九段新報

犯罪学オタク、新橋九段によるブログです。 日常の出来事から世間を騒がすニュースまで犯罪学のフィルターを通してみていきます。

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 これの件です。ざっくり検証していくぞい。

どこから出てきた?

 そもそも、数字がいくら書いてあろうと、出典のない情報は疑ってかかるべきです。

 さて、ツイートではまず、『近年の強姦は年間約1200件』とありますが本当でしょうか。令和5年版の犯罪白書によれば、令和4年の強制性交等罪の認知件数は1655件です。あれれ~。
 罪名すら正しく書けない奴の主張などこの程度です。いつのデータとやらを見たんでしょうか。

 『そのうち12歳以下で約5%つまり60件』に至ってはなぜ1200の5%だと見積もったのかすらわかりません。人口の割合を機械的に当てはめたんでしょうか。

 まぁ、間違いなのでどうでもいいです。
 警察庁の令和4年の犯罪(54 罪種別 被害者の年齢・性別 認知件数)によれば、令和4年の強制性交等罪の被害者のうち、0から5歳は5名(全員女性)、6歳から12歳は211名(うち女性は178名)です。つまり、12歳までの女性の強制性交等罪の被害者は183名いることになり、60件とかなり開きがあることがわかります。

 どういう計算をしたかはわかりませんが、彼の計算は相当被害を少なく見積もることに成功したようですね。

 加えて、『全国の総合病院は3700軒』も出典がわかりませんでした。ざっと調べただけなので見落としがあるかもしれませんが、私が調べた限りでは総合病院の数を調べた統計は見つかりませんでした。ちなみに、3700を鵜呑みにするなら、1病院当たり毎年0.24人の被害者が搬送される計算です。

 ともあれ、ここからわかるのは、『「強姦された6歳以下」が運び込まれるのは一施設あたり年間0.016人』という数字は、出典不明の数字を基に理由のわからない計算をして出した数字を、出典不明

かなり低いほうへ見積もった数字

 注意しなければならないのは、被害者が183名というのは最低限の数字でしかないということです。性犯罪に暗数が多いことはすでに知られていますが、被害者が子供であればなおのことです。被害を説明するのが難しい子供への加害は、さらに表沙汰になりにくい傾向があります。

 もちろん、内臓を損傷するレベルの被害で病院に搬送されない可能性は低いでしょう。しかし、病院に搬送されることは警察に被害を認知されることではありません。病院にはかかったが警察に相談しなかった/できなかった事例や、警察に相談したが事件化が困難だと判断され被害届すら受理しなかった事例がそれなりにあることも予想されます。

 このような場合、子どもの被害の真の値を知ることはほぼ不可能です。犯罪被害実態調査も成人を対象とした調査なので、幼少期の被害を拾うことは困難でしょう。

数字を議論する意味があるか

 そもそも、今回の件を統計(もどきでしたが)を引っ張り出して論じる意味があるのかという点も気を付ける必要があります。今回の元の投稿は、以下のように幼少期の性暴力被害の酷さを訴えるものでした。

 こうした被害の酷さは、仮に件数が少なかったとしてもなかったことになるものではありません。

 もちろん、SNSの投稿ですから、大雑把な語りになったりある程度強調を伴って語られることもあるでしょう。しかし、SNSの投稿は論文ではありませんから、あまりにも有害であったり嘘過ぎる場合は別としても、万人が統計分析までしっかりやって語らなければならないものではありません。

 かく言う『一施設あたり年間0.016人』マンも、実態から乖離した分析を披露するという、ある種の不正確な強調や「盛った」投稿をしているわけで、少なくとも彼自身は人の投稿の不正確性を論難できる立場にはありません。

