2013年10月10日

巨大素数

2007年3月に,以下の記事を書きました。

「巨大素数」

この記事において,巨大素数,特にメルセンヌ素数について解説しました。

この記事を書いてから早くも6年経ってしまいました。この6年の間に,新たなメルセンヌ素数が4つ発見され,したがって巨大素数ランキングの上位10位も様変わりしました。

上記の記事にも書いたとおり,電子フロンティア財団(Eloctronic Frontier Foundation, EFF)は最初に1,000万桁以上の素数を見つけた個人または団体に10万ドルの賞金を払うと宣言していました。1,000万桁以上の素数はGIMPS(The Great Internet Mersenne Prime Search)のプロジェクトによってカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の数学科のコンピュータにおいて発見されました(発見時の記事)。

GIMPSの発見の歴史はこのページを見て下さい。前回の記事以降,新たなメルセンヌ素数が4つ発見されています。それにより,現在巨大素数ランキングは上位10位すべてがメルセンヌ素数によって占められています。
現在最大の素数は257,885,161-1(17,425,170桁 )で,48番目のメルセンヌ素数です。これは今知られている中で48番目に小さいという意味であって,本当に48番目のメルセンヌ素数であるかどうかは分かっていません。現在順序が確定しているのは42番目までです。

また,1億桁以上の素数に15万ドル,10億桁以上の素数に25万ドルを払うことになっていますが,これらはまだ達成されていません。今までのペースを考えると,さすがにあと数年はかかるでしょう。

巨大素数については次のページを参照して下さい。
The Largest Known Primes--A Summary

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seven_triton at 00:25|PermalinkComments(11) 整数問題 

2013年10月05日

Identric mean と Logarithmic mean (3)

区間$[a,\,b]$を,前々回は等差数列で,前回は等比数列で分けました。というわけで今回は調和数列です。

引き続き,$0 < a < b$とします。

区間$[a,\,b]$を調和数列(逆数が等差数列であるような数列)$\{x_k\}$で「分割」し,それらの「$H\leqq G\leqq A$」を作って$n\to\infty$とすることによって,さらに新たな平均とそれらに関する不等式を得ることができます。

$x_0=a,\ x_n=b$から$\frac1{x_0}=\frac1a,\ \frac1{x_n}=\frac1b$なので,
\[\frac1{x_k}=\frac1a+\frac{\frac1b-\frac1a}nk\quad\therefore x_k=\frac1{\frac1a+\frac{\frac1b-\frac1a}nk}\]
となります。あとは前回・前々回と同じように,これらの「$H\leqq G\leqq A$」を作り,$n\to\infty$の極限の計算を区分求積でおこなうだけです。各自やってみて下さい。得られる不等式は

\[\frac2{\frac1a+\frac1b}\leqq\frac e{a^{\frac b{a-b}}b^{\frac a{b-a}}}\leqq\frac{ab\left(\log b-\log a\right)}{b-a}\]


となります。

$\displaystyle\frac{ab\left(\log b-\log a\right)}{b-a}$は前回出てきた,Logarithmic mean の変形$\displaystyle\frac{1}{L\left(\frac1{a},\,\frac1{b}\right)}$です。$\displaystyle\frac e{a^{\frac b{a-b}}b^{\frac a{b-a}}}$は新しく出てきた平均で,Identric mean を$I(a,\,b)$と表したとき,$\displaystyle\frac{1}{I\left(\frac1{a},\,\frac1{b}\right)}$となります。最後の$\displaystyle\frac2{\frac1a+\frac1b}$はお馴染み調和平均$H(a,\,b)$です。


前回・前々回の結果と組み合わせると,次のようになります。

\begin{align*}
\large&\large\frac2{\frac1a+\frac1b}\leqq\frac e{a^{\frac b{a-b}}b^{\frac a{b-a}}}\leqq\frac{ab\left(\log b-\log a\right)}{b-a}\\[5pt]
\large\leqq{}&\large\sqrt{ab}\\[5pt]
\large\leqq{}&\large\frac{b-a}{\log b-\log a}\leqq\frac{a^{\frac{a}{a-b}}b^{\frac{b}{b-a}}}{e}\leqq\frac{a+b}2
\end{align*}



