2007年01月14日

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ザカリアスの唯一作。
オリジナル原盤は値段がつけられないほどのプライスがつけられているのはご存知の通りだが、待望の紙ジャケ化によりぐっと手に入れやすくなった。
国内盤も10年以上廃盤状態が続いていただけに、今回の紙ジャケット仕様でのリリースは嬉しいリイシューだ。

素性の知られていない謎のミュージシャンとして有名なザカリアス。
現在も熱心なマニアによって研究されてはいるものの、未だ全貌を掴めずにいるままだ。
せいぜいオーストラリア出身のマルチ・プレイヤーというところまでしか分からなかったが、2006年にリリースされた紙ジャケット盤のライナー・ノーツによると、「近年も散発的にライヴ・パフォーマンスを披露している」らしく、全く足取りが掴めていないわけではなさそうだ。
案外「ストレンジ・デイズ」誌辺りがインタビューまで漕ぎ着けて、あっさり身元が割れるかもしれない、あの「イングランド」の時のように。
ここから先の展開は期待せずに待っておこうか。

中身は純然たるサイケデリック・ロックだ。
よれたヴォーカル、アコースティック・ギター。主役を張るヘヴィなベース。楽曲を彩るのはメロトロンではなくチープなキーボード。
泣けるプログレは全くといっていいほど皆無なので、シンフォ寄りのリスナーは買い控えたほうが吉か。
重い演奏は確かに聴き手を選ぶが、メロディ・ラインや声質がデヴィッド・ボウイやマーク・ボランらのグラム・ロックを思わせることもあり、そちら側のファンにもアピールできなくもないような気がする。
とはいえ音楽性の話であって、ルックスでは……。
アルバムの顔であるジャケット写真ですら、見方によってはアキバ系の怪しいお兄ちゃんかマフィアになりえる。
まっこと恐ろしいぜよ。

(22:03)

2006年12月04日

ROCK PROGRESSIVO ITALIANO











イタリアン・プログレッシヴ・ロックの総合カタログ、「ロック・プログレッシーヴォ・イタリアーノ」。
全編オール・カラーのハードカヴァー本と、レーベルを超えたコンピ盤が一枚収められている。

掲載されているバンドはマニアックなグループまで押さえているものの、ジャケット写真は代表作のみしか掲載されていないのが残念。
「ブオン・ヴェッキオ・チャーリー」は本国AKARMA盤ではなくMELOS盤のジャケットなのに、AKARMA盤の情報を掲載しているのが気になる。

本とCDの装丁は、デザインの国イタリアだけあって面白い。
が、日本のように精度の高い作りとは言えない。
新品であるのにもかかわらず、角が欠けていたりスレが目立つ。
本もCDもケースからの引き出し式になっているため、何度も出し入れするとすぐにボロボロになってしまいそうだ。
取り出す際は慎重に。

ジャケットはおそらくレ・オルメの「包帯の男」を手掛けた方と同じだろう。
エログロナンセンス。
苦手だ、こういう画風は。

最後にCDの曲目は以下の通り。
オザンナ、ニュー・トロルス、アレア等のメジャー・バンドから、マイナー・バンドまでバランスよく収められている印象。
7曲目、9曲目から12曲目、15曲目のバンドは限りなく無名に近いと思う。
トータル・ランニング・タイムは73分オーバー。

01 OSANNA / Vado verso una meta
02 DELIRIUM / Deliriana
03 NEW TROLLS / Venti o cent'anni
04 QUELLA VECCHIA LOCANDA / Il cieco
05 RACCOMANDATA RICEVUTA RITORNO / Un palco di marionette
06 AREA / Gioia e rivoluzione
07 PANNA FREDDA / Scacco al Re Lot
08 LE ORME / Gioco di bimba
09 PROCESSION / Ancora una notte
10 METAMORFOSI / Sfruttatori
11 GENCO PURO & CO. / Nebbia
12 OSAGE TRIBE / Arrow Head
13 LIBRA / Shock
14 CHERRY FIVE / Country graveyard
15 MOTOWNS / A trip around the world

(22:11)

2006年11月17日

809ca7b2.jpg











メディテラネアのデビュー作。
とはいえ、二作目があるかどうかは不明。

「地中海の印象」という邦題が示唆するように、地中海に根ざしたトラッド・ミュージックをロック的に解釈した音楽性をもつ。
「アレア」がバックを務めたマウロ・パガーニの大名作「地中海の伝説」ほどのインパクトも孤高性もないが、流し聴きするにはじゅうぶん刺激的な音を鳴らしてくれる。

