2013年05月13日

法曹養成制度検討会議に対するパブリックコメント

締め切り直前に、駆け足で以下のようなパブリックコメントを送りました。

第1 法曹有資格者の活動領域の在り方
意見 企業内の法曹有資格者の拡大がどれだけ求められているかは疑問である。国家公務員総合職法務は年齢制限を撤廃すべきである。
理由 私は東証一部上場企業に勤務する弁護士であるが、法務部門が充実した大企業では、法務部門は案件がある程度煮詰まってから関与することが多く、中間的取りまとめのように初めから終わりまで一貫して関与するということは、必ずしも多くないと感じている。ただ、大企業の法務部門が作成する法律文書も、表現が十分にこなれていないことも多い。細かな契約書チェックを社外弁護士が担当することが現実的でないことを考えると、大企業に法曹有資格者を送り込んで、内国企業の法務を充実させるメリットはあるかもしれない。
 また、国家公務員法務職は、法科大学院出身者の多様性を生かすべく、特別採用だった3年前までのように年齢制限を撤廃すべきである。

第3 1(3)法曹養成課程における経済的支援
意見 修習専念義務を堅持した上で、5年以内に給費制に戻すべきである。
理由 私は、家庭の事情から、大学入学以来ずっと奨学金を借り、なおかつアルバイトもしながら、学部・大学院の課程を経て、何とか司法試験に合格した。
 学習に必要な経費を奨学金で賄い、生活費はアルバイトで稼ぐという方針を採っていたため、学部での成績は中くらい、大学院の成績は最下位であった。新司法試験にも、3回目で辛うじて合格した状態であった。司法修習に行っても、最初のうちは皆の議論についていくことすらできず、実務修習中の起案でも、教官が採点した約30人の中で最下位を取ることもあった。
 しかし、修習専念義務があったおかげで、他にアルバイトをすることもなく、それまでの「二足のわらじ」のような生活とは異なり、修習と就職活動に専念することができた。毎月の安定した収入(実は謝金だが)を得ることが、こんなにも楽なことだというのを初めて思い知った。
 選択型実務修習中に内定先を確保することができたことから、司法修習の最後の3か月間は、完全に修習に集中することができた。おかげで、集合修習の起案では、下位層に入ることがかなり少なくなった。さらに、弁護士資格を得るための最後の関門である二回試験においては、法律の学習を始めてから最高の成績を確保することができた。
 このような私自身の経験から、学習に集中することのできる環境にいることは、非常に重要だと感じている。現行制度上、司法修習生には休暇という概念がなく、土日祝日は配属庁会が休みだからという理由で出席を免除されている。私は、このことによって、土日祝日に適度にリフレッシュしたり、修習のためのより基礎的・理論的な学習をすることができ、二回試験での好成績につながったと考えているから、修習専念義務を堅持する方向で構わないと思っている。
 ただ、修習専念義務が維持できるのは、生活の糧があってこそである。収入を得る手段がない司法修習生は、専念義務を課す国から生活費を得るしかない。
 私は貸与制の第一期生である。貸与金は、生活費の保障であり、修習に必要な経費の多くは、国や弁護士会・指導担当弁護士が支払っている。このような多くの方々の支えがある点は、給費制でも貸与制でも変わらないことから、私は、修習においてはできる限り多くのことを身につけようとして取り組んだ。その結果、二回試験において好成績を取ることができたのだと考えている。
 その一方で、生活費は、貸与金という「将来的には自らが返すカネ」であった。そのため、修習には直接関係のないことであっても、自らの視野や見聞を広めるための活動には積極的に利用したし、就職活動への経費も一定程度は惜しまずに使うようにした。これが給費制であれば、もう少し抑制的に使ったかもしれない。
 さらに、私は貸与金を324万円借りたが、給費制であれば400万円程度得ることができたようである。1年間の修習期間において、70万円余りの経済的格差は非常に大きい。また、給費制のときには、夏冬の賞与も得ており、修習前後の引越代や弁護士会入会費用に宛てていた。私たちの代からは、貸与金の中からこれらの費用を積み立てねばならない。この3年ほどの修習希望者は、希望通りにならないと、修習地決定後に修習を辞退した者も多い。さらに、弁護士事務所が集中する東京や大阪から時間的・金銭的に遠い高知には、希望順位が低い人が多く集まっていた。それが修習のモチベーションを下げることになっていないのが、高知修習生の偉いところであったが、いずれも、修習生が金銭的負担を考慮していることを明らかにしている事情だと言える。
 経済的安定が、修習の成果を大きく左右することに鑑みて、貸与金返還が始まる5年後までに、給費制を復活を真剣に検討して頂きたいと強く願う。

pacta_sunt_servanda at 23:59|PermalinkComments(0)TrackBack(0)