近年の強姦は年間約1200件、
— YS@GPCR (@YS_GPCR) March 19, 2024
そのうち12歳以下で約5%つまり60件、
全国の総合病院は3700軒
「強姦された6歳以下」が運び込まれるのは一施設あたり年間0.016人、
故に、一人の看護師が「強姦された6歳以下の子が数年以内で死んでしまうことはよくある」と言えるほど目撃することはありえない。 https://t.co/uqXwMgODBY
これの件です。ざっくり検証していくぞい。
どこから出てきた?
そもそも、数字がいくら書いてあろうと、出典のない情報は疑ってかかるべきです。さて、ツイートではまず、『近年の強姦は年間約1200件』とありますが本当でしょうか。令和5年版の犯罪白書によれば、令和4年の強制性交等罪の認知件数は1655件です。あれれ~。
罪名すら正しく書けない奴の主張などこの程度です。いつのデータとやらを見たんでしょうか。
『そのうち12歳以下で約5%つまり60件』に至ってはなぜ1200の5%だと見積もったのかすらわかりません。人口の割合を機械的に当てはめたんでしょうか。
まぁ、間違いなのでどうでもいいです。
警察庁の令和4年の犯罪(54 罪種別 被害者の年齢・性別 認知件数)によれば、令和4年の強制性交等罪の被害者のうち、0から5歳は5名(全員女性)、6歳から12歳は211名(うち女性は178名)です。つまり、12歳までの女性の強制性交等罪の被害者は183名いることになり、60件とかなり開きがあることがわかります。
どういう計算をしたかはわかりませんが、彼の計算は相当被害を少なく見積もることに成功したようですね。
加えて、『全国の総合病院は3700軒』も出典がわかりませんでした。ざっと調べただけなので見落としがあるかもしれませんが、私が調べた限りでは総合病院の数を調べた統計は見つかりませんでした。ちなみに、3700を鵜呑みにするなら、1病院当たり毎年0.24人の被害者が搬送される計算です。
ともあれ、ここからわかるのは、『「強姦された6歳以下」が運び込まれるのは一施設あたり年間0.016人』という数字は、出典不明の数字を基に理由のわからない計算をして出した数字を、出典不明
かなり低いほうへ見積もった数字
注意しなければならないのは、被害者が183名というのは最低限の数字でしかないということです。性犯罪に暗数が多いことはすでに知られていますが、被害者が子供であればなおのことです。被害を説明するのが難しい子供への加害は、さらに表沙汰になりにくい傾向があります。もちろん、内臓を損傷するレベルの被害で病院に搬送されない可能性は低いでしょう。しかし、病院に搬送されることは警察に被害を認知されることではありません。病院にはかかったが警察に相談しなかった/できなかった事例や、警察に相談したが事件化が困難だと判断され被害届すら受理しなかった事例がそれなりにあることも予想されます。
このような場合、子どもの被害の真の値を知ることはほぼ不可能です。犯罪被害実態調査も成人を対象とした調査なので、幼少期の被害を拾うことは困難でしょう。
数字を議論する意味があるか
そもそも、今回の件を統計(もどきでしたが)を引っ張り出して論じる意味があるのかという点も気を付ける必要があります。今回の元の投稿は、以下のように幼少期の性暴力被害の酷さを訴えるものでした。病院勤めだった立場から言うとレイプされた6歳未満の女児ってわりといて内臓の損傷もすごいしずっと泣き叫んでたりその後数年以内に亡くなる子がほんと多いんだけどそういうことって報道されないよね。 https://t.co/cGYMMDTYQW
— 看護師ラメたん⭐︎現在ニート (@jpmancomicoande) March 18, 2024
こうした被害の酷さは、仮に件数が少なかったとしてもなかったことになるものではありません。
もちろん、SNSの投稿ですから、大雑把な語りになったりある程度強調を伴って語られることもあるでしょう。しかし、SNSの投稿は論文ではありませんから、あまりにも有害であったり嘘過ぎる場合は別としても、万人が統計分析までしっかりやって語らなければならないものではありません。
かく言う『一施設あたり年間0.016人』マンも、実態から乖離した分析を披露するという、ある種の不正確な強調や「盛った」投稿をしているわけで、少なくとも彼自身は人の投稿の不正確性を論難できる立場にはありません。
人が被害の酷さや凄惨さという、1ケースにおける問題を論じているとき、言葉尻を捕らえて小手先の数字を弄してしまうのは、もしかしたら有害な男らしさの一例なのかもしれません。理性や数理が男性的であるとされ、感情や共感が女性的であるとされているので。しかし、数字で表されるものだけが重要なのでもなく、その場で注目すべきものであるとも限らないことは念頭に置く必要があります。