない
 | 筑摩書房 発売日 : 2020-03-17 |
地名をめぐる随想。気になった地名をひろい読み。紀伊長島の朝食の時間「厳守」の宿。目の前でカンカンに焼かれた灼熱の石を味噌汁茶碗に放り込んでしあげるため。幼い少年が人生で忘れられない味、大人に混じって漁の手伝いをしてクタクタになって寒さに震えながら味わったであろう味噌汁。母袋子（ほろこ）：」ポロナイスクをめぐって、地名の由来がアイヌ語だけのものだったのだろうか、いろいろな北方民族が混在していたから、多様な民族に共通の地名だったのでは、と。/星置、という地名に、神々がふと、あの辺りが暗い、と何気ない風に歩いて行ってそっと抱いていた星を置いて帰ったようなうつくしいイメージを抱き/濃昼の項では、仙台藩士玉蟲左太夫という記録魔といっていい稀代の紀行家がとりあげられ。「仙台藩士幕末世界一周」「入北記」あたりは手にとってみたい。アイヌへの目線から、当時としてはヒューマニスティックな感覚を持っていた、と。戊辰戦争に斃れたのはかえすがえすも残念。また、串田孫一が首都高に直に足をつけて歩くことを望み、果たせないだろうといっていたのが2018年1月22日に東京を襲った大雪で、おおぜいの人がクルマを諦め首都高を徒歩移動したことが語られ。/東風平を故郷とする謝花昇という自由民権運動家は寡聞にして知らずだったが、当時の沖縄県知事奈良原繁と鋭く対立、44歳の若さで命を落とした、と。こちらも著作にあたってみたい。/
 | 星海社 発売日 : 2016-09-22 |
(2021/12/06読了分)真田太平記全12巻読了を機に再読。真田信繁の前半生の研究はまだ緒についたばかり、というのになるほど、と。いわく、生年は今までよりぐっと下がって元亀三年ごろでは。そうなると信幸との年齢差は1歳ではなく6歳差に。第一次上田合戦に出るには幼すぎるので、参戦してないのではという可能性。また次男ですらなく、信之とのあいだに男子がいた可能性も、と。北条氏征伐時の忍城攻めでは真田昌幸・信之ともにパッとせぬ失態があったが、後世の軍記物で戦巧者のイメージが。「豊臣」は、源氏、平氏、藤原氏のように「本姓」であり、秀吉の「苗字」は「羽柴」だった、といったあたりが今回読んでなるほどと思ったところ。/(2016/10/03読了分)書状という史料を題材に、元服の時期、実際の活動、石高、家族とのやりとり、馬廻りとしての暮らしぶり、配流時の逼塞具合など様々なことが浮かび上がってくる。そして、書状と関連する文書も用いて、鮮やかに年代比定を実施し、紙や文例、折り方などからも情報を取得し、判断していく手さばきが惚れ惚れするほどで、歴史研究の興奮に満ちた一面を提示してくれたように思った。/以下、備忘録として。/秀吉馬廻りに取り立てられ、肥前名護屋に出陣していたp.96より/真田氏の石高から昌幸・信幸に賦課された普請役を引いた380人を信繁担当分と換算し、信繁の石高を19000石と見積もる。p106より。/真田氏は信幸が徳川家康の姻戚となった一方で、昌幸・信繁が豊臣政権奉行と密着する複雑な姻戚関係を構築したと言える。ここに、関ヶ原合戦において、親子兄弟の判断がわかれる素地が存在したといえる。p.110/信繁が借金を申し出ているのは、彼が伏見という「消費地」かつ大名・旗本が集う「サロン」で暮らしているからであろう。交際費は、馬廻りとしての体面にも関わってくるから、削るわけにはいかなかったと思われる。p.118/信繁が昌幸に従って「西軍」についたのは、秀吉馬廻りとして、豊臣政権奉行衆との間に張り巡らせた姻戚関係によるものであろう。p.146/(上杉景勝が自領の分断を解消すべく行動、毛利輝元は四国九州で領土拡張を図り、西軍の城も攻撃、昌幸には領国拡張を持ちかけ) 三成挙兵は、豊臣政権が成し遂げた天下一統を破壊し、時計の針を戦国の世に戻す状況を生み出していたのである。p.157/以上から、信之は慶長一〇年の上洛時に、河原綱家を伴って九度山を見舞ったことが明らかになる。これが、昌幸・信繁親子と、信之との永遠の別れとなった。p.175/１０００石でも領主として復帰したいというのは、30代を九度山に埋もれて過ごした信繁の本音であったのかもしれない。しかし合戦中に寝返っての栄達、しかも主君として仰いだ秀頼を滅ぼしての出世など、信繁には思いもよらなかったのであろう。p.238/本多正純がなんども信用してくれと言ってるのは、信頼できない話と正純が悟っていたからだろうp.238より/信繁が石合十蔵に頼んだことは長女すへを決して離縁してくれるなということであった。九度山で「家族」とともに一四年もの時を過ごした信繁にとって、それが「守りたいもの」のひとつの答えであったのかもしれない。p.248
 | 風響社 発売日 : 2021-11-15 |
イブン・ハルドゥーンという題材も充分に興味深いが、それにも増して写本の研究というのは気が遠くなるほどの所業、各地に散逸したものをかきあつめ、あるいは実見し、その内容を比較し、系譜を追い、整理し、ものごとを明らかにしていく、と。「人々の理解を得ず、読まれもしないような書物が手間をかけて筆写されるはずもなく、そのような書物は散逸するのが常であった」からこそ際立つ、「イブン・ハルドゥーンの著作群はトルコ、エジプト、チュニジア、モロッコ、ヨーロッパ各国に100点以上存在。近代以前から彼がいかに人々の関心を集めてきたかを示す証拠」。また物理的には、著者の実体験でエジプトの文書館で滞在時に複写代が３０倍にはねあがったり。「アメリカ同時多発テロを経て反ムスリム感情が高まりを見せた時期、「西洋」と「イスラーム」という「衝突」する両者から肯定的評価を獲得してきた歴史をもつイブン・ハルドゥーンに、「イスラーム文明」なるものの代弁者という役割が期待された」など、現代でも関心を集めているイブン・ハルドゥーン。イスラーム地域研究ジャーナル」の「イブン・ハルドゥーン自伝」あたってみたく思った。また手に取りやすいところで云えば、「イバルの書」全体からしたらごく一部だけれど、「歴史序説」（岩波文庫版）にもあたってみたく思う。個人的興味としては、ナスル朝に興味津々なので、イブン・ハルドゥーンの生涯のうち、ナスル朝にかかわったところも調べてみたくなった。
 | 立風書房 発売日 : |
武士の紋章（滝川三九郎）、槍の大蔵（雨宮大蔵）、闇の中の声（西尾仁左衛門）、運の矢（天野源助）のみ読了。真田太平記全12巻読了を機に再読。こうして読みかえすと、滝川三九郎、西尾仁左衛門あたりは、真田太平記にも取り入れられてるんだな、と感じた。（滝川三九郎が、師の柳生宗章と中村家のお家騒動で対峙したエピソード、真田信之・幸村兄弟の妹を娶ったこと、幸村の娘二人を養女とし他家へ嫁がせたこと。西尾仁左衛門が幸村の首をとったが、家康にその状況を話せと言われ、一槍あびせたが…というも、その方などと槍をあわせるはずがない、と見抜かれ、恩賞もなかった、というエピソード）。ただ、三九郎の話で、妻の名前がお妙（真田太平記では於菊）、娶った事情が関ケ原の戦い後の本多忠勝からの取りなしで「真田家が承知なれば、それがしに否やはございませぬ」と請け負い（真田太平記では第二次上田攻め時に、真田昌幸・幸村父子に託される）、幸村と初めてあったのは大阪冬の陣後の和睦時期（真田太平記では第二次上田攻めの時）と設定が変わっているのは何か意味があったのだろうか。三九郎が、大坂の陣での幸村と甥のあいだに手加減があったのではという噂に、家康が「当然であろう」「身内同士が敵味方に別れて戦い合う。それほどの人の心が通わなくては、獣と獣のあらそいも同然ではないか」と言ったと聞き、この老人が好きになったというエピソード。武士の一生は束の間との師からの言葉と、師に助けられた命と、飄々と、見るものに好感をいだかせ、風に流れるように、涼やかな生きざまを託した三九郎像なのだな、と感じた。幕府から、幸村の娘を養女としたこと、お役目で出張した帰りに養女の婚家に寄ってもてなされたことを罪状として改易されたときも、あまりの馬鹿馬鹿しさに一言も弁解せず、お受けつかまつる、と。最後は「束の間の一生にしては長すぎたようじゃが…いまや三九郎一積、天地の塵となるぞよ」と1655年、80歳で息を引き取る。/雨宮大蔵は、信幸の近習だったが、初めての遊郭で、興奮した遊女に舌を噛み切られ、言葉を失い、弁明もせずに足軽へ左遷され、悔しさを武術を磨くことに費やし、のち関ケ原で武功を立て見直される。しかし、それが慢心となって、大坂の陣では西軍に走り戦死した、と。信幸の「武士たるものは、おのれの武功に対し、絶えず反省を怠ってはならぬのじゃ。それでこそ、おのれの力に、まことの自信を持つことが出来よう」という言葉が重く。/西尾仁左衛門は、厳密には真田武士、ではなく、鳥居元忠、結城秀康、松平忠直と仕えた徳川方の武士だが、真田幸村とは二度、その配下の忍び弥五兵衛とは四度、相まみえている。幸村の乗馬を素手で倒したが、弥五兵衛に蹴りうちに逢い、返り討ちの部分は省いて武勇弾にしていたが、節目節目で弥五兵衛に翻弄され、人生を狂わされていく様が描かれる。
 | 新潮社 発売日 : 2021-11-09 |
女は待つものと説く業平には、女がいつまでも待つばかりと思うな業平、追われたくなくば、追われぬようにすれば良い。自分で持ってこず薬種を義父に託した道真へ、自分で持ってこいあほんだら、と宜来子の啖呵に胸がすく。そして、源融、業平からのつながりで廃太子の知己を得た道真。唐の話や祖父の話、書物や人柄に好感を得るが、彼が窮地に立たされると知り、昨日会ったものが明日苦しむと知れば何もできずにいられるか、と業平にせまり、乗り出す道真。それが次巻でどう展開されるか。そして平安の世に女医がいたというこは寡聞にして知らず。それとからめて近代初の女医がそのことを引き合いに、国から女性の医師資格をもぎとった女性であった章の幕間のエッセイで知り。
 | 立風書房 発売日 : |
錯乱(堀平五郎)、碁盤の首(小川治郎右衛門)、この父その子（真田信安）、角兵衛狂乱図（樋口角兵衛）、信濃大名記（真田信之）のみ読了。直木賞受賞作にして、最晩年の真田信之が、お家騒動を目の当たりにして一時は何もかも捨てて京都で暮らしたいと思いつめるも、思いとどまり、幕閣を怒らせてのちのちにたたることは危惧しつつも、目の前の騒動を片付けるためにはと窮余の一策で、幕閣の隠密を手玉に取って、老中をおどすようにして、決着をつける一編。隠密の「今に見ておれ。殿もおれに兜を脱ぐことになるのだ」という暗い情熱。酒井忠世に真田の兵法如何？と問われ、「家来領民を不憫に思い万事に礼儀正しく。士卒も領民も下知ばかりでははげまぬもの。金銀を快くつかわした上での下知命令でなくては」と応えた真田信之。「信濃大名記」の底流にも流れる思想。「人はわしを名君と呼ぶ。名君で当たり前なのじゃ。少しも偉くはない。大名たるものは皆、名君でなくてはならぬ。それが賞められるべきことでも何でもない、百姓が鍬を握り、商人が算盤をはじくことと同じことなのじゃ」（真田信之）/激しい思い込みから、「今に見ておれ」と、自分を認め重用しない真田家への憤懣をためるだけためこんで爆発してまわっていた角兵衛だったが、その最期の切腹は…狂気だったのか母の言葉を肝に命じた信之への最後の奉公だったのか、角兵衛を公儀隠密にみたてた「角兵衛狂乱図」。大阪の陣の和睦中での信之と幸村の対面、それをとりはからってくれた小野お通への果たせなかった恋慕、最後は松代へ移るまでが描かれた「信濃大名記」。わたくしは今御公儀からどう見られているか、将軍様がどう思っているか、それが上田に行くということは…。そしてあなたこそどうして何もかも捨てて京に来てくれないのですか、というお通の激情。お互いの背負うものの重さと相手の思いを感じつつ、すれちがうお通と信之。右近の「でき得ることなれば、殿を京へ、お通殿の許へ差し上げとうござる」という言葉にこめられた万感。
 | 新潮社 発売日 : 2021-03-26 |
三宅香帆さん、あかしゆかさんがとりあげて感想を書いてるのに惹かれて、手に取った一冊。不登校の息子を持つ検事、岡山の寝具店で働く女性、男性に気持ち悪さを感じる女子大生が主な語り手となり、三人の物語が思いもよらぬ形で絡み合い、結び合わさることになる。そのベースにあるのは、誰からも理解されない特殊な性癖。実在するのか、想像を超えたものの比喩としてなのかはわからないけれど。理解されない側からの、「多様性、という言葉が生んだものの一つに、おめでたさ、があると感じています。/想像を絶するほど理解しがたい、直視できないほど嫌悪感を抱き距離を置きたいと感じるものには、しっかり蓋をする。そんな人たちがよく使う言葉たちです。/私はずっと、この星に留学しているような感覚なんです/自分はあくまで理解する側だって思ってる奴らが一番嫌いだ」という言葉。/これでもかと、ゲタをはかせてもらっている存在なんだということを突きつけられる言葉とシーン。最後は後味が悪いけれども、最後には御互いに「いなくならないから」と伝え合う関係、一方的で根源的とも思える拒絶に、こちらのことだってわからないでしょ、なのに自分だけわかるわけがないと関係を閉ざさないでよ、もっと話して、と喰い下がれる強さとしたたかさに、かすかな希望を感じつつ。心揺さぶられる読書体験だった。次は、杉田俊介「マジョリティ男性にとってまっとうさとは何か ＃ＭｅＴｏｏに加われない男たち 」(集英社新書)を読みたくなった。
 | 星海社 発売日 : 2021-12-10 |
全編フルカラーは豪華。皇族の婚約者の突然の死から、軍事貴族の子息との政略結婚を命じられたアンナ・コムネナ。子自らが皇帝になるべき、たとえ弟を消してもという強い思い、また歴史書をものすのだ、そのためにできることはなんでもやりたい、と。うまくいかなくても「報われなくても好きでいることは自由」という言葉は夫の胸を撃ち。最後は、敬愛する父とともに戦場に立つ夫に、見てきたもの聴いてきたこと全部私に話しなさい、と見送る14歳のアンナ・コムネナ、というところまで。セリフ、背景説明がなかなかにぎっしり。井上浩一「歴史学の慰め:アンナ・コムネナの生涯と作品」を読んだ身にはふむふむとたのしく読めたが、そうでない身には大丈夫だろうかと要らぬ心配。
 | 小学館 発売日 : 2021-12-10 |
なっちゃんの漫画家への第一歩。不動産屋の女性から、泣きながら、みんながあなたみたく生きられるわけじゃない！と言われたことが尾をひくが、商店街の喫茶店で、あの時はいいすぎたと切り出され、そしてお互いどんな思いだったか語り合いすこし距離の縮まったヒロト。この巻も嘘ついてでも堂々とマイ・ウェイなヒデキがトリックスター。
 | 平凡社 発売日 : 2015-11-16 |
(2021/12/11再読)真田太平記全12巻再読を機に、信繁、信幸の章、および昌幸（天正壬午の乱、第一次上田征伐）のみ再読。/武田末期の国衆の謀反が相次ぐのを「裏切り」と評価するのは一面的にすぎる。敵国から保護する軍事力を武田家に期待できなくなった以上、国衆にとってやむを得ない仕儀。北条家に通じたのは、北条家の支援を得て勝頼を支えようと模索した可能性も否定できないが、この時点で北条家がすでに織田政権に従属していたことから現実味を欠く、と。/昌幸の朱印状の無断使用から、本能寺の変を知った直後に、織田政権から離反する心づもりを固めた、と知れる/そこから神流川の戦いまでのわずか10日程度で、昌幸は武田時代の「北上野郡司」管轄領域を回復/天正十年十月の徳川・北条の和睦は昌幸には青天の霹靂だったろう/家康は、小牧・長久手の戦いで、秀吉に命じられた上杉景勝の南下をくいとめることを期待した真田昌幸に、北条氏に約束した「沼田領」割譲についてあまり強い態度でのぞむことができなくなった/天正十三年、昌幸の裏切りで関係の最悪だった上杉景勝への昌幸の従属嘆願。（武士の心を称する美しき物語ではなく）越後一国すら掌握できていなかった景勝には、三郡を領する真田氏を取り込む意味は大きかったのだろう。また家康が提示した条件よりも、実効性の高い恩賞が多かった。/越前藩士西尾仁左衛門が信繁を打ち取り。最初は誰の首かわからなかったが、同僚が気づき忠直に言上。家康・秀忠にも報告があがり、「西尾は家康への謁見を許され、褒美として黄金と時服を与えられている」/信之の項。大阪の陣後。馬場主水なる真田旧臣の忍の訴えで、宮下藤右衛門尉が信繁への内通嫌疑で誅殺された、とあるが、良質な史料には見えず。ただこれ以降宮下は史料から姿を消す。/転封といっても上田藩と松代藩は隣接し、松代城もかつての海津城で真田氏と縁が深い。幕府との因縁が想定されがちだが、決して悪い待遇を受けたわけではない/転封にともない中上級家臣４８人が脱藩し、過半が上田に帰農する「四十八騎浪人事件」が発生/といったあたりが目に留まったところ。(2015/12/03読了時)幸綱46p、信綱16p、昌幸122p、信繁60p、信之22pというページ数が関心の多寡を示している。もっとも幸綱の章は、それ以前のどのように真田氏が発祥したか、ということに割かれてもいる。そして、結論は、結局よくわからない、といったところか。結果から遡って、歴史を解釈しようとしてはいけない、という一貫した著者の姿勢には好感が持てる。また、真田氏の研究史が武田時代が一番詳しく、豊臣政権下についてはかなり手薄というのも寡聞にして知らず、意外だった。幸綱の時代は、武田の家臣というよりは、ある程度独自の裁量を持った国衆、武田が強ければ武田につくが、そうでなければ別の家につくことにも可能性を残す。信綱については超短命の当主という印象だったが、実質的には書状などから幸綱在世時から当主として遇され、約８年当主の座にあったことがわかる、と。昌幸の章については、父兄が外様扱いだったのが、その死により武田親類衆の武藤家から真田家の当主になったことで、真田家が譜代扱いされる、というポイントがあったこと。調略を基本としたため、恩賞地不足という問題がつねについてまわったこと。「高天神崩れ」といわれた敗戦は、武田につく家臣や同盟者たちに、いざとなっても助けてくれない、という絶大な悪評をもたらしたこと。国衆の謀反が相次ぐが、裏切り、というのは酷で、自勢力を保つための自衛手段という面もあったこと。秀吉にくだるまで、徳川、北条、上杉、とめまぐるしく主を変えたが、最後は、秀吉と直接交渉を持っていたため、上杉氏の国衆としてではなく、中央政権に直接仕える豊臣大名となったこと。兵農分離、は戦国時代にはなかった可能性が高いこと。家康による三成失脚は、もっとも多くの大名の「取次」を果たしていた三成を追いやることで、家康が取って代わるという意味合いが強かった。家康にとって、三成の挙兵、毛利輝元が西軍の頭領となることは想定外だったのでは、ということ。白峯旬氏の研究によると小早川秀秋は通説とは違い、開戦後即座に裏切りを決めていたこと。などがポイントとしてあげられる。信繁については、ずっと部屋住みの次男坊のイメージがあったが、豊臣家大身馬廻りとして所領も持ち、実際に父の家臣に領地の差配などを依頼していたことがうかがわれる、というのが興味深かった。そして著者は、家康による豊臣家滅亡は規定路線ではなかったのではないか、しかし、豊臣方の予想外の善戦がかえってその方針を覆してしまったのでは、と推定している。信之については、三成からの書状は概して短い、それだけ親密な関係にあった、というのが意外な一面として語られた。真田家を語りつつ、この時代の通説に切り込む姿勢も見せ、新たな知見も得られ、刺激的だった。
 | 新潮社 発売日 : 2015-12-23 |
(2021/12/11再読)真田太平記全12巻再読を機に再読。各巻あらすじ、人物図鑑、物語と史実をあわせた年表などは、本編再読後だとより味わいを増した。松代時代の信之を描いたという長編「獅子」は読んでみたく思った。そして、ないとは思うけどエヴァの綾波レイの前身はお江ではないのか？と一瞬思ってしまった。"危機に臨んだ時は無理にも「笑ってみるのがよいのだ」と亡父から教えられたお江は。<むりにも笑う……すると、その笑ったという行為が、ふしぎに人のこころへ反応してくる>"p.255(2020/07/05読了)真田太平記を通しで2度読んだ身としては、なぜ見逃してたのかと思いきや、大河ドラマ「真田丸」のタイミングで四年前に出版されていたもの。池波正太郎の真田ものエッセイ、全巻のあらすじと人物紹介、年表、関係者へのインタビューなど盛りだくさんで楽しめました。樋口角兵衛、滝川三九郎が主人公の短篇があるとのこと。手にとってみたい。
 | 小学館 発売日 : 2021-11-25 |
コソヴォの戦いからレパントの海戦までを描く。ビザンツ、セルビア、神聖ローマ帝国、フランスなど他国からの視点も。ただ、ビザンツが衰退する中でもアカイア公国攻めて領土を広げてたのは興味深いが、皇位継承者たちの兄弟喧嘩も含めて、少ない紙幅でオスマン帝国の巻に入れるべき内容だったろうか。それならもっとオスマン帝国側の情報にページを割いてほしかった。また、第一次ウイーン包囲のように、手こずってることまでは描いたが、結末がどうなったのかは描かれないものもあり、より描き方の整理の必要があったのでは、と。
 | 双葉社 発売日 : 2021-11-27 |
ストレスを受けると大量の粘液を発するヌタウナギ。アメリカでヌタウナギを運んでたトレーラーが横転したとき、大量の粘液があふれ出て後続の車がスリップする大事故になったとか、に、レースゲームのトラップかよ、と即座に突っ込む先生。イールスキンと呼ばれ財布とか革製品として人気、ヌタウナギの粘液で作った繊維は軽くて丈夫でストッキングやパンツの素材としても活用可能、など可能性を感じさせる食材。漁協から3キロわけてもらったヌタウナギを、1kgは自分、1kgは知り合いの雑食家に、そして1kgは「うなぎ」と言って姉にわたしたそうだが結末やいかに！？/実としてなってる間から、すでに自然に発酵してアルコール分５％を含むフルーツ「マルーン」。たべてみたい！/エゾイバラガニのみそはまずいと漁師がメモを描いてきたのに、わざわざ食べて、うん、たしかにうまくない！と自ら確かめずにはいられない桐谷さん/イグアナ手羽先＆メキシコ風イグアナスープ/エメラルドグリーンなエミューの卵でつくったプリンと生どらやき。/下処理がえらくたいへんな熊の手/と、１２巻まで来てもネタぎれを感じさせることなく次々と興味深い食材をこれでもかと繰り出し、料理エンタメとして成立させる力技と、桐谷さんの汲めども尽きない好奇心には脱帽です。
 | 文藝春秋 発売日 : 2017-09-05 |
近藤ようこのマンガ版を読んだのを機に、何年かぶりに再読したくなり。/天皇家に生まれ、一時は皇太子とされるも、政変で廃太子となり、仏門に入り、そして最晩年に、幼少期にかわいがってくれた藤原薬子に導かれるように天竺をめざすことにした高丘親王。随伴の僧侶二名に、つきしたがう秋丸（のちに春丸）、後宮に案内されたり、ジュゴンがつきしたがったり、オオアリクイと対話したり、姫と親しくなり天竺に行く方法を示唆されたり。アナクロニズム、アンチポデス、時空も、地理も、夢と現実も、たゆたうように溶け合って自在に行き来する、いや自在にというよりは流されるようにあっちへ行き、こっちへ行きし、最後は象徴的な天竺行きを果たす、といったところまでが描かれ。
佐藤二葉「アンナ・コムネナ」１の参考文献にあがっていたので手に取り。アンナ・コムネナの生涯の概観、1118年、1119年の陰謀の経緯と推移、コムネノス朝の女性皇族の活動、「アレクシオス１世伝」成立の過程と内容、ヨハネス１世、マヌエル１世への批判など、読みどころ多しでした。
 | 日販アイ・ピー・エス 発売日 : 2021-12-08 |
敬愛するzine作者の方からゆっきゅんの存在を教えてもらい、最初は衝撃ととっつきにくさを感じていたけど、seesawbooksで見かけたimaginaryのW編集長対談のフリーペーパーの内容がよくって、電影と少年CQ「Pa.Pa.Ra.Pa」もよくって、これは創刊号も買わねば！という気持ちになり購入。/ネットに掲載された全てが一瞬で世界中の人間にコピーされる。アウトプットした全てが他人の物語に巻き込まれる。それでも自分が世界にとって異質なものだと証明する為には、独自の「動機」や「文脈」を常に紐付けた引用であることを示さなければならない。「バズり貧乏」、拡散されていくとありがちなカテゴリーに収められ、ディテールやストーリー、文脈がどんどん抜け落ちていく。/けど、説明は誰も聞いてない、見ればわかる状態にしなければならない。/個性らしきものは消失した。オシャレは死んだのか、そうではない。個人の思い入れに紐づいた共感不可能な「強い動機」は拡散しようがないから。/といったあたりが、特集のベースに流れている思想なのかな、と思いました。自分にとっては、世界の切り取り方が面白い。ファッションの最先端を追いかけたことのない身にも、その最前線を垣間見せてくれて、魅力的に語ってくれたところがすごくよかったです。独自の「動機」や「文脈」を常に紐付けた引用が大事というのは、ファッションに限らず、何を読んで、何を見て、何を観て、何を集めて…といったこと全般にも言えるのかも。それらをパフェライク（パフェのよう）に盛り付けて見せてくれたページは楽しかったです。特に、電影と少年CQのルアンのパフェ、センスが独特で最高でした。個人的には、ゆっきゅんの行こうぜ！国会図書館が好きでした。生涯に２度だけ行ったことある国会図書館なのですが、ゆっきゅんのセレクトはさすがの絶版ファッション雑誌で、こんな本があったんだ、面白そう、そして懇切丁寧な国会図書館の利用法もgoodでした。第二号の特集「2020年代のDIVA」では「DIVA PROJECT」をひっさげて、ゆっきゅんがゴリゴリに語りだしてくれるのではないかと今から期待してます。
美味しんぼ、かしましめし、など読んだことある、そして、あたりのキッチン、きのう何食べた？、孤独のグルメ、などすごく気に入ってるマンガがとりあげられていてそれだけでも読まずにはいられず。また、マンガでの人間関係、食との距離感で、世相を映し出し、時代の変遷を感じさせてくれて面白かった。山岡士郎の栗田ゆう子への態度にみる古き家族観とか、あたりのキッチンの食の特殊技能を使っての周囲へのサポートとか、きのう何食べた？の全体を圧倒する量のレシピとそれが必ず数品並行して作られててそのままでは活かしづらいところとか。
 | 文藝春秋 発売日 : 2021-10-21 |
私たちは本でつながれる。通信制の高校で再開した幼馴染の沙羅と万葉。万葉は、最初は打ち解けなかったけど、沙羅が万葉の働く古本屋におしかけて、本について教えて！と話し続けるうちに打ち解けて、学校にも佑月という友だちもできて、「ごんぎつね」、遠藤周作「砂の城」、伊藤計劃「ハーモニー」、福永武彦「草の花」「廃市」、マリー・ホール・エッツの「わたしとあそんで」などの本の話を通じて、気持ちをわかちあい、考えを伝えあい、最後は、沙羅も万葉もかすかに本に関わることで生きていこうと思えるまでになったところまでが描かれる。本好きとしては、同じ本のことで盛り上がれるのは至福だし、誰かとわかちあいたい気持ちも貴重。紆余曲折はありつつも、それがみずみずしく描かれていてぐっときました。「草の花」「廃市」「砂の城」あたりは読んでみたく思った。「ハーモニー」「ごんぎつね」は読み返したくなった。
さっぽろ地下街写真展 かつての名所「ポールタウン編」「オーロラタウン編」を観て、俄然、さっぽろ地下街の歴史が気になって手に取った一冊。地下街誕生の発端は、駅前通りの幅を23mから36mに拡幅される時、狸小路3丁目から4丁目へわたるのに、冬季間ならお年寄りや子供たちは1回の青信号でわたりきれないのでは、という意見が、狸小路のサンデパートで話題にあがったこと、また、人口の急ピッチな増加でラッシュ時の「4丁目十字街」は最高7台の電車が連なり、反対歩道へ行こうにも道路を横切ることができなくなり、狸小路というショッピングゾーンが二つに分断されたも同然。そこで東西の商店街を自由に行き来できる地下道が欲しい、といったあたりが地下街誕生のきっかけ。そこに冬季オリンピック開催、地下鉄構想が浮かび上がり、駅の予定地が決まり、それにあわせて地下歩道を作るよう陳情へ、となったと。/オープン当時にはあった「よろこびの川」と名付けられた、オーロロラタウンの通路中央の噴水付きの水路は強い印象。水路の記憶はないが、水路にかかる橋にはおぼろげな記憶が。/渋谷のスクランブル交差点もかくやというオープン当時のにぎわい/昭和48年「デートを重ねた地下街でぜひ結婚式を」とオーロラの滝の前で挙式したカップル/昭和47年から56年までのうなぎのぼりな売上高/月10万円の高給取り（当時）だった、選抜された3人のサッポロジェンヌが地下街を案内/といったあたりも印象に。/オープン時は、出店希望者の700ほどの約9割がポールタウンに集中し調整に苦慮/一年目はまだ舗装が進まぬところも多かった地上から、ピークで一日30万人がかけつけたため、彼らが持ち込むホコリに泣かされた、といった苦労も/開業十年目のリフレッシュ工事では、既存の川の撤去、池の縮小で、広場を拡大、多目的広場としてイベント対応できるステージ機能を付加。/写真を見ても、資料を見ても、往時の出店してるテナントを見てもたのしめる一冊でした。
十年誌に比べて、カラー写真がふんだんに使われ。また地下街の一日と題して、管理運営の裏方仕事から、店員たちの動きまでまとまった企画は興味深く。企画も、中学生に地下街にある化石を探索してもらったり、各店舗の制服一覧、さっぽろファッション物語、地下街はマークと記号の宝庫、などバラエティに富み。関係者の座談会2つで、開業時の苦労と今後の展望が語られ。販促関連のイベントではけっこうな有名人が招かれ、景気良かったんだなあ、という思い。ただ、十年目と比べて二十年目は爆発的な売上増はなく、横ばい。二十年目のハードリニューアルも、シャッター、サイン、トイレ、ステンドグラスと割と地味な印象を受けた。また巻末近くに、不正経理に端を発した管理側と店舗側の紛争、市議会による改善勧告が正直に書かれていることも好感。
オーソドックスに、40年記念事業の紹介、2002-2011年にあったできごとを年表形式で並べたのがメインで、座談会や特集のようなものはなく、シンプルなつくりに。記念事業のナイトタイムバーゲンはなんとなく記憶あり。YOUのHAPPY LIFE トークとか聞いてみたかったなあ、子供向けの施設裏側探検ツアーはうらやましい、大人向けにも開催してくれないかしら、という思い。ここまで来ると店舗のラインナップもだいぶ見慣れた感じに。40周年記念の年は、東日本大震災の年でもありその影響で式典の中止などもあったようだ。売上高推移を見ると、この十年は、横ばいかゆるやかな減少といったところで、開業当時のような勢いはないが、地下街単体ではなく日本全体の傾向に沿ったものとは言えるかも。/20年記念誌で課題にあがっていた従業員休憩室はオーロラタウン2006年、ポールタウン2008年にようやく実現したこと。2006年に札幌地下街総合管理株式会社、株式会社札幌地下街サービスセンターが解散したとあるが、役目を終えたのか、統合・吸収されたのかそのあたりはわからず。そのあたり、目に留まった。
 | 小学館 発売日 : 2021-12-10 |
ヒュッレムが推薦したかたちでの、イブラヒムを総司令官としたペルシア遠征。一度立てば数年は戻ってはこれない中、ヒュッレムは自分の味方を増やそうと宰相や提督に助力を求め。またギュルバハルにも喧嘩をふっかけ、顔に傷をつけられ、そのことを口実にスレイマンのお召を断り、はるかハンガリーを代理大使として治めるアルヴィーゼ・グリッティを直接統治を緩めるよう説得に向かうが…といったところまで。史実のグリッティの末路を知ってる身には、なんとも。巻末には、天は赤い川のほとりの出張版。話の途中みたいだし、なぜここに、とは若干思わぬでもないですが。
 | 文藝春秋 発売日 : 2021-12-15 |
モンゴル帝国はモンケの治世、西方遠征を命じられたフラグの息子ボルトルが虐殺の渦に叩き込んだペルシア東部メナムの街は、ボルトルが美しきナンを見初めたことで全滅の難を逃れ。しかし、殺戮、武術、酒、肉、怒号のみの蒙古兵を受け入れられぬまま、妃になれという願いにも肯じないナン。そんなときに知ったボルトルを殺そうと目論む幻術師の存在を知り。ボルトルの宴に現れた幻術師とボルトルの対決は後日を期すことになったが果たして、と。割と短めのお話だったように記憶するが、続刊というのは意外。また、東チベットを舞台の魅力的なマンガを描いてくれた蔵西さんと世界観がマッチしているようにかんじた。
 | 秋田書店 発売日 : 2021-12-16 |
凪はのゴンのプロポーズから、母と祖母の確執をクールダウンさせるため母を東京へ送り出し、自分は母のバイト先の歯車になってしまい。我聞はみくびってた社内の彼女にプロポーズからの俺が養ってやるムーブからの、大外から彼女が業績ぶちあげの、私稼ぐからお前家庭に入れやムーブをかまされ。誰も彼もくるくるクルクルと、ジェットコースターのような立場役割喚起入れ替わりからのさあどう出る、といったところに。
 | 小学館 発売日 : 2021-12-10 |
自分だけ軽く扱われてると、他者を自分勝手な天秤に乗せてもてあそび、命を奪ってきたり痛めつけてきた犯人。以前の事件の関係者が集められ、互いに子供を誘拐させられ、自白を強要され。最後は…と。娘を救うためならなんでもするという刑事の姿に、最後にこらえきれずに男泣きに泣いた姿に、そして冷静なようでいてきっと手が震えている、けどそれを相手に感じさせない刑事の元妻、検事が登場し、整にお礼の握手するシーンにぐっとくる。
 | 財界さっぽろ 発売日 : 2021-04-15 |
特集ポールタウン・オーロラタウン"半世紀秘話"のみ読了。さっぽろ地下街１０年誌、２０年誌、４０年誌を読んだ身としては、４ページで、簡潔にさっぽろ地下街構想、できるまでの奔走、完成までの道筋が語られていてありがたかった。ここでは今井氏、布施氏に焦点があたる。その後の、５０年続いた店あれこれ、さっぽろ地下街トリビア（オーロラタウンのほうが通路の幅が広く感じると何件も問い合わせ受けるがポールタウンと同じ、幸運の小川があった、など）、超レア！開業当時の店舗マップ、など行き届いた特集で興味深く読んだ。
 | PHP研究所 発売日 : 2018-12-06 |
児童向けだけど、「ゴールデンカムイ」の監修者が監修ということで手に取る。暮らしを知ろう、言葉を知ろう、歴史を知ろうの3章からなり簡潔によくまとまっていて理解しやすかった。入門編としてはバランスよく最適なのでは、という感触。/アイヌの女性の入れ墨の理由はよくわかってないこと、「言葉」を意味する「itak」のように子音で終わる言葉のカタカナ表記は「イタク」の「ク」を小文字にして表記すること（小さいカナはなんだろうと思ってたのでこれは目からウロコ）、ファッション雑誌「non-no」は「花」というアイヌ語から来てること、陣取りゲームウコニアシ、13-14世紀にモンゴル軍と戦ったことがきちんと記載されてること、1997年北海道旧土人保護法が廃止され「アイヌ文化振興法」が制定されたこと、2008年に「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」が国会で採択されたこと、など気になったトピック。アイヌ歌人違星北斗についてはもうすこししらべてみたくなった。また札幌の小金湯にもサッポロピリカコタンというアイヌ文化に触れられる施設があることも初めて知った。
都市とは、単なる入れ物→都市住人の労働や生活における関係の総体、と捉えるべき。/1940年代からの流入する人口と不法占拠住宅の急激な増大→ゲジェコンドゥ（一夜建て）という呼称が利用されるように。/ゲジェコンドゥの内部構造を理解するには、労働関係、地縁・民族・宗教的つながり、土地所有形態に注目する必要があると考える/「労働者階級」内にもさまざまなグラデーション。ゲジェコンドゥはそれぞれ独自の歴史を持ち、それぞれの問題を持つ。どちらも平準化して論じてはその差異が見えなくなってしまう。現在、急速な再開発事業でゲジェコンドゥが姿をけしつつあるなか、今一度ゲジェコンドゥを問い直すべき、と。
北海道のおもしろ大学生から送る物語。北海道で、冒険する君と。という表紙に惹かれて手に取り。大学生インタビュー、「森を愛し森のことをもっと知ってもらいたい」「誰もが安心してすごせるサードプレイスづくりをずっと続けたい」「在学中にカレー屋をオープン、いまはDJとYoutuberも」という三人の語る活動が、紆余曲折はあったものの今はいきいきとやりたいことに邁進してて、それぞれの行動力に、こんな大学生活すごしてみたかったな、という思いに。
 | KADOKAWA 発売日 : 2016-01-18 |
真田太平記全12巻再読を期に、買い直し。本来、信州小県郡の一角だった本領が、幸綱・信綱の活躍で、武田信玄から大幅加増。昌幸の家督相続は、国衆として郡司指揮権だけ与えられていた真田家に、譜代家臣扱い、行政も扱う高級官僚の役割も負わせることになった。秀吉に服属することで、大名に付属する国衆ではなく、独立した大名の扱いを受けることに。/信綱は文書から1567年には当主となっていた。また父同様調略を得意としていた/信之の藩政改革でもうけられた「職方」は警察権をもつ役職。出浦、大熊両氏を任命。上野は家臣におおまかに委ねた/真田家の「家伝文書」は昌輝系（越前松平氏）につたわることに/出浦昌相は吾妻職方をつとめながら、沼田城の城米管理、上田領内の検地も担当。また昌相黒印状は信之発給文書を補完する役割を持つ/鈴木右近は、1616年以降のいつ真田信吉のもとを出奔し、1643年に信之に召しかえされるまで何をしていたのだろうか/などが気になったトピック。
 | 河出書房新社 発売日 : 2015-03-12 |
福永武彦「廃市」のみ読了。中江有里「沙羅と万葉」で、万葉が九州へ叔父を探す旅に出た時に携えていった小説。卒論を仕上げるために、紹介を受けて、ひと夏、柳川の旧家にやってきた主人公。そこで快活な安子と、美しく憂いを帯びた郁代の姉妹、ひょうひょうとした郁代の夫直之らとの邂逅。退廃の極みのような、時間の重みに耐えかねてただ病み崩れていくような水路の町で繰り広げられる愛憎。妹が義兄を愛し、義兄は妻を深く愛するが信じてもらえず、他の女のところに転がり込み、妻であり姉たる者は妹と夫とならと身を引き、誰も幸せにならないような三すくみの果ての破綻。主人公は、町を離れるにあたってようやく妹のほうを愛し、慕っていることに自ら気づくが、その時点ですでに取り返しはつかず。何十年もあとに、大火でその町があらかた焼けて廃市になったことを知って、思い起こされる青年の日の思い。俄然、モデルとなった柳川へと旅情をそそられる。/あるのは退屈です、倦怠です、無為です。ただ時間を使い果たして行くだけです(直之)/わたくしにとって、生きている人と死んでいる人との区別がつかないせいかしら。(安子)/
 | 筑摩書房 発売日 : 2020-03-10 |
一番は、留守番電話が出始めのころに、9回も吹き込んで、最後に用件は会った時に、でしめくくった黒柳徹子ショー。本人に悪いとは思いつつ、ひとりで楽しむのはもったいないとしばらくは来客があると、その留守電を聞かせていたとか。また「ヒコーキ」は誰もが書いただろうけど、やはり、あの鉄の塊が飛ぶなんてというベースにあった不信が、飛行機事故で亡くなるという最期を予見していたかのようで。「父の詫び状」、高名で名だけ知っていたが、こういうエッセイだったんだな、と。昔ながらの、当時の家族観はそこかしこに垣間見ることができるが、おそらくそれが大勢だったのだろうと思う。他に以下のトピックスが目にとまり。/心に残るごはんは、第一に東京大空襲の翌日の最期の昼餐、第二が、気兼ねしいしい食べたうな丼/中野にライオンがいた、電車のなかから見た、それが二十年後に飼い主と会えようとは/アイヌの人がたは山で寝る時、と古い斧をわたしてくれた/沖縄の「きっぱん」、平べったく大きめの饅頭、まわりは白い砂糖がけ、アンは細く切った果物の砂糖漬け。猛烈に甘くほろ苦かった/昆布が沖縄料理で多いのは、昔、松前藩あたりと交易があり、かなり一方的に昆布を押しつけられたのではないですかなあ、と土地の方がおっしゃっていらした/「人間はその個性に合った事件に出逢うものだ」といったのはたしか小林秀雄/ないものねだりの高のぞみが私のイヤな性格なら、とことん、そのイヤなところとつきあってみよう。そう決めたのです。二つ三つの頃からはたちを過ぎるその当時まで、親や先生たちにも注意され、多少は自分でも変えようとしてみたにもかかわらず変わらないのは、それこそ死に至る病ではないだろうか
大好きなシリーズの第5弾。/今日はカレーだ！85％の胃袋、まだいけるな、ぐおお、1コマ目に戻る、に、すごく共感/筋肉痛より先に骨が限界/高校生のとき寿司屋でアルバイトしてた話。どいつもこいつもみんなヘビースモーカーで美味しんぼ育ちには以外だったが、まかないの寿司、茶碗蒸しがおいしくてどうでもよくなる。/雪見だいふく30分おいとくと小籠包になるのか/ダブリーアルマジロ：本とかのダブりがでてくると出てくるアルマジロ。あー、CDでもやったことあるなあ/プロテイン→腹筋ローラー→一回で全ての腹筋がちぎれた→しかたがないのでアイス食べた、のスピード感と納得感といったら。/
 | 合同会社志学社 発売日 : |
亀田俊和の台湾通信が一番の目当てで購入。この巻は中国語学習や台湾の食べ物、そして亀山島旅行記と興味深く。日本の戦国時代が台湾で人気なら、南北朝時代も余地があるのでは、天皇や武士に関する関心が高いので、と目論み。次のお目当ては平林緑萌「前漢功臣伝抄」。前漢初期なんて史料も少ないしやり尽くされてるのでは、と思いきや、功臣の中でも光のあたってない人々に焦点をあてて語られるのが興味深く。張蒼が在任期間14年と前漢の丞相・相国で最長とは寡聞にして知らず。異なる材料が矛盾する記述を含む場合も、あえてこれに手を入れずに遺すという古代中国史家の「正しい」態度が後世に利することのなんと多き。これで著者は章邯が漢軍に捉えられた後も生き延び、のちに高官として活動したのではと推定。他に、シリーズ中国の歴史（岩波新書）、三田村泰輔「宦官」、「感染症の中国史」の書評は、とりあげられた本を読んでみたい気をそそられた。また中国時代劇の世界、北宋に生きる「異民族」は、「天龍八部」をとりあげ、遼から宋への亡命者、大里の皇子、五胡十六国の燕の末裔で故国復興を志すものなどが登場。また、「大宋少年志」には、渤海国の移民の少女も登場。と、それらの作品で描かれる異民族への目線の変遷が興味深い。
 | 筑摩書房 発売日 : 2018-12-07 |
生まれた時から、家庭、学校、職場、結婚生活で、これでもかと男性優位の社会で、社会制度に、男性優位の目線での言葉に、傷つけられ、痛めつけられ、それでも進んできたジヨン氏の心を折ってしまったのは「ママ虫」というあまりにも心ないネットスラングだった…。ジヨン氏よりひと世代前の母は、それらをくぐりぬけてきた上で、娘には違った道をすすませたいと奮闘するが…。お隣韓国の話だけど、日本がそうじゃないとは誰がいえるだろう。ゲタはかせらるる身としては、名など必要ないとされた身としては、自分の来し方を振り返って、またこの先どう考え、どうふるまっていくかに示唆を与えてくれる一冊。/「いったい今が何時代だと想って、そんな腐りきったこと言ってんの？ ジヨンはおとなしくするな！元気出せ！騒げ！出歩け！わかった？」（ジヨンの母）/すぐ目の前に見える効率と合理性だけを追求することが、果たして公正といえるのか。公正でない世の中で、結局何が残るのか。残った者は幸福だろうか。/2005年、戸主制度の廃止が決定され、2008年施行された/家庭があることも両親がいることも、そんなしわざを許す理由ではなく、そんなことをしてはいけない理由ですよ(以上、本文より)/男たちに名前など必要ない---強烈なミラーリングである(解説より)
 | 講談社 発売日 : 2021-12-13 |
花束みたいな恋をしそこねた思い出にひたってたタイラー先生の回想から、エドガーさんを避けていたリンダさん、タイラー先生に相談をもちかけ、三島君がキープでもなくフェイクなことをあかしてしまい。就職活動は、就職セクハラなおやじにおそわれそうになったところを、ベランダのしきりをぶちやぶってエドガーさんが助けにきてくれたことで、事なきを得て。最後は、末永く友達でいてくださいのエドガーさんに、彼女にしてくれなきゃ末永くいてあげませんとかえしての…と。このまま恋の暴走機関車、暴走しつづけるのか。
 | 株式会社プレイド 発売日 : |
seesawbooksで気になって手に取り。自分にとって、こんな事業が、商品が、サービスが、仕事が、考え方があるんだ、というのが目白押しで読んでて刺激を受けた。以下気になったところ。/おませちゃんブラザーズのNujabes解説動画。（Nujabesを何曲かiTunesでおとしてきた身からするとこれはよくまとまっていて楽しかった。）/サウナのようにととのう伝統芸能としての能の紹介。/ONLY FREE PAPERというフリーペーパー専門書店。オンラインから生まれる未知との出会い、一点物をつくるつづけるエド・カーティス(https://ed-curtis.com)。スコセッシ監督のレボウィッツを撮った作品を題材に「加速度する社会における贅沢とは、次巻をかけて物事を観察し、オリジナルの視点や語り口を獲得することなのかもしれない」。/ソロサウナtune/サウナでととのった状態でアートにふれる/全身鏡にエクササイズ動画を映すミラーフィット/コロナ禍のクルマであつまってもりあがるフェス/闇の自己啓発。人間が切実に必要とする場合、ときに間違ったものすら機能する/南ンデベレ語のラッパーとであったはなし/「知っているはずの、一語一語の文脈を掘り下げます。ブラウザからのサジェストが変わる機会があるんです。/気候や天候がままならない、屋外という環境が「なんとかなる」という感覚を育むのかも、と森のようちえんぴっぴ/甑島で１３の事業を展開する会社/インドネシアの街角にある「アンクリンガン」という屋台のようなテントのようなものを街中に展開/美術の世界はすごくカラフル/ファンケルの「パーソナルワン」、検証、食生活、睡眠などのアンケートから分析し、個々人の健康状態に合わせた「その人だけのサプリメント」を届ける/キヌア、腹持ちもよく、食物繊維も豊富/Amazon GOがスマートストアの先鞭をつけ、日本ではトライアル、イオンが取り入れ/サミットの週刊誌風チラシや、中身は店頭で、とだけ書いたチラシ/チョーヤの、梅酒、梅シロップ手作り体験店/現場の声でちいさく改善しつづける小杉湯/
2022年01月02日
極私的2021年よく聴いた曲、アルバム、アーティスト
極私的2021年よく聴いた曲、アルバム、アーティスト
・小袋成彬 分離派の夏
・宇多田ヒカル one last kiss
・=LOVE
・原田知世 BLUE ORANGE
・スカート アンダーカレント
・Hamburger Boys PARTY SET5
・THE BOOM 極東サンバ、TROPICALISM -0°
・FREE TEMPO SEKAI
・水曜日のカンパネラ バッキンガム
・femme fatale
・小袋成彬piercing
・小袋成彬 分離派の夏
なんだかんだで年またいで2ヶ月ぐらい通勤時にパワープレイしてた。まず声がいい。曲も詞もよく。冒頭の八木宏之、途中の酒井一途、両氏の語りにも魅了され。知ったきっかけは、宇多田ヒカルのアルバムに参加してたからかな。
・宇多田ヒカル one last kiss
シン・エヴァ最終章観に行って、エンディングに流れてて、そのまま買った気が。
・=LOVE
きっかけはネットで熱をこめて紹介してるblog見たからだったかな。
「=LOVE」「青春サブリミナル」「僕らの制服クリスマス」「探せダイヤモンドリリー」「CAMEO」「ズルいよズルいね」を並べて聴いてたおぼえ。
・原田知世 BLUE ORANGE
「七色の楽園」がなつかしくて聴き始めたら、全曲好きに。
・スカート アンダーカレント
大好きな豊田徹哉「アンダーカレント」にインスパイアされた曲があると知りいてもたってもいられず。PVのアニメも世界観がつたわってきていい。
・Hamburger Boys PARTY SET5
UHB「マチのウタつくっていいですか」で松前編見たのを機に、アルバム出たらぜったい買おうと。
・THE BOOM 極東サンバ、TROPICALISM -0°
なんだか無性に聴き返したくなり。
・FREE TEMPO SEKAI
大好きなアーティストで、でも活動停止しちゃったしなあ、とずっと思ってたのに、ふと思い立って調べてみたら、10年ぶりに活動再開してて、新譜も出してて、迷わず買って。アン・サリーともコラボしてて。
・水曜日のカンパネラ バッキンガム
Aerodynamik - 航空力学 : 第10回 アイドル楽曲大賞2021 に投票するよ
(https://aerodynamik.hatenablog.com/entry/20211130/1638281858)
での紹介に心惹かれ。
まさか世田谷に宮殿が、という発想が好き。郵便番号、面積、緯度まで早口で歌詞に織り込まれ。
・femme fatale
これも、
Aerodynamik - 航空力学 : 第10回 アイドル楽曲大賞2021 に投票するよ
(https://aerodynamik.hatenablog.com/entry/20211130/1638281858)
での紹介に心惹かれ。
PVもダンスも手がこんでるなあ、と。歌詞もすっ飛んでて好きです。「鼓動」「ピューピル」「Club Moon」などを買い。目がとびでたって、かるく押せばだいじょうぶ…じゃないよ！
・小袋成彬piercing
デビュー作があまりによかったので、3月に買ってパッと何回か聴いて、あわないなと思ったのに、なぜか12月に聴き返したらぴったりハマり、何度も何度も何度も聴き返し。
・小袋成彬 分離派の夏
・宇多田ヒカル one last kiss
・=LOVE
・原田知世 BLUE ORANGE
・スカート アンダーカレント
・Hamburger Boys PARTY SET5
・THE BOOM 極東サンバ、TROPICALISM -0°
・FREE TEMPO SEKAI
・水曜日のカンパネラ バッキンガム
・femme fatale
・小袋成彬piercing
・小袋成彬 分離派の夏
なんだかんだで年またいで2ヶ月ぐらい通勤時にパワープレイしてた。まず声がいい。曲も詞もよく。冒頭の八木宏之、途中の酒井一途、両氏の語りにも魅了され。知ったきっかけは、宇多田ヒカルのアルバムに参加してたからかな。
・宇多田ヒカル one last kiss
シン・エヴァ最終章観に行って、エンディングに流れてて、そのまま買った気が。
・=LOVE
きっかけはネットで熱をこめて紹介してるblog見たからだったかな。
「=LOVE」「青春サブリミナル」「僕らの制服クリスマス」「探せダイヤモンドリリー」「CAMEO」「ズルいよズルいね」を並べて聴いてたおぼえ。
・原田知世 BLUE ORANGE
「七色の楽園」がなつかしくて聴き始めたら、全曲好きに。
・スカート アンダーカレント
大好きな豊田徹哉「アンダーカレント」にインスパイアされた曲があると知りいてもたってもいられず。PVのアニメも世界観がつたわってきていい。
・Hamburger Boys PARTY SET5
UHB「マチのウタつくっていいですか」で松前編見たのを機に、アルバム出たらぜったい買おうと。
・THE BOOM 極東サンバ、TROPICALISM -0°
なんだか無性に聴き返したくなり。
・FREE TEMPO SEKAI
大好きなアーティストで、でも活動停止しちゃったしなあ、とずっと思ってたのに、ふと思い立って調べてみたら、10年ぶりに活動再開してて、新譜も出してて、迷わず買って。アン・サリーともコラボしてて。
・水曜日のカンパネラ バッキンガム
Aerodynamik - 航空力学 : 第10回 アイドル楽曲大賞2021 に投票するよ
(https://aerodynamik.hatenablog.com/entry/20211130/1638281858)
での紹介に心惹かれ。
まさか世田谷に宮殿が、という発想が好き。郵便番号、面積、緯度まで早口で歌詞に織り込まれ。
・femme fatale
これも、
Aerodynamik - 航空力学 : 第10回 アイドル楽曲大賞2021 に投票するよ
(https://aerodynamik.hatenablog.com/entry/20211130/1638281858)
での紹介に心惹かれ。
PVもダンスも手がこんでるなあ、と。歌詞もすっ飛んでて好きです。「鼓動」「ピューピル」「Club Moon」などを買い。目がとびでたって、かるく押せばだいじょうぶ…じゃないよ！
・小袋成彬piercing
デビュー作があまりによかったので、3月に買ってパッと何回か聴いて、あわないなと思ったのに、なぜか12月に聴き返したらぴったりハマり、何度も何度も何度も聴き返し。
極私的2021年読んだ本10冊＋α
※読んだ順
(1)ユリイカ 偽書の世界
(2)柳美里 8月の果てに
(3)金子文子 わたしはわたし自身を生きる (なにが私をかうさせたか(抄)・調書・短歌・年表) 梨の木舎 をはじめとした４冊
http://blog.livedoor.jp/chokusuna0210/archives/52504477.html
(4)宇野常寛 遅いインターネット
(5)高森純一郎 プロテアの咲く大地
(6)燃え殻 これはただの夏
(7)二階堂奥歯 八本脚の蝶 河出文庫
(8)真田太平記シリーズ(全１２巻＋真田太平記読本）
(9)朝井リョウ 正欲
(10)imaginary 創刊号
毎年やってるその年の10冊。＋αなのは、シリーズものや一連のものをとりあげているので。
自分のなかに今までなかった視点を与えて激しく揺さぶられるものが多かった印象...(1)(2)(3)(4)(7)(9)(10)。
(2)は、ただただ、語りの厚さに、重みに圧倒された。
(5)は、毎年新作を楽しみにしている作者のもの。今年はもう一作読んだが、南アフリカと台湾を舞台に描いたこちらの方に。
(6)は、デビュー作の連載時から追ってる作者が、デビュー作路線で今後も行くと明らかにしたように思えた新作。
(7)は、ただひたすら死へ向かってキリキリと、けれど行きつ戻りつしつつ、読んでてひりひりとしてきた。
(8)は、だいぶ前に2回ほど読んだのをまた通読したくなり。刻み込むように通読。読後、しばらく、真田氏関連の新書や文庫をあさった。
(1)ユリイカ 偽書の世界
(2)柳美里 8月の果てに
(3)金子文子 わたしはわたし自身を生きる (なにが私をかうさせたか(抄)・調書・短歌・年表) 梨の木舎 をはじめとした４冊
http://blog.livedoor.jp/chokusuna0210/archives/52504477.html
(4)宇野常寛 遅いインターネット
(5)高森純一郎 プロテアの咲く大地
(6)燃え殻 これはただの夏
(7)二階堂奥歯 八本脚の蝶 河出文庫
(8)真田太平記シリーズ(全１２巻＋真田太平記読本）
(9)朝井リョウ 正欲
(10)imaginary 創刊号
毎年やってるその年の10冊。＋αなのは、シリーズものや一連のものをとりあげているので。
自分のなかに今までなかった視点を与えて激しく揺さぶられるものが多かった印象...(1)(2)(3)(4)(7)(9)(10)。
(2)は、ただただ、語りの厚さに、重みに圧倒された。
(5)は、毎年新作を楽しみにしている作者のもの。今年はもう一作読んだが、南アフリカと台湾を舞台に描いたこちらの方に。
(6)は、デビュー作の連載時から追ってる作者が、デビュー作路線で今後も行くと明らかにしたように思えた新作。
(7)は、ただひたすら死へ向かってキリキリと、けれど行きつ戻りつしつつ、読んでてひりひりとしてきた。
(8)は、だいぶ前に2回ほど読んだのをまた通読したくなり。刻み込むように通読。読後、しばらく、真田氏関連の新書や文庫をあさった。
 | 青土社 発売日 : 2020-11-27 |
黒川巧さんの商業誌デビュー目当てで購入。”文字は空気の中に泡のように消えていく運命にあった歌に不滅性を与えてくれる。文字は詩の命を奪うかわりに、永遠を約束してくれる剥製技術だった。”(p.193) ”言葉は書かれた瞬間に偽である。”(p.197)といったあたりにしびれる。ピュタゴラスは書くなと言った、しかし弟子たちの熱意のために残されてしまった。ピュタゴラスは書くなと言った、と書かれている…クレタ人がクレタ人は嘘をつく、と言うようなパラドックス。さまざまな議論を掻き立て、人々を魅了するピュタゴラスの姿を活写。/他には、椿井文書をめぐる対談。安倍政権と偽書は、竹内文書や〇〇がかかわっている団体に、前首相夫人が出入りしていたことが、公文書改ざん廃棄も辞さない政権運営と重なるところを示唆する一節。甲陽軍鑑の、偽書だ、偽書ではない、の紆余曲折を経て、史料価値が現在認められている過程を語る一節。"密教の阿闍梨ガ、仏や金剛薩埵に「なりきれ」ば、または仏や金剛薩埵が不空に「乗り移れ」ば、彼が語り書くことばは、当然「仏や金剛薩埵の金言」そのものになるだろう。"という一節。日本に固有の文字があったと信じたい国粋主義者たちによって作成された神大文字のこと。カール・レーフラーや「万歳三唱令」に触れた一節。"偽書・贋作がもつこうした「綺想」の世界の構成を知ることは、たとえば今日のインターネットやSNSに飛び交う種々の言説ー断片的な情報ともとになされる「自由な」書き込みーのあり方を理解する手助けになるかもしれない"という一節。「書経」の成立に疑いを向ける研究。自筆本が散逸してしまい、「どこからどこまでが「源氏物語」であるか、という概念を、我々は改める必要がある、と語られる一節。"偽証は悪徳であっても、深い洞察に裏付けられた聖典の正統な解釈を補強するものであれば、史実の誇張や偽名による著作は許容された"という時代もあったこと。仮説上の存在「インド＝ヨーロッパ祖語」に魅了された人々。「物語を書く」というこれまでのファンタジーのありかたを見直し、むしろ「世界を創る」ことに注力したトールキン。などなど。古代から現代まで、欧米から日本、中国、中東まで幅広い時代地域のテーマを取り扱い偽書の世界を語ってくれる魅力あふれる一冊でした。
 | 新潮社 発売日 : 2004-08-10 |
著者のマラソンの金メダリスト孫基禎とも肩をならべたこともあり、東京オリンピックが開かれてればメダル確実と言われたこともある祖父李雨哲を軸に、1900年代前半から現代までの日本、朝鮮、中国を舞台に描かれる大河小説。出だしからいきなり巫女が祖父やその妻らをおろすところから始まって度肝を抜かれるとともに若干のとっつきにくさを感じるも、そこからは一気呵成。李雨哲の幼少時代、青年期、中年期、老年期とその周囲の人物のヴォイスが次々と現れ、語り、喜怒哀楽激しく、欲しい物をつかみとろうとし、またはつかみそこね…。その中でも強く印象に残るのは、祖父を越すほどの足を持ち最後は民主化運動に倒れた弟李雨根と、慰安婦として連れ去られた同郷の女性だった。村でもその周囲でも一目置かれる器の大きさをもちながら、妻に黙って妻の籍を抜いてそのことを妻に告げずもしかしたらばれないかもと考える卑劣で冷酷な面も持つ李雨哲。捕まりそうと予感すれば、家族も捨てて日本へのがれ、そこでまた家族をつくり、パチンコ屋の経営で財を成し、また思い出したように走り出し、最後は周囲の静止も聴かず、なぜ？と言われつつも朝鮮に戻り、そこで孤独に死ぬ。家族を選ばず女を嫌い、逃げ、しかし逃げた先でまた女にしがみついた、そこでまた家族を作り、また逃げた、だが座して死を待たぬ、生のただなかを走る…という旨の最後のほうの独白がせまってくる。また、名というものの大切さ、かけがえのなさも繰り返し語られていたことも印象に。"ほんとうの名を名乗れず ほんとうの名で呼ばれない飢餓感は名前を奪われたものにしかわからない"(李雨根)(p.467)
 | 幻冬舎 発売日 : 2020-02-20 |
戦後日本がどういった社会を経て、人々が何に駆動され、そこでインターネットがどのような役割を果たしたか、鮮やかな手付きで整理して提示してくれる。読み終えて、ああ、選択肢もなく世界に素手でさわれていない自分よ、と思いつつ。フィルターバブルは避けるように、Web上で論争や批判に首をつっこまないように意識はしていたものの、それだけでは、と。世界の端から端までつなげられ、今この地球で息をしているだけで否応なくこの世界にからめとられ、つなぎとめられてしまう。世界の果てや山奥にひきもってすら、そういう態度を世界に示したというだけでは、その影響から遁れられない感。個人としては、ひとまず、「遅いインターネット」のLINE公式チャンネルに登録するところから始めた。
| 発売日 : |
1980年代後半、中華民国外交部に所属する外交官・宋瑞炎は南アフリカの首都・プレトリアの大使館に赴任する。/折しも祖国で民主化が進む中、瑞炎は、アパルトヘイト体制下で自らが『名誉白人』と扱われることに複雑な思いも抱く。/しかし、日米など友邦との外交関係を絶たれ、北京政府の外交攻勢がアフリカに及ぶ中にあって、南アの白人政府は中華民国との国交を維持する貴重なパートナー。瑞炎の苦悩は深まっていった。/そんな中、商都・ヨハネスブルグで、在留華僑同胞、そして白人政治家を巻き込んだ小さな事件が発生する。やがてその事件は折しも政治問題として浮上していたネルソン・マンデラの釈放も絡み、瑞炎を異国の政治混乱へと巻き込んでいく…。(Text-Revolutions Extra 紹介文より)/「名誉白人」として扱われたのは日本人、韓国人、台湾人。その中でなぜ日本人ではなく台湾人を取り上げたのか、と思ったが、"40年前に大陸から移ってきた、島内人口の2割程度を占めるに過ぎない外省人が、残る8割の土着住民・本省人の上に立つという台湾社会。南アは、そんな台湾と類似した構造になっている国と言えた。"(p.8)といったところに理由があったと思われ。冷静かつ柔軟な上司、外省人として将来を嘱望される後輩、ジャーナリストとなった学友、南アフリカの新進気鋭の政治家、南アフリカで黒人を食い物にする華人経営者、自分の腕をたのみかつ運動に身を投じる黒人技術者。外交官宋瑞炎を軸に、それぞれの人物の立場、希望を語りつつ描かれるストーリー。実質は小国だが中国を称し、しかし世界的には修好国が減る中、どんな国であろうと手を結ばなければいけないと思い極めている台湾政府。その外交官としては、政府の方針に従うと肚を決めても、心の中まで完全に言い聞かせることはできない。誠実な仕事相手であるアボット副大臣が、またアパルトヘイトという人種差別政策を擁護する政権の一員であることに、忸怩たる思いを抱いてしまう瑞炎。もっと小さなスケールに落としこめば、自分にとって誠実な仕事をしてくれてる人間が、他の人間に対してはひどいことをしているかもという可能性、あるいは、1980年代の台湾ー南ア関係ほどではないにしろ、何かしらの許容できぬ政策をとっている国のビジネスマンと仕事をするたびに、この人の国は…といちいち考えるだろうか、あるいは国家と個人はどこまで同一視できるものなのだろうか、というところにまで思いを馳せてしまう。もちろんみんなそうだから、他でやってるからという安易な落とし所に落ち着けることなく。その煩悶もありつつ、自己の職務にはまっとうに、時に、踏み込みすぎるところまでやったことにより、南アの政治家、南アの黒人技術者たる人物の信頼を勝ち得て、ひと筋の希望を見いだせるストーリーとなっていた。今回もアパルトヘイト廃止前後の南ア、蒋経国−李登輝時代の台湾にいるかのような読書体験が味わえ、またその時代についてもっと調べたい思いに駆られた。
 | 新潮社 発売日 : 2021-07-29 |
デビュー作「ボクたちはみんな大人になれなかった」に、連載時点でまいっていた身としては、待望の小説第二作。テレビ業界、制作会社につとめる主人公の、結婚式の二次会で出会った「反則」級の美女、マンションの同じフロアに暮らすしっかりした小学4年生の女の子とすごす、ひと夏の思い出。お互いに心を開いて、わかりあえたと思っていたのに、気がつくと、何もいわずに主人公の前から去っていってしまう儚さは前作と同じ。見抜かれるような嘘しかつけない嘘つき、女の気持ちがわからないと面と向かっていわれ、それでも心の底からあたためられるような一瞬をすごせたあの夏を...感傷たっぷりに読ませてくれる一作でした。/個人的には、明菜に「ダンス・ダンス・ダンス」のユキを、「嘘つき」てセリフが吐かれたシーンに、「風の歌を聴け」か「1973年のピンボール」かで私と結婚したい？と聴いてきた女の子の影をみた。勝手に見た。/
 | 河出書房新社 発売日 : 2020-02-06 |
穂村弘作品で何度かふれられていて気になったので。これから泳ぎにいきませんか、という本のタイトルにもなった発言は、夜十時の打ち合わせが終わったタイミングで、二階堂さんから穂村さんへ発された言葉。机の上に差し出された水着とともに。その後泳ぎにいったかどうかは語られてないのだが。膨大な読書量と思索、くりかえし語られる神への愛、耽美的な指向、フェミニズム思想、コスメへの愛、E.M.シオランさえ手ぬるいと感じさせる厭世思想、人生の時々を支えてくれる書物からの言葉。死の間際の死へ踏み出し踏みとどまり揺れている様は読んでるこちらまで苦しさに震えてきた。著者を導き照らしていた雪雪さんの文章を読みたくなった。巻末に著者と生前かかわった人たちからの文が寄せられているが、津原泰水のが一番痛切だった。/シモーヌ・ヴェイユ「重力と恩寵」を読もうか（自分がぐちゃぐちゃになるとこの本を読みたくなる）(57)/愛欲がらみの犯罪を立て続けに見せられると、恋愛という、一つ一つが特別で一回限りと思われるものが、実は誰にでもどこにでもいつでもあるごくごく陳腐なものだと思い知らされる。それでもいいのだ。(63)/わたしは生きていることに絶望などしない。なぜなら希望を持っていないから。それは生を悪いものとして低く評価しているということではなくて、評価をしていないということである。生を呪うのは裏切られた者だけで、そして裏切られるのは信じていた者だけなのだ。(96)/「もしもし、二階堂です。私あと五分で昼休みが終わるのですが、今神保町にいまして、古本の神様があと二軒廻ってから帰れといので休憩を三〇分いただきます。」(164)/私はしばしば罰せられ許されたいと思う。私は完璧ではなく、罰せられてしかるべき存在であるのにもかかわらず、愛されたいと願う。(197)/泣いているのは世界が美しいからです。世界が美しいのは、失われるからです。とても綺麗です。どうか、この一瞬にすべてが消えますように(340)/「そうよね。自分を自分で作れないで生きていて、どうするっていうのよね」(393)/165 あまりにも激しく祈る者は、自分に向けられた祈りには応えないもの。（雪雪「叙景集」『醒めてみれば空耳』）(427)/幸せになって。私をしあわせにしてくれたみたいに、哲、自分をしあわせにして。(525)/君は何度も僕を助けてくれたのに、僕は君を助けられなかった。無垢な魂の悲鳴に耳を傾けなかった。死ぬまで悔やむだろう。(津原泰水)(549)
| 新潮社 発売日 : 2021-03-26 |
三宅香帆さん、あかしゆかさんがとりあげて感想を書いてるのに惹かれて、手に取った一冊。不登校の息子を持つ検事、岡山の寝具店で働く女性、男性に気持ち悪さを感じる女子大生が主な語り手となり、三人の物語が思いもよらぬ形で絡み合い、結び合わさることになる。そのベースにあるのは、誰からも理解されない特殊な性癖。実在するのか、想像を超えたものの比喩としてなのかはわからないけれど。理解されない側からの、「多様性、という言葉が生んだものの一つに、おめでたさ、があると感じています。/想像を絶するほど理解しがたい、直視できないほど嫌悪感を抱き距離を置きたいと感じるものには、しっかり蓋をする。そんな人たちがよく使う言葉たちです。/私はずっと、この星に留学しているような感覚なんです/自分はあくまで理解する側だって思ってる奴らが一番嫌いだ」という言葉。/これでもかと、ゲタをはかせてもらっている存在なんだということを突きつけられる言葉とシーン。最後は後味が悪いけれども、最後には御互いに「いなくならないから」と伝え合う関係、一方的で根源的とも思える拒絶に、こちらのことだってわからないでしょ、なのに自分だけわかるわけがないと関係を閉ざさないでよ、もっと話して、と喰い下がれる強さとしたたかさに、かすかな希望を感じつつ。心揺さぶられる読書体験だった。次は、杉田俊介「マジョリティ男性にとってまっとうさとは何か ＃ＭｅＴｏｏに加われない男たち 」(集英社新書)を読みたくなった。