 人が被害の酷さや凄惨さという、1ケースにおける問題を論じているとき、言葉尻を捕らえて小手先の数字を弄してしまうのは、もしかしたら有害な男らしさの一例なのかもしれません。理性や数理が男性的であるとされ、感情や共感が女性的であるとされているので。しかし、数字で表されるものだけが重要なのでもなく、その場で注目すべきものであるとも限らないことは念頭に置く必要があります。
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 以前『「クルド人犯罪」言説をファクトチェックする』を書きました。個人的に気になったことがまだあったのと、いずれ動画で扱いたいという事情もあってもう少し調べものを進めることにしました。今回の記事はその備忘録込みのまとめです。

「クルド人犯罪」とされているあれこれ

 まず、ネットでも注目された「クルド人犯罪」とされたあれこれについて事実を確認していきましょう。

 1つ目は、2023年7月4日に起こった、川口市立医療センターでの騒動です。ネットではクルド人が100名近く病院に集まり乱闘を起こしたことになっていますが、実際はクルド人コミュニティでのトラブルがあり、それを収めようとして双方の関係者の親族が集まった結果かえって騒動が大きくなってしまったということでした。
 事件は7月4日夜、同市内の路上で発生した。クルド人の男らによるトラブルを起因とし、複数人が重軽傷を負う殺人未遂事件に。その後、男らが運ばれた近くの病院「川口市立医療センター」周辺に約100人が駆け付ける騒ぎとなり、機動隊員らが出動した。これまでに5人が県警に逮捕されている。
 同市によると、同センターではけが人の対応により、同日午後11時半から翌5日午前5時までの間、救急車の要請をやめてもらうよう消防に依頼するなど市民への影響が出たという。
(中略)
 一連の騒動の様子を収めた動画がSNSを中心に拡散されると、X(旧ツイッター)では「国に帰れ」「クルド人は日本にいらない」などと反応する投稿が目立ち、一時「クルド人」がトレンドワード入りした。
 「SNSではクルド人全体を非難するような書き込みが多く、申し訳ないという気持ちもあるが、同時に心も痛い」。同市内に15年ほど暮らしている30代のクルド人男性は複雑な胸中を明かす。
 男性によると、事件のきっかけはクルド人同士の男女トラブル。同センターに負傷者が搬送されたとの情報を基に多数の親族らが心配になって病院へ駆け付け、結果的に騒ぎになったという。男性は「法律やルールを守らない人が罰を受けたり、非難されるのは当然。日本人でもクルド人でも同じ」とした上で、「迫害を受けて日本に逃れてきたが、クルド人全体を非難するのは差別と感じてしまう人もいる」と話す。
 乱闘…男女もめた結果、病院で100人大騒ぎ 救急車受け入れできず 批判の先は…誤解も 騒動を取材<上>-埼玉新聞
 「あの事件のことですね。ここで結婚をしていたクルド人夫婦がいたのです。二人はとても仲が良かったのです。でも、女性が別のクルド人男性を好きになってしまって、(その男性と)二人で埼玉から神奈川に逃げてしまいました。
 その後、時間が経って女性はトルコに帰り、男性だけが川口に戻ってきた。彼は私のところで勉強して、3年くらい前に親族と一緒に会社を作った人です。彼が戻って来たことを知った女性の弟とその親族が、彼を追いかけてナイフを使ったわけです。
 クルド社会では日本よりも男女の関係には厳しいのです。それと、帰ってきた男性のお金に関わるトラブルもあって、その両方の原因があって喧嘩になったのです。
 マスコミでは、病院前でクルド人100人が乱闘騒ぎをしたという報道になっていますが、本当は、それ以上の喧嘩にならないよう、双方の親族や友人たちが集まったのです。
 喧嘩を止めるために集まったのに、大勢で喧嘩をしたという逆の報道になってしまった。その場で警察がたくさん出てきて、互いに興奮した結果があの騒ぎだと思ってます。
 もちろん病院や川口市民に迷惑をかけてしまったことは心から申し訳ないと考えています。事件後、すぐに関係者を通じてクルド人を代表して病院や役所の関係者に謝りに行きました」
 埼玉県川口市や蕨市に住む「ワラビスタン」の「ビッグボス」が、ついに重い口を開いた!県警の機動隊まで出動した「クルド人騒動」…そのウラで起きていたこと-現代ビジネス
 クルド人コミュニティが問題を(少なくとも日本人の"常識的な"基準では)うまく収めることが出来なかったのは事実でしょうが、これを暴動であると見なしたり、クルド人の凶暴さを示す事例であるかのように扱うのは端的に事実誤認と言えましょう。