テンションも高すぎず低すぎず、程よく乾いた音にまとめられていて、一部の曲では踊れそうな勢いである。
まぁ、実際に踊りはしないが。

ご覧の通り、ジャケットはどこぞの激安ベスト・アルバムに匹敵するほど劣悪なデザインだ。
そのため、かつてキング・レコードから邦盤LPが発売された際に、オリジナル・デザインではなく日本独自のデザインに差し替えられている。
そちらは写真家である石井久夫氏の尽力により、オリジナル・ジャケットよりもずいぶん見れるものに仕上がっている。

(21:34)

2006年10月25日

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キング・クリムゾンに最も接近したバンド「美狂乱」。
キング・レコード内のネクサス・レーベルよりリリースされたファースト・アルバム。

ロバート・フリップを師と仰ぎ、自らのアイデンティティを重ね合わせた男、須磨邦雄(g)。
プリップナイズされた彼のギターはフリップそっくりで、中でもクリムゾンの第三期(太陽と戦慄〜暗黒の世界〜レッド)を彷彿させる。
物真似だろうが何だろうが、ヘヴィで神経質なギターは問答無用で格好良い。

問題はヴォーカルの弱さ。
線の細い声はジャップス・プログレ特有のもの。
いっそ全編インストで仕上げたほうが……。

歌詞も日本語でダイレクトに伝わってくるだけに、少々気恥ずかしいものがあるね。


(21:28)

2006年10月24日

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元「ジェネシス」のギタリスト、スティーヴ・ハケットの2006年作。
「アンダーワールド・オーケストラ」なる小編成のオーケストラを率いての目下最新作。

まるでハリウッド映画さながらの重厚なインスト、ヴォーカルがメインの歌モノ、クラシック・ギターが導く内省的楽曲、ジャズやブルース及び民族音楽のテイストを盛り込んだ楽曲等々、曲幅が広さは過去最高かもしれない。
が、それが必ずしもプラスに繋がっておらず、トータル感を損なう要因となっている。
曲単位では優れた楽曲が多いだけに残念だ。

CDの収録時間限界まで詰め込んているため、中弛みを感じることも。
ボーナス・トラックは別途ディスクを用意してそちらに収めればよかったかもしれない。

日本盤のみボーナス・トラックでフォーカスのカヴァー「エラプション」、セルフ・カヴァー「エアーコンディションド・ナイトメアー」計2曲収録。
http://www.whd.co.jp/music_info/album_view.php?wid=93&cdvdsel=C
スペシャル・エディション(輸入盤)のみボーナス・トラック4曲収録。
16ページのブックレット付き。
http://www.camino.co.uk/product/Wild_Orchids_Special_Edition.html
通常盤(輸入盤)はボーナス・トラックなし。

(10:26)

2006年10月23日

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「マグマ」「アンジュ」らと並ぶフレンチ・プログレの巨星「アトール」の三作目。

フランスの「イエス」として紹介されてきた「アトール」だが、散々いわれている通り全く「イエス」的ではない。
あえて言うならファースト「ミュージシャンズ・マジシャン」から若干「イエス」臭が漂ってくるだけで、セカンド「組曲『夢魔』」以降は独自の路線を築いた別モノだ。
彼らから「イエス」を期待すると確実にコケる。

さて、本作「サード・アルバム」はどうかというと、驚異的なテクニックに裏打ちされた風変わりなシンフォニック・ロックと評することが妥当だろう。
風変わりな、というのはクラシック・コンプレックスに因するコテコテのシンフォニック・ロックではないという意味で、決して貶しているわけではないのであしからず。

白玉鍵盤と変拍子の上をギターやベースが弾きまくり、ヘヴィながら軽快な音作り。
聴きやすさ、入りやすさという点では初期3作の中でもベストだろう。

自分の所持しているムゼア盤CDは若干ヴォリュームが小さいようだ。
今から購入を考えているならば日本盤紙ジャケットCDが無難か。

(22:03)

2006年10月18日

哀愁の南十字星(紙ジャケット仕様)