$a$と$b$の相加平均を$A(a,\,b)$,相乗平均を$G(a,\,b)$,調和平均を$H(a,\,b)$,Identric mean を$I(a,\,b)$,Logarithmic mean を$L(a,\,b)$と書くことにし,また一般に$a$と$b$の平均$M(a,\,b)$に対して$\displaystyle\frac{1}{M\left(\frac1{a},\,\frac1{b}\right)}$のことを$\widetilde M(a,\,b)$と書くことにし,「$(a,\,b)$」を省略して書けば,上の不等式は次のようになります。

AILG


相乗平均を中心とする対称性が見て取れます。非常に美しい不等式ですね。


ここで$a=1,\ b=2$としてみると,

\[\large\frac43\leqq\frac e2\leqq 2\log2\leqq\sqrt2\leqq\frac1{\log 2}\leqq\frac4e\leqq\frac32\]


となります。$\frac43=1.333\cdots,\ \frac32=1.5$なので,なかなか狭い範囲に入っています。


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seven_triton at 18:19|PermalinkComments(6) いろいろな「平均」 | 不等式

2013年09月28日

Identric mean と Logarithmic mean (2)

前回は,区間$[a,\,b]$(ただし$0 < a < b$)を等差数列$\{x_k\}$で「分割」し,それらの「$H\leqq G\leqq A$」を作って$n\to\infty$とすることによって,新たな平均とそれらに関する不等式を得ることができる,という話でした。

\[\begin{array}{ccccc}
\text{Logarithmic mean}&\leqq&\text{Identric mean}&\leqq&相加平均\\
\displaystyle\frac{b-a}{\log b-\log a}&\leqq&\frac{a^{\frac{a}{a-b}}b^{\frac{b}{b-a}}}{e}&\leqq&\frac{a+b}2
\end{array}\]



では,はじめに「分割」する数列を,等差数列ではなく等比数列にしてみるとどうなるでしょうか。これが今回の内容です。

引き続き,$0 < a < b $とします。

$x_0=a,\ x_n=b$をみたす等比数列$\{x_k\}$を考えると,
\[x_k=a\cdot\left(\frac{b}{a}\right)^{\frac{k}{n}}\quad (k=0,\,1,\cdots ,n)\]
となります。この$n+1$個の数に対して$$H\leqq G\leqq A$$を考えると,
\begin{align*}
\frac{n+1}{\displaystyle\sum_{k=0}^{n}\frac{1}{a\cdot\left(\frac{b}{a}\right)^{\frac{k}{n}}}}\ \leqq\ \left\{\prod_{k=0}^{n}a\cdot\left(\frac{b}{a}\right)^{\frac{k}{n}}\right\}^{\frac1{n+1}}
\ \leqq\ \frac1{n+1}\sum_{k=0}^{n}a\cdot\left(\frac{b}{a}\right)^{\frac{k}{n}}
\end{align*}
となります。これで$n\to\infty$としましょう。


区間を等差数列で分けたときは,$A$をシグマ計算した結果$\frac{a+b}2$となり,$n$に依存しませんでした。
等比数列で分けると,これに対応するように,$G$をシグマ計算した結果が$\sqrt{ab}$となり,$n$に依存しません。

$A$と$H$は計算が必要です。ともにシグマ計算できますが,結局$n\to\infty$とするので,区分求積法で求めます。

まずは$\displaystyle\lim_{n\to\infty}A$です。

\begin{align*}
&\lim_{n\to\infty}\frac1{n+1}\sum_{k=0}^{n}a\cdot\left(\frac{b}{a}\right)^{\frac{k}{n}}\\
={}&\int_0^1a\cdot\left(\frac{b}{a}\right)^x\,dx\\
={}&\frac{a}{\log\left(\frac{b}{a}\right)}\biggl[\left(\frac{b}{a}\right)^x\biggr]_0^1\\
={}&\frac{b-a}{\log b-\log a}
\end{align*}


何と,これは前回の記事で出てきた Logarithmic mean です。

次に$\displaystyle\lim_{n\to\infty}H$です。

\begin{align*}
&\lim_{n\to\infty}\frac{n+1}{\displaystyle\sum_{k=0}^{n}\frac{1}{a\cdot\left(\frac{b}{a}\right)^{\frac{k}{n}}}}\\
={}&\lim_{n\to\infty}\frac{1}{\frac1{n+1}\displaystyle\sum_{k=0}^{n}\frac{1}{a\cdot\left(\frac{b}{a}\right)^{\frac{k}{n}}}}\\
={}&\frac1{\displaystyle\int_0^1\frac1{a\cdot\left(\frac{b}{a}\right)^x}\,dx}\\
={}&\frac{1}{\frac1{a}\cdot\frac1{\log\left(\frac{b}{a}\right)}\left[-\left(\frac{b}{a}\right)^{-x}\right]_0^1}\\
={}&\frac{ab\left(\log b-\log a\right)}{b-a}
\end{align*}



