AZX総合法律事務所の雨宮美季先生、橋詰卓司さん(はっしーさん)との共著、良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方 の改訂第3版が本日発売です。

改訂の背景や概要については、はっしーさんのブログ(企業法務マンサバイバル)の『利用規約の作り方』改訂第3版は何をアップグレードしたのかをぜひご参照ください。

本書の帯には「最新動向を踏まえて大幅アップデート」と記載されているのですが、この「動向」は法改正にとどまるものではなく、サブスクリプションサービスの隆盛、AIの急速な普及、利用者サイドの意識の変化といった事業環境の変化を視野に入れているのが本書の強みなのではないかと思います。
第2章の冒頭で弁護士に相談する起業家が持ち込んだビジネスは、11年前の初版では「出会い系サービスを起点にクーポン販売をする」といったものでした。そして、5年前の改訂版では「出会い系サービス起点でCtoC仲介やポイント課金」というアイデアにチャレンジし、今回の第三版では、ついに祖業?の出会い系サービスから大胆に業態変更をして、「AIを使ったアバター作成サービスのサブスク課金」にチャレンジしています。(改訂作業が始まったタイミングでは突拍子もないビジネスアイデアだと思っていたのですが、現実がものすごいスピードで追いついてくることに驚愕しました・・・)
これだけを見ても、本書が「法律の解説書」にとどまらない、「事業を起点に、法律とどう付き合っていくか」のガイドであることがおわかりいただけるのではないかと思います。

他方、事業目線の法律解説書は、表面をなぞっているだけで少しでも典型的なパターンを外れたり、一歩踏み込んだりした論点にはまったく触れられていないことも少なくありませんが、本書は、実務上重要なポイントについては、むしろ思いっきり踏み込んでいるのも特徴の一つです。
例えばCtoCサービスでお金の受け渡しをプラットフォーマーが行うことが資金移動業に該当しないのか、という論点については、結論だけでなく、為替取引の定義から実務的な落とし所までしっかり解説されていますし、個人情報を第三者提供する際には結局どうすればよいのかという問いについても、ポジションを取った回答を記載しています。

私自身、業務上参照することを確信している一冊に仕上がっていますので、ウェブサービスやアプリに関する事業を営む皆様にもお手にとっていただければと思います。

IMG_1351良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方 の改訂第3版

初版、改訂版に続いて、今回も共著者の雨宮先生とはっしーさんからは多くのことを学ばせていただき、このことが私自身にとって何よりの報酬だと思っています。
また、技術評論社の藤本さん、傳さんには、きめ細やかな進行管理や校正、ご助言を頂き、安心して原稿に向き合うことができました。
ありがとうございました!
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年始に世古さんから短歌の本をおすすめいただき、いつもの読書の対象として読んでみたところ、一瞬で短歌の虜になってしまった。
その本がこちら「あなたのための短歌集

短歌の何がそんなに僕を惹きつけたのか、自分でもよくわかっていないんだけど、後で読み返すために、今感じていることを書き残しておこうと思う。
なにしろこういうのって、すぐに忘れちゃうものですからね。

情景と心情


短歌の形式的なルールは57577という文字数以外にはないらしい。文字数の数え方に決まりはあるみたいだけれど、そもそも字余り・字足らずが一定程度許容されている以上そこに大きな意味はない。
なのに、57577のリズムで作られた文章がすべて「短歌」に見えるかというと、そんなこともないのがおもしろい。
誰にとっても当てはまる短歌らしさを定義することは多分できないのだろうと思うんだけど、今のところ僕にとっての短歌は、情景と心情が織り込まれているもの、ということになっている。
この「織り込まれている」というのが(個人的には)ポイントで、別に両方書いてある必要があるわけではなく、情景を描写しただけなのに心情がスドンと伝わってきたり、心情を書き連ねているだけなのに明確な情景が背後に透けて見えたりするものの方が好みだったりする。
自作のもので「情景と心情」のどちらも描けなかったものがこちら。これはたまたま31文字になっただけの文章であって、僕にとっては「短歌」という感じではない(ということも作ってみないとわからなかったので、それはそれで意味があったよな、とも今書いていて思った)


抽象化


短歌に許された文字数はたったの31文字なので、具体を描写すると1平方センチメートルくらいしか描くことができない。なので、決定的な1平方センチメートルを切り抜けるような特異なシーンでもない限り抽象化が必須になるのだけれど、これがめちゃくちゃおもしろい。
朝ジムに行く途中に温かい日差しを浴びてとても気持ちよかったので、日差しでなにか詠もうと思った結果出てきたものがこちら。もう、朝ですらないけど、僕の中では「日差しの気持ちよさ」という同じものを見ている。幼虫が蛹の中でドロドロに溶けて蝶になる、みたいな(たまにドロドロのまんま蛹から流れ出てきちゃったりもするんだけれど)