| 日販アイ・ピー・エス 発売日 : 2021-12-08 |
敬愛するzine作者の方からゆっきゅんの存在を教えてもらい、最初は衝撃ととっつきにくさを感じていたけど、seesawbooksで見かけたimaginaryのW編集長対談のフリーペーパーの内容がよくって、電影と少年CQ「Pa.Pa.Ra.Pa」もよくって、これは創刊号も買わねば！という気持ちになり購入。/ネットに掲載された全てが一瞬で世界中の人間にコピーされる。アウトプットした全てが他人の物語に巻き込まれる。それでも自分が世界にとって異質なものだと証明する為には、独自の「動機」や「文脈」を常に紐付けた引用であることを示さなければならない。「バズり貧乏」、拡散されていくとありがちなカテゴリーに収められ、ディテールやストーリー、文脈がどんどん抜け落ちていく。/けど、説明は誰も聞いてない、見ればわかる状態にしなければならない。/個性らしきものは消失した。オシャレは死んだのか、そうではない。個人の思い入れに紐づいた共感不可能な「強い動機」は拡散しようがないから。/といったあたりが、特集のベースに流れている思想なのかな、と思いました。自分にとっては、世界の切り取り方が面白い。ファッションの最先端を追いかけたことのない身にも、その最前線を垣間見せてくれて、魅力的に語ってくれたところがすごくよかったです。独自の「動機」や「文脈」を常に紐付けた引用が大事というのは、ファッションに限らず、何を読んで、何を見て、何を観て、何を集めて…といったこと全般にも言えるのかも。それらをパフェライク（パフェのよう）に盛り付けて見せてくれたページは楽しかったです。特に、電影と少年CQのルアンのパフェ、センスが独特で最高でした。個人的には、ゆっきゅんの行こうぜ！国会図書館が好きでした。生涯に２度だけ行ったことある国会図書館なのですが、ゆっきゅんのセレクトはさすがの絶版ファッション雑誌で、こんな本があったんだ、面白そう、そして懇切丁寧な国会図書館の利用法もgoodでした。第二号の特集「2020年代のDIVA」では「DIVA PROJECT」をひっさげて、ゆっきゅんがゴリゴリに語りだしてくれるのではないかと今から期待してます。
2021年12月11日
2021年11月に読んだ本
(1101・昭和天皇物語 9
(1104・盛り場『六本木』におけるアフリカ出身就労者の生活実践(pdf)
1104・山口文憲 香港世界 河出文庫 2021ver. 20211030
1106・ほんとうのアフガニスタン〜18年間“闘う平和主義”をつらぬいてきた医師の現場報告〜 kindle
1106・オリエント史講座 第4巻 カリフの世界 学生社 1982年 図書館
1107・宇佐美りん 推し、燃ゆ 20211106
(1107・分断社会における排外主義と多文化共生 日本とオーストラリアを中心に(pdf)
(1107・アンダルスのなかのトレード_後ウマイヤ朝の辺境都市(pdf)
(1107・ターイファ国の都トレード(pdf)
(1107・川尻こだまのただれた生活 4 kindle
(booklogなし【再読】きのう、何たべた？ 3-14
(1107・逢根あまみ 回転ベッドは恋人たちの夢を見るか？ seesawbooks
(1108・黒田佑我 中世と近現代との「対話」_アンダルス(イスラーム・スペイン)の遺したモノをめぐる議論のゆくえ(pdf)
(1108・マイモニデスの遍歴_その著作に与えた影響(pdf)
1109・小熊英二 社会を変えるには 古書浪漫堂 20210904
(1109・護雅夫 林武「オスマン帝国の改革運動」(『岩波講座世界歴史21 近代8』岩波書店, 386-410)
(1110・ギリシア文化の西欧伝播とビザンツ＝後ウマイヤ朝関係(pdf)
1111・池波正太郎 真田太平記 1 20210812-14
(1114・【再読】きのう、何たべた？ 15-18
1114・池波正太郎 真田太平記 2 20210812-14
(1114・香山哲 ベルリンうわの空 ランゲシュランゲ
1115・【再読】野沢尚 青い鳥 図書館
1115・池波正太郎 真田太平記 3 20210812-14
1115・ワシントン・アーヴィング アルハンブラ物語 岩波文庫版 下巻 20211022
(1115・午後9時15分の演劇論 3 (ビームコミックス) kindle 20211114
(1115・ヴラド・ドラクラ 5 kindle 20211114
(1116・天上恋歌 4 kindle 20211114
(1116・きのう、何食べた？ 19 特装版
1119・池波正太郎 真田太平記 4 20210812-14
1120・池波正太郎 真田太平記 5 20210812-14
1120・佐々木ののか わたしと服 stores.jp 20211118
1120・【再読】金益見 ラブホテル進化論 文春新書 図書館
(1120・パリピ孔明 7 kindle
1121・今夜 壱号 夜について トーキョーブンミャク seesawbooks あおにさいBOOKS
(1121・七ツ屋志のぶの宝石匣15
(1121・幸せカナコの殺し屋生活 6
1122・池波正太郎 真田太平記 6 20210812-14
(1123・アサギユメ アタマの中のアレを食べたい 3
1124・池波正太郎 真田太平記 7 20210812-14
(1126・麻生みこと 大正ロマンポルノ 読書室ポワロ
1126・池波正太郎 真田太平記 8 20210812-14
1127・池波正太郎 真田太平記 9 20210812-14
(1127・出版流通の実務 seesawbooks 20211127 \660
(1127・鳥辺茜 Kitatrip 06
(1127・小学館版学習まんが世界の歴史別巻4 オスマン帝国2: (学習まんが 小学館版)
(1127・ひらばの人 2
1128・池波正太郎 真田太平記 10 20210812-14
1129・池波正太郎 真田太平記 11 20210812-14
(1104・盛り場『六本木』におけるアフリカ出身就労者の生活実践(pdf)
1104・山口文憲 香港世界 河出文庫 2021ver. 20211030
1106・ほんとうのアフガニスタン〜18年間“闘う平和主義”をつらぬいてきた医師の現場報告〜 kindle
1106・オリエント史講座 第4巻 カリフの世界 学生社 1982年 図書館
1107・宇佐美りん 推し、燃ゆ 20211106
(1107・分断社会における排外主義と多文化共生 日本とオーストラリアを中心に(pdf)
(1107・アンダルスのなかのトレード_後ウマイヤ朝の辺境都市(pdf)
(1107・ターイファ国の都トレード(pdf)
(1107・川尻こだまのただれた生活 4 kindle
(booklogなし【再読】きのう、何たべた？ 3-14
(1107・逢根あまみ 回転ベッドは恋人たちの夢を見るか？ seesawbooks
(1108・黒田佑我 中世と近現代との「対話」_アンダルス(イスラーム・スペイン)の遺したモノをめぐる議論のゆくえ(pdf)
(1108・マイモニデスの遍歴_その著作に与えた影響(pdf)
1109・小熊英二 社会を変えるには 古書浪漫堂 20210904
(1109・護雅夫 林武「オスマン帝国の改革運動」(『岩波講座世界歴史21 近代8』岩波書店, 386-410)
(1110・ギリシア文化の西欧伝播とビザンツ＝後ウマイヤ朝関係(pdf)
1111・池波正太郎 真田太平記 1 20210812-14
(1114・【再読】きのう、何たべた？ 15-18
1114・池波正太郎 真田太平記 2 20210812-14
(1114・香山哲 ベルリンうわの空 ランゲシュランゲ
1115・【再読】野沢尚 青い鳥 図書館
1115・池波正太郎 真田太平記 3 20210812-14
1115・ワシントン・アーヴィング アルハンブラ物語 岩波文庫版 下巻 20211022
(1115・午後9時15分の演劇論 3 (ビームコミックス) kindle 20211114
(1115・ヴラド・ドラクラ 5 kindle 20211114
(1116・天上恋歌 4 kindle 20211114
(1116・きのう、何食べた？ 19 特装版
1119・池波正太郎 真田太平記 4 20210812-14
1120・池波正太郎 真田太平記 5 20210812-14
1120・佐々木ののか わたしと服 stores.jp 20211118
1120・【再読】金益見 ラブホテル進化論 文春新書 図書館
(1120・パリピ孔明 7 kindle
1121・今夜 壱号 夜について トーキョーブンミャク seesawbooks あおにさいBOOKS
(1121・七ツ屋志のぶの宝石匣15
(1121・幸せカナコの殺し屋生活 6
1122・池波正太郎 真田太平記 6 20210812-14
(1123・アサギユメ アタマの中のアレを食べたい 3
1124・池波正太郎 真田太平記 7 20210812-14
(1126・麻生みこと 大正ロマンポルノ 読書室ポワロ
1126・池波正太郎 真田太平記 8 20210812-14
1127・池波正太郎 真田太平記 9 20210812-14
(1127・出版流通の実務 seesawbooks 20211127 \660
(1127・鳥辺茜 Kitatrip 06
(1127・小学館版学習まんが世界の歴史別巻4 オスマン帝国2: (学習まんが 小学館版)
(1127・ひらばの人 2
1128・池波正太郎 真田太平記 10 20210812-14
1129・池波正太郎 真田太平記 11 20210812-14
 | 小学館 発売日 : 2021-10-29 |
朝鮮軍満州出兵の事後承認。天皇はつ…タカがきけなかった続きは、なんだったのか。軍内部に、"権威への疑念"。今こそ親政を、と弟である秩父宮の再三の懇請を、立憲君主としてはねつけ。私の代で大戦争が起こるのであろうか、それは持って生まれた宿命か？という問いかけ。溥儀、川島芳子の登場。関東軍が満州に国をつくる？バカな国をなんだと思っている、と吐き捨てる犬養毅。リットン調査団のリットン卿「この国はいったい誰が最終決断を下すのか？」。犬養の話せばわかるんだから、と常々言っていたという伏線。おそらく次巻は大きな動乱に。
歴史的なユダヤ人＝ユダヤ商人、経済的に大きな力を持ち、というイメージがあったが、少なくともオスマン帝国、メフメト2世治下、コンスタンティノープル復興という局面では経済的な期待を寄せられていなかったことから、当時、コンスタンティノープルでは、一部のユダヤ人と外来のユダヤジン以外は大きな経済力を持たなかった、と。/1496年に死去したユダヤ教徒コミュニティの指導者としてオスマン政府に任命されたモシェ＝カブサリは、帝国内に移住してくる同胞をあたたかく迎えたが、後任者は、膨れ上がる移住者の対応に苦慮。/マラーノは、キリスト教世界でも改宗の真偽を問われたいたが、安全であるはずのユダヤ教徒コミュニティ内でも侮蔑と疑惑の目が向けられていた/そのマラーノのなかにナスィ一族がおり、多くのマラーノを自らの商業ネットワークを通じて救うと同時に、彼らを自らのエージェントとして商業ネットワークの拡充に成功。これはオスマン政府にとっても重要な価値を持つ情報ネットワークに。/オスマン帝国末期、イスタンブルのユダヤ教徒コミュニティは、連合(フランスのジャーナリストが立ち上げた万国イスラエル連合。1890年代から中東、バルカン諸国でフランス語、フランス教育システムの学校を設置）派とシオニスト派に分裂。トルコ共和国建国にともない、シオニストの民族主義的活動はすべて禁止され、連合派の学校でもフランス＝スタイルの今日行くは、トルコ語教育、政府が定めたカリキュラムへと置き換えられていった、と。
 | 河出書房新社 発売日 : 2021-08-05 |
返還前、70−80年代、香港で過ごした著者の現地での暮らしから見る、香港人の思想、住居、食事、しぐさ、お金、人間関係など。おそらく今では街並みも人情もすっかり変わってると思われ、そういう意味では、もう決して行くことのできない天地。そう考えると不思議な時間旅行が味わうのもまた一興という心持ちに。大陸から渡ってきて、香港に住み着いた人、そこからさらにアメリカや中南米など別の国に旅立って行った人のライフヒストリーは読み応えがあった。/毎日二階電車と二階バスにのり通勤し、家に帰れば大の大人が二段ベッドにもぐりこむ…という住環境/香港-マカオを結ぶ旅情あふれるフェリーも今は昔、現在は長大な海上橋でむすばれてる/寝間着でおでかけしてしまう香港娘/つねに温暖な気候で着るものにかまわない香港人が多く。イギリスが持ち込んだ毛織物は見向きもされず、ならばとアヘン戦争を起こし。香港人が毛織物に少しは興味を示していれば…などは詮無き仮定かと/歩道を歩く時は上から落ちてくるものに常に気をつけなば。火のついた煙草、おしめ、空になったプロパンボンベ、いかれた冷蔵庫。/食事をともにすることをとても重要視/野味といって犬や猫を食す習慣。ただ当時でも犬食なんて、という層もちらほらと/香港的微笑とは、我と彼の間になにか利害関係を含む実態的関係があること、あるいはそれをつくりたいと思う場合にのみ発動される。つまり赤の他人には笑いかけたりしないということです/アグネス・チャンも出演した米中仏伊合作映画「マルコ・ポーロ」。/などなど
なぜ遠くアフリカからやってきて六本木で働いているのか。どのように働いているのか。2001年と2008年、バーや飲食店、風俗店関係の店員に聞き取り調査した記録から説き起こされる。/「都市における盛り場としての状況（場所）における就労者の仕事への参加を、バーのセキュリティと風俗店の呼び込み従業員というアフリカ出身者の二大職業ににおける呼び込みの仕事、イメージとしての黒人、ストリートの職種による序列関係、そして呼び込み従業員のコミュニティの萌芽の観点から考察。」/都市における/ナイジェリアはエド人の経営するバーでは、つてを頼ってエド人従業員があつまる。逆に在留資格なく、身元保証人の血縁者がいないイボ人はそこでは辛酸をなめる。また、トップレスバーで働くイボ人で、伝統的宗教の預言者の家に生まれ、神から日本に行けとのお告げを受けたため6年前に来日した、と答えるケースも。呼び込み従業員たちは、自身の体験や就労仲間の情報を共有しながら、情報を咀嚼し、行動パターンをより安全な方法として確立させていかねばらない。また、職種の違いが、年齢や経歴を超えた序列関係を形づくっていることも（例えば、ドアマンのほうが呼び込みより序列が高いとみなされるケース）。それは出身国での学歴や地位の高さに左右されない。興味深いケーススタディだった。
 | 光文社 発売日 : 2002-02-01 |
「問題解決能力」とは、具体的にどのような能力なのか。(https://blog.tinect.jp/?p=73316)というブログ記事で紹介されてるのを見て、衝動買いした一冊。医者として、パキスタン北西辺境州、アフガニスタンに入り、医療を施す前にまずは現地の人々が生きるために何をしなければならないか、ということに気付かされ、井戸を堀り、病院を建てるために土木監督をし、無感覚になってしまうらい病患者の足を守るためサンダルを開発し、銃を向けてくる無法者には敢然と立ち向かい、地域を束ねる長老たちと交渉する。空爆や飢饉が起きても絶対に逃げない姿勢を見せ、現地からの信頼を得る、と。湾岸戦争や9.11からの空爆について、当時の日本でニュースで語られていた実情と、全然違う、現地に深く関わったものだからこその視点も得られた。また、アフガニスタンでの医療のために、と意気込んでやってきたわけではなく、縁にみちびかれてここまでやってきたので、参加したいという方はまずは物見遊山でもいいから来てみてください、続けられたらありがたいし、そうでなければ別の道にすすめばいいというスタンスが印象に。
前嶋信次 「コルドバのカリフたち」、矢島文夫「アルハンブラ」のみ読了。いずれも、ワシントン・アーヴィング「アルハンブラ物語」に端を発したアンダルス熱の一環として。ただ、前嶋信次論文のほうは、自分でも持ってた同じ著者の「イスラムの陰に」と重なる部分がけっこうあった。あと、「コルドバのカリフたち」とあるので全カリフ紹介してくれてるのかと思いきや、初期のわりと在位期間のあるカリフでも、名前と在位期間だけですっとばしているのとかあって、そこ、もう少し語ってほしかった、という個人的な不満あり。それまでアーミルの称号に甘んじていた後ウマイヤ朝のカリフたちだが、929年に、アブド・アッラフマーン三世がカリフを号したこと、アル・ハカムが晩年に寵姫とのあいだに生まれた年少のヒシャームを後継者にしたことが後ウマイヤ朝の滅亡の遠因、としてることのみ記す。
 | 河出書房新社 発売日 : 2020-09-10 |
推しを推すことだけが生きがいだった。だから、推しがファンをなぐった、と知っても、ただ推し続ける。みんなが難なくこなせる何気ない生活もままならないけど、推しを推すことで生きていける。だから、「見返りを求めているわけでもないのに、勝手にみじめだと言われるとうんざりする。」「体力やお金や時間、自分の持つものを切り捨てて何かに打ち込む。そのことが、自分自身を浄化するような気がすることがある」。それは、「推しを推さないあたしはあたしじゃなかった。推しのいない人生は余生だった」という境地にまで達するが、しかし推しは…と。ラストシーンは、それでも這ってでも生きる、ということなのか、今は這うことしかできないしその先もわかんない、ということなのか。推しを推すことに限らず、これが好きで、これに打ち込んでて、人になんといわれようとこれが自分の背骨で、自分の中心なんだ、といえるものを持てる強さと歓びと、自分以外のものにすべてを委ねる危うさと、失うときの儚さと、それら全部を味あわせてくれる物語だった。
後ウマイヤ朝期、10世紀後半をのぞいて多くの期間、反乱を起こしてきたトレード。「トレードの住民は、ムスリムによる征服以前からの住民やその子孫が多く、かつての都であった自分たちの町に誇りをもち、征服者のイスラーム政権に潜在的敵意を抱いており、それが権力者の圧政によって顕在化し、地理的位置、堅固な防備、食料の問題で有利な立場におかれていたこともあり、反乱に立ち上がった。」トレード住民の二大構成勢力だった、モサラベとムラディー。「両者はアラブ化したキリスト教徒と、キリスト教徒であったムスリムであり、重なり合う部分が大きかったと考えられないだろうか。両者を区別するのではなく、その共通面に着目すべき」と。また、後ウマイヤ朝のフィトナと言われる内乱期については、複雑な様相を呈しているが、丁寧に描かれわかりやすかった。
第一次ターイファ時代のトレードを取り上げ、その中でもジー・ル・ヌーン朝3代のうち、初代アルザーフィル、2代目マームーンの時代を中心にとりあげられる。その前史としては、後ウマイヤ朝末期のフィトナと呼ばれる内乱期、アラブ人、旧ベルベル人、新ベルベル人、サカーリバ(宮廷奴隷)の四勢力が争い、それぞれのちにターイファと呼ばれる小君侯国をアンダルス（イスラム・スペイン）に打ち立てていくことが語られる。コルドバの人々が次々とカリフを立てても意味がないことをさとりカリフ制を廃止し、それにより後ウマイヤ朝は滅びた。トレードを中心にだが、他ではあまり読めない、ターイファ各国の興亡を知ることができるのが貴重。混乱する中央政府のトレード支配の放棄、わ−ディフの任務離脱によりトレードは独立できた。主に2代マームーンの時代に、コルドバ、バレンシアを征服し、最大領土を誇り、文化面でも主に科学が発達した。ただ、レオン＝カスティーリャ王フェルナンド1世、アルフォンソ6世に貢納金を支払ってもいた。アルフォンソ6世については、後継争いに敗れ、亡命してきた際に保護し、王位につくサポートまでしている。それは他のターイファ諸国の憎しみを買うことにもなった。3代目にしてトレードのターイファは滅びることに。また、最後のグラナーダ。ターイファのアブド・アッラーフが有名な「回想録」を残している、というのは寡聞にして知らず。小国の君主の、そういったものが残っているというのも少し驚き。
日本のアカデミズム・ジャーナリズムでの分断という言葉がどう語られ、系譜をたどり概念を整理。次に、社会の分断からマイノリティへの排外主義が発生するメカニズムについて、日本とオーストラリアを念頭におきつつ仮説を提示。
/「勤労国家レジーム」は1990年代以降の経済の低成長期に機能不全に。/人々のあいだに偏在するヴァルネラビリティ（不安、無力感、他者への不信といった感覚の偏在化）があり、それに起因して排外主義が生じ、ヴァルネラビリティがますますマイノリティへ偏在。マイノリティのシティズンシップの制度的な非/誤承認によって生じる「不道徳な他者」表象がそれを方向づけ助長する。リベラル・ナショナリズムも、「寛容の限界」からハードな排外主義を黙認してしまう、と。/著者は現状の分析のみ、解決策は提示しないとするが、眺めてみると、貧すれば鈍する、経済的に頭打ちになって余裕がなくなって、その不満を誰か叩きやすいものを叩くことで晴らしたい、ということが背景にあるのでは、と思えた。また2005年の「クロナラ事件」という騒乱についてはもう少し調べてみたい。
/「勤労国家レジーム」は1990年代以降の経済の低成長期に機能不全に。/人々のあいだに偏在するヴァルネラビリティ（不安、無力感、他者への不信といった感覚の偏在化）があり、それに起因して排外主義が生じ、ヴァルネラビリティがますますマイノリティへ偏在。マイノリティのシティズンシップの制度的な非/誤承認によって生じる「不道徳な他者」表象がそれを方向づけ助長する。リベラル・ナショナリズムも、「寛容の限界」からハードな排外主義を黙認してしまう、と。/著者は現状の分析のみ、解決策は提示しないとするが、眺めてみると、貧すれば鈍する、経済的に頭打ちになって余裕がなくなって、その不満を誰か叩きやすいものを叩くことで晴らしたい、ということが背景にあるのでは、と思えた。また2005年の「クロナラ事件」という騒乱についてはもう少し調べてみたい。
seesaw booksさんのtweetで興味を惹かれ手にとった一冊。話には聞いたことがあっても、見たことも、見たという人にも会ったことのない回転ベッド。1970年代に全盛期を迎え、1985年には風営法で規制され、衰退の一途をたどっていたとは。どうりで…。機械操作版の古めかしい感じ。ベッドに最適化された円形のふとん。ギラギラとした電飾、ルーレット、宮殿風、目線の入った某有名キャラクター、宇宙船風とさまざまな部屋をながめることができる。なぜ回さなければいけないのか？回るとたのしいのか？なぜ山に登るのか、そこに山があるから、の境地なのだろうか。映されてるのは徹頭徹尾設備のみ、なところも光景を楽しむという点からはいいと思いました。
今まで登場人物紹介にしかでてこなかった天啓猫、いきなり出てきてうれしい。チャーシューメンダイエットというパワーワード！タンパク質と炭水化物を一緒にとれば炭水化物の吸収をおさえてくれるという理論で。限界つまみシリーズ、塩を舌先につけてお酒を！。お茶漬けを美味しく食べる方法＝お茶漬けの素2倍だあああ。カピカピのウィンナーを卵焼きパンで茹でてたはずが、いつのまにかインスタントラーメンが飛び込み、卵も入れようか？。プロポリスキャンディを、臭くて甘くて辛くてマズイと酷評しつつ、すごく効くと絶賛の乱高下。などなど、もうおかしくて笑いをおさえることができない一冊でした。
口頭発表の要旨。以下の3都市についての記述が印象に残った。 /後ウマイヤ朝の宗教的寛容と空前絶後の栄華を誇るトポスとしてのコルドバは、むしろその寛 容が損なわれ「イスラーム社会形成」をひと段落させたときに最盛期を迎えている点を指摘した。/「レコンキスタ」の偉業と、宗教的寛容の結節点として知られるトレードをめぐる現在の研究成 果では、1085 年に征服された後に急速にムデハル(残留ムスリム)の文化的貢献が失われてしまっており、いわゆる「十二世紀ルネサンス」における翻訳運動に貢献したのがアラビア語を母語と するモサラベ(アンダルス治下のキリスト教徒)であった点が強調される。/そしてアンダルスの 滅亡を憂いつつ、近世スペインの宗教的不寛容を予兆するトポスとしての役割を果たすグラナダ であるが、実際にはナスル朝社会は境を接するカスティーリャ王国以上に好戦的な特質を持っており、またカスティーリャ辺境領域との政治・社会・文化的接触を繰り返したアブ・ノーマルなイスラーム領域であったことが近年の研究で明らかとなっている。
中村小夜「昼も夜も彷徨え」を読んで以来のマイモニデスのファンとしては、おさえておきたい一編。やはり、マイモニデスのコルドバ、フェス、アッコ、アレクサンドリアの遍歴では、移住時期、移住理由、官職の変遷など、史料の点からはわかっていない点も多くある、と。/「イスラームへの改宗は許容されることであり、迫害に耐えて殉教するよりも、礼拝実践が可能な地域へ亡命するよう同胞に勧めている」「思想的対立が政治的闘争を生み出し、果ては同胞が迫害に巻き込まれる状況を見て、論証を基盤とせず、教義を護ることを目的とした神学の危険性を彼は見抜いたのであろう」と。
 | 講談社 発売日 : 2012-08-17 |
こういった理由でこういう社会運動をすれば、みたいな話かと思いきや、まず、その変えようとしている「社会」とは何か、というのを古代ギリシアまで遡って説きはじめ、近現代日本まで丁寧に語り下ろしたあと、ようやく第7章で、こういうやり方もある、ああいうやり方もある、けど万能な理論なんてないから、地域、時代背景、状況などを鑑みて、ケース・バイ・ケースで有効な方法をとるしかないのでは、という至極真っ当な結論に。また、これを鵜呑みにするのではなく、ツールのひとつとして考え、それぞれの問題意識で語り合う際の材料にして欲しい、「すてきな社会、家族、政治は待っていても、とりかえても現れません。自分で作るしかないのです」「社会を変えるには、あなたが変わること。あなたが変わるには、あなたが動くこと」なのだから、と。同じ著者の共著の「平成史」にも手をだしてみたい。/以下、抜粋や要約/原発は経済的に見合わないという認識が先進国では共有される/学生運動全盛時代の学生は自他ともに認めるエリート/第九条、デモ、社民党、共産党が悪いわけではない。「あれは自分たちと関係ない一部の特別な人がやっていることだ」としか考えない、ということが問題/日本の運動は、共同体を基盤にしたものがメインだった/お金や暴力は関係が希薄になってくるところに、関係の代役として入り込む/団塊の世代のうち学生運動に参加したのは4%/デモが社会を変えるときは、社会の大多数が、自分の声を代弁してくれる、とデモに対して思ったとき/盛り上がるというのは「みんな」「われわれ」をつくるということ/デュルケムの「自殺論」/近代社会はどんどん関係をお金に変えて走っている社会/人間は何か「自己を超えたもの」とつながっていないと生きづらい/ベンサム：人間の快楽感受能力は等しい。どんな人間も一人として数えると主張したこと。王様の快楽が農民より優先される、ということはありません/人びとが「自由」になり、国家と地域社会を束ねる宗教的・理念的な「われわれ」意識が薄れたら、自由かつ平等で安定している、ということはむずかしくなります/ギデンズ：人間はほんらい再帰的な存在。なんらかの対象との関係のなかで、作り作られてゆく存在/エンパワーメント、アクティブ化がこらからの政府や専門家の新しい役割/「社会を変えること」というのは「われわれ」により異なる、「われわれ」がばらばらに乱立しているので、これを変えれば社会が変わるというのが見つけづらい/だれもが共有している「だれもが「自由」になってきた」「誰も自分の言うことを聞いてくれなくなってきた」「自分はないがしろにされている」という感覚、それを変えれば誰にとっても「社会を変える」ことになる、とは言えないでしょうか/
 | 岩波書店 発売日 : |
これ40年前に出たものだけど、護雅夫の書いた「トルコの改革運動」はそれなりに詳しく、かつ満遍なく書いてあるんだよね。改革の歴史的評価も今でも通用するものは多い。（@jun_naibzade）というtweetに惹かれて手に取る。護雅夫 林武「オスマン帝国の改革運動」の、”1 トルコの改革運動(護雅夫)” p.386-410のみ読了。/セリム三世の改革の挫折の原因は、イェニチェリ、ウレマーの守旧性のみならず、新興勢力アーヤンが中央政府を支配下に置き、地方諸州で自らの地位の保障を求める行動に出たことにももとめられる。/1806年、セリムが軍事的改革をバルカンに及ぼそうとすると、その地のアーヤンはイェニチェリとともどもエディルネに集結してこれに抵抗/イェニチェリ軍団解体、ムハンマド常勝軍創設、イェニチェリと密接な関係のベクタシ教団閉鎖、中央権力に対する地方のアーヤンへの打撃。トルコの近代化運動の第二期を1826年から始めるのはこの意味で正しい。/オスマン帝国内における非ムスリムの保護を口実・理由とする列強の干渉、それと表裏一体をなすバルカンでの民族解放運動の勝利、エジプト問題、その一つのピークをなすネジブの敗戦、これらは、トルコ国内のあらゆる欠陥を露呈するに至った。/初期のタンジマートは、中央集権的官僚機構の確立による「近代化」という意味ではマフムトの改革の連続ともいえるが、スルタン権力の空洞化への努力という点ではそれと断絶している/タンジマートは、多くの面で「新」の導入と「旧」の温存をもたらし、未完の改革となったが、タンジマートを中心とするトルコの「近代化」運動は後戻りできない前進をもたらし、引き継がれていった面も多かった、と。
最近つづく、個人的なアンダルス熱から、ビザンツ＝後ウマイヤ朝関係に興味を持ち。後ウマイヤ朝が、アッバース朝と対立し、まわりのムスリム諸国からも孤立してたゆえ、ギリシア古典文化のアラビア語翻訳熱から取り残されていたが、10世紀半ば、シチリアを攻めるために、ビザンツと組もうと外交関係を持ったところから、ギリシア古典の流入、アラビア語への翻訳が行われるようになった、とのこと。/ウマイヤ朝は、旧ビザンツ領を引き継ぎ、その統治制度を官僚ごと引き継ぎ、ギリシア語の官僚養成マニュアルを引き継ぎ、ギリシア語納涼のある膨大な人口をかかえた。/アッバース朝による翻訳活動については、異教徒を論破するための武器としての側面が強かったのでは、キリスト教神学の真髄がギリシア修辞学にあると見抜いてからでは、という視点。そこから敷衍して、ビザンツではなく我こそがローマ帝国の後継という意識も、と。/
 | 新潮社 発売日 : 1987-09-30 |
武田家の滅亡から、本能寺の変まで。高遠城の戦いに参戦した向井佐平次は、真田忍びのお江に命を助けられ、真田家へ。/小畑亀之助の名はこのあとどこで出てくるのだろうか。/真田昌幸が、武田家滅亡前に北条家に通じていたという史実も、あくまで武田家の棟梁を逃しかくまうためだった、と作者は解釈し/矢沢頼綱が真田信幸、幸村兄弟にどのような教育をほどこしたかはこの先おのずとわかる、と/「忍びの女の躰は冷えもすれば、温もりもする」「そのかわり長生きはできぬ」/向井佐平次と真田幸村の出会い。源二郎様にこのいのちをかけよう、とまで思い極めた佐平次/幸村の「おれと、お前とは、いつの日か、いっしょに死ぬるような気がしてきたぞ」という暗示めいたことば。
 | 講談社 発売日 : 2021-05-21 |
15-18巻再読。劇場版の影響で。15巻。自分の字を取って、知り合いの子どもに名前がつけられたこと。その名前が偶然自分の父と同じ名前となったことに、何かしらのつながりを感じるシロさん。それってシロさん死ぬまで一緒にいてくれるってこと？の問いに、内心で、違うよ、たとえこの先別れたとしても俺の人生で遺産を譲ろうなんて思う相手はお前ぐらいだと思うからさ、というシロさんのモノローグ。16巻。こうやって一度でも家族全員であなたと顔をあわせておけば、ケンジに何かあったとき、お互いケンジの身内としてお葬式のときだって、わたしたちと一緒に家族として見送れるって思った、という深い気遣いを筧に見せてくれたケンジ母。歴代カレシとひき比べ、冷蔵庫の在庫管理に行き違いがあったのにこんなに心安らかにメシが作れて食べられたことが今まであっただろうか、とケンジに内心感謝するシロさん。そして佳代子さん一家とケンジのようやくの邂逅。そして事務所の所長を継ぐことになり、もっと抵抗するかと思ったと拍子抜けされるが、ケンジにばかり社会人の責任を説いて自分は…と思うところがあったこと。小粒マシュマロ80gとミックスドライフルーツ100gにヨーグルトひとパックでよくまぜて冷蔵庫にラップして一晩から丸一日ねかし、これを今度は冷凍庫に入れる…てデザートがつくりたくなる。17巻。佳代子さんからケンジに語られる、シロさんのケンジ愛。自分が好きではないレシピでも、あーでもこれケンジ好きだからなー、と教わっていくこと。ジルベール、小日向さん、ケンジがシロさん居ぬ間に語っていたことを「察して」て顔を3人が向けて、察した上でケンジに怒りを向けるシーンが印象に。
 | 新潮社 発売日 : 1987-09-30 |
真田家が、徳川・北条を大向うに回し、今までの煮え湯を飲ませ続けてきた経緯から虫がいいのは百も承知で上杉景勝に中立を願いに行くところまで。/「私は、戦がきらいなのでござります」（佐平次）/越前大野にさびしくくらす滝川一益へたびたび使者をつかわしねんごろになぐさめたことが、真田滝川間の不思議な友好はのちに一つの果実を/蛮勇の天性をもつ樋口角兵衛が数十年にわたり真田家にもたらす奇怪な宿命/お徳の警護に裏切り者が紛れ込んでいたことに、父上が特に選んだ五人、父上も油断、と幸村に断じられ返す言葉のない昌幸/おれは、兄上を、心から敬うている。あのような人は、めったにこの世に生まれ出るものではない。はきと申すなれば、父上など、足もとにも寄れぬお人だ（幸村、佐平次に語る。）/もよのような、よい女房をもろうたので、おれはお前を妬んでいたらしい(幸村)/あれほどに自分を救援し、みずから戦場へ出て、共に戦ってくれた徳川家康へ、一言もこれを告げなかった織田信雄である/天正十三年があけて、名胡桃でお徳が産んだ子に昌幸は「於菊」と命名/戦ってのち、もし生き残れたときにこそ、源二郎を人質として受け取ろう、と、景勝がいってくれたのである。「わしは、忘れぬ」（昌幸）/
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-11-12 |
本当の感動っていうのは、なんかわけわかんないもんなんじゃねーかな？/なんもかもわけのわからん中から”本当のこと”を引っぱり出そうと必死で格闘する 瞬間瞬間のギラつきだけが結局は本当の感動なんじゃないかな/というセリフにぐっときた。
 | 幻冬舎 発売日 : |
20年以上前にトルコを旅し、イスタンブールで宿が一緒だったお姉さんが、札幌に帰ってきてから、ぜったいオススメだからとドラマ「青い鳥」を録画したビデオを貸してくれたことがあった。ひさびさにそれを思い出し、原作を読み返したくなり。タイトルはもちろん、メーテルリンクの「青い鳥」より。幸せは実は身近なところにあった、というお話。「あたしは地球の上で一番不幸せになっている。それを目印にしてあたしを探して…」「お前たち、もっといいお土産を目印にしなさい」。人は何か悲しいお土産を持って生まれてくるという理森の言葉が、詩織の心にともした灯。/「流れ星を見ても、何も願い事をしない人なんだよ」(詩織)が幸せな意味合いで語られていたことから、「それは違う。何も願い事がないのは、死んでるってことよ」(詩織)という境地へ至るまでの道のりの苦しさ。/主人公の理森が最後の方で、「今目の前にあって、手を伸ばせば触れるものさえ大切にすれば、人間は明日を生きていけるような気がします」「明日を大切に生きることができたら、明後日も多分、生きることができます。手に触れるものだけを大事にしていれば、一日一日が続いていくんです。気が付いてみたら、それが自分の人生になってるんじゃないでしょうか」という境地に立つけれど、そこに至るまでの道のりは、長く暗く、激しく、そしてつかの間の歓びに満ちたものだった。静かな片田舎でレールにのったかのような決まった道を進むと思っていたところに、かほりと激しく出会ってしまい、その娘の詩織とともに北へ北へとの逃避行。かほりを失い、服役。その後は、計らずも、娘の詩織と南へ南へと。南十字星を見て、かほりの骨を、満潮のときだけ渡れる島に埋めるために。そして最後は、"彼らの旅は終わった。それでも人生は続く。"と。
 | 岩波書店 発売日 : 1997-02-17 |
講談社文庫版を読み終わったあとに、こちらも入手し読み比べ。岩波文庫版のほうが訳がこなれて読みやすく、また注も充実していて背景がつかみやすかった。また講談社文庫版より章が増えているのかな？と思った。イスラム・アンダルスの詩人たちの章を読むと、イブン・ハズムの作品に触れてみたく成る。王子に恋の素晴らしさを説く鳩。塔に閉じ込められていた美しき三姉妹の王女がそれぞれ選んだ道。そのうちの一人が授けた銀のリュートの数奇なる運命。アルハンブラを明け渡したあと、実はグラナダの地下に兵士たちと財宝とともに魔法にかけられてひそんでいるというボアブディルの伝説。強欲な神父のたどった末路。片腕の総督に一発御見舞するという書き置きがまるでルパン三世のような一編。隠者のインチキな預言にのせられ、狂信的な十字軍を起こしてしまった騎士団長。などなど、往時のイスラム・スペインをしのばせる魅惑的なエピソードをたのしめた。
 | 新潮社 発売日 : 1987-10-28 |
徳川家による上田攻めから、名胡桃落城、小田原攻め、鈴木右近の出奔まで。上杉景勝から、石田三成から、決して忘れ得ぬ恩義を受けたと感じた昌幸。この後の行動への影響が予感され、と。/戦後の、上杉へ幸村を人質に、間髪入れず百騎の常勤を出し、間髪入れぬ昌幸の誠意に景勝も「お前の父が、かほどの男とは、よも、おもわなんだぞ」/ あなたさまが御兄上さまに遠慮なさるおこころが、そのまま、御兄上さまへ映るのでござりましょう。なればこそ、御兄上さまも、あなたさまへ御遠慮なさる…人のこころというものは、そのように、相たがいに働きかけるものでござりますよ」（お江。幸村へ）/徳川家康、本多忠勝（この男なれば、たよりになる）（信幸へ）/昌幸の苦悩と、その苦悩が行きついた末に生まれた覚悟とを、二人（景勝、兼続）は何の疑惑もなく汲み取ってくれた/甲賀忍びの血は、もともと熱いものじゃと、わしは、おぬしの父ごに教えられた。冷えた血をもつ忍びは真の忍びではないとな（住吉慶春。お江へ）/単身名胡桃を抜け出して危急を告げようとし死んだお徳/関白から賜与された短刀を鷹揚に与えたことで、幸村に心酔するようになった角兵衛/名胡桃の鈴木主水の妻、息子小太郎が無事であると己の一存で知らせてきてくれた石田三成。「忘れまいぞ。父も忘れぬ」(昌幸)/戦場働きで信幸の命をすくったというのに、感謝も重用もされぬと信幸への不満をつのらせる角兵衛/小田原攻め後に、秀吉から上州・信州の領地を安堵された昌幸。武田氏滅亡より八年。「生き残ることを得た」/最終章の章タイトル「行方も知れず」は、鶴松亡き後に秀吉が詠んだ「なき人の形見に涙のこしおきて 行くへも知らず消え落つるかな」と、右近の出奔をかけたものであったか/強いていえば、自分が父や弟から、しだいに引きはなされつつあるのではないか、ということだ（信幸）/当主たるものは、どこまでも、わが一念をつらぬき通さねばなりませぬ。それがしもそのように、あなたさまを、お育てしてまいったつもりでござる(矢沢頼綱。信幸へ) この言葉を、信幸は忘れてはいない。いや、生涯、忘れ得なかった。/
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-11-15 |
ヴラドが、スルタンのもとへ単身乗り込んで一騎打ちを果たしたシーンに、武田信玄のもとへ単騎乗り込んで一騎打ちした上杉謙信の影を見て、ヴラドを逃がすために殿をつとめた親衛隊長が槍衾で立ったまま絶命したシーンに、武蔵坊弁慶の最期を重ねあわせてしまった。ヴラドの奇襲と、その後の串刺しにした捕虜たちの居並ぶ道は、オスマン軍を撤退させ、ひさびさに欧州に朗報をもたらした。その徹底抗戦は、その後支配下におさめられたのちも、自治を認められるきっかけになった、という設定に。真正面からの対決をあきらめたオスマン側は、オスマン宮廷で幼少の頃からすごしていたヴラドの弟を新たな公としてワラキアへ送り込み…と。
 | 秋田書店 発売日 : 2021-11-16 |
白凛之への膨らむ疑念、皇子たちの争いにまきこまれる、アイラと康王。登場するおだやかで地味めだが極秘の大事な使命を司る皇太子。その右腕としての白凛之、使命のための行動だったことが明らかになり。そしてアイラたちの反撃やいかに、と。この皇太子がのちの宋の欽宗なのだろうか、と思いつつ。その後の歴史がどう進んだか知る身としては、この明るくも温かな世界がどう流れていくのか、気になってしまう。
 | 新潮社 発売日 : 1987-10-28 |
草のものお江の甲賀潜入と戦い、逃れ得ぬと思い極めた時に差し伸べられた手、甲賀の本拠地で半年におよび匿われ療養し、追手と戦い脱出するまでがメインストーリーの巻。真田家としては、朝鮮の役への参加がもとめられ。/家康につかえる山中大和守と秀吉につかえる山中内匠が、ともに家康のために働こうと会談/「笑いたくなくとも、先ず、笑ってみるのがよいのだ」（馬杉市蔵。お江へ）。エヴァの名台詞にもつながる痕跡がこんなところに。（つながってはいないだろうけど）/お江の行方不明を幸村へも信幸へも告げず。”いまは昌幸も、肚を打ち割ることが不可能になった長男なのである”/信幸への通報が遅れたと、知らせてきた徳川の家臣に腹を切らせようとした小松/「太閤殿下が天下人となられて、世が治まったか？」（昌幸）/「殿、名護屋へおもむかれましたなら、めったに、草の者をつかわれてはなりませぬぞ」(矢沢頼綱)/柳生宗章へ刀術指南を懇願する鈴木右近/「沼田へは、お前に行ってもらったほうがよかったのかもしれぬ」（昌幸、幸村へ）/理屈や五感ではたらくようになってしまっては「もはや、忍びではない」/死ぬるなら働いて死ね（山中大和守、お江を逃してしまった杉坂重五郎へ）/幸村といい佐平次といい、これほどお江のことを絶えず気にかけている人びとがいるとは(又五郎)/与助よ、馬杉市蔵の娘を討ち取れ（山中大和守）
 | 講談社 発売日 : 2021-11-18 |
eikoの地元での大規模な町内対抗の演芸祭も佳境。三国志演義でフィーチャーされていた孔明の計略をこれでもかと盛り込んで、現代にお届けしてくれる楽しさ。計略で負けそうになったとき、最後に人の心を動かしたのは歌の力だった、というたてつけ、嫌いじゃないです。
 | 文藝春秋 発売日 : 2008-02-20 |
逢根あまみ「回転ベッドは恋人たちの夢を見るか？」を読んで、そういえば、そもそもなぜ回転ベッドは回転するのだろう、と思い、手に取った一冊。部屋の両サイドにプロジェクターとテレビがあって、見る時にベッドを回転させて調節した、とか、ストリップ劇場の影響でライトや鏡と組み合わせることであらゆる角度からお互いを見られるようにするため、とかの理由だったそうな。回転ベッドに限らず、ラブホテルの発祥、変遷、技術革新、多店舗展開など、そこにこめられた熱意と創意工夫、上に法あれば下に対策ありを地でいくしたたかさ、男性側のみからの視点での快楽から、女性が主導で楽しめる空間への転換など、読みどころ多くて面白かった。/以下、気になったところの抜粋、要約/ラブホテルの資料を見るのが大好き。そこに本気で「カップルの空間」を試行錯誤する愛すべき真面目な日本人の姿があるからだ。/1985年新風営法。回転ベッド、鏡張り、浴室の透明ガラスなど扇情的な仕掛けや装置が禁止。/作り手のこだわり。ケガしない。他の人にあわないよう出口にこだわる。バックヤードの従業員の動きやすさ。掃除のしやすさ。などなど人によりさまざま/昭和47年の法律規制でワンルーム・ワンガレージのモーテル営業は姿を消す。が、抜け道もあり/回転、上下動だけじゃなく、縦揺れ、横揺れ、ベッドそのものの空中つり上げ、ベッドの小刻みバイブレーションなどのさまざまな組み合わせ/お互いに離れたベッドがスイッチひとつでツーっと接近してドッキングするドッキングベッド/寝心地が悪い、回転時にキーキー音がする、メンテナンスがたいへん、服が巻き込まれる事故、など否定的な意見も/ラブホテルがシンプルで清潔な空間になったのも”女性が喜ぶもの”を重視するようになったから/ホテル側も犯罪にかかわりたくない。できれば広くていい部屋をたくさん作って、ホテルの質も客単価も上げたい。しかし、条例があるのでできない。皮肉な循環/自動精算機の導入で、従業の不正防止が図れ、多店舗展開がすすむ/足でつかんだ情報が重視されるゼミで、女性一人でラブホに乗り込むも門前払いされ、ゼミ発表に準備なしでのぞむことになったが、叱られ、しどろもどろに説明したあと、教授はニコッと笑って「ラブホテルは、女性一人だと入れてもらえないことがわかったということですね。君の足で掴んだ成果じゃないか」/カップルにとってラブホテルをより身近な存在にしたのは情報誌であった
 | 新潮社 発売日 : 1987-11-30 |
文禄二年、1593年から1598年まで。豊臣秀頼誕生。そして秀吉の死。いわゆる武断派と文治派の対立、三成の失脚と家康の蠢動までが描かれ。強烈だったのは、死にあたっての昌幸の叔父矢沢頼綱。「死にのぞんで頼綱、はきと、わかり申した」「真田の家ひとつ、天下にあってもなくても、どうでもよいということでござる」と。さすがの昌幸も言葉を失いその含意に戸惑う一撃だった。/以下抜粋、要約。淀の方懐妊がつたわってから、昌幸・幸村と、信幸が疎遠に。/「この先、いかなる事態が起ころうとも、真田家の血脈を絶やしてはならぬ」/千利休亡き後、秀吉の茶の湯のほとんどを司った織田有楽斎/おもいがけぬ場所で、おもいかけぬときに、人びとはそれと気づかず、すれちがって行き、愛憎の峠を知らずして越えてしまうものなのである。（p.88 猫田与助と荷車のなかのお江のすれちがい）/石田・小西は日本側の結束を乱そうとしている相手方の謀略にのせられているのでは、と//「そろそろ、わしの許へもどってもよいであろう。どうじゃ？」（信幸から左近へ）/ただ秀頼のことを頼むという最期の言葉に、これが己が敬慕した男の最期の言葉かと落胆する昌幸/大仏も焼けた。狂え唯、遊べ唯…浮世は不定の身じゃまで」(前田利家。松永久秀が大仏殿を焼き払ったときの歌)/大阪に流れ込んできた行商人や乞食の類を秀吉は「捨て置け」「あの者どもが、自ずから消ゆるようにいたすのが、天下人のつとめじゃ」/武断派に追われた三成を、家康にあずけよう、という佐竹義宣。それを受けて立った家康/
| 発売日 : |
個人的に、見た目を飾って何になると思い込んでた時期、花柄極彩色しか着たくない時期、落ち着いたモノトーンしか着たくない時期を経てきた身としては、読み終えて、服は武装でメッセージ、という思いに。著者や借金してでもマルジェラの新作を買い続けた元カレの、ひりひりするほどのファッション愛は触れると火傷してしまいそうだけど、火力を弱めて自分にあててみると、いくつもいくつも自分と着る服、着たい服、着てきた服への思いがあふれてくる、そんな一冊でした。「行く場所に合わせて服を選ぶことは、世界への告白のようなものだ」という一文には撃ち抜かれました。また、街中で突然「突然で申し訳ないのですが、そのお召し物とても素敵で似合っていて、どこで買ったかお聞きしたいなと思いました」と声をかけることがあるというエピソードも好き。
| 発売日 : |
アベハルカさんの短歌とエッセイの寂しさと切なさ。爆竹香織さんの誰かと深夜にとんこつラーメン食べに行くだけの「深夜ラーメンプラチナ家」に感じるこんな時間にという背徳感と美味しさと誰かと分かち合える歓び。詩と散文のあわさったような、コーヒーの描写が印象的だった、すなばさん。生湯葉シホさんの偶然知り合った先生と散策して語り合った一夜が描かれた作品、あたりが個人的には好きでした。あと、西川タイジさんの、初対面で童貞だろ！とからんできた先輩との話の続きが気になりすぎます。フルフィクション、モデル小松菜々だったとは。
 | イースト・プレス 発売日 : 2021-11-07 |
冒頭の、将来の夢、「強い恐怖や不安を抱えず、自分の人生に「大逆転」や一発逆転を期待しないくても毎日コツコツと、やろうと決めたことにたのしくとりくめて、視野や知見を広げていける生活を送ること」。地に足がついていて、すごくいいなあ、まわりの皆が職業をあげていたなかで、こういうことを考えていたことが尊く。ポーランドへの小旅行でそこに暮らす人の軌跡をたどり、語学学校で世界各国から習慣や英語の習得度合いなどさまざまな中でともにドイツ語を学んだことのかけがえのなさ、自分を養生することの大切さ…料理をする等で。あたりが印象に。友人たちのあつまりで、本の貸し借りを見ていた別の友人が「2人が読んだ本だから見てみたい。最後まで読めないかもしれないけれど」と話すシーンがよかった。
 | 講談社 発売日 : 2021-11-12 |
合成ダイヤを倉田屋に持ち込んで盗聴器をしかけていったオバさん。それを逆に利用して背後を探ろうとする鷹臣としのぶ。それを知り危ないからと倉田屋に住むことにした顕定。乃和との関係はなにかまずいことが持ち上がるたびにデュガリーのSNSでみなでトランプを楽しむ投稿をしてなんとか凌ぐ方向に。そして、合成ダイヤの背後に橘がいることを確信した鷹臣は…といったところまで
 | 星海社 発売日 : 2021-11-08 |
好きだから殺してほしい。会社の先輩桜井が撃たれたのは彼に惚れ抜いた女アド。そしてカナコの友人を人質にとってKの正体に迫ろうとする7。突然の呼び出しから、殺し屋オフ会再びからの、桜井とカナコの同居生活、最後は四つ巴の撃ち合いとなり…と。なかなかに展開がスピード感とアバンギャルド。
 | 新潮社 発売日 : 1987-11-30 |
1600年。上杉景勝の戦支度。石田三成の挙兵。家康の伏見から江戸への東下まで。以下、抜粋、要約/出浦対馬守幸久、信幸が沼田の分家の主となった際に本家からつかわされ、吾妻衆という忍びばたらきのものを組織/信幸とて謀略の効用をわきまえているが、謀略などというものは、生涯に三度か二度…いや、煎じつめれば（一度のことでよい）/「もしも、いまこのとき、私の兄が大老の一人でありましたらなら…兄・伊豆守信幸こそ、天下人として申し分なき人と存じます」(幸村。大谷吉継との対談で)/壺谷又五郎の子が、向井佐平次であることが語られ/可能不可能は問わず、両者のあいだにはいって調停するのが太閤から受けた恩をかえすことと思い極める大谷吉継/「武士の血は、なかなかに冷え切らぬものじゃな、又五郎」（三成へ味方すると決めたときの大谷吉継）/上杉景勝がこたびのことをひとことももらしてくれなかった、とうらめしげにつぶやく昌幸/犬伏。「親子三人、こうして語り合うは、太閤殿下の名護屋在陣以来のことであろうか」/おのれの五体のみなぎる情熱のままに生きる。そこに（弟の生きざまの、美しさがある）と、信幸は思っていた/身をたてようがたてまいが、世の中のことはみな同じようなものだ。天下人であろうが小者であろうが、人の世のいとなみは、みな、同じことだ(向井佐平次)/「おもいきり、馬を走らせていると、風が躰の中を吹き抜けて行くようなおもいがする」「その風が、おれの躰を吹きぬけるとき、おれの心ノ臓や腸や肝が風といっしょに躰の中から外へ飛び出してしまうような気がして、まことに凄まじく、こころよい」という16年前の幸村の言葉こそ、まさにいまの左衛門佐様、と思う向井佐平次/真田信幸のもとへあらわれた滝川三九郎/
 | 秋田書店 発売日 : 2021-11-18 |
窓の外を眺めながら「脳みそが食べたい…」に、「きみゾンビ？」と秀逸なかえしをされるところからあける3巻。羊の頭に脳みそにキン●マてなんだこのラインナップ、黒魔術師か！と激しくつっこまれつつも食べることはやめられないアサギさん。京都ですずめを食し、突発的BBQでは、ヤモリを焼いて食し、くせのなさに食肉としての可能性を感じ。最後は、「リョウさんはいちご嫌いじゃないよ、私がいちご大好きだからいつもあー言ってゆずってくれる」「何その不器用なやさしさ。どこの主人公！」「私の物語の主人公だ〜」というやりとりがほのぼのして好きでした。
 | 新潮社 発売日 : 1987-12-23 |
いよいよ関ケ原の戦い。前の巻の終わりからこの巻にかけて、石田三成無能、徳川家康有能、だから関ヶ原の東軍勝利は必然！みたいな後世に書かれた”ものの本”からのエピソードが目白押しでいささかゲンナリ。真田の草のものの、家康を三度、あと一歩まで追い詰めた活躍が救いか。あるいはそちらを鮮やかに描くための石田三成の描き方か。そして昌幸・幸村親子は、東軍の第二軍をさんざんに上田に足止めさせ、本戦に遅らせることに成功。西軍勝利であればどれだけの殊勲であったか、と。その戦乱のなか、昌幸は、お徳に産ませた末娘の於菊を滝川三九郎に預けることに。戦国の世の男たちのくだくだしい説明や理屈を抜きにした鋭い感能のなせるわざと語る作者。戦後、真田家取り潰し、昌幸・幸村に腹を切らせると思い極めていた家康に、信幸は家康の養女を娶った徳川の縁者、殿は遅参した秀忠殿を罰したか？と鋭くせまり、最後は、戦も辞さぬと決死の助命を請うた本多忠勝。それゆえに家康も翻意し、助命の上、っ高野山に流されることになった昌幸・幸村、といったところまで。
 | 講談社 発売日 : 2021-11-12 |
いままでのおそろいのなかで一番シロさんに喜ばれたわっぱの弁当箱と、ケンジお手製ののり弁/矢吹店長とご発注の20本の育毛剤とレモンパウンドケーキ/休日の朝の散歩（ケンジにとっては競歩）のあとのバターチキンカレー/シロさんケンジと買い物中にばったりケンジの元カレに再会/佳代子さんの孫がもう小四になっててびっくり/若先生の刑事弁護教官/小日向さんの救急搬送を機に、式をあげることを決意したジルベール/誕生日プレゼントのセレクトはまかせる、といわれたシロさんへの破壊力/と今回も盛りだくさんの19巻。着々と年を重ねる中で、シロさんとケンジの関係もじっくりと深まっていき、お互いへの思いの深さがあらためて感じられる巻でした。次巻に向けてはやはり、予告にもあるとおり、ジルベールと小日向さんの挙式狂想曲が気になるところ。特装版で気になったのは、以下のところ。原作で一番好きなカット「死ぬの？」を内野さんで見ることができ、感無量でした！（西島） それから終盤、ケンジがおめかししてレストランに現れるシーンがとっても素敵でした（よしなが） スタイリストがスタイリングしたドラマの着回しをマ「漫画でも着せたい！」（よしなが） 大切な人とおいしいものを食べて、「おいしいね」と言い合う時間を持つことで、元気になれる。この作品が伝えている”何気ない日常”の大事さを、今、多くの人が身をもって感じているのではないでしょうか。（西島） 原作者の脚本を書く時は保育園の先生になった気持ちで。大切なお子様をあずかるからには園に通ったからこそできることひとつでも増やさねばと（安達） いちばん気をつけたのはシロさんとケンジの距離感（安達） / 映画オリジナル ケンジがレストランにシロさんの指輪をもってきていたシーン/演じてるときだけぐわっとケンジになるんだもんな〜内野さんは（西島）タチなんだよね？ケンジはおネエ入ってるけどタチなんだよね？（内野）/漫画では若干うっとうしいなと思いながら描いていたケンジですが内野さんが演じるとただただキュートに見えるのが不思議です（よしなが）/
 | 白泉社 発売日 : 2020-09-04 |
「大正ロマンポルノ」盲目の遊女順子と文士志望崩れの学生信太郎。順子の思いはつのるが、貢がせるだけ貢がせて、最後は無頼漢から身体をはって助けてくれたのに自分だけ逃げ出す信太郎。その足音を聴きながら、いつか２人でダンスホールにいけたら…という思いを胸に意識が遠のき…からの、場面はいきなり現代。それは舞台演劇の脚本で、主演女優と主宰兼脚本家の一方通行のようなそうでないような関係が重ね合わせられ透けてみえるお話で。ジェットコースターのように思いを揺さぶられながら、役者としても一皮むけ、お前なんか捨ててやる、役者も辞める、と思い極めたはずなのに、ひきとめられ、結局はどちらも続いていき、二人の関係性も変化し、と。「徒花」新進気鋭の陶芸家が恋したのは、ギャラリーのオーナーの美しく美術界隈の知識も鑑識眼も豊富な大学院生の娘。一度はふたりで駆け落ちを試みるも、「でもその気持ちは刷り込みのようなものだ」「そうね でも恋とはそういうものでしょう？」と彼女は養父のところへ。どちらも揺さぶれるだけ揺さぶった初志が、揺さぶられたゆえに強度を増して、さらに貫かれていくものがたり。
 | 新潮社 発売日 : 1987-12-23 |
本多忠勝の命を引き換えに家康に迫った助命嘆願で、紀州九度山に配流されることになった真田昌幸・幸村親子。/信幸から信之への名乗りのあらため/佐平次へ、見送るとお前がそばにいなくなると確かめるようなことだ、いつでもそばにお前がいると思っている、と幸村/滝川三九郎と信之・幸村の妹於菊との結婚/「武士の一生は束の間のことじゃ」「その束の間を、いかに生くるかじゃ」（柳生宗章から三九郎へ）/「わしはな、何処へ行って何をしようが同じことだと思っている。あの夜、柳生五郎右衛門殿に、この太股を斬られたときから、ふしぎに、わが心が安らかになってまいってな」「束の間の一生よ」（三九郎）/宮中、豊臣方、家康方にも関係の深い小野お通の登場/蟄居からの十年の経過/加藤清正の料理人梅春の記述が登場するようになり/赦免についてはきっぱりとあきらめるべき、と遺言で信之にいってきた本多忠勝。/戦場での駆け引きに、真田の軍略を天下に見せつけたい、これが真田父子の真意/戦陣で大御所の首を撃ってこそ、兄信之は天下に引け目を感じぬ、それを草の者を使って暗殺したとすればなんとなる、と草の者独自に暗殺を画策したお江を諌める幸村、といったところまで
本屋を開くわけでも書店につとめるわけでもないのに、本好きとしては、本を売る現場って…というに興味があり買った一冊。出版営業一年目社員に向けて書かれた実務書、ということもあり、また出版社社員、書店員、書店経営者として著者の見知ってきたケースなので違うケースもあると断りつつですが、本が出版されてから書店に届くまでの流れがよくわかりました。買切りが必ずしも出版社、書店にとって一番とは限らない、商品の特性にあわせて最適解は異なる、安すぎる本は本屋としても売りづらい、などなど、出版する時に送料のためにやりたいことを捻じ曲げる必要はないが、A案B案在る時には送料のことも考慮してみては、とか、利用者にとっては便利なAmazonも出版社からすると、納得の行かない姿勢や条件提示があって、みたいな興味深い話がめじろおしで面白かったです。
毎号首を長くして新号を待っているzine「KITATRIP」。今回の題材は、やきとり弁当。函館でハセガワストアが売ってる名物なのは知ってたが、根室のセコマ系列のタイエーてコンビニでも売ってるのは知らなかった。味に違いはあるのか？その謎を知るために我々は旅立った…と根室へ向かったのですが、載せられているのは前半だけでto be continued。併録のKITATRIP5.5、Ruby on railsで作る各駅時刻表は、IT部署にいる身としては面白く読んだのですが、はじめてほどないプログラムでここまで意欲作に取り組んでものにしちゃうの、すごいなと思いました。最後はなつかしの歴代表紙ふりかえり。正直本編の旅ものが前半のみだったので食い足りない気はするのですが、なぜそうなったかの事情はtwitterで存じ上げているので、あとは続きを伏して待つのみの心境です。
 | 新潮社 発売日 : 1988-01-28 |
二条城での、徳川家康・豊臣秀頼の会談が中心に。立派に成長し、大阪の人々の人気も高い秀頼、その柱石となる覚悟をもって両脇にひかえる加藤清正、浅野幸長。それを目の当たりにした家康は、自分の目が黒いうちに豊臣家をつぶしておかないと禍根に、と思ったというのが真田昌幸の観察、という見立て。しかし昌幸はあっけなく配所で息をひきとり。また清正、幸長も相次いで世を去り、毒殺のうわさがながれ。/1614年前まで時はすすみ。8巻と9巻はときの進むすのが早く。/馬場彦四郎の登場/江戸幕府が方広寺の鐘にいいがかりをつけて、豊臣家へ三箇条を出す、といったところまで
 | 新潮社 発売日 : 1988-01-28 |
9・10巻を読んで思うのは、豊臣秀頼像の急激な変貌。英邁の気質から凡庸へ。柱石となる大名は失ったが、大阪城での環境はそれほど変わらなかったように思うが。そこは語られず。/幸村の、配所を脱出しての大阪入城/向井佐平次が勧めても勧めても身をたてようとしなかったのは、大阪へ出奔する日があることを思い、そのときに信之に迷惑をかけぬためではなかったのかと思慮する信之/お江を追い続けた猫田与助の最後/真田丸の構築と、そこへ東軍を引き寄せて痛打し、盛名を高からしめた幸村/幕府からの和睦工作/幸村はじめ戦将たちにあまりに無礼、と淀君、大野治長、織田有楽の暗殺を進言するお江と却下する幸村。/「いまさら和睦して何となる」という秀頼の怒りをよそに、和睦はなり/といったところまで
 | 小学館 発売日 : 2021-11-25 |
第二次ウィーン包囲から、トルコ共和国成立まで。ポイントをつかんだ説明で至極わかりやすかった。あいまあいまに出てくる勢力図、地図も理解を助けてくれて。
 | 講談社 発売日 : 2021-11-22 |
張扇を叩く音が近所迷惑と怒られ、けど謝って説明したら聞きにきてくれたけど…。妻の介護で講談から離れそうな兄弟子を、さりげなく引き留めることになる師匠、妹弟子、弟弟子。女子高に学校講談ででかけるも無反応、つまらない、に心折れそうになるも、最初は否定的だった子の中に「は組小町」のような激しい炎をつけることに。今どき義士ものは流行らぬ、苦手という声に、あれはすれちがう物語、年を重ねてすれ違うことが多くなると好きになるものと穏やかに語り聞かせたり。などなど。
 | 新潮社 発売日 : 1988-03-01 |
池波正太郎には関ヶ原の西軍も大坂の陣の豊臣家にも、愚かな戦をしやがって、うまくやれば勝てたものを、の思いが強いんだろうなあ、というのを読んでて端々から感じた。/和睦の折り、幸村のもとをおとずれ、旗本にありながら、幸村の冬の陣での活躍を「胸がすいた」と語り去っていった滝川三九郎/信之の、お通への募る慕情/寝返りを説得せよ、と設けられた信之と幸村の兄弟対面。しかし幸村にその気がないことは対面した瞬間にわかり、死ぬ前に兄をひと目見たかっただけと知り、それからは思いの丈を話し合う兄弟の場面「大御所が憎いのか？」「いいや…」「では、何故に戦うのじゃ」「わかりませぬ」「何と」「まことに、わからぬのでござる」にこめられた万感/初一念とは、事にのぞんで一瞬のうちに決意をかためることだ。その一瞬に、決意した者の全人格が具現されることになる。口に出さずとも、武士にとって、この初一念ほど大事なものはない/「若いころは、さておき、いまのわしは、鏡のようなものじゃ」 家康を怖れ、家康を敬愛し、家康を憎み、家康に親しむ、百人百様のひとの心が、家康という鏡に映っているというのだ 相手の出様によっては鬼にも仏にもなる/
2021年11月06日
2021年10月に読んだ本 その2
(1016・近藤ようこ（澁澤龍彦原作）高丘親王航海記 4
(1016・ヤマシタトモコ 違国日記 8
(1016・舞妓さんちのまかないさん 18
(1016・こぐまのケーキ屋さん 6
1017・小西章子 イスラムスペイン千一夜 図書館
(1017・ちおちゃんの通学路 1
(1017・犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい 7
(1017・会社員でぶどり 6
(1017・中村明日美子 鉄道少女漫画 1-4
(1017・市川ラク オダリスク 上・下 kindle 20211015
1018・北村紗衣 批評の教室 —チョウのように読み、ハチのように書く (ちくま新書) kindle 20211009
1021・ゆめみるけんり 5号 がたんごとん 文学フリマ札幌
1021・CONNECTERS MAGAZINE 2020 ツナイデ ツナガッテ ヒトツニ ナッテ 文学フリマ札幌
1022・札幌市交通事業小史 平成20年(2008年)1月から平成29年(2017年)12月まで 図書館
(1022・さっぽろ市電BOOK 図書館
1023・札幌市電が走る街今昔 図書館
(1023・北爪宏幸 機動戦士Zガンダム define 9-16 自遊空間
(1023・それでも吉祥寺だけが住みたい街ですか？ 1
(1023・片喰と黄金 6
1024・松田青子 スタッキング可能 キノカフェ 20210925
(1024・city hunter外伝 伊集院隼人氏の平穏ならぬ日々 5
(1024・喰う寝るふたり住むふたり続 1
1024・スペイン史 1 山川出版社 図書館 …後ウマイヤ朝からナスル朝まで読了
1024・サルトル 水いらず 20210925 キノカフェ
1025・アントニオ・タブッキ インド夜想曲 図書館
(1026・江戸時代の経済入門 1-3 kindle 1.
1026・白石かずこ JAZZに生きる シャンティブックス 20211007
(1026・南泰裕 イスタンブールの街と建築 国士舘大学理工学部紀要 10(2017)(pdf)
1027・吉野万理子 海岸通りポストカードカフェ 図書館
1028・江國香織 東京タワー 20211022
1029・【再読】アントニオ・タブッキ フェルナンド・ペソア最後の三日間 図書館
1030・マグダレナ・トマシェフスカ＝ポラウェク ポーランドの食卓(pdf)
(1030・宮武志郎_地中海世界におけるユダヤ教徒 _オスマン帝国を中心に(pdf)
1030・MAYA MAXX 移住は冒険だった seesawbooks-sundy books
(1030・黒田佑我_アンダルス社会から封建社会へ_農村社会構造研究とレコンキスタの新解釈(pdf)
(1030・柿沼陽平_唐代安西四鎮関連遺址踏査_中国新疆ウイグル自治区・キルギス北部・ロシアウラジオストク(pdf)
1031・アントニオ・タブッキ 島とクジラと女をめぐる断片 河出文庫 図書館
(1031・うかうか 貼りまわれ！こいぬ 2
(1031・ムラービト朝のアンダルス支配とその受容に関する研究調査(学生海外調査研究)(pdf)
(1016・ヤマシタトモコ 違国日記 8
(1016・舞妓さんちのまかないさん 18
(1016・こぐまのケーキ屋さん 6
1017・小西章子 イスラムスペイン千一夜 図書館
(1017・ちおちゃんの通学路 1
(1017・犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい 7
(1017・会社員でぶどり 6
(1017・中村明日美子 鉄道少女漫画 1-4
(1017・市川ラク オダリスク 上・下 kindle 20211015
1018・北村紗衣 批評の教室 —チョウのように読み、ハチのように書く (ちくま新書) kindle 20211009
1021・ゆめみるけんり 5号 がたんごとん 文学フリマ札幌
1021・CONNECTERS MAGAZINE 2020 ツナイデ ツナガッテ ヒトツニ ナッテ 文学フリマ札幌
1022・札幌市交通事業小史 平成20年(2008年)1月から平成29年(2017年)12月まで 図書館
(1022・さっぽろ市電BOOK 図書館
1023・札幌市電が走る街今昔 図書館
(1023・北爪宏幸 機動戦士Zガンダム define 9-16 自遊空間
(1023・それでも吉祥寺だけが住みたい街ですか？ 1
(1023・片喰と黄金 6
1024・松田青子 スタッキング可能 キノカフェ 20210925
(1024・city hunter外伝 伊集院隼人氏の平穏ならぬ日々 5
(1024・喰う寝るふたり住むふたり続 1
1024・スペイン史 1 山川出版社 図書館 …後ウマイヤ朝からナスル朝まで読了
1024・サルトル 水いらず 20210925 キノカフェ
1025・アントニオ・タブッキ インド夜想曲 図書館
(1026・江戸時代の経済入門 1-3 kindle 1.