これで,以下の不等式が証明できました。

\[\large\frac{ab\left(\log b-\log a\right)}{b-a}\leqq\sqrt{ab}\leqq\large\frac{b-a}{\log b-\log a}\]



$\displaystyle\frac{b-a}{\log b-\log a}$は上にも述べたように Logarithmic mean で,また$\sqrt{ab}$は相乗平均です。
$\displaystyle\frac{ab\left(\log b-\log a\right)}{b-a}$は新しく出てきた平均です。特に名前はついていないと思いますが,Logarithmic mean を$L(a,\,b)$と表したとき,この平均は$\displaystyle\frac{1}{L\left(\frac1{a},\,\frac1{b}\right)}$と表されます。


これまでの結果と組み合わせると,次のようになります。

\[\frac{ab\left(\log b-\log a\right)}{b-a}\leqq\sqrt{ab}\leqq\frac{b-a}{\log b-\log a}\leqq\frac{a^{\frac{a}{a-b}}b^{\frac{b}{b-a}}}{e}\leqq\frac{a+b}2\]



まだまだ続きます。


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seven_triton at 20:21|PermalinkComments(0)TrackBack(0) いろいろな「平均」 | 不等式

2013年09月21日

Identric mean と Logarithmic mean (1)

今日は,Identric meanLogarithmic mean という2つの平均を紹介します。

log の積分と区分求積法を用いますので,数IIIの積分を一通りやった人向けです。

(今回の内容は以前書いたものですが,MathJaxを用いて書き直しました。また内容的にも,次回以降増補する予定です。)


$a_1,\,a_2,\cdots,a_n$を正の実数とします。以下の3つの平均は有名です。

  • 相加平均(算術平均,Arithmetic mean)

  • \[\frac1{n}\sum_{k=1}^{n}a_k=\frac{a_1+a_2+\cdots +a_n}{n}\]
  • 相乗平均(幾何平均,Geometric mean)

  • \[\left(\prod_{k=1}^{n}a_k\right)^{\frac1{n}}=\sqrt[\uproot{1}\leftroot{3}n]{a_1a_2\cdots a_n}\]
  • 調和平均(Harmonic mean)

  • \[\frac{n}{\displaystyle\sum_{k=1}^{n}\frac1{a_k}}=\frac{n}{\frac1{a_1}+\frac1{a_2}+\cdots +\frac1{a_n}}\]




そして,これらの間には以下の関係があるのでした。

\[\begin{array}{ccccc}
調和平均&\leqq&相乗平均&\leqq&相加平均\\
\frac{n}{\displaystyle\sum_{k=1}^{n}\frac1{a_k}}&\leqq&\left(\prod_{k=1}^{n}a_k\right)^{\frac1{n}}&\leqq&\frac1{n}\sum_{k=1}^{n}a_k
\end{array}\]



以下,この不等式を「$H\leqq G\leqq A$」と表すことにします。


さて,$0 < a < b$として,区間$[a,\,b]$を考えます。

まず,この区間を,$x_0=a,\ x_n=b$をみたす等差数列$\{x_k\}$で「分割」します。
\[x_k=a+\frac{b-a}{n}k\quad (k=0,\,1,\cdots ,n)\]

この$n+1$個の数に対して,$H\leqq G\leqq A$を考えると,
\begin{align*}
\frac{n+1}{\displaystyle\sum_{k=0}^{n}\frac1{a+\frac{b-a}{n}k}}&\leqq\left\{\prod_{k=0}^{n}\left(a+\frac{b-a}{n}k\right)\right\}^{\frac1{n+1}}\\
&\leqq\frac1{n+1}\sum_{k=0}^{n}\left(a+\frac{b-a}{n}k\right)
\end{align*}
となります。

まず$A$(最右辺)ですが,これは実際にシグマ計算した結果,$\frac{a+b}2$となります。
これは数列$\{x_k\}$の作り方から,直観的にも明らかでしょう。