想定外


世古さんのこちらの歌を初めてみたとき、体調悪いときに家族が果物を用意してくれた情景が浮かんだのですが、スレッドの解説を読むと違う情景を詠われたものであることがわかります。
でも、その解釈違いやすれ違いがまたおもしろいんですよね。余白の大きさは、俳句や詩よりもずっと広いように思える。文章を使った絵画みたいな。で、一度解説を読むと、次からはその情景が浮かんでくるわけで、その意味では「だまし絵」みたいでもある。


口ずさんだときの気持ちよさ


口ずさんだときにリズムが気持ちいいのも好き。
こういうやつは、もう内容なんてどうでもいいと言えちゃうくらい。
例えばこれ。内容は、世古さんと全く話を合わせずに短歌アカウントを作ったのに、たまたま「_tanka」を後ろにつけるという対応をしたことをおもしろ半分に57577にしただけのどうしようもないものなんだけど、「末尾のアンダーバー短歌」というリズムが好きすぎて、お気に入りだったりする。こんなどうしようもないものをお気に入りにしているなんてちょっとどうかと思うけど、そういう個人的な好みを持てる懐の広さもまた、短歌のいいところなのかもしれない。


見逃していたもの


短歌を作るようになってから、いろんなものに目が留まるようになったし、過去の記憶を違う視点で眺めるようになった結果、いろんなものを見落としていたんだな、ということに気づいたりもした。見ていたんだけど意識していなかったということに、短歌のネタにしてみて気付いた、とか。
例えばこれは、作っているうちに「ありがたいことだなぁ」なんてしんみりしちゃったりしてね。


誰でも今日からできる


短歌をやってみて実感したんだけど、良し悪しにこだわらなければこれほど簡単な創作活動はなかなかないんじゃないかと思う。写真も手軽ではあるけれど、被写体は必要になる。その点短歌は、脳があればいつでもどこでも手ぶらで始められるし、5分でできちゃったりもする。しかも、そこから始まる推敲もまた楽しいんだよね。
スマホの下書きに思いついた歌を入れておいて、時々立ち上げて推敲して、また閉じる。粘土細工みたいな感じで。

というわけで、2024年は飽きるまで短歌をやってみようと思っています、というお話でした。
ご興味持たれた方は「idの末尾のアンダーバー短歌」で!
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12月1日から続けてきた一人Advent Calendarも、このエントリーで終了です。
もともと25日分全部書く必要があったわけではないし、気持ちとしてもやれる範囲でやれたらいいんじゃないかな、と思って始めたことですが、結局毎日書いちゃいました。
というわけで、最終日はインタビューで振り返りをして締めくくりたいと思います。

一人Advent Calendar、お疲れ様でした。
ありがとうございます。

まずは終わってみての率直な感想をお願いします
思いついたタイミングは仕事が落ち着いていたので行けるかな、と思ったのですが、すぐに忙しくなってしまって、始める前が一番やばいな、と思っていました。
終わってみれば、前日に書いて予約投稿する、というルーチンで回しきれたので、意外にできるもんなんだな、というのが完走です。

そもそもなぜ今回、一人でAdvent Calendarをやってみようと思ったのですか?
毎年恒例の法務系Advent Calendarにエントリーしようと思ってのぞいたら埋まっていたので、「だったら一人でやればいいじゃないかな」と思ってしまったのがきっかけです。前述のとおり、思いついたときはそこそこ仕事に余裕があった状況だったので。

ところが、その後仕事が忙しくなってしまった。
そうなんです。ゆとりがあったのは一瞬でしたね。
なので、朝の運動時間を使って書くことでなんとか辻褄を合わせた感じです。

エアロバイクを漕ぎながら、とおっしゃっていた方法ですね
はい、エアロバイクを漕ぎながらガガッと30分〜50分くらいで書いていました。
その際にLivedoorBlobのスマホアプリを使っていたのですが、想像していた以上に使いやすかったので助かりました。逆に、漢字変換のヘボさとか、謎に読点を入れてくるといった日本語入力のヘボさの方に悩まされましたね。