1026・白石かずこ JAZZに生きる シャンティブックス 20211007
(1026・南泰裕 イスタンブールの街と建築 国士舘大学理工学部紀要 10(2017)(pdf)
1027・吉野万理子 海岸通りポストカードカフェ 図書館
1028・江國香織 東京タワー 20211022
1029・【再読】アントニオ・タブッキ フェルナンド・ペソア最後の三日間 図書館
1030・マグダレナ・トマシェフスカ＝ポラウェク ポーランドの食卓(pdf)
(1030・宮武志郎_地中海世界におけるユダヤ教徒 _オスマン帝国を中心に(pdf)
1030・MAYA MAXX 移住は冒険だった seesawbooks-sundy books
(1030・黒田佑我_アンダルス社会から封建社会へ_農村社会構造研究とレコンキスタの新解釈(pdf)
(1030・柿沼陽平_唐代安西四鎮関連遺址踏査_中国新疆ウイグル自治区・キルギス北部・ロシアウラジオストク(pdf)
1031・アントニオ・タブッキ 島とクジラと女をめぐる断片 河出文庫 図書館
(1031・うかうか 貼りまわれ！こいぬ 2
(1031・ムラービト朝のアンダルス支配とその受容に関する研究調査(学生海外調査研究)(pdf)
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-10-12 |
海上での妖しい出来事。その最中真珠を飲み込み喉に張り付いてしまった親王。シュリーヴィジャヤに流された一行はパタヤ姫と再会し、命数を見定めた親王がもはや天竺へは行けぬと語ると、餓虎投身の故事にならいて、いまのシンガポールで虎に食べてもらえば虎が天竺まで運んでくれるとすすめられ。逍遥と死の道へつく親王の航海記ここに完結。現実と幻想の双方をたゆたうような心地。原作も読み返したくなった。
 | 小学館 発売日 : 2021-10-12 |
おだやかに、キヨ、すみれ、健太の日常が描かれる巻。大きな事件もストーリーの展開もなく、ただ、そこにある喜び、お互いの存在を感じつつ。健太と先輩の銭湯でのやりとりが気になる。そう見えてたのか、野球を諦めても野球をかわらず好きという気持ちが、と。
 | 小学館 発売日 : 2021-10-12 |
クマの店長が雨にはしゃいで店の外で踊れば、雨なのにたくさんのお客さんが訪れ、お休みの日に店員さんとお互いを気遣って優しいすれ違いがおこったり。
| 河出書房新社 発売日 : 2020-02-06 |
穂村弘作品で何度かふれられていて気になったので。これから泳ぎにいきませんか、という本のタイトルにもなった発言は、夜十時の打ち合わせが終わったタイミングで、二階堂さんから穂村さんへ発された言葉。机の上に差し出された水着とともに。その後泳ぎにいったかどうかは語られてないのだが。膨大な読書量と思索、くりかえし語られる神への愛、耽美的な指向、フェミニズム思想、コスメへの愛、E.M.シオランさえ手ぬるいと感じさせる厭世思想、人生の時々を支えてくれる書物からの言葉。死の間際の死へ踏み出し踏みとどまり揺れている様は読んでるこちらまで苦しさに震えてきた。著者を導き照らしていた雪雪さんの文章を読みたくなった。巻末に著者と生前かかわった人たちからの文が寄せられているが、津原泰水のが一番痛切だった。/シモーヌ・ヴェイユ「重力と恩寵」を読もうか（自分がぐちゃぐちゃになるとこの本を読みたくなる）(57)/愛欲がらみの犯罪を立て続けに見せられると、恋愛という、一つ一つが特別で一回限りと思われるものが、実は誰にでもどこにでもいつでもあるごくごく陳腐なものだと思い知らされる。それでもいいのだ。(63)/わたしは生きていることに絶望などしない。なぜなら希望を持っていないから。それは生を悪いものとして低く評価しているということではなくて、評価をしていないということである。生を呪うのは裏切られた者だけで、そして裏切られるのは信じていた者だけなのだ。(96)/「もしもし、二階堂です。私あと五分で昼休みが終わるのですが、今神保町にいまして、古本の神様があと二軒廻ってから帰れといので休憩を三〇分いただきます。」(164)/私はしばしば罰せられ許されたいと思う。私は完璧ではなく、罰せられてしかるべき存在であるのにもかかわらず、愛されたいと願う。(197)/泣いているのは世界が美しいからです。世界が美しいのは、失われるからです。とても綺麗です。どうか、この一瞬にすべてが消えますように(340)/「そうよね。自分を自分で作れないで生きていて、どうするっていうのよね」(393)/165 あまりにも激しく祈る者は、自分に向けられた祈りには応えないもの。（雪雪「叙景集」『醒めてみれば空耳』）(427)/幸せになって。私をしあわせにしてくれたみたいに、哲、自分をしあわせにして。(525)/君は何度も僕を助けてくれたのに、僕は君を助けられなかった。無垢な魂の悲鳴に耳を傾けなかった。死ぬまで悔やむだろう。(津原泰水)(549)
 | 中央公論社 発売日 : 1995-08-01 |
ワシントン・アーヴィング「アルハンブラ物語」を読んだ勢いで次に手に取った本。十年以上ぶりの再読。割合的には、後ウマイヤ朝：ナスル朝グラナダ王国：それ以外で、6:3:1ぐらいの割合。後ウマイヤ朝、特に始祖のアブデラマン、最盛期を現出したアブデラマン三世については魅力的に描かれもっともっと知りたくなった。ジルヤーブは詩作、音楽、料理、美容の面でコルドバに洗練された文化をもたらした/コルドバの通りには8万軒の店、950年頃には立派に舗装され、牛車が定期的に清掃、夜には家々の壁に固定された街灯で明るく照らされていた。大学と高校が17、何十万冊の蔵書を誇る公共図書館が20(ジグリト・フンケ「アラビア文化の遺産」)/アブデラマンの死後、遺品からでてきたメモ。「なんの憂いもなく心から楽しめた我が人生の日々」、わずか十四日/アブデラマン三世が建設した宮殿都市、メディナ・アサーラ/といったエピソードの数々に惹かれ。/グラナダ王国は、カスティーリャ王国への臣従にはじまり、文化的には爛熟期を迎え、マホメッド五世時代にはベン・アル・ハティブ、ベン・サムラック、親密にかかわりあうモロッコには、イブン・バットゥータ、イブン・ハルドゥーンという多彩な文化人を輩出/ただ末期グラナダ王国の人々については「彼らは国家にとって不可欠な協力し合う心とたくましさを失っている。彼らは家系図にこだわるのみだ」（イブン・ハルドゥーン）、「保守的。きちんと税金を払い、優雅に着飾り、美食する。・・・女性は小太り。宝石類に包まれる。」（アル・ハティブ）と評される。その最後については、"名誉さえ捨てても守りたい（略）キリスト教徒の土地で暮らし、彼らの文化に触れた経験のあるボアブディルは、イスラム文化の結晶であるアルハンブラの価値を誰よりも認識し、アルハンブラをメディナ・アサーラにしてはならない、との思いがあったのではないか。"(p.260)と評価する。
 | KADOKAWA/メディアファクトリー 発売日 : 2014-09-23 |
自意識過剰系エクストリーム通学漫画。おもしろい…けど、三話くらいでよかったかな。
 | 講談社 発売日 : 2021-10-13 |
歯磨き粉なしで歯を磨こうとしたら、ととと、と歯磨き粉のとこまでいって、あじ、て顔でこっちをみる犬。寝ぼけてとかげのケース落としそうになってきつめにおこったら、神妙な顔で聴いてくれた猫。寝ようとしてたから布団どけてあげたら、ありがとうありがとうと後ろついてきて、楽しくなってきて寝るの忘れちゃった犬。抱こうとして足を突っ張ってきてる間に寝てしまった猫。12年も経つと眠いが勝つ日が多いみたいですがそれもまた愛しく。
 | 産業編集センター 発売日 : 2021-09-15 |
取引先三兄弟、仲良すぎて、zoom会議の画面一個にみっちみちで出てくるの楽しすぎる。
 | 白泉社 発売日 : 2011-01-31 |
1-4巻読了。小田急線を舞台に、連作短編集。時刻表や乗り換えに詳しい人が出てきて、それが物語のキーになり。駅員さん、車内でスリを働いてた女子高生、弟と妻がロマンスカーで逃避行したのではと疑うゲーム制作会社社員、洋菓子店の奥のNゲージ鑑賞に集う人々。最後の集う人々を描いた「木曜日のサヴァラン」が、スピンオフとして2-4巻になる構成。わかりやすすぎる小平とわかりにくいアコ。なんか、前の恋忘れるのに一巻、好きだと気づくのに一巻、その先へ踏み出すのに一巻、て、あとがきにあったけど、自分のこと好きじゃなくても、コミュニケーションとってとってとり倒して、いい反応もらえなくても折れずに、最後はうまくいくって。必ずそうはならぬとは思うが、王道と言えば王道かなあと。小平の下の名前を3巻の真ん中まで引っ張ったこと、みさっちんの誇り高き乙女ぶりと、アコのことをよく見て理解してここぞというときに背中を押す役目が印象に。
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-10-12 |
スルタン・スレイマン、ヒュッレム、大宰相イブラヒム、マヒデヴラン、トプカプ宮殿とそろいぶみなのに、なぜにアスマンスカヤ帝国なのだろう、と一抹の疑問は抱きつつ、絢爛たるハレムの世界で、スルタンの奴隷の身でありながら、己の我を通し、宦官長への恋慕を全うしたマハスティを中心に描かれる絵巻。ヒュッレムを、国政もハレムも統括できる有能な女性と、イブラヒムを、有能だが驕慢でスルタンの地位を害し得るもの、と描く。スレイマンの目を逃れて、そこまで気ままにできたかな、と思うところはあれど、あったかもしれない一幕として楽しむことができました。
 | 講談社 発売日 : 1976-10-12 |
憧憬を抱いてアルハンブラにやってきてしばし居を定めた著者が現地の人と交わりつつ聞いたグラナダを舞台とした伝説、民話が語られる。そこからは3つの類型が浮かびあがる。(1)予言者の言葉を信じて親の都合で子を幽閉する王たち、(2)ボアブディルは逃亡したのでなく廷臣たちとともに、魔法にかかって、山中に隠れた宮殿に潜んでる、(3)ナスル朝の隠された財宝がグラナダの地下に眠っている。(1）はともかく、(2)(3)は著者いうところの大半が貧しい生活をおくる人々がひとすじ抱く小さな夢といったところだろうか。つねに国と人民を心から愛し、人一倍の苦悩と屈辱を体験し、壮大なアルハンブラ宮殿を築いた<美>の崇拝者でもあったナスル朝初代ムハマド・アブ・アルアマール王によって着工された幻想の宮殿は、ユスフ・アブル・ハジャジ王によって1348年に完成、と宮殿もそれを作り上げた王たちにも惜しみなく讃辞が送られ。「教えてあげますとも。愛とはひとりでいれば苦しみ、二人になれば至福でありましょう」と愛を語るつばめ、が一番印象に残った。
文学フリマ札幌で、参加作家のひとりで運営にも携わっていたやまだなおとさんのブースで購入した一冊。ギャラリー犬飼で2020年9月に開かれた展覧会の図録。個人的には、初めて自分で自分のために絵を買った展覧会。その坂田玲楽作品の他のものも載っていてうれしく。…なぜ展覧会のとき、図録買わなかったのかな、たまたま品切れだったのかな。既知の森迫暁夫、やまだなおと、佐藤まゆ各氏の作品以外では、木々野まや作品（目が描かれてない8人のイラストが、雄弁に表情を伝えてきていて）、田村結衣作品（見てるだけで切なさと郷愁をさそわれるような女性）、なしなほしの作品（口をゆがめたスーツの男性が空のワイングラスを逆さにしてる図に、あのさー、と語りかけられそこから一夜分の物語が語られそうな空気）が気になりました。豪華だったのは、松浦シオリインタビュー。インタビュアーとの親密さと真摯な回答のやりとりがたのしく、また長いこと蒼野甘夏ファン、というのは作風からしてもすごくわかる気がする、と思いました。熱かったのは、巻末のこれからのCONNECTERとは！みたいな4人の対談がおもしろかった。開かれてるところと閉じてるところみたいな話も面白かったけど、厳しい言葉のなかにも愛があふれてて、田中さん、やまださんのこと好きすぎでしょ！とも思いました。
月並だけど、さまざまな詩と散文に触れて、いい言葉がたくさん身体に入ってきた感。毎回楽しみにしてる「砂漠に生きる」さんの作品、出ていった彼女と残された猫をめぐる物語もどちらなのか曖昧さを感じさせるところ、ピリッとさせられるところが、よかった。/遠くの他人に石を投げるよりも前に、例えば、隣で眠る人に毛布を掛けてやることが、私たちにはできる。行為で。言葉で。ただ居ることで。(工藤純) /佐々木美佳「フェミサイド」という詩/僕はこの凝縮された時間のなかで祝福された（倉畑雄太）/かまわないよ何に変身したって カエルになったら私は池を掘ろう 星になったら私は宇宙を産もう 一緒にいてくれるならいてさえくれるなら(プロホロワ・マリア)/ぼくは絶望に打ちひしがれてはいない。過去に囚われて、ふさぎこんだりしない。人はいつでも、前に進むことしかできないのだから(砂漠で生きる「ニコール」)/コンゴ出身の作家Fiston Mwanza Mujila”Tram83”の作家自身の朗読。”独特の抑揚とボイスパーカッションに身体的表現を交えながら、土埃を上げて様々な乗り物が行き交うコンゴの街の情景を巧みに表現”/「線を引いてみないと、その線が間違っていることにも気づかないよ」(ことたび-ふじたみさと往復メール)/ペソアのいう「サウダーデ」は、たんなる郷愁ではなくて、選ばれなかった世界への、なつかしさなんだって(ふじたみさと)/私たちは、物事を欲しており、かつ欲していない。私たち自身が、変化し、矛盾し、分裂しているからだ。そうして万物は消え去り、無と化す。趣味も例外ではない。(レンシ「わが痕跡」)/観察する誰かがいなければこの世界は存在しないし、その世界がどう造られてあるかということに責任を持つのは私たちだ。私とは、始まりだ。（略）どんな終わりも、それはただ新しい始まりでしかない。(Kamila Rin )/といったあたりが、心惹かれた。自分とは違う視点、見方にふれ、触発された感に満ちた一冊だった。
| 発売日 : |
市電沿線のメジャーな観光地以外のところがとりあげられていて面白い。西線14条界隈では、住宅街のなかの公園までとりあげられている。旧小熊亭、2017年までカフェ営業していたようだがいまはどうしているのだろう。昔中央図書館にいきがてら何度か足を運んだ「町子ママの店かしわ亭」は軟石造りの建物として紹介されていたが、すでに閉業とのこと。2015-2018年のどこかで閉店したようだ。西4丁目停留所を東に歩けばタイムスリップの醍醐味、創成橋、島義勇判官が札幌の建設を始めた場所、そして大友亀太郎像、と。 旧新通商店街をはじめ、いくつかの商店街が解散してしまったのは時代の流れとは云え寂しい限り。ミニ大通は、一度散策してみたい魅力。地元に愛されるスーパー「ベンリー」など、地場に根付いたお店が息づくところでもある、と。
ひもとくと、猛烈な合理化をはかり黒字化を前倒し、一方、可動式ホーム柵の設置、女性子ども車両の導入、SAPICAの開始、市電のループ化、さっぽろ駅連絡通路柵の撤去、ミルポ（授乳スペース）の設置等必要な施策はうっているが、一方乗客増の施策は本当に効果があるのだろうかというものが載ってて首をかしげる（たとえば、つり革をハート型にすると乗客は増えるのだろうか）。関連するトピックスとしては、この時期に地下歩行空間が開通したことか。
 | ジェイティビィパブリッシング 発売日 : 2012-08-29 |
シリーズの特徴のようだが、この、定点観測で、昔の写真と今の写真を対比させる構成はすごくいい。馴染みの深い景色の往時を知ることができて、タイムスリップの醍醐味。自分がよく知るあの道路、この街に市電が走っていたことを想像して。ただ、懐古がすぎるあまり、あちこちで、高層マンションが建った、景観がぶちこわしだ、という類のコメントを見るのは違和感。市電が使われ、残っていくのにも、経済の発展は必要であり、そこはある程度景観とはトレードオフの関係になるのでは。中心部では商業施設の盛衰や繁栄の中心の移動が語られ。また、この本の時点ではあったものも、今となっては閉店、解体が決まっていてそれもまた感慨（4プラ、大通TSUTAYA、パセオ、ラフィラなど）。保守部門の方の思い出で、市電の深夜の走行試験でブレーキ音がうるさくて苦情が来て、早朝の短い時間にやらなければならなくなった、図面のコピーは青焼きだったが、さらにその原理を応用して太陽光で青焼きしてた時の苦労なども。西線6条の喫茶「市鉄沿線」は一見さんにはハードル高そうだけどチャレンジしてみたい。西線14条の本田珈琲から市電をながめるのもよさそう。北の方に目をむければ、イオン麻生が牧場の跡地だったとは。市電があるころはのどかな光景だったことがしのばれる。
 | KADOKAWA/角川書店 発売日 : 2015-03-24 |
9-16読了。アムロの合流。「人の命令では動けない」と決然と語るフォウの登場。私たち敵同士らしいわ、それって大人の都合だよな、と接近するフォウとカミーユ。これは軍事作戦だぞと叱咤するアムロに、あんたにぼくの気持ちがわかるのか、と個人の感情優先なカミーユ。フォウと戦いつつ彼女を救おうとするカミーユの試みは果たせず。クワトロからカミーユを導くよう託されるアムロ。フォウのスードラへの特攻により、カミーユの属するアウドムラは救われ。それにはカミーユが行ってたとおり自分の記憶が救えるという研究所への望みが絶たれた面もあったのか。エマ・シーンの復調。ハマーンはスミレ・ホンゴウのメモをもとに新型キュベレイを手にし。12巻は一転して、地球圏へ向かうアクシズ内部の亀裂を19歳の摂政ハマーンをめぐる人々ともに描き出す。最終的には反乱を鎮圧しシャアの正体を知り、自分とアクシズを捨てたことを悟り、摂政として一人でもジオン再興を果たすと決意するまで。/13巻からは、サブタイトルが、シャア・アズナブル赤の分水嶺、に。月に派遣されるヘンケンとユイリイ。キリマンジャロのティターンズ本拠潜入を目論むカイら。ジャブローでの核使用をエウーゴのせいと全世界へ宣言するジャミトフの卑劣。いままで隠していた正体をあかし、自らがシャア・アズナブルであることを明かした上で、あらためてスペースノイド独立に力を貸して欲しいとうったえかけるシャア-結局身分を隠しても明かしても道化を演じることにかわりはないと独語し。作戦をともにしつつもシャアが正体を隠していたことを内心どうしても許せないカミーユ。サラのティターンズ潜入など八面六臂の活躍。迫るバスクの非道な月へのコロニー落とし作戦の発動。そこに残るエウーゴと連邦兵の救出を基地でみちびいたのは、サラとファ・ユイリイだった。エウーゴ、シロッコ、それぞれの援護は受けつつも。最後はシロッコがジャミトフへの手土産とともによいポジションでのティターンズ参入を画策するところまで。ヤザンがただの戦争大好き野郎から、さらに仲間を大事にし非道を見過ごしにできない側面を加えて深みを持たせられている。アニメ版に沿うだけでなく、それぞれのキャラの背景に深みをもたせ、事件の関連付けを変えたりすることで、より説得力をもたせるストーリーになっている。
 | 講談社 発売日 : 2021-10-20 |
いつのまにか、新シリーズに。双子の姉妹が経営する、吉祥寺にあるのに、吉祥寺に住みたくて来たお客に、話をきいてぜんっぜんちがう街を、あんたにはこっちがオススメ、と長時間連れ回してその街を一緒に楽しんだあとに内見するスタイルの不動産屋さん。今回は、日本橋浜町、立川、湯島、高円寺。ズバズバ言うけど、最後に、そんな事情が合ったとはしらなかった、なのに色々否定してごめん、でもいいんじゃない？愛情を注ぐ練習ができれば、としめくくられることも。日本橋浜町は、都営新宿線で通るだけで、降りたこともない街だったけど、いつのまにかランドマークになるようなおしゃれホテルに、オンリーワンな飲食店がつどう街になっていたとは。真っ黒なイカクリームコロッケ、そそられます。
 | 集英社 発売日 : 2021-10-19 |
先生を連れかえりにきた妹&幼馴染コンビとの賭事勝負。アメリアは勝負に負けたが説得が功を奏し、仲間に加わることに。セントルイスでは、イザヤのパトロン家に滞在、のっけからグイグイとアメリアのプロポーズから始まり、イザヤとパトロンの鮮烈で紆余曲折経た関係が語られ。ここのとこ、面白かった。最後は彼がコレラらしき症状で倒れ、さて、といったところまで。相変わらずこの時代のアメリカ史、興味が尽きない。
 | 山川出版社 発売日 : |
(2021/10/24読了分)佐藤健太郎「第3章 イスラーム期のスペイン」を再読。「アルハンブラ物語「イスラム・スペイン千一夜」でひろがったロマンとファンタジーをキュキュッとひきしめてくれる。今回は特に、後ウマイヤ朝に着目して読み進め。ウマイヤ朝期は、中央の政争と連動してイフリーキヤ総督が任命・解任されるのと連動してアンダルス総督も任命・解任されるケースが多かった。ただ不安定な統治にも関わらずフランスへは出征をくりかえし。740−750年代のアンダルスは、アラブとベルベルの対立、「土地のものたち」とシリア軍の対立、南北アラブの対立と幾重にも入り組んだ対立関係のなか推移。（”アラブ”というと一枚岩の印象があったが南北で対立していたのは知らなかった）そこでアンダルスに後ウマイヤ朝をうちたてのが初代アブドアッラフマーン一世。ただし十世紀初頭まではアミールを名乗るのみ。バグダードのカリフの宗主権を否定しつつ、自らの宗主権をアンダルスの外へ伸ばそうとは考えてなかった。後代、アブド・アッラフマーン三世のとき、ファーティマ朝がカリフを名乗るにおよび、障害はなくなったといわんばかりにカリフを名乗る。反乱が頻発したのは、土地のものとアラブの対立、また西ゴート以来つづく地域社会における中央集権化への反発が原因となっていた。また末期には主たる軍事力を外部出身者に頼る構成となっていき、滅亡の遠因となった。「豚の世話をするよりは、ラクダの世話をするほうがマシ」というターイファ時代のエピソードは、ムスリムの君主がキリスト教国にくだらずムスリムの国家（ムラービト朝）に助けを求めるのは必ずしも自明ではなかった証拠としてとりあげられる。ムラービト朝はターイファ諸王朝の非合法税を撤廃し支持を得た。これはキリスト教国に貢納をしなくて良くなったことも一因。しかしキリスト教国への軍事的敗北が重なると一気に存在意義がゆらいだ。また、マイモニデスがムワッヒド朝の支配を嫌いエジプトに移住したように、キリスト教勢力の侵攻とそれに対するジハードが断続的に展開されるこの時代は、非ムスリムにとって決して居心地のよいものではなかった。ナスル朝下にはジンミーはほとんどいなくなる。ナスル朝初代ムハンマド一世は、諸勢力と入れ替わり立ち代わり結んだあと、カスティーリャ王に臣従する形から、ナスル朝をスタートさせる。ナスル朝-マリーン朝連合は、サラード川の戦いで破れ、キリスト教国にジブラルタルの制海権をあけわたす。しかし、その後のカスティーリャでのペスト流行と内紛、マリーン朝のアンダルス介入から自由になったことで、軍事的圧力が弱まった14世紀後半、ユースフ一世、ムハンマド五世の治世に相対的な安定と繁栄の時代を迎える。(2019/11/10読了分)佐藤健太郎「第3章 イスラーム期のスペイン」(『スペイン史 1：古代 – 近世』関哲行、立石博高、中塚次郎編、山川出版社〈世界歴史大系〉、2008年、70-135頁)読了。ナスル朝について、簡潔にして要を得た通史が得られる。配下がほぼムスリムという同質性、状況によってどことでも結ぶ変幻自在の外交、アルハンブラ宮殿をはじめとした最盛期の文化、スルタンの正確な在位年をならべるのが困難なほどの宮廷闘争、ジェノヴァ商人の活躍、など。
 | 筑摩書房 発売日 : 2021-09-09 |
精読する、分析する、書く、コミュニティをつくる、の四章からなる。何かを読んだり、観たり、聴いたりした時に、「感動した」「面白かった」だけでなくその向こうにたどりつきたい人に、その感動と面白さがどこから来て、それはなぜなのか、と考えを深めていくための方法が平易に語られる。ただそれが簡単にできるかは人それぞれ。作品の精読は必須だが、精読だけでは足りず、背景の理解、他の作品との関連・差異を図るには、たくさんの作品に触れるしかない、と。何度も出てくるものを書き留めてなぜか考えたり、図に書いてみたり、タイムラインを書き起こしてみたり、これは参考になる感。一冊一冊にやるのは手間かもしれないけれど、これはと思った作品に大してやればいいのでは、と思った。そしてこの本で提示されてることをすべて理解した上でなら、その批評作法を逸脱するのも必要。それが批評者の味になるのだろう、と。またコミュニティをつくる、で実際の授業で生徒とお互い批評しあい、それについて対話するところ、実践的ですごく興味深かった。こんな授業受けてみたかったな、と。/「作品の中から一見したところではよくわからないかもしれない隠れた意味を引き出すこと（解釈）と、その作品の位置づけや質がどういうものなのかを判断すること（価値づけ）が、批評が果たすべき大きな役割としてよくあげられる」「良い批評探偵になるには、まず虫眼鏡のかわりに辞書を用意しましょう」「フィクションを楽しむからには、最低でもこのごっこ遊びのルールにのっとり、中で起こっていることを規則に従って「虚構的真理」として受け入れないといけません。」「作品というのは受け手に理解されるためのものとして提示されているはずです」「作品に何かの描写が入っているということは、物語を語る上で何らかの意味があるはずです。」「訓練を伴わない「自由にのびのび」は個性を伸ばす敵」
 | 河出書房新社 発売日 : 2013-01-18 |
表題作は、あるオフィスビルの中でくりひろげられる、A村やC田ら、とりかえのききそうな表記の名前の人物たちがくりひろげる対話とモノローグ。最後の語り手は…ビル自体だったのかなあ。個人的にぶっささった特大のロンギヌスの槍は「うん、私、好きな人がブログやってるだけでやだ。えらそうに映画とか本の感想書いてると思っただけで鳥肌が立つ」(p.34)かな。/「簡単なことだ。これだけわかっていればいい。誰も理解してくれない。それに加えていうならば、誰のことも理解できない」(p.24)/女子社員は、自分たちと同じように会社に働きに来ているのであって、男性社員を気持ちよくさせるために来ているのではない。（略）愛想の良さややさしさはオプションでしかない。(p.37)あたりが印象に残り。間奏曲的にいくつか挟まれる「ウォータープルーフは嘘ばっかり」。”「ウォータープルーフは嘘ばっかり！ってなんなの？」「それはね、この世界の悪を暴いて真実を見ることができる魔法の呪文なのよ」”を地でいく、世の中に物申し、バッサバッサと切っていき、けど己を省みて…と思う瞬間もあり。「もうすぐ結婚する女」は、無防備に、語り手1：もうすぐ結婚する女1、でよみすすめていったら、あれ？あれ？と気がついたらくるくると入れ替わったのか？入れ替わってないのか？と翻弄されつつ、終わってみればその企みをたのしみつつ読み終えた一編。
 | 竹書房 発売日 : 2021-10-20 |
香のハンマー一撃がとどめになってのキャッツアイ、リフォーム。獠と香のダブルサプライズは闖入したリアルな強盗で波乱かつそうなりますよねの幕切れに。ファルコンの浮気疑いに、信用ないんだな、あらファルコンの魅力について信用があるのという美樹さんのかえし、カウンターに座って、どんなお願い聞いてもらおっかなあ、あら常連さんのお願いは聞くのに？てやりとりがほんと仲の良さ伝わってきて善き。巻末の、宝塚版シティーハンター観劇録も豪華豪華のひとこと。そしてこれで最終巻とは。もっともっと観たかった。
 | コアミックス 発売日 : 2021-10-20 |
結婚、そして五年後ののんちゃんとリツコ。メインテーマは「妊活」。何が勝ち負けで、誰に対してそう思って、その源は…と掘り下げていき、そしてのんちゃんの両親に諦めたことを告げ、父からの、なにを謝る、こんな可愛い娘ができたんだ、これ以上の贅沢は言えねえという言葉に救われ。二人で向き合って、これからも関係を築き上げていこうという思いが伝わる一巻でした。
 | 白水社 発売日 : 1993-10-01 |
だまされたと思って読んでほしいアントニオ・タブッキ『インド夜想曲』( https://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2021/10/post-15e85a.html)というブログ記事に導かれて手に取った一冊。個人的には、フェルナンド・ペソアが出てきたところが印象深く-末期の言葉、死に瀕した際のメモ、「降誕祭」という詩の引用。友人を探している主人公が、インドの各都市、ホテルをめぐりつつ、様々な人々に問いかけ、語りかけ、語ってもらい、時に夢想もまじりつつ、たゆたいながら、最後にゴアのホテルでの美女との対話からこれがどういった旅だったのか示唆される、と。/たとえば、作品のひとつは、あるところに旅をしたいと一生思いつづけた男の話しで、ある日、ついに実現のめどがついた。すると、彼はそんな旅なんか、ぜんぜんする気が自分にはないことに気づく、といったような(p.33)/「だがそいつは見つかりたいと思ってるのか」「わからない」「それじゃ、探すのはよせ」(p.120)/引伸すと、コンテクストが本物でなくなる。なにごとも距離をおいて見なくてはいけない。抜粋集(アンソロジー)にはご用心(p.151)/終着地にたってふりかえってみれば、そこにたどりつくであろうことは、さりげなくいくつも散りばめられ、織り込まれていた。それを眺め渡すのはまたこころよい愉しみ。
1-3巻まで読了。マンガで手軽に…と思いきやなかなかに記述はみっちりとつまっていて。日本の商人や大名たちが海外渡航船に投資＝投銀（なげがね）。イエズス会がその窓口に。キリシタン追放も、宗教的な側面以上に、オランダとの勢力争いに破れつつあったスペイン・ポルトガルをバックにしたイエズス会が借財を重ね、経済的に家康の逆鱗に触れたことが原因、と描かれる。また家光の時代、輸入の大半は生糸が締め、加工は国内、その一大拠点が京都西陣。また大量に輸入するための制度が「糸割符（いとわっぷ）」。幕府から独占権を与えられた大商人が独占一括購入することで安く仕入れ、国内市場へ。ただし小規模商人は参入がむずかしかった、と。江戸時代の初期の豪商たちはみな朱印船貿易家であったが、鎖国とともに没落。/西は銀、東は金が通貨として成立。経済力では上方が圧倒。/日常貨幣の需要が高まった時期に600年ぶりの国産通貨寛永通宝の鋳造。/大阪では商取引の99％が手形決済になったほどだったが、東日本はほとんど現金決済だった/などのトピックが目をひいた。
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ミマール・シナン大学への半年の客員教授としての滞在。授業での指導内容（モデルをほぼ作成せずすべてCGですませてしまう）。シーサイドに立地した大学、立地のすばらしさ。アジア側のウスキュダルから船を使ってヨーロッパ側へ向かう、毎日の優雅さ。一夜にしてお気に入りの店がなくなってしまう、入れ替わりの激しい街並み。アヤソフィア、スレイマニエ・ジャーミーの簡易な説明。ワクフ、キュッリイェの解説。など。
目で読んでもグルーブがつたわってくるかのような読書体験だった。「詩を聴きにくるのは、詩の魔法にかかりにくるのだ」と語り、海外で数多のポエトリー・リーディングのライブを開いてきた作者は、「ドラムをビートするように、名詞をたてつづけにうちかさね、あるいは動詞を短く、強く、歯切れよく、かさねていく方法はジャズが教えてくれた詩の演奏法。」「わたしは、古今東西の詩人たちの、あるいは文芸評論家たちの詩論や芸術論から、何ひとつ学ばず、コルトレーンの数枚のレコードから、手ほどきをうけて、自分の今の詩をのスタイルを作った」「コルトレーン「クル・セ・ママ」をかけてから、わたしは瞑想し、詩作にはいっていったのだ」と、自らの詩作とジャズの深いかかわりを語る。そしてウェイン・ショーター、沖至、ジェームズ・ブラウンに向けられた熱い賛辞。いっときも、自分のなかからあふれでてくるものをとどめず、その衝動に忠実に、日本を、世界をとびまわった軌跡。
 | 双葉社 発売日 : 2012-01-18 |
ぶらっと寄った図書館で、詩とカフェと、というミニコーナーの展示があって、目があって借りてきてしまった。人の手元に届けられるとはがきはいつしか忘れられてしまう、けれど、カフェでずっと預かってくれて貼っておいてくれれば、気が向いた時に、また見返すことができる。カフェ宛にはがきを出すと、連絡先がわかればその宛先の人に、あなた宛の葉書が来てますが、カフェにいらっしゃいませんか、と招待される。それが縁でかつての教え子と再会した教師。何の事情も説明せずに出ていった料理人の夫からの葉書を何十年も待っている女性。かつて重役、いま認知症だけれど、店の人や客から暖かく受け入れられている男性と、娘とのすれちがってしまった関係。父との思い出に反発するかのように、しかし一部は受け継いでいるかのようにポストカードカフェを開いたマスター。今どきの若者っぽく見えて、胸に熱いものを秘めた店員。先生に謎めいた手紙を出した顔面麻痺に悩むデザイナー。一方的に別れを告げてモデルと付き合い始めた元彼のことを待ち続けたものか悩む女性。客と店員の織りなす物語が、予定調和なようでいて、一筋縄では行かなくて、みなに愛される場があるからこそ紡がれる物語に、しばし身をゆだねる喜びを感じられた。/「自分ひとりの夢も、なかなか叶わないものでしょ」「うん…」「まして、他人が登場する夢はね、もっと難しいと思うよ。自分を思い通りに動かすより、他人を思い通りに動かす方が、よっぽど大変だもん」(p.77)/「だから、たまには会っとかないと、ってなんとなく思ったんだ。じゃないと、だんだん相手に対する文面じゃなくて、自分に対する日記みたいになっていくんじゃないかって」(p.251)/
 | 新潮社 発売日 : 2006-02-28 |
燃え殻「相談の森」で、妻子ある人との恋愛に悩んで、という相談に、江國香織「東京タワー」をおすすめします、と応えてたのに導かれて手にとる。大学生の透と耕二。母の友人で夫もいる詩史にどうしようもなく惹かれてしまう透と、同級生の母親に始まって、年上の女性がいい、とばかりに付き合いを重ねていく耕二。登場人物が何度も語る「年上の女は無邪気だ」は作者の考えがこめられてるのかな。詩史の聴いてた音楽、読んでた本、写真集を追体験したいという思い、遠い昔に味わったことがあってなつかしく感じた。最後の透の決死の名案（迷案？）は、詩史には受け入れられ、母親には激しくたしなめられるが、その後のことは読者にゆだねられ。何の鎧もまとわずに、回転するミキサー車に飛び込むような所業ではないかと思いつつ。若さのまぶしさもたたえつつ、男も女も年とってからの方が魅力的だし、恋愛も深く、面白いものになるのだ、という含意かな。折々、透の目に映る東京タワーに仮託して、透の心情、状況が描かれつつ。
 | 青土社 発売日 : |
騙されたと思って「インド夜想曲」読んでみて、ってブログに導かれて「インド夜想曲」読んだら良かったので、同じ作家の「フェルナンド・ペソア最後の三日間」にも手を出してみる。何年か前の個人的ペソアブームの時に手に取ったら、なんだかとりとめなく感じて、読んでて目がすべる感じだったのに、作者（タブッキ）の方からアプローチしたからか、その間何冊かペソアの本を読んだからか、今回はしっくりと、一文一文染み込んでくるように読めた。文字通り、「フェルナンド・ペソア最後の三日間」に、病床に、彼の異名者たち、アルヴァロ・デ・カンポス、アルベルト・カエイロ、リカルド・レイス、ベルナルド・ソアレス、アントニオ・モーラ。本来己の中にあるはずの異名者と対話を重ねるという幻想的な設定で描かれる。その対話が魅力的で。/人生は言葉には尽くせないものです、とペソアは応えた。訊ねることも、信ずることも、けっしてしてはなりません、すべてが神秘なのです。(p.37)/「煙草屋」の冒頭の詩行を教えてやりました、「わたしは何でもない、何になることもないだろう、何でもないことを望むことはできない」と。(p.64)/でも、もういいでしょう、アントニオ・モーラ、わたしの人生を生きるということは、千もの人生を生きることでした、わたしは疲れています。わたしのろうそくは尽き果てました、お願いします、わたしの眼鏡をとってください。(p.88)
 | 中西出版 発売日 : 2021-07-31 |
札幌北区に開店したseesaw booksの貸棚オーナーSandy Booksで購入。画家である著者が岩見沢の美流渡に移住した一年を綴ったものなんだけど、掲載れてる作品が鮮烈で、これは手元に置いておきたい、とレジに向かいました。「大地から沸き起こるものや、天から降り注いでくるものがあったとして、それと自分の歯車がカチッと合う瞬間に”これだ”と思うものが生まれるんじゃないかと思います」という言葉に深くうなづきつつ。アトリエで両手で顔をおおいヘッドホンして正座している写真は、沸き起こるもの、降り注いでくるものを待っているのだろうか、必死に目をこらしているだろうか。取り上げられたた現代語訳の般若心経や、サイ・トゥオンブリーの作品にも触れてみたいと思った。
| 発売日 : |
ポーランド料理、と言われるとあまり思い浮かばないが、というところから興味を持ち、手に取る。歴史、という面からすると、今に伝わる詳細な料理書が残っていることがわかる。歴史家・日記作家イェンジェイ・キトヴィチ（1728−1804）をはじめとして。料理の紹介から、酒を飲む際に乾杯の挨拶を念入りに行う習慣まで記され。19世紀貴族の豪邸では、一日は高脂肪の濃いクリーム入りのコーヒーではじまり、午前10時頃にはアニスリキュールをたしなむことも。ただ、苦い歴史も。ポーランドが、プロイセン、ロシア、オーストリア＝ハンガリーに併合され消滅した時期は、それぞれの占領された地域で、占領国の料理文化が流れこみ、今もその名残があるのだとか。第二次大戦後、共産主義の時代はポーランド料理冬の時代で、手に入るもので料理するだけでせいいっぱいだったとか。/今ではジビエが人気。ヤマウズラのパテ、レモンピール入りうさぎのミートボール、ヘラジカの鼻口肉の唐揚げなど。豊富な魚料理に、ヨーロッパ産タラの一種ホワイティングにまつわる伝説。そして、ピエロギという餃子のような料理はポーランド料理で一番有名で認知度が高いのだとか。/11世紀中頃クラクフ市内に建立されたベネディクト教会の大修道院の記録では、はちみつを裁判費用にあてることもできた、というものが/といったあたりが興味を惹かれました。美しい図版も豊富で見てるだけでもたのしくなってきます。
個人的な後ウマイヤ朝時代、ナスル朝グラナダ王国への興味から気になった論点は、下記。/少なくとも後ウマイヤ朝時代、アンダルスは「スペイン」たる特質を失わなかったという解釈が、1970代以前は常に有力。/そこへ、西欧化したアンダルス像の修正が図られる。アラブ、ベルベルの入植者たちは「スペイン」化せず、逆に彼らが帯同した厳格な男系相続原理が原住民側にとりこまれた。ただ、以後、「伝統主義的」アラブ学者からの反論は、バレンシアのベルベル化をめぐるものに留まり、全体像を覆すまでにはいたってない、と。/自由農民の犠牲の上に勃興した聖俗所領貴族らとの公的権力の代表者たる王権との間の緊張状態は、10世紀後半から11世紀諸島にかけて王国レベルの大混乱を招来。後ウマイヤ朝宰相マンスールの大規模なレオン王国侵攻の背景。/グラナダ王国研究は、マルビカ・クエリョが家人。灌漑・水利、都市・農村関係の面での研究が進行中。彼の弟子トリーリョの研究も。14世紀以降、水・土地の売買行為の進展に伴い、伝統的な農村共同体構造から逸脱を余儀なくされるが、ナスル朝支配層が大所領を形成し得るほどではなかった。/ナスル朝グラナダ王国国境地域の領民は、領土侵犯、日常的略奪行為の点で、「対岸」のキリスト教徒以上に戦争遂行型社会を成していた。/
2019年、新疆へ学術調査におもむいた筆者が直面した、日本や中国内地に比して尋常ではないと思われる監視体制の一旦がうかがいしれる。その真因を丹念に探ることが現代中国社会の理解の一つの鍵。また、厳格な検問があるが、当地がつねに内乱状態にあるわけではなく、現地民には彼らなりの生活が営まれていると感じられたこと。学術調査が、結果的にむだな緊張を招いたこと、などが語られる。なかなか現地に行くのが難しそうな中、貴重なレポートだった。
 | 秋田書店 発売日 : 2021-10-15 |
高級食パン専門店にシール貼らせてもらいに行き、大怒りで断られ、その後店前であまりのパンのおいしさに犬4匹でおいしいおいしい食べてたら大宣伝になって、おかげでシールを貼らせてもらえることになった顛末がなんだかあったかくて好き。腰を悪くしてる書道の大家がライブイベントで最後の一文字が腰にきて書けないところにこいぬがやってきてシール貼って、斬新な作品だ！と激賞されたのも。あと、元言語不明なのに、きっちり翻訳してくれるアプリ、強すぎて欲しすぎる。こいぬが研修帰りに網棚に忘れてしまったお土産はどうやってみんなの手元に？などシュールなところもいろいろありましたが。総じてほんわかとたのしめて。
 | 河出書房新社 発売日 : 2018-03-03 |
アソーレス諸島が舞台と知り、心惹かれて手にとったが、ちょっと途中の断片的で散漫なところでついていけなくなり。ただ、青いくじらの話とピム港の女あたりは個人的に心惹かれた。「繊細すぎて、わたしは人生をあやまった」「本なんて、みんなばかげてるさ。ほんとうのことなんてちょっぴりしか書いてない。」「ほんとうの裏切りというものはだな、もうはずかしくて、じぶん以外の人間になってしまいたい、そういうことだ。」「これが、わがものと信じた女をピム港で殺してしまった、ルーカシュ・エドゥイーノの真実の物語だって」
ムラービト朝のアンダルス支配というと軍事的側面しか語られず、そこに社会史的な視点を持ち込みたいと、スペインに飛び、研究資料を集めに図書館をまわった際の記録。図書館の司書が現地の研究者を紹介し、そこからさらにモロッコの研究者を紹介してくれて、今後の研究にも大きな力になってくれそうな関係を構築できて、といった様子を読み取れた。また、最近類似のテーマの論文を読んだな、と思ったら、「地中海圏都市の活力と変貌」所収の「二つの中世ベルベル帝国とマラケシュ」の著者の方でした。個人的シンクロニシティ。
2021年10月に読んだ本 その1
1002・梨木香歩 水辺にて 図書館
(1002・羽海野チカ ３月のライオン 16
1003・Apied vol.17 テーマ:シェイクスピア「マクベス」 20210925 トロニカ
1003・ポッケ 鮨と地酒号 スタジオプリケ 文学フリマ札幌
1003・北18条文学 荒ぶる男の純文学 文学フリマ札幌
(1003・篠原まこと 8月のシンフォニー (りぼん 昭和51年８月号ふろく) 漫画林 20211003
1004・矢澤豆太郎 ゲームセンターにまつわる創作短編集 Home. 文学フリマ札幌
(1004・ティラノ部長 Kindle 20211004
(1004・ラーメン大好き小泉さん 10 Kindle 20211004
1005・北18条文学 NIKU-CHA 文学フリマ札幌
1006・高森純一郎 大地の裂け目を越えて 文学フリマ札幌
1006・梨木香歩 不思議な羅針盤 図書館
(1006・杉浦日向子 東のエデン 漫画林 20211003
(1008・koma 扇風機と私 喫茶こん 20211005
(1008・koma 宝箱 喫茶こん 20211005
(1008・koma 室外機を見つめ続けて 喫茶こん 20211005
1008・夏目漱石 吾輩は猫である 青空文庫 kindle (0923-1008で読了)
1009・午前四時のブルー4 20211009
(1010・ハイスコアガールdash 2
(1010・であいもん 12
(1011・WeTuber 1 -3 kindle
1011・二階堂奥歯 八本脚の蝶 河出文庫 図書館
(1011・koma 室外機を見つめて 喫茶こん 20211011
(1011・koma 室外機に見つめられて 喫茶こん 20211011
(1012・青に、ふれる 4 kindle
1012・なnD 8 20211011
1012・芦原すなお 山越くんの貧乏叙事詩 (原題「雨鶏」) 古書浪漫堂 20210911
1013・札幌市交通事業小史 平成10-19年 図書館
1013・黒川正剛 魔女狩り 講談社選書メチエ 図書館
(1013・サトゥフ・リヤド 未来のアラブ人 3 図書館
1015・ワシントン・アーヴィング アルハンブラ物語 講談社文庫版 20210904 シャンティブックス
(1002・羽海野チカ ３月のライオン 16
1003・Apied vol.17 テーマ:シェイクスピア「マクベス」 20210925 トロニカ
1003・ポッケ 鮨と地酒号 スタジオプリケ 文学フリマ札幌
1003・北18条文学 荒ぶる男の純文学 文学フリマ札幌
(1003・篠原まこと 8月のシンフォニー (りぼん 昭和51年８月号ふろく) 漫画林 20211003
1004・矢澤豆太郎 ゲームセンターにまつわる創作短編集 Home. 文学フリマ札幌
(1004・ティラノ部長 Kindle 20211004
(1004・ラーメン大好き小泉さん 10 Kindle 20211004
1005・北18条文学 NIKU-CHA 文学フリマ札幌
1006・高森純一郎 大地の裂け目を越えて 文学フリマ札幌
1006・梨木香歩 不思議な羅針盤 図書館
(1006・杉浦日向子 東のエデン 漫画林 20211003
(1008・koma 扇風機と私 喫茶こん 20211005
(1008・koma 宝箱 喫茶こん 20211005
(1008・koma 室外機を見つめ続けて 喫茶こん 20211005
1008・夏目漱石 吾輩は猫である 青空文庫 kindle (0923-1008で読了)
1009・午前四時のブルー4 20211009
(1010・ハイスコアガールdash 2
(1010・であいもん 12
(1011・WeTuber 1 -3 kindle
1011・二階堂奥歯 八本脚の蝶 河出文庫 図書館
(1011・koma 室外機を見つめて 喫茶こん 20211011
(1011・koma 室外機に見つめられて 喫茶こん 20211011
(1012・青に、ふれる 4 kindle
1012・なnD 8 20211011
1012・芦原すなお 山越くんの貧乏叙事詩 (原題「雨鶏」) 古書浪漫堂 20210911
1013・札幌市交通事業小史 平成10-19年 図書館
1013・黒川正剛 魔女狩り 講談社選書メチエ 図書館
(1013・サトゥフ・リヤド 未来のアラブ人 3 図書館
1015・ワシントン・アーヴィング アルハンブラ物語 講談社文庫版 20210904 シャンティブックス
著者のカヤックを漕ぐことへの深い愛情にふれられる。それを通して語られる地球との一体感のようなものも。/鴨とともに水中に吸い込まれそうな感覚。天候がおだやかなら思う存分パドルを置いてカヤックで読書。観光資源とするため風切羽ねを切られた二度と渡りができないハクチョウ。すべての装備をおさめたカヤックが流されそうになり北極海に飛び込んだ星野道夫。単に「生きる」以上の何かを必要とする人々。僅かな可能性にかけて、罠があろうと、遡上しようととする鮭。ゆつくりと治つてゆかう 陽に透けて横に流るる風花を吸ふ(河野裕子歌集「歩く」)。"歳をとるとまずその欲求がなくなる。「世界がどうなっているか知ること」はそれほど大した意味は持たなくなる。そしてそういう欲求がなくなるということはそのまま「世界の一部として朽ちてゆく」準備のひとつにもなるのだろう。"(p.201)/といったあたりのテーマ、エピソード、それをめぐる考察が印象に。
 | 白泉社 発売日 : 2021-09-29 |
最初は零のストレートな愛情表現も、ひなが子どもだから全部スルーみたいなコンビだったのに、いつの間に、大人よりも強くしたたかに聡明な関係を築き上げたんだろう、高３と高１で、というおどろきの巻。零の今までのがんばりを台無しにしたくない。言ってくれないといっしょに考えられない。かわりばんこにはげましあっていけばいいんだよ、と。人生をかけた夢への努力と、お互いの会えないと寂しい気持ちを両立させるために、話し合おう、お互いアイデアをだそう、と。そしてそれを暖かく見守ろうとするあかり、美咲、そめじといったまわりの大人たち。/零も、級友たちとご飯を食べ、普通に受験に対するぐちを言われるぐらいの関係は築いたことが描かれ。今まで謎に包まれた宗谷名人のプライベートが描かれ。チョコもアイスもいつのまにか消えたとなげく川本姉妹に、消えたんじゃないんですよ、食べたんですよと内心突っ込む零。店の縁起物を買ってくれる客の顔に明るさがともるのをみて、幸せってきっとああいう風景の事をいうんじゃないかな、と語りかけるひな。しつこくてあきらめきれない気持ちを「向いてる」って言うんじゃないかと語るひな。甘いとしょっぱいの無限ループをお客様にも味わってほしいと力説するあかり。ああ、もう、名言と名「関係」と笑わずにはいられないシーンがあいまって、ぎゅっとつまって、愛おしい巻。最後のほうで、二階堂が、零に、おたがい苦しみをバネに這い上がってきたけど、お前、全身全霊で別ルートを探りはじめたんだな、と内心語りかけるシーンなんて特に。
鳥辺茜さん、藤沢チヒロさん、秋永真琴さんがお目当てなのですが、他の方の作品も豪華。ただただ札幌で寿司が食べたい叫びのようなエッセイ。家族とのしんみりした思い出の染み込むお寿司やさん。傷心旅行のウニ尽くし。こぼれんばかりのいくらの愉悦。持ち帰り寿司のネーミング考現学。日帰りで飛行機にのり、寿司とかつての思い人の痕跡を鎮めてかえる一人旅。短大時代の友人と魚を仕入れに行くトラックで雑魚寝したエピソード。などなど。鮨と地酒にまつわるエッセイ、マンガ、小説が目白押し。読んでて、一件、どうしても行きたいお店ができました。行かねば。調べたらそのお店、日曜定休だったので、かわりに、読み終えたカフェから、一番近い根室花まるにかけこんでおいしい鮨と地酒を堪能しました。
45年前の作品。the昔の少女漫画。幼馴染の高校生同士。片方は世界を飛び回る指揮者の父を持ち、音楽を専攻する男子高校生。片やスポーツ、勉学万能のハンサムな先輩にぞっこんな女子高校生。クラシックコンサートでとなりあった美人に一目惚れしたら、実は、父の再婚相手候補だったり。その彼女がハンサムな先輩の義理の母だったり。そして最後は、幼馴染の男子から女子へ告白するも、混乱、とまどい、そんなこと気付けなかった…とぐるぐるして終わる。ある意味王道だった。
| 発売日 : |
毎年楽しみにしている北18条文学の新刊。今回も今野の勢いはとまらない。2話目と3話目は、同じできごとを、話者を変えて、違う視点から語られるストーリー。婚活…というには、あまりにむき出しで粗野でパワフルすぎる出会いと結末と。4話目は、惨尻記、ってどうやって読むんだろうと思いつつ、読みすすめていくと、あのガオーッと吠える、一休さんが屏風から連れ出すことを命じられた動物になってしまい、なるほどそうきましたか、李徴ですか、中島敦が助走付きでぶん殴りにきそうだなと、思いながらも勢いに圧倒されました。小西さん、どうしてお金貸しちゃうんですか、もう最後のほう面白がってますよね。さて明日の今野はどこへ向かうのか。
早瀬耕「未必のマクベス」読んで、シェイクスピア「マクベス」読んで、また「未必のマクベス」読み返した身で、いつかそのうちまとまったマクベス論を読みたい、と思っていたので、なんてどストライクな一冊なのだろうと狂喜。ひとりだいたい3ページなのも読みやすく。/シェイクスピアの台詞の音に着目した論考。Fair is foul, and foul is fair.を、悲しみは喜びに通じ、絶望の最果ては希望、冬のなかに春があり、死があるから生はつづいていく、と読み解き。マクベスの呪いが受け継がれてるとすれば、きっかけさえあれば、自分の欲望や誘惑にやすやすとのってしまう人間が現代にどれだけ多いかの証と説き。「きれいはきたない、きたないはきれい」「こんなきたないきれいな日は見たことがない」の符号が、"従来のシェイクスピア劇とは異なる、人間の意志や価値基準など超自然の力の前では取るに足らぬという非常にニヒリスティックな、二十世紀的なテーマが開陳されている"という論点。劇中の、モノとしての蝋燭の役割。暗殺されたダンカン王の息子のうち、一層現実的で即物的で猜疑的で用心深いドナルベインに着目した論考。などなど、さまざまな論点が興味深く、マクベス論心を大変満足させられました。
苦くて甘酸っぱくて切ない、ゲームセンターを舞台にした、短編小説とマンガと。どれもよかったけど、特に大収穫だったのは「天使の名前」(矢澤豆太郎）と「夜の名前」（市村圭）。「天使の名前」はつかずはなれずだったのに、だんだん距離が縮まり、てんしのくれたキーボードは千春の人生をぐんぐんと音楽の方向へとすすめていき。こんなにもてんしへの思いあふれる曲をつくった千春が拒絶なんてしないと心のどこかでは思っているのに、思いを沈めてしまう何年か後のてんしの心がもどかしくもわかるような、けれど、という余韻を残してくれる。「夜の名前」は、ゲーセンの音ゲーと十年をはさんで、友情よりも愛情に近い思いが、好きな相手が超気になってる相手のふりをしたノートの書き込みを軸に積み重ねられ、時を経て種をあかしても、「ずいぶんと遠回りをしてしまったけれども。今宵のように、特別な名前を付けるのを望まれた夜こそが私たちの望んでいた上等というやつなのかもしれない」という境地にお互い至れたことが貴くて。よかった、他の作品も読んでみたいと思った。
 | マガジンハウス 発売日 : 2021-10-04 |
ただただ優しくて、切ない、ティラノ部長。
 | 竹書房 発売日 : 2021-09-30 |
秋刀魚ラーメン、サンマーメン、そしてセコマの山わさびカップ麺まで堪能。セコマ、地元のコンビニだけど、湯気だけで辛味にむせるのはなあ…。まろやかにしてくれる食材も紹介してくれてるのであわせてチャレンジか。サンマーメンの回でいつも単刀直入にふたりでいこうと誘って玉砕している悠が、サンマーメンのこともっと知りたい！と小泉さんにせがみ、とうとうと小泉さんの説明を引き出し、本物じゃなきゃ！と叫んでふたりでのサンマーメンをゲットの流れが好きでした。
文学フリマででくわし、「今までののベストなんですよ」「でも、今までの全部持ってるしなあ…」「新作も一編入ってて」「買います！」というぐらい、勢いこんで買った一冊。今まで読んだのも読み返せてよかったなあ。円山動物園の象が、人生で一度でもいいから大将の肉チャーハン食べたくて、それを叶えるために奔走する飼育員さん、カッコいい。そしてシリーズを通して感じる今野の図太さ、ふてぶてしさ、どこからでてくるのかわからないパワー、クセになります。特別に収められた一編のテーマは、北24条の団地妻。また強烈なの持ってきたなあ。私が通ってた高校でもまことしやかな噂がながれていました、やれ、○○くんが、サザエさんみたいな髪型して割烹着着て買い物かごさげたおばさんが入ってくのを見た、とか。友人たちから借金しまくって誰も貸してくれなくなって、最後に貸してくれた友人の条件が「団地妻で使うなら」。そこで何があったか、パワフルすぎる今野もへこむくらいのオチのインパクト、破壊的すぎるだろう！と思いつつ読み終えました。
| 発売日 : |
テロの起こる2019年パリで、現・極右政党のオルガナイザー、元・文民官吏、軍政官としてボスニアに派遣されていたデュフォールへ、インタビューを試みるジャーナリストのアンリと同僚のマリー。1990年代後半のボスニアと行き来しつつ、なぜデュフォールはそのような道筋をたどったのか、現地でどのようなことがありどんな人と関わったのか、語られ、明らかになっていく。くりかえし語られる、強力な指導力がないため、縦割り、前例主義な官僚主義の悪いところが煮詰められて、動きのにぶい国連と、国連が強くなることなど望まない大国の思惑。役に立たないだけでなく、存在が害悪とすらみなされ、現地住民に蔑まれ、時に攻撃さえ受ける国連軍。その中で、フランスの文官としての立場と国連へ派遣されているという立場に板挟みになりつつ、時に、武装勢力との交渉にのぞみ、時に、従軍記者たちへの情報の出し入れをコントロールしようとし、時に、規則にはずれても人道主義にもとづいて行動し、偶然知り合ったフランス語講師と貿易商の夫婦とのやりとりから彼らの亡命を手助けしたり。その中で、往時のユーゴでは民族主義は戒められ、民族を超えた婚姻は推奨すらされたのに、紛争が起きれば、どちらの勢力からも裏切り者と言われてしまう変転が語られ。紛争の中を懸命に考え、行動してきたデュフォールとティヒッチ夫妻が、国家という大きな渦に人生を翻弄され、辿ったその後の人生はあまりにも過酷だった。デュフォールなりの国家への闘志が、その後の道行きを決め、巻末近くの国際法廷への出廷が大きな始まりの終わりになることを感じさせて閉じられる物語。今年に入って、米澤穂信「さよなら妖精」、柴宜弘「新版 ユーゴスラヴィア現代史」と読みすすめてきた身には、まさにこういうの読みたかった、な一冊でした。しかし、ボスニア紛争に派遣されたフランスの文民官吏、軍政官という視点、なかなかに思いつかず、また貴重な視点であると感じた。そして、平日の夜に読み始めてはいけない。気がつくと日付をまたぎ、翌日に差し支えること請け合いなので。
 | 新潮社 発売日 : 2015-09-27 |
竹林の磁場。異質なものを排斥せず生きていける群れを。あえて世界を狭く見てみること、片山廣子のように。ものとの付き合いは、自分と世界の折り合いの付け方の一つの象徴的な顕れ。「シロクマはハワイで生きる必要はない」。誰かの美点を心地よいものと意識して積極的に自分の「お手本」にしるW・G・ゼーバルト。森下典子「日々是好日」の、自分が百パーセントここにいるという感覚。自分は「悪いもの」にもなりうるのだと自覚している人間のほうが人間的。といったあたりの言葉、視点、論点が心にとまりました。
| 発売日 : |
扇風機と同居人のように暮らしている様を描いた一冊。出迎えてくれて、ケーキのろうそくを消してくれて、そっと寄り添ってくれる。お風呂にも入る。だんだんとこの扇風機が愛しくなってきます。
| 発売日 : |
錆びたタンク、雪のつもった樹木、夜の街、メリーゴーランド、鮮やかな花。けど、一番印象にのこったのは、まぶしいくらいの青空をバックに鉄塔と電線が入り組んだ一枚。
| 発売日 : |
個展「室外機を見つめて」の会場で感銘を受けて購入。室外機写真集第三弾。最後のほうに、個展で一番心にとまった、圧巻の、壁面いっぱいの室外機の写真がみられて、大満足。そして、大半の写真は匿名でどこの建物かわからなかったけど、最後のほうにちらりとビル名の入ったものがあり、賑わいのある地にはまた室外機もにぎわうのか、という思いに。
 | 発売日 : 2012-09-27 |
柳広司「漱石先生の事件簿 猫の巻」に導かれて。名だけ知ってるが、学生時代に10ページで挫折した超有名作を読んで見る気になり。猫の眼から見た、主人や友人たちとの対話や生態は当時の風俗も織り交ぜられて面白く読んだけれど、おそらく漱石先生の乗り移った猫のひとり語りが長くつづくところは、当時の文明観に根ざした人間論で肝のところなんだろうけど、個人的には正直中だるみしてしまった。主人や友人たちの変わり者ぶり、今から見てもなかなかに堂に入ってるな、の感。/「人間というものは時間を潰すために強いて口を運動させて、おかしくもないことを笑ったり、面白くもない事を嬉しがったりするほかに能もない者だと思った。」/人間は贅沢なものだ。なまで食ってしかるべきものを（略）好んで余計な手数を懸けて御互に恐悦している/西洋の文明は積極的、進取的かも知れないがつまり不満足で一生をくらす人の作った文明さ/時と場合によると、時候おくれの方がえらいんだぜ/人間の定義を云うとほかに何もない。ただ入らざる事を捏造して自ら苦しんでいる者だと云えば、それで充分だ/真理に徹底しないものは、とかく眼前の現象世界に束縛せられて泡沫の夢幻を永久の事実と認定したがるものだから/となかなかに皮肉がきいている。
| 水声社 発売日 : 2021-09-01 |
午前四時のブルー。タイトルだけで素敵で、マルティニクに惹かれて、以前、第二号だけ買っていた雑誌が、今回、第四号で完結、テーマは音楽ということで購入。剛毅な吉増剛造の詩からはじまり、コロラトゥーラ田中彩子との対談。責任編集小林康夫の発意で転がりだしたクラシック音楽のコンサート。そのプログラム決定までの紆余曲折。集客戦略や経理的な問題。曲目による編成の変更、楽団員の数、リハーサル時間の変更。曲のレンタル料に問題。などなど。とりあげられていた「音楽の危機《第九》が歌えなくなった日」(中公新書)を読みたくなる。みなで音楽をつくりあげていく過程で、自分でなんとかしようとするのではなく、ここは相手の力を使いなさい 、という言葉にであった指揮者。"わたしはことばの可能性を信じる。しかしそれ以上に、ことばを追い越してしまうものの訪れを祈るだろう。夜明けに見た、あの緑の波のように。"という一節。鍼の名人が五十年かかって達したここに一本打てば肩凝りを直せるという境地、音楽にも同じく、一動かせば百動くような核心というものがある。ペンデレツキが自身のヴァイオリン協奏曲第2番のある箇所だけを以上とも思えるほどのこだわりでひたすらに突いていた。というエピソード。そして圧巻は巻末に置かれた青山学院での小林康夫最終講義、ならぬhe Last Celebration in Aoyama ~道化、そして花々~。youtubeですこし見たけれど、バッハのイギリス組曲第六番が奏でられる中、舞われた舞の静かな、水の流れをくぐるような、なぞるような、不思議な感覚を味わえた。舞、といえばもっと激しいダンスのようなものを想像していたけど、なるほどこういう舞もあるんだ、と。その静かな吸引力が観客を誘い、小さな輪が作られる様もまた善き。音に、言葉に、魅惑される一冊でした。
 | スクウェア・エニックス 発売日 : 2021-09-25 |
小春先生がだんだん覚醒してきた巻
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-10-04 |
和菓子記事を書きたいライターさんの熱意と、取材を拒む老舗和菓子店との橋渡し。正面からの熱意だけじゃダメだけど、熱意をみて手を差し伸べてくれる人もいて。大学時代の友人の迷い犬から嫁姑が和解するきっかけ。一果の父と母がふたたび話すきっかけづくり。などなど、和菓子が人と人を繋ぐきっかけになるストーリー。和のアフタヌーンティー、気になります。
 | 小学館 発売日 : 2019-12-26 |
若い頃は放送作家をめざしてたが、安定が欲しくて、家業を継ぎ、いまや同族会社の常務にして次期社長候補だが「俺の人生これでよかったのか」と悔やむ日々だった武田が、ひょんなことで登録した「レンタルおっさん」で駆け出しのWeTuber(言わずと知れたおそらくYouTuberのもじり)せりゅーと出会い、勢いだけだったせりゅーにネタ出ししてアドバイスすることで、徐々にバズるようになり、武田も自分の人生を…というストーリー。個人的にはあまり馴染みのない動画界隈の様々な側面が垣間見られておもしろかった。こういうのがバズる、こういうものが受け入れられやすい、といったところから、昨日まで罵詈雑言を投げつけあってたのに、利益があるとなれば、今日からコラボ、みたいなメンタリティも描かれ。いつまでも人気があるかわからない、いつまで話題にされるかわからないというあせりが、炎上を招いたりするけれども、それも活用次第な面も、など。
| 発売日 : |
室外機写真集第一弾。個展のフライヤーにもなった青空を背景に四種の室外機がならぶ一枚、喫茶こんのエアコンの下に貼ってあったいくつかの室外機の写真、印象深い夕暮れと室外機、そして壁面いっぱいの室外機、といったあたりが、個人的には好きでした。
| 発売日 : |
室外機写真集第二弾。むき出しの室外機が多い中、むしろとコーンで覆われた室外機を発見。また冬と室外機はちらほらお見かけするモチーフ。雪に埋もれている室外機の写真を見てるとしんとした気持ちに。北海道の厳しい冬も、室外で耐え忍んでくれているんだ、という思いに。
 | 筑摩書房 発売日 : 1993-07-01 |
穂村弘「これから泳ぎにいきませんか」つながり。まだ明治になりたて、江戸の色を濃く残した東京を舞台に描かれる、来日した外国人や、元下級武士・殿様・商人らの下宿を舞台に描かれるストーリー。トノさんの飄々として銃弾をかいくぐり、洋妾に惚れられても、許嫁がいるから気持ちは受け入れられぬとかわし、世が世ならなさなかったようなことにも積極的に首をつっこむ佇まいが印象に。この4人のストーリー、もっとよみたかった。
 | 双葉社 発売日 : 2021-10-12 |
生まれつき顔にあざのある高校生瑠璃子と、相貌失認を限られた人にしか打ち明けていない教師の神田。お互いがお互いに助けられ、理解が深まり、お互いの気持ちが近づいたように感じられるけど、抑制してとどまる、けど気になる、といった関係。修学旅行の京都の舞妓体験で、舞妓に扮しても自分のことを気づいてくれた、慈しむような眼で一緒に写真に写ってくれたことは、瑠璃子にとって大きなはげみになり。かけられた言葉、態度も、もし、自分が少しでもモヤッとしたら、それを感情的にならずにきちんと相手に伝える、そうすることで、関係がよくなれば、という瑠璃子。それはクラスメイトや神田にも向けられ、徐々によい関係が構築されていき、と。すっぴんの自分も、メイクした自分も、どっちでもいいんだ、どっちも自分だ、と。育ってきた環境はひとそれぞれだけれど、瑠璃子の歩んできた道から考えをかさねて導きだされた答えには、真摯さと力強さがあって、いいなと。
| 発売日 : |
何年か前に模索舎で偶然手にとって、流れるように購入したのが、なnD 5だったような記憶。それから毎年待ち遠しく、出るたびに買っている、なnD。今回は、いままでお目当てだったテンギョウ・クラさんが書いてないのが残念。気になったエピソード、モチーフ、本、映画など多数。/西荻に一瞬存在した「コレット」という雑貨屋さんのカオスぶりと心の奥底を刺激してくれそうな佇まい。/フランスで出会ったアジア人へのヘイトの数々とカラーコードという言葉。そのモヤモヤをふきとばしてくれた映画「ドライブ・マイ・カー」/夜学舎というレーベルの「B面の歌を聞け」というzine/武田麟太郎「蔓延する東京: 都市底辺作品集」/相米慎二「東京上空いらっしゃい」バブル期の東京が舞台で隔世の感 …その隔世の感味わってみたい。わざわざ映画館で「バブルへGO」を観た身としてはとくに/モノ・ホーミー 図案家。…興味をひかれる職業/キデンセン M 私は仕事でやばいかもピンチになりそうかもっていうときはiPhoneのメモに「まじやばい」って書く。神に対して、私はちゃんとやばいと思ってるぞって。それがマイルール。
イ 自分じゃどうしようもないことあるからね。神は助けてくれるの？ M うん、結構助けてくれる。…この対話、今回のなnD8の中で一番好きかも。極度に力抜けて、それでいて一瞬実効性あるかもと思わせてくれて。
イ 自分じゃどうしようもないことあるからね。神は助けてくれるの？ M うん、結構助けてくれる。…この対話、今回のなnD8の中で一番好きかも。極度に力抜けて、それでいて一瞬実効性あるかもと思わせてくれて。
 | ポプラ社 発売日 : 2013-12-05 |
