Z級アクション研究所 暫定出張版

B級以下のアクション映画をゆるゆる語っています。

『ザ・スナイパー 孤高の男』 実は超真面目な格闘映画

Blackbear
2019年/アメリカ
監督 J・M・ベリオス
出演 スコット・プライアー、エリック・ロバーツ


<あらすじ>
 アフガンでの任務中、ISISに捕まった特殊部隊。隊員のベアとカウボーイは脱出に成功するが、帰国後、カウボーイはISISに投与された毒物によって余命3ヶ月を宣告されてしまう。ベアは治療費を稼ぐため、地下格闘の大会に参加するが……。


<火薬量 ★>
 大規模爆発一回。CGではないと思う。


<スタント ★★>
 こんな邦題だが、実は格闘映画な本作、冒頭約15分はアフガンを舞台に主人公が所属する特殊部隊のドラマが展開し、戦闘シーンもあるのだが、だからって、そこだけを切り取って邦題にしてしまうあたりはさすがトランスワールドアソシエイツ(TWA)! ちなみに戦闘シーンのガンエフェクトはCGだけでなく、ちゃんと火薬、血糊を使っているので感心。
 メインとなる地下格闘大会が始まるのは後半30分とかなり遅め。さらに始まってからも人間ドラマが優先されるため、試合数は少なく、短い。そのせいか、主人公が勝ち上がっていく興奮はほとんどなく(特に決勝の行き方!)、殺陣も総合格闘技のリアルさを出そうとしているが、地味&短いのでリアリティを感じさせるまでには至らない。さらにクライマックスとなる決勝では主人公の目的である贖罪を前面に押し出し、自分を罰するが如くボコボコにされるので、ひたすら痛々しい。これは作り手の狙いだから成功しているのだが、観る側としてはちょっと……。まぁ、全体的に打撃技が多いなかで決勝の決め技は意外だったが。
(アクション・ディレクター:Nicholas DeKay/スタント・コーディネーター:Christian Brunetti)


<しょぼさ ★★★★★>
 この映画は非常に真面目だ。人間ドラマを真面目に描こうとしすぎて、遊びの部分がまったくない。おかげで94分間正座させられている気分になってしまった。
 おそらく監督のJ・M・ベリオスと脚本も書いている主演のスコット・プライアーが非常に真面目な人物なのだろう。劇中でやたら聖書を薦めてくるし、信仰的なものも関係してそう。これで二人がちゃらんぽらんな人間だったら逆に凄いが。

 しかし、そんな真面目一辺倒な本作もラストで意外な展開を見せる。人間ドラマが優先されるあまり、それがクライマックスの格闘シーンにまで侵食、ラストでまさかのどんでん返しを仕掛けてくるのだ。その結果、超絶シリアスなはずのラストで「そっち!?」と思わずツッコんでしまう事態が発生。どんでん返しの意外性が、悲愴感や感動その他もろもろの余韻を完全に上回ってしまい、なんでこんな展開にしたのかと首をひねった。真面目さが変な方向にいって「映画の最後でなにか仕掛けなきゃ」とでも思ったのだろうか?
 
 真面目すぎて面白みに欠ける、そんな月並みな表現がピッタリな映画。TWAさんの邦題が一番遊んどる。


『コードレッド ロシア軍秘密兵器破壊指令』 今月のロシアン・コマンド・アクション

Secret Weapon
2019年/ロシア
監督 コンスタンティン・スタツキー
出演 アレクサンダー・ウスティゴフ、ティモフェイ・トリヴァンツェフ


<あらすじ>
 ナチスに奪われた新兵器カチューシャを破壊すべく派遣された特殊部隊。仲間が次々に戦死するなか、任務を果たせるのか!?