普段より短い時間で書くことで、なにか違いはありましたか?
えぇ、読む人がどう思うかをあまり気にしなかったという違いがありました。気にしなかったというより、気にしていたら毎日アップできなくなっちゃうので、意識的に頭から読む人のことを追い出していた、という感じです。これまでは、ブログには読む人の役に立つことを書こうと思っていたのですが、このくらいの力の抜き方でも良かったのかもな〜と思いました。

テーマは事前に考えていたのでしょうか?
そうですね。テーマは25個あらかじめ用意していましたが、結局使わなかったり、書こうとしたもののそのテーマでは書けなかったというものも結構ありました。他方で、「ブログを書くぞ」と意識してからネタにできそうなトピックを発見したらiPhoneのメモに残して補った感じです。

取り上げなかったテーマにはどんなものがあったのでしょうか?
「面接不合格の理由」とか、「契約法務における具体と抽象」とか、「人柄マネージメントの限界」とか、「役職定年と隠居」とかですね。「AppleWatchのナビで徒歩移動すると発見がある」や「slack直リンクの作り方」みたいな、140文字でも書けちゃいそうな物もありましたが、25個テーマを出すことが目的になっていますね、これ(笑)

さいごに、やってみて気づいたことや発見があれば教えて下さい
書くことで思考の整理になるんだな、ということはよくわかりました。
頭の中で考えていることや、本から仕入れた知識を自分の言葉でアウトプットすることで、自分のものになる感覚がありましたし、そもそも「このテーマについて書けないぞ」ということを自覚することを通じて自分の理解の甘さや思考の浅さに気づけたということもありました。
あと、Twitterではどんどんかけるのにブログになると難しくなるということから、140文字という文字数制限の偉大さを再確認しましたね。

本日はありがとうございました。メリークリスマス!
ありがとうございました。メリークリスマス!
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毎年恒例のやーつですが、今年から「tweetで振り返る」ではなくなりました。
これを書いている瞬間のポスト数は3899で、月平均は325、1日10ポストって感じでした。

1月


この企画で過去ポストを振り返って初めて、こんなこと言っていたことに気づいてびっくりした。
まさかね、という…

今年も11月にてひどい失敗をしている(本業の方ではないのでセーフ!セーフ!)ので、あー、1年に1回はてひどい失敗をしているんだな、ということを再確認しました。
成長してくれ、自分!

2月


読み返して「あーわかる」と思ったし、これは多分、一生そう思い続けるんじゃないかという気もする。
昨日、たまたまマネージメントの向き不向きについての話題になったんだけど、結局のところ、良いマネージャーであろうと試行錯誤できるかが重要で、「自分はできる」と試行錯誤を辞めてしまったら終わりという意味では、「一生そう思い続ける」ことでもいいのかの、とも思う。

意外にすぐ飽きちゃった。

3月


確かにいい言葉だと思ったけど、すでに綺麗サッパリ忘れていた。


4月


そうなんだよな〜。かといってうまくやらなくてもOKかというと、当然そんなこともなく。

スピードに限らず、最近こればっかり言ってる。人と比べず、過去の自分と比べよう、って。その意味でもBlog書いたり過去のポストを振り返るのって結構有用だと思う。

5月


これはほんとそうだと思う。細谷功さんの具体と抽象とかアナロジー思考を読んでから、意識的な抽象化の重要性を強く意識するようになった。

その後、toCの会社に移った結果「特商法はともかく」じゃねーよ、半年前の自分!ってなっている。

6月


リーガルリスクマネジメントの教科書は、今年読んだ法務本の中で一番記憶に残っているし、実務に反映された量はダントツだったと思う。マンガパートがあるということで敬遠してしまっているのであればもったいない。

自分にとって、内部監査室はしっかり機能しているのが当然で、それを織り込んで法務の施策を考えてしまうところがあるんだけど、そんな素敵な環境はなかなかないのよね。内部監査を機能させることは法務以上に難しいはず。

7月


先日久しぶりに忘年会に行って思ったけど、大人数の忘年会って話も聞こえづらくなるし時間も長くかかるから、やっぱりオフィシャルなイベントはランチ会の方がいいんじゃないかという思いを新たにした。夜の飲みは気の合う少人数で行った方がいいと思うんだよね。

なので、Querieでご質問いただけるのは本当にありがたいんですよね。

8月


え、これ8月だったっけ…。という衝撃。会社の枠を超えて毎週オンラインで集まって1時間議論する、みたいなことが気軽にできるようになったのはリモートワークの恩恵ですよね。

今年最も響いたコンテンツは、やっぱりLIGHT HOUSEだったな(もういいよ、と言われそうw)

