いよいよお待たせしました。
私がこの1〜2年でXの中でよく見かけていて1度お会いしてお話したいと思っていた竹島憲一郎先生の教育講演のレポートです。竹島憲一郎先生に関しては先日のレポートでも紹介していますが、こちらの記事でも(私の主観で)紹介させていただきます。
バレエダンサーは医療機関に行かない。
みなさんなら心当たりある方が多いはずです。ダンスに理解あるドクターやセラピストに出会うことはとても難しいのが現状です。
芸術家のくすり箱でもこんなアンケートがありました。
この事実は日本だけではなく世界中のどの地域でも共通しているそうです(後述)。
そんな現状の中でドクター自身がダンサーであるというのは安心できると思いませんか?
竹島憲一郎先生は競技ダンス(社交ダンス)の選手として活動していたことがある方なのです(名前を打って画像検索するとダンサーとしての写真が出てきます)。
特に専門は「足」です。
「ダンサーへの理解がある足の整形外科医」ってダンサーにとってはパワーワードだと思います。
世の中にはダンス経験がなくてもダンサーに理解のあるドクターやセラピスト、トレーナーは沢山います。かくいう私もダンス経験があると言えるほどダンスをしてきたわけではないです。
とは言えどもダンサーでありドクターというのは「話が早い(理解してくれる)」と思います。
さてそんな竹島先生の教育講演を聞いて印象的だった部分を皆さんにシェアしたいと思います。
(私の主観を加えて書きますので、竹島先生の言葉の通りでないですし論文の一次情報そのものではないことを予めご了承ください)
上手なダンサー約800名の怪我を調べてみると11歳、12歳が特に怪我が多くなる傾向があったそうです。これはポワントの履き始めだったり初コンクールに出場するくらいの年齢ということなのでしょうか。この論文の数字だけをもって世の中の正解とするのは危険ですが、少なくとも11歳12歳あたりのダンサーを指導する際に頭の片隅に入れておいて損はない情報ですね。そして経験上、それを知っている先生も少なくないはずです。
そしてバレエダンサーの怪我で最も多く見られるのは「足、足関節」です。これは直感とズレがないのではないでしょうか。全体の半数が足、足関節の怪我のようです。ただし、年齢によって起きやすい怪我の場所が変わるそうで、8〜11歳が足・足関節の骨や関節の怪我が多いのに対して12歳〜18歳位になると腱や筋肉などの痛みが増えてくるそうです。
これは身体が少し大きくなってきて体重が増えてきて、演目も難しくなってきているのに筋力が足りないまま踊ったり、間違った使い方のまま繰り返したりすることで腱や筋肉に負担がかかってくるのでしょうね。
さらには「システマティックレビュー(めちゃ説得力のあるデータ)」として、ダンサーの怪我のほとんど(65%〜70%)はオーバーユース(使い過ぎ)が原因だそうです。つまり、負担のかかる動きを繰り返し行なって痛みが出るというケースがバレエダンサーの怪我のほとんどだと言いかえることも出来るというわけです。
ここから考えるべきポイントとしては「使いすぎる」ことを前提に踊る方が怪我のリスクが減らせるということです。「今後絶対に使いすぎるんだから事前に強化しておこう」とか「これから使いすぎることを想定して今日は休んでおこう」とか、そんな考え方を持っている人の方が怪我しにくいのではないでしょうか。
その他の研究では、1年以内に怪我をしたダンサーは初めて怪我をした人よりも過去に怪我をしている人の方が7倍も多かったというデータもあったようです。これは様々な要因が考えられるので決めつけた発言はできませんが、そもそも使い方が悪くて怪我を繰り返したり、リハビリが不十分で怪我を繰り返したり、筋力が足りないまま踊ることで怪我を繰り返したり、骨格的に怪我しやすい条件の人だったりと、色々考えられますが、怪我をしたタイミングで適切にセラピストやトレーナーが介入すれば、ここまでの比率にならないのではないかなと感じています。
こんな感じで、お話される内容がいずれも興味深くかつわかりやすくお話していただきました。
他にも【利用可能なエネルギー不足(RED-s)】の話や実際のダンサーの症例報告(足関節インピンジメント症候群)や、症例に合わせて手術をするのかしないのかの考え方など大変貴重なお話を聞くことができました。
お話を聞いている限りでは、なるべく手術をしないで使い方の修正で改善することを目指しつつ、構造的にリスクのある状態や痛みがとても強くなっているケースにおいては慎重に検討しつつ丁寧な手術を行なうという印象がありました。
リハビリのプロトコル(組み立てかた)はファンクフィジオの押本理映先生と連携を取っているようです。
押本先生はニューヨークにあるハークネスセンターで研修を受けている方です。
押本先生はこの頃にアメリカから帰国されたとのことです。
実は押本先生とも懇親会のタイミングで繋いでいただきお話することができました。
惜しみなく私の質問に答えていただき、このお二人の懐の深さに感動しました。
この5年でさらに日本のダンス業界を支える人達のネットワークが広がり、
質の高い医療を受けられる環境が増えてきたと実感しています。
そのフロントランナーとも言えるお二人です。
懇親会でのエピソードはまだまだあるのですが、話が散らかるので別の機会にします。
以前から知っている話でも改めて聞くことに意味があり、場合によっては情報が更新されていることだってありますから、ダンサーの怪我などについての講演は何度聞いても良いと考えています。
「そんなの10年も前から同じだよ」なんて思わずに「同じでも大切なことなので何度でも聴講しましょう」という気持ちを持っていたいと思っています。
来年のダンス医科学は神戸で開催されます。神戸でお会いしましょう!
と、その前に実は今年の6月に札幌で「日本舞台医学会」というのが初開催されます。
詳しい情報はまだですが、私は必ず参加します。竹島先生も登壇されるそうです。
今のうちからスケジュールを空けておきましょう。詳細が発表され次第、随時このブログで情報をお伝えします。
ということで6月に札幌でお会いしましょう!
関連情報:
竹島先生がファシリテーターのオンラインセミナーはこちら
なぜダンサーは治療に行かないのか?
その際にドクターがどんなことを考えているのか?
学術集会レポートその1はこちら
ーーーーーーーーーーーーーーー
フェイスブックページにいいね!を押すとあなたのフェイスブックのタイムラインに更新情報が届きます。
https://www.facebook.com/ballet.figureskating
毎月生放送でお送りしているバレエのお悩みバスターズはこちら
https://busters.balletup.com/
私の所属先「医療法人スポキチ」は、医師(整形外科医・内科医)、柔道整復師(整骨院)、理学療法士(リハビリ)、鍼灸師、そしてトレーニングと幅広くダンサーをサポートする施設になっています。札幌市北区にあり夜遅くまで受付(20:30)しているのが特徴です。
トレーニング指導場所
新琴似中央整骨院(月〜土)
https://2.onemorehand.jp/m_support_er/
インターネット上で予約が可能です
011-764-7557
メディフィットコンディショニングラボ(火・土の午後)
https://medifit-scenes.com
電話のみの予約 011-522-5804
パーソナルトレーニングの料金について
http://blog.livedoor.jp/quality_of_life-ballet/archives/47234979.html
ダンサー、フィギュアスケーター、あらゆる表現者をサポートするトレーナー
森脇俊文