次に$G$と$H$ですが,これらは計算できません。しかし,$n\to\infty$とすれば区分求積法で計算できます。
$G$に関しては,まず対数を取ってから計算します。

\begin{align*}
&\lim_{n\to\infty}\log\left\{\prod_{k=0}^{n}\left(a+\frac{b-a}{n}k\right)\right\}^{\frac1{n+1}}\\
={}&\lim_{n\to\infty}\frac1{n+1}\sum_{k=0}^{n}\log\left(a+\frac{b-a}{n}k\right)\\
={}&\int_0^1\log\left\{a+(b-a)x\right\}dx\\
={}&\frac1{b-a}\int_a^b\log tdt\quad\text{($a+(b-a)x=t$とした)}\\
={}&\frac1{b-a}\Bigl[t\log t -t\Bigr]_a^b\\
={}&\frac1{b-a}\left\{b\log b-a\log a-(b-a)\right\}\\
={}&\log b^{\frac{b}{b-a}}-\log a^{\frac{a}{b-a}}-1\\
={}&\log\left(\frac{a^{\frac{a}{a-b}}b^{\frac{b}{b-a}}}{e}\right)
\end{align*}
よって,
\[\lim_{n\to\infty}\left\{\prod_{k=0}^{n}\left(a+\frac{b-a}{n}k\right)\right\}^{\frac1{n+1}}=\frac{a^{\frac{a}{a-b}}b^{\frac{b}{b-a}}}{e}\]



これに比べると$H$の極限の計算は楽です。

\begin{align*}
&\lim_{n\to\infty}\frac{n+1}{\displaystyle\sum_{k=0}^{n}\frac1{a+\frac{b-a}{n}k}}\\
={}&\lim_{n\to\infty}\frac{1}{\frac1{n+1}\displaystyle\sum_{k=0}^{n}\frac1{a+\frac{b-a}{n}k}}\\
={}&\frac1{\displaystyle\int_0^1\frac{dx}{a+(b-a)x}}\\
={}&\frac1{\frac1{b-a}\displaystyle\int_a^b\frac{dx}{t}}\quad\text{($a+(b-a)x=t$とした)}\\
={}&\frac{b-a}{\Bigl[\log t\Bigr]_a^b}\\
={}&\frac{b-a}{\log b-\log a}
\end{align*}




これで,以下の不等式が証明できました。

\[\large\displaystyle\frac{b-a}{\log b-\log a}\ \leqq\ \frac{a^{\frac{a}{a-b}}b^{\frac{b}{b-a}}}{e}\ \leqq\ \displaystyle\frac{a+b}2\]



ここに現れた$\frac{a^{\frac{a}{a-b}}b^{\frac{b}{b-a}}}{e}$と$\frac{b-a}{\log b-\log a}$のことを,それぞれ,$a$と$b$の Identric meanLogarithmic mean と言います。


\[\begin{array}{ccccc}
\text{Logarithmic mean}&\leqq&\text{Identric mean}&\leqq&相加平均\\
\displaystyle\frac{b-a}{\log b-\log a}&\leqq&\frac{a^{\frac{a}{a-b}}b^{\frac{b}{b-a}}}{e}&\leqq&\frac{a+b}2
\end{array}\]



次回に続きます。


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seven_triton at 15:00|PermalinkComments(4)TrackBack(0) いろいろな「平均」 | 不等式

2011年11月09日

高次導関数と経済

equation



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seven_triton at 08:54|PermalinkComments(14)TrackBack(0)

2010年11月06日

多項式で平均値の定理

equation1


equation2


equation3


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seven_triton at 01:43|PermalinkComments(14) 理系微分 

2010年03月29日

2010年度東大数学

久しぶりの記事になります。
更新を心待ちにしていた方がいらっしゃいましたら,大変申し訳ありませんでした。


さて,この記事では今年の東大数学について簡単なレビューをしたいと思います。


その前に,ここ数年の東大数学に関する私見を簡単にまとめておきます。

【理系】
・難易度については2002年度あたりが底であり,それ以降少し戻したが,その後2007年度までは大きな変化は見られなかった。
・しかし2008年度は,第1問の一次変換,第3問の正八面体の回転,第6問のパラメータ表示曲線の囲む面積など,難易度・計算量が増加した。
・昨年度(2009年度)はそれに更に拍車がかかった格好で,質・量ともに非常に重厚なセットだった。第1問の二項係数,第4問の体積の評価,第5問の不等式,第6問の正三角形の問題,など。

