ギリシャのごはん

ギリシャ料理のレシピと、ギリシャで私が作っているごはんの記録。

復活祭前の長い大斎(断食・節食期間)も折り返し点を過ぎたところ。

2024.03.28 sefoukloti
Σεφουκλωτή Νάξου

うちは普段と変わらない食生活ですが、せっかくなので断食メニューをどんどん紹介していこうと思っています。いくつかレシピは書き溜めてあるのだけど、復活祭までに載せきれるかな?

近年はベジタリアンやヴィーガンの代替食品がどんどん増えているため、動物性食品の断食もしやすくなっています。肉で作っていた料理をそういった食材で代用するのは私もたまにやってみるのだけど、自分の中でしっくりくるものや本当においしいなと感じるのは、そういった“もどき”(というのもよい表現ではないですが)よりも、ギリシャで昔から食べられている食材を使った動物性食品なしの料理です。


2024.04.03 sefoukloti 1
ギリシャ人のソウルフード的な食べもののひとつにパイがありますが、私が気に入って冬から春にかけてよく作っているチーズなしのパイを今回はご紹介します。定番の青菜パイの地方バリエーションで、ナクソス島のセフクロティという料理。ふだんそう(セスクロ)を主材料に、たっぷりのハーブや米を加えた味わい深いパイです。


chard
このパイのレシピを書くにあたって、日本でふだんそうはどれぐらい入手しやすいかというのが気になって調べてみたのですが、「うまい菜」という名前で売られていたりもするよう。妹が地元の里の駅で売られていたのを撮影して見せてくれました。他の名前はスイスチャードですが、茎の色がカラフルな品種がそう呼ばれる場合が多いみたいです。

フィリングに米を入れるのは他のいくつかの地方でも見られるもので、水分を吸ってクラストがべチャッとなるのを防ぎます。そういえばこのブログでは米入りのパイってほとんど紹介していませんが、初期に載せたタコのパイケファロニア島の干し鱈パイがこのタイプです(いずれもレシピ未公開)。


ナクソス島のふだんそうパイのもうひとつの特徴が、ちょっと甘味を加えるということ。こちらは絶対条件というわけではないので苦手な方は抜いて作ってもいいのですが、干しぶどうを少し加えたり、蜂蜜をかけて食べたりします。蜂蜜をかけるのは確かアピランソスという村でよくやる食べ方ですが、これがまたおいしいのでぜひお試しを。イタリアやフランスの南の方にも甘いふだんそうのパイがあるのを思い出しましたが、地理的・歴史的に繋がりがあるのかもしれませんね。


2024.03.28 sefoukloti 2
レシピは厚めの生地上下1枚ずつの簡単なフィロでご紹介していますので、生地から手作りするパイは難しそう……と二の足を踏んでいる方にも比較的作りやすいです。


2023.12.14 sefoukloti
薄いフィロがお好みの方は、そちらで作っていただいてもどちらでもおいしいですよ。


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ギリシャの春の味覚のひとつ、アーティチョーク。

2024.04.02 stuffed artichoke
子供の頃に読んだギリシャ神話に出てきて、どんな植物なんだろうと想像を巡らせたり、料理本のエッセイに書かれていた丸茹でアーティチョークの食べ方が気になって憧れたりしたものですが、ギリシャで長く暮らすうちにすっかり身近になった食材です。

旬は結構長く、最盛期の春からシーズン終わりの初夏までは値段もかなり下がるので、やる気のある年にはいろんな調理法で楽しみます。

というのも、アーティチョークは下処理がなかなか面倒なんですよね。可食部だけを使う場合は硬い部分をバリバリむしったりナイフで削いだりして、中の毛羽も取らないといけないし、丸ごと茹でるにしても洗うのが結構大変。おまけに可食部が少なく、筍の下処理の時みたいにごみの山ができます。

去年は終わりかけの時期にちょっとやる気が出たものの買いそびれたので、暑くなってきた今週ちょっと焦って市場で買ってきました。

ギリシャで一番よく食べられるアーティチョークの料理は、コンスタンティノープル風と呼ばれる煮込みや、柔らかなそら豆と一緒に煮込んだ料理です。
それも好きなんだけど、去年食べたかった米詰めをまず作ることにしました。


IMGP0804
これには緑の丸いアーティチョークではなく、紫がかった色で少し縦に長いものが適しています(他の料理にも私はいつも後者を使いますが)。今回は結構しっかりと先の部分を切り落としてしまったのだけど、棘の部分だけちょんと切って長く残した方が見た目はいいですね。茎もあれば捨てないで、外側の筋っぽい部分をナイフでメリッと剥がすように剥いて一緒に煮ます。