 ほかにもなんかあった気がするが、忘れてしまったのでまあいいやということにします。どうせデマだし。大体は電脳藻屑氏がブログで検証しているので気になったらそっちを見ればいいと思います(他力本願)。

クルド人と性的暴行

 女子中学生に性的暴行をしたとして埼玉県警川口署に逮捕されたトルコ国籍で自称解体工の男(20)が、難民認定申請中で仮放免中だったことが8日、同署の調べで分かった。男はトルコ生まれ日本育ちの在日クルド人で、事実上の「移民2世」という。
 調べによると、男は1月13日午後10時半ごろ、川口市内のコンビニ駐車場に止めた乗用車内で、東京都内の10代の女子生徒に性的暴行をしたとして7日、不同意性交などの容疑で逮捕された。
 同署によると、男は先に来日していた父親を頼って幼少期に来日し、地元の小中学校に通っていた。卒業後は家業の解体業を手伝っていたと供述している。男は父親とともに難民認定申請中で、入管施設への収容を一時的に解かれた仮放免中だった。自宅はさいたま市内だが、川口市北部の隣接地域だった。
 女子中学生に性暴行の容疑者、難民申請中のクルド人 トルコ生まれ川口育ちの「移民2世」-産経新聞
 こういう事件もありましたね。ただ、これに関しては犯人が捕まりましたね、以上。というほかありません。

 レイシストはこの事件をクルド人の民族性などに何とか擦り付けようとしていますが、クルド人であることが原因となった根拠は特にないので(というか、あらゆる犯罪、あらゆる民族性で同じことが言える)、なるほど君はレイシストなんだねと言う反応しかできません。

 『なぜ自由戦士は「パヨクの性犯罪」を喜んでしまうのか』でも同様の議論をしましたが、彼らは差別の口実になるとみるや日本人同胞の被害でも平気で喜ぶので本当に人間性が終わっています。そのくせ、都合が悪いと被害者を叩きますからね。山口某の加害とか、在日米軍の犯罪とか。

 ちなみに、日本人の方が民族性として性暴力に近しいと言われてもぐうの音も出ないと思います。首相の友人が逮捕状を握りつぶしてもらえるくらいですから。

馬鹿コメント

・日本は全体的に犯罪減少傾向になるのだから、日本または埼玉県の減少率との比較が必要
・人数が多いのだからという根拠は、普段の外国人に対して日本人の犯罪者の方が多いという主張との整合性
・治安悪化については、自動車での暴走など具体的に住民の声も聞くべきでは
・性犯罪については暗数を誇張するのに、検挙でさえ犯罪を反映するものではないとすることの整合性

他にもあるだろうけど、ざっとみこんな所かな

差別自体にはもちろん反対だけど(移民の積極的な受け入れには反対)、
君はいつも結論ありきなので指摘しておいた
「犯罪学」という学問を銘打ってそんなんじゃダメだからね。

しかし君のいう犯罪学って統計の結果から言えることを述べる事なのかな。
なんか犯罪学ましてや心理学という専門的な知見を感じないのだけど。
 前回の記事についた頭の悪いコメントを晒していました。皆さんはどこが愚かかわかったでしょうか。結果発表です。

 ①日本全体との比較をする意味が分からない
 恐らく「日本より埼玉の減少幅が低い!クルド人のせいだ!」と言いたいのかなと思いますが、仮にそうだったとしても、そうなる理由はクルド人以外にもいくらでもあるので。こっちとしては、あくまで川口の治安悪化の証拠がないことを示せればそれでいい。

 ②文意が取れない
 日本語が下手過ぎて『普段の外国人に対して日本人の犯罪者の方が多いという主張』の意味がよく分かりませんね。これで外国人にケチ付けようとしているのでお笑いです。
 恐らく、川口の外国人犯罪検挙人員が多いということについて、私が「川口には外国人が多いのだから検挙人員も多いのは当然」と指摘したのに対するものです。