<火薬量 ★★★>
 前半からラストまで爆発を随所に配置。小規模なものがメインだが、大規模なものだと木橋を吹っ飛ばしたりして頑張っている。装甲車爆破シーンは一瞬「おおっ!」と思うが、CG合成っぽくもあるんだよなぁ。


<スタント ★★>
 爆発で吹っ飛ぶ人、燃える人など。戦闘シーンでは手持ちの武器が少ないなかで敵のものを奪ったり、味方にケガ人や戦死者を続出させることで壮絶さを演出。ガンエフェクトは一部CGを使いつつもマズルフラッシュは火薬(空砲)メインなので迫力あり。


<しょぼさ ★★★★>
 なんか毎月のように新作を観ている気がするロシアン・コマンド・アクション、今回はWW2モノとなっております。いかにもTVドラマって感じのOPと全体的な作り(安さ)から察するにTVやネット配信での公開を前提に作られた作品ではないかと思うのだが、調べてもよくわかりませんでした。

 コマンド・アクションとしては非常にベタかつシンプル。ドンパチだけでなく、敵側との頭脳戦的駆け引きや任務のために若い命が散っていく苦みも加味され、ツボを押さえたものとなっています。
 さらに単調にならぬよう、何人かのメンバーをはぐれさせることでサブストーリーを作り出し、本筋と同時進行(このへんもTVドラマっぽいんだよなぁ)。若干ゴチャつくところもあるけど、本筋がダレてくると「そういや、あの話ってどうなった?」と気になってくるので退屈はしないかな。クライマックスでこのサブストーリーが本筋と合流し、実は伏線だった部分が回収されるあたりはちょっと感心。

 決して出来の良い作品ではないけど、娯楽性に富んだベタさ加減には好感を持ってしまった。コマンド・アクション好きならそれなりに楽しめると思います。


『ガーディアン24』 ツッコミ不在で面白くなり損ねた残念作

Walter
2019年/フランス
監督 ヴァランテ・スージャン
出演 イサカ・サワドゴ、アルバン・イヴァノフ


<あらすじ>
 閉店後の巨大スーパーマーケットに強盗団が襲来。警備会社からの連絡で警備員が様子を見に来るが、彼は元最強兵士だった!!


<火薬量 ★>
 爆発一回……と言いたいところだが、CGにも見えるんだよなぁ。本物なら場所的に凄いし、CGならよく出来ている。
 クライマックスの店内大炎上も迫力あり。


<スタント ★>
 アクションはすべて『ホーム・アローン』系なので誰も死にません。主人公がその場にあるもので武器を作り、敵が滑って転んで大騒ぎ。さらに主人公はメチャクチャ強い設定だけど、敵は全員ボンクラなので、あまり反撃することなく、ひたすらやられ放題。
 『ホーム・アローン』って主人公が子供で、敵がマヌケでも大人だから成立してるんであって、本作みたいに最強の男が主人公だと緊張感に欠け、あまりスカっとしませんな。


<しょぼさ ★★★★>
 スーパーマーケットを舞台にした『ダイ・ハード』設定に『ホーム・アローン』的なアクションを加え、アクションとコメディのいいとこ取りを狙った結果、なぜか『イコライザー』のクライマックスを水で薄めた感じになってしまった残念作。

 お膳立ては完璧なんだよね。普通に作ってもそれなりに面白くなりそう。しかし、本作が失敗しているのは、敵をボケ役にしてしまった、この一点に尽きる。なぜならアクション映画における「バカみたいに強い主人公」というのは存在自体がギャグみたいなものなので、コメディだとこれ以上のボケはいらんのですよ。
 それなのに『ホーム・アローン』要素のせいですかね、敵側のコミカルな掛け合いをやたらと挿入してくる。主人公がバカみたいに強いんだからそれを動かすだけで笑いが取れるのに敵側がクソしょうもない小ボケを連発するせいで、せっかくの大きなボケが希釈されていく。さらにこれが映画のテンポも悪くしてるんだよなぁ。

 つまり、この映画、ツッコミ役がいないんですよ。敵をもうちょっと強くして、ツッコミ役にすべきだった。そうすれば、双方とももっと生かされたはず。
 いくらでも面白く出来そうなのに、ほんともったいない。ツッコミ役の重要性がよくわかりますね。


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評価の見方

火薬量……一番重要。

スタント……二番目に重要。

しょぼさ……総評のようなもの。★の数はしょぼさの度合いであって評価とは無関係。

全項目★5つで満点。

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