フィリングは肉なしドルマデス(ぶどうの葉の米包み)と同じような感じのハーブライス。オリーブオイルで玉ねぎのみじん切りを炒め、米も加え炒めて水を適量加え表面が柔らかくなる程度に煮て刻んだハーブ(ねぎ、パセリ、ディル、ミント、フェンネルなど)を加え塩こしょうでしっかりめに味つけします。また、お好みで細かくすりおろすか刻んだにんじんやトマトを少し入れても。米の量はアーティチョーク1個につき、大さじ2杯ぐらい。中心の空洞だけでなくガクの間にもフィリングを挟み、塩とレモン汁とオリーブオイルを加えた水をアーティチョークの“台の部分”が浸るぐらい加え蒸し煮にします。

米がしっかり蒸されるよう、ふたをして強めの火加減で40分ぐらいでしょうか。途中、空焚きにならないようチェックがてら煮汁を2回ぐらい回しかけます。

米にしっかり火が通り、ガクが容易に剥がせるほど柔らかく煮えたらできあがり。煮汁にもレモン汁を入れますが、食べるときにもレモンを添えてどうぞ。粗熱が取れて味がなじむまで休ませてからすぐ食べても、余って冷蔵庫で冷やされたのもそれぞれおいしいです。


2024.04.02 stuffed artichoke1
ガクの部分を食べるのに手が汚れるし、あまりスマートに食べられるものではありませんが、合間にワインを飲み飲み、フェタチーズやオリーブをつまみつつ……春のよろこびを感じられる一品です。


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カロミナ(よい月を)。4月になりました。
先週半ばくらいからぐんと暖かくなり、昼間外を歩いていると暑いぐらいです。

2024.03.20 semolina halva with apple
Χαλβάς σιμιγδαλένιος με μήλο και φουντούκια

イースターの投稿は?と思われた方ももしかしたらいらっしゃるかもしれませんが、今年の正教会の復活祭は5月5日で、日本のゴールデンウィークとイースター休みがほぼ重なります。パンデミック前の同じ頃に一時帰国したのですが、ギリシャのイースターっぽいことをしたり地元のお祭りを見に行ったのがとても懐かしいです。残念ながら今年は日本へは行けそうにないし、特別なことをする予定もないけれど、家でささやかに美味しいものでも食べたいなぁと思っています。

そんなわけでまだ1か月は断食期間なので、いくつか断食メニューも載せていく予定。カサリ・デフテラ(断食期間初日の祝日)の時に作ったセモリナ粉のハルヴァというお菓子を別記事で紹介しようと思っていたら月をまたいでしまいましたが、こちらは昔載せたレシピの改訂版になります。


ハルヴァというと米原万理さんのエッセイに登場した、ものすごく美味しい謎のお菓子としてご存知の方もいるでしょう。



彼女がソ連時代に食べたという、“噛み砕くほどにいろいろなナッツや蜜や神秘的な香辛料の味がわき出てきて混じり合う”ようなハルヴァがギリシャにあるかはわからないけど、スーパーでもよく売っているハルヴァはごまペーストのタヒニを主原料としたヌガーの一種のようなお菓子で、無骨でどっしりとしたブロック状の見た目と、口の中でサクッ・ホロッと溶ける食感のギャップが面白いです。

「ハルヴァ・トゥ・バカリ(食料品店のハルヴァ)」とも呼ばれるごまペーストのハルヴァは一応手作りもできますが、基本的にお店で買うもので、細かい繊維状に練り上げるには熟練の技と力を要します。ハルヴァというお菓子はそれ以外にもいろんな種類があるのですが、特によく知られるのはセモリナ粉のハルヴァや、ファルサラのハルヴァ(ギリシャ中部ファルサラ辺りの郷土菓子。スターチで作られるぷるんとしたハルヴァで、キャラメル化させてある)など。全国的によく食べられ、簡単なので家庭でよく作られるのはセモリナ粉のハルヴァです。


2024.03.18 semolina halva with apple

セモリナ粉のハルヴァをざっくり説明すると、炒ったセモリナ粉を砂糖と水で煮た簡単お菓子です。セモリナ粉の粒感とホロッとした食感が特徴で、素朴な味わいは日本の郷土菓子と言って出されても(油気が結構ある以外は)あまり違和感はないかもしれません。

りんごを加えたバリエーションは昔思いついてレシピ化したものですが、今回は微妙に違うので改訂版としてレシピを書いてみました。動物性の食品を摂らないギリシャ正教の断食ルールに沿ったお菓子で、ベジタリアンやヴィーガンの方にも食べていただけます。