仕送りはだいた月のなかばで使い果たし、友人たちからはかえすあてのない金を借り、バイトすればと言われれば働くのは身体に悪いとこたえ、勉強は大嫌いだけど就職したくないから大学院に行きたい、腐ったイカで腹を壊してはまじめな勤労学生がああいうイカを食わねばならないような社会が悪い、彼女なんて不経済なものは作りませんとうそぶきつつ、友人のかわいくてしっかりものの妹には惚れられ、小説家になったらあたしが出版社につとめて出版してあげるなんてラブコールを送られる始末。いいかげんなようでいて、権威やみんないっしょにはやんわりと反発し、友人にもめぐまれ、友達甲斐もありなんだかにくめない。そんな60年代末大学生ラプソディー。あ、「青春デンデケデケデケ」の人だ、というのと、「なに？貧乏叙事詩？変わったタイトルだ。面白そう」というので買ったけど、なんのことはない、だいぶ前に買った「雨鶏」という連作短編集の改題、文庫化だった。読み始めて3話くらい読んでから気づきちょっとがっかりするも、読み進めるにつれてにくめなくなってきて、最後には文庫にだけ入ってる、前日譚もおさめられていたので、最終的には収穫、という心持ちに。さんざんな生活ぶりを語ったあとに、「ときどきひもじくなるけど、慣れるとどうってことないんだよ」「それなのにスサんでないのがすごい」という山越とあーちんの会話が好きでした。まわりの友人も、失恋があまりにも痛手すぎて大雨のなか研究室でしめた鶏を素手でもってやってくる安根、最後の最後に大盤振る舞いしておいて、わけも言わずに、じゃあな、といって故郷に帰ってしまった笹尾、などなど個性的で目がはなせなかった。
1998年-2007年の札幌市の交通事業。2002年、ドニチカキップが試験販売。当時は、土曜日用と日曜日用があったのか、とか。韓国で発生した地下鉄火災事故をはじめとし、日本や海外での地下鉄事故、あるいは同型車両の故障などにはやはり敏感に反応して対策を打ったり、点検をしたりしていること。2004年の市営バス事業廃止は一大転機だったこと。2005年に、市電イメージアップの一環で、イ・ビョンホンを市電運転手役にしたMVがとられ、上映会、ロケ地写真展などが盛況だったこと（いま考えるとなかなかにぜいたくな催し）。などを知ることができた。
 | 講談社 発売日 : 2014-03-11 |
魚豊「チ。地球の運動について」を読んで、魔女狩りについて何か一冊と思い手に取った一冊。ただ、魔女狩りにも地域、時代によって差があり、激しいところとそうではなかったところがある、というのを何かで読み、そのへんのことを深められれば、と思ったが、この本は、魔女狩りとは何か、狩る側の論理が縷々述べられていて、個人的に知りたいところからははずれていた。ただ、はじめにの、"仮想がそれと認識されず現実と同一視された時代。その錯誤にもとづいて大量の人間が殺された。”というのを現代にもあてはまるのでは、という問題意識の提起は面白いな、と思った。またどのような論理、構造で始められ、続けられ、終焉していったのかということのおおまかな見取図は得られた。宗教の名のもとに、人を殺すということの恐ろしさ、そもそもそれは衆生を救うためにはじめられたのではないのか、という問いとともに。
 | 花伝社 発売日 : 2020-11-09 |
つづくシリアの田舎ぐらし、母の妊娠によるフランスへの里帰り、そして次の目的地は…まさかのサウジアラビア？と。著者の眼からみたシリアの因習や理不尽よりも--ただ大統領のボディーガードが親切にふるまい小旅行にもつれてってくれたのが買収の一環で、授業は試験の1回、答案に自分と父の名前だけの白紙の答案だして博士号、というのも強烈だったが--、フランスの田舎でみた、長年可愛がって猟につれていった犬たちを、銃が持てなくなったからといって銃でぶちころしてから八つ裂きにして、だってもう要らないだろ？といった老人の話のほうがこわかった。父方のおばが、著者の母が田舎にうもれて、フランスで博士号もとったのに、頭ももっとつかわせないと、ダマスカスでも出たら、とすすめても、父は訳さず。田舎暮らしに我慢の限界がきて爆発した著者の母に、父が出した答えは、この巻のなかで散々ののしっていたサウジアラビア。まだ4巻は邦訳されてないようだけど、つづきが気になる。
 | 祥伝社 発売日 : 2021-10-08 |
人生の脇役であるという実感、親友からのカミングアウト、そして父から自分は愛されていたのかという問い。両親を事故で亡くし、偏屈な作家の叔母と同居する高校生朝。事故で両親を亡くした人という以前にわたしがわたしであること、同性が好きな人という以前にわたしがわたしであること。「関係に名前なんかなくていいんだよ」（槙生）。安易なレッテルに関係性を規定されたくないふたりにはきっと福音。「えみりが何で傷つくかはえみりが決めるんだ。わたしじゃなくて」（朝）。言えばよかった、わかんなかったら行ってね、ヤだったら言うからね、と。それですべてが解決するわけじゃないけれど、きっと最初の一歩にはなり。そして朝の抱いた問いは周囲に投げかけられることによってエコーのようにさまざまな反応をひきおこし。最後のほう、朝と笠原が偶然あってベンチで語ってるところに、槙生がやってきて、遠吠えをリクエストされたら、迫真過ぎて遠くの犬から返事があり、「わたし、犬の才能ある？」ってところが、朝の抱いていたモヤモヤもふきとばすようなおかしさと、絶妙な距離感と、あたたかさを感じて出色のシーンだった。
2021年10月03日
2021年09月に読んだ本
0901・白戸圭一 アフリカを見る アフリカから見る ちくま新書 20210813
0902・嶽本野ばら 落花生 20210812 …小鳥さんおすすめ
0902・ワイルド(平野啓一郎訳) サロメ 光文社古典新訳文庫 20210813
0904・中谷功治 ビザンツ帝国 中公新書 20210813
(0904・地図にない場所 2
(0904・Shanti Books店主溜政和×旅行作家野崎卓也 旅の話 20210910発行 シャンティブックス
0905・魚住昭 野中広務 差別と権力 20210814
0905・大澤真幸 三島由紀夫ふたつの謎 20210813
0905・村上啓二 ノルウェイの森を通り抜けて 図書館
(0905・あざらしさんジャーニー
0908・開高健 ポ・ト・フをもう一度 20210813
0910・山本周五郎 さぶ 青空文庫
0910・【再読】柳広司 百万のマルコ 20210815
(0911・ゴトウマキエ 北海道観光マスターのゴトウマキエが行く！！
(0911・はしゃ フィリピンではしゃぐ。
(0911・夏目友人帳 27
0912・柴宜弘 ユーゴスラヴィア現代史 新版 岩波新書 20210828
(0912・ひらやすみ 1 kindle
0913・田口幹人 まちの本屋: 知を編み、血を継ぎ、地を耕す ポプラ文庫 20210901Amazon注文
(0913・人事のカラスは手に負えない 4 kindle 20210913
0913・廣野由美子 批評理論入門 「フランケンシュタイン」解剖講義 中公新書 図書館
(0913・重版出来 17 kindle
0914・端島凛 図書館はいつも静かに騒がしい 20210904 古書店浪漫堂
0914・すばる 2021年8月号(ペソア評伝、グレン・グールド論、武田砂鉄・瀧波ユカリ対談 など) 図書館
0916・春日 武彦, 穂村 弘, ニコ・ニコルソン ネコは言っている、ここで死ぬ定めではないと
0918・おかざき真里 阿吽 14
(0918・おいおい！ピータン！3
(0918・テラモリ アンコール
(0918・護下圭 突厥第二帝国のことが少しわかる本 簡易版 pixiv
0918・僕のマリ 常識のない喫茶店 20210918
0919・小林功 生まれくる文明と対峙すること 図書館
0919・宮下遼 物語イスタンブールの歴史 中公新書 20210918
(0920・リアド・サトゥフ 未来のアラブ人 2 中東の子ども時代 1984−1985 図書館
(0920・岩明均原作、室井大資漫画 レイリ1-6
(0920・室井大資 秋津1
0920・開沼博 日本の盲点 PHP新書
0921・【再読】村上春樹 使い道のない風景
(0922・紛争でしたら八田まで 7 kindle
0923・柳広司 漱石先生の事件簿 猫の巻
(0923・熊倉献 ブランク・スペース 2 kindle 20210923
(0923・ゴールデンカムイ 27
(0923・モブ子の恋11
0923・はじめてのミャンマー 20210904 シャンティブックス
(0923・正清健介 ホウ・シャオシェン 『珈琲時光』におけるオマージュのあり方―小津映画の現代映画への「間接的」影響について (人文・自然研究 第13 号,2019) (pdf)
(0925・鳥辺茜 kitatrip 05 ...20210925
0925・松本浦 道草画報 図書館 20210925
booklogなし 0925・【再読】燃え殻 相談の森
(0925・懐中雑誌ぱなし2011.03号 20210925 トロニカ
(0926・懐中雑誌ぱなし2009.07号 20210925 トロニカ
(0926・映画大好きポンポさん 劇場映画特典 杉谷庄吾【人間プラモ】描き下ろしコミック 前編・後編
0926・Art×Communication ＝ Keith Haring
(0926・会社員でぶどり 5.5
(0926・空えぐみ 沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる 1 kindle
0928・梨木香歩 ピスタチオ 図書館 -1008
(0928・近藤ようこ 高丘親王航海記 1-3 kindle 20210926
(0930•魚豊 チ。地球の運動について 5 kindle
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0902・嶽本野ばら 落花生 20210812 …小鳥さんおすすめ
0902・ワイルド(平野啓一郎訳) サロメ 光文社古典新訳文庫 20210813
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0923・はじめてのミャンマー 20210904 シャンティブックス
(0923・正清健介 ホウ・シャオシェン 『珈琲時光』におけるオマージュのあり方―小津映画の現代映画への「間接的」影響について (人文・自然研究 第13 号,2019) (pdf)
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0925・松本浦 道草画報 図書館 20210925
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(0925・懐中雑誌ぱなし2011.03号 20210925 トロニカ
(0926・懐中雑誌ぱなし2009.07号 20210925 トロニカ
(0926・映画大好きポンポさん 劇場映画特典 杉谷庄吾【人間プラモ】描き下ろしコミック 前編・後編
0926・Art×Communication ＝ Keith Haring
(0926・会社員でぶどり 5.5
(0926・空えぐみ 沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる 1 kindle
0928・梨木香歩 ピスタチオ 図書館 -1008
(0928・近藤ようこ 高丘親王航海記 1-3 kindle 20210926
(0930•魚豊 チ。地球の運動について 5 kindle
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 | 筑摩書房 発売日 : 2019-08-06 |
日本の報道に接しているだけではアフリカの実像は見えてこない。アフリカ36カ国・54000人へのアンケートで中国へのアンケート調査で中国を評価する・肯定するというのが半分以上、日本人が考えるほど北朝鮮は孤立してない、アフリカに橋頭堡を築いている、など。国連の枠組みでの自衛隊の海外派遣で、一緒に働くのに、今一番仕事があるのは、アフリカ、南スーダンでできないならどこでやるのか、という提言。「金融機関もインフラもないようなところではビジネスはできない」から「金融システムやインフラを一からつくること自体がビジネスチャンスなのだ」へ、という視点などは読み応えあり。また、「ネルソン・マンデラ 未来を変える言葉」は手に取りたいと思った。ただ、最後の対談は、若干ポジショントークが入ってるかなとの感。
 | 光文社 発売日 : 2012-04-12 |
作品としては再読。平野訳は初。一読、誰かが誰かを「見る」ことが、キーになっているな、と。若いシリア人はサロメを見る、ヘロデもサロメを見る、サロメはヨカナーンを見る、ヨカナーンは神を見る。近習はシリア人に見るなと止め、ヘロディアはヘロデに見るなと止める、けど止まらない。ヘロデ「わしはこやつが、その物憂げな目で、サロメをじっと見つめておったのを覚えておる。結局、こやつはちと、見すぎたのであろうな」と見すぎることへの不吉な、マイナスな考えが語られる。だのにヘロデも止められず最後には、自他ともにきっと思ってなかった結末を迎えるのだけれど。そのへんは、訳者あとがきでも、「サロメ」は"視線のドラマ、対象への欲望が、「見る」という行為にすべて直結している。"と十分に敷衍されていた。また、母親の望みをそのまま口にするだけの娘から自分の欲望を力強く表現する女性への変貌。ワイルドが行った決定的な改変、完全な独創ではないにしても、とも。また解説では、"制度とぎりぎりまで戯れながら、絶対にそれを決定的に破壊しないワイルドの手法"という視点も提示され。総じて、いずれも十分にサロメの作品解析、ワイルドの人物像、作品遍歴、その社会背景などを縦横に論じていて、大変興味深かった。また、 井村君江「サロメ図像学」も手にとってみたく思った。
 | サイゾー 発売日 : 2016-09-06 |
好きなzineの作者さんが面白いとおっしゃってて手に取りました。「下妻物語」「カフェー小品集」しか読んでない身には、従前のイメージとは、結構かけはなれてて、"僕は反抗的な人間だ。決められたことには意味なく逆らってしまう。"、"でも、嫌なものは嫌なのです。損したって嫌なものは嫌だ。"となかなかに肩肘張った人だなあ、という印象。 検察官とのやりとりや、精神科のK先生とのやりとりは好きでした。もう来なくていいんじゃないと言われてるのに、ここに来るのが楽しいもので、って。一番可笑しみを感じたのは、ごねて独居房にしてもらったら、そのうち他の部屋が満員になってきて、申し訳なくなってきて、あの、部屋がえしましょうか？と訪ねたら、留置場はホテルじゃない！と怒られたエピソードです。
 | 中央公論新社 発売日 : 2020-06-22 |
６世紀から11世紀のビザンツ帝国を中心に据えて書かれた一冊。イコンの破壊がどこまですすめられたのかは藪の中。/ビザンツ千年の歴史に「皇帝教皇主義」というレッテルを貼るのはかなり乱暴。教会をめぐる手続きで、皇帝と総主教の対立は絶えず/プロノイアは、ミカエル八世時に世襲化が進展。パライオロゴス朝をビザンツ「帝国」に含めない本書の考え方は、プロノイア制の拡大した後期ビザンツは、中央集権を旨とする君主専制の「帝国」とは呼べないというもの/というあたりが特徴か/特に興味をいだいた皇帝・高官は3人。/コンスタンス二世期、首都を離れて出征する皇帝と、首都で留守を守る政府要人は、必ずしも意向が同一ではなかった/文人コンスタンティノス七世。歴史にかかわる書物を国内からすべて探し出し分類・編纂「コンスタンティノス抜粋」。/最末期に活躍したトレビゾンド生まれのヨハネス・ベッサリオン。/もっと詳しく知りたい方はJ・ヘリン「ビザンツ 驚くべき中世帝国」を、と。以下の論文・書籍は手にとってみたく思った。/キャサリン・ホームズ「変容するビザンツ？グローバル・ヒストリーの時代におけるビザンツ研究の新潮流(600-1500)」（「思想」1118）。小林功「生まれくる文明と対峙すること：７世紀地中海世界の新たな歴史像」。中谷功司「皇帝ユスティニアノス２世の流転 紀元７００年のビザンツ北方世界」。
古書店シャンティブックスの店主と旅行作家・野崎が行く！をはじめとしたzineの作者の旅をめぐる電話対談。最初の旅のきっかけや、長いこと放浪した旅のことが語られていて興味深い。インドの好きな都市はどこ？という話題で盛り上げれるの稀有。そしてご飯の好みは別れているようで、ここのはまずくないですか？いや美味しかったです、みたいな。そんな両者の好みの違いも、そうだよね、という共感もまた楽し、でした。///個人的なことですが、ご飯といえば、その昔、クアラルンプールの市場で現地の人が食べてるのを見た、ショッキングピンクのスープに入ったごはんが今でも気になる。かき氷かなんかにライスプディングとかだったのかなあ…。
 | 小学館 発売日 : 2021-08-30 |
イズコ探しをつづける琥珀と悠人。しっかりしてるようでいて、色々隠したがったり、琥珀に自分のダメなところを知られたくなくて、あがいたり。けど、それも含めて思ったことを言葉にしてしまうと、ダメなのは自分じゃない、今の自分の状態が悪いだけ、ユートはダメじゃないよと諭され…と。
 | JICC出版局 発売日 : |
引用長すぎ、引用私的すぎ。小説の解析に必要な本を持ってくるのではなくて、たまたま自分の読んだ本を、村上春樹解析に無理やりあてている感。また、年が一個違いだから春樹呼び、て感覚もよくわからん。ノルウェイの森-ダンス・ダンス・ダンスの復習にはちょっといいかも。
 | 講談社 発売日 : 2006-05-16 |
「政敵たちを震え上がらせる恐ろしさと、弱者への限りなく優しい眼差し。いったい野中の本当の姿はどちらなのだろうか。」という問いには、どちらも本当の姿なのではないか、という思い。部落差別を受けた辛さ、差別を無くそうという情熱、政治の世界へ身を投げ入れ、やがて権力のはしごを登り詰め、そして敗北する。最初の志はそうだったのかもしれないが、最期のほうはもう権力闘争一辺倒に感じた。最後は福祉に戻る、という道行きを示したとしても。権力の階段を昇っていくときの仕事の仕方、権力者の懐に入りかた、時期がくれば今までの仲間を冷徹に切り離すやり方、潮目を見て判断し、首尾一貫した思想ではなく、その時その時に有効な手を打つ、百八十度の転換や不倶戴天の敵との野合も辞さない、といった激しさ。/矢田（仮名）「野中は表の政治で国会議員を目指す。俺はその裏で体を張って野中を守りながら、自分の土建業を発展させていこうと思ったんや」は、まんま池上遼一「サンクチュアリ」の世界かと思った。/同窓生「野中はんの中には、差別に憤る部落民としての野中はんと、政治家としての野中はんと二人おるんです」/部落民の陳情を受けつつも、周囲から浮くような贔屓の引き倒しのようなことはしない、そうすることがかえって彼らへの差別と反感を呼び込むことになるから、というバランス感覚。/麻生太郎の自らへの差別発言への公の場での激しい言葉/といったあたりが印象に。/最後に。作者に対しては、「私の家族がどれほど辛い思いをしているか知っているのか。そうなることがわかって、書いたのか」という野中の言葉に、本人も言っているように、真正面から答えられていない、業のようなもの、書いて世に知らせるべきと思ったから、という自分本位の思いから出たものであることに、そういった思いでも世に出てしまう、書として残ってしまうという恐ろしさを感じた。第三者的に見れば確かに意義のあるものだったとしても。
 | 集英社 発売日 : 2018-11-16 |
ふたつの謎、とは、「なぜ自衛隊に乗り込んでの割腹自殺という最期を遂げたのか」「なぜ遺作「豊饒の海」のラストはああなったのか」。豊饒の海のラストについては、確かに愕然とした覚えがあるので、そこは同感。長い論証ののちに、無意識下で虚無にたどりついてしまったため、あの結末となり、そこから無理やり逃れようとあの最期になった、と。正直、小説の人物をとりあげ、これとこれは構図が一緒、ここは天皇だ、ここは三島自身だ、と言われても、そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないぐらいにしか思えず。実験や数式を持ち出すわけじゃないから、あとはどこまで納得して信じるか、になるのかな。羊をめぐる冒険は、夏子の冒険の書き換えだとする研究。井上隆志「三島由紀夫 幻の遺作を読む もう一つの豊饒の海」平凡社新書。鍵のかかる部屋。彼が書きたかったこと、書く意味のあったことはすべて「仮面の告白」一冊の中にあり、と書いた松浦寿輝「三島を憐れむ」、あたりは手にとってみたい。個人的には「豊饒の海」の復習にはよかった。
 | crim 発売日 : 2020-08-10 |
「脳内会議中」のイラスト、さらに5パターンに展開したのが個人的に一番ヒット。曲者ーであえであえーって。都道府県シリーズもひとつひとつ解説ついてきてて、よき。乱闘のスタンプがプロ野球珍プレー好プレーから来てたとは知らなかった。
 | ロングセラーズ 発売日 : 2012-07-25 |
単行本未収録の49編を集めたもの。ごくごく短いものから、開高健、手塚治虫含む4名の映画鼎談など豪華なものまで。おおらかな時代だったんだなあ、著書に住所がはっきり書いてあって、読者が訪ねようとすれば尋ねられて、当時住んでた井荻の駅前には荒野が広がっていた、と。/「ひたすらに自分を抑制する傾向があるんですわ。けど、この自己抑制が逆に反発力を養う結果にもなり、きれいなことばでいえば、沈潜、ぼく流にいうなら、だらしなく自己を埋没するという危険性から脱出することが出来ることになる。」(p.84)/私たちの欠陥のうちとりわけ罪深いのは、そそっかしく結論をもとめる心であろうかと思われる。(p.91)/何を、どう、書かないか。これは、何を、どう書くか、とおなじくらい痛切な問題である。井伏さんは若いときから文体の背後に何を隠すか、秘めるか、ということについて、なみなみでない努力と成功をかさねてこられたかと思える。(p.274)あたりが印象に。/巨人と玩具、裸の王様、パニック、食卓は笑う、が読みたくなってきた。
 | 東京創元社 発売日 : 2007-03-22 |
１０年以上ぶりの再読。手にとって読みすすめてから、再読したいと思ってたのは、楠見朋彦「マルコ・ポーロと私」だった！と気づくが、こちらもおもしろい。捕虜としてジェノヴァの牢に放り込まれたるは、物語作者ルスティケロと、船乗り、貴族、仕立て屋、僧侶の若者たちと、ホラ吹きとよばれる「百万のマルコ」。いざキミらを外の世界に連れ出さん、と語ってくれるのは、大ハーン・フビライの治めるモンゴル帝国のさまざまな珍奇な話、その話には必ず、語り残された謎の部分があり、それを解こうとやっきになってるうちに、ここ（退屈）にいることを忘れてしまう、と。そうして書き留めたものをルスティケロが写本作家に頼んで出版したところ…全員分の身代金となり、といった枠組み。この世界でいちばん遠くの景色は、望遠鏡をのぞく自分の後ろ頭だ。結局のところ私にとってこの世界の一番遠くの景色というのは生まれ故郷ヴェネチアだったのかもしれない。というのが、ありきたりかもしれないけど肝かな、と。どんなに遠くへでかけ珍奇なものを見、食べ、出会い、語り、多くのことを経験してから再度見た故郷はまた違って見えただろう。たしかにこれは「東方見聞録」も読みたくなる。
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-09-10 |
漫画家はしゃさんのフィリピン留学記。不安だった共同生活も、ルームメイトのサラの明るさと気遣いで、いつのまにか、ショッピングモール行くの、わたしもついていっていい？と聞いたら、はあ？いっしょに来るにきまってんでしょ、なにいってんのよ！と怒られるくらいの関係に。命の危険を感じるほどの洞窟探検や、長距離バスでのビーチリゾート旅、あつあつのマンゴーに塩気のあるチーズのピザ、バロットなど、フィリピン料理にも舌鼓をうち、来る前の不安を打ち消すような先生や生徒たちとの交流に、ああ青春よもう一度、楽しい学生生活agein、といった感のエッセイマンガでした。日本人、韓国人、フィリピン人の強い味覚、弱い味覚の比較などもおもしろく。
 | 白泉社 発売日 : 2021-09-03 |
櫛がこわれたチョビのために、夏目たちがこっそりと白い龍の鱗を探し出し、櫛にしてもらおうとちょびに差し出したら、実はちょびが白い龍だったという一幕。養母の友人が酔ってなくした靴探しと、ニャンコ先生の芋掘りがクロスした先に、墓荒らしの妖に、誤って名を返したかと思いきや、大妖可可とレイコの深謀遠慮があってのことで、…という一幕。最後はファンタジーファンタジーした一編。海辺で友人たちと過ごした夏目が、夢というかたちで、ニャンコ先生がしゃべり、海の上を歩けて、流れてきた星を捕まえて、空に投げ返せば、虹の雲が降りてきて道が開けて小鳥たちが空に帰れる、というのをみんなでやって…と。ほんとに楽しそうで、幻想的で、いいシーンだなと。
アルケミノート＆ゴトウマキエ ふたりキャラ展で購入。札幌近郊の真っ黒な湯の竹山高原温泉、豊富町のめずらしい石油の温泉が気になる。がっつ元気めし！で紹介されてるガッツリ系ごはん、稚内のスラッピージョー、根室のエスカロップあたりはぜひためしてみたい。むかわのしょうゆサンデーも。と気になる点多数で、いろんなところめぐりつつ楽しそうに紹介してくれるのでほっこりした気持ちになれます。
 | 小学館 発売日 : 2021-09-10 |
意気投合したおばあさんから、阿佐ヶ谷の平屋の一軒家をもらった青年ヒロトと、山形から美大生になり上京してきたいとこのなつみのストーリー。役者をめざし上京するもいまはフリーターで、のんびりすぎるくらいのんびりでおおらかなヒロトと、都会の大学生はおしゃれでクールと気後れしていたけど、ようやく友達できて、やりたかった漫画家の道を歩み始めるなつみと。マイペースすぎていらいらされることも、とあるけど、考えかた自体は、そういう視点もあるのかあ、、、という思いに。なつみの甘ったれたところも、びしっと指摘したり、エスカレーターでがんとして陣取って動かないところなど、のんびり一辺倒ではないところも垣間見せつつ。超せっかちな不動産やさんのおねえさんがどうからんでくるのかなというところがたのしみだったり。
 | 岩波書店 発売日 : 2021-08-31 |
米澤穂信「さよなら妖精」を読んでから募った、もう何年にもなるユーゴスラヴィア現代史への関心。オスマン帝国、ハプスブルク帝国時代の統治から説き起こし、第一次ユーゴ、ドイツによる併合、パルチザン運動、チトーの主導による第二次ユーゴ、内戦、各共和国の独立までが旧版では語られ、新版では、ここ四半世紀の、各共和国の政治的な動き、共和国間の連携の動き、相互の謝罪と和解の動き、民族主義的政党の後退などが描かれる。民族、という概念がいかに人工的で恣意的なものか、というケーススタディーに思えた。見た目も言語も宗教もほぼ差異がないのに、ある日、別の民族として対立の火種があがり、仲良く混在していた隣人同士での殺し合いが始まる。特に、混在の度合いが高かったボスニア・ヘルツェゴビナで顕著だった。多くの要因があり、これというものに帰せないが、政治エリートが民族・宗教対立を煽り、マスコミもそれにのったところが大きな要因だったのでは、と指摘される。また、セルビアのみを悪玉にした報道、政策へも疑義を呈する。参考文献からは、「アイラブユーゴ」「解体後のユーゴスラヴィア」「ボスニア・ヘルツェゴヴィナを知るための６０章」「スレプレニツァ・ジェノサイド」は手にとってみたく思った。両親の民族が異なる場合、ある地域の民族的少数者が多数者によるどうか傾向に抵抗する手段として、便宜的に「ユーゴスラヴィア人」を選択する場合も見られた、とあるが、一番多くても「ユーゴスラヴィア人」を自らのアイデンティティとして選んだのは、全人口の１０％ほど。チトーの３０年以上の施政期でもこれは埋まらなかったのだなあ、という感想。すくなくとも半数以上の人が、自らが○○人というアイデンティティより、ユーゴスラヴィア人というアイデンティティを持てれば、と他国の後世の者からはないものねだりを感じてしまう。著者が、最後に、ボスニアを史前地理的な区分で三地域にわけ、地域共同体からなる連合国家にするのが最善、"「実験国」ユーゴで行われた模索は、「小ユーゴ」に場所を移していましばらく続くことになるだろう。ユーゴスラヴィアの現代史はまだ幕を下ろしていない。"と記した言葉が重く響く。
 | 中央公論新社 発売日 : 2005-03-01 |
小説技法編、批評理論編の2部で、小説「フランケンシュタイン」を徹底的に解剖する。正直、小説一冊読むごとにこれをやってたら疲れるが、これだけの様々な視点、手法から見ることで、こんなにも豊かな体験を引き出してくれる、というのは脱帽の感。小説技法編は、冒頭/ストーリーとプロット/語り手/焦点化/提示と叙述/時間/性格描写/アイロニー/声/イメジャリー/反復/異化/間テクスト性/メタフィクション/結末。批評理論編は、伝統的批評/ジャンル批評/読者反応批評/脱構築批評/精神分析批評/フェミニズム批評/ジェンダー批評/マルクス主義批評/文化批評/ポストコロニアル批評/新歴史主義/文体論的批評/透明な批評、からなる。/小説の読み方には、小説の内に入ってゆく方法と、小説から外へ出てゆく方法とがある。/あらゆる小説は本質的に、見かけの裏に潜む現実の発見を描くものであるから、この文学形式の至るところにアイロニーが染みわたっているのは、当然であるとも言えよう/
 | ポプラ社 発売日 : 2019-05-02 |
柳美里「南相馬メドレー」つながりで。(1)地方の書店チェーン→(2)実家の本屋→(3)地方の書店チェーン→(4)東京の流通会社、と変遷する著者の勤務先。メインは(3)のときの、さわや書店フェザン店のこと。どうすれば本を手にとってもらえるか、同僚たちと議論を重ねてつくりあげた棚、POP、来店するお客様とはできるだけ言葉をかわし、何を買い、何が好きだったか、機会があればおすすめし、関係をつくりあげていく。本屋は「今日行く」と「今日用」のための店、と。仕掛けて火をつけることも。「身近な雑草のふしぎ」は、著者をまねいて、ラジオでのトークイベント、介護施設の小さな図書館での読者交流イベント、その後雑草をみんなで探索、摘んだ野草を天ぷらにして食べる、探索中はみな真剣に著者の話に耳を傾け…という幸福の連鎖のような道行き。3.11があったときは、岩見ヒサ「吾が住み処ここより外になし」萌文社(「先祖代々受け継いだ海と土地をお金のために手放した人たちは今、幸せに暮らしていますか」)を展開、岩手で原発誘致が議論にあがったとき、真っ先に反対運動をした著者を店頭に並べ。また、本屋の六次産業化、「まちづくりへの参画」をやる、その一つの方法としての「異業種との交流」と、文具や複合スペースにも手をひろげ。すごく丁寧な店作りと顧客との関係づくり、業界内にとどまらず、連携することで本屋の生きる道を模索する姿に頭がさがる。ただ、後日譚は少し苦い。店の方針転換で、そういった丁寧さは割に合わないと判断されたということか。今度は、流通の面から書店を支えたい、という著者の、新しい道での著書も出して欲しい、読みたい、思い。
 | 新潮社 発売日 : 1965-12-28 |
ヤマモトマナブ「キューナナハチヨン」にさらりと出てきて読んでみたくなり。舞台は江戸。表具店に奉公する、腕も良くて頭も切れて男前の栄二と、大柄でひとはいいのだけど何事もゆっくりしてるさぶ。いつか自分の店を持つことを夢見、はげんでいたふたりだが、ある時、栄二が濡れ衣の罪を着せられ…というところから人生が転がりだし…と。自暴自棄になり、自分の力になりたいという人の心さえもはねつけ、自分の殻にこもっていた栄二も、人足寄場の人たちと働き、語り、助けられ、教えと交わっていくうちに、いつしか殻もやぶれ、自分は何をすべきか、何ができるか、どこへ向かっていきたいかつかめ、一途に自分を慕い、支えてくれたさぶ、おすえと一家を持ち、といった姿が描かれる。最後は落語のような道行きだったな、と。誰があの事件の犯人だったか、知ったあとも、あれでよかった、布一枚で人生を狂わせてなるものか、自分は良い方に変われたと栄二が思えたことが救い。/おまえが気づかず、また興味がないにしても、この風には秋の爽やかな味がするし、もくせいの花の香りが匂っている（岡安）/「人間のすることに、いちいちわけがなくっちゃならない、ってことはないんじゃないか、お互い人間てものは、どうしてそんなことをしたのか、自分でもわからないようなことをするときがあるんじゃないだろうか」（さぶ）
 | 講談社 発売日 : 2021-09-13 |
完結編。同期の友人国領へのアウティング被害から、布田が属する人事部をあげての再発予防作、啓発活動と、前と変わらぬ接し方に、国領がすくわれた話。新人採用試験時に、当落線上に来た、いまの会社をあつく見据えるものと、将来の会社を語るもので、軍配が上がったのは…と。そして採用活動の中で、自分が何度も企画を立ててはねかえされていた夢を思い出し、そこへ向かって走りだした布田。それを人事部から支えようというカラス。最後は、お互いの思いが通じての大団円。企画会議で、ターゲットとする女性像を語る布田に、同僚たちが、それまんま烏山さんのことだって気づいてないのかな？と語ってるシーンが一番好きでした。/「とびたつ勇気があるなら留まる勇気もまたあるのではないでしょうか」（カラス）/「どんな結果であろうとも一度情がわいた人には幸せになってもらいたいよな ここじゃなくても どんな場所でも」（布田）/
 | 三交社 発売日 : 2017-07-10 |
就職活動に失敗して、本に興味はないけど、つなぎで、家から近いから、という理由で図書館につとめはじめた主人公が、クセありこだわり強い同僚たちに囲まれ、指導を受け、感化され、個性的な利用者に問いかけられ、翻弄され、最後は、子供のときに読んだ絵本を探す女性の手助けをしたことで、ふっきれ、司書講習を受けよう、この道を進もうと決意するところまでが描かれる。/「私たちは、利用者の秘密を守るための黒衣でなければならないのよ」「私たちは貸本屋ではありません。知識を収集し、蓄積し、提供することこそが使命です」といった真っ直ぐな言葉から、リファレンスのコツや苦労、大衆演劇一座の、兄、妹、双子の弟たちとのドタバタとしながらも、最後は語り合い、アドバイスできたり、一年後の再会をまちわびる関係を築くところまで、幅広く描かれ、読み終えて温かい気持ちに。
 | 集英社 発売日 : 2021-08-06 |
お目当ては、澤田直のペソア評伝第二回。リスボンに戻ったペソアは孤独感を抱きつつ、英語で詩や短編小説をつづり。そのうちの「独創的な夕食」は、「アナーキストの銀行家」におさめられてるとのことで、読み返してみよう。そして批評家としてのデビュー。王政打倒の革命。ポルトガルの政治の季節。ポルトガル文学でも、「サウダーデ」を中核に据えた思潮が、新たな文学運動を推進する理念となり。ペソア自身も遺産を手にし、出版社を立ち上げるが、短い間に事業は頓挫し。そして仲間たちとカフェにつどいての談論風発。「不穏の書」の孤独癖からすると友人はいなかったのかと思いきや。そして、君は批評ばかり書いてないで詩を書くべきだと忠告してくれた畏友サ＝カルネイロの存在。「鐘のひとつひとつが/広い空に振動するが/ぼくは過去をより遠くに感じる/郷愁（サウダーデ）をより近くに感じるのだ」。そして次回からはペソアの文学的特色、異名について語られるとのこと。/他に、滝波ユカリ-武田砂鉄対談。進化論の一番末尾がスーツ来たサラリーマンの図って腹たちません？に込められた怒りと諧謔と。/西村紗知「グレン・グールド論」は演奏の違いを聞き分け流麗な言葉でいいあわらせない身には、遠くてまぶしい。/「パレスチナの朝」のもう笑うしかない、この状況は、というそれ以外に如何せんという思い。
 | 小学館 発売日 : 2021-09-10 |
完結。コロナ禍の現代に寄せて来た感。新たな仏教がこの乱れた世のワクチンとなる、みたいなセリフ、あるいは、正しすぎるものは毒となる、とは、己の見たいものだけを見ようとする多くの日本人への戒めかな、と思ったり。天皇や貴族層への対応、受け入れられ方の違い、方向性の違いなどあり、傍目には対立しているように見えても、最期の瞬間、お互いの高みを理解出来るのはお互いだけ、と空海、最澄が共に思っていたと描かれる。現代日本を見下ろす二つの視線は、二人の思想が脈々と受け継がれてきたことを指すのか。満濃池のみひらきページの壮大さ、二人が対話を重ねるシーンの背景が、むかしのWindowsのスクリーンセーバーの模様に似ていたな、という雑感。
 | イースト・プレス 発売日 : 2021-07-17 |
歌人と精神科医が死について対談。マンガでは本文に書かれてないエピソードやオチもあり楽しい。穂村さん、先生て呼びかけるんだ、と思ったり。/春日さんが産婦人科医だったこと、「ブルックリンの古い印刷工場を改装してに住む辛辣なコラムにストの住処」に改装、それをまた本にしてたとかは、知らなかったなあ。/お試しの死とかないかな、死神以外に死について教えてほしい、などは、究極的には死んだ人に話を聞けない以上いつまでも横たわる問い。死について考えたことありやなしや、という話題で、穂村さんが、光さす蔵書充実した図書館にいい椅子と机ありて日がな読書というイメージ有れば生きていける、みたいなこと言ってたのが良き。雨宮まみさんが亡くなった際、詩人文月悠光さんが「雨宮さん」て言葉で検索をかけてたというエピソードが紹介されててそれもまた良き。また、傍目には素敵な友人恋人両親に囲まれて仕事が充実しているように見えても、本人の問題としてハッと死に惹かれてしまうこともある、という線でやはり、二階堂奥歯さんの著書を読まなければと思った。一番好きな、というか率直なやりとりは、赤ちゃんをとりあげたのが1年で365人、それを6年、というのを聴いて「それは世界への確かな貢献だよ。でもさ、そんな大変な体験をしているのに、なんで崇高な人格にならないんだろ？いつも「俺は理解されてない！」「あいつは許せない！」とかばっかり言ってるじゃん（笑）」(p.207)てところ。
 | 柏書房 発売日 : 2021-09-15 |
常識のない喫茶店、というけど、「常識」を問い直してくれる。客だからといって何でもいうことを聞くわけじゃない、客がお金を払い、それを代価に店はサービスを提供するのだから本来対等のはず。そもそも「働いている人がいやな気持になる人はお客様ではない」と。だから、喧嘩もしていいし、出禁にもする、というお店の方針。それを踏まえた上での、微笑ましいエピソードから腹立たしいエピソードまで、時に一緒に笑い、時に一緒に、時に我が身を振り返り…著者の勤める喫茶店での時間をおすそわけしてもらった気持ち。帯のこだまさんの、潜入したい、変なあだ名つけられたい、という気持ちよくわかります。何の特徴がなくても、あの、何の特徴もない人、というあだ名がつくなんて。超絶謙虚なお客さんが、あのう…ご迷惑でなければ追加でトーストを、と頼むシーンと、店が忙しすぎると常連たちに謎の連帯感ができて、ここだ！というタイミングで会計の列をつくってくれるところ、いいなあと思った。喫茶店めぐり好き勢には見逃せない一冊、でした。
 | 講談社 発売日 : 2021-09-13 |
渡辺さんの、フカフカボンボン超熱愛話と、失恋するたびに、厄落としのように兄にその終わった恋を名付けてもらう（すべて食べ物絡み）妹の話が、良きでした。
 | 双葉社 発売日 : 2021-09-16 |
まさか後日譚のアンコールが読めるとは！みな身近にいる青い鳥に気づく冒頭の二篇の他は、メインの二人が結婚へと、二回のプロポーズ保留を経て、やはり話し合わないと、気持ち伝えないと前に進めないことを再確認しながら、これからも一緒に、と。スーツ姿の鉄子さん、義実家となるところへ結婚の挨拶にうかがえば、娘の父が、ほ、ほんものだ、と初めて芸能人に会ったファンみたいな応対したところがツボでした。
 | ミネルヴァ書房 発売日 : 2020-01-16 |
中谷功治「ビザンツ帝国」(中公新書)つながりで。新たな7世紀ビザンツ帝国像、ヘラクレイオス帝晩年630年代から、10年単位で詳細に検討し、コンスタンス2世死後の670年代までが主に扱われる。史料の残存状況が壊滅的で「暗黒時代」などとも言われていたそうだが、その後発掘や現存史料の再評価により、史料状況が改善し、当該時期の再評価が可能になったとのこと。/重箱の隅をつつくように思えても、諸史料、諸研究をつきあわせて、年代をカチッと確定させることで、それまで関連がないと思っていた事柄に関連を見いだせる！となった時の、違った地平が開ける感が痛快、と思った。/ヘラクレイオス帝末期からコンスタンス2世治世までの、政治・軍事・経済・外交・宗教政策面、ササン朝ペルシア、アラブ勢力などの外部要因から、当該期のビザンツ帝国の政策が再評価される。/ビザンツ帝国は、これまでの「ローマ帝国」ではなくなった。信仰、言語面で離心的傾向を示していたシリア、エジプトなどがアラブ支配下に入ったことで、逆説的に中央の権威、権力が高まり、凝集力の高い国家へと変貌した。アラブ勢力のコンスタンティノープル包囲をしのいだことで、神によって守られる国家、神によって守られる皇帝が統治する国家として、続いていくことに、と。一方、お互いの信仰は「他者」として併存・対峙しなければならない存在となった。ビザンツは生まれくるイスラーム文明と対峙・対話を余儀なくされ、イスラーム文明もまた、存続するビザンツとの対峙・対話をするアラブ国家が余儀なくされたからこそ生まれてきた、と。俯瞰で大きな流れを捉えようという視点には大きな魅力を感じた。/ただ、アラブ側の第一次内乱、第二次内覧、ウマル二世の即位、アッバース朝革命、すべてビザンツ帝国へのアラブ側の敗北が要因となった、というのは言い過ぎな気もするがどうなのだろうか、とは思った。
 | 中央公論新社 発売日 : 2021-09-17 |
時代も自由に前後し、高度も虫の眼から空高くまで自由にとって、イスタンブールの各地区を行き来する時間旅行者の視点で描かれる一巻。ただ、「物語」かというとすこし疑問。巻頭で述べられるとおり、最初に、古代から現代までの通史をざっと見たあとは、各地区をめぐりつつ、時代にとらわれず関連するエピソードをさしだしてくれる手法。土地勘のあるところはすいすい読めるけれど、そうじゃないところは、章扉の地図と首っ引きで行きつ戻りつしつつ、なかなか読み進まないのもまた愉しいといった風情。個人的には、近代あたりのエピソードは類書でも触れられたものも多かったゆえ、現代のイスタンブールの発展に目を見張る。旧市街、新市街、アジア側を旧都心として、新市街の北側の「新都心」が発展していく様子。地下鉄網の大幅な延伸、ボスポラス海峡にいくつもかかる大橋から、海底トンネルの掘削、時代のランドマークになり得る大型のモスク２基の開基、第２ボスポラス海峡とも称されるカナル・イスタンブールのプラン、など。「重機の入れない狭隘な旧市街や急峻な斜面の住宅地以外は、またたくまにこの鉄筋コンクリートの街並みに置き換わっていった。オルハン・パムクや村上春樹のような作家たちは、こうした地域を見にくいコンクリートの街と切って捨てるが、この街並みこそ現代イスタンブール人の暮らしがあるのも事実である。」(p.256)と。いきなり村上春樹が出てきてびっくりですが。チューリップ時代の盛衰の象徴たる、9年で露と消えたサアーダーバード離宮。ハレムの女性たちの御用聞きとして殿中と市井を橋渡しした女商人エステル・キエラ（？ー1600）。勝田茂「トルコ影絵芝居(カラギョズ)の世界 」えくす・おりえんて 3, 55-77, 2000。あたりは、もう少し調べたり、読んだりしてみたくなった。
初代の唐への蜂起と独立。その弟の強引な即位。初代の息子の弟の方の活躍で、兄のほうが即位。弟は向かうところ敵なしの武力面で貢献するも兄に先立つ。兄も、大臣に毒をもられるが、死ぬ前にその大臣と一党をすべて斬殺してから息絶えるという豪のエピソード。簡潔にして流れや人物紹介もまとめられてわかりやすかった。
 | 花伝社 発売日 : 2020-04-06 |
アラブ人の父、フランス人の母をもつ著者の6、7歳時、主にシリアでの生活が描かれる。小さいながらに、学校生活への不安と理不尽さが描かれ。父にお願いしても買ってくれない規定のものを、父が言ったとおりに先生に言い訳したら、棒でぶん殴られる理不尽さ。授業内容も旗から見るとめちゃくちゃというか…ずっと国歌歌って終わり、とか、雨を受ける手の型をして終わりとか。かと思えば、休み明けに何の説明もなくいきなり担任が変わってたり、連絡つかなくなった級友がいたり。有力者に取り入ろうとする父、ガスオーブンやビデオデッキなどの大型家電を買い出しに行った際の描写、何かにつけ母に「フランス人め」と悪態をつくところ、土地を買ったまではいいが、豪邸を立てる立てるといいつつなかなか着手できなかったり。親戚の子どもや近所の子どもから理不尽な悪意をあびせかけられたり。衝撃的なのは巻末近くの「名誉殺人」の成行きだろうか。
 | PHP研究所 発売日 : 2021-02-17 |
「勝手に民衆に期待し、勝手に失望し、勝手に蔑み、挙げ句反知性主義・ポピュリズムという概念を恣意的に乱用しながら、天に唾を吐くごとく権力批判したつもりになることで溜飲を下げる」ことを繰り返す近年の民主主義の一側面には、自分の都合を過度に投影した「民衆」の理想かと単純視が存在する/経済指標を可能な限り改善し、外交も不要な葛藤を避けるよう安定させる。野党・マスコミがエラーを責め、悪印象を植えつけようにも、「そうだともそうじゃないともいえる」ようなプロセス論の範疇に止める。むしろ人びとの視線が集まりにくい他の”地味な”実務を勧めて、大衆が飽きたころに別の話題を提示する。この既視感あふれる政権維持のテクノロジーは、より洗練されつづけているにも見える。政局はあっても政策（論）がない政治は、一層日本に根付いている。(p.178-9)/といったあたりが愁眉か。/また、ポスト貧病争、村中璃子氏の功績、「PLOS ONE」に発表された論文「福島第一原子力発電所事故後の半年間における、放射線に関するTwitter利用とインフルエンサーネットワークの可視化についての分析調査報告書」、Youtuberの公共性の獲得、といった論点も。/こんな角度から見ると、こんな視点から見ると、という点では示唆に富むことが多かった。贅沢をいうなら、１編だいたい４ページほどではむずかしいかもしれないけど、大半の解決策が、立ち止まるべきだ、議論をはじめるべきだ、考え直すべきだ、等の紋切り型に堕していたところ。
 | 秋田書店 発売日 : |
時は戦国、甲斐は武田勝頼の世。家族を殺され、岡部丹波守に拾われ、大抵の男には剣で勝てるようになったころ、土屋惣三に見出され、武田信勝の影武者となることになった少女レイリ。自らを天才といってはばからない信勝に最初は反感を覚えつつ、その背負うものの重さ、深謀遠慮、将としては生きるが正義と語るのを目の当たりにし、また主命に反して高天神城攻防に加わった末、もう死にたがりはやめました、と語ったシーン、土屋惣三の表情がやわらいだところが出色だった。もうひとつのクライマックスは、信勝が父の盾になったシーン、理で言えば自らが生き残るべきところを、情を抑えきれず、勝頼がレイリに、最後にあんな信勝の笑顔が見られたと礼をいうシーンも。
 | エンターブレイン 発売日 : 2012-10-15 |
ただただいらかくんと村瀬さんが不憫。
 | 中央公論新社 発売日 : 1998-08-01 |
何年ぶりかの再読。「波の絵・波の話」を手に取ったら、同じコンビのこの本も読み返したくなり。「移動するスピードに現実を追いつかせるな」それが旅行者のモットーである。/（それでも旅に出るのはなぜ？）たぶん僕らはそこに自分のための風景を見つけようとしているのだ。/といったあたりが目にとまる。
 | 講談社 発売日 : 2021-09-22 |
ナウル編、シンガポール編、完結まで。八田さん妹の地元の不良たちの抗争編、途中まで。ただ地の利を得ただけで億万長者になった者は、出身地の未来に投資すべきでは、という回答を引き出した顛末（ナウル）と、ある程度の自由を制約されつつの経済的繁栄、という国是にも近い潮流にも、若者を中心に異議が出ており、それが野党の躍進にもつながり、文化的政策の重要性にもつながる、という八田さんの説得に真実味。（シンガポール）
 | 徳間書店 発売日 : 2018-03-22 |
民主化が浸透していたころの、国軍がクーデターを起こす前のミャンマーが、現地の視点で、オールカラーで語られている一冊。レストラン、雑貨店から名所旧跡まで。行く際の細かい注意、たとえば2階の店がシャッター閉まってて閉店と勘違いしそうだけど店は3階にある、とか、きっとありがたいだろうなあ、と。/「毒のあるシリン豆。食後に水をたくさん飲む必要がある。そこまでして食べたいのか！？」/数多ある寝仏のくっきりしゃっきりした化粧のあざやかさ/崖の上に端座するゴールデンロック/Manuha Payaの”狭い空間にみっちり詰まった仏像” 人がすれ違うのが困難なほどの狭さ/カステラにクランブルやプリンをトッピングしたプーティン/外国人から「ミャンマー版iPad」と呼ばれる石版/などなど興味を惹かれるところがいっぱい。今は変わってしまったのだろうか、と思いつつ。
 | ヒーローズ 発売日 : 2021-09-15 |
躊躇していたけど、坂口安吾「堕落論」の”人は誰しも自分一人の然し実在しない恋人を持っているのだ”に背中を押され、自分だけの透明な恋人を産み出してしまったスイ。それを最初は驚きおそれつつも、馴染んでしまい、自分も欲しい、と思ってしまった友人のショーコ。彼女が見守るスイは、マッドサイエンティストから恋する乙女へ。それと並行して語られる、「遺失物粉砕所」というマンガと、「わが空白」という小説を軸に語られるストーリー。彼らのストーリーはこの先交わるのか。そして、意識せずに、飢えた野犬属性を植え付けられていた透明な恋人の行方は、と。
『東京物語』からの引用と思われるエピソードの数々は、ホウの小津への「明示的なオマージュ」と捉えることが可能。ただ、スタイルはホウ監督自身のべるように異なる。/『珈琲時光』は物語上、2 つのパートに分けることが可能。1 つ目は、「『東京暮色』を思わせるホームドラマ」たる、陽子の妊娠を巡る陽子とその両親のパート。2 つ目は、「音の探求」を巡る物語たる、江の調査を巡る陽子と肇のパート。/「重要なのは、『珈琲時光』は、小津映画のシーンやテーマを契機としながらも、過剰なまでの移動描写と「音の探求」という新たなテーマの導入により、結果として小津に捧げられたものとは思えないほど小津映画とは異質なものになり果ててしまっているということである」/雑感としては、小津へのオマージュか否かという点ではそうだろう。ただ、「珈琲時光」という映画単体として見るならばまた違った評価もあり得るだろう、という雑感。
 | 角川書店(角川グループパブリッシング) 発売日 : 2010-11-25 |
「吾輩は猫である」パスティシュ。猫の視点ではなく、先生のうちに住み込みの書生で探偵小説ファンの少年「僕」の目で語られる、先生と猫と先生の友人たちをめぐる物語。本家の夏目漱石「吾輩は猫である」は学生時代に十ページぐらいで挫折してしまったが、こちらは楽しくツルリと読めてしまった。これでもかと僕に繰り出される無理難題に、僕が戸惑うと、黄門様の印籠かよ！という頻度で繰り出される「だって君、この家の書生だろう？」。そんな言葉に押され、章ごとに、仕掛けられた謎を「僕」がそれを解いていく趣向。解説の、僕の目の前で鼠が消え失せ、猫が踊り、泥棒が山の芋を盗んでいったかと燃え場、先生の家では奇妙な演芸会が開催され、ついには裏手にある中学の生徒たちとの戦争がはじまりますのとおりに。本家にも手をつけたくなること請け合いの一冊です。あと、猫の巻、と銘打ってあるからには、いまのところみあたらないけど、続編も期待していいのかしら。
 | 集英社 発売日 : 2021-09-17 |
アシリパ争奪戦で、第七師団、房太郎、杉元たち、土方歳三たち、ロシアのパルチザンが交錯。巻の半分は、教会での鶴見による、アシリパ、ソフィアへの尋問。ウィルク、キロランケ、ソフィア、長谷川と名乗っていた鶴見の来歴、因縁、野望、変心。ついに聞き出したアシリパからの一言は次巻どう展開するのか。バラバラの謎が一つの大きな束によりあわされ物語が大きく動いた巻。
 | コアミックス 発売日 : 2021-09-18 |
民間の就活がうまく行かず自信をなくし落ち込むのぶこ、的確なタイミングで駆けつけて彼女の良いところをこれでもかと並べたて、自分が大事にされていることを思い起こさせ。本命の公務員試験の結果で、次の年からは遠距離になることが決まり。それでも二人の関係は大丈夫、と前を向くふたり、といったところまで。正直、地元じゃない身には、広島-愛媛の距離感はわからないのだけど、この二人ならきっと大丈夫、と思わせるものが。
 | 中西出版 発売日 : 2020-12-23 |
松本浦図画工作展「昭和96年度 路地裏画報」を観たのを機に手に取る。札幌の馴染みの風景、そして今は無い、在りし日の風景を眺めることのできる至福。
今回は、釧網本線をテーマに。メインのマンガは、ノンフィクションの経験をもとにしたフィクションに、とのことだけど、藻琴駅で、次の電車がくるまでの４時間、喫茶で珈琲片手に、見渡す限りの海を埋め尽くす流氷を眺めてあっという間とか、最大級の贅沢だなあ、とうらやましい思い。また、もし、何の知識もなく思いつきで途中下車した時の、あとから来る衝撃といったら…。丁寧に、駅や沿線のアクセス、情景、そこに昔接続していた路線などが紹介されているのも吉。ワクチン接種記の副作用（？）で本代がかさむのわかりみが深すぎて首がもげそうなくらいうなずいた。
イラン駐在妻のペルシャ語講座もといお気楽生活日記。アルバイーンの日のバスツアーで、予定とぜんぜん違うところをひきまわされ、最後は綱引きまで盛り込まれ、「そう、これがまさにイラン式、なのだ。絶対に予定通りにはいかない。期待は嫌な意味で裏切られる。けれど、最後にはなんとなく、つじつまを合わされてしまう」というのがおもしろく。巻末のPROFILEの、Apple TVのAir Play+周辺機器でホームシアター環境は、めまぐるしく変わる規格のなかでも、いまもつかえるのだろうか。ちょっと調べてみたい。TO BE TO BE RUN & RUN 、ここだけ読むとすごく気になるけど、連載の途中。どこかでまとまってるのかな…
自分でiPhone接続のスピーカーつくってみた、のiPhoneが3GSで年月を感じる。プレイリストにでてきた、吉増剛造、高柳昌行、翠川敬基「古代天文台」、メンバーとタイトルだけでどんな曲か興味をそそられる。菅野さやか「骨ヶ原より男来たりて女郎に簪を与ふるのこと」、これまでも続きも気になるけど、パッと調べたところ、「ぱなし」のバックナンバーあたるしかないのかな。
 | 産業編集センター 発売日 : 2021-05-21 |
いいタイミングで各キャラの振り返り出来たり、今に至るまでの経緯が簡潔に触れられたり、人気投票あったり、もしも〇〇が〇〇だったらの仮定漫画が面白かったり、盛りだくさんで楽しかった。取引三兄弟、キュートすぎる。ぴよ、なかなかハードモードな道のりでズメックにたどり着いたんだな、と。
ジーン・フィニ監督前夜。ままならぬ学生時代から映画鑑賞のみへの没頭。ペーターゼンフィルムの雑用係としてのスタートまで。そのすべてが監督をする際の糧になるとは、まだ知らず。
さっと、キース・ヘリング展の復習しようかと思いきや、じっくり２時間以上かけて見てしまった。学芸員さんの論文も二度見し、全作品、二周見てしまった。アポカリプスの詩の理不尽さと疾走感、キース・ヘリングの絵とマッチしてるなあ、と改めて認識。手塗り感のある作品をわざわざシルクスクリーンでつくった、みたいな解説は、紙幅の関係かカットされてたけど、それでも、ほぼほぼ同じ章立て、同じ作品が収められていて、展示の復習にはバッチリでした。類書もあたってみたい。
 | 新潮社 発売日 : 2020-07-09 |
まるでインプリンティングのような。東京から沖縄にきて、なじめない思いをいだいてテルが、はじめて方言で明るく積極的に話しかけてくれる喜屋武さんを好きになり、来たばかりのころのテルを海でみかけて少し話して好きになっていたカナが、喜屋武さんの方言をテルに通訳してあげる、という、三角関係。それをテルが鈍感で気づかず、一方クラスメイトには気づかれたり。天真爛漫明るい喜屋武さん、だんだんクラスにも受け入れられていくテル、もどかしいさまも愛らしいカナと、あまずっぱいことこの上なく。そして、沖縄の日常生活のあれこれも読めてたのしい。
 | 筑摩書房 発売日 : 2014-11-10 |
ケニア帰りで東京で暮らすライターの棚。老犬との生活。極度に心配性のパートナーの鐘二。仕事と、あわせて知人の残した研究書と亡くなった経緯を知りたくて、ウガンダへ飛び。最初の頼りない案内人に導かれ。ケニアに残してきた友人との再会。神の抵抗軍に妹をさらわれた女性ナカトらとの森林への道中。呪術師へのインタビュー。風、水、土、大地、精霊、アフリカの自然と織り合わされ語られるストーリー。人が地球の中で、循環する一員であり、精霊も含めた超自然的に思われるものも含めて、自然の中に生かされている。"見栄のためじゃない、死者には、それを抱いて眠るための物語が本当に必要なんだ。"(p174)ということが通奏低音として流れている。そんなことを物語を通じて語りかけてきていると感じ取った一冊。
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-04-12 |
1-3まで読了。薬子にまた会えるのでは、という思いが天竺への強い憧れへと凝結し、当時で言えばもう老境も老境の年齢で、発心して、天竺へ向かった高丘親王。付き従うは僧ふたりと奴隷の身から逃げて来た秋丸。道中、ジュゴンが道連れになったり、アンコールの後宮をのぞいたり、アリクイに出会ったり、密人となった空海とであったり、丸木舟で空をとんだり、人と鳥のハーフが何人もいる部屋をとおったりと、奇想、アナクロニズム、アンチポデスにでくわしながら、天竺をめざしてたどりつかず、南海域をふらふらする。「何と呼んだらよいか分らないようなもの。世の中にはね みこ そういうものがあるのよ」（薬子）という言葉に象徴されるような。次巻、完結。完結したら、解説でオススメされているように、原作の澁澤龍彦「高丘親王航海記」を読み返したい。
 | 小学館 発売日 : 2021-09-30 |
追手の異端審問官に武力で立ち向かうオグジー。あと一歩と思われたが果たせず。仕えていたパページも捕まり。ただ、以前語っていた拷問を受けても冷酷な立ち居振る舞いをする、といったのとは正反対に、オグジーへのてひどい拷問にすべてを打ち明ける。逍遥として刑に服す二人。のぞみは薄いが、次代にのぞみが引き継がれる仕組みをのこし、それが生きることを願って、と。「自由なんて、聞こえはいいが、規範がないなら獣と変わらないじゃないか」（異端審問官）。「今ある規範を疑えないなら それも獣と大して変わらない」（オグジー）。己の汚い欲望から、罪なきものを異端にかけようとする上司に疑問をいだいた新米異端審問官に逃されたヨレンタさんは、次巻の鍵となるのだろうか。
2021年09月03日
2021年08月に読んだ本
0801・穂村弘 これから泳ぎにいきませんか 穂村弘の書評集
0801・渡辺浩弐 1999年のゲームキッズ ブックハウスQ 20210705
0802・パコ・イグナシオ・タイポ二世 三つの迷宮 図書館 …中南米マガジンつながり
(0802・児玉まりあ文学集成3 kindle
(0802・booklogなし【再読】豊田徹也 ゴーグル
0803・稲越功一 村上春樹 波の絵、波の話 図書館
0804・三島由紀夫 青の時代 ブックハウスQ 20210705
0804・石原慎太郎 完全な遊戯 図書館 ……町山智浩「映画の見方が変わる本」つながり
0804・野崎卓也 野崎が行く！10 東京編 シャンティブックス \440
0804・野崎卓也 必聴！ジャーマン・ロック〜とりあえずこの12枚〜 シャンティブックス \660
0804・佐々木博光 <論文評>ユダヤ人高利貸像再考 史林 88(3) 2005年 pdf
(0804・川尻こだまのただれた生活1-3 kindle
0805・【再読】村上龍 限りなく透明に近いブルー 20210712
(0805・星野幸代 侯孝賢映画「珈琲時光」を読む (多元文化と未来社会 : 名古屋大学総長裁量経費プロジェクト成果報告書 名古屋大学大学院国際言語文化研究科 p. 91-104, 発行日 2005-03-31) pdf
0807・【再読】鳴海章 風花 ブックハウスQ 20210705
0807・龔金浪 ：侯孝賢『珈琲時光』論 : オマージュの視座から - 北海道大学大学院文学院研究論集 第19号(2019) (pdf)
0808・グレー ギャラリーエルシャダイ 北海の魔獣あざらしさん展 画集
0808・グレー 北海の魔獣あざらしさん展2019 画集
0808・【再読・再購入】柳美里 人生にはやらなくていいことがある 20210717
0809・飯田美樹 カフェから時代は創られる 喫茶こん 20210804 \1980
0810・【再読】村上春樹 夜のくもざる
0812・野呂邦暢 愛についてのデッサン 20210711
0812・今村夏子 こちらあみ子 カルメル堂 …こちらあみ子、のみ読了
0812・札幌大学ウレシパクラブ編／ウレシパオルシペ―アイヌ文化で育てあう日々 図書館
0813・ほしおさなえ 活版印刷三日月堂 小さな折り紙 20210813
0813・アグアルーザ 忘却に関する一般論 図書館
(0813・北爪宏幸 機動戦士Zガンダム Define 1-8 20210813
0816・窪添慶文 北魏史 図書館
0817・【再読】馳星周 不夜城 20210812
0818・【再読】馳星周 鎮魂歌 不夜城�� 20210815
0819・地域と人の歴史を紡ぐ2 札幌市中央区中央地区第8町内会 2021.5発行 図書館
(0820・セクシー田中さん 4 Kindle 20210820
0820・村上春樹 猫を棄てる 父について語るとき 20210813
(0821・子犬のこいぬ 2
(0821・山田胡瓜 AIの遺伝子 2
(0821・東独にいた 5
(0821・本田 病める惑星より愛をこめて
(0821・プリンタニア・ニッポン 2
0821・閑散として、きょうの街はひときわあかるい Tolta 20210821 Book lab.
0821・石弘之 感染症の世界史 20210812
(0822・相澤いくえ おねがいモディリアニ 1-5
0822・下城米雪 え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか？ kindle 20210822
0823・坂木司 女子的生活 20210813
0824・馳星周 長恨歌 不夜城完結編 Amazon20210818注文 0823到着
0826・ポルトガル短編小説傑作選 よみがえるルーススの声 図書館 …ベイショット 川辺の寡婦。リカルド・アドルフォ 東京は地球より遠く。少尉の災難。美容師。図書室。定理。植民地のあとに残ったもの。読了
0826・【再読】田中芳樹 長江落日賦 20210813
0826・すばる2021年8月号 （澤田直 ペソア評伝。バルガス＝リョサのボルヘスインタビュー。マリアム・タマリ「パレスチナの朝」。） 図書館
0827・木皿泉 Q10 1 20210813
0827・柳美里 南相馬メドレー 20210815
0828・木皿泉 Q10 2 20210813
(0829・大衆酒場ワカオ ワカコ酒別店 5
(0829・ワカコ酒 17
(0829・ヤマモトマナブ キューナナハチヨン 1
0829・福田誠 河井継之助の決断: 長岡攻防戦における機動戦略とその限界 (歴史ソウゾウ文庫) kindle 20210828
0829・村上龍 ラブ＆ポップ トパーズ�� 20210814 …宇野常寛、シン・エヴァンゲリオン論 つながり
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0801・渡辺浩弐 1999年のゲームキッズ ブックハウスQ 20210705
0802・パコ・イグナシオ・タイポ二世 三つの迷宮 図書館 …中南米マガジンつながり
(0802・児玉まりあ文学集成3 kindle
(0802・booklogなし【再読】豊田徹也 ゴーグル
0803・稲越功一 村上春樹 波の絵、波の話 図書館
0804・三島由紀夫 青の時代 ブックハウスQ 20210705
0804・石原慎太郎 完全な遊戯 図書館 ……町山智浩「映画の見方が変わる本」つながり
0804・野崎卓也 野崎が行く！10 東京編 シャンティブックス \440
0804・野崎卓也 必聴！ジャーマン・ロック〜とりあえずこの12枚〜 シャンティブックス \660
0804・佐々木博光 <論文評>ユダヤ人高利貸像再考 史林 88(3) 2005年 pdf
(0804・川尻こだまのただれた生活1-3 kindle
0805・【再読】村上龍 限りなく透明に近いブルー 20210712
(0805・星野幸代 侯孝賢映画「珈琲時光」を読む (多元文化と未来社会 : 名古屋大学総長裁量経費プロジェクト成果報告書 名古屋大学大学院国際言語文化研究科 p. 91-104, 発行日 2005-03-31) pdf
0807・【再読】鳴海章 風花 ブックハウスQ 20210705
0807・龔金浪 ：侯孝賢『珈琲時光』論 : オマージュの視座から - 北海道大学大学院文学院研究論集 第19号(2019) (pdf)
0808・グレー ギャラリーエルシャダイ 北海の魔獣あざらしさん展 画集
0808・グレー 北海の魔獣あざらしさん展2019 画集
0808・【再読・再購入】柳美里 人生にはやらなくていいことがある 20210717
0809・飯田美樹 カフェから時代は創られる 喫茶こん 20210804 \1980
0810・【再読】村上春樹 夜のくもざる
0812・野呂邦暢 愛についてのデッサン 20210711
0812・今村夏子 こちらあみ子 カルメル堂 …こちらあみ子、のみ読了
0812・札幌大学ウレシパクラブ編／ウレシパオルシペ―アイヌ文化で育てあう日々 図書館
0813・ほしおさなえ 活版印刷三日月堂 小さな折り紙 20210813
0813・アグアルーザ 忘却に関する一般論 図書館
(0813・北爪宏幸 機動戦士Zガンダム Define 1-8 20210813
0816・窪添慶文 北魏史 図書館
0817・【再読】馳星周 不夜城 20210812
0818・【再読】馳星周 鎮魂歌 不夜城�� 20210815
0819・地域と人の歴史を紡ぐ2 札幌市中央区中央地区第8町内会 2021.5発行 図書館
(0820・セクシー田中さん 4 Kindle 20210820
0820・村上春樹 猫を棄てる 父について語るとき 20210813
(0821・子犬のこいぬ 2
(0821・山田胡瓜 AIの遺伝子 2
(0821・東独にいた 5
(0821・本田 病める惑星より愛をこめて
(0821・プリンタニア・ニッポン 2
0821・閑散として、きょうの街はひときわあかるい Tolta 20210821 Book lab.