 これに対する『普段の外国人に対して日本人の犯罪者の方が多いという主張』というのは恐らく、外国人犯罪ではしゃぐレイシストにカウンターが皮肉交じりに反論するときに使う「日本人の方が犯罪者多いやんけ」という主張を指していると思われます。もちろん、これは皮肉交じりの嘲笑であり、真意は「(レイシストが言うように)そんなに犯罪者が多いのが怖いなら日本人の方がヤバいだろ」というものです。

 この主張はそもそもレイシストの詭弁ありきで、その詭弁が正しいなら日本人が一番危険な民族になるぞという仮定込みのものに過ぎないので、文脈を無視して持ち出すと意味不明になります。ネトウヨやレイシストは皮肉を理解できないことがまたわかりましたね。

 ③住民の声
 聞けばいいと思いますが、個別事例が全体の傾向を正しく反映するという保証はありません。もちろん、石井某の主張するところの「取材」が実際に行われたと信用する義理もありませんし、ネットに突然現れた自称川口市民を信用しなければいけない利用もありません。

 ④性犯罪と暗数
 やはりネトウヨは説明しても理解できないようですね。性犯罪の認知件数や検挙人員が過少に出ることと、外国人犯罪の検挙人員が過大に出ることは、いずれもそれらの数字があくまで警察の活動を反映している数字に過ぎないことの表れであり、整合します。つまり、警察は外国人差別から外国人犯罪者を積極的に取り締まる動機があり、女性差別から性犯罪を消極的に取り締まる動機があります。この2つの動機はマイノリティの権利を軽視するという1つの動機にまとめられますね。

 この程度の理解力で自分が賢いつもりなのが愚かですね。

的を射たコメント

 ちなみに、コメントにはなるほどと膝を打ったものもありました。以下のものです。
 そもそも平均年齢も全然違いそうですよね。高齢者多いグループと高齢者少ないグループで「犯罪率」比べて高齢者多いグループの方が低いってなってもそりゃそうだろと。
 クルド人コミュニティの年齢構成はわかりませんが、素朴に考えれば、高齢者より若い人の方が難民として外国に渡航しやすいでしょう。そして、一般に犯罪は若者の方が多いですから、クルド人コミュニティの年齢構成が若者に偏っていれば、その分犯罪が多くなるのも自然です。

 一口にクルド人犯罪と言っても、その原因は複雑で複合的です。単に若いことが原因であったり、学校への不適応やドロップアウト、家庭内での不和、社会からの敵視などが折り重なって犯罪は起こります。それを「クルド人だから」で単純化してしまうのは、差別をしたいという欲求のためと、複雑な事実関係を理解する能力を欠くためにほかなりません。
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 『業界と自由戦士の無法のせいでまた表現の自由が狭まりました。あーあ』のときに続けて書こうと思っていたことをようやくいま書きます。
 業界の常識のなさと自由戦士大暴れのせいで晴れていらん規制が生まれた水着撮影会ですが、そのことを嘲笑していると変なリプライがついてきました。

 どうも、水着撮影会を批判していたとされる県議が知人女性の性的な画像をアップロードしたために書類送検され、議員辞職したようです。
 報道等で既にご承知の方もいらっしゃるかと思いますが、一昨年の12月に私が女性の性的な画像をインターネット掲示板にアップロードした行為について、わいせつ電磁的記録媒体陳列の疑いで神奈川県警から捜査を受け、本年1月に書類送致をされたところでございます。
 私の軽率な行動によって、県民の皆様の信頼を裏切り、また関係者に多大なご迷惑をおかけしたことに対しまして、深くお詫び申し上げます。
 司法の最終判断が出るのはまだ少し先の時期ではありますが、私がこれ以上、議員の職にとどまることは、県民の皆様の政治への不信感を増大させ、県議会への信用を失墜させることにつながると判断致しました。
 以上の理由から、本日3月1日、議長に対して議員辞職願を提出し、県議会議員を辞職致しました。
 また、これに先立ち、昨日2月29日には、所属党派の埼玉県市民ネットワークおよび越谷市民ネットワークを退会致しました。
 改めて、県民の皆様、県議会や県行政の皆様、ご支援、ご期待を頂きましたすべての皆様に心よりお詫び申し上げます。誠に申し訳ございませんでした。