9月


一昨日のエントリーでも書いたけど、ChatGPTとの対話が人との対話と同じくらいの頻度で行われるようになったら、人とのやり取りにもChatGPTとの対話スタイルが逆流してきて、無配慮でストレートなスタイルになるということはありそうな気がしている。

というか、部門運営もコミュニティ運営の一形態なんだよね。これだけ転職が容易になった時代においては、特に。

10月


フルリモートの会社か、フルリモートにすることも可能な会社かの違いって結構大きいんですよね。そして、フルリモートにすることも可能な会社の方が、出社組との意識の差が生まれてしまうせいでチームビルディングの難易度は高くなるとも思う。

結局、今でも原因がわからないので、ローカルに保存してGoogleDriveに上げ直すという超絶無駄な一手間が発生している…なんなの、これ。

11月


今月の苦行はここから始まりました。思いつきで軽々しく発言をするもんじゃないですね。

一人ACのせいで12月全然はかどらなかったけど、これからまきかえしていきます!

12月


自分としての今年最大のできごとは、やはり転職でした。


2024年も、引き続きよろしくお願いいたします〜
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契約書のドラフティングを高速化するTipsに続いて、Wordマクロについてもご紹介します。

Wordマクロ作成の準備


Wordのツールバーに「開発」は表示されていない方は、「ファイル」→「オプション」「リポンのユーザー設定」で開くリボン設定の画面の右側の「開発」にチェックを入れてください。
そうすると、BoostDraftの左(いないと思いますがインストールしていない方はヘルプの左)に「開発」が表示されているはずです。
「開発」から「マクロ」を選択し、「編集」を押して表示する画面に以下の諸々を貼り付けることでマクロを使えるようになります。
なお、上記の各マクロには、「リポンのユーザー設定」の「ショートカットキー:ユーザー設定」の「分類」内の「マクロ」からショートカットキーを設定できます。

蛍光ペンを引く


Sub 黄色の蛍光ペンを引く()
Selection.Range.HighlightColorIndex = wdYellow
End Sub

Sub 蛍光ペンを消す()
Selection.Range.HighlightColorIndex = wdNoHighlight
End Sub


文字通りです。蛍光ペンを引く方をコピペしてwdYellowを別の色に変えると更にべんりになります。
いちいちツールバーから蛍光ペンを選択するのはもうやめにしましょう。
時間の無駄です。

カーソル移動


PowerToysやAutoHotKey等でグローバルなカーソル移動ショートカットキーを設定していない方でも、せめてWordではカーソルキーを使うのをやめにしましょう。
ホームポジションから手を話すことは罪なのです。
Sub 左移動()
Selection.MoveLeft Unit:=wdCharacter, Count:=1
End Sub

Sub 右移動()
Selection.MoveRight Unit:=wdCharacter, Count:=1
End Sub

Sub 下移動()
Selection.MoveDown Unit:=wdLine, Count:=1
End Sub

Sub 上移動()
Selection.MoveUp Unit:=wdLine, Count:=1
End Sub

Sub バックスペース()
Selection.TypeBackspace
End Sub

Sub デリート()
Selection.Delete Unit:=wdCharacter, Count:=1
End Sub


カッコ記入スタンバイ


細かい話ですが、カッコを書いてカッコ内にカーソルを移動させると0.5秒短縮できます。1億回やれる5000万秒の節約です。600日近く節約できるわけです。すごいですね。
Sub カッコ内記入()
Selection.TypeText Text:="()"
Selection.MoveLeft Unit:=wdCharacter, Count:=1
End Sub

Sub カギカッコ内記入()
Selection.TypeText Text:="「」"
Selection.MoveLeft Unit:=wdCharacter, Count:=1
End Sub


履歴の表示・非表示・初版表示の切り替え


修正履歴を表示していると、(令和のアプリケーションとは思えませんが)特に大きなファイルだと動作が重くなってしまうので、切り替えが0.5秒でできると便利です。1億回やれば(以下略)
Sub 履歴表示()
With ActiveWindow.View.RevisionsFilter
.Markup = wdRevisionsMarkupAll
.View = wdRevisionsViewFinal
End With
End Sub

Sub 履歴非表示()
With ActiveWindow.View.RevisionsFilter
.Markup = wdRevisionsMarkupNone
.View = wdRevisionsViewFinal
End With
End Sub

Sub 初版表示()
With ActiveWindow.View.RevisionsFilter
.Markup = wdRevisionsMarkupAll
.View = wdRevisionsViewOriginal
End With
End Sub