0821・石弘之 感染症の世界史 20210812
(0822・相澤いくえ おねがいモディリアニ 1-5
0822・下城米雪 え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか？ kindle 20210822
0823・坂木司 女子的生活 20210813
0824・馳星周 長恨歌 不夜城完結編 Amazon20210818注文 0823到着
0826・ポルトガル短編小説傑作選 よみがえるルーススの声 図書館 …ベイショット 川辺の寡婦。リカルド・アドルフォ 東京は地球より遠く。少尉の災難。美容師。図書室。定理。植民地のあとに残ったもの。読了
0826・【再読】田中芳樹 長江落日賦 20210813
0826・すばる2021年8月号 （澤田直 ペソア評伝。バルガス＝リョサのボルヘスインタビュー。マリアム・タマリ「パレスチナの朝」。） 図書館
0827・木皿泉 Q10 1 20210813
0827・柳美里 南相馬メドレー 20210815
0828・木皿泉 Q10 2 20210813
(0829・大衆酒場ワカオ ワカコ酒別店 5
(0829・ワカコ酒 17
(0829・ヤマモトマナブ キューナナハチヨン 1
0829・福田誠 河井継之助の決断: 長岡攻防戦における機動戦略とその限界 (歴史ソウゾウ文庫) kindle 20210828
0829・村上龍 ラブ＆ポップ トパーズ�� 20210814 …宇野常寛、シン・エヴァンゲリオン論 つながり
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柳美里「言葉のレッスン」つながりで。1997年からみた1999年、および、そのもっと先へ。当時、最先端技術と考えられていたものがどう展開し、あるいは廃れたか、14年後にいる身からすれば、想像に追いついたものもあり、まだまだ追いつかぬものもあり、もはや今となって効かぬ技術もあり。それぞれをお題に、星新一ばりのショート・ショートがつまっている。電源を切ったり、音声をオフにしたりすることが許されないテレビが普及し、大人気番組が、二時間ほど音声と映像を途切れさせる「オフタイム」という番組の皮肉。そして、電子ペーパー上のニュースに対し、政府の方針に反するような事を表明すると、まるで最初から存在がなかったかのように消されてしまう、一編。なにがそのままの姿で身近にあり、形をかえて身近にあり。。。といったことを考えるのもまた一興。
 | 河出書房新社 発売日 : 2021-07-06 |
一番インパクトがあって面白かったのは、酒井順子の項。最初は何もかも見透かされそうでイヤだからと、対談したくないとゴネてたのに。いざ対談してみると、その魅力にからめとられ、しまいにはに「名付けてください」と懇願し、キラリと目を光らせた彼女の口から放たれたのは、”かつて一度も思いもしなかった、そして、私という存在を芯まで貫く言葉…。「○○○○」" なんだよー○○○○って！超気になるじゃないですかー！と本を閉じて絶叫したくなった身は、すでに術中に落ちている…/読みたくなったのは、(1)瓜田純士「ドブネズミのバラード」(2)杉浦日向子「東のエデン」(3)二階堂奥歯「八本足の蝶」(4)筒井康隆「銀齢の果て」(5)鴻巣友季子「全身翻訳家」(6)高橋源一郎「大人にはわからない日本文学史」(※順不同)。(1)は、やはり触れたことのない世界が描かれていそうで。(2)は、涼やかな幕末の武士の心と洋妾の女性のやりとりを読んでみたく。(3)は、タイトルにもなった、夜10時のカフェの打ち合わせで唐突に水着を差し出され、これから泳ぎにいきませんか？と誘ってくれた編集者の書いた本。(6)は、高橋源一郎はなぜそんなにも自分にはない属性を持つ人々の気持ちがわかるのだろうか、というフレーズに惹かれて。/面白かったのが、川上弘美「物語が、はじまる」を一話読むごとに女友達に電話をかけるやりとり。「ほんじょの鉛筆日和」の解説の最後で”今度デートしてください”てしめくくりはありなのだろうという思い。 四元康佑「世界中年会議」てタイトルも秀逸だけど、ふとった水野事業部長のネクタイがシュレッダーに…てシーンだけでもふきだしそう。松本青子の項でもくりかえし語られる、”無根拠に押し付けられる普通との戦いは、悪との戦いよりもずっと厳しい。普通との戦いにおいては、いつの間にかこちらが悪にされてしまうからだ”は、著者にとってそれほど重要な位置づけなのだ、と感じた。
 | リイド社 発売日 : 2021-07-29 |
言葉の力を、言葉の魔術を駆使して、世界をちょっとだけかえる存在のまりあさん。この先も、世人の気づかぬ角度から鋭く言葉をふりまわしていくのかと思いきや、笛田くんの気持ちにひっぱられるように、つきあう展開に。なにかぶつかったようでいて、それでもぼくたちは交際している、というリピートに微笑ましさをかんじつつ。
| 早川書房 発売日 : |
季刊「中南米マガジン」vol.3で紹介されているのを見て、興味を惹かれて手にとる。時は1970年代後半、メキシコシティ。独立探偵のエクトルのもとに、スター女優による娘のボディーガード、会社社長からの技師連続殺人事件の真相解明、すでに死んだとされる革命の英雄サパタは実は生きていて所在を突き止めてほしい、という3つの依頼がいっぺんに舞い込み。それを全部受けて、エイヤと解決しようと、メキシコシティを奔走する。”複雑であればあるほどい。不可能であればあるほど美しい”…を地でいくように。”エクトルは、この街がたまらなく好きだった。そして街以上に、底に住む人々が好きだった” 。”エクトルは街を嫌悪してはいるが、同時に愛してもいた。その矛盾の真っ直中で生きていくことに慣れはじめていた”。"「一目惚れを信じる？」「おれが信じるのは混乱だよ」"/愛憎こめて描かれるメキシコシティの町並み、そこで生きる人々が生き生きと描かれていたのが読めたのは収穫。最終盤までもつれにもつれた三つの事件は、もはや依頼にこたえる次元を超えて、エクトルの意地と誇りをかけたダイナマイト抱えた大立ち回りに、力技へ、と。身体に負った代償はまったく小さくはないが、少なくとも何かを果たした感は得たのかも、というエンディング。続編があるとすれば、亡父の北アフリカに残した財宝探しに、頼りになる弟妹と乗り出すストーリーだろうか。
 | 文藝春秋 発売日 : |
「世界は村上春樹をどう読んだか」つながりで。この本の中の一編を翻訳している方がいて、むむむ、この話、読んだことないぞ、と思い、探して借り出してきたもの。1984年刊。羊をめぐる冒険のあと、世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランドのちょっと前の時期。分量的には、波をメインとした稲越功一写真に、キャプションとしては気持ち多めくらいの割合で、少年時代に受けた生のジャズ演奏の洗礼、地下鉄で妄想したフルコース、1980年のスーパーマーケット的人生、ハワイのビーチでの随想、などなどが軽妙に描かれていた。ビーチボーイズ「キャロライン・ノー」の訳詩、レイモンド・カーヴァーの短編、両腕が義手の男に、あんたの家の写真を買ってくれと押し売られたが、対話を重ねるうちに、それを買った上に、家と自分の写真を撮ってくれと依頼する話し、いい味わいだったなあ。そんなことしたって、誰もかえってきやしないよ、と言われても撮ってもらわずにいられない思い。
70年近く前の「光クラブ事件」を題材に書かれた一編。東大生が在学中に金融会社を立ち上げ、大流行、しかし内実はネズミ講で、破綻し自殺…と。どこまで忠実かは知る由もないが、少年期から段々と屈折していき、長じるにつれ、何か自分の中で認める確固とした基準に沿って、大半のものを侮蔑しつつ、それを気取られまいとし、見抜かれるものには見抜かれ、去られ、といったものと感じた。なぜにそこまで何かを侮蔑することにこだわるのか。"誠はそういうものを十把ひとからげに侮蔑するためにひたすら劇的に生きたのであった。"
| 文藝春秋 発売日 : 2007-09-25 |
町山智浩「映画の見方が変わる本」つながりで、「完全な遊戯」のみ読了。いくら解説で、ひとつも無駄のない短編、ほとばしる才気、時代を見通した先見、とうたわれていても、当時総スカンをくわせた文壇を道学者めいた、と揶揄しても、かかれてることの悪辣さ、胸くそわるさはぬぐえない。これで訴えたかったことは…と
個人的に、ロックと聴くと手がでないのですが、競馬の時と同様、野崎さんのzine出し、エイヤと手に取る。KRAFTWERKやTANGERINE DREAMもジャーマン・ロックだったんだ！という思い。しかし、ここに乗ってるのは聴いたこと無いので、ここからはじめてみようかな、と。ASHRA TEMPELやPOPOLVUHあたりも、すごく魅力的に、聴きたくなるように紹介されているので、手にとってみたい。
| 発売日 : |
都心！て感じの銀座の町並みから、下町情緒あふれる風景まで。シャッターのおりたビューティーサロンや、何十年も前からやっていそうな定食屋、室外機、マスクをして歩く人々、ごちゃごちゃとした商店街や路地など、見てて飽きない。
「サラ金の歴史」つながり。中世ヨーロッパで、独占的に自由に高利貸しを営んでいたというユダヤ人像に対して、そもそもユダヤ人の独占に非ず、キリスト教徒、ロンバルド人も高利貸しを運営。そもそもユダヤ人にも許されてなかった。だから数々の法令を潜り抜けるための、利子と称さない迂回策で利子を徴収してた、と。
1-3巻まとめ読み。まねするなよ！といわれるとまねしたくなるのが性。ただれた生活というが、過剰にふりきった背徳的な甘さがあって、読み止められず。ダイエットに最適だからと間食にサラダチキン、しかし気がつけば普段の食事＋サラダチキンで何も減ってなかった、とか。業務用ガーリックバターソース、ためしたい！ドンキのクソデカポテチの塩分つよつよ描写。限界ジェネリックノンアルビールの作り方。あたりが特に好きでした。
映画に仕掛けられたさまざまなオマージュ、小津映画との共通点と相違、日台関係、作中の洋子や肇の行動の意味の解き明かしなど、映画を読んだ身には有益でたのしめる文献だった。
 | 講談社 発売日 : 1978-12-19 |
以前読んだときはただ単に混沌ととりとめなさを感じただけだったが、今読むと、クスリや乱交、パーティ、ライブでの常軌を逸したはしゃぎまわり、電車での捕まってもおかしくない行為などの無軌道さも、現在の視点からは許されざることも、当時としてはやむにやまれぬ思いであったのかな、と思ったり。キマってるときの詩的で精緻なイメージの描写もそういった文脈なのか。本線ではないけれど、ばったり出会ったメイルとリュウのやりとりが、個人的には印象に残った。黒焦げになったメグと食べられたうさぎ。/「あなた何かを見よう見ようとしているのよ、まるで記録しておいて後でその研究する学者みたいにさあ。」/「限りなく透明に近いブルーだ（略）このガラスみたいになりたいと思った（略）僕自身に映った優しい起伏を他の人々にも見せたいと思った」/
 | 芳文社 発売日 : 2021-04-15 |
ヴァリニャーノの上京。弥助の登場、信長の配下へ。馬揃え。そして、この時代、世界の料理も大きく動いたが、国もまた。1580年、スペインによるポルトガル併合。ポルトガルを後ろ盾としてきたイエズス会、ヴァリニャーノとしては、賭けに出る。信長に、明国出兵の進言を。そこにのる信長、といったところまで。光秀の表情はこのあとの本能寺が、明国出兵を止めるためだった、と示すための伏線なのだろうか。
 | 講談社 発売日 : |
外資系の勤務先をクビになった主人公が、泥酔した自分を助けてくれた風俗嬢と、突然北海道クルマ旅するロードノベル。最初は、なぜに執拗なまでに自分のちっぽけなプライドにこだわって相手を見下し続けなければいけなのか、とうんざりして放り投げそうになったけど、レモンとの対話を重ね、襟裳岬、サロベツ原野、宗谷岬、サロマ湖と旅を続けるうちに、最後にはきちんと自分を取り戻せた、と主人公が思える物語になっていて。映画も見たことあるけど、映画は別物。/「自分を認めるって、本当は凄く怖いことなのよ。たぶん、スピードを出せないことより、スピードを出せない奴なんだって認めちゃうことの方が勇気が要ると思う」「美しく生きていくためには、羞恥がなけりゃね」「おれ、北海道に来ていろいろなものを取り戻した。（略）ずっと見栄をはってた（略）最初はレモンにいい人って見られたくて、おれは嘘つきじゃないっていいたくて、来たようなものだった。でも、一番の嘘だよな。私は嘘をつきませんってのが。レモンのおかげだ。レモンに会わなければ、おれは自分を一生見つめられずに逃げ回っていたと思う」
先行研究との相違、小津へのオマージュとは一概にいえないのではないか、と。もっと言うと、先行研究が語るような小津をなぞるようなオマージュにはなっていないのでは、と。各ショットや映像が全体の何％かの計測…細かい。"主にフレーム外の見せないもの，フレーム内の邪魔するもの，そしてフレーム内の直接しないものという三つの側面から考察" "いずれも劇的なものを避けるという共通点 ","それは物事の深みを、表面、表層的なものに隠す小津への賛嘆"ではないかと。「電車時光」と呼んでもいいのでは、というプロデューサーの言葉をひき、電車移動、歩行移動の過剰さを、東京という都市を豊かに表象するためのものと指摘。電車胎内図、都市と個人の関係、都市の養分が母親を養い、個人が都市に溶け込み、また都市が個人を束縛する。侯孝賢なりのオマージュは単純に映像表象の類似点からオマージュ対象に敬意を捧げることではなく，オマージュ対象と共通している創作理念を表出することによってオマージュする。裏返して言えば，同じ創作理念について，裏切るような映像で表すことも本作がオマージュ作品の創造性を表しているところではないかと思われる…といったあたりが肝かな、と。
 | 講談社 発売日 : 2012-05-11 |
いきなりあらわれた親戚と許嫁に困惑する於通。秀吉の弟の家臣として押してきて抗えず。なのに大事にもされず飛び出し。思い人左大臣の転変も激しく。出雲お国との出会いと刺激。ひとり立ちして文雅で生きていくと一家をたて。真田信幸、幸村兄弟との、兄弟のちぎり。千利休との交流。石田三成からの警戒。秀吉からの誘いを断り続け、その正妻おねの奥祐筆となり、茶々ら三姉妹ともまじわり。盛り沢山な内容と成り行き。そのひとの将来を見てしまう眼とともに、九条の大御所から腕利きのくノ一もつけてもらい要所で活躍…と。2-5巻、鶴松誕生後しばらくのところまで読み進め。
 | ベストセラーズ 発売日 : 2016-12-10 |
(2021/08/08読了)「命」四部作読了を機に、半年ぶりの再読。やはり同じ時期を扱った部分は、分量的にはこちらのほうが簡潔に描かれており。"彼がわたしに「ありがとう」と言ったのはそれが最初で最後でした","「住む」ことの中に苦しみが在るのに、よそに住みながら「苦しみ」を聴くために通っている自分に違和感を覚え、居たたまれなくなった","絶望を抜ける小説は「生活」にある"といったあたり、ムラカミさんの"東さんは死んだんだッ！死んじゃった人と比べても仕方ないだろッ！ウォォォォォォォー"という叫びが今回は印象に。(2021/02/28読了)「８月の果て」つながりで。自伝のタイトルして特異だなあというのが第一印象。流動的な家庭環境、そこから飛び出し、劇団を居場所と思い定め飛び込み、劇団主とともに暮らすことになり、激しい付き合い、一度は離れたが、死の間際に看病のために舞い戻り。そして南相馬への移住。パートナーとの出会い。息子の成長。などが語られ。/人は物語がないと生きていけないのでは、という思い。若い頃は対話ができず、すぐ対立になってしまったこと。鷺沢萠からの韓国語学習の誘いもバッサリ切ってしまい、修復できなかったこと。看病のために、町田康夫妻が乳飲み子だった息子を預かってくれたこと。柳美里の存在に理解を示し、退学に反対し続けてくれ、卒業後も芝居に通ってくれ、それはガンの末期までつづいていたと後に知ることになった恩師の木田先生のことが印象に残った。
 | crim 発売日 : 2018-09-03 |
初期のあざらしさん、今とはちょっとテイストがちがって、尾びれがしっかりしてて、尾びれで立っていたの、なかなかに新鮮でした。ネコーとかユニコーンとか他キャラもあまり馴染みがなかったので新鮮。
 | crim 発売日 : 2019-10-05 |
いままでスマホのLINEアプリの画面でしか見てなかったあざらしさんスタンプが、細部まで見て取れて、こんなこと描き込まれてたんだと思えるものがあったこと、ひとつひとつに丁寧にグレーさんがコメントつけてるのが読めたのが収穫。自分でスタンプにしておいて、スタンプとしての用途がまったく思い当たらない、と書いてるのもあり、ふふふと思ってしまう。カフェであざらしさんがまったりしてるスタンプ、ぜんぜん使われてない…てコメントありましたが、個人的にはめっちゃ重宝しているのですが。
 | クルミド出版 発売日 : 2020-09-10 |
主に二十世紀前半のパリのカフェを舞台に、サルトル、ボーヴォワール、藤田嗣治、ピカソ、モディリアーニ、ブルトンなどなど綺羅星のような才能あふれる者たちが、カフェに集い、カフェでつちかったネットワークを活かし、またそれを後から来る者に与え、カフェでインスピレーションを得て、作品を生み出していく…そんな場としてのカフェを多くのエピソードと考察で生き生きと描き出してくれ、また著者自身のカフェ通い、カフェ経営の知見ももりこまれ、読んでてわくわくした。好きだったエピソード。モディリアーニの絵が高額で売れたお祝いの宴会に、ロトンドのリビオンをまねくが、調度はほぼすべてナイフもグラスもお皿も円卓もロトンドから盗んだものだった。黙ってでていくリビオン。次にもどってきたとき「うちの店から来てないものはワインだけだったからね」とかかえてもってくるなんて、どんだけ寛大でおおらかでいい人なんだろう、と(p.206より)/詩人のペーター・アルテンブルグはカフェの効用をこう述べている。…あれやこれやと、悩みが尽きないならーカフェに行くことさ！ といった調子でカフェに行くことさ！と続々とつづられていくところ(p.220より)。しかし、何故サン＝ジェルマン・デュ・プレを最後にカフェの時代は終わってしまったのか（1．）カフェに行く必要性の低下。暖房等の住環境の改善。(2.)珈琲を始めとする飲料が手軽に自宅でとれる (3.)通信手段の発達。（4.)カフェ側のプロ意識の低下 (5.)カフェ店内の環境の変化 BGMありがデフォルトに。(6.)通える値段のカフェの減少 (7.)長居できるようなカフェの減少(p.389-393)と今の時代におけるカフェの困難さも語られる。ただ、著者自身の体験として、”こうして私はパリのカフェで勇気を出して自己表現し、急速に世界が開ける体験をすることになったのである。(p.257)" と語られる一連のエピソードでまだまだ可能性を秘めていることも示唆されており、希望が見える。
 | 新潮社 発売日 : 1998-03-02 |
(2021/08/10読了)「世界は村上春樹をどう読んだか」つながりで。とりとめのなさがとりとめのなさを通ってとりとめのなさに終わるので、たしかに翻訳しづらかろうなあと改めて思ったり。やはり、ウミガメに食われると思って必死に防戦したのに、防衛線を突破されたら、実は一緒にトランプしたかっただけだった、てのが一番印象に。(2015/03/04読了)安西水丸展を見て、つながりで。展覧会で絵とタイトルだけ見たらまったくつながらなかったけど、シュールな短編とともに読むと、つながったり、やっぱりつながらなかったり。トランプをにぎりしめて海からやってきたウミガメ、恋人や妹がドーナツ化してしまった世界、アンチテーゼを採りにボルネオに行った伯父、インド屋さんからインドを買わないと、インドが足りないと叱られる母。「ドーナツは私だ」とフローベールの真似をしていってみた、って、ものすごく限られた世界でしか通じないのでは、とくすりと思ったり。日曜の午後に叩き起こされた電話の向こうのオガミドリさんは、脇腹の皮を削がれて、そこに塩辛を塗りつけられたおっとせいが発するような声だった、ってどんなだ、と思ったり。可笑しみ。
 | 筑摩書房 発売日 : 2021-06-14 |
古本屋の青年が主人公の話があると知り手に取る。ライターや書評者の文章で名前は何度か見かけて、どんな作家なんだろう、と思っていたことも手伝い。佐古啓介の旅という六作の連作短編がお目当てのもの。あまり自らのことを語らぬまま亡くなった父のあとを継ぎ、古本屋となり、亡くなった詩人の肉筆原稿を手に入れるため奔走したり、自らの店で本が盗まれまた返却された謎を追い、若くして才能を感じさせる小説を書いた同級生をたずねたり、父の足跡を長崎に求めたり、女性たちに女の気持ちがわからぬと責められたり、と。悪どく設けるのではなく、古本屋として筋を通してすっくとたたんとしているところがすがすがしく好感。
| 筑摩書房 発売日 : 2014-06-04 |
穂村弘の書評集でタイトルをみかけて頭の片隅にあったところ、カフェですわった席の前にあったので手に取り、表題作のみぱらりと読了。あみ子の純粋無垢、まっすぐさは、ときに眩しく、ときに周りの者にとってはいたたまれず、刃を向けられたような思い、そのために疎まれ、嫌われることも多々あり。けれど、あみ子にはこたえず、変わらず自分のペースで、自分の思いを口にしていく…と。
 | 地方・小出版流通センター 発売日 : |
私はウレシパクラブで活動するようになって”アイヌのことはアイヌで”、”自分は差別をしていないから問題ない”など、アイヌ文化に対する和人の、どこか他人事ともいえる視線を痛感するようになりました。しかし、自分のすぐ隣にある異文化をきちんと理解できずに、果たして遠くの多文化を本当に理解することはできるのでしょうか(長谷仁美)というのが一番印象に。基調講演は、池澤夏樹、上橋菜穂子、横内龍三の各氏。池澤講演、上橋講演から共通して感じ取れたのが、アイヌとアボリジニの共通性。一時期、アイヌであること、アボリジニであることがマイナスであるような社会状況を作られ、固有の文化が断絶しかかり、その存在を認められると、今度は、固有の文化を知らないと責められ、あるいは自分は文化を知らないと自問する、と。世界地図をぐるりとまわして、日本列島プラスサハリンが、アジア大陸の上に虹のようにかかっている。そのとき、北海道を中心に、細長い島（サハリン、本州）がふたつつながっている。そういう図式から話をいろいろ組み立てる、という視点は刺激的。アイヌの首長たちが次々だまし討ちに合う背景も「言葉に頼る以上、言葉を徹底して信用する、というのがアイヌの考え方。しかし和人の場合は言葉を悪用する。嘘を言ってだます。」と指摘。上橋講演の、「俺、学校で自慢したいから、何かアボリジニの言葉教えてよ」そのお母さんが何と言ったと思います？私の肩に手をおいて、「ここに人類学者がいるわ、教えてもらいなさい」（笑）の一節も好き。/中川裕講演の、一度消滅した、イスラエルのヘブライ語を、建国時にかなりの力技で復活したイスラエル、ハワイ語の教育できる機関を増やしていってるハワイの事例などあげつつ、アイヌ語の言語政策が提言されているところは興味深く。/シマフクロウの話題や、クラブの活動も詳細に語られていてよかった。とくにイクパスイを作製はうらやましかった。/上橋菜穂子「隣のアボリジニ」、瀬川拓郎「アイヌの歴史 海と宝のノマド」（講談社選書メチエ）、魚住昭「野中広務 差別と権力」講談社文庫、結城幸司の版画、解散したアイヌレブルズの活動、その後の酒井美直の活動「イメルア」、熊谷たみ子さんの「カムイ レンカイネ/Amazing Grace」は追ってみたいと思った。
 | ポプラ社 発売日 : 2020-01-04 |
この巻は三日月堂店主弓子のかつての顧客や地元の仲間、幼稚園のときの先生までを語り手として、活版印刷がそれぞれの人の人生のステップを踏み出すときの背中を押す様を描くとともに、弓子や人生のパートナーとなった悠生の後日譚、その子供のことまで描かれる。弓子が幼かったときに、折り紙にこめられていたメッセージに触れて泣いたこと、その息子が同じ幼稚園に通いまた違った個性を見せていること。高校の文化祭で活版印刷に触れた高校生たちのその後の進路。地元の観光協会の女性が、ガラス工芸に触れ、もっともっと観光に体験型のものを取り入れようと感じたきっかけ。息子の成長に目を見張る父の視線。などなど。「庭のアルバム」に出てきた楓の祖母の庭が、なくなるかも、ということで、皆々集まってその庭を楽しむシーンが一番好き。
 | 角川書店(角川グループパブリッシング) 発売日 : 2011-11-25 |
1-8巻購入、読了。遠い記憶や、新解釈の映画版三部作を見ただけではわからなかった登場人物たちの心境、立ち位置、各組織の理念、政治的思想、作戦行動などが詳細に追えてよかった、といったところ。エウーゴが罠と知りつつもティターンズの待ち受けるジャブローを襲い、シャアはアムロへの接触を図る、といったところまで。
 | 小学館 発売日 : 2021-08-11 |
善十の入院。一葉の献身。泥酔した女性客大神の介抱から、自然体の休日をすごした善十と一葉。しかし一葉に線を引かれたと感じてしまう善十。そして大神がバーで映画監督や俳優に柳原を紹介しようとした時に古傷に触れ爆発され。それをフォローするうちに、二組のカップル誕生の芽が…といったところまで。崇拝されてもぜんぜんうれしくない女心と自然体でいられることのありがたみと。
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-08-12 |
完結。ゼミ誌をつくることになり、連句を巻くことになり、最後は句を作るために皆が外に出るところまで。言葉で遊ぶ楽しさ、奥深さをこんなにも堪能させてくれるとは…という想いに尽きる。こんなゼミあったら受けてみたかったな。
 | 白水社 発売日 : 2020-08-28 |
アンゴラ独立時。現地の黒人たちによる白人への風当たりが強まった時期。行方不明となった姉と義兄、迫りくる危機に対し、姉についてポルトガルからアンゴラに移住していたルドはマンションの廊下をセメントで封鎖し、以降30年ものあいだ、自室に立てこもる。なんだかそこの描写は時間が伸び縮みし、さまざまな思い、テキストがなだれこんでくる感覚。気がつけば中年から老人になり。そこへ挟まれる、秘密警察から探偵になったモンテ、反政府主義運動家から（ルドがダイヤをのませて放った鳩をきっかけに）実業家になったペケーノ・ソバ、ポルトガル軍兵士だったものが牧場の主になったジェレミアス、それを手助けし看護師からNGOの長になったマダレナ、失踪者を追うジャーナリストのダニエル、ストリートチルドレンのサバル、さまざまなライフストーリーがからみあい。それが「クバンゴ川の奇妙な運命」のあたりで一気に邂逅し、化学反応をおこし。「まあまあ、もう過去の話じゃないか。みんな同じアンゴラ仁なんだから」(モンテ)とどの口がいうかといわんばかりのおそらくずるい顔をして、その同じアンゴラ人に極悪非道を働いていたもののセリフ。過去が後ろぐらいものは、積極的に忘れられたい、忘れてほしいと願い、己の信念に従って生き延びてきたものたちは、忘れない、忘れてはならないと思い極めている対比。そして、事情がありルドの記憶からも遠くなっていた娘の登場。連れ帰りたいという彼女に「娘さん、わたしの故郷はここなの。帰るところはほかにないわ」。「光はいつもわかる、そしてこの国の光といったらお祭りの真っ最中のようなのよ。とにかく、これ以上望むものはないの。光もある。本を読んでくれるサバルがいる。それに、毎日ザクロをひとつ食べられる喜びもあるからね」と。
 | KADOKAWA 発売日 : 1998-04-23 |
しばらくぶりの再読。映画を見て、こりゃ別物だな、と思った記憶と、全員悪人、全員滅亡的な話で印象、主人公はクールでクレバーでタフみたいなうっすらとした印象しか残っていなかった。が、再読して、主人公健一は、最初から最後まで焦燥感に駆られて、追われて、誰も信じられなくて、保険の保険の保険までかけて、その保険の一画が崩れて、追い詰められて、最後は、自分と同じ匂いがすると、生涯初めて愛したかもしれない女を自分の手で殺す羽目になり、そう踊らせた、そう仕向けた、最後は深い虚脱にとらわれつつ、養父楊偉民を深く深く憎むところまでが描かれる。/「親も兄弟も関係ない。おれ以外の人間は、みんな他人だ」/「おまえはおれが自由にできる女なのか。知らなかったな」/崔健「一無所有」「南泥湾」が聞きたくなる。台湾のポップスが聞きたくなる。
 | 角川書店 発売日 : 2000-10-24 |
「不夜城」に続けて、しばらくぶりの再読。前巻の主人公劉健一は裏にまわり、多くの人々を抱き込み、踊らせ、養父の楊偉民への対抗を試みる。踊らさせるのは、凄腕の殺し屋の郭秋生と、元は不良警官で今は北京マフィアの使い走りの滝沢。北京マフィアの四天王の一画を、楊偉民の命令で郭秋生が殺したことを発端に、滝沢が走らされ、秋生もボディーガード対象の上海マフィアのボスの情婦に惚れ、操られ、焦燥感がさらに事態を悪化させ、逃げ、走り、叩きのめし、叩きのめされ、劉健一に救いを求めるが、それは破滅へと敷き詰められた舗道を進むことと同義で最後は…と。誰にも同情できず思い入れを拒む人々の中にあって、最後は劉健一が笑い、楊偉民も歌舞伎町を追われたが虎視眈々とまだ刃を研いでいるところまで。読み終えて、激しく揺さぶられ、暗澹とした気持ちで、やるせない思いに。完結編でどうなるのか。気になりすぎて、すぐにAmazonでポチってしまう。
 | 文藝春秋 発売日 : 2020-04-23 |
タイトルとなっている、村上春樹が幼いとき、父と海岸まで自転車に乗って猫を棄てにいき、まっすぐ帰ってきたら、にゃあと、捨てたはずの猫が出迎え、それを見て父の表情が呆然から、仕方ない、ほっとしたものへと変わったシーン、短編映画のワンシーンになりそうなあざやかな印象。村上春樹が語る父の来し方行く末、京都の大きな寺の息子として生まれ、中国戦線に駆り出され、京都大学に進み、俳句にはまり、国語の教師となり、おそらく多くの生徒に慕われ、ただ息子から見るとお互いに頑ななところがあり、期待にこたえられていないという思いと、自分のやりたい道をやりたいように進みたいという思いを抱え、長いこと絶縁のような状態にあったが、父の死の間際に和解のようなことをした、と。ただ語りたくないとするところは語られないし、調べてみたけれどどういうことかわからないことも、父が本当のところはどう思っていたのかわからないところもあり。ただ率直に書かれているなとは思った。高妍の絵も、少年と猫の絵がなつかしさを感じるタッチで描かれていてすごくよくあっていた。「我々は、広大な大地に向けて降る膨大な数の雨粒の、名もなき一滴に過ぎない。固有ではあるけれど、交換可能な一滴だ。しかしその一滴の雨水には、一滴の雨水なりの思いがある。一滴の雨水の歴史があり、それを受け継いでいくという一滴の雨水の責務がある。我々はそれを忘れてはならないだろう。(p.96)
 | 東方書店 発売日 : 2020-12-18 |
北魏は建国段階では鮮卑色が色濃かったのだが、華北統一後、次第に変化を示し始め、文明大后の臨朝期には中華の地を統治する国家としての姿がかなり鮮明になった(p.190)孝文帝は親政後、この変化を劇的に促進させたわけである。その象徴が洛陽遷都であった(p.190)/孝文帝の改革後、短い期間を経て北魏は分裂した。分裂をもたらしたのは、孝文帝の改革への反発であった。とすると、孝文帝の改革は失敗だったといえそうではある。しかし、単純にそう考えてよいいだろうか。胡漢を超えた新たな中華帝国が誕生する。漢代以来の社会の変化の中で、いささか強すぎたかもしれないが、その新しい中華帝国への流れを加速する「スイッチ」を入れたのが孝文帝であったと、筆者は考える。(p.268)といったあたりが肝かな、と思った。北魏と五胡の諸国を分ける歴史観。代国と北魏を分ける歴史観。戦争指揮者、遊牧君主としての皇帝像。可汗号と皇帝号を称した君主像。皇帝が即位するとその生母に死を賜る慣習。部族解散。文明大后期に初めて官僚の俸禄制度が定められたこと。などなど、興味を引くトピックが目白押しだった。孝文帝の改革については、反発する人が多く、短い期間で国の分裂を呼ぶほどであった。中華の大きな流れからみると意味はあったのかもしれないが、多くの人が反発する改革とは何のためか。貴族も民も喜ばない改革とは。しかし、人々の声だけ聴いていても、彼らに耳の痛い改革はできない。その改革の成果は…と思いが広がった。ふと思ったのは、「鮮卑人」「漢人」とはもともとの文化を異にしたようだが、見た目としてはお互いにパッと見て区別がついたのだろうか。現代の日本人、中国人、韓国人がお互いをみてなんとなく区別がつくけれど、欧米人から見るとみな同じように見えるといった感じの区別だったのだろうか。といったことも疑問に思った。
書肆吉成の池内に本屋をつくってが読みたくて手に取る。出店から２年強での池内退店に至るまでの経緯、実施したイベント、くすみ書房から受け継いだ本棚、詩人文月悠光によるファッション誌での紹介、古本屋稼業に入った経緯、学生時代に学んだこと、憧れの吉増剛造から著書を託されたけど売ることができずに抱えてることなどなど、個人的に興味を惹かれるトピックスがたくさんでした。HBCの方の、安倍首相(当時)の演説にヤジを飛ばしただけで道警に連行された事件をメインにした話も読み応えあり。「ジャーナリズムとは報じられたくないことを報じることだ。それ以外のものは後方にすぎない」「政治的公平というのは与党、野党の主張をバランスよく公平に伝える、という意味ではないんです。いろいろな政治的干渉から自由である。政治から距離を置いて自由に物事を言えることを意味する」/また、刃物の宮文、中山ミシン、カナリヤなど、地場に根ざした商店主のライフヒストリーはそのままで札幌の歴史を垣間見ることができた思い。
 | 小学館 発売日 : 2021-08-10 |
腕の調子がイマイチななかでの、松戸でのボリウッドとベリーダンスの融合イベントに出た田中さん。朱里、小西、笙野のトリオに加え、田中さんの両親も観覧。終電逃しかけからのまさかのお泊り会、高度すぎるガールズトークに夜も眠れない田中さん。そして、つづく朱里のモノローグ。「笙野は田中さんの前では素直で急にかわいくなるんだな 素直に自分のネガティブな感情を受け入れられる人は全然ダメじゃない」あの偏屈頑固な笙野を、田中さんの好きなものを知りたい理解したいと三好へのダルブッカ弟子入りまで果たさせた田中さんにあって自分にないものはなんだろう、という自問。自分のことを振り返しもしてくれない魅力的な幼馴染と、チャラいおっさんだけど自分のことをよく見て理解してくれる小西とどちらがいいのかと悩み、後者に傾きかけ。そして、自信を失いがちな田中さんに、私も含めて田中さんのことが好きで魅力を感じている人がこんなにいるのだから「背筋を曲げないで！」と叱咤する朱里。ジェットコースターのように乱高下する田中さんの心に、最後は会社への身バレという現実がおそいかかり…といったところまで。
タイトル見ただけで一目惚れし、Booklab.でひっつかんで購入。"「マイナンバー」に紐づけられた情報が国家によって全面的に把握され、それに基づいて私たちの行動に制限が加えられるとしたら、感染症との戦いは、自由をおびやかすものとの戦いになるのではないか"という危惧から、数について考えるために行われたプロジェクト。参加者が一日一回、一つ以上の数字を含んだテキストを共有ファイルに匿名で記入、それをTOLTAが詩に構成したもの、とのこと。固有名と数字で刻印された文章は、2020年4月-5月にあったこと、感じたことを思いおこさせ、味あわせてくれて貴重。ブルトンとズッキーニ。やわらかな緊急事態宣言。Nujabes feat.Shing02「Luv(sic)part3」。加島 祥造「タオ―老子 (ちくま文庫)。/「麦わら帽子のリボンは雨の排水溝」この一行に痺れて。ブルトン全集7巻に大枚叩いたのに。結局まだ読んでない。見るだけのブルトン。というか。人生を棒に振る人もあれば。排水溝一本に大枚叩いて終わる人生もありがとうか。(p.111)/割引ゴーヤ八七円（税込）と書かれた袋に入れられた居心地の悪そうなズッキーニ (p.111)/（自分がズッキーニなら居心地悪すぎて逃げ出したいと思った）/ねえ、緊急事態宣言さん、答えて。こんなに長くて柔らかくて「継続」も「解除」もできる、とっても珍しい「宣言」の肉声を、わたしまだ聞いたことがないの。(p.114)/大河ドラマに期待することはひとつかもしれない。人はどのように生きて死んでゆくのか。驚くほどたくさんの人が死ぬのが大河ドラマだ。私はまだ死んだことがない。いずれ参考になるだろう。(p.90)
 | イースト・プレス 発売日 : 2021-08-12 |
ふりかけかけすぎたら鳥たちが窓から飛び込んできてちょうど良くなったり、スーパーヒーローが困ってる人助けに行ったら失敗して逆に慰められたり、仕事の憂さを晴らすためにオーロラ見に行ったら、あざらしのくしゃみで雲が晴れて見れたり。オチがない話も含めて優しい世界でほっこりする。
 | 秋田書店 発売日 : 2021-08-06 |
AIが人間を監視しその過程を明らかにせずスコアリンクする社会とその対し方、死後に自らの思考を学習させたAIに故人と同等の権利を持たせる社会の希望と問題点、AIを道具として使い捨てるのか人間と同等の存在として遇するのかなど、少し先の未来に起こりそうな問題点を差し出してくれ考えるきっかけをくれるストーリー
 | 講談社 発売日 : 2021-08-19 |
神軀兵器の存在に着目し接触してくるKGB。神軀兵器たちを束ねるマイザーと東独議長の会談を機に、マイザー暗殺を試みるフライハイトと”違う顔”。その試みは、超低周波音の研究も引かれて描かれる。CIAのフライハイトへの資金提供も高額だが最後であることが示され、民主化運動も活発する中、ベルリンの壁崩壊までのタイムリミットは後わずか…というのは後世の後知恵だが。いつかこんな国があり、こんな機関があり、こんな事件があり、人がいたと思うことがあるだろうかというアウグストの独白。今と思う時も、後世から見ると…と。
 | 講談社 発売日 : 2021-08-17 |
大団円。東コレで、服の魅力を最大限に引き出すため、モデルは無表情という鉄則をやぶり、ランウェイ上で、モデルたちが対話し、人生の各ステージ、人間関係を表現し、豊かな表情を見せ、服のためのモデルから、モデルの個性のための服へ。それは大きな拍手で迎えられ、十年後、中核メンバーは変わらず育人のブランドはパリへ。そしておそらく公私共にパートナーの千雪もともに…といったかたちで。最後の、笑って、がすごくいいなと。
 | 秋田書店 発売日 : 2021-08-16 |
人類の半分が心を病む世界。もふもふとした地球外生命体を抱くと苦しみが緩和されるという世界。心を病んだ警察官、人が死にたいというのがわからない女性、目の前で飛び降りた人を見て心が壊れて両親に捨てられるのではと怯える少女。もふもふは言葉を解さずただ癒すだけ。たた癒すだけ。作者と同様確かにこれ欲しいという思い。
 | イースト・プレス 発売日 : 2021-08-19 |
コンサルが各人を監視しコントロールしメンテナンスする世界、猫が世界の秩序を守ろうとする世界で、3Dプリンタから出力されたもちっとした生命体プリンタニア・ニッポンのすあまとそらまめを飼う主人公佐藤。彼らに癒されつつ、佐藤を守りたいと思うすあま、自由に行動したいそらまめと、友人たちの交流。違うプリンタニアやその飼い主との交流もあり。一歩踏み出した感も。
 | KADOKAWA 発売日 : 2018-01-25 |
この本だけ読むと世界史上の多くの戦争は、戦略や軍事力や兵站ではなく、ウィルスに耐性があったかどうかだけで決まったかのように思えてくる。死亡者推計が3000万単位で違うというのは、かなりの大枠でしか推計できないのだろうなということをしのばせ。ウイルスの系統分析から人類の起源や移動の歴史を推測する「ウイルス人類学」が近年注目をあびている、というのは興味深く思った。大枠として、ウィルスの爆発的な流行には、必ず人の手による環境へのアクションがあり、無理な開発とコインの裏表なんだなという思い。抑え込んでも抑え込んでも、変異して変異して生き延びようとする姿にはしぶとさ、したたかさを感じる。今、世界を席巻している新型コロナウィルスについては、直接は触れられていないが、この書を読んだ後には、その流行はある程度予見されていたとも思えた。
 | 主婦と生活社 発売日 : 2021-05-07 |
社内システムを一人で回していたのに、社長交代で、コストカットの一環として解雇されたコスプレして勤務するエンジニアの佐藤愛。「未経験者NG」のプログラム塾を起業した幼馴染み鈴木に雇用され、超一流の技術力と破天荒な接客・教育方法で、ひとり、またひとりと顧客が幸せな道を進む後押しをしていく。プログラム塾は大規模イベントを仕掛け、鈴木、佐藤も含めた社員もそこへ邁進するが立ちはだかったのは…と。テンポよくよめて、エンジニアの苦悩も喜びも詰め込まれていて、読んでいてぐっとくる。正論なんか言われなくたって本人がわかっている、それをどうにかするのが教育でしょ！とグイグイいき。#エンジニアは数字じゃない、というタグが大きな共感を呼びキーポイントとなり、と。タイトルからして、もっと社内SE話を読みたかった気もするが、痛快な読後に、ああこんなプログラム塾あったら、行ってみたいなという思い。
 | 小学館 発売日 : 2016-10-28 |
1-5巻読了。東北の山の中の美大につどう三人の男子。天才の本吉、真面目な藤本、勢いの千葉。のんびりとバカなこといって学生生活をすごしてるかと思いきや、それぞれの専攻で、考え、悩み、触発され、ひらめき、のめりこみ、自分の道をつかんでいく、「ハチクロ」とはがらっと違う、芸大生青春ストーリー。真摯に向き合ってくれる教師や先輩たちもいい味だしてる。/途中、本をとじて、宮沢賢治の「やまなし」を一気に読んた。/そして、ここに出てくる美術とは、という言葉にいくつも打たれた/何をしたってもう古い だから俺は古いことをやる 古いことの中に「誰もやらなかったこと」を見つけられたら 古いことは新しくなる/信じていたのだ 自分が正しいと思うことが世の中にとってもそうであって 自分が信じることを友達も絶対に信じてくれるのだと/音楽じゃなく 言葉でもなく 気持ちも空気も体温も味も今を今を全部叩き込んで 撃ち抜きたいんだ 美術ってそういうものだろう/世の中には残念だけど絵とか音楽とか必要ない人がいて でも必要でないと生きていけない人もいる 人生にはたまにとんでもないつらいことがあって そういう時そこには1人でしかいけない そこに入れるのが絵とか音楽とか 小説でも映画でも舞台でもなんでも人の手で作ったものだけだ 作れ、手を動かせ 1秒でも長く1秒でも速く/あと、吉野さんが千葉妹に語ってたのがいいなあ、と思った。大事なのはこころ 誰かに花冠をあげたいと思ったらあげなきゃいけない けどその時に作り始めようとしても間に合わない だからいつも花冠をつくりつづけなければならない、と。//4集で燃え殻さんの話出てきて、え、え、て思ったら巻末に文章が寄稿されてて、そういえば「ボクたちはみんな大人になれなかった」の文庫本の巻末、マンガだったなと思い開いたら相澤さんだった。最初に読んだ時より内容にしっくり来た。
 | 新潮社 発売日 : 2019-03-28 |
最初は、和菓子のアンシリーズや、ひきこもり探偵シリーズの坂木さんが変わったの書いてるなあ、と最初の何ページかだけ読んで購入。最初はおしゃれが大好きなごきげんなOL生活を描くのかと思いきや…薫や晶だったら気がつけただろうか。みきは、マイノリティだけれど、正論でぶつかっていって受け入れられるなんてキレイごとと、アパレルにつとめ、ひょんなことから高校の同級生の冴えない印象の男後藤がころがりこんできて。合コンに行けば、今だけ、刹那、なぜならこんな風にできるの若いうちだけだと思ってるし、と。あからさまに見下したり、化け物のようにみてくる奴らには、相手するところはしつつ毅然とするところは毅然として、話の通じる女子とは通じあえて、…と。男どもへの辛辣なコメントは、寸鉄人を刺すの体。最初は気も使えず、ビシビシ言われていた後藤が、みきと暮らすうちにどんどんと成長し、最後は一番の理解者になって啖呵を切ったシーンは胸がすく。最後には、一筋縄じゃいかない、けれどあきらめたりしない、戦略を練って、したたかに生きてる、自分の気持ちにもなるべく嘘をつかずに、みきのこだわりが、生き方が、グッときます。
 | 角川グループパブリッシング 発売日 : 2008-07-25 |
不夜城三部作すべて読了。三部作における劉健一の立ち位置は、表、裏、闇になるだろうか。最後も劉健一がすべての望みを果たして暗い高笑いを見せるかと思いきや…。主人公の武基裕も出だしから、偽の戸籍で日本人になりすまし、故郷に残してきた幼馴染との約束は弊履のように捨て去り、しかしそれを悔いてもいるという半端さ。小文に、その半端な保護者気取りを冷たく指摘された後は、読んでるこちら側にも、なんのために動いているのかわからず、すべてが無為に思えるはずが、小文にこだわり続け…。惚れた女を自らの手で殺すという前作、前前作のモチーフも反転し、と。もう続編を書けないぐらいに完膚無きまでの終わらせ方だった。疾走感と暗澹とした読後感は健在。この巻の劉健一の存在感、人というよりは、魔法使いか化け物かといった趣だった。その目的は、武を走らせかきまわし、麻取、日本のヤクザ、福建人、東北人、かつての仲間、台湾人、すべてひっかきまわさせ、何人も何人も巻き込んで、まわりくどいやり方で仇敵を追い詰めたのその目的は…と。/解説であげられていた志水辰夫「尋ねて雪か」徳間文庫、ジェイムズ・エルロイ「ホワイト・ジャズ」文春文庫にも手をのばしたくなった。/だれにも他人のことはわからない。わかったつもりになるのは危険だ（167）/人間ってのは、決して手に入らないとわかってるものを手に入れたがる。あるいは、すでに手のうちに入れているものを、そうとは気づかずに手に入れたがる（178）/人っていうのは、だれよりも自分のことがわかっていないのさ。(148)/おまえが何をしたって、だれも救われない。救いなんかどこにもない。ただ、過去を悔い、自分を呪って生きていくしかないんだ（380）/自分以外は信じるなといっただろう。自分で見たもの以外信じるな。他人の心になにも期待するな。（527）
 | 現代企画室 e託 発売日 : 2019-11-14 |
ベイショット 川辺の寡婦。リカルド・アドルフォ 東京は地球より遠く。少尉の災難。美容師。図書室。定理。植民地のあとに残ったもの。を読了。ネットで訳者の木下眞穂さんのインタビューを見かけ、ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ「忘却についての一般論」に手が伸び、またこの短編集でもいくつか訳していると知り、手に取る。ベイショットは、因習に囚われた村で、若者に恋し家を出ようとした娘が、母により監禁され、母の死によって解放されたときにはすでに老婆になっていたという何とも暗澹とした話。リカルド・アドルフォ作品は、外の視点から見た日本のおかしさと関心するところとを諧謔に満ちた筆致で描き、たのしかった。著書のうち3編だけ訳されているが全編読みたい思い。美容師は、経歴からするとなぜに美容師に、と思いきやまさかの塀のなかの…。少尉の災難は、理不尽でひどすぎる上官の見栄で殺されたも同然の少尉がやりきれない。以下、備忘録。/俺の時間を決めるのはこの俺自身だ。医者なんかじゃない。身体でもない。俺が決めるんだ。(図書室)/文字はほとんど血と同じくらい俺たちの言質になる。名前を書けば俺たちはその所有者となる。それとも奪われるかだ。片手で書かれた線だ。線自体何の価値もないが、結局、価値のあるものとなるのだ。(図書室)/ここの男たちみたいになれっていつも言ってるのはそっちじゃん/試しに、もう一度訊いてみた。海に入るのに何か障害があるか/こんな風に島民たちの精神性の気高さに感じ入っているその最中、ぼくの前にいるサラリー男が、そのまた前のサラリー男を押す。(東京は地球より遠く)
 | 河出書房新社 発売日 : 2019-02-06 |
転校生としてやってきたアンドロイドのQ10。平太や校長、担任の小川など少数以外には、女子高生として紹介され。ちょっとずれたところがありつつ、少しずつとけこみ、愛され、人の感情をまなんでいくQ10。平太の心も知らず知らずのうちにQ10にひかれていくが…/恋は革命ですよ。自分の中の常識が全部ひっくり返ってしまうようなものなの。良さそうな人とかお似合いの人とかじゃ、永遠にひっくり返らんでしょうーが。（柳）/この世に引き止めるものなんて、ささやかなものかもしれない（平太）/違うって言わないと、間違ったことが本当になってしまうよ。自分で大声で言わないと。かわりに誰も言ってくれたりしないんだから。(民子)/どうせとか言うなよ。とりあえず、やれることをやろうじゃない。(岸本)/今わかった。この世のほとんどは、どーでもいいことと、どーにもならないことで出来ている（平太）
 | 第三文明社 発売日 : 2020-02-27 |
柳美里「人生にはやらなくていいことがある」を読んだら、俄然、南相馬に移住してからのことも詳しく知りたいという気持ちをおさえきれず。「いま、小説に書きたいのは、日々繰り返される生活です。生活の中にこそ、絶望を擦り抜ける小道がある。」というのを地でくように、南相馬で暮らし、と。「痛みを感じつつ住まうことによって人々と繋がり、その繋がりの中で温もりや優しさを日々育んでいるのです」と。地域FMに番組を持ち、地元の高校に授業で出向き、書店を開店し、地元のキャストで劇団「青春五月党」を復活させ、東京公演まで行う様が描かれ、地域に根ざした活動の一端にふれることができる。「静物画」が収録されている戯曲集に含まれてない奏人くんのセリフは心に深く届きました。「全ての生き物は、その個体の欲望を成就させるために生きているのではない。生きる意味や目的は個の内に決して留まらない。個から飛び出し、他へと繋がっている。同じ種の命を繋げ、異なる種の命のリレーにも加わっている。」/田口幹人「まちの本屋 知を編み、血を継ぎ、地を耕す」（ポプラ社文庫）、ファラダ「ベルリンに一人死す」、若松英輔「悲しみの秘儀」は読みたい三冊。
 | 集英社 発売日 : 2021-07-06 |
澤田直 ペソア評伝。バルガス＝リョサのボルヘスインタビュー。マリアム・タマリ「パレスチナの朝」。のみ読了。個人的に一番の目当ては、ペソアの評伝の連載開始。ペソア少年から、母の再婚により、リスボンから南アフリカに渡り、詩に目覚め、学業も優秀な成績をおさめるが、奨学金を得られず、失意でリスボンに戻るところまで。自分のアイデンティティに疑問を持ち、後年の”あらゆるものにたいする無所属の感情”が、ペソアの中で大きくなっていたのでは、と。もしそのままペソアがイギリスの大学に進み、英国紳士になっていたら…膨大な作品群は生み出されなかったのだろうか。ペソアの異名者を語るくだりで出てきた平野啓一郎の分人概念はもう少し深めてみたいと思った。タブッキの、ペソアをふんだんに引用したという「インド夜想曲」、ペソアが登場するという「レクイエム」も手にとってみたく思った。/「パレスチナの朝」は、現に住む故郷が、日々空爆され続け、テロリスト呼ばわりされ、国際社会から無視されていることを淡々とした筆致で問いかけてくる/ボルヘスインタビューは、ボルヘスの「スピノザが言うように「どんなものも自身の存在の孤独を欲する」のです。私はボルヘスであり続けたいと思います。理由はわかりません」の一節にしびれる。
 | 河出書房新社 発売日 : 2019-02-05 |
がらりと様相が変わって、Q10の出自がSF的な色彩を帯び始め。Q10を愛したように、世界を愛せよ。この言葉に導かれるように、自分ひとりのQ10への愛着を、まだ見ぬ未来の人々の命へと思いを馳せるまでにひろげた末に、決断した平太。後日譚がまたじんわりと来ます。/好きなものを選んできた。その果てに、私らここにいるんですから。(しげ)/死ぬほど考えること。それが後悔しない、たったひとつのやり方です。（柳）/
 | 祥伝社 発売日 : |
再読。一番の目当ては、魏の皇族にして、司馬一族に追われるように蜀に亡命し、そこでも蜀の皇族として遇され、重用された夏侯覇の複雑な思いを描いた「白日、斜めなり」。「魏にあっては、皇族にして叛逆者。蜀漢にあっては、皇族にして亡命者。これほど奇怪な境遇に置かれた者は、歴史上にそう多くはあるまいな」（夏侯覇）。流れてきた蜀が、漢王朝の正統な後継を歌うのに史観が置かれていないことに違和感を感じ、魏に比べてあまりに文雅の風がうすいことを寂しく思い、反面、将軍として、后妃の親類として重用されることをありがたく思いつつ、君主や同僚たちに良きものを見出すも、時に駆られるふわふわとした居心地の不安定さ、ふたつの国に仕えることの思いなどが描かれ、やはり、読み返してよかったと思える一編。。他に、宋の皇族の末裔を名乗るあやかしが、イシハの野望を、仕える君主の悪名が代々伝わることを告げる「黒竜の城」。ウマイヤ朝のクタイバ・ブン・ムスリムの伸張に対抗するため送られた唐の武人河東の李炎が最後はクタイバを討ち果たすがその過程で不可思議に登場し自分を助けてくれた愛する舞姫ゼノビアを失ってしまう「天山の舞姫」。太宗李世民の死の間際、病身につけこんだ方士に心を操られた皇帝を救うための、文武のトップ、李靖、尉遅恭らの奮闘、李淳風の予言、そして正道にもどしたはずの政権の顛末に寂寞を覚える「長安妖月記」。侯景の乱を中心に梁の混乱と、名称羊侃の息子羊鯤の若くしての活躍を描く「長江落日賦」。/すべては天命だ。だが、だからといって、人の営為が無為であるとはいえぬ。人であればこそ天命を知ることができるのだから（李淳風）(「長安妖月記」)
 | 幻冬舎 発売日 : 1997-12-01 |
宇野常寛作品、藤田直哉「シン・エヴァンゲリオン論」つながりで庵野秀明が監督した映画に興味を持ち、その前に原作を、と。今日絶対にあのインペリアル・トパーズの指輪を手に入れなければいけない。やりたいこと欲しいものは、そう思ったその時に始めたり手に入れようと努力しないと必ず自分の中から消えてしまうから。そこまではわかるけど、だから今日援助交際して手に入れる、というのが飛躍に感じ。その結果は…と。友達とは対等でいたい、4人で稼いだものをひとりでもらうのは何か違う、という健全な思想とのギャップ。冷静に相手を見ているようで危うい綱渡りのように、紙一重で、もとの場所に戻ってきた主人公。深い衝撃を受けつつも、「他人と出会えないっていうのは死人と同じだと、ぼくは思うけどね。」「だって、それ、お前には価値があるってことよ。安売りするなってことよ。裸っていうか、その人の存在がね、誰かにとってすごい価値があるから、その誰かは死ぬほど悲しむわけでしょ？」と語る男の言葉で少し、落ち着きをとりもどし、と。サエキカヤ、ナカタニミキのKDDラジオ、いしだ壱成など、挟まれる伝言ダイヤルのメッセージや会話やニュースなどに、20年以上前の世相を垣間見。
落合洋司ブログで見かけて手に取り。河井継之助の武装中立論は成り立たない。それまでの反薩長・徳川再擁立な言動・行動からは、急に中立と言われても、受け止める側としても、偽装中立と切り捨てるのは当然。むしろ藩内の穏健派を主戦派へと統一するための行動だった、と。今町の戦いは、長岡放棄という後退戦略によって得た戦力集中の結果でまさに河井の戦略家としての昇華。しかし、その後の戦闘指揮は米沢藩家老。河井を活かせなかったのが同盟軍の限界だった、と。司馬遼太郎「峠」しか知らない身にはなかなかに辛口に思えそうだが、史実を丹念に追っていくとこういう見方もできる、と。
 | コアミックス 発売日 : 2021-08-20 |
あん肝は糸で切るの初めて知ったことと、ワカオが料理人めざすきっかけになった老女将の引退。エイヒレのエースではないが必要とされしっかりと立ち位置を確保してる仕事っぷり。豚のあたりめ、食べてみたい。看板娘はっちゃんのスピンオフがいい感じ。突然出てきた海原雄山みたいな客はなんだったんだろ。
 | コアミックス 発売日 : 2021-08-20 |
広島の回、絶景と蒸し牡蠣とレモンサワー。なんて黄金の取り合わせ。モブ子の恋コラボもよき。もちごめ焼売は、皮の代わりにお米、焼売はご飯で食べたい派としては朗報な一品。夏のご馳走牛肉のタリアータ、冷製料理のようですが、食べたい気しかしない。
 | 少年画報社 発売日 : 2019-10-01 |
北海道のある都市の神社の中にある書店にアルバイトで入った泰弥。神様のいたずらでなぜか泰弥にだけ、書店内で、迷子の子の親のいる方角がわかったり、客の悩みが見えたり、探してた本が一人でに棚から飛び出てきたりと不思議なことが。そこにご当地覆面アイドルの子がからんできたり、個性的な同僚たちにビシバシ鍛えられたり、と。ただちょっと主人公の性格が扱いづらい感。
2021年09月01日
NEVER MIND THE BOOKS 2021 の感想まとめ
NEVER MIND THE BOOKS 2021 の感想まとめ。
twitterでもつぶやいたけど、流れていってしまうので、あらためてこちらのほうにもまとめておきます。内容はほぼ変わらず。
ぽやん舎さんの分は、こちらを参照。
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tamari mikaさん
Sunday Midnight Blue
日曜と月曜の間の高い壁、深夜ドライブの楽しさ、一瞬一瞬のかけがえのなさ、伝えたいことを伝えきれないもどかしさ、他人の夢で癒やされ覚めたらすべて忘れてしまう療法の儚さが心に留まる。ディスクガイドは、インストゥルメンタルでアンビエント寄りのものが多めなのかなと思った。今からリンクをたどってお気に入りの曲を探しにいくのが楽しみ。
くるみみどりさん「読書後文２」
「日本のジャズ地図」を読んでの札幌ジャズ喫茶巡り。これは良き！慣れないカウンターにそわそわしつつ、あ、あれはあの曲だ、この曲は…と耳を傾けて次第にリラックスしてく様子が伝わってきて。この本読みたくなりました。個人的には、ハトコーヒーで毎週金曜日やってるジャズ喫茶の日がオススメです。そして映画「ブックセラーズ」。人の身体の一部で作った本をはじめ興味をひくワードが一杯でこれも観てみたくなりました。
mayuさん。
天使の低空飛行 （イラスト）
Kitten Story （架空レーベルジャケット）
「天使の低空飛行」。instagramのストーリーで、中をめくって見せてくれる動画を見て、欲しいと思ってしまった一冊。どこか幻想的な風景のなかで、地上に降りてきた天使が、寄り添い、また抱き合う。静かに。「実はミシン目がついていて、切り離して飾ったりもできるんです」と言われたけど、いやあどうしよう、もったいなくて。この紙を触った時の、めくる時の質感も大事にしたい一冊。「Kitten Story」。 架空のレーベルのレコードジャケット。個展でお見かけしたとき、あ、いいなあと思ったけどSOLD OUTだったので、再会即購入できてうれしかった。
スガラムルディ
Sapporo Cult Classics 2
スガラムルディ「Sapporo Cult Classics 2」。「電柱に貼ってある怪文書の主に連絡を取りたいので携帯番号を電柱にはりまして…」と熱く語られ、買います！となりまして。読んだら、わざわざこのために携帯一台確保して契約してるんですよね。すごい熱量。振込用紙の備考欄使った連絡方法もスパイ映画かよ！と。しかし、これは...続編あると思っていいんですよね？そして、ヤラれたのがSAYUNOPOLIS 2021。おそらくオーウェル「1984年」オマージュなルビの振り方だと思うんだけど、これが笑いながらウザい！腹立つ！と思いながら読んでるうちに 中毒になってきて、もう一回読みたい！となる粘度で。スゴイよ！またご本人にには1mmの罪もないのに、これからTVでスクリーンであの御方を見かけるたびに、心の中で「…YS・76だ」と思ってしまいそうです。どうしてこの人たちはこんなに奇妙なパワーにあふれているんだろう、こっちも元気出るわ。
フルチ流血夫さん
Dai・Towa
シリアスでミステリアス。謎の国に降り立ち、反政府運動に身を投じた主人公。命を賭けるに値するものとは、と問うた時に弾丸を受けるが…。夢とうつつのあいだが曖昧に感じた読後感。
朱鷺さん
北海道zine
この形！これだけでも伝わってくる北海道愛！北海道愛にあふれたテキストが詰まってます。セコマが最近全国配送始めたとは知りませんでした。ブースでお見かけした北海道型大型クッションは極上の手触りかつ、すごい存在感でした。
あれこれ青森テンカウント
主に伝統工芸や舞踏で組まれた青森ベストテン。切り貼りされた画像と手書き文字の組合せがいいです。”やきもの”の項の、汚いものを残すこと 修復しないからわかること、という一節にグッときました。価値ある痕たち。
宮浦宜子さん
「1でもなく、2でもなく、3でもなく」。宮浦宜子さんのお粥をめぐる随想。関西ではおかいさんていうことから発祥、仏教から高齢者の多い炊出しに適してることまで。西川勝さんの、市井の人釜ヶ崎のふじやんを語る連載も続きが気になる。
Atsumi Sugai
十月の海
海を見る女性のイラストのポストカード。QRコードから飛んだ先では、10秒ほどのアニメで、海風に吹かれる様子が描かれる。イラストの裏面に書かれる、夏のひとときの楽しさと寂しさと余韻がよかったです。
Wataru Sugai
Bonny Yang / ただ日々は繰り返す
Bonny Yangというバンドの歌の歌詞と、MVから撮った画像が一枚のカードに、ということなのでしょうか。海ではしゃいでるというかじゃれあっている写真がいいなあ、と。
が、実際のMV見たらもっと良かった！穏やかに心を均してくれるような音楽と映像だった。曲への入り口として秀逸なカードでした。Apple Musicとかで配信してないのかな？
Morita
「case ＃1」 。タイトルは例（ケース）と箱（ケース）をかけてるのだとか。紙によるパッケージに強みのある会社のフリーペーパー。クラフトジンをつくる人、オリジナルのシリアルバーをつくる人など、パッケージのお取引先へのインタビューがメイン。考え方とか刺激になります。
トコトコ通信
非日常ではなく、日常の特別感
トコトコ通信。メンバーたちの日常や疑問に思うこと、オススメの本などがつづられてます。「非日常よりも、特別感のある日常がとびきり好きなだけだ」て一節にグッときました。PUBLIC HACKて本、シオリーヌさんの本は手にとってみたいと思った。
買った方に見せていただいたものから。
宮浦宜子さん
「北の女が食べる西」。
札幌から関西へ移住した著者が食の違いを感じた点を主に記した食エッセイ。ブリ、きつねうどん、ぼたん鍋、お好み焼き、冷やし西瓜など。個人的に一番の収穫はいちじくのフライ。寡聞にして知らずだったのですが、兵庫の川西というところが最も売れてるいちじくの品種の発祥だとかで普通に生いちじくがスーパーで売ってるんだとか。いちじくLOVERとしては超絶うらやましいです。ここは鮭だろうというところでブリが来た、お好み焼きに入る空気の絶妙さが味をわけること、西瓜の美味しさで感じる気温差、北じゃエゾシカ西じゃイノシシという対抗意識などなども興味深く。
やまだなおとさん
「ココアシガレット」
#nmtb21 感想その12。買った方に見せていただいたものから。やまだなおと「ココアシガレット」。この夏懐かしくてココアシガレットアイスを2度食べた身としては、「勉強机の上のラムネとココアシガレットの偶然の出会いのように美しい」の一節にグッときました。
mayuさん
Alone With You
架空のレーベルのレコードジャケット、架空のレーベル印字されたCD（プラスチック）と来て、架空のアルバムの歌詞カード。イラストの世界観とつながってる、と思える歌詞がおさめられ。「昨日見た夢」「プラスチックプールサイド」「ナイトプール」あたりが個人的に好きな世界。本来の意図とはずれるかもだけど、どなたかに曲つけていただいて、実際に聴いてみたい思いに駆られる。
twitterでもつぶやいたけど、流れていってしまうので、あらためてこちらのほうにもまとめておきます。内容はほぼ変わらず。
ぽやん舎さんの分は、こちらを参照。
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tamari mikaさん
Sunday Midnight Blue
日曜と月曜の間の高い壁、深夜ドライブの楽しさ、一瞬一瞬のかけがえのなさ、伝えたいことを伝えきれないもどかしさ、他人の夢で癒やされ覚めたらすべて忘れてしまう療法の儚さが心に留まる。ディスクガイドは、インストゥルメンタルでアンビエント寄りのものが多めなのかなと思った。今からリンクをたどってお気に入りの曲を探しにいくのが楽しみ。
くるみみどりさん「読書後文２」
「日本のジャズ地図」を読んでの札幌ジャズ喫茶巡り。これは良き！慣れないカウンターにそわそわしつつ、あ、あれはあの曲だ、この曲は…と耳を傾けて次第にリラックスしてく様子が伝わってきて。この本読みたくなりました。個人的には、ハトコーヒーで毎週金曜日やってるジャズ喫茶の日がオススメです。そして映画「ブックセラーズ」。人の身体の一部で作った本をはじめ興味をひくワードが一杯でこれも観てみたくなりました。
mayuさん。
天使の低空飛行 （イラスト）
Kitten Story （架空レーベルジャケット）
「天使の低空飛行」。instagramのストーリーで、中をめくって見せてくれる動画を見て、欲しいと思ってしまった一冊。どこか幻想的な風景のなかで、地上に降りてきた天使が、寄り添い、また抱き合う。静かに。「実はミシン目がついていて、切り離して飾ったりもできるんです」と言われたけど、いやあどうしよう、もったいなくて。この紙を触った時の、めくる時の質感も大事にしたい一冊。「Kitten Story」。 架空のレーベルのレコードジャケット。個展でお見かけしたとき、あ、いいなあと思ったけどSOLD OUTだったので、再会即購入できてうれしかった。
スガラムルディ
Sapporo Cult Classics 2
スガラムルディ「Sapporo Cult Classics 2」。「電柱に貼ってある怪文書の主に連絡を取りたいので携帯番号を電柱にはりまして…」と熱く語られ、買います！となりまして。読んだら、わざわざこのために携帯一台確保して契約してるんですよね。すごい熱量。振込用紙の備考欄使った連絡方法もスパイ映画かよ！と。しかし、これは...続編あると思っていいんですよね？そして、ヤラれたのがSAYUNOPOLIS 2021。おそらくオーウェル「1984年」オマージュなルビの振り方だと思うんだけど、これが笑いながらウザい！腹立つ！と思いながら読んでるうちに 中毒になってきて、もう一回読みたい！となる粘度で。スゴイよ！またご本人にには1mmの罪もないのに、これからTVでスクリーンであの御方を見かけるたびに、心の中で「…YS・76だ」と思ってしまいそうです。どうしてこの人たちはこんなに奇妙なパワーにあふれているんだろう、こっちも元気出るわ。
フルチ流血夫さん
Dai・Towa
シリアスでミステリアス。謎の国に降り立ち、反政府運動に身を投じた主人公。命を賭けるに値するものとは、と問うた時に弾丸を受けるが…。夢とうつつのあいだが曖昧に感じた読後感。
朱鷺さん
北海道zine
この形！これだけでも伝わってくる北海道愛！北海道愛にあふれたテキストが詰まってます。セコマが最近全国配送始めたとは知りませんでした。ブースでお見かけした北海道型大型クッションは極上の手触りかつ、すごい存在感でした。
あれこれ青森テンカウント
主に伝統工芸や舞踏で組まれた青森ベストテン。切り貼りされた画像と手書き文字の組合せがいいです。”やきもの”の項の、汚いものを残すこと 修復しないからわかること、という一節にグッときました。価値ある痕たち。
宮浦宜子さん
「1でもなく、2でもなく、3でもなく」。宮浦宜子さんのお粥をめぐる随想。関西ではおかいさんていうことから発祥、仏教から高齢者の多い炊出しに適してることまで。西川勝さんの、市井の人釜ヶ崎のふじやんを語る連載も続きが気になる。
Atsumi Sugai
十月の海
海を見る女性のイラストのポストカード。QRコードから飛んだ先では、10秒ほどのアニメで、海風に吹かれる様子が描かれる。イラストの裏面に書かれる、夏のひとときの楽しさと寂しさと余韻がよかったです。
Wataru Sugai
Bonny Yang / ただ日々は繰り返す
Bonny Yangというバンドの歌の歌詞と、MVから撮った画像が一枚のカードに、ということなのでしょうか。海ではしゃいでるというかじゃれあっている写真がいいなあ、と。
が、実際のMV見たらもっと良かった！穏やかに心を均してくれるような音楽と映像だった。曲への入り口として秀逸なカードでした。Apple Musicとかで配信してないのかな？
Morita
「case ＃1」 。タイトルは例（ケース）と箱（ケース）をかけてるのだとか。紙によるパッケージに強みのある会社のフリーペーパー。クラフトジンをつくる人、オリジナルのシリアルバーをつくる人など、パッケージのお取引先へのインタビューがメイン。考え方とか刺激になります。
トコトコ通信
非日常ではなく、日常の特別感
トコトコ通信。メンバーたちの日常や疑問に思うこと、オススメの本などがつづられてます。「非日常よりも、特別感のある日常がとびきり好きなだけだ」て一節にグッときました。PUBLIC HACKて本、シオリーヌさんの本は手にとってみたいと思った。
買った方に見せていただいたものから。
宮浦宜子さん
「北の女が食べる西」。
札幌から関西へ移住した著者が食の違いを感じた点を主に記した食エッセイ。ブリ、きつねうどん、ぼたん鍋、お好み焼き、冷やし西瓜など。個人的に一番の収穫はいちじくのフライ。寡聞にして知らずだったのですが、兵庫の川西というところが最も売れてるいちじくの品種の発祥だとかで普通に生いちじくがスーパーで売ってるんだとか。いちじくLOVERとしては超絶うらやましいです。ここは鮭だろうというところでブリが来た、お好み焼きに入る空気の絶妙さが味をわけること、西瓜の美味しさで感じる気温差、北じゃエゾシカ西じゃイノシシという対抗意識などなども興味深く。
やまだなおとさん
「ココアシガレット」
#nmtb21 感想その12。買った方に見せていただいたものから。やまだなおと「ココアシガレット」。この夏懐かしくてココアシガレットアイスを2度食べた身としては、「勉強机の上のラムネとココアシガレットの偶然の出会いのように美しい」の一節にグッときました。
mayuさん
Alone With You
架空のレーベルのレコードジャケット、架空のレーベル印字されたCD（プラスチック）と来て、架空のアルバムの歌詞カード。イラストの世界観とつながってる、と思える歌詞がおさめられ。「昨日見た夢」「プラスチックプールサイド」「ナイトプール」あたりが個人的に好きな世界。本来の意図とはずれるかもだけど、どなたかに曲つけていただいて、実際に聴いてみたい思いに駆られる。
ぽやん舎さん作品の感想まとめ（※随時、追加していきます)
2021.08.28読了分**************************
Never Mind The Books 2021 で購入したものの感想。
※twitterでつぶやいたものの再録です。
「世界の終わり」。もうね、冒頭の、国内初の国立記憶消去センターが開設された、がパワーワードすぎて、やられて、心持ってかれた。施設にやってきたよしのとあおいは管理人が不在のため、二人で楽しい時間をすごすが、それぞれ選んだのは、残ること、戻ること。それを分けたものはなんだったのか。描かれない部分にある消したい記憶の濃度によるのか。そして、国立なんだからせめて選択して記憶を消せればいいのになあと、ないものねだり。最後のシーンが二人それぞれの形でのハッピーエンドなのだと信じて。
「everyday,everywhere 」尚也さんが昔撮った風景写真に頃さんが撮影者尚也さんのイラストを入れていく合作。本来の意図からずれるかもだけど、なんだか自分のいなかったはずの相手の過去の記憶に入り込む、のを見ているようで楽しい。
「ひみつ絵日記」。楽しかったこともネガティブなことも描かれて、浄化の一端を垣間見させてもらっているような。そっとさりげなく温かい気持ちにさせてくれるおばけちゃんはマジ天使です。”ときどきなら世界を愛せる”Tシャツ、売ってたらほしいと思ってしまった。
「filaments」。ただ撮る人の視点にあわせて差し出されたものを眺める。ただ眺める。縁石に射す光も雪原の割れ目からのぞく流れも訴えかけてくるような草花の緑も。前作の「無題�機廚澆燭�きっと何度も見返す予感。
「かわいい僕の中二病 （ステッカー）」個人的にはこの構図、このポエムが一番しっくりきました。これください！どれですか？この、虹のかけらを…と読み上げ始めた時に、目の前で読み上げられるとはずかしいです、と言われたのを思い出し笑い。
2021.05.22読了分**************************
2021.03.08読了分**************************
2021.01.14読了分**************************
2021.1.1のtweetより*************************
2020.11.2のtweetより*************************
2020.09.17読了分**************************
2020.08.17読了分*************************
2020.08.03読了分*************************
Never Mind The Books 2021 で購入したものの感想。
※twitterでつぶやいたものの再録です。
「世界の終わり」。もうね、冒頭の、国内初の国立記憶消去センターが開設された、がパワーワードすぎて、やられて、心持ってかれた。施設にやってきたよしのとあおいは管理人が不在のため、二人で楽しい時間をすごすが、それぞれ選んだのは、残ること、戻ること。それを分けたものはなんだったのか。描かれない部分にある消したい記憶の濃度によるのか。そして、国立なんだからせめて選択して記憶を消せればいいのになあと、ないものねだり。最後のシーンが二人それぞれの形でのハッピーエンドなのだと信じて。
「everyday,everywhere 」尚也さんが昔撮った風景写真に頃さんが撮影者尚也さんのイラストを入れていく合作。本来の意図からずれるかもだけど、なんだか自分のいなかったはずの相手の過去の記憶に入り込む、のを見ているようで楽しい。
「ひみつ絵日記」。楽しかったこともネガティブなことも描かれて、浄化の一端を垣間見させてもらっているような。そっとさりげなく温かい気持ちにさせてくれるおばけちゃんはマジ天使です。”ときどきなら世界を愛せる”Tシャツ、売ってたらほしいと思ってしまった。
「filaments」。ただ撮る人の視点にあわせて差し出されたものを眺める。ただ眺める。縁石に射す光も雪原の割れ目からのぞく流れも訴えかけてくるような草花の緑も。前作の「無題�機廚澆燭�きっと何度も見返す予感。
「かわいい僕の中二病 （ステッカー）」個人的にはこの構図、このポエムが一番しっくりきました。これください！どれですか？この、虹のかけらを…と読み上げ始めた時に、目の前で読み上げられるとはずかしいです、と言われたのを思い出し笑い。
2021.05.22読了分**************************
春のおとずれ編。特にウサギちゃんが好きな季節とのことで、季節も日々もいつくしむような4コマに目がいきました。うれしくても、かなしくても、目の端に涙がまるくたまるウサギちゃんとオバケちゃん。風邪なのにカレーをねだり否決されておふとんでメソっとしてたおばけちゃんが、ただよってきてカレーのかおりににこっとするとこ。ウサギちゃんが占い師さんにした相談が、だいこんがたくさんすぎて…で、回答がもらってあげましょうなとこ。寒くて、みんなでおしくらまんじゅうするつばめ通信社。春のひだまりでうたたねするウサギちゃん。といったあたりがこの巻では特に好きでした。ひとつ。肩こっていたというがオバケちゃんの肩はどこだ！（笑）と思っちゃいました。
2021.03.08読了分**************************
| 発売日 : |
あーちゃんとのんたん、仲良しなふたりの、お互い好きなものを認め合い、影響を与えつつの関係。あーちゃんがのんたんを見送ったあとの、この気持ちは、色で例えると、えーと、と好きなもの、きれいなもの、好きな人を思い浮かべているシーンが一番印象に残りました。今回も、宝物のなかに、おそらくsalonタレ目グッズのライターが入っていたり、のんたんの手紙の折り方が学生時代の一時期に見かけたものだなあと思い出したりで、気づいた人には刺さるアイテムも。/最後に、音楽好きののんたんに、あーちゃんが自分でセレクトしたCDを手渡すシーンで締めくくられるのもいいなあ、と思ったことに寄せて、個人的に。最初に入った会社の同期と、定期的に、おすすめのCD2〜3枚持ち寄って、貸しあっていた時期があったの思い出しました。自分では絶対にたどりつけなかった音源の数々は刺激的だったけど、いつしか"音楽性の違い"で続かなくなってしまいました…。その中の一曲、モダンチョキチョキズの新オバケのQ太郎とかは、今でもたまに聞きかえしたりします。
| 発売日 : |
最初に読み終わったときの感想は、コンクリートの灰色も、銀杏の黄色も、花の赤も、雲の白さも、みんな世界だ、といったもの。何度か見返すうちに。最初のページ、いきなり何が映っているかわからなかったのですが、中ほどのページに愛らしくたたずんでいた、ハムスターだったのでしょうか。もし、そうだとすると、生き物の死から始まり、それを弔うためのドライブ、埋めた場所…という想像を膨らませてみたり、それでも自然は移ろう、日々の生活は続いていく、ちょっと伸びかけの虹や、机の上のホチキスや、いまにも無くなりそうな溶けかけの雪のなかに最後まで刺さった葉や、美味しそうなパフェにも愛しさを感じてしまう、そういった感想に変わっていきました。見返すたびにまた変わっていくかもしれません。/前作「時間を残す」は、写真ごとの撮影日時とあとがきが付されていましたが、今回は、タイトルと写真のみ。全くの素材だけを見てくださいな状態。 無題�気蓮↓供↓掘弔搬海い討い�のか、前作とも共通する、焚き火？暖炉？の燃え盛る写真、紅葉の写真、浅漬けの写真は、より思い入れがある写真なのでしょうか、ということも、想像するだけにとどめておきます。/写真集、好きで、よく見るのだけど、正直、わかるとか読み解くとかいう境地にはほど遠く。好きとかきれいの先に、自分はこう感じたというのを載せるのがせいいっぱいで。今まで買った写真集でベストは、川内倫子「cui cui」、川島小鳥「BABY BABY」、奥山由之「Bacon Ice Cream」。自分にとっては、撮ってる人と撮られてる人の関係性が見えやすいと想像しやすいけれども、そうでなければ、数少ない自分の中にあるものをとっかかりに、眼の前の写真のどこかにフックを見つけて、自分の方に引き寄せる作業なのか、と思った。置かれたものを置かれたままで十分に解釈できれば、それはまたきっと楽しい世界。そう考えると、写真とはちょっと違うけれども、図像学の世界って、一枚の絵画とか彫刻とかから、さまざまな意味を読み取っていってすごい、と思ったところまで考えが広がっちゃいました。
2021.01.14読了分**************************
個人的には待ってました！のシリーズ第5巻。ケンカもするけどおずおずとでも照れながらでもちゃんと仲直りするオバケちゃんとウサギちゃん。美味しいものを一緒に食べれば幸せだし、幸せな二度寝を楽しんだり、あたたかな肉まんにいやされたり、一緒に冬の空を見上げてみたり。この巻で一番好きだったのは、ハッピーチョコミント。チョコミントがうりきれてたときも、それはそれでまあしあわせ、と結ばれてて、思わず、それはそれでしあわせなんだあ、と声に出してほほえましく思ってしまいました。あと、好きなライターコレクションに「今日は記憶ある」（サロンタレ目！）があったり、読むたびに泣く本が「Sunday Midnight Blue」(tamari mikaさんのzine。個人的にはこのzineのおかげで知らなかった素敵な曲に何曲も何曲も出会えました！)だったりして、あ！見つけた！て感じの愉しみもありました。
| 発売日 : |
「たねしわけ」さんが、鉄格子から外に蒔いた"悪い種"。思い思いに咲いた花は、個性的な美しさだったけれど…最後は…と。そこに花があったこと、そこに確かに「たねしわけ」さんがいたということを覚えてくれる人がいるということが救いに思えた。そして、ふと、思いつきのように蒔いたように見えたのは、バレてもいい、何か生きた証を残したいという、決然とした思いだったのだろうか、とぐるぐる考えてしまった。だいぶ前に、カズオ・イシグロ「わたしを離さないで」を、最近、魚豊「チ-地球の運動について」を、読んだ時の気持ちを思い出してしまった。
2021.1.1のtweetより*************************
2020.11.2のtweetより*************************
#nmtb20 感想その9。ぽやん舎。「時間を残す」。風景写真と月日時分のみのシンプルなつくり。季節の移り変わりを感じつつ。個人的には、静かでクールで、ページを閉じるとしんとした気持ちに。
posted at 21:11:48
#nmtb20 感想その8。ぽやん舎。ちゃも吉のぬいぐるみ。既刊のマンガはすべて買っていたので、今回はスタンプでも愛用してるちゃも吉のぬいぐるみを。ちなみに"ちゃもよし"と思いきや、このぬいぐるみは"ちゃもきち"だそうです。机の上に置くとかわいくて和み、たまにゆらすと鈴の音がして和みます。 pic.twitter.com/CktTiiKaLA
posted at 21:06:51
2020.09.17読了分**************************
おでこに×印ができて、周りにまじわれない、消えてなくなりたいと思うときもある佐藤さん。親切な本屋さんがくれたオーロラと透明の栞に心はずませ、電車で聞いている音楽、読んでいる本、何きいてるの？何よんでるの？から始まる出会いがあればな…と夢想しつつ。最後に出てくる友人らしき女性の明るさと屈託のなさと、佐藤さんの夢がかなったかのようなオススメの本を手に取るシーンであたたかい気持ちに。聞いてる音楽、読んでる本、観た映画、見かけた記事などなど誰かと分かち合いたい、という思いはよく抱くので、何聞いてるの？何読んでるの？からはじまる夢想には深くうなずきつつ。
2020.08.17読了分*************************
4コマと”聴きたい歌”の歌がいいなあ、と思った。ふぶきのなかまっしろしろ、とリンクした歌もいくつかあって、世界観の重なりを感じた。
オバケちゃんとウサギちゃんのほんわかした世界とはガラッと違い、前半は、ウサギちゃんの悩める時代のお話。国民、非国民、安楽死センター…と強めのワードで語られる、自己嫌悪と死の誘惑と回復のくり返し。そんなかででかけた好きなバンドのライブでのオバケちゃんとの出会い。意気投合し、仲良くなり、そして告白。わたし非国民だから…と告げても、それがどうしたの？と意に介さないオバケちゃん。そして結婚。それでも死にたくなる時もあったけど、結局はもどってきて、10歳の誕生日を迎えて、おだやかな日々が続く予感を残してfin. 別設定…というお話もあるけれども、これがオバケちゃんとウサギちゃんの1巻につながっていくのかなあ、と。もしそうなら前日譚として、そうでなければ、another storyとして心に留めておこうと思った。
待望の、シリーズ4巻。この巻で好きだったのは、春のおさんぽ。右上と左上に表示されているオバケちゃんとウサギちゃんの充電池が、ある春の一日、おさんぽしてるだけで、みるみる充電されていき、ベンチで一息つくころには満タンになって、ああ春っていいなああ、としみじみ思うところが。そして、聴きたいうたがあります。このテーマは、独立して一冊の本になるぐらい、共通するテーマなんだなあ、と。あと、すずめみるオバケちゃんをみるウサギちゃん…の4コマが愛にあふれていてよかった。うれしいときはいっしょに、元気ないときははげまし…といったオバケちゃんとウサギちゃんの関係性がいいなあと思えて。
2020.08.03読了分*************************
| 発売日 : |
しずかに、おなじような日々を繰り返すなかで、生きてる意味なんて・・・という思いがすこしずつ染み出してくる女の子。ちょっとしたことに喜びを見出そうとしたり。まぶしい朝に、自分では選べないランダム再生の音楽機器で、聴きたかったあの歌を聞けたときの、安堵感とかすかな希望と。/たんすのうえの熊のぬいぐるみが、そんなことないよ、とそっと言ってくれるところがやさしくて好きです。/ちょっと関係ないけど、個人的には、ランダム再生しかできない音楽機器は持ってないのだけど、車を運転してるときに、聴きたいところが終わって、曲を変えたいときによくもどかしさをかんじる…ことを思い出してしまった。
この巻で好きだったところ/オバケちゃんの勤務先は、編集長がまんまる三毛猫で、社長が蝶々なところ(おてんばなしっぽ)。/ウサギちゃんの実家で、オバケちゃんが初めてラムしゃぶというものを食べて喜ぶ姿、お肉を持ってくるお母さん、それをながめてるウサギちゃんが、みんなみんなただただ幸せそうな表情なところ（ハッピー！ハッピー！ハッピー！）/満腹でしあわせで、お腹をたたいておとを出してたウサギちゃんを、物陰からニコニコして見てたオバケちゃん（ひみつのはらつづみ）/2個入りものと6個入りのものをおたがいにシェアするときの、オバケちゃんとウサギちゃんの対比がほのぼのとしてて（あーぼくは雪見だいふくが大好きで）（きみをアイス）
この巻で好きだったところ/春菊入親子丼作るだけなんだけど、火の通りかけた春菊の色や、食べたときのほろ苦さ、オバケちゃんとウサギちゃんの幸せそうな顔が印象に（ハッピーどん）/きれいな虹をみたうさぎちゃんが、それを、おでんやさんの店員に伝えたり、仕事中のおばけちゃんに電話したり。一方おばけちゃんはめちゃくちゃ心配してたり、それでも同僚と会社の屋上で虹をながめたり、なお話。(山のあなたの空とおく)(虹をください)/(あたらしい朝が来た)は、O・ヘンリ的な手ざわり。お互い、相手が寝たらプレゼント用意しよう用意しよう…と思ったらねむりこんじゃって、ハッ朝だ、てところ。
シャンティブックスさんのtweetで、オバケちゃんとウサギちゃんスタンプ https://store.line.me/stickershop/product/12658388/ja?ref=gnsh_stickerDetail の存在を知り。スタンプ買ったらcuteすぎて、けど、スタンプで「どんば」「ちゃもー」て言ってるのなんでかわかんなくて、マンガも買っちゃいました。ただ、マンガを読んだだけではわからず、結局、作者御自らに「どんば→ドンマイがんばれが転じて、がんばらないでがんばれの意味です」「ちゃも〜！→勝ち誇ったときの声です」と教えていただき解決^^/1-3巻読了して。オバケちゃんもうさぎちゃんもお互いマイペースなとこありつつ、基本お互いいたわり合っていて、たのしむツボも似てて、読んでて本当にほっこりのんびりあたたかい気持ちになれました。オバケちゃんとウサギちゃん、同居の契機は謎ですが。番外編というか、別次元の話で「ふぶきのなか、まっしろしろ」というのがあるようなので、こちらもチェックしてみようかと。/読み返してみると、神社で、オバケちゃんとウサギちゃんが、一緒に暮らすようになって四年、みたいなのがあって、最初から一緒に暮らしてたんじゃなくて、どこかの時点で知り合って、仲良くなって、暮らし始めた、同棲カップルのメタファーなのだろうか、と少し思ったり。/一巻で気になったところ/まろころパーテーのまろころはどこかの銘菓なのだろうか…たべてみたい/オバケちゃんが、クレープに惹かれて、ひきずられていき、ソフトクリームに惹かれて、ひきずられていき、最後に、たい焼きに惹かれたとき、ウサギちゃんにようやく買ってもらえた流れ、好き/オバケちゃんの背中にお灸をすえて、ウサギちゃんが「オバ灸」と内心思っちゃうところ好き/ほしいものを聞いてくれるオバケちゃん、かわいいものを買っちゃうことにしたウサギちゃん、双方とも喜んでるコマのほのぼのさ。
2021年08月04日
2021年07月に読んだ本
0702・小島庸平 サラ金の歴史 中公新書 20210626
0703・ほしおさなえ 活版印刷三日月堂4 雲の日記帳 20210626 ...