レシピは関連記事のあとに続きます。

【関連記事】






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今年は3月後半の月曜がどちらも祝日でした。

2024.03.25a
移動祝日である復活祭に連動する大斎(断食期間)のはじまりが先週の月曜、そして昨日は毎年3月25日にお祝いされる生神女福音祭とギリシャ独立記念日(オスマン帝国の支配下にあったギリシャで革命が起き、独立戦争を開始したことを記念する日)。

動物性の食品を摂らない断食期間中には魚も禁止食品に含まれるのですが、特別に魚食が許される2日のうちの1日が生神女福音祭なのです。特に干し鱈のフライにガーリックソースを添えた「バカリァロス・スコルダリァ」が定番。なぜ干し鱈を食べるのが伝統なのかというのは以前にも何度か書いていますが、流通が発達していなかった時代において、干し鱈はギリシャ中どこでも入手しやすい魚だったというのが大きな理由でしょう。

ギリシャで長く暮らしていて気付いたのが、似たテーマの記念日と料理のイメージが結びついたのか、近年はオヒ・デー(第二次世界大戦への参戦を記念する日)や生神女就寝祭(聖母マリアの永眠を記憶する日)にもバカリァロス・スコルダリァを食べる人が増えているらしいことです。おかげでスーパーの特売品に干し鱈を見かける回数も増えたので助かりますが。

我が家ではフライ以外の干し鱈料理を作ったりする方がどちらかというと多いのだけど、今年は久々に超ベーシックなバカリァロス・スコルダリァが食べたくなりました。


2024.03.22 garlic
関連記事のレシピに近いですが、炭酸水で小麦粉を溶いたシンプルな衣にくぐらせてサクッと揚げた干し鱈は、熱々にスコルダリァをたっぷりつけて食べると最高。スコルダリァは茹でたじゃがいもを主に、パンとアーモンドも少し加えたものにしました。今の時期は丁度、ジューシーな新にんにくが出てきたところなのでスコルダリァを作るのにもってこいです。


2024.03.25b
バカリァロス・スコルダリァと一緒によく食べられるのがビーツのサラダです。ギリシャでは、ビーツは葉付きで売られているのがうれしい。根はオーブン焼きまたは茹で、葉も別に茹でるのですが、このサラダにもスコルダリァをつけながら食べるととてもおいしいので、ぜひこの組み合わせでお試しを。スコルダリァはたっぷり添えるのがおすすめです。


【関連記事】




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自分用に少しだけ作ったものですが、今年のカサリ・デフテラの食卓のメインはタコとハネムスカリ球根の土鍋焼きでした。

2024.03.18 octopus with bulbs
Χταπόδι με βολβοί στο πήλινο

球根は木曜に剥いて、水に浸けた状態で冷蔵庫に入れてありました。日曜にピッツァを焼いたついでに、下茹でせずそのままの球根を1個、試しにホイルに包んでオーブンに放り込んでみたのだけど、食べてみたら苦味もなく、ねっとり・ホクホクして美味しい!
少なくとも古代ギリシャ・ローマ時代から食べられていたハネムスカリの球根は、当時は催淫効果があると言われ珍重されたそう。調理法のひとつとして灰に埋めてじっくり焼いたというようなことをどこかで読んで、苦くはないのかなと気になっていたのでした。

同じ状態で何日も水に浸けてあった球根をピクルス用に茹でたものは、一度軽く茹でただけではまだ結構苦かったので、よく加熱することにより苦味がなくなるのかも?今期もしまた買うことがあれば、水にさらしてないものでも実験してみたいです。

2024.03.18 octopus with bulbs1
タコと球根をあわせた料理は10年前に作ったスティファドをトマトに頼らずもう一度試してみたいというのが当初の目的だったのですが、もっとシンプルにオーブン焼きにしたらどうだろうと思い、予定を少し変更しました。オリーブオイルを回しかけ、ローズマリーとオレガノの穂先を1本ずつのせて、蓋をしてオーブンへ。


2024.03.18 octopus with bulbs2
じっくりと蒸し焼きにされたタコは、「ルクミ……!」と思わず感嘆を漏らすほどの美味しさ。とろけるように柔らかく調理された肉に対しこのような表現をしますが、みっしりとした食感を残しつつも濃厚に舌にからまるような味わいのタコは、まさにルクミを思わせるものでした。ハネムスカリ球根、そして控えめに入れたハーブとの出会いも素晴らしく、特別な味つけにこだわらなくても深い味わいが生まれるのだなぁと再確認させてくれた一品となりました。

2024.03.18 bulbs1
球根だけのホイル焼きも。これは全く何も加えず焼いて、食べる時にオイルと粗塩を少しかけました。


2024.03.18 bulbs2
オーブンの底に置いたので少し焦げてますが、ちょっとぬめりも感じさせるホクホクの中身に、こんがりパリッとしたところがアクセントになりよかったです。

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