終わりに


上記は汎用性が高い(大抵の人にとっては便利な)マクロの例ですが、特定の会社でのみ有効だったり、特定の人にとってだけ便利な操作も色々あるのではないかと思います。
なんとなく避けている方も少なくないマクロですが、慣れればなくてはならない相棒になりますので、毛嫌いせずに色々試してみることをお勧めします〜。
(今日はまじで書く時間がなかった。危なかった…)
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2023年はChatGPTのビジネス利用が盛んに喧伝された年でした。なにしろ、ChatGPTを毎日使っていない人は、人生を悔い改めたほうが良いとさえ言われましたからね。
ただ、僕は正直全然ChatGPTを有効活用できておらず、大喜利生成マシーンとして何度か遊んだあとは放置している状態でした。

しかし、そんな中、delyの金子さんからChatGPTの使い方をハンズオンで教えていただく機会をいただき、「なるほど、こう使えばいいのか」と理解をして以来、かなり有効活用できるようになりました。
ポイントはこんな感じです(金子さんから学んだことを自分が理解できた限りで文章に起こしたものなので、文責はすべて私にあります。念の為。)
  • 答えがない問の対話の相手として使うと、時間をものすごく節約できる
  • 芯を食った回答を引き出せないときは、前提情報の入力が足りていないのが理由
  • 最初から前提情報をすべて入れようと思わない(最初から芯を食った回答を引き出せるとは思わない)ようにして、ダメ出しや追加情報で回答精度を上げていくことを意識する
  • ダメ出しは遠慮なくストレートに。前の入力や出力をコピペして具体的に指摘すると良い。
  • 回答に対する感情のフィードバック(がっかり、嬉しい、とか)も重要
  • 会話のシミュレーションをさせるのも良い。アドバイスを引き出した後、成功したパターンの会話と、失敗したパターンの会話を作らせると適用される場面がよく分かる 
おもしろいな、と思ったのは、ダメ出しがかなり「人間臭い」やり取りだったことです。「ピンとこないな」とか「そんなにうまくいくわけ無いよね」とか。
当たり前ですが、ChatGPTはどんなにダメ出しをされてもめげずに打ち返してきます。そして、ダメ出しが上手だと、どんどん回答が芯を食ってくるようになるんです。

この、やり取りでどんどん回答がブラッシュアップされていく様子はすごいなと思いましたし、指摘を指摘としてピュアに受け止められたら、人もすごい勢いで成長するのかもしれないな、という具合に、AIから人の方向への連想も発生して興味深かったです。

 他方、ChatGPTにストレートかつ繰り返しダメ出しすることに慣れてしまうと、人との対応にも配慮が薄くなって、パンチ力のあるフィードバックをしがちにならないかな、という懸念も感じたりしました。気持ちを無視したらそっちの方が早いということを知ってしまった人が、まどろっこしいお気持ちケアをどれだけ熱心にやれるかということを考えると、心許ないな、と。
そう考えると、物心ついた頃から生成AIをパートナーにしてきた世代と、そうでない世代とのコミュニケーションの質が変わったりするのかもしれません(ChatGPT後の世代は言い方に配慮が足りない、みたいな)

もう一つ、11月から思いつきで情報処理安全確保支援士というIPAの情報セキュリティの検定試験の勉強を始めたのですが、このパートナーとしてもすごく優秀であることに気づきました。
参考書やウェブサイトの解説には1から10まで書いてあるわけですが、自分にとって必要なのはそのごく一部です。その一部を検索ではなく、質問で引き出せるのはとても便利でした。加えて、もう少し突っ込んだ情報が欲しい時は、「詳しく」とオーダーすれば応えてくれます。
相手が人間だったら、タイミングや「前も同じこと質問したよな」みたいなことをどうしても気にしてしまいますが、ChatGPTには当然そのような配慮は不要です。
情報セキュリティのように正確な情報がウェブ上に公開されている分野においては、ものすごく有用だな、ということを実感しています。
そして、これは情報を食わせることで容易に他分野に展開することが可能になるはずなので、ここ数年で自習の方法は様変わりするのだろうな、という予感も抱きました。特に、法律学習の分野ではめちゃくちゃ有効な学習手段になるんじゃないかと思います。
具体的なやりとりはこんな感じです。
IMG_1303
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今回は、「チャレンジしようというけれど、みんながみんなチャレンジできるわけでもないよね」という話を書きます。

チャレンジにはコストがかかる

まず最初に強調したいのは、チャレンジはタダではない、ということです。
チャレンジは、既存の運用に異を唱えることから始まるわけで、必然的に慣れない仕事を伴いますし、うまくいかない可能性も高いものです。普通の人は、そんなことをわざわざやろうとするわけがありません。
つまり、放っておいてもチャレンジングな仕事をしたいと思っているのは一部の変な人に限られるというのがスタート地点となるはずです。