2024年3月1日
辻浩司
 ……が、この件で自由戦士が勝ち誇って躾のなっていない犬のように嬉ションしている意味がよくわかりません。

 この手の反応は別に今回に限った話ではなく、彼らは反論に困ると米山隆一とか前川喜平の事例を持ち出して勝ち誇り始めます。今回の記事では、そんな彼らの、一見すると不可解な生態を明らかにしましょう。

そもそも批判してたの?

 ……の前に、そもそも辻県議が、自由戦士の主張するように「水着撮影会を批判していた」のか、少々疑念があります。というのも、辻県議のTwitterアカウントで検索する限りでは、水着撮影会に関する言及は一切ないからです。

 また、先に挙げたクソリプは「フェミ松速報」というカスまとめサイトをソース()にしているのですが、ここでも辻県議が直接批判している様子は出てきません。

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 唯一証拠らしく挙げられている画像では、マスクされている部分に「辻」と補足されています。が、この補足が「辻」と言い切れるのかは全く説明されていません。なお、現時点で辻県議以外に苗字が一字の県議は2名確認できます。

 もう少し調べてみると、同じまとめサイトのページに『強烈な "フェミ騎士あるある" が発動。『埼玉県プール撮影会騒動』の黒幕がとんでもない罪状で書類送検』というnoteへのリンクがあります。筆者が荒井禎雄の時点でお察しですが、このnoteにリンクが張られている『埼玉県営の水上公園での水着撮影会中止騒動について。その16「共産党埼玉県議団の『6/8申入れ』の3日前に県庁に問い合わせを入れた県議」』を読むことで、ようやくマスクされている県議の名前が辻県議だろうと推測されることがわかります。

 もっとも、県議の問い合わせは「水着撮影会に未成年が出ているという指摘があるけどどうなの?」くらいのことしか聞いておらず、そりゃまともな県議がその情報を知ったら確認するでしょくらいのことでしかありません。また、荒井などは県議のサイドなどの記述を細かく転載して撮影会騒動の『黒幕』とまで書いていますが、県議のサイトにある内容は今日日左派系の議員なら誰でも、下手すれば自民の議員だってアリバイ作りに書くくらいの漠然としたことしかわかりません。

 このことから、自由戦士たちがいかに不確かな情報で舞い上がってしまう残念な人達か、ちょっとしたこともすぐに大げさに受け取って盛り上がってしまう陰謀論気質な人達かわかろうというものです。

俺だってモテたいのにずるいぞ!

 本題に戻りましょう。なぜ自由戦士たちは「パヨク」の性犯罪にはしゃいでしまうのでしょうか。

 基本的には、彼らは何も考えていません。この反応がクソリプの一形態だと考えれば、単にオウム返しをして気の利いた一言で相手を論破したつもりになっているのです。以上です。

 ……ではつまらないのでもう少し考察しましょう。実際、それだけでは説明がつかない認識もあります。荒井なんて『強烈な "フェミ騎士あるある" 』とまで書いてますからね。なぜ彼らはそう思ってしまうのでしょうか。

 このヒントは、荒井がまさに使用している「フェミ騎士」というフレーズに隠れています。彼ら表現の自由戦士を始めとするミソジニストは、男性の言動を全て女性獲得のためのものだと考えており、親フェミニズム的な男性もそうだと思い込んでいます。彼らは本心では親フェミニズムの方が女性にモテると考えており(自分に差別的な人を好む女性は稀なのでそれは事実かもしれないが)、親フェミニズム的な男性を女性獲得競争における脅威だと捉えています。