0705・ナボコフの一ダース ブックハウスQ 20130420
(0705・魚豊 チ。地球の運動について4 kindle
(0705・イシュタルの娘 小野於通伝1 kindle
0706・井上靖原作 吉田剛・佐藤純彌シナリオ/シナリオ敦煌 徳間文庫 ブックハウスQ 20210705
0707・ヤマザキマリ 中野信子 生贄探し from実家
0708・ほしおさなえ 活版印刷三日月堂3 庭のアルバム 20210704
(0708・八木重吉 貧しき信徒 青空文庫 …活版印刷三日月堂つながり
0709・季刊 中南米マガジン vol.3 ブックハウスQ 20210705
0710・ほしおさなえ 活版印刷三日月堂5 空色の冊子 20210626
(0710・ヤマザキマリ とりみき プリニウス11 kindle
0711・ブレイディみかこ 女たちのポリティクス kindle 20210621
(0711・珈琲をしづかに 1 kindle
(0711・ゴールデンカムイ 26
(0711・桐谷さんちょっそれ食うんすか？！11
0712・開高健 オーパ！ らくだや 20210626
(0712・放課後さいころ倶楽部 19
(0713・大西巷一 乙女戦争外伝II 火を継ぐ者たち 下巻 kindle 20210710購入(20210712配信)
(0714・パリピ孔明 6 kindle
0715・藤田直哉 シン・エヴァンゲリオン論 河出新書 kindle 20210711
(0717・森泉岳士 アスリープ
(0717・トマトスープ ダンピアのおいしい冒険3
(0717・ミステリという勿れ9
0718・今福匡 「東国の雄」上杉景勝 角川新書 kindle 20210711
(0718・山川方夫 あるドライブ 青空文庫
(0718・しょうもないのうりょく2
(0718・七つ屋しのぶの宝石匣14
(0718・舞妓さんちのまかないさん17
0718・菅原敏 季節を脱いで二人は潜る
0718・鷹鳥屋明 私はアラブの王様たちとどのように付き合っているのか？ 星海社新書 20210717
(booklogなし0719・【再読】七つ屋しのぶの宝石匣1-2 kindle
(0720・刷ったもんだ 4 kindle 20210712購入・0720配信)
(0721・BlueGiantSupreme 9-11
(0721・BlueGiantExploler 1-2
(0721・キングダム 61-62
0722・【再読】火坂雅志 上杉かぶき衆 図書館
0722・村上春樹 柴田元幸 本当の翻訳の話をしよう 20210711
0722 Transit 20 美しきミャンマーの宝もの カルメル堂
0723 ・春風亭一之輔 まくらが来たりて笛を吹く 20210721
(0723・青に触れる 3 kindle 20210723
(0723・能條純一 昭和天皇物語 8 kindle 20210723
(0723・カレー沢薫 ひとりでしにたい3
0724・三島由紀夫 ラディゲの死 らくだや 20210626
0724・澤井繁男 錬金術 講談社現代新書 20210621 …ざっと
(0725・はしゃ ハクとはしゃぐ。20210616発行
0725・島田雅彦 そして、アンジュは眠りにつく ブックハウスQ 20210705
0727・メイキング・オブ・2001年宇宙の旅 図書館 …ざっと
0727・町山 智浩 <映画の見方>がわかる本 『2001年宇宙の旅』から『未知との遭遇』まで 映画秘宝COLLECTION 22 洋泉社 図書館
0727・巽孝之 「2001年宇宙の旅」講義 図書館 …ざっと
0728・A・C・クラーク 決定版 2001年宇宙の旅 ハヤカワSF文庫 図書館
0728・土屋耕司追悼画集ほろ酔い気分のススキノ・スケッチ散歩 すすきの文化側面史 1991年出版 …北天堂書店 20210723
0728・ヘミングウェイ 老人と海 青空文庫
0729・冬の旅 名曲喫茶「ウィーン」30年記念誌 図書館
(0730・((PDF))今澤 浩二 メフメト 2 世時代初期の宰相たち 人間文化研究 (14), 271-305, 2021-03-16
(0730・日日べんとう13
(0730・信長のシェフ24-28
0731・燃え殻 これはただの夏 20210731
(0731・panpanya 魚社会
0731・世界は村上春樹をどう読んだか ブックハウスQ 20210705
(booklogなし0731・【再読】豊田徹也 アンダーカレント
(booklogなし0731・【再読】豊田徹也 珈琲時間
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0703・ほしおさなえ 活版印刷三日月堂4 雲の日記帳 20210626 ...
0705・ナボコフの一ダース ブックハウスQ 20130420
(0705・魚豊 チ。地球の運動について4 kindle
(0705・イシュタルの娘 小野於通伝1 kindle
0706・井上靖原作 吉田剛・佐藤純彌シナリオ/シナリオ敦煌 徳間文庫 ブックハウスQ 20210705
0707・ヤマザキマリ 中野信子 生贄探し from実家
0708・ほしおさなえ 活版印刷三日月堂3 庭のアルバム 20210704
(0708・八木重吉 貧しき信徒 青空文庫 …活版印刷三日月堂つながり
0709・季刊 中南米マガジン vol.3 ブックハウスQ 20210705
0710・ほしおさなえ 活版印刷三日月堂5 空色の冊子 20210626
(0710・ヤマザキマリ とりみき プリニウス11 kindle
0711・ブレイディみかこ 女たちのポリティクス kindle 20210621
(0711・珈琲をしづかに 1 kindle
(0711・ゴールデンカムイ 26
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0712・開高健 オーパ！ らくだや 20210626
(0712・放課後さいころ倶楽部 19
(0713・大西巷一 乙女戦争外伝II 火を継ぐ者たち 下巻 kindle 20210710購入(20210712配信)
(0714・パリピ孔明 6 kindle
0715・藤田直哉 シン・エヴァンゲリオン論 河出新書 kindle 20210711
(0717・森泉岳士 アスリープ
(0717・トマトスープ ダンピアのおいしい冒険3
(0717・ミステリという勿れ9
0718・今福匡 「東国の雄」上杉景勝 角川新書 kindle 20210711
(0718・山川方夫 あるドライブ 青空文庫
(0718・しょうもないのうりょく2
(0718・七つ屋しのぶの宝石匣14
(0718・舞妓さんちのまかないさん17
0718・菅原敏 季節を脱いで二人は潜る
0718・鷹鳥屋明 私はアラブの王様たちとどのように付き合っているのか？ 星海社新書 20210717
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(0720・刷ったもんだ 4 kindle 20210712購入・0720配信)
(0721・BlueGiantSupreme 9-11
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0722・【再読】火坂雅志 上杉かぶき衆 図書館
0722・村上春樹 柴田元幸 本当の翻訳の話をしよう 20210711
0722 Transit 20 美しきミャンマーの宝もの カルメル堂
0723 ・春風亭一之輔 まくらが来たりて笛を吹く 20210721
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(0723・能條純一 昭和天皇物語 8 kindle 20210723
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0724・三島由紀夫 ラディゲの死 らくだや 20210626
0724・澤井繁男 錬金術 講談社現代新書 20210621 …ざっと
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0725・島田雅彦 そして、アンジュは眠りにつく ブックハウスQ 20210705
0727・メイキング・オブ・2001年宇宙の旅 図書館 …ざっと
0727・町山 智浩 <映画の見方>がわかる本 『2001年宇宙の旅』から『未知との遭遇』まで 映画秘宝COLLECTION 22 洋泉社 図書館
0727・巽孝之 「2001年宇宙の旅」講義 図書館 …ざっと
0728・A・C・クラーク 決定版 2001年宇宙の旅 ハヤカワSF文庫 図書館
0728・土屋耕司追悼画集ほろ酔い気分のススキノ・スケッチ散歩 すすきの文化側面史 1991年出版 …北天堂書店 20210723
0728・ヘミングウェイ 老人と海 青空文庫
0729・冬の旅 名曲喫茶「ウィーン」30年記念誌 図書館
(0730・((PDF))今澤 浩二 メフメト 2 世時代初期の宰相たち 人間文化研究 (14), 271-305, 2021-03-16
(0730・日日べんとう13
(0730・信長のシェフ24-28
0731・燃え殻 これはただの夏 20210731
(0731・panpanya 魚社会
0731・世界は村上春樹をどう読んだか ブックハウスQ 20210705
(booklogなし0731・【再読】豊田徹也 アンダーカレント
(booklogなし0731・【再読】豊田徹也 珈琲時間
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 | 中央公論新社 発売日 : 2021-02-20 |
金融技術＝Fintec とは何ぞや、という思いに、要は、与信管理、資金調達、回収なのでは、と回答を得た思い。それらの技術は、個人高利貸し、団地金融、その流れを組んだサラ金が、率先して商機をみつけ磨きをかけ、銀行などの金融機関は後を追っていった構図。どのような所に貸すか、与信を簡略化するためにはどうするか、どこから資金を調達するかといった話から、お金を貸すこと、お金を借りることが世間一般でどうとらえられていたのか、という意識の変遷、家計とジェンダーの関係の変遷まで読み取れて興味深かった。以下は手にとってみたい論文・書籍/立原正秋「白い罌粟」〜サラ金キラーを主人公に。/佐々木博光「論文評ユダヤ人高利貸像再考」史林 88(3) 2005年/中川量博 「サラ金」を踏み倒せ KKベストブックス 2006年/難波功士 社会学ウシジマくん 人文書院 3013
 | ポプラ社 発売日 : 2018-08-03 |
"星をつなぐ線"は、"星がつなぐ縁"、でもあった…悠生の会社の先輩のプラネタリウムに勤める女性の思いは、三日月堂も関わった活版印刷の星座早見表がキーとなり。大学のゼミ発表でのzineづくりが川越の木々と木々への人々の思いを浮かび上がらせ…三日月堂で刷られたzineが。そのzineの販売会場だった古書店「浮草」の店主が書いていたエッセイをまとめる話が、三日月堂の仕事を本造りへと一歩押しすすめること、そして”魔法”をかけて弓子と悠生の思いをむすびつけることに。この巻も、活版印刷をあいだにはさんで人々の思いがそっと背中を押され、人と人の縁がつながれ、世界がすこし広がっていく読後感。紙の本に対する深くて熱い思いも。//「本というのは、たくさん作って消費するものじゃない。みんなが同じものを繰り返し読んで、なにかを発見し続けていくものなんだ、って気づいたんだ」(p.179)/「それに、人は、はっきり説明できるような役割なんてなくても、生きていいんだよ、って言うんです」(p.238)//八木重吉「貧しき信徒」、山村暮鳥「雲」も手にとってみたくなった。
最近、ナボコフは文章の魔術師、というどこかで見かけた惹句にひかれて、挫折して本棚にさしてあったものをふたたび手に取り。自分のことを好きなはずだという女性とのお互い結婚した後もつかずはなれずの関係。自分と同姓同名の男がやらかしたことのとばっちりを受け続ける男。意に沿わぬ観光局主催の団体旅行に参加する羽目になり、鬱々と楽しまない中にも行った先が気に入り「ここに永住する」と告げると主催者や同行者に「そんな勝手は許さん」と散々殴りつけられる理不尽な目に合う男。精神を病んだ息子を見舞いに行くのに、どんな話題をしようかどんな本を持っていこうかと悩む夫婦。英雄として宇宙から帰還するも入院する羽目になった息子を見舞い気遣う両親。夭逝したはずの詩人が、後世、詩人を称える式典に、本人だといって乗り込み、主催者は相手にしないが観衆が大熱狂した話。めずらしき蝶を外国に見に行こうと何度も画策するもその度に何か出来して果たせず、人生の終盤にようやく果たせそうという時に死んでしまった男。小説として語れば語るほど、自らの記憶は変成され、うすれていってしまうといいつつ、幼少期に家政婦として教師としてかかわったマドモアゼルのことを語る一編。変幻自在、ときに、話を追えなくなることもあったけど、世の不条理や不可思議の数々を味あわせてくれたのも確か。/「これが名声というものだ、といっているんです」「調子のいい言葉を並べて下らない詩を二十篇も書けば、まるで何か人類の約に立つ事でもしたかのように名前があとまで残るんだ！」（「忘れられた詩人」）/人生とは結局、あとからあとから喜びを奪われてそれをあきらめることにすぎない（「合図と象徴」）/平和な幼年の日にぼくがもっとも深く愛した人や物や、それら心臓を射ぬかれたり灰燼に帰したりしたあとでようやく本当の価値がわかるもの--ぼくはそれを取り逃していたのではなかろうか？(「マドモアゼルO」)
 | 小学館 発売日 : 2021-06-30 |
知とはそれを使うに相応しいものが知ればよい、と考えるバデーニ。「自らが間違ってる可能性」を肯定する姿勢が学術とか研究には大切なんじゃないかと返すオクジー。非道徳的なことで溢れかえっている世の中を変えるために必要なのは「知」（バデーニ）、世界を今のままに保持する為に必要なものはなんだと思う？「血」だよ。（ノヴァク）。二つの対比があざやかで。研究の末に、自らの名で発表できる段階まで地動説を極めたと思ったバデーニと、共に行動するオクジーのもとに延びる異端審問官ノヴァクの魔手。といったところまで。
 | 講談社 発売日 : 2010-08-11 |
信長に仕える武士の娘として生まれた小野於通。人々の背後の守神を見ることができるが、長じてそれを口に出すことはなくなり。信長に興味深い娘と見いだされるが、本能寺の変が起き、父兄を失い、母も亡くなり、手を差し伸べてくれた九条稙通に弟子入りして教養を武器に、公家社会に足がかりを築くところまで。近衛信尹、細川幽斎、真田信之、真田幸村といったのちのちまで出てきそうなキャラも一巻から勢揃いで。「調度も着物も茶碗も…美とはまことにむだと思えるものの中に存在いたします。於通はそのむだをあえていたす人の心がすばらしいと思うのです。そしていつか…なろうことなら、於通も自分の手でこのような美しきものを」/池波正太郎「真田太平記」の最終盤で出てきて、2、3冊関連書籍を読んだことがあった於通に関連して、こんな作品があったとは、と今更ながら知り手にとった次第。
 | 講談社 発売日 : 2021-04-22 |
さまざまに語られる息苦しさは、”世間体”という、具体的なかたちになっていないだけの民意による強烈な統制力と、その時々の流動的な倫理によって形成される正義感によって、思想や行動の自由が容赦なく規制された、窮屈な環境のなかに置かれているとも言えるのです。(p.173)という一文に凝縮され得る。メリットもデメリットも十分に語られた上に。そして、ありきたりにも思えるけれど、処方箋のひとつは、"私がおすすめするのは、どこか広く視野が開けた、なるべくなら都市部よりも自然の多い場所まで出向いて、地球とそこに生きる自分のつながりをシンプルに感じることです。"(p.200)といったところだろうか。正直、○○人だから、イタリアや中東では、ローマでは、東大男は…などの一般化がどこまで有効かは疑問な点もあり。/トピックスとしては、魔女狩りの地域差、釈尊が苦行を中断して中庸を志しスジャータの粥を食べた、エリアス・カネッティ「群衆と権力」、長澤英俊の彫刻、といったあたりがもう少し掘り下げてみたく。
 | 徳間書店 発売日 : |
子供のころに父に連れられ見に行った映画。原作も読んだけど、違うところもけっこうあるので、各場面のスチールとともにシナリオで振り替えれるのは貴重。ウイグルの王女とのくだり、記憶してたのよりけっこう長めにとられてたんだなあという思い。西夏の描き方は、文明に憧れるも冷酷で傲慢で野蛮。研究がすすんだ今ならそうは描かれないかなあ、と思いつつ。何者かでありたいと科挙を目指し、挫折し、西夏の文字と文化を極めたいとイルガイ（興慶）へ向かうが、捕らえられ西夏の漢人部隊兵士とされ、その後文字を仕えるものとしてイルガイへ派遣され、最後は、西夏軍のイルガイ侵攻時に貴重な経典の数々を莫高窟に埋蔵する役割を果たし…と。己を何者かであると示したいという若々しい欲望と、文化への憧れ、まっすぐな行動力が描かれた映画だったんだな、と。/阿銘「人が己を苦しめるのではない。己の心が己を苦しめるのだ」/行徳「言葉に優劣はありません」元昊「そうだ。優劣はない。それだけのことだ。西夏が宋を征服すれば、宋の人間は、争って皆西夏の言葉を学ぶようになる。そして西夏の文字もな！」
 | ポプラ社 発売日 : 2017-12-05 |
”自分が印刷に願うのはそういうものだ”…旅行雑誌めぐりんへの三日月堂の掲載→それを見た弓子の亡き母のサークル仲間が、弓子へ会いに来て母の生きていたときの話をきかせてくれ、母の短歌を三日月堂で活版印刷し大学時代のサークル仲間へ配布→それを受け取ったサークル仲間の娘の楓が活版印刷に興味を持ち→楓も参加した活版印刷イベントで弓子は盛岡の印刷会社で働く悠生とその大叔父と出会い、彼らにとって思い入れのある八木重吉の詩集を活版で組む。今回も活版印刷の呼ぶ縁でつながりがつながりを読んで、人生に惑い、もやもやしたものをかかえ、何をしたらいいかわかってなかった人たちの背中を、弓子や活版印刷がそっと押して、それがまたつながっていく様が描かれていて、読んでいて暖かい気持ちになれる。/弓子「でも、わたしは…」「たぶん、本を作りたいんだと思います」/悠生「亡くなる少し前、あの版を見ながら祖父は言っていました。この人の言葉に、この人と華族がこの世界にいたことに、いつも心打たれる。いつまでも残しておきたいと思う。自分が印刷に願うのはそういうものだ、って」/八木重吉の詩集「貧しき信徒」、詩「虫」「雨」「悲しみ」「ふるさとの川」「夜」「雨の日」「冬」「踊」、読んでみたくなる。
 | 小学館 発売日 : 2021-07-09 |
入れ替わる双子の話、完結編。親や親戚ですらときに見分けられなくなるくらい入れ替わる双子、なぜ入れ替わらなければいけないか、それをどう整が見抜くのか…と。「老人の海」、年取ってから読むとまた違った味わい、というのは試してみたくなる。
 | ポプラ社 発売日 : 2019-12-05 |
活版印刷三日月堂の前日譚をあつめたもの。語り手は、雑誌ウェスタンに西部劇エッセイを書いてたライター。弓子の父。弓子の祖母。弓子の母カナコの大学時代の友人裕美。三日月堂の先代の取引先の和紙屋。三日月堂の先代である弓子の祖父。弓子が三日月堂に引っ越す前夜にやってきた大学生時代の友人。弓子やその母カナコも、語り手とはなっていないが、まわりの人の目から描かれ、弓子の三日月堂の物語が始まる前のことに触れられてうれしい一冊。/「いっしょに探しにいくことがほんとうのさいわいなんじゃないか、って」（カナコ）/「たまにはいいよ。人には優しくされた記憶が必要だ」（三日月堂の先代）/「正しさとは誰かにとっての正しさであって、ほかの人にとってそれが正しいとは限らない」（裕美）
 | 新教出版社 発売日 : |
ほしおさなえ活版印刷三日月堂シリーズつながりで。シンプルで素朴でいて、味わいがあっていいなあとあらためて思う。
 | 新潮社 発売日 : 2021-07-08 |
故郷でのプリニウスの幼少期、ローマに出てきてからの青年期が描かれる一巻。急に舞台となる時代が巻き戻り若干戸惑うも、山谷で自然に触れ興味を抱く幼少期、生真面目に世の成り立ちや珍しきものにのめり込み過ぎて、恋に敗れ、ゲルマニアの戦地に向かい、騎馬隊長として活躍、といったところまで。いよいよ終幕へ、と巻末にあったので、きっと次からは怒涛の展開。
 | 幻冬舎 発売日 : 2021-05-26 |
フィンランドで30代で政権についたサンナ・マリン首相について知りたくて手に取る。なかなか一筋縄ではいかない生育環境でも問題意識を持って奮闘すれば上り詰められ、そして女性党首たちと連合を組んで、先進的な政策を実施。日本ではいつのことやら…と思いつつも、フィンランド手放し礼賛ではなく、影の部分にもきちんとふれ。他に、ドイツのメルケル、イギリスのメイ、フランスのマリーヌ・ルペン、スコットランドのスタージョン、ニュージーランドのアーダーン、日本の小池百合子など。今後注目したいのは、アメリカのオカシオコルテスかな。メルケルのたとえ自分を引き立ててくれて目をかけてくれた政治上の恩師だろうと、言いべきことは言い、切るときはバッサリ切り捨てる冷徹さ、ついには殺害にまでいたったイギリスで女性議員に対して高い割合で発生する脅迫・嫌がらせへの対応といったあたりが気になり。
 | 講談社 発売日 : 2019-10-23 |
近所のしばらくやってなかったカフェに、訳ありそうな愁い顔の年上の女性がマスターとしてやってきて、好きになってしまった純朴な高校生…といった設定。まっすぐさと自意識の板挟みでもだえる高校生。彼女の過去をすこしずつうかがったり、年上でやさしくてかっこいい実兄との関係が気になったり…と。オーソドックスといえばオーソドックスだけど、どう展開していくのか気になり。
 | 集英社 発売日 : 2021-06-18 |
切り裂きジャック掃討は成り、上エ地の刺青人皮についての渾身の嫌がらせは不発に終わり、ただその内容は争奪戦を一掃熾烈にする予兆となり。最後はアシリパ争奪戦。杉元の手をすり抜けて確保されたアシリパは…と。
 | 双葉社 発売日 : 2021-06-28 |
今回はまず、サメ！個人的には臭みと酸っぱさがあるほうのを食べてみたい。そして残業してたら、羊の脳味噌カレー届けてくれるなんてなんて素晴らしい人たちなんでしょ。その昔出張の合間に新宿に羊の脳味噌カレー食べに行った身としては特に。最後の、世にも奇妙な食べ物語。こんな経緯でキビヤック食べれるなんてうらやましすぎる。「もやしもん」で読んでから憧れの一品。他に、虫料理苦手だけど憧れてる子のために、混ぜ込んで料理したり、桐谷兄からの料理教室ビデオで、会話に直接の名前は出てこないけどどう考えても「ゴールデンカムイ 」と勝手にコラボでしょ！てシーンに思わずニヤリとしたり。
 | 集英社 発売日 : 1981-03-20 |
名前だけは知っていたが一度は読んでみたかった著者の代表作。死の三年前に書かれたとは知らなかった。舌なめずりせんばかりの心で、雄大なる自然に飛び込んでいき、さまざまに考察しつつこだわりを見せつつも、存分に転げ回り、のたうって、楽しんでいる感。抜けた歯が新しく生えてこない老齢のピラーニャの悲哀。何を塗っても効かないダニが満足したとみるやサッと去っていく去り際。現地の住民を怠惰の芸術家だと讃嘆。釣りの史前的豪奢。極貧のはずの人々の淡々と鷹揚なところ。海水魚が淡水に棲み、ポロロッカで海から上流へ逆流する、アマゾン河の不思議。といったあたりが印象に。黄金色のドラドをつりあげて、どうだといわんばかりの笑みを浮かべる著者の写真が印象的。現地のものとして、アサイーが紹介されていて、まさか何十年後かの日本で、一瞬の嵐のように流行するとはこのときは思わざりしだろうなあ、と。
 | 小学館 発売日 : 2021-07-12 |
完結。みながみな、思い悩んで末にそれぞれの進路を決め。飛び出していくもの、待つものさまざまに。けど、また集まることもあるよと思わせるような。このメンバーのためだけに作ったオーダーメイドのボードゲームを遊ぶ至福と贅沢がきらきらとまぶしかった。
 | 双葉社 発売日 : 2021-07-12 |
コンスタンティノープルの陥落から、オトゥルクベリの戦いまでのオスマン帝国、同時代のハンガリーが描かれ。当時の諸勢力は融通無碍、情勢を見て、あるいはやむを得ず、所属先を変えていく印象。火力重視への移行も描かれ。最後はフス派のワゴンブルク戦術がその有効さのため、オスマン帝国でも採用され、白羊朝、マムルーク朝、サファヴィー朝を倒すのに一役買い、ついには、アフガン、インドまで到達した、と語られて締め括られる。オスマン帝国好きとしては見逃せず手に取ったが、マーチャーシュ王時代のハンガリーについても知りたくなった。
中南米マガジンを推してくれた女性、雑誌ができるまでの経緯・苦労・決算、中南米旅行記、B級映画紹介などなども面白かったが、後半の、ゲバラブームへ一石投じるエッセイ、書評、音楽評のほうにどちらかといえば心ひかれ。パコ・イグナシオ・タイボ二世「三つの迷宮」「影のドミノ・ゲーム」読んでみたい。tex-mexという音楽ジャンルも気になる。デスカルガ・ニューヨーク「ベサメ・ムーチョ」、比屋定篤子 のすたるじあ、LO MEJOR DE DIAMANTES、V.A SALSA MUNDOあたりは手にとってみたく。
 | 講談社 発売日 : 2021-07-14 |
母と娘の話は舞台を京都へ移し。祖母の町内をあげての演芸大会にまきこまれる英子と孔明。そこで大昔の父と母の姿を知り、また磨いた自信の楽曲で認めてもらおうと奮闘。その裏で孔明は策を練り…と。さあ舞台は整いいざ、というところまで。舞妓さんが闊歩する街で、孔明違和感なし、の一幕が好き。
 | 青土社 発売日 : 2021-07-13 |
架空の近未来。世界の週末。かつての首都に一人取り残された女性。夜よ私の未来はどこだ。選択肢は無数。物質が崩壊しても本質は残る。最期に一瞬立ち会えた存在。滅びるのではない、ただ眠るだけなのだ、それを起こせるものは…。希望を感じさせるラストでした。
 | イースト・プレス 発売日 : 2021-07-17 |
リングローズとの別離と再会。ダンピアとリングローズの、未知の南方大陸を目指す旅立ちと直後の挫折。船団によるプラタ船略奪の試みと挫折。最後は、両船長による、リマ突撃か東インド航路かの岐路。ダンピアとリングローズの進路やいかに。ホタテをすましバターで煮た鍋料理、アボカドや南海のフルーツたち、普及し始めた砂糖菓子。食の面でも楽しませてくれる。
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-07-09 |
総じて、剛毅なエピソードは軍記物に多く、強いていえば、関ケ原の敗戦後の処遇について「今度、会津を転じて米沢へ移る。武命の衰運、今においては驚くべきにあらず」という趣旨のことばを吐いたシーンがしびれた。とりあげられた書状やエピソードからは、細かいことにこだわる神経質で生真面目な一面が感じられ、徹底的に社交が苦手だったとも感じられた。関ヶ原に至る過程でスケープゴートにされたのも、社交下手ゆえ味方してくれるものが少なく、政治的敗北に至った感あり。そうはいっても、ただひ弱い訳ではなく、御館の乱で君主の座をとりにいく過程、織田家の侵攻、関ケ原の敗北と二度の滅亡の縁から上杉家を生き延びさせた手腕、果断な面もあったことは忘れてはならない。直江兼続をはじめとして配下にも多くの人を得たところ、凡なる存在では率いていけなかっただろう。第五章は、年取ってできた嫡男への厳しさと愛情を兼ね備えた書状、徳川政権下でどう生き延びていくかという苦闘が描かれており、御館の乱、関ケ原以外で語られることの少ない景勝像が得られて個人的に収穫でした。
 | 星海社 発売日 : 2021-06-25 |
アラブの民族衣装を来てSNS上でアラブ文化・日本文化を紹介しまくる日本人…といった観点で、アラブ圏のさまざまな人から興味を持たれた著者が体験した話を中心に。導入からぶっとんでて、ページをめくる手が止められず。いきなりサウジの王族の下で仕事している起業家のラッパーを名乗る男からメールが来て、彼のボスのいるモロッコに招かれて遊びにいく、という出だし。その後も次から次へと出てくるエピソードでもわかるように、よくもわるくもノリ。腰軽く、それいいね、とノリでのっかっていけば、見たこともない文化にふれられ、世界がひらけていく、と。もちろん著者のベースあってこそだけど（大学で学んだ歴史学や、アニメ・ゲームの世界への没頭）。1000人のアラブ人を前にアラビア語でスピーチとかおそれいる。クウェートで日本式のカレーを教えてください！と料理人に頼み込んだり。/ただ、現実もしっかりと語ってくれ、アラブの王様がオイルマネーでどかんと買い物してくれるから企業進出してウハウハとか、そんなのはただの夢、気を抜くとただアジアの出身というだけでこんな目にも…みたいな話も。/UFOロボグレンダイザーの主題歌、日ア合同制作のアニメ「ジャーニー」なんかは触れてみたいと思った。”中東女子たちと記念撮影”とキャプションのある一枚の写真に、漫画「サトコとナダ」を思い出しました。
| 青空文庫 発売日 : 2021-06-16 |
遠い昔に教科書で読んだ「夏の葬列」の印象が強くて、ときに思い返して手に取りたくなる山川方夫。妻の自分の友人との不倫をかぎつけてそれを祕めていた夫が、ドライブの最中に詰問をはじめ、最後は…と。誰も悪くないだなんていわせない、結果としては救われるはずが、誰にも言い開きのできない状況に落とし込まれ、苦い結末。
 | 竹書房 発売日 : 2021-06-28 |
ちょっとした異能を人々が生まれつき持っている世界でのお仕事コメディ。そこに今回は、相反する異能の対決が見られたり、偽のより見栄えの良い異能が有るかのように吹き込むセミナーが出てきたり、主人公に恋する不老不死の同僚がようやく告白したら、思ってた展開とちょっと違うけど、結果オーライな話が見られたり、と。このままゆるゆると続いてほしいなあ。
 | 講談社 発売日 : 2021-07-13 |
だいーぶ点と点がつながったきた感あり。もう少しで顕定の家族と赤いダイヤの謎が解かれるか…と。やりたくないことはやらないけど、やりたいことは死んでもやりたい…がすごく見抜かれてたシーン、偽装しのぶに顕定がしてやられたシーンが好き。
 | 小学館 発売日 : 2021-07-12 |
すみれとキヨが、内心お互いを、すごい人だ、と思って一話。舞妓として奨励賞をもらったすみれ。気遣いと料理で元気のない舞妓を元気にしてしまうキヨ。そして、すみれを百花として、妹分としてかわいがってくれる百子の、喫茶店での攻め込み振り、かわいがりぶりの様子が印象に。最後は、百子が健太の店に忘れたスマホが三人のチームプレーで、手元に戻る、お互いがお互いを心強く感じる一話があたたかくてよかった。
 | 雷鳥社 発売日 : 2021-07-01 |
日々の暮らしのなかを移ろいゆく季節を。少しずつ切り取って差し出してくれる。ザアザアと雨が降るせいでところどころ聞こえないのを想像で補う楽しみ。相手ごと押し花にして思い出を閉じ込めたいという思い。バスタブで聞く音楽。
 | 講談社 発売日 : 2021-07-20 |
コミケでのてんやわんやから、新人の失敗へのフォロー編ひとまく、卒業アルバムへの保護者からのクレームに一番の特効薬は現場を知ってもらうこと、そして、真白の過去の苦い思い出、デザインの道に進むきっかけをくれた旧友との再会は…といったところまで。この巻も印刷会社のお仕事あるある、印刷の知識をわかりやすく提示がもりこまれつつ、たのしげな職場の雰囲気、たいへんなところもあまさず織り込んで、真白のまっすぐさでよませてくれる。
 | 小学館サービス 発売日 : 2019-10-30 |
初レコーディング！からの、ダイが自他ともに頭ひとつ抜けてきたことを自覚し、周囲も気付き、もっと高みを目指そうと。そして、おおきなロックフェスに招聘され。
 | 小学館サービス 発売日 : 2020-02-28 |
事前の軋轢や緊張もなんのその。ロックフェスの大観衆を虜にし、世界的バンドのボーカルも虜に。ベルギーから駆けつけてくれたファンとのやりとりは胸熱。そのビッグサプライズな申し出を切り返したり。そして、ラファやハンナの休日、ダイとアーニーのドライブなど。
 | 小学館 発売日 : 2020-10-30 |
ヨーロッパ最大級のジャズフェスへの出演が決まり、しかしダイには言い出せない思いが…解散。そのステージが、最高のものとなり、演奏するだけで音で会話し合う話の通じる四人のシーンを見てると読んでる方も熱くなる。そして、ダイのメンバー紹介、ら素晴らしかった。ヨーロッパ編完結。
 | 小学館 発売日 : 2020-10-30 |
アメリカ編のスタート。入りはまさかの、本場東海岸ではなく、西海岸シアトル。自動車修理工場に職を見つけ、街のステージに立ち…と。貪欲に全てのジャズを見たいから、と。ステージに誘ってくれた同僚に、傲慢でなんて力強くて残酷なんだ、と慨嘆させるプレー。罵倒と称賛の入り乱れる中で自分の音を出し切り。
 | 小学館 発売日 : 2021-02-26 |
アメリカ二つ目の町はポートランド。肩の力を抜いて穏やかに今を肯定する人々に触れ、またジャズがほとんど聞かれてないことに触れて。自分からちいさなラジオ局に売り込んで、自分の名前でライブを開くが、やはり次へ、次へと。コーヒーショップの女性とのデートとダイアローグが、全く違う二人の、だからこその親密な時間を感じられて。
 | 集英社 発売日 : 2021-07-16 |
61-62巻読了 什虎戦の勝利。羌瘣の命を狙いに来た後輩と和解。秦の六大将軍制度の復活。趙侵攻戦の苦戦。恒騎の命令で死地に立たされた王賁と同じ戦場に投入された信たち、といったところまで。
 | 実業之日本社 発売日 : 2011-10-05 |
(2021.07.22読了)前田慶次郎、大国実頼、上杉三郎景虎、甲斐御料人、上泉泰綱、本多政重、水原親憲。上杉家にまつまる人々を主人公とした連作短編。今福匡「上杉景勝」角川新書を読んだのを機に再読。最新の研究と作中の、北の関ケ原で、革籠原での決戦を目論む、情報戦でも伊達・最上より優れていた、大減封をされても一人も解雇しなかった、などを比較しつつも。ベースは、上杉謙信、上杉景勝、直江兼続に「漢」として惚れ込みどこまでも殉じたいという思いをもった武士たちの思い、弱肉強食、利にばかり転ぶ輩多き世で、上杉家こそは仕えるに足る家、という思いが描かれている。その中で、直江兼続のネガとしての弟実頼、敵国武田から嫁いできた甲斐御料人は、それらの思いを逆側から照らしたストーリーとなり。手放しの礼賛だけではなく、その弱きところ、容れられぬものからの目線も織り交ぜられている。(2011/10/15読了)上杉謙信の、上杉景勝の、直江兼続の、義に、漢ぶりに引かれ、引き寄せられた、男女の物語。初陣で命を助けられ、あまつさえ命惜しみしないことをほめられて以降上杉家に殉じようとする水原親憲。真面目で兄をまぶしく思いつつ、自分の居場所を見つけたと思いきや、最後は兄の心弟知らずに、出奔した兼続の弟、大国実頼。実家が滅びても、義をもってそなたを守るといわれ居場所を見出せた甲斐御料人。最後は意気に感じて殿軍を助けて切り死にした剣豪の孫・上泉泰綱。花の慶次こと前田慶次郎が、残してきたはずの娘が現れ、その身勝手振りを責められおろそろする様などなかなか見れない、と思いつつ。変わりどころは、兼続が実施を廃嫡して養子にとった本多政重か。徳川の密偵として、諸家を渡り歩き、疑うことだけ覚えたけれども、兼続の娘の誠実さに打たれ、変わっていく様が印象的。通説どっぷりでオールドファッションと言えばオールドファッションな歴史小説。けれども、すがすがしいまでに、義を貫き、死に様を飾ることを是とする空気が、現代には持ちえなく、まぶしく見えて、人口に膾炙するのだろう、と思った。
 | 新潮社 発売日 : 2021-06-24 |
翻訳の話だけれど、小説論にもつながっていて。そのつながっているところが個人的には興味深く、面白く読んだ。あと、”村上 文法、好きですよね、前置詞とか（笑）。 柴田 そう、すみません（笑）。(p.503)”には、二人のあいだで何があったんだろう…村上氏翻訳を柴田氏チェックする！て時に、前置詞ばっかり20連続くらいでなおされたことあったよね、みたいのがふたりのあいだに浮かんだんだろうか、ふふふ、と思った。/小説って、何かを五つ書いて、三つが効いていれば、あとの二つは外れててもいいんですよ。力さえあれば。(p.83)/小説っていうのは描写と会話を織り交ぜていくものなんですよね(p.95)/訳し比べ。面白い。特に「プレイバック」。/読み飛ばしていくスペースがないと、小説って落ち着かないんですよ。(p.96)/モラリティをもってしないと描ききれない非モラルな状況があります。アイロニーをもってしか語れない幸福や安寧があり、ユーモアと優しさをもってしか語れない絶望や暗転がある。僕はそう思っていつも小説を書いています。(p.405)/現実的なことをいえば、僕が翻訳するときに一番気をつけているのは、同じ文章を二度読ませないっていうことなんですよね(p.492)
 | 講談社 発売日 : 2013-03-08 |
アウン・サン・スー・チーの簡潔にまとめられた来し方行く末がよかった。ちょうど民主化の道が緒についた頃の発刊で、街の人々のスナップにもこれからの期待に胸ふくらみ、すこしずつ自由を謳歌しはじめていることが感じられる。それまでの目上に絶対服従で、女性はめったに酒を口にしないみたいな慣習もすこしずつ、と。アメリカ人男性とミャンマー人女性のカップルの1ページもののストーリーとかほっとする一幕も。だからこそ、いまの暗転と対比されて、いまはどうなっているのだろうかという思い。
 | 河出書房新社 発売日 : 2021-06-26 |
庵野秀明の作品、インタビュー、それにまつわるテキストを広く渉猟して引用してくれてるところは○。その社会背景の解説も○。それをやった上での、この作品のここの部分は、こういうメッセージがこめられている！という熱い論じ方は、読み手としては賛否半ばするところ。なるほどそういう解釈もできるのか、面白い、とうならされるところも。ラブ＆ポップ、式日など、作品づくりのターニングポイントとなったと論ずる実写映画には、手をのばしてみたくなった。ただ、自分語りに引き寄せた論じ方はどうかと思った。若い頃はめちゃめちゃやってなんじゃこりゃと思ったけど、俺も中年になって年とって妻や子供ができたらわかるようになった、って、なんじゃそりゃ。それを差し引いても、肯定的なメッセージだなとは思った。
 | 小学館 発売日 : 2021-05-28 |
不誠実な報告をしてきた田中義一総理の事実上の罷免、鈴木貫太郎の侍従長就任。そして、さらなる関東軍の暴走。立憲君主として本来出してはならない政治への介入を一度行い、悔いたために、さらなる機会に介入できず…という構図が。それにしても中央の意向を無視する出先軍。天皇直属ゆえ我正義なりという考えだったのだろうか。
 | 双葉社 発売日 : 2020-12-10 |
相貌失認の担任教師と先天的に顔にあざのある女子生徒。お互いがお互いの置かれた日常を知ることで、さらに距離が縮まり。それぞれに想いを寄せる存在も描きつつ、それでも二人は…というところまで。
 | 講談社 発売日 : 2021-07-20 |
母の熟年離婚希望に、あれこれ調べつつ、同じ趣味にハマってみて距離感縮めつつ、会社の同僚と二人で説得に乗り出す鳴海。最終的には次の話に行ってしまうという母のなんとも剛腕なありようがまた。その過程で、老後、家族について普段考えてない対話をこれでもかと見せてくれる。
 | 新潮社 発売日 : |
「芸術の顔 三島由紀夫」というアンソロジーで、「旅の墓碑銘」からの「旅人はもまた泥棒みたいなものさ」「一分のちに、無縁の人間になれるとわかると、僕たちは安心して友だちになり、相手の中へずかずかと入ってゆき、そこから全部を失敬して引き上げる。世界中に友人を作るのは易々たるものだね」をはじめ、いくつもの言葉が気にかかり、一冊読んでみたくなった次第。/尊敬は一種の不換紙幣で、どこにも黄金の感情はないのだ(大臣)/生活するためには生活を犠牲にすればよろしい(魔群の通過)/神を見た人間は、視力の極地まで、人間能力の極地まで行ってかえって来る(ラディゲの死)/幸福な状態は、幸福について考えるのに適していない(施餓鬼船)/電車に惹かれて首をはねられた恋人たちのイメージ、箱根の芸妓との恋におぼれた真面目一徹の丁稚が、東京に戻るとともに音信を絶たれただただ虚しい思いをかかえるシーン、部下に戦犯の罪を押し付けてその父からの復讐におびえる一家、蕩児の放埒をむしろ褒め称えこれぞ男だと甘やかしつけあがらせる祖母...など。
 | 講談社 発売日 : |
ざっとの読了。途中目が文を追ってくれず。興味をもって手にとったのに、個人的にははごたえ。/「すべて（全）」と「一」の原理は錬金術の基本原理。対立物の一致と物質の相互変換の理論を確定するもの。/唯一者の軌跡の成就に当たりては、下なるものは上なるものの如く、上なるものは下なるものの如し/万物が一者より来り存するが如く、万物はこの唯一者より変容によりて生ぜしなり。/現代では、日野啓三「石の花」（「夢を走る」中公文庫）が錬金術の文学といえよう
 | 新潮社 発売日 : |
少年時代の友人たちの茶の間から、日本中、ひいては世界中の茶の間にお邪魔するのを生きがいとした人のストーリー「茶の間を旅して」をぱらりと見て気に入り、手にとった一冊。「神は不合理だから祈るしかないのよ」「私は糞で作った茶の間で、糞の接待を受けたのだった」/殺す覚悟で強く関係を求める女性から、いのちからがら逃げ出す「イヴの植民地」。元テロリストの息子と承知の上で買ってくれた、帝国を支配する”元帥の妻”、その日々を描く「ばらの騎士」。「後悔しても空しいだけなのについ考えてしまうものなのよ。もしもあの時そうしていなければって」/明智光秀と名乗るサラリーマンが、徳川という取引先、豊臣というやり手の同僚、マクベスばりの魔女に翻弄されつつ、最後は破滅的な道行き、「カタストロフの理論」。などなど。
| 発売日 : |
はしゃさんのもとへやってきた保護猫ハク。初手からまるで自分のうちかのように猫用トイレで用を足し。警戒心のない人懐こさと気遣いを見せるかしこさ。ふとんにもぐりこんでくるときの愛らしさ。読んでるこちらまで深い愛情がつたわってくる一冊。
 | ソニーマガジンズ 発売日 : |
ざっと読了。写真にキャプションがついて、このシーンはこんな風に撮ったみたいなところや、映画のなかの語録などは興味深く。
 | 平凡社 発売日 : 2001-05-01 |
ざっと読了。個人的に読みたかった、映画の内容に即した解説よりかは、その背景に重点が置かれているように感じ、食い足りず。
 | 洋泉社 発売日 : 2002-08-01 |
「2001年宇宙の旅」はツァラトゥストラだ！ナレーターありきの映画を完成後にナレーター取り除いたらそりゃわかりづらい。観客の神秘体験をそこねないために、そうした、と。小説版の販売許可も遅らせて。すべてを映像に語らせるために、と。映画を見ただけではわからない、関連書籍や証言などを集めて解析されていて納得度高し。他に、「時計じかけのオレンジ」「地獄の黙示録」についても読んだ。キューブリック監督、原作はあくまで下敷きで、自分の直感でどんどん映画のなかでは改変していく度合いの高い監督だなという感想。
 | 朝日新聞出版 発売日 : 2021-01-20 |
毒を効かせたまくらから、家族で盛り上がるあたたかいネタ、自虐的なネタ、ちょっとうまいこと言ってるような下品なネタまでとりそろえて。ユビキリマンゲンコをする今はなき夜の接待をともなうお店が大好きだったSさん。東京漫才のすず風にゃん子・金魚コンビの紹介。"私は中座してトイレへ。早くも「アウトプット」完了"。"辺り一面、ガールズ＆チョコレート。茶褐色と化粧の匂いによって視覚と嗅覚を刺激され便意が「ゴディバーッ！」と膨れあがる"。娘の書き初めの課題に熱くなる父と、やりぬいた娘。顔に墨をつけて抱き合って喜び合う父娘。どうやら我が家ではノンフライヤーのことを「うちのお父さん」と呼ぶことに決めたらしい。「白米にペヤングをかけて食べる背徳感最高！」。といったあたりが個人的には好きでした。ちょっとうつりに行けよ、はなかなか出せるネタでないかと。
古書店でふと目に止まり買った一冊。味のあるイラストを、間近ではなく、すこし離してながめると、すすきのの雰囲気が伝わってくるような心地。自分が生まれる前のすすきのも描かれており、こういう雰囲気だったのかな、と想像したりするのもまた楽しい。特によかったのは、大半はいまはなき店の店内の雰囲気がさらりと描かれていて、それを味わうことができること。おでんの小春など、わずかながらもまだ通える店もあるのだけれど。のんびりと眺めて、いくばくか散策した気分にひたれる一冊。
映画館で「2001年宇宙の旅」を見て、関連書籍を三冊読んだあとに、手に取り、HALとボーマンの対決から、最後までをつまみながら読み。だいたい知りたいこと-あれはなんだったのだろうか...と思った点-は知ることができた思い。ただ、小説だけ読んでも、わかった気になれたかというと微妙。映画、関連書籍と通ってからだからすっと入ってきた思い。なぜHALが反乱を、なぜ木星探査にむかわねばならなかったか、ボーマンがくぐったスターゲートは何で、なぜボーマンがロココ調の部屋にたどりつき、なぜ急激に歳をとり、なぜ赤子にさかのぼり、地球へと到達したか。導いてくれた。
| 青空文庫 発売日 : 2015-10-03 |
「ミステリと言う勿れ」最新刊で、おとなになってから読むとまた違う味わい、とあって手にとる。作中の少年に近い年齢のときに読んで、老人が釣りに出て大物釣り上げたけどサメに食べられて終わり、なんじゃそりゃ、と思ったのに。どちらかといえば老人のほうに年齢が近づいてから手に取ると、くりかえし、ああここに少年がいたら、と思いつつ、自らの技量と経験に誇りをもって大物と対峙し、会話し、戦い、ねじ伏せるが、その後の曳航される大物の魚をねらってくるサメとの戦いは、負けるとはわかっていても立ち向かわずにはいられず、ついにはすべてを喰われ、骨だけになった大物を曳いて、港にもどる。老人はぐったりと昏々と眠り続けるが、それを徒労だとあざけるのではなく、少年も港の人々も、彼はたいしたことをやりとげたといわんばかりの称賛で迎え入れていることが感じ取れる。誇りと称賛、およばずとも立ち向かい、結果はともかくやりきった感を得られる、シンプルでストレートな暮らしをまぶしく感じた。/「毎日が、新しい一日だ。運はあったほうがいいが、運任せでは駄目だ。そういう気持ちでいれば、運がめぐってきた時に慌てることもない。/
狸小路7丁目にあった名曲喫茶「ウィーン」の30周年記念誌。主に常連客や元店員を中心に、店にまつわる思い出はもちろん、店のことにとどまらぬ自分語りや詩歌など、思い思いの文章がつづられ。個人的には、ウィーンに行けたのは閉店する207年の3回のみ。長年知ってはいたけど、敷居が高く感じて入れなかったのが、エイヤと飛び込んだらものすごく居心地がよくて、聞いたこともなかったマーラーの交響曲第5番をここで初めて聴いて感銘を受けて、CDを買いに走ったりしてました。あのちょっと荘厳な雰囲気のなかでかしこまっておっきなスピーカーから流れるクラシック音楽に耳をかたむけるのは至福の一時でした。/読んでみて驚いたのは、30周年時点で店主の方が、長年にわたる慢性の疲労で一時は閉店を考えたと語ってらっしゃったこと。最近はもう少し頑張ってみようと思っております、とおっしゃってたご本人もその時はまさかその後27年も続けるとは思ってなかったのかなあ、と。/”「ウィーン」に行ってみよう、「ウィーン」に行こう、この感情が懐かしいのである。”というのはウィーンに限らず、好きな店を持つと抱く感情。/「少ないレコードを繰り返し聞く」というある世代までのクラシック音楽愛好家の習いに、ウィーンはくさびをうちこんだ。/夜はレスピーギ「リュートのための古風な舞曲とアリア」、バッハ「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ」/合間合間に描かれる、狸小路とウィーン店内のイラストの味わい/”そこで自分を解放し、バカになりきり、音楽と対峙する。生じてくる心の中の変化には言葉はない。時間だけが流れ、今がある”/マスターが結婚された年のクリスマスのオール・ナイトコンサート、夜十時から朝七時まで/"ブラームスの交響曲第四番、あの曲は、黄昏という言葉を除いては語れない"/”一日に十三時間を、あの音・音楽のなかで過ごすというのは、それを三年間続けるというのは（略）私の耳を育て、魂をひらき、音楽と自分との関係を決定することになったように思われる。"/といったあたりが印象に残りました。
メフメト治世開始からの七人の宰相の経歴を取り上げ紹介。逸話を信じれば、メフメト2世は、ウレマー層からではなく、側近の宮廷奴隷を宰相に抜擢、中央集権化を進めたという見方に対し、いやいやウレマー層にも配慮していたのだよ、という点が伺える。逸話を信じればザガノスは、罷免後も他の役職で活躍し、以降の気ままに処刑された宰相たちとは違う、と結びにある。逸話を信じれば、という点、上記に限らずだけど、同時代史料も後代の資料も研究も同列に扱われていてちょっと…な印象。
 | 集英社クリエイティブ 発売日 : 2019-10-25 |
完結。新人の不注意で黒焦げにされたわっぱ。仕事はできるが、何かあれば自分が被害者、パワハラだと叫ぶ新人を、否定し排除するでなく、言うことはまっすぐ言い冷静に指摘し、それを繰り返し彼女も変わっていき。紫藤さんも貴理子も大人だなあと。そして深まる二人の関係。貴理子の母ともミラノで会おうと思えるくらいに。もっとも、さらりと育児放棄してあんたの男を寝とったことまだ根に持ってんの、しつこいわね、という人に優しい気持ちにはなれず。そして、田舎で菜園作りに精を出す荒井からの連絡。死ぬ間際にデートしてよ、貴理子に、てぐらい繋いでやるよと。最後は荒井合宿所での、紫藤オフィスの面々と、紫藤パパ、貴理子弟も集まり、穏やかな関係が描かれ、新人わっぱの登場でしめくくられ。あたたかく、真摯で、いい物語に触れられた感。
 | 芳文社 発売日 : 2019-06-13 |
信長から村上元吉への、もっと広い世界への道を示すことでの誘いは、元吉の中に大きな揺れをもたらし。そのためにケンは海へと派遣され。そして、荒木の内通。それを探るためにケンが派遣され。信長の本願寺包囲で生きる糧を失われたケンが彼らに示したのは、メープルシロップの甘露煮を地場産業にすること。しかしそれでは取り込めず、ケンが策を講じて突き止めたのは、荒木村重。その謀反が早まったのは毛利の壮大な計画に微妙な齟齬を与え…と。
 | 芳文社 発売日 : 2019-10-16 |
荒木攻め、木津川の海戦での織田の圧勝、戦勝祝いの席。ここで、もし織田政権を討つならどうする、と信長が光秀に下問。理路整然とその条件を挙げていく光秀。後代のものならここに本能寺の芽をみるが、これも含めてこの世界の信長と光秀は深い信頼で結ばれているように思われる。信長の先を、世界を見据えた政略を高いレベルで理解し補佐する者として。そこへ現れたのはオルガンティーノ。イエズス会の世界征服の志をちらとも見せず、誠心誠意全てを差し出して信長に仕える体をみせ、その懐に入り込もうと。それを暴く役割はケンと光秀に与えられ、と。
 | 芳文社 発売日 : 2020-03-16 |
死期迫る半兵衛から、ケンへの最後の心遣い、最後の頼みは、ケンを再び村上海軍へと走らせ。織田に傾く息子元吉と違い、瀬戸内海に生きそこで死のうと腹を決めた武吉との海上の語らい。日の本の海軍の構想は老海賊の心にも火をつけたが…と。そしてヴァリニャーノと弥助の来日。彼らが信長に謁見されるのは本能寺の一年前であることが語られ。最後は安土城を束ねる濃姫が、記憶を取り戻そうとするケンを呼び出したところまで。
 | 芳文社 発売日 : 2020-07-16 |
濃姫からの示唆で、記憶を取り戻すことで今の記憶がなくなる可能性を知ったことで、記憶を取り戻すことを諦めたケンは、本願寺にいるようことあうことで行方不明の料理人の手がかりを得ようとし、それはバテレンの勢力拡大を危惧する信長に、本願寺との和睦へ大きく舵を切るきっかけともなった…と。ケンを和睦の特使として派遣するための、従三位授与と公家への猶子工作もすすみ、と。香道勝負面白かったなあ。
 | 芳文社 発売日 : 2020-11-16 |
率直に、バテレンに対抗するために、日の本のために手を貸してくれと、本願寺に和睦をせまる信長。その意は通じ合い、ケンの役目も果たされ。ようこから探している料理人の情報も得られ。戦国時代に飛ばされる直前の客にケンの父がいたこと、父が考古学者だったこと、その追っていたものがケンたちが戦国時代へ飛ばされるキーとなったのではということが示唆され。そして、怒涛の天正九年の幕が開けようとする…と。
| 新潮社 発売日 : 2021-07-29 |
デビュー作「ボクたちはみんな大人になれなかった」に、連載時点でまいっていた身としては、待望の小説第二作。テレビ業界、制作会社につとめる主人公の、結婚式の二次会で出会った「反則」級の美女、マンションの同じフロアに暮らすしっかりした小学4年生の女の子とすごす、ひと夏の思い出。お互いに心を開いて、わかりあえたと思っていたのに、気がつくと、何もいわずに主人公の前から去っていってしまう儚さは前作と同じ。見抜かれるような嘘しかつけない嘘つき、女の気持ちがわからないと面と向かっていわれ、それでも心の底からあたためられるような一瞬をすごせたあの夏を...感傷たっぷりに読ませてくれる一作でした。/個人的には、明菜に「ダンス・ダンス・ダンス」のユキを、「嘘つき」てセリフが吐かれたシーンに、「風の歌を聴け」か「1973年のピンボール」かで私と結婚したい？と聴いてきた女の子の影をみた。勝手に見た。/
 | 文藝春秋 発売日 : 2009-06-10 |
何かをするのを想像することと、実際に何かをすることは、重なりあう営みなのだ。(p.44)村上春樹の小説が多くの人々に訴えるのはむしろ当然でしょう---ナショナリティ、自己、その他かつて人をひとつの場所につなぎとめていたものたちが、グローバルな資本と貿易の互換性の流れにあっさり呑み込まれていくのを感じてきた人々すべてに。(p.62)(冒頭の、リチャード・パワーズの基調講演より)/世界中の村上春樹翻訳者たちを一同に介し、村上春樹文学との出会い、翻訳者になった道行き、翻訳する際に苦労した文化の違い、各国での村上春樹文学の受容についてなどなど、幅広く語られている。特に興味深かったセッションは、各国で出版されている村上春樹の本の表紙を次々と見せ、それにまつわることを話してもらったセッション。ひとつとして日本出版時と同じものはなく、日本の作家だからとゲイシャフジヤマ的ステレオタイプな日本イメージをはりつけたものから、最近はこのほうが売れゆきがいいからとあざやかな抽象的なものまで幅広く。また、擬音語やカタカナで書かれる固有名詞などが特に訳しにくく、”ドイツではマンガの擬音語・擬態語を訳すためだけの辞典が出ているそうです”というのは興味深いエピソード。また各方面への村上春樹文学の影響のなかに、個人的に大好きな映画、ウォン・カーウァイ監督「恋する惑星」が挙げられていて、なるほど、と。最後は、棚から、映画「パン屋襲撃」「100％の女の子」のDVDを引っ張り出してきて見返そうかなという気持ちに。
 | 白泉社 発売日 : 2021-07-30 |
カステラ風蒸しケーキシリーズ。好きになったたべもの、おやつやドリンクがかずかず無くなる経験をした身にはしみいる物語。ポストウォーター、復活しないかなあ。シュクルメリヌードルとか。打ち上げられたと思ったらあっという間に順応し、工場の主戦力となり、人間の社員を追い出し、ついには会社をのっとる「魚社会」も、その寓意を含め印象に残る。あとは、サービスエリアならではのお土産を作っちゃう話も。
2021年07月01日
2021年06月に読んだ本
0601・井上浩一 生き残った帝国ビザンティン 20210523
0601・穂村弘 図書館の外は嵐 穂村弘の読書日記
0602・香山リカ インターネットマザー 20210504
0605・マーセル・セロー 極北 (中公文庫) 20210503
0605・北村薫 秋の花 円紫さんと私シリーズ3 20210531
0605・柳美里 命 命四部作第一幕 20210504
0606・柳美里 命 命四部作第二幕 20210504
0606・渡辺浩弐 アンドロメディア 20210504
0608・ほしおさなえ 活版印刷三日月堂 海からの手紙(シリーズ第二作) 20210522
0610・北村薫 朝霧 円紫さんと私シリーズ5 20210530
0612・北村薫 太宰治の辞書 円紫さんと私シリーズ6 20210531
(0612・シマシンヤ ロスト・ラッド・ロンドン3 kindle 20210612
(0612・午後9時15分の演劇論 2. Kindle 20210612
0613・円城塔 文字渦 20210502
0614・【再読】米澤穂信 さよなら妖精
0615・米澤穂信 真実の10メートル手前
(0616・天上恋歌 3 kindle
0616・【再読】米澤穂信 王とサーカス
0617・和田竜 忍びの国 20210612
0618・【再読】池澤夏樹 スティル・ライフ …表題作のみ
0619・(pdf版) 札幌国際芸術祭記録集 SIAF2020 インデックス
0619・保坂和志 この人の閾 20210522
0620・安田峰俊 八九六四 角川新書版 kindle 20210613
0620・【再読】村上春樹 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 20210531
0620・(html) 伽藍とバザール [https://cruel.org/freeware/cathedral.html](https://cruel.org/freeware/cathedral.html)
(0621・鳥辺茜 kitatrip 04 …メロンブックス通販 20210612注文 0620入手
0621・柳美里 生 命四部作第三幕 20210616
0621・柳美里 声 命四部作第四幕 20210616
0622・三島由紀夫 太陽と鉄 20191219
0623・柳美里 自殺 20210616
(0623・紛争でしたら八田まで 6 kindle
0626・【再開】三島由紀夫 鹿鳴館 20191213
0628・アジア遊学 元朝の歴史 \3520 20210626
0629・おれは一万石 16 出女の影 らくだや 20210626
0601・穂村弘 図書館の外は嵐 穂村弘の読書日記
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0610・北村薫 朝霧 円紫さんと私シリーズ5 20210530
0612・北村薫 太宰治の辞書 円紫さんと私シリーズ6 20210531
(0612・シマシンヤ ロスト・ラッド・ロンドン3 kindle 20210612
(0612・午後9時15分の演劇論 2. Kindle 20210612
0613・円城塔 文字渦 20210502
0614・【再読】米澤穂信 さよなら妖精
0615・米澤穂信 真実の10メートル手前
(0616・天上恋歌 3 kindle
0616・【再読】米澤穂信 王とサーカス
0617・和田竜 忍びの国 20210612
0618・【再読】池澤夏樹 スティル・ライフ …表題作のみ
0619・(pdf版) 札幌国際芸術祭記録集 SIAF2020 インデックス
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0620・安田峰俊 八九六四 角川新書版 kindle 20210613
0620・【再読】村上春樹 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 20210531
0620・(html) 伽藍とバザール [https://cruel.org/freeware/cathedral.html](https://cruel.org/freeware/cathedral.html)
(0621・鳥辺茜 kitatrip 04 …メロンブックス通販 20210612注文 0620入手
0621・柳美里 生 命四部作第三幕 20210616
0621・柳美里 声 命四部作第四幕 20210616
0622・三島由紀夫 太陽と鉄 20191219
0623・柳美里 自殺 20210616
(0623・紛争でしたら八田まで 6 kindle
0626・【再開】三島由紀夫 鹿鳴館 20191213
0628・アジア遊学 元朝の歴史 \3520 20210626
0629・おれは一万石 16 出女の影 らくだや 20210626
 | 文藝春秋 発売日 : 2021-01-27 |
松浦理英子「最愛の子ども」、「ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹」、「ブローティガン 東京日記」、佐藤究「QJKJQ」あたりが手にとってみたくなった。
 | 講談社 発売日 : 1990-12-20 |
ローマ帝国の危機を前にして、キリスト教を取り入れたコンスタンティノス一世、古代民主政治に否を突きつけたユスティニアヌス一世からはじまって、イタリアよりスラヴ人への世界へと目を向けたコンスタンティノス五世、地方貴族の台頭を前にして、彼らとの提携へと支配体制を根本的に転換したアレクシオス一世、みずから国営模範農場に力を注いだヨハネス三世、バルバロイ（野蛮人）と軽蔑されてきた西欧に援助を求めたマヌエル二世。いずれの皇帝もただ伝統を守ったのではなく、新しいことを行なったのである。(pp.245-246)とあるように、柔軟にその形を変えていったこと。"「ローマ」理念に民衆の心を深くとらえたキリスト教を融合させて、その国家イデオロギーとしたところに、国家の強靭さの秘密があったのである。"(p.54),"血統や家柄には関係なく、実力と運さえあれば皇帝にさえなれるという、開かれた社会をビザンティン帝国はもっていたのである。"(p.76)という強さの秘密。これらがビザンティン帝国を生き残らせたのだ、と。そして、著者のキリスト教観も縦横に語られる。いわく、支配者に服従することとの親和性。異端とは聖書に忠実な人、と定義すべきではないか、という問いかけ。聖像崇拝を禁止することそれ自体は、はたして神を冒涜することであったのだろうか。"全能の神が、人々を救うために、人間の姿をとって地上にあらわれた、と説くところにキリスト教の最大の魅力があったのである。"(p.136)/
 | 河出書房新社 発売日 : |
20年以上前の本。坂本龍一の歌にもあるようにみな電子には海のイメージをあてはめがち。精神科医がマスコミに求められるままに犯人像や幅広いコメントなど語るのではなく、もっと精神科に、心の病に親しみをもってもらえる発信があるのではという問いかけ。自分の存在を肯定されたい若者たち。「小さきものを愛でる」として移行対象をいつまでもずるずる抱え続けることを容認されているのが、日本でのおまけ文化の隆盛をよんだのでは。自分の悩みだけが特別で、それを誰かだけがわかってくれるのではというのぞみ。心と身体が乖離している若者たち。といったあたりが目に止まったところ。ここで語られてる「若者」もいまは中年にさしかかっているんだよなあ、とおもいつつ。いくら傾向があるからといって、そんなにひとくくりにまとめてしまっていいのだろうかという箇所も感じつつ。
 | 中央公論新社 発売日 : 2020-01-21 |
50ページ読んだだけで、深く豊かな物語が続く予感を受け。しかし、それを上回る強さで物語は進んでいき。誰一人いなくなった街で暮らすメイクピースが、一度は撃った人を受け入れ、ともに暮らす日々で、心にあたたかさをとりもどしていくと思いきや、それをあっけなく失ってしまい、凍る湖に身投げして死を図るも、そこでみかけた墜落する飛行機に、まだ自分の知らぬ果てに、文明の残り香があることを期待し、それを求めて旅に出る。厳しく、裏切られ、時にあたたかさに触れ、だが虜囚の目にあい、強制労働、かすかな同志愛、看守への抜擢、同志とも思う友の死、そして自分の求めていたものが身近にあったこと、自分を陥れた人物が無実だとする弁明を信じかけたその時…と。変転めまぐるしく、その度に、タフに、粘り強く、何度も心折れそうになりながら生き抜いていく、自分のこだわりを通そうとするところに感銘。以下備忘録。/人類全体の物語とは、生活の資を得ようとし悪戦苦闘して、それに失敗する人々の物語でしかない/人生の多くは慣習に過ぎない/人々は理念のために戦っているときに、最も残虐になれるようだ。/正義というものには一定のパターンがあると考えると、心が安らぐかもしれない。しかしそんなものはどこにもない/彼によれば人の真実の像は、本人が他人にこう見てほしいと望んでいる像とは、反対のものである。/彼は神と犠牲について語った。しかし彼の神とは彼の虚栄であり、犠牲とはつまり私のことだった。/
 | 東京創元社 発売日 : 1997-02-16 |
主人公が、母校の文化祭で、小学生のころを知っている女子学生が亡くなったと知り、彼女と仲の良かった子の話を聞いたことがきっかけで、真相をさぐることに…と。教師や生徒会の生徒、亡くなった生徒の母親と話を聞き、謎めいたメッセージがポストに届き、友人たちにも話して考えを進め最後は…と。わかったあとも苦い後味、謎解きなんて児戯にひとしい、これからどうするかの方が本当の難題なのだ、と語られ。誰が悪いわけではないというのは易く、当事者に響きがたし、一生背負っていくことになる、けれど押しつぶされて人生を投げ捨てるのはきっと遺志ではない、と胸に秘めて。以下備忘録。/耳で食べてはいけません。情報を食べておいしいというようなものだから/私は水を飲むように本を読む。水のない生は考えられないのだから仕方ない。/立ち向かうことは出来てもさ、世の中で<本当に逃げられること>なんて、何もないんだと思うよ/この中の登場人物のひとりが、「スキップ」の主人公だったとは。そちらも再読してみたい。
 | 幻冬舎 発売日 : |
4章まではSF、5章はホラー。実際のアイドルを模したAIを作り上げたが、自らの意志を持ち、活動し、本体を殺そうとし、本体の幼馴染で自分の理解者と思い定めたユウを恋い慕い、最後は变化して執拗につきまとい…と。20年以上前の想像力に現代の技術は、倫理は追いついただろうか。本体とは、本当のとは…どこまでがコピーで、どこまでが本体で…と思いがめぐった。
 | 新潮社 発売日 : 2003-12-20 |
 | 新潮社 発売日 : 2003-12-20 |
四部作の第一部、第二部まで読了。出産、育児と末期がん患者の闘病・看病を並行し、その間も書く仕事は続け、不誠実な相手に認知・養育費も求め。壮絶な手記。編集者たちとの濃密な関係、本来プライベートなことでここまで頼り、それを受けて立つ編集者がいる、というインパクト。以前読んだ自伝的な新書を読んだときより、東さんがすごく乳児の育児に積極的だったんだな、という印象を受けた。そして、ホスピス、末期という言葉は使いたくない、可能性がある限り最後まで闘いたいという姿勢には頭が下がる。第一部のあとがきで、結果を知っている身としては…だが。/心をとらえたのは/東の治療のためのニューヨークへの同行を拒まれた最相葉月の「ひとにはこころからやってみたい、どうしてもしなければならないことがあると思うんです」「黙ってればいいんです」の凛としたたたずまい。柳美里の「わたしは家族によって疵つけられた魂で、疵ついた家族を愛し、求めていたのだ。だから家族の崩壊をテーマにしながら、常に家族の再生のイメージを胸に抱き温めていた」という述懐。東の火を噴くような、医者は技術を鍛えるとともに、言葉も鍛えなければいけない、言葉で患者に影響をあたえるのだから、という叫び。
 | ポプラ社 発売日 : 2017-02-03 |
仲間との朗読会に自信が持てなかった主人公が、活版印刷の店で素敵な招待状を作ってもらい、そっと背中を押され。その仲間の小学校教師の担任の生徒が、その招待状で活版印刷に興味を持った小学生が死産した姉がいることを知りその命名札を活版印刷で刷り親戚に配り。それを受けとった親戚が、自分の中に目覚めた版画への意欲と活版印刷が結びついて、版画と活版印刷の組み合わさった素敵な本を作り。それを買った家族を持ちつつ無職となった男性が、亡き父の思いを探るうちに、活版印刷屋でその大きな痕跡を見つけ、その思いを知る。活版印刷をきっかけに、大事な思いが順に手渡され、実を結んでいく様にふれられるよろこび。以下、備忘録。/印刷物はきれいで透明じゃないといけない。/朗読って読み手だけのものじゃない、聞き手といっしょにその世界に行く/いまできることだけをやってたんじゃ、ダメなんですよね/悲しさは消えないけど、大事なものだから消しちゃいけないんだ、って/長谷川潔の作品/飛ぶことに意味はない。飛びたいから飛ぶ。飛べるから飛ぶ。それだけ。だけど、飛ぶためには技術が必要です。/投壜通信って言葉があるでしょう？ツェランだったかな。詩は海に投げられた壜に入った手紙みたいなものだって。/
 | 東京創元社 発売日 : 2004-04-09 |
主人公が大学を卒業し、出版社で働きはじめたあたりの話が三編。校長で俳句講師で元クラスメイトの父が抱えたいい尽くせない思いへの哀切。結末を読者にゆだねる話から、先輩編集者の友人の書店経営者が書いたもの、その答えは…。そして、亡き祖父に下宿の娘が贈った暗号で書かれた一首。今回も円紫さんの推察は冴え渡るけれども、最後は、あとは「私」が独力でしらべてごらんなさい、とボールを渡される。その意図すら愛おしい。これは一人で考え味わい到達するべきものだった、という深い悦び。ベルリオーズの君にかかわりたいと思ったきっかけとなったシーンが一番印象に残りました。以下備忘録/本の場合には、読者の方がそれぞれ演者になるわけでしょう。読者が、本を深いものにする。だから、本を読むことは楽しい。そうじゃありませんか。/「本屋が稼ぐっていうのは、売れない本のため。ね、社員のためじゃないの。一億入ったら、＜ああ、これだけ損が出来る＞と思うのが、本屋さんなの」というのを先輩から聞かされ、書店で口にしていたら、やんわりたしなめられたシーン/本当にいいものはね、やはり太陽の方を向いているんだと思うよ
 | 東京創元社 発売日 : 2017-10-12 |
ページをひらいて、まず、前作よりかなり時がたったのだなあ、と。出版社の中堅社員となった「私」が、芥川、三島、そして太宰と、興味のおもむくままに、縦横無尽に調べ物をし、仮説を立て、それをといていく。今回は円紫さんも、謎をとくのではなく、むしろ問いを投げかけてくれている。今までの作品に比して、ブッキッシュな傾向が強かったように思った。最後は作品中で出した結論が、その後のエッセイで後日譚として語られ、そうであっても、「私」はきっと太宰の心にその瞬間寄り添ったのである、という思いを残して。そして「連れ合い」は、ベルリオーズの君だったのでしょうか。ちらりともうかがわせず。以下備忘録/自分の好きだった本が、友達のうちにずっと置いてあるのも、悪いことじゃない/起こったことだけを書き、起こらなかったことを書かなければ、それは<歴史>になってしまう/「美しさは、いつも無意味で、無道徳だ。きまっている。だから、私は、ロココが好きだ」(「女生徒」)/「私は花火の事を考えていたのです。我々の生のような花火の事を」（「舞踏会」）//三島由紀夫「黒蜥蜴」（学研M文庫）、”芥川が自殺を決意したのちに書かれた文学的遺書ともいうべき”「或阿呆の一生」、正ちゃんのおすすめする「女生徒」、三島が選んだ芥川「秋山図」「舞踏会」「手巾」/は手にとってみたい。/