他方で、現状維持は、基本的には緩やかな衰退と同義なので、誰かがどこかのタイミングでチャレンジをしない限り、組織は徐々にダメになっていきます。そこで、組織を預かる者としては、メンバーに何とかしてチャレンジしてもらおうと躍起になるわけですが、発破をかけるだけではなかなかうまくいきません。
これは、個人にチャレンジのコストを負担させつつ成功の果実だけもぎ取ろうとしているからと考えると当たり前のことではあります。
つまり、メンバーにチャレンジをさせたかったら、チャレンジのコストを軽減する必要があるわけです。

チャレンジのコストの軽減方法

では、チャレンジのコストを軽減するためには具体的にどうするのが良いのでしょうか。

失敗を歓迎する

ポイントは、失敗を「許容」するのではなく、「歓迎」するというところです。失敗を許すのではなく、失敗を喜ぶ。もっといえば、失敗していないことに危機感を覚えるくらいでちょうどいい。
人は誰しも失敗なんてしたくはないので、歓迎すると言われても進んで失敗する人なんてそうそういません。
チャレンジの結果の失敗を目にした時にかける一言目は、「ナイスチャレンジ」の一択です。

チャレンジする際の仕組みを作る

チャレンジする際はここで宣言をしようとか、新しい取り組みを始める時はこのシートでリスクアセスメントをしようといった具合に、チャレンジの際の型や仕組みを作りましょう。
型や仕組みがあれば、最初の一歩を踏み出しやすくなります。

変化することを当然のこととする

変化によって得られるメリットは未確定のものであり、変化によって失われる便益は確定的です。また、人は失うものの価値を、得るものの価値の2倍高く評価する生き物なので、変化自体に異議を唱える人の主張の方が、変化を起こそうとする人の主張より正しく聞こえるものです。
この変化に対する抵抗に抗うためには、変えるか否かの是非を問わず、いつ、どう変えるかのが良いかだけを問うことが有効です。
変えないという選択肢を持たないことで、変化に対する許容度は格段に上がります。今がベストでない限り、変えないという選択肢が最善であることはありませんし、今がベストであるわけはないのです。

みんながチャレンジすべきというわけではない

他方で、どんなに負荷を軽減しても、チャレンジのコストはゼロにはなりません。なので、みんながみんなチャレンジをしなければならないと考えるべきではありません。できる人ができるタイミングにやればいいのです。

例えば、家族の介護や育児等で業務の負荷を重くしたくない方にチャレンジを求めるのは明らかに不適切でしょう。また、そもそも不確実性の高い業務への耐性という向き不向きの問題もありますからね。


ただ、自分でチャレンジできない人にもできる貢献があります。それは、他人のチャレンジのコストを上げない、ということです。
簡単なことです。邪魔しなければいいんです。もっといえば、応援してあげられたら最高です。
当事者でない立場から出されるアドバイスより、ずっとずっと役に立つことでしょう。
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契約法務に携わったことのある方は誰しも、「何でダブルチェッカーの先輩が気付けたあの穴を自分は見落としてしまったのか」という情けなさを抱いたことがあるのではないかと思うのですが、今日書くのはその話です。

人が持つ注意力の総量は決まっていると仮定する

実際どうかなのかはよくわかりませんが、「人が持っている注意力の総量は決まっている」「穴の発見のためには一定量の注意力が必要」と仮定すると、この現象に説明がつくように思います。
どんなにがんばっても投入できる注意力の総量は変わらず、そしてその総量が契約書の隅から隅まで行き渡らせるには足りない場合、契約書のどこかに注意力の投入不足の部分が生まれます。そして、そこに穴があると、発見できずにスルーしてしまうことにつながるわけです。

なぜ先輩はあなたが見落とした穴に気づけるのか

ダブルチェッカーの先輩があなたの見落としたミスに気づけたのは、あなたより注意力量が多かったからとは限りません。
最も大きいのは、先輩はダブルチェッカーであり、あなたがいったん注意力を消費して整えてある程度綺麗になった成果物を確認しているので、変なところで注意力の損耗が発生しないという点です。逆にいえば、先輩が穴に気付けたのは、その穴以外を綺麗に整えたあなたの功績でもあるのです。
また、先輩が優秀な方である場合は、注意力を投入すべきポイントをあらかじめ把握していることで注意力の集中投下が可能になり、あなたが見落とした穴を発見できたということもあるかもしれません。
いずれにせよ、あなたが無能だったからではなく、ダブルチェッカーとの関係とはそういうものだと思うのです。