【文系】
・理系と同じく,2000年代前半の易化傾向からやや戻していたが,理系ほどの戻りはなかった。
・逆にここ2年(2008,2009年度)はかなり楽なセットで,上位の生徒にとっては差がつかなかった模様(逆にここで点数が伸び悩むと致命的)。


この流れでの2010年度東大数学ですから,

・理系の難化傾向が続くか(特に,2年連続で難しかった図形問題に注目)。
・文系の易化傾向が続くか。

をポイントとして見ていました。



では,2010年度の東大数学を,まずは各問別に見ていきます。

【理系第1問】(直方体を90°回転した立体の体積の範囲)

(1) 中学レベル。
(2) 一方でこの設問はなかなか良問だと思います。全く難しくはありませんが。「合否を分ける」レベルの一段階下,というところでしょう。


【理系第2問】(定積分の不等式の証明)

昨年度の理系第5問と似た問題ですが,それよりはかなり易しいでしょう。2007年度第6問も同じような問題です。

(1) 気付ば一瞬ですが,ちょっと経験が必要でしょう。ただ,どんな方法でも最後まで行き着くので,確実に取りたい問題です。
(2) これも気付けば一瞬,経験が必要な数IIIの問題。

【理系第3問/文系第3問】(確率の漸化式)

確率は,2003年度から8年連続の出題。近年は漸化式を使わない(使わないでもいい)問題が目立っていましたが,今年は漸化式。
ただ,漸化式を立てるのが(そしてその前に (1) に答えるのが)非常に厄介です。まずは状況の把握に手間取りますし,(1) の「 x に対してうまく y を選び,」という部分がきちんと理解できなかった受験生も多いでしょう。
(1) を使って漸化式を立てれば (2)(3)(文系は (2) のみ)は簡単なのですが,全体の難易度としてはかなり高い方です。

【理系第4問】(双曲線,面積)

私は,今年のセットではこの問題が最も簡単だと感じました。x/2 を移項して2乗すれば2次曲線であることはすぐに分かり,x→-∞,∞ を考えることにより漸近線が存在することが分かるので,双曲線だと分かります。(1)(2) ともに直角双曲線だと非常によくある話です。
そんなことを考えなくても,普通に計算していけば出ます。(2)では y で積分することが一応のポイントでしょうが,「(1) を利用する」,「y_1,y_2 で表せと書いてある」の2点を考えれば当然です。


【理系第5問/文系第4問】(単位円周上を動く3点が直角二等辺三角形をなす条件)

「直角二等辺三角形をなす」という条件を数式化できれば,あとはひたすら一つ一つ考えていくだけです。難しくはありませんが,意外と面倒です。ただ,逆に言うとそれだけの問題です。


【理系第6問】(四面体の断面積の最大値)

(1) サービス問題。
(2) これが今回のセットで最も難しい(面倒)でしょう(それでも昨年度の第6問(正三角形)に比べればマイルド)。

t=2/9 の前後で断面が変わることに気付くのは必須ですが,その理由の記述や,また t>=2/9 のときに台形になることの理由の記述などはバッサリ割愛すべきでしょう。答えを出すことが先決です。ただ,ほとんどの受験生にとってはここを取るのは至難の業だったと思います。
(3) は (2) が出来れば (1) 以上のサービス問題なのですが……。


【文系第1問】(2つの三角形の面積の和の最大値)

条件 (ii) に不備がありましたね。私が問題を受け取ったときにもそれを知らなかったので,状況が2つあって面倒だなぁと思っていました。

不備が修正されれば非常に易しい問題です。論理性も計算量もほとんど必要なく,絶対に落とせません。


【文系第2問】(定積分,係数決定)

第1問以上に簡単な問題です。近年の東大文系数学の特徴ですね。特に言うことはありません。




まとめると以下のようになります。


【理系】
・さすがに昨年度よりは難易度・計算量ともに落ち着いた。
・しかし,それでもここ数年の中では難しい方である。特に図形問題は今年も難しかった。
(・ただしその一方で,80年代,90年代と比較するとやはりそれほど難しいわけではない。)