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-06-11 |
淡々と、ただ淡々と解決への道筋が描かれ。ただ、エリスの査問覚悟の独走がなければ、アルの運命は過酷なものだっただろうと。アルとエリス、ユキとエリスの関係性も絶妙な距離感で目が離せなかった。ひと1人助かったからってタダで済むと思うなよと悪態つきつつ、どこか信頼は置いてる感が。そして、最後にエリスに問いかけたのは…
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-06-11 |
初回は、役者の暴走と観客のさらなる笑いへの期待で、当初の演出はかけらも残らない、しかし客には受け役者もやり切った感のある舞台に。そこからは二転三転し、最後は…。相変わらず暑く自問自答を続けつつ、結局は演出への評価は…。もがいてもがいて自意識に絡め取られ、答えを求めようと七転八倒する姿はカッコ悪いようでいていっそ眩しく。
 | 新潮社 発売日 : 2021-01-28 |
円城塔「Boy's Surface」「Self-Refarence Engine」をくぐり抜けてきた身には、一話目の、兵馬俑の俑を作る職人と始皇帝の話を読んで、何だこれ、ぜんぜん読みやすい、と思ったのだが、その感慨は二話目以降でしばしば裏切られ。文字が主人公の連作短編。前近代の日本や中国が舞台の話もあるが、時にそこに近未来のテクノロジーがまぎれこみ、文字が自由に動き出したり。脳みその普段使ってない筋肉がフル回転したかのような読書体験は「誤字」の章。途中から、ルビが本文と独立して語りだす仕掛けに、これはどう読み進んだらいいのか…と頭の中が痒くなる思い。それも含めて、よく思いつくなあという奇想の連続を楽しめました。/現代の境部さんと遣唐使の境部石積はやはりつながりがあるのかな、と思いつつ、武則天の新字発明は、従来の字世界に混乱をもたらし、唐の日本への矛先を弱めるための、石積の策謀-時に唐の外交官にイスラム勢力との同盟すらほのめかす-が冴え渡った結果だといった見立てがおもしろく。/
 | 東京創元社 発売日 : 2006-06-10 |
何年ぶりかの再読。地方都市で路頭に迷っていたユーゴの少女マーヤに、手を差し伸べた高校生の守屋と大刀洗。そこから友人たちをも巻き込んで過ごしたひと夏は、日本とユーゴのあいだに徐々に理解の架け橋をかけ、文化の違いに気づきつつ、それを受け入れていったが…彼女の故郷は戦火につつまれ、それでも決然と帰るという彼女。つれていってくれという守屋を毅然とはねつけ。その理由とその後の結末は…。「…ユーゴは、続けるの？」という大刀洗の問いに対して、答えが描かれることがあるのだろうか。以前読んだ際は、ユーゴ関連書籍を大量に漁らずにはいられなかったことを思い出す。
 | 東京創元社 発売日 : 2018-08-30 |
(2021/06/16読了分)再読。「さよなら妖精」「真実の10メートル手前」を読んでから読むと味わいもまたひとしお。ラジェスワルが対話で見せた厳しさとあとから感じられる優しさ。最初は快活な印象を見せたサガルと穏やかで深い慈愛を感じさせた八津田のガラリと変わる印象。悪と善、好意と憎悪、真摯と狡猾、さまざまな多面性をはらみつつ、見過ごしてしまえば人はその一面にしか触れられず。ただ観察し、違和感を覚え、洞察し得たもののみが別の面をひきだすことができるのだ、と。"確かに信念を持つ者は美しい。信じた道に殉じる者の生き方は凄みを帯びる。だが泥棒には泥棒の、詐欺師には詐欺師の信念がある。信念を持つこととそれが正しいことの間には関係がない。"(ラジェスワル准尉)(p.196) ///(2019/05/15読了分)見過ごしがちな風景、小さな一言に含まれている真実、堅い職業につき卑劣なことに手を染めているものでも最後の譲れない一線では清廉になることもあるということ、知ること、それを広く知らしめることに含まれる快楽といかがわしさと残酷さを伝えてくれる。"それでも黙るわけにはいかなかった。知は尊いと、わたしは信じてきた。だから、関わりのないことを知る必要はないと言われて、沈黙するわけにはいかない"/本当は気づけたはずなのに、種は巻かれていたのに、信じていたことが崩れ去るようなラストのひねりが効いている。
 | 秋田書店 発売日 : 2021-06-16 |
宋の皇子に嫁いだ金の王女アイラ。遼に内通した高官に爆殺されそうになっても、凛之が機転と身体をはって助けてくれ。しかし、その後の凛之はきなくさい動き。刺客が落とした書物を王宮の庭で探したり、それを皇子に問われたときに、火薬を使ってむりやり奪っていったり、と。巻末にあったように、アイラの明日はどっちだ、の思い。
 | 新潮社 発売日 : 2011-02-26 |
伊賀の国の話。無門という腕はものすごく立つがあまり働きたくなく、家では他国で口説いた美しいが厳しい妻に頭があがらない下働きの忍びの視点がメイン。飛んだり跳ねたりが忍術の本質ではない。知恵をめぐらし策謀を練り、術をかける相手の「心」を読み解き、「心」につけいり勝利をおさめるのこそが至上である、と。そんな国では、義理や人情などくすりに支度もなく、ひたすら己が欲望に忠実、隙あらば相手を蹴落とし、騙される方が悪、自分以外の命になど紙切れほどの価値もみとめず。そんなところに愛想がつき、何人もが、時に北畠の勢力を、時に織田の勢力を引き込んで、伊賀の国を滅ぼそうとするが果たせず。だが最後は…と。武士の流儀に殉じたお国が、最後の最後で無門と、夫婦わかりあえたと思う瞬間と暗転、無能ではあるが、自らの無能を自覚できるだけの頭脳はある、と描かれる織田信雄の悲しみが、印象に。
 | 中央公論新社 発売日 : 1991-12-10 |
(2021/06/18読了時)30年も前の小説なのに、文庫版が店頭で版を重ねて面陳され、20刷超えてて、広く読まれているんだなあという思い。ひさびさに本棚から取り出し。今回は「チェレンコフ光が見えないかと思って」の一文を読むためによみ化したようなところがある。/(2012/12/22読了時)何度目かの再読。周期的に読み返したくなる、薄い水色がかった空気の世界。何気ない日常と思ってたところに、持ちかけられた株売買の助手の話。いまなら、ネットで一人で完結できるけど、30年前じゃそうはいかない。そして、個性的なロシア人と知り合うこと。恐竜を飼っていることが語られること。小さなハードボイルドワンダーランドのような。
 | 東京創元社 発売日 : 2018-03-22 |
大刀洗万智を主人公とするベルーフシリーズ第三弾は連作短編集。一話目が新聞記者時代、そのあと第二弾「王とサーカス」をはさんで、二話目以降が、癖が強くて扱いづらいがとにかく切れる、と評価されるフリーライター時代。「さよなら妖精」から読んだ身としては、「さよなら妖精」の語り手守屋くんの再登場、大きな存在感を示してくれたマーヤ…の兄が登場したことがすごくうれしかった。特に、マーヤの兄と万智との対話は、この短編集の中でも出色の印象に残るものとなった。一貫して語られるのは、報道する意義、なんのためにそれを、そして正当化するのかという問いかけと、万智の、すぐには答えられなかったけれども徐々に自分の言葉でそれをつかんで行く過程。そして関わった事件の、やりきれない、苦い、時に胸糞悪いまでの後味の悪さ。暴いた真実のその先は…と。/情報を取り扱う上で最もやってはならないのは、当事者の言葉をそのまま伝えることです。先ほどあなたは、真実はいずれ自然と明らかになる、と言いました。ですがあなたもお気づきのように、それはあまりにロマンティックです。真実とは、そうであってもらわねば困る状態のことなのです。(p.246-7)/わたしたちは、人々がみたいと思っているものを見せるために存在します。そのために事実を調整し、注意深く加工するのです。それは実際の目が行っていることと同じです。(p.248)/
 | 新潮社 発売日 : |
芥川賞受賞の表題作含めた4編を所収。「残響」に比べてタイムラインがひとつに統合されてるので読みやすかった。語り手＋1人か2人での対話で描かれる何気ない対話が、大半はとりとめもないけれど、すこしだけ深淵も垣間見せてくれて、といったたたずまい。/「いくら読んでも、感想文も何も残さずに真紀さんの頭の中だけに保存されていって、それで、死んで焼かれて灰になって、おしまい--っていうわけだ」「だって、読むってそういうことでしょ」(「この人の閾」)から始まる、ヨガの行者やイルカや「始めに言葉ありき」へといたり、誰にも感想を言わず読書をするというのはイルカの話をするに似てると思う、にたどりつく会話が一番好きでした。
 | 文藝春秋 発売日 : 2015-12-04 |
文庫入手を機に再読。やはり最初に来た思いは、多崎つくるの人生の大きな転機となった、高校時代の親密な五人組から理不尽に追放されるくだり。あとから説明はつけられてはいたが、どうしても、「それはその時理由を問い質せば済む話では？」「なぜわかっていて誰も明かしてくれなかったのだ」と。読みすすめる内に感じた魅力は、これは自分のことだ、と思ってしまう箇所が複数箇所あり、作者の深い井戸に降りていって掘り起こしたものは、多くの人（いきなり主語が大きくなった）の思いを最大公約数的にとりこんだものなのだろうか、という思い。最後の沙羅の出した判断は示されずに終わるが、3日もとってくれたのだからそれはもうひとりの相手との関係を清算するための時間だ、ともとれるし、いやいや満面の笑みを見せられない相手のために、満面の笑みを見せられる相手を切るなんて考えられないだろうとも思ったり。ミステリじゃないんだから、何から何まで語り尽くさいのが流儀とはいえ。
 | 札幌国際芸術祭実行委員会 発売日 : |
中止となったSIAF2020。SIAF2017に入れ込んで期間中ほぼすべての作品を見て回り、気に入ったものは多くて6回ほど足を運んだり、イベントにもいくつか行った身としては、期待するところ大だっただけに残念。それだけに、どのような思いでどのような企画が進められ、どのような作品が発表予定であったか、一冊にまとめられた本はありがたく、一読、やはりオフラインで実地で見て観たかったな、という思い。///特に観てみたかったのは、(1)ヒスロムのタイトル未定の、ワルシャワからロシア、稚内を通り札幌までいい感じの石を運ぶプラン(p.96)。もうその理由とか可笑しくて奇想で途上の写真とかもたのしそうで。/(2)プシェミワフ・ヤシャルスキの作った「紙の牢獄」に実際に入ってその時抱く感覚を味わってみたかった。/(3)村上慧の「広告看板の家」：真冬の札幌の屋外に立てた外観が広告でその収入で暮らすという簡易な家（というかほぼ簡易ビニールハウス的な？) /(4)ジュリアン・シャリエールの、１台はカメラ搭載、１台は強力なスポットライト搭載のドローンを飛ばし、北極圏の夜の闇の中を撮影した作品(p.92)。/(5)ジョアナ・モールがウェブサイト閲覧などのオンラインの活動に知らぬ間にかけられてるコストを可視化するために提示する９０００ページもの印刷されたコード。/(6)馬定延が「動物園の動物とその観衆に類似した《Senster》における作品と観客の関係性は、三上晴子の《欲望のコード》のなかで逆転されている。」と語る両作品。他にも、アルパカの毛を刈ってそれでセーターを編んでアルパカに着せたりとか、モエレ山をスキー場にとか、美術史の中から約25000枚の画像を選び高速些再生とか、階段を組み立てるワークショップとか、池田宏のアイヌの人々のポートレート、伊波リンダの一連の沖縄の写真、実現は難しかったようだがテレビ塔ホテルという発想、などに興味を惹かれた。///ひととおりの発表予定だった作品に触れ、芸術は不要不急のものではない、日常に流されそれが当たり前となっている存在に、違った角度から違った視点を提示し、世界の見え方を変えるきっかけをくれ、時に鋭く社会のあり方を批評する道標となってくれるものだ、という思いをあらたたに///テーマの説明で「その土地に根差す固有の歴史や環境に向き合うことは、一見ローカル(偏狭的)なようでいて、世界のどの地域にも存在するその場特有の問題に向き合うヒントとなる、グローバルで普遍的な視点を発見することにつながります。」と語られることに深く同意。///天野太郎氏が、中野美代子氏の講演で、北前船を巡る交易による南北を基軸とした日本文化論についての見解が示され、インスピレーションを受けた記述に触れ、北前船について少し調べてみたい思い。
 | 発売日 : 2014-10-01 |
はやめにしょっちゅうリリース、任せられるものは任せて、なんでもオープン。ときどきヘマが出回っても、あんまり失うものは大きくない。デザイン上の完成とは、付け加えるものが何もなくなったときではなく、むしろなにも取り去るものがなくなったとき。命令と規律という原理にしたがった活動、共通の理解という原理に基づいて行動することの差異。たのしんでやること、よろこびが資産、たのしみが能率をあげる。といったあたりが印象に。
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-05-10 |
逃れる者、忘れる者、寝返る者、あくまで戦う者。時を経てその渦中にいた人も、その影響を受けた人も様々。広場で演説を行い人々を鼓舞した人も、ある人は当時したことの責任を負いつつ、問われれば何百回でも同じことを語り、今の若者たちに期待をかける。ある人は迷走のすえ、政治的発言をすることから足を洗い。ある人は、生真面目に革命の理想を置い続け、タイで、深センで、日本で、活動をつづける。ただ当時よりも豊かになり、政治的な自由に目をつぶり、豊かな生活を送れる中国社会では、彼らの「生真面目な理想」は共有されにくいだろう、と著者は語る。ただ、読み手としては、余儀なく選択をせまられた多くの人生を、後知恵からだけでどうこういうことはできないと感じた。/「「暗黒」中国からの脱出」(文春新書、2016)、「境界の民」（KADOKAWA、2015）、「天安門十年の夢」（新潮社、1999）は手にとってみたいと思った。
楽しみにしていた紀行もの同人誌の第四弾。またまた宗谷瀬戸内旅行記はお休みのようですが、連載「知床、以外」が開始。旅のスタートをかんじさせるところまで。そして、ひたすら偏愛的にハードにJRとバスで稚内を目指す「ポラリスをめざして」。傍目には、もう少し情報共有しては…と思うところもあるけれど、サプライズでひっぱっていく腕力もまた楽し。出色の紹介は「サロベツ湿原」。これはもう行きたくなる度100％。ただ、残念なのが、作品発表時に比べて、バスがぐっと減っているということ。利用者減で採算が…ということなのだろうけど、儚い。競馬はね、、、わたしもわからないです。
 | 新潮社 発売日 : |
最後の最後まで回復ののぞみを捨てなかったが、ついに…訃報、というところまで。時々挿入される東氏と柳氏の思い出がほほえましいほど、闘病中、看病中の現在時制との対比がいたましい。ただ、露天だと思ってふたりして入ったら川だった、通りがかった人に笑われたてエピソードには、ふふっとなってしまったけど。命を維持するための医療にはすべて値段がついているというリアル。自らを証明するための一切合財を強盗に持ち去られるという痛恨事。それらをくぐりぬけての、いつか息子が東氏の写真を指差して、このひとだれ？とたずねてきた時のために、自分の言葉を鍛えなければならないと思っている、というあとがきに覚悟を感じ。
 | 新潮社 発売日 : |
東氏が亡くなってからのこと。四十九日までの記憶がすっぽり抜け落ちて、前三作は記憶をたどって書けたものが、この巻だけは当時の情報をかき集め、インタビューし書き上げたところに、ショックの大きさを感じ取り。最相葉月さんと柳さんの弔辞に胸をうたれた。
 | 中央公論新社 発売日 : 1987-11-10 |
一度挑戦して25ページで挫折。読むコンディションをとｔのえ一年半おいて再挑戦。それでも「太陽と鉄」は論理の筋道を追うのに行きつ戻りつの読書だった。自分の身体に筋肉をつけることにこれほどまでのきらびやかな理論を展開した人がいただろうか、というのが一読後の感想。言語と肉体を対立したものと置き、多くの人は前者が形成され後者があとから来るが、著者は「まず始めに言葉ありき」。先に言語が形成され、肉体は遅れて形成されたので、幼少期、青年期の我が貧弱な肉体よ、と。意識の絶対値と肉体の絶対値が重なり合うところに惹かれ、ボディビル、剣道等を経て、エピローグのF104搭乗による音速の体験でそれは頂点を迎えた、と。言語の呪術性がなし崩し的に精神に終わりを認識させないこと、英雄的な死には強靭な肉体が必要不可欠、という認識は、史上有名な最期を迎えるにあたる道筋だったのだろうか、という思い。「私の遍歴時代」はうってかわって、作家を志した少年期から、世界周遊の旅に出るあたりまでの若き日の小説家としての思いがざっくばらんに語られ。やはり「僕は太宰さんの文学はきらいなんです」と面と向かっていい「そんなこといったって、こうして来てるんだから、やっぱり好きなんだよな」という太宰のかえし、名場面だなあ。
 | 講談社 発売日 : 2021-06-23 |
アメリカ編の完結。イギリス、フットボール編。ナウル編の途中まで。アメリカ編は見えぬライバルに結果的には利用された形になったが、依頼者たちが、満点回答ではないものの、仲間としてすごした時代をあたためなおすことに。フットボール編は、以前、パブのバイトとして事件に巻き込まれた少年との再会。古典的な地政学の概念を軸に、サッカーチームの臨時監督になった八田は…というストーリー。ナウル編は、「楽園」の歴史と現状、内実に迫る。以下備忘録/自由で開かれた社会は分断されやすいからな〜〜〜/イギリスのフィッシュフィンガーラップ/ナウルの生魚と椰子の実のユッケ/新しい監督の、ロベルト本郷だ、って八田さんが言うシーンはかなり好きでした。
 | 文藝春秋 発売日 : 1999-12-08 |
まだ小説を出していない、劇作家だったころの著者24歳のころの本。自殺の話なら自殺未遂したことのある柳美里さん、というオファーもすごいなと思うが。眼目は、"私がみんなにいいたいのは、自殺を自分の人生の中にプログラムすべきだということです。"といったところでしょうか。ただ今日と同じ明日を繰り返すのではなく、なにかこれ！と人生でやることを決めたらそれを機に…楔を打ち込むような思いで、ということかな。自殺が特権化して美しく語られるケースへの疑義、死は彼岸にではなくこの世の内側に在る、”自殺は必ずしもネガティブな行為ではなく積極的に自己を表現するための行為だともいえる”という逆説、”日常というのはある種の人間にとっては凶器のように自分を脅迫するもの”、といったあたりが印象に。
 | 新潮社 発売日 : 1984-12-24 |
四編通じて。起きて見る悪夢。最後には取り返しのつかない事態と絶望、それをもたらしたものの冷たい悪意。いやそれは悪意ですらない、本人は我こそ正気と思い、やっていることだから、また救いもなく。/一番これが言いたかったのかな、と思ったのは、資産も失くした華族の未亡人に求婚された小寺のセリフ。「御厚意はありがたいが、お断わりいたします。私は民衆というものがきらいでしてね」「なぜって、私が民衆だからです」/以下、備忘録。/影山 好い歳をした連中が、腹の中では莫迦々々しさを噛みしめながら、だんだん踊ってこちらへやって来る。鹿鳴館、こういう欺瞞が日本人をだんだん賢くして行くんだからな。（「鹿鳴館」）/園井 秘密をもつということは、負けることです。つまりあなたに敵うやつはないからだ。それで秘密をもたざるをえないんだ。(「夜の向日葵」)/
 | 勉誠出版 発売日 : 2021-06-18 |
個人的には、順帝期の政局についてが一番読みたかったところ。即位からバヤン権勢期、トクト実権期まで簡潔にまとめられており非常に興味深く。ただ明朝研究者の筆によるからか、元末の衰亡を天変地異に帰す動きには、統治者がそれに対応しようとしたのに十全に果たせなかったのだから統治者の能力不足は否めない。また、岡田氏・杉山氏によるモンゴルの画期性だけを持ち上げ、明の不完全さだけをあげつらう論調は根拠がないと注で触れるなど手厳しい面も。/英宗シデバラの重臣で、南坡の変でシデバラに殉じたバイジュが、のちに、彼を祖先として崇拝する集団を生み出すまでになり、元朝は崩壊しても、その記憶は人々の中にさまざまなかたちで残り続ける、そのケーススタディとして興味深かった。/巻頭はやはり、モンゴル人至上主義はなかった、モンゴル人・色目人・漢人・南人という四階級制はなかった、といった教科書を書き換えるほどの研究の進展。集団ごとに長を任命し、その長を通して集団を統括。官僚の任用には根却（チンギス・カン一族との関係）が重視され、また参用といって一セクションに複数の集団から登用された人材を配置した、と。/教科書にものる駅伝制度ジャムチについては、問題があったことばかり史料に残るので、それだけ読むとタダ飯タダ馬にのっかり無理難題ふっかけ放題の輩に好き勝手される問題だらけの制度に思えるが、通常の運用に関しては資料に残らず、まだまだわからない点が多いのだとか。/モンゴル宮廷の女性の仏教や儒教を振興する活動も語られ、/”元代文学”というものは成り立たないのでは、断代史にとらわれるのではなく、言語圏に着目した文学史というアプローチが必要なのではという問いも投げかけられ。/詞集、散曲、雑劇を残した白樸は、元朝に仕えることを拒み続けたが、その生涯と態度から当時の知識人の一類型がうかがえ、また新しい文学ジャンルに取り組んだ点は、彼なりの元という時代を許容するすべだったのでは、と語られる/楊庭壁のインド洋航海で、インド、マレー、インドネシアなどの諸国から使者が到来し、また、中国ーイラン航路の安定に寄与した。/義経＝チンギス・カン説は成り立たないことはチンギス・カンの妻や子供といった家族の問題に着目すれば成り立たないことに触れて、これまでの諸作品を斬りつつも、瀬下猛の漫画「ハーン」が初めてその問題へのアプローチも見せるもやはり…といったところにも触れられ。義経＝チンギス・カン説も、歴史ロマンとしてあたたかい目で見ようという人もいるし、モンゴル帝国史研究の入り口にでもなってくれればとも語られ。/さまざまな論点、研究の進展、研究アプローチが語られ、興味の尽きない一冊だった。
 | 双葉社 発売日 : 2021-03-11 |
話の発端は、急な奏者番の退任で、必要となった参勤交代の費用。出入りの商人、親戚筋の大名、ことごとく断られ、ついには一門の総帥に、奏者番の退任は一門の意向でもあったはず、と腹を切る覚悟で詰め寄り、十両出させた世子正紀。それでも足りず、面々と描写される武士のカツカツの生活。一打逆転の策は、大奥の有力者滝川のバレたら改易ものの頼みを受け入れることだった…と。そこに逆恨みする者たちが襲撃をしてくるが返り討ちにし、また正紀も傲慢なだけと思っていた滝川の意外な一面も垣間見、その絆も深まったのだった、と。金策必須→指命発生→悪役襲撃→善玉返討→めでたしめでたしは黄金パターンなんだけど、ついつい手にとってしまうシリーズ。
2021年06月02日
2021年05月に読んだ本 (感想)
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1980年代後半、中華民国外交部に所属する外交官・宋瑞炎は南アフリカの首都・プレトリアの大使館に赴任する。/折しも祖国で民主化が進む中、瑞炎は、アパルトヘイト体制下で自らが『名誉白人』と扱われることに複雑な思いも抱く。/しかし、日米など友邦との外交関係を絶たれ、北京政府の外交攻勢がアフリカに及ぶ中にあって、南アの白人政府は中華民国との国交を維持する貴重なパートナー。瑞炎の苦悩は深まっていった。/そんな中、商都・ヨハネスブルグで、在留華僑同胞、そして白人政治家を巻き込んだ小さな事件が発生する。やがてその事件は折しも政治問題として浮上していたネルソン・マンデラの釈放も絡み、瑞炎を異国の政治混乱へと巻き込んでいく…。(Text-Revolutions Extra 紹介文より)/「名誉白人」として扱われたのは日本人、韓国人、台湾人。その中でなぜ日本人ではなく台湾人を取り上げたのか、と思ったが、"40年前に大陸から移ってきた、島内人口の2割程度を占めるに過ぎない外省人が、残る8割の土着住民・本省人の上に立つという台湾社会。南アは、そんな台湾と類似した構造になっている国と言えた。"(p.8)といったところに理由があったと思われ。冷静かつ柔軟な上司、外省人として将来を嘱望される後輩、ジャーナリストとなった学友、南アフリカの新進気鋭の政治家、南アフリカで黒人を食い物にする華人経営者、自分の腕をたのみかつ運動に身を投じる黒人技術者。外交官宋瑞炎を軸に、それぞれの人物の立場、希望を語りつつ描かれるストーリー。実質は小国だが中国を称し、しかし世界的には修好国が減る中、どんな国であろうと手を結ばなければいけないと思い極めている台湾政府。その外交官としては、政府の方針に従うと肚を決めても、心の中まで完全に言い聞かせることはできない。誠実な仕事相手であるアボット副大臣が、またアパルトヘイトという人種差別政策を擁護する政権の一員であることに、忸怩たる思いを抱いてしまう瑞炎。もっと小さなスケールに落としこめば、自分にとって誠実な仕事をしてくれてる人間が、他の人間に対してはひどいことをしているかもという可能性、あるいは、1980年代の台湾ー南ア関係ほどではないにしろ、何かしらの許容できぬ政策をとっている国のビジネスマンと仕事をするたびに、この人の国は…といちいち考えるだろうか、あるいは国家と個人はどこまで同一視できるものなのだろうか、というところにまで思いを馳せてしまう。もちろんみんなそうだから、他でやってるからという安易な落とし所に落ち着けることなく。その煩悶もありつつ、自己の職務にはまっとうに、時に、踏み込みすぎるところまでやったことにより、南アの政治家、南アの黒人技術者たる人物の信頼を勝ち得て、ひと筋の希望を見いだせるストーリーとなっていた。今回もアパルトヘイト廃止前後の南ア、蒋経国?李登輝時代の台湾にいるかのような読書体験が味わえ、またその時代についてもっと調べたい思いに駆られた。
 | 祥伝社 発売日 : 2021-04-24 |
写真を、雑貨を、好きなものを突き詰めて形にしていく友人に影響され、離れていた絵画をふたたび始めるエイジ。けど、それは美術予備校の教師に言わせると…。そして三人の住処に招かれた教師。再会と自分語りと。打ち上げ会うだけが正義じゃない、なにもしないが心地いい関係。最後の、弱さは愚かさだが、悪い予兆のようで気になり。
 | 星海社 発売日 : 2021-04-30 |
現場に鉢合わせした、先客の殺し屋に誘われて、殺し屋オフ会てなんだよ、と思ったらまた尖った子が二人来て、二人ともカナコを殺そうとするのに何故だか気に入られ…。そしてクリスマスはぼっち同士のコワモテの先輩と飲みに行き、最後はまさかの…。これ次の巻どうなってるのか。そととそこが繋がってたのはなぜ、と。
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-05-01 |
一果の両親と住む選択肢も踏まえた上のあらためての後継ぎたい宣言、職人政さんの若かりし頃のやんちゃな話と大旦那に救われた話、親の修行仲間の会に連れられてきた和が、父が不機嫌にしつつも楽しみにしてくれてたこと、和菓子への深い思いを若い仲間に語ったりの一幕などなど。最後は和があらぬところをちづるとかのこに見られて…と。
 | 講談社 発売日 : 2021-04-23 |
こ、これは…まんまと講談を聴いてみたくなった！しかし、講談社の講談が講談から来てたとは。その一筋縄で行かぬ経緯は巻末参照。あこがれのかつての講釈場の経営者に投げかけられた一言は、泉太郎にどんな波紋を。そしてそのわけは？と
取られた対策は、清掃消毒による清潔の維持、不潔の排除、 混雑解消、悪臭除去、上水へのコレラ菌混入→断水。発症しない保菌者がいるということは、細菌の侵入のみで発症しないのでは、ととらえられた。/患者の隔離措置/従来のコレラ対策(混雑解消、悪臭除去)が細菌学導入により代替されるのでなく追加された。/細菌の生育を阻む健康な身体の獲得を人々に求めた。イズミルのような地方社会では、衛生行政を主導した文民医学校出身者が、日頃の診療や出版通じて人々に健康改善促し地方社会に生きる個人を国家全体の衛生政策に組み込む役割を果たした。オスマン帝国近代の、身体の国民化という流れの一環としてもとらえられる、と。
「盆の国」のスケラッコさんの日常コメディ。…まあ紫の猫とビールと同居ってあたりは非日常かもしれませんが。猫のニヌキの傍若無人ぶりが堂に入ってる。公園でダンボールかぶって寝てたら子供に声かけられ、アイス一口くれよとねだったら、4分の3ぐらい食べちゃうとか、一週間分のポテサラ一気にたべちゃったり、せっかくゆでたそうめんごっそりもってったりとか。ニヌキ、ビールが吸い寄せられるようにはいっていったからデマエもつられて入っていったビアガーデンのシーン、よかったなあ。
「盆の国」のスケラッコさんの日常コメディ。コロナ編ともいいましょうか。リモートワークになったデマエさんが、なんとか悪戦苦闘してせまい家のなか、猫のニヌキさん、ビールさんと暮らし。ニヌキさん、気に食わないことあると飲み物吹き出すのは健在。ひそかにまかないつきの出前のバイトなんかはじめたりして、出前先でカツ一枚ちょうだいと言ってことわられたりして。なんだかんだいってニヌキさんに釘付けです。
 | 丸善出版 発売日 : 2020-01-31 |
読んだのは、領土の罠と領域性のイデオロギー、フェミニスト地政学、ポストモダン地政学、オルタナティブ地政学、戦争と性暴力、地政学と国家中心主義、地政学とスケール、批判地政学、オトゥホールの批判地政学、感情・情動の地政学、ポスト・ヒューマニズムと複雑系の地政学。/気になった論点は以下。/スウェーデンとカナダがフェミニスト的な外交。/領土の説明に、女性専用車両、沖縄県を例示。/モダン地政学＝現状維持の世界認識、権力者による世界構築に手を貸す知の制度。ポストモダン地政学＝権力者に抑圧される人々の立場に立ち権力に抗い既成の世界をよりよい方向に導くための方策を模索。/オルタナティブ地政学＝反地政学、下からの地政学/テイラーは世界から都市にいたる政治経済的過程を単一のスケールからではなく世界経済・国民国家・地方という三層のスケールの関係から捉えようとした＝マルチ・スケールのアプローチ。/国家中心主義への批判から人間中心主義への批判まで目を向ける。
 | 柏艪舎 発売日 : 2020-10-28 |
ハゲワシと少女の写真でピュリッツァー賞を撮った写真家。フツとツチの対立からの大虐殺の中ルワンダ中心部に残り続けた老人。南アの現実をみつめつづけた作家クッツェー。真実和解委員会の理不尽さ。従前のイメージと違って、気安く頼み事できない、お金のためより好きな人と働きたいアフリカ人の存在。ポルトガルに引き上げる親族に取り残されアンゴラに独り残った老人。チェ・ゲバラとルワンダ王族など。個人的には、アパルトヘイト廃止前後の南アと台湾を描いた高森純一郎「プロテアの咲く大地」を読んだ直後だったので、まさに求めていたものといった感。ものごとはそうそう単純でも一面的ではない。周囲からの批判に耐えきれず自殺したとされるピュリッツァー賞カメラマンの周囲を取材をすることで本当にそうだったのかという思いは募り。タイトルになった「絵はがきにされた少年」も、ヨーロッパの白人が勝手に撮影してヨーロッパで流通していたことに撮影者が憤慨、などというものではなく、かえってこんな昔の時代の自分を見れるなんてと喜ぶ面もあったり。そして図太くて自己主張が強くて…みたいな先入観をくつがえすアフリカの人々。やっかいなのは、はっきりと言い切れないことに、意味づけを求める人が結構いることだ。自分で納得できないことは胸の奥につかえる。なら、いっそのこと「これはこういう意味だ」と勝手な解釈を加えて、つかえたものを流してしまう。その方が楽だ。(p.103) 安易に意味付けに走らず、わからなければ自分の中に置いてうまずたゆまず考え続ける、そういったことの大事さを改めて気付かされる。/以下備忘録。/"じゃあ、なぜ撮るのかと聞かれればこう答えるしかない。私はただ、自分の写真が載るのを見たいだけだと"(p.15)/ クッツェーについて "「不平等はけしからん、不平等をなくそう」と真正面から叫ぶことの空しさを彼は幼いころからの体験で心得ていたのだろう。それでも、単に目の前の現実に甘んじ、それを享受して暮らしてきたわけではない。"(p.38)。"人は国家が犯した罪からどこまで自由になれるのか。クッツェーの作品の底には、この問いが流れている。個人の身にたまたま起こったことを、社会の問題にすりかえた瞬間、個人の自由やその可能性は薄まってしまう。"(p.81)/助けるということは無償のようてでいて、実は助けられる側になんらかの見返りを求めている。援助には目に見えない依存関係が隠れている。誰かがごく自然に「アフリカを救わなくては」と考えた途端に、その人はアフリカを完全に対等な相手とはみなさなくなる。(p.231)
 | 筑摩書房 発売日 : 1996-12-01 |
近藤聡乃「ニューヨークで考え中」に影響を…という一文を見て手に取る。ちょうどバブルの終わりかけのころ、おしとやかに見られがちだけど茶目っ気あってたくましいところもあるるきさんと、常識的なようでいてちょっと抜けたところもある友人のえっちゃんの、つかずはなれずの距離感がいい。ツッコミに、急にゴルバチョフの改革スピードとか出てくるあたりとか。当たり前のように黒電話で会話して、ちょっと近くまで来たからとふらりと顔だしたりとか、障子をはってたりとか。東京近辺、あのころはこういうライフスタイルだったのかしら、と思ったり。
 | リイド社 発売日 : 2017-11-30 |
最近口をきいてくれなくなった娘のことが気にかかって、部屋に忍び込んで本棚の本をチェックする、速読術の得意な父親。娘の本棚にある作中作のぶっ飛び具合もいいですが、お父さん、真夏に締め切った部屋で長時間滞在して空気の入れ替えもせずに、娘さんが気づかないとでも…と思ったり。
 | KADOKAWA 発売日 : 2020-02-12 |
交差点でバイクで並んだ時に寒そう！と言われたのが縁で、とか、定食屋さんで、別の人が忘れたと思った店員さんが、自分のカバン持ってすごい勢いで走ってったのに気づき、それを追っかけていき…という縁だったり。なるほど、それは気になるかもで展開から、火事から愛犬を救い出す消防士、飼い主と…と思ったら、それをみていた野次馬二人が結婚したみたいな、そっちかよという展開まで。巻末近くの、男女それぞれの視点からのもよかったり。あと、女子がだいたい若林さんなのなんでだろ。
 | 筑摩書房 発売日 : 2014-01-08 |
個人的には、面白い服、密室のコマーシャリズム、新時代小説、待ち合わせ、永遠に続くもの、がベスト５かな。ただ、帯にある書店員さんがめちゃくちゃオススメ、というほどではなかったかな、と。打率的に。「自分からアクションを起こす時は、第一印象を終わらせてからでないといけない」「携帯電話のせいでいろんあことの意味が変わった。友達、待ち合わせ、手紙、海外旅行、音楽…」は印象に。あと、愛・地球博にあわせた金シャチ・ルパンコンクールなんてものがあったとは寡聞にして知らずでした。
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-01-12 |
 | 太田出版 発売日 : 2014-02-12 |
「桶屋さんのデコルテ」待ち合わせに遅れてしまった桶屋さんの、コンタクトを洗面所で落としたことからはじまるあれやこれやが濃密すぎて、途中、眼鏡の人と呼ばれふりむいたら別の人でバスを一本のがしたり、気まずくてバスを降りたり、強盗を投げ飛ばしたり…最後はお祈りしたら扉が開いて…と。「エレガのほくろ」書店据え付けのエレベーターガールのうなじのほくろをうっかり押してしまうと…。「姉の薬指」事故でなくなった女性の婚約者と弟が、弟が指輪をにぎりしめてると思っておこなった対話が、実は小さな骨で、それをみて今まで冷静だったのに堰を切ったように悲しみを止められなくなってしまった婚約者。「母のまつげ」モテてモテて仕方ない父と終電後のタクシーでばったりあった娘が話すうちにこの人は実は、わざわざ近くでばれるような浮気をくりかえし、そこにきれいに化粧した妻が乗り込んでくるように仕向けていたのでは、という疑い。「幽霊の二の腕」中学生の主人公が、銭湯で出会った同年代だけど幽霊だと思っていた女性が実は…。「先輩の耳たぶ」卒業を機にピアスをあけ、先生に告白しようとしていた女子生徒が、先輩の持ち物を取りに来た後輩野球部員にピアスの穴をあけようとしてもらおうとするやりとり。やるやらないで押し問答のあとのアクシデント。結局いいだせず、最後の、ノーコンが愛にあふれてて。「兄嫁のつめ」ネイリストの資格試験のモデルにかけつけてくれたけど、マイペースすぎてイライラしてしまう兄嫁が実は…。「キミの脚」ふられた彼女にプレゼントもお金の使い方もまとはずれと罵られ、買った高級ヒールを誰かにもらってほしくて、町を歩いてた子に七万円渡すからもらってくれ、目の前ではいてくれ、と。普通にどんびきされてもおかしくないけどこの度は…と。「ふたごのスキマ」いつもワンセットに見られてたのに、片方は形から入って別々になろうとし、もう片方はときがたてば別々になるんだよと達観していて、けど通じ合うところは通じ合ってて…
 | リイド社 発売日 : 2021-04-24 |
原作は遠い昔に読んだことあり。記憶に残るのは女子大生と落語家が挑む日常の謎ということだけ。織部の腹切りの明快さ、砂糖合戦、赤ずきんに仄見える人の闇、温泉地で小さな子を保護する話のやりきれなさ、そして、表題作の真心を無駄にはさせやしないという真摯な思い。作品と絵柄もまたよくあっていたように思う。
 | KADOKAWA 発売日 : 2020-08-04 |
毎日過酷なバイトに身を投じながら、家にかえりささやかな、けれど歓びに満ちた食事をとるのが生きがいな主人公。ちょいと簡単料理、疲れたときのリーサルウェポンに、と思ってしまう。いくら、何回も登場するところをみると相当好きとみました。ひとつぶひとつぶ命をいただいている実感、と。バイトの息抜きに求人情報を見る無限ループ。ひんぱんに挟まれるアメリカギンヤンマからヨトウムシまで動物への熱い思い。簡単な仕事ほどクビになりやすく、過酷な仕事ほど達成度が低くても許容されやすいという職業観。過剰なほどの密度のモノローグ。いつまでも読んでいたい気持ちに。続刊はないのでしょうか。
 | 宝島社 発売日 : 2017-09-08 |
50代デザイナー、こだわり持って仕事して、休日も過ごして。けど、時に勘違いして、期待しちゃったりして、ダダ滑りして痛い目見たりして煩悶したり。その作者のえぐり方がもう…。ただ気が利かないと思ってたアシスタントが実はすごくいいやつだったり、敬遠してた同期のチャラいデザイナーが業界全体の底上げ図ろうとする熱いヤツだったり。主人公のカッコ悪いとこたくさん描いたあとに、最後の最後これはずるいよカッコよすぎでしょというしめくくり。
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-01-12 |
1-2巻読了。ロンドン市長殺人事件。犯人に仕立て上げられそうになる南アジア系の学生アル・アドリー。過去に自分が摘発した事件は冤罪だったのではという思いの消えないエリス刑事。真犯人を探そうと独自の調査を進める。明かされる本人も知らなかったルーツ。周囲に伸びる影。まだアルを追い詰めようとする勢力の正体は明らかにならず…と。厳しくも公正なエリスの同僚ユキの造形も注目。全て話すか私に頼みごとしないか、どちらかにして。
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-04-23 |
家具にこだわりありまくりで顔だけよくて家賃は女の子に払ってもらいたい寄生系元カレに家具ごと突然出ていかれ、DIYに目覚めたキイちゃん。数々ならこだわりDIYを披露するも、また元カレと再開し、まさかの元サヤ？と思いつつそう一筋縄ではいかず。元カレ友人のひろくん、いい味出してるなあ。
 | ゴマブックス株式会社 発売日 : |
円谷幸吉。片足が曲がっていたことは知らなかった。そこからくる腰への過大な負担。そして校長の無理解から来る結婚破談、恩師の左遷と支えを失っていく様が描かれ。無声映画の雄グリフィス、「国民の創造」「イントレランス」は観てみたい思い。マリリン・モンローも、彼女に投げかけられた心ない言葉の数々は記されていたが、アーサー・ミラーの最後の脚本の映画から死までのあいだをもう少し知りたいように思った。
 | 産業編集センター 発売日 : 2021-04-15 |
ぴよ、ジャックは相変わらずいいこと言うなあとか。インターンを経て、新入社員もはいり、先輩社員として奮闘したり、新規事業立ち上げたり、取引先が悪巧みを画策したりなどなど。闇落ちしそうだった失業者鳥を正しい道へ引き戻したまだしゃべれないキャロルちゃん。今後が楽しみです。
 | 東京創元社 発売日 : 1994-03-27 |
漫画版を読んだのを機に原作再読。漫画版と原作の違いを読み比べるのも楽しく。それ以外では「砂糖合戦」での、マクベスへの見方がおもしろく。マクベスの立場にたち、一番気に入らないのは三人の魔女、次にマクベスを倒す連中。そそのかすだけそそのかして途中退場のマクベス夫人は許せない。マクベスはバンクオウを養子にしちゃえばいい、あるいはマクベスがバンクオウの養子になればいい、と。また「胡桃の中の鳥」の引用合戦も。「世の中の人は、男のペダンティズムは許容してくれる。老人の醜さを許容するように。でも女にはそのどっちも許さない」（アルベール・ティボーテ）/「どうです、人間というのも捨てたものじゃないでしょう」（円紫）/小説が書かれ読まれるのは、人生がただ一度であることへの抗議からだと思います。（北村薫）
 | KADOKAWA 発売日 : 2018-11-10 |
やがて君になるスピンオフ。佐伯沙弥香を主人公に小学校時代、好意を向けられ逃げ、中学校時代、先輩に好意を向けられ受け入れて、自分の中で大切なものとなったのに、遊びだからと切り捨てられ。そして高校。七海燈子と出会い、生徒会に入るところまでが描かれ。漫画ではさらりとしか触れられてないところを深く掘り下げられていて読み応えありました。
 | KADOKAWA 発売日 : 2019-05-10 |
漫画版のダイジェストにあわせた、佐伯沙耶香視点の心情。漫画版ではほぼ語られなかった、小糸悠が入学してくる前の佐伯沙耶香、七海燈子の一年間。そして、漫画版の少し先まで描かれる。「私だ。私なんだ。私が選んで、私が望んで、今の私がいる。」(p.179) 平行線として、どこまでも付き添う。（略）そうして側にいれば、いつか。いつか、燈子が変わった時を感じて、動ける。(p.181)
 | 文藝春秋 発売日 : 2009-06-10 |
宇野常寛「遅いインターネット」つながりで。/ダートン・ホール大学の1969年度同窓会と、参加者の学生時代、あるいは現在が交互に語られる。/ベトナム戦争で足を失ったもの、ベトナム戦争の徴兵から逃れるためカナダに亡命したが駆け落ちを望んだ彼女はついてきてくれずそのことをいまだに恨んでるもの、駆け落ちを断って結婚し堅物の夫・優秀な息子たちと裕福な生活を送るがガンで片胸をとってから喪失感になやむもの、二重結婚生活をおくるもの、足を失った夫から逃れるように去っていったもの、事業で大成功をおさめたのち大嘘をついて絶世の美女と結婚したがそのことがバレて一生逃れられない思いをもつもの、目の前で不倫相手が溺死してしまったもの、子供の頃からの夢だった牧師の職を投げ打つのがわかりつつ人のうちに忍び込んだもの、反戦運動や劇団活動に挫折してハンサムで裕福な男と結婚したものの長い長いモラハラを受け続けたもの、50を越えて夢見た結婚生活を手に入れたのにカジノでの大勝を機に二週間ももたなかったもの。それぞれの人物が来し方行く末を語り、わめき、くっつき、離れ、寄り添い、元の生活へもどったり、新たな道を踏み出したり。過去の選択を悔いたり、間違っていなかったと励まされたり。愛する人にずっと言えなかったことを告白して赦しを乞うたり。ずっと言えなかった思いを告げたが、友人止まりで、けれどもとても信頼され帰りの飛行機にともに飛び乗ってくれるぐらいの思いだったり。誰もまっさらな完全無欠な幸福をかかえたものなどおらず、悩み逡巡し、それでも…という思いに。/一兆年くらいは愛なんてそこらじゅうにふんだんにあった。（エイミー）/殺戮のおかげで私の人生ははつらつとしたものになった、戦争がいつまでも終わらなければいいのに。(ジャン)/ドロシーが相手だと、人は語られざるものに対して注意を払っていなくてはならない。消去と削除に対して。/私がいらいらさせられるのはね。みんながいまだに、60年代にべったりしがみついていることなの。(ドロシー)/彼だってひとりの人間だったのよ。そこには熱ってものがあったの。（ポーレット）/戦争反対とか、私たちの外側にあったもの。私たちは世界を変革しようとしていた。でもそれでどうなったと思う？世界が私たちを変革しちゃったのよ。（エイミー）/赦しというものの素晴らしい点は君がそれを自力で勝ち取るわけじゃないということだ。それは無償で与えられる。（デイヴィッド）/
 | 幻冬舎 発売日 : 2020-04-15 |
ミーハー心を抑えきれずに手にとってしまった。A song for xx、Depend on you、TO BE、appears、Boys & Girls、vogue、M…あたりは、耳にも馴染みがあって、その背景がこういった感じだったのかなと想像しつつ、あくまで事実にもとづいたフィクションとあるけれども。"音楽と歌と光と人と、それが混ぜ合わさると、人間はこんな気持ちになるんだな"(p.33)というのには共感。
 | KADOKAWA 発売日 : 2020-03-10 |
漫画版のすごく先まで、佐伯沙耶香大学２年生の時代が描かれた後日譚。/向けられた気持ちに対して、軽くうけながしたり、なかったことにしたり、いい加減にあつかったりせず、じっくりとあらゆる角度から自分の気持ちと向き合い、友人にも相談し、取り入れ、考えて、結論を出す、真面目で誠実な態度だなあ、とまぶしく読みました。/「何をやっても、変わっていってもいいって侑が言ってくれたんだ」(燈子)(p.218)
何年ぶりかの再読。大昔、塾に通ってたとき、塾での友人に絶対面白いからとオススメされたのが最初。３０年以上前の作品、今となってはその表現マズイですよねというのもあるけれど、登場人物たちのハチャメチャぶりは相変わらずで、そこは楽しめました。個人的には、細部にいたるまで覚えていてびっくり。ただ６巻冒頭あたりから、苦しくなって、波乱のないところに波乱を起こそうと無理に舵を切った感はあり。
 | 中央公論新社 発売日 : 2001-11-01 |
夜のように美しい小説、という背表紙に引かれて手にとってしまう。「コーリング」「残響」の二編。一見とりとめもなく、それぞれかすかにつながっているようなそうでないような人物たちが、彼らの日常や周囲の人を語ったり、観念をもてあそんだりしている印象。なにごとも起こらず。二編を入れ替えても、つなげても、断片を混ぜ合わせても大差ないのではないか、と。ただそこで語られる観念がキラリと光って魅力的に見えるケースもあり。/むなしいだのさみしいだのはある年齢を境に意味をもたなくなる実体のないもの/人って、本当にしゃべりたいことと別のことをしゃべっちゃってるものだからね/あれから半年ちかくたついまになっても、のうちのどれという結論を出さずにそのまま持っている/自分でいちいち全部考えるより「わかっちゃうこと」があるんだったら、わかっちゃう方がいいかもしれないとあたしは思うの/事後に再現できることとこの世界に物質的に記録されることが同じなのか俊夫にはわからなかった/「いつも心の中でその人に話しかけててね（略）やっぱり一人で感じてるのと全然違うのよね。心の中で話しかける人がいるとっ、ずっと楽しくて、感情が鮮明になって（略）」/ゆかりは仏教学の先生がインドで山に日が沈んでいくのを見ていたときに突然、それまで頭の中で別々のところに仕舞われていた仏典の言葉が結びついて、意味が明瞭になったと言っていたことも思い出し、自分には真知とかあの先生のように風景が違って見えるような専門知識がないと思ってとても残念になった
 | 中央公論新社 発売日 : 2004-06-01 |
シリーズ8冊目にして最終巻。扱われているのは、ホメロス「オデュッセイア」全編と著者が気に入っている単発のギリシア神話いくつか。ちょっと前に「オデュッセイア」を四苦八苦しつつ読んだ身にはすっと入ってくる内容でした。オデュッセイアを苦しめたポセイドンの「自分の力だけで生き抜いていけると思うのは傲慢の極み。人間はすべて自然に、神によって生かされているのだ。大自然の力そのものであるわれわれ神に対して感謝と畏れを忘れているから思い知らせてやったのだ」というのは、当時の神々、人間、自然感が凝縮されていると感じました。著者は、古き良き神々の時代と新しい時代の生き方のせめぎあいを見たとのこと、その点は納得。
 | DU BOOKS 発売日 : 2021-04-09 |
母に先立たれ父に捨てられた三姉妹が明るくたくましく暮らすストーリー。なにげないやりとりがすごくいい。そして、君臨するマルセイバターサンドの威力といったら。
 | リイド社 発売日 : 2021-04-27 |
幕末も最末期から、坂本龍馬暗殺、戊辰戦争へ。長崎もそのあおりをくらい、幕府と薩摩で衝突かと思いきや、これからも治安維持にあたってほしいという説得で和解。岩次とたまをの視点で主に語られる出島。日本人にはまだ許されてなかったゆえのキリシタン狩り、岩次が祖母から聞かされたペテロが三度知らないと言ってしまった話、など、印象に。大火で焼け出された岩次と百年。続きはどうなるかと。
 | 双葉社 発売日 : 2020-12-10 |
ここまで来て改めて、正紀は、商人探偵剣豪世子だなとの思い。尾張家のはからいで、大奥の有力者滝川とつながりが出来、その拝領屋敷を船問屋として再生するために奔走、一方尾張一門の三宅家が三方相対替するのにあたり不審な背景の洗い出しに奔走。こちらは結果的には苦い思いが残るものだったが。毎回のように繰り広げられる大立ち回りがこの巻は地味だった印象。三方相対替という制度も初めて知り、また、遠洋航路と江戸近海の回船では特色が違い、大水害の時にその差が出たということも初めて知った。大奥の有力者にあう道中、緊張でかちこちになっている正紀に、父正国が「顔がこわばってるぞ。笑え」という無茶振りにくすりとしてしまった。
 | 太田出版 発売日 : 2013-02-05 |
泣かせ、笑わせ、楽しませ。芸歴10年以上で芽のでない漫才コンビイエローハーツ。底抜けに陽気で勢いはあるけど考え無しで働かず彼女に働かせ借金を重ね飲みに出るクズな甲本が、クールな相方田中に持ちかけたのは「交換日記」。ほぼほぼ交互に書かれる交換日記だけで綴られる物語。最初は甲本が大乗り気で田中は嫌ですと断ってたのに、いつのまにやら田中が攻める側にまわったり、交互に入れ替わる波のようにいままで言えなかったこと隠してたことをぶちまけ、ぶつかりあい、そして…。書き手まであざむき、こう来たかという波乱万丈を経ての最後の漫才まで、勢いよく、けれど弱いところもダメなところも含めてぜんぶ愛しくなってくる。うまいなあ、やられたなあ、と思ってしまう。
 | 河出書房新社 発売日 : 2017-04-20 |
オランドのあとが、マクロンではなく、2022年、ムスリムのモアメド・ベン・アッベスがフランス大統領になった設定で、ユイスマンス研究者の大学教授を主人公に書かれた物語。変化とは、急激にではなく、気がつくと起こっていて、手もなくからめとられてしまう、そんな読後感。解説の佐藤優は、知識や教養はもろく、人間が自己同一性を保つのに無力だ、とソ連崩壊時の知識人を例にひくが、おそらく日本の1945年の敗戦時も同様だったのだろう。では何をもって人が人の自己同一性を保つのか、また時代が変わったとしても保ち続けることは是か、時代のせいにしてしまうのは個人のよって立つところを否定し…ととめどもなく思いがころがっていく。そしてタイトルの含意が語られる時に、O嬢の物語が出てくるとはおもわなかった。/「過去は常に美しく、未来も同様なのだ。ただ現在だけが人を傷つけ、過去と未来、平和に満ちた幸福の無限の二つの時間に挟まれて、苦悩の腫れ物のように常に自分につきまとい、ぼくたちはそれと共に歩くのだった」(p.280)
 | 文藝春秋 発売日 : 2020-10-07 |
軽快なキューバ、モンゴル、アイスランド旅行記なのかな、と思って手にとったら、新自由主義、生き辛さ、家族観、結婚観まで思い巡らされた一編だった。/キューバでガイドブックがお金の説明を間違ってたせいで、チップに現地の月収一ヶ月分を置いてきちゃったり、それをガイドに話すと無口で人見知りなガイドがお腹がよじれるほど笑ってくれたり、ハバナのジャズクラブで遠くから来た有名人がいる…とプレイヤーが言い、紹介してくれると思い椅子に手をかけてたら、ボン・ジョヴィのドラマーで、すんでのところで…てシーンや、アイスランドの最初の夜のディナーが自分以外みんな知ってる同士で腹痛のふりして部屋に帰ってきたり。そんなところが楽しく印象に残り。/「血だらけになって、もう闘えなくなっても諦めない。それがキューバ人の魂だ」（エダジマ）/モンゴルの13世紀村で、金やフォロワー数のような数字に表されるようなものではない揺るがない心の居場所を作りたいと思った、てところ/死にたくないけど生きてるって実感したい。たまには瞳孔が開くことでもないとやってられないのである/てところも好きなとこでした。
 | 小学館サービス 発売日 : 2019-04-12 |
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 | 文藝春秋 発売日 : 2020-10-15 |
ご自宅を改装された小さな博物館を訪れたら、二日前に館長がなくなってて…それでもコレクションを見ていくクリハラさん。コレクションの行き先や相続剤の話までしてきてかえってくる、という導入からパワフル。ニホンドウ漢方ミュージアム、薬膳ランチが食べられて身体によさそうなお茶が買えた記憶。東京都庭園美術館のアールデコ、堪能してみたい。個人宅の玄関に展示されたつまみかんざし博物館。鈴木信太郎記念館の鈴木信太郎はフランス留学で集めた貴重本が船火事で焼けたのを教訓に、空襲にあっても焼けない書斎をつくり、増改築を経て記念館に。群書類従を編んだ塙保己一史料館、塙本人のことをもっと知りたくなる。東洋文庫ミュージアムは展示も図録も圧巻で圧倒された記憶。昭和のくらし博物館、昭和の普通の暮らしを体感してみたい。壜の小さな博物館ボトルシヰアター、神秘的な光につつまれてみたい。曼荼羅美術館、空海展を堪能したことのある身としてはぜひおとずれてみたい。といったあたりが心惹かれたところ。やはり個人宅などのこじんまりとしたところは個性的で心惹かれるところが多かった印象。
 | 祥伝社 発売日 : 2020-07-08 |
 | 祥伝社 発売日 : 2021-05-08 |
1-2巻読了。女子高を舞台に、生徒たちと星先生、小林先生、中村先生ら個性的な教師陣がくりひろげるミクロな事件のつらなり。おっかしくって、あっという間に２周読んでしまった。猫型ルンバを買ったら愛着が湧いて心の治安が改善した中村先生のエピソードが一番好きでした。他にも、星先生観察日記つけてたら間違って先生に提出。授業中に書いてた人がすぐに死にがちな漫画を先生にみられ、アドバイスをもとめる生と。授業中に結婚指輪がみとがめられただけで学級崩壊。早朝の列車と恋とうどんまん。肩にクワガタのせた卒業アルバムから都市伝説。などなど。無邪気さと残酷さとお茶目さとクールさとがまぜあわさって、結果可笑しいみたいな気持ちに。
 | 日本文芸社 発売日 : 2008-02-18 |
失業失恋のダブルパンチな主人公が、ふと入ったタイ料理屋のおいしさにやられ、レジの求人みて勢いで採用。いかついマスターとパワフル美女なウェイトレスのコンビのお店で、悪戦苦闘。料理のことは、経験はないけど、一度やってみせれば覚えられて、お客様にも通り一遍ではない愛情をそそぎ。お客さんがスパイスの効いた料理を食べたときの表情が好き。それだけでなんだか救われる気持ちに。マスターとウェイトレスの謎は謎のままどんどんイメージだけ膨らんでいったままあっけなく幕が閉じ。
 | KADOKAWA 発売日 : 2019-08-10 |
前半が林くん、後半が二階堂くんを軸にした学園モノ連作短編集。二階堂くんは…メガネをはずすと美少女という漫画は古典的少女漫画の王道設定かと思ってたけど、まさか性別も意図も逆に運用した設定でくるとこんなに可笑しいとは。そこに、まわりの評判など意に介さず、自分のマイペースな好奇心だけでつっこんでいく目高君の存在がgood。林くんは、男子校で自分のことかわいいとゴリ押ししてみたり、中学時代のあだなが仮釈放だったり、勝手に美術部のキャンパスで干し芋つくったのがばれて、悪い子としたときの犬みたいに目だけそらすも許されず、絵のモデルとなることを承諾し…とマイペースでシュールな魅力でまわりのひとたちを引きつけるところがgood。
 | 講談社 発売日 : 2020-07-15 |
シリーズ第二弾。オリーブの丘が放った刺客「ボロネーゼドリア」が298円とサイゼリヤより1円やすいのに涙を誘われたり。沖縄の天一でおそらく米兵さんたちが「ギョーテイ」「ギョーテイ コッテリ」とこなれた注文を唱えてて、将来国に帰った時に社会復帰が心配といらぬお世話を。ゴーゴーカレーの金沢ではなく東京発祥で、金沢上陸の、NY出店というとびっぷり。美味しく安くを追求してつぶれてしまった牛丼太郎から飛び出した三人が継いだ丼太郎の物語。といったあたりが特に印象に。第二弾でネタがつきるかとおもいきや、モス、松屋、ミスド、串カツ田中、すた丼屋、五右衛門、大阪王将、家系ラーメン、コメダ珈琲店、すしざんまい、とけっこう馴染みがあるところも残ってたなあという思い。
 | KADOKAWA 発売日 : 2019-11-28 |
全部自分でやったら、自分のキャパシティまでしか物事が成長しない。「経済的・精神的に余裕がなくなる」「自分には出来ないことをしている人を見ると劣等感で傷つく」「傷つきたくない文化圏では傷つけられた場合ぶん殴っていいっぽい」「めちゃくちゃぶん殴る」という昨今のTwitterの苦手な空気感。完全な自由とは合理性が強く働き、一部の強者が有利になり、一部の弱者への救済措置がなくなりやすいもの。何かに対してお金を使う、「いいね」を押してみる、そういう一つひとつのアクションが実はとても大切な意思表示。といったあたりが印象に。
春のおとずれ編。特にウサギちゃんが好きな季節とのことで、季節も日々もいつくしむような4コマに目がいきました。うれしくても、かなしくても、目の端に涙がまるくたまるウサギちゃんとオバケちゃん。風邪なのにカレーをねだり否決されておふとんでメソっとしてたおばけちゃんが、ただよってきてカレーのかおりににこっとするとこ。ウサギちゃんが占い師さんにした相談が、だいこんがたくさんすぎて…で、回答がもらってあげましょうなとこ。寒くて、みんなでおしくらまんじゅうするつばめ通信社。春のひだまりでうたたねするウサギちゃん。といったあたりがこの巻では特に好きでした。肩こっていたというがオバケちゃんの肩はどこだ！（笑）と思っちゃいました。
 | 講談社 発売日 : 1997-07-18 |
ヨーロッパの「発見」までアフリカには歴史はなかったなどという言説を一刀両断、それ以前のアフリカ世界にも多様な歴史活動、生態、交流があったことを十二分に説明を尽くしてくれる。サハラが牧畜可能だった時代。「アフリカのバーミンガム」と呼ばれるほど製鉄のさかんなクシュ王国のメロエ。1150年から100年ほど存在した南部アフリカ最初の大国家マプングブエ国。サハラ奥地のユダヤ人。無頭制社会のヌエル人。金で栄えたガーナ王国。トンブクトゥ、ジェンネの発展。などなど。ナイル川、ニジェール川、ザイール川など5つの大河にかかわる世界で切り取った論説も意欲的。/ヨーロッパとアフリカの戦い、植民地時代、アフリカ諸国の独立、現代までについても興味深い論点多数。/歯をとがらせたり、口に皿をいれたりの奇習は、奴隷狩りを逃れるためだったとは。トゥクロール、マーシナ、サモリ、ソコトなどの帝国についてはもっと知りたく思った。/連れ去られたアフリカ人からの視点、「オラウダー・エキアノすなわちアフリカ人グスタブス・バサの生涯の興味ある物語」 は手にとってみたい思い。二度の世界大戦で宗主国に兵士として動員されたアフリカ人は、外の世界で見聞を広め、アフリカの現実を広い視野でみつめ、支配者の白人も同じ人間だと知った。/トライバリズムとナショナリズムのダブルスタンダード。なぜナイジェリアはナショナリズムとして称揚され、ビアフラはトライバリズムとして排斥されなければならなかったのか。判断する強者側の論理ではないか、と。/近代化路線の行き詰まりによるアフリカの伝統への回帰。1991年、エチオピアでの単一のネイションを前提としない国家の成立。農耕する都市というのはアフリカ都市の原像。アフリカの地域共通言語でまとまった言語世界という未来図。/24年前の本なので、その後の後日譚で評価が変わったり、研究が進展した面もあると思われ、そこは改訂新版にあたっておぎないたい。/他に手に取りたいと思った参考文献：(1)嶋田 義仁 マーシナ帝国物語 季刊民俗学46 (2)嶋田 義仁 嶋田 義仁の牧畜イスラーム国家の人類学―サヴァンナの富と権力と救済(3)岡倉登志 二つの黒人帝国. アフリカ側から眺めた「分割期」
 | 朝日新聞出版 発売日 : 2016-02-27 |
前半1/3で、大阪夏の陣の家康と真田の対峙が語られ、その後、関が原に真田家がいたならば…という悔悟が語られ、そこから時はぐっとさかのぼり1582年武田氏滅亡、向井佐平次とお江の逃避行、真田親子が武田勝頼の死を知る所まで描かれる。
安野モヨコ「監督不行届」でカントクくんが、ハマっていて、セリフを口にしていたのを見て、手に取る。どこからともなく、江戸時代と思われる日本にやってきたアレクサンダー南無と弟子のアミ。悪代官や盗賊、悪いやつらが無辜の民を苦しめていると知れば、痛めつけ、時に命を奪う。/「わたしはいまだ悟りなく悪を許すことができない わたしにできるのは悪をほろぼすことだけだ」「人はその行いによっていやしき者となりまた聖者ともなります」/ここでは百戦百勝だが、戦い続ける限りいつかは敗れ去るときが来る、また俯瞰でみれば巨悪は出てこず、小悪党どもをいくら倒し続けてもきりがなく、どこへ向かうともなく。
 | コアミックス 発売日 : 2021-05-20 |
誕生日デートから、会えない時も合間合間に電話する約束を。そして、三年生は進路のことも。民間、公務員、進学、愛媛、広島、その他の大都市といろいろ考えて、と。初々しすぎる、生真面目すぎる、と色々ありつつも。みまもりたくなる。
 | 秋田書店 発売日 : 2021-05-14 |
勤め先が倒産して無職になったこいぬがみつけた新しい仕事は「シールはり犬」。ただシールを貼るだけの簡単なお仕事と思いきや、道行く人に怪しまれたり怒られたり、逆にファッションやアートと喜ばれたり。断れない性格、気になるポイントが人とは違いすぎる小さな犬のまきおこすお話にくぎづけです。
 | 新潮社 発売日 : 2016-09-28 |
みみずくは黄昏に飛びたつ: 川上未映子 訊く/村上春樹 語る (新潮文庫)を読んで、再読したくなる。/小説家は他業種からの参戦に寛容/小説を書くのは効率が悪い作業。それは「たとえば」を繰り返す作業/小説をひとつ書くのはそれほど難しくないが、ずっと書き続けるのは難しい/僕らは論というものを本当はそれほど必要としていないのでは/僕が心がけたのは「説明しない」こと/「書くべきことを持ち合わせていない」ということは「何だって自由に書ける」ということ/ある意味においては、小説家は小説を創作しているのと同時に、小説によって自らをある部分、創作されているのだ/といったあたりが、印象に残る。そしてやはりあとがきでは、自分は基本的には「普通の人間」だ、ということが語られていた。
 | 文藝春秋 発売日 : 2014-11-07 |
詩と寓話と。自分の前に次々現れるドアを開けつづけ最後は…「立ちはだかるドア」。愛する人から最後に残されたごめんねの意味を知りたくて…「言葉のプレパラート」。きれいな夕日が見られる島に行った男が、目的を忘れ、ただそこにあることに歓びをおぼえる…「夕日を見る人々」。特に響いてきた寓話。また「自分に嘘をついてちゃ駄目だ。」「無理に愛したり、好きになったり、肯定する必要は一切ない。」「ホットケーキがシロップでべちょべちょにするぐらい、自分で自分を存分に愛してほしい。」といったあたりが印象に。
 | 新潮社 発売日 : 1978-02-01 |
「パルタイ」「非人」のみ読了。幻冬舎新書の中川右介「昭和45年11月25日 三島由紀夫自決、日本が受けた衝撃」で作者がちらりと出てきた時の印象があって、手に取る。「非人」は、不条理に自分の存在を否定され、自信をなくしていき、最後は訳もわからず断罪される後味の悪さ。「パルタイ」はおそらく当時の学生運動に材をとっているのだろうが、パルタイという組織に入ることを熱望し、恋人もそれを望んでいたのに、それが虚しくなり、断念するまでの軌跡。その寓意が何を…というのをひとつひとつたどっていけば、当時の問題意識が明らかになるのだろうと思いつつそこまで追えず。
 | 講談社 発売日 : 2018-11-14 |
「民族や文化にもとづいた対立・紛争が頻発する二一世紀のアフリカ社会は、こうしてみると、じつは多民族・多文化共生と和解を模索する実験場であり、そのための有効な知恵と制度を創り出しつつある先進社会でもあった」というのがもっとも言いたかったことだろうか、と感じた。たしかに以下にあげた中にも、柔軟な仕組みや知恵が感じられ興味深い思い。/以下備忘録として/絶えざる混血と移住が生み出した多様性/ヨーロッパに接触することで、長い歴史的伝統をもつと示すために、王の系譜を発明したアフリカ/アフリカ人は圧倒的なヨーロッパの力を前に、創意工夫をこらした選択を続けることで、その巨大で暴力的な圧力を吸収しようとした。時に激しく抵抗し、時に容易に服従して。/1990年代とは大きく異なり、国際社会はアフリカを「援助」の対象から「投資」の対象とみなすように。/インフォーマルな互助制度の創出でのりきろうとする庶民たち/広くアフリカ各国で携帯電話が普及/マンデラたちが罠にはまったのか、戦略的な妥協を行ったかは評価がさだまらない/民族的帰属の変更や一人の人間が複数の民族に同時に帰属する重帰属の仕組み/参考文献としては、坂井信三「イスラームと商業の歴史人類学」、砂野幸稔「ンクルマ」、遠藤貢「崩壊国家と国際安全保障 ソマリアに見る新たな国家像の誕生」、「わたしの南アフリカ ケープタウン生活日誌から」
 | 新潮社 発売日 : 2002-06-28 |
ポルノ小説を書いてみませんか、と編集者に請われた設定で、断片を書きつつ、否定し、そこに自らのヰタ・セクスアリスを重ねて、絡み合わせて語られていく。男のパーツを章のタイトルに採り。愛情の発し方は至極情熱的で、けれど醒めた目で観察するところもあり。「いずれにしろ、どんな男であれ、その女に対する性的欲望が尽きたあと、人間的な、あるいは同士的な関係を築きあげない限りは、いつかは逃げ出したくなるのだ。ポルノとはそのような人間関係を築けない男と女の絶望的なあがきの物語だといえなくもない。」(p.182)/あなたが わたしにとって歌だからといって あなたのことをいつまでも 歌っていてはいけない(ラングストン・ヒューズ「束の間の愛」)(p.182)/
 | PHP研究所 発売日 : 2017-11-08 |
ホリエモンメルマガでその波乱万丈の生涯に興味を持ち、手に取る。青年期はいたずらに素行の悪さを発揮するところがあるも、アメリカではエリートではない下層の暮らしから生きた英語とアメリカ人との交流を肌で学び、その後、投機に失敗したりもするが、官僚として特許政策に取り組んだ後、日本銀行、横浜正金銀行で辣腕をふるい、日露戦争の戦費調達のための英米独での公債発行、昭和恐慌での金融引き締め策と国家の重大事に起用され、最後は軍事費増大を真っ向から批判するも、それを抑えきれない予算案が成立した直後に、二・二六事件で凶弾に倒れた、と。絶対に自己本位に行動しない、「出所行蔵一つに義をもって決す」、天は自ら扶く者を扶く、と押し渡っていった一生。/事業については詳細だったが、家族関係への筆はうすく、あまり描かれず。最初の妻も作中ではほぼ一言も発さずいつの間にか亡くなり、いつのまにか再婚し。息子たちとの交流も作中では皆無。死の間際に、嫁いだ娘が里帰り前に予定外に会いたくなったことに触れられ、それほど愛されていたのでは、とは推測されるが。
 | イースト・プレス 発売日 : 2017-12-13 |
気がつくとルテティアのカフェにいたスズメ。今いるのが夢の世界で、別の世界から来たような意識はあったが、だんだんと境目もあいまいに。カフェのマスターのハクロさん、お酒も料理も大好きなメンタさん、元気いっぱいでお菓子が大好きなちいさな双子の姉妹、姉妹を溺愛しつつ唯々諾々と従ってしまう兄。お客の少ないカフェで、おいしいお菓子に、珈琲、パン、お酒、おつまみと、おだやかでこころたのしい日常が描かれてほっとする一編。ボールペン旅日記が印象的だったはしゃさんの商業誌デビュー作。ルテティア、パリの古称というのは意識されてるのか、作中パリっぽい雰囲気がたゆたい。
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-05-27 |
読み終わって第一声。「ジーン監督は、監督クンなの？庵野秀明なの？プロフェッショナルの庵野回なの？」という思い。突き詰めると鋭敏なクリエイターはみんなそうなるということなのか。”自分のスタイルとか定番の型を作って それをベースに見た目や味付けをを変えた物を 新作として発表するのって クリエイターとして死んだ人のやり口なんじゃないですかね”、納得するカットが撮れるまで凍てつく川に23回飛び込むミスティアさんと飛び込ませるジーン監督、二作同時にニャカデミー賞を取った作品をどっちも駄作と一蹴し、次は何を撮りましょう、という姿勢のジーン監督。自分の限界を壊し続けて、君が世界を服従させろ、というポンポさんのエールを背に。
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-05-06 |
5人それぞれのインタビュー、会いたい脚本家との対談、どれもおもしろかったけど、安田さんの、結婚8年目で奥さんに、あなたが何を言っているのかずっとわからなかったと言われ。確かに、僕は滑舌よくないんですけど。8年間どうしてたの？と聞いたら、”何となく”で聞いてたと言われたってエピソード。大泉さんが、缶詰になりたくて唐津の宿に泊まって、でも一行も書けませんでした、いい宿で朝も夜もいい飯が出て夜も一人でお酒なんか飲んでね。といったのに、野木さんが”それ、ただの旅行ですよね”と突っ込むくだり。が好きでした。