オーストラリアのプログレ・バンド「セバスチャン・ハーディー」のファースト。
初期「キャメル」、スペインの「ゴチック」を彷彿させる、叙情派プログレの代表的作品。

マリオ・ミーロ(g)の奏でる泣きのフレーズが心地いい。
ここぞという時のヴァイオリン奏法や、湿り気を帯びたメロトロンが、涙腺を刺激すること請け合いだ。

テーマのリフレインが多く、プログレ・バンドの中でも曲構成は比較的単純といえる。
テクニックの押し付けではなく、あくまでアンサンブルを重視した作りは好感が持てるが、過剰なドラマティックさが鼻につくことも。
とはいえ、シンフォニック・ロックのアルバムでは群を抜いた完成度を誇ることも確か。

本作が気に入れば、同傾向のセカンド「ウィンド・チェイス(風の唄)」も押さえておきたい。

紙ジャケット仕様でCDがリイシュー済み。
現在も入手は容易なはず。

(20:50)

2006年10月16日

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イタリアを代表するカンタウトーレ、アラン・ソレンティのファースト・アルバム。

ジャケットが表すような、暗めのトーンで統一されたプログレッシヴ・ロック。
軽く地中海色を帯びたパーカッション、ヴァイオリンがいい味付けとなっていて、退屈さを感じさせない。
狂気を孕んだヴォーカルは深く沈んでいて、どこか焦点のあわないまま、ぼんやりみつめているような恐ろしさを秘めている。

後にAOR志向のシンガーとして再デビューしたようだが、そちらまでは手が届いていない。
聴いたら聴いたでガッカリするんだろうけど、怖いものみたさで少し気になる。
検索かけてみたらEL&Pの「ラヴ・ビーチ」を思わせるジャケットが引っかかったんだが……。

伊ヴィニール・マジックよりリイシューされているが、EMI盤はCCCDのよう。
ご注意を。

(23:18)

2006年10月14日

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イタリアを代表するロック・バンド、「イ・プー」の六枚目。
クラシカルなテイストを前面に押し出した作風で、「パルシファル」や「ミラノの騎士」と並んでプログレ期の代表的アルバムとされる。

ストリングスやピアノ、ヴァイオリンらで綴られる本作は、穏やかさと麗しさが同居したサウンドを聴かせてくれる。
ヴォーカルはイタリアにしては線が細めなのだが、哀愁たっぷりに、繊細な音世界によく合う。
作風の関係上、ギター、ベース、ドラムの出番は控えめだ。

プログレ・ファンからは不評だが、80年代以降のポップな「イ・プー」の作品群も素晴らしいデキ。
もともと彼らは歌心溢れるロック・バンドであり、そういう意味ではバンドの根幹は一貫していると思うのですが、どうでしょう。

輸入盤CDはワーナーから、日本盤CDはストレンジ・デイズ・レコードから紙ジャケット仕様でリイシュー済み。

(10:00)

2006年10月12日

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元「マグマ」「ザオ」のサックス奏者、ヨシコ・セファーによるリーダー・グループ「ネフェッシュ・ミュージック」。
インプロヴィゼーションを重視した硬度 / 高度なジャズ・ロック・アルバムに仕上がっている。

案外テーマ自体は素っ頓狂だったりするのだが、その先が恐ろしい。
予想の域を遥通り越したインプロヴィゼーションの嵐である。
鬼気迫るテンションはマグマ「ライヴ!」に比肩しうるもの。
超強力盤。

フランスのムゼアからリイシュー済み。
日本ではベル・アンティークから2006年10月25日再発予定。

(09:13)
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リック・ウェイクマン(key)が新規加入しての4枚目。

数あるイエスの作品の中でも「危機」と並んで名盤に数えられる本作。
各自が持ち寄った、ある意味ではソロ・ワークに近い楽曲が並ぶため、アルバムのトータリティは薄いといわざるをえないが、それぞれの楽曲のデキが素晴らしく、そんな欠点すら吹き飛ばしてしまう。

とりわけスティーヴ・ハウ(g)のアコースティック・ソロ「ムード・フォー・ア・デイ」は何度聴いても感心する。
3分弱の小曲ながら、ハウのアイデアがぎゅっと凝縮され、クラッシック・ギターの魅力が余すところなく伝わってくる。

作曲がバンド名義の「ラウンドアバウト」や「燃える朝焼け」も忘れてはならない「イエス」の代表曲だ。
前者はシングル・カットされ、全米チャート13位にくい込むスマッシュ・ヒットとなった。
後者はヴィンセント・ギャロの映画「バッファロー'66」のクライマックスで挿入され、若い世代にもプログレを知らしめたことは記憶に新しい。