 騎士というフレーズは彼らのこの妄想を象徴するものでしょう。ここで使用される「騎士」という単語は、単なる騎士と言うより「白馬の王子様」的なニュアンスで用いられています。彼らは「騎士」というフレーズを一種の揶揄のように用いています。ネトウヨが市民運動をする人を「プロ市民」と呼ぶとき、別に彼らのプロフェッショナリズムに敬意を払っていないように。しかし、同時に、この単語選択は揶揄以上の意味を持つとも解釈できます。揶揄するだけならわざわざ「騎士」という、一般にはカッコいいイメージの言葉を使う必要などないからです。女性を雄々しく守り女性から慕われるというイメージこそ、彼らミソジニストが本心では持つ親フェミニズム男性への認識なのかもしれません。

 ちなみに、ケイト・マンは『エンタイトル』のなかで、インセルが女性だけでなく時に男性も攻撃対象にすると指摘しました。その理由はまさに、インセルにとってモテている男性は女性獲得競争において脅威であり、自身の男性社会での地位を脅かす存在だと見なされるからです。マジで便利だな『エンタイトル』……すべてを説明してしまう。

 ですが、私もそうであるように、親フェミニズム的な男性はモテるために親フェミニズムになっているわけではありません。というか、親フェミニズムならモテるほど人間関係は単純ではありません。私もそうですがね!

 こうした妄想と事実関係とのずれが、彼らの滑稽で愚かな言動を生み出していると言えるのかもしれません。

 本心では親フェミニズムの方がモテると思ってるなら自分もそうなればいいじゃんと思うのですが、そうならないのはまた別の理由があるのでしょう。それはまだ謎のままです。

0点が20点を嗤う愚かさ

 彼らの滑稽さは、「パヨクの性犯罪」を持ち出したところで何の反論にもなっていない、どころかその「パヨク」や「フェミ」の主張を裏付けしているだけであるところにもあります。

 一般的な左派的な主張に則れば、性犯罪は厳しく罰せられるべきでしょう。自由戦士たちは相手方の性犯罪を言い立てることで、「お前らだってやってるじゃないか」と主張したいのかもしれません。

 ですが、左派の性犯罪は基本的に、相応の責任を取らされています。今回引き合いに出された辻県議は議員辞職しています。よく持ち出されやすい米山隆一や前川喜平だって職を辞しています。

 もちろん、この程度の責任の取り方では甘いという主張はあり得ます。が、少なくとも自由戦士やネトウヨはそうした主張をする権利を持ちません。なぜなら、彼らは左派以上に身内の性犯罪・セックススキャンダルに甘いからです。

 自由戦士の親玉であれば、山田太郎の例が記憶に新しいでしょう。彼は買春不倫が報じられても議員の座にしがみつき、AFEEの名誉顧問にも居座っています。不倫は文化などというアホ向けに予め書いておくと、買春は法律で禁じられています。禁じられてなくてもダメでしょうが。

 ネトウヨ関係になるとさらに酷くなります。最近では懇親会にセクシーダンサーを呼んで顰蹙を買った自民党議員は誰も辞職していません。下着泥棒は未だ現役の議員ですし、元首相の友達に至っては逮捕状を握りつぶしてもらってもいます。

 こういう状況にあって、自由戦士やネトウヨは左派やフェミニストと違って身内を批判することがありません。にもかかわらず、他人の行状に口を挟めると思いあがるのは止めた方がいいでしょう。そのような振る舞いは、テストで0点だったのに20点だった人間を嗤うような愚かな行為です。

 第一、ネトウヨや自由戦士は存在自体が女性差別であり、その言動においてたった一瞬たりとも女性の権利を尊重したことはありません。そのような人々が、左派を論破できそうなときだけ性犯罪を持ち出すありさまは醜悪と言うほかありません。


 左派であっても性犯罪はあってはならず、厳しく批判されるべきです。ですが、その批判は「まともな」人がすればいいだけの話であって、自由戦士やネトウヨは最初からお呼びではありません。口を慎むように。
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