注意力のリセットを意識する

一旦仕上がった後一晩寝かして翌日再度チェックしてから返す、という対応はよく行われていることだと思いますが、実際そうすることでミスを発見できることはままあります。これは、時間を置くことで注意力の減耗がリセットされるからだと考えるとしっくりきます。
印刷して読むとミスが見つかるのも同様に、媒体が変わることでリセットが起きます。このようなリセットのトリガーを持っておくことで、擬似的にダブルチェックを行うことが可能になります。
ポイントは、2回見ることではなく、注意力のリセットを発生させた後に再度確認することなのです。

注意力の無駄な損耗を避ける

注意力の総量を意識し始めると、インデントを整える、表記揺れを避ける、正確さだけでなく読みやすさも考慮する、といったことがなぜ必要なのかも肌で理解できるようになります。これらができていないと、注意力が無駄に損耗してしまうのです。ただ単に、綺麗な方がいいよね、みたいなお気持ちの問題ではないのです。
他方で、これらの事項に注意力を消費してしまっては本末転倒なので、みんな大好きBoostDraftやGVA assistやLAWGUEなどに肩代わりさせるのが良いのだと思います。

プレイブックや雛形を注意力効率を上げるために使う

プレイブックは人による判断品質や判断内容のブレを抑制する機能を、雛形は効率化機能を重視して備えられていることが多いと思いますが、いずれも注意力が無駄に損耗するのを避ける機能も発揮してくれます。
つまり、軸が定まっているから、その軸からの距離が離れているポイントに注意力を集中的に投下できるようになるのです。

まとめ

一晩寝かしてもう一度見ましょうとか、形式を整えましょうとか、雛形を整備しましょうといったよくある親父の小言を注意力を切り口に整理してみたら意外にしっくりくる感じになりました。
注意力の無駄打ちを避けつつ、穴の発見に至らないような注意力の小出しで無駄に損耗するのもやめにして、注意力の的確な集中投下をやっていきましょう!
これが、言うは易し、行うは難しってやつですね!
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インハウスや法務プロパーの人だけで構成されていく法務部にずっといる人は驚くかもしれませんが、世の中には法務も他部署に普通に異動したり、他部署からの異動の対象になっている会社は普通に存在しています。
でも、そんな会社の法務部の業務レベルが低いかというと、そんなことはまったくありません。むしろ、視野の広さや他部署での経験とのシナジーによって、ずっと法務だけをやってきた人より仕事ができる、みたいなケースだって普通にあるのです。要は、他職種と同様、法務という仕事も、向き不向きこそあれ、必要な移行期間を経れば普通にでやれる仕事なわけです(何でこんなわかりきったことを冒頭に持ってきたかというと、そう思われていないケースをそこそこ見かけるからです)

もちろん、他部署から異動してきた方は、法務プロパーの人に法律知識では敵いません。知識は、基本的には鍛錬の量と比例するからです。(フリーレンの世界の魔力と同じですね。)
ただ、企業内の法務業務においては、「専門性」の優劣が総合的な人材の優劣に与える影響はそこまで大きくはないのでは、という気もするのです。もう少し正確に言うと、最低限わかっていて欲しい、というレベルをクリアさえしていれば、あとは信頼できる情報源にあたってしっかり調べる姿勢や、わからないことを専門家に確認して結論を導けるコミュニケーションのうまさや、人の指摘を虚心坦懐に聞ける素直さの方が、ずっと影響度は大きいように思うのです。

消費者保護法制とプライバシー保護法制の変化にキャッチアップしつつ、会社法上の組織再編に関する手続きも抑え、M&A指針の勘所やシステム開発訴訟に関する裁判所の判断傾向を把握する、なんてことを日々大量の契約審査その他の業務を捌きながらやるのはもう無理なわけで、「専門性」には必ず偏りが出ることになります。
法務担当者が持つ偏った専門性を価値の源泉とすると、「できるところはできる」という価値しか発揮できません。もちろん、異なる専門性を備えた多様な人材を確保できる大企業では、力技でこの偏りを均すことはできるのでしょうが、多くの会社では現実的ではありません。

そこで、分野を絞って積極的に専門性を外注する、という動きが重要になってきます。わからないから聞くのではなく、この分野については、解決済みの問題を除いて自己判断をしないという割り切りをするのです。
ポイントは、聞くべきことを聞く、ではなく、解決済みの問題以外は聞く、ということです。なぜなら、聞くべきことを正しく仕分けるためにも専門性が必要性になるからです。