 | 講談社 発売日 : 2021-05-21 |
この巻はシリアスなところもおりまぜつつ。夏休み前に、遺書や養子縁組の話を持ち出して機嫌をそこねられてしまうシロさん。「それって、シロさん死ぬまで俺といっしょにいてくれるって事？」に、独白で「違うよ たとえこの先別れたとしても俺の人生で遺産を譲ろうなんて思う相手はお前ぐらいだと思うからさ」と語るとこ。二人の会話は2020年8月のものです、という注釈がつき、同性婚が認められないがゆえの養子縁組に対しては特例として同性婚が認められた際に例外的に婚姻を認めてもよいのでは、という議論があることを知らされたり。「俺は俺に喰わせてもらって俺に遠慮してるお前と暮らしたい訳じゃないんだよ」てシロさんの独白。このあたりがコメディタッチで日常を描きながらも、ふとしたところで、重要なことに立ち返らせてくれる思い。茶目っ気をかんじたのは、シロさんの”ケンジなんて喰い物に「好き」と「大好き」しか無いんだもんな。”てとこです。
 | 東京創元社 発売日 : 1999-06-20 |
芥川龍之介「六の宮の姫君」を題材に、バイト先の出版社の縁で出会った、芥川龍之介とも会ったことのある作家が、芥川本人から、あれは「玉突き、いやキャッチボール」と言った、という一言を鍵に、その意図を探り当てようと調べて、自分なりの回答にたどりつくまで。芥川龍之介と菊池寛の交友が深く描かれ、お互いに大事なものが浮き彫りとなり、それが…と。ねばりづよく、視点を変え、書物を繰り、つながりを考え、仮説をかまえ、それを証明してくれそうな本を手に取り、またふとめくったページに天啓とも思えることが書いてあり、調べること、考えること、新たな説を建てることの楽しさ、難しさ、至福の時間が描かれているように思った。講演会に二人で呼ばれ、芥川が語った後、菊池が芥川の説への批判に触れつつ語ったあと、芥川が「ちょっと！」と演壇にかけあがり、菊池の批判への反駁を述べ、それに再反論するとおもいきや菊池がにこにこしながら聞いてた、というエピソードが好きでした。
 | 講談社 発売日 : 2021-05-17 |
デザイナーとしての育人も、モデルとしての千雪も、大きなチャンスを手にし、ひたむきに仕事をしていくが、千雪の父が、娘の名をつけた事務所を畳むことにしたのは、千雪に大きなダメージを与え。そして、育人は、次の大舞台を全て千雪メインで打ち出すことに。次巻、完結、どこまで描くのか、パリコレまで手は届くのか。
 | 講談社 発売日 : 2011-09-13 |
小さなデザイン事務所で働く社長と社員2人を中心に、取引先や大家さんも含めての、お仕事コメディ。塩田くん佐藤くんの物おじしないとこが好きでした。
 | 河出書房新社 発売日 : 2020-09-23 |
喫茶こんでお弁当のテイクアウトを待つ間にさらりと読めた一冊。元気いっぱい食欲いっぱいだけど空気読めないと思われるところもあって、の山本さんが、カップラーメン、コーンフレーク、コロッケ、おでん、うどんと食べつつ、友達の恋の行く末にもの申したり、勢いで海まで行ってみたり、コロッケのおじさんの笑顔にすくわれたり。
2021年05月に読んだ本 (タイトルのみ）
0501・高森純一郎 プロテアの咲く大地 20210429 テキレボ
(0501・久世番子 ひらばのひと 1
(0501・幸せカナコの殺し屋生活 5
(0501・であいもん 11
(0501・おかざき真里 かしましめし 4
0502・藤原章生 絵はがきにされた少年 図書館
(0502・スケラッコ にぬき・ビール・デマエ おまちどう！ 20140826発行 20210502 アダノンキ
(0502・スケラッコ にぬき・ビール・デマエ またきたよ 20210301発行 20210502 アダノンキ
0502・現代地政学事典(抜粋)(複写-図書館) …領土の罠と領域性のイデオロギー、フェミニスト地政学、ポストモダン地政学、オルタナティブ地政学、戦争と性暴力、地政学と国家中心主義、地政学とスケール、批判地政学、オトゥホールの批判地政学、感情・情動の地政学、ポスト・ヒューマニズムと複雑系の地政学。
0502・鈴木 真吾 一九世紀末から二〇世紀初頭イズミルにおけるコレラ対策の変容と継続 ――近代オスマン帝国における衛生政策と地方社会―― 史学雑誌130-3(2021.4) (複写-図書館)
(0504・高野文子 るきさん (ちくま文庫) 20210503
(0504・本田鹿の子の本棚 暗黒文学少女編 kindle
(0504・音井れこ丸 その時の彼女が今の妻です
0504・うしろわたり淳治 うれしい悲鳴をあげてくれ らくだや 20210424
(0505・渋谷直角 デザイナー 渋井直人の休日 20210503
(0505・シマ・シンヤ ロスト・ラッド・ロンドン 1 (ビームコミックス) 20210503
(0505・シマ・シンヤ ロスト・ラッド・ロンドン 2(ビームコミックス) 20210503
(0505・heisoku ご飯はわたしを裏切らない kindle
(0505・コナリミサト 黄昏てマイルーム
(0505・ウラモトユウコ 彼女のカーブ
(0505・会社員でぶどり5
(0505・栄光なき天才たち 大合本1 kindle …円谷幸吉 アベベ グリフィス マリリン・モンロー
(0505・北村薫原作、タナカミホ漫画 空飛ぶ馬
0506・入間人間 やがて君になる 佐伯沙弥香について1 (電撃文庫) 20210502
0506・北村薫 空飛ぶ馬 円紫さんと私シリーズ1
0507・ティム・オブライエン 世界のすべての七月 20210411
0507・入間人間 やがて君になる 佐伯沙弥香について2 (電撃文庫) 20210503
0508・入間人間 やがて君になる 佐伯沙弥香について3(電撃文庫) 20210503
0508・小松成美 M 愛すべき人がいて (幻冬舎文庫) 20210503
(0508・【再読】楠桂 八神くんの家庭の事情1-7 20210508
(0509・里中満智子 オデュッセウスの航海―マンガ・ギリシア神話〈8〉 (中公文庫) 20210503
(0509・町田メロメ 三拍子の娘 1
0509・保坂和志 残響 中公文庫 20210503
(0509・高浜寛 扇島歳時記2
0511・鈴木おさむ 芸人交換日記〜イエローハーツの物語 20210510 kindle
0511・千野隆司 おれは一万石 15 大奥の縁 20210424 らくだや
0513・ミシェル・ウェルベック 服従 20210414
0514・若林正恭 表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬 20210504
(0515・ゆうきまさみ 新九郎奔る1-2 kindle
0515・開高健 声の狩人 20210424 らくだや
0516・北村薫 夜の蝉 円紫さんと私シリーズ2
(0516・ふることふひと1-2
0516・柳美里 JR上野駅公園口 20210502
(0517・久世番子 博物館ななめ歩き
(0518・和山やま 女の園の星 1-2 kindle
(0518・深谷陽 スパイスビーム kindle
0519・村瀬秀信 それでも気がつけばチェーン店でばかりメシを食べている 20210502
(0519・和山やま 夢中さ、きみに kindle
0520・ハヤカワ五味 私だけの選択をする22ルール 20210502 アダノンキ
(0521・野澤頃 オバケちゃんとウサギちゃん6 ぽやん舎 シャンティブックス
0522・宮本正興 編 新書アフリカ史 (講談社現代新書) 1997年初版 20210503
(0523・池波正太郎原作、細川忠孝漫画 真田太平記1 20210522
(0523・モブ子の恋10
0523・大宮エリー 思いを伝えるということ (文春文庫) 20210503
(0523・うかうか 貼りまわれ！こいぬ1
(0523・ジョージ秋山 戦えナム1-2 kindle 20210522
0524・村上春樹 職業としての小説家 20210503
0525・倉橋由美子 パルタイ 20210424 らくだや …「パルタイ」「非人」のみ読了で読了扱い
0527・宮本正興 編 改訂新版新書アフリカ史 (講談社現代新書) kindle 20210523
0528・柳美里 男 20210504
(0528・はしゃ さめない街の喫茶店1 20210502
0529・津本陽 人生を逆転させた男・高橋是清 (PHP文芸文庫) (「生を踏んで恐れず」改題) 20210503
(0529・映画大好きポンポさん3
0530・北村薫 六の宮の姫君 円紫さんと私シリーズ4
(0530・ダ・ヴィンチ2021年6月号 ナックス特集
(0530・きのう、何食べた？18
(0530・ランウェイで笑って21
(0530・衿沢世衣子 sato shio 1-2
(0531・森つぶみ たべざかりの山本さん!: 青春とジャンクフード 喫茶こん
(0501・久世番子 ひらばのひと 1
(0501・幸せカナコの殺し屋生活 5
(0501・であいもん 11
(0501・おかざき真里 かしましめし 4
0502・藤原章生 絵はがきにされた少年 図書館
(0502・スケラッコ にぬき・ビール・デマエ おまちどう！ 20140826発行 20210502 アダノンキ
(0502・スケラッコ にぬき・ビール・デマエ またきたよ 20210301発行 20210502 アダノンキ
0502・現代地政学事典(抜粋)(複写-図書館) …領土の罠と領域性のイデオロギー、フェミニスト地政学、ポストモダン地政学、オルタナティブ地政学、戦争と性暴力、地政学と国家中心主義、地政学とスケール、批判地政学、オトゥホールの批判地政学、感情・情動の地政学、ポスト・ヒューマニズムと複雑系の地政学。
0502・鈴木 真吾 一九世紀末から二〇世紀初頭イズミルにおけるコレラ対策の変容と継続 ――近代オスマン帝国における衛生政策と地方社会―― 史学雑誌130-3(2021.4) (複写-図書館)
(0504・高野文子 るきさん (ちくま文庫) 20210503
(0504・本田鹿の子の本棚 暗黒文学少女編 kindle
(0504・音井れこ丸 その時の彼女が今の妻です
0504・うしろわたり淳治 うれしい悲鳴をあげてくれ らくだや 20210424
(0505・渋谷直角 デザイナー 渋井直人の休日 20210503
(0505・シマ・シンヤ ロスト・ラッド・ロンドン 1 (ビームコミックス) 20210503
(0505・シマ・シンヤ ロスト・ラッド・ロンドン 2(ビームコミックス) 20210503
(0505・heisoku ご飯はわたしを裏切らない kindle
(0505・コナリミサト 黄昏てマイルーム
(0505・ウラモトユウコ 彼女のカーブ
(0505・会社員でぶどり5
(0505・栄光なき天才たち 大合本1 kindle …円谷幸吉 アベベ グリフィス マリリン・モンロー
(0505・北村薫原作、タナカミホ漫画 空飛ぶ馬
0506・入間人間 やがて君になる 佐伯沙弥香について1 (電撃文庫) 20210502
0506・北村薫 空飛ぶ馬 円紫さんと私シリーズ1
0507・ティム・オブライエン 世界のすべての七月 20210411
0507・入間人間 やがて君になる 佐伯沙弥香について2 (電撃文庫) 20210503
0508・入間人間 やがて君になる 佐伯沙弥香について3(電撃文庫) 20210503
0508・小松成美 M 愛すべき人がいて (幻冬舎文庫) 20210503
(0508・【再読】楠桂 八神くんの家庭の事情1-7 20210508
(0509・里中満智子 オデュッセウスの航海―マンガ・ギリシア神話〈8〉 (中公文庫) 20210503
(0509・町田メロメ 三拍子の娘 1
0509・保坂和志 残響 中公文庫 20210503
(0509・高浜寛 扇島歳時記2
0511・鈴木おさむ 芸人交換日記〜イエローハーツの物語 20210510 kindle
0511・千野隆司 おれは一万石 15 大奥の縁 20210424 らくだや
0513・ミシェル・ウェルベック 服従 20210414
0514・若林正恭 表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬 20210504
(0515・ゆうきまさみ 新九郎奔る1-2 kindle
0515・開高健 声の狩人 20210424 らくだや
0516・北村薫 夜の蝉 円紫さんと私シリーズ2
(0516・ふることふひと1-2
0516・柳美里 JR上野駅公園口 20210502
(0517・久世番子 博物館ななめ歩き
(0518・和山やま 女の園の星 1-2 kindle
(0518・深谷陽 スパイスビーム kindle
0519・村瀬秀信 それでも気がつけばチェーン店でばかりメシを食べている 20210502
(0519・和山やま 夢中さ、きみに kindle
0520・ハヤカワ五味 私だけの選択をする22ルール 20210502 アダノンキ
(0521・野澤頃 オバケちゃんとウサギちゃん6 ぽやん舎 シャンティブックス
0522・宮本正興 編 新書アフリカ史 (講談社現代新書) 1997年初版 20210503
(0523・池波正太郎原作、細川忠孝漫画 真田太平記1 20210522
(0523・モブ子の恋10
0523・大宮エリー 思いを伝えるということ (文春文庫) 20210503
(0523・うかうか 貼りまわれ！こいぬ1
(0523・ジョージ秋山 戦えナム1-2 kindle 20210522
0524・村上春樹 職業としての小説家 20210503
0525・倉橋由美子 パルタイ 20210424 らくだや …「パルタイ」「非人」のみ読了で読了扱い
0527・宮本正興 編 改訂新版新書アフリカ史 (講談社現代新書) kindle 20210523
0528・柳美里 男 20210504
(0528・はしゃ さめない街の喫茶店1 20210502
0529・津本陽 人生を逆転させた男・高橋是清 (PHP文芸文庫) (「生を踏んで恐れず」改題) 20210503
(0529・映画大好きポンポさん3
0530・北村薫 六の宮の姫君 円紫さんと私シリーズ4
(0530・ダ・ヴィンチ2021年6月号 ナックス特集
(0530・きのう、何食べた？18
(0530・ランウェイで笑って21
(0530・衿沢世衣子 sato shio 1-2
(0531・森つぶみ たべざかりの山本さん!: 青春とジャンクフード 喫茶こん
2021年05月03日
2021年04月に読んだ本
0401・池田彩乃 観光記 20210327 がたんごとん
0401・酒井一途 わたしを見つめるわたし
0403・地政学ルネサンスを越えて 「境界研究」No.11 2021 pp.55-84 (pdf)
(0403・小坂俊也 モノローグ書店街
0403・宇野常寛 若い読者のためのサブカルチャー講義録 図書館
(0404・オカヤイヅミ いいとしを
(0404・オカヤイヅミ 白木蓮はきれいに散らない
0404・田中ましろ（文・写真）、遊上なばな（出演）写真歌集 燈心草を香らせて
0404・ゆめみるけんりvol.4 20210327 がたんごとん
(0405・【再読】石坂啓 アイムホーム 上下
0406・「サトコとナダ」から考えるイスラム入門 20210327
0406・チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ 男も女もみんなフェミニストでなくちゃ…図書館
0407・ユリイカ 特集＝近藤聡乃
0408・加藤千恵 ラジオラジオラジオ！ …図書館
0408・ブラジル・ジョーク集 …図書館 …Bancaつながり。
(0409・応天の門15 kindle
(0410・【再読】サトコとナダ1
(0410・じしょへん3-4
(0410・山田胡瓜 AIの遺伝子 Blue Age1
(0410-12,14・やがて君になる1-8
0413・宇野常寛 遅いインターネット 20210404amazon注文0406着
(0413・ゴルゴ13 ラオスのけし
(0413・石巻からの復興情報マガジン マンガッタンvol.7 kindle
(0414・東独にいた 1-3 kindle
(0415・パリピ孔明5 kindle
(0415・夜と海3 kindle
(0415・ふしぎの国のバード8 kindle
0415・渋谷に召喚される渋谷系 (pdf)
0417・ミランダ・ジュライ あなたを選んでくれるもの…図書館
0417・金子邦彦 カオスの紡ぐ夢の中で …図書館
(0418・カレー沢薫 ひとりでしにたい 1-2+コミックDAYS
(0418・近藤聡乃 うさぎのヨシオ
0418・塩田武士 騙し絵の牙 文庫版 20210417
0419・サハラ以南アフリカの国家と政治のなかのイスラーム (pdf)
(0420・東独にいた4 kindle
0421・近藤聡乃 不思議というには地味な話
0421・奥美穂子 オスマン帝国における贈与と返礼 (pdf)
0422・今井宏平 トルコ政府によるアヤソフィアの再モスク化に関する一考察 歴史学研究 1006 (複写-図書館)
0422・藤木健二 近世オスマン帝国都市の慈善と救貧 (pdf)
(0422・キングダム58-60
0423・【再読】やさしい現代音楽の作曲方法 図書館 …トータル・セリエリズム、ポスト・セリエルのみ
0423・南太平洋を知るための58章 …図書館
0423・Transit 特集＝砂漠の惑星を旅しよう カルメル堂
0423・Transit 特集＝バルトの光を探して カルメル堂
(0424・後ハッピーマニア 2 kindle
(0424・ラーメン発見伝 1 kindle
(0424・アサギユメ アタマの中のアレを食べたい 2
0424・三浦しをん エレジーは流れない 20210424 ジュンク堂
0425・船戸与一 カルナヴァル戦記 図書館
(0425・モンキー・パンチ 千夜一夜物語
0425・町田そのこ 夜空に泳ぐチョコレートグラミー 20210405 江別蔦屋書店
(0425・映画大好きポンポさんomnibus
0425・アメリカ先住民を知るための62章 …図書館
0426・ほしおさなえ 活版印刷三日月堂 20210412
0427・神崎忠昭・長谷部史彦編 地中海圏都市の活力と変貌 20210408ジュンク堂着0409入手
0428・柳美里 オンエア 上 20210414
0429・柳美里 オンエア 下 20210414
0429・カール禿頭王は本当に禿げていたのか(pdf)
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0401・酒井一途 わたしを見つめるわたし
0403・地政学ルネサンスを越えて 「境界研究」No.11 2021 pp.55-84 (pdf)
(0403・小坂俊也 モノローグ書店街
0403・宇野常寛 若い読者のためのサブカルチャー講義録 図書館
(0404・オカヤイヅミ いいとしを
(0404・オカヤイヅミ 白木蓮はきれいに散らない
0404・田中ましろ（文・写真）、遊上なばな（出演）写真歌集 燈心草を香らせて
0404・ゆめみるけんりvol.4 20210327 がたんごとん
(0405・【再読】石坂啓 アイムホーム 上下
0406・「サトコとナダ」から考えるイスラム入門 20210327
0406・チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ 男も女もみんなフェミニストでなくちゃ…図書館
0407・ユリイカ 特集＝近藤聡乃
0408・加藤千恵 ラジオラジオラジオ！ …図書館
0408・ブラジル・ジョーク集 …図書館 …Bancaつながり。
(0409・応天の門15 kindle
(0410・【再読】サトコとナダ1
(0410・じしょへん3-4
(0410・山田胡瓜 AIの遺伝子 Blue Age1
(0410-12,14・やがて君になる1-8
0413・宇野常寛 遅いインターネット 20210404amazon注文0406着
(0413・ゴルゴ13 ラオスのけし
(0413・石巻からの復興情報マガジン マンガッタンvol.7 kindle
(0414・東独にいた 1-3 kindle
(0415・パリピ孔明5 kindle
(0415・夜と海3 kindle
(0415・ふしぎの国のバード8 kindle
0415・渋谷に召喚される渋谷系 (pdf)
0417・ミランダ・ジュライ あなたを選んでくれるもの…図書館
0417・金子邦彦 カオスの紡ぐ夢の中で …図書館
(0418・カレー沢薫 ひとりでしにたい 1-2+コミックDAYS
(0418・近藤聡乃 うさぎのヨシオ
0418・塩田武士 騙し絵の牙 文庫版 20210417
0419・サハラ以南アフリカの国家と政治のなかのイスラーム (pdf)
(0420・東独にいた4 kindle
0421・近藤聡乃 不思議というには地味な話
0421・奥美穂子 オスマン帝国における贈与と返礼 (pdf)
0422・今井宏平 トルコ政府によるアヤソフィアの再モスク化に関する一考察 歴史学研究 1006 (複写-図書館)
0422・藤木健二 近世オスマン帝国都市の慈善と救貧 (pdf)
(0422・キングダム58-60
0423・【再読】やさしい現代音楽の作曲方法 図書館 …トータル・セリエリズム、ポスト・セリエルのみ
0423・南太平洋を知るための58章 …図書館
0423・Transit 特集＝砂漠の惑星を旅しよう カルメル堂
0423・Transit 特集＝バルトの光を探して カルメル堂
(0424・後ハッピーマニア 2 kindle
(0424・ラーメン発見伝 1 kindle
(0424・アサギユメ アタマの中のアレを食べたい 2
0424・三浦しをん エレジーは流れない 20210424 ジュンク堂
0425・船戸与一 カルナヴァル戦記 図書館
(0425・モンキー・パンチ 千夜一夜物語
0425・町田そのこ 夜空に泳ぐチョコレートグラミー 20210405 江別蔦屋書店
(0425・映画大好きポンポさんomnibus
0425・アメリカ先住民を知るための62章 …図書館
0426・ほしおさなえ 活版印刷三日月堂 20210412
0427・神崎忠昭・長谷部史彦編 地中海圏都市の活力と変貌 20210408ジュンク堂着0409入手
0428・柳美里 オンエア 上 20210414
0429・柳美里 オンエア 下 20210414
0429・カール禿頭王は本当に禿げていたのか(pdf)
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| 発売日 : |
ぱらりとみて、生きることのエッセイと思い買ったら、愛の詩だったという誤算。詩歌を受けとるアンテナが低くなってきた身には、かみくだけないものもあったが、それでもページをひらいてもとめて、自分に押し当てたいと思える引力のあった本でした。装丁も栞もパッと目をひく素敵なものでした。以下備忘録/ひとを変えようとしなくてもいい。変わってゆくことを見つめて、待つこと。それが愛情だとわかったこと。/ここに在ったものが、なくなることの後には必ず、在ったこと、が残ります。だから生まれることそのものが尊いと、わたしは思います。/生きる意味がないってなんだよ。。意味があったら納得するのかよ。（p.64）/花の名前を忘れているときは、花に名前を忘れられているときだという詩を書いたことがある。(p.73)
| 発売日 : |
小袋成彬「分離派の夏」で、声の出演をしているのが酒井一途氏と知り、その、消費する主体であるはずの自分が、社会に消費されつくされてるのではないか、何かものを作ろうと決意した、という趣旨の語りに心ひかれて、何か文章を書いていないかな、と探してたどりついたのが、この一文。/自分とは何か、自と他を分ける境界線はなにか。言葉が自らのなかにとどまり、また去ること。触れることはまた触れられることでもあること。”あなたが見つめるわたしを、あなたの目をとおして見つめるわたし”。/一番印象に残ったのは、”「器としての自己」を受け入れると、「わたしであることの執着」から解き放たれます。わたしは一つの現象です。そして、わたしは常に可変的な存在です。（略）わたしが命を所有しているのではなく、命がわたしを所有している。”（中島岳志・若松英輔「現代の超克」）
| 発売日 : |
「現代地政学事典」(丸善)の刊行を機に開かれた座談会。「紛争でしたら八田まで」を読んで地政学入門みたいのを探してたのに、いきなり応用編最先端を触ってしまった感覚。国対国の観点から導きだされた古典的な地政学の理論や分析なんて「童話」だ、”地政治”ともいうべきもっと小さな流れに目を向けなければ、現代の事象を読み取れない、と。「紛争でしたら八田まで」の地政学が古典的なものかは判別がつかないが-その理論は援用されているように思うが-導き出す解決策には、個人的には、国よりもっと地べたの人に目を向けているように感じるのでした。/”新自由主義やグローバル化のなかで国家自体、国家と領土、国家と人々の関係も大幅に変更されている”、”もう今の国家は、地政学が前提としていた国家ではないわけです。”、”国家だけ見てても何も対応できない。多様で争われる地理的現実を観ましょう”（対談より）/奥山真司さんの一連の地政学がらみの一般書にはあたってみたいと思った。また、事典に触れて、テイラーのマルチスケール論(事典p374）、アグニューの領土の罠論(事典 p.524)、フェミニズム地政学、マルチスケール地理学、オルタナティブ地政学、「地政治」geo-politics あたりは深めてみたいと思った。
 | 朝日新聞出版 発売日 : 2018-03-13 |
「ゼロ年代の想像力」を潜り抜けてきた身としては、平易に復習ができてとてもよかった。ただ、時代をするどく写し取ったサブカル作品もある一方、そうではないものもあふれてていたわけで、サブカルを読めば時代が理解できる、というよりは、時代に沿ったサブカル作品はこれなので、あわせてこう読める、ということにしかならないのでは、という疑問も頭をよぎった。主題としては、ここにあげられたサブカル作品での想像力をこれからの世界に活かせないかということなのだが。それは”まだ存在してないけれど現実の可能性を探り出すための虚構、そういった想像力がこの先のサブカルチャーには求められていくのではないか。”(p.386)と。///ジャンプをはじめ、アニメ、マンガというものがどのようなテーマ、形で描かれ、それが発表された時代をどう写していたかということについては説得力を持って読めた。"カリフォルニアン・イデオロギーが広がることで、「自意識を変える」よりも「世界を変える」ことのほうにリアリティが出てきた。社会の前提が変化したことで、サブカルチャーについて語ることが、そのまま社会を語ることに結びつかなくなっています。"(p.36)といった視点も含めて。/わざわざ作家の想像力で作られた虚構って、相対的に需要が下がらざるをえない。面白い現実に出会うためのコストが百分の一、1万分の1になってしまってる。アニメからアイドルへのサブカルチャーの中心の移動はその一側面、不可逆の現象。/人間はもう情報をパッケージしたソフトというものと手を切ろうとしています。/といった状況も踏まえて、それでも、”虚構、あるいは目に見えないものの世界を一度経由することで得られる思考法−を抽出すること”という問題意識で書かれた一作。あげられた作品でどれかひとつといえば、それまでのロボットアニメの常識をことごとくこわしたという「ガンダムW」に興味が。
 | 竹書房 発売日 : 2021-03-27 |
いろんな書店員が主人公の連作8コマ、4コママンガ。作家デビュー目指しつつな書店員の鬱屈と作家魂と書店員魂、24時間営業の書店員の触れるちょっと違った客層と購買傾向。リストラされて離婚された店主が自分の蔵書を切り売りするために始めた古本屋。お客様の購買履歴を記憶してしまう店員。となりの花屋と行き来するうちにお互い気になってしまい…の店員などなど。一番印象に残ったのはひねた感じだけど自分なりのこだわりを持ったオフビートて古本屋の店主。現在高い古書値をつけてるのに、それを知らずに持ち込まれた本を二束三文で買い叩き、けど中身を読んだらスカスカだったので、この本にはこの値段が相応しい、笑いたきゃ笑えと安値で売りに出してしまうようなところが。
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-03-25 |
40代で実家の母の死をきっかけに、電車で40分の実家に戻ることにした主人公。彼女には告げずだったことでフラれ。70代の父との同居がはじまり。まだしっかりしているものの、ふとした瞬間に、これで倒れられたりしたら、俺が介護するのかな、みんなそういうのいつ覚悟するんだろうとつぶやいていたりして。会社でも、子供のいる同僚にチャンスをゆずれと圧力をかけられたり。なにがどうスパッと解決するとかもなく、ゆるゆると日常がつづき、いつまでも決定的なことは先延ばしできたらなとうっすら思いつつ。死ぬまでにやりたいことをと、父がかっこいいバイクを買ってきて、二人で疾走するけれども、ある意味ふたりとも吹っ切れた感がありで。
 | 小学館 発売日 : 2021-03-25 |
孤独死したアパートのオーナーだった女性の遺言には、40年会ってない高校のクラスメイト3人へ、アパートを継いでほしいという願いが。条件は、友人であり店子である大学生が卒業するまで経営してほしい、あとは売ってもかまわない、と。50代にさしかかり、専業主婦、独身でキャリアウーマン、店のオーナーと三者三様。三人の高校時代の生活が思い起こされ、忘れていた死んだ女性との行き来も思い出し。また店子の大学生の超然として浮世離れしたところも気になり。紆余曲折を経て、三人でここを継いで、また好きな時にあつまれればいいねと盛り上げってからの急転直下、現実の強さにひっぱられ結局は…という結論に。立場も環境も違えば、来し方行く末も違い、思うこともさまざまで、苦くもあり、それもまた一つの決断であり、と。
人という迷路を抜けて今ここが前線 あなたの横顔が好き/季節とは水の冷たさ朝が来ることもあなたと歓びあって/儚さを語尾に乗せればハローハローあなたはときにわるいひとだよ/の三首が好きでした。ひととおり読んで、最後に、移住してきたばかりの夫婦の不安と生活を詠んだと知り、もう一度最初から読み直したり。小豆島を舞台に、遊上なばなさんという女優が、さまざまな表情を見せながら撮られた写真と短歌が相俟って、いいなあと思いました。
 | 小学館 発売日 : 2015-03-30 |
上下巻読了。宇野常寛「若い読者のためのサブカルチャー講義録」に出てきたことから、再読したくなり。やり手で自身家でまわりを踏みにじってのしあがってきた銀行マンが、一酸化炭素中毒で、五年間の記憶をなくしてしまい。手にした鍵で、幸せだった記憶をたどって、部屋をたずねたりするが、得てして、それは、自分が傲慢にもふみにじってきた友人、前妻、前妻との娘、融資を打ち切った人、会社で蹴落としてきた人、別れた恋人、実家の家族…であり、事情を聴いて同情してくれることもあれば、勝手なものだと怒り出す人もいて。そして今の妻子とその一族の顔は仮面にしか見えず、その表情をうかがうことはできず、砂を噛むような日々。最後は仮面の下から…とはならず、最後まで仮面のままだけれど、どこが、なにが大事かとわかってからの主人公の行動は、一コマだけ今の家族の表情をうかがいしることができて、かすかなのぞみを感じさせて終幕。
 | 星海社 発売日 : 2018-12-27 |
論旨に沿った「サトコとナダ」の漫画からの引用はあったが、本文中では「サトコとナダ」には触れられず。もう少し「サトコとナダ」に触れつつ論をすすめる読み物を期待していたので、個人的にはそこは残念、と感じた。全般的には、イスラム＝怖い・過激・大変そう、などといった過度な一般化、ステレオタイプにくぎを刺し、一部のものがそうだからみんなそう、という見方がいかに一面的か、現代日本におきかえて考えてみようという問いかけ、世界に約17億人もいるムスリムをひとつの類型・イメージに押し込めることなどどだい無理な話で、文化、生活、教義など、さまざまに多様なケースがあることが語られていると感じた。特に、ハラル・フード、結婚、フェイクニュースの読み解きにも使えるハディース学、利子がとれないので「一緒に儲けて一緒に損しよう」をかかげるイスラム金融、といった論点は興味深く読んだ。一点、残念だったのは、”アメリカでのイスラム嫌いは「手を噛んだ飼い犬」に向けられたもの”(p.153)という表現。特に前後にエクスキューズもなく使われており、無前提な主人と飼い犬のような表現に違和感。
 | 河出書房新社 発売日 : 2017-04-19 |
「なにかが首のまわりに」「半分のぼった黄色い太陽」を熱狂しながら読んだ身には、もっと著者のことを知りたいと手にとった一冊。著者が、子供時代から今にいたるまで、女性であるという理由だけで出くわしたさまざまな理不尽な出来事が語られたあとの、「文化が人びとや民族を作るわけではありません。人びとや民族が文化を作るのです。もしも、女性に十全な人間性を認めないのが私たちの文化だというのが本当なら、私たちは女性に十全な人間性を認めることを自文化としなければならないし、それは可能です。」という言葉に深くうなずく。/これを読んだ身としては、男性ゆえに、見過ごしてきたことや、守られてきたであろうことに目を向け、意識を向けることをおこたらずに、という思いをあらたに。/著者がフェミニストなんて○○だよ、と言われるたびに、じゃあわたしは○○じゃないフェミニストになろう、と決意していくうちに、”わたしは「男嫌いではなく、男性のためではなくて自分のためにリップグロスを塗ってハイヒールを履く、ハッピーなアフリカ的フェミニスト」ということになっていました”という一節に著者のユーモアと聡明さと、著者が感じた苦さを感じました。
 | 青土社 発売日 : 2021-02-27 |
A子さんの恋人論としては、住本麻子「A太郎のベタ、『ガロ』の影…さよなら」が一番整理されていて腑に落ちた。登場人物が選んだ職業と美術との距離、ベタ塗りに託された思い、似た人物を登場させることへのこだわり、”こ言葉を象徴するような存在であるA君が、（絵）画を象徴するようなA太郎を、ベタ塗りそのもののようなA太郎を、A子の影のようなA太郎を切り離すのである”(p.292)。また、くどうれいん「アドベントレター」がA子さんの恋人オマージュの作品としてはいいなあ、と。とくに、くっくっく、気づいてしまいましたかぼくがA君とA太郎みたいにふるまおうとしていたことを、といったところが。/65pの、ニューヨークのA君がA子に向けて最後におそらく一か八かで送ったメッセージ…読み返したいと思った(植本一子論考より)/A子さんの恋人とテーマが重なる。これはもう一つのやがて君になるだ、と。(仲谷鳰「やがて君になる」電撃コミックNEXT 全8巻 テーマは私を好きにならないで。)(藤本由香里論考より)/他に、何編かに共通するのは、A太郎がA子へ、僕が君を好きなのは、君が僕のことをあまり好きじゃないからだよ、といったこと、A太郎はA子になりたかったという視点、処女作にすべての主題が書かれるという指摘、日常に張り巡らされた隙間といったモチーフ、最後に名前を取り戻すことの象徴的な意味、あたりが気になったところ/ニューヨークで考えるに影響を与えたという高野文子「るきさん」、
近藤聡乃エッセイ集「不思議というには地味な話」は手にとってみたいと思った。
近藤聡乃エッセイ集「不思議というには地味な話」は手にとってみたいと思った。
 | ゆめみるけんり 発売日 : 2019-12-15 |
紙版を購入。特集は「手紙」。個人的には、このzineは、”砂漠を生きる”さんの文章を読むために買っているといっても過言ではない。今回も、”仔ヌーを逃がす”は奇想とサスペンスに満ちていて好み。/他に、十二音技法で現代音楽の扉を開いたシェーンベルグが、自分はチャイコフスキーの改良版の作曲家と思ってほしい、そして人々に私のメロディを知ってもらい、口笛で吹いてほしいのです、という手紙を書いていたことには意外の感。作曲家たちがなぜ作曲を続けられたのか、という問いには、彼らは誰かが言わなくてはならなかったことを、自ら言わねばならなかったのです、と力強く答えている。/もう一箇所目をひいたのが、ニコライ・フョードロフの「フランスや西欧全体が、それが人生の唯一の目的とでもいうかのように、各人の金儲けへの権利を保証することを神聖視している。すなわち、生きることは完全に徒労であると認めているわけである。」という一節。
 | 河出書房新社 発売日 : 2016-06-18 |
東京に憧れる地方都市の女子高生カナ。特別になりたい、みんなと違う感性をもちたい、という気持ちからクラスで一番仲のいい智香を誘ってラジオパーソナリティに応募し、みごと採用。本物の場所にいる本物の人に見つけてもらいたいと願う気持ちとは裏腹に、ラジオはなかなかリスナーもつかず、智香もどんどんやる気を失っていくのが手にとるようにわかり、どんどん空回り。別の中のいい子の失恋話を実名までだしてラジオで語ったり、ほぼ唯一のリスナーの書店員のお姉さんに甘えたり、ラジオ局の取締役にテレビとラジオは別物でどちらが劣ってることもなくより受け手に深く寄り添える場所なのだと諭されたり。ある時、自分があまりに自分のことしか見えてない、身勝手…ということに気づく幼さ。けれどそこから少しずつでも…と。2014年に発表されて、舞台が2001年、道具立てにノスタルジーを感じる。またはっきりとは書かれないが、びっくりドンキーがあって公立の教育大学があって、特急で大都市まで一時間半という描写から、旭川が舞台なのかな、と想像。
 | 新潮社 発売日 : 2021-03-09 |
旧知の紀静子に伊勢神宮へ呼び出された在原業平。斎宮となった娘を救うために汚名を着てくれと頼まれた業平が、いつも頼ったばかりだが今回は助力を断られた道真がいない中、講じた一計とは。そして、偶然のいたずらで藤原基経の牛車に乗ることになった道真。いつも大人たちに頼み事をされ頼りにされるのに、藤原家の有力者から見れば一介の文章生。鋭い片鱗は見せつけたものの、ただの話し相手に選ばれただけと知り、改めて自らの位置に思いを巡らす、と。次巻は、宣来子がどう出るのか、といったところまで。
 | 秋田書店 発売日 : 2021-04-08 |
前シリーズ、前々シリーズの前日譚。須藤医師の研修医時代の話。医療も介護もAIが主導し、頭は電脳、体は人間のヒューマノイドが能力、寿命、権利は制限されつつ、人間として暮らす世界。その時人が、人として、何ができるのか、というのが底に流れるテーマ。「確かに役に立つことは素晴らしい。自己肯定感にもつながります。でも、命そのものの美しさや不思議さの前では、小さなことに思えてしまいます。」(須藤光)
 | KADOKAWA 発売日 : 2020-03-06 |
3-4巻読了。上層部の意向で、現字選の編集一時ストップ、出稼ぎ、王子を先頭に立てての役員プレゼンからのリーダー任命。名物制作の復帰に新たな制作志願者の志願と目まぐるしく。空き巣騒動からの王子の引っ越しラプソディは、王子の祖母の小説家、編集者にして祖母の元夫の話にまで広がり。漢和辞典編纂のあれこれから本への熱い思いまで尽きせぬ面白さでした。
| 幻冬舎 発売日 : 2020-02-20 |
戦後日本がどういった社会を経て、人々が何に駆動され、そこでインターネットがどのような役割を果たしたか、鮮やかな手付きで整理して提示してくれる。読み終えて、ああ、選択肢もなく世界に素手でさわれていない自分よ、と思いつつ。フィルターバブルは避けるように、Web上で論争や批判に首をつっこまないように意識はしていたものの、それだけでは、と。世界の端から端までつなげられ、今この地球で息をしているだけで否応なくこの世界にからめとられ、つなぎとめられてしまう。世界の果てや山奥にひきもってすら、そういう態度を世界に示したというだけでは、その影響から遁れられない感。個人としては、ひとまず、「遅いインターネット」のLINE公式チャンネルに登録するところから始めた。
 | 講談社 発売日 : 2019-12-20 |
1985年東独を舞台に、反体制組織と生物兵器並みに強化された軍特殊機関との戦い。片方のトップと片方のホープが、片方は知ってて接近し、片方は知らずに惹かれていてという枠組み。どちらの組織も、東独をよくする、東独と西独を統一するという理想をかかげているが、それがどうなるかは、後世のものとしては知っており、ただそれをどう描くかという点に興味がひかれる。
 | KADOKAWA/AMW 発売日 : |
ユリイカの近藤聡乃特集で、藤本由香里論考にて、「A子さんの恋人」はもうひとつの「やがて君になる」である、と説いていたのに興味を持って手に取る。個人的には、そこまで読み解けなかったなあ、という思い。それはそれとして。/好きはしばることばじゃない、変わってもいいんだ 好きは選ぶことだったんだ、こんなにも重いこととは知らなかった けど好き、逃げない、受け止めるといった登場人物たち。/登場人物のすべてが悪意なく、邪気なく、高校生も真摯で理性的で、大人も見下ろすような形ではなく、同じ目線に立って話していて、誰も邪悪な気持ちで誰かを貶めたりしようとせず、異なる価値観にも理解を示し、といった世界ではあるけれど、だからこそ浮き彫りになる、恋することの初々しさ、楽しさ、苦しさが描かれていてまぶしく。
| 発売日 : |
当時「渋谷系」と言われたミュージシャンはほぼ自称せず、渋谷で売れる音楽のカタログぐらいの他称でしかなかった「渋谷系」が、さまざまに使われ、イメージを付与され、海外にも流布し、それが電通出身の渋谷区長、渋谷観光協会会長もひとつの起因として、町づくり、活性化に取りこまれ、時を経て、野宮真貴、カジヒデキらミュージシャンたちもこだわりを捨てたかのように身をゆだね、新たなうねりになっている、というのが見て取れて興味深かった。野宮真貴、渋谷系を歌うは手に取って見たくなる。
 | 講談社 発売日 : 2021-04-14 |
三兄弟の話から、母と娘の物語へ。孔明を亡国の軍師と知ったうえで責め立てるエイコの母に、それでも…と食い下がる孔明のシーンが印象に。
 | 芳文社 発売日 : 2021-04-15 |
距離を縮めたい内海と相変わらずのクールな距離感の夜野。対話を重ねて、すこしはわかったこともあったように思えたのにあっさりとした卒業。時を経ての再会も、潜る人という夢を叶えた内海と、海洋学者の助手になっていた夜野。なにも交わってないようでいて、穏やかに影響を与えていたということか。ただクールな距離感は相変わらずで、これがわたしたちの距離感、と腑に落ちたところでend
 | 実業之日本社 発売日 : |
banca vol.3でみかけててにとったが思った以上にオールドファッションで40pで挫折
 | リイド社 発売日 : 1997-12-01 |
ラオス好きとしてはタイトルにひかれ。ラオス、アメリカ先住民、ボリビアと、当時の社会情勢の一端を切り取ってるのだなあと感慨。
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-04-08 |
新聞社、製紙工場、水産会社など震災に直面しつつも挫けず、奮闘する様子が描かれていた
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-04-15 |
秋田編は、嫁盗みという一種の駆け落ちで、父に許されぬまま婚礼をあげた二人に、参列させてもらうバードと伊藤。父の参列は叶わなかったが。バードの掛けた言葉が、父と娘夫婦のその後の関係をいいものにしそうな予感を残して。嵐で増水した川を無理矢理に舟で遡行しようとし、行き違う大破した船の乗客たちを助けられず悲痛な場面もあったが、それでも歯を食いしばり北へ、と。
 | 講談社 発売日 : 2021-04-13 |
ねこは、電気あんかが好き、作者にはツンデレだが父にはデレ全開、言い聞かせれば納得してくれて。犬は素直で愛されたがりでかまって欲しがり。両者とも愛らしく。
 | 講談社 発売日 : 2021-04-13 |
なぜか、ゼミ内で三島くんと付き合ってるという嘘をつき、平良先生からの警戒も少し緩み、そこへエドガーさんとお試し期間彼女することに。ツッコミ、ダメ出しのためのはずが、どんどん急上昇急降下する感情に、疲れてしまい…といったとこまで。
 | KADOKAWA 発売日 : 2019-11-21 |
単行本を二度読んで、映画を見て、文庫版でまた再読。速水、高野恵、二階堂大作、柴崎、久谷は出てくるけれど、それだけで映画は全く別物だったなあ、というのを再認識。原作が宛書きで書かれたのだからそのまま映画にすれば十分よい作品になったのにというのは、無責任な観客の戯言か。映画も十分面白かったことは確か。移り変わりの速い世の中、原作の道具立てでいくつか古びてしまったものもあるから、そのままではいけなかったということなのか。原作を読み返して、小山内の、辞職を決意した後の、どうも世の中がわかりやすいものばかり求めて骨抜きにされている気がする、というのと、エピローグのこれからが情報化社会のはじまり、どんどん細分化され、あらゆるところが薄利を押し付けられ、多売すらできず、社会は衰弱してゆく、そこに立ち向かうには言葉だ、といった趣旨の感懐が印象に残った。
 | 講談社 発売日 : 2020-03-23 |
1-2巻までと続きはコミックDAYSで読了。テーマが、老後、孤独死、猫は神、って、なかなかに類を見ないもので。普段考えないことをリアルに突きつけてくれるマンガ。持ってる環境も千差万別なら選択肢も様々。そして正論ぶつけても感情で返されれば話は噛み合わず…。意識してなかったけど対話を重ねるうちに実家が太いと気づいた山口さん。複雑な家庭であることを感じさせつつキツイ言葉でつっこんでくる同僚と話すうちに、気づきを得て行動も起こすが…と。そして、猫の廬山人、かわいすぎてホッとします。/"孤独と不安は人を馬鹿にする" "それなりに余裕がある人生じゃないと他人の言うこと素直に聞いたりまして周りを見るなんてできないですから" "よく死ぬにはよく生きねばならない"
 | エンターブレイン 発売日 : 2012-04-14 |
ユリイカの近藤聡乃特集つながりで。漫画家を目指しながら喫茶店でバイトするウサギのヨシオくん。オーナーや同僚、よくくる憧れのお客さん、最初は客寄せだったつばさくんに、刺激をうけたり、背中を押されたり、一緒に仕事をすることになったり。着実に、こつこつと自分の道を進みつつ最後は…と。伝染るんです。のカワウソくんや星の王子さまネタをはじめ引用と仕掛けに満ち、作中作やつげ義春作品も鍵となり、読みどころ、楽しみどころもいっぱいでした。
 | 新潮社 発売日 : 2015-08-27 |
映画の脚本書きに悩み、ペニーセイバーという不用品を売るための広告に電話をかけ、インタビューさせてくれないかと頼み、断られ続けながらも、その中でも話を聞かせてくれた人たち。確かにみな独特な人生観、個性的なふるまいや信条を持っているように見受けられ。最後に会った”ジョーはまるで強迫観念に取りつかれた天使のように、がむしゃらに善をなそうとしていた(p.203)”といったジョーとの出会いで、人生観ががらりと変わり、映画にも出てもらうことに。その出会いと対話と転換は強く印象に残った。///もしかしたら残りの人生は小銭なんかじゃないのかもしれない。いや、あるいは最初から最後まで全部小銭だったのかもしれない。数えきれないくらいたくさんの小さな瞬間の寄せ集め(略）そこに固有の意味も価値もないからこそ、それは奇跡のように美しい。それは精緻でラディカルなアートそのものだった。(略)あえて無意味であることを選び、ゆえにその人の生のすべてが反映されるような、そんなアート。(p.211)/人はみんな自分の人生をふるいにかけて、愛情と優しさを注ぐ先を定める。そしてそれは美しい、素敵なことなのだ。でも独りだろうと二人だろうと、わたしたちが残酷なまでに多種多様な、回りつづける万華鏡に嵌めこまれたピースであることに変わりはなく、それは最後の最後の瞬間までずっと続いていく。(p.230)///ただ、気になったことも。50ドルの謝礼で、どこまで承諾したのかはわからないが、読み手によってはおとしめられていると感じた描かれ方をされ、壁に貼ってるものや家にころがってるものまでさらされてる人もいた。気にならないのだろうか。お国柄なのだろうか。
 | 日本貿易振興機構アジア経済研究所 発売日 : 2021-03-31 |
◇ソマリア：アル=シャバーブ登場までのイスラム勢力の変遷を描く。スーフィーを中心とした政治的には穏健なイスラム勢力。独立後のバーレ軍事独裁政権下でのソマリ語ラテン文字化、財産権の男女平等からのイスラム統制政策。バーレ政権崩壊後の、世俗的なムスリムからサラフィー主義者までのさまざまな勢力がイスラム法廷による統治を行ない、その連合が駆逐され、エチオピア軍駐留、暫定連邦政府樹立の中で、アッシャバーブ台頭。サラフィー主義者の軍事力を継承し、またサラフィー主義者たちの支持を得、木炭交易で大きな財を成し、統治を可能とする官僚機構を持ち、現地民の支持も得て、ただのテロ勢力とみなすのは妥当ではない、と。/◇コートジボワール：独立運動、独立後を通しての、ウフエ＝ボワニとイスラム改革派の関係。重要都市のモスクのイマーム人事において、改革派に改革派イマームの辞任、罷免と、伝統主義者のイマームを据えるという形で、介入し、それを受け入れさせるほどの影響力を持っていた。その例から見られるように、影響力はかならずしも改革派の意向に沿ったものとは限らなかった。自らの政治的利益のために、改革派と伝統主義者の融和をはかっていたためではないか、と。/◇南アフリカ：インド系という南アフリカでのマイノリティが、黒人と手をたずさえて独立運動でも大きな役割を果たすが、インド系コミュニティ内では様々な対立があった、と。また、現地のアフリカの人々への布教は、人種が違うという見方をされて広がらなかったが、アフリカ各地からやってくるムスリムに対しては、インド人ムスリムが受け皿となった面があった、と。/◇ケニア：イギリス植民地化以前のオマーン系アラブ人によるイスラム法統治の伝統が、現在10％というマイノリティーのイスラム教徒に、イスラム法による統治という特権を与えている。他宗派から特権に対する攻撃という揺り戻しはあるが、現在揺らいではいない、と。/◇ナイジェリア：イギリス植民地下で、現地の統治は現地人にという方針からかえってシャリーアによる統治が活性化し、その後、イギリス法を上、シャリーアを下とする枠組み。独立後は、シャリーアは下火に。21世紀にふたたび。けれど個人法に限定。共通するムスリムエリートの冷静さ。他宗派も過激化しないと知り、反発も沈静化。
 | 小学館 発売日 : |
科学はそんな、「もの」の発見競争ではない。あ、こういう風に自然は見てとれるのかという、新しい世界観をつくっていく、もっと豊かで楽しい文化活動であって、唯一の絶対的真理の発見競争などではないのだ。(p.12)/科学やカオス研究のエッセイからはじまり、気象学者が悪魔と契約して世界から”カオス”を失くしたら人間も生物も滅びてしまった…という「カオス出門」、物語を作り続ける人工知能を開発した教授と研究室のメンバー、それが世界的にも影響を与えてしまい…といったドタバタが描かれる「小説進物史観」。すごい思考実験、といった感。
 | ナナロク社 発売日 : 2019-01-19 |
ユリイカ 特集＝近藤聡乃を読んで読みたくなり。靴を脱ぐ文化の日本と土足文化のアメリカの、床に対する意識の違い。彼らはあまり床を汚いものと思っていないのでは、と女子トイレでトイレの床にかばんを置く女子を見かけて思ったりしたことなど。自分が使っている言語で思ってることのどれだけを表現できているのか、という考察から、”気づいてないだけで、まだ何語にもなっていない抽象的なものが意外とたくさんあるのかも”と。お酒を飲んで目が見えなくなる体験をしてから、お酒を飲んでないこと、の一節。ワイエスの「クリスティーナの世界」はどんな絵なんだろう。といったところが印象に残った。
 | 講談社 発売日 : 2021-04-20 |
1945年前後のグローマンとノアゾンの父の若き日の姿、政府高官への道と反政府組織フライハイトの萌芽が描かれ。そしてフォン・マイザー女子とMSGを生んだ研究所。MSGの独走でのフライハイト本部への急襲。決着は政治的な決着に持ち込まれ、その矛先は…と。そしてフレンダーの接触した殺し屋のこれからの役割は…と。最後にあった、監修者のコメントがまた効いていて。史実にもとづいたずらし。1985−1989年あたりの東ドイツについても知りたくなった。
布地の価値。贈り物を奇数で揃える作法。贈与でも返礼でも重視される布地。さまざまな階層への返礼。といった論点が印象に残る。少なくとも1582年にはそうとれるということか、16世紀後半にあまねくそうだったのか、その前後の時代は、というところは留保しなければだが。
 | ユーフォリアファクトリー 発売日 : 2019-06-17 |
ナミビアの旅 ヒッチハイクする少年 歩くヒンバの少女 水を求める声 砂漠に緑の円が連なる光景 キャラバンの担い手の誇りと減少 デコート・豊崎・アリサのドキュメンタリー「caravan to the future」で描かれるキャラバン 砂漠化に対抗する試み 砂漠に未来都市を展開する試み 無人の実験都市や、サウジ皇太子の肝いりのヒトよりロボットが多くなる都市・サウジの法律の及ばない特区NEOM、ブロックチェーン技術主導の都市 ソマリ砂漠 デザートアート植田正治、ダグ・エイケンのナミビアを舞台にした「ダイヤモンド・シー」春間豪太郎の冒険紀行 カラバリ砂漠のスイカ主食の村 デーツがお好みソースに ゼロカーボン都市マズダールシティ紀行 などが興味を惹かれたトピック。「ユートピアって、この世界の”まだどこにもないもの”ですよね。既存のものに対して独立・自立した生態系を構想しようとしている点で、ユートピアと砂漠は似ている。既存の環境の影響を受けにくい砂漠は、新しい都市のかたちを生む可能性を秘めているのかもしれません」（五十嵐太郎）
 | ユーフォリアファクトリー 発売日 : 2020-03-13 |
バルト三国というくくりはソ連統治時代からの枠組みでそれまではそのようなくくりはなかった。北欧志向でフィンランドとのつながりの深いエストニアと、東欧志向の強いラトビア、リトアニア。ITに強いエストニア、薬学に強いラトビア、繊維産業がさかんなリトアニアと特色も違い、言語も民族的なルーツも異なり、と。三国間での行き来もそれほど便利ではなくさかんでもないとか。日本在住のエストニア、ラトビア、リトアニア人の鼎談とか興味深かった。モデルさんが、梨木香歩「エストニア紀行」が大好きなのでエストニアにこれてうれしいみたいなこと書いてて、梨木香歩「エストニア紀行」好きとしては共感。エストニアの歌手・画家・モデルのLepatriinu、実験的なサウンドを多用するKIWA、Kris Lemsalu「Whole Alone2」、ラトビアのAnnemarija Gulbeの現代の若者の日常・恋愛・葛藤を写した「White goat」「Love Re-search」などチェックしてみたいアーティストもちらほらと。リトアニアの不協和音を重ねたようなコーラス「スタルティネス」も気になります。
なぜ今のタイミングか、ということについては、ロシア、アメリカなど諸外国の批判は意に介さず、掣肘するはずの軍もクーデター失敗からこっち権威は地におちている、という状況のなかで、国内向け、保守層向けの支持取り付け、次の選挙への危機感から行われた、と。前段では、トルコ共和国建国からの世俗主義とイスラームの相克、前者の圧倒的優位から、親イスラーム政党の登場、その勢力が強くなりすぎると軍が出てきて揺り戻す、という繰り返しが、後者の力がつよくなり、現政権にいたる経過、オスマン帝国だった領土には責任を持つという理念の新オスマン主義を押し出した外交政策などが語られる。
近世オスマン帝国都市の慈善と救貧。慈善や救済の対象が誰であったのかという点については、都市により施設により時代によりさまざま。貧者というケースもあれば、施設の職員というケースも。興味深かったのは、1730年のパトロナ・ハリルの反乱以降、警戒を強めた政府が特定集団・地区の住民調査や不審者の取締りを強化した事実から、そうした政策の一環でつくられたのでは、という1736年付キリスト教徒の物乞いに関する台帳という資料の紹介。だいぶ昔に、オスマン帝国の乞食で卒論書きたいという生徒が来て、史料がないから無理だよと諭したという教授の話を聴いたことがあるのですが、初動の段階とはいえこういった研究もでてきているんだなあ、と。
 | 集英社 発売日 : 2020-12-18 |
58-60巻まで読了 朱海平原の戦いの決着、趙の政変、李牧の追放。そこからの秦と魏が連合しての楚との戦い。信もようやく将軍となり、さていつ頃統一までいくものやら。
 | 自由現代社 発売日 : 2018-04-24 |
(2021/4/23読了分)トータル・セリエリズム、ポスト・セリエルのみ再読。セリエリズムで音楽を完全にコントロール下に置こうとしても、どこまでコントロールするかでコントラストができるものだなという感想。音高、強弱、リズム、再利用の可否、などなど。(2018/08/07読了分）何となく時々聴きたくなる現代音楽。一時期、スティーヴ・ライヒやフィリップ・グラスのCDを集め、時々、ブーレーズのル・マルトー・サン・メートルを聴き返したくなる身としては興味深さしかない一冊。きっかけは中学校の図書室にあった、BERNARD DEYRIES 「まんが 音楽史 (Vol.3) マーラーから現代まで」(音楽之友社)。こんな音楽があるんだ、面白そう、聞いてみたい、と思ってしまったこと。即興演奏と不確定性の章で、笑っていいとも！でのタモリと明石家さんまの「フリートーク」が取り上げられるなど、楽理を説明しつつ、その発展で取り上げる話題は縦横無尽。無調、12音音楽から、ミニマリズム、フルクサス、不確定性など様々な話題が語られ、それがどういう社会背景で生まれ、現代につながっていくか解き明かしてくれる。気になった曲、作曲家、ワードは、下記。クセナキス:ヘルマアイスラー:雨を描く14の方法トマス・ピンチョンジェフスキー :カミングトゥギャザーthe KLF:Chill outハリーパーチのオリジナル楽器リゲティ:ロンターノシュトックハウゼン:ミクストゥールルイジ・ルッソロ:都市の目覚め近藤譲 線の音楽の思考に基づく「オリエント・オリエンテーション」「スタンディング」「クリック・クラック」川島素晴 作品集CD「ACTION MUSIC」macaroom「cage out」John Cage:ザ・ビートルズ1962-1970ラ・モンテ・ヤングの「一本の線を引き、それを辿れ」
 | 明石書店 発売日 : 2010-09-29 |
パプアニューギニアの観光化する通過儀礼、選挙の背景にある「ビッグマン制」という伝統的リーダーシップ、中国系ビジネスにおびやかされる現地個人商店主、一方治安はよくなったという感想も。フィジーのインド人コミュニティの盛衰、ソロモン諸島の民間同士の争いで政府に賠償を求める風潮、ヴァヌアツのカヴァバー、西サモアとアメリカ領サモアとの間の一筋縄ではいかない複雑な感情、ニュージーランド統治、アメリカ統治を背景に異なる嗜好、経済格差。サモアに特徴的な屋根と柱だけで壁のない家屋から西洋的な建築への移行、作家性を押し出さないオセアニック・アートの特徴-展覧会のために三ヶ月かけてほった木の彫刻を、その素晴らしさに打たれた青年が彫刻刀で掘り出しても悠然としている作家。といったトピックに興味をひかれた。
 | 双葉社 発売日 : 2021-04-21 |
以前は栄えていた半分眠ったような温泉街に暮らす男子高校生怜を主人公に、男子高校生たちの群像劇が描かれ、母が二人いるという設定で一般から外れたイメージの家族像という三浦しをん節も効いている。博物館から土器が盗まれてとか、修学旅行先のこぜりあいとか、父と称する男の登場とかはありつつ、それほど大きな事件が起こるでもなく、傍目には平穏な高校生活に見え。その中で、奔放派の友人たちと理性的な友人に囲まれ、時に影響しあい、気遣いあい、大人とて完璧な存在ではないと思う瞬間瞬間を受け入れ、マイナスな意味ではなくフラットな意味合いで夢も希望ない自分を悪いかと花火大会で叫び、すごく青春だぞと言われたり、そんなこんながあたたかくていいなと思えた物語。/「「七人の敵がいる」って思う人は、線引きがはっきりしてるんだろうなと思う。もしくは、身内によっぽど甘やかされて育ったんじゃない。」(伊都子)/
 | 秋田書店 発売日 : 2021-04-20 |
奇食に興味をしめした編集者と、奇食食材代を経費にと目論んだ旦那さんというきっかけが、著者の奇食愛の爆発を目の当たりにすることで連載開始！という前段が語られ。ツキノワグマ、コウモリ、ウシガエルと一般的にはちょっと引かれそうなものを、至極美味しそうに描く手腕よ。虫の自販機はちょっと興味引かれます。最後は、著者と旦那さん、それぞれのおいしいゲテモノランキング。ふたりともワニの手が入ってる所に興味。ラクダの肉は一番なんだあ…など。旦那さん、生き物飼いた過ぎて家ぶちたてたとか、時々旦那さんが意地悪な顔をするところにすごく萌える著者、なれそめを語りたくて仕方ない著者に、「Twitterです」の一言でぶったぎる旦那さん、のあたりが印象に。珍獣屋さんのyoutubeチャンネルも開設とのこと。それで予習して、往来が自由な世の中になったら一度行ってみねば、という思いに。
 | 祥伝社 発売日 : 2021-04-24 |
印象に残ったのは、シゲタが田島に”痛い傷ついてるって言えるようになってるじゃん、旦那に愛されていたってことでしょ”て趣旨のこと言われたシーンと、シゲタが、なぜ耐えねばならぬ、よし、人生短いんだしもう耐えない、と思い切り、啖呵切ったシーン、かな。もとは自分に気があった男二人と何十年ぶりに会ってみれば、即座に、ないわ、て雰囲気を出されたり、なぜか尾行の腕を磨いたり、フクちゃん夫婦に知らぬうちに徳をつんでたり、夫のタカハシも迷走してたりで、さらに作者が、ああシゲタそれ自業自得だわと読者に思われないようにこの設定は伏せてましたみたいなこともあかされ、この巻も、シゲタの明日はどっちだ、という読後感
 | 新潮社 発売日 : 2021-03-27 |
五話、すこしずつつながりをもたせた形の連作短編集。叙述トリックのような、そう来たかという仕掛けが随所にあり、それでなくても、深い所まで持っていかれた心を、さらに深い所まで潜らせてくれる。そこまでしてしまう思い、というものに打たれて。二度と帰らぬ人を待って同じところにとどまり続けるのも、ここではないどこかに思いを馳せ続けているのにとどまるのことを選ぶのも、誰かの中に生き続けたいと願うことも、みな尊くて。「生きるとか生きていけないとか、大人でも考えて苦しむものなんだ。だったら俺や晴子が苦しいと思うのは当たり前なんだ。大人が苦しみながら泳いているのだとしたら、それはとても厳しい現実だと思うけど、でもそういうものであるなら、仕方ないよな。もがきながら泳いでいくしかない」(啓太)
 | 嶋中書店 発売日 : |
日本におけるアラビアン・ナイト受容みたいな本（タイトル忘れてしまった…そのままずばりアラビアン・ナイトとかかなあ）読んで興味を持った一冊。物語の雰囲気と絵柄がマッチしてるなあ、という思い。しかし残念なのが、いざ、これからシェヘラザードが王に嫁ぐ、というところまでということ。続刊鋭意作成中て最後のページにあるんだけど、描かれなかった模様。どうしてだろう…最晩年の作品というわけでもないように思うのだけど。
 | 小学館サービス 発売日 : 2020-06-08 |
ラーメンオタクの商社のサラリーマンは、プライベートはラーメン研究と屋台でラーメンを出している、という設定。寛容な上司、主人公の正体を知ってか知らずかその特性を活かそうとする上司、屋台には来るけど屋台のことは黙っててくれる同僚のラーメン好きの女性、脱サラしてラーメン屋はじめたのにまわりの意見を聴きすぎて迷走中の店主などなど登場するけど、強烈なのは、客はバカ舌、やつらは情報を食ってる！と割り切り、わかりやすく強烈な味だけど鮎の風味なんかしない人気ラーメンで銭をかせぎ、それで、鮎の風味をわかる人にはわかるというラーメンにつぎこむ店主。主人公はそのラーメンをアレンジして主人公なりの回答を示すが、それはひとつの答えとして、この問いの投げかける先には…と。自分も情報を食ってるのではないか、しかも喜んで、という思いに。
 | 講談社 発売日 : |
Banca vol.3つながりで。35年ほどまえの作品。ブラジルは貧富の差がはげしく、日本人はカネにあかせられれば何でもできて、東北部ではいまだに警察の手の届かない掟がはびこっている、という世界観。殺し屋、麻薬の売人、商社の現地雇用員、炭鉱夫、旅行会社社員、便利屋、農場の下働き。アウトローだったり、底辺に近い暮らしを強いられた者たちが、あるものは一攫千金を夢見、あるものは己の職務に忠実に、あるいは、何者にもしばられない境遇をもとめて、ブラジルの大地をうごめき、だいたいは目論見破れいずこともなく去っていく…。乾いた読後感。
 | 明石書店 発売日 : 2016-09-25 |
植民地時代から合衆国初期の時代まで、統治者が先住民族と交渉し条約を結び関係を持とうとしていた、という側面は意外だった。最初から高圧的ではなかった、と。それが後代には一方的に条約をやぶり、土地を収奪し、強制的に移住させ、文化を奪い、貧困につきおとしていった…と。ただ、「アメリカ先住民」と言っても300近い部族がそれぞれの個性、環境を持ち、多様な存在で、貧困が問題になっている部族から、カジノ経営等で莫大な財を築く部族までさまざまであること。また誰が「先住民」なのか、ということについて多様な議論が存在すること。アメリカ先住民へのステレオタイプな見方もまだまだ存在するが、アメリカ先住民自身が、顧みられなかった自ら固有の文化を復興する動きもあり、そのなかで部族大学が大きな役割を果たしていること、などを知ることができた。以下備忘録。/カジノ産業からの収益金を政党への寄付金に充て、ホワイトハウスにまで影響力をもつ一大政治勢力になったピクォート部族の事例(p.60)/「先住民」とは誰なのかについて多種多様な定義が存在し、この結果、連邦、州、先住民集団のそれぞれのレベルでさまざまな「先住民」が生まれ、ある場合に先住民と認められた者が、別の場合には否定されるという、非常に複雑な事態が生じている。(p.114)/2006年12月、フロリダ・セミノールが世界45カ国、124店舗のレストランをもつハード・ロック・カフェを6億5000万ドルで買収(p.156)/スー族は歴史的に合衆国に対してブラックヒルズの返還を訴え、賠償金と引き換えに聖地と部族の過去を精算することを拒んできた。(p.201)/男女どちらの性でもないベルタージュという存在をみとめる部族もあり。男性として生まれて女性のように振る舞うベルタージュの方が一般的だった/テカムセは「今住んでいる土地を手放して合衆国に売る権利はどの部族にもない。この土地は先住民皆のものであるのだから」と訴え、部族同士、皆で団結して、今住む土地を守っていくことを提案した。(p.330)/石井泉美「ウィルマ・マンキラーー過去・現在・未来をつなぐ人」『立教アメリカン／スタディーズ』30,2008は読んでみたい。
 | KADOKAWA 発売日 : 2021-04-26 |
ポンポさんのおじいさんの思い出、主役しか張れないスター俳優との出逢い、その映画を撮るための会社設立、天才的な脚本家の参入、ヒット街道の驀進、老いて映画人としての潮時を考え始めた時に気づいた孫娘の才能、その中に見た天才脚本家の萌芽、自分の持てるあらゆるものを孫娘に注ぎ込み、それがポンポさん、と。自分の心がチラリとでも動いたらそれを俯瞰で眺めてネジの一本までバラしてタグ付けして自分の中に蓄え、いつでも創作に活かせるようにする、って凄まじい業だなあと。
 | ポプラ社 発売日 : 2016-06-03 |
活版印刷で人生の悩みを解決、でもどうやって？みたいな期待で手に取り。レターセット。ショップカードとコースター。栞。結婚式の招待状。自分の青春時代の思い出を次の世代に渡すこと。先代の俳句への思いを引き継いでしっかりと刻印し自分ならではの味を出すこと。祖母が一文字一文字押してくれたお年玉袋へ思いを共に歩む人へ伝えられたこと。それぞれ印象的だったが、一番はやはり表題にもある「星たちの栞」。宮沢賢治「銀河鉄道の夜」を軸に、鋭い感性で物語をつむげる少女と羨望しつつ編集者としての萌芽を感じさせる少女の、友情とすれ違いと理解と、顧問の先生の演劇を一度は捨てた思いと今でも女優として活躍する友人の物語が絡み合い、そこでキーとなる活版印刷。ひさびさに「銀河鉄道の夜」を読み返したい思いに。/「だれも、だれかの代わりになんて、なれませんよ」（弓子）/「不思議ですよね。版も活字もないけれど、印刷された文字はこうして残っている。実体が消えても、影は残る。影が実態になって、いまもあり続けている。」（弓子）/「「ほんとうのさいわい」がどういうものかはわからないけど…カムパネルラはザネリを救うために、とっさに川に入ったんですよね？そうやって、だれかを救いたいという衝動が人のなかにある。そのこと自体が、希望のように思えます。」(弓子)
 | 慶應義塾大学出版会 発売日 : 2021-04-05 |
http://blog.livedoor.jp/chokusuna0210/archives/52505578.html
フランク王国メロヴィング王家、長髪、生まれた時から切らず？臣下はそれより短髪。メロヴィング王家の長髪はローマ化の防波堤という意味合い。カロリング朝は髪になんの思い入れもなく。むしろ短髪を是とするキリスト教ローマ帝国と繋がろうとしていた。聖書では髪に対しては神の矛盾した意志を感じられる。長いのを是とするか短いのを是とするか。タイトルのカール禿頭王が本当にそうだったのかは、史料的裏付けはないが、髪はあったのでは、と。そこからトンスラに話題はうつり、当時の聖職者の禿頭称賛嗜好、俗人の長髪礼賛嗜好が読み取れる、と。ただ時代によっても移り変わりがあり…と。ヨーロッパのある時期を例にとり、髪の長短をめぐり当時の人々がどのように考えていたか、という視点はおもしろかった。
 | 講談社 発売日 : 2012-11-15 |
上下巻読了。女子アナとその周囲の人をめぐる群像劇。そのなかでも、卑劣な行為で一度はどん底まで転落させられた望月結香と自分の手にした職を天職と受け止め、着実に回復していくストーリーに胸を打たれる。長崎先生の分け隔てない献身と、佃ディレクターのあたたかく背中を押してくれる姿勢と。また、週刊誌連載で、「わたしスキャンダル記事を書いたあなたの手は、さぞおきれいなんでしょうね？わたしの裸の写真が載った週刊誌のページをめくったあなたの手は、さぞおきれいなんでしょうね？」と、そして書いた記事で貶められた人がその後どんな人生を送るか考えたことがあるのか、と週刊誌批判が語られるアイロニーも。そして、エリック・ドルフィーのネイマ、聴いてみたくなる。/”今日が一生、今が一生、今日生まれた、今を生きる”/自分ときちんと向き合うということは、簡単なことじゃないんです。真夜中に、トンネルのなかで、向こうから歩いてくる得体の知れない人と話をするのと同じくらい、怖いことなんですよ」(佃ディレクター)
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