この度、Mobile Fidelity社の24K Gold Discとして、再度リマスターされリイシューされることに。
発売は2006年11月21日。
いつも早々と店頭から姿を消すシリーズだけに、購入はお早めに。

(00:49)

2006年10月11日

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3枚組ライヴ盤。

「イエス」に「イエスソングス」があるように、「EL&P」にも「レディース・アンド・ジェントルメン」がある。
「イエスソングス」同様、ベスト盤に近い選曲がなされており、本作と「展覧会の絵」があれば中期までの代表曲はおおよそフォローできる。

驚くべきはそのテンションの高さで、これを聴いたあとではスタジオ盤が物足りなく感じるかも。
とりわけタルカスでの切れ方は尋常ではない。
組曲中盤で「キング・クリムゾン」の「エピタフ」を挟み、グレッグ・レイクのファンはニヤリとさせられるはず。

「悪の経典#9」は「タルカス」と比べるとつまらないなぁ。

日本ではビクターよりCDが紙ジャケット化され、リイシュー済み。
CD化に伴い、LPでは3枚組だったものが2枚組にまとめられているようだ。

(08:36)

2006年10月10日

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代表曲「怪奇のオルゴール」、「サルマシスの泉」を含むサード・アルバム。
この作品よりスティーヴ・ハケット(g)、フィル・コリンズ(ds)が新規加入して、プログレッシヴ・ロック・バンドとしての「ジェネシス」が確立された。

分厚いキーボードの壁に代表されるように、彼らのサウンドは大英帝国然としていて、気品すら感じる。
メンバーに殆どが貴族階級の出身であることから、サウンドにその育ちのよさが滲み出ているようだ。

しばしばマザーグース的と形容されるように、「ジェネシス」は童話のもつある種の恐ろしさを秘めている。
フロントマンであるピーター・ガブリエル(vo)のステージングを観れば火を見るより明らかで、奇抜な衣装や、シアトリカルなパフォーマンス、シュールなMCは常軌を逸している。
真っ白のメイクにタイツを着て、箱の気ぐるみや、老人のお面を被るなんて、自分には到底できそうにない。
(その後ろでは楽器隊が黙々と演奏しているのだから、笑わせてくれる)

日本盤は紙ジャケットCDでもリイシューされたが、弾数の少なさから2006年現在プレミア価格で取引されている。
手軽なのは輸入盤CDか。



(23:06)
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元「フォーカス」のギタリスト、ヤン・アッカーマンのソロ。
4枚目。

ギターのみならずリュート等古楽器を用い、バロック音楽にも通づる音世界を作り上げた。
全編インストゥルメンタルで織り上げた本作は、シルクのように繊細で儚く脆い。
その美しさといったら筆舌に尽くしがたい。

系統立てると「グリフォン」の初期作やアンソニー・フィリップスのファースト・アルバムに近い感触があるが、似て非なるもの。
やはりロックのフィールドで語るには無理があるような気がする。

ジャケ、裏ジャケ、内ジャケ、ついでにレコードのライナーと、アッカーマンのヒゲだらけなのがむさくるしくていい。
「フォーカス3」のタイスと並べてディスプレイしてみてはどうだろう。

(08:39)
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イタリアのボブ・ディランという異名をもつ、ルーチョ・バッティスティのサード・アルバム。
彼はイタリアを代表するカンタウトーレで、「P.F.M.」や「フォルムラ・トレ」の生みの親でもある。

オーケストラによるシンフォニックな味付けがなされたフォーク・アルバム。
とはいっても、メインはカンタウトーレらしく歌モノだ。
オーケストラはあくまでも添え物程度にとどめているのは正解だろう。

深く味わい深い声は、どこかクサ味のある旋律と相まって、素晴らしい説得力を持っている。
ただ問題なのは輸入盤CDでは対訳はおろか、歌詞すら掲載されていないこと……。

このアルバム、日本で買おうとすると高いけれど、旅行先の本国イタリアでのCDショップでは10ユーロくらいで売られていた記憶がある。
さらにヒドいのが、フランコ・バッティアートの初期作は全て5ユーロくらいで売られていたこと!
日本だと「フィータス」とか高いのにねぇ。

(00:39)