なお、この動きを現実的なものとするためには、ある程度阿吽の呼吸が効く専門家との関係も必要になります。確認頻度が上がる分、(専門家の手によれば)サクッと終わる問題は、文字通り秒殺していただけないと回らないからです。

このような使いやすい専門家ネットワークを築ける能力は、限られた人数で多様な問題に対処しなければならない法務にとっては自分自身のスキルアップよりずっと会社に対する貢献度は高いのかもしれません。また、個人視点でも、陳腐化しづらい分、ポータビリティやサステナビリティも高くなりそうです。

これまでも、年1しかなく、かつ特殊性が高い株主総会対応ではそのような機能を法律事務所に外注している会社は少なくなかったと思いますし、個人情報保護関連や消費者保護法関連でも社内に詳しい人がいない場合は自己判断を避けるという動きは既にあると認識していますが、どちらかというと「できないからしょうがなく」という必要悪的な対応と捉えられているのではないかと思います。
しかし、法務としての機能を拡充するために、今の法務の能力に合わせて、柔軟かつ積極的に専門性の外注を行っていくことを推進してもいいんじゃないかな、ということを今は考えています。
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特定商取引法第12条の6に定められた最終確認画面、皆さんの会社ではどのように実装されているでしょうか?
ECやWEBサービス系であれば、どこまで書くかは別にしてガイドラインの画面例に記載されているような典型的な「最終確認画面」を申し込み確定前に挟むだけで良いので悩む点は少ないのかもしれませんが、スマホゲームだとそうも言っていられません。小さな画面にごちゃごちゃ表示したら離脱を招きませんし、そもそもビジネスライクな一覧表を見せつけられたら世界観がぶち壊しになってしまってユーザーが興ざめしてしまいます。

そこのところを各社はどう対応しているのだろうと思いつつも、スマホゲームはアイテム購入の画面にたどり着くまでにチュートリアルを乗り越えなければならないということと、多くのアイテムは仮想通貨経由で購入する仕組みになっている(仮想通貨自体は最終確認画面表示義務の対象外なので、購入前に最終確認画面だけを拝見してキャンセルすることができない)のでなかなかサンプルを見つけることができずに困っていたのですが、法務互助会で相談したところ瞬時に複数の例を教えていただけました。法務互助会、まじで有益!!

実際の最終確認画面がこちらです(モンストの例)。
最終確認画面
ガイドラインによると、リンク先での表示が認められないのは数量と販売価格なので、その2点は最終確認画面上で表示(数量が「1回」で、販売価格が「オーブ5個」)しつつ、それ以外はリンク先に逃がしています。(そして、リンク先は最終確認画面と同時にいわゆる特商法表示も兼ねています)

あまりにも違和感がなさすぎて、最初はリンク先が最終確認画面で、「数量と販売価格が記載されていないのでは?」と勘違いしてしまっていたほどでした(完全にしろうとムーブ)。
考えてみれば、最終確認画面って、特商法に基づくものかとは無関係に、誤購入が発生しやすいスマホゲームでは従来から普通に実装されていたものであって、その表示を少し変更すればよいだけだったんですよね。言われてみればそりゃそうだという話なのですが、ガイドラインの画面例が頭にこびりついていた自分にとってはコロンブスの卵だったのです。

ガイドラインに対するパブコメでは、ガイドラインがPCを前提としたかなりこってりとした表示しかサンプルを示していないことからスマートフォン向けの画面例を求める意見が多数寄せられていましたが、仮にガイドラインにスマホ向けの画面例が記載されたとしても、モンストのような例が載ることは考えにくいわけで、その意味でもモンストの最終確認画面のクリエイティブさに舌を巻いた次第です。
(ちなみに、表面上模倣した結果なのか、リンク先に飛ばせないはずの数量と販売価格が最終確認画面に表示されていなかったり、リンク先が特商法表記になっていて特商法第12条の6と混同されちゃっているように見受けられるゲームもあったりなかったりしていました。スクショではなく、実際の画面を見たらちゃんと対応されているのかもですが。)

おそらくスマホゲームを主戦場としている法務の方からすると一周遅れのテーマなんだろうなと思いるるも、門外漢の自分としてはと今年一番感心した法務の仕事だったので、賛辞の意味も込めてシェアしました。

このスタイルを最初に考え出したのはどなたなのかわからないのですが、僕も自分の頭で考えてこういう提案をできるようにならないとな、と心から思いました。
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