【文系】
・微妙に難化したと言えなくもないが,ほぼ昨年並み。やはり上位層の間では差がつかず,点を落とすと致命的。





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seven_triton at 02:22|PermalinkComments(14)TrackBack(0) 大学入試問題 

2009年07月31日

周期関数の和は周期関数か(2)

前回の記事では,$f(x)=\sin x+\sin\sqrt2\,x$が周期関数であるかどうかが未解決でした。$\cos x+\sin\sqrt2\,x$の場合と違って,$x=0$と$x=-p$を代入してもすぐには分からないのですが,$x=0,\,\bun{\pi}2,\,-p+\bun{\pi}2$を代入すればわかります。$f(x)=\sin x+\sin\sqrt2\,x$が周期$p\ (>0)$の周期関数であると仮定すると,任意の実数$x$について\[\sin x+\sin\sqrt2\,x=\sin(x+p)+\sin\sqrt2(x+p)\text{ ……\ajMaru{1}}\]が成り立ちます。\ajMaru{1}に$x=0,\,\bun{\pi}2,\,-p+\bun{\pi}2$を代入して\begin{align*}&0=\sin p+\sin\sqrt2\,p\text{ ……\ajMaru{2}}\\&1+\sin\left(\sqrt2\cdot\bun{\pi}2\right)=\cos p+\sin\sqrt2\left(\bun{\pi}2+p\right)\text{ ……\ajMaru{3}}\\&\mathopen{}\cos p+\sin\sqrt2\left(-p+\bun{\pi}2\right)=1+\sin\left(\sqrt2\cdot\bun{\pi}2\right)\text{ ……\ajMaru{4}}\end{align*}\ajMaru{3}\ajMaru{4}を比べて\begin{align*}&\mathopen{}\sin\sqrt2\left(\bun{\pi}2+p\right)=\sin\sqrt2\left(-p+\bun{\pi}2\right)\\\LLeftrightarrow{}&\mathopen{}\sin\sqrt2\left(\bun{\pi}2+p\right)-\sin\sqrt2\left(-p+\bun{\pi}2\right)=0\\\LLeftrightarrow{}&2\cos\left(\sqrt2\cdot\bun{\pi}2\right)\sin\sqrt2\,p=0\\\LLeftrightarrow{}&\sin\sqrt2\,p=0\ \left(\because\cos\left(\sqrt2\cdot\bun{\pi}2\right)\ne0\right)\text{ ……\ajMaru{5}}\\\LLeftrightarrow{}&\sqrt2\,p=n\pi\ \left(n\in\Z\right)\\\LLeftrightarrow{}&p=\bun{n\pi}{\sqrt2}\text{ ……\ajMaru{6}}\end{align*}\ajMaru{5}を\ajMaru{2}に代入して\[\sin p=0\Leftrightarrow p=m\pi\ \left(m\in\Z\right)\text{ ……\ajMaru{7}}\]\ajMaru{6}\ajMaru{7}より\[\bun{n\pi}{\sqrt2}=m\pi\Leftrightarrow n=\sqrt2\,m \]$n,\,m\in\Z$と$\sqrt2\not\in\Z$から,これをみたす$n,\,m$は$n=m=0$に限りますが,このとき$p=0$となるので不適です。従って,$f(x)=\sin x+\sin\sqrt2\,x$は周期関数でないことが示されました。\br2以上は文理共通用の答案ですが,三角関数の微分を使っていいのであればもっと簡単に解決します。\ajMaru{1}までは同じです。\ajMaru{1}は任意の実数$x$で成り立つので,両辺2回微分しても成立します。$(\sin x)''=-\sin x$なので,\begin{align*}&\mathopen{}-\sin x-2\sin\sqrt2\,x=-\sin(x+p)-2\sin\sqrt2(x+p)\\\LLeftrightarrow{}&\mathopen{}\sin x+2\sin\sqrt2\,x=\sin(x+p)+2\sin\sqrt2(x+p)\text{ ……\ajMaru{8}}\end{align*}\ajMaru{1}と\ajMaru{8}とを比べて,\[\sin\sqrt2\,x=\sin\sqrt2(x+p),\quad\sin x=\sin(x+p)\]が任意の実数$x$で成り立つことになります。あとは移項して和→積の公式を使う,もしくは$\sin $の周期が$2\pi$であることを使うなどして矛盾が導けます。




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seven_triton at 17:55|PermalinkComments(10)TrackBack(0) 大学入試問題